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1999-08-03 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月三日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  七月二十二日     辞任         補欠選任      須藤美也子君     笠井  亮君  七月二十三日     辞任         補欠選任      木村  仁君     上杉 光弘君      本田 良一君     伊藤 基隆君  八月二日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     阿南 一成君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 浜田卓二郎君                 池田 幹幸君     委 員                 阿南 一成君                 岩井 國臣君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 益田 洋介君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君    政府委員        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        法務政務次官   北岡 秀二君        大蔵大臣官房総        務審議官     原口 恒和君        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省金融企画        局長       福田  誠君        大蔵省国際局長  溝口善兵衛君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      池上 政幸君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君        日本銀行理事   黒田  巖君        日本銀行理事   引馬  滋君        日本銀行理事   小畑 義治君        預金保険機構理        事長       松田  昇君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )  (日本債券信用銀行問題に関する件)  (預金保険制度等に関する件)     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  議事に先立ち、一言申し上げます。  皆様既に御承知のことと存じますが、本委員会委員であられた石川弘君は、昨日、急逝されました。まことに哀悼痛惜にたえません。  ここに、皆様とともに同君の長年にわたる御功績をしのび、謹んで黙祷をささげ、哀悼の意を表し、御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。  どうぞ御起立願います。黙祷を願います。    〔総員起立黙祷
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 黙祷を終わります。御着席願います。     ─────────────
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 委員異動について御報告いたします。  去る七月二十二日、須藤美也子君が委員辞任され、その補欠として笠井亮君が選任されました。  また、去る七月二十三日、本田良一君及び木村仁君が委員辞任され、その補欠として伊藤基隆君及び上杉光弘君が選任されました。  また、昨二日、上杉光弘君が委員辞任され、その補欠として阿南一成君が選任されました。     ─────────────
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁速水優君、同理事黒田巖君、同理事引馬滋君、同理事小畑義治君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 財政及び金融等に関する調査を議題といたします。  まず、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について、日本銀行から説明を聴取いたします。速水日本銀行総裁
  8. 速水優

    参考人速水優君) それでは、通貨及び金融調節に関する報告書につきまして、概要を御説明させていただきます。  去る六月四日に、日本銀行法第五十四条に基づきまして、昨年度下期の金融政策運営に係る半期報告書国会に提出させていただきました。新しい日本銀行法が昨年四月に施行されましてから、今回で二回目の報告書提出ということになります。本日は、本報告書につきまして御説明機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げます。  まず初めに、私から日本銀行の最近の金融政策運営に関する考え方を述べさせていただきたいと存じます。  振り返ってみますと、一昨年来、日本経済実体経済面金融システム面ともに大変厳しい状況に直面してまいりました。昨年夏場以降は、ロシア金融危機米国大手ヘッジファンド経営危機等をきっかけにいたしまして、国際的な金融資本市場緊張が著しく高まりました。我が国におきましては、金融機関資金繰りが極めて厳しくなりましたほか、一時は優良企業でさえ資金調達が難しくなるといった状況に至りました。景気悪化が続きます中で、こうした金融市場の動揺は、企業金融の逼迫や企業家計マインド悪化を通じて、我が国経済活動全般にさらに深刻な影響を与えることが懸念されたわけでございます。  日本銀行は、こうした危機的状況を踏まえまして、昨年九月以降、迅速かつ弾力的に新たな政策措置を講じまして、金融市場の安定と経済活動支援全力を挙げて対応してまいりました。すなわち、まず昨年九月には二年ぶりに追加的な金融緩和を実施しまして、コールレートをほぼ〇・二五%に引き下げる決定を行いました。また、十一月には企業金融円滑化に資するためにCPオペの積極的な活用、さらに臨時貸出制度の創設、これら新たな対策決定いたしました。さらに、本年二月には、過去に前例のないいわゆるゼロ金利政策、すなわち、より潤沢な資金供給を行い、オーバーナイト・コールレートをできるだけ低目に推移するよう促すという極めて思い切った措置に踏み切った次第でございます。  幸い、この間、海外における金融資本市場緊張は次第に鎮静化してまいりました。また、政府による累次にわたる経済対策金融システム対策の実施、ただいま申し述べましたような日本銀行の思い切った金融緩和策の浸透などを背景にしまして、本年に入りましてからは事態の改善が徐々にはっきりしてまいったように思います。すなわち、金融市場は安定を取り戻し、景気悪化テンポは次第に緩やかとなってまいりました。現在では、足元の景気ははっきり下げどまったと判断できるようになっております。  とは申せ、企業リストラの動きが本格化しつつあることなどを踏まえますと、設備投資減少基調雇用家計所得の厳しさなどは当面続く可能性が高いと考えられます。したがいまして、民間需要の速やかな自律的回復は依然として期待しにくい状況にあります。このため、こうした面からの物価に対する潜在的な低下圧力は根強く残存いたしております。まだデフレ懸念払拭されたと言える状況には至っていないと思います。  申し上げるまでもなく、新日銀法二条には、日本銀行金融政策は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」と明記されております。こうした理念に照らしまして、日本銀行としては、デフレ懸念払拭が展望できるような情勢になりますまで現在の思い切った金融緩和基調を維持して、金融面から物価の安定と経済回復をしっかり支えていく方針をとっております。  日本銀行としましては、金融財政面から経済を下支えしておりますうちに経済産業構造改革が着実に進められまして、日本経済の新たな自律的成長の道筋が確かなものになっていくことを強く期待しておる次第でございます。  新しい日本銀行法が施行されてから一年四カ月がたっております。この間、日本銀行は新法の理念を十分踏まえまして、与えられた使命の達成に全力を挙げますとともに、政策決定過程透明性向上、言いかえれば説明義務履行アカウンタビリティーと言われております説明義務履行につきまして積極的に取り組んでまいったと思っております。  幸い、政策委員会金融政策決定会合議事要旨の公表、金融経済月報刊行等の新しい仕組みも次第に定着してきたものと考えております。また、こうして国会におきましてまとまった時間をいただきまして政策運営に関する質問にお答えする場をいただきましたことは、透明性向上の上で極めて重要な機会と認識しております。  本日は、金融政策運営をめぐるさまざまな問題につきまして、日本銀行考え方をできるだけ率直に御説明し、御理解を得たいと願っております。  勝木委員長初め、皆様何とぞよろしくお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。
  9. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 林芳正

    林芳正君 自民党の林芳正でございます。  きょうは、日銀総裁また大蔵大臣に御出席をいただきまして、金融の話をさせていただくということで、お忙しいところをありがとうございました。  今、総裁から御説明がありましたように、まさに新生日銀一年四カ月ということで、私もぼんやりしておりまして、もうこれで二回目の質疑をやるということでございますが、私自身としては初めてこの金融の御報告に対する質疑に立たせていただくわけでございまして、感ひとしおのところがございます。  と申し上げますのは、私が議員になる前にアメリカ議会インターンをしておりましたときに、ほんの短い間でございますが、九一年の秋に、アメリカ連邦議会の下院の銀行委員会というところがございまして、そこにドメスティック・マネタリーポリシー・サブコミッティー、国内の金融政策の小委員会でございますが、そこはまさに当時の連銀から定期的にこういう報告を聞いて、金融政策はこれでいいのかという議論をするための小委員会が設けられている。そこで私はインターンをして、当時のグリーンスパン議長が来られてヒアリングをするときの下準備をしておったものですから、九年たちましてこういうところで我が国もこういうことができるようになったということで大変に感無量なところがあるわけでございます。  そこで、本題の金融の面に入ります前に、まず総裁や藤原副総裁はいろんなところでアカウンタビリティーを果たすということで御講演を積極的にやられておられるようでございまして、大変に我々もいいことだなと思って見ておるわけでございますが、先ほどの御説明にもちょっとありましたけれども金融財政面から経済を下支えしていくうちに経済産業構造改革が着実に進められることが望ましいと御発言がありました。  たしか総裁は、七月二十七日に御講演された原稿をいただきましたけれども、そこにかなり詳しく、総裁の個人的な御意見も入っているのかもしれませんけれども構造改革について述べられておられます。  今から需要創出政策、ディマンドサイドと言われておりますけれども、これも全くなしでというわけにはいきませんが、かなり量的にはぎりぎりのところまで来ているのではないか。宮澤大蔵大臣の言葉をおかりしますれば、大魔神が最初から登板して、どうも入院しちゃったりしているようだというお話も最近はあるようでございますが、今からまたいろんな財政出動需要の方の喚起もやっていかなければならぬわけでございますけれども、まさにこれをやっている間に本格的に構造問題に着手してこれを遂行していかなければ、景気自律的回復民主導回復ということはあり得ないのではないかと私も思っておる一人でございます。  この間御講演をなさいました中身につきまして、総裁の個人的な御見解も含めていただいて結構ですから、何が構造改革の推進の上でポイントになるのか、総裁の御見解を賜れればと思います。
  11. 速水優

    参考人速水優君) 林委員に私の講演録を読んでいただきまして大変光栄に存じております。  私も今、金融政策財政政策、いずれもやるべきことはほぼやり尽くしている段階ではないかと思っておりますが、当面の景気はこれで下支えできるといたしましても、その間にサプライサイド、特に企業面、それから家計雇用面、ここで日本のこれまでの経済構造改革が行われなければならないということを痛感しておる次第でございます。  先ほど九〇年代の構造改革お話が出ましたけれども、九〇年代前半の米国におきましても企業リストラと同時に産業構造の転換が進んで、それを新たな金融仲介技術とか資本市場が支えたという展開をたどったように思います。  私もあのころ経済同友会の代表幹事をしておりまして、日米財界人会議などにも出ておりましたが、いつまでたっても失業が減っていかないし、成長が進んでいかない、どうするんだろうなと。ディレギュレーション、規制撤廃をやった後でございましたけれども、それがなかなか進んでいかない。  しかし、今から考えてみますと、あのころ九一年がアメリカの場合は底になって、それから生産所得が伸び始めて、二年、三年と伸びていくわけですけれども、その間、失業はむしろ逆にふえていくし、貸し出しも減っていく。ちょうど今の日本情勢と同じようなことが起こっておったんです。  三年ぐらいからずっとすべてのことがよくなっていくというふうに言ったわけなんですけれども、これは明らかに構造改革が起こって、新しい産業がどんどんできていって、またそれを支援する資本システムとかあるいはベンチャーキャピタルとかエンゼルなどというようないろんな資本がニュービジネス、ニューエコノミーに対して投資サイドからの支援が進んでいったといったようなことが起こっていった時代で、日本でも、そういう方向に今ありとすれば、これは将来期待できるわけですけれども、その辺のところは、生産がここへ来て伸びてきたといったようなことは一つの新しい要因だと思います。ただ、まだまだこれからリストラが起こっていくわけですから、マイナスサイド影響していくものはかなりあるというふうに思います。  金融面財政面でもいつまでこれが支えられるか問題でございますし、その間に構造改革が行われ、また資金的にも、今までのように銀行を通ずる間接金融だけでなくて、市場がどんどん発達して、庶民の千三百兆からある金融資産というものが、今までは八百兆近くが預金、現金になっており、あと三百兆ぐらいは保険年金ということで、市場に向かって、いわゆる証券投資といいますか、国債も含めても極めて限られた、アメリカなどに比べて非常に目立った金融流れマネーフローが起こっているわけです。そういうものをこれから変えていくためにはやはり市場をつくっていかなければいけない。特に国債が中心になって、そこに社債や企業債務が売買できる市場ができていく必要がある。  ビッグバンなどが言われ始めてかなりになりますが、規制的には進んではいるんだと思いますけれども、これからそういうものが実ってくる段階ではないか。そういう意味で、ことしあたりは非常に私どもは期待を持って事に臨んでまいりたいというふうに思っておる次第でございます。  日本も中長期に見ますと、六〇年代は二けた成長をやり、七〇年、八〇年代は四%程度だったと思います。九〇年代は平均して一%程度、ここ二年はマイナス成長ということで、大きな流れとしてはこれから先どういうふうになっていくのか。社会的な構造面だけを見ますと、老齢化もしておりますし、非常に大きな債務が残っておりますし、どれぐらいのスピードで新しい構造ができていくかということを非常に注目しておる状況でございます。そういうことを頭の中に置いて私どももこれからの政策考えていきたいというふうに思っております。  まず、企業のバランスシートが、設備過剰あるいは雇用過剰あるいは借り入れ過剰というものが、企業家の思い切った決断によってどの程度要らないものがリストラされ、新しいものに向かっていくことができるのか。それから、世の中全体がグローバル化されている中で、日本のこれまでの量を追う企業経営から利益率を重視する方向へどれぐらいのスピードで切りかわっていくか。それと、先ほど申し上げた貯蓄と投資とのインバランスというものがどういうふうにうまくミートしていくようになっていくか、バランスのとれた資金流れ需要供給との出会いが行われていくのかといったようなことを非常に注目しながらかじをとってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。  若干抽象的なことになってしまいましたけれども、私どもの頭の中に置いております流れとしてそういうことを考えております。お答えになったかどうかわかりませんけれども、私の考えを述べさせていただきました。
  12. 林芳正

    林芳正君 総裁、ありがとうございました。  まさに基本的な思想といいますか哲学はそういうところになくてはならないなと。ただ、構造改革というのは、日銀の本来的なところと違ったところでやらなければならないことがたくさんあるわけでございまして、むしろ我々の方の責任が大なのかなと思います。  サプライサイドとか構造改革が言われて久しいわけでございますが、先般、我々の方でも雇用対策産業再生ということを一生懸命議論させていただきました。また、今までも、例えば確定拠出型年金というのは、一般的には雇用流動性、それからポータビリティーということを言われておりますが、私はこれが導入になれば、先ほど総裁がおっしゃいました第三の、なかなか個人の金融資産というものがリスクをテークしにいかないというところを少しずつでも、大きな年金でございますから、もう少しポートフォリオを使ってリスクをとれるところへスムーズに移行する一つの手段になるのかなと思ったりもしております。  また、これもアメリカからの輸入物と言えるのかもしれませんが、アメリカも八〇年代に産学連携というのを一生懸命やりました。例えば、国のお金を使って研究して特許を取得した場合でも、これを共同研究した民間の会社に開放して利用を促進するというところからたくさんのベンチャー企業が生まれた。こういうようなことをやっていくということでございまして、このサプライサイドをやらない限り、いろんな投資家海外資金供給する方の日本経済に対する将来の潜在成長率というのはどういうものだろうというところを必ず見てきますから、これをやるということが回り回ってこの財政金融政策にも大きな影響があると我々も理解して、今、総裁がおっしゃったようなことをやっていかなければならないんではないかなと思います。  ただ、総裁もおっしゃっておりますように、アメリカもそうでございましたが、これは総裁講演された原稿で「改革国民に根付いて本当の成果が現れるまでにかなり懐妊期間を要する面も、恐らくあるでしょう。」と。まさにそのとおりでございまして、アメリカの場合もレーガノミックスでレーガンが八年、それからブッシュが四年で、ちょうど成果が出てきた九〇年代の、今九三年ぐらいとおっしゃいましたが、そのころにはもう民主党の政権になっておりまして、先ほど申し上げた特許の法律なんかも、バイドール法という、ドールというのは大統領選に出たわけでございますが、せっかくバイドール法をつくったドールはクリントンに勝てなかったと、こういうような結果もあるわけでございます。なかなか政治的に難しい局面もあろうと思いますけれども、意を決してこういうサプライサイドの痛みを伴う改革に取り組んでまいらなければならないと私も思っておるところでございます。  そこで、大変長い懐妊期間が要るということでございますけれども、その間にデフレ懸念解消のために金融政策上いろいろ対応していくという御決意をいただきました。今の御説明の中にも、いつもおっしゃっていることでありますが、デフレ懸念払拭が展望できるような情勢になるまで現在のゼロ金利政策を続けるということでございますが、これは大変大きな意味がある、こういうふうに思っております。  例えば、このデフレ懸念払拭が展望できるまでというのは具体的にどういう指標がどういうふうになったときかというようなことも議論があるわけでございますし、これは逆に言えば、例えば一年とした場合は一年のターム物金利をゼロに誘導する、こうおっしゃれば一年ぐらいはこれはいじらないよという意味になるわけでございますが、あえて展望できるような情勢になるまでとおっしゃっているところに大変私は大きな意味があるのではないか、こういうふうに思っております。  このことにつきましては、いろんな議論アカウンタビリティーということで発信していただいていますので議論が盛んになっておりまして、大変いいことだと私は思っておりますが、例えば金利がここまで来ましたからベースマネーとかいわゆるフリーリザーブ超過準備等量的基準をもう少しはっきり数値で出してこれを政策目標にしたらどうかという議論とか、それからもう一つは、いわゆるインフレターゲティング、これはバンクオブイングランド等がやっておるようでございますが、例えばバンクオブイングランドの場合は、インフレ目標二・五%プラス・マイナス一%ということに定めて、これを掲げて、この範囲内に持っていくというようなことをやっておるので、我が国もこういうことを検討すべきではないかというような御議論もあるようでございます。  日銀研究所の翁さんがお書きになったペーパーを私も大変興味深く読ませていただきましたけれどもかなり詳しくこの中で議論をされておるようでございます。私が今申し上げましたターム物とか超過準備につきましては、メリットデメリットいろいろあるので、今の状況がどこまでかという認識がまずあって、それに即してメリットデメリットを比較して、メリットデメリットを超えるようであれば全くこういう方式をとらないでもないというような、これは研究所の論文ですから即これが政策にならないということは私も承知しておりますし、最終的には新しくできました政策委員会政策が決まるわけでございますけれども、こういういろんな議論につきまして現在日銀はどういうふうにお考えになっているか、総裁もしくは日銀の御答弁を賜りたいと思います。
  13. 黒田巖

    参考人黒田巖君) お答えいたします。  ただいま先生からお話がございましたように、一段の金融緩和の手法といたしまして、ベースマネーとかフリーリザーブといった量的指標とか、インフレ率をターゲットするいわゆるインフレターゲティングなどの議論がいろいろとなされておりますことは私ども承知しております。また、私ども決定会合の議事要旨にも記されておりますように、日本銀行金融政策決定会合の場でもこのことはいろいろと議論が交わされている状況にございます。  そこで、ただいま先生から御指摘のありましたような政策手法に関しまして、現在の日本銀行考え方というものを申し上げますと、次のようなことかと存じております。  まず、御指摘のマネタリーベースとかマネーサプライなどの量的指標に具体的な数値目標を定める方法についてでございますけれども、これが有効であるためには少なくとも二つの条件が必要だというふうに考えられます。  第一は、操作目標と言われております、中央銀行から見ますと比較的身近にあります目標であるマネタリーベース、そして中間的な位置にある中間目標と言われておりますマネーサプライ、さらに最終的な政策の目標である物価とか実体経済という一連の指標の間の連動関係が明確であって適切な数値目標を設定できること、これが第一の条件かと思います。  第二に、こうした量的な金融指標が少なくともある程度どもの意図に準じてコントロールできるということが条件になろうかと思います。  少し長くなりますが、第一の条件を申し上げますと、一昨年来景気の足取りが重い状況が続く中で、マネタリーベースは大体四%から一〇%の範囲で大きく変動しております。一方、マネーサプライはおよそ四%前後で相対的には安定的な伸びを続けてきております。こういうことからわかりますように、マネタリーベース、マネーサプライ、実体経済といいますただいま申し上げました一連の連動関係が特に最近は不安定なものになってきてしまっているのが実情でございます。  第二の条件について申し上げますと、最近、日本銀行市場に対して大量の資金供給を行っているわけですが、これは必ずしも都市銀行等の超過準備の増加には結びついておりませんで、短資会社等その他の市場参加者に資金が積み上がるといった現象も生じているわけでございます。また、マネタリーベースを通じてマネーサプライをコントロールする場合のかぎになります信用乗数と言われております数字も、この数年大きく低下してきて安定していないというような状況になっております。こういうことから見ますと、量的金融指標の制御可能性というものも必ずしも十分高いとは見られない状況にございます。  したがいまして、私どもは、現時点では、金融政策運営上、量的金融指標に具体的な数値目標を定めることは技術的に難しい点が多いし、適当でないというのがこれまでの金融政策決定会合における検討で得られた判断でございます。  次に、インフレターゲティングについて御説明させていただきます。  申すまでもございませんが、金融政策の目的はインフレでもデフレでもない物価の安定を実現することでございます。ただ、インフレ率に具体的な数値目標を設定する手法につきましては、中央銀行が目指すべき物価の安定というものをいずれか単一の指標による特定の数値で示すことが適当かどうかといったそもそもの問題があるように思われます。  こうした点も含めまして、私ども金融政策決定会合でもさまざまな議論が行われてきているわけでございますけれども、現時点ではインフレターゲティングを採用すべきであるとの結論には至っていないわけでございます。やはり経済金融情勢を先行きの動向を含めまして多面的に分析して判断していくことが物価の安定を中長期にわたり確保するための一番確かな方法であるという認識にあるわけでございます。  もっとも、インフレターゲティングを採用すべきであるといった議論の背景には、先行きの金融政策運営に関しまして、より明確なコミットメントを対外的に示すという考え方があるように理解しております。こうした点につきましては、先ほど先生からも御指摘のありましたとおり、現在、私どもではデフレ懸念払拭が展望できるような情勢になるまでは現在の金融政策を続けていく旨を表明しているわけでございます。  このように、金融政策運営考え方を明らかにしていくことを通じて、インフレターゲティングという主張をする方々の考えておられます主張を生かしつつ、そのデメリットを回避し、よい点をかなり程度取り込むことができるのではないか、現時点ではこのように判断している次第でございます。
  14. 林芳正

