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1999-03-15 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十五日(月曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  三月十五日     辞任         補欠選任      佐藤 昭郎君     平田 耕一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 益田 洋介君                 池田 幹幸君     委 員                 岩井 國臣君                 片山虎之助君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君        発議者      峰崎 直樹君        発議者      広中和歌子君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君    政府委員        大蔵政務次官   中島 眞人君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        坂  篤郎君        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        国税庁次長    大武健一郎君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    説明員        建設大臣官房審        議官       風岡 典之君        自治大臣官房審        議官       林  省吾君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所  得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者  等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法  律案内閣提出衆議院送付
  2. 峰崎直樹

    所得税法の一部を改正する法律案峰崎直樹君  外三名発議) ○児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律  案(峰崎直樹君外三名発議)     ─────────────
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、佐藤昭郎君が委員を辞任され、その補欠として平田耕一君が選任されました。     ─────────────
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案所得税法の一部を改正する法律案並びに児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案所得税法の一部を改正する法律案並びに児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案の五案を一括して議題といたします。  五案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 金田勝年

    金田勝年君 自由民主党として、私の方からまずきょうは税法につきましての質問をさせていただきたいと思います。  今回の十一年度税制改正でございますけれども、これは何よりもまず現下の厳しい経済情勢景気情勢というものに最大限の配慮を行うという考え方でできたものでありまして、それに加えて税のグローバルスタンダード観点、それから二十一世紀に向けての経済社会構造的変化への対応、そういう性格をあわせ持つ措置が数多く盛り込まれた内容になっているわけであります。減税規模は平年度ベースで国と地方を合わせて九兆円を上回るというかつてない規模でありますから、政治リーダーシップを十分発揮して初めてなし遂げることのできた内容であるということで、評価すべきものであるというふうに考える次第であります。  また、今後の我が国経済社会景気対策、そういうものを講じた上で、今回の所得課税、それから法人課税改正、これを将来の抜本的な改革のいわばかけ橋と言うべき性格で位置づけて、そして将来にわたって今後の税制どうあるべしというふうな見地からは幾つもの検討課題があるということを今の時点では言わざるを得ない状況も事実であるというふうに私は思うわけでございます。  今回のこの国税三法の審議に当たりまして、限られた時間で極めて制約を受けておりますので、幾つかの点について税制改正内容の基本的なポイントを順次伺ってまいりたい、そしてできれば将来に残された税制上の課題にまで及びたいのでございますが、そこら辺は五十分という時間の中で頑張らせていただきたいと思いますので、答弁される大臣政府委員の皆さんは、簡潔で結構でございますから答えを教えていただければありがたいというふうに思うわけであります。  そこでまず、今回の税制改正のキーワードは、景気対策、それからグローバルスタンダード経済構造改革、こういったものに配慮したということは今申し上げたとおりなんですけれども、一方で、税制考える場合には公平、中立、簡素という大原則があるわけであります。したがって、今回の税制改正をこの税制基本原則、公平、中立、簡素という観点から関係づけた場合にはどのように位置づけられるものなのか、今回の税制改正考え方について大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回の税制改正につきまして、ただいま金田委員から総括的な御批評がありました。お話を承っておりまして、まさしく的を射ている御批判であり御批評であると承りましたが、詳しいことは後ほどまた主税局長からも申し上げるとして、簡素に答えよということに多少反しますけれども、最初に総括的なことだけ申し上げておきたいと思います。  このたびの税制改正は、昨年一年限りの所得税減税というものが行われましたそれとの対比におきまして、一遍限りの減税でなく、半ば恒久的な減税をお願いしたいと考えている点で特色がございます。ただ、半ば恒久的と申しましたのは、このような時代でございますから本当に我が国経済が正常な成長過程に入るまでの間の税制である、これが二十一世紀に向かっての文字どおり恒久的な税制になるとは考えておりませんで、一年限りではございませんが、将来いずれ抜本的に考え直さなきゃならないという性格を持っております。  したがいまして、そういう不況打開ということを目指しまして減税をしておりますが、しかしながらそれは金田委員のおっしゃっていらっしゃる基本的な性格をそのまま体現しておるかと申しますとそうはまいりませんで、しかし将来そういうことの実現のために妨げになることだけはしたくない、こういう性格を持っておるかと思います。  そのまず最後の点でございますが、これはしばしば両院において御批判を受けているところですが、昨年のいわゆる定額減税というものが、時間的にやむを得なかったとは申せ、いわゆる税制累進構造というものに割って入った感じがございまして、同時に定額減税でございますから、それによって八百万近い納税者を失うことになりました。その結果、昨年、平成十年分所得に関する限り課税最低限は四百九十一万円というまことに、かねてから我が国課税最低限は高過ぎると思っておりましたが、四百九十一万円ということになりまして、これが恒久化しますと将来の基本的な税制改正というものは到底できない、非常に課税最低限の高い、そして大変にたくさんの人々がもう所得税を納めないという形は適当ではないと思っております。  御承知のように、課税最低限はイギリスにおいて百万余りと言われますし、アメリカでも、州によりますが二百何十万と言われるところへ四百九十一万とは法外でございますから、これはどうしても今までのところへ引き戻しておきたい。三百六十一万円でございますが、それでも高過ぎる。しかし、そこへどうしても引き戻したい。今度、多少扶養家族等々の減税をふやしましたから三百八十二万円になりましたけれども、それへ戻しておきたいと考えております。  したがって、この点は納税者にとっては、多くの方が昨年免税になったのに平成十一年分は課税を受けるのかという御批判を受けました。それは八百万人の人がこの間にリタイアしたわけでございますから、また帰ってきてもらうということは確かにそれが景気対策になるかという御批判を受けましたけれども、しかし将来の税制考えるとこれはどうしてもそうすべきものだと思ったわけでございます。これが一つです。  それからもう一つは、最高税率を下げたことについて、これは金持ち減税であるという御批判がありました。しかし、これもいかにも六五というのは高い税率であって、かねて税制調査会等々からも国際的な配慮もあってこれは下げるべきであるということがございましたのでここを五〇にいたしてございますが、議論をされる方からは、それによって失われる税収はむしろそれより下の人の減税に充てるべきである、こういう御批判があったことも事実であります。  それから、もう一つの問題は法人税でございまして、いわゆる法人事業税について自治省としては将来何かの改善をしたいと。例えば、外形標準といったようなことも議論になっておるわけでございますけれども、それはなかなかこの際行いがたいということもありまして、かなり部分国税の方で背負ったような形になっております。しかし、結果として四〇%という法人課税国際並みにもいいのであろうと考えておりますが、将来の問題としては、いわゆる外形標準課税というものをどうするか、あるいは連結決算というものをどう考えるかというような問題が残っております。  多少長くなって申しわけございませんでしたが、以上がこのたびの税制の持っておる一種の特色並びに将来に向かって幾つかの問題を含んでおるということにつきましての総括的なお答えでございます。
  9. 金田勝年

