運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-03-16 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十六日(火曜日)    午前十時六分開会     ─────────────    委員異動  三月十五日     辞任         補欠選任      石川  弘君     加納 時男君      日出 英輔君     佐々木知子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 益田 洋介君                 池田 幹幸君     委 員                 岩井 國臣君                 加納 時男君                 片山虎之助君                 佐々木知子君                 西田 吉宏君                 林  芳正君                 平田 耕一君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君        発議者      峰崎 直樹君        発議者      広中和歌子君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君    政府委員        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        大蔵政務次官   中島 眞人君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵省主計局次        長        坂  篤郎君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        国税庁次長    大武健一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    説明員        自治大臣官房審        議官       石井 隆一君    参考人        日本たばこ産業        株式会社代表取        締役社長     水野  勝君        日本銀行理事   黒田  巖君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所  得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者  等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法  律案内閣提出衆議院送付) ○所得税法の一部を改正する法律案峰崎直樹君  外三名発議) ○児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律  案(峰崎直樹君外三名発議) ○平成十一年度における公債の発行の特例に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政・金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、石川弘君及び日出英輔君が委員を辞任され、その補欠として加納時男君及び佐々木知子君が選任されました。     ─────────────
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案所得税法の一部を改正する法律案並びに児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会参考人として日本たばこ産業株式会社代表取締役社長水野勝君及び日本銀行理事黒田巖君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案所得税法の一部を改正する法律案並びに児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案の五案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 民主党・新緑風会の浅尾慶一郎でございます。  本日は、お忙しいところ、日本たばこ産業水野社長にもお越しいただいておりますので、お許しをいただきまして先に水野社長お話を伺いたいと思います。  お招きいたしました理由というのは、今般の経済対策向けの諸減税を考えた場合に、将来、恒久的減税ということであれば国有財産有効活用といったようなことも考えていかなければいけない。現在、日本たばこ産業株式会社の株の大部分はまだ大蔵大臣あるいは大蔵省が保有しておるということだと思いますが、その絡みで、今般、RJRナビスコ株式会社が持っておりましたたばこ海外事業米国を除く部分を七十八・三億ドル買収されたということでございますけれども、この点について若干質問をさせていただければと思います。  まず、七十八・三億ドル買収されたということでございますけれども日本たばこさんが例えばドルをお借りになった場合に幾らぐらいの調達コストドル借りられますか。  なぜそういうことを聞くかといいますと、いただきました資料によりますと、海外たばこ事業というのは大体四億六千八百万ドル収益が上がると。七十八・三億ドルということですと大体五・何%ということになると思いますけれども日本たばこさんがドルをお借りになる場合大体幾らぐらいでしょうか。私の推察するところによりますと多分六%を超えるんじゃないかというふうに思いますが、その点をちょっと教えていただければと思います。
  7. 水野勝

    参考人水野勝君) お話しのようなディールにつきまして現在具体的に進めているところでございますが、これから本格的ないろんな準備等をいたす段階でございますので、なお詳細につきましては今後の検討課題といたしております。
  8. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 一般論で結構なんです。別に今回のためにということではなくて、日本たばこさんが米国ドルをお借りになる場合には、六%を超える金利を払われるんではないかなと、そういう点でイエスかノーかだけで結構です。
  9. 水野勝

    参考人水野勝君) 現時点まで当社としては借り入れというのが余りございませんでした。特に外貨につきましてもそうでございました。これからの検討でございますので、従来からの一般的な負担と申しますか、そうしたものにつきましても私どもは持ち合わせてはいないところでございます。
  10. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今般、大変大きな買い物をされた。これが全くの一〇〇%の民間企業であれば私はそれを全く問題にするつもりもありませんし、その株主さんが責任を最終的には負われるということなんだと思いますが、冒頭に申し上げましたように、七割強ですか、株式をまだ国有財産という形で持たれておられる御社のことですから聞かせていただいておるんです。  私の推察では、日本たばこさんがドル借りられると大体六・何%、六・二、三%ぐらいの金利を多分払われることになると思うんです、十年間借りた場合。そうすると、今申し上げましたように、この四億六千八百万ドル収益というのは、これは税引き前、しかも償却前、無形資産償却利益と書いてありますから、税金とかをその後払ったりなんかするととても六・五%に追いつかないんじゃないかなというふうに思いますが、それではどういう計算をされて日本たばこさんは七十八・三億ドル払われるのか。  こういう言い方をすると大変恐縮なのかもしれませんが、手元に現金、流動性が大変ある会社であると。そうすると、選択肢としては、それを投資したいというのは会社の側からいえばそういうことなのかもしれませんけれども株主立場に立ってみますと、それを投資されるぐらいだったら、これぐらい多く赤字国債を出しておるわけですから、株主である大蔵省大蔵大臣手元流動性を返された方が、投資先としてはあったんではないかなというふうに思います。だとすれば、これを投資することによってより国民財産も発展するという計算があってしかるべきなんではないかなと思うんです。  ところが、今伺っていますと、日本たばこさんがドル借りた場合幾らになるかもわからないと。本当にわからないんですか。
  11. 水野勝

    参考人水野勝君) 資金面での準備はこれからでございます。当社といたしましては、ある程度流動性は残しつつ、ある程度のものは現時点での手元資金で賄う。それから、借り入れお願いするという場合でも、どの程度のものを国内からの調達とする、どの程度のものを外貨お願いをするということもあわせて、そうした資金構造借入金構造につきましても現時点準備を重ねておるところでございますので、御指摘のような調達コストにつきましては、そうした仕組み、構造の中で出てまいるかと思いますが、私どもは極力コストの安い構造にいたしますよう努力をしているところでございます。
  12. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 もう少しわかりやすく私の方も質問をさせていただきますが、年間四億六千八百万ドルぐらいのキャッシュフローが上がる取引であるということだと思いますけれども、そうすると、さっき申し上げましたように、七十八億ドルも払われると、六%を割ってしまうと思うんですね、収益としては。先ほど言いましたように、日本たばこさんが今十年間ドル借りたら、恐らく六%を超える金利を払わなければその借り入れができないということだと思いますけれども、そうだとすると、投資としては魅力がその段階だけでも非常に薄いんではないかなというふうに思います。  それから、百歩譲って、これからたばこ海外での消費というんですか、買収された地域消費がふえるというふうに思っておられるのか、それとも世界的な潮流を考えると今後そんなにはふえないだろうと、大体今までどおりなのか、そこはどういうふうに見ておられて今回の買収をされたんでしょうか。
  13. 水野勝

    参考人水野勝君) たばこ消費につきましては、それぞれの経済発展段階でいろいろな差があるように見受けられます。今回の買収によりまして、私どもが既に進出している地域、それから相手方会社が進出しかなりなシェアを持っている地域、いろいろな地域の組み合わせがあるわけでございますが、私どもと今回の提携と申しますか買収相手とはそれぞれの地域におきまして重複するところが割合少ない、したがいましてその間におきますところの相乗効果等も期待できるわけでございます。そうした意味におきましては、私どもは両社のそれぞれの長所を生かすことによって全体の営業水準も高めることができるのではないかと思っております。  たばこでございますから、先生の御指摘のように急激に増大するということは余り期待はできない面もありますけれども、その地域地域の特性に応じて市場策を展開していけばプラスの効果が期待できる、このように考えておるところでございます。
  14. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それではちょっと伺いますが、大体その消費量あるいはその利益が年率どれぐらい例えば過去五年間買収された地域で伸びてきているのかという、そういったデータはお持ちですか。
  15. 水野勝

    参考人水野勝君) 海外部門につきましては、先ほど先生指摘のような水準収益がおおむね上げられてきているようでございます。ただ、先般の東欧地域におきますところの経済の混乱等々がございました地域におきましては、その年度につきましては若干の低下が見られる、しかしそうしたものから回復すれば御指摘のような水準のものは今後とも継続して期待できるのではないか、こんなふうに考えております。
  16. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そうすると、ゼロ成長という観点計算しますと、いわゆるIRR、内部利益留保率内部利益率が大体五・二九%ぐらいになるのかなという計算になります。そうすると、先ほど申し上げましたように、ドル調達する、あるいはドルで運用しても、六%ということになるとこの取引は損をする可能性が高いのではないかな、余り魅力的な投資ではなかったのではないかなというふうに思います。  それからもう一つ、たばこという事業が抱えておられるいろんな問題点、これはいい悪いは別ですが、客観的なことで質問させていただきますと、米国においては和解が成立したと。日本たばこさんとしてはこれは訴訟ではなくて和解だということだと思いますけれども和解金として総額何兆円ぐらい払っておられるんですか。
  17. 水野勝

    参考人水野勝君) アメリカたばこ会社、大手四社ございますが、そうした会社におきましては、今後二十五年ということを一応の計算期間といたしまして、二千億ドル強のものを支払うような和解となっているようでございます。それ以外の会社につきましては、和解に参加するかあるいは供託金等を求められるか、いずれかの対応になろうかと思いますが、和解に参加する場合におきましては、その市場におきますところのシェア等に応じての計算になるようでございます。  私どもとしては、米国におきまして営業を続けるからにはその地域におきますところのシステムに従う必要があるということでこの和解には参加をすることといたしておりますが、私どもシェアはそれほど大きくございませんので、その金額も大きなものにはなっておりません。
  18. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 米国において二千億ドルということでございますが、今回買収された地域の中には、訴訟形態あるいは社会形態米国と似通っているところももちろんかなりあると思いますし、買収されるに当たっては当然可能性を考えられなくてはいけないと思います。  例えば買収された米国以外の地域において同じような訴訟が起こされた場合に、責任分担というか、仮に和解した場合にはそのときのマーケットシェアに応じて和解金を払うという取引形態になっているんですか。それとも、歴史的に今までRJRさんが売っていたわけでございますから彼らが責任を持つのか。買収に当たって、訴訟リスクというか、そのリスク部分はどちらが責任を持つという形態になっているんでしょうか。
  19. 水野勝

