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1999-03-30 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月三十日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      岸  宏一君     石川  弘君      林  紀子君     笠井  亮君  三月二十九日     辞任         補欠選任      石川  弘君     山内 俊夫君      岩井 國臣君     佐々木知子君      片山虎之助君     岡  利定君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 益田 洋介君                 池田 幹幸君     委 員                 岡  利定君                 佐々木知子君                 西田 吉宏君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 山内 俊夫君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君    衆議院議員        発議者      大原 一三君        発議者      堀内 光雄君        発議者      小池百合子君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君    政府委員        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        法務省民事局長  細川  清君        大蔵政務次官   中島 眞人君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        国税庁課税部長  森田 好則君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○土地の再評価に関する法律の一部を改正する法  律案衆議院提出) ○金融業者貸付業務のための社債の発行等に関  する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百  四十五回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政・金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、林紀子君及び岸宏一君が委員辞任され、その補欠として笠井亮君及び石川弘君が選任されました。  また、昨二十九日、石川弘君、岩井國臣君及び片山虎之助君が委員辞任され、その補欠として山内俊夫君、佐々木知子君及び岡利定君が選任されました。     ─────────────
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  発議者衆議院議員大原一三君から趣旨説明を聴取いたします。大原一三君。
  6. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  昨年成立いたしました土地の再評価に関する法律は、法人が所有している不動産のうち長期に所有している事業用土地帳簿価額時価乖離が著しい現状にかんがみ、これを是正し、資産の適正な評価を行うことができるようにすることにより、金融機関自己資本比率の向上を通じた金融円滑化並びに企業経営健全化に資するものでありました。  今般の土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案は、昨年の土地の再評価に関する法律の採決の際の附帯決議でも指摘されております税効果会計に係る会計基準が採用されることとなったことから、現在、貸借対照表負債の部に計上されております土地の再評価差額から繰り延べ税金負債を控除した金額を再評価差額金として資本の部に計上するとともに、公開会社はその金額の三分の二を限度に自社株消却に充てることができることとしております。これらの措置により、法人財務内容健全化経営体質強化につながるものと期待されるところであります。  自社株消却手続につきましては、株式消却手続に関する商法特例に関する法律と同様の手続によることとしております。  また、この法律により自社株消却ができる期限平成十三年三月三十一日までとされていることにかんがみ、事業用土地の再評価を行うことができる期限を一年延長することとしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
  7. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 平田耕一

    平田耕一君 平田でございます。  ただいま提案理由説明いただきましたので、早速質問をさせていただきたいと思います。  この提案理由から、法改正の目的というのは、自社株消却法人財務内容健全化経営体質強化、この二つだと、こういう解釈でよろしゅうございましょうか。
  9. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) おっしゃったとおりでございます。  昨年の審議におきまして議員立法お願いをしたわけでございますが、そのときは十三兆円という公的資金を注入して銀行の貸し渋り対策ないしは自己資本充実を図ろうという一方における提案がありましたが、私は、いろいろ党内での議論の過程で、その前に金融機関としてやるべきことがあるんではないのかということを御指摘申し上げまして、余りにも日本地価現状取得原価との差額乖離が著しいことにかんがみまして、これを自己資本充実に利用することができないかという考え方から御提案を申し上げて、金融機関の貸し渋り対策の一助にということで昨年は提案をいたしました。  ところが、その当時、同じく議員立法により自社株消却という問題が提起をされたわけであります。私個人としては、その際に、これを資本の部に計上して、でき得れば同時に成立した自社株消却に利用できないかと思ったのでございますけれども、従来の立法経緯等にかんがみますと、四六%という税金の負担が中に入っておるものですから、法務省大蔵当局との意見を集合した結果、昨年は一応負債勘定にこれを置いたわけでございます。  ところが、最近、自社株消却動き等もこれあり、将来はいずれそういう措置をしなきゃいけなかったのでございますけれども、でき得ればこれを早めまして、利益剰余金と見合いで資本勘定へ振りかえて自社株消却に役立ててあげたらというのが提案理由でございます。
  10. 平田耕一

    平田耕一君 そうしますと、現行法でその原資がないという場合に、法改正によって含み益を、実現しておりません利益をもってその自社株消却に充てる、こういうことでよろしゅうございますか。
  11. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) おっしゃったとおりでございます。  これは、金融機関自己資本計算上は、金融機関だけに限って申しますと、四五%がティア2に入ってBISの規制の対象になりまして、自己資本充実内容になっております。各国ともそういうことを、特にヨーロッパはやっておりますので、それに準じてやったわけでございますが、性格上は資本準備金というよりは利益剰余金に近い資本勘定であろうということで、繰り入れることによって自己株消却に役立てる、こういうことになるわけであります。
  12. 平田耕一

    平田耕一君 なぜ自社株消却する必要があるんでしょうか。
  13. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) これは現在の株式持ち合い状況あるいは日本エクイティーファイナンス過剰性等に着目して、昨年、私ではございませんが、別途議員立法自社株消却法商法特例法として成立をしたわけでございます。  その経緯を見ますと、アバウトでございますが、トータルで約四百社の公開企業自社株消却をしていらっしゃるわけでございます。恐らく今後もそういった需要が潜在的にあるものという前提に立って、自社株消却をして、そうして過剰株消却をこれによって推進しよう、こういう考え方であります。
  14. 平田耕一

    平田耕一君 私がお尋ねをしたいのは、現在、一つ会社にとりまして株式時価総額、要するに株式数と一株当たり市場価格というものは含み資産も含めてそういう市場成立をしておるんではないかなというふうに思っているんです。今日の市場に至りますまでに、エクイティーファイナンスをずっとやりまして、時価発行時価発行で来たと。そういうものはその企業利益として一部資本金に計上されておるわけであります。そういうものが積み上げられてきておるわけでありますけれども、既にそういう含みも全部含んで現在の市場価格と株数というものは計上されているわけであります。  それで、株式消却ということにつきましては、ひとつ会社の再建のために認めてくれという無償消却は大いに正当な理由があるんだろうというふうに思うんですが、もう一つには、余剰があるので買い入れ消却しよう、株式防衛その他含めてやろう、こういうことも有償で認められるだろうと思うんです。  ところが、今回の法案改正につきましては、余剰がないけれどもあえて含みを見てまで買い入れ消却をするということの理由がちょっとまだ私自身には不明確というか、理解をしがたいところもありますし、一般的にもそうだろうと思いますので、的確に御説明いただければありがたいと思います。
  15. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 先ほど、従来の資産評価というのを申し上げましたが、実は昭和二十五年、二十六年、二十八年、二十九年と、戦後、企業自己資本充実が足りないということで、資産評価を実施いたしたわけでございます。その際は当然任意でございまして、土地の再評価はほとんど行われておりません。二十九年のごときは、余りおやりにならぬものですから強制をいたしまして、資本充実お願いしたという経緯もあります。そして、三十年には、性格があいまいであったこれまでの資産評価積立金という勘定をやはり同じように資本勘定繰り入れ整理をいたしたわけであります。  ところが、この資本勘定繰り入れも任意でございまして、余りおやりにならぬ経緯もありまして、だらだらこういうことをしておいてもいけないと、企業会計透明性ということから、四十二年だったと思うのでありますが、今までの繰り入れていない部分資本勘定に組み入れなさいと、全額組み入れによりという整理をいたしたわけでございます。  したがって、我々はこうして資産評価負債勘定に置いておりますのも、いずれ消却期限が終わったら、これは二年間の時限立法でございますから、この期間が経過したら、消却経緯を見て、いずれにしてもこれは資本勘定繰り入れ性格のものである、このように思っていたわけであります。したがって、自社株消却があろうとなかろうと、宙ぶらりんの負債勘定に置かないで、やっぱり利益剰余金的勘定でありますから、資本勘定繰り入れなければならぬという要請はあったわけでございます。  ところが、一方において議員立法自社株消却ということがありまして、昨年の附帯決議をごらんになってもおわかりでありますが、こういう法律も一方においてあるなら本来資本勘定繰り入れるべきであるという議論がそのときもございました。一年経過を見ようということでことしになったわけでございますが、そういった意味で、自社株消却要請のある企業というのがやはり潜在的にあるようでございますので、従来の資産評価でやったと同じように、これを資本勘定繰り入れてお使いをいただくという便宜的な手法を考えたわけでございます。本来なら来年ないしは再来年に繰り入れをやろうかなと思っていたのでありますが、そういうことで一年繰り上げてそれに符牒を合わせたというのが実態でございます。
  16. 平田耕一

