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1999-05-11 第145回国会 参議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十一日(火曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     木俣 佳丈君      高野 博師君     益田 洋介君  五月十一日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     浅尾慶一郎君      小泉 親司君     宮本 岳志君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         井上 吉夫君     理 事                 鈴木 正孝君                 竹山  裕君                 山本 一太君                 若林 正俊君                 齋藤  勁君                 柳田  稔君                 日笠 勝之君                 笠井  亮君                 山本 正和君     委 員                 市川 一朗君                 加納 時男君                 亀井 郁夫君                 木村  仁君                 世耕 弘成君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 橋本 聖子君                 畑   恵君                 松村 龍二君                 森山  裕君                 矢野 哲朗君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 石田 美栄君                 木俣 佳丈君                 久保  亘君                 佐藤 泰介君                 千葉 景子君                 寺崎 昭久君                 前川 忠夫君                 荒木 清寛君                 福本 潤一君                 益田 洋介君                 緒方 靖夫君                 筆坂 秀世君                 宮本 岳志君                日下部禧代子君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 月原 茂皓君                 椎名 素夫君                 山崎  力君                 島袋 宗康君    衆議院議員        修正案提出者   赤城 徳彦君        修正案提出者   大野 功統君        修正案提出者   中谷  元君        修正案提出者   丹羽 雄哉君        修正案提出者   遠藤 乙彦君        修正案提出者   佐藤 茂樹君        修正案提出者   山中あき子君        修正案提出者   東  祥三君        修正案提出者   達増 拓也君        修正案提出者   西村 眞悟君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     陣内 孝雄君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        内閣官房内閣安        全保障危機管        理室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障・        危機管理室長   伊藤 康成君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        内閣法制局第二        部長       宮崎 礼壹君        防衛庁長官官房        長        守屋 武昌君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        防衛庁人事教育        局長       坂野  興君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済局長  大島正太郎君        外務省条約局長  東郷 和彦君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        通商産業省貿易        局長       佐野 忠克君        運輸省航空局長  岩村  敬君        海上保安庁長官  楠木 行雄君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君     ─────────────   本日の会議に付した案件日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間に  おける後方支援物品又は役務相互提供に  関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間  の協定を改正する協定締結について承認を求  めるの件(第百四十二回国会内閣提出、第百四  十五回国会衆議院送付) ○周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保  するための措置に関する法律案(第百四十二回  国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案(第百四十二  回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送付  ) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、本岡昭次君及び高野博師君が委員辞任され、その補欠として木俣佳丈君及び益田洋介君が選任されました。  また、本日、小泉親司君が委員辞任され、その補欠として宮本岳志君が選任されました。     ─────────────
  3. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の三案件を一括して議題とし、日米防衛協力のための指針に関する集中審議を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 依田智治

    依田智治君 おはようございます。自由民主党の依田智治でございます。  総理以下、各大臣、また衆議院の方からも御苦労さまでございます。  きょう、ここへ来るに先立ちまして、依田氏はちょっと熱中すると声が物すごく早口になると、歌も早口が得意なものですから。それと、専門家でもございませんが、多少専門をかじった者としては、難しいことを易しく言うのが本来の専門家だ、こういうことでございます。そちらにも相当な専門家がおられますので、きょうはひとつわかりやすく、きょうも総括的集中ということで一日テレビがございます。国民皆さんに、本当にガイドラインとは何だと、この法律というのは本当に我々のためになる法律なのか、このあたりを本当にわかりやすくやってみたい、こんな感じでおりますので、よろしくお願いしたいと思います。  衆議院でもう既に、この一覧表を見せてもらいましたが、公聴会中央、地方も含めて八十時間やられている。当院においても昨日、終日やった。もう大体だれが立っても問題点は出尽くしているなという感じがするわけです。  結局、この法律は、国の安全保障危機管理にとって極めて重要な法律である、平和を確保するための極めて重要な法律だというように位置づけるか。一方、戦争戦争への法律戦争法案アメリカ戦争に加担する法案とか、自治体国民戦争に動員する極めて危険な法案だ、こういう二つの見方があるわけでございます。  結局これは、国の安全保障危機管理というものをどう考えるのかという、その基本のスタートにおいて違いがあるのではないか。私はいつも質問に立つと同じようなことを言うんですが、三点だけ、きょうは審議全体に通じる共通の問題なので、私はぜひ言わせていただきたい。  その一つは、自分の国は自分で守るということが独立国家としてのまさに基本なんです。それで、国の任務として防衛があるわけです。後に防衛省の話もしますが、しかし、国が自衛隊をつくって、自衛隊が一生懸命訓練しても、それだけでは国は守れないわけです。結局、国の構成要素たる自治体国民、これが一体になってその国を守るという気持ちがあってこそ、その国というものは守られる、この基本ですね。この周辺事態法案第九条、国以外の者の協力、当たり前のことです。大分遠くだけれども火事がある。風向きや乾燥によってはこっちまで燃えてくるぞというときに、これは家主の仕事だなんと言っている暇はないわけです。やはり全部一体となって重要な問題と位置づける。この法案を、そういう国だけではなくて自治体も含め、国民も含め、極めて重要な法律だということで位置づける、この問題が一つ。  そうはいっても、一国だけでいかに防衛力を整備したって国は守れない。そうすると、国連があり、今NATOが問題になっていますが、そういう地域安保があり、アジア地域ではARFというのがあるけれども、必ずしもまだ安全保障では機能していない。そうなってくると、二国間の防衛協力関係というのが国家存立にとって極めて重要だ、こういうことなわけです。  そう考えた場合に、我が国アメリカとの同盟という道を選んでいる。そして、同盟というのは、私が言うまでもなく、我が国日露戦争をやったときにイギリスと日英同盟をやっていた。バルチック艦隊がどっと来るときに、長い航海だからどこかの港に寄らなきゃいかぬ。そういうときに、港へ寄って良質の石炭を補給し、隊員が休養する、そしてまた出ていく。それが続いてこそ、そのサポートがあってこそ戦える。ところが、当時は英国は参戦こそしなかったけれども、側面から、ソ連艦隊が来てもあれを貸すなというようなことで、ソ連はさんざん苦労して日本海に来たときはくたくたになっていた。  ここにロジスティックサポート、要するに補給の重要性というのはそこにある。戦闘に参加しないまでも、それをサポートする行動というのはいっぱいあるわけで、我が国のこの法律というのも、戦闘区域と一線を画する。わかりにくいけれども、我が国政策としてそういう方針でこの法律をつくっていく。これも立派な考え方である。  そういうことで、基地を提供すること自体が既に同盟関係において一方に味方しているわけですから、アメリカ戦争に加担する法律じゃなくて、アメリカとの同盟関係をより強固にするための法律だ、ここの位置づけが重要じゃないか。  あと一つ演説ばかりぶっていて申しわけないですが、きょうの基本ですから話しているわけです。もう一つは、軍事というものを戦後日本というのは忌避する傾向がある。例えば我々の体でがんがんなんというものは、聞くのも嫌だと思ったっていつかしらはなっているかもしれない。こんな演説をしているとどこかに発生するかもしれません。そういう点を考えると、嫌だけれどもこれに対して対決して、予防のために最善を尽くすと同時に発生したらあらゆる手だてを講ずる。軍事というのもそうです。いかに外交努力をしても、なお軍事に頼らざるを得ないときがある。そこをどうするのか。安全保障というもの、軍事というのは、それがすべてではないけれども不可欠の要素だ。  したがって、ガイドライン法案だって、周辺武力紛争が起こっているというのは、もう戦争が起こっているかもしれない、そういうときにどういう対応をするか、こういうことですから、場合によったら軍事関係しているんです。関係法案なんです。しかし、独立国家としてそれを忌避できない。しかし、それをさらに拡大しないように、また我が国にも波及してこないようにするためにどういう手だてが憲法のもとであるのか。これが我が国の直面している問題である。  そういう意味で、今回の三つの法案、先ほど委員長が長々読まれましたが、非常に長い法律で、法律名だけ聞いていてもどういう法律かわからぬ。周辺事態法案、ACSAというアメリカとの関係物品等を供与する法案と、邦人を輸送するときに飛行機だけじゃだめなので船も使いましょうと。当たり前だ。船というのは甲板とかその他に乗せれば相当乗るんです。飛行機は定数があるから乗れない。そういう当然のこんなことを戦後五十年になって今ごろどうしてやっているのか、こういうぐらいな法律ですから、私はぜひこの法律は通さなきゃいかぬ、こんな感じでおります。  そこで、総理。これから第一問ですが、総理大臣基本的要件の第一として私が挙げたいのは、国家安全保障危機管理というものに対して的確な識見を持つということじゃないか。この大勢の中でも、将来総裁を目指そうという人はそういう国家安全保障観というものを政治家として心にしっかりと確立しておくことが大変重要である。そういう点から、総理、今回のガイドライン関連法案というものをどのように総理自身認識しておられるか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  5. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま依田委員から、日本のあるべき姿の中でいかに我が国国民の生命と財産を守っていくかにつきまして委員の御見解をお示しいただきまして、ある意味ではそのことに尽きるのではないかというふうに考えておりまして、まず自分の国は自分で守らなければならない、これは基本でございまして、その意思なくしてみずからの国を守り得ないというふうに思っております。そのためには国民の理解と協力を得なければならないという御指摘もまたそのとおりだろうと思います。  がしかし、防衛の面で我が自衛隊、精強でかつ訓練が行き届いておりますけれども、しかし多くの外敵といいますか外国からのかりそめにも侵略というようなことがあった場合には、それに相対するには、自国の防衛力とともに、アメリカとの安全保障による協力によりましてその抑止力を持つということが極めて大切だと。そういう意味では、今、委員の御指摘と全く私自身同じ考え方に立脚いたしておると思っております。  そこで、しばしば私は対話抑止ということを申し上げておるわけですが、これは単に北朝鮮に対するだけでなくして、国際社会に対しましてもこのことは極めて重要なことだと思っておりまして、対話ということは、先ほどのお話の中でいえば外交によって他の国との関係を極めて友好に持していく、そしていやしくも我が国が攻撃されることのないように、また諸外国との友好親善のうちに我が国立場をそうした脅威にさらされないようにいたしていくことが極めて重要でありまして、外交的手段、いわば対話により国際社会における我が国立場を明らかにしていくということは必要だと思います。  一方、同時に、常に備えあれば憂いなしということはこれまた古今東西、国の存立にかかわることでありますから、そうした意味での抑止的効果ということも常に考えていかなきゃならない。そこで、先ほど第三の日米安保につきましてその実効性を極めて強固にし、その抑止力に対して極めて有効的に対処すべきというのが今回のガイドラインの趣旨だろうと思っております。  そういう意味では、いろいろ言われておりますように、いわゆるアメリカとの協力がかえって日本の安全に大きな危惧をいたす、極端な言葉で言うと戦争法案だなどということは全くあり得ないわけでありまして、まさに日本の平和と安全を確保する意味での法律である、こういうことをぜひ国民皆さんにも再三御理解いただく努力をいたしながら、この法律について御成立をさせていただき、その実効性を上げさせていただきたいと、こう念願しておるところでございます。
  6. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。  そこで次に、この法案についてガイドライン関連法案とかいろいろ言われておるわけですが、皆さん国民の中にもガイドラインという言葉は非常に際立ってきて、私なんか、依田さん、ガイドライン大変だね、ところでガイドラインて何ですかと、こういうような言葉をよく聞かされるわけです。それで今回、大分古くなったガイドラインを新しくして新しいガイドラインをつくっていく、そのうちの周辺事態に関する部分を法案化したというのがこの周辺事態関連法案なわけですね。  そこで、外務大臣が適当かと思いますが、外務大臣、聞いている国民皆さんにひとつこのガイドラインというものはどういうものなのか。これは条約じゃないんですよね。指針と言っている。それを今度法律にしよう、こうしているわけですが、ガイドラインとはそもそもどういうものであって、旧ガイドラインのどういう点がぐあいが悪くなったというのか、古くなったので新しく今回のガイドラインをつくったのか。このあたり、ちょっと今回の法案との関係で、ポイントを絞ってわかりやすく御説明していただくとありがたいと思います。  よろしくお願いします。
  7. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日米安保条約に基づく日米安保体制でございますが、過去四十年間、我が国及び極東に平和及び安全をもたらしただけではなくて、アジア太平洋における安定と発展のための基本的枠組みとして有効に機能したところでございます。  この点につきましては、九六年の日米安保共同宣言におきましても、日米安保体制が二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基盤であり続けることを再確認しているところでございます。  このような共同宣言を踏まえて、平成九年九月に日米両国政府が公表した新たな日米防衛協力のための指針は、冷戦終結後も日米安保体制のもとでより効果的かつ信頼性のある日米協力を行うため、日米防衛協力のあり方に関する一般的な大枠及び方向性に関する考え方を取りまとめて政治的な意思表明として発表した文書でございます。
  8. 依田智治

    依田智治君 今、政治的意思表明ということでございますが、旧ガイドラインと新ガイドラインの違いという点はどこにあるのか、この点を聞いたんですが、答弁漏れになっています。
  9. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 旧ガイドラインにおきましては、主に我が国に対する武力攻撃に際しての日米対処行動に関する事項等に関する記述が中心でありました。これに対して新指針におきましては、我が国に対する武力攻撃の際の日米対処行動に加えて、新たに我が国の平和と安全に特に着目し、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に際しての日米協力に関する事項等が盛り込まれているわけでございます。  現在、国会でお諮りしている指針関連法案等は、このような新指針実効性を確保するために、周辺事態に対応して我が国が実施する対米協力を含む措置を定めるものであります。御審議を得て、早期に成立することを期待しているわけでございます。
  10. 依田智治

    依田智治君 旧ガイドラインはそういう研究をしようということで始まり、共同作戦研究とかいろいろな研究日米間でやったわけです。ただ、これを実行に移すという形で法律をつくるという発想はなかったわけです。それは研究指針であった。ところが、今度のガイドラインというのは、今外務大臣から話がございましたように、周辺事態についても、旧ガイドラインでは極東について研究しましょうということになっていたのが研究しなかった。今度のガイドラインは詳細にこれについて規定している。しかもあと一つ大きな特徴は、これを各政府はそれぞれ主体性を持って実効あるようにこれを、正式なもので読みますと、「政策措置に適切な形で反映することが期待される。」という文言がガイドラインに入っているということは大変に重要なことであって、それだけ日米同盟関係というものがそういう実際の協力、現実の協力まで来ているということが非常に重要だ、それを今回政府主体的立場法案化している、こういうことじゃないか。  そこで、このガイドラインというもの、これは旧ガイドラインができたのは昭和五十三年ですから、日米安保条約が改定になったのも一九六〇年、六〇年安保と大騒ぎになった。大分たってから、やっと旧ガイドライン研究だけが始まったわけです。そうしてみると、安保条約というのは相当な長い歴史の中で、実際上、こういうガイドラインもなくて日米協力なんてどうやっていたのかという時代もあったわけです。  ガイドライン重要性というのをクローズアップする意味防衛庁長官にお伺いしますが、そういうのがなかった以前というのはどういう形で防衛協力がなされておったのか。この点を御報告いただきたいと思います。
  11. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 昭和五十三年に旧ガイドラインが策定される以前におきましても、昭和三十五年に締結されました日米安保条約及びその関連取り決めに基づきまして、我が国の施設・区域提供米軍からの装備品供与等協力がなされたところであります。  しかしながら、今お話しのように、旧ガイドライン策定前においては日米防衛面における協力体制に関する研究協議のようなものは行われておらなかったわけでありまして、その結果、例えば我が国に対して武力攻撃が発生した場合に、日米両国が協力してとるべき措置の具体的内容や範囲は不分明な状態でございました。  そこで、こうした面の改善を図るために、旧ガイドラインにより日米防衛協力のあり方についての基本原則を確立し、以後、これに基づく共同作戦計画を中心とする具体的な研究を行ってきたところである、こういう次第でございます。
  12. 依田智治

    依田智治君 こうして眺めてきますと、安保条約ができて間もないころは自衛隊もそれだけの実力もないし、ほぼ米軍に頼っておれば済んだ、そういう国際情勢でもあった。ところが、だんだん国際情勢も複雑化し、そういうことだけではやはり国の安全が確保できないという状況の中で旧ガイドラインができ、研究をし、さらに研究だけではなく実行に移していくということが極めて重要だ、こういうことになり、今回の法案があるわけです。  そこで、次にこのガイドライン研究しましょうというのは、クリントンさんが来て橋本総理と、これは平成八年ですね、日米安保共同宣言というのがなされた。  安保条約というのは、東西対立の中でソ連等を目標にしてつくっていた法律だからもう意味がないんじゃないかというような意見もある中で、いや、我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の安全にとっても極めて重要なものなんだと。これは安保上、当時、再定義だとか、今までよりも新たな意味をふやす再定義だという意見も出ましたが、我々は、もともと安保条約というのは我が国の安全並びにアジア極東、ひいては世界の安全に対して重要なものとしてこれがあったということで、この重要性を今日の情勢下において再確認した。私は、この安保共同宣言というのは、そういう意味では大変に重要な同盟関係におけるきずなを深めるスタートとして極めて重要なものだ、こう位置づけておるわけです。  そこで、これは総理にお伺いしますが、そういう点に立って、安保共同宣言、こういうものの意義づけ、それと今回のガイドラインとの関連等についての総理の御見解を一言お願いします。
  13. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これまた依田委員指摘のとおりでございまして、平成八年の四月に、日米安全保障共同宣言は、冷戦後も依然として不安定性、不確実性が存在している認識のもとで、日米安保条約に基づく日米安保体制の重要な意義を改めて確認し、二十一世紀に向けた日米同盟関係のあり方について内外に対する意思を明らかにいたしたものでございます。したがいまして、現在国会にお諮りいたしております周辺事態安全確保法案等は、同共同宣言を踏まえて、平成九年九月に日米政府が公表した新たな日米防衛協力のための指針実効性を確保するためのものでございまして、日米安保共同宣言指針関連法案等にとり重要な意義を有することについては、依田委員指摘のとおりであると思っております。  日米安保条約が吉田首相によって調印されて以降、六〇年の安保改定、七〇年の自動延長と時代は下ってきたわけでございます。六〇年のときもそうでしたが、これは従来、法的な根拠その他につきましても日本としてもきちんとした対応をしなきゃならぬ、またアメリカとしても事前協議その他の条項を導入して、それぞれの時代に即して変化をしてきたわけでありますが、改めて冷戦後の国際情勢の中で、今なおこの北東アジアにおける看過できない状況にかんがみまして、再びきちんと日米間がしっかりとこの実効性を上げるために、従来の上に新たなる観点に立って対処しようといたしたものが今回の処置であるということでありまして、これが通過をいたし、実施いたしてまいりますれば、必ず日米間のより一層の信頼を深め、そしてその効果が発揮できるものと、こう認識しておるところでございます。
  14. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。  衆議院の方でも、「日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の効果的な運用に寄与し、」というのを目的の中に入れたという修正がなされたわけで、私がるるきょう述べてきたそういう思いもあり、こういう規定が入ったのだろうと、こう想像しており、大いに賛成しておるわけでございます。この点について、どなたか代表者で結構ですから、この周辺事態法案との関連において、安保条約重要性、それから共同宣言重要性というものをお聞かせいただければありがたいと思います。
  15. 大野功統

    衆議院議員(大野功統君) 依田先生は御専門家でいらっしゃいますから、御質問の中に既にお答えがあったのではないかと思いますけれども、九六年の日米共同宣言、これはもう時代認識は総理からお話がございました。いわば日米安全保障条約日米同盟関係が大事であって、その同盟関係によって二十一世紀のアジア太平洋の安全と平和を確保していこう、こういうことでガイドラインをつくりましょうと、いわば試合開始のキックオフをやっている、こういうことだと思います。  それから、新ガイドライン、九七年でございますが、これもお話が出ておりました。これは、今までのガイドライン日本有事を主にし、また極東有事ということで考えられておりましたけれども、平素から行われる協力日本有事、それから周辺事態協力、こういう分野において協力していきましょうという、いわば政治的なコミットメントをやっている。そして最後に出てきておりますのが、そのキックオフに続いて政治的コミットをやって、それから指針実効性を確保するためにそれを法制化している。いわば一連の流れで具体化が始まっている。それはいわば二十一世紀における日米安保条約の、あるいは同盟関係と言っていいかと思いますけれども、友好がいかに大切かということを再確認というか法制化している、こういうことと私どもは理解しております。  そこで、今、依田先生からお話のありました日米安保条約の有効な運用に資しと、こういうような文言を加えたことでありますが、これは私は日米安全保障条約ガイドライン法案関係をきちっとうたって、そしてさらに日米安保条約が大事なんだということを再確認している、このように理解しております。
  16. 依田智治

    依田智治君 日米安保共同宣言がなされたときもそうですが、こういう法案審議等を通じて、アメリカの世界戦略等に追従するとか、アメリカ主導で日本の主体性がないような発言がいろいろあるわけでございますが、私は先ほど三原則の一つ自分の国は自分で守る、自分の国の防衛政策というのは自分の頭で考えるということが極めて重要だと、こういうことを述べたわけです。  日米安保共同宣言が出る前年の七年十一月に、これは総理等も中心になり安保会議等でも大変な議論をしたあげく、我が国政府として閣議決定した新しい防衛計画の大綱というのが我が国防衛政策基本としてつくられておる。これを詳細に読んでいただけば、既にその中に、これまでは我が国に限定小規模な攻撃があったとき、それにどう対処するかというような観点だけに集中して物を考えていたが、それではだめだ。テロを初めいろんな状況が起こり得る。それに対して独立国家としてどう考えていったらいいかということについて、これもまた旧防衛計画の大綱というものを見直して新しい大綱ができ、その中でこの周辺地域における事象に対して対応するという問題についても既に我が国としての基本方針を述べられている。その基本に立って安保共同宣言があり、今日のガイドラインから関連法があるんだということをしっかり確認しておく必要がある。  そういうことで、防衛庁長官に、旧大綱から新大綱になり、今の我が国防衛政策基本になっておるこの新防衛計画大綱、その中でこの周辺事態法との関連においてどういう方針が述べられているのか、このあたりをわかりやすく説明していただければありがたいと思います。
  17. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今お話のございました平成七年十一月に策定されました防衛大綱と前大綱との違いは、まず新防衛大綱の今後の防衛力の役割といたしまして、主たる任務である「我が国防衛」の項に加えまして、「大規模災害等各種の事態への対応」、それから大事なことでありますが、「より安定した安全保障環境の構築への貢献」、こういうものを挙げております。日米安保体制についても、将来に向けての日米安保体制の意義及びその信頼性の向上を図り、これを有効に機能させていくための具体的取り組みの重要性について整理して述べているところであります。  御指摘我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合につきましては、防衛大綱においては、「憲法及び関係法令に従い、必要に応じ国際連合の活動を適切に支持しつつ、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応する。」、こういうふうに記述されているところであります。  このように、防衛大綱は、冷戦終結後の国際情勢や自衛隊に期待される役割の変化等を踏まえまして、今後の我が国防衛力のあり方についての新たな指針として策定されたものとして意義あるものと考えているところであります。  私どもは、かかる防衛大綱のもと、今後とも積極的に防衛政策を推進してまいりたいと考えております。
  18. 依田智治

    依田智治君 防衛庁長官が今御報告くださいましたように、この大綱の中に既に今日の法案の中にある「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態」、何回か耳にしたこの表現は、既に我が国の大綱の中で表現され、それに基づいて今日まで来ておる、この点を我々としても認識しておく必要があるのじゃないか。  本来は大綱から始まってずっとガイドライン法律となるところを逆に来たのは、やっぱりそういう意味を認識する意味で来たわけですが、そういう点からしても今回の法案というのは我が国安全保障にとって私は大変重要である、これは一刻も早く通す必要があるのじゃないかということ。  さて、この法案をつくっただけで事足れりというのじゃなくて、この法律をさらに実効性あるものにするためには相互協力計画というか、これに基づく相互協力というものをどういう形でやるか。もう既にいろいろ研究日米双方でやっているわけですが、日本有事の場合の共同作戦計画とともにそういうものをしっかりつくって、総理もしっかりとそれを確認してそしてシビリアンコントロールというものをしっかりやる、それで初めてこれが確定されるわけです。  そういう意味で、安全保障危機管理という視野に立った我が国政策というものがしっかりしたシビリアンコントロールのもとにしっかりとなされるように、これは我々としても留意していく必要がある、この点を考えておる次第でございます。  次に、やはり憲法との問題です。この法律について戦争法案だという以外に、私のところに何かいろいろ紙が来たりして憲法違反の法律と、こういう憲法との関係というものを一回ここでクリアしておく必要があるのじゃないか。  そこで防衛庁長官、今度周辺事態法案では、日米両国が主体的にする行動米軍を支援する行動、実際に自衛隊なり米軍が運用面で協力する、こういう三つのことが規定されている。その中でやはり我が国が実施する以上、現行憲法というものの範囲内でやるということが常に念頭にあって法律というのはつくられておるんですが、この周辺事態関連法案における協力と憲法上の限界というようなものについてどのような認識のもとにこの法案が策定されているか、まず防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  19. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 政府案に基づきまして実施することを想定しておりました後方地域支援、後方地域捜索救助活動、それから船舶検査活動は、それ自体は全く武力の行使には該当しない、またこれらの活動をやる場合には後方地域等を設定して実施区域を定めてやるのでありまして、米軍の武力の行使との一体化の問題を生ずることは想定されておらない、そういう意味で憲法との関係で問題を生ずることはない、私どもはそう考えております。  したがって、政府案に定められていた規定に従いまして行われる御指摘の活動について、憲法上の限界が問題になるということはないものと考えております。
  20. 依田智治

    依田智治君 そこで、法制局長官にお伺いしますが、我が国憲法上認められておる自衛権、そもそも自衛権というのはどういうものなのか。  いわゆる独立国家存立する以上、自衛権というのがなければ独立国家として存在し得ないわけですから、自衛権とはそもそも何なのか。それから、憲法上認められておる自衛権というのはどうなのかということについての正式の見解を、ここでお話しいただくとありがたいと思います。
  21. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) まず、お尋ねの第一点である自衛権とはいかなる概念であるかということでございますが、一般に国家に対する急迫不正の侵害があった場合に、その国家が実力をもってこれを防衛する権利、このように説かれているところでございます。  なお、御承知のとおり国連憲章の五十一条におきましては、今述べましたような自衛権、すなわち個別的自衛権のほかに集団的自衛権という概念を認めております。この場合の集団的自衛権と申しますのは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が攻撃されていないにもかかわらず実力をもってこれを阻止することが正当化される地位という意味で使われていると理解しているところであります。  次にお尋ねの、では我が日本国憲法との関係では一体どうなのかということでございますが、御承知のとおり日本国憲法は、いわゆる戦争等を放棄し、また戦力はこれを保持しないというふうに規定しているわけでございますが、これによりまして我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されていないというふうに考えられているところでございます。すなわち、その理由にわたるわけでございますが、憲法前文がいわゆる平和的生存権を有することを確認しているということを踏まえますと、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得ることは国家固有の権能の行使として当然であり、憲法九条がこれを禁止しているとは到底考えられない、これは有名な最高裁判所の砂川事件判決においても確認しているところでございます。  したがいまして、我が国に対して武力攻撃があったという場合におきましては、平和と独立を維持回復するため、すなわち換言しますと、我が国防衛するために必要最小限度の実力を行使する、またそのための裏づけとなる自衛のための必要最小限度の実力を保持するということは、もとより憲法の否定するところではない、このように解しているところであります。  大体以上のとおりでございます。
  22. 依田智治

    依田智治君 関連してもうちょっと聞こうとしておることがあるんですが、この周辺事態法における我が国行動、今、法制局長官、国家に対する急迫不正の侵害があった場合に実力をもって阻止する、そういう事態じゃないわけで、そうなると、この周辺事態法における我が国行動というのは、広い意味での自衛権の発動でもない、個別的自衛権の発動でもない、集団的自衛権の発動でもないとなると、結局これはどういう行動なのか。  言うなれば、国家安全保障のために独立国家として必要な措置をとり得ることは当然なので、自衛権の発動まで至らないが独立国家としてとる必要な行動、こういうことなのか、ここらあたりの性格をどのように解しておられるか、ちょっと法制局長官。
  23. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) お尋ねの件につきましては、結論から申し上げますと、後段で言及をされたような意味であろうということでございますが、敷衍して申し上げますと、周辺事態と申しますのは、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態ではございますけれども、いまだ我が国に対する現実の武力攻撃が開始されている事態ではない。したがいまして、自衛権を発動できる要件を満たしているわけではございません。  この法案に基づき実施することを予定している後方地域支援等の活動、これは先ほど防衛庁長官からも答弁がございましたように、それ自体は武力の行使に該当しないと。また、その活動が米軍の武力の行使との一体化を生ずるものではないというふうに繰り返し説明したところでございまして、この法案が予定している行動と申しますのは、自衛権の発動としての活動でないということは明らかでございます。  他方、我が国は、先ほど申し上げましたように、平和的生存権を確認する前文とか、あるいは生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を最大限に尊重すべきことを規定する憲法十三条の規定等の趣旨からいたしまして、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うして、これらの責務を果たすことができるように憲法の定める範囲内で必要な措置をとり得る、これは主権国家固有の権能の行使として当然のことでございます。  これは狭い意味の自衛権の問題にとどまらない問題でございまして、周辺事態において法が予定します後方地域支援活動等は、以上に述べました考え方に従いまして、国のとるべき政策の選択として、我が国の平和と安全を確保する観点から、日米安保条約の目的達成に寄与する米軍に対して、憲法九条が禁止する武力の行使等に当たらない限界内で主権国家固有の権能に基づく行動として行うものであるということが説明できようかと思います。
  24. 依田智治

    依田智治君 衆議院の方の修正で、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」というのが周辺事態の定義に追加された。そこで、これは自衛隊法七十六条に防衛出動の規定がございますが、括弧の中に、「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」というのがあって、おそれがあれば防衛出動できるよと。これは、よくよく見てみると大分気を使って書いているなと。「そのまま放置すれば」というのがついており、「我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれ」ということだから、これは自衛権の発動する事態じゃないなと。しかし、ほっといたら大変なことになるよという事態だと、だから我が国の平和と安全にとって極めて重要な事態なんだと。これをかみ砕いてみると非常によくわかる。私はあえてこんなことを入れなくてもと思っていましたが、今つらつらと読んでみますと割合わかりやすくなっているのかなと。  そこで、衆議院修正案提出者の方は、この自衛権との関係、それからこれをここへ入れた思いというか、これはどこにあるのか、この点をどなたか代表して御報告いただければと思います。
  25. 大野功統

    衆議院議員(大野功統君) まず、自衛隊法七十六条との関係でございます。  七十六条も確かに「おそれ」という言葉があるわけでございますが、おそれといった場合、一つの例で御説明いたしますと、武力攻撃というのは相手国の意図がある、これが一つ。もう一つの条件は、能力あるいは軍事的展開と言っていいかもしれません。意図と能力がある。意図も明白、能力もはっきりしている、しかし現実の武力攻撃はない、これはおそれだと思うんです。  でも、ここに書いてあります「そのまま放置すれば」「武力攻撃に至るおそれ」、これはどちらかあるいは両方とも灰色という状態じゃないか。相手の意図はわからないけれども軍事展開がある、こういう場合があろうかと思います。その場合にはやはり外交努力で相手の意図のところを真っ白にしていかなきゃいけない、こういうことだと思います。  したがいまして、明らかに七十六条の「おそれ」と、「そのまま放置すれば」「武力攻撃に至るおそれ」は違う、つまり武力行使にならない、自衛権の問題ではない、こういうことでございます。  それからもう一つ、実際にどうしてこういうことを入れたのかということでございますけれども、例示的にわかりやすくするということでございます。例示的に、我が国の安全と平和に重要な影響を与える事態の代表的な例がこういうことじゃないかということで、代表的な例を掲げることによりましてこの周辺事態というのをわかりやすく説明している、わかりやすく説明するためにこういう文言を入れさせていただいたということでございます。
  26. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。  次に、先ほど法制局長官、集団的自衛権の関係ないという話がございましたが、きのうも夜遅く私の宿舎にある年輩の女性の方から電話があった。自分の息子を再び戦場に送らないでくださいと。こっちも、あした質問があると思って早く寝たら夜中にリーンと電話がかかるから、また何か嫌な報告や連絡でもあったら大変だと思ったら、そんな電話がかかってきた。何ですか、それはと言ったら、今のガイドライン法案、また戦争に息子が送られることになると。そんなことをどこに書いてあるんですかと言ったら、後方地域支援と言うけれども、後方地域というのは兵たんですよ、どこかで聞いた言葉ですが、そういうようなことで、これはまさに一体だ、だから戦争に加担することになる、こういうことを盛んに言ってきて、いろいろな弁護士会その他からの文書等も来ておりますが、そういう部分が非常に多い。  そこで、この後方地域支援、戦闘区域と一線を画すということで、しっかりと区分けして補給なりなんなりする。さっき日露戦争の際のいろんな補給の重要性の話をしましたが、そういうことと集団的自衛権の行使とは違うんだという点を、法制局長官、ひとつ御説明いただければありがたいと思います。
  27. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) まず、集団的自衛権とはいかなる概念であるかということでございますが、これは先ほども申し上げましたように、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国は攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することを正当化される地位、このように説明されるのが通常でございます。  したがいまして、この武力攻撃を実力で阻止するということでございますから、この実力で阻止するというのは武力を行使して阻止するという意味を持つわけでございます。  そこで、今審議をいただいている法案に基づく後方地域支援等がその武力行使に当たるのかどうかということがポイントになってくるわけでございますが、これはもう今までも繰り返し御説明いたしておりますように、要するに今この法案で実施することを予定している後方地域支援等の活動と申しますのは、それ自体武力行使に当たらない、これは内容を十分お知りいただければすぐに御理解いただけることであろうと思います。  すなわち、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対する補給とか輸送とか修理あるいは医療、通信等というのが支援の内容でございますから、これ自体がその武力の行使に当たるということは、よもやだれもお考えにはならないであろう。  したがいまして、問題なのは、そういう行為が米軍の行う武力行使と一体化して、やはり評価としては我が国も武力行使をしているということになりはしないかという御疑問に対してであろうと思います。  この点につきましては、今までもるる御説明申し上げておりますように、まずそれを行う場所というのがいわゆる後方地域である。後方地域と一般的に言ってしまうものですから余り印象がはっきりしないわけでございますが、この後方地域と申しますのは、法案ではっきりと定義しておりますように、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」、こういうことでございますので、そういう後方地域内で行われるということであり、しかも事態は刻々と変化するわけではございますけれども、それに対応して実施区域の指定の変更とか活動の中断、一時休止についても規定している。  したがいまして、そういう意味における後方地域内においてのみ行うということが現実にも確保、担保される仕組みになっている。このような仕組みのもとにおける後方地域支援と申しますのは、米軍の武力行使との一体化の問題を一般的に生ずるものではないということでございます。  そういうことになりますと、我が国が武力を行使して武力攻撃を阻止するという部分が生ずる余地がないわけでございますから、我が国が集団的自衛権を行使するに至るという心配は一切生じないということは、これは詳しく説明すればだれでもおわかりいただけることではなかろうかと思う次第でございます。
  28. 依田智治