    林芳正君 ありがとうございました。  インフレターゲティングについてはいろんな議論があるところでございますし、現時点ではそういうことであるということでございました。確かに、目標をはっきり出してしまうとそれは将来縛られることにもなるわけでございますし、一度決めたターゲットを、また少しインフレぎみになってきたから何年か後にいじるということでは日銀そのものの信用性が失われるという議論も大変理解できるところでございます。  先ほど構造改革議論をしたときの総裁の論文の中の最初の方に、今やはり皆さんの気持ちがシュリンクして、いわゆる倹約のパラドックスという言葉をお使いになっておりますが、そういうことになっておるということでありますから、もしできることであれば今のデフレ懸念払拭が展望できるような情勢になるまでゼロ金利を続けると。これは、専門家はああそういうことかとわかるわけでございますが、普通の方はこれを見ても、金利はこのままだなと、むしろインフレターゲティングで例えば二・五だと言ってくださった方がこの倹約のパラドックスだけ考えると一般の方にはわかりやすいのかなという感じもするわけでございまして、引き続き御検討いただきたいとお願いをしたいと思います。  大蔵大臣、御所管ではないかもしれませんが、今ずっとこの議論を聞かれておりまして、ゼロ金利というのは未体験のゾーンでありますから、なかなか今までのいろんな前例等が使えないと思うのでございますが、何か御所見がもしありましたらお伺いしたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 金利政策は挙げて日銀総裁の御所管でありますが、殊に二月以来とられております今の政策、何でもないように見えまして極めて大胆な政策をとっておられると考えておりまして、またそれなりの成果を上げてこられておることも私は相対的に疑いないことであると思います。  今、理事の御説明もいろいろ伺っていまして、自分がぼんやり考えておったことを大変明晰に言っていただいた思いがするんですが、今の現状を考えますと、総裁の言われますように、なおしばらくこの政策を続けていただくことが私は極めて望ましいのではないかという所見でございます。
  16. 林芳正

    林芳正君 ありがとうございました。  それでは次に、これもまたいろいろ議論が出ておるようでございますが、今後いろんな財政需要が新たに生じた場合に、前回審議をさせていただきました補正予算は何とかやりくりでやっていただいたようでございますけれども、今後また補正を組んだり、また来年度の予算でも、今シーリングは新聞等で報道されておりますが、国債を新たに増発して資金を調達していくということが不可避ではないか、こういうふうに思っております。一方で、これまた国債が出ますと長期金利が上昇して、去年の暮れに一度ありましたけれども、これがクラウディングアウトになるかどうかは別として、景気へのマイナス効果が出るのではないか、こういう議論があります。  そこで、これは私は必ずしも賛成ではないんですが、日銀国債を引き受けたらどうかというような議論も一部ではございますし、またそこまでいかないまでも、今現にやっておられます国債の買い切りオペを少し増額すればこれに近い効果が得られるのではないかというような議論もあるようでございますが、この点につきまして日銀のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  17. 速水優

    参考人速水優君) 国債の問題をいみじくも御指摘くださいましたが、私どもとしては、これから起こるであろう最大の問題の一つでございます。  私ども中央銀行の立場から言わせていただきますと、確かに今の日本国債発行残高は三百数十兆、地方を入れますとGDPを超えるような数字になっておりますし、今後もまだまだ増発が予想されるわけでございます。そういうものをどうやって消化していくかということは、これは非常に大きな金融問題ではなかろうかというふうに思っております。しかし、中央銀行の立場から言えますことは、国債を新規に引き受けるということはやるべきでないということを強い信念といいますか、これまでの歴史や私どもの経験からも言えることだと思っております。  日本の場合を考えてみましても、昭和七年に高橋是清は、満州事変が起こり不況のときに国債の引き受けをやって、高橋是清は二・二六事件で昭和十一年に亡くなるわけですけれども、それ以降、そのまま引き受けが続いて臨時軍事費がどんどん出され、そしてまた終戦になって終戦処理費が出され、ハイパーインフレを呼んでいったわけでございます。  こういう負債の中央銀行引き受けといった、そのときは必要な資金の調達に非常に便利であることは間違いないと思いますけれども、そういう国債に対して、今金融市場というものがグローバル化している中で、一たん中央銀行でないと引き受けない国債というのは、それだけでもういわばジャンクボンド扱いになってしまうわけです。そういうことはやっぱりやるべきでない、国債のためにもやるべきでないし、一たびそういう制度ができ、あるいは癖がつきますと、それが資金調達の最も簡易な方法になってしまうといったようなことになると困るわけです。  せっかく日本銀行も独立性が与えられたわけでございますので、私どもの判断で、引き受けはもとよりのこと、買い切りオペがどんどんふえていくといったようなことになりますと、これは必ずインフレをもたらすというふうに思われます。市場自体もそういう危険性を十分知っておるわけでございますし、我が国だけでなく、そういうことを中央銀行がやっております国は、特に引き受けをやっております国はございません。  前例を見ましても、ドイツが第一次大戦のときに戦費調達のために引き受けの道を開いて、それによって戦後にハイパーインフレをもたらした。また、イタリーが一九七〇年代に財政が非常に苦しくなって引き受け制度を導入した結果、非常なインフレで後々まで困ったといったような例もございます。そういうことを考えますと、国債の買い切りオペも引き受けもやるべきことではないというふうに考えております。  国債の消化あるいは価格支持を目的として行うということであるならば、結局は国債を際限なく買っていくことにならざるを得ない直接引き受けと同様な結果となることが買い切りオペについても言えるわけでございまして、このため日本銀行は、従来から国債の買い切りオペは経済が必要とする長期的な資金を円滑に供給するための手段というふうに位置づけております。長い目で見た日銀券の増加と大体とんとん、トレンドを合わせていくというような考え方でこれまで来ております。こうした基本的な方針をここへ来て変更するつもりはございません。  このことはこれからも国民にも理解をしていただく必要がありますし、それと同時に、市場をなるたけ広く、しかも流動性のあるものにして、ビッグバンによって債券市場が内外に開かれていくわけでございます。その中で、やはり国債というものが債券市場のいわゆるベンチマークといいますか中心になっていくということは、この数量からいっても性格からいってもリスクのない証券でございますので、中心になっていくことは当然の流れではなかろうか。そういうものを早く一般の人たちに買いやすいものにしていく、内外の市場から調達しやすいものにしていくことが必要かというふうに思っております。  そういうことをよく考えた上で、国債の方もできるだけ、既に二年物、四年物などができておりますが、種類をふやしていただきますと同時に、これをもって日本の債券市場、今預金、現金に非常に大きくとどまっております日本家計の資産というものを流動化していくように使っていっていただきたいものだというふうに思っております。
  18. 林芳正

    林芳正君 ありがとうございました。  今、最後に総裁がお触れになりましたけれども、これはインフラ整備といいますか、後でお聞きしようと思っていたんですが、円の国際化等にも資する、債券市場全体のインフラという意味でも、私は四年と六年の間の五年を考えていくというのは大変大事なことではないかと思っておりまして、我が党の債券市場問題小委員会でも提言をさせていただきましたし、先般の予算委員会でも大蔵大臣に御質疑をさせていただいて前向きな御答弁をいただいたところでございます。今、総裁がおっしゃったような方向でそちらの方は検討していただきますし、また国債の引き受けについては、ぜひ今のスタンスをきっちりと守っていただきたいというふうに思うわけでございます。  そこで次に、これは七月二十九日に藤原副総裁が御講演をされて、その中でも触れておられることでございますが、いわゆるペイオフの問題でございます。大分近づいてまいりましたので、二〇〇一年四月以降ペイオフを解禁、この言葉がちょっと誤解を招くのかもしれませんが、いろんな方が、金融市場がこれで混乱をしてしまうのではないかとか、少し延期をすべきだという意見も最近は余りおっしゃる方も少なくなってきたと思うんですが、一部でそういう御意見もあるようでございます。私も予定どおりやるべきだと思いますが、予定どおりやるべきだとおっしゃる方々の中にもいろいろ誤解もあるようですし、また全部が全部ペイオフして一千万円までしかもらえないというようなことではないですし、そういう中間的な手段、もう少しメニューをそろえるべきではないかという御意見が強いように思っております。  この間、浅尾議員も少しそれに関連した御質疑をされておったと思いますけれどもアメリカの方でも、金曜日の三時ぐらいに営業が終わりますと、そこで特殊部隊のようなものがだっと入っていきまして、週末までに全部仕分けをして月曜日には看板をかけかえてできる、こんなようなことをやっているというお話でございます。いわゆるPアンドA、パーチェス・アンド・アサンプション、こう言うそうでございますが、こういうような方式についても検討すべきかと思います。特に、地方の中小、我々の地元なんかの方のお話を聞いておりますと、いっぱい銀行があるところは、すっとやって小切手で送ってもらってもそれで結構だと。小切手はアメリカですからこちらは余りないかもしれませんが、地方ではそこがなくなって次といってもなかなかないというようなこともあるようでございますし、その辺をかんがみまして、アメリカでも数字を見ますとPアンドAというのが半分を超えたりする年もあったようでございます。  その辺につきまして大蔵省の方で今中間取りまとめをされておるという報道もあったようでございますが、大臣もしくは当局の御見解を賜りたいと思います。
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的には、以前にも申し上げましたが、現在行われております制度は二〇〇一年三月をもって廃止をしたいと考えておりまして、そういう考えのもとに、過般、金融議会にこれに伴ういろいろな問題についての御審議をお願いしたわけでございます。そして、先般、審議会からいろいろこれに関連いたします諸問題の問題点を洗い出して、世の中にお示しになりました。  その目的は、洗い出した問題点に従っていろいろ世論の反応あるいはそれについてのサジェスチョンを求めて、そして最終的な答申に入ろうという中間段階でございました。  それに対しまして、この問題は二〇〇一年三月の問題ではありますけれども、いろいろ考えますと、本年のうちぐらいに基本的な政府の方針をはっきり決めることが大事ではないか。国会に御審議をいただきます法律案は来るべき通常国会になるといたしましても、その前に方針だけはきちんと決めませんといろいろな迷いを生むのではないかというふうに考えましたので、まことに恐縮なことですが、金融議会に夏休みを返上して審議を再開していただきたいというお願いをいたしました。間もなく再開をしていただくことになると思います。  これを予定どおり廃止するといたしまして、それに伴う問題は極めてたくさんある。ただ廃止しただけで済むというわけにはまいりませんで、あれこれの問題について後始末をどうするのか、またどういうものについてどういう処理をするのか。  今パーチェス・アンド・アサンプションの話もございまして、金曜に店を閉じると月曜にはどこかの銀行が払ってくれるというようなことがどうしてうまくいくのか。大銀行についてでありますとなかなかそう簡単にもいかないのだろうなと。どういうことをやっているんだろうかというようなことも、既に研究にも人をやったりしておりますが、だんだんこの問題が世の中の方に議論をされ始めますと、思ったほど簡単な話ではない、よほど周到に対応しておかないと迷いを生ずるという気がいたしましたので、それで今そのことを金融議会にお願いいたしました。  また、本委員会委員各位からも御教示を得たい問題でございますが、金融議会の御審議を見ながら、私としては、年末にならないうちに政府としての方針を確認いたしまして、それに伴う諸問題についての処理を、同時にこういうふうに考えるということを国会に申し上げるようにいたしませんと、ちょっと手おくれになるという思いがしておりますので、ただいまそういう作業をいたしておるところでございます。
  20. 林芳正

    林芳正君 ありがとうございました。  まさに待ったなしのことで、夏休みを返上してやっていただける、ありがたいことだと思います。  そこで、検討を早くして骨格を示していただくということは大変大事だと私も思っておりますが、そのときに、今、大臣がおっしゃいましたように法制度が、大分基本的な法のインフラがアメリカ日本で違いますからいろんな御苦労をされると思いますが、ぜひいろんなことを詰めていただいて、早く骨格を示していただきたいと御要望させていただきます。  それから、FDICのインプルーブメントアクトというのをアメリカがやったときにも、実はこのPアンドAの最小コスト原則、これが一番コストが低くて済むんだということを厳格に定めておりますし、もう一つはシステミックリスク例外規定、ちょっと難しいのでございますが、そういう最小のコストでやるのが原則ですけれども、それに従ってやってしまった場合に物すごく金融システム全体に大きな影響を与えるという場合は、それをオーバールールしまして、別のやり方をやってもいいということをかなり厳格な手続を決めて認めております。  私は、こういうことは必要だろうと思っております。かなり厳格に決めて、このインプルーブメントアクトをやった後の発動例はまだないそうでございまして、これは景気かなりよくなったということもあるんでしょうけれども、そういうことも御検討の中に入っていると思いますが、御要望しておきたい、こういうふうに思います。  そこでもう一つ、ペイオフは二〇〇一年でございますが、その前にいわゆる二〇〇〇年問題、これはもともとはコンピューターの問題ですが、最近は郵貯の問題も二〇〇〇年問題と言うそうでございますけれども、コンピューターの方の二〇〇〇年問題についてお尋ねをしたいと思います。  Y2K、こう言うんですが、私も最初Y2Kと聞いて何のことかなと。イヤー・ツー・サウザンドで二〇〇〇年問題と言うそうです。これも最近減ってきましたけれども、一時は日本の対応が諸外国に比べてこの二〇〇〇年問題はおくれているのではないかということがございましたけれども、随分進んできたのではないかと私も実際思っております。  何よりも、ここに乗じて変なことをするような人、またいわれない不安が増幅していろんなことが起きてしまうこと、こういうことを防止しなければいけないなと思っております。  もう八月になりましたけれども、例のノストラダムスの予言によりますと、七月には空から大王が降ってくるという話で大騒ぎをしておりましたが、何のことはなかったわけでございまして、そういうものがないようにきちっとディスクローズをしていただいて、いろんな対策をやっていただいておると思いますが、今どのような準備をされておるか、日銀にお伺いをいたします。
  21. 小畑義治

    参考人小畑義治君) お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、私ども日本銀行といたしましては、二〇〇〇年問題への対応というのは順調な対応が図られているというふうに認識いたしております。  日本銀行におきましては、二〇〇〇年問題への対応を最重要案件の一つと位置づけておるところでございまして、我が国決済システムの基盤をなします日銀ネットにつきましては、本年の一月以降でございますけれども、二〇〇〇年問題が発生しないように改善いたしましたシステムを稼働させるなど、着実に対応を進めてきたところでございます。一方、この間、民間金融機関に対しましても、漏れなく所要の対応を図るように早い段階から働きかけを行ってきたところでございます。  やや具体的に敷衍して申し上げますと、そうした働きかけの一環といたしましては、日本銀行では取引先金融機関の対応状況につきましてアンケート調査を実施いたしますとともに、大手行を中心といたしまして二〇〇〇年問題に焦点を絞りました特別考査、私どもターゲット考査とも言っておりますが、そういう考査も実施してまいりました。  また、民間の決済システムと連携いたしまして、昨年の十二月以降四回にわたりまして主要な金融機関を網羅いたします対外接続テスト、インダストリーワイドテストを行ってきたところでございます。こうしたテスト結果を見てみますと、いずれの場合におきましても二〇〇〇年の日付がつきましたデータが正常に処理されておるところでございまして、参加した決済システム金融機関のY2K対応が順調に進んでいるということが確認されたというふうに思っております。  この間、対応を順調に図ってきておるわけでございますけれども、二〇〇〇年問題のもう一つの問題は、対応を十分に図っても不幸にして万が一問題が発生するという問題がございます。実際に問題が発生した場合の危機管理計画、いわゆるよく言われますコンティンジェンシープランでございますが、この危機管理計画につきましても、金融機関に策定上の留意点を示しましたペーパーを配付いたしまして対応を促してきておりますほか、日本銀行自体のコンティンジェンシープラン、危機管理計画の策定とその充実も着実に進めてきておるところでございまして、その概要を先般公表いたしたところでございます。  以上申し上げましたように、我が国金融界におきますこうした対応の進捗は、最近では海外関係者の間にも広く認識されてきておるところでございまして、海外の格付機関などからも十分な対応が図られていると評価されるに至っておるところでございます。  日本銀行といたしましては、年末に向けまして、金融界における危機管理計画の一層の充実を図ることによりまして、二〇〇〇年問題への対応にさらに万全を期してまいりたいと思っておるところでございます。
  22. 林芳正

    林芳正君 英語で情報を提供したり、インターネットで随分公表をしていただいて、かなりインターネットのホームページにもヒットが来ておるということでございます。ぜひ総裁、副総裁もいろんなところへ出ていただいて、今もやっていただいておりますけれども、今の点も含めましてどんどんとお話をしていただいて、新生日銀の役割を果たしていただくことをお願いいたしまして、時間がまだありますが、用意した質問が終わりましたので私はここで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  23. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 きょうは日銀総裁にもお越しいただいておりまして、当初質問通告をさせていただいていなかったんですが、林委員の質問の中で私が関心を持ちました点がございましたので、一点だけお許しをいただきまして伺わせていただきたいというふうに思います。  それは何かといいますと、先般の当委員会の席においても、まだまだデフレ懸念が残っている中において、ゼロ金利政策を続けていくというふうにおっしゃっておったわけでございますが、先ほど一方で、国債の増発が補正予算等の関係であり得るかもしれない、国債増発が起きた場合には、いわゆるイールドカーブというか、長期の金利は少し高くなる、そして短期の金利は〇%のまま維持されるということで、長いものの金利が高くなって短いものが低くなっていくということが起きる可能性があるんですが、果たして本当にその場合に、〇%で金利を維持することがインフレその他を考えた場合でも可能かどうか、その点だけお答えいただければと思います。
  24. 速水優

    参考人速水優君) 長期金利につきましては、私どもも非常に神経を使って見ておるわけでございますが、やや長い期間をとってみますと、基本的には先行きの景気とか物価について市場がどういうふうに見ているかという見方を反映してつくられていくものではなかろうかというふうに思います。  これまでの長期金利の推移を振り返ってみますと、短期的には国債の需給懸念といったことを材料にして一時的に上昇したことがございましたが、結局は景気の低迷が長引くという中で金利の低下傾向が続いてきたと申してよかろうかと思います。  今後、補正予算とか国債の追加的発行というようなことが行われていきますときに、今ここで具体的なコメントを申し述べることは差し控えたいと思いますが、一般論として申し述べますならば、仮に補正予算論議をきっかけにして市場参加者の景気に対する見方がさらに強まっていくということであれば、長期金利が上がっていくのは、それは経済活動に悪影響を与える危険というものは小さいのではないか、その程度のことであれば受け入れていくべきものではないかというふうに思います。一方、人々の景気物価に対する見方が変わらなければ、長期金利は短期的には振れることがあっても結局もとに戻るものというふうに考えられます。  いずれにしましても、長期金利の動向と経済活動との関係につきましては今後とも注意深くウオッチしてまいりたいというふうに思っております。
  25. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございました。  さて、少し観点を変えた質問をさせていただきたいと思いますが、昨日の衆議院の予算委員会でも若干議論があったかと思いますが、いわゆる日債銀の問題に関してでございます。  きょうは法務政務次官にも、副大臣制の導入ということもあり得るかなということで、将来答弁されることもあろうかということでちょっとお願いをいたしまして御出席をいただいておりますので、若干法律論に関する部分も質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、法律論に関して申し上げますと、銀行法に関するところでございますけれども、日債銀に関しましてその日次のあるいは月次の資金の出入りというものは、日債銀の経営状況かなり危ないと言われておる、あるいはいわゆる奉加帳を回すようになる前後ぐらいから監督当局として徴求をしておったのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  26. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 個別の具体的な内容につきましては差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、監督当局といたしましては、金融機関の財務状況を的確に把握いたしますために、例えば半期ごとの決算状況表でございますとか、毎月末の預金、貸出残高等に係る日計表等でございますとか、幾つかの必要な情報につきましては適時に報告を求めているところでございます。
  27. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 銀行法の二十四条には、「金融再生委員会は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、銀行に対し、その業務又は財産の状況に関し報告又は資料の提出を求めることができる。」と書いてあるわけでございまして、日債銀の場合には、非常に経営が厳しいという状況になっておるわけでございますから、報告を求めなかったということは、仮に求めていなかったとするならば、当然それは職務に対して遅怠があったのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  28. 乾文男

