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1999-06-29 第145回国会 参議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月二十九日(火曜日)    午前九時一分開会     ─────────────    委員異動  六月八日     辞任         補欠選任         村沢  牧君     梶原 敬義君  六月九日     辞任         補欠選任         藁科 滿治君     小川 敏夫君  六月十日     辞任         補欠選任         小川 敏夫君     藁科 滿治君      梶原 敬義君     村沢  牧君  六月十一日     辞任         補欠選任         藁科 滿治君     小川 敏夫君      村沢  牧君     梶原 敬義君  六月十六日     辞任         補欠選任         小川 敏夫君     藁科 滿治君      梶原 敬義君     村沢  牧君  六月二十八日     辞任         補欠選任         郡司  彰君     海野  徹君      阿曽田 清君     入澤  肇君  六月二十九日     辞任         補欠選任         海野  徹君     郡司  彰君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         野間  赳君     理 事                 岩永 浩美君                 三浦 一水君                 和田 洋子君                 須藤美也子君                 谷本  巍君     委 員                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 佐藤 昭郎君                 中川 義雄君                 長峯  基君                 森下 博之君                 海野  徹君                 久保  亘君                 郡司  彰君                 藁科 滿治君                 風間  昶君                 木庭健太郎君                 大沢 辰美君                 村沢  牧君                 入澤  肇君                 石井 一二君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    政府委員        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省畜産        局長       本田 浩次君        農林水産省食品        流通局長     福島啓史郎君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        食糧庁長官    堤  英隆君        林野庁長官    山本  徹君        水産庁長官    中須 勇雄君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 威男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○派遣委員報告食料農業農村基本法案内閣提出、衆議院  送付)     ─────────────
  2. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、郡司彰君及び阿曽田清君が委員辞任され、その補欠として海野徹君及び入澤肇君が選任されました。     ─────────────
  3. 野間赳

    委員長野間赳君) 公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  食料農業農村基本法案審査のため、七月六日午前十時に公聴会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野間赳

    委員長野間赳君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 野間赳

    委員長野間赳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 野間赳

    委員長野間赳君) 食料農業農村基本法案を議題といたします。  去る十五日、当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。  まず、第一班仙台班の御報告を願います。和田洋子君。
  7. 和田洋子

    和田洋子君 第一班につきまして、委員派遣の御報告を申し上げます。  野間委員長須藤理事谷本理事岸委員国井委員中川委員郡司委員風間委員及び私、和田の九名は、食料農業農村基本法案審査に資するため、去る十五日、宮城県に派遣され、仙台市におきましていわゆる地方公聴会開会し、五名の公述人から意見を聴取した後、質疑を行いました。  まず、公述要旨につきまして申し上げます。  最初に、天童市農業協同組合代表理事組合長土屋完治公述人からは、老齢化後継者不足が同時進行する中、農業者が希望の持てる農政展開を期待すること、四つの理念は高く評価しており、その実現のための関連施策の実施に期待すること、自給率目標国内農業生産増大を図ることを基本として五〇%を割ることのないようにすること、中山間地域対策については農村政策に踏み込んだ取り組みが必要であること、農村環境の果たす多面的機能発揮については国全体で考える必要があること、農業団体みずからが二十一世紀農業の確立に向けて取り組む必要があること等の意見が述べられました。  次に、栗っこ農業協同組合理事佐藤隆幸公述人からは、自給率低下に歯どめをかけるため、五〇%程度を目標として明示すべきであること、農業持続的発展には価格政策担い手への経営安定対策が重要であること、都市農村が一体となって農業農村多面的機能を守るべきであること、株式会社による農地取得を認めるべきではないこと、土地改良事業については、めり張りをつけ地域のニーズに沿ったものとすること、次期WTO農業交渉に当たっては、国内農業者が不利益とならないよう交渉に臨むこと等の意見が述べられました。  次に、農業者坂本進一郎公述人からは、米価の下落等により専業農家は極度の情緒不安定な状況にあること、新基本法案消費者食品産業等言葉が躍っていて農業の位置づけが見えてこないこと、食料主権を回復し自給率は五〇%を基本とすること、優良農地だけではなく農地のすべてを確保すべきであること、農業経営の安定のため、転作作物については米並み所得補償をしてもらいたいこと、中山間地域への直接支払い導入評価できること、稲作経営安定対策よりデカップリングを実施してもらいたいこと、次期WTO交渉に向けて新基本法の中に所得補償制度を明記すべきであること等の意見が述べられました。  次に、農業者高橋良蔵公述人からは、新基本法においては大規模農家小規模農家に差をつけないでほしいこと、中山間地域耕作放棄人口の減少が集中していることから、条件不利地域に対して大胆な政策を期待すること、労働者農業者の生涯所得の格差が大きく、農産物価格保証ができないのであれば、年金対策を織り込んでもらいたいこと、主食である米を中心とした日本型食生活のよさを積極的に教育すべきであること、転作作物としての飼料米が認知され、作付できるようにしてほしいこと等の意見が述べられました。  最後に、食糧・農業を考える宮城各界連絡会世話人の大松澤照子公述人からは、国の独立と食料自給は密接な関係があると考えていること、自給率向上を図るため、自給率目標に当面五〇%という数値とその実現のための具体策を明記してほしいこと、食料自給率低下の原因とされる国民食生活変化学校給食等を通じて政策的に誘導されてきたこと、食料輸入依存政策を転換すべきであること、国産農産物安定供給確保のために農産物生産費補償を盛り込むべきであること等の意見が述べられました。  これらの公述人意見に対し、派遣委員より、新基本法に示された政策方向性自給率向上のための方策として、供給が不足する農産物等生産振興地域ぐるみで取り組むための条件国民食生活変化自給率低下の最大の要因とすることに対する見解株式会社耕種農業への参入に対する見解生産調整に対する認識、所得確保されない状況のもとで多面的機能発揮される可能性、中山間地域に対し講ずべき施策農村における女性の参画等広範多岐にわたる質疑が行われました。  なお、会議内容速記により記録いたしましたので、詳細はこれによって御承知願いたいと存じます。  以上で報告を終わります。
  8. 野間赳

    委員長野間赳君) 次に、第二班福岡班の御報告を願います。三浦一水君。
  9. 三浦一水

    三浦一水君 第二班につきまして、委員派遣の御報告を申し上げます。  岩永理事佐藤委員長峯委員森下委員小川委員久保委員大沢委員梶原委員阿曽田委員及び私、三浦の十名は、食料農業農村基本法案審査に資するため、去る十五日、福岡県に派遣され、福岡市におきましていわゆる地方公聴会開会し、四名の公述人から意見を聴取した後、質疑を行いました。  まず、公述要旨につきまして申し上げます。  最初に、宮崎酪農業協同組合連合会専務理事殿所啓男公述人からは、食料農業農村基本計画について、食料の需給や国内生産目標等は長期的かつ具体性を持ったものであるべきである、食料自給率目標を明確にしてほしい、農産物価格の安定は最重要課題であり、農産物価格が急落した場合の緊急措置についてセーフティーネットの設定を強く求める、中山間地域対策は原則として地域機能集団対象にするのが望ましい、九州は台風常襲地帯であるので、災害対策に対する特段の強化・充実をお願いしたい旨の意見が述べられました。  次に、福岡県食とみどりの会副会長の林宏公述人からは、食料自給率向上国内農業生産増大という明確な農政方向性を示したことの意味は大きいが、具体化への道が全く見えてこない、担い手確保育成のため、幅広く多様な担い手対象施策を講ずべきである、厳しい農地転用の規制、耕作放棄地活用等により、少なくとも五百万ヘクタールの優良農地確保すべきであり、また、株式会社農業参入は認めるべきではない、地域への直接支払い導入に当たっては、地域農業振興農村活性化を目的とし、中山間地域及び平地を含めた地域対象として、農業農村振興計画に基づく一括交付金方式とすべきである旨の意見が述べられました。  次に、九州大学農学部教授村田武公述人からは、多面的機能発揮が第三条に明記されたが、中山間地域等にとどまらず、農地と景観の保全に大きな役割を果たしている平たん地を含め、各種政策具体化する関係法の整備を進めるべきことが課題となっている、最も危惧するところは農産物価格の形成と経営の安定に関する第三十条であり、生産費を補てんする最低価格保証がないことが担い手に展望を失わせている、農産物の輸出入に関する第十八条は、その趣旨において、ガットのセーフガード条項さえ発動できなかった現行農業基本法第十三条と変わらない旨の意見が述べられました。  最後に、九州大学農学部教授横川洋公述人からは、生物多様性に関する規定が不十分であること、直接支払い対象になる農業とそうでない農業とを区分する境界として基準値という考え方が必要であること、生物多様性計量評価手法の開発が我が国でも必要であることの三つを留保条件として、農業発揮する生物多様性機能人類存続のために果たす役割重要性等にかんがみ、その確保について条文に書き加えるべきである、また、国は第三条の農業多面的機能に対する直接支払いと、第四条の農法の改善、転換に対する政策的支援を積極的に行うべきである旨の意見が述べられました。  これらの公述人意見に対し、派遣委員より、農業基本法に対する評価、新基本法による新たな食料農業農村政策実効性食料自給率低下要因、安全な食料供給実現するためのあり方市場原理導入経営安定方策株式会社農地取得に対する考え方多面的機能に対する国民の期待、中山間地域等に対する直接支払いあり方等広範多岐にわたり質疑が行われました。  なお、会議内容速記により記録いたしましたので、詳細はこれによって御承知願いたいと存じます。  以上で報告を終わります。
  10. 野間赳

    委員長野間赳君) これをもって派遣委員報告は終了いたしました。     ─────────────
  11. 野間赳

    委員長野間赳君) 次に、食料農業農村基本法案につきまして、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  12. 長峯基

    長峯基君 おはようございます。自由民主党の長峯基でございます。  私は、農業県といいますか、食料供給県といいますか、宮崎県の出身でございますけれども、この食料農業農村基本法を何度か読ませていただきました。大変よくできているというふうに評価したいと思います。三十七年を経まして時代も大分変わってまいりました。このような基本法ができたこと、そしてこの法律に基づいて十分な政策を実行していただく、そのことが私は非常に大事ではないかと思っております。  三十分の時間でございますから、何点かに絞って御質問申し上げたいと思います。  たまたまきょうは農業新聞の一面で、日本型食生活という記事が出ておりました。ちょうど私が質問しようと思ったことが書いてございますのでタイムリーだなと思ったのでございますが、まず食料自給率について違った角度から大臣に御質問したいと思っております。  ただいま仙台あるいは福岡における公聴会お話がございました。今、国民がひとしく食料自給率について心配をいたしておりますけれども、私はこの四一%という自給率を考える前に、いま一度私たち食生活について国民全員が反省も含めて考えてみることがあるだろうと思っております。  私は、昭和十六年の生まれでございますから、ちょうど戦争の前後、大変貧しい生活を送りました。食生活が大変苦しい時代でございました。大臣はたしか二十八年、ちょうど私と一回り違うわけですね。お若いのに大したものだと思います。大臣がお生まれになって物心ついたころは多少貧しかったかもしれないけれども中学校高校とだんだん豊かになった時代だと思います。  それで、当時はもったいないという言葉を私は、おやじやおふくろ、じいちゃん、ばあちゃんから、とにかく物を大事にしろ、御飯を残してもったいないことをするなという盛んな教育を受けましたので、今の飽食時代、例えばパーティーが毎晩のようにありますが、あるホテルの支配人に聞いてみましたところ、三〇%から四〇%が捨てられるそうでございます。こんなぜいたくな国民があるだろうか。我々の世代、終戦前後に生きた世代は、今のこの日本飽食というのはまことにもったいないという気がしてなりません。  それで、食料自給率についてちょっとお伺いいたします。  昨年の農業新聞でも出ておりましたし、これは農林省の発表だそうでございますが、まず朝食和食にする。御飯みそ汁にホウレンソウのおひたしに焼き魚、納豆。単身赴任生活をしておりますとこんなごちそうの朝食は到底食べられませんけれども、これで食料自給率が五六%、熱量が五百六十一キロカロリーだそうでございます。洋食のトーストパン、ソーセージ、オムレツ、牛乳、野菜サラダ、これで熱量が五百五十五キロカロリー、自給率がわずかに一四%でございます。大変おもしろいデータだなと思うのであります。  それから、先ほどお話を申し上げました食べ残し、昨年の農業白書では、日本家庭から出る食べ残しは年間三百四十万トン、これは六百五十五万人分、香港の全人口を一年間養える量であるというふうに農業白書に書いてございます。  日本型食生活和食への勧めと同時に食べ残しのぜいたく、この二つを何らかの形で、厚生省あるいは農林省文部省等の御努力で少し日本人の考え方を変えていくだけでも私は食料自給率は五〇%にすぐ行くのではないかなと、こういう感じがしておるのでありますけれども大臣の御所見を伺いたいと思います。
  13. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) おはようございます。  今、長峯先生からお話がありましたが、私もかすかに外米の記憶、それから学校給食での脱脂粉乳、余りいい思い出がないわけでございますが、その後、経済成長とともに我が国がお金を出せば世界じゅうからいろいろおいしいものが手に入るという、ある意味ではこれはいいことなのかもしれませんけれども、その結果として自給率が大変下がってきたということについてはやはり農政上問題があるのではないか、また国民生活上も問題があるのではないかということで、新しい基本法十六条にその趣旨のことが書かれておるわけでございます。  先生指摘のように、家庭食料、おうちの中での食料でも約五%が捨てられておる、全体としては業務用を含めると大変な食料が食べ残し、ごみとなって捨てられているということでございまして、これを何とかしていかなければならないということであります。  もう一つは、食生活変化によりまして、いわゆる日本型食生活という世界でも冠たる非常に健康にいいヘルシーな食生活が、どうも脂質の向上、肉を食べるなとか脂をとるなというところまでは申し上げませんけれども、やはり肉ということになると、えさはほとんど輸入だということで、これも自給率に影響を与えるということで、農林省厚生省そして文部省、協力し合いまして、我が国食生活を、自給率向上、そしてまたヘルシーな日本型食生活をもう一度復活させようということで努力をしておるところでございます。  これは、啓蒙普及、いろいろございますけれども、特に子供たちに対する日本型食生活理解というものが非常に重要であろうということで、有馬文部大臣にも大変御理解をいただきまして、文部省ともタイアップしながら日本型食生活普及といいましょうか復活といいましょうか、それに向けて努力をしております。  また、食を考える国民会議というものを通じた運動の展開等々も活用いたしまして、食生活改善日本型食生活普及に向けて、これは国民的に理解をいただかなければならない、国がこうしろ、ああしろと言うには限界がある話だろうと思いますので、国民皆様方の御理解をいただくべく、政府としても、また地域あるいは消費者サイド生産者サイド挙げてみんなで努力をしていこうというふうに考えて、新しい基本法の精神の一つとして自給率向上、そしてまた日本型食生活普及努力をしていきたいというふうに考えております。
  14. 長峯基

    長峯基君 次に、後継者問題も含めまして人材の育成ということについてお聞きしたいと思っております。  農は国の基と言います。私はそのために基という名前をつけていただいたのでございますが、農業についてやっぱり教育が非常に大事だと思うのであります。その教育の場、私どもは小さいころ、今でいう家庭菜園というものでしょうけれども、ほとんどの家庭野菜をつくったり果物をつくったりお茶を植えたりしていたわけでございます。今の都市部ではそういうことは想像もできないことでありましょうが、子供たちにどういうふうな教育をするかということは、今、大臣お話にもございましたが、非常に大事なことだと思っております。  それで、教科書を少し調べてみましたけれども農業についての記述というのが非常に少ない。例えば、中学校教科書で茨城県岩井市のレタスについて、なぜレタスを選んだのかわかりませんが、これが一ページございます。それから北海道の、大臣の足元でございますが、広大な北海道農牧業、盛んな畑作と酪農という項目がわずかに半ページ中学校教科書にあるというようなことでございます。  もちろん、今回この新農業基本法ができれば、それを中心として食料自給率あるいは食生活問題等新しい教科書づくりというものが行われるであろうと思いますけれども、今日までの小中学校における教育、私は非常に量が少ないのではないかというふうに感じておりますが、文部省の御答弁をお願いします。できるだけ簡単に、時間がございませんので。
  15. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 小中学校におきましては、社会科という教科がございますが、そこで農業等につきましても子供たちにその大切さあるいは農業への正しい理解という学習をしているわけでございます。  そこで行われておりますことは、小学校の例えば五年生で地域産業等を学びますが、地図とか資料等を用いまして、我が国農業自然環境と深いかかわりを持って営まれていること、国民食料確保の上で農産物生産が大切であること、農業に従事する人々が品質改良あるいは消費者の需要にこたえた安全な食料生産のためにさまざまな工夫をしていること、あるいは国民生活を支える食料生産意味について考えること等を学習することにいたしております。それから、中学校におきましては、地理という授業がございますが、そこでただいま申し上げましたような小学校での学習をベースにいたしまして、全国地域地域の特色ある農業状況等について学習することになっております。  今、先生から教科書についての記述が少ないのではないかという御指摘がございましたが、私どもここに調べてまいりましたが、小学校社会科、例えば五年生では百八十ページ前後の教科書でございますが、その中で農業に関して記述してございますページは四十ページ前後ございます。五社ほど調べてまいりましたが、五社につきまして同様にそのような記述になってございます。それから、中学校につきましては三百ページ前後のページ数、これは数社とも同様でございますが、その中で二十数ページ記述になっているというのが現状でございます。  いずれにいたしましても、この農業というものが大切であるということを私ども小中学校の段階からきちっと教えていくということは大切なことだと考えております。
  16. 長峯基

    長峯基君 もちろん、教科書記述と同時に、教職員の資質の向上といいますか農業に対する理解食料に対する理解、こういうことも今後ぜひ積極的にお進めをいただきたいと思います。  それで、実は私は宮崎県の都城市というところでございますけれども、たまたまこの四月に私の友人が、同級生でございますが、農業高校校長になりました。せっかく質問の時間を与えられましたので、先々週ちょっと校長に会いに行きまして、今どんなことを農業高校はやっているんだという話を聞きました。びっくりいたしまして、なかなか進んでいる、いいことをやっているなと思いましたのでちょっと御披露します。  宮崎県立都城農業高校全国農業高校は約四百近くあるようでございますけれども学社融合推進モデル校ということで、平成九年度と十年度で、地域小中学校あるいは老人クラブ婦人会、そういうところにオープンにいたしまして、そして地域との連携の中で公開授業あるいは対外的な交渉、例えば先進農家の宿泊実習その他いろいろやっているのであります。繊維科、もう最近ではほとんどないようでございますけれども、こういうところでも染色の実習とかをやりまして非常に好評だった。草木染めの体験、こういうものを地域婦人会の方にお集まりいただいて、学生と指導官と地域の人と一緒にそういう染色の授業をやった。あるいは小学生あたりにサツマイモの植えつけあるいは大豆の収穫、そういうものをいろいろと地域の人たちと学社融合ということで推進しているということでございます。  後ほどもちょっとお話ししますけれども、やっぱりそういった農業理解してもらう、あるいは農業生産に喜びを覚える、そういう体験学習といいますか、学習というふうに大げさに言うこともないと思いますけれども、そういうことを小さいときから体験するということ、これは非常に私は大事なことではないかと思いますけれども文部省としてはどのようにこれをとらえておられるか、御答弁をお願いしたいと思います。
  17. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 特に、高等学校の中でも農業、工業といったいわゆる専門高校につきましては、ただいま先生、学社融合という言葉がございましたが、地域との連携を図って学習を進めていくということが大変重要だと思っておりますし、特に実践的な体験を通した学習というものは大変重要だと考えております。  御紹介のありました都城農業高校は、宮崎教育委員会の指定を受けまして、学社融合推進モデル校としてこうした取り組みをいたしているわけでございます。例えば、地域の人たちを講師として迎える、あるいは地域先進農家に学生たちの体験実習の場を提供していただくという形での連携、それから学校が持っております機能地域に開放する、紹介がございましたけれども、染色の授業に参加させる、あるいは学校農場を開放するといった、地域と学校との相互の関係学習を進めていくということは大変重要なことだと思っております。  私ども文部省も国の指定事業といたしまして専門高校等と地域との連携推進事業というのを最近開始いたしましたが、それに先駆けて宮崎県の方ではそのような取り組みをされているということでございまして、私ども、こうした高等学校の取り組みは大変すぐれた実践であり、全国的にもこうした取り組みを紹介してまいりたい、こんなふうに思っておるところでございます。
  18. 長峯基

    長峯基君 また後ほど農水省にはこの問題についてはお伺いします。  次に、今回の基本法の中で、グリーンツーリズムの一環でございましょうが、都市農村の交流というのが第三十六条で出てまいります。私はこれは大変すばらしいことだと思いますし、積極的に進めるべきだと思っております。この都市農村の交流で、特に子供たち、小学生とか中学生は夏休みが長期的にあるわけでございますから、この子供たち都市農村の交流を積極的に進めるべきではないか。これは文部省農林省、連携してぜひお進めいただきたいと思っております。  今、山村、農村の学校では子供たちが少ないのでどんどん閉校になっております。校舎がいっぱいあいておりますから、こういう校舎をリフォームして、必要なのは水洗便所とシャワーだと思いますが、そういう形でのリフォームをして都市子供たちを積極的に夏休みに農村に行かせる。そこでは植物採集とか昆虫採集とか、いろいろ農山村にある文化とか大事なものがあろうと思いますので、そういうことに積極的に参加をさせる。これは、もちろんその地域地域教育委員会なりのカリキュラムというものをつくって、子供たちが農山村で十分自然を満喫しながら体験ができる、そのようなことを積極的に進めるべきではないか。  最初お話ししましたように、我々の子供の時代は黙っていてもそういう場を与えられたわけでございますけれども、今、都市子供たちにはそういう自然と触れ合う体験の時期もないと思いますので、そういうことを積極的に進めるべきではないかなというふうに思います。文部省、どのようにお考えでしょうか。
  19. 富岡賢治

    政府委員(富岡賢治君) 先生指摘のとおり、いろんな自然体験や生活体験が豊富な子供ほどモラルとか正義感とかというのが身につくというような数字的なデータもございます。  私どもとしましては、平成十四年に完全学校週五日制というものが実施されますので、その三年後の完全学校週五日制に向けまして地域でいろいろ子供を育てる環境を整備しようということで、緊急三カ年戦略ということで全国どもプランというのを立てまして、いろんな体験活動の機会をふやそうということで今整備を進めておるところでございます。  その一環としまして、先生指摘のような御趣旨で、例えば都会の子供たちを、既設の農家とかユースホステルとかそういうところを借り上げさせていただきまして、できるだけ長期、二週間以上の長い期間その地域生活しまして、いろいろな農業体験とか自然体験、地域の伝統行事への参加を進めようということで、このたび子ども長期自然体験村というような事業を出発いたしました。農林水産省の大変な御協力をいただきまして、今、全国の五十地域でそのような活動を進めておるところでございます。先生の御趣旨のような形で進めてまいりたいというように思っております。
  20. 長峯基

    長峯基君 農林省はぜひ積極的に文部省と話し合ってお進めいただきたいと思います。時間がございませんので御答弁は結構でございます。  次に、理事会の御了解を得まして、宮崎県でウッドピア諸塚という「二十一世紀に架ける国土保全奨励制度」、多少宣伝になりますけれども、きのう、おととい刷り上がったそうでございますので、ごらんをいただきたいと思います。  この十一ページに「国土保全を支える担い手確保」というのがございます。実は、この法律では第三条「多面的機能発揮」というふうになっておりますが、この多面的機能を国土保全奨励制度で宮崎県では今実施をいたしております。  諸塚村というのがございます。ウッドピアというのは、ウッドというのは森、ユートピアのピア、理想郷、合成語でございますけれども、森林理想郷、ウッドピア諸塚という、これは国土保全森林作業隊という名前で最初スタートいたしました。  諸塚村というのは、九州の背骨にある山林、村の面積の九五%が森林でございますけれども、総人口が昭和三十五年のピーク時には八千四十八人でございましたが、現在は八十八の集落、二千四百五十九人、ほとんど高齢者でございます、これはどこの県でもこういう過疎地域があると思いますけれども。ここで財団法人ウッドピア諸塚、諸塚村と諸塚村の森林組合、それから日向JAの三者がお金を出し合いまして、第三セクター方式でございます。  これはおもしろいなと思いますのは、今、職員が二十五名、平均年齢が二十七・四歳でございますけれども平成十七年度までに三十名を目標としてウッドピア諸塚というのが計画されております。  この財団法人の事業内容でございますが、例えば森林の適正管理、造林、育林、間伐、それから森林の管理道の整備、公園・集落環境の整備、あるいは新規農林産物の開発、ハーブ園をやったりシイタケの栽培をしたり、それから畜産振興センターの管理運営、こういうことをやるわけでございます。つまり、若い人をここで採用して、定年までちゃんと給料も払います、退職金も出します、年金も上げますと。そのかわりこの村のために、ここの場合は林業でございますが、村をしっかり守ってくださいよ、こういう第三セクターでございます。  農山村の振興というふうなことがこの法律でも言われておりますが、つまり人がいるということが非常に大事なんです。山村に人が定住するということが基本的に一番大事なんです。どんなに農産物所得を上げようとしても中山間地では条件が悪い。そこで中山間地の所得補償も出てくるんだろうと思いますが、お金を上げるからそれでいいじゃないかという発想では、生活保護をするから農山村に住みなさいと言ってもそれは無理なんです。  ですから、若い人が定住する、そういう制度をつくるということは私は非常に大事だと思っておりまして、このような例が全国いろいろあると思うのでありますけれども、この宮崎県の諸塚村で試みられております国土保全を支える担い手確保、約三十名を目標に今そういう基金をつくりましてやっているわけでございますが、林野庁としてどのような評価をしておるか。  実は、御存じのとおり宮崎県の松形知事、八十一歳で今度六期目の挑戦でございますけれども、元林野庁長官、私も県議会議員を十六年しましたが徹底して林野行政についてはたたき込まれました。いかに山が大事であるかということです。もう釈迦に説法でございますからそのことには触れませんけれども、しかしこの試みは、今二十五人の隊員というか、若い人たちで非常に意欲的に使命感を持って頑張っております。こういう若い人たちを各町村で育てていくということは将来の二十一世紀の山村の担い手としてすばらしいシステムだと私は思うのでありますけれども、長官の御見解を伺っておきたいと思います。
  21. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生お話しのとおり、ウッドピア諸塚は諸塚村と諸塚村の森林組合、それから日向農業組合の三者の第三セクターとして、若い林業従事者の通年雇用を図るための組織として設立され、あわせてハーブ園の経営等々、農作業等にも従事しておられるわけでございまして、林業と農業を組み合わせた地域の通年雇用の機関として全国でも大変模範的な活動をしていただいておるわけでございます。  私ども、こういった活動に対して、地方交付税による出資に対する支援、それから林業従事者等の研修、また林業機械等の導入に対する補助を行っておりますけれども全国でも諸塚の例を参考に北海道を初め十八地域でこういった第三セクターが設立されておりまして、これらについて今後とも積極的に支援いたしますとともに、効率的で健全な運営が図られるようにまた御相談してまいりたいと考えております。
  22. 長峯基

    長峯基君 時間がございませんので、これで一応終わりたいと思います。  戦後、どんどん大都市、工業地帯に農村人口が流出してまいりました。そして、一応今ピークを迎えていると思うのでありますけれども、これからは農山村に人を帰す。例えば、大学を持っていくのもいいでしょう。大臣はまだお若いから将来、総理大臣になられる可能性もありますので、この都市に集まった人口をどうやって地方に帰していくかという政策がこれから一番大事な国の政策ではないか。人がいなくなったら死んでしまうんです。そして、断水が起こるとすぐわかると思うのですけれども、今この文化生活の中でもし断水が起こったらトイレに行くこともできないんです。農村なら外がいっぱいありますけれども。  水というのはどこから来るかというのを考えると、山を大事にしなきゃいけない。これは釈迦に説法でございますが、どうぞそういう意味では山村に人を帰す、そういう政策にぜひ積極的にお取り組みをいただきたいとお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  23. 国井正幸

    国井正幸君 自由民主党の国井正幸でございます。  これからの農政展開していく上での基本的な方向性についてぜひこの機会にお伺いをしたい、このように思っています。  目下、政府から本院に対して新しい農業基本法、いわゆる食料農業農村基本法が提案をされておるわけでございまして、その提案理由の中で大臣は、これまでの農政というものは成果を上げてきた面がある一方で、国民が不安を覚えるような事態が生じるに至っている、こういうふうに書いてあるわけです。  何が問題か、こういうことでこの記載を読んでみますと、一つ食料自給率低下をしてしまった。二つには食生活変化食料需要に対応した国内供給体制が不十分である。そして、農業者の高齢化やリタイアが進む中で担い手確保がこれまた不十分だ。そして、農地面積が減少したり、あるいは耕作放棄地がふえて農地を有効に活用する体制もこれまた不十分だというんです。さらには、農村の活力も低下をして地域社会の崩壊への危惧さえ表明されておるわけでございます。そして、現状のままで推移すると、国民から期待される役割を果たすことは困難であるので、これまでの傾向に歯どめをかけて、国民は安全と安心、農業者は自信と誇りを持つことができるような新たな政策展開を図りたい、こういうふうなことなんです。  そこで、ひとつ大臣にお伺いをしたい、このように思うんです。こうなった限りにおいては、内外の諸情勢がいろいろ大きく影響したというのは当然だというふうに思いますが、一言で言うなら、これまでの基本法の理念、つまり農業と他産業との所得の格差を是正する、このことが不十分だったのではないのか、つまり所得格差を埋めることができなかった。このことがこういう状況を生んでいる最大の原因ではないのかと私は考えているんですが、大臣はこれらの問題についてどのようにお考えでしょうか。
  24. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現行農業基本法は、条文に書いてあるとおり、農業者あるいは農村地帯をどうやって都市並みにしていくか、生産面あるいは生活面を含めてそれがポイントであったわけであります。  プラス、マイナス両方あるわけでありまして、うまくいった結果といたしましては、農家所得が一般勤労者よりも上回るようになった。これは農業だけではないトータルの農業所得でありますけれども、そういう面もありました。それから、これは農業の持つ宿命的な要素だと思いますけれども、やはり自然相手、生き物相手である以上は、工場の生産向上のような、幾何級数的にふえるような生産向上というものがどうしても農業の場合にはできにくくて、生産向上はしたのでありますけれども、いわゆる工業との間の生産性の格差を埋めることができなかった。そして、生活面におきましても、下水道整備が象徴的でありますけれども生活基盤が依然として都市並みになることができなかった、こういうような農業農村の現状が否定し得ない現実として総括せざるを得なかった。  そしてまた、先生指摘のように、一般消費者の方は非常に所得等が伸びた結果、外国から必要なものは輸入すればいいじゃないかというようなことで、自給率低下し、そしてまた食生活も欧米並み食生活ということで、結果的に日本型食生活が失われつつあって、これもまた自給率低下に大きな影響を与えたということが一般的な総括として言えるのではないかというふうに思っております。
  25. 国井正幸

    国井正幸君 それは、いろいろ理由があるのは私も承知をするんです。こういうふうになったという状況の分析は十分できているように思うんですが、原因というんでしょうか、ここに対する掘り下げがどうも足らないのではないかな、私はそういう気が今もって率直のところしております。  しかし、そうはいいながらも、今、大臣がおっしゃられたように、それなりに成果を上げてきたところもある。我が国としても無防備で来たわけではないわけです。特に、所得との関係ということで見ると、いかにして所得確保するか、そういう観点からすると、一つは新品種や新技術を開発して、単位面積当たりの収量を上げる、こういう努力もされてきました。これは、数字で見ても、例えば米については大体三割ぐらいふえているし、あるいは麦については七割ぐらいふえているんです。三十五年当時と現在を見ると、ほかに比べてはまだまだ少ないと言われながらも、しかし七割ぐらいふえている。あるいは牛乳の搾乳量です。一頭当たりの搾乳量なんか見ても七割ぐらいふえている。そういう意味では、そういう努力をしてきたのは一つはわかります。  それからもう一つは、所得確保するという意味価格支持政策もとってきた。つまり、数量掛ける単価、これがいわゆる農業生産額の総量になるわけですから、そういうことをやってきたわけです。したがって、数字で見てみますと、もちろんこれは物価の上昇というのもあるわけでありますが、昭和三十五年当時は農業生産高が二兆一千億程度であったわけでありますが、平成八年度では十一兆六千億になった。これは一つはそういうことだと思うんです。  それからもう一つは、やっぱり流通政策等もそれなりにやってきて、いかにして生産コストを下げるか、こういう努力もやってきたというふうに思うんです。しかし、結果としては、ほかの産業の伸びが大きかったということもあるんでしょうが、昭和三十五年当時はGDPに占める農業のシェアというのが九%あったけれども、八年度には一・四%ということで、減少したということなんです。やっぱりほかの産業と比べるとなかなか生産性の伸びがそこまで追いつけなかった、こういうことになるんだろうというふうに思うんです。  それはそれとして、所得との関係で見てきますと、さっき大臣は農家所得を言いました。大臣がおっしゃられたとおり、農家所得は、それは兼業農家のいわゆる他産業で働いていただく賃金等も入っているわけですから、農家所得だけではなかなかきちっとした比較にならぬと思うので、昭和三十五年当時の農業就業者一人当たりの農業所得、これが幾らあったのかなと、こういうふうに見てみますと、一日五百三十九円だったんです。この当時の製造業労働者、これは規模によってありますけれども、一番小さい区分である五人から二十九人という区分で見てみると五百四十二円でありました。ほぼ遜色がない状況でありました。ところが、それを同じとり方で、平成八年度で見ると、農業者農業所得というのは五千六百四十六円、一日。ところが、製造業労働者の賃金というのは一万三千四百五十二円だということで、製造業労働者の賃金というのは農業者の二・四倍。逆に製造業労働者を一〇〇とした場合はどの程度かというと、四二%。半分にも満たない、こういう状況なんです。  いろいろ何だかんだ言ってみても、要はやっぱり所得があるのかないのか、その職業についておって、しかも専らそれに従事をしている者がそれだけの所得確保できたのかできなかったのかというのが私は大きな問題だろうというふうに思っているんです。したがって、これから農業振興を図る、農業離れを食いとめる、いろんなことを言うんですが、こういうふうな状況が続くとなると、なかなかその後に続く者が少なくなるのではないか、こういうふうに思うんですが、大臣としての御所見はいかがでしょうか。
  26. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) とにかく我が国にあります五百万ヘクタールを何としても維持していかなければならない。そのためにはその四割を占めております中山間地域、先ほどもお話がありましたけれども、そこでの定住あるいはまた耕作を続けるというようなことが非常に大事なわけでございます。そういう意味で、先ほどの総括にちょっと関連しますけれども、実は農地の流動化が余り進まなかったということも過去の一つの反省材料であろうと思っております。  なぜ進まなかったかということに関しては、所有者たる農業者のインセンティブというものがあったわけでありますけれども、何とか農地を集積していく、そのためには流動化をしていくということで、中山間地も含めましていろんな形の営農形態というものを考えていかなければいけないのではないか。そしてまた、直接支払いといったような定住農地農地として保持するためのいろいろな施策も講じていかなければならないというふうに考えておりますし、また新規就農者に対する支援等々もより積極的にやっていかなければならないということで、まさに自給率あるいは農業の安定的な国内生産基本とする国民に対する農産物の安定的な供給といった基本理念を何としても実現していくためにもいろいろな施策を講じていかなければならない。一番大事なポイントではないかというふうに考えております。
  27. 国井正幸

    国井正幸君 私、ここに昨年の九月、農林水産省が出した資料で、「イギリスにおける農業政策の変遷等について」というペーパーを持っているんです。時間の関係で余り詳しくこれを質問もできないんですが、要は、やっぱりイギリスの中でも自由貿易ということでやってきた。そして、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じて大変な食料不足に陥ってきた。その反省に立って、不足払い制度を中心にして自給率向上に努めてきた。そして、EECが発足したけれども、そこには最初からイギリスは参画をしなかった。なぜしなかったか。やはり、国内農業保護がECの共通農業政策の中で少しだめになるのではないか、こういう危惧を持っていたようなことが記載されているんです。しかし、最終的には、ECの一員としてEC農業の共通政策の中で我が国よりもずっとずっと、これを見てみますと、昭和三十六年当時は我が国が七五%、穀物で自給率があって、イギリスは五三%であったものが、現在我が国は二九%、これは平成八年のデータですから二九ですが、二八%に落ちた。一方でイギリスは一三〇%に上がってきている。そういう意味では、いかに不足払い制度等を含めて価格支持政策というのが重要なのかと、このように私は思っています。  それで、これを余り議論する時間がなくなっちゃったので次に行きたいというふうに思うんですが、これまでは、正確に言うと九三年のWTO協定を受け入れるまでは、我が国にあっては国民の合意と財政的な裏づけがあれば多様な政策というのを選択することができたと思うんです。ところが、WTO協定を批准した、こういうことからすると、もう一つハードルができた。それは国際的な規律性というんでしょうか、このWTO協定との整合性というものも考えざるを得ない、こういうことになったと思うんです。WTO協定の中ではとにかく価格支持政策のようなものはやめるか削減しよう、こういうふうなことがうたわれているわけです。  いろいろWTO協定に対して我が国としても主張したい点あるいは改善したい点はあるというふうに思うんですが、この価格支持政策との絡みで、今後WTO協定に対して再協議があるわけでありますが、どんな方向で再協議に臨もうとしているのか、今、大臣としてのお考えがあればお聞かせをいただきたい、このように思います。
  28. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先日公表いたしましたWTOに向かう我が国考え方を提案という形でまとめさせていただきましたが、この中の三つの大きな柱というのは、農業の果たす多面的な役割、そしてまた多面的な役割の一部でありますけれども、あえて一項目立てました食料の安全保障、そして輸出入国間のバランス、これは三つのポイントになるわけでありまして、それを実現するために我が国としては国境措置をきちっとやらなければいけない。それから、国内支持というものもやはり必要だということを主張していきたいというふうに考えてはおります。  その場合に、WTO協定と全く相反するようなことはできませんので、我が国としては我が国に必要な施策としての国内支持というものが黄色の政策であってはならない、緑の政策にしていかなければならないということで、これから各国間で主張をしていかなければならないというふうに考えておるところでございます。まさに、先生指摘のように、国民的合意のもとで次期交渉に取り組んでいかなければなりませんので、そういう意味で、国際的な規律上も正当に位置づけられる形での価格支持というものを推し進めていく努力をしていかなければならないというふうに考えております。
  29. 国井正幸

    国井正幸君 いろいろWTO協定の中でも、特に輸出国と輸入国との権利と義務のバランスを欠いている点とかいろいろあると思うんですが、価格支持政策の部分について、それは輸出国と輸入国とで、あなた方、輸入国に対してだけ輸入義務を課しておって、では不足したときに輸出はどうなのと、そういう部分とか何かについてはそれなりの迫力を持って物を言えるというふうに思うんです。  ただ、私が心配するのは、この価格支持政策の部分については、どうも全体的に押し切られはしないか、そういう方向にあるのか、これは我が国としても何としても頑張ってもらわなくちゃなりませんが、しかしこれは相手のあることなんです。合意に達しないということになると今のような状況が続くということなんです。今のような状況が続くということは、AMSの削減目標等も定められておって、やっぱりそれは削減の方向なんです。横ばいないしふやす方向には決してない。  だから、そこで一番問題なのは、いろんなことでこれから国内農業振興してその多面的な機能発揮させる、そして国民には安全と安心を、農業者には自信と誇りを持ってもらう、こういうことでやるんですが、この価格支持政策が削減の方向になってくると、冒頭御質問させていただいたように所得との関係が出てくるんです。農業所得との関係が出てきます。  そうすると、要は、産業として成り立たないというか、そこに従事をしてもそれで飯が食えない。それもあっちもこっちもやっているからアブハチ取らずで飯が食えないということは世の中にあります。いろんなことをやっているから、まとまったものができないから、三日坊主で、そういうことは世の中あるけれども、専らそれに専念をしていって、しかも所得が十分確保されない、こういうことになったらこれは後継者を見つけようといってもなかなか私は難しいというふうに思うんです。  一番のポイントは、これからの国際化社会の中で、WTO協定というのはできた、我が国もそれを批准した、これから直そうともしているけれども批准した。そういう中で価格支持がどうも下げられてくるのではないか。そうしたときに、価格支持が下げられてきたとするならば、それにかわる政策というのは我が国の中で、新しい農業基本法の中で何を打ち出すのか。ここがどうも私が話している限り、私の周りにいる方々ではなかなか理解できないと言うんです。持続可能な農業をつくるんだ、いろんなことを言っている。だけれども、ここぞというポイントが、価格支持政策は下げるけれどもそれにかわって、ではこれでもってそれを埋めていってこれを伸ばしていくんだというところがどうも見えないという批判が率直のところあるんです。  これらに対してやはり単純明快にもっとすぱっと打ち出すようなことが求められているのではないか、このように思うんですが、非常に難しい、大臣に対してもきつい質問かもしれませんが、その辺、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  30. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 次期交渉は、改革過程の継続ということですから、貿易の新しいルールをまたさらにつくっていこうということでございますけれども我が国としては、基本的に農産物というのはほかの鉱工業品のような価格決定あるいは貿易ルールにはなじまないんだということが多面的機能であり、食料安全保障であり、そして現行協定が輸出国と輸入国とのバランスがとれていないということを強く主張しながらやっていくわけであります。  この基本法におきましても、経営安定措置というものをきちっと講じていかなければならないということを条文上は明記しておるわけでございまして、そういう意味で四つの理念というのはまさに経済原則だけでは機能し得ない農業の果たす役割というものを諸外国にも理解をいただき、そしてまたその前提として国民的な合意を得て交渉に臨んでいくわけでございますので、二〇〇一年かその後かわかりませんが、次期ルールがスタートするときのAMSの削減の割合というものがどのぐらい下がるのかということを前提にした交渉ではない。必要なものについては我が国は、国内支持を含めて国境措置とかいろいろな施策を含めて我が国の立場、そして国際的な安定的な食料の貿易ルールというものを主張し、また現段階におきましては、前回と違いまして各国の賛同もいただいておるわけでもございますので、そういう意味我が国としての立場というものを提案としてお示しをし、今各国に御理解をいただく努力をしておる最中でございます。
  31. 国井正幸

    国井正幸君 ぜひそういう意味で、これは頑張ってもらいたいし、政府だけということではなくて我々もともに努力をしていきたいと思いますが、これは我が国としても主張すべき点はきちっと主張しなくちゃいかぬ。やはり、過去の反省というものも必要だと思うんです。政府部内においても農林水産省とあるいは通産省と必ずしも食料農業問題に関して同じ温度で見ているかというと、どうも私どもはそうではないような感じもする点もありますから、ぜひそういう意味ではこれは国民にとってかけがえのない食料というものであるし、あるいは国土保全ということでもあるので、ぜひ次期WTO交渉に当たっては不退転の決意でやってもらいたいというふうに思うんです。  しかし、それはそれとして、もう一つは、何度も言うようでありますが、そういう国際環境の中にあったならば、我が国としても、ではそういう中だからこういうことをやりますということで、もう少しめり張りのきいた具体的な政策が出ないものかなと。私もわかるんです。例えば、稲作経営安定化対策等についても、これまでの計画流通助成金をそういうふうに振り向けていくとか、いろんなことで政府部内で苦労されているのはわかりますが、生産者サイドから見て、価格支持制度が削減の方向になったときに、じゃそれにかわってそれを埋めていくものはこういうものを国内的には考えていきたい。これがやはり国際規律との兼ね合いで、我が国としては国内措置としてこういうことをやっていくんだということをもう少し明確にぜひ出していただいた方が、私は国民理解が得られるのではないのかな、このように思うんです。  それから、余計な話かもしれませんが、やはり今やられておる経営安定対策ということで、稲作経営安定化対策なり麦作安定化資金の問題、これはあるんですが、特に稲経の場合は過去三年間の平均をもって云々ということになると、これは長期的に今の水準を維持するということには必ずしもならないということは生産者の皆さんもよくわかっておるんです。そういうことからすると、なかなかこれぞという、これも決め手にならないというふうに思うのです。  結論めいたことの要望になると思いますが、ぜひ国民の合意形成を図りながら、所得補償の物の考え方というのをもう少しきちっと出していただきたい。そういう意味で、中山間地の所得補償というものがその一里塚になるというのであれば、私は大いに評価をしたいというふうに思うんです。しかし、これがすべてだということになるのであれば、我が国の平場の農業というのはなかなか大変な状況に陥ってしまう、このように思いますので、ぜひ大臣に、この提案理由の説明の中にあるように、国民には安全と安心を、農業者には自信と誇りを持てるような農政をぜひ積極的に進めていただくことを要望いたしまして、時間でございますので、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  32. 佐藤昭郎

    佐藤昭郎君 自由民主党の佐藤昭郎でございます。  まず、このすばらしい基本法、これは戦後四十年ぶりの大改革、農地改革以来の大改革でございますが、この基本法を作成され御提出になられました中川大臣初め農林水産省の幹部の方、またそれを支える多くの職員の方々に深く敬意を表する次第でございます。  顧みますと、一昨年の四月でございますか、木村委員会食料農業農村基本問題調査会が発足いたしまして、冬に中間報告、昨年の九月に最終報告、そして昨年の十二月には農政改革大綱、プログラム、こうやって順を追って、約二年半努力していただいたわけでございます。そして、今国会にはこの基本法以外にも十二本の関連法案を提出されたということでございます。通常の業務あるいは予算編成、またさらに省庁再編の大プログラムの中でここまでこぎつけられたわけでございます。本当に大変な御努力であったのではないか、こういうふうに思っております。  さて、このすばらしい農業基本法、第二条から五条に掲げる理念はすばらしいわけでございますが、先ほど長峯先生、そして国井先生からもいろいろなお話がございましたし、私も福岡公聴会に参りました。また、衆議院の国会審議もずっと伺ってきたわけでございますが、国民また農家の間にも、期待はあるんですけれども、不安もやはりあるのは事実でございます。理念はすばらしいんだけれども、一体しっかりとした実現ができるだろうか、政府や国会も本当に頑張ってくれるんだろうか、そういった不安もあることは事実ではないかと思います。  いろんなその背景があるわけでございますが、私は三点ほど御指摘したいと思うんです。  一つは、この基本法というのは二条から五条まで非常にすばらしい、また多面的な理念をうたっているわけでございますが、農業の多面的な機能発揮、持続的な発展と並行して、国内農業生産の拡大、自給率を上げていかなきゃいけない。EU諸国等では、御案内のように、自給率がフランスの一三四を初め、先ほどもお話が出ましたけれども西ドイツが九〇%、そういった高い自給率を達成した後、環境保全型農業への切りかえが行われている。これはある意味ではわかるんですが、我が国はこれを両方同時にやっていかなきゃいけない。  それからもう一つ申し上げますと、三十条、後で御質問申し上げますけれども市場原理導入価格の安定、ここら辺をどうやって具体的な政策でカバーしていけるか。  最後にもう一点だけ申し上げますと、先ほど国井先生からの話もございましたけれども、WTO交渉、ここで我が国基本法理念を具体化する政策我が国が立案したとしても、この枠の中での制限を受けるのではないかという、こういったいろんな背景がやや国民のあるいは農家の間に不透明感を生んでいるのではないかと思います。  したがいまして、この基本法をしっかりと実現していくためには、これからも関連法の執行、そしてまた次期通常国会には農地法や土地改良法の改正という大きな関連法もございます。そういったところをしっかりやっていただく。そして、まず何より予算が大事でございます。こういったところをしっかり確保していただいて、この基本法の理念を具体化していただけるように、ひとつ大臣の方にもよろしくお願いしたいと思います。これは答弁は結構でございます。  少し具体的に、この基本法の中で私が重要だと考える点について御質問したいと思います。  まず第一点は、第十九条に不測時における食料安全保障についての基本的な考え方というのが述べられているわけでございます。これは農政改革プログラムの中でも平成十一年から十二年度にかけまして具体的な対策内容、危機管理体制を構築するということで、省内で検討が始まっているというふうに思っておりますけれども、諸外国における不測時の食料供給、ヨーロッパ等でもさまざまな国がさまざまな形で法的整備も含めて危機管理体制を築いておられるわけでございます。  例えば、ドイツ等では食料供給保障法、これは原子力事故等が起きたときに四週間分一人一日一食というふうなものを備蓄する、そういったこと。ノルウェーは小麦粉一年分、これは平時の食料水準でございますが、こういったことで危機管理体制を一つつくっているわけでございますが、我が国はこの新食糧法で米百五十万トンの備蓄ということで一つの形があるわけでございますが、やはり到底これでは足りないと思うわけでございます。  現在までの検討の中でこの食料安全保障についての危機管理体制の構築がどういうふうになっているか、また具体的に現時点で示せるものがあれば伺いたい、こういうふうに思っております。
  33. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 食料安全保障についてのお尋ねでございます。  ただいまお話がありましたように、十九条では「不測時における食料安全保障」ということで一条規定を置いておりまして、不測の事態に対する対応策を講ずべしということを明記しております。  具体的にどのように対応するかという基本的な整理を申し上げますと、まず不測の事態というのをとらえるわけでございますが、不測の事態とは何であるかということですが、これは主要輸出国や生産国におきます不作のほか、輸出国の港湾ストライキなどによる輸送障害、さらには局地的な紛争あるいは事故によって生ずる世界の農業生産や貿易の混乱、こういったものが考えられると思います。これはもちろん程度によって我が国に対する影響がどのようになるかということは異なるわけでございます。  これに対する対応策といたしましては、まず基本的な条件整備といたしましては、何よりも平時におきます農地担い手農業技術といった国内における食料供給力の維持確保が重要でございます。その具体的な平時における食料自給あり方につきましては、まさに「食料自給率目標」ということで明確化をしていくというふうに考えております。また、国の内外におきます食料需給についての情報の収集・分析体制、特に国外の情報の収集、分析ということが極めて大事であると思います。それから、今御指摘のありました、三番目には備蓄の適切かつ効率的な運営ということが必要であると思います。  また、平時からだんだん周りの状況が厳しくなりますと、いわゆる不測の事態の程度が厳しくなりますと、生産面におきましては熱量効率の高い穀類などの増産、あるいはそれへ向けての生産の転換といったことが必要になりますし、流通面、価格面での法的措置、これをどうしていくかといった問題も出てまいります。  したがいまして、まさにいろいろなケースに応じましてどう対応していくのか、それからそのときにどの程度の食料水準を確保していくのか、また関連する法的整備をどうするのかということが検討課題でございまして、先ほどお話がありましたように、目下、省内で検討を進めているところでございます。  もちろん、これは単に農林水産省だけで済む問題ではございません。関係省庁とも十分な連携をとりながら、政府一体となった検討を進める必要があるというふうに考えております。  その際には、御指摘のありましたドイツ、スイス、スウェーデン等々の外国の事例、これは戦争や紛争の場合のほか、原発事故とか自然災害、こういったものも想定して、平素からの備蓄のほかに、不測時におきます生産転換、配給統制、こういった措置を講じておりますので、これが一つの参考になるかと思います。それから、我が国におきましても、戦中戦後の食料難の時期に食料の増産あるいは配給等の経験もございます。  こういった海外の事例あるいは我が国における過去の実践例、こういうものも精査しながらさらに検討を深めてまいりたいというふうに考えております。
  34. 佐藤昭郎

    佐藤昭郎君 現在は安全保障といっても軍事的な安全保障、これに国民の関心が非常に高くて、五十年ぶりに見直すということで今大きな動きがございますが、この食料の安全保障も、不測時の事態の危機管理、農地五百万ヘクタールあるいは水五百八十億トン、そういったところをしっかり確保していかなきゃいけない一つの基軸になると思いますので、ひとつよろしく取り組みをお願いしたいと思います。  次に、先ほども長峯委員国井委員の方からお話ございましたけれども、この食料自給率達成のための政策展開、運動論、これは非常に大事なポイントだと思います。特に、第十条には「事業者の努力」というのがうたわれておりますし、第十二条には「消費者役割」というのをきちっとうたっておられまして、この食料農業農村というものを国民全体、国土全体のものとしてとらえる理念がしっかり出ているわけでございますが、先ほど少しお話がございましたので、具体的な取り組み、特に平成十二年の予算要求あたりで早速スタートするものが何かあるのか、ここら辺まで含めてよろしく御説明をお願いしたいと思います。
  35. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 平成十二年度の予算要求というのはまさに検討中でございまして、まだ具体的なところまではいっていないのでありますが、やはりそれに向けてどういうことを検討しなければいけないかということにつきましては幾つか柱を考えております。  それは、やはり生産の段階では地域段階で地域農業の再構築といいますか、取り組んでいかなければいけない。その中で、麦や大豆などの土地利用型の農産物、これは自給率向上にも非常に寄与するものでございますので、ぜひ何らかの形で対策を講じていかなければならないと思っております。  それから、先ほど来御議論になっておりますが、やはり実需者、消費者に選択されなければ幾ら生産量を上げてもむだに帰するわけでありますから、市場ニーズに合ったものをつくるという意味での推進策、価格政策の見直しをいたしまして、努力した人が報われる、実需者に評価されるものを生産した人が報われる、こういった方向に政策転換をしていきたいというふうに思っております。  それから、技術の開発普及につきましても、これもターゲットをはっきり定めまして、達成目標、時期を明確化して、試験研究なり新品種の開発に取り組むということをやっていきたいと思っております。  それから、生産基盤の整備なり農地の流動化なり担い手育成ということは言わずもがなでございまして、これは着実に進めていかなければならないと思っております。  さらには、食生活見直しや改善に向けた情報提供、啓発活動といったもの、これも従来各局にそれぞれまたがっておりまして、いわばばらばらと進めてきた面もあるわけですが、今度、食料政策局を食料政策の担当部局として二〇〇一年一月からつくるということとも相まちまして、当該局で食料の消費改善などに向けた取り組みは集中的にまとめていくといった方向での検討を進めております。  それから、今お話ありました食品産業、これが非常に今地位が高くなっていると思います。国民食料消費は高度化し、多様化しております。そういう中にありましては食品産業の役割食料自給率向上のためにも極めて大きいわけでございます。したがいまして、食品産業ということを一つ食料供給担い手として本基本法案では位置づけたわけでありますけれども、単に生ものだけの消費ではない実態を踏まえまして、農業サイドとの連携の強化といった点には一層力を入れていかなければならないと思います。  具体的には、販路開拓とか新製品開発とかいうことで、農業者消費者の間を結ぶ役割をさらに果たしていただくということを考えております。そのために情報なり交通なりのネットワークということも非常に大事なことになってくるのではないかというふうに考えております。
  36. 佐藤昭郎

    佐藤昭郎君 今ほども房長の御説明にありましたけれども生産者と消費者の間が非常に遠くなっている今の段階では非常に難しい政策運動だと思います。今、国民の飲食費全体の消費支出が平成五年では約七十二兆円という中で食品産業が七七%の五十六兆円を受け取っているという中で、第十条の事業者の努力、これが非常に重要になってくるのではないかと私も思うわけでございます。  次に、第三十条に「農産物価格の形成と経営の安定」という項目がうたわれております。  先般、私も、北海道の水田の単一経営農家が多くいらっしゃいます上川、空知の地域の方々から陳情を受けたわけでございますけれども、やはり想像していた以上に、いやそれ以上に、新食糧法で市場原理導入したある意味では負の部分といいますか、これを受けて、自主流通米価格平成九年、そして十年もほとんど回復しておりませんが、この直撃を受けまして、米価の下落に伴う農業所得の減少というのは物すごいものがあります。これは、三十条に掲げてありますセーフティーネットが本当に機能するんだろうか、基本法は理念はいいけれども、これのまさに具体的な証左として農家の方は注目していると思います。  一つ申し上げますと、例えば北海道の稲作単一経営平成七年、十から十五ヘクタールの農家の方の所得が五百六十六万一千円、これは北海道の農林統計年報といいますから公式の数字でございますね。これによりますと、七年の五百六十六万が平成九年には半分の二百八十六万に落ちている。十五ヘクタール以上の方をとりましても八百三十四万が五百三万に落ちているということで、米価が二割落ちますと所得は二割じゃなくて五割六割も落ちる、こういった状況がございます。  この三十条は、「国は、農産物価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずる」、こうなっておりますけれども、具体的な施策は今どのような点を考えておられるか、伺いたいと思います。
  37. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 今、北海道の稲作を例に挙げられまして御指摘がございました。  御承知のように、平成五年の大不作を受けまして、平成五年、六年と米価が大きく上がりました。そういう意味では、その反動ということがありまして、七年産、八年産、九年産と下落をいたしております。同時にまた、作況は一〇九、一〇二、一〇五、一〇二ということで四年連続の豊作がございましたので、その点もこの中に加味されなきゃならないだろうというふうに思っております。  そういう状況の中では、今おっしゃいましたように、今後育成していくべき意欲ある稲作農家の発展ということが非常に難しいということの中で、さまざまな議論をした上で稲作経営安定資金ができたわけでございます。まさに十年度から発足をいたしております。と同時に、生産調整をきちんとしていくということの両方が相まちまして、十年産につきましては自主流通米価格も回復をいたしております。  それから同時に、十年度、第一回目の稲作経営安定対策でございましたけれども北海道におきましては、今の段階では上場五銘柄のうち四銘柄が補てんの対象になっております。それから、生産者の拠出金が二十一億でございましたけれども、財政負担も含めまして補てん金の交付総額が六十一億円ということになっておりますので、いろいろな見方はあろうかと思いますが、初年度としてこういった意味での稲作経営安定資金も効果があったというふうに考えております。  今後につきましても、今現在、農家の方々の意向調査等を取りまとめております。そういう中におきましても、規模の大きい農家の方につきましては、こういった稲作経営安定資金の支払い方法についてもっと選択制といいますか、そういうものも導入してほしいという意向が示されておりますので、そういった稲作農家の方々の御要望、それからまだ初年度でございますのでその実施状況を見ながら、稲作経営安定資金につきましても、大規模農家の方も含めまして、意欲のある農家の方々の経営の安定の支持という方に働くよう私どもも知恵を出してまいりたい、こういうふうに考えております。
  38. 佐藤昭郎