    依田智治君 今詳しく説明していただいたんですが、必ずしもこれはわかりやすいとも思わないんです。私も実はそう思っているんです。  ただ、政府はそういう方針で、実力行動に直接参加しない、戦闘に兵を送らない、兵といっても自衛隊ですが、戦闘自衛隊を送らない、そしてまた、それとまさに密接不可分みたいな行動はとらない、こういう方針でやっておるんだと。それを、ここから先は集団的自衛権にかかわるがここから先はならないという説明はなかなかわかりにくいんじゃないかと思います。このあたりはまた私は憲法問題としてしっかりと議論していく必要があると思いますので、ここではこの程度にとどめます。  そこで、防衛庁長官にちょっとお伺いします。我が国戦闘行為に自衛隊を送らない、これは当たり前、そういう政策をとっておる。また、支援する場合でも、この周辺事態法の別表第一に三つばかり例外が備考欄に書いてありますね。「物品提供には、武器(弾薬を含む。)の提供を含まない」ということ。あと一つは、「物品及び役務提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まない」。さらに、「物品及び役務提供は、公海及びその上空で行われる輸送(傷病者の輸送中に行われる医療を含む。)を除き、我が国領域において行われる」。こういう備考欄がついておる。  これは、この法律で、我が国は直接戦闘にかかわらないし、直接戦闘に極めて近接した行動はとらないということですみ分けしている、こういうことだというように私は解釈しているんですが、集団的自衛権との関係で、やはりこういうことをやると集団的自衛権に踏み込むおそれがあるからということでこういう除外をしたのか、どういう理由でこれが除外されているのか、この点を御報告いただければありがたい。
  29. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) この法案の別表第一の備考には、今お話がございましたとおり、「物品提供には、武器の提供を含まない」、「物品及び役務提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まない」、「物品及び役務提供は、公海及びその上空で行われる輸送を除き、我が国領域において行われる」ことがそれぞれ規定されておるわけでございますが、これらは、いずれも米軍からの要望がなく、このような支援を我が国が行うことが想定されないことからその旨を明記したというのが真相でございます。  我が国の行う活動と憲法との関係につきましては、個別の事態に即して慎重に判断する必要がありますけれども、今申し上げたように、我が国が行うことが想定されず、法案上も明文で支援対象から除外されているものにつきましては、御指摘の集団的自衛権の不行使のような憲法との関係を仮定の議論に基づいて申し述べることはこの際差し控えたいと思います。
  30. 依田智治

    依田智治君 憲法の関係、特に集団的自衛権、先ほどちょっと法制局長官でしたかどなたか、国連憲章五十一条にも個別的、集団的自衛権というものは独立国家は持っておるということが述べられておりますし、日本国との平和条約をつくったときにもそれは第五条の中に入っておる。さらに、御承知のように、今問題になっている日米安保条約前文、これにも「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」ということが述べられておりますし、日ソ共同宣言でも触れられておる。  こういうことで、独立国家として当然なんです。これは一国が攻められたときに最小限守っていればいいというだけの時代と違って、世界がまさにグローバルな共存関係にあるときにおいては、やはりお互いに、同盟国がやられたら自分の国もやられる可能性があるという点も含めながら総合的に考えていかなきゃ国家存立できない、こういう時代になってきておるわけです。  そこで、総理。これは法制局長官よりも総理に聞いておいた方がいいのじゃないかと思うんですが、これは政治という立場で考えた場合に、占領下、国家として日本は潜在的に個別的自衛権も集団的自衛権も持っているといったって、武器もないし、アメリカが占領しておるから何かあればアメリカが守ってくれるというときは何の必要もなかった。独立国家になってもなお日本自衛隊がまだまだひとり歩きももちろん部分的にもなかなか実力が示されない時代というのは、それはそういう自分の国を守るだけでもできないというような状態の時期もあった。それが今やこういう国際情勢の中でミサイルが飛んでくるかもしらぬ、国が攻められたときに、それで相手の国をぶっつぶすようなICBMを持っちゃいけませんよということになると、これで果たして国が守れるのか。  こういう点等も考えていきますと、憲法に認められる自衛権、これはもう国際的にも認められる自衛権、集団的、個別的、すべて日本も持っている。しかし、政府解釈のこれまでの問題は、必要最小限の自衛権、ここは私も賛成しているんです。憲法のこういう条項で言う以上、必要最小限の自衛権。そして、我が国の場合、個別的自衛権についても必要最小限、自分の国が攻められておるときでも必要最小限の自衛権という考えに立っているわけです。  例えば、ミサイル時代に、ミサイルが飛んでくる、これは相手の基地をたたく以外に方法がない。しかし、我が国がもしそれをたたく手段として戦略爆撃機とかICBM、大陸間弾道弾とか攻撃的空母を持っていってばっと基地をたたく以外にないというときに、そういうものを持つのは我が国の自衛の範囲を超える、こういうことになってくると、これは果たして国を自衛する気があるのかということになるわけです。  そしてしかも、ここから先は、問題は、集団的自衛権というものは、ましてや集団的自衛権は一切認められない、こういう考えに立っているわけですが、国家存立する以上、個別、集団自衛権というのは両方あり、必要最小限の集団的自衛権、私はある意味においては武力抗争、紛争が起こったときにロジスティックサポートをするというのは一種のそういうサポート行動だと思うんです。そこのところ、ここからここまでは集団的自衛権だが、ここから先は違うと。なかなか国民的にもすみ分けがわかりにくい。  こういう点を考えると、我が国は憲法上必要最小限の集団的自衛権も行使し得る、しかし過去の歴史その他の問題もあり、我が国政策として行使を控える、控えているんだ、これならわかるんです。そうすると今回の法律だって明快だ。戦闘区域と一線を画する地域まではやるという政策をとっておる。それが発進中というと何か戦闘に参加したような感じになるからそれは控えるということで御理解を賜っておる、こういうことなら非常にわかりやすい。  だから、そのあたりを、これはちょっと集団的自衛権の問題について、集団的自衛権はすべてノーという考え方独立国家としておかしいんではないか。これを議論していても時間がなくなっちゃいますから、私は、この際、早く憲法調査会等をつくって真剣に議論して、独立国家としてしっかりとした方策を考える、こういうことが大変重要じゃないか、こう思います。  総理、政治の最高責任者として、それから行政の最高責任者、自衛隊の最高指揮官という立場もある総理がこのあたりをどう考えられるか、一言御見解をお伺いしたい。
  31. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府は、憲法第九条は独立国家固有の自衛権まで否定する趣旨のものではなく、我が国に対する急迫不正の侵害があり、これを排除するために他の適当な手段がない場合に自衛のための必要最小限度の実力行使をすることは認められていると従来から一貫して申し上げてきておるところでございます。  そこで、集団的自衛権につきましては、国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているものとされておりまして、我が国が国際法上この集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然であると考えております。しかしながら、政府は従来から一貫して、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国防衛するため必要最小限度の範囲にとどめるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものとして憲法上許されないとの立場に立っており、この見解を変更する考えはないというのが内閣の基本考え方でございます。  しかし、今、依田委員が御指摘をされましたように、憲法上、集団的自衛権を持っておる。しかし、憲法でこの行使を許されないという意味での見解に対しまして、依田委員自身の今御見解を聞いておりますと、もしそのことを実行するということであれば、憲法を改正するのか、あるいは憲法解釈を変えるのか、いずれかの立場をとらざる限りにおいてはこの見解、依田委員考え方を実行することはできないわけでございます。  現内閣といたしましては私が答弁いたしたとおりでございますが、今、有力な議員たる依田委員もこうしたお考えを持たれておられる方もおられますし、あるいは憲法問題を含めて総合的に判断すべきであるという、この国会においてそうした考え方も含めまして憲法全体を見直したらよろしいのではないかという意味での調査会設置についての動きもございます。これは、要は国民の判断に期することではございまするけれども、一つのポイントとしては、こうした問題があること自体については認識をいたしておるところでございます。
  32. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。  私も政府・与党の一員であり、今ここで直ちに解釈を変えろとは言っておりません。ただ、私もこの法案を自社さきがけ体制のとき、協議その他から参加してずっと来ていますが、非常に難しいというか、ここから先はあるいはどうなのかという気がつくづくしておりまして、このあたり国家としてもうちょっとしっかりしておく必要があるんじゃないかという思いがあります。しかし、周辺事態法案は過去の政府の積み重ねてきた解釈等の上に立ってぎりぎりできている法案ですから、ぜひ通していく必要がある、こんな感じを持っておりますのでお伝えしておきます。  それからもう一点、この法案に関連して武器使用について、これは衆議院修正案提出者の方にも、後方地域支援活動で武器使用が入ったということでございますが、防衛庁長官、この法案における武器使用、関連法案で結構です、関連法案における武器使用というものについての基本考え方というのはどういう点にあるのか、この点をお伺いしておきます。
  33. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) この法案に基づく武器使用でございますが、法案第十一条において、後方地域捜索活動または船舶検査活動のうち、一定の職務を行うに際し、自己または自己とともに当該職務に従事する者の生命または身体を防護するための武器の使用を規定しておるわけでありますが、これはいわば自分の命を守る、自己保存のための自然的権利と言うべきものでありますから、そのために必要な最小限の武器使用は憲法九条一項で禁止された武器の行使には当たらない、これは先ほど来申し上げているとおりでございます。
  34. 依田智治

    依田智治君 衆議院の修正の中でもこの武器使用について追加がありましたが、この点、御報告をお願いします。
  35. 中谷元

    衆議院議員(中谷元君) 政府案においては、当初は後方地域支援においては武器使用の規定がなかったわけでありますけれども、戦闘地域から一線を画された後方地域支援においても万が一の不測の事態が生じる可能性を全く否定することはできない。例えば、国内において米軍の物資の輸送を行う場合に、武装集団の妨害を受けるといった事態もあります。また、公海上において米艦艇に後方地域支援として輸送を行う際に、付近の偽装漁船に潜んでいた不審者から妨害を受けるといった不測の事態も考えられます。  かかるような状況を考えますと、従来の自衛隊法九十五条の武器防護に加えて、実施隊員の安全を考えた武器使用に係る規定を追加すべきだということで、衆議院段階で各党合意をされて修正を行ったわけでございます。
  36. 依田智治

    依田智治君 武器の使用を個別的に、こういう事態についてはこうこうと。削除になりました船舶検査でも乗船検査の場合は使うとかいうような形になっていますが、今、中谷衆議院議員から御説明がございましたように考えますと、これは周辺事態法というのを、事態で、この場合はこう、この場合はこうというよりも、やはり一つの統一的考え方で、この法律における武器使用についてはこうなんだということをしっかりと確立しておくということが大変重要で、どういう場合は守るためにやる、どういう場合は武器防護のためにもやるよと。こういうはっきりと自衛隊行動等にかかわるような、しかも周辺事態というのはある意味においては軍事的事象にもかかわる問題ですから、不測の事態もあり得る。そういう場合に対する武器の使用規定というのは、個別的に少しずつつくるというよりも、きちっとつくるということが大変重要じゃないか、こんな見解を持っております。  それから、自衛隊法改正案の方では、今まではけん銃だけ持っていけというような閣議決定があったわけですが、内部秩序維持のためにけん銃を持っていくと。これが今度はちゃんと、身を守るため、しかも保護下に入った当該輸送の対象となった在外邦人等の防護のためにも使える、こういう規定が入った。これは適切だと思います。  私は、これは法案作成等に当たって論議の対象になったのかどうかお伺いしたいんですが、例えば後方地域捜索救助活動。これは、邦人輸送のとき、救出する邦人の安全、せっかく救出するんですから安全のために重要なんですね。救助をする人、せっかく救助をしているのに救助をする人がねらわれたときは見捨てて逃げちゃうのか、そこらあたりの一貫性を欠くのじゃないかなと。そういう隊員ないし救助する者の生命の安全のためにも使える、保護下に入ったそういう人たちに使えるという規定があってもいいような気がするけれども、そこのところはどんな感じでおられるのか。防衛庁長官、お願いします。
  37. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 法案十一条の武器使用の関連で申し上げますと、後方地域捜索救助活動の例を今先生お挙げになりましたが、この活動そのものはいわゆる後方地域でございまして、戦闘行為が行われないと認められる。したがいまして、救助対象者が攻撃を受けるといったようなケースはどちらかというといわゆる戦闘行為に類するものがまだそこで続いているようなケースではないかということで、私どもはそういう状況では捜索救助活動そのものを行わないスキームにしております。  しかしながら、救助に行きましたところが、例えばそういうある種混乱した状況でありますので、錯誤に陥った対象者の行為によってその隊員の生命、身体に危害が加えられる可能性が全くないとは言えないということで必要最小限の武器使用を認めていただきたいという仕組みで法案をつくっておるわけでございまして、私どもの考え方はそういうことでやらせていただいているということであります。
  38. 依田智治

    依田智治君 私の考えは、さっき中谷さんから御説明があったように、後方地域というまさに後方地域アメリカ協力してやる場合にも武器の問題を考えているとすれば、捜索救助、救助というのは戦闘の後ですから味方ばかりがいるわけでもないということも考えると、やはり救助する人ということも十分考えておく必要があるなというのはちょっと法案を読んでいて感じましたので指摘だけさせていただきたいと思います。  あと、武器使用の関係で今後十分検討しなきゃいかぬのは船舶検査です。これは今回の法案から外れたけれども、きのうも議論がありましたが、本法案成立までには衆議院の方で、また参議院の方も一緒にぜひともこれは成立させる必要がある法案だと。  その中で、威嚇射撃もできないようになっているんですね。これは自自連立協議、さらにその前は逆の意味で、とんでもないというようなことで、こんなことをやることは到底できないという議論と、自自連立のときはこんなこともできないでどうなのかという議論と両方あったわけです。  この威嚇射撃は国連憲章の禁ずる武力の行使ではないということについては、いわゆる停船措置または進路変更に従わない船舶に対する警告射撃は武力行使に該当しないというのは各国一致の意見なんですね。ただし、航行を不能にするために射撃をする、どうしても従わないからぶっ放して航行を不能にするということについてはアメリカやイタリアあたりは賛成、しかし他の国等はちょっとそこまでは行き過ぎじゃないか、こういう感じが国際的常識になっておると。  かつて新ユーゴの経済制裁のときにドイツが参加したけれども、ドイツはそういう行動をとらない、強制措置をとらないということで参加したのでドイツが出るときはいつも後方支援に他の軍隊がついていて、逃げられたら支援するということで大変だということで非常に各国が苦労したという話も聞いております。  それで、船舶検査が行われると、そこに参加する海軍が調整会議というか、を設けて、こういう場合はどうしましょうということをやるんですね。それは当然常識として威嚇射撃という問題はあるんですよ。  だから、日本は出るけれども、日本は威嚇射撃もしませんというようなことがこの法律でしっかりと書かれて、信号弾を上げるだけですというようなことだと日本の出ていく自衛隊というのは気の毒ではあるなという感じもして、日本が出ていくときは絶えず日本部隊後方支援部隊というのをつくってもらわないかぬということになるわけです。私は、これも十分議論のあるところで、威嚇射撃自体をした例も少ないんだと、だから当面この法律では、当時いろんな状況で反対意見もあり、いろいろな中で苦しい選択としてこうなっているということは十分承知しておるわけですが、今後、こういう問題については十分これは議論する必要があるんじゃないかなと。  この点について防衛庁長官自衛隊を指揮して、実際船舶検査活動をいずれやる責任者としてこのあたりをどう考えているのか。また、衆議院の方の修正案提出者は、この船舶検査活動をとりあえず外した、外したときにそのあたりは論点には入っていなかったのかどうか。このあたり防衛庁長官衆議院の提出者の方から御報告をいただければありがたいと思います。
  39. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) これまでの諸外国における検査活動の実績を見ましても、警告射撃が行われたケースは極めてまれであります。警告射撃等の措置を行わずとも、政府案に規定されていた範囲内で実質的に有効に機能する船舶検査活動を行い得るものと考えましたので、政府案に規定された範囲内で私どもはよかろうというふうに考えておったわけでございます。  なお、警告射撃につきましては、政府案においてはそういうことで実施することとしておりません。具体的に行うことを予定していなかった措置について、今は憲法との関係をお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、あえて仮定の議論としてお答えすれば、船舶検査活動の一環として警告射撃を行うことについては、憲法との関係についてはさらに検討を行う必要があるのではないか、こういうふうに考えております。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  40. 大野功統

    衆議院議員(大野功統君) まず第一に、今回の修正案で船舶検査の項目を外したときに威嚇射撃の議論があったか、こういうことでございますけれども、我々が議論いたしましたのは、むしろ国連安保理決議という言葉を入れるか入れないか、こういうことでございまして、明々白々たる議論は威嚇射撃につきましてはございませんでした。  それから、威嚇射撃ができるようにするという考えについてどう思うか、こういうことでございますけれども、まず実態面と法律面と、この二面から考えていく必要があるのではないか。  実態面で見てみますと、これまで十万件の船舶検査がございまして、そのうち進路変更要請がありましたのは二千件、約二%でございます。しかし、その中で威嚇射撃、警告射撃を行ったケースというのはわずか十一件というふうに伺っております。したがいまして、船舶検査というのは、相手国すなわち旗国の承諾があって、できれば船長さんの了解もあって、主として公海上、商船に対して行うものである、こういうことを考え合わせてみますと、実態的には必要性があるのかなという問題点一つございます。  それから法律面で、しかし実際は、実態上はやらないけれども、その構えをしておく必要はあるじゃないか、こういう議論も出てこようかと思います。その面については、これまでも航行不能化射撃というのは依田先生御指摘のとおり一件もございません。しかし、威嚇射撃というのは少ないといえども十一件あったわけでございます。そこで、今、防衛庁長官からもお答えいただきましたように、憲法上の問題、法体系全体の中でどういう地位を占めていくのか、こういう点を十分議論して決定していくべきことだと思っております。
  41. 依田智治

    依田智治君 二つ問題点ございまして、今まで十一件であって非常に少ないからないんだということなんですが、あれは、いざという場合は警告射撃するぞというバックがあって、実際はしなかったということなんですね。あることとないのでは全然違うんですよ。そこに問題がある。あるから、それが威嚇射撃するまでもなく威嚇になっているということなんですよ。そこの威嚇も取り上げちゃって出ていけというのは気の毒なことだなと私は実は考えておるわけです。  しかし、この法案は、私も大分作成の過程でやむを得なかろうという、最終的に現状においてはやむを得ないと認めた一人ですから、やむを得ないとしても、十分検討することが重要じゃないかと。やっぱりいざというときはやるよという態勢があって、しかしそれがたまたま十一件であったということであって、それがあるなしということは大変なことだということをひとつ考えておく必要がある。  それからあと一つは、憲法の問題。これは、国際常識として船舶検査というのは武力行使なり戦争じゃないんですね。経済制裁の一環として警察活動なんです。警察活動としての関連における武器の使用。この間、あの不審工作船があったときに自衛隊が威嚇射撃したけれども、あれは純然たる警察活動です。私は、この船舶検査活動というのも一種の国連の警察活動であるという観点に立てば、憲法違反という懸念から差し控えると言う必要はないんじゃないか、こんな感じがしておりますので、これは指摘しておきたいと思います。  あと、周辺事態法ばかりやっていると時間がだんだんなくなってくるので、最後に一つだけ、外務大臣に。  朝鮮国連軍というのが当時あって、現在、その関連の後方司令部というものがまだ座間キャンプにも置かれておる、こういう現状があるわけですが、この周辺事態法案というのは日米安保体制における協力関係というものを確認した法案ですから、アメリカとの関係においてはできておる。  それからまた、湾岸戦争のとき、ちょうど私も防衛庁におったんですが、国際連合平和協力法案、これは大分法制局等ともやり合って、結局この法案はできて提出したけれども廃案になったといういわくつきの法案ですが、これはまさに中東に自衛隊を送って後方における支援をやるということを規定した法案でしたが、廃案になった。現在のPKO法というのは休戦になってから平和維持活動としてやるという法であります。  この点、今朝鮮国連軍というのはどうなっておるのか、簡単で結構です。それと、そういう事態を余り想定するのは感心しないという意見もありますが、もし万が一という場合に新たに決議をつくってやることになるのか。今、座間に出ておる朝鮮国連軍というのがとりあえず出ていって、後また新たな決議があってやることになるのか。その場合に、やはりこれを支援する場合というのは実際上法律はないと思うんですが、こういう問題についてはどのように考えているか。外務大臣に代表して答えていただければありがたい。
  42. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) そのような場合が起こったときということで仮定の場合に答えるのは余り適当でないと思いますが、一般論として言えば、いわゆる朝鮮国連軍についての国連決議というのは今でも有効ではあるわけでありますが、何分もう何十年も前にできた決議でありますから、実際そういうことが起こったときに、国連がその決議に基づいてやるのか、また新たな決議を必要とするかということは、国連自体がいろいろ議論して決めることになるんだろう、こういうふうに考えております。  それで、何らかの国連軍の組織が新たに再編成されて実際に動くような場合に、周辺事態安全確保法案との関係はどうか、こういうことだろうと思いますが、朝鮮国連軍のうちで米軍以外に対する後方支援として我が国がどのような関与をなし得るかということにつきましては、周辺事態安全確保法案にある後方地域支援とは異なって、法整備の必要性を含めさらに検討を要する問題、この周辺事態安全確保法案は直ちに適用できない、こういうことでございます。  実際に、そのような朝鮮国連軍のうち米軍以外に対しいかなる後方支援を行うかについては、憲法解釈上の問題に加えて諸般の情勢を総合的に勘案した上で慎重に判断しなければいけない、こういうふうに考えております。
  43. 依田智治

    依田智治君 時間がだんだんなくなってきましたので法律論をやるのは避けますが、やはり多国籍軍支援という問題も法制として十分考えておく必要がある。これは、日米だけ協力していればいい時代じゃないわけで、国連活動等にどう対応していくのか、湾岸戦争みたいなものが再び起こった場合に我が国はどう対応するのか、平和維持活動では休戦後でないとできないわけですからそのあたりは十分考えておく必要があるんですが、その場合でも、憲法論としては武力行使はしない、武力行使と一体化する行動はしないという原則のもとにどこまで我が国として行動するか、こういう問題じゃないかと思うんです。そういうことで、その点の意見を述べて終わりにしたいと思います。  以上、周辺事態法案について、主として安全保障上の見地、憲法論、さらに関連して武器使用の問題と来ましたが、やはり国際常識とかその他いろいろ考えれば結構問題点はあるんです。しかし、政府の戦後一貫してとってきた憲法に対する姿勢、解釈というものの延長線上の問題として、我が国として現在何をなし得るかということでぎりぎり詰めたのがこの法案であるという点を考えれば、一刻も早く当院においても成立を期す、また衆議院で削除された船舶検査活動に関する規定、これは別の法律にするのか、またある程度条項をあえてこの法律の中へ入れるのか、これは真剣に議論して対応していく必要があるという点を指摘して、時間があと三十分ございますので、北朝鮮不法工作船事件、この問題を取り上げさせていただきたい。  この事件については、友人など一般の人に会うと、何だだらしないな、逃げられてと、何かもうちょっと、自衛隊も出ていったのならバーンと撃ってとめることはできないのかとかいう声がある反面、専門家は冷静によくやったと、総理もすばらしい決断であったとか、海上自衛隊の方々もすばらしい決断だったということで意外とお褒めもいただいたようでございますが、ただ、自衛隊も出て結果として逃げられた。  しかし、現実にとめて、乗船して臨検するという事態になった場合に、果たしてどういう事態が起こっていたのか。撃ち合いになって殉職者が出るような事態になっていたのか、軍用船みたいなものにあっては自爆装置で大変な事態になっていたかもわからぬわけですから、それはそれとして今後の対応として考えていかなきゃいかぬわけです。  総理、戦後初の海上警備行動を指揮し発動されて、またいろいろ新聞紙上等でも、我が国としてこういう問題についての対応策をしっかりすべし、特に領域警備等の権限というようなものを自衛隊に付与すべしというような声もあり、衆議院の方にも専門家も相当おられますが、そういう点も含めて、行政の最高責任者であり、かつ自衛隊の最高指揮官である総理、この問題についてどうとらえられ、今後についてどう考えておるか、まず初めに総理の御見解をお伺いしたい。
  44. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先般の能登半島沖の不審船事案に対する我が国の対応につきましては、不審船の停船や立入検査には至らなかったものの、国の安全の確保に対する国家としての意思は明示することができたものとして重要なものと考えており、この種の事案に対しては今後とも政府が一丸となって対応することが重要であると考えております。  また同時に、今、依田委員指摘のように、結果的には、これを取り逃し、また逃走を許したというようなことにつきまして、いろいろ国民の間にも双方御意見があることは御指摘のとおりだろうと思っております。  ただ、現行法の中でとり得る手段として適切に対応いたした、この適切ということが国民の中の一部からは、御指摘のように、あれだけ四千トン、五千トンという海上自衛隊の船が出ていきながらわずか数百トンの船に翻弄されるというようなこと自体は一体どういうことかということもございます。したがって、こうした点についてのやっぱりレビューというものは行わなければならないことではないかと思っております。  そこで、今回の事案を契機にいたしまして、今お話のありました領域警備強化のための問題についても御指摘がありました。最近、日本の有力な、例えば読売新聞等、この問題についてかなり緊急の提言等を全紙面を通じてされておりますのを拝読もいたしております。また、各政党の間にもいろいろ議論の行われていることは承知をいたしております。  政府としては、私の指示に基づきまして、一連の活動について自衛隊の対応や関係省庁間の連携のあり方も含めた点検を行っておるところでございまして、今後内閣官房を中心にこれら作業をできるだけ速やかに進め、必要な措置を講ずることによりまして、今後我が国の安全の確保及び危機管理に万全を期してまいりたい、このように考えております。
  45. 依田智治

    依田智治君 私は、警察、防衛そのほかにまだ内閣安保室長と内閣の仕事もやったわけですが、この問題は警察権の発動としての行動防衛としての軍事的な行動、このはざまでどっちのサイドからアプローチするかという接点の問題なんです。  それで、本来警察権というのは、民主主義国家というのは警察と軍というのは完全に分かれている。通常の治安というのは警察機関がそれをやる。その場合には、警職法の体系に基づく善良な国民相手に法を執行するんですから、非常に厳格な規律のもとに執行して、捕まえて留置場へ入れて裁判して裁く。  ところが、軍事行動というのは、これは周囲の事情から合理的に判断してこの男はどうかなんて考えているうちにこっちがやられてしまいますから、国際法規・慣例では敵を見つけた場合にそれに、それ相応の比例原則というのはあるにしても、対応するという問題だと思うんです。だから、その場合に兵器が拡散し軍が偽装しているというような場合には、通常警察だけでは対応し得ない場面もある。そうかといって自衛隊が常時そういう任務をやって、警察活動みたいに自衛隊もやるということになったら防衛の仕事もおろそかになる。だから、そこをどう近代国家として穴を埋めるかという問題だと思うんです。  そこで、ちょっとお伺いします。外務大臣、先ほど総理が述べられた読売の提言の中にも、いわゆる国際法規・慣例に基づく対応ができるようにせよということが言われておるわけですが、この国際法規・慣例に基づいてやったら、この間のような場合には船を沈めることもできるんですか。この国際法規・慣例に基づく対応、そこのところを外務省から説明していただくとありがたいと思う。
  46. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 国際法上、領海内にある船舶の活動が自国の法令に違反したと信ずるに足る十分な理由がある場合に、沿岸国の権限ある当局が当該船舶を取り締まるべく領海から継続して公海上において追跡するということは、これは国際法上もちろん何の問題もないわけであります。  それで、追跡と武器使用との関係でございますが、国際法上、沿岸国の艦船は追跡権の行使によって被追跡船に対し強制措置をとる際には、その目的を達成するため必要で合理的な実力を行使することが許されているということでございます。これは必要で合理的な実力でございますから、比例性の原則に従って行使しなければならないとされております。  比例性の原則がどのような場合に満たされるかにつきましては、個別具体的な状況を離れてお答えすることは困難でありますが、あえて一般的に申し上げますと、例えば停船命令を単に拒否したという理由のみで被追跡船を直ちに撃沈し乗組員全員の生命を失われるようなことは、一般にはその限度を超えていると解されております。
  47. 依田智治

    依田智治君 国際法規・慣例に基づく軍の行動としても比例という問題がかかわってくる。  我が自衛隊法八十八条で防衛出動時における武器使用の規定がございます。自衛隊我が国防衛するために武器を使用できる。自衛官はではなくて自衛隊が隊として、もちろん指揮官の命令に基づいてやる。そこの次に、「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ」「必要と判断される限度をこえてはならない」。だから、防衛出動については国際法規・慣例に基づいて使ってよいということになっているんですが、治安出動、海上警備行動等については警職法によりなさいということになるわけです。  ただ、一つちょっとわからない。防衛庁長官に教えてもらいたいのですが、領空侵犯に対する措置の中で、自衛隊の部隊に対し、着陸させ、領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。必要な措置ということの中には武器使用を含む対応、何しろ自衛隊しか対応できない。この間の不審船のときも、ミグ23か何か飛んできた、こっちからF15が行った、しかし識別線のところで互いに別れた、こうなっているわけです。  そうなってくると、この必要な措置という中には、自衛隊行動、航空自衛隊行動ですから、国際法規・慣例に基づく武器使用という概念も入っているのかどうか。このあたりを御報告いただければありがたい。
  48. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 領空侵犯に対する措置に言う、必要な措置における武器の使用はどのようなものかということでありますけれども、対領空侵犯措置の任務を実施している要撃機の武器の使用は、正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合にのみ許されるというのが政府の見解であります。  例えば、領空侵犯機が実力をもって抵抗するような場合とか、あるいは領空侵犯機によって国民の生命及び財産に対して大きな侵害が加えられる危険が間近に緊迫しており、これを排除するためには武器の使用を行うほかない緊急状態もこれに該当する、こういうふうに考えます。  お尋ねのとおり、必要な措置には武器の使用は含むものと考えます。
  49. 依田智治

    依田智治君 国際法規・慣例の問題がどうなるのか、あれですが、時間が迫ってきたので。  運輸大臣はおられますか。この不法工作船の関係は、結局漁業法違反。今回の場合は、これは結局、海保として行動をとったのはこの違反しかないのか。どういう法令に違反して、そしてこれはどの程度の刑罰になるのかということを御報告いただければありがたいと思います。
  50. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今回は、まず自衛隊から三隻の不審船の情報がございました。その中で、私どもが二隻については日本漁船を装った不審船である、一隻は我が国の漁船である、こういう判断をまず行いました。  したがいまして、日本漁船を装った漁船であるということから、漁業法第七十四条に基づく検査行為に入った。しかしながら、不審船はこれを忌避して逃走した、漁業法第百四十一条に規定する検査忌避ということで追及を行ったことになります。これがもし貨物を装った不審船ということになれば、関税法等の適用になるだろうと考えております。  また、残念ながら立入検査を実施することができなかったわけでありますけれども、できたとしたら、その後の事態で出入国管理法また難民認定法、関税法その他の法令違反を適用できただろうと、このように考えております。
  51. 依田智治