    金田勝年君 大臣からは、今回の税制改正税制基本原則である公平、中立、簡素というものの妨げになるのだけは避けたい、そういう中で、景気対策として、あるいは先ほど私が申し上げましたグローバルな見地経済構造改革にも資するという今の状況を踏まえて、それを最優先してやった結果だ、こういうふうにお聞きしたわけでございます。  次に、大蔵大臣は、恒久的減税、「的」という言葉が入るわけでございますが、将来の抜本的な見直しを行うまでの間の措置だと、そしてそれについてはこれまでの答弁では、経済成長率が二%程度成長軌道に乗ったころにと。ただいまは正常な成長過程に入った場合にとおっしゃいましたけれども、それをこれまでの答弁では経済成長率が二%程度成長軌道に入ったのではなくて乗ったころにと、こういうお話なんですね。ですから、安定的に二%ぐらいの成長ができる状態になったときに、財政税制を基本的に、恒久的なという現在の税制税制基本原則にのっとって考えていくべきではないか、こういうふうに受けとめることができるわけでございますが、個人所得課税法人課税の抜本的な見直しの時期については、私が今申し上げたような内容、これをより具体的にお話しいただいて、あるいはその内容について具体的にどこまでお話しいただけるかはちょっと教えていただきたいなというふうに改めて問いを申し上げたいと思うのでございますが、よろしくお願いします。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさにおっしゃっていただきましたように、乗ったというところがみそでございまして、大丈夫、もうサイクルに入ったということを見きわめませんとなかなか根本的な改正というものはできないだろうと。全体の考え方は、この間経済戦略会議で言っておられたことと偶然にほとんど私の考えも一致しておりまして、まさに乗ったころに将来に向かってといったような考えでございます。  そのときには恐らく税制ばかりでなく財政も抜本的な見直しをしなければなりませんし、国と地方関係もどうもそうであろう。そして、そのころにはいわゆる国民の給付と負担との関連年金であるとか医療であるとかということと、いわゆる国民の税及び社会保険負担等々、そのことも恐らくもう一遍考え直さなければならないということになってまいると思います。  そういう中で税制はどうあるべきかということでございますから、今具体的に何をとおっしゃいましても、なかなか私なんかにはちょっと考え及ばない、またそれから先の日本経済社会というものもよくわかりませんので、今お尋ねではございますが、申し上げることがちょっと私の能力を超えております。  ただ、今御審議をお願いしております税制の中で、例えば最高税率は五〇を上回りたくない、これを国と地方でどのように分けるかということは、実はまだやや将来の問題に属しておりまして、今は三七と一三に分けているわけですが、三七というのは国税税率としては本当は四〇にしたいのかもしれません。ただ、トータルで五〇を超えたくないという問題がございます。  それから、課税最低限は今三百八十二万になりまして、諸外国に比べるとそれは甚だ高いと思っておりますけれども、それだけ単独に引き下げることができるだろうかということになりますと、引き上げの圧力はあっても引き下げの声はなかなか大きくないだろうということを思いますものですから、少なくとも引き上げないことを考えなければならぬのではないかと思っております。  それから、法人税の方は、先ほど申し上げましたトータルで四〇なら国際的におさまるところではないかと思っております。  最もわかりません問題は、いわゆる社会保障等々の関連におきまして間接税をどのように考えるかという問題がございます。今、将来を展望することは年金との関係もございまして困難でございますが、いずれにしてもそういう間接税負担というものはその時点においていろんな意味議論されることになるであろう、こう考えております。
  11. 金田勝年