    平田耕一君 仮に何らかの項目を資本繰り入れるということは、これは無償割り当てであれあるいは額面発行均等割り当てであれ、いずれそれはまた別の議論だと思うんです。肝心なのはそれを買い入れ消却に充てるということであります。これは有償でやるわけでありまして、したがってそれが会社のためになるかといいますと、出費を伴うわけであります。  一株当たり利益とかいろんなことを勘案しましても、今の時価からいきまして、現実に恐らく数十億、百億単位で会社の金が逸失するわけです。これが見かけ内容をよくするため、あるいは一株当たり見かけ利益を上げるためということでなされて、この会社が借り入れなりなんなりして何らかの財源をつくって数百億というお金を出していくことが健全性につながるのかどうか。そのことと、負債勘定から資本への繰り入れというのを連動していいのかどうか非常に疑問に思いますし、果たしてそういうことをなさる経営者というのはどういうことでおやりになるのかなと私は疑問に思います。資本への繰り入れ買い入れ消却とが連動するところがどうも説明がつかないので、何か御見解がございましたらお話しいただきたいと思います。
  17. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) この前の資本組み入れの法律は私の担当ではございませんでしたけれども、資本準備金を取り崩す、言ってみればこういう画期的な措置をとって自社株消却をやろうとしたわけでございます。  一方、確かにお説のとおりに自社株を手元に買い上げなきゃなりませんので、キャッシュフローが必要なんです。そこまでして自社株消却を約四百社の方がおやりになったわけでございますが、それは自社株に対する株価対策過剰株の吸収等々の理由からおやりになったんではないのかなと。そういう動きがやはり現在も潜在的にあるようでございますので、資本準備金勘定も限界がありますし、それの側面的なサポーターとしてこれを繰り入れてあげると。  さっき申しましたように、いつまでも負債勘定に置いておくというのは中間的な措置でございまして、いずれは繰り入れなきゃならぬ勘定でございましたので、一方においてそういう要請があるとすれば、中間期間でございましたが、今回の改正によって繰り入れ自社株消却をしていただこう、こういう意図からでございます。  おっしゃるとおり、どれぐらいの会社が今後おやりになるかということは結果を見ないと実際にわからないわけでございますが、上場会社店頭会社を入れて三千社ある中で四百社が一年間でおやりになったわけでございますので、この法律をやればさらに自社株消却要請にこたえられるんではないのかな、こういうねらいからお願いをいたしているわけであります。
  18. 平田耕一

    平田耕一君 いずれにしても法案に賛成しますので、これはこの辺にしておきます。  資本勘定繰り入れた、積み立てたとしますね。それで、しかる後に土地を売ったと。そうしますと、その資本に計上したものはどのような計上をするのでしょうか。
  19. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) この法律をお読みになるとおわかりでありますが、実は法人税相当額の四〇%は負債の部に残したままでございます。その残り資本の部に計上しようということでございます。しかも、おっしゃるように、資本の部に一〇〇%残りを計上しますと、今後、右肩上がり地価動向ではないようでありますので、やはりその三分の一ぐらいは資本勘定に組み入れるということを遠慮した方がいいのではないかという議論がございます。ですから、まず一〇〇ある資産評価差額金の中から四〇%を控除した六〇%、その六〇%のさらに三分の一をリザーブいたしまして、三分の二を確実性を見て資本勘定繰り入れよう、こういう措置をとったわけであります。先生の御指摘のような懸念があるものですから、そういう措置にさせていただきました。
  20. 平田耕一

    平田耕一君 ちょっと質問が違ったんですけれども、それでお聞きしておきます。  それから、配当可能利益からはその分は控除するということをやっていくんだろうと思うんですけれども、売ってしまってなおかつ常に控除額というのを明記しておくのかとか、いろんなことがございますので、その辺の整合性事務局できっちり一遍確認をして教えていただきたいなというふうに思います。  余り子細に突っ込みますと法案成立しないといけませんので、この辺で終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  21. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 平田委員の御質問がちょっと予定より早く終わりましたので、私が質問をしようとしている方がまだ来られていないものですから、順番を変えさせていただいて、先に発議者に伺わせていただきたいと思うんです。  まず、現行土地の再評価に関する法律の第十条に、仮に再評価をした後に損失が出た場合には注記をするというふうに書いておられると思うんですけれども、これは注記というよりは、むしろ時価会計ということを考えた場合にはその段階でまた損は損として認識をされた方がいいのではないかというふうに思うんですが、その点、いかがお考えなんでしょうか。
  22. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 先生もこの点は御専門でありますから私からるる申し上げることもないと思うのでありますが、先ほど言いましたように、今の不動産市況を見ますと、上がるところもあるでしょうが、一般的に下がるという懸念があります。したがって、再評価をやった後、損が出た場合、出る場合には注記をしよう、こういう当面的措置をとったわけであります。  おっしゃるとおりに、税効果会計が入ってきて経営実態税務計算とは別個に明確にすべきであるということで、非常にいい会計制度が、ことしは一応強制はいたしませんけれども、来年からは強制される。それで、時価会計が完全に入ってくるかと思いましたら、土地についてだけは株と違って例外になっているようでありまして、なぜそこら例外になっているのかなと、私も多分に疑問に思っている者の一人であります。  特に、日本のように土地取得価額原価と、しかも戦後再評価をおやりにならなかったところに至っては私は帳簿価額というのは全く形式的な価額になっているのではないのかなと。要するに、実態はそれと乖離した天文学的な時価になっている可能性があります。  おっしゃるように、やはりこういった会計を導入するのでありますから、お説のように、これからの時価会計の中でそういった特殊日本的な土地時価原価差額をどうクリアしていったらいいのかなということはこれからの日本土地会計の一番問題点であろう、こう思っております。
  23. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございます。  大蔵省政府委員多分いらしておったのかというふうに思いますが、ただいま時価会計について土地部分は含まれないということで、これを変えていかなければいけないという発議者の御答弁をいただいたわけでございますけれども、特に土地の再評価に関する法律で再評価をした場合はこれを入れていくべきなのかなというふうに思いますが、その点、簡単に御説明いただければと思います。
  24. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) どうも先ほどの答弁は舌足らずであろうかと思うんです、私も正直に言ってわからないところがたくさんありまして。  時価会計という場合に、最近調べてみたんですが、ある超一流銀行土地が六百万円でございまして、坪六千円か七千円です。その隣の旧国鉄本社ビルの値段が坪千八百万円と。一方は七千円で一方は千八百万。これを知らぬ顔をして隠しておくというのが本当にいい会計なんだろうかという疑問を多分に持っていまして、そこら先生専門家でありますから、これからの日本会計制度のあり方で、特殊日本的な土地価格というものを一体どのように会計の中へあらわして企業実態をつかんだらいいのか。会社がつぶれたら株はただになっちゃうんです。土地だけは会社がつぶれても残っちゃうんですから、私はそっちの方が評価をいたしますと会社の実力をあらわすんじゃないのかなという疑問も一方で持っております。
  25. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございます。  簡単で結構ですから、大蔵省、もしその点について何かあれば。
  26. 伏屋和彦

    政府委員伏屋和彦君) お答えいたします。  今言われました評価の点でございますが、資産評価方法につきましては、近年、企業会計透明性を一層高めていくために、時価による自由な換金が可能な資産につきましては時価評価することが適当であるという考え方が支持されるようになってきておりまして、このような観点から、主として金融商品につきましては国際的に時価評価が採用されているところでございます。  他方、土地につきましては、これは商法によりまして原価評価されるわけでございます。国際的にもまだ時価評価すべきであるといった考え方が一般的にはなっていないと承知しております。  各国土地に係る評価基準は、原則は日本、アメリカ、イギリスドイツとも原価評価国際会計基準原価評価でございます。一部、投資不動産土地につきましてイギリス時価評価をやっているということでございますが、一般的にはまだ時価評価というぐあいにはなっていないと承知しておりまして、その意味で、今回の土地の再評価に関する法律におきましても、基本的には原価評価考え方を維持しつつ、特例として期限を切って一回限り再評価できることとされているものと、そういうぐあいに私どもは承知しております。
  27. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 さて、今回の土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案あるいはもともとの法律金融機関自己資本対策ということで先ほど趣旨説明をいただきましたが、自己資本が足りないとかいろいろな議論がある中で、先般、二〇〇一年三月にペイオフ制度が実施されるということをにらんで、ペイオフをこのままやると大変危険だという御認識からそういう御発言をされたのかどうかわかりませんけれども、日銀総裁日本経済新聞社に対するインタビューの中で、ペイオフより範囲の広いペイオフに類するものを考えていきたいというふうに答えられたという報道がなされております。  そこで、この土地の再評価に関連しての質問なんですけれども、果たしてそういったようなことを具体的に今考えておられるのかということと、もし仮に考えておられるとするならばどういうものが対象となるのか。どういうものかということは、御存じのように一千万円ですけれども、それがまた金額を切って範囲がふえるのか、それとも金額を切らずに何となく漠然とした安心感を与えるようなものなのか、その点についてお答えいただければと思います。
  28. 速水優