    政府委員(乾文男君) ただいま一般論でお答えしたとおりでございまして、今引用になられました銀行法第二十四条に基づきまして、適宜に必要な資料を徴求しているところでございます。
  29. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そうすると、資料を月次の貸し出し、あるいは財産状況について徴求をしておられたということだと思います。そうだとすると、お金の動き等を当然見られて、ある程度あるいはかなりその財産の状況等がわかったのではないかな、こんなふうに思いますけれども、そうすると、ずっと専門家が見ることによって、もしそこに多少粉飾等のごまかしがあったとするならばわかったのではないか、あるいはわからないとすればそこに大きな過失があったのではないかなというふうに思います。要するに、徴求すべき資料はそこにあって、そしてそれを見ておられて、帳簿上おかしいというふうに気づかないというのは故意か過失があるのではないかと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  30. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 今申しましたように、金融機関資金繰り等につきまして、必要な資料を徴求いたしまして把握しております。資金繰りというのは非常に重要な要素でございますから、監督当局のみならず、日本銀行も日々の資金繰りを非常に注意深くウオッチしているところでございますけれども、そうした資金繰り等の問題と、今御指摘になりましたそこから何か粉飾であるとかそうしたことを発見するためということとはこれはちょっと違うのかなと。  金融機関のいわば健全性、日常の業務の観点からそうした資金繰りというものを日本銀行を中心に見ておりますけれども、この銀行法二十四条は、申し上げるまでもないんですけれども、特に犯罪を探るためとか、そういうことではございませんので、そこは御理解をいただきたいと思います。
  31. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、別の観点から質問をさせていただきます。  せっかく政務次官お越しでございますので、今度は少し刑法の方で、一般論でお話を伺いたいと思います。  申すまでもありませんけれども、刑法の第六十一条には、これはちょっと言葉が強いんですけれども、「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」と書いてあります。一般論で伺わせていただきますと、仮にいろいろな資料を徴求した上で、当時セーフティーネットがなかったとかいろんな事情があるわけでございまして、そこでそのとおりに出すと問題があるといったようなことを黙示、あるいは明らかに出した場合には教唆になるんでしょうけれども、どの程度までだと教唆に当たるか。どの程度までというのは、暗黙の了解ということも当然あるんでしょうけれども、どの程度までだと一般論では教唆になるのかということをちょっと伺わせていただければと思います。
  32. 北岡秀二

    政府委員(北岡秀二君) 一般論の仮定の話には大変お答えしづらいんですが、犯罪が成立するかどうかにつきましては、あくまで捜査機関におきまして法と証拠に基づいて厳格に判断すべき事柄でありますので、そのあたりの状況の設定というのが十分に掌握できない状況の中ではなかなかお答えしづらいと思う次第でございますので、よろしくお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  33. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 一般論ではなかなかお答えしづらいということでございますので、もう少し具体的にお伺いさせていただきますけれども、いろいろな事情があったにせよ、明らかに数字を変えろと言った場合にはこれは犯罪になるという理解でよろしゅうございますね。
  34. 北岡秀二

    政府委員(北岡秀二君) ちょっと子細にかかる部分でございますので、事務当局より答えさせていただきます。
  35. 池上政幸

    説明員(池上政幸君) ただいま政務次官からもお答え申し上げましたとおり、お尋ねは具体的な事実関係を一定の場合を想定してお尋ねになっているものでございまして、犯罪の成否というものは法と証拠に基づいて具体的な事案に応じて判断すべきものであるので、なかなかお答えしづらいところがあるのでございます。  もちろん、委員御指摘のとおり、刑法第六十一条第一項は、「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」ということで教唆犯の規定を設けておりますけれども、具体的にどのような事実があって教唆の罪が成立するかということは、個別具体的な事案において証拠に基づいて判断されるべき事柄であると考えております。
  36. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 なかなかお答えいただけない難しい部分もあろうかと思いますけれども、最後にその点に関してもう一点だけちょっと伺わせていただきたいんです。  私は、素直にその法律を読めば、明らかに教唆した場合には刑法違反になるんだろうというふうに思いますが、日本社会の中において暗黙の了解ということもあろうかというふうに思いますけれども、その暗黙の了解の場合に、果たしてそれが教唆に当たるかどうかということをお答えいただければと思います。
  37. 池上政幸

    説明員(池上政幸君) お尋ねは、人を教唆した場合にその教唆の方法が具体的に明示的に行われた場合に限らず、意思を通じたような場合もあり得るか、あるいは黙示的に教唆の意思を示したような場合もあり得るかということだと理解させていただきますが、一般論として申し上げますならば、明示的にはっきり言葉で教え唆すということだけには限らないとは解釈されておりますが、それはいずれにせよ具体的な事実関係いかんによるものと考えております。
  38. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございます。  さて、もう一点、日債銀絡みで伺わせていただきたいと思います。  銀行法上は、監督当局に関して、特に明示の義務規定ということではなくて権利規定というんですか、何々をすることができるという書き方になっておるんです。できると書いてあった場合に、かつ国民経済の観点から必要がある場合には、私はむしろこれを義務規定的にすべきであるというふうに読むのが正しいのかなと思うんですが、仮にそうだという前提で質問をさせていただきます。  一方で、国家公務員法の八十二条には公務員の懲戒規定が書かれておりまして、その第二号に「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」という規定がありまして、その場合は懲戒に当たるということなんだと思います。  ここで伺いたいのは、義務に違反したかどうかというのは非常に難しいところでしょうけれども、義務を怠ったということはあり得るのかなという観点から、一般論で結構でございますが、先ほど来伺わさせていただいております報告または資料は提出を求めていなかったとするならば、私はこれは職務義務を怠ったということになるんだと思います。どうも御答弁は明確には答えておられませんが、日債銀に関しては少なくとも奉加帳の前ぐらいからは報告は徴していたということだと思いますが、徴した上で例えば二十六条の業務停止その他の適切な措置をとらなかったということは職務を怠ったことになり得るのかどうか、その点についてどなたでも結構でございますから、お答えいただければと思います。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 質問の趣旨は極めて明らかでありますけれども、公務員法の解釈に属しますので、ここにおります者だれも有権的な解釈を下す立場にないように思います。
  40. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 わかりました。それはぜひ別途お答えいただくようにお願いを申し上げたいというふうに思いますが、有権解釈でなくても結構でございますので、もし御所見を大蔵大臣、いただければと思います。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お言葉ではございますけれども、これは厳格にこれこそ法の解釈に属します。しかも、それいかんによっては懲戒をすべきかすべきでないかということになりますので、ここはお答えをできる立場にある者からひとつお答えを申し上げる機会をお与えいただきたいと思います。
  42. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 わかりました。  では、次の質問の方に移らせていただきたいというふうに思いますが、時間の関係で少し急ぎながらやらせていただきたいと思います。  次の質問というのは、きょう柳沢委員長もお越しでございますけれども、最近、金融再生委員会が初めて外資系の金融機関、クレディ・スイス・グループに検査に入られて、結果としていろいろ大変厳しい検査結果、不正があったということでございましょうけれども、大変厳しい措置を下されたということでございます。その免許取り消しに該当するのは、銀行法二十七条の公益を害する罪ということで免許を取り消されたということだと思います。  そこで、公益を害するということは果たしてクレディ・スイス単体で公益を害することができたのだろうかと。言い方をかえますと、公益を害したのはクレディ・スイスが損失先送り商品を販売いたしまして損失先送りの手助けをしたということでありますから、販売をしたということは当然購入した金融機関もあるわけでございまして、そういったところも公益を害しているのではないかな、こういうふうに思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  43. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) CSグループは五社でございましたが、それとのかかわりの御商売をなさった日系の金融機関が一社ということで六社に対して検査が行われ、これに基づきまして、先般、今御指摘のような処分をいたしたということでございます。  その中で、クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ銀行というものに対して免許の取り消しということを行いまして、その根拠として引用いたしたものは、法令違反の行為ももちろん、検査の妨害であるとか忌避であるとかということ、さらには証取法等における兼業禁止を破ったというようなことで、大きく分けて二つの固まりにおいて法令違反の事実もありましたけれども、加えまして、ただいま先生御指摘のように、公益侵害行為ということをもって根拠にし、これら法令違反と法令侵害行為のすべてを根拠として免許の停止に結びつけた、こういうのが今回の処分の概要でございます。  しからば、この公益侵害行為というのは、単にCSファイナンシャル・プロダクツ銀行だけにあったのではなく、その他の関連するところにもそれぞれにあったのではないか、こういう御質疑でございますけれども、そこは私ども金融検査の結果をいろいろと報告を受け、また金融監督庁側の意見というようなものも参酌いたしまして、総合的な判断として、最もある意味で重い責任を追及すべきなのはファイナンシャル・プロダクツ銀行である、このように結論を出したというのが概要でございます。
  44. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私は、決してクレディ・スイスに対する処罰が重いとか軽いとか、そういうことではなくて、ちょっと明らかにさせていただきたかったのは、公益を害するという罪で簡単に言えば免許停止、取り消しということになるわけでございますが、公益を害した共犯金融機関というのがあるんではないか。共犯金融機関というのは、クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツが売った製品によって損失を先送りした幾つかの中には、某雑誌等のあれによりますと日債銀等も含まれておるということでございますけれども、そうした共犯の、日債銀に限らず、幾つか現存する金融機関も、特別公的管理に入っていない金融機関経営形態が変わっていない金融機関もあるわけでございます。そうしたところに関しては、いわゆる公益を害することの共犯になるのではないかという質問なんですが、その点についてはいかがでございましょうか。
  45. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 銀行法二十七条に関連してのお尋ねでございますので、監督庁からお答えいたします。  まず、このクレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツの免許取り消しの直接の理由の一つとなりました公益侵害でございますが、これは顧客というのはいるわけでございますけれども、その顧客との間の取引が、これは個々の実態を見てみなければ一概に違法かどうかということは決めつけられない問題でございます。  ただ、このファイナンシャル・プロダクツについて申しますと、顧客である金融機関あるいは事業会社等の財務内容の適切な開示の観点から、著しく不適切な商品を大量に反復継続して組成、提供して販売していたということでございまして、これは我が国金融市場及び金融機関の健全性を著しく損なわせるということから、このファイナンシャル・プロダクツ銀行の行為が二十七条の公益を害する行為というふうに認定し、取り消しの処分を行ったわけでございます。  これに対しまして、顧客たる金融機関の方につきましては、ただいま申し上げましたように、その一つ一つの実態あるいは意図というものを見てみないとわからないわけでございますけれども、一般論で申し上げますと、顧客である金融機関がこうしたスキームを活用いたしまして、損失の先送りにつながるようなスキームを活用いたしまして自己資本比率の意図的なかさ上げを図っていたといたしますと、これは金融監督庁の事務ガイドラインにも抵触することになるわけでございます。  そうしたことから、金融監督庁といたしましては、CSFP銀行東京支店等が行っておりました不適切な取引の顧客のうち金融機関につきましては、今後その取引実態を把握いたしまして、法令に照らして適切な対処をしていくこととしたいと考えているところでございます。
  46. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 多分、私の質問は大体お答えいただいているんですが、恐らく今回のクレディ・スイス・グループのいろいろな処罰に関して、これはどちらかというと外国当局はルール違反ではないかなと私は思います。例えばスイスの当局も、スイスの当局かあるいはクレディ・スイス・グループなのかちょっとわかりませんけれども、いろいろな申し入れをされておるということだと思いますが、今申し上げたように、片方、公益を害するという、ここは非常に裁量の部分も強いかなという気もいたします。  そうした中で、繰り返しになりますが、公益を害するということは決して共同してその商品を買ってくれる、あるいはそうすることによって公益は害しながらも損失を先送りして決算書を粉飾する、利益のある客があって初めて成立するわけでございますので、ぜひそこの点を慎重に、購入された側についても公平な観点から対処していただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。  これは銀行法でございますので、しかもここの部分は法務省の方に質問通告はしておりません。もしお答えが可能であればで結構でございますが、その公益を害する罪ということについて、共犯ということがあり得るのかどうか。質問通告をしていないので、もしお答えいただけなければ結構でございます。
  47. 池上政幸

    説明員(池上政幸君) 突然のお尋ねでございまして準備がございませんが、報道等で、あるいは国会での御論議がなされていることは承知しておりますけれども、お尋ねの件が御指摘の法条に当たるかどうかについてはお答えする立場にないであろうと考えております。
  48. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 一点補足させていただきますと、この銀行法第二十七条で免許の取り消しをいたしましたけれども、これはあくまでも行政処分でございまして、もう先生御承知かと思いますが、これは刑事罰とか犯罪ということではございませんので、共犯であるとか幇助であるとかそういうこととは直ちに結びつかない問題であるということを申し述べさせていただきたいと思います。
  49. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今までいろいろるる申し上げましたけれども、今回の外資系の金融機関にも法に基づいてしっかりと検査に入られるということは、非常に私自身は評価しておるということをぜひ申し上げさせていただいて、次の質問に入らせていただきたいと思います。  それでは、ほかの例えば外資系の金融機関が多数日本にあって、これは今後の趨勢においてますますふえていくものだろうというふうに思いますが、そうした金融機関の中には外貨預金あるいは邦貨の預金を非常に多く集めておるところもあろうかと思います。  一般論に関して言えば、それが果たして預金保険上の、外貨預金についてはオフショア預金であれば預金保険の対象外なんでしょうけれども預金保険の対象外だといっても、二〇〇一年三月までは仮にペイオフはやらないということになると、二〇〇一年三月までに外資系のそういう金融機関日本預金を集めているところが破綻をした場合には、それも含めて救済するという理解なのかどうか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  50. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 預金保険制度の対象となる金融機関につきましては預金保険法第二条に列挙されておりまして、あくまで日本国内に本店のある金融機関に限定されておりますので、国内に本店の存在しない外資系金融機関預金保険制度の対象となっておりません。
  51. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 いや、それは結構なんですが、そういった国内に本店がない金融機関が破綻をした場合に、二〇〇一年三月まではそれでも保護することが果たして可能なのかどうか。  なぜそういうことを質問させていただきますかというと、外資系の金融機関は国内に本店がないところでもかなり預金を集めておるのではないかなというふうに思いまして、そういう人はセミプロみたいな人だから保護する必要はないという理解であればそれは一つ考え方でしょうが、そうではなくて、やはり安定あるいは周知徹底というのが足りないということであれば、そうはいっても要はペイオフというか多少保護することを考えておられるのか。その点だけお伺いしたいと思います。
  52. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 先ほど申し上げましたように、金融機関自体が対象外でございますし、外貨預金預金保険の対象となっておりませんで、現在、二〇〇一年三月までの特例措置におきましても保護の対象となっていないということでございます。  また、その辺の誤解を招かないように、金融機関におきましては、顧客には預金保険の対象となるもの、ならないものについて周知徹底するようにということにはなっているわけでございます。
  53. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、質問を変えさせていただいて、外国という言い方がいいのかどうか、いわゆる金融機関の中で国内に本店は置いているけれども資本関係において日系の資本でないものについてお話を伺わせていただきたいと思います。  具体的に申し上げますが、これから少し破綻する可能性があると言われているものの一つとしていわゆる朝鮮系の金融機関、こういったようなものが破綻する可能性があるといろいろと報道がなされております。  まず第一点、そういったようなものは金融再生法の対象になるという理解でよろしゅうございますか。
  54. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 今御指摘になりました朝銀系の金融機関でございましても日本の信用組合でございます。中小企業等協同組合法であったかと思いますけれども、その法律に基づきまして設立された金融機関ということでございますから、預金法でございますとか再生法でございますとか、そうした国内法の適用は当然にあるということでございます。
  55. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そこで、質問でございますけれども、そうしたところが破綻をした場合には当然金融整理管財人というものを再生委員長が任命されるということになると思いますが、あるいはこれは財務局になるのか、ちょっとそこは細かいところは見ておりませんが、その金融整理管財人は金融再生法に基づきますと第十八条の第二項で犯罪があると思われるときには告発をしなければいけないというふうに記載がされておるわけでございます。そういう告発義務は当然一般的な金融機関と同じというふうに考えてよろしいわけでございますか。
  56. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 信用組合が一般的に破綻をした場合どのような破綻の処理が行われるかということにつきましては、これは国内の銀行ですし、預金保険保険料も払っているということでございまして、預金保険法の適用もあるし、金融再生法の適用もあるし、金融機能健全化法の適用もある、こういう立場でございます。破綻の場合にどういうふうになっているかと申しますと、現実には、預金保険法に基づく救済金融機関に対する資金援助方式ということで行われているものが大宗でございます。  この関係で責任追及の規定が格別に設けられているかどうかはちょっと私つまびらかにいたしませんが、今の先生のお話で、仮に再生法に基づいて金融整理管財人が派遣される方式を採用された場合には、ただいま御引用になられたあの責任追及の規定が当然働く、このように制度が仕組まれているところでございます。
  57. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私が実はこの質問をさせていただいておりますのは、これは事実かどうかというところはもちろん争いがあるところでございますが、幾つかの朝銀系の信用組合において横領があったということで訴訟も行われておると聞いております。それが本当に横領に当たるのかどうかわかりませんが、預金をした者が知らない間に送金をされていた、送金された先が北朝鮮であるというようなことも含めて訴訟が行われておると聞いております。  そうした中で、また八月にはテポドン・ミサイルが発射されるかもしれないといったようなことも新聞報道ではされておりますが、一般的な国民感情から申し上げさせていただきますと、仮にテポドン・ミサイルが発射された場合に、しかも、個別の金融機関がどうかということは別として、その金融機関の中に仮に不正を行って資金を送金していたというようなことがあった場合には、それは法律上は、当然救わなければいけないというのは、預金者は善意の預金者ですから救わなければいけないと思いますけれども、一方において、犯罪があったとするならばしっかりと告発をしていくべきではないかなというふうに考えております。だとすれば、金融再生法には十八条にしっかりと告発の義務が書かれておるわけでございまして、預金保険法での破綻処理よりかは、結果は、結果はというのは、預金者に対する結果は一緒なわけでございますから、より犯罪の可能性があるとすれば金融再生法での破綻処理を行われたらいかがですかということなのでございますが、その点についてお伺いさせていただきたいと思います。
  58. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 今、先生がおっしゃったとおり、信用組合の破綻において常識的に適用されるのは預金保険法上の救済金融機関に対する資金援助方式と再生法に基づく金融整理管財人による方式、こういうことなんだけれども、責任追及の規定のあるのは再生法の方なんだから、むしろ優先的に再生法の方を適用するように持っていくべきではないか、こういうお話のように承りました。  確かにそういう面もございますけれども、私が今事務当局を督励いたしておりますのは、どこであれ、この預金保険法に基づく資金援助に当たっても、これは第一義的には都道府県にその事務が移管されているわけでございますけれども、よく見て、吟味をして、やはりどんな理由であれ、穴があいたものを埋めるんだというような安直な対処の仕方をとるということは、大宗は保険料が入っているとしても、何がしか国民の税金の部分も加わらざるを得ないというのが現況であることを考えれば、当然そうでなきゃならないということで、現在、督励もいたしておるところでございます。  確かに、この援助のときに、犯罪と思料されるようなことがなくてもあっても、国家公務員は犯罪と思料される事実に直面したときには告発の義務を一般的にかぶっておりますから、もしそうしたことがあればこれで対処をするということになって、再生法に基づく金融整理管財人の場合とそんなに大きな差が出るとも法制上考えられないし、実効上は特に考えないようにしてまいりたい、このように思っております。
  59. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございました。  本来は政務次官にも同じ趣旨の質問をさせていただこうと思ったんですが、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  60. 広中和歌子