    佐藤昭郎君 ありがとうございます。  これは非常に大事な政策だと僕は思います。北海道の稲作農家、これは今現在の市場原理導入しますとどうしても値段が下がっていくんですけれども、ただこの基本法の目指すところも食料自給率向上、特に二十一世紀の世界の食料需給が逼迫する中で日本食料自給をどう上げていくかということでございます。地球温暖化という要素もございまして、地球温暖化が進めば二〇五〇年あたりには北海道の気候が南関東の気候になっていくんじゃないかというような予測もなされているわけです。非常に基盤整備も進みまして、本当に優秀な農家もおりますし、優良な農地もあるわけでございますので、ここをどう支えていくか。これは生産調整あるいは経営安定資金だけではやはり足らないのではないか、もう少し思い切った政策がとられないと日本の水田あるいは水田農家というのは守れないのではないかという感じがするわけでございます。  そういった意味で、次にちょっと御質問といいますかお考えを伺いたいわけでございますが、私はなかなか難しい要素が入っている基本法であると冒頭申しました。生産性の向上を図りながら持続的、あるいは環境保全をしていかなきゃいけない、あるいは市場原理を入れ価格が安定していかなきゃいけない、こういう状況の中ですが、これを結んでいく一つのキーワードはやはり水田ではないかと思います。第二条の安定供給、三条の多面的機能、そして四条の持続的な発展とあるわけでございますが、これをどうやって実現していくかのかぎが我が国の二百八十万ヘクタールの水田ではないかと思うわけでございます。  御案内のように、平年作ですと百九十万ヘクタール、平時ですと八十万から九十万ヘクタールの水田が余裕としてあるわけです。これを生産調整対象として重荷として感ずるのではなくて、これは貴重な資源である、こういうふうに考えまして、これをどうやって平時うまく活用していくかということが大事になってくるのではないかと思います。  いろいろな取り組みが全国で今行われています。一つは、大豆、小麦あるいは飼料作物への転換、こういうのももちろん大事でございますが、この農地我が国にあふれる生物系の廃棄物のリサイクルの場としてひとつ活用していこうという新しい試みがあるわけでございます。  いろいろな見方があるわけでございますけれども全国で今輸入している食料、飼料作物、こんな飼料を全部入れますと、窒素換算で九十万トンという大量の窒素が今我が国に入ってきている、これをどう農地に還元していくか。あるいは、実は化学肥料の五割を全部転換したとしてもこの全部の窒素をもう受け切れないというような状況になっているわけでございます。地域によっては窒素をそのまま発散させるような処理の方法も大事になってくるわけでございます。  いろいろな形でこの水田というのを一つの資源と考えて活用していく方策、これが極めて大事になろうかと思いますが、少し中長期的な点も含めましてこのあたりのお考えを、今ございますれば、伺いたいと思います。
  39. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) ロングスパンのお話をお伺いいたしました。  もちろん、我が国の水田というのは世界に冠たるすばらしい生産装置でございますので、これを良好な状態で維持していくというのはこれからの農政推進上不可欠のことでございます。新しい基本法の中でも、二十三条で農地確保と有効利用、とりわけ水の問題も含めて明確な位置づけがあるわけでございます。私どもはその中でとりわけ優良農地をどういう状態で確保していくかということにつきまして、現在、農振法の一部改正を衆議院の方に提案させていただいております。この中で、国の基本指針を定める、その基本指針の中において優良農地をどういう状態でどれだけ確保していくかということをこれから具体化していきたいと思っております。  それから、農地は面積として確保されただけではなくてこれが有効に利用されていくということが必要でございますので、結局のところ、やはり担い手にこれを集積していくということが重要でございます。できれば、日本農地の過半を効率的、安定的な担い手に集積したいと考えておりますけれども、まだ全体で二百万ヘクタール弱というところまでしか来ておりませんので、これからは手法をもう少し多様化いたしまして、具体的に市町村段階でどういう人にどれだけのものを集めるか、そしてそれを点検しながらどこに欠点があったのか、どうしたら直るのかというふうな運動を進めていきたいと思っておりますし、この集積のために農地の流動化の上で支障を生ずるようなことがあれば、制度の改正ということについても考えていきたいと思っております。  同時に、耕作放棄地と不作付地を合わせまして三十万ヘクタール以上が我が国にまだ存在するわけでございますので、これの掘り起こしという点でも、特に農業委員会農業委員中心に八万人の推進員がいらっしゃいますので、この活動を活発にしていくということで、受け皿としての農地、水田が有効に活用され、今、先生がおっしゃった生物系資源の受け入れ先としてもうまく結びつけるようなことができるよう努力をいたしたいと考えております。
  40. 佐藤昭郎

    佐藤昭郎君 今、渡辺局長の方から大変本質に迫るお話がございました。ひとつ、そういったきちんとした農地の有効利用についてもよろしくお願いしたいと思います。  最後でございますが、もう時間がございません。これはせっかく来ていただいたんですけれども、時間の関係でないと思います。  技術の開発普及についても第二十九条に書いております。この難しい基本法理念を具体化するにはこの点が非常に大事になってくるかと思います。独立行政法人という移行の話の中でしっかり取り組んでいただきたいと思います。ひとつごく簡単に。
  41. 三輪睿太郎

    政府委員(三輪睿太郎君) 先生の御指摘のとおり、技術開発は新基本法の理念、これを実現するために大変重要なことと考えております。特に、中核を担う国の試験研究体制についてはお話のように独立行政法人化をすることになっておりますが、いろいろな面で運営の自立性とか機動性、開放性を高めるということで、この制度を活用しながらやるべき仕事をきちっとやっていきたいと思います。
  42. 佐藤昭郎

    佐藤昭郎君 ありがとうございます。終わります。
  43. 海野徹

    海野徹君 おはようございます。民主党の海野徹であります。  私は、静岡県静岡市の山間地で猫の額ほどの農地を持っております。茶業にいささか携わっている人間でありまして、ことしも新茶を収穫させていただきました。ただ、大変気象条件もありまして、樹勢の問題もありまして、余りいい成果が得られなかったわけなんですが、実際に農業をみずからの生活の中で実践しながら戦後の農政をずっと見てまいりました一人として、大臣にいろいろ御質問させていただきたいと思うわけであります。  予算委員会大臣にフードマイルズのお話をさせていただきました。その後、十分御研究されたかと思うんですが、私は当たり前のことが当たり前にできるという成熟した地域社会をつくりたいというのが政策目標でありますから、自分たちがつくったものを自分たちで収穫してそれを消費する、そういうような社会、自給自足できる、自立できる、そういうような地域社会ができればいいかなという思いで常に考えておりますし、輸送技術とか冷凍技術が発達したとしても、生産者から消費者まで余り距離が遠くあるということは私は好ましいことではないと思っております。  また、たまたま私は純農村地帯に住んでおりまして、自分がみずからやっているということもありますから、我が家にいろりがありまして、いろりで農家の青年たち農業のあすを語るわけなんですが、なかなか元気な答えが返ってきておりません。  そういった意味で非常に悩んでいるわけなんですが、ただ最近いろんなところでお話をさせていただく中で、そういう考え方でいきたいねと思うことがあります。小渕総理大臣の富国有徳論、これは川勝さんの理論なんですが、近代化の終点は都市ではなく田園にあるという言葉があります。私もまさにそういうものだなと思っておりますし、今回、私がこの質問に立つということで知人からメッセージがありました。  これを少し紹介させていただきますと、年月をかけてつくり上げた田んぼの土は非常に美しい。手ざわりも羽二重のような感触がある。そういう田んぼに温度計を入れてみると地温が非常に高い。つまり温かい土なんです。一握りの土に十数億というたくさんの微生物が生き、そこに独自の世界をつくり出している。人間の物差しだけで自然や生き物をとらえるのは大きな誤りだ。命の糧をみずからが生産する者と商品として購入する者との認識の差が今は大き過ぎるのではないか。土が生きていることを体験を通して感覚で知る者と色と形で農産物評価する者との認識は異なっている。種から育ち行くものへの成長への願いと祈りがあり、家族や地域の人々の間で織りなす支え合う生活があります。自然と向かい合う厳しさと恵みがありますというようなメッセージであります。  私は、今回の新しい農業基本法食料農業農村に関する法律ですが、これは現行農業基本法にある意味では根源的な問いかけをすることからこの新しい法律の議論が始まるのではないかと思っております。  まさに、今回出てくるわけなんですが、多面的な機能を持っている農業から経済的側面だけを取り上げて、さらに自然条件からの制約を考慮せずに、生産性の向上あるいは工業と比較して効率の低さを指摘し、これを強調してきたということが、今、日本農業の全体像を見失って、農業軽視、ひいては農業の衰退につながっていったのではないか。この愚を二度と犯してはならない、そういう決意をしております。  そこで、今、私が知人からのメッセージを申し上げながら、私の農業観を少しお話しさせていただきましたが、その点についての御感想をまず大臣からお伺いしたいと思います。
  44. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生のおっしゃるとおりだろうと思います。  昭和三十六年の基本法制定当時は、業として、あるいはその業を営む地域としての農村地帯をどうやって都市並みに生産性あるいは生活条件向上させ、そして所得の格差を是正しようということで、どちらかというと農村地帯の農業という業を中心にして何とか向上させていこうということでございましたが、先ほども答弁させていただきましたので繰り返しは避けますけれども、目的をクリアした部分とそうではない部分とがあって、どちらかといえばクリアしていない部分のウエートが高いと言わざるを得なかったのではないかというふうに思っております。これはそれぞれいろいろな要因があるわけでございまして、農業者の方のインセンティブの問題とかまた外的な経済要因とかいろいろございました。  今回の新しい基本法の精神というのは、もちろん農業生産活動をさらに充実していくことによりまして、国産の生産基本とした食料の安定的な供給というものが主目的であり、そしてまた農業という産業だけではなく、農業農村の果たす多面的な役割というものにも大いに着目をしてその機能発揮していかなければならない。そして、その二つの目的を達成するためには、やはり持続的な農業生産活動の発展、そして空間としての農村振興というものが必要不可欠である。これら四点がセットになって初めて国民的な意味での農業農村の果たすべき役割というものが意味が出てくるという四つの理念から成り立っておるわけでございます。  静岡というのは、私も時々参りますけれども、近代的な都市であると同時に、海があり、そして伝統的な農業、さらには中山間といいましょうか、大変な山間部の農業まであるわけでございまして、私も大変好きな町の一つでございます。三千メートル級の山から海岸まで、一つの市の中で文字どおり多面的な機能農業、林業を中心として果たしている町だな、まさに日本農業、山村を象徴する町だな、こういう町が発展してこそ我が国農業の将来というものがますます重要になっていくんだなと思いながら時々静岡にお邪魔するわけでありまして、ぜひ静岡の農業がますます発展されることを御祈念申し上げたいと思います。
  45. 海野徹

    海野徹君 大臣から大変期待のお言葉をいただきまして、我々も頑張らなくちゃいけないなと思うわけであります。  クリアできなかった問題点が非常に多かったんではないかというような話だったんですが、要するに生産性及び生活水準の格差是正ということが現行農基法の目標であったと思うんです。それには生産政策あるいは価格・流通政策、構造政策、三本柱がありまして、それぞれにおいてどういうような問題点が今課題として積み残しをされているのか、個別の三本柱についての現行基本法農政展開の反省と評価ということをお聞かせいただきたいと思います。
  46. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 三本柱に即して申し上げますと、生産政策の面では、基本法制定当時の米麦中心農業生産から、畜産物、果実、野菜などの広がりのある生産が行われるに至ったと思います。その中には地域特産物も入りますが、いろいろなバラエティーのある多様な農産物がつくられるようになったということは言えますけれども、米の消費の減退に伴いまして、それにかわるべき麦なり大豆、こういったものの生産がいささか足りないのではないか、この点の増強という点が今後の大きな課題ではないかというふうに思います。  それから、価格・流通政策につきましては、所得確保という点で価格政策にかなり強い配慮が払われて運用されました。その結果、農業経営の安定という点では効果があったと思いますけれども消費者のニーズあるいは実需者のニーズが農業者に的確に伝わらなかった、そのためにかえって国内生産物のマーケットの縮小を招いた面があるのではないか、いわゆる需給のミスマッチが生じているのではないかという点がございます。先ほど申し上げた麦、大豆についても同様の点があるかと思います。今後の課題としては、実需者のニーズが的確に生産者に伝わるような価格の形成ということが必要ではないかと思っております。  それから、構造政策につきましては、施設型農業では一定の規模が図られたことはもうハウス園芸等を見れば御案内のとおりかと思います。また、中小家畜でも相当の規模拡大が図られましたけれども、土地の広がりを必要とするいわゆる土地利用型農業につきましては、農地価格の上昇もありましたということで、北海道を除きましては規模拡大がおくれているといいますか、余り進んでいないという問題がございます。これも先ほど申し上げました麦、大豆などの生産の増強という点から考えますと、団地化の進展なりあるいは担い手育成という点では今後もう一度よく考え直して再構築をしなければならない点かと思っております。  以上、簡単でございますが、生産あるいは価格、構造面でなお残されている問題という点では以上だと思います。  そのほか、現行の基本法にはない新しい課題というものが当然必要になっているわけでございます。先ほど来御指摘もありましたが、農業の持つ本来の自然循環機能というものが農薬あるいは肥料の多投入というようなことで損なわれているのではないか、いかに農業としての本来の機能発揮していくかという課題も当然あるわけでございますし、農地の有効利用とかという点も当然あるわけでございます。そういったもろもろの反省の上に立って新しい基本法の法案を構築したということでございます。
  47. 海野徹

    海野徹君 今、御答弁いただいた中で、若干また具体的に質問させていただきます。  規模拡大、所得格差の是正、生活水準の格差の是正、そのために選択的拡大というのがあった。ニーズに合わせたものをたくさんつくって、要するにもうかろうよという話で農業は進められていって、そこには生産手段である農地があるわけなんです。  そういう政策目標を持っていきながら、これは日本だけじゃなくて、第二次世界大戦後、同じように世界各地で農地の拡大ということが図られていったのではないかなと思うんですね。それがヨーロッパではほぼ二倍ほどになっている。しかしながら、日本ではそれがそうはなっていない。本来だったら生産意欲がある農家に対して、懸命に取り組もうとしているところへ農地が集約されていくべきだろう、いくはずだというもくろみがありました。にもかかわらず、同じように農業の構造的な問題を変革していこうということでやってきたヨーロッパはそれが実現してきて、日本はそれが実現できなかった。その違いというのはどこにあると思いますか。
  48. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 結局は、同じ土地の上に利用が競合するわけでありますから、その土地の利用を手放したという人がいるかいないかという点であろうかと思います。  これを日本の中で見ますと、北海道におきましては、いわば離農する方が同時にその土地も離れます、いわゆる挙家離村型の離農をされました。したがいまして、その跡地を取得するという形で北海道農業は規模拡大が進んだというふうに思います。  一方、北海道以外の土地につきましては、挙家離村ということではなくて、在村型での農業の縮小ということでございますから、必ずしもそこで担い手の方々に農地を手放すという形もとり得ませんでしたし、また農地を利用する側の担い手の方から見ますと、高度経済成長の過程にありまして農地価格が非常に高騰した、農業採算価格を超えて大幅に高騰したということになりますと、農地を取得して営農したのでは採算に合わないということが一方にございまして、これが規模拡大に結びつかなかったというのが実態かと思います。  しからば借りてやったらどうだということもあろうかと思いますが、農地改革の記憶鮮明なりしころであったと思いますので、なかなか借地による利用も進まなかったのが当時の農村の実態ではないかというふうに思っております。
  49. 海野徹

    海野徹君 日本が持っている宝で、世界でこれは通用してほしいなというものが戦後の農地解放だったんですね。これで生産手段を我々は手に入れることができた、それがつい五十年前なんです。それで、そのときの人たち、解放を受けた、譲り受けた人たちが我々のちょっと上の年代で、今まで一生懸命やってきたんですね。選択的な規模の拡大に向けて農政に従順に一歩でもやってきました。  しかしながら、それがこの国の経済のスピードと合わなかった。為替レートとの競争の中で全く合わなかったんですね。一ドル三百六十円の時代は国際価格という言葉はなかったんです。二百四十円あたりから国際価格、国際競争力というのが出てきた。全く為替レートの競争になってしまった。そういう中で耕作放棄地が出てきた。  では、放棄地を集約すればいいじゃないか、もっと流動化すればいいじゃないかという話が出てきたわけなんですが、つい五十年前に我々は譲り受けた、そういう経験をしている。それをまた預けたり貸したりということに対する大変な抵抗感が我々農家側にあったんですね。貸したら返ってこないんじゃないか、あるいはせっかく手に入れたものを、自分の生産手段を幾ら生産性が悪くても手放すということは何ともこの村社会の中でみっともない、それだけはおれの目の黒いうちはできないと。そういうものが非常に日本農村社会にあって、歴史的なそういうものがあって私は規模拡大につながっていかなかったのではないかという思いがあるんですが、その辺はどうでしょうか。
  50. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 基本的には先生の今お話しになったのと同じようなことが原因になっているんだろうと思います。  当時、まだまだ次三男の方がかなり農村にはおられまして、その人たちが都会に出ていく、あるいは農村に工業が入ってきて飯が食えるということが課題であったというぐらい、農地と人との関係でいえば人の方が多かったというふうに思います。しかし、さはさりながら、農地改革の結果取得した農地を大事にして、土地の生産力を高めるという、いわば労働をたくさん投入して収量を上げるという時代であったと思います。  そういう時代から、もうちょっといわゆる労働生産性の方に力点を置いた経済の流れになってきたと思いますけれども、先ほど申し上げたような歴史的経過から、なかなかその転換というものがスムーズに進まなかったのではないかというふうに、昭和三十年代から四十年代にかけては主としてそういうことが原因ではなかったのかというふうに思っております。
  51. 海野徹

    海野徹君 そういうような現状がある中で、これからまた規模拡大というのを求めていった場合、それは進むと思われますか。
  52. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 当時は昭和一けた生まれの方が、今もそうなんですが、いわば農業の世界では団塊の世代になっておりまして、そういう方々が青壮年期にあるということで、なかなか農地の流動化が進まなかった点があったかと思います。しかし、最近になりましてさま変わりになりましたのは、そういった昭和一けたの団塊の世代の方々がいわばリタイアの時期を迎えつつあるという点が農業構造上大きな転換点かと思っております。  そういう中で、むしろ負の要因として、先ほど先生も御指摘になりましたが、耕作放棄地が発生したり、あるいは耕地利用率が必ずしも高くない利用が行われるということで、むしろ人の方が農地に比べて少ないといいますか、意欲のある、取り組もうとする人の方が農地に比べて少ない状況も間々見られかねない、こういう状況になってきたと思います。  したがいまして、まさにこの昭和一けたの団塊の世代のリタイアの時期をとらえまして、さまざまな形での、他産業からの新規就農者も含めまして担い手育成確保を図っていく、その担い手農地の利用を集積していく。個々人では困難であるならば集落ということでまとめて、集落全体をまとめていく法人なりあるいは協業経営体という形でまとめていく。さらには、山の方で人がさらに少ないという場合には、第三セクターという形でその土地の農地を管理していくと。  さまざまな担い手の形が展望できるかと思いますけれども、そういったむしろ担い手の方が農地との関係で相対的に弱くなりつつある状況というのは、逆に言えばこれは農地の利用集積が可能な条件が出てきた状況ではないかというふうに見ております。
  53. 海野徹

    海野徹君 担い手の問題は後ほどまたお話しさせていただこうかなと思ったんですが、私は若干違った見解を持っております。  私も、父親から受け継いだ農地、茶園は非常に広かったんですが、この仕事へ入りましてもう二十年になります。当然、余り条件がよくないところ、もうこれは中川大臣条件不利地域という言葉は使いたくないですねという話をさせていただいたんですが、条件が余りよろしくないところはやっぱり耕作を放棄しています。そこを借りてくれる人もいません。若いお茶農家でも、やはり借りるのだったら生産性が上がる平地なんですね。我々も平地だけは、何とか私の母と家内と私で、あるいは後援会の連中で、お茶だけでも摘もうよということでやっているわけなんです。私は、なかなか集積というのは進んでいかないんじゃないかな、思惑どおりにはいかないんじゃないかなという思いの方が非常に強いんですね。  では、Uターン組が、あるいはリタイア組がそういう急傾斜、急傾斜と言わなくて傾斜度のある農地で何かやってくれるかというと、やはり肉体的なものもありますから、これも借りてもくれないということになると、先ほど国井先生がWTOの関連をお話しになりましたが、私はこれはWTOの準備だと思いますから、そういう認識でおりますが、本当に切り捨てられるかどうかというぎりぎりのところに日本の農家は今来ているのではないかなという危機感を非常に持っているわけなんです。  だから、昭和一けたの世代がリタイアしたらもう日本農業はなくなっちゃうんじゃないか、そのぐらいの危機感を持っているものですから、なかなか放棄地が生産手段として生かされていかない、あるいは集約化が進んでいかないという我々の周囲の状況から見ますと、今、官房長がおっしゃるような形では期待できないなと思うのですが、再度御見解をお願いします。
  54. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 単に無策で迎えるということでは当然ございません。  先ほど申し上げたのは、主として担い手の観点からの切り口で申し上げたわけですけれども、まさに個人としてその土地で頑張られる方も当然ありましょうし、先ほども申し上げましたが、個人個人だけではなかなか全体の管理が難しいという場合には、最近やはり集落全体でまとめて農地の管理なり農業生産に取り組んでいこうという動きも強くなっております。その中には、集落丸ごと法人化をしてきちんと管理をしているという取り組みも全国各地に見られるようになってきておるわけであります。それからさらに、農業者だけの力では難しい場合には、市町村あるいは農協なども加わりまして第三セクターという形でその地域農地を管理していく、こういう形態も出てきていると思います。  いずれにしても、中山間地域等の、条件不利地域という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、その農地の管理を通じて、あるいは正常な農業生産活動を通じてその地域の果たしている公益的機能が維持確保されるようにということで、現在、中山間地域等に対する直接支払い政策も検討しているわけでございます。そのほか、これだけでなく、中山間地域等につきましては、その持てる力が最大限に発揮されるように政策を体系的に推進していくということで、その土地の農業生産の維持あるいは農地の維持管理ということを図っていく、こういう体系的な考え方で取り組みたいというふうに考えております。
  55. 海野徹

    海野徹君 今の官房長からの答弁は新法の中でちょっと関連して質問させていただきたかったんですが、今、多様な担い手が現実にいろいろあると。それについては新しい法律の中できちっと財政的な支援の制度、そういうものはより一層進められるという御決意と受け取ってよろしいですか。
  56. 高木賢

    政府委員(高木賢君) この新しい農業基本法案では経営ということを重視しております。そしてまた、その本来の経営の発展という一筋だけでなくて、生産組織の活動の促進ということも位置づけておるわけでございます。それから、全体的な法制上の措置あるいは財政上の措置、金融上の措置ということにつきましては十三条で包括的に明記してございます。  そういう意味で、日本農業が期待される役割をきちんと果たす、食料安定供給多面的機能発揮という二つの大きな役割を果たすという上でその経営あるいは経営を担う農業者育成ということは極めて優先的な課題でありますから、それについて必要な支援をしていくという基本的な考え方に変わりはございません。
  57. 海野徹

    海野徹君 先ほど佐藤委員からもすばらしい理念だという話だったんですが、理念としてすばらしくても、それが抽象的になって弱まっては何にもならない。要するに、現行基本法の問題点というのは個別施策との整合性がなかった、宣言法でしたから。この新農基法も多分そういう性格です。非常に理念的で宣言はしているわけなんですが、個別的な施策との整合性というものがなくて、あるいは拘束力というか指導性が発揮されなくて今日の農業農村の実態を迎えている、これも事実なんです。それは絶対あってはならないと私は思いますから、その点について、理念先行だけじゃないと。  要するに、今言った担い手については、本当に農村に暮らしていますと若い連中がいないんです。昼間いないんです。消防をするにしても消防団員がいないんです。人数だけは三十分団六十名と、六十名いるんですが、現実に日中にはいないんです。私のところなんか、静岡市の町中から二十分から三十分ぐらいのところなんです。にもかかわらず、そういうことなんです。やっぱり担い手確保というのは大変重要なことなんですね。  いま一度その辺の決意のほどを、ちょっと先の質問まで入ってしまいましたけれども、お願いします。
  58. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 二つのことを申し上げたいと思います。  一つは、基本法というのがいわゆる宣言法なり理念法で具体的な政策とつながっていかないのではないかという御指摘でございますが、これは現行基本法におきます反省も踏まえまして、今度新たな基本法案では、十五条に食料農業農村に関する施策の推進に関します基本計画というものを基本法の中に組み込んでおります。  基本計画におきましては、政策基本方針あるいは政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策ということで、食料自給率目標とともにそういった基本的な政策の方向というものを明記いたしまして、かつこれを五年ごとに見直すということにいたしております。したがって、ここでまさに具体的な政策基本法で掲げております基本理念の橋渡しをする、その具体化を図るという位置づけにしております。  それから、二番目に御指摘のありました担い手問題でありますけれども、まさに担い手なくしては農業生産も何もかもあり得ないわけでありますから、やはり担い手育成確保ということは、もろもろの課題があるわけですけれども、その中でも優先的な地位を占める課題であるというふうに思っております。  そういう意味で、農業経営ということを二十一条なり二十二条で十分位置づけておりますし、人材の育成確保という点でも、総論的に二十五条の規定を置き、女性について二十六条、高齢者について二十七条ということで、この基本法案の、理念法なり宣言法と言われますけれども、そういう中にありましても、経営とか人材という点については相当力点を置いた規定ぶりにしているということでございます。
  59. 海野徹

    海野徹君 それでは、次の質問に移らせていただきます。  価格・流通政策で、現行農基法の反省点というか、評価の質問なんですが、価格政策というのが農基法の中である意味では大きく誤った政策ではないかというような指摘がされております。これは先ほど国井委員からも、WTOと価格支持政策との整合性、交渉等の中で価格支持政策の整合性の御質問がありました。国の立場を主張すると、大臣はそういうような答弁をされたかと思うんですが、どうも私は言葉にこだわるものですから、大臣、その辺は十分御理解いただいて答弁していただきたいんですが、産業とは何だろうかなと思います。  私は、農業というのは産業たり得ないのかなとふだん言っているんですけれども、要するにみずからが価格決定権を持っていないというのは産業じゃないのじゃないか、そういう私の産業という言葉に対する解釈なんです。農業ということに対する理解の仕方なんです。  しかしながら、安定的に食料供給しなくちゃいけないし、国土を保全しなくちゃいけない。農業が持っている多面的な機能を十分生かして豊かな日本をつくっていかなくちゃいけない。そうなると、価格決定権を持たない産業でありながら価格支持をしていかないと日本農業というのはますますなくなってしまうのではないかなと。だから、価格政策自体に非常に問題点があるという指摘が現行農基法でありますが、その辺は新農基法にどういうような形で移行されていくのか、大臣の御見解をいただきたいと思います。
  60. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 特に、新しい基本法の中では、農業というものも広い意味の産業であろうというふうに位置づけなければならないと思っております。  ただ、国境措置でありますとか、あるいは全く価格が、先ほど市場原理というお言葉をお使いになりましたが、私は若干それについては神経質でございまして、法文上、市場原理という言葉はないわけでございます。三十条には、「国は、消費者の需要に即した農業生産を推進するため、農産物価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずる」ということでございますから、やはり生産者と消費者といいましょうか、購買者との間でおのずから価格というものが自然にでき上がってくる。その場合に、では全くそれでほっておいていいのかというと、「育成すべき農業経営に及ぼす」云々ということで、いろいろな施策を講じなきゃいけないというのが第二項にあるわけでございます。  そういう意味で、今までの基本法よりはいわゆる市場原理的な要素がより強くなっていることは間違いないと思いますけれども、あくまでも生産者そして購買者、消費者との間の値決めで決まっていく、まさに米がその典型であるわけでございまして、と同時にそれに対するセーフティーネットというものも農産物の特性からいって十分に講じていく、こういう二段構えの施策をこの基本法の中でとっていくということでございます。
  61. 海野徹

    海野徹君 私の質問の仕方がまずかったのかもしれませんが、新農基法と現行農基法が非常に関連性があるものですから、私は現行農基法の問題点、あるいはそれを評価しながら新農基法に移っていきたいなと思っているんですけれども、どうしても関連性があるものですから、先走って質問をすることになるわけなんです。  私はよく理解できないんですけれども価格決定権を農業者みずからが持っていないんです。  今の日本全体の食料品というのはGDPの中で多分一割以上、五十二、三兆円あると思うんです。しかしながら、農畜産物の生産額というのは十一兆円しかない。しかも、野菜出荷安定法を初めとして、とにかく市場が消費者になっているんです。私がつくったものは要するに市場で評価されるわけです、卸売市場です。相対で評価するということは全く無理な話かもしれませんが、少なくとも我々がつくったものを、価格決定権を持つような行為をしたい、そこに近づきたいという思いでできるだけ占有率を高めると、特産品は全部行ってしまうわけなんです。だから、近所で特産品をつくっていても、近所の消費者の人たちはここの特産品を知らない、みずからの周辺でつくられている農産物、特産品を知らない。そのぐらい市場イコール消費者になっているんです。  そういうことになると、産業としてみずからが相対で価格決定をする決定権を持っていない、しかも大きな市場が消費者でそこが決めているということになると、相当な価格支持ということもやはりこれからやっていく必要があるのではないか。その辺に問題点があったと。  確かにいろんな意味で、政治的な思惑で価格支持政策がされてきた。それは問題点があるわけなんですが、一律にやる必要は全くありませんけれども、その痛烈な反省はすべきだと思うんです。私は、現行農基法の中で価格政策が必ずしも最も大きく誤った政策であるとは思えないんですが、その辺、大臣、どうでしょうか。
  62. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 現行の価格政策の問題点は、今、先生もおっしゃいましたように、いわば消費者生産者の間で決まるというより、その間に行政が入って価格を決めるということでありますから、消費者の方あるいは実需者の方の意向が必ずしも反映されないうらみがあったという点が一番大きな問題点だろうと思います。  具体的には、麦などで見られるわけですけれども、実需者のニーズのないものが余計に生産される、あるいは実需者が欲しいと思っているものの生産が足りないということで、そのニーズが必ずしも的確に生産者に伝わらない、需給のいわばミスマッチが生じてきているという点が大きな問題であろうと思います。そのことによって国内生産が伸びない、伸び悩む、自給率低下につながる、こういった問題があるわけでございまして、やはり価格というものは消費者評価生産者に的確に伝わるように、つまり品質なりがきちんと評価される、あるいは需給事情なりが評価される、こういうシステムでないといかぬのではないかというふうに考えているわけでございます。いわゆる価格支持政策はWTO条約もいわば黄色の政策ということになっておりまして、なかなかこれを永続的なものとしては保持しがたいものとも思っております。  そういったいろいろな点も考えまして、新たな基本法案では、価格の形成のあり方といたしましては、需給事情及び品質評価を適切に反映された価格にすると。同時に、そうはいってもそのことによって担い手に悪影響を及ぼしてはいけないということで、育成すべき農業経営に及ぼす影響を勘案するために経営安定対策を講ずるということを明記しているわけでございます。
  63. 海野徹

    海野徹君 いま一度こだわって質問させていただきますと、私は、産業政策として特化していくとしたら、また新農基法というのは誤った方向に行くのではないかなという思いがあるんです。というのは、地域政策なり社会政策的な面を加味して、その面に対する十分な評価をしていかないと農村というのは維持されていかないんじゃないかな、そんな思いがありまして、産業というのを定義づけたとき、やはり価格決定権を持っているか持っていないか、持っていないのは産業じゃないんじゃないのかなということを私は言っているわけであります、その辺はそれぞれの解釈の仕方がありますから。  ただ、いろいろ近所の若い連中と話していまして、もうからないねという話をするんですね。もうからないからじゃやめるかというと、年齢も来ていますし、やめると言わないわけです。私はよく言うんですけれども農業はもうからない、もうからないからほかの人が入ってこないから、だから強いんじゃないか、だからほどほどでいいんじゃないかと。ほどほどでほかで何か自分たち生活の豊かさが実現できるような発想の転換をしたらという話をして、ある意味では励ましながら今いろんな活動をしているわけなんですけれども、私は、だからそういった意味では、余り経済性とか効率性とか生産性とか産業というような形で農業を非常に特化してとらえていくようなことは今後やっていただきたくないという思いがありまして、そんな質問をさせていただきました。  では、次に参ります。  担い手の問題のこともあるんですが、大臣にお聞かせいただきたいんですけれども後継者不足の本当の理由は何だろうかなということなんです、質問は。  大臣はお生まれになっていたかどうか、私も生まれたばかりでしたからよくわからないんですが、小さいとき聞いた歌で、昭和二十九年「東京へ行こうよ」という歌がありました。これが都市集中のスタートの歌だと言われます。昭和三十年「別れの一本杉」、三十一年「逢いたいなああの人に」、三十二年「お月さん今晩は」というのがあった。昭和三十四年「僕は泣いちっち」、こういうような歌があった。確かにありましたよ。そういうふうに私も聞いています。要するにどんどん都会へ出て行ったんですね。  私の静岡県の県の職員で、東京の大学に送るために高校生まで育てるのにどのぐらい費用がかかるんだろうかといっていろいろ計算した人間がいるんです。具体的な数字は忘れましたが、一千万を超えていました。それだけして東京の大学に出す、しかも仕送りして。就職先が東京ですから、また不足になると、やれ家賃を補助してやったり敷金を補助してやったり、全部そうやってのしをつけて都会へ送り込んでいった。その一方で、我々のところにもたらされるものは余りにもなかったのじゃないか。そういう思いをしているのは結構あるんですね。    〔委員長退席、理事三浦一水君着席〕  そういうことを聞くと、なるほど昭和二十九年からこんな歌が出たということは、確かに東京へ東京へと行ったのだなと。では、今担い手がなくなっちゃっているのは、そういう一生懸命のしをつけて送り込んだにもかかわらず、それのバックがないんじゃないかというようなことも含めて、ある意味では現代版の百姓一揆じゃないか。もうやめたと。根底には農政に対する不信があるんじゃないかと思うんですが、その辺、大臣、どうでしょうか。
  64. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほど基本法の総括の中で、土地の集積が北海道を除いては余りうまくいかなかった、一・二倍程度にしかふえなかったということでございますが、一方では産業化、いわゆる工業化、高度経済成長ということで、都市の方に需要が非常にあったのだろうということも一方では言えるのではないかと思います。ここに座っております農林省の幹部も東京以外の人が随分おるわけでございまして、やはり東京で農政に携わりたいとか、あるいはどこかのメーカーに勤めたいとか、そういう需要があって、それは残念ながら農村で暮らすよりも魅力的だったということが当時はあったのではないかと思います。  そういう意味で、今その反動が来て、まさに担い手不足、後継者不足ということでございますが、最近の新規参入、あるいはまた農村へのUターンといった数字も少しずつではございますけれどもふえておりますし、また我々も、いろんな形、趣味的な農業から新規に意欲を持ってやっていける農業参入者も含めまして、いろいろな支援措置を講じることによりまして、日本農地を守り農業を守っていくということによりまして、生産活動だけではない多面的ないろいろな国家全体にプラスになるような役目というものをぜひ担っていただきたい。大事な転換点であろうというふうに思っております。  この新しい基本法の理念の一つでもございますが、そういう観点からさまざまな諸施策を、理念法ではありますけれども、理念法に基づく、先ほども房長から申し上げました基本計画、あるいは国の責務というものもございますから、そういう形で地方にまた夢と希望を持って定住できるような施策というものを講じていかなければならないというふうに考えております。
  65. 海野徹

    海野徹君 職業観あるいは教育の中で、農業に対する評価というのは非常に低いんですね。大変問題だなと私は思っています。  私なんかもある意味ではその地域の中で別格扱いされちゃったんですが、結局、進学校へ行った。農家の長男が進学校へ行く、大学へ行くということ自体もうある意味では別格扱いと同時に、農家の長男は学校に行かなくていい、あるいは行っても農業高校だと、優秀な次三男は全部都会へ行けというような、やりきれないような発言というのは結構あるんですね。  そして、今、農家の長男の嫁が大変な犠牲になって農業経営というか農家自体が維持されている。次三男は盆暮れに帰ってきては冷蔵庫から何から全部中身を持っていってしまう、泣くに泣けないのは農家の長男の嫁だと。だから、絶対農家には嫁にやらない、後継ぎもさせないという声が非常に多いんです。若干、即売所なんかやり出した人たちはそういう部分を変えてきていますけれども、いや、これ楽しいねということでやってきていますが、どうもそういうのが本音じゃないかなと。  だから、職業観にしても教育の中での農業の扱い方にしても、どうも軽視あるいは蔑視しているのかなと。そういうことが後継者不足を生んでいるだろうし、あるいは生活自体が年々苦しくなっている。非常に絶望的になっている。現行農基法が選択的拡大、ある意味ではその当時はわくわくしたんですよ。にもかかわらず、現実はそうじゃない方向へ行ってしまっている。とすると、我が身を殺すことで必死な抵抗をしているというのが、そういう百姓一揆みたいなのが後継者不足の真の原因じゃないかなと私は思うんですが、再度御見解をお伺いします。    〔理事三浦一水君退席、委員長着席〕
  66. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) たしか十年ぐらい前のアンケートですけれども日本とアメリカの高校生に将来何になりたいかということで同じような人数のアンケートをとった資料を見たことがあります。日本の場合には弁護士さんとかお医者さんとか公務員とか会社社長とかというのがずらり並んでおりまして、アメリカの方は牧場主、政治家、以下いろいろありますが、ベストテンに牧場主と政治家が入っていないということに私自身非常な驚きを感じたわけであります。やはりこれは日本農業に対する教育、そしてその教育以前の現状が非常に厳しいということが一般的に国民的な認識としてあるのではないかというふうに思うわけでございます。  したがいまして、先ほどから先生と官房長とのやりとりを伺っておりましたが、官房長の方は育成すべき農家あるいは担い手というものを中心に答弁をし、先生の方はもっと零細な個別の農家の現状というもので、それぞれポイントの置き方が違った議論をしているなという感じを持ったわけであります。  これからは育成すべき農家は育成しいろいろな経営形態を活用していく、そしてまた個別でいいんだという農家については集落営農的な形でより密接な協力関係を集落単位で守っていく、そういうことによってそれぞれが文字どおり自信と誇りの持てる農業というものにしていかなければなりませんし、先ほどお話がありましたように、産業面だけでとても農業というものを語ることはできない大きな意味を持ったお仕事でございますので、基本計画等々あるいはこの基本法の理念を実現すべくさまざまな諸施策を集落ごとあるいは地方公共団体ごとにきちっとやっていく、それに対して後押しをさせていただくということで、文字どおり誇りと自信が持てる農業というものをつくっていくべく新たなスタートラインとしなければならないというふうに考えております。
  67. 海野徹

    海野徹君 私は、農民の自信と誇りが新農基法の中のどこの部分で具体的に表現されているのかという質問をさせていただこうかなと思っていたんですが、まさに大臣が今おっしゃるような形で、そのスタートラインだという話なんですけれども、我々農業人が自信と誇りを持つような農基法というのは具体的にどの部分でどうやって表現されて、それを我々はどう理解すればいいのか、いま一度その辺を御質問いたします。
  68. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 条文的に申し上げますと、例えば三十条のところで、育成すべき経営体に影響を及ぼさないような措置をとる、あるいは二十一条で、これからの農業というのは望ましい農業構造を確立していかなければならない、効率的、安定的な農業経営育成していかなければならない、そのために必要な施策をとる、あるいは二十二条で、経営意欲のある農業者が創意工夫をすることによって家族農業経営活性化を図るとともに、多様な経営形態という中で法人化というものも言っておるわけでございます。  そういう意味で、あえて条文で申し上げますならば、いわゆるプロ的な農業といいましょうか、育成すべき農業経営体というものをつくり上げていくためのいろいろな施策を講じなければならないということがこの法律の中の何カ所かにちりばめられておるということでございます。
  69. 海野徹

    海野徹君 今、条文を例示されながら大臣の方から話があったわけなんですけれども、現行農基法では前文で「農業従事者が他の国民各層と均衡する健康で文化的な生活を営むことができるようにする」と、あれは曲がりなりにも農民を勇気づけるような方向性が示されていたんですね。だけれども大臣が今お読みになった条文の中でも、私はそれがストレートにそうなんだというふうには、現行法と比べてどうしても弱いんじゃないかなと。農業者に対する位置づけというには方向性が現行法に比べてどうしても弱い、愛情がないのかなというふうに私は受け取っちゃうんですが、どうなんでしょうか。それが私としてはどうしても、幾ら読んでもその辺が出てこないんです。  元気が出ないというのは担い手の減少あるいは高齢化という周りの状況だけじゃなくて、将来の日本農業農村あり方というのが具体的なイメージとして浮かんでこない、そういうビジョンが示されていないということなのかなという思いもあるんです。私は、大臣がおっしゃるほど愛情を持った表現が込められているとは思いませんが、どうなんでしょうか。
  70. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 立案の担当者として申し上げたいと思いますが、やはり愛情といいますか位置づけが基本的に違うと思うんです。  昭和三十年代では、追いつき追い越せといいますか、他産業との間の格差ということがありまして、端的にそういう格差の是正というところにあったと思いますが、その後の我が国の経済社会の発展とともに、やはり農業役割というのは何だろうかということが大いなる問題として浮かび上がってきたと思うんです。  自分のやることが社会的に意義があることなのかどうかという点が大きなポイントだと思うんです。その点で、この基本法案では、そういった農業と他産業との格差是正といういわば狭い範囲から、むしろ経済社会の中であるいは国民生活の中で我が国農業というのはどういう意味を持つのかという役割、位置づけを明確にしたという点に大きな画期的なポイントがあると思っています。  その一つ食料安定供給確保という、これはいわば理念のところで二条から五条に規定しているわけでございますが、まず大きな一つ食料安定供給確保国民の生命の維持に欠くことができない、また健康で充実した生活の基礎として重要なものであるという食料の位置づけが与えられておりますけれども、まさにこれに対して国内農業生産増大を図ることを基本としてこれを供給するんだということで、食料安定供給確保に対して国内農業生産が大きな役割を果たさなければいけないということを明確にしております。  それからもう一つ、これもこれまでには全くなかった画期的な規定ですけれども農業の持つ多面的機能、国土の保全とか水源の涵養とか自然環境の保全あるいは良好な景観の形成、文化の伝承、こういった農村農業生産活動が行われることにより発揮される機能というものを三条で明確に位置づけております。  これらは今日の日本の社会におきましてまさに国民から求められているものでありますし、こういう二つの機能発揮する限り我が国農業は永遠に発展するんだということをうたい上げている点におきまして、私はこの二つの柱が一番根幹をなす基本法案の重要なポイントだろうと思います。  それを受けて、四条で農業の持続的な発展を図らなければいけないことを明記しておりますし、その基盤たる農村振興を図らなければいけないということを五条にうたっているわけでございます。もちろん、担い手に対しての育成確保対策ということももとより重要ですけれども、そのさらに大もとの我が国農業農村の位置づけ、我が国経済社会、国家社会においての位置づけを明確にしているという点が今日の一九九九年におきます最も肝要な点ではないかというふうに思っております。
  71. 海野徹

    海野徹君 官房長と解釈の違いがあるわけなんですけれども、余り農基法が話題になっていないんです、我々の周辺で。国民的合意とかいろいろな言葉が出てきますが、現行農基法が制定された昭和三十六年当時に比べると国民的な関心が非常に低いんじゃないか、話題がないということは。それはなぜか。  確かに、三分の一ほどに今農業人が減ってしまった、それが理由かもしれない。先ほどからずっと私が述べている農業観もあるんじゃないか。確かに、理念の中で多面的機能、これはもちろん私は初めからそういうものはあるべきだと。それを経済的な側面だけ、それは時代的要請もある、官房長が言うのはそういうことなんでしょう。だから、それを引っ張り出したんだということなんでしょうが、それにしてもどうも関心が薄い。国民的な合意形成なんて求められないんじゃないかというぐらい関心が薄いんです。  それは官房長が愛情が込められていますよと言っても、なかなかストレートに来ないような精神的な背景が今農業人の間でも出ているんじゃないですかね。特に、当事者がわくわくするような期待が新農基法に持てていないんです。その辺について、大臣、どうですか。
  72. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私が全国に今いろいろ行きますと、やはり新しい基本法について非常に関心があるな、あるいは農林省の課長以上が全国に行っていろいろとWTOとかこの問題について議論をしますと、大変関心が深いなと思います。一つ経営安定対策とか直接支払いの問題とか、まさに目に見える形での政策が一体どうなるんだろうかというようなことが一番象徴的であると思います。  それから、確かに先生おっしゃるように、当時に比べて農業人口が非常に少なくなったということで、そういう意味での数的な問題があるかもしれませんが、一方では食料農業農村基本法ということで、冒頭に食料という言葉を持ってきておるわけでありまして、私は消費者の皆さん方の関心が非常に深いのではないか。これが前農業基本法とかなり違う反応ではないか。消費者団体の皆さんともいろいろ懇談をさせていただきますけれども、新しい基本法につきまして非常に関心をお持ちでございますので、まさに国民的な議論が今なされているのではないか、そして当委員会での御審議を注目しておられるのではないかというふうに私は理解をいたします。
  73. 海野徹

    海野徹君 大臣が会われる方というのは農業団体の代表がほとんどだと思うんです。まさに関心がなぜ高いか。これは新農基法というのはWTOに対する基本方針だ、そのための準備だ、そういう思いがあるから関心が高いんです。これによって我々は切り捨てられるのか、残るのか、そういう意味での関心の高さじゃないんですか。
  74. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) これは先ほど官房長も答弁いたしましたように、二十一世紀に向かって文字どおり誇りと自信の持てる農業をつくっていこうという理念法、憲法みたいなものでございますから、やっぱり中長期的な農業経営、個々の農業経営にたえ得るような法律としての位置づけだと我々は確信をしております。  そういう意味で、もちろんWTOとの絡みでの御関心も多いかと思いますが、この二条から五条にわたる四つの基本理念というものは、やはり日本農業が持続的な発展をしていく上で極めて重要なものであると理解をしていただいているものというふうに理解をしております。
  75. 海野徹

    海野徹君 なぜ私はそういう質問をしたかということなんですが、いろいろな意味で世界各国は農産物貿易に関して二〇〇〇年からのWTOの農業交渉の準備を進めています。アメリカは九六年農業法、EUもアジェンダ二〇〇〇で共通農業政策の改革を急いでいる。しからば、日本は新農基法でWTO交渉を乗り切ろうというのはある意味では当然のことかなと思いますし、その交渉を乗り切るために四つの理念が出てきたんだな、私はそう思っていますし、そうしてほしい。そして、日本農業のあるべき姿、世界の中で当然貢献しながら、我々農業人にとって自信と誇りの持てるものにしていってほしいと思うんです。  そういう意味での関心はもちろん私どもも持っていますけれども、私は新農基法というのはWTOに対する日本農業面の戦略だと思っていますが、そう理解してよろしいでしょうか。
  76. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 大体において当然同じような趣旨であることは間違いございません。提案骨子の三つの柱の中の多面的機能、あるいは食料安全保障、輸出国と輸入国とのバランスというのはこの条文上は出てまいりませんけれども、とにかく我が国を初めとする世界の食料人口というもの、あるいはまた国際貢献というようなこともこの条文にもあるわけでございますので、そういう意味で目前に迫ったWTOとこの法律とをダブってお考えになられるのは、これはある意味では当然でございます。また、この両者の間には、我が国の提案とこの基本法との間には当然そごがないわけでございます。  もっと広い意味で、旧農業基本法が四十年近く法律として存在したわけでございます。そういう意味でいいますと、次期交渉がどのぐらいのタームを視点に置いて行われるかはこれからのことでございますけれども、この基本法というのは日本農政の中長期的な基本理念として十分たえ得るものである、そしてまた、理念法でございますから、先ほど申し上げたように基本計画あるいはまたこれに関連する実体法等々とセットでこれからの農政への新しいスタートに向かって機能させていかなければならないというふうに考えております。
  77. 海野徹

    海野徹君 それだけに、私は、交渉力というのを持つためには、中長期的な日本農業ということもおっしゃったわけなんですが、当面、WTOを乗り切ってほしい。そのためにはやはり、後でまた質問させていただきますが、食料自給率基本的な数字を出していく、出してその決意を持って臨むという必要があるかと思うんですけれども、その辺についてどうでしょうか。
  78. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 当然、この法律を成立させていただきましたならば基本計画というものを策定しなければなりません。基本計画の中には自給率目標というものを書き込まなければならないわけでございます。来年の三月までにこの数字を出すわけでございまして、また交渉もそれと同時にスタートをするということになりますので、交渉ポジションを強くするためにも、この法律に基づくやるべきことはきちっとやっていかなければならないというふうに考えております。
  79. 海野徹

    海野徹君 数字を基本計画で出すとしたら、それは五〇%を割る数字ではないんでしょうね。  また、これは予算委員会でも大臣にちょっと質問させていただいて、いやそれはできますかねという話だったんですけれども、私は各県ごとに自給率をはじかせてみたらどうかと。総務庁の家計調査も出ているだろうし、あるいはその地域でどういうものができているかというのをもう当然つかんでいるわけですから、それは数字を出すための大変重要な根拠となり得ると思っています。各自治体が積み上げたものを持ちながら、当面、目標として農民がやる気を起こす、これで交渉してくるよと言うには、やっぱり五〇%を割る数字というのはあり得ないだろうと私は思いますが、どうでしょうか。
  80. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 穀物ベースで二八というのが世界の共通の数字になっておりまして、実はカロリーベースというのは最近は各国とっていないようでございますから比較のしようがないのであります。  いずれにしても、我が国自給率が非常に下がってきておる、低い、そしてさらに下がる傾向が続いておるということですから、これを何としても上げていかなければいけないということは再々申し上げておるところであります。  ただ、この五百万ヘクタールという農地の中でどうやって本当に、一ポイントはおろか、〇・何ポイントでも上げていくためにどうしたらいいかという作業を今進めておりますけれども、五〇というのは一つの切りのいい数字ではありますが、なかなか何ポイント上げるということの作業が非常に難しいわけでございます。先生御承知のとおり、麦で倍つくって一ポイントとか、大豆で三倍つくって一ポイントとか、食べ残しをどうしたらどうなるかとかいうことで、本当に一ポイント上げるだけでも実は大変な作業がございます。  ですから、今の段階で、確かに五〇でも低いだろう、各国に比べれば低いだろうと言われれば否定はいたしません。しかし、では五〇を目標にするといっても、最初に五〇という数字をつくってそれに向かって四苦八苦して、これは政府が決める、政府が責任を持つ数字でございますから、なかなか何年後に何%になるかということも、かなりテクニカルな数字の積み上げ、いろんな諸状況の判断というものが必要になってきますので、現時点ではいつ時点で何%ということを技術的に申し上げられないということは大変申しわけなく思いますけれども、現状はそうでございます。  それから、先生指摘の、都道府県別の自給率というのは農林省でもとっておりまして、例えば東京の自給率が一%とか、神奈川県が三%とか、北海道が一二〇%ぐらいだったと思いますが、そういうものはございまして、これは試算だそうですけれども先生が必要であれば試算という前提でごらんいただければというふうに思います。
  81. 海野徹

    海野徹君 それでは、大臣が予算委員会でそれはできかねるという話は違ったわけなんですね。もう既にあったわけですね、その数字は、試算として。
  82. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 実は、試算とあえて申し上げましたのは、その県の県民の方がどういう食生活をしているかという統計はないわけです。ですから、これは仮定としては全国平均と同じだと、まず非常に乱暴な前提を置かなければいけないというのが一つございます。  それから、輸出入のように通関統計というものがありませんから、厳密な意味で県産物がどの程度食べられているのかというのも、率直に言って県境調整措置ということで県の間で関門がありませんのでわからない面がありますけれども、そこは県の生産統計というものを、これも大胆にそれが全部県内に供給されているという前提を置いて、そういういろいろな仮定計算を置けば、大体その県産物がどのぐらいその県の需要を賄っているだろうかと大まかなめどはつけられるんじゃないかという意味での試算をしているわけでございます。
  83. 海野徹

    海野徹君 私は自給率の明記を求めているわけなんですが、それは実態を判断するには大きな意義がある。自給率を明記することによってそれとの差が当然出てきますから、実態が非常に把握しやすいです。  先ほど大臣が言いましたように、相当な決意を持って臨んでいるということが我々農業人に対してやる気を起こさせることですから、私はぜひ明記を求めていきたいと思いますし、それは五〇%を切ってはならないというような思いでいるわけなんです。ぜひその辺は速やかに取り組んでいただきたいと思います。  今回の農基法の目指すものの中にぜひ取り入れる、そういう視点がなぜなかったのかということだったんですが、先ほど大臣お話の中でも、非常に消費者から期待の声が大きいですという話がありました。今、東京都でも一%の自給率ですという話がありました。まさに、農業の問題というのは、私たち農業人から言わせれば、農業人は別にきょう食っていくだけだったらやめちゃってもいいんです。農業をやめてどこか日雇いに行ったって生活はできるんです。しかし、九割の生産手段を持たない消費者である都市住民の人たちにとって、農業農村あるいは食料を初めとしたそれが一番大事な問題なんです。にもかかわらず関心が薄いと私は思っています。  だから、都市がどうしたら自立できるのか。都市の自立の視点が農基法の中に盛り込まれていないんじゃないか。都市農産物供給しておりません。供給してもらっています。緑もありません。ごみだけは我々農村部へ廃棄処分で持ってこられるんです。  そういった意味で、二十一世紀が自立と共生というのがキーワードとしたら、都市の自立という視点が農基法の中へ私はやっぱり盛り込まれるべきじゃないかと思うんですが、その辺はどうなんでしょうか。
  84. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 本法案は食料農業農村に関する基本法でありますので、もろに都市という側から規定するというのはやはり基本的な性格として難しかろうと思います。  しかしながら、食料消費者の大宗を占めているのは都市住民でございまして、その都市住民あるいは消費者に対しまして食料を安定的に供給しなければならない、そしてそのまた供給のソースとしては国内農業生産基本だということで整理をしておるわけでございます。  先ほど来のお答えと重複する面がございますが、同時に都市住民が求めておりますのが、あるいは受益しておりますのが多面的機能であります。国土の保全なり水源の涵養という機能の受益者は主として都市の住民であるという意味では、もろに直接的に都市住民に対してという書き方はしておりませんけれども日本国民のかなりの部分を占める都市の住民、都市消費者という方々を念頭に置いて、その人たちをサポートできるような、そういう我が国農業あり方として農業の持続的な発展なり農村振興ということを位置づけておるということでございます。
  85. 海野徹