    金田勝年君 個人所得課税恒久的減税、これが今回の税制改正の最大のポイントだと私は思うわけです、もちろん法人課税もそうですが。  そこで、昨年の十年度は、昨年の二月以降実施された二兆円の特別減税と四月の経済対策で追加されました二兆円の特別減税、合計して四兆円規模特別減税定額減税という方式で実施された、こういうことなんですけれども、今回の最高税率引き下げ、その結果としての累進構造の五段階から四段階化、それから定率減税という組み合わせ、もちろんそれには扶養控除特別扶養控除引き上げといったような効果も加味しなければいけないわけでございますが、そういう今回の組み合わせによる対策。これに対しては、今回の方式はサラリーマンのかなり部分特別減税のあった十年度に比べてむしろ税負担増になる、そういったような指摘はかつてかなりこの審議の中で行われてきた。これは十年度に比べるからそうなのであって、もともと特別減税は一年限りなので、別途一年限りの特別減税というのは恒久的に実施される減税よりもその効果は異なるんだよという議論も確かにあったわけですね。  ですから、そういう中で、今回の方式景気刺激効果として限られるんではないかとか、あるいはむしろ定額減税の方がよかったんではないかとか、いろんな意見が出ておりますので、そこのところは国民にわかりやすく、これは景気対策として効果があるんだよ、本来こういうことをやるためにはかなりの英断で政治的リーダーシップでこれをやることになったんだよということをしっかりと伝えていただくということが重要だと思うんです。それについては後で、法人税が終わったところでお話し申し上げます。  そういうふうな点で、これは主税局長から二点お聞きしたいんですけれども、そのときに課税最低限あり方、これは定額方式定率方式では課税最低限が異なってくるわけでありまして、その課税最低限あり方との関係でどういうふうに今回の組み合わせをお考えになるのか、説明するのか、わかりやすく簡単に。それからもう一つは、この経済効果というものはいつごろからどのようにあらわれてくるというふうに受けとめておられるのか、これも簡単に、その二点をお答えいただきたい。
  12. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) まず、所得課税ですが、最高税率はまさに半ば日本の構造改革的な改正だと思います。  それから、今の定率減税でございますが、定額減税では一回限りでおしまいになってしまう、景気効果が全くないということがございました。それで、今回まさに期限の定めのない恒久的減税をやるわけでございますけれども、その分だけ効果も大きいと我々は考えているわけでございます。  長く続く税制というのはやっぱり税の理念も踏まえる必要がある。この定率減税といいますのは、まさに納税者所得の多寡に応じて比例的に軽減されるわけでございます。また、ただいま先生おっしゃいましたように納税者数が大幅に減るということもない、いわば所得税考え方からしても適正な考え方であるという、その所得税のあるべき姿ということから考えてまいりますと定率減税、こういうことになるわけでございます。  なお、定率というのはいささか特殊な姿ではないかということをおっしゃる方があるかもしれませんが、本来、税率構造全体を見直すというのであるならば、課税ベースがどうあるべきかというのも一緒に見直さなきゃならぬ。しかし、ただいま大臣からお話がございましたように、今の課税ベースの話はこれからの課題でございますので、まさに今回の恒久的減税ということでは定率減税というのが所得税制考え方に一番沿ったものというふうに考えたわけでございます。  それから、いつごろからどのようにあらわれてくると考えているのかということでございました。これはマクロモデルで計算すると当然出てくるわけでございますが、実は昨年の八月にこの恒久的減税ということを総理の御決定をいただきまして、十一月の末には明らかになったわけでございます。そういう意味では、全体の経済的な活力といいましょうか、今後の方向を指し示すことによって企業行動の予測がしやすくなる、もっと設備投資もしやすくなるという無形の量的にはかれない効果は既に出てきているのではなかろうかというふうに私ども思います。  一方、今回の個人所得課税、一月から三月末までに支給されました所得税につきましては、年末調整ではなく、原則として六月のボーナスのときにその源泉徴収税額から減税分をお返しするということにしてございますので、これもまた早期に効果が発現してくるものというふうに考えているわけでございます。
  13. 金田勝年

    金田勝年君 その効果がいつからどういうふうにあらわれてくるかというのは非常に重要なことであって、これにつきましてはまた法人課税の御質問を終わった後で、私も一つ考えがあるのでそれは申し上げたいと思うんですが、まず時間の関係で、次に法人税なんですけれども、この恒久的な減税についてであります。  その実効税率を今回四六・三六から四〇・八七に大幅に引き下げた。これは十年度改正で四九・九八から法人課税実効税率四六・三六に引き下げたのに引き続く二年目の措置と、こういうことになるわけです。グローバルスタンダードに照らして、国際競争力我が国企業が発揮していくという意味では国際水準並み引き下げることが必要だということは、私も平成八年三月、平成九年三月と、これがまだ決まる前だったと思うんですが、財政金融委員会の前身である大蔵委員会の場で税法審議のときに、これはぜひとも必要だということを申し上げてきたんですけれども、これが今回、法人税法人事業税基本税率思い切って引き下げられたということで、これはもうに私も大いに評価したいと思うわけです。  この法人課税について、課税ベース適正化とあわせて行った十年度改正に比べて、十一年度は税率引き下げを先行的に行うというふうにされたと受けとめておるわけですけれども、これは景気対策という視点経済社会構造の展望、そういう両方の視点が重要というふうに考えられた結果だとは思うんですが、二点お聞きしたいと思います。  一つは、後で出てくる有価証券取引税、有取税と言われるもの、それも二年に分けてやったんです。法人課税も今度は二年をかけてやった。どうせやるのなら一年で思い切ってやった方がインパクトが強くて、経済的効果が強くて、それこそ喜ばれるんではないかなという感じが私はするんですけれども、そこも含めて、今回、国際水準といえばこの水準だという思いでされたのかとは思いますが、私の今の指摘に対するお考えですね。どうせならこういうふうな税制改正は、きちっとそこまで行くというふうな読みがあるのであれば一気にやるという、後で有取税のお話もあるんですが、そういうことが大事ではないかというのが一点です。  それからもう一点は、やはり我が国経済を支えるのは中小企業個人事業者であると一面で言えるわけですから、そういうふうな中小企業個人事業者への適切な配慮というものも非常に重要だなというふうに思うんです。ですから、そういうふうな点でも、例えば軽減税率二五から二二に引き下げたという話はお聞きしているんですけれども、その点についての思いといいますか、中小企業配慮するんだよという思いがどのようにあったのか、その二点について簡単にお教えいただきたい。
  14. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) まず、法人課税の方からでございますが、私ども課税ベースを広げながら国際水準並みにするという理念、これをなるべく早くやらなきゃならぬという覚悟でおったわけでございます。ところが、現実にはこの課税ベースの拡大というのは企業によって税負担当たり方が違ってくるものでございますから、なかなかその議論に時間がかかる面もある。さらには、この外形標準課税を次にどうするかということになっていたわけでございますが、これも景気の問題からなかなかことし入れるというわけにはいかない、そういうことで二年になったわけでございます。いわば課税ベースとの関係であるべき税制見直した結果、その中でできるだけ早期に二年で実施したというふうに御理解いただければと思うわけでございます。  それから、中小企業に対する軽減税率でございます。  国際競争力という観点からすれば、むしろ中小企業については国際競争力という面は比較的少ないんじゃないかという意見もございましたが、よくよく考えてみますと、中小法人は日本経済を支える企業でございますし、また今の中小企業を取り巻く環境から見ますと、これもまた大法人だけでいいというわけにはいかない。それは不適切なわけでございます。今回、おっしゃるようなことで二二%にこれも引き下げさせていただくという提案をさせていただいているわけでございます。
  15. 金田勝年

