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1999-07-01 第145回国会 参議院 農林水産委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月一日(木曜日)    午前九時三分開会     ─────────────    委員異動  六月二十九日     辞任         補欠選任         入澤  肇君     阿曽田 清君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         野間  赳君     理 事                 岩永 浩美君                 三浦 一水君                 和田 洋子君                 須藤美也子君                 谷本  巍君     委 員                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 佐藤 昭郎君                 中川 義雄君                 長峯  基君                 森下 博之君                 久保  亘君                 郡司  彰君                 藁科 滿治君                 風間  昶君                 木庭健太郎君                 大沢 辰美君                 阿曽田 清君                 石井 一二君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    政府委員        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 康宏君        国土庁計画・調        整局長      小林 勇造君        外務省経済局長  大島正太郎君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省畜産        局長       本田 浩次君        農林水産省食品        流通局長     福島啓史郎君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        食糧庁長官    堤  英隆君        林野庁長官    山本  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 威男君    説明員        通商産業大臣官        房審議官     北爪由紀夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○食料農業農村基本法案内閣提出衆議院  送付)     ─────────────
  2. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る六月二十九日、入澤肇君が委員を辞任され、その補欠として阿曽田清君が選任されました。     ─────────────
  3. 野間赳

    委員長野間赳君) 食料農業農村基本法案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 岸宏一

    岸宏一君 おはようございます。  この法案の問題で大臣に御質問申し上げるのは考えてみるともう三回目になってしまったんです。余り質問することもなくなりましたが、ひとつよろしくお願いいたします。  今まで衆議院参議院を通じて長い質疑があったわけであります。聞くところによりますと、衆議院では三十数時間、それから我が参議院におきましては十数時間、この委員会だけでも質疑が行われているということでございますが、大臣も大変だと思います。  ところで、大臣としてこの長い質疑を通じて、法案を出されたときと、各国会議員皆さんからさまざまな質問や御意見をちょうだいしていろいろと参考になるものも多かったろうと思うんです。そんな意味で、今までの質疑を総括してどんな印象を持たれたか、どんなふうに考えられたか、そんなことをひとつお聞かせください。
  5. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) おはようございます。  今、岸先生からお話がありましたように、当委員会におきましても長時間、大変精力的な御議論をいただいておりますことにまず厚く御礼を申し上げます。  衆議院で三十数時間、そして当委員会でも既に十数時間ということでございますが、率直に個人的な感想から申し上げますと、御議論内容が非常に私自身も勉強になり、考えさせられるところが多いということをまず申し上げ、先生方に厚く御礼を申し上げます。  四十年近くぶりの日本農政基本議論していただいておるわけでございますから当然十分な議論が必要でございますが、特に新しい基本法におきましては、国民全体にかかわりのある食料、あるいはまた国民全体にかかわりのあるそれを生産する農業、そしてその生産地域である農村地域あるいは空間というものが新しくこの基本法の中に大きな柱として入ってきたわけでございます。そういう意味で、そういう議論を初めとして多岐にわたる食料農業農村についての議論をいただいておりまして、その議論を通じましてこの法案提出に至る経緯あるいはまたこの法案趣旨等につきまして、個別政策あるいは基本理念を含めまして国民的に議論が深まっているというふうに理解をさせていただいております。  衆議院におきましては三点の修正があったわけでございまして、法案趣旨が一層明確化されたというふうに理解をしておりますが、当委員会におきましても引き続き御議論をいただき、何としても国民的な理解あるいは国民的な支持のもとで、特に国の責務としての我々の仕事あるいはまたそれぞれの責務努力目標が図られまして、四つ理念を初めとするこの食料農業農村基本法目的が十分達せられるようにしていきたいというふうに考えております。  重ねて、当委員会での御議論と、国民的な合意のもとでの新しい食料農業農村政策遂行できますように引き続き御指導をよろしくお願いいたします。
  6. 岸宏一

    岸宏一君 ところで、大臣農家皆さん農業その他について非常に深い愛情というんでしょうか、そういうものをお持ちの方だというふうに思いますが、いつぞや堺屋長官が何か関税率の問題で御発言なさったのにかみついたと言っては失礼ですが、強く抗議をしたということでしょうか、それから禁煙デーたばこに関してもたばこ農家のためを思って積極果敢な御発言をなさった、こういうお話を新聞で承知しましたが、それは事実でしょうか。
  7. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ことしの一月にたまたま堺屋長官がパリで、そして私がモロッコに出張しているときに、堺屋長官のたしかソルボンヌ大学の講演の中で、今度、米を関税化する、一〇〇〇%の関税というような内容の御発言がございました。私自身大変失礼な言い方をしたと、またその表現方法について失礼になるであろうということを実は予測をしながらといいましょうか、念頭に置きながらああいう発言をしました。  私自身あの発言用語については反省をし、また堺屋長官にも直接おわびを申し上げたところでございますが、その背景といたしましては、年末の関税化決定、そして生産者皆さんが大変御心配をされている中で、大変に内閣の重要な位置におられる方が事実と違うことを御発言されることによって生産者関係皆さん方にまた新たな不安を与えるということに対して、農政責任者として強い危機感を持ちました。  海外でのことでございました、お互いに。したがいまして、生産者を初め一般国民、特に事情を知らない一般国民皆様に、この問題が事実と違うということをどうやってマスコミを通じて知ってもらうかというために、若干過激かつ不適切な表現を使ったということでございます。  堺屋長官におかれましては早速事実関係を調べられまして、決して一〇〇〇%なんという数字ではないということを御理解いただき、堺屋長官からも自分には事実についての誤認があったということですぐお話をいただきましたし、私も御本人にあるいは公の場で大変不適切な表現を使ったこと、特に大先輩であり、私が堺屋長官に向かってああいう単語を使うということ自体、世の中にとってみれば中川は何を言っておるんだということになりますが、とにかく事実をできるだけ生産者国民皆さんに御理解をいただきたいということでああいう発言をしたわけでございます。  堺屋長官には御理解をいただき、また私自身も若輩の者が堺屋長官ほどの方に対して申し上げたあの単語用語につきましておわびを申し上げ、また今回の関税化の事実について御理解をいただいたわけでございます。  それから、たばこ耕作者関係のことにつきましては、世界禁煙デー禁煙週間というものが五月にございまして、たばこが有害か無害かという議論が閣議の後の閣僚懇談会の中でございました。禁煙週間の間、皆さん禁煙努力をしてくださいという厚生大臣お話は了といたしましたが、たばこについては有害であるから今後も一切たばこを吸わないようにしよう、そのために灰皿等を取り払おうという提案がございました。  私自身が、先生方大変失礼だとは思いながらも、たばこをついつい吸いながら委員会に出席していることを毎回反省しながら出てしまうほどのヘビースモーカーでございますけれども、とにかく日本には、つい数年前で六万戸、そして現在では三万戸を割ったとはいえ、地域の重要な産業としての葉たばこ生産農家が現にいらっしゃるわけでございまして、その方々も一生懸命御努力をされておるわけでございます。  日本農業あるいは農家の一部分を占めておる伝統的な葉たばこ耕作に対して、あたかも政府として不快な感情を与えることは私としては納得のできないところでございましたので、厚生大臣に対して日本葉たばこ耕作者立場というものも御理解をいただきたいということで、たばこあるいは葉たばこ耕作者について厚生大臣とちょっと議論をさせていただいたというのが実情でございます。
  8. 岸宏一

    岸宏一君 大臣、そういう大臣の率直なお気持ちを披瀝すること、これがやはり多くの農民の皆さんから恐らくは支持されるものと私は思うんです。ですから、そんなに誤ったことじゃないんじゃないか、むしろ私は大臣お話を喜んでお聞きした、こんなことがございました。  ところで大臣、その後、この参議院委員会審議に入りましてさまざまな御質問があったわけでございます。ところが、そういう率直な御意見とは裏腹に、この委員会での御答弁に何となく自分を抑えて抑えてというふうにされているような、そういう印象を感じざるを得ないわけですね。ですから、あのとき言ったようなそういう積極的な率直な御答弁あるいは御論議をこういう委員会などでやっぱりやった方がいいんじゃないか。  例えば、一度や二度間違っても、後からそれは間違いでしたと訂正すればいいことであって、ぜひ大臣の生の声をいつも私は聞きたい、それが農家皆さんに対して大きな自信あるいは大きな希望を与えることになるからだと、こういうふうに思うわけです。どうでしょうか、そういう点では。
  9. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生からの大変ありがたいといいましょうか、またある意味では厳しいといいましょうか、アドバイスをいただきました。決して自分を抑えて答弁しているわけではございません。時々予定外発言もしてしまうわけでございますけれども、万が一にも先生方の御質問に対して誠意のない答弁をしたとするならば、ぜひ先生方からも御指導、おしかりをいただきながら、できるだけ誠実に、率直に答弁をさせていただきたいというふうに思います。
  10. 岸宏一

    岸宏一君 決して失礼などはしておりません。大変御丁寧な答弁ではございます。  そこで、私はお伺いしたいんですが、この新しい法律そのものは大変立派なものだと思います。しかし、農業現状を見ますと、やはり農家人口がどんどん減少し、農家戸数も減少し、自給率も下がる、そういう非常に難しい局面にあるわけでございます。それだけに、この法案国民に対する理解を深める、最初の質問で申し上げたのにお答えいただいたわけですけれども、国民理解も深まったとおっしゃっていましたが、そんなに深まっているとはやっぱり言えないんじゃないか。これからもっともっと、まずこの理念なり基本的な考え方なり、こういうものを国民に訴えていく必要があると思うんです。  そこで、大臣として何か、国民に訴えるためにおれならこうやりたいと。例えば、大臣農家でない皆さんのところへ直接行って農業の重要さを遊説して回るとか、あるいは、きょうは林野庁長官もいらっしゃいますけれども、天皇陛下が全国植樹祭に出席されたことでどれほど日本の森林が立派に造成されたか知れない、その影響は非常に大きいものがあると思うんです。実は、平成十四年に私の町でおかげさまで全国植樹祭が行われるように内定はいただきましたが、これだけでも大変地域皆さんは喜んでいらっしゃるわけです。  ですから、新しい法律ができるあるいはできた、そこで国民理解を求めるための新しいアクションなり新しいイベントなりを大臣として個人として何か一つぐらいあってもいいんじゃないかと、こういう思いを実は強くするわけなんですけれども、率直にどうですか、大臣
  11. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の法案審議につきましては、一部農業関係専門誌では逐一報道されておりますけれども、確かに一般国民の中にはこの参議院の当委員会での非常に有意義な議論過程というのはなかなか国民に知らされていないというのが現状だろうと思います。  先ほど国民的理解がふえつつあるというような趣旨発言をいたしましたが、特に消費者皆さんを初めとする、農業に直接携わらない、しかし利益を受ける国民皆さんに対してこの法案内容を何としても御理解いただくことが新しい農政遂行大前提でございます。そういう意味で、私は、農政責任者としての立場と同時に、農政国民に知らせるための広報の第一線にいなければいけない存在だろうというふうに思います。  そういう意味で、具体的には消費者団体皆様方、これはあくまでも全国団体皆様方でございますから人数的にはいつも二、三十人でございますけれども、できるだけ、一時間二時間かけましてこの基本法あるいはWTOを初め時々の農政の重要な問題につきまして御意見をいただき、また現状を御説明しておるところでございます。また、消費者の部屋というのが農林省にございますけれども、あそこにもできるだけ私自身顔を出して、そこに来ていただいております皆さん方といろいろ言葉を交わしてお話を聞かせていただくとか、また農林省のホームページの中に基本法を初めとする農政ポイントにつきましてできるだけ迅速に情報を載せていくというようなことにも努力をしておるところでございます。  先生指摘のように、足を運んで農政、特に基本法内容というものを一般国民皆さんに御理解いただくということは非常に大事なことでございますので、今、省庁を挙げて幹部が全国に散って説明をしておりますけれども、私自身が今まで以上に消費者を初めとする一般国民皆様にこの審議の模様あるいはまたこの法律案ポイントについて一生懸命説明をしていかなければならない責任があると思っております。  さらに大事なことは、子供たちへの理解が必要なのではないかということで、文部大臣には大変御理解をいただいておるわけでございますので、有馬大臣陣頭指揮のもと、文部行政の中でも特に子供たちに対する農業農村あるいは自然に対する親しみといいましょうか、コンタクトというものができるようにする。これは私が先頭にならなければなりませんけれども。  政府全体を挙げて、この法案の御理解をいただきながら、当委員会での御審議を支えていただくという言葉が適切かどうかわかりませんが、国民的な理解合意というものを大前提としながら、この法案が成立をさせていただきましたならば政策遂行に邁進をしていかなければなりませんし、また審議過程というものを国民皆さんに御理解いただく努力を今まで以上に、先生の御指摘もいただきましたので、頑張っていきたいというふうに考えております。
  12. 岸宏一

    岸宏一君 大変御丁寧なお答えでございましたが、私はこの際、新しい法律ができたならば、来年度の新しい予算で何かビッグイベント、あるいはそれを毎年やっていく、そういったことを考えることも必要なのではないか、国民理解を得るために。そんなことを大臣それから官房長にぜひひとつお考えいただきたい。  特に、国民理解を得にくい点を一つ申し上げたいと思いますが、私も議論を聞いておりまして一番難しいと思っているのは自給率の問題です。この法案によりますと、国内農業生産の増大を図ることを基本的にやるわけですから、常識的に自給率は五〇%以上かなというふうにみんな考えると思うんですね。  これは、大臣としてはまだ目標を何%にしたいなんということはお答えになっていないはずですけれども。お答えになりましたか。
  13. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現在の自給率あるいはそのトレンドというものを前提として、二条、あるいは十五条の基本計画の中、あるいはまた十五条三項の自給率向上を図ることを旨としというような条文で、今までの自給率では国内生産基本としと言えないのではないかということは再三答弁をさせていただいております。  では、どのぐらいになったら基本とするのかということにつきましては、向上ということにつきましては努力をしその実現を図っていきたいと考えておりますが、具体的に何%ということになりますと、いろいろな要件あるいはまたいろいろな要因、極端に言えば消費者マインドも含めましていろいろございます。  現在作業中ということで、具体的に何%ということ、これは実現をしていかなければいけない目標でございますので、もちろん私も実現可能な、高ければ高い数字を掲げたいところでございますけれども、基本計画という非常に重たい計画の中にそれを書き込むということになりますならば、慎重かつかなり多岐にわたり複雑な前提の中での計算というものが必要になってまいりますので、現時点でははっきりと何%以上とかそれを目標にするということは申し上げられませんので、いかなる機会においても申し上げておりません。
  14. 岸宏一

    岸宏一君 確かに、これを五〇%に上げるというのは並大抵の努力では難しいと思います。しかし、国民に向けて、例えば具体的に一%上げるために皆さんこういうふうな努力をしてください、消費者はこうしてください、農家皆さんはこうしてください、こういうふうに、例えば一%上げるための具体策というものをはっきり国民に示すということは理解をいただくために非常に重要なことじゃないか。  同時に、なぜ自給率向上が必要かということももう少し国民に広く知っていただかなきゃいけない、こういうふうに思います。ぜひこれを今後わかりやすくお示しいただくようにすべきではないかというふうに思います。これは時間がありませんからよろしく申し上げたい。  そして、目標ですから、到達できないと後から怒られるとかそういうこともあるでしょうけれども、どうなんでしょう、これぐらいは欲しいんだよということをやっぱり大臣が言ってもいいと思うんです。それが達成できなかったときにいろいろ言われても、それは仕方がないことですから。目標をはやっぱりある程度示すことは大事だと私は思っていますということだけ申し上げておきます。  大臣答弁大変熱が入っておりまして質問の時間がもうあと三分しかありませんから、これは答弁は要りません。それで、お考えいただきたいことは米の問題です。  来年度の生産調整をどうするかということでいろいろとお悩みだろうと思います。今までのやり方をただ単に踏襲するということだけはぜひ改めていただきたい。新しい基本法ができる、あるいはできたその直後にこの計画が発表されるというような形になるわけですから、せっかく新しい法律ができたのに生産調整やり方は何にも変わらないんだな、じゃ農業もさっぱり変わらないだろうというふうに国民に思われることを私は一番恐れます。ですから、ぜひ新しい視点で、この方法論については私は申し上げません、ぜひ新しい方法生産調整をやっていただきたい。そして、苦しいでしょうが、農家皆さん国民皆さん理解を得るようにやっていただきたいということをお願い申し上げておきます。  それから、中山間地等に対する直接支払いの問題でございます。これは非常に重要な問題でございます。聞くところによりますと、直接支払い一筆ごとに支払われる方向で進んでいると聞いております。そういたしますと、結構事務量もふえてまいります。事務量もふえるということ、これは地方公共団体がかなり費用がかかるということでもございますから、この辺に対する御配慮もお忘れないようにお願いしたい。  と同時に、この作業については農業委員会というものが、私は今新しい時代に農業委員会がしっかりしなきゃいかぬと思っていますので、農業委員会あたりにこういった仕事をさせてはどうかということを御提案申し上げますとともに、ぜひひとつ御要望申し上げたい、こういうふうに思っております。  林野庁長官にも質問をしたかったんですが、三十三分になりましたので、またこの次にお願いをすることといたしまして、私の質問を終わります。  大臣、ひとつしっかり頑張ってください。そして、日本農政史に残る立派な大臣と言われるように私ども期待をしております。  どうもありがとうございました。
  15. 森下博之

    森下博之君 自由民主党の森下博之でございます。  本委員会の二日間の質問を拝聴いたしまして、問題点も出尽くした感もいたすわけであります。若干重複する点もあろうかと思いますが、お許しをいただいて、以下質問をさせていただきたいと思います。  今、政府提案をいたしております新しい基本法案法律名というのは農業基本法ではないわけでありまして、食料農業農村基本法ということであります。その基本理念というのも、食料安定供給等々四本の柱で成り立っておると思うわけであります。したがいまして、現行基本法と比べましてその法目的の範囲というのは格段に広がったという認識を私もいたしておるところであります。  これまでの農政というのは農業生産者農業生産ということに力点が置かれまして、消費者視点というのが若干軽視をされた面がある点は否めないと思っておるところであります。法案の名称からも国民全体の視点から農政を改革するという姿勢がうかがえるわけでありまして、農業者のみならず消費者も大いに期待をいたしておるところではないかと私は考えております。  いずれにいたしましても、食料農業農村政策というのは国民の生活に直接関連するものでありますし、新たな基本法というのは国民各界各層期待に十分こたえられるものであるべきだと思うわけであります。  そこで、国民全体の視点に立った新しい基本法というものについて、改めて大臣の決意をまずお伺いいたしたいと思います。
  16. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、先生指摘のように、新しい基本法におきましては四つ理念、その第一番目に国民に対する安定的な食料供給、これは平時、不測時両方にわたって国内生産基本とし、備蓄あるいは輸入を組み合わせてやっていくということが第一でございます。したがいまして、国民全体に密接なかかわりのある法律だということでございます。  そして、これも国民全体にかかわりのあることだと思いますけれども、農業農村の果たす多面的な役割というものが大事である、機能を発揮させることが大事であるということでございます。  この二点を支えるために、農業の持続的な発展、そしてまた農村の振興というこの四つ理念から成り立っておるわけでございまして、この大きな四つの柱のほかに、どうやって国際的な貢献をするかとか食料の輸出についても実は条文の中にあるわけでございますし、さまざまな大事なポイントが新しく盛り込まれているわけでございます。特に、今後予想される人口と食料とのアンバランスの中で、国民に対して安定的な食料供給をしていくということを初めとするこの四つ理念実現させていかなければなりません。  そのためには、生産者はもとより、消費者あるいは食品産業を初めとする国民全体の理解と共通認識のもとで国の責務あるいは自治体の責務あるいは生産者努力目標等も含めまして、国民に対する命と暮らしの安全と安心を確固たるものにし、そして農業者に対しては自信と誇りを持てるような農政、新しい食料政策というものを遂行していかなければならないというふうに理解をしております。
  17. 森下博之

    森下博之君 次に、昭和三十六年、現行法の制定をされた時期と今日の国内外の食料問題の大きな違いは何かということについて承りたいわけであります。  申すまでもなく、食料というのは国民の生活に欠くことのできない基礎的な物資であるわけであります。いかなる場合におきましても安全、良質な食料国民供給する、そういう意味での食料政策を推進していくということは、まさに私は政府の当然の責務であろうかと思うわけであります。私は、現行基本法になかった食料政策視点を新たな基本法に取り込み、食料安定供給ということを本法案基本理念の第一に挙げたということは高く評価をいたしておるところであります。  現行法にはなかった食料安定供給を本法案に盛り込むことに至ったのは、現行基本法の制定後、我が国の食料を取り巻く情勢が大きく変化をしたものであると思うわけであります。昭和三十六年当時と今日の国内外の食料問題の大きな違いは何であるか、承りたいと思います。
  18. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 現在の基本法が制定されました昭和三十六年当時におきましては、米の自給がほぼ可能な見通しになってきたということと、同時に我が国の食料自給率もカロリーベースで約八割という水準でありました。しかしながら、その後の国民生活の変化、食生活の変化が大きかったというのが第一点であります。  これは、国土資源に制約がある中で、自給が可能な品目であります米の消費が大幅に減退をいたしまして過剰問題を惹起するに至った。その一方では、畜産物や油脂の消費が増加をいたしまして、そのえさとなる穀物の、あるいは油の原料となる大豆や菜種などの原料農産物の輸入が大きくふえたということが挙げられます。このことによって、八割近かった自給率が大幅に低下したというふうになりました。それから、近年、国民の食品の安全性あるいは品質に対する関心も非常に高まっているということも言えようかと思います。  一方、国外の情勢を見ますと、御案内のように、世界の人口はふえる一方でございます。また、中国を初めとする国の食生活の高度化、日本がたどったと同じように肉類の消費がふえていくとなりますと、穀物に対する需要が一層増大するということが需要面である一方で、供給面では環境問題の顕在化によります生産拡大への制約、こういうことが出てまいりまして、短期的にも不安定な要素が出ておりますし、中長期的に見ますと逼迫する可能性がある、こういうことが見込まれるに至っております。  以上のような国民の食生活と食料供給のあり方に関する変化ということと世界の食料需給をめぐる不安定な要素、こういうことが昭和三十六年当時と違う今日の大きな事情であろうかと思います。そういったことを背景といたしまして、ただいま御指摘がありました食料安定供給に対する国民の不安が高まっている、あるいは一方で健康というものの価値が非常に高まりまして、健康で充実した生活の基礎としての良質な食料に関する関心が高まっている、こういうことが今日の特徴的な事態として言えようかと思います。  こういう要請に対応いたしまして、まさに食料安定供給、そしてまた良質な食料の合理的価格での供給ということを基本理念として規定するに至ったということでございます。
  19. 森下博之

    森下博之君 次に、食料自給率についてお伺いをいたしたいわけでありますが、今、岸先輩委員の方から御指摘のあったところでありますが、私も若干意見を申し上げたいわけであります。  衆議院議論あるいはこの二日間の議論の中で、どの程度の目標値を設定すべきかということについては判然としないわけであります。岸委員指摘の中でありましたように、一%目標値を上げるということ、自給率を引き上げるということの困難性も私なりに理解をいたしておるところであります。  しかしながら、今回修正されました国内生産の増大を基本とするという第二条の理念というのを考えました場合には、やはり五〇%を切る目標値設定というのはできないのではないかというか、五〇%以上にすべきではないかという思いを私は強くいたしておるところであります。地方公聴会におきましても、公述人の方からの御意見もそういうことであったんじゃないかというふうに私は理解をいたしますし、国民の大多数の方々もそういうふうに思っておるのではないかという認識をいたしておるところでございます。  岸委員指摘のように、大臣、早い機会にこの目標値というものを設定して公表すべきものだと私は考えております。この点はもちろん答弁は結構でございます。  次に、食料自給率目標を達成するために政府としてはどういうふうに取り組んでいかれるかということについてであります。  食料自給率目標の達成につきましては、難しい点も当然あるわけでありますが、具体的にどのような手段で目標実現していくか、その戦略を示されるべきだと私は思うわけであります。基本計画におきまして目標を設定するということを法文に明記されたのでありますから、具体的な取り組みについても当然一定の構想はお持ちであろうかと思うわけであります。この際、その方針を承っておきたいと思います。
  20. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 自給率向上のための方針というか戦略ということでございます。  食料自給率目標は、法文にもありますように、国内農業生産食料の消費に関する指針として定めるということでございますが、その中で、やはり何といいましても今輸入されているものに国産のものが振りかわっていくということが大事な点であろうかと思います。特に、麦や大豆、飼料作物などは自給率の低いものでありまして、振りかわる可能性が非常に高い、また食品としても重要な位置づけを占めているものであろうと思います。  したがいまして、いろいろなものが、果樹や野菜やらあるわけですけれども、特に麦、大豆、飼料作物という点は重点に置くべき品目であるというふうにまず思っております。コストの低減なりあるいは実需者、消費者のニーズに応じてこれが選択されていく、外国産のものと振りかわっていくということが大事でありまして、そういった実需者なり消費者のニーズが生産者に的確に伝わるような仕組みにしていくということがまず必要であると思います。  そのために、価格政策の見直しによりまして消費者ニーズが生産者に的確に伝わるような仕組みにしたい。また、生産者の側は、いいものをつくればそれが評価されて実需者に好まれるということを通じまして生産意欲の増大にもつなげていきたいというふうに思っております。  それから、土地の面でいいますと、現在まだ耕作放棄地が非常にございます。これを解消して有効利用していかなければならない。また、耕地利用率も、まだ裏作が可能な地帯でも必ずしも十分裏作が行われていないという問題がありますので、耕作放棄地の解消と耕地利用率の向上ということは特に重点的な課題として取り組まなければならないと思います。  それから、今日の食生活の実態を見ますと、加工食品のウエートが非常に高い。外食あるいは中食と言われているもののウエートも高いわけでございますので、現場の農業生産消費者の間をつなぐものとしての食品産業、この働きも非常に大きいと思います。農業サイドと十分連携をしてもらって消費者との間を取り持ってもらわなければいけないわけでありまして、言葉として言えば農業サイドとの連携の強化あるいは新製品の開発ということになろうかと思いますが、こういった点も重要な点であろうと思います。  これらの点に政府が取り組むことはもとよりですけれども、農業者あるいは食品産業の事業者におかれましても、十分みずからの課題として取り組んでいただく必要があると思っています。特に今具体的に、麦、大豆あるいは飼料作物ということも申し上げましたが、耕作放棄地の解消あるいは耕地利用率の向上ということになりますと、地域段階で関係者が相集って、地域農業の再構築として、地域におきます生産努力目標を立ててそれを確実に実行していく、こういう体制をとることが特に大事かなというふうに思っております。この点は生産者団体と十分これから話をしていかなければならない問題だと思います。  それから一方、今申し上げたのは主として生産面でございますが、消費の面では、これまでもるる申し上げてきたところでございますが、食べ残しとか廃棄の量が相当なものになっております。このむだをなくすということは非常に大切なことだと思います。  それからもう一点は、油分の摂取が過多になっておりまして、糖尿病も十年間で倍増するというようなことにもなっておりますので、この際やはり現在の食生活を見直してバランスのいい栄養をとるということの国民運動を起こしていかなければならないと思います。これは厚生省のような栄養を担当するところと十分連携してやっていかなければいけない。そのために、健全な食生活の指針の策定ということとか、あるいは日本型食生活の普及ということに関しまして国民的な運動もこれから起こしていかなければならないというふうに思っております。これは消費者団体の御協力も得て、相携えて取り組んでいきたいというふうに思っております。
  21. 森下博之

    森下博之君 食料自給率向上させるためには、国内で生産されたものが消費者に選択されるということが前提になろうかと思うわけであります。それを通じてその需要が増加するということが国内生産の拡大につながると思うわけであります。このためには、食料自給率目標を達成していくためにも、政府だけでなく、生産者あるいは消費者といった関係者がそれぞれの課題に一体となって取り組んでいくことが必要であろうかと思うわけであります。  具体的にどういう取り組みが考えられるか、承ります。
  22. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 農業者自身につきましては、やはり生産の現場で直接携わっているわけでありますから、今御指摘のありましたように、本当に消費者に好まれるもの、消費者から評価されるもの、あるいは麦でしたら麦を原料としている加工業者である製粉業者から評価される品質のものをつくっていく。しかもまた、大豆なんかにつきましては量のまとまりということが大変重要な課題になっております。外国産のものはまとまった量のものがどんと来るのに対して、国産の場合にはばらつきがあるということで、どちらかというと敬遠されかねない、こういう状態がありますので、ロットのまとまりということにつきましては、特に生産者サイドあるいは生産者団体を含めまして取り組んでいただかなければならない重要課題であるというふうに思っております。  また、食品産業につきましては、生産者消費者を媒介する事業者でありますから、まさに消費者のニーズにこたえ、かつそれを生産者に的確に伝えて、今日の食料消費の実態、一方ではきちんとした食事をとろうという運動もございますが、一方では女性の方の就業率も高まりまして食生活の簡便化の傾向も出ております。それ自体が悪いというわけにはいきませんけれども、その中で栄養のあるもの、きちんとした国産の農産物を使ったものが消費されていくように、間に立つ人にも御尽力いただかなければならないというふうに思っております。  政府としては、そういった農業生産者あるいは食品産業の事業者、こういった方々の努力に対しまして一体となって取り組んでいくということでやっていきたいと思います。
  23. 森下博之

    森下博之君 大臣食料安全保障についてお伺いをいたしたいわけであります。  本法律案におきましては、凶作や輸入の途絶といった不測の要因によって国内食料需給が逼迫するような、いわゆる不測の事態における食料安全保障の確保という基本理念が明記をされておるところであります。このことは、前にも申し上げましたように、いついかなる場合におきましても国民に対して食料を安定的に供給していくという決意のあらわれであろうと理解をいたしております。  改めて食料安全保障について大臣の見解を承ります。
  24. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 食料の安全保障というのは、いついかなるときも平和と並んで国民に対する一番大事な要件であろうというふうに考えております。したがいまして、先生今御指摘のように、二条あるいは十九条によりまして、平時はもとより、不測の事態においても食料供給されるようにしていかなければならないということでございます。  特に、不測時におきましては、もともと国内生産基本としと言いながらも完全に自給でやっていけないのが我が国の農業の実態でございますので、そういう中で、不測時におきましても必要最低限の食料が適切に供給されることが必要であるということで、十九条におきましては、そのために必要な食料の増産、あるいは流通の制限その他、かなり不測の事態というものを、各国の例あるいは我が国の経験等も参考にしながら、いろいろな体制をこれからとっていくべく万全を期していかなければならないと思っております。  なお、これを確保するためには農林省だけではなかなか難しいことでございますので、政府全体、そして生産者の方々の御努力、そして国民的な御理解というものも、この問題につきましても極めて重要な一つの要件ではないかというふうに考えております。
  25. 森下博之

    森下博之君 食料の備蓄の問題について承りたいわけであります。  一昨日ですか、佐藤委員質問と重複するかもわかりませんが、現在の食料備蓄の状況、我が国の食料安全保障を確保する上での備蓄の役割というものについて承りたいと思います。
  26. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 食料供給につきましては国内生産とともに輸入ということで現実に賄われているわけでありますけれども、御案内のように、国内生産につきましては不作ということが間々生じかねないわけでございますし、輸入につきましても、過去の例からいきますと、世界におきます不作、あるいはミシシッピ川が凍結したとか、港湾労働者がストライキをしたというような輸送における障害がありまして、円滑に輸入ができないという事態が生じたわけでございます。こういう経験にかんがみまして、備蓄制度ということで幾つかの主な品目につきまして備蓄をやっております。  米につきましては、特に平成に入ってからの大不作も勘案いたしまして、百五十万トンを基本にプラス・マイナス五十万トンという一定の幅を持って運用しているということでございます。このほか、小麦につきましては年間の外麦需要の約二・六カ月分、飼料穀物につきましてはトウモロコシ、コウリャンの年間需要量の約一カ月分、食品用の大豆につきましては年間需要量の約二十日分というものを予算的に措置いたしまして備蓄をしております。この数値は民間での保有量も勘案して定めております。こういうことで、過去における不作あるいは輸入障害の経験からいたしますと、その程度の短期的な供給不足に対しては十分対応が可能な水準が確保されているというふうに思っております。  ただ、備蓄というのは一時的、短期的な供給不足の事態に備えるべきものでありますから、事態が長期化するということになりますと、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、本法案の十九条に規定しているような食料の増産あるいは流通の制限といったような生産、流通両面の対策が必要になるというふうに考えております。
  27. 森下博之