    広中和歌子君 私も、冒頭の質問は実を言うと質問通告していないんですが、林委員の御質問に触発されまして、質問させていただきます。  この御報告の中で、「デフレ懸念払拭が展望できるような情勢になるまで、現在の思い切った金融緩和基調を維持し、金融面から、物価の安定と経済回復をしっかり支えていく方針であります。」というふうにおっしゃっているわけでございます。  私は、日銀総裁が初めてこのポストにおつきになりましたときに、庶民の立場から言うと、千二百兆円に上る預金がほとんど金利を生まないといういわばお金の飼い殺し、そういう状況に対して大変にフラストレーションを感じている、それが消費マインドを押し下げているんではないか、仮に例えば一%預金金利が上がりますと、それは市場に十兆円のお金が出回る、いわば減税効果と同じような効果があるわけでございますと。そのような趣旨のことを申し上げましたらば、総裁は、自分も日銀総裁になるまでは同じような考え方を持っていたというふうにおっしゃったのを鮮やかに今思い出すわけでございますけれども、こういう状況をいつまでお続けになるのか。  さまざまな政策、それは金融面であれ財政面であれ、効き目があらわれるのには、先ほどの御質問にもありましたように時間がかかる。この時差を考えますと、ブレーキを緩め過ぎたりきかせ過ぎたりということが起こってしまうわけでございます。それが政策転換の難しさでありまして、その失敗が十年ほど前からのバブルを大きくし、そしてバブルをつぶし過ぎた。そうしたことが現在の不況につながっているんじゃないかと思うわけでございます。  ですから、今回の緩め過ぎというんでしょうか、それが行き過ぎないように、気がついてみたならば調整インフレ局面に入っていたというような、そしてそれがコントロールできないような状況に至るという可能性もあるわけでございまして、このファインチューニングについていつ起こすべきか、お考えがあったらお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  61. 速水優

    参考人速水優君) 非常に難しい御質問で、はっきりしたことを申し上げることは非常に難しいわけでございますけれども、繰り返し申しますように、今は、足元の景気は下げどまっているけれども回復へのはっきりとした動きは見られていないというふうに判断をしておるわけです。物価面では、当面、需給ギャップの明確な縮小がまだ見込みがたい。こういうことを考えますと、潜在的な物価への低下圧力というのはまだ残っておるというふうに見ざるを得ないわけです。  こうした景気とか物価環境を踏まえますと、やはり現在は金融面から経済活動を下支えすることによって景気回復を図ることが必要であるというふうに思います。もちろん、この長引く低金利のもとで、金利収入に多くを依存しておられる家計などで厳しい状況にあることは私どもも十分承知しておるわけでございます。  しかし、今金利を引き上げますと、投資採算の悪化企業収益の減少などを通じまして、経済活動が落ち込むおそれがまだ十分残っておるように思います。これがひいては雇用所得をまた減少させて、結局、個人消費にもマイナス影響をもたらすということを懸念しておるわけでございます。  雇用所得というのが所得の八三%を占めておるわけでございまして、それに引きかえ財産所得、利子配当所得というのはわずか五%ということでございます。そういうことを考えてみましても、今のところは、一般の人たちの雇用所得がふえて需要もふえていくといったようなことで、もうしばらく様子を見ていかざるを得ないというふうに考えております。  現在のゼロ金利というのは、この前もうっかり異常状態だと言ったらすぐ市場が動いたりしたんですが、通常の状態でないことは確かでございます。今のこのデフレ懸念さえかなり長く続いておりますので、これがもう少し先が明るくなってくれば、その辺は見逃すことなく、十分考えて次の手を打っていかなきゃならないというふうに思います。  ただ、やはり当面は今の状態、ゼロ金利といいますか、オーバーナイト物の無担保金利をゼロに等しい状態でしばらく続けていく。まだこれのデメリットの面というのがそんなに大きく出てきているとは思いませんので、この超低金利政策といいますか超金融緩和がもう少しすべての面に浸透していくまで、またその間にいろいろ前向きな構造改革なり新しい動きが出始めてくるのを十分注意して見ながら、当面、雇用等にはまだ暗い数字が出ていくかもしれませんけれども、けさ申し上げたアメリカのケースを見ても、よくジョブレスリカバリーなどという言葉が使われておるのを見ましても、雇用はどうしても後からついてくるので、少し生産が伸びたり所得が伸びたりし始めても、雇用の方は数字の上ではどうしてもおくれて、しばらくは悪化が続いていくというようなことが起こり得るわけでございまして、そういうことをよく総合して判断してまいりたいというふうに考えております。  お答えになっていないかもしれませんけれども、現在の心境を申し述べさせていただきました。
  62. 広中和歌子

    広中和歌子君 時差ということは大変面白い点だと思います。レーガンそしてブッシュ、二つの政権がやったことのクレジットというのはクリントンに引き継がれているわけでございますから、自民党政権もそういうことがないように、よそごとながら御忠告申し上げる次第でございます。  後ほど御質問しようと思っているわけですけれども、いわゆるサラリーマン金融というんですか消費者金融、それは銀行から低い金利資金を調達して、そして高利で貸しているという状況が続いているわけでございまして、庶民というのはまさに踏んだりけったりの状況ではなかろうかと思う次第でございます。  その質問は時間があります限り後でさせていただくとして、日銀報告に関連して御質問させていただきますが、山一証券問題でございます。九七年十一月に経営破綻した山一証券でございますが、去る六月二日、東京地裁から破産宣告を受け、創業百二年の歴史に幕を閉じたわけでございます。この間の大蔵行政のあり方についても、また日銀特融にも大きな問題を残しているわけですが、まず監査法人の責任追及が行われていないということ、これについてお伺いしたいわけでございます。  きのう、たまたま新幹線に乗っておりましたらば、ウエッジという雑誌がございました。そこで雑賀孫市さんという方が「公認会計士が逮捕されない日本の不思議」ということで、エッセーというんでしょうか、論文を書いていらっしゃるわけですけれども、この方が日本の長銀あるいは日債銀などの破綻のケースをあるアメリカの検事に御報告になったそうです。そうしましたら、アメリカの連邦検事は次のように言ったそうでございます。   「それでCPA(公認会計士)は何人捕まったか」   「一人も捕まっていない」   ここでこの検事は一瞬絶句した。そしてこう言った。   「なぜだ。私は法律が日米間でそれほど違いがあるとは思えない」   有価証券報告書はCPAがサインして成立する。   「頭取や社長は私企業の責任者として、赤字決算を黒字にしようとし、不良債権を甘く見るのは当然だ。それでCPAは国家・国民に代わってチェックするのだ。米国だったら頭取より先にCPAが捕まるだろう」 そういうふうに書いているわけでございますけれども、山一の監査法人の責任も問われていなければ、他の長銀などさまざまな銀行金融機関が倒産に追い込まれている中で、粉飾決算について公認会計士の責任が問われていないことについて、大蔵大臣の御見解を求めたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国でCPA、サーティファイド・パブリック・アカウンタントの制度ができましてちょうど五十年でございます。これは占領中でございましたが、アメリカの制度に倣っていたしまして今日に及びましたが、大変に試験も難しい、社会的な地位も高いということでございます。そういう意味ではアメリカの場合と比べてCPAの責めを問うというケースは確かに少なかった。  一つは、やはり我が国経済金融を含めまして右上がりに上昇してまいりましたので、いろいろなケースが起きる場合が少なかった。監査法人としても比較的困難のない仕事をしてこられたということもあったであろうと思いますし、推測すれば世の中すべて右上がりでございますから、多少のことは経営側と腹を合わせてやってもだれにも迷惑をかけないというような、言葉は悪うございますが、そういう傾向もあっただろうと思います。  ここへ来まして、殊に金融監督庁発足以来銀行の検査は極めて厳しくなりました。今までならばCPAがやっていることで済んだ話がそうはいかなくなって、いいかげんな監査をすれば大変だというようなことは監査法人の方あるいは会計士の方がかなり強く感じていらっしゃる。今までやった監査をちょっとやり直すなんという、これは初めてのことでございますが、そういうふうになってまいりました。ごくごく最近のことで広中委員が今アメリカのケースと比べておっしゃいますことは確かにそうであったと思いますが、そういう事情につきましてはCPAの方々も、皆さん方の監査法人の会計士審査会、企業会計審議会委員が中心になられまして、そういう点についての再検討を行っておられると承知をしております。  なお、山一につきましてお話がございました。個々のケースについて余り申し上げることは適当でないかと思いますけれども、山一証券の場合には事案がかなりはっきりいたしておりますので、公認会計士法第三十条または三十四条に規定するいわゆる虚偽の証明というものに該当するかどうかについては、必要な調査は実は行っております。結論は出ておりませんけれども、行っております。  それから、同じことは例えば日債銀についてもあるのではないかと。事件が取り調べ中でありますので、最終的には申し上げられないことですけれども、もし会社側が虚偽の処理をしておる、監査法人がそれを見落としておったということになりますと、これは監査法人の責めを問わなきゃならないことがあり得ることでございます。この方はまだ会社側が虚偽の記載をした、報告をしたということがもう一つ取り調べ中でございますので、監査法人についての調査はまだいたしておりません。しかし、これはいたさなければならない状況になるかもしれないということは注意して見ております。
  64. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカの場合ですけれども、十数年前にSアンドL、セービングス・アンド・ローンアソシエーションがばたばた倒産したときに、千人ぐらいの経営者が逮捕されると同時に、千人ぐらいの公認会計士も逮捕されたということでございます。逮捕そのものが目的ではないんですけれどもアメリカもこの事件を契機にして公認会計士制度を非常に厳しくしたということだそうでございます。日本もこれを他山の石として、国民投資しやすいようなきちんとした環境、オープンなものをつくっていただければと思う次第でございます。  それで、日銀総裁にお伺いいたします。  山一証券の自主廃業に際して、当時債務超過ではないということで日銀特融をお使いになりまして、そして結果的には千六百二億円の債務超過が明らかになった。これの処理の仕方なのでございますが、総裁は六月二日、証券業界でつくる日本投資者保護基金に補てんを求めるというお考えをお示しになっているわけですけれども、一方、証券業界は難色を示している。こういう中で、それでは財政資金をと、大蔵省の方に顔を向けていらっしゃいますけれども、この間の解決方法について日銀総裁並びに大蔵大臣にお伺いいたします。
  65. 速水優

    参考人速水優君) お答え申し上げます。  山一証券が破産という事態に立ち至ってしまいましたことは、日本銀行としてもまことに残念かつ遺憾でございます。  ただ、日本銀行が実施してまいりました山一証券向けのいわゆる日銀特融、これは平成九年十一月における山一証券の廃業、解散方針の決定という事態が我が国金融・証券業界に対する信認の低下とかあるいは内外市場の混乱を引き起こすことを回避する、そのことによって金融システム全体の安定を確保していくということを考えまして、どうしても必要な措置であったというふうに考えております。  日本銀行としては、今後、破産手続の中で適切に権利を行使していくことになるわけですが、山一証券の資産処分を通じまして特融資金の回収に努めていく所存でございます。これによっても、なお相当部分の回収不能額が発生するものと予想せざるを得ないわけでございます。  本件特融につきましては、平成九年十一月二十四日付の大蔵大臣談話におきまして、「本件の最終処理も含め、証券会社の破綻処理のあり方に関しては、寄託証券補償基金制度の法制化、同基金の財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく適切に対処いたしたい」ということを述べられております。日本銀行資金の最終的な回収に、その点、懸念はないものと考えております。  実際、こうした事情を踏まえまして、大蔵大臣におかれては、国会におきまして、本件については大蔵大臣の責任において解決しなければならないとの趣旨の御答弁をしていただいております。  私どもとしましては、特融の具体的な返済方法について現時点で予断を持っているわけではございませんが、いずれにしましても今後の破産手続の進展をも踏まえつつ、最終的には大蔵大臣談話の趣旨に沿った適切な対応が図られるものと考えております。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 山一証券に対する日銀の特融は大蔵大臣の要請によるものであります。日銀法が新旧と変わっておりますけれども、いずれにいたしましてもそのことは間違いありません。  この処理について今、総裁お話になられましたが、その当時、大蔵大臣は、いわゆる証券会社の破綻処理につきまして寄託証券補償基金制度というものがございますので、それに期待するという意味のことを言っておられます。これらの基金は、この山一のようなケースについても破綻処理に伴う貸付債権を譲り受けることができるというのは妙な規定でございますが、そういうことを承知の上で発足したものでございます。発足早々でございますので、ただいまの基金の規模は三百三十億円であります。もう一つ別のができておりますけれども、この方は三十億円でございますから、これはその責めに任じてもらわないといけないと私は感じておりますけれども、これだけで日銀に対する債務を払い切れるというふうには私にはちょっと思いにくい。これらの基金が増資をいたしましても、二〇〇一年には五百億円ということでございます。  といたしますと、特融の要請をいたしました大蔵大臣が最終的に責任を負わなければならない、私はどうもそれ以外の結論はあり得ないと考えておるわけでございます。
  67. 広中和歌子

    広中和歌子君 一部に日銀納付金との相殺で処理をしようという、言ってみれば日銀から国庫に納めるべきお金の中からという声もありますけれども、もし財政でしなければならないのであればきっちり責任の所在を明らかにしながら、そういう処理の方が好ましいのではないかということを申し上げ、次の問題に移らせていただきます。  もう時間がございませんので、簡単にお伺いいたしますけれども、先ほどペイオフの問題がございました。  銀行が破綻してもうまく処理されれば、例えばPアンドAみたいな形で処理されれば、必ずしもペイオフということにはならないわけでございます。しかし、国民の間にはいろいろな不安があるという中で、まず一つお伺いしたいのは、このペイオフは二〇〇一年から必ずなさいますね。それをちょっとチェックいたします。  それから、そうしたときの手続、仮にペイオフのような状況が生まれたときの手続ですけれども、仮払い金が二十万円払われると。つまり、名寄せとかなんかしている間に時間がかかるから、とりあえずのこととして二十万円ということだそうでございますけれども、その額は少し少な過ぎるんではないかという点が二点目の質問でございます。  それから一方、中小企業の決済資金の点でございますけれども、これをどうするのかという問題について大蔵大臣の御所見をお伺いさせていただきます。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ペイオフの今の制度は二〇〇一年三月をもって打ち切りたい、そういう前提のもとに金融議会にそれに伴ういろいろな問題についての問題点の発見とそれへの対応を今お考え願っておるところでございます。  その中には、今、広中委員が御指摘になりました問題は当然含んでおりまして、二十万円というのはいかにも少ないと実は私も思っておるわけでございます。  それから、中小企業の決済資金の問題は、これは利子を稼ぐのではなくて、文字どおり決済のために置いておるという観点からいえば、いわゆる普通預金とは違うということは理解ができることですが、しかしそれから生ずるモラルリスクをどうするかといったようなことも含めまして、これも御審議を願っておる、こういう状況でございます。先ほども申し上げましたが、できるだけ早く、今年内にはそれらの問題についての政府の基本的な態度と対策を打ち出したいと考えております。
  69. 広中和歌子

    広中和歌子君 この決済性資金についてですけれども、例えば国民金融公庫などで一時立てかえをするというようなこともその御判断の中に入っているんでしょうか、お伺いいたします。
  70. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 大変重要な御指摘をちょうだいしております。  金融議会でもまさに、他方では、大臣が申し上げたように、中小企業のためには全額速やかな払い戻しをできるようにするべきであるという御議論がある一方で、預金保険制度は少額の預金者保護を目的とする制度なので、決済性預金の問題については別の制度的な工夫によるべきではないかというような御意見もちょうだいしておりまして、その辺もすべて含めて、今後、精力的に詰めさせていただきたいと思っております。
  71. 広中和歌子

    広中和歌子君 先ほどちょっと申し上げましたサラ金の金利問題でございますけれども、ともかく非常な高金利で消費者にお金を貸している。その結果として非常にたくさんもうけておられるわけでございます。例えば、武富士は一千八百億の経常利益を上げ、プロミスは八百八十二億円でございます。信じられないようなこういう種類の利益があるわけでございます。  そうしたことで多くの人たちがこういうところに依存している。四・九%といった失業率、社会的なこうした状況の中から消費者金融に頼らなければならないという状況、しかもそれが今、市中金利が非常に低金利な中で高金利を取っているという現状、こうしたものを考えますと、やはり出資法の刑罰金利四〇%と利息制限法の年一五%から二〇%の上限金利、その間のグレーゾーンなども減らしていかなければならないんではないかと思います。  そして、全体的に金利を下げていくということで、この前私ども金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律案をここで審議いたしましたときも、金利の問題については検討するというふうに大蔵大臣がおっしゃっておられましたので、その後どういう方向で進んでいらっしゃるか。そしてまた、私ども民主党では対案を出しておりますので、そのことについてもどのようなお考えをお持ちなのか、ちょっと時間がオーバーして恐縮でございますが、お答えいただければと思います。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題につきましてはいつぞやも申し上げましたが、法制定当時、参議院の大蔵委員会及び法務委員会で大変に御苦労をされまして、昭和五十八年だったと思いますが、一〇九%ということからだんだん下げてまいりまして四〇%になっておるわけでございます。  それで、これはもとより甚だ高い率でございますから、低いにこしたことはないと申しながら、しかし実は借りたい人があるので貸すというまことに情けないつらい問題がございまして、一方だけの話ではいかないということがあります。結局、法務省あるいは貸金業者の監督に当たっている金融監督庁、警察等といろいろ考えながら少しずつでも下げていきたい、そういう苦労をいたしておるところでございます。  この前も申し上げたことを重ねて申し上げますが、なかなかおいそれといきにくいところがあって、片方で何々会社は大変もうけているという、どうも一つ納得のいかない状況にありますことはおっしゃるとおりだと思います。  なお、民主党からの御提案がありまして、国会がどういう御意思でこれをお扱いになるか、私どもとしても大変関心を持っておるところでございます。
  73. 広中和歌子

    広中和歌子君 終わります。  ありがとうございました。
  74. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ─────・─────    午後一時二十一分開会
  75. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  76. 益田洋介

    ○益田洋介君 日銀総裁、御苦労さまでございます。  先週末明らかになったところによりますと、預金保険機構が九月からでも償還期間が四年物の中期債を発行して、そして資金調達の手段に充てるということのようでございます。この動きが明らかになりましたのは、やはり相次ぐ金融機関の破綻で借入金が十六兆円まで達している、このうちの八割方は民間金融機関からの償還一年物の短期の借り入れ、残りは全部日銀特融からの借り入れであるということでございまして、ですから三兆円余は既にもう日銀特融が使われているわけでございます。  確かにこういうことで資金調達してくれるということ自体は日銀総裁としても非常に心強いものだと。政府債は政府の保証はついているわけで、資金の手当てを積極的に預金保険機構がするということは結構な話だと思うわけでございますが、今中期債というのは大蔵省が発行しております国債、それから長信銀、長信銀といっても二行なくなってしまったわけでございますけれども、長信銀が発行している金融債、これも五年物でございます。五年物二つに加えて、今回、預金保険機構の四年物ということでございまして、かなりマーケットで需給のバランスが難しくなってくるのではないか、ですからこの三つの中期債が競合するんじゃないかということが懸念されております。  以前、日銀総裁は、この預金保険機構への日銀特融の投入というのは固定化すると困るんだ、一時的なものであってほしいんだということを述べておられましたが、このお考えと今回の中期債発行の動きというものをどのようにお考えでしょうか。
  77. 速水優

    参考人速水優君) 預金保険機構への貸し付けにつきましては、確かに御指摘のように私どもは、かつて都市銀行等への資本投入のときに必要資金を調達するルートとして日銀からの借り入れでやりたいんだという申し入れを受けまして、そのとき、これが固定化していくと金額も大きいし、日銀のバランスシート、資産の固定化といったような意味でも困るなということを心配いたしまして、宮澤大蔵大臣や柳沢大臣などにお願いをしたことがございます。それをお聞き入れくださいまして、なるたけ少なくしていこうということで、今六カ月の手形貸し付けということで国債担保と同じ扱いで日銀からお貸しすることにして、大体いつどれぐらいという金額も決めてスタートしたわけでございます。  その後、市場金利が非常に安くなりまして市場調達がやりやすくなったこともあったと思いますが、預金保険機構からの入札でかなり低利の資金が調達できるようになったというようなこともございまして、今のところは、先ほど御指摘のように、預金保険機構への貸し付けは三兆五千億、ピークでたしか八兆一千億ぐらいあったと思いますが、減ってきております。  日本銀行としましては、我が国金融システムの現状から見て、預金保険機構がその業務運営上直ちに必要とする資金につきましては適切に供給していくということは必要だと思っております。ただ、これは預金保険機構が民間からの資金調達を行うまでの一時的なつなぎ資金供給する、そういうふうに考えていただかないと困る。預金保険機構において最大限民間調達のための努力が尽くされることを前提とした上で、補完的な信用供与であるべきだというふうに考えております。これは、こうした貸し付けが著しく増加して、かつ長期にわたりまして固定化する事態が生じます場合には、日本銀行のバランスシートの健全性に対する懸念が生じてまいりましたり、短期の流動性供給によって金融調節を行っていくという中央銀行本来の機能に支障を来すということにもなりかねないと考えたからでございます。  こうした点を踏まえまして、日本銀行としては、預金保険機構が政府保証債の発行といった調達手段の多様化を含めて、民間からの資金調達努力を尽くすことなどによりまして日本銀行貸し付けへの依存を極力抑制してくださるよう強く要請してまいったところでございますので、このたびあのような形で政府保証債を発行できることになって、近い将来にお始めになることを私どもとしては大変歓迎するし、お喜び申し上げたいというふうに思っております。  今般、いろいろ調達手段の多様化努力を尽くして、これもいつまで続くものか私どももちょっと見当がつきませんけれども、なるべく御協力は申し上げるつもりでおりますが、調達手段の多様化努力を尽くしていっていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  78. 益田洋介