    参考人速水優君) 私が新聞の取材を受けましていろいろ金融政策その他について話をしたわけですけれども、最後のところで、これからどういうことが問題になるだろうかという御質問の中で申したことの一つでございますが、二〇〇一年三月に預金保険法の特別資金援助、ペイオフの保留が終わると。このことだけでなくて、金融再生法も早期健全化法も皆この二〇〇一年三月で終わるわけでございますが、その後の金融システムの安定化、この期間に全力を尽くして今の金融システムを安定化させてもらいたいわけですけれども、二〇〇一年三月以降にただペイオフが残るということだけでいいんだろうかという不安は私自身持っております。  海外主要国などの例を見ますと、米国の預金保険法、FDICがやっておりますことなどは、いわゆるペイオフもそうですけれども、実際に多いケースは、破綻しそうな銀行資産負債を承継させていくという方式で金融機関の破綻を防いでいくということが広く使われておるわけでございまして、こういった預金保険金の支払い、いわゆるペイオフだけでなくて、破綻金融機関資産負債を他の金融機関に承継させて、預金者に対してもそういう銀行の債務を適宜支払っていくといったようなやり方がより二十一世紀の金融システムにふさわしい、より社会的、経済的なコストの少ない、かつ非常に機動的に早期に問題を解決し得るセーフティーネットではないか、そういうものも今からデザインしていく必要があるんじゃなかろうか。預金保険法の中にそれが、譲渡ということもあるんでしょうけれども、今の法律をどういうふうに改正し、あるいはどういう新法が必要なのか、そういうことを今から考えておく必要があるんじゃないかというようなことを申したつもりでございます。  このことは金融審議会などのワーキンググループなどでこれから恐らく検討されていくことだと思いますけれども、私は一千万円を拡張しろとか延期しろとか、そういうことを申したわけではございません。そこのところはおわかりいただけると思います。
  29. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 御答弁はわかりましたが、おっしゃっていることは恐らく金融再生法の二〇〇一年三月期限を延長すればいいということと同じなのかなというふうに聞こえておりますけれども。  所管であります柳沢金融再生委員長に伺うと、多分もう二〇〇一年三月までには必ず金融機関は再生するんだということなんでしょうけれども、セーフティーネットとしてどうかというのを、できれば総裁と、そして可能性として法律の延長ということでセーフティーネットを考えるのかどうかということをお伺いできればと思います。それは柳沢国務大臣にもということです。
  30. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 私の立場は法の運用ということに現在権限が限られておるわけであります。特に再生法のような税金そのものを損失の補てんに使用させていただくというようなスキームは、これはどう考えても臨時暫定の措置であろうというふうに考えるわけでありまして、私といたしましては、これを延長していただけないかとかなんとかいうことはもともと考える立場にないわけであります。  同時に、私の使命というか心構えといたしましては、この期間に本当に、再生法を使ってとただいま先生おっしゃいましたが、むしろ健全化法とかいうようなものを使わせていただいて、そしてたとえペイオフというような事態が起きても預金者に預金の引き揚げをされないような健全な金融機関をつくることに邁進する、こういうことでなければならないというように考えている次第です。  同時に、私は早期是正措置は恒久的な制度としてもうビルトインされているというふうに承知をいたしておりまして、これの活用ということによって、ただいま日銀総裁がちょっと御言及になられたいろんな心配事というものがその是正措置の中身として実現されていくということが期待できればそれで手当てができるのではないか、そういうようなことを念頭に置きながら、冒頭から申し上げておりますように、ペイオフが始まっても預金者の預金の引き揚げがなされるようなことのない金融機関をつくってまいりたい、そのことに力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  31. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、速水総裁に、私の理解が不足しているのかもしれませんが、資産あるいは負債をそのまま引き継ぐ、承継銀行に引き継ぐということはブリッジバンクになるのか、先ほどのおっしゃっていることは、それは形を変えた特別公的管理になるのかは別として、それをそのままということであれば金融再生法を使うのか、今の現行の枠組みの中ではそれが一番近いのかなというふうに思いますが、その理解でいいかどうか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  32. 速水優

    参考人速水優君) 今ある預金保険法、それから二つの臨時の法律はいずれも金融システムの安定化のためにぜひとも必要なセーフティーネットであると思いますし、現時点ではこれをフルに活用していくことが必要だというふうに思います。  ただ、一方で、こういった措置というのは公的資金を含む多大のコストを要するわけでございますし、預金者、債権者、金融機関のモラルハザードを惹起するおそれもあるわけで、そういう意味でビッグバンのフリー、フェア、グローバルといったような考え方でいきますと、基本理念とは必ずしも方向を一にするものではない。今の特別資金援助方式もそうでございますが、いずれも時限立法になっておりますので、これを延期するか否かは立法者、国民の意思で決めるべきことだというふうに思います。  ただ、私としては、二〇〇一年三月に向けて関係者が全力を尽くして不良債権問題の克服に当たるべきであって、安易に現在の特例措置期限延長するということはよくないと思います。期限延長するようなことになれば、コストの増大とかモラルハザードの発生のおそれがあるばかりでなくて、不良債権問題の克服も遅延を招きかねないと思うわけでございます。  しかし、二〇〇一年四月以降のこういう問題をどうやって解決していくのかということになりますと、やはり何か付加的な新しい考え方が入ってこなければいけないと思います。そこで私が頭に浮かびますのは、FDICあたりがかなり機動的に使っておりますが、場合によっては破綻が起こってこの部分をどこに承継するというような話がウイークエンドにすぐ決まってしまって、それに応じて、全部の場合も一部の場合もあるんでしょうけれども、破綻が回避されて金融のシステムが不安定化していくことを未然に防いでいくというようなシステムがあるわけで、そういうものをこれから考えていかなければいけないなというようなことを申したつもりでございます。
  33. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 FDICの制度は私も不勉強で余りわかりませんけれども、多分制度の運用で大きい金融機関は割と救われて、小さいところはつぶされてペイオフに遭っているといったような部分があると思いますので、そうなると果たして本当に公平な取り扱いとなるのか。我が国の場合はアメリカよりも多分公平性ということに重点が置かれる可能性がありますので難しいのかなという印象を持ちました。  最後に、この問題は本論ではありませんので簡単で結構なんですが、ペイオフ制度の延期について、大蔵大臣、何か御所見があればお述べいただきたいと思います。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 日銀総裁も言われましたように、今制度を延長するということは考えておりません。さらに、総裁が言われましたことは、恐らくその後の時期において破綻ということはやっぱりあり得ることであるから、破綻というものがあったときに社会的、経済的コストをどれだけ少なくして処理するか、そういう問題意識でおっしゃっていらっしゃるのだろうと理解をいたしております。
  35. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、この問題はこれで終了させていただいて、本論の方に入らせていただきたいと思います。  さて、土地の再評価をされますと、先ほど平田委員の方からも再評価に際して自己株式の消却といったようなことのお話がありましたが、この点について、金融再生委員長にもお越しいただいておりますので、ひとつ簡単に、イエス、ノーでお答えいただければ結構なんですけれども、この再評価によって得た資金で先般注入された優先株というのは理論上は多分消却できると思うんですが、そういう理解でよろしゅうございますか。
  36. 森昭治