    森下博之君 新しい基本法の中では、不測の事態となった場合において必要な対策を講じることにより、国民が最低限度必要とする食料を確保するということが明記をされておるわけであります。この最も厳しい状態というのは、食料の輸入が全くなくなった場合も想定されるわけであります。  こうした場合に、国民が最低限度必要とする食料とは具体的にどの程度の食料水準を念頭に置かれておるのか、お答えいただきたいと思います。
  28. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 御指摘がありましたような輸入が一切ない場合でもどうなのかということでございます。  これにつきましては、現状程度の農地と農業生産技術という前提を置きまして試算をいたしてみますと、一人当たり大体千七百六十キロカロリーの供給熱量に相当するものを供給することが可能だというふうに考えております。これは、現在の生産を転換いたしまして熱量効率を最大化した場合に、国内生産だけでどれだけ供給が可能かというものでございます。それで、千七百六十キロカロリーという水準、これは大体昭和二十二年から二十三年ぐらいの水準でございまして、この程度の水準が一応最低限必要なというときの目安になる水準であろうかなというふうに思っております。  もちろん現実には、今申し上げましたように、現在の農地あるいは技術ということが前提になっておりますが、そういう逼迫の事態になりますれば、当然あいております河川敷とか、戦時中もそうでありましたが校庭の一部を使うとか、そういった土地利用の拡大も可能性として見込まなければいけないわけでありますので、当然そうなればただいま申し上げた供給熱量以上の供給が可能だというふうに見ております。
  29. 森下博之

    森下博之君 次に、中山間地域への直接支払いの問題について二点お伺いをいたしたいわけであります。  私の地元の高知県を例にとって恐縮でありますが、人口二千人を割る村が中山間地域に点在をいたしておるわけであります。特に、その市町村というのは全くもう米びつは空になっておる状況にあるわけであります。この中山間地域への直接支払いの財源というのを、もしその市町村が一定の負担を強いられるといたしますと、私はこの制度そのものの十分な効果が期待をできなくなるのではないか、また実施自体も困難になるのではないかという心配をいたしておるのであります。  この直接支払いについては、まだその全容はもちろん明らかになっていないわけでありますので、私が早計な質問をすることは失礼かとは思いますが、そういう中にありまして必要な財源というのは、端的に申し上げれば、国ですべて見ていただくということでなければ私は非常に困難ではないかと思うわけであります。  その点、お伺いをいたします。
  30. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御案内のとおり、具体的な仕組みにつきましては現在、検討会で検討を急いでいるところでございまして、十二年度の概算要求にはぜひ間に合わせたいと思っております。  その中で、地方公共団体の負担につきましては、意見が三つに分かれております。一つは、先生が今おっしゃいましたように全額国庫負担とする考え方、二つ目には地元地方公共団体の裁量によってかさ上げをするという考え方、そして三つ目には、これは共同の政策でありますので、やはり地方公共団体は応分の負担をすべきであると。ただ、その場合、先生から今御指摘がありましたように、地方財政は大変苦しいわけでございますので、地財措置というふうなことでそのバックアップをするというふうな三つの考え方に分かれておりまして、まだ収れんをいたしておりません。  今申し上げましたように、概算要求時までに詰めていきたいと考えております。
  31. 森下博之

    森下博之君 終わります。
  32. 和田洋子

    ○和田洋子君 民主党・新緑風会の和田洋子です。質問をさせていただきます。  私は、各委員皆さんが御質問になったことと重複する点があると思いますが、衆議院で農基法が通った段階で各地からたくさんの要請、また陳情がありました。そういう意味からも、重複するところは国民皆さんが御疑念を持っておられるところだと思って再度お答えをいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  私は、去る六月四日の本会議で、食料農業農村基本法に前文を置くべきであるということを主張いたしました。これに対する総理の御答弁は、新基本法案が現行法と異なり四つ理念を明示する構成になっていること、趣旨説明において食料農業農村が置かれた今日の実態と農政との関係、今後農政が目指すべき方向を明らかにしていること、さらに最近の立法例として前文を置く法律がなくなっている実情からその必要がない旨お答えをいただいたと私は記憶しております。しかし、私は、この新基本法案国民の共感を呼んでいない、農業者が将来の営農に希望を持っているようなものではない、そういう力強さに欠けているというふうに思っています。  ここで、大変時間をいただいておりますので、現行基本法の前文、「わが国の農業は、長い歴史の試練を受けながら、国民食糧その他の農産物の供給、資源の有効利用、国土の保全、国内市場の拡大等国民経済の発展と国民生活の安定に寄与してきた。」、またその後で「われらは、このような農業及び農業従事者の使命が今後においても変わることなく、民主的で文化的な国家の建設にとつてきわめて重要な意義を持ち続けると確信する。」。  何回読んでも胸が震え立つような、本当に熱いものを感じるのがこの前文であり、また次の総則であるというふうに私は思います。憲法の前文にも匹敵するような格調の高い前文であるから、私はやっぱりこの新基本法にも前文を置いてほしかったというふうに思います。提案理由で過去の農政の反省の上に立って新たな基本法を制定する意義を説明しておられるのですから、その四つ理念基本理念を統括した考えでぜひ前文を置いてほしかったというふうに思います。  さっき岸委員が農林大臣にすばらしいエールを送っておられましたが、率直に農林大臣の生のお声で、ああ、実は前文を置くべきだったというふうに思っておられるかどうか、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  33. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、この基本法農政食料政策全般の基本法であり、いわゆる理念を掲げた法律であるという位置づけにあるわけでございます。具体的には二条から五条まで四つ理念があるわけでございますが、一条でその理念実現に向けて頑張っていかなければならないということが明記をされておるわけでございます。  また、先生も御指摘になりましたが、最近の基本法におきましては男女共同参画法を除いて、というのはこれは議員立法でございますので、政府提出法案といたしましては、最近の立法例として前文を置かずに、特に基本法で具体的に条文の形で法律理念というものを明示しておるわけでございます。  さらに、先生農業基本法の前文を引用されましたけれども、民主的で文化的な国家の建設とか、あるいはまた公共の福祉を念願する国民責務に属するものだという農業者の使命とかいったものはまさに日本国憲法で明示されておるわけでございますから、日本国憲法に反するような立法というのはあり得ないわけでございますので、日本国憲法の趣旨に沿った形でこの食料農業農村基本法ができ上がっているということも、これは実は政府答弁の中にはない、私が今この条文をいい条文だなと思いながら読んで、たしかこれは日本国憲法の中の言葉にもあったなと思いまして、こういう答弁をさせていただいております。  憲法の趣旨にも十分合致した基本法であるということ等々を踏まえまして、前文を置かずに各条文の中で基本理念を掲げ、その実現に向けて努力をする責務を我々は負っておるということでございます。
  34. 和田洋子

    ○和田洋子君 御答弁でありますけれども、前文に流れた思いと、また総則でしっかり書いてあることを思えば、私はやっぱり必要だったという考えは変わりません。  そして、総理は趣旨説明で述べているというふうにお答えでありますが、この基本法趣旨説明が一緒にいつもいつも行くということは考えられません。後世の皆さんがこの基本法を利用するときに、趣旨説明はどうだったかなという感じはないというふうに思います。  また、男女共同参画社会の前文を大臣は今言われましたが、議員立法であろうと国からの法律であろうと、今までなかったから今もないというよりは、なかったけれども今つけるという方が意義がありますし、男女共同参画のあの前文は朝日新聞の先日の社説の中でも前文を引用して書いてありました。やっぱり国民はその前文がどんなものであるか、大変関心が高いというふうに思います。  そしてまた、大臣はこの農業基本法消費者皆さんにも大変大きな関心があるというふうに先日お答えになりました。もちろん、カロリーベースで四一%だったり穀物ベースで二八%だったり、安全な食料、また遺伝子組みかえなんというこの世の中でもう消費者皆さんが食に理解を示さない、関心を示さないというわけにはいかない、そういう思いで消費者皆さんは関心を示されているのだというふうに思います。  必ずしもこの基本法がいいとか悪いとかは私は言いませんが、消費者皆さんの関心があるだけではないというふうに思いますので、その点を十分お考えの上、この基本法、次の基本計画などに取り組んでいただきたいというふうに思います。  そして、私は基本理念に欠けているものを御指摘したい。新基本法案が掲げた理念は、食料安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的発展及び農業の振興の四点であります。これ自体これからの農政に絶対に欠かすことはできないものだというふうに思いますけれども、しかし何か欠けたものがある。それは、胸を打つものがない、情熱がない、無機質であるということと同時に、農業基本法が最大の課題としてきた他産業就業者との所得の格差の是正、すなわち農業者の生活水準を確保しなければならないという政策課題に対応していない、これが欠けているからだというふうに思います。  国民の要請にこたえて食料安定供給に努めるとか、農業の多面的機能が十分に発揮されるように努めるとか、農業の自然循環機能が維持増進されるよう持続的発展を図るという諸課題は、農政に課せられた課題だというふうにも思いますが、実はこれは農業者に課せられた課題なんです。しかし、農業経営の安定とか豊かな農村なしにはこういうことは実現できないとすれば、新基本法にこの肝心な所得の格差の是正というのが欠けていたことが農業者皆さんに落胆をさせている一番の原因ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  35. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、この新しい基本法が決して無機質ではないというふうにぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。例えば、三条の多面的機能の中に自然環境の保全あるいは景観の形成、文化の伝承といった農村ならではの、単に農業生産活動と直接かかわりないとは申し上げませんが、密接なかかわりはありますけれども、本来の農業生産活動の目的ではないけれども国民的に非常に重要な役割を農業農村が果たしておるということ、あるいは教育的な側面、消費者生産者とが共生する、お互いに理解を持って協力をし合うというようなことがポイントになっておりますので、極めてこれは有機的な新しい食料農業政策基本法というふうに御理解をお願いいたしたいと思います。  また、他産業との所得格差の是正が基本理念に入っていないという御指摘でございますが、過去の経緯の中で生産性におきましては他産業の生産性の方がはるかな伸びを示した結果、格差是正には至りませんでしたけれども、生活水準につきましては世帯員一人当たりの所得で勤労者世帯を上回り、格差は大体是正されたというふうに理解をしております。  そういう中で、この法案理念農業の持続的な発展でありますとか、あるいはまたいろいろな諸施策を農業農村に果たしていくということは、他産業との所得格差の是正ということを基本的な考えとして位置づけた上でのこの法律であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  36. 和田洋子

    ○和田洋子君 確かに、家と勤労者世帯の一人当たりの家計費の比較をしてみますと、農家の家計費は勤労者世帯をかなり上回っているというふうな統計が出ています。それは事実であります。自立経営農家の下限農業所得もおよそ勤労者の一般的な所得水準に達しているというふうに言われております。  平成十年度の農業白書には、平成九年の販売農家における世帯員一人当たりの家計費は百二十九万円で、全国の勤労者世帯を一〇〇とすると一一四・二であり、勤労者世帯の水準を上回っているというふうに確かに言われております。しかし、販売農家の世帯員というのは四・一三人であり、就業者は二・四九人、二・五人ぐらいです。就業者の比率は六〇・三%であります。一方、全国の勤労者世帯の世帯員は三・五三人であり、このうち就業者は一・六六人ということであるとすればその比率は四七・〇%でありますが、これは勤労者間の比較でいえば共働き世帯と専業主婦の家庭を比較しているようなもので、比較の対象には全然ならないというふうに私は思います。  さらに、販売農家の就業者二・四九人がすべて農業に従事しているとすれば、これは農政がすばらしい成果をもたらしたというふうに思いますけれども、多くの場合は他産業にその所得の源泉を求めている、そういう世帯員がいることが所得の水準を押し上げているという結果になっているというふうに思います。中には一家を挙げて農業に専従して高い農業所得を得ている農家もありますが、これは販売農家の数から見れば微々たるものです。自立経営農家の下限所得が平成九年の場合、一戸当たり六百十三万円であると申し上げました。しかし、これ以上の所得を確保している自立経営農家のシェアは戸数にしてわずか五%にしかすぎないんです。こういうことから考えれば、必ずしも農業者の所得が上がったというふうには私は思いません。  農業所得と製造業賃金との格差は長期的に見ても縮小しなかったというふうに農業白書でも述べておりますが、最近の傾向として農産物の価格が抑制傾向で推移をしているため、十年度の統計が明らかになれば格差はさらに拡大するのではないかというふうに思われます。農家として高い所得水準が確保されていればよいという考えがあるとすれば、それは農政の役割を否定することにもなりかねないというふうに思います。  新基本法案においても、農業で生きていこうという意欲のある農家農業所得によって勤労者並みの生活水準を確保するという目標を施策で展開する、そういう理念を明確にお示しいただきたいというふうに思います。
  37. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 今御質問の最後にありました、まさに農業を本業として意欲を持って取り組んでいこうという方の位置づけにつきましては、この基本法の二十一条で「効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立する」ということで明確にしているところでございます。この「効率的かつ安定的な農業経営」というものは、主たる従事者の年間労働時間が他産業並みの水準で、主たる従事者一人当たりの生涯所得が他産業従事者と遜色のない水準、そういった農業経営の実現を図るということを念頭に置いたものでございます。  そのためには、コストの節減も一つありましょうし、また積雪地帯で最近行われておりますように、モチ米をつくるだけじゃなくてもちにまで加工して付加価値を向上するといったような多角的な農業経営の展開によりまして農業所得を得ていくというような動きもあるわけでございますが、まさにそういったものを支援していくというふうに考えております。  これは全国一律画一的なものではもちろんございません。まさに、営農の類型あるいは地域の特性に応じてその経営が発展できるようにしようということでございます。そういったものを目指して二十一条、二十二条で経営対策を総合的に講じていく、あるいは体系的に講じていくことで農業経営の継続発展ができるようにする。そのことを通じて、また四条に農業の持続的な発展という基本理念がございますが、まさに経営あるいは担い手というものが継続発展することが日本農業の持続的な発展の大きな柱でありますから、当然そういうことで対応していくということでございます。
  38. 和田洋子

    ○和田洋子君 六月二十九日の国井委員質問でも、どうして農業者の所得が上がらなかったかという御質問に対して、大臣は集積された農家がなかったからというふうなお答えだったと思いますが、しかしこれは地域的なこともあると思います。北海道に私たちも行ってまいりましたけれども、北海道のようなああいう集積した農家が一番苦労しておられる。その集積の結果の借財、また農業構造改善事業の償還金の問題など本当に苦労しておられる。お米が二割下がれば所得が五割から六割下がるというふうにもこの間は言っておられましたが、そういうことを考えられて、農家皆さんのために皆さんのお考え、英知を集めて、所得の格差がもうこれ以上広がらないような方向にぜひお願いしたいというふうに思います。  昨年のFAOの報告によれば、九五年から二〇五〇年の間に世界の人口は七二%ふえ、五十二億人から九十五億人になると言われています。これにより、世界の食料は七五%増産が必要との見通しです。また、ワールドウオッチ研究所のレスター・ブラウン氏によると、中国が経済成長により畜産物の消費がふえ、食料作物の需要が急増することで中国は二〇二五年には一億七千五百万トンの穀物を輸入しなければいけなくなるというふうに言われております。  新基本法の第二条第二項は、世界の食料情勢について「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、」云々と規定されております。世界銀行のように楽観視して見通しを立てているところもありますが、先ほどのレスター・ブラウン所長のように極めて深刻な見通しを立てておられる専門家もいるわけでございますが、我が農林省はどういう見通しを立てておられますか、世界食料需給モデルの考え方をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  39. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 世界の食料需給の見通しについてのお尋ねでございます。  農林水産省も昨年、世界食料需給モデルを用いて二〇二五年の世界の食料需給の予測作業を行っております。これは、FAOからのデータの提供なども受けまして見通し、予測作業を行ったものでございます。二通りやっております。  一つは、単純シナリオといいますか、今までの傾向がそのまま続いたらどうなるかということが一つ。それからもう一つは、これから予想されるであろう生産の制約要因、例えば単収の伸びが鈍化するであろうとか農地面積がこれまでのトレンドどおりには進まないとかいったことから生産の伸びが鈍化するということを見込んだ生産制約シナリオ、二つのシナリオを設定してシミュレーションを行ったわけでございます。  単純な趨勢によりますと、世界の穀物生産の生産量二〇二五年で二十九億トンということでございます。これは実はほかの、今いろいろお話がありましたFAOの予測とか世界銀行なりあるいはレスター・ブラウンさんの数量と比べましても多い数字でございまして、これは単純にそのまま進めばという前提ですが、なかなかそういうふうにいくのは、現実問題としてはそう楽観できないのではないかということで、もう一つの生産制約シナリオというものをシミュレーションしたわけでございます。これによりますと、生産量の予測が二十五億トンということでございます。単純な趨勢に比べて四億四千万トンほど少ないということでございます。  一方、それに対しまして需要の方は、先ほど御指摘がありましたように、人口がふえるという要因、それから中国を初めとする国で食料消費が高度化する、肉類や油類の消費がふえるということになりますと原料農産物に対する需要が高まるわけでありまして、その少ない生産に対して需要が高まるということでありますから、どこで価格上バランスするかというと、大体国際価格が現在の四倍程度になる水準で需給がバランスするのではないかというふうに予測をしております。  これは、このシナリオのといいますかシミュレーションの性格上、需給は量としてはバランスをするという前提をとっております。ただ、その場合に価格がどう動くかということでいわば逼迫度をあらわしているわけでございまして、現在の国際価格に比べて四倍になる程度でようやく需給がバランスをするということでありますから、生産が制約されるということになりますとこういう大変厳しい事態になるというふうに考えられるわけでございます。  今申し上げた単純な趨勢のものと生産の制約のシナリオの二つの中のどの辺に現実に落ちつくのかということは、予測としてしかと申し上げるほどの材料はまだないわけですけれども、生産が制約されるという場合にはかなり厳しい事態になるということは十分予測をしてこれからの対応を考えていかなければならないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  40. 和田洋子

    ○和田洋子君 これはたしか一九九四年を基準年としてということですが、このシナリオとかあれはいつおつくりになったんですか。
  41. 高木賢

    政府委員(高木賢君) この作業そのものは昨年でございます。
  42. 和田洋子

    ○和田洋子君 わかりました。  それでは、食料安定供給基本的な考え方についてお尋ねをいたします。  修正後における新基本法案の第二条第二項は、国民に対する食料安定供給基本的な考えとして、「国内農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」と規定しています。  農政改革大綱が「世界の食料需給について長期的にはひっ迫する可能性もあると見込まれる中で、国民の必要とする食料を安定的に供給するとともに、不測の事態における食料安全保障を確保するため、国内農業生産食料供給基本に位置付け、可能な限りその維持・増大を図っていく。」というふうに述べていることと考えると当然のことであったというふうに思いますが、輸入に全幅の信頼を置けないために国内生産の増大が必要なのでありますから、あくまでも食料供給基本国内生産であるという認識を新基本法案が確認したことは適切な判断であったというふうに思います。  そういう意味で、今ほどの質問にもありましたが、食料安全保障問題にどういうふうに対応していくか、そしてまた輸入と備蓄の適切な組み合わせとはどういうものであるか、お答えをいただきたいと思います。
  43. 高木賢

    政府委員(高木賢君) まず、後者の方から申し上げますと、今も御指摘になりましたように、世界の食料需給あるいは貿易が不安定な要素を持っておるということになりますと、国民への食料供給は第一義的には輸入とか備蓄ということではなくて、国内農業生産の増大を基本として位置づけるということでございます。その上で足らざるものがあればそれは輸入によるということでありますし、また国内生産につきましても増大を基本としていくわけですけれども、時には不作ということもありますからそのことも念頭に置かなければいけない。また、輸入につきましてもいろいろな理由で十分な輸入量にならない、一時的にも減るというようなことがある可能性が当然あります。そういった一時的な供給不足の事態に対応いたしまして備蓄というものを備えなければいけないという三者の関係になろうと思います。  そこで、では国内生産をどうして増大させていくのかということでございますけれども、やはりふだんから国内農業生産の増大を図っていくということを行いまして、それがまたいざというときにも対応できる力を国内に蓄えるということにつながるのではないかというふうに思っております。したがいまして、国内農業生産につきましては、需要の動向に応じまして生産性の向上なり適地適産を進めるということでその維持増大を図るということになりますけれども、これはやはりその目標を明確に掲げるということが第一に重要なことではないかと思います。  そういう意味で、食料自給率目標ということを基本計画で定めることにしておりますけれども、その場合にはトータルとしてのいわばカロリーベース一本の自給率ということではなくて、米、麦、大豆などの品目別に自給率目標を策定する、その積み上げで全体の食料自給率目標というものを出そうというふうに思っておりますが、生産の物別にいえばやはり物別の自給率というものを出さなければならないというふうに考えております。その上で地域段階それぞれどのように目標をこなしていくのかということが大事になろうかと思います。  そういう意味で、行政と生産者団体が一体となりまして、地域のレベルあるいは研究者も加わった、あるいは普及組織も加わった地域農業におきます取り組み体制をつくるということが極めて大事なことだろうと思います。  それから、全体の仕組みといたしましては、実需者なり消費者のニーズが生産者に的確に伝わるような、そういう価格形成の実現を図らなければならないと思います。やはり、需給事情なり品質評価というものが的確に反映された価格形成でないと、製品のよしあしにかかわらず同じ価格で売れるんだとかいうことになりますと需給のミスマッチが出てまいるという意味で、価格政策の見直しをしていかなければならないというふうに思います。ただ同時に、そのことが意欲のある担い手の経営への打撃になってはいけませんので、価格政策の見直しに伴いましては経営安定対策をしっかり講じていくことが必要であろうと思います。  それから、当然のことながら自然災害が頻発するわけでございますが、これに対する補償制度というものも維持発展させていかなければならないというふうに思います。  それから、バックグラウンドとしての技術、先ほど地域農業の中でも申し上げましたけれども、やはり日本の狭い国土ということを有効活用する上では技術のウエートが非常に高いと思いますので、その開発にちゃんとターゲットを定めて取り組んでいかなければなりませんし、それから全国地域ではまた実態が違いますので、地域地域に合った形での普及というものも図っていかなければならないと思います。  それから、大きな生産のグラウンドとしてはやはり農地でございます。必要な農地の確保をすると同時に、その農地がいい農地、生産力の高い農地になっていく必要がありますので、その生産基盤の整備ということもやっていかなければならないと思います。  こういった総合的な取り組みをして、国内農業生産の増大を図っていくということでございます。具体的には、基本計画においてどういうことをやるかということを整理していきたいというふうに考えております。  それから、国内で足らざるものにつきましては海外から輸入せざるを得ない実態にございます。この輸入につきましても、ある日突然途絶えるということになりますとこれは国民の食生活に大混乱をもたらすということになりますので、やはり日ごろから安定的な輸入ということにつきましては心がけていかなければならないと思います。主要輸出国と安定取引に関する取り決めを幾つかしている事例もございますが、その着実な実施をする、それから日ごろから海外における生産動向、供給動向の情報を的確に把握いたしまして、単一の国だけじゃない、輸出国の多角化への模索ということもしていかなければならないというふうに思います。  それから三つ目は、先ほども申し上げた備蓄でございますが、これは国内の不作だとかあるいは海外の、そうはいっても一時的に輸入が途絶えるあるいは減少するという事態も起こらないではありませんので、当面の役に立つという意味での備蓄、これの取り崩しで対応するということがあろうかと思います。  これがいわば平時の姿でありまして、これにもうちょっと長期的に食料供給の不安、凶作が連年続くとかあるいは輸入が途絶するというような事態の場合に最低限どう対応していくかということにつきましては、これは日ごろからシミュレーションをしておきまして、いざというときに生産あるいは流通の制限等の対策をきちんと講じていく、こういうことで対応していきたいというふうに考えております。
  44. 和田洋子

    ○和田洋子君 新基本法案は第二条の第三項で食料供給基本的な考え方を明らかにしています。そこでまず規定されているのは「農業の生産性の向上を促進しつつ、」という視点です。現行基本法のもとで最も重視されてきた課題は生産性の向上を通じて農業経営の安定と他産業者との所得格差の是正であったわけですけれども、そのために経営規模の拡大と機械化とか農薬、化学肥料の多投による省力化が推進されてきたような経過があるというふうに思います。この結果がもたらしたものは、本来の農業が持っていた自然循環機能の喪失であったし、農業の持続的発展に赤信号がともったことであろうというふうに思います。  今回の基本法案はその反省の上に立って新たな理念が求められたのでありますが、それとの調和に整合性があるのかなというふうに私は思います。生産性の向上食料供給基本理念に掲げたことと矛盾はないのでしょうか。
  45. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 農業における生産性の向上というのは基本法の柱の一つでもありましたし、新しい基本法の中でも生産性の向上を促進することは先生指摘のとおり条文でも書かれているところでございます。  一方、四条には、持続的な農業の発展という中で、地域の特性あるいは担い手の確保、優良な土地条件、さらには技術といったものが効率的に組み合わされた望ましい農業構造と同時に、農業の自然循環機能というものが両々相まちまして農業の持続的な発展というものが果たされるというふうに理解をしております。  その際に、自然循環機能というもので、例えば環境保全型農業というものを導入した直後におきましては、確かに単収の低下とか作業時間の増加等の効率性あるいは生産性と相反する面も出てまいりますけれども、中長期的に見ますと、地力の増進あるいは連作障害の減少ということによりまして農薬、肥料等の減少という効果も上がってまいりますし、また消費者ニーズ、有機でありますとか安全性の高い農産物のニーズにこたえるという面からも付加価値というものが生まれてまいりますので、この持続的な農業の発展ということと自然循環機能とは、この持続的なということは長いタームというものを視点に入れた農業という面で矛盾はないというふうに考えております。
  46. 和田洋子

    ○和田洋子君 先日の委員会でも指摘をされましたが、例えば化学肥料を抑えて堆肥にするというふうなことを阿曽田委員も言われたと思いますが、全国で流通しているのでもなく、また畜産、耕種の立地がうまくかみ合わされていなければ利用ができないわけです。そして、一トンが五千円を上回る価格だというふうなことからすれば、使い切れないというのも問題だというふうに思います。  そして、肥料の散布を手でするというよりは、今度は新しい機械を買わなくてはいけないということになるとすれば、もう本当にこれは一例にしかすぎませんが、自然循環機能を維持しながら生産を上げながら輸入農産物に太刀打ちできる価格形成を図ることが本当に可能なんでしょうか。もし農林省がそんな農家の参考になるような生産と経営の指標をお持ちでしたらお知らせいただきたいと思います。
  47. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 実は、それと逆の部面からの御説明になろうかと思いますけれども、現在土づくりが非常におくれているといいますか、かなり減退をしてきて堆肥の施用が少なくなっている。これは、先般、法律を御審議いただきましたときにるる御説明を申し上げましたけれども、もしそういうことがございましたら一般的な収量とか品質が低下していく。これは、有機物の含有量が減少したり、あるいは塩基バランスが崩れるという現象が出てくるわけでございまして、最終的には農家皆さんの収入減につながる。  先ほど大臣からもお話を申し上げましたけれども、これを防止するために土づくりを進めることで確保するという効果もございますので、単に投入するコストだけではなくて、経営の観点から土づくりを進める、堆肥を施用する、そして一定の品質のものをつくっていくということを今やらないと、農家の経営から見ました場合の予定されたといいますか目指すべき収入が減ってしまうということもございますので、そういうことを確保することによりまして持続的な経営を確保する効果もあるというふうな形で、自然循環機能が持続的な農業を続けるために効果を持っている、そういう形でのお考えも御理解いただければありがたいなと思っているわけでございます。
  48. 和田洋子

    ○和田洋子君 確かに、地力を上げることが必要だということは私も思っていますし、そういう農産物が体にいいということもわかっています。そして、近年、そういう農家もふえたし、農産物も少しずつ市場に出回ってきていることは確かですが、でも本当にそれで農家の収入が上がるならもっともっと普及していいはずなんですけれども、普及しないということには何か問題があるというふうに指摘をしておきたいと思います。  基本法のもとで展開された生産性向上のための諸施策について、その効果をどのような数値で検証するかについて必ずしも明らかになっていません。比較生産性で論じておられる方もいらっしゃれば物的労働生産性の変化率を用いておられる方もいらっしゃいます。  そこで、この新基本法案が「農業の生産性の向上を促進しつつ、」という課題に対する政策の効果を検証するに当たってどのような指標を念頭に置かれるのか、お示しをいただきたい。
  49. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 生産性の向上をはかる物差しとしては、端的に言うと二つあるわけでございます。一つは物的労働生産性でありまして、単位労働時間当たり物がどれだけ生産されるかというものでございます。もう一つは比較生産性でありまして、就業者一人当たりの純生産額で、金額で他産業との比較を行うものでございます。  これらは率直に言って一長一短があります。物的労働生産性につきましては、投下労働時間当たりの物の生産量の増加ということの動向について端的で非常にわかりやすい、一時間当たりどれだけできたか、こういうことでありますからわかりやすいわけですが、反面、物ということになりますので総生産量とか所得や収益の動向の把握ということになりますとこれは適さない面がございます。  一方、比較生産性は就業者一人当たりの純生産の金額ですからほかの産業との比較が可能でありますが、一方、それは他産業の方が価値が高く評価されるというようなことになりますとそれに左右される、したがって農業自体がどうなったのかというものの把握には必ずしも適さないということで、それぞれ一長一短あるわけでございます。したがいまして、結論的に言いますと、やはり両者を併用していくということに当面ならざるを得ないというふうに思っております。  ただ、この中ではかりがたいものといたしましては、先ほどもお話がありましたが、今後環境への負荷がどうなるのか、減ったのかふえたのかとか、あるいは付加価値が向上した、その分をどう見るのかといった点などにつきましてもう一工夫が要るかと思います。そういったものの評価もできるように、先ほどは二つと申し上げましたが、今後の評価の指標のあり方につきましてはさらに検討すべき課題があるというふうに思っております。
  50. 和田洋子

    ○和田洋子君 国民が最低限度必要とする食料の確保についてお尋ねします。  新基本法案の第二条第四項で、「国民が最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じないよう、供給の確保が図られなければならない。」というふうに規定しています。  国民が最低限度必要とする食料について、国家が経済社会を維持していくために不可欠なぎりぎりの水準を意味する危機管理に係る問題でありますので、抽象的な表現ではなくて、具体的にどのくらいの必要カロリーが確保されなければいけないか、お示しをいただきたいと思います。
  51. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 国民が最低限度必要とする食料ということでございますが、これはこれまでの歴史的経験から見てどの程度かということにもなろうかと思います。  現在一つの試算をしております。現状程度の農地面積あるいは現在の農業生産技術という前提を置きまして、輸入が一切ないという前提のもとで、国内農業生産におきます熱量効率を最大化する、簡単に言えば米の生産をふやす、あるいは芋類というカロリーの高いものの生産をふやした場合にどれだけの熱量が供給可能かということでございますが、現状程度の農地あるいは農業生産技術を前提といたしますと一人当たり千七百六十キロカロリーの供給が可能ということでございます。これは昭和二十二年ないし三年ごろの水準ということでございますから、その当時、まあまあ不十分、不足はあったと思いますが、それなりに日本国民が生きてきたという経験に照らしますと、この辺のところが最低限度の目安かなというふうに思っております。  なお、今のは現状の農地と技術を前提としておりまして、このほか本当にいざとなったときには家庭の庭、菜園での増産もありましょうし、河川敷などの活用ということも考えられますので、現実問題としてはこれよりふえる可能性があるというふうに思っております。
  52. 和田洋子

