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1999-08-03 第145回国会 参議院 地方行政・警察委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月三日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         小山 峰男君     理 事                 釜本 邦茂君                 松村 龍二君                 輿石  東君                 山下八洲夫君                 富樫 練三君     委 員                 井上 吉夫君                 岩瀬 良三君                 鎌田 要人君                 木村  仁君                 久世 公堯君                 谷川 秀善君                 保坂 三蔵君                 高嶋 良充君                 藤井 俊男君                 魚住裕一郎君                 白浜 一良君                 八田ひろ子君                 照屋 寛徳君                 高橋 令則君                 松岡滿壽男君    衆議院議員        修正案提出者   宮路 和明君        修正案提出者   桝屋 敬悟君        修正案提出者   鰐淵 俊之君    国務大臣        自治大臣     野田  毅君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        法務省民事局長  細川  清君        大蔵大臣官房審        議官       福田  進君        自治大臣官房長  嶋津  昭君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        消防庁長官    谷合 靖夫君    事務局側        常任委員会専門        員        入内島 修君    参考人        毎日新聞社論説        副委員長     中村 啓三君        日本弁護士連合        会国民背番号        制度問題等対策        協議会座長    野村  務君        岐阜県知事    梶原  拓君     ─────────────   本日の会議に付した案件 〇委員派遣承認要求に関する件 〇住民基本台帳法の一部を改正する法律案(第百  四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議  院送付)     ─────────────
  2. 小山峰男

    委員長小山峰男君) ただいまから地方行政警察委員会を開会いたします。  最初に、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  住民基本台帳法の一部を改正する法律案審査につき、埼玉県において意見を聴取するため、来る五日に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、午前は本法律案審査に関し、参考人の方々から御意見を承ることといたしております。  参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しいところを当委員会に御出席いただきまして、厚く御礼を申し上げます。  皆様から忌憚のない御意見を承り、本法律案審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず、参考人皆様方からそれぞれ十五分程度ずつ御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人皆様の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、中村参考人からお願いいたします。
  6. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 毎日新聞論説委員長中村でございます。  住民基本台帳法改正の問題については、平成八年に研究会報告が出てから私どもも随分長い時間をかけて議論してまいりました。  結局、この問題というのは、二つ時代要請にどうこたえていくかという基本的観点がいつもぶち当たってきたわけです。言うまでもなく、一つ行政効率化透明化の問題であります。もう一つは、いわゆる人権の問題をどう確保するか、二十一世紀に向けて一層きめ細かく対応が迫られている問題をどうしたらいいのかという、二つの問題をここでどう調和させたらいいかということが私ども議論中心でございました。  行政効率化透明化の問題は、基本的には行政権限をどうするかとか組織をどうするかという問題でありましょうが、もう一方の課題として、新しい事務処理技術というものを積極的に採用していくということは当然ではないかというのが議論の中の大勢の意見でございました。  新しい事務処理技術としてコンピューターの積極的な利用というものを考えるというのは、これはもう日本だけでなく世界的な傾向と言っていいんだと思います。現在、民間に限らず、公官庁でも情報電子化は急速に進んできております。そして、現に情報電子化は、さまざまなメリットを行政だけでなくて国民の間にも道を開いていることも事実です。パソコンを使ってさまざまな情報に簡単にアクセスして、その情報を得ることができます。  私どもの仕事で申しますと、かつては役所に電話をかけて情報を聞く。近年はファクスなんというものが随分使われるようになりましたが、最近は夜中でもパソコンで一般的な公開情報に接するということができまして、その点では、私ども報道に携わる者だけでなくて、幅広い間で知る権利という上でも大きな改革が起こっているんだと思います。  実は、行政事務効率化という観点から言えば、従来の事務を電子情報化するというだけでは多分十分ではないんでしょう。それで、電子化に伴う事務あり方そのものが総合的に再検討されなければならないことは言うまでもありません。  その一つが、他省庁が作成したり蓄積している資料の積極的な活用の問題です。これは過去、国会でも随分取り上げられておりまして、同じような情報が他の省庁で全く違った形で作成され蓄積されている問題をもうちょっと効率よくできないかというような指摘も何回か取り上げられております。そうしたデータ共同使用ということに限らず、もう一つは、共同データそのものをつくることができないか、さらに共同利用システムをどうやって構築するかということもやっぱり今の時代要請なんだと思います。  住民基本台帳の中から必要な四情報コード全国センターに集めて、主として給付や資格認定などの事務本人確認利用しようということは、私は基本的には時代要請にこたえているものだと思っております。もちろん、情報効率のよい処理というものは、一方で情報漏えいとか、さらに情報の不必要な集積に道を開くことと裏腹の関係にあることは言うまでもありません。  今度の基本台帳法の一部改正でも、こうした問題に十分な配慮がなされているかどうかということで多分この法案の当否が決まってくるんだと思います。その点、政府から提出されました住民基本台帳法の一部改正案は、一応のガードがかかっているものだと思っております。  情報一元管理に当たっては、それぞれの市町村にサーバーを置いて、四情報コード以外は全国センターに集まらないシステムになっておりますし、専用回線暗号化などの配慮もなされております。それから、秘密漏えいには科罰規定も用意されておりますし、各省庁目的外使用も禁止されております。  私どもは、平成八年の研究会報告書が出た段階では、とてもではないがこんなものは賛成できないという立場でございました。  なぜかというと、一番最初は、住民全員にカードを持たせるとか、それぞれの市町村の持っている住民基本台帳管理コンピューターに直接アクセスできると思われる箇所があること、それから必要に応じて自由にこの情報利用できるというようなことになっておりました。  それに比べたら、今度正式に出てきた法案は、法律で九十二の事務使用を制限するとか、幾つかの改善がなされておりまして、私どもの基本的な立場というのは、国民幾つかの不安を除去してこの電算化の道というのを前に進めていくべきだろうというのが私ども毎日新聞立場でございます。  今日、これだけのガードがかかりながら、一方で国民の間にまだ漠然とした不安があることもまた事実でございまして、新しいシステムの構築に当たっては、国民のこうした不安をどこまで除去できるかということが不可欠の課題だと思っております。  漠然とした不安という問題を私なりに三つぐらいに整理いたしますと、一つは、やっぱり行政機構並びに公務員に対する一般的な不信感というものに起因するものだと言うことができるんだと思います。  ここ数年、大変大きな問題になりました例えば大蔵省の金融不祥事の問題、厚生省を中心とした幾つかの問題をとっても、役所公務員というのは与えられた権限をはるかに越えてその裁量権を発揮してきたんではないかという疑念が持たれます。そして、中には法に触れると思われるもの、現に触れたものもたくさん散見されるわけです。こうした事例を多く見ますと、法律幾らガードをかけても、役所というのは裏で何をするのかわからないという不信感国民の間に根強く残るのも当然のことだと思います。  さらに、金銭をもらえば違法覚悟データ漏えいもあり得るんだろうと想像することを、法律ガードを決めているからそんなことはあり得ないんだと笑うには、現実は余りにも法律が守られていないということを指摘せざるを得ないと思います。  さらに、利用する公官庁目的外使用も制限されておりますが、お役人、お役所というのは、多分それは国会との関係もあるんでしょうが、手元にできるだけ多くの情報を置きたいというのは役所の本能と言ってもいいんだと思います。したがって、情報アクセスできる幾つかの省庁のメンバーが集まれば、そしてデータをマッチングすれば法律で決められた以上の情報収集ということも可能なわけです。もちろん、コードがなくても氏名住所生年月日だけでマッチングすることも可能なようです。しかし、コードが与えられることによってはるかにこの作業が楽になることも明らかなわけでして、この面からも、今度の改正というのは、むしろこうした不安を一方でかき立てているということも否定できないんだと思います。  それからもう一つの問題は、今度の住民基本台帳法というのは第一歩であって、ここから先、最初は非常に厳しいガードや何かをつけていくが、後は一部改正一部改正という形で次から次へと改正が積み重ねられていって、結果としては国民の全人格を役所が管理するという方向に利用範囲なし崩しに広がっていって、今度の法律ではそこのところに厳しいガードをかけた形になっておりますが、事実上の個人データファイルみたいなものが役所において構築されることに対する不安ということがあるんだと思います。  この問題は、はっきり言いますと、国会が今後役所をどのようにコントロールしていくかという問題でして、先ほど申しました役所データの話も含めまして、住民基本台帳法法律自体の問題ではなくて、国会なり国民行政をどうやってコントロールするかというもうちょっと幅広い問題に行き着いてくるんだと思います。  今日でも幾つかの問題がございます。例えば、人々は公道を自動車を使って自由に走る権利が与えられているわけですが、同時に高速道路を初めとして多くの道路の関門のところにたくさんの監視カメラがあって、ここにおいて車のナンバー等の写真がきちんと記録されております。そうすると、このことは一体どういう法的根拠に基づいているのかということになると、極めてあいまいです。それから、二年前に制定されましたいわゆる年金番号の問題も一片の省令だけでつくられていったわけです。  そういたしますと、私は基本台帳法というものは幾つかの点で、法定主義という法律で制限した範囲でしか使えないという一つ情報収集に道を開いたという点では高く評価できるんだと思いますが、一方で、一たんこういう制度が始まりますとなし崩しになるという不安をどう解消するかということも大きな課題なんだと思います。  三番目に、その漠然とした不安感原因を探っていくと、やっぱり世間一般プライバシー保護に対する認識というものが非常に低いという問題に行き着くんだと思います。  電子機器の発達で、私どもの周辺にはたくさんの社員名簿とか各種の団体の名簿とか同窓会の名簿なんかがあります。それらは何年卒業で住所はどこでというような記録が全部ございまして、これは何もコード番号を使わなくても氏名住所や何かを拾っていけば十分にマッチングが可能です。そして、私どもはこの種のデータがかなりひそかに世間では売買され、商売に利用されているということもうかがうことができるわけです。  時々、公官庁もしくは金融関係のところから流れたと思われるデータが廃棄されているということなんかを見ましても、こうした情報民間においてほとんど法の規制がないまま蓄積されていて、しかもそれが実際自分の情報として正しいのかどうかを人々が知ることもないまま、現実本人の差別や幾つかの商取引から排除されるというようなことに使われるとしたらかなり問題なんだと思います。  それで、こうしたことが極めて野方図に行われているということが、やっぱり情報というものは漏えいしてももしくは他のことに転用しても問題が少ないんだという社会的な風潮をみんながわかっているから、今度の住民基本台帳法の問題でかなりのガードがかかっても何となく不安感がぬぐい去れない原因になっているんだと思います。  したがいまして、さっき言った漠然とした三つの不安というものをどうしたらいいかというと、住民基本台帳法そのものが持っている個人情報保護幾つかの規定がございますが、それをもう一つ超えて、もっと一般的な包括的な個人情報保護基本法的なものがつくられて、そこから官庁情報保護、並びに個人情報保護というような考え方が広がっていかなければ、この住民基本台帳法幾らガードがかかっているといってもなかなか国民の間の不安というのがぬぐい去れないのではないかと思います。  この問題は、一つ基本法をつくりあとはそれぞれの個別法個人情報保護というのをきちんとやっていくのか、一本の法律の中に個人情報保護に関するものを全部集めて法律として一つの体系をなすのかということは法律の設計の問題でございまして、これは国会皆様方の十分な検討をお願いしたいと思いますが、多分そこには官庁情報をどうするかということが必ずかかわってまいります。  そういたしますと、この問題は、政府提案という形でこの個人情報保護法国会が受け取って国会審議をするという形よりも、できることならば、今の民間のそういう実態も公官庁に対する漠然とした不安もよく承知している国会議員皆さん方の間において議員立法の形においてこれがつくられるということが、多分この種の法律に対する国民の信頼というものを得ていくためにも必要な過程なのかと思っております。  もちろん、個人情報保護法の問題というのは大変難しい問題です。私ども報道に携わっている者から見ますと、報道の自由とあるところでバッティングしてまいります。最近の幾つかのワイドショーに見られるような報道あり方について、果たしてこれでプライバシー保護が守られているのかという、むしろ個人情報保護という問題は報道の方にも投げかけられている問題でもあります。  もう一つは、つい最近も裁判がありましたが、ある女性作家モデル小説の問題がございます。昔から三島由紀夫さんの「宴のあと」を初めとして、この種の表現の自由の問題もしくは報道の自由の問題と個人情報の問題というのは至るところでバッティングいたしますし、この個人情報をどんどん強めてまいりますと、多分役所の方は、これは個人情報保護にかかわる問題でございますから答弁できません、もしくは情報を開示できませんという、ある面で逃げ口上に使われる面もあるんだと思います。したがいまして、この問題はそういう意味からも議員立法という形において法律がつくられることが望まれるのではないかと思っております。  住民基本台帳法の一部改正案衆議院から参議院の審議を通して個人情報の問題というのが非常に大きなテーマとして盛り上がってきたことは大変な成果だと私は思っております。この問題は、政府の方から提案されないとするならば、ぜひとも国会においてイニシアチブをとってこの種の法案がつくられて、なるほど個人情報というものは一方でこれだけの法律的な保護があり、国民的な認識もかなり高まっているという中で初めて電算化による行政効率化というのが前に進んでいくんだと思っております。  以上で、とりあえず私の意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  7. 小山峰男

    委員長小山峰男君) どうもありがとうございました。  次に、野村参考人からお願いいたします。
  8. 野村務

    参考人野村務君) 参考人野村務でございます。  私は日弁連国民背番号制度問題等対策協議会座長ということで来ておりますが、この改正案が発表される二年前の平成九年の六月に改正試案が発表されまして、これは自治省の方から発表されたわけですが、この試案に対して、これはいろいろ国民プライバシー保護にとって非常に問題がある改正試案である、将来国民背番号制問題に発展する危険性がありますので十分この内容を検討して対策を講ずる必要があるということで、情報問題対策委員会とか人権擁護委員会消費者問題委員会等関連委員会から委員が出まして、日弁連の中に対策協議会ができたわけでして、その座長としてこの試案に対する意見をまとめたわけでございます。これが本日お手元資料として出しております「住民基本台帳法の一部を改正する法律案についての意見書」ということで、一九九八年、昨年の三月十九日に日弁連が公表しているものでございます。  今回のこの改正案試案よりはいろいろな面で改善されている点はあります。しかし、その本質は平成九年に発表された試案と変わっていないというふうに私たちは認識しております。  一番の問題は住民票コード、全国民に漏れなく十けたの統一番号をつけるという問題でございます。これは絶対に同じ番号の者がいない、二重付番がない、生涯変わらない番号でございます。自治省の方は、本人が希望すればいつでも変えられるんだということで、試案では必要が認められれば変えるということになっておったのですが、今回の改正案では、本人が希望すればいつでも番号は変えられるんだということになっております。しかし、必要もないのにどんどん番号を変える者はいないわけであります。また、番号を変えましても、コンピューターに前からの番号のつながりというのが全部わかっておりますから、結局生まれたときから生涯変わらない同じ番号になるわけでございます。結婚して姓が変わっても、また住所が変わっても、この番号は一生ついて回る、そういう十けたの番号なのです。  そして、今回は、この住民票コードという番号氏名住所生年月日、性別の四情報、これが本人確認情報と言われておるんですが、住民票を管理する市町村だけではなしに、もともと住民票市町村で管理しているわけでありまして、こういう広域運営というのはしていなかったわけですが、市町村コンピューターだけではなしに都道府県センター、さらに全国センターコンピューターを設置しまして、これを専用回線でつないでネットワーク化するんだ、これが今回の改正案の主眼でございます。  そして、この全国センターコンピューターから、法で認められた十六省庁が所管する九十二の行政事務にこの番号本人確認情報を提供して、さまざまな行政分野において利用するということになります。このために、この統一番号と四情報利用する各省庁コンピューター全国センターコンピューターが接続されるわけです。このネットワークシステムが構築されて便利になるということになりますと、今回はこの九十二の行政事務だけですが、この別表改正すればどんどん広がっていく可能性があるわけでして、別表改正によって今後他の省庁行政事務にも恐らく次々と拡大されるであろうと思われます。  現在、膨大な個人情報があるわけでして、医療情報とか教育・学校情報税務情報年金福祉情報、さらに犯罪情報、たくさんの個人情報を各省庁別々にそれぞれの必要な行政事務に応じて持っておるわけでして、各省庁別々にまた番号がついているわけです。ですから、これを検索するのはなかなか大変なんですが、この住民票番号が定着しますと、各省庁番号と恐らく平行してこの住民票番号も各省庁に一緒にコンピューターに入るということになると思われます。そして、いずれこの番号に統一されるというときが来ると予想しております。  したがって、この住民票コード番号というのは、各省庁が保有しています膨大な個人情報を検索し、集積するための各省庁共通個人識別番号として利用されることになると思われます。各省庁共通個人識別番号として利用されることによって、これが国民背番号となり、いずれは国民背番号制につながるものと思われます。  そして、このネットワーク化された個人情報漏えいとか盗用の危険性というものは非常に大きなものがあります。ネットワーク化された回線上のデータに触れることのできる者は、市町村職員を含めて全国で膨大な人数になるわけでありまして、各市町村に、大きな市であれば何十人という人がこのネットワーク回線上に接触できるということになるわけです。現在の通信技術の急速な進展に伴いまして、一瞬のうちに数十万人、数百万人単位の個人情報がコピーされて伝搬されるということが起こり得るわけでありまして、そのような事例は既に多数発生しているところです。  自治省は、不正なアクセスを防止するために、専用回線でやるんだ、それから通信データ暗号化する、また末端コンピューターをさわる末端オペレーターに対しましてはパスワードという暗号を使って認証チェックをするから全然関係のない第三者はこのネットワークアクセスできないんだ、こういうことを言っております。それから、ネットワークシステムへのアクセスがされた場合には、それを監視する体制を整えて万全な技術的な保護措置を講ずるというふうに説明しております。  しかし、不正にデータアクセスしようとする者の介入を防ぐことは極めて困難であります。オペレーター全国で膨大な人数でありますし、また暗号化とかパスワード化されても全末端までの安全性の確保は非常に困難であります。市の職員は同じ人がずっとやっているわけではないわけですから、数年たてば配置がえ等でかわることもありますし、絶えずそういう人事異動というものがあるわけです。全国で恐らくこのコンピューターに接触できる人は数万人に上ると思われますが、自治省の方は、暗号を時々変えたり、パスワードを変えることによって安全性を確保するというふうな説明をしておられますけれども、これはなかなか大変なことでして、職員が絶えず流動的にかわるという市町村で一挙に暗号を変えるとかパスワードを変えるということは混乱を起こす可能性があってなかなか難しいと思われます。  そして、こういう情報というものは、一たん流出すれば絶対にもとに戻ることはあり得ないわけでして、しかも流出がわかるのは後からであります。流出されてから何カ月、何年もたってわかるという場合があるわけです。そして、一たび流れた情報がその後どこへどういうふうに流れているかということを探ることは全くできないんです。したがって、個人情報の流出が起こった場合の危険性というのは非常に大きなものがあると考えています。  次に、住民基本台帳カードの危険性の問題ですが、このカードは全国共通様式のICカードでありまして、八千文字の記憶容量がある、そういうICカードをつくると言われております。このために、住民票コード番号本人確認情報の四情報だけではなしに、市町村が条例で定めれば、医療情報とか教育・学校情報年金福祉情報、納税関係情報等、各種の個人情報が記録されることになるわけです。これは各市町村が条例で決めるわけで、自治省全国一律に決めるというものではございませんが、恐らくかなり統一された様式になって同じような形になると思われますが、医療情報にしましても、病歴とか健康状態、血液型とか医者にかかった保険の利用状況、そういうものも恐らく入ってくるということになると思われます。  改正案では、偽造や盗用を防止する措置への配慮はないわけです、この住民基本台帳カードに関しては。カードの盗難とか紛失によって悪用されてプライバシーが侵害される危険というものは避けられないと思われます。このカードは、ICカードであり、恐らく発行する市町村の名前と住民票コードだけが表面に表記されるだろうと思われますが、これがどういう形になるかは今後詰めていかれると思いますけれども、他のいろいろな情報は、これはICカードだから他人に拾われても読み取り機に入れない限りはわからないんだ、だから紛失しても危険性はない、こういう説明をされておりますが、この読み取り機というのは全国に相当な数が配置されるということになろうと思われます。  市町村におきましても、このICカードを有効に利用するためには各部署においてこの読み取り機がなければいけないわけですし、医療情報をこのカードに入れるということになりますと、恐らく救急病院とか大きな病院はこの読み取り機がなければ設置する必要があるわけでして、それがなければ有効に機能を果たせないということになりますので、盗難に遭ったり紛失した場合の危険性は非常に高いというふうに思われます。  それと、このカードは本人が申請した場合にだけ市町村が交付するんだと。したがって、カードを所持していれば恩給、年金などの各種申請手続が簡単になって行政サービスが受けやすくなるということになると思われます。そうしますと、任意申請という形はとっていましても、国民はこのカードの交付を受けて所持せざるを得ないことになるわけでして、ほとんど全員がこのカードを持つということになると思われます。したがって、このカードは国民の登録証、身分証明書の役割を果たすことになると思われます。  次に、納税者番号への利用、転用の可能性でございます。  政府税制調査会では二、三年以内に納税者番号制度の導入を検討しているわけですが、その場合に、社会保険庁が既に導入しております基礎年金番号でいくか、今回の住民票番号でいくか、どちらかを採用するという方針を打ち出しておりまして、私は恐らく住民票番号が採用される可能性が強いものと思われます。この基礎年金番号では、番号のついていない人がたくさんいるわけです。全国で二、三割、二千万人以上の人が基礎年金番号はないわけです。しかし、この住民票番号は全国民に漏れなくつくわけですから、絶対に番号のない人はいないわけですから、この番号を使った方が効果的であることは間違いないわけです。  改正案では、プライバシー保護のためにこの番号民間での利用は禁止しておりますので、納税者番号への利用はすぐにはできません。しかし、住民票ネットワークシステムが定着すれば、法の改正によって納税者番号への利用に用途を広げるであろうと思われます。これは法を改正しなければできないわけですが、そのときにいろいろまた問題にはなろうかと思いますが、その布石として今回ネットワークシステムをつくって住民票番号をつけるということを考えているんだと思います。  そして、納税者番号利用されるということになりますと、銀行への預貯金とか借り入れ、株式の購入、投資信託の購入等証券関係、保険など、あらゆる民間取引にこの番号使用されるわけです。また、源泉徴収の関係で、企業は従業員に給料を払う際に必ず源泉徴収をせぬといかぬわけですから、この番号が必要になるわけです。したがって、企業が全従業員の住民票番号を把握するということは、従業員の方からいいますと、企業に全部この番号が把握され登録されるということになるわけでして、民間に巨大なデータベースができるということになると思われます。  私は、納税者番号制度自体に反対しているわけではございません。所得、収入、資産の正確な把握と税の公平な負担のためには何らかの番号制度が必要であることは否定しておりませんが、この住民票番号が各省庁共通個人識別番号となる、この番号が納税者番号に使われることには反対であります。  我が国の現在のプライバシー保護の法体制は極めて不備な状態でございます。現行のいわゆる個人情報保護法というのがあるわけですが、これは国の行政機関の保有する個人情報だけを対象としておりまして、国の特殊法人とか地方公共団体は対象外としております。かなりの地方公共団体は条例に基づいて個人情報保護条例を制定しておりますが、まだ四割ぐらいは個人情報保護条例を制定していない市町村があるわけです。しかも、現行法の個人情報保護の状態は、目的外利用とか外部提供の禁止規定はあるにはありますが、非常に幅広い例外規定が認められておりまして、極めてお粗末な状態でございます。  民間における個人情報保護法制は全く存在していないのであります。通産省や大蔵省は、局長通達等で個人情報のガイドラインをつくってはいますが、法的規制ではないために実効性に欠ける面がございます。現に、民間に集積された個人情報の大量流出事件が多発しているわけでございます。本日の日弁連意見書の十九ページにも出ておりますが、たくさんの個人情報の流出事件が明らかになっております。また最近では、七月二日の朝日新聞の報道によりますと、NTTとNTTドコモが社外秘として管理している全国の顧客情報が大量に流出して売買されているということが大きく報道されていることは皆さん御存じのことと思います。  インターネットとか携帯電話が普及したのを背景に、個人情報を手がける業者がここ数年ふえ続けて、現在では百社前後が個人情報の売買を行っていると言われております。これは電話番号から、電話番号の所有者の住所氏名だけじゃなしに、勤務先、さらに電話料金が引き落とされる銀行名、口座番号まで一緒に流出しているわけです。そして、この口座名を通じてこれまた銀行の行員から残高まで流出しているということが大きく報道されております。民間における個人情報保護の法規制が全くないために、こういう事件が起こりましても手の打ちようがないというのが現在の状態ではないかと思われます。  このような状況の中で本ネットワークシステムが導入されます場合は、国民プライバシーが侵害される危険性は極めて大きいものと思われます。人には他人や権力機関からみだりに干渉されない、自由に振る舞う権利というものがあるわけです。そして、プライバシー権利として、私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利、最近では自己に関する情報をみずからコントロールする権利、自己情報コントロール権、これがプライバシー権利と言われておりますが、憲法十三条を根拠とする個人の尊厳を守るための権利概念でありまして、このプライバシー権利が侵害される場合は、人間が本来持っているはずの尊厳とか自律性が奪われることになるわけでございます。  この統一番号が、国の各省庁から市町村に至るまで行政機関の保有する膨大な個人情報を検索する共通の個人識別番号個人を識別する共通のマスターキーとなることによりまして、国家による個人情報の集中管理が行われ、これが国民背番号となり、いずれは国民背番号制につながることを危惧するものでございます。これによりまして、個人プライバシー個人のあらゆる情報が国によって集中的に管理され、近い将来、管理社会、監視国家となる危険性が強いものと思われます。  したがいまして、私は今回の住民台帳法の改正に反対するものでございます。  以上でございます。
  9. 小山峰男

    委員長小山峰男君) どうもありがとうございました。  次に、梶原参考人からお願いいたします。
  10. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 私は、住民の生活の現場を預かる自治体の長として、また地域情報化を推進しておる立場から、一日も早くこのシステムを稼働していただきたい、そのように思っております。  自治体といたしましては、このシステムで住民の生活上の利便を向上したいということと、行政効率化して、地方分権でどんどん地方の仕事がふえていきますので、介護保険とかいろいろございますが、そういう地方分権の受け皿をつくっていかなきゃいけない、その有力な手段であると思います。地域情報化をここ十年ぐらい進めておりますが、いわゆるマルチメディアというのは、リアルタイム、リアルイメージ、インタラクティブ、インテリジェントあるいはネットワーク、こういう機能がございまして、実は行政立場からいたしますと、社会的弱者に非常に大きな武器になるということを痛感しております。そういう社会的弱者の障害をこうしたシステムで除去していく、そしてバリアフリーの機会均等化社会をつくっていきたい、そんなふうに思っております。  自治体の立場からいたしますと、このシステム住民基本台帳であって国民基本台帳じゃないんです。したがって、このシステムはあくまでも住民の住民による住民のためのシステムでなきゃいけない。その議論が従来欠けておるんではないか。住民自身がオーナーでありユーザーであり責任者である、このように私は理解をいたしております。  事実、このシステム、カードとかネットワークシステムは、いろいろモデル事業なんかございますけれども、住民の中で好感を持って迎え入れられているということでございまして、どうも国家のネットワークというふうに言われる向きもございますけれども、これはあくまでも住民の全国規模のネットワーク、シティズンズ・ネーションワイド・ネットワーク、CNNというふうに私は考えております。このCNNで電話番号に相当するのが四つの情報です。これがコード番号でございまして、もともと住民のためのコード番号ですから、国は、要するにNTTですね、番号のつなぎ役をやるということ、またそれに尽きる、かように思っております。  それで、それにどういう機能を付加するかということはまさに住民自治の問題で、市町村ごとに決めていけばいいことなんです。さらに言えば、個人個人が選択をしていくという性格のものである、そうでなければならない。住民の自己責任という議論が今まで欠けておるんではないかと私は思います。例えば、ICカードを使用するかどうか、どういうふうに使用するかということは住民レベルの問題であって、中央レベルで一律に決めてもらいたくない、それがまさに地方分権の時代であり、住民自治の原則であると私は思っております。  それから、地域情報化を進めている立場からいきますと、まさにマルチメディアというのは社会的弱者のためにこそあるということを実感いたしておりまして、先ほどの流儀で表現いたしますと、このシステムは弱者の弱者による弱者のためのシステムである、またそうでなければならない、そんなふうに思っております。マルチメディアを使うのはいろいろな立場がございますが、行政としては、今申し上げましたように、社会的な公正だとか、あるいは平等社会を実現するとか機会均等化社会を実現するという、バリアフリーとか機会均等化という点に重点を置くべきじゃないかというふうに私は思います。  それで、社会的弱者というのはどういう立場の人かといいますと、まず身体的障害です。いわゆる障害者の方あるいは高齢者の方、こういう方は移動の自由も阻害されていますし、それから情報の受信、発信ということも非常に不自由なんです。ある日本の有名な方が、高齢者の場合、電子取引、電子マーケットなんてナンセンスだとおっしゃいましたが、失礼を省みず申し上げたんですが、独居老人は歯ブラシ一つも買いに行けないことがあるんですよ、こういうマルチメディア社会というものは健常者じゃなくて弱者のためにあるんですよと面と向かって申し上げたんですが、そういう誤解が横行しているということは大変残念なことでございます。  岐阜県の障害者団体の方々の御意見を申し上げますと、県の聴覚障害者協会会長の後藤さんは、聴覚障害者にとって他の人とコミュニケーションをとることが非常に難しい、そういう意味でこのネットワークシステムは便利なことであり、異論はない、こういうふうにおっしゃっておられます。  それから、県の身体障害者福祉協会副会長の松井さんは、住民登録、住民票は当然だ、それにプラスいろいろ付加機能をつけてほしい、健常者よりも障害者においてお互いの情報の的確な伝達ということは大変意義が大きい、こういうふうにおっしゃっておられます。  それから、知的障害者愛護協会の四辻会長さんは、知的障害者の場合、御本人がカード等を自己管理することは非常に難しい、結局親などの後見人がそれに当たられますけれども行政サービスの手続の簡素化等メリットも大きい、こういうふうにおっしゃっておられます。  それから、県の老人クラブ連合会会長の吉田さんは、ぜひこれを住民の立場に立って制度化してくれ、高齢者にとってきめ細やかな行政サービスを受けられるということは生活を送る上で必須の条件だというふうにおっしゃっておられます。  それから、交通事故で首から下の障害を持たれた上村さんという方、この方は頸髄損傷者連絡会岐阜代表というお立場におられますが、私どもの福祉メディアステーションでパソコンの研修を障害者、特に重度障害者の方中心に進めておられまして、リーダー格の方でございますが、カードの利用によって医療機関へ直接出向かなくても医師による医療診断を受けられるとかいろんな付加機能を、追加機能をつけてくれというふうにおっしゃっておられます。  こういう障害者の方々の声を御披露させていただきました。  それから二番目に、地理的な障害というのがございます。過疎地は、役場へ行く場合、住民票をとるのに一日仕事になってしまうんですね。そういうお立場の方とか、それから、そうでなくても行政が広域化してきますから、どうしても広域連合なんかになってきますとこうしたシステムが必要になってくる。  それから、経済上の障害です。低所得者の方、こういう方にはこういうシステムでなるべく生活上の経済的負担を軽減するようにしなきゃいけない。  それから四つ目に、時間上の障害がございます。共働きの人だとか、あるいは中小零細企業の方々はなかなか住民票一つとりに行けないというのが現実でございます。  それから、災害時の障害です。先生方もある日突然の災害によって社会的弱者になる。これは阪神・淡路大震災の例でもそうですが、情報がないです。そして、救援を求めようにも手だてがない。それをこういうシステムでカバーするということが考えられます。  それから最後に、緊急時の障害です。急病だとか事故とか、いろんなことで行政上の対応を急速にしなきゃいかぬ、そういう場合にこのシステムをうまく使うというように、障害者、健常者を問わずいろんな障害の可能性があるわけですが、このシステムを使って障害を除去してバリアフリーの社会を実現していくべきだ、こんなふうに思います。  それから、プライバシーの問題ですが、さっき申し上げましたように、国はNTTで電話番号を管理しておればいい、それが守備範囲だと私は思います。いろんな追加機能、付加機能については、住民自治という時代ですから、あるいは地方分権の時代ですから、それぞれが主体性を持って選択していくべきだというふうに思います。  NTTのお話も出ましたけれども、NTTの情報漏えいしたからNTTを利用するのをやめたという人はいないと思うんです。百点満点のセキュリティーというのはあり得ないわけでして、人間が介在する以上何か起こり得ることはもう当然、いかなる制度でもいかなるシステムでも予想しなきゃいけない。そのリスクと生活上のメリット、利便との比較考量において住民の皆さんがそれぞれ自己責任で選択していく、こういう性格のものであろうというふうに思います。  いかにこのセキュリティーがパーフェクトかどうか、そんなことを議論しても時間のむだだと思います。困っている人が現におられるわけですから、早くシステムを稼働して、そしてリスクとメリットを個人個人立場でバランスをかけて選択していく、そういうことができるように早くしていただきたいというふうに私は思います。  そして、早くこのシステムの規格の統一をしていただきたい。このICカード自体の標準化の問題、それからネットワークの接続性、共用の問題、これを技術的に早く確立してもらいたい。そうしないと、どんどん地方で、市町村でモデル事業等で現実にいろいろ進めております。例えば、岐阜県の益田郡というところでモデル事業を進めていますけれども、自動交付機で住民票を交付するということが大変人気があります。なぜかというと、やっぱり市町村の境界を越えて働きに行っていますので、非常に便利だということです。それで、大変強い要望がございまして、県といたしましても単独事業で補助金を出して自動交付機を増設するということを今年度予算に計上しました。そういうニーズがあるわけなんです。  したがって、早くシステムの標準化、統一をしていただきたい。二〇〇一年に次世代の携帯電話が実用化されます。そのことを念頭に、早くICカードあるいはネットワークの標準化、規格化を図るべきだと思います。  岐阜県では、耳の不自由な方にザウルスを使っての研修をしております。御承知のとおりですが、このザウルスと携帯電話をつないでいけば、耳の不自由な方も地震のときに、本人確認、自己証明ができれば文字情報でいろんな情報が得られて、そして適切な救援措置を受けるということが可能になるわけです。携帯電話というものが社会的弱者のためにいかに重要かということがいずれわかってくると思うんです。非常に大事なタイミングですから、早くこの規格化を進めていただきたい、それでICカードとの接続とかそういうものを技術的に早く標準化して進めていただきたい、そのことを特にお願いしておきたい。  そのことによって、今景気対策とかいろいろございますけれども、このシステムが決まりますと、携帯電話あるいはネットワーク情報通信社会で大きな刺激を受けて、新しい産業がどんどん地域で発展してくると思います。産業構造の改革、失業対策、そういう点でも副次的に大きな効果があるというふうに思います。  いろんな議論を伺っておりますが、私ども立場からいたしますと、どうも論議が生活の現場から遊離しておるんじゃないか、宙に浮いておるんじゃないか、国民背番号制などの議論を聞いていますと、まことにそんな感じがしてならない。どうか中央レベルの机上論ではなくて、住民レベルの生活現場論で論議をしていただきたいと思います。このままですと生活者不在であり、あるいは弱者疎外である、私はかように思っております。  そして、さっき申し上げましたように、地方分権の時代ですから、仕事の量がふえる、範囲が拡大する、質の向上を図らなきゃいけない。もう自治体は大変なんです。したがって、早くこういう便利なものを稼働させて、そして余剰人員を介護保険とか福祉とか環境とか、そういう面に振り向けたいんです。ぜひそういう点でもよろしくお願いしたいと思います。  それから、岐阜県では予算編成のプロセスを全部県民にインターネットで公開いたしております。そして、そのときそのときの県民の皆さんの御意見、これはもう大変な数のアクセスがございます。それを取り入れながら、言うなれば県民と共同作業で予算編成をする、こういう住民参加の試みをしております。それで、本当はインタラクティブ、双方向にしたいんですが、本人確認というのが非常に大事なんです。本人確認が容易にできますと、まさに県民との対話の中において県の予算編成ができる、こういうことも可能なんです。そういう付加的、追加的な機能というものは各自治体あるいは各住民に任せていただきたい。国は、さっき申し上げましたように、これは住民のための電話番号みたいなものでございますので、それをきっちり守ってもらう、NTTの役割をしっかりやってもらう、そして余分なことはやってもらわぬでもいい、こういうのが私たちの立場でございます。  以上でございます。
  11. 小山峰男

    委員長小山峰男君) どうもありがとうございました。  以上で参考人皆様の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 自由民主党の釜本邦茂でございます。  まず最初に、御多忙の中、三人の参考人の先生方に御出席をいただき、それぞれのお立場で貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  そこで、まず最初に梶原参考人にお伺いいたします。  梶原参考人は、知事として岐阜県の情報化に早くから積極的に取り組まれ、その結果目覚ましい成果を挙げてこられましたことに対し心から敬服する次第であります。  さて、今回の法案によるシステムの特徴は、全国ネットワークを構築することに加え、ICカードを導入し、このカードの付加機能としてどのようなサービスを加えるかは各市町村の判断としているところにあると思うのであります。この各市町村の判断にゆだねた点は、地方分権の趣旨を踏まえた積極的な選択であったと思います。  しかしながら、衆議院参考人質疑の中で、五色町長さんが、カードシステムの効果を十分に発揮するためには広域的な対応も必要になる、一部の市町村利用がいま一つだったのは広域的に伸ばせなかったからではないかというお話をされたと聞いております。そうなりますと、やはり県の役割というものが非常に重要になってまいります。岐阜県におかれましては、既に三年近く前から県下全域で通用するICカードシステムの構築を目指した研究を進められておりまして、その先導性、広域性、そして専門家、学界、多くの省庁を巻き込んだ総合性、こういった点で全国的に注目されております。  そこで質問いたしますが、この改正法により全国ネットワークが構築され、さらに住民台帳カードに県と市町村が連携してつくり上げたプラスアルファの機能が加わって利用されれば、住民サービスの向上、行政効率化はもとより、職員や住民の情報リテラシー、すなわち情報を活用する能力を高め、地域全体の情報化の一層の推進につながると思うのでありますが、この点につきどのようにお考えでしょうか、参考人にお尋ねいたします。
  13. 小山峰男

    委員長小山峰男君) ちょっと、お答えいただく前に。  参考人の皆さんにそれぞれお答えいただくわけでございますが、時間の都合がございますので、できるだけ簡潔にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  14. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 広域化についてのお尋ねかと思いますが、先ほど申し上げましたように、岐阜県のモデル事業でも益田郡というところで住民票の自動交付をやっていますけれども、まだ発足して間もないのですが、かなり広域交付の実績が高いのです、実施率が。というのは、共稼ぎとか何かで時間がないということで、自分のところの町村以外で、働く場所で住民票を交付できるというのは大変ありがたいと。もう既に現実としてそういうことがある。それから、衆議院のときもお話ししたのですが、医療も岐阜県の県境を越えて、例の世界遺産になりました白川村は富山県のお世話になっていますし、そういうことで広域化は避けられない。  本来は市町村連合でやっていくべきことかもしれません。しかし、それを県がお世話するということによって、おっしゃるとおり大変大きな生活上の利便あるいは弱者の救済ということになるというふうに私は思います。
  15. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 それでは、もう一つ梶原参考人にお尋ねしたいと思います。  現在、インターネットショッピングが急激に発展してきておりますが、ネットワーク利用して、通信回線を通じて買い物をしたりサービスを受けたりするいわゆる電子商取引が今後一般の住民の生活の中で重要な位置を占めると言われておりますが、その場合にいろいろな条件整備が必要であります。特に回路でやるわけですから、顔が見えない相手が本当に正しい相手なのか、本人を確認する電子認証という仕組みが不可欠であろうかと思います。公的な機関にせよ民間の機関にせよ、信頼できる第三者機関が認証を行うべきであるとされております。私は、将来的に住民台帳カードが電子認証に活用できるのではないかと考えておりますが、具体的な方法はともかくとして、自治体もこの問題について検討を進めていくべきであろうと思います。  そこで質問でございますが、この電子商取引等の際の本人確認、いわゆる電子認証にICカードを活用することについては、衆議院参考人質疑においても大山参考人が提唱されているところでありますが、情報化先進県の知事さんであります梶原参考人のお考えをお尋ねしたいと思います。
  16. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) お答えします。  岐阜県では、大垣共立銀行という全国の銀行の中でもいろんなことを先駆的に施行されている銀行がございます。つい最近発表されましたけれども、独居老人等に郵便局と提携して現金の宅配をやるということになりました。その際に暗証番号というものを使われております。  それで、いろんな電子取引があると思うんですが、それぞれで暗証番号をつくってやられる場合もあるでしょうし、これから住民基本台帳ネットワークが普及すればこのシステムを使って本人確認をするということもあり得ると思うんですが、いずれにいたしましても、自治体とか住民が自分自身の責任でどれを選択するかということを決めるべきだというふうに思います。  何回も繰り返して恐縮ですが、要するに自治性、自主性、主体性、任意性、選択性、人間性というものがこのネットワーク利用する基本的なコンセプト、理念でなきゃいけない、こんなふうに思っております。
  17. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 ありがとうございました。  それでは次に、毎日新聞中村参考人にお伺いします。  中村参考人は、民間部門を含めた総括的な個人情報保護法をつくることが前提とのお考えであろうかと思います。党、政府においても現在検討が始まっているところでございますが、ここでは法案の内容についてのお考えをお尋ねしたいと思います。貴社の社説を拝読いたしますと、自治省研究会報告が出された時点では非常に厳しい意見をお持ちであったようでございますが、その後の党、政府における検討により、国等の利用については法定する等の変更がなされたところであります。  そこで、実定法としてのこの法案の内容自体については評価されているのか、評価されているならばこの法案のどのような点が評価できるとお考えか、お尋ねしたいと思います。
  18. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 先ほど申しましたように、全体として行政効率化に資するという点を大前提として、個人情報保護がきちんとできるかどうかというところが一番不安でございました。したがいまして、研究会の中間報告並びに最終報告の段階では、とてもではないがこれではガードがきちんとしていないという立場からかなり厳しくこれに対して批判し注文をいたしましたが、最終的に出てきた法案幾つかのそうした批判意見がかなり取り入れられているという評価をいたしまして、この法案そのものはかなり前進したものとして一応評価しております。  ただ、先ほど申しましたように、漠然とした不安というものにどうこたえるかという形でまた別の法体系が求められていかなければならないのかなという感じがしております。  以上です。
  19. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 次に、野村参考人にお尋ねしたいと思います。  今、御意見を拝聴しておりましたところ、野村参考人日本弁護士連合会の国民背番号制度問題等対策協議会座長として従来から活発に活動されてきた方であるとお伺いしております。私は、野村参考人が昨年、住民基本台帳ネットワークの導入に反対の立場全国紙にお書きになった文章、ただいまの御意見とも重なるわけでございますが、これを拝読いたしました。野村参考人はこの中で、安全性について技術面での御心配を述べられております。この点につきましては、当委員会において先般、技術面での専門家二名の御意見を伺いましたところ、今回のシステムは十分に安全であり、技術的には問題がないという御意見をいただいていることをまず申し上げたいと思うのであります。  また、あわせて野村参考人は、民間における個人情報保護法制が存在しない問題点を指摘しておられます。まず、こちらの方の検討を急ぐべきだというお考えであろうかと存じますが、この点について、御案内のとおり、既に党、政府においても検討に着手したところであります。  そこで質問いたしますが、日弁連におかれましては、昨年、国の行政機関を対象とした個人情報保護法大綱を発表され、衆議院参考人質疑の中でも資料を配付されております。この中で、民間部門を対象にした個人情報保護法の早期制定を提言されておりますが、この点につき日弁連として具体的な検討をなされているのかどうか、されているならその体制やメンバーの構成等、現在までの検討状況はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。
  20. 野村務

    参考人野村務君) お答えいたします。  日弁連としましては、今質問で出ましたように個人情報保護法大綱を発表しておりますが、これは民間の部門に対するものはございません。公的なものを対象にしておるわけです。それで、民間部門における個人情報保護法の必要性は言っておりますが、今の段階ではまだ具体的な民間保護法の大綱というものはつくっておりませんし、具体的に検討が進んでいるというわけでもございません。  この問題は、政府においても現在、公的部門の保護法と言われております行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律、これが現行法と言われておるんですが、これが平成元年十月に施行されまして、五年以内にいろいろ問題点を見直すということになっておるんですが、これに対して行政の方でも全く検討されていないというか、出ていないわけです。民間部門に関する個人情報保護法は全くない状態でございまして、今回衆議院でそういうふうに附則で決まったようでございますが、具体的にどういうふうにどこが検討しているかも我々まだわからない状態でございます。
  21. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 ありがとうございます。  それでは、もう一度中村参考人にお伺いしたいと思います。  この六月の貴社の社説の中で、民間部門を含めた総括的な個人情報保護法についていち早く政党間の協議の必要性を強調されたというように私は読んだわけでございますが、現実にそのような動きになったところであります。  そこで質問したいと思いますが、この問題について政党ベースで検討することについてどのように考えておられるのか。先ほど御発言の中にもありましたけれどもプライバシーと経済活動の自由との関係、またプライバシーと言論の自由、表現の自由との関係など、権利権利の調整という非常に難しい検討が必要であろうかと思います。そのあたりについて何かお考えがございましたらお教えいただきたい、かように思います。
  22. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 私、この問題はどうやって整理したらいいかという大変難しい問題だと思うんです。それで、やはり基本的に基本法的なものがまず一つどうしても必要なのかなと。その下に例えば金融情報とか医療情報とか教育情報とか、個々の情報保護するための法律をつくるか、このうちの一つとしてこの住民基本台帳法に関するガードもその一つという位置づけでいくのか、また包括的な個人情報保護法というものを、OECDの勧告を受けて六十三年につくられた個人情報保護法も含めてもう一度全面的に書きかえるか、二つあると思うんですが、現実的には前者しか対応がとれないような気がしております。  したがいまして、先ほど申しました報道の自由なり表現の自由なり幾つかの権利もきちんとこれを保障しながら、一方で個人情報というものを保護していく必要性をきちんとうたい上げる。そのために必要なそれぞれの分野において所要の措置を講ずるというところをきちんとうたって、その後それぞれの部門での法律をつくっていくということが現実的な対応なのかなと思っております。  特にもう一つ、各省庁を超えて市町村で、先ほど野村参考人も申されておりましたが、個人情報保護条例がないままにかなり総括的個人データファイルに近いようなデータの集積がなされております。そこも含めて、やっぱり基本法的なもので全国一律の一つのガイドラインというのをきちんと明確にするということが何よりも急がれるん だと思っております。  以上です。
  23. 釜本邦茂

    ○釜本邦茂君 ありがとうございました。  私は、この住民基本台帳改正法案における審議の中で参考人の方々に今御質問したわけでございますが、強調したいことは、やはり民間部門における個人情報保護あり方について既に政党ベースでも政府でも真剣に具体的に取り組みが進められているということを聞いております。そういうことによりまして一日も早くこの法案が成立し、そして地方行政の中で住民に十分なるサービス提供ができることを祈って、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  24. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 民主党・新緑風会の山下八洲夫でございます。きょうはお忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、まずもって心から厚くお礼申し上げたいと思います。  皆さん方も御案内のとおり、民主党・新緑風会はこの住民基本台帳法の一部を改正する法律案、これにつきましては党といたしましては反対の方針を決めております。本日は、先ほど貴重な御意見をいただきましたので、賛成とか反対とかそういう立場ではなくて、率直に私の疑問点やまたお尋ねしたい部分を質問させていただきたいというふうに思っている次第でございます。  特に、もう当然のことでございますが、現行制度住民基本台帳法では市町村ごとに住民基本台帳に十三項目の情報が記録されているわけでございます。今回の法律改正では、住民基本台帳ネットワークシステムのためにすべての国民に十けたの住民票コードをつける、そして住所氏名等の四情報で、いわゆる住民票の交付が便利になったり、あるいは行政手続が便利になったり、そういうことをするために行うんだというふうに言われているわけでございます。  そこで、本論に入る前に、先ほど野村先生の御意見を伺っておりまして、五年後か十年後かあるいは三十年後かは別に、将来的にはこのような方向になっていくだろう、私もそういう意味では余り野村先生のお考えに異議を挟むわけではございません。今回は今の住民票コードのところだけの一部改正でございますけれども、将来的にはだんだんこのようにしていった方が、せっかく大変な高度情報化の時代でございますし、こういう関係というのはどんどん日進月歩のように発展するわけでございますから、だんだん世の中がある意味では便利になっていく、そうしますと、その便利を使うためには先ほどの野村先生のお考えのような方向に行くのが当然だというふうに私も考えています。  ただ、ここで一点だけ、私の方が間違っているのか野村先生の方が間違っているのかちょっとわからないんですが、「住民基本台帳カードの危険性」というところの、これはICカードのことを指していると思うんですが、この③の中で「発行する市町村の名前と住民票コード番号だけが表記されるだけで、他は読み取り機に入れなければわからない」と。これはそうではなくて、例えば私、山下なら山下がこのカードを発行してもらいたいということで希望を言えば四項目は表に出すことができる、それから身分証明書がわりに写真も入れることができる、そして市町村が発行できる、それでこの十けたのコードはICの中に入ってしまう、このように理解しているわけでございますが、多分その方が正しいのではないかなというふうに思います。  ただ、私はこの四情報だけでは、確かにこのカードを持ちますと大変すぐれた身分証明書がわりにはなってくると思うんですが、その程度では行政コスト等々を考えますと余り効果がないと思いますし、最終的には私が今申し上げたような方向に流れていくだろう。そういう中で、梶原知事さんも岐阜県で同じところでございますが、この高度情報化に対しまして積極的に取り組んでくださっていることは私も十二分に承知しておりますし、感謝を申し上げているわけでございます。  これは知事さんと野村先生にお尋ねしたいわけでございますが、まず住民票コードというのは、おぎゃあと生まれた赤ん坊から、要するにすべての国民に、四情報でございますけれども、それを付記したコード番号がつく。それと、一般的によく言われていますいわゆる国民背番号、先ほど若干お話がございましたけれども、この違いというのはどういうところが違うのか、まずその辺からお尋ねしたいと思います。
  25. 野村務

    参考人野村務君) 国民背番号制といいますのは、その番号によって個人のあらゆる情報を検索し集積できる、そういう番号国民背番号制ということになると思います。したがって、今回の住民票コードと四情報が直ちに国民背番号制になるわけではございません。将来、今回は十六省庁九十二の行政事務で使われる、提供されるということでございますが、これがどんどん広がっていって、あらゆる行政、地方自治体、国を初めとする行政の場においてこの番号によって個人のあらゆる情報が検索できる、そういう個人を識別する共通のマスターキーになる番号、これが国民背番号制であると思います。  それから先ほどの、表記されるのは四情報と写真、これは本人が希望すれば四情報と写真も表に出すということのようですが、この辺はまだこれから自治省の方で詰めていかれることになるかと思いますが、今、先生がおっしゃったとおりであろうかと思います。
  26. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 先ほども申し上げましたように、これは国民基本台帳ではなくて住民基本台帳の問題であって、この仕事は市町村の固有事務なんです。したがって、先ほど申し上げましたが、シティズンズ・ネーションワイド・ネットワーク、CNNですから、国の方はNTTの役割で番号の管理だけしてもらえばいいわけなんです。いたずらに国の都合で固有事務を侵害してもらっては困る、こういうことでございまして、そういう意味では国民背番号制という表現は当たらないと思います。  なおかつ、それに付加機能を与えていくのは全部自治体の裁量でございまして、あるいは住民の選択でございまして、自動的に健康とか医療とかいろんな情報が載るわけではございません。それはそれぞれの自治体住民の責任においてどういう機能を付加するかということでございます。秘密、機密の漏えいの問題が議論されていますけれども、人間が介在する限りパーフェクトなシステムはないんです。限りなくパーフェクトにする努力はしなきゃいけませんが、なおかつ〇・〇一%か何か、そういう可能性は残るわけです。そのリスクとメリット、住民にとってのメリットの比較考量において決めていくということでございまして、あくまでも住民の自己責任、主体性、選択性、任意性、それに基づくものでございますので、国民背番号制というのは大変誤解を招く表現であろうと私は思っております。
  27. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 反論するわけではございませんが、例えば今のこの四情報だけでございますと知事さんのおっしゃるとおりでございますが、たしかこれはコンピューターには少なくとも十三項目はもうインプットされるはずなんです。その中から情報としては四項目だけ引き出される、こういう状況になるわけでございます。これが例えば、先ほど中村先生も一部改正一部改正というような御発言もございましたけれども、将来的にはやはり納税者番号もこの中へインプットした方が便利ではないか、あるいはインプットするんじゃなくて住民基本コードと同じ番号にすればもっと便利ではないか、あるいはパスポートだってそうでございます。あらゆる番号を別々の番号でインプットすることも可能ですけれども、そうではなくて同じ番号にそろえるということも将来的には可能だと思うんです。  ですから、自己責任ということも理解はできるんです。だけれども、自己責任が当然与えられるなら、自己責任で防衛するために、ではこの番号は要りません、使いませんというところを与えてくれない限り、やはり将来的には私は住民基本台帳コードをベースにしてだんだんと、これは十年後か三十年後かわかりませんよ、だんだんと国民背番号に近づいていく。そうしないと、そのことが国も地方も、近づけるほどやはり行政サービスもうんとコストを安くできるというふうに理解をしているんです。  ですから、私は、これは賛成とか反対とかではなくて、将来そうしないと、ただこの四情報だけでは余りにももったいない。あれだけすぐれたコンピューターでございますから、ファイルごとにだあっと入れることもできますし、ファイルごとに今度はそれぞれかぎをかけることもできるわけですし、いろいろなことができるわけですから、これは私は住民基本台帳コードの入ったICカードも全く同じだと思うんです。今は八千字だと言っておりますけれども、これも数年すれば三万字、五万字が入る可能性というのは十分ございますし、ICカード自身も大変性能がいいですから、そう簡単にセキュリティーを破られるということはあり得ないと思います。  それだけに、それだけ容量のあるものを十分に活用するということが目的になければ、私はここで無理して住民票コードを全国民につける必要はないだろうというふうに判断いたしますが、その辺につきまして梶原知事さんと中村参考人にお尋ねしたいと思います。
  28. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 先ほどから申し上げていますが、これはあくまでも固有事務としての住民基本台帳の問題でございまして、納税者番号に使うかどうかということは、一体だれのために便利かという基本にかかわることだと思うんです。住民のために便利かどうかということがこのシステムの一番の基本だと思うんです。今、便利と先生がおっしゃったのは、国にとって便利だということで、同じ便利でも立場によって違うと思うんです。したがって、このシステムに関しては住民にとって便利かどうか、その一点を貫徹すべきだと思います。  そして、納税者番号のお話が出ましたけれども、それは国の方の便宜の問題であって、別の土俵で論議をしていただく。この問題と混同していただくと私どもは大変迷惑なんです。国は国で負担の公平とかいろんな意味で納税者番号制度を取り入れられるということは結構でございますが、全く別の土俵で、国の都合でどうするかということなので、土俵を別にして論議をしていただかないと問題が混乱してしまうというふうに私は思います。
  29. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 私は、野村参考人のお話を聞いていまして、一つは、納税番号というか納税の問題を、名寄せというか、所得、資産、消費についてずっと一元的に管理するための導入の必要性を認めておられました。行政事務全部を考えていけば、将来コード管理というのは避けられない時代の趨勢でしょうし、今度の住民基本台帳法は少なくとも九十二のファイルについて検索できるコードですから、明らかに総背番号がつくんだと思います。だから、もしすべてのファイルに入って検索することができる番号を総背番号というならば、住民基本台帳法の今度のコードは明確に総背番号でいいんだと思います。総背番号の是非の問題は、またこれは論議が別だと思います。  したがいまして、さっき言った納税番号の問題も、住民基本台帳コードに対して何らかの暗号なり介在式を加えることによって、表にあなたの番号はこうですよと示すものから住民基本台帳コードが読めないようなシステムというのは幾らでもつくることは可能でしょうが、しかしそれでも基本になってくるのはこの住民基本台帳法コードだと思います。  問題は多分、番号管理をすることが問題なのか、そうではなくて情報が一カ所にマッチングで全部集められるということが個人プライバシーや何かに対しての侵害に非常に結びついてくるということをみんな恐れているんじゃないかと思うんです。氏名住所、性別、生年月日というものは、ちょっと乱暴な言い方をすれば、漏えいしても個人プライバシーをそれほど激しく侵害するものではないと思います。しかし、九十二の情報がそれぞれ別個に管理されている部分においてはそれほど大きな問題はなくても、これが一つのファイルの中に集められると、一枚の紙に出されたときにその人間の人格が、しかも集められた情報だけでかなりゆがんだ形の表現がされるというところがこの問題の持っている問題だと思うんです。  総背番号という言葉の理解ですが、総背番号という言葉が何か皆さんイメージが違うままで使われているんですが、今回、住民基本台帳法のこのコードを採用するということは、総背番号、ファイルをのぞける番号ができるということを議論のスタートにされた方がいいんじゃないかと思っております。
  30. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 もう時間がございませんので、簡潔にお尋ねさせていただきたいと思います。  これは本当なら知事さんに質問すべき問題ではないと思うんですが、市町村事務でございますので市町村長さんの方が正しいんだと思いますが、現在、住民票の写しをいただく、これは市役所からいただいてきたわけでございますが、もう一つ、印鑑登録の交付を受ける。私の住んでいるところは印鑑登録の証明書を受けるときには、手帳みたいなものがございましてそれに番号が書かれているわけです。コード番号があるわけです。そして、自分の名前を書き、住所を書き、もちろん生年月日、この四情報を書くわけでございますけれども、四情報プラスその番号を記入する、こういう形になるわけです。  今度のこの住民基本台帳法の一部改正で申し上げますと、仮に言いますと、その人個人の自由ですけれども、カードを持ちますと、四情報を外へ出すことも可能でございますから、四情報を出す。ただ、十けたのコードはICの中に入っているということになりますと、こういう交付を受けるときにコードは書かなくてもいいということにしないと、私はこのコードといいますか番号がどんどん外へ出ていってしまうということになると思います。  その辺の考え方について、知事さんと中村参考人に一言ずつ御感想をいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。
  31. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 印鑑証明の番号で足りるんじゃないかと。今の、現在……
  32. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 いや、使わなくてもいいようにすべきじゃないかと。
  33. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 今、手帳のようなものがございますね。
  34. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 手帳の番号を交付のときにもう一度こちらへ書くんです。
  35. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) それは私はそれぞれの自治体とか住民の選択の問題だと思いますけれども。一律にどうこうすべきかどうかですね。
  36. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 私も山下議員のおっしゃるとおりだと思います。特に、カードを持っている場合は、別のコードを記入させる必要性というのは全く出てこなくなると思っております。
  37. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 どうもありがとうございました。
  38. 白浜一良

    ○白浜一良君 公明党の白浜でございます。  きょうは、三人の参考人の皆さん、お忙しいところお出ましいただきまして、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。時間が短いので、端的に何点かお聞きしたいと思います。  まず中村参考人に、先ほどのお話で、包括的な個人情報保護がこの住基法の審議の中で衆議院、参議院にわたって議論されたことは大変成果だと、こういうお話をされました。衆議院段階で我が党も積極的に主張いたしましたが、当然、今回の改正案というのは住民の生活上の利便性とか行政効率化という効果があるわけでございますが、プライバシーの問題が一つ。それから、何回もおっしゃっていますが、国民背番号制につながる危惧といいますか懸念といいますか、そういうことが一方で議論になったわけでございます。そういう中で、民間部門を含めた包括的な個人情報保護法をつくろうということがこのネットワークシステムの実施の前提になっているわけでございます。  それで、今三党で議論が開始されているわけでございますが、中村参考人立場から、この法律を組み上げていく上での留意点と申しますか、ポイントがございましたら、お教えいただきたいと思います。
  39. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 先ほども申しましたように、要するに、他の権利、例えば表現の自由とか報道の自由とか取引の自由みたいな権利との衝突をどう調整するかというのが一番の大きな課題だと思います。私は、まだこの国において、個人情報保護するという──これは極めて大きな罪に当たるんだということが社会的に認識されていない。現に情報が極めて安易にマッチングされ売買されているという現状を改めるために、まず基本の部分、理念の部分をどううたい上げるかということにかなりの神経を使っていただけたらと期待しております。  では、具体的に金融情報をどうするか、医療情報をどう保護するか、教育情報をどうするかというのは、ひょっとしたら一本の法体系になじまなくて個別の法で外に出さなければならないかもしれませんが、少なくともどの分野に所要の措置を講じなければならないというところまではこの包括の法案の中できちんとうたっていただくことが必要になろうかと思っております。  同時に、この法案は、民間はもちろんのこと、地方自治体の現在つくられているデータベースまでもきちんとカバーする内容であることを期待しております。  以上です。
  40. 白浜一良

    ○白浜一良君 これを基本法的なものとすると、先ほどの御意見でもおっしゃっておりました。今、三党、自自公の議論の中で、大きな分類系といたしまして、ヨーロッパ的なオムニバス方式かアメリカ的なセグメント方式か、こういう議論が専らされているんです。日本の現状を踏まえて基本法的なものをとおっしゃいましたね。その上で個別的なものをどうするかということ、そういう御意見だと思いますが、オムニバスかセグメントかという議論の立て方というか、今そういう議論をされているという現状に対してどういうお考えでしょうか。
  41. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 法体系から考えると、当然、ヨーロッパ方式かアメリカ方式かというところがスタートになるんだと思います。  どちらから入ってもいいんでしょうが、プライバシー侵害というものが大した罪でないという風潮、それは一部私たちマスコミも含めてかもしれませんが、この問題を基本に置くとしたら、どこかでその二つの分類とは別に、第一条か第二条には、どちらの法律にしろこの法の目的といったあたりが書き込まれるんでしょうが、そこのところをどうつくるかということが一番肝要だと思っております。  あえて日本に合うとしたらヨーロッパ方式かなという感じはしておりますが、これは即断できないんで、ちょっと意見を留保させていただきます。
  42. 白浜一良

    ○白浜一良君 おっしゃっているように、日本の社会というのは個人情報が、極めてプライベートなことも、うそか本当かということも含めて物すごく報道されて、そういうたぐいの雑誌もたくさんございます。ちょっとこれは余分な話でございますが、雑誌ならば訂正もできるんですが、テレビなんかの映像はもっと強いですね。  今、朝から昼からワイドショーが多くて、大変ためになる内容のものもございますが、極めてこれはプライバシーを侵害しているな、だけれども話題があって受ければいい、視聴率が上がればいいというような傾向も一部あるわけです。  それで、テレビの場合は、報道をしてしまうと後でちょっと間違いましたとかそういうことがしにくいんです。活字の場合でしたら活字でそれなりの表現はできますが、映像の場合は大変影響力が大きい割に、少し間違った報道に関しては訂正のしようがないというか、そのまま垂れ流しでいっているという現状が私はあると思う。  これをまた法律で取り締まるといいますと、それは報道の自由と抵触するわけで、ここをどうするかということが私は個人的にも大変大事だなという考えを持っているんですが、お考えがございましたらお聞かせいただけますか。
  43. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 電算化情報保護とこの問題は扱いが違ってくるんでしょうが、私は、多分プライバシー保護という理念においては同じ根本に行くものだと思うんです。  私は、基本法個人情報保護というものをうたうことがその種の報道をできるだけ排除していくというか、規制させていく道だと思います。法律そのものでそこのところにばさっと網をかけて、これこれこういう内容の報道はしてはならないというような報道の自由に対する規制という方向に行くよりも、個人情報保護法の包括的な法案の重要性というのは、一見精神規定のように見えながらもここでうたい上げるということの一般的に意識を上げていくための効果というのはかなりのものがあるんだと思います。  もともと、この種の法律というのは、プライバシー保護というのは当たり前だ、侵害は悪だということが社会的風潮として定着している国においてはむしろ法律をつくらない方が理想的なんでしょうが、その法律が必要だという現実もあると思うんです。私は、そこのところが極めて包括的でかつ漠然としたものであっても、そのことがもたらすかなりの効果を期待しておる次第です。
  44. 白浜一良

    ○白浜一良君 もう一点お聞きしたいんですけれども、いわゆる個人情報保護と言いますが、参考人もコンセンサスはできていない、こういう表現をされているんです。  それで、いわゆる保護すべき個人情報と公にされるべき個人情報、これは一概に言えないのかもわかりませんが、何かそういうライン、考え方の基準というかそういうものはございますか。
  45. 中村啓三

    参考人中村啓三君) それは報道に関してですか。  私は、一般的な行政情報については、比較的個人か極めて個人にかかわるというところで何となく線が引けてくる問題ではないかと思っております。  だから、行政情報公開という一方の要請個人情報という一見全く相反する情報なんですが、そういう情報の中身が個人にかかわらないという極めてネガティブな定義しかできないんでしょうが、その種のものはできるだけ出していくという姿勢の問題に尽きてくると思います。  では、そこのところは民間も含めてどこが保護すべき情報かという線というのは、議論をかなり重ねているんですが、非常に難しい話になってくると思います。そこのところはかなり定性的な定義しかできないものだと思っておりますけれども、私ども議論の中でもまだ出ておりません。私もかなり雑誌や何かを丹念に読んでいるつもりなんですが、保護すべき個人情報という言葉がかぎ括弧でくくられているのが精いっぱいで、ここから先の積極的な議論の煮詰まりというのはまだ見ていないように思っております。  むしろ、それは野村参考人の方が詳しいのかもしれません。
  46. 白浜一良

    ○白浜一良君 今回、三党でそういう法律を三年をめどにつくろうということになってございますから、国民的な議論のきっかけになればいいな、私もそういうふうに考えておるわけでございます。  次に、野村参考人にお伺いしたいんです。  先ほどレジュメをいただいておりますし、るる我が国のプライバシー保護の法体制の不備ということを述べていらっしゃいます。これはごもっともなんです。六十三年にできた国の情報法律がありますが、これだけであって地方行政とか民間は全くない、これはおっしゃるとおりでございます。  しかしながら、そういう現状だからこそ、今回の住基法改正審議の中で包括的な保護法をつくろうと自自公三党で合意したわけでございます。そういう現状だからこそ大事だということで、共通の認識に立って今作業が始まっているわけでございますが、その事実に関しまして、どのようにお考えになりますか。
  47. 野村務

    参考人野村務君) 今回、三党でそういう総括的な個人情報保護法をつくるという方向で検討に入られましたことは結構なことだと思います。これまで全くそういうことを検討もされていなかったわけでして、公的部門におけるこういう個人情報保護法も非常に不十分な状態であったわけです。  民間を含めた総括的な個人情報保護法をつくるということは非常に難しい問題でして、日弁連でも公的部門に関しては個人情報保護法大綱を発表しておりますが、民間部門に関してはまだそういうものも発表していないという状態で、非常に難しい問題なんです。これに取り組まれることに対しては非常に敬意を表したいと思うんです。  ただ、保護をするという面と、もう一つ情報公開との関連がありまして、今回、情報公開法ができて行政上のいろいろな情報国民情報公開によってとることができるということが決まっておりますが、この情報公開とプライバシー保護という問題は非常に難しい二律背反的な面もあるわけです。  情報公開がどんどん進みますと、その中で個人情報が漏れるということがあるわけで、その辺の調和、調整が非常に難しいわけです。ただプライバシー保護したらいいというだけの問題ではなしに、やはりプライバシーであっても社会にとって、国民にとって、市民にとって必要な行政情報は公開されるべきであると考えます。  したがいまして、今度総合的な個人情報保護法をつくられるに際しましては、情報公開との兼ね合い、本当に市民にとって必要な行政情報が公開されるという中でプライバシー保護していく。だから、その両方の調和、調整の問題がありまして、これは非常に難しいと思いますが、何とかいい個人情報保護法をつくっていただきたいというふうに考えております。
  48. 白浜一良

    ○白浜一良君 どうもありがとうございました。  梶原参考人にお伺いしたいと思います。  冒頭で、今回の改正案は住民生活の利便性という点、行政効率化という点、地方分権の受け皿、こういう観点から評価のお考えを述べられて、押しなべていわゆる社会的弱者に利点をもたらすんだというお話をされました。しかし、いろいろ御意見がございますように、今回のシステムというのはNTTが電話番号を管理しているその範囲だ、国が。そうおっしゃったわけでございますが、CNNですか、初めて私も聞きました。  一方で、行政に対する不信感もあるわけです。先ほどから話をされているように、行政の公開制というんですか、情報を公開して住民に信頼される行政というのは地方自治でも当然ベースになっているわけでございますが、もう一方で、行政に対する不信感というのもございまして、なかなかそこらがしっくりいかない点にもなると思うんです。  実際に、知事として御担当されておりまして、この点、そういう声も住民の中に一部あるということ、それはどのようにお考えになっておりますか。
  49. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 自治体行政に対する信頼感を維持するには、まず第一に情報公開だと思います。そして住民参加、この二つの手段によって自治体行政の信頼感を保っていくということじゃないかと思います。  このシステムに関しましても、住民に対して情報公開をしていく、そして住民の参加の中でシステムを構築する、そういうことによって不信感を払拭していく、そういうことではないかというふうに思います。
  50. 白浜一良

    ○白浜一良君 確かに、情報公開をされて住民とのネットワークを引いて信頼を強化するという知事の先ほどの御意見の中で感ずるものがございました。  もう一つ、ICカードが今回できるわけでございますが、一応市町村単位がベースですね。ちょっと町が変わったら、市町村単位でつくった場合は取りかえなきゃいかぬと、こういうことになってしまうわけでございます。先ほどから知事がICカードの標準化ということをおっしゃっていますが、実際に行政を担当されていて、こういう標準化をすべきだという具体的な内容、もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  51. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 標準化というのはちょっと誤解を招いたかもしれませんが、ICカードが共通に使える、要するに技術的にです、内容の問題じゃないんです。あるいはネットワークがどこにも接続できる、こういうことが大事なことで、中身については、前からお話ししておりますけれども、もともとは市町村の固有事務ですから市町村が決めていくことである。そして、広域でかつ交流が激しいようなところは住民基本台帳の広域連合をつくってそして内容についても共通にしていく、こういうことは今後あり得ると思うんです。  例えば、介護保険の関係で、岐阜県の場合も市町村の広域連合がどんどん進んでおります。そういうことが進行しますと、住民基本台帳の業務においても広域連合で、そして場合によっては中身も共通化していくということはあり得ると思うんです。中身について、私が申し上げているのは全国的に共通にするということではございません。
  52. 白浜一良

    ○白浜一良君 ありがとうございました。
  53. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。  きょうは参考人の先生方にお出かけをいただきまして、本当にいろいろ貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。  まず最初に、日弁連野村代表にお尋ねしたいと思うんです。  昨年三月十九日、あるいは衆議院を通過しました六月十五日の会長声明、これも拝読させていただきました。本法案が「住民基本台帳法の本来の目的を逸脱し、住民票コードの導入により国民背番号制にも道をひらき、国家による個人情報の集中管理が行われ、国民プライバシーを侵害する恐れがあるとして、反対の立場を示してきた」、これは日本弁護士連合会としての御意見だというふうに思います。また、今改正点の持つ問題点をいろいろとお示しいただきました。  そこで、私はまず法律あり方として、今回の改正の問題を専門家のお立場で教えていただきたいというふうに思うんです。  本改正案がそもそも住民基本台帳法の目的から逸脱しているというふうに言われているんですが、この住民基本台帳ネットワークシステム、新しくネットワークシステムをつくるんですが、これが住民基本台帳法改正のみでいいのかどうか。実現不可能であると述べられているんですけれども、私も実はいろいろ皆さんの御論議を聞いたり勉強をする中で、こういうネットワークシステムの構築というのが住民基本台帳法改正だけで進められていっていいのか、先ほど中村参考人からもそんなような御意見があったんですが、大変違和感を持ちます。  新しいシステムをつくるには無論国民的な合意というのが最大限必要だというふうに思いますが、法律あり方としても、今回の住民基本台帳法改正するというやり方についてどうなのか。ここにも書かれておりますこういう中身をもう少し具体的に教えていただければありがたいと思います。
  54. 野村務

    参考人野村務君) 本来、住民の居住関係を公証する、そして住民に関する記録を正確かつ統一的に行う、これが住民基本台帳制度の趣旨であります。したがいまして、今回こういう番号をつけてネットワーク化して全国的なネットワークの中でこれを利用するということは、住民基本台帳法の趣旨を逸脱しているというふうに認識しております。  これは法の一条でも、前からありますように、「住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて」「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳」を定め、「もつて住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。」、こういう目的になっておるわけです。各市町村での住民の居住関係の公証、それを全国統一的な形式等にするために定められた法律でありますから、今回のようにこういう住民票全国一律の統一番号をつける、そしてこれをネットワーク化して府県センター、さらに全国センター利用する、さらに全国センターから各省庁コンピューターにも接続して利用するということは、本来住民基本台帳法改正ではできない内容じゃないかというふうに認識しておるんです。  全国民に漏れなくこういう統一番号をつけるということは、やはりもっと国民的な合意が必要であろうと認識しております。
  55. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 同じ質問で恐縮ですが、中村参考人の方で先ほどちょっと、今私が大変疑問に思っております問題について触れられたんですが、マスコミとか広い立場からごらんになると、この住民基本台帳の法改正というだけでこういうふうな、私は新しいネットワークシステム法ではないかと思うんですが、これはどうなんでしょうか。
  56. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 別法でつくられることが望ましいんでしょうが、多分法律としては、居住関係を公証することの延長として、居住している人間の一番基本的な台帳ですから、そこに現実の問題として各省庁なり他の自治体から照会がなされている、それの事務の延長を住民基本台帳法改正という形で構築しようというのが今度の構想でしょうけれども、基本的には別の特別法がつくられた方がよりはっきりするのかと思います。
  57. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 ありがとうございます。  先ほど梶原知事がおっしゃったみたいに、これは住民基本台帳国民基本台帳ではないということにも通ずるのではないかなというふうに思います。  そこで、国民プライバシーとのかかわりというのが、きょうの論議でもまた今までの論議の中でも大変大きいわけなんですけれども野村代表に伺いたいのですが、「所要の措置を講ずる」という修正で衆議院を通過してきたわけですが、いわゆる包括的個人情報保護システムをつくるという点ではこれからも十分な論議が必要ですし、参加していきたいというふうに私は思うんです。  民間が入る入らない等いろいろな方式の話もあるんですが、個人情報保護法をつくるだけでいいのか、またそういうときにはどういう問題点があるのか。また、最初に御意見をいただいたときにも憲法十三条に触れられたわけで、個人として尊重される社会をつくるということなんですが、こういうプライバシーという問題についての環境を整えるために今、日本の国としてどういうことが必要なのか。国民の暮らしとか生活の現場からとりわけ法曹界は切実にいろいろと接しておられる部分もあると思うんですけれども、そういう法律の専門家の立場からはどうか。具体的に教えていただければと思うんです。
  58. 野村務

    参考人野村務君) なかなか難しい質問なんですが、今回、三党合意で民間部門も含めた総合的な個人情報をつくるということで検討に入られたということは非常に結構なことだと先ほど申し上げましたが、本当にそういう個人情報保護するような法案が今回のこのネットワークシステムが具体化する三年以内につくられるかどうかということを非常に私たちは危惧しておりまして、恐らくそういう十分な個人情報保護法でない形で、不十分な状態での保護法をつくって、ちゃんとつくったんだという形になる危険性があるというふうに認識しております。  まず、個人情報について十分な国民議論をして、国民的な合意の中で個人情報保護法をつくって、それからこの制度を導入するという順番でいくべきであるにもかかわらず、まずこれをつくる、それで実際に施行されて、このシステムが軌道化する、定着する、三年以内につくるんだということを言っておられますが、今まで民間部門も含めた個人情報保護法をつくろうとする動きが政府の中にも全くなかったわけです。今回、急にこの法案を通すためにそういう合意ができたということで、順序が逆転しているというか、その意味で本当に国民個人情報プライバシー保護できる法案が三年以内にできるのかということを非常に危惧しているわけです。  現実に、いろいろな場面でプライバシーが流出しているという事件が多発しておるわけでして、先ほどからも言われておりますように、プライバシー保護に関する基本的な認識というかそれを流出、漏えいすることがどんなに重大な問題かという認識がまだ十分国民公務員の中にもないという状態です。  まず、プライバシーがどういうものか。憲法に基づく、本当に個人の尊厳を守るための法概念としてのプライバシーという問題をもっと国民的な議論の中で考えていって、そして保護法もつくっていくべきであるというふうに考えるわけです。
  59. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 まさに憲法の定める、個人として尊重されるというのがプライバシーの法概念のコンセンサスというお話だと思うんです。  私は、本会議で小渕首相にも尋ねたんですが、この住民基本台帳法の中身が報道されたり、国会審議が進めば進むほど、この住民基本台帳法改正には何か不安があるとか賛成できないというマスコミの調査なんかも示されているんです。さっき野村代表がおっしゃいました憲法に基づく法的概念のコンセンサスというのとは別に、実際には国民の間で漠然とした不安、これはそういう不安があるから所要の措置を講ずるという御意見もあるんですけれども、そういうのはどういうところから実際に出てくるというふうにお考えなんでしょうか。
  60. 野村務

    参考人野村務君) 人はだれでも他人に知られたくないプライバシーというものを持っているわけでして、どんな人でも家族の関係、親子の関係、病気の関係とかいろいろな関係で人に知られたくないプライバシーというものはみんなあるわけです。それをこの番号制度によって、行政によって集中的にいろいろな情報が管理されて掌握される、検索されて掌握されるということに対してやはり非常な不安を国民は持っているというふうに考えております。
  61. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 ありがとうございました。  次に、具体的なお話で恐縮ですけれども、梶原知事の先ほどのお話の中での問題を伺いたいと思うんです。  今回の住民基本台帳ネットワークシステムというのは、今言われているのが導入経費に四百億、経常的経費に二百億という試算が示されていて、これは地方の固有の事務でございますので地方負担というのは当然だというふうに言われております。先ほど益田郡のお話があり、私も今回いろんなところへ、また委員会としても静岡県に調査に行かせていただいて、あそこも広域で住民票を発行しているんですが、ファクスでやっているんです。衆議院の地行委員会参考人に来ていただきました兵庫県五色町では磁気ストライプで住民票を交付しています。先ほどの知事のおっしゃる益田郡ではICカードです。先ほども広域の交付が非常に人気があって、県も単独事業で補助金を出したというふうに言われています。  今回の法改正で、住民の利便で一番大きいものの一つが、この住民票の広域交付となっているわけです。この益田郡の場合は国の事業費が二百一億円ですね。その他、自治体のあれもあるんですけれども。昨年から始められたということで、ことしの四月から六月までの直近を教えていただいたわけなんです。そうしますと、例えば萩原町では広域利用というのは三カ月で四回、下呂で言いますと三カ月で七回ということで、大体一カ月にお一人かお二人がこういう広域利用を使われるんですが、住民票の広域交付というのは大体がこういうふうな推移でございましょうか。
  62. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 自動交付機によります広域交付の割合は萩原町で一六・二%、下呂町で二九・六%ということになっております。五人に一人が広域交付サービスの利便性を活用しているということでございます。  それで、この実験は普及することを目的に進めているということではなくて、まず広域的な利用が可能かどうか、支障がないかどうか、それから多目的に利用できるかどうかということです。  まず、広域利用が可能だということはわかってきましたし、それからポイント制という別途のサービスも付加しておりまして、これも大丈夫だというような実績になっております。それから、お金のかかる問題点は、複数メーカーのICカードシステムの規格を統一するという余分なことをやらなきゃいけないんですね、この規格統一がなされていないものですから。その規格統一のための実証実験もやっておるということで、余分なお金が随分かかっていると思います。  そういうことですが、先ほどもお話ししましたように、地元から自動交付機をもっとふやしてくれ、こういう御要望がございまして、まだ実験段階なのでどうかとも思いましたけれども、強い御要望なので自動交付機を三台、県の単独事業の助成でふやすこととしたということでございます。
  63. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 先ほどからお話があるように、ICカードの付加価値、すごく効果があるというのは、小坂町と金山町はまだ自動交付機がなくても温泉に入るときのポイントカードがあるからICカードの発行数が一番多いというんですか、そういうことも言われているので、それぞれ地域の創意工夫でお使いになるのはいいなというふうには思います。  今お話がありました、住民票はそれぞれコンピューターシステムが違うので、何かここですと県の情報センターでおやりになっているのと独自におやりになっているのとで会社が違う、メーカーが違うので、ソフトの開発の実験ではないかというのは知事のおっしゃるとおりで、これに大変お金がかかるので、これは単独事業でやらざるを得ないということなんです。  そこで最後に、財政的な面でお伺いしたいんですけれども、ICカード発行機というのは一千二百二十万かかって、自動交付システムも一千百七十万で、通産省は五つの自治体があるのに二つしか自動交付機を補助してくれないものですから、三つが自己負担になる、一つを岐阜県がお持ちになったということ、このほかにコミニュケーションサーバーシステムというのが一千万ぐらいかかるわけです。そうしますと、ここはたまたま通産省のモデル実験ということで二億ほど来るからいいんですけれども、そうでない小さな町ですと、自動交付機を一個だけにしても三千万から四千万、そのほかにさっき言ったコンピューターシステムのことがあるわけです。  そうしますと、全国一斉に、例えば岐阜県一斉にこういうのを導入するときには、それぞれの都道府県、岐阜県なら岐阜県がこのような財政援助をしようというお話があるのかどうかを、最後にお伺いしたいと思います。
  64. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 実験段階で御要望があるのでことし自動交付機の助成をするんですが、今、議員が非常に重要なポイントを指摘されましたけれども、会社が違うということによって非常にむだを生ずる、それでソフトを別途開発しなきゃいけない、そういうことで、先ほど申し上げましたように、早くこのシステムをいついつに実施するということを決めていただいて、全国的にハード、ソフトを標準化していく、これによって大幅にコストダウンになります。  それから、自動交付機自体も、全国一斉にそういうものを必要とするようになれば、この何分の一、あるいは場合によっては何十分の一というふうにコストダウンされてくる、そういうことでございまして、今実験にかかる費用で実際にこのシステムが稼働したときの経費を推計するということは無理じゃないかと思うんです。  だから、何回も言いますけれどもシステム全国的に稼働させるめどを早くつけていただくということが大切なことだというふうに思います。
  65. 小山峰男

    委員長小山峰男君) もう時間ですから。
  66. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 ありがとうございました。  一般会計予算で三十億程度の町で三千万以上の導入経費がかかるというのは、介護保険の導入なんかも控えて大変だなと思いました。ありがとうございました。  終わります。
  67. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。  私は、この法案審議する最初から、プライバシー権利を私たちがどう理解するのか、そして本法案プライバシー権利のかかわりというのを慎重に吟味していくことが大事だというふうに言い続けてまいりました。プライバシー権利については、私生活をみだりに公開されないといういわば消極的な狭義の考え方から、今や、憲法十三条が保障する幸福追求権に基づいてみずからの情報に関するコントロール権、こういう考え方に至ってきた、こういうふうに私は理解をいたすものであります。  そこで、最初中村参考人にお伺いをいたします。  私は、中村参考人とは一つ違いでございまして、同世代の新聞人として日ごろ大変尊敬をし、書かれたりしているのをこの間ずっと読んできた者の一人であります。あらかじめ配っていただいた発言要旨と、きょうの参考人意見陳述の中で、中村参考人御自身も、多少乱暴だがという前提でありましたが、氏名生年月日、性別、住所の四情報だけなら漏えいしても致命的なプライバシーの侵害にはならない、こういう趣旨のことをおっしゃっておりました。中村参考人にしては本当に乱暴な意見かなというふうに私自身は受けとめたのでありますが、私は、現在のような高度情報化社会あるいは高度なネットワーク社会では、まさに氏名住所生年月日、性別、これは保護されなければならない重要なプライバシー権利の要素ではないかというふうに考えておるわけであります。  それで、毎日新聞の六月一日の「住民基本台帳」に関する社説の中でも、「包括的個人情報保護に対するイメージが定着していないのに、保護法の制定を条件に住民基本台帳法改正案を採決するのも拙速である。」、こういうふうなことが書いてあります。それから、同じく六月十六日付の毎日新聞の「住民基本台帳」の社説の中でも、「「保護すべき個人情報」の合意がないまま「万全を期すための措置を講ずる」といっても空念仏に終わる恐れがある。」、「各党は、それぞれが考える「包括的個人情報保護法案」を持ち寄って、議員立法でまず保護法を成立させ、その後、住民基本台帳法改正案を採決」すべきではないかというふうなことを言っております。そして「将来の「個人情報保護」を根拠にコード化の作業が先行したり、実効性のない「個人情報保護法」でお茶を濁せば国民の政治不信は募るばかりだ。」、こういうことが社説で書いてあるわけであります。  そこで、私も、先ほど申し上げましたプライバシー権利の本質的な部分、それから高度情報化社会とプライバシー権利とのかかわり、それから住民基本台帳法の「住民の居住関係の公証」という本来の目的をかなり逸脱した今度の新しいネットワークシステムからすると、包括的な個人情報保護法の制定、その中身、理念を含めて、報道の自由とのかかわりを含めて、そこを国民的に議論する、国会でも真剣に議論をする、そういう中から包括的な個人情報保護法を先につくって、それからでも本改正は遅くはないのではないか、こういうふうに思っておりますが、中村参考人野村参考人に御意見をいただきたいと思います。
  68. 中村啓三

    参考人中村啓三君) お答えします。  先ほどの氏名住所生年月日の四情報はそれほどプライバシーの侵害に当たらないのではないかというのは、いわゆるトータルとしての個人情報のファイルが構築されることに比べたら、既にこの問題はかなり流布していて、今度のプライバシー保護の一番の問題点は、幾つかの情報を全部マッチングして集めてくると人格トータルが何となくわかってしまうということが一番行政なり国会審議を通じてきちんとしていただきたいことであって、これが全国センターに至る過程で漏れることに比べたら、そこから先の各省庁におけるマッチング及びその情報を違法にマッチングした場合の罰則はどうなるのか、マッチングされた情報はどうやって破棄が確認できるのかというようなことについてもこの法律は必ずしも明確でないと思っておりますので、したがって後者との比較の関係で、まだこちらの方はそれほど大きな問題ではないと申し上げたつもりです。  それから、やはり私は、この法律がもし採決されて、やがて個人情報保護法が制定されるといっても、国民の間に漠然と不安が残るというこの不幸を避けるには、同時に改正法ができるんだったらば、同時に包括的な個人情報保護法が一方に用意されているということが、先ほどから申し上げています国民のそうした漠然とした不安に何らかの、一〇〇%ではないかもしれませんが、こたえる道に通じるのかなと思っております。  そしてもう一つ、それができないとしたら、少なくともこの包括的個人情報保護法ができるということを前提に法の施行が行われると。この包括的情報保護法が先行して施行され、もしくは同時に施行されるという形をとることが、今国民が漠然と抱いている不安にこたえる、一番消極的な意味でもその措置が必要ではないかと思っております。
  69. 野村務

    参考人野村務君) プライバシー権利が侵害されるということは、人間が本来持っているはずの人間の尊厳とか自立性、こういうものが奪われるということになるわけでありまして、プライバシー権利がどういうものか、そしていかに大事なものかということに関してやはり国民的な合意が成立することが先決でありまして、ただいまおっしゃったように、民間部門も含めた包括的な、総合的なプライバシー保護法をちゃんとつくって、それからこういう住民票番号をつけて全国的なネットワークシステムをつくるということに関する国民的な合意が得られて初めて今回の住民台帳法の改正案は採決に持ち込まれるべきであるというのが私の考えです。
  70. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 この改正法のシステムでいきますと、これから生まれてくる人にも番号を付することになるわけです。しかも、戸籍法との関係で言いますと、出生後十四日以内に届け出をしなければならない、届け出を怠った場合には過料が科される。要するに刑罰をもって届け出ることを義務づけられるわけです。届け出なければそもそも付番のしようがない。  せんだっての内野参考人でしたか、このシステムとの関係で、みずからの存在証明を番号にしたくないという少数意見も尊重されるべきだ、こういうふうなことをおっしゃっておりました。しかし、この法案ではそういう選択権は与えられないわけです。私はここも大変大きな問題だと思います。  さて、野村参考人にお伺いをいたしますが、私も日弁連の会員ですから、日弁連意見書、考え方はよく理解できるわけでありますが、本改正法案では、本人確認情報の提供を受けた者に対して単に目的外利用をしてはならないと規定するだけでありまして、使用済みの本人確認情報の消去規定がないんです。そうすると、そこにデータがどんどん蓄積されるんじゃないか、こういうことを私は心配しているわけであります。  しかも、現行の住民基本台帳法では、使用目的をあらかじめ特定してそれで閲覧をしたり住民票の交付を受けることになっておりますけれども改正システムによりますと、使用目的違反についての刑罰の定めもないし、国民の側からの中止要求権もない。こういうことでは、私はますますもってプライバシー権利が侵害されるおそれがあるのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、野村参考人の御意見をお伺いいたします。
  71. 野村務

    参考人野村務君) ただいま照屋先生がおっしゃったとおりでありまして、このネットワークによって住民台帳法に基づく住民票コード番号と四情報利用する十六省庁九十二の行政事務におきましては、恐らくそれぞれの行政事務に必要な人の名前とか生年月日、全部あるわけです。全部それにも番号がついておって、その行政事務に必要な何十万人、何百万人かの一連の番号があるわけですが、今回、この全国センターコンピューターと各省庁コンピューターが接続されることによって、この情報をキャッチした方の省庁においてはこの番号と四情報というのはそのまま残るわけでして、必要がなくなったら消すというような規定は全くありません。  したがいまして、当分の間は各省庁のそれぞれの番号と並列的にこの住民票コード番号が各省庁に残るということになりますと、各省庁においてこの番号に基づくデータベースができるんじゃないかというふうに認識しております。したがって、今おっしゃったとおりでございます。
  72. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 たしか中村参考人意見陳述の中でも御指摘があったやに思っておりますけれども、まさに私たちの住んでいるこの社会の中で、個人信用情報だとか、それからまさに個人確認情報というか本人確認情報というか、そういう情報そのものが漏えいをし、そしてそれが商品化されて流通をするという社会状況にあるわけです。  野村参考人、この改正法案本人確認情報民間利用禁止の規定はありますけれども、本当にこの法案の中身でその民間利用禁止の実効性が担保されるというふうにお思いでしょうか。
  73. 野村務

    参考人野村務君) なかなかそれは難しいというふうに考えております。  民間ではこの番号の告知を求めてはならないということになっておりますが、任意提出はいいんじゃないかというふうになって、例えば銀行からお金を借りるときとかローンを借りるときとかクレジットカードの発行を求めるときとか、本人がよければ番号を書いてくださいということになりますと、ほとんどの人はやはりその目的のために番号を書くということになるわけです。そうしますと、民間におきましてもこの番号に基づくデータベースが構成される可能性が強いわけでして、告知してはならない、求めてはならないということになっておりますが、これは実効性に非常に問題があるというふうに認識しております。
  74. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 本改正法案でいきますと、住民票コードとそれから本人確認情報と言われる四情報、これがネットワーク化されるわけです。しかも、改正法案では十六省庁九十二の行政事務にそれがアクセスできる、こういうふうになっておりますけれども、それだけにとどまらずに、条例で定める事務だとかあるいは国の行政機関の所掌事務というふうな形でこれが拡大してしまうんじゃないか、無限定になってしまうんじゃないか、こういう心配があるわけです。そうすると、そのことによってもう既に本人確認情報利用の仕方そのものが自己情報コントロール権を侵害してしまう、こういうおそれが本改正法案の三十条の六あるいは三十条の七、三十条の八、三十七条あたりで見受けられるのではないかと私は心配するものでありますが、野村参考人はいかようにお考えでしょうか。
  75. 野村務

    参考人野村務君) 私もそのように考えておりまして、自己に関する情報をみずからコントロールする権利プライバシー権利であると言われておるわけですが、今回このシステムが定着いたしますと、自分の住民票がどこの省庁からどういうふうにこのネットワークシステムを通じてとられたかということが全くわからないわけです。本来ならば、これまでは必要な場合にみずから住民票をとりにいって、それで必要なところへ提出するわけですから、自分が住民票をとってこういう状態になっているということは皆よくわかっておるんですが、今度のシステムが定着した場合は、九十二の行政事務の方で必要な場合にいつでもこのネットワークシステムを通じて本人確認情報とこの番号を検索できるということになりますので、知らない間に住民票がとられるということは十分考えられるわけでして、しかもこれは法改正によって今後ますますふえていくことは間違いないと思います。
  76. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それで、最後に梶原参考人野村参考人にお伺いをいたしますが、本改正法案と地方分権とのかかわりを梶原参考人は強調しておられました。私は、別の視点で考えますと、むしろ本改正法案は地方分権の推進に逆行するのではないかという意見を持っているわけであります。  その一つの視点が、現在多くの地方自治体が個人情報保護条例を制定して、かつかなりの自治体が個人情報の安易なオンライン接続を条例でもって明確に禁止してプライバシー保護しているわけであります。しかしながら、本法案が成立をいたしますと、まさに住民基本台帳ネットワーク化というのは、上位法の改正によって、地方自治体のいわゆる地方主権に基づいた地方の人たちの主体的な選択で築いてきた個人情報保護というのが台なしになってしまうのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、梶原参考人とそれから野村参考人にその点だけについて御意見をちょうだいして、私の質問を終わります。
  77. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 私のところの県では個人情報保護条例というのはございまして、その中ではオンラインアクセスの禁止条項はございません。他の県がどう考えるかということも僣越でございますけれども、このオンラインの性格によって大きく変わってくる問題だというふうに思います。
  78. 野村務

    参考人野村務君) 私も照屋先生の認識とほぼ一致しておりまして、地方自治に基づいて各市町村がこれまで管理していた住民票関係情報がオンライン化されてネットワーク化されて全国的に利用されるということになりますと、地方自治体の自主、自立の問題にやや問題が起こるんじゃないかという危惧を感じております。
  79. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  80. 高橋令則

    ○高橋令則君 参考人の三人の先生方、本当に御苦労さまでございます。  私は自由党の高橋でございます。  まず最初に、野村先生にお聞かせいただきたいと思うんですけれども、OECDの八原則がございます。これについては日弁連意見の中にるるいろんな項目がありますけれども自治省の説明では、今まで四年ぐらいありましたか、その経過の中で相当改善した、したがってOECDの八原則のかなりの部分、かなりの部分というような表現は適当じゃないかもしれませんけれども、それに合わせて修正をした、したがってそういう国際的な関係からも十分ではないか、こういう表現で言っておりますが、一方、日弁連ではそうじゃないんじゃないかという項目がるるあります。  その中で、実は私ども三党プロジェクトの中に入っておりまして、これから検討しなければいけませんけれども、この法律に対する評価と、それからもう一つは、今後私どもがやらなきゃならぬ個人情報保護法の検討について、こうあるべきではないか、OECDとかそういう国際的な感覚からもこういう点が重要ではないかという点があれば、それをまずお聞かせいただきたいというふうに思います。
  81. 野村務

    参考人野村務君) 最初意見陳述でも申し上げましたように、当初の試案に比べまして今回の改正案はかなり改善点が見られるわけでございますが、OECDのプライバシー保護個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告というのがございまして、これは一九八〇年に出ておりますが、ここでプライバシー保護に関する八原則が定められておるわけです。今回の改正案ではこれを十分考慮したというふうに言われておりますが、私としましては、非常に不十分であって、このOECDの八原則を十分考慮した改正案であるとは到底思えないわけでございます。  外部利用、提供に関する制限の不備の問題、また個人情報の外部委託の問題、これが非常に問題になるわけでして、ほとんどのこういう事務処理コンピューター処理は外部委託されるわけでして、公務員でない外部の人が情報を流出するという危険は非常に強いわけでございます。それから、個人情報の開示とか訂正請求権というものも本来認められるべきでありますが、これも非常に不十分な状態でございます。また、安全確保の対策にいたしましても不備な点がたくさんございます。時間の関係一つ一つの項目について説明はできないと思いますが、OECDの八原則が十分に生かされているということは到底考えられない状態でございます。
  82. 高橋令則

    ○高橋令則君 その点が今後私どもが勉強して、そして取り組まなきゃならない問題だと思いますけれども、今後のやるべきポイントについてはどうでしょうか。
  83. 野村務

    参考人野村務君) なかなか難しいと思いますが、やはり広く国民の声を聞いて、こういう番号制度をつくること自体に対するやはり皆さんの合意、国民の合意というものがまず必要になると思うんですが、今度の総合的な個人情報保護法をつくるに際しましては、やはり今申し上げましたOECDの個人情報保護に関する八原則、これを十分生かすような保護法をつくっていただきたいというふうに考えております。
  84. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  今度は中村参考人の方にお聞かせをいただきたいと思うんですが、この個人情報保護法の問題は、白浜委員からも話があったので重複しているんですけれどもプライバシー情報公開の問題は非常に悩ましいんです。基本的にはいいんですけれども、総論は皆様賛成なんですけれども、各論になりますと非常に面倒な問題だなというふうに思っております。  今勉強しておりますと、ずっとやっていきますと、報道の自由ともやっぱり抵触するという、表現は適当ではないかもしれませんけれども、心配されるというふうなことから、包括的な法律というのは一体どうなのかなという議論も実はあります。実は、セクトラル方式ということで、アメリカのように極めて人権についてナーバスな国でありながら包括的な保護法はないんです。個別に厳しくやっていると。かなりの法律があるんです。法律でいわば規制している、しかし包括的ではないというふうなこともございます。  質問になるわけですけれども、第一点は、白浜委員から話もあったんですけれども、重複するかもしれませんが、特に報道の問題との関連にもう少し踏み込んだお話をいただければありがたいなと。それからもう一つは、いわゆるEU、ヨーロッパのやり方とアメリカの方式は必ずしもどちらがどうということはちょっと難しいかなという感覚もあるんですけれども、今途中の過程でありますのでどうこう申し上げる立場じゃありませんけれども、その二点について御意見をいただきたいと思います。
  85. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 御質問の趣旨自体が既に大変難しい問題であるということを御示唆していただいておりますが、私ども議論していると、本当に表現の自由、報道の自由、さらに商行為の自由みたいなところとどこで折り合いをつけるかという問題になると思うんです。  だから、私が先ほども申しましたように、どうしても基本法的なものが、そんなものは精神規定だけで実効性がないと言われるかもしれないけれども、かなり私たちの社会において、憲法をもうちょっと具体化した内容として、これが大事だということを基本に置いた上で、先ほど先生が述べておられましたように個々の問題、例えば金融情報についてどうするかという形の個別法という形でしか現実にはなかなか組み立てができないのではないのかなという、不勉強ですが、議論がそんな中途半端な段階で終わっているところが現実です。  したがいまして、基本法的な形になりますから、報道の自由だとか表現の自由というものに対する尊重も同時にその中でやっぱりきちんとうたっていただくということが、最終的な折り合いは多分個々のケースにおいてしか判断がつかないものに具体的にはなってくるのではないかと思います。そんな法の設計しかできないのかなという感じがしておりまして、個人情報保護というものを包括的にあらゆるところに全部持ってきて一つの法体系をつくるということはまず無理なのか。それとも、三党はあえてそれに挑戦されようとしているのか。もしできればそれが理想的だとは思いますが、なかなかそれは難しいのではないかなという予感がしておるところでございます。
  86. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  三党では三回会議をやりまして、今勉強の段階でございまして、三党の中でこうするとかどうするという、まだそこまでは行っておりません。しかしいずれ、こういうプロジェクトがあって進んでおりますので、ぜひとも参考人皆様方に御指導いただいたようなことの中身について十分検討して対応していきたいというふうに考えております。  梶原知事さんにちょっと。  私も地方自治の人間でございまして、大変御指導をいただきましたが、情報化というのは流れとしてはもうどうしようもない。極端なことを言いますと、利便とかいろんな意味で抗し得ないような流れではないかというふうに私自身は考えております。  そして、利便性とかコストの問題とか、いろんな問題はありますけれども、今まで私も現場でやってきた経験からしますと、最初はやっぱりコストが十分じゃないとか利便性がないとか、そういうことは言われるわけです。ところが、実際にもうそれなりに進度が進んでやっていきますと、それがなければもう行政ができないという実情なんです。したがって、立ち上がりとその後の管理というのが非常に重要ではないかと実は思っているわけです。  そういう問題を含めて、この四情報だけですけれども、今後の情報化に対して全体的に規律してきちっとして、そして国家あるいは地方団体として全体的にやれるような、そうすることによってかえっていわゆる規律ある情報化社会になるのではないかと私は思っているんですが、その辺についてのお話をいただきたいと思います。
  87. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) 時代認識として、私は、一万年単位で続いた農業社会から工業社会、今情報社会に入ってきておりまして、この歴史の流れはもう食いとめるわけにいかない。それからさらに、歴史的にさかのぼりますと、ネットワーク技術の革新があって世界が変わってきました。最初は船舶、航路の開発、その次が機関車、鉄道の開発、その次が自動車と道路の開発ということで世界が大きく変わってきたわけです。このたびの革新は、マルチメディアネットワークによって世界が変わっていると。この流れももうとめようがないと。現に、インターネットの普及の現状を見てもその状況でございます。  そこで、規律というお話が出ましたが、これは地球規模とか国家的規模で一律にどうこうするということは非常に難しいんです。結局、全体を構成している部分部分がしかるべき機能を果たさなきゃいけない、こんなふうに思うんです。  自治体におきましては、確かに地球規模の情報化が進んでいますが、自治体は自治体で自主的に住民参加も得ながら、どうIT、情報技術を使っていくか、これを主体的に決めていかなければいけないというふうに思うんです。まさにそういう意味でこの情報化社会における自治体がしかるべき決意で情報社会に臨む、そのことを求められているというふうに思うんです。  この住民基本台帳ネットワークにいたしましても、何回も繰り返しておりますけれども、住民の自主性からスタートしていくという発想でなきゃいけないというふうに思います。
  88. 高橋令則

    ○高橋令則君 終わります。
  89. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 参議院の会の松岡滿壽男です。  三人の参考人皆さん方、御苦労さまでございます。  途中、ちょっと中座いたしたりしたものですから、先行議員の皆さん方の質疑を十分聞いておりません。    〔委員長退席、理事山下八洲夫君着席〕  若干ダブるかもわかりませんが、お許しをいただきたいというふうに思います。  今の議論ですけれども、高橋先生がおっしゃった議論なんですが、せんだって安田参考人ですか、のお話を伺っていますと、電子商取引がもう既に現在六十兆ぐらいだけれども、二〇〇五年には二百兆になるだろうと。いや応なしに情報化が進んで、デジタル化が進んでいくわけでありまして、それに対する日本社会全体の法整備というものがついていっておらぬという悩みを抱えておる。この法案につきましても同じ悩みだと思うんです。個人情報をどうやって保護していくんだという部分がやっぱりあるだろうと思うんです。  後ほどその辺は野村参考人にもお伺いしたいと思うんですけれども、まず中村参考人に、現在の法案で出ておりますのは四つの情報、先ほど照屋先生とのやりとりも伺っておったんですけれども、素人目に見ると四つの情報だけだと何の情報の秘密だという思いがするわけです。これだけだと全くある面では使いがいがないといいましょうか、この厳しい状況のときに六百億も投資して一体どうなるんだろうという疑問が浮かびますが、しかし国民の方はこれだけじゃとどまらぬだろうというふうに思っていることも事実だと思います。  私も地方で市長をやっておったんですけれども住民基本台帳ということになると、四つのほかに続柄とか住民となった日とか、筆頭者、それから本籍地、国保、年金、児童手当、あるいはそのほか第二欄がありますから、家族構成がずらっと出てくる。それに今度介護保険とか選挙人の控えとか、そういうものを皆それぞれの自治体はくっつけているわけです。そういうものがずうっとつながってくるし、先ほど来お話が出ておりましたように、当然電子商取引の問題とか出てくると銀行関係が必要になってくるわけです。  その場合に、きょうのお話の中で、個人情報について、具体的に保護すべき個人情報のコンセンサスができていないというお話を先ほどなさったわけでございますけれども保護すべき個人情報というものは、それでは項目別に見て具体的にどういう部分だろうかということを改めてちょっとお伺いいたしておきたいというふうに思うんです。
  90. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 住民基本台帳の中からですか。
  91. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 いや、それも含めながら全体的、総括的に。
  92. 中村啓三

    参考人中村啓三君) それは先ほどから議論が繰り返されているように、多分保護すべき個人情報というものをめぐってまだ相当の開きが国民の間にあるんだと思います。  だから、これまでの国会議論を見ても、私、今度の住民基本台帳法を契機に、三年以内に何らかの形で包括的な個人情報保護法を制定する、これは大変な進歩でして、データベースで調べますと、かなり前から個人情報保護なりプライバシー保護という言葉はあるんですが、言葉だけでそこから先に具体的に何も進んでいないんです。多分、これはいかにこの問題の定義が難しくて、具体的にどういう形の規制をするかという、全く今まで未分野の分野に法律なり国会というものが挑戦するという作業でもあると思うんです。    〔理事山下八洲夫君退席、委員長着席〕  したがいまして、答えにならないんですが、私はそこに今の難しさがあるんだと思います。特に一つは、保護すべき個人情報という概念と、その情報がどの程度蓄積されているかという、トータルとしてまとまってくるとかなりその人間の幾つかのイメージが浮かんでくるということだと思います。その二つの意味から保護すべき対象というのは議論していただきたいと思うのが、私どもの場合、議論の中に出ている話です。
  93. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 毎日新聞の社説も拝見いたしたのですけれども、御指摘のとおりだと私も思いますし、だからまず最初にそういう国民的な議論をきちっとしなきゃいけない。保護すべき情報はどこまでなのか。例えば、本籍地の問題なんかもこれは含まれていると思います。そういうものをしながら、しかもこれを実施する段階では、一つの流れとしてはこの方向に将来行かざるを得ないだろうと私も思っているんです。いや応なしにそういう方向に行かざるを得ない。  その場合に、どうやって個人情報保護をしていくのか。基本法というだけでなくて、具体的な対応をやっぱりしなきゃならぬだろうと、それは国会の責任において。それがやはり衆議院改正案だろうというふうに私は受けとめていますし、我々良識の府と言われている参議院としても、それはしかと受けとめていかなきゃいかぬだろうというふうに思っておるわけです。  しかし、先ほど申し上げましたように、そういうデジタル経済基盤がどんどん進んでいく、ニューメディアの世界がどんどん広がっていく、それに対してどうも法整備というものが十分に追いついてきていない。  しかし、今回の法案におきましては、自治省の方は胸を張って、自治大臣も刑罰はきちっとしているんだということを言っておられるんですが、こういう情報を漏らした者に対する刑罰、これについて懲役二年以下、百万円以下の罰金というものについての考え方、私は今、日本の社会全体がグローバル化の中でかなり国民のいろいろな価値感それから質的な部分も変化してきていると思うんです。そうすれば、やっぱりやってはいけないよという部分についてはきちっとした刑罰を科していかざるを得ない状況が出てきているのではないかというふうに思うんです。  この点につきまして、中村参考人野村参考人のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  94. 中村啓三

    参考人中村啓三君) 松岡議員のおっしゃるとおりでして、したがいまして、先ほど私も今度の住民基本台帳法の一部改正案そのものはかなりよくできている法体系ではないかと思っていることを再三申し上げております。しかし、これに伴って出てきたいわゆる漠然とした不安、三つの不安として私なりの考え方を述べさせていただきました。これにこたえていくというのは国会の役割だと思っております。  松岡議員のおっしゃるとおり、本当に新しい時代が始まろうとしているのにこの面での法体系というのが全くできていなくて、これからむしろ国会の手できちんとその方向性なりを示していただくことが、直ちに法改正というのができないとしても、議論を通して国民の間に、なるほど国会もこういうものに対して真っ正面から取り組んでいるという姿勢が、国民にある種の、安心感とは言わなくても安堵感ぐらいのものは与えてくれるのかなというふうに期待しております。
  95. 野村務

    参考人野村務君) 刑罰によって情報保護するということです。公務員情報漏えいした場合は刑罰を科するという形になっておりまして、それによって保護するという方向自体にも若干問題はあろうかと思いますが、これはある程度私はやむを得ない面もあろうかと思うんです。  しかし、幾ら刑罰で情報漏えいしてはならないということになっておりましても、情報に価値があり、それに対して第三者からいろいろと働きかけがあった場合に、悪意でそういう情報を漏らす人が出てくるということを防ぐことはなかなか難しいと考えております。  それと、先ほどの電子商取引にこの番号を使ってはどうかという話ですが、電子商取引にこの住民票番号を使うということは、本人確認のためには非常に有益であろうかと思いますが、今回の改正案ではこれは民間では使ってはならないということでありますから使えないと思いますが、法改正されれば、将来どんどん電子商取引がなされて、その場合の本人の身分確認のためにこの番号を使うということになりますと、これは法改正で新たに国民の合意を得なければならないというふうに思います。
  96. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 野村先生は、このカードの問題、だんだんにこれをやっていけば、確かに恩給とか年金など各種申請手続が簡単になるわけですから、自然にカードを発行していったら全部国民が受けざるを得なくなるのじゃないかというような御指摘がございました。しかし、それは確かに恩給、年金とか、そういうものを受給されている人たちはそうかもしれませんが、それ以外の人たちも、カードをやることによって国民全体が受けざるを得なくなってくるというふうにお考えなんでしょうか。
  97. 野村務

    参考人野村務君) 市役所へ行っていろいろの手続をする場合に、このカードを見せればそれですぐにできるということになりますと、皆さん、これは持つというふうになると思います。先ほど出ました印鑑証明の問題にしましても、今でしたら印鑑登録カードを持って市役所へ行っていろいろ住所氏名生年月日等全部記載して出さぬといかぬわけですが、このカードがあれば、印鑑登録証とこのカードによってすぐに交付してもらえるということになりますと、ほとんどの人はやはりこのカードを持つようになろうかと思います。
  98. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ありがとうございました。  梶原参考人にちょっとお伺いをいたしたいと思うんですが、先ほどの御指摘、確かに社会的弱者の立場、具体的にいろいろお話がございました。それは確かにそういう身体的な障害を持っておられる方々にとっては非常に有益なことだろうというふうに思います。また、生活の現場論といいましょうか、余り国会が机上の空論ばかりしておってはいかぬぞという御指摘を現場からいただいて、確かにそれも私どもは受けとめていかなきゃいかぬというふうに思っております。  ただ、今回の問題について、市町村固有の業務として住民基本台帳をずっとやってきているわけです。今まで県はそれは入っていなかった。今度は国が六百億かけてこれだけの四情報をする。それは当然県が間に入られてやられるわけであります。情報公開法というものが今回通りまして、情報公開というもので確かに国民行政との間のかなり風通しがよくなってくるだろう。それで、住民参加があれば結局それが抑止力になる、マッチングしても変な使われ方はおれたちがさせないよという意気込みはよく私どもも伝わってきますし、そうあってほしいというふうに思うんです。  しかし、現実の問題として、今回地方分権について法案が通りまして、百三十年続いた国と地方との関係が上下関係でなくて一応対等の関係になったということは歴史的なことだと私も思いますし、そういう方向に進んでいかなきゃいかぬと思うんですが、現在の段階で、三年先に導入され、五年先にカードが使われるというその段階で、今の国と地方との力関係で、知事さんがおっしゃるように胸を張って本当にそれを抑止できるんだろうかということを危惧いたしておるんですけれども、その辺につきましての知事さんのお考えを改めて伺ってみたいというふうに思います。
  99. 梶原拓

    参考人(梶原拓君) おっしゃるとおり、まさに地方分権の時代でございますので、この法案あるいはこのシステム一つとりましても、地域地域で住民参加、情報公開のもとで地域の実情に適合したシステムが構築されるようにしなきゃいけない。おっしゃいましたように、住民基本台帳というのは市町村固有事務でございまして、たまたまネットワークが広域化するから県あるいは国がお世話するということであって、それを逸脱しては相ならぬ。住民基本台帳法の枠内で、そして固有事務である地方自治を侵害しない、こういう大前提で法律もつくらなきゃいけないし、運営もされなきゃいけない。それだけ私どもも責任が重いということでございます。  最近は国に対して率直に申し上げる知事さん方もふえてまいりまして、国の言いなりにはならないというのが我々の申し合わせでございまして、何か事がありましたら決起しなきゃいけない、このように思っております。
  100. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 今のお言葉を御信頼申し上げまして、私も地方出身でありますし、地方分権、本当に名実ともにそういう状況が出てくるように頑張りたいというふうに思っております。  私の持ち時間はまだありますけれども参考人皆さん方も本当に長時間御苦労さまでございました。終わります。
  101. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げたいと思います。  本日は、大変長時間にわたり貴重な御意見を承りまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  どうもありがとうございました。(拍手)  午後二時まで休憩いたします。    午後一時五分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  102. 小山峰男

    委員長小山峰男君) ただいまから地方行政警察委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  103. 輿石東

    ○輿石東君 民主党・新緑風会の輿石東でございます。  開会前に大臣からも三巡目だねというお話があったわけですけれども、三巡目にして初めて私は質問に立たせていただくわけですので、よろしくお願いしたいと思います。  午前中の参考人質疑の中でも、そして考えてみますとこの法案は四月十三日に衆議院で始まったわけで、五月、六月、七月、八月と四カ月にわたって議論を重ねてきたということが言えると思いますが、それでもなお大きな問題がクローズアップされている。  私は、デジタル革命とかネットワーク社会、こんな言葉を最近よく耳にしているわけですけれども、このような高度情報化社会の進展に伴いまして、今や世界的な規模で物や金や情報までが動いていくという時代を迎えた。大臣の衆参にわたる答弁をお聞きしていても、大臣はたしか、例えばアメリカの学校教育の中ではもうインターネットで宿題が出てインターネットで答えを返すという時代になっている、それにもかかわらずとは言わなかったわけですけれども日本では市役所へ書類を持っていって判こを押さなければ気が済まないようなアナログ的な手法でいて大丈夫なのかと。この認識は全員一致していると思います。  そこで出てくるのが人権問題、プライバシーとのバランスをどうとっていったらいいのかという問題にかかわってくるんだろう、こう私は理解しているわけです。したがって、もう一回原点に戻って、プライバシーとは何か、個人情報保護とはどういう概念があるのかということをやっぱり考えていく必要があるだろう。  午前中の質疑の中にも再三出てきたわけですが、この情報技術の発展とともにプライバシーの概念といいますか、そういうものも同時進行で変遷をしていく、そういうものだろう。だから、例えば情報を伝えるメディアのレベル、その情報処理するコンピューターのレベル、そしてさらにそれらを相互に接続するネットワークのレベルでこのプライバシーの問題も考えていかなければいけない。  だから、プライバシーの概念にはいろいろあるけれども、定説もなければ明文もないということも言われていますけれども、一人にしておいてほしいという狭い意味のプライバシーから、みだりに自分の生活を公開されないというふうに、またコンピューターが入ってからは自分の個人情報がどこでどのように使われているかというような自己情報のコントロール権というところまで来たんだろう。これからもうこういう時代を迎えるわけですから、一番大事なのは、自分の個人情報がどこでどのように使われているのかということを認識できる自己情報のコントロール権というものが大事だ、こういう確認はここまでされてきたというふうに思うわけです。  そこで、私はきょうはこのネットワーク社会とプライバシー、そういう視点に立って、特に個人情報保護の問題、それから衆議院で終盤段階で附則に修正案が提出された、この辺から議論が少し混乱をしたり、そして問題点がややこしくなってきたというふうに認識していますので、その二点に絞って順次質問をさせていただきたい、こう思うわけであります。  最初に、衆議院政府原案の附則の第一条二項に「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする。」という規定が追加されたわけですけれども、まずこの「所要の措置」について、既に六月十日の衆議院地方行政委員会自治大臣の答弁もありますけれども、再度このことについて局長の方から説明をいただければと思います。
  104. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  今御指摘の改正法案の附則第一条第二項の「所要の措置」につきまして、「所要の措置」とは、一つは、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えること、第二に、第一のシステムの整備状況を踏まえ、住民基本台帳法におけるさらなる個人情報保護措置を講ずるため、所要の法改正などを図ること、第三に、地方公共団体が適切に住民基本台帳ネットワークシステムを運用することができるよう、自治省として個人情報保護に係る指導を十分に行うことなどを示すものと認識している旨を自治大臣から答弁がなされております。
  105. 輿石東

    ○輿石東君 ここで再度確認をしておきたい点は、局長は今三項言われたわけですが、第一項の個人情報保護、第二項の個人情報保護、同じ言葉が使われていますけれども、この中身は違いますね。そこだけ確認をしておきたいと思います。
  106. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) 第一項は、民間部門をも対象とした個人情報保護に関するシステムを整える、こういう趣旨でございます。二項の方は、そのシステムの整備状況を踏まえまして、住民基本台帳法におけるさらなる個人情報保護措置を講ずるため、所要の法改正等を図る、こういう趣旨でございます。
  107. 輿石東

    ○輿石東君 一項、二項は違う性格のものだということを確認させていただきました。  そこで最初に、一つ目の民間部門を対象とする個人情報保護システムというのと我々が今議論をしています今回の住民基本台帳ネットワークシステム関係について、これも同じ日に総理からこの関係について答弁があったわけですけれども、このことについても再度確認をする意味で局長の方からでも説明をいただければと思います。
  108. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  この住民基本台帳法一部改正法案につきまして、内閣総理大臣の方から、住民基本台帳法の一部を改正する法律案は、近年におけるコンピューター等の技術の飛躍的発展に呼応しての住民サービスの向上と、特に地方公共団体の省力化、事務能力や効率化等に資するものでありまして、いささかも国民プライバシーを侵害するものでないことを確信しているところでございます。本法案におきましてもプライバシー保護に格段の配慮を行っているところでありますが、これまでの国会審議を踏まえ、特に住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たりましては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識している、その旨を総理大臣が答弁をいたしております。
  109. 輿石東

    ○輿石東君 そこで、ここで問題にしたいのは、というよりも問題になるのは、総理の言われた前提という言葉の意味であります。この総理の答弁によりますと、局長からも今話されたわけですけれども個人情報保護システム住民基本台帳ネットワークシステム実施の前提だ、こう明言されているわけですけれども、この前提の意味が私にはよくわからない。この部分についてもう一度説明をしていただきたい。
  110. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  御指摘の総理の答弁でございますが、住民基本台帳法改正法案におきましても、プライバシー保護に格段の配慮を行っているところでございますが、これまでの国会審議を踏まえまして、特に住民基本台帳ネットワークシステムの実施に当たっては、民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提である、このような認識である、こういうことを答弁されております。
  111. 輿石東

    ○輿石東君 総理の答弁を繰り返していただくという意味で御質問したのではなくて、総理は六月十日以前に四月十三日の衆議院本会議で社民党の議員に答えているわけです。そこでどういうふうに総理は答えているかと申し上げますと、「民間部門を含めた包括的な個人情報保護法の必要性についてのお尋ねでありました。」と、こう断って、「このネットワークシステムにおきましては、民間部門を本人確認情報の提供先とせず、本人確認情報の厳重な保護措置を講じ、さらに住民票コード民間利用を禁止していることから、このシステムを導入する前提として、包括的な個人情報保護法の制定を要するものではないと考えております。」と、ここでは前提ではないと言っていて、六月十日には前提ですと、こう言うわけですから、前提という意味が私にはわからない、こう申し上げたわけであります。  そもそも、自治省はこれまで、総理の最初の答弁のように、この住民基本台帳システムの構築に当たっての前提としては、民間部門を含めた個人情報保護は必要ないと答弁してきたはずだと思うわけであります。しかし、今になって、今になってというか、今日は個人情報保護システムがこのシステム導入の前提だと説明している。これは明らかに矛盾するんじゃないですか。だから、先ほど三党の修正案が出た途端に議論が混乱しわからなくなってきたと言った意味はわかっていただけるというふうに思います。これについていかがですか。
  112. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) 状況を十分御承知の上での御質問でございます。つまり、今御指摘ありましたように、今回の住民基本台帳ネットワークシステムに関して、それはたびたび申し上げておりますが、制度面、システム面あるいは運用面、そういった各方面から、今日における個人情報保護ということについて、考えられる、とり得る万全の保護措置を講じたところでありますし、同時に民間部門における利用も禁じておるところでもあり、必要な手当てをいたしておる。したがって、このとおり今直ちに実施されるとすれば、十分これで個人情報保護に関する手当てはできているという私どもは考えでおります。  しかし、これが実施されるまでの間になお数年間という準備期間がある。そういう準備期間の間に、日進月歩の技術進歩の世の中でありますから、何らかのそれを超えるような技術的なものが出てくるという可能性を否定するわけではありません。したがって、これが実施されるまでの間に十分それらを念頭に置いた必要な手当てというものはこれからも講じておく余地は残しておく必要があるということが第一点でございます。  そういう意味で、この法律案そのものの前提として、今直ちに民間部門における個人情報保護に関する法的手当てをしなければならないという意味ではない。これは私ども今日においてもそうとらえております。  しかし一方で、そういう状況は承知をしていただくものの、今日この法案の問題とは別の次元の問題ではありますけれども、あるいは民民における利用の形態、あるいは行政の分野におきましてもいろんな形で個人情報に関する漏えい事件がいろいろな場面でたくさん出てきております。特に今回の住民基本台帳ネットワークシステムの導入ということが、先ほども御指摘がございましたが、これからさらに高度情報ネットワーク社会の形成に向けていわば大きく踏み出していく要素になるわけでありますから、そういう社会になればなるほど、個人情報保護について今まで民間分野をも含めた手当てが百点満点ででき上がっておるかというと、まだまだ完全だと言い切れない部分が現にあるわけでありまして、それは必ずしも自治省の所管をする住民基本台帳にまつわる部分ということを超えてのテーマでもあるわけです。  そうなりますと、政府全体としてこれにどう手当てをしていくのか。各分野ごとに今まで個人情報保護に関する法的手当てはなされてはおりますものの、そういうトータルとしての法体系全体として法的整備ができ上がっているかというと、まだ漏れている部分がいろいろあるではないか、そういう民間分野における個人情報保護ということに対する法的整備、これはこれからさらに高度情報ネットワーク社会が大きく踏み出していくという前にきちんとした法的整備をする必要があるではないか、審議の過程の中でこういう指摘もあったわけでございます。  くどいようでありますが、この住民基本台帳ネットワークシステムの導入と直接リンクしての法整備の問題という側面よりも、私は、それと直接の関連性は横へ置いて、高度情報ネットワーク社会の構築に向けて大きく踏み出す要素になるわけですから、そういう面におけるトータルとしての法的整備の必要性ということが指摘をされた、それをあえて、適切な言葉であったかどうかわかりませんが、漠然とした不安ということも指摘をされたという言葉で表現をさせていただいておるわけでございます。  そういったことを念頭に置いて、衆議院におけるいろいろ御指摘があって修正の中で御議論があった。その過程の中で、総理からの御答弁の中で、この法案そのものに対する直接のリンクとしての前提ということではないけれども、この法律に基づいてこのシステムが導入される、そのときには少なくとも個人情報保護に関する包括的な法整備のネットワークをつくっておく必要があるという手順について前提という言葉で表現をされたものである。ある意味では、そういう手順といいますか物事の順序というか、そういったことを意図して御説明が行われたというふうに私は理解をいたしておるわけでございます。  そういう点で私からの、総理の答弁を受けて、先ほど局長からも申し上げましたが、附則第一条第二項の「所要の措置」とはで、一、二、三とあるんですが、その中の二のところで、一のシステムの整備状況を踏まえ、住民基本台帳法におけるさらなる個人情報保護措置を講ずるため、所要の法改正等を図ることという中にそういったことの意味をも含んでおるというふうに私は理解をいたしております。
  113. 輿石東

    ○輿石東君 今、大臣は御丁寧に説明をしていただいたわけですけれども、私は頭が悪いものですから十分理解し得ない面もあります。  特に、この住民基本台帳システムにおいては万全な措置をしていると。しかし、これから高度情報化社会へ入るその一つの準備として、また情報技術は日進月歩の速さでやってくる、だからこれが施行されるまでには三年なり五年かかるだろう、そういうものも踏まえながら先取りした形でというような意味も含めて御説明をいただいたわけですけれども、その中にまた国民の中に漠然としたこのシステムについて不安もあるんだ、こういうお話もあったわけですけれども、私、それこそ大臣の説明が漠然としてよくわからない。私も頭が悪いのか理解できない。  しかし、これを繰り返していても仕方がないと思いますけれども、最後の方で、物事の手順として、やっていく順番としてこうも考えたというわけですけれども、前提というのは何か物事が成り立つためにもとになる条件というふうにも理解できるわけでして、そういう意味でいえば、これは前提が成り立たないのではないかな、総理の答弁それから今まで自治省が主張され大臣が主張されてきたこととはやっぱり矛盾しているのではないかなと私は理解していますけれども、これはそのくらいにいたしまして、ここで出てくる問題は、やはり個人情報保護システムをどのようにつくっていくか、どう担保していくかということに尽きるだろう、こう思いますので、個人情報保護システムの中身について議論をさせていただきたいなと思うわけであります。  先ほど大臣からも、この民間を含めた個人情報保護というものは住民基本台帳システムを超えたところで政府全体として取り組む課題であろう、こういうおっしゃり方をされたわけですけれども政府でもこの問題、総理が本部長をしています高度情報通信社会推進本部というのが発足をして、その推進本部の下に個人情報保護検討部会というのが立ち上がって、参考人として見えました堀部中央大教授が座長をやって、一回目が終わって、たしかきょうあたり二回目が開催されるとか、そんなスケジュールも聞いていますけれども、この検討対象となります個人情報保護システムをどのようにとらえているのか、内政審議室から見えているかと思いますので、御説明いただきたいというふうに思います。
  114. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) 政府個人情報保護検討部会についてのお尋ねでございますが、委員、今御指摘のとおり、高度情報通信社会推進本部のもとに、七月二十三日、第一回会合を開いて立ち上がっております。堀部先生が座長ということでございます。  これにつきましては、二つの経緯がございます。  一つは、そもそも電子商取引ということをこれから進めていく場合の基盤整備、条件整備として個人情報保護についてもきちんと考えていかなきゃいけない、こういう問題意識で、政府が昨年の十一月九日に高度情報通信社会推進本部で決定をいたしました基本方針というものがございますが、そこでアクションプランを定めることになっておりまして、そのアクションプランにおいてこの検討部会を設けるということが既に決められておりました。そういう流れで、以後は電子商取引を進めていくための一般的なプライバシー保護システムはいかにあるべきか、そういう命題にこたえるために検討部会を置くというのが一つの流れでございます。  もう一つは、本委員会で御議論になっております住民基本台帳法の修正にかかわりまして、三党で検討会を設けられ、年内に基本的枠組みを取りまとめられる、三年以内に法制化を図るという合意で、検討部会が既にこちらの方もスタートしているわけでございますが、そちらの三党の検討会の方にも政府としてよく御連絡をさせていただいて、要は実効性のある個人情報保護のためのシステムはいかにあるべきかということについての結論を得ようというものでございます。  その際、政府といたしまして、高度情報通信社会推進のための基本方針におきましては、簡単に申し上げますと、EU型のいわゆる統合方式、オムニバス方式という公的部門、民間部門全部をカバーいたしましたまさに包括的な法律ということではなくて、アメリカ型の必要なものは法的な規制でプライバシー保護をする、技術の進歩、いろいろ状況の変化というものがございますので、民間における創意工夫というのを最大限に生かす、それから情報の自由な流通というものを確保するという観点からは、ガイドラインに基づく自主規制というものもあわせて、法規制と自主規制、両々あわせまして実効性あるシステムをつくる、どちらかというとそういう考え方がよろしいんではないかというのが昨年の十一月九日に推進本部で決められました基本方針の中でうたっておることでございます。  そういうことでございますけれども、その後、七月二十三日に立ち上がりました政府の検討部会におきましては、答えはあらかじめ決めてかかるということではなくて、いろいろな御意見もございますので、それらをよくよく検討いたしまして、最後は実効性ある個人情報保護のための法整備を含むシステムがいかなるものかということについてきちんと整理をさせていただきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  115. 輿石東

    ○輿石東君 今、基本方針にも触れていただいたわけですが、当初、昨年十一月ですか、のレベルでは、そのヨーロッパ型のオムニバス方式ではなくてアメリカ型のセクトラル方式、そういうものを志したと。しかし、この二つの流れがあって今回の附則もついてきたことだから、もうそれを加味しながら、どちらでやるかを先に決めることはしない、これからだ、こういうお話ですね。しかし一方で、経済界の流通というものも考えれば、法整備と自主規制、この辺のバランスもあるんだと。この含みを残されたわけです。  そこで、今内政審議室からもお話がありましたように、附則にかかわって三党でこの問題も検討しているというお話もあったわけですから、この問題についてお聞きをしたいと思いますけれども、もう午前中の高橋先生の質問の中にも、三回ほど三党のこの検討部会では議論をされているというお話ですけれども、その検討状況と、検討対象になる個人情報保護システムあり方はどのような方向に行くのか、またどのような議論がされているのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  116. 宮路和明

    衆議院議員(宮路和明君) ただいまの輿石先生の御質問でございますが、今お話のありましたように、我が党そして自由党、公明・改革クラブ、三党間におきまして六月四日に個人情報保護に関する法律についての検討会を設置して、そして法制化に着手し、年内に基本的枠組みの取りまとめを行い、三年以内に法制化を図る、そういう確認書を三党間で取り交わしまして、そして先ほどお話がありましたように、既に六月二十三日を皮切りに三回の検討会を行わせていただいておるところでございます。  そこで、これまでのところは、我が国における個人情報保護に関する検討状況が政府としてどういうぐあいになっているかということだとか、あるいはまた海外における個人情報保護システムというものがどういうぐあいになっているかといったことを内政審議室あるいはまた通産省等からヒアリングを行いまして、どういうぐあいに我々として今後結論を導いていったらいいのかについての勉強を今行わせていただいているということでございます。  そこで、その法体系としてどういうものを目指していくかということでございますけれども、我が国として政府の保有しておりますコンピューターについての情報保護、これは現在のところ総務庁が中心となってつくった法律が御案内のようにあるわけでありますけれども民間部門や地方公共部門をも含めた総合的なものはない、こういうことでございますので、そういった総合的な全体をカバーする個人情報保護システム、法制というものを政府に限らずもっと幅広くやっていかなきゃならないという認識に立っておるわけでございます。  したがって、今申し上げた意味では、包括的な個人情報保護の仕組み、法整備ということも当然私どもは視野に入れてしっかりとこれを検討していかなきゃならない。そして、先ほど内政審議室長の方からお話がありましたように、我が国として効果的な個人情報保護の法体系としてどういうことが一番望ましいかという観点から、我々は基本的な枠組みというものをしっかりとつくって、そして三年以内の法制化を目指す、そういう方向で取り組んでまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  117. 輿石東

    ○輿石東君 今、内政審議室から、また宮路先生からそれぞれ三党と審議室の状況も話していただいたわけです。  それともう一つは、総理の先ほど答弁の問題を私は確認をさせていただいたわけですけれども民間部門を対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステム、総理は法整備を含めた、こういう表現をされているわけです。この法整備を含めたシステムという定義がよくわからない。  包括的な個人情報保護をも目指す、宮路先生もそれも検討の中に入っている、こう言われているわけですけれども、内政審議室では先ほど自主規制と法整備との兼ね合いの中で考えていきたいと。国で考えること、三党で考えていること、それを連絡を密にしながら考えていきたいというお返事もあったわけですけれども、この辺ちょっといま一つはっきりしないものがあるわけです。  午前中の審議の中で、照屋先生の方から、衆議院住民基本台帳法案が通るときには、一斉にこの前提として包括的個人情報保護を考えているのではないか、またそうあるべきだというマスコミの論調があったという毎日新聞の社説の紹介もあったわけですけれども、包括的個人情報保護と宮路先生が言われました。そう言えば、先日の参考人質疑の中で堀部教授自身がEU型のオムニバス方式、統合方式を披露していただいたわけですが、それを思い出すわけです。  提案者並びに内政審議室では、必ずそっちの方向で検討していくんだという方向にも見えないわけですけれども、そうだとすれば、特に自自公三党でこれを協議されて、同じテーブルに着きながら究極の目的が違うとすればこれもおかしな話ではないか。この辺もう一度、私のそういう意見に対してどのようにとらえられているか、お答えいただければと思います。
  118. 鰐淵俊之

    衆議院議員(鰐淵俊之君) 私の方から御答弁をさせていただきます。  今、先生の方からいろいろ御質問ございましたが、私ども衆議院におきましてこの住基法の問題につきましていろいろ論議があったわけでございます。その中で、ただいま大臣からも総括的なお話もございましたし、また宮路理事からもお話がございました。  住基法そのものの法整備につきましては、既に何時間か議論されているからもう御案内のとおりでありまして、今考えられる個人情報保護というもの、あるいは民間の活用は絶対しない、万が一情報を漏らした場合には非常に大きな刑罰といいましょうかいわゆる罰則規定がある、こういうことで厳重に保護されているわけであります。しかしながら、個人情報というものは今我々の社会の中ではありとあらゆる分野にもう既に使われているわけであります。特に金融機関、医療機関、通信、福祉あるいは行政、ありとあらゆる機関に使われております。  そういう中にあって、一体、住基法も三年後まで準備していって、実際に使う段になれば、まだしかし今のままで完璧なのかということになりますと、先ほどお話しございましたように、漠然とした不安感といいましょうか、あるいはまたその情報が一時漏れるといったような事件もこれまでも何回かありますから、そんなようなことも整備しながら、やはりその究極は、国民の皆さんがそのシステムを安心して利用していただく、活用していただく、あるいは行政国民の皆さんが安心してその情報についてサービスを受けられる、こういうようなことを構築するために、三党におきまして住基法が実際施行される段階では、こういった個人情報保護システムをしっかりとした内容にしてある程度法整備をしていくべきではないか、こういう合意になったわけでありまして、初めから統括方式、オムニバスでいきますとか、あるいはセグメントでいきますとか、こういったことが最初にあるわけではございません。  今どういった方式がいいのか、世界的な情報保護規定が一体どういう状況でやられておるのか、それぞれの関係行政機関はどうなのか、あるいは民間ではそれぞれガイドラインをつくったり、それぞれでまた保護規定を設けておったりしているわけですから、そういった情報をいろいろ勉強いたしまして、最終的にはこの法の執行のときには安心して使われていくような形で私ども議論を深めていきたい、そう考えているところでございます。
  119. 輿石東

    ○輿石東君 この問題は、最初に方式を決めるのではなくて、いろんな諸般の状況もあり、審議の経過も踏まえて最終的には実効ある個人保護ができるような手だてをし、担保をしていくんだと。それは一般論としてはそのとおりでしょう。しかし、今までの経過からいってあの附則第一条の二項にああいう修正案が付されるまでの公明党さんの主張は違っていたのではないか。  桝屋先生にこの辺をちょっとお尋ねしたいわけですけれども、先日の委員会でも同僚議員であります高嶋議員もこの問題にちょっと触れたと思いますけれども、六月四日の公明新聞で坂口政審会長はこの辺を明確に論じているわけです。「システムを運用する前提として、包括的な個人情報保護法がどうしても必要だと思います。」と、こう明言されておるわけです。そして、それに加えて「政府側からは、「包括的個人情報保護法は必ずつくる」という非公式な回答は得ていますが、それをどういう形で担保するのかが大切なことです。」と公明党さんの機関新聞にきちんと載っているわけです。  この記事を見ますと、やっぱり政府の検討部会と公明党の政策の方針というものが矛盾してくるのではないか。前回も桝屋先生から、最後まで悩んだ問題だ、苦しんだ問題だ、こう言われたわけですけれども、今後公明党として、また桝屋先生個人としてどのようなスタンスで検討部会に臨まれるのか、確認をさせていただきたいと思います。
  120. 桝屋敬悟

    衆議院議員(桝屋敬悟君) 輿石先生のお尋ねでありますので、お答えを申し上げたいと思います。  我が党の公明新聞を引用していただいて感謝申し上げたいと思います。これは内容を読んでいただきますと、六月四日でありますからまだ最終の出口に至っていない段階での記事でありまして、流動的な状況があったにしろ、私どもの政審会長が機関紙で申し上げていることでありますから、この内容を踏まえてのお尋ねでありますから、そうした観点でお答えを申し上げたいと思うんです。  一点だけ、今、輿石先生もこの場でテーマとされております包括的個人情報保護法なるものがどういうものを意味するのかということは、きょうの午前中の審議でもあったようでありますけれども、大変にとらえ方によって判然としないところがあるわけであります。したがいまして、私どもの政審会長の記事は実は私どもの党内でも随分議論をしております。  この中で、「包括的な個人情報保護法」、なということが入っているわけでありまして、これは必ずしも一本の法律を意味するのかどうなのかということ。実は正直申し上げますと、私どもはその交渉の過程の中で、包括的個人情報保護法を一本の法律、いわゆるオムニバス方式といいますか、そうした統合方式の方がいいという議論をずっと党内でもしておりまして、そこを出口として目指したわけでありますけれども、先ほど政府からそういう確証もあったという話がちょっとありましたけれども、私は坂口さんからその話はまだ聞いていないわけであります。  いずれにしても、何度もこの委員会でも御答弁をさせていただいておりますように、まずは公的な部分、地方あるいは民間も含めて総合的に検討し、なおかつこの検討の過程では、既に国にあります個人情報保護法、それから各自治体の条例、さらには民間の自主規制等も政府において取り組まれているわけでありますから、そうしたことをも総体的に総合的に検討して、結果的に一本の法律になる場合もあるでしょうし、必ずしもそうならない場合もあるという意味合いで実は私どもの政審会長はこの包括的な個人情報保護法ということを使っているというふうに私どもは理解をしております。  その上で、誤解がないように申し上げますと、今から議論する三党間でのシステム検討会は一つの党がやっているわけではありませんで、それぞれの党が当然ながらそれぞれの党の固有の政策を持ち込んで同じテーブルに着いて議論をするわけであります。  我が党といたしましては、この席でも何度もお答えしておりますように、私はEU型の形というのはおくれた日本にあって非常に検討に値する方向であると思います。さらにはまた、きょうの午前中の毎日新聞中村参考人あたりの御意見も大変傾聴に値する御意見だったと思うのでありますが、やはり自主規制だけではどうしても足りない、そこに法的な効果を与えるということも考える必要があるでありましょうし、そういう意味ではパブリックな部分、それから民間も含めた基本法をつくっていくということも私は方法としてはぜひ考えなきゃいかぬと。我が党もそういう主張を持っているわけであります。  おくれた我が国の現状の中で、この住基のネットワークシステムが動き出す前に何としてもそういう法整備を含めたシステムというものをつくり上げたい、そういう決意で私ども公明党としては、オムニバス方式も検討に値する、あるいは基本法をつくった方がいい、こうしたことは精いっぱい主張してまいりたい、このように思っておるところであります。
  121. 輿石東

    ○輿石東君 用意している質問項目はたくさんありますのでそれ以上申し上げませんけれども、この附則に修正案が出てきた経過からして、公明党さんがその原動力になったわけですから、その責任は大きいというふうに私はぜひ強調しておきたいと思います。したがって、必ずや個人情報保護が担保できるようなものを三党で御検討いただきたい、こう申し上げて、この問題は終わりたいというふうに思います。ありがとうございました。  次に、私は、先日の高嶋委員からもありました納税者番号制度の問題について議論をさせていただきたいと思います。  この納番制の問題についてはもうかなりの歴史があるわけでして、先日の参考人の中でもこれが過去の国民背番号制につながるものだと。グリーンカードの問題も過去にあったわけですけれども、昭和四十五年に中山太郎先生の「一億総背番号」というような本が出たのがきっかけでこういうものがあった。それから派生して、今回のこの住民基本台帳も行き着くところは国が一元的に我々の情報を管理する国民背番号制につながるものではないか、この疑念がずっと続いているわけであります。しかし、これだけの情報一つにまとめて、住基の費用対効果からいえば、できることなら納番制へ利用できないのか、こんな議論もずっとやってきたというふうに思います。  そこで、納税者番号等検討小委員会というのが六十三年に報告書も出されているわけです。この中身については時間もありませんので省略をさせていただきますけれども、大蔵省、見えていると思いますけれども、この納番制度の導入というものを考えた場合に、政府税調等ではこの検討状況も含めて納番制が導入された場合の導入効果、メリットというものを一体どのようにとらえているのか、最初にお聞きしたいというふうに思います。
  122. 福田進

    政府委員(福田進君) お答え申し上げます。  今、先生御指摘のように、政府の税制調査会でこの納税者番号制度については三つ観点から、あるいは三つの類型に整理をして検討しております。  一つは、税務行政の機械化、効率化による課税の一層の適正化を図る、現行の支払い調書やその他の法定調書に番号を付することによりまして、税務行政上、名寄せ制度の向上等を図る、そういった観点一つでございます。もう一つは総合課税の実施の観点から、そして三番目には相続税等の資産課税への利用、こういった三つの類型に整理をして議論がなされているところでございます。
  123. 輿石東

    ○輿石東君 この問題について、今までの審議の中で住民票コードを納番として活用するということの是非について議論をされました。  先日、高嶋委員もこの辺について大臣と質疑を深められたわけですけれども、この折の両者の質疑をお聞きしていながら、大臣はどうもこの住民基本台帳と納番制はリンクしたものではない、将来的にこれへの活用というものについてはかなり消極的だったのかな、議論を聞いていてそんな感じがするわけですけれども、このことについて再度大臣の方から、どうお考えになられているか、お聞きをしたいというふうに思います。
  124. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) 幾つかの視点があると思います。  納税者番号制度導入の是非ということについては、今大蔵省福田審議官から御答弁がありましたが、政府税調においても鋭意勉強していただいております。ただ、もう十年以上ずっと勉強してきてなかなか結論が出ていないというほど事柄は難しいというか、いろんな角度から点検をする必要があると。しかし、いずれにしても、税務行政そのものを円滑に遂行していこうという角度からかなり積極的な検討がなされた時期もありますが、一方で経済取引への影響等々で多少ブレーキを踏むような時期があったり、なかなか結論が出にくいというのが現状ではないか。  そういう点で、平成十一年度の政府税調答申でも、今後、「国民の理解が更に深められるよう、経済取引への影響、民間及び行政のコストと効果、プライバシー保護等の課題を含め、より掘り下げて具体的な検討を進めていくことが必要です。」、こう書いてありまして、率直に言ってアクセルを踏んでいるのかブレーキを踏んでいるのかよくわかりません。それはそれとして、これはしっかり勉強してもらうべきテーマである、非常に大事なテーマだ、そう思っています。  それと、いわゆる今回の住民基本台帳法改正に伴う住民票コードを用いて納税者番号に転用することがどうかという論点は、これはまた別問題であると考えております。これは御案内のとおり、少なくとも九十二事務について利用していただこう、こういうことで別表で掲げておるわけですが、少なくともこれをそういう納税者番号の世界に何らかの形で活用するということであれば、当然のことながら別途法改正を必要とする、それを伴うものであるということが当然あると思います。それからいま一つ、その番号そのものについて一体どういう考えでいくのかという論点もあろうかと思います。  そういう点で、今まだ納番制度そのものが検討中であるということでありますから、なかなか述べることは難しいんですが、やるとする場合にどういう形でおやりになろうとするのか、その結論が出ていない段階でアプリオリに今から申し上げるのはいかがかとは思います。  ただ、少なくともこの住民基本台帳ネットワークシステムにおいては、本人確認情報利用を法的部門における住民の居住関係の確認のための利用に限定しているということを念頭に置いて御検討をいただくべきことではないかというふうに考えております。
  125. 輿石東

    ○輿石東君 答弁をいただいたわけですが、今、大臣からも一番問題になるのはやっぱり民間利用の問題だと。このまま法改正しなければこれは民間利用できないわけですから、それはだめだということになると思います。  非常に単純な発想で今度は疑問があるわけですが、大蔵省にお尋ねしたいわけですけれども、なぜ大蔵省は独自にこれにかかわる番号をつくろうとしないのかなという素朴な疑問があるわけですけれども、これに対してはいかがでしょうか。
  126. 福田進

    政府委員(福田進君) 先生さっき御指摘ございました政府税制調査会におけるこれまでの検討の中で、実は納税者番号として利用し得る番号付与の方式として三つの検討がなされております。一つ年金番号方式、これはアメリカ等で利用されておりますのでアメリカ方式と俗称されております。二つ目が住民基本台帳方式、これは北欧諸国が活用しておりますので北欧方式と呼ばれるものでございます。そして三つ目が課税番号方式でございます。イタリア等が利用しておりますのでイタリア方式と言われております。  この三つについて検証いたしまして、このうち主としてイタリア方式、税務に利用する番号を付与するこの課税番号方式につきましては、所得の把握を行うためだけの番号でございますので、仮にその番号の取得と番号使用を罰則により担保しようとしても、この番号制度国民の間に定着しないおそれがあるのではないか。また、この番号制度の導入とその管理には多額の費用を要することとなりますので、税務だけにこの番号利用することは費用対効果の観点から問題が多いのではないか。さらに、仮に番号付与の事務を国税当局が行うことといたしますると、現在当局が把握しているものは全国民のごく一部にすぎないところから、多数の地方公共団体から必要な記録を一時期に入手し、番号を付与するほか、その後の移動についてもこれを管理する必要があるが、それは事実上困難ではないか。こういう理由によりイタリア方式、つまり課税番号方式については適当でないとされ、結論から申し上げますと、年金番号方式と住民基本台帳方式の二つの方式が有力とされることになりまして、その後の検討においても同様の判断が踏襲されているところでございます。  納税者番号制度としてこれら二つの方式のうちのどちらの番号が望ましいかを判断するには、いずれにいたしましてもそれぞれの番号の実施、検討状況等を見きわめて、国民各界各層におかれて各番号を納税者番号として利用する場合のメリット、デメリットについて十分な御議論をいただくことが必要であると私どもは考えております。
  127. 輿石東

    ○輿石東君 何か今現状では難しいと。三つの方法が考えられる。この住民基本台帳を使うか、年金番号を使うか、その二つの選択の方が可能性がある。しかし、この課税番号方式を使うと非常に費用もかかるしいろんな問題があると。  しかし、そうした課税番号方式、その番号をつくれないことはないと私は思うわけです。もし大蔵省でその番号をつくれば、ずっとこのシステム民間に絶対漏れることはないと自治省も言い切っているわけですから、そして大蔵省と自治省関係の中でこのシステムを導入すれば、民間へ絶対に漏れることはないと言っているわけですから、それをつなぎ合わせれば可能ではないか。全く私の単純な素朴な疑問ですけれども、もし費用対効果という面で言われるならば、そういうことをすることの方がこの住民基本台帳の費用対効果という面ではすばらしくなっていくのではないか。  だから、もう少し端的に言いますと、今利用分野は十六省庁九十二事務あるけれども、この九十二事務一つふえて九十三になったというふうにとらえれば、これはその形でできるのではないかと私は思うのですけれども、その辺について、大臣いかがでしょうか。
  128. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) 率直に言って悩ましい問題だと思います。今大蔵省の方からそれについての検討状況について御答弁もありました。  ただ、今仮の話としての御質問でございますので、仮のお話としてお答え申し上げた方がいいのかとは思うんですが、その独自の納税者番号が仮に導入されると、言うならイタリア方式というんですか、そういう形で導入されるということを前提とした場合は、その納税者番号制に別表事務の拡大という形で住民基本台帳ネットワークシステムを活用していく可能性があるではないかという御指摘であります。これは一つの御提言であると思います。ただ、それの是非については十分御議論をしていただく必要性はあろうかと思います。  もしそういうことであるとすれば、住民基本台帳ネットワークシステムにおいて民間部門における利用を認めていないというこの法体系からして、このシステムをそのまま納税者番号制度に使うということは大変難しい問題があるという上での難点は解消されやすいということは言えるとは思います。
  129. 輿石東

    ○輿石東君 一つの提案として検討する余地はあるだろうという大臣の御答弁だったわけですが、私は四月十三日からずっとこの方、この住民基本台帳システムは絶対に民間に漏れることもなければ制度的にもシステム的にも安全なんだ、こういう主張をされているからこそ、もし大蔵省でそうした限定番号をつくった場合に、大蔵省と全国センターの間でのやりとりになって民間へは漏れないということが裏を返せば言えるのではないかという気持ちがあったものですから、そのように申し上げたわけであります。  最後になりましたけれども、今回の法改正自治省はこの点については必ずしも十分に説明をしていただけなかったわけですが、今回この法の第十一条を改正するということになっているわけですけれども、この第十一条を改正することの理由について最後にお聞きをし、質問を終わりたいと思います。
  130. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  御指摘の十一条は住民基本台帳の閲覧の制度でございます。現行制度におきましては、閲覧につきましては、市町村長は住民基本台帳自体、原本または全体の写し、これを閲覧に供するか、または政令で定めるところによりまして、氏名住所、性別、生年月日の四情報に係る部分の写しを閲覧に供する、この二つの定めがございます。  今回、住民票の記載事項といたしまして住民票コードが追加されることになります。この住民票コードは、厳重な保護措置を講ずるということでございますので、住民基本台帳の閲覧の対象からは除外する必要があるということでございまして、住民基本台帳自体の閲覧は廃止しなければならないということで廃止することといたしました。  さらに、プライバシー保護を徹底するという観点から、住民票コードのみを閲覧の対象から外すだけではなくて、現在政令で定めておりますところを法律において氏名住所、性別、生年月日の四情報に限定して閲覧に供する、こういう改正を行おうとするものでございます。  実は、現行の規定は昭和六十年改正規定されているものでございまして、現実行政事務執行面においては政令で定めるところにより四情報の一部の写しを作成して活用することが望ましいということで、各地方団体、市町村にはそういう方向での事務処理要請してきておりますので、現実の扱いとしましては定着しておりますので、その処理を変更するものではございません。法律上その趣旨を明らかにするというものでございますので特段の問題は生じない、このように考えております。
  131. 輿石東

    ○輿石東君 この住民基本台帳システムとは性格を異にするものでしょうけれども、だからこそ積極的にこれは改正すべきだ、そういうことを主張して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  132. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。  前回、七月二十九日、質問に立たせていただきまして総括的な質問をさせていただいたわけで、きょうも若干個別論点について質問をいたしたいというふうに思います。  その前に、七月三十日、要するに二十九日の夜、翌日の朝方ということでございますが、大きな火事がございました。大阪の豊中というところで、死者が九名、負傷者が六名でしょうか、そういう大きな火事がありまして、築三十五年の木造モルタル二階建てのかなり大きい、延べ面積五百七十六・四平米という共同住宅でございますけれども、海月荘というアパートのようでございます。ちょうど大阪の飛行場のそばで、かなり騒音が大きいということで、国の負担で密閉状態をよくするとか、そういう状況があったようでございますけれども、火災報知器も余りよく聞こえなかったんじゃないかということで、多くの死傷者が出た案件でございます。  いろいろ消防で努力していただいていると思いますけれども、何でこんなふうな大きな火事となったのか。特に九名というのはかなり大きな火事かなというふうに思っております。こういうような大規模な木造建物にはスプリンクラーとかそういうものもあっていいんじゃないか。殊に人命に関する問題ですからそういうふうに思うところでございますが、この大火となった理由、特に多くの人が亡くなったという理由はどのようにお考えになっていますか。消防庁の方、よろしくお願いします。
  133. 谷合靖夫

    政府委員(谷合靖夫君) 七月三十日の豊中市の共同住宅海月荘におきます火災の概要については、既に先生の方から御指摘があったわけでございますが、豊中市の消防本部では一一九番通報による覚知をしたのが午前二時九分ということでございまして、直ちに消防隊が出動をして、職団員合計百三名、出動車両二十一台ということで消火活動を行い、いわゆる鎮圧というのが二時五十六分、そして完全な鎮火というのが午前四時五十五分ということになっておるわけでございますが、今御指摘ございましたような多くの犠牲者が出たということは事実でございます。  この建物につきましては、平成九年一月に豊中市の消防本部で査察をしておりまして、その結果としては、そういうような共同住宅に法令上義務づけられております消火器あるいは自動火災報知設備等については法令の規定どおり設置をされているということが確認をされております。また、居住者からの事情聴取では、今回の出火時にそうした自動火災報知設備が作動して非常ベルが鳴ったということも確認をされているという状況でございます。  ただ、どうしてこのような大きな犠牲者が出たかということについては、多分、夜中であるということとか火の回りが速かったとか、いろんなことがあったと思いますけれども、現在、そうした出火原因とか出火場所、そうした詳細については消防本部の方で調査をしておる段階でございますので、私どもとしては、そうした調査結果を踏まえた上で必要な対応をとっていきたいというふうに考えております。
  134. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今、長官のお話がございましたけれども、査察は前回が平成九年一月ということで既に二年半たっているということでございまして、査察の要員が少ないのかというような思いもあるのですが、その辺もぜひ充実をさせていただきたいというふうに思います。  また、新聞情報によると、消防自動車がなかなか入れないようなかなりの住宅密集地である、あるいは界壁と言うんでしょうか、火の回りを抑えるようなそういうようなものをつけていなかった住宅のように記載がありますけれども、これもかなり細かく点検をしていたらこのように人命が失われることはなかったのではないか、そのように思うところであります。  大規模大惨事の火災というと千日前デパートとかそういうものを思い起こすわけでございますが、そういうことを考えればかなり消防も一生懸命やっていただいているなと思います。消火活動の充実というか事前のいろんなチェックというものがあろうかと思いますが、その辺を考慮してぜひ消防行政を進めていただきたい、このように思う次第でございます。これは意見陳述でございます。  それでは、本題の住民基本台帳の問題につきまして何点か質問をさせていただきます。  参考人等を含めまして、いろんな収集された情報、特に四情報を含めて漏れるのではないかというようなことがかなり言われております。技術的な問題それから人的問題いろいろあろうかと思いますが、この間新聞を見ていましたら、NTT顧客情報流出の案件について、派遣社員が漏らしたという記事が載っておりました、八月二日の朝日新聞でございますけれども。アルバイトというか、そんな感覚で知り合いの社員あるいは派遣社員と連携をとりながら、例えば芸能人の携帯電話をピッピッとやって教えている、そういう記事もございます。また、NTTにしてもあるいは移動通信、NTTドコモにしても顧客データベースというのがあり、それを扱えるのはかなりの社員の数。また、その中でも大半は派遣社員の操作にゆだねられている、そういうようなことがあるわけでございます。  翻って、この住民基本台帳法システムにおいてもかなり委託というような手法がとられるのではなかろうかというふうに思うわけでございますが、いわば内部の人間のレベルを上げるという問題ももちろんありますが、道徳の問題もありますけれども、具体的にどういうようにそういうサイドからの情報の流出がないようにお考えになっているのか、その辺をお聞きしたいと思います。特に内部が一番ポイントかなというふうに思うので、よろしくお願いいたします。
  135. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  このシステムにおきましては今御指摘のような点も確かにあるわけでございますので、例えば操作する者の確認がなされた場合であってもその職員がすべての命令を実行できる権限を持たせるのでなくて、それぞれの資格によりまして扱える情報範囲また内容について制限を設ける、あるいはデータベースのコピーなど非常に重要な命令については複数の職員の承認があって初めて実行できる、こういったシステムづくりをするなどの措置を講ずることといたしておりまして、これによって不正な操作による被害を防止する、こういうふうにしております。  また、データへのアクセス記録また操作記録などをとり、それを適切に管理すると同時に、定期的にチェックを行う体制をとりまして、仮に不正行為がなされた場合でも操作をする者の特定を可能にできる仕組みとする、こういうことで不正行為を抑止するという考え方でございます。  今後とも、さまざまな観点から十分な検討を行いまして、プライバシー保護に有効な技術的な面からの措置も採用してまいりたいと考えております。
  136. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 定期的なチェックというようなお話でございますけれども、これはやはり運用管理者が恣意的に介在していく、それを許さない方式であるべきだというふうに思うんです。万一不正が発生をしたような場合でも、暗号化、ログ情報というんですか、そういうことによって不正が検知できるようなシステムにしていかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  137. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  基本的には御指摘のような点についても十分必要な措置を講じていく必要があると思います。  先日の参考人の方のお話でも、技術的にはセキュリティー上の問題はないけれども、運用面、人間系での適切な対処が必要である、こういう御意見を承っておりますので、そういった人にかかわる問題について、教育の面でもまたシステムの面でも適切に対応していく必要があると考えております。
  138. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今の私の話は、もし万が一不正があっても自動的に追尾できるようなというか、ログ情報をきっちりやっておく、今不正アクセスといった場合に、このログ情報をどこまで保管するかというような問題がありますけれども、それと同じような形で内部のシステムにおいてもきちっと後づけができるような形にしていくべきだ、そういう観点なんですが、いかがですか。
  139. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  御指摘の点につきましては、情報へのアクセス記録また操作記録、ログを定期的にチェックできるように、それぞれの記録、ログをとるとともに管理していく。それで、仮に不正行為がなされた場合でも、操作をした者の特定が可能にできるような仕組みをとることによりまして、不正行為の抑止に努めてまいりたいと考えております。
  140. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それから、これは四情報コードということでございますが、住所氏名生年月日、この生年月日というのは、プライバシーというか、自己の情報をコントロールする権利としてのプライバシー権、この対象にはならないというような発想でこれは組み上がっているんでしょうか、一番基本的な問題ですが。
  141. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  氏名住所、性別、生年月日の四情報についても、プライバシー性の高い、低い、必要性、そういう点はございますが、そのプライバシーを考える場合の対象になる情報であると考えております。
  142. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 参考人の中にも、この四情報ぐらいであればダイレクトメールが送られてくるぐらいではないですかという意見もありました、筑波大の内野教授であります。また、きょうの毎日新聞中村論説委員長も、四情報だけなら漏えいしても致命的なプライバシー侵害にはならないのではないか、そういう趣旨の発言をしております。  ただ、生年月日も基本的には番号でございまして、こういうような事案があったんです。四月段階でございますが、警視庁の捜査という形で、偽造カード、被害相次ぐ、そういう新聞記事であります。キャッシュカードでございますけれども、この被害に遭った名義人というのが東京都内のある区に集中しているとありました。  よく考えてみたら、キャッシュカードの暗証番号というのは、結構生年月日が使われているのではないか。恐らくきょうこの部屋の中にいる人でも、キャッシュカードを持っておられて、自分の暗証番号は何かの記念日だろうと思うんです。それは多分自分の生年月日か配偶者の生年月日か、あるいは子供の生年月日か、あるいは結婚記念日かもしれません。そういう何か記念になる日だろうと思うんです。多くの場合、自分が一番覚えているのはやはり自分の生年月日かなというふうに思うわけでございます。警視庁の捜査の中でも十件ぐらいあるようでございますけれども、どうも区役所コンピューターアクセスして生年月日を手に入れて、それで暗証番号を推測してキャッシュカードを偽造したのではないか、そういうようなことが新聞紙上指摘されております。  区役所では、よく考えてみたら区民税とかこういう税金の関係で、自動引き落としでありますと口座番号までわかるということでございまして、この生年月日もかなり重要だなと。このシステム全国版、一億二千五百万人の方々の生年月日を集めて万が一ばれた場合、大混乱が起きるのではないかというふうに私は想像するんですが、この生年月日の重要性についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  143. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  このネットワークシステムを構成する場合には、プライバシー保護ということを最重要課題として、お話しの点も含めて個人情報漏えいすることがないようにいろいろな方面、制度面からもシステム面からも運用面からも、いずれの面からも厳格な本人確認情報保護措置を講ずる、こういうことにいたしております。  そこでお尋ねの、特に四情報のうち生年月日についてでございますが、住民基本台帳制度でどういう考え方をしているかということとの関連でお答えさせていただきたいと思いますが、基本的にこの四情報は閲覧または住民票の写しの交付ということで、その意味では公開されている情報でございます。しかし、六十年改正を行っていまして、考え方はそうであるけれども、原則は従来の考え方を踏まえながらも、不当な目的によることが明らかな場合または不当な目的に使用されるおそれがある場合には閲覧は拒めるということで、いわばプライバシーの侵害等の不当な目的に使用されることがないように閲覧制度自身も合理的な改善を図ったということでございます。  やはり、住民基本台帳制度の上ではこのようなプライバシー保護の考え方でございますので、今回のシステムを構築するに当たりましてはその点に十分配慮いたしているところでございます。  ただ、四情報につきましては、「本人確認情報の電子計算機処理等に関する事務に従事している者」などは、「みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。」という規定を置いておりまして、法律上一定の保護措置を講じている、こういうことでございます。
  144. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それは、基本は公開になっておりますよ。この部屋の議員の先生方はみんな公人だから、ちょっと調べれば生年月日ぐらいわかる。だけれども、今問題にしているのは、一億二千五百万の人たちのものが万が一漏れた場合の影響性を考えた場合、今おっしゃったようなことだけでは済まないのではないかという思いなんですよ。ちょっと漏れただけで十人で一千万ぐらいの被害が出ているんです、この新聞に載っている事案は二つの銀行からだけでありますけれども、しかも特定の区だけで。だから、どこかの区から漏れているなということなんです。不正にアクセスしたかあるいは内部から漏らしたかどうかはわかりませんけれども。  恐らく私は、自分の生年月日を暗証番号にしている人は結構いると思いますよ。半分ぐらいいるかもしれない。女房の生年月日だったらそんなに覚えていない人もいるかもしれないけれども、自分のは覚えているんじゃないのかなと思うんです。そういうようなことで、もっともっと慎重な取り扱いをすべきではないか、このように注意喚起をしておきたいと思います。  次の問題に行きたいと思いますが、今度は住民基本台帳カードでございます。これは任意に交付するということでございますが、行為無能力者の場合、赤ちゃんあるいはお年寄り、かなり痴呆的になってきた場合、この任意といった場合、本当にその任意性が担保されるのかという問題がございますが、この点はいかがなんでしょうか。特に、赤ちゃんなんて絶対判断できないわけでございますが。
  145. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  住民基本台帳カードは、お話しのように住民の方の任意の請求に応じて発行するということで、交付申請を義務づけられるものではないわけでございます。  お話しのいわゆる行為無能力者等に対するカードの交付等の取り扱いでございますが、保護者である親権者、その他の方、赤ちゃん以外の方ですと後見人とか保佐人という方がいらっしゃるわけですので、そういった方を通じてその是非などを判断するものと、このように考えております。
  146. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 当然親権者という形でやるだろうというふうに思いますが、赤ちゃんから十九歳ぐらいになった場合、十九歳で大学に入った、私は要らないと言った場合はどういうふうな扱いになるんですか。
  147. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  御本人が判断できるお年になって本人がカードは必要ないという場合には、市役所に行っていただいて返却をしていただく、こういうことです。
  148. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 その場合に年齢はどの辺までを判断しておりますか。意思能力という問題でしょうから、小学六年生なのか中学三年生なのか、成人といえば二十でしょうけれども、その辺はどのようなメルクマールを考えているかという問題です。
  149. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  具体的に意思能力を何歳にするかということは、法律をお認めいただいた段階で、実施の段階で十分検討して考え方を整理してまいりたいと考えております。
  150. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そうすると、それは外形的なというか、年齢とかそういうことじゃなくて、実質を重んじて判断するというふうに考えていいわけですか。二十一歳になっても、この人は実際に意思能力が本当にあるのかなという人もいるだろうと思うんです。成年後見制度とかまだできていませんけれども、そうじゃない人、あるいは禁治産者も準禁治産者にもなっていない方、そういう場合はやっぱり市役所の役人さんがこの人はちょっと意思能力が欠けているかもしれないということを判断するわけですか。
  151. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  やはり基本的には年齢何歳ということで決めていくということが適当であろうと思います。  お話しの意思無能力者等の扱いにつきましては、これは現実の問題としては民法の基本的な考え方というものを類推適用していかざるを得ないんじゃないかと思いますが、実務においてはやはり年齢というものを基準に置いて処理するということが円滑な運営からいって適切であろうと考えております。
  152. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そうすると、大学生の場合は外形的な問題じゃなくて十九歳でもオーケーだというわけですか。あるいは高校生の場合は。
  153. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えします。  具体的に何歳かというのは今後検討させていただきたいと思いますが、何歳ということを明らかにして地方団体において処理をしてもらうということが適切であると考えております。
  154. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 カードを落としたあるいはなくなった、だれかが成り済まして使ってしまった場合、何らかの財産的な損害とかが出る場合があるかもしれません。こういう場合はだれが責任を持つのか。特に、未成年で中学生ぐらいだった、親権者の意思でカードを持たせた、だけれどもなくしちゃった、そういうような場合、どういうふうな判断をしておるんでしょうか。
  155. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  住民基本台帳カードはICカードを抱えておりますので、そのいわばセキュリティー機能ということで考えますと、カード自身は物理的な攻撃あるいは不正な電気信号による読み取りに対してそれが読み出せないような機能を持っている。あるいは偽造等はできない、変造等もできない、こういう機能があります。また、不正にカード内の情報の読み取りを行おうとした場合には自動的にカード内の情報を読み取れなくする、こういう機能も持っておりますので、それによって偽造を防止することができるということでございます。  カードを紛失した場合には、市役所の方に届けていただければ、速やかに全国の端末機での利用を停止するという措置も講ずることといたしているところでございますので、盗難されたカードあるいは落としたカードの悪用というものは防止できるのではないかと考えております。
  156. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 大体そんなところだと思いますけれども、今、これは政府の答弁という形でのお話でございますが、もう絶対にそういう偽造とかはないんだ、一〇〇%、という答弁の趣旨で受け取っていいわけですね。万が一起きた場合、ちゃんと責任を持つということですか、局長は。
  157. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  この住民基本台帳カードにつきましては、先日の参考人の方の御意見でも、スマートカード、ICカードの場合には、カードの偽造や変造、改ざん防止については極めて有効であるということのお話がございました。このシステムにおいて高い安全性を有するICカードを使うべきであるということでございます。  具体的なケースにつきましてはそれぞれの事情によって判断しなくちゃならない面もあろうかと思いますけれどもシステムとしては、またカードのハード、ソフトの面においては、セキュリティーの高い、安全性の高いものを構築してまいりたいと考えております。
  158. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 先ほどは、万が一盗難等があって、使われて、財産上の損害があった場合はどうなのかという質問に対して、いや、これは絶対安全だからそういうことは考えませんというか、その先の答弁がなかったわけですね。だから、一〇〇%絶対大丈夫なんだというような趣旨の御答弁だと受けとめざるを得ないんですが、ただ、今、参考人意見を受けて極めて安全だと。その極めてと一〇〇%とはちょっと違うんじゃないのかなというふうに思うわけでございます。  これ以上言っても言葉のやりとりだけで終わってしまうかなと思うので、次に進ませていただきます。  カードの交付を受けて、市町村から引っ越す場合、カードを返すことになっていますね。  この間、みんなで浜松、豊田で四時間ぐらい現場視察という形で伺わせていただきました。あそこで聞いた話は、カードが一枚千四百十一円でしたか、そのぐらいかかるというお話でございますけれども、これは、カードを買うということになるんですか。つまり、あのときはただでございましたけれども、カードの所有権というのはだれが持っているというふうな前提でこの制度は組み上がっているんでしょうか。
  159. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  この住民基本台帳カードにつきましては、住民の任意の請求に基づきまして市町村長が発行されるというものでございます。このカードの所有権につきましては、改正法案成立後、検討していくべきものと考えております。  このカードの所有権のあり方につきましては、確立された考え方が必ずしもあるわけではございません。複数の考え方があり得るものでございます。例えば、発行市町村にある、また住民にあるという考え方があり得るものでございますが、これまで発行した市町村におきましてはその市町村の所有としているケースが多い、こういうふうには承知をいたしております。これから他のカードの事例ども参考にしながら発行主体となります市町村などとも十分調整をして決めていきたい、このように考えております。
  160. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 この一部改正案が通った後考えるというのは、ちょっと何か違うんじゃないかなというふうに思うわけであります。  一般国民から考えますと、例えばクレジットカードとかがあって、新しいのが来ると、古いのははさみで切ってごみ箱に捨ててください、多くの人がそれを経験していると思うんです。恐らく局長あるいは大臣も自分で切った記憶があるだろうと思うんですよ。──ないですか。大臣はお財布は持たないのかもしれませんけれども。  要するに、多くの人は不要になったカードというのは切っちゃうと。そうすると、所有権がどこにあるかわからないものを切っちゃってどうなっちゃうのかなというような思いがあるわけです。  それから、カードの中にはいろんな工夫が想定されています、工夫というか用途ですね。それは医療情報であるとか、福祉情報とか入ります。もし医療情報が入ると、多分お医者さんが書き込むような形になるのかもしれない。そうすると、そのお医者さんの著作権といいますかそういう問題もこのカードに載っかるのかなというようなことも考えますと、はさみで切っちゃう場合はもういいんですけれども、単に返納するということだけで、これどういうふうに考えれば一番すっきりできるのかというところでございますが、まだ法案は通っておりませんけれども、あらかじめその辺の問題について整理して教えていただきたいと思います。
  161. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  住民基本台帳カードにつきまして、転出転入の場合に、このカードは転入地において転入届を行う際に添付してもらって返してもらう、それで転入地の市町村を通じて転出地の、前の住所市町村に返納させる、こういう方向で検討をいたしております。  具体的には、やはり主体となります市町村など地方公共団体で十分御相談いただいて、また私どもとも相談していただいて決めてまいりたいということで、法律がお認めいただいた後にそういった協議を具体的に開始したい、こういう趣旨でございます。  それで、お話しの、カードの内部に記録された情報がどうなるかということでございます。  物理的な面では、転出地の市町村に返納されたカードについては、中身も含めまして責任を持って廃棄されるべきものと考えております。中身の情報につきましては、所有権というよりも情報の管理権の問題でございますので、それについてもきちっとした、物理的に廃棄する、基本的にはそういう考え方で臨むべきものだと考えております。
  162. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 責任を持って廃棄と言うんだったら、自分のカードですから、持っている方が自分で廃棄した方が本人にとっては一番いいんじゃないのかなというふうに思うところでございます。  今の局長のお話ですと、転入転出のときに、カードが発行されている場合はカードを添付しないと転入届は受け付けないということなんですか。カードを持っている人でも転出証明書はとれますでしょう。転出届を添付して転入届を出せばいいはずであって、別にカードを持っていかぬでも転入は受け付けるんじゃないですか。
  163. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  転出転入にカードを利用する場合には、転出転入の特例手続に乗れますので転入地の方の手続が一回で済むというメリットがございますので、カードを利用していただければ転入地の方で今申し上げましたように返納の手続をとれる。  それから、転入転出のときにカードを利用しない場合でございますけれども、転出地の市町村ではカードの発行の有無がわかりますので、それについては住民の方にカードを返してもらうようにすることによりましてきちっと回収をする、こういうことでございます。
  164. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 では次に、指定情報処理機関には本人確認情報保護委員会というものが設けられるようでございますけれども、この設置目的というものはどういうふうになるんでしょうか。簡単に説明してください。
  165. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  指定情報処理機関には本人確認情報保護委員会というものを設置するということで、学識経験を有する者を委員として構成する、それで本人確認情報に係る事務処理を客観的にチェックして必要な意見を述べるということでございます。  具体的な役割としては、指定情報処理機関において、本人確認情報保護対策について技術的な面から、保護対策を講ずるに際して専門的な立場からの意見を述べていただく、また、住民の方から寄せられますさまざまな苦情とか相談に適切に対応するための意見を述べる、こういうことを予定いたしております。さらに、改善すべき点があるとの認識を持った場合には、諮問を待つまでもなくみずから意見を申し出ることができることといたしておりまして、一種の監視機関として牽制機能を果たすことを期待しているところでございます。
  166. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 この保護委員会委員の任命権者は、指定情報処理機関の代表者ですね。そこに意見を述べるという形になるわけで、本当にこの保護委員会としての機能、今設置目的でおっしゃっていましたけれども、その目的を達成できるのかどうか。自分に気に入らなかった意見が出たら解任すればいい話ですからというような危惧がありますが、その点はどうですか。
  167. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  おっしゃるように代表者が任命するわけでございますが、この保護委員会委員の方は学識経験を有する者のうちから適任者というものを選んで、本来の法の趣旨に沿った運用を期待いたしたいと思うわけでございます。  この任命方式につきましては、いわゆる指定法人におきます一般的な構成の仕方がこのようなことが通常なものですから、そういう形をとっております。  自治省といたしましても、指定情報処理機関に対しましては、プライバシー保護措置も含みますが、本人確認情報の管理規程については認可を行う。また、監督命令、報告及び立入検査、業務の適正な運営がなされない場合の指定の取り消しなどを行うこととしているほか、都道府県の方でも、事務を委任するわけでございますから、指定情報処理機関に対しまして事業計画の作成についての意見が言える。また、監督について業務の適正な実施の確保のために必要な措置を講ずることの指示ができる。また、報告、立入検査などができるということでございますので、こういったことで適切な運営というものを確保していけると思っております。
  168. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  169. 富樫練三

    ○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。  最初に、プライバシーに関する問題について伺いたいと思います。  プライバシー保護についてでありますけれども、もう現在既に世界的な流れとしては個人情報に関する活発な議論が展開されております。全体としては個人情報保護の方向に漸進しているわけですけれども、その中でも一九九五年のEU理事会指令、これは個人データ処理に関する現時点での定式化された、そして世界的に大変大きな影響を与えている基準だというふうに思います。  この理事会の指令では、データ処理の適法性の根拠に関する原則というのがありまして、その第一にデータ主体の明確な同意というものを挙げております。このデータ主体の明確な同意ということについてどういうふうに理解しているのか、まず最初に伺いたいと思います。
  170. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) EUの理事会指令の第七条におきまして、構成国が個人データ処理を行うことができる場合として、データ主体が明確に同意を与えた場合のほか、幾つかのケースを認めているところでございます。  データ主体の同意というのは第二条に定義されておりまして、データ主体が、自己に関する個人データ処理されることについて同意を表明することによる、自由に行った特定のかつ通知された意思表示をいうものと、このようにされております。
  171. 富樫練三

    ○富樫練三君 ということは、すなわち個人情報の主体である国民の同意、これが大前提になっているということだと思うんですけれども、今回提案されておりますネットワークシステム、このシステムではこのデータ主体の明確な同意というのはどういうふうに生かされていますか。
  172. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  EUの理事会指令におきましては、構成国が個人データ処理を行うことができる場合といたしまして、データ主体が明確に同意を与えた場合。そのほかに、一つデータ主体を当事者とする契約の履行またはその準備のために必要な場合。また二つ目は、管理者の法的義務の遵守のために必要な場合または公的権限行使のために必要な場合。それから三つ目は、管理者またはデータの開示を受ける第三者等の適法な利益のために必要な場合。こういった場合には個人データ処理を行うことが認められているということでございます。  今回の改正法案は、このうち二番目の、管理者の法的義務の遵守のためまたは公的権限行使のために必要な場合に該当するものと考えられまして、この法案はEU指令の趣旨を踏まえている、このように考えております。
  173. 富樫練三

    ○富樫練三君 このシステムがなくても住民票の写しはとれますよね。このシステムがなくても通常の業務はできますよね。したがって、今回新たにこういうことで個人データ処理するということになれば、当然のことながら今までの制度でできたもの以外にプラスしてやるわけですから、本人の同意が条件になるのではないかと。これがEUの指令の考え方ではないかというふうに私は思うんです。  こういうEUの指令の結果として、ドイツやカナダの場合には個人認証制度では申請主義というふうになっております。これは、対象がイギリス、ドイツの場合では十六歳以上というふうになっているわけですけれどもデータ主体の明確な同意ということ、一定の年齢以上を対象にして申請主義を採用することによって個人認証システムが保障される、こういうことになると思うんです。  ところが、今回出されております法案では、出生と同時に一〇〇%の国民がこの個人認証システムに登録されることになります。どうして政府は、国民の同意なしに、判断する力さえない生まれたばかりの子供を含めて住民番号をつけて、それをネットワークに載せるのか。こういうことでは完全に個人の主権は無視されてしまうのではないかということなんですね。  これは以前からずっと議論されてきておりますけれども、最近のプライバシーの概念というのは個人情報のコントロール権、こういうふうにも言われているわけなんですけれども、これでは個人情報をコントロールする、そういうことができなくなってしまうわけですけれども、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  174. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  EU理事会指令におきまして、先ほどもお答えいたしましたが、第七条においてEUの構成国、国が個人データ処理を行うことができる場合は、御指摘のデータ主体が明確に同意を与えた場合ということもありますが、そのほかに、管理者の法的義務の遵守のために必要な場合、または公的権限行使のために必要な場合に個人データ処理を行うことが認められているわけでございまして、今回の法案につきましては、この制度面のプライバシー保護措置といたしまして、本人確認情報の提供先、また利用目的を法律により具体的に限定する。また、安全確保措置及び秘密保持について法律上義務づける。そのほか、提供先が本人確認情報を目的外に利用することを禁止する。民間部門の住民票コード利用禁止。これらを法律によって規定しているということで、EUの指令というものの趣旨を踏まえているというふうに考えております。
  175. 富樫練三

    ○富樫練三君 私は、EU指令の趣旨を踏まえているというふうにはなかなか理解できないわけなんですけれども法律利用内容を限定するからいいんだと、こういう答弁のようであります。  これに関してですけれども、六月二十八日、参議院の本会議で小渕総理はこういうふうに言っています。「改めて制度面、技術面、運用面にわたり個人情報保護に万全の措置が講じられるよう指導いたしたところであります。」と答弁しておりますけれども、この三つの側面から改めてプライバシー保護の問題について伺いたいと思います。  その一つは、今度の住基台帳法といわゆる個人情報保護法、これは六十三年十二月制定の、正式には行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律、いわゆる個人情報保護法でありますけれども、この関係について伺いたいと思います。  市町村から県のセンター、全国センターを通じて十六省庁に入った個人情報、いわゆる住民票コードがついている内容、これが十六省庁九十二事務に活用される、こういうふうになっているわけでありますけれども、その個人情報というのはいわゆる個人情報保護法の規制を受けることになりますか。どうでしょうか。
  176. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) 国の行政機関が電子計算機処理をされた情報として保有するということであれば、それはただいま御指摘の個人情報保護法の対象になります。
  177. 富樫練三

    ○富樫練三君 そうすると、その昭和六十三年につくられました個人情報保護法の規制の中に入ると。  そうしますと、この各省庁に行った情報というのは、住民票コードがついている情報ですね。それと従来その省庁で保有していた情報とがここで接続されるわけですけれども、そういう情報というのは各省庁間やそういうところのデータとは接続することはできないというふうになっていると思いますけれども、それは間違いありませんか。
  178. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) 行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律では、その法律の第九条の第二項で例外的に目的外利用、提供を認めておりますが、同時に、個人情報保護法の九条三項では、「処理情報利用又は提供を制限する他の法律規定の適用を妨げるものではない。」ということで、他の法律によって制限をされている場合には提供されないということになります。
  179. 富樫練三

    ○富樫練三君 ということは、個人情報保護法では各省庁間の横の連絡というか横の接続はできないことになっている、例外はありますけれども。ただし他の法律で決められたことを妨げるものではないというのは、ここの場合でいえば住民基本台帳の方が優先するというふうに理解してよろしいですか。
  180. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) ただいまの個人情報保護法第九条第三項では、「処理情報利用又は提供を制限する他の法律規定の適用を妨げるものではない。」と規定をしておりますが、この点につきましての目的外利用、提供の規定につきましては住民基本台帳法が優先すると考えております。
  181. 富樫練三

    ○富樫練三君 ということは、目的外の利用はできないということになると思うんですけれども、今まだ新しい住基台帳法はできていないわけですから、従来その個人情報保護法の第九条二項の例外規定を使ってどういうところに各省庁から個人情報が提供されていたか、主なものをちょっと挙げてみてください。
  182. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) 主なものの例として申し上げますと、例えば総務庁であれば恩給等受給者データベースを平和祈念事業特別基金の方に提供している、あるいは厚生省の援護年金個人データファイル国民金融公庫に提供している、あるいは外国人出入国記録マスターファイルを大蔵省の税関の方に提供しているといったような例がございます。
  183. 富樫練三

    ○富樫練三君 ということは、従来だと、いわゆる住民票コードがくっつかない段階で、そういうものであればそれぞれの団体や特殊法人とかそういうところに、今各省庁が保有しているデータを流すことは第九条の二項の例外規定によってこれは可能だと、こういうことになりますね。それは、例えば社会保険庁でいえば被保険者のファイルを年金福祉事業団に提供するとか、船員保険の被保険者ファイルをこれも年金福祉事業団に提供するとか、あるいは運輸省でいえば自動車登録ファイルを自動車検査登録協力会に提供するとか、こういうことが可能だ、あるいは省庁間でもそれは可能である、こういうことになりますね。  そうすると、今回この住民基本台帳ネットワークができますと、市町村にある個人情報がナンバーをつけられて全国センターを通じて各省庁に行く、そこで今まであった情報と一緒になる。今の説明では、この情報を九条の例外規定によってこれらの例えば年金福祉事業団であるとか、こういうところには行かないはずなんだけれども、しかしながらそれを行かないようにチェックする機関というのはどこにあるんですか、そこをチェックするのは。
  184. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) 指定情報機関から本人確認情報の提供を受けるものとして別表で定められているのは、国の機関等でございます。この法律によりまして本人確認情報を取り扱うことが認められたいわば国の機関、公的な機関でございます。このような機関が目的外利用することは禁止をいたしているところでございまして、法律規定された目的に沿って適切に本人確認情報が取り扱われる、このように考えております。
  185. 富樫練三

    ○富樫練三君 どこにチェック機関があるのか。禁止されているというのはさっきの説明でわかったわけですから、それをちゃんとチェックする機関があるのかどうかを聞いたわけなんです。  あわせて、もしもそういうことが行われた場合、第九条の二項というのがあるんですから、そっちの方を優先させて、そうすればよその団体にこの情報を流すことは可能なんですね。今までやっているような形で仮に行ってしまったとします。そうなった場合には罰則とかそういうものはあるんですか。
  186. 瀧上信光

    政府委員(瀧上信光君) 行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律の第十条で、「受領者に対する措置要求」という規定がございます。十条を読みますと、「保有機関の長は、前条第二項」というのは目的外の利用、提供でございますが、「の規定に基づき、処理情報を同項第三号又は第四号に掲げる者に提供する場合において、必要があると認めるときは、受領者に対し、提供に係る処理情報について、その使用目的若しくは使用方法の制限その他必要な制限を付し、又は安全確保の措置を講ずることを求めるものとする。」というような規定がございます。
  187. 富樫練三

    ○富樫練三君 今のはちょっと違うんです。それは、今の答弁は、ある省庁から、例えば社会保険庁から年金福祉事業団に情報を提供するときに、それを受け取った年金福祉事業団に対して、こういうふうに使いなさいと、こういうふうに条件をつけてデータを流すんですと、こういう話でしょう。そもそも流しちゃいけないというもの、今度はそういう制度になるわけですから、住民票コードがくっついた場合には流しちゃいかぬ、こういうことになるわけだから、それをどこでチェックするのか。もしも間違えてやったり、万が一そういうことが行われた場合には、それには罰則があるのか、こう聞いているんです。
  188. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  この住民基本台帳システムから本人確認情報を得た国の機関等は、お話しのように、その情報というものを目的外に利用することを法律上禁止いたしているわけです。それで、罰則規定等の規定はございませんが、例えば当該機関の職員に国家公務員法あるいは地方公務員法が適用される場合には、法令遵守義務に違反するということになれば懲戒処分の対象となるということでございます。また、運用面においてやっぱり内部のチェック体制というものが重要でございまして、情報保護管理者の設置、あるいは監査などの管理体制の措置、当然個人情報保護の意識の向上、安全・正確性の確保措置の徹底といった措置を十分に講ずることによりまして、本人確認情報保護を図ってまいらなけりゃならないと考えております。
  189. 富樫練三

    ○富樫練三君 要するに、公務員としての一般的な守秘義務の問題であるとか、それから法律で禁止していると、これはもうそのとおりなわけなんだけれども、事は個人データ個人情報住民票コードと結びついて、かつ、今まで各省庁に蓄積されている個人情報とこれが一緒になるわけなんです。これが例えば年金福祉事業団であるとかそういうところの団体に流れていくという場合、これは通常の守秘義務の問題や、あるいはちょっと法律から踏み外した問題とは質が違うんです。  そういうことが行われて、チェックの機関もはっきりしない、あるいは罰則も一般的だと、こういうことになれば、万が一流れた場合に、その情報についてはその本人国民の側ですね、その情報の御本人はどこにどういうふうに流れているかもわからない、どういうふうに使われているかもわからない、まさにコントロール権はなくなっちゃうわけなんです。ですから、その情報を仮に提供された場合でも、そこのところできちんとストップできるような、そういう仕組みにつくっておかなければ、本当にプライバシーを守る体制は万全だ、こういうふうには言えないということだと思うんです。  ですから、今のこの仕組みでは、少なくとも万全な仕組みだということは私は言えないというふうに思っているんです。これは、十六省庁の九十二事務住民票コードは少なくとも結びつくわけですよね、別表で掲げられているのがあるわけですから。それは、使う目的があるからあの九十二事務が全部別表で出されたわけでしょう。ということは、確実にこれは住民票コードと結びつく、そういう中身ですね。ということは、少なくとも今後は、この法案が通れば、九十二事務については、先ほど言いました、各団体には情報は今後は一切流さない、こういうことで既に合意になっているんですか。それぞれの行き先、今まで情報提供され、受けていた団体との関係では、そこはもうはっきりしているわけですか。
  190. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  このシステムから本人確認情報を提供する機関と事務、目的につきましては、今お話しのように、法律上において明確に規定しているところでございまして、その範囲内において利用することができる、目的を超えて利用することはできないということを法律上明らかにしておりますので、その点については受領機関、国の機関等においても法律にのっとった利用をしていただけると考えております。
  191. 富樫練三

    ○富樫練三君 今まで、例えばこれは平成九年度一年間で外側の団体、特殊法人などに情報を提供した。提供された方の側として、先ほどの年金福祉事業団とか、厚生年金基金連合会であるとか、自動車検査登録協力会であるとか、労災ケアセンターであるとか、労災年金福祉協会であるとか、国民金融公庫、それから沖縄振興開発金融公庫、その他たくさんあります。大学関係幾つかあります。九十二事務とかかわる事務に関しては、こういうところには今後一切情報は行かないという意味なのか、それとも、情報を提供するときにはもとの状態に戻して、住民票コードを切り離して、今まで保有していた個人情報と、後からつけ加わった住民票コード、これは切り離して、それで送り出すんだ、こういう意味なのか、どっちですか。
  192. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  このネットワークシステムから提供されました本人確認情報コード等をお考えいただいていいですが、それにつきましては、別表に掲げられた機関において規定されました事務処理のために使われるということでございますので、別表規定されていない機関において利用するということはありません。
  193. 富樫練三

    ○富樫練三君 ということは、住民票コードを切り離すのではなくて、切り離さないまま省庁で保管するけれども、それを外側に出すということはしないということとして理解してよろしいですね。それをちょっと確認しておきたいんです。
  194. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) 本人確認情報を受領する国の機関等においてどのようなデータ管理をするかによりますが、コードのついたデータというものが法律規定する機関以外に使われるということは、法律はそういうことを禁止いたしております。
  195. 富樫練三

    ○富樫練三君 先ほど言ったような状態ですから極めて危ないというふうに私は思うんです。  次に、総理はこの間こういうふうに言っているんです。プライバシーに関する基本認識一つとして自己情報をコントロールするということを示したわけなんですけれども、これが最後までちゃんと貫かれるかどうかという問題、今の問題とも関連するわけですけれども、ここが大事だというふうに思うんです。  市町村住民基本台帳の四情報プラス住民票コード、これが都道府県から全国センターに集まって十六省庁に行く。市町村から都道府県そして全国センターまで、ここの部分は自治省資料を見ると専用回線と書いてあるんですよ。この全国センターから十六省庁に行くところには何も書いていないんです。市町村から全国センターまではわざわざ専用回線と書いてあるんですよ。そこから先は何も書いていないんですけれども、これはどういう形で情報が送られるんですか。
  196. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  本人確認情報を受け取ります国の機関などにつきましては、本人確認情報利用の態様というものはさまざまでございまして、必ずしもリアルタイムの情報を必要とするものかどうかということでありまして、法律上一律に電気通信回線を通じてその情報の提供を行う必要があるかどうかということで、具体の事情に応じて提供方法というものを決定していくということでございます。  それで、では具体的にどうするかということでございますが、本人確認情報を提供する場合の技術的な方法については、今後、慎重な検討を十分に行った上で決定していくべきものと考えております。考えられる方法といたしましては、一つは磁気媒体を通じてデータ提供を行うという方法があります。もう一つは、ファイアウオール機能を介しまして、専用回線を用いて接続を行うという方法もございます。  いずれにいたしましても、この国の機関等の安全確保措置というものは当然義務づけられておりますので、個人情報保護を第一に十分なセキュリティー措置を講じていく、こういう考え方でございます。
  197. 富樫練三

    ○富樫練三君 そうすると、一つは磁気媒体、フロッピーディスクとかそういうものを使って移動するということになれば、これはかなり危険性は高いですね。フロッピーディスクというのは、恐らく人間が運ぶんでしょう、自動的に行くんじゃないんですよね。車で運ぶんだか何で運ぶかはわからないけれども、要するに人間が直接そこに介在します。これは幾らでもコピーをとれるものですから、別に私は人間を悪く思って言っているわけじゃないんですけれども、そういうことが可能性の問題としてはある。これは非常に危険です。  ファイアウオールを介したオンライン接続、これは専用回線と今おっしゃいましたけれども、そこのところは専用回線をちゃんと確保するということですね。そういうふうに理解してよろしいですか。
  198. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  フロッピーディスクなどの磁気媒体を通じた処理、バッチ処理を行うということも考えているわけでございます。それについて今御指摘ございましたけれども、記録する情報暗号化するという方法も講じることが可能でありますし、第三者が内容を読み取れないようにすることも検討してまいりたいと考えています。また、専用ケースなどを使用しまして、物理的な衝撃に対しても必要な保護を行った上で運搬する、こういうことなども考えております。  いずれにいたしましても、国の機関等の責任におきまして適切な措置が講じられるものと認識をいたしております。  専用回線につきましては、ファイアウオール機能を介した上で専用回線を用いて接続を行う方法ということも考えられるところでございます。
  199. 富樫練三

    ○富樫練三君 現在では専用回線でも危ないというふうに言われているぐらいでありますから、そういう点でいえば、では一〇〇%大丈夫な方法はあるのかというふうにそれはおっしゃられるかもしれませんけれども、残念ながら今のコンピューターの技術でいえば一〇〇%というのはあり得ないわけなので、開発した新しい技術をつくるということは、同時にそれを壊す技術も発達するわけです。ですから、そういう意味では一〇〇%というのはないだろう。  そういう意味で、ファイアウオールということも考えているんだろうとは思います。だけれども、そうなると、また新しい別の問題が出てくるんです。このネットワークシステムはいわゆる分権分散型なんだということで、ネットワークシステムの枠というのは国の機関までは入らないんだ、市町村コンピューターから全国センターまでの間なんだ、国との関係はここはカットしてあるんですよ、ここの範囲だけがいわゆるネットワークシステムと称しているものなんだ、こういうふうな説明は以前衆議院の方でもあったかと思うんですけれども、ここがもし国の機関との間で専用回線で結ばれるということになれば、まさにそれは中央集権型のネットワークシステムになるではないか、こういうふうに率直に思うわけですけれども、どうですか。そういうことになりませんか。
  200. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  全国センターの方から国の機関等へ提供するに当たりましては、専用回線を通じて行う場合であっても、必要な情報については全国センターの方でデータベースから抽出して国の機関に送る、こういうシステムでございます。
  201. 富樫練三

    ○富樫練三君 要するに、専用回線を通じて国の方は必要なデータは全部全国センターから受け入れることができる。全国センターの方で判断して、例えば文部省からこういう情報を出してもらいたいと言われたときに、いや、その情報はお宅の方には渡すわけにはいきません、十六省庁の九十二事務に関して言えば、これはすべて全国センターは判断抜きでその情報は国の機関に出すことになるんでしょう。そういう仕組みなんでしょう、違いますか。
  202. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  今のお話の前提といたしまして、国の機関等がこの本人確認情報利用する事務については、法律規定している事務処理に関して全国センターから国の機関等へ提供するということでございます。法律上の根拠なく指定情報処理機関から本人確認情報の提供を受けることはできないわけです。システム的には全国センターが国の機関等に本人確認情報を提供する場合には、ICカードあるいは暗証番号などによりまして厳重な操作者の確認を行った上で、必ず指定情報処理機関が必要な情報の抽出を行ってそれを提供するということでありまして、国の機関が直接データベースにアクセスするということは認めないということで考えております。
  203. 富樫練三

    ○富樫練三君 いや、要するに、私が聞いているのは、市町村にあるコンピューター、それがコミュニケーションサーバーに四情報が移されて、市町村の段階で、そこからは要するに県、全国センターを通じて十六省庁まで専用回線で全部つながるということじゃないのか、こう言っているんですよ。その中で国の機関だけを除いたところが今度のネットワークシステムだと、こういうふうに自治省は説明をするんだけれども、実際は専用回線で国の機関まで直結しているじゃないか、こういうことを言っているんですよ。システムとしてはそういうことなんでしょう。
  204. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  今回のシステムは、市町村のところから申し上げますと、住民基本台帳データベースとコミュニケーションサーバーとを切り離して、市町村のコミュニケーションサーバー、それから都道府県のサーバー、全国センター、これを専用回線で結んだ一つシステムでございます。市町村住民基本台帳データベースとの関係は、ファイアウオール機能を介する、あるいはフロッピーディスクなどの磁気媒体を使うという形で、いずれにしろ一つの遮断機能を持ったもので、そういう機能を持たせるということでございます。  他方、全国センターから国の機関も同じようなことでございまして、そこについては、専用回線で結ぶとしてもファイアウオールでこのシステムというものを区切る、または磁気媒体で国の機関に提供するということでございますから、市町村から県、それから全国センター、これが一つシステム、このように御理解いただきたいと思います。
  205. 富樫練三

    ○富樫練三君 時間がなくなりましたので次に進みますけれども、要するに、システムとしてはそういうふうに市町村から国まで専用回線で結ばれる、こういうことだと思うんです。  そこで、運用面について一つ伺いますけれども、きょうは皆さんのお手元に主な個人情報流出事件についての資料を配らせていただきました。これは、民間の中で起こっている流出事件やあるいは住民基本台帳と直接関連する流出事件、こういうのがあります。  最初の方の二ページ目までのところが住基台帳関連です。これで合計十件の流出事件があるわけなんですけれども、その中で、今回の住基台帳法の改正公務員に対する大変厳しい罰則や規制を加えている、こういうふうに言われているんですけれども、この十件のうち地方公務員が直接流出にかかわったものというのはわずか一件なんです。一番多いのは、ダイレクトメール業者がやっているのが一番多い。中には行政書士さんであるとか弁護士さんとか、そういう方がかんでいるのもあるわけですけれども、要はこういう人たちが事件を起こしているわけなので、公務員だけではなくてその外側に位置している人たち、そういう人たちに対して今度の住基台帳法での規制というのは具体的にはどういうことをやっているのか、この点についてお答えをいただいて、私の質問を終わります。  時間がちょっとオーバーして済みません。
  206. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  このシステムに関連いたしまして電算処理業務の外部委託を行った場合には、電算処理業者に本人確認情報漏えいを防止するための安全確保措置を講じることを義務づけております。また、電算処理に従事する者につきましても、通常よりも重い罰則により担保されました秘密保持義務を定めているということでございます。
  207. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。  きょうも午前中、参考人三名の方から貴重な御意見をお聞きいたしました。私は、この法案審議を重ねる中で、参考人意見や、あるいは法案の細かい議論を尽くせば尽くすほど、やはりプライバシー権利保護との関係で疑念が深まる思いがするわけであります。  さて、きょうは先日に引き続きまして局長中心に御答弁をいただきたいと思いますが、先日どうしても私が納得をできなかったのは、今度の改正法案では、本人確認情報の提供を受けた行政機関が住民票コードを含む本人確認情報使用し終わった後、これを消去する明確な法文上の規定がないということであります。  これはやっぱり所定の事務を遂行する際に本人確認のためと目的を限定されて使用するわけでありますから、私は、本人確認が済んだら直ちにその情報を廃棄すべきである、消去すべきである、こういうふうに思うわけです。それが廃棄、消去の明確な規定がないということになりますと、どうしても保存し保管をされて情報が蓄積されていく。こういうことが許されていいはずはありません。したがって、廃棄の規定がないというのは私は大いに不満であり疑問であります。  局長は、そこらあたりは政令で整備をするんだという趣旨のことをたしか先回おっしゃっておったと思いますが、廃棄、消去の規定が明文上ないということになりますと、私は、プライバシー保護との関係で大変重大な問題を持っておる、同時に、提供を受ける機関がそれぞれに取り扱いを明記する、そういうふうな規定を体系的に整備しないといかぬのではないかというふうに思いますが、改めて局長の御答弁をお願いいたします。
  208. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  本人確認情報使用が終わった後の消去についてでございますが、これは都道府県あるいは指定情報処理機関など、またお話しの国の機関など共通の問題でございますが、本人確認の受領者に対しまして、不要となった情報についての消去を含めました本人確認情報安全確保措置義務が課せられるということでございまして、こうした情報保護は適切に図られるべきものと考えております。  具体的には、安全確保措置として、本人確認情報の内部管理規程に情報の消去に関する事項を定めるということ、もちろんそれによるしっかりした管理の実行ということが必要でございますが、こういうことで必要な措置が講じられるというふうに考えております。
  209. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 局長、私はこの前も申し上げたんですけれども、いかにも安全確保措置義務なんというのはこれは極めて抽象的で、そういう義務規定によってどれだけ実効ある措置がとれるかというと、私は、とてもとてもそういう規定では不十分であって、なぜ消去、廃棄の規定を明確に設けないのか、設けてしかるべきだと思うんです。  というのは、それぞれの行政機関が、今は十六省庁九十二の事務ですか、あるいは市町村が使う場合もあるかもしれませんけれども本人確認情報をそれぞれの目的に沿って使い終わったら当然廃棄すべきじゃありませんか。蓄積されるのが私はおかしいと思うんです。いかがでしょうか。
  210. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  本人確認情報の取り扱い、特に安全確保措置をどのように具体的に実行していくかということとかかわると思います。特に、消去、本人確認情報については、具体的にこの情報、四情報プラスコードというものをそれぞれの行政機関が処理する事務のために使うわけでございますから、どのぐらいの期間が必要とするかというものは、これから具体的に利用事務が決まった段階で相談していくわけでございますが、そういったその後の消去ということでございます。  それで、その具体的な消去につきましては、例えば本人確認情報に係るデータベース自体の消去もありましょうし、それから本人確認情報の記録媒体の初期化などによって行うこともありましょう。そういうことで、安全確保措置の中の内部管理規程、あるいはアクセス記録、それから個人情報の管理、そういったことの中で具体的に消去についての取り扱いというものを定めていくということになります。  したがいまして、そういうことで具体的にはそれぞれの必要に応じた適切な消去について、情報管理についての規定というものが整備されるということが必要であり、またそのように今後とも国の各機関等には要請してまいりたいと考えております。
  211. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 局長、この法案に多くの国民が率直にみずからの保護されるべきプライバシー権利との関係で大変重大な危惧の念を抱いて、この法案審議の行方に関心を持っておられる。今言った安全確保措置義務とか、そういうことじゃ疑念が払拭されない、制度的に不十分だというところも強いと思うんです。  先ほど富樫理事からも質問がございましたけれども本人確認情報の提供を受けた者に対して目的外使用をしちゃいかぬという禁止規定はあります。これは三十条の何項かにそういう規定が書いてある。しかし、それについては消去規定も廃棄規定もない、ましてや目的外使用があった場合の罰則規定もないわけでしょう。罰則規定がございますか。
  212. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  国の機関等において、本人確認情報については目的外利用の禁止ということでございます。国の機関あるいは公的な機関ということで罰則規定は置いておりません。
  213. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 罰則規定もなければ、国民の側からそれを監視する、あるいはそういう目的外使用があった場合の請求権としての中止を求める権利、そういったものも法文上定められておりませんね。
  214. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  本人確認情報の提供を受ける国の機関等でございますので、同じ考え方で中止請求権というものを設けてはおりません。
  215. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私はそこが大きな問題だと思うんです。国の機関だから、あるいはお上がやることだから、公務員がやることだから安心して任せなさいといっても、そうはいかぬと思うんです。これだけの高度情報化社会の中で、いろんな参考人からの御意見もありましたけれども、やっぱり国民の側にも、一方で目的外使用があった場合にはきちんと監視ができる、そしてみずからのプライバシー権利に基づいて中止請求権も担保されるというふうなことがないと、国のやる機関だから任せなさいといっても、それはとてもとても納得できない、こういうふうに私は思います。そういう点ではこの改正案は極めて不十分であるというか、プライバシー権利との関係では致命的な欠陥を持った法案であるというふうに言わざるを得ません。  ところで、せんだって、行政文書の保存期間とそれから実際の廃棄手続との関係で、本住民基本台帳システム情報の廃棄の問題、極めて技術的な問題としてどういうことが可能かということをお聞きしたときに、局長はその段階では十分お答えいただけなかったんですが、その後わかったことがありましたらお教えいただきたいと思います。
  216. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  個人情報本人確認情報の廃棄、消去でございますけれども幾つかの方法がございまして、本人確認情報の記録媒体、フロッピーディスクなどを初期化するという方法、また本人確認情報に係るデータベース自体の消去を行うといった方法によりまして、確実かつ安全に消去を行うべきものと考えております。  具体的な手順というんでしょうか、技術的な側面から申し上げますと、データベース、フロッピーディスク等の中から消去すべき関係ファイルを抽出して、それを削除するプログラムを実行するということで情報が消去されるということで、いわばシステムとして、例えば何年と期限を決めましたら、その期限が来たら消去される、こういうふうにシステム上において措置するという考え方でございます。  また、こうした本人確認情報の消去が適切に行われたかどうかを確認するため、消去の実行記録、こういうものを保存する。そこには消去日時とか消去者とか消去範囲とか、そういったことが記録されるということで、確実なデータ消去に十分留意してまいる、こういう考え方でございます。
  217. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは次に、本人確認情報民間利用との関係をお尋ねいたします。  本人確認情報民間での利用禁止の規定はございます。その実効性と、違反した場合の罰則のあり方について、まずお考えをお聞きしたいと思います。
  218. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  今回の改正法案におきましては、民間での住民票コード利用を規制するという観点から、住民票コードの告知を要求することを禁止いたしております。特に、契約に際して住民票コードの告知を要求すること、また住民票コードの記録されたデータベースを構成すること、こういったことを禁止いたしまして、これらに違反した場合には都道府県知事が中止の勧告をする、さらに命令を経た上で命令違反に対する罰則を科するということで、民間利用を厳しく禁止することといたしております。これらの禁止措置によりまして住民票コード民間利用というものの禁止は十分に担保されている、このように考えております。
  219. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 この種情報漏えいによって一たんプライバシー権利が侵害されると、これは回復不可能だと私は思うんですね。そうすると、民間利用禁止の実効性との関係でいいますと、中止勧告でしょう。従わない、命令を出す、その命令にも従わない、そのときに刑罰をもって処罰をしよう、こういうことですね。しかも、たしか一年以下の懲役または五十万円以下の罰金でしたかね。  私は、そもそも、被害の甚大性というか、に照らすと、これは刑罰そのものも非常に軽いのではないかというふうに考えるわけですが、中止勧告から命令、そして具体的な処罰に至る過程で、ここがいかにも悠長な定めになっておって、それは直ちにプライバシーの侵害を中止する手だてにはなっていないのではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  220. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  このシステムでは、プライバシー保護観点から、本人確認情報の厳重な保護措置を講ずるということといたしているところでございます。  こうした観点から、今回の改正法案においては、特に契約に際して住民票コードの告知を要求すること、また住民票コードの記録されたデータベースを構成することを禁止しまして、御指摘のように、これらに違反した場合に、知事の中止勧告、命令を経た上で、命令違反に対する罰則としては一年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処するということといたしております。  先般の堀部参考人の御意見でも、違反に対して罰則を科するという直罰主義という考え方もあり得ると思うが、どうも日本の場合には民間についてはなかなかそういう発想がない、今回の改正法案では知事が一定の命令などを出してそれに違反した場合に処罰するというやり方をしているということで、今回の住民基本台帳に関する限りではこの規定で対応できるのではないかというふうに考えている、こういうような評価をいただいているところでございます。  具体的には、都道府県知事の行政上の手法ということで、勧告あるいは命令という手続を経まして、いわば情報収集の自由との関係もあります、そういったことで、実態に合った適切な措置が講ぜられる、しかもそれは罰則をもって担保するということでございますので、これにより民間利用の禁止の趣旨は達成される、このように考えております。
  221. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、とてつもない個人情報が商品として売買されておる、流通されているという現状からすると、この改正法案の定めのような民間利用の禁止ということでは実効性はおぼつかないなという思いをいたしております。そういう点では、任意提供を禁止するとともに、任意提供を受けた者に対しての制裁規定も明定する必要があるのではないか、こういうふうに考えております。    〔委員長退席、理事山下八洲夫君着席〕  ところで、民間住民票コードなどの告知要求の禁止と同時に、住民票コードの記載されたデータベースの構築も禁止をしておりますが、これは、蓄積されたデータベースというんでしょうか、それを他に提供することを予定したものが禁止されておるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
  222. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  御質問の趣旨、御指摘の点についてはそのようでございます。  それで、データベース構成というものを全面的に禁止するかどうかという問題もあるわけでございますが、民間住民票コード利用規制というものは、情報収集の自由あるいは経済活動の自由ともかかわるということでございますので、民間部門に対する行政の過度の干渉を防ぐという観点からも、これらの権利プライバシー保護の重要性の双方を慎重に比較考量する必要があるということで、プライバシー侵害の危険性が高く悪質なものを特に規制する観点から、何人も業として、住民票コードの記録されたデータベースであってその記録された情報が他に提供されることが予定されるものを構成することを罰則をもって禁止している、こういうことでございます。
  223. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 データベースの構築が、他に提供することを予定したものはだめですよ、しかしながら自社で使う分、あるいは自家用で使う分については結構です、こういうことになると、私は、民間の営業活動を云々しますけれども、むしろプライバシー侵害の可能性の方が強いのではないか。そもそも、他に提供する目的でデータベースを構築したのか、あるいは自家用、自社用で構築したのかというのは、どういうふうに見分けるんでしょうかね。
  224. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  住民票コードの告知要求につきましては一般的に禁止ということでございますから、そういう意味で、それぞれ皆告知をしないという責務を持っているわけでございます。  そこで、この住民票コードをやはり継続的に使うということにつきまして、それについては、データベースの構成というものを業として継続して使うという、しかも他に提供することを予定する、例えばこの間もございましたけれども、インターネットで販売等の広告を出すとかということで告知されるわけでございますから、そういうものにつきましては禁止するということでございます。    〔理事山下八洲夫君退席、委員長着席〕
  225. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 どうも局長の答弁を聞いていると、私は、大変そこは重大な問題をはらんでおって、非常に苦しそうな答弁のようにお見受けいたしましたけれども、ともあれ、またあさってもあるようですので、引き続いて質問させていただきたいと思います。  法務省がおいででございますので、法務省に一点お伺いいたします。  今回、この住民基本台帳ネットワーク化というのが法整備をされるわけであります。そして、我が国で初めて行政目的との関係番号を付すことが法律上の根拠を与えられるという新しい仕組みができるわけであります。  ところで、かつて法務省が提唱して、戸籍の付票のオンライン化というかネットワーク化というのが議論をされ、その段階では自治省も法務省の構想に賛同をしたというふうな記録を見聞したことがあるんですけれども、この戸籍の付票のオンライン化、ネットワーク化の検討作業というのはどこまで進んでいるのか。  というのは、住民票ができれば恐らく戸籍もそういうふうにオンライン化すべし、あるいはした方が行政効率が高まるんじゃないかという議論が当然起こってくると思うんですね。しかも、本改正法では、これはもう生まれると同時に番号が付されるわけです。そして、本来は生まれると戸籍法に基づいて十四日以内に届け出をする、こういう仕組みになっていますよね。届け出をしない限り番号を付されないという関係もありますね。  そういうこととの関係で、この戸籍の付票のネットワーク化という検討作業がどこまで進んでおるのか。そういうようなことについて法務省からお考えをお伺いいたします。
  226. 細川清

    政府委員(細川清君) 戸籍の付票の問題でございますが、これは住民基本台帳法規定されておりますが、戸籍の附属書類ということになっておりまして、私どもとしては、やはり戸籍の問題として、全体として、一環として考えるのが適当であろうということで、実は戸籍全体のネットワーク化の研究会を今しているわけでございます。これには地方自治体の戸籍事務担当者とかコンピューターメーカーのシステムエンジニア等に入っていただいて検討しているわけなんです。  戸籍につきましては、婚姻、離婚とか養子縁組、嫡出非嫡出の別とか認知事項とか、極めてプライバシー性の高いものが入っておりますので、これをどうやって保護するかという問題、あるいは通信回線安全性の問題等、あるいはネットワーク間におけるデータコードの統一化の問題とかいろいろ問題がございまして、それを今研究しているところでございます。  また、戸籍につきましては、実はコンピューター化をしている市町村はわずか三百強でございまして全市町村の一割程度でございますので、全体の戸籍のネットワーク化の前提条件がまだ整備されていないという感じもいたしまして、今回の住民基本台帳法が成立して施行されるならば、そういった、これの実施状況をよく見させていただいて、その中で私どもの考えをまとめてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  227. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今回の住民基本台帳法の一部改正法がうまくいって住民基本台帳ネットワークができれば戸籍の方もやりたいなと、こういうふうに率直に思っていらっしゃるんでしょう。
  228. 細川清

    政府委員(細川清君) 戸籍法の戸籍のコンピューター化の御審議をいただいたときに、衆議院、参議院でそれぞれネットワーク化の研究をするようにという附帯決議をいただいておりますので、そういう関係がございまして私ども研究しているわけで、もちろんこの制度がうまく運用されれば私ども大変参考になるということでございます。
  229. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  230. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 重要法案でありますので参議院の独自性を発揮した審議をいたしたいということで、どちらかというと参考人をお呼びすることについては積極的でなかったのでありますけれども衆議院が八人呼ばれて、参議院は七人の参考人で、いろいろお話しいただいて、日ごろ不勉強でありましただけに大変よい勉強ができたなというふうに思っております。特にきょうは、毎日新聞中村論説委員長ですか、さすがに今国民が非常に危惧していること、当委員会でのいろんな質疑のありようにつきまして明快にお話をいただいたわけであります。  確かに、利便性と個人情報の保持ということについていろんな示唆を与えられましたし、特に前回の参考人の段階で、いわゆる電子商取引が現在六十兆だけれどもちょうどこのカードができる二〇〇五年ごろになると二百兆の規模になる、そうするとほとんどの商取引があっという間に電子商取引に、安田参考人が言われるとおりであればそういう事態になってくる。  それから、やっぱりコンピューター関係も、いわゆる個人が使っているのが今千三百万ぐらいで一三%ぐらい、しかしアメリカはもう既に三〇%。という形になってくると、三年、五年の間に、あっという間に状況が変わってくる。その中で重大なことは、けさの参考人の方々も認めておられましたし、せんだって私の質疑に対して法務省が答弁しておりましたけれども、こういうデジタル化というものが、急速に情報化が進んでくる中での法整備がやっぱりおくれておる、これはもうゆゆしき問題だと思うんですね。新しい形の犯罪がどんどん出てくる、それに対してやっぱり構えができていない。日本人の本質も変わってきている。そういうことに対してきちっとした取り組みをしなきゃいかぬなということを思いました。  後ほど、そういう問題につきまして最終的に自治大臣のお考えも伺っておきたいと思いますけれども、その前に、時間は十分しかないわけですからもう余り質問する時間もないわけでありますけれども、前回も局長に、私は非常にこの六百億円というものにこだわっているわけですが、既に自治体がこの住民基本台帳法に基づいて皆コンピューターを設置していろいろと基本台帳をつくっているわけですよ。それの経費について一体どうなっているんだというお話をしましたら、三千億というのが出てきたんですが、実際は、いろいろ類推してみるとそんな金額じゃないんですよね。  だから、実際にコストがどのぐらいそれぞれかかったかということぐらいは掌握をされるべきだと思うし、そういうものは民間であれば、何を一体今ごろそんな議論しているんだと。要するに、利便性とコストの関係なんですよ。それがどうも数字がいつまでたってもはっきりしない。  ここらでひとつもう決着をつけていただかないと、幾らのんびりした話でもこれは許しがたい話でありますので、その辺のこともきちっと局長の方から再度、答弁訂正をしていただきたいというふうに思います。
  231. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  松岡先生のこの間からの御指摘でございます。住民基本台帳電算化に要する経費ということで概算いたしまして、新規に住民記録システムを導入した場合の概算で見ますと、人口規模により異なるわけでございますが、一万人規模のところですと、一時的な導入経費として約二千七百万円、それから年間の運用経費として約三百万円ということ。また五万人の規模で申し上げますと、導入経費として約四千八百万円、運用経費は五百万円。それから十万人の住民基本台帳人口のところですと、導入経費として七千三百万円、運用経費として年間約八百万円、こういう概算コストというものが見込まれるわけでございます。実際の金額は諸条件等によって異なる場合があるということを御理解賜りたいと思います。
  232. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 それを足していくと、前回御答弁いただいた三千億という金額にはならないだろうと思うんです。恐らく六百億から八百億、三千三百の市町村がそういう投資をし、一年間の経費をかけてやってきている、それに今回国の方で一年間に六百億円投下するということ、そういうふうに理解していいんですか。
  233. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  三千億円と申し上げましたのは、市町村において戸籍とか住民基本台帳事務にかかっている経費ということで、その中には人件費なども含んだ金額でございますので、先ほど申し上げたものとはまた別な数字でございます。  したがいまして、例えば人件費ですと職員給ですと約二千億円かかっておりますので、その他の経費はそれを除きますと一千億円、こういうぐらいのが決算ベースでのお話でございます。
  234. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 そうすると、一応一千億円ぐらいという形でとらえていいんですか。今回、国が六百億円出しますね、四百億と二百億と。それに対する地方自治体としては、今おっしゃったように込みで一千億円というふうに理解していいんですか。
  235. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) お答えいたします。  今回は開発導入経費が四百億円で、年間のランニングコストが二百億ということでございますので、先ほど決算ベースで申し上げたものは、開発部分もありますけれどもランニングコストという──三千億とか人件費二千億というのは、現在市町村において戸籍あるいは住民基本台帳にかかっている経費ということでございます。そのうち、三千億円のうち二千億が職員給に相当する、こういうことでございます。
  236. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 この話をしているうちに十分たっちゃったんですけれども。  先ほど参考人の方の話で、やっぱり個人情報保護法議員立法で先行してやるべきじゃないかという意見もございました。それは国会の問題でございます。  いずれにしましても、いろいろな不安が背景にありますだけに、この辺は先ほど来私が申し上げておりますように、結局、参考人で来られた梶原さんも、そういう非常に疑問なものについては我々地方自治体が地方分権なんだからしっかりそれは国を監視する、させませんというようなことを言われたけれども、今の国と地方との関係でそれが果たして可能かなという疑問もないことはない。  こういうものについて、これだけ議論を積み重ねてきて、いろいろな部分については理解できる部分も出てきましたけれども、そういう個人情報保護法というものについての対応、これは衆議院では、きょうも三人出てこられていろいろそのときの修正案の経緯等も伺ったわけであります。  この問題と、今申し上げた地方自治体との関係で私が一つ非常に疑問に思っているのは、例えば市長会その他でこの制度を進めてくれという提案をしたことが一度もないわけです。事実、その辺の関係がないんですよ。市長会で議題としてあったことはあるんです。私も資料は持っていますけれども。だから、その辺の地方自治体との話し合いというものもきちっとやってもらいたい。  時間がなくなりましたので、大臣の御決意を伺って私の質疑は終わりたいと思います。
  237. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) 若干事実関係だけ申し上げますと、今、市長会からの要望がなかったじゃないかという話があったんですが、市長会から昨年、一昨年、例えば住民基本台帳ネットワークシステムの整備を推進するため、いろいろ書いてありまして、早期に住民基本台帳法改正し、住民サービスの向上、行政の簡素効率化について所要の措置を講ずること等、あと町村会、知事会などから現に要望あるいは意見が寄せられておりますことはちょっと申し上げておきたいと思います。  それから、きょうもずっと時間をかけてそれぞれ御議論いただいて、その中でやはり個人情報保護について非常に重点を置いた質疑がきょうは展開されたと思います。  そういう中で、住民基本台帳ネットワークシステム固有の問題として何らかの問題があってプライバシーが侵される懸念が強いのかどうかということに関してはかなり御理解をいただいて、そういった問題については対策、そのシステム面あるいは運用面、技術面等々、あるいはまだ不十分というお話もありましたが、民間利用に対するいろんな手当てとか禁止とかということも含めてかなりのことをやっているなということは大体御理解いただいていると思うんです。  ただ、日進月歩の技術の世界の中で、これから実施に移されるまでの数年の間にいろいろ技術的にもどんどん進むではないかということもこれあり、そういったことはそういったこととして、なお一層、この法案が成立した後においても、自治省としても全力を挙げて技術面でもきちんとキャッチアップしていくというのは当然のことでございます。  それから、先ほど来いろいろ御指摘がございましたが、特にこのところ、電子マネーが云々ということまで行かれるかどうかは別として、そういう議論が世の中に現にある。そういう非常に急速なデジタル革命と言われるぐらいの進歩に応じて、それに対応するプライバシー保護個人情報保護という問題を、この法案と別途の問題としても、トータルとして今のままでは不十分なのではないか、したがってそういう手当てが必要なのではないかという意味から、衆議院における修正などということもございました。  そういったことを念頭に置いて、そういう話になれば、自治省という世界だけでなくて政府全体として対応していかなければならないし、しかもこれは政府だけではなくて、議会として、立法府として対応するという側面も必要ではないかということもあって、各党間における相談もスタートしていただいているということでございます。  そういう点で、私どももその御検討のことをも十分頭に置いて、それを受けて政府としてあるいは自治省としてきちんと対応すべきものは、このシステムを実施に移す前に必要な手当ては、なすべきものはいたしたい、こういう気持ちでございます。
  238. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 ありがとうございました。
  239. 小山峰男

    委員長小山峰男君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十分散会