    依田智治君 いずれにしましても、そう大騒ぎするほどの重罪ではないんです。  それで、この警察的アプローチの場合でも、警職法七条で長期三年以上の懲役等に当たる罪の場合には、それが凶悪な場合に危害を与えてもよろしいとなっているわけですから、国としてこういう国境犯罪みたいなものは重罪だということにしておけば十分海保でも対応できるわけですが、公安委員長、この警職法七条における凶悪な犯罪、これについての正式見解はどんなぐあいになっておるんでしょうか。
  52. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 警察官職務執行法第七条の後段におきまして、警察官が武器の使用により人に危害を与えることが許される場合として、正当防衛及び緊急避難のほか、死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役もしくは禁錮に当たる凶悪な罪を現に犯しているなど、一定の場合が規定されております。  そこで、委員指摘のとおり、同条に言います凶悪な犯罪というのは、単に死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪というだけではなく、例えば殺人、強盗等、その犯罪の性質、態様が人の生命、身体に対して危害を及ぼしまたは及ぼすおそれがあって著しく人を畏怖させるような方法によって行われるものがこれに該当するものであります。
  53. 依田智治

    依田智治君 凶悪な犯罪ならば危害が加えられても、公安委員長が今言われましたように相当な凶悪性が要する。やはり我が国は、いろいろ法制を考える場合に、国境犯罪に対する取り締まり、スパイ防止法なんていうのもございませんし、そういう意味では国家として国を守るという法制面からの問題というのも非常に欠如しておるんじゃないか。  法務大臣、どうでしょうか。こういう不法目的を持って悪質に国境侵犯してきているような犯罪というものを重罰にするというような考え、これについてはどんな見解を持っておられますか。
  54. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 国境侵犯事犯に対する罰則といたしましては、出入国管理及び難民認定法の定める要件を満たす場合には不法入国罪の適用が考えられます。したがって、この法律の適正な適用によって国境侵犯事犯に対処することができると考えておるわけでございます。  なお、不法入国罪の法定刑につきましては、委員が今おっしゃいましたわけでございますけれども、入管法に定める他の罰則の法定刑との均衡等を考えますときに、現段階において不法入国罪についてのみ法定刑を引き上げる必要があるとは考えておりません。
  55. 依田智治

    依田智治君 そういう答弁になると思います。ただし、結局、国を守る、そういう視点に立った、ただ普通の人間が入った、密航者が入ってくるというのと、不法目的を持って軍が偽装して入ってくるというようなものに対する罰則というのはちょっと考える必要があるんじゃないか。そうすれば危害要件にも十分に適当し、警察的アプローチでも十分対応できるという面があるわけです。  そこで私は、結論的に、こういう問題は結局警察的対応と防衛的対応のはざま、それをどっちのサイドから埋めるか、こういう問題だと思うんです。その場合に、やはり原則は一般的治安は警察がやる、装備、訓練等が足らなかったらしっかりとやる。しかし、それでもなお、装備その他軍が偽装しているような場合は、これは軍での対応が必要になってくる。そういうことになれば、軍が対応できるように装備、態勢も整えておく、こういうことじゃないか。それで、その接点において迅速にそれが機能するように訓練し、法制面でもきちっとしておく、こういうことじゃないか。  私は、現在の海上警備行動、治安出動、かつて鹿児島の下甑島まで官庁間連絡だか訓練だかの目的で地域自衛隊が出た。武器の使用も何もできない、ただ出ていくだけ。この間の海上警備行動でも自衛隊が長時間にわたって出ていたけれども、官庁間協力、これは何もできない。ただついていっているだけ。これはおかしいので、波の荒いもっと早いうちに海上自衛隊の警備行動を発令していたら、私は拿捕もできたかなと。ただ、拿捕した後どういう事態が起こっていたかという問題はあるかと思うんです。そこで、政府としても、やはり現行法に基づきしっかりと訓練し対応する仕組みをつくるのが原則ですが、それでなお足らない部分を法制面で考えるということが大変重要じゃないか。  そこで、ひとつ運輸大臣に、今回の事案に関連して、装備、訓練でどういう反省点があったのかを簡潔に、またそれに引き続いて防衛庁長官に、これから海上の検査とかいろいろある。この間海上自衛隊の一線部隊に行ったところ、個人装備なんというものはそんなに持っていませんと。持っていないといったら、海上を検査するのに不測の事態、身を守るだけの武器を使用できるといったって、その前に個人装備の充実。それから、警察が対応できないような事態が起こっているから自衛隊が行く、自衛隊はそういう訓練をしているんですかと言ったら、していません。特殊部隊を持っているんですかと言ったら、持っていません。陸海空自衛隊において特殊なそういうものの対応ができるような態勢をとって訓練しておいてこそ警察のバックアップができるわけです。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  そのあたりについて、運輸大臣防衛庁長官からお話を伺いたい。
  56. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 反省の中で次への対応をしていかなければならない、こういう御指摘でございます。まさにそのとおりであろうと思っております。  まず第一に、防衛庁との連携の問題でございます。  やはり情報をお互いが早く知らせ合うということがまず第一になるだろう。実はあの事件の後、三度ほど民間の方々から不審船情報というのが寄せられました。結果としては誤報でございました。しかしながら、その都度私どもの方から自衛隊に連絡をしながらやってまいりました。すぐできることは直してまいりたい、こんなことで今実行いたしております。  また、高速船艇等を整備しなければならぬという問題と、捕捉というものをどう考えていくか。これは船のみならず、やっぱり空というものも使いながらしっかり考えていかなければならないだろうと。お互い自衛隊と連携をしながらマニュアルをつくっていかなければならない。こういう立場で、四月末に運輸省の基本的な考え方を取りまとめまして、今、内閣官房を中心としてどういう対応をしていくかということを煮詰めていただいているところでございます。そうした段階の中において、防衛庁長官からも、一度私と話し合いを持とうじゃないか、こういうお話もいただいているところでございます。
  57. 依田智治

    依田智治君 防衛庁長官、ごく簡単で結構です。
  58. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先般の不審船事案を踏まえまして、海上警備行動時における船舶への立入検査、このことについて、やはりまだ未熟な面がございますので、これは今月から行われる米国に派遣する研修等でひとつ習熟をさせたい、こう思っております。  また、装備につきましても、大変不足をしているということを、この間も私、舞鶴へ行きまして、すべての装備を点検し、それぞれ第一線におった人の話も聞いて実感いたしました。そういう充実もやってまいりたい、こういうふうに思います。  いろいろ反省点がございますが、特に、官房長官を中心にして内閣が、関係各省庁間の情報連絡や協力のあり方、あるいは海上保安庁や自衛隊の対応能力の整備、その他いろいろな、七点に及ぶ問題を取りまとめていこうということで、今、それぞれの所管に従ってこれを取りまとめ、内閣で、官房長官のもとで最終的なものを早急に仕上げるという作業を進めているということで御理解をいただきたいと思います。
  59. 依田智治

    依田智治君 特殊部隊の問題については答弁にありませんでしたが、当然重要なことですので、時間の関係で、強くこれは要望しておきます。船舶検査の場合でも、乗り込む隊員は個人装備等も充実して対応するというのは当たり前のことでして、そういう点を十分検討していただく必要があると思います。  時間があと六分になりましたが、最後に防衛庁の省移行問題、これについてお伺いしたい。  総務庁長官、現在、中央省庁の改革関連法案が出ておる。国防という仕事、これは国の仕事としての最たるものじゃないか。それで、この省庁関連法案、省庁の統合をする場合に何を重点にしていくか、国の仕事は国が責任を持ってやる体制、こういうことだと思うんですね。このあたりについて、所管する総務庁長官の見解をまずお伺いしたい。
  60. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 中央省庁改革の法案は、四月二十八日に国会の方に提案をさせていただく運びになりました。  その中で私どもが、十一カ月になろうかと思いますけれども、ずっと厳しくみずからを律してまいりましたのは、昨年の六月に国会で成立をいたしました行政改革基本法、それから行政改革会議の最終報告、その二つが言っておることをどうやってきちんと実現するかということが今回の法案の立案作業のスタートであったわけでございます。  したがって、今おっしゃった防衛庁の省昇格問題も、この行政改革会議の最終報告に何が書いてあるかということによって決まるわけでございまして、そこでは、まさにこの問題は国の安全保障の象徴的なテーマであるので、それはこの中央省庁改革という行政改革のテーマの中で取り上げるのではなくて、それ自体として正面から取り上げるということの扱いにしようではないか、こういうことであったかと思うのでございます。そこで、この問題はあえて取り上げなかったということでございます。  また、そのような行政改革会議の結論に至る前に、依田委員も私も自民党の総務会の方での議論にも参加しておりましたので、あのときの整理もそのようなことではなかったかと思っております。  以上でございます。
  61. 依田智治

    依田智治君 官房長官、これは、昭和三十九年に政府防衛省設置法案を閣議決定して、ちゃんと総理の権限、防衛庁長官の権限もすみ分けして、当時は臨時行政調査会が、他の案件等と一体として考えた方がいい、これだけを取り上げるのはどうかということで国会提出を見送った経緯があるわけですね。そういう点を考えますと、現在の省庁改革というのは、国がすべき仕事は何かということをはっきりしてやるのがまさに今回の改革だと思いますので、法案は今提出され、私も政府・与党の一員として賛成しているわけですが、やはりこの審議等の過程で、あるべき姿というものを十分議論して、訂正すべきは訂正すべきじゃないか。  過去の先例等を踏まえて、どんな考えでおられるか、官房長官にお伺いしたい。
  62. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) ただいま委員から御指摘もございましたし、先ほど太田総務庁長官からもお答えをいたしましたが、先生御指摘のように昭和三十九年六月に防衛庁の省昇格のための法案が閣議決定をされたところでございますけれども、当時は、行政機構全般につきまして審議を行っていた臨時行政調査会の意見等も踏まえまして国会への提出に至らなかったわけでございます。  今回、防衛省あるいは国防省等の意見がありましたことも事実でございますけれども、先ほど総務庁長官がお答えを申し上げましたように、昨年六月に成立をいたしました中央省庁再編のための基本法にのっとりまして、防衛庁に新たな業務が加わったわけではない等の理由によりまして、十条で従来どおり内閣府に外局として置くことに至ったわけでございます。  その意味におきまして、先ほど総務庁長官から話がございましたように、行革会議の最終報告の中におきまして、今後国際情勢のもとでなお引き続いて国の防衛基本的なあり方について議論をされるべきであると結ばれておるわけでございまして、引き続き現在の国際情勢のありようによって議論をされていくものと存じておるところでございます。
  63. 依田智治

    依田智治君 時間が参りました。防衛省設置というような問題は、国の基本にかかわるものを政府の責任においてやるということで大変重要なことですので、ぜひこれは考えていく必要があるということを主張して、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  64. 柳田稔

    ○柳田稔君 私は、民主党の柳田稔でございます。  きょうは参議院においてガイドライン審議の二日目と。先ほどから与党さんの言うことを聞いていますと、衆議院ではもう九十時間も議論した、参議院でもきのうも議論した、もういいじゃないかというような意思が伝わってきておりますけれども、参議院ではやっときょうが二日目と。これから我々もいろいろと審議をしながらよりよい法案にしたい。我々は廃案にしたいとは思っていません。できるだけいい法案にして、我々も賛成できるような内容にしてどうにかしたいな、そういう思いがありますので、衆議院で九十時間もやったからもういいじゃないか、そういう話はちょっと控えていただきたい。  さらには、新聞を見ますと、もう来週にもこの法案は参議院で成立をするんだという報道もされております。何たることかと思って私は見ているんですけれども、そういう発言や報道が続きますと、ああ参議院というのは要らないんだ、衆議院で答えが出てしまえばもう参議院の議論というのは単なる付録だ、やらなくたって一緒だ、そういうことにもなりかねない。私はそういうことも考えて、この参議院でしっかりした審議をしてよりよい答えを出していきたい、そういう思いでこのガイドライン審議に臨んでおります。そのことを冒頭申し上げたいと思います。  まず、総理、訪米をされたということで、これについて一つだけ触れたいと思うのでありますけれども、訪米されましてアメリカの学生といろいろと日本の失業率について意見交換をされたという話が新聞に載っておったんですけれども、どういう内容の意見交換をされたのか、まず教えていただきたいと思います。
  65. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) せっかくの機会でございましたので、特に中西部の中心のシカゴにおきまして歴史と伝統のあるシカゴ大学を訪問いたしました。かつて帝国ホテルを設計したライトさんという方がこの地の出身でございまして、そのライトさんの設計したかつての帝国ホテルに似た建物がございまして、その中で学生たちと率直な意見交換を学長司会のもとでさせていただきました。  もろもろ内外の問題、あるいは特に日本の経済の状況とかその他万般にわたりまして、学生の若々しい皆さんの意見も拝聴しながら、私は私なりの見解をいろいろ申し上げさせていただき、大変有意義であり、かつ時間ももっと欲しいというような大変いいディスカッションができたと思っております。
  66. 柳田稔

    ○柳田稔君 新聞の報道を見ますと、日本の経済が、企業が変わりつつあるときだからこうして失業率がふえるのはある面いたし方がないといったような発言をしたというふうに新聞記事に載っておったのでありますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  67. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 現在、日本は経済再生の実現の過程にあるということでございまして、需要サイドの問題に対しての対策を講じつつありますが、一方、サプライサイドの問題にも踏み込まなければならない事態でありまして、そういう中で企業もみずから生き延びるために人員削減を企図しておることから厳しい状況になるだろうと思う、自分としては雇用問題が重要であることを認識して国民生活を確保するための施策を講じていると、こういう趣旨のことを申し上げたところでございます。
  68. 柳田稔

    ○柳田稔君 今、手元に平成七年から今日までの日本の完全失業者数及び完全失業率、そして会社都合でやめさせられた、俗に言います非自発的離職者数、さらには世帯主、そういうグラフをつくりました。(図表掲示)  平成七年というのは、総理も御存じのとおり橋本総理が誕生した年です。そして、小渕総理に引き継いで今日までまいりました。  総理、これを見てください、完全失業率。橋本総理が誕生した平成七年の完全失業率は三・二%でした。完全失業者数二百十万人、会社都合でやめさせられた人が五十五万人、失業している世帯主の数五十九万人。これが今日どうなっているか。完全失業者数三百三十九万人。私の選挙区であります広島県の人口は二百九十万人です。これは子供の数も入れてです。それよりも多い人が失業されている。  この中で会社都合で今離職している人は百六万人です。いいですか。橋本総理が誕生したときが五十五万人。倍なんです。世帯主の失業者数は、橋本総理が誕生したとき五十九万人、今や九十二万人。五割増しです。失業率も四・八%。時間を追うごとに完全失業者の率は記録を更新しているんです。いい記録だったらいいんです。史上最悪の記録を更新している。  こんな中で、総理アメリカに行っていろいろお話をされたと。日本の経済の変化とか企業の内容の変化というのは私もあると認めます。しかし、それ以上にもっと大きな原因があってこうなっているんではないでしょうか。  このグラフを見て総理はどう思われますか。
  69. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 残念なことでございますけれども、我が国にとりまして、示されているように現下四・八%という失業率の高い水準になっておるわけでございまして、看過し得ない数字と心得ておるわけでございます。  失業率につきましては諸外国いろいろのとり方がございまして、例えばフランスやドイツのように一〇%以上の失業率がありますが、しかしこれは外国から入りましたアルバイターが職を失うというような点もありまして非常に高いものになっております。  我が国の場合は、御指摘されましたように、会社の都合といいますか、会社として経営再建をされる過程の中で、会社内で従前は、俗に言う会社内失業者というようなものを確保し得る状況でないというまさに厳しい環境の中でこれが失業者として数字になってきておるという実態はまことに残念でありますが、現実といたしましては、かなり企業の競争力強化という点においてそういう趨勢にあることについては厳しく見詰めなきゃならぬ。  したがいまして、また欧米の例を申し上げて恐縮ですが、いわゆる雇用の流動化ということについては、日本の場合には、従来はなかなかそういった流通の市場というものも欧米のような姿になっておりません中で、ややグローバルスタンダード的な形での会社経営の状況に相なっておるわけでございまして、それが失業という形になって存在する。これは日本の場合によくよくのことでございますので、この数字は本当に看過できない状態であり、これがさらに増加してくるというようなことになりますと、これは社会的な不安を起こしかねない重大な問題でございます。  一方、会社、企業におけるリストラの一つの流れと同時に、失業をされた方々をいかに再雇用するか、あるいはいろんな形での救済をするかというようなことが政治のこれからの大きな課題になってきておりまして、この点につきましては政府を挙げて、特に労働省あるいは通産省その他関係省庁を挙げてこの問題に今真剣に取り組まさせていただきつつあるところである、こういうことでございます。
  70. 柳田稔

    ○柳田稔君 私は前にサラリーマンをしていまして、円高・構造不況というのが訪れました、今からもう十数年前になりますが。私はそのときに会社をやめて政治の道に入ったんですけれども、私だけがやめたんではなくて会社の多くの仲間も同じようにやめていったんです。そして、再就職ができるかというと、ほとんどの者ができなかった。これは、世間、日本全体が不況だからです。探してもできない。そして、運よく職が見つかって就職ができた。当時私が勤めていた工場は五百人ぐらいの規模でしたけれども、約半分強が離職された。就職された中で二人自殺者が出ているんです。  総理アメリカに行って、こういう状況だというふうな話をされる。しかし、離職をして、それも世帯主であれば家族をどう守っていくのか、どう食べさせていくのか、大変不安になるんです。そして、最後には自殺の道を選ぶ人もいる。その数がもう既に百万人にもなろうとしているんです。  今の三月というのは、総理が言っていましたね、十五カ月予算。(「時間が足らないと言っているんだったら本題をやろうよ、本題」と呼ぶ者あり)いや、アメリカに行かれてそういう話をされてきたから、私はそれについて触れておきたい。ガイドラインも大切だけれども雇用問題も大切だ。いや、自民党さんは雇用問題が大切でないと言うんだったらそれは結構ですけれども、私は同様に必要だと思うから質問させてもらっています。
  71. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 静粛にしてください。
  72. 柳田稔

    ○柳田稔君 この三月という時期は、小渕総理が緊急経済対策だといって十五カ月予算を組んだ。そして三月なんです。史上最悪。さらに悪くなると言っていますよ、皆さん。悲惨な人がもっとふえる。ことし三月の予算委員会において政府は何と答弁されたか。GDPが五百兆ぐらいで経済成長率が約〇・五%と見込めますから、この予算が通れば雇用環境はよくなるでしょうとおっしゃった。余りにも他人事過ぎる。  私はこの場で言いたい。先ほど総理も触れられたように、雇用の問題が悪化すると治安的な問題も出てまいります。そうなると、のんびりとやっていられない状況になるんですよ。銀行にはたくさんお金を投資した、お金を入れた。公共事業にも莫大なお金をつぎ込む、総理官邸の新築にも大変なお金をつぎ込む、それぐらいの気概を持ってこの雇用問題に対処してほしいなと。私はそのことを触れておきたいと思います。  次に、コソボ問題に触れさせていただきたいと思います。  先日、ドイツのボンでG8緊急外相会議というのが開かれたようでありますが、その合意内容はどんなものであったのでしょうか。
  73. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) G8外相会合でありますが、コソボ問題の政治解決のためにG8としての統一ポジション、すなわち政治的意思とその方向性国際社会に対して表明することに主眼があったわけでございます。  今回の会合において、政治解決のための七項目の諸原則と、この諸原則を実現するための今後の段取り、具体的に言うと、安保理決議の準備を事務方にさせましょうということと、さらに詳しいロードマップの作成、こういったことについて合意したことは重要な成果であった、こう考えているわけでございます。  必要であればその七項目も申し上げますが、いいですか。
  74. 柳田稔

    ○柳田稔君 この内容の主要なテーマというのが、やはり安保理決議を求めていこうということなんだろうなと思うんです。ところが、その緊急外相会議が終わった直後にNATO軍が中国大使館を誤爆した、その事件が起きました。大変な影響が出ております。きのう、ニュースを見ていますと、中国の国家主席とロシアの大統領が電話連絡をしてという報道もされておりました。  としますと、この安保理決議を求めていこうといった緊急外相会議の内容はまず不可能に近いのかなと僕は思うんです。中国が空爆をやめなさい、これがまず第一だというふうに主張されておるわけですから、相当難しい問題になったなと思うのであります。  このコソボ問題、そして今回の中国大使館の誤爆の影響を考えて、日本政府としては一体このコソボ紛争をどういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
  75. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日本政府といたしましては、やはりミロシェビッチ大統領に国際社会の声を聞いてもらって、いわゆる民族浄化などということをやめてもらう、そのことによって空爆もやむ、こういった政治解決の道にさらに努力していきたい、こう思っております。  確かに、中国大使館に対する誤爆というのは問題をより困難にした面がありますが、私は委員のように、国連決議が不可能になったとまでは考えておりません。当然、現時点での中国の立場というのは私も承知しておりますが、そのことによってこれは不可能だからもう国連決議を持っていくのはあきらめよう、そういうような状況ではない、こういうふうに思っております。
  76. 柳田稔

    ○柳田稔君 国連決議にもいろんな内容があると思います。  それでは、ちょっと具体的に絞って聞いてみたいと思うのでありますけれども、NATO軍はそれでも空爆は続けますと。今でもやっています。この空爆については国連はお墨つきを与えておりませんですね。その中で空爆をさらに続行すると。  日本政府としては、この空爆続行について支持するのか、それとももうやめなさいと言うのか、どういう姿勢でありますか。
  77. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ユーゴ軍あるいは治安部隊によってコソボで民族浄化と言われるような非常に非人道的、それも程度のすさまじいことが行われていると。そういうような中でNATOが空爆を続けること自体については、それをやめさせるためという意味で理解はしております。  ただ、現実に民族浄化の程度がどのくらいだとか、そういうことは中に入ってみないと私たちにははっきりわからないという点もありますので、日本政府としてこれを支持するとか支持しないとかいうことは言っておりませんけれども、今そういったことについては理解をする。そして、このことについては、先ほど申し上げたように、ミロシェビッチ大統領、ユーゴの方が、そういう民族浄化と言われるような極めて非人道性の高いことをやめろという国際社会の声を聞いてもらうことによって空爆も必然的にやむ、そういった事態を心から願っておりますし、そういう方向に日本としても政治的努力をしていきたい、こういうことでございます。
  78. 柳田稔

    ○柳田稔君 コソボに対する空爆が起きたときに、日本政府は理解するとおっしゃいましたですね。状況が大分進んできました。誤爆も大分起きたし、最悪の中国大使館の誤爆も起きた。状況が大分変わってきた。  今の状況を見たときに、空爆続行に対して日本政府は今でも理解をしているのか、それとも支持をするのか、やめろとおっしゃるのか。いろんな判断があろうかと思いますが、日本政府はどういう判断をされるんでしょうか。
  79. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今でも空爆続行そのものについて理解をしているということでございます。言うまでもないことでありますが、誤爆に対して理解をしているということではございません。  私は、今ユーゴ軍あるいは治安部隊によって行われているすさまじい民族浄化と言われるような状況、これは空爆の状況と違ってテレビなどに映りません、映す機会がないので、私たち日本人の目にそういうことが余り感じられないという面もあるわけでありますが、そういった状況にフリーハンドを与えてしまうようなことはなかなかできないのではないか、国際社会としてもそれなりの責任はあるのではないか、こういうような考え方を持って理解をしている、こういうことを申し上げているわけでございます。
  80. 柳田稔

    ○柳田稔君 空爆が開始されたとき、日本政府は理解をすると。私はそれなりにやむを得ないのかなという気はいたしておりました。  しかし、繰り返しますように、中国政府の代表である大使館が空爆を受けたわけです、誤爆とはいえども。受けたという状況を考えて、今、外務大臣が今でも理解をするとおっしゃったということは、中国政府に対してもそのことははっきり伝わるわけですね、日本政府としては空爆の続行については理解をすると。中国政府は空爆をやめろとおっしゃっている、空爆はもうやめなさいと。ちょっと意見が違ってくるんではないかなと思うんです。(「スタンスが違う」と呼ぶ者あり)野田先生がおっしゃるように、最初からスタンスは違いますけれども、ただ日本と中国の関係を考えたときにある面が出てくるんではないかなと。やじばかり出ますけれども、ガイドラインも中国は関係ないわけじゃないので、一体この空爆を理解するといった発言で対中国関係がどうなるのかなという気はするんですけれども、外務大臣は余り心配する必要ない、そういうふうに思われますか。
  81. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日本国際社会の中で生きているわけでありますから、すべての国がどう考えているかということを全体的に考えることはもちろん必要でありますし、その中で中国がどう考えるであろうかということも当然考えます。  ただ、先ほど申し上げたように、私は誤爆を理解すると言ったわけではありませんし、中国大使館が誤爆されたことを理解しているわけでもない。日本政府とすれば、その直後に、少なくとも大使館地域に対する爆撃はやめるように、こういうことをNATO、アメリカ、イギリスにも申し入れているわけであります。  そして、日本と中国の立場が違うからこれをどうするんだ、こう言われても、日本と中国のこの空爆に対する立場は空爆が始まったときから違ったわけでありますし、逆にNATO十九カ国が一致して支持をして今やっているということもあります。そういう状況の中で、全体的に考えて、日本政府とすれば今も理解をしている、こういう立場でございます。
  82. 柳田稔

    ○柳田稔君 誤爆を支持するなんてだれも考えていません。それは大きな間違いです、だれが考えても。要するに、空爆続行を日本政府は理解をする、中国はすぐにでももうやめなさいとさらに鮮明にしています。その違いがあるんではないですかということを言いたいんです。日本国内にいると、先ほど外務大臣も言われましたように、余りわからないから我々はぴりぴりしないかもしれない。でも、関係している国々というのは相当ぴりぴりしているはずです、小さなことでも相当大きく感じるように。  なぜここでわざと大きく触れたかといいますと、このガイドライン法案自体というのも日本国内だけで済む問題ではないからなんです。日本の領土、領海があります。日本の憲法の影響力は多分ここまでは行くんでしょう、領土と領海。その外に出て、今度は海外の国と関係が出てくるわけです。その海外の国の人にも憲法が及ぶわけではない、日本の憲法は。今度のガイドライン法案は、日本の領土や領海の外に出ていって活動する、そうなったときに海外がどういう考えを持つのか、それも相当考えていかなきゃならないのではないかと私は思うから、大分強く触れさせてもらいました。  ガイドライン法案に入りますけれども、北朝鮮、名前を出して大変恐縮なんでありますけれども、ただ昨年もミサイルが飛んできたり、不審船が入ってきたり、日本人の拉致事件があったり、さらには地球上で見ると一番不安定な地域と言われている北朝鮮、このことを避けて通るわけにはいかないだろうと。この北朝鮮の脅威から日本人の生命と財産を守るのは、これは日本国政府として最大の責任だろうと私は思うんです。  だから、この法案を通すということについては私は前向きに考えたい。しかし、これからるる質問いたしますけれども、それにつけても不備が多いな、やっつけ仕事みたいに出てきた法案かなと。いろんな専門家の話を聞きますと、この法案は非常にできが悪いという意見が強いですね。私も基本的にはもう一回出し直した方がいいんじゃないかと思うぐらいのできの悪い法案で、そう言うとつくった方々は怒るかもしれませんが、一つのいい例が、後方支援の三本柱の一つを削ってでも送ってきたわけですからね。  ベストの法案、これはどうしても必要だという法案であるんだったら、何としても政府が与党である自民党を、身内ですからね皆様は、説得してでもこれは要るんだと。ところが、何か知りませんけれども、週末の一日、二日の国対政治といいますか影の議論で修正してしまって、衆議院特別委員会審議もほとんどないまま参議院に送られてきた。  一体この法案というのは、そのしぐさというかやり方を見ても、政府自身もぼろ法案と思っているんじゃないか。ぼろという言葉はちょっときついかもしれませんが、余りいいできの法案ではないと思っていらっしゃるんじゃないかなと、私はそう思うんです。  それで、いろいろと抽象的な議論も要るかと思うんですが、私はちょっと自分なりに整理してみたいと思うんです。(図表掲示)  これは自分なりに整理いたしました。軍隊、これは世界では皆さん軍隊ですからね、自衛隊と言われているのは日本だけですから、軍隊の活動といいますか行動、どういうものがあるかと思って自分で表をつくってみました。  この左側は「世界の軍事活動」ということで書きましたけれども、一つ国連軍というのがある。まだ創設をされていないと思うんですが、これは国連憲章第七章の四十二条とか四十三条に国連軍の規定があるわけですから、これはあるのかなと思うんです。  私の認識では、国連軍はまだ一回も編成されていないと思うんです。先ほどの依田先生の話の中にもありましたけれども、そういえば朝鮮半島に国連軍らしきものがあるなという話もあるんですけれども、まず先に、この国連軍の目的は一体いかなるものか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  83. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 国連軍と言われるものにもいろいろあるかと思いますが、一般に正規の国連軍と言われるものは、国連憲章第四十二条、第四十三条に基づき、集団安全保障の制度としての軍事的強制行動を伴う部隊として組織される国連軍だと、こういうことでございます。  でありますから、目的は集団的安全保障制度としての軍事的強制行動を行うと、こういうことでございます。
  84. 柳田稔

    ○柳田稔君 そのとおりだと思います。普遍的安全保障をどうするか。今後、戦争が起きないように国連が中心となっていかに世界の平和をつくっていくか、普遍的な安全保障。何かどこかで紛争があると、それに対して強制的な力をもって鎮圧をして平和を維持していこうと、そういうのが国連軍だと私も認識しております。  先ほどありました朝鮮半島に国連軍があるという話もあるんですが、朝鮮半島へ行くと国連の旗が立っていますけれども、これは一体国連軍なんでしょうか。
  85. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ですから、今申し上げた国連憲章第四十二条、第四十三条に基づくいわゆる正規の国連軍ではない、こういうことでございます。  朝鮮動乱時に編成された朝鮮国連軍は、一九五〇年六月二十七日の安保理決議八十三の勧告に基づいて加盟国が自発的に兵力を提供したものであって、同年七月七日の安保理決議八十四号により、米国のもとにある統一司令部の指揮下に編成されるとともに国連旗の使用を認められた、こういうことでございます。  でありますから、繰り返しますが、朝鮮国連軍は国連の諸決議に従う行動に従事するために派遣されたものであっても、憲章第四十二条、四十三条に基づく正規の国連軍とは法的根拠を異にしている、こういうことでございます。
  86. 柳田稔

    ○柳田稔君 私もそう思います。ですから、これは正規の国連軍ではない、どちらかというと、国連のお墨つきをもらった武力行使ということを考えれば、ある意味では多国籍軍に近いのかなと、そう思ったりもしているんですが、まあそれはそれとして。  要するに、朝鮮半島に正規ではないけれども国連軍らしきものがあるという認識をちょっとしてほしいのであります。国連の決議にのっとって行動した、アメリカが司令のトップですからね、トップはアメリカ大統領ですから。これがあると。  その次、活動として言えるのが、今ちょっと触れましたけれども、国連の決議に基づく活動です。我々が記憶に新しいのは、イラクのクウェートに対する侵攻、我々俗に湾岸戦争と呼んでおりますが、これが多国籍軍ということに相なるんだろうな、そう思います。  それで、ちょっとここで触れておきたいのでありますけれども、日本から掃海艇が行きましたですね、掃海艇が。ちょっと先に質問を飛ばしてもらいましたけれども、ここで言いましたんですけれども、湾岸戦争のときという表現が正しいのか、湾岸戦争が落ちついた後というのが正しいのか、ちょっとはっきりしませんけれども、日本から掃海艇がアラビア海に派遣されましたですね。この掃海艇の派遣は多国籍軍への参加なんですか。それとも、一体何なんですか。
  87. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ペルシャ湾への掃海艇の派遣は、湾岸危機の間にイラクにより多数敷設されました機雷が放置され、これら遺棄されたと認められる機雷が我が国のタンカーを含む船舶の航行に重大な障害となっている状況にかんがみまして、多国籍軍とイラクとの間に、今、委員がおっしゃったとおり、正式停戦が成立した後、自衛隊法九十九条の規定に基づき我が国の船舶の航行の安全を確保するために行ったものでありまして、多国籍軍への参加には当たらないものと考えております。
  88. 柳田稔

    ○柳田稔君 停戦の合意があった、そこに日本船舶の航行の安全の確保のために送ったと。そうすると、これはPKOですか。ピースキーピング・オペレーション、その一環になるんですか。
  89. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今、防衛庁長官が述べられたように、自衛隊法九十九条に基づいて、自国の船舶等の安全、そういったことを守るために派遣したものであって、いわゆるPKOではありません。
  90. 柳田稔

    ○柳田稔君 そうすると、自国の船舶を守るためには日本自衛隊は出動できる、その先例が掃海艇であったという認識をさせてもらってよろしいでしょうか。
  91. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) いずれにいたしましても、自衛隊法九十九条で海上における機雷その他の爆発物の危険物の除去及びこれらの処理を行うことができるわけでございまして、我が国の船舶の航行の安全という観点からこの九十九条に従ってとられた措置でございます。
  92. 柳田稔