    ○和田洋子君 新基本法の十九条では、「国は、第二条第四項に規定する場合において、国民が最低限度必要とする食料供給を確保するため必要があると認めるときは、食料の増産、流通の制限その他必要な施策を講ずるものとする。」と規定されております。  流通制限については、国民生活二法と言われる国民生活安定緊急措置法及びいわゆる買い占め売り惜しみ防止法の活用による流通規制ないしは価格の統制とか配給制度の実施が想定されるというふうに思いますが、食料の増産については、どうぞつくってくださいというふうにお願いする政策になるのか、何か具体的な作付統制などのハードな手法が考えられているのか、いかがでしょうか。食糧法による食料生産の調整の例や緊急時における売り渡し命令の例はありますけれども、特定農産物の増産を義務づける制度はないというふうに思いますが、いかがですか。お答えいただきたい。
  53. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 現在の制度では、御指摘のように特定の農産物を作付けるべしというものはございません。流通につきましては、いわゆるオイルショックのときに二つの法律がございまして、流通の制限ということについては持っております。  それでは、いざというときにどうなるのかということでございますが、結論的に言えば、いざというときの対応策について今検討中の段階でありますけれども、これまでの検討の成果の一つといたしましては、我が国として戦中戦後の食料難の時期に作付統制をやったという実績といいますか、過去の経過がございます。したがいまして、そういった経過なり実例、その経験が、一体本当にそういうことが実行されたのかどうかというようなことも精査をする、あるいは海外での事例の精査もするということで、そういった経験をどのように今後のいざというときの事態に生かしていくのかということにつきまして、さらに検討を深めてまいりたいというふうに考えております。
  54. 和田洋子

    ○和田洋子君 第三条の「多面的機能の発揮」ということでお尋ねをしますが、国土の保全とか水源の涵養とか自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承など農業農村が有する多面的機能については、法案が規定しているように農村農業生産活動が行われることによって生み出され、維持されるものだというふうに思います。そして、先ほど大臣も、決して無機質ではない、文化の伝承などいろいろあるというふうにお答えをいただきました。  しかし、これらの機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるためには、効率的かつ安定的な農業経営を中核としながらも、経営体とは言えない小規模農家を含めて地域に人が住んで集落機能が維持されて初めて可能なことだというふうに思います。  私が言いたいことは、現在の農村集落の現状を見ますと、集落の居住者が保有する農地が十ヘクタールあるいは二十ヘクタールという例はかなり多いのですけれども、例えば一九九二年の「新しい食料農業農村政策の方向」が示しているように、稲作で十から二十ヘクタールの単一経営農家五万戸、五ないし十ヘクタールの稲作にプラスして集約作物の複合経営十万戸、計十五万戸というような姿になってくるとすれば、生産向上のためには大変すばらしいことだというふうに思いますが、一つの集落に一つか二つの経営体というか、そういうことだとすれば、文化の継承も多面的機能の発揮も集落機能さえも維持できない、したがって多面的機能が失われるというふうに思いますけれども、いかがですか。
  55. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 新しい基本法におきまして、もちろん経営の発展あるいは効率的、安定的な経営というものを育成するということを施策の一つとして明示しておりますけれども、家族経営の活性化というものにつきましてもこれの活性化を図っていくということが基本法に明示されておるところでございます。  したがいまして、多面的機能を維持するためには集落としての機能を果たしていかなければならないというのはおっしゃるとおりでございまして、一戸の農家が小さな集落の全部の農地をということではやはり集落としての位置づけが失われていく、文字どおり集まっているということではないわけでございます。ただ、それを経営体としてどういうふうに見ていくかということも一つの議論であろうと思います。  農村空間を維持していくための多面的な機能というものをより発揮していくためには、例えば環境に負荷を与えない農法でありますとか、生産と生活基盤が一体となった総合的な農村整備の推進でありますとか、特に中山間地域等の条件不利地域における多面的機能の確保を図るための施策を推進していかなければなりません。  と同時に、農村空間を維持していくために、家族経営あるいはまた家族経営の一形態、発展段階としての担い手の確保等々も含めた多面的機能にも資するような望ましい農業農村構造の確立というものも重要になってくるというふうに考えて、こういうことも含めまして多面的機能というものの役割をより発揮するためのいろいろな施策を講じていかなければならないというふうに考えております。
  56. 和田洋子

    ○和田洋子君 今まで何回も私が言っておりますとおり、農家農業が始まった段階から多面的機能の発揮ということは、日本の国の自然を守るために、国土の保全のためにやってきました。  多面的機能の発揮、そして片方では集約をしなさい、コストを上げる農業をしなさい、そしてオーガニックの作物をつくりなさいといつもいつも二本の柱が立っている。集約する、家族経営も大切、いつもそういうふうに出てくる。結局、そういう日本の国の農業であるというふうにおっしゃるならそれでもいいと思いますが、そのときそのときで、多面的であったり、家族経営が大切だったり、集約する農家が大事だったり、そういうふうに別々の立場でおっしゃるから整合性がないので、日本農業は家族経営こそ大事で、そして集約させていくのもそういうためには必要なんだという、同じ次元に立っていつもそういう発言をしていただきたいなというふうに思います。  私たち地方は、先日の質問にもありましたけれども、空気をつくって、水をつくって、食料をつくって、我が福島県は電気もつくって、そして人材を育成して、高校生まで立派に育てて、大学にやるために親が大変苦労してパートにまで出て子供を大学に入れて、それで東京に全部お金を送っています。そういう人たちがみんな東京で就職をして、東京に税収が上がるという仕組みになっています。地方は税収が上がりません。  そして、地方が使うお金は多過ぎる、公共事業はもう地方はだめと。中央では海に道路までつくっている時代に国県道がまだ砂利道であったりするわけでありますから、公共事業云々、そして地方がどうの、地方にお金を使い過ぎる、農政にお金を使い過ぎるというのは私は当たらないというふうに思います。農林省はそういうためのお金であれば大きな顔をして大蔵省に文句を言ってもいいというふうに思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  農業の多面的機能について平成十年度の白書は、農林水産省農業総合研究所が平成十年六月に行った代替法による試算結果を公表しています。それによりますと、一年間の全国における試算額は六兆九千億、うち中山間地域は三兆円に達しているというふうに言われています。  従来、農業については農産物の産出額など経済的側面にのみ関心が払われてまいりましたが、近年、多くの国民農業農村の有する多面的機能を評価する機運が盛り上がってきて、農業農村が健全であればその副次的効果としてこれだけの機能を発揮するわけで、環境に負荷をかけるだけの他産業とは基本的に異なる農業の本質がここにあります。  農業農村の重要性はGDPの比率などで定量的にはかるだけではなくて、多面的機能を的確に評価した施策の展開が求められてくるというふうに思いますので、ぜひ農林大臣の力強い御発言をお願いします。
  57. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、先ほどの先生お話で、担い手というか効率性を追求する農業と、家族経営といいましょうか小規模経営とどっちなんだという御指摘がございましたが、これはやはり両方だろうと思うんです。全国の十四万と言われている集落、それぞれ条件が違いますし、先生の御地元も私の地元もいろんな意味で全く違うわけで、それが日本農業のある意味では特徴であり、よさでもあり、また一つの問題点かもしれません。しかし、どこの地域においても農村の果たす多面的役割というものの重要性は変わらないと私は思っております。  しかし、先ほど生産性の御質問もございましたけれども、どういう形態であっても生産性を向上させたりあるいは所得をふやしたりということは、これもまた農業においての基本的な目標といいましょうかニーズだろうと思います。    〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕  そういう中で、今、代替法の六兆九千億という御指摘がございました。まさに、これは直接価格に乗っけるという評価方法ではないわけでございます。いわゆる外部経済効果、農業活動の外部の経済効果の一定の評価として六兆九千億というものがございます。これを組み入れたらどうかという御指摘でございますが、なかなかこの評価そのものが、一つの定量的な試算としての数字であり、我々もよくこの数字を使うわけでございますけれども、もう少しこれを農業農村の実態に即して適切に評価ができるような研究をする必要があるというふうに考えております。  そういう中で、繰り返しになりますけれども、環境に負荷を与えない農業の推進とか、あるいはまた農村空間で生産、生活あるいは多面的機能が一体となった農村整備でありますとか、特に条件不利地域における多面的な機能の確保を図り、それが農業農村地域にとっても付加価値としてどういうふうにプラスになっていったらいいかということは大事なポイントだろうというふうに思っております。
  58. 和田洋子

    ○和田洋子君 望ましい農業構造についてお尋ねをいたします。  第四条における「必要な農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担い手が確保され、地域の特性に応じてこれらが効率的に組み合わされた望ましい農業構造」の確立という表現につきまして、農地などの農業資源及び担い手という農業存立の基本的要素の地域の特性に応じた効率的な組み合わせがどのように考えられているか、また地域の特性に応じた効率的に組み合わされた望ましい農業構造とはどのような農業構造であるのか、お示しをいただきたいと思います。
  59. 高木賢

    政府委員(高木賢君) まず、後段の方の望ましい農業構造というところで申し上げますと、農業生産は御案内のように農地、農業用水などの農業資源、それから人としての農業の担い手、これらの組み合わせとして、やはり当然現行の技術水準が前提になるわけですけれども、最も効率的な、いわば最適な組み合わせというものが求められるわけでございます。これは、コストの点から見ましてもそうでありますし、地域農業が持続的に発展する上でも必要なことと思います。  ただ、現実問題として、条件がまさに地域地域によって違います。気候も違いますし、作目も営農形態も違う。あるいは中山間地と平場でも違ってくるということでございますから、望ましい組み合わせといっても全国で画一的なものが存在するというわけではございません。それぞれの地域の特性に応じて組み合わされるということで、まさにこれは効率的な最適な組み合わせということを理念としては追求するわけですけれども、実際にはその理念地域の特性を十分踏まえた形で組み合わされる必要がある、こういう両面の要素を整理して規定したものでございます。
  60. 和田洋子

    ○和田洋子君 農村の振興についてお尋ねをいたします。  現行の農業基本法は、第二条の「国の施策」というところで「農村における交通、衛生、文化等の環境の整備、」により「農業従事者の福祉の向上を図ること。」と規定しています。所得水準だけではなくて、生活環境とか福祉の側面においても都市部との間に存在する格差の是正を図ることが国の重要な施策の一つとして位置づけています。しかし、現行農業基本法農村生活について言及しているのはこの第二条の第一項八号のみであります。  この反省の上に立って、新政策では「食料政策」とか「農業政策」に引き続いて「農村地域政策」という項目を起こして、具体的な政策の展開の方向を明らかにしているわけです。また、平成八年九月の農業基本法に関する研究会の報告の中でも「新たな基本法の制定に向けた検討に当たって考慮すべき視点」の一つとして農村地域の維持発展ということを指摘しています。このような流れは当然のこととして食料農業農村基本問題調査会に引き継がれて、基本法で第四節を設けて具体的に規定しているのだというふうに思います。  農村の振興に関する理念を表明したこの第五条は、農村農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしているという認識から「農業の有する食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能が適切かつ十分に発揮されるよう、」云々ということで、振興が図られなければいけないという理論で構成されております。  その一方で、新政策では「農村地域政策」の中で、多様性を持った地域社会の中で個性ある多様な地域社会を発展させることが、国民が生活の豊かさとゆとりを実感でき、多様な価値観を実現できる社会をはぐくむことにつながるというふうに言っております。  食料農業農村基本問題調査会では、農村地域農業農業に関する地場産業地域経済上重要な位置を占めており、農村地域食料安定供給の役割を果たしているとともに、多くの住民で地域社会が形成され、国民の約四割が居住している実態を踏まえてこの新しい農業基本法というものができてきているというふうに思います。  現行農業基本法が一項しか設けていないので新しい基本問題調査会は農村地域が維持発展できるように力強く言っているのに対して、新しい農業基本法農村のあり方が少し、せっかく上から農村をしっかりさせなさいと言うのに、タッチが弱いんじゃないかなというふうに読めるんですけれども、いかがでしょうか。
  61. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 結論的に申し上げれば、決してそういうことはないというふうに思っております。  と申しますのは、先ほど来申し上げておりますが、多面的機能の発揮についても、当委員会に所属の先生方は多分当然のようにお受け取りになっておられると思いますけれども、ほかの分野の方々、政府部内におきましてもほかの省の方々は必ずしもこれは今までお認めになってこなかったという経過があるわけです。  そういう中で、今回、基本法案の作成過程関係省庁とも大変激しい折衝をいたしまして、多面的機能の発揮ということについて一条を設けるということで合意を見た経過もございます。そういう中で、農業がそういう役割を果たしているということまではまいりました。    〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕  それから、そうなると農村の位置づけはどうなるのかということでございますが、まさにこの三条にも書きましたけれども、「農村農業生産活動が行われることにより」ということで、多面的機能の点でも農村農業生産活動が行われるという形でではありますけれども、農村の機能ということでも位置づけたわけでございます。それを受けまして五条では、今御指摘もありましたが、「食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能」と、この両面から農村の位置づけを明確にしております。それが「農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしている」ということもあわせて明記をしております。  この点につきましてもいろいろ議論がありまして、農村と一口に言っても都市近郊の農家以外の方が大多数を占めている地域と中山間地域などというところとはやはり実態が違うのじゃないか、一色で農村とくくれるのかというような議論も当然ありました。そういう中で、農村振興ということも食料供給あるいは多面的機能を支える柱であるということで明確に位置づけたわけでございまして、このことの意義も現行基本法にない画期的なものではないかというふうに思っております。  具体的に、内容的にどうかといいますと、実は「農業の持続的な発展」ということと重なる部分も多々ございます。農村の土地利用に関しましては、農地の利用のあり方をどうするのか、土地利用秩序というものをどうするのかということに密接に絡んでまいりますが、農地の利用に関しましては「農業の持続的な発展」の方で二十三条、二十四条というようなことで整理をいたしましたので、そこで書いております。  それから、人の要素も農村では非常に大きいわけでございます。農村の女性、高齢者は非常に大きな位置づけを持っておるわけですけれども、この法案では農業の担い手というのがまず第一義的ではないかということで、二十六条、二十七条の方に書いてございます。  それから、先ほど来御議論ありますが、農村におきまして集落というものが大変重要な地位を持っているわけですけれども、同時にそれは営農組織としても機能しているという側面がありますので、農業生産組織という方面で集落を基礎とした農業者の組織というものも規定してございます。  そういった意味で、農村振興の方がやや条文の数も少ないという印象は否めないんですけれども、「農業の持続的な発展」の方で農村の構成員たる要素あるいは土地の利用に関する要素というものもかなり整理してございますので、これは全体としてごらんいただければ、特に中山間地域等の振興なり都市と農村の交流という都市との共生のあり方なりあるいは農村の総合的な振興ということで、農林水産省の施策だけでなくて各省の施策も講じてもらいながら総合的に農村の振興を図る、そのことが我が国の農業を支え、食料と多面的機能の基礎になるものであるという位置づけは、この法文上はかなり明確に出てきているのではないかというふうに私としては思っている次第でございます。
  62. 和田洋子

    ○和田洋子君 新政策以降の農政というのは、食料安定供給とか多面的機能の発揮とか自然循環機能と調和した持続的農業の展開などを農業農村に強く求めると同時に、政策もそれに沿ってシフトをされております。今日の農業農村にこれらの課題に取り組めるだけの余力があるのか、農業農村に求め過ぎているのじゃないかなというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  63. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 端的にお答えすれば、やはりそれだけの期待が現実にあるのではないかと思います。それに比べて対応がバランスを欠いているのではないかという御指摘かと思いますが、先ほど来御指摘ありますように、私どもとしては農村が個性ある地域社会として発展していくようにということにつきましては、他省庁の協力もいただきながら全力を挙げて取り組んでいきたい。  また、今回、省庁再編の中で農林水産省も局の再編成をいたしますが、その一つに農村振興局というものを設けて対応していきたいというふうに考えております。
  64. 和田洋子

    ○和田洋子君 四つ理念というのは、二十一世紀の食料農業農村を展望する上で適切な理念だというふうに私も思っています。しかしながら、農業農村にとっては大変厳しいというふうに思います。  今、官房長から新しくできる農村振興局と。農業農村の方たちが流した汗を絶対にむだにしないような、来年もまたつくるぞというふうな、そういう精神が持たれるような農政であってほしいということを心から祈念し、指摘もしていきたいと思います。  地方公共団体責務についてお尋ねをします。  現行農業基本法は、第二条において国の施策を八項目にわたって列記しています。また第三条では、「地方公共団体の施策」として「国の施策に準じて施策を講ずるように努めなければならない。」というふうにも規定しているのですけれども、本法律案では農業者努力、事業者の努力消費者の役割については規定していません。  この相違は、新基本法案が、基本理念実現は国や地方公共団体のみならず、農業者はもとより消費者まで含めた国民課題として取り組む必要があるという考えに基づいているというふうに思います。国のこれらの規定の中で地方公共団体責務について規定した第八条は、農業基本法第三条と異なって、「国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する」と規定しており、「国の施策に準じて施策を講ずる」という表現を大きく改めています。  これは、地域の特性に応じた施策の展開が求められていることと、地方分権の推進に配慮したというふうに私は思いますが、そういうことについてちょっとお尋ねします。
  65. 高木賢

    政府委員(高木賢君) ただいまのお尋ねでございますが、まさに御指摘のとおりでございます。  現行の農業基本法では、地方公共団体の施策については「国の施策に準じて施策を講ずるように努めなければならない。」ということで、端的に言えば国に右へ倣えと、そういう規定でございました。  しかしながら、新しい基本法の八条はこの考え方を全く改めまして、地方分権の考え方、つまり国と地方公共団体は対等なものであるという考え方のもとに再編成したわけでございます。もちろん、そのときには地方公共団体がその地域の実情に応じて施策を講ずるということも当然入ってまいります。その意味で、八条では今申し上げた二つのこと、「国との適切な役割分担を踏まえて」ということと、「その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた」という二つを明記したわけでございます。  上下関係でなくなりますからどういうことになるかということで、三十七条に行政組織のあり方という規定がございますが、そのところでも「国及び地方公共団体は、食料農業及び農村に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、」ということで上下関係から協力関係にということを明記したわけでございまして、まさに地方分権の趣旨に沿っての条文の変化ということでございます。
  66. 和田洋子

    ○和田洋子君 適切な役割分担とはどういうことですか。
  67. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 役割分担というのはどういうことを念頭に置いておるかということでありますが、例えば食料安定供給ということで申し上げますと、国家存立の基盤を確保する上で国が直接的に実施することが必要なもの、例えば備蓄とか輸入においての調整措置、こういうものは国家固有の仕事であろうというふうに思います。  それから、全国的な規模あるいは全国的な視点で行われるもので国の関与が必要なもの。例えば、農業共済制度というのは地域だけの設計ではなかなか成り立ちがたいということでありますから農済制度と。あるいは、農地の確保という点は、地域地域の実情というのは当然ありますけれども、全体的に農地を確保しなければならないという要請があるわけですから、農地法のもとで、統一的な制度のもとで運営をする。こういったことが必要になろうと思います。  また、大規模な投資だとか、あるいはリスクが大きい、民間にゆだねただけではうまく進まないというようなものとしては、基礎的な研究開発なり大規模な農業基盤整備というものもございます。  それから、冒頭申し落としましたが、国との関係でいえば、国際協力といったことも当然国がやらなければならないことだと思います。  しからば、どういうものが地方公共団体と協力する分野としてあるかといいますと、例えば地場産業の発展という点で、食品産業に対する支援措置というものは、国だけでなくてその地域地域の実情での対応が必要になってまいります。  それから、先ほどもお尋ねがありましたが、効率的、安定的な農業経営の育成なり、あるいは望ましい農業構造の確立といった点も地域の実情が加味される必要が当然あるわけでございまして、国の施策と相まっての地方公共団体の施策というものも、その独自性を発揮する上で必要なものがあるかと思います。  それから、その地域農業を支える人材の育成の確保だとか、最近かなりの地域で行われております第三セクターの活動の促進とか、こういった分野はまさに、国の施策ということもありますけれども、その地域の独自の取り組みということも必要になってまいりますわけで、地方公共団体が国と相協力して実施することが適切だという分野が出てまいります。  こういったことで、例えば技術の開発、先ほど基礎的なものは国と申し上げましたけれども、現場で応用して現地にどのような適応ができるかという実証的な研究は地方公共団体が中心になって行うというふうに、研究においても基礎と応用というようなことで役割分担がされるのではないかというふうに考えております。
  68. 和田洋子

    ○和田洋子君 次は、第九条に「農業者及び農業に関する団体は、農業及びこれに関連する活動を行うに当たっては、基本理念実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。」と規定されています。「基本理念実現に主体的に取り組むよう努める」という表現が用いられていますが、主体的な取り組みというのは、あくまでもみずからの意思が判断することであって、それは国が求めることなのかどうかなという思いがするんですが、どうですか。
  69. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 今回の新しい基本法におきましては、先ほども地方公共団体と国との関係で申し上げましたが、それぞれの地域なり農業者あるいは農業に関する団体の位置づけというものが、端的に言えば従来よりは大きくなっているわけでございます。これは食料自給率目標達成についても同様だと思いますが、国だけが何か請け負ってやるということで物事が達成できないことは当然であります。  したがいまして、これはすべての分野、地方公共団体だけでなくて農業者農業に関する団体、事業者、消費者ということで、国民皆様方がそれぞれの置かれた地位に応じてこの基本理念に関して何らかの寄与をしていただきたいということで、それぞれの強弱ということで整理しているわけでございます。  特に、農業者農業に関する団体は、農業につきまして本当に第一義的なかかわり合いを持つ方々でありまして、国の施策なり地方公共団体の施策を享受する側にいるというだけではなくて、みずからの問題として基本理念実現に取り組んでいただきたいという趣旨で法文上明記されているわけでございます。これはそういう位置づけでございまして、何か国が施策としてそういうことをしろということまで言っているものでもございません。
  70. 和田洋子

    ○和田洋子君 農業者は主体的にと。  次の十条では、主体的にとまでは書いてありませんが、事業者にもこういう表現を用いた。事業者までもそういうふうに言った理由も同じでしょうか。
  71. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 食品産業の事業者は、農業者と比べまして全体的に食料農業農村かかわり合っているわけではないわけですけれども、食料供給という面では、現在の傾向からしまして、加工のウエートがかつてと比べものにならないほど大きくなっておりますし、さらには外食、中食という形での国民生活とのかかわりも強くなっております。したがいまして、食品産業の事業者もその努力ということではやっていただかなければならないわけであります。  ただ、農業者というように第一次的にトータルで農業農村かかわり合っている方と若干位置づけが違う、二次的と言うとちょっと失礼になるかもしれませんが、二義的な面が多いということで、表現ぶりにつきましては基本理念とのかかわり合いとの関連で多少変えているということでございます。
  72. 和田洋子

    ○和田洋子君 次は消費者ですけれども、消費者皆さんに御理解をいただいて、食料の消費生活の向上に積極的な役割を求めている規定だというふうに思います。  皆さんいろんなところで何回もおっしゃるように、日本の米政策というのは外国の麦政策に負けたというふうにいつも言われます。米を食べるとばかになるなんという、キッチンカーが走って、日本国民は小麦の政策に制覇されてしまった。  目には目をというふうには言いませんが、消費者皆さんに何を食べろとまでは言わないけれどもというふうに大臣はおっしゃいましたが、一歩も二歩も三歩も四歩も進んで、日本の米がすばらしいバランスのとれた食品であるということとか、米が本当に見直されなければいけないとかいうことをぜひ積極的に農林省が啓蒙運動を、そしてまた教育の場で子供たちに、地場でとれたお米を、皆さんの御両親がつくったお米なんだから感謝して食べなさいと。  そういうことのためには、給食なんか減らさないで、そんなところには米を食べてもらって、大きいスパンの中ではそれが日本国民に米が定着する大きな要因になるというふうに思いますので、ぜひ積極的なそういう施策、支援が必要だと思いますが、いかがですか。
  73. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 今、先生から御指摘がありましたように、我が国の食生活の現状というのは、食料の相当部分を海外に依存する一方、脂質の摂取割合が世代によってバランスが崩れているという面もありますし、また御質問にございました食べ残しなり食品の廃棄という資源のむだの問題もあるわけでございます。  こういうことから、この十二条の規定を受けました十六条二項におきまして、食料消費の改善及び農業資源の有効利用に資する観点から、健全な食生活に関する指針の策定、それから食料の消費に関する知識の普及や情報提供等を推進するなどの施策の方向が示されているわけでございます。  それで、この基本法制定後、厚生省とも十分連携いたしまして、この健全な食生活に関する指針を策定すると同時に、これに則しまして食生活を見直す全国的な運動を展開したいというふうに思っているわけでございます。  その場合には、当然のことながら、先生指摘がありましたように、消費者団体への活動支援も行っていかなければなりませんし、また広範な関係者の賛同、協力を得て、食を考える国民会議といったようなものも組織しながら運動を展開する必要があります。また、マスコミなどを通じた積極的な情報提供、さらには子供たちに対する食教育の充実など、各般にわたり食生活の改善や食料品の廃棄、食べ残しの削減等に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  74. 和田洋子

    ○和田洋子君 基本計画について少しお尋ねをしたいと思います。  私たちは、基本計画はぜひ国会で承認をすべきだというふうに主張しましたが、国会に報告ということで修正をされたわけです。基本法の中核を形成する重要な位置づけでなされると理解しているんですけれども、需要と生産の長期見通しを策定して施策を講ずるという現行の基本法から基本計画を定めるというふうになったその経過をお尋ねいたします。
  75. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 現行のいわゆる長期見通しは、まさに文字どおり見通しということでございまして、その取り組みのための施策の裏づけということは法律上要求されておらないわけでございます。つまり、言いかえますと、今の基本法の仕組みの問題として、そういった需要なり生産の見通しというだけでなくて、今度は「食料自給率目標」ということで明確にするわけですけれども、あわせて施策の裏づけというものの制度的仕組みが必要だというふうに考えた点が第一点でございます。  これは、これまでの基本法が、基本法でせっかく考えたことが個別政策とつながりが欠けていた、そのことによってだんだん乖離が生じてきたということが反省点の一つでございまして、その反省の上に立って基本法の定める方向と施策の裏づけのリンクについての仕組みとして基本計画という制度を考えたわけでございます。  それからもう一つは、近年におきます行政運営の透明化の要請の中で政策の効果に関する評価、これをきちんとビルトインした仕組みにしなければいけないのではないかということでございます。  そういう点で基本計画というものを策定し、その中で目標だけでなくて施策に関する規定も置くと同時に、おおむね五年ごとに見直すということを政策の効果に関する評価を踏まえて行うということもあわせて導入するということにいたしたわけでございます。
  76. 和田洋子

    ○和田洋子君 基本計画の二項のところで、「次に掲げる事項について定めるものとする。」という中で一、二、三、四とありますが、「食料自給率目標」というのはわかりやすい言葉なのですが、あとのものは基本計画内容がどのようになっているのかちょっとわかりにくい。一番の「食料農業及び農村に関する施策についての基本的な方針」とか、自給率以外の明確な御説明をお願いします。
  77. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 順次申し上げますと、まず第一号の「食料農業及び農村に関する施策についての基本的な方針」ということにつきましては、まさにこれは基本的方針でございまして、基本理念で掲げた四つの「食料安定供給の確保」、「多面的機能の発揮」、「農業の持続的な発展」、「農村の振興」、こういうことの基本的な方向を記述するということをまず予定いたしております。  次に、「食料自給率目標」は、これはるる申し上げておりますが、各作目別の目標とトータルとしてのカロリーベースの目標ということを考えております。  それから三号は、食料農業農村に関して講ずべき施策ということですから大変幅広いわけでございますけれども、食料消費の方向など消費に関する事項、食料生産に関する課題、それから今後の生産の方向ということも当然あります。そのための施策として食料安定供給の確保に関する施策ということでは、先ほど来言っておりますように、どういうものを重点に置いて生産していくかということが当然出てまいりますし、輸入と備蓄の組み合わせという議論もございましたが、そういうことも出てくるかと思います。  それから、農業につきましては、この理念に書いております農業の持続的な発展に関する施策ということでありますから、いわゆる農業構造の展望をどうするのか、あるいは環境保全型農業をどうするのか、あるいは価格制度の見直し、あるいは経営安定対策についてどうするのかというあたりが記述の内容になろうと思います。  それから、農村の振興に関する施策は、中山間地域の振興を初め、先ほど来出ておりますように、農村の生活環境の整備なりをどう進めるのかという点が出てまいるかと思います。  いずれにしても、非常に概括的に言えば、この法律で以下いろいろ具体的に条文で出てまいりますけれども、そういった項目がこの記述の項目になっていくのではないかというふうに思います。
  78. 和田洋子

    ○和田洋子君 自給率目標なんというのを全部やっていくとすれば、それは担い手のいる農家ということなんですけれども、担い手ということに関しましては、私たちは地元に帰ってみますと、もう本当に担い手がいない、その一言に尽きると思います。担い手、お嫁さんが来ない農家なんです。皆さんが、お母さんもお父さんも一番危惧されているのはうちの息子に嫁が来ない。  何で嫁が来ないか。それは所得がないからです。いつもいつもいろんなところで議論がされますが、それは必ず所得のところに行くというふうに思います。現行基本法は所得の格差を是正するということだったけれども、今の基本法はいろんなところでそういうことを、経営安定とかいろんなことを言いながらも、所得の格差を是正するというきちんとしたものがない。担い手が育つためには、農家にばっちりとした所得があって、農家の生活が豊かで明るいものであったら必ずお嫁さんが来る。自分の息子に嫁はもらいたいけれども娘は嫁にやりたくない、それが今の農家のお父さんとお母さんの思いです。  そういうことからすれば、担い手対策を手ぬるい担い手対策ではなくて、そういうことを本当にきちんとしていただきたい。このことをお答えいただいて、私の質問を終わります。
  79. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) これからの農業の中心的な役割を担い手が文字どおり担っていくわけでありますけれども、その中で、お父さんの後を継いで農業をやりたい、しかしお嫁さんが来ないということは、これは農政の一つの課題というか問題点であるわけであります。所得と申し上げるよりも、所得については冒頭、一人当たりが上回ったとか、先生はそうではないとか、いろいろやりとりがございましたけれども、所得面もあるのかもしれませんが、それだけではなくて、例えば労働時間の問題でありますとか、あるいは住んでいる地域の生活基盤がまだ立ちおくれておるとか、そういったいろんな面があるのではないかというふうに思っております。今後、少子化が進んでいく中で、ますますその問題というのが大きくなっていかないように、担い手がしっかり支えていけるような農業農村にしていかなければならないと思っております。  なお、私自身の個人的な考えなんですけれども、女性の労働力が農村において六割、過半を占めているという現状は、私はこれはいかがなものかなと率直に思います。育児あるいは家事等々をしながら、しかも農業労働力としても過半を占めておるというのは、女性に大変過重な負担がかかっていると言わざるを得ません。今後、家族協定とかいろんな形で女性の役割をきちっと報いられるような農政を進めていこうと考えておりますけれども、現状を一言で申し上げるならば、農村における女性の労働というものは、非常に重要であるという言い方も現実かもしれませんけれども、過重であるのではないかというふうに私自身は考えております。  いずれにしても、担い手をきちっと確保し、日本農業農村を維持発展させていくために、その一つとしての後継者対策、そしてまたお嫁さん対策というものは非常に重要なものになっていくというふうに考えております。
  80. 風間昶

    ○風間昶君 お昼を回って恐縮です。公明党の風間です。  まず、おとといちょっと明確にしておかなきゃならないと思って、残った部分についてですが、要するに、この三十五条で言っている「中山間地域等の振興」についての「中山間地域」の、そして「等」の定義で、先般はこの新農業基本法といわゆる農林統計に使われているものとは異なるんだというお話がございました。再度明確に、この新農業基本法では中山間地域というのをどうとらえているのかをお聞きしたいと思います。
  81. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) この新基本法の第三十五条の一項におきまして、「山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域」、これを「「中山間地域等」という。」というふうにされております。  したがいまして、先般御説明をいたしました農林統計上の山間農業地域と中間農業地域、これはここに書いてあります概念よりは、統計上の範囲でございますけれども、やや狭いというふうに思います。
  82. 風間昶

