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1999-06-01 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月一日(火曜日)    午前九時三十分開会     ─────────────    委員異動  五月二十五日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     浅尾慶一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 浜田卓二郎君                 池田 幹幸君     委 員                 石川  弘君                 岩井 國臣君                 西田 吉宏君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 益田 洋介君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君    政府委員        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        北海道開発庁総        務監理官     斎藤 徹郎君        科学技術庁原子        力局長      青江  茂君        国土庁地方振興        局長       中川 浩明君        大蔵政務次官   中島 眞人君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    参考人        日本開発銀行総        裁        小粥 正巳君        北海道東北開発        公庫総裁     濱本 英輔君        日本銀行総裁   速水  優君        苫小牧東部開発        株式会社代表取        締役社長     中田 一男君        むつ小川原開発        株式会社代表取        締役社長     内田 隆雄君        野村総合研究所        研究理事     富田 俊基君        北海道大学経済        学部教授     濱田 康行君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本政策投資銀行法案内閣提出衆議院送付  )     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政・金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月二十五日、木俣佳丈君が委員を辞任され、その補欠として浅尾慶一郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 勝木健司

  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 日本政策投資銀行法案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 岩井國臣

    岩井國臣君 このたびの日本政策投資銀行法案日本開発銀行北海道東北開発公庫を統合しようとするものでございますが、大蔵大臣趣旨説明にもございましたように、平成九年九月の閣議決定に基づく一連の特殊法人等整理合理化一環として行われるものでございます。  私は、このことに関しまして、この二つ政府系金融機関が一つになるという単なる合併問題に終わってはならないし、法律案の第一条に掲げられております三つ目的、すなわち経済社会活力向上及び持続的発展、豊かな国民生活実現地域経済自立的発展、その実現に向けまして積極的に貢献していく、そのことが今求められているのだと承知しております。  これまで日本開発銀行は電力とか鉄鋼とか、我が国基幹産業の育成のためにその機能を発揮してこられたわけでございます。この点につきましては大変大きな成果を上げてきたものと私なりに理解をしております。しかし、このような分野への融資というものは今日ではむしろ民間金融機関によって十分に賄われるわけでございまして、政策金融がこれらの分野資金供給を行う必要性というものは現在大変大きく低下してきているのではなかろうかと思います。  一方、日本政策投資銀行法案に掲げられております先ほどの三つ目的というのは、まさに現在政府に求められている政策課題そのものでございます。特に地域経済自立的発展という目的は極めて重要でございまして、この目的を達成するためには、例えば社会資本整備と連携した地域産業振興というのはどういうものなのか、それをどのように実現していけばいいのか、そういうことが極めて重要ではなかろうかと思う次第でございます。  そこで、日本開発銀行総裁お尋ねいたします。  法案に掲げられております三つ目的に沿った出融資としてどのようなものに重点を置いていくべきなのか、開発銀行総裁認識というものをお示しいただきたいと思います。
  7. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) ただいまお尋ねをいただきました新法案に掲げられている三つ目的、その内容をどのように新銀行業務具体化していくか、こういうお尋ねでございます。  三つ目的、まず最初に経済社会活力向上及び持続的発展というふうに書かれてございますけれども、これはいわば経済牽引役を生み出しながら経済成長を安定的に維持する、こういうふうに理解をしております。  やや具体的に申し上げますと、特に新規産業の創出でございますとか新技術開発支援、それから事業革新支援あるいは規制緩和促進、このような政策目的に資する事業を重点的に対象とすることによりまして我が国経済活力を維持するために戦略的に重要な分野を育成していこう、こういうものと理解をしております。  それから、二つ目目的でございます豊かな国民生活実現、これは生活インフラ整備等によりまして質的な国民生活の充実、安定を図っていく、こういうふうに考えられます。  より具体的に申し上げますと、例えば廃棄物リサイクル対策等環境対策あるいは都市防災対策、それから人に優しい建築物という考え方がございますけれども、このような施設の整備など福祉、高齢化対策、さらに大都市圏交通整備というような交通物流ネットワーク整備、さらに電気通信整備等情報通信ネットワーク整備などに資する業務を重点的に対象としていくというふうに考えております。  目的の三番目は、地域経済自立的発展と表現されておりますけれども、ただいま申し上げましたような持続的な経済成長及び質的な国民生活向上日本の各地域間におきまして均衡あるものとするために地域経済の自立的な発展を促す、こういうように理解をいたしております。  より具体的には、例えば町づくり等地域社会基盤整備でありますとか地域産業立地促進等地域活力創造、さらにそれぞれの地域独自の地場産業振興及び地域間の連携、このような目的に役立つような事業を重点的に対象にしていきたいと考えております。  これを主務大臣がお定めになります中期政策方針でより具体化し、さらに毎年の予算に反映され、銀行としては毎年の投融資指針にさらに具体化、細分化いたしまして実際の出融資業務を行っていく、新銀行業務内容はそのように展開されるものと理解をしております。
  8. 岩井國臣

    岩井國臣君 ところで、新銀行として、その発足に当たりましては当然のことながら過去の失敗というものを十分に反省して、その反省点に立って出発するというようなことが重要だと思います。すなわち、苫小牧東部開発むつ小川原開発失敗というものをどう総括するかという点でございます。これは要するに苫東開発むつ小川原開発に関連して発生いたしました不良債権問題をどう考えるかということになるわけでございます。  むつ小川原開発につきましては、政府からこれを総括する報告書というものがまだ出ておりません。本質的には苫東開発と同じ問題でありますから、この法案の本日の審議に当たりましては苫東開発を例に質疑をさせていただきたいと思います。  まず、開発計画の定義についてでございますけれども北海道開発計画におきまして、戦後、北海道産業立地政策はどのように進められてきたのか、そしてそういった全体の流れの中で苫小牧東部開発というものはどのような位置づけであったのか、できるだけ簡単にお答えいただきたいと思います。
  9. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 御案内のとおり、北海道は豊かな国土資源に恵まれた開発可能性の高い地域でございます。昭和二十五年に制定されました北海道開発法に基づき六期にわたる北海道総合開発計画を策定し、経済復興や食糧の増産、人口や産業適正配置、多極分散型国土の形成など、その時々の国の課題解決に寄与することを目的として開発整備を行ってきているところでございます。  この中で、苫小牧東部地域開発につきましては、昭和四十五年に閣議決定された第三期北海道総合開発計画におきまして、国として国土利用を再編するとともに、北海道の長期的、飛躍的な発展を先導するプロジェクトとして、苫小牧東部地域鉄鋼石油精製等工業の導入を図るものとしたところでございます。  これを受けまして、昭和四十六年に苫小牧東部規模工業基地開発基本計画が策定され、この開発がスタートしたものでございます。
  10. 岩井國臣

    岩井國臣君 昭和四十六年に苫小牧東部規模工業基地開発基本計画というものが策定されて、平成七年八月に新計画が策定されるまで、特にこれといった見直しというものがなかったわけでございますけれども北海道開発庁計画策定者としての責任が今問われているわけです。北海道開発庁のそのことについての認識はどうでしょうか。
  11. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 今、先生御指摘基本計画昭和四十六年に策定され、それから平成七年八月に新計画が策定されておりますけれども、これはいわばグランドデザインといったものでございまして、その中間期にそれぞれ段階計画ということで当面十年の計画を策定し、適宜見直しを行ってきているところでございます。その結果として、石油備蓄火力発電所石炭中継基地自動車関連産業立地など成果を上げてきております。  昭和四十六年当時、重厚長大産業企業立地としては太平洋ベルト地帯が超過密状態にあった。そこで北海道の未利用広大地である苫小牧東部地域に新たな企業立地を求めたわけでございます。このような当時としては時代要望を担った計画でございましたけれども、今日の状況からいいますと、そういった重厚長大型産業の誘致といったこと自体が時代の要請にそぐわないものになってきているところでございます。  私ども北海道開発庁としましては、苫東計画全体についていわば計画責任を負っているわけでございますが、その時々で最大限努力をし、何とかしてこの計画をうまく進めようということでやってまいったつもりではございますけれども、振り返ってみれば、今日のような苫東会社破綻といった事態を踏まえますと、その時々における見通しが甘かった、あるいは計画の改定について適時適切にできなかったという点は指摘できるところでありまして、その点は真摯に受けとめてまいりたいと思います。
  12. 岩井國臣

    岩井國臣君 責任を十分感じていただく必要がありますが、ちょっとその点が弱いような感じもしないわけではございませんけれども責任についての見識が示されたかと思います。  次に、北東公庫責任問題でございますけれども北海道開発庁がお出しになりました「苫東開発をふりかえって」という報告書がございます。この報告書によりますと、有利子債務が非常に膨らんだことが問題だとあります。簡単に言ってしまえば、利子利子を生んだ借金地獄であります。  そこで質問でございますけれども北東公庫は回収の見込みのない貸し付けを続けてきた責任を今問われておるわけでございます。北東公庫総裁さき衆議院大蔵委員会の答弁で国の意思云々を連発されるわけでございますが、北東公庫リスク管理に対する考えがやはり甘かったと言わざるを得ないというふうに思います。  北東公庫を統括されます北海道開発庁見解をお聞かせいただきたいと思います。
  13. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 北東公庫の個別の出融資実行につきましては北東公庫金融機関としての判断にゆだねられているところでありまして、一般論として申し上げれば、北東公庫の個々の出融資に係るリスク管理について北海道開発庁が個別に指導することは困難であろうというふうに考えております。  ただ、苫東開発につきましては、これは国家的プロジェクトでございます。開発庁、北海道、それから北東公庫が一体となって推進をしてきたところでございます。先ほど申し上げましたように、北海道開発庁苫東開発について計画責任を負っているところでございますし、また北東公庫貸し付け責任貸し手責任を負っているところでございます。  結果として苫東会社破綻という事態に至ったことからすれば、おのおのの立場から見て事業の先行きに対する見通しが甘かったのではないかとの御指摘については謙虚に受けとめたいと存じます。その上で、北海道開発庁北東公庫それぞれの立場から、苫東会社に累積いたしました債務を適切に処理し、未利用広大地であります苫東の土地の上で引き続き事業を展開していくということで責任を果たしてまいりたいというふうに考えております。
  14. 岩井國臣

    岩井國臣君 この北東公庫責任問題はなかなか悩ましい問題でございます。  会計検査院の「会計と監査」という雑誌がございますが、この五月号に検査院の元審議官奥村勇雄さんという方が「苫東開発計画のざ折」について書いておられるんです。「行政における最高意思決定であり、かつ政治的判断との性格をも合わせもつ閣議決定変更がなされていない場合、現場ではどのような選択が残されていたのであろうか。北東公庫担当者悩みは、政策金融を検査する立場にあった筆者の悩みでもあった。」、こんなふうに書いておられますが、なかなかいわく言いがたしというか、悩ましい問題です、この問題は。  この問題に関しまして、宮澤大蔵大臣さき衆議院大蔵委員会でこのように述べておられます。「三十年前からここまで、一体おまえたちは政治をやっていて何をしていたのかねと、私自身がむち打たれる思いなんです。」、こうおっしゃっているわけです。  私も、苫東問題につきましては、北海道開発庁北東公庫責任はもちろんあるわけですけれども、それだけではいけないのではないか、北海道開発庁北東公庫だけを責めるのでは片手落ちではないかというふうに思うんです。会計検査院や行政管理庁の責任はどうなるのか。そして、国会における決算委員会責任というものはどうであったのか。そのことを問題にしないで、北海道開発庁北東公庫だけを非難しても決して問題の解決にならないのではないかと思うんです。  例えば国会決算委員会というものは適宜適切にその責任を果たしてきたのか。そういったことも本来問題になるべきものだと思います。決算委員会はいつ北東公庫有利子負債の問題を問題にしたのか。そして、そのことに対していつ警告決議を出したのか。これは特に何にもやっていないんです。それで国会議員責任といいますか、決算委員会責任が果たせたと言えるのか。  私は、参議院改革一環といたしまして、決算委員会のあり方というものにつきまして少し勉強をさせていただきました。そのことについて、先般、大蔵省にも会計検査院にも要望を申し上げたところでございますけれども参議院決算委員会審議をもっと充実していかなければならないんです。決算審査で特に問題がなければ、これは毎年やるわけですけれども、各省庁はやれやれと、ほっとして無罪放免になるんですね。これが実態だと思うんです。ですから、やはり問題があれば決算委員会できっちり指摘をしなきゃいかぬ、このように思うんです。  以上述べましたように、我が国の場合は、苫東問題に限らず、すべて護送船団方式といいますか、もたれ合い体質でやってきたわけです。私は今問われているのはそのことではなかろうかと思うんです。  そこで質問でございますが、苫東問題に関する関係者責任について、政治家としての大蔵大臣の一般的な見解で結構ですけれども、ちょっとお聞かせいただければと思う次第でございます。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど政府委員から御説明がございましたけれども我が国経済が戦後復興をし興隆していきます過程の中で、いわば世界有数経済大国になる路線を歩むうちに、産業重厚長大化という世界トレンドの中で、我が国太平洋ベルト地帯工業用地というものはもうほとんどない、そういう状況で、苫小牧東部地域というものが我々に残されたいわば発展可能性であると政府は考えました。先ほどのお話は主として北海道の方の立場からのお話でありましたけれども政府としても明らかにそう考えたわけであります。  したがって、これは政府計画において、この地域にいわば十分前もって受け入れの体制整備しておくべきであると判断をいたしたわけであります。この事実に私は間違いはないと思います。したがって、そういう意味では政府が明らかにそのことについて責任のある決定をしておるわけであります。  結果は、その後いわゆる石油危機があったり、また今に至るまでいろいろな経済状況の変化がございましたが、世界経済トレンドは変わりましたし、また我が国の比較優位の立場もいろいろな意味影響を受けるに至りましたから、物色という言葉は適当でないかもしれないが、選択いたしました苫東への投資計画というものは、ただいまの段階でそのままでは実現が不可能だということになったわけであります。  その間、北海道東北公庫政府のそういう基本方針というものを踏んまえながら、先ほどちょっと御紹介がありました点ですが、基本的には国がそう考えるその方針に従って融資を進めてこられたと思いますので、公庫だけのお立場からいえば、この融資についてはいろいろたびたび問題を感じておられたろうと思います。また、北海道開発庁でも、現実の事態が動いてまいりましたから、いろいろ計画変更等々を何度もやっておられます。  しかし、その間、北海道自身は、石炭は完全に斜陽産業となりましたし、漁業は二百海里の問題で非常に大きな影響を受けた。その上に、国がいわゆるローカル線の撤去ということをいたしまして、その点は北海道社会経済に非常に大きな影響を与える等々、非常に気の毒な事態が続いておりました。  そういうこともありましてというのはちょっと適当な表現ではないのですが、いずれにしてもいつかの日にこの苫東という地域は、北海道のためにはもちろんですが、国のために有用になるという判断、その判断そのものは現状の非常な不振にもかかわらず失われていないという状況が続いて今日に及んだということであったと思います。  したがいまして、このことは基本的にはそういう決断をいたしました政治政府責任であるということは否定できないと思います。
  16. 岩井國臣

    岩井國臣君 ありがとうございました。  大蔵大臣責任問題に対する基本的な認識をお聞かせいただきました。私もそのとおりではなかろうかと思う次第でございます。  さて、今回の北海道東北開発公庫に限らず、現下の金融問題というものはすべてリスク管理の甘さに根本的な原因があるのではなかろうかと思います。北東公庫の問題にしても、一番大事なことは今までの失敗から何を教訓とすべきなのかということであります。新たに発足する日本政策投資銀行は今までの失敗をどこにどのように生かすのかということだろうと思います。そういう点から若干質問させていただきたいと思います。  質問通告では幾つかの質問を用意しておったんですけれども、時間がなくなってきましたので少しはしょって御答弁いただくようなことになろうかと思いますが、お許しいただきたいと思います。  御案内のとおり、カオスだとかフラクタルというのは二十世紀最大の発見だと言う人もいるんです。アインシュタインの相対性理論じゃなくて、カオスだと言う人がいるんです。カオス理論。近年、不確実性理論という全く新しい学問分野が発達してきているんです。私らはそんなものは学生のころ習っていなかったです、カオスだとかフラクタルなんか。僕らは知らなかったんですけれども、最近はいろんな分野で研究されているんです。  それで、金融部門におきましても不確実性理論が応用されて、リスク管理学問が発達してきている、どうもそういうことのようなんです。私は日本開発銀行日本政策投資銀行におきましてもそうした動向を頭に入れて業務運営を行うことが必要ではなかろうかと思います。  そんな観点から、業務実務責任者としての日本開発銀行総裁お尋ねいたしますけれども日本開発銀行は財務の健全性保持のための、要するにリスク管理というものにつきましてどのような対応をしてきたのか、また今後リスクを軽減し、あるいはリスクに耐え得るようにするにはどのようなことが日本政策投資銀行において必要なのか、どう考えておるのか。その辺、時間がございませんので簡潔にお答えいただきたいと思います。
  17. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) ただいまのお尋ねに対してなるべく簡潔に申し上げます。  リスク管理の問題でございますけれども、基本的には開銀法、そして新しい日本政策投資銀行法においても定められております償還確実性の原則、これを遵守していくというのが当然のことでございますけれども最も大切なことだと思います。しかし、それは単に定性的に考えるということではありませんで、私どもがこれまで培ってきたノウハウを最大限に生かしながら、事前に十分な審査を行って適切な融資判断に努めてきたつもりでございます。これが事前のチェックということになります。  それから、融資実行後に決算報告等いろいろな貸出先情報を常に把握いたしまして、いわばモニタリングを注意して行いながら企業業況把握に努めて、事後の債権管理体制十分配慮をしていく、こういうことに当然のことながら私どもは努めてきたつもりでございます。  しかし、それだけではまだ及ばないところがいろいろございます。したがいまして、個別案件ごとの管理以外に、いわゆるALM、資産負債の管理システムと申しますか、この体制整備することによりまして銀行全体として財務の健全性を確保していく、こういうことを考えております。  さらに、ただいま委員から最近の新しい金融理論についての御指摘がございました。私どもも、まだごく初歩的かもしれませんが、内部でもそういう勉強もさせているつもりでございますし、御指摘のような確率的な手法を用いたリスク管理可能性あるいは実現性、そういうものにも注意を怠らずに今後とも新しい時代にふさわしいリスク管理というものに努めていきたいと思っております。  なお、一言付言させていただきますと、政策性の高いプロジェクトの遂行を支援することには当然リスクがございます。そのリスクに耐えるようにするためには、具体的には新銀行法案にも規定されております法定準備金の積み立て等による自己資本の充実、これを図っていくこと、つまり健全な財務基盤を確保していくことがこのリスク管理問題の基本であるということを私ども常に配慮していかなければならないと考えているところでございます。
  18. 岩井國臣

    岩井國臣君 融資に係るリスクというものを考えたときに、土地を担保に融資するという従来の考え方には大変問題が多いのではなかろうか。私がそう思うというよりも、むしろそういうふうに言われておると思うんです。  土地についてはいわゆる価格変動というリスクがございますけれども、そのほかにいろんなリスクがあります。基盤整備によりその土地の付加価値というものがどのように高まるのか高まらないのか、さらにはそのときの経済情勢を背景にしてどのような上物が立地し得るのか立地しないのか、そういったリスクまで考えなければならないわけでございます。土地についてはそういった将来の不確実性に起因するさまざまな変動リスクを考えなければならないわけでございますけれども、その分析が大変難しいようなんですね。不確実性理論からしますと、土地というものは本来担保性に欠けるというか、リスクが極めて高いということになるようなんです。  そこで、日本開発銀行総裁お尋ねいたしますが、金融機関の一員として、土地を担保にした融資というもののリスクについてどのようにお考えになっているのか、最近の金融理論による考え方ということになるのかもわかりませんけれども、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  19. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) ただいま土地を担保として融資をした場合のリスクについてのお尋ねがございました。  私どもも実務上企業の主要な資産の一種でございます土地を担保にすることは当然ありますが、土地の担保価値のみに着目した融資は行っていないつもりでございまして、むしろ個々のプロジェクトに着目いたしまして、その収益から返済を受けていくということが中心でなければいけないと。それからまた、申すまでもなく担保は万一の場合の最終的な債権保全手段でありまして、担保をとって安心ということは決してあってはいけないと思います。  したがいまして、お尋ねのように、例えば土地を担保にした場合も、価格変動があれば当然その都度評価がえをしていくということが必要でございますし、それ以外の状況の変化がございましたら、担保の追加、洗いがえということを実務上行ってきているつもりでございます。  さらに、私どもが現在手がけております若干先導的な担保の考え方、一つは収益還元的な考え方を採用いたしまして、当該プロジェクトの将来にわたる収益から生み出されるキャッシュフローを現在価値に還元していく、これを実質的な担保として評価していくという考え方、あるいは土地、機械設備のような有形な担保ではなくて、知的な所有権担保、まだ若干の実例でございますけれども、私ども民間金融機関に先駆けてこのような担保制度の導入も手がけておりますので、今後ともただいまの御指摘を反映いたしまして適切な担保及び評価方法の採用に取り組んでまいりたいと考えております。
  20. 岩井國臣

    岩井國臣君 世界ではプロジェクトファイナンスというものが結構広く行われているわけです。我が国では日本開発銀行に少し経験があるようでございますけれども都市銀行はほとんどプロジェクトファイナンスの経験がございません。私は、今後グローバルスタンダードで我が国もやっていくのであれば、プロジェクトファイナンスをしっかりやっていくことが重要ではなかろうかと思うんです。  そこで、プロジェクトファイナンスに多少なりとも取り組んでおられます日本開発銀行総裁お尋ねいたしたいと存じます。  プロジェクトファイナンスにつきまして日本開発銀行はこれまでどのように取り組んできたのか、また今後、日本政策投資銀行になるに当たり、プロジェクトファイナンスというようなものについてどう取り組むべきか、どのようにお考えになっているのか、その辺の基本的な認識をお聞かせいただければと思う次第でございます。
  21. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) プロジェクトファイナンスについてのお尋ねをいただきました。  いわゆるプロジェクトファイナンスは個々の事業が生み出す収益から元利金の返済を受けるという金融手法と理解をしておりますが、ただいま御指摘のように、最近新たな手法としてニーズも高まってきている、関心も強くなっていると思います。  私どもも近年この問題について多少勉強しておりますけれども、個々の事業が生み出すキャッシュフローに着目しての事業評価、それとともにプロジェクトに関連するさまざまなリスクを分析いたしまして事前にそのリスク関係者間で分担していく、それからその上でリスク管理あるいは事後のモニタリングの仕組みを構築するということが重要だと思っております。  私どもは具体的に、例えば都市開発事業でございますとか、最近電力の販売が一部自由化されましたいわゆるIPP事業、電力卸供給に対しても具体的に融資実行しております。  今後とも、日本政策投資銀行に移行いたしました後では余計これまでの若干の経験を生かしながら、事業化に際してのアドバイス、あるいはプロジェクトの資金調達の誘導、調整、そして政策金融の主たる目的でございます政策的に意義のあるプロジェクトに長期低利の融資を安定的に行っていく、そして先ほど申し上げました事業性の評価、モニタリングを怠らず、これを通じて政策的に意義の高いプロジェクト支援していきたいと考えております。  御案内のように、現在国会でいわゆるPFIの推進法が審議されておりますけれども、PFIの対象事業がそのまますべてプロジェクトファイナンスの対象ではないといたしましても、このプロジェクトファイナンスの考え方、手法はPFI事業に恐らく最も好適な手法の一つではなかろうかと。今後とも十分に研究して取り組んでまいりたいと考えております。
  22. 岩井國臣