    参考人水野勝君) 今回買収対象となりましたアメリカ以外の地域、この地域営業に関して発生いたします訴訟につきましては私どもとして責任を持って対処する、真摯にこれに対応してまいりたいと考えておりますが、アメリカ本土内、アメリカ国内におきますところの訴訟、これは当然RJR方でこれまでどおり処理していく、このように考えております。
  20. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 もう一度確認しますと、今回七十八億ドルで買われた部分地域において仮に五年ないし十年以内に同じような訴訟が起きた場合には、二千億ドル掛けるマーケットシェア分担金を払われるということなんだと思います。  そうすると、先ほどおっしゃっておった利益というものがかなり減ってしまう、今のレベルにおいてもこの投資収益というのは御社ドル借りるよりも低い利回りしかないわけですから。これは例え話ですけれども、仮に個人でお金を借りて株に投資する場合には、借りている金利よりもかなり利益が上がる可能性が高くない限り投資しないでしょう、リスクは株に投資する方が高いわけですから。たばこ事業というか、事業投資する方が多分高いわけでしょう。借りている方は必ず返さなければいけない、事業の方はどういうリスクがあるかわからないと。  今おっしゃったように、これから訴訟が起きた場合には、歴史的な経緯からいえば、当然健康を害した、今まで吸っていたたばこが変わるわけじゃなければ、最初の二十年間はRJRさんの責任で、これからJTさんがそのブランドを売るようになったら五年間分だけその責任を負うというような契約で買っておられるのかなと思ったら、そこはもう潔くというか何というかわかりませんけれども、今までの責任は全部JTさんが仮に訴訟が起きた場合にはひっかぶってしまうと。言葉は悪いですけれどもJTさんが責任を持つ買い方というのは、こういう申し方をすると失礼ですけれども、非常に高い買い物をされたのではないかなと思いますが、そこまで責任を持たれると。繰り返しになりますが、全くRJRさんに責任はないんですよということでよろしいんですね。
  21. 水野勝

    参考人水野勝君) 今後、買収後におきまして、しかも今回買収対象となった地域訴訟が起こされた場合ということでございます。  アメリカ社会におきましては訴訟の現状というのはかなり特異なものがございますし、またアメリカ国内におきますところのたばこ税負担水準というのはそれほど高くない。そういったことから、今回、和解州政府に相当なものをお払いになるという背景があるのではないかと思うわけでございまして、今回手放した海外地域におきましてアメリカと同じような訴訟が起きるのかどうかにつきましては、必ずしもそのようなことは考えられないのではないか。しかし、もし訴訟が起きれば、これは他の地域あるいは日本国内におきましても同じような問題でございますので、それに対しましては真摯に対処してまいりたいと思っております。  そういった観点も含めまして、私どもとしては、全体の買収価格、今後の収益見通し等計算いたしまして、合理的な水準取引ができたのではないか、このように考えておるところでございます。
  22. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 どうも私にはよくわからないんですが、先ほど申し上げましたように、今の水準収益が上がった場合でも、ドル金利を考えた場合には収益利益率というのはドル金利よりも低いと。しかも、訴訟が起きた場合は、和解した場合でも、歴史的な経緯云々は全くなしで、その責任は全部事業を買われたJTさんが責任を持つということだと思うんですが、七割ぐらい国有ということを考えた場合には大変高い買い物なのではないかというふうに思います。  ここで監督大臣であります大蔵大臣に伺わせていただきたいんですが、どう聞いても私には高いように思える、今申し上げたような理由で高いように思うんですが、その点について大蔵大臣はどのように思っておられるか、ちょっと御所見をいただければと思います。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回の買収株主総会議決事項ではございませんから、したがいまして株主であります私は、水野社長からこのお話の中途の段階において進行状況お話しいただきました。  そのときに私が老婆心で申しましたことは、もうとっくにいろいろ御研究であるには違いないが、どうもアメリカたばこ産業というのは非常に歴戦の雄で恐ろしい。幾つかの個人訴訟を徹底的に各地で闘っておって、その上にとうとう各州の検事総長相手取って二五年に向かってのやりとりのネゴシエーションをして、一遍は昨年は法律になりかかったわけでございます。法律はできなかったけれども、今二千億ドルとおっしゃいましたが、そういうもので二千億ドル、二十五年の間に。もちろん値上げは許されるわけでございますね。値上げそのものはディスインセンティブになるので許されるという、非常に不思議な話ですが、だから歳入はある。しかし、そのかわり、これをしてはいけない、あれをしてはいけない、こういう訴訟まで入ってきているわけだから、とにかく大変な人たち相手にしておられるので、それはもう御如才もないでしょうがということは老婆心で申し上げました。  ただ、そのときに私が思いましたことは、日本たばこは現在、例えば薬品であるとか、あるいは恐らくバイオテクノロジーとか、いろんなことで少しずつ多角化を考えておられるではありましょうけれども、基本的にはたばこ会社である。従来のいきさつからいっても、今後を展望しましても、たばこ会社をやめることはできない、そういう性格を持っている会社だと思います。  そして、御承知のように、アメリカでもレイノルズナビスコなんかも、いろいろ私は事情があったと思いますが、たび重なるレバレッジド・バイアウトでかなり金融的にはいろいろ苦しいところもあるし、たばこというものが国内的にはある意味でなかなか問題の多い品物になっているということもございまして、海外を売ろうとしているのではないか。  そうしますと、これは浅尾委員はよく御存じですが、フィリップモリスとブリティッシュアメリカンですか、ロスマンズは合併になったから、その次ぐらいに今度JTが来るはずになって、どうしても世界的な寡占体制というものは恐らくもう免れないのではないか。そうすると、JTとしてもその寡占の中に入っていかなければ、今後のたばこ会社としての運命というものはなかなか切り開けないのではないか。そういうふうに経営者が考えられることは私は無理はないことであるというふうにお話をしながら思ったわけでございます。  すぐ外電がありまして、七十八億ドルというのが大変高い買い物であったと言うんです。そうかもしれないが、しかし本当はJTとしてはどうしてもこの際レイノルズナビスコを買っておくべきだという気持ちがおありだったでしょうし、ネゴの途中では、いや、フィリップモリスが買うのかもしれないとか、当然いろんな真偽取りまぜてうわさもありましたでしょう。  そういう意味で、仮にJTが多少高い値で買われたにしても、今の浅尾委員お話では、確かにそろばんをとりますとそれはそろばんとして合うのかなというお尋ねはごもっともではありますけれども、やっぱり世界市場における寡占体制の中でおくれてしまうということを考えますと、これは証明も何もできないことでございますけれども、仮に多少値段が高かったとしても経営者としてこの決心をなさることには十分に意味があるなと。私は何も意見を申し上げる立場には実はないわけでございますけれどもお話をしながらそう思っておりました。
  24. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 余り時間がないので、二点で終えたいと思います。  どうも私には高い買い物のように思われるんですけれども日本たばこRJRナビスコ海外部門を買われるに当たって、どこか外国のインベストメントバンクと言われるところにアドバイザーとしてお願いをされましたでしょうか。された場合は、その報酬体系というのが多分成功報酬という形になっていまして、買収金額掛ける何%というふうになっているんじゃないかなと。だとすると、そのアドバイザーは高い方が彼らの収益は上がるのではないかと思いますが、簡潔にお答えいただければと思います。
  25. 水野勝

    参考人水野勝君) 高い安いという点、先ほど先生から御指摘がございました外貨金利の問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、まだ資金構造が円貨でいくか外貨でいくかはこれからの問題でございます。支払いは一時に行う、そのときには確かに外貨借りるわけですけれども、その後の処理におきまして国内借り入れをどの程度のものとして残していくかということ、そのあたりからの計算になるわけでございます。  また、仮に先生指摘のような金利となった場合におきましても、それは法人税関係からすればおおむね半分になるということもございます。しかしながら、全体の金利水準借入金構造によって今後変わるところでございまして、御指摘のような高い率で今後十年ということはないと思います。できるだけ早く投資は回収する、借入金は償還をしてまいりたいと思っておるところでございます。  それから、今回のディールにつきましては、それぞれのコンサルタント、アドバイザーと提携していることは御指摘のとおりでございますし、またそうしたものにおきましてはいろんな契約もあるわけでございますが、私どものものは必ずしも高い取引高になったからそれによって報酬が上がるという構造にはなってはおりません。  いずれにしましても、私契約の問題で、いろんな守秘義務的な契約もございますので、詳細はお許しを願いたいと思いますが、御心配のような向きは極力避けておるところでございます。
  26. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 簡潔で結構ですけれども買収金額掛ける何%という項目は入っていませんか。
  27. 水野勝

    参考人水野勝君) 必ずしもそういう形式ではございません。
  28. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 必ずしもというのはよくわからないんですが。  それからもう一点は、これは訴訟リスクがかなりある話だと思います。先ほど二千億ドルというお話がありました。これは米国の話ですけれども海外で同じような形で訴訟が起きた場合に、仮定の話ですが、JTが債務を入れると債務超過になってしまうといったような場合に、私ちょっと日本たばこ産業株式会社法というのを読んでいないのでわかりませんが、政府に赤字補てん義務というのはあるんでしょうか。
  29. 水野勝

    参考人水野勝君) 特段そのような規定はございません。そういうことが万々起こることのないよう経営の健全化に努めてまいりますし、現時点では今回の買収案件を勘案いたしましてもそのようなことが起こることはあり得ないと考えております。
  30. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 問題を伺ってみますと非常に高い買い物だと思いますし、それからどう考えても収益的になかなか合わないのかなというふうに思います。  先ほど大臣の方からフィリップモリスが買われるかもしれないといったようなこともあったんでしょうけれども、よくよく考えてみますと、買える方というのが限られている事業ですから、その中でフィリップモリスさんが買わなくて日本たばこさんが買ったということは、私はこれは当たっていないことを望みますけれども、バブルのときに日本の企業が随分と海外のモニュメンタルな建物を買って、結果として高い買い物だったといったようなことの繰り返しになってしまったら非常に残念だというふうに思います。  時間の関係で次に移らせていただきますけれども、今回の減税ではいろいろな法人税減税もされておると思います。その関連で若干質問させていただきます。  今後、日本の国の中で時価会計といったようなものが企業に対して導入されることが決まっておるわけでございます。仮にこの時価会計を導入した場合には、大変積極的に退職給与引当金あるいは企業年金を積み立てている会社であっても、具体的に言いますと、キャノンという会社は非常に積極的にこれをやってきたわけですが、それでもニューヨークにおいて上場に際して時価会計でやると大体千五百億円ぐらい足りないと言われたそうであります。日本企業全体で見ると、大体六十兆円ぐらい足りないという計算もあるようでございます。  一方で、企業の方を時価会計で縛るわけでございますから、今まで企業がそれをやっていなかったというのは税法上認められている範囲が非常に小さかったわけでございますけれども、時価会計を導入するに当たって税法上認められる各種控除、これを拡大する考えはないのかということと、それから簡潔で結構ですから、例えばアメリカ、イギリス、フランスはどういう取り扱いを税務上やっているのか。日本は非常に厳しいんじゃないかな、そうすると国際競争力上、日本の企業にとって不利に当たるのではないか、そういう観点から質問させていただきます。
  31. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今回、企業会計の分野で退職給付の関係が時価主義になってくるというのは私どもも承知しております。  この辺の関係法人税でどう取り扱うかという議論は、実は政府税調の中に法人課税小委員会というのを設けまして、三年間にわたり議論したところでございます。その際、このような時価会計の動きも念頭に置きながら議論をしたわけでございます。  コンパクトにということでございますが、一言で言いますと、やはり税務会計といいますのは公平で明確でなければならぬという要請がございます。他方、企業会計の方は、御存じのように、債権者と利害関係者の利害調整あるいは経営成績をできるだけ客観的に示すという情報提供、そういう意味で税法の考え方と企業会計の考え方は必ずしも一致しない部分が出てきます。  それで、退職給付について申し上げますと、特に退職給与引当金の取り扱いをめぐって問題になってきたわけでございます。アメリカには御存じのように内部引当金制度はございません。そういう意味では完全に税法と企業会計が分離しているわけでございますが、そこでとられている考え方といいますのは、長期に潜在的に発生する債務というものは多分に見積もりの要因が出てきます。しかし、税法の方からいたしますと、見積もりの要因を法人税法に取り込むというのは税法の考え方とずれてくる面がございまして、できるだけそういう要素は廃すべきではないか、こういうような考え方になっておるわけでございます。  したがいまして、今回の時価会計に伴いまして十五年間にわたり是正していくことになるわけでございますが、税法の方での手当てというのは必要がないのだろうというふうに思っております。ただ、外部拠出でございまするならば、過去勤務債務を実際に外部に拠出する、その時点では確かに外に支払われる、確定するわけでございます。それは当然損金になる、こういう取り扱いでございます。  なお、海外における取り扱いでございますが、全部詳細に調べたわけではございませんけれども、ほぼ同様の考え方になっているものと承知しております。
  32. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 時間の関係で次に移りますが、日本の場合は今まで時価会計というものがなくて、十五年間とはいえ大変大きな負担に各企業が直面するわけでありまして、アメリカはずっと時価会計でやってきたわけですから、そのインパクトということを考えた場合には税法上の手当てをされた方がいいのではないかということを申し上げさせていただいて、次に移らせていただきます。  次に、自治省の方に来ていただいておりますので、自治省の方に伺わせていただきます。  最近どうも地方交付税の不交付団体が減っておるということでございますけれども、一九八三年から五年刻みで九八年、昨年までの不交付団体の都道府県、そして市町村ごとの数を教えていただきたいと思いますし、また多い都道府県の上位三つを教えていただければというふうに思います。
  33. 石井隆一