    ○益田洋介君 昨二日、大蔵省が発表いたしました六月の一般会計税収は前年同月比一四・一%の減でございまして、中でも一番大きな原因は法人税収が前年同期に比べて九八・三%減っているということでございます。加えて、損金扱いにする国庫納付金がふえたこと、さらには納税額が減った日銀への還付の金額が二千億円にも達するように、それぐらい膨大な膨らみ方だということですが、この点については総裁、いかがでしょうか。
  79. 速水優

    参考人速水優君) 還付資金が出ましたのは、確かにおっしゃるように、特融が私どもが予想しておりましたより早く返還になったということでございます。これは拓銀等であったと思いますが、拓銀等がああいうようなことで処理がかなり順調にいったと言っていいんだと思いますけれども、その結果、私どもの方で特融で貸しておりました巨額の資金が予定したよりも早く戻ってまいりました。そのために引当金を積んでおったわけですが、引当金には税金を払って積んでおったわけでございますので、その分が戻ってきて、納税額が減ったということです。地方公共団体ではちょうどたまたま半期半期で決算をしておりましたのを一年に期間を延ばしたといったようなことも同時に起こったためだと思いますが、そういうようなことで、一度お払いした地方公共団体への税金を払い戻すということが起こって、多少あちらこちらに御迷惑をかけたということが起こったわけでございます。  こういう事態でございますので、事情を御了解いただきたいというふうに思っております。
  80. 益田洋介

    ○益田洋介君 昨日、ロンドンの外国為替市場で円相場がついに百十三円をつけたということで、これは実に五カ月半ぶりの数値でございまして、日本の輸出産業がほぼ採算割れするに近い、いわゆる危険水域に入った状態だという見方もございます。  残念なことに、円高阻止の決め手を今当局は持っていらっしゃらない。七月半ばから既に介入はとまっております。やっておりません。要するに、もう日本政府が介入してもマーケットは連動してくれない状態になっている、効力がなくなってきている。  まず日銀総裁、この辺はいかがお考えでしょうか。
  81. 速水優

    参考人速水優君) 為替介入につきましては、これは大蔵省の専管でございまして、私どもは代理としていたしておりますので、きょうは大臣も御出席でございますから、大臣から御説明を伺った方がよろしいかというふうに思っております。  ただ、一般的に申せば、やはり日本では経常収支の黒字が非常に大きゅうございます。引き続きまだ年間千億ドルを超えるような黒字が続いておるわけで、またそれと同時に対外債権超過、外に対する債権超過は一兆ドルを超えるといったような状況の中で、今外から、海外の証券市場状況景気の動向からも日本の株への投資が非常にふえておる、年初来で五兆円近く入っております。五兆円と申しますと四、五百億ドルになりますから、非常に大きな外資が入ってきておるわけです。  一方で、昨年非常にたくさん出ておりましたが、円キャリートレードと称して、ここは金利が安うございますから、低金利の円を借りてそれをアウトライト、裸で円の売り持ちにしてドルに運用したり、そうやってヘッジファンドその他が大きな資金を動かして外へ出していたのが、ここへ来て非常にやり方がコーシャスになってきております。そういうことで、流入は多く流出は少なくといったようなことから円が強くなってきているという事態が起こっておるんだというふうに見ております。  相場のことにつきましては、大蔵大臣お話をしていただければというふうに思っております。
  82. 益田洋介

    ○益田洋介君 大蔵大臣、今申し上げましたように、もう日本の単独介入ではマーケットが動かなくなっているんじゃないかという観測ですから、やはりアメリカとの協調介入が必要なんじゃないか、それが唯一市場心理にインパクトを与える方法じゃないかという見方もされていますが、いかがでございますか。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 円がここへ来て高くなっております基本的な原因については、今、総裁お話しになられまして、幾つかプラス、マイナス両方の例をお挙げになって、いわばそれには理のあることであるという説明をしていただいたわけであります。  それは、基本的に今の日本としてそういうふうに外から見られるということはそうであろうかと思いますし、株の相場なんかもいろんな意味でそれと関係がございますから、いいことばかり言っているというわけにもまいらないだろうとは思います。それでも、余り急激に市場が変化をする、日本景気回復を余り過度に先取りをされるということは、景気そのものにも関係しますし、市場がそういうふうに大きく動くことは本来好ましくないことであるということも事実だと思います。  七月に入りましてから、ただいま益田委員の言われましたように、百二十二円から二十日間ぐらいで百十五円に行っていますから、相当大きい。そして、それが十四円になり、ちょっとこぼれて十三円になり、またきょうは十四円でございます。  それで、余り急激な市場の変動は好ましくないということは、アメリカとも実はいろんな意味で話をしております。今直ちにどうということを話しますよりは、やはり急激な変化というものは好ましくない、その点については基本的には合意がございますので、そういうことを防ぐためには、必要ならば必要な対応をしなければならないと思います。  ちょっとここのところ、確かにおっしゃいますように急激だと。日本の輸出との関連につきましてならばいろいろございますけれども、それはそれといたしまして、余り急激な変動は好ましくないと思っております。
  84. 益田洋介

    ○益田洋介君 アメリカも今は金融引き締め政策の目的がインフレ予防からドル安の阻止という方向に若干切りかえられてきているという見方があって、したがって八月二十四日に催されます連邦公開市場委員会でFRBのグリーンスパン議長が追加の利上げをするんじゃないかという見方があります。それまでの間、我が国政府は単独介入で継続していく以外に方法がないんじゃないかという見方もございますが、この点は大臣、いかがですか。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだって、グリーンスパンの対応というものがいろんな意味で、殊にアメリカのGDPは思ったほどではなかったんですが、レーバーコストは上がっているというようなちょっと矛盾した動きを、結局市場としてはインフレ懸念ととって、今、益田委員の言われましたように、八月にはFEDはどうするんだろうという気迷いになっているのが今のマーケットだろうと思います。余り透明なマーケットの感じではございませんから、益田委員の言われたようなことはあろうかと思います。我が国我が国といたしまして、余り大きな、市場の急激な変化というものには対応していかなければならないと思っております。  もう少し詳しく本当はお答えをすべきかもしれませんが、事柄が事柄でございますのでおわかりいただけるかと思いますが、そう思っております。
  86. 益田洋介

    ○益田洋介君 前回の財政金融委員会大蔵大臣に、第二次補正の金額、それから予算を組むタイミングというようなことについて議論させていただきました。  私は、やはり十一月ごろでは遅過ぎるので、十兆円程度、真水で五兆円程度の特に公共事業の予算を九月ぐらいに執行できるような形にすべきじゃないか、そうしないと十一月に補正を組んで公共事業の発注が即座に行われたとしても実際に受注が起こるのが来年の一月から三月だ、そうすると公共事業の中断がことしの秋ぐらいに起こってしまうんじゃないかというようなことを言ったら、十一月は遅過ぎるかもしれないけれども九月の必要もないんじゃないかと大蔵大臣はおっしゃいました。  私は、仮に十一月ぐらいに補正ということであれば、五千億程度の本予算の公共事業の予備費がございますので、これを第二次補正までのつなぎ役として活用していったらいかがかと。そして、四―六月期の経済成長率が九月十日ぐらいに発表されるというお話でございますので、それを見ながら、政策効果がどういうふうになっているのかという判断と同時に、五千億をなるべくだったら九月ぐらいから使い始めて、そして様子を見て、第二次補正の最適な量といいますか、金額を検討されたらいかがかと思います。  この五千億の予備費と第二次補正の金額を合わせて実行しようという議論もあるようでございますが、私は、なるべく早い段階でこの予備費は使って、そして経済の動向、政策の反応を見ながら第二次補正を考えるという方が上策ではないかと思いますが、この点、いかがでしょう。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 公共事業の関係につきましては、これはいつぞやも申し上げましたけれども、支払いに関します限りは、今年度全体で昨年度よりも一兆三、四千億高うございますし、下半期でも七千億円ぐらい高いと思いますので、支払いについてはさほど心配しておりませんが、工事そのものの進行につきましては、昨年の補正の関係もございますから、場合によっては来年の一月から三月、あるいはもう少しおくれるかもしれません。その辺にたるみがあるかもしれないということは御指摘のように考えておかないといけないと思っております。としますと、年内の県会は大体十二月でございますから、それにはアクションをとってもらうように、間に合うように補正のその部分が成立していなければならないというふうな逆算になりますので、それよりおくれることがあってはならないということはわかっております。  したがいまして、補正の時期が益田委員の言われるように九月というようなわけでなくても、公共事業予備費の五千億円というものは、これはいわゆる民需等々の動きが予測を下回るといったような場合には、それが予備費の条件でございますから、そういう条件のもとに補正を待たずに執行するというお考えは私はごもっともだと思っております。  ただ、これも、その決定をいたしましてから各省庁から具体的な予算要求を受け、それを決定するのにほぼ一月ぐらいかかりますので、したがいましてその決定時期を逆算して比較的早く行われるべきではないかということは、私自身もそうであろうかなというふうに実は思っております。
  88. 益田洋介

    ○益田洋介君 けさも同僚の林議員の質問の中でペイオフが論じられておりました。  これは、ある我々の先輩といいますか、総理経験者の方が最近新聞に経済動向に対する御自分の所見というものを発表されていまして、やはりペイオフについて触れられている。  この方は、やはりペイオフは特定の期限を切って解禁するべきじゃないんじゃないかと。例えば昭和初期の恐慌は、台湾銀行の破綻ですとか鈴木商店の破産、それから当時の片岡大蔵大臣のある特定の銀行に対する失言等から起こったわけでございますが、この方の意見というのは、一般の預金者の方、国民の方々は、やはり情報の数が少ないから、そうした一部で起こったことがどんどん広がるのでないか、そうした心理構造を持っているんだと。  それは、例えば官僚ですとか金融の専門家というのは、こうした一般の預金者、国民の方のそうした恐慌に対する恐怖心というものを実際に理解していないんだと。この昭和初期の恐慌の成り行きを見ると、やはり社会心理に非常に弱い人たち、失礼な言い方ですが、エリートコースを歩んでこられた官僚の方、経済官僚の方、それからまた金融の専門家の方は、そういった心理状況、社会心理というのが読み切れない、洞察力がないということが証明されたんだと言っているわけです。  ですから、確かにモラルハザードの処理ということ、それが今回の二〇〇一年四月のペイオフの一つの目的であるとしても、それは小目的であって、やはり金融の安定という大目的をまず優先させて考え、そのためには、この方の提案というのは、早期にペイオフの延期をむしろ打ち出した方がいい、そして不良銀行に対しては検査を厳密に励行して、経済の安定化が見えるようになった段階でペイオフの解禁をした方がいいんじゃないか、そういう議論をしております。  さらに、きょうは時間がありませんのでできませんが、むしろペイオフの論議をするよりはデノミネーションを考えたらどうかと。どなたの話をしているかおわかりかと思いますが、そんな提案もされております。  このペイオフの解禁延期についての論議、こうした線に沿っての論議につきまして、大臣、いかがお考えでしょう。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう御論議のあることを承知いたしております。けさほどからも申し上げておりますように、今のシステムを二〇〇一年三月でやめるということは、いろいろそれに関連します事項等々を含めますと、かなり厄介な問題、そう簡単な話ではないということは承知をいたしておりますし、大変に注意をしながら運ばなければならないということも、今おっしゃいましたようなことを含めましてございます。殊に、平成九年のあの山一、北海道拓殖銀行などのときに、地方では銀行に人が並んだことが現実にございましたから、そういうことを余り軽く考えてはいけないというふうに、ごもっともな話だと思っております。ですから、そういうものを全部含めまして金融議会にとことん議論をしてもらって、準備万端遺漏のないようにして進めなければならないと思っております。  他方で、これも申すまでもないことでございますけれども我が国金融システムというのは、殊に平成九年の出来事以来いわばまことに不正常なことになりまして、国が公的資金を導入するというようなことにもなっておりますので、日本金融のシステミックリスクというものが二〇〇一年には一応きれいになったということにいたしたいという気持ちが政府にもございますし、民間の有識者にもそういう御意見がある。その一つの問題がこのペイオフの問題であるわけです。  殊に、これはよその役所のお立場からいいますと、各銀行、殊にこれはマネーセンターバンクスよりは小さい銀行の方に多いかもしれませんが、うちの銀行はどうも危ないと思われているということではたまりませんので、リストラの努力が行われるわけでございます。その期限が取っ払われてしまったというときに、果たしてリストラのための努力、あるいは片っ方からいえばそのための追い込みというんでしょうか、そういうことが実際きかなくなる危険性は私はやっぱり考えておかなければならないと思うわけでございます。  ですから、一人一人の預金者に不安を与えることはもとよりよろしくないのですが、そういうマクロの努力というものが目標を失ってしまってオープンエンデッドになってしまえば、これはリストラというものができなくなるという問題が、御想像いただけると思いますが、ございますから、その辺のこともよく兼ね合わせながら考えなければならないだろうと思っております。
  90. 益田洋介

    ○益田洋介君 ペイオフの論議を別の角度からされている方がいまして、これはある民間シンクタンクの主任研究員の方です。邦銀の格付ということでございますけれども、公的資金の投入を受けながらその結果として格付が上がった邦銀は一つもないんだ、要するに日本銀行に対する外国の金融機関からの評価は地に落ちたままだ、資金投入しても全然その評価は変わっていない、だから金融界の実態というのはまだその程度なんだということをこの人は言っています。  そして、興味深いのは、今日本で行われているペイオフ論議の中で一番欠落しているのはペイオフの際のコストの問題なんだ、この論点から論議をしている人はだれもいない、預金者がペイオフを避けようとして金融機関を選ぼうとすると混乱が生じて大変なコストを実際は預金者も金融機関もかぶることになるんだという主張をしているわけでございます。この点はいかがでしょうか。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平成九年以来いろいろな努力がなされまして、今格付業者に言わせれば別に日本銀行の信用は少しも増進したわけではないとおっしゃいましたけれども、それはジャパン・プレミアムをごらんになっていればもう明らかに、かつてあれだけのプレミアムがございましたものがもう事実上なくなったわけでございます。この点は私は、日本銀行の信用というものはとにかくこの際の問題としては回復をしたと。いや、それでも長い間のいろんなものがたまっているというようなことであれば、それはそれとしまして、今日本のいわゆるシステミックリスクというものはなくなっておると思いますから、その点は私は格付業者の考えとは違っております。  いずれにしても、やはりリストラクチャリング、再生のための努力というものはマネーセンターバンクスばかりでなく地方の金融機関もやってもらわなければならないところでございますから、それゆえペイオフというものが、今後とも現状が続くということになりましたら、やはりそういう努力はどうしてもなまるというふうに考えるべきであろうと思います。  その辺のことを、この際この何年間かの、あるいは何十年かもしれませんが、問題をきれいにしてしまおうというマクロの努力と、それが預金者に与える影響というものとを慎重に私は考えなければならないと思っておりますので、審議会にはそういうことについても答申をお願いするつもりでございますが、やはりこの制度は二〇〇一年にはやめるべきではないかというふうに思っておるわけでございます。
  92. 益田洋介

    ○益田洋介君 大蔵大臣は繰り返し、当委員会においてもそうでございましたが、アジアにおける通貨という論議の中で、アジアの中で円、ドル、ユーロという通貨バスケット方式を採用した方がいいんじゃないかと提唱されてまいりました。実はこの通貨バスケット方式というのはドイツ人が最初に提唱したアイデアだったようでございまして、であるならば、やはり国際通貨を円がこれから再び目指していくということであるならば、この方式をアジアだけじゃなくもう少しグローバルな視点に立った考え方で再構築してはどうかというふうに私は思うわけでございます。  通貨の地域割り、分割というのはもうグローバル経済の実態にそぐわない考え方じゃないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今通貨バスケットというものを採用している国が世界に十幾つあるそうでございますけれども、アジアの場合、ドルだけにペッグをしておったという経験は多少苦い経験として残りましたので、場合によっては複数通貨、いわゆるバスケットということを議論されるようにもなりました。  ただ、そのためにはもう少し円というものに親しんでもらいませんといけません。いろんな意味で、円をお持ちなさい、その運用は方法がございますということで、まあそういうことがありまして、最近ファイナンスビルを公募にいたしましたり、あるいは短期登録国債の源泉課税を非居住者にはやめたりいたしまして、なるべく使いやすい、使ってもらえる円にしようとやっております。  マーケットをつくろうとやっておりますが、その上で円というものがだんだん親しまれてバスケットに入れられるといったような、決して無理に急いでもこれはできないことでございますが、しかし今までいかにも円というものに親しんでくださいというような施策をしてまいりませんでした。最近になってそれが始まりましたから、やがてそういうふうになってくればよろしいなと思っております。
  94. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、国内の証券取引所でございますが、かなり統廃合が進みまして、東京、名古屋、大阪の証券所、東京だけで全国のシェアの九割近くになっております。この三つの証券所を合わせるとシェアの九九%ぐらいになってきている。ただ、地方密着型の企業で地方で単独上場している企業、例えば新潟の北陸ガスですとか新潟交通、広島のせとうち銀行、広島電鉄などというのもあります。  東京市場一極集中という現状、これは大臣、どういうふうにお考えでしょうか。  今、地方分権といいますか、分散型のタイプをとろうとしているときに、証券取引所はみんな東京に集中してきている。あとは大阪と名古屋。この現象をどういうふうに評価されますか。
  95. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かつて取引所があるということはその地域の都市のステータスシンボルであった時代もありましたし、その時代には交通、通信も今のようでございませんから、殊に地元企業を中心にして各市場市場で取引が相当盛んに行われました。  もうそのことは歴史的に事実でございますけれども、片方でしかし、そういう地元企業がいわゆる東京の一部上場に進出するということがあったり、何よりもやはり私は通信の発達だと思います。もう東京市場の会員権がなくなるというようなことが象徴しますように、場というものは一種の家や座敷でなくて、文字どおり抽象的なラインによる場というものが十分に考えられるようになってまいりましたので、そういう意味から申しますれば、地方の取引所というものの従来のような、先ほど申しましたような伝統的な機能はきっと少なくなりつつあるのではないかというふうに思っています。  そのことを別に東京市場に集中と申さなくてもいいのではないか、通信というものはそういうものではないかというふうにも思ったりもしますので、私は別に地方を整理したらいいという考えを持っておるわけではございません。しかし、何かの事情で地方の取引所をやめて取引を東京に合併しようというようなことがあれば、それも一つ流れではないかというような思いで見ておるわけでございます。
  96. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。
  97. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  私は、先月二十七日の速水日銀総裁講演をペーパーに起こしたものを読ませていただきました。そこでは総裁景気に関して、「景気が自律的な回復軌道に乗る展望が拓けるのかどうかは、現時点では、なおはっきりしていません。」とおっしゃって、そして「景気の先行きに対するマイナスの要因としては、第一に、公共投資による景気の下支え効果がいずれ減衰してくること、第二に、企業リストラ努力を重ねていく過程で経済に縮小方向への調整圧力がかかることです。」というふうに説明しておられます。  今、小渕内閣がやろうとしていることを見ますと、来年度予算はまたもや公共事業、これは本年度と同じということですから、相当大きな額で公共事業をやろうとしておりますし、今国会産業再生法案、これを通して大企業リストラ支援するということをやろうとしておるわけです。  そうしますと、この二つを見てみますと、速水総裁のおっしゃるマイナス要因の矛盾を拡大していくという方向にあるとしか私は考えることができないんですけれども、そのことに関して総裁見解を伺いたいと思います。
  98. 速水優