    岩井國臣君 私が金融の近代化と言うのは融資する場合のリスク管理ということでございます。新しいリスク管理学問世界における新しい金融技術というものを知らないでこれからの近代的なリスク管理というものはできないだろう、そんなふうに思うわけでございます。ぜひとも新しく設立される日本政策投資銀行におかれましては、リスク管理の新技術の研究、研さんに努められまして、健全な業務運営をしっかり確保していっていただきたい。そして、総裁から今お話がございましたPFI、プライベート・ファイナンス・イニシアチブといった新しい業務分野の開拓にも積極的に取り組んでいかれるように要望させていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  23. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 民主党・新緑風会の峰崎でございます。  きょうは四十分間という短い時間でございますので、また引き続き継続して質問をさせていただきたいと思います。  この問題は衆議院の審議どもどもは注目していたわけですが、特に私は北海道選出の参議院議員として、ただいま岩井議員の方からも苫東問題に触れられてその原因その他について追及されたわけですけれども、その意味北海道の道民にとっても大変切実な問題であるということを私どもも痛切に感じているわけであります。  その観点からすると、私はきょうはきちんと過去の責任の問題やなぜこのような事態に至ったのかという原因の問題、あるいは第三セクターと言われているものが抱えている問題などを中心にしながらお話をし、また次の機会には苫東あるいはむつ小川原といったようなところをどのような地域にしていったらいいんだろうか、こういう積極的な面もぜひこの委員会で集中的に議論していくべきじゃないだろうか、私はこのように考えているわけであります。  今のお話の中で、私は大蔵大臣に本当に感謝をしなければいけないなというふうに思っているわけです。苫東について、いつの日にか有用になる日が来るだろう、その可能性は存続しているはずだということを長い間の政治家の大変な経験を持たれた大蔵大臣お話をなさったときに、ある経済学者のクールヘッド・ウオームハートという言葉がございましたけれども、ついそんな思いで大臣からお話を聞きました。  改めてまた、その観点でこれからも北海道に対しても、苫東も含めてぜひ温かい御支援をいただきたい。しかし、北海道の道民にとってはそういう温かい御支援あるいはウオームハート・クールヘッドを逆にしてはならないのでありまして、しっかりと受けとめてまた頑張らなきゃいけないなというふうに思います。  それに引きかえ、きょう非常に落胆をしたのは、この計画責任を持っておると言われた開発の担当大臣はたしか運輸大臣だったでしょうか、担当大臣がお見えになっていない。むつ小川原はたしか国土庁でしょうか。政策投資銀行の所管の大臣は確かに中心的には大蔵大臣だと思うんです。しかし、その中の一番大きいポイントというのはやはり苫東とむつ小川原だろうと思うんですが、その担当大臣がお見えになっていないというのは、私は残念で仕方がありません。きょうお見えになっていないとすれば、次回には必ず御出席を願いたいというふうに思っているところでございます。  それでは最初に、開発庁にお聞きせざるを得ないのでありますが、開発庁はたしか昨年十一月に「苫東開発をふりかえって」という文書をまとめられているんです。ここの中で苫東開発がなぜ失敗したのかということについて書かれております。  この一番最後の段階でこのように書かれているわけです。「結語」として「以上、苫東会社の経営破綻は、一義的には経営上の問題と考えられるが、併せて苫東開発のシステム全体における複合的な要因によるものも大きいと思われる。」と。複合的というのは、さっきの複雑系とかコンプレックス、何か説明したようでなかなか説明し切れていないんだろうと思うんです。  そうした中でも、「有利子借入金による債務累積構造が最大の要因」と言っている。次に、「また、一方で苫東開発が壮大で長期的な視点に立ち戦略的に取り組むべきにもかかわらず、関係機関が官と民の多岐にわたる既存の縦割りシステムの下で、連携の不足と責任の欠如が生じる、いわゆる官民もたれ合い構造にも一因があると考えられる。」と。  逆じゃないかと思うんです。要するに、「有利子借入金による債務累積構造が最大の要因」というのは結果であって、原因は違うところにあるのじゃないだろうか、むしろ一因があるといった官民もたれ合い構造のところに最大の問題があるのじゃないんだろうかという気がするんです。結語を出されたんですが、開発庁はこの点についてどのように考えられているのか。  考えられているというよりも文書でまとまっているわけですから改めて聞きますが、この苫東問題を検証する会をつくられた北海道大学経済学部の濱田先生も後で来られて、午後から私たちは参考人質疑をすることになっているわけです。この五人の苫東問題を検証する会が三回にわたって、三回と言えばわずかしかないんでしょうが、ヒアリング対象十六名でやられているわけでありますけれども、この三回の中で五人の方々はこういう共通認識で本当にまとまったんでしょうか。そのことも含めて開発庁の見解をお聞きしたいと思います。
  24. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 御指摘の「苫東開発をふりかえって」というレポートは昨年十一月にまとめたものでございます。一方で、苫東会社が経営破綻に陥っている、その上で計画遂行上の責任を持っております北海道開発庁が将来に向かって未利用広大地をどうやって新しい体制のもとで開発計画を推進していったらいいかという点からいたしますと、当然に、なぜ苫東会社破綻し、その責任がどこにあるかという点を開発自身責任でもって検証していくことが必要だという観点からまとめられたものでございます。  審議の途中にメンバーであります先生方からいろいろ御意見がございました。先生方の一部には、レポート自身とは別に、それぞれのお立場からの見解を別途の形で表明されております。ただ、大宗の点、基本的な破綻の原因あるいはその責任については、先生が今挙げられたような点で参加された先生方も基本線では一致しているというふうに考えておるところでございます。
  25. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 その五名の方の一人が宮脇さんという方でございますが、書かれた論文を見ると、自分はこの報告書に対して意見書を付したと。もう一人の船津秀樹先生という小樽商大の先生も別の意味でのものを出されている。それを読むと、これとは考え方が違っているんです。  私がさっき申し上げたように、要するに有利子借入金による累積債務がたまったのが最大の原因だったのではなくて、それは結果だというふうに私が言ったのは、宮脇先生という方がそれを指摘されているんです。残念ながら宮脇先生はきょうは御都合が悪いので参考人でお呼びしておりませんけれども、そういう違った意見があったということはどこかで付記しておいてくださいよということを何かでしゃべられているんですが、これに付記されていません。船津秀樹先生もたしか別の意見を持たれていて、これもぜひ参考意見として付してくださいと。こういう審議会によくある、本答申があって、それと違った意見があったことについても付記する、そういうことはなかったんでしょうか。その点をちょっとお聞きしたい。
  26. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) この「苫東開発をふりかえって」という報告書の性格でございますけれども、学識経験者の先生方が加わりながらも、最後は北海道開発庁責任判断で取りまとめたものであるというふうに関係の先生方にも御理解をいただいており、その上で、もしこの報告書と参加いただいた先生方に違う御意見があれば、個人的な意見表明の形で御公表いただいても結構であるというふうに申し上げております。  今申し上げたようなのがこの「苫東開発をふりかえって」という報告書の基本的な性格でございます。
  27. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ということは、そういう意見はあったけれども開発庁の責任でこれをまとめましたということですね。  それでは、その中身に入ってお聞きしたいと思うんですが、苫東開発に当たって国の閣議決定がされました。そして、十三省庁の連絡会議を行いました。閣議決定をされて十三省庁の連絡会議を行う。そして、十三省庁の主管といいますか、それは開発庁になったんでしょう。その点は開発庁が十三省庁の中のある意味では主管官庁になった、そういうふうに理解をしていいですね。
  28. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 御指摘のとおりでございます。
  29. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 第三セクターで苫東会社をつくられました。もちろんこの文書の中に出てまいります計画責任というのは、基本的には北海道開発庁計画責任がある、そういう理解でよろしゅうございますか。
  30. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 御指摘のとおりでございます。
  31. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 この中に私は重大な問題が指摘されているというふうに思っているのは、北海道開発庁というのは、私どもが存じている限りでは、農水省、建設省、それから運輸省を中心とした公共事業を取りまとめていく官庁ですね。そうしますと、非公共の分野における企業誘致問題であるとか、あるいはその他の、例えば最近で言えば教育問題であるとか、さまざまな私たちの生活を取り巻いている問題というのは、主管官庁である開発庁はある意味では権限がないということですね。  五十四ページに「計画推進体制開発庁の役割」というのがございます。この中で、「開発庁は、北海道開発予算として一括計上される公共事業を建設、運輸、農水など三省との調整を踏まえ、先行的・計画的に行ってきた」、「非公共分野では、他省庁をはじめ北海道や地元自治体の協力に頼らざるを得なかった。」、そのことが結果的に「プロジェクト推進の責任体制が不明確となり、困難な局面に対して開発庁が適期に有効な各種施策を具体的に打ち出すなどの強力なリーダーシップを発揮するには限界があった。」、こういうある意味では反省をなさっているんですね。  ということは、縦割りが今日の日本の役所の特徴点ですから、本来十三省庁のいわゆる主管官庁として北海道開発庁がある意味ではそういうものをまとめたけれども、十分にまとめられる力のない官庁に実は任せてしまったという問題が残りはしないかという気がするんです。  これは開発庁長官が来ていればお話を聞こうと思ったんですけれども質問通告をしていないんですが、大蔵大臣、こういう国の閣議決定したことの進行管理、これは北海道開発庁が主管官庁でやっておられて、しかもそれは独任の大臣が置かれている官庁ですね。そこが本当の意味で実際上まとめ上げていく、しかも進行管理をしながら公共事業以外のさまざまな分野をまとめ上げていかなきゃいけないときに、こういう官庁に任せてしまった、そういう責任は一体ないんだろうかという気がしてならないんです。  その点、宮澤大蔵大臣に、ここは次回開発庁長官来られれば開発庁長官に聞きたいと思いますので、コメントできないとおっしゃるのならそれでも構わないんですが、もし御意見があればちょっとお聞きしたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ほかにどういう選択があったかということを考えなければ正確にお答えができない種類のお尋ねでございます。私は十分知っておるわけではございませんが、北海道開発庁は確かに先ほどおっしゃいました公共事業について一番責任を負って処理されている役所ではありますけれども北海道全体の現在及び将来について一番心配している役所ということになりますと、北海道庁はこれは当然のことでありますが、国の官庁として北海道開発庁がその役所であるし、またそういう問題意識で仕事を推進してこられた、私はそういう感想を持っております。
  33. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 北海道開発法の中でかねてから問題だと言われて私たちが問題意識を持っていましたのは、そういう公共事業だけに、すなわち戦後のあの復興の中で食糧増産、人口問題の解決、こういったことが北海道開発庁の大変大きな役割なんですね。北海道開発法に書かれております。  ということは、北海道の道民の福祉や生活の向上というのは北海道開発法の中に実は入っていない。そこが主管官庁で進めていくと、ある意味では雇用の問題あるいは企業誘致の問題、さまざまな我々の生活の向上、福祉の向上ということを考えたときに、北海道開発庁は確かに北海道の公共事業に関しては、河川や道路あるいは港湾、そういったところに対するノウハウは大変お持ちですし、最近ではニューカントリー事業と言って地域を面として考えられる事業もだんだん進んできていますので、その面でのノウハウも少し出てきていると私は思っているんですが、基本的に開発法で設けられている仕事からすると、やはり大きな欠陥を持ちながら、しかも食糧増産だとか戦後のあの食糧難の時代のとき、もちろん新しい意味での、北海道が食糧基地だという意味での位置づけは私は必要だと思うんですけれども、そういう意味での見直しがおくれていることが私は北海道開発庁という役所が一つの問題を持っていたんではないかなという気がしてならないわけでありまして、これはまた開発庁長官が来られたときに少しお話をしたいと思います。  そこで、北東公庫総裁にお聞きしたいと思いますが、衆議院の予算審議を聞いておりますと、濱本総裁は、先ほど岩井議員からもありましたように、非常に北東公庫融資の姿勢に甘さがあったんじゃないかという指摘などを受けて、国の意思の実現に専念をしたんだ、国の意思を確認しながら続けてきたんだ、こう答弁をされているわけです。  この国の意思というのは具体的には何なのか、あるいは今もそういう認識をされて衆議院の発言をされたかどうか、そしてこの国の意思というのは具体的には何を指されていたのか質問したいと思いますので、よろしくお願いします。
  34. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) お答え申し上げます。  苫東、むつに対しまして融資を実際に行った者といたしまして、そのことに関連いたします責務というのは北東公庫にあると考えます。ただ、その貸し付けを行うに至りました契機と申しますか事情といたしまして何があったかという論議、これに関連いたしまして、私どもは次のように受けとめておりますというふうに御答弁したかと存じます。  北東公庫は、北東公庫法第一条によりまして、北海道、東北地方における産業振興開発促進すべく長期の資金を供給することとされておりまして、これを受けた業務方法書におきまして、その業務を行うに当たっては政府北海道・東北地方の開発政策に順応すべしとされております。国会におきましても、昭和三十二年の議論におきまして、政府は速やかに北海道総合開発計画あるいは東北開発促進計画をつくって開発公庫対象となるべき投融資計画を明確にすることとされました。  北東公庫といたしましては、以上申し上げましたような業務運営の大方針のもとに、国の国土開発政策におきまして明記されました苫東・むつプロジェクトの推進方針、これを確認させていただき、何とかこの二つプロジェクトを前進させようと、困難な事態に直面します都度それを突破しようと努力してまいったわけでございます。  ここで国の意思と私が御答弁させていただきましたことは何かということでございますけれども、結局、北東公庫に係りますかような法令あるいは国会での論議、附帯決議、それから閣議決定という行政機関の最高意思の中に盛り込まれました計画内容、そういったことを全体として指してそのように申させていただいたわけでございます。
  35. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今、北東公庫総裁からお話を聞いたんですが、私も実は元会計検査院奥村勇雄さんという方の一番新しい「会計と監査」という資料をいただきまして、ちょっと読ませていただいたんです。  私がこれで痛感するのは、閣議決定をされたものに対して、いわゆる融資をする立場あるいは金融検査をする立場から、この閣議決定とは違った、ある意味では国家プロジェクトとしての旗印がついたままの計画に対して融資をやめるようにという検査もなかなかできなかったと。北東公庫立場からしても、主管官庁である開発庁と恐らくいろんな話し合いもされ、協議もされたんだろうと思うんですが、そういう国家プロジェクトというにしきの御旗みたいなものがついているんだろう、そうすると、どうしてもそこがある以上は融資を継続せざるを得ないというような形に追い込まれていくんだろうというふうに思うんですね。  さて、もう一つお聞きしますが、経団連というまさに日本を代表する経営者団体の組織がございますが、これは国土庁にお伺いした方がいいのか、あるいはもし開発庁もわかっていれば教えてほしいんですが、むつ小川原の処理策について、九三年に経団連が責任を持ってむつ小川原会社の経営の管理、指導に当たるという金融機関にあてた念書があるというふうに言われているんですが、それは本当に存在するのかどうなのか。  また、これはたしか一九六九年の新全総で始まっているのだろうと思うんです。むつ小川原が今のような具体的な問題があるとした場合は比較的わかりやすいんですが、苫東計画についても、私どもが聞いている限りでは、経団連という大変大きな日本を代表する経営者団体がこの苫東計画に対してもある意味ではしっかり応援するよと、こういう前提で出発したと聞いているんです。  国土庁には本当に念書があるのかどうなのかということと、開発庁の方にはそういう背景があったかどうかということについて、多分あったんだろうと思いますが、その点、少ししっかりとした答弁をいただきたいと思います。
  36. 中川浩明

    政府委員中川浩明君) お答えを申し上げます。  むつ小川原開発に関しまして、平成五年に経団連の会長からむつ小川原開発株式会社に融資をいたしております各金融機関に対して文書が出されたと聞いております。その文書は金融機関に対して出されているものでございまして、その詳細を承知いたしておりませんが、聞き及ぶところでは、経団連がむつ会社経営の管理、指導に当たるという旨の内容のものであると聞いております。
  37. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 苫東会社の発足に当たりまして経団連を初め経済団体が主導的役割を果たしてきたことは事実でございますし、また新会社発足後、最初の二代にわたる社長は民間からついていただいているところでございます。  ただ、具体的に経団連と関係者との間で文書の形で何がしかの約束があったということは全然承知しておりません。
  38. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 こういうふうに考えてきますと、閣議決定をされて、そして十三省庁を含めて開発庁を中心にしながら苫東の場合は進めていく。実際上は第三セクターで苫東会社をつくるわけです。融資北東公庫が進めていく。  この流れをずっと見ていくと、やはり計画を立てた責任、しかもそれはナショナルプロジェクトとしてスタートをさせたということ、しかもそれには財界の総本山と言われる経団連が担保をしている。こういう大変大きなバックを持ち、しかも計画を立ててきた中で、この第三セクターと言われているところが実はある意味では第三セクター特有の問題点を抱えていたんではないだろうかという気がしてならないわけであります。  その意味で、私はいろいろ考えてきたときに、一番大きい責任がどこにあるのかなというと、やはりその計画を最初に立てたところ、そしてもちろん計画を立て、その進行管理を含めて任されたという意味では北海道開発庁に一番大きな責任があったんではないか、苫東に関しては、そんな思いがしてならないんですが、この点、開発庁の総務監理官はどのようにお考えになっておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  39. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 先ほど申し上げましたように、昭和四十年代前半、太平洋ベルト地帯は満杯でありましたので、新たな土地を求めそこに工業立地をするということは当時としては国家的課題であり、経済産業界の輿望を担っていたプロジェクトであったというふうに考えております。その担い手として北海道開発庁があり、それから具体的な不動産の分譲、販売という点になりますと三セクである苫東会社があった。同時に、地元であります北海道あるいは苫小牧市等の公共団体も相応のかかわり合いと取り組みを持っていたということでございます。  ただ、その後の経済情勢の変動、それから適時適切に計画自身見直しができなかったこと等の要因から計画としても一時的にはとんざした状態になっているわけでございまして、北海道開発庁計画責任を持っておりますけれども、その点からいいますと、振り返ってみますと、先ほど来御指摘のとおり実力不足の面はあったかな、あるいは本当の意味での努力不足の面もあったのかな、こんなふうに考えているところでございます。
  40. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 私はこれは第三セクター特有の問題点も中に抱えているんじゃないだろうかなという気がしてならないわけです。  先ほど開発庁の指摘の中で、苫東開発のいわゆる官民もたれ合い構造にも一因がある、こういうふうに言われた。もたれ合いというのは、恐らく民は官に、官は民にと、いろんな格好でもたれるんだと思います。先ほど申し上げたように、国の閣議決定があり、国策で進み、開発庁が責任官庁だ、しかも経団連もバックアップしてくれている、そう考えると、その地域の人たちは、いざとなれば国が何とかしてくれるんじゃないだろうかという気持ちをやっぱり持つだろうと思うんです。  そのときに、計画を決めました、融資を進めます、あるいは企業誘致を進めます、さまざまなことをやります、そういうときの進行管理を進めていく責任者というのは、第三セクターの会社の社長さんのように見えて、この社長さんに本当の意味で権限が与えられていたんだろうか、だからそこの進行管理の責任というのがどこかで不明確になっていったんじゃないかという気がしてならないわけであります。  第三セクターの問題についてまず自治省にお聞きしますが、全国で今第三セクターが続々と破綻し始めているんですけれども、その現状についてかいつまんで説明していただけませんでしょうか。
  41. 香山充弘

    政府委員(香山充弘君) お答え申し上げます。  第三セクターの一部には御指摘のように赤字の累積等で経営が深刻化しているものもございますけれども、率直に申し上げまして第三セクターの数は大変多うございまして、平成八年一月現在で自治省が把握しておる数字で大体九千三百ほどございます。それぞれ地方公共団体の責任において設立され、指導監督等も行われておりますし、また地方団体の関与の仕方も全面的関与から株の一部を保有しているだけといったものもございます。個々の第三セクターの経営状況についての具体的な把握は自治省としてはいたしておらないところでございまして、問題が生じておる第三セクター等について個別に事情を聴取する、あるいは設立地方団体の行っております債務保証等につきまして決算統計を通じて数値を把握する、そのような形をとらせていただいております。  今後、第三セクターのすべてというわけにはまいりませんけれども、経営がうまくいっていないというようなこともございますので、一定の範囲内で、債務負担行為の設定状況に加えまして第三セクターの経営状況あるいは公的関与の内容等につきまして調査をいたしたいと考えておりまして、現在検討させていただいておる状況でございます。
  42. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 自治省、ぜひこの第三セクター、特に地方自治体が関与している第三セクターについて全貌を一回明らかにしていただけないかなと。そして、地方財政も大変ですし国の財政も大変なわけですが、とにかく今不良債権と言われているものを私たちは金融機関にディスクローズしろとよく言っていますが、やはりこういうものの実態もしっかりと洗い出してみる必要があるのかなと思います。  九八年一月十二日といいますからもう一年以上前の日経新聞によりますと、債務超過の第三セクターを抱える自治体が非常にふえてきているというデータが載っております。都道府県でいいますと約五〇%、政令指定都市になると約八〇%、全体の二〇%が債務超過の第三セクターを抱えている自治体だ、こういうふうに言われております。  これは一九九八年一月ですから、もう一年以上たっていますので、恐らくもっとふえているんじゃないかと思います。ぜひこの点をきちんと情報をとって、しかも第三セクターがなぜ破綻をしていったのかということについて、破綻の原因についてしっかりと分析をしていく必要があるんじゃないだろうかと思います。  第三セクターが破綻をしていく要因として、一つは官僚化と言われている。これは今回の苫東あるいはむつ小川原もそうなのかもしれませんが、結局、官に依存してしまう、人材あるいは情報や資金などをこれに依存してしまう、そういう官依存の体質というものがやっぱり一つあるのかなと思っております。  二番目に、経営責任あるいは自主独立性のあいまいさみたいなものが出てくるんではないだろうか。これは午後から参考人質問をさせていただこうと思っておるわけですが、私どもの仲間が衆議院で苫東に視察に行ったんです。そのときに苫東会社の社長さんは雇われマダムみたいな感じで、自己責任は余り意識されていないようだった、こういう印象を実は受けているわけであります。そうなってしまったのでは、苫東会社、第三セクターのいわゆる経営責任は一体どうなったのかということに対して疑わしいわけでありますので、この点についてはどうなのか。  そしてもう一点は、これは自治体の関係で香山審議官にお願いしたいんですが、情報公開あるいは民主的統制と言われているもので、たしか第三セクターに自治体が五〇%以上出資する場合には監査をするとかいろんな基準がございましたね。そういうものが果たしてうまくできているんだろうか。しかも、複数の自治体が関与して第三セクターをつくっている場合にはほとんどそれが有効に機能していないというふうに言われております。  そこで、第三セクターの破綻の原因について正式な政府見解を私はどこに求めたらいいのかということが実はなかなかわからないのでありますけれども大蔵大臣、もし第三セクターと言われているものに対する御見解があったら後でお聞かせ願いたいんです。  今度の苫東の新しいスキームというのは、まだむつ小川原は聞いておりませんけれども、同じようにこれはまた第三セクターで出発するんでしょう。開発庁、そうですね。そうすると、第三セクターと言われているものが失敗をしてしまった原因に対して、今度の第三セクターは失敗しませんという保証はどこにあるのか。  今、私は官僚化する危険性の問題、あるいは経営責任の問題、それから情報公開や民主的統制、議会における統制といったようなものが不十分だったんじゃないのかということを指摘したわけでありますが、今度の新しい苫東会社はそういう危険性、あるいはそういうことにならないという保証はあるわけなんでしょうか。  そこの点、まず最初に宮澤大蔵大臣に、この第三セクターはどなたに質問していいか、政府責任者がわからぬのですが、本当は総理なのかもしれませんが、きょうは大蔵大臣にもし御見解があればお聞きしたいし、それから開発庁には新しいスキーム、これは今回は大丈夫ですということをどのように担保されているのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのお尋ねはちょっと私の力ではお答えが十分にできません。だれがお答えをしたらいいのか、それはよくわからぬ問題でございますけれども、私の見ております限りでは、少なくともある事業が絶対にもうかるということであれば、これはもう民間がやることはわかっております。それから、絶対に損をするというのであれば、民間がこれに参加をすることは恐らくないのだろうと思います。  したがって、恐らくは一定の半ば、やや公的な目的を達しながら、しかし大きなもうけもない、けれども大きな損失もない、そういう運営というものがきっと第三セクターというものがねらっているところであろうと思いますけれども、もうけもしない、しかし損もしないという中途のところは非常に難しい話でございますから、第三セクターとして出発するときにその辺を、どの辺までが第三セクターとして存在し得る限界なのかということをやはりはっきりしてスタートすることが必要なのであろうと思います。  つまり、ある程度の損失というものはあり得るということで、それを承知でスタートするのであれば、官側がそのような損失に対してどう対処するのかということをあらかじめ決めておかなければなりませんし、かなりの利益が出た場合にはそれをどのように処理するのかというようなことも決めておかなければならないのであろうと思いますから、考え方そのものはよくわかる考え方でありながら、現実にはそのどっちかになって非常に難しい状況になるということではなかろうかと思います。  外的な条件、つまり外部の経済社会と申しますかが安定しているときにはそういうふうに大きな振れが余りなくて済んでおる場合がきっと多いんだろうと思いますが、我が国のような場合には、先ほど全国九千幾つと言われましたか、そのような第三セクターがこういう状況の変化に余計耐えにくいような環境があったのではないかというふうに思います。  ただいまの御質問には十分お答えできませんで、申しわけないと思います。
  44. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 苫東の新会社に限って申し上げますと、先ほど御指摘のように、これまでの反省点であります借入金依存型が原因であるのか結果であるのかという御議論はありますけれども、私どもといたしましては、現在の苫東会社破綻に至った大きな要因として借入金の累増ということを挙げざるを得ないわけでございます。  そこで、こういった反省を踏まえまして、新しい会社のもとでは一切有利子の借入金に依存しないという前提で専ら出資金の形で土地という財産を確保していく。土地の評価が適正である限りにおきましては、出資、すなわち株式が紙くずと化すことは絶対にあり得ないというのが第一点でございます。  それから、新しい会社は現在の苫東会社から埠頭収入等の固定収入を生む資産を引き継ぐこととしております。これで一般管理費を賄うということでありますから、会社が事業を存続する過程で赤字を生んでいくということはないということでございます。  加えまして、この推進体制でございますけれども、今まで民間企業誘致ということで主に開発を進めてまいりました結果、経済情勢の変化によりまして企業立地が進まないという状況にありますので、引き続き民間企業の誘致ということを目指してはまいりますけれども、同時に向こう四年、五年、国あるいは北海道、関係公共団体が事業主体となりますような公的プロジェクトを中心に事業展開を図っていくということで会社の収益性を確保していきたいというふうに考えているところでございます。
  45. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 きょうはもう時間が来たので終わらざるを得ないんですが、今のお話を聞いていると、また土地担保、六百億円近くこの土地の担保があるから、もうここは出資してもらっていますから安心ですと。そんな話を聞いていると、先ほどの岩井先生じゃないんですが、プロジェクトファイナンスじゃなくて土地担保、ここがしっかりしていればまずは大丈夫です、後はこれからそれが売れていけば、あるいは港湾収入とかそういうものが入ってくるから大丈夫だとか、いろいろそういうお話が恐らく続くんだろうと思いますが、聞いていると、どうもこの第三セクターのあり方についての本当の意味での反省点というものがなかったんじゃないのかなと思うんです。  私はきょうはもうこれ以上述べられませんけれども、次回また議論させていただこうと思うんですが、開発庁だけがこういう、もちろん開発庁はいろんな人から話を聞いたと思うんですが、なぜこれが失敗したのかという大変貴重な教訓を、開発庁単独でなくて、もっと総合的に検討しておかないと同じような失敗をまたしでかすのではないだろうかという気がしてならないわけであります。今度担当大臣が来られれば引き続きまたそういった点についての議論もさせていただきたい、きょうはこのぐらいにして次回に譲りたいと思います。
  46. 益田洋介

    ○益田洋介君 まず、日銀総裁にお伺いしたいと思います。  三月期決算の主要上場企業の決算結果が昨三十一日までにほぼ出そろったわけでございますが、その結果は前年度比八・九%減という、円高不況の昭和六十二年の三月期決算以来最悪の決算結果となった。あるシンクタンクの分析によりますと、景気低迷はやはり続いているんだと、その結果、需要の落ち込みと販売価格の下落が業績悪化の主要な原因であるというふうなことを発表しておりますが、まずこの点はどのようにお考えでしょうか。
  47. 速水優

    参考人速水優君) この三月の決算、民間のほとんどの産業各社ともかなり苦しい一年であったと思います。したがいまして、この三月には経常収支も悪いと同時に、これまでたまっていた悪い資産を引き落とすということをやったところが非常に多かったと思います。そういうことで、全部平均した決算の結果はよくなかったということはもう大体予想されていたところだと思います。  まだこれから株主総会等控えておりますから落ちつかないところもあると思いますけれども、かなりリストラを思い切ってやったところが多うございますから、これから新しい陣容で、そして今までの過剰な設備を廃棄し、過剰な雇用を整理して、採算性のある、競争力のある経営を続けていこうというふうな決意で立ち上がっているところが現状ではないかと思います。  株価の方もそういうことを反映して、大体一万六千円前後で動いているというところが現状かと思っております。
  48. 益田洋介

    ○益田洋介君 四月に日銀が発表した短観によりますと、業況判断指数はわずかながらでも向上してきているというふうな御意見でございました。しかし、実際にはこのような企業の減収減益という状況は二年連続して続いているわけでございますし、失業率は過去最高の失業率を更新している状態だと。私は景気の下げどまり感というのが実感として感じられないんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  49. 速水優

    参考人速水優君) 実体経済の面で見る限り、足元の景気は、設備投資あるいは消費にしてもそうですし、あるいは住宅その他下げどまったということははっきり言えると思いますけれども、それではこれから上がっていくのかということになりますと、実体経済面ではまだそこまで私どもは自信を持って言えない。金融サイドではかなり明るくなってきたということははっきり申し上げられると思います。
  50. 益田洋介

    ○益田洋介君 御承知のとおり、金融再生法、それから金融健全化法というのは二〇〇一年の三月末に期限が切れまして、四月からはペイオフの実施が予定をされております。  私は前回にも日銀総裁とこの件で議論をしたんですが、ペイオフの解禁を延期するということは企業がリストラの努力を怠るということと企業家のモラルハザードにつながるから当面は考えないんだということでございました。ここに至って、後で大蔵大臣にも伺いますが、数々の経済政策をとっていただいて、六十兆円も用意していただきましたけれども、どうも足元がまだふらついている日本経済の状態であるということと、アメリカの経済がよかったためにそれに便乗した形でやっとここまでの業績の悪化で食いとめたんだという見方もございます。  アメリカの経済は一年半か二年ぐらいで相当悪化するんじゃないかという見方がある。今、日本は約二百兆円ものアメリカの国債を買っているわけでございますが、これも償還ができなくなってしまう、そういった時期でございますので、二〇〇一年までということではなしに、やはり日本経済全体、それから企業の体力をしっかりその前につけるということで、今はペイオフの解除の時期を早急に再検討していただくべきじゃないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  51. 速水優

    参考人速水優君) さっきおっしゃいました預金保険関係の特例、あるいは再生法、早期健全化法、こういう法律が三つそろって、ここ数カ月ようやく大銀行も地方銀行も今までの不良資産を償却して、債務超過のところはそれなりの手を打って動き始めたところでございます。最近の事例を見ておりましても、かつてのようにこの銀行が危なそうだということで一挙に取りつけ的な預金の引き出しというのは余り起こっていないように、預金者の心理というのもかなり落ちついてきたというふうに私ども判断しております。  御承知のように、今でも国民銀行とか幸福銀行とか、次々と問題が起こってはおりますけれども、かつてのような大きな騒ぎにならないうちにこれらの新しい法律を使って手が打たれてきたという意味では、これらのものは非常に有効であったというふうに思います。  しかし、これがいつまでも続きますと、コストの面でも国の負担になりますし、それからもう一つはモラルハザードという面で、銀行の経営者がかなり安心してまた経営に緩さが出てくるというような可能性を私どもは十分感じます。そういう意味からも、非常措置でとられましたこれらの措置はほかの国でもこういうものはあるわけじゃないので、もちろんこれを撤廃するかどうかは立法府が国民の判断によってお決めになるべきことだと思いますけれども、私としては二〇〇一年三月末に向けて関係者が全力を尽くして不良債権問題の克服に当たる、これが重要であると思います。  その意味で、安易に各種の時限措置の延長を視野に入れるということは、先ほど申し述べました副作用を生じかねないと思いますので適当ではないと考えております。もっとも、二〇〇一年四月以降のことについては、また改めてどういう制度をつくっていくかということを今から考えておく必要があるということはこの前にも申し上げたと思います。  以上です。
  52. 益田洋介

