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公述人(林宏君) 林宏です。
まず初めに、資料の方の説明をいたします。
一枚目がきょう申し上げます
意見の柱でございます。二枚目以降は、私
たちの会で「みのり」というのを出しているんですが、その中身でございます。その二枚目に、これは
農業とみどりの会となっておりますが、後で説明いたしますけれ
ども、その
関係の重立った取り組みについてずっと抜き出しておるものです。あとは、最近出しました十三号、十四号、十五号というのをつけておりますので、後ほど見ていただいたらいいと思います。
貴重な時間でございますので、本来ならばごあいさつをしなければならないのですが、早速、
公述をさせていただきたいと思います。
ところで、食とみどりの会というのは初めてお聞きになると思いますけれ
ども、まず、これにつきまして若干説明をしたいと思います。
農業・
農政問題が政治的、社会的に大きく揺れてきたのは十年以上前だったと思うんです。当時、私は高等学校の組合の役員を退職したばかりで、それでも月に二、三回は
福岡に顔を出していたのですが、
農業、
農政の非常に荒れている
状況を見まして、これは傍観できない
状況だ、この局面に対応するために何とかせねばと思ったのがこの運動にかかわる初めになったわけです。
そこで私はまず、
関係の労組や団体あるいは事業所、こういうところに話をしまして、
農業とみどりの会を結成したいがというようなことで申し上げまして、さらには業者の
関係、個人的にも学者の方や元農協の役員、関心のある方
たちにも呼びかけまして、これが一年以上かかったんですけれ
ども、一年余り準備をした上で、一九八九年、
平成元年十一月に
農業とみどりの会を結成いたしました。水産
関係は専門外だったものですからすぐできなかったのですけれ
ども、三年後になりましたけれ
ども海と食の会を結成いたしました。
私はこの二つの組織を軸にいたしまして運動を進めたわけですが、具体的には、農林水産業や環境問題についての
関係施設、団体、
地域、こういうところへの視察・調査、それから研究会、講演会、時によってはシンポジウムや集会などの取り組みを進めてきたわけです。特に視察・調査については、農林水産業の実情を把握する上から非常に重要なことだということで、これに重点を置いて取り組みました。県内はもちろんですけれ
ども、九州全域を広く視察してきましたし、時には、
平成七年でありますけれ
ども、タイへの
農業調査にも行っています。
各位には既に御承知のことだと思いますが、現在、農林水産業は多くの問題を抱えていますけれ
ども、その背景となる経済、社会、産業面での農林水産業とのかかわり方からいえば、
基本的には同じものではないか、こういうこともありまして、運動的も一体化する必要があるということで、昨年四月、
農業とみどりの会と、海と食の会の二つの組織を統合いたしまして、食とみどりの会としたわけでございます。
「食」というのは、単に食するということだけではなくて、農林水産業の
生産、流通、消費段階までのすべてを含んでいます。「みどり」というのは、いわゆる緑のほかに水や環境問題すべてを含んでいます。
私
どもは、この運動の中で多くのことを、現地に行って学ぶわけですから、学びましたけれ
ども、これは後ほど
公述の中で現地の実情と照らし合わせながら申し上げたいと思います。
そこで、
意見の第一ですけれ
ども、
食料自給率の
向上や
国内農業生産の
増大についてであります。
今回、六月三日に新農基法案が衆議院を通過したことはマスコミが報じて承知しましたけれ
ども、この中で、
食料自給率向上や
国内農業生産の
増大という明確な
農政の方向を示したことには非常に大きな
意味があると思っています。ですけれ
ども、問題は、このことについて
具体化への道が全く見えてこないのが大きな問題ではないかと思っています。これは三点修正されているようですが、普通、修正されて出された場合には、大体こういうことだなというのが見えるんですけれ
ども、そのあたりが全く見えてこないというところが問題ではないかと思っているわけです。
食料自給率向上のためには、世界貿易機関、WTOの次期
交渉での問題とのかかわり、麦、大豆、飼料作物などの