    海野徹君 重ねてお伺いさせていただくわけなんですが、九割の生産手段を持たない都市住民、消費者のすぐれて関心の高い問題がこの食料農業農村の問題なんです。それに対して、ではどういうふうな形でPRして、あなた方の問題なんだと。一割の生産手段を持った農業者の問題じゃありません、もっと真剣に考えてほしいと。具体的にはどうやってその活動をされていくつもりなんですか。  私なんか、朝、みそ汁の中へ何か具を入れるにしても、目の前の畑へ行けばとれるわけなんです。最高のぜいたくをしています。マリー・アントワネットの究極のぜいたくがベルサイユ宮殿に家庭菜園をつくることだと言われていますが、まさにそういった意味では私もマリー・アントワネットと同じようなぜいたくをさせてもらっている。だから、若い連中には、そのぐらいぜいたくをやっているんだから、おまえら我慢しろとある意味では言っているんです。  要するに、我々一割は何とでもできるんです。自分が食べるものは肥料は少々やるけれども農薬はまかないんです、目の前のは。真っすぐできれいなもの、日もちのいいものを市場が要求してきますが、どうやっても労働力がありませんから、労働力がないことを肩がわりするには多肥料、多農薬、農薬をたくさんまくしか今までなかったんです。それは自分たちも痛烈に反省しながらも、危険だとわかりながらも農家はやってきちゃったんです。それが、ようやく今自分たちが加害者なんだと農家も気づき出したんです。  私は、数年前から肥料設計をし直しなさい、農薬のかけ方をもっと研究しなさいというふうにさんざんJAに言っていたんですが、JAとしてはどうしたって売りたい一本でしたから、それがなかなかなされてこなかったんです。しかしながら、ある意味では大臣がおっしゃったように環境問題、食料の安全、安心という意味での消費者の声の高まりの中からそれが今非常に大きな問題となって、我々が加害者であるという自覚も農業人に出てきたわけなんです。  だけれども、事ほどさように、我々一割の人間というのは、要するにわずかな自分たちの食いぶちだけ家庭菜園で、自分の家の前でできれば、後はどこかへ職を求めていったっていいわけです。一割の問題じゃないんです、九割の問題なんです。その点についての御努力をどうされるのか、お聞かせください。
  86. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) この基本法の十二条に「消費者役割」というのがありまして、「食料農業及び農村に関する理解を深め、食料の消費生活向上に積極的な役割を果たすものとする。」ということで、生産者は国民に対して安定的に食料供給する責務という言葉はここでは使っておりませんけれども努力、努めるものとすると。消費者の方は消費者の方として、業としての農業あるいは空間としての農村というものがまさに国民全体に対する大変なプラスの財産として存在をし、しかもそれを維持するために関係者の皆さんが大変な御努力をされているということ、それから国内生産される農産物を、私の言葉で言えば感謝しながら食べていただくということで、都市農村という対立の構造ではなくて、お互いにお互いが認め合い、共生し合っていくことがまさにこの理念が求めているものであろうというふうに考えております。  したがいまして、生産者の努力といいましょうか、国民食料供給しているんだという責任感、その責任感の前提として経営意欲とか担い手とかいったプロとしての農業者の意識というものが要求されてくるわけであり、それを助長するための政策をとっていかなければならない。そして、国民の大半を占めるいわゆる消費者は、国産の農産物、つまり日本食料の将来に対して不安が非常に大きいという総理府のデータも出ておるわけでございます。そういう意味で、お互いがお互いを認め合い、そして共生しながらやっていくことが、世界で一番自給率の低い我が国の異常な状態を少しでも直していくための方法であります。  また今、先生が農薬、肥料のお話をおっしゃいましたけれども、やはり消費者の方もそういう自然や体に優しい農業、農法というものを求めておるわけでございます。当委員会でも御審議いただきましたJAS法の表示の問題あるいは持続的農業の法律、さらには家畜ふん尿処理法等々でそういう方向の法整備もしながら、消費者ニーズ、そしてまた生産者の意欲が増すような施策というものを今後一層この基本法に基づいてやっていかなければならないというふうに考えております。
  87. 海野徹

    海野徹君 具体的にいろんな御努力をされることをお願いするわけなんですが、非常に食というのは保守的なものだと私は思っています。我々の祖先がずっと食べてきたものを親が食べて、それである意味では親は人体実験をしているわけです。問題ないから子供に食べさせて、それが孫にと。しかし、今の生活習慣病を含めて日本人の健康状態を考えると、親が食べないものを子供が食べて、子供が食べないものをまた孫が食べている、そういうような状況です。本当に食が保守的であるということがどこかへ忘れられているのではないかと思うんです。  それは戦後、私もそんなことがあるのかなと思ったんですが、当時の慶応大学の林先生が米を食べるとばかになるというような本を書いて、私も父親が買ってきたものですから読まされたというか、ちらっと見たんですが、キッチンカーがずっと全国を回って歩いた。日本食生活協会のキッチンカーが回って説明をすると、必ず説明の献立の材料が八百屋さんで全部売れちゃったという、そういうエピソードを残したぐらいキッチンカーがずっと回ったという話なんです。  都市の方々、九割の消費者の方がみずからの問題として考えるんだったら、今でも日本食生活協会というのがあると思うんですが、戦後キッチンカーをやったのと同じような形で厚生省がそういう要請をしていく必要があるんじゃないか。これはアメリカの小麦戦略の中での要請だったという話もあるわけなんですけれども、そういう具体的な努力をしていかないとなかなか御理解いただけないんじゃないかと思います。  今、食事のように生活の中で本当に基本であって最も日常的なものが別な理由で犠牲にされていく。そのことによるいろんな意味での深刻さ、それを我々現代人は今本当に真剣にゆっくり立ちどまって考えるときが来ているんじゃないかと。私は、そういうような啓蒙活動もやっぱり皆さん方が先頭を切ってやっていく必要があるんじゃないか、我々はもちろん現場でやりますけれども、やっていく必要があるんじゃないかと思っています。  特に、安ければいいじゃないのという消費者がいるものですから、ではあなたの命の値段は安いんだね、安上がりの命なんだねという話をするんですが、いやそんなことはありませんと。だったら、安全なものは手間暇かかったらそれなりのコストがかかるんだという話をするんです。  日本農業を本当に変えようとしたらやっぱり台所の意識から変えていかないとだめだ、しゅんを食卓へ持ってくるんだという決意を消費者が持っていかないと私は変わってこないんじゃないかと思うんですが、大臣、どうでしょうか。
  88. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) やはり、食というのは、単に腹いっぱいになってエネルギーのもとが入ればいいというものではなく、伝統文化、あるいは今お子さん、お孫さんの話が出ましたけれども、私も子供たちに対して食というものに非常に注意深くしなければならないというふうに思っております。  そういう意味でも、先ほども申し上げましたが、これは家庭段階それから教育の段階を含めて、日本型食生活というのは世界的にも評価されているわけでございますから、大いに誇りを持って見直し、そして普及をしていく必要がある。何々を食べなさい、何々を食べちゃいけませんなんということは政府が言うべきことではないとは思いますけれども、学校教育あるいは啓蒙普及といった形でそういった面の促進に努力をしていかなければならない。農林省としても消費者の部屋とかいろんな形で宣伝をしておりますけれども、これはまさに生産サイド、消費サイド、国を挙げて国民的運動としてやっていかなければならないというふうに考えております。
  89. 海野徹

    海野徹君 大臣に相当な決意を持って取り組んでいただくことを期待するわけなんですが、今回の新農基法の中でも十分述べられているその理念の中に多機能というのがあります。要するに農業というのは、私は少し端くれにいる人間として、そして農村におけるリーダーといろんな話をして彼らの生きざまを見ている中で、いろんな段階があるなと思っているんです。生活の糧を稼ぐためだけの農業をやっている人もいれば、そうじゃなくて大変すばらしいものをつくろう、農業における芸術品をつくろうじゃないか、そういう意気込みでやっている人もいれば、これはUターン組あるいはリタイア組にも多いんですが、非常に私的な情操的な部分で農業に取り組んでいる、そういう面を要するに受けているという農業もあると思う。あるいは思索の空間みたいな形で、要するに自然との対話の中で生まれてくる恵みに対して大変な感動をしているというものもあるんです。そういう人たちも、そういう段階もあると思うんです。ある意味では、人間が生かされているという中で、信仰心というか宗教的な段階、そういうのをひっくるめていろいろやると、余りもうからなくても、要するにほどほどにもうかって皆さんに喜んでもらえれば誇りも自信も出てくるんです。  そういうことをどう国民の方々に理解していただくのか。本当に農というのはそのぐらいの段階がある大変すばらしいものだということを理解してもらう、それが私は日本農業再生の何物にもかえがたい第一歩じゃないかと思います。私は農業をそう思っています。  最後大臣にその思いに対する見解をお述べいただいて、質問を終了させていただきます。
  90. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) やはり、農産物といいましょうか、食というのは、その地域地域の自然条件の微妙なデリケートなバランスの中に人の知恵と労力とででき上がっていくものであります。  先ほどもありましたけれども、私も小さいころ、御飯粒を二つ三つ残すと父親から、米一粒をつくるためにお百姓さんがどんなに苦労しているのかということがわからないのかと言って随分怒られた記憶がございます。そういうものでございますから、やはりそこには先生指摘のような思索的な空間までいってしまうデリケートな感情、私はそこまでいかない不粋ではございますけれども、やはり自然あるいはまた生き物、そしてそれに携わっている農業者の皆さんの御苦労というものも時々頭に浮かべ、子供にもその一端を話すことがございます。  やはり、単なるエネルギー源というよりも、それを超えた文字どおり人間の営みの原点でございますから、そういう意味で、国内生産基本としてというところにまさに我が国の存立の原点があるんだということで、新しい基本法を契機として、そういった先生のいろいろな示唆に富むお話がありましたので、私自身も先生の御指摘を踏まえてこれからの農政に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  91. 野間赳

    委員長野間赳君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  92. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、海野徹君が委員辞任され、その補欠として郡司彰君が選任されました。     ─────────────
  93. 野間赳

    委員長野間赳君) 休憩前に引き続き、食料農業農村基本法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  94. 風間昶

    風間昶君 公明党の風間です。  三週間前に食料問題について若干お伺いしたんですけれども、引き続いて食料問題でも世界の食料需給の観点で、きょうは外務省さんにもおいでになっていただいていますので、伺いたいと思います。  今後、人口増加あるいは所得向上で、主要食料需要というのが開発途上国を中心に大幅に増加するというふうに見込まれている。その一方で、世界の農業生産がやや頭打ちになる懸念というか傾向もあるわけでありますから、世界の食料需給というのは中長期的には不安定な局面があらわれるであろうということが予測されるわけであります。万一逼迫した場合、緊急援助として現物で食糧を援助するということが起こってくる危険性があるわけであります。  輸入国の我が国としても何らかの形でそこに対応せざるを得ない状況生まれてくるかもしれませんので、その場合に備えてと言うとおかしいんですが、世界の食料需給逼迫に際しての食糧援助大綱といったものを、ODA基本大綱はあるわけでありますけれども日本の国として、外務省が中心になるのかどうかわかりませんが、その部分について食糧援助大綱といったものの策定を想定しているのかどうかをまず伺いたいと思います。
  95. 大島賢三

    政府委員(大島賢三君) ただいま御指摘がございましたように、まさに急増する人口増加に食料生産が追いつかないとか、あるいは特に食生活の高度化といったような問題によりまして穀物消費が増大しているとか、いろいろ圧迫要因があるというわけでございまして、多くの開発途上国の中で慢性的な栄養不足状態にある。こういうことで、現在の我が国のODAの中に開発の分野における食料関係、すなわち農業、漁業等の分野が組み込まれておりますし、それから緊急事態に対しましては別途緊急食糧援助といったようなことをやっております。  そういう状況の中で、ODA大綱が全体を規定しておるわけでございますが、その中で、我が国の援助政策において飢餓、貧困によって生ずる対応についてはきちんと立場を踏まえて対応していくということがうたわれております。さらに、難民等に対します緊急援助も同様でございます。そういうことで、現在のODA大綱の基本理念とその原則の中に一応重点項目として受けとめられていると思いますので、そういったことでこれからも対応していきたいと思っております。  非常に先々長い見地から、こういった先生から御提言のございますような食糧援助大綱というようなものをもし別途検討していくということがあれば、これはこれで考えていく必要があるかというふうにも思いますけれども、現時点におきましてはODA大綱、それから先般の御質問の中でも御提起がございましたけれども、援助の中期政策というものを今政府の中で検討中でございまして、このODAの中期政策の中で農業とか食料問題をどういうふうに考えていくかということの政策的な位置づけは明らかにしていくことにしておりますので、当面はそういう対応で十分ではないかというふうに思っておりますけれども、非常に長い将来を見据えた見地からこの問題をどういうふうに考えていくかということは、我々としても十分心しておくべきことだというふうに思っております。
  96. 風間昶

    風間昶君 今のお答えの中で、当面はこれで大丈夫ではないかということですが、実際に戦争状態が日本ではなくてほかのところで起こった、先般の事例もあるわけでありますから、そういう際に、今、日本が考えているODA大綱の中では緊急援助として出動する仕組みになっていないはずですね。ですから、そういうことを想定しておいて、出動できるようなものとして具体化すべきだというふうに私は言いたいのでありますが、どうでしょうか。
  97. 大島賢三

    政府委員(大島賢三君) 現在の国際的な食糧援助の仕組みにつきましては、先生御案内のとおり、食糧援助規約という国際条約もございます。それから、国連の枠組みの中で世界食糧計画というものがもうこれは三十年以上一応存在いたしておりまして、その通常の開発を通じた食料増産の問題、それから緊急事態における緊急食糧援助の問題、この両面を世界食糧計画、WFPが担当いたしております。  そういうことで、国際的にもそれなりの枠組みができておりますし、日本もこの枠組みに組み込まれまして非常に積極的な貢献をやってきておるわけでございますので、当面のところはこうした国際的な枠組みに従いつつ、その枠内での対応と、それから別途二国間援助という仕組みがございます。食糧援助、それから食料増産援助も二国間援助の仕組みでやっておりますので、その両建てでもちまして当面の食料安保にかかわる問題についての我が国の対応というのは実施をしていけるというふうに考えておりますので、これからも積極的な対応に努めていきたいと思っております。
  98. 風間昶

    風間昶君 今の答弁の基本的な考え方は私も賛成でありますから、もっとより具体化していくべきものとしてやっぱり援助大綱を、発動できる大綱をつくっておくべきじゃないかというふうに思っております。  それを広げていくことがある意味では世界の食料安保、あるいは配分機構センターとして具体的施策を即座に実行に移していく機関というのが今国際的には私は明確にはないんじゃないかというふうに思っているんです。  もちろん、FAOの緊急援助機構とかはありますけれども、いずれにしても余剰食料のある諸国から不足諸国へ廉価で、安い値段で申し出があれば買い取ってもらって、支払いが滞るということであれば長期融資を含めてといった、私は世界食料銀行というふうに名づけたいんですが、そういうものの構想を私は持っているわけでありますけれども、それと今の御答弁になった国際的な枠組みの中での日本参画等ということと多少ラップしている部分がありますけれども、これについてはどうお考えですか。
  99. 大島賢三

    政府委員(大島賢三君) 最近、先生が御指摘のような事態が生じたのはインドネシアに対します緊急食糧支援であったわけでございまして、七十万トンの米の支援を行い、ほぼ現時点までには消化をされたという報告に接しておるわけでございますが、この際に、このときには政府米を使用することもございましたので、新たな緊急食糧支援の仕組みというのを農水省、外務省で協議をいたしまして成立させたわけでございます。こういうことで、個々のケースに応じまして柔軟に適切な対応をするという対応ぶりをとってきております。  今後とも、こういった仕組みが必要であればさらに活用していくということになろうかと思います。  そういう問題を離れて、非常に長期的、非常に広い意味でこの仕組みをどうするかということ、これは別途もちろんいろいろ幅広い見地から検討する必要があると思いますけれども、差し当たりのところは、繰り返しで恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたような世界食糧計画等の国際的な食糧援助のシステムというのが一応きちんと動いております。我が国もこれに参加をして積極的な貢献を行っておりますので、こういった枠組みを通ずる協力を通じまして、世界的な課題である食料問題にも取り組んでいくことができるというふうに考えております。その上で、なお何か将来的に考える必要があるということが出れば、これはその必要性に応じていろいろ考えていく必要が出てくるのであろうというふうに認識をいたしております。
  100. 風間昶

    風間昶君 そういうことが起こらないにこしたことはないわけでありますけれども、その際、技術的な問題かもしれませんが、収穫した米を利用しやすくてなおかつ栄養価に富んでいてコストも低い、それから保存性にも富んでいる玄米での粉末体に加工して、世界の途上国への食糧援助に充てるというのも私は考えているんです。  玄米の場合は白米に比べてカロリーも約二倍ぐらい高いと言われていますし、ビタミンB1も四倍ぐらい高いと言われておりますけれども、この部分について、これは国内的には生産調整のところもつくってもいいのではないかというふうに思っているものですから、玄米粉末体として、微粉末として生産調整の緩和にも使えるというふうにしておけばいいのではないかと思っているんです。とっぴなアイデアでありますけれども、この件に関して農水省の御意見をちょっと伺いたいと思うんです。
  101. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 玄米を米粉にします際には、今御指摘のように精米と比較いたしまして脂質が非常に高い。それから、今、先生指摘のように、カルシウムであるとか燐とかカリウムといった無機質につきましても栄養価が高いというメリットがあるということを私ども承知いたしております。  他面、これを食糧援助に利用するということにつきましては、一つには、玄米をすべて全粒粉にします際には当然アルファ化する過程があるわけでございますが、そういった過程を経ますので、米粉の加工賃がトン当たり三十万円程度必要になってくるということになります。したがいまして、援助に要する費用が増加するというか、援助の額が一定であれば援助量が少なくなるという、そういう意味での援助効率は低くなるといった問題もあろうというふうに理解をいたしております。  それからもう一点は、やはり米粒と異なりまして、米粉として食用に供するといいますか、利用するという場合はかなり世界的にも限られているんじゃないかということで、被援助国が米粉として援助してほしいといって要請されるケースというのは、おのずから米粒と比較した場合には限定されるんじゃないかというふうに思っておりまして、そういった玄米の米粉によります援助につきましては、こういったメリットあるいはデメリットといったものを総合的に検討してこれから勉強していかなければならない課題というふうに受けとめさせていただきたいと考えております。
  102. 風間昶

    風間昶君 なるほど、わかりました。  技術的には随分できるんじゃないかと思っておるんですけれども、問題は、今コストのお話がありましたから、ここを、だから市場流通をさせていくことの意義というか、今おっしゃったデメリットも踏まえて検討していただきたいというふうに思います。外務省さんありがとうございました。  次に、農業構造問題について数点伺っていきたいと思います。  先日発表されました農業経営統計調査によりますと、九八年度の農家一戸当たりの農業就業者は前の年の一・〇四をさらに下回って一・〇二というふうに過去最低水準になりました。農水省として九九年度の傾向をどのように認識されているのか、伺いたいと思うんです。
  103. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 私の方からお答えを申し上げます。  農林水産省では、統計情報部におきまして毎月と毎年、農業経営の動向を農業経営統計調査として公表いたしております。これによりますと、傾向としましては、先生からお話ございましたとおり、販売農家の一戸当たりの農業就業者数は減少傾向にあることは事実でございます。  なお、先生からお話ございましたのは、恐らくこれは推測で恐縮なんですが、日経新聞の記事ではないかと思われるんですけれども、これは実は私どもが公表いたしましたデータを、平たく申し上げますと集計をし直されまして、置きかえて推計をされた数字でございまして、私どもが発表いたしております数字そのものとはちょっと計算の仕方は違っておるところでございます。  なお、九九年度につきましては、当然のことでございますが現在調査中でございますので、これがまとまらないと何とも申し上げられないということはお許しをいただきたいと思います。
  104. 風間昶

    風間昶君 だから、傾向はどういうふうになっているのかと、認識しているのかと伺っているんです。
  105. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 毎月の数字は、十一年になりまして四カ月ほど統計上は数値が出ております。この数字だけを御説明申し上げますと、一月は〇・六三、二月が〇・六三、三月が〇・八三、四月が一・一六ということになっておりまして、当然農繁期はこれがふえることになるということでございまして、時期によって違いますので、この後の傾向は推測ではむしろ申し上げるのは適切ではないと思っておりますので、御容赦をお願いしたいと思います。
  106. 風間昶

    風間昶君 農家が滅んで農業が栄えるというようなことはあり得ないわけでありますから、日本国内生産量の見通しが立てば、それに必要な農地面積も、そして就業人口というのも当然概算ではじき出せることですね、理論的には。  農地確保できたけれども農業人口が減って食料自給はできませんでしたと、こういうことでは話にならないわけでありますから、政府としても、新規の参入就業者の確保、おととしの新規青年、あるいは昨年の新規高齢者というか高年者というさまざまな施策確保のために実施してきたと思いますけれども、残念ながら就業人口の減少の歯どめというのがかからないのも事実であります。  そういう意味で、別の発想をもうちょっと立てなければならないのではないかというふうに私は思うんですが、なかなか私も別の発想が今のところ浮かんでこない、むしろ知恵を持っている農水省の人から出してもらえればと思っているぐらいであります。  これについて、一点は、新規青年者の農業内それから農外、また去年から動き出した新規高齢者の農外参加がどのぐらいふえたのか教えてもらって、さらに別発想による就業人口確保するアイデアを教えていただきたい。
  107. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) まず、他産業から農業の方へおかわりになっているといいますか、農業の方に主に従事することになった、新規就農者と言ってもいいと思いますけれども、そういう皆さんの数字を御紹介いたしますと、このところ全体としてはふえてきておるわけでございまして、すべての数字で申し上げますと、例えば八年度が四万八千九百人ほど、それから九年度が五万四千五百人ほどでございますが、この中でいわゆる青年と呼ばれます三十九歳以下の方はそれぞれ六千五百人、七千五百人でございます。  その一方で、四十歳―四十九歳、五十歳―五十九歳、六十歳以上とランク分けをしてデータの整理をいたしておりますが、傾向といたしましては、年齢が上に行くほどこのところの増加の数といいますか、伸び率と言ってもいいと思いますが、それがふえている傾向がございまして、六十歳以上の方が九年度で申し上げますと二万八千六百人ほどという数になっておりまして、かなり高齢者の方の新規就農が増加しているといいますか、そういう傾向がうかがわれるのじゃないかと思います。  もう一点の御質問にお答えすることになりますが、私どもとしましては、中核になっていただく青年の方の就農はもちろんでございますが、農村において活性化をしてもらうとか、あるいはほかの産業でのいろんな御経験や知恵を生かしてもらう、そういう観点からもこういう中高年齢者の方の新規就農は大事なことではないかと考えておりますし、先ほど先生からお話ございましたように、十年度では新規就農のための資金の貸し付けに係る法律の改正を行っていただいたというようなことでございます。
  108. 風間昶

    風間昶君 別発想の問題はどうですか。教えてください。
  109. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 先ほどお話をしましたのは、どちらかといいますと家族経営といいますか、個人が就農されるということもあるわけでございますが、そのほか、私どもとしましては法人経営というものも、例えば集積を図る、そこにいろんな形でのハード、ソフトを集中するという観点から推奨をしていくということではなかろうかと思っております。
  110. 風間昶

    風間昶君 新しく農業をやる人に宝くじを出すとか、いろんなやり方が、こそくな手段かもしれないけれども、いろいろあるわけであります。それこそこの間、不登校で高校をやめた人たちとか十数人と話していて、要は、自分で食べるものは自分でつくってみたいという子も結構いたんです。それが直ちに農業をやれるかやれないかは別問題でありますけれども、要するに自分の生きざまを自分で探したいという人が結構いるんです。だから、奇策と言われても何しても、自立して自活していくという観念というか、意識の啓発にももっと力を入れていかなきゃならないんじゃないかというふうに思っております。またアイデアがあれば教えていただきたいと思います。  次に、株式会社参入の問題で、先般、仙台に私は行かせていただきましたけれども農業者だけじゃなくて一般消費者の方々も相当この株式会社農業参入に対しては大きな懸念を持っていらっしゃいました。今回の基本問題調査会の答申でも全面ゴーサインが出たわけではないわけであります。その一々のデメリットをここであげつらうわけにもいきませんが、当然考えられるデメリットがあるわけであります。そういうことに対して農水省はどうこたえていくのか、つまり国としてどうこたえていくのかということが極めて大事じゃないかと思うわけです。  私自身は、就農ルートを多様化して就業を確保するという観点からも、またその地域に住んでもらうという定住条件整備からも大事な問題であると思いますし、若者の重要な就職先としても有望であると思っております。ただ、大手の資本による農村荒らしのような事態には備えておかなきゃならない。それに対する規制と監視チェックというのは当然必要だと思っているわけでありますが、現在、既に有限会社として経営されている農業生産法人を株式会社に転換する、あるいは第三セクター方式、最近いろいろなところで問題というか課題を残していますけれども農業公社を株式会社にするような場合には私は弊害がないのではないかというふうに思っているところであります。  法人雇用の、いろんな人たちと話していて一番のメリットは休みがとれる、要するに休日などの就業条件が非常にほっとする部分だということと、社会保険が適用されるというのは今の景気の状況からいうとすごくうらやましいと思っている人もたくさんいるわけであります。そういう意味で、雇用者の福祉が株式会社化によるメリットとしては挙げられるのではないかというふうに私は思っているわけであります。  長々話しましたけれども、言われている株式会社参入に関してのデメリットをどういう認識でいるのか、またそれをどう乗り越えようとしているのか、農水省に伺いたい。
  111. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 二つに分けてお答えを申し上げたいわけですが、株式会社一般の土地利用型農業への参入の問題につきましては、昨年の基本問題調査会の答申にもございますように、二点の大きなデメリットがございます。一つは、農地の投機的な取得につながるおそれがあるということ、それから二つ目には、周辺の家族農業経営と調和した経営が行われずに地域の水管理、土地利用を混乱させるおそれがある、こういうことでございました。  したがいまして、農政改革大綱では、土地利用型農業における株式会社の取り扱いにつきまして、いわゆる株式会社一般は認めない。しかし、今、先生がおっしゃいましたように、地域に根差した農業者の共同体である農業生産法人の一形態であれば選択肢を拡大する。例えば、今、先生が御指摘ありましたような雇用の受け皿の問題、それから資金調達の問題、あるいはノウハウの問題、こういったメリットがございますので、この点について検討すべきであるということでございます。  ただ、この場合であっても、農業関係者の中には、一つは農外資本に支配されないだろうか、二つ目には偽装した参入が行われないか、三つ目には初めから転用目的の参入があるのではないかといったことが懸念としてあるわけでございます。これらの一つ一つにつきまして懸念が払拭されるような措置を現在検討会で詰めているところでございます。もう近々成案を得まして、できれば次の通常国会に関連制度の改正という形でお願いをしたいと思っております。
  112. 風間昶

    風間昶君 この基本法が成立した後の具体的な実体法の中でやっていきたいというお話であります。  引き続いて、農地法の許可要件、農地の権利取得が認められるにはさまざま条件があります。農地のすべてについて耕作するとか、常時従事するとか、経営状況を含めて居住地から農地までの距離だとか、経営面積が五十ヘクタールを超えることという条件を満たす場合であります。  農地法そのものは、当然その上に土地の基本理念等施策基本を定める土地基本法、ここには当然土地の投機的抑制がきちっと規定されているわけであります。そういう意味では、この農地法の権利移動の規制というのはこの土地基本法の理念にもかなっているわけでありますから、株式会社参入について、権利移転に一定制約をきちっと設けるということにすれば、農地法や土地基本法との関係農地が荒廃していくという事態は避けられるのではないかというふうに思っております。  私は、新農業基本法を、理念法とはいってもそこの押さえをきちっとやって、この株式会社参入を、無目的というか、あるいは投機的な利用に歯どめをかけるということが大事ではないか。これはどこの農業者あるいは団体、どこへ行ってもやっぱり一番懸念として、今、渡辺さんがおっしゃったように三つの懸念を出されていますけれども、口々に皆さんおっしゃるわけであります。  そういう意味で、実体法ができるというのが、先ほどは自給率の話で大臣が来年の三月ぐらいまでには自給率を明示と、そんなのは来年三月の話じゃないのではないかと私は思っているんです。自給率の話は別にして、理念としての新農業基本法ができたときから既に株式会社参入というのは、当然、投機的に利用するという考えを持っていらっしゃる方は素早く行動に移すわけですから、そういう意味できちっと規制をしておく、あるいは監視、チェックの体制を、こういうふうなフレームで今いるというぐらいのところまでは出しておかなければならないのじゃないかと思うんですが、農水省としてどうですか。これは大臣に聞きたいけれども
  113. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 生産者団体あるいは農業者の皆さんが株式会社について多くの不安と、それからメリットも当然あるわけでございますから、先生はあえてメリットにはお触れになりませんでしたけれども、あるという前提での御質問かと思いますが、そういう意味で、やはりこの条文の二十二条にも書いてありますけれども農業経営の法人化を促進するということは一つの流れであろうと思います。  しかし、先ほど構造改善局長からお話がありましたように、投機目的あるいは動かなくなったら放棄してしまう、さらには転売してしまう、そして集落、自治体との関係がよくないというようなデメリットも当然現時点でも考えられるわけであります。  これを防止していかなければいけないと同時に、株式形態とはいいましても一般的なものについては認めないということで、例えば権利移転関係につきましても、株式の譲渡制限なんというものは株主総会、定款でこれを決めることができるわけでございますから、多分、株主の大半はその地域農業者ということになるんだろうと思いますが、それが転々流通するということのないようにしていくということも必要なのではないかというふうに思います。  また、農振地域の制度あるいは農地転用許可制度を厳正に適用することを前提にいたしまして、メリットの分を最大限発揮できるように、そして考えられるデメリットについてはそれが発生しないようにしていかなければいけないということで、これにつきましては検討会の方でことしの夏ごろまでに、来年の三月ではございません、ことしの夏ごろまでに基本的な方向を出していきたいというふうに考えております。
  114. 風間昶

    風間昶君 もう夏ですよ。  農地の流動化についてもそうなんですが、これまで農地が流動化しなかった背景はさまざまあると思いますけれども、私は、農地価格がほかの土地と同じく高くなってきたということも一つの原因として挙げられるのじゃないかと思っているわけであります。  そういう意味で、農地価格が上がれば投機の対象になる、あるいは農地価格が下がれば農地の資産としての価値が下がるという、非常にバランスというかてんびんが難しいというふうに思うわけでありますけれども、今後の農地価格について政府としてどういう方針で臨むのかという、場当たり的な答弁じゃなくて、一定の筋を通して方針を決めておく必要があるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  115. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 農地価格低下をする、あるいは低下傾向にある、この二つはちょっと違うと思うんです。  低下傾向にあるということになりますと、やはり受け手の方の農業者というのはなかなか取得をしづらい、先まだ下がるんだからということになります。それから、低下をいたしますと、これはその農地を所有している者にとっては担保価値が下がるわけでございますので、二重の意味で、低下ないしは低下傾向について、なかなか農地が流動化をしないという問題が生ずるわけでございます。それは先生がおっしゃったとおりであります。  したがって、これからは所有権というところにそう強くスティックをするのかどうか、現に農地流動化の大宗は、今、多分七割程度は賃借権の設定で動いております。それに加えまして、基幹作業を受託、委託をするという形、実質的に経営の規模を拡大するという道もございますので、これからの重点はどちらかといえばそういうところに軸足を置いたらどうだろうかというふうに考えております。  あとは具体的な運動論になるわけでございますけれども、笛や太鼓で流動化流動化と言うだけではなくて、個別の市町村ごとに、いついつまでにどれだけ、どういう形で動かすという具体的な目標を定めて、これにみんなが取り組む。そして、そのプロセスで、流動化しなかったときにはどういうことが原因であろうかということをきちんと点検して進めていったらどうだろうかというふうに思っておるわけでございます。  同時に、農地法の中でもまだ農地流動化を阻害している一定の規制があれば、これらも今検討中でございますけれども、制度改正をして流動化がよりしやすくなるようにするというふうなことを目下検討しているところでございます。
  116. 風間昶

    風間昶君 今、個別の市町村ごとに、しかも賃借の部分に軸足をやや置きながら行くという御答弁がありました。  もちろん、農地の流動化については、農業委員会によるあっせんとか、あるいは掘り起こし活動のほかにも、保有合理化法人が行っていく事業によって農地の権利移動の方向づけや利用集積が今も行われておるわけでございますけれども、私はそれはそれとして、圃場整備について、優良農地の集積に資する場合に、現実に一戸一戸の農家の方から極めて負担が重いという声も聞いているわけでありまして、これを低減していくということも優良農地を集積するには極めて大事なポイントになるのではないかというふうに思います。このことについて一点伺いたい。  もう一点は、農地の流動化を進めていく上で、優良農地に資するために、後継者もいないからやめるといったような場合には、例えばリタイア後に農業者年金を部分的にかさ上げしてやるとか、なかなか難しい問題かもしれないけれども、そういう年金額加算を含めて、生活不安というか、その後の生活不安を取り除いていってやることがさらにまた優良農地をふやしていくことになるし、農地の流動化を図ることになるのではないかというふうに思うものです。  二つとも似たような、農家負担の軽減ということと逆に年金の加算ということ、両方とも矛盾するものではないと思いますが、この二点についてどう考えているのか、伺いたいと思います。
  117. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 農業農村整備事業、とりわけ圃場整備事業をきっかけとして農地の流動化、集積が進むというのはよくあるケースでございます。ウルグアイ・ラウンドの農業農村関連事業の中でも三十数地区の調査をいたしましたが、規模が二・二倍になっているというふうな状況も見られます。  その場合、やはり今、先生指摘ありましたように、一つは総体として圃場整備事業のコストを下げる、あるいは整備水準を必要最小限度のところに抑えるというやり方もございますし、それからもう一つは、この事業をやっていくときに、望ましい方向を向いた圃場整備であるならば、農家負担部分のパーセントをできるだけ下げてやるという工夫が必要だろうと私ども思っております。  現在、担い手育成型の圃場整備事業では国庫の負担率が五〇%になっておりますし、それからそれに合わせて、担い手への農地利用集積を促進するというふうなケースにおきましては、農家負担一〇%部分の六分の五について無利子資金を供与するという制度がございます。さらに、この事業をよりエンカレッジするという観点から五%相当の促進費を交付するという仕組みもございまして、実質負担は一番負担を小さくした場合で農家部分が五%になるような工夫もいたしております。今後ともこういった施策を活用しながら、円滑な事業実施に努めていきたいと思っております。  それから、農業者年金問題につきましては、実は大変頭が痛いところでして、加入者三十万、受給者七十五万、成熟度二五五%という状況の中で、一人が二・五人を支えているというふうな状況にございます。  来年、ちょうど財政再計算の年に当たりますので、これから制度全体を抜本的に見直す必要があろうと思っております。現行制度では、確かにより望ましい相手先に移譲した場合には一番高い年金を受け取ることができるという三段階制になっておりますけれども、そのことについても賛否両論あるわけでございますので、検討会をやりまして、当然、明年は財政再計算の年ですから農業者年金法の改正をお願いしたいと思っておりますので、その過程でいろいろと議論をしてまいりたいと思っております。
  118. 風間昶

    風間昶君 まず、農家負担の低減のお話がありましたけれども、実際上どのぐらい利用されているんですか。制度はあるんだろうけれども、動いていないんじゃないですか。
  119. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 具体的な数字は持っておりませんけれども、後でまた御報告申し上げたいと思いますが、担い手育成型圃場整備事業をやっているところでは、ほとんどの地区がこの無利子六分の五というのと、それから促進費の交付について前向きに取り組んでおります。
  120. 風間昶

    風間昶君 わかりました。  それでは、この食料農業農村基本法案という法律ですね。食料はわかる、農業もわかる。農村というふうにこの基本法の中に言っているけれども農村って一体この法案ではどうやってイメージしたらいいのかなということ、どういう地域を指しているのかなということを一つ伺いたい。イメージがみんな個人個人によって違う。
  121. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 農村ということにつきまして特に定義規定は置かれておりませんので、お尋ねのようなことがあるかと思いますが、一般的に申し上げますと、農業的な土地利用が相当の部分を占める、かつ農業生産生活が一体として営まれており、居住の密度が低く分散している地域、こういう意味で用いております。  これはほかの法律でも、農村という言葉を使っている法律が農業協同組合法以下十二本あるわけでございますが、そのうち特に定義がありますものは農村地域工業等導入促進法というのがございますが、それだけでございます。これは、農村地域工業導入を促進するときに助成措置を講じておりますけれども、その助成措置の対象となる地域に工業が行ったのかどうかということを判定する必要があることから、定義規定といいますか線引きの根拠規定があるわけでございます。  そのほかの農村が用いられている法律については特段定義はございませんが、大体法制的には先ほど申し上げたような意味合いで使われているというふうなのが一般的でございます。
  122. 風間昶

    風間昶君 済みません。もう一回言ってくれませんか。
  123. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 土地利用にアクセントがありますから、農業的な土地利用が相当の部分を占める、かつ農業生産生活が一体として営まれており、居住の密度が低く分散している地域ということでございます。
  124. 風間昶

    風間昶君 相当苦心されたお言葉ではないかと思いますが、人口集中地区の指標でありますDID地区というのが平成七年で国土面積の三%にしかならない。DID地区ではない箇所を農村地域とした場合には実に日本国土の九七%が該当してしまうわけであります。この地域には総人口の三五%が居住している。  今回のこの法案で、今、定義はないというふうにおっしゃいましたが、これらの地域すべてに適用する政策となれば極めて抽象的なものになってしまう、効果が本当に疑わしくなる。そういう意味では、農村の範囲をもう少し明確にして、この新農業基本法食料農業農村基本法案の効果が上がるように絞り込む必要があるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  125. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 農村の範囲をどうするかということにつきましては、相当苦心したわけでございますが、今おっしゃるように、それぞれの地域で相当実態も異なっておるというのが実情かと思います。  ただ、一義的にそれに何か濃淡をつけるということは大変難しいものですから、この法案では三十四条におきまして、地域の特性に応じて基盤整備とか交通、情報通信エトセトラの政策を推進するというふうに、政策を講ずる場合に「地域の特性に応じた」ということをかぶせまして、そこで濃淡を、対策の必要性、政策の必要性というものを振り分けよう、こういう整理をしたわけでございます。  ただ、農村の中でも特に今重要な位置を占めております中山間地域等、この地域の崩壊防止といいますか、持っている公益的機能の適切な発揮ということが課題でございますので、特に濃く政策を講ずるべき地域は中山間地域等ということで、農村の中でも特掲をして規定した、こういう整理でございます。
  126. 風間昶

    風間昶君 さてそうすると、じゃ中山間地域って何なんだということになるんじゃないかと思うんです。  農林統計に用いる農業地域類型の基準指標では、中山間地域というのは平地と山間地との中間的な地域というふうにおっしゃっています。林野率が主に五〇から八〇%で傾斜地が多い市町村、山間地域は林野率が八〇%以上で耕地率が一〇%未満の市町村というふうに言っている。  いずれにしても、今回この中山間地域の線引きをした場合に直接的補償にかかわってくる問題であります。何に対して所得補償をするのかということも、先般の本会議大臣は、傾斜度を極めて重要視した御答弁がございました。だから、何に対して補償するのかということの効果の側面から逆に中山間地域の範囲を決めることも考えられるわけであります。中山間地域の範囲を決めるに当たっては、従来どおりのこの指標を用いるのか、あるいは大臣もおっしゃっていた傾斜度を基準に決めるのか、意見が分かれるところだと思います。これもまたこの新農業基本法で明確にしておかないで、実体法になってから中山間地域というのはここですよとばんとやるのかどうかということだと思います。  話はもとに戻りますが、政府としては何に対して直接支払いをしていこうとされているのか、また中山間地域の線引きについての基本法というからには基本方針はこれから決めるのか、どうなんですか、教えてください。
  127. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 直接支払いお話からの御質問でありますが、中山間地域等条件不利地域というものに対しての直接支払いをどういうふうにしたらいいのかということを当委員会あるいはまた検討会で今御議論いただいておるわけでありますが、本会議で私が申し上げたのは、傾斜度等の一つの基準をつくっていかないと国民理解が得られないということで、構造改善局長の方からもう少し具体的な話をいたさせますが、条件不利地域生産性において条件不利な部分をカバーするということであります。  なぜカバーするかというと、そこがやはり耕作放棄地あるいは定住が損なわれてしまうことによるいわゆる農業農村の果たす多面的役割というものに対して、国土保全という観点からも非常に大きな影響が生じる。これはもう川下、大都市を含めて大変大きな影響があるということで、定住あるいはまた耕作持続、そのために生産条件が不利な地域についてのその不利部分をカバーしていくというのが基本的な考え方でございます。
  128. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 多少ブレークダウンして御説明したいと思うんですが、先生から御指摘があった農林統計上の中山間地域と、それから基本法で言っている中山間地域等とは厳密に言えば異なるものです。もちろん、農林統計上の中山間地域とほとんどの部分がオーバーラップはすると思いますけれども、農林統計上の中山間地域は千七百五十七市町村、こういうことでございますけれども、中山間地域等として我々がこれまでの国会の答弁でも御説明をしてまいりましたいわゆる地域振興五法ということであれば、その対象市町村の数は二千二百余に上るわけでございます。「等」というのがついておりますのは、この基本法三十五条にありますように、「国は、山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業生産条件が不利な地域」と、これを総称して中山間地域等と言っているわけでございます。その中山間地域等に対して、二項にありますように、今、大臣から御説明をした「農業生産条件に関する不利を補正するための支援を行う」、「不利を補正するための支援」でございまして、これは所得補償ということではなく、不利の補正のための直接支払いということでございます。現在、検討会で議論を進めているわけでございますけれども、この第一のネットとしては地域振興五法、それに加えて特定立法、沖縄、奄美、小笠原、そういったところの取り扱いをどうするか、それからこの地域振興五法と条件が類似している地域をどうするかというところがまだ詰まっておりません。  それから、その地域の中で今度は対象農地を選定するときの条件が、第一は傾斜度でありますし、それ以外にこの検討会で出ておりますのは小区画・不整形な水田、あるいは極端に気温が低いために牧草しかできない、その収量も劣るような農地については対象としたらどうだろうかというところまで議論が来ている状況でありますが、もうしばらく詰めるのに時間がかかるというふうに思っております。
  129. 風間昶

    風間昶君 一つは、今、条件不利地域の話が出ました。生産性において条件不利というふうにおっしゃった、大臣耕作放棄地と定住が損なわれるということだけしか挙げていませんでしたけれども北海道のような、専業農家でも、平場で専業しか生産性を上げられない、これは東北もそうですが、自然的条件、豪雪あるいは平場であったとしても水利が悪いといったようなところも含まれるのか含まれないのか、これは大きな問題なんですよ。これが全然視野に入っていないような気がするんです、今の大臣の話だと。
  130. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 中山間地域等条件不利地域と、あえて私は、「等」を毎回強調しながら話をさせていただいておりますが、生産条件として非常に不利な地域、例えば北海道で牧草地、そして冬にはその牧草地が何十センチにもわたって凍結してしまうような地域といったところも局長が今例示として挙げました。  逆に、余り具体的な話を申し上げると今検討会でお願いしている最中でございますから、私がこれはいい、これはだめだということは申し上げませんけれども、一般論としては、平場であっても生産条件が不利であれば必ずしも排除をしない。しかし、これはあくまでもどのぐらいの金額になるか、あるいはだれに支払うか、支払い方法をどうするかといった極めて技術的な問題。さらには、国民一般のお金を直接差し上げるわけでございますから、やはり国民的な理解という一定の縛りがおのずから出てくるでありましょうという前提で、平場だからといって排除、全く門前払いにするということではございませんということです。
  131. 風間昶

    風間昶君 直接支払いでも、確かに定住保障されないし、一部の個人に税金をまたお渡しするというのも行政としても困難だということはわかるんだけれども、この問題はこの次の委員会でまたやらせていただきます。  せっかく通産省さんに来てもらっているので、さっきの農村地域工業等導入促進法、そこでさっき官房長は、農村ということの定義がこれは極めてはっきりしているというふうにおっしゃいました。通産省さんにお伺いしたいんですが、伺いましたら昭和四十六年から、もう随分と昔に農村地域工業等導入促進法が動き出して、農地に工業立地を図るということで、どのぐらいこれは実態として成果が上がっているのか。自慢げに言う必要はないけれども、言ってください。
  132. 太田信一郎

    政府委員太田信一郎君) 今御質問のございました農村地域工業等導入促進法は昭和四十六年に制定された法律でございまして、私ども、農水省、運輸省、労働省で運用させていただいております。  この法律に基づきまして、都道府県または市町村が工業等導入実施計画を策定した場合に、いわゆる農工団地への企業立地に対して税制面等での支援策を講じることにしております。  昭和四十六年以来、平成十年三月現在で、千二百二十一の市町村で実施計画が策定されておりまして、これらの計画に定められた農工団地内には、平成十年三月現在で、対前年比百五十五社増の約八千社が立地または立地決定しております。また、このうち約七千三百社が既に操業しております。  ちなみに、この七千三百社において約五十二万人の従業員が雇用されておりまして、このうち地元の雇用者は全体の約八一%の約四十二万人。その四十二万人の中の三七%の約十五万人が農家世帯からの雇用者となっていると聞いております。
  133. 風間昶

    風間昶君 極めてそういう意味では、定住条件の整備に対しても大変大事な、地域における就業機会の確保に寄与されているんじゃないかというふうに思います。ただ、昨今は、全体の景気動向からいうと立地企業の数の伸びは鈍化しているんじゃないかと私は推測するんです。だから、今後は地域の特殊性を生かした、本当に地域密着の工場にするとか、あるいはバイオを含めた先端技術の研究所にするとか、いずれにしても都市部にもないような独自の路線で勝負をしなければ、結局、魅力がなくて若者が定住していかない、定着していかないという懸念があるわけであります。  したがって、農水省として今後、就業確保、場所の確保というところから、今まで動いている農村地域工業等導入促進法と同様に、あるいはそれ以上にどんな施策展開しようとするのかを伺って、時間がありませんから次回の質問に残りは譲りたいと思います。
  134. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私も先生と同意見でございまして、やはりこれからは農村地域の持っている水とか空気とか、そういうものの生かし方もあるだろうと思います。先端技術が来ればそれにこしたことはないわけであります。  それから、それに加えまして、やはり農業内部から内発的に、みずからの生産物であるとか、あるいはその地域の特産物をうまく加工なりサービスに乗せて、起業というんでしょうか、そういう形で業を起こしていく、そういうものも支援をする。農業農業関連業の起業と工業導入の促進、この三つがうまく動いて初めて農村地域内の地域の維持と振興が図られるというふうに思っておりますので、そんな姿勢で臨みたいと思っております。
  135. 風間昶

    風間昶君 終わります。
  136. 大沢辰美

    大沢辰美君 日本共産党の大沢辰美でございます。  私は、昨年初めて当委員会で質問しましたとき、農家の方々の思いと今日の農政あり方にとても大きな乖離があると指摘しました。新しい農業基本法の審議に参加をしまして、この乖離が埋められて、二十一世紀に本当に希望の持てる農業をつくらなければならないと思っています。  ところが、本法案には重大な問題点が多くあります。私たち日本共産党は、この新たな基本法に対する修正提案を行いました。特に、食料自給率引き上げに、その実質的な担保となる具体的施策が重要であること、その大きな柱の一つに、生産費を償う農産物価格支持制度の実現について私は質問したいと思います。  参議院の本会議でも私は質問させていただきましたけれども価格支持制度が生産拡大、自給率引き上げに決定的役割を果たすことを、EU諸国で歴史的に試された原則として示しました。しかし、そのとき大臣は、イギリスは二百年かかって自給率を引き上げたんだ、こういうふうに話をそらしています。  そこで、再度質問いたしますけれども我が国が穀物自給率を一九六〇年八二%から八五年三一%へと急激に低下させたその時期に、イギリスは著しく高めています。六〇年五〇%程度だったのが、七〇年代後半から向上して八一年に一〇〇%を超しています。この間に何があったかといったら、七二年にECに加盟して、そして七八年に共通農業政策が全面適用になったことであると思いますが、この経過は事実であることをお認めになりますか。
  137. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 十九世紀の初めにイギリスで大論争があって、結局、一八四六年ですか、穀物条例というもので重商主義政策をとってきたわけであります。その間、イギリスは牧草の方にウエートがシフトいたしまして、小麦の生産が非常に落ち込んでいき、そして十九世紀後半からたび重なる戦争、第一次大戦、第二次大戦ということでイギリス国民は大変な食料不足になったわけでございます。  そういう中で、チャーチル首相のもとで当時のイギリス政府が、食料増産というか、基本的な食料である穀物について自給を高めていかなければならないということで政策の大転換をしたわけであります。その中には、イギリスの地力というのは日本よりも大分劣るようでございますけれども、いい品種のものをどんどんつくって、牧草地から穀物畑に転換をしていったという国策がございました。  一方、ECの方でも、小麦全体の価格が非常に上昇してきたということもございまして、生産者の経営状態も非常にいいということで、まさに三方一両得みたいな形でイギリスの穀物自給率が、戦後の経済復興と並んで急速に穀物自給率が、象徴されるような自給の向上が見られたということが事実であろうというふうに考えております。
  138. 大沢辰美

    大沢辰美君 この数字については事実であるということはもう歴史の証明ですからそのとおりであるということを確認しまして、もちろん条件日本と異なりますけれども、しかし六〇年に五〇%の穀物自給率が八一年に一〇〇%に達したということは、この中で農業保護が強化されたことは私は事実だろうと思うんです。その共通農業政策中心をなしているのが私は農作物の価格制度だと思うんです。  御存じのように、イギリスはEC加盟までは不足払いを実施してきたけれども、小麦で見ると、市場価格のトン当たりが二十四ポンドに対して、保証価格は三十二・六ポンドであった。それが七二年にEC加盟後、ECの共通農業政策の介入価格への、当時四十ポンドだったですけれども、この引き上げを五年間で段階的に引き上げた。そして、価格が下落したときはこの介入価格で無制限に買い上げられたと。これらの措置によって、イギリスの小麦の作付面積も、六〇年を一〇〇としたら、八五年には約二倍以上に拡大したという経過があろうかと思います。  小麦の自給は困難だと言われてパン用の穀物なんかは七五%を海外に依存していたイギリスが輸出国に転換したというのは、大臣も今経過を言われたわけですけれども、やはり私は、この基本になったのは、価格制度が生産拡大、自給率向上の原動力になっていることは明らかであると思うんですが、それは否定しないですね。
  139. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) いろんな要因があったと思うんです。  まず一つは、イギリスは平地に恵まれておるということ。それから、可能な耕地面積が一千七百万ヘクタールございますから、日本の五百万ヘクタールに比べて、人口が半分であるにもかかわらず非常に広い耕地を確保することができた。それが牧草地になったり麦畑になったりということで、非常な潜在能力があったと。  それから、品種、技術の面での向上があって、そしてECの中での小麦の価格というものが非常に魅力的なものであったと。  そして、先生指摘のような価格支持政策というものもあって、価格支持だけでこれだけのことができたということじゃなくて、いろんな要因の中で、政府が先頭になって小麦の増産に励んだ結果が一〇〇を超える自給率になっていったというふうに理解をしております。
  140. 大沢辰美

    大沢辰美君 確かに、平地に恵まれているという条件日本と違う場合があると思います。だけれども、イギリスだけでなくて、EU関係で、旧西ドイツなんかも日本と同様に高度の工業国だと思うんです。だから、農業の規模は非常に零細ですし、国民経済の中でも比重が非常に小さい国であります。ところが、この旧西ドイツでも、当時、七〇年で七〇%の穀物自給率が八八年で一〇六%と、日本よりはるかに高い水準に引き上げているんですね。  ですから、EUの地域内でのこのシステム、一つには生産刺激的な価格政策があったし、輸入課徴金による輸入規制によって主要農産物は大体完全な自給を達したと思うんです。  これには国際価格より高い介入価格を設定した経過もございますけれども、その当時、七〇年代の価格で見ると、小麦では七一年、七二年で国際価格の二〇九%、七七年、七八年度で二一六%と、非常に高価格があったことが明らかな経過だと思うんです。  ですから、やはり私は、政府の固有の責任として、自給率を引き上げるための価格支持を行うこと。今、価格支持だけで自給率は上がっていないと言うけれども、こういう他の国の例だとかを参考にすれば、これは歴史の事実として教訓にし、学ぶべきではないかと思うんですが、いかがですか。
  141. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ですから、否定はしておりません。いろいろな要因の中の一つとして我々は認識をしております。
  142. 大沢辰美

    大沢辰美君 そういう点では、今日、EU、アメリカも価格支持制度は最低限のセーフティーネットとして崩していないわけですから、私たち日本の国の農民を守る姿勢にしっかりとこたえていただきたいと思います。そのことを指摘して、次の質問をさせていただきます。  五月から衆議院の農水委員会でも論議がされ、そして我が党の中林議員がこの法案の内容についての質問の中で、本法案が、九二年にスタートした新政策、「新しい食料農業農村政策の方向」というのを中核としているが、自給率低下に歯どめをかけるとしながらそれが実現できなかった、この新政策を受け継いだ基本法ではないか、本当に自給率の引き上げができるのかと質問いたしました。それに対して大臣は、みんなで自給率を設定して、政府の責任のもとでみんなで実現していきましょうという全く新しい概念のもとで今回の自給率を設定するわけでございますから、現行法時代の新政策というものはこれからの議論の前提にはならないと答えられておられます。  法律をつくる場合、前の政策がどうだったかということを点検して、よいものをつくるものだというのが私たちは当然のことと思っていますけれども市場原理の推進を前提に規模拡大、集約を目指した新政策に基づき政府施策が実行されて、その中で九二年は四六%の自給率が四一%へと低下し続けています。だから私は、新政策によって具体化され実行された施策が、自給率低下に歯どめをかけるという目標には全く無力だったことは事実じゃないかと思うんですが、その点はいかがですか。
  143. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今の自給率の現状というものが非常に低い、したがってこれを何としても、ほかの国並みというには大変高い差があるわけでありますけれども、何としても自給率を上げていかなければならないということで基本計画、この基本計画は国が責任を持って策定するものでございますけれども、これを今、検討会でいろいろと議論をし、また当委員会でも御議論をいただいておるところでございます。  今度の基本法というのは、農業基本法等の反省の上に立って、これから十年、二十年先を見据えた、国内生産基本とした自給率向上を目指した食料政策をつくっていこうということでございますから、そういう意味では現行基本法の反省、あるいは四十年間の農政というものを総括をした上で、これから新しい基本法のもとで、それぞれの法律あるいは基本計画が有機的に絡み合った形で、自給率向上等を含めた新たな政策をとっていかなければならないというふうに考えております。
  144. 大沢辰美

    大沢辰美君 衆議院の答弁の中でも、自給率低下食生活変化が原因と言い続けておられました。だけれども、私は本当に食生活変化させたのはだれなのかと言いたいと思うんです。ここで議論するつもりはないんですけれども、やはり輸入自由化によって安価な農作物が大量に市場に流入した、それが消費の増加をもたらしたことは明確だと思うんです。  これも農水省の農業総合研究所の調査で明らかになっていますけれども、「輸入自由化前後における牛肉の家計消費構造変化」という調査があります。この中でも、「牛肉の輸入自由化は、国内牛肉価格低下をもたらし、牛肉価格低下は成長期の子供を中心に、牛肉消費量の増加をもたらした」と指摘をしています。  ですから、本当に政策によって私は変えられたと思うんです。それが今健康の問題にまで広がっていることを私は一層反省をしていただきたいと思います。
  145. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 自給率低下要因について、数字をもってお話ししたいと思います。  やはり、消費の変化という食生活変化の寄与度が大きいというのは数字上も出ております。と申しますのは、最近十年間で見ますと、自給率は四九%から四一%に低下をしておりますけれども、そのうちの四%は、米の消費の減少あるいは畜産物や油脂類の消費の増加といった食生活変化、この寄与率が四%でございます。そのほか大きなものとしては、魚介類の生産の大幅な減少と魚による油の生産の減少、こういったもの。あるいは小麦、大豆の生産減少ということがそれに次いで大きいものでございます。  ということですから、今お話しのように、自由化を直接の原因とした産物が特に減ったということではございませんので、畜産物のところでいうと〇・六%、えさの減によるものがございますけれども、大宗は自由化とかかわりのないところで下がっているということでございます。
  146. 大沢辰美

    大沢辰美君 私はそのことで論議するつもりはないということを先ほど申し上げましたけれども食生活変化させたのはだれなのか、原因と結果を私は逆に描いていると。今、数字を述べられましたけれども、数字的には確かにそういう数字が出ているわけですけれども、この間の輸入自由化によって安価な農作物が大量に市場に流入したという点についての今の調査でも明らかなように、消費量を増加させていったという経過、そのことを一応指摘して次の質問に移ります。  政府施策によって自給率低下が引き起こされたことは、反省もしているとおっしゃいましたけれども、本法案が新政策をさらに発展させるものだから私は問題にしているんです。  本法案三十条一項において、「国は、消費者の需要に即した農業生産を推進するため、農産物価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずる」としています。本法案は、まさに新政策価格政策について、農業構造の変革を促進するため需給制度を反映させた価格水準としていく必要がある、こうした同じ路線を歩んでいると思うんです。それを受け継いでいるんです。  価格政策全体を見直して、現行の価格支持制度をなくしてしまうということになるのではないかと私は心配しているわけですが、だから自給率引き下げに歯どめをかけると言いながらつくった新政策が歯どめができなかった、この新政策の発展では、新基本法には本当に希望が持てない。具体性がない、担保がない。  やはり、これについては、本当に二十一世紀に農業が発展し自給率が引き上げられるのかどうかという点、そして後継者に農業を継げと言えるのか、こういう点を私は指摘したいと思いますが、新政策と本法案についての、価格支持制度を崩してしまったその点についての見解を聞かせてもらいます。
  147. 高木賢