    ○益田洋介君 個人預金についてのシフトはペイオフになってからですから、ペイオフ以前の段階での懸念は私は余りしていないんですが、問題は大口預金、企業が抱えている一口座一億円を超えるような口座で今百兆円の預金がある。これが一度にシフトを始めるときの混乱を私は懸念しているわけでございます。検討していただけるということでございますので、お願いしたいと思います。  さらに、アメリカではPアンドA方式という負債資産継承方式というのが既に採用されております。これはコスト的に見ても破綻処理コストがペイオフよりも安上がりで済むということで、あわせてこれは二重のセーフティーネットということで、この方式の導入も我が国で検討されてしかるべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  53. 速水優

    参考人速水優君) 海外の主要国の例を見ますと、金融機関破綻した場合に当然に保険金の支払いという意味でのペイオフが行われているというわけではないと思います。  御指摘のように、例えばアメリカのPアンドA、パーチェス・アンド・アサンプション、これは破綻金融機関の資産負債の一部または全部を承継するといいますか、入札で売り切るわけですけれども、これは非常によく使われていると思います。そして、かなり早い時期からひそかにデューデリジェンスで資産内容を検討して、週末を利用して入札を図って、売られた銀行が月曜日から新たに仕事を始めるといったようなことがかなり広く行われておるわけで、こういう形の制度ができていけばこれは一つの例になるというふうに思っております。  こういうことは金融審議会等の場で今議論が始められておるところでございますので、私ども日本銀行としても二〇〇一年四月以降のあるべきセーフティーネットの具体案作成に積極的に参画してまいりたいというふうに考えております。
  54. 益田洋介

    ○益田洋介君 日銀総裁、ありがとうございました。  次に、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  景気回復の緊要なポイントの一つであります土地の流動化という問題でございますが、いまだに多くの企業が塩漬けになってしまった、動かなくなった土地資産を抱えて、これが経営の重荷になり続けているわけでございます。  私は前にも大蔵大臣と議論をした記憶がございますが、相続税の最高税率が七〇%ということで、それが十一年間も据え置きになっている。これは大蔵省としては当然大事な税収源の一つだというふうにお考えでしょうけれども、他の先進諸国、例えばアメリカの場合は五五%が最高税率ですし、フランスとイギリスは四〇%、ドイツは三〇%、カナダとオーストラリアに至っては相続税というものを廃止しております。  こういう現況であるのに、七〇%の最高税率を十一年間続けて、いまだに減らそうとしていないというのは、これからグローバライゼーションを図っていかなきゃいけない我が国としては、片手落ちであるのと同時に、企業の活性化、景気の回復につながってこないんじゃないか。ぜひ相続税の最高税率は見直していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 税制のことにつきましては後に主税局長から答弁をしてもらいますが、土地の流動化ということは必要なことで、いろいろな施策、アセット・バックト・セキュリティーズ、ABSでございますか、あるいはSPC法等でも一生懸命それをひとつやってほしいと思って政府も努力をいたしておりますことは御存じのとおりでございます。  それで、相続税の最高税率、この間もそういう御説をよそでも拝見いたしました。かつて土地がもうむやみに高くなりましたときに非常に課税上あるいは納税上困難を生じたことは事実でございましたが、ここで幸か不幸かそういう異常な価格は解消いたしましたので、現在はかつてのようなことはないようでございます。  我が国の相続税の最高税率が適用される相続案件というのは年間に十数件だそうでございます。したがって、それに影響を受ける人の数は非常に少ない。少ないならばむしろそういうものはやめてしまってもいいではないかという御議論もあるかもしれませんが、恐らく専門家からいいますと、相続税を資産課税全体の問題として考えさせていただきたいという気持ちでおるのではないかと思います。  主税局長から御答弁を申し上げます。
  56. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) ただいま大蔵大臣から答弁されたとおりでございますが、つけ加えさせていただきますと、現在、相続税をお支払いになられる方は、百人お亡くなりになりますと大体五人でございます。それで、その相続財産の中身を調べさせていただきますと、七割が土地でございまして、まさにバブル以降土地の価格が三大都市圏の商業圏で六八%下がり、住宅圏で四二%下がったわけでございます。その間に三回にわたりバブルの土地問題ということで減税をさせていただいたものでございますから、相当程度全体としての負担は軽減されているというふうに思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、先生がおっしゃいました七〇%という最高税率を申し上げますと、国際的に高いというのはそのとおりでございまして、十一年度の税制改正をどうするかというときも、最高税率の引き下げとの関連において議論になったこともそのとおりでございます。  この相続税は、富の再分配を図るという機能のほかに、所得税の補完税としての役割もあるものでございますから、まさに今後の相続税の役割をどう考えるか、また個人所得課税の抜本的見直しとの関連におきまして、今後の社会を考えながら、税率構造だけではなしに課税ベースを含めまして幅広く税制調査会におきまして検討を行っていくべき課題であるというふうに考えているわけでございます。
  57. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、雇用問題でございますが、企業のリストラも皆さん歯を食いしばってやっていらっしゃるんでしょうけれども、リストラばかりしているんじゃなくて、やっぱり雇用の促進をするという企業の形態の改革といいますか、そういったものをもっと官民ともに力を合わせて進めていくべきじゃないかと思うわけでございます。  特に新規産業、マスメディアと言われる情報通信産業に力を入れていくのが私は一番いいんじゃないかと思っております。アメリカでは国内経済のわずか六・五%を占めるにすぎない情報通信産業がこのところ実に六五%も成長を遂げて、そのことによって国内経済全体を四%押し上げている。こういう実態をただ傍観しているだけじゃなくて、やはり官民が協力して具体的に話し合って進めていくべきじゃないか。これは経済の活性化と同時に、雇用の促進、失業率の低下につながる問題だと思いますので、今一番実効性のある対策だというふうに考えます。  先日、ある経済界の方と話していましたら、秋に仮に補正予算を組んでいただいたとしても、公共事業にまたつぎ込むようではゼネコンだけ喜ばせるだけで、その方はたまたまゼネコンの経営者の方でしたが、よくない、もっとさまざまな分野にいい影響が及ぶような予算のつけ方をしていただくべきだと、本音かどうかわかりませんけれども、そういう御意見でございました。この点、いかがでしょうか。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国は戦後成長を続けてまいりましたから、本当の深刻な雇用問題というのは、石油危機というようなものがいっときございましたものの、構造的に本格的な問題には今度初めて遭遇しておると思います。  従来でございますと、失業保険等々を払うあるいは訓練をする、何しろ基本的には終身雇用という社会の制度がございましたし、企業もそれを守っておってくれたということが従来の安定の基本的な要因であったと思いますが、企業もここへ来て背に腹はかえられないという状況にまでなりました。したがって、今まで雇用政策というものは、なるべく失業をしないように、そうしてミスマッチが起こらないようにということに重点を置いてきたと思いますが、ここへ来て同じく、あるいはそれよりもジョブクリエーションというものをしないと問題は解決しない。今、益田委員の言われましたのはそういう意味であると思います。  今までそういう経験が実は国としてなかった、あるいはその必要がなかったのに対して、どうもそういう努力をしなければ当面の問題に対処できそうもないし、また実際にはいわば窓際にじっと置いていってもらうという考え方そのものは、本来、全体の面から見れば労働力の有効な活用ということとは遠いわけでございますから、そういう意味でもジョブクリエーション、ジョブオポチュニティーというものをつくることが必要になってきたというふうに認識しております。  今月十一日にそういう問題につきましての政府の緊急対策を決定いたそうと考えておりますが、経験のないことであるだけに、そういうことに十分重点を置いていかなければならない、今の日本経済あるいは秋にかけての我が国経済にとりまして一番大切な問題になってまいったというふうに認識しております。
  59. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、法案について、きょうは二総裁おそろいでおいでになっていらっしゃいますので伺いたいと思います。  まず、特に東北、北海道において具体的にどのような事業をこれからお考えになっていくのか、さらに大企業中心の開発銀行と中小、中堅企業対象とした北東公庫が合併されるわけで、新銀行としてこの辺の融資対象についてどういうふうに整理をしていかれるおつもりか、さらには東北、北海道に設けられる融資枠がございますが、これはいつまでの期間設定するのか、この三つについてお答え願いたいと思います。
  60. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) 両機関は、法案審議の上成立をさせていただければ、この秋から日本政策投資銀行として新たに発足をするわけでございます。今までともに総合政策金融機関として同種の仕事をしてきておりますけれども、具体的な業務の展開、融資対象はもちろん各機関でそれぞれでございます。  そこで、この新しい銀行がどのような業務に取り組んでいくのか、まずそういうお尋ねですが、これは私がお答えをすべき立場かどうかいささか困惑するわけでございますけれどもお尋ねでございますので、とりあえず新銀行業務のあり方を法案内容に即して簡単に申し上げますれば、新銀行業務三つの重点分野というものは既に法律上目的としても定められております。すなわち自立型の地域創造、豊かな国民生活の創造、そして経済活力の創造、この三分野でございます。  ごく簡単に申し上げたいと思いますけれども、最初の自立型の地域創造につきましては、それぞれの地域の社会基盤の充実、活力の創造を図る上で地域の拠点となる町づくり、あるいはそれぞれの地域のいわゆる地場産業の高度化、活性化が重要だと考えております。また、いろいろな意味で条件の不利な地域を初めとする地域におきまして、先ほど雇用の問題の御指摘もございましたが、新たな雇用創出につながる事業支援していきたい、こんなふうに考えております。  それから次に、豊かな国民生活の創造でございますけれども、いわゆる持続可能な経済発展実現を目指すとともに、まさに入りつつあります高齢化社会への対応を踏まえまして、特に環境対策あるいは防災、福祉対策が重要であると考えております。また、生活の基礎でございます社会基盤につきましては、特に交通物流ネットワーク整備、あるいは情報通信ネットワーク等の特に生活インフラに直結する施設の整備に取り組んでいきたいと考えております。  三つ目の経済活力の創造でございますけれども我が国経済の構造改革を進める上で特に新規事業支援とともに既存産業事業革新が重要と考えておりまして、このような取り組みを積極的に支援していきたいと考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、北海道東北開発公庫と私ども日本開発銀行は、これまで別々な機関で、基本的には同種の業務ながら個々には個別の異なった出融資活動を中心にそれぞれの業務を展開してまいりましたが、新しい銀行として統合いたします以上、両機関がそれぞれこれまで培ってきました経験、ノウハウ、そしてきめ細かい対応を統合することによって一層前向きに結びつけ、融合しながら、新しい時代に真に効率的に役に立つ政策金融の展開を両機関力を合わせて図ってまいりたい、このように考えております。
  61. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) お答え申し上げます。  ただいま開発銀行総裁から御答弁がございましたことと全く私ども同様に考えさせていただいておりますけれども、今日、北東公庫に身を置きます者の立場からいたしまして、やはりこれから高齢化が進んでいくといたしますと、地域の人口構成の変化というものにも大きな変化が考えられますし、また経済のボーダーレス化といったような事態に対しました場合には、地域の空洞化と申しますか、そういう懸念もないわけではございません。さらに、財政上のいろいろな制約の問題も言われておりまして、地域をめぐる環境というのは安閑としておれない状況にあると思われます。  そういったときに、長く地域金融とかかわってきました者といたしましては、これから後、新しい銀行におきまして地域政策金融の重要性というのはますます高くなっていくのではないかと考え、これに今まで培ってまいりました経験とかノウハウを活用いたしますのは当然でございますけれども開発銀行の豊かなスキルというものを合体しまして、より高いレベルの課題に挑戦していきたいというふうに考えております。  先ほど先生から、開発銀行融資対象北東公庫融資対象は今まで少し違いがあるけれども、これを全体としてどうしていくのか、あるいは融資枠についてどのように今後扱われるものと考えているかといったようなお尋ねもございましたけれども、確かに開発銀行北東公庫には融資対象に多少の差異がございます。  いろいろなとらえ方ができようかと思いますけれども、開銀の場合には、私が仄聞しておりますところ、一つの産業というものを世界あるいは日本産業活動においてどういうポジションに置くか、そこにどういう資金をどの程度投入していくべきかということをはかる、こういう軸を持っておられる。それに対しまして、北東公庫は、どちらかと申しますと地域のバランスにおいて、ある特定の産業をどの程度助成することが地域の中におけるバランスというものにたどり着けるか、そういう大きな軸を抱えてまいったように思います。こういったものが合体されまして、全体を視界におさめたところで資金の最適な配分を心がけていくということができれば、それはすばらしいことではないだろうかという気がいたします。  それから、融資枠に関しましては、確かに予算書に一定の注記をしていただき、それがまた地元の方々の目にもとまっておるわけでございますけれども、そうした注記をめぐります今後の論議の中でお考えをいただいていくことかと存じております。
  62. 益田洋介

    ○益田洋介君 北東公庫の不良債権の二千億を開銀の準備金で補てんするわけでございますが、開銀の準備金は九七年度末までで既に支出が一兆円を超えている。これも言ってみれば公的資金です。税金だけじゃないだろうと言うかもしれませんけれども、英語で言えばタックスペイヤーズマネー、公的資金に変わりない。ただいま開銀の総裁政策金融だと言われたが、そういうふうな実態でなくなっている、この一兆円については。むしろ、言ってみれば債務者の救済のために投入するわけです、今度の準備金は。そうすれば、また公的資金が膨大な量のむだ遣いになる。大蔵大臣、これは国民にどういうふうに説明なさいますか。
  63. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 御指摘の準備金の問題に関しましては、昨年十二月に苫東開発プロジェクトの抜本処理策につきまして閣議了解がなされまして、その閣議了解を踏まえまして新銀行設立の際に御指摘のような処理をいたすことになったわけでございます。  今回の新銀行設立の法案によりまして、新銀行開発銀行北東公庫の一切の権利義務を承継するわけでございますから、新銀行全体として一体的に処理することが適当だということでこの処理の方法を考えたわけでございます。準備金はいろいろな問題がございますけれども銀行として不慮のいろいろなリスクを抱えるわけでございますが、そういうリスクに対応するものとして準備金制度が設けられているということにかんがみましてこういう処理を行うことといたして、法律にもそういう仕組みを提案いたしまして御審議いただいておるところでございますので、御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  64. 益田洋介

    ○益田洋介君 終わります。
  65. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  この政策投資銀行法案の重要な問題の一つは、今もちょっと話に出ました北東公庫の損失を開銀の準備金で穴埋めするというスキームにあると私は考えます。衆議院の論議におきましてもこのことがいろいろと言われておりました。開銀と北東公庫を廃止して政策投資銀行を設立する、そこにすべての債権債務を引き継ぐ、こういった点では、政府破綻した開発プロジェクト、すなわち苫小牧東部開発とかむつ小川原開発、こういったことをずるずると続けて北東公庫が追い貸しをして、ついに不良債権を抱え込むと。こういったことの反省と総括をあいまいにしたまま開発事業を続けたのではまたまた同じ過ちを繰り返すんじゃないか、こういったことが衆議院でも論議されておって、懸念と危惧が表明されていました。  私はこの危惧はもう既に現実のものになっているというふうに考えます。といいますのは、苫東開発株式会社を清算して新会社を設立して、そして北東公庫がそこに出資するというこのスキーム、このことは結局、過去にやってきた処理の過ちをもう一回今繰り返すことになるんだ、そのものだというふうに考えるわけです。それで、このことをちょっと問題にしたいと思うんです。  まず、大蔵大臣政府の考え方という点でお伺いしたいんですけれども、昨年十二月に「「苫小牧東部開発」及び「むつ小川原開発」の両プロジェクトの取扱いについて」という閣議了解がありました。その閣議了解の第二項で、「政府としては、我が国に残された貴重な未利用広大地である苫小牧東部地域開発を推進するため、苫小牧東部開発株式会社を清算し、借入金に依存しない形での土地の一体的確保、造成、分譲を行う新会社を設立するとの抜本的処理策を踏まえ、以下の措置を講ずること」として、新会社への北東公庫の出資条件などの方針を示しています。  ということは、北海道とか民間とは関係なしに、政府として新会社をつくって苫東開発を続けるんだという意思を示したものといいますか、政府主導でこの国家プロジェクトを続けるんだということの意思を示したものというふうに理解してよいと思うんですけれども、それでいいですか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そうでございます。
  67. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そこで伺いたいのは、政府として続けるんだが、それに続く二項の①で、「新会社については、北海道、民間各々と均等に出資を行うとの考え方を基本とするとともに、北海道、民間各々の諸事情を勘案し、新会社の事業の円滑な推進が図られることを前提に、産業投資特別会計からの出資を受けて、北海道東北開発公庫が出資を行う。」と、こうなっております。この均等にこれを行うんだということ、三者が均等に出資するんだということが衆議院の論議の中でも言われておったんですけれども、この三者が均等に出資するという根拠は一体どこにあるのでしょうか。
  68. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 新会社の出資に当たりまして、国、北海道、それから民間が均等に出資していくということの考え方でありますけれども、一つはこれが国家的プロジェクトであること、それから何と申しましても国家的プロジェクトでありながらやはり地元の北海道経済に裨益するところが大きいのではないか、それから事業主体が三セクでもありますし、民間の経営上のノウハウといったものも大いに活用していく必要があるということで、出資割合に当たってのスタートラインの考え方として、国と北海道と民間で三者均等という考え方をとっているところでございます。
  69. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 従来は官民折半ということでやってきたわけですね。それを今度は、今言われたように、北海道に関係するからということで、北海道は公に属すると思うんですけれども、それで分けると。  今の苫東会社に対する出資比率を見てみますと、国が二五%、北海道と地元三市町が二五・二五%、民間金融機関が二九・二五%、民間企業は二〇・五%、こうなっています。そうすると、今度、均等に三等分するということになりますと、結局、民間の負担を軽くしてやろうと、こういうふうに数字の上からは出てくるわけですね。従来の半々から三分の一に減らしてやろうじゃないか、そういった考え方でやっていくということですか。
  70. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 御指摘のとおりでございます。  今御指摘がありましたように、現在の苫東会社は公が半分、それから民が半分というのに対しまして、新会社にありましては出資割合が、基本的な考え方といたしまして公が三分の二、民が三分の一ということになっております。
  71. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうしますと、今度いただいた資料で見ますと、どうもおかしいんじゃないか。今度の計画では、国と民間金融機関と苫小牧市などを含む北海道が新会社をまず設立して、旧苫東会社は清算するわけですね。そのことで出資するわけですけれども、いろいろごちゃごちゃやって、清算時の出資比率を見てみますと、国つまり北東公庫が三百三十四億円で五四%、北海道は百九十二億で三一%、民間金融機関が一五%の九十六億、五四パー、三一パー、一五パーと、これのどこが均等なんですか。
  72. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 新会社への出資に当たっての基本的な考え方として、国ないし北東公庫、それから北海道、それから民間を三者均等にするというところから議論をスタートさせているわけでございます。  一つの要素といたしましては、民間は三分の一の出資ではございますが、現在の苫東会社、これは商法上の三セク法人でありますけれども、これが現物出資の形で出資を行うということでありますから、現在の苫東会社は現物出資をした結果、新会社の株式を現物出資相当額取得するわけでございます。この新会社の株式を現在の苫東会社に対する債権残高の割合でもって代物弁済の形で返済に充てる、いわば金銭にかえて株式の形で返済に充てるということが第一点でございます。  それから、北海道の三分の一相当、具体的には六百二十二億円の出資金のうちの百九十二億円でございますけれども、これについては、北海道庁ばかりでなくて地元の公共団体、それからそれほど大きな金額ではございませんけれども、地元の経済界が負担するという区分けになっております。  最終的な姿といたしまして、先ほど申し上げましたような現物出資見返りの株式による返済分を合わせて配分いたしますと、最終的には北東公庫が五四%の株式を取得する、三百三十四億円でございます。それから、北海道は地元経済界あるいは地元公共団体を含めまして百九十二億円、それから民間金融機関は最終的に九十六億円、一五%の出資割合となるわけであります。
  73. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私が言った数字を繰り返しただけじゃないですか。どこが均等なんだと私は聞いているんです。  新会社をつくる、それから設立に至るまでごちゃごちゃややこしいことを書いています。出発時均等にやるんだとあなた方自身が決めたんでしょう、開発庁が決めたんでしょう。何で均等なんですか、これが。
  74. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 物の考え方といたしまして、出資割合を決めるときに、議論のスタートラインとして均等出資という考え方をとりながら、今申し上げましたように、特に民間分について現物出資を行うということの結果、その最終的な株式の配分によりまして、結果としては先生御指摘のように均等配分になっているわけではございません。
  75. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうじゃないんですよ。大体あなた、最初の出発点は、新会社を設立するときは三分の一ずつですよと。若干の違いはあるけれども、この数字を見ると、国が二百二十二億、北海道百九十二億、民間二百七億となっています、確かに。  ところが、民間というのは何ですか。設立のときだと今おっしゃったように苫東会社でしょう、苫東会社が二百七億円出資すると。これを民間だと言っているんですよ、あなた方は。これは第三セクターじゃないですか。その第三セクターに対する今の出資、私は最初に申し上げました。約半分が国と北海道でしょう。官が半分持っているんですよ。これが何で民間なんですか。最初の出発点から民間はそんなに持たないことになっているじゃないですか。何だかんだ言ってぐるぐると回してやった結果が、さっき言ったように五四パー、三一パー、一五パーじゃないですか。  こういう事実になっておることについて、何でごたごたとそういうふうに言うんですか。何か意図があるんですか。三分の一ずつになっていません、出発時決めたことにちゃんとなっておりませんということをまず認めるべきじゃないですか。
  76. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 最終的な結果としましては、北東公庫北海道民間金融機関との間で三者均等と言うにはほど遠い姿になっておりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、議論のスタートラインといたしまして、国、北海道、民間が均等に出資を行うということを基本的な考え方としているところであります。  確かに苫東会社は三セクではありますけれども、そして三セクの六十億円の資本金の内訳は民間が半分であり公が半分になっておりますけれども、同時に鑑定評価によりますと六百億円弱の土地という資産を持っているわけでありまして、いわば商法上の法人が六百億円の資産を持っている、その三分の一相当額について現物出資の形で新会社設立時に出資をいただくという構成となっているわけであります。
  77. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 これは後で問題にしますが、そうすると、出発の時点で三分の一というふうにやった、それを何とか形の上で整えて三分の一にした、後から出資割合がどうなったって構わぬ、国がどんどん膨らんだっていいんだ、こういうことですか。まあいいです、それをやっていると時間がなくなるので。そういうことだと思うんですね。  それで、今言われたことについて見てみたいと思うんですけれども、二百七億円現物出資すると。この新会社は旧会社からかわってくるわけですけれども、結局、国民に対して六百五十五億円の債権放棄を迫ったに等しいと思うんですね。今度、国の持ち分については六百五十五億償却するということになっております。それから、民間にも債権放棄、これは五百五十八億お願いするわけですね。そうでしょう。  そうしますと、考えてみたら、新会社といっても幽霊みたいな存在なんだけれども、二百七億円出資するというのは、一体どこからその金が出てくるのか。土地だとおっしゃるけれども、これだって評価額についていろいろ言われております。六百二十二億あると言うけれども、実際は二百十九億しかないとか、いろいろほかの鑑定会社がやった結果そういう数字が出るとか言われておる、そういう代物です。  昨年夏の予算委員会で当時の井上開発庁長官は、「この問題の処理に当たってはもういささかも国民から疑念を受けないような対応が基本的に必要だ」というふうに答えておられるわけですけれども、今申し上げた地価の積算根拠とか、それから新会社のスキームの問題とか、自分が決めた均等の出資だっていいかげんな形で、出発点から狂っておるにもかかわらずそのままやろうとするとか、まさに疑念だらけになっておるわけですね。六百二十二億だって、実際それだけの価値があるなんて考えていないと私は思いますよ。  こういった形で出発すること、これは将来の失敗を約束されているとしか言えないんじゃないかと思うんですが、開発庁の考えをお聞かせいただきたいと思います。
  78. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 新会社の最大の保有資産は土地でありまして、それとの関係で、反対方勘定に株式が立っているわけでございます。したがいまして、新会社の資産内容を推しはかる上で土地の評価というのは極めて重要な点でございます。その点は先生御指摘のとおりでございます。  ただ、この土地の評価につきましては、昨年の十一月に専門の鑑定士さんにお願いをし、全体として六千六百ヘクタールの土地が五百六十八億円という正規の鑑定をいただいております。それから、新会社に対しましては同じ土地を、一つは現物出資で苫東会社から出資することになりますし、また他方で残りの土地は苫東会社から譲渡を受ける、すなわち新会社にとっては重要な資産となる話でありますので、この点につきましては、現在、商法上の要請に従いまして改めて苫東会社の方で専門の鑑定士に評価を依頼しているところでございます。できるだけ早い機会に鑑定結果を得ることになろうかと思います。  ただし、去年の十一月の鑑定といい、今回の別の鑑定士さんによる評価といい、同じ土地について同じ方法でもって専門的な立場から評価するわけでありますから、私どもとしては大きな食い違いといったものは生じないというふうに考えているところでございます。
  79. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 新しい鑑定会社に依頼しているんですね。私も聞いています。同じ方法で検査するんだから結果は同じだろうと。そこまでわかっているんだったら何で新しい会社に依頼したんですか。むだ遣いじゃないですか、そんなことをやったら。前の会社は北海道開発庁OBばかりがそろっている会社だからこれは危ないということで反省してやったとしても、結果は最初からわかっていますよという形で頼むなんてとんでもないことですよ。  実際、北海道で今言われておるのは、六百二十二億、こんなのはうそだと。二百十九億という数字がひとり歩きしていることについては恐らく御存じだと思うんです。実際、そういうことが言われておるわけですから、もしそういったことになったときにどうなるのかということも当然考えておかなければならないことだろうと思います。  これを余りやっておっても時間がないので、今度は大蔵省関係についてお伺いしていきたいと思うんです。  まず、一般論として開銀と北東公庫総裁に伺いたいわけですけれども、現在出資している金額、その総額と個別出資の中の最高額、こういったものは幾らになっているか、出資先に対する出資比率、これについて上限というのは設けているのかどうか、このことについてまず伺いたいと思います。
  80. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) 日本開発銀行の出資についてのお尋ねでございますけれども、結論的に現在の出資についての実績を申し上げます。  この十一年三月末現在で、五十七法人に対しまして合計三百五十九億円の出資を行っております。このほかに、それぞれ特別法に基づきまして三つの認可法人、すなわち産業基盤整備基金、造船業基盤整備事業協会、そして通信・放送機構、この三認可法人に対しまして合計四百六十三億円の出資を行っているところでございます。  それから、出資比率についてのお尋ねでございますが、これは業務方法書に基づきまして、出資を受ける者の資本の額の五〇%以内、これを限度としているところでございます。
  81. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) 北東公庫の出資会社に関しまして手元の資料でお答え申し上げます。  出資会社としまして六十六社ございまして、出資しました総額が百三十七億九千八百万円、出資の限度は五〇%でございます。
  82. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 どちらも限度五〇%になっておるわけですけれども、現実に最高額というのは何%ぐらいになっていますか。
  83. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) 先ほど五十七法人、合計三百五十九億円と申し上げましたが、その出資案件の中で今お尋ねの一社当たりの最高額は基盤技術研究促進センターに対する四十二億円でございます。
  84. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 パーセンテージは。
  85. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) 本行の出資比率はこのセンターに対しましては一・七%でございます。
  86. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) 先ほど五〇%を上限と申し上げましたけれども、ただいま北東公庫が出資をしております対象企業の中で最大の出資比率を示しておりますものを見てみますと、四〇%をちょっと超えた四一%台のものがございます。
  87. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私のいただいた資料は九八年三月末でしたので少し古かったようですが、それにしても余り数字は変わっていないようです。大体上限五〇%となっているけれども、そんな五〇%に張りつくような出資比率のところはないといったのが現実だということですね。  この五〇%という上限を設けた、業務方法書で設けているわけですけれども、これを設けた理由というのは、要するに民業補完の政策金融銀行として企業を支配するといったことになってはならないという意味で設けたんだと思いますが、そうですね。そういうことだと思います。  そこで、新会社のことに戻るわけですけれども、さっき言いましたように、新会社では国が、つまり北東公庫が全体の五四%の出資比率を占めるわけです。しかも、その額が三百三十四億円。今言われた中でも、基盤技術研究促進センターでも四十二億円でしょう。これはけた違いにでかい出資金になるし、けた違いに高い出資比率になるわけです。  ということは、大蔵大臣、政策投資銀行というのは従来の開銀とか北東公庫とは違って、政策投資銀行対象投資企業を支配することになってもいいんだという、従来の原則を大きく変えるということなんでしょうか、そうなっていいんだと。
  88. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) 御指摘の点でございますけれども、先ほど北海道開発庁の方からの答弁にもございましたように、旧苫東会社債務の代物弁済によりまして新苫東会社の株式を取得することになります結果、ただいま先生御指摘のように、新出資分を合わせました合計で五〇%を超える株式を所有することになります。  ただ、これにつきまして我々も問題意識を持ちました。問題意識を持ちまして、法制度面からどうであろうか、主務省庁とも協議をしてまいりましたけれども、これは積極的に出資行為を経まして到達したものではなくて、代物弁済による株式の取得の結果生じた数字であるという理解のもとに、この際五〇%を多少超えます保有比率になることについては、それはそれとしていたし方がないことであるというふうに解釈いたしております。
  89. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 いたし方がないということなんですけれども、原則にかかわる問題ですよ。大蔵大臣、これをいたし方がないでそのまま済ませていいんですか。
  90. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) 私ども立場での受けとめ方でございまして、今後ともなおいろいろな論議を重ねていかなきゃならない点もあろうかと存じます。  先生御指摘の出資比率でございますが、これは政府関係金融機関としましてあくまでも補完機関である、民間を補完する立場にある、したがって五〇%というのは一つのめどではないかという今までのお示しというのは我々もよく理解できます。  補完の実を上げるということが今大事でございますから、出過ぎないことが大事だということもこのとおりに理解いたしますけれども、例えば今までも北東公庫制定時の議論ですとか、あるいは今回の貸し渋り対策等の議論を見ましても、五〇%というめどにこだわって果たすべき補完の役割が果たせないということでも困るわけで、目的は補完するということであるとしますと、大所高所といいますか、大きな決定に基づきまして事が図られます場合に、五〇%をちょっと超えたからそれはもうだめだということになるのかどうか。  私どもの方としましては、五〇%というのはあくまでも大事なめどであるというふうに考えておりますし、今後も遵守されるべきめどだと存じますけれども、これは業務方法書のレベルで決定されていることでございます。法律的に直接的に示唆されているものではございません。したがいまして、担当大臣あるいは閣議のレベル、あるいは国会の議論、そういったものを通じましていろいろ御要請を受けるということはあり得ることかとは存じております。
  91. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、何にも答えていないじゃないですか。  補完する立場にあるんだったら、むしろ五〇%を超えちゃならぬ、企業支配に至るようなことになっちゃならないということでしょう。政府系金融機関企業を支配するようなことになっちゃいけないんだ、そういう原則を今度は変えることになるじゃないかということで、これは大蔵大臣に答えていただかないと、北東公庫や開銀総裁が答えられる問題ではないと思うんです。私は今度のこの法律の根幹にかかわる一つの問題だと考えておるんです。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから一貫したお尋ねでありました。三者均等でなければならないではないかということについて、清算時には結局三六%ではなくて五四%になる。それは百十二億円という代物弁済の結果であるということまで御説明をいたしたわけであります。  おっしゃることは私はなるほどなと思って実は伺っているんです。そういう意図ではなかったんでしょうが、代物弁済によって株式を取得したということが本来北東公庫の行う業務の出資行為というものとは一緒のものではない、こうでも申し上げることになるんでしょうか。取得したことは取得したんですが、業務の出資行為の範疇には入らないものと考える、こういう御答弁になるんだと思います。  私が申し上げようとしておることは結果としてそういうことになりました。それは恐らくはこの新会社ができるときの、今北海道は御承知のように非常な不況でございますし、いろんなことがありますが、そのときの一種の環境、その中から北海道東北開発公庫が、代物弁済としてではありますが、こういう出資者にならざるを得なかったという環境があったのだろう、大変正直なことを申し上げますけれども。そうでなければ、五十何%持つということは正常なことではない、おっしゃるとおりだと思うんです。  そこで、このことの解決というのは、恐らくは将来この会社の存続について周辺からも心配がなくなり、そしていわば順調に成長していったときに、この五〇%を超える出資分というものは、やはり民間でございますかどなたでございますか、そちらへ渡っていかなければ、本来、公庫の建前からいえば、結果としてそうなっているということはどうも感心したことではない。したがって、将来願わくば会社が成長をいたしまして公庫の過剰な出資分を民間なりに譲り渡していく、こういうことがお答えとして申し上げられることではなかろうかと思います。
  93. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 もしこの法律が成立しますと、その分が政策投資銀行という形で受け継がれるわけなんです。政策投資銀行がそういった五四%を持って支配するということになるわけなので、これは異常だから今後改めていくというお答えが今ありました。ということは、ほかのところではもう絶対こんなことが起こらないんだ、起こしてはならないんだというお答えだと思います。むつ小川原について、もし二度目にこんなことが起こってはもう政府責任は重大だということをまず申し上げておきたいと思います。  それともう一つは、経済が順調に回復して、うまくいったらそういうことになるというお答えだったんですけれども、現実の問題を言いますと、先ほど申し上げましたように、土地の評価についても非常にいいかげんだということが一つあります。それから、借入金に依存しない事業をやっていくとおっしゃるのだけれども、しかしまだ北海道と約束した買い入れなければならない土地もあります。これは借入金に依存しないでどうやって買うんだという問題がありますね。  それを考えていきますと、将来、順調にいったらうまく返していけるような事業経営がやっていけるのかというと、非常に疑問というよりも、まず失敗間違いなしと言えるのじゃないか。それを喜んでいるわけじゃないですよ。喜んでいるわけじゃないけれども、そうなるんじゃないかということを指摘せざるを得ないわけです。だから、こういったいいかげんなやり方はやめるべきだ、苫東開発については今きちんと整理してやっていくのが筋だろうということを申し上げたいと思います。  まだまだ新事業の問題等々もありますし、北海道との約束の問題もあります。次回からこの問題についても質疑を続けさせていただきたいと思います。  終わります。
  94. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  日本政策投資銀行法案並びに関連につきましてお尋ねをいたします。  北東公庫には創設以来運営協議会というものが設置されておりますが、これは国会の附帯決議に基づく総裁の諮問機関であると伺っております。これまでにどのような機能を果たしてこられたのか、運営協議会の役割につきまして北東公庫総裁の御見解をお伺いいたします。
  95. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) 御指摘がございましたように、北東公庫の運営協議会は昭和三十一年、それから三十二年の国会審議の際に附帯決議が付されまして、公庫に運営協議会を設置することという決議がなされました。この決議によりますと、「開発公庫業務運営の公正妥当を期するため、総裁の諮問機関として学識経験者その他をもって構成する運営協議機関を設置すること。」とされております。  三十二年の十月に協議会が設置されまして、現在十人の委員をもっていろいろな論議を賜っております。年に何回か会議を開催し、いろんな角度からの御意見を賜りますほか、現場といいますか、現にどういう融資が行われているか、そこはどういう状況になっているかというような視察もいただいたりしております。
  96. 三重野栄子