    参考人速水優君) これから構造改革をこの不況の中で始めていくについて、中期、長期にわたってここで改革しなきゃ日本経済はこれ以上伸びていかないということと、不況をどうやって乗り越えていくかということとの二つの当面の矛盾を問題にしておられるのかというふうに思います。  我が国景気は、確かに今、足元は下げどまっておりますが、民間需要の自律的な回復のはっきりとした動きは依然として見られないわけでございます。御指摘の私の講演の中で、こうした状況判断を踏まえまして、景気の先行きを見てまいります上でプラス要因とマイナス要因とを整理して説明させていただいたわけでございます。  まず、プラス要因の方で挙げましたのは、第一に、リストラによって企業収益が回復し、それを見て、そういうものを入れてマインドが明るくなって株価も上がっていくと。第二に、安定回復を背景として金融システム、それから家計企業のマインドというものが明るくなっていくと。第三に、アジアを初めとする海外経済回復我が国の輸出や生産に与える好影響、これは円が強くなることも彼らにとっては日本がいい市場になりますし、日本との競争力という意味でも彼らはそれを歓迎しておるところでございます。  一方で、マイナスの要因といたしましては、第一に、公共投資による景気下支え効果がいずれは減衰していかざるを得ないということ、また第二には、企業リストラ努力を重ねていく過程で設備投資家計雇用所得環境に悪影響を及ぼしていくことは確かではないかというふうに思います。  そこで、このようなプラス要因がマイナス要因を上回っていけるかどうか、これが経済回復のかぎとなるというふうに思っております。その際、重要なことは、日本経済が直面しております構造的な課題を解決して、民間需要中心の自律的回復力を強化していくことがこれからの基本的な課題であるというふうに思っております。  あのときの講演でも、構造問題として、第一に、長年バブルをつくり、バブルが崩れ、その過程で企業のバランスシートというのが不健全なものになっておる、それが健全化するか。  それから、東西冷戦が終わってからもう十年近くになりますが、非常に経済全体がグローバル化している。特に金融はそうでございますが、世界じゅうが一つ市場になって、いわゆるメガコンペティションといいますか、皆が市場で競争し合うような関係になっておるわけで、そういうものに日本企業が対応していけるかどうか。  三つ目は、リスク資金の円滑な供給の課題、今千三百兆ある家計の資産というもの、それから一人当たり世界でもナンバーワンと言われるぐらい、年間三万五千ドルぐらいの所得があるわけでございますが、そういう資金がどのように動いていくかどうかというところがこれからの課題でございます。それには、銀行や郵便貯金に預金する、あるいは保険年金に入れるだけでなくて、直接金融と言われる市場を通じて起業家あるいは企業資金を調達していく、あるいは構造改革に必要な資金をそういった形でリスクをとりながら企業を育てていくのに使っていくと。  先ほどちょっと申し上げましたが、アメリカでも九一年が成長の底で、そこから上がってくるわけですけれども、二年、三年に景気は、GDPは上がっていくんですけれども雇用はむしろ失業がふえていくと。ピークがたしか九二年、九三年、七%を超えた時期があると思いますけれども、貸し出しも減っていっている。それでも、大企業からスピンアウトした人たちが自分たちで技術を持って、また起業家精神を発揮して、新しい製造業、新しいサービス産業をどんどんつくっていく。それに対してまた、ベンチャーキャピタルや仲間あるいはエンゼル組合といったような、そういういろいろなプライベートな資金がサプライされていって、気がついてみたら景気はニュービジネス、ニューエコノミーをつくり上げて、今のような堅実な、生産性の高い経済が育っていっていたんだといったようなことを考えてみますと、その辺のところは、日本も今そういう過程にあるのかもしれない。生産が伸びてきております。雇用はますます失業がふえてきております。貸し出しも減ってきております。しかし、そこで……
  99. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 総裁、短くお願いします。
  100. 速水優

    参考人速水優君) はい。  これからのそういう私どもの目に見えないリカバリーが起こってきているのかどうかというようなことを、先ほどのプラスが勝ちかマイナスが勝つかというようなところが今分かれ目のところであるということを申し上げたつもりでございます。
  101. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私の時間は四十分しかありませんので、ひとつ考慮いただきたいと思うんです。  要するに、マイナス要因をプラス要因が上回ればいいんだと、こういうことですね、私の質問に対するお答えは。いろいろ開陳いただきましたので、それはそれなりによくわかったんです。  ただ、要するにプラス要因として、リストラによって企業が収益を上げる、そういう効果が出てくればいいんじゃないかということだと思うんですけれども、現実の問題として今企業が行っておりますリストラ、これは人減らしが中心なんです。まさに人減らしをすることによって企業収益を上げるということは確かに起こっておりますけれども、ではそれで利益を上げて人をふやすか。これはもう矛盾になるわけですから、そういったことはしないわけです。人は減らしたままという状況になっております。  現に、総裁自身もこの講演の中で、「リストラのしわ寄せにより所得環境が厳しくなる雇用者が支出を切りつめ、リストラによってキャッシュ・フローが好転する企業の方では、それを支出に回さずに溜め込んでしまう」と、まさに正確な指摘をしておられるわけなんです。こういう現象が起こっているわけなんです。ですから、企業は収益が上がっても、雇用の拡大ということにそれを結びつけるようなことはしない、それが現実なわけです。つまり、リストラ景気を悪くする方向に今動いておるというのが現実だと思うんです。  ですから、総裁が言われた二つのマイナス要因のことについて言えば、やはり大型公共事業についてはもう九二年以来何度もやってきて効果は上がっていないわけですから、これについては大幅な削減をして、少なくとも生活密着型公共事業に一部回すし、そして私たちは何といってもその削減を消費税の減税と個人消費を拡大する方向に回すべきだというふうに考えておるんです。  そしてまた、リストラについては、今このような状況の中では、やはり企業に対して、企業雇用責任ということから考えて、首を切る、解雇するといったことについては規制をしていくということが大事なんじゃないかなというふうに考えておる次第です。これについては、若干時間がなくなりましたので議論はこの辺にして、次に移りたいと思うんです。  総裁は、ゼロ金利政策は結局続けるというふうにおっしゃっているわけです。その点についてなんですけれども、結局、家計部門は、賃金の目減り、それから低金利、それによる所得の移転、行っちゃったということで苦しい切り盛りを強いられておるわけで、いわば二重の苦しみを味わっているわけなんです。  ここで、日銀が五月三十一日に発表しました生活意識に関するアンケートでちょっと見てみたいんですが、暮らし向きが苦しくなってきたと考える人の判断理由、この第一位、第二位ということでこれは挙がっているわけなんです。それを見ますと、第一位は給与などの定期収入の減少を挙げられております。これが六三・五%で、第二位が利子等のその他収入が減ったから、これが二八・一%になっているんです。第一位と第二位でほとんど占めてしまっているというのが現実です。これは非常に現実をよくあらわしていると思います。  また、同じアンケートで、国民が低金利をどう見ているか、低金利の受けとめ方にはどういう特徴が出ているかということなんですが、これを見ますと、「現在の低金利の受け止め方」として、預金などから受け取る利子が少なくてつらいと答えている人が五一・二%、半数以上を占めています。これは間違いないですね。  これを見ますと、結局、日銀自身がなさった調査で、庶民がゼロ金利に苦しんでいるんだということがはっきり出ております。  ちょっと角度を変えて、国民経済計算年報で実態を見てみたいんですけれども、九三年度に低金利政策が始まるわけですが、そのころから九七年度までを見てみますと、家計金融機関における純受取利子所得の総額、これは家計が四十二・二兆円、金融機関が百二十六・七兆円になっているんです。圧倒的に金融機関の方に偏っているんです。これだけだとよくわからないんですが、これをちょっと私は計算してみたんです。  まず、九三年度を基準年度として、九四年度から九七年度までの純受取利子所得の単年度の増減を見ていきましたら、非金融法人、家計金融機関、これは分けて書いてあるんですけれども、それぞれ計算してみますと、非金融法人がプラス二十三・六兆円になるんです。それから、金融機関がプラス八・八兆円になります。そして、家計マイナス十五・三兆円という形であらわれております。  時間がないから私の方で申し上げたんですけれども、間違いないですね、この数字。日銀の方でも、済みませんが。
  102. 黒田巖

    参考人黒田巖君) 私どもの方で調査いたしました数字につきましては、先生御指摘のとおりでございます。
  103. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、ゼロ金利政策といいますか低金利政策、これが家計から利子を吸い取って、金融機関、それから法人、大企業、そういったところに移転してしまっておるということがこれからはっきり読み取れるわけです。ゼロ金利の与える影響というのはもうこれだけ深刻なものというのがはっきり出ておるというふうに私は考えます。  これだけでもわかるんですけれども銀行についてもう少し見てみますと、低金利政策で莫大な利益を得る一方で、結局、不良債権処理という名のもとに六十兆円の枠が適用されて、私たちは六十兆円の公的支援というふうに考えておりますが、これがやられたと。そういったことで、銀行国民の苦しみに比べて非常にいい思いをしておるという状況にあると思うんです。  七月二十八日に日銀が出された全国銀行の平成十年度決算というのがあります。これで全国銀行の業務純益、当期利益というのを見てみますと、これはちょっとわかりにくいので、簡単にわかりやすいように、業務純益、コア業務純益とか、この辺はどうなっているか説明いただけますか。
  104. 小畑義治

    参考人小畑義治君) お答え申し上げます。  全国銀行の十年度決算の計数でございますが、前年度比と絶対額という形で申し上げますと、まず業務純益は三兆八千四億円でございまして、前年度比増減率はマイナス二五・五でございます。この業務純益をブレークダウンした中で、経費をどれぐらい使っているかということでは、人件費が三兆五千七十五億円でマイナス四・七、それから物件費が三兆五百六十五億円でプラス〇・三とほぼ横ばいでございます。  ただいま先生の言われたコア業務純益と申しますのは、実は銀行の収益は債券市況等の債券勘定で膨れましたり、あるいは現在喫緊の課題でございます不良債権の処理で一般貸倒引当金を積むという形で、そういう要因を除いたものを私どもはコア業務純益と呼んでおります。  今、手元に絶対額は持っておりませんが、業務純益で先ほど三兆八千四億円でマイナス二五・五と申し上げましたけれども、債券勘定での売買益あるいは不良債権処理に伴います一般貸倒引当金の繰入額を調整いたしますと、コア業務純益ではほぼ横ばいのプラス二・〇という数字になりまして、不良債権処理に非常に取り組んでおるということで、全国銀行の十年度の収益の実勢はほぼ横ばい圏内で動いておった、経費は、人件費は抑制ぎみで物件費も横ばいだ、そういうような私ども調査結果でございます。
  105. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 数字はともかく、結局こういうことだと思うんです。銀行は、さっき言いました低金利政策のおかげで利子の受け取りはプラスになっておる、これを確保して、今言われたコア業務純益というのは業務純益の低さに比べて結局プラスになるところまで持ってきたということです。さっき言いましたように、不良債権の処理として公的資金支援も受ける、それから今言われましたように、物件費は横ばいということのようですけれども、職員を減らして利を上げるという形がここにあらわれていると思うんです。  一方、国民生活は、先ほど申しましたように非常に困難になってきておる。利子の問題についても、国民はこれはとんでもないという声を上げているというのが現状だと思うんです。結局、このゼロ金利政策を続けているということがいかに国民生活を困難なものにしているかということをあらわしていると私は思うんです。  もう少し論議したかったんですけれども、次のところをやりたいので、これはこの辺で終わらさせていただきたいと思うんですが、要するに政策委員会の会合の中でもゼロ金利政策はもうやめろという声が出ているというふうに聞いております。やはり今の時点で、先ほどの広中議員の質疑の中にありましたように、一%金利を引き上げるだけでどれだけ国民が助かるかというところがあるわけで、真剣にこのゼロ金利政策の見直しというのは考えなければならないときに来ているというふうに私は申し上げておきたいと思います。  そこで、一つだけ大蔵大臣に伺いたいんですけれども日銀総裁はたしかあの講演でも、今の動きについてはもう少し様子を見ていきたいんだということで、ゼロ金利政策を続けるとおっしゃっているんです。そうだとすると、大蔵省の方でできることとしては、今やっております福祉定期預金というのがありますね、母子家庭とか障害者の方々の預金。こういったものを低所得の高齢者の方々とかそういったところにまで範囲を拡大するとか、福祉定期預金金利水準を引き上げるとか、少なくとも非常にお困りの方々にそういった手を打つというぐらいは今考えていいんじゃないか。そういうことを検討するおつもりはないかどうか、伺いたいと思います。
  106. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 福祉定期預金についてのお尋ねでございますが、御案内のとおり、これは老齢福祉年金の受給者等の社会的、経済的に恵まれない方々を対象に、市場実勢を上回る優遇金利を付しております定期預金でございます。大体約四百四十万人ほどの方が対象となっているわけですが、これは御案内のとおり、金融機関がそれぞれの経営判断によりまして自主的に、また金融機関の負担において取り扱っているものでございますので、当局の方からその対象の拡大等々を行政的に指導することはちょっと困難であるということを御理解賜りたいと存じます。
  107. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 自主的にやるといっても、大蔵省の方でこういう制度を設けてやってくれよということを要請して銀行の方がやっておるということなんですから、こういった情勢の中でやはりそういったことは検討すべきだということを申し上げておきたいと思います。  それからもう一点、銀行の審査能力の問題について伺いたいと思うんですが、これも日銀総裁の六月の講演なんですけれども、ここでは、要するに日本銀行金融市場に対して潤沢な資金供給しておる、金はあり余っているんだ、ところが「多くの投資家金融機関は、よい貸出先や運用先がなかなかみつからないという状況にあるようにみえます。」と言っておられます。事実そうだと、現実の動きはそうなっていると思います。あわせて、「金融機関の貸出の回復力は強まっているとは言えません。今後、金融機関の融資姿勢がどのように変化し、これが企業金融設備投資行動にどのような影響を与えていくのか、よくみてまいりたいと考えています。」と言っておられる。  これは先ほど言っておられたゼロ金利を続けるということと同じ意味だと思うんですが、しかし政府としてはこれをずっと見守るというわけにはいかぬのだろうと思うんです、現実に金融機関の貸し出しの回復力が弱まっているわけですから。  この点については再生委員長に伺いたいと思うんですけれども、何でこんな貸出力が弱まったのかということなんです。私は、このことについては、もうバブルの時代に土地担保さえあればということでどんどん貸し出していった、そういうむちゃくちゃなやり方をしたことによって結局は審査能力を低下させていったんだろう、その後バブルが回復した後もそういったことの修復ができなかったということなんだろうと考えておるんですけれども、まずそのことについての柳沢大臣のお考えを伺いたいと思います。
  108. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) あのバブルのときに、営業にもっと力を入れろ、審査なんかやっている人間がいたら営業に回せみたいなことで、各行とも審査の部門を縮小してしまったというような話は私も耳にしたことがあって、現実にそういうこともあった銀行も存在したようでございます。  それとはまたちょっと別で、実は高度成長の時代の日本経済というのは万年資金需要過剰というか資金不足の状態で、金融機関預金さえ集まればそれを右から左へ、ほとんど口を開けて待っているぐらいの資金需要がありましたので、それを流してやるというようなことで、先生もお使いになられたようですが、金融の仲介機能というか仲介能力というものが非常にうまくワークしていたという時代があったと思います。  それが、ここへ来まして、どういうことで行き詰まっているんだろうということでございますけれども一つにはやはり資金需要が全体としてこの資金の潤沢な中で企業にもそれなりの手元資金があるというようなこと、あるいは場合によってはエクイティーファイナンスだとかその他の直接金融でもって資金を獲得できるというようなことの中で、間接金融に期待する部分というのが昔に比べればさま変わりに少なくなっている、弱くなっているというようなことが一つ背景としてあろうかと思います。しかし、それに手をこまねいていたら金融機関というのは皆じり貧に陥ってしまうわけですので、金融機関も今一生懸命努力をしておるわけでございます。  一つは、やっぱり自己資本比率というものを国際的な基準等々からやかましく言われるものですから、自己資本を厚くする、ROEが許す限りで厚くしていこう、そういうことで一定倍率許される資産というものをしっかり貸し出しの形でも持っていこう、こういうことがあろうかと思います。  それからもう一つリスク管理、これをちゃんとやらなきゃいけないということで、先生が今お触れになった審査能力というようなことも大事なのでございますけれども、最近ではIT、インフォメーションテクノロジーを使いまして、自分たちの貸出先となる企業を格付する、スコアリングを打つ、そういうようなことによって一定の事前的なスクリーニングをして、その上で審査に当たるというようなことで、手間も省き審査の質も高めるというようないろんな努力をしておるということでございます。  そういう中で、条件についても、今までのように大体同じタイプだったら同じだというような大ざっぱなことではなくて、データバンクによってマーケティングをするというか、データに基づいた、あるいはリレーションシッププライシングというような、どのくらい自分がいろんな形でその貸出先と仕事の上で関係があるかということで全体としての信用力を推測する、こういうようなこともやっておるというようなことで、いろいろな工夫をしてリスクを管理し、そして貸し出しを伸ばしていこう、こういう方向にあるものだというふうに認識して、これを我々として応援していかなきゃいかぬ、こういうふうな考え方をしております。
  109. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 不況で資金需要が落ち込んでいるということもあると思うんですけれども、今問題にしているのは審査能力の問題で、後でちょっとこれに関して伺いたいと思うんです。  結局、審査能力の落ち込みというのは、銀行の公共的な役割であります信用創造、これがうまくいかないということなわけですから、これは大変なことで、おっしゃったように手をこまねいて見ているわけにはいかない。いかないとすれば何をすればいいのかということのお答えが私は欲しかったわけですけれども、これはやはりきちんとした行政指導をしないと、もういいかげんな形ではこのままずっと続いていくということになるんではないかというふうに考えるんです。  では、ここで資料を配らせていただきます。(資料配付)  いわゆる信組の実態についてなんですが、今幾つかの地域で金融機関の再編がやられているわけです。この再編に関しては、これはきちんとした形で再生委員会の方でも条件をつけて、再編する際にはこういうことをやらにゃいかぬよということも出しておられる。その中の一つに、地域または分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生じないといったことが条件になるよということを言っておられるんです。  さて、時間も余りないので、この表を見ていただきたいんです。小さい方が大阪の信組再編の結果です。それから、大きな方が一応九年度以降の破綻金融機関債務のうちRCCに送られたものの比率を見てみたんです。これは大蔵省と監督庁、両方から資料をいただいて、その数字をくっつけたという点で、ちょっとうまくいかない面もあるんですけれども、大きな枠組み、トレンドとしてはきちんと出ておると思うんです。  つまり、大阪の例を見てみましても、例えば信組大阪弘容などは、破綻の直近の貸出債権額に対するRCCに送られた資産の簿価を見てみますと、九割近い八七%ぐらいがRCC送りになっているんです。全国的なものを見ましても、これは何で一〇〇%を超えるところが出てくるのか私は不思議なんですけれども、これなんか見ると、山より大きなイノシシが出ちゃったみたいな感じでちょっとわからない面もありますが、そのとった時期にもよるのだろうとは思うんです。直近といってもかなり一年近い間があるところもあったでしょうから、そんなこともあるのかなと思うんです。そんなことがありますが、要するに全体を見ますと、七割、八割、八〇%から八五%がRCC送りになっているんです。  銀行でこれを見ますと、下の小さい表がございますが、これを見ますと、平均では約五〇%程度なんです、五〇%超える程度がRCC送り。ということは、信用組合というのは基本的に中小企業、零細企業、そういったところへ融資しているところなんですけれども、結局、信組ではほとんどがRCCに送られちゃう。だから、中小企業の場合はほとんどが不適格だとして、不良債権だとしてRCCに送られてしまっているわけなんです。  だけれども、果たしてこんなことがあり得るだろうか。審査能力が衰えているということを先ほど申し上げました。それにしても余りにひどいじゃないか、これはこのまま放置できないんじゃないかと思うんですが、再生委員長、この実態を見てどうお考えですか。
  110. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 昨日も実は衆議院の方で長銀、日債銀の破綻処理をめぐる集中審議もいただきました。そのときに、日債銀のRCC送りがほぼ半々だということで大変なおしかりを受けたわけでございます。実際、そういう状況が現実としてあったわけです。それに比べても、なおこの信組の状況というのは、八割から九割というような状況が軒並み並んでいるということはいかにも異常ではないかということでございます。  先般、御党の御指摘もあって、大阪の方のことで、私ども大阪の現実に行政に当たっていらっしゃる大阪府の管理監に再生委員会に御出席をいただいて、その説明をお聞きしました。そういたしましたところ、本当に腐っているんです、債権はと。 しかし、何とかして中小企業を救おうと思って、もう無理やりRCC送りにしないようにした努力の結果がこれでございますと、こういうお話でございました。考え方としては、いわば債権の分類で、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先というものはRCC送りになることはやむを得ないわけですけれども、正常先、要注意先というところで、正常先というものがないのでございます。要注意先以下しかない。しかも、その要注意先の中でも、もう本当にやっていればRCC送りになっちゃうから何とか要注意先の一部でも引き継ぎの方に回るように努力をする、そういうことを我々は必死になってやっているんです。そういう結果がこれでございますということでございました。  また別の観点からの、二キロ以内しか認めないでRCC送りにしちゃっているんじゃないかというようなお話もあったわけですが、そういうことも全くなくて、預金を集めに自転車で回る範囲を画しているのは半径二キロというのはあるけれども、貸出先などについてそんなことを適用していることは全くない、こういうようなお話でございまして、私どもとしては引き続いて努力をしてくださいという話をしたということでございます。  実情を申せば以上のとおりでございます。
  111. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 その最後の自転車で回る範囲の話ですが、これは違います。明らかに私どもはそれに携わっている、あるいはそこから融資を受けている人たちから聞いたわけで、明確に半径二キロから超えたところはRCC送りになっているんです。委員長が今おっしゃったように、ほぼ一〇〇%がみんな不良債権だったら、その二キロも、あるいはそれから内も区別はつかないと思いますけれども、現実の問題としてそういうことだということを申し上げておきたいと思います。  だからこそ私は審査能力の話をしたんですが、これは大企業と同じような基準でやっているんじゃないですか。担保がなければ、はい不良債権という形でいけば、中小企業の場合は全部確かにそうなります。全部要注意先になります。しかし、恐らく信用組合の中でも、その経営者の質といったところも見ながら担保がなくても貸し出しをしているというのが信用組合、地域の金融機関のあり方だと思うんです。それがなければ地域の金融機関としては成り立っていかないわけです。担保がないから、はいという形でもうRCCへとやっているんじゃないか。こういうところに審査能力の欠落というのがあるんじゃないかなというふうに私は考えます。  先ほどのお答えで、全部そうだということだから、水かけ論になりますのでこれはやめておきますけれども、私は到底それは信じられない。重ねて調査を要求したいというふうに思います。  それから一点だけ、金融サービス法のことについて伺いたいんですけれども金融議会がつい最近、中間報告を出されました。そこで、金融サービス法の制定のことについて一定の方向が出されております。中身については私たちは全部賛成できるものではないんですけれども、消費者保護といった方向に向かってサービス法を制定する、これは少なくともビッグバンと同時にやられなければいけないことだったので、そういう制定の方向は当然歓迎するものなんですが、それをやるに当たって、今度の審議会の中間報告でほとんどなされていないのが消費者の保護、特に現に起きておる消費者被害の救済、このことについてはほとんど触れられていないんです。やはりこれはまずいだろうと思います。こういった現に起きておる被害者の救済というのはどうしてもやるべきだというふうに考えております。  そのことに関して、今非常に大変な状態になっております山一ファイナンスの抵当証券被害者の救済の問題を例にとってみたいと思うんです。  といいますのは、この山一の抵当証券については、中身は説明しませんけれども、要するに購入者が全国で一万人近く、九千七百九十五名いるわけです。被害額の合計は三百二十億円と言われております。聞くところによりますと、最近、日債銀の関連会社で同じ抵当証券を扱っております日債銀モーゲージという会社、これについて自己破産申請に基づいて破産手続が進められているわけですけれども、そこでは破産管財人が抵当証券購入者から全額買い戻すことによって一〇〇%被害の回復が行われようとしておるというふうに聞いております。  事前に監督庁にもそれは事実だということを伺ったんですが、だとしますと、山一ファイナンスの場合についても、破産管財人がそういった決定を行えば、監督庁は当然その決定に従って処理を行うべきものだというふうに考えるわけですけれども、その点について確認したいと思います。
  112. 乾文男