    政府委員(森昭治君) お答え申し上げます。  今回の土地評価法改正案の趣旨からすれば、先生御指摘のとおり、再評価差額金というものを商法特例として資本の部に計上することになりますので、この法案が通過した暁には、当三月期におきましてその資本の部に計上されました再評価差額金を使いまして当方が注入に際して購入した優先株というものを自己消却することはできるわけでございます。  ただ、今回の公的資金注入の目的は各金融機関におきましての資本の増強ということにあるわけでございまして、この再評価差額金を使って自己株消却を行った場合には当然資本の部の額というものは減るわけでございます。それに伴って自己資本比率も減ってしまうということで、現在各金融機関が目指している方向とは逆の方向になるわけでございまして、それを各金融機関がどう考えるか。いずれにしても、各銀行資本政策に係る経営判断の問題でございますけれども、当面すぐこれをやるということは我々の行った目的と正反対の方向の形になるのではないかという印象を持っております。
  37. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 もう一点だけ、金融機関絡みで伺わせていただきます。  先ほど発議者の方から、改正前ですとこれが含み益の四五%しか算入ができなかったということをお答えいただいておったんですが、仮に改正後、含み益の六割を資本金に入れられるということになりますと、かなり効果が違ってくるのかなと。しかも、ティア1とティア2との違いというのが出てくると思いますので、かなり効果が違うんではないかなというふうに思いますが、そうすると今回の改正金融機関に与える影響というのは見かけ上の自己資本が厚くなるんではないかという理解なんですけれども、その点についてはいかがですか。
  38. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 今のお尋ねの点でございますけれども、金融機関におきまして土地の再評価益を計上いたします場合には、これはバーゼルの自己資本比率規制上の話でございますけれども、これは自己資本のティア2に、さらに言いますとアッパーティア2と申すものでございますけれども、ティア2に算入すべきものとされておりますことから、したがいまして金融機関についてのみ見ますと、自己資本比率計算上、今回の改正によって特に差が生じることはないのではないかというふうに考えております。
  39. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そうすると、金融機関にとってみると、再評価で得た利益で、利益というか見かけ上の利益株式消却するというのはバーゼルとの間でいえばかなり論理矛盾があるんじゃないかなと思うんですが、ちょっと発議者に伺います。
  40. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 今の御質問の前に、まず先ほどの御質問内容であります。  私も先生と同じように、利益準備金を入れたら一〇〇%ティア1に入れていいんじゃないかと議論をしました。ところが、今答弁がありましたように、各国の事例を見ますと、イギリスのものもフランスのものもドイツのものもやはりティア2だというふうに当局は固執しておりまして、私はまだ自分の考えを捨てていないわけでありますから、これからバーゼルで議論していただいてもいいんじゃないのかな、こう思っています。  それから、おっしゃったとおり、これは金融機関株式消却というのが本来の目的ではないわけでございまして、金融機関以外の企業消却要請には資本準備金で今までやってまいりましたが、やはり限度がありますので、そのサポーターとして何らかのお役に立てるんではないのかなと。約四百社の方が、私は四十社の間違いじゃないかと思ったら四百社でして、上場プラス店頭会社で三千社ありますが、そのうちのアバウトで四百社が消却をおやりになっていると。  消却をやるについてはキャッシュフローが要るんですね。だから、やる会社はお金がないと実際問題としてやれないので、おっしゃるとおり、どれだけこれが効果があるか。さっき質問がありましたように、どれぐらいのサポーターになれるか、正直言って今のところはっきりは答えられませんが、そういう要請も一部ございますので、おこたえしたらというのが案でございます。
  41. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 時間の関係で最後の質問になると思いますが、ただいま大原先生の方から御指摘いただいて、どれだけの助けになるのかなと。  私もちょっと考えてみましたが、一つ可能性としてあるのは、事業会社同士がお互いに持ち合いをしていたと、どれぐらいの可能性があるかわかりませんけれども、していたとして、それぞれが土地の再評価益を出せばその再評価益によって持ち合い株式を相殺していく。現金を一たん借りて、返せばいいんですけれども、そうすれば現金、キャッシュフローがなくてもできるのかなということで、この仕組みをうまく使えばいわゆる企業の持ち合い解消にも現金がなくても使えるのかなということで、大変そういう面では評価できるんじゃないかなというふうに思っております。  この点、最後の質問になりますが、発議者の方にその御所見と、それからそういったことを行った場合に、私の理解では税法上全く問題はないと思うんですが、なぜ問題がないかというと、現金を入れてその現金で相手が持っている自分の株を買うということをお互いにやるわけですから税法上問題がないという理解なんですが、もし税務当局の方で問題があるということだったら、その点についてお答えいただければと思います。発議者の方に御所見をいただいた後で結構です。
  42. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 私も先生と同じような考え方を持っていたわけです、等価交換だから課税しなくていいじゃないかと。ところが、今の税法はそうなっていませんで、株をやっちゃうということはみなし譲渡課税がかかるんです。現金で買って株を上げるということになりますと、時価でやるわけですから、取得価額との差額がみなし譲渡課税になっちゃうと。だから、それをやるとすれば特別措置法を改正していただいて、こういう場合には非課税にするという規定を入れないと現行法ではできないようであります。  ところが、不動産については一部できるんです。おかしいんです、そこは。私は税務当局じゃありませんから、おかしいことははっきり申しますが、何かできそうな感じだなという印象だけは先生と同じように持っているわけであります。
  43. 森田好則