    三重野栄子君 そこで、政策投資銀行に設けられます運営評議員会は今伺いました北東公庫の運営協議会とどのような違いがございますでしょうか、そこらあたりを伺います。
  97. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 政策投資銀行の運営評議員会は、行革の趣旨を踏まえまして、業務の政策性があるかどうかの担保、それから民業補完の原則をちゃんと守っているかどうか、そういう観点から中期の政策方針というものを業務の運営の大きな指針といたしまして主務大臣が中心となりましてつくるわけでございますが、そうしてつくったものを政策投資銀行がきちっと守って業務をやっているかどうかというような点を外部の有識者から構成される評議員会で事後評価をするということでございます。法律に定められているものでございます。結果は総裁に報告されまして、さらに透明性の観点から公表するということになっておりまして、新銀行の一つの重要な機関でございます。
  98. 三重野栄子

    三重野栄子君 次に、苫東・むつ小川原問題は石油公団と同様に財投システムの暗部でありまして、財投出口機関の不良債権の典型とも言えると思います。しかし、財投の原資は郵貯、年金等の国民の貴重な財産でございまして、出口機関のずさんな経営によって郵貯、年金等が毀損するというようなことは許されることではございません。  申し上げるまでもないことですが、資金運用部資金法第六条には、財投原資については大蔵大臣が管理、運用する旨が規定されているところでございます。財投システムの出口部分で、苫東・むつ小川原問題あるいは石油公団のような、放漫経営と言うと少し言い過ぎかもわかりませんけれども、そのようなことが放置されまして不良債権が累積している現況について大蔵大臣の御見解をお伺いしたいのでございますけれども、その前に国土庁並びに北東公庫のそれぞれの方から今日までのことを伺いたいと思います。
  99. 中川浩明

    政府委員中川浩明君) むつ小川原開発問題についてお答えをいたします。  むつ小川原開発は青森県がその基本計画を作成する役割を担い、政府においてはこの基本計画を参酌しつつ所要の措置を講ずる旨の閣議口頭了解を行っておりますし、また北東公庫、青森県、そして経団連が主導いたします民間が出資をいたしました第三セクターでございますむつ小川原開発株式会社が用地を買収し、造成し、分譲するなど多岐にわたる関係者の協力と連携のもとにこれまで進められてきたものでございます。  開発当初に比べまして、二度の石油危機を経験するなど産業構造の転換、経済社会環境の大きな変化もございまして、企業立地は必ずしも十分に進捗しているとは言えない状況にございます。そのため、多角的立地の導入や平成五年五月の総合支援策としての分譲促進のための立地促進策、安定的低利資金の導入による用地コスト上昇の抑制策が取りまとめられるなど、国、県、経団連等関係者は真剣な努力を重ねてきたところでございまして、一定程度の成果も上がっております。分譲済み面積が千百五十ヘクタールで、予定の四一%となっているところでございます。  しかしながら、昨今の厳しい経済環境の影響もございまして、現在むつ会社の経営は極めて厳しい状況下に遭遇しているところでございます。
  100. 斎藤徹郎

    政府委員斎藤徹郎君) 苫東会社の経営破綻につきましては、一義的には運営主体であります苫東会社責任と言わざるを得ないわけでありますけれども、同時に、これまで有利子借入金による累積債務構造が生じたこと、それから既存の縦割りシステムのもとで関係者が多岐にわたり連携の不足と責任の所在が欠如したといったことから、この苫東会社の経営破綻に至っているわけでございます。  そんな中で、北東公庫が現在の苫東会社に対しましては五〇%を超える融資を行っているところでありまして、こういった国家的プロジェクトのもとでの公的金融機関が抱える不良債権の問題でありますので、あくまでも公的枠組みの中で債務処理を適切に行った上で、新しい会社のもとで事業が円滑に遂行されますように最大限努力してまいりたいと思います。
  101. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 二つプロジェクトの評価につきましてはただいま政府委員が申し上げたとおりでありますが、おっしゃいますように、確かに財投から流れます金は相当たくさんプロジェクトに運用されるわけでございますから、それらは会計検査院対象ではあると思いますけれども、やはり会計検査院の観点と違った観点からのコストベネフィットの分析というものが本来あるべきものであろうと思います。  それで、現在、資金運用審議会懇談会のもとに専門家の方々に来ていただきましてアドバイザリーグループを設けて評価検討をしていただいておるところでございます。そういう問題が大事だということは私どもも気がついております。
  102. 三重野栄子

    三重野栄子君 今、大臣からお答えがありましたことに関連すると思いますが、もう少し具体的にお伺いさせていただきたいと思います。  財投原資は有償資金であり、償還確実性の原則が基本的に守られるべきであります。そのためにも、出口の財投機関に対しましてコスト分析手法を早期に導入することが求められております。コスト分析手法の導入については、平成九年十一月の資金運用審議会懇談会の報告書でも指摘されておりますし、さらに平成十年十二月二十二日の朝日新聞にも、大蔵省は衆議院での予算審議に間に合わせるため、平成十一年二月初めをめどにほぼすべての財投機関の分析結果を国会に提出する予定であるとの報道がございましたが、大蔵当局からはいまだ明確な指針が出されていないように思います。導入実施がおくれているのはコスト分析手法導入について何か障害があるのでしょうか。これまでの検討状況とあわせまして御説明をお伺いいたしたいと思います。
  103. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 政策コスト分析は、財政投融資を活用している事業に対して、今後その事業が終了するまでの間に国、一般会計等から投入される補助金などを一定の前提条件のもとに仮定計算いたしまして定量的に明らかにすることにより、国民負担に関する情報のディスクロージャーの充実に資するものでございます。現在、この政策コスト分析の導入に向けさまざまな検討を進めているところでございます。  ただ、政策コスト分析の作業は今回が全く初めての取り組みでございまして、各種分析の整合性や分析の基本となる事業の将来シミュレーションに際しての前提条件の考え方等、技術的問題が多数存在するわけでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、国からの補助金、補給金、交付金は毎年の投入額を現在価値に換算いたすわけでございます。また、国からの出資金、無利子貸付金は分析の最終年度までに国に返還されるものとみなしまして、その間の機会費用、つまり出資金、無利子貸付金を他の用途に使用すれば得られた利益、これは国からの補助金等と同様の経済効果を持つことから、これについて現在価値に換算することといたしております。  このような分析を行うに当たりまして、現在価値に換算する場合の割引率と将来の財政投融資金利につきましては各機関に共通の前提とすることになるわけでございますが、それ以外の前提条件につきましては各機関の実情を踏まえ各機関がそれぞれ独自に設定することになるわけでございまして、設定された前提条件に従って事業の将来シミュレーションを行い、分析期間中、つまり今後当該事業が完了するまでの間に当該事業に対して投入される国からの補助金等を推計するわけでございます。  この場合、設定する前提条件によって将来シミュレーションの結果が大きく変わるケースも多々ございまして、政策コスト分析につきましては、結果の数字をごらんになった方に誤解を与えないよう、どのような前提条件を設定するのが最も適切かどうかという点について今大変苦心しているのが実情でございます。  これらにつきましては、現在、資金運用審議会懇談会のもとに置かれておりますアドバイザリーグループであるコスト分析・評価検討会のメンバーの先生方から専門的な見地に立ったアドバイスを受けながら鋭意検討を続けているところでございます。  分析結果を公表する具体的な機関数、時期につきましては、現時点では確たることは申し上げられないわけでございますが、現在、鋭意検討作業を進めているところでございまして、御理解いただきたいと思います。
  104. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変慎重にやっていただいているようでございますが、日本政策投資銀行が出発をして、しかもそういう将来のシミュレーションも含めて事業が動き出すわけでございますので、できるだけ早く的確にそれが公表できますように要望したいと思います。  最後に、開銀においては政策金融経済効果を客観的に評価するために平成十年四月にプロジェクト評価審議役を設置したと承知いたしております。プロジェクト評価審議役はこれまでにどのような試みを実施してこられたのか、開銀総裁にお伺いしたいと思います。  費用効果分析の考え方は政策金融にとって非常に大切であり、今もいろいろございましたけれども、こうしたポストは新銀行に移行後も必要だと考えるわけでございます。プロジェクト評価審議役は新銀行に引き継がれるでしょうか。大蔵省、開銀からお願いしたいと思います。
  105. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) 私どもが昨年新たに設置をいたしましたプロジェクト評価審議役についてのお尋ねがございましたが、一般的な行政活動と同様でございますけれども、開銀もその業務につきまして国民に対する説明責任、いわゆるアカウンタビリティーが求められているわけでございます。このプロジェクト評価審議役という新しい役職を設けましたのは、今申し上げました国民に対する説明責任を具体的にどのように果たしていくべきか、これを専門的に検討するために設けたものでございます。  この役割は、第一に国内外の政策評価のあり方、いろいろな議論がございますけれども、それにつきまして基本的な調査を行いながら新しい政策金融の評価システムをどうやってつくっていくか、その検討を行うことでありまして、その点についていろいろと模索をしてまいりました。それから、もちろん全体としての政策金融の評価にとどまらず、具体的な個々の出融資対象であるプロジェクトの評価につきまして、定性的評価だけではなくて、今御指摘がございましたいわゆる費用便益分析に至るまで、さまざまな評価手法のノウハウの蓄積に努めております。  具体的にどんな実績を上げたかというお尋ねでございますけれども、これは実はまだ設置しましてやっと一年余りでございまして、私も最近この審議役からこれまでのいわば勉強の中途報告というものを聞かせてもらいました。私の頭でも時にとてもついていけない難しい勉強をいろいろしてもらっておりますが、これを具体的な評価に反映していくのは実はこれからであろうと思います。  そこで、最後にお尋ねの、それでは始まったばかりのこのプロジェクト評価審議役の役割をどう新しい機関に引き継いでいくかと。これはむしろ大蔵省からお答えいただくべきものだと思いますけれども、新銀行におきましてもプロジェクト評価の重要性というものはむしろいよいよ大事になりますので、私どもといたしましては新銀行でこのような仕事を引き続き担当するセクションがあってしかるべきであろう、そんなふうに考えて今後とも努力を重ねてまいりたいと思います。
  106. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 開銀総裁の方からお話がございましたが、新銀行を設立いたしました際には、事後評価を専担的に担当する部署を拡充する方針でございます。部のようなものを設置してはどうかと考えているところでございまして、さらに検討してまいりたいと思います。
  107. 三重野栄子

    三重野栄子君 終わります。
  108. 星野朋市

    ○星野朋市君 前回、私は金融再生委員会に時間の都合上多少中途半端な質問をいたしましたけれども金融再生委員会の答えが全く答えになっていないと。そこで、私は、私の質問をよく調べて、これは宿題としておくから次の委員会に答えをもらいたいと言っておきましたけれども、その宿題の答えはできておりますか。
  109. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 前回のお尋ねは、地銀、第二地銀についていろいろな問題が次から次へと出てくるけれども、早期に処理、是正をすべきではないか、そういうお尋ねであったわけでございます。  これにつきましては、現在の地銀、第二地銀に限りませんけれども、バブルの後、資産価値の低下に伴いまして多額の不良債権を抱えているというのが日本銀行の一般的な状況でございまして、私どもはこの三月期決算におきましてもそれの処理をできる限り行うようにということを指導してまいりました。その結果、多くの銀行が三月期決算におきまして赤字を計上しているということになっているわけでございますけれども、赤字を計上してでも不良債権の処理をするということ自体は評価すべきことであるというふうに考えております。  ところで、そうした銀行の財務状況を見まして、私ども、この確定決算でございますとかあるいは検査に基づきまして出てきた数字をもとにいたしまして、早期の是正が必要であるというふうに判断をいたしました場合には、前回の御質問にもございましたような金融機関についての社会的な費用と申しますか、そういうものを最小にするという観点から、私どもに与えられております権限である早期是正措置等を的確に発動することによりまして金融機関の健全性の早期回復、ひいては預金者の保護、金融システムの安定を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  110. 星野朋市

    ○星野朋市君 まだ半分ぐらいしかわかっていないですね。  この問題を取り上げた前々回の直後に幸福銀行と東京相和の問題が起こったわけです。それでどうするかと聞いたんですよ。幸福銀行は恐らく内容が明らかになれば一族の背任行為と思われるような貸し出し、東京相和も似たようなところがあります。東京相和の問題は最近になりまして早期是正措置で増資というのをもくろんでおるけれども、これはあの銀行のやり方からすると、また関連会社にお金を貸し付けて払い込ませる、そういうような手段もとられるかもしれないという危惧があるような銀行なんですよ。それでどうなんだとお聞きしたわけですけれども、どうですか。
  111. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 個別の金融機関の問題につきましては従来からお答えを差し控えさせていただいているところでございまして、一般論としてお答え申し上げざるを得ないわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、財務状況が一定の状況、これは私ども昨年の四月から早期是正という手法をお認めいただいているわけでございまして、端的には自己資本比率が一定の状況に該当いたしました場合には、社会的費用最小の観点から的確な措置を発動していくということで、私どもはその原則に立ちまして、早期是正措置の厳正な運用を初めとする監督権限の適切な行使によりましてそうした御要請にこたえてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  112. 星野朋市

    ○星野朋市君 私どもは昨年の金融国会で、いわゆる再生法よりも早期健全化法の方が重大だ、重要な法律だということを一貫して主張してまいりました。  前回もちょっと指摘しましたけれども、地銀、第二地銀の中に相当な問題行が二十八行ぐらいあると申し上げましたし、それからこれは次の機会にまたやりたいと思いますけれども、都銀、信託銀行に資本注入をした際に、各行から健全化計画を出させたそのときに初めて新基準による新しい負債額というものが報告されている。この前七兆四千五百億も注入してこれで終わりかと思ったら、何と十兆も償却した後で六兆以上の負債がふえたとか、今度の問題も第二地銀が次から次へと出てくる。要するに、日本の金融界というのはどこまで行ったら完全に明らかになるんだということで大いに外国の信用を落としているし、国民自体もどこまで行ったらけりがつくんだと、こういうことになりかねないんですね。そこを私どもははっきりしてくれと、そして場合によったらもうハードランディングせざるを得ないんだと。それをいつまでもだらだらやっているから解決がつかないんだという立場で物を申しているわけです。そこの点をもう一度はっきりさせていただきたいと思います。
  113. 乾文男

    政府委員(乾文男君) お尋ね二つあったかと思います。  まず、金融機関の不良債権の問題でございますけれども、これは昨年からいわゆるSEC基準ということでもってアメリカと同様の基準によりましてリスク管理債権の額の開示を始めたところでございまして、この三月期からは全金融機関でこれが義務化されているところでございます。  そこで、お尋ねがありましたのは、また新しい基準が出てきたのではないかということでございますけれども、これは昨年十月に施行されました金融再生法に基づきます開示というものが主要行につきましてはこの三月期から始まっているわけでございます。その金融再生法に基づきます開示は、先ほど申し上げました米国基準のリスク管理債権と比べまして、例えばリスク管理債権が貸し出しベースになっているのに対しまして、支払い承諾見返りを含めたような総与信ベースとなって範囲が広くなっていること、それからこの再生法の開示基準は自己査定の債務者区分をベースとしておりますことから、破綻先や破綻懸念先に対する債権についてはすべて破産更生債権または危険債権として区分されるという違い等がございまして、この再生法基準の方がリスク管理債権の基準よりもさらに踏み込んだ内容となっているところでございます。  いずれにいたしましても、この再生法基準はまだ主要行だけでございますけれども、こうした昨年からのSEC基準、そして今申し上げました再生法基準等が整備されまして、これらを開示していくことによりまして不良債権のディスクロージャーは国際的には遜色のない水準に達したというふうに考えているところでございます。  二番目の御質問は、そうした不良債権のディスクロージャー等を踏まえて、いわば立ち行かないものにつきましては破綻処理をもすべきではないかという御質問であったかと思います。  先ほどから申しておりますように、私ども金融機関についていろいろな監督権限を適切に行使することによって早期の健全化を図ってまいることが第一だと考えておりますけれども、万一そうしたことをしても破綻のやむなきに至った金融機関につきましては、昨年の臨時国会整備されましたさまざまなスキーム等を用いまして処理されていくことになるものと考えているところでございます。
  114. 星野朋市

    ○星野朋市君 この問題はまた別の機会に質問をさせていただきます。  本題の日本政策投資銀行法案に関連してでございますけれども、この法案が通れば、要するに北海道東北開発公庫は一応幕を閉じ、もちろん開発銀行も幕を閉じ、新しい銀行が誕生するわけであります。  今までの御議論を聞いておりますと、私ちょっと中座をいたしましたけれども、大体、北海道東北開発公庫苫東、むつ小川原への投資の問題点というのが指摘されておったわけであります。  北海道東北開発公庫北海道地域金融にどれだけの貢献をしたか、どういう思いで今最後を迎えようとしているのか、総裁の胸には万感の思いがあると思うんです。あと三、四分でございますけれども総裁にその思いのたけを公の席上で最後にお述べいただきたいと思います。
  115. 濱本英輔

    参考人濱本英輔君) 北東公庫が設立されまして以来今日に至りますまでどういった業績を上げたか、私どももこれを振り返るときが来たというふうに思っております。  この間、北東公庫出融資を行いました金額の累計を見てみますと、ほぼ四兆五千億、これは先ほど来お話がございましたように、民間の金融機関との協調融資を前提にしておりますから、これの倍を超えます民間からの融資を伴っておりますので、合計いたしますと十兆を超える投資を北東地域にもたらした、そういうことになろうかと存じます。結局、民間金融機関だけではなし得なかったものをどこまで北東公庫として助け得たか、ここに我々の使命があったのだろうと思うのでございます。  これを一口にお話をし尽くすことはなかなか難しいかと存じますが、一つには政府関係機関としましての補完機能としてどの程度のことをなし得たか、量的にどうであったかといいますと、例えば景気の後退局面等におきまして東北の金融がすぼみまして、見る見る金融が苦しくなる局面が繰り返し訪れましたときに、これに対しまして、北東公庫のみならずでございますが、北東公庫もその一翼として、政府関係金融機関の一員としまして量的な補完に励みましたことは今までの実績が示しております。  それから、構造的にも、北東地域で人々が預金をいたしまして、それが地元にどれぐらい返ってくるかということを見ますと、預貸率と申しますか、全国平均では九〇%何がしという数字がございますけれども、北東地域では七〇%ちょっとでございます。これを大きな意味におきまして政府系金融機関としてお金を戻すといいますか、そういう機能を果たし得たのではないかというふうに考えます。  それから、質的にどうかと考えました場合に、企業体力が整っておりません地場の中小、中堅企業に対しまして、公庫として直接の収益には結びつかないわけでございますけれども、いろいろな相談相手になってきた。相談の結果、話が実らないことももちろんございましたし、北東公庫としてその事業は今はしばらく見合わせようというようなことを申したこともたびたびあったかと思いますけれども、結果として、全体としまして地場の企業支援できた、信用の補完が図られたというふうに考えております。現に北東公庫融資対象の半分以上は中小、中堅企業でございます。  それから、もう一つ地域経済を支えることができたのではないかと思います重要な点は官民協調型のプロジェクトでございまして、政府金融機関として初めて出資機能を付与されたのが北東公庫でございます。また、民間ではなかなか難しい非常に長期の金融というものを東北、北海道に展開できました。情報とかノウハウを提供いたしましたり、国と地域、あるいは官と民、そういう多数の関係者をコーディネートするというような場にも出てまいりまして実績を上げさせていただいたように思います。  そういったことを通じまして北東公庫が寄与してきたところを別の側面で一、二触れさせていただきますと、東北、北海道に参りまして市町村を訪れましたとき、そこの中核になっております企業を育成することに北東公庫はかなり大きなかかわりを持ちました。先ほど来お話にございました雇用の問題を取り上げましても、かなりの雇用の確保に寄与しているというふうに考えます。  北海道あるいは東北地方の歴史では、先ほど宮澤大臣のお話にも多少ございましたけれども石炭あるいは水産業などがああいった状況になりまして非常に苦しい局面を迎えたわけでございますけれども、こういう局面を打開しますために北東公庫はかなり引っ張り出されたという感じがいたします。  一、二例を申し上げますと、例えば水産業で魚がとれなくなった、あるいは造船業が低迷したという函館の場合を考えてみますと、結局いろいろな議論を町でなさいました結果、観光産業への転換ということに集約されまして、函館山にロープウエーをつくる。公庫がこれに積極的に関与させていただきまして、六十二年に整備が行われ、現在は、平成十年度の実績でございますけれども、年間百七十三万人に上る観光客を引っ張ってきておりまして、ロープウエーでは十年連続全国一の記録を続けているそうでございます。観光都市としての函館を再生させたわけであります。  あるいは、基幹産業であります石炭がとれなくなりましたときに、北海道の上砂川町を中心にしまして、空知郡の地域経済が沈滞しましたときに、炭鉱の立て坑を活用いたしまして世界最大規模の落下型の無重力実験施設をつくることに成功いたしました。世界最高度の研究成果を発信しておりまして、NASAなどからも研究依頼が参っております。こういった研究開発を核とします地域振興にも寄与したことがありました。  北東公庫が姿を消しまして新しい銀行へ移行しますにつきましては、地域の方々に期待とそれから戸惑いもあろうかと存じますけれども、私どもといたしましては、新しい銀行地域の方々にとってこれまで以上にお役に立ち得る組織になることを心に期してまいりたい、かように存じます。
  116. 星野朋市