    ○風間昶君 そうしますと、いわゆる地域振興五法と言われておる山村振興法だとか過疎法だとか特定農山村法だとかいろいろありますが、この五法で言う中山間地域との整合性はどうなりますか。
  83. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 先般、地域振興五法を御議論いただきましたときには、中山間地域等に対する直接支払いの対象地域としてこの五法を現在、検討中であるということを申し上げた次第でございます。大部分はこれとオーバーラップするというふうに思われますので、その意味からこの五法をまず第一のネットにすべきだという議論が現在行われておるところでございます。
  84. 風間昶

    ○風間昶君 議論がどこで行われているんですか。あなたがそう思っているんですか。
  85. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 直接支払いをどの地域に対して、またどの地域内のどういった農地に対して行うかという御議論を検討会で行っているところでございますし、その結論はまだ出ておりません。十二年度の概算要求に向けて出していくつもりでおりますので、言ってみれば最後の線を引くところについてはこれからの議論にまちたいと思っております。  直接支払いをするかどうかということでございます。
  86. 風間昶

    ○風間昶君 そこで、今もお話があった直接支払いに行く前に、その前にもう一回ちょっと確認しておきたいんですけれども、私の認識では、「中山間地域等」の「等」というのは生産条件の不利性のある部分、つまりこれは平場でも含まれる、私の認識ではそう思っているわけでありますけれども、条件不利地域の考え方について農水省としてどう考えているのか伺いたいんです。
  87. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ここで言っております条件不利地域というのは、今いろいろ構造改善局長から申し上げましたが、生産性が低いことによるということが一言で言えばその条件不利でございますが、生産性が低いということは、それによってともすれば耕作放棄にもつながりかねない、あるいはまた定住条件の不利にもつながりかねないといったような観点から中山間地域というものを条件不利地域というふうに、順序がまた、言い方がさかのぼりますけれども、この場合の定義としては、生産条件が平場等に比べて低いということが前提であります。
  88. 風間昶

    ○風間昶君 そうしますと、いわゆる議論になっておるところであります直接支払いは、条件不利性というのが直接支払いの根拠になるわけですけれども、条件不利地域というのは、今、大臣お話によると、生産性の不利性だけじゃなくて定住も含めたということになると、定住性の条件もよくするということになると、生活条件の不利性も含まれるというふうに考えていいんですか。
  89. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 議論を整理させていただきますと、三十五条の一項で「必要な施策を講ずるものとする。」というふうに書いてあります中山間地域等の定義について言えば、かなり広い概念になると思います。ただ、その中で、二項にございますように、「生産条件に関する不利を補正するための支援を行う」という施策の対象としてはまたそこから絞り込まれるというふうにお考えいただいたらと思います。
  90. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、直接支払いとの関連でいうと、三十五条の一項よりはむしろ二項の方が支払いの対象範囲ということになっていくというふうにとってもいいわけですか。
  91. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私どもは直接支払い法律上のよりどころというのは第三十五条二項であるというふうに考えております。
  92. 風間昶

    ○風間昶君 わかりました。これはこれからの、いわゆる直接支払いのことになるとまた議論していかなきゃならない問題だと思います。  もう一つ、多面的機能という観点からいうと、この三十五条で言っている「中山間地域等」は、今、林野行政についてのさまざまな議論がまた一方ではあるわけでありますけれども、今度衆議院で上がって参議院でまた議論しなければならない農業振興地域整備法の中身ともちょっとラップしてくるかもしれませんが、森林や林業関係についても地理的条件が悪いわけでありますから、この中にもこの中山間地域等の振興ということは当然含まれると。含まれるというふうにおっしゃるんだろうと思うけれども、要するに、具体的にどうなのかという一歩踏み込んでお答えをいただきたいと思います。
  93. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) この食料農業農村基本法案の中にも「水産業及び林業への配慮」という項目が一つございます。林政というのはやはり大きな別の政策対象範囲でございます。もちろん、日本の森林と農地の関係、それから日本の林家と農家関係というのはもうかなりの部分が大きな関係を持ち重複をしているわけでございますので、そういった点で大きな関係を持ちながら配慮していかなければならないとは思っておりますけれども、直接農政の対象とする範囲ということについて言いますと、私どもはまずは農地を抱えている農村というふうに考えていただいたらと思います。
  94. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、それは林業基本法、あるいは大臣も所信表明の中で水産業に対する新しい基本法といったような制定も視野に入れているというふうにおっしゃっていましたが、そういうものの方で、つまり林業をやっているところは中山間地域に入るわけでありますね。そうすると、三十五条で言っている新農業基本法は、今のお話ですと一項に別に林業、水産業に対する振興の観点があるからここでは含まれないと断言するわけですか。
  95. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 結論的に言えばそうでございます。  ただし、中山間地域は、先生今おっしゃられたように、林と農が非常に近接しておりますし、現に林家の四割は農業も兼ねておるという現状でありますから、そういう意味で中山間地域あるいは山間地をどういうふうに保全していくかということにつきましては、これは大きな政策課題になっておるわけであります。  したがいまして、水の方も、今水産の基本法議論を、検討会でいろいろな議論をやっておりますが、林政全体のことにつきましても基本的な議論を今検討会で専門家の方々とやっております。  ただし、この議論の中で、林地は条件不利地域だから直接支払いをやるかやらないかということにつきましては全く中立的でありまして、そういう方向でとかやらないとかいうことについては、検討会の作業の最中でもございますし、これについては私から現在お答えができないわけでございます。
  96. 風間昶

    ○風間昶君 いずれ答えざるを得ないときが来るんだから、今答えてもいいと思うけれども。今は検討中ですから、それはあれにしますが。  では、先ほどの直接支払いと絡んできますが、定住条件を整備していく上でこれまでも農水省がいろんな人、地域あるいはジャンルに対して施策を行ってきているわけですけれども、まずいずれにしても若い人や女性や高齢者が住みよい農村をつくることが農村の活性化、ひいては日本農業の活性化というか再生につながるというふうに思うわけです。  そういう意味で、定住条件をどう整備するのか具体的な話になってきますと、なかなか特色のある農村づくりというのは、それぞれ地方自治体レベルでもやっているけれども、もちろんこれは農水省がいろんな指針なりあるいはいろんなアドバイスをされてやっていることだと思います。  一つは、生活環境施設の整備状況で農村と都市部を比較しても、これは自治省の公共施設状況調べのデータですけれども、一番大変な差があるのは汚水処理施設の普及率が大都市、中都市に比べて町村は極めて低い、相当な差があります。大都市が九五・八%、中都市が六三・二%に比べて町村は二一・五%、こんなに差があるわけです。あるいは道路舗装率についても、八六・八%の舗装率、これは大都市ですが、町村では六四・八%と。  いずれにしても、十年程度の水準の隔たりがあるわけで、この二つに限ってもそうでありますから、まず汚水処理施設の普及率をどう整備していくのかということと、それから道路舗装率の整備についてもどう整備されていくのか、農水省としてもこれまでもやってきていることでありますから、さらにもうちょっと進めていくような気持ちを含めての方針を伺いたいと思うんです。
  97. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 絶対水準の是正の問題と、それからその地域の実情に合わせた整備ということと二つあると思うんです。  例えば、汚水処理施設について言えば、人口が密集しているようなところでは流域下水道を使い、それから合併浄化槽を使い、そして人口の密度が非常に低いようなところでは集落排水というふうな分担と連携になると思うんです。  絶対水準について言えば、今、先生から御指摘がありましたように、町村部二二%という非常に立ちおくれた水準を是正するという点で、私たちの守備範囲である集落排水というものに対しまして、第四次土地改良長期計画、最終年度は平成十八年度でありますけれども、現況一万四千集落を三万五千の農業集落について整備したい、そういう計画を持っておりまして、この進展状況は非常に要望も強いわけでありますけれども、これから先も着実に進めていきたいというふうに思っております。  道路の整備につきましても、農道でやるのか、集落道でやるのか、あるいは国県道でやるのか、それぞれ分担関係がございますけれども、これは建設省とも国レベル、県レベル、それぞれ連携、話し合いの場を持っておりますので、そういう中で分担をしながら計画的に進めていきたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、私どもは第四次土地改良長期計画を持っておりますので、これをきちんと進めるということで対処したいと思います。
  98. 風間昶

    ○風間昶君 これも今の道路のことで言えば、北海道なんかでも農道空港がつくられて、当初の目的とはかけ離れたような感もあるわけであります、その地域住民にとってみれば。一方ではちゃんと農産物を運んでいるんですよ。それは僕は否定しませんから。大臣のいるところもあるでしょう。  いずれにしても、今、改善局長がおっしゃったように、定住条件をきちっと、都市と農村との交流という、文化的な交流だけじゃなくて、若い人やあるいはまさにさっきのお嫁さんのお話じゃないですけれども、来ていただいて、きちっとした町づくり、村づくり、要するに農村づくりを超えた町づくり、村づくりをしていく上でもこれは絶対大事だと思うものですから、そういう意味で、私は公共事業をもっとこれについてぶち込んでもいい、投資してもいいと思っているわけです。きちっとした農業日本農業の再生につながるということを確信しているから、そう言うわけであります。  さらに、この定住条件の整備でいえば、北海道なんかもそうなんですが、要は病院や診療所、幼稚園といった医療や教育の現場においても、大変な中間地域あるいは山間地域になりますと極めて市町村営の割合が高くなっているわけです。市町村営、要するに公営ですね。これはもう民間参入を促しても採算性の面からなかなか進出してこれないという側面も大きい。  一つは、やっぱり広域行政のおくれが私はあるんじゃないかと思うわけです。そこは農水省は余り今までもタッチはしてこれなかった部分もあるかもしれないけれども、しかしちゃんと定住条件を整備していくという観点に立てばもっとかかわっていってもらいたいんです。そうしないと、そういうインフラが整備されないと、幾ら農水省が若い人に新規就農者においでおいでと言っても来ないわけです。  そういう意味で、広域行政のおくれによって効率が悪くなっている部分があることも否定できないわけです。車でたかだか三十分以内に同じ診療所の内科と小児科は二つも要らないわけでありますし、また幼稚園に至っては、学校同様、一部事務組合にした方がうまくいく場合も実はあるんです。  そういう意味で、総理府のアンケート調査によれば、近隣の市町村までの交通アクセスが整備されていればすべての施設を自分のところの市町村等に整備しなくてもいい、あるいは施設が分散してもいいと。例えば、隣の町では内科と産婦人科があれば隣の村では眼科と小児科があるというような形にしてもいいというふうにお答えなさる方が七割近いとアンケート調査では出ているわけであります。  そういう状況ですから、今後、農村地域の定住条件の整備を総合的に、かつ広域的に進めていくということが必要ではないかと思うわけであります。それについてのいわば農水省としての考え方、どうやっていくおつもりなのか、今までそういう部局はないんだろうけれどもどうなのか、これは中央省庁再編の方とも絡んでくるわけですけれども、まず伺いたいと思います。
  99. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 一番端的な事例として生活環境の立ちおくれを挙げられました。それから、高齢化につきましても都市の十五年とか二十年先を言っているわけでございますので、今、先生がおっしゃられた医療、福祉、教育、そういう関係の定住条件の整備につきましても私どもはやはり積極的にかかわっていくことが大事だろうと思います。  これまでの手法は、どちらかといいますと、そういった医療・福祉施設の整備のための用地の整備というふうな形でしか関与はしてまいりませんでしたけれども、先般のウルグアイ・ラウンド受け入れに伴う関連対策をまとめましたときにも食料農業農村対策検討本部をつくりまして各省庁にいろいろと呼びかけて対策を実現していただいた経緯がございます。  今般、この基本法案におきまして農村の振興ということが位置づけられ、新しい設置法の中で農林水産省が農村の総合的な振興のための企画、立案をするというふうに規定がされておるところでございます。こういう状況になってまいりましたので、私どもは積極的にイニシアチブをとって関係省庁と連携してこういった農村の整備を進めていきたいというふうに思います。
  100. 風間昶

    ○風間昶君 構造改善局長お答えすることなのかなと私は今ふっと思った。あなたの頭の構造をまず改善しなきゃならないと思うんですけれども、要するに、例えば農業の土地利用にしても基盤整備にしても、そういう構造改善をやるだけじゃなくて、まさに今、農水省がそういう村づくり、町づくりの観点に立って積極的にイニシアチブをとっていきたいとおっしゃってくださったことは私も大変心強いと思います。  そういう意味で、先ほど和田議員の質問答弁にもありましたように、要は、農村問題をもう農水省だけでやっていられない時代なんです。横断的にやっていかないと定住条件の整備については進んでいかない時代に入ってきている。つまり、他省庁との連携なくしてはうまくいかないわけであります。  そういう意味では、今回新しい国土交通省への統合が決まった北海道開発庁については、公共事業に限ってではありますけれども、そういう省庁間の役割分担についての調整に大きな役割を果たしてきたわけでありますから、農村についてもやっぱり公共事業だけじゃなくて介護あるいは医療、福祉といった問題について総合的に施策を企画する部署が必要だと私はかねがね思っておったわけですけれども、先ほど農村振興局というお考えがあると伺いましたが、もうちょっと具体的に。
  101. 高木賢

    政府委員(高木賢君) まず、この基本法案におきましても、「農村に関する施策に係る部分については、国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない。」ということで、今御指摘のありましたように、他省庁も講じております施策の基本になる全国総合開発計画というようなものもございますが、そういったものとの調和が保たれた中で行うということでございます。言いかえれば、農村に関する施策は農林水産省だけがやるわけではなくて関係各省が相協力してやっていくということになるわけでございます。  その中で、今、基本計画につきましては、食料農業農村政策審議会の意見を聞かなければならないわけでございますし、この委員も総理大臣の任命ということでございますが、その審議会の運営に当たっては関係各省と協力しながらやっていこうという考え方を持っております。  それから二番目に、農林水産省としての取り組みの体制はどうかということでございますが、二〇〇一年一月のいわゆる中央省庁再編におきまして、今御審議をいただいております新しい農林水産省設置法というものの中では、新たに農山漁村及び中山間地域等の振興ということが農林水産省の任務として位置づけられております。この任務を遂行する組織といたしまして、内部部局を再編成いたしまして農村振興局というものを設ける予定でございまして、ここが固有の農林水産省として取り組むべき、例えば先ほど来御議論になっております中山間地域等に対して直接支払い制度を導入するとなればその所掌をいたしますし、関係省庁と相協力して農村の振興を図るというときの農林水産省の担当局ということになるわけでございます。
  102. 風間昶

    ○風間昶君 相当大きな事業を含めてやっていかなきゃならないと思うから、どのぐらいの人数とか規模でやるのか、もうちょっと詳しく教えてください。
  103. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 今は局の柱が決められた段階でございまして、具体的に何をどう配置して員数をどうするかというのはもうちょっと調整をさせていただきたいと思います。
  104. 風間昶

    ○風間昶君 人ががらがらっと動いてまた大きいのがどんとできるというだけに終わらないようにしてほしいと思います、その危険性はあるわけですから。  さらに、定住条件の整備について少し伺いたいと思います。  来年四月からの介護保険の導入に向けて、JAなんかでも介護・福祉サービスを実際にやっているところもあって好評を博している、部分的ではありますけれども。一方では、中央省庁再編と地方分権推進法を特別委員会議論しておりますけれども、あの分権一括法案の行き着くところの一つは市町村合併ではないかというふうに私は思っているんです、これは私見ですけれども。  その前段階としてやっぱり広域的な連携ということが当然議論になっていくでしょうし、そういう意味で今の農水省が、農山漁村、山村の中には林業をやっている人も含まれるんだろうと思うけれども、その広域連携を図る場合に、集落ごとあるいは町村ごとの役割分担についてある程度考えざるを得ないんじゃないかと思いますが、どういうふうに決定していくつもりなのか、伺いたいと思います。
  105. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) なかなか難しい課題でありますけれども、例えば私どもで事業をやりますときに、一つの集落あるいは一つの町村では効率的でない、あるいはむしろ市町村の域を越えた方がいいのではないかというふうな事業、あるいは同じようなものをそれぞれの市町村が持つよりは分担して持った方がいいのではないかというふうなケースが生じます。その場合には、市町村同士が話し合いをいたしまして一つの計画を立てる、そしてそこに事業を投入していくというふうな、いわゆる広域連携タイプの事業というのも持っております。最近、やはり各市町村は、こういった景気の停滞あるいは中山間地域農村の活性化が見られないという状況の中でかなり真剣になってきておりまして、この広域連携タイプの事業に対する要望が強くなっております。  具体的に申し上げますと、中山間地域総合整備事業の中には広域連携タイプがあるわけでございます。それによりまして生産基盤と生活基盤の両方を総合的に整備するわけでありますけれども、平成七年度にこの事業を導入いたしまして以来、広域連携型を導入したんですが、年々実施地区、それから採択地区もふえているという状況にございます。
  106. 風間昶

    ○風間昶君 それはどのぐらいあるんですか。
  107. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 実施地区の推移で申し上げますと、現在、中山間地域総合整備事業は平成十年度で百一地区、事業全体が五百十二地区でございますので二割ぐらいを占めております。八年度、九年度はそれぞれ三十七と六十四地区でございましたので、年々倍増に近い伸びを示しております。また、新規採択につきましても、平成八年度の二十六地区から平成十年度三十七という形で、採択地区数も毎年増加をしているという状況にございます。
  108. 風間昶

    ○風間昶君 さらに、定住条件の整備で、マルチメディアが充実してきて、いろいろなインターネットの導入も、聞くところによると、農業者で二万戸近い方々がインターネットを使われているというふうに聞いています。  もう一つは、我が国全体の光ファイバーの整備目標が、現在、都道府県庁の所在地を中心にして先行準備期間で今やっております。今後二〇〇五年までにファイバー・ツー・ザ・ホームという家庭向けの光ファイバー網が全国整備されるんですが、農水省としても、お聞きしましたら田園地域マルチメディアモデル整備事業ということで、これはCATVですけれども、CATVの施設を核として高速で大容量で、かつ双方向の通信が可能という情報基盤をモデル的に整備していく事業があって、それに対して助成を行っているというふうに伺っていますが、CATVは初期投資にかなりの金額がかかるんです。だからこそモデル事業でやってみて、恐らく、きついなと思ったら、ちょっとこうなる可能性もあるんです。  それで、電気通信審議会の答申では、ことしの五月ですけれども、二〇一〇年までに全国のCATVをデジタル化することが望ましい。そうなりますと、家庭向けの光ファイバーを開通させる、二〇〇五年までにというふうになりますから、この家庭向けの光ファイバーが開通してさらに五年後にようやくCATVのデジタル化が完成するというふうになるんです、これは電気通信の方の話ですけれども。  そうなりますと、農水省として今進められている田園地域マルチメディアモデル整備事業、せっかく農村振興の一環としてやるんだけれども、情報通信分野での事業を行うのであれば、特にモデル事業が日進月歩の発展を遂げているこの技術革新におくれることのないように柔軟な対応をしなきゃならない。したがって、私は、二〇〇五年に開通する家庭向け光ファイバー網にもう既に実用化して利用料金も手ごろになっている衛星通信を利用した方が、それを組み合わせた方が安く早く通信が可能だと思うんです。  そういう意味で、今モデル的に整備しているこの田園地域マルチメディアモデル整備事業について、さらにどんどんどんどんやるのかどうかということが問われるわけでありますが、私は見直さなきゃならない時期が来ると思っているものですから、見直すつもりがあるのかどうかを含めて農水省に御意見を伺いたいと思います。
  109. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 大変有意義な御指摘をいただきましたので、御指摘を踏まえて十分検討をしたいと思っております。  この田園地域マルチメディアモデル整備事業、平成十五年度までに十五地区以内ということで平成九年度にスタートいたしました。現在、十地区についてその事業を実施してきておりますけれども、十年度末では一地区が供用開始というふうな状況にございます。おっしゃられたように、情報通信は日進月歩でありますし、それからこの基本法案におきまして、三十四条二項です、農村地域の情報通信基盤の整備ということが位置づけられておりますので、そうしたことも念頭に置きながら十分勉強させていただきたいと思います。
  110. 風間昶

    ○風間昶君 ですから、これは農水省さんだけがこうなっていないで、ウイングを広げておくれないようにしないと、せっかくモデル整備事業を起こしたんだけれども、それが利益が少ないとなるとまたここでロスが生じるんじゃないかと僕は思うものですからお伺いしたんです。  さらに、定住条件についてでありますけれども、今後このマルチメディアが充実していくと、在宅勤務、これは専業農家の方じゃなくて兼業農家の方に該当する話になると思いますけれども、在宅勤務が珍しくない段階に入れば、農村に住む人が農家でなければならないということはないことも生じてきます、数は少ないにしても。現に、北海道にも作家の方で日高の方に別荘と菜園と、これは営業まではいきませんが、農業にいそしんで創作活動をやっていらっしゃる方もいるわけであります。恐らく、これからも作家や音楽家あるいはいわゆる文化人の方が農村に入って生活しながら創作活動に励んでいくということも出てくるでありましょうから、そういうような人たちも吸収して町づくりというか農村づくりを進めていくことが求められていると思いますけれども、これに関してはどんな政策政策というオーバーな大げさなものではないにしてもお考えを持っているのか、伺いたいと思います。
  111. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 農業経営の近代化ということで非常に経営自体が高度化をしてまいりますし、それから担い手のレベルといいますか、そういった通信施設に対するアレルギーといいますか、そういうものも非常に小さくなってきているというふうな状況にございます。都市との交流も盛んになれば、そのためにいろいろなものが必要になりますし、また都会の方々が農村地域に住んで仕事をするテレワークというふうなこともこれから出てくるわけでございます。  もちろん、私どもだけでこれを全部やるというわけにいきませんので、この点につきましては、平成九年度には郵政省と連携をしてテレワークセンターの中の情報機器を私どもが分担して整備するというふうなこともいたしました。具体的に申しますと、阿蘇テレワークセンターというところに私どもの予算で情報機器を整備する、もちろん私たちの整備の対象というのは農業側からのということになりますが、そういう事例もございます。  先ほど申し上げましたが、基本法案の中に情報通信基盤の整備というのが位置づけられておりますし、世の中の進展が非常に速いものですから、そういった点を念頭に置きながら、各省庁と連携をとって、農村におけるテレワークの条件整備がどれだけできるかということに意を用いていきたいと思っております。
  112. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほど来先生から農山村の生活基盤あるいは定住条件整備のための情報通信についていろいろ御指摘がございました。  要は、農山村にいながらきちっとした情報インフラを整備するということがポイントであると思います。その意味で、いろいろなインフラがあるわけで、先生指摘のように、地下のケーブルあるいは電話線あるいは地上波あるいはマイクロウエーブ、そして衛星といろいろあるわけでございます。ファイバー・ツー・ザ・ホームのお話もございましたが、あれはラスト百フィートまでを整備しようということで、最終的にホームまで行くかどうかはホームの判断になるわけでございますが、そういう意味で、今のテレワークも含めまして、アメリカなんかでは農村あるいはとんでもなく離れたところにいながら情報インフラ、パソコン等によって十分仕事ができる。私の地元にもそういうことをやりたいといって東京から打診をしてくる人が時々おられます。  そういう意味で、何が必要かということではいろんなツールがあって、全部を整備すれば一番いいんでしょうけれども、時間もかかる、あるいはその間に技術も進歩をしていくということで、CATVあるいはまた光ファイバー、衛星等々いろんなツールを最終的にはきちっとネットワーク、多種なネットワークを整備しなければいけないと思います。  これは、先生も御指摘のように、緊急性もある程度要求される話でもございますので、その中で農林省だけではなく郵政省等々とも組みまして、これは建設省も若干関係してくる話にもなるかと思いますけれども、とにかく農村において何が優先的で何を重点的にやっていくかということを少し省内で検討して、農業者を中心とする本当に農村に昔から住んでいる人、あるいは新規に田園地帯で自分の別荘なり家できちっと東京やニューヨークと結んで仕事ができるような人を受け入れるような体制づくりというものをやっていけるように、私は省内あるいは関係省庁と積極的にこれから検討していく必要があるというふうに考えております。
  113. 風間昶

    ○風間昶君 引き続いて定住条件の整備でありますけれども、基本問題調査会の農村部会での発言でこういうのがあったそうです。「直接支払によっても定住が保障されるわけではない。また、一部の個人に現金を配分するというのは行政として非常に困難。これらを踏まえると、農地の維持管理等の仕事を行う農地保有合理化法人や第三セクターに対する財政支援とし、実質的なデカップリング的機能を発揮してもらうことが適切ではないか。」というふうな意見があったそうであります。これは、意見意見でありますから、いずれにしても直接支払いの必要性はともかく、定住確保の困難性にある意味では警鐘を鳴らしているのではないかなという点は傾聴に値するのではないかと思うんです。  そこで、農村の過疎化、荒廃をどうやって食いとめていくのかということがまた大きな新農業基本法の一つの柱になっているのではないかと思っているわけであります。この新農基法すべてに込められているだけではこれは荒廃を食いとめられないと思いますから、基本方針をやっぱりきちっと持っていないとだめだと思うんですけれども、大臣、いかがですか。農村の過疎化や荒廃化を食いとめようとしてこの新農業基本法の中にも込められているけれども、基本方針が大臣の腹にきちっとおさまっていないとだめですよ。大臣基本方針を聞かせてちょうだいと言っているんです。
  114. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、以前より住んでいる人たちが都市に流れていって過疎化を促進させるということを食いとめるということと、先ほどの先生の情報通信の話に触発されて、新規にテレワークなりあるいは田園に住んでみたいという人たちを受け入れるという意味での新規の定住促進という意味、両方からこれは促進する必要があると思いますし、また基本法の中でも、そのためにも生活基盤整備あるいは中山間地域農業農村地域の多面的な役割というものをより促進していくための条件整備をしていかなければならないというふうに思っております。  具体的に申し上げますならば、農産物の加工あるいは流通施設の整備等による農業の振興や担い手の育成、あるいはまた生活インフラとしても重要な集落道あるいは集落排水等の生活環境の整備、都市と農村との交流、工業導入等による就業・所得機会の確保といったようなこと、それから先ほどの情報通信あるいは福祉、医療、教育、先生が広域連携型ということに着目されておりましたけれども、まさしく一集落、一町村単位ではなく連携した形でいろいろなインフラの整備を共通にしながら定住を促進し過疎化あるいは農地の荒廃を防いでいくということで、今住んでいる人を守っていくと同時に新規に定住してもらえる、あるいはまた都市との交流で滞在してもらうという両面から非常に大事なポイントの御指摘であり、また基本法の中でもその理念が重要なポイントであるというふうに考えております。
  115. 風間昶

    ○風間昶君 第二十六条に「女性の参画の促進」という項目が入ったのは、私は大変画期的なことであるんじゃないかと思います。やっと男女共同参画を農業の関連のところにも認めてくれたということは大きいことだと思いますけれども、法律ができることと残念ながら旧態依然たる農村での男性社会というのが転換するかどうかというのは別問題でありまして、本当にこの男女共同参画社会ができるかどうかということは、農水省としても農村のあり方の中での部分でいうと十分な手を尽くす必要があると思います。  そういう意味で、家族協定による女性農業者の位置づけあるいは女性の農業者年金への加入というのはもう画期的なことだと思いますが、まだまだ法律の二十六条に込められている「女性の農業経営における役割を適正に評価」、だれが評価するのかなと思うけれども、結局これも農業委員あるいは農協が評価するのは男社会の中でふさわしく評価するということだから、ちゃんと適正評価されるかどうかという担保もないんじゃないかという危惧があるわけです。  いずれにしても、法にきちっとこうやって載せた以上は女性参画に対する施策をどうこれからさらに進めようとしているのか、今考えられていることがあれば教えていただきたいと思うんです。
  116. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) お答え申し上げます。  今、先生指摘ございました第二十六条のところで、まさに一番最後のところにそういう「環境整備を推進する」という規定になっているわけでございます。  御指摘ございましたように、農山漁村では男女共同参画の現状を見ますと、農業経営において女性が大変重要な役割を果たしていただいているということにもかかわらず、一般的には男性優位でなかなか家中心の色彩が残存しているという事情にあるということは否定できないと思います。  農林水産省としましては、そういう環境整備を推進するという観点から、女性の地位の向上それから適正な評価を確保するというために、幾つか御紹介いたしますと、一つは経営内あるいは家族の中で確保するということで、この内容は御説明申し上げませんが、家族経営協定の普及を図るというのが一つの柱になっております。  それから、地域的といいますか社会的といいますか、そういう地位の向上という観点からは、現在、私どもの方で県と一緒になって進めておりますのに、農協等の役員、そういうところへ女性を登用していただくということで、農山漁村での社会参画への促進ということをやっております。これは現在の計画といいますか見込みでは、ほぼすべての県で十一年度中に女性の方がどういうところへどういう数字で参画してもらうかという指標なり目標なりを設定していただくということが大体できるだろうと私どもは見込んでおりまして、そういうことで御指導しているところでございます。  それから、何よりも女性の皆さん農村の婦人の方の経済的基盤が確立するということが地位の向上なりそういう評価につながる、先立つものがあるということで精神的だけでなくて実質的にも地位の向上につながろうかということで、現在いろんな形で農産加工等、そういう企業活動へ熱心な空気が見られるわけでございまして、私どもとしましてはそういう活動へ無利子の資金を融資するというような形での支援を申し上げております。このところ、かなりその企業数が増加をしてきておりまして、前年までは大体四千ほどでございましたのが、現在これは十一年二月に調査をいたしまして六千にふえておりまして、こういう活動で経済的基盤を確立されるということも効果があろうかと思っておるところでございます。
  117. 風間昶

    ○風間昶君 こういう男女共同参画の問題についても、農産園芸局長答弁するというのもまたおもしろいなと思いましたが、男女共同参画室長も兼ねていらっしゃるんだなと思って伺っておりました。  農水省が食料品消費モニターを通して調査したアンケートによりますと、消費者行政に対して食品の安全性を望む回答が最も多く、七七・七%になっています。いろんな調査目的や項目は異なりますけれども、前回の一九九二年に行った調査でもやはり食品の安全性ということに対して最も高い関心が示されているわけであります。年代別に見ても、今の二十歳代、三十歳代のいわゆるもう子供を産んだ人でなくてこれから子供を産む人たちの層の方の関心が極めて高いわけであります。二番目は、ちなみにごみ、環境、リサイクル、三番目はぐっと落ちて価格、流通、こういうふうになっていくんです。  農水省としては、一般論で答えるしかないかと思いますけれども、どのように食品の安全性確保について努めていくかということが基本的にも問われているわけであります。個々いろいろあると思います。添加物の問題あるいは放射性照射食品の問題、あるいはいろんな化学物質が入った問題、いろいろあるけれども、要するに大臣としてこの食品の安全性確保についてどう努めていくのか。この新農業基本法では余りないんです、農産物の価格形成しか。だから、どうしていくのかお答えください。
  118. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 基本法十六条に食品の安全性の確保、品質の改善、それから表示の適正化等について項目がございますが、具体的には農薬取締法、薬事法等での使用規制とか、加工・流通段階で卸売市場等における品質管理、衛生水準の向上等に対する整備の推進、あるいは安全なものを供給するということは当然のことでございますけれども、しかも安全性とか適正な取り扱いについての正しい情報というものを消費者に正しく伝えていくことということも最近は特に重要なことだろうというふうに思っております。  そういう消費者のニーズにこたえるためにも、役所の一階に消費者の部屋、あるいはホームページでいろいろな情報を公開する、例えばダイオキシン問題、環境ホルモンあるいは家畜クローン等で話題になったときには直ちにホームページでそのことにつきまして情報提供をするようにいたしたわけでございます。また、農林省消費者の部屋に子供電話相談室というのを設けまして、特に都会の子供たちには素朴な疑問から大変興味ある疑問まで含めていろいろな問い合わせをいただいておるところでございます。  これからも食を考える国民会議等を通じまして、食品の安全性と正しい情報の提供に向けて、これは教育的な側面も子供たちに対してあると思いますので、厚生省あるいは文部省等々とも連絡をとりながら一層の充実を図っていきたいと思っております。
  119. 風間昶