    説明員(石井隆一君) お答え申し上げます。  一九八三年以来、五年刻みの不交付団体の数でございますが、道府県について申しますと、八三年が一団体、八八年が四団体、それから九三年、九八年はいずれも一団体となっております。  それから、市町村分の不交付団体でございますけれども、同じく八三年から五年刻みに申しますと、百十五団体、百七十八団体、百六十四団体、それから百十九団体となっております。  なお、この間、市町村で不交付団体がいずれの年をとりましても一番多かったのは愛知県、次に神奈川県、東京都、こういうふうになっております。
  34. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今のお話を伺いますと、大体バブル崩壊後ずっと減ってきているということだと思います。ちなみに、一団体、東京都がなくなった場合に地方交付税制度そのものが破綻を来すのではないか、破綻を来すというのは言い過ぎかもしれませんが、その制度の役割を終えるのではないかと思いますが、そういう観点から大蔵大臣に、地方は今まさにだんだん減っておるという状況であるということを踏まえて、地方への財源移転について、簡単で結構でございますので、所見をいただければと思います。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたびは予算編成に際しまして自治大臣と何度も御相談し折衝をいたしましたが、まず最初には所得課税、法人課税について、中央と地方との減税分の分け方につきまして、いろいろ地方の財政を伺っていますと、ちょっと私が当初考えたようにはまいりませんで、国税がかなりの減税分を引き受けるような形になりました。その上で、昨日もこの席上でお話がございましたが、かなり異例の地方財政対策を予算の上で講じてございます。  それでも、いわゆる富裕団体につきましては、今までなかったことでございますけれども、法人関連の減収が非常に大きゅうございまして、法人税の交付税率の特例等を設けたりいろんなことをいたしましたが、どうも展望しておりますと、今の法人の収益状況というものはそんなに急速には回復しそうにもない。したがいまして、これは一年限りのことで済むのか済まないのかというような心配を片方で持っております。  いずれにしましても、中央と地方の行財政の再配分というのは長いこと言われていて実現したことのない課題でございますが、いわゆる税制あるいは財政の来るべき抜本改革にはどうしてもこれを入れて考えるしかもう方法がないと私は思っていますし、恐らく自治省でもそう思っていらっしゃるのではないかと思います。  したがって、それまでの間、つなぎという言葉はちょっと適当ではございませんが、どっちみち大きな改正をしなきゃならない、しかし景気がその間に、うまく法人税が回復していけばよろしゅうございますが、そうでない場合にどうするかということは、それまでの間いろいろ工夫をしなければならないのではないかなと。情勢が好転することを祈っておりますけれども、急には期待できないかもしれないという感じがしております。
  36. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございました。  ここで、政府案の所得税減税二法案に対して、民主党・新緑風会案の考え方の違いといったようなところを発議者にお聞きしたいと思います。
  37. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 浅尾委員にお答えしたいと思います。  昨日、私も質問の中で申し上げたわけでありますが、政府案における所得減税というのは最高税率だけが引き下げで、さらにそれに定率減税を継ぎはぎしている。将来を展望した個人所得課税のあり方という観点からすると、どうも抜本的改革につながっているというふうにはなかなか思えないわけであります。  例えば、昨日も指摘したわけでありますが、税率を引き下げる場合に課税ベースを広げていく必要があるにもかかわらず、今回はフリンジベネフィットの問題も含めてほとんどそれが触れられていない。その意味ではいわゆる高額所得者だけが非常に不当に優遇されているのではないかという指摘をしたわけであります。  さらにまた、かねてから日本の課税最低限は高過ぎる、こういう指摘があったにもかかわらず、今回も再びまた子育て減税と称されて扶養控除を増額される、こういう形で、とてもこれは抜本改革に向けた動きとは私たちは思えないわけであります。しかも、景気対策と称しながらサラリーマンのほとんどの世帯では昨年よりも負担増になるという、その意味で政府案に対しては私たちは非常に不満を持っております。  それに対して、私たち民主党・新緑風会の案は所得税本法で改正案を出しているわけでありますし、また将来のいわゆる抜本的な税制改革という方向をできるだけ前倒しにしていこうということでございます。五段階の税率をそれぞれ二割引いて八%から四〇%という形にして、あらゆる階層の人たちにこの減税の恩典が当たるように、さらに私たちは分離低率課税になっている現在のいわゆる利子、配当、株式譲渡益、こういったことに対する総合課税ということを三年以内に納税者番号制度を導入して整備するということを指摘しているわけであります。  さらに、私たちは、ただいま大蔵大臣からもお話がありましたように、地方財政が大変ひどい状態にある、国ももちろん大変なんでありますが、この地方財政の状況をかんがみて、今回の減税は国税だけで進めるべきではないかという対案を出してきたところでございます。  以上、民主党案と政府案との違いといったことについて特徴点を私の方から指摘させていただきました。
  38. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 終わります。
  39. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 公明党会派に属しております浜田卓二郎です。  きょうは三点に問題を絞って質疑をさせていただきたいと思います。  最初は質問というよりも感想でありますけれども、税法の審議でありますから、今回提案された改正案について私なりの感想を申し上げて、もし御答弁をいただけるのであれば御答弁をしていただきたいと思います。  まず、今の所得税の改正ですけれども、最高税率を引き下げた、これは長年の懸案でもあったと思いますから私は賛成でありますし、それから課税最低限を従来の線まで戻す、これも賛成であります。本来、もう少し課税最低限は低くてもいいというのは私自身は考えているところでありますから、そういう方向への所得税法の改正というのは結構だと思うんです。ただ、民主党案の説明も今ございましたけれども恒久的減税からぜひ早く恒久減税へつなげていただく議論をきちっと政府は急いでやってもらいたいということでございます。  ただ、あえて申し上げれば、宮澤大蔵大臣が御就任されて、最初に税の問題に取り組まれた。矢継ぎ早に今日の改正案の骨子を、私は大蔵大臣御自分の頭で考えられて打ち出してこられたなというふうに感じておりまして、大変迅速で、珍しく政府としては結構なことだと思っておったんです。  ところが、あれは暑い盛りでしたね。今はもう四月を目前にしているわけですけれども、八カ月かかっているわけです。だから、これはおっしゃるのが早過ぎたということなのか、おっしゃることが実現するのに時間がかかり過ぎたということなのか。私は後の方だと思っておりまして、これは一体何が原因なのか。政府税調があり党税調がありというような議論の構造、それから国税庁における執行の体制、いろいろあると思うんですけれども、しかし機動的な財政運営とか特に景気対策に対する財政のあり方からすれば、ここのところはもうちょっと短縮できないものかというのが予算委員会、そしてこの委員会にずっと出席しながら感じていることでございます。  それからもう一点は、これは公明党も民主党も同じように主張しておったわけですけれども、七百万円以下の中低所得層が前年度に比べると結果的には増税という形になってしまう。大蔵大臣の御説明ですと、これは増税ではなくて減税の規模の違いだというお話でありまして、それはそのとおりでありますし、それから課税最低限を二回も今の水準でやると何か定着しちゃうんじゃないかというお話で、しかしこれは私も基本的には賛成しながら、どうも説得力がちょっと乏しいなと。二回続けても三回目でやめるということだってあり得るわけで、むしろ景気の局面を考えれば、さっきの時期の問題、タイミングの問題も含めてもう少し考える余地があったのかなという気はいたします。これは感想でございます。  それから、どちらにしろこれだけ減税したんですから、これからどこかで戻していかなきゃいけないでしょうし、その過程で税構造の問題をもっと深刻にというかまじめに議論していかなきゃいけないと思います。当然、消費税の問題もあります。  消費税の三%への引き下げ論というのは大分ありました。これは国民の側からすれば魅力的な案なんです。私も消費刺激という面で議論しなきゃいけない論点だと思っておりまして、その場合に何があり得るかと思っておりました。  私なりの結論は、少なくとも消費税の逆進性という面からも考えて、食料品とか生活必需品とか、そういうものに対する課税は変えてもいいんじゃないか。だから、もしどうしても引き下げるのであれば、その部分だけ引き下げたらどうなのかというのを私なりには考えておりました。  結果は変えなかったわけですからこれでいいんでしょうけれども、将来、消費税をさらに上げていかざるを得ないと思います。このときには、やはり生活必需品とか食料品とか、面倒でしょうけれども、これはもう据え置きだろうと思うんです。  実は三%の導入のときもこの議論は活発にあったわけでありまして、私は当時、自民党内で議論をしておりましたけれども、外すことがあり得るのかなということを考えた時期もございました。しかし、三%ならば勘弁してもらおう、逆進性の問題もここは勘弁してもらおうというのが結論だったというふうに記憶しておりますが、今後の消費税の改正についてはこの点はもう考える段階に来ているというふうに思います。  それからもう一つ、これは全く今まで論点に出てきておりませんでしたけれども、相続税の問題があるんです。  最高税率七〇%ということで、金持ちから取ればいいというのは確かにそうかもしれませんけれども、特に日本の資産家、昔から先祖伝来の土地を持っている資産家というのがやはり最高税率七〇%で来る相続税に相当不満を持っているというのは事実でございます。実は埼玉県でこの間おもしろい会がございまして、地主たちの一揆というんですか、地主さんたちがお集まりになって、相続税改正ののろしを上げるというか、むしろ旗を立てるというか、そういう感じの会がございました。  特に今深刻感があるのは、バブルの最盛期に相続が起きる、そして高い評価で相続税を課される。それを全部物納で済ませてしまえばよかったんですけれども、もちろん欲もあったかと思いますし、当時のそれぞれの事情もあったと思いますけれども、結果的には延納にしてもらって土地が担保に入っている。ところが、土地が十分の一ぐらいに落ちていて、しかも現実には売れない。税務署はまじめですから物すごい勢いで取り立てに来る。そうすると、相続税も含めて日本の税には大変貢献しているはずの方々が今や恨み節になっていて、全部処分しても足らない。そうすると、おまえのところの家、四百年続いた屋敷まで処分せよというのが徴税官のおっしゃる現実のせりふになっている。そうすると、一体何なんだという思いが物すごくあるわけです。  そういう実態も、これは法律の問題ではなくて、徴収という面の問題もあると思いますけれども、いずれにせよ相続税のあり方も今後はひとつ大いにこれからの税制を考えていく場合には御検討いただきたい。諸外国に比べて著しく高いというのは現実でございます。  そういう感想を申し上げて、私はこの税法には賛成するつもりでございますので、もし答弁をしたかったら答弁をしていただきたいと思います。──別にしたくありませんか。では結構です。  それでは質問に入ります。  低金利政策、低金利に超がつきますね。私は金利は低過ぎるということをずっと主張してきました。後で申し上げますけれども、それはいろいろ弊害があるわけです。ところが、この間二%まで長期金利が上がりました。私はいい傾向だと実は思っていたんです。何かのきっかけでこの異常なる低金利体系というのを直さなかったら私はだめだと思ってきましたから、いいチャンスじゃないかと思っておりましたら、それは大変だということに逆になってしまった。そして、資金運用部が国債の買い入れを再開する。これは一つの引き下げに対するアナウンスメントエフェクトをねらった措置だろうと思っております。  それから、日銀さんは大騒ぎで低利誘導をおやりになった。実質金利がほとんどゼロになっている。これは異常の上にさらに異常を重ねたという気がするんです。動機は、一つは景気があったとは思います。しかし、もう一つはやはり米国と日本の実質金利差というのがどんどん縮小していく、実質金利でいうとほとんど金利差がなくなってしまう。そうすると、米国への資本流入が減少して、金利も上がりぎみになる。そうすると、せっかく調子がいいアメリカの株が下がるんじゃないか、それに円高も過ぎるんじゃないか、そういう話がどうやら背景にあると言われてきましたし、現にダボスでの国際フォーラムでも、本当に言ったかどうかはやぶの中ですけれども、日本の金融政策に注文がついたわけです。  そこで、大蔵大臣のお考えも変わられて、資金運用部の買い入れも始められる。そして、日銀も大騒ぎで金利低利誘導をされるという、これは推測でありますけれども、そういう筋書きじゃなかったかなというふうに思うんですね。私は、この判断というのは、これはアメリカも大事ですけれども、どうなのかという気がしてならないんです。  一つは、私は今アメリカに資金が集まり過ぎていると思います。それで、アメリカの株は高過ぎるというか、過熱ぎみじゃないか。グリーンスパンさんだって心配して警告を発するわけですから、かつての日本のバブルの最盛期とはあえて言いませんけれども、むしろアメリカももう少し冷えた方がいい、徐々に冷えた方がいい、私はそう思うんです。何も大騒ぎで、ダウがちょっとぐらい下がりそうだから日本に金利を下げろ、はい、わかりましたというような話では少なくともないというふうに私は思います。  それからもう一つは、我が国の景気の局面からいっても、金利が企業の資金需要を左右する、ちょっと金利を上げたら企業が資金の借り入れをやめちゃうというような局面では少なくともないわけで、どちらかといえば設備余剰、どちらかといえばじゃなくて明らかに設備余剰であって、むしろそれをどうやってリストラするかという話のときですから、長期金利が二%になった、それは大変だという話は、日本の経済全体で見た場合にそうなのかという気がするわけです。ですから、そういう面からいっても、慌てて低目誘導にして実質ゼロにする必要があるのかどうか私は疑問です。  それから次、三つ目で言いますと、これはよく皆さん言っていますけれども、今でさえ預貯金するのはばかばかしいと思っているわけです。本当にばかばかしい数字ですね。それをさらに、ゼロにはならないでしょうけれども、実質金利ゼロだなんていうのが新聞に出ますと、ますますそんな危なっかしい銀行や何かに持っていかないという気になっちゃう。たんす預金がふえるという説です。私はこれは本当にそうなんじゃないかと思うんです。それから、銀行間取引で言っても、コールに出す出し手がなくなるんじゃないでしょうか。だから、銀行間の資金取引マーケットも縮小しますね。むしろ、今でもしんどい銀行はさらにしんどくなるんじゃないか、こういう問題があります。  そもそも景気対策から考えても私は逆だと思うんですね。六百兆本当にあるかどうか知りませんけれども、六百兆の預貯金と言われています。六百兆の一%というと六兆円ですよ。ちまちました減税をやるより、その面だけで考えれば、金利を上げてやれば所得がふえるんですよ。そっちの方が消費刺激効果があるんじゃないか。お金を持っていても、銀行に預けてもろくなことはないし、みんな手元に持っている。しかも、年金生活者なんというのは悲惨なものだろうと思います。年金生活者というよりも金融資産で食っている人たちというのは悲惨なものだろうと思います。  だから、むしろ金利を上げることが減税よりもよっぽど消費刺激効果という経済効果から見れば上じゃないか。そういう側面からだけで幾つか申し上げてみたんですが、どうですか。もう無理やりの低金利政策というのはどこかで転換しなきゃならない、そう思いますけれども、いかがでしょうか。
  40. 黒田巖