    政府委員(森田好則君) お答えいたします。  現行法の取り扱いでありますけれども、二つの面があると思うんです。  まず、自己株消却した側、発行法人の方の課税関係でありますが、これにつきましては、法人税法上、会社更生法の規定に基づきます場合などの特定の場合を除き、資産の再評価益は益金の額に算入しないこととされております。土地評価法に基づく土地の再評価はこの特定の場合に該当しないため、その評価益は益金の額に算入されないという形になります。また、その自己株消却につきましては、それ自体は損益は生じないために発行法人に課税関係は生じないということです。  もう一方の消却に応じた株主あるいは残存株主についての税の取り扱いを現行法上申し上げますと、消却に応じた株主はその消却株式の売却につきまして原則として譲渡益課税またはみなし配当課税ということになります。それから、消却されなかった株主、いわゆる残存株主に対するみなし配当についてはその時点では非課税です。ただし、法人株主についてはみなし配当として申告することも選択できるというような扱いになっているというところであります。
  44. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 終わります。
  45. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 何を質問してよろしいかちょっと迷うんですけれども、平田議員から先ほどいろいろ御発言がございまして、ほぼそういう線に沿った質問になろうかと思います。  私は昨年の立法のときには議席がございませんでしたので議論に参加しておりませんから、ちょっと昨年とことしの関係というのがよくわからないところがあるんですが、どうも先ほどの御説明を聞いておりますと、再評価差額は本来資本の部に計上していいはずだと立法者は考えておられた。ところが、将来、税として実現したときに、つまり税の支払いに充てる部分がある、いわば負債性のものがあると。だから、まとめて資本の部に計上するわけにはいかなかった、だから負債の部だという御説明だったんです。  しかし、今回も資本の部に計上するのはその負債性の部分は差っ引いているわけでしょう。だから差額資本の部に計上しなきゃいけないと書いてあるわけで、去年の立法のときもそういう処理は可能だったんじゃないですか。
  46. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 私もそのつもりで立法したわけですが、先ほども申しましたように、法務省ともいろいろ議論するし、大蔵省とも議論したのでありますが、四六%は負債だからとりあえずは負債の部に入れておいて、再評価が終わった後、前回やりましたように、やはりこれは利益剰余金性格のものであるからいずれは資本の部に計上しなきゃならぬだろう、この辺の感覚でおりました。  確かに昨年の立法のときも、資本の部に入れるべきではないかという御議論が一部の先生からありました。私もそれに共感いたしたのでありますけれども、立法者の建前上、はい、そうですと言うわけにいきませんので、やはり今までの大蔵省法務省の意見も聞いてやらなきゃいかぬ、こういうことでありましたが、いよいよ本来の姿にこれで返せるんではないか、こう思っております。
  47. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 何かそうだろうなという気の反面、いかにも不見識だという気がするんです。つまり、昨年やったんでしょう。昨年の議論はどうも不十分だったからことしそれをきちんとしますということでありまして、なぜ今どうしてもそれをやらなければいけないのか。  税効果会計という考え方企業会計原則の中にことしから入ったというのは、一つの口実というか理由にはなっております。だけれども、今私が伺ったのは、それが決定的な理由であるならば昨年はそれができなかったという答弁になるはずであって、昨年できたのにやらなかったということであれば、ことしは考え方をちゃんと改めてやります、去年立法したのはいいかげんな議論でしたからことしはちゃんとしますというのでは、ちょっと立法府としては私は不見識じゃないかというふうに思うんですが、どうですか。
  48. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 実は私も主税局というところへ勤めたことが昔ありまして、ちょうど入ったころに資産評価法というのができたわけであります。その際も、資産評価積立金という負債性か資本性かわからない積立金になっているわけです。このままではいけないわけでございまして、二十九年度で資産評価が一段落した後に資本へ組み入れるという法律を出しております。  そういった経緯もありまして、私は法務省大蔵省議論に同調したわけでありますが、いずれは前回同様これは資本の部に組み入れる性格のものである。したがって、昭和三十年からだらだら組み入れさせたんです、任意に。これではおかしい、いつまでも宙ぶらりんにしておくのはということで、四十二年に残った分全額を資本勘定に組み入れなさいという法律を出しております。以前の経緯も見ながら、そういう判断を私もさせていただいたわけであります。
  49. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 その点はそれだけにしておきます。  それでは、資本の部に繰り入れた分で自己株消却してよろしい、任意でと。自己株消却の目的というのは、先ほども平田委員から緊急性というか必要性が余り納得できないというような御指摘もありました。  私なりに考えてみまして、これは株価対策にはなるんですね。つまり、発行済み株式数が減るわけですから、論理的には一株当たりの株価が上がる。これも私の読んだ知識にしかすぎませんけれども、ストックオプションがもっと一般化しておって、自社株を保有している社員がたくさんいるというような企業、マイクロソフトなんかはその典型的な企業であると言われておりますけれども、そういう企業では利益が出ると配当しないで自己株消却をするんだそうです、多くの場合。そうすると株価が上がる。だから、それは社員に対する一種の利益配分になる。  極端に言えば、アメリカにおける株式マーケットというのは資金調達の場から利益配分の場に今変わりつつあるというような、そういう特徴づけを指摘する向きもあるようですけれども、そういうことを考えておられるんですか。つまり、自己株消却するということを奨励していって、全体に低調をきわめている株式マーケットに活を入れる、そういう目的がありますか。
  50. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) お説の議論がもう一方の立法のサイドであったわけであります。自己株消却議員立法と私の方は資産評価のための議員立法、この議論の間に若干すれ違いがあったことは事実でありまして、私の方はいずれかといえば金融機関自己資本充実のためにやってあげよう、こういう措置でありました。一方の法律は、過剰株消却することによって景気が低迷しております資本市場株価対策上プラスの効果が出るのではないのかなというのが消却法のねらいであったと思うんです。したがって、そのねらい同士が昨年はすれ違ったのでありますが、ことし初めてドッキングできたなという法律改正であります。
  51. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 昨年の議論の不十分さをいずれにせよ補う改正であると。別にそれで反対だという意味じゃありません、議論としてはそうなんだなと確認をしているわけです。  しかし、日本の場合にはまだストックオプションというのがそれほど一般化していないというか、少なくとも累積をしていない。それと、果たしてサラリーマン社長の会社でそれほど株価対策というのをアメリカのように考えるのかなと。株主総会の前は大騒ぎするようですけれども、一般的にそう言えるのかなと、オーナー企業は別にしまして。  それと、後で問題にしますけれども、土地評価自体が任意性である、やってもやらなくてもいいと。今回の自己株消却ももちろん任意性である。どれほどのインセンティブがあるのかなという気がするんですね。だから、株価対策としてもそれほどの効果は期待できないというふうに思えますね。そう思っていらっしゃるでしょう。
  52. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 本音ばかり言うとからかわれるので、余り本音は申し上げたくないのでありますが、実は今総務庁長官になっている太田さんがそっちの方の立法の担当者であったわけであります。これは先ほどおられた宮澤さんが金融システム改革のための委員会でその議員立法を認められて、株価対策としてやろうという考え方でありました。  さっきも申しましたように、これはお金が要るんですね。ストックオプション制度が普及しておって、銀行株がかなりの部分で認められておればそれをすとんと落とせるのでありますけれども、先生おっしゃるとおり、そういうシステムがまだ普及していないという状況の中でやりますと、キャッシュが要って、それを買ってきて消却するわけですから、やはりかなり限界があるわけであります。それにもかかわらず、法務省に調べていただいたら、消却をした企業が四百社もあるということでありまして、やはりそれなりの効果はあったんだなと思っております。  浜田先生からせっかくそういう御質問でありますからはっきり申し上げますが、これは私も関与しておりまして、日本の持ち合い株というのは正直言って護送船団なんですね。金融だけが護送船団じゃなくて産業会社そのものが株の持ち合いをして助け合いをやっている。したがって、配当率はお互いさまですから低い方がいいわけですね、持ち合い株の場合は。それで個人株主が一方で犠牲になっているというのが日本資本市場じゃないのかなという感覚を持っていますが、いずれにしましても今申し上げましたような新しい政策を仮に打ち出すとすれば、その政策の方がはるかに効果は大きいと、これに比べれば、私はそう思っております。
  53. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 大原立法者の持論は私も承知しておりますし、そっちの方が興味あります。しかし、きょうはその議論ではありませんので、この議論をもう少し続けたいと思います。  土地の再評価というのが去年立法されて、四兆円ほどの再評価益が出たと。これは大したものだと思っていらっしゃるようですけれども、そうなんですか。せっかくこういう手段ができたんだから、もっと再評価が、三千社もある中でたった四兆円なのかというのが率直な感想なんですけれども、どうですか。
  54. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 私ももっと出るんじゃないのかなと期待をしておったわけであります。これは二年間の時限立法でございますから、最初やったのが金融機関だけで四兆円出た、ことしどれぐらい出るのかなと。  ある銀行実態を聞きましたら、何千筆とあるんだそうですね、土地が。これを集約するのに大変な手間が要ると。後で御質問があるんだろうと思うんですが、現在、不動産鑑定士を使って限りなく時価に近いことをやると二年間では間に合わない、こんな話であります。したがって、仕方がないから地価税に使ったいわゆる路線価基準、地価税のものを使って出しましたという便宜的な手法をとられたところが大部分のようであります。あとのところは、地方銀行さんでございますけれども、かなりまだ残っているようでありますので、幾らかまだ今後出るのかなと。  四兆円が大きいか小さいかでございますが、四五%、つまり約二兆円が自己資本に算入されたわけでありまして、今回の資本注入は七兆四千億、それに比べれば二兆円というのは国の税金を使わぬでよかったなと、私は正直言ってそんな感じを持っております。
  55. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 時限立法でやって、今度一年延長するわけですね。しかし、全体としてもごく限られた期間でやる。それにしては宣伝が足らないよということを私は言いたいわけです。  会計士の何人かに聞いてみましたけれども、企業でこれを知っていて本気でやろうというところが少な過ぎるという感想も聞きました。だから、いい制度であればよく知らしめるべきですよ、今回のもので自己株消却ができるんだよというのを。そうすると、あるいはこれはいい手段だと思う企業があるかもしれない。そうすれば、立法者のねらいも意味が出てくるわけで、わずかな時間ここで議論しただけでは、新聞だってほんのちょっぴりしか書きませんよ。それだけで終わってしまうというんじゃなくて、ひとつ政権党という立場も大いにお使いになって、少しPRされたらどうでしょうか。  それともう一つ、最後の質問ですけれども、今もう大原さんがおっしゃったのと同じことなんですが、どうも土地評価のやり方が、固定資産税の評価額とか路線価とか公示価格とか、それから鑑定士評価額とか、何か五通りあるというんですね。どれでやってもいいよということなんですよ。ところが、それぞれ考えてみると、鑑定士の評価額と固定資産税の評価額、固定資産評価額が一番低いでしょう、多分。こんなに差がありますよ。だから、再評価しましたといっても一律じゃないというのが一つです。  それから、さっきと同じ問題になりますけれども、再評価する会社としない会社に全く分かれてしまうわけでありまして、ある会社含みを持っていて黙ってぶっ倒れるのかもしれない、ある会社含みを出してこうだということでマーケットからそれなりの評価を得るのかもしれない。これは区々なんですね。だから、こういう制度があることによって逆にディスクロージャーという面、あるいはマーケットでの情報という面においてはかえってわからなくなってしまう。  だから、私は、そこまで言っていいのかどうかわからないけれども、例えば時間がかかるというお話はあるけれども、何でも時間がかかるから腰だめでいいという議論にはならないわけであって、やはり時価というものを大事に考えるのであれば、もう鑑定士評価額だけにしろと。聞くところでは、アメリカは再評価はそれだけでやっているという話も聞いた気がいたしますし、それからもう一つは再評価を一定の時期に義務づけてしまう、必ずやれという手法だってあるだろうと思うんですね。  いずれにせよ、これからあらゆる行政がルールづくりとウオッチになる、あとはマーケットだというふうにだんだんシフトしていくわけですから、私はディスクロージャーという面で今回の制度というのはもうちょっと再検討の余地がある、そういうことを申し上げ、感想を伺って、質問を終わります。
  56. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 今おっしゃったことは確かにいろいろこの制度の問題点を十全に御指摘いただいていると思うんです。  ただ、現在法律がいっぱいあるが、時価とは何ぞやというのを定義しているのは一つもないんですね。固定資産税も時価と書いてあるし、地価税も時価と書いてあるし、相続税も時価と書いてある。一物三価か四価が実態なんですね。ですから、時価と書いておけばよかったのでありますが、しかしそれでは余りにも不親切だと。だから、一番的確なのが今おっしゃったように不動産鑑定士で限りなく売買実例に近いもの、その次に正確なのが国土庁の公示価格、これが時価であります。  しかしながら、宮崎の場合、私の郷里でありますが、五つしかポイントがないんですね。五つしかポイントがないものを遠いところから公示価格を援用するわけにもまいらぬと。相続税の評価基準は全国一律でありますから、それをお使いいただくかなと。いろいろありましたけれども、結局、地価税が目前にございましたから、あの評価を援用して早くやろうという会社が大部分であったようでございます。  お説のように、これから時価会計ということも出てくるわけでございますし、さっきも申しましたが、日本土地評価額は時価との乖離が余りにも大きい、この辺を今後どう考えたらいいか。  強制につきましては、これをやりますと評価損の会社が大分出てくるんです。バブルで悪いことをした会社ほどそうなので、これはやってもらった方が本当はいいんですね、私の会社はこんなことをやりまして申しわけございませんでしたというのがわかってしまうんですから。だから、流通企業はほとんど出ないんですね。デパートは片っ端からおつくりになっているから、時価評価をやりますと評価損が出ちゃう。したがって、貸借対照表資産が減価するわけでありますから、強制というのはその辺ではいかがなものかなという議論もさせていただきました経緯があります。  御意見ありがとうございました。
  57. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 終わります。
  58. 笠井亮

    笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。  昨年の議論ということで今もございましたが、昨年は衆参とも法務委員会ということでありました。私も会議録を振り返って見ましたが、質疑におきましても、また参考人質疑がそれぞれありましたが、土地評価法そして自社株消却法のいずれにおきましても、商法あるいは企業会計の原則からいってさまざま問題があるということが指摘をされていたと思うんです。  しかも、商法の根幹にもかかわる改正であるということでいえば、今回は議員立法ですから別ですけれども、本来、法制審議会にかけて十分に審議をしてやるべきなのに短時間でやったというようなことを含めて、昨年来の評価は大方そういうことになっているのかなというふうに思うんです。にもかかわらず、目的があって、必要があって去年ああいう形でやられたということなんですか。
  59. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 法制審議会云々は御意見のとおりだと思うんですが、あそこの審議会は一番短くて一年、これではとても当面の政策に間に合わないということで、議員立法お願いするしか方法がなかったわけであります。  お説のように、法務委員会でやったのは本筋じゃなかったんです。去年は大蔵委員会金融改革でラッシュアワーでございまして、どうも三月三十一日に間に合いそうでないと国対が勝手に法務委員会に持っていってしまって、それで私はどこでもいいんですからそこへ出席をさせていただいたわけです。共産党さんからも厳しく、ことしは何で大蔵委員会なんだと。もともと資産評価法というのは大蔵委員会でございましたので、やっと本卦帰りがことしはできたなと、そういうことで御議論をいただいているわけであります。  共産党さんの御指摘もたくさんいただきましたが、どうかひとつよろしくお願いしたいと思います。
  60. 笠井亮

    笠井亮君 時間の関係もあり、当面の貸し渋り対策などのために限られた政策目的があって臨時の措置としてやったというお話だと思うんですけれども、そういう形で臨時的な措置をとってやったのだったらば、その目的が達成されたかどうかというのが当然検証されなきゃいけないと思うんですね。  貸し渋りということについては、衆議院でも議論がありましたけれども、昨年からことしにかけての貸し渋りの現状は事実を見ても明らかだと思うんですが、解消というよりもむしろ依然深刻だという事態があります。それから、株価への効果を見ましても、昨年三月末の株価というのが政府が考えていたような一万八千円台にはほど遠かったと。一昨年のストックオプションでも、決めたけれども実際は実行されなかったということだと思うんです。  では今回はということを見ますと、土地の再評価差額金自己株消却を進めるということですけれども、先ほどもありましたその目的というのは、伺っておりますと、過剰株消却を推進して株価を維持する、それに加えてROEを上げるということも含めて、そんなことを考えていらっしゃるということでよろしいんでしょうか。
  61. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 株を消却すれば株価はそれだけ上がるというのは理屈だろうと思うんです。アメリカで今かなり積極的に行われているというようなことも私はそういう意味だろうと思います。  いずれにしましても、私の方のねらいは、金融機関自己資本をふやして、これは本当は私はティア1に一〇〇%入れていいんじゃないかと言ったんです。ところが、金融当局は非常に弱気でありまして、四五%しか入れないと。先ほど浜田先生もおっしゃったんですが、四兆円という数字が多いのか少ないのかという議論ですけれども、私はやはり期待より少なかったと思うんです。  いずれにしましても、四兆円出たわけで、それが自己資本比率をアバウト二兆円押し上げる結果になったわけでありますが、これだけで貸し渋りが全部なくなるというのは、やっぱりここへだけ貸し渋り対策を持ってこられてはちょっと過酷じゃないのかなという感じがいたします。
  62. 笠井亮

    笠井亮君 今回の問題について具体的に伺っていきたいと思うんですけれども、既に四百社が自社株消却をしたということで、今回も要請がある企業は潜在的にあるだろうというお話がありました。  今回の改正によって、どれぐらいということと、大ざっぱでいいですけれども、具体的にはどういう分野の企業といいますか一般事業会社事業用土地の再評価益の一部を自社株消却の原資に活用するというふうに見込んでいらっしゃるか、その点はいかがでしょうか。
  63. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 正直に言ってどれぐらいになるか、私は数字的な見当はつきません。  しかしながら、これによって、昨年は金融機関は再評価いたしましたが、一般産業界の再評価のメリットについて、浜田先生もおっしゃったように、PRが足りなかった面もある。ことしは自社株消却という誘因もできたので、一般企業がおやりになる面がかなり出てくるんではないのかなと思っております。  私のところにもある産業団体が来られて、今まで聞きもしなかったところが、ぜひこれをやってくださいというお話がありまして、そこの会社自社株消却をおやりになるために資産評価をおやりになると。さらにまた、昨年PRが足りなかった面も確かにあって、こういう資産評価があれば、企業成績は悪いんだけれども、資産内容を顕在化して金融機関からの借り入れも潤滑にしたいという企業も中にはあるようであります。  それぐらいのことはわかるのでありますが、数字的にどれぐらい消却が出るだろうかということは、去年も予想が立たなかったわけでありますが、結果は四百社程度出た。ことしもそれ相当の会社がおやりになるんではないのかな、こう思っております。
  64. 笠井亮

    笠井亮君 先ほど、バブルのときに大分膨らんだところなんかは無理だろうというふうなお話もありましたし、かなり昔からそういう事業用土地を持っていた分野というのは大体ある程度想像がつくのかなというふうには思うんですけれども、ちょっと具体的に見てみたいと思うんです。  三月十七日の日経金融新聞に、本法案の効果は限定的かという、まさに先ほどからの議論のような見出しの記事があって、「株価低迷を余儀なくされている鉄鋼などの企業にとっては「朗報」と言えそうだ。」というふうなことを言いながらも、先ほど大原議員も言われましたけれども、キャッシュフローの問題があるということで、鉄鋼株のアナリストの「効果があるのは、キャッシュフローが黒字で手元資金に余裕がある新日本製鉄くらいではないか」という発言を紹介していて、まあ実際は新日鉄ぐらいじゃないかという話が出ております。  それで、これは仮の話ですけれども、この新日鉄が土地の再評価をした場合にどういうことが起こるかということを考えてみたときに、効果があるかもしれないけれども副作用もあるということではないかと思うんです。  例えば収益性の目標であるROEをとってみますと、土地の再評価自己資本が上昇する分、ROEが低下する。昨年のある試算を見ますと、新日鉄ではROEが二・四%から〇・五%、それからNKKの場合は三・五%から〇・九%に著しく低下するとの指摘もございます。新日鉄でいえば、そのうちの一部を自己株消却に充てたとしても、再評価差額金は三兆円を超える巨額になると。大変な額がいわば実体もないのに残るということになりますと、自社株消却してROEを上げたいという気持ちはあるかもしれないんだけれども、そのために土地の再評価差額金を使うということになると、今度は逆にROEを下げることにもなりかねないというか、この点は矛盾があるんじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  65. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) お説のとおりだと思います。もうかっていない企業がこれだけたくさん出しちゃったら、資本利益率は余計下がるわけでございますので、株も下がってしまうという矛盾がやはり出てくると思うんです。  おっしゃるとおり、株価対策消却するのなら、ROEが下がり過ぎると株はむしろそっちの方で下がってしまうので、効果がゼロということに私はなると思うんです。にもかかわらず、やりたい企業が四百社あったようでありまして、これからこういう誘因が、銀行はやりましたけれども、そのほかの一般産業にどれだけ及ぶかということはやってみなきゃ正直言ってわからないですね。やってくれという人の意見だけはわかりますけれども、全体としてどれぐらい波及効果があるのかなということについては、さっき浜田委員にも申し上げましたが、持ち合い株式の解消にはそれほど大きな効果は期待はされません。これはいずれやらなきゃならぬことを繰り上げてやるわけでありますから、もしそういう動きがあればその会社はこれを利用していただけるな、こういう判断であります。
  66. 笠井亮