    ○柳田稔君 ちょっとここでまた突っ込んで聞いてみたいんですけれども、じゃ、自衛隊が保有している出せる船舶、それは限度があるんですか。
  93. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) いずれにいたしましても、自衛隊法九十九条に従って行うわけでございますから、その目的にふさわしい船舶、またその態勢につきましても、そういうものとして出すということでございます。
  94. 柳田稔

    ○柳田稔君 ありがとうございました。  これは今すぐ追及するつもりはありません。後のガイドラインの実質の審議のときに聞いてみようと思ってちょっと参考までに聞いたのであります。  次にPKOです。国連平和維持活動。これは国連憲章にはっきりとは書いてありませんけれども、世界の平和を維持するためにどうしたらいいかということで、国連の中でいろいろ知恵を出し合ってつくったのがこの活動だろうと思います。  これは日本でも七年前、平成四年にPKOに参加しようということで法案が成立いたしました。このPKO、大変長い歴史がありますし、日本もゴラン高原またカンボジア、いろんなところに参加をして、日本国内でも相当理解が進んでいる、そういうふうに思っております。  この下にゴラン高原、カンボジア、ソマリアとわざと書きました。意図を持って書きました。ゴラン高原というのは最初にできたPKOかなと。これは第一世代。その次のカンボジアというのはその最初の発想から出て次にできたPKOかな、ソマリアというのはまたその次かな、そう思って羅列したのであります。  ここでちょっとPKOだけ詳しくやりたいんですけれども、このPKO、三つ原則がありますね。私は国連まで行って勉強した立場もありますけれども、PKOには基本的な原則が三つあると言って教えられました。それは、紛争の当事者が停戦に合意している、そしてPKOの受け入れに合意した、これが一つ。それから、PKOというのはあくまでも当事者に対して等距離ですと。言葉をかえますと中立ですと。これが二つ目の原則。そして三つ目、自衛以外のことには武力は使いませんと。これが三つ目の原則だというふうに僕は教わってきました。  ですから、言葉をかえますと、平和とは言いますけれどもいろんな事件はありますね。不穏な地域をやっといろんなことで停戦をしながら戦争のないようにしたわけですけれども、やはり事件は起きる。大体、言葉をかえると平和なのかなと。平和という言葉がいいか知りませんが、戦争は起こらない、そういう大前提のもとに日本もPKOに参加させようといって送った。この三つの原則。  それで、このゴラン高原、何をしているかといいますと、各当事者間の停戦ラインの監視とか、その間をパトロールするとか、ほとんど危害のない安全なPKOです。これが多分初代のPKOだと思うんです、初期の。  その次がカンボジアですけれども、カンボジアは第一世代から踏み出るというか、もっと大きくしました。つまり、カンボジアを例にとって言いますと、カンボジアという国が内乱によって崩壊してしまった、自力で国の復興はおぼつかない、よってPKOがそこに行って選挙から道路の政策から、いろんなことをしました。要するに、カンボジアという国が内乱で疲弊したために政府機能が果たせない、そのかわりにPKOが行って新しい国をつくってあげる。トータル的なPKOの作戦でした。ほかにはナミビアとかモザンビーク、こういうのも入るんだろうと思います。これまで日本は参加しました。  その次がソマリアなんですが、このソマリアというのはまた違ったPKOなんです。これはある程度の実力行使をする、つまり武力行使もできる。ですから、その国の中にいろんな部隊がたくさんあるわけですから、不満の多い部隊がある。それに対して武力行使をして鎮圧できる、そういったPKOでした。私も思い出しますけれども、このPKOでアメリカの兵士が十八名亡くなりまして、それ以来、アメリカが地上戦から手を引いたというのもあります。  こういった大きく分けて三つぐらいあるんだろうけれども、日本はゴラン高原とカンボジアには参加したけれども、なぜソマリアには参加しなかったのか。武力行使はあるけれども、後方支援は多分あるはずですね。とすると、国連中心主義の日本としては、ソマリアでさえ、武力行使がない後ろの後方支援であれば参加できたはずなのになぜ参加しなかったのか。  外務大臣、どうでしょうか。
  95. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 委員がソマリアと言うのは、第二次国連ソマリア活動、UNOSOMⅡのことだと思いますが、これは、安保理決議八一四に基づき展開したものですが、紛争当事者の同意を必要としないで展開したわけでございます。日本の国際平和協力法の要件の一つに紛争当事者の同意ということがあるわけでありますから、その要件に合致しないから参加し得なかった、こういうことでございます。
  96. 柳田稔

    ○柳田稔君 大変簡単明瞭で、そのとおりだと思います。要するに、当事者間の停戦の合意がなければ日本は参加できない。そうですね。  これから外れるのはちょっと嫌なんですけれども、今回のガイドラインは、ある地域で有事になっている、日本に対して非常な危険な状態だ、その後方支援ができる、その法案なんですが、そうするとこのソマリアと大分違うなと、そんな気がしていますので、またこれも後で触れます。  次に、国連憲章の五十一条に、個別的、集団的自衛権が認められております。これは、固有の権利というふうに日本語では訳されております。ちょっとアクセントがうまくいかないかもしれませんけれども、インヒアレントライト、固有の権利というふうに訳されている、英語を。どういう日本語の訳がいいかというと、いろいろきょうも聞いたのでありますけれども、自然発生的なと。  要するに、何を言いたいかというと、集団的自衛権ですよ。個別的自衛権というのは当たり前だと、持っているのは。さらには、集団的自衛権についても国連は、当然持っているんだ、当たり前です、自然発生的な権利ですから各国が持つのは当たり前ですと国連憲章には書いてありますね。そして行使もできると。  ところが、日本は、先ほどの答弁を聞いていましても、集団的自衛権は保有はするけれども行使できない、そう答弁されまして、私もこのPKOのときに世界各国いろいろ回ったりして勉強したんですけれども、集団的自衛権、これは、当然持っているし使えるんだよと国連は認めてくれている。  では、世界の各国の中で、持っているけれども使えませんという国があったかなと思うと、ないんじゃないかと思うんですが、外務大臣、どこかあるような記憶がありますか。
  97. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 全部を知っているわけではありませんが、日本以外にそういう法制をとっている国があるとは承知しておりません。
  98. 柳田稔

    ○柳田稔君 そうなんです。多分日本だけだろうと思うんです。そうすると、いや、日本は憲法があるから、だから我々としては行使できない、保有はするけれども行使できない、そういう理屈を政府は述べておりますけれども、このガイドラインというのは外に出るんですからね、先ほども申しましたように。安全な地帯だ、後方支援地域、安全だという認定をすれば外に出るんですからね、日本政府の権利の及ぶ。公海であれ出ていくわけですから。  とすると、日本政府がいかに集団的自衛権は我々は行使しないんだと国内に向かって言っても、日本以外の人は、それは集団的自衛権の行使ですと言ったって、これは当然なんです。日本のようにそんな理屈をこね回す国はありませんからね。国連で認められている自然発生的な権利である集団的自衛権なんですから、当然日本も持っているといって見るのは、これは通常なんです。そのことを十分認識していただきたいと思うんですけれども。
  99. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 先ほど法制局長官も述べられたように、国際法上、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利をいいます。  そうでありますから、自衛隊が仮に公海上に出たって、何も実力をもってみずから阻止しなければ、これは集団的自衛権ということは一般的に、国際社会ですからいろんな学説はありますけれども、一般的にそれが集団的自衛権の行使だと判断されることはないと承知しております。
  100. 柳田稔

    ○柳田稔君 では、聞きますけれども、集団的自衛権ですよ。いろいろ参加します、ただ、我が国は武力行使できない、でも武力行使以外は何でも参加しますといった条件ですね。わかりますか。我が国は武力行使以外は何でも参加します、いろんなことに参加します、後方支援もやります、人命救助もやります、医者も派遣します、やりますよと。これは世界から見たら集団的自衛権じゃないんですか。もし違うとおっしゃるんだったら、そうでない国があるんだったら言ってみてください。
  101. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) そういうことは、先ほどから私も法制局長官も申し上げている集団的自衛権の定義からいって、世界じゅうどこの国から見ても集団的自衛権の行使ではございません。
  102. 柳田稔

    ○柳田稔君 国内の議論をしようと思っているんじゃないんです。世界各国がそういう考えでいるんです。その中で、日本の領海を出て日本自衛隊初め民間が出ていくわけですから、そうすると、日本の常識が通じるのは領海までですよ、常識的に考えて。その外に出たら世界の常識と話をしないといけない。しかし、世界の常識は集団的自衛権の行使は認めているんだ、また現にやる。そういう立場から日本を見たときに、日本はいろんな応援はする、ただ、しないのは武力行使だ。それは集団的自衛権とみなすのが当たり前じゃないんですか、ほかの国から見ると。国内にいるときは別でしょう、日本国内にいるときは。ただ、外に出たら違うんじゃないですか。
  103. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 集団的自衛権の定義についても、学説上はいろいろありますけれども、国連憲章の絡みからいってもできたときの状況からいっても、通説とすれば、やはり実力をもって阻止する権利、こういうことにされているわけでありますから、実力をもってみずからが阻止しない以上集団的自衛権の行使と見られないということは、我が国だけが特別言っているわけではなくて、世界じゅうから見てそれは普通の見方でございます。
  104. 柳田稔

    ○柳田稔君 では、聞き方を変えます。  日本政府がおっしゃるように、前方と後方ですね、前方と後方と分けていらっしゃるんでしょう。それを分けて議論をしているというよりも、国防として分けて考えている国がありますか、では。アメリカは分けて考えているんですか。前線と後方といって分けて作戦を立てるんですか、アメリカは。立てているそんな国があったら教えてほしい。
  105. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 委員のおっしゃっていることは私よくわかりませんが、前方と後方というのはどこの国でもその区別はございます。ただ、委員がおっしゃっていることがもしこの法案に言う後方地域ということであれば、それはこの法案日本国憲法によって規制される集団的自衛権の行使ということを制度的に避けるためにつくったものでありますから、それは日本独自の概念として行われている、そういうことでございます。
  106. 柳田稔

    ○柳田稔君 軍事行動をするときに、前線があります、そして後方で支援するわけでしょう、兵たんという言葉で。この前線と後方の兵たんを分けて作戦行動を立てる国がありますかと聞いたんです。アメリカはそうなんですか。イギリスもそうなんですか。フランスはどうですか。ドイツはどうですか。みんな一体なんですよ、海外は。これを分けて考えるのは、日本は憲法というものがあるから分けて考えているだけで、そうではない国というのはみんな一体なんですよ。だから聞いたんです、分けて作戦を立てて、作戦行動を実施する国があったら教えていただきたいと。
  107. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今のお話で委員のおっしゃっている意味がわかりましたので、それは前方と後方と総合的に作戦行動は立てるのが普通だと思います。ただし、やはり前方と後方という言葉は世界じゅうにあるわけですから、これが同じものであるということではないわけであります。  それから、武力行使の一体化ということは、日本の憲法の解釈の問題で今我々は使っている言葉であって、その前方と後方の作戦計画を一体として立てるということと、日本国憲法の解釈で申し上げている、集団的自衛権の行使に当たるかどうかで申し上げている武力行使との一体化と、当たるかどうかということとはそれは関係のないことでございます。
  108. 柳田稔

    ○柳田稔君 日本の中の解釈を聞いているんじゃないんですよ。  高村外務大臣は、外務政務次官を長くやられて、外務大臣をやられて、大変長い経験がありますよね。いろんな国にも行かれたと思う。その海外の常識からいって、前線と兵たん、ロジスティックス、これを別々なものだと言って作戦を立てて行動するような国はないですよと。これが世界の常識なんですと。ただ、残念ながら、日本という国は憲法があるがためにいろんな制約を受けていると、私はそう理解しているんです。  もう午前の時間がなくなりましたのでやめますけれども、何かございますか。
  109. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほどから再々外務大臣が御答弁されておるところでありますが、これは委員がおっしゃるとおり、世界ではそうなっているかもしれませんが、私どもがこの法案でやる活動、三つの活動というのは、あくまでこれは戦争をやるわけじゃないし、まして作戦計画なんか必要あるわけはない。だから、武力の行使なんかやらないという前提に立っているわけでありますから、委員が質問されるように、外国の場合がそうだから、日本の場合は後方地域を設けて武力を行使しない、戦闘にも参加しないし作戦計画も要らないという事態においてやるわけですから、そのことを理解してもらわぬと、これは外国の場合と区別をして考えていただかなければいかぬことだと私どもは考えております。
  110. 柳田稔

    ○柳田稔君 防衛庁長官、今回のガイドライン、計画立てないんですか、計画を。立てるんでしょう、基本計画を。基本計画を立てるんですよ、ガイドラインは。その前線としてアメリカ軍の行動があるんでしょう。その行動に対して日本はサポート、後方支援するための計画を立てて実施するんですよ。計画を立てないなんて、そんな無謀なことをおっしゃらないでください。
  111. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) それはあなたの誤解でありまして、私は戦争をやるわけじゃないから作戦計画を立てないと言っているんで、基本計画は戦争をやるための計画じゃなくて、後方支援やあるいは後方地域捜索救助活動のための計画であって、これは全く違うものだということをぜひわかっていただきたいと思います。
  112. 柳田稔

    ○柳田稔君 戦争が起きたからといって作戦を練って戦争用に実行するというのは、それはあるかもしれないが、僕は聞いたことがない。その前からいろんな計画するはずですよ、作戦というのは、戦争じゃなくたって。結果として戦争になるのが普通なんでしょう。いろんな作戦を立てながら、戦争にならないように、抑止ですよ、総理はよく言うじゃないですか、抑止のためにいろんなことやるんですよ、作戦行動を。でも、それは軍事行動一つじゃないですか、世界から見ると。  これ以上議論していても水かけ論になりますからやめますけれども、あとまた午後お願いいたしたいと思います。
  113. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時開会
  114. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) ただいまから日米防衛協力のための指針に関する特別委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、木俣佳丈君が委員辞任され、その補欠として浅尾慶一郎君が選任されました。     ─────────────
  115. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 休憩前に引き続き、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件外二案を一括して議題とし、日米防衛協力のための指針に関する集中審議を行います。
  116. 柳田稔

    ○柳田稔君 午前中に引き続きまして審議をさせていただきます。  午前中は、日本の言う集団的自衛権、それと海外の言う集団的自衛権、大分意味が違いますよという話で終わったんですけれども、議論を続けさせていただきたいと思います。(図表掲示)  この表に基づいて、集団的自衛権の行使なんですが、韓国とアメリカ、この二国間には集団的自衛権の行使ができる条約があります。このことをひとつ強く言っておきたいと思います。それから、台湾とアメリカにおいても関係法があります。これはアメリカと韓国との条約とは大分違いますけれども、台湾に対してアメリカは武器の供与ができるという内容の条約であります。このことも知っておいてもらいたいと思います。  それから、次に行きますけれども、今度は日本国内の自衛隊の活動でありますが、戦争になったとき、有事のときには、ここに書いてありますとおり、防衛出動プラス日米安全保障に基づいてアメリカ軍が参加をする。もう一つの柱として、平時のときに、治安出動や海上警備行動、これは先日の北朝鮮の不審船が来たときに初めて発動された海上警備行動、以下、領空侵犯、PKO、いろいろあります。この日本自衛隊の活動の中で検討しなきゃならないという課題が有事法制の整備とか領域警備の強化であります。午前中、依田先生の方から、有事法制の整備、いろいろ指摘がありました。そういう課題があるということだけちょっと説明させていただきたいと思います。  それで、質問なんですが、総理にお聞きしたいと思うんですけれども、今回のガイドライン法、このガイドライン法に基づいて自衛隊行動いたします。これは、この表は私が考えてつくったのでありますけれども、一体どこに入るのかな、日本の集団的自衛権の行使の一部に入るのかなと。一体どこに入るんだろうかという気がするのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  117. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 今回、周辺事態安全確保法案でお願いしております内容でございますが、これはその行為自体は武力行使に該当するものでもございませんし、また他国の武力行使と一体化するものでもないという意味で、自衛権の行使、こういう概念でございません。  要するに、今回お願いしております内容は、日本国憲法の範囲内におきまして、日本の平和と安全を確保するための措置を講ずるための枠組みをお願いしている、こういうことでございます。
  118. 柳田稔

    ○柳田稔君 つまり、有事ではありませんから平時だと。平時というと、治安出動であり、海上警備であり、領空侵犯、PKOもありますけれども、そういうことは我々は今日まで考えて実践したこともありました。今回のガイドラインというのは、その今までにあったものと全然違ったものをやろう、自衛隊行動させようということではないのかなと思うんです。  としたときに、要するにこの表をつくったのは、世界の軍隊はこういう関係で動いていますよ、国内の自衛隊はこういう関係で今まで動いていますよという表をつくったんですが、再度聞きますけれども、このガイドラインという法案は、じゃ世界の軍隊の動き、活動から見たときに、一体どの範疇に入るんですか。
  119. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 私どもとしては、日本国憲法を頂点とします日本の法制度の中でこの新しい行為を位置づけているわけでございます。  そういう意味では、今回の内容は、同じような御説明になって恐縮でございますが、自衛権の行使という関係から整理をしているわけではございませんで、先ほど申しましたような日本の平和と安全を確保するための措置、これを日本国憲法の枠内で構築する、こういう内容のものだと、こういうふうに思います。
  120. 柳田稔

    ○柳田稔君 この表はコピーにしてもう渡してありますので、皆さんよく御存じだと思うんです。  要するに、自衛隊が行ってきた活動、有事ではないというんですから防衛出動でもないわけですね。では、平時というと治安出動かどうかというと、それも違いますとおっしゃる。世界の軍隊の動きから見たときに、これは国連軍でも多国籍軍でもPKOでもないというのははっきりしています。世界の軍隊の動きから見たときに、集団的自衛権に入るのかと聞くと、そうでもないとおっしゃる。とすると、世界の常識の中にある軍隊の作戦とは大分違った概念ですよと私には聞こえるんです。新しい概念ですよとおっしゃっているような気がする。  そして、国内で見たときに、いや、今日まで自衛隊がやってきた活動とはまた違った概念を持ち込んだんですよ、新しい概念で自衛隊を動かすんですよというふうに答弁が聞こえるんですが、そうとって構いませんか。
  121. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほど政府委員の方から答弁しましたとおり、この法案に基づく自衛隊の活動は、それ自体武力の行使には該当しない、また米軍による武力の行使とも一体化しない、御指摘のとおり集団的自衛権や個別的自衛権の発動に該当するものではない、また本法案に基づく活動は治安出動のように警察権を行使するものでもない、あくまでも我が国の平和と安全の確保のため憲法の範囲内で実施される措置であります。  だから、自衛隊がどの軍隊というカテゴリーに入るかというのじゃなくて、私どもはこの法律によって日本独自のこういった憲法の範囲内で許される措置を講ずることにしたというふうに御理解いただきたいと思います。
  122. 柳田稔

    ○柳田稔君 簡単明瞭に答えてもらいたいんですけれども、要するに世界の軍隊が活動する例を私は示しました。これには入りませんよということですね。そして、自衛隊が今日まで活動してきた内容、これとも違いますよとおっしゃるんですね。つまり、新しい考えを持ってこの新しいガイドラインの活動を決めていきたいということですよね。  要するに、今日までなかった、我々日本国内でもみんな知らなかった、知らなかったけれどもある地域のこともあるし、それに対して日本人の生命と財産を守るために新しい概念を導入しました、それがガイドラインですということですね。間違っているんですか。
  123. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 日本の平和と安全を守るためにこの法律によってそういう措置を講じたということで、今、委員が挙げられたそのカテゴリーには入らないものだと思います。
  124. 柳田稔

    ○柳田稔君 そうなんです。初めて導入する考えですね、これは。過去に、戦後五十数年たちましたけれども、今日まで平時において日本が考えてきたこと、概念、そしてとってきた行動とは全然違うことをこのガイドラインで決めようと。世界から見ると、世界の常識から考えてもちょっと違う、これは日本国憲法があるからという理由があるわけですけれども、ちょっと違うことを行おうということなんです。  そこで、私は思うんです。初めてそういった概念で、ガイドラインといった概念で自衛隊を動かそうとしたときに、何が起こるかわからないじゃないかと。日本政府が想定したとおり動いてくれればいい、世界が。ところがそうはならない。となれば、自衛隊だけの動きを今回衆議院で修正された。新しい概念であるんだったら、私は、基本計画全体を国会承認にして国会も責任を持つ。報告しろとか承認を求めろとか僕は言うつもりはない。政府も責任を持つんだったら国会議員である我々も責任を持つ。そうするのが本来の筋ではないか。過去、我々は何かやったこともある。それに類したことであれば、それはそれなりの処置があってもいいかもしれないけれども、長官も今認めたとおり初めて行うこと、これがどういうことを引き起こすかわからないような法案だ、しかし必要だ。となれば、私は、政府だけが責任を持つんではなくて国会も責任を持つ。内容は、この計画に関係するすべてを国会が責任を持つというふうにすべきではないかと私は思うんです。  民主党は、そういうことで衆議院段階でも修正を要求してまいりました。しかし、残念ながらこの意見は自民党の皆様には受け入れてもらえませんでしたけれども、この参議院で審議を尽くしながら、入れていただくように我々としてはいろんな話をさせていただきたいと思います。  それで、抽象論をし過ぎてもあれでございますから、具体的に質問させてもらいたいと思います。  この地図は日本近海です。(図表掲示)日本と、特に色分けしていますけれども北朝鮮、韓国、その地図をここに提示しました。これは縮尺していますけれども、こんなに北朝鮮と日本が近いのかと思わないでください、実際に近いんですから。  そこで、周辺事態というと、政府の方は必ず周辺という地理的概念ではないとおっしゃる。事態ということを認識してほしいとおっしゃる。  そこで、この朝鮮半島で有事が起きたと。ちょっとテレビ向けにわかりやすくするために、閣僚の皆様は頭がいいと思いますし、よく理解されると思いますから、もし朝鮮半島で有事が起きたとしたら必ず米軍行動を起こします。または、もっと強く言いますと、主体的に行動するだろうと私は思う。朝鮮半島有事ということが起きれば、私は、アメリカはこのガイドライン法にのっとって日本協力要請をするだろう、日本政府にこういうことをしてほしいと。その要請を受けて日本政府は、この事態が周辺事態であるのかどうなのか認定をされると思います。それで、これは周辺事態だという認定をすれば、基本計画をつくってその計画を実施に移す。多分、大筋そういうことだろうと私は思うんです。  そこで、問いたいんですけれども、周辺事態の認定基準なんです。北朝鮮、朝鮮半島で有事が起きた。その理由は、いろんなことが想定できると思います。  そこで、皆さんに聞いてほしい文書があるんですけれども、これは二年前、一九九七年五月十九日に出されましたアメリカの四年ごとの国防計画見直し報告書というのがあるんです。これはアメリカの国防の基本戦略が書いてあるものです。その報告書の中に記載があるんですが、軍事力の一方的行使の基準となる死活的な国益を次のように例示しています。つまり、以下の例示があればアメリカ軍は一方的に軍事力を行使します、そういうふうな内容なんです。  その一番目に、国家主権と領土や国民の保護、アメリカ本土に対する核・生物・化学兵器による攻撃やテロの脅威の予防と抑止という項目が実はあります。二番目は、敵対的な地域連合や覇権国の出現防止。あと三番目、四番目、五番目と書いてあるんです。これらの国益が危機に瀕した場合、アメリカ軍事力の一方的使用をちゅうちょしないことを明言している。  何が言いたいか。御記憶にあろうかと思うんですけれども、アメリカがテロの養成所を空爆しましたですね、つい最近の話ですが。そのときに日本政府は支持もしなければ理解もしなかった。防衛庁長官、ありましたですよね、そういう空爆の事実が。テロの要員を訓練するところだからアメリカは空爆をした。ありましたですよね。長官、御記憶ありませんか。
  125. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 柳田先生御指摘のケースというのは、恐らくアフガニスタンとスーダンに対する米国の爆撃のことだろうと思いますが、この機会にちょっとだけ申し上げさせていただきますと、先生今御指摘の四年ごとの国防計画の見直しで確かにそのような記述がございますけれども、これはあくまでも一般的な記述でございます。  したがいまして、具体的に先ほど先生が挙げられました米国の主権や領土、国民を保護すること等を具体例に当てはめまして、その死活的利益を守るためにどういう行動をとるかということが決められるというふうに解釈されます。
  126. 柳田稔

    ○柳田稔君 難しい答弁を聞いてもしようがありません。つまり、アメリカの国防の基本方針に書いてあるんですよ。国家主権と領土や国民の保護、アメリカ本土に対する核・生物・化学兵器による攻撃やテロの脅威の予防と抑止と書いてある。実際に行われた箇所についても今答弁がありました。スーダンやアフガンであります。御記憶があろうかと思います。一般論がここに書いてあるとしても、実際に攻撃したことは変わりありません。これは事実であります。そのことを念頭に置いてもらいたいんです。  そして、アメリカと北朝鮮の協議、KEDOの協議もありますが、ミサイル開発についての協議も最近活発に行われております。  北朝鮮のミサイルでありますが、何年前かノドンというのが日本海に落ちました。そして、それから昨年の八月にテポドンという弾道ミサイルが日本の上空を通過いたしました。通常、ミサイルの開発がこんな短期間で済むわけがない。これは技術者から私もいろいろ話を聞いております。  本当に短期間でノドンクラスから日本上空を越えるようなテポドンまでできてしまった。次にできるのはもっと足の長いといいますか、航続距離の長いミサイルの開発ですよ。とすると、その開発に成功するのにそう時間はかからないだろうと私は思う。それは一段から二段の開発、二段から三段の開発ですからね。ミサイルの下につけるものですから、一段ロケット、二段ロケットという。だから、二段まではできたわけですね。今度は足の長いミサイルの開発に入っている。その脅威がアメリカにはあるから、そんなミサイル開発をするなと、いろんな協力をしてやろうということで米朝協議に入ったんだろうと私は思うんです。  しかし、一方では、北朝鮮は既に生物兵器、化学兵器を保有しているというのは防衛庁の中でも通説ですし、そういう話も我々は委員会の質疑を通じながら知っております。さらに、委員会の席でも、原爆についても既に二基ぐらいは持っているんではないかと防衛庁としては考えておりますということも外交防衛委員会の質疑の中で防衛庁長官は発言をされております。  つまり、何を言いたいか。足の長いミサイル開発もそう時間を置いて予断を許さない、一方では生物・化学兵器は持っている、核兵器もあるかもしれない。そういった中でアメリカは北朝鮮といろんな話し合いをしている。コソボでもそうでした。いろんな協議を積み重ねていった。積み重ねていって、最終的にNATOは空爆をする、だからユーゴよ我々の要求をのめとおっしゃった。そしてユーゴがのまなかったからついに空爆に走ってしまった。そういうこともありました。これと北朝鮮が関係するとは私は思わないけれども、となったときに、私はアメリカがミサイル開発を阻止するために、または核兵器の開発を阻止するために北朝鮮に対して攻撃をしないとは言えないだろうと思うんです。  これは私の持論でありますけれども、想定の質問に対しては政府は答えられないとおっしゃるかもしれませんが、アメリカが一方的に北朝鮮の核施設やミサイル施設を攻撃した場合、これは政府が言う周辺事態に入るんですか。総理、どうですか。
  127. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま柳田委員から朝鮮半島をめぐっての情勢について、具体的ないろいろのケースについてお尋ねがありましたが、こうした質問には、仮定の設問となりますことでございまして、お答えを申し上げることは、政府としては誤解を招きかねないことでございますので、差し控えさせていただき、適当でないと考えております。  その上で、あえて全く一般論として申し上げれば、周辺事態とは、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でございまして、先ほどの話は朝鮮半島においての事態に対して米軍の行為そのものでございまして、そのことが我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態か否かということが常にこの法律案の根底にあるわけでありまして、ある事態がそれに該当するか否か、あくまでもその規模、態様等総合的に勘案して判断することになります。この点については累次御答弁を申し上げておるとおりでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  128. 柳田稔

    ○柳田稔君 政府は、周辺事態というのはその事柄の内容なんですとおっしゃっていますね、ずっと答弁で。その事態がどうかが周辺事態として認定するかどうかといって答弁をずっとされているんです。だから私は、ひとつ私が考えられる中で、あってもおかしくないなというものを想定したんです。そういう具体的な想定に対してはお答えができないとおっしゃるけれども、この法案日本人の生命、財産、平和を守るための法案です。  とすると、今どこにもそんなものはないんです。ないけれども、この法案をつくるということは、いろんなことを想定をして、それに対応できるものをつくってこないといけないわけですね。そんなものは一切ありません、ただどこからか言われたからつくっただけです、これではちょっと話にはならない。  とすると、いろんなことを想定して、これに対応するように実際に法案をつくって、国会に提出して、衆議院皆さんはそれを御存じなんでしょう、私は初めて聞くからわからないんですけれども、具体的に事態がどういうことかというのを判断しないと周辺事態かわからないとおっしゃるから、具体的にこういう場合はどうされるんですかと聞いただけなんです。アメリカが北朝鮮の施設を攻撃した、爆撃した、有事ですよね、これは。  もっと突っ込みましょうか。その攻撃の爆撃機はどこから飛ぶんですか。韓国本土にある米軍施設か、または日本本土にある米軍の基地からしか出動できないんですよ。どうですか。これは周辺事態ではないんですか、あるんですか。
  129. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 周辺事態であるか否かは、あくまでも我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるか否かという観点から判断するものであります。だから、米国が北朝鮮を攻撃したということとか、あるいは米国からの協力要請の有無によって判断されるものではないと考えます。  特定の地域における事態に一定の仮定を設けた御質問に答えることは困難でありますけれども、一般論として申し上げますと、御指摘の場合に限らず、この事態が周辺事態に該当するか否かについては、米軍からの協力要請の有無にかかわらず、我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるか否か、その時点の状況を総合的に見た上で判断することが正しいと思います。
  130. 柳田稔

    ○柳田稔君 周辺というのはどこかと聞くと、それじゃない、事態だと言う。では、こういった事態はどうなんだと言うと、答えられないと言う。一方では新しい概念を持ち込んで国防のためにやるんですとおっしゃる。  とすると、聞く方、質問する私もそうですが、テレビを見て聞いている国民の皆様も、このガイドライン法案というのは一体何なんだ、自分たちの判断基準はどこに置けばいいんだということになりませんか。どう考えても、一〇〇%ないとは言い切れない、あり得る。この作戦行動に出るのは、日本米軍基地か韓国の米軍基地、これはもうはっきりしている。それもなってみないとわからない。  では、もっと突っ込んで聞きましょう。なってみないとわからないということであれば、起きました、それからいろいろな会議を招集して、これは情報収集、集めよう集めよう、ああ集まった、じゃ会議をしよう、これは周辺事態かもしれぬ、じゃそれから基本計画をつくろう。  政府は今までどう言ってきたかといいますと、緊急事態の場合もあるから報告で許してくれと。そしてこの法案も、どんどん急いで通そうとする。我々をもっと理解させてほしいし、テレビを見て聞いておる国民の皆様にもわかるように説明してほしい。そうするためには具体的な問題を提示しろと言うから、私は周辺事態である具体的な例を提示しただけなんです。  これは周辺事態であるのかないのか、もし違うと言うんだったらどこの点が違うのか、何が不足しているのか、具体的に答えていただきたい。
  131. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 委員が、米国が北朝鮮を攻撃した場合、これを周辺事態に該当すると判断するかどうかという質問でありますから、そういうときに単純に周辺事態というふうには判断しないと。また、米国が要請してきたから周辺事態と認定するかということになると、そうでもない。我々としては、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるか否かを総合的に見た上で判断するということを申し上げているわけであります。  委員がおっしゃるように、それでは事態が起こってから基本計画等について慌ただしくやるのかということでありますが、これはもう累次申し上げてきたとおり、私どもは、絶えず米軍と連絡をとりながら、どういう事態になっていくかということについては細かく緊密に連絡をとっておりますから、あってはならないことですが、仮に米国が北朝鮮を攻撃するというような事態について、私どもは必要かつ十分に予備知識を持って対応していく体制は整えることになっていくだろう、こういうふうには申し上げられると思います。
  132. 柳田稔

    ○柳田稔君 またこれを押し問答していてもしようがありませんから、次に行きます。  今、私が言いました北朝鮮にそういう攻撃をするということは、日本本土から爆撃機が飛ぶということは自明の理なんですけれども、もしこういうアメリカの方から事前協議の対象とするということが起きたとき、これは要するに日本から行くわけですからね、空母なり戦闘機が行くとなったとき、これは事前協議の対象になるんでしょうか。
  133. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 北朝鮮とかどことかそういう話ではなくて、我が国の施設・区域から戦闘作戦行動として米軍が活動するということになれば、当然事前協議の対象となります。
  134. 柳田稔

    ○柳田稔君 湾岸戦争がありましたね。あのときに日本から空母なり戦闘機なり弾薬なりを大量に持っていきました。あのときは事前協議の対象になったんですか。
  135. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 我が国の基地から戦闘作戦行動として出ていったという事実はありませんから、当然事前協議の対象となりません。
  136. 柳田稔