    金田勝年君 そういうことで、二年はかかりましたが、またこれからあるべき税制見直しについても検討していくわけですけれども、一応いわゆる国際水準並みへの引き下げができた、それから中小企業個人事業者にも配慮をした、こうおっしゃるわけでございます。  そこで、法人課税経済効果というものはいつごろからどのようにあらわれてくるとお考えか、簡潔にひとつ教えてください。
  16. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 法人税効果ですが、マクロモデルの計算はなかなか難しゅうございます。  これは先ほど申し上げましたように、我が国経済の活性化を図るためにはどうしても国際水準並みにする必要がある、そういうことによって企業の体質の改善強化、さらには税引き後利益がふえてまいりますから設備投資もふえてくるだろうと。計量的になかなかはかれない部分が極めて大きいものであり、この効果は思っているよりも相当大きな経済的な効果になってはね返ってくるだろうと思います。  なお、法人税率を引き下げるということをお認めいただければ、もうすぐにでも企業経済行動の中に、経営計画の中にそれを織り込んで経営が始まる、そういう意味では、定量的にはかるのは難しいわけでございますけれども、これはもう早期に効果が出始めるだろうというふうに私ども考えておるわけでございます。
  17. 金田勝年

    金田勝年君 そこで、時間の関係でこれは質問にはいたしませんが、減税による景気刺激効果については、きょうは経済企画庁を呼んでいないので、私の考えを申し上げるだけにしたいと思います。  個人所得課税法人課税がもたらす経済効果というものは、一つ一つの税目ごとに細かくというのは難しいだろうと思うんですね。でも、減税というのは、中期的に考えれば、景気刺激を通じて経済が活性化して所得が上がって、結局それが将来の増収効果というものに結びついてくるわけであります。  マクロ経済財政の中期展望なんかもあるんですけれども、そういうものに対する動態分析、これをできることなら定量的に、経済企画庁には優秀なスタッフがそろっているんでしょうから、そういうモデルも優秀なモデルがあるんでしょうが、どういうふうになるのかということを政府の意見として私は聞いたことがないんですね。ですから、今回やる減税経済効果というのは十年後はどうあらわれてくるんだというふうなことを経済企画庁長官に聞きたいぐらいなんですが、きょうはちょっとお呼びできなかったものですから。  だから、そういうふうな動態的視点というものをこれからは物すごく大事にしていかなきゃいけないんではないか。そうすれば、今回まさに九兆円を超えるそういう政策の組み合わせで大変な努力をした、これは大変な政治的リーダーシップがそのもとにあったんだということに対する国民の理解も非常に得られやすいんではないか。そういう視点にもっと力を入れて、優秀な皆さんがそろっているわけですから、そこで頑張ってそういうことをPRする、これがこれからの課題として重要ではないか。動態的に中長期的にどういう効果があるんだという視点がなければ、どんなに苦労をしてもどんなに頑張っても理解してもらいにくい。そういうふうなところを何とか改善してほしいなという思いを持ちますので、それは申し上げることにとどめておきます。  これは私の同僚議員もそういう思いを強くしておりまして、時々いろいろ話をしたりしておるものですから、その辺はまたいつの機会かにお教えいただければありがたい、こういうふうに思うわけです。  時間の関係で、政策減税の面に進ませていただきますが、昨年十一月十六日の政府の緊急経済対策におきまして、景気回復に資するように、住宅建設、民間設備投資等、真に有効かつ適切な政策減税が重要課題であると、これが指摘されてきたわけであります。緊急経済対策においてもそう述べられております。これに景気刺激のための措置として非常に重要な内容幾つかあるわけです。  特にその中で二つ、住宅ローン減税と情報通信機器、パソコンの即時償却制度の創設、こういうものは今の経済には非常に明るい話題であったというふうに思うわけです。  その住宅ローン減税ですけれども、今回は住宅借入金にかかる税額控除制度につきまして、控除額の大幅な引き上げ、そして居住用財産の譲渡損失繰越控除制度の併用を認めるという二つの措置、こういう大幅な拡充が行われたわけであります。これをめぐる税制改正論議の過程で、税額控除制度もいいけれども利子所得控除方式もいいんだよというふうな意見もあったわけでありまして、いろんな議論が行われた結果これをとられたわけですけれども、この住宅ローン減税について、利子所得控除ではなくて税額控除とした考え方、特にメリットを強調して政府の考え方を簡単に教えてください。
  18. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 今の利子控除等の税の議論の問題は申し上げません。  それで、もしも利子控除をとった場合には、所得税をたくさん納めている累進の高い人ほどその分の軽減効果が大きくなって、税負担の少ない中低所得者の人は累進で小さくなるわけです。私どもも、住宅政策、中低所得者層の持ち家促進ということからすると、まさに税額控除の方がはるかに適切な制度だろうというふうに思います。いわば利子控除をとりますと、同じ住宅を買う場合の値段が、所得の多い方は安く買えて、中低所得者の方は高く買わなきゃならぬ、こんなことになってくるわけでございます。
  19. 金田勝年

    金田勝年君 それは課税の公平とか、そういうふうな観点をおっしゃりたいんだろうと思いますが、いずれにしても、この住宅ローン減税は対象ローンの残高を五千万円に引き上げたり、二年間には限るんですけれども控除期間を十五年に延長したり、非常に今注目を浴びておるわけでありまして、こういうことが住宅投資需要の改善に本当に資するといいなと、こういうふうに思うわけでございます。  建設省に伺いますが、住宅市場への効果について、この住宅ローン減税効果というものが既に顕在化してきておるという見方も新聞なんかで時々見るんですけれども、この点についてどういうふうに受けとめておられるか、そしてまた今後の住宅投資の動向というものをどういうふうにごらんになっているか、簡単に教えてください。
  20. 風岡典之

    説明員(風岡典之君) 最近の住宅市場の状況でございますけれども、一言で言いますと全体的には大変明るさが戻ってきている、このように考えております。  具体的には、昨年末に既に締め切りをしました住宅金融公庫の第三回の募集でございますけれども、これも大変大幅な増加になりました。また、昨年末以来、住宅展示場へ来ていただくお客さんの数というのも急増してきております。さらに、新築マンションの販売というのも非常に好調でありますし、また中古住宅の成約件数というのも非常に増加をしてきているということで、そういうように住宅投資に非常に明るいというような効果が出ているところであります。  私どもとしましては、住宅市場の活性化というのは、国民の住宅に対するニーズというのが潜在的に非常に大きい、そういった中でこういった税制措置とか住宅金融公庫の融資の拡充とかというものが非常に大きな効果を発揮しているというふうに考えております。  今後こういう施策を有効に活用することによって何とか住宅投資の拡大に努めてまいりたい、このように考えております。
  21. 金田勝年