    参考人黒田巖君) お答えいたします。  まず、先生指摘の点は、私ども日本銀行の政策決定会合において二月十二日に決定されました金融市場調節方針についての御指摘かと存じます。  その折の決定の趣旨はあくまでも国内景気に関する判断に基づくものでございます。つまり、民間の経済活動が停滞を続けまして、先生指摘のとおり、昨年末以来の長期金利の上昇や円高ぎみの推移といったことが経済の先行きにマイナスの影響をもたらすおそれが出てきたということを踏まえまして、あくまで国内経済をしっかりとサポートしていきたいという観点に立ってのものでございまして、米国のさまざまな現象、事情への配慮といったことではございません。  それから二番目に、金利が下がっても企業の借り入れがふえる状況ではないという御指摘がございました。確かに企業の借り入れが今直ちにはふえにくい環境にあることは御指摘のとおりだと思います。  ただ、私どもの二月十二日に行いました措置の後、先生指摘のとおり、オーバーナイトコールレートは既にゼロに近い水準まで低下しておりますが、そのほか預貯金金利、貸出金利ども市場金利水準を下げてきておりまして、これがやがてさまざまな金利にも波及していくものと考えております。そうしたことが金融・資本市場の全体として投資採算の改善、金融機関の資金繰りの緩和等を通じまして、経済全体に好ましい影響を与えていくものというふうに理解しているわけでございます。  三番目に、銀行間取引への影響でございますが、先生指摘のとおり、これも取引が縮小しております。オーバーナイトのコール市場の規模は約二割この間低下しております。そういう意味で、これは金融市場調節方針にも記されていることでございますが、私ども市場のいたずらな不安を招かないように注意をしながら金利を下げていくというふうな方針でございます。  それから四番目に、預貯金金利が下がるということで預金等の収入に依存している家計が大変困るのではないかと。その点はまことにそのとおり、その限りにおいてそのとおりだというふうに私どもも認識しているつもりでございます。  ただ、御承知のとおり、ただいま何しろ雇用・所得環境は大変悪い状況でございます。これが家計部門全体に対して大変マイナスの効果を及ぼしております。いわゆる雇用者所得というのは家計所得の八割を占めている状況にございます。したがいまして、ここは経済全体を何とか浮揚させることによって家計部門全体の状況を改善していくということがやはり必要なのではないか、かように考えておる次第でございます。
  41. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 アメリカ云々は、言われたからやった、それがけしからぬという気持ちじゃないわけでありまして、世界全体を考えて、アメリカにとっても今は瞬間的には日本の金利が下がっていった方がいいと思うかもしれませんけれどもアメリカ経済のソフトランディングを考えてみても、この日本の金利が少しずつ上昇していく、それをきっかけに日本が超低金利政策から脱却できるということがむしろ私はプラスだと、そういう総合的な判断をすべきときじゃないかということを申し上げたいわけです。  大蔵大臣、もしそうお考えならうなずいていただければ結構でございますけれども、いかがでございましょうか。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) けさも経済対策閣僚会議がありましたときに、日銀総裁からお話がありまして、ただいま理事のお話しになられたような趣旨のことでございました。少なくとも当面経済に与えている影響は、利子生活者のことをおっしゃいましたがそれは別といたしまして、各方面、三月末という難しい時期を迎えてともかく比較的平穏に推移をしておるというところで、私なんかも日銀総裁の二月十二日の方針決定を多としている方でございます。  浜田委員の言われるように、利子生活者等々についてゼロの金利というものは、まさに六百兆円であれば六兆円、一%ではないかとおっしゃることはそれもうそではないでしょうが、しかし雇用者所得の方が恐ろしいから、ここで失業がさらに悪くなるというような状況の方が短期的にはネットとしては怖いかもしれないということで今のようなことをお願いしております。  一つの結果としては、長期金利も先ほどおっしゃいましたように下がってきておりまして、クーポンレートも一・九とかいうレートでございますから、そうしますと財投金利もそれだけちょっと楽ができる、財投機関の貸し出しにもそれが影響するというような部分は確かにプラスの部分、等もあれこれ考えまして、さてこれから次の局面は何かということを考えると、さっき浜田委員がちょっと言われましたが、実は企業における老朽設備のリストラなんじゃないかと思います。そういうところで次の展開を待っておると申しますか、そういう政策を日本銀行としてはとって、この年度末をとにかく平穏に乗り切っていこうと考えておられるのではないかと思います。
  43. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 時間がなくなりましたので、生保についてまとめて質問させていただきます。  この低金利というのは実は生保経営にとっては大変深刻な影響を与え続けているわけです。私は、いろいろ調査というか聞かせていただいて、何か今利ざやが、いわゆる保証利回りというんですか、保険契約をやるときの保証利回り、予定利率というんですか、これが現状は大体四%前後だと。ところが、運用利回りはこれより一%程度は絶えず下回ってしまう。三%確保できればいい方だというような状況のようであります。既契約を新規契約に取りかえていって全体の予定利率というのを下げていこうということでも、これも相当時間がかかることのようです。  そうすると、九八年三月末ということでちょっと合計してみたんですけれども、上位二十社で年間一兆八千億円の逆ざやを生じているわけです。この逆ざやが縮小していく見込みというのがなかなか立てがたいということがあります。これは各生保別にいろいろ議論していかなきゃいけないと思います。  しかし、全体として見て、本当にこの生保の経営という面から見て、現状でいいのか。というのは、低金利の話の延長で申し上げたわけですけれども、生保の経営は大丈夫なのかというのが私は心配なんです。  それともう一つは、日産生命が破綻しましたね。このときの債務超過は総資産二兆円に対して一五%程度、三千億円ぐらいあったわけですが、これは生保業界がいろいろ拠出し合って、二千億ぐらいは業界がみんなで負担したという格好になったようであります。  今後の経営破綻に対応して保険契約者保護機構というのがつくられておって、十年間で四千億円の拠出を各社が納得をしている、積み立てているわけです。この四千億というのはよくわからないんですけれども、日産生命が一つ破綻しただけでも既に債務超過額が三千億、保険業界で二千億を負担した。では、これ以上の破綻が起きたらどうするのか。四千億でおさまるのかという問題が一つ。これを超えたら、今はスキームがないでしょう。  今あらゆる目が銀行に行ってしまっているわけです。私もこの生保問題というのはこれから取り上げていきたいと思って、きょうはイントロだけなんですけれども、やっぱり生保の経営というものをもう少し真剣に考えていかないと、これは高齢化社会とか何とかかんとか言いながら民間の商品に期待するところも大なわけですからね。  この経営問題は大丈夫なのか、破綻に対する対応について政府はどう考えているのか、この二点を簡潔にお答えいただいて、質問を終わります。
  44. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 今お話がございましたように、近年の低金利や株価の低迷などの影響を受けまして生命保険会社における運用利回りの低下による逆ざやが引き続き発生していることは承知しております。このような環境の中で、各社とも経営の効率化の推進、店舗の統廃合でございますとかいったようなリストラ、それからもう一つは自己資本の充実策等の経営基盤の強化、増資でございますとか基金の増強でございますとか劣後ローンの調達等でございますけれども、そのほかいわゆる運用資産の組みかえ等の努力を払っているところでございます。  今御指摘になりました生命保険会社におきます保険収支でございますけれども、御案内のようにいわゆる三つの利源、費差損益、死差損益、それから今御指摘の利差損益の三つがあるところでございまして、御指摘の逆ざやというのはこのうちの利差損益を悪化させるわけでございます。最近の傾向を見ますと、利差益以外の費差益と死差益が総じてプラス傾向で推移してございまして、保険収支全体で見ますと、利差部分の逆ざやのみでもって今直ちに経営上の問題があるとは言えないのではないかと考えているところでございます。ただ、いずれにいたしましても利差の部分で総じて損となっていることは私どもも真剣に受けとめるところでございます。  今後とも生命保険会社に対しまして一層の経営の効率化、自己資本の充実等を払うように、適切な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  45. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 終わります。
  46. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  昨日、法人税問題を伺っていて時間切れになりましたので、きょうは引き続きそのことの質問をさせていただきたいと思うんですが、その前に二点ほどお伺いしたいと思います。  まず、児童手当法及び所得税法一部改正に関する法律案に関して発議者に伺いたいと思うんですが、児童手当に関しては、一九八五年の改正以来、対象年齢が義務教育終了から開始までというふうに引き下げられたり、九一年には第一子からというふうにするかわりに三歳未満までということで狭められるといったような経過をたどってきております。  我が党はこうした改悪に反対してきたわけですけれども、そういったことから、今度の民主党が提案なさった児童手当の拡充、対象拡大には私たちは賛成するものであります。今度の提案のよさといいますか、現行の扶養親族控除方式を手当方式に変えるということを提案された。こういうことは結局は低所得者には現行制度より有利になりますし、所得税を納めていない層にも恩恵が及ぶわけですから、評価できるものだというふうに思います。  ただ、この法案では児童手当の所得制限が引き上げられます。それはいいことなんですが、扶養親族控除の廃止、この影響によって、主に中堅層なんですけれども増税になる部分が出てくるわけですね。つまり、モデルではたしか夫婦子供一人ということだったと思うんですが、そうすると妻と子供が二人で年収が一千二百万円を超える世帯については大体二十万円ぐらいの負担増になるんじゃないかなというふうに思うんです。所得制限を超える世帯では、今度は子供の数がふえればふえるほど、子供の数が多いほど結局増税になってしまう、そういう矛盾を持っている。  全体としていいんですけれども、ここの部分に対する手当て、増税となる層への救済策といいますか子育て支援策といいますか、そういったことが必要になってくると思うんですけれども、伺いたいと思います。
  47. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 限られた時間で私どもの提案に質疑をいただきまして本当にありがとうございます。また、児童手当の抜本的な拡充案にも賛成するということで、本当に感謝を申し上げたいと思います。  御指摘を受けた点は私どももそのとおりだと思っているんです。私どもの持っている試算表で扶養家族を三名、四名、五名とずっとふやしてまいりますと、ちょうど千二百万円を超えるところあたりから実は増税になってしまうという、私どもとしては大変不本意なといいますか、ある意味では非常に問題を持っているなということについては御指摘のとおりだと思っております。  ただ、その場合、私どもが今回所得制限を設けたのは、今回の減税案というのは高額所得者に非常に有利になってきているということを考えて実は所得制限ということを付したわけでありますが、ヨーロッパを調べてみますと、大半は父母の所得に制限を設けていないのが実態でございます。その意味で、私も将来的には所得制限は撤廃するのが最も望ましいんじゃないだろうかと。所得が高いから低いからといって児童手当を制限するということについては、本来の趣旨からすればこれはやはり望ましくないのかなと思います。  その意味で、私たちは将来的には御指摘のような負担増を解消するためにも所得制限の撤廃ということについては考慮していかなきゃいけないなと思っておりますので、この点については、もしこれに御賛同願えれば私どもとしてはこの点についての修正もまた必要だというふうに考えております。ぜひまた御議論願いたいと思います。
  48. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 賛成です。  結局、子育て支援なわけですから、子供の数が多くなってきたら不利になるというのでは、ちょっとそこは矛盾だと思いますので、そこについては知恵を出す必要があるだろうなと私たちも考えております。  続いて、消費税の問題といいますか、最近行われました日経のアンケートのことについて大蔵大臣の御意見をちょっとお伺いしたいなと思うんです。  ちょうど三月十日付の日経で、「所得・住民税減税や住宅ローン減税法人税減税など九兆円を超す税制改革案が成立すれば、四月から減税が始まる。」という説明をしまして、この減税で支出をふやすかどうかというアンケートをとっておられます。今度の九兆円減税で支出をふやすかどうかというアンケートです。それに対して、ふやす、ふやすというのはかなりふやすとややふやすという両方合わせた数字なんですけれども、これが九・四%、一〇%弱、一割弱です。それから、変えないというのが八五・一%、支出を減らすというのが五・五%ありました。  九兆円の減税といったらもう史上空前、大変な額の減税なわけですけれども、そういう減税をするということを聞いた上で、にもかかわらずこれに対する国民の反応は今申したとおりなんです。宮澤大蔵大臣はこれをどういうふうにごらんになりますか、このアンケート結果を。
  49. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐らくこのアンケートは一般の中立的な消費者のほぼ正直な反応ではないだろうかと思って読みました。  と申しますのは、こういう減税が行われる、それについてはいわば限界的な消費がそれによってふえるかという問いかけでございますから、いや、こういうことがちょっと行われたところで急に何を買いましょうという気持ちはありませんというのが限界的な消費についての恐らく正直な答えであろうと思います。  私どもが期待をしておりますのは、そういう九兆円というような減税が行われている中で多少全体の経済の雰囲気が変わってきて、それでは少し何か買ってみようかなという平均的な消費性向と申しますか、そういう動きをむしろ期待すべきなのだろう。リアクションがそのように非常にきついもの、渋いものであっても、それは別に気にするに当たらないのではないか、私はそう思ってあの統計を見ておりました。
  50. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私はもっとストレートに、九兆円減税しても効果はないんだ、消費はふえないぞという形で受けとめるべきじゃないかと思うんです。  同時に、このアンケートでは、支出拡大のためには何がいいかということを問いかけているんです。それに対して、「消費税率の引き下げを求める割合が六割と最も高かった。」というふうにありますが、この二つを並べてみたらわかりますように、今本当に個人消費を拡大していこうということを考えれば、消費税の減税という方向を打ち出さなければならないんじゃないかなというふうに思うんです。  大蔵大臣は財政演説で国民の英知を結集して不況を早急に克服したいとおっしゃった。そうしますと、国民の英知というときに、少数の知恵者、その知恵もあるかもわかりませんけれども、この場合、多数の国民の声がやっぱり国民の英知じゃないかなと思うんです。そういう点では、私たちも消費税引き下げ法案というのを出しておりますけれども、決して少数の声じゃない、どんどん日がたつほど多数の声になっていっていると思うんです。こういった声に率直に耳を傾けていただいて、消費税の減税ということも検討しなければいけないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 消費税の減税を行いまして、殊に何かうまいぐあいでこいつは余り長続きはしないんだぞというふうなことでも一緒に言っておくと多分相当の消費刺激になる、それはきっとそうだろうと思います。しかし、そうでなくても消費減税というのは、それは目先値段が下がるわけでございますから、かなり効果があるというのは私はあえて反駁をいたしません。  しかし、私が心配するのは、いつそれをもとに戻して、将来に向かって、消費税というものはいろんな意味で二十一世紀に向かっていろいろな役割を背負ってもらわなきゃならないかもしれない、そうでないかもしれませんが。そういうことを考えますと、当面の利益はきっとあるだろう、ただ長い目で見て、日本の二十一世紀当初における財政、税制その他あるいは社会保障等々の措置として邪魔になるような選択はこの際私はしない方がいいのではないかということを思っておるわけです。