    ○風間昶君 そうですね、十六条に入っていました。済みません。  食品の安全性につながるんですが、野菜の栄養価について若干伺いたいんですけれども、今いろいろ野菜が出ていますが、野菜の栄養価を示すデータがあるんです。これは食品成分表と言うんですけれども、これは一体どこがやっているのかと思ったら、何とびっくりしたことにきょう来ているところです。お願いします。
  120. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 先生指摘日本食品標準成分表でございますが、これは戦後いろんな食料需給の関係国民の栄養を改善しなきゃいけない、そういう観点から昭和二十五年に初めてできたわけでございますが、経済安定本部で取りまとめたのが最初でございます。  その後、科学技術庁が三十一年に発足いたしまして、それを引き受けたところでございます。そして、昭和二十九年には第二訂版といいますか、改訂版を出しまして、三十八年には三訂版、さらに五十七年には四訂版を公表しておりまして、その後二年ごとぐらいに成分の追加等のフォローアップをしているところでございます。そして、平成九年には四訂版に載っていない、最近食生活が非常に広がっておりますので新しい食品の成分表も公表いたしました。そして、現在では全面的に改訂すべく五訂版の作業を行っておりまして、年度内目途に新しい成分表を出したいと考えている次第でございます。
  121. 風間昶

    ○風間昶君 本当にびっくりしました。科学技術庁が今やっていらっしゃるということに敬意を表するというか、歴史的な経過の中でやっていらっしゃる。  そこで、昭和二十五年と二十九年とを比較してもどうもならないんですが、少なくとも最後にちゃんと出ているものが四訂と言われて、一九八〇年ですからもう十八年前のものがデータで出ていまして、今、局長はその後二年ごと新しいものを追加してということでありますが、びっくりしました。  ビタミンCと鉄分とカルシウムが含まれている野菜の変遷表というのがありまして、三十年でホウレンソウが百五十ミリグラム・パー・百グラム、百グラム中百五十ミリグラムが六十五ミリグラム、半分以下になっているわけであります。鉄分は、ホウレンソウの鉄分が十三・〇ミリグラムが三・七、三十年の月日の中に、しかも出てきている数字は平均値でありますからなかなかとらえ方が難しいんですけれども、いずれにしても鉄分は三分の一か三分の一以下。ニラに含まれる鉄分も二十分の一になって、ワケギに含まれている鉄分も三十分の一になっている。こういうように国民の健康を維持増進させていくという観点から野菜の栄養価の低下は目に余るものがあるんです。  実際に僕らが買っても、予冷で中央市場に入ってきて、中央市場から一般のスーパーでもお店でも行っているのに、また時間がたつごとに、特にビタミンCは気温やなんかに応じてどんどんなくなっていきます。さらに水につけておくと、大根なんかでもそうですけれども、色が変わる。空気中に置いておいても色が変わるぐらいにどんどんビタミンCが抜けていく。ビタミンCというのは体内合成できませんから食品でしか摂取できないわけであります。  そういう意味で、これは大変物づくりに一生懸命になってもらっているのはわかるんだけれども、実際には何が原因かはいろいろあると思うんです。複合的な要因がたくさんあると思いますが、いずれにしても野菜の栄養価の低下は目に余るわけであります。このことについての認識と対策を、科学技術庁に伺ってもどうかなと思うけれども、やっているところだから伺いたい。
  122. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 今、先生の御指摘になりました数字でございますが、実は一番最初の初版、昭和二十五年につくられましたときは戦前のいろんな文献を集めてつくったようでございます。二訂版以降は我々がきちっと実験をして確認した数字でございますので、二訂版以降から比較していただいた方が多分よろしいのではないかと思いますが、それでもホウレンソウ等につきまして減っている、それは事実でございます。  これは作物の環境とか、それから輸入がふえているような話とか、そういう食品の流通の変化、そういうさまざまな要因で成分値も変化してきていると思います。そのために、我々といたしましては、現実に合うといいますか、実態の数字の成分表が必要でございますから、時々改訂しているところでございます。  我々としましては、この成分表に基づきまして、これを基礎的なデータとしまして、集団の給食とかいろんな栄養管理、栄養指導、そういうものに役立てていただきたいということでございます。  対策と申しますのは、先生指摘のように科技庁で直接できるところは余りないわけでございますが、むしろ我々といたしましては、そういう野菜を含めた食物の基礎的な研究でしょうか、そういうことを通しまして何か役立つように貢献していきたいと考えている次第でございます。
  123. 風間昶

    ○風間昶君 まさに、対策は科技庁に求めても大変なことです。ただ、出てきたデータをただ表にしてつくっているだけじゃ、この食品成分表は何も科技庁でやる必要はないんじゃないかと私は思いますよ。むしろ、厚生省とか農水省が食の安全性という観点からもやっていくべきです。仕事をとったら困るかなと思うけれども。  それはともかく、済みません、時間になりましたから、残りの質問は次回以降にしたいと思います。
  124. 野間赳

    委員長野間赳君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  125. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、食料農業農村基本法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  126. 須藤美也子

    須藤美也子君 前回は私、第二章の一節、二節を質問いたしましたので、きょうは第三節を中心に質問したいと思います。  先ほど来いろいろお話がありましたが、後継者が育たない、その上離農がふえている、こういう農業現状をどのように認識しているのか、まず大臣にお尋ねしたいと思います。
  127. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 後継者につきましては、依然として減っているとはいえ、例えば新規学卒者あるいは三十九歳以下のいわゆる若手の新規就農というものは一時に比べてふえておる状況でございますし、またいわゆる外からの担い手あるいは後継者が参入できるような支援措置というものもいろいろと講じておるところでございます。  一般論といたしまして、農村における後継者の減少あるいはまた離農者の増加というものは集落そのものに対する影響あるいはまた農業生産に対しての影響というものも大きい問題でございますので、これからも農業に後継ぎが入りやすいように、あるいはまた外から入りやすいような支援措置をとることによりまして、農業あるいは農村というものの位置づけを維持していくように努力をしていきたいというふうに考えております。
  128. 須藤美也子

    須藤美也子君 まだ心臓の部分に触れられていないと思うんです。  現行基本法発足当時、新規就農者は八万九千人でした。現在は数千人。いろいろ離農者も含めて、再就農をした人を含めると五、六千人、数としてはそのぐらい、こういう結果になっているわけです。ということは、日本農業が縮小している、しかも生産意欲をなくしている、そういう現状が今農村の分野で大きく広がっている。  例えば、この間、日曜日、私は新潟に行きました。新潟の農家のお父ちゃんからこう言われました。自分の娘、十八歳、高校を卒業して就職した。初任給が手取りで十二万ぐらいもらってきた。夫婦二人で働いて、汗水流して農業をやって、娘の給料に及ばない。農業はこの先どうなるのか、やっていけない、こういうふうに訴えられました。  価格の低迷が現場の農家の経営に相当大きな影響を与えている、こう言わざるを得ないと痛切に感じてまいりました。高校生のアルバイト料よりも農業の所得、手当というものが少ない。こういう現状をどう考えているのか、それをお聞きしたいんです。どうですか。
  129. 高木賢

    政府委員(高木賢君) その事例がどの場合とどの場合を比較したのか定かでありませんけれども、要するに労働力の評価が、たまたまかどうかわかりませんが、お嬢さんの方が評価の高い分野に行かれたのだろうと思います。それから、農業者の方も、何をつくって何を売っているのかよくわかりませんので私には何とも申し上げようがないのでありますが、やはり働きの価値がどう評価されたかということであろうと思います。
  130. 須藤美也子

    須藤美也子君 高木官房長、何を答弁しているんですか。わかり切っていることじゃありませんか。農業所得は製造業で働く労働者の賃金の三分の一しかないということは統計上もはっきりしているわけでしょう。だから、こういう施策もいろいろ皆さんの方で出していらっしゃるわけでしょう。私は稲作の問題を言っているんです、新潟はお米の産地ですから。  「北海道農業現状農家の意向」というこういう立派な、ことし三月に出したのをごらんになっていると思います。この中で、農業をやめたい、農業を中止あるいは縮小したい、これが一四%です。この理由は、農産物価格の低迷、これが三割です。このままではやめざるを得ない。米価の低下で出稼ぎに行き、女性の労働が大変になっている。野菜農家も価格低迷で離農がふえている。「北海道農業現状農家の意向」の中ではっきりこういう結果が出ているんです。ことしの三月ですよ。恐らく目を通していらっしゃると思うんです。これは農林水産省北海道統計情報事務所が出しているんですから、ごらんになっていると思うんです。これが現状なんです。  私は、価格の低迷、これが最も今農業に対して、何をつくっても採算がとれない、そういう状況の中で生産意欲を失っている、後継者も育たない、そこに大きな原因がある、こういうふうに考えております。  そういう点で、私は、今回の第三節の「望ましい農業構造の確立」の点なんですが、価格の安定を抜きに後継者、担い手の育成はできないと思いますけれども、基本法案はそれが保障され、農家が希望を持って後継者を育てる、こういう内容のものになっているのでしょうか。
  131. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほど官房長答弁いたしましたように、いろいろな形態があるわけでございまして、北海道の場合には専業比率が高いと思いますが、何をつくってももうからないというのはちょっと言い過ぎではないかと私は言わざるを得ません。  しかし、北海道の大規模な米作農家の所得が非常に減少しておるということについては、私もそういう認識を持っております。だからこそ、昨年から新しい稲作経営安定対策ということで、その年の価格が、高ければ高いほどいいわけでありますが、価格が変動した場合には、この基本法案の三十条二項にありますように、変動によって育成すべき農業経営に影響が及ぶときに、それを緩和するために必要な施策を講ずるということで、その一つとして経営安定対策ということで、いわゆる激変、激減と言った方がいいんでしょうけれども、激変を緩和するための経営安定対策等を講じておるところでございます。
  132. 須藤美也子

    須藤美也子君 この間も大沢委員が価格問題について質問いたしました。三十条一項では「農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成される」、市場原理にゆだねるということですね。それから、二項には「国は、農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずる」とあります。この「影響を緩和する」の「緩和」はどの程度なんですか。
  133. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 影響があった場合に、その程度を一〇〇%及ばないようにするということはもちろんでありますが、もろに打撃を受けないようにという趣旨でございます。
  134. 須藤美也子

    須藤美也子君 どうもきょうはかみ合いませんね。  そうすると、一〇〇%は補てんしないという意味ですね。すると、稲作経営安定対策のようなものなんですか。
  135. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 稲作経営安定対策は稲作におきます経営安定対策でありますから、その一つの具体策であります。
  136. 須藤美也子

    須藤美也子君 この二項に書いてある「緩和」というのはもっと違う意味にとれるわけですか。
  137. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 三十条一項で、価格というのは需給事情によって決定されるということでございまして、今、先生は一〇〇%という言葉を使われましたが、何が一〇〇%かということはそういう需給の状況によって常に変動する、生産者価格が上がることもあれば下がることもある、これがまさに需給を反映した価格であるわけであります。  これだけですと下がった場合に農家に対する影響が大変大きくなるということでございますから、制度の細かい仕組みは先生も既に御存じだと思いますが、過去三年間の平均とかいろいろなところのそういう要件は申し上げませんけれども、それによって激変を与えないようにして、引き続き農家経営がこれからも持続できるようにしていくという意味の措置でございます。
  138. 須藤美也子

    須藤美也子君 稲作経営安定対策もほとんどが農民負担が多い保険制度なわけですよ。そういう中で、一〇〇%補てんはされておりません。下支えもなくなりました。こういう状況の中で、稲作経営はもとより、非常に不安定な経営状況にある、先行きが見えない。ですから、そういう状況では農家経営の安定は図れないのではないか。「農産物の価格の形成と経営の安定」とありますけれども、こういう内容では現場の農民はこれに期待することができない、経営を安定することはできない、こういうふうに言わざるを得ません。  もう一つの例を申し上げたいと思います。  一九九二年、新政策を出しました。これは他産業並みの労働時間と所得保障、所得を保障する、そのためのいろいろな類型をつくって基本計画を出しました。それにあわせて、全国都道府県でも農業経営基盤の強化促進の基本方針を各市町村に明示いたしました。そのときは個別経営体が三十五万から四十万、組織経営体が四、五万ですか、国はこういう形の計画を立てた。  自分の山形のことを申し上げるので大変恐縮なんですけれども、山形県で六年にこの基本方針を出しました。しかし、このときに基準になった米価は二万三百円だったんです。一九九四年前後の米価だったんです。新潟県は二万三千円であります。今現在、米価は、山形県は一万八千円、それから新潟県は二万円です。この基準に合わせて他産業並みの労働時間と所得を明示した。例えば、山形の場合は、他産業並みの労働時間二千時間、一人当たりの所得は年間五百万円、主とした農業従事者二人にして一千万の所得をこのようにやれば確保できますよ、こういうことを示したのが新農政、新政策だったわけです。  ところが、現在は逆に、他産業並みどころか、それ以上に減収しております。こういう状況の中で、今回も、この第三節の第二十一条、規模の拡大その他農業経営基盤の強化の促進を図る、営農の類型及び地域の特性に応じて云々となっておりますけれども、私は、現在のこの進めてきた新政策、こういうものではもう現状に合わない、もう既にこの計画を見直すべきではないか、これをさらに推進するのではいよいよもって農業が破綻してしまう、こういうふうに考えますが、いかがですか。
  139. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 新政策のことについて言及がございましたので、ちょっとお答えをさせていただきます。  他産業従事者というお言葉を使われましたけれども、この政策の中では地域における他産業という言葉を使っておりまして、地域における他産業従事者と生涯所得において遜色がない、それから労働時間において遜色がないという言い方をしております。その場合、経営改善計画を立てますときには一定の仮定を置きますので、もちろんその当時の米価というのが一つの参考にはなると思いますけれども、これがそのまま横に滑っていく、あるいは上昇するというふうに確定をされているわけではないわけでございます。  今、山形の例を引かれましたけれども、私どもの集計でも、稲作単一経営の場合で約三四%、三分の一の認定農業者の方々が七百万から九百万というところに所得の目標を置いております。  これは直接稲作とはリンクはいたしませんけれども、統計情報部が十年の十月にアンケートを認定農業者の方々からとりました。確かに、米価の低下その他農業経営を取り巻く情勢は非常に厳しい事態にあるわけでございますけれども、認定農業者の方々それぞれが目標を達成すべく、コストダウン、経営の複合化、販売・加工部門への取り組みその他、経営改善に努力をされているところでございまして、このアンケートによりましても、おおむね六割の方が相当の努力はあるが何とか達成が可能というお答えをいただいておるところでございます。  こういった意欲をさらに具体化するために、こういった方々に対し施策を集中いたしまして、何とか目標が達成できるようにいたしたいと考えておりますし、この制度が誕生いたしまして五年が立ちますので、そのレビューの際にはそうしたことを十分配慮して新たな改善計画へと歩を進めたいと考えております。
  140. 須藤美也子

    須藤美也子君 認定農家皆さんは大変だと言っていますよ。この間の仙台の地方公聴会でも、坂本進一郎さん、十町歩をつくっている稲作の専業農家の方から、一俵当たり四千円から五千円下がった、年間五百万円の減収になった、減反は押しつけられ、しかも米価は下がる、これでは先行きの計画が立てられない、こういう実態を公述、発言されました。  こういう現状を見ないで、認定農家はいい方に行っている、いい方に行っていると言うから錯覚を起こすんです。今、米価は上がる状況にありますか。むしろ下がる方向に来ているでしょう。そういう状況の中で、この計画実現不可能だ、こういうことを認めて、現状を見ながらそれをもっと引き上げていく計画を進めていただきたいと思うわけです。  もう一つ、さらに価格を不安定にする動きが出ております。  六月の農水省の検討文書、新たな米政策大綱推進状況等という文書の中に、作況指数が一〇〇を超えた場合、生産オーバー分を主食用以外に処理する機動的な対応について検討している。備蓄、加工、えさ米、工業用とあるわけですけれども、備蓄、加工は輸入米で今いっぱいだと思います。そうすると、作況指数が一〇〇を超えた場合はえさ用か工業用の米になってしまう。そうなると、米価は三十分の一に下落するのじゃないですか。そういう計算がいろいろマスコミ等でも報道されております。三十分の一ということは一俵千円から六百円。これで農業をやれますか。こういう動きをどう考えますか。
  141. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 生産調整のねらいというのは、結局のところ、生産数量をコントロールして自主流通米の価格その他を一定の価格水準に維持するということであろうと思うんです。そういう形で計画どおり生産調整をしましても、作況が一〇〇を超えるということによりまして、作況が一〇三とか一〇八になればその分だけその年の分から見ると過剰になってくるということで、過剰が発生しました場合には従来は生産者団体は調整保管ということをやっておりました。御案内のとおりでございます。  調整保管も一つの有効な手段ではありますが、市場隔離を一たんしますけれども、結局は主食用としてそのまま持ちますので、自主流通米の価格は下がるという方向にどうしても働くという面は否めない。それから、一年間調整保管を持ちましても、結局、翌米穀年度でまた自主流通米として売るということになりますから、その面においても価格の低下ということがあり得る。それから、全体の消費がふえない限りは、こういうことを繰り返せば結局は翌年以降の生産調整目標面積を大きくせざるを得ない。  こういうようなことをいろいろ考えました際に、計画どおり生産調整をしても作況が豊作によって一〇〇を超えたという場合に、これを例えば主食の世界から切り離してえさ用等に持っていくことによって、一〇五の五の分をえさ用等、主食の世界から外すことによりまして、一〇〇の世界の分は価格が下がらずに予定どおり主食としてそのまま利用できるという面もあるわけでございます。  そういう意味では、稲作経営という観点から見て、今申し上げましたようなやり方、自主的な調整保管という形の方がいいのか、あるいは豊作部分を主食の世界から外して全体として稲作農家の所得を確保するという方がいいのか、このあたりはこれから議論のあるところだと思います。  そういう意味で、そういう方途も含めて現在生産者団体におきましてもその可能性も含めての御議論がありますので、私どももそういう動きを注意深く見守っていきたいというふうに考えております。
  142. 須藤美也子

    須藤美也子君 そうすると、今の答弁では、一〇〇を超えた分については、そのほかのえさ米とか工業用とか、そういうものに使われる、検討しているということは認めたわけですね。それがわかれば、今後またいろいろ要望を出していきたいというふうに思います。  続きまして、麦も民間委託しよう、こういう動きが農政改革大綱にあります。  これは日清製粉会社の社長さんとお会いになったんですか、農水省の代表の方が。
  143. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 基本法案にも食品産業の位置づけが出ておりますけれども、私どもといたしましても、今後、食品産業の方々と十分意見交換をしながら、適切な食料政策の一翼を担っていただこうという趣旨で、主な食品産業の社長さん方と大臣をトップといたしまして農林水産省の幹部との間で先般二時間ばかり懇談をいたした、そういうことがございます。その中に正田さんもおられました。
  144. 須藤美也子

    須藤美也子君 週刊東洋経済に載っております。この中で、この社長さんは、内外価格差が今よりも二倍から一・二倍に下がる、こういうことを言っているわけです。九千円から約五千数百円になるというわけです。今、食料自給率向上させるために、需要の多い麦、大豆、菜種、これを増産しようとしているのじゃないですか。そうじゃないのですか。
  145. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 民間流通についてのお話がございましたので、御説明をさせていただきます。  麦につきましては、現在、端的に言いまして、例えば九千円で買いまして二千五百円程度で売るという形にしております。米と違いまして大変大幅な逆ざやになっております。したがいまして、建前上は間接統制になっているのですけれども、ほとんどの場合が政府として買い入れをせざるを得ないという状況になっております。そういうことでございますので、生産者の方々も実需者の方々もそれぞれ相手の方々の要望というものが十分つかめない状況で、過去、昭和二十七年以来推移をしてきております。  そういう意味で、これから内麦の振興を図って、実需者に喜ばれるいい麦をつくった方につきましてはその努力に報いる道を開いていこうではないか。結果的には所得がふえるという道を何とか模索したいということで、民間流通への議論をしているところでございます。  したがいまして、例えば民間流通になりました場合に二つ考えておりまして、一つは、民間流通する場合の取引価格につきましては、十年の秋に価格を決めておりますので、それをベースにしましてプラス・マイナス五%の幅の中で取引をしていただこうではないかということにいたしております。これはとりもなおさず、実需者や消費者の方々に喜ばれるいい品質の麦をつくった方につきましてはその分だけ取引価格が上がる可能性を開くということでございますので、ニーズに合った努力をされた農家の方に対する所得の拡大の道が開けるということでございます。  もちろん、それに加えまして、先ほど申し上げましたように、大幅な逆ざやになっておりますので、麦作経営安定資金をこれに加えるということによりまして別途農家の方々の所得を確保していこう、こういう形で対応いたしているところでございます。
  146. 須藤美也子

    須藤美也子君 農政改革大綱にはそういうふうに書いてあります。さらに、大豆、菜種の交付金制度の見直し、これも載っております。  こういうふうにどんどん民間に移行していく、市場原理が導入されていく、このことによって農家の経営が一層不安定なものになる。こういう状況の中で、後継者は育たない、農業経営も安定しない。だから、離農が北海道で一番ふえているのでしょう。  こういう状況の中で、私は価格をきちんと安定させる、このことが必要だと思います。労働者だって最低賃金制度が保障されています。農民にも価格の最低の保障、何をつくっても採算がとれないというのではなくて、今、米は下支えがなくなりましたが、価格保証制度を確立していく、こういうことが私は日本農業の再建にとって最も重要な問題である、こういうふうに思います。そして、生産者の生産意欲を起こしていく、こういう点で、今回の担い手、さらには離農をやめさせていくためにも、そういう農家経営安定のための施策をやるべきだ、こういうことを強く要望したいわけです。  次に、私は農業法人の問題について質問をいたします。  二十二条に「農業経営の法人化を推進するために必要な施策を講ずるものとする。」と、こういうふうにうたっています。農業経営の法人化は現在まで幾つかあると思いますが、農業法人の経営の状況についてお尋ねをいたします。  七年度、八年度、九年度、この三年間で農業法人の営業利益はどういうふうになっていますか。
  147. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 稲作主体の農業組織経営体、稲作が第一位の農業経営体でございますけれども、これの経営収支状況を農林水産省が実施しております農業組織経営体経営調査で見ますと、税引き前当期利益は平成七年が二十四万円、平成八年が二百六十五万円、平成九年が八十三万円でございます。  また、損益計算書上では費用に含まれている法人構成員に支払われた労務費、借入地地代、負債利子等を除外して個別の農家経営と比較が可能な状態に収支を持ってまいりますと、農業所得は平成七年で一千七百六十八万円、平成八年で一千九百五十二万円、平成九年で一千三百七十七万円という実態にございます。
  148. 須藤美也子

    須藤美也子君 稲作主体の法人経営体の営業利益、これは農水省からいただいた資料ですけれども、これを見ますと、七年は二百七十八万円の赤字、八年は二百十九万円の赤字、九年は四百八十九万円の赤字になっています。これでいいですか。
  149. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私が先ほどの答弁で税引き前当期利益というふうに申し上げましたのは、稲作主体の組織経営体ですと現在の状況では当然のことながら転作、生産調整に参加をいたしておりますので、営業利益ということになりますといわゆる転作奨励金等の事業外収益が含まれません。そうなりますと先生が今おっしゃったような数字になりますけれども、営業利益に転作奨励金等の事業外収益を含めた法人全体として利益を見るのが適当だろうと思いましたので、先ほどの税引き前当期利益を申し上げた次第でございます。
  150. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は営業利益について今質問をしているんです。いただいた資料では、これは間違いなく赤字です。こういう状況の中で仮に農業生産法人の株式会社が生まれた場合、一体どうなるのか。  この委員会でも株式会社導入の問題について幾つか質問されたと思います。事業要件の見直しもやる、農業と関連事業が主であればいいというもとでは、利潤を上げなければならない株式会社がより効率的な部門に傾斜していく。不採算部門の農地利用型部門の合理化が危惧されるというふうに思います。土地利用型農業から手っ取り早い事業に傾斜していくのではないか。つまり、農業者内部から生産法人の変質、農地の荒廃につながる危険が大きくなるのではないか、こういう懸念をしているんですが、その点はどうですか。
  151. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 二点申し上げたいわけです。  利潤を追求するというふうにおっしゃいましたけれども、それは現在の農業生産法人、有限会社、合資会社等々でも、やはり最終的には農業経営によって利潤を追求するというのは産業である以上大きな目的でございます。今回は株式会社が外から落下傘的に来るということを想定しているというよりも、農業内部において、経営の組織のあり方として株式会社形態によるメリット、これもたくさんあるわけなので、そのメリットをどう生かしていくかということに着目をして検討させていただいているわけでございます。  当然のことながら、先生が今おっしゃいましたように、農外からの支配であるとか偽装参入であるとか、あるいは途中で農地をほうり出して転用するとかというふうなことについては十分な防止措置が必要なわけでございます。そういうこともございまして、現在この懸念を払拭できるに足る措置について検討しております。もう間もなく成案が出るものと思われますので、その上でまた国会の場で、農地法にかかわることでございますから、御議論を賜りたいと存じます。
  152. 須藤美也子

    須藤美也子君 基本問題調査会の第十回農業部会中で、会長代理の渡辺文雄氏、栃木県の知事ですが、この方はこう言っております。商法改正は実質的には何の役目も果たさない。取締役会の承認が必要な会社であったが、実態的には大会社に株式は実質上売買されてしまい、しようがないので取締役会で認めようかという話になった。商法改正があったからといって、農業生産法人の要件を欠くことになる危険にさらされなくなったと思うのは全くの錯覚だと。第六回農業部会では、百害あって一利なしと、こういうふうに渡辺文雄氏は言っているわけです。  私は、株式会社は農業参入にそぐわない、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  153. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私も検討に参加をいたしておりまして、議事の一過程でそういう御議論があったことも事実でございます。ただ、そのときには、いかなる株式会社というものを農業生産においてイメージするかということが必ずしもきちんと固まっておりませんでした。また、株式会社が、商法上の措置だけによってそういった懸念あるいは各種の防止措置をとるのか、それともそれ以外にも構成員要件であるとか役員要件であるとか、そういうもろもろのこととあわせて措置をとるのかということもその当時においては明らかでなかったわけでございます。  いろいろ議論はございましたけれども、議論のプロセスを経まして、私どもの調査会の最終答申におきましては、株式会社一般は認めないという大原則、そして担い手の経営形態の選択肢の拡大を図る観点から地域に根差した農業者の共同体である農業生産法人の一形態としての株式会社に限り認める、その上で各種の懸念払拭措置については十分な検討を行って成案を得るということにさせていただいたわけでございます。
  154. 須藤美也子

    須藤美也子君 株式会社は株式の譲渡が常識であります。株式の譲渡あるいは転用、こういう場合はだれがチェックするんですか。
  155. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) まず、株式の問題でありますけれども、今、先生が株式は自由流通するという御指摘でございましたけれども、商法の改正によりまして、株式の譲渡についてはその譲渡に一定の制限をかけることができるというふうになっております。これをうまく使うことによりまして、例えば定款で株式の譲渡につき取締役会の承認を得る旨定められている株式会社に限るというふうな規定を置きますと、株の券面には譲渡制限というものが書かれますし、その株を受け取った方も株主総会等においてその権利を主張できないというふうな歯どめがきいております。  私どもは、そういったことを初めといたしまして、農地の権利取得に係る許可時の審査の充実あるいは農業委員会による報告徴収や立入検査、地域全体として各種の協議の場を設けて監視と指導をする、あるいは農業生産法人の要件を欠いた場合には国も含めていろいろな措置をとるというふうな、今五項目ほど申し上げましたけれども、これについて早急に結論を得たいというふうに考えているところでございます。
  156. 須藤美也子

    須藤美也子君 渡辺文雄さんは、商法二百四条は当てにならない、余り規制にならないということを調査会の中で言っているわけです。さらに、例えば転用をチェックする農業委員会の存在、これは今、地方分権でどうなっていますか。現在の農地面積よりも三倍にふやす、あるいは農地主事を義務的に置くということにならない、こういう状況の中で、転用の場合厳しく県がチェックするというふうにはなっていません。なっていると思いますか。
  157. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) このことにつきましても二つ申し上げたいと存じます。  基本問題調査会の委員からそういう指摘があったことは事実でございます。しかし、私どもは、これはやはり法律の専門家によってこの部分をきちんと詰めていただくということでございますので、法制に通暁した方々に検討をお願いしているところでございます。我々の法務省等とのお話し合いの中では、それは当然できる、日本のいわゆる株式会社の大多数が譲渡制限を有効に使っているという状況もございます。  それから、農業委員会について、地方分権とのかかわりで、必置義務やエリアの拡大ということの御指摘がございました。今、五項目、懸念払拭措置の対象ということを申し上げましたけれども、農業委員会はもちろん主役でありますが、農業委員会だけではなく、市町村や農協や農業者の方々も入った地域の協議会というふうなものを設置いたしまして、地域全体として、株式会社形態をとった農業生産法人が果たして地域に根差した活動ができるかどうか、農地を有効に利用しているかどうかということを確認したい、指導したいということでございます。
  158. 須藤美也子