    政府委員(高木賢君) いわゆる新政策は、よくお読みいただきますと明確に書いてございますが、「農業構造の変革を促進するため需給事情を反映させた価格水準としていく必要がある。」ということと、「その際、価格低下育成すべき経営体の規模拡大などによるコスト削減にタイム・ラグが生じないように努める」ということでございまして、これは価格政策自体の水準をどうするかということで整理しておりますが、必ずしも引き下げ一方を言っているものではないというふうに理解をいたしております。  それに対しまして基本法三十条、御指摘になりましたが、むしろ考え方が若干変わっておりまして、消費者の需要に即した農業生産を推進する。つまり、価格政策がこれまで、消費者生産者の間を結ぶ場合に必ずしも、品質評価なりあるいは実需者が求めるものがどういうものかということが生産者に伝わらないうらみがあった、いわゆる需給のミスマッチの発生を招いた面があるわけでございます。そのことが、消費されない、あるいは実需者に使われない物づくりの方に作用しかねなかったということから、やはりつくられたものが消費者あるいは実需者に歓迎され、そのことによって生産増加の方向につながるようなものでなければいけないだろうということで、この三十条に明確に規定してございますけれども消費者の需要に即した農業生産の推進ということが主目的であります。  と同時に、そのためには農産物価格が需給事情と品質評価を適切に反映して形成されるようにするということで、まさにマーケットの中できちんと国産の農産物が品質、価格両面で選択されるようにしていく、そして自給率向上につなげていく、こういう考え方が明確になっていると思います。ただ、その場合に、価格が変動する、そのことによって育成すべき農業経営に悪影響が及んで経営がぐあい悪いことになってはいけない、経営が発展できないことになってはいけないということで、この価格形成とセットで経営安定対策を講ずるべきであるということを明記しているわけでございます。
  148. 大沢辰美

    大沢辰美君 結局、違うと言うけれども価格支持制度をなくしていく上では一緒だと思うんです。それを私は、新政策をさらに発展させているのが新しい基本法であるということを指摘して、その具体的な内容について質問をしたいと思います。  一つは、この新政策後、具体的に米への市場原理導入がされて、農作物価格のさらなる引き下げが行われて、食糧管理法が廃止されて、食糧法で米価の下支え機能もなくした、そして自主流通米でも値幅制限の大幅な緩和がされた、そして撤廃して市場に任せていった。  この間の、九二年からの、米、麦の政府買い入れ価格、乳価、畑作物のすべてが引き下げられてきているという数字をちょっと示したいと思うんですけれども、米でいったら、九二年一万六千三百九十二円が、今一万五千五百二十八円になっています。それから、小麦は九千百十円が八千八百九十三円になっている。加工原料乳が七十六円七十五銭から七十三円三十六銭になっている。大豆は一万四千二百十八円から一万四千八十円になっている。自主流通米も下支えを失い大暴落をしています。  それが私は、新政策育成すべきとした認定農家などの担い手経営を困難にしているのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  149. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生は御存じの上で質問されているのかどうかわかりませんが、価格そのものはその数字のとおりだろうと思いますけれども価格決定に当たりましては、農家手取りの確保というものに最重点の配慮をしておるわけでございますので、いわゆる保証乳価が幾らになったというだけで生産者の売り上げというものが決まるわけではないわけでありまして、いろんな奨励対策費等々を含めまして、手取りとしては常に前年よりも、いろんな名目で知恵を絞りまして所得確保というものに全力を挙げておるわけでございますから、その一面的な価格だけで下がった下がったと言われるのは、生産者の皆さんに大変誤解を与えることになるのではないか。  それから米については、政府米というのはもうごく一部になりまして、先生指摘のとおり自由な入札の中で決まっていくわけでありますけれども、しかしこの三十条二項にもございますように、経営安定対策、つまりいわゆる下支え的なものをきちっと担保しておるわけでございますから、どこまでも下がっていって生産者が大変なことになるということのないようにするために三十条二項というもので担保をしておるわけでございまして、そういう意味で、市場原理価格が乱高下するのを全く放置しているということではないということを御理解いただきたいと思います。
  150. 大沢辰美

    大沢辰美君 しかし、結果は先ほどの水準になっているということですが、自主流通米で見てみますと、九七年産の自主流通米価格は、過去三年間に比べて六十キロ当たり三千円という大暴落をしているわけです。それから、有名銘柄であるか否かを問わずに、新潟の佐渡産コシヒカリが前年比五千百円下がっている、岩船産が四千五百円下がっている、魚沼産が四千円も下がっているわけです。だから、自主流通米価格政府価格を下回る事態も、北海道だとか青森だとか北陸、もちろん関東より西にも広がっているわけです。その後も価格は低迷しています。  先ほど午前中の答弁で、最近は価格が少し上がっていますという答弁がありましたけれども、確かに二月までは少し上がっていますけれども、ことし三月からやはり下落を続けています。六月に行われた第十二回の入札では、全銘柄平均の指標価格は一万七千六百四十五円になっています。暴落した九七年六月の価格よりさらに六百五十七円も下回る価格に下がっているわけです。ブランド米も例外じゃなく、魚沼産のコシヒカリも二万七千六百六十九円と九七年の価格より下がっているわけです。だから、卸の業者の方も、一カ月で一俵数千円も下落するのは投機としか言えない状況だと言われている方もあります。  ですから、今回の法案審議でもメリットのみを強調されていますけれども、やはり市場任せにすればするほど価格下落は目に見える事実ではないですか。これがいいものをつくれば売れるという状況であるかどうか、まずお尋ねします。
  151. 高木賢

    政府委員(高木賢君) やはり、市場経済でありますから、供給が過剰になれば価格が下がるというのは当然のことかと思います。それはまさに下がるのでありまして、下げてそうなったわけではないわけでありまして、蛇口を締めれば、その後の自主流通米価格の推移に見られますように、価格は上向きになるということは明らかになっていると思います。  そういう意味で、米は特に需給バランスを確保することが重要な作目であります。ただその中では、品質のいいものをつくれば同じ値段ではなくて高く売れていく、こういうものになるわけですから、需給バランスをとりつつ、いい製品をつくっていく、それが消費者に好まれて高い評価を受けていく、こういうことであろうかと思います。  そうはいっても、天候のかげんで、生産調整面積をきちんとこなしてもなおかつ供給過剰になる場合があるわけでございます。それに備えて稲作経営安定対策ということで経営安定対策を打っているわけでございますので、まさにそういった点をにらんだ運営にしているということでございます。
  152. 大沢辰美

    大沢辰美君 だから、不安定な価格に放置してはいけないということを私は言っているわけです。  経営の安定対策をやるということを今言われましたけれども、そういう施策をやっている稲作経営安定対策でも大変な事態になっているということをもう一度具体的に述べたいと思います。  それは、大規模経営ほど打撃を受けていると思うんです。半分の方が参加しました六月十五日の福岡公聴会でも、実際の数字を示して大型経営農家への影響が言われていました。食管法から食糧法への移行に伴って、十五ヘクタールというまさに新政策が目指した経営規模の農家が、九州を代表するヒノヒカリ六十キロ一俵当たりが価格二万円台から一万五千円台と政府米と同じレベルに下落した、九四年から九八年にかけて粗収益が二百万円も落ち込んだと言われるんです。  しかし、稲作経営安定対策によって、ことし受け取った額は三十七万八千二百五十円、本人が出した拠出金は二十六万一千円だったと。だから、差し引き十一万七千二百五十円しかこの経営安定対策で措置されなかったわけです。だから、二百万円の減収に対して十一万円の補てんでは経営安定の名に値しない、このように指摘をしています。だから、経営安定対策は市場価格の下落を抑えるのではない、将来の展望にはつながらない、このように結論を出されていました。そのとおりだと思うんです。  これが一部の農家に起こったことではないということを、五月二十七日付の日経新聞が発表していました。米主体の農業生産法人の調査を見ても明らかです。この結果を見ますと、四割が赤字に陥っており、赤字法人の二割は黒字転換の見通しはないとしています。日経は「ここ数年の米価下落の影響をもろにかぶった格好だ。」と評していますけれども小規模農家にかわる稲作経営のモデルとされて、本法案でも今後の農政担い手として位置づけられている農業生産法人が米価の低迷の中でこうした事態になっているということ、市場原理導入、競争条件導入の推進は担い手育成をも困難にしていることは明らかだと思うんです。  だから、新政策に基づく施策の失敗は明らかだと思いますが、この大規模経営の実態も見ていただいて、答弁をいただきたいと思います。
  153. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 今、大規模経営についての稲作所得低下について御指摘がございました。それぞれの地域によりまして、平成五年、未曾有の大不作でございましたので、自主流通米の価格が非常にはね上がるという状況をベースにしまして、六年産、七年産、八年産、九年産と価格低下いたしました。この中の一つの大きな要因としましては、作況が六年産から九年産まで四年連続の豊作であったということで、それだけのポイントを数えますと一八ポイント、在庫にしまして適正在庫に百八十万トンが積み上がるということで、全体的に三百五十万トンという国内の在庫が積み上がったわけでございます。そういうことも受けてやはり価格低下ということがあったということも、これまた認識をしなきゃいけないだろうというふうに思います。  私どもとしましては、そういった状況の中で、稲作経営を一生懸命やっていこうという方々の経営をどう安定するかということが最大の課題ということの中で、稲作経営安定資金というものが導入をされたというふうに理解をいたしております。  十年産につきましては、一年目でございますので評価はまだ難しい面がございますけれども、先ほども御説明いたしましたように、北海道について見れば、これは規模が非常に大きいわけでございますけれども、二十一億の自己拠出に対して六十一億円の支払い金があったということもこれまた事実でございます。  他方、またこの稲作経営安定資金というのは結局は、生産調整をきちんとやった上で、なおかつ豊凶の変動にどう対応するかということでございますので、生産調整対策をきちんとするということと稲作経営安定対策の運用のよろしきを得るということを両々相まって、これから頑張っていこうという農家の方々の経営の安定ということに私どももこれから努力をしたいというふうに考えております。
  154. 野間赳

    委員長野間赳君) 午後四時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後三時二分休憩      ─────・─────    午後四時三十二分開会
  155. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、食料農業農村基本法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  156. 大沢辰美

    大沢辰美君 先ほどの質問の続きになるわけですけれども、私は先ほど九州の例を挙げさせていただいて、二百万円の減収をした人が十一万円の稲作経営安定対策を受け取るに過ぎなかった、そういう事態を報告しますと、北海道では非常にたくさんの稲作経営安定対策を講じているという答弁を受けて質問を終わってしまったわけです。  私は、ちょうど休憩時間に、北海道の方が傍聴に来られていましたのでちょっとやりとりしたんですけれども、こういう金額というのは、北海道の稲作農家の人たちからすれば、一戸当たり約十三万円になる、これだったら経営安定対策ではない、見舞金にすぎない、所得の安定にならないということをひどく怒りを持って休憩時間におっしゃっていました。そのとおりだと思うんです。  そこで私は、新政策に基づく施策が生んだこれらの事態、北海道の件については何度もこの委員会でも指摘をいたしましたけれども、もう一度金額について指摘をしたいと思うんです。農業所得の減少は本当に著しい。稲作単一経営の農家の農業収入を暴落前の九五年と九七年で比較すると、大体五ないし七ヘクタールの農家の方で百九十四万円減っています。十ないし十五ヘクタールで二百八十万円減っています。十五ヘクタール以上の農家の方は三百三十一万円の減となって、規模が大きい農家ほど減少額が大きくなっています。担い手農家が農業に見切りをつけざるを得ないという事態になっているのがこの数字を見ても明らかです。  そのことが北海道の農家戸数の減少にも顕著にあらわれています。九七年から九八年の一年間に、北海道では二千戸の農家が減少しているし、農家戸数は七万五千七百になっています。減少率も、北海道は二・七と全国の一・六%を上回っている。九〇年から九年間でも、全国は一五%の減少に対して北海道は二〇%と、本当に減少幅も大きくなっているわけです。  だから、大臣北海道の質問をしますと、いいところもあれば悪いところもある、そういう答弁がよく返っていましたけれども、私はこれが新政策施策の結果ではないかと思うんです。稲作の経営安定対策が農家の経営を安定させていない、農家の所得補償していないということを指摘し、この改善を求めなければ農業経営は成り立たないということを指摘したいと思いますが、いかがですか。
  157. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 私の答弁で、平成五年に大不作がございましたので価格が暴騰をした、そういう状況から比べますと、大変な値下がりをしているということは私も認めております。それから、それはまた四年連続の豊作という大変な実は過剰在庫があったということで、これまた自主流通米価格の足を大きく引っ張った、そういう事実につきましても申し上げたところでございます。  そういう状況の中で、これから頑張っていこうという稲作農家の方々を支えていくにはどうしたらいいかということで種々の検討をした結果として、一つにはやはり生産調整の規模の拡大ということの中で全体の需給調整を図って自主流通米価格の安定を図るということが基本でございます。  それと同時に、それをやりましてもなお、年によっては豊凶の変動というのがございますので、豊作が続けばやはり価格が下がるということがございます。そういう意味で、平成六年から九年のような稲作農家の実情ということをつぶさに見て、平成十年度から稲作経営安定資金という新たな経営安定資金を創設してその運用に心がけているということでございまして、そういう意味では認識におきましてそう大きな違いはないと思うんです。  そういうことの中で、政府としても、さまざまな生産調整対策、それから稲作経営安定対策、それから麦作につきましても、ことしから麦作経営安定資金というものを創設して麦作農家の経営の安定を図っていく、そういう方向へ大きくかじを切りかえつつあるということも御認識いただきたいというふうに思います。
  158. 大沢辰美

    大沢辰美君 その稲作経営安定対策が安定対策になっていないということを私は指摘したわけです。その改善を後で述べたいと思いますが、麦作については後でちょっと質問をしたいと思います。  そういう点から、九州の例、北海道の例は大規模農家の例を挙げさせていただいたんですけれども、やはり今日、大規模経営だけではないと思うんですね。複合経営でも、経営安定の上で重要な部分を占める稲作所得の急激な減少は経営を本当に不安定にしています。特に、中山間地でも稲作の不採算化は地域農業の危機を一層深刻化していると思うんです。  本法案が実施されたならば、これが稲作だけでなくて、今言いました麦も酪農家も畑作もすべてに及ぶことになります。だから、本法案は失政が明らかになった新政策が中核になっている、しかも価格政策対象を米だけでなく全面拡大する、その点では本当に農業経営を困難にした新政策を発展させるものだ、市場原理に全面的にゆだねようとするものであると指摘せざるを得ません。  だから、農家の経営が成り立たないというのは明らかで、困難を一層深刻化させるのではないか、その結果、生産縮小を招くのではないか、このように私は危惧していますが、いかがですか。
  159. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 新政策以来のお尋ねでございますが、新しい基本法におきましては、先ほど来るる申し上げているとおり、価格形成につきまして需給事情並びに品質評価を反映した価格が形成されるようにする、これが基本でございます。これは需要に即した生産を促すために避けて通れないといいますか、当然の前提であろうというふうに思います。もはや、国が何か買い上げて支えるとか、そういう時代ではないと存じます。やはり、消費者なり実需者のニーズが直接、的確に生産者に伝わる、そういう前提のもとに政策を組み立てる、こういうことが必要なときではないかというふうに思います。  そういう意味で、まさに政策が二項として経営安定対策ということで整理されてございまして、一項の需給状況あるいは品質評価を反映した価格形成と意欲ある担い手経営安定対策、これをセットで三十条で規定している、こういうことでございます。
  160. 大沢辰美

    大沢辰美君 その三十条ですけれども政府価格が著しく下落した場合は経営安定対策をとると、そういうふうに繰り返しているわけですけれども、その内容たるや、稲作経営の安定対策で明らかなように、農家を救済できていないということを何度も指摘しているわけです。  この三十条二項は、「育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずる」と、影響緩和措置の対象育成すべき農業経営に限定されています。したがって、育成すべき経営体がどのような範囲になるのか問題となります。  衆議院での質問で、育成すべき農業経営とはどのような経営なのかという質問に対して大臣は、一般的に経営規模が大きくて、それから資本装備の近代化等を通じて経営改善の意欲を持ち、効率的かつ安定的な農業経営に発展する可能性の高い農業経営、このように答弁しています。これはまさに効率的、安定的な農業経営、つまり認定農家と認定農家に発展する可能性の高い、認定農家に限りなく近い農家に限定されるということになります。  今、農家戸数は三百二十九万戸、そのうちの六四%が兼業農家です。中でも百七十一万戸を第二種の兼業農家が占めています。また、基幹的農業従事者二百四十一万人のうち四四%が六十五歳以上の高齢者です。六十歳以上を含めるともっと高くなるわけですけれども、これらの兼業農家、高齢の生産者は育成すべき経営体になるんですか。
  161. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 三十条二項に規定された経営安定対策でございます。育成すべき農業経営と申しますのは、効率的、安定的な農業経営育成するということを二十一条で全体の方針として書いておりますが、その効率的かつ安定的な農業経営に発展する可能性が高いということを衆議院におきまして大臣が答弁申し上げました。ただ、そのことが限りなく近いというようなことは全く言っておりません。まさに、現状ではないということでございまして、そういった意欲を持って取り組めば、将来、効率的、安定的な農業経営に発展することが見込まれるであろうということで言っているわけでございます。  そういう農業経営こそが、先ほども御質問の中にありましたけれども、大規模経営こそが価格の変動で影響を受けることが大きいじゃないかということがございました。まさに、実態がそういうことだろうと思います。ですから、そういう人に対して経営安定対策を講ずる必要が大きいわけでございます。そしてまた、その経営安定対策だけでなくて、二十二条にも書いてございますが、経営政策というものを体系的に整備してこれの支援をするということでございます。  なお、こういう基本法でありますから、育成すべき農業経営ということはいわば定性的な概念として使っております。具体的に経営安定対策でどこまで対象にするのか、どういう人が対象になるかということについては必ずしも画一的なものではないということでありまして、まさに今、品目ごとに価格政策の見直しをして経営安定対策を実施しようということで、先ほど来お話もありましたが、麦あるいは酪農あるいは大豆というような経営安定対策の樹立ということを目下検討いたしておりますが、そういう対策の実施の中で決められるものというふうに考えております。
  162. 大沢辰美

    大沢辰美君 育成すべき農業経営を広くとらえている、規模によって線を引くようなことは考えていない、そういうふうに言われているわけですね。そういうふうに考えたらいいわけですね。
  163. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 定性的なものということでございまして、具体的な経営規模とか経営内容ということにつきましては、画一的に定めるものではない、まさに品目ごとの価格政策の見直しに伴います経営安定対策の実施の中で決めるものだということでございます。
  164. 大沢辰美

    大沢辰美君 次の質問に移ります。  基本法の先取り的に具体化が今進んでいる麦の経営安定資金ですけれども、これは来年度から実施されるということでもう既に具体化が進んでいるわけですけれども、現時点ではすべての農家を経営安定資金の支払い対象にはしていると。担い手となるべき生産性の高い経営体の経営安定に資する観点から、国内産の麦の生産コストに着目して決められるもので、当面、その補てん水準は、いわゆる主産地、主な産地の平均規模以上の層の農家の生産コストしか懸案されないとなっています。要するに、平均規模以下の農家、中小零細規模の農家の経営安定はその基準に考慮されない、対象外ということになるんじゃないですか。しかも、それでさえも、民間流通への円滑な移行のための当面の措置、三年から五年という数字も出ていましたけれども、その後は民間流通への移行や状況、そして生産構造の変化を踏まえ必要な見直しが図られることとなっています。  経営安定対策対象となる経営体が、どんどん規模の大きな農家に絞られていくのではないか、このことについて非常に私は心配しているが、その点についていかがですか。
  165. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 麦作経営安定資金につきましては、制度上、間接統制というふうになっているんですけれども、現実は大きな逆ざやがございますので、そのほとんどが政府として購入しているという状況になっております。したがって、これではいつまでも生産者と実需者との間の直接の取引がございませんので、需要に見合った生産誘導というのはなかなか難しいということの中で、外麦との競争の面で問題が大きいという状況の中で、需要と生産のミスマッチを解消しようということで導入をされたわけでございます。  したがって、そのときの麦作の担い手となるべき生産性の高い経営体ということにつきましては、現在、政府買い入れをやっておりますものと基本的に合わせていくということが制度の変革上大事だということで、当然そういう方向をとっているわけでございますが、これは要するに、それぞれの価格政策におきまして大きな消費者負担あるいは財政負担を伴って行われるものでございますので、どの水準を維持することが国民的な合意を得られるかということとの関連で考えなきゃならない問題であろうと思います。  そういう状況の中で、リーズナブルなものとして私どもは先ほど来御説明したような形のものをとっているわけでございますが、今後につきましてもそういった方向で当面運用したいと思います。先々の問題として、生産構造が大きく変われば、それはその時点でまた見直しすることはあるかもしれませんけれども、当面はそういう方向でやっていきたい。  それからもう一つは、農家を特にその段階で絞っているわけではございませんで、規模の大小にかかわらず、従来、政府に売り渡しをされた農家につきましても、すべて民間流通ということであれば新しい麦作経営安定資金の対象になるということでございます。
  166. 大沢辰美

    大沢辰美君 麦の経営安定対策資金もまた、私はやはり価格低落に対応するものではないということを指摘したいと思います。生産費を補てんする最低価格保証がないことが担い手に展望を失わせることになるからです。  次に移りますけれども、本法案の三十条は、生産費を償う価格保証を否定し、政府育成すべき担い手とみなさなければ、兼業農家や中小零細農家、効率の悪い農家については経営安定は考慮しないということになる。これは中山間地農業にとっては死活にかかわる重大な問題であります。  そこで、中山間地の観点から聞きたいと思いますが、中山間地はもちろん高齢化率が高い、圃場整備の面積も狭い、機械化、規模拡大は制約されています。専従者がいない農家が三分の二あります。六十歳未満の男子専従者がいない農家も九割を占めています。これらは育成すべき担い手対象外になる可能性が強いと思うんですね。だから、生産費を償う価格支持なくして、四割を占める中山間地の農家の経営を困難にして、農業生産の拡大、自給率向上はあり得ないと私は思いますが、この点についての見解をお尋ねします。
  167. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 先ほど官房長からも答弁申し上げましたけれども、中山間地であると平場であるとを問わず、その地域内においてそれぞれみずからの経営計画を立てて、どういう農業経営をやるか、この計画に基づいてみずからの経営を発展させていこうという意欲を持った方は、やはりこれから農政上重要な存在として位置づけるべきであるというふうに思っております。  基本法の中では、定性的なことということで官房長からお答えしたわけでございますけれども、中山間地域においてそれぞれの地域の実情に応じた農業経営の発展を図るというのは、これはまたこの基本法の中ではきちんと位置づけをされておりますので、それぞれ具体的にどういう農業を行っていくかということに着目しながら育成をしていきたいというふうに考えております。
  168. 大沢辰美

    大沢辰美君 時間がありませんので、直接所得補償の問題についてお尋ねしたいと思います。  この間の審議や公聴会の中でも、政府の検討している直接の所得補償について、対象を狭く限定しようとすることへの批判が多く出されてきています。対象地域についても、「特定農山村法等の地域振興立法の指定地域のうち、傾斜地の農地等公益的機能確保する必要性は高いが、農業生産条件が不利で、耕作放棄地の発生の懸念が大きい農用地区域内の一団の農地とする。」と、農用地区域内の農地に限定している点です。  なぜ農用地区域に限定しなければならないのか、それ以外の農地は公益的機能を認めないのか、その点についてお尋ねします。
  169. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 御案内のとおり、農用地区域内の農地というのは農業以外の用途の転用が厳しく禁止されております。将来的にも農地として利用されるべきものということが明確であります。こういう中山間地域に対する直接支払いという制度を導入するに当たっては、やはり国民的合意といいますか、国民理解のもとに進めなければならないわけでございますので、政策目標がはっきりしているということが大事でございます。  さきに検討会の中間取りまとめを公表いたしましたが、中山間地域の直接支払いで、農用地区域内の農地とするいうことにつきましては検討会の各委員から支持をされているところでございます。私は、そういった検討会の中の、将来的に真に維持すべき農地対象とすべきだという点は重要視すべきであろうと考えておりまして、この直接支払いという我が国農政史上初の試みにつきましては、やはりこういった点から対象地域国民合意が得られる線に絞り込む必要があろうというふうに考えておりまして、対象地域は農振地域の農用地区域とすべきであるというこの検討会の方向につきましては重視をすべきであるというふうに思っております。
  170. 大沢辰美

    大沢辰美君 この中山間地の農地で農用地区域外の農地がどれくらいあるのか、直接支払い対象とならない農地がどれだけあるのか、私は知りたくて農水省の方に資料請求をしたんですけれども、これはもらえませんでした。  しかし、全域が特定農山村法の指定地域になっている私の地元の兵庫県村岡町でちょっと調べたんですけれども、全町の田んぼが五百八十二ヘクタールあります。それで、農用地区域内の田んぼは四百二十ヘクタールです。畑は二百九十ヘクタール、そのうち百三十一ヘクタールしか農用地区域内にはない。だから、百六十二ヘクタールの田んぼと百五十九ヘクタールの畑、これも畑の比率が高いのは桑畑がまだ残っているためです。だから、田んぼの三割近くが直接支払い対象外ということになります。  確かに、一つの町だけで全国を推しはかることはできません。だけれども、典型的な中山間地の町で、三割の田を対象から外すというような直接支払いあり方で、条件不利地域での農業生産を守ることができますか。国土環境を守るという本来の役割を果たすことができますか。
  171. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 繰り返しになりますけれども、中山間地域等に対する直接支払い、これは中山間地域等における公益的機能維持のために大変有効な手段だろうと私は思っております。確信をいたしております。ただ、これのみをもって中山間地域振興をすべて律しようという特効薬ではないわけでございます。私たちは、これからの十二年度の予算に向けて、この中山間地域等に対する各種の対策の整理をもう一度し直しまして、総合化をする時期に来ていると思っております。  この基本法の中でも、先生御案内のとおり、第一項と第二項、両方あわせて読んでいただかなければならないものでございます。三十五条ではこの中山間地域等に対してそれぞれ地域の実情に即した必要な施策を列挙いたしております。それとあわせて生産条件の不利の補正のための支援ということでございますので、双方あわせた上で中山間地域等振興が図られる道を選ぶべきであろうと私は思っております。
  172. 大沢辰美

    大沢辰美君 確かに、私も条件不利地域の直接支払い導入については評価をしています。だけど、やっぱり現地の方たちは、生産条件が悪く最も耕作放棄になりやすい農地対象外となりかねないと非常に心配しているわけですね。ですから、無償の国土の管理人として今日まで役割を果たしてきた、その正当な評価をするならば、私はそのような限定はすべきでないと思いますが、もう一度質問します。大臣、いかがですか。
  173. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) いかなる農地をまず第一に守るべきかというところから入りますと、農振法という法律に基づいて農用地区域内で転用が厳しく規制をされ、今後優良農地として守っていかなければならない農地、これが最優先でございます。  直接支払いという手法もそうですし、中山間地域等振興という対策もそうでありますけれども、何を入り口の第一段階として一番重視しなければならないかということに着目をし、その点に立ちますと、私は、直接支払いという手法の導入に当たって、国民理解あるいはWTO農業協定の枠組みを活用するという点からいいますと、客観条件がはっきりしていて、生産条件の不利の格差の範囲内で直接支払いを行うというこの手法に立ったときに、やはり農用地区域内の農地、これをまず第一優先順位として取り上げるべきであろうというふうに思っております。
  174. 大沢辰美

    大沢辰美君 今、私は、中山間地の直接補償、いわゆる条件不利地域補償については大事だとし評価をしたということ。だけど、それを補償するためには、いわゆる平地に対する価格保証一つの基準になろうかと思います。ですから、そういう点からいったら、EUなどの経験を学ぶというのは大事だと思いますが、今、政府は両論併記を掲げながら、あと一カ月ぐらいで結論を出すということですけれども、私はやはりEUでの経験なども学んでいただきたいと思うんです。  EUは、所得補償的な価格支持中心農政から直接支払いへと転換を進めているが、そのもとで中小農家の離農が激化していると言われている。だからこそ、EUは条件不利地域対象となりやすい環境適合型農業への直接支払い導入して、そこでの農業経営を守るために矛盾の緩和措置を整備していると。  直接支払いについて、今からでも間に合うのかという意見もありますけれども対象を狭く限定する方向じゃなくて、今の条件をさらに中山間地の人たちがこれから希望を持ってやれるような、そういう直接支払いに発展をさせていただきたい。残された一カ月半ですけれども、大いに頑張っていただきたいと思います。その点はちょっと指摘だけさせていただきます。  途中ではしょられまして時間がなくなってしまったんですけれども最後に修正案について申し上げたいと思います。  私たちは、食料自給率向上のために、生産費を補い、他産業並みの労働報酬を保障する農産物価格制度の再構築をするために、三十条を「農産物価格の安定等」とし、「国は、農産物について、農業生産条件、交易条件等に関する不利を補正し、農業者と他産業従事者との間の所得の格差を是正するため、生産事情、需給事情、物価その他の経済事情を考慮して、その価格の安定が図られるよう必要な施策を講ずるものとする。」、このように修正したいと思います。  そのためには、公共事業が今予算の五割を占めていますが、価格所得対策費は農業予算の一割程度という予算の使い方を抜本的に改める必要があります。だから、第二項で、農業予算について、「農産物の需給・価格安定対策予算が占める割合が百分の五十を下回らないようにするものとする。」、このように修正提案を行ってまいりました。  離農、高齢化が進む中で担い手確保は緊急な課題です。労働の対価の確保も保障されない状況の中で後継者や新規就農者を確保することなど不可能であり、農業再建のために不可欠な修正だと思いますが、いかがですか。
  175. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 共産党の修正要求につきましては、今、先生からも御説明ありましたけれども、新しい基本法のもとで、三十条でありますけれども消費者や実需者のニーズというもの、一生懸命つくれば報われる、いいものは実需者、消費者が欲しがるというような形の価格形成というものを講じようとするものであります。二項の方では、価格低落時における対策というものを措置しておるところであります。  修正案の、他産業従事者との間の所得の格差の是正を目的とした価格では、生産性の向上が促進されないということで、需要に即した農業生産展開が進まないというふうに申し上げざるを得ません。  また、本法案では、農業経営の維持と発展を十分確保し得るような経営安定対策のほか、経営基盤の強化対策あるいは経営の発展に資する条件整備を体系的に講じる法律案となっております。  予算の半分を農産物の需給・価格安定対策とすべきだという修正案につきましても、財政状況が非常に厳しい中で農業基盤の整備、生活環境の整備といった急務の仕事もたくさんまだまだございますので、硬直的に百分の五十以上をこちらに回せということは、自然、生き物を相手にする農業というものの特殊性からかんがみまして、この御提案というのは率直に申し上げて不適切であると言わざるを得ません。
  176. 大沢辰美

    大沢辰美君 最後に、価格所得対策費の割合を農業予算の今五割以上にできないという答弁ですけれども、五割以上にしただけで現在の予算規模でも価格対策費の予算は四倍前後にふえるんですよ。新たな基本法が二十一世紀に向けて食料自給率向上という国民の生存がかかる課題にこたえるものにするならば不可欠な修正であることを強調して、質問を終わります。
  177. 村沢牧

    村沢牧君 食料農業農村基本法の提案をするに当たって、大臣は、農業を取り巻く情勢が大きく変わってきた、こういう現状では農業農村に対する期待されるような役割を果たすことができないので、現行法にかわって新しい法律を制定する、そういうふうに述べています。私もそのとおりだと思う。  しかし、新しい法律を制定してその理念あるいは目的を実践に移すためには、現行の農業基本法、今の農業基本法に対する政府の取り組み、このようなことであっては私は目的を達成することはできないと思うんですね。  そこで、政府は一体現行基本法に対するどういう態度をとってきたのか、そのことについてまず総括をしたいというふうに思うのであります。  昭和三十六年に施行された現行農業基本法は、他産業との格差の均衡、農産物の選択的拡大、自立経営農家の育成、こういう国民に期待と農民、農家に幻想を与えるような理念のもとに発足したわけでありますが、十年を経ずして米の過剰による減反政策も始まった。その後、高度経済成長やら、また政策の誤りによって、今や我が国農業農村は最低の食料自給率だ。そして、他産業との所得の格差が拡大をしている。二種兼業は増加している。高齢化、集落の崩壊など、厳しい現実を迎えていることは御承知のとおりであります。  この間、政府は、当初は基本法農政基本法ができたから基本法でやっていくんだということを強調しておった。その後、総合農政になった。さらには国際化農政というふうになった。新政策あるいは新農政というふうになった。今ではWTO農政になっているんですね。次から次へと言い方も変えてきたんですね。そして、農業基本法目標農政が現実とはまさに乖離をしてしまった。農業基本法は形骸化したんです。今では現行農業基本法はあってないようなものだ。こういうことを指摘すれば幾らでもあるんですよ。しかし、私はそれが目的ではない。  そこで、大臣現行農業基本法のその理念、目標は間違っておったのか、そしてこの基本法に対して農林省はどのような運営をしてきたのか、現実の政治を行ってきたのか。この総括の反省がまずなくては新しい農業基本法に期待することはできない。大臣の率直な見解を聞きたい。
  178. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 戦後農政の本当に生き字引とも言っていい村沢先生でありますから、率直に申し上げますならば、やはり現行基本法では何としても生産条件あるいは生活条件都市の勤労者並みにしていこう、そしてまた、当時はまだ米は完全には自給されておりませんでしたけれども、ほぼ米の方がめどがついたということで、いわゆる選択的拡大ということで、必要な農産物を集中的につくっていこうということでやってきたわけでありますけれども、外因的ないろいろな状況、いわゆる高度経済成長でありますとか、オイルショックでありますとか、景気の好況、不況もございましたし、平成五年には大冷害もございましたし、そんなようないろいろな状況の中で、振り返ってみますならば、農業生産性の向上というものが他産業並みになるどころか、生産性において格差が埋まることができなかった。さらには規模拡大という側面からも……
  179. 村沢牧

    村沢牧君 経過はいいから、率直に言ってください。
  180. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) はい。  したがって、当初の基本法がうたっているあるべき姿、目的というものが十分達成できなかった、一言で言えばそういうことになろうかと思います。
  181. 村沢牧

    村沢牧君 そんな答弁では、達成できなかったことは知っているんだよ。その対応はどうだったんだと。謙虚に総括し反省をしなければ、新しい基本法をつくったって、今までのようなことをやっていたらこの理念も達成することはできない。いいですか。そんな長々と、こういうふうになればこういうふうになると、そんなことは私は知っているから、反省を求めているんだ。  それから、農業基本法農政の指針として機能を失ってしまった。これは農業六法を見ると一番最初農業基本法が載っている。その次のページには新しい農業農村政策あり方と書いてあるんですね。これは基本法なのか法律なのか。農業六法を見てください。そこに載っていますね。一体これは新政策との位置づけというのはどういう関係を持つのか。まさに基本法を形骸化した、一番の指針をなくしたものではないですか。どうですか。
  182. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 御指摘のように、今の農業基本法の次に、いわゆる農業六法の編集としては「新しい食料農業農村政策の方向」が載っております。これは新しい食料農業農村政策検討本部、これは農林水産省に設けられた組織でございますが、そこで決定されたものでございます。  それは、その当時もいろいろ国会で御議論がありましたけれども、必ずしも農業基本法に背馳するというものではなくて、そのときの、平成四年当時のことでございますが、その基本法制定後の経済情勢の変化を踏まえまして、基本法趣旨をその当時におきます今日的に表現し直して重点的な政策の方向づけを行った部分、あるいは基本法には明確に方向づけがなされていない新しい事態に対して基本法趣旨に反しない限りでの政策方向を提起したと、二つのものがあると思います。  例えば、前者について申し上げますれば、自立経営ということが現行農業基本法の柱になっておりますが、それをその当時の労働時間もというのを、ゆとりある経営ということも重要な事態になってまいりまして、経営体の指標を単に所得だけでなくて労働時間も加味して目標を設定している……
  183. 村沢牧

    村沢牧君 時間がないから内容はいいです。
  184. 高木賢

    政府委員(高木賢君) わかりました。  それからもう一つは、新しいものとしては環境保全型農業とか中山間地域に対する振興方策ということで、基本法の精神をその時点においてより具体化した、あるいは基本法で足りなかった部分を盛り込んだというものとしていわゆる新政策を決定し、基本法の次に掲載しているということでございます。
  185. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、今度新しい基本法ができる、この方向づけと新しい基本法に対する位置づけはどういうことになっているか。新しい基本法ができてもああいうことになるんですか。
  186. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 新しい基本法ができた暁には、新しい基本法基本法でありますから、それが真っ先に優先しておりますし、先ほど申し上げた新政策の文書は歴史的役割を終えたものとして掲載されないことになろうと思います。
  187. 村沢牧

    村沢牧君 農林省自体が、せっかく基本法に載っておりながらこの基本法を遵守してこなかった。幾つかの例があるんです。時間がありませんから簡単に指摘をしましょう。  現行基本法の第十一条には、農産物価格施策については総合的に検討し、農政審議会の意見を聞き、公表しなければならないと規定されておりますが、こうしたことはやったことがないじゃないですか。総合的に判断して、価格はどうだという検討をしたこともない、公表をしたこともない。さらに十三条には、農産物輸入について規定をしています。農業基本法我が国にはあるから、例えば牛肉・オレンジの問題、ガットの問題、基本法に照らしてできませんといって皆さん強調したことを私は余り記憶がない。何のために基本法があるのか。  それからさらに、これは我が党の関係になりますけれども、我が党がこういう形の中から一九九二年には地域農業振興法だとか、今の地方分権を踏まえて、それから日本型デカップリングを考えて、青年農業者の就農補助金を出しました。皆さん御承知のとおりです。それからさらに、ガット・ウルグアイ・ラウンドの関係で、新しい食料農業農村基本法をつくりなさいと、これを何回も強調してまいりました、本会議でも。  私も参議院議員になって二十二年になりますが、この間、農林大臣は何と二十七人かわっているんです。私も農水委員ばかりやっているわけではない、全部の大臣指摘したわけじゃありませんが、基本法の精神に照らしてやるべきではないのか。基本法がまさに時代に合っていないとすれば基本法自身を考えるべきだ。何回も言ったけれども、なかなか皆さんは聞き入れてくれなかった。  今日、私たちが強調したような基本理念、全部賛成ではないですよ、中身において。しかし、あそこまで持ってきたことは高く評価します。我々も皆さんにいろいろと提言してまいりました。しかし、この理念をどういうふうに実行していくのか、それにかかっているんですよ。  だから、大臣、私が今指摘した、農水省自体が基本法がありながらそのとおりやってこなかった、率直に言うとそうですよ。そうでなかったら反論してください。そういう中において、新しい基本法を実践していこう、大臣の真剣な気持ちをひとつ聞かせてください。やりますと。あなたは新しい時代の新しい基本法をつくったんですよ。立派なものだ。その決意を聞かせてください。
  188. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先人たちの御苦労の上に今、国会で御審議をいただいているわけでありますが、まさに非常に大事な時期にこういう基本法先生方の御指導をいただきながら審議をしていただくということは、農林省としましても、また私自身としましても非常に重いものを感じるわけであります。  これからの新しい基本法というのは、一義的には政府、そして担当としては私ということでございますが、国の責務が中心にございまして、そして地方自治体あるいは農業者努力、食品産業、そして消費者の協力といったもので、オールジャパンで生産者あるいは生産地域だけではなく、国を挙げて新しい食料農業政策というものをこの基本法の理念というものを生かしながらやっていく。そして、その最終的な責任は農林大臣にあるということで、非常に重いものを感じながら御議論をいただき、御指導をお願いいたしたいと思います。
  189. 村沢牧

    村沢牧君 大臣、あなたは将来伸びる政治家ですから、あなたのときにこの新しい基本法ができたんです。名誉だと思っていい、自信を持っていいと思う。ただ、あなたの答弁をたびたび聞いておると、農林省だけじゃないんだと。国民にも消費者にも期待される、何か責任がどこかへ行ってしまうようなことをたびたび言っているけれども、あなたが責任を持って国民に訴えていかなければだれが訴えてくれるんですか。  ともかく、この理念を貫徹するために頑張ると、もう一回決意を聞かせてください。
  190. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 四つの理念を初めとする四十三条の条文の中に込められております非常に重いものを、私自身が全力を挙げて実現に向けて頑張っていきたいというふうに思います。
  191. 村沢牧

    村沢牧君 さて、基本法は宣言的性格を持つ法律でありますから、農政の理念だとか施策、方針、その決定方法はやっぱり抽象的になる、そのとおり私も理解しています。しかし、個々の法律としては、予算、施策に対する基本法は、拘束力というか規範力というか、それを持つべきものである。基本法の精神に反したり理念に反するような法律が今まであったんですけれども、それは間違っていると思いますが、規範力や拘束力を基本法の性格からいってどういうふうに考えますか。
  192. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 御指摘のように、基本法政策の理念あるいは施策基本的なあり方、方針を定めるものですけれども、同時に、それが法律ですから、やはりその方向づけに沿った施策具体化ということは、まさに基本法に定められた基本理念なり政策目標に沿ったものとする必要があると思っております。  そういう意味で、他の政策食料政策農業政策農村政策を推進するに当たって、導きになる規範性を持った法律という位置づけであろうと思います。したがいまして、具体的な政策を構築する際には常に基本法に立ち返って、その整合性について十分に吟味をして政策を構築する必要があると考えております。
  193. 村沢牧

    村沢牧君 せっかく新しい基本法ができるんですから、農水省の幹部の皆さん、よくその辺は留意してください。要請しておきます。  そこで、私は、先ほど申しましたように、新しい基本法がまさに時代の要請にある程度こたえている。理念も出した。したがって、その理念が現実問題にどういうふうに対応するかという点については私も議論をしてまいりました。皆さんとも、これは野党ですから開かれた場所じゃありませんよ、議論してきた。  しかし、この施策をどういうふうに展開していくのか。大臣、一言で新しい基本法はどういうものだと、今まではこうだったけれどもこういうふうになりますよと一言で言えるなら言ってもらいたいが、なかなかそれもできないだろう。しかし、今、皆さんはこの国会で早く成立させてくれと。一体、私どもの立場で、参議院の農林水産委員会としては何を論議していくべきか。衆議院で修正もされました。この修正されたものを受けて、参議院ではどういうふうに結論を導いていこうとするのか。  それから、来年の法律までもう皆さんは検討している。十二年の概算要求の検討もしているんですね。一体、どういうふうに、何をやっているんだと、そのことを皆さんから聞かなければ、私の場合は、さっきも申しましたけれども、いろいろ取り組んできたけれども、ああ、基本法ができてよかったな、基本理念ができてよかったな、日本農業はこれでよくなるよと、そういうぐあいに私はいかぬですよ。そういうことで、この基本法案、そういう立場で私はこれから質問したい。  そこで、今、官房長から言われたけれども、新しい基本法ができる、成立すると思う。そこで、この基本法に基づいて新しい法律や予算、政策大臣だって随分考えていると思います。そういう用意を持っていますね。
  194. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) この基本法を成立させていただきましたならば、直ちに基本計画の策定作業に入らなければなりませんし、その中には、例えば直接支払いあり方とか自給率の問題とかいろいろございますので、当然ことしの夏までに結論を出すべきものというのはあくまでも平成十二年度の予算を前提にしてのスケジュールでございますので、予算措置等々、あとほかの法案の整備等も含めまして、できるだけ早く新しい基本法体制のもとで農政展開できるようにやっていかなければならないと考えております。
  195. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、当然のこと、関係局長も、基本法ができたらこういうふうにしますということを盛んに言ってきた。つまり、この通常国会には間に合わぬと思うけれども、来年の通常国会に向けて、この基本法案が成立したら、重要法案についてこういうことを考えていますと。しかし、長期計画は五年でありますから、五年と言われても難しい。法案にどんなことを考えているのですか。考えないことはないわけでしょう。ないわけはないですよね、今までだって出しているんだから。関係局長、重要な問題について答弁してください。
  196. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 経済局の関係でございますが、新しい基本法案におきましては、現行法と同様、農業災害補償制度につきまして農業災害に関する施策としてその重要性が明確に位置づけられております。そこで、既に今国会におきまして、新基本法の関連といたしまして農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案を提出いたしまして、先日、成立させていただいたところでございます。  今回の制度改正は、新しい基本法案農政改革大綱で示されております意欲ある担い手育成とか農業経営の安定機能の強化、そういった観点を踏まえまして所要の措置を講じたものでございます。  現段階におきまして、次期通常国会に法案を提出するかどうか、これはまだ決まっている段階ではございませんが、今後、新しい基本法案あるいは農政改革大綱に基づく施策を法改正も含めまして検討させていただきたいと考えております。
  197. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 構造改善関係では、この国会にいわゆる農業振興地域の整備に関する法律の改正案を提出いたしております。これは、御案内のとおり、基本法自給率向上ということと関連をいたしまして、基本計画の中で必要な農地、これを出していきます。その中で私たちは、農振法の中で、優良農地をどのようにして確保するか、その量はどれぐらいであるべきかということを国の指針という形で定める、こういうことをしたいと思っております。  それから、現段階で検討を急いでいるものといたしましては、基本法の中に法人化の推進ということがございますので、農業生産法人制度、これは農地法に規定がございますので、これについて抜本的な見直しをしなければならないと思っておりますし、それから望ましい農業構造の実現経営政策展開ということに関連をいたしまして、農業者年金制度の見直し、さらには土地改良制度の改正につきましても、これを視野に入れまして検討を急いでいるところでございます。
  198. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 農産園芸局関係でお答えを申し上げます。  新基本法案では、農業の持続的な発展を図るために、農業が本来有する自然循環機能の維持増進が不可欠という旨の理念が書かれております。さらに、これに必要な施策ということで三十二条の規定が置かれているわけでございますが、この関係で私どもの局では、既に本委員会で御可決をいただいておりますけれども、堆肥等による土づくりと化学肥料、農薬の低減を一体的に行います生産方式の導入を行う農業者に対する支援措置ということで、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律案、それから堆肥等の品質表示制度の創設と汚泥肥料等の登録制への移行を内容とします肥料取締法の一部を改正する法律案を提出して、御審議をちょうだいいたしているところでございます。  それから、今後の課題といたしましては、自給率向上する作目といたしまして麦、大豆ということでいろいろ御議論をちょうだいいたしておりまして、これが大変大きな課題だというふうに認識をしております。いろんな施策を検討しないといけないと思っておりまして、その検討の結果、必要であれば所要の法案は検討しないといけないなと思っているところでございます。
  199. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 畜産局の関係でございますけれども、ただいま農産園芸局長が答弁したのと同じ関係でございまして、新基本法案の三十二条に関係する法律でございますが、この委員会で可決させていただいております家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律案を新基本法関係で提出させていただいているところでございます。この法律は、御案内のとおり、畜産業におきます家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進を図るための所要の措置を定めているものでございます。  なお、次期通常国会における対応でございますけれども、私ども関係では加工原料乳生産者補給金等暫定措置法などの価格政策について現在検討しているところでございますが、この検討の結果、必要であれば所要の法案を提出したいと考えているところでございます。
  200. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 食品流通局関係でございますが、今国会におきまして、新基本法案、特に第十六条、第十七条に関連するものといたしまして三本の法案を出しております。  一つは、特定農産加工業者の経営改善を促進するための特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案でございます。二番目は、卸売市場関係業者の経営体質の強化、取引方法の改善等を図るための卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案でございます。三番目は、生鮮食料品の原産地表示の拡充、有機食品の表示の適正化等、食品の表示・規格制度を改善するための農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案でございます。この三本につきましては、いずれも本院において可決いただきまして、このうち特定農産加工法につきましては六月二十四日に成立いたしております。  次期通常国会への法案の提出でございますが、現段階において提出することが決まっているわけではございませんが、食品産業と農業との連携の推進、それから砂糖・甘味資源作物対策の見直し等、新基本法案及び農政改革大綱に基づく施策を法改正も含めまして検討してまいりたいというふうに思っております。
  201. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 新基本法案の三十五条におきまして、中山間地域等振興を図るべきことが明記されております。これに基づきまして私どもは、森林開発公団法の一部を改正する法律案を今国会に提出させていただきまして、新しく緑資源公団として発足させていただき、農地と森林を一体的に整備する新しい中山間の事業を実施することにいたしまして、これによって農林地を一体として活用した中山間地域振興とあわせて、公益的機能発揮を図ることにいたしておりまして、六月四日にこの法案を成立させていただいたところでございます。  現時点では、次期通常国会に関連法案を提出するということは予定しておりませんが、林業については、ただいま大臣の御指示によりまして基本問題について検討を進めさせていただいておるところでございます。
  202. 村沢牧

    村沢牧君 冒頭指摘したように、現行基本法にあってもやらないようなことがたくさんある。今回の対応は極めて早いと思います、大臣基本法そのものが成立しないうちにどんどん基本法に関連する法律が出てきて、これは悪いとは言いませんよ。本法が成立しないのに基本法関連だ、基本法関連だとどんどん審議を急がされる。しかも、基本法ができたら後にどうするのかと、それについては検討中だとかなんとか言って、そういう対応はどうですかね。官房長、私はこの新しい基本法は成立すると思う。もし成立しなかったらどうするの、基本法関連だといって出した法律は。
  203. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 基本法案というのは、まさに先ほど来申し上げておりますように、これからの農政の推進に当たってのよりどころになる新しい考え方を体系的に整備したものであるわけでございます。  しかしながら、同時に具体的な政策というものの推進につきましては一日も休むわけにはいかない。やはり、今後の方向としてコンセンサスは得られるものであり、かつ一日も早く実施する必要がある。例えば、環境保全型農業の推進なり、家畜の排せつ物の処理の適正化と、こういった問題は基本法がどうあるかとは別にやらなければならない問題ではないかというふうに思っております。  そういう意味で、多少手順の前後と言われるとそのとおりかもしれませんけれども、ある日突然用意ドンということですべて発車するということでなくて、多少のタイムラグはありますけれども、やるべきものはやるということで整理をいたしまして、今国会に提出をさせていただきました。  それから、そこまでの用意のないものが現時点では率直に言ってございます。先ほども若干出ましたが、例えば農業生産法人の見直しに伴う農地法の改正なり、土地改良制度の見直しの問題なりというものは現時点ではまだ国会に提出するまでに熟しておりません。しかし、基本法の流れに沿いまして、早急に具体化を図って、何とかできるだけ早い機会にというふうに思っているわけでございます。  そういう事情でございますので、ある程度の幅を置いて、お許しをいただければというのが率直な気持ちでございます。
  204. 村沢牧

    村沢牧君 私は、事を早く運んで、出された法律も決して私たちも反対したわけじゃないわけで、いいけれども、そのくらいの熱意があったらもっと、今までだってやるべきだったし、今後もやらなければいけないと思う。  それで、この委員会では、衆参両院を通じて重要な問題が論議されています。大臣、今まで皆さん方が小出しにやって、基本法基本法、関連だ、関連だと、やたら持続的何だとか基本法言葉を使って法律をつくって、基本法関連だから早く通してくださいと、基本法がまだ通過しないうちにやっている。これから論議をする重要な問題について、来年の通常国会に法律として政策として出していく、国会の意思を尊重して。そういう気持ちをお持ちですか。
  205. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 基本法体系というものは基本法だけではうまくいきませんので、今、各局長が答弁したとおりでございますので、とにかくできるだけ早く十分な御審議をいただいて、成立をお願いして、新しい基本法体制のもとで農政をスタートさせていかなければならないというふうに考えております。
  206. 村沢牧

    村沢牧君 それはそうだけれども、衆参両院の委員会や国会で論議をされて、新しい基本法に対して期待をしているんだと。今聞いてみるとこれが基本法関連の法律であり、政策だということに大部分はなっているんですね、八割ぐらいは。これから国会で論議する問題について、長期計画の期限内に、来年の通常国会で新しい法律も出していく、その決意がなければ、皆さん方が基本法をつくって認めてください、それきりじゃ私も国会議員として何をやっておったんだと。  大臣、今まで関連法も含めて基本法が成立したらどうなるのか。一言、言ってください。
  207. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 基本法を成立させていただきましたならば、関連法案そしてまた基本計画等々と相まちまして新しい体制をスタートしていくわけでありますが、その場合におきましても、当委員会を初めとして常に御論議をいただき、また国民各層に対してもきちっとこの基本法体制というものを説明して、御理解をいただきながら進めていかなければならないというふうに考えております。
  208. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、今までは手っ取り早い法律を基本法関連として通したと。通したといっても、まあ通らぬのもあるかもしれぬけれども。  これからが大事なんですよ。せっかく論議した。なるほど、今までの三十六年にできた基本法はだめだったけれども、今度の基本法は立派なものだと、こういうふうにやるぞと国民の目にわかるように、農家、農民の目にわかるように。そうしなきゃ、国民総意で基本法ができたということにならないんですよ。基本法だけ成立すればいいというものじゃない。大臣、その決意を持ってください、来年の通常国会に向けて。よろしいですか。もう一回聞いてみましょう。
  209. 高木賢

    政府委員(高木賢君) まさに、基本法が制定された暁には、その趣旨に沿って各般の法律につきまして省内各局を督励いたしまして所要の法律改正に向けて取り組んでまいります。
  210. 村沢牧

    村沢牧君 ぜひ要請しておきましょう。  さてそこで、先ほど申し上げましたように、この法案と並行して、法案はいつ通るか知りませんが、平成十二年の概算要求の時期に入っている。もう皆さんは大蔵といろいろ折衝していると思うんです。それは表面では言えないけれども、そう思うんです。  そこで、この法律が制定したら、金額が幾ら要るとは言わないよ。今までなかったような予算で、政策で、どういうものが頭を出してくるのか。意欲的な答弁をしてください。
  211. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 今、先生指摘の、もうそろそろやっているんじゃないかというお話でございますが、御案内のように、概算要求は八月末ということでございますので、現在は省内検討段階でございます。  そういう中で何をするんだと、こういうことでございますが、したがいましてまだ成案ができているとかという段階ではございませんが、どういうことが検討の内容になるか、柱になるかということで申し上げますれば、やはり食料政策農業政策農村政策、それぞれについてあろうかと思います。  食料自給率の関連で申し上げれば、土地利用型農業、麦、大豆につきましての価格政策の見直しに伴います新対策をどうするかという問題、農業持続的発展の関連でいいますれば、有機質資源のリサイクル関係の対策をどうするかという問題、それから認定農業者などの担い手に対する施策をどう集中していくかという問題などがあろうかと思います。  また、農村振興あるいは中山間地域対策ということであれば、ここでしばしば御論議いただいております中山間地域等における直接支払い制度の導入、あるいは環境対策の強化などの農業農村整備事業の見直しといったことが事柄としては考えられるかと思います。  いずれにしても、単に予算計上というだけでなくて、施策を大くくり化するとか、プロジェクト化するとか、他省庁との連携に配慮するとか、こういったことも含めながら十二年度予算の検討を急ぎたいと思っております。
  212. 村沢牧

    村沢牧君 当然、継続してやる重要施策もあると思う。それはいい、そのとおりだと思います。  しかし、せっかく基本法ができたから新しい項目の芽が出ましたと、それははっきりしている。国会の審議をやって法律が制定したと。一週間ぐらいたったら、概算要求でこういうことを農水省は考えていると。そんなふざけたことを言ったら私は許しませんよ。言うなら今言っておいてください。いいですか。  次の問題に行きましょう。  次は、基本計画なんですが、これは基本計画を国会に報告するという修正がされた。これは重要なことですね。皆さんも承知をしていると思うんです。  国会に報告するということは、報告すればいいというものじゃないですよ。私ども報告を受けた基本計画について質問をします、質疑をしますね、当然のこと。そして、これを国会に報告して公表する。この質疑の中で、基本計画、五カ年計画がどうも基本法に照らしておかしいのではないかと、そういう問題が国会へ出されたりした場合、国会は修正することがないとしても、重要な問題として受けとめてもらいたい。よろしいですね。
  213. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 基本計画は、この法案にありますように、政府が閣議決定をして決定するというものでございますが、衆議院におきます修正におきまして、国会報告をするということに相なったわけでございます。  それで、国会報告をした暁に恐らく国会におきます御論議が行われるということになろうかと思いますが、当然、御論議の結果といいますか、内容につきましては政府としては十分受けとめる、こういう姿勢でございます。
  214. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、恐らく基本計画は来年の通常国会冒頭で出されると思うし、予算や重要法案と一緒に出されるものだと思いますが、そのとおり理解していいですね、基本計画。
  215. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 基本計画につきましては、遅くとも年度内の閣議決定を今予定いたしております。その後、遅滞なく計画を国会に報告するということでございます。
  216. 村沢牧