  52. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、今の景気対策としては役に立つかもわからぬが、まあ立つだろうと。しかし、将来消費税は値上げしなければならないというお考えに立っているから、結局上げようとしたときに上げにくくなるから今は下げない方がいい、そういうお答えだと思うんです。  それでは、今何でもありとおっしゃって、本当に景気回復に役立つ対策を打っていこうじゃないかというお考えですが、そうじゃない、かなりある面では消費税の増税問題というのは長期にわたった経済政策の考え方に立つものであると同時に、私はかなり党利党略的なものが今あるというふうに思うんです。そういったところをやはり廃して、今本当に景気対策に役立つ対策をとるべきだということを申し上げておきたいと思うんです。  昨日に引き続き、法人税問題を伺いたいと思います。  景気回復を引っ張る主役は個人消費と設備投資だということがずっと言われてきたわけですが、その設備投資問題に絡まる法人税減税問題ということで、昨日は大蔵大臣はこれは大いに効果があると、私はそういうふうに聞いたんですけれども、設備投資効果があるとおっしゃったんじゃなかったですかね。景気回復には効果があるとおっしゃったんですけれども、ただ大蔵省がこの十日に発表された四半期別の法人企業統計を見ますと、御承知のとおり、昨年十—十二月期が前年同月比一八・七%減で三十六年ぶりのマイナスだというふうに報道されております。極端に設備投資が落ち込んでおる。その中で、この法人税減税ということがどういう形で設備投資の増に結びついていくというふうにお考えなんでしょうか。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今の我が国の経済回復の努力の中で、やはり期待をしたいのは国民消費と企業の設備投資でございますけれども、両方とも残念ながら決め手がございません。  設備投資については、GDPにおける大きさからいえば一三、四%、衰えたりとはいえそのぐらいの大きさがございますから、何とか出てきてもらいたいと思いますけれども、まだまだ古いものを持っておって、新しい投資をするような感じではないような気がします。したがいまして、今回法人税を下げましたのは、この際短期的に設備投資が大きくなることを期待しているわけではございません。むしろ、国際化が進んでまいりましたから、この際世界的な法人の負担というものにさや寄せしておきませんと、企業が出ていく、あるいは入ってくる企業が入ってこない、そういう方を主に私としては考えました。  もちろん、企業の立場から申しますと、この四月から始まる新年度から会社の税負担が減るということは、どの会社も一年だけでない多少中期的な計画を立てておりますから、採算に非常な影響があることはもう間違いございません。そういう中で、将来の投資計画なり人員採用なりなんなりにいい影響があることは確かであろう。これは池田委員もお認めいただけると思いますが、そういうことは考えておりますけれども、即効があるというふうには実は余り期待をいたしておりません。
  54. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 採算がよくなる、それはそうだと思うんです。もうけておる会社については、利益の上がっている会社については採算がよくなるわけで、それは間違いないことだと思うんですけれども、ただ採算がよくなって、ではそういう会社が設備投資にすぐ打って出るかというと、そういう情勢にはやはりないというふうに私も思います。  特に、私が非常に目を向けておかなきゃいかぬなと思うのは、設備投資の落ち込みが、この報告を見ますと、特に一億円未満の中小企業、一千万円から一億、これは一千万円以上の法人企業についての統計ですから一千万円以下はないんですけれども、一千万円から一億円までのところで三八・一%の減少なんです。トータルでは一八・七に比べて、中小企業は極端に悪い。  これはもうだれでも知っていることですけれども、景気の回復期には従来ずっと中小企業の設備投資が引っ張ってきました。この中小企業の設備投資の立ち上がりがなければ景気の回復というのは過去なかったわけで、そういう点からすると、今はもう非常に深刻な事態にあるということで、景気回復の胎動といいますか、いろいろ言葉があったようですけれども、のんきなことを言っておれるような状況ではないというふうに私は思います。  それでは、減税によって恩恵を受ける企業はどうかということについて見たいんですけれども、中小企業の黒字企業、それが今一体どれぐらいあるのかということなんですが、特に一千万円以下の小零細といいますか、そういったところの企業、法人についてはどの程度の黒字の会社があるんでしょうか。割合を言ってください。
  55. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 国税庁が実施しております会社標本調査によりますと、平成九年分の資本金、これは先生は以上と言われたんですけれども、一千万未満しか統計をとっていないんですが、一千万未満の法人数でとりますと百二十八万社、そのうち黒字企業は三十六万社で、全体の約二八%という数字が出ております。ただ、この数字はあくまでも標本調査でございますから、実数というわけではございません。
  56. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 失礼しました。私、何か言い違えたようでしたね。未満の会社で結構です。  二八・三%ということは、逆に言いますと赤字企業が七割以上あるということなんですね。一億未満でとってみても大体六五%程度が赤字になっています。そうしますと、こういったところにはもちろん今度の法人税減税の恩恵はないわけです。結局そういうところはもうそういう状態にある。  片一方、恩恵を受けるところはどうかというところで見ますと、これは特に一番大きなところで見ますけれども、代表的なのはNTTです。もうかっています。この業務利益は大体三千億円ということが見込まれておるようですけれども、そうしますと、減税額も相当なものになります。それでは設備投資はどうかといいますと、三月四日の報道によりますと、そこで宮津社長が会見しているんですけれども、ここでは、九九年度の設備投資計画額は前年度実績見込み比二千三百億円減、つまり一兆五千二百億円、三年連続のマイナスだというふうに言われております。結局、NTTへの減税分は投資額には回らないというのが現実なんです。これはNTTだけじゃないと思いますが、いかがでしょうか。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ですから大企業有利の法人税減税と余りおっしゃらないでいただきたいと思うんです。実際には設備投資というのは本当に足が重うございますから、ちょっとやそっと減税してもすぐにそうならないだろう。即効は私どもも期待しておりません。  ただ、殊に海外との関連で申しますと、海外からも企業は誘致したいし、日本の企業が税金の安いところへ行くことも困りますし、かたがた、こういう悪い経済はいつまでも続くものでもございませんでしょうから、企業が将来を展望して計画を立てるときに、この四月から先は負担が小さくなっているんだということはプラスに働いていくだろうと、私は少し遠い効果を考えておりまして、決してすぐに何かいい結果になってくると思っておるわけでもございません。
  58. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 設備投資にすぐに結びつかないというお考えはさっきお聞きしました。しかし、それはそれとして、逆の効果があるというふうに私は考えているんです。  というのは、ここのところの三月に入ってからの報道をずっと見ましても、こういった一応利益を上げておる大企業に関して見ていきますと、利益が減っておるといっても上げておる。それをずっと一定のスパンで見ますと、いわゆる減税分を何に充てようとしているかということなんですけれども、恐らくリストラに回るんだろうと思います。  このリストラというのが、単に設備廃棄ということじゃなしに、日本の場合には人減らしです。明確に人減らしという形に移っていっているんですね。現実に見ましても、今挙げましたNTTにしても、民営化後の十数年を見ても半分になっているんです。三十万人から十五万弱、そういうふうな形で人を減らしてきているんです。ただ、その間に退職給与引当金を見ますと、四千億円ふやしているんです。二兆五百九十一億円もあります、給与引当金残が。  そういうふうに、人減らしをする企業について言えば、退職給与引当金を積み増しながら人減らしをやるというのが現実なんです。これはトヨタでも東芝でも同じなんですね、実際数字があるんですけれども。そういうのが現実になってきておって、結局、今法人税減税をすればリストラに回されちゃう、人減らしに使われちゃう。これでは景気回復にはむしろ逆じゃないかというふうに私は考えるんですが、いかがでしょうか。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこのところは難しいところだと私も思っておりますが、考えてみて、やはり今デフレギャップがあると言われておりますけれども、それは消費者の側にも買い控えというようなことがいろいろあると存じますが、サプライ側にも、もう既に廃棄してもいい、あるいはもう時代のニーズが変わってきたといったような設備が実は相当抱えられているだろうと思っております。これを処理しなければ企業の競争力あるいはアーニングパワーというものが生まれてこない、だから赤字でいる、そういうのが今の現況だと思いますので、アメリカと同じことが起こってもらっては困るのですが、そういう意味でのリストラはやっぱりやってもらわなければならないと政府は考えています。ただし、それが雇用に対して余り厳しい影響を持たないようにしてほしいと難しい注文をしているわけでございますが。  したがって、減税分がリストラに使われるということは結構でありますし、また積立金を少しずつふやしていってもらうのも結構であると思っております。今、雇用のことは政府も特別な対策も考えておりますので、そこは企業も十分に、決してアメリカのような事態が起こるとは私は思いませんけれども、しかしかなり厳しいことになりかねないわけですから、労使双方に理解を求めながらお願いしたいというふうに思っております。
  60. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 今、現実にリストラというのは人減らしなんですね。その計画を見ても、これは昨年も雑誌で特集されておりますけれども、もうともかく人減らしですよ。これに結びつかないようにと言うならば、それでは具体的にどういった対策を政府としてとるのか。私は、今やっておるのは、逆にリストラをどんどんやりなさいやりなさい、人減らしをやりなさいということを奨励しているようなものだというふうに改めて指摘したいと思うんです。  さらに、先日、予算委員会では公述人においでいただいて、神野教授の公述を伺いました。私が非常に重要な指摘だと思ったのは、今法人税減税をして景気回復効果があるかということで疑問を提起されて、本当に大事なのは法人税を納めることができない赤字の企業、それに対する支援が今必要なんじゃないのかと。これは税制でということではなかなか難しいと思います。別の対策が必要だと思うんですが、そういったことを提起しておられました。ですから、今発想としては、中小企業では七割に及ぶ企業が赤字ですが、こういった中小企業に対して具体的な支援というものをどう考えていくのかということが一番大事なんじゃないかなというふうに思います。  それからもう一点、今競争力の話ということが大蔵大臣から出たので、これはもう指摘するだけにさせていただきたいんですけれども、少なくとも今度の法人税減税について言えば、確かに競争力強化ということが問題になっていたようです。  昨日も紹介した「税経通信」の中に加藤政府税調会長と林自民党税調会長の対談があるんですけれども、その中で、なるほど、こうだったんだなと私は思ったんですが、今度の法人課税について、加藤会長に言わせれば、日本の場合は他国と比べてそんなに高くはないんだ、特異な状況じゃないんだということを言いながら、今度本当に法人税減税をやらなければいけなかったのはビッグバン対応だというふうにおっしゃっているんです。これは正直なところだろうなと私は思います。  紹介させていただきますが、「ビッグバン、ビッグバンと来てしまったのでしょう。焦ってしまったから、その焦りがそのまま法人課税引下げに反映してしまったんです。だから、企業のほうは、「ビッグバンだから、世界競争で大変だから、それに間に合うためには早く下げろ下げろ」と、こういう考え方が強くなってしまったということだ」というふうに、これは正直なところだろうと私は思うんです。  結局、一定程度競争力を持って、強い競争力を持っておったところをさらに強くするというのが私は今度の法人税の引き下げの本心だろうというふうに考えております。その点、もし反論があればおっしゃっていただいて結構ですけれども、時間が参りましたので、これで終わります。
  61. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  昨日に続きまして、三項目それぞれお伺いいたします。  まず、株式譲渡益課税の問題でございますけれども、今回の税制改正では所得税の最高税率の引き下げだけが行われまして、資産課税の見直しが同時に行われておりません。これでは金持ち優遇と言われても仕方がないのではないでしょうか。  そこで、資産課税のうち株式譲渡益課税についてお伺いいたします。  今回、グローバルスタンダードを持ち出して所得税の最高税率をアメリカやイギリス並みに引き下げるというのでしたならば、資産課税である株式譲渡益課税についてもグローバルスタンダードに合わせないと不公平になると思うのでございます。例えばアメリカには有価証券取引税はないものの、株式譲渡益課税は総合課税となっております。また、イギリスは、株式の流通段階で日本の有取税に該当する印紙税が課税された上で、株式譲渡益課税は総合課税となっております。  これに対しまして、日本は、有価証券取引税を廃止する一方で、株式譲渡益課税の方は平成十三年三月三十一日をもって二六%の申告分離課税制度に一本化するという改正だけでございます。これではアメリカやイギリスの総合課税に比べましても株式に係る税負担が日本は大幅に少ないように思うのでございますけれども、いかがでしょうか。
  62. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今、先生からお話がございましたように、株式の課税を考える場合、まさに株式を取得する段階、保有する段階あるいは譲渡する段階、いろんな段階を総合して考えていく必要があるということかと思います。  それで、先生がまだ不十分だということでおっしゃいましたが、今回、申告分離方式一本化がなぜ後の年度になったかというと、これは今の日本の市場の状況を考えてでございます。少なくともそういう意味では、申告分離の一本化という適正化措置を今回有価証券取引税の廃止とあわせてとっていることを御理解いただければと思うわけでございます。  今、アメリカとイギリスの例をおっしゃいましたが、確かに総合課税の仕組みになっているわけでございます。今後、所得税制をどう考えるかという検討を始めてまいりたいと思っておりますが、この課税方式の問題も大きなテーマかと思っております。ただ、総合課税ということになってまいりますと、所得把握体制をどうするかというような問題がございます。そうなりますと、納税者番号制度の問題についてどう考えるかという問題も出てまいるわけでございます。  いずれにいたしましても、この株式譲渡益課税のあり方につきましては、今後の抜本的な見直しに向けて今後とも課税方式のあり方を含めて検討していかなければならないというふうに考えております。
  63. 三重野栄子