    ○柳田稔君 日本の基地から出動したという事実は外務大臣も御存じですね、日本から行ったというのは。それは新聞を見れば何々の空母と書いてあるわけですから、どこを基地にしているかというのはみんな知っているわけです。要するに、日本から行ったとしか考えられないんですよ。それで、そのときは事前協議の対象にならなかった。  では、もしある国、そういった施設を爆撃するときに米軍が移動するとき、これも同じように考えると事前協議の対象にならないんじゃないかと僕は思うんですよ。なるんでしょうかね。それとも日本政府が頑として事前協議の対象になるようにするのかどうか。どうでしょうか。
  137. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 委員はよく御承知の上で聞いておられると思いますが、戦闘作戦行動ということはもうずっと前から定義づけられておりまして、政府として何度も答弁しているところでございます。例えば我が国からどこかに直接爆撃機が爆撃するために飛び立つ、これは明らかに戦闘作戦行動でありますが、我が国の基地から航空母艦がどこかに移動して、その上で戦闘作戦行動に出る場合とそれは違うということは、これは何度も何度も政府として従来から答弁しているところでございます。
  138. 柳田稔

    ○柳田稔君 国民の多くも、湾岸戦争のときに米軍がどういう行動をしたかというのは新聞、テレビを通じて知っているんですよ。日本から出ていって、そして湾岸戦争の作戦に参加したと。同じことで、日本から移動していって、ある国の爆撃をしました。そしたら日本は事前協議の対象になりません、それはアメリカが勝手にやったことですということになりますね、移動という概念を使えば。ところが、さっきの地図にもあったように、大変近いところなんです。これは僕は問題だと思いますよ。  それで、話を先に進めますけれども、次に、基本計画をつくった。その中で後方地域というのを政府は指定しますね。これは後方支援活動をするためにこの地域でやるんだという地域を決めるわけです。この法案を読みますと、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空」と書いてあります。  それで、聞きたいんです。戦闘行為が行われることがないと認められるその具体的基準は何ですか。
  139. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 後方地域の要件を満たすかどうか、この判断でございますが、それはその時点での戦闘の全般的状況、装備品の能力、それから米軍と相手国の軍隊の展開状況、こういうものを総合的に勘案いたしまして合理的に判断をするということになると思います。
  140. 柳田稔

    ○柳田稔君 民間の商船もそこに行きますね。民間の商船は何の武器も持っていません。例えば具体的に聞きます。北朝鮮の潜水艦が行動できる範囲というのがあります。この潜水艦を見つけるのは大変ですよね。これは出てきては攻撃するわけです。日本はそれに対して自衛隊を派遣して撃沈するような法案ではないわけですから、物資を輸送する船に対して潜水艦が近づいてきた、発砲できる航続距離の範囲だ。これは安全な後方地域になるんですか。
  141. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 後方地域支援等は、後方地域のうちから防衛庁長官内閣総理大臣承認を得て指定する実施区域において実施されるものでありますが、この実施区域が後方地域の中にあるかどうかについては、自衛隊が常時得ている情報あるいは外務省から得た情報あるいは米軍から得た情報などを総合的に分析することによって防衛庁長官が合理的に判断することになります。  特定の地域に係る事態での仮定の御質問にお答えすることはどうかと思いますけれども、一般論としては、さっき政府委員から話がありましたように、戦闘の全般的状況、装備品の能力、米軍及び相手国の軍隊の展開状況といった要素を踏まえて総合的に判断して決めるものであります。だから、御指摘のように特定の国のミサイルの射程とかあるいは潜水艦の活動地域のみによって判断されるものではないと考えております。
  142. 柳田稔

    ○柳田稔君 その総合的な判断の基準を具体的に聞いただけなんです。潜水艦が動き回って攻撃できる距離というのはある程度はっきりしているわけでしょう。だから、それはこの安全な地域に入るんですか入らないんですかとただ具体的に聞いただけなんです。それはわかりません、それは見てみないとわかりません、そうおっしゃったじゃないですか。だから、具体的に聞いたことに、それは基準となりませんとかなるとか答えてみてください。
  143. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 後方支援活動等を行う実施区域について、委員がお話しのようにミサイルが飛び交っておったり潜水艦が出没したりというような実態があるとすれば、それはもう当然防衛庁長官は実施区域の変更をやるわけでありまして、そういう危険なところで実施をするわけじゃありません。また、直ちに行為の中断や行為の休止をするということできっちりと安全を担保しておりますので、御懸念はないことだと思っております。
  144. 柳田稔

    ○柳田稔君 もう時間があと四分です。  私は、孫子の兵法というのを時々読むんです。その中にいろんなことが書いてあります。敵の守らないところを攻めると書いているところもある。わかりますか。敵がいた、強いところを攻撃するのはやめておこう、弱いところを攻撃しなさいと孫子の兵法に書いてある。多分、テレビを見ている皆さんは、孫子の兵法に書いてあると言うとなるほどなと信じてくれると思う。まだ言いましょうか。今言ってしまいましたけれども、実を避けて虚を打つというのもある。今言ったとおりです。強いところは避けよう、弱いところをたたこう。わかりますか。アメリカ軍が作戦展開しているところは強いところです。日本防衛庁長官が決めて、ここは安全だ、警備もつけずにどうぞ日本の商船さん行ってください、安全ですよ、航海は。一番弱いところです。それをたたけと孫子の兵法には書いてある。  さらに言いましょうか。先日もありましたけれども、中国の八路軍、古いですよ、私は生まれていませんけれども、その中に書いてある言葉があるんです、毛沢東閣下ですけれども。  毛沢東閣下はどういうことを言ったかといいますと、我々の基本方針は帝国主義と国内の敵の軍需工場に依存することである。わかりますか。自分たちでつくるとは言っていない。敵の軍需工場が我々の軍需工場だとおっしゃっている。我々はロンドンと漢陽の軍需工場に権利を持っておる。敵の国ですよ、敵のところにある工場は我々が使用する権利を持っていると言うんです、毛沢東閣下は。しかも、敵の輸送隊がこれを運んでくれる、それをとればいい。これは真理であって決して笑い話ではないと毛沢東閣下はおっしゃっている。  弱いところをたたくと書いてある。当たり前。強いところを避けて弱いところを攻めろ、これも書いてある。そして物資を運ぶならそれをとってしまえ、そして我々の資財にしろと書いてあるんです、孫子の兵法に。決して潜水艦がどうのこうのじゃない。攻撃をされない安全な地域だからどうぞ通ってくれということは、孫子の兵法をかりて言いますと、これはどうぞ攻撃をしてくれというのと一緒なんです。そう思いませんか。孫子の兵法が誤りですか。
  145. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 孫子の兵法は約二千年ぐらい前の話でありますが、今はとにかく近代的な情報を収集するためにいろいろなものが完備されております。だから私どもは、自衛隊が常にあらゆる機動力を発揮して新しい情報を得ている、また米軍もそれと同等ぐらいの立派な情報を持っている、外務省からもいろんな情報を得た上で安全な場所を見つけているわけですから、孫子の兵法が直ちにこの場合に該当するとは決して思っておりません。  ぜひひとつそういうことで、この法律はこの法律で独自のものを持って構成されているということを御理解いただければありがたいことだと思います。
  146. 柳田稔

    ○柳田稔君 私は中国の毛沢東閣下のお言葉も説明したんですけれども、それも古い昔の話だとおっしゃりたいんですか。  北朝鮮という国とは言いません。その地域というのは危ない。危ない国は弱い、今のところ弱い。弱い国は何をしでかすかわからない。そのことを十分考えて対処しないといけないんだということを考えていただきたいと思います。  終わります。
  147. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) あなたの話はすべて戦争当事者国の間の話であって、私どもは戦争をやっておるわけじゃありません。支援活動をやるだけの話でありますから、そこを混同しないでいただきたいと思います。
  148. 柳田稔

    ○柳田稔君 私は戦争とは言っていない。そういう作戦があるんだよと。そうすると安全な地域というのはないじゃないかということを言っているんです。(拍手)
  149. 益田洋介

    益田洋介君 益田洋介でございます。  当参議院において慎重審議をされ、修正の末衆議院に送り返された情報公開法が五月七日、可決成立をいたしました。これは非常に画期的なことでございます。長い間我が国が待ち望んでいた情報公開法でございまして、良識の府参議院におきまして修正され、完璧とは言えませんが、ほぼ現状においてはこれ以上のものはできないといった立派な法律をつくり上げたわけでございまして、やはり参議院の功績、快挙の一つではないか、そのように思っておるわけでございます。長いこと待っていたわけでございますが、もちろんイギリス、アメリカ、フランス、ドイツにおきましては既に三十年、四十年前に情報公開法というのが制定されているわけでございます。  この公開法は来年、二〇〇〇年の末には施行される予定でございますが、今まで中央官庁また特殊法人が頑として公開しなかった、要するに機密文書であるということで守秘義務がある、守秘義務が公開する義務よりも優先するからといって皆情報をひた隠しにしてきた。そのために厚生省の汚職が起こり、防衛庁の調達本部の汚職が起こり、また一連の大蔵省の汚職が発覚したわけでございます。今後は官民業挙げてそのようなことのないように私ども日本国民は努めていかなきゃならない、政治家はその先頭に立って透明性を増していかなきゃいけない、日本国の政治は透明である、世界に冠たるそのような状況をつくり上げるのが私たち政治家の使命であるというふうに考えているわけでございます。  残念ながら、外務省、防衛庁、それから警察庁については条件つきで若干非公開を許すことはございますが、しかしそれも、行政訴訟をするという権利を国民の一人一人に付与されている法律でございまして、これは札幌から福岡までの全国八カ所の高等裁判所において行政訴訟がとられるわけでございます。  この日本の情報公開法に先立つこと三十三年、一九六六年にアメリカでも情報公開法が成立をいたしました。これはフリーダム・オブ・インフォメーション・アクト一九六六というものでございまして、昨年の六月二十九日、アメリカの民間の研究機関、シンクタンクであるナショナル・セキュリティー・アーカイブという会社が申請した結果、アメリカは一部の、一九七二年の一月六日と七日、アメリカのカリフォルニア州サクラメントで行われた沖縄返還に関する、これは七二年の五月に実現したわけでございますが、返還に関する最終段階での日米首脳交渉に関する議事録を公開いたしました。  このときの総理大臣佐藤栄作氏でございます。そして、外務大臣は福田赳夫氏でございます。福田外務大臣は後に総理になられたわけでございます。そして、佐藤・ニクソン会談、さらには福田・ロジャーズ国務長官の会談、それぞれの議事録が残っている中で、今回のガイドラインに絡んで、沖縄返還交渉でございますので、特に沖縄に関する興味のある記述が記録として残されております。その一部を御紹介いたします。  福田外相が語ったところによると、これは米軍が那覇空港を日本側に返還するに当たって米海軍の哨戒機P3の移転先について細部を語り合ったわけでございますが、福田外相は、P3が岩国基地、山口県でございます、や三沢基地、青森県に移転されれば政治的問題を引き起こす、このように述べている。「日本本土でなく、沖縄の別の基地に移転するようロジャーズ国務長官に要請した」と、このように書かれている。なぜ本土であっては困るのかについて福田外相の発言部分は、岩国基地は佐藤総理の地元選挙区の山口県にあるからだと、こういうことが記録として残されている。私はこれは大変な問題だと思うんです。だから、本土にはもう基地はふえなかったかわりに、沖縄にどんどん基地や勢力が集中してきた。結局、これは日本政府が当時示唆した結果として、当然の帰結としてそうなったという事実が判明した。これは大変なことですね、総理。  私は、この問題はやはり自由民主党という政権が本当に国民のために、国民を思って政治活動をしているんじゃないんだということの証左であると思います。身勝手なことばかりやっているのが自由民主党の政権なんです。それはいまだに連綿として続いているんです。だから国民は怒っているんです。  私は、総理に対して、このような発言をし行動をとった自由民主党の先輩、総理であり外務大臣であった方々がとったそのような言動についてどのように総理として沖縄県民に今説明をされるおつもりなのか、これが第一問。  それから第二問。自由民主党の先輩の二人の総理がこういうふうな倫理観の欠如した発想であり、また不遜な政治行動をとったということについて、また福田総理小渕総理の地元の先輩でもあられる、尊敬をされていらっしゃったそうです。どう思われますか、所見をお伺いしたい。
  150. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 益田委員指摘の文書は一九七二年一月の佐藤・ニクソン会談の議事録でございまして、福田外務大臣がロジャーズ国務長官に対し、那覇空港の返還に伴い同空港に駐留していた米海軍P3航空機を本土でなく沖縄の別の基地に移転するよう要請した旨の記述が見られるものと承知をいたしております。  当時の事情について詳細に承知をしているわけではありませんが、同外相の発言は、沖縄県民の御期待が高かった那覇空港の返還を早期に実現するために、現実的な解決策をぎりぎりのところで探るものではなかったかと推測をいたしておるわけでございます。当時の環境から申し上げて、あるいは本土に移転するということが望ましいことであったかもしれませんけれども、特に那覇空港をいかに返還させるかという中で、この問題を直接担当された当時の責任者がこのような判断をして結論を出されたものと推測いたしておるわけでありまして、この時点におきましての行動としてはやむを得なかったことではないか、このように考えます。
  151. 益田洋介

    益田洋介君 先輩お二人の倫理観の欠如について、自由民主党政権がこういうふうな政治理念に基づいて行動していたということ、それについて私は質問しているんです。
  152. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 倫理観ということはなかなか難しい言葉でございます。政治家としての政治倫理ということでありますれば、究極的に国民の利益に合致をするということで、その時点においてぎりぎりの判断をして行動したということは、政治としてこれは許されるべきものだと、こう考えております。
  153. 益田洋介

    益田洋介君 私は、許されるとはとても思えない。  それで、お二人とも故人でございますから、事実関係をこれから伺うということはもうできません。そこで、総理、当然日本の外務省にもこの七二年一月六日と七日の首脳会談の記録が残っていると思います。その文書を当委員会に提出していただきたい。
  154. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 外務省におきます記録につきましては、その公開の可否につきまして種々の観点から検討して措置をしているところでございますが、現在までのところ、この首脳会談の記録につきましてはまだ公開の対象とするものではないという判断で来ているところでございます。
  155. 益田洋介

    益田洋介君 既にアメリカでは公開しているんですよ。何で我が国で公開できないんですか。理由を言ってください。
  156. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 米国におきましては、これは先ほど先生からも御指摘がございましたけれども、情報公開法の手続にのっとった公開請求の要求がありまして、それに基づいた手続がとられたものだと私は承知いたしますが、我が国におきましては、我が国の現在の制度、慣行上におきましてまだ公開するに至っていないということでございます。
  157. 益田洋介

    益田洋介君 時期的な問題で、何も日本の情報公開法が施行される二〇〇〇年の末まで待っている必要はないですよ、アメリカは公開したんだから。おかしいじゃないですか。  委員長、これは理事会預かりで結構でございますから、ぜひ協議をしていただけますでしょうか。
  158. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 理事会で協議します。
  159. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございます。  次に、自由民主党と自由党の連立について若干お話を伺います。  今回、総理が訪米なさるに当たって、相当慌ただしく最後の詰めをガイドライン法案されたわけでございますが、昨年の十二月から始まっておりました自由民主党と自由党の政策協定、そして年がかわってことしの一月十三日、政策合意に至って、翌十四日には内閣改造を行って、今お戻りになりました野田自治大臣が閣内にお入りになったわけでございます。  そして、今度のガイドライン法案衆議院での修正、成立、大変慌ただしかったわけでございますが、かなり自由党の修正に対する主張を自由民主党はおのみになった。主に国会の関与に関する問題、船舶検査の問題、それから安保の枠内の問題、さらには周辺事態の定義その他について、ほぼ全面的に政府・自民党は自由党の主張をのみ込んだ。二階俊博国対委員長言葉によれば、自民党は今回は自由党の主張を丸のみにした。政策論争じゃないんですね、官房長官。  要するに、政権の枠組みの中で綱引きをしただけなんだ。だからこれが国民にはわからない。非常に不透明なんです。一体ガイドラインというのはどうなっているんだ。政府案を骨抜きにしたのか、きばがついたのかわかりませんけれども。小沢一郎党首は、最小限、党の基本方針を貫くことができたと非常に満足をされていたようでございます。  私は、こういうふうな政権の連立の仕組みというのは非常によくないのじゃないか。この前にも、九四年の六月から九八年の八月まで自社さきがけの連立政権が異常な形で、よく四年間お続きになりましたけれども、その間さまざまな悪法を通している。  これは、私自身も国会に参りましてから最初の秋の臨時国会で経験した例の宗教法人法、大変な乱闘騒ぎにもなった。しかし、数の力で政府は押し切った。それから、国民皆さんの六千八百五十億円の税金をどぶに投げ捨てたような住専法案、これも力ずくでお通しになった。さらには沖縄特措法、また沖縄が出てきた。今回のガイドライン周辺事態が起こった場合には、沖縄には今七〇%の米軍の施設及び勢力が集中しているわけでございますから、当然沖縄は相手国の一番攻撃の対象になる。沖縄の人は怒っているわけです。特措法もやった。それから財政構造改革法、これも無理やり通した。小渕総理総理になってからこれをすぐに凍結されて、私は正解であったというふうにこれは思いますが、これらの悪法を自社さきがけ政権は四年間にわたってつくり上げた。そして、今、自自じゃまだ足りなくてもう一つ別の政党にまで官房長官は誘いをかけて、四月に統一地方選挙があって、全く政府・自民党と反対の立場で戦った政党に対してそういう働きかけというのはおかしいんじゃないですか。選挙民の方々には理解できない。  何を一体画策して、どういう真意でいらっしゃるのか、官房長官お答えください。
  160. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) まことに奇異な質問をいただく次第でございまして、それぞれ政策は今日まで政党間が協議をし、さらに各所管委員会においてそれぞれ理事を中心にして最終決着点を論議の中から求められて、そして法案として委員会で議決、決定をいただき本会議で可決をいただく筋のものでございまして、委員十分御承知のとおりでございます。私どもが何かを仕掛けておるようなただいまの言い方はむしろ国民にわかりにくく誤解を生むわけでございます。  沖縄特措法のお話もありましたけれども、私の承知する範囲におきまして貴党も賛成をいただいたと思うわけでございますし、また自自連立について言及がございまして、これに伴うガイドラインの問題についてお話がございましたけれども、今度のガイドラインはその連立前に提案をされておったものでございます。それについて自自連立をいたしまして連立の中で政策合意したものをどのようにしてこの法案の中で生かすかそれぞれ苦労をした中におきまして、なお他党との政策協議もそれぞれ御苦労を賜って衆議院において修正議決をされたものでございます。  政府側から、私どもが政党のありようについて何かをやっておるようにとられ、またこういう本委員会の厳粛な審議の中でそういうことが申されることは残念だと思うわけでございます。  いろいろ問題になりましたけれども、例えば地域振興券等につきましてもそれぞれ政党から御提案がございました。いいものはいいものとして、それが景気刺激を行い国民皆さんの御理解をいただくとするならば、我々はこれを実現していくために、政党間の協議が調い、政府もこれを受け入れて努力するのは当然の帰趨であろうと私は思うわけでございます。  そういう中において、特定の政治家が特定の意図を持って何かをやっておるように言われ、この厳粛な審議がそういう方向でとられることは貴党自身にとってもまことに不名誉なことだと思うわけでございます。  以上でございます。
  161. 益田洋介

    益田洋介君 いろいろ尋ねることがございますので。しかし、その議論は余りマスコミに吹聴されてつまらない方向に枠組みが進まないように今後御注意願いたいと思います。  昨年十二月十八日午前六時五十分、長崎県の対馬の南西約八十キロ、そして同じく長崎県の五島列島の北西約九十キロの海上で、公海上でございますが、北朝鮮の半潜水艇が韓国の軍艦から数千発に及ぶ射撃を受け、轟沈いたしました。この事件が起きたときに日本自衛隊は何をしたか、どういう行動をおとりになったのか、実に心寒い限りのことでございます。  それは、自衛隊法にのっとって、隊員三人による周辺の、海岸線から南へ約五キロ余あたり地域の調査研究ということで、丸腰で出かけていった。半潜水艇が撃沈されたわけでございますから、当然北朝鮮の潜水艇の母船などが接近する危険性もあったわけでございますが、現行の自衛隊法の七十六条によればもうこれ以上のことはできなかった。そして、総理による防衛出動や治安行動の命令がない限り自衛隊には沿岸警備権限がない。  私は、今回のガイドライン法案についても、これは言ってみれば平時と有事の中間点のような事態だった、こうした中間点のような際の政府がとり得る行動が空白になっている、そんな気がしてしようがないんです。有事になったら手おくれなんです。平時であっても、平時という定義、有事という定義、言葉の問題だけにかかわらず、事態として平時から有事に移行するという予兆が強い場合にやはり政府としてすぐに速やかに適切な行動がとれるようなそういう支度を、法整備をしていく必要があるんじゃないかと私は考えるわけでございますが、防衛上の大変根本的な問題である領域警備というものについての不備というものを私は可及的速やかに是正をする必要があると思いますが、総理、いかがお考えでしょうか。
  162. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 周辺事態の予兆はあるものの周辺事態と認定されていない状態において防衛庁・自衛隊はどのように対応するかという意味での御質問だったと思うんですが、周辺事態が予想される場合には、防衛庁・自衛隊としては、米国と適切に協力しながら、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行うわけであります。同時に、情勢の変化に応じ、情報収集及び警戒監視の強化及び情勢に対応するための即応態勢の強化を行うこととなります。自衛隊は事実そういうふうに徹底しております。この旨はまた日米防衛協力のための指針にも明記されているところであります。  昨年の十二月十八日、北朝鮮の半潜水艇が撃沈されたことに関し、事案直後の我が国周辺における情報収集に万全を期すために、私どもは十八日と十九日の二日間、海上自衛隊の航空機及び護衛艦、航空自衛隊の偵察機により対馬海峡等における警戒監視態勢を強化したところであります。その際、護衛艦には通常装備している武器を搭載しており、丸腰での出航を余儀なくされたとの事実は当たらないと思います。  いずれにしましても、国の安全と繁栄を維持し、国民の生命、財産を守ることは政府の最も重要な責務であり、我が国危機管理体制を一層堅固なものとして遺漏なきを期すとの観点から、委員が御心配いただいておりますように、必要な対応のあり方についてさらなる検討を行っていく考えであります。
  163. 益田洋介

    益田洋介君 二月二十四日の当予算委員会におきまして、総理は有事法制について答弁をなさいました。いかに有事の際に対処すべきかはきちんとした法体系のもとで対応する必要があるのではないか、そのようにお述べになっています。したがって、有事法制の研究段階からいま一歩踏み込んで、立法化を視野に入れた御発言であると、このように私は理解したわけでございますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  164. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 有事法制の整備につきましては、基本的には防衛出動が命ぜられている事態における自衛隊行動に係る有事法制の問題についてその研究は当然のことであり、政府としてもこれまで研究を行ってきたところでございます。  現実に法制化を図ることは高度の政治判断にかかわる問題であり、今直ちに法制化することを考えているわけではありませんが、政府としては有事法制は重要な問題と認識をいたしておりまして、国会における御審議国民の世論の動向を踏まえて適切に対処してまいりたいというのが現時点における公式の政府の見解でございます。  が、ただいま益田委員がお尋ねになりましたのは、恐らく二月二十四日の依田委員の質問に対する答弁かと存じますが、この中におきまして、当時この有事立法がどういう形で研究をされてきたかという経緯を申し上げました。  言うまでもありません。御存じのところだと思いますけれども、昭和五十二年の八月に福田内閣総理大臣の了承のもとで三原防衛庁長官の指示によって検討されまして、特に自衛隊行動に係る法制につきまして、第一、第二、第三分類につきまして、既に第一、第二につきましては国会に報告をいたしております。第三につきましては、内閣安全保障危機管理室で調整中のものでございます。  すなわち、この法制につきましては、当初これは法制化、いわゆる立法準備ではないという前提でこの研究を始めておることでございまするけれども、やはり有事における立法ということは、自衛隊のようないわゆる実力組織に関して、シビリアンコントロールというような立場から考えましても、法制化によりましてきちんとした対応をとることが一つの方向ではないかというようなことを実は御答弁申し上げました。  このことにつきましては、冒頭申し上げましたように、今後国会での御議論それからまた国民世論を背景に十分勘案していかなければならないことでございまするけれども、こうした法制につきましても、今後とも国民世論の動向等も勘案しながら考えていくべき課題ではないか、こういうふうに御答弁申し上げましたので、恐らくそのことをお取り上げいただきまして前向きな姿勢というふうに御質問されたのではないかと思います。  私自身は、この法制化につきまして直ちにこれを実行するということではありませんが、研究をされ、かつ法制的にきちんとした対応をとることは、国民のサイドから考えましても、一つ法律によってシビリアンコントロールを確実なものにするという意味では、これを研究にとどめるべきものかどうかについては十分研究する必要もある、こう私は答弁申し上げたわけでございます。
  165. 益田洋介

    益田洋介君 五月八日、土曜日でございますが、ウィリアム・ペリー前国防長官、現在は政策調整官として御活躍でございますが、六月に大統領と議会に提出する予定でございますペリー・レポート、これは北朝鮮に対するアメリカ政府及び議会の政策の骨子の見直しといった内容のレポートになるということでございます。  その中で大事なことは、九四年の米朝合意厳守、そしてまたミサイル活動停止を求めること。二つ目、日本人拉致疑惑の解明を求める、これは総理がこのたび訪米された一つの成果じゃないかと思います。早速これは骨子の中に入っております。三つ目、北朝鮮の出方を見ながら米朝・日朝関係の改善や経済援助などを検討すると。相当やはり日本とトライアングルな角度で考え方政策の見直しをしようということがうかがわれます。  三月十日にペリー調整官が来日した際、総理とお会いになって意見交換されたその延長線上のことではないかと思いますが、御所見をお伺いしたいと思います。
  166. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 米国のペリー北朝鮮政策調整官を中心に行われている対北朝鮮政策の見直しにつきましては、北朝鮮の核やミサイルその他の問題等に対処する包括的かつ日米韓三国が協力して対処することを念頭に置いた総合的なアプローチを検討しているものと承知をしております。  拉致疑惑につきましては、ペリー調整官より我が国立場を支持するとの発言を得ているのに加え、先般の日米首脳会談においてクリントン大統領より米国としても取り組んでいきたい旨の発言がなされたところでありまして、今まさに委員がおっしゃったように、小渕総理訪米の成果でもあるわけでございます。  また、米国は南北対話の進展を図るとの韓国の立場を支持しているものと承知をしております。  こうした米国の立場につき北朝鮮が前向きに応じるのであれば、米国としても北朝鮮に対して我が国及び韓国とともに前向きな対応をとることが可能になると考えているものと承知をしております。換言すれば、北朝鮮が前向きに応じないのであれば、より厳しい対応を検討せざるを得ないとの立場でもあると承知をしております。  こうした米国の対北朝鮮政策の見直しは、先般のハワイでの日米韓協議を含め、我が国や韓国との緊密な意見交換を踏まえた上でなされているものでありまして、抑止対話を基調とし、また北朝鮮の建設的な対応には対話を通じ関係改善を図るという我が国の対北朝鮮政策基本的な方向性を同じくするものだと、こういうふうに認識をしております。
  167. 益田洋介

    益田洋介君 終わります。
  168. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 関連質疑を許します。福本潤一君。
  169. 福本潤一

    ○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。  私は、広島市で原爆の傷跡冷めやらぬ昭和二十四年に生まれました。そこで数限りなく戦争の悲惨さは聞いてまいったところでございます。私自身の父親も看護兵でしたので、原爆死者がたくさん出た直後には死体焼却の作業に携わっており、放射能的に言えば私も被爆二世に当たるという人間でございます。この周辺事態法、広島でもまた沖縄でも、さまざまな御意見を聞くと、大変な不安を抱いている方がたくさんおります。  そこで、日本有事、また周辺事態、さらには日本平時、この関係について昨日からさまざまな質問が出ているんですが、非常にわかりにくいということで、衆議院の公明党の遠藤乙彦理事にこれをわかりやすい形で国民に伝える話はないかということを聞きましたところ、彼は交通信号に例えて、日本有事という事態は赤信号である、周辺事態というのは黄色信号である、日本平時は青信号であるという例え方をしていただいたことがあります。  こういう例え方で言わないと、周辺事態だけでいつまでも押し問答、禅問答のような話が続いているというところで、総理に、この例え方、青信号、赤信号、黄色信号事態だということについてどういうふうにお考えか、お伺いしたいと思います。
  170. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 交通信号に例えてのお話でございまして、今直ちにお尋ねをいただきましたので、必ずしもそのままに当てはまるかどうかわかりませんが、日本有事ということはそれこそ我が国の平和と安全が瓦解をするということでございますから、赤信号というか、あるいは信号機が壊れるような状況のような気もいたしますし、平時というのはそれこそ安寧が保たれ日本国民が安心してほかからの脅威にさらされることなくいくという意味では、それは青信号だろうと思います。  そこで、周辺事態の状況を黄色の信号とは例えて妙なようなところが大変あるように思います。周辺事態というのは我が国の安全と平和にとって非常にかかわり合いのある事態ということでございまして、その事態は常に十分監視をし、我が国の安全を図るためにその事態が赤そのものにならないということをいたしていかなきゃならないという、この危険信号だということも言い得るかと思います。  ただ、周辺事態そのものについては既にいずれの地域かにおいて赤信号が出ておりまして、そのことが我が国の安全に大いなる脅威となりかねない事態になっておることも、我が国が主体的に判断することの中には起こってくるわけでございまして、簡単に赤と青の間ということは言えませんが、しかしわかりやすく言えというとかなりわかりやすい説明の仕方ではないか、こう考えます。
  171. 福本潤一

    ○福本潤一君 三つの信号のときに、黄色信号はほとんど赤信号に次は変わるわけでございます。青信号に戻したいという時点で、黄色信号を対話抑止ということで一方では今回の周辺事態法がある意味では青信号に戻すための法案だという御質問に対する返事をいただいておりますけれども、対話抑止、公明党もこれを基本外交政策を考えておりますが、総理の答弁でも対話抑止でしていくのだというお話は伺っております。  ただ、一九九四年に北朝鮮核疑惑があったときに、米朝は一触即発の事態だったということがありました。これ自体が周辺事態かどうかということを問う以前に、もしこういう形でなるとどうなるのか。細川総理アメリカに行かれたときに、現実に核疑惑の問題で北朝鮮と交戦状態になる可能性があるということもあったわけでございます。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  そこで、現在日本政府が把握している、不透明だとは言われながら北朝鮮の軍事情勢また食糧、エネルギー事情、これについて具体的にお伺いしたいと思います。
  172. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 北朝鮮の国内事情は依然として不透明な部分が多くて確たることは申し上げられないわけでありますが、金正日総書記が国政全般を掌握している状況は変わっていないと見ております。また、同総書記のもとで引き続き軍重視かつ自由経済化を排した政策がとられており、経済やエネルギーの面において依然として困難な状況が続いているわけでございます。  軍事力につきましては、種々の情報を総合すれば、陸軍中心の構成、陸軍が約百万人となっており、総兵力は約百十万人を超えるものと承知しております。また、北朝鮮はノドンミサイルの配備を完了した可能性が高く、さらに弾道ミサイルの長射程化に努めているものと見られております。  食糧事情につきましては、昨年十一月に発表された国連食糧農業機構、FAOでありますが、及び世界食糧計画、WFPによる北朝鮮の食糧事情に関する特別報告によれば、昨年における北朝鮮の穀物生産量は約三百四十八万トンと見込まれ、本年には約百三十五万トンの穀物輸入が必要であり、北朝鮮の食糧事情は依然厳しいものと見ております。
  173. 福本潤一

    ○福本潤一君 現在、周辺事態の最たるものは北朝鮮ではなかろうかというふうに最近のさまざまな情報を得ると私どもは考えております。この北朝鮮の日本の情報把握、今述べていただいたぐらいがやっとわかる程度で、本当に三百万人も餓死者が出たのかというようなことも正確にはつかんでいない。ただ、工作船等を含めてかなり緊迫した事態が起こっているということでございます。  米国の国防情報局が出した、これは九八年、昨年でございますが、北朝鮮の核開発に関する緊急報告書というのを見ますと、一番目に、米国国防情報局は、DIAと略していますが、地下工場で北朝鮮が核兵器を開発中であることを突きとめた。二点目には、核関連施設は十カ所以上に及び、八千人以上の技術者が日夜働いている模様。三点目には、工場ではミサイル搭載用の核兵器の開発生産を行っている、中でも金正日総書記が開発を急がせているのがプルトニウム製核爆弾を小型化する圧縮技術である等々、十一点にわたって報告書が出ておりますが、これは外務省は承知しておられるでしょうか。
  174. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 少なくとも私のところには報告は届いておりません。
  175. 福本潤一