    ○星野朋市君 終わります。
  117. 菅川健二

    ○菅川健二君 日本政策投資銀行につきましてお聞きいたしたいと思います。  三つ目的のうちの一つに地域経済自立的発展という項目があるわけでございまして、長らく地方行政に携わっておりました私も大変これに注目し期待いたしておるわけでございますが、これまでも開銀、北東公庫につきましては地域振興面でいろいろな寄与をされてきたわけでございます。  ただ、先ほど来質問がございましたように、光の部分と影の部分があることも事実でございますが、北東公庫につきましては先ほど来いろいろの質問がございましたのでさておきまして、開銀におきましても、これまで地域振興につきましていろいろ実績があろうかと思うわけでございます。  まず、近年におきます地域振興に対する主な融資対象とか実績とか、それがどのようになっておるのか、あるいはこのうちリスク管理債権の状況はどのようになっておるのか、概況を教えていただきたいと思います。
  118. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) ただいまお尋ねの、最近のバブル期、さらにバブルが崩壊しました後、私どもとしましては、従来からの地域開発融資あるいは地域整備関連融資というものを開銀の業務としても年を追って重要なものと位置づけてきております。バブル崩壊後、地方経済は確かに非常に厳しい状況にございますけれども、こういう中で、豊かで活力ある地域社会を形成するために、地方振興に資するための融資の政策的意義は以前にも増して重要だと考えているわけでございます。  このような認識のもとで、新銀行におきましても、御案内のように、業務三つの重点項目の一つとして地域整備関連分野を位置づけておりまして、自立型地域創造という表現をとっておりますけれども、今後とも開銀におきまして私どもが努力をしてまいりました地域開発あるいは地域整備関連の業務を新銀行におきましてもより活性化し、また統合の相手でございます北東公庫がこれまで大変きめ細かい、いろいろと工夫をされた地域整備関連の業務を展開しておられるわけでございますから、その豊かな経験、きめ細かい対応というものをこれらに生かしていきたいと考えているわけでございます。  多少具体的な内容を申し上げますと、私どもとしまして、各地域の特色を生かすような多種多様なプロジェクト支援というものを行ってきておりますけれども、一地域における私どもの実績を他の地域での同種の業務に生かす、こういうことを特に意識しております。  その具体的な最近の例を一つ申し上げますと、地域町づくりの典型的な例といたしまして、これは中国地方でございますが、津山市の中心市街地における再開発事業というものを、津山街づくりという株式会社組織の第三セクターでございますが、これを私ども出融資対象といたしまして、これは総事業費が二百八十五億円でございますけれども、私どもの出資が一億円、融資額が二十億円と、こういう地域の町づくりとしてはそれなりにかなり規模の大きなものでございますが、これによりまして、津山市における空洞化しつつありました中心市街地の活性化、そしてこの地域における雇用確保に、大変政策的意義の高い具体的な町づくりの例として私ども出融資実現した。これは比較的最近の例でございます。  なお、ただいま申し上げました津山街づくりの例もそうでございますが、地域開発の場合には、私ども業務といたしますと、先ほど来お尋ねがございました地方公共団体と民間の経済界の両方からの協力による具体的な姿としては、いわゆる第三セクターという形で地域開発を行っていく例が大変多うございます。  具体的な数字の一例を申し上げますと、開銀が融資を行っております第三セクターは実は現時点で五百五社あるわけでございまして、第三セクターについての御議論が先ほど来いろいろとございますけれども、私どもとしては、やはり公益性、公共性を重視しながら、しかし民間の効率的な経営を生かしていく、そしてまた一方では収益を第一義的に追い求めるのではない、いわば息の長い地域開発事業にこの手法を生かしていきたい、こんなふうに考えているわけでございます。
  119. 菅川健二

    ○菅川健二君 最後にお話がございました第三セクターについてでございますが、先ほど峰崎委員からも話がございましたように、最近、第三セクターの破綻が相次いでおるということが新聞情報にもございますし、また自治省自身が五月末にそれについて指導方針を出しておるわけでございます。  今お聞きしますと、三セク五百五社に出しておられるということでございますけれども、私の郷里の方の身近な例から見ますと、例えば新交通システムにつきましてはそれなりの業績を上げておるわけでございますが、呉ポートピアにつきましては先ごろ破産いたしたわけでございまして、今清算をやっておるところでございます。  そういった面で、三セクにつきましてはかなり問題のある融資もあるのではないかと思うわけでございますが、五百五社のうちどの程度問題を抱えておるのか、現状をどのように把握しておられますか。
  120. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) 私どもの取引先でございますいわゆる三セクの経営状況についてのお尋ねでございます。  先ほど私は最近の数字といたしまして五百五社の三セクと私ども取引をさせていただいているということを申し上げましたが、この経営状況でございますけれども、手元の数字で見ますと、仮に当期損益が黒字か赤字かということで経営状況の現状を把握いたしますと、この五百五社の半分強、具体的には二百五十七社が黒字でございまして、半分に近い四九%の二百四十八社は当期損益が赤字と、こういうことでございます。  ただ、ここでどうしても補足をさせていただきたいのは、当期損益が赤字であるから直ちにこの三セクの経営が非常に問題であるということでは必ずしもないということでございまして、先ほど申し上げましたけれども、三セクで行われている事業は何よりも公共性、公益性に政策的意義を見出しているわけでございまして、例えば事業を開始して黒字転換をいたしますのに十年から十五年かかる、十数年かかるという例はむしろ平均的なものでございます。そういたしますと、事業を開始いたしましてから十数年はむしろ毎期赤字を出しているが、当初の適切な事業予測の範囲内である。しかし、ある時点から、つまりこれは企画の段階から十分に事業性を検討いたしまして、例えば十二年目に黒字転換をするという目標を立て、それがほぼその目標の線に沿って経営が行われているといたしますと、最初の十数年が仮に毎期赤字であっても、それは決して直ちにその三セクの経営について問題があると言う必要はないわけでございます。  その意味で、私はたまたま当期黒字か赤字かということを手元の数字で申し上げましたけれども、その点は、私どもといたしまして、三セクの事業内容を評価するには通常の民間企業の場合と違ってかなり長い目で見る必要がある。それから、当初の事業性の見通しが果たして大体そのとおりに動いているのか、それとも途中で見通しが違ってしまいまして当初の見込みよりも赤字の時期が長く続いているのか、その原因は何か、そういうものはやはり個々の三セクの状況に応じて綿密に検討する必要があるだろうと思っております。
  121. 菅川健二

    ○菅川健二君 確かに三セクにはいろいろあるわけでございますが、新聞の記事にも、東京商工リサーチによりますと実質赤字の会社が七割あるという数字が出ておるわけでございます。その内容につきましては御指摘のことはいろいろあろうかと思いますが、いずれにしても問題を抱えておるところが大変多いというわけでございます。  私も地方団体におりまして随分三セクというのをつくってきたわけですが、かなりオシャカになっておることもあるわけでございまして、いずれにしても三セクというのは官と民の得手得手をプラスするという当初の目標が、不得手不得手が合体したような状況になるということが逆に多いわけでございます。とりわけ、公共団体としては収益性の判断というか、そういったコストベネフィットの分析が非常に甘い場合もありますし、それから実際に動き出した後の情勢変化に柔軟に対応し切れていない。これは苫東なんかもその大きな事例でございます。  そういった面で非常にフレキシビリティーに欠けておる、地方団体の場合どうしてもその団体の性格上そういうふうになるわけでございますが、銀行におきまして新しく三セクに関与する場合はそういった面の専門的な知識というものをよく地域の公共団体と連携をとりながら運営なり出資に注意をしていただきたいと思うわけでございます。  最後に、この点につきまして御意見をいただきたいと思います。
  122. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) ただいまの御指摘にもございますように、三セクの実態が必ずしも当初の見通しどおりに推移していない、その意味では債権管理に非常に注意をしなければならない例があることも全く御指摘のとおりでございます。そのような不良債権化するおそれのある三セクに導かないように、ただいまの御指摘では、特に地域状況に非常に精通をしております地域金融機関と私ども政策金融との連携が非常に大事である、これは私ども三セクの具体的な実務経験から申しましても全く御指摘のとおりだと思っております。  私どもは当然のことながら民間金融の補完あるいは奨励ということを前提にしておりまして、民間金融機関との競争というものはむしろ禁止をされているという立場でございます。地域金融機関とは、特に三セクにおきましては我々が関与しておりますそのいずれの例でもごく密接な連携をいたしまして、お互いに補完をしながらそれぞれの地域の三セクの事業を円滑にして推移させていく。仮に当初の見込みと違った事業状況であります場合にも、できるだけ早く関係金融機関と十分に意見交換をしながら、時に事業の中核でありますその地方の公共団体ともよく協議をして、私どものノウハウも生かしながら健全な三セクに導いていく、そういう努力は私どもだけではやはりできない、御指摘のように地域金融機関との連携が極めて重要であるということを私どもも肝に銘じておりますし、新銀行に移行いたしましてもその点は十分に配意をしてまいるつもりでございます。
  123. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  124. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政・金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本政策投資銀行法案を議題といたします。  それでは、参考人の意見陳述及び参考人に対する質疑を行います。  本案審査のため、参考人として苫小牧東部開発株式会社代表取締役社長中田一男君、むつ小川原開発株式会社代表取締役社長内田隆雄君、野村総合研究所研究理事富田俊基君及び北海道大学経済学部教授濱田康行君、以上四名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず中田参考人内田参考人富田参考人濱田参考人の順序で、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えを願いたいと思います。  また、御発言は着席のままで結構でございますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず中田参考人からお願いいたします。中田参考人
  125. 中田一男