    三重野栄子君 私も納税者番号につきましてはできるだけ早く考えなくてはいけない方法だろうというふうに思っています。  株式譲渡益課税を適正化する一つの方法としては、二六%の申告分離課税に一本化するだけではなくて、株式譲渡益に大小に応じた累進税率を導入する案とか、大口の株式取引者に限定した形での総合課税化などが国会でも議論されてきたわけでございますけれども、今後の方向としてはどのように検討されるのでございましょうか。
  64. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今までも大口について別の取り扱いをしてみたりした時期もございました。ただ、他方、把握体制が整わないとなかなか申告していただけないというような問題もあったかと思います。要は、税制でございますので公平公正という側面が大変重要なことかと思っておりますが、あわせましてこの金融課税といいますのは大変逃げ足の速いといいましょうか、金融が国際化していく中でどうなっていくのかという問題がございます。  それからまた、公平といいましても、先生から納税者番号制度を早く検討せよという御指摘をいただきましたが、把握体制が整いませんと、形は公平であっても実質は公正でないということになってくる、その辺を総合的に考えながら今後検討していかなければならないというふうに思っております。
  65. 三重野栄子

    三重野栄子君 それでは次に、租税特別措置の整理合理化の問題につきまして伺います。  租税特別措置の整理合理化につきましては、毎年、当委員会における附帯決議におきまして繰り返し指摘されてきておるところでございます。  そこで、まず個人と企業関係を合わせた租税特別措置の総数は現在どのぐらいになっておりますか。これは数字は事前にいただいておりますけれども、簡単にお答えいただければと思います。また、租税特別措置の総数はこの十年間どのように推移をしてきたかという傾向をお伺いできればと思います。
  66. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 所得税法人税関係の租税特別措置の数でございますが、現在、全体で百三十四項目になっております。うち個人関係が五十三項目、それから企業関係が八十一項目ということでございます。  なお、十年間の推移ということでございましたが、どう見るかなかなか難しい点もございます。平成元年の総数だけで申し上げますと百三十二項目ということになっておりまして、個人関係の方で二項目ふえる形になっております。さらに、平成十一年度の税制改正後、今回の法律改正がお認めいただけますればということでございますが、これは百三十四項目ございまして、個人関係が五十五項目、企業関係が八十一項目から二項目減りまして七十九項目、こういうふうになっております。
  67. 三重野栄子