    村沢牧君 さてそこで、基本計画と年次報告との関係。  現行基本法によっても国会に年次報告をしなければならないことになっていますね。そこで、新基本法においても年次報告をすることになる、新基本法においては基本計画を国会に報告する、その一年分について年次報告基本計画に基づいて実行したこと、講じようとする施策報告しなければならない、そういうふうに重なってくるわけですね。  その場合、現行基本法については、この年次報告で、今まで講じてきた生産性の向上だとか所得だとか、その所見を含めなければならないと現行基本法はなっていますね。ところが、今度の新基本法では、そこには所見が含まれていない。  現行基本法でも、どういうふうにやっていったかという所見が含まれていなければならない。新しい基本法では、国会に報告してやったことを、年次報告にどういうふうにやったという所見という事柄が含まれておらない。これはおかしいじゃないですか。
  217. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 新しい基本法案におきまして、年次報告は「毎年、国会に、食料農業及び農村の動向並びに政府食料農業及び農村に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。」ということでございますから、食料農業農村の動向あるいは講じた施策ということで、基本計画との関連で申し上げますれば、基本計画で講ずべきとされた施策、これがどういう実施状況になっているかということも含めまして、またあるいは食料農業農村の動向の記述も含めまして、これを整理してまとめる、そして提出をするということになると思っております。
  218. 村沢牧

    村沢牧君 これは提出するのは当然のことですけれども、今の基本法政府の所見を含めてこういうことをやりましたと、しかし新しい基本法には所見を含めてとは書いていないんですよ。しかし、この基本計画については国会に報告しなければならない。その報告したものを、今度は一年たって報告する、どういうふうにやったという所見が当然必要になってくる。どうですか。  現行基本法に所見があるんですよ。新しい基本法に所見という言葉は何ら出されることを考えていない。どうですか。
  219. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 確かに、今の基本法案では、内容をどういうことを盛り込めというところの規定が幅広いものになっております。ただ、御指摘のように、動向がこうだというだけで必ずしも内容的に白書として済むとは思っておりません。やはり、動向についてのどういう評価とか、あるいは施策の効果がどうかとかということは当然白書として整理をしなければならない内容であるというふうに思っております。
  220. 村沢牧

    村沢牧君 私は、どういうふうに所見を書けとかなんとか、そういうことは皆さんで検討することでしょう。法律でというのはおかしいと。  委員長にお願いいたしますが、今、私が申しましたように、基本計画は国会に報告する、一年間たってどういうふうにやりましたという所見が現行基本法には、その上政府の所見を含めなければいけないということになっている。今の基本法案にはそんなことは書いていないんですよ。改めて理事会で御検討願いたいと思います。
  221. 野間赳

    委員長野間赳君) 後刻の理事会で検討をいたします。
  222. 村沢牧

    村沢牧君 次は、問題になっておる自給率の問題です。  我が党は、自給率向上する、少なくとも五〇%を目標としたいと盛んに言ってまいりました。そこで、自給率を何%にするかということは、いろいろの重要農産物をカロリー計算して、その総合的な数字をもって示すということになると思いますが、それでよろしいですか。
  223. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 自給率目標の策定に当たりましては、主な農産物ごとにどういう目標にするかということを明確にした上で、そしてそれを農産物相互間、これは共通の物差しとしてはカロリーベースを考えておりますが、その総合的なカロリーベースの自給率目標数値として明らかにするという考えでございます。
  224. 村沢牧

    村沢牧君 その重要農産物は何ですか。
  225. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 具体的な品目といたしましては、米、麦、大豆、飼料作物、畜産物、果樹、野菜などを想定しております。また、花も、食料ではございませんけれども、近年、農業経営上相当の割合を占めているということで、これも含める考えでございます。
  226. 村沢牧

    村沢牧君 時間がないので、各局長に全部聞きたいんだけれども、今、話のあったそういうものについては長期計画を持っていますね。そして、自給率も計算をしておる。しかし、今度の基本法の修正によって、生産を高めなければならないと修正されましたね。これを受けてどうするのか。官房長、まとめて答弁してください。
  227. 高木賢

    政府委員(高木賢君) ただいま申し上げた主な品目ごとに、現在、需要の見通しがどうなるか、その中で国内生産としてどこまで輸入のものに振りかわっていけるかということの準備の作業を進めているところでございます。これはまさに品目別に行っております。その上で、それぞれの品目についての生産がどこまで可能な水準として到達できるかという生産努力目標をそれぞれの品目について立てようということで今作業しているわけでございます。  総括的には、この基本法が制定された暁におきまして、基本計画の策定作業ということで総括されるという手順に相なります。
  228. 村沢牧

    村沢牧君 それはわかるけれども、この法律は衆議院で修正をされているでしょう。例えば、国内農業生産増大を図ることを基本として自給率を高めなさいと、こういう基本法ができるんですよ。今まで検討したことだけでいいのかどうか。どうなんですか。
  229. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 御指摘のありました修正の趣旨一つは「農業生産増大を図ることを基本とし、」ということと、もう一つは十五条で、「自給率目標は、その向上を図ることを旨とし、」ということで修正がありました。私どもも、趣旨としてはその内容は含まれているということにつきましては衆議院におきましてるる答弁したわけでございますが、その趣旨を一層条文上も明確化するという趣旨と受けとめております。したがいまして、今後の作業もその趣旨を体して進めていくということでおります。
  230. 村沢牧

    村沢牧君 趣旨を体していくんじゃないですよ。そういう法律ができるんだからやらなきゃいけないんですよ。  それで、現行法によっても長期見通しを立てておる。平成十二年から十七年のカロリーベースによる自給率は立てておるんですね。これは国会に報告することじゃないけれども、そのとき政府国内生産基本として需要の動向に即した生産展開を見込むということで、平成十七年で、さっき答弁があったような食料自給率の見通し、試算、これは立っていますね、十二年から十七年。はっきり言ってくださいよ。
  231. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 現行基本法におきます農産物の需要と生産の長期見通し、平成十二年度を目標年次としたものを平成七年の十二月に閣議決定をしております。
  232. 村沢牧

    村沢牧君 それから、平成七年度で平成十二年度から十七年度を見越して閣議決定したのがありますね。あるでしょう。それを言ってくださいよ。平成十七年度は国内生産を高めてこれだけやりますと言って皆さんが努力している。決して現在四一%という数字は出てこないですよ。あるんじゃないですか。このとおりやれとは私は言いませんよ。これに加えて今度新しい基本法ができて、自給率を高めなさい、生産増大しなさいと。その数字について、食料自給率の見通し、試算、カロリー自給率、主食用穀物自給率、飼料自給率、言ってください。
  233. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 平成七年に立てました食料自給率の試算、これは本体の需要と生産の長期見通し自体ではありませんが、参考にいつも閣議決定の際にお示ししているものでございます。それによりますと、食料自給率の見通しは平成十七年度におきまして四四ないし四六%というふうに見通しをいたしております。
  234. 村沢牧

    村沢牧君 少なくとも閣議に報告したことですよ、法律に基づいて。それをこれから計算して、何だかんだ言うけれども、少なくともこれは最低の指標になる。これより下がりっこない。新しい基本法ができる。長期見通しも立てる。この自給の見通しの中では、例えば米ならどうする、麦ならどうする、需要と供給の見通しを立てて、それぞれの品目について自給率を示しておる。面積も示しておる。  大臣、御存じですか。大臣
  235. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 長期見通しがあることは存じ上げております。
  236. 村沢牧

    村沢牧君 中身ですよ、今、私が簡単に中身を言ったように。
  237. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) この資料を読ませていただくということでよろしゅうございますか。
  238. 村沢牧

    村沢牧君 そんなことでは、自給率を高めましょう、五〇%にしよう、常識みたいになっているんですよ。この平成十七年の見通しだって、国内生産基本として最大限努力するんだと、現行基本法ですよ。閣議でもそう言っているんじゃないですか。それが今、大臣がどうも勉強させてもらうなんて、そんなことでは極めて残念だよ。少なくとも最低指標です、これは。それに新しい基本法ができるんだ。目標ですよ。しっかり示してください。
  239. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現状の四一とか二八とかいう数字は極めて我々としても遺憾な数字だと思います。  そこで、基本計画のもとで実現可能なできるだけ高い自給率を設定するということは、国としての国民に対する責務であろうと私自身は考えておりますので、これから基本計画の中で、今、官房長からも答弁がありましたけれども、主要な農作物、あるいはまたカロリーベースですと野菜とかそういうものはなかなかウエートが低くなってくるわけでありますけれども、カロリーベースで総合的にあるいは品目ごとに、例えば野菜なんかの場合は重量ベースの自給率みたいなことになるかもしれませんけれども、そういう形でできるだけわかりやすく、実現可能なできるだけ高い数字を設定していく作業をこれから、大変な作業になると思いますけれども、鋭意取り組んでいきたいというふうに考えております。
  240. 村沢牧

    村沢牧君 これは目標じゃなくて見通しだというふうに言う人があったけれども、法律に基づいて見通しを立てるのだから、これは実行できるような見通しにしなきゃ、努力しなきゃだめですよ。見通しだから幾ら出したっていいというものじゃないと申し上げておきましょう。  それから、自給率を高めるためにどうしても関連するのは米の問題ですね。新しい土地利用型農業への設定をしていくと、時間がありませんからその基本的な考え方については質問いたしません。土地利用型というのは当然のことですよ。麦と米と大豆を組み合わせることによってこれからどういうふうにしていくか。米の生産調整あり方、九月か八月に決めるでしょう。決めますね。どうですか、米は。
  241. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 現在の生産調整は十年度と十一年度の二年度にわたります緊急の対策ということで整理されておりまして、その後のことにつきましては、ことしの秋にいろんな御相談をしながら決定していくということになろうかと思います。
  242. 村沢牧

    村沢牧君 新しい基本法ができる。減反調整を始めたのは、私がさっき申しましたように昭和三十六年の農業基本法で十年たって、もうあれからずっと続いているんですよ。  大臣に率直に申し上げましょう。この減反、生産調整をこの基本法の成立とともに何とかしなきゃならない、方向づけを。考えませんか。
  243. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 米については現状が非常に在庫がたまっておるという状況の中で、九十五万ヘクタールという大変な減反を生産者の皆さんに協力をしていただいておるわけであります。  そこで、緊急の十年、十一年のこの減反措置をとっておるわけでありますけれども、何とか通常の百五十万トンプラス・マイナス五十万トンという適正備蓄の水準に早く戻していくと同時に、水田としての役割だけではない、例えば飼料作物をどうするとか、そういうことも含めていろんな方策を考えていかなければならないというふうに考えております。
  244. 村沢牧

    村沢牧君 私は、農林省の幹部の諸君は、米の問題について関税化に踏み切った、一つの方向。基本法でもって新しい土地利用型農業をつくっていこう。その次には今度は米対策をはっきり出す、そういう戦略を持っているのではありませんか。政府と自民党と農業団体でこれでいこうと、そういうことを描きつつ今日来ているのではありませんか。率直に聞いておきます。どうですか。
  245. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 主食用の米にかわる作物というものが、具体的に麦、大豆等、飼料作物等々についてどういうふうにやっていけばいいかということは現在検討中でございます。
  246. 村沢牧

    村沢牧君 時間がないのでまた後日に譲りますが、現在九十六万ヘクタールの生産調整ですね。そうですね。この中で、もう水田には戻りません、果樹になっている、野菜になっている、山林原野になっているその面積は、このうちの比率どのぐらいありますか。率直に言ってください。
  247. 樋口久俊

    政府委員(樋口久俊君) 率直に申し上げまして、定着の程度がどの程度か、これはいろんな御意見があるわけでございましてなかなか難しいわけでございますが、せっかくの御質問でございますから、まず形態でどういうものがあるかということを御説明した後でお話ししたいと思います。  野菜、花卉等は非常に収益性が高いので大宗は農家経営に組み込まれている傾向が強い。永年性の作物につきましては大体物理的に定着しているんじゃないか。あと、山林につきましては物理的に定着している割合がかなり高いんじゃないかと我々は判断していますし、年々上昇しています。  そういうことを前提条件で相当割り切って判断をして、おおむね転作のうちの六割程度かなという判断をしております。これについてはいろんな御意見があることは御承知の上で御理解をいただきたいと思います。
  248. 村沢牧

    村沢牧君 今の減反、生産調整面積の六割はもう水田に戻らない、定着している、大変なことですね。残った九十六万のうち五十万ヘクタールがそういうふうになる。そうすると、四十何万ヘクタールでもって大豆をつくろう、そうかといって大豆や麦を全部つくるわけにいかない、不作のときもありますから。そういう中で、一体新しい米政策をどういうふうにして新しい土地利用型農業を築いていくのか、それがまさに自給率向上にもつながってくるし、本年度における農林水産省としての、政府としての重要な課題ではないか。  今からそのことを皆さんが、九十六万ヘクタールの六割はもう水田に戻りませんよと。水田に戻らないものに補助金を次々に出していけるのか。そうすると、農家の人は怒りますよ、農民の皆さんは。そこまで来ている、この米政策基本法を契機としてもうはっきりしなきゃいけないと私は思う。そのことをやれとは言いませんよ。皆さんの判断を求めて、時間が来ましたから、私の質問を終わります。しっかり頑張ってください。
  249. 入澤肇

    入澤肇君 最後の質問を承りまして、幾つか御意見を申し上げたいと思います。  この新農業基本法は、平成四年に近藤元農林水産大臣農業基本法基本的な見直しをやったらどうかということを指示されまして、省内で検討会を設けまして、その結果打ち出したのが新農政でございます。  先ほどから、新農政は大規模農業だけを追求するんじゃないかとか、あるいは市場原理だけを追求するんじゃないかという視点からの大変な誤解のある発言が多々ありましたけれども、新農政はそういうものではございません。これは農林省もしっかりと内外に言わなくちゃいけないところだと思います。  要するに、経営マインドを持って意欲的にやっていく農家、これを大いに鼓舞して、めり張りをつけた価格政策所得政策を実行しようじゃないかということが基本的な背景にあるんです。このことを言わないで、何でも新農政だ新農政だといってそこにすべてなすりつけて、新しい基本法ができればそれで世の中が大きく変わるんだ、農業が変わるんだというふうなことを言ったとしたら、私は大きな間違いであると思います。  ところで、三十六年の農業基本法、この評価がまず第一になされなくちゃいけない。これは今、村沢先生がおっしゃったとおりでございます。  高度経済成長のもとで国民所得向上が非常にあったわけであります。その中で、食料消費構造が変わってきた、日本の食品産業も大いに変わった。これは事実であって、これをとやかく言うわけにいかない。問題は、その変化の速さと国内農業生産体制の対応の仕方が十分でなかった、ラグがあって十分でなかったと。私は、三十六年農業基本法の総括をするに当たっては、その農業生産体制の対応がなぜできなかったのかということを農業の本質論に十分留意して把握しておくことがまず必要じゃないかと思うのであります。  今後の農政展開するに当たって、これからもかなりグローバリゼーションあるいは市場原理、そういう考え方のもとに農政に対していろんな合理化を求める意見が出てくると思いますけれども日本農業はそういうふうな一方的な効率化あるいは合理化の路線だけでは守れないんだということを理論的に言うためにも、三十六年農業基本法のもとでどういうふうに生産体制が十分に対応できなかったかということを実証的に把握しておくことがまず必要じゃないかということを言っていきたいと思います。  しかし、そういう中で、これだけ大きな変化の中で、我が国農業者がかなりの意欲的な生産をして農業生産を守ってきた、一定の水準を維持してきたということに対しては、敬意を表し、高く評価をしなくちゃいけない。そのこともまた特に分析しておかなくちゃいけないんだと思うのであります。  さらに、農業者努力とは別に、食料安定供給を図るためにいろんな制約条件がございます。外部的あるいは内部的な制約条件が多々あります。例えば、大豆ショックあるいはオイルショック、こういうふうなこともありましたし、国内においては急速に減少する米の消費。これに対応して、猫の目農政だとかなんとかいろいろと言われましたけれども、いろんな形で米の生産調整を需給に合わせてやらざるを得なかった。こういうふうな内外の条件についても、果たして対応策が十分であったのかなかったのか、そのことを分析しておかなくちゃいけない。どういう視点から分析するかが大事なのでありまして、それは一にかかって農業経営者、専業的にやっている、あるいは兼業でも意欲的にやっている農業経営者が十分に満足するような視点から政策が十分であったかどうか、こういう視点からの分析をすることが必要じゃないかと私は思うのであります。  そういう中で、私は、今度の食料農業農村基本法について、まず第一にお聞きしておきたいのは、食料農業農村、この中ポツでつなぐキーコンセプトあるいはキーワードを一言で言っていただきたいと思います。
  250. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 御指摘のありました「新しい食料農業農村政策の方向」以来、中ポツで三つ並んでいるものを踏襲してきたのが率直なところでございますけれども、るる申し上げておりますように、国民が期待する二つの役割、すなわち食料安定供給確保農業農村の有する多面的機能発揮、これを確実に我が国において実現するために我が国農業持続的発展農村振興があると、この四つの理念ということで申し上げてきたわけでございます。あえて三つをつないで一つで言うとすれば、国民の期待するところにこたえる我が国農業農村づくりということでくくられるのではないかと思います。
  251. 入澤肇

    入澤肇君 私は、この食料農業農村の中ポツをつなぐキーコンセプト、キーワードは、やはり食料の需給安定、この一言に尽きるのじゃないかと思うんです。  衆議院の議事録を私は全部読んでまいりました。衆議院で民主党の安住先生が、農村政策をやるというのは農村において農水省が電気もガスも水道もみんなやるのかというふうな意味の質問をされていました。それは、この中ポツのつなぎ方のキーワードの説明が不十分であれば、農村という言葉が入ったものですから何でもやれるんじゃないかというふうな誤解を招く。あくまでも食料の需給安定という観点から、食料政策については安定供給、これは健康の保持、それから安全性の問題も含めて各省にわたる政策展開するべきでありますし、農業については需給安定という観点から、担い手育成をもう一回見据えて、理念の中心に据えて展開することが必要でありますし、農村というのは生産の場であり生活の場であるという視点から、必要な政策を農水省でできるだけやるということで三つがつながるんじゃないかと実は思っているんです。いつでも食料の需給安定のため、これを実現するのは農業経営者でありますから、農業経営者、農業担い手をやっぱり基軸に据えなくちゃいけない。    〔委員長退席、理事三浦一水君着席〕  そこで、担い手確保するための基礎的な条件を私はお聞きしたいのであります。  担い手確保農村に定住して農業経営にいそしむための基礎的な条件とは一体何なんだろうかということを、これは三十六年以来の農業基本法のもとでいろんな農業政策展開してきましたけれども、各地の実証的な調査を踏まえて、もしこういう条件が把握できるということがあったら、これは官房長なり構造改善局長、教えていただきたいと思います。
  252. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 今御指摘がありましたように、この問題については、平成四年の新政策の中でかなり議論がなされてきております。やはり、そのときに、経営感覚にすぐれた効率的かつ安定的な経営体の育成というのを前面に出したわけでありまして、そのときの二つの要素というのは、一つは、生涯所得において地域の他の産業従事者と遜色がないということであります。それから二つ目には、労働時間においてやはり同じようにその地域における他の産業従事者と遜色がないということであります。  この時点で計算をいたしましたのが、生涯所得において二億ないし二億五千万という所得でありますし、そして労働時間については千八百時間ないし二千時間ということで進めてきたわけでございます。やはり、ベースになるそういった、自分が全力を投入してそれに応じた所得が得られる、満足度が得られるというのがこれから先中核になる農業経営体であろうと思っております。  幸い、経営基盤強化法が成立をいたしまして、あれから五年たちました。各地に認定農業者という形でみずからの経営改善計画を立てる農家の方々、経営体の方々が十四万まできておりますけれども、まだ私どもは現状から考えますとこれは倍ぐらいになってもいいというふうに認識をいたしておりまして、こういった形で効率的かつ安定的な経営体の育成に向けてさらに一層施策を体系化し強化していくべきだというふうに考えております。
  253. 入澤肇

    入澤肇君 まさに、担い手育成するということは、農山村に住んで農業を営んでもらうわけでございますから、何といったって所得の安定がなくちゃいけません。所得の安定を、認定農家というのは可能な限り効率的な作付体系を模索する、兼業も含めてもいいんですけれども、可能な限り農家として所得確保するための条件整備をするということで、いろんな手法を駆使してやろうということがあったわけです。この所得確保ということをやはり政策のこれからの正面に据えなくちゃいけないんじゃないかと。  同時に、所得だけでは定住ができませんから、アクセスの整備であるとか生活環境条件の整備であるとか、そういうこともなくちゃいけません。  同時に、またこれらを継続して持続してやっていくためには、今度また法律も出ていますけれども農業災害補償制度、あるいは価格政策経営安定政策、こういうものの拡充強化が必要なのであって、まさに今度の新農業基本法を出発点にしまして新しい政策体系を築いていっていただきたいと思うのであります。  それにしましても、若干この農業基本法を読んでいまして疑問に思いますのは、農業者努力といいますか、農業者が主体的に努力しなくちゃいけないというふうな言葉がございました。主体的にということを法律にうたっていることは、今まで受動的だったのかなと。私は、もし農業団体の指導者であったら、この条文については削除を要求したいぐらいな気持ちで受けとめるんじゃないかと思うんです。  なぜかといいますと、農業者はその時点その時点で大変な圧力をはね返しながら農業生産をやってきたわけでありまして、運動としてもかなりの努力をやってまいりました。それを、今までは受動的であって、これからは主体的に努めろというふうなことをもし言われたとしたら、それは心外であるというふうに私だったら言います。  しかし、それは説明としては、そういうふうなことは考えていなくて中立的、客観的な言葉として入れたんだと言われればそれまでですから、あえて答弁は求めませんけれども、この農業基本法を読んでいまして、基本法らしからぬ条文であるかなというふうに一つの感想を持ったわけであります。団体の再編成にしてもそうですし、都市農村の交流につきましても、本当に都市農村が対立的に考えられていいんだろうかということから考えますと、これは基本法の中で主として扱われるべきことじゃないというふうに私は考えます。    〔理事三浦一水君退席、委員長着席〕  そこで、衆議院におきましても、この委員会におきましても、自給率問題が非常に大きな課題になっております。今も村沢先生から厳しい御指摘がございました。また、需給見通しにつきましても、かなり現実と見通しとのギャップが前から指摘されております。しかし、これは役所が悪いとか何が悪いとかいうんじゃなくて、まさに経済の流れと農業生産の対応のしかもギャップ、これが大きな原因じゃないかと私は思っているんですが、余り幻想的な夢というか希望を与えるんじゃなくて、自給率向上させることがいかに難しいのかということをもっと積極的に数字で説明すべきじゃないかと思うんです。  そこで、まず一%自給率を増加する場合に、どのような手段が考えられて、またそれにはどのぐらいの経費がかかるのかということをまずひとつ説明していただけませんか。
  254. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 自給率を上げるということは、大変多大な努力を要するという点は御指摘のとおりだと思います。  小麦について言いますと、現在が五十七万トンでありますが、これのほぼ二倍の九十九万トンまで生産が拡大いたしませんと一%の向上ということにはなりません。  これはどの程度かということになりますと、需要で申しますと、日本めん用が七十万トン、それからその他のパン、菓子とかという需要で、全体で五百三十万トンでございますが、大体日本の小麦は、パン用に使われるたんぱく質含有量の多い小麦というものの生産が難しいということでございますから、めんだけでなく菓子とかその他のところにも、最近はパンでも日本の小麦を使っているパンも一部できておりますけれども、なかなかこれが大変だということが需要面の方からおわかりいただけると思います。  また、製粉メーカーに使ってもらえる、さらにはパン屋さんあるいはめんの製造業者に使ってもらえるような品質の粉にしていくということになりますと、相当な新品種の開発なり普及努力というものが必要なわけでございます。また同時に、だからといってコストが幾らかかってもいいというわけにいきませんから、コスト削減も必要になるということであります。  したがいまして、圃場条件の整備から始まりまして、新品種の開発なり普及なりの経費、あるいはその間のランニングコスト的なものまで含めますと、これはもう大変なまだ難しさがあるわけでございまして、一体幾らかかるのかということにつきましては、率直に言って試算のしようもないくらい難しい話かと思います。  それから、大豆につきましても、一%上げるとなりますと、現在の十四万トン、大豆だけで上げるとなりますとほぼ三倍の四十二万トンということでございますが、これも納豆とか煮豆の食用だけで全体でも八十万トン、みそ、しょうゆが二十万トンというようなことで、全体として食用が百万トンということでございます。  国産大豆としては、そういった食用を主体としてしか供給し得ない性格、性質のものでありますので、そういったところに食い込まなければいけませんけれども、片や輸入大豆は自由化をされて関税もほとんどない、こういうことに昭和三十六年以来なっておりますので、これに食い込んで国産の需要というものを確保するというのはこれまた大変な問題かと思います。  特に、大豆は単収の振れが各地域で大きいわけでありまして、これの収量を安定させるということ、それからロットをまとめるということになりますと、これは政策努力のみならず関係者の力強い努力が必要であると思います。  特にまた、地域段階でそういった、先ほどもお話がありましたが、土地利用型農業、米と組み合わせてどういう体制をつくっていくかということになりますと、お金だけではない、各地域におきます農業者農業団体の主体的な取り組みということも極めて大きなウエートを持ってくるわけでございます。  そういったもろもろのことを考えますと、これもどの程度のお金が要るかということの試算が特にできているわけではございませんが、相当な関係者の努力を必要とするということだけは言えるのではないかというふうに思っております。
  255. 入澤肇

    入澤肇君 非常に難しいことは今の説明だけでも読み取れるわけであります。  私は、自給率を五〇%とか何か書くのも、国民の総意であればこれはある程度やむを得ない、しかし現実的な対応策も行政としては持っておかなくちゃいけないんじゃないかと思うんです。  現実的な対応策というのはどういうことかといいますと、自給率を云々するということの背景には、一たん緩急ある場合の自給力、これを確保するということがあるわけでございまして、この自給力、潜在自給力を向上させるための対策を内側に持ちながら自給率論争に私は立ち向かわなくちゃいけないんじゃないかと思うんです。  その意味では、一つ考え方なんですけれども、まず現行の消費量をトレンドで計算した場合にどのくらいになるかという消費量の見通しを行います。これを充足するために国内の資源でどのぐらい確保できるかということを細かく計算してみる。  一つは、農地の一〇〇%作付、減反なしでですね。それも米を全部作付するのがいいのか、あるいは地域によって適切な作物の組み合わせがありますから、そこら辺は十分に精査した上で農地を一〇〇%使うと。  同時に、私の持論でありますけれども日本農業というのは水田農業であるから生産量が落ちないというのは、これはちょっと間違いでありまして、農業試験場のデータによりますと、畑作は連作すれば収量が三割ぐらい落ちる、草地も落ちます。お米の場合でも七割ぐらいに落ちる可能性がある。肥料と農薬で辛うじて生産を維持しているということもあるんです。  そこで、畑も水田も草地も、土づくり休耕しながら維持していくということが全体としての生産力を高めるし、新鮮、安全、良質という新政策のキャッチフレーズ、これを実現するためにも必要なのでありまして、一〇%から二〇%の予備農地を土づくりしながら持つと。一〇〇%作付の中にはこういうものも計算をしておくことが必要じゃないかというのがまず第一点であります。  第二点目は、耕地利用率を過去のよいときの平均レベルまで上げられるかどうかということを検証しておくということでございます。  三つ目は、農地の転用がどのぐらいになるかというのを従来のトレンドで計算しておくと。  ただ、これは私は、これから都市の再開発を中心にいろんな政策が進んでいくと思います。都市のスプロール的な発展を食いとめるということが必要になってくるので、今度の食料農業農村基本法都市側に対する農村側の攻勢の手段を用意しなくちゃいけないとすら思っているんです。農地の転用をトレンドでふやすんじゃなくて、農地の転用が減っていくということを前提にしてどのぐらいかということを見積もると。  さらに、耕作放棄地につきましては、農業委員会中心農地の有効利用を進める運動というのはなされているんですけれども農業委員会もなかなか弱体で十分な成果が上がっていないというふうに私は見ております。今度、農業委員会の制度を大改革するんでしょうけれども、その農業委員会活性化して有効利用の運動を展開させて耕作放棄地、遊休地の量を減らしていく、こういうふうなことをやる。さらに、技術会議を督励して、研究者を督励して単収を増加させるための研究をやる。  こういうふうにして国内生産でどのぐらい供給ができるかということをはじいて、それをまず原点、出発点に置いて、例えばこの前、花本さんが衆議院の公聴会で言ったらしいんですけれども、二十二年で自給率を五〇%にしようという話がありましたけれども、二十年、三十年かかってもいいですから、どのくらい供給力を高めていくかという現実的な目標を立てる。  その結果、残りを輸入に仰ぐと言えば理想なんですけれども、そういうふうな、自給率をいきなり五〇%に設定してその現実との間のギャップでまた当局が悩む、それから五年ごとにこんなはずじゃなかったといって挫折感を味わう、不満が高まる。そういうふうなことを和らげるためにも、潜在供給力を維持し、高めていくための手法を別途用意することが私は必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  256. 高木賢

    政府委員(高木賢君) ただいまいろいろ有益な御示唆をいただいたものと思います。  私どももまさに潜在自給力といいますか、いざというときにもきちんと対応できるようにという考え方をまず一つ持っております。それは法案の二条四項でも、「国民が最低限度必要とする食料は、」、途中略しますが、供給確保を図るということと、十九条におきましても、「不測時における食料安全保障」ということで対応しようと思っているわけでございます。そのときに、供給力を高めるということをやろうということですが、これはまさに平時における食料自給率向上対策ということで整理できるのではないかというふうに思っているわけでございます。  今お話がございましたが、多少違うところがあるかとも思いますけれども基本的には同じアイテムで考えているわけです。消費量につきましては、消費量のトレンドもございますが、同時に廃棄の削減をすればどうなるか、あるいは栄養バランスの改善ができると消費量の見通しはどうなるかということもトレンドだけでなくてあわせて考えたいというふうに思っております。  それから、供給対策としては、冒頭御指摘がございましたように、人なり経営といいますか、プロフェッショナルにやる人の育成という問題がまずあろうかと思いますが、農地について言えば、先ほどありましたように、農地の外延です。これをどれだけ確保できるかということを、まず作付面積として全体の外延としてどれだけできるかということが一つあろうと思います。その中でも耕地利用率、過去のよいときというお話もございましたが、どこまで表作、裏作あわせて可能かという耕地利用率の問題。  それから、技術陣をまさに督励しての単収の増加ということでその限られた農地から最大限どれだけとれるのかという単収の増加を図る。これは技術開発もありますし、普及による安定化というものもあろうかと思います。  それから、先ほどちょっと言い落としましたが、農地利用の中では耕作放棄地の解消というものも一つの重要なポイントでありますし、農地の転用をどう見るか、都市の再開発によって農地をつぶす方向に働いてくる力を削減するということも貴重な御示唆かと思います。  そういった生産力と消費の方と両方相まちまして、平時において自給率をどれだけ高められるか、またそのためにどういう施策を打っていくかということが基本計画におきます重要な盛り込まれるべき内容というふうに今考えておりまして、そのことが平時から実現されることを通じて、いざというときの潜在的な自給力も強化され維持されていくのではないか、こういう整理をしているわけでございます。
  257. 入澤肇

    入澤肇君 少しちょっとわからないところがあるんですけれども自給率を数字で示せという要求と、潜在自給力を基本計画に書けるかということがまだよくわからない。わからないけれども、現実的な政策を追求しなくてはいけない行政当局としては、ここはひとつ真剣に方法論を検討していただきたいと思うんです。  今、食料消費の、例えば先ほどから廃棄物のむだをやめようという議論もございましたけれども、これを本当にやるのであれば、私は、食料農業農村基本法というのでなくて、これは農業基本法にして、食料は別途、食料基本法として位置づけた方がよかった。なぜかというと、厚生省、科技庁、文部省と、やっぱり食料安定供給の理念、安全性の理念、例の遺伝子組みかえの問題も含めまして技術開発の問題、それから健康増進という視点からの留意すべき事項、それから食料については文化論的な観点からもアプローチしなくてはいけません。そういう観点からのアプローチ、それから消費者ニーズの変遷、この多角的な問題についてまとめた政策体系を用意しておかないと国民運動にならない。東京都で毎日廃棄される食品だけで百万人の人間が養えるなんという、これは東京都が昔調査をやったんです。最近、農林省が調査したという話があるんですけれども、この廃棄物を少なくする、残飯を少なくするというのは、本当にやるとしたら今申し上げたようなことをきちんと整理して、そして国民に訴えないと、私は十分な政策展開できないのじゃないかと思うんです。  そこで今度、食料農業農村基本法ができますと、この裏づけとして財源をどう確保するかという大きな問題になってくる。この財源を確保するときに、我々が現役のときからも、今皆さん方が悩んでいるのも、いかにして農業に対して予算をとってくるかということだと思うんです。  外部的には、まず食料安全保障ということでいかに輸入国としての立場を主張するか、国内的にはまさに多面的な機能論みたいなことを言って農業予算を獲得してきたわけであります。しかし、いっとき一〇%ぐらいあった農業予算があるときから防衛費のシェアを下回るようになって、そして今三、四%になってきたわけです。これも国の資源配分あるいは予算配分のいろんな結果そのようになってきたんだと思うんですけれども、この間のWTOの交渉に臨むための文書もかなり議論いたしました。  今、多面的な機能論なり安全保障論を言うのであれば具体的な戦略目標がなくちゃいけない、戦略目標というような大げさな言葉でないかもしれませんけれども目標がなくちゃいけない。その目標として、例えば国際的に見てグリーンボックスの範囲をふやすことができるのか、あるいは国内において農業予算の配分をふやすことができるのか、この点から多面的な機能論とか食料安保論というのはもう少し深めておかなくちゃいけない。  深めるための一つの方法として、私は新しい視点をもう少し真剣に検討していいんじゃないかと思うのであります。それは、永田町に行きまして農業以外のいろんな政策を勉強させられますと、かなり大胆に厚生省にしても労働省にしても郵政省にしても通産省にしても要求しております。農林省は非常にまじめに一つの小宇宙、ミクロコスモスの中で要求しているんじゃないかというふうにすら思えるほど、各省庁は大胆にいろんなことを要求している。  昨年来、いろんな議論がある中でセーフティーネットの議論があります。セーフティーネット最初の議論は、金融業界に対する六十兆円になんなんとする国家予算の投資、それからまた医療や年金、こういうことに対しても大変なお金がセーフティーネットの名のもとに投下されているわけであります。私は、食料安定供給ということもセーフティーネット、このことをもう一回多面的機能論、食料安全保障論の中に位置づけて主張していいんじゃないかと思うんです。  そしてさらに、それを具体的にどのように展開するかといいますと、一つは国土経営論です。  さっき中山間地域等ということで、「等」でいろんな議論がなされていましたけれども、中山間地域と離島なりなんなりは基本的に違う。今どういう条件下で直接不足支払い対象に入れるかどうか議論されているというんですけれども、昨今の国際情勢から見ますと離島は別扱いして、ここに人に住んでもらわなくちゃいけない。住んでもらうために、ただお金をやるわけにいかないので、離島の立地条件を生かしながら、生産活動に従事させながら生活を保障する仕組みというのは、国家安全保障というセーフティーネットの議論から導き出して、これは別枠として農政の基礎的な経費として要求する。あるいは農林省が要求できなかったら国土庁でも何でもいいんです。とにかく国土経営論のセーフティーネット一つの手段として堂々と要求してしかるべきではないか。各省のいろんな予算要求をずっとヒアリングしていますと、一見奇異に、大胆に見えるかもしれませんけれども、私はこれが一つ通用すると思います。  それから、中山間あるいは過疎地域。過疎地域対策もこれから法案をまとめてくれないかという要請があちこちからあるんですけれども、中山間地域、過疎地域につきましては、当然のことながら平場との条件不利ということだけじゃなくて、環境保全、国土保全ということからもっと真っ正面から取り組んで要求したって別にだれも非難しない。  三つ目に、これが大事なところなんですけれども、産業としての農業を維持拡大するためにどうしても農業の持っている制約条件から、これはげたを履かせなくちゃいけない。これは三十六年の農業基本法以来、いろんなところで悩み続けてきたんだけれども、ぜひ農業経営がどう変遷してきたかということを分析して、そこからどの程度の保護水準がいいかということを導き出さなくちゃいけないんですが、産業としての農業の維持増大ということも堂々とセーフティーネットの枠の中で私は要求していいんじゃないかと思うんです。  多面的機能論とか安全保障論というのは、これはもう人口に膾炙しています。今これを言うのであれば、先ほどの繰り返しになりますけれども、グリーンボックスの拡大なり、あるいは追加的な農業予算の獲得なりということに寄与しなければ意味がない。寄与するためには、この多面的機能論、食料安全保障論を一つの例示として挙げましたけれども、さらに理屈をつけて堂々と理論闘争することが私は必要じゃないかと思うんです。そうでないと、衆議院の農林水産委員会の議事録を読んでいましたら、大蔵省の次長の答弁で、農林省が重点的、効率的に予算を配分してくれると思っていますなんて、ああいうふうに言われちゃうんです。  そこで、やっぱり農業保護論ですね。  これはもう長い間、私どもも財界とやり合い、それから外国ともやり合ってきたんですけれども、どこに行っても堂々と主張できるだけの基礎的な理論体系というのは持っていかなくちゃいけないと思うんです。  そこで、今の論の締めくくりとして、財源に限度があるわけでありますから、新基本法ができたら何でもやれと言ったって無理です。中山間地域の直接所得補償をやれと言ったって、そんなに多くの金額がとれるわけがない。望むべくは、これは人様が言っている、ジャーナリズムが言っている言ですけれども、中山間における地域振興券にならないようにしてもらいたいなんという言葉があります。そうならないように内容のあるものにしなくちゃいけないと私は思うんです。  農業予算を重点的、効率的に配分するものと期待していますという財政当局の要望に対して、こういうふうに考えていますということがあったらひとつ官房長言ってください。
  258. 高木賢

    政府委員(高木賢君) 先ほど来お話を伺わせていただきまして、いろいろと感ずるところもあるわけでございますが、やはり根底は食料の安全保障と多面的機能ということになるのかなという思いをいたしました。その具体化として、離島の問題なり国土経営、あるいは環境なり国土保全を強調した中山間なり過疎対策、あるいは産業としての農業の維持増大ということも、それは多面的機能なり食料安保の機能農業にあるから主張が可能になるのではないかというふうに思った次第でございます。  それで、具体的にどういうふうに攻めていくかということでございますが、今も御示唆がありましたが、セーフティーネットというようなことを一つの理論の中に組み込んでいくという視点もあろうかと思いますし、産業政策的な視点もありますし、また先ほど来お話がありますように、国土政策あるいは環境政策というような視点もあろうかと思います。  具体的にはどういうことになるかというと、先ほども御答弁申し上げましたが、中山間地域に対する直接支払いの要求であるとか、あるいは土地利用型農業の新たな再構築のための予算であるとか、こういうことになってくるのだろうと思います。  そういう個々具体的な政策課題と、そういった背後にある大きな背景といいますか根拠というものをどう結びつけて具体的な要求に仕立て上げて、いわば俗に言うタマをつくっていくかということが今一番の課題だなということを痛感した次第でございます。
  259. 入澤肇

    入澤肇君 そういう意味で、時間がありませんので一つ二つ要望しておきたいんですけれども、WTOの対策で六兆百億円のお金をとりました。今、計画的に実施していると思うんですけれども、あれをとったときの趣旨に即して、受益効果が早期に発現する、六年間で例えば一つの道路が完工する、橋ができるというふうな使い方がされているかどうか、これを、きょうは時間がありませんから点検しておいていただきたいと思うんです。  実は、あのときには非常にいろんな議論がございました。六年間きり猶予期間がない、六年後はどうなるかわからない、せっかく与えられた六年間だから何をやるかというので私は重要な提案を三つやりました。一つは、構造政策を徹底してやりましょう、土地改良進度を早めて早く受益効果を発揮させる、土地改良負担金を軽減させる、中山間地域対策に取り組む、農地の流動化を促進する、これは法律もできました。そういうふうな構造政策と並んで、六年間きりとれない経営安定のための基金を相当とっておいたらどうかということを私は申し上げました。  それからもう一つ、世界最大の食料輸入国でありますから、食料供給について一番敏感に対応しなくちゃいけないのは日本であります。アメリカは、宇宙衛星とCIAの職員を使って地上から、あるいは宇宙から世界じゅうの食料生産流通の状態を見ているわけです。日本は無手勝流なわけだ。あれから若干の予算はふえているけれども、本当はアメリカ以上の予算を持って世界じゅうの生産流通状況を眺めなくちゃいけない。世界の最大の食料輸入国でありますから。そういう意味からしますと、その意味でのセーフティーネットの情報網の整備ということも基本的な課題だと。この三つの課題中心にしてWTO対策に臨もうじゃないかということを申し上げたんだけれども最初の構造政策の六兆百億円に特化しちゃった。それであるならば、この六兆百億円ぐらいは六年間で受益効果が早期に発現できるように執行しなくちゃいけない。しかし、全国各地に行って見てみますとなかなかそういうふうになっていないというふうな情報がありますし、私も現場でそういうことを痛感しております。きょうは質問しませんけれども、あと二年あるんですか、ぜひ二年間に受益効果が早期に発揮できるような執行体制をとっていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  260. 野間赳

    委員長野間赳君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時四十一分散会      ─────・─────    〔参照〕    仙台地方公聴会速記録  期日 平成十一年六月十五日(火曜日)  場所 仙台市 勝山館    派遣委員     団長 委員長      野間  赳君        理 事      和田 洋子君        理 事      須藤美也子君        理 事      谷本  巍君                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 中川 義雄君                 郡司  彰君                 風間  昶君    公述人        天童市農業協同        組合代表理事組        合長       土屋 完治君        栗っこ農業協同        組合理事     佐藤 隆幸君        農業者      坂本進一郎君        農業者      高橋 良蔵君        食糧・農業を考        える宮城県各界        連絡会世話人   大松澤照子君     ─────────────    〔午後一時一分開会
  261. 野間赳

    ○団長(野間赳君) ただいまから参議院農林水産委員会仙台地方公聴会開会いたします。  私は、本日の会議を主宰いたします農林水産委員会委員長野間赳でございます。よろしくお願いを申し上げます。  まず、私ども派遣委員を御紹介申し上げます。  民主党・新緑風会所属の和田洋子理事でございます。  日本共産党所属の須藤美也子理事でございます。  社会民主党・護憲連合所属の谷本巍理事でございます。  自由民主党所属の国井正幸委員でございます。  同じく自由民主党所属の中川義雄委員でございます。  同じく自由民主党所属の岸宏一委員でございます。  民主党・新緑風会所属の郡司彰委員でございます。  公明党所属の風間委員でございます。  次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。  天童市農業協同組合代表理事組合長土屋完治君でございます。  栗っこ農業協同組合理事佐藤隆幸君でございます。  農業者坂本進一郎君でございます。  農業者高橋良蔵君でございます。  食糧・農業を考える宮城各界連絡会世話人大松澤照子君でございます。  以上の五名の方々であります。  参議院農林水産委員会におきましては、目下、食料農業農村基本法案について審査を行っておりますが、本委員会といたしましては、本法案の重要性にかんがみまして、国民皆様方から忌憚のない御意見を賜るため、本日、当仙台市及び福岡市において同時に地方公聴会開会することにいたしました次第でございます。何とぞ特段の御協力をお願い申し上げます。  農業基本法は、皆様方も御承知のとおり、昭和三十六年に、当時の社会経済の動向を踏まえ、我が国農業の向かうべき道筋を明らかにするとともに、農業従事者の生活水準の向上を図ることを目的として制定されました。  その後、三十八年の歳月が流れる中で、農業及び農村を取り巻く環境は著しい変化を遂げてまいりました。  一方、国民の間からは、食料安定供給を初め、国土や環境の保全、文化の伝承など、農業農村に対する期待が高まっています。  食料農業農村基本法案につきましては、参議院本会議において政府趣旨説明を聴取し、各党の質疑を行った上で本委員会に付託されており、本委員会は六月八日に第一回目の質疑を行い、本日、皆様の御意見を拝聴した後、さらに議論を深めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  土屋公述人佐藤公述人、坂本公述人、高橋公述人、大松澤公述人におかれましては、大変御多忙のところ、貴重なお時間をお割きいただきまして御出席をこのように賜ることができました。まことにありがたく思っております。派遣委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日の会議の進め方につきまして申し上げます。  まず、公述人の方々からお一人十五分で順次御意見をお述べいただきまして、その後、委員の質問にお答えをいただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、私どもに対しての質疑は御遠慮願うことになっておりますので、御承知願いたいと思います。  また、傍聴の方々にも傍聴人心得をお守りいただきまして、会議の円滑な進行に御協力をお願いいたします。  それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べいただきます。御発言は着席のままで結構でございます。  まず、土屋公述人からお願いいたします。
  262. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) ただいま野間委員長から大変御丁寧なごあいさつをいただきまして、初めてでもありますので大変恐縮をしておるところでありますが、率直に私の考えている点を申し上げて、御批判をいただきたいというように思っているところであります。  私は、国際化時代を迎えました二十一世紀の日本農業の望ましいありよう、あるいはまたみずから農業をやって、そしてJAのリーダーとして、現場の生の声をもとにしながらいろいろと御意見を申し上げたい、このように思っているところであります。  まず、基本法制定の意義でありますが、これはまさに二十一世紀農業の憲法に相当するものではないか、こんなふうに思っているところであります。  昔ならば、春ともなれば菜の花が咲きチョウが飛び交い、まことにうららかな農村風景であったのでありますが、今は減反を初めとするいろいろな問題を抱え、なおかつ農業の現場では農業就業者は年々老齢化しております。私どもの天童市では、六十歳以上が五四・七%、後継者は三十歳未満で二・八%と極めて低い状況にあるところであります。そしてまた、農業就業者全体が減少しておる、つまり老齢化農業後継者不足というものが同時進行して年々深刻になっておる、こういう状況にあるところであります。でありますから、なお農業に希望を持って継いでおられる若い方々が将来希望を持てるような農政展開をどうしてもお願いしたい、こういうふうに念願をしているところでございます。  それから、四つの理念等につきましては、これは我々が長い間要望してまいった点でもありますので、高く評価をしたいというように考えております。したがいまして、この基本理念を実現していくための関連施策の実施については、殊のほか御期待を申し上げているところであります。  それから、基本計画の策定に当たっては、基本理念に即した施策を実施するための基本方針、食料自給率目標、これは第十四条に記載をされています国会報告の義務づけによって、透明性のある開かれた農政として期待をしているところであります。  それから、食料自給率目標についてでありますが、自給率向上など国内農業生産増大を図ることを基本とした国の姿勢がうかがえて大変力強く思いますが、自給率五〇%を割るなどということのないようにお願いをしたいと思っております。人間が生きていく上に一分として吸わずにいられないのが空気であり、一日として飲まずにいられないのが水であり、三日として食べずにいられないのがこの大事な食料でありますから、食料確保ということは極めて重要なことではないか、このように思っているところであります。  また、過日の衆議院の先生方の修正及び可決に心から感謝を申し上げたい、このように思っているところであります。  それから、食料政策についてでありますが、農業生産消費者あってのものでありまして、消費者ニーズがいずこにありや、このことを理解しない生産はあり得ないのではないか、私はこのように考え、消費者食料農業農村に深く理解をいただくことは極めて有意義なことであるというように思っております。  それから、今、農村が抱えるさまざまな問題、高齢化の問題、生活環境あるいは価格の低迷、後継者不足、数え上げれば切りがない問題がありますが、今は農業問題であってもやがては日本の問題になってくる、このように思っているところであります。この地球上を見ても、世界のどこからでも幾らでも買ってくることができる、こういう時代はいつまでも続かないのではないか、とりわけアジアの人口増などを見るにつけアジアが怖い、こういう印象を持っている一人であります。  それから、政策的にも後継者や認定農業者への支援、さらには農村政策にまで踏み込んだ取り組みが必要と思っております。特に、中山間地では学校の閉鎖、人口の減少で村落維持が困難だ、特に中山間地の導水路の管理などは極めて困難な状況に差しかかっているというように思っております。したがいまして、全体として、こういった農村社会にまで踏み込んだ農業政策をぜひともお願いしたいというように思っています。  参考までに、私の大阪の友人がうちを売って、福島に新しくうちを建てました。その最たる理由は、緑が多くて空気がきれいで、しかも水がおいしい、新鮮な食べ物が手近にある、こういう理由で福島にうちを建てた方がおります。まさに、人間として暮らすには緑が多くて空気がきれいで、水がおいしくて新鮮な食べ物が手近にある、こういう環境こそすばらしいのではないかというように思っております。  それから、多面的機能発揮等について申し上げますが、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成など、従来にない農村環境の果たす役割が高く評価され、しかもこれらが国民経済の安定にはかり知れない効果をもたらすことにかんがみ、将来にわたって継続的に発揮されなければならない、このように思っております。  例えて申し上げますならば、水田十アールの稲作に必要な水の量というのは、広さが一千平米、高さが二・七メートル、重さが二千七百トンになる、このぐらいの水が十アールで必要だ、こういうふうに言われております。国土の保全あるいは水資源の涵養等々についても、やっぱりこれは国全体として考える必要があるのではないかというように考えております。  とりわけ、土地改良区の役割は、単に農地だけではなくして水資源の涵養なり水路の管理なり、あるいはまた導水路、森林公園に至るまでを仕事の分野として将来考えていただきたいものだ、このように考えているところでございます。  それから、WTO次期農業交渉について申し上げますが、交渉担当者にはまことに申しわけありませんが、これまでの交渉経過を見ますと、米国を中心とした輸出国の強い要求とその圧力に寄り切られてきたような気がしてならないところであります。新たな農業基本法の制定を機に、持続的な農業生産の確立の上に、しっかりした交渉とその成果を期待したい、このように考えております。  それから、みずからの取り組みという点で、JAグループといたしましても、単に要求するだけではなくして、みずから農業を守るんだ、こういう姿勢の上に立って二十一世紀農業の確立に向けた取り組みをみずからやるべき時期に来ているのではないかというように考えておるところでございます。  我が天童市では、我々の大先輩の皆様方が、将来農業はこうあるべきだという理想に向かって昭和二十七年から農業構造改善事業などあらゆるものを取り入れまして、基盤整備を初めとして県内ナンバーワンの農業投資をやってまいりました。今、天童市の農業が比較的元気なのはそのおかげではないかというように思っているところでございます。  したがって、農業振興の上で行政と農業団体が一体となって取り組んでいくということが極めて大事なことだ、このように思っているところであります。  最後に、新たな基本法は、農政の一大転換であり、二十一世紀農業の確立に向けた重要法案でありますので、国会議員の先生方の格別の御尽力をいただき、同法案の一日も早い成立をお願い申し上げ、私の意見陳述とさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  263. 野間赳

    ○団長(野間赳君) ありがとうございました。  次に、佐藤公述人、お願いいたします。
  264. 佐藤隆幸

    公述人佐藤隆幸君) 先ほど野間委員長より御紹介いただきました佐藤隆幸でございます。栗っこ農業協同組合理事、また栗原郡小山田川沿岸土地改良区の副理事長でもございます。  先生方におかれましては、日本農業方向性、そして農業協同組合の活動、また土地改良等に特段の御理解と御協力を賜りまして感謝申し上げます。とりわけ、地域のよりどころでございました農協の合併助成法の恩恵をいただき、平成八年四月一日に広域合併した組合員一万五千三百六人を擁する栗っこ農協を代表して、これからの農業の道しるべとなります食料農業農村基本法を制定する重要な審議に際しまして、このような公述人として意見を述べる機会を与えていただきましたことに心より感謝と御礼を申し上げます。  さて、私は、現農業基本法、土地改良法のもとで、農業を始めて以来、集落の協力をいただきながら、借地等により農地の集積はかつての五倍の耕地面積になり、現在、専業農家の一人として営農しております。また、平成三年からは低コスト化水田農業大区画圃場整備事業が進められており、組合員一同心から感謝しております。  このような状況のもとで、新たな二十一世紀の指針として日本食料農業農村基本法案が出されたものととらえております。栗っこ農協でも幾度となく討議を行い、今後どうあるべきか取り組んでまいりました。基本的に賛成でありますが、組合員の中には何点か不安な面、そしてまた要望することがありましたので、代弁させていただくことをお許し願いたいと思います。  第一に、食料安定供給確保であります。  国内農業生産の位置づけでありますが、先ごろの報道で、ベルギーの鶏肉がダイオキシン等の問題でパニック状態になっているようでありますし、つい最近、閣僚が辞任したとされています。私たち農業者は、消費者に安全で安心して食べられる食料を提供したい、と同時にそれが生きがいでもありますし、誇りでもございます。我がJAでも栗原米GOGO運動を実践し、消費者に喜ばれる米づくり、そして有機栽培に取り組んでいるところでございます。この基本法案基本理念を具体化する指針、つまり生産目標食料自給率を明示しておりません。年々自給率低下しつつある現況でもあり、ここで歯どめをかけるためにもカロリーベースで四一%、これ以上下がることのないよう目標を明示すべきと思っております。私見ではございますが、先ほどの土屋先生のごとく五〇%程度は必要かと考えております。  第二に、農業持続的発展でございます。  農業自然環境が維持されると同時に、また持続的発展を我々農業者はだれしもが望んでおります。反面、持続的に発展するには、現在行っている稲作経営安定対策のような価格政策、そして意欲ある担い手経営安定対策をとらないと国内生産に重大な支障を与えることになります。とりわけ、専業農家経営を圧迫することになると危惧するものでございます。現在、大型農業機械のリース等は有効な手段で行われておりますし、こういう事業をもっと拡大、拡充していただくことが担い手の方にとっては大変重要かと考えております。  第三に、農業農村多面的機能発揮でございます。  大規模農家小規模農家も、そこに人が住み、集落がございますし、三世代、また四世代同居の家族がございます。そして、そこに培われてまいりました文化がございますし、それを無視するわけにはいきません。むしろ、水路のいざらい、あるいはまた集落の決まり等、協力し合って生活しているのが現況です。このように生命をはぐくみ、緑豊かな大地、耕地、山林などに一部のモラルの欠落した人たちが粗大ごみを不法投棄されるようになりつつございます。今こそ、水源の涵養機能、大気浄化機能、保健休養・安らぎ機能などを持つこの大切な大地を都市農村が一体となって守るべきと思っております。  第四に、担い手対策でございます。  農村振興は、ひとえに、農業持続的発展の基盤の役割を果たすためにも担い手対策が必要でございます。そのために集落で協調し合い、集落での営農体系が大切と信じております。  しかるに、ちまたで報道されております株式会社による農地取得を認めることはいかがなものかと危惧するものでございます。むしろ、農地の流動化を進めつつ担い手確保し、担い手の規模拡大を図り、農業者による農村振興を図れるようにと願っているものでございます。  第五に、土地改良でございます。  第二十四条、農業生産の基盤にありますように、生産を高め効率的な基盤づくりをすることによりまして、耕作放棄地もなくなり、担い手を支えることにもなります。  初めに申し上げましたとおり、我が栗っこ農協管内でも圃場整備が進むほど担い手の活躍の場が広がり、集落の発展にもつながっております。あわせて、かんがい排水施設も老朽化しておりますし、農林予算にめり張りをつけていただき、地域のニーズに沿った予算をつけて早急に達成されますよう切に要望するものでございます。  第六に、次期WTO農業交渉についてでございますが、国内生産で需要が満たせない今日、農産物の安定輸入確保のためにも、我が国食料の安全保障、農業の持つ多面的機能の位置を明確に示した新たな基本法によりまして、決して国内農業者が不利益にならないよう、次期WTO交渉に臨まれますよう、先生方に切に要望いたす次第でございます。  まだまだ言い足りないことがございますが、以上、六つに論点を絞り、私たちJAの考え方、また土地改良区の一員として述べさせていただきました。  今、農村を取り巻く環境は厳しくなっております。我が栗っこ農協では、収益部門としてではなく、だれもが安心して暮らせる高齢化社会に対応すべく、福祉事業への取り組みとしてJA栗っこ助け合いの会をつくり、ヘルパーの養成、ケアサービス相談センターの開設の基礎づくりをしております。人が住み、その地域を、金では買えない豊かな大地を次世代に残そうと日夜努力しております。  最後になりますが、今回の食料農業農村基本法案が、生産者である私ども都市消費者理解を得ながら、国民の合意のもとに今次国会で早期成立になられますようお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。  大変ありがとうございました。
  265. 野間赳