    政府委員(乾文男君) お尋ねの破産をいたしました抵当証券業者の抵当証券の取り扱いでございますけれども、日債銀モーゲージの場合と山一ファイナンスの場合とで扱いが違うではないかということでございます。  これは、端的に申しますと、裁判所から選任されました両社のそれぞれの破産管財人が、どういう回収方法をとった場合にその抵当証券会社にとって一番有利で効率的な回収が行えるかという観点からそれぞれの責任において判断されたことだというふうに承知しておりまして、その結果につきまして行政当局としてコメントすることは差し控えたいと思っております。
  113. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そんなことは私も知っています。山一ファイナンスの破産管財人はまだ決定しておりません。ですから、破産管財人が日債銀モーゲージと同じような決定を下した場合には、監督庁としては当然その決定に従って処理すべきだというふうに考えるんですがどうかと伺っているんです。
  114. 乾文男

    政府委員(乾文男君) それは、ただいま申し上げましたように、破産管財人が手法的な立場から有利ということで判断された場合には、いわば民事上の判断でございますから、それが尊重されることになるんだろうというふうに思います。
  115. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 済みません。私、あるいは言い間違えたかと思いますが、先ほどの池田先生の審査能力の観点の、RCC行きの資産が多いのはなぜかということの説明の中で、不動産、建設向けのものがもう圧倒的に多いということがまず基本的な背景でございますが、もちろんその中には正常先もあって、正常先はRCCではなくて承継銀行に行っていることは当然でありますので、ちょっと間違ったかもしれません。
  116. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 終わります。
  117. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党・護憲連合の三重野栄子でございます。  通貨及び金融調節に関する報告に関しまして、八点ほど質問をいたします。  まず、日銀総裁に二点お伺いしたいんですが、ゼロ金利政策につきまして、これはもう既に何人かの御質問もございましたけれども、もう一度私の視点からお尋ねしたいと思います。  日銀がまとめました平成十年度の資金循環統計によりますと、名目GDPに占める金融機関資金余剰額の割合は四・一%と過去最高を記録したと報道されております。すなわち、日銀がゼロ金利政策を通じて金融機関へ大量の資金供給に努めているわけですが、金融機関から企業への貸し出しは行われず、金融機関において資金が異常に滞留している状況が続いています。結局、ゼロ金利政策は、日銀金融機関の間の資金のキャッチボールにすぎないのではないかという見方も生まれてきております。  日銀総裁も、先日の講演において、財政支出の拡大や金融緩和策日本経済が直面している課題の解決には不十分という発言をされたと伺っておりますが、その真意をお伺いいたしますとともに、現在の金融政策について改めるべき点があればあわせてお伺いいたしたいと存じます。
  118. 速水優

    参考人速水優君) お答えいたします。  去る七月二十七日の講演におきまして、やや中長期的な視野に立って、我が国経済の直面する構造面の課題について説明をしたつもりでございます。  その中で、我が国経済構造面の問題を解決して民間需要を中心とするダイナミズムが復活していかなければ、財政金融面需要刺激策だけでは景気回復を息の長いものとすることはできません、こういう趣旨を申したつもりでございます。  もとより、構造改革成果がフルにあらわれてくるまでにはある程度の時間がかかります。また、その間に、企業リストラなどの構造改革の動きが、設備投資雇用面への悪影響を通じて、当面の景気マイナスのインパクトを及ぼす可能性も十分ございます。  日本銀行によります現在の金融緩和政策は、こうした構造改革に伴う痛みをある程度和らげつつ、企業が思い切ったリストラや前向きの設備投資を進められるための環境を整える上で大きな役割を果たしていると思っております。  景気の現状につきましては、何度も申し上げておりますが、足元は下げどまっておりますけれども民間需要の自律的な回復のはっきりした動きは依然として見られないのが現状でございます。  こうした情勢を踏まえまして、日本銀行としては、デフレ懸念払拭が展望できるような情勢となりますまで現在の思い切った金融緩和基調を維持して、それが浸透するのを見ながら経済金融面からしっかりと下支えしていきたいと考えておる次第でございます。
  119. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  先ほどCPオペもございましたのですが、功罪についてお伺いしたいと思います。  日銀は昨年秋に、いわゆるCPオペの拡充を行いました。それは政府経済政策と相前後して、企業金融支援を中央銀行として行うものであったと思います。  しかし、このCPオペにつきましては、資金繰りが行き詰まって倒産状態にある会社を延命させているのではないかとも言われます。また、このような格付の低い会社のCPを所有することは日銀の財務の健全性を損なうとも言われておりますが、これらにつきまして日銀総裁見解をお伺いいたします。
  120. 速水優

    参考人速水優君) CPオペにつきましては、これまでも短期の資金供給手段として活用をしてきたつもりでございます。御指摘のように、特に昨年十一月には、企業金融円滑化に資することをねらいにしまして、臨時貸出制度の創設など、そういう措置のもとで積極的にこれを活用してきたわけでございます。  幸いなことに、その後の動向を見ておりますと、企業金融の逼迫感はかなり和らいできております。日銀による潤沢な資金供給政府による金融システムへの対応の進展などの効果と相まって、所期の効果が上がってきているように考えております。  このような日銀の持っておりますオペ、貸し出し手段、基本的には資金供給したり吸収したりするための手段でございますが、それぞれの手段の特性をうまく生かすことによって、例えば企業金融円滑化などの面でも政策効果を上げ得るものと考えております。  もちろん、その一方で、CPオペのように民間企業債務をオペ、貸し出しの手段として活用するという場合には、それが中央銀行の資産として相ふさわしいものでなければならないわけでございます。実際にCPオペの対象としておりますCPは、その発行企業の信用力等につきまして、日本銀行みずからが策定した基準に基づいて十分審査を行った上で適格と認めているものだけを買っておるわけでございます。  また、CPオペは買い入れ対象金融機関等との売り戻し条件つき買い入れという方式によって行っておりまして、対象金融機関等の信用力とCPの発行企業の信用力と二重に安全性が補強されていると言ってもよかろうかと思います。  このように、日銀としては、中央銀行資産の健全性確保に常に留意しながら、現在保有しておりますオペ、貸し出し手段のそれぞれの特性を十分に生かしながら、その時々の政策目的を達成していくことが大切なことだというふうに考えております。  参考までに、今、市場のCP残高はおよそ十四兆数千億、そのうち日本銀行に入っておりますのが先ほどの三兆弱というのが現状でございます。
  121. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  次は、日銀当局の方に二点ほど伺いたいのでございます。  まず、事業年度の変更に関することでございますけれども、最近、日銀の支店が置かれております地方団体から、財政が逼迫しており、多額の地方税の還付をせざるを得なくなったことについて意見書が出されています。この問題は、平成九年の日銀法改正において、日銀の事業年度の変更があり、それまで半年単位で行われていた決算が一年単位に変更されまして、それに伴い、法人住民税等の納付も年一回から二回に変更になったことがそもそもの発端のようです。  そこでまず、日銀当局に、一昨年の日銀法改正で事業年度の変更が行われた理由につきましてお伺いしたいと存じます。
  122. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) ただいまの事業年度の変更につきましてのお尋ねでございますが、日本銀行の事業年度につきましては、旧日本銀行法のもとでは格別の定めはございませんでした。私どもの定款において半年というぐあいにされていたわけでございます。  御案内のとおり、新日本銀行法では、事業年度は四月一日から翌年の三月三十一日までの一年というぐあいに定められたわけでございますが、これは一般の法人も含めまして事業年度は一年が通例となっているということから、日本銀行法の改正の際の金融制度調査会の答申におきましても一年が適当とされた経緯がございまして、こうしたことも踏まえて、日本銀行の事業年度も一年とすることが法定化されたということでございます。
  123. 三重野栄子

    三重野栄子君 その結果、いろいろの課題が出てきたわけでございます。日銀はこれまで予定納税を行っていなかったんですけれども、平成九年度の実績に基づいて、法人事業税、法人住民税を各地方団体に予定納税をしておりました。  ところが、平成十年度におきまして、課税の対象となる内部留保が大幅に減少した結果、地方団体に対して納めるべき税額は大幅に減少することになりました。その理由は、課税対象が金融機関が破綻した場合の日銀特融や為替、金利の変動に備えた引当金として内部留保される分に限られていたと説明されております。昨年度は、特融の回収が進んだために、引当金の積み増しがわずかしかなくて、課税となる内部留保は大幅に減少したとされております。  これらの一連の流れにつきまして、日銀当局はどのように御説明になるでしょうか。
  124. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 今、先生からるる御説明がございました。私どもの内部留保すなわち課税所得流れという御質問でございますが、対象となりました平成十年度の課税所得というものを前年度、九年度と比べてみますと、かなり減少いたしたわけでございますが、これは御案内のとおり、私どもの内部留保のいろいろな動きが影響したということでございまして、中でも非常に大きく影響をいたしましたのは、いわゆる特融見合いの貸倒引当金の動きということでございます。  そこで、特融見合いの貸倒引当金の動きということでございますが、九年度につきましては、御案内のとおり、北海道拓殖銀行あるいは徳陽シティ銀行等への特融の実行から貸倒引当金を積み増すことになったわけでございますが、十年度はこれらの特融の回収に伴いまして貸倒引当金は取り崩したわけでございます。  そこで、こうした貸倒引当金の動きというものを課税所得との関連で見てみますと、特融見合いの貸倒引当金の積み増しというのは有税でございまして、したがいまして課税所得の算定上は所得に加算されるわけでございますが、一方、取り崩しは課税所得が減算されることになるわけでございます。  したがいまして、先ほど申し上げました十年度、九年度の特融見合いの貸倒引当金の動きに合わせて考えてみますと、十年度の課税所得は九年度との対比で見て大幅に減少することとなったということでございます。
  125. 三重野栄子

    三重野栄子君 そこで、自治体の財政に与える影響を自治省にお伺いします。  今のことと関連いたしまして、具体例を挙げますと、例えば長野県では法人事業税と法人住民税で二十二億三千三百万円の事前納付を受けていたんですが、税額が確定した時点で納税額はわずか七十五万円になりました。さらに、地方税法では、このような場合、還付金に加えて年利七・三%の還付加算金を支払わなければならないと定められており、地方税にとってまさに踏んだりけったりの結果となりました。東京都は、ある程度の還付を予想して財政調整基金に日銀の予定納税額を積んでいたために対応できたと言われております。  しかし、予定納税分を使ってしまった団体等、何らかの手当てが必要になった地方団体がなかったのかどうか、あったとすれば、どのような財政上の手当てがされたのか、自治省にお伺いいたします。
  126. 成瀬宣孝

    政府委員(成瀬宣孝君) 先ほど来議論に出ておりますように、平成九年の日本銀行法の改正によりまして、日本銀行が半年決算法人から一年決算法人となったことに伴いまして、平成十年度から初めて中間納付の手続がとられることになったわけでございます。  この中間納付に当たりましては、直前の事業年度が六カ月でありますことから、結果的には前事業年度であります九年度下期に係る納付額と同額が納付されたわけでございます。しかしながら、最終的には、平成十年度の納税額が九年度下期の納税額に比べまして大幅に減少したことによりまして、昨年秋に中間納付された法人二税を本年五月末の確定申告に伴って還付しなければならないという次第になったわけでございます。  この問題に対します各地方団体の対応についてでございますけれども、例えば、御質問にもございましたが、東京都におきましては、日本銀行の中間納付額につきまして、還付が生じ得る可能性が高いという見通しのもと、還付財源を留保されるなど所要の措置を講じたほか、多くの地方団体におきましても中間納付に係る最終見通しに関する各種の情報収集に努められまして、還付に必要な歳出予算額を平成十一年度当初予算に計上するなどの対応がとられたものというふうに承知しているところでございます。  なお、この還付によりまして具体的に地方団体の方で財政運営上支障を生ずることがないかというお尋ねかと思いますけれども、平成十一年度の普通交付税におきます法人住民税あるいは法人事業税の関係につきましては、平成十年六月から本年五月までの調定額を基礎として算定を行っております。  したがいまして、今回の日本銀行における還付額につきましては、還付された後の調定額を基礎として普通交付税の算定を行っているということでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  127. 三重野栄子

    三重野栄子君 それでは、時間があと少しになりましたから最後になると思いますが、大蔵大臣にお伺いします。  日銀法では、通貨発行益等から経費、配当、内部留保を差し引いた分を全額国庫納付しなければならないと五十三条第五項に定められております。したがって、平成十年度では日銀特融の回収が進んで特融の引き当てが減少したこと等から、日銀の国庫納付が大幅に増加し、先日成立しました平成十一年度第一次補正予算の有力な財源となった一方において、課税対象となる内部留保が減少したという事情が理解できます。ただ、日銀は特殊法人でありまして、納税義務者としての性格も有しておりますから、地方団体から見れば、日銀が納税する法人住民税などが平成十年度のように事前の見込み額と納税額が大幅に食い違うことは税収の安定性、予測性を害することにもなります。  現在のような金融情勢が目まぐるしく変化するときは、日銀の財務内容もまた激しく変動せざるを得ないことはわかりますけれども、そのツケをそのまま地方団体に回すことは問題があるように思いますが、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 事情はただいまお聞きになられましたようなことで、事業年度が一年になりましたことと特融をされたことの引き当てとの関連でこういう問題が生じたということでございます。  ですから、東京都のように予想されたところもあるわけでございますけれども、一般にはちょっとショックがありまして、おまけにそれに金利を取られたということでございました。  私は、これは何と申しますか、制度の改変とそれから引き当てをしていたこととの関連で起こったことで、どうもこれ自身はやむを得ないのではないかというふうに思っておるのでございます。
  129. 三重野栄子

    三重野栄子君 一分だけ。  前段の説明ができなくて恐縮でございますけれども、こういう地方税制の変更について松本市の意見書も出ているようでございますが、今後の自治省のお考え方についてお伺いさせていただきたいと思います。
  130. 成瀬宣孝

    政府委員(成瀬宣孝君) 松本市の意見書の中で具体的に出ています還付加算金の問題かと思いますけれども、御案内のように、この還付加算金は国税、地方税を通じて制度化されているものでございます。その点をまず御理解いただきたいと思います。  ただ、この還付加算金の率が妥当かどうかということにつきましては、最近におきます超低金利状況等を勘案いたしまして、既に本年度の税制改正によりましてその率を引き下げる改正、現行七・三%でございますけれども、来年一月一日以降からは公定歩合プラス四%、この公定歩合というのは前年の十一月末現在の数値でございますが、この率が七・三%を下回る場合にはこれを基準金利とするという引き下げの改正を行っておりますので、あわせて御理解をいただきたいというふうに思います。
  131. 三重野栄子

    三重野栄子君 終わります。
  132. 星野朋市

    ○星野朋市君 私は、預金保険機構の問題について若干質問をさせていただきます。預金保険機構の現状について、理事長から若干御説明をいただきたいと思います。  と申しますのは、ここのところへ来まして第二地銀を中心にして何行かの破綻が相次ぎました。預金保険機構としては今相当の資金の問題を抱えていると思いますけれども、そこら辺をあわせて、現状について御説明いただきたいと思います。
  133. 松田昇

    参考人松田昇君) 預金保険機構の活動一般についてのお話でございましたけれども、ただいまお話がございましたように、主たる任務は破綻金融機関の処理、これが本業でございますので、まずそれを中心にお答え申し上げたいと思います。  預金保険機構がこれまでに資金援助で使いましたお金というのは全部で六兆円弱でございます。その財源としては、保険料が二・七兆円、国債の償還が一・五兆円、それから借入金として一・七五兆円、こういうことに相なっております。  今後の問題でございますが、現在、破綻が公表されて、いずれ私ども資金援助あるいは資産の買い取りをしなければいけないものは四つの信用金庫と二十三の信用組合でございます。これに加えまして、金融整理管財人を派遣しております金融機関は三つの銀行国民、幸福、東京相和のほかに五つの信用組合がございます。加えて、長銀、日債銀、二つの特別管理銀行がこれからの処理として残っております。全体としてそういう厳しい状況の中で、私ども今運営をいたしているところでございます。
  134. 星野朋市

    ○星野朋市君 そうしますと、その資金の調達というのはどういう形で行われておりますか。
  135. 松田昇

    参考人松田昇君) 先ほど申しましたように、資金援助の財源といたしましては保険料が主たるものでございますが、ペイオフコストを超えて現在特別の資金援助をいたしておりますので、その部分につきましては条件が整ったところで国債を償還して使わせていただいているという状況にございます。  ただ、私どもの現在の借入金そのものは全体で約十五兆五千億円ございます。これは、一つ金融再生勘定というところで特別公的管理銀行にお貸ししている二・二兆円がございますし、それから昨年三月に資本注入いたしました一・八兆円の優先株を買い取ったときの原資が残っているものがあります。そのほかに、ことしの春に資本増強ということで約七兆五千億円を私ども資金調達いたしまして、それをRCCに貸し付けて優先株等を買っているという状況がございます。そのほかは、ペイオフコストを超える資金援助で、国債では足りなかった部分が借入金になって残っているという状況でございます。  したがいまして、この勘定は借入金がそっくり負債ということではございませんで、差し引きしますと、特例業務勘定と言っているいわゆる資金援助の部分だけが私どもの欠損の状況になっておりまして、両勘定合わせまして一兆七千五百億円の欠損、これが七月末現在の実情でございます。
  136. 星野朋市

