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参考人(梶原拓君) 私は、住民の生活の現場を預かる自治体の長として、また地域
情報化を推進しておる
立場から、一日も早くこの
システムを稼働していただきたい、そのように思っております。
自治体といたしましては、この
システムで住民の生活上の利便を向上したいということと、
行政を
効率化して、地方分権でどんどん地方の仕事がふえていきますので、介護保険とかいろいろございますが、そういう地方分権の受け皿をつくっていかなきゃいけない、その有力な手段であると思います。地域
情報化をここ十年ぐらい進めておりますが、いわゆるマルチメディアというのは、リアルタイム、リアルイメージ、インタラクティブ、インテリジェントあるいは
ネットワーク、こういう機能がございまして、実は
行政の
立場からいたしますと、社会的弱者に非常に大きな武器になるということを痛感しております。そういう社会的弱者の障害をこうした
システムで除去していく、そしてバリアフリーの機会均等化社会をつくっていきたい、そんなふうに思っております。
自治体の
立場からいたしますと、この
システムは
住民基本台帳であって
国民基本台帳じゃないんです。したがって、この
システムはあくまでも住民の住民による住民のための
システムでなきゃいけない。その
議論が従来欠けておるんではないか。住民自身がオーナーでありユーザーであり責任者である、このように私は理解をいたしております。
事実、この
システム、カードとか
ネットワークの
システムは、いろいろモデル事業なんかございますけれ
ども、住民の中で好感を持って迎え入れられているということでございまして、どうも国家の
ネットワークというふうに言われる向きもございますけれ
ども、これはあくまでも住民の
全国規模の
ネットワーク、シティズンズ・ネーションワイド・
ネットワーク、CNNというふうに私は考えております。このCNNで電話
番号に相当するのが四つの
情報です。これが
コード番号でございまして、もともと住民のための
コード番号ですから、国は、要するにNTTですね、
番号のつなぎ役をやるということ、またそれに尽きる、かように思っております。
それで、それにどういう機能を付加するかということはまさに住民自治の問題で、
市町村ごとに決めていけばいいことなんです。さらに言えば、
個人個人が選択をしていくという性格のものである、そうでなければならない。住民の自己責任という
議論が今まで欠けておるんではないかと私は思います。例えば、ICカードを
使用するかどうか、どういうふうに
使用するかということは住民レベルの問題であって、中央レベルで一律に決めてもらいたくない、それがまさに地方分権の
時代であり、住民自治の原則であると私は思っております。
それから、地域
情報化を進めている
立場からいきますと、まさにマルチメディアというのは社会的弱者のためにこそあるということを実感いたしておりまして、先ほどの流儀で表現いたしますと、この
システムは弱者の弱者による弱者のための
システムである、またそうでなければならない、そんなふうに思っております。マルチメディアを使うのはいろいろな
立場がございますが、
行政としては、今申し上げましたように、社会的な公正だとか、あるいは平等社会を実現するとか機会均等化社会を実現するという、バリアフリーとか機会均等化という点に重点を置くべきじゃないかというふうに私は思います。
それで、社会的弱者というのはどういう
立場の人かといいますと、まず身体的障害です。いわゆる障害者の方あるいは高齢者の方、こういう方は移動の自由も阻害されていますし、それから
情報の受信、発信ということも非常に不自由なんです。ある
日本の有名な方が、高齢者の場合、電子取引、電子マーケットなんてナンセンスだとおっしゃいましたが、失礼を省みず申し上げたんですが、独居老人は歯ブラシ
一つも買いに行けないことがあるんですよ、こういうマルチメディア社会というものは健常者じゃなくて弱者のためにあるんですよと面と向かって申し上げたんですが、そういう誤解が横行しているということは大変残念なことでございます。
岐阜県の障害者団体の方々の御
意見を申し上げますと、県の聴覚障害者協会会長の後藤さんは、聴覚障害者にとって他の人とコミュニケーションをとることが非常に難しい、そういう意味でこの
ネットワークの
システムは便利なことであり、異論はない、こういうふうにおっしゃっておられます。
それから、県の身体障害者福祉協会副会長の松井さんは、住民登録、
住民票は当然だ、それにプラスいろいろ付加機能をつけてほしい、健常者よりも障害者においてお互いの
情報の的確な伝達ということは大変意義が大きい、こういうふうにおっしゃっておられます。
それから、知的障害者愛護協会の四辻会長さんは、知的障害者の場合、御
本人がカード等を自己管理することは非常に難しい、結局親などの後見人がそれに当たられますけれ
ども、
行政サービスの手続の簡素化等メリットも大きい、こういうふうにおっしゃっておられます。
それから、県の老人クラブ連合会会長の吉田さんは、ぜひこれを住民の
立場に立って
制度化してくれ、高齢者にとってきめ細やかな
行政サービスを受けられるということは生活を送る上で必須の条件だというふうにおっしゃっておられます。
それから、交通事故で首から下の障害を持たれた上村さんという方、この方は頸髄損傷者連絡会岐阜代表というお
立場におられますが、私
どもの福祉メディアステーションで
パソコンの研修を障害者、特に重度障害者の方
中心に進めておられまして、リーダー格の方でございますが、カードの
利用によって医療機関へ直接出向かなくても医師による医療診断を受けられるとかいろんな付加機能を、追加機能をつけてくれというふうにおっしゃっておられます。
こういう障害者の方々の声を御披露させていただきました。
それから二番目に、地理的な障害というのがございます。過疎地は、役場へ行く場合、
住民票をとるのに一日仕事になってしまうんですね。そういうお
立場の方とか、それから、そうでなくても