    金田勝年君 ぜひそういう方向で住宅投資の拡大につながるということを期待するものでありまして、どうか建設省さんも頑張っていただくようによろしくお願いします。  それから、二つのうちの一つと申し上げたパソコン、情報通信機器の即時償却制度の創設、これは景気対策であると同時に、やはり情報化の推進という経済構造改革に非常に寄与する重要な改正であるというふうに私は思うんです。これは短期間に集中的に投資を促そうという考え方で、本年四月からの一年間の措置ということになっておるわけですけれども、いずれにしても短期の効果が本当に出てほしいなということを期待して、次の問いに移りたいと思います。  有取税の廃止ですが、これは昭和六十一年度から平成元年度は税収規模は一兆円に達しておったと思います。そのころは証券市場も活性化してそういうことになっておったんですが、その税目を廃止するという意味におきましては非常に画期的なことであるということで、株式市場の活性化を図る観点から、あるいはグローバルな観点から、もちろん景気対策に資するという観点から非常に重要な対応であったというふうに思うわけであります。この有取税の廃止も、叫ばれてしばらく時間がたちました。私はこれもちょっと遅かったのではないかなと思うぐらいでありますけれども、でも実現できたわけですから、そういう思いを持ちながらこれを評価しておるわけであります。  一方で、去年の税制改正の際に、平成十一年度末までに金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直して、株式等譲渡益課税適正化とあわせて廃止するという政府及び自民党の方針が示されておったわけでありまして、これについては、ことしはこの有取税の廃止法案とは別の租税特別措置法の中で株式等の源泉分離課税をなくすというか、そういう合わせわざをきちっと講じておるわけであります。これは十三年の、二年後の措置といいますか、そういう形で入れているわけですけれども、この辺の考え方について、キャピタルゲイン課税適正化をやはりあわせ行わなければいけないものなのかどうか、その点について簡単に教えてください。
  22. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 株式の有価証券取引税についてはかねて議論がなされてまいりましたが、税制は、有価証券取引税の取引の部分だけではなく、譲渡まで含んだ全体としての税制が公平公正なものになっているかという視点もまた重要でございます。  あわせて、いわば金融のビッグバンが始まる、特に株式につきましては五千万までの自由化が既に行われ、いよいよことしの十二月末までには完全な自由化が行われるであろう、こういう流れの中で税制をどう考えるかと。総合的に考えました場合に、いわば株式譲渡益課税税制の目から見ていかがかという御指摘がございました。  そこで、源泉分離選択課税制度につきまして、今の市場の状況考えますと、すぐにやめるというわけにはいきません。平成十三年の三月三十一日までという経過措置を講じた上、申告分離課税に一本化する、いわば市場の動向、今後の金融市場のあり方税制としてのあり方を全部考えたところがこの結論になっているというふうに考えているわけでございます。
  23. 金田勝年

    金田勝年君 資産につきましてですけれども、地価税は平成十年一月から課税を停止した、凍結したということで、土地の流動化対策のためにさまざまな対応をしてきたわけです。  資産税の中で相続税に関してなんですが、かつてこの委員会で益田先生からも指摘があった話でありますけれども、今回は手をつけずに据え置いた。  相続税というのは所得税の補完税という性格を持つんだということからいたしますと、将来の所得税の抜本的見直しの際にはきちっと最高税率引き下げを含む相続税の見直しをあわせて行うべきではないか、グローバルな外国とのバランスからいってもそういうふうにすべきであるというのは私も同感でありまして、時間の関係上、これはそういう指摘を申し上げて次に進ませていただきます。  それから、国税地方税の関係について簡単に伺わせていただきたいと思います。  地方財政も非常に厳しい状況にあるんですけれども、恒久的な減税について地方税にも分担があったわけであります。国民から見ますと国税地方税も同じ税でありますから、景気対策とかあるいは税のグローバルスタンダード観点からは地方税も政策手段としては重要であります。国の経済の活性化、地方経済の活性化、両方とも重要でありますけれども、こうした中で今回の恒久的な減税につきましては地方税も分担をした。個人所得課税減税については個人住民税を一三%とし、法人課税減税については法人事業税を九・六%としたわけでございます。  これについての考え方と今回の恒久的減税に伴う地方財政対策に対する考え方をまず大蔵省から一言簡単に、それから自治省からも、地方税の恒久的な減税に対しまして、地方財政の現状もかんがみまして地方財政対策をきちっととられたというふうに聞いておるわけでございますが、その辺を簡単に両省から教えていただきたい。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたびの予算編成で一番難しかったのはやはり地方財政との関係でございました。  冒頭に申し上げましたが、所得課税の最高を六五から五〇にいたしました。実は私は当初は国が四〇で地方が一〇ということができるのではないかと思いましたが、いろいろ自治大臣から伺いまして、地方財政上それは難しいということで、この際納得いたしました。  法人税につきましても同じような問題がございまして、自治大臣と私との予算折衝は二段階に分かれておりましたが、一つは、そういう税についての国と地方の分け方、その分け方で結論に達しましたので、残った分の地方財政についての国の各種の協力、これは御承知のように幾つか異例なことをいたしました。したがいまして、冒頭に申し上げましたような将来のあるべき基本的な税制の姿という中にはやはり地方税の問題がいろいろに残っておる、国もそうでございますけれども、そう思っております。
  25. 成瀬宣孝

    政府委員(成瀬宣孝君) 恒久的な減税によります地方財政の減収は、減税が継続されます限り毎年度制度的に発生するものでありますことから、現在の極めて厳しい地方財政状況を踏まえつつ、将来、税制の抜本的な見直し等が行われるまでの当分の間の補てん措置として講じられることになりました。  すなわち、恒久的な減税によります地方税の減収につきましては、地方税は地方自治の基盤をなす自主財源であり、地方分権の推進に伴う地方税の充実確保の要請等を踏まえまして、減収総額の四分の三につきまして、たばこ税の一定割合の地方への移譲、法人税に係る地方交付税率引き上げ地方特例交付金の創設により対処するとともに、残余は減税補てん債により対処するという従来にない手厚い措置が講じられることになったところでございます。
  26. 金田勝年