生産振興対策の問題、関税引き下げの問題など多くの問題が大きく絡んでくることは言うまでもありませんが、これらの問題を乗り越えることが重要であることは言うまでもないと思います。少なくとも、
国民の
食料は
国内で
生産することを
基本にすべきであって、これは現状とは大きくかけ離れているわけですけれ
ども、安全な
食料の
安定供給体制を早急に確立することこそ
国民の強く希求するところだと考えます。
また、年々
増大する外食や中食に見られるような、企業にゆだねた形の食卓の
あり方についても注視する必要があると思います。十六条や十七条とのかかわり合いがあるんですけれ
ども、健全な
食生活に関する指針の策定を初めとする、
食料消費に関する
施策の充実を図るべきだと考えます。
ともあれ、これら多くの問題を乗り越え、
具体化への道を明確にできるよう、参議院での徹底した審議をお願いするものです。
次に、第二の
意見です。第一の
意見とも関連が深いのですが、
国内生産の
増大を目指すためには、何といっても
農業生産の
担い手を
確保育成するということとともに、農用地の
確保、拡大が図られなければなりません。
まず、
担い手について述べます。
私
どもが、村おこし、
農業振興構想のもとで取り組まれている
地域や団体への視察・調査を行った際に感じたことですけれ
ども、総体的に見まして、各
地域、これは自治体をも含めてですけれ
ども、団体とも意欲的、創意的に取り組まれているところが多く、これにかかわっている人
たちが将来を展望しながら現状を正しく踏まえ事業を進めていることに非常に明るいものを感じました。さらに、事業にかかわっている人
たちの中には、本来の
農業者のみではなくて、元行政の職員や教員経験者の人
たちがその
役割の一翼を担っているところもありました。
これらのことを考えますと、
担い手の
確保育成の問題は、認定
農業者はもちろんですけれ
ども、家族営農者や新規就農者など、幅広く多様な
担い手に
施策を講ずべきだと思います。
また、女性の農産加工を初めとする
農業経営などへの
役割は非常に大きなものがあります。
農業就業
人口の六割を占めるとも言われる女性の活力を生かし、
農業経営や
地域社会
活性化への取り組みなどに積極的に参画できるように、環境といいますか、
条件整備を図るべきではないかと思います。
次に、農用地の
確保、拡大についてですが、資料によりますと、かつて
我が国の
農地は六百万ヘクタールを
確保されていますが、最近では既に五百万ヘクタールを割っています。非常に寂しく思いました。加えて、私、県内ですけれ
ども、周辺
地域を見て感じることは、宅地造成や大型小売店舗、そういうものがどんどん増設されています。農用地がそのたびに転用されています。このような事態を回避するためにも、厳しい
農地転用の規制とともに、
耕作放棄地の活用などを図り、少なくとも五百万ヘクタールの
優良農地を
確保すべきではないかと思います。
関連して、
農地問題では
農業生産法人の問題があります。
農業生産法人は、
地域農業の有力な
担い手ですが、あくまで
農業者の共同体であり、
地域に根差したものでなければならないと思います。そして、
株式会社の
農業参加が最近問題になっておりますけれ
ども、この
農業参加の問題は認めるべきではないと考えます。それは、企業は当然のことながら利潤追求を第一義としておりますし、
農村社会、
地域農業の
活性化や環境保全などの問題、これは第二次的に取り扱われるでしょうし、さらには企業の系列化などの問題も考えられますし、
地域の
活性化などとは必ずしもなじまないものです。
したがって、
農業生産法人の構成要件は、JA、それから森林組合、これは農山村に必要です、自治体、生協までとすべきではないでしょうか。ただし、事業要件としては、観光農園やグリーンツーリズム、
農産物の直販所など
農業生産法人の
経営の多角化を図ることは、
農業生産法人の
経営の安定化を図る上で有効だと考えます。
次に、第三の
意見です。これも第一の
意見と深くかかわっていますけれ
ども、備蓄問題があります。
九一年、
平成三年の大凶作による米不足のときの怖さというのはいまだに忘れません。最近のような異常気象が続発する
