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参考人(
浅倉むつ子君)
東京都立大学の
浅倉むつ子と申します。本日は
参考人として
意見を述べる
機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
私は労働法、
社会保障法を
専門としておりまして、中でも
男女雇用平等を
研究テーマにしております。本日御
審議の
法案につきましては、
部分的ですが雇用に
関係ある
研究をしておりますので、主としてそういうかかわりでお呼びいただいたと思います。それと同時に、本日ここにお招きいただきましたのは、
東京都の条例案の
策定の仕事との
関係ではないかとも思っております。
東京都は現在、
男女平等参画条例を
策定すべく検討中ですが、私は、
東京都の
女性問題協議会におきまして条例検討
専門部会の部会長といたしまして条例の
検討骨子を取りまとめる
作業に携わってまいりました。そのような経験の中から、この
法案にかかわる
事柄につきまして、若干の
意見を述べさせていただきたいと思います。
もちろん、
東京都の条例といいましてもまだ
検討骨子の段階でございまして、実は、先ほど
江橋先生がお配りくださいました資料がそれでございます。ちょうどいい資料をお配りいただきましたので、私もこれを利用しながら
意見を述べさせていただこうと思います。したがって、まだ成案になっておりません。また、辛うじてこのようにでき上がりました
検討骨子も、決して十分完璧なものとは言えませんで、中にもさまざまな
意見があるということはもちろん御承知おきいただきたいと思います。
ただ、
幾つかの点で、私どもがこれを取りまとめる経過の中で
議論したことがございますので、それについて御紹介することがきょうの
法案に対する
意見ともなるかと思います。
まず、条例の名称なのですけれども、
東京都の私どもの
検討骨子では、
男女平等参画
基本条例という名前が適当ではないかという考えに達しております。国に合わせまして
男女共同参画条例というふうにしてはどうかという
意見もありましたけれども、私どもは、国が説明しておられますように、
男女平等の
実現を当然の前提とした上でさらに参画を目指すというふうに言うには、今なお
男女平等がいかにも不十分だというふうに考えておりますので、そこで明確に平等という
言葉を盛り込むようにいたしました。
ただ、同時に、男性との平等のみが
目標ではないという御
意見は十分に
参考にいたしまして、平等によっていかなる
社会をつくるのか、そういう決定を
女性が参画して行うということが非常に大切だと考えております。
したがいまして、平等と参画というのは車の両輪だと考えておりますので、平等参画という
言葉を使いました。国の場合も決して平等を無視していらっしゃるわけではもちろんありませんし、それが
基本であるということは承知しております。しかし、多くの
女性の中にはやはり平等が不十分だ、それを明確にうたってほしいという
意見が強いのではないかと思いますので、単なる名称というだけではなくて、
基本的な
考え方としてこのような理解が必要なのではないか、それを最初に申し上げたいと思います。
また、
東京都の条例骨子の特徴としまして、一つは、この資料の中で九ページに「
責務規定」というのを設けまして、そこでは都、都民、それから事業者の
責務というものを置こうとしております。事業者という場合には営利法人、営利を
目的とした
個人、公益法人、その他の
法律による法人格を持つ団体、また権利能力なき社団のうち事業を行うもの、そのような幅広い概念なのですけれども、条例はその事業者の
責務の具体化としまして、十二ページのところで「
男女平等参画の
促進」といたしまして、一定規模以上の事業者については
女性の参画状況の報告をせよという要請をしております。積極的に
ポジティブアクションに取り組むように求めるという
仕組みを考えております。また、事業者は事業活動を行うときも
男女平等参画の
促進に配慮せよという要請、また都が行う
施策に対しても積極的に協力せよという要請を置いております。さらに、積極的な
取り組みを行う事業者に対しては表彰等を行うなど、プラスのインセンティブを与えるという
仕組みも盛り込もうとしております。そのような状況の中で、単に都民という
責務のみならず、事業者の
責務というのを盛り込んでいるということも条例骨子の一つの特徴であろうかと思います。
もう一点、
東京都の条例骨子の特徴は、
性別による
権利侵害の
禁止というのを明確に打ち出していることでございます。
資料の十一ページなんですが、その中では、「何人も、職場、家庭、学校、地域
社会等において
性別を理由とする
差別的な取り扱いをしてはならない」、また「何人も、職場、家庭、学校、地域
社会等においてセクシュアル・ハラスメントをしてはならない」、また「夫等から妻等への暴力は、これを行ってはならない」、「都は、夫等から妻等への暴力は
人権侵害であるとの認識に立ち、その防止のための啓発に努める」、そのようにしたことでございます。そして、被害者に対して、
東京都は「
保護及び自立の支援等必要な措置を講ずる」というふうに
規定しようとしております。
実は、このような
女性に対する暴力の撤廃、それをどのように
規定するかということにつきましては、現在御
審議中の
政府案の中では「
男女の
個人としての尊厳が重んぜられる」、その表現から
女性に対する暴力の根絶も読み取れるのだという御説明があったように思いますけれども、暴力の根絶という点は非常に具体的な
施策でございますけれども、やはりそれは具体的にメンションしておいていただきたいなという要望を
東京都の
審議経過の中で持っております。
政府案につきましては、実を言いますと、私も
政府案を現在制定するということそれ自体については大変積極的に評価いたしたいと思っております。この
法律ができることによりまして、
女性問題に関する国の
施策が計画的かつ総合的に
推進されるようになる、それは大変重要なことでございます。私の本日の
意見も、せっかく
法案をつくるのであれば、それをぜひともよりよい内容のものにしていただきたいという積極的な
意見から述べさせていただいているということを御理解いただきたいと思います。
政府案の中では、とりわけ第三条で
男女の尊厳が重んぜられるということ、それから
性別による
差別を受けないこと、それから
個人として能力を発揮する
機会が
確保されること、そういうことが重要であると述べていらっしゃる、そういう明確な
基本的な姿勢に対しては大変敬意を表したいと思います。しかし、あらゆることをその中に読み込むというのはやはり無理があるのであって、
基本法というからには、重要な
規定はできるだけ、現在考えられる限りの
規定はなるべく具体的なところも盛り込んでいただきたいというのが私の要望でございます。
すなわち、これは
基本法ですので、将来の
社会の展望となるようなものにしなければなりません。将来の改革の基礎になるものということと、それから現在合意ができていることというのは実はある場合には矛盾してくるのではないか。現在の合意が必ずしも将来の展望まで指し示しているというわけではありませんので、できるだけ現在の
社会の合意よりも一歩先に進んでいる、そういう
基本法をできるだけ制定していただきたいというのが私の
基本的な要望でございます。
どうもありがとうございます。