    金田勝年君 そういうことで、地方税の恒久的な減税、これもきちっと行って、そして交付税措置等いろいろ地方財政対策についてもきちっととられたということでありますが、今後における地方税、それから地方財政関係で、やはり地方分権の進展に伴って地方税の充実確保というものが非常に重要な課題となってきているというふうに思うわけです。  やはり地方法人課税あり方については、応益課税という性格を持つ地方税というものが税収が景気変動によって大幅に振れるという問題、そこが解決されるようによりふさわしい制度に改める必要がある、地方税の応益課税という考え方で。そういうことでの議論、いわゆる法人事業税への外形標準課税の導入の議論というのが本格化してきておるわけですけれども、これにつきましては、やはり景気情勢という現在の状況もあります。  それから、特に中小事業者からは強い懸念の声も聞こえてくるわけでありまして、これらの意見も含めて、やはり納税者視点を十分に踏まえた幅広い検討といいますか、前向きにかつ慎重にとでもいいますか、そういう中小企業を含む納税者の意見も十分踏まえた検討が必要と考えるんですけれども自治省のお考えは今どういう状況にあるんでしょうか、簡単にお願いします。
  27. 成瀬宣孝

    政府委員(成瀬宣孝君) お尋ねの法人事業税への外形基準の導入の問題につきましては、これまで政府税制調査会等におきまして幅広い観点から検討が進められてきております。  この外形基準の導入につきましては、税収の安定化を通じて分権の推進にも資するものであること、あるいは応益課税としての税の性格の明確化につながること、広く薄く税を分担すること等の意義を有するものでございますので、地方税の税制あり方としては望ましい方向であると考えております。  今後、経済情勢の動きなどを踏まえながら具体化に向けまして検討していくこととなりますけれども、御指摘のございましたように、外形基準の導入に伴う税負担の変動や中小法人の取り扱い等の種々の問題への対応も含めまして、政府税制調査会等の場におきまして専門家の方々の御意見も十分伺いながら精力的に検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  28. 金田勝年

    金田勝年君 ぜひそういう配慮をしながら検討を進めていただきたいというふうに思います。  地方財政が非常に厳しいという状況の中で地方税を充実しようとする場合には、地方公共団体の課税自主権の拡充ということも重要であろうと思います。  地方のそれぞれの実情を見ますと、同じ地方といっても都市部と地方部というのは分かれるわけであります。都市部では歳入に占める地方税のウエートが大きい、一方で地方部では地方交付税の財源調整機能を持つ地方交付税のウエートが大きいということになりますから、そういう現状を踏まえながら、地方税、地方交付税のそれぞれの機能というものを適切に調和させていくことが重要と考えますので、その辺をまた時間をいただいたときにいろいろ伺っていきたいというように思います。  以上、こういうふうに見てまいりますと、厳しい財政事情の中であえて景気回復のために行った今回の各般の減税措置である、国税地方税を通じた思い切った施策である、九兆円を超えると。こういうことであれば、これを国民の今の生活の安定と将来の安心のために、やはり大蔵大臣からの絶大なPRをぜひ国民に向かってしていただきたいものだなと。これは大蔵大臣にシンボリックにお願いをするようなことになるわけですが、政府全体としても、これが成立した場合にはそういうきっちりとしたPRをしていかないと、広報活動により積極的に国民に意義、内容効果についてPRしていかないと私は誤解を生むもとだと思うんです。  何をやっているかわからぬ、どういう効果があるのかわからぬ、わからぬままに税というのは遠ざかりたいというような発想を国民に抱かせたのではいけないわけでありまして、九兆円超に及ぶ、平年度ベースだという自信があるならば、ぜひこれを大いにPRしていただいて、わかりやすく浸透させていただきたいな、こういう思いをするのですが、大蔵大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま五十分にわたりるるお尋ねくださいましたことも、まさにそういう意味国民に事態をわかっていただく大切なよすがと存じましたが、御趣旨を体しまして、政府といたしまして今後とも最大限の努力をいたしまして、国民の御理解を得たいと思っております。
  30. 金田勝年