    須藤美也子君 地域地域と言いますけれども、農村の集落というのは皆共同でやっています。協業でやっています。ここに株式会社が参入してもなじまない。これは一番よく農水省さんがわかっていると思うんです。それをあえてやる。しかも、このように農業が縮小しているのに、株式会社が参入しても何のメリットもないのに、なぜ株式会社の参入が今議題になっているのか、ここが私は大きな問題だと思うんです。第六回農業部会のときに、農業団体は全部株式会社参入に反対しています。賛成したのは経団連だけであります。これはおかしいじゃありませんか。  経団連はこう言っております。株式会社が農業に参入する、経団連はもう五十四年からそういう方向を打ち出しています。経団連や同友会の農業に対するいろいろな提言を読みますと、ずっと一貫しております。  日経連の永野前会長はこういうことを言っています。日本の狭い土地を農業保護という名のもとに非効率的に使っているのはけしからぬ。農地法を廃止して、余った農地を大企業が自由に使えるようにすべきだ。水田は二百七十一万ヘクタールありますが、そんなに要らない、百万ヘクタールあればいい、ここまで言っています。しかも、農業は自然につぶれるからほうっておけばいいと言う人もいる、農地法改正こそ内需拡大の突破口だと、東洋経済の中でこう述べているんです。  このことは主人公である農業団体からの要求ではなくて、むしろ経団連や財界の要望が強かったからではないか、こういうふうに私は第六回農業部会提出の資料を見て思わざるを得ないんです。しかも、この基本法案の中には株式会社の参入は出ておりません。これは農業経営の法人化を一層推進していく中で、この夏までに、もう夏になりましたけれども、この夏までに懸念する部分を払拭する、こういうことで今検討されている。しかし、その中でも、会長代理の渡辺文雄さんは、そういうのは百害あって一利なし、こういうことまで言っているわけです。  今どういう状況になっているかは結論が出た時点でまた質問させていただきたいと思いますが、そういう点では、株式会社参入の問題というのは、株式会社が農地を購入して、しかも採算がとれない、そうなった場合に大規模な農地の荒廃につながるのではないか、これが皆さん最も心配していることなんです。この点について、大臣、きっぱりと答弁していただきたいんです。
  159. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 先ほど来の御意見、御指摘につきまして、ちょっと二点だけは明確に説明をさせていただきたいんですが、法人化と並んで、何となく農業生産法人が地域農業の和を乱すというふうに、ちょっと私が誤解をしているのかもしれませんけれども、農業生産法人、実際に現地で経営をされている方々は、ほとんどと言っていいと思いますけれども、地域のために何ができるか、地域の集落営農をどう崩さないように自分たちが一緒に生きていくかということに大変な心配りをしております。  農林水産省では、つい先ごろも公益法人として農業法人の協会の設立をさせていただきましたけれども、そのときにも明確にここの会長は、地域のために私たちができる、地域と離れて法人はあり得ないということを声を大きくしておっしゃっておられました。  それから、二点目の経済界の指摘についてでございますが、これもはっきり申し上げておきたいんですけれども、私どもは規制の緩和とか撤廃という観点からこの株式会社形態の導入について検討したのではございません。あくまでも農業サイドから、農業者にとってどういうメリットがあるか、メリットと一緒に出てくる懸念についてどういうふうにそれを防止できるか。懸念が防止できればメリットの方が大きく出るわけでございますので、例えば雇用の問題、資金調達の問題、販路の問題、非常にいい点も持っているわけでございますので、欠点をなくしメリットを生かすという観点からこの問題を検討させていただいております。
  160. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、幾つか先生指摘の中で正確を期しておきたいのは、三十二回ですかにわたる基本問題調査会の議論、だれが何を言ったかということについては別にいたさなければならないと思います。ただ、そういうような発言を、個々にだれとは言わずに発言があったということについては公開を後ほどしておるわけであります。  中間報告の段階で、四点でしたか両論併記的な形の中間報告がありました。その後、私も何回か調査会に参加をさせていただきましたが、本当に自由な御意見が飛び交い、そしてその基本日本農業はいかにあるべきかという、日本農業農村あるいは食料というものを真剣に考えた議論ということが大前提になって、いろいろな意見があったということを私自身の体験としてこの場でお話をしておかなければならないと思っております。  雑誌を引用されていろいろなことを先生が今お話しになりましたけれども、とにかくいろんな御意見を最終的には全会一致という形で木村尚三郎会長のもとでまとめられたものが基本問題調査会の答申でございます。  具体的には、株式会社の議論についても、今、構造改善局長からいろいろな理由を説明しながら、極めて限定的かつ地域との整合性といいましょうか協調というものを前提にしながら、そして担い手、地域というものの農業形態の発展の形態として法人化を推進する。法人化という言葉が出ていないじゃないかという御指摘がありましたが、基本法の中にも株式会社という言葉は一つも出ていないわけでございます。二十二条でも「農業経営の法人化を推進する」、その前提としては、先ほど局長から申し述べたところでございまして、これは前回の当委員会におきましても、株式会社はそういうことによってより効率的、あるいはまた雇用や休暇の面で非常にメリットがあるのではないかという当委員会先生からの御指摘もあったことは先生も御記憶かと思います。そういう意味で、極めて限定的かつ地域あるいは農地をきちっとした形で守り発展をさせていくということでやっていくわけであります。  先生の御指摘の中で一点だけ共通するのは、効率的という言葉先生はお使いになりました。私どもも、農業をどうやってよりよいものに位置づけていくかという観点から、家族経営も含めたいろいろな農業形態をどうやってよくしていったらいいかということを効率化という一つの観点からも考えていくことが必要なのではないか、このことも大事なポイントであろうというふうに考えております。  いずれにいたしましても、現在、検討会で検討を進めておるところでありますが、先生の御懸念のないような形での株式会社という一形態をやっていくことを目指していきたいと考えております。
  161. 須藤美也子

    須藤美也子君 私も調査会の農業会議事録というのは全部読みました。これは公開しておりますから、どの委員が何を言っているかというのはわかります。それに基づいて言っているわけです、そこは時間の関係上割愛した部分もありますけれども。  いずれにしても、農業生産法人といえども株式会社化することは農地の荒廃、農業生産の縮小につながるおそれが大きい、耕作主義が失われる危険性が非常に高い、わざわざそのような道に踏み込むべきではない、検討を中止すべきだ、私はこういうふうに最後に強く要望しておきたいと思います。  そこで、残された時間、法人化の推進と同時に家族農業の強化についても触れられておりますので、家族農業について質問いたします。  先ほど認定農家について質問いたしました。今現在、認定農家は十四万、目標は三十万だと思いますけれども、経営体を抜いて。そうすると、あとの自給農家も含めて三百万人の農家は一体どうなるんですか。
  162. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 残りといいますか、その他の方々は、もう認定農業者を超えたレベルの農家がまずいらっしゃいます。その対極には自給的な農家あるいは生きがいを持って農業を行っている農家、高齢の方が多いかと思います。それから、兼業収入への依存度が大きくて農業はそれほど依存度が少ない農家という方々がおられるかと思います。  こういう方々の問題につきましては、地域農業の振興ということを考えた場合には、機関車の役割を果たすような主として農業で生きていこうという方がどうしても必要でございます。今そういう方々が認定農業者の中の主流を占めているというふうに思いますけれども、そういう方はまた同時に地域の中で生きているわけでありますから、独立して無関係に生きるというわけにもいきません。地域内におられる農業者の方々と補助労働力の提供なり地域資源の維持管理といった面でいろいろ役割分担をしながら総合的な地域農業の発展ということを目指すという形が想定されます。  具体的に言いますと、今行われておりますのは集落営農、これは具体的な運営の仕方にはさまざまなものがありますが、集落単位で集落の農家が参加しまして、その中で主たる担い手の人がリーダー格になりまして、ルールを決めて運営をしていく。そして、さらに発展をしますと、ただいま議論がありましたが、地域ぐるみで法人経営になるという形が最近目立ってきております。何も法人経営というのは落下傘的に、敵視すべきものではないということを渡辺局長から申し上げておりますけれども、地域ぐるみの法人経営というのはまさにその一つの典型例だろうと思います。そういう中で法人の構成員として位置づけられていく、あるいは法人まで行かなくても、先ほどの調査でもありましたが、そこまで行かない組織経営体というものもございます。そういった法人経営なり集落営農の組織なりに位置づけられて、そういう中で経営対策等の支援策が講じられるという姿を描いております。  いずれにしても、今一般的なことを申し上げましたが、具体的にどういう施策、対策を講ずるかという政策目的に照らしてそれぞれの農家も位置づけられるべきものだと思います。例えば、生産調整でやりますれば、これは皆さんやっていただかなくちゃいけませんから、当然、生産調整に参加する農家は奨励金の対象になるとか、そういったことが想定されるわけでございます。
  163. 須藤美也子

    須藤美也子君 私はそういうことを聞いているのじゃないですけれども、御丁寧にいろいろおっしゃっていただきました。  小規模農家も兼業農家も大規模農家も認定農家も、集落が一つになってみんな農業生産に励んでいることが実は国土を守り環境を守っているんだ、ここをきちんと押さえてもらわないと、例えば株式会社が入って採算がとれなければ行っちゃう、こういうのでなくて、長い間蓄積してきた集落の存在、生産基盤が損失しないように兼業も小規模もきちんと認定農家と同等に育成していく、こういう立場で私はやっていただきたい、そうでなければ農業の持つ多面的機能は果たせない、こういうふうに思います。  そこで、「農業と経済」の三月号で高木官房長と同じ名前のかつての高木食糧庁長官、この方がこういうことを言っております。米価が仮に一万円に下がったら兼業農家はやっていけない、しかし大規模農家も同じように苦しくなるから大規模農家は育成しよう、座談会でこういうような兼業農家には大変失礼なことを言っていると私は思います。このことに対してきょう意見を聞こうと思ったんですけれども、時間がありません。兼業農家を離農させる、つまり離農を促進させる、こういう内容のことを言っているのではないか、こういうふうに私は考えざるを得ないんです。意見があれば後でお伺いいたします。  そこで、この家族農業の問題で私はいつも取り上げるんですけれども、世界食料サミットの家族農業者サミットに私も出席しました。全中の原田会長がFAOの大会で家族農業者サミットの報告をいたしました。各国政府、サミットの宣言を実行していく上で、家族農業者及び小規模生産者を優先するよう強く要求する、いかなる食料安全保障政策も文字どおり持続可能なものであるためには家族農業者による農業の保護を中心に位置づけなければならない、こういうふうにNGOフォーラムの家族農業者サミットでの宣言を高らかに報告をしました。  この立場に立って、私は、家族農業を守っていく、家族農業を本気になって育成していく、今こそそれが大事だと思うんですが、この全中の原田さんの発言も含めて、大臣からその考えをお聞きしたい。もし、高木事務次官のそれに何か言うことがあればつけ足しても結構ですけれども、私が言いたいのは家族農業の育成の問題です。
  164. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 大臣の家族農業に対しますお答えの前に、「農業と経済」につきましての御指摘がございましたので、これにつきまして私の方から真意を御説明させていただきます。  御案内のように、これは三者によります鼎談となっておりますので、当時の高木長官の発言の前の文章をお読みいただきたいと思うのですが、その中に非常に明確に書いてあります。  これは生産者団体の関係者の方が、初めて全国共補償を導入するということの前でございましたので、非常に不安なお気持ちになっておられまして、こういうふうに発言されております。その共補償や転作につきまして、加入率が低くて生産調整の実施率も十分でなかったような場合には価格が一方的に下がり続ける。一方的に価格が下がり続けていけばまた生産調整目標をさらに拡大していかなきゃならないということから、そういうものが繰り返し繰り返し行われますと、まじめに生産調整に協力してきた人に過重な負担がかかることになるのではないかという懸念を表明されました。  それを受けて当時の食糧庁長官が、仮定の議論といたしまして、価格が下がり続けるような事態が生じた場合におきましても、例えばということで、専業農家に比べて兼業農家の方の中にはコストを余り考えなくてもいい方もおられるわけでございますが、そういう農家の方でありましても、例えば六十キロ一万円となるような水準ではコスト割れになってしまいますので、生産調整に取り組んで価格をきちんと維持しようという行動に出られるはずだ、そういうことから価格が一方的に下がり続けるような事態は起こり得ないのではないかということをここで発言しているというのが真意でございます。おっしゃいましたように、決して離農促進とかそういう観点からの議論ではなかったというふうに承知をいたしております。  なお、この答弁をするに当たりまして本人にその真意を確認したところ、今のようなことでございました。
  165. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 我が国の農業は家族経営が主体であるということは大前提であると認識をしております。また、認定農家と家族経営とは全く別物であるというようなトーンでのお話でございましたけれども、認定農家のほとんど大半は家族経営でございます。そして、もちろん規模が大きい小さい、いろいろありますけれども、少なくともなりわいとして農業をやっている方は、その土地を愛し、そして丹精込めて米なり農産物をつくっておられる、自信と誇りをお持ちになっていらっしゃると私は思っておるわけでございます。  そういう意味で、小規模であるから土地が荒れてしまうとか、あるいはまた家族経営の発展段階、担い手の発展段階としての株式会社がもうからなくなったら行っちゃうとか、そういうことは最初から決めつけることはできないと思います。我が国の伝統的な、また今後もきちっと守っていかなければいけない農業、そしてその中心をなす家族経営については、これからも農家としての誇り、農地に対する、あるいはつくっておる農作物に対する愛情というものはやはり非常に強いものがあり、そしてその気持ちを大切にし、また経営をさらによくするためにいろいろな施策を講じていかなければならないということで、この基本法を初めとするいろいろな御審議をお願いしておるところでございます。
  166. 須藤美也子

    須藤美也子君 終わります。
  167. 谷本巍

    ○谷本巍君 前回の私の質問国内生産増大問題を中心にして伺いましたので、本日は農村政策などを中心にしながら伺いたいと存じます。  その前に、遺伝子組みかえ作物問題について若干伺いたいと存じます。  去年の八月、イギリスのパズタイ教授がラットを使っての遺伝子組みかえ作物給餌実験の結果を発表されて以来、言うならばイギリスは騒然とした状況になったという話を伺っております。多くの団体がボイコット運動に乗り出す、そしてことしの四月にはネッスル英国を初めとして巨大な商社が遺伝子組みかえ農産物拒否声明をする、続いてスーパーなどもこれに同調していくといったような状況等々が生まれてまいりました。六月二十五日にはEUが環境相理事会で、この種の作物の販売許可は二〇〇二年まで事実上の凍結を意味する決定を行っております。  アメリカ側の生産状況、例えば大豆でいいますというと、去年は四〇%と伺っておりますが、ことしは何と遺伝子組みかえ作物が五〇%を超えるだろうといったような話も伺っておるところであります。そうしますと、日本は世界最大のアメリカの遺伝子組みかえ農産物のはけ場というような状況になっていくのではないかと思うのだが、その点、政府はどうお考えになっておるでしょうか。
  168. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 組みかえ農産物の貿易に関しましては、科学的に安全性が確保されるということが前提であると考えております。この面で、我が国は健康安全については厚生省、環境安全については農林水産省が担当して、安全性を確認しております。  農林水産省では、環境に対する安全性につきまして、これまでのOECD等における議論を踏まえまして、科学的な知見に基づき慎重に審査をしております。また、最近報告されたように、Bt遺伝子組みかえ植物に由来する花粉についての新しい科学的報告が出ておりますが、この報告を踏まえまして、これらの組みかえ植物の国内栽培を想定した安全性評価基準の検討に着手するなど、対応には万全を期しているところであります。  今後とも、その安全性に問題のある組みかえ作物が栽培あるいは輸入されることがないように適切に対処してまいる方針であります。
  169. 谷本巍

    ○谷本巍君 私は安全だとか不安全なんというようなことは聞いていないんです。はけ場になるんじゃないか、それに対して政府はどう対処するんだということを聞いているんです。簡潔に答えてください。
  170. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 安全性に問題のある組みかえ作物が栽培あるいは輸入されることがないように万全を期していきたいと思います。
  171. 谷本巍

    ○谷本巍君 どうもわかったようなわからないような話です。  ともかくも、この問題は次期交渉とも微妙な絡みが出てくるものと思われます。御存じのように、アメリカの二十一世紀の世界食料戦略というのは、遺伝子組みかえ種子とその食料にあるとも言われておる状況であるからであります。日本政府がこれまでコーデックス委員会などでとってきたような態度をとり続けて、日本とEUの対立的な状況などが出てきたら、これはもう次期交渉はアメリカの思うつぼということになる可能性が強いですよ。私が心配するのはそこなんです。  政府の次期農業交渉に関する文書を見てみますというと、そこに述べられていることは、遺伝子組みかえ食料の取り扱い等新たな課題については積極的な取り組みが必要だと、こう言っているんです。アメリカとEUはどっちにしたって激しく対立するという状況になっているんです。そういう中で、ここで言う積極的な取り組みというのは、一体どっちを向いての積極的な取り組みなのか、そこはどうなんですか。
  172. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 遺伝子組みかえによる技術開発が進みまして、GMO、遺伝子組みかえ作物や、これを使った食品の生産が急速に増加しております。その安全性確保、あるいは表示、それから権利保護等、多岐にわたる課題が国際的にあるわけでございます。  こういうような問題は、現行のWTO協定のさまざまな枠組みに横断的に関連する問題でありまして、現状の分析とか問題点の洗い出し、現行各協定との関係整理を多角的に検討するための適切な場を設けることが大事だというふうに考えております。  これまでGMOに関連しましては、OECD環境政策委員会とか生物多様性条約、バイオセーフティー議定書に係る会議、幾つかの国際会議においても、科学的知見に基づき遺伝子組みかえ生物による環境への影響が的確に評価される仕組みが確保されるべく対応しているところであります。  我が国といたしましては、組みかえ技術が切り開く大いなる可能性、GMOがもたらすかもしれない環境や健康への影響並びに消費者の関心、こういった三つの側面につきまして大きな関心を持っておりまして、国際関係におきましても、それらに留意した幅広い視点から総合的な取り組みが行われるように対応してまいりたいと思っております。
  173. 谷本巍

    ○谷本巍君 最後に三つの点を挙げられた。そこらのところで対応していくのかなというようなお話でございましたが、時間もありませんから先へ進ませていただきたいと存じます。  それで、この問題について最後に大臣に見解を承りたいと思うんです。これは遺伝子組みかえではありませんが、アメリカとEUのホルモン牛肉戦争の問題であります。  御存じのように、昨年のWTO裁定ではEU側が敗れました。EU側は敗れましたけれども、危険性を証明すべしということになりましたから、今は期限は切れたが、とにかくEUは検査にはあと半年必要だということで、金融補償の覚悟でやっているわけであります。  EU側は、安全の確証のないものを消費者に食べさせることはできないという考え方に基づいてやっているんだという話であります。こうした消費者を守るというしたたかな粘りと申しましょうか、これがEUにおける農業負担について消費者の同意獲得をする重要な一つのファクターをなしていますよという話を聞きます。私もそうだろうと思います。  やっぱりこのEUの姿勢は日本も学んでいかなきゃなりません。学んでいくということがこれからの日本農業消費者の間の距離というのを詰めていく道になっていくのではないか、私はそう考えるんだが、大臣、どうお考えでしょうか。  これが一つであります。  それからもう一つ、この際伺っておきたいと思いますのは、当面少なくとも遺伝子組みかえ食品の表示については消費者の選択権があるわけでありますから、そして多くの消費者団体は表示を明確にしてほしいということを言っておるわけでありますから、それにひとつ対応していただきたい、これが二つ目であります。  最後にもう一つ、大臣は今月の中旬に五カ国農相会議に出かけられます。既に、この遺伝子組みかえ問題についてはアメリカがフランスの閣僚級との間で話し合いをしたいといったような動き等々が出ておるわけでありますから、当然これは話題として出てくるであろうというふうに思われます。どんな考え方で対処していかれるか、その辺のお考えがありましたら一緒に承りたい。  以上であります。
  174. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、GMO食品とホルモン牛肉の問題は、我が国にとって議論そのものが参考になるといいましょうか、我が国がこれからどういうやり方をしていくかという意味で非常に注目をしておるところであります。  まず、安全性というものが大前提にあることは言うまでもないわけでございます。また、先生の二つ目の御質問の方に飛んでしまいますけれども、消費者に対する表示の問題というものも、消費者立場あるいはまた我々の一つのこれからの農政のあるべき姿としても、この基本法の中にもありますように非常に大事な視点だろうと考えております。  一方、アメリカとEUのいろいろのやりとりを見ておりますと、やはりアメリカの広い意味での国家戦略みたいなものも私自身感じざるを得ないわけでございますし、またEUにはEUの輸入国側としての戦略みたいなものもあるというふうに考えております。  そういう意味で、このGMOあるいはホルモン戦争につきまして我が国としてどういう立場をとるかということにつきましては、まず専門家による安全性の確認というものを徹底的に追求していかなければならないということで、先ほどから技術会議局長答弁をさせていただいておるところでございます。また、表示の問題につきましては、これは何回も答弁しておるところでございますが、検討会での議論、パブリックコメント、そしてもうそろそろ検討会自身が結論をお出しいただく時期に来ているというふうに考えております。最終的には、検討会の結論を参考にしながら、農林省として、あるいは私自身がどういう結論にしていくかということについて判断をしなければいけない時期だと思いますが、今の時点では、間もなくその取りまとめが出るということでございますので、表示につきましての私の考え方は、大変申しわけございませんけれども、検討会の取りまとめを待って最終的な判断を先生あるいは当委員会にお示ししたいと思います。  なお、五カ国農相会議は、率直に申し上げてEUを別にした三カ国はいわゆる食料純輸出国でございます。アメリカ、カナダ等はGMOあるいはホルモンに対して非常に輸出に積極的というか輸出国でございまして、そういう意味で純輸入国は我が国だけでございますし、EUは輸出と輸入と両方あるということで、交渉自体輸出国との激しい議論になっていくのではないか。それに対して、WTOあるいはまたAPEC等の議論の一つの前哨戦的な意味もあるわけでございます。このGMOの問題につきましても、その表示の時期とのかかわりもありますけれども、我が国の立場というものをきちっと表明していく。  今の段階で申し上げられるのは、安全性と輸入国の立場というものが大前提であるということを基本にして会談に臨みたいと考えております。
  175. 谷本巍

    ○谷本巍君 安全性と輸入国としての立場大前提になるという、最後の締めくくりの話がそういうことでありますので、大体の見当がつきました。ありがとうございました。  次に、農村政策について、まず最初に大臣に伺いたいのであります。  新法案農業だけじゃなくて食料もくっつけました。農村もくっつけました。これは私は大変いいことではないかと思うんです。そして、農村を加えたことについては提案理由説明の中では次のように述べております。「国家社会における農業農村の位置づけなど食料農業農村政策に関する基本理念の明確化と政策の再構築を行わなければなりません。」、基本理念の明確化と政策の再構築をやるということをはっきり言っているわけです。  そこで、法第五条を見てみますというと、農業の持続的発展の基盤たる役割として農産物の供給、多面的機能が発揮されるよう条件整備がされていかなければなりません、こう言っているんです。どうもこれは役割規定であって、農村政策に関する基本理念とは少々次元が違うのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  176. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 四つ理念ということでございますが、私自身も何回か答弁申し上げておりますように、国民あるいはまた生産者生産地域にとって一番ポイントとなるのは二条と三条であります。  国民に安定的な食料供給すること、あるいは農業農村の果たす多面的な役割、これが消費者あるいは生産者にとって決定的に大事なことであるという二つの理念、その二つの理念実現するといいましょうか、より確固たるものにするために必要不可欠な理念として農業の持続的な発展と農村の振興という理念四つ並んでおるわけでございます。その農村の振興なり農業の持続的発展ということは、まさに先生がおっしゃるように、ある意味では二条、三条と同列と言っていいかどうか、私自身もはっきり同列だと申し上げられない、若干性格の違うものを理念として四つ並べておるわけでございます。つまり、二条、三条の理念を全うするためにはどうしても四条、五条が必要だというふうな位置づけとして私は理解をしております。
  177. 谷本巍

    ○谷本巍君 食料供給と多面的機能の発揮、そこを軸とした理念というお話でありますけれども、私はそれだけじゃないと思うんです。  例えば、現行基本法がつくられるときに盛んに強調されたものは、農村というのは民族の苗代だということが当時強調されました。これは、経済が成長して、それでもって農村から今度は外へ出ていく人がふえてくる、そこで規模拡大をやっていきましょうといったような発想等々があってそうした問題強調がされてきたわけであります。  ところが、今度は状況は逆になりましたね。そういうふうにして大きくなった企業は、今度は多国籍化して外へ出ていく時代になってきた。土地にへばりついて外へ出ていくことができない産業農業がそこで見直されるようになってきた。その現象として最近顕著なのは、定年退職して農業をやる、それからUターン組もふえてきた。ここのところは、言うならば急増的状況ですね。  ですから、そういう意味で見てみますというと、どうやら農村社会というのは日本国社会の安定装置としての意味合いをやっぱり持っているということが一つ私は強調されてよいと思うんです。  そして、農村は、欧米と全く違うのは、総合市場的共生型社会というのをつくり上げてきた。これは水田農業が特にそういう状況というのをつくり上げてきているわけでありますが、そうした農村社会のありようというのが環境型農業の時代に入って一つの特徴として生かすことができるような時代を迎えてきているということが強調されてよいだろうと。  さらに、余りいい例じゃないかもしれませんが、欧米の皆さんが東京へ来られて驚くのは、治安が非常にいいということですね。それはそうですよ。欧米は夜中ひとり歩きできる大都市というのは少ないですよ。これは東京だったら、新宿にしたって六本木にしたって夜の夜中まで人が出ているが、犯罪はほとんど起こらない。アメリカの皆さんに言わせるというと、アメリカ民主主義のふるさとである家族農業を早くつぶしたところとそうでないところの違いだなという話が比較的多いですよ。  それにまた、他産業の分野で申し上げますというと、これは前の調査会の会長さんがよく言っていらっしゃいますが、日本の中小企業の技術水準の高さというのは、日本の小農技術の水準の高さが基礎にあってそういうものが実現されてきたと。日本の中小企業が競争力を持ったのはそれだけじゃないですね。  もう一つの問題は、大企業の何というか縦型の系列とは違って横型のネットワーク形成のうまさ、業者からの協力のうまさ、これが非常に日本の中小企業の競争力を強めたもう一つのゆえんでありました。どこから出てきたか、これは農村型社会の発想ですよ。  だから、そういうふうにして見てみますと、こうした問題というのは私はもっと積極的にうたい上げられていいのではないのかと。残念ながら前文がありませんでしたからそうした議論もほとんどなされないままに案ができ上がってしまったという点、僕は非常に残念だと思うのですが、大臣、その辺何かお考えがありましたらお聞かせいただけますか。
  178. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まさに、先生指摘のとおり、これは日本だけじゃないのでしょうけれども、いわゆる都市というのは消費の世界であって、そして何かあると農村から人が出てくる。我が国でいえば、鎌倉武士が一朝何かあるときには近くの農村から兵隊を集めてとか、あるいは戦国時代とか、そういう時代が日本だけではなくあったんだろうというふうに思います。  そして、それは戦後の高度経済成長時代には、兵隊としてではなくて、今度は産業化の中の労働力としてやはり農村から人材が出ていった。しかも、先生指摘のとおり、日本を支えておる中小企業の技術水準が高いということは人のレベルが高いということで、やはり農村社会の人材というものが日本の高度経済社会を支えた一つの大きな原因ではないかと私自身日ごろ思っておるわけでございます。  現在は不景気ということもありますし、産業の空洞化という御指摘もありました。また、午前中にはテレワークというような御議論もありましたが、むしろ都会のジャングルの中よりも自然に親しみながら若い人でもパソコンと電話線とで仕事をしたいとか、あるいはまた農業そのものに入っていきたいというような方々も結構私の周りには、仕事柄かもしれませんけれども、いらっしゃるわけでございまして、そういう意味で、農村の位置づけというのは、まさにこういう二十一世紀を迎えようとしている時代の新たなニーズとしての位置づけというものが出てきたのではないかというふうに考えております。これは、成熟社会あるいはまた情報インフラの整備というものが、あるいは交通網の整備とか、そういう基礎的なものが充実されたことも一因だと思います。そういうことで、農村の果たす役割が変わってきたという先生の御指摘はまさにそのとおりだろうと思います。  また、そこにはっきりとした理念が入っていないのではないかという御指摘も、その御趣旨はよくわかるところでございますが、そこはまさに農業農村の果たす多面的機能というところで、それによって自然環境とか景観とか、そういう空間で暮らすことによって、現代人と言ったらちょっと語弊があるかもしれぬけれども、そういう人たちの生きがいといいましょうか、どういうお仕事をされるかは別にいたしまして、大事なことではないかという先生の御趣旨に私も同感でございますので、多面的機能の中で読んでいきたいし、いかなければならない。  また、「人材の育成及び確保」という二十五条がございますけれども、農業に関する教育の振興等で、次代を担う子供たちが自然に親しみながら成人をしていくということの役割というものも大きいという意味で、農村の果たす役割は新時代の中で新しいニーズといいましょうか使命というものがあるのではないかというふうに考えて、条文上は先生の御期待に沿うようなはっきりとしたものはございませんけれども、趣旨としては十分あるというふうに理解をしております。
  179. 谷本巍

    ○谷本巍君 ありがとうございました。  そこで伺いたいのは、農村政策地域経済に関する問題であります。  これまでの農業近代化というのは端的に申し上げますというと単作・専作型で、化学肥料や農薬、そして大型機械で低コスト化への規模拡大を進める、そして主産地形成化をやっていくというようなところが基本に据えられておりました。  規模拡大が進んだ北海道は別として申し上げますというと、この構造改善事業が行われた当初でいいますというと、東北、北陸、そして九州などからは一挙に出稼ぎ者が出ました。機械化貧乏ですよ、これは。では、規模拡大が進んだ北海道はどうだったんだと。特に顕著だったのは、畑作それから畜産であります。規模拡大が進んだところは農家戸数が減って地域社会の維持が非常に難しくなってきた。過疎的現象が出てくるというような状況が見られました。  やっぱりここで考えていかなきゃならぬのは、加工や流通も捨てて原料生産の基地化に徹してしまったというところが少なくないのでありますが、そういうことの帰結は、どうやら農村経済の地盤沈下につながったのではないかというふうに私は思います。  例えば、現行基本法が制定された昭和三十六年現在で申し上げますというと、最終消費者が支払った代価のうち、農家が受け取っていたのは四一%でありました。最近はどうなのか。これは統計のとり方によりますけれども、二〇%前後というようなことで、半減の状況になってきております。この点、私は反省を要する点ではないのかと思うのだが、当局はどうお考えでしょうか。
  180. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 現在の基本法におきましては、農産物の流通、加工の合理化ということは掲げておりますが、必ずしも流通、加工の加わった部分のいわば価値というものが地元に落ちるという点については、あるいは地元でリザーブするという点では、今、先生が原料生産の基地化という言葉で言われましたが、原料生産としては確かにある程度発達したけれども、その付加価値なりが地元でつくという点については、かつては少なかったと思います。  ようやく最近になってといいますか、比較的最近になって、よく一次産業だけじゃなくて二次、三次も入れた六次産業まで起こさなきゃいかぬというような町おこし、村おこしのときに言われるようなことが出てまいりまして、農業者自身あるいは農業者団体が生産から流通、加工、さらにはサービス部門まで進出をして地元にその価値をリザーブする、こういう動きが出てきたと思います。どちらかというと、当初はいわば合理的になればいいというか、それで足りるというか、そういう意識が強くて、十分に地元へのリザーブという意識が足りなかったと思いますが、最近若干各地域から地元の声としてそういう取り組みが進んできたのではないかというふうに思っております。
  181. 谷本巍

    ○谷本巍君 そんな状況の中で単品大量生産、広域流通から外れた地域を中心にして、需給の社会化とも言われる直売市、それから産直等々が盛んになってまいりました。この伸びが非常にまだ続いています。大変な伸びです。  生産の特徴は大産地の逆です。少量多品目生産、そして複合生産、そして環境型の農業だということであります。担い手も違う。大産地とは違いまして、高齢者と御婦人が中心だといったような特徴がございます。  新法の精神からしますと、農村政策も含めてどういうふうにこれを評価されるか、その点の考え方はどうなんでしょうか。
  182. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 今、先生指摘がありましたように、流通につきましては二つの動きといいますか、動向があるわけでございまして、一つは保冷技術の高度化なり高速道路網の発達、あるいは川下におきます量販店の進出等を背景としまして広域流通化が進展している。一方において、今、先生が言われましたように、より鮮度の高いもの、あるいは有機農産物等のこだわり商品、あるいは生産者の顔の見える商品、そういうものを求める消費者の意向を反映しまして、朝市なりあるいは産直の販売等の取り組みが広がっているところでございます。  こうした流通経路の多元化は、多様化する消費者ニーズに的確にこたえるということ、また農業者の所得安定、あるいは国産農産物の需要確保に寄与するわけでございまして、また農村の活性化なり国民農業農村への理解、関心を高めるという効果も期待できるわけでございます。  したがいまして、今後の農産物の流通につきましては、今申し上げましたような大都市消費者向けの多種多様かつ大量の農林水産物の広域的な卸売市場流通と、それから産直などの生産者消費者が個々に結びついていきます流通、この二つの流通形態が共存し、相互に補完することが望ましいというふうに考えておりまして、今後ともそうした考え方に沿って施策を展開してまいりたいというふうに考えております。
  183. 谷本巍