    参考人中田一男君) 苫小牧東部開発中田でございます。よろしくお願いいたします。  本日は、当財政・金融委員会にお招きをいただきまして、苫小牧東部開発の現況につきましていろいろお聞き取りいただく機会を与えていただきましたことをまずもって御礼申し上げたいと存じます。  お手元に封筒に入った資料をお配りしてございます。「苫小牧東部地域開発」というパンフレット、その中に幾つかのリーフレットが挟まれておりますが、まず最初にこのパンフレットをちょっとごらんいただければと思います。  三、四ページを開いていただきますと、地図が四ページ目に出てございます。ちょうど新千歳空港のすぐ南側、太平洋に面した地域でございまして、黄色であらわされている長方形の区域でございます。この区域は、南北の距離が十二キロ、東西の幅が八キロございます。この広さを実感していただくために東京からおいでになったお客様にはよく申し上げるんですが、東京の山手線の大崎から田端まで南北が十二キロでございます。それから、新宿から東京までの幅が五キロでございます。苫東の区域は、南北は山手線の長さ、東西の幅はその一・六倍ございまして、山手線の内側の面積の約一・七倍の広さを持っております。  その一ページ前の一、二ページに航空写真が出ております。空から見ますと平たんな土地でございます。この航空写真の左上の方に新千歳空港が写っておりますように、新千歳空港のターミナルからこの区域の中心地まで、直線距離で十五キロぐらいの近さでございます。車ですと十五分か二十分ぐらいで移動できるという状況でございます。  そして、非常に平たんな土地でありまして、一番高いところで標高二十メーターぐらい、標高差が二十メーターぐらいのほとんど平たんな土地でございまして、この地域に着目して大規模工業基地を建設しようという構想が起こってきたわけでございます。  私どもの会社が発足いたしましたのは昭和四十七年七月でございます。この地域に大規模工業基地を建設しようという動きは昭和四十年代の初めごろからございました。地元では特に北海道庁が大乗り気でございまして、既に昭和四十四年ごろから道独自でこの地域の土地の先行取得に入っておりました。  御案内のとおり、当時、日本経済は高度成長の余韻がまだ十分残っておるころでございまして、鉄鋼の生産が一億トンぐらいに達したところでございました。臨海工業地帯というのは非常に競争力のある地域だ、原材料を船で運んできてそこで製品にして輸出するということで、まだまだ日本の国が伸びていくというふうに考えておりました。したがって、鉄鋼生産も一億五千万トンから二億トンぐらいまで伸ばしていかなきゃいけない、非鉄金属、石油精製、石油化学等についてもまだまだ大型の立地が必要だという時期でございました。  苫小牧東部のこの地域も全国幾つかの大規模工業基地の開発候補地として挙げられ、国は北海道総合開発計画あるいは苫小牧東部地域開発基本計画を樹立いたしまして、この地域に大規模工業基地を建設しようということに相なったわけでございます。  この計画を進めるに当たって、どういう形でやっていくかということは当時いろいろ御議論があったようでございます。非常に大きな計画ですので、特殊法人、公団とか事業団のようなものがやっていくのがいいのか、あるいは道の公社のようなものがいいのか、あるいはまた第三セクターという方式で民間の資金なり活力なりを活用してやっていくのがいいのか、真剣に議論されたそうでございます。  昭和四十七年当時、既に必要な土地の七割ぐらいは北海道の方で取得しておられました。そしてまた、産業界の方では鉄鋼とか石油精製とか石油化学とか大規模な企業がここに立地をしたいという希望を複数出しておられました。それだけに、建設が順調にいけば需要サイドは問題がないだろう、どれぐらいの事業期間があれば港湾をつくり道路をつくり造成がやっていけるのかというふうなことを主として検討して、大体十五年から二十年ぐらいの間にはそういう工事ができる、したがってこの事業はそれぐらいのリードタイムで完成するというような見通しでございました。  したがって、ともすれば予算等で事業規模が制限されがちな公団、事業団の方式よりは、民間の資金を活用して第三セクターでやっていく方がいいだろうという御判断で会社が設立されることになりました。  発足当初は授権資本が六十億、払込資本金が二十億、役職員のスタッフ総数三十六名という規模で出発をいたしました。設立世話人会で披露されました当初の事業資金計画を見てみますと、四十七年に会社が設立され、四十八年から分譲を開始する、昭和六十年度、設立後十三年目ぐらいまでに土地の分譲収入は三千億余り、それに対して土地代あるいは造成費等の事業支出は二千六百億余り、十三年間で法人税も百億以上の納付が可能だろうというような計画、予想見込みでございました。  また、事業資金の調達につきましても、六十年度までの事業資金の必要額は大体六百億弱、五百億から六百億ぐらい、その一割を資本金で集めようということで授権資本は六十億円、残りは借入金によって賄うという計画でございましたが、大体設立十年後、昭和五十六年度には借入金はゼロになるであろう、こんな計画が当時検討されておりました。  実際に会社が設立されました後、順調にいったかといいますと、供給サイド並びに需要サイドそれぞれでこの計画とは大きな食い違いが出てまいりました。  まず、供給サイドでございますが、この地域に大規模工業基地を建設するというのは地元の悲願であったわけですが、一方では大規模工場というのは公害発生の源であるというような性格もございまして、反対運動も根強くございました。あるいは一万ヘクタールを超える地域にどのように道路を建設し、どういうふうに整備していくかという基盤整備計画をつくりますのにも、関係者がたくさんいらっしゃったということもあって、その調整に非常に手間取っております。あるいは漁業権の補償交渉というのも時間がかかっております。また、環境アセスメントをしっかりやらなきゃいけないということで、その準備にも時間がかかっております。  そういったことに時間をかけておりましたので、実際に造成に着手しましたのは昭和五十二年、初めて分譲が行われましたのは、北海道電力の苫東厚真発電所に対しまして昭和五十三年に第一号の分譲が成立した。当初の予定では四十八年ごろから既に分譲できるであろうというふうに考えておりましたけれども、非常にずれ込んだわけでございます。  一方、この間に日本経済の構造に大きな変化が生じました。四十八年に第一次オイルショックがございまして、石油資源の確保というものが非常に頭の痛い問題になってまいりました。五十年代に入ってからは円高の傾向が始まりました。そして、日本経済では既に重厚長大型の産業は限界に来ておる、これからは軽薄短小型の産業に移行していく必要があるというふうに産業構造が大きく変わってまいりました。  苫東の場合、当初予定しておりました大きな企業立地希望はこういった構造の転換の中でそれぞれ辞退するという形に相なりまして、当初の予定どおり立地が進みましたのは北海道電力の発電所と、それから無公害型の産業であるということで地元が熱心に誘致をしてまいりましたいすゞ自動車工業立地、この二件のみでございまして、それ以外の大規模工場はいまだに誘致することができないという状況になってございます。  しかし一方、石油備蓄というのが国の政策として浮かび上がってまいりまして、全国に幾つかの大きな石油備蓄基地が必要だということで、苫小牧東部開発地域もその候補の一つになりました。地元では、大規模工業基地なので石油備蓄基地をこの基地内に設けることについては反対論もございましたけれども関係者で調整をしていただきまして、石油備蓄基地をこの基地内、この苫東地域内に取り込むということで計画を改定していただきました。  私どもは第二段階計画と呼んでおりますが、苫東基本計画の中のツーステップ目の計画石油備蓄基地を取り込みまして、昭和五十三年から六十一年までの間に、民間の石油備蓄会社並びに国の石油備蓄会社の二社に対しまして四百十七ヘクタールの土地を造成し分譲いたしております。  この分譲が進んでおりますころは年間の売上高が大体百億から二百億ぐらいに達しておりまして、法人税を納付するというようなところまで会社の体質は強化されました。しかしながら、先行きとしては大規模工業基地の建設というのはもう限界に来ておるということでございまして、それ以外の立地は遅々として進んでおりませんでした。  昭和六十年代に入りまして、大規模工業基地をねらうのではなくて、むしろ空港に一番近い地域、柏原地区を臨空工業団地として造成し、企業誘致をしようというふうに方向転換をいたしました。これも国を初め関係者の間で意見調整をしていただきまして、第三段階計画ということで計画の一部手直しをしていただいて、先ほどの図面で空港に一番近い左上の地域を小規模な小口の分譲に踏み切ったわけでございます。  昭和六十年から平成二、三年ごろまでは土地ブームがございましたし、それから大都市近郊の工場が郊外に移転するというふうな流れがございました。特に平成三年にはトヨタ自動車が苫小牧西港に立地をいたしまして、その関連企業でありますアイシン精機さんとか日本板硝子さんとか、そういったところが苫東基地内に工場用地を手当てしてくださいました。  そして一息つきましたけれども、その後の円高の進展等によりまして企業立地日本の国内に向かうよりは外国に向かうというふうな風潮になり、私ども会社の方も営業の人間をふやしたりいろいろと努力をしてまいりましたけれども、この数年は土地の分譲は非常に低調になり、分譲が低調になるだけ金利の負担が重くのしかかるというふうな状況で推移してまいりました。  平成五年ごろから大規模工業基地という看板はもう既に時代おくれというか、これだけではいけないということで計画見直し作業が始まりまして、平成七年に新しい計画をまとめていただきました。それで、産学住遊複合開発ということをうたい文句にいたしまして、製造工業だけではなくて、大学、教育機関あるいは住宅、都市機能、さらにはスポーツ施設等、この地域を活用するために一種の規制緩和といいますか、利用する幅を大きく広げていただきました。  私どもはそれを受けて、当時、首都機能移転なんかが議論されておりましたので、新千歳空港周辺に首都機能を移転するならば、あしたからでも工事が始められる場所があるというふうなことをPRして、平成七年十二月の調査会の報告には、六百キロ以上離れた場所であっても他の条件にすぐれたところは検討対象にしようというふうに言っていただくまでになりました。しかし、この大きなプロジェクトもその後は北海道対象外になっております。  それ以外に、国際熱核融合の施設ですとか、大きなプロジェクトについても地元と一緒に誘致活動をしてまいりました。  それから、企業誘致につきましても、会社独自でアンケート調査を行い、戸別訪問をするほかに、北海道あるいは苫小牧市と共同で企業誘致を図ってまいりましたが、十分な成果を上げることはできなく、非常に残念に思っております。  平成九年に入りまして、九月二十四日の閣議で「特殊法人等整理合理化について」というのが閣議決定されました。北海道東北開発公庫と開銀とが統合するまでに苫東、むつの案件については結論を出すんだということに相なりました。それ以降、金融機関から、この結論が出るまでの間、融資をとめたいというふうな意見が出てまいりまして、協融団を組成するために努力いたしましたけれども平成九年度の協調融資は組むことができませんでした。  そして、平成九年十一月以降、金融機関からの借り入れができず、私ども会社の金利ですとか、償還期限の終わりました元本をお支払いすることはできないという延滞状況に入りました。それ以来、金融機関には結論が出るまでの間、元利棚上げをお願いしてまいりました。元利棚上げ自体は認めていただけませんでしたけれども金融機関の方々は一応会社の経営を見守ってくださいました。  この二年間、会社といたしましてはリストラに励みました。役員、職員の給与を引き下げ、希望退職を募り、当時六十二名いました従業員が現在二十五名まで、再就職のあっせんをしながら規定の退職金を支払い、整理をしてまいりました。何とか金融機関からお金を一銭も借りないままで今日までやっとやってまいりました。  この間、昨年七月には北海道開発庁鈴木宗男長官のもとで新しいスキームを決めていただきました。私どもの持っております土地が新しい会社に引き継がれまして、このプロジェクトが続いていくというような方向になったことを従業員ともども非常に期待もし、喜んでおる次第でございます。  少し時間をオーバーして申しわけございませんでした。まだまだお話ししたいことがございますが、いずれまた御質問の機会にお話しさせていただくことにいたしまして、冒頭陳述をこの辺で終わらせていただきたいと思います。  本日はどうもありがとうございました。
  126. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、内田参考人にお願いいたします。内田参考人。  恐縮でありますが、十五分程度ということでよろしくお願いしたいと思います。
  127. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) むつ小川原開発の社長をしております内田でございます。  本日は、日本政策投資銀行法案審議に関連いたしまして、当社の経営概況を御説明する機会をちょうだいいたしました。よろしくお願いいたします。  また、当社の経営不振について、勝木委員長を初めとして財政・金融委員会の諸先生方、さらに国民の皆様に大変御心配をおかけしていることをこの場をおかりしまして深くおわび申し上げます。  さて、私どもの会社の基盤でありますむつ小川原工業基地の開発計画昭和四十年代の高度成長期における工業の地方分散と国土の均衡ある発展という国家的要請を受けて立案されたものでございます。  昭和四十四年の新全国総合開発計画においては、次のような趣旨の記述がなされております。すなわち、鉄鋼、石油という基幹産業の生産規模は今後飛躍的に拡大するので、これに対応してこれら巨大な生産機能の展開の場を造出する必要がある。このため、巨大工業基地の建設を推進する。むつ小川原地区については、港湾等の産業基盤の整備により陸奥湾、小川原湖周辺等に巨大臨海コンビナートの形成を図るというものでございました。  このような時代要請を具体化するため、昭和四十七年に青森県によりむつ小川原開発第一次基本計画が作成され、政府においてはこの基本計画を参酌しつつ所要の措置を講ずる旨の閣議口頭了解がなされました。  また、当社はこれに先立ち、昭和四十六年、大規模用地の先行取得、造成及び分譲を目的とする開発事業主体として、北東公庫、青森県、経団連傘下企業が出資する第三セクターの株式会社として設立されました。  残念ながら、二度にわたるオイルショック等、経済環境の激変によりまして、当初構想されました石油コンビナートや火力発電所計画実現いたしておりませんが、昭和五十年代後半に国家石油備蓄基地として二百六十ヘクタールが、昭和六十年代に原子燃料サイクル施設関係といたしまして七百五十ヘクタールが分譲できました。また、平成元年には地元の研究、技術開発向上に大きく貢献する財団法人環境科学技術研究所が設立され、自然環境と放射能の関係等について研究を行っております。  このように、むつ小川原地区はエネルギー、環境等の分野における重要な施設の立地が進むなど、我が国にとってかけがえのない地域となっております。また、地元での受注や雇用の拡大を通じて地域の活性化にも寄与してきたものと考えております。  計画総面積五千二百八十ヘクタールのうち、分譲予定工業用地計画面積は二千八百ヘクタールであります。会社設立以来約三十年をかけまして、今述べました二つの大規模プロジェクトを中心に合計千百五十ヘクタールを分譲し、分譲予定地全体の約四〇%が売れたことになります。  会社の経営につきましては、この五年間平均で毎年二十ヘクタール程度は分譲できておりますが、借入金で土地を先行取得し、また港湾や道路の建設費、漁業補償費等の公共事業費の一部を負担してきたため、その借入金の金利が累増して、その利払いのためにまた借金をするという構造になりました。  現時点では、土地の平均原価一平米当たり約一万五千円のうち、金利に充当する部分が約六〇%、九千円を占めております。その結果、昨年十二月末には債務総額二千三百億円に達し、まことに残念ながら金利の支払いを一時猶予していただかなければならなくなりました。  この間、平成五年には関係省庁、青森県、経団連など関係者が協議し、我が社に対する総合的支援措置を取りまとめていただき、私が社長に就任してから、この二年間におきましても、関係者の協力を得て、役職員数や経費の削減等、懸命の経営リストラを行いましたが、年間の支払い利子だけで約八十億円でございます。非常に厳しい経営状態に直面しております。  私は、今後の日本社会を考えると、世界的な大きな時代の変化の中で環境や国際交流、エネルギー等、多数の大規模プロジェクトの立ち上げが必要になると考えております。例えばITER、国際熱核融合実験炉でありますが、このITERプロジェクトは地上に太陽をつくるという二十一世紀のプロジェクトであり、私どもとしても一生懸命誘致に取り組んでおります。  このような大規模プロジェクト決定されたら直ちに用地が必要になるのであり、その時点から用地買収や漁業補償をやっていたのではまた五年から十年近く時間が経過し、とても時代の要請にこたえられません。時代の要請があれば迅速に対応できる、これができなければ日本社会は時代の流れから脱落していくわけであります。  このような観点に立ちますと、むつ小川原工業基地のような一種の用地の備蓄は国家として極めて重要であると考えており、約三十年前の計画立ち上げの際の動機、趣旨は現在においても変わっていないのではないでしょうか。むつ小川原工業基地のような広大な用地を一社が所有し、大型プロジェクトからの要請にあわせて直ちに用地提供を可能とすることの意義は将来においても同様ではないでしょうか。我が社の存在意義はそこにあると考えております。  むつ小川原開発の今後の取り扱いにつきましては、現在、国土庁を初めとする関係省庁、青森県、北東公庫、経団連、当社等関係者が協議を進めているところであり、できるだけ早期に結論を得るよう努めてまいりますので、皆様方の御理解をちょうだいいたしたく存じます。  それでは、引き続きまして補足的にカタログで御説明申し上げます。  お手元にこういうカタログがございます。開いていただきますと、左端の真ん中にページが打ってございますのでそのページで見ていただきますと、四ページでございますが、青森県の下北半島のつけ根のところに小川原港がありまして、小川原港の北にむつ小川原工業基地、赤く塗ってあるところがそうでございます。  東京から飛行機で約一時間十分で三沢に着きまして、そこから車で三十分ほど行くと基地に着くということでございます。日帰りも十分可能でございますし、風光明媚ないいところでございます。  次に、五ページをあけていただきたいと思います。この左半分の地図でございますが、色塗りをして色の変わっているところが全体計画面積の五千二百八十ヘクタールでございます。これは、先ほどの中田社長の御説明にもありましたが、ちょうど山手線の内側ぐらいの面積でございます。黄色いところは工業用地で、これから売るところでございまして、おおむね一千六百五十ヘクタールほどあります。それから、ピンク色に塗ったところが分譲済みでございまして、これが一千百五十ヘクタールほどございます。  次に、九ページをあけていただきたいと思います。九ページの上には石油備蓄基地のタンクの図面がございます。これが石油備蓄基地でございまして、陸奥湾の方から太平洋側を眺めた写真でございます。  それから、その同じく下半分にございますのが原燃のサイトでございます。ちょうど真ん中に再処理工場建設地と書いてありますが、ここに今クレーンが林立しておりまして、大変すばらしい工事現場になっておりますが、二兆円を超える投資をしているということでございます。まだ最盛期になっておりませんで、数年のうちには最盛期を迎えると思いますが、その場合には五、六千人ぐらいの人間がここで働くことになるのではないかと思っております。先生方には、大変お忙しいところでございますが、ぜひ一遍ごらんいただきたいと思っております。私どもいつでも御案内を申し上げます。  それから、十ページの上半分でございますが、これは環境科学技術研究所でございます。これは、原燃のそばでございまして、原子力と環境とのかかわりが主な研究テーマになっておりまして、そういう研究所が立地しております。  次に、十五ページをあけていただきますと、これは尾駮レイクタウンと申します町づくりを私どもでやっておりまして、その町づくりの様子を示しております。職住近接の町づくりをして、一見北欧風と言っておりますが、そういう町並みをつくっております。真ん中に文化交流プラザ、スワニーと言いますが、これは国際会議もできますし、同時通訳もできますし、数百人がいつでも会議ができるところであります。それから、ショッピングセンターとか銀行とか診療所とか幼稚園とか学校、いろいろとそろっている町づくりもやっておりまして、これはほぼ九〇%以上売却済みでございます。  これがカタログの説明でございます。  それから、もう一言申し上げますと、会社の設立は昭和四十六年三月、資本金は六十億円でございます。事業目的は土地を取得して造成して分譲するということでございます。それから、目下おります常勤役員は四名、職員は十七名になっております。  それから、主な分譲先は、今申し上げましたように日本原燃の八百ヘクタールですとか、石油備蓄基地の二百六十ヘクタールなど、六十三企業に計一千百五十ヘクタールを売っております。分譲価格は平米当たり一万円から二万二千三百円でございます。昨年の分譲実績といたしましては、約五十ヘクタール売れております。売上高は約四十億円でございます。  以上でございます。  どうもありがとうございました。
  128. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、富田参考人にお願いいたします。富田参考人
  129. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 御指名をいただきました野村総合研究所富田俊基でございます。  特殊法人の整理合理化と財政投融資のあり方という観点から、日本政策投資銀行法案につきまして意見を申し述べさせていただきます。お手元に資料がございますので、御参考にしてください。  財投といいますと、我が国に特殊な制度として受けとめられる傾向があるようです。しかし、欧米主要国にも我が国の財投に類似する制度があります。アメリカの九八年度大統領予算教書を見ますと、連邦政府は引き続きアメリカ最大の金融機関であると書いてあります。  その規模は、お手元の資料の表一にありますように、九八年末三兆ドルで、民間非金融部門、つまり個人と法人部門の負債残高の二〇%を占めています。日本の財投計画残高は九七年度末三百九十五兆円、そこから郵貯と公的年金の自主運用を除いた一般財投の残高は三百十五兆円で、民間非金融部門負債残高に対する比率は二四%でありました。また、ヨーロッパにおきましても、ドイツの復興金融公庫、フランスの預金供託公庫、イギリスの国家貸付資金、さらに欧州連合の欧州投資銀行などを通じて、長期金融の分野に対する政府の介入が行われています。  政府の介入は市場の失敗を前提としています。申し上げるまでもなく、市場で形成される価格の導きによって、経済全体で最も効率的な資源配分が実現します。金融もその例外ではありません。高い金利を支払う者に優先的に資金が供給されます。それによって、社会にとって最高の価値を持つ事業に資金が供給されるはずです。  だが、市場は常に完全ではありません。貸し出しに際して審査の費用が巨額にかかる、そして借り手にとって効率的な市場へのアクセスが制約されることがあるからです。こうした場合には、資金が社会的価値を反映した分野事業に供給されないことがあります。また、企業事業を行おうとしても、例えば環境対策のように利益が社会に広く拡散し、企業がコストを回収できない場合があります。  こうした理由で、民間では供給できない、あるいは供給できたとしてもそれが過小となる分野対象として政府の介入が行われています。表二にごらんのように、欧米主要国の財投の主な対象分野は住宅、中小企業社会資本整備などです。フランスは住宅に、イギリスは地方自治体向け融資に特化しています。アメリカとドイツでは、我が国と同様に対象は広範囲にわたっています。  このように、財投が存在する理由は市場の失敗にあります。しかし、それを是正しようとする政府もまた失敗する可能性があります。社会目標の実現を重視するが余り、政府による介入が過大となり、経済効率が犠牲になるという政府失敗政治失敗が生じ得るのです。財投による長期低利資金の供給が過大に傾き、民業を圧迫するという問題も指摘されています。  こうした政府失敗は次の三つの理由で発生すると考えられます。  第一は、市場がわからないことについて政府が確実にわかるという保証がないことです。市場の失敗は価格が最適な供給を行うために必要な情報を伝達できない場合に生じます。だが、政府も完全な情報を持っているわけではありません。  第二は、政策を実施する財投機関に親方日の丸と言われる非効率が発生する懸念です。民間企業が自己資本利益率、ROEなどの指標によって管理されるべきであるのに対しまして、特殊法人は民主主義によって目標が与えられます。この目標は民間企業に比べ多様で複雑です。このため、特殊法人は、廃止につながるような極端な非効率も、また民営化につながるような徹底的な効率の追求も避けようとするかもしれません。このため、そこそこの効率性を維持することになってしまいかねません。  第三は、民主主義のありようにかかわる問題です。財投が利用できると、ほぼ十年国債の金利で長期間にわたって融資を受けることができます。国債金利がベースであるので、民間金利に比べて長期で低利です。このため、個人や企業政治家を利用して財投資金の配分をふやそうとします。また、政治家も財投を利用して特定のグループに利益を誘導することで得票をふやそうとするでしょう。中小企業金融、地域開発金融、住宅金融が複数の財投機関で重複して行われてきたのもこのためかもしれません。  以上の三つの理由から、政府の介入も過剰となり、市場経済を混乱させる可能性があります。したがって、市場も失敗するが政府もまた失敗するという認識のもとに、政府の関与する範囲を必要最小限にとどめる必要があります。  この点から、資料の二ページにございますように、財投改革ではまず財投の出口機関の背後にある政策を精査、検討しなければなりません。そして、出口機関の役割と存続理由を見直し、運営の効率化を図っていくことが必要であります。  そのためには、類似する分野ごとに重複して存在する財投機関の統廃合を行うことがまず第一に必要な作業です。第二臨調や行革審でも検討され、懸案となっていた政策金融機関の統廃合が今回行われることは、こうした観点から大きな意義を持つものであります。  だが、特殊法人の改革はこれで終わってはなりません。今回と同様に、政治の力、民主主義の力で特殊法人を地道にチェックし、整理合理化をさらに推進することが必要であります。  特殊法人の整理合理化政治によってではなく、それを市場にゆだねようという考え方があります。財投機関債という考え方です。だが、投資家は、いつ整理されるかもしれない、またいつ補給金がなくなるかもしれない財投機関が発行する債券を果たして購入するでありましょうか。  財投機関債というあいまいな債券が市場の評価を得るためには、政府保証が必要となります。だが、政府保証債となると、幾ら非効率な財投機関であっても国民の負担で存続が保証されることになり、改革は進みません。  やはり特殊法人、財投機関の改革は政治によって行われねばなりません。市場には財投機関の存続、廃止、民営化を決める力はないのです。財投機関債というアイデアは政治不信と市場過信の産物にすぎないのです。したがって、財投機関債が発行可能とすれば、民営化が予定されている機関、そして財投機関というステータスとは独立した資産担保証券、ABSに限定されることになります。  さて、財投は金融的手法を用いる政策手段です。予算とは異なって財投は長期の融資ですので、返済にも長期間を要します。このため、財投計画の策定に当たっては、確実に返済されるかどうか、返済までにどれほどの国民負担が発生するのかを推計し、判断の材料にする必要があります。これが政策コスト分析と呼ばれるものです。  資料の三ページにごらんのように、政策コスト分析は財投機関が融資事業を行うことによって発生する将来の補助金などの国民の負担を現時点で推計し明らかにする仕組みです。政策コスト分析の導入によって、財投ならば当座は税負担が発生しないので拡大してもよいという政治の錯覚を抑え、政府失敗を抑制することに役立ちます。財投機関の政策コストが国民にディスクローズされることにより、財投機関のスリム化、効率化のさらなる推進が可能となります。  資料の四ページにありますように、アメリカでは財投改革として一九九〇年に政策コスト分析を導入しております。  我が国の財投改革にもコスト分析は不可欠です。たとえ国家プロジェクトであっても、関係者それぞれが負担すべきリスクと参加できる利益を明確に定める必要があります。そして、将来に発生するであろう国民負担を明確に示した上でプロジェクトを行うべきかどうかを決定するべきです。  環境変化とともに政策コストも変動いたしますので、政策コスト分析を毎年繰り返し行うことが必要です。新しく設立される日本政策投資銀行は言うに及ばず、すべての財投機関、ひいてはすべての政府活動に導入する必要があります。  私は、政策コスト分析こそが特殊法人改革、財投改革の中心となるべきものと考えております。  御清聴ありがとうございました。
  130. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、濱田参考人にお願いいたします。濱田参考人
  131. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 私も資料を用意してまいりました。お手元に四枚ものの資料がございます。一枚目に私が本法案について申し上げたい項目が並べてあります。二枚目以下は本日の資料でございます。  順にお話しさせていただきます。  最初に申し上げたいことは、政策金融の補完機能ということでございます。  これはいわゆる補完原則というふうに呼ばれているものでございますけれども、本法案目的のところ、第一条並びに第二十一条でそれが述べられております。「一般の金融機関の行う金融等を補完し、又は奨励する」という文言がございます。このことにつきましては、さきに行われました衆議院の附帯決議にもそれが書かれております。私が申し上げたいことは、補完ということの中身、意味でございます。  一枚めくっていただきまして、カラーの表をつくってまいりましたので、それをごらんください。  補完と申しましても、量的補完と質的補完というものがあるだろうというふうに私は考えております。一番わかりやすいのは左側にあります量的補完でございます。これは民間の金融機関がお金が足りないときに公的金融機関が出すというものであります。しかし、これは現在では余り重要でないというふうに考えております。今重要になっているのは右側の方に展開しました質的補完でございます。  さて、法案を読みますと、新銀行は、そこの緑のところに書きましたけれども、大きく二つの機能を持つようでございます。一つは、長期・安定資金の供給銀行である、お金を出す銀行だと。もう一つは、右の下の方に書きましたが、「知恵の銀行」というふうに私は表現しましたけれども、知恵を出す銀行である。この二つの機能によって民間の金融機関の活動をさまざまな形で補完していく。  そのさまざまな形というのが上の方に幾つか書いてございます。長期の資金を出すわけですから、それはいわゆる期間補完ということが成立いたします。民間の金融機関は基本的には短期の金融機関として出発しておりますので、長期の資金を供給するということは補完になる。  それから、「長期」の次に「安定資金」と書いてございますけれども、安定資金というのは、途中でお金を取り上げない、それからなるべく固定金利で貸す、そういうようなことを意味しておりますけれども、もしそういうことがあれば借り手の利益にもなると。民間でそういうことができないわけではございませんけれども、民間の金融機関の場合には調達が短期が主であること、それから変動金利で調達しなければならないという面がございますので、公的金融機関がその借り手利益の補完をすることができるということでございます。  もう一つ、隣に「企画・立案補完」というふうにございますけれども、これは、何か大きなプロジェクトファイナンスをするときに当初の企画を立てる、そういう機能であります。最初に知恵を出すということはなかなか利益になりにくいということでございますので、こういうことを政策金融機関がすれば民間の補完機能を果たすことになるということでございます。  それから、一番最後の方についていますのが「情報生産補完」ということでございます。大方の政府系金融機関というのは民間との協調融資という形をとりますけれども、もし政府系の金融機関審査機能、モニタリング機能、そういうものを十全に果たせば、その分、民間金融機関の負担は軽くなるということで「情報生産補完」というふうにここでは書いておきました。この線でつながっているところをごらんいただければおわかりになると思いますけれども、「知恵の銀行」であると。  法案には「補完」と書いてありますけれども、その内容を少し深めていただきたいというのが私の第一の論点でございます。  その次に、一枚目に戻りますけれども、第二十条の二項に回収等の確実性ということが書かれています。新銀行はおよそ四つの業務貸し付け債務の保証、社債の取得、そして出資という四つの機能を持ちますけれども、いずれも償還が確実と認められた場合に限りやってよいというのが二十条二項の規定でございます。これは償還確実性原則というふうに呼ばれておりまして、これも衆議院の附帯決議に書かれております。この点について意見を申し上げます。  この償還確実性の原則は日本開発銀行法十八条二項にもございます。また、資金運用部資金法にも同様の表現がございます。多分それを援用したものというふうに考えられますが、私のような金融を専門にしている人間からすると、やや問題があるというふうに考えております。  回収等が確実ということは金融の世界、投資の世界ではあり得ません。お金というものは、一度手放せば確実に戻ってくるということは金融論の学者には容認しがたいというか、そういうことはないのだと。そこにはリスクがあって、必ずそのリスクの見合いとして何らかのリターンがあるということでありますから、確実ということをここでお書きになるのはいかがなものか。回収等が見込める、あるいは回収等の見込みが極めて高い、そういう表現に改めた方が後々よろしいのではないかというふうに思っております。  三番目の論点は、貸し渋りでございます。  本法案の附則十六条以下には貸し渋り対策ということが書かれています。  新銀行にも貸し渋り対策として大きな期待があることは当然であります。しかし、新銀行対象が中堅企業等というふうに限られております。これは国民金融公庫、中小企業金融公庫等、中小企業専門機関との業務のバッティングを避けるという配慮からこういうふうに書かれたものと推察いたしますが、現状では中小企業をめぐる貸し渋りは非常に深刻な状況でございます。私は政府系金融機関が一丸となって貸し渋り対策を講ずる状況にあるというふうに認識しております。新銀行については本年度分で五千五百億円余の貸し渋り対策予算が既に決められておりますけれども、その有効な活用を期待するものでございます。  その次のテーマでございますけれども、政策投資銀行という名称でございます。これは法案の第六条です。それから、二十条の一項二号に出資機能があるのだというふうに書かれております。しかし、資料二というのをごらんいただきたいのですが、現在、新銀行の母体になる二つ銀行日本開発銀行北海道東北開発公庫の出資機能を見てみますと、ごらんのように非常に額は少なくなっております。融資に比べると約百分の一の機能でございます。日本政策投資銀行という看板を新しく掲げることになるわけですけれども、果たしてそれでは投資は今後拡充されるのかどうかというところが私のお聞きしたいところでもございます。  次は、もし新銀行ができ上がるのであればこういうことを望みたいということを並べてあります。  一つは「国際・地域銀行」ということでございます。これは妙な表現でございますけれども、新銀行三つ目的の一つに地域経済自立的発展への貢献ということがございます。  地方の時代が言われて久しいのですが、実のある政策は実施されておらず、現状では地方の衰退が目立っております。人口減少率は上昇、後継者不足による廃業は各産業に及んでおります。土地があっても仕事がなければ人は生きていけないのですから、こうした事態日本人の住む場所が失われているということを意味します。経済領土の縮小と言ってもよろしいでしょう。ですから、地域経済の自立は大変重要な問題でございます。  もちろん、地方、地域を補助金や公共投資漬けにしておけばよいという問題ではございません。地域それぞれが特色を出し、競争し、その結果、ベンチャー企業等の生成により、世界に通じる力を持たねばなりません。目下進行中の経済審議会でも、独自の魅力ある地域づくりを進めることにより個性豊かな国土形成が進められるべきだというふうにしております。グローバルな時代地域経済の自立にはそれなりの国際的センスも不可欠であり、母体両機関の培ったノウハウがこの点でそれぞれに生かされることを期待しております。  その次に、「環境・平和銀行」と書きましたけれども、新銀行の活躍する重要な分野として、環境保全、安全、平和のための投融資があるということは言うまでもないことだと思います。  平和産業に対する融資、国際交流施設、環境NPO、NGOなどへの支援が期待されるところでございます。  最後に、「ベンチャー支援銀行」と書きましたけれども、ベンチャー企業支援はまさに時の話題でございます。これに関しては母体両機関は既に先導的な役割を果たしておられます。  資料の三番目をごらんください。ここには母体両行が現在行っているベンチャー関連事業並びに先導的な事業を書き出してございます。実績も私のわかる限りつけ加えておきました。これを説明しようと思っていたんですけれども、ちょっと時間がないようですので省略させていただきます。後でごらんください。こういう先導的な役割を新銀行になっても引き続き維持してほしいし、さらに拡大してほしいというふうに私は希望しております。  「その他」というところでございますけれども、「その他」については一つだけ申し上げたいと思います。  本法案の二十一条に新銀行民間金融機関と競争してはならないという規定がございます。私はそれ自体に反対ではございませんけれども、民間に競争的な雰囲気を醸成することはあってもよいのではないか。例えば、地方でよく見られることなのですが、金融機関の寡占率は極めて高く、必ずしも競争的な条件がない場合、こういうときに公的金融機関がある程度のシェアを持つことは競争刺激的な雰囲気をつくるのに役立つということは考慮しておいてよろしいのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  132. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  133. 日出英輔

    ○日出英輔君 自由民主党の日出でございます。  きょうは、四人の参考人の方には大変いいお話を伺ったわけでございますが、限りある時間でございますので、早速伺いたいことを申し上げたいと思います。  まず、富田参考人に伺いたいと思っております。  富田参考人の書かれました幾つかを読ませていただいたわけでございますが、その中に財投ブラックホール論批判というようなものがあったように思います。私も、実は特殊法人の整理合理化の過程で、ある政府系の金融機関に在籍をしておりましたときの話でございますので、大変身近な気持ちで伺ったわけでございます。  どうも私の感じは、富田参考人が書かれている御趣旨と合っているのかどうかわかりませんが、個別の政府系金融機関の持っている問題の議論と財投全体の問題を混同した形であのときには議論をされていたのではないだろうかという気がするわけでございます。自分が所属している金融機関の問題点は自分もある程度理解しているわけでございますが、それと財投の仕組みが本当におかしいのかおかしくないのかという議論が尽くされないままに、整理合理化の議論がある種の政治不信といいましょうか、そういう背景の中で進められたような気がしております。確かに一般的に見ますと、補助金に頼らないで、要するに民間ではできないであろう超長期の低利貸し出しがどうして資金運用部の世界では可能なのかということについて十分に説明ができていなかったかもしれません。そういう思いもするわけでございます。  私は、そういう意味で、当時の整理合理化の議論の一番大事なところについて、何らかの形でこの議論が尽くされないままにあのときの結論が出たのではないか、あるいは今議論されております日本政策投資銀行法案等々の話が出たのではないかという感じが若干するわけでございますが、これにつきまして富田参考人の何らかの感想がありましたら伺いたいと思っております。
  134. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 財投改革ということで、非常に魔女狩り的な雰囲気の中で、どうも私が正しいと思う方向とは随分違う議論が世の中でなされてしまったように思うんです。  例えば、むつ小川原の問題であっても財投でお金を貸したから悪い、あるいは国鉄清算事業団の累積債務についても財投があるから悪いんだ、あるいは原発の事故が起こる、そうすると動燃に財投でお金を貸しているから悪いんだろうと。実はそういう事実はないわけですけれども、個々の特殊法人の問題点はすべて財政投融資の仕組みに原因があるという議論が非常に横行いたしまして、魔女狩り的な雰囲気の中で問題の本質を考えずに議論がなされていたようにも思います。  そういう意味で、先生が今おっしゃいましたように、財投はそういう不可解な伏魔殿でもなければブラックホールでもない、入り口と出口をつなぐ仕組みであって、自由化された金利に従いまして市場金利に連動した形で財投の仕組みができているんだと。とりわけ一九八七年に資金運用部資金法が改正されましてから、財投金利、預託金利を国債金利と連動して決めるというふうに定められておりますので、そういう意味では非常に透明な仕組みになった。ですけれども、いろんな誤解が出てきたというふうに感じるわけでございます。  そういう意味で、財投改革というのは、先ほどもお話しさせていただきましたけれども、出口の機関にまず問題があるんだと。では、その出口の機関は国民が選んだ政策を正しく実行しているのかどうかということについて、やはり民主主義的なチェックを受けるべきだということが基本であろうというふうに存じます。
  135. 日出英輔

    ○日出英輔君 それで、物事の順序というとなんでございますが、先生がきょうのお話でも政策コスト分析の議論をされておられます。私も自分で考えますに、政策コスト分析の姿がある程度見えてきて、これがある程度進みませんと財投の議論あるいは財投機関の議論、こういうものは本当に議論として進んでいかないんじゃないだろうかというふうに思っております。  先生のお話、時間があれだったものですから、もうちょっと詳しくこの政策コスト分析の点のところをもし補完していただける問題があれば、よろしくお願いしたいと思います。
  136. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 政策コスト分析という名前がついておりますものは、ある政策を遂行するに当たって国民負担が将来にわたってどれだけ投入されるのであろうかということを現在価値で示す手法でございます。  財投機関について考えますと、例えば住宅金融公庫である年に何万戸分融資するといった場合に、将来にわたって毎年利子補給が必要なわけですけれども、それが一体幾らになるのかということがまず示されます。それが多いか少ないかということも考えながら、その政策が国民にとって望ましいかどうかということを政治決定していくというのが政策コスト分析の役割であるというふうに考えております。  そういう意味におきまして、先生御指摘のように、改革にとって非常に重要なステップであるというふうに考えております。
  137. 日出英輔

    ○日出英輔君 次に、濱田参考人に伺いたいと思います。  今度のこの投資銀行三つの役割の中で私が一番注目しておりますのが地域経済自立的発展という分野でございます。  きょう御説明のありました資料、非常にわかりやすい図で描いていただいたわけでありますが、この新銀行三つ目的の中で、目的によって少しアプローチの仕方が違ってくるのではないか、あるいは政策金融機関の補完機能の発揮の仕方が少し違ってくるのではないか、そういう気もするわけであります。  余りこれにストレートに関係はしないかもしれませんが、例えば地域経済発展にかかわる分野で言いますと、民間の金融機関との協調の関係があったり、あるいは北東公庫が今までやってこられた幾つかの中に、産官学の連携のためのコーディネーターみたいな役割をしていたり情報の問題があったり、いろいろございます。  先生のこの図の中で、特に地域経済自立的発展という世界で補完機能をお話しになったときに、強調されるべき点がありましたらお伺いしたいと思います。
  138. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 日出議員にお答えいたします。  おっしゃるとおり、新銀行三つ目的を掲げているわけですけれども、最初の二つと最後の一つはちょっと性格が違うということは私も感じております。  御質問の趣旨は、地域経済自立的発展というところでどういう補完機能が主に働くべきかということであったかと思いますけれども、特に必要なのは、上にブルーで囲って四つ並べているもののうち、企画・立案機能、そして情報生産機能、やはり知恵の銀行の方であろうというふうに思われます。  ついでに申し上げれば、地域経済発展ということになりますと、国だけではなく地方公共団体等々にも絡んできますので、参加者がより多くなるし複雑になってくる。そこで、知恵の銀行の最後に書きましたけれども、調整機能、オーガナイザーの機能というものが非常に注目されるのではないかというふうに考えております。  以上です。
  139. 日出英輔

    ○日出英輔君 今の地域経済自立的発展に関連しまして、中田参考人内田参考人に、もしお答えがいただけるものであれば伺いたいわけでございます。  北東公庫のこれまでの仕事をいろんな資料で読ませていただきますと、大きなプロジェクトの遂行という仕事で大きな役割を果たしている一方で、かなりきめ細かい、地域の自立支援といいましょうか、そういうことも随分なさっているようであります。  新銀行がこれから仕事をやっていきますときの地域経済自立的発展に資するという仕事の仕方について、今までのような国主導型の大型のプロジェクトだったり、あるいは地域もかなり野心的な地域発展プロジェクトだったり、そういうものと、きめ細かいものと、いろんなタイプがあろうかと思うんですが、新銀行の発足に当たって、こういった新銀行の仕事の仕方について、何かお考えとか御抱負とか、こういうふうにした方がいいというお話がありましたら、余り時間がありませんけれども中田参考人内田参考人に、もしおありでしたら一言お伺いしたいと思います。
  140. 中田一男

    参考人中田一男君) 苫小牧東部開発の社長としてより、北海道でこういった仕事をしております一員として申しますと、北海道の場合、道経連が中心になりまして地域のクラスター、産業クラスターを育てていこうという取り組みをしておられます。それに対して北東公庫がバックアップをして、先ほど濱田先生がおっしゃったコーディネーターとしての役割を果たしておられますけれども、やはり銀行側と地域の人たちのそういう気持ちとがうまくかみ合うことが非常に大事なんだろう、そんな感じがいたしております。
  141. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) むつ小川原開発といたしましては、せっかくの大きな土地でございますので、私の希望としましては、ぜいたくは言っていられないんですが、大きな土地として一体的に確保しまして、それで大きな需要があるのが本当は一番望ましいと。少しずつ売っていたのではとても太刀打ちができないというような感じでございますので、どうしても大きなプロジェクト、そのために大きく土地があけてあるんだというふうに思っております。  どうもそのぐらいしかお答えできないのですが、よろしゅうございましょうか。
  142. 日出英輔

    ○日出英輔君 時間が参りました。終わります。
  143. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 きょうは本当にありがとうございました。  民主党・新緑風会の峰崎でございます。  順番どおり、中田参考人の方からお話をさせていただきたいと思います。  午前中、いわゆる法案質疑の中で、北東公庫の問題を中心にして実は苫東という第三セクターのあり方について議論したわけであります。中田参考人はかつて開発庁にもおられたというお話も聞いておりますし、北東公庫の方にもおられた、そして今は第三セクターの苫東会社におられると。そうすると、そういう経験を通じて、一体どこに今回の破綻責任があったのかということについてまずお伺いしたいと思うんです。
  144. 中田一男

    参考人中田一男君) 今回の計画が当初の予定どおり進まなかった一番大きな原因というのは、やはり当初のもくろみと違って日本経済の構造が非常に大きく変わってきたということだと思います。  一万七百ヘクタールというような大きな土地は、先ほど内田社長もおっしゃいましたように、恐らく通常の企業誘致というふうなことでこれを活用しようと思っても、それこそ百年河清を待つような状況になろうかと思います。  大規模工業基地として、あの地域の特殊性、特異性、優越性がございましたけれども、むしろこれから先、国際空港が間近にあり、それから港湾が間近にあるああいう場所ですから、必ず大きな使い道というのは出てくるんじゃないか、そのために備えていくというふうなことでこれまでの失敗を生かしていく、こんなことができればなと思っております。  世の中の構造が変わっていきましたときに、それにきめ細かく対応していければまた違ったシナリオができたのかもしれません。しかし、いろんな思惑がございました。地元の方々は、特に苫小牧東部開発地域については、ここに大きな工場を持ってこよう、製造工業立地をしてほしい、北海道産業構造をもっともっと二次産業をふやすという方向で努力したいという思い入れが非常に強くございました。  それが、例えば石油備蓄基地を導入するときにも、それではというふうな反対の声が上がったり、それから先ほどちょっと申し上げましたが、平成七年に複合開発ということで都市機能をこの地域に持ってこられるというふうに緩和が図られましたときに、首都機能のようなビッグプロジェクトを短期間でやり遂げようと思えば土地の問題が一番大きなネックになる。その問題について幾らでも協力できる場所はあるということで、地元の方々に首都機能の移転の誘致をしたいということを申し上げましたときに、何人かの方々から、苫東工業基地としてスタートしたんだからやはりそういう方向でもってやってもらえないかというような御意見があったりいたしました。  そういう思惑もあり、なかなか世の中の変化に対して機動的に対応していくのは難しいなという感じがそのときいたしました。
  145. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 また中田参考人に伺いますが、今のお答えを聞いて、確かに世の中は絶えず変化するわけです。これからも変化するだろうと思うんですが、その変化についていけなかったと。では、なぜついていけなかったのか。  午前中にもちょっと指摘をしたんですが、先ほど中田参考人の方からも、いろんな関係者との調整に手間取りましたとかさまざまなことを指摘されていましたけれども、そうすると、苫東会社の社長さんとして、第三セクターであるがゆえに官民のさまざまな関係者との話し合い、調整、そういったことに大変なエネルギーを注がれて、本来の企業、会社という組織をある意味で引っ張っていくといいますか、そういう点が何か乏しいのではないかという印象を受けたんです。  その意味で、これからもまた新しいスキームの中には第三セクターが入っているわけでありますが、そういうあり方の欠陥みたいなものが今回露呈されているんではないかというふうに思うんですけれども、その点はどのようにお考えでしょうか。
  146. 中田一男

    参考人中田一男君) 会社の立場といいますか会社の仕事は、苫東基本計画に沿って、あるいはその段階計画に沿って、北海道から土地を譲り受け、造成をし、ユーザーに分譲するというのが仕事でございました。  峰崎先生がおっしゃいますように、それを進めていくためにいろんな関係方面との調整というか、会社側からいえば要望という形になるわけですが、いろんな要望はその都度やってまいりました。  しかし、土地を分譲するのが会社の役目でございますが、実際大きな工業立地というふうな需要はなくなって、柏原地区を小口で分譲していこうという方向に転換したときに、私は当時は北海道開発庁におりましたけれども開発庁の責任者として頭に浮かんだのは、もともと短期間に仕上がるであろうと思って第三セクターでスタートしたこの事業が非常に長期にわたるということであれば、この仕組みではとてもうまくいかないんじゃないか、何とかそこにメスが入れられないか、そこが一番の問題だというふうな感じはいたしておりました。  ただ、その当時、必ずしも会社の資金繰り等について窮迫したという状況ではありませんでした。非常に長く時間がかかるということで、いずれ問題が顕在化するんではないかという問題意識は持っておりましたけれども、なかなかそういう段階では方向転換を図ることが難しかったというのが実感でございます。  今回、私どもの会社は協調融資団を組成することに失敗をいたしました。これは、ある意味では第三セクターで民間の資金を導入したからこそ、民間の金融機関の方がこのプロジェクトをこの考え方でやっていくのはノーだという判断をされて私どもの会社が立ち行かなくなったということですから、ある意味では市場の力をおかりしたんだな、こんな感じすらいたしております。
  147. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 中田参考人、今お話を聞いていて、開発時代にもこれは先行きどうなるかなという心配をされていたと。  私は午前中ずっと開発庁の方にもお話を聞いて、閣議決定をされて計画を立てている、この責任はやはり計画を立てたという点においては開発庁にあったわけです。開発庁がそういう計画を立てて、そして国、道、関係市町村、民間が入って苫東会社、第三セクターがつくられています。そういう関係団体のもとで限られた目的をやる第三セクターの会社になってしまっています。  そうすると、計画を立て進行管理をすべき責任は一体だれにあるのかということになると、社長さんみずからはもちろんこの会社の目的に向けて頑張るんだけれども計画を立てその進行管理を、国策としてのナショナルプロジェクトを進めていくとなると、これは主として開発庁の方に大きな責任があるんではないかという印象を私自身はなかなかぬぐえないわけです。  確かに追い貸しをしていった、そのことが金利を上乗せして土地の値段が高くなってますます売れなくなっていくというようないわゆる現象面はいろいろ出てくるんですが、そこを進めていくときの仕組みの中に問題が生じていたんではないのか。そこを改革しないと、次の新しいスキームも、いや今度は金利を返さなくてもいいお金なんだという意味で何かまた比較的安易に流れていくんではないかという気がしてならないんですが、そのあたりについては社長さんとしてはどのようにお考えですか。
  148. 中田一男

    参考人中田一男君) 私どもの会社の失敗から学ぶとすれば、非常に長期にわたって続くであろう事業を借入金という資金源でやっていくことは不可能だということだと思います。  そういう意味で、新しい会社のスキームは資本金という形で土地を取得する、したがって金利に追いかけられるということが少なくともなくなるわけです。しかも、私どもの会社は年間五億ぐらいの専用埠頭の収入がございます。その収入の範囲の中で固定資産税の支払いだとか人件費、物件費等の経費の支弁ができる。したがって、新しい会社は仮に一坪も土地が売れなくても赤字が出ないという体質の会社ができた。そこで、この土地を長い時間かけてでも立派に使っていこうということが可能になる仕組みです。  これまで仕組みについていろいろ私ども要望しやってまいりましたけれども、そういう点では今度のスキームは一歩前進だというふうに考えております。
  149. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そこで、富田参考人に伺いますが、今の苫東開発問題との関連で、先ほど日出議員の方からも最後にお話があった政策コスト分析です。  苫東のこういう会社にお金を出資したりするわけでありますが、そういうときに政策コスト分析をやってくださいということを依頼するような機関があるのか。それは我々国会の方から、例えば国会の予算審議のときにこういう財投も審議をすることは当然ですが、御指摘の民主主義の力でというのは国会で十分議論してくださいという意味だと思うんですけれども、そのときに私たち自身が今おっしゃった政策コスト分析という手法を使えるような機関、ツール、手法、そういったものが日本には存在をしているんでしょうか。その点をちょっとお聞きしたいんです。
  150. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 政策コスト分析でありますけれども、今お話しのような国家的なプロジェクトの場合でありましても、大きなプロジェクトでも、だれがどこまでその事業のどの部分について責任を持つのか、生まれる収益はだれが受け取ることができるのかというそのプロジェクトの仕組みをやはり明確にしておくことが大前提になるわけでございます。  大事なことは、計画計画で、どんどん建物をつくるなり用地を造成するということだけに着目しがちなんですけれども、当然これは将来世代の大きな税負担となってはね返る、そういうことをやはり前提にしなくてはならない。では、そのコストはどれだけかかるかということにおいて将来世代の負担ということを明らかにする、そういう位置づけにおいてコスト分析が重要であると思います。  そういたしますと、将来世代からこの負託を受けている役所はどこかといえば、これは大蔵省なわけでして、大蔵省においてコスト分析ということを行っていくことが当然の仕組みであろうというふうに思います。  そこで重要なことは、これまでですと、一度国会に数字が出ますと、コスト分析は推計値ですので、それが一度出ると、これはちょっと違うじゃないか、翌年出すときにまた違うじゃないかということで議論が紛糾しかねないわけです。そこはアメリカにおきましても、九〇年に導入して以降、毎年毎年そのコスト分析をやって事態の変動に対処しようということでありますので、通常出る予算とは違った性格であるということも議会においては認識されておく必要があろうというふうに存じます。
  151. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もう時間も少なくなったので、最後に濱田参考人にちょっとお聞きしたいと思うんです。  北海道新聞の五月二十三日、「寒風温風」というところに、先生は衆議院の審議を振り返られて、「報道で見る限り、審議内容は少々お粗末だ。いわゆる苫東の損失処理ばかりに焦点が集まり、肝心の新銀行の機能についての議論があまり聞かれない。参議院が存在意義を示す良い機会だ。」というふうに指摘をされております。きょうの中身というのは多分にそのことを意識されて、こういうことを議論してもらいたいということだったと思うんです。  一つは、この図でございますけれども、長期・安定資金の銀行というのは非常にわかりやすいというふうに思いますし、これからの政策金融の一つの大きなポイントだと思うんですが、知恵の銀行というとき、どこの銀行もこれからはきっと知恵の争いになってくるのかなというふうに思っております。  そういう意味で、この新しく政策投資銀行として出発する金融機関としてはどういう分野における特化をしていった知恵なのかなというのをもう少し明確に出していただければなというふうに思ったりしているわけであります。モニタリング機能なんかもこれからは普通の民間企業ですら恐らく出るだろうと思いますが、その意味でいうと、やはり民間が融資しにくいような分野対象の中心になるのかなというような思いを持ったんですが、そのあたりが一点でございます。  それから、附則にある貸し渋りの問題ですけれども北海道大学の濱田先生ですから北海道の現状は非常によくおわかりだと思うんですが、先ほどおっしゃった意味は、新しい政策投資銀行は貸し渋り対策に中小企業も含めてもらいたい、こういう趣旨であったのかどうかということを確認させていただきたいのであります。  最後に、少々恥を忍んでお聞きするのでありますが、ベンチャー企業支援のところに産学官の連携でTLOと書いてあるのはどういう略なのかなということです。英語というか頭文字で書いてありました。多分テクノロジーというものを中心にしながら産学官の連携をするようなことなんだろうと思いますが、単純な質問で恐縮でございますけれども。  そして、その上の、上から四行目ですが、日本開発銀行が二二%を出資するというふうに書いてありますが、これはどこに何を出資しているのか。お金を出していることについてはわかるんですが、何に対して二二%出資しているのかということについても、単純な質問でございますけれども、教えていただければというふうに思います。  ちょっと時間が長くなりましたが、以上でございます。
  152. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 峰崎議員にお答えします。  新聞の記事を書いたときはまさか自分が参議院に呼ばれるとは思っておりませんでしたので、多少言いたいことを書かせていただきましたけれども、御質問は四点ございます。  簡単な方から申し上げます。一番最後の二二%出資、資料の三でございますけれども開発銀行が二二%出資というのは、その二行上にあります新規事業投資株式会社というところに開発銀行が二二%現在出資しているということでございます。  それから、TLOという言葉でございますけれども、これはテクノロジー・ライセンシング・オーガニゼーションというアメリカの言葉ですが、技術移転会社、特許事務所のようなものでございます。現在、文部省と通産省が共管で大学等技術移転法という法律が昨年八月にできまして、それに基づいて全国の主要な大学に設置したらどうかという話で進んでいる計画がTLOでございます。  ついでに申し上げますと、北海道大学でもこの話は進んでいるんですけれども開発銀行の方にお世話いただいている。それから、私の知る限り東北大学が一番進んでいるんですが、そこでは開発公庫の方が非常に貢献をされたというふうに聞いております。  さて、一番目の知恵の銀行の御質問ですけれども、冒頭に申し上げましたが、最初に知恵を出すということはなかなか元の取れないことなんです。政策系金融機関に求められているのは多分最初に知恵を出すことだろう。というのは、最初の知恵は実現するかどうかわかりませんから、実現しないとこれは企業としてビジネスにならない。そのビジネスになるかならない段階で最初に知恵を出すというところが政策金融機関の一つの役割であろうというふうに思っています。  それから、もう一つ政策金融機関に求められるのは非常に大きなプロジェクトです。苫東の場合にはうまくいかなかったんですけれども、非常に大きなプロジェクトを企画するというのは、例えば地域銀行等ではなかなか難しいことであります。そういうことをやってほしい。量的補完の方は大したことはないという話をしましたけれども、実は新聞記事に書きましたように、新銀行は八千六百億円という巨大な資本金を持つ、恐らく世界最大の金融機関になります。ですから、そういう大きなプロジェクトを企画立案し、資金的にも応援する能力を十分備える機関であるというふうに思われます。  それから二番目、貸し渋りの話でございますけれども、これは議員がおっしゃったとおり、中堅企業等というふうに限定をつけないで、この際、平成十三年三月三十一日と法律にも期限が切ってございますので、そこまでは中小企業を含めて貸し渋り対策を一丸となってやっていただいたらいかがかというふうに思っております。  以上でございます。
  153. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ありがとうございました。
  154. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 公明党会派を代表して質問させていただきます。  まず、中田参考人にお伺いしますが、内田参考人も同じことでありますが、先ほど中田さんの振り返っての経緯の御説明を拝聴しておりまして、苫東株式会社が設立されたのは昭和四十七年ですね。それで、用地の先行取得はさらに進んでいったわけですが、苫小牧東港の建設に着手したのは昭和五十二年だったですね、私も当事者の一人でございますけれども。  ですから、そのころをずっと思い起こしているわけですが、港湾整備五カ年計画に苫小牧東港とむつ小川原港の整備計画が入って、重工業の基地をつくろうと思い立ったころはまだバブルも膨れ上がる途上にあったわけで、重厚長大型の産業はさらに隆盛を続けるであろう、そういう感じがありました。  この五十二年度の港湾建設に着手する時点の議論を思い起こしますと、既に第一次、第二次オイルショックも終わりまして、その後急激な円高で苦しむわけですけれども、一つの時代が終わったという認識がかなり広まっておって、本当に計画どおりに工場が立地されるのか、かなり疑問を持つ向きがふえておったですね。  ですから、ただいまの峰崎議員の責任論で私もどうなのかなと思って聞いておりましたけれども、この大プロジェクトが、途中で引き返すことができる、あるいは中断をするなり計画変更をするなりというのが可能だったのは、本格的に造成を始め、あるいは港湾事業に着手したこのときだったのかなと思うんです。これはもうしようがなかったのでしょうかね。主計局的な査定ということで考えれば、金利負担がもうどうしようもないんだ、早く事業化をしてくれということで、何か一斉に責め立てられるような雰囲気だったような記憶がありますし、同時にこのままでいいのかという懐疑論もかなりありましたからね。  どうでしょうか、この苫東あるいはむつ小川原の会社の経営にタッチをしておられて、振り返ってみて、どこかでこういう大規模なプロジェクトの進行を思いとどまれる場面や仕組みがあったのかどうか。そういう流れになってしまったら全く不可能だった、やっぱりここまで来るのはやむを得ぬことであって、今さら責任論を言われてもしようがないということなのか。これは感想だけでも結構ですから、ちょっとお聞かせいただけたらと思います。
  155. 中田一男

    参考人中田一男君) 北海道の場合、昭和四十四年度から土地の先行取得が進んでおりました。したがって、ほかの大規模工業基地の候補地よりはかなり勢いがついておったと思います。当初は、四十七年からすぐに造成を始めて、四十八年からは分譲しようというような勢いで進んでおりました。それがいろんな事情でおくれてきたわけですけれども関係者にとっては一日千秋の思いで着工を待つというような状況だったと思います。  確かにオイルショックがございまして日本経済の基盤というのは大きく変わったわけですけれども、それでも高度成長の余韻もありましたので、本当に変わったのか、また戻るのかということについては、必ずしも一〇〇%変わったと判断をするのは非常に難しかったんじゃないか。したがいまして、それこそ息せき切ったように港湾建設が進み、また必要な道路の基盤整備が進みました。  しかし、その後、非常にペースダウンしております。当初の予定に比べればかなり、需要を見ながら投資をしていくという点ではある意味見直しが行われております。港湾なんかを見ておりますと、ある程度まで投資しないことにはそれまでかけたお金が全くむだになる。ある程度防波堤ができて、静穏度が高まって、埠頭の長さは長くなくていいけれども、船が入ってきて荷役ができるというところまでが一段落ではないだろうか。そういう点では、そういう需要を見ながら、今も投資計画を絶えず見直しながら進んでいるんではないかなという感じはいたしております。
  156. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) オイルショック等の経済環境の変化の中で、このプロジェクトを続けていくか続けていかないかということは非常に問題になったそうでございます。当時、取得済みの土地が大分ございましたので、取得済みの土地を有効に利用しようということで継続が決まったというふうに聞いております。  その後ですけれども、ちょうど昭和五十四年に石油の備蓄基地を立地してくれることになりまして、これで大型のプロジェクトが入ったので一息ついたんだと思います。その後、昭和六十年に原燃の立地の話が大体決まりまして、六十年、六十一年、六十二年、六十三年ぐらいはちょうど原燃さんが土地をお買い上げになる時期でございまして、我が社にとって最もよかった時期ではないかと実は思っております。それは悪いことじゃありませんけれども、そういうことがあって検討がおくれたんだと思います。  その上に、これも私どもにとってまことにありがたいのですけれども平成五年になってからは、通産省、青森県、経団連、それから北東公庫、私どもの会社も入りまして五者でいろいろ協議しております。その中で、我が社に対しまして総合的な支援策というのをつくっていただきました。これはいろいろありますけれども、土地をもっと売ろうとか、金利を安くしようとか、五項目ほどあるんですが、それが平成六年から五年間の予定で総合的な支援措置が講じられました。  そういうことがありまして何とか食いつないできたのでございますが、おととしの暮れに金融機関から実際にはもうお金を貸してもらえなくなりまして、元金はそのままにして金利だけは何とか私どもの営業収入で払って過ごしていたんですが、去年の十二月にはその支払いもできなくなって、まさに元金の支払いを猶予してもらうという状態になっております。  まことに申しわけないのですけれども、そういう事情でございまして、折に触れて我が社にとって言うならば神風が吹いたといいますか、そういうことがありました。  それからもう一つ申し上げますと、青森県で、現在でもやっていただいておりますけれども、新しい計画の骨子といいますか、それを今盛んに練っておられまして、時期はよくわかりませんけれども、それが近くまとまる予定になっております。そういうのがございます。  皆、我が社にとっては大変ありがたいことでございまして、抜本的な検討ができなくなったといいますか、なかなかやりにくかったということはあるのではないかと思います。
  157. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 むつ小川原も苫東も同じ時期に同じようなプロセスで立ち上がって、同じように失敗しているわけですね。だから、たまたまここが失敗したということじゃなくて、これは明らかにそういう時代的な変化というものを結局取り入れ切れなかった。どこかでこれがこうならないで済むための決断というのがあり得たのか、あるいはシステムの問題としてあり得なかったのか。私はむしろシステムの問題だと思って、これは大蔵大臣でもおられるときに質疑をさせていただこうと思っております。同じ時期に同じことが起きているということですから、この教訓には大いに学ばなければならないだろうと思って伺ったわけです。  続いて、富田先生にお伺いします。  財投改革論というのは出口の問題が一番大事だというのは私も賛成なんです。ところが、出口の議論が余り厳密にされないまま、その資金だけは郵便貯金の強制預託を廃止する、一応そういう形で財投改革がなされたということになっているんですけれども、私はこの委員会で何度もこの問題を取り上げておりまして、そんな中途半端な議論はなかろうと言っているわけです。  先ほどの御説明には必ずしも詳しく入っておりませんでしたが、先生のきょう出されたメモには「預託廃止・自主運用の問題点」ということで、郵便貯金という言葉は直接出てきておりませんけれども、郵便貯金の預託を廃止したことについてどういうふうな問題意識でいらっしゃるのか。  私は、むしろ出口の議論、これももっと吟味しなきゃ本当はいけないんでしょうけれども北東公庫なり開銀なりを含めた財投機関の存在価値というか存在理由というのが認められるとすれば、その原資はむしろ今政府部門で調達している資金の中身からいえば一番ふさわしいのは郵便貯金だろう。そっちだけ切り離しておいて出口はこのままでいいというのは、どうも議論として片手落ちだというふうに思っておるものですから、ちょっと先生のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  158. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 財投の問題が出口機関の問題であるというふうに申し上げたわけですけれども、これまでの多くの認識として、入り口で郵便貯金がどんどん集まるので、それがそのまま財投に使われていていろんな問題が起こっているんじゃないかという流れで改革がなされたんだと思うんです。しかし、基本的には財投計画として国会でも当然議論がなされ、あるいはそれぞれの財投機関はその背後に政策を担っているわけでありまして、まずはその財投機関の担う政策でそれをきちんと検討し、そしてそれを財投機関が的確に遂行しているかどうかということが議論されるべきだというふうに考えるわけでございます。  そして、自主運用の問題でありますけれども、これは民間企業であれば自分で集めたものを運用するのは当然なわけですけれども、公的な信用で集めるというものであれば、それはやはり国会の議決対象、厳正なる民主主義の手続のもとに運用を決めるのが基本的な物の考え方だろうと思うんです。そういう意味におきまして、自主運用という問題について何か余り注目されないうちに決まってしまったということについては、私も今日非常に疑問に思っていたんです。  ことし、アメリカの連邦準備制度のグリーンスパン議長が、日本語で言えば自主運用に当たると思うんですけれども、社会保障基金の一部を株式で運用するということにつきまして、この資料にも書きましたが、クリントンの提案に対しまして極めて強い口調で何回も反論されているのがこの自主運用の問題だろうというふうに私は存じます。
  159. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私も全く同じことを言っているものですから確認的に伺ったんですが、今五十兆ぐらい既に郵政省は自主運用をしています。これだって、五十兆の自主運用をやるというのはすさまじい話で、所得税だって今二十兆かそこらしか入っていないんでしょう。一方では、どかんと五十兆という資金を野田聖子大臣のもとで自主的に運用して、損をしないというようなことを言っておられるのは僕は奇妙な制度だなと思うんですよ。  郵便貯金は、強制預託の廃止ですから、あるいは自主預託でやっていくというのかもしれませんけれども、極論すれば、今財投資金を担っている二百五十兆が、どれぐらいの時間がかかるかは別にして、自主運用にシフトしていっちゃう。それを先生の言われるように、国会の議決も経ないで自主運用しています、損しないように運用しています、そんな制度があるはずはないと言って私はここで何度も大声を出しているんです。だから、財投の改革論というのは出口ももっと本当は議論しなきゃいけないと思うんです。  今、濱田先生も量的補完とかいろいろ言っておられるわけですが、どうも郵便貯金がどんどんふえて、預託原資がいっぱいあるから、財投というのは財投機関を通じて金融の量的補完ができるという大前提に立ってしまっているわけです。だから、量的補完というのが簡単に出てくるような気もするわけで、私はその役割も本当に必要なのかということで議論し直す必要があると思います。  意地悪く言うわけじゃないけれども、北東開発公庫が初めてつくられたときの地域開発政策金融必要性と今の必要性は違っているはずですから、これから苫東やむつ小川原のような大規模プロジェクトを本当に国家が率先してやっていく時代がどこまで続くのか。そこが、やっぱり地域開発に対する金融という意味も変質しているはずですね。  それから、開銀だってもとは傾斜生産方式で幼稚産業も含めて経済の成長の基盤をつくろう、だから傾斜的な融資をやろうというのが開銀のスタートだったはずであって、そういう要請というのは今の産業構造を見ると私は違っていると思うんです。ベンチャーがありますから、むしろ四十億、五十億でよくできたという議論じゃなくて、ベンチャーはもっと強調しなきゃいけないというふうには思うんです。  いずれにせよ、出口、入り口含めて財投の改革論というのは全くできていないという印象を持っているものですから、ちょっと一言ずつお二人の感想を、時間がありませんから短くお願いします。
  160. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 量的補完ということにつきましては、やはり昔の資金不足の時代とは違って随分様子は変わってきているように思います。したがいまして、政策金融としては、市場では供給できないところに限定するということに大きく役割を担うところがあろうかというふうに存じます。
  161. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 浜田議員の御質問にお答えできるかどうかわかりませんけれども、おっしゃるように、二百五十兆円ものお金が出口の定まらないままということはあり得ない。私は、当面、話が出ていますように、財投機関債とかそういう形でもって運用していくことになるんだろうというふうに思っております。  五十兆の自主運用という話がありましたけれども、これもいきなり五十兆になったわけではなくて、十年以上をかけて累積してこうなった。運用先のほとんどは実際にはまだ国債だと思いますので、そんなドラスチックにこんな大きなお金の使い道が変わってしまうということはちょっと問題じゃないかというふうに個人的には考えております。  以上です。
  162. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 終わります。
  163. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。  先ほど来、苫東、むつ小川原を初めとして、それから政策論についても議論があるわけですけれども、私も苫東には行ったことがあります。  それで、峰崎委員も議論をされておりましたけれども苫東にしてもむつ小川原にしても、経済情勢の変化、あるいは会社としては計画に沿ってやったんだというお話でありますけれども、やはりそれぞれのレベルで破綻に至った原因、責任をきちっと総括する、そして今後の処理をきちっとやることが本当に求められているというふうに感じております。  そこで、具体的に聞いていきたいと思います。  まず、中田参考人に伺いますが、分譲しているというお話ですけれども、土地が高くないかという話がございます。金利分がかさんで価格競争力がなくなったことがこの会社の破綻の一つの原因ということになっておりますけれども、周辺の工業団地との対比もしながら、今の価格というのは競争力がないのかあるのか、もしあるというならば価格以外の何が原因で企業が進出してこないのか、競争力がないというならばどれぐらい安くすれば競争力を持つことができるのか、これが一つです。  それからもう一つは、午前中も政府との質疑であったんですけれども、資産鑑定です。鑑定評価について、昨年十一月の北海道公共補償研究センターではない別の会社にやってもらうことになっている、苫東会社の方で依頼しているということでありますけれども、依頼先はどこなのか、どれぐらいの金額で依頼しているのか。とりわけ、その中で分譲済み宅地価格が一平米当たり八千円とか九千円というふうな形になっていると思うんです。それが高いという声もありますけれども、そうでないと言えるのか。その辺、まとめて伺っておきたいと思います。
  164. 中田一男