    金田勝年君 日出議員から少々時間をいただいて、あと国税庁にちょっと質問させていただきます。  現在、国税職員は五万七千人おります。そして、このうち上席調査官、上席徴収官といういわゆる管理職ポストにつく前の職員が約一万二千人いるわけであります。そして、税務署の組織、機構が今のままで推移しますと、六年後にはこれらの職員が約一万八千五百人にふえるわけであります。したがって、それはポスト待ち、いわゆる課長クラス、統括官クラス、そういうポスト待ちの職員が一万八千五百人に及ぶ。この層の皆さんにはプロフェッショナルという自負があり、一番難しい、そして能力を発揮しなければいけない、そういう時期に当たるわけであります。  この人たちにつきましては、十一年度の予算案におきましては、国際調査専門官や機械化調査専門官という専門官ポストを三十七、それから困難な税務執行事務に従事するという特別国税調査官、特別国税徴収官、特官と言われる人たちですが、この人たちのポストも四十ふやしていただいておるわけでありまして、非常に専門的になりますが、税務職俸給表上の八級以上に格付をすることが可能なポストに十一年度は三百五十一の増を認めていただいたわけであります。  しかし、そういう今の税務行政を取り巻く環境、経済環境が急激に変化をし、国際化、機械化、高度情報化もあり、滞納残高もふえるという今の厳しい状況の中で一生懸命働いているそういう皆さんに対して、この配慮というものを、ぜひ今後ますます努力をして国税庁当局としても関係の機関にしっかりと働きかけて、そして頑張って確保していくべきものというふうに思うわけであります。これは組織、機構、ポストの話でございます。  あともう一点は定員の確保であります。  十一年度予算におきましては、国税庁の定員は九十九名の削減ということになりました。これは地価税の凍結等いろいろ、定削もあって残念ながら減ということになっておるわけでありますが、九十九名をどう評価するかというのはいろんな評価の仕方があります。社会情勢の変化で今申し上げたように事務量がふえているわけでありますし、滞納額もふえていますし、難しい事案もふえているわけですから、国税職員の定員につきましても今後十分な配慮をしてもらうように、これまた関係当局にしっかりと働きかけていただきたいと思うわけであります。  もう一点は、今の厳しい経済情勢のもとで赤字法人が非常に増加してきている、それから国民の税の負担感も、今回大減税するんですけれども、そういう負担感の高まりというものも引き続き見られるわけであります。  そういう中で、国税庁におきまして、そういうことは絶対あり得ないと思うんですが、例えば税収の増減で調査が甘くなったり厳しくなったり、いろんなそういう変化が出たりはしないだろうかと、こういうことを心配する声も今聞くんです。そういうふうなことはあってはいけないことですし、私はあるはずがないというふうに思いますが、そういうことで調査が厳しくなるとか、あるいは納税者とのトラブルがふえるとか、そういうことによってせっかくの税務行政に対する信頼というものが損なわれてはいけないと思うわけであります。  だから、適正で公平な課税の実現という税務行政の本来のモットーをきっちりと形としてあらわしていき、この厳しい時代、だれもが厳しい、乗り切らなければいけないこの経済、こういう状態をみんなが一緒に乗り越えていかなければいけないわけですから、そういうことを十分踏まえた国税職員の調査あるいは指導、そういう仕事の内容であってほしいと思うわけであります。  それについては、納税者に対する丁寧な指導あるいは対応ということを心がける必要があると思います。一方で、難しい時代ですから職員の方はより一層能力の向上、知識の獲得に研さんを積んでいかなければいけないと思いますし、適正で公平な課税の実現を大きなテーマとして考えていかなければいけない。  いろいろ申し上げましたが、そういう非常に難しい、信頼される税務行政の実現というものに国税当局の幹部はしっかりと、五万七千人いるわけですから、そういう趣旨を徹底していただきたいものと思うわけでありまして、その二点をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。お願いします。
  31. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 二点の御質問をいただきました。  まず第一点目、国税職員の処遇及び定員の問題でございますが、まさに先生から御質問のございましたとおり、今の税務行政を取り巻く環境というのは経済取引の国際化、複雑化あるいは会計処理の機械化、情報化の進展、さらに不正手口の巧妙化、それから納税者数の増大などへの対応によりまして、質、量ともに大変厳しい状況になってきております。  こうした中におきまして、国税庁においては、そうした状況の変化への対応ということにつきまして、関係方面への御理解を得て国際課税や機械化、会計法人の調査に対応するための専門官ポストの新増設とか、あるいはただいま先生から御質問のありましたいろんな特官の増員など所要の機構の整備、定員の確保、そしてポストの確保ということに努め、そしてこれらのポストに能力のある中高年職員を登用するということにしてきたところでございます。  それからまた、定員の問題につきましても、事務量の増大等の状況にかんがみまして、従来から事務運営の合理化、効率化に努める一方で、なお必要とされる定員についてその確保の必要性を関係方面に強くお願いしてまいったところでございます。  こうした状況を踏まえ、税務の困難性及び歳入官庁としての特殊性など訴えまして、所要の機構の整備、定員の確保等に関係方面の御理解を得られるよう今後とも一層の努力をしていきたいと思っているところでございます。  それから第二点目に、厳しい調査の対応という点でございます。  この点は、まさに先生が言われましたとおり、申告納税制度を基礎とする現行税制のもとにおきましては、やはり税務行政に対する納税者の理解と協力を得るということが特に必要なことだと認識しております。このため、従来から納税者の理解と協力を得ながら適正公平な課税の執行を通じて税負担の公平を確保し、国民の信頼を得るよう努めてきたところでございます。  税務調査につきましても、適正公平な課税を実現するために行う、まさに先生が言われるとおりでございまして、歳入が不足しそうだからといって徴税を強化するとか、自然増収が期待できるからといって調査の手を緩めるというようなことは全くしておりませんで、常に適正公平な税務行政の執行に努めてきているというところでございます。
  32. 日出英輔

    ○日出英輔君 私は、時間が余りありませんが、要点を絞って大蔵大臣と事務当局の方に御質問申し上げます。  一つは、先ほど金田委員お話になっていましたが、ことしの個人所得課税の問題でございます。  私も確定申告をこの数年やっておりまして、あれによってどうやら税の構造というのがわかってきたというような情けない状況なのですが、一般のサラリーマンといいますか給与所得者は大体同じような状況だろうというふうに思います。  今ずっと減税の話、税額、税率控除その他の話を伺っておりまして、私今の税制の論議にやはり大きな危惧を覚えるわけであります。といいますのは、例えば国際比較一つとりましても、先ほど大蔵大臣お話になっていました課税最低限の話でありますとか、あるいは低中所得者層の問題でありますとか、国際比較をいたしますと、日本の個人所得税の構造が極めてゆがんでいるということがはっきりしているわけでありますが、これを知るすべが一般のサラリーマンにはない。ちょっと大げさでございますが、すべがないというよりも、意外にこういうことを書いている本がないわけであります。  書店に参りますと、金融関係の問題点などについてはたくさんございますけれども、税についていろんな問題点を書いているものはありません。それから、国税庁は大分丁寧なホームページをつくっておりますけれども国税庁のホームページなんかを見ていましても、実務的なところは大変丁寧に書いてございますが、今言ったようなところについて実はよく知らないで一般の国民税制議論をしているというふうな感を強くいたします。  この基本は、政治の方でも所得税は軽ければ軽いほどいいのだというような議論、あるいは課税最低限引き上げについてどんどん上げてしまえというような議論、容易に耳に通りやすい話だけが出てくるわけであります。私は、この話が一つは源泉徴収の議論関係しておるのではないかという危惧がいたします。先ほど出ましたように申告納税制度が基本だと言われながら、サラリーマンの場合には基本的には源泉徴収ということで、しっかりきちんと納めておるといいますか、そういうことでございます。  ただ、この源泉徴収は、各国の話を伺いますと、それぞれの国によって源泉徴収を基本としながらも実質的には申告制を取り入れているというような話をよく聞くわけでありますが、ちょっと話の前提としまして、アメリカあるいはヨーロッパの源泉徴収制についての状況をごく簡単に事務当局の方からお話しいただけますでしょうか。
  33. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 給与所得についての源泉徴収でございますが、我が国だけがやっているような御意見が時々あるわけでございますけれども、実はアメリカも源泉徴収をやっております。ただ、アメリカの場合には我が国と違いましていわゆる年末調整というのがございません。そこが我が国と違う点かと思います。  他方、イギリスでございますが、これは源泉徴収をもちろんやっているわけでございますけれども日本の年末調整よりもきめ細かく、例えば週給なら週給ごととかいう形で年末調整を結果的にやっている。正確な言い方ではございませんが、イギリスの場合には日本よりもいわばきちっとした源泉徴収をやっているということだと思います。
  34. 日出英輔