    ○谷本巍君 食品流通局長としての答弁であればそれで及第点ということなんでしょうけれども、私は、流通上の問題だけじゃなくて、もう一つは農村政策という立場から見てどうなのか、この評価問題があると思うんです。  この種の問題に取り組んでいる地域で聞いた話を少々まとめながら申し上げますというと、一つは病院通いの年寄りの数が減りましたと、この話は大体共通しています。それは好きなことで体を使うんですから元気になります。それにまた頭を使うからぼけだって少なくなります。ですから、市町村長さんの間には、これで医療費が軽減できる可能性が出てきましたという声も聞いたことがあります。  それから二つ目の声は、地域農業という意味で申し上げますというと、耕作放棄地が減りました、これはえらいことですと。病害虫の巣になっていたようなところがうまく整理されてなくなってきましたからねという声が結構多いです。それにまた、年寄りと御婦人が頑張り出すと若い人が頑張り出す、これは各地とも大体共通しております。ここのところがもう一つの注目点だと私は思います。  それから三つ目は、地域社会の問題でいいますというと、こういう問題を契機にして、村の中の人と人との結び合いといいましょうか交わりといいましょうか、なくなっていたものが復活できました、だからあの地域では盆踊りが復活しましたというような話等々を聞くようになりました。  それに、さらに年金プラスアルファ、やっぱり地場経済への貢献度が少々は出てくるんだといったような感想が多いのであります。市町村長さんがかけた金といえば運搬手段、これは助成しなきゃやれません。それから場所の提供です。それは金に換算できぬものも含めてプラス・マイナスでいえば、大きなプラスですというのがほぼ共通しております。確かに、個々の生産で見てみますというと、高コストのものは多いです。高コストのものは多いですけれども、農村社会や生活の原理から見るとトータルでぴしっとつじつまが合っています。だから、私はここのところを注目してほしいと思うんですよ。  確かに、大量生産、広域流通の流れが都市へのこの種の食料供給の流れになっておりますけれども、住民と結びついた地域流通を重視しませんと、地域の中の循環、農村社会の活性化、これは生まれてまいりません。  そういう意味合いから、つまり農村対策という点からすると、私はこの種の動きというのは積極的に評価されてよいのではないかと思うんです。これはいかがでしょうか。
  184. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生お話のきっかけが、産直とか少量多品種が伸びていますねというところからスタートをしたわけでございますけれども、それが結果的に農村社会に住む人々、あるいは農村空間全体が非常にいい意味で、経済的な側面だけではなく、非経済的な面でも大変にいい効果を与えておられるという実際に先生がお聞きになったお話、大変今興味深く伺わせていただきました。そういう意味で申し上げますと、先ほど私が答弁したことと逆になるのでありますけれども、消費者ニーズにこたえられるようなものをつくっていくことによって、逆に農村の多面的な機能がプラスになっていくと。さっきの論理と今度は逆になるような感じであります。ですから、先ほど、二条から五条までが一体的ではありますけれども若干意味合いが違いますと申し上げたのと逆の意味で、また同じようなことを申し上げることになって大変恐縮でございますが、先生お話を伺って、やはり農村の持続的な発展なり、国民全体あるいはそこに住んでいる人たちの伝統文化、あるいは健康も含めたいわゆる多面的な機能を果たすためにも、やはり先生がおっしゃった共生といいましょうか、消費者国民生産者の間の共生関係というものが多面的機能あるいは農村の維持、発展に貢献するという大変有意義なお話を伺ったようで、冒頭の発言を若干修正した形に今後していかなきゃいけないなと今思っているところでございます。
  185. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、流通、加工の問題について伺いたかったのでありますが、既に官房長が先に答えてくださいました。官房長お答えしたさっきの話の中にありましたから、簡潔に済ませたいと思います。  もう一つお考えいただきたいのは、かつての農村社会における物の加工、農産物を原料とした加工というのは、地域社会の求心力というか活力というか、人と人とを結びつけるという意味で重要な意味を持っていました。それが今解体も同然の状況になってしまったということであります。ですから、一つは付加価値の問題だけじゃなくて、古い話でいいますというと、もちつきだとかみそづくりを集落の人が集まってやる。これは人と人とを結合する、地域社会の形成力につながっていたんです。  先ほど官房長が言われた六次産業というお話がありましたけれども、その種の取り組みをやっているところは見事に地域社会が復活しているんです。地域社会が活力を持つようになってきているんです。ですから、この加工、流通の問題というのは、決して経済主義だけじゃなくて、活力のある農村社会をつくり上げていく上で社会形成力として実に重要な意味合いを持っているというぐあいに私は思うんです。官房長、その点いかがでしょうか。
  186. 高木賢

    政府委員(高木賢君) まさに、加工を地域社会の活力の求心力としている地域は現在相当数見られると思います。今、先生おっしゃったことに加えさせていただきますと、やはり地場の農産物を地場できちんと消費するという道、それから大量流通に乗り切らない規格外のものも地場では使い得るというメリットもあると思います。  それから、先ほどのというか大分前の議論ですけれども、女性の活性化という点でも、やはり地場の農産物を使った加工を中心として業を起こす、グループとして起こす。さらに進みますと、会社まで建てて女の人が社長をやっている会社もありますけれども、そういった女性の活躍の場、さらには高齢の方の知恵を生かす場という面もあろうかと思います。  そういう意味で、何が起爆力になるかという点につきましては十分な分析が必要かと思いますけれども、うまくいった暁には、地域社会の活力でもあり、人の面でもあるいは地場の農産物の有効活用という面でも、いろんな意味で総合的に地域の活性化の源になるといいますか基盤になる、そういうものであろうと思います。
  187. 谷本巍

    ○谷本巍君 もう一つ私の方からつけ加えておきますというと、地域性、地域の特徴、それから気候風土、これをうまく生かしたものだったらいいんです。だから、どこでも同じようなものをつくるというのは必ず失敗する。この辺のところが私は重要な点ではないかということをつけ加えて申し上げておきたいと存じます。  さてそこで、大臣に伺いたいのでありますけれども、多様な産業構造を持つ地域づくり、これをひとつ進めるべきではないかということを提起したいのであります。  先ほども官房長が、生産、加工、流通も含めた農業の六次産業化と、人呼んで総合産業化ということを言っておられる人もありますけれども、そういうことへの着目と同時に、それを基礎としたいろいろなものを積み上げていくということが大事だろうと思うんです。  例えば、自然エネルギー開発もその一つの課題にこれからなっていくでしょう。宮崎県では畜産ふん尿を活用した電力開発の仕事を始めている。それから、大臣の地元の北海道では風力発電に取り組もうと準備していますなんという話もちょいちょい出てくるようになってまいりました。  何といいましても、オリジナルエネルギーを輸送で大部分失ってしまうという今のような大規模集中型電力システムというのはこれは長続きしません。何といっても、これから注目していかなきゃならぬのは分散型システムだろうと思います。そして、その種の取り組みがヨーロッパなどでも成功している例があるわけでありますから、そうした取り組みを可能とする政策整備ということにこれから取り組んでいくべきだろうと思います。それから、この後提起をしたいと思いますグリーンツーリズムの問題、そしてもう一つは高齢化社会に見合う福祉、そして介護と年金、つまり雇用と生活保障といったようなものをうまく組み合わせていくということが大事になってきているんじゃないのか、こう思います。  これは大臣にも前にちょっと申し上げましたけれども、どうもこれからの世界の行き方というのは、既にアメリカは物づくりよりも金融市場の経済になった。どうやら日本もその後追いをするのかなというような感じも少なくないのでありますが、そういう経済体制になればなるほど巨大都市中心型の経済になっていきます。これはやっぱり地方をどう守っていくかということは、そういう意味でも今から考えていかなきゃならない問題ではないのか。  さらにまた、これから大臣に御苦労願わなきゃならぬWTO交渉にしましても、公共事業への外国資本の参入を保障しろといったような問題提起等々が出ているわけです。これは大臣も御存じのように、OECDで多国間投資協定、あそこに示された考え方、多国間投資協定はフランスなどの反対で棚上げになりましたけれども、今度はWTOの舞台でもってやっていかなきゃなりません。その手始めに出てきているのがいわゆる公共事業への外国資本の参入というふうに私は見ます。そういうような多国籍企業主導型の国際化というのが進めば進むほど、これはやっぱり巨大都市集中型になっていくんです。  そういう意味では、自立型の地方経済というのをどう確立するか、これは今から私は考えていかなきゃならない課題だろうと思う。国連の中にもその種の議論があるんです。それだけに、多面的な産業構造を持った農村社会の建設ということについてひとつ考えていただけないかということを提起したいのですが、いかがでしょうか。
  188. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、先生からも御指摘がありましたように、自然あるいはまた生き物、そしてそこに住む人々の伝統、歴史といったものを前提として、そこでの一つの経済的要因だけではなく、今、福祉とかいろいろな御指摘がございました。まさに、アメリカのような広い国家も、日本のように一極集中あるいは三極集中ではなくて、シリコンバレーとかワシントン州のような地域が今非常に活力があるというふうに言われておりますけれども、やはりアメリカが、先生指摘の情報なり金融なりそして食料といったものがそれぞれの特色を生かして、結果的に世界のトップの位置にあるということだろうと思います。  日本は、アメリカとは随分与件が違います。逆に、国土としては狭いわけですけれども、自然条件もまた歴史、伝統も非常に多様なものがあるわけでございます。単に地方分権というと、言葉としてはよく使われますけれども、地方が、先生のお言葉をかりれば自立した自主的なもの、何をやっていくかということについて、逆に上からこうすべきだということを、先生は豊富な経験と洞察でいろいろな例を挙げました。少なくとも私のような者からは、こうすべきだというよりもむしろこういうものがあるからひとつバックアップしてもらいたいというものに対して、いろんな政策や施策を通じましていかにバックアップしていける体制をつくっていくかということがこれから一つのポイント、あるいは我々のやるべき仕事のウエートが高くなっていくのじゃないのかなというふうに思います。  そういう意味で、こうすべきだということが申し上げられないのが自分自身歯がゆいわけでありますけれども、先生がおっしゃられたようないろんな例につきまして、農林水産省だけではなく中央政府が一体何がお手伝いできるか、何が結果的に地域の人やあるいはまた農業を中心とする産業や暮らしにお役に立てるかということについてこれから考えていく、そのバックアップの仕方を含めて、文字どおり多面性を生かしながら自立性を伸ばしていくようなお手伝いの方法というのを考えていくことが大事なのではないかということを今、先生お話を伺いながら感じたところでございます。
  189. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に伺いたいのは、グリーンツーリズムの問題であります。  先ほどの問題にしましても、私は、大臣は政治家ですから農林水産を担当している政治家として考え方を聞かせていただきたいという意味で申し上げておるのですが、グリーンツーリズムの問題についても似たような点でございますので、あらかじめ申し上げておきたいと存じます。  グリーンツーリズム問題は、一つの問題としては、やっぱり私は日本の景気回復にとって非常に大事な意味を持っているのではないのかというふうに思います。例えば、ことしのことで申し上げますというと、三連休が二つ新たにふえました。業界の皆さんに伺いますというと、三連休が二つふえたことによって初年度は八千百億の経済の動きが出てまいります。そして、その後は平均的にいって五千二百億前後の経済効果が出てくるだろうという話を伺いました。これは観光客が動くと潤うのは旅館だけじゃないんですね。考えてみますというと、波及効果はまことにもって広範ですよ。  今の日本国民所得も、外国と同じように生活必需消費へ向けられるのは五〇%以下であります。選択消費の部分が五〇%を上回るという状況であります。ですから、ヨーロッパなどの先進国の景気対策を見てみますというと、日本のようなあり方と違って第三次産業傾斜型ですね。これは、国民皆さんが生活必需以外の支出というのはどうしてもらうかという、そこからの発想が出ているものと思われます。  日本でもグリーンツーリズムが言われて久しくなるのでありますが、その辺の問題点をどうとらえておられるか、そして今後どう対処していかれるか。これは大臣でなくても構いません。担当の方ひとつ答えていただけますか。
  190. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 今、先生が御指摘ありましたように、国民サイドからも都市と農村の交流、グリーンツーリズムに対するニーズは非常に高まってきております。それと同時に、おっしゃいましたように、先ほどの多様な産業構造と相共通するものがあるわけですけれども、農村サイドにとってみれば、やはり就業なり所得の機会をそこでふやすことができるという地域の活性化に重要な問題でございます。  優良な事例が各地にふえてきておりますけれども、私自身は全体としてはまだいま一つというふうに思っております。それは都市サイドと農村サイドにそれぞれ理由がございまして、都市サイドでは、今おっしゃられたように祝日三連休というものもありますけれども、まだまだ長期に休暇をとるという習慣が定着をしていないという点がございます。小中学校も間もなく週休二日ということになりますので、そういうことが促進の材料になるのかなと思っております。  それから、受け入れ側も、やはりこれまでの民宿、旅館、ホテルというふうなことにのみ目が向いておりまして、ワンセットで何でもみずからの特徴を生かさずにやるというふうな経営になっております。いわば農村農家の特長を生かしたグリーンツーリズムというノウハウがまだ確立をされていないという問題がございます。  私の方ではいろいろソフト、ハードを含めて支援もいたしますけれども、もう少しそういった双方の成熟についてPRをするなり、一定の例えば指導ができるような方々をつくっていくとか、そういったようなことでグリーンツーリズムの推進をしたいと考えております。
  191. 谷本巍

    ○谷本巍君 私は、去年の秋モスクワで行われましたIPUの会合の帰りにイギリスの農業漁業省を訪ねまして、グリーンツーリズムの話をいろいろと半日かかって聞いてまいりました。  日本との一番の違いというのは、日本には長期滞在がない。今、局長がおっしゃられたとおりでしょう。これは休暇がとれないためです。ですから、滞在型の需要が出てこない。出てこないから現在の状況というのは、若い人や学生、それから超短期型の温泉旅行、こういうところが主流になって、そこから抜け出すことができないというような状況が続いているわけですね。やっぱり子持ちの家族が家族ぐるみで長期滞在ができるような状況というのをどうつくっていくのか、ここのところが私一番問題だろうと思うんです。  その意味で一番ネックになっているのは何かといいますというと、ILO百三十二号の条約批准、これが日本はされていないです。今、先進国では日本とアメリカぐらいじゃないですか、批准していないのは。これはよく調べてみていただきたいと思いますが、私の記憶ではそんなところであります。ですから、ここのところを批准をやって、きちっとやっぱり長期的な休暇がとれるような状況をどうつくるか、これが第一の課題ではないか。  それから二つ目の課題になってくるのは、EUのように政府、自治体が本格的にバックアップをするというふうにしたら、日本の場合も大きく事態は変わっていくだろうというふうに思われるということであります。長期休暇がとれますというと子持ち家族が動き出す、そして都市生活費プラスアルファぐらいで滞在できるような条件整備が出てきますというと、うんと状況というのは私は違っていくのではないかと思います。ただ問題は、株式会社進出型ではなくて地域コントロール型でやれるような体制をこっちがつくらないというと、これは何の意味もなくなってきます。  そして、もう一つ考えていかなきゃならぬのは、やっぱり多様な変化に富んだ日本の自然的条件をどう生かしていくか、そこをどう武器にするかということがもう一つの問題だろうと思います。景色や文化や芸能ということになっていくわけですが、それぞれの地域に何といいましょうか、掘り起こせばいっぱい日本の場合にはある。この点はイギリスの比じゃないなというのが私の印象であります。そして、例えば流域ごとにサミットをやればいいんです。みんなが同じものをやらないで、別々なものをやっていく。専門店が五つ六つ集まればこれはデパートになるんですから、方法さえよければうまくやっていける。問題はILO百三十二号条約の批准だと。  そしてもう一つ、イギリスと違うのは、日本農村婦人が余りにも忙し過ぎる。イギリスの場合には、規模拡大を一気呵成にやったときに、大分農村婦人の暇な時間がとれるようになってきた。そして、農業労働者はもう要らなくなってきた。そういう中で、農業労働者が寝泊まりしたところを少々改造すれば町からの人を歓迎することができるといったような点があってうまくいったという話も聞いてまいりました。  ともかくも私は条件があると思うんです。だから、その条件を物にしていくのには、農村婦人の忙しさをどう解決するかという問題とともに、ILO百三十二号の批准というところが突破口になっていくんじゃないのかというふうに思うのですが、その点、大臣、いかがでしょうか。
  192. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほど先生からお話がありましたように、去年三連休で景気対策も視点にあったと記憶しておりますけれども、農村で休暇をといいましょうか、そういう形の目的も含めて成人の日ともう一つ何でしたか、三連休にくっつけちゃおうということをやったわけであります。  まさに、日本でグーリンツーリズムがまだ未成熟なのは、先生あるいは渡辺局長から話があったように、歴史も浅いんでしょうけれども、行く側、受け入れ側双方にまだまだ障害がある。  私も先日、フランスの農家民宿で実際に昼食事をし、また施設をずっと見てまいりましたけれども、本当に小ぎれいで料理も大変おいしいですし、またガイドブックがイギリス、フランスとも大変充実をしておりまして、どこどこにどういうものがあって、近くには釣りができてゴルフができて乗馬ができてというふうに、きめ細かくできた辞典のようなものがある。日本にも何か農林省の方にノウハウがあるそうですけれども、何年か前のパンフレットか何かが一応一まとまりになっているみたいな話で、まだまだお互いに成熟していないなというふうに思います。  それから、先生指摘のように、やっぱり農村における女性が大変労働力として重要性があるということは、男性、女性どちらでもいいんですけれども、とにかく一人でやらずに二人で、あるいは息子さんも含めて数人で農業に従事しなきゃいけないという現状を、特に御婦人の立場からは何とか労働の軽減ができないかということを先ほども申し上げたところでありまして、問題点の認識については全く同じであり、さあそれを解決して日本もグリーンツーリズムによって、特に家族、特にお子さんがそういう体験をすることの効果というのは将来的に非常に大きいものがあると私は思いますので、その辺をまた先生にも御指導をいただきながら、グリーンツーリズムの活性化というか充実に努力をしていかなければならないというふうに思っております。
  193. 谷本巍

    ○谷本巍君 終わります。ありがとうございました。
  194. 石井一二

    ○石井一二君 石井でございます。  本来なら阿曽田議員の順番でございますが、ちょっとスケジュールの関係で同議員の御好意によりまして先に質問をさせていただいております。どうもありがとうございます。  さて、新農業基本法もいよいよ制定間近というような状態になりつつあるようでございます。現在の農業基本法が制定された一九六〇年時代を見てみますと、たしか農家数は六百六万戸という数字があったわけでありますが、今や大体三百三十万戸ぐらいに減少いたしておりますし、また農業就業人口も一千百九十六万人から大体三百三十万人前後という大変な激減ぶりでございます。また、この農業就業人口三百三十万人のうち六十五歳以上が四五%を占めるという高齢化も深刻になってまいり、昭和一けた台という者がリタイアした後一体どうなるかというような大きな心配事もあるわけであります。  片や、食料自給率は七九%から四一%に低下をいたしておりまして、これは先進国の中では最低だということであり、耕地面積もいろんな理由で六百七万ヘクタールから五百万ヘクタールそこそこというぐあいに減少してまいりました。  こういった中で、新しい法律の改正が必要なのかなとも思うわけでありますが、中川大臣答弁をいつも聞いておりますと、もう新法ができないとやっていけないんだ、旧法ではだめなんだ、こういう御表現もあるわけですが、だめなんだということは、餓死者が出るとか米騒動が起きるとか、非常に平易な国民的な表現で、どこがだめなんですか、その辺のちょっと御感想をお聞かせいただきたいと思います。
  195. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 一言で申し上げますならば、今回の基本法案の名称にもありますように、食料というものに関係のない人はいないわけでございまして、そういう意味で、食料国内生産基本とした安定供給、あるいはすべての国民にこれまた関係の深いであろう農村空間の役割というものを国民的な理解合意のもとでやっていかなければならない。そのためには、国民理解あるいは子供たち理解、そして都市と農村との共生といった今までの基本法では想定していなかった幾つかの理念を改めて立てまして、そして国民的な合意のもとで食料あるいは農業農村のなりわい、そしてまた空間というものを発展させていこうということが必要な時期になってきたというふうに考えております。
  196. 石井一二

    ○石井一二君 おっしゃることはごもっともですが、それであれば今のままの法律でも私はやっていける、そのように感じるわけでありまして、だからといって新法に反対するという立場でもありませんが、一応指摘をしておきたいと思ったわけであります。  さて、総理府が食料農業農村の役割に関する世論調査というのを平成九年一月に公表いたしております。それを見ておりますと、国民の関心度というものは、一番高いのが、農薬の使用量を減らすなど安全な食料供給することというのが五二・八%。できるだけ安定的に食料供給することというのが二番目、これが四八・一%。輸入に頼らないでよいようにより多くの食料を生産することというのが四四・六%で三番目。生産コストを引き下げ、より安い食料供給することというのが四三・二%で四番目。五番目が、味や新鮮さなど品質のよい食料供給することで四〇・四%というように、以下いろいろまだほかにもございますが、続いておるわけであります。  こういった国民の要求というものを背景にして、今回の法案では「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。」という表現を使っておられるわけでありますが、この「合理的な価格」というのは何を指すのか。特に、国際的に日本の農産物の価格が飛び抜けて高い、こういった中で、「合理的な」という表現を使われたこのあたりの背景なり解釈論について、所信があれば御披瀝をいただきたいと思います。
  197. 高木賢

    政府委員(高木賢君) ただいま御指摘がございましたように、世論調査におきましては安定的な供給という量の問題とあわせまして、相応のコストといいますか、価格の問題も国民皆さん方の関心の強い項目に挙げられていると思います。  そういう意味で、食料が量的に安定して供給されるということと、安全を含めまして良質なものが供給される、これが二つ目の重要点だと思います。それから三番目には、購入する方にとりましては価格がリーズナブルでなければいけないという意味で、合理的な価格であるという、いわば三点セット、量と質と価格というふうに考えております。  そこで、「合理的な価格」とは何ぞやということでございますが、これは別途三十条というところで農産物の価格形成という条項がございますが、「農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずる」とありますが、需給事情と品質評価が適切に反映された価格というふうに解釈をいたしております。
  198. 石井一二

    ○石井一二君 須藤議員もおっしゃっていましたが、官房長答弁を聞いていると余計わからなくなってくるような気がして、今一瞬戸惑っておりますが、ちょっとその問題は後に置いておいて、先に進みたいと思います。  そういった中で、農業の振興のためにはどうしても農業労働力と農地というところへ話が来るのではなかろうかと思うわけでございますが、今農地というのはどのような概念で、どういうものを農地と言うのか、ちょっとその農地の定義をお教えいただきたいと思いますが、いかがですか。
  199. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私たちが農地と言いますときに、農地と言ったり農用地と言ったり、それから耕地、その三つぐらいを使っております。  農地というのは農地法における定義でございまして、「耕作の目的に供される土地」ということになっております。これは、現に耕作されている土地は当然入りますが、一時的に耕作されていない休耕地あるいは耕作放棄をされていても復元がいつでも可能な土地というものは農地の概念に入ります。  あえて申し上げますと、それ以外の農用地という区分ですと、これは農地にプラスして採草放牧地が入ります。それから、耕地という言葉を使いますと、耕作放棄地は含まないということでございます。
  200. 石井一二

    ○石井一二君 いずれにしろ、二十一世紀において安定的に食料供給するという中で、私は農地というものがどんどん都市化の波に侵食されて減っていきつつあるのではないかということを心配するものであります。  ここに、ちょっとつまらぬ小さなあれですが、人口の推移と農地の減少というものをちょっとパネルにつくってみたわけであります。(図表掲示)せっかく一生懸命つくったので一分ほどこのまま置いておきたいわけでありますが、別にどうということはないのですが、明らかに農地は逓減しておる、人口もこのあたりからぼつぼつ非常にふえ方が減って、やがてはダウンしていくんじゃないかと思います。そういった中で、農地を確保していくということが非常に大事だと思いますが、国土利用計画法等の絡みの中で、農地を確保していくためのいろんな配慮というものがなされなければならない、私はそう考えるものでございます。  そういった意味で、建設大臣にその辺のお考えをお聞きしたい、こう思ったわけでありますが、大臣におかれてはもっとほかに重要な用事があるということでお越しにならないようでございますので、計画・調整局長、未来の事務次官かもわかりませんが、責任あるこういった面について、国土利用計画上農地を減らさないようにするためにはどのようなお考えをお持ちかというあたりをひとつ御披瀝願いたいと思います。
  201. 小林勇造

    政府委員(小林勇造君) 先生の御指摘のとおり、現在の国土利用計画は、国土利用計画法に基づいて定められてございますが、これは国土の利用に関する基本構想等について定めたものでございまして、農用地につきましては、国土利用の区分の一つとしてその利用の基本的方向が決定されているところでございます。  現行の第三次国土利用計画平成八年に策定しておりますが、この計画におきましては、農用地の利用の基本方向として、「効率的な利用と生産性の向上に努めるとともに、国の内外における食料の長期的な需給動向を考慮し、国内農業生産力の維持強化に向け、必要な農用地の確保と整備を図る。」というふうに決定されているところでございまして、国土庁としても、このような農業の生産力の維持強化あるいは必要な農地の確保というような観点から農用地の確保が適切になされるように、農水省を初めとする関係機関と十分調整を図ってこの計画を決定し、かつこの計画遂行していくという基本的な考え方でございます。
  202. 石井一二

    ○石井一二君 農地が減っていく場合は、私は先ほど都市化の波と申しましたが、道がつく、あるいは家が建つ、いろんな要素があろうと思いますが、過疎化の流れの中で耕作放棄ということが中山間農地において起こる可能性がある。こういうようなことをずっと詰めていきますと、優良農地というものがどんどん減って、現在、農水省が想定しておられます国民の胃袋を満足させていくためにはこれだけの農地が必要だというような数からどんどん減少していっているのではないかという気がするわけでありますが、まず適正な農地というものはどれぐらいないといけないかというビジョンがあればお聞かせいただきたいと思います。
  203. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 今回の基本法の中で食料自給の目標というものを立てることになっております。今、先生は農地の総量というか絶対面積についてお触れになりましたけれども、これまで何回か答弁申し上げておりますように、目下の耕地利用率というのはかつてと違って非常に低くなっております。一枚の水田、畑が九五%ということでございますので、一年に一回作付されていないというふうな状況にございます。  そういった耕地の利用率というふうなことも計算に入れなければいけませんけれども、それぞれの品目につきましてどれだけの供給をすべきかということを積み上げまして、それに必要な農地の総量というものを基本計画の中で明らかにしていきたいと思っておりますし、これらの絶対的な量である農地の中でさらに優良な農地については、農振法の国の指針の中で具体的な数字を定めて公表したいと考えております。
  204. 石井一二

    ○石井一二君 私は、面積で最低これは要るんだというのがないかと聞いたんですが、大臣、いかがですか。
  205. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) よく我々が申し上げるのは五百万ヘクタールですけれども、全部を自給するとするならば一千七百万ヘクタール必要だと。しかし、それは三千七百万ヘクタールで六割は山という中ではとても無理でしょうと。したがって、国内生産基本としつつ輸入と備蓄を組み合わせて新しい日本食料安定供給をしていきたいということでございます。  今、局長が申し上げたことがちょっと説明としてわかりにくかったかもしれませんが、とにかく必要な農地というのは、結論から申し上げますと、自給率をいずれきちっと基本計画の中に入れていかなければならないわけでございますが、個別品目ごとに積み上げていって、自給率目標として、しかも実現可能な中でできるだけ高い目標を出していきたい、そのためにどのぐらい農地が必要で、そのためにこの品目がどのぐらい増産といいましょうか新たに生産が必要かということを割り出すもととしての農地という位置づけでございます。優良農地が四百三十五万ヘクタールとか農用地が五百万弱あるとかいうことが現状でございますが、日本食料を自給するために、自給というか自給率を出すための一つの前提としての個別品目ごとに必要な農地を積み上げていくというやり方で、必要な農地というものを基本計画の中でお示ししていきたいということで、現在、検討会の結論を待ちながら、今後作業をしていくということでございます。
  206. 石井一二

    ○石井一二君 中山間地域には耕作放棄地がある、それから市街化調整区域はだんだん町になっていく。そういう中で、私は今全国の道路マップを持っているんですが、道路というものがどんどんつくられていく。そういう中で、トンネルを掘ったりして山の下をくぐったりするとどうしても高くつきますので、できたら農地を通るというようなケースが多いわけであります。そういう意味で好まざるだけれども、売らなきゃしようがない、しかも相手は公共事業だという中で、宅地、山林その他原野、雑種地等で、大体聞いてみますと、三割はどうしても農地をつぶしていかなきゃいかぬ。そういう中で、今全国挙げて高規格道路等を含めて新しい開発が進みつつある。それはそれでまた別の利益を国民にもたらすわけでありますが、どうかひとつ最低限これだけは必要だという農地をぜひ確保して今後進めていただくようにお願いをしておきたいと思います。  それで、農地に続いて今度は農家ですが、これもどんどん減少しておりますが、農家の定義とは何ぞやということになるとどういうぐあいになるでしょうか。
  207. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 実は私が今ちょっと手間取っておりましたのは、農家の定義というのは、農地の方から見る定義と、それから販売、つまり農地にかかわらず施設型のものもございますので、販売面からとらえるものとがあるわけでございます。  土地の方からいいますと、主業農家では十アール以上の農業、あるいは農産物販売金額が十五万円以上というのが農家の定義になっております。
  208. 石井一二

    ○石井一二君 今のはどうも自信のなさそうな答えですが、大臣お答えも一緒ですか。
  209. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 同じであります。
  210. 石井一二

    ○石井一二君 ちなみに、高木官房長はいかがですか。
  211. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 同じでございます。
  212. 石井一二

    ○石井一二君 私はここに一冊の本を持っておりますが、そう大した本じゃないんですが、「農業問題のここがわからない」という本で、PHPから出て、箱崎道朗氏という方で、産経新聞の編集委員ですが、この方は農水省は農家の数についてはうそをついていると、こう指摘しているわけですね。東日本では十アール以上だけれども、西日本では五アールで農家と勘定しておる。今、構造改善局長の言われた農産物の販売額が十五万と言われたですが、十万だと書いてあるわけですね。  そうなると、言う人によって農家の定義が違うのかということにもなってこようと思うんです。その定義は多少違ってもいいんですが、問題点として指摘しておかなければならないことは、ともすれば農水省は農家の数を多く言いたがる。その結果、先ほど申した耕地面積というのは決まっていますから分母が多くなればなるほど一家当たりの面積は小さい、だから日本は価格が割高になってもしようがないんだ、世界的な農業価格競争では負けるんだ、だから予算を余計につけなければいかぬのだという論理を根拠に、農家の数をより多く誇張することによってエクスキューズを求めておるというのがこの方の指摘なんです。それで、私はどちらが正しいとも言いませんが、定義ぐらいはどちらが正しいか白黒つけておきたいと思うんですね。  それで、先ほど言われた農業予算の中で、例えば水田農業確立対策にウン千万、水田営農活性化対策、名前がころころずっと過去変わってきましたから、新生産調整推進対策、それから緊急生産調整推進対策というようにじゃぶじゃぶ補助金がついて、そのこと自体はいいんですが、農業に金をつぎ込み過ぎじゃないかというような国民意見もあります。にもかかわらず、あれだけ食料自給率が低いではないか、こういう論理にもつながってくるわけでございます。  私は戦時中、ある岡山の寒村で疎開生活をしておりましたが、芋を食べ、おかゆをすすっておりましたけれども、もしそのような状態であれば、自給率は一〇〇%なんじゃないかなと思うんですね。だから、必要な農地さえ確保しておけば、非常に大きな激変があった場合でも国民は飢えない。むしろ、銀座のこじきでも糖尿病になるということは中川大臣のお父上の言われた言葉ですが、そういった飽食日本というものが自給率の低さというものを招いておるのではないか、このように感ずるわけであります。  そこで、農家の定義の違いを、どちらがどうかということを産経新聞に電話をかけなきゃいかぬ都合がありますので、そこら辺をもう一言聞きたいことと、私の言った水膨れ的に農家の数というものを多く見積もって一つの理論的根拠のもとにしているのかいないのかというあたりの御所見を聞きたいと思います。
  213. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 二点御質問がございました。  恐らく先生がお手持ちの本は平成二年以前の本ではないかと思っております。平成二年に統計上の区分が変わりまして、先ほどおっしゃられた西日本の五アール、十万円というのが、私が先ほど御説明したところにそろえられました。つまり、これは旧定義と言っております。ですから、新しいのは私が御説明申し上げたとおりでございます。  それから、水膨れという御指摘がございましたけれども、やはり世の中全体として、例えば一定の物価の上昇もありますし、農家の規模その他も変わってまいりますので、社会経済情勢に合わせて一定程度の期間を置いて定義を世の中の情勢に合わせた形に切りかえていくというのも、これは統計を進めていく上で必要なことではないかと思っております。
  214. 石井一二

    ○石井一二君 そこで、農地転用というものを都市近郊でよく行うわけでありますが、今後、農地転用というものはどんどん認めていく方向であるのか、極力抑えたいという考えであられるのか、その辺の方向性についての基本的なお考えをお教えいただきたいと思います。
  215. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 農地の転用につきましては、さきの国会におきまして農地法の改正をさせていただきました。その中で農地転用の基準というものを法律上明定するという形で、だれが見ても一定の場合にのみ転用を認めるというふうにされたわけでございます。  具体的に申し上げますと、農業振興地域制度の中で農用地区域を策定いたしますと、その中の農地は転用が原則禁止ということになりますし、その区域以外の農地でありましても、農地の置かれている状況、農地の性格、そういうものに応じて転用がそれぞれ区分をされて明確な基準のもとに運用されているところでございます。
  216. 石井一二

    ○石井一二君 農業生産について考えるときは、農地とそれから耕していただく農民の方々と、それからやはり技術ということがあろうと思いますが、昨今、行政改革の結果、数多くの試験研究機関というものが将来、独立行政法人となっていくというようになっております。こういった中で、農水省関係の研究、試験においてどのようなこれまで成果が上がり、今後こういった行政改革というものがどのような新たな変化の波を起こしつつあるとお考えか、その辺の御所見を承りたいと思います。
  217. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生指摘のように、農水省の研究機関は一つを除きまして独立行政法人化することになっております。独立行政法人化によってのメリットは、先生一般論としては御承知だと思いますが、農林水産、自然、生き物、地域、それぞれ特色がありますし、研究方法多岐にわたっておりますので、これから国民に対する安定的な食料供給、あるいはまた、先ほど先生指摘になった安全性とか新技術の開発、あるいはその新技術の与える影響等について、それぞれ必要な研究をこれからもやっていく上で必要な研究機関として存続が必要だというふうに考えております。
  218. 石井一二

    ○石井一二君 それと、先ほど私は冒頭、その食料安定供給ということに対する不安があるのではないかということを申し上げましたが、通常そういうことは起こり得ないわけでありますが、一たん緊急事態というようなことが起きた場合に、そういうことが想定し得る。そういう中で、新法の第二条第四項の理念と第十九条、不測時における食料安全保障という中で、具体的な危機管理計画というものを策定しておられるのかどうか、もしされている場合はどのようなものであるか、若干御説明いただきたいと思います。
  219. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 危機管理の対応といいますか計画につきましては、現在省内で作業中でございます。  具体的にどういうことをやっているかということでございますが、まず平時におきましては、国内外の食料需給の動向を適切に把握するというための体制整備をしなくてはいけないということでございます。また、本院で今御議論をいただいておりますが、食料自給率の平時におきます目標を立てて、それに向かって着実に推進しなければいけないということでございます。  ただ問題は、そういう平時、平穏のときでなくて、まさに凶作とか輸入、特に輸入の減少、途絶といった事態にどう対応するかということが今日一番重要な課題であると思います。そのときには、当面一時的には備蓄の取り崩しということで対応できるわけですけれども、それは輸入の減少が長引きますと底をつく、こういうことになるわけであります。  したがいまして、より厳しい事態が継続した場合には生産面で、いわゆる生産転換といいますか、カロリーの高いものに、先ほどちょっとお話がございましたが、米とか芋とか、そういうものに転換をしていく。その場合、自給率も当然高くなってくるわけでございますけれども、そういった生産転換を進めていくということを考えております。具体的に何をどれだけ植えていくかというのは事態の厳しさに応じて決まってくるわけでございまして、今その辺の数字をどう整理していくかという詰めをしているわけでございます。  それから、価格・流通面におきましては、当然物が足りなくなると物の値段が上がる、国民の手に行き渡りにくくなるということでございますので、既にあります国民生活二法とか食糧法の規定によりまして、標準価格の決定とか売り渡しの指示とか配給とか、こういう流通・価格面の対策を講ずる。これをどの程度やっていくかということが、まさに厳しさのステージによって変わってくるということでございますので、その辺もあわせて検討しているところでございます。  今、省内だけの検討段階でございますが、やがてそれがある程度整理されますとこれは関係省庁いろいろ出てまいりますので、また御協力も願わなくちゃいけない事態にもなりますので、次の段階としては関係省庁間で協議をいたしまして、危機管理のプログラムをつくっていきたいというふうに考えております。
  220. 石井一二

    ○石井一二君 我々は、この委員会でかつてウルグアイ・ラウンドのWTO交渉について論議もいたしました。そういった中で、日本として、次の交渉は二〇〇一年ですか、始まるまでに具体的な提案すべきプログラム、プランを持って当たるべきだということを申し上げたわけでありますが、そういった意味で、先般来の交渉の結果を見てみますと、どうも輸入国には不利で農産物の輸出国には有利だというのが過去の交渉結果であったと思いますが、食料輸入国としてぼつぼつWTOの次期交渉に向けて準備を始めるべきだし、省内の考え、あるいは内閣としての考え方というものの骨子ができてしかるべきだと思います。  そういった具体的なスケジュールあるいは内容について、大臣の御所見があれば承りたいと思いますが、いかがですか。
  221. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 次期WTO交渉に向けましては、先般、我が国のWTOに対する提案という形で、政府として取りまとめをし、与党との調整も終わり、公表したところでございます。  そのポイントの一つは、農業の果たす多面的な役割というものが各国において大事なのではないか。あるいはまた食料の安全保障、これまた輸入国が数カ国に限られ、残りは何らかの形で食料を輸入しておるという現状でございますので、その国の食料安定供給というものは、どの国にとっても安全保障上極めて大事なのではないか。  あるいはまた、今御指摘がありましたように、特に日本は世界一の食料純輸入国でございますが、WTO協定上、例えばミニマムアクセスのように義務的に多量なお米を輸入しなければならない。一方、輸出国の方には都合が悪いときにはいつでも輸出をストップすることができるといったようなことを含めまして、輸出国と輸入国との間の権利義務が非常にアンバランスであるというようなこと。また、発展途上国の扱いをどうするかとかいうことを含めまして、林産物、水産物も含めまして、農、林、水という形で次期交渉に向かう基本的な考え方を提案としてまとめました。  これは、交渉に臨む一つの原則としての扱いをしながら各国にお示しをし、少しでも多くの国々に御理解をいただきながら、国民合意大前提でございますけれども、次期交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  222. 石井一二

    ○石井一二君 あと一、二分あろうかと思いますが、以上で終わります。  ありがとうございました。
  223. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田でございます。  本日最後の質問になりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  WTO体制下の自由貿易、そして市場原理の導入ということが今回の基本法の中身の根底に流れておるわけでありますが、今まで産地におきましては、産地間競争ということでもう二、三十年、一生懸命各産地に負けないように量と質を上げるように努力をしてきたわけでありまして、その中で、産地銘柄が通っていくところもある、それに負けたところもあるわけでありますが、また今度は海外から入ってくるものにも一緒に戦っていかなければならないという状況に、これから二十一世紀になるというようなことだと私は認識をいたしております。  そんな中で、生産者の人たちとよく話すんですが、そうなったら、これ以上に産地間競争、また国際競争の中にのみ込まれてしまっていくんじゃないかという不安を感じる方々もたくさんおりますし、またある人は、米も木材みたいになってしまうんじゃないだろうかというような生産者の方もいらっしゃいます。  そこで、今回、自給率向上を明記されたことは私は大変意義があると思います。自給率向上にどう取り組むか、その仕組みをどのように考えておられるのかなというようなことをまずお伺いいたしたいと思います。  この自給率目標設定するのには、基本計画を立ててするということになっておりますが、いかに立派な基本計画を立てたにしても、農業者の生産なくしては達成できないわけであります。  そういう中で、今まで国の農政、現行農業基本法では、全国画一的に国が施策を講じてきていた。今回は公共団体が相協力して、そしてそれぞれの基本計画をそれぞれの地域が立てて、そしてそれを国と一緒になってやっていく、こういうような相協力するというようなことになっておりますが、私は、そういう側面と、むしろ地域地域の独自性を出した農政の一つの展開というものがもっと強く出されるべきじゃなかろうかなというように感じるわけであります。そして、それを政策誘導を国がしていくということの方が私は地方に元気が出てくるのではなかろうかというふうに思いますが、いかがなものでありましょうか。
  224. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 御指摘趣旨はよく理解できているつもりです。  ただ現実問題として、手順を申し上げますと、生産は地域地域がありますけれども、需要というのは全国ベースで見ないといけない性質のものだろうと思っています。現実に農産物も、地域だけで消費されているだけではなくて全国各地に広域流通をしているという実態にあります。  したがいまして、主要作目別の需給、まさに需要の見通しのもとにどれだけ全体として国内生産でそれをカバーしていくかということは、やはり一たんは全国ベースで立てないといけないのではないかというふうに思っています。  ただ、まさに実効確保といいますか、その地域地域農業者皆さんが取り組まなければ実現できないことは明白でありますから、当然各地域で、例えば県段階なり市町村段階で、あるいはもっとブロックかもしれませんが、生産者だけでなくて行政あるいは需要の側の実需者、あるいは試験研究機関なり普及組織なり、こういった関係の方々から成ります協議組織をつくりまして、その地域地域の生産目標というものを積み上げていくということはぜひ必要だと思います。  ただ、それを積み上げていって全国ということになりますと、手順としても大変時間も要しますし、先ほど申し上げましたように、需要の動向を的確に見通すことが、各地域だけで全国を見るというのはなかなか難しいのではないか。また、需給バランスを乱しますと結果的に生産者に御迷惑がかかる、こういうことにもなりますので、手順としては、全国段階で見通した上で、その上で各地域も同時並行的に取り組んでいただく、こういうことを描いているわけでございます。
  225. 阿曽田清

    阿曽田清君 市場原理の導入というようなことを今回前面に押し出してきて、需給バランスを国で調整しますよというようなこと等が果たしてどれだけできるのか私は大変疑問なんです。  今まで県は県で、国が各県に対して各作物ごとに、五年後はどういう生産計画を考えておるか、計画を立てておるかというのを検討させていましたね。私はそのときの委員をしていたことがあるんです。五年に一回しか会っていませんでした。それは何でもない、ただ伸ばしたいのをどれくらい伸ばすかなと、各作物ごとに思惑の数字を入れて国に報告していたんです。それは現行農業基本法の時代ですから、国がすべて全国画一的にやっていたことなんです。こういうのはくだらぬなと思っていました。  今回、そういうことを外して、それぞれ地方に元気を持たせるやり方というものをまず第一義に考えて、そしてそれを国が政策誘導していくというような内容に変わってきたんだなというふうに私は思っているんです。そうしたら本当に今までの農政と違った形が出てくるなという思いをいたしておりますから、官房長の御発言は少し後退するような、何か国が全部指図するよという感じに受け取れましたので危惧を申し上げたんです。  できることであれば各地域に、例えば県の職員の方々も議会の方々も、あるいは農協の方々も生産者の方々も、消費者の方々もいろんな食品関係の方々も、さまざまな各界各層の方々でいわゆるラウンドテーブルあたりを設置して、そこで議論されることによって地域の活性化、農政に対する活性というのが生まれてくると思うんです。そういうようなことを考えて、むしろ中央よりも地方に私はそのエネルギーを持っていった方がこの基本法が達成していく道になるんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。
  226. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 基本法で考えている設定の仕方は官房長から今申し上げたとおりでございますけれども、先生も先ほどおっしゃいましたように、やはり自然条件が違うわけでございまして、その中で農家がつくらなければこれはしようがないというのが大前提にあります。一方、消費者なり実需者の方が買わなければこれまた成り立たないという面もあるわけでございます。  そういう意味で、全体のニーズといいましょうか、あるいはまた、よく大豆や小麦の例を出しますけれども、これから自給率を上げるためにはどういうふうにしていったらいいかというようなことについては、国民全体のニーズなりまた生産条件を、国全体としてやはりきちっと全体の枠というものを品目ごとにまず総合的に積み上げていくことが大前提になるのではないか。その上で、もちろん地域の特性とか、あるいはまた地域と国とが相協力してこれらの施策を推進していかなければならないわけでございます。  そういう意味で、この自給率設定に当たっては、何も国が上から一方的に押しつけるというわけではなくて、全体的な枠組みというものの精査をして、自給率目標を全体として品目ごとにやる。その過程におきましては、基本法にも書いてございますように、食料農業農村政策審議会の意見も聞かなければいけないということで、そこにはおのずからいろんな立場の方、国民を代表される方々が委員として御出席になられるでありましょう。  そういうことで、全体としての自給率というものを設定させていただきたいというふうに考えております。
  227. 阿曽田清

    阿曽田清君 もう既に産地の段階では、つくった物を売る時代はもうとっくに過ぎているんです。いかに高く売れる物をつくるかということにJAグループも生産者も自己努力をやっているんですよ。  ですから、そういうものをいわゆる各地域、各県なら各県段階が中心になって、我が県はこういうような農業振興を図ってやっていくというものを、地域が独自性を出して取り組んでいくというものを国がサポートしてやる、これが基本だというふうに思いますし、そういう基本法になっているものだと私は信じておるんですが、答弁を聞いていると、何となく後ずさっていっているなと、期待感と裏腹になってきてしまっておるのでちょっと心配するんです。  官房長、もうちょっとぴしゃっと言ってください。
  228. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 各地域でお取り組みになることを大いに奨励したいということはそのとおりです。ラウンドテーブルでやっていただくということなんです。  ただもう一つ、先ほどから言っているように、需要が全国流通なものですから、言葉としてはそつ啄同機というのがあるんですが、国の側からの全体のプランと地域における取り組み、こういうものがぴったり合うというのが一番望ましいわけでございます。  そういう意味では、作成過程でも各県なり地域意見なりは十分お伺いしたい、こういうふうに思いますけれども、順番としてぴったりうまく合うかということだと、タイムテーブルの中で、一方、基本計画は早くつくれということが言われておりますので、そういうこともにらみ合わせると、ぴったり合うかなというのが心配なものですから。  それからもう一つは、政府責任を持って計画をつくれという声もまた意見も大変いただいているわけでございまして、そういう兼ね合いで考えさせていただきたいと思います。
  229. 阿曽田清

    阿曽田清君 そういう思いの中で、国は国の自給率を上げる、地方は地方の活性化をしながら自給率に貢献していく、その相乗効果が出るようにひとつ国の御指導をいただきたいと思います。  価格政策から所得政策へということの転換が図られておるわけでありますが、ついせんだって、米作農家の若い人たちの会合の中で、経営安定対策というもので、いわゆる価格が暴落したときの緩衝対策といいますか、補給するという意味で資金対策ができてきているわけでありますが、これは下がるときに対策を講じられるわけで、二十一世紀、海外の米と戦っていかなきゃならぬというなら、この対策だけじゃ安楽死させられるのと一緒じゃないかといったきつい言葉生産者から聞いておりますが、その見解をお聞きいたします。
  230. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 経営安定対策としましては、稲作と麦作がございます。かなり性格が違いますので御説明申し上げます。  稲作につきましてはとにかく、全体的な価格が下がっていくという状況の中で、稲作農家に与える影響を緩和するということで対応しておるわけですけれども、これは基本的には生産調整、米の場合でございますから、生産調整をきちんとして需給均衡を図っていくということがまず基本にあろうと思うんです。そういった生産調整をきちんとして需給均衡を図ってもなおかつ、豊作が例えば連年続くといった場合に価格が下がる、それが農家経営に対する悪影響を及ぼす。そういうことのために、緩和対策として稲作経営安定対策はできておりますので、そういう意味では生産調整対策と稲作経営安定対策というのは全体として見なきゃいけないだろうというふうに思います。そういうことを通じて全体としての自主流通米価格の回復を図っていくということであろうと思います。  それからもう一つは、麦作経営安定資金は、これは稲作経営安定対策とかなり違いまして、民間流通に移ります場合には、当事者間で話をしていただくんですけれども、基本的には政府の売り渡し価格、今の二千四、五百円という形になるわけでございますけれども、これにプラス・マイナス五%の範囲の中で安定的な運営をし、かつ、麦につきましては大幅な逆ざやになっておりますので、その間を麦作経営安定資金という形で、実際の取引価格とかけ離れた形で、一応切り離してお支払いをするという形で農家を支えたい、こういうことでございます。
  231. 阿曽田清

    阿曽田清君 米、麦の安定対策資金の内容を私は質問したんじゃなくて、今の制度のありようの見解を求めたわけです。私は、これじゃ十分ではないと。前から大臣に申し上げているのは、別の所得補償、農家の所得補償政策というものを当然考えた上でのまず緩和政策の一つだということならば納得する、そういう意味の見解を求めたということでありますので、私は、そういうものを農林省として当然頭に入れてこれからひとつお取り組み願いたいということを御要望申し上げたい。  例えば、先ほど申し上げましたように、農家の方々が自分たちの将来は不安だらけだというような中で、木材と同じように米もなってしまうんじゃなかろうかといったような発言をする方々もおる。その中で、少なくとも再生産の可能な価格形成というものがどうしても私は必要だと思うんです。つまり、再生産可能な条件整備を私は具体的に打ち出さなければならないというふうに思いますが、この点について御見解を求めます。
  232. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) もちろん、再生産ができなくて何年も所得が減り、赤字が出るということは我々としても避けなければいけないことは言うまでもないことであります。しかし、先生のおっしゃられておりますのが、再生産可能な価格決定というものの従来のやり方というものであるとするならば、あくまでもこれは供給サイドだけの話になるわけでございまして、そういう意味で需給のミスマッチというものも現に発生をしたこともございます。  そういう意味で、三十条の一項で、需給というものの結果として価格が決定される、つまりいいものをつくれば高い値段になる。また、先ほど食糧庁長官答弁いたしましたように、豊作が続けば需給のバランスが崩れて価格が下がる。そのままでいいかというと、それでは文字どおり農家経営がおかしくなっていくわけでございますので、三十条の二項で、いわゆる経営安定対策を米麦を初めとする主要農作物につきましていろいろなやり方でとっていくということで、下支えという言葉は、先ほど下支え機能がないという御質問がありましたけれども、ぎりぎりのところ、農家経営に激変を避けるような形のシステムというものを導入することによって、文字どおり農家がこれから将来にわたってやっていけるようなシステムをつくっていくことを法律上明記しておるわけでございます。
  233. 阿曽田清

    阿曽田清君 従来の価格政策を言っておるわけじゃありませんで、むしろ所得政策の方に全体が移行してきているわけだから、そういう中で再生産確保というのは、私は、最低価格の支持というものが、生産費、直接費用部分ぐらいは最低──やっぱりいざというときにはその下支えはあるんですよというのが一つの安心感へつながっていくのではないかということでございますので、今基本法スタートに当たってその点を踏まえた取り組みを示していくことが、これからの若い方々に対する一つの安心感と、取り組むのに大いに励みになるだろうというふうに思います。よろしくお願いしたいと思いますが、次に入ります。  通告と別に行きますが、前回もえさ米について質問しまして、本田局長から畜産のサイドからの話で、私は小麦とか大麦とかえさ米の話を比較して話しておったところがトウモロコシに切りかえられましたので、また話の舞台が違ってきましたので、今度はそういう角度じゃなくて技術会議の方から御答弁いただきたいと思います。  私は、色も形も味もどうでもいい、重たい飼料米、えさ米を開発して、それを畜産農家と米農家が連携をとって、しかも水田が守れるようにしていくことが自給率向上にもつながることなんだということで、IRRIに行ったこともお話をいたしました。  農林省で、いわゆる技術会議の方で開発研究をどれくらいされているのか、その実践されている状況、そして可能性、さらには経営試算もはじいてみておられるのか、その三点をまずお聞かせください。
  234. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 第一の研究開発の成果でございますが、どこまで行っているのかということでございますが、先生のおっしゃった重たい米、多収の米という意味で研究開発をしてまいりましたが、現在十アール当たり七百から八百キログラムの収量、すなわち主食用の一般品種に比べまして約三割程度玄米重で高い品種、ハバタキとかオオチカラ、タカナリ、こういったものが育成されてきております。これが現状の成果でございます。  この収量レベルで普及の可能性というものを試算いたしますと、経営試算のもとになるコスト比較、コスト試算でございますが、生産費で申し上げますと、現在のところこの収量であれば、普通の飼料用トウモロコシの価格が一トン二万円ぐらいでございますが、その約十倍以上という格差が残念ながらまだございます。そういったようなことであります。  それで、えさ米ということを考えますと、主食用ほど精緻な栽培管理をしなくてもいいだろうということで、大規模な区画の水田で不耕起のような、あるいは乾田直播のような低コストの技術を投入した場合どうかという試算を行いましたが、まだ現在のところでは飼料用のトウモロコシに比較しましても相当の格差があるという評価が現状でございます。
  235. 阿曽田清

    阿曽田清君 何か私から言わせると技術会議は全然本気で取り組んでいない。  私は、IRRIのレベルよりも国の研究機関の研究者の方がレベルは上だと思いたい。IRRIでさえも、あの亜熱帯地域で一・二トンとれるという。向こうの方は、日本だったら恐らく二割から三割は高くとれますよ、こういうような話まであったんです。このモンスーン地帯でそれがとれないということは、いかに研究開発に取り組んでいないかということを実証しているようなことでございます。私は、日本だったら一・五トンはとれないことはないというふうに思っておるんです。そういう取り組みをしないからこそ水田が三五%も荒れて、そして水を張ることができない。多面的機能どうのこうのと言う前に本当にやるべきことはちゃんとあるんじゃないか、そういう思いを強く持っております。  とにかく、重たい米の開発研究に力を入れてください。そしてそれができさえすれば畜産農家も耕種農家もやろうと構えているんです。それが今の研究機関の姿とするならば、本当に嘆かわしい、私はそのように思いますので、一層の取り組みをお願いしたいと思います。  時間がありませんので次に移ります。  第十八条のところでございますが、緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限というものが、これは現行基本法の中にも同じように載っているわけでありますけれども、セーフガードがラウンド合意ができて以来一度も発動されていない。特別セーフガードについては価格ベースで七回、数量ベースで十四回発動されております。私がこれはやるべきじゃないかと思ったのがイグサとショウガのセーフガードであったわけですが、これがとうとうできなかったわけであります。  通産省、おいでですね。  イグサとショウガがあんなに暴落し、イグサの農家が十数人も自殺せざるを得ないような状態になったとき、何でこのセーフガードができなかったのか。そして、セーフガードができるような法律になっておるのにとうとう今までできなかった、できなかったのをあえてまた新基本法の中に入れてある。将来大事なときに使えないものを入れておくことは意味がないじゃないかとまで思いたいぐらいでありますが、それについて、セーフガードがそんなに実行されないものであるのかどうか、まずお尋ねいたします。
  236. 北爪由紀夫

    説明員北爪由紀夫君) ただいまのセーフガードのお尋ねでございますが、先生質問の中で触れられましたように、セーフガードは特別セーフガードと、それから繊維のセーフガードと一般セーフガードとございます。  今、御議論になっておりますのは一般のセーフガードでございまして、一般のセーフガードは、特別セーフガード、繊維のセーフガードに比べましてかなり要件が厳しく書いてございます。輸入が急増し、かつ、それによりまして国内産業が重大な損害を受ける、それから国民生活上それを是正することが必要である、こういうかなり厳しい基準が書いてございます。  それで、私もたまたま、今、審議官でございますが、農林省からイグサとショウガの御相談を受けたときに貿易局の総務課長でございまして、この問題を担当しておりました。その際、一番問題になりましたのは輸入の急増の要件でございまして、確かに御地元が大変だというのは非常によくわかるのでございますが、当時のショウガ、それからイグサの輸入の状況、そういったものを見ますと、やはり要件に該当してセーフガードを発動するのはかなり難しいのではないかという判断がございました。  それと並行しまして、ただ御地元が大変なものですから、片や日本に出しています中国とむしろ交渉をするということを農林水産省の方でやられていましたので、それの動きを見ながら対処してきたわけでございます。  今後につきましては、いずれにしても要件に該当しますれば一般セーフガードを発動するということにつきましては、通産省としてもやぶさかでないわけでございまして、確かに今まで一回も発動したことはございませんけれども、要は要件に該当するかどうかであって、該当すれば我々とすれば粛々として手続を進めてまいるということでございます。
  237. 阿曽田清

    阿曽田清君 要件が非常に難しいからという話であるわけですが、実際に日本は全然発動していなかったんだけれども、韓国、アメリカは発動しているんですよね。それは要件が満たされたという答えが返ってくるんでしょうが、あれだけの価格の暴落、ショウガだってそうです、イグサは自殺者まで十数名出すというような事態になっている。これが要件に該当せぬなら、セーフガードを出す要件に該当する対象作物はないんじゃないかというふうに感じざるを得ません。  ですから、今度WTOの交渉のときにおいては、このセーフガードの一つの要件といいますか条件を、国内のそういう作物に大きな打撃を与える、結果として農家そのものがそういう悲惨な目に遭う、そういうような要件の問題についても、ちゃんと今度それをキープしてきてもらわないと、関税率の調整とか輸入の制限とかというのは、書いてあるだけで実行できないということがまた今後とも引き続いていくということになる。  農家の方々はこれで大変期待しているかもしれません。外国から大量に安いのが入ってきたときはこの十八条で救ってくれるものだと期待しているかもしれません。それが前の基本法と同じようで、今までの被害状況ぐらいじゃだめなんですよということになってしまう。今度のWTO交渉において、そういう要件の見直しもぜひお願いいたしたいというふうに思いますので、通産省、外務省、農林水産省、よろしくお願いいたしたいと思います。  もう時間がありませんので、最後に、先ほど風間先生が御質問されました女性の地位の問題についてでございますけれども、幸いにして男女共同参画社会基本法が成立いたしました。これを機会に追い風にしてもらえぬだろうかという思いで御質問をいたします。  先ほど大臣も申されましたように、農業従事者の六割を女性が担っているということで、農家の女性の果たしている役割は大変大きいんだということを申されました。私もそのとおりだと思います。ところが、女性の七割の方がいわゆるただ働きといいますか、無給の家族従事者であります。  総理府、おいでですか。  農村の女性のいわゆる地位の現況はどのようになっておりますか。そして、この男女共同参画社会基本法を契機といたしまして、女性の地位の向上のための実践というものはどのように考えておられるか、簡単に御説明ください。
  238. 佐藤正紀

    政府委員佐藤正紀君) お答えいたします。  先生おっしゃいましたように、女性は農業就業人口の六割を占めておりますとともに、農業農村社会の活性化に大きく貢献しておりますけれども、重要な役割を果たしているにもかかわらず、見合った評価がされていないと考えられます。  男女共同参画社会の実現に向けました国内行動計画であります男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましては、重点目標の一つといたしまして、農山漁村におきますパートナーシップ確立を掲げておりまして、施策の基本方向として、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大、それから女性の経済的地位の向上と就業条件・環境の整備等を掲げておるところでございます。  先生もおっしゃいましたが、男女共同参画社会基本法が成立いたしまして、先ごろ公布、施行いたしました。総理府といたしましては、この基本法基本理念を踏まえまして、またこのプランの内容等に沿いまして総合的な施策を推進してまいりたいと考えております。
  239. 阿曽田清

    阿曽田清君 そこで、農林水産省にお尋ねいたしますが、女性のいわゆる社会保障、中でも先ほど言いました七割の方がただ働きをしているような現況というものを、どうやって農家の女性に対して報酬ができるように道を開こうと思っておられるのか。ただ、家族労働協定とか父子契約とかといったような範疇じゃない形で私はやらなきゃならぬだろうと思うんです。それが一点。  それから、現実的には、親が子供に経営権を譲ったときに、御主人の方には経営移譲年金が参りますけれども、御主人が亡くなったときに、じゃその経営移譲年金が奥様に来るかというと来ないんですね。他産業の方々とその点が違うわけでありますが、農業者年金あたりも、みどり年金に奥さんがかたるということだけじゃなくて、経営移譲年金というのが、やめた人は六十万ばかり来ますが、御主人が途中で亡くなられたら、その後は奥さんには適用にならない。こういうことでは極めて私はアンバランスじゃなかろうかなと思うんですが、そういう点について見解を求めたいと思います。
  240. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) それでは、私の方から何点かお答えをいたしまして、年金の方は担当の局長が参っていますのでお答え申し上げます。  社会保障、広い意味でいろんなことがあると思いますが、私どもの方で幾つかお答えをしたいと思います。  まず、報酬の方からお話をしますと、お答えしたいところを先生に先に言われてしまった部分があるんですけれども、最大の力を入れておりますのは、家族経営協定の中できちっと位置づけてもらう、これが我々の当面の目標でございます。逆に言いますと、月々きちっとしたものを受け取っていない人がかなりおられますので、最初にそこをまず一つのステップとしたいと思っております。  それから次に、農作業に従事をされますものですから、どうしても農作業の場合は災害に遭われるということがあったりいたします。したがって、いわゆる労災に特別加入制度というのがございますので、そういう特別の扱いの中に入れないかどうかということで、これは男女差なく私どもの方としては今実態を調査いたしておりまして、その中で改善ができることが見つかれば労働省と御相談をしようという、社会保障といいますか労災の仕組みで対応しようと思っておるところがございます。  それから、例えば健康保険等々ございますが、これは国民保険で入っておられるわけでございますけれども、仮にさらに有利な扱いができないかということになるとしますと、実は家族経営じゃなかなか無理でございまして、法人の経営ということを一つ考えて、その中で例えば農事組合法人等々というものの中に入られまして、今のそういう保障よりも有利なことが受けられるかどうかと。  実は、これは常にメリットだけあるわけじゃございませんでデメリットの部分もございますので、それは選択をしていただかないといけないんですけれども、そういう余地はございますので、そこは御判断かなと思っているのでございます。等々、私どもの方でもいろんなことを考えたいなと思っているところでございます。
  241. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 農業者年金についてのお尋ねがございましたので、その点についてお答え申し上げたいと思います。  結論から申し上げますと、配偶者への経営移譲というのは、この制度の趣旨が経営規模の拡大と経営の若返りということでございますので、適当ではないということで経営移譲等を認めていないわけでございます。  先ほど例に引かれました死亡時における遺族年金の問題等も、実は長い検討の経過がございまして、現況は、死亡されますと死亡一時金という形で大体掛金の三割ぐらいが残された遺族に渡るというふうなことになっておりますけれども、農業者サイドからは遺族年金について強い要望があるわけでございます。ただ、この年金の性格がいわゆる被用者年金ではなくて自営業者の年金という性格を持っておりますので、その点につきましてこれまでそういったことは実現をされてこなかったわけでございます。  私どもがお勧めしておりますのは、現況もそうなっておりますけれども、御夫婦で家族協定を結んでいただいて年金に加入していただく、そしてその御夫婦から若い世代に経営を移譲したときには、農地の名義が例えばだんなさんであっても、この家族協定の中で御主人も奥様も年金が受け取れるというふうな仕組みを平成七年からつくったところでございまして、現況、三千三百三十人ほどの女性の配偶者の方が入っております。女性全体は一万五千人ぐらいですから、家族協定による配偶者の年金加入も少しずつ上昇しているという状況にございます。  この問題は、平成十二年度が財政再計算の年に当たっておりますので、この基本法案を受けまして、いかなる年金のあり方とするか検討したいと考えております。
  242. 阿曽田清

    阿曽田清君 私もそれは大変勉強になりました。夫婦で家族協定を結んでおれば、夫婦でかたるということをすればもらえるということですね。勉強不足で申しわけありませんでした。  私も若妻グループを持っていまして、若妻グループに私はいつも言っているんです。三つの自由、これを家庭の中で整備させてくれと。一つは自由に使えるお金、そしてもう一つは自由に語れる場所、もう一つは自由に使える時間、この三つを家族の中で確立するようにと。そうすると農家の嫁対策も非常にスムーズにできやすいし、また農村の活性化といいますか、家族も明るくなってくる。そういうことをやっていますので、農水省の方もそういうところをもっと取り入れてPRしていただくと全国が変わっていくんじゃなかろうかと思いますので、申し上げて終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  243. 野間赳

    委員長野間赳君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時四十七分散会