    ○福本潤一君 報告は届いていないということでございますが、これは昨年八月、議会で、米国国防情報局とオルブライト国務長官の議会討議でオルブライト長官が知りませんと答えている。DIAの方から、オルブライト長官、その情報は既に何カ月も前に国務省にお伝えしましたということで、長官は赤面せざるを得なかったという状況で報告書ができ上がっておるわけでございます。  そういう意味では、現在、北朝鮮は最も緊迫した情勢にある。我々日本人が北朝鮮に例えば昨年一年間でどの程度の人数が入っているのか。南北は戦後の冷戦構造の中で、ドイツは統一されたにもかかわらず、まだ統一されていない。戦後処理が終わっていない問題が人類としては残っているわけでございますが、何人ぐらい日本人が北朝鮮に入れたのかというのは承知されているでしょうか。
  176. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 日本人が北朝鮮に何名という統計は、正確には承知しておりません。
  177. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう意味では、食糧事情の問題、また断片的に得る情報、農業需要に関しまして私自身が個人でつかんでいる情報でも、例えば有用微生物群を取り入れて国家体制とともに三年間で農業生産需要を飛躍的に拡大しようとしているというような情報も入っておるわけです。ある意味では、食糧問題に関しても、むしろ日本より先に輸出国になれるのではないかというような情報も入っているようでございます。  先ほどの北朝鮮に対する北米の、アメリカの認識とともに、具体的な情報を正確につかんで、ある意味では統一、戦後処理が終わるような対話努力というのを総理も考えられておるようでございますので、その対話努力は具体的にどのようにされているか、それを総理にお伺いしたいと思います。
  178. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) やはり北朝鮮にあっては、国際社会の中で近隣諸国との関係をより緊密にしていかれることによりまして、この北東アジアのそれぞれの諸国との友好関係を増進していただくことをこいねがっておるわけであります。  今いろいろ御答弁させていただいておりますように、なかなかもってその状況が不明な点があります。日本人がどのくらい行っておられるかというお尋ねもございましたし、また食糧事情といわれましても、統計的にどれくらいのものが出ているのかわかりません。また、私の知るところでは、KEDOに対しましても日本人はたしか一人くらいしか技術者が入っておらない。韓国がこの軽水炉についてはお仕事を受け持つということで数百人入っておられると聞いておりますが、というようなことでございまして、なかなか不明な点が多いと思います。  それにつけても、日本としては、申し上げておりますように、対話抑止、その対話ということをできる限り進めていかなきゃならぬと思っておりまして、まず第一としては、やはり公開でのハイレベルのメッセージを常々出し続けなければならない。そういう意味で、実は一月十九日の施政方針演説でも、私の演説でも、また高村外務大臣外交演説でもそうしたメッセージを強く発しておるわけでございますが、残念ながら直接的にはそれに応答をいただいておりませんが、これはたゆまず努力していかなきゃならぬと思っています。  それから、非公式な接触、これは民間の方々もかなり北朝鮮にいろんな関係を通じて入っておられる。経済人また文化人、ついせんだっても日本を代表する画家である平山郁夫先生が、高句麗の遺跡の問題を文化遺産に登録したらどうかということで北朝鮮に参られまして、随分話が進んでおるやに聞いておりますが、こういった政治以外の方々も大変北朝鮮へ入っている。  政治の関係では、自由民主党の中山正暉先生を初めといたしまして、特に今回、村山訪朝団というのが既にメンバーも固まっていろいろと訪朝のための御苦労をされておられるように聞いておりますから、一日も早くそういった機会によりまして多くの方々が参られるということを期待しておりますし、その他も随分、衆参両院の議員の方々もいろんな課題を抱えてお訪ねしておる、大変望ましいことだと思います。  何はともあれ、政府としては国交の正常化を図っていかなきゃならぬということでございまして、国連の場におきまして北朝鮮の外交官に対する接触とか、あるいはまた、中断をいたしておりますが、北京においての北朝鮮との接触等につきましては精力的に取り組んでいきたいと思っておりますが、本件は例の拉致事件をめぐりまして中断をされておるままでございまして、進展がしないことについては残念に思いますが、さらに努力をいたしていきたいと思っております。
  179. 福本潤一

    ○福本潤一君 対話による努力、この観点以外にも、工作船のときに私、ことしの四月五日の沖縄北方特別委員会で、官房長官に総括してどういう対応策があるのかという質問を申し上げましたところ、七項目の海上警備等の項目を整理、点検しているというお話がありました。お答えいただきたいわけですが、時間がなくなっておりますので、その整備状態はまた別の機会に聞かせていただきたい。  今回、総理、英断として沖縄でサミットをされるという決断をされました。私も沖縄へしばしば参ります。そのしばしば参ったときに、直接に現地の市長、また稲嶺知事からサミット要請をいただいて、それにおこたえいただけるような形で英断していただいた。基地、警備問題、大変だと思います。並の凡人ですと警備上問題だと、非凡の凡人だと決断できるということがありましたので、ぜひともこのサミット、基地問題に大変なところ、大いに成功に向けて取り組んでいただきたいというふうに要望して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  180. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私、昨日に続いて質問いたします。  昨日は憲法問題、周辺地域問題を中心に伺いましたが、きょうはまず最初に、アメリカ主導によるNATOのユーゴスラビア空爆問題について伺いたいと思います。  三月二十四日にNATOの空爆が始まって以来、既に五十日が経過をいたしました。この結果は、コソボ紛争、コソボの事態が解決に向かうどころか、空爆のさらなる激化と紛争の泥沼化、この一途をたどっています。難民はこの一カ月の間にも五十万人以上ふえました。そして、国際旅客列車への爆撃、あるいは避難するコソボ難民の車列への爆撃、民間住宅や学校、市場、病院、テレビ局等々が爆破され、既に多数の非戦闘員の一般民衆が犠牲になっています。そして、五月七日にはベオグラードの中国大使館も爆撃をされ、二十人以上の死傷者を出しました。今の事態というのは、いわば無差別爆撃とも言えるようなそういう惨状を呈しているというのが今の実態だと思います。  私は、小渕内閣がこの間、ユーゴ空爆に対して理解するという態度をとってこられたわけですけれども、やはりこの態度を改めるべきだ。そして、NATOによる武力行使の即時停止、コソボにおける非人道的事態については交渉による平和的で政治的な解決を図っていく、このために、私は、小渕内閣が国際政治の中で大いにイニシアチブを発揮すべきときに来ている、こう思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
  181. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) コソボ問題の政治解決のために国際社会が一致をいたしましてミロシェビッチ大統領に圧力をかけることが必要でありまして、この観点から、G8が統一ポジションを固めまして、その上でさらに国連が主導的な役割を果たし得る状況に持っていくことが重要であると考えております。  G8の前には、高村外務大臣にもあのコソボ周辺のマケドニアを初めとした地域にみずから足を運んでいただきまして現状を十分つぶさに視察をしていただいておることも、我が政府として極めて大きな関心を有しておるということの証左であると御理解いただきたいと思います。  そこで、G8外相会合におきまして、その方向で統一ポジションが合意できましたことは重要な前進であると考えておりまして、G8の一員として政治解決のために積極的に貢献してまいりたいと考えております。特に、G8の中で爆撃に参加をしておりませんのはロシアと我が日本でございまして、そういった意味では、ロシアは特別な、あのバルカン半島地域におけるいろいろ過去の歴史的な経過で大きな影響力を行使しておりますが、残念ながら我が国は、そういった意味でのあの地域とのかかわり合いというものは、ボスニア・ヘルツェゴビナのあの悲劇以降はいろいろな形で援助をいたしておりまして、ある意味では相当のドナー国となっておるわけでありまして、これからも国際政治の中で日本としての役割を果たしていかなければならないと考えております。  私自身も、実はアメリカにおりましたときに、そのロシアの特使であるチェルノムイルジン特使ともいろいろお話を申し上げましたが、ぜひこういった点で、日本としての平和に向けての行動、何がなせるかということについて真剣に考えていきたいと思っております。  また、これは政府からお願いしたことではありませんが、大変この地域に御縁の深かった明石康氏が、昨日、ミロシェビッチ大統領とも会談をされたということでありまして、帰国していろいろお話をお聞きしたいと願っておりますが、十分承知をしませんが、いろいろな形で何とか平和解決に向けての努力日本としてはいたしていきたいと思っております。  一方、難民の問題につきましては、難民支援、周辺国支援、和平達成後の復旧や難民帰還への支援など、総額二億ドルの支援を行うことを決定いたしました。難民の流出は依然として続いておりまして、今後、この状況に応じまして必要があれば我が国としてもさらなる貢献策を検討いたしたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、一日も早くミロシェビッチ大統領においては平和に対する要請についての条件を受け入れることによって爆撃が停止される事態の早からんことを願っておるところでございます。
  182. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今、総理も言われたように、G8の七項目の声明でも政治的解決ということがうたわれている。そして、今、総理も何とか平和的解決ということを言われました。しかし、このG8の七項目の声明には空爆の即時中止というのは入っていないんです。政治的解決というのは、これはいわば平和的解決のことであります。一方で政治的解決を言いながら、他方では空爆は続行、拡大するというのでは、これはいわば自己矛盾であります。私は、本当に平和的解決、政治的解決を先行させようと言うなら、やはりそれとあわせて空爆の即時中止ということがなければならないと思うんです。  もともとコソボ問題というのは、ユーゴ国内におけるセルビア系とアルバニア系の民族紛争、いわば内紛であります。もちろん、そこで非人道的な出来事があったということは、これは問題であります。しかしこれは、明朗なことは、だからといってNATO諸国が攻撃を受けたわけじゃない。にもかかわらず、NATOが空爆に踏み切った。  この間、コソボ問題では、一一六〇、一一九九、一二〇三、三つの国連決議もありますけれども、これは紛争の停止であるとかあるいは禁輸であるとかこういうものであって、空爆をすべきだという決議は、これは三つの決議の中には入っていません。内政問題に干渉している、これが主権尊重、内政不干渉、武力不行使という国連憲章の根本原則をじゅうりんするものであることは、これはもう明瞭です。ですから、NATO諸国だって国連決議があるからなどという説明は一切してきていません。  NATOがユーゴ空爆の最大の理由に挙げてきたのは、コソボにおける人道上の惨禍を食いとめるということでありました。しかし、空爆に踏み切った後の事態はどうか。さっきも言いましたように、空爆後一カ月間で難民の数は五十四万人ふえたと言われている。そして、誤爆に次ぐ誤爆、あるいは中国大使館に対する爆撃。空爆によって非戦闘員が多数犠牲になっている。そして、内戦だったものが今や国際化している、紛争の泥沼化が進んでいるというのが今の事態。つまり、人道上の惨禍を食いとめるというのがいわば最大の理由でやられたけれども、この理由が破綻しているというのがこの五十日間の空爆の示したものだったと私は思うんです。  だからこそ、例えば最近も、イタリアのスカルファロ大統領も、コソボ紛争の平和解決のため空爆を停止しなければならない、こう語っている。東南アジアでも、タイ、カンボジア、ベトナム等々、次々と空爆中止の声を上げています。インドのシン外相も、人道に名をかりた継続的空爆は全く容認できない、こういう態度を表明しています。  私は、総理が政治的解決そして何としても平和的解決ということをおっしゃるのであれば、ここで日本政府がやはり空爆中止、武力行使の中止、こういうことを世界に向かって、NATO諸国に向かって、アメリカに向かって言うべきだというふうに思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
  183. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) G8の七項目についてでございます。その前提として空爆停止の決議ができなかったのではないかと。これはある意味では、空爆に反対をしておるロシアとまたこれを実行しておる国々が一緒にまとまっているわけですから、そういう意味で苦心を重ねた結果、平和的解決へ向けてのいろいろポジションを設定していこうということだろうと思っております。  なぜこういう事態が起こったかということを詳しく申し上げる必要もないかと思いますけれども、コソボにおきまして委員も御指摘のように五十万を超えるところの難民が生まれて、その行き場を失って非常に今流浪しておる。しかも、その中におきましては、多くの家族をセルビア軍、正規軍か否かは存じませんけれども、相当の死者を出しておるということでありまして、その以前としてボスニア・ヘルツェゴビナのあの悲劇を考えましたときに、このような状況が、民族浄化が行われるということが問題であるということから始まったことだろうと思っております。  そこで、一方的に、委員おっしゃるように空爆を中止すればすべて平和解決になるとは私は考えないわけでありまして、その以前に起こったこの問題についていわば貴党としても一体どうお考えになるかということもお話をお聞きして、そして最終的に解決するためには、いろんな困難な道はあると思いますけれども、日本としては日本のできることを全力を挙げて努力していくということだろうと思っておる次第でございます。
  184. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私にも御質問がありましたので、私お答えしたいと思うんです。  G8が結局どういう七項目の、これは高村さんも行かれたわけだけれども、この中の一つにこういうのがありますでしょう。国連安保理決議に基づくコソボ暫定統治機構の設置ということが入っておるでしょう。結局、空爆をやったけれども、人道上の惨禍を食いとめるどころか、ますます拡大したわけですよ。そこで初めて国連に提起するということになったわけです。何でもっと早く国連の場でやらなかったのかというのが私たちの主張なんです。  しかも、そのきっかけがなかったのかといえば、そうじゃないでしょう。米、英、仏、ドイツ、イタリア、ロシア、六カ国の連絡グループが中心になって和平案をまとめる作業をやっていたわけでしょう。ところが、結果的にはこれは一方しか署名しなかった、アルバニア系しか。だから、ロシアは一方しか署名しないような合意、アグリーメントがあるかという批判をしていますよ。しかし、和平交渉はあったんです。しかし、一方はのまなかったんです、ミロシェビッチの側はのまなかった。だから、そこをどう両者がのめる案にするかということでさらに協議を続ける、そして合意を見出す可能性はあったじゃありませんか。ところが、それをやらなかった。  だから、キッシンジャー元米国務長官は言っているでしょう。何でアルバニアが署名したか、NATOの空爆を引き出すためだったと。こんな一方的なことをやれば必ずこのコソボ事態というのはますます泥沼化する、何で国連の場でちゃんとやらないんだ、何でNATOにそんな権限があるんだと。だれが考えたって当たり前じゃないですか。そして、行き詰まったから今やっとG8で、空爆中止を言わなかったけれども、国連で暫定統治機構をコソボにつくろうという話になったんでしょう。日本政府は何でそのためにリーダーシップを発揮しないんだと。国連に提起すること自体がいわば一つの破綻じゃありませんか。  私は、総理がお尋ねになったから、逆にもう一遍お尋ねしたい。
  185. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 委員が国連の場で全然やらなかったというのは全く認識不足でありまして、昨年の三月から一年間にわたって国連の中でもずっと安保理でいろいろな協議が行われ、そしてユーゴスラビアの側が幾つかの国連決議を無視し、そして非人道的な民族浄化と言われるようなことをやり、そしてそういう中で、今、委員も御指摘になった幾つかの国が大変な努力の後に和平案をまとめて、両方にその和平案を提示したわけであります。  その和平案は我々から見れば大変に中立的な和平案でありまして、いわゆるコソボ解放軍からいえば独立ということを目指しているのに、独立はだめだよ、要するにユーゴスラビアの領土的一体性は保持したまま高度の自治権を与えると。こういうことでコソボ解放軍の方も最後までのむのを渋ったわけでありますが、最後の最後にのんだわけでありますが、民族浄化、そういった非人道的行為を行っているユーゴの側が最後までのまない、こういう状況にあったわけであります。  そして、ボスニア・ヘルツェゴビナの場合もそうでありますが、本当に戦渦で大変な非人道的なことが行われて、これをのまなければ空爆をやるよという最後通牒のもとにデイトン合意というのができた経緯もある。そういう状況の中で、何とか最後、すがるような気持ちで、両方がのんでくれよということで最後通牒を突きつけながら和平案を出した。しかし、残念ながら最後までミロシェビッチ大統領の方はかたくなに拒否した。そういう状況がある中で、私は、それはやむを得ない選択ではなかったかと理解をしているわけでございます。  そして、難民が空爆後ふえたことは客観的な事実でありますが、去年の九月でもう既に二十万人ぐらいの難民が出ていると。そういう状況の中で、ユーゴ軍そして治安部隊がかなり和平交渉を行っている中で増強されて、何をするかわからないという状況の中で最後通牒が突きつけられたというような状況の中で拒否した。そういう状況だったということも考えなければいけない点である、こういうふうに考えております。  日本は、残念ながらことし一月から安保理のメンバーでなくなったというわけで、国連でいろいろ活動することが非常に難しくなっているわけでありますが、そういう中にあっても、G8のメンバーの一員として、何とか平和解決に持っていきたい、こういうことで努力をしているわけで、そして私たちがこれを、最終的な解決案とすれば、国連安保理に戻そうと努力したことが委員はいけないとおっしゃるんでしょうか。私は、それはいいことだと信じて一生懸命政治的努力をしているわけでございます。
  186. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私は、何で最初から国連でずっともっとやらなかったんだということを言っているんです。それが一つ。  もう一つは、そして空爆に踏み切ったと。しかし、今、外相も言われたように、結果的には非戦闘員がたくさん被害に遭っているわけでしょう。そして難民も、二十万とおっしゃったけれども、その後五十万人以上ふえているわけでしょう。  ですから、私は、今の時点で空爆中止を日本政府としてここまで来たらなぜ言わないのかということを言っているんです。私の話を随分曲解されましたけれども、何で国連の場でもっと努力しなかったのか、そして今の時点ではなぜ空爆中止を言わないのか、私はこのことを申し上げているんです。  何でこの問題が大事かといいますと、私は今審議中の……(発言する者あり)だれがそんなことを言ったんですか。私は、どちらがいいなんということを一言も言っていないんですよ。どうやってその非人道的な事態をなくすかと言っているんです。  それで、今のガイドライン法案というのは、これは私は、下手をすると、日本がユーゴを空爆したNATOの立場、こういう立場になりかねない危険性を持っている、こういう問題があるからなんです。例えば、これまでの衆議院での審議を通じて最大の問題になってきたのが、私がきのう取り上げた地理的範囲の問題と周辺事態の「事態」とは何かということであります。  政府の説明は、基本的には法案に書いてあるとおり、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態、こう言うだけで、なぜそうなるのか、これは説得力ある説明、解明はされてこなかった。だからこそ政府周辺事態のいわば典型例として六つの類型というのをお示しになりました。しかし、この六つの類型を見たって、いろいろ紛争の性格や態様を述べているだけでしょう。そしてその後に、それぞれ最後に、それが日本の平和と安全に重要な影響を与える事態というのをつけ加えたにすぎません。  例えば、この六類型の一つに、ある国において内乱、内戦等の事態が発生し、それが純然たる国内問題にとどまらず国際問題に拡大しておる場合であって、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態というのがあります。例えばユーゴの場合はどうかといえば、これは内戦が国際化したのはNATOによる空爆によって国際化しました。中国大使館の爆撃もありました。  このように、外部からの介入、もっと端的に言えばアメリカ軍事介入をしたためにある内戦が国際化する、そしてあなた方が言うアメリカのいわば後方地域支援、これを日本がやる、このためにその内戦が日本に及んでくる。こういう場合もガイドライン法案というのは想定しているのだろうか、この点について伺いたいと思います。
  187. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) まず前提でございますけれども、ガイドラインにも明記してございますように、この指針及びそのもとで行われる取り組みは幾つかの原則がございますけれども、その中で、「日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法の基本原則並びに国際連合憲章を始めとする関連する国際約束に合致するものである。」という前提がございます。  それから、この周辺事態につきましての六類型の中の一つでございます「ある国において「内乱」、「内戦」等の事態が発生し、それが純然たる国内問題にとどまらず国際的に拡大している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合」、まさにその事態が国内にとどまっているという状況ではなくて対外的に影響を及ぼすような事態、こういう事態で、しかもそれが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合ということであれば、これは我が国としても我が国の平和と安全を確保するために必要な対応を講ずる必要がございますので、この周辺事態安全確保法の対象として対応をする必要が出てくるということだと思います。
  188. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 法案を丁寧に言っただけじゃないか、それじゃ。全然答えになっていないですよ、そんなものは。何を聞いているんですか。法案を読んでいるだけじゃないですか、それだったら。
  189. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) まさに法案周辺事態と言うのは、日本の平和と安全を確保するために我々として必要な対応を講じなきゃならないような事態ということでございます。それで、その周辺事態というのを、その発生原因と申しましょうか、そういう観点からこの六つの事例というものを挙げさせていただいているということでございます。その中で、今申しましたその一つの事例について申し上げれば、今言ったようなことになるということでございます。
  190. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 もう一回だけ言います。これで答えなかったらだめですよ、ユーゴが現実にあるんだから。  ある内戦にアメリカ軍事介入する、そのためにその影響が日本に及んでくる、こういうこともガイドライン法案は想定しておるのかということを聞いているんです。
  191. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) それにつきましては、大前提として日米両国政府行動というのが国際法の原則あるいは国連憲章に合致したものである、こういう原則がまずある、こういうふうに申し上げました。そういう前提の上で、我が国の平和と安全に重要な影響を与える、それが軍事的観点を初め種々の観点からそういった事態であるということが周辺事態として判断されるかどうかという判断の基準になると思います。
  192. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 何にも答えてないじゃないですか。法案読んでいるだけだ、これじゃ。法案読んだだけじゃないか。余りにもひどいじゃないですか。
  193. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) 佐藤防衛局長、再答弁を求めます。
  194. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) まず、大前提としてこの日米両国の行為というのが国際法の原則、それから国連憲章等に合致しているという前提があるということを申し上げました。  それから、ユーゴ云々ということでございますけれども、私どもこの周辺事態安全確保法で考えておりますのは、我が国周辺地域における事態を考えているわけでございます。それで、その周辺事態が発生する原因ごとに分けた場合にどうかということでございますから、先ほど御説明したところでございます。その特定の今のユーゴの事態がどうだというようなことで申し上げる問題ではないだろう、こういうふうに思います。(「明快、明快」と呼ぶ者あり)
  195. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 何が明快なんですか。  ユーゴの事態でと言っているんじゃないんですよ。ある国で内戦、あなた方が典型的な例として出しているんでしょう、内戦が日本の平和と安全に重要な影響を与える事態と。だから、その中身を聞いているんじゃないですか。ある国の内戦にアメリカ軍事介入しました、その後軍事介入したために日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が仮に生まれたとしたら、それはあなた方はこの法案の発動をするのかということを聞いているんです。そんな国連憲章五十一条に基づく行動だとか、そんなことは聞いていない。
  196. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 私なりにお答え申し上げたいと存じます。  周辺事態というものはどういう事態であるのかということをなるべくわかりやすく御説明したいというふうに考え、衆議院の方で周辺事態についての統一見解をまとめた次第でございます。その中に、委員指摘のように、「ある国において「内乱」、「内戦」等の事態が発生し、それが純然たる国内問題にとどまらず国際的に拡大している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合」、これがその一つになるというふうに考えているわけでございます。  しかしながら、この委員会におきまして私どもの方から特定の国の名前を挙げた仮定の事態についてお答えするということは、一生懸命お答えしたいのですが、適切な御説明にはならないと思います。  委員の今の御質問は、日本周辺のある国において内乱が発生し、アメリカがそれに軍事介入した、その事態をどういうふうに考えるかという御質問でございました。したがいまして、恐縮でございますが、そのような仮定の質問に対して私どもからお答えするのは適切ではないというふうに考えるわけでございます。  そういう背景のもとに同僚の政府委員より御説明した次第でございます。
  197. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ガイドライン法案協力する相手はアメリカでしょう。ほかにも予定しているのかね。そんなのは当たり前じゃないの。何がアメリカが特定の名前だ、これはアメリカが相手の法案じゃないか。それも答えられないで……。  ちょっと待ってください委員長、こんな答弁を何度も続けて、私の時間をこれでやるんだったら、私はこれ以上続けることはできないです。だれが今の答えを聞いてわかるんですか。何が明瞭ですか。
  198. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 委員のただいまの御質問は、どういう事態が周辺事態になるのかという御質問でございました。したがいまして、私の方から特定の国の名前を挙げた事態を、仮定のものであるとはいえ、この委員会の場でそれについてコメントするのは適当ではないだろうということを申し上げたわけでございまして、他方、この周辺事態法の我が方の協力の対象が米国である、これはもう当然のことでございます。
  199. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ともかく、こんな問題に答えないで、この法案を通してくださいと、いかにこれが無謀か。  ですから、私は、もしああいう事態に、ユーゴのような事態でガイドライン法案を発動されないのだったら、恐らく発動されないとはっきりおっしゃるでしょう。そういうことも視野に入っているということなんですよ。  そして、先ほど防衛局長が何度も国連憲章をちゃんと守る、そういうアメリカ日本だということが書いてあるから守るんですと。そんなことは何の保障にもならない。だったら、法律なんか要るわけないじゃないですか。現に、ユーゴの場合だって国連決議もなかった、五十一条に基づく自衛権の発動でもなかったということは、これは明瞭じゃありませんか。ですから、まさにアメリカが内戦に介入する、そのために日本にその影響が及んでくる、そういう場合にも発動されるのがガイドライン法案だということですよ。  いつまでもこの問題をやっていてもしようがないので、もう一つ周辺事態の六類型の一つ武力紛争の発生が差し迫った場合というのがありますけれども、私、これも重大だろうと思うんです。  アメリカは、海軍の海戦法規で、差し迫った攻撃から自己を保護するための国家の権利は自衛の権利の中に含まれる、目前に差し迫った圧倒的で平和的手段の合理的な選択の余地が残されていないほどの明白な必要性がある場合には先制自衛は武力行使を含むと、これは海戦法規で明記しています。あるいは戦争権限法第二条、目的と政策では、敵対行為に巻き込まれることが差し迫り、それが状況から見て明白な事態に際して合衆国軍隊を投入することに対して連邦議会と大統領の両者の共同判断を適用することを確保すると。  つまり、軍の規則でも戦争権限法という法律でも、アメリカが差し迫っている、国連がじゃないですよ、アメリカが差し迫っていると判断すれば先制攻撃を行う、こういうことを明記している国だということです。  総理は、私がかつて本会議で質問した際に、アメリカが先制攻撃論を持っていることは承知していないというふうにお答えになりました。しかし、ガイドライン法案の相手方、日米安保条約という軍事同盟の相手国、この相手国の法律や軍の規則も、私、知らないだけでは済まない。アメリカが海戦法規、戦争権限法で先制攻撃を明記し、いわばそれを国家戦略にしている。私、これは明瞭だと思うんです。総理、そう思われませんか。
  200. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 私も、アメリカが先制攻撃戦略など持っているということは承知しておりません。日本共産党の委員が何度も繰り返すので、念のためにアメリカに問い合わせてみましたが、そんな戦略は持っていない、こういうことでございました。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  先ほどの内乱、内戦の場合どうかという話でありますが、これは典型的な例として挙げた、こうおっしゃいましたが、必ずしもその六つの類型を典型的な例として挙げたわけではなくて、衆議院の外務委員会で日本共産党の委員から内乱、内戦の場合は理論的にはどうなるんだ、こう言われて、私が理論的には排除されない、こうお答え申し上げました。そして、そういう中でそういうことが国際的に拡大して日本の平和と安全に重要な影響を与えるのであればそういうことになり得るという一つの例。本当は、典型的なものと誤解されるといけないので私はこれを出したくなかったわけでありますが、ある党の理事から……(発言する者あり)それは途中の経過を話しているんです。ある党の理事から、今まで国会で問題になったことはできるだけ入れて出してほしい、こういう要望がありましたのでそういうことを出したわけで、必ずしも典型的なものを言ったわけではありません。  そして、アメリカ法律が国内法がどうなっていようと、アメリカも国連加盟国でありますから、国連憲章上あるいは一般国際法上許されないことは国際法上できないわけで、これは日本の船舶検査の話でも問題になりましたが、国連決議という言葉がなくたって、日本の国内で授権したって国際法上できないものはできない、こういう理屈でありますから、アメリカがそんなに国際法を無視して委員がおっしゃるようにやるということは、私たちは考えていないわけでございます。  特に、安全保障条約の中には国際法、そして国連憲章に基づいてと、こういうことがはっきり書いてあるわけでありますから、アメリカがそういうことをするというふうには想定していないわけでありまして、内戦、内乱にアメリカが介入してとおっしゃるけれども、介入した場合でそれが果たして国際法、国連憲章に違反しないで介入する場合がどういう場合があるのかなという、にわかにあるのかないのか想定は一〇〇%できませんけれども、先ほどから政府委員が答弁しているところは、アメリカが行った何らかの行為は国連憲章なり国際法に準拠しているということを前提としての話であるということを政府委員が何度も答弁しているところでございます。
  201. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 だから、それがもう全く成り立たないんですよ。  例えば、八三年十月グレナダ侵略、これ国連総会で、アメリカが行った行為は国際法及びグレナダの独立、主権、領土保全への重大な侵害と国連総会で決議されている。リビア爆撃、これは八六年四月、国連憲章と国際法への違反、国連総会で決議されている。パナマ侵略、八九年十二月、国際法及び諸国の独立、主権、領土保全への重大な侵害、国連総会で決議されている。  そして、私、もう一つ取り上げたいのは、一九八六年のアメリカのリビア爆撃です。あなたは、国内法でどう言っていようと、実際の国連の場でどうなのか、国際政治の舞台でどうなのかということをおっしゃったけれども、アメリカがリビアに爆撃を行った、これは国際法違反として国連総会は非難決議をやりました。それだけじゃなくて、このとき国連で何が問題になったか。それは、このリビア爆撃についてアメリカの報道官が声明で、我々はこの行為、空爆が無辜の人々に対するリビアの将来における攻撃を先制的に防ぎ、思いとどまらせるものになることを希望する、公然と先制攻撃を報道官が認めたことが国連総会で大問題になったんですよ。  そして、だから当時インドネシアの代表は、アメリカの言う先制自衛防衛は国際法には存在せず、憲章五十一条にも当てはまらないと。外務省は知らないわけないでしょう、国連総会に出ているんですから。そして、きょうは持ってきました、外務省国際連合局国連政策課がまとめた「国際連合第四十一回総会事業」。これにもインドネシアの代表がアメリカの先制自衛というのは国際法違反、憲章五十一条で認められない、厳しく批判したということが日本の外務省が出したこの「国際連合第四十一回総会事業」にもはっきり書かれているじゃないですか。国内法で言っているだけじゃないんです。実際にやったと例示しているんですよ。そして、それが国連で問題になっているんです。  ところが、あなた方はこれだけの証拠、事実を示しても、アメリカが間違ったことをやることはない、だって間違ったことをやらないと書いているからやらないと、これだけの話です、あなたたちが言っているのは。もう本当にどこにも通用しないですよ。そこにこのガイドライン法案の恐ろしさの一つがあるんです。  アメリカは絶対正義だと。しかし、この法案アメリカ軍事行動を起こして初めて後方地域支援というので動き出すわけでしょう。アメリカ軍事行動なしにこの法案は動かないんです、後方地域支援というのは。そのアメリカが何をやるかわからない、アメリカのやることは絶対正義だというのでは、こんな法案の運用を国民が安心してあなたたちに任せることができますか。私は本当に驚きました。  あなたは典型的なケースじゃないとおっしゃったけれども、ともかくあなたたちは六つの類型を挙げられたんです。内戦、差し迫った、あるいは紛争が起こっている、紛争が終わっている、政治体制混乱など六つ挙げられた。しかし、まず先に軍事行動を起こすのはアメリカなんだから、そしてそのアメリカは絶対正義だとあなたたちは言われるわけだから、結局、アメリカがどういうケースであろうと介入すれば日本は後方地域支援するんだというふうに言わざるを得なくなるじゃありませんか。  さっきから内戦……(「委員長」と呼ぶ者あり)ちょっと待ちなさい。何を言っているんだ、あなた。さっきから聞いていることには答えないくせに、聞いていないときに手を挙げるんじゃないよ、あなたたちへの質問で何度も同じ答弁で時間がなくなったんだから。  もう一つ私、民間動員の問題についても伺いたいと思うんです。  例えば、今度のガイドライン法案で、民間動員に関連して民間航空機の協力問題というのがあります。民間航空機というのは、通常、国際民間航空条約、シカゴ条約と呼ばれている条約によって国際的に安全運航が担保されております。ところが、このガイドライン法案では、周辺事態のときに米軍の後方地域支援として民間航空機が武器弾薬や兵隊の輸送、こういうことを行うこともあり得るわけです。この場合にシカゴ条約、国際民間航空条約の保護対象となるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  202. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) シカゴ条約第三条は、「この条約は、民間航空機のみに適用するものとし、国の航空機には適用しない。」と規定し、また、同条(b)は、「軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。」と規定しておりますが、同条約上、具体的にいかなる航空機が民間航空機あるいは国の航空機に当たるか、また軍、税関及び警察の業務に用いる航空機に当たるのかについて明確な基準は設けられておりません。  我が国としては、具体的にいかなる航空機が同条約上の民間航空機に当たるかについては、航空機の所有形態、使用形態あるいは使用目的等に照らして個別に総合的に判断されるべきものと考えております。したがって、民間の航空機が米軍への輸送協力に従事する場合であっても、そのことのみをもって直ちに当該民間の航空機がシカゴ条約の適用を受けなくなるわけではない、こういうふうに考えております。
  203. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 そうしたら、なる場合もあるだろうし、ならない場合もあるということですね。  もう一つ伺いたいんですけれども、日米地位協定五条に基づく航空特例法というのがあります。米軍機の場合にはこの航空特例法が適用されています。  この航空特例法に基づく航空機というのはどういうものなのか。また、この航空特例法が適用された場合にはシカゴ条約の保護対象となるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  204. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日米地位協定上、米軍がチャーターした民間の航空機、米軍からの具体的な依頼に基づき防衛施設庁が借り上げたものも含むわけでございますが、民間の航空機であって、その運航が米軍の管理のもとに行われるものについては、地位協定第五条の適用のある航空機、合衆国及び合衆国以外の国の航空機で、合衆国によって、合衆国のためにまたは合衆国の管理のもとに公の目的で運航されるものとして取り扱われることになり、この点はこれまでに累次答弁しているとおりでございます。  このようないわゆる五条機は、米国の公の目的のために米軍がチャーターしたものであり、米軍の管理のもとで運航されるものであること、実際にも米軍指揮官が当該機に搭乗しその責任と管理のもとに当該機を運航しているわけでありますが、そしてまた日米安保条約の目的の達成という観点から、地位協定第五条に基づく権利を与えられていること等にかんがみて、シカゴ条約に言う国の航空機とみなされ、同条約の適用の対象外となるものと考えております。
  205. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今、外務大臣がお答えになったように、航空特例法が適用される民間機というのは、米軍機のように米軍管理下に置かれる、そしてアメリカのために運航される、こういう航空機になる。つまり、民間機の場合にもこういう場合には米軍機と同様の扱いになる。したがって、シカゴ条約の保護対象にはならないということであります。  実際に重大なことは、これも平時のことではありますけれども、一九九七年に全日空機がアメリカ海兵隊の日本本土での実弾砲撃演習、このために二度にわたって武器弾薬、兵隊の輸送を行っています。このとき全日空機は航空特例法の適用になっています。そして、このときには実際にアメリカ海兵隊の指揮官が搭乗する、そして運航は完全に米軍の管理下に置かれました。これは平時のときです。  しかし、問題は、周辺事態のときに仮にこういう扱いになったとすれば、アメリカが当然軍事行動を起こしているということになれば、これは紛争当事国の航空機、軍用機、そしてアメリカの公の目的というのは、つまり武力行使、この目的のために日本の民間機が飛ばされるということになるわけです。これは間違いないですね。
  206. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 委員の御質問は、法案の九条二項の関係だろうと思います。  九条二項では、国以外の者に対していろいろな協力を依頼することができるという規定になっております。その中に当然航空機の輸送ということも入るわけでございますが、九条二項で求める範囲というのはいわゆる後方地域でございます。すなわち、日本の領域と周辺の公海公空に限るわけでございます。したがいまして、米軍の運用と申しましても、基本的には領域の中ということになるんだろうと思います、海上に着水するわけにはまいりませんので。そういう意味において、領域の中での米軍のための航空機の運用ということが果たして委員のおっしゃるような軍事目的云々ということに該当するかどうか、これはちょっと私お答えしかねるところでございます。
  207. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 だって、そういうことは想定されるわけでしょう。実際にそれはそのときどうなるかわかりませんよ。しかし、法律の仕組みからいえば、アメリカ周辺事態軍事行動をやっている、そのアメリカの軍用機の扱いになるわけでしょう。だから、紛争当事国の飛行機になると。そして、そのときのアメリカの公の目的というのはアメリカ軍事行動じゃないですか。何でそんなことが認められないんですか。当たり前じゃないですか、そんなことは。実際にそういうことが起こるかどうかは別ですよ。しかし、法律の建前からいえばそうなるのは当たり前じゃないですか。
  208. 伊藤康成