    参考人中田一男君) 分譲価格の設定でございますが、会社が当初四十七年にスタートいたしましたときにこの価格の設定が非常に難しくて、実際に価格の水準が決まったのは五十三年でございました。  その当時、どういう価格の決め方をしたのかということを調べてみますと、道内の近隣の各公共団体等がやっております工業団地の分譲価格というのが一つ参考になっている。それから、臨海部につきましては、石狩新港ですとかあるいは新潟の新港、そういうところで造成をし分譲しておられる実例が参考になっておりまして、一万ヘクタールを超える膨大な土地ですから、厳密に原価計算をしてコストを積み上げて価格を決定するというのは非常に難しいということもあったと思います。したがって、実際の価格を決める基準はむしろ競争相手の価格水準というのを頭に置いて価格設定をいたしました。  しかし同時に、どういう基盤整備をやっていくか、どういう造成をやっていくかということで積み上げたコスト計算でそれをチェックする、必ずしもこの価格であれば赤字は出ない、あるいはある程度利益が出るというふうなことをチェックしながら決めてまいりました。  それがベースになって、その後、価格改定を何度かいたしておりますけれども、一応価格につきましては通産省から補助金、利子補給をいただいております関係上、毎年事前にこういう価格で販売したいということを申し出て御承認いただいている。そういうことから、価格水準が高い低いということもございますけれども、価格が非常にリジッド、一度決めた価格を変えられないというような事情がございました。  実際にこのような価格政策のもとで仕事をやっておりまして、需要が非常にあるときはどんどん売れておるわけですが、需要がなくなってくるとぐっと売れ行きが落ちるわけでございます。北海道への企業立地自体が落ちてくる。その場合、苫東と、ほかの、例えば千歳に臨空工業団地というのがございます、あるいは苫小牧市の明野というところに工業団地がございまして、競争関係にあるわけです。引っ張り合いをして、勝ったり負けたりしております。  勝ったり負けたりしておる原因を調べてみますと、苫東の値段が高いから負けたという感じではございません。レベルとしては、これらの団地の値段より若干低い価格になっています。しかし、競争相手が例えば公共団体なんかでありますと、少し基盤整備をサービスするとか、いろいろな非価格競争力をお持ちなわけです。苫東会社の場合はそういうものが必ずしも十分じゃなかったということで負けた場合もございます。  企業立地を決めた原因あるいは立地をほかに移した原因等を聞いてみますと、価格が高い安いという理由は大体第四番目か五番目ぐらいの順位でございます。それよりも、例えば住居が近くにあるかとか、基盤整備がどれだけ進んでおるかとか、あるいは下水道等の設備がどこまで完備されておるかとか、そういったものが競争力を形成しているという感じがいたしております。  したがいまして、もし需要が出てくれば今の価格水準でも商売はやっていけただろう、しかし需要がない限りとてもじゃないけれども年間十ヘクタール、二十ヘクタールの大きな売り上げを期待することはできなかっただろうというふうに考えております。したがいまして、どこまで価格を下げたら売れるかというのは、必ずしも価格を下げることが大事なのかどうか。  私どもの仕事はエンドユーザーに土地を買っていただくということですから、仮に価格を半分にすれば将来上がるかもしれないというようなことで買いに来てくださるお客さんがいるかもしれませんけれども、それは私どもの仕事じゃないと思います。したがって、価格は低いにこしたことはありませんけれども、価格が高いために売れなかったという原因は比較的少ないんじゃないか、そんな感じがいたしております。
  165. 笠井亮

    ○笠井亮君 資産鑑定の方はいかがですか。
  166. 中田一男

    参考人中田一男君) 失礼いたしました。  私どもが新しいスキームのもとで土地の一部を出資いたします。そして、残りの土地を新会社に買っていただくことになっておりますので、私ども会社の立場からして、予算で積算されておりますような価格が妥当かどうかを確かめたいという気持ちで、株式会社関東不動産鑑定所というところに鑑定依頼をいたしております。評価の基準日は五月三十一日ということで、今作業をしていただいております。そういう状況でございます。  結果についてはできるだけ早くまとめていただきたいということをお願いしておりますが、きょうの時点ではまだ結果は出ておりません。
  167. 笠井亮

    ○笠井亮君 続いて、内田参考人に伺います。  今後の開発の進め方、計画についてなんですけれども、先ほどITER、国際熱核融合実験炉の誘致問題にもお触れになりましたが、苫東の方の資料を拝見しましたら、苫東の方でも今後の各種プロジェクトの中でITERが四百ヘクタールという最大規模で、しかも短、中、長期のプロジェクトのうち今後十年程度の短期に挙げられているんです。他方、むつ小川原の場合には、青森県のパンフレットを拝見しますと、見開き四ページ使って誘致を大々的に呼びかけられているという形になっていると思うんです。そこに一兆円の規模の投資効果があるというようなことも触れられております。  実はITERというのは建設そのものも未定だし、それから日本に来るかもわからない。諸外国を見ても手を引くような動きがかなり出ているということで、実現見通しが立っていないという現状にあると思うんです。それを苫東、むつ両方でそれぞれ大きな目玉として誘致し合っている形になっているわけですけれども、展望についてはどう考えているか。地上に太陽をつくる二十一世紀のプロジェクトと先ほどおっしゃいましたけれども、これまた苫東に行くかもしれないし、日本に来ないかもしれない。そういうのを見込みながらやっていくということになると、また同じようなことを繰り返すことになるんじゃないかと思うんですが、どのように考えていらっしゃいますか。
  168. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) ITERにつきましては、確かにほかにもまだ立候補をしておられるところがあるというふうに聞いておりますが、自由競争の世の中でございますから、地域で自由な競争をする分にはやっぱり競争場裏にあるというふうに考えております。ですから、何とか勝たなくてはいけないというのが一つあるわけでございます。  もう一つ、背景を言いますと、青森県知事を初めとしまして、商工会議所もそうですが、要するに青森を挙げて、それから経団連も一生懸命バックアップしてくれておりますし、そういう意味で私どもも一生懸命にやっているわけでございます。日本の原子力発電所から出る使用済み燃料を全部集める、要するに日本の原子力のある意味で中心となるような地帯でございますので、そういう原子力に貢献しているところでまた貢献できたらいいんじゃないかというふうに考えて頑張っているわけでございます。  アメリカの動きですとかいろいろ聞いておりますが、これは計画の一つとしてやはり外すことができないというふうに思っております。
  169. 笠井亮

    ○笠井亮君 引き続き内田参考人に伺います。  この会社設立が昭和四十六年三月ということですけれども、設立当初の資金計画はどういうものだったんですか。
  170. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) むつ小川原開発計画というのは、だれが立案して、だれがどういうふうに推進してきたか、またその責任はどうだというお問い合わせかと思いますので、そういうふうにお答えを申し上げさせていただきます。
  171. 笠井亮

    ○笠井亮君 いや、設立当初の資金計画に限ってでいいです。
  172. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) 当初の資金計画は、これは大分古いんですが、昭和四十六年の三月に当時の株式発行目論見書というのがございまして、その第一期計画、これは昭和四十六年から五十八年までを第一期計画としておりますが、その十三年間の年度別の資金計画がございます。  これは昭和四十七年に策定された青森県の開発基本計画の前のものでございますので、今我々がやっております計画面積よりはるかに大きい面積だったそうでございまして、総事業費は二千三百億円でございます。それが当初の資金計画でございます。
  173. 笠井亮

    ○笠井亮君 それは出していただけますか。
  174. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) もう大分古いものでございますから、私は現実には見ておりませんが、帰りましてよく捜してみたいと思っております。
  175. 笠井亮

    ○笠井亮君 それでは、現時点での資金計画、それから資金収支実績というのはどういうふうになっていますか。
  176. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) 資金計画は株式会社ですから当然ございますが、長期資金計画は必要に応じてつくっております。例えば、平成五年度から十年度までの総合支援措置が講じられておりますが、その五年間の長期資金計画というのがございます。それから、協調融資の関係の銀行などには逐一いろいろと資金計画を出しておりまして、そういうことをやって融資を受けていた事実がございます。
  177. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに、現時点でまとまった計画あるいは収支実績表、例えば苫東でいえば「苫東開発をふりかえって」という中に当初の資金計画と資金収支実績表の一覧があるわけですけれども、こういうものはむつも当然あるわけですね。
  178. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) 昨年の十二月からは言うなれば元利が払えない状態になっておりますから、そういう状態になってからはきちんとした資金繰り表ができているわけではございません、今の段階では。しかし、協調融資体制を組んでおりましたので、協調融資銀行に対する説明資料とか、そういうものはつくっていたわけでございます。
  179. 笠井亮

    ○笠井亮君 どうも聞いていて、時間がないのであれなんですが、会社としてやっていて、さっきも協調融資という話がありましたけれども銀行からも融資を受けながらやっていくわけですし、資金計画はどうなっているのか、それから実績はどうなっているのか、これはちゃんとしたものがないと、本来そんな会社というのはあり得ないと思うんです。先ほど戻ってからとおっしゃいましたけれども、今の時点できちっと、どういうものがあってどの時点で何を出して今どうなっているのかわかるものを、これは法案審議の中でも大事なことなので、ぜひ出していただくように検討をお願いしたいと思います。  残った時間はわずかなんですけれども富田参考人に伺います。  先ほど欧米諸国のお話もありましたけれども、本来、政府系金融機関に求められる役割というのは、中小企業だとか地域経済振興とか国民生活環境対策とか、そういう分野に対して低利で十分な資金供給を行うということが大事なものになっているんじゃないかと思うんです。  欧米にも財投と類似の制度があるというお話でしたけれども日本の場合とどの辺が一番違うのか。政策課題対象ということでは一覧表がございましたけれども日本のようにかなり広範囲に、景気対策も含めて何でもやるというふうに言ったらあれかもしれませんが、そういうものになっているのかどうか。その趣旨や違いの点についてはどういうふうに見ていらっしゃるか、お話しいただけないかと思います。
  180. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 国によってさまざま違っておりまして、政策の目的というか領域につきましてはお手元の資料でお示ししたんですけれども、仕組みとして、入り口と中間、そして出口に分かれているという仕組みのものもございます。  フランスとイギリスでは郵便貯金なり非課税貯蓄といったものが入り口にありまして、中間の資金運用部に相当するものといたしまして、フランスではお示しいたしました預金供託公庫、イギリスにおきましては国家貸付資金というのがございます。ドイツにおきましては、我が国政策金融機関をすべて統合したようなKFW、復興金融公庫というのがございます。生い立ちも、我が国の場合はガリオア・エロア資金だったわけですけれども、KFWはマーシャル・プランのお金でできており、中小企業金融等を行っております。  どこも共通しておりますのは、市場で成立する金利ということを前提にいたしまして、そこから政策的に優遇する場合には国民負担が発生するわけですので、それを明示するという考え方に立っているということだろうと思います。
  181. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間になりましたので濱田参考人には伺えませんでしたが、補完機能のところについては非常に興味深い話を伺いました。審議の中でもぜひいろんな形で生かさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  182. 三重野栄子

    三重野栄子君 社会民主党の三重野栄子でございます。  先生方、本日は大変いろいろ御示唆をありがとうございます。  まず、北海道開発庁から提示されています苫東新会社の収支見通しによりますと、売り上げも堅調に推移しておりまして、今後二十年間の配当金と内部留保の合計は五百六十四億七千三百万円となっておるようでございます。  こうした数字は達成可能だと考えられますか。濱田先生、中田社長にお伺いしたいと思います。
  183. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 新会社は今立ち上げる話が進んでいるところでありまして、この収支見通しを私に聞かれてもちょっと困るんですが、簡単にフレームワークだけを申し上げますと、これは中田社長にお聞きになった方がいいかもしれませんが、一応は無借金会社という形になるはずであります。  それと、先ほど説明もありましたが、港湾収入というものが固定的に見込まれておりますので、新会社が計画された形で立ち上がれば収益は上がると思います。ただ、それはコストをどのぐらい抑えられるかということにかかっているだろうと思います。  先ほど金額がございましたけれども、それについては私は承知しておりませんので、御勘弁いただきたいと思います。
  184. 中田一男

    参考人中田一男君) 私も詳しい金額は承知しておらないんですけれども濱田先生がおっしゃいましたように、この新会社は非常に腰を据えて仕事ができる体制になっております。土地の売り上げがふえればふえるだけ利益なり手元資金がふえていくという、ある意味ではマイナスがなくてプラスがふえていくというような仕組みの会社ですので、ぜひそういうふうに進んでいただきたいものだと願っております。
  185. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変希望が持てる方向性を伺っておりますが、先ほど濱田先生から新銀行に望むことをいろいろ伺いました。  先生は苫東問題を検証する会のメンバーでもいらっしゃいましたが、苫東新会社の将来につきましてはどのような展望をお持ちでしょうか、お伺いいたします。
  186. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 新会社の展望でございますが、私も会社経営の経験があるわけではございませんので、なかなか難しい質問でございますけれども、現在計画されているような形で進めば、これは黒字体質の会社ができ上がることはもうわかり切っていると思います。  ただ、その場合、問題になるのは前段でありまして、膨大な赤字を処理しなきゃいけないわけです。そのときには、現在交渉中だと思うんですけれども、民間銀行の債権放棄ですとかさまざまな損金処理ということをやって会社としては無傷になる、そこで出直すということになるわけです。そこを新銀行発足までにちゃんとやりなさいというのが閣議決定だと思いますけれども、それができるかどうかというところに私は注目しております。  繰り返しになりますけれども、新会社ができればそれなりの世帯と支出構造で運営されるわけですから、発足すればそんなに心配はないというふうに私は考えています。
  187. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変期待をいたしております。  それでは、富田先生にお伺いをいたします。  財投改革につきましては二つの選択肢が示されて、現在検討中であると伺っております。つまり財投債中心でいくのか、あるいは財投機関債中心でいくのか、財投改革実施が予定されています二〇〇一年四月が目前に迫っているのでございますけれども、まだそのイメージがはっきりしておりません。  富田先生は財投債中心でいくべきとのお考えと伺っておりますが、財投債は国債とどう違うのか、やや判然としない側面も否めません。その点につきましてもう一度詳細な御説明をお伺いしたいと思います。
  188. 富田俊基

    参考人富田俊基君) これまで郵便貯金、そして公的年金が資金運用部に預託されまして、それが原資となって財投機関に融資されるという仕組みであったわけですけれども、それが預託業務を廃止するということでありますので、財投機関が政策を遂行する場合に資金調達が必要になってくるわけでございます。  そこで、先生御指摘のように財投債でいくのか、財投機関債かという、分ければ選択ということなんでしょうけれども、まず財投機関債を考えてみますと、財投機関という政府出資の法人が債券を発行するわけでございます。当然そこには利子補給なり補助金なりが政策遂行のために必要でありまして、それが永続的に続くということであれば、財投機関債を出しても国民はそれほど混乱することなく財投機関債を買うかもしれません。  しかしながら、きょうも議論がございますように、大きな経済構造の変化ですとかそういうことが起こりますと、そういう永続性というのはなかなか保証できないわけでございます。あるいは財投機関の改革ということも必要になってくるということでありますと、財投機関債とは一体何ぞやということが人々の間で疑問が出てくるということになろうかと思います。  したがいまして、財投機関債で財投機関がお金を集める、ファイナンスするというのは非常に難しいことでありましょうし、私は市場のことを考えますと、それはほとんど困難だろうというふうに考えます。もしそれでも財投機関債ということになりますと、政府保証をつけるか、あるいは暗黙に政府保証がついているような債券として発行されてしまう。そうすると、財投機関債を発行した機関は、政府保証でありますので、税金で保証されているんだということでずっと改革努力も怠ってしまうかもしれないということになろうかと思います。  そういう意味で、財投機関債を発行するというのは極めて限定的な範囲でしか成立し得ないだろうと思います。その範囲と申しますのは、もう確実に民営化が予定されております財投機関、あるいは財投機関という特殊法人のステータスから独立いたしまして、その資産を完全に担保として発行される債券であろうというふうに考えられます。  これに対しまして財投債でありますけれども、これは資金運用部が一括して資金を調達するという形のものであります。現在の郵貯、年金の預託にかわって資金運用部が市場から資金を調達するというものが財投債でありまして、資金運用部は特別会計でありますので、当然国債としてそれが発行される。現在も国債は建設国債、特例国債、それから借換債という三種類のものが出ておるわけですけれども、四番目の国債として発行されるであろうと思います。  しかしながら、それは税金で、つまり将来の国民の負担でもって償還される建設国債、赤字国債とは違うという財政的な性格を持っております。財投債はその発行の担保として財投機関の資産が担保になっているという性格のものでございます。したがいまして、財投機関の資産、つまり財投機関が融資している先の貸出債権ですとか、あるいはさまざまな社会資本というものが担保になり、それらが生み出しますキャッシュフロー、例えばそれは住宅金融公庫からお金を借りている人が利子を返す、元本を返す、あるいは有料道路を使って料金収入を払う、そういうものが担保になって発行されるのが財投債である。財投債で発行された資金をこれまでの財投計画と同じように、あるいはそれ以上に議会で審議をし、市場でできないことを補っていくというのが新しい財投計画であろうというふうに考えております。
  189. 三重野栄子

    三重野栄子君 もうちょっと研究していきたいと思います。  続きまして、富田濱田両先生にお伺いいたします。  平成十三年三月末までの時限立法によりまして、開銀、北東公庫の両機関は、貸し渋り対策の一環として、社債償還資金や長期運転資金の融資を実施しております。臨時異例の措置としてやむを得ないという判断によりまして、我が社民党としても賛成をしているわけでございますけれども、今回の措置に対する両先生の率直な御意見をいただきたいと思います。
  190. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 私は貸し渋り対策ということについてはもう少し慎重に考えるべきことだろうと思います。と申しますのは、政府系機関が行って貸したお金が戻ってこないといった場合には、今の御質問にはなかったわけですけれども、信用保証協会の保証によります融資でありますと、それは戻りませんと将来当然国民の負担となってまいります。そういう意味で、重要なことは、保証があると民間金融機関が全然審査をしなくなってしまう。そういうことによって国民の負担が発生するとすれば、これは将来世代にとって、幾ら一時異例といっても非常に申しわけないことになるのではないかというふうに思います。  そういう意味で、保証をつけて貸し渋り対策をやるというのは、やはりモラルハザードと申しますか倫理の欠如を生む、それが国民負担を生むということをもっと明確に認識する必要があろうというふうに思います。  そして、お尋ねの貸し渋り対策としての社債償還資金、長期運転資金という問題でありますけれども、これについてのリスク開発銀行が負うという、リスクが明確になっておりますので、当然そこは開発銀行としてのリスク判断にもお立ちになって融資されるということだろうと思います。その分、保証によります貸し渋り対策よりは国民負担は軽減されるということも期待できようかと思います。  ただ、貸し渋りだから何でもありというのは、やはりこれは将来にとって禍根を残す危険ありと。そもそも市場経済とは何であるか。自己責任によって、また市場に立脚して経済活動を行うという原点を認識すべきでありまして、一時異例として十三年三月までには当然完了すべきことというふうに存じます。
  191. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 富田参考人の御意見は私もごもっともだと思っています。貸し渋りというのはやったら危ないですよと。そういう面は必ずあります。  そこで、私たちに求められているのは、これは我々の経済に対する一つの判断だろうと思います。だめになるような企業はだめにしてしまえというふうに割り切ってしまうのか、苦しいところをちょっと支持してやれば元気になる者がいるんだから、それは支持してやるべきかという二つ判断があって、貸し渋り対策をやるということは後者を判断したということだと思います。  だから、そこまでさかのぼって議論をするということではなくて、これは貸し渋り対策をやるということで皆さんが昨年議員立法をなさって決めたわけですから、私は今その方向に沿ってお話をしているわけであります。確かに貸し渋り対策をやればリスクは相当覚悟しなければなりません。  そこで、先ほどは申し上げませんでしたけれども、新銀行が時限を切って、時限を切ってということは、ずっとやっていればいいというのじゃなくて、ずっとやっていれば過保護になってとんでもないものまで抱え込むということになって問題ありということで時限立法という判断をなさったんだと思います。  新銀行がやるに当たって一つ追加して申し上げたいことがございます。三重野議員の御質問にもお答えする部分があるかと思いますけれども、相当なリスクを覚悟されなければならないということです。  そこで、これもぜひ当院で議論していただきたいんですが、本法の四十一条に新銀行の利益金の処分という項目がございます。四十一条にそれが書いてあるんですが、「政令で定める」というふうに、政令にゆだねる格好になっています。これは日本開発銀行法では三十六条でもって、法律で決めてございまして、貸出金の千分の三あるいは利益の二〇%を準備金として積み立ててよろしいと。銀行ですから確実ということはあり得ないというふうに私は最初に申し上げましたけれども、そういうやむを得ず起こる不確実損失に対してそういうもので対応していくということが開銀法では決まっているんですが、新銀行法に関しては条文になくて政令ということになっています。  私が申し上げたいのは、法律で書かなくてよろしいのですかということと、それから千分の三とか利益の五分の一という規定で貸し渋り対策に十分なのでしょうかと。ひょっとすると足りないのではないでしょうかという危惧があるということを申し上げたいというふうに思います。
  192. 三重野栄子

    三重野栄子君 先ほど濱田先生から回収等の確実性についても伺いまして、えっと思ってびっくりしたんです。今もお話しいただきましたが、私どもからしますと、本来、民が負うべきリスクが官に移転していることも影響しているんでしょうけれども、二銀行公庫のいわゆる政府系金融機関の延滞債権額は平成九年度末にはついに一兆円を超え、貸付金残高に占める延滞債権額の割合も約八・五%と高い水準に達しております。  償還確実性という本来の原則を思うわけでございますけれども、こうした数字を看過することはできません。何らかの手だてを講じなければならないと考えますけれども、それは今伺いましたような形でよろしいんでしょうか。
  193. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 今、三重野議員がおっしゃった数字を私は持っておりませんので、的確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、私が申し上げたいのは、ただいま三重野議員がおっしゃったように、計算の仕方によってさまざまだと思いますが、返済が確実であるというふうにたとえ法律に書いても、事実の問題としては必ず不良債権というのは生じる。金融機関というものはそれをいかに少なくするかということ、そのために審査をし、モニタリングをし、努力をする、しかし完全にゼロにすることはできないということを私は最初に申し上げたんです。  そこで、確実という言葉をここで使ってしまえば貸し渋り対策はできるんでしょうか。ベンチャー支援、ベンチャーというのは危ないという意味なわけですから、そういうことができるのでしょうかと。そこでもう既に条文と新銀行に対する期待とが相反してしまっているでしょうと。そこら辺のところを整理をつけていただきたいというふうに申し上げました。
  194. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。  終わります。
  195. 菅川健二

    ○菅川健二君 参議院の会の菅川健二です。  もうしばらくお時間をおかしいただきたいと思います。  先ほど来、苫東とかむつ小川原につきましては、経営上の失敗、それなりの責任という問題があるわけでございますけれども、幸いなことには広大な土地が残っておるということでございます。これにつきましては、中田社長はよく御存じですが、私のような中国地方、平地のない地域の人間から見ますと大変うらやましい土地でございまして、いずれ大規模な国家プロジェクト等が立地できるというような時期も来るのではないかというふうに思うわけでございます。  それにつけても、余り短期的に小規模な企業立地したりすることによってその土地が虫食い状態になるということを一番恐れなくちゃならぬのではないかと思うわけでございます。そういった点、今度の苫東の新会社については利息が膨らまないということなので、じっくり構えておれば時期が待てるというような状況でございますので、そういった面では少し腰を据えてやれるということで、将来的にはそれなりの展望が開けるんじゃないかと思うわけでございますが、中田参考人、いかがですか。
  196. 中田一男

    参考人中田一男君) 菅川委員と全く同じ意見でございます。  一昨年の十一月に協調融資がうまくなりませんで元利棚上げを要請いたしましたときに、私自身一番苦しみましたのは、下手をしてこのまま会社が破産状態に陥った場合にこの土地はどうなるんだろうか、やはり一括してちゃんと持っていくような体制ができるまで頑張らなきゃいかぬという気持ちで、職員ともどもリストラをやりながら頑張ってまいりました。やっと新会社に何とか、当会社は清算ということでなくなるわけですけれども、土地を引き継ぎ、またそれに附帯するような業務を引き継いでいただける状況が来たということでほっといたしております。ぜひ菅川委員がおっしゃるような形でこの土地が活用されますことを心から願っております。  ありがとうございました。
  197. 菅川健二

    ○菅川健二君 同じことでございますけれども、むつ小川原につきましては、やはりそのようなことで同様に考えてよろしいんでしょうか。内田参考人、ひとつよろしくお願いします。
  198. 内田隆雄

    参考人内田隆雄君) 私どもの本当に希望しておりますことは、せっかくの大事な広大な土地を、言うなれば国からお預かりしているつもりでございますので、それを虫食い状態なんぞにしないように一体として確保して、何とかそれで維持できる体制というものを早くつくり上げていかなくちゃいけない、そういうふうに思っております。
  199. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ苫東もむつ小川原も災い転じて福となすということで、将来の有効活用のために御尽瘁をお願いいたしたいと思います。  それから、濱田先生でございますけれども、先ほど政策金融機関についての二つのポイントとして、一つは知恵の銀行ということを申されたわけでございます。午前中も、最近地方団体の出資しておる三セクがどんどん破綻しておる、その中で開銀の融資に基づいておるのもかなりあるという話があったわけでございますが、いずれにしても三セクということになりますと基本的には地方団体が中心になっておるプロジェクトが多いわけでございます。地方団体はどうしても最初のプランニングの場合における採算性といいますか企業収益性、それについての見通しの専門家がいないということと、それから状況変化に対応して即決断し得る一つのメカニズムが十分働き得ないというようなことがあるわけでございます。  そういった点で、やはり政策金融機関として、そういった面で知恵といいますかアドバイスといいますか、そういったことを働かせて地域における三セクとか地域プロジェクトが効率的に執行できるように、あるいは効果的な事業実行できるように、そういった役割を果たしていただくというのが重要ではないかと思うわけでございますが、そういうふうに判断してよろしゅうございましょうか。
  200. 濱田康行

    参考人濱田康行君) 三セクについてですけれども、三セクというものが出てきたときには、これはいいアイデアだということでやったんだろうというふうに私は聞いておりますし、私も思っております。  三セクが破綻したのは、三セクの経営というかお金の集め方という点では悪いものではなかったというふうに思いますけれども、菅川議員がおっしゃるように、民間の企業ですとすぐ決めなきゃいけないことがいろいろな当事者がいるために決められなかったとか機動性を欠いたということでうまくいかなかったと。先ほどからお話があります苫東の場合でも、これは三セク以前に十三の省庁が絡んだという問題がありまして、そういうところから、決定をするということになかなか時間がかかるというような問題があったんだろうと思っております。  そこで、お答えなんですけれども、そうなりますと、どうしても調整者、そしてリーダーシップをとるという機能が非常に重要になってくる。特に国から県レベル、さらに県レベルから市町村レベルというふうに行けば行くほど参加者がふえるように日本の仕組みというのはできているんです。そういうところではメーンにお金を出す金融機関が調整者の役割を買って出るということが私は成功の可能性が高い方法ではないかというふうに考えております。
  201. 菅川健二

    ○菅川健二君 確かに関係者が多くて、しかも特に行政をやっておる者というのは経済に疎い場合が多いわけでございますので、経済行為としてきちっと対応できるのはやはり政策金融機関ではないかと思うわけでございまして、そういった面の役割というのは重要だと思うわけでございます。  それから、先ほど来財投の問題がございますけれども、財投については出口の問題というのが一番ポイントだということでございます。入り口でやはり生命維持装置がいつも働いておりますと出口も緩んでしまうというようなことがございまして、ある程度それを遮断してみてはどうなんだろうかという一つのシステムの再点検ということで財投の見直しということが出たのではないかと思うわけでございます。  そこで、入り口の大きな資金源としては郵貯があるわけでございますが、郵貯そのものは一般的には地域の小口の資金を集めて、それで今までは主に国家的なプロジェクトを中心にしていろいろな対応を図ってきておるわけでございます。今後、郵貯がある程度の自主性を高める、自主運用に決まっておるわけでございますけれども、実態面におきましても、やはり地域で集めたお金を地域に還元して地域振興に役立たせていくという役割も大きいのではないかと思うわけでございまして、そういったシステムも考える必要があるのではないかと思うわけでございますが、この点につきまして、富田参考人、いかがでございましょうか。
  202. 富田俊基

    参考人富田俊基君) 自主運用をしていくということで、地域振興に郵貯を使ってはどうかというのが先生の御指摘だったと思うんですけれども、私は国の信用で集めているものはやはり国会の場できちんと配分が決まっていくというのが筋だろうというふうに存じます。それと同時に、地方もその資金を調達する場合には当然金利が必要になってまいります。期間と金利というのは市場で決まるものをやはりベースとして決めていくべきだろうと思います。  したがいまして、地域振興といっても、民主主義のルール、それから市場経済のルールというものを前提にして、そういう二つの前提のもとに使われるべきだというふうに存じます。
  203. 菅川健二

    ○菅川健二君 いずれにしましても、財投の問題につきましては今後引き続き検討を進めなくてはならぬと思いますので、引き続き何かと御示唆をお願いいたしたいと思います。  以上で終わらせていただきます。
  204. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、長時間にわたり御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会