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政府委員(五味
廣文君)
金融検査マニュアルにつきましては、
金融検査マニュアル
検討会、岩原紳作東京大学教授を座長といたします各リスクの専門家によるワーキンググループでございますが、この
検討会におきまして
検討が進められまして、今月八日、先週の木曜日でございますけれども、「
金融検査マニュアル
検討会最終とりまとめ」というこうした大部のものでございますけれども、発表されております。
この取りまとめの過程で、中小企業あるいは中小
金融機関の
経営あるいはそれへの貸し渋りを助長するのではないかということがパブリックコメントで幾つも御
指摘をちょうだいしたわけでございます。こうした御
指摘も踏まえまして、この
検討会においてこれへの対応というものを
検討してまいりました。中小
金融機関の団体あるいは
借り手であります中小企業の団体からも詳しくその出されたパブリックコメントの趣旨などを聴取して
検討を進めたということでございます。
こうした聴取の結果といたしまして、一番皆さんが御心配になっていたのは、マネーセンターバンクと中小
金融機関が全く同じような
考え方で検査を受ける、同じ
基準で検査を受けるということになった場合、中小
金融機関にとって大変つらいことになるのではないだろうか、したがってなかなか
貸し付けが思うようにできなくなるということがあるのではないかと。また、
借り手の側の話でございますけれども、中小企業と大企業では財務の状況、帳簿の整理の状況等が違うわけでございますので、これも全く同じような発想でそこに対する
貸し付けの資産査定というものをチェックした場合、やはりどうしても中小企業に苦しいことになるのではないだろうか、これがまた貸し渋りを助長するのではないだろうか、こういったような御心配が中心でございました。
そこで、この
検討会では、マニュアルの適用に当たりまして、まず総論的に検査官はどういう
考え方でこのマニュアルを適用しなければいけないかということを述べております。そこのところにはっきりと明示的に、機械的な適用をしてはいけないんだということを記述することが大切だという御
議論がございまして、総論の中に「マニュアルの適用にあたっては、
金融機関の規模や特性を十分踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないよう
配慮する必要がある。」と、こうした一文を入れました。
金融機関の規模や特性に十分
配慮するという点がポイントであるということが
一つでございます。
それから、このチェックリストを適用いたしますときに、中小企業、
借り手の側に対する資産査定のあり方というものが問題になる可能性があるということでございました。これは本来貸し渋りの問題とは直結しないのでございますけれども、中小企業団体の皆様等の御心配もございましたので、自己査定結果を検証する場合の
考え方の中にこういう記述を明示しております。「特に、中小・零細
企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の
経営実態を踏まえて判断する」ということで、いわゆる帳簿書類が完備し所有と
経営とがきれいに分離をした大企業に対する資産査定のチェックの仕方とはおのずと違うやり方があって、そういう点に十分
配慮するようにという点を明示しております。
さらに、これだけでは心配だという向きもおありなようでしたので、信用リスクをチェックいたしますときの基本的な共通チェックリストでございますけれども、その中に健全な融資態度のチェックという項目を入れております。銀行なり
金融機関が
貸し付けを行うに際しまして、健全な融資態度、例えば健全な事業を営む融資先、特に中小・零細
企業等に対する円滑な
資金供給の実行が確立されているか、この点をチェック項目としてチェックリストに加えております。
さらに、当局が定める
金融検査マニュアルを
理由に、健全な事業を営む融資先に対する
資金供給の拒否や
資金回収を行うなどの不適切な取り扱いが行われていないか、マニュアルを口実とした貸しはがし、貸し渋りが行われていないかどうかもチェックをするという項目を追加いたしております。
いずれにいたしましても、
金融機関が融資を行うかどうか、貸し渋りをしないかどうかという点は、借入先の財務状況だけではなくて、そこの事業計画ですとかあるいは投資
効果ですとか、こういったものを各
金融機関が総合的に
経営判断として考えた上で実行していくということであります。
この検査マニュアルの基本的
考え方にも書いてありますけれども、
金融機関の本来の任務というのは適切なリスク管理というものを前提にして積極的なリスクテークを行っていく、そして信用創造をする、これが
金融機関が
金融機関たるゆえんでありますので、こうした基本的な業務を果たすということがきちっと行われているのかどうか、またこうした業務を果たすために、貸し渋りという手法ではなくて、逆に貸すべきところに貸せるようにきちんと自己資本の増強などを行っているのかどうか、これをチェックしていくということが大切であります。健全な融資態度が確立できているかどうか、これをチェックしていく、マニュアルもそういう思想に立っております。
他方で、こうしたチェックをきちっとするということは、当局といたしましては、私どもは預金者の代理人でありますし、また公的
資金が
金融システムの安定のために投入をされているという現状にかんがみますれば、我々は同時に納税者の代理人でもあるわけでありますので、赤信号になったときにきちっと
金融機関がブレーキを踏んでくれるかどうか、これは厳格にチェックをしていく必要があるということでありまして、本来、貸し渋りの問題とこの
金融検査という問題はつながってはいけないはずのものであります。
金融機関に対してもこういった
考え方というものを確立していただけるように今後十分御説明をしてまいりたいと考えております。