    ○団長(野間赳君) ありがとうございました。  次に、坂本公述人、お願いいたします。
  266. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) 私は、大潟村で十五ヘクタールの農業をやっている専業農家です。  今、専業農家である大潟村の入植者の気持ちを一口で言えば、ちょっと言葉はきついのですけれども、極度の情緒不安定にあると言っていいと思います。  その理由は、一つは、米自由化によってまず意気消沈したんですけれども、そうしているうちに新食糧法によって米価がこの五年間というか、二年目から下がりました。一応いろいろ試算があるわけですけれども、四千円から五千円ぐらい下がっています。大体一戸当たり十五ヘクタールですから、少なく見ても千三百俵、そうすると五百万ぐらいの減収になります。五百万ぐらいの減収は凶作のときにも経験しましたけれども、これが人為的につくられている、そういう構造的なもので将来も続いていくということになると非常に閉塞感と敗北感というものがあって、結局、情緒不安定になっているんだと思います。  正直なところ、関税自由化、それから減反強化、そして米価下落ということで営農計画が立ちません。非常に厳しいことを言って申しわけないのですけれども、それが農民の今の実情だと思います。  レジュメを書いてこいというので、一応こういうものをつくってきましたけれども、今回の食料農業農村基本法に私はそんなに強い期待を、言うとおしかりを受けると思うんですけれども、そんなに強い期待を持っていませんでした。条文をずっと読ませてもらいましたけれども消費者ニーズとか食品産業の健全な発展とか農産物の輸出入に関する措置という言葉が躍っていて、言葉はきついですけれども、ちょっと物足りないというか、はっきり言えば気の抜けたビールじゃないかなというふうに思っています。それは、農業をちゃんと国民経済の中に位置づけるということが見えてこないからです。  大きなことを言って申しわけないんですけれども、独立国の要件というのは国民が安心して暮らしていけるということにあると思います。さっきも話がありましたけれども、そのために日々の糧である食料が、安心な食料が安定的にいつも入るということが保障されていなければならないと思います。  この農基法をつくる前に、農業基本問題調査会の後書きに暮らしと命を守るということが緊急の課題だというふうに書いてありましたけれども、木村会長の思い入れもかなりあると思いますけれども、暮らしと命を守るための柱としてやっぱり日々の糧が一番大切じゃないかなと思っています。  そのことについては、私もローマに行ったんですけれども、一昨年、ローマで世界食料サミットのときにNGOのサミットもありました。世界食料サミットで各国も恐らく署名していると思うんですけれども、さっきからいろいろ話がありましたけれども農業多面的機能に配慮するということとあわせて、貿易は一つの重要な要素にすぎないと。つまり、自由貿易一辺倒にくぎを刺したというか、それに日本もたしか署名しているんじゃないかと思いますので、そこら辺をやっぱり含んでもらいたいと思います。  真の独立国になるためには、言葉はいろいろあります、食料安全保障とか食料主権とか基本的人権とか、それから環境保健とか身土不二、いろいろ言葉はありますけれども、今、グローバリゼーションによって非常に国家主権が侵されていると思います。国家主権の回復という意味で、私は食料主権の回復をということをこの公聴会で一番訴えたいと思います。  さっきも話がありましたけれども、ずっと名指しして悪いんですけれども、アメリカなどの要求によって四一%の自給率まで下がりました。そうすると、これは本当に独立国と言えるのかなというふうに思います。お二人も言ったんですけれども、私も自給率を五〇%にしてください、これを基本にしてくださいと。五〇%が決まれば、農地の面積がどのぐらい必要で、それから農民の経営も安定しなくちゃならないということが必然と決まってくると思います。農地は大体五百万ヘクタール削ったそうですけれども優良農地なんて言わないで、今ある農地を早速守るという決意でまず臨んでもらいたいなというふうに思います。  それから、二つ目の農民の経営安定ですが、私たちは、さっきも言ったように、針のむしろに座らされているというか、冒頭申し上げましたけれども、米価が下がりました。それから、減反ですけれども、私も随分頑張ってきましたけれども、年も六十近くになってきついので、減反を委託したら大体二百万円とられます。そのほかに、時間があれば述べますけれども、意外や意外というか、稲作経営安定対策というのができましたけれども、これによって非常に苦しめられています。  それやこれやで針のむしろに座っているというか、そういう感じなんですけれども、結局、今回の農基法をずっと見ますと市場原理万能で、つまりは安い農産物が入ってくればいい、極端ですけれども、それでつぶれる農家はつぶれてもいい、農家というか農業というか、そういうふうに読み取れます。  そこで、デカップリングを要求したいんです。十年来ずっと言ってきているんですが、ちょっと今、直接支払いとかという言葉になっていますけれども、デカップリングの要求というのは、このデカップリングという言葉は一応市民権を私は得ているんじゃないかなと思ってあえて使うわけです。ヨーロッパのデカップリングをイメージしているわけですけれども、先年、EUというかヨーロッパに行って自分なりに調査してきましたけれども、家族農業を守るということが非常にしっかりしているというか、うらやましいなと思いました。実に、条件不利地が五三%、これは土地の条件不利だけじゃなくて、経済的条件不利地も含むそうですけれども、そういうふうにして直接に所得補償されていて、大ざっぱに言って大体三割ぐらいが直接に所得補償されているというふうに聞いてきました。  それで、農民の経営の安定のために二つのことを要求したいんですけれども一つは転作です。  転作は、私も随分頑張ってきましたけれども、結局は二十数年、三十年近くやってくたびれ損だったというのが今の感想です。アメリカでは大豆で五割が遺伝子組みかえ、それからトウモロコシが六割になっているそうです。ですから、食料主権の中には安心なものを食べたいということも含まれるとすると、今が大豆とか飼料を回復していくチャンスじゃないかというふうに思います。  それで、転作をやってきましたけれども、御存じのように、大潟村は二つに分かれてしまって、なぜかというと、農民にモラルを期待する部分もありますけれども、やっぱり経済行為なので、そうすると転作をやらぬでも米をつくっても大体同じ、余り損得がないようにするというか、EUに行くとやみ米という概念はないんですけれども、残念ながら大潟村には転作が余りにも厳しいものだからすき間をねらってやみ米をやっていく、農民同士が仲たがいしていて、本当は大潟村が一つにまとまって農林省にデカップリングをやりましょうなんて行けば相当力になるんだけれども、二つになっているものだから全然動きがとれないということで、せめて転作をやっても米並み補償をしてもらいたい、一つはそれです。  それから二つ目は、農業経営の安定に、家族農業の柱というのは米ですから、米がやっぱり二万円米価になるようにしてもらわないと我々の再生産の維持というのは非常に難しいと思います。  私なりに計算したんですけれども、あきたこまちが一万七千円から一万八千円です。例えば、二万円にするのに追加予算がどのぐらい必要かなと計算しましたら、自主流通米は六百万トンを切りましたけれども、私のコンピューターが狂っていないとすれば、三千億ぐらい追加予算してもらえば二万円米価が出る。そうすると、こんなに悩まなくていいんだなということを思います。  実は、来年の農水予算を見ると五二%が公共事業費になっているんです。これまで一番多いところで五七%、それで逆に食糧関係費はたったの八%です。ずっと十年来言い続けてきたんですけれども、ゼネコン奉仕型予算を変えないうちは日本農業の再生産はあり得ないということを私たちは言ってきました。今回、一応中山間地の直接支払いは認められましたけれども、我々が言ってきたからか、それとも世界の流れで外圧でそうなっているのか、ちょっとわかりませんけれども、一応そこは評価できるなと思っています。  ちょっと稲経のことについて話したいんですけれども稲作経営安定対策という制度です。これは去年からつくられました。それで、実は自主流通助成金という販売科目がなくなっちゃったんです。一生懸命あちこち聞いてやっとわかったのは、これが稲経の方の予算に回ったと。そういう意味では情報公開がおくれているんですけれども、それが稲経の予算に化けたということがわかりました。つまり、あきたこまちで言うと、一俵千百四十円ですけれども、これが米価を下げる要素になっています。  それで、さっき言ったように、稲経に入るためには減反に協力しなきゃならないし、いろいろあります。何か稲経ができたために、あれも出せこれも出せということですごくお金を取られて、非常に経営圧迫になっています。  去年の十二月、当時の自民党の農水、ちょっと正確な名前はわかりませんけれども、松岡委員長の談話で、この稲経の余った分は個人に帰属するというふうになっていて、六月にそれをどうするのか全農に行って聞きましたら、十月にならないとわからないと言われました。  それで、大体一人当たり百万ぐらいずつ積み上がっているんです。それで、今またことしの分を払わなくちゃならない、拠出金を出さなくちゃならないんですけれども、無事戻しとか一〇〇%補償とかいろいろあると思うんですけれども、それを何とか無事戻しでもいいからやってもらいたいなと思います。  実は、今のままですと、自主流通助成金というのがこの稲経の人質にとられてそのまま動かせないというか、個人に帰属するといっても全中と農林省が合意しない限りは動かせないというふうに聞いています。そういうことで、稲経なんていうちょっとごまかしたような、ちょっと言葉がきつくて申しわけありませんけれども、そうではなくてやっぱりわかりやすいデカップリングということでやってもらいたいと思います。  最後に、関税化しようが、それからミニマムアクセス米で残ろうが、我々にとってはもう去るも地獄残るも地獄です。ですから、国内対策をきっちりやってもらいたい。そういう意味では、デカップリングをずっと言ってきたんですけれども、ぜひ今回の農基法の中にも所得補償ということをきちっと書いて、それで次期WTO交渉のときには戦いの陣地構築をしていただきたいと思います。  以上です。どうもありがとうございました。
  267. 野間赳

    ○団長(野間赳君) ありがとうございました。  次に、高橋公述人、お願いいたします。
  268. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) 私は、秋田県の平たん部で水田酪農を小規模ながらやっている専業農家です。水田が二町五反歩、乳牛が二十頭、そのえさをつくる転作地が七町歩。転作地というのは十三カ所に点在する借地なんです。そこで牧草とかデントコーン、そういうものを栽培しておる七人家族の農家なんです。  私は、農業者にとっては自給自足というのが最も合理的で健康的だと考えておるものですから、米、みそ、野菜、食べ物の自給、そればかりでなしに、牛舎を建てるにもサイロをつくるにも全部手づくりで、業者や大工さんを頼まないでそういうことをやりますと、三分の一から半分ぐらいで仕上がるんです。  例えば、これは二十年前のことなんですけれども、十トン詰めのサイロを私は十本持っておるわけですけれども、一本のサイロが構造改善事業では三十万円かかる。その半分を補助するということだったわけですけれども、コンクリートだとか砂利とか自分では自給できないものは購入して手づくりでやりますと、自分の労賃を含めて半分以下で立派なサイロができるわけです。牛舎だとか牧草を収納する収納庫とかそういうのは、学校の校舎の払い下げを受けるとか近所の廃材をただで集めて、くぎとかトタンとか窓ガラスとかベニヤ板とかは現金で買わなければならないわけですけれども、大工さんに設計してもらうより三分の一ぐらいででき上がるわけです。  私の所属する酪農組合は、最盛期のころは百八十戸の酪農家がおったわけですけれども、これが次々と廃業して現在は十分の一になってしまいました。私のような、堕農ではないんですけれども、それほど精農でもない、篤農でもない農業者がこの十分の一に残っているというのはそれは何ででしょうか。それは私に借金がなかったからです。借金を持った農家というのはほとんどやめてしまいましたし、今残っておる人たちも借金のためにやめることもできないというふうな人たちがおるということなのです。  新しい農業基本法というものは、認定農家であるとか規模拡大の農家ということばかりでなしに、私のような小規模な家族農家、農業で自立していきたいというふうな要望を持っている農家というものはたくさんおるわけですから、こういう小さな農家の人たちにも差をつけない基本法であってほしいというふうに思うわけです。  それから、私の住んでいる羽後町というところなんですけれども、半分以上を中山間地が占めておるんです。平たん部の米の単収量というものは十俵ぐらいなんですけれども、山間部になりますと七俵からよくて八俵。冷害というのは平たん部では十年に一回あるかなしかというふうなことなんですけれども、山間部はいろいろ統計をとった数字を見ましても、私の町では四年に一回ということになっております。コストは高いんだけれども生産性は低いと。そういうことだから、水田の価格というものも平たん部で反当が百万ぐらいするときは半分以下の五十万円にもならない。そういうことですから、耕作放棄だとか人口の過疎、減少、こういうのはもう例外なくこの山間地に集中して起きておるわけであります。  これは改めて申し上げるまでもないわけですけれども、私の町ではこの三十年間に二七%の人口が減ったわけですけれども、同じ町の中でも田代、仙道というふうな山間地帯では四〇%以上人口が減っているわけです。三輪地区という平たん部では一三%より減っていない。こういうふうに同じ町でも違いがあるわけです。  ですから、ヨーロッパでは早くからデカップリング制度というものを導入してハンディの克服に成果を上げてきたように、新しい農業基本法でも条件不利地域の平均化のために大胆な制度政策をやってもらいたい、私はただならぬ期待を持っておるわけです。  農業の従事者が最も期待する肝心の所得補償政策というものが落ちているような気がするわけです。労働者の生涯賃金、所得というものと農業従事者の生涯所得が余りにも格差が大きいというふうに思うわけです。  今ここに七十歳になる、小学校農業高校を同じに卒業した二人の同級生がおる。何十年も前になるわけですけれども、一人は卒業と同時に町役場の職員になって、一人は三町歩農家で畜産とスイカ、そういう複合系の専業農家になった。しかも、農業の彼は出稼ぎもしないで民生委員だとか農協の班長であるとか二十年も三十年も村役をやってきたわけです。やがて六十歳で定年退職した役場の職員の退職金と八十歳までの年金の総額は六千八百万なんです。ところが一方、三町歩専業農家はお役所のためにもたくさん働いてきたわけですけれども退職金がない。農業者年金と国民年金で八十歳までの総額というものは千七百万円。この老後の二十年間で、同級生AさんとBさんは何で五千万円の差がつくのか。それを一番よく知っているのは村の娘さんたちで、結婚相手に厚生年金をもらう男性を選ぶ。それが農家の嫁不足とか農業離れというふうな大きな原因になっておるわけなんです。  だから、農業を大切にする法律であるというならば、農産物価格の保証ができないということであるならば、一歩踏み込んで緑の政策というふうなことででも年金対策をぜひひとつ織り込んでもらいたいと思うわけです。  今、村の生活の中で一番人気の悪いのは米の生産調整、減反なわけです。一割減反から始まって、私の方では現在三〇%の減反で青息吐息というふうな状態なんですけれども、一方で米の消費は年々減って、この三十年間に一人当たり一年に一キロずつ減っている。その減り方がなお続いているというふうな現状にあるわけですが、この三十年間に三百六十万トンの米の消費が減ったことになるわけです。その分そっくり減反面積の拡大とか、あるいは過剰米だとか在庫米となって農家負担に覆いかぶさってきておるわけです。この先、この米の消費の減退というものが一年に十二万トンずつ減り続けるということになれば、十年後百二十万トンプラスになるわけですから、減反率が五〇%近い恐ろしいことになってしまう。この三十年間そういう恐ろしいことを我々は続けてきたわけです。  そういうことを考えるときに、もう一つ関連ある問題は、この米の消費の落ち込みと同時に、この二十年間に国民医療費が膨張して、特にこの五、六年の間、一年間に一兆円から一兆五千億円近いふえ方をしているわけです。だから、平成八年度は二十八兆五千億、国家予算の三分の一に膨らんでいるわけです。厚生省は、欧米型の食生活に変わったことに原因があるというふうに分析して、しかもこれらの病気は子供から四十代の患者が多いというふうに指摘しているわけです。  毎年発表される農業白書も同じことを指摘といいますか問題にしておるわけです。農業白書の第二章第二節あたりを読んでみると、生活習慣病の原因というもの、主食である米を中心とした日本型食生活を捨てた因果関係、あるいは日本人の健康に米を中心とした日本型食生活の大切さというものが克明に書かれておるわけです。  国は、飽食、美食、加えて朝食抜きの青少年がふえた食生活の乱れというものを正す責任があると思うわけです。農業白書小学校中学校教科書に採用して正しい日本人の食生活あり方というものを教育するべきではないか。農業白書のあの部分というものは私は大変立派な当を得たことであると思います。  御飯というのは日本人にとって最もすぐれた健康食であるということを本当に理解されるそういう国民教育をやったならば、日本の米は足りなくなって、減反が不要になって、国民医療費も大幅に減る、日本全体が複合的に元気がよみがえるというふうに思うわけです。  これはお茶の問題になるわけですけれども日本人は古来健康飲料としてお茶を飲んできた。ところが、コカ・コーラとか缶ジュースが出るようになってから、特に若い人たちがお茶離れして、お茶の消費というのは平成四年から五年ごろにピークのときよりも半分ぐらいまで落ち込んでしまうわけです。売れ行きが不振になって毎年一千ヘクタールの茶畑が荒廃したというふうに言われておるわけです。  あれから六、七年たった今お茶を飲む人口が多くなって、七年前、私どもが心配したときの飲料茶生産量というのは五十五万キロリットルというふうな数字になっておりましたが、今はちょうどこの倍の量が消費されるようになったというふうに言われておるわけです。日本緑茶を飲む人が短い期間にこんなにぐんぐん追い上げてきたのは、それは一体何だったのか。  それは、緑茶というものは健康によいと研究機関やマスコミが大騒ぎで報道したから、そういう影響によって消費というものが伸びたんだと。つまり、緑茶には健康によく効く有効な成分が豊富に含まれていることや、お茶の産地静岡県は胃がんの死亡率が全国平均よりずっと低い、あるいは濃い茶を飲んでいる中川根町はがん死亡率が全国平均の五分の一だ、こういう実証例を公の研究機関や新聞が大きく紹介して報道する、それですぐ国民は、よしじゃお茶を飲もうということで伸びてきたものだと思うわけです。  ですから、農業白書の一章か、学校教育国民教育において、御飯中心とした日本型食生活のよさというものを正しく知らせてほしいと私は思っております。  私は、酪農家ですから、えさ米を自給するために昭和五十四年からずっとやってきました。登熟稲サイレージをつくったり、玄米を粉末にして配合するようにしたり、玄米をこうじにして牛に与えたりして、その実験の結果非常にいいものだということがはっきりわかっておるわけです。  同時に、秋田県の畜産試験場でも登熟稲のサイレージによって肉牛の比較実験をやった結果、家畜の生理、生態にかなうもので、増体率も肉質も断然よいデータが出ておるわけです。国も、食用米より二割、三割増収できる品種の開発はやる気になれば、簡単にというわけにはいかないでしょうが、これは十分可能なことだと思いますので、新しい農業基本法の中では転作としてのえさ米を認知されて、堂々と作付できるようにしてほしいということをお願いして、終わります。
  269. 野間赳

    ○団長(野間赳君) ありがとうございました。  次に、大松澤公述人、お願いいたします。
  270. 大松澤照子

    公述人(大松澤照子君) 大松澤でございます。私は、日ごろから申しておりますけれども、葉っぱ一枚でも買わなければ食べられない、そういう消費者でございます。  まず、国の独立と食料自給は密接な関係があるというふうに日ごろ考えております。これが私の考えのベースでございます。消費者として、今回の食料農業農村基本法案に望むことを述べたいと思います。  四つほど柱を挙げてありますけれども、一番目の柱にほぼ私の消費者としての思いが込められておりまして、その一番目の柱が実現するという状況生まれてまいりますれば、二番目も三番目も四番目も、それはほぼ見通しがついてくるというふうに考えております。私は、その一番目に自給率向上ということをとにかく申し述べたいのです。  当面五〇%、先ほどから生産者の方々もおっしゃっていますけれども、私も当面五〇%という数値を明記していただきたい、そしてその具体策を記してほしいということが私のまずお願い、要望を最初に申し上げます。  現在、御存じのようにカロリーベースで四一%、そして穀物自給率は二八%という数字になっております。人口二千万人以上の国で自給率が五〇%を割っているのは日本だけです。政府が、昨年六月、食料農業農村基本問題調査会に食料輸入がストップした場合の食料危機シミュレーションを出しました。これは耕地面積が三百九十万ヘクタールの場合としています。日本国民の摂取可能なカロリーは一日千四百四十カロリーということで、生存に最低必要な千六百カロリーよりも低いという結果が出ております。現在は二千六百五十一カロリーになっております。  私ども消費者は忘れもしません、一九八四年五月、韓国米十五万トンを緊急輸入いたしました。さらに九三年、作況指数七二という大冷害に見舞われました。私の周りでお米がない日が数日続いた人たちがたくさんおりました。そして、この年の十二月、米の部分輸入に踏み切ったという経過があります。現在、世界では八億四千万人が飢餓、栄養失調にあえいでおります。これはもう周知の事実でございます。一九九六年、世界食料サミットではこの解決を国際的にやろうという宣言が出されております。  総理府の世論調査によりますと、高くても、少々高くてもと少々をつけましょう、そうでないと幾ら高くてもいいのかというような反論がうっかり返ってまいりますから、国産農産物を食べたいのだというその消費者の希望、一九八七年には七〇・二%でした。一九九六年には八三・四%になっています。つい最近、九九年、ことしの二月ですけれども、岐阜県の農業会議の調査によりますと、この国産農産物をという希望は九一・五%という数字が出ております。  私は、ここに自給率の推移を並べてみました。そこに一九六〇年以来の自給率低下の推移の数字を挙げておきました。国会で米は自給しようという決議を三回上げております。そしてまた、地方自治体の七〇%以上が輸入自由化は反対という決議を上げているということを御再考願いたいと思います。  この一番目の、もう一つ私は②としておきましたけれども、本法案の提案理由説明に対して少し私は物を申したいのです。食料自給率低下、米の消費減退、畜産物、油脂の消費の増加という国民食生活変化というふうにあります。  ここでまた私は振り返ってみたいのですが、一九五四年三月、アメリカとの間にMSA協定が結ばれました。付随して、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定が結ばれました。この年の五月、日本では学校給食法が成立しました。そして、七月にはさらにアメリカ公法四百八十号、農業貿易促進援助法というのが制定されまして、通称余剰農産物処理法というふうに申してまいりました。  このころ、米を食べれば頭が悪くなるという論が宣伝されました。日本の米は高い、過保護だ、貿易の障害だという生産者いじめのこんな宣伝も横行いたしました。そして、一九五六年にはキッチンカーなるものが日本全国を走りました。栄養指導車というふうに呼んでおります。いかにして小麦粉を消費するかというものでした。これは六〇年代の初めまでキッチンカーが走ったわけですけれども、これが走った後は団地の中でほぼ同じメニューの食卓が用意されたというような記録もございます。最初に走り回った十二台はアメリカが日本に貸与したものでした。  学校給食法は日本で五四年に成立したが、これに当たってその当時の国会に上程されたときの文部大臣の提案理由説明にこうあります。今後の国民食生活は粉食混合形態が必要だが、米食偏重是正はなかなか困難なため、学校給食により幼少時代教育的に配慮された合理的な食事になれさせるということを文部大臣が強調されました。  さて、諸外国での学校給食を、これは農林中央金庫調査部が一九八〇年にまとめたものですけれども、アメリカ、イギリス、フランス、スウェーデンなどを見ますと、これらの国々の学校給食の特徴は、まずその国の民族の食習慣を学校給食に取り入れているということ、二つ目に、したがって国内農産物の消費を重視し、風土に合った食事を供給するということ、三つ目には家族の食事と学校給食とが連続性を持っているということ、四つ目に食堂が設置されているということです。日本学校給食は、パンと脱脂粉乳からスタートして、今もパン給食が多数派を占めております。  ここで、日本にしっかりと居住権を持ったというふうに私は思うんですけれども、ハンバーガー市場をちょっと考えてみたいと思います。  今、総売り上げが六千五十四億円だそうです。そのうち日本マクドナルド社が五九%の市場を占めていて、ここで昨年販売した各種ハンバーガーの個数は九億七千四百万個、国民一人当たり大体七・七個、私は一度も一個も食べたことがありませんから私以外のところでこのぐらい、そして他社が販売した残りの四〇%のハンバーガーを含めますと、赤ちゃんからお年寄りまで何と一人当たり十個ぐらい食べているということになるのだそうです。一九七一年に五店舗のハンバーガーショップが、二十八年後の今、日本全県で五千五百店舗あるという調査結果が出ております。  ハンバーガー大好き国家をつくり出した日本マクドナルドの社長はこう申しております。二十八年前は、四、五歳の子供がマクドナルドに行きたいと言うと親は渋々連れていった、今は親もよっしゃてなもんで、三十年でワンサイクルした感があるというふうに言っております。  学校給食にパン食が提供されてから四十五年になります。ワンサイクルを過ぎました。  さて、今、日本型の食生活が特にアメリカで大変見直されているという状況があります。私は、今申し上げました一番目の柱、これに尽きるわけですけれども、そのことを実現するために輸入依存政策の転換をぜひ求めていきたいというふうに思います。  安全性が確かめられていない添加物、ポストハーベスト、ホルモン剤、抗生物質、最近は遺伝子組みかえ、そしてクローン肉、こういう安全性について全く未知のものが食卓に乗っているという恐ろしい事実を何とかしていかなきゃいけないというふうに思います。強調しておきたいのは、消費者は好むと好まざるとにかかわらず食べさせられる、そういう宿命を持っているということです。  そして、私が最初に申し上げました自給率をとにかくアップしてほしい、安全な食料安定供給、国産の農産物消費者にというその願いを実現していくために、農産物価格生産費補償をぜひこの法案に盛っていただきたいと思います。そして、国産の農産物安定供給を進めた場合には、当然のことながら国土の保全は満たされていくだろうというふうに思います。  私は、きょうここに二冊の写真集を持ってまいりました。棚田の写真です。ちょっと委員席が遠くてお見せできないのですけれども、これは十年ほど前に「水田稲作」、「心のふるさと稲作文化」というので写真集が出ているんですけれども、私はこれを買うときに、昔の夢だったというふうにならないことを願って、今日の私ども農村風景、私も米どころ宮城の出身ですが、中山間地のこの原風景だということをいつまでも私は願いたい、そういう思いでこれを購入しております。  もう一つ、私の地元に伊豆沼という大変きれいなラムサール条約に指定された沼がございます。今、グリーンツーリズムというのがさまざまな地域で計画されています。昨年の暮れ、ここに一泊二日で、この若柳町からグリーンツーリズムの御案内をいただきまして参加しました。昼間、あの沼に行ってハクチョウを見ても今まで余りおもしろくなかったんですけれども、夕方、日暮れどき、そして朝、日の出のとき、ハクチョウの専門家、渡り鳥の専門家の御案内もいただいて見せていただきました。実にすばらしい伊豆沼を発見してまいりました。  私は資料として、大変つたない作文ですけれども、多分委員の皆様に届いているかと思いますけれども、このグリーンツーリズムのときのお話日本農業新聞宮城版の「女の本音」というところに書かせてもらっております。  ここで、ガンが生活するためには二つのものが必要だというんです。一つは夜を安全に過ごすということ、もう一つは昼間食べ物を食べる田んぼ、その二つだということなんです。広い田んぼが必要です。ガンというのは大変用心深くて、そして百メートルの中でしか生活しない、食べ物をついばまないということもあります。  もう一つ、ガンは全員一致主義だそうです。満場一致だそうです。朝方、これから食べ物を食べに行こうかというふうになります。そのときに、家族の中で一羽が首を振りますと、家族がそれに呼応して首を振る。一羽でも首を振らなかったら飛び立たない。満場一致制だそうです。  私は、伊豆沼に行っても、棚田の写真を見ても、人間と動物と自然との共生、それを確立することが私ども消費者が願う国産の安全な食料安定供給につながると日ごろから一生懸命考えて、生産者の皆さんと御一緒に行動しております。  終わります。
  271. 野間赳

    ○団長(野間赳君) ありがとうございました。  以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  272. 国井正幸

    国井正幸君 自由民主党の国井正幸でございます。  本日は、公述人の皆さん、大変御苦労さまでございます。  実は、私ども質問をさせていただくんですが、持ち時間が十五分、こういうふうなことでやっていますので、その辺をお含みの上、簡潔にひとつ答えていただければと、こう思っています。  皆さんのお話を聞いていまして、今度の新しい農業基本法に寄せていただく期待が非常に大きい、これを率直に私どもとしても受けとめさせていただいております。それから、共通しておっしゃられていることは、自給率目標を何らかの形できちっと明示して、そして具体的に政策展開をしたらいいのではないか、こういうふうに皆さんおっしゃっているように私は受けとめたわけでございます。  そういう中で、与党の私がこういう質問をするのもどうかなと思っておるんですが、実はこれまでの基本法に比べて今度の新しい基本法は、世間一般的にはどうも政策方向性が見えにくいのではないか。これまではいわゆる農業と他産業との所得格差を是正する、ですから収穫量と農産物価格、量と単価を掛けていけば総額が出るわけです。そういう形で価格支持政策をずっと基本にやってきた。その辺がこれまではそれなりにわかった。  しかし、今度の中でこの基本法ができた後の政策方向性がどうもなかなか見えにくい、こういう御批判があるんですが、皆さんから見て、一口でおっしゃっていただいて、今度の基本法でその辺はどうでしょうか、きちっとお感じいただけますでしょうか。土屋公述人から、一言で皆さん方の感想を聞きたいと思うんです。
  273. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) 私は、これまでのいろいろな法律はそれなりに苦労してつくったものだと思っておりますが、必ずしも現状に合わない点が相当あったのではないかというように思っております。ですから、そのときの言い回しでいかようにも内容が変えられてきた経過があるように思います。  今回のものについては、農業食料とか、そういうものだけでなくて、多面的な機能とかあるいは農村のありようとか、そういうものも含めて考えておられますから、私は従来よりは非常に理想に近い、国際的な感覚もある、こういうふうに評価をしているところであります。
  274. 佐藤隆幸

    公述人佐藤隆幸君) レジュメにも書いてございますけれども、私は前よりも踏み込んだよい方向性に行っていると思っております。  申し上げましたように、農地の取得だけはどうしても容認できないと思っています。なぜかといいますと、既に畜産の株式会社が近くにございます。養豚経営です。と同時に、私たちも養豚をやっておりました。追いつかずやめざるを得なかったのが事実でございますので、これだけを除けば満点に近い方向性だと私は思っております。
  275. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) 自給率を掲げたことは非常に評価されると思います。ただ、全体を通して見ると、さっきも言ったんですけれども、農民というところが非常に影が薄くなっていて、割かし総花的に書いてあるなというふうに思います。やっぱり生産を担っているのは農民ですから、そこのところをもっときっちり位置づけてもらいたいなと思います。  それから、さっき支持価格という話がありましたけれども、EUもアメリカもローンレートとか介入価格で支持価格をやっているわけです。そこのところはさっき時間がなくてはしょったんですけれども、直接所得補償だけでは間に合わないと思うので、市場原理万能だけではなくて、支持価格というものも織り込んでもらいたいなというふうに思います。  以上です。
  276. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) 文章を読んでみると大変立派な非の打ちどころのないような作文で、例えば直接所得補償の問題、条件不利地域の問題、しかし具体的な制度、政策の段階でどうなるのかということになりますと、現地で我々が期待しているよりも非常に期待外れする、そういう内容になって政策の中に出てくるのではないかということが非常に心配になってきています。
  277. 大松澤照子

    公述人(大松澤照子君) 法律の文章というのは大変わかりにくいというのがありますけれども、その中でも、先ほど私が申し上げましたように、どうも自給率が減った理由を消費者のせいにされているような面があったり、それから農業経営の法人化を推進するとか、それから効率的かつ安定的な農業経営を営むために農地の利用の集積とか、そういった面で、私は消費者として、これは生産者の皆さんにとってどうなのだろうかという疑問を抱いております。
  278. 国井正幸

    国井正幸君 坂本公述人あるいは高橋公述人の方からデカップリングの話が出ているわけでございまして、政府においても、今、条件不利地域に対する所得補償政策を検討中のようであります。  そこで、一つお聞きをしたいと思うんですが、国内の平場に比べて条件不利地域に対して、その不利の分を何かの形で埋めるようなことをしようということが今検討されているというふうに私は理解しているんです。しかし、平場の農業といえども、外国と比べていった場合、明らかに規模等で国内農業が不利な状況にあるのは御承知のとおりなんです。  そういう意味から見て、皆さん方もデカップリングという言葉を使っていらっしゃいますが、どの程度のいわゆる所得補償というものを期待しているのか、簡潔にお答えを、なかなか簡潔というわけにはいかぬのかもしれませんが、いかがでしょうか、坂本さん、高橋さんそれぞれ。
  279. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) そこの家族構成によっても恐らくいろいろ違うと思うんですけれども、せめて農業生産が可能なように、これは米価でやるのかちょっとわかりませんが、さっきも言ったように、昔は二万円米価で頑張ったのにいつの間にか消えてしまって、今はしゅんとして声なしですけれども、やっぱりもう一回元気を出して、二万円米価ということを言いたいと思います。
  280. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) 農業離れなどの耕作放棄、こういう問題がそういう条件不利地域に集中しているわけです。だから、まず急いでこれを受けとめるということ、そういう意味からも中山間地にまずやるべきだというふうに思います。  その金額といいますか、その差というものは一様ではないと思いますが、例えば私の町の人口減少の差からいえば、四〇%ぐらい違いのあるところもあるし、それから農地価格の上からいっても半分ぐらいのところもあるわけです。でも、平均して大体二〇%から三〇%山間部が農業のハンディを持っているということですから、二〇%ないし三〇%は試算の根拠にしてもらいたいというふうに思います。
  281. 国井正幸

    国井正幸君 次期WTO交渉に向けて私どもも与党として今検討中でございます。特に、余ったものでも買わなくちゃならぬという、こんなばかな話があるのか。さらには、いわゆる輸出国と輸入国との権利義務がアンバランスではないのか。こういう点を含めて、これは外交交渉で相手のあることですから、なかなか我が国一国でできるということにもなりませんが、多数派工作を含めてこれはきちっと次期にやりたい、このように考えております。  それから、先ほど坂本公述人の方から出た稲作経営安定対策、千百四十円分、計画流通助成金が六%部分で行っています。皆さん方が二%部分、恐らく三百八十円ぐらい積み立てていると思うんです。これらについては、基金ですからある一定の規模までは積み増さなくちゃならぬだろうというのが私どもの検討している部分でありまして、一定の規模ができた後は皆さん方のおっしゃるようなことを含めて今後検討していく、こういうことになるというふうに思うわけでございます。  何か短い時間なんで、もっともっと皆さん方からお話を聞きたかったんですが、私の与えられた時間ちょうどになったものですから、我々も頑張りますので、皆様方においてもそれぞれの現場でぜひ頑張っていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  282. 和田洋子

    和田洋子君 民主党の和田洋子です。  きょうは、五人の公述人の皆さんの貴重な御意見ありがとうございます。これからの審議に皆さんの御意見を反映していきたいというふうに思います。  まず最初に、土屋公述人佐藤隆幸公述人にお尋ねをいたします。  農協の理事をされておるということで、佐藤さんのレジュメにもありますが、食料安定供給確保とか農業持続的発展とか、農業農村多面的機能発揮というようなものは大変農政の指針に重要なことだというふうに私も思っています。でも、それは農家の方の所得が安定していて、農村がしっかりして豊かであるという、形成されていればこそこういうことは言えるんですけれども、現行基本法でも言っていますように、他産業との所得の格差を是正するという本来の目的が三十八年の間に実現しないで、それがだんだん格差が広がっていった現在、農家の皆さんが多面的機能とか、そんなことを所得確保もないままに言っていられるかどうか、皆さんの、農家の方たちの御意見はどうですか。お二人にお願いします。
  283. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) 所得の安定ということは生きていく上において極めて大事なものであると思います。しかし、所得の安定というのは法律や政策によってのみ可能であるとは私は思っておりません。したがって、農家の創意工夫、農業者の創意工夫を生かしながら、あるいはまた地域の農協の役割として、地域農業振興の上に、さらにこれまで農協が苦手としておった販売をする努力、特に消費者に向かっての販売の努力、これによって相当所得というものは確保される、こういうふうに私は思っております。ですから、神戸の生協とは二十年もの長いつき合いをして今日に至っておりますし、それこそ多方面にわたって私のところは販売に努力をしておりますから、所得という点では極めて恵まれておるのではないかというように思っています。  それからもう一点、米について申し上げますが、我々はこれまで県米を食べもしない、倉庫も持たない経済連に自動的に売っておりました。そういうのはこれからの時代にはふさわしくないのではないか。おいしい米、安全な米を消費者に直接売る努力も産地として払っていかねばならないのではないか。そういう意味で、精米プラントを設置いたしまして米なども全国に向けて販売をしている、こういう取り組みなどもしているところであります。  ですから、政策も極めて大事ではありますが、完璧なものではありませんので、一つ方向性というものを打ち出して肉づけをしていただきますが、肝心な生産者の努力、創意工夫、そういうものもあわせて生かされるような方向によってのみ所得確保できるのではないか、こういう考え方であります。今はサクランボで大変忙しくて、サクランボも相当な収入がありますから、政策や何かにだけ頼るという考えは我々は持っていないところであります。
  284. 佐藤隆幸

    公述人佐藤隆幸君) 和田先生の御指摘にもございましたように、農協の果たす役割は大変大切であると思っております。  ただいま土屋先生も話されましたように、大型合併しましてから、かつて栗駒農協の時代でございますが、しめ縄を販売しておりました。これが大変当たりまして、どうしても正月に必要なものですから、そのルートによりまして農協同士の米の販売を我がJAで行っています。大変リスクが少なく、また総代会の資料をお上げしましたけれども生産力は百万俵あるんですが、実際転作等の状況によりまして六十万俵前後になっています。その中で、二十三万俵独自に販売するルートを模索し、昨年オーダーが参りました。そのうち十八万俵販売する努力をしておりました。さらにまた、今いろんな意味でリーダーという立場でございますので、何とか他産業並みとはいかないまでも、そこの場で生活していますので、自活できるよう鋭意努力中でございます。  蛇足ではございますが、今までの所得補償方式によって私たち農家は初めて人間らしい生活ができたと思っております。ですから、価格制度をある程度ここまで押し上げてくれた今までの先生方に感謝すると同時に、それがあってこそ初めて二種、三種兼業の方があり、私たちのような専業農家があり、それをミックスしたところに私たちJAの立場がございますし、最後に申し上げましたように、金にならない福祉活動も私たちはこれからやる、そういうことに観点を置いております。  以上です。
  285. 和田洋子

    和田洋子君 ありがとうございます。  次に、坂本公述人にお尋ねをいたします。  坂本先生がいろいろ本を書かれた中で、家族農業こそ大切だというふうな言葉がいっぱい出てきますが、家族農業についてどういうふうに思っておられるか、お尋ねをいたします。
  286. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) 家族農業というのは経営と労働力が一緒になっているというのがまず特徴だと思います。それで、最近は企業農業が入ってきましたけれども、企業の場合は経営だけあって労働力というのは余り関係ない。  実はアメリカの農業を見てきましたけれども、あそこも家族農業なんです、二千町歩やっても三千町歩やっても。でも、オハイオ州を見ましたけれども、木が一本もないと言うと大げさだけれども、大体木がありません。なぜかと聞いたら、トラクターもコンバインも木があると邪魔だと。それでも家族農業なんですけれども、企業農業に近い。そうすると、それは土地を結局工場と同じように転がしていくというか、それなりにローテーションを組んで大豆をやったりして土地の保全には気をつけているようですけれども、でも土地が物すごくかたくなってだんだん生産性が恐らく落ちていくはずです。  それに比べて我々のやっている家族農業というのは、要するに土をなめるように、自分の労働と経営とが一緒なものだから、それからおてんとうさんと相談しながらということで、だからこれは未来永劫に続けられる、そういう要素を持っているんじゃないかと思います。  例えば、ちょっと古い文献なんかを調べると、ローマのラティフンディウムなんという奴隷農場、あれも一種の企業農業です。それから、ソ連のソホーズ、これも企業農業、これはつぶれました。結局、土をなめるようにしない、そういうところはもうつぶれていく。中国なんかも請負制にしてちょっと収奪農業のようなところもあるけれども、やっぱり家族農業というものが今までずっと続いてきたし、これからも環境問題とかいろいろ考えたら、その方が人類にとって幸せじゃないかというふうに思います。
  287. 和田洋子

    和田洋子君 きょうは民主党から二人来ていますので、郡司さんに。
  288. 郡司彰

    郡司彰君 時間がございませんので、簡潔に質問させていただきます。  一つ、坂本さんの方にお聞きをしたいと思いますが、以前同じ集落といいますか大潟のところで生産調整にかかわって意見が二分されたというような本を出されましたけれども、今現在、お互いどういうような形になっていて、それぞれのところでそれぞれ意見といいますか思いもその当時と変わってきたと思うんです。日本の米作の中で生産調整というものと集落の中のそういう葛藤といいますか、ございましたけれども、思いをちょっとお話しいただきたいと思います。
  289. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) さっきも言ったように、これは基本的には政策が悪いと思っています。農民にそういうモラルを押しつけても、農民というのは資本家であり労働者であり、それから地主でありという三つの顔を持っていて、もう一つ生活者という顔もないとこのモラルというのは出てこないんだけれども、要するに規模が大きくなればなるほど資本家です。金をもうけたい。  だから、資本主義的農業になっていって、大潟村の場合は、谷本先生にもいろいろお世話になりましたけれども、結局やみ米の巣だということで、これをどうするか、このままいけば食管制度がつぶれるということで頑張って十五町歩認知をしてもらって、それで食管制度を守れると思ったら、昔と全然変わっていません。  最後に、青刈り騒動で結局今二人は農地明け渡し、言葉はきれいなんだけれども、実際は没収です、我々から見ると。私は遵守派として、一人はもう支援は要らないと言っているからどうにもならないんだけれども、もう一人の人に対して救援運動をある県議と組んでやっているんですが、その両派に顔を出してみると、何か二つの民族があるみたいで、もうこれは融和しないな、この村は発展性がないなということをつくづく感じました。  農水省にけちをつけて悪いんだけれども、要するに農水省の手のひらの上で二つが争って今日に来て、人間関係までだめになって、だから十五町歩になったらよくなるかなと思ったら、全然変わっていません。  つくる自由、売る自由なんと言ったものだから、向こうの人はみんな手を挙げて、手をたたいて、おれらの言ったことがいいと。しかし、つくる自由、売る自由というのは、売る自由があれば農民はどんどんつくります。売る自由というのはだれのためかというと、大手流通業者、ダイエーとか丸紅とか、そういう人のためであって、我々のためではないんです。逆に、つくる自由、売る自由と言った途端に減反がふえて、彼らはだから自由米だと言っていますけれども、ルールを守っていないわけです。とにかく半分がいるんだから、みんなで渡れば怖くないということで。だから、そういう意味では自由米という言葉は非常に問題の所在を悪くしているので、あえてやみ米と言った方がいいんじゃないか。でも、余り言うと村の中に住んでいられないので、一応今は言いませんけれども。  結局、三十年たって、一人の人には何とかもう一回やってもらいたいと働きかけているんだけれども、彼にとっては三十年間ずっとやってきて、収支決算すると、農地をとられて損害金が何千万も残って、さらにまた農地を取得しなきゃいけない。そういう結果なんかを見ていると、さっきの話に戻るんですけれども農政何たるものだろうなというのが私の感想です。
  290. 郡司彰

    郡司彰君 あと二分ほどしかございませんので、高橋さんの方に一言お聞きしたいと思います。  七人家族でということで、創意工夫がかなりなされている中でやってきているなと。そういう中で、いろんなところでお話しされていると思いますので、高橋さんと同じようなことで、ちょっと創意工夫しながら自分でいろんなものをつくってみたりとかということが地域の中で若干広がっているのかなということと、後継者の関係で、高橋さんのところでは後継者の方はどういうことになっておりますでしょうか。
  291. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) 私の長男は農業を継いでやっております。私のうちは嫁さんも私も内職も出稼ぎも日稼ぎもやっていないで、農業専従です。  それから、例えば牛舎とかサイロ、そういう施設費に金がかかって、それが借金になって悪循環して廃業するという例が多いわけですけれども、私の関係する、今十分の一残っている人たちの大半はそういうやり方で残っております。
  292. 郡司彰

    郡司彰君 終わります。
  293. 風間昶

    風間昶君 公明党の風間です。  きょうはどうもありがとうございます。  まず最初に、中山間地域の問題でありますけれども、いわゆる中山間地域というのは、山間地あるいは平場の中での位置づけがいろんな統計によっても違ってくるわけでありますけれども、いわゆる農林の関係で言うと、耕作地の部分で言うと傾斜地が多いところというふうになっています。この中山間地域等に対するいわゆるデカップリング、所得補償の問題でありますけれども、私は一つは、中山間地域の範囲をきちっとどこということに決めない限りはだめじゃないかと思っておるんです。これは新しい農業基本法では明確にはなっていないと僕は思っているんです。  それからもう一つは、つまり線引きをどうするかということと、何に対して所得補償をしたらいいのかというのがあるんじゃないかと思うんですが、ここはみんなそれぞれ生産者の方々、組合団体の方々あるいは一般国民がいろんな観点から取りざたしているわけであります。  そういう意味で、JAグループのお二人、それから農業者としてのお二人、それぞれ中山間地ということの線引きをどこにしたらいいと思っていらっしゃるのか、そして何に対して所得補償をしていけば、一〇〇%満足なものではないにしても、あるところで納得していただけるのかということを、大変難しいと思いますが、お考え方だけで結構ですからそれぞれ教えていただきたいと思います。
  294. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) 私のところは、中山間地というのはほとんどないと言ってもいいところであります。ですから、具体的に何と、こういうふうに言われましてもちょっと困っているんですが、中山間地は平場から見れば作業の面においても相当苦労が多い。こういう点から考えれば、ある程度の温かい思いやりのある政策というものは当然あった方がいいというように思っております。  ただ、一カ所だけ私の地域で若干あるんですが、そこに私はお願いしているのは、ネギを栽培してくれないか、こういうふうに言っております。ネギというのは大体一反歩百万から百五十万ぐらいになるんですが、ちょっと高いためにすばらしいネギができるんです、涼しいために。田んぼなんかやめて全部ネギをやってくれ、それでも足りないぐらいだからと、こういうふうに実はお願いをしているところであります。今、ネギも県内で一番の生産になっているところでありますが、そういうふうにお願いをしています。  だから、そういう特殊な作物といいますか、その地方その地方で振興しなきゃならないといって選定した品目等についてはそういう政治的な御配慮をいただければ大変ありがたいというように思っております。
  295. 佐藤隆幸

    公述人佐藤隆幸君) 中山間地の定義でございますが、私は地方議員はやっておりませんけれども、過疎法があるやに聞いております。過疎法によって、うちの方ですと栗駒山のふもと、栗駒地方はなっていないようでございますけれども、そのそばの花山村、その地域は逆にその恩恵によって活性化している部分があるやに聞いています。その一つ、栗駒高原では高原大根をつくり、そしてまたイチゴをつくり、ただいまの土屋先生のように、その特色を生かした農業をやって、冬場は下に下がってくる、夏場だけしか仕事ができないものですから、そういう二重の生活をしながらやっているところもございます。  今ここで問題になっているのは、先ほどもちょっと触れましたが、どうしても米価が高いものですから、耕作不適地の頂上付近まで田んぼをつくり、そのところが放棄地になっているわけです。もともと畑なり、そういったところは現在もつくっております。成功例として、ウド等の山菜をつくり、それを農産加工して販売している我がJAの役員もおります。ですから、特色あるやり方、そしてまた別な形のデカップリング等につきましてもあろうかと思いますが、これにも指摘されておるように、町村によって違うと思いますので、その辺のところはよく御検討いただきたいと思っております。
  296. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) 線引きですけれども、私も中山間地に住んでいるわけじゃないのでちょっとわかりませんが、ヨーロッパでは何か境界を基準にするというか、高いところとか、日本でも四割ぐらいが中山間地となっています。余りけちなことを言わないで、細かく言うと恐らくその集落内でもいろいろけんかになるし、町村でも中山間地を抱えているところもあるし、平野部もあるし、だから余りけちなことを言わないで、割かし大らかに考えてもらいたいなというふうに思っています。  それから、何に対してということは、さっき高橋さんも言いましたけれども、要するに平場に比べて不利な部分にあしだを履かせてやるというか、そういうことで再生産ができればいいと思います。
  297. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) 私の町の例からしますと、まず平たん部との単収の格差は、同じ技術、同じ努力、同じ農機具でやっても収量というものが二俵前後、所によっては三俵ぐらいの違いがあるんです。  それから、地理的な条件の問題もあるんです。人口が減っているというその減り方も、場所によって三〇%も減少しておるとか四〇%も減少していると。これは条件の不利という問題が背景になって人口の減少率みたいなものが出てきていると思うんですが、そういうことを総合的に勘案して三段階ぐらいに段階を設けて、余り五段階、七段階というたくさんの差というものはつけないような、せいぜい三段階ぐらいの差をつけた、そういう場所を設定してそれぞれ支給するべきではないだろうかというふうに思います。
  298. 風間昶

    風間昶君 住みよい農村をつくるのは、若者だけじゃなくて、女性、高齢者がどうそれぞれ自分の地域に定住していくかという問題になろうかと思います。  そういう意味では、今回の新法案で女性に対する参画のことが明文化されたということは画期的なことで評価できるんですが、しかしながら法律ができることと、実際に私が聞いている限りにおいて、農村部における男性優位社会、この現実はいかんともしがたい部分が今まだまだある。  真の男女共同参画社会をつくるために農水省としてもいろいろ手だてを尽くしていると思うんだけれども、そういう意味では家族協定による女性の年金加入という問題も大きな問題ですが、大松澤さんに、主婦であり、母であり、よき妻であり、そして生産者でありというこの四つのハードルを含めて、消費者として、女性の農村社会における参画についてお考えがあれば教えていただきたいと思います。
  299. 大松澤照子

    公述人(大松澤照子君) 町で暮らす私と生産者の女性とは大分生活の中身も違うんですけれども、今ふと思い出しておりますのは、昨年ギリシャに行きましたときにこういう話を私は聞きました。  女性はさまざま社会的活動はするけれども、ちょうど選挙の最中だったんですが、議員に選ばれる人は少ない。つまり、私が今思い出しましたのは、下働きですか、活発な人間関係も女性のところなんですけれども、社会的に評価される位置づけというのがなかなかないんだという意味で、私もそれを聞いてきました。  町の中で男女共同参画型社会というのを今一生懸命運動はされているんですけれども、法律に書かれたらどうにかなるかというふうにはなりにくくて、当面の敵は男性だなんて私は決して言いませんが、それぞれは大変すばらしい家庭をつくり、すばらしい社会活動をしておいでになりますけれども、それだけの問題ではない、法律が変わればいいんだという問題ではないといっても、やっぱり社会的にきちっとそういう位置づけが法律でもされていかないとなかなか共同参画というのはできないというふうに日ごろ私は考えております。
  300. 風間昶

    風間昶君 株式会社参入問題でそれぞれ受けとめられ方がちょっと違うという感じを、参入問題について公述人のそれぞれのお話があったのかなというふうに思っております。  要は、農業生産法人を株式会社に転換したり、あるいは第三セクター、農業に限らず今第三セクター方式は大変厳しい状況でありますが、第三セクターで農業公社を株式会社にするような場合は、私は弊害は少ないというよりむしろないのではないかというふうに思っております。  つまり、法人のメリットは結構あるわけです。機械や生産設備などの資金の手当てが要らないとか、働きながら農業の技術、ノウハウが獲得できるとか、あるいは何といったって若い人には労働時間の短縮とか休日を確保するということが大きなメリットじゃないかと私は思っているんです。あと社会保険ですね。これがもらえないでいるからこそ、今農業以外でも若い人たちがフリーターの形で、アルバイトで四苦八苦しているというような現実もあると思っているんです。  こういうメリットがある中でも、先ほどは佐藤さんも土屋さんも株式会社参入はノーというふうにおっしゃった。デメリットがあるにもかかわらずメリットが大きいとすれば、私は株式会社参入をしていくことの方がむしろ日本農業をきちっと守るということにもなるのじゃないかと思っておるわけであります。  そういう意味で、時間のない中でありますが、要はデメリットがあってもメリットを優先して株式会社参入をすべきだという私は意見なんですが、それに対してイエスかノーかで、大変恐縮でありますが、お考えを若干含めて、土屋さん、佐藤さん、坂本さん、高橋さんにお伺いしたいと思います。
  301. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) 企業の決算書を見ますと、そんなに大きくない会社でも二億、三億の利益を出している。その利益金を土地の買収に使うならば、農家の何十倍も土地を買うことが可能になってくると。  こういうふうになってまいりますと、農業というのは地域全体とうまく調和して成り立って、特に水田なんかは水の問題もありますから、それが株式会社参入によって阻害されるなどというようなことがあってはならないのではないかと私は思っているところであります。  それから、仮に参入しても、農業はそんなに利益の上がるものではないと。ですから、企業の利益をそっちの方に持ってきたってそんなにうまくいくものでは決してない、そういうふうに私は思っていますから、そんなに神経質にはなっていないわけですが、余り歓迎はしておらない、こういう立場であります。
  302. 佐藤隆幸

    公述人佐藤隆幸君) 風間先生とちょっと認識が違うところでございますが、農地を買う方は、公務員の退職金等により、それで自分の食料を自給したいということで買う方が大半でございます。なぜならば金があるからです。  その原理からしますと、専業的担い手に集めようとしてもどうしても資金がないから買えないわけです。だったらば株式会社に集めようじゃないか、これも大いに結構でございますが、先ほどから申し上げましたように、農村、農協の果たす役割、その集落をいかに維持するかという観点からしますと、株式会社が参りますと、土屋先生仰せのとおり、私がさっき言いましたように、そういう方が現実に入ってまいりますと、大変な欠陥だらけと見ております。  置いていったのは畜産公害だけ、持っていくのは利益だけ、こういう畜産会社が現実でございます。これが耕種農業に入ってきますと壊滅的打撃を受けますし、当然、農協の存在そのものがなくなってくると私は確信しております。  以上です。
  303. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) 先ほども言いましたように、企業的農業というのは余り長続きしないというか、今最後のところに来たと私は思っています。最後のところは何かというと、農民にいろいろあきらめさせて農地をとるという段階に来たと思っています。そのときに、何のためにとるかというのは、農業をやるのかそれとも産廃場にするのかはっきりわかりません。財界の提言を読みましたけれども、九七年でしたか、あれは三段ロケット方式になっていて、一段目は生産法人の株式会社化、二段目は借地を企業が経営する、三段目に条件が許せば企業が農地を取得すると。  もう一段目の風穴はあけられました。さっきも話がありましたけれども、登呂遺跡を見に行くとわかるんですが、農村社会というのは共同で水を引いてきて、共同でみんなで水田をやっています。そこら辺の背梁山脈を走ればすぐわかるんですけれども、集落のでき方というのはやっぱり水社会であって、その中に企業がぽこんと入ってきて、もうからなかったというので行ってしまうと、毛細血管のように水はずっと流れているわけですから、日本の文化そのものがだめになってしまう、そういうふうに思っています。  ついでに言いたいんですけれども、フランスではサーファーというのがあって、これが目を光らせていて、企業も入ってもいいと門戸をあけています。ただし、そこの企業の人がちゃんとやらない場合には没収すると。私も農業委員をやっているんですけれども農地法の二条に一応そういうことを書いておいて、ちょっと条項は忘れましたけれども、五十二条あたりにきちんとそれを書いて、企業も入ってもいい、そのかわり転売とかダミーとかを使ったら没収するぞと、日本でもそういうふうにしてもらいたいと思います。
  304. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) 私は、地主制度の中で育った経験のものですから、小作料を持って地主のうちに運んでいった、そういう思いを持っておるものですから、企業が農村に自由に参入できるというふうなことになれば、いろんな規制は最初のうちはあっても長い間にはやっぱりこの人たち農村を支配する、そういうふうに必ず変わるというふうに思うものですから、反対です。
  305. 風間昶

    風間昶君 ありがとうございました。長くなりましたけれども、済みません。
  306. 須藤美也子

    須藤美也子君 皆さん御苦労さまでございます。共産党の須藤美也子でございます。  東北は米を初め農産物供給地でありますから、その現場の皆さんが御苦労なさっている声を聞かせていただいて大変参考になりました。また、食料自給率の問題がこれまで出されましたけれども、今先進国の中では最悪の四二%、穀物では二八%と、こういう危機的な状況であります。日本民族の七千万人分は外国に胃袋をゆだねなければ生きていけない、こういう極めて危険な状況の中で、今度の食料農業農村基本法案現行農業基本法の三十八年ぶりの改正といいますか、新しい基本法案を制定する、こういうことで今、国会で審議されているわけです。  そういう中で、基本法という冠をつけるのであれば、まず何よりも農業を重要な生産として農政の中にきちんと位置づける、これが何よりも重要ではないか。さらに、消費者も含めて日本国民が願っている食料自給率向上、これも重要な中心課題である、こういうふうに考えております。公聴会でございますので公述人の皆さんは言いたい放題余り言えなくて、遠慮して半分ぐらいしか物を申していないのではないかと思うんですが、私は、今出されているこの新しい基本法案というのはかなり問題があるのではないか、率直に言ってそう感じます。  まず何よりも、この中でたった一人消費者の代表として参加しております大松澤公述人、先ほどいろいろマクドナルドと、私も初めてお聞きしましたが、私も余りハンバーガーというのは好んで食べていませんけれども、そのように日本国じゅうマクドナルド市場が蔓延しているというふうには考えてもみませんでした。  ところで、この間の国会で、食料自給率がこのように下がったのは、肉・油脂類がウエートを高く占め、国民食生活が変わったことが第一の原因だと、大臣がこう答弁されました。いかがでしょう、大松澤公述人、このように自給率をここまで下げるほど食生活変化してきたのでしょうか。
  307. 大松澤照子