    政府委員伊藤康成君) 私、御答弁申し上げましたように、確かに日本国の領域の中においてそのような航空機の運航ということは考えられますが、委員のおっしゃる軍事行動という意味が私にははっきりいたしませんので、そのように答弁をしている次第でございます。  当然のことながら、九条二項でお願いをする輸送というものの中には、例えば米軍の医薬品とか、そういったような物品の輸送もあり得るわけでございますし、必ずしも人員等に限られるものではございません。
  209. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 あり得るということがわかりました。  もう時間が参りましたので終わりますけれども、民間パイロットの皆さんがおっしゃっているんです。それは、その飛行機になったからといって直ちに撃墜されるというふうなことはそんなにあり得ることじゃないでしょう。しかし問題は、そういうことを民間機が受けた場合には、いいことじゃありませんよ、私たちはテロは絶対反対だけれども、テロにねらわれる危険性がある、その航空会社全部の飛行機が。それが恐ろしいんだということをパイロットの皆さんは必死になって訴えておられるわけです。  私は、この声は本当に皆さんよく聞きとめていただきたい、このことを申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。(拍手)
  210. 田英夫

    ○田英夫君 きのうの夜、パリにおります社民党の土井たか子党首から国際電話がありました。ユーゴ爆撃で中国大使館が爆撃された、多くの死傷者を出しているというこの問題について日本国会ではどういうことになっているか、こういうことも聞かれましたので、国会でも取り上げているけれども、政府はNATOのユーゴ爆撃に対して理解をするという態度を変えていないという意味のことを報告いたしましたが、土井さんは、そんなことなのという驚きの声を上げていたのであります。  といいますのは、土井さんは今パリにおりますが、きょうハーグへ移って、あしたからハーグで始まります一八九九年のハーグ平和会議の百周年を記念した「二十一世紀の平和と正義」ハーグ平和市民会議という会議に招かれて出席をするためにヨーロッパに行っているのでありますが、この席で日本国憲法九条の理念についてスピーチをしてくれということで、恐らく十三日にスピーチをすることになります。  そのときの土井さんの話によりますと、まさにNATOの国々のヨーロッパでは今市民の間で、特に中国の大使館誤爆問題以後、NATOの爆撃に対して厳しい批判が盛り上がっている。つまり、NATO加盟国の市民の人たちの間でさえ自分たちの政府がやっているユーゴ爆撃に対して厳しい声が沸き上がっている、そういうことでありました。  日本一体どうなっているのか。特に日本政府の姿勢は何だという気持ちを言っていたのだと思います。しかも、日本の場合は戦争をしないという日本の憲法がある。今度のコソボの事態は、まさに戦争とは悪であるということを極めてはっきりと世界の人たちに示していると言っていいんじゃないでしょうか。  改めて小渕総理に、このコソボの事態に対して、しかも中国大使館があのような事態になったということに対してのお気持ちを聞かせていただきたいと思います。
  211. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日本政府といたしましては、コソボの問題の政治解決のために国際社会が一致してミロシェビッチ大統領に圧力をかけることが必要でありまして、その観点からG8の統一ポジションを固め、その上でさらに国連が主導的役割を果たし得る状況へ持っていくことが重要であると考えておりまして、そういう意味で、高村外相も出席をいたしましてのG8の外相会談におきまして統一ポジションの合意をいたしたわけでありまして、ぜひこれを推し進めるように努力をいたしていきたいというふうに考えております。  また一方、難民の問題につきましても、これに対しまして我が国としてかなり、二億ドルという支出を、国民の御理解を得ながら、この地域の悲劇的な状況を救済するために日本としてできる限りの貢献策として取り組ませていただいておるわけでございます。  それから、今ユーゴにおける中国大使館に対する誤爆につきましてお話しありました。まことに遺憾なことであると考えておりまして、改めて犠牲になられた方々に深い哀悼の意を表したいと思っておりますが、こうしたことの上でG8の外相会談が行われましたので、この事件が政治解決に向けての機運に悪影響を与えることのないようにすべきことでございまして、我が国といたしましては、G8の一員としてそのような方向で対応する方針でございます。  我が国といたしましては、先ほども御答弁申し上げましたけれども、現下、ロシアのチェルノムイルジン特使が積極的に対応いたしておることでもございますし、また、G8の中でのドイツのシュレーダー首相も近日中に中国を訪問するやに聞いておりまして、そういった意味で、外交活動が活発化しつつあるのではないかと思っております。  先ほど申し上げましたけれども、ミロシェビッチ大統領がどのような考え方をしておるかということも極めて重要でございまして、過去、ボスニア問題に対して大統領とかなりの回数会談を持った経験を有しておりますのは日本としては明石康氏でございまして、その明石氏も大統領と面談をしたと聞いておりますので、一日も早くその御報告を聞きつつ、いかなる対処ができるかということに対して努力をいたしたいと思います。  また、明石氏は御案内のとおり国連の次長をされておられた方でありますので、国連という場で日本としてさらに積極的にどのような対応をしていくかということにつきましては、外相を中心に積極的に取り組ませていただきたいと思っておる次第でございます。
  212. 田英夫

    ○田英夫君 今、総理も言われたように、この問題は、G8の結論もそうですが、国連の場に戻すといいますか国連の場で解決をする、これはだれが考えても当たり前のことなんですよ。明石さんのこともその関連でしょう。国連の場に戻すということは一体どういうことか。国連憲章、国連というのは一体どういうことを基本にしているのかということを改めて考えないと、国連というところに預けておけばいいやということではないんですね。  総理、国連憲章を恐らくさあっとお読みになったことはあると思うんです。日本国憲法というのも極めて、国連憲章と密接不可分と言っていい、同じ基本に立っている。一九四五年と四六年に相次いでできたんですから、当時のあの第二次世界大戦直後の悲惨な状況の中で、特に日本はそうですが、相次いで生まれたこの考え方、一言で言えば、国際紛争は軍事力ではなくて平和的な話し合いの中で解決するという、これが基本でしょう。これが国連憲章ですよ。そのことをぜひ改めてお考えいただきたい。  これはガイドラインの問題もまさにそうなんですね。まず、日本という国は特に、国際的な紛争がこの周辺であるという場合に、アメリカ軍事力で解決しようとするのが現在特に目立ちます。朝からお話も出ておりますが、イラクだとかアフガニスタン、スーダンなどは最もそのきわまったものですね。自分たちの大使館がやられたということで、全然その国には関係のないアフガニスタン、スーダンを爆撃している。国連は無関係、決議も何にもない、こういうことは許されないのですよ。  国連憲章の精神に沿って、国連憲章のまず前文のところで、「共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則」と書いてある。第一条にも、「平和的手段によつて且つ正義及び国際法の原則に従つて」、こういうふうに書いてある。もう頭から、至るところでそうした平和主義が貫かれている。この精神を本当に日本政府皆さんが体しておられるなら、あのNATOのユーゴ爆撃を理解するなどということは絶対に出てくるはずはないんですよ。  今からでも遅くないから、爆撃は中止すべきだということを政府表明しませんか。総理、いかがですか。
  213. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 委員指摘のように、国連憲章が平和主義を理念としている御指摘につきましては、国連憲章第一条第一項において、その基本的目的として平和と安全の維持を掲げており、また前文中にも、今御指摘のように、「互に平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、」と規定していること、さらに紛争の平和的解決に第六章という一つの章を設けていることを踏まえてのものと考えております。  このような意味におきまして、国連憲章は基本的に平和主義を掲げる日本国憲法の精神と軌を一にしているものと考えております。我が国はこのような平和主義の理念を掲げる日本国憲法のもと、国際社会の安定と繁栄のため積極的に貢献していくべきであると考えております。  さきの施政方針演説におきましても、我が国国際社会の中で尊敬され、その地位にふさわしい責任を果たすことにより、二十一世紀に向け世界へのかけ橋を築いていくべきであると述べたのもこのような考え方に基づくものでございます。  そして今、田委員指摘のように、今回の問題につきましても、既に国連の事務総長といたしましてもその解決に向けて努力を傾注いたしておるとは思いますし、それを日本としては力強くバックアップしていかなければならないことは当然であります。  しかし、国連自身が、残念ながら今国連軍によって国際紛争を解決する手段としての行為が十分行い得ない状況の中で種々の行動がなされておるということでございまして、今回の問題について言えば、残念ながら、コソボにおける民族浄化の問題から発しまして、そしてこれが解決のために空爆という手段が行われておるということにより、なお紛争が解決せざる状況に相なっておることでございます。  そういった意味で、日本といたしましては、この問題に対して直接的に、空爆に対して、今の時点におきましては、その行いました当初から理解を示しておることでございまして、これの中止を求めれば、これによって事態が直ちに解決する方向であるという認識はなかなか困難な状況であるわけでありますが、しかし同時に、国連においてさらなる活動を講ずることができるように、G8の外相会談でまとめられた方向について、日本としてはその方向で努力をさせていただく、こういうことでございます。
  214. 田英夫

    ○田英夫君 失礼ながら、今の小渕総理のお話を聞いていますと、どこの国の総理大臣かなという気がするんですよ。あの憲法のある日本という国。憲法には、まさに総理初め閣僚の皆さん、そして我々国会議員も、憲法を守らなければならないという義務が明記してある、その憲法。そして、その憲法の基本になっている国連憲章。そして、歴代日本政府は国連中心主義の外交をと言ってこられた。それは一体何なのか。まさにさっきから申し上げている平和主義ということじゃありませんか。武力によって解決するんじゃなくて、平和的な話し合いで解決する。  確かに、コソボの問題、ユーゴの問題は、ミロシェビッチ大統領の民族浄化ということがある。そのこと自体を軍事力によって、爆撃によって懲罰して直そうという考え方は、国連憲章の考え方からは出てこないんですよ。特に、日本国憲法の考え方をそれに加えれば、絶対に、日本政府がとり得る、これを容認できる、そういうことではないんですよ。今の総理のお話を聞いていると全くそこの感覚がない。  この問題はさらに突っ込んで議論をしたいと思いますが、先ほど申し上げた、土井さんが行っているハーグの平和会議、恐らく十五日には終わりますが、そこで、世界じゅうから集まっているNGOを中心とした人たちの決議が出ると思います。どうぞひとつ、これも政府皆さん注目をして読んでいただきたいと思います。日本からも、一番多いようですけれども、四百人を超すNGOの人たちが参加をしているようであります。  そこで、話を進めるために申し上げたいのは、今回のガイドラインの問題を議論するに当たって私も、六〇年安保のときの、ガイドラインの問題の基本日米安保条約であることは言うまでもありませんから、あの締結当時の審議の状況などを速記録で勉強してみました。  あの年、一九六〇年、昭和三十五年の通常国会冒頭の岸首相の施政方針演説の中でも、実に明快に「国連憲章の原則を厳格に実践し、自国の安全を国連の平和と安全を維持する機能にゆだねることができるようになるまで」、こういうような言葉もあります。「本条約は、国連憲章によって否認された侵略行為が発生しない限り決して発動されることのない、平和と自由のための条約なのであります。」、岸さんは安保条約についてこう言っておられる。皆さんの先輩ですよ。  また、藤山外務大臣は趣旨説明の中で、まず第一にと言って、第一に、日米間の安全保障体制は国際連合との関係を明確にしたことが今回の特徴でありますと。国連憲章のことを第一、第二、第三という中で挙げておられる。最も重視しておられる。そういう経緯をぜひ閣僚の皆さん改めて認識をしていただきたいということを申し上げて、次にこのガイドラインの具体的な問題に入りたいと思います。  三月八日のこの参議院で行われました予算委員会のガイドライン集中審議でも取り上げましたけれども、そのとき申し上げたのは、今回の新ガイドライン、つまり一言で言えば、アメリカ日本周辺戦闘行為を始めたときに、日本がその後方支援をする、このことは安保条約のどこに規定されているんですか。安保条約は、五条と六条は安全保障問題についての柱、五条は日本有事のとき日米が共同して対応する、第六条は日本アメリカに基地を提供する、そして極東という範囲の中で米軍が活動するということが決めてある。それ以外何もないんです。安保条約というのは十カ条しかない、そういう条約であります。  どこに、アメリカ軍事行動を起こしたらそれを日本が支援をするというそういう規定がありますか。条約に規定がないのに、行政府間の約束事であんなことを決められるんですかというのがそのときの私の質問でありましたが、お答えになれないでしばし時間がたってしまった。結局総理は、安保条約上具体的な条文の根拠はありませんけれどもと、条文に根拠がないことを認められました。しかし、日米安保条約の目的の枠内において行われるものであるからいいんだ、こういう意味の答弁をされたけれども、私は納得しないと言って時間が来てしまいました。  総理、改めてこの問題についてお答えいただきたい。
  215. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) そのときにも田先生にお答え申し上げましたが、結論からいうと同じ御答弁になろうかというふうに考えております。やはり我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態が生起した場合、米軍が事態の拡大の抑止、収拾のための種々の活動を行うことが想定されまして、このような米軍に対し我が国が何らの協力も行わないとすれば、事態はさらに拡大し、我が国の平和と安全に一層深刻な影響が及ぶこととなるおそれがございます。周辺事態における我が国の対米協力がまさに我が国の平和と安全の確保に資するものでありまして、我が国及び極東の平和と安全の維持という日米安保条約の目的の枠内のものと考えております。  また、このような対米協力日米同盟関係の中核であります日米安保条約が当然のこととして前提としておるものと考えております。旧指針以来、日米両国間で行ってまいりました研究も踏まえ、今回はこれを行い得るような法整備を行おうとしているものでありまして、このような考え方に基づくものでございます。  他方、新たな指針に基づく対米協力は、我が国の平和と安全の確保に資するものであるとの我が国自身の主体的な政策判断に基づくものでありまして、米国との関係での実施を条約上法的に義務づけられたものではありません。  しかしながら、我が国が憲法の範囲内において、その時点で有効な法令に従い、必要な安全保障上の措置をとり得ることは主権国家として当然でございます。指針のもとで、周辺事態における対米協力日米安保条約の目的の枠内で行われるものでありまして、条約上明示的な規定がなくともこうした協力を行うことは何ら問題はなく、御指摘のような、九九年安保条約といったようなことも言われておりますけれども、そういった基本的な条約締結する必要は全くないと考えておるわけでございます。冒頭申し上げましたように、これが我が政府の今回このガイドライン法律案を出したゆえんのものでございます。
  216. 田英夫

    ○田英夫君 国際的な取り決め、二つの国が約束事をして共同で対応するというような問題、そういうことを、特に安全保障問題についての対応ということの意味が極めて軽視されていると言わざるを得ないんです。  安保条約には何にも規定がない。安保条約以外のアメリカとの間の約束事にも協定を含めて何にもない。それを、アメリカ軍事行動を起こしたら日本が後方地域支援をするという、そういう全く新しいことをまさに法律に対する政令のような形でやってしまっていいんですか。しかも、事は日本国民の運命にかかわる、生命にかかわる、こういう戦争にかかわる問題ですよ。  この防衛庁でつくった新ガイドライン、(資料を示す)「日米防衛協力のための指針」、これが今回の議論のもとでなくちゃいけないんです。大変衆議院皆さんには申しわけないけれども、衆議院における特別委員会の議論はほとんどこれと関係ない。もちろん国会ですから、国内法それからACSA、これについて議論をされるのは当たり前ですけれども、そのもとはこれですよ。これは両国間で約束されて、もう発動されている。これについて議論しなくちゃいけないんですね。これについて私どもは極めて大きな異論がある。  大体、今度の国内法には四十項目にわたって、この文書の中には日本アメリカに対して協力する項目が四十並んでいますね、表になって。国内法には全然そんなことは書いていないんだから。機雷除去なんというのは自衛隊法九十九条があるからというのでもちろんもういつでもやれると。しかし、こっちには書いてある。そういう全く衆議院では議論されなかった部分がたくさんある。その最たるものは安保条約とこのガイドラインとの関係ですよ。何の条約に基づいてこんなことができるんですか。  次に、視点を変えて申し上げると、このガイドラインをつくったのはまさに官僚の皆さんです。日米の官僚ですよ。そうでしょう。大臣は作成の議論に参加をしておられないと言っていい。  外務大臣、首をひねっておられるけれども、私の調べたところでは、2プラス2をやったのは九七年六月八日、中間発表があったときの前と、それから九月二十三日に最終合意をしたときのその直前と、つまりセレモニーとして外務大臣防衛庁長官が出られただけですよ。あとはまさに事務方と言っていい外務省と防衛庁の審議官、この二人が中心になっている、日本側は。向こう側もそれに見合う人が出てきている。そして、小委員会といいましょうか、ミニ会合と言っていたようですが、両省の課長クラス、それにプラス自衛隊の一佐、二佐という制服、そういう人たちが加わって実際の条文をつくっていった。  しかも、正文は英語、英文であると言われているけれども、その作成に参加をした課長クラス、制服組の人の話によると、日本側は日本文の条文をつくった、アメリカ側はアメリカ側の英語の条文をつくった、こういうことも言われているんですね。そして、最後に両大臣が出てセレモニーをやっただけですよ。  安保条約のときはどうですか。藤山外務大臣がずっとその前の数年間交渉に当たっておられる、先頭に立って。外務大臣自身が交渉者、そして岸総理が調印をされた。もちろん政府間の約束事という低い扱いをしたから条約と違うとおっしゃるかもしれない。低い扱いをしたのが間違っている。中身はまさに安保条約に当たる両国間の重要な安全保障上の今までになかった新しい項目ですから、それは政治が主導してやるべきですよ。岸さんという先輩はみずから責任をかぶって、本当に先頭に立ってこの問題に取り組まれた。それはこの当時の速記録を読んでみるとひしひしとわかりますよ。今回は全く官僚任せで、中身はまさに安保条約の一条を起こしてもいいような問題ですよ。どうですか、総理
  217. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) あるいは田先生から見ると大変不足のように感じられるかもしれませんが、私ども、このガイドラインの作成過程においては、作業の進捗に従い、総理を初め関係閣僚が適切に事務当局からの報告を受けまして作業方針を示すとともに、必要に応じて指示を与えていたところであります。  例えば、平成八年四月十七日に臼井・ペリー日米防衛首脳会談を開きまして、日米安保共同宣言指針の見直しを開始することを明記し、そこでも議論をしております。それから、八年九月十九日に、池田、臼井、クリストファー、ペリーが、進捗状況の報告を受けてそこでも意見交換を行っております。それから、九年四月七日に、日米防衛首脳会談、久間、コーエンの首脳会談を開きまして、この問題も議論しております。それから、日米首脳会談で、橋本、クリントンの場でもそういう議題が出されております。  そういうことで、御指摘防衛庁長官のリーダーシップは私どもとしては適切に発揮されていたものと考えますけれども、先生から見るとあるいは不足だったかもしらぬということもあるのかもしれません。済みません。
  218. 田英夫

    ○田英夫君 大変時間が短いので残念ですが、一つ外務大臣にお聞きしたいんです。  ドイツでまさに周辺事態と同じような考え方で、危機事態ということに基づいてそれに関連する法律が一九九五年に出されているということを御存じでしょうか、事務当局でもいいですけれども。
  219. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 現時点で私、承知しておりません。
  220. 田英夫

    ○田英夫君 これはお調べいただいたらいいと思いますが、一九九五年十二月ですからコール政権時代ですけれども、ドイツ連邦政府は交通配慮法、直訳すれば交通配慮法と訳せる法案を議会に提出したんですね。これはNATO軍や在ドイツ・アメリカ軍に対する協力という、まさに今回と全く同じです。  だから、今回の周辺事態が危機事態という名前で、その危機事態の発動に基づいて交通配慮法によってNATO軍やアメリカ軍に対して優先的に輸送、交通ができるようにするということで、その中に出てくる文章を見ますと、ドイツの平和と安全に重要な影響を与える事態と、どこかで聞いたような言葉がそっくりあります。  結局、この法案は廃案になりました。この経緯も外務省はお調べいただいた方がいいかと思う。私も今調べつつありますが、なぜ廃案になったのか。ちょうどその直後にドイツ連邦軍のボスニア派兵、前のときですね、ということが起こる、そういう空気の中でさえ廃案になっている、このことを一つ申し上げておきたいと思います。  きょうは、本当ならばここで憲法と武力行使の問題について議論をしたかったんですが、次回のために考え方だけ触れておきます。  結論だけ申し上げておきますが、これは防衛庁長官にお話ししなくちゃいかぬことですが、三月二十三、四日のいわゆる不審船の問題、このときに海上保安庁が対応された。これは、川崎運輸大臣もおられるけれども、非常に重要なことなんですよ。海上保安庁という海の警察が対応した。途中から、速力がどうだとかいろいろ言われましたけれども、海上自衛隊が出て、海上警備行動ということに八十二条によって変わっていった。そこに問題がある。  各国とも、沿岸警備隊という名前であったり、ヨーロッパのような陸地続きのところは国境警備隊という名前の警察機構が対応している。領海、領土、そこに沿う問題は警察が対応しているということ、これは非常に重要なことです。ということは、軍隊がそこに出てきて対応してしまうと外交上の問題に発展する可能性が極めて大きいという配慮なんです。だから、日本の場合も、意識してかどうかは別にして、海上保安庁だった。自衛隊がないときから海上保安庁はありましたからそうなったのかもしれませんが、このことをぜひお考えいただきたい。  これは国際的な配慮なんです。国際的にもう常識化している配慮なんです。軍隊が出ていっちゃまずいんです。まずいことになりかねないんです。それを今逆に、防衛庁はもっともっとという方向にあるように思えて仕方がない。  それは、また繰り返して申し上げるけれども、日本国憲法という憲法を持ち、そしてその根底に平和という……(「化石だよ」と呼ぶ者あり)平和ということを大前提にしている国連憲章というものを皆さん勉強していないからそういうやじのようなことが出てくるので、国連憲章を頭から一回読み直してみなさいよ。  終わります。(拍手)
  221. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 自由党の月原です。  きょうはガイドライン基本的な問題についてお尋ねしたいと思います。  その前に、我が自由党は、安全保障に関して三原則を持っている。それは、日本国憲法の理念に基づいて行うということ。そして、日米安保体制我が国及びアジア太平洋地域の平和と安定のかなめとして引き続き堅持する、そして防衛力を効率的に整備する、そういうことであります。第三に、日本国憲法及び国際連合憲章に規定される国際協調主義の理念に基づいて活動に積極的に参加するというのが我が党の基本的なものであります。  そこで、ガイドライン法案について修正が行われたわけでありますが、その修正の個々の問題についてはあすまた審議が行われると思いますので、それに対して我が自由党の代表としてどのような態度でこのガイドライン審議及び修正に応じたのか、その点を自由党の衆議院の方に御説明願いたいと思います。
  222. 達増拓也