    三重野栄子君 それでは、消費税について伺いたいと思います。  先ほども消費税の問題が議論になりましたけれども、私ども社民党といたしましては、かねてから消費税の逆進性対策といたしまして、飲食料費に係る消費税額の戻し金制度を提唱しておるところでございます。これは、年収一千万円以下の世帯に対しまして、平均消費支出に占める飲食料品の支出に係る消費税額を所得税から控除するものでございまして、飲食料品に関して実質的な消費負担が生じないことを目的としているところでございます。  具体的に申しますと、年収区分に応じて五万円ないし三万円を所得税から税額控除、または低所得者に給付することとしておりますけれども、このような社民党の提案に対しまして大蔵大臣の御見解をいただきたいと存じます。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今のお話は、物の考え方としてはそういうことができそうなというか、戻すという考え方なんでございますけれども、現実の行政の上でそれがどういうふうにできるかということについて、例えば御本人の確認をするとか、あるいはどれだけの額であるとか、あるいは三重野委員は納税者番号でもきちんとすればできるとお考えでいらっしゃるかもしれませんが、それをすぐに前提にできない現状において、今のようなことが的確にどうも行政の方でできる自信がないということが一番にあるだろうと思います。  消費税は一般的に見て逆進性がある、それはそのとおりでございます。しかし、これは消費税だけとってみればそうでございますが、その他のいろいろ税制をあわせて考えまして、いわば総合的な効果として考えた場合に、消費税が非常に低所得者にとって不利であるほど逆進的であるかどうか、他のものと総合的に判断をいたしました場合には必ずしもそういうふうに言えないのではないかと思います。
  69. 三重野栄子

    三重野栄子君 そのことは、今二万円の地域振興券でもいろいろ問題が起こっておりますから、あれができるんだからこれもできるのじゃないかなと思うのでございますけれども、いかがかと思います。いろいろ議論になりながらも、喜んでおられるところもあるけれども、非常に混乱しているところもあるわけでございまして、これは工夫すれば我が党が今申し上げていることもできるであろうと思います。  実は政府税制調査会の加藤会長も私たちの提案と同じ趣旨のことを主張しておられると思うんですけれども、いかがでございましょうか。昨年のジス・イズ読売の十一月号によりますと、加藤会長は、食料や衣料など基礎的消費に係る消費税相当分を所得税の納税額から差し引く方式での減税を提唱しております。加藤会長案と我が社民党案との違いは、加藤会長案では年収に制限を設けていないのに対しまして、私どもの方は年収一千万円以下の世帯に限定しているところでございます。さらに、カナダでも所得税から一定の売上税額を控除する制度が既にございます。  カナダにも同様な制度があるわけですし、しかも税制の専門家である加藤会長が日本でも導入可能な制度として提唱してございますから、逆進性対策として、これからの消費税を考えるということに関しましても社民党案を真剣に検討していただきたいと思いますが、もう一度大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
  70. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今、カナダの例がございました。カナダでは先生が今おっしゃいましたような仕組みがございますが、カナダは納税者番号制度をとっておりまして、利子の所得を初め全体がわかっているという中での仕組みであるというふうに私どもは理解してございます。  なお、加藤会長がどういう御発言をなされたかというのがございましたが、加藤会長は納税者番号制度がないとこういう仕組みがうまくいかないということはよく御理解されているようでございます。
  71. 三重野栄子

    三重野栄子君 時間がありませんけれども、大臣、ちょっとさっきの地域振興券と関連しましても、ぜひ今後の見通しについてお願いします。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平成九年に消費税を引き上げましたときに、同じような問題についての意識がなかったわけではありませんで、年金受給者等の方々に臨時福祉特別給付金を支給したことがございます。そのことは幾ら地域振興券と類似したことでございましたけれども、これは引き上げのときにやった一時的な措置でございまして、こういうことを恒久的にやるのはなかなか難しい。恒久的にやりますと因果関係というようなものを説明しなければなりませんし、制度としては何かわかる部分はございますけれども、うまく行政にのっけられないのじゃないかという感じがしております。
  73. 三重野栄子

    三重野栄子君 終わります。  ありがとうございました。
  74. 菅川健二

    ○菅川健二君 所得税法の改正案につきまして若干御質問申し上げたいと思います。  しばしば議論にはなっておりますけれども、今回の所得税法改正案を見ますと、消費性向の特に高い七百九十三万以下の所得層においては増税になっておる。逆に、消費性向の低い高所得者層につきましては大幅な減税になっておるわけでございます。  これを見ますと、景気対策という観点からすると甚だ疑問ではないかということでございまして、最高税率を六五%から五〇%に引き下げるということにつきましては、グローバルスタンダードという面で将来の方向としては望ましい方向ではないかと思うわけでございますが、短兵急に単年度でこれを実行する必要があったのかどうか。それらの財源を一部でも増税になる層の減税に振り向けられた方がよかったのではないかという気もいたすわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  75. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは今国会におきまして衆参両院で一番問題になった点でございますので、菅川委員の御指摘はよくわかるわけでございます。  まず第一に、つまり七百九十三万円の話、前回の一遍限りの定額減税というもので数百万人の納税者がリタイアされたということは申し上げました。このとおりの減税をもう一遍ことしやろうとすれば、同じことをやればいいわけでございますが、その結果としては、恐らくその方々は永久に納税者であるということをいわば離脱されたとお考えでありましょう。したがって、四百九十一万円という課税最低限を覚悟しなければならないということになって、将来の税制の抜本的な改定の際にそれは非常に問題であります。また、我が国のようにかなり円熟した社会において、それだけの方々を全く所得税を払わないんだというお立場にすることが果たして健全なことだろうかと思います。  この点は、おっしゃいますように、ことしの減税平成十年分所得に対するよりは十一年分所得に対する税金の方が多いという方々を相当たくさん出しましたことは事実であります。そのことは購買力という意味からいえば問題ではないかとおっしゃれば、それはそうでございましょう。ただし、そういうことを長くは続けていけないとまた申し上げなきゃならぬということだと思います。  それから、六五%を五〇%に下げましたことは、いつかは必ずしたかった、税制調査会でも言っておられたことで、この際思い切っていたしたわけです。菅川議員のお話は、それに要する財源というものは下の方へ回せばもう少し大きな減税ができたではないかと。それは理屈上そのとおりと思います。しかし、六五という税金はいかにも高い。国内的にもそういうお方はたくさんはいらっしゃらないといえばそれまでですけれども、そういうお方には気の毒なことであるし、また国際的にもいかにも高いじゃないかということもありまして、この際切り落とさせていただいたわけです。  これも消費性向からいえば余り大きくないところへしたわけですから、減税の購買力に向かう効果というものは小さいだろうとおっしゃれば、それは恐らくそうでございますと申し上げざるを得ないと思いますけれども、そのような政策的考慮からあえて踏み切らせていただいたということでございます。
  76. 菅川健二