    笠井亮君 ROEの問題だけじゃないと思うんですけれども、不良債権の直接償却ということで、例えばバルクセールのような形で不動産を安い値でどんどん処理すれば、地価の下落傾向が進むことは容易に予想できます。下落を続けたら土地評価による含み損もふえてしまう。この点でも逆効果を生むということにもならないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  67. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 議論がどうも私には余りよくわからぬ点があるのでありますが、資産評価をおやりになれば損が出るところはいっぱいあるんですね、さっきも申しましたように。しかも、これはつまみ食いができないようになっています。含み益の出る資産だけを評価して出す、含み損は隠すということはできないことになっています。それは企業会計の建前上当然だと思うので、悪いことをした、言葉は悪うございますが、バブルのときに踊った企業はこの方法を使いようがないんです。だから、バブルのときにまじめだった企業は再評価益が出るな、そんなことに産業界の場合はなるんじゃないのかなと思います。  金融機関の場合は余業禁止になっていますから、不動産をやたらくたら買っていくという動意もありませんでしたから割に評価益は出るのでありますけれども、おっしゃったように装置産業はかなり損が出ると思うんですね。しかし、おやりになってプラスになるのかマイナスになるのか、そこら強制するわけにはまいりませんので、任意でおやりくださいと。これは戦後の評価がそうでございましたから、そういう立場でお願いをしているわけであります。
  68. 笠井亮

    笠井亮君 伺っておりましても、実際これをやって効果があるかどうかというのはなかなか見えない。しかし、要請がある、これを使うところがあるということで、それにこたえようじゃないかというお話だと思うんですけれども、商法の監査特例法人である大企業、そのうちで実際にこれをやれるというのは本当に一部なのかなということになりますと、それだけを対象にして、そのためにということで二百五十万から三百万あると言われている法人全体に商法の原則にかかわるような変更をこういう形でやっていいのかというふうに私は思わざるを得ないということを申し上げたいと思うんです。  さらに伺っていきたいんですけれども、先日、国土庁の公示価格が発表されました。土地の値段が依然として大幅に下落をしている。そういうときに、この未実現の、帳簿上だけの土地評価差額金を使ってしまえば、含み損はきちっと計上するということですけれども、自己株消却で使ってしまえばいずれ下落分はどこからか手当てしなきゃいけなくなると。  そこで、取り崩しの限度を三分の二ということでお話がありました。将来の土地の減価に配慮したという形で御説明もあったと思うんですけれども、三分の二とした根拠といいますか、これは四分の一でもなく二分の一でもなく下落分を三分の一にした根拠というのはどういう点にあるんでしょうか。
  69. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) これもまた大変難しい質問でありまして、半分がいいのか三分の一がいいのか、その辺は非常に判断に苦しむところでございますが、最近出ました地価公示を見まして、かなりまだ地価というのは動いているな、底値という議論も一部にございましたが、底値じゃなかったなと。これから先どうなるかわかりませんけれども、大体三分の一というと三三%でありますから、その程度のことを含んでおけばいいんではないのかなと思っております。  この前の資産評価を見ますと、あのときはそんなことはお構いなしに一〇〇%資本勘定に入れているわけであります。個別企業にとっては、資産評価はしたけれども企業経営が悪いので資産内容が劣化したりした企業もその後にあっただろうと思うんです。そういうことはこの前の資本組み入れではもう既にのみ込んでしまっているわけで、リザーブを考えるというような手法はとられませんでした。したがって、今回は正直に、下がることもあり得べしということで三分の一をリザーブさせていただいたわけであります。  果たしてそれが的確であるかどうかは今後の動向を見ないと正直言ってわかりません。
  70. 笠井亮

    笠井亮君 法律で書くわけですから、やっぱり根拠があって、そして的確だというふうに客観的に見られるものでなきゃいけないと思うんです。  法務省、この三分の一という決定については、これで的確なのかどうかという点ではどういうふうにお考えですか、三分の一というふうなことで出ていますけれども。
  71. 細川清

    政府委員(細川清君) 三分の一の根拠についてお尋ねでございますが、これにつきましては、提案者におかれまして現下の経済情勢その他を勘案され高度の政策的な判断でお決めになったものと私どもとしては了解しておりまして、これについて法務省事務当局として御意見を申し上げる立場にないということでございます。
  72. 笠井亮

    笠井亮君 高度の政策的な判断ということで、ここまでなら大丈夫だとかというようなことでは、実際に法律ができてしまいますとそれで動きますので、実際それ以上になったときにどうなるのか、これは本当に大きな問題が残るんじゃないかと私は思うんです。  仮に土地評価を行うにしても、自己株消却をするにしても、いずれにしましても商法あるいは企業会計原則の根幹にも触れるような中身をやろうとするわけですから、冒頭にも申し上げましたけれども、やっぱりこれはじっくりとやるという側面が極めて大事だと思いますし、慎重に検討すべき問題がある。今回二つのことを結びつけて、高度の政策的判断ということを優先させて、そしてこういう形で立法をし改正をするということについては、私は今後のことを考えましたときに極めて大きな問題があると言わざるを得ないということを最後に申し上げて、質問にしたいと思います。  終わります。
  73. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  土地評価とBIS規制につきまして質問をいたします。  まず、金融監督庁にお伺いいたしますが、昨年破綻しました日本長期信用銀行及び日本債券信用銀行平成九年度末に土地評価法に基づきました再評価差額金を計上していないということでございます。この理由は両行のティア2が自己資本比率規制上の上限まで達しておりまして、したがって再評価差額金の計上が自己資本比率の向上につながらなかったためと言われておりますけれども、そのとおりでしょうか。
  74. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 昨年制定されました土地評価法に基づきまして再評価を行いますかどうかというのはあくまでも各企業経営判断にゆだねられておりますことから、当局としてその理由を申し上げるべき立場にはないわけでございます。  そこで、一般論として申し上げますと、土地評価を実施した場合に、金融機関の場合、自己資本比率が増加するメリットがあるかどうかということになるわけでありますけれども、まず当該金融機関土地含み益があるかどうかということがその金融機関にとって一つの判断にもちろんなるわけでございます、なければどうしようもないわけでございますから。それで、あるとした場合に、ただいま先生御指摘のように、土地評価差額金が算入されず、ティア2にいわば空き枠があるかどうかによって決まってくるわけでございまして、あってもやらないというところもあるのかもしれませんけれども、以上のようなことから、各金融機関経営判断として行われることでございまして、事情は区々であるということをお答え申し上げたいと思います。
  75. 三重野栄子

    三重野栄子君 そこで、本法案が施行された後のことについて金融監督庁にまた伺いたいんですが、金融機関自己資本比率計算する際の再評価差額金の扱いは従来と比べてどのようになるんでしょうか。
  76. 乾文男

    政府委員(乾文男君) この自己資本比率の規制上、バーゼルの合意では従来からこの土地評価差額金につきましてはいわゆるティア2に算入すべきものとされておりまして、昨年、この法律が制定されましたときから、私どももその国際的な合意に倣いましてそのようにしてきたところでございます。  今回の改正案は、土地の再評価差額金資本の部へ計上し、あるいはその期間の延長をするというものでございますけれども、金融機関自己資本比率計算上に限りますれば基本的に差異が生じるものではないというふうに考えております。
  77. 三重野栄子

    三重野栄子君 それでは、大原議員にお伺いいたします。  土地含み益のうち資本の部に計上される分がティア1に算入できるようにするならば、ティア2の上限も大きくなって、金融機関自己資本比率の上昇に資するという見解もあるようでございます。発議者大原先生土地含み益を全部ティア1に算入すべきだと主張しておられたのでございますが、改めて発議者としての御意見を伺いたいと存じます。
  78. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) 今までは負債勘定でありましたから劣後債と同じような取り扱いで四五%、これで仕方がないのかなと、今度は利益剰余金勘定に入れるんですから一〇〇%でいいんだろう、こう思っていましたが、なかなか金融当局は、バーゼルとの折衝も残されておるし、やはりいきなり私が言うように一〇〇%という返事が、相手のあることでもありますし、出ないようでありますので、私はこの辺は金融当局の判断にお任せしたい、こう思っております。
  79. 三重野栄子