    衆議院議員達増拓也君) 自由党は、周辺事態安全確保法案政府原案には反対をしておりました。といいますのは、政府案には、自衛隊という我が国唯一の実力組織を海外に派遣するに当たり、従来の政府見解ではなし得なかった活動をなし崩し的に拡大させていくのではないかという懸念があったからであります。  我々は、安全保障政策を遂行していく上で明確な原理原則を明らかにすることなしにむやみやたらに自衛隊を海外に派遣するべきではないと考えたわけでございます。この点、月原委員はその三原則に言及されましたけれども、安全保障政策を遂行していく上で明確な原理原則を明らかにすることなしにむやみやたらに自衛隊を海外に派遣するべきではないということは自由党の理念、政策の核心の一つでございますし、自自連立成立に当たりましての政策合意三本柱、すなわち国会・行政の改革、安全保障の改革、そして経済・財政の改革、この三本柱の一つにもなっているわけでございます。  この法案に則して申し上げますと、周辺事態というものの本質、船舶検査活動の本質、また国会の関与のあり方、武器使用のあり方、こうした点につきまして衆議院審議の中で我が党の質問者より繰り返し問題点指摘、また背景となる考え方の説明等々を行いまして、長時間かつ密度の高い審議の末に自民党と我が党との間で修正協議に合意し、最終的には公明党・改革クラブも加わって三会派による修正合意がなされたという次第でございます。  その結果、修正が行われまして、今この委員会で御審議いただいておりますガイドライン関連法案は、我が国の平和と安全の確保に寄与するものである、またアジア太平洋地域の平和と安定にも資する、世界の緊張緩和と経済発展にも資する、そして日米関係をより確かなものにしていくことができる、こういった意義を自由党は認めているところでございまして、参議院においても充実した審議の上に速やかに成立をお願いしたいというふうに考えているところでございます。
  223. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今、自由党の態度そのものが十分わかりましたので、いよいよガイドラインそのものに入っていきます。  尖閣諸島に対する攻撃は安保条約の対象になるのかということがかつて大変議論されたわけでありますが、その点外務省は、自分の判断、日本側の判断で、条約は施政権下における攻撃はという条文で、その条文で当然として判断されているのか。一時米国が違うような発言をしたことがあったものですから、その点、向こうの方に確認しているのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  224. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日本国の施政のもとにある領域ということで当然入ると思います。当然入ると思いますが、念のためにアメリカともいろいろ話しておりますが、アメリカは、仮定の状況に応じて米国としてとり得る行動について推測することは差し控えるとの立場をとりつつ、その締結した国際約束は遵守する、こういうふうに言っているわけでございます。
  225. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 よくわかりました。ちゃんと締結した約束を守るということであります。  それでは次に、本質的な問題ですが、なぜ今ガイドラインが問題になるんだ、ガイドラインが出てくるんだ、こういうことが国民の多くの人々に詳しくわかっていないというか、理解しにくい。こちらがアカウンタビリティーがあるんだけれども、なかなかこういう問題は聞いてくれないだろうなんというのでほったらかしているのが非常にある、私はそのように思うんです。  そこで、冷戦後の我が国周辺の事情というのはどうなんだと。それから、これは安保条約を超えるものかどうか。安保条約は、御承知のように両国が極東における国際の平和及び安全の維持だと、そしてこの極東というものについては周辺地域も含むということについては、既に昭和三十五年に国会答弁があるところであります。それに対して、このたびは、日本周辺地域における事態で、日本の平和と安全に重要な影響を与えるものとするとともに、その前提として我が国アジア太平洋に米国とともにその安定に寄与するんだと、こういうふうに言われておるわけですが、今私はこの二つ、冷戦後の我が国周辺の事情からいってガイドライン法案をつくらぬといかぬのだ、そして安保条約との関係はこうなんだということを簡潔に説明していただくとともに、これは抽象的な話ではなくて具体的な話としてお尋ねしたいのは、この地域における両国の国益は何かと。  やはり国民を納得さすためには、目先のそれは利益ではないかもしれぬけれども、基本的にはこういうふうな協力をすることによって我々は利益を得られるんですよと。米国の方は米国の国民にそれを説得せぬといかぬ。日本は当然のこととして日本国民に説得した上でこの同盟が強固になっていくわけでありますから、このガイドライン、新しい周辺地域法案によってこういうふうな点が経済的なものも含めて両方がメリットがあるんですよと。  そういうことについて簡潔に、総理大臣外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  226. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 月原委員から基本的な問題について改めてお尋ねがございました。なぜガイドラインを必要とするか、こういうことでございますが、冷戦終結後、国際情勢は大きく変化をいたしました。しかしながら、我が国を取り巻く国際情勢には依然として不安定、不確実な要因が存在しておるという認識でございます。このような情勢におきまして、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態に対する対応を含め、より効果的な日米防衛協力関係を構築することが一層重要となっておるという点でございます。こうした認識のもとで、日米政府日米安保共同宣言におきまして日米防衛協力のための指針の見直しを開始することで意見の一致を見て、その後、日米協議を行い、平成九年九月に新指針を公表した次第でございます。  そして、この法案等は新たな指針実効性を確保するために作成をされたものでございまして、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態である周辺事態におきまして日米安保体制のより効果的な運用を確保し、周辺事態に対応して我が国が実施する対米協力を含む措置等を定めるものでございます。安保条約四十年、本当に我が国の平和と安全を確保するのに大きな役割を果たしてきた、しかし国際情勢は変化してきた、その中でなおこの周辺において安定した状況を確保するためにはこの際改めて日米間にきちんとした枠組みを確立すべきだ、こういう形で今回の法案等を提出させていただいた、こういうことだと思っております。  なお、日米安保条約を超えるのではないかという批判があるというお尋ねでございましたけれども、日米安保条約の目的は我が国極東の平和と安全の維持であるということは申し上げたとおりでございまして、しかるがゆえに周辺事態安全確保法案我が国の平和と安全の確保に資することを目的としており、我が国の安全に着目したことを改めて国民皆さんにも御理解をいただきたい、こう願っております。したがいまして、この法案日米安保条約の目的の枠内であり、日米安保条約を超えることはなく、このことはこれまでも繰り返して答弁いたしてきたところでございます。  政府としては、日米安保条約の効果的な運用に寄与するとする今般の法案修正は、我が国の平和及び安全に着目した本法案日米安保条約の目的の枠内であるということと同義であると考えており、法案日米安保条約を超えることのないことは明らかでありまして、こうした法律案の施行が可能になりますれば、ますます日米協力をいたしまして我が国の安全確保のためにより効果的な体制が整い得るもの、こう確信をいたしましてこの法律案を提案させていただいておるところでございます。
  227. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今、総理からこの法案の必要性、それから安保条約を超えないのかということについては過不足なく答弁があったと思いますので、日米の国益という点についてお答えしたい、こう思います。  我が国は、米国との間で自由、民主主義、基本的人権の尊重という基本的価値、理念を共有する同盟国として、政治、経済、文化等あらゆる分野において緊密な関係を有していますが、かかる緊密な日米関係日米安保条約がその基盤となっているわけであります。これは換言いたしますと、もし日米安保条約がなかったならばこのような平和と繁栄を我が国が享受し得たと考えられないところであります。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  かかる日米安保条約の役割は国民の大多数により支持されていると考えており、政府としては、今後とも基本的価値を共有する米国との間の日米安保体制を堅持し、これを安全保障政策の重要な柱の一つとしていきたい、こういうことでございます。
  228. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 よくわかりました。  そこで、外務大臣が今おっしゃった問題が非常に抽象的な印象を国民に与えるわけです。もちろん、人権とかもろもろのことが大切なことは間違いありません。しかし、繁栄することだ、人権だと、こういうふうに言っても、私はそこで思ったのは、ナイ・イニシアチブのころに、米国民を理解させぬといかぬ。太平洋地域にこのくらい投資したんだ、我が国は太平洋国家なんだ、そしてこのくらいの雇用が確保できておるんだと。そのころの米国の経済は今と違っておりましたけれども、そういうふうな具体的な話をして国民に理解をさせたということがあるんです。  だから、私は何も経済が、お金がどうだという話じゃなくて、もう少し具体的に、確かにおっしゃったとおりなかったときを考えてみろといったら、多くの人はこれは大変な話だなとわかりますけれども、もう少し別の角度から、それは今まで何回となく言われたことで、それでもまだ理解しない人がいるとすれば、そういう切り口からもう少し研究してもらえないかなというのが私の希望であります。  それでは次に、総理大臣周辺事態のことを認定する、決心する最大の唯一の方であります。この間の夜、朝鮮戦争のテレビを総理はごらんになったというお話だったが、私もたまたまそれではなくてケネディさんのキューバ危機の決断という場面があったんですが、やはりいろんな情報が入ってきているんですね。そして、いまだに反省としては、ミサイルが、もう既に核も持ち込まれておったということがわからなかった、いかにあれだけのアメリカの大国でも情報が十分でなかったということが言えると思うんです。  それだけに、私は総理が決断されるについて現在どういうシステムを維持されておるのか、そして今後どのようにされようとしておるのか、そういう点についてお尋ねしたいと思います。
  229. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 法律を施行させていただきまして、かりそめにも周辺事態というような事態が参ったときには、まさにそのときにおける最高責任者の決断というものは極めて重要だと思っております。  そのためには、今御指摘のように十分なる情報を確保しなきゃならぬというふうに思っておりますが、その判断を行うために必要な情報につきましては、事態の性質等に応じ異なるもので一概に申し上げることはなかなか困難だと思いますが、一般的には自衛隊の警戒監視、また米国との情報交換によるほか、外務省の在外公館等を通じて収集される情報や関係行政機関から提供される情報等により、あらゆる情報を確実にかつ間違いなく収集して総合的に誤りなき判断をしなければならない、その大変な責務を負うものと思っております。  今お話のありましたケネディ大統領のキューバ危機における対応、また閣僚における話し合いの録画、録音をずっと再生しながらの放送を私も拝見いたしましたが、そうした危機は絶対訪れていただいてはいけないと、こう思います。しかし、事安全保障の問題につきましてはそれこそ絶対ということはあり得ないわけでありますから、そうしたときにおける最終的決断のためには、全くあらゆる角度からの情報を収集しながら誤りなきを期していくべきものと考えております。
  230. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今、総理のお話を聞いて大変心強く思いました。いろいろなところでみずからを、その立場からどうすればいいかということの勉強といったらちょっと生意気ですが、研さんを積まれておるということ、やはりさすがだなと、こういうふうに思いました。  そこで、これと同じようなほどのシステムではなかった、そういうものではなかったかもしれませんが、お尋ねしたいのは、この前テポドンが飛んだ、これが九八年の八月。そのときにどういう反省があって、いろいろシステムそのものを変えたという点があろうと思いますが、ことしの三月に不審船があった。この不審船のときに、その情報、それから判断するシステムにどういう点で改造が加えられ、またどういう点が問題として残っているかということをお尋ねしたいと思います。防衛庁長官、よろしいですか。
  231. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 昨年の北朝鮮の弾道ミサイル発射事案につきましては、種々の情報を総合的に勘案した結果、八月中旬ごろから実は自衛隊の艦艇、航空機を日本海に派遣するなど情報収集態勢を強化するとともに、米国との情報交換を緊密にして実施したところであります。このように、政府としましては、先般のミサイル発射に際して適時適切な情報収集及びその報告、連絡に努めたところでありますけれども、なお反省すべき点もあったことから、危機管理重要性にかんがみ、情報の迅速な公表を含め連絡体制の一層の充実を図るべく努めてきたところであります。  また、私ども防衛庁内部に重要事態対応会議というものを設置しまして、既に十数回検討を行って、あらゆるケースに対応する問題点の摘出を行っております。実は、その一環として、先般不審船があらわれた場合も、私どもは検討したことをそのまま復習するというような結果になった面もありまして、私どもはこういうものを今後も詰めながらあらゆる事態に対応していけるような努力をしたい、こう思っておるところでございます。
  232. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 こういうものはケース・バイ・ケースでありますが、基本的な問題は変わらないわけですから、修正すべき点は修正して、今、長官はそういうふうにおっしゃっておりましたから、今後進めていただきたいと思います。  時間が限られておりますので、また次回にお願いすることも幾つかありますので、あとは国防省の昇格の問題についてお尋ねしたいと思います。  この国防省の昇格についてはいろいろもう既に何回となく発言されておるのでありますが、平成九年の十一月には、自民党には省にすべきとの意見が多いが、他の与党は異なる意見も強いとの報告を受けていると。このところの与党というのは、社民、さきがけのときの話ですね。そして、四十二回の行政改革会議のときにも、与党三党の協議の結果、「与党三党は、新たな国際情勢の下におけるわが国の防衛基本問題につき、引き続き真摯な協議を行う。」と、こういうふうなことを書かれておるんですが、その背景がもう全然変わったんです。  それに基づいて法律はつくったけれども、そのときの防衛庁のを外した法律というか、防衛庁は庁のままにする、内閣府に置くというそういうものはつくったんだけれども、そのつくるときの前提とするものは大変もう地盤が変わってきておるわけです。しかも、その後に調達実施本部、これは不幸な事件ですが、それを分解して組織がえもあったわけですね。それは急に法律をつくる前にできたわけですけれども含めたわけです。だから、スリム化とかいう議論にもちゃんと合うわけですよ。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  そういうことから考えると、常に現場で、昨日は田村先生も議論されたんですが、身の危険をも顧みず、私もそういうことはちゃんと判を押して入ったんですが、そういうことで毎日訓練しておる人、しかも今重要な法案審議されておる。実施機構としては防衛庁が主力になるんだと。そういうようなときに、まだ庁だ、エージェンシーなんというのは、何か知らぬ、子供が聞いたら、それは国の機関ですかと、こう聞かれるぐらいの調子にしか扱われぬじゃないかと。もうこれだけ俎上に上って、それを何もしないということは否定したという意味になってしまうんです。問題が出ていなかったらいいですよ。  そういう意味で、新たな国際情勢のもとにおける我が国防衛基本問題については政治の場で議論すべき課題であるというふうに言われておるんですが、これが言われて久しいわけですが、政治の場でどのように議論されようとしているのか、そのことを総理にお尋ねしたいと思います。
  233. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 本件につきましては、しばしば御答弁申し上げておりますが、防衛庁の省への移行につきましては行革会議でもさまざまな議論がなされ、今回の中央省庁の再編に当たって防衛庁は現状どおりといたしたところであります。なお、行革会議の最終報告にもあるとおり、新たな国際情勢のもとにおける我が国防衛基本問題について別途政治の場で議論すべき課題とされているところであります。  いずれにしても、国民の十分な理解が得られる形でこの問題について議論が尽くされることが重要であると考えておりまして、今般提出をいたしました中央省庁改編の法律案におきましては従来どおりということに相なっております。  そもそも、自衛隊が発足いたしましたとき、警察予備隊から発足して今日までの期間、国民皆さんの理解、ますます自衛隊に対する期待も高まってきておるわけでございまして、いわば自衛隊皆さんにとりまして、古い言葉で言えば武人ということかもしれませんが、武人にとっての誇りというものは極めて大切なものでございまして、そういった意味合いから、省への昇格の問題もかねて来御議論のありましたことは私も十分承知をいたしておるところでございます。  したがいまして、今般、法律政府としては提出させていただいておりますが、政治の場でと、こういうことにつきましては、まさにそれこそ、それぞれ政治に携わっておられる責任ある議員各位その他の御意見も拝聴しなければならぬかと思っておりますが、段々の経緯の中で提出いたしております法律でございますので、現時点におきましてはこうした形で、この省庁再編におきましては今申し上げたような形で今回はお認めをいただけるようにお願いをいたしたいと思っておる次第でございます。
  234. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 国防省昇格問題は自由党でも一番大きな要望であります。それだけに、今後の努力をお願いし、我々も政治家としてその場を積極的につくっていきたい、こういうふうに思っております。  いろいろありがとうございました。(拍手)
  235. 山崎力

    ○山崎力君 参議院の会の山崎でございます。きのうに引き続きまして、新ガイドライン関連法案を中心にお伺いしてまいります。  まず一番最初に、今回の一連の衆議院を含めての議論の中でどうしてももう一度振り返っておかなければいけないというか、議論のいろいろな中での問題点一つとして集団的自衛権というものがどういうものかということを確認したいという気が私は強くなってまいりました。そういった意味で、我が日本国憲法が集団的自衛権というものを否定する内容、そういうふうに内閣法制局を初め現政権も判断しているわけですけれども、この背景にある考え方、思想といいますか、あるいは法哲学というものはいかなるものなのかという点をお伺いしたいと思います。
  236. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) お尋ねの集団的自衛権の行使を憲法が否定している背景にある法思想あるいは法哲学はいかがかと、非常に格調の高い御質問でございまして、御質問を伺いますと、若き時代に学びました法哲学の一章に自衛権というものが一分野としてあったなということを思い出すわけでございますが、それはともかくといたしまして、このお尋ねの件と申しますのは、憲法の基本理念、すなわち平和主義、そして国際協調主義及び基本的人権尊重主義というものが総合した姿で発現した問題の一つかなというふうに考える次第でございます。  これでは余り抽象的過ぎようかと思いますので、もう少しブレークダウンして御説明いたしますと、今までもるる御説明いたしましたように、集団的自衛権と申しますのは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力で阻止することを正当化される地位ということでございます。これは我が国が加盟しております国連の憲章第五十一条の規定にもあらわれているところでございまして、我が国が国際法上このような集団的自衛権を有していることは主権国家として当然である。これは先ほど申しました国際協調主義の一つのあらわれととらえることができようかと思います。  しかしながら、次に述べるような理由によりまして、政府は従前から一貫して、我が国が集団的自衛権を行使することは憲法上許されないという立場に立っているわけでございます。すなわち、憲法は、第九条におきまして、戦争、武力の行使等を放棄し、戦力の保持を禁止し、交戦権を否認しているわけでございます。しかしながら、午前中も御説明申しましたように、前文におきまして確認している平和共存権、平和的生存権の確認、あるいは憲法十三条の生命、自由、幸福追求に対する権利の尊重などの趣旨を踏まえますと、自国の平和と安全を維持し、その安全を全うするために必要な自衛の措置をとることまでも憲法九条は禁じているものではないという結論が出ようかと思います。  しかし、平和主義をその基本的原則とします憲法が自衛の措置というものを無制限に認めているとはまた解されないのでありまして、それはあくまで外国武力攻撃に対して我が国防衛するためのやむを得ない措置として初めて認容されるものである。その措置武力攻撃を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権と申しますのは、その行使は憲法上許されないという結論に達せざるを得ない。  これが、従前から繰り返し説明いたしております集団的自衛権の行使は憲法上認められない理由でございます。
  237. 山崎力

    ○山崎力君 るるお述べいただきましたが、それは今までの政府解釈の説明でありまして、私のお聞きしたのはその背景にあるのは何かということであるわけです。私もこういう議論をしておりますと今くらいの中身は大体入っているわけで、そこのところをどういうふうな考え方でそういうふうな考え方にきたのかということをお述べいただきたかったわけでございます。  と申しますのは、いろいろおっしゃいましたけれども、今回の問題も含めて集団的自衛権の問題、我が日本国政府の従前の解釈は、どなたかもおっしゃられましたけれども、極めて独自でございます。特異と言ってもいい、あるいはひとりよがりと言っていいかもしれません。私の思うところでは、集団的自衛権を制限しているという形のものはいわゆる中立国がとっている政策であって、軍事的な同盟国がそれをかざしているという国は一国もないと私は承知しております、もしあれば教えていただきたいわけですが。  そういった意味で、その辺のところの世界的な常識と外れた部分というものが、ある意味では日本行動というものを世界の各国から見てわかりづらいものにしているんではないだろうかという危惧すら持つわけでございます。  そういった点で、もう一歩進んで言えば、この日米安全保障条約というものが片務的であるからよろしいんだ、合憲である、集団的自衛権にはつながらないんだということなんですけれども、周辺有事の際に、いろいろな兵器であれ資金であれ食糧であれ何であれ、そういったものを提供するということが、いわゆるお互いさまの同盟関係、自衛権のお互いの足らざるを補うというような形の行動にならないのか。一言で言えば、日本は物を出します、アメリカは人を出します、これでお互いさま国の存立を保とうあるいは安全を確保しよう、こういう考え方というのは、集団的自衛権の行使というか、行使と言うと大げさかもしれませんけれども、そういった物の考え方とどう違うんだろうかというふうに考えるんですが、その点はいかがでしょうか。
  238. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 少なくとも私は、安保条約が片務的であると言ったことはないし、片務的であるからこの条約が合憲であると言ったことはないわけで、委員は物の提供と言いましたが、むしろ施設・区域提供しているということが日本の最も大きな義務というか、そういったものだろうと思っております。  ただ、なぜ合憲かといえば、やはり集団的自衛権を行使しないから、この条約に基づいて集団的自衛権を行使することがないから合憲なのであって、片務的とか双務的とかそういう話ではないんだろうと。  委員とはこの問題で外交防衛委員会でも随分話した記憶がありますが、端的に言って、集団的自衛権の定義が政府がとっているところと委員と違うということが端的な理由だと、こう思っていますが、日本国政府がとっている定義はむしろ国際的にも通説である、こういうふうに考えております。  国際的にわかりにくいということは、できるだけわかりにくくないようにその解釈をころころ変えないようにしているわけでありますが、国際的にも変えないことでわかっていただくということにしようと思っているわけでありますが、やはり集団的自衛権を行使しないという、そういう憲法を持っている国がほかにない、日本ただ一つだと、そういう中でいろいろなことをやろうとしているときに、それは国際的にわかりにくくなることもあるかもしれません。ただ、できるだけ、その解釈をころころ変えていればもっとわかりにくくなるわけでありますから、日本政府とすればそういう解釈は変えないでやっていこう、こういう立場をとっているわけでございます。
  239. 山崎力

    ○山崎力君 特異ということがひとりよがりということでなければいいわけですけれども、少なくともこういった普通の国際常識、国際国家間の関係を見る面において、日本というのは普通の国とは違った位置づけの法体系といいますか考え方を持っているということだけは客観的に否定できないと思うわけです。そして、我が国が平和国家であるからと自称しておりますけれども、そうすると、そうでない国は平和を愛する国家ではないのかという裏から言える部分があって、別にそういった意味日本がそれだけ現時点で威張れるようなことを平和国家としてやっているかということになると、ますます背筋が寒くなるような状況もないわけではないわけでございます。  それはこの際ともかくといたしまして、今回の問題でいけば、非常にそういった意味でのわかりにくさという点からいけば、言葉の問題があります。これは英語の訳がそれぞれ違っているということで、百も承知でお伺いするわけですが、日本語だけ見ますと、いわゆる後方支援と後方地域支援、地域が入っているか入っていないか、こういう問題ですが、ここは、時間がなくなっていますので簡潔にお答え願いたいんですが、その定義上の違いは何かということと、周辺事態においてなぜ後方支援ができないのかということをお答え願いたいと思います。
  240. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 私どもが後方支援と後方地域支援を分けておりますのは、やる中身は大体同じでありますが、後方地域という概念を導入したのは、昨日来いろいろ憲法論議がありましたが、そういう憲法の問題から見て我々は武力行使ができない、三つの活動において武力行使ができない、または武力行使と一体となってはならない、あるいは今、委員がおっしゃっているとおり集団的自衛権というようなものも行使できない。こういうことを考えますと、やはり三つの活動をやる場合に、後方支援とは違った後方地域というものを設けまして、今言うような憲法上の制約を乗り越える地域を設けざるを得なかったというのが事実だろうと思います。
  241. 山崎力

    ○山崎力君 それでは、ちょっと飛ぶようですが、また言葉の問題にさせていただきます。  先般の不審船事件の例で、護衛艦、あるいはこの場合巡視船というのはちょっとなじまないかもしれませんけれども、発砲したり、航空機から対潜爆弾を落としたと。これは武力の行使ではない、一種の武器使用であるというふうに言われて、私も個人的にはそう思います。  それでは、武力行使と武器使用とはどこが違うのか。外見上は非常に似ている部分もあるんですが、どこが違うのか、言葉の使い方として、まず教えていただきたいと思います。
  242. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 一般に憲法九条一項の「武力の行使」と申しますのは、我が国の物的あるいは人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為を言うと言われております。  また、武器の使用とは、火器とか火薬類とか刀剣類その他、直接人を殺傷しまたは武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置をそのものの本来の用法に従って用いることを言うと解されております。
  243. 山崎力

    ○山崎力君 武器使用の定義はそれでいいかもしれませんが、武力行使といった場合、武器を使うということは前提ですけれども、やはりそこのところには組織、多くの場合、軍隊であれば国家意思がそこにあって、そこからの命令になっている。しかも、その命令するところがある目的を持ったものである。そこの目的がどういうものであるかということが、平和のために武器を使うのか、それともそうでないために使うのか、その辺で違ってくるのではないかと思うわけですが、今のお答えですと、その辺が非常にあいまいに聞こえてまいります。時間の都合で先に行かせていただきますが、詳しくは後ほどの議論の中でもお教え願いたいと思います。  そのときに、武器使用に関係がないとは言えないんですが、日本有事の際に、自衛隊法の八十条、これによりますと、防衛庁長官海上保安庁長官を指揮することができる、こうなっておりまして、他方、海上保安庁法第二十五条においては、海上保安庁の組織というものは軍隊としての機能を営むことが認められておりません。軍隊としての機能を営むことが認められていない海上保安庁を有事の際に防衛庁長官がどういう指揮をできるんでしょうか、教えていただきたいと思います。
  244. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) この隊法の八十条におきましては、総理大臣防衛出動または治安出動を命じた場合には、「特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れることができる。」とされております。この場合には、防衛庁長官海上保安庁長官に対して指揮を行うことと委員がおっしゃったとおりであります。この場合であっても、海上保安庁法に定める海上保安庁の任務、権限には何ら変更はございません。具体的にいかなる業務を行わせるかはその時々の事態の態様に応じて異なり、一概には言えないわけでありますが、海上保安庁は、自衛隊の出動目的を効果的に達成するために、その所掌事務の範囲内で、例えば漁船の保護、船舶の救難等の人命、財産の保護や、密輸、密航等の海上における犯罪の取り締まり等の業務を実施することとなると考えられます。  このように、自衛隊法の八十条の規定による防衛庁長官による海上保安庁の統制は、海上保安庁の非軍隊性を規定する海上保安庁法二十五条と矛盾するとの御指摘は当たらないものと考えております。
  245. 山崎力

    ○山崎力君 いや、御指摘は当たらないと思うというのは、法律を管掌するところからいえば当然おっしゃるんでしょうけれども、当たる可能性があるんではないかと。それじゃ、当たらないように運用するにはどうしたらいいんだと。  また、逆に言えば、防衛庁として、自分たちは有事の際に日本防衛のために軍事行動をつかさどって行動する役所ですよ。それが、それをやっちゃいけないところを抱え込んで指揮命令するということになると、ある意味ではかえって足手まといになりかねないわけで、その辺のところを、これは警察も当然そういった場合はあり得るわけですけれども、その場合、有事に際して防衛庁長官が警察庁長官を指揮するというような法律はどうもなさそうでございますけれども、その辺のところの整合性が非常に見えてこない。こないというか、その辺をきのうもひとつ指摘させていただきましたが、ガイドラインのところへ行く前に、私は日本の国内の有事の方の現行法における問題点を先に整理しなければいけないんじゃないかという気がますます強くなるわけでございます。  そういった点で、時間の都合もございますので、こういったいろいろな議論がございますが、同僚議員のそれぞれの立場からの質問を見ていてある種共通して感じるのは、先ほど一番最初に申し上げましたように、いわゆる特異な我々の解釈である集団的自衛権の否定、あるいはさかのぼっていえば憲法第九条の考え方、そしてそれ以降五〇年における日米の旧安保条約、六〇年の新安保条約、そういった中でずっと来ていた。それで、その中で正直に言えば我々の先輩が日本の有事あるいは危機管理、そういう法律の体系の整合性、行政府としていかにそれに合理的に対応するかという法体系を整備してこなかったということが言えるのではないかと思います。  その中で私が危惧するのは、条約的ないわゆるアメリカとの約束事、こういった中で、新ガイドラインから国内法の整備、日本有事の法体系に逆におりてくるんではないか、つくり方が逆なんではないかと。自分たちの国をどういうふうにして緊急時において運用するのかということからやらなければいけないんではないかなと思っているわけです。  そういった流れについては、ほとんどこの間自由民主党が政権をとっておりました。そういった中で、総理の前で恐縮でございますが、現在一番経験豊かであると思われる宮澤大蔵大臣に、その辺の経緯を踏まえた今の御感想をまず伺えたらと思う次第でございます。よろしくお願いします。
  246. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 時間が限られておりますので簡単に申し上げますが、日本が独立を回復しましてから何年かたちまして、私は、もし東京に空襲があったらばだれがサイレンを鳴らすんだろうかということを一生懸命調べましたけれども、自衛隊じゃありません、米軍ではありません、どこの役所でもないということを発見いたしました。  そういう状態は非常に長く続きまして、やがて自衛隊ができまして防衛出動という規定はできましたが、いざどこかの敵が上陸しようとするときに、自衛隊の戦車は私有地である原野を突っ切れるのか、海岸に構築物を置けるのか、道路交通法に違反なしに動けるのかといったようなすべてのことは何にも決まっておりませんで、自衛隊法には「政令の定めるところにより」という部分が幾つかございますが、政令は定められておりません。  そういう状態がずっと続きましたので、自衛隊の人は私が心配するぐらいですからよほど心配をされていろいろ研究されるんですが、研究が報道されるたびに国会委員会はとまるわけでございます。そして、そういう研究をした人間はけしからぬと言われますから、政府としてはどうもできない。福田内閣のときにようやく少し物を決めそうになりましたが、ただしこれは立法を前提としないということでありますから、何のことかわからないということがおっしゃいますように大変長く続いて、私は何かやっぱり有事ということは災害のような立法で考えられないだろうかと思いましたが、それもだめでありました。  正直申しまして、そういう雰囲気でありますから、国会としては、委員会としてはなかなかそういう議論を正面からお取り上げいただけなかった。大変正直に申しますが、村山首相が安保条約は大事なものである、自衛隊は違反でないと言われまして、初めてこういう議論ができるようになった。それでもなおちょっとございますけれども、これがやはり大きな転機で、こういう議論ができるようになった。  アメリカ側は、自分たちは同盟国であるから大事なときには助けなきゃならぬが、その助けるロードマップがないわけでございます。青写真があって、自分たちは職人ですから一遍それを実際に訓練でやってみなければ心配でしようがないという事態がごくごく最近まで続いたと思います。
  247. 山崎力

    ○山崎力君 本当に今までの経緯を簡潔に御説明願ったと思います。  そこで、総理に最後にお伺いしたいんですが、せんだっての質問で、名前はともあれ対有事の諸立法を真剣に検討中であると、近い将来というニュアンスでおっしゃられましたが、今般の新ガイドライン関連法規、今の宮澤大蔵大臣の発言、そういったものを考えると、それだけ悠長な問題ではないんではないかというふうな気がしているんです。その辺のところで総理の御決断をそろそろしていい時期じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  248. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今回の新ガイドライン法律案制定をめぐりまして、有事立法の問題等につきましても御指摘をちょうだいいたしました。今回の法律につきましては、これはぜひ通過させていただかなきゃなりませんが、こういう機会にもろもろの問題についてもかなり問題提起をされておりますので政府としても勉強いたしていかなきゃならぬと思います。  大先輩の宮澤大蔵大臣、長きにわたりまして日本の政治をごらんいただいてまいりました。そういった点では、正直申し上げて、今日、この共通の基盤において国会でも御議論がなされることのできるような時点に達してきておると認識いたしておりますので、さらに政府としても勉強させていただきたいと思っております。
  249. 山崎力

    ○山崎力君 終わります。(拍手)
  250. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 アメリカは、アジア太平洋地域に十万人の兵力を維持しているわけであります。御承知のように、その大半は在日米軍でありますけれども、またその多くも沖縄の基地に駐留しているというふうな状況であります。また、歴史的にも第二次大戦で地上戦を強いられ、朝鮮半島、ベトナム戦争、そして湾岸戦争などの出撃拠点となったのは沖縄基地であります。ほとんどの軍事評論家もこの法律の成立によって沖縄が真っ先に周辺事態の影響をもろに受けるだろうというふうなことを予想されております。私も周辺事態に巻き込まれる可能性は沖縄が一番高いというふうに認識しておりますけれども、外務大臣はいかようにお考えですか。防衛庁長官でも。
  251. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 確かに、地理的条件からいっても基地が多く存在することがあることを考えても、委員が言われることがあり得るのじゃないかというふうに考えられます。
  252. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 それでは、沖縄にとってはこの周辺事態の問題はあり得るというお話でありますから、大変な状況になるということのおそれを感じております。  そこで、この法案に対し沖縄県民及び国民の最大の関心事は周辺事態として扱うのかということであります。  政府はあらかじめ地域を特定するものではないと答弁しておりますけれども、ベトナム戦争や湾岸戦争のような有事が沖縄では恒常的に今日まであったわけです。したがいまして、今のような答弁では沖縄県民は納得できない。日本有事、極東有事、周辺事態はどのように区別していくのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  253. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 周辺事態とは、我が国に対する武力攻撃には至りませんが、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でございます。繰り返し述べておりますが、ある事態が周辺事態に該当するか否かはあくまでもその事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するわけでございます。したがいまして、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできないわけでございます。  また、お尋ねのこのような周辺事態極東との関係でございますけれども、周辺事態極東における国際の平和と安全の維持といった観点ではなく、あくまでも我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすか否かということに着目したものでございます。したがいまして、周辺事態極東との間の地理的な関係を一概に論ずることはできないということが従来から繰り返し述べているところでございます。
  254. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 さきの北朝鮮テポドン事件では何の被害もないままに大騒ぎをしたわけでありますけれども、周辺国から奇異な目で見られた記憶は新しいわけであります。しかし、一方において中国のミサイル発射事件が台湾近海でありました。そのときには、我が沖縄県の与那国町では実際に漁民が出漁できない、漁場に行けないというふうな状況になっておりまして水揚げも落ちまして、そして生活に非常に困った事態がありました。本当にそのときには一触即発の状況であったことは県民は等しく認識しております。  そこで、具体的にお尋ねいたしますけれども、もし台湾で再びあのようなことが起こった場合に周辺事態として対処されるのかどうか、お伺いいたします。
  255. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 周辺事態と申しますのは、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であります。したがって、御指摘の事態について周辺事態に該当するか否かにつきましては、その時点の状況を総合的に見た上で判断すべきものであり、一概に申し上げるわけにはいきませんが、一般論として申し上げますと、単に漁ができなくなったというような影響が発生していることのみをもって、軍事的な観点を含む意味我が国の平和と安全に重要な影響が生じていると判断していくことは困難なものと考えます。したがって、漁ができなくなったことをもって周辺事態だと、こういうふうに認定することは困難なものと考えます。
  256. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 沖縄県石垣市登野城の番地が付されている尖閣列島、これは現在二カ所の米軍の射爆場がありますけれども、その一つの島は久場島といって、これは個人有地でありますから賃料が払われております。もしも尖閣列島で領有権問題で紛争が発生した場合は当然に日本有事になるものと思われますが、この際はっきりしておく必要があると私は思います。その際、対処の仕方について米軍とどのような取り決めがなされているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  257. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 今回の日米ガイドラインにおきまして、我が国に対する武力攻撃があった場合の共同の対処行動ということにつきまして、これが今回のガイドラインにおきましても中核的な要素であるということで、そういう事態に対応した場合の日米の役割等につきまして記載が行われているところでございます。  今、先生が設例されたような事例、それが具体的に自衛権を行使するようなそういう事例になるかどうかというのは、その状況を具体的に判断しなければならないと思います。したがいまして、自衛権発動の三要件に該当する場合に、この日米の共同対処というのは、このガイドラインで記述されておりますような日米の役割に従って整合的に対応していくということになろうかと思います。  それからなお、先ほどこの周辺事態の対応につきまして、日本の特定地域について特に過重な負担があり得るのかと、こういうふうなお尋ねがございましたが、いずれにいたしましても、これは当然でございますが、具体的な対応というのは、周辺事態、それに対しましていかなる措置が必要かという点から講ぜられるものでございます。したがいまして、あらかじめどういう地域にどういう措置が必要か、対応が必要かということが先験的に申し上げられるような状況にはないと思います。  ただ、いずれにいたしましても、先ほど防衛庁長官が御説明しましたように、沖縄につきましては基地も非常に集中している、こういう状況にございますので、当然御関心も高いと思います。そういうところで、この問題につきましても慎重に考えていかなきゃならないということで、防衛庁長官から御説明させていただいたところでございます。
  258. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 一言でいいんです。仮に尖閣列島が紛争地域になった場合に米軍協力するんですか、しないんですか、その辺を一言でいいです。
  259. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 尖閣列島が我が国の固有の領土であり、さらにそこにおいて我が国が実効的な支配をしているということが前提となる事実でございます。  しかるに、これは一般論で申し上げますけれども、日米安保条約第五条におきまして、我が国の施政のもとにある領域に対する武力攻撃が行われたというような場合には、日米で共同の対処を行うということが定められておるということで明らかであろうかと思います。
  260. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 一九七二年の沖縄返還協定締結するに当たって、一九七一年十月二十七日の米国上院の外交委員会の聴聞会において、当時のロジャーズ国務長官は、一、米軍兵員数の重要な変更、二、装備の重要な変更、三、直接的な戦闘作戦行動のための基地使用につき、明確に我が国との事前協議によって拘束されるということを説明しております。しかしその後、この事前協議は、核持ち込みを初めとする問題について一度も事前協議が行われていない、有名無実化しております。  連日報道されているNATOのコソボ紛争の介入を見ていると、国連安保理や国際社会の動向を軽視し、米国が独自の軍事行動をとる危険性が感じられるわけであります。我が国は、周辺事態法案審議に当たって、まず米国との事前協議の問題については原点で協議すべきではないかというふうに考えますけれども、その必要性はどのようになっていますか。
  261. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日米安保条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文は、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用を、我が国政府との事前協議の主題とすることと定めているわけでございます。  委員指摘のように、事前協議はこれまで一度も行われておりませんが、これは日米安保条約締結以来、事前協議を行わなければならないような事態が生起しなかったことによるものであります。このことは、まさに日米安保体制抑止力が効果的に機能してきたことの証左でもあり、事前協議制度が有名無実化しているということはありません。このような事前協議制度につきましては、日米両国政府日米安保条約締結以来、長年にわたり確認してきているものでございます。  また、日米防衛協力のための指針においても、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務を変更しないということを明記しているわけであります。  政府といたしましては、その対象となる主題を含め、事前協議制度を見直すことは考えておりません。
  262. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 では、もっと具体的にお尋ねしたいんですけれども、朝鮮戦争の際、米軍を主体とした国連軍が組織されました。それは、現在も形式としては残っていると理解しております。しかし、この国連軍の実態は米軍であるため、在韓米軍、在日米軍はいつでも国連軍の指揮下に入ることがあり得るというふうに思っておりますけれども、間違いありませんか。
  263. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 朝鮮国連軍につきましては、御承知のとおり、休戦協定が成立しました後、各国の兵力が撤退をいたしましたし、またさらには、米韓相互防衛条約が発効いたしまして、在韓米軍への編成がえなどがございました。したがいまして、現在は約四百数十名の少数の軍事要員から構成されているところでございます。  それで、お尋ねの点でございますけれども、現時点におきまして、在韓米軍及びそれ以外の米軍を朝鮮国連軍に編入するような事態が想定されているわけではございません。また、仮に朝鮮半島において何らかの事態が発生した場合にいかなる対応を国連がとるかということにつきまして、具体的に予断することは不可能でございます。そうして、そのような仮定の事態を想定した御質問にお答えするということは、必ずしも適当ではないと考えるところでございます。  ただし、その上で、現在の状況を前提といたしましてあくまでも一般論として申し上げさせていただきますれば、在韓米軍及びそれ以外の米軍を朝鮮国連軍に編入させるか否かということにつきましては米国政府の判断の問題でございまして、朝鮮半島における平和と安全の維持という朝鮮国連軍の駐留の目的を達成するためにということで米国政府がそのような決定を行うということは、手続的には現在の状況においては可能であるということが実態でございます。
  264. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 引き続きまだ質問はありますけれども、時間でありますので、あした行います。  ありがとうございました。(拍手)
  265. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 本日の質疑はこの程度といたします。     ─────────────
  266. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の三案件の審査のため、来る五月十三日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  267. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  268. 井上吉夫

    委員長井上吉夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会