    ○菅川健二君 今御指摘になりましたように、基本的には、当面の景気対策を優先するのか、あるいは将来の税構造の改善に向かってマイナスにならない面を重視するのか、どちらかをとる、その選択の問題ではないかと思うわけでございます。そのバランスの問題で、どちらかといえば大蔵省当局というのは、将来の税構造の方向に向かってマイナスにならないようにという配慮が強過ぎたのではないかという感じがいたしておるわけでございます。  そこで、高所得者層につきまして多くの減税効果があるわけでございますが、恐らく他の欧米諸国におきましては、高所得者層というのはドーネーションもどんどんするわ、あるいは投資もどんどんされるということで、非常にお金を使う環境といいますか、そういうものが整っておるわけでございますが、我が国の場合はお金を使うための税制上の措置というものがむしろある意味では障害になっておる面も幾つかあるのではないかと思うわけでございまして、一つはNPO等に対する減税措置をどんどんやっていただいて、金を持っておる人がどんどん寄附しやすいようにしていく、これが非常に重要ではないかと思うわけでございます。  その点、昨年せっかく法律が通ったわけでございますが、その後、税法上の取り扱いというのは前進しておるんでしょうか。実態としてはどうなっておりましょうか。
  77. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) NPOに対する税の取り扱いでございますが、NPO法自体が十二月一日から施行されたところでございまして、NPOに対する寄附金の取り扱いの問題といいますのは、まずはどのような団体が資格を取得され、どのような公益的な活動をなされるのか、まずその実態を把握することが先決かなと思っております。  実態を把握させていただきますのとあわせまして非常に難しいところは、今までの公益法人と違って監督官庁というような概念がないわけでございます。公益性の担保をしていく仕組みがどうあるか、いろいろこれから検討していかなければならないと思っております。
  78. 菅川健二

    ○菅川健二君 この問題につきましては、ぜひ早急に、前向きに進めていただきたいと思います。  それからもう一つは、これからの産業構造改革の中でベンチャー企業をどんどん輩出させるということが重要ではないかと思うわけでございます。その初期投資というのは、御案内のように、銀行がお金を貸すという状況ではないわけでございまして、恐らく個人のお金を持っておる方が、お友達あるいはこれはいい技術を持っておるなというところにどんどんお金を投資していくという状況が必要ではないかと思うわけでございます。  そこで、平成九年にエンゼル税制ができ上がっておるわけでございますが、この点についての実際の適用状況というのも非常に件数が少ないようでございますけれども、この点の実態はいかがなっておりましょうか。
  79. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) ベンチャーの振興ということは重要な課題だというふうに認識しておりまして、ただいま先生指摘ございましたように、平成九年度に中小ベンチャー法に規定する特定中小会社の株式について、譲渡損失が生じた場合はもとより、株式が売却できなくなった場合に生じる損失については譲渡損失とみなしまして、三年間にわたってこの損失の繰越控除を他の譲渡益と相殺することを可能とするというふうにしてその振興を図っているわけでございます。  実態がどうかということでございますけれども、これは通産省の方から把握する必要があると思っておりますが、また調べた上、先生の方に御報告させていただきたいと思っております。
  80. 菅川健二

    ○菅川健二君 私が通産省から聞いておる限りでは、対象企業として確認書を発行してもらった件数は六十件ということで大変少ないという実情をお聞きいたしておるわけでございます。  さらに、諸外国、アメリカとかイギリスとかフランスを見ますと、いわゆる損失をこうむった場合につきまして、他の所得と通算して課税するというやり方をとっておるようでございますが、我が国の場合はそういったことができないようになっておるわけでございまして、その点についてさらに踏み込んだ検討をしていただきたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  81. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) この譲渡損失の扱いといいますのは所得税の中でもなかなか難問の分野でございます。いずれにいたしましても、所得税制の抜本的な見直しに向けて勉強してまいりますので、この譲渡損失の取り扱いをどう考えるのがいいのか、よく検討していかなければならないと思っております。  なお、これも区々でございまして、ドイツでは認めていないとか、繰越控除はだめとか、いろいろございます。ただ、アメリカの考え方を申し上げますと、オーディナリーゲインとキャピタルゲインという二つのカテゴリーを基本的には設けておりましてそれぞれの中で行く、ただ一定の場合には横の通算もという考え方のようでございます。  いずれにいたしましても、ベンチャー企業の問題は重要な問題だと認識しております。所得税の基本的な考え方とあわせて今後の検討課題とさせていただきたいと思っております。
  82. 菅川健二

    ○菅川健二君 ベンチャーにつきましては、どんどん輩出できるような税財政の環境整備をぜひ進めていただきたいと思います。  先ほど来申しておりますように、高所得者層がせっかく金を自分のところにためられるような状況になりますので、ひとつどんどん有益なところに使っていただくような環境を整備して、遺産をたくさん残して相続税をたくさん取られるということのないようにひとつよろしく御配慮のほどをお願いいたしたいと思います。  以上で終わらせていただきます。
  83. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もないようですから、経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案並びに有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案、以上三案に対する質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  84. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案を議題といたします。  本案は去る十二日に質疑を終局しておりますので、これより本案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  85. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私は、民主党・新緑風会を代表して、平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案に反対する立場から討論を行います。  歴代自民党政権の経済失政により、我が国経済は戦後最悪とも言える危機にあります。バブル経済崩壊後、政府は累計で百兆円を超える経済対策を講じてきました。そして、小渕内閣はついに公債依存度約四割という財政規律を全く無視した予算を組むに至りました。  しかし、小渕内閣が背水の陣の覚悟で提出された平成十一年度予算は相変わらず土木工事中心のばらまき予算であり、景気回復に何ら効果がないのは目に見えております。昨年実施した二度にわたる景気対策、すなわち事業規模十六兆円超の総合経済対策と二十三兆円超の緊急経済対策にもかかわらず、昨年十月から十二月の民間需要がことごとくマイナスであったことからもそれは明らかであります。その上、平成十年の暦年ベースの実質成長率はマイナス二・八%、マイナス成長は五四半期連続と、各種経済指標は最悪を更新しています。  このような景気回復に効果のないばらまき予算は結局は国及び地方の借金を際限なく膨張させ、国民の将来に対する不安を著しく増幅させるだけです。平成十一年度末には国及び地方の借金は六百兆円にまで膨張する見込みですが、これはGDPをはるかに超える金額であり、主要先進国の中では最悪であることから、長期金利の上昇という市場からの警告を受けることにもなりました。このような危機的な財政状況に国民の不安は高まり、景気がますます冷え込んでいるのです。まさに日本経済は悪循環のさなかにあるのです。  このような危機的な財政状況にあるにもかかわらず、平成十一年度特例公債法案では膨張する公債残高について何ら手だてを講じることもなく、財政規律の精神がほとんど見られません。したがって、我々民主党・新緑風会は、未来への責任を果たすものとして、このような無責任な法案には到底賛成できません。  以上、平成十一年度特例公債法案に反対する理由を申し述べ、私の討論といたします。
  86. 金田勝年

    ○金田勝年君 私は、ただいま議題となりました法律案につきまして、自由民主党及び自由党を代表して、賛成の立場から討論を行うものであります。  本法律案平成十一年度の厳しい財政事情のもとで公債発行の特例措置を定めようとするものでありまして、これにより二十一兆七千百億円の公債の発行が見込まれるものであります。  経済再生内閣を表明している小渕内閣のもとで、平成十一年度予算は緊急、最大の景気対策を盛り込んだものであり、また深刻な不況に伴う税収の減少が見込まれる中で、本法律案はやむを得ずその財源を確保しようとするものでありますことから、賛成をするものであります。  今日、これまで数次にわたる経済対策の効果がようやくあらわれようとしている中で、さらに十一年度予算の成立、執行によりまして、より確かな景気回復の道のりを歩んでいくものと存じます。  しかしながら、一方で現下の財政状況は先進国中最悪の危機的な状況にあり、本格的な少子高齢化社会の到来を間近にし、その改善が求められるのは当然でありますし、また昨年の財政構造改革法凍結の状況下にあって、その構造改革の精神はこれを維持していかなければならないものでありましょう。  その意味では、今後の財政資金の一層の重点的、効率的な配分を図りつつ、既存の制度、施策の徹底した見直しを行うことが必要でありますし、その上で、情報通信、科学技術など二十一世紀を見据えたさまざまな施策、課題に挙げて取り組んでいくことが重要でありましょう。  我が国の景気について一定の回復が図られた時点で、改めて国民の理解と協力を得た上で財政のあり方について英知を集めた論議をなすべきであると政府に注文をいたし、簡単でありますが、私の賛成の討論といたします。
  87. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私は、日本共産党を代表して、特例公債発行法案に対して反対の討論を行います。  第一に、本法案は九九年度予算の歳入不足対策として二十一兆七千百億円もの史上最高の赤字国債を発行しようとするものです。これにより、国債依存度は三七・九%に達し、過去二番目に高い数字を記録することになります。国債費は十九・八兆円に上り、歳出に占める割合は二四・二%と約四分の一に達する勢いであります。さらに、国と地方の債務残高は対GDP比で九九年度末に一二〇%を記録するという、主要先進国の中では最悪の状況になっています。本法案は我が国の財政を未曾有の危機に陥れるものであります。  第二に、このような危機にもかかわらず、政府は、今は景気回復が最優先であり、景気回復後に財政再建を考えるといって財政再建の方針と目標を示さず、財政運営の責任と自覚を放棄する態度をとっています。主要先進国を見ても、どのような形であれ、財政再建の目標を持たずに財政運営を行っている国は我が国しかありません。こうした異常さこそが国民の間に社会保障の一層の切り下げと将来の大増税への懸念という生活不安を呼び起こし、景気回復にも悪い影響を与えていることは明らかであると言わねばなりません。  第三に、政府・大蔵省は二十一世紀の初頭における税制の抜本改革を強調しています。これは財政危機を消費税を主とした将来の増税で乗り切ろうとねらっているものであり、我が党はこうした一連の国民への負担増の動きに対して反対するものであります。  以上の三点の理由から、本法案に反対であることを述べ、討論といたします。
  88. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  平成十一年度における公債の発行の特例に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  89. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会