    ○日出英輔君 聞くところによりますと、源泉徴収というふうに言われながらも、納税者個々の関与といいますか、これは申告という言葉を使っていいのかどうかわかりませんが、それが組み入れられているものが結構あるというふうに伺っているわけであります。  私はこの源泉徴収制について、極めて簡素にできていて取りやすいところはきれいに取れる、取れるというと言い方はよくないのですが、そういう意味としてはすぐれていると思いますけれども、何か個々の納税者が、特にサラリーマンが税について理解を進めながら自分は納税者として義務とある種の国政への参加、そういったものを果たしているのだという意識を持ってもらわないと、いつまでもこの税制論議について先ほどのような余り次元の高くない議論で終始するのではないかというふうに思います。  そこで、国税庁のホームページを見ておりましたら、サラリーマンの必要経費を認めた特定支出控除制というのが出ておりました。これを後で主税局の調査課の方が書いた「図説日本税制」という本で見ましたら、かなりの詳しい説明もございました。  ただ、これは八七年から実施されているというふうに聞いているわけでありますが、なかなか使いにくいように聞いております。また、件数も余りたくさんないというふうに聞いているわけでありますが、それにしても、この制度については、周知ということがいまいちなのではないかということ、あるいは給与所得控除額を超えたときにその超えた部分について認めていくという、ある意味ではこの所得控除が、サラリーマンの必要経費みたいなもの一般と考えますとかなりの額ですが、それを超えるものということでありますから、なかなか使いにくいような感じも一般にはします。  ただ、これは八七年当時の議論をぜひとも一度伺いたい。きょうの席でなくて伺いたいのでありますが、やはりサラリーマンの今の源泉徴収の中で申告制的なものを拡大していく、そういう一つのきっかけとして考えたのではあるまいかというふうに思うわけであります。  今申し上げた私の理解が間違っているのか、あるいは事務当局の方から特定支出控除制について今後こうしたいというような話がありましたら伺いたいと思います。
  35. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) この特定支出控除制度は昭和六十二年に導入された制度でございます。  当時の議論は、今もそうかもしれませんが、サラリーマンの税に対する不公平感が非常に、バブルのこともあったのでございましょうか、強かったように思います。そこで、税制調査会議論がなされまして、この特定支出控除制度というのが先生がまさに今おっしゃったような背景もあって入ったわけでございます。  一言だけこの問題の難しさを申し上げさせていただきたいと思いますが、サラリーマンにとっての必要経費って一体何だろうかと。現実に詰めてまいりますと、そういう実額控除制度をとっている国でも非常に限定的に取り扱われているわけでございまして、我が国の特定支出控除制度は通勤費とか転任に伴う転居費とか研修費とか帰宅旅費、資格取得費等々に限定されておりますが、大体そのようなものだと思います。  今難しさと申し上げましたのは、実は我が国のサラリーマンに認められております給与所得控除でございますが、これは収入の大体三割がほぼ控除できるという形になっておりまして、この給与所得控除をどう考えるのかという関連においてこれから所得税制の抜本見直しをやってまいりたいと思っておりますが、その時点でまた問題点の一つとして検討していきたい、こういうふうに思っております。
  36. 日出英輔

    ○日出英輔君 それで、ちょっと大蔵大臣に伺いたいのでございますが、この個人所得税の今後のありようにつきまして、先ほどから出ております課税最低限などの課税ベースの話でありますとか、税率の問題でありますとか、先般浅尾議員から出ました例えば納税者番号制度の話でありますとか、幾つか個人所得税あり方について問題点が出ているやに聞いているわけであります。私は何かそのほかに、今申し上げたように、もう少し給与所得者が納税ということに進んで臨むような、どこの国のお手本というほど私の知識がないわけでありますが、何かそういう実質的な申告制の拡大みたいなものも、やや逆説的な話かもしれません、一般のサラリーマンからすれば面倒だという話があるのかもしれませんが、やはり一方で納税者という立場を一番理解するためにそういうような仕組みも研究していいのではないかという気がするわけでございますけれども大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 冒頭に源泉徴収についてお話がありまして、それは確かにいろいろ考えなければならない問題だなと、私もお話を伺いながら思っておりました。  俗に、税というのは取られる方が痛みを感じないで取るのがいいんだという説と、いや、そういうことをやっているとイージーに流れるので、本当は痛みを感じた上で払ってもらう方がいいんだという説と両方ございます。確かに源泉徴収というのは痛みを感じないで税をいただく方法ですし、おまけにそれが銀行振り込みになっておりますと余計わからないという、大変ある意味で巧妙な方法をとっておるということであるかもしれない。しかし、そのかわり減税のときにはまたありがたがられない、よくわからないということがございまして。  そういうことをやってまいりましたが、そしてできるだけ確定申告の煩も省きたいというようなことから、ある意味で効率的なことをやっておって、おっしゃいますように、そういう意味国民が税というものを一遍考えてみるという機会が少ない。今、給与所得者の特定支出控除というお話をされまして、私も正直言ってしばらく忘れておりまして資料を取り寄せたほどでございますから、そういう点についての考慮は足りないなと思います。  この間も納税者番号のお話がございましたけれども、難しいことですが、いろいろに議論をしながらわかって払ってもらうