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谷本巍君 私は、社会民主党・護憲連合を代表し、
卸売市場法及び
食品流通構造改善促進法の一部を
改正する
法律案に反対の立場から討論を行います。
卸売市場法と
流通構造改善促進法の一部
改正案は、
量販店の進出と
相対取引の増大と相まって
競り市場の
原則を撤廃するというものであります。ということは、
相対取引一本も可能となり、
競り部分を残さないこともあり得るということにほかなりません。
そういう事態も予測されるこの
改正案は、公正な
価格決定と公平な荷分けを八百屋さん等に保障してきたこれまでのあり方が変わっていくことを意味します。また、そのことは、
卸売市場が民間資本による物流センターなどと変わりのないものに変質していく可能性さえ含むものと言わなければなりません。
こうした問題点を持つ
改正案だけに、
市場取引委員会の設置は義務化されるべきでありました。しかし、それすらも法的には選択事項とされております。
今回の
改正に際し、私たちが期待したのは、
量販店の進出によってもたらされた町場の
地域社会の崩壊ともいうべき
商店街の不振と崩壊の危機への対処であります。この危機の克服に向け、
商店街の維持や再建に不可欠とされる八百屋・
魚屋さんがやっていける
競り市場の維持と多面的な支援策の強化に向けた施策の拡充が求められており、それにこたえることであります。
第二は、
量販店等による広域
流通が進展するにつれ、環境保全型生産による直売市を初めとした多様な産直運動等が広がる状態が生まれております。扱われる数量は決して多くはありませんが、これらの動きは大量生産・大量消費路線に対置される
地域市場形成への動きとして重視されるべきであります。ということは、今重視しなければならないことは、
中央卸売市場集中型でいくのではなく、
地方市場の活性化を土台に据えた
地域からの生産、
流通の整備を図ることにその力点が置かれなければならないということであります。それがまた、環境保全にかなう農業生産と自給力を伸ばしていく道でもあります。
改正案の目指す
方向は、
量販店主導の広域
流通進展の追認であって、目指す
方向は必ずしも明らかでないとはいえ、紛れもなく旧態依然とした大量生産・大量消費型の
中央卸売市場集中型の広域化を
基本に据えたものであります。そして、その合理性も一面的でしかないこともこれまた明白であります。
例えば、野菜等の生産でいうなら、
農家が求められるのは、低コスト化に向けた薬剤まみれの大型生産が
中心であり、選ばれる品種にしても広域
流通にかなうものに限定されるという例等々に見るとおりであります。人の命を支えるべき食料が人の命もむしばみかねぬものに変質したり、変化に富む日本列島にあって、
地域地域に合ったさまざまな野菜を生み出した日本農業が、広域
流通のもとでほとんど
地方品種が淘汰されつつある例を見ても、それがどんなに重大な損失であるかは明らかであります。また、さらには大型生産に不向きな中山間
地域など条件不利地の農業が大型生産、広域
流通のもとでこれまで以上に追い詰められていくことになりはしないでしょうか。
次期WTO交渉に向け
政府が強調してきたことは、国内生産を
基本とした食料安全保障と、環境問題を
中心とする農業の果たす多面的
役割を重視したルールの確立でありました。省庁再編成による新農林水産省が果たすべき新たな
役割もまた同じようなことであります。
この
改正案がそうした内外に宣明された新たなる課題にこたえようとしているかどうかは、もはや申し上げるまでもなかろうと存じます。
以上の理由から、本法案に反対である旨を申し上げ、討論といたします。