    公述人(大松澤照子君) 先ほど公述の際に申し上げましたけれども、あの問題につきましては実に心外であり、もってのほかだというふうに私は考えております。  今度の提案理由の説明にありましたということで申し上げましたけれども生産者の方は大変少ないわけです、消費者との人口比較で言いますと。そうしますと、そういう中で私たち消費者というのは食べさせられる。  学校給食にも一緒にあの時期に出されたということで、学校給食で子ども食生活をとにかく米飯から粉を重点にした食生活に変えていくということをきちっと文部大臣は当時おっしゃったわけで、そういう形で今まで進められてきた。ですから、マクドナルドの社長がワンサイクル二十八年、およそ三十年だと。私は、給食が始まってから四十五年になりますから、その間に育った子供たちがもう大人になってマクドナルドに走っていくので、ごく普通に生活に入り込んでしまったというふうに考えております。全く胃袋が政治の場の道具にされている。  私は、今度の法案を実は腹立たしく思っております。皆さん静かにおっしゃるので、私も日ごろのようにすぐかっかするのはちょっと控えないといけないかしらとも思っておるんですけれども、外敵に対して、これはちょっときつい表現ですが、輸出国に対して日本国民をどう守るか、日本国民の胃袋をどう守るかというその手だてが何もなくて、輸出国と相提携してやっていくということが全体としてはうかがわれるわけです。  ちょっと飛んで申しわけないんですが、先ほど中山間地の価格の問題が質問として生産者の皆さんに出されていましたけれども、それでは国土を保全する保全料というのはどうするんでしょうか。やっぱりそれは国会できちっと考えて、つくることによって保全されるのだと、それを消費者としては申し上げたい。  とにかく日本民族のプライドの問題。一番最初に申し上げました。そういう立場で、胃袋を外国にゆだねるわけにはいきません。私はよく、外車に乗って米びつ空っぽねと、そういう表現を日ごろしております。何でもいい、外車に乗ります、グッチがある、何やらかんやらデパートに行きますといっぱい輸入品があります。でも、米びつが空っぽという状況が来て、政府のシミュレーションのような形がやがて来る。これは政府もおどしでおっしゃったのではないんだろうと思うんですけれども、そういうことが目前に迫っているということ。そのことに対して私は、国会は責任を持っていただきたいというふうに考えております。
  308. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は、山形出身なので天童農協の組合長さんに聞かないと悪いと思いまして、一言お尋ねします。いつもいろいろお世話になります。  この農業基本法は言うところなしと大変べた褒めのようでございますが、二十一条に「農業の持続的な発展に関する施策」というのがあります。その中で、「農業経営の規模の拡大その他農業経営基盤の強化の促進」というのがあります。  そこで、ちょっとお尋ねしたいんです。  一九九二年に新農政ができて、それに基づいて山形県は平成六年、つまり一九九四年に農業経営基盤の強化の促進に関する基本方針を県内の全市町村に発出いたしました。  この内容は、効率的な経営育成するために他産業並みの労働時間、他産業と同じ農業所得、こういうことで、山形県は一人当たり二千時間、そして一人の農業所得は五百万、二人の従事者で一千万、こういう計画を持って認定農家育成を続けました。しかし、その当時の基本となる米価は一九九二年の二万九百幾らでした。これは今その当時と比べて米価が下がっておりますし、効率的な農業経営というのはもう既に新農政のこの基本計画から見て現状に合わなくなっているのではないか、それをまたこの基本法案中心に据えた農業経営でよろしいのかどうか、これで生産意欲を持って働けるのかどうか、この点を簡潔にお答え願いたいと思います。
  309. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) 農業時代とともにいろいろ変化のあるものだというように思っております。ですから、今農業に従事している方が十年後も十五年後も従事していなければならないということは私はないと思います。やっぱり公正な競争を通じて、あるいは農業に対する意欲、努力、そういうものを通じて優秀な者が残っていくというのが私は当たり前なのではないかと。つまり、ふまじめというか不満だらけで農業に魅力も感じないような人は、私は御遠慮願った方がいいのではないかと思っている一人なんです。  ですから、みんなを育てるということは現実の問題として可能ではないと私は思っているんです。意欲のある農業者、若い農業者を育てることこそが政治の大きな仕組みなのではないか、そういうふうに思っていますし、我々の農協の営農指導事業の中にもやっぱり一千万目標というものを掲げて指導をやっております。ですから、必ずしも前の、つまり農業者でないような方が書いた作文だけでは決してうまくいくものではない、特に農業の指導をする場合は口で指導してはだめだ、こういうふうにやればこうなるんだという見せる指導をしないとだめだということを私しょっちゅう言っている一人であります。  ですから、私もみずからそういうふうな立場で農業をやって、そしてこうすればこうなるんだという考え方の上に立ってやっているのであって、国がどうしたから、県がどうしたからということは二の次三の次ぐらいになるのではないか。しかし、全体的には農業の将来はこうあらねばならない、これは国できちっと示すべき必要があるのではないか、こういうふうに思っています。
  310. 須藤美也子

    須藤美也子君 机上のプランではもうだめだと、こういうことですね。
  311. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) 余り成功した人はいないんじゃないですか。
  312. 須藤美也子

    須藤美也子君 いないですね。  では、魅力ある農業とは、佐藤さんもやはり農協の方でありますから組合員との接触が多いと思いますが、魅力とは何ですか、農業の魅力とは。
  313. 佐藤隆幸

    公述人佐藤隆幸君) 今、土屋先生が申されましたように、確かにかすみを食って生きるわけじゃございませんので、金魚じゃございませんし、所得確保が最優先だと私は思っています。ですから、今までの現行の基本法はそれなりの成果があったと思っています。なぜかというと、小さい農家も大きい農家も一律に生産費を上回る価格で買っていただきましたから、それが大変ベターだと思っています。  しかし、これからどうするかという話になってきますと、うちの息子を初めとしまして、現実には、さっきも申し上げましたように二種、一種の方が大変多くなっています。ところが、この不況になりまして、仕事がなくて専業農家でない方が農業をやるようになりました。結局は、どうしてもこの地域に住んでいる人たちの吸収、私は自動車のショックアブソーバーだと思っておりますけれども、そういう形で景気の好不況によって農村社会は生きてまいりましたし、これからも生きざるを得ないと思っております。  農協人としましては、その活力ある方向性につきましては、現在、集落で菊で一千万円以上の方が出ました。さらにまた和牛、そういう方でも成功する方が出てきました。子牛だけで一千万円以上の方も出てきました。ですから、やる気さえあれば、その条件さえ、農水省、そしてまた先生方に筋道をつけてさえいただければ、先ほど土屋先生も申されましたように、全員とは申し上げません、三%になろうとしている専業農家も生きられる基本法だと私は確信しております。
  314. 須藤美也子

    須藤美也子君 率直な意見ありがとうございます。まず所得ですね。  最後になりました。坂本公述人最後にお尋ねいたします。  日本型デカップリングについてお聞きをしたい。先ほど来、ヨーロッパ、EUの問題をおっしゃいました。EUは今ほとんどが自給率一〇〇%以上です。それまで農業保護政策をとって価格政策をとってやってきた。その結果、自給率向上しております。しかし、EUは今度価格を引き下げた分直接補償でやる、その点は日本とは違うと思います。事情が違うと思います。そういう点で、坂本公述人日本型デカップリングをどのように具体的にお考えなのか、簡潔にお願いをいたします。
  315. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) デカップリングという言葉は、今おっしゃられたように過剰生産の中で、「デ」というのはノットだから、要するに所得と切り離すという意味で、日本でデカップリングという言葉を使うと正確でないと思います。だから、不足払いとかと言った方がむしろ正確だと思います。  ただ、生産刺激的なことをやるとWTOにひっかかっちゃう、でも国民の要望はずっと国内生産を欲しいと言っているわけですから、正確な意味では不足払い、さっきから言っているように、大体米価でいえば二万円とか、要するに家族農業が成り立つようなそういう仕掛けが必要だと思います。  そこは私にいろいろ専門的なことを聞かれても困るんですけれども、実はフランスでも一九七三年にDJAというか、新規就農助成制度とかいっぱいあって、それが最初は山間部にあったのがずっと平野部におりてくる、ミッテラン政権のときに。日本ではもう四分の一世紀もおくれているんですけれども、本当に家族農業を守るとするのであれば、そういう心の優しい政治というか、血の通った政治があれば何かいろいろ出てくるんじゃないかなと、ちょっと逃げる答えなんですけれども
  316. 須藤美也子

    須藤美也子君 ありがとうございました。  高橋公述人にもお聞きしたかったのですが、時間がなくて済みません。この次に回させてください。  どうもありがとうございました。
  317. 谷本巍

    谷本巍君 伺いたいことたくさんあるんですが、ひとつ簡潔にお答えいただければ幸いです。  初めに、佐藤さんとそれから高橋さんに伺いたいと存じます。  中山間地域の問題、随分議論がありました。今、政府が設けました検討委員会では、生産力格差ということを基本にしたデカップリングをお考えのようであります。  私ども社民党は十年ほど前からこの議論をやってまいりました。生産力格差で言いますと、当時で十アール二万円であります。これでは話にならぬと。それで、減農薬でやった場合に一万円積み上げるとしても三万円、中山間地域は五十アールあるかないかの人が多いですから、十五万やそこらでもって中山間地域地域社会の解体に歯どめをかけるなんてとてもできやしないと。  ですから、これはやっぱり発想を変えて、中山間地域の定住なかりせばということでの環境費、何かその種の問題をやらなきゃしようがないんじゃないのかというのが、私どもの党が今思い悩んでいる点の一つなんです。そうした点について、どうお考えか。  それからもう一つは、中山間地域に向けての多様な施策をやっていかなきゃならぬということが言われております。どんな施策を考えるべきか。先ほど土屋さんから、中山間ならではの作物をやってもらって奨励策というのを抱き合わせたらどうだという提案がありました。何かその種のアイデアがありましたら、ひとつ御提起いただきたい。
  318. 佐藤隆幸

    公述人佐藤隆幸君) 先ほど申し上げましたように、うちのところは秋田県境そしてまた岩手県境のところがございます。その地域かと思います。  現実的には、そこに住んでいる方で、農業のみだけで生活は不可能だと私は思っています。なぜかというと、林業が大半です。花山村の村長さんも林業だけでは食っていけない、こう言っています。伐採、下刈り等もできないというようなことを御本人が言っています。では、農業だけで生きていかれないとするならば、何か生きる方法があるのですかと。そこに政治の力が必要だと思っています。  近くにハイルザームあるいはまたいこいの村栗駒、花山村営の旅館等ができました。どうしてもその場で雇用の場を確保していただかないと、そこから転居するわけにいきません。ぜひともそういう総合的な林業行政なり、また別な形でやっていかないと生きられないと思っております。  さらに、花山村では定住者を募集しました。大変、別荘地として最適なところでございますので、数多く来たようでございます。うちの近くにも二人参りました。先ほどから話されているように、金では買えない豊かさ、これを大都会の方は求めております。百五十坪の土地、ふろつき水道つき一切で八百万、そこで埼玉の方が現在週末に来て生活しています。それは私は一つのライフスタイルだと思っております。
  319. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  それでは高橋さん、何かございましたら。
  320. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) 私の町は、さっき申し上げましたように過疎、人口の減少率も二七%ということですけれども、山間部では地域によって四〇%を超えているところもあるということなので、そういう対策で、デカップリングの問題でどういうことが考えられるかということを議論する会議一つ持ってみたことがあるんです。そうしたら、町長初め、そんな幻想を持たせて結果的には国の政策なんてそういうことに役立つようなことは期待できないからということで、まじめな議論というか、そういう話ができなかったというふうな状態があるんです。知っておいていただきたいと思うんです。
  321. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  続きまして、自給率問題でありますけれども、五〇%という話がきょうも多かったのでありますが、ではどうやって自給率を引き上げるか、これは方法はいろいろあります。  今、政府自身が検討しているものは不足農産物とされる小麦、大豆プラス飼料作物、この辺の生産を伸ばしていこうということなんです。それで、施策もぼつぼつ出始めてきております。これをやっていく上で、地域ぐるみでそういうものに取り組んでもらうんだという構想が今出つつあるんですけれども、そういうものの生産を可能としていくのにはどういう条件整備が必要か。  坂本さん、大潟村の場合にはどういう施策だったらそれが可能ですか。  それからもう一つ、高橋さんに伺いたいのは、先ほどあなたのお話最後で、飼料稲の生産問題、これはちょっとお話があっただけでおしまいになってしまいました。飼料稲生産を可能とするのにはどういう条件整備、つまり施策が必要なのか、助成が必要なのか、そこをひとつ御提起ありましたらいただきたい。
  322. 坂本進一郎

    公述人(坂本進一郎君) 私も随分大豆で頑張りましたけれども、あそこはやっぱり重粘土でヘドロです。このごろの天気はばっと雨が降ったり、かと思うとさっぱり降らないというか、雨の降った年はものすごいです。通称ばたり病というのがあって、その菌が水を泳いで大豆畑が死んじゃうというか、雨が降るたびにくわを持っていくんだけれども、どうにもならない。  本当に大豆をやるとすれば暗渠をやらなきゃならないです。これはもう二年でだめになってしまうし、大体一枚やると百万ぐらいかかる。そうすると、この前の全中なんかの資料では大豆はもうかるというふうになっているけれども、そういうのをやって初めてもうかるのであって、だから少なくとも米並み所得が保障されていないと余りやる気が起こらない。  私も、さっきも言ったように随分やってきたんだけれども、くたびれ損で、それから計算が成り立たないんです。三俵とれてみたり、台風十六号では全滅してみたり、大雨でやっぱり三俵。五俵とるというのは非常に難しい。何とか米並みに、一番最初売ったとき一万円ぐらいだったんだけれども、どんどん下がっていってそれで意欲をなくしたというのもあります。
  323. 高橋良蔵

    公述人(高橋良蔵君) えさ米ですが、コストの問題がいろいろ言われるわけですけれども、確かにそれがあるわけです。このえさ米専用の品種の開発ができないのか。私どもはもう二十年も前からこの問題を言っているわけですけれども、一向にこの開発に取り組んでもらえない。ひとつこれに取り組んで、二割、三割増収の品種は必ず開発できるはずだと思うんです。  それから、栽培する場合の面積なわけですけれども、それぞれ転作の割り当てをされた農家が一反歩だ、二反歩だというふうな面積で栽培するようなことでなしに、一町歩、二町歩、十町歩というそういう集団の条件を持った栽培にしてもらうということ、これだけでもかなりのコストの問題が出てくる。  それから、畜産農家の場合、自分がつくったものを自分で利用するということは当然認めてもらうことが必要ですが、流通の問題で、地元で栽培したものは地元の畜産農家が利用できる、そういうシステムをつくってもらいたいということです。  それから、畜産農家といってもえさ米の利用の有利性というか、そういうことがまだ知らされていないわけです。私どもあるいは畜産試験場なんかが経験して、こうじにして、豚なり乳牛なり肥育和牛なりにいい面が、ビタミンがたくさん含まれているというそういうことがある。それから、えさ米を粉末にして濃厚飼料に配合する場合に、配合率をどれぐらいにするのか、そういう問題も私たちが自分で実験したその範囲ぐらいで、専門的な配合のそういうデータというものは全然出ていない。それから、登熟稲のサイレージというものは非常に肥育和牛や養豚の場合なんか、肉質の場合であっても増体率の場合でもいい結果が出ているわけです。ですから、えさ米の利用の姿にこんな利点があるということをやっぱり知らせる必要があると思うんです。そういうことをまずやる必要があるというふうに思います。
  324. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  土屋さんに伺います。  今度の基本法というのは、農業だけじゃなくて農村というものが入っているんです。私は、農村政策地域政策という意味では、天童というのは非常に、何というか一つの典型をなしているような気がいたします。といいますのは、天童はもともと将棋の町で有名で、温泉があってということでありましたけれども、戦後は工場が随分あそこへ来ておる。農業生産の方は、米にこだわらないで、そして果物なんかについても非常に多様な果物生産が行われてきた。しかも、一部は加工まで行われてきているというような状況等々があるわけです。  つまり、地域的に多様な産業構造づくりが進んでいたということが天童の特徴だろうと僕は思うんです。これが町の経済にとって、そして農業経済にとって、農業への投資を非常にやりやすくしてきたというような条件だろうと思うのです。  こうしたあり方というのは、目的意識的に追求されてきたものなのかどうなのか、これが一つ。  それからまた、これから先の展望といいましょうか、こうしたい、ああしたいといったような方策等がありましたら教えていただけませんか。
  325. 土屋完治

    公述人(土屋完治君) 専門家の谷本先生に教えるなどというものは何もないのでありますが、聞かれるままにお話を申し上げますと、天童の行政の立場に立った歴代の市長さんあるいは農業団体の長、こういうグループは物すごく仲がよくて昔から一生懸命協調して、行政と農業団体が常に一体となって将来の農業をどうするか、こういうことに常にまじめに議論をしてきた、そして取り組んできた成果が今日あらわれているのではないかと思います。  ですから、どの部落に行っても道路が整備をされていたり、あるいはどこに行っても公民館があったりということで、そういう意味では先輩の方々は先を見る目があったのではないか、こういうふうに思います。単に目的がどうじゃなくて、将来の町づくりはこうだ、天童の田園都市建設はこうだということを農業を通してきちっと位置づけておったのではないかというように思っています。  それから展望ですが、私も実は非常に悩んでおるのです。天童において何を振興していくかと考えたときに、畜産はなかなか難しい。年々一人二人と減っていく状況にある。それから野菜はどうか。野菜も非常に頑張っているんですが、何せその数が少ない、そのために頑張れ頑張れということをしょっちゅう言っているんですが、量的な力にはならない、こういう状況にあります。それでも三億三千万の売り上げはありますが、半分はネギで頑張っている、こういう状況でありますが、いまいち足らない。  それから米ですが、米についても、やっぱり減反の強化によって三分の一休むということは三年に一回休みだ、三年に一回休んで成り立つ企業なんというのは世の中にあるのか、こういう話をしょっちゅう私はやっているんですが、そのぐらい大変だ。でありますから、米については農協が責任を持って有利販売をするという新しい取り組みをしておりますが、さらに米をふやすということについてはいささか問題だ。なぜならば、山形県内の状況を見ましても、米にウエートを置いている地区ほど実は元気がなくて問題が多い、こういう状況であります。  ですから、そうしたら何で頑張るか、こういうふうになりますと、やっぱり果樹園芸に力を入れる以外にはないのではないか。おかげさまで去年はサクランボは日本一の取り扱いもしたし、私が最初、ラ・フランスということを言い始めたとき、十五トンから二十トンでした。今二千トンです。間もなく三千トンになります。そういうふうなことで、果樹園芸を振興する以外に農家の所得をふやす、あるいは希望を持って、自信を持って農業をやるということになれば、そちらの方に農協としても力を入れていくのがベターなのではないか、このように考えて、新しい品種の導入、あるいは選果場の増設等々、設備も含めて果樹園芸について力を入れていかざるを得ないといいますか、その方が賢明なのではないかということでただいま取り組みをしている最中であります。
  326. 谷本巍

    谷本巍君 ありがとうございました。  済みません、一言だけ。  大松澤さんにも伺いたかったのでありますが、時間がなくて伺うことができなかったことは残念であります。おわびいたします。
  327. 野間赳

    ○団長(野間赳君) 以上をもちまして、公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。  皆様方には、長時間にわたって有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は今後の本委員会審査に十分反映してまいりたいと存じます。派遣委員を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  これにて会議は滞りなく終了いたしました。  おかげをもちまして、我々が遺憾なく所期の目的を果たし得ましたことは、ひとえに本日御出席をいただきました公述人の方々の御協力のたまものと深く感謝申し上げる次第でございます。  また、本地方公聴会のために種々御高配、御尽力を賜りました関係者各位に厚く御礼を申し上げます。  また、傍聴の方々にも長時間にわたり御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。重ねて厚く御礼を申し上げます。  これにて参議院農林水産委員会仙台地方公聴会を閉会いたします。    〔午後三時三十八分閉会〕      ────・────    福岡地方公聴会速記録  期日 平成十一年六月十五日(火曜日)  場所 福岡市 シーホークホテルアンドリゾー         ト    派遣委員     団長 理 事      三浦 一水君        理 事      岩永 浩美君                 佐藤 昭郎君                 長峯  基君                 森下 博之君                 小川 敏夫君                 久保  亘君                 大沢 辰美君                 梶原 敬義君                 阿曽田 清君    公述人        宮崎県酪農業協        同組合連合会専        務理事      殿所 啓男君        福岡県食とみど        りの会副会長   林   宏君        九州大学農学部        教授       村田  武君        九州大学農学部        教授       横川  洋君     ─────────────    〔午後一時開会
  328. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) ただいまから参議院農林水産委員会福岡地方公聴会開会いたします。  私は、本日の会議を主宰いたします農林水産委員会理事の三浦一水でございます。よろしくお願いいたします。  まず、私ども派遣委員を御紹介いたします。  自由民主党所属の岩永浩美理事でございます。  同じく自由民主党所属の長峯基委員でございます。  同じく自由民主党所属の森下博之委員でございます。  同じく自由民主党所属の佐藤昭郎委員でございます。  民主党・新緑風会所属の久保委員でございます。  同じく民主党・新緑風会所属の小川敏夫委員でございます。  日本共産党所属の大沢辰美委員でございます。  社会民主党・護憲連合所属の梶原敬義委員でございます。  自由党所属の阿曽田委員でございます。  次に、公述人の方々を御紹介申し上げます。  宮崎酪農業協同組合連合会専務理事殿所啓男君でございます。  福岡県食とみどりの会副会長林宏君でございます。  九州大学農学部教授村田武君でございます。  九州大学農学部教授横川洋君でございます。  以上、四名の方々でございます。  参議院農林水産委員会におきましては、目下、食料農業農村基本法案について審査を行っておりますが、本委員会といたしましては、本法案の重要性にかんがみ、国民の皆様から忌憚のない御意見を賜るために、本日、当福岡市及び東北仙台市において同時に地方公聴会開会することにいたしました次第でございます。  農業基本法は、昭和三十六年に、我が国農業の向かうべき道筋を明らかにするとともに、農業従事者の生活水準の向上を図ることを目的として制定されました。その後、三十八年の歳月が流れる中で、農業及び農村を取り巻く環境は著しい変化を遂げてまいりました。  一方、国民の皆様からは、食料安定供給を初め、国土や環境の保全、文化の伝承など、農業農村に対する期待が高まっております。  食料農業農村基本法案につきましては、六月四日、参議院本会議において政府趣旨説明を聴取し、各党の質疑を行った上で本委員会に付託されており、本委員会は、六月八日に第一回目の質疑を行い、本日、皆様方の御意見を拝聴した後、さらに議論を深めてまいりたいと考えておりますので、何とぞ特段の御協力を賜りますようお願い申し上げます。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  殿所公述人、林公述人、村田公述人、横川公述人におかれましては、御多忙中のところ、貴重なお時間を賜りまして御出席いただきまして、まことにありがとうございました。派遣委員一同を代表いたしまして厚く御礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。  本日の会議の進め方について申し上げます。  まず、公述人の方々からお一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、委員の質問にお答えいただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、私どもに対しての質疑は御遠慮願うことになっておりますので、その旨、御承知願います。  また、傍聴人の方々にも、傍聴人心得をお守りいただきまして、会議の円滑な進行に御協力をお願い申し上げたいと思います。  それでは、これより公述人の方々から順次御意見をお述べいただきます。御発言は着席のままで結構でございます。  まず、宮崎酪農業協同組合連合会専務理事殿所啓男君、お願いいたします。
  329. 殿所啓男

    公述人(殿所啓男君) 参議院におかれましては、今回、食料農業農村基本法案を御審議されるに当たり、地方公聴会を開催され、お招きをいただいて意見を述べる機会を与えていただきましたことを大変ありがたく思っております。かねて考えておりますことを少しく述べさせていただきたいと存じます。  近年、我が国においては食料には困らない状態がずっと続いてまいっております。特に、飽食と言われるような時代すら経験をしてまいりました。そんな中で、現基本法が制定される以前から私ども農業者が使命と思い込んでおりました国民への安定的な食料供給ということについて、国民の皆さん方がどのように考えておられるのだろうかわからなくなってしまうような事態すらございました。  新基本法が、食料を筆頭に掲げられまして、国民の関心を促し、課題を提供し、農業生産現場の強化、さらには、将来への不安から農業を継ぐのをためらっております若い人たちの問題を含めて、都市と地方の関連の整備を行おうというところまで広げられましたものを今回志向されました。この点に思いをいたし、期待を持って賛成をするものでございます。  まず、基本計画でございますが、新基本法の第五条までに盛られました各条項にわたってこれから計画が立案されてまいるのでしょうが、そのうち、食料の自給や国内生産目標等につきましては、農業経営のベースになるものでもあり、長期的かつ具体性を持ったものであるべきだと考えます。  次に、基本施策についてでございますが、新基本法の目玉の一つ食料自給率目標というのがございます。我々農業関係者は大きな期待を持っておりまして、ぜひ明確にいたしていただきたい。また、不足する食料については輸入に頼らざるを得ない現実もあるわけでございまして、消費全体のあり方がこれを決めることになろうと存じます。  例えて申しますと、米でございますと、おかゆをすするというときもございます。あるいは、洋皿に白い御飯を乗せてナイフとフォークでいただく場合もございます。あるいは、お祝い、お祭りになりますと、これに酵母を加えてお酒にして楽しむといういろんな形がございます。  私は畜産業に関係をいたしておりますが、最近は輸入の肉、乳製品がだんだんと比率を高めてまいっております。これは、飼料を輸入に頼っているということもございますが、飼養地、生産地が集中化、偏在化してまいりまして、畜産排せつ物の後始末に困っている現実がございます。これ以上の多頭数経営を困難にしつつあることもあり、またこの一方では、輸入する肉の骨、皮、内臓などは輸出国の方の産業廃棄物処理に頼っているわけでございまして、安いからといって、このままでいいものかどうか考えてみる必要があろうと思います。  いずれにいたしましても、この狭い国土では、多量の食料、つまり有機物を輸入いたしまして、自然な形ではもう代謝、分解ができないところまで来ておると思います。したがいまして、自給率と申しましても、政府が決められるのは当然でありましょうが、まさに国民が決めなければならないところまで来ているのではないかというふうに感じております。法第十六条の二項あるいは第二十五条の二項などがこれから政策として大変重みを増してくるだろうというふうに感じます。  農業政策について申し上げます。  農業経営の継続と安定という点から申し上げますと、農産物価格の問題は最重要な課題でございます。新基本法にも、市場原理による価格決定の方式をより広範に導入するとされておりますが、ウルグアイ・ラウンドの決定を起点にいたしまして国際化、自由化が進展をしてまいりました。内では行政改革、規制緩和へと次々に従来の枠組みが外されていきまして、経済構造の変革が進んでまいっております。その中でございますからやむを得ない面もあろうと存じますが、農業農産物に限って言いますと、まさにその消長を決定しかねない仕組みになると考えます。したがって、価格が急落した場合の緊急措置について、セーフティーネットの設定を強く求めます。  例えば、生産者が補てん制度を構築しようとする際の資金運用に関する税制上の特例措置、あるいは価格帯の設定について公正取引法の一部適用除外などでございます。もちろん、資金面においても、国が出資、拠出、融資等を通じて十分の配慮をいただきますことを期待いたします。特に、為替の変動によって起こります場合は、とても生産者みずからでは対応いたしかねる場面がございますので、よろしくお願いをいたします。価格の安定なくしては、基本理念にうたわれました農業生産性の向上云々というくだりについては見通しが全く立ちません。  次に、中山間地域対策でございます。  総合的な地域農業対策として初めてのことでございますので、大変御期待をしておるところでございますが、助成の仕方あるいは基準の設定など難しい問題もございますので、慎重に検討されまして、原則としては地域機能集団対象にされるのが望ましいのではないかと感じております。  次に、災害対策でございます。  新基本法では、災害による損失補てんについて、共済方式などを取り入れられまして対象を広げる方向にございますが、さきに述べました対策とあわせて特段の強化充実をお願い申し上げたいわけであります。  特に九州は台風常襲地帯でございまして、従来から水路、道路などは行政で復旧されておりますが、農業生産施設、機械類、その他大型の生産資材の損失については、従来の自作農維持資金の融資の対応では救済されにくいものがございます。これは、連続いたしますと重ねて借り入れを続けていくという場面がございまして、大変返済しにくい状態があります。特に、個人の場合でございましても、地域的に集団で被災したときには補てんの対象にできないものでしょうか。収益が上がるまでの期間的損失がありまして資金返済が滞る場面がございますので、よろしくお願いをしたいと思います。  最後になりますが、農業者とJAの取り組みについて申し上げてみたいと思います。  九州は食料基地と言われてまいりました。しかし、耕作放棄地が出始めておりまして、これからもふえてくることが予想されております。私どもJAは、組織を挙げて、コントラクターの運用などで休閑地の管理、有効利用に万全を期してまいりたい。また、高齢者対策を含む福祉活動にも力を注ぎまして、市町村と協力して地域の民生の安定に寄与すべく精いっぱいの努力をいたしてまいります。  新基本法及び関連法の制定をできる限りお急ぎいただき、WTOに臨む基本的スタンスの強化、そして農業者が意欲を持って生産に励むことができますように、ひいては自給率向上によって消費者に安全で安定的な食品の供給体制を構築するための法律となりますことをお願い申し上げまして、終わります。  どうもありがとうございました。
  330. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) ありがとうございました。  次に、福岡県食とみどりの会副会長林宏君、お願いいたします。
  331. 林宏

    公述人(林宏君) 林宏です。  まず初めに、資料の方の説明をいたします。  一枚目がきょう申し上げます意見の柱でございます。二枚目以降は、私たちの会で「みのり」というのを出しているんですが、その中身でございます。その二枚目に、これは農業とみどりの会となっておりますが、後で説明いたしますけれども、その関係の重立った取り組みについてずっと抜き出しておるものです。あとは、最近出しました十三号、十四号、十五号というのをつけておりますので、後ほど見ていただいたらいいと思います。  貴重な時間でございますので、本来ならばごあいさつをしなければならないのですが、早速、公述をさせていただきたいと思います。  ところで、食とみどりの会というのは初めてお聞きになると思いますけれども、まず、これにつきまして若干説明をしたいと思います。  農業農政問題が政治的、社会的に大きく揺れてきたのは十年以上前だったと思うんです。当時、私は高等学校の組合の役員を退職したばかりで、それでも月に二、三回は福岡に顔を出していたのですが、農業農政の非常に荒れている状況を見まして、これは傍観できない状況だ、この局面に対応するために何とかせねばと思ったのがこの運動にかかわる初めになったわけです。  そこで私はまず、関係の労組や団体あるいは事業所、こういうところに話をしまして、農業とみどりの会を結成したいがというようなことで申し上げまして、さらには業者の関係、個人的にも学者の方や元農協の役員、関心のある方たちにも呼びかけまして、これが一年以上かかったんですけれども、一年余り準備をした上で、一九八九年、平成元年十一月に農業とみどりの会を結成いたしました。水産関係は専門外だったものですからすぐできなかったのですけれども、三年後になりましたけれども海と食の会を結成いたしました。  私はこの二つの組織を軸にいたしまして運動を進めたわけですが、具体的には、農林水産業や環境問題についての関係施設、団体、地域、こういうところへの視察・調査、それから研究会、講演会、時によってはシンポジウムや集会などの取り組みを進めてきたわけです。特に視察・調査については、農林水産業の実情を把握する上から非常に重要なことだということで、これに重点を置いて取り組みました。県内はもちろんですけれども、九州全域を広く視察してきましたし、時には、平成七年でありますけれども、タイへの農業調査にも行っています。  各位には既に御承知のことだと思いますが、現在、農林水産業は多くの問題を抱えていますけれども、その背景となる経済、社会、産業面での農林水産業とのかかわり方からいえば、基本的には同じものではないか、こういうこともありまして、運動的も一体化する必要があるということで、昨年四月、農業とみどりの会と、海と食の会の二つの組織を統合いたしまして、食とみどりの会としたわけでございます。  「食」というのは、単に食するということだけではなくて、農林水産業の生産、流通、消費段階までのすべてを含んでいます。「みどり」というのは、いわゆる緑のほかに水や環境問題すべてを含んでいます。  私どもは、この運動の中で多くのことを、現地に行って学ぶわけですから、学びましたけれども、これは後ほど公述の中で現地の実情と照らし合わせながら申し上げたいと思います。  そこで、意見の第一ですけれども食料自給率向上国内農業生産増大についてであります。  今回、六月三日に新農基法案が衆議院を通過したことはマスコミが報じて承知しましたけれども、この中で、食料自給率向上国内農業生産増大という明確な農政の方向を示したことには非常に大きな意味があると思っています。ですけれども、問題は、このことについて具体化への道が全く見えてこないのが大きな問題ではないかと思っています。これは三点修正されているようですが、普通、修正されて出された場合には、大体こういうことだなというのが見えるんですけれども、そのあたりが全く見えてこないというところが問題ではないかと思っているわけです。  食料自給率向上のためには、世界貿易機関、WTOの次期交渉での問題とのかかわり、麦、大豆、飼料作物などの生産振興対策の問題、関税引き下げの問題など多くの問題が大きく絡んでくることは言うまでもありませんが、これらの問題を乗り越えることが重要であることは言うまでもないと思います。少なくとも、国民食料国内生産することを基本にすべきであって、これは現状とは大きくかけ離れているわけですけれども、安全な食料安定供給体制を早急に確立することこそ国民の強く希求するところだと考えます。  また、年々増大する外食や中食に見られるような、企業にゆだねた形の食卓のあり方についても注視する必要があると思います。十六条や十七条とのかかわり合いがあるんですけれども、健全な食生活に関する指針の策定を初めとする、食料消費に関する施策の充実を図るべきだと考えます。  ともあれ、これら多くの問題を乗り越え、具体化への道を明確にできるよう、参議院での徹底した審議をお願いするものです。  次に、第二の意見です。第一の意見とも関連が深いのですが、国内生産増大を目指すためには、何といっても農業生産担い手確保育成するということとともに、農用地の確保、拡大が図られなければなりません。  まず、担い手について述べます。  私どもが、村おこし、農業振興構想のもとで取り組まれている地域や団体への視察・調査を行った際に感じたことですけれども、総体的に見まして、各地域、これは自治体をも含めてですけれども、団体とも意欲的、創意的に取り組まれているところが多く、これにかかわっている人たちが将来を展望しながら現状を正しく踏まえ事業を進めていることに非常に明るいものを感じました。さらに、事業にかかわっている人たちの中には、本来の農業者のみではなくて、元行政の職員や教員経験者の人たちがその役割の一翼を担っているところもありました。  これらのことを考えますと、担い手確保育成の問題は、認定農業者はもちろんですけれども、家族営農者や新規就農者など、幅広く多様な担い手施策を講ずべきだと思います。  また、女性の農産加工を初めとする農業経営などへの役割は非常に大きなものがあります。農業就業人口の六割を占めるとも言われる女性の活力を生かし、農業経営地域社会活性化への取り組みなどに積極的に参画できるように、環境といいますか、条件整備を図るべきではないかと思います。  次に、農用地の確保、拡大についてですが、資料によりますと、かつて我が国農地は六百万ヘクタールを確保されていますが、最近では既に五百万ヘクタールを割っています。非常に寂しく思いました。加えて、私、県内ですけれども、周辺地域を見て感じることは、宅地造成や大型小売店舗、そういうものがどんどん増設されています。農用地がそのたびに転用されています。このような事態を回避するためにも、厳しい農地転用の規制とともに、耕作放棄地の活用などを図り、少なくとも五百万ヘクタールの優良農地確保すべきではないかと思います。  関連して、農地問題では農業生産法人の問題があります。  農業生産法人は、地域農業の有力な担い手ですが、あくまで農業者の共同体であり、地域に根差したものでなければならないと思います。そして、株式会社農業参加が最近問題になっておりますけれども、この農業参加の問題は認めるべきではないと考えます。それは、企業は当然のことながら利潤追求を第一義としておりますし、農村社会、地域農業活性化や環境保全などの問題、これは第二次的に取り扱われるでしょうし、さらには企業の系列化などの問題も考えられますし、地域活性化などとは必ずしもなじまないものです。  したがって、農業生産法人の構成要件は、JA、それから森林組合、これは農山村に必要です、自治体、生協までとすべきではないでしょうか。ただし、事業要件としては、観光農園やグリーンツーリズム、農産物の直販所など農業生産法人の経営の多角化を図ることは、農業生産法人の経営の安定化を図る上で有効だと考えます。  次に、第三の意見です。これも第一の意見と深くかかわっていますけれども、備蓄問題があります。  九一年、平成三年の大凶作による米不足のときの怖さというのはいまだに忘れません。最近のような異常気象が続発する状況のもとでは、再びあの悪夢に見舞われないとも言えません。ましてや、極度に低い我が国自給率、これは極めて低いのは御承知のとおりですけれども、その現状を踏まえるとき、そのはかり知れない事態に対応するための備蓄の問題というのは非常に重要な課題と思います。自給率向上に向けての施策について、あわせて徹底した論議をお願いする次第です。  この際、米の備蓄制度については、百五十万トンを基本に、回転と棚上げ備蓄を併用することとし、総体としては第二条四項及び十九条などに基づいて行われるべきだと思います。  第四の意見は国際貢献でありますが、これにつきましては、時間の関係もあると思いますので、省略をいたします。  第五の意見ですが、魅力ある農村づくりといわゆるデカップリング導入についてであります。  私どもが視察・調査を行った地域、団体の中に、元農協幹部であった営農者が農地の荒廃化や転売から農地を守ろうと地域に呼びかけまして、集落営農方式を提起し、これが行政をも動かすような非常に大きな成功をおさめた地域がありました。土地利用型農法の場合に、この集落方式というのは、まず担い手が非常に減少しておる状況ですが、それを克服するという意味でも、また農地集約のあり方でもすぐれていると思われます。  また、地域によっては、行政主導のもとで活力ある農村づくりを目指し、都市との交流やレクリエーション施設の設立、さらには農村公園の整備など、生産基盤と生活基盤の一体的整備を図るとともに、農産物の直販などによって地域農業、農山村の振興を図っているところもありました。  以上より言えることは、地域振興を目的とする地域への直接支払い、いわゆるデカップリングと言われているようですけれども、この導入に当たっては、対象を中山間地に限定せずに、集落機能の維持、環境に優しい農業生産活動など、地域農業振興農村活性化を目的として導入すべきではないかと考えます。いわゆる日本型デカップリングとして導入し、中山間地並びに平地を含めた地域対象として農業農村振興計画に基づく一括交付金方式とすべきです。特に、補助金のばらまきにならないように施策を講ずべきではないかと思います。  第六は環境問題についてであります。  二十一世紀の地球的規模における最大の課題は食と環境だと言われており、これについてどう対処するか国際的にもいろいろ論議をされていますが、各位の御承知のとおりであります。  我が国におきましても、市場原理最重視の経済社会のあり方を問い直し、国民生活にゆとりと豊かさを取り戻すべきではないかという風潮が漸次広がってきています。二十世紀の大量生産・大量消費型の経済社会のあり方の中で環境破壊が大きく進み、今なおその傷跡が残っていることは否めない事実です。農業の面でも、かつて効率化、低コスト化の名のもとで、大型機械化、化学肥料・農薬漬け農法が進む中で大きな環境負荷を生み、環境・食物汚染を生み出してきたことは御承知のとおりであります。  環境問題は、以上のような過去から現在までを含めて、かつ地球規模のものから本当に身近な農業生産や食のサイドに至るまで広く存在しています。その意味では、農林業は本来的に環境保全型ないし共生型の産業であると同時に、農山漁村が単に食料生産の場だけではなくて、環境保全や保健休養など多様な役割を持つことが近年広く認識されつつあります。私どもは、これらについて視野を広げ、将来をも展望しながら環境保全のためにさらに努めねばと思っています。  そこで、当面、現在消費者あるいは消費者団体などが特に注視しております食品の安全検査を強化するとともに、生産から消費までの責任を持つ農水省の検査・表示体制を整備するよう要請するものです。また、遺伝子組みかえ食材については、学校給食に使用しないよう措置をとっていただくことを要請するものです。  第七は、次期WTOの農業交渉への対応についてであります。この点につきましては、結論から先に申し上げます。  二〇〇〇年からWTO農業協定の再交渉が始まると聞いていますが、この際には、食料農業、環境はまさに自由貿易になじまないものであるから、他の交渉と切り離して別交渉とすべきではないかということをぜひ主張し続け、やり抜いていただきたいと思います。
  332. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) 林公述人に申し上げます。  予定の時間が過ぎておりますので、そろそろまとめをお願い申し上げます。
  333. 林宏

    公述人(林宏君) はい、ここで終わらせていただきます。  少なくとも自国の食料は自国で生産することを基本とすべきことは、かつてILO農業部会でも決議されたことがあります、これは大分以前ですけれども。そういう意味から、新たな農産物貿易ルールの確立を図るために最大の努力を続けていただくよう重ねてお願いするものであります。  国際交渉の場ですから非常に難しい問題ではあるかとも思いますけれども、少なくとも、この面における貿易ルールのあり方は、輸出大国側のエゴがまかり通っていると言っても過言ではないと思います。加えて、地球環境や世界全体の食料の有限性を考えるならば、我々の主張は決して間違ってはいないということに自信を持っていただき、新たな農産物貿易ルールの確立に向けて最大の努力をお願いいたしまして、終わらせていただきます。  どうも失礼いたしました。
  334. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) ありがとうございました。  次に、九州大学農学部教授村田武君、お願いいたします。
  335. 村田武

    公述人(村田武君) 御紹介いただいた村田でございます。  農政学講座の教授として、主に欧州連合との比較を行いながら我が国農業政策について研究、教育に携わっております。本日は、この福岡での地方公聴会公述人として意見陳述できる機会を与えていただき、ありがとうございます。  さて、九三年末のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意でありますが、これは、アメリカなど農産物輸出国の主導で、農産物についても自由貿易体制を無理やり強要するというWTO体制に道を開くことになりました。世界の食料需給が不安定な要素を強めている中にあって、各国が食料自給を目指す政策展開する、採用するといったことを妨げる自由貿易体制は大変遺憾なことだと考えております。だからこそ、このような局面にあって、政策の再構築を行うという新基本法の担うべき役割は大変重大であると考えております。  本日は、以下の三点について私見を申し述べたいと思います。  まず第一点であります。  新基本法案は、食料農業及び農村に関する施策についての四つの基本理念を明らかにしております。その中で、農業生産活動による国土の保全を初めとする多面的機能発揮が第三条に明記されたことは、これは農業関係者のみならず、自治体の都市計画の関係者等にとっても希望を抱かせるものだろうと存じます。  この多面的機能発揮に関連して、第三十五条に中山間地域等振興を掲げて、その二項で中山間地域等農業生産条件の不利補正のための支援が盛り込まれたことは大変結構なことだと思います。願わくは、この中山間地域への支援が対象地域を狭く限定してしまって、しかも予算を既存の農水予算の枠内にとどめ、他の農水予算の振りかえで賄うといった情けないことにならないように期待をしておるわけであります。  しかし、問題は中山間地域にとどまりません。御承知のように、全国の耕地面積が五百万ヘクタールを切ったわけであります。国内農業生産増大を図るという第三条の趣旨からすれば、何としても耕地面積をこれ以上減らすわけにはいきません。  今、生産農家は、平たん地においても、とりわけ集落の水田の多くの管理を任されている担い手農家、さらに集落営農組織は、農地保全にとってぜひとも不可欠な土地改良事業を推進し、水管理、さらに畦畔の草管理に多大の時間をかけております。そのことが平たん地の乱開発を防ぎ、農地と景観の保全に大きな役割を果たしているわけであります。法案の第二条の精神からすれば、国土保全の役割の大きい土地基盤整備事業は公共事業とすべき時代が来ているのではないでしょうか。  これにかかわって、既に実施された基盤整備事業の地元の償還金負担、これが重うございます。この既に実施された基盤整備事業の地元償還金負担の大幅軽減もぜひとも望まれます。  さらに、公共財としての農地と景観の維持管理に対する直接補償、これがやはり平たん地にあってもしかるべきだと思います。これに関しては、つい先月末、五月末に成立したフランスの新しい農業法を見るべきではないでしょうか。このフランスの新しい農業法は、国土・環境保全の取り組みなどで政府と契約を結んだ農家に対して、経営に関する国土契約という助成制度を創設いたします。これはぜひとも参考にすべきではないかと考えます。  こういったわけで、法案第三条、多面的機能というこの位置づけをもう一歩進めて、政策具体化する関係法の整備を進めることが課題になっているというふうに期待するわけであります。  これが第一点であります。  次に、第二点に移ります。  私が新基本法案について最も危惧するところは、農産物価格の形成と経営の安定に関する第三十条であります。  現行農基法がその第十一条で価格政策農産物価格安定とともに農業所得確保という機能を期待したのとは明らかに異なって、法案第三十条は、農産物価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成される、言いかえれば、これは基本問題調査会の答申で言えば市場原理を活用するということでありますが、市場原理を活用するとされ、必然的に発生する価格の大変動による育成すべき農業経営への影響緩和のための施策を講ずるとされておるわけであります。なるほど、新基本法を、国内助成の削減、とりわけ価格支持など生産を刺激する黄色の政策の削減を求めるWTO農業協定に整合的なものにしたいということでありましょうが、ここにはやはり見過ごせない問題がございます。  ここで、お配りした資料をごらんいただきたいと存じます。  第一表は、九州北部の平たん地稲作地帯にあって、現在では自作地三ヘクタール、借地十二ヘクタール、合計十五ヘクタールという代表的な大型経営農家の米麦作の数字を教えていただきました。平成六年度から九年、十年、これを比較しますと、つまりこれは食管法から食糧法への移行に伴ってどうなったかということでございます。  九州を代表するヒノヒカリが六十キロ、真ん中から少しいったところに販売単価というのがございますね、これをごらんいただきたいんです。ヒノヒカリが一俵当たり二万円台から一万五千円台に、つまり四分の三の価格水準にまで下落し、これは政府価格と同じレベルになったということでございます。二枚目の第二表をごらんいただければよくおわかりいただけると思います。福岡県産ヒノヒカリ自主流通米価格の推移、政府米買い入れ価格、あえてグラフにまでいたしましたが、九州を代表するヒノヒカリが政府米買い入れ価格と同水準まで落ち込んできておるわけであります。  ついでながら、平成六年から九年、十年と、私は昭和十七年生まれでございまして、食管法と同じ年に生をうけて、五十数年で食管法がついに制度疲労ということで廃止のやむなきに至ったということで、何のことはない、私自身が制度疲労になったのかと言われているような気がしておったところでございますけれども、それは少し言い過ぎでございますが、こういう状況価格が下落してきておることの影響でございます。  これに第三表を見ていただきます。二枚目の下の段、糸島郡ということで、この農家が糸島郡の農家であることがわかってしまいましたが、糸島郡の生産調整配分であります。何と、生産調整が四〇%台に達しております。さらに、これに麦作の収量不安定がかかわるわけであります。  一枚目に戻っていただきますと、この農家は平成六年の経営面積をその後頑張って十五ヘクタールまで拡大しています。ところが、右端の粗収益を見ていただけば、平成六年の米麦販売額総計千八百六万円から九年に千九百四十四万円、規模拡大しましたのでここまでは行っていますが、しかし、価格の下落、麦の不作、これで十年には千六百九万円に二百万円も落ち込んでいます。  九州産の自主流通米価格が一万五千円台の水準に落ちていることの意味、これは何かというと、もう一つ、ミニマムアクセス米の直撃を受けるということであります。  御承知のように、ミニマムアクセス米のうちの主食用になっているSBS米が十二万トンに達しました。この十二万トン、しかも価格水準は一万四千円、一万五千円、一万六千円と、九州産米とまともにぶつかる価格水準であります。中国産米、中国東北米は一万四千円でSBSが入ってきています。  ところが、平成九年産の計画流通米出荷実績を見れば、九州の主産県で見てみますと、福岡県十二万八千トン、熊本県十万九千トン、佐賀県十万六千トンであります。このSBS十二万トンというのは、全国の主産県十四ないし十五県と同じ量のレベルに達しておるわけであります。しかも、九州産米と同じ価格水準ということでありますから、九州産米への価格押し下げ圧力は極めて厳しいものがあります。  こういう中で、生産農家にとってみますと、自主流通米価格のさらなる下落はあっても、回復は望めない、あきらめにも似た気持ちで見ております。したがって、担い手経営にとっての最大の不安は、最低価格保証がないことであります。  第五表をごらんください。三枚目の真ん中から下。第五表を見ていただきますと、これは、新たな米政策大綱による稲作経営安定対策平成十年度の補てん金単価、そして十一年度の補てん基準価格と拠出金単価を示しております。  A農家に引きつけて見てまいります。一番下の方にあります。A農家の平成十年度の補てん金と拠出金、交付金を比較しました。A農家は、十年度に基金造成のために、補てん基準価格の二%に相当する合計二十六万一千円の拠出を行いました。ところが、過去三年間の基準価格からの下落の八〇%の補てんにとどまる交付金、これは合計三十七万八千二百五十円であります。受け取った交付金と拠出金の差額は十一万七千二百五十円にすぎません。  第一表で見た米の粗収益の減少と比べてみればよくわかるわけでありますけれども、この制度は、米価下落による経営のショックを和らげているとは言えないわけであります。この稲作経営安定対策は市場価格の下落を抑えるものではありませんから、生産農家にとっては残念ながら将来展望につながらないということであります。  法案第三十条の二項に言うところの経営安定対策は、例えばこの稲作経営安定対策を抜本的に改善して生産費を補てんする所得政策を予定しているのかどうなのか、ここが問題になってまいります。特に、九州北部の水田麦作地帯にとっては新しい麦政策の帰趨が大変気になるところであります。麦作経営安定資金が、これもまた価格低落に対応するものではありませんし、農家にとってみますと、最後のとりでである政府買い入れがどうなるのか、これをかたずをのむ思いで見ておるわけであります。  減反率四〇%という大変な生産調整に協力しながら、生産費を補てんする最低価格保証がないことが担い手に展望を失わせておるわけであります。このことにかかわって、法案三十条をぜひとも私は修正願いたいと考えております。このままでありますと、生産費を補てんし農業所得確保する価格制度を維持ないし充実させることが新基本法に背馳することになりかねないわけであります。  時間がございませんので、第三点に移ります。農産物の輸出入に関する第十八条であります。  法案第十八条は、「緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるもの」としております。ところが、この趣旨は現行農基法の第十三条と変わるところがないではありませんか。  新法案の第十八条というのは、WTO農業協定の市場アクセスに関する約束とどのような関係があるのでしょうか。十八条で言う関税率の調整、輸入の制限というのは、WTO農業協定の第五条で言う特別セーフガードの発動に限定されるのではありませんか。しかも、御承知のようにWTOの新しい特別セーフガード条項というのは、ウルグアイ・ラウンド農業合意で新たに関税化した品目に限られております。牛肉はまた特別にとっておりますけれども。  それとも、この第十八条は、我が国が独自の判断で関税率の調整、輸入の制限ができるように、WTO次期農業交渉で市場アクセスの約束を抜本的に改定させるということを前提にしておるのでしょうか。ここが問題だろうと思います。なぜならば、現行農基法が第十三条を持ちながら、ガットのセーフガード条項さえ発動できなかったではありませんか。  資料の最後ページに、い草と畳表のグラフを掲げました。  畳表価格の一昨年来からの暴落、作付面積の減少、これは三浦団長と阿曽田先生におかれては熊本県選出でございますので重々御承知のことだろうと存じますが、私、昨年の十二月に筑後と八代に入って調査をいたしました。  熊本県のい業センターの関係者に言わせれば、八代のい業農家のうち、栽培技術、加工技術において高品質のものを生産できる農家は、三千戸まで減っている農家のうちの三分の一にすぎないのではないか。この二、三年の間にい草の栽培面積は八代でも二千ヘクタールに落ちざるを得ないだろうと見ております。この間、あれほど関係者の皆さん方が中国産い草・畳表の輸入に対してセーフガードの発動を求めて運動した。しかし、残念ながら結局は中国の輸出自主管理を求める以外にないという事態になっているではありませんか。  WTO農業協定によって現行農基法の改定が迫られたという側面は否定できません。それとの関係で、私は、現行農基法第十三条の関税率の調整と輸入の制限という文言を新基本法案は消さざるを得ないのだろうと見ていましたので、大変戸惑っておるわけであります。  あえて提案すれば、法案十八条には、農産物輸入国の立場からWTO農業協定の改定を求めるということが明記されてもよいのではないだろうかと考えております。  以上で私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。
  336. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) ありがとうございました。  次に、九州大学農学部教授横川洋君、お願いいたします。
  337. 横川洋