    三重野栄子君 そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのでございますが、今両方の御意見を伺ってまいりましたけれども、BIS規制につきましては、従来から八%という数値の根拠やリスクアセットの算出方法につきまして見直しを行うべきとの意見が根強いようでございます。  来月中にもBISのバーゼル銀行監督委員会において新しい自己資本比率規制の中間報告が発表されるという報道がございましたが、その内容はどのようなものでしょうか。また、我が国の金融当局といたしましては、これまでの内外の論議を踏まえましてどのように対処していくおつもりなのか、お伺いいたします。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 後ほど政府委員から補足をしてもらいますが、聞くところによりますと、今の自己資本比率規制につきまして、民間企業に対する与信リスクの積算が画一的なものになっていないか、あるいは最近の金融技術の進展に必ずしも適合していない面があるというような指摘がなされておりますので、これを受けてバーゼル銀行監督委員会の場において抜本的な見直しのための議論が行われていると承知をいたしております。  このバーゼル銀行監督委員会における議論には我が国からは金融監督庁が参加をいたしておりますので、その方から具体的な内容につきまして御説明を申し上げます。
  81. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 今の大蔵大臣の御答弁を補足して御説明させていただきます。  バーゼルの自己資本比率規制の見直しにつきましては、現在バーゼルの銀行監督委員会におきまして市中に協議する案、パブリックコンサルテーションと申しますけれども、それについての議論が集中的に行われているところでございまして、議論がまとまりますれば、近々たたき台的なペーパーが公にされまして、そのコンサルテーション、民間金融機関からの意見を聞くという段取りになるようでございます。  その際、バーゼル銀行監督委員会におきましては、民間の銀行界等からのコメント期間を十分に長く設定しまして意見を求めることとしており、その後に各国から出された意見を踏まえまして一層の検討が進められていく予定になっているわけでございます。  現時点で市中に協議されます案の具体的な内容につきまして申し上げることは困難でございますけれども、一般的な話として申し上げますと、現行のBIS規制につきまして、八%の自己資本比率規制を銀行に求めているわけでありますが、その際、まず第一に信用リスクについて、現行の制度が信用リスクのとらえ方が画一的であると。民間企業に対する与信であればみんな一〇〇%ということになっているわけでございますけれども、それを個々の銀行資産の信用リスクの違いを十分に反映した計算方法とする必要があるかどうかという点が一つです。  それから第二番目に、リスクアセットの算出方法につきまして、最近の証券化でございますとかいろいろな金融技術の進展に必ずしも追いついていない面があるのではないかということから、そのためにともすれば人為的に規制回避行動が発生しているのではないか、そういう問題意識に立ちまして検討を行っているというふうに承知しております。  そのような検討が進み、先ほど申しました協議案が公表されてまいるわけでありますけれども、今後、私どももこのプロセスに乗りまして引き続きこのバーゼルでの議論に建設的に参画していきたいというふうに考えておるところでございます。
  82. 三重野栄子

    三重野栄子君 よりよい方向に検討されることを期待します。  終わります。
  83. 星野朋市

    ○星野朋市君 大原先生に、この再評価法が産業界に適用される場合、この一点に絞ってお尋ねをしたいと思います。  先ほどからも御説明がありましたけれども、この再評価法が昭和二十年代に行われたときに、再評価税はたしか六%ですか、要するに再評価税六%という問題があったために、普通の事業会社は償却資産を主に再評価したわけですね。土地はそのまま残してしまった。ですから、特に戦前からの事業会社でかなりの土地を持っているところは評価額が現在までもうほとんどゼロに等しいような会社もあるわけでございます。  それで、その後これはなかなか再評価が進まないという形で参りまして、バブル期の前に一時日本の輸出額がかなり大幅に増加したときに海外から批判が起こって、日本の産業界というのは根本的にダンピング的な性格を持っておると。ところが、それで赤字を出したとしても、土地をちょっと売ればもう大部分その赤字を埋められてしまうじゃないか、こんな批判があった。私なんかは、大店舗法、そういうものの規制解除、その後に多分ここら辺の問題が海外から起こってくるんじゃないかと予想しておったんですが、バブル期に入って各社ともかなりなエクイティーファイナンスなんかをやって、自己資本の面ではかなり増加した経緯があると私は思っておるんです。  ところが、戦前からのストックのある会社、ここら辺は逆に言えば成長性の低い分野をかなり抱えているというような状態で、一番典型的な例は、片倉製糸が香港資本におまえのところは何をやっているんだと言われて脅迫ぎみに株を買われた、こういうような事件もあったやに私は記憶しているわけです。  今度、金融界の自己資本充実とかそういうことでなくて、資本評価をやって、いわゆる産業界の含み益を出させ、同時に産業界が今抱えている設備過剰、一般的に約三割過剰だと言われるこういうものの償却を片方でやれないかと。  自己株消却という問題が先ほどから問題になっておりますけれども、さらに年金の不足のために自己株の提供というような一つの方法もあるわけですが、事業会社が抱えているいわゆる含み損または設備過剰の分、こういうものを表に出して、それでしかる後に資本剰余金、利益準備金、ここらを取り崩してそういうものを消却させる、こういうようなことが考えられないかと私は思うんですが、いかがでございましょうか。
  84. 大原一三

    衆議院議員大原一三君) おっしゃる議論はよくわかるのでありますが、これを使って消却をされた場合、税金がかかるんじゃないかと思いますね。その辺の問題がクリアされないとなかなかこの消却も進まないなという感じを持っております。  おっしゃるとおり、先ほど固有名詞で御指摘があったんですが、繊維産業等は町の真ん中に大体お持ちになっているんですね。含み益が物すごくあるんですが、ただ、企業利益率が非常に低いところへ資本だけふやしますとさらにまた下回るわけでございますから、その辺が非常に痛しかゆしと、資本利益率が下がれば株価も下がるというような構造がありますので。  私は、産業界から去年、再評価があったことを実は知らなかったと、この際、自己株消却もできるということであれば株価対策も含めてやりたい、そういった声が業界にかなり上がっていることも確かにお聞きをしております。
  85. 星野朋市

    ○星野朋市君 先ほど浜田委員も御指摘になりましたけれども、そういうことで一般産業界もこの制度をどのくらい認知しているか。PRをしっかりしていただきまして、この法律の適用期間中にできるだけ多くの会社がこの制度を利用していただきたい、そう念願して、質問を終わります。
  86. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  87. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、日本共産党を代表して、土地評価法の一部改正案に対して反対の討論を行います。  本法案は、大企業事業用土地の再評価益の一部を自社株消却の原資として活用できるようにするために、会計上の特例措置を講じるものです。  今回の改正株価対策、決算対策のために企業会計の原則をゆがめるものであり、多くの問題をはらんでいます。昨年制定された再評価法では、再評価益は負債項目に組み入れられ、専ら金融機関自己資本拡充を図ることが目的とされました。ところが、今回の改正では、再評価益は資本項目に組み入れ、それを自社株取得の原資として用いるということであり、再評価の目的も会計処理も全く異なっています。  このような措置によっても、株価が回復し、企業経営健全化する保証は何もなく、その場限りのびほう策と言わなければなりません。  以上が反対する理由であります。
  88. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  89. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、伊藤君から発言を求められておりますので、これを許します。伊藤基隆君。
  90. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私は、ただいま可決されました土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 資産評価については、国際的な会計基準の動向等に留意しながら現行評価原則の在り方について検討すること。  一 現下の経済状況に対応するため、企業の財務の健全性及び投資家等への情報開示の必要性からみて緊急的に行われている措置については、望ましい会計処理に移行するよう努力すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  91. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいま伊藤君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  92. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 全会一致と認めます。よって、伊藤君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、宮澤大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮澤大蔵大臣
  93. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
  94. 勝木健司

    委員長勝木健司君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  96. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 金融業者貸付業務のための社債の発行等に関する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。  なお、本案は衆議院において修正議決されましたので、この部分修正につきましてもあわせて政府から説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  97. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました金融業者貸付業務のための社債の発行等に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  現在、いわゆる金融業者が社債発行により不特定かつ多数の者から貸付資金を受け入れることは出資法で禁止されております。これは、社債制度が未成熟であった戦後の出資法制定時において、投資家保護等の観点から規定されたものでありますが、今日、社債に係る諸制度が格段に整備されたもとで、この規制の撤廃は金融仲介チャネルの多様化による資金配分の効率化等に資するものと考えられます。  本法律案は、こうした状況を踏まえ、金融システム改革の一環として、投資者保護の観点からの措置を講じつつ、金融業者の社債の発行等による資金調達を自由化するものであります。  具体的には、社債の購入者等の保護に資するため、貸付業務のために社債の発行等を行う金融業者につきまして、最低資本金基準等を要件とする登録制度を実施するとともに、証券取引法に基づく有価証券報告書等に融資業務の特殊性に対応した貸付状況等の項目を明確に表示するための会計整理を義務づけることによりディスクロージャーの充実を図り、あわせて出資法の関係規定の改正を行うものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容であります。  なお、本法律案は衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりであります。  第一に、原案では登録、監督の主体が内閣総理大臣となっておりましたが、これを金融再生委員会に改めることとされ、第二に、原案では施行期日が平成十年十二月一日となっておりましたが、これを公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日に改めることとされるなどの規定の整備が行われております。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  98. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会