行政が広域化してきますから、どうしても広域連合なんかになってきますとこうした
システムが必要になってくる。
それから、経済上の障害です。低所得者の方、こういう方にはこういう
システムでなるべく生活上の経済的負担を軽減するようにしなきゃいけない。
それから四つ目に、時間上の障害がございます。共働きの人だとか、あるいは中小零細企業の方々はなかなか
住民票一つとりに行けないというのが
現実でございます。
それから、災害時の障害です。先生方もある日突然の災害によって社会的弱者になる。これは阪神・淡路大震災の例でもそうですが、
情報がないです。そして、救援を求めようにも手だてがない。それをこういう
システムでカバーするということが考えられます。
それから最後に、緊急時の障害です。急病だとか事故とか、いろんなことで
行政上の対応を急速にしなきゃいかぬ、そういう場合にこの
システムをうまく使うというように、障害者、健常者を問わずいろんな障害の
可能性があるわけですが、この
システムを使って障害を除去してバリアフリーの社会を実現していくべきだ、こんなふうに思います。
それから、
プライバシーの問題ですが、さっき申し上げましたように、国はNTTで電話
番号を管理しておればいい、それが守備
範囲だと私は思います。いろんな追加機能、付加機能については、住民自治という
時代ですから、あるいは地方分権の
時代ですから、それぞれが主体性を持って選択していくべきだというふうに思います。
NTTのお話も出ましたけれ
ども、NTTの
情報が
漏えいしたからNTTを
利用するのをやめたという人はいないと思うんです。百点満点のセキュリティーというのはあり得ないわけでして、人間が介在する以上何か起こり得ることはもう当然、いかなる
制度でもいかなる
システムでも予想しなきゃいけない。そのリスクと生活上のメリット、利便との比較考量において住民の皆さんがそれぞれ自己責任で選択していく、こういう性格のものであろうというふうに思います。
いかにこのセキュリティーがパーフェクトかどうか、そんなことを
議論しても時間のむだだと思います。困っている人が現におられるわけですから、早く
システムを稼働して、そしてリスクとメリットを
個人個人の
立場でバランスをかけて選択していく、そういうことができるように早くしていただきたいというふうに私は思います。
そして、早くこの
システムの規格の統一をしていただきたい。このICカード自体の標準化の問題、それから
ネットワークの接続性、共用の問題、これを技術的に早く確立してもらいたい。そうしないと、どんどん地方で、
市町村でモデル事業等で
現実にいろいろ進めております。例えば、岐阜県の益田郡というところでモデル事業を進めていますけれ
ども、自動交付機で
住民票を交付するということが大変人気があります。なぜかというと、やっぱり
市町村の境界を越えて働きに行っていますので、非常に便利だということです。それで、大変強い要望がございまして、県といたしましても単独事業で補助金を出して自動交付機を増設するということを今年度予算に計上しました。そういうニーズがあるわけなんです。
したがって、早く
システムの標準化、統一をしていただきたい。二〇〇一年に次世代の携帯電話が実用化されます。そのことを念頭に、早くICカードあるいは
ネットワークの標準化、規格化を図るべきだと思います。
岐阜県では、耳の不自由な方にザウルスを使っての研修をしております。御承知のとおりですが、このザウルスと携帯電話をつないでいけば、耳の不自由な方も地震のときに、
本人確認、自己証明ができれば文字
情報でいろんな
情報が得られて、そして適切な救援措置を受けるということが可能になるわけです。携帯電話というものが社会的弱者のためにいかに重要かということがいずれわかってくると思うんです。非常に大事なタイミングですから、早くこの規格化を進めていただきたい、それでICカードとの接続とかそういうものを技術的に早く標準化して進めていただきたい、そのことを特にお願いしておきたい。
そのことによって、今景気
対策とかいろいろございますけれ
ども、この
システムが決まりますと、携帯電話あるいは
ネットワーク、
情報通信社会で大きな刺激を受けて、新しい産業がどんどん地域で発展してくると思います。産業構造の改革、失業
対策、そういう点でも副次的に大きな効果があるというふうに思います。
いろんな
議論を伺っておりますが、私
どもの
立場からいたしますと、どうも論議が生活の現場から遊離しておるんじゃないか、宙に浮いておるんじゃないか、
国民総
背番号制などの
議論を聞いていますと、まことにそんな感じがしてならない。どうか中央レベルの机上論ではなくて、住民レベルの生活現場論で論議をしていただきたいと思います。このままですと生活者不在であり、あるいは弱者疎外である、私はかように思っております。
そして、さっき申し上げましたように、地方分権の
時代ですから、仕事の量がふえる、
範囲が拡大する、質の向上を図らなきゃいけない。もう自治体は大変なんです。したがって、早くこういう便利なものを稼働させて、そして余剰人員を介護保険とか福祉とか環境とか、そういう面に振り向けたいんです。ぜひそういう点でもよろしくお願いしたいと思います。
それから、岐阜県では予算編成のプロセスを全部県民にインターネットで公開いたしております。そして、そのときそのときの県民の皆さんの御
意見、これはもう大変な数の
アクセスがございます。それを取り入れながら、言うなれば県民と
共同作業で予算編成をする、こういう住民参加の試みをしております。それで、本当はインタラクティブ、双方向にしたいんですが、
本人確認というのが非常に大事なんです。
本人確認が容易にできますと、まさに県民との対話の中において県の予算編成ができる、こういうことも可能なんです。そういう付加的、追加的な機能というものは各自治体あるいは各住民に任せていただきたい。国は、さっき申し上げましたように、これは住民のための電話
番号みたいなものでございますので、それをきっちり守ってもらう、NTTの役割をしっかりやってもらう、そして余分なことはやってもらわぬでもいい、こういうのが私たちの
立場でございます。
以上でございます。