    公述人(横川洋君) 横川でございます。  お手元の資料に沿ってかいつまんでお話をさせていただきます。私見を陳述する機会をお与えくださり、ありがとうございました。お礼を申し上げます。  意見の範囲を絞りまして、衆議院での法案の修正を踏まえ、法案に基本的に賛成の立場から、従来論じられることが少なかったと思われる分野、つまり農業と環境問題の分野に限定し、以下の三点について意見を述べます。  一、第一章第三条「多面的機能発揮」。二、第一章第四条「農業の持続的な発展」及び第二章第三節第三十二条「自然循環機能の維持増進」。三、第一章第三条と第一章第四条とを合わせて。  この三つに共通する問題意識は、基本法農業の新しい使命を強く宣言し、農業協定における緑の政策を積極的に活用するということにあります。  それでは、第一点であります。  主張。第三条は、農業発揮する多面的機能、公益的機能として、「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物供給機能以外の多面にわたる機能」を列挙していますが、生物多様性という機能が欠如しています。  農業の新しい使命の宣言としての、一、農業発揮する生物多様性機能人類存続のために果たす重要性、二、国際的に通用するその説得力、三、OECDの一員としての我が国の国際的声明に対する配慮、及び四、緑の政策の積極的活用としての、直接支払いの根拠として生物多様性を活用する可能性を担保しておく配慮などの諸点にかんがみて、条文に生物多様性を書き加えるべきであろうと考えます。  その理由を申し上げます。  一、生物多様性は生態系の中心概念であり、生物多様性条約を初め、人類の存続基盤として国際的に承認されている価値観であります。自然生態系の保護・回復は、現在、世界的に認められた最も優先順位が高いテーマであります。つまり、生物多様性は、我が国農業の健全な発展あるいは存在理由を国際的に承認させる上で、人類の存続基盤という観点から重要で、説得力に富む根拠となり得ると期待されるわけであります。  二つ目の理由であります。  平成十年三月に合意されたOECD農業大臣会合コミュニケでも、生物多様性農業の環境便益として明記されています。つまり、「農業活動は、食料や繊維の供給という基本機能を超えて、景観を形成し、国土保全や再生できる自然資源の持続可能な管理、生物多様性の保全といった環境便益を提供し、そして、多くの農村地域における社会経済的存続に貢献することも出来る。」となります。ここには農業の環境便益が四つ挙げられていますが、生物多様性はその一つという重要な位置づけであります。我が国も加わった農業大臣会合コミュニケという国際的声明に配慮する必要はないのでありましょうか。  三つ目の理由であります。  現在OECDが策定を進めている農業環境指標というものがございますが、その第八番目に農業生物多様性が含まれています。  農業環境指標というものは、国民に現在の環境状態を適切に理解させ、政策立案者が農政改革に沿った適切な政策を立案するのに役立ち、かつ政策の有効性の評価に役立てるために策定するものでありまして、OECDでは十二の農業環境指標を策定することで合意しています。つまり、OECD各国は、環境と調和した農業政策、この政策農業環境政策という用語であらわしておりますが、これの推進に積極的に取り組んでおり、各国での一層の推進やあるいは国際的な相互監視などのために農業環境指標の作成が必要になっているわけであります。その一つの項目として生物多様性が含まれているわけであります。このことは、OECD各国で既に生物多様性を根拠にした農業環境政策が実施されていることを意味します。  四つ目の理由です。  我が国も参加した一九九六年のOECDのセミナーで、生物多様性農業の環境便益の一つとして明確に位置づけられ、直接支払いの根拠の一つとして承認されています。  九六年にフィンランドで開催されたOECDの農業の環境便益に関するセミナーでは次のような認識で一致しています。農業は、土壌、水、空気、生物の生息地、生物多様性、景観に対するプラスの効果、公益的機能を及ぼすことができるとあります。  ヘルシンキ・セミナーでは、EU諸国やアメリカで実施されている直接支払いという政策手法について根本的な検討が行われたわけでありますが、このセミナーの結果、生物多様性農業の環境便益の一つとして明確に位置づけられ、直接支払いの根拠の一つとして承認されているわけであります。  それゆえ、我が国も、農業協定で緑の政策として認められている、環境に係る施策による支払いとしての直接支払いの根拠の一つとして、生物多様性を活用する可能性を担保しておく配慮が必要ではないかと考えるわけであります。  もちろん、第三条で列挙されています「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等」の機能も直接支払いの根拠として活用できるのでありますから、活用に努めるべきでありますが、この機能の中には、いわゆるアメニティーととらえられるような、主観的で指標化や制度化になじみにくいものも含まれているわけでありまして、これに対して、生物多様性機能は、最初にも述べましたように、人類の存続基盤として説得力があり、より客観的な根拠になり得るとも考えられるわけであります。  五番目の理由を申し上げます。  生物多様性を含めて多面的機能は、食料その他の農産物供給に伴う副産物でありますから、多面的機能発揮させることは、国内農業生産増大を図ること、第二条と対立するものではありません。  一般に、第四条あるいは第三十二条で目指されていますように、持続的な農法への改善、転換が図られれば両者は対立しないわけであります。もう一点、生物多様性と同じく緑の政策に含まれている農業農村の基盤整備も、整備のあり方に工夫を凝らせば生物多様性と必ずしも対立しないわけであります。基盤整備の工夫にはさまざまあり得ましょうが、基盤整備の前提として、ドイツ系の景観生態学という学問領域がございますけれども、この学問領域で開拓された土地利用計画の手法、それは生物生態に配慮した土地利用計画という手法が開拓されておりますが、それを基盤整備の前提に置くということが大事なのではないか、一つの重要なアイデアではないかというふうに考えるわけであります。  以上、五つの理由をもって生物多様性というものを主張しているわけでありますが、三つの留保条件がございます。  一つは、生物多様性は、恐らく第三条の中で多面的機能として挙げられている「自然環境の保全」の中に含まれているものと推測されます。これは、農林水産省のホームページの中の一覧表と突き比べてみますとそのように推測されます。しかし、前述のような理由から、それでは不十分なのであって、条文の中に独立させた方がよいというふうに公述人は考えています。特に、我が国の水田農業生物多様性に富むという長所がありますから、アジア諸国の代表として国際的にも積極的に打って出るのがよいのではないでしょうか。  生物多様性農業の新しい使命の宣言を特に強く意味しますので、農林水産省の総力を挙げて取り組むべき課題であろうと考えます。農林水産省に期待したいことは、実態調査から始めて、現場の農家の力もかりながら、生物多様性の問題に総力を挙げて取り組んでいただきたいということであります。  二つ目でありますが、直接支払いの方法をずっと申し上げておりますが、直接支払い対象になる農業とそうでない農業とを区別する境界というものが必要であります。これを基準値というふうに呼んでいますが、この考え方が必要であります。生物多様性についての基準値を今後詰めていく必要があるわけであります。他の多面的機能を直接支払いの根拠にする場合も全く同じであります。  この基準値というものの御説明をいたしますと、直接支払いという財政支払いをやってもよいという水準はさまざまにあるわけでありまして、これが税金を使ってもよい水準であり、基準値というのは国民合意をあらわす水準でありますから、それを詰めていかざるを得ないということになるわけであります。それ以下の農業行為をしている、つまり環境に汚染を及ぼしているような農家は、原則的には自己負担で、つまりPPP、汚染者負担の原則でやるというのが農業環境政策基本原理であります。このことは国民的合意を得るために欠かせない作業であろうというのが二つ目の留保条件であります。  そして最後に、生物多様性評価基準、計量評価の手法の開発が我が国でも必要であろうと思います。  最後に、第一章第四条及び第二章第三十二条について主張を申し上げます。時間も迫ってまいりましたのでその点は飛ばしまして、第三の論点について申し上げます。この中にあわせて含まれておりますので申し上げます。  直接支払いについてさんざん申し上げたことは、手法としてはリカップリング。デカップリングではなくてリカップリング、あるいはデカップリングからリカップリングへという手法の転換を主張しているわけであります。つまり、価格政策所得政策を切り離すというところがデカップリングだと思いますが、それを環境要件と再び結びつけるという意味でリカップリングという手法について述べているわけであります。  それで、この第三条と第四条を合わせまして統一的に農業環境プログラムというものをぜひつくっていただいて、その中で第三条は、公益的機能多面的機能に対する積極的な社会的報酬、ボーナスとして支払う。それから、第四条の循環型農業への転換については、社会的に支援していく、財政的にも支援していく。そういう二つの側面をあわせ持った統一的な、農業環境プログラムという言葉を使っておりますが、そういうものを期待したいということであります。  そういう農業環境プログラムの適用というものは、決して中山間地域に限られる必要はありません。つまり、環境保全という社会的な貢献に対して、社会的貢献に社会が報いるという意味で、いわば環境原理というふうに言うことができると思うわけですが、それに沿って行うわけですから、地域的に限定する必要はありません。  こういう手法は、既にヨーロッパ、アメリカで実行されておりまして、私はドイツの研究の専門家でありますが、ドイツのように、ヨーロッパの中でも工業が盛んで農業としてはやや規模の小さい国においては、こういう手法による直接支払いが農家の所得の多元化に寄与しているという側面を持っていることを申し上げて、私の陳述を終わらせていただきます。  時間を少し延長しまして失礼しました。
  338. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) ありがとうございました。  以上で公述人の方々の御意見の陳述は終わりました。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  339. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) 速記を起こしてください。  それでは、これより公述人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  340. 岩永浩美

    岩永浩美君 ただいま御紹介いただきました自由民主党の岩永浩美です。  私は佐賀県選出の議員でありますが、四人の公述人の皆さん方は、大変お忙しい中にお時間の御割愛をいただき、貴重な御意見をありがとうございました。きょうここへ伺うまでに、皆さん方からお示しいただいているレジュメをいただき、いろいろ皆さん方のお考えを拝読させていただきました。きょうまた新たに、それぞれのお立場でいろいろな御意見を率直に申していただいたこと、今後の審議に供するのに大変参考になりました。  そこで、二、三御質問をさせていただきたいと存じます。  四人の公述人の皆さん方には、今回の新農業基本法における農業農村多面的機能発揮していくための文言が加えられたことに高い評価をいただいております。  ややもすると、今までは農業はほかの一つの経済と同じような形の中で論じられてきた嫌いが多分にありますが、それぞれの地域の持てる特性をこれほどまでに御理解いただいたこと、私どもにとってこんなにありがたいことはないという思いでございます。  特に、私自身、私事にわたって恐縮ですが、中山間地域に生をうけ、中山間地域農業を営んでいる皆さん方のことをよく熟知しているだけに、多面的機能発揮していく農業をいかに今後進展させていくべきか、そのことにいろいろな思いを抱いていただけに、きょう皆さん方からいただいた御意見というのは大変ありがたい思いで聞いておりました。  今回、基本法国民的な一つの視点に立って食料農村の分野にまで対象を広げていくということになったこと、食料の安定的な供給を続けていく上において、今後、農業農村に、皆さん方はただ単に多面的機能というその一つ言葉の中にもどういうものを特に期待されておられるのか、私は伺いたいと思います。  その中で、先ほど来お話があっているように、中山間地域における所得補償方式について率直な御意見をお聞きしたい。横川公述人は、ただその中における中山間地域所得補償だけではなく、環境に対してという一つの思いも言われましたが、具体的に一つ補償をしていくということになると、どういう形でそのことを示していけばいいのか、それをまず伺いたいと思います。  四人の方にそれぞれお聞きしたいと思います。
  341. 殿所啓男

    公述人(殿所啓男君) お答えいたします。  ただいまございました中身については、先ほどちょっと申し上げましたけれども、最近になりまして非常に我が国は開発が進みまして都市化、集中化が行われてまいりました。当然、人口もそういう移動をしておりますが、私どものおります九州、なかんずく南九州等については、人口がわずかですが最近ふえています。従来は、減少の一途をたどっている時代には、非常に都市化と地方化という現象で財政的にも苦しかったし、生活も苦しいという場面がありました。特に、私どもがそういった点で農業という立場から考えますと、消費地がだんだん遠くなっていく。したがいまして、農産物を搬送し、そこから得ます収入が比較的にだんだん落ちてくるというような現象がございます。  そういった意味で、環境という単純な問題を考えてみても、それが偏在化していく一因になっておりまして、それが、都市と地方の関連づけ、あるいは住環境の整備といったことで、いま少し地方への人口移住等がなされればもっと違う局面の展開があるだろうと思います。  それから、環境に負荷を与えるということになりますと、これは基準値等のとり方では非常に難しい問題になろうと思いますし、私も専門ではございませんので、それを一つの計数として評価する点については、ちょっと発言を差し控えたいと思います。  以上です。
  342. 林宏

    公述人(林宏君) 質問の意味が、私、勘違いしてとっている部分があったら後で御容赦願いたいと思いますが、多面的機能というような場合には、当然、農業生産だけではなくて環境問題とかいろいろなものがあります。  そこで、私の方では現地に行って調査をしたり視察したりというので主にとってきたものですから、その面からいきますと、全体的に言えるのは、先ほども意見で申し上げましたように、総体としてそれを整備していくという整備という意味は、これから先その地域農業振興するためにどうするかというのについて、単に農業生産だけではなくて、都市との交流だとかそういうものも考えた上での環境整備、こういうことにかなり重点を置いておるようです。これは調査に行きました地域、どこでもそうです。  それともう一つは、単にそれだけじゃ経営は成り立ちませんので、だから直販方式でやっておるとか、温泉ができたらその温泉をそれに生かしていくとかというふうな形でされているようですけれども、そういう意味での環境整備というように考えていただいたらいいと思いますが、そういう多様な形で進められている、これが一つであります。  そういう面で、単に何かのものに限定するのじゃなくて、先ほど言いましたように中山間地だけに限定するんじゃなくて、そういう条件からいきますと広い形になりますから、農業振興地域振興に当てられるような状況があれば、そこにも所得補償の方式も考えていいんじゃないかと、こういうようなことで申し上げたところでございます。
  343. 村田武

    公述人(村田武君) 二点申し上げたいんです。  一点は、これまでの中山間地域対策の議論の中で、これは少し誤解があるかもしれませんが、基本的に中山間地の棚田を初めとする水田の議論が中心になってきた嫌いがあるんではないか。これは重要だと思うんですけれども、とりわけ九州から問題にする場合には、畑作地、そして樹園地、それから草地、この問題をどう取り扱うかということをもう少し明確にする必要がある。積極的にそういった水田以外の農地も保全するという点がポイントだろうということ、これが一点。  二点目は、それを含めて既存の農地、水田から畑作地、樹園地、草地等については基本的にこれをほぼ全量、農地として保全することの方が経済的に見て最も効率的ではないか。これを原野に戻すなりなんなりをしていくときに起こるそれに対する災害対策、それから先ほどあった生物的多様性、いわゆる生態系にかかわる問題から、基本的には既存の中山間地農地を全面保全という方針を持つべきじゃないかと考えておるということ、この二点であります。
  344. 横川洋

    公述人(横川洋君) 少し迂遠かもしれません。村田先生がそこまでおっしゃいましたので、それに追加する形で申し上げます。  まずは前提として、生態的な土地利用計画といいますか、土地利用区分というのもやはり全農地についてやるべきではないかというふうに思います。中山間地についてもそのようにして、生産力面で残していく、農用地として積極的に残していくところについては基盤整備をやっていくし、そうでないところ、生態的にむしろ価値が高いというふうな判断がされるところについてはいろんな形があり得るだろうと思います。  だから、それを自然に戻すのがいいのか悪いのか、そのコストはコスト計算も少しやってみないとわからないと思いますが、少し迂遠ですが、そういうもう少し前提のところできちんとした土地利用区分をしていくということがないと、その線引きの仕方が現場でなかなか困るのではないかと思います。ちょっと時間はかかるかもしれませんが、そういう感じがいたします。  それから、転作田がその中にあれば、そこに水を張って、そしてそこが生物のすみかとして使えるというふうなことに、例えばそういうことについて積極的にプラス機能として補償していくというふうなこと、そういうふうに例えば転作についてもう少し柔軟性を持たせてもいいのかもしれません。  以上です。
  345. 岩永浩美

    岩永浩美君 この問題で深くまたというわけにいかないので、次のことでちょっと御質問させていただきたいと思います。  私は、株式法人の農地の購入には反対の立場をとっています。それは、株式会社がすべてだめということではなく、農業を営んでいる皆さん方が株式法人をつくって農業経営するということについて、構成要因を満たしておけばそのことは別に否定するものではありません。  異業種からの参入については、ある一定の地域社会を形成しているその一つのなりわいからすると、どうしても株式法人の農地の購入というものについては私自身、個人的には反対の立場でおりますが、皆さん方はどういう御意見なのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  346. 殿所啓男

    公述人(殿所啓男君) 私も同じ立場でございます。  特に現場では、例のバブルの時代を通じまして、ダミーを通じて取得をされましたものがそのまま放置をされる、あるいはそれが先ほどから問題になっております災害の原因にもなったりというような、特に中山間地でそういったものが見られまして大変迷惑をしている現実がありますので、この辺の運用については全くおっしゃるとおりだろうと思います。
  347. 林宏

    公述人(林宏君) これも現地に行っての調査ですが、実態としても株式会社化しておるところはまだ少ないんじゃないかと思います。実際になかなか探すのに苦労するぐらいですが、二、三のところには参りました。  この中で言えることは、今先生がおっしゃるように、やっぱり農業者だけのあれになっておるようです。ただ、率直に言いましてということで向こうから聞いたのでは、経営は決して楽じゃありません、こう言っておられました。  ですから、自分のところではこうしていますということで、直販方式をさらに非常に広げた形の方式で、結合した形でやられておるようですけれども、こういう点を含めて考えれば、まず農業者だけの経営でやるということが先行すべきではないかな、このように思っています。
  348. 村田武

    公述人(村田武君) これについては岩永先生の御意見に賛成でございます。  一点は、農地の囲い込みを農業関係法でやる時代がもう過ぎているんだろうと思うんです。都市計画の問題なんです。きょう、最初の陳述でフランスの新農業基本法の話をしましたが、やはり一番大事なのは、農地及び山林を含めて既存の現在の農家的所有、農家が所有しているものと集落、これが、山林を含めて一体的に農地の管理ができる体制をどうとるかがやはりこの株式会社問題を考える上でポイントになるんじゃないでしょうか。  その点で、私のきょうの陳述の多面的利用の観点で、集落や農家が農地農地として、また山林を山林として維持管理できる体制をぜひとも欲しいと申したわけであります。
  349. 横川洋

    公述人(横川洋君) 基本的に同意見であります。同意見というのは、岩永議員の御意見に賛成でありますし、村田先生意見とほとんど同じであります。  もうちょっと言い方を変えますと、土地利用の規制体系といいますか、それがきちんと国土全体にわたってできていないところで株式会社化をすれば、それは決して経営の優越論の議論には終わらないわけであります。つまり、それは資産としての土地、どのような形でそれが利用されてしまうかわからない、つまり農業経営としてのレベルの議論ではなくなるということ、それにはとどまらない、そのことを現場の方は大変恐れているというふうに私も理解します。
  350. 岩永浩美

    岩永浩美君 どうもありがとうございました。
  351. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。  村田公述人と横川公述人にお尋ねいたします。  これは私の個人的私見ということで聞いていただきたいんですが、中山間地の直接支払い、これは中山間地にとどまらず、すべての農地農業対象にすべきだというのが私の私見でございます。村田公述人も横川公述人もそのような御趣旨であるようにお伺いしたんです。  それで、それを前提にまず村田公述人の方にお伺いしますが、そうした直接支払いを行った上にさらに最低価格保証制度が必要であるというような御意見でございました。私は消費者の典型的な場所である東京の選出なんですが、どうも消費者の方から見ますと、最低価格保証制度のあり方によっては、これは消費者が高い農産品を買うようなシステムになってしまいはしないかというような不安もございます。直接支払いの制度を充実させれば、ある意味では最低価格保証制度は必要ではないんではないかと。そこら辺、細かいお話をお伺いしませんでしたので、ちょっとそういった疑問を感じたものですから、お尋ねしたいと思います。  まず村田さんから。
  352. 村田武

    公述人(村田武君) きょうは時間がございませんでしたので、私の専門のヨーロッパの関係お話しできなかったんですが、かいつまんでお答えをいたしますと、私は、すべての農地に直接支払い方式を展開していく時代が来ているんだろうというふうに思いつつ、同時に、最低価格保証制度をセーフティーネットとして下支えしなければ、直接支払い方式だけで今後の自給率の拡大を含む農政展開は不可能だろうと考えておるんです。  と申しますのは、ヨーロッパで言うデカップリングなり価格支持から直接支払いへという転換の前提基礎にこういう事情がございます。  日本と明らかに違うのは、日本は何だかんだと言っても、現在の四百九十万ヘクタールの耕地の管理をだれが行っているか、米の出荷者というのは、やはり結局は三ヘクタール以下の稲作農家が八割の生産出荷を担っておるという現実。これに対してヨーロッパの場合には、既に二割、三割の大規模農家が七割、八割の商品生産を担っているという現実でございまして、価格政策展開、維持すればするほど、価格支持財政が大規模の経営者のところに集中して所得の再配分の逆再配分、いわば豊かなところにまた所得が集中するという現実が起こっていることが国民的な意識と当然ずれてくる。社会的公正という点で、価格制度それ自体が問題を起こしていると思うんです。  その点で、ヨーロッパなりアメリカとやはり日本は異なっていると思いまして、私は、価格支持制度それ自体が、日本には日本農業構造から前提として必要だと。しかし、WTOとの関連からいけば価格支持財政を減らさざるを得ないということの中で、価格支持財政一本でいけませんので、直接支払いでバックアップをするということなんだろうと思うんです。  ただし、問題は、ヨーロッパもアメリカも価格支持を引き下げながらも、最後の一線は押さえていますよと。ヨーロッパの場合は、介入価格制度で国際価格水準、アメリカもローンレートですよね。これでこの下支えをしておかないと、これ以下に下がると、いわば中小兼業農家のみならず、かなり中から大規模経営もこれは赤字になってしまいますから、もうこれはがたがたになるという意味で、そういう意味最低価格保証制度というのはやっぱり放せないという現実があるんです。  そういった状況の中で、わかりにくい話をして申しわけありませんが、差し当たりの日本というのは、その最低価格保証制度というのはヨーロッパ並みのように国際価格水準でいかないことは明らかであります。ありていに申して、九州の米生産からいけば、何とか今の政府米水準、一万六千円台の水準を、これをどうあっても最低価格保証の水準にしてもらえないかという数字を含めて考えております。
  353. 小川敏夫

    小川敏夫君 わかりました。  横川公述人にお尋ねします。  デカップリングではなくて、環境政策とリカップリングという大変貴重な御意見を賜りました。ただ、環境という非常に抽象的な概念とリカップリングさせることが技術的に難しい面があるのじゃないかと私ちょっと考えたんですが、もし横川公述人の方で具体的に環境とのリカップリングで、もう少し時間をおとりいただいて結構でございますから、こういうふうにしたらいいという具体的なアイデアなり例を示していただければと思います。
  354. 横川洋

    公述人(横川洋君) 私も、まずはヨーロッパの話をさせていただきます。  先ほどから申し上げましたように、生物多様性、あるいは、きょうは強調はしておりませんでしたけれども、景観というものと直接所得補償というものを結びつけるのは決して難しくはない、ヨーロッパの経験からして。  そういうプログラムは、例えばドイツの南の方の州では、南の方にバーデン・ビュルテンベルクという州と、バイエルンという二つの州があります、これは北ドイツに比べても規模が小さいところでありますが。私は、そういう二つの州の様子を見ていますと、ほとんど同じような先ほど申しました農業環境プログラムというものを持っているわけであります。  それで、バーデン・ビュルテンベルク州の方を申し上げますと、原理はこういうことであります。  基本的には市場原理に沿っているわけですから、要は農家が強制ではなくて任意で、契約で一定の農法のあり方政府と契約する。その契約した具体的な手法、農法について例えば点数をつけておいて、そしてメニューを並べておくわけです。一覧表をつくっておきます。この中から農家に選ばせるわけです。  農家はどういうことを考えるかといいますと、農産物の販売額と、それから具体的に自分が選んだ政策についてくる直接支払いの合計額が最大になるように努力するわけであります。これも一種の経営努力なわけであります。そういう形の経営努力が行われるわけであります。  つまり、市場原理を前提に、任意の手挙げ方式で、そして自分で組み立てていく。その手法については、最大に所得を上げようとするならば、農家としては、よほど自分の農地あり方、自分のつくっている作物のあり方、そういうものをよくわかっていないとできないわけであります。  そういう農家の知識が向上するということは大前提になりますけれども、力があるということは大前提になります。その上で、環境保全的な生物多様性に寄与するような手法というのを州の方でつくりますから、それから、それが同時に風景としての美しい農村風景としても役立つという手法をつくっておきますので、それを農家が最大の経営者能力を発揮して組み立てていく。そういうやり方をすれば、農家はおのずから自由な任意契約の中で力をつけていく。そして、経営者能力を高めていくという意味で、人の面から見て決して無理ではない、技術的に見たらこれは可能です。  ヨーロッパの農業日本農業はタイプが違いますから、それについては申しませんが、人の面から見れば共通問題ですから、可能であります。そして、市場原理のもとで、任意性のもとでそれがやれる、そういう時代に来ているということであろうと思います。
  355. 小川敏夫

    小川敏夫君 林公述人にお考えをお尋ねしますが、私、消費者の立場の声を聞きますと、やはりこれからの農業問題、まあ食料問題というふうに考えますと、安定した供給ということはもちろんですが、安全な食料供給してほしいという声も消費者の方では希望が強いわけでございます。そうした安全な食料供給ということを実現するというようなことについて、林公述人の方で何か具体的なお考えがありましたら、教えていただければと思います。
  356. 林宏

    公述人(林宏君) 安全な食料を安定的に供給するというのは、これはもう私たちのいつも考えておかねばならないところですが、同時に、大衆からいけばそれを物すごく望んでいるところだと思います。  そこで、安全なという意味で言えば、きょうちょっと意見の中では申し上げなかったんですけれども一つは安全性の問題について、国際的な基準と日本の基準というものはちょっと差がありますね。日本の場合の方が非常に整備されておったと思うんです。ところが、国際的に合わせなきゃということでだんだんそこがずれてきておる格好があるんですけれども、その面を非常に残念に思うんですが、これが一つ。  それからもう一つは、意見の中でも申し上げましたけれども消費者というのはその面が一つの大きな要求といいますか、期待する一つになっていますね。その意味で、今度の法案を見ますと、十七条、十六条だったか、あそこで整備されておったと思いますが、これがどんなふうに実行されるかにかかると思います。  その際に、先ほどの意見の中でもありましたけれども、中食の場合に、非常にこれは環境との問題があるんですが、食べ物を食べて残したやつは全部廃棄する、それでその額が全部額に含められておると言われておりますね。ですから、それが物すごく環境問題とのかかわりが一つ出てきておるというのがあります。  そういういろんな問題はありますが、私どもとしては、ぜひそういう問題も含めて、消費者や消費団体が言うように、きょう意見の中で申し上げましたけれども、検査・表示体制を整備していただきたい、これが一つあります。  それからもう一つは、遺伝子組みかえのあれについては、少なくとも学校給食で使うべきではないと、こういうような考え方を持っております。
  357. 小川敏夫

    小川敏夫君 ありがとうございます。
  358. 大沢辰美

    大沢辰美君 御苦労さまでございます。日本共産党の大沢でございます。  私たち日本共産党は、新たな農基法の最も中心にすべき課題はやっぱり食料自給率向上であると思っています。  その点で、現在審議されていますこの法案について、生産費を償う農作物価格支持制度を事実上なくして、輸入依存を一層強めるものだと思っているんです。だから、自給率向上の実質的な担保がここには含まれていません。  それで、私はもう本当に日本農業の再建のためには抜本的修正が必要だと考えています。その点から何点かお尋ねしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  最初に村田公述人にお尋ねしたいんですけれども、この基本法にある価格の下落時の価格安定対策ですね、これは今、農家の方たちの再生産価格保証になっていないということを、九州の稲作の経営安定対策の実態を数字であらわしていただきまして、本当によくわかりました。  そういう中で、日本のこれからの農業、農作物の価格支持制度を私はつくっていくことが大切だと思っています。  EUの問題が少し先ほどの質問の中で出ておりましたけれども、このEUの経験で、農作物価格支持制度を中心とした共通農業政策が、生産力の向上、農作物の安定供給、特にドイツ、イギリスで完全自給率をつくり上げたという役割が示されていることをお聞きしました。だから、こういう中で食料自給率が異常に低い我が国が学ぶべき点ですね、その点について一点お聞きしたいと思うんです。  もう一点は、このEUの介入価格制度についてなんですけれども、介入価格水準が引き下げられて直接補償に置きかえられても市場価格の下支え機能を果たしていると言われていますけれども、現在、介入価格水準の果たしている役割についてお聞きしたいのが二点。  三点については、やはり所得補償政策での小規模農家の扱いについてはどうなのかという三点についてお聞きしたいと思います。
  359. 村田武

    公述人(村田武君) 三点をまとめてお答えすることをお許しいただきたいんですけれども、ひとつ誤解のないようにといいますか、これは私自身が注意しなければならないと思っている、直接所得支払い、これをごっちゃにしないようにする必要があると思っております。  一つは、ヨーロッパで従来行われてきましたのは、今ここでも議論したような中山間地に対する直接支払いというのは、これは中山間地の不利を是正すると。もともとはこれはイギリスに始まっていまして、イギリスの戦時中の丘陵地農業対策で始まって、これがEUの農政の中に取り込まれ、条件の悪いところの平たん地との不利を是正する、それは平衡給付金と言っています。その意味でのそういう助成が展開されてきたんです。これはやはりダイレクトペイメントと言っているんです。  もう一方で問題になってきましたのが、過剰生産にどう対応するか、それからWTOにどう対応するかということで、価格支持が生産刺激的だということで、このイエローをグリーンにどうしていくかというようなことの中でヨーロッパが選択したはっきりした道は、一九九二年の共通農業政策改革に始まる価格引き下げです。介入価格を引き下げると。そのかわり、やっぱりヨーロッパの場合は農業団体、農民が抵抗しますから、価格を下げるのならば所得が下がる、それをそのままにはしておけない。したがって、そこで直接所得補償という、この補償はコンペンセーションであります。  したがって、最初の中山間地なんかに対しては条件の不利なところを助成するための直接支払いなんですけれども、今ヨーロッパでやって議論になっているのは、価格支持を下げる、そのコンペンセーションとしての直接支払いの問題がドッキングされているんです。  そこで厄介なことは、確実に中山間地域等の中小農家にとってはこれは大変やはり重要な支えになっています。ドイツなんかで見ましても、老齢年金をもらうまでの経営をどう維持するかということで役に立っていると思います。  問題は、やっぱりこれは、なかなか中山間地助成があるからといって参入できるか、後継できるか。嫁不足がやっぱり起こっているんです。その問題を抱えながらある。  深刻なのは、今のコンペンセーションの側は、ヨーロッパの農業財政を削減するという政策路線の中での選択です、価格支持財政を直接支払いにやっていくというのは。したがって、そのことは農家はよく知っています。いつまで直接支払い、直接所得補償が続くのかと。このことについての将来展望は非常に乏しいわけです、財政削減の路線の中ですから。  したがって、このことに対する抵抗をしながら、よく聞くんですけれども、せんだって三月にデンマーク、アイルランドとイタリアの農村を歩きました。我々は生産者だ、生産者は自分の生産するものが商品としてちゃんと価値を価値どおり認めてもらうことがすべてだという我々の生産者としてのプライドであると。そうではなくて、無理やり政策的にいわば価格は引き下げられてといいますか、支持水準を下げられて、直接補償でコンペンセーションされても我々としてのプライドにつながらないと。このことは我々はやっぱり見ておくべきことではないかと思うんです。  私は、日本の財政問題から見たときに、価格支持から直接支払いに行くときに、本当に財政型の農業保護体制の財政を減らさないで行けるのかということについて危惧をしておりまして、少しそこは慎重に考えた方がいいのではないかと。一方で中山間地から平たん地を含む助成は生きながら、やはり価格支持をむげに削減していくという路線は、農業保護という点から少し危ないのではないかということを感じております。  大沢先生の御質問のお答えになったかどうかわかりませんが。
  360. 大沢辰美

    大沢辰美君 ありがとうございます。  殿所公述人にお伺いいたします。  今度、新たな酪農・乳業対策によりますと、飲用乳向けの生乳についても入札などが検討されて市場原理導入されようとしていますけれども、これがまた先ほど申し上げました米の経営安定対策の二の舞になるのではないかという心配をしていますが、農家経営の打撃になるのではないかという私の心配、殿所さんにお聞きしたいと思います。  林さんにお尋ねしたい点で、今政府自給率低下消費者の嗜好が変わったためだと言っております。消費者の嗜好が変わったためという答弁をしています。法案でも、自給率向上政府の責任でなく農家や消費者の皆さんの努力でという表現をしています。ですから、自給率向上についての政府の責任について、林公述人にお聞きしたいと思います。  時間の関係で、横川先生に一点お尋ねしたいんですけれども、ドイツの専門と言われる中で、環境適合生産給付金という制度があるようにお聞きしましたが、この農家への支払い措置について教えていただけないでしょうか。  以上です。
  361. 殿所啓男

    公述人(殿所啓男君) 飲用向けの生乳の価格形成についてはおっしゃるようなことが巷間伝えられますが、現実にヨーロッパないしはニュージーランド、オーストラリアあるいはアメリカ等で行われている実態を見まして、品質ないしは、これは水分が大変多いために保存がなかなかしにくいものですからどういうロットで入札をしていくかということで、非常に現実の価格形成が入札という方法ではやりにくいということで、実態としては価格が下がらない方向、むしろ上がる方向で行っているということでございます。  ただ、それに伴いまして、乳製品に向かいますときにこれが価格面でまた問題を醸し出すということがございまして、入札価格そのものについては、もしこれがそうなります場合には、あの大綱の一番最後の方にちょっとくっつけてございますが、生産者がする価格支持対策等については、これをつくることを含めて検討をするということがつけ加えられてございますので、この点で期待をしているところでございます。
  362. 林宏

    公述人(林宏君) 申しわけありません、ちょっと質問がよくわからなかったんです。
  363. 大沢辰美

    大沢辰美君 今、自給率低下している中で、政府はこの自給率低下消費者の嗜好の変化が大きな原因にあるという指摘をしているんです。農家や消費者の皆さんももちろん努力をされていますけれども政府の責任という点でどういうふうにお考えでしょうか。
  364. 林宏

    公述人(林宏君) ちょっと意味がわからなかったもので、失礼をいたしました。  自給率低下という意味では、先ほど触れられましたように、食文化が変わってきておるというのが一つあります。戦後、食文化が変わっておるというのは、それが特に米の方に影響が大きく出ておると思います。それからもう一つは、何といいましても農産物の自由化ですか、それによってだんだん変わる、そういう面も含めましてある。  消費者の食文化が大きく変わっておることが影響しておることは間違いないと思いますが、それだけが自給率低下の問題ではないというようにも考えます。一つ価格問題もあるんじゃないかというように考えます。それともう一つは、それに対する手だてといいますか、これが一つ。ただ、消費者の希望といいますか要求といいますか、そういうことだけで動いておるような面がありはしないかなというようにも感じるわけです。  今度のこれを見ますと、私もちょっと触れましたけれども、その施策について若干触れてあるように思います。十六条と十七条のところに触れてありまして、特に、健全な食生活に関する指針の策定というのが今度出ておるようですね。そういうものは今まで余りされていなかったんじゃないかというような気がします。  そういう意味で、こういうものが法制化されたり、あるいは消費に関する施策の問題が出てきておるというのは、施策としても進んではきているんじゃないかと思います。
  365. 大沢辰美

    大沢辰美君 ありがとうございました。
  366. 横川洋

    公述人(横川洋君) それではお答えいたします。  御質問のドイツの環境調整金というものは、先ほどバーデン・ビュルテンベルク州の例で御説明したもの、具体的にはそういうものを指します。それはなぜならば、ドイツの政策のやり方が州を中心にやっておりますので、それに連邦が財政的に支援をするということであります。だから、先ほどの調整金の名前は州に行きますと具体的に、先ほどプログラムの名称は申し上げませんでしたが、MEKAというプログラムになっているわけであります。  先ほどの補足をさせていただきます。  このプログラムの参加率は、農家の約半数、農地の約半数、それだけ参加しています。つまりそれは州の面積ですね。州というのはどのくらいの広さかというと、九州よりやや大きい感じなんですけれども、ほとんど変わらない。その農地の半分、農家の半数がそこに参加しているということであります。  それから、村田先生との分野調整をいたしますと、直接所得補償に三通りございますということであります。  価格引き下げに対する直接所得補償、村田先生は主にこの点について積極的に論陣を張られたわけであります。私は、専らそれ以外の中山間地域に対する直接所得補償、つまりこれは地域原理と申します。それからもう一つは環境貢献に対する所得補償、つまり環境原理という、この三つがございますので、そこのところを私は、環境原理を中心に、地域原理についてお尋ねがある限りでお話ししているということであります。
  367. 大沢辰美

    大沢辰美君 最後に一点だけ、村田先生に。  今、中山間地への直接所得補償について、私はそれが機能するには平たん地の農家の経営所得補償価格支持制度によって支えられていることが前提だと思っていますが、その点について一言。もうあと一分しかございません。
  368. 村田武

    公述人(村田武君) 既に今ヨーロッパで展開されている政策というのは、日本と同じ農基法農政展開してきた中で、条件の違いからヨーロッパでは農業の構造改革が相当進んでしまって、平たん地にはいわば中、大型の経営しか残っておりません。いわゆる家族経営といっても、酪農であれば搾乳労働はもう雇用労働に依存する、雇用労働を確実に入れて奥さんは農作業には従事しないような家族法人的な経営平たん地ではなっていまして、小企業農とでも言ったらいいでしょうか、そういう条件、そういう平たん地と。ところが、中山間地にはそういう経営は育つ条件がありませんので、中小家族経営が残ってこれを支えていると理解したらよろしいんではないでしょうか。  さらにその中で、今の残っている経営が物すごい勢いでまた減っています。九〇年代に入って、価格支持を下げて、コンペンセーションへと転換の中で大規模な家族経営というものが物すごい勢いで減って、そのことが、平たん地も含めて相当の地域地域問題、農村問題を引き起こしておって、私ども研究者としては、さてヨーロッパはこの先どうするんだろうと。それほど共通農業政策改革の路線がうまくいっているわけではなくて、問題を引き起こしていることをやっぱり見なければならぬのだろうと思っております。
  369. 大沢辰美

    大沢辰美君 ありがとうございました。
  370. 梶原敬義

    梶原敬義君 四人の公述人の皆さん方には貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  私は社会民主党の梶原と申しますが、大分県の出身であります。私は選挙区全域をよく回るんですが、御承知のように大分県は中山間地、農山村の非常に多いところでありまして、猛烈な勢いで高齢化、過疎、あるいは担い手がいなくなる、こういう状況が進んでおります。  そこで、この新基本法食料農業農村基本法、これを先生方が見られまして、これで今のような状況というのは解消できるのか、大丈夫だと、こういうようなことが言えるのかどうなのか。食料自給率向上なりあるいは多面的機能の充実なり豊かな農業農村、そういうものの期待がされるのかどうか。この新基本法で感じたことを、できれば二分以内ぐらいで四人の先生方、御意見をちょっと聞かせていただきたいと思います。
  371. 殿所啓男

    公述人(殿所啓男君) 大変難しい話でございまして、私の年齢は戦時を経験いたしておりますが、戦後、私どものおじきあるいはいとこあたりは次三男対策として随分都会の方へ就職をしてまいりました。その連中が現在、親がぼちぼちいなくなりまして、墓をどうするかとかそういう現実の問題が出てまいりまして、どうだ、帰って面倒見らんかという話、あるいは田畑を継いではどうかという話、そういう問題を出しますと、今から農業か、それよりも買った方が早いよという感覚でやはり返事が返ってきます。そういう外からの、もとは農家でありながらそういう感覚で都会地にある元後継者が言っている現実を見ますと、これはなかなか並大抵のことでは難しかろうというふうに思います。  ただ、私も先ほどから申し述べておりますように、やはり命をはぐくむというなりわいでございますから、そういった面に非常に感度のすぐれた方たちがこれからやられることについてどのような環境を整備していくかということがこの基本法で盛られているというふうに受けとめておりまして、今後の関連法の成案を含めて御期待を申し上げているところでございます。  以上です。
  372. 林宏

    公述人(林宏君) 非常に難しい問題だとは思っていますけれども、何といいましても、きょう意見の中にも出てきましたような問題の一つ一つの処理、手だてといいますか、これが非常に重要と考えます。  私も申し上げましたけれども農業生産云々という問題にしても自給率向上の問題にしても、最後は国会報告、そういうことも出てきておるようですが、担い手問題、農地問題、あるいは魅力ある農村づくりとかいろいろありますけれども、そういうものをどう一つ一つを処理するかということ、これにかかっておるような気がします。  今度の場合、私がああこれはいいなと思ったのは、国会報告のところが修正第三項になっていますね。これがされて、そしてまた中で論議されて補強されていくという、こういう動きというのは、私は五年じゃなくてもう少し短くてもいいんじゃないかと思う。今の時代の流れの変化の速い時期からいえば、そういう面からいってもこれはぜひ有効に生かしていただきたいな、こういうふうに思います。
  373. 村田武

    公述人(村田武君) 簡単にお答え申しますが、私の最初の陳述をお聞きいただければわかりますように、残念ながら、私はこのままでは農業生産者に展望を与えないだろうと思います。  率直に申して、今のこの農政改革大綱から新法のこのままは、少し早とちりと言うと失礼ですけれども、農水省を批判しますが、WTO農業協定、ウルグアイ・ラウンド農業協定のとりわけ国内支持の削減について、なぜそれほど前倒しで実施しなければならないんだ、少なくとも六年間でやるぎりぎりのところをやっていったらいいではないかということを思っていますので、私の乱暴な言葉で言えば、かなりやみくもに価格支持制度を崩していくということがやっぱり生産者にとって非常にマイナスになっているんだろうと思います。  しかし、そういう中で、やはり我が国消費者の食に対する期待というのは大変なものであります。私の今住んでいるところに大山町農協が木の花ガルテンという小さな店舗を持っていますが、産地ブランドといいますか、今大事なのはやっぱり原産地表示、JAS法改正ともかかわりますが、産地表示をしっかり行いながら、だれがつくったか、どういう品質だということを一つ一つ明確に消費者までつないでいけば、これは生き残れるというふうに考えております。  以上です。
  374. 横川洋

    公述人(横川洋君) 農業者の能力に期待し、消費者の知恵に期待し、そして、いわば与えられた貿易自由体制の中での日本の経済の中での農業という、その枠組みの中でどう生き延びていくのかというふうに発想します。そうすると、必ずしも暗い面ばかりではないだろうというふうに考えます。  それは、農業者の能力というのは、自由な体制の中で農業者が生き延びるためにはいろんな形の選択肢があって、それをいかに組み上げていくか、例えば、先ほど申し上げましたような、農産物の販売額と直接所得補償をどう組み合わせていくかというふうなところで競争していく、知恵を働かせていく、こういうふうなことをやらざるを得ないだろうと思うし、必ず人はそういう場に置かれれば力を発揮するというふうに私は信じています。  と同時に、消費者については、消費者は顔の見える安全性を欲しがっていると思います。変な表現ですけれども、もちろん顔の見える安全性というのは第三者がラベルで証明した安全性、これは世界市場で流通するものなわけですが、それ以外に、もっと多くのすそ野の広いところで消費者が求めているものも確実に非常に重要なものとしてあるわけであります。そして、そこがまさに基礎的な食料になるわけでありますが、その部分については、消費者は顔の見える安全性、お互いに信頼し合っておればそれでいいではないか、これをやはり充実させていくことが今の認証制度を底支えするような働きをするのではないかというふうに思っています。そういう点で、消費者のそういう知恵というのか、賢さに期待したいと思います。  と同時に、外部経済、つまり公益的機能に関してはこういうことを消費者に期待します。つまり、きょう申し上げましたが、生物多様性というのは輸入できないものであり、それからこの日本の懐かしい風景というのは輸入できないわけであります。つまり、それは健全な農業が営まれてこそ生まれる副産物であります。そういう理解消費者が到達するように私たちは全力を挙げて導いていかなければいけないだろうというふうに思っています。  そういうふうに副産物を込めて、つまり丸ごとの農業、丸ごとの農村というものを消費者が支えようと。そのために、直接に生産者も消費者にアピールする、消費者農村に入ってきて、農村のさまざまな機能を、口も出すが汗も流す、そしてお金も落とす、そういう体制、いわゆるこれがグリーンツーリズムとも言います。そういうふうな、丸ごとの農業農村消費者が認めていく、支えていくという体制に期待せざるを得ないのではないか。そういうふうに全力を挙げて、非力ですがやってみたいというふうに考えております。
  375. 梶原敬義

    梶原敬義君 ありがとうございました。  次に中山間地問題ですが、私も中山間地農業生まれ育ったんですが、これは規模拡大というのはなかなか無理なんですね。そういう状況の中でどうするかというと、やっぱり兼業農家というものとの組み合わせをうまくやらないと、いろんなことを言っている間に村はつぶれ、後継者は育たない、年老いていく、そういう状況になりますから、これをどうするかということを具体的にお考えをお伺いしたい。  そこで、この法案の第二十八条の関係ですが、国は、地域農業における効率的な農業生産確保に資するため、集落を基礎とした農業者の組織、委託を受けて農作業を行う組織等の活動の促進に必要な施策を講ずるものとすることと。この二十八条の関係につきまして、殿所公述人
  376. 殿所啓男

    公述人(殿所啓男君) 中山間地はおっしゃるとおりで、私どものところも大変苦労されておるようでございます。ヨーロッパ、特にスイスで私も酪農を見ておりますけれども、あそこは御承知のように国民皆兵制度をしいておられますので、乳価については八十円程度で現在まで維持されておったんですが、今度EUに統合されることになりましてそれが二五%ぐらい引き下げられます。したがって、農家経営としてはもう成り立ちませんので、四戸ぐらいを併合いたしまして、あるいは大きなところは十五戸ぐらいと言われておりますが、一戸がその四戸とか十五戸を担当いたしまして、あとの方々は下におりて一般労働に従事するといった局面があるようでございます。そういったものがそれぞれの社会の中でどういう仕組みになっているかということで変わってくると思います。  したがって、私どもは、機能としては中山間地の問題は非常に大事ですから、先ほどから皆さん方がお話しになっておりますように、そこでどういう機能を果たしているかということを中心補償制度を考えていただきたい、このように考えるわけでございまして、この機能を全く外してやりますと、先ほどちょっと申し上げましたけれども生産物を育成するという意欲の持ち方が変わってまいりますと、そこに居住してその機能を果たすというところまで入っていきません。  特に私どもが、酪農のことばかりで恐縮でございますけれども、若手が残りますと、その残った者たちが、消防団やPTAは言うに及ばず、たまには救急車の役目も果たさなきゃいかぬといったような機能を果たしているわけでございます。そういったものに対する公的な支援というような形のものにしていただければというふうに考えているわけであります。
  377. 梶原敬義

    梶原敬義君 特に米作の場合、中山間地の五反やっているところも三反やっているところも農機具を買いまして、農協がそれを売りつけてずっとやってきましたよね。それに対して、二十八条の関係というのは、委託を受けて農作業を行う組織をつくるとか、こういうのは本当にちょっと遅かったんじゃないかと思うんです。こういうものの組織化について、本当にこれはやらないと、農山村というのはなかなか残りにくいんじゃないか。兼業農家とそれを組み合わせてどうやっていくか。自然や環境を守っていくためには、やっぱり計算抜きで、所得抜きで、お金抜きで物事というのは考えられませんから、この点についてどうですか、村田公述人
  378. 村田武

    公述人(村田武君) 御質問のことにかかわって、山間地の水田稲作地帯を念頭に置きまして第二十八条との関係でいえば、差し当たりこれがやれれば一定やれるんではないかと思っていることがございます。  一点は、このような集落営農組織なり受託組織、それは受託経営でもいいんですが、基本的には、受託組織にとっては機械作業のオペレーターの労賃の半額補助を行うこと、同時にもう一つは、この組織を続けさせるためには、農業機械の更新時、初期導入は補助金がございますが、農業機械を更新する際の補助、この二つをセットにすれば、これはもう中山間地域の山間棚田について一定レベルで確保できる条件になるんではないか。その基本的な原資は、平たん地と中山間地の稲作のコスト差、十アール当たり約二万円を念頭に置いて、それを小さな個別農家にばらばらばらまくというよりも、実際の担い手経営なり受託組織の継続に向けて補助するという方式を検討いただけないだろうかと思っております。
  379. 梶原敬義

    梶原敬義君 ありがとうございました。
  380. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田でございます。先生方、大変すばらしい御意見を拝聴いたしまして参考になりました。  まず村田公述人にお尋ねしたいと思いますが、三十八年間の農業基本法、これの果たしてきた役割、反省、そういうものを総括した上で今回の新農業基本法というものが制定されるべきものだと私は思っております。その中で、せんだっても私、大臣に質問したんですが、前の農業基本法は目的といいますか理念が非常にわかりやすかった。すなわち、選択的規模拡大、そして自立農家育成ということを図りながら農工間の所得格差を是正していくんだと。今回はその理念の中に、食料の安定確保多面的機能発揮農業の持続的な発展、そして農村振興、この四つが理念になっているわけですね。私は、この四つからどういう将来の姿を予想するかということになると、ぼわっとは出てくるんですけれども、こういう農業農村を目指すんだというものが農家の方々にぴしっとくるのかな、ちょっとこういう気もしておるんです。  そこで、基本法を好意的にとらえて私は大臣にこのように申し上げました。今までは農村からほとんど都会へ出ていってしまって今日の工業社会を支えてきたという基本のもとで、魅力ある農村回帰の実現ということにこの農業基本法の新しい二十一世紀の姿があるんじゃないか、そういうことをねらいとした一つの理念のもとで各種これから施策が行われると思うんだけれどもどうだろうかという話を申し上げました。  先生、この法案を見られて、どちらかというと厳しい御判断をされておられます中で、先生は、このような法案から将来を想像されるといいますか、希望を持つという意味からしての期待感を踏まえて、どういう基本法なのだろうか、一言で言うならば。あるいは厳しく見られたときにはどういう表現で見られるんだろうか。突然の質問でございますが、感覚を教えていただければと思います。
  381. 村田武

    公述人(村田武君) 阿曽田先生から率直な御質問でございますので、私も率直にお答え申したいのですが、私は「あらまし」を持っておりますけれども、この「あらまし」の中で、「基本法が目指すもの」ということで、現行農基法と新法の比較をしながら、新法の持っている「国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展」と、きょうは「多面的機能の十分な発揮」のところを第一点に指摘しましたが、やはり一定の目はあると思うんですね。やはり現行農基法段階と異なった新しい段階を目指そうという意味での農業のとらえ方をこれまでと異なった見方で提起しようということについては、私はなるほどというところがあるわけでございます。  そこで、しかしなぜ私がきょうかなり修正提案を申し上げたかといいますと、三十八年の農基法総括と言われる、それはこの「あらまし」の中で言えば、「食料自給率低下」、「農業者の高齢化・農地面積の減少」、「農村の活力の低下」と、国内的に期待があるにもかかわらず農業が相当厳しくなってきているということを理由に掲げておりますけれども、事の真実はこれだけではないでしょうと。  こういう国内農業条件が起こってきた背景に、残念ながらウルグアイ・ラウンド農業合意であれの約束をせざるを得なかったという国際条件があるでしょう、そのことをはっきり見据えて、それをなぜ提起しないんですかと。それを提起するならば、きょう私が三つ目に言いましたような農産物の輸出入に関する第十八条、こういう書き方では誤解を与えると申したのは、もっと厳しく、現在、国際環境で置かれている日本農業の厳しさという点はこういう点ですと。その厳しさをやはり頭に出して、その中で日本政策選択としてはここまでとれますという提起をするならば、まだ国民なり生産者、消費者との意思疎通は可能になると思うんですけれども、国際規律との整合化という基本問題調査会の答申の最後の部分にあります文言が法案の精神の中に隠されてしまっているために、それが誤解を与えているんだろうと感じておるわけであります。
  382. 阿曽田清

    阿曽田清君 ありがとうございます。  そういう一つのこれから目指すものの、一言で言うならばこういうサブタイトルといいますか、タイトルとか必要じゃなかろうかなという感じを私は持っているんですが、先生方から、こういうタイトルがいいぞ、一言で言うなら今回の基本法はこういうことをねらっているものなんだなというようなぱっとひらめくようなものがございましたら、後日で結構ですので教えていただきたいと思います。  各公述人に一問ずつ御質問いたしますが、殿所公述人に対しまして、先ほど災害対策対象範囲が広がってきたというお話でありました。  大型の施設や機械等にもっと資金、あるいは災害対象として対応を考えたらどうかという御提案がありました。私もまさにそのとおりだと思います。せっかくつくり上げてきて収穫直前で大被害を受ける、これで農家の方々が打ちひしがれるということがたびたびあるわけで、九州は特に台風の常襲地帯、御説のとおりであります。  したがって、こういう大災害で被害をこうむった時点で立ち上がるのには大変な農家の方々の精神的あるいは資金的な問題が生じるわけで、そこで農業に対する魅力をなくすというのがあります。その点について、今の共済制度では私は不十分だと思うんですが、その点の御見解をひとつお聞きしたいというのが殿所公述人に対するお尋ねです。  林公述人に対しましては、私が絶えず言っていますのは、四割の減反というものに対して、これこそ環境負荷を伴っているものはないと思うんです。瑞穂の国である以上は、四割の減反で水を張らない水田というのは水田とは言わない。だからこれを、やはり日本全国、水田には水を張る栽培を進めていくべきではなかろうか。そのためには、私は多収米であるえさ米の開発をやれと農水省に強く申し上げているんですが、自給用の食用としての米じゃなくても、ヒエでもアワでも何でもいいんだと。とにかく水田に水を張って栽培をするということの方が、環境あるいは自然の面におきましても国土保全の面におきましても、すべてやっぱり共通していく話だと。それが今四割も欠けている。これは日本農業、わけても稲作について大きな問題ではなかろうかなと思うんですが、その点の御見解をお聞かせいただきたい。  それから、村田公述人に対してでありますが、再生産確保というのが農家の方々に対する一つ農業の励みになると思うんです。そういう観点からして、今まで価格政策から所得政策へというそういう国の姿がありますが、所得政策へ移行することが決して農家の方々の再生産をつなぐことにつながっていかないんじゃないか。  所得政策は、八〇%補てんではどんどん下がっていくということになってくる。おっしゃるとおりに、支持価格というものは要るんじゃなかろうかという御指摘、私もそうだという感じを持っておりますが、その再生産確保をどうやって図っていくかという観点の中で、私は、カナダのNISAというものも一方、作目別の所得補償するという観点プラス農家の所得補償政策というものが必要だろう。私は日本型の農家所得補償政策というのが要るんではなかろうかなというふうに思っておりますが、そこの見解を教えていただきたい。  最後に、横川公述人に対して、生物多様性という、聞いておってなるほどなとわからぬでもない、こういうふうな感じで受けとめておったんですが、その生物多様性基準値を決めてというようなお話がありました。私は、どのような形で基準値を決めるのかな、そして生物多様性というものを一言で言うならばどういうことなんだろうか、この二点を教えていただきたい。  それぞれお願いをいたします。
  383. 殿所啓男

    公述人(殿所啓男君) お答えをしたいと思います。  一言で共済制度と申し上げましたけれども、これは既に御承知だと思いますが、収入保険等の方法もございます。したがいまして、一にかかって、この価格水準のとり方、あるいは補償基準のとり方、そういったものにかかってくるんだろうというふうに思っております。  その際に、入札あるいは自由化に伴います価格変動値、先ほどもちょっと触れましたように為替の問題等もございます。したがって、そういったものをあわせてとられてまいりますと、必ずしもその基準値が上がる、あるいは平行な形で進むとは限りません。これは下落していく可能性もございます。したがって、一たん下落をいたしますと、それがずっと下落し続けるという弊害が出てくるようでございます。  したがいまして、これをどのような形でさらに補てんするかということで、既にもう先生方も御承知だと思いますが、アメリカは新農業法を施行いたしまして三年たちました。WTOの交渉に臨むわけでありますが、基準年以後に三百五十億ドルの資金を投入いたしまして、現在そういったものの対応を進めているようでございますが、それらが、収入保険と同時に基金運用による補てん制度、これを併用するような話もございます。カナダの方でもこれが農家の方の選択によって進められようとしております。  そういったいずれかの方法によって、その農家の持ちますあるいは地方、あるいは売り先、製造品目、そういったものにあわせて採用できるような、いわゆる一つの選択ができる制度といったものができれば、なお助かるんじゃないかというふうに思っています。
  384. 林宏

    公述人(林宏君) 特に環境保全の角度からのことが重く出されまして、例えば多収米、えさ米、そういうようなものをつくって、そして今の廃田になっておるようなところを生かすべきではないか、こういうお声だったと思います。私もその点については本当に賛成でございます。  ただ、その際に問題は、農業経営の問題から見たときにどうなのかというのが出てくるだろうと思うんです。ですから、そのあたりを、これはもうむしろ要請になりますけれども、ぜひやはり今後の問題として、従前、転作の場合に補助したとかなんとかというのがありますけれども、必ずしもイコールでなくてもいいんですが、そういうものを含めてぜひやるべきではないか、このように考えております。
  385. 村田武

    公述人(村田武君) 基本的に阿曽田先生の言われた水田農業の再生産確保方式、賛成でございます。とりわけ九州におけるような地域においては、米、麦、大豆、これをセットにして水田農業の総合的発展という観点で経営類型を構想しながら、それを全体として支えるという方式は物すごく重要な観点ではないかと思っております。
  386. 横川洋

    公述人(横川洋君) 生物多様性は持続可能な社会の基礎であります。つまり、資源という側面から申しますと、再生可能な資源は生物がつくり出すものであります。生態系が乱れればその影響はどのようなものになるかよくわからないままに時代は少しずつ悪化している、少しずつなのか、その程度は判断はいろいろでしょうけれども、悪化している。これを何とか回復しなければいけないのではないかというふうに考えます。  したがいまして、新しい基本法をどのように一言で表現するか、とても知恵がわきませんが、環境の時代基本法といいましても余りうまくぴんとこないとするならば、生態系という用語を使いながら、生態系調和あるいは共生の農業基本法、これはなかなか理解はしていただけないかもしれませんが、しかし早目に私はそれを打ち出してみたいという立場であります。  それから、基準値はどのようにして定めるか。これは時代がまだまだ早いわけでありまして、それだけの蓄積は十分には積んでいないと思いますが、最初公述の中でも申しましたように、農家自身が環境をつくり出しているという意識が必ずしも十分ではありませんので、そこから議論をやっていかなきゃいけないという深刻な問題があります。それだけに、その農家の力を逆に使い、参加を得ながらやっていくという地道な作業が必要ではないかと思います。
  387. 阿曽田清

    阿曽田清君 終わります。
  388. 三浦一水

    ○団長(三浦一水君) 以上をもちまして、公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼申し上げます。  皆様方には、長時間にわたりまして有益な御意見をお述べいただきました。まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、今後の本委員会の審議に十分反映してまいりたいと思うところでございます。派遣委員を代表いたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。  おかげさまで、これにて会議は滞りなく終了いたしました。我々が遺憾なく所期の目的を達し得ましたことは、ひとえに本日御出席をいただきました公述人の方々の御協力のたまものと重ねて感謝を申し上げる次第でございます。また、本地方公聴会のために、種々御高配、御尽力を賜りました関係者各位に厚く御礼を申し上げます。また、傍聴の方々にも長時間にわたり御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。あわせて厚くお礼を申し上げます。  これにて参議院農林水産委員会福岡地方公聴会を閉会いたします。    〔午後三時三十五分閉会〕