状況のもとでは、再びあの悪夢に見舞われないとも言えません。ましてや、極度に低い
我が国の
自給率、これは極めて低いのは御承知のとおりですけれ
ども、その現状を踏まえるとき、そのはかり知れない事態に対応するための備蓄の問題というのは非常に重要な
課題と思います。
自給率向上に向けての
施策について、あわせて徹底した論議をお願いする次第です。
この際、米の備蓄制度については、百五十万トンを
基本に、回転と棚上げ備蓄を併用することとし、総体としては第二条四項及び十九条などに基づいて行われるべきだと思います。
第四の
意見は国際貢献でありますが、これにつきましては、時間の
関係もあると思いますので、省略をいたします。
第五の
意見ですが、魅力ある
農村づくりといわゆるデカップリング
導入についてであります。
私
どもが視察・調査を行った
地域、団体の中に、元農協幹部であった営農者が
農地の荒廃化や転売から
農地を守ろうと
地域に呼びかけまして、集落営農方式を提起し、これが行政をも動かすような非常に大きな成功をおさめた
地域がありました。土地利用型農法の場合に、この集落方式というのは、まず
担い手が非常に減少しておる
状況ですが、それを克服するという
意味でも、また
農地集約の
あり方でもすぐれていると思われます。
また、
地域によっては、行政主導のもとで活力ある
農村づくりを目指し、
都市との交流やレクリエーション施設の設立、さらには
農村公園の整備など、
生産基盤と
生活基盤の一体的整備を図るとともに、
農産物の直販などによって
地域農業、農山村の
振興を図っているところもありました。
以上より言えることは、
地域振興を目的とする
地域への直接
支払い、いわゆるデカップリングと言われているようですけれ
ども、この
導入に当たっては、
対象を中山間地に限定せずに、集落
機能の維持、環境に優しい
農業生産活動など、
地域農業の
振興、
農村の
活性化を目的として
導入すべきではないかと考えます。いわゆる
日本型デカップリングとして
導入し、中山間地並びに平地を含めた
地域を
対象として
農業・
農村振興計画に基づく
一括交付金方式とすべきです。特に、補助金のばらまきにならないように
施策を講ずべきではないかと思います。
第六は環境問題についてであります。
二十一世紀の地球的規模における最大の
課題は食と環境だと言われており、これについてどう対処するか国際的にもいろいろ論議をされていますが、各位の御承知のとおりであります。
我が国におきましても、
市場原理最重視の経済社会の
あり方を問い直し、
国民生活にゆとりと豊かさを取り戻すべきではないかという風潮が漸次広がってきています。二十世紀の大量
生産・大量消費型の経済社会の
あり方の中で環境破壊が大きく進み、今なおその傷跡が残っていることは否めない事実です。
農業の面でも、かつて効率化、低コスト化の名のもとで、大型機械化、化学肥料・農薬漬け農法が進む中で大きな環境負荷を生み、環境・食物汚染を生み出してきたことは御承知のとおりであります。
環境問題は、以上のような過去から現在までを含めて、かつ地球規模のものから本当に身近な
農業生産や食のサイドに至るまで広く存在しています。その
意味では、農林業は本来的に環境保全型ないし共生型の産業であると同時に、農山漁村が単に
食料生産の場だけではなくて、環境保全や保健休養など多様な
役割を持つことが近年広く認識されつつあります。私
どもは、これらについて視野を広げ、将来をも展望しながら環境保全のためにさらに努めねばと思っています。
そこで、当面、現在
消費者あるいは
消費者団体などが特に注視しております食品の安全検査を強化するとともに、
生産から消費までの責任を持つ農水省の検査・表示体制を整備するよう要請するものです。また、遺伝子組みかえ食材については、
学校給食に使用しないよう措置をとっていただくことを要請するものです。
第七は、次期WTOの
農業交渉への対応についてであります。この点につきましては、結論から先に申し上げます。
二〇〇〇年からWTO
農業協定の再
交渉が始まると聞いていますが、この際には、
食料、
農業、環境はまさに自由貿易になじまないものであるから、他の
交渉と切り離して別
交渉とすべきではないかということをぜひ主張し続け、やり抜いていただきたいと思います。