    ○星野朋市君 その資金かなりの部分が一年以内の都市銀行からの借り入れという報道がなされておりますけれども、それは誤りですか。
  137. 松田昇

    参考人松田昇君) 御指摘のとおりでございます。  そういう点もありまして、長期的な安定的な資金調達を図るべく、現在、政府保証つきの預金保険機構債券の発行に向けて取り組んでいる段階でございます。
  138. 星野朋市

    ○星野朋市君 このことについてちょっと前から関心を持っておったんですが、たまたま昨日の日経の第一面に、預金保険機構が四年物の債券の発行に踏み切る、こういう報道がなされましたけれども、これは間違いございませんか。
  139. 松田昇

    参考人松田昇君) その点は御指摘のとおりですが、記事の中身に一部間違いがございまして、私どもが現在、関係御当局の御理解を得て発行を予定しておりますのは、本年の十月以降に四年物の利付債を毎月一千億程度発行する予定で、大体六千億を上限というような形で考えております。
  140. 星野朋市

    ○星野朋市君 それは今お聞きしてわかったんですけれども、報道は年に約一兆円、一回の発行額が二、三千億ということでございました。これは例のペイオフの二〇〇一年三月までをお考えなのか、これからまだ破綻銀行が出てくると思うんですが、そういうのに備えて相当中期にわたってこれを発行なさるのか、どちらでございますか。
  141. 松田昇

    参考人松田昇君) 日経の記事によりますと、見出しに「破たん処理財源確保」ということで、先生御指摘のような記事になっているのでございますが、実は今回、私どもが計画いたしておりますのは健全化勘定というところの債券の発行でございまして、これは七・五兆円、ことしの春に資本増強したときに、優先株その他借り入れたときの原資を現在、私ども借入金で持っておりますので、それを債券に振りかえて借りかえていきたい、こういうつもりでやっております。
  142. 星野朋市

    ○星野朋市君 昨年の金融国会で成立しました預金保険機構に対する七兆円の枠、これは今どのくらい使って、どのくらい枠が残っておるんですか。
  143. 松田昇

    参考人松田昇君) 現在一・五兆円を使っておりまして、残り五・五兆円の枠が残っておる、こういう計算になります。
  144. 星野朋市

    ○星野朋市君 それで当分やりくりはできるとお考えですか。
  145. 松田昇

    参考人松田昇君) 先ほど申し上げましたように、たくさんの信用組合、信用金庫、銀行の破綻処理はこれからもありますので、大ざっぱに言いますと非常に厳しい情勢ではないかなと思いますけれども、具体的な数字になりますとまだ精査ができておりませんので、今この段階であれこれ申し上げるのはちょっと御容赦いただきたいなと、このように思います。
  146. 星野朋市

    ○星野朋市君 わかりました。ありがとうございました。  私の後、質問がないようでしたら、どうぞお引き取りくださって結構でございます。  次に、日銀総裁にちょっとお伺いしたいんですが、けさほどから林議員も取り上げましたし、どなたかも取り上げられました七月二十七日のきさらぎ会における総裁講演の中で、ちょっと私、気になることがありますので、申し上げさせていただきます。  四の「企業のバランスシート健全化の遅れ」という項目がございまして、そこを皆様のために若干時間をとって読ませていただきますと、   日本経済が抱える構造問題として、まず最初に挙げなければならないのは、バブル経済とともに膨れ上がった資産や負債の処理がまだ終わっていないという点です。バブルの崩壊とともに、まず強気の経営計画をもとに大きく負債を膨らませた企業経営破綻が相次ぎ、その中で金融機関の不良債権が増加していきました。そのことは、自己資本の毀損を通じて金融機関リスク・テイク能力を減退させ、経済の血液とも言うべきお金の流れを滞らせることとなりました。さらに、一部金融機関経営破綻をきっかけとして金融システムに対する信認が低下し、預金者や金融市場の動揺を招いたことが、企業家計のコンフィデンスを悪化させるルートを通じて、一昨年から昨年にかけての景気悪化の要因の一つとなったのだと思います。 と、こうおっしゃっておられます。  確かにそのとおりだと思うんですが、問題は、ここで「バブルの崩壊とともに、まず強気の経営計画をもとに大きく負債を膨らませた企業経営破綻が相次ぎ、その中で金融機関の不良債権が増加していきました。」とある点なんです。  このバブルの問題、確かにいろいろな企業が強気の経営計画のもとにいろいろな設備を膨らませたということはございますけれども、その原因はどこがつくったのか。今この論でいくと、金融機関はその外にあって、企業がおかしくなったから金融機関がおかしくなったと人ごとのように言っているんですけれども、本来は金融機関がそもそもこのバブルを起こして、そしてこういう結果になったんじゃないかと私は思っているんです。  それで、その中に、これは強気の経営計画をもとに負債を膨らませたというのは製造業だけじゃなくて土地会社も何もだと、こうおっしゃられると、その部分については肯定せざるを得ないんですが、私もそのときある会社の財務担当をやっておりまして、都市銀行数行といろいろ取引していましたけれども、ある銀行一行を除いて、支店長は会社の経営計画なんというのは余り耳にしていない、ほとんど土地問題、こういう物件があるけれどもお金を貸しますから買ってくださいなと、こういう話ばかりなんです。おまえ不動産屋かと私は怒ったんですけれども、そういう状態のもとで、金融機関がこれに加担し、これをあおったわけです。この点を総裁、やはりはっきりさせないと、これからの政策に私は問題が生じると思っています。  あえて言わせていただければ、バブルの発生期に、せっかく日本というのはアメリカからディフュージョンインデックスの手法を学びながら、景気の転換点というものを見つけられないで、三回目の経験にもかかわらず、五年有余にわたって低金利政策を続けて、その後急速に締めて金利を引き上げていって、日本経済がポシャった。これをやった反省というのがこれにはないんじゃないかと私は思うんですが、いかがでございますか。
  147. 速水優

    参考人速水優君) 実は私も、バブルの発生期、崩壊期に商社という何でもやる民間企業の責任者でありました。それまでは本当に、かつて日本銀行にいたわけですけれども金融機関というのはとにかくオーバーローンといいますか、常に床の間を背にして企業にお金を貸すことで、預金さえ集めれば借り手は幾らでも出てくる、そのさやで十分食っていけると、そのスケールの量を専ら競い合ったということだったと思うんです。  それが急に変わってきて、八〇年代の後半以降、とにかく非常に低利で資金の調達ができるようになったんです。特に、海外などでもほとんどただのような資金が借りられるようになった。これは日本企業にとっては、製造業も商社やサービス産業も同じだったと思いますけれども、これは夢じゃなかろうかと思うぐらいの大きな変化だったんです。  この時期に、しかも景気がいいし、株価も地価も上がっていくといったような状態の中で、借りなきゃ損だといったような感じでいろいろな仕事を始めたことも、世界じゅうに手を伸ばして仕事をやったことも、ついこの間のことでございます。それが行き過ぎて、世界の諸国からも同じようなことが起こって、日本にもそれが伝わってきて、行き過ぎがあった。やはり、設備投資が過剰になるし、土地や株が上がり過ぎるという状態が急速にわかって、バブルがはじけて、それ以降、今日に至るまでデフレが続いておる。  どっちが悪いかというのはこれはなかなか難しい。私も両方におりましただけに、これはどっちに軍配を上げていいのか、罪を着せていいのか難しいところだと思うんですけれども、先日の講演でも、企業のバランスシートについて、その健全化がおくれぎみであるということが低金利のもとでも設備投資がなかなか回復しないことの底流にあるんだ、その背景にはバブル期に負債を大きく膨らませたということがあるんだと、こういうことを申したつもりでございます。  いわゆるバブルの発生について、自由化とか国際化などの経済環境の変化とか、首都圏への一極集中が起こったとか、あるいは土地取引に関する法制、税制などのさまざまな要因が互いに複雑に影響し合う中で、経済全体にいわゆる右肩上がり、必ず右肩が上がっていくんだという確信のような幻想が生まれたということでなかったかと思うんです。また、その際、長期にわたる金融緩和にもその原因の一端があったことは否定できません。  そうした中で、企業活動におきましても金融機関活動におきましても、どちらも行き過ぎが生じておったと思います。すなわち、企業設備投資のみならず、財テクと呼ばれるような資産運用を積極化したわけです。マネーサプライの伸びは、それでかなり高い伸びを続けました。この両者の間には、御指摘のように、金融機関が指導したケースもありますし、逆に企業の積極的な活動に金融機関が応じたケースもあったと思います。こういうふうにして、当時多くの経済主体のリスク感覚が鈍ってしまって、経済活動の行き過ぎが非常に広範に、これは当たり前だというふうに皆が思って行き過ぎが発生してしまった。  したがいまして、企業金融機関のどちらかに一方的にバブルの原因があるということではございませんし、先日の講演でどちらがどうということを申し上げたつもりもないことを御理解いただきたいと思います。
  148. 星野朋市

    ○星野朋市君 問題は、過去のことじゃなくてこれからのことを本当は論じたいんですけれども、時間がございません。いつかゆっくりとこれは論じたいと思います。きょうは時間でございますので、終わらせていただきます。
  149. 菅川健二

    ○菅川健二君 金融の正常化問題について、若干御質問申し上げたいと思います。  昨日の本会議を聞いておりますと、これはここにおられます浜田委員に対する柳沢再生委員長の答弁でございますが、金融正常化に対しまして大変力強い決意と自信のほどを示しておられるわけでございます。  若干これを読ませてもらいますと、ペイオフの解禁予定時期までに我が国金融機関のすべてを通じて不良債権を処理し、十分な資本を持ち、さらに効率的で競争力の強いものとし、これによってある程度リスクに耐えるとともに、他方、信用リスク市場リスクなどのリスクを的確に管理できる能力を持つ体制を築いてまいりたいと考えておりますと。大変優等生の答弁でございまして、そのとおりになれば大変ハッピーに過ぎるわけでございます。  最近、御案内のように、地銀のこの三月期の決算状況が発表になりましてから、いろいろ週刊誌等におきましてもかなり際どい記事が幾つか出ておるわけでございまして、地域金融危機マップという全国のマップが出ておりまして、実は私の郷里、これは宮澤大蔵大臣の郷里でもあるんですが、郷里もこの火薬庫の一つになっておるわけでございます。そういった面で、全国的に不良債権が噴出して債務超過になって、そしていろんな問題が起こるんだというマップでございます。  そこでまず、再生委員会におかれましては、地銀の不良債権の実態、これをどのように把握しておられ、またそれに対して今後、金融正常化について基本的にどのような見通しを持っておられるのか、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  150. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 不良債権の実態ということでございますので、計数等を交えて申し上げたいと思いますが、金融監督庁が発足いたしましてから、主要行に続きまして、地銀、第二地銀につきましてもいわゆる集中検査というものを行ってまいりました。そうしたことを踏まえて、ことしの三月決算というものを地銀、第二地銀も組まれているだろうというふうに考えているところでございます。  不良債権について見ますと、地銀、第二地銀の先日発表いたしましたリスク管理債権でございますけれども、十年三月末、一年前から十一年三月末のリスク管理債権は七・八兆円から九・四兆円に増加しておりますけれども、これは集中検査を踏まえまして、計上基準の統一等による貸出条件の緩和債権が増加したということが要因になっているんだろうというふうに考えております。  そこで、このリスク管理債権というのは、いわゆる担保がある分とか、それから引き当ててある分も全部含まれておりますので、そうしたものを控除した後の自己査定ベースで見ますと、いわゆる第Ⅲ分類額は不良債権の進捗等によりまして十年三月の一・三兆円から減少しまして、十一年三月末では〇・九兆円ということになっておるわけでございます。  それで、今度は償却、引き当ての状況を見ますと、個別の貸倒引当金の残高でございますけれども、十年三月末の三・七兆円から十一年三月末は四・四兆円に増加しております。一般貸倒引当金も十一年三月末は一・一兆円と、一年前の二倍の水準になっておりまして、各行が監督庁の検査等を踏まえまして、それぞれが適切な償却、引き当てを行ったものというふうに考えているところでございます。  これをこの数年間の累積で見ますと、地銀、第二地銀の不良債権の処理状況につきましては、八年三月期で二・三兆円、九年三月期で一・五兆円、十年三月期で二・四兆円、十一年三月期で三・一兆円、合計この四年間で九・四兆円の相当多額の不良債権の処理というものを行っております。これによりまして、先ほど申し上げましたようなことも踏まえまして、相当の不良債権の処理が今期行われたというふうに考えておるところでございます。  監督庁といたしましては、今後適用される金融検査マニュアルでございますとか、そうしたことを踏まえまして、この財務の状況につきまして的確にウオッチしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  151. 菅川健二

    ○菅川健二君 トータル的に見ますと、ある程度改善されておるということが言えるわけでございますけれども、個別におきましてはいろいろあることは御案内のとおりでございます。  そこで、金融再生委員会の方におきまして、六月十日でございますが、「地域金融機関資本増強についての基本的考え方」というのをまとめておられるわけでございます。その際、金融再生委員長の方から、自己資本比率は四%でなく八%をめどに考えたいという談話が発表され、この衝撃が全国といいますか、地域を駆けめぐったわけでございます。その後、釈明しておられるわけでございますが、これは公的資本を注入した後に自己資本比率の目安が八%であるのが望ましいということを釈明されたのではないかと思うわけでございますが、そこで一応とりあえずは小康状態になっておるわけでございます。  ただ、この三月期末の決算を見てみますと、上場している地銀、第二地銀九十八行のうち、自己資本比率が八%を上回っておるのは五十三行、そのうち第二地銀は九行にすぎないわけでございます。現在、いろいろ地銀におきまして公的資本の導入につきまして検討しておる地銀もあるやに聞いておるわけでございますが、数日前の新聞記事等によりますと、九月をめどにして大体三、四行程度がその申請を出すのではないかという報道もあるわけでございます。  再生委員会とされまして、今後の公的資本の導入の見通しについてお聞かせいただきたいと思います。
  152. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 今、菅川先生がお触れになりましたように、私どもは六月十日に地域金融機関資本増強についての基本的考え方というものを明らかにいたしました。これにはいわば地域金融機関、具体的には地方銀行と第二地方銀行と言われる業態の金融機関に対する再生委員会側からの呼びかけのペーパー、それぞれにおいて御検討いただく際にぜひ参考にしていただきたいペーパーという意味もありまして、これを発表させていただいたわけでございます。  若干申し上げますと、私ども、八%云々というくだりも、別に文書の上でそういった明示の数字を掲げたというわけではないわけでございまして、考え方として、資本増強が行われる際、「申請金融機関が国内基準行の場合にも、単に国内基準行としての最低限の水準を満たすとの考え方ではなく、今後発生し得るリスクにも対応できる水準となることを目指す。」と、こういうふうに書いてあります。これについて解説を新聞記者会見で求められました際、これは委員会の議にも諮って私ども意思統一をしておったわけでございますけれども、八%を目安にする、こういうことを表明させていただいたというわけであります。  思い出していただきますとおわかりになりますように、資本増強に当たっては、必要性の側面からのアプローチと、それから制約性というか、いろんな制約からするアプローチと二つがありまして、これらがいわば調整されたところで現実の増強額が決まる、こういう仕組みになっております。  あえて申しますと、必要性の方は、これは当たり前で、不良債権をきちっと処理しなさい、あるいは、当時は有価証券の含み損をたくさん持っていましたから、それらを引き当ててもなお十分な自己資本比率ができるようにしなさい、こういう考え方がいわば必要性の側面からの考え方でございます。  それから、今度は制約面からの考え方というのは、やっぱり我々は出資した優先株なりなんなりを処分、消却していただかなきゃならない。その原資は収益である。したがって、その銀行の収益の状況というものが一定の制約要因ということになるわけでございまして、そういうことで決まってくるわけなんですが、それでもなお相当の金額、相当の自己資本比率というものが実現されてしまうというときに、では一〇%にも一二%にもなるということを目指すべきだろうかと言われたら、それはやっぱり地方銀行、第二地銀の場合は八%を目指す、八%程度を目安にして考えていく、そういう意味の数字であったわけでございます。  いずれにしても、お時間もありますので先ほどの御質問に戻りますけれども、私どもといたしましては、これをぜひ御理解いただいて、できるだけ早目に、ペイオフも始まるということでございますから、真剣な検討をお願いしたい。いろいろマスコミは何か晴れ晴れしい図表なども掲げて不安をあおるような側面も見えますので、私どもとしてはそういうことで火が燃え出ないような姿のものに早くしていただくことを真剣に検討いただきたいということを考えておりますが、現在までのところは、どうも九月期に合わせてというところについては、残念ながら私どもの見込みというものをかなり下回っている。もとより、九月期と三月期ということは大体考えてはおりました、数も多うございますので。しかし、九月期を目指してというような方々というのはやや少な目である。  これから先まだ時間もありますので、ぜひ非公式にも接触をしてきていただきたいということを呼びかけさせていただいている次第です。
  153. 菅川健二

    ○菅川健二君 その点、若干気になりますのは、自己資本比率八%以上が健全行であるというのが事実上の基準になりかねないわけでございまして、そのためには自己資本比率四%という一つの国内基準というものが形骸化しまして、八%をクリアしておるかクリアしていないかでもって峻別されてくる、それがまたいろいろな預金シフトに結びついていく、そういった悪影響を及ぼさないかということが気になるわけでございます。今御指摘のように、せっかく再生委員長が刺激を与えられたんだろうと思うんですが、なかなか笛吹けど踊らずというような状況もあろうかと思います。これらにつきましては、ぜひ公的資本導入とあわせて大いに督励をしていただきたいと思うわけでございます。  あわせて、何といいましてもこれにつきまして、単にそれぞれ一行一行を健全化していくということが無理な場合もあるわけでございまして、そういった面で、体質改善をするためには再編をしなくちゃならぬということもあるわけでございます。これも、巷間伝わるところによりますと、原則一県二行体制が再生委員会が目指しておる一つの青写真だというような説もあるわけでございますが、この点についての真意はいかがでしょうか。
  154. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) ちょっと八%のことを引き続いて述べさせていただきますが、八%を目安ということを、これはそうはいっても、我々が一言数字を口にすると思ってもみなかった作用をするということがあろうかと思うんですけれども、私どもはあくまで目安ということを申しているわけでございます。いわゆる早期健全化計画という別の、銀行法のいわば業務改善命令の系統のメルクマール、そこに使用されるメルクマールがありますが、この方はもう四%ということできちっとしておりまして、それよりも下回った場合にいろいろ健全化の措置が打たれるということであって、四%はあくまでも銀行法の早期健全化の仕組みの中では健全行である、これはもう頑として不動のものでございますので、この点ちょっと申し添えさせていただきます。  さてそこで、今の御質問の中核行、競争行、再編行ということでございますが、これについては、資本増強の規模や条件について次のような場合には優遇を行う、つまり優遇条件ということが我々の位置づけでございます。つまり、中核行の場合には、気持ちとしては、相当傷んでいても、ある程度こちらはいろんなところに寛大な気持ちでもって接して、そして中核行は中核行らしい位置づけでもって今後ともその地域の金融を面倒見ていただき続けるんだ、そういうことを考えていますよということが我々の趣旨でございます。しかし、それだけではちょっと独占的になってくるので、やっぱり厳しい競争をしてもらうためには競争行というものが必要でしょう、こういうことを申して、この競争行についても、規模、条件についてはかなり優遇をしますよということを言っておる。  それから、その他のところと言うとまたいろいろ誤解も起こるんですが、その他のところはどこかに、いろいろ垂直的、水平的に合併、提携してもらえばそれは大いにメリットとして勘定していただきますよということでありまして、別段、一県二行というようなことを固定観念的に考えているわけではない。そのことのあかしとして、私ども、「基本的考え方」の最初のくだりで、例えば地域の中小企業、産地を形成しているところ、そういう地場産業を面倒見てくれているところ、こういうものについてはまた特段の、「十分考慮する。」という言葉もここに真っ先に挿入しておりまして、そこはかなりきめ細かく見ていくけれども、その大筋として何を考えているかということを明らかにした、こういうことでございます。
  155. 菅川健二

    ○菅川健二君 委員長お話をお聞きして私は理解したわけでございますけれども、こういった物事というのは本当に、信用問題というのはちょっと委員長が一言言われるとかなり大きくぶれるおそれがありますので、何分正確な情報が全国各地に伝わるように、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。いずれにいたしましても、ペイオフの時期までに金融機関の正常化をぜひ図っていただきたいと思うわけでございます。  最後に、ペイオフの問題につきまして。ペイオフはきちっと一定の時期までに凍結解除しなければならない、二〇〇一年三月末をもって終わるんだということは我々としてもわかるわけでございますが、その後のセーフティーネットをぜひきちっとしたものをつくっていただきたいと思うわけでございます。  これは要望をして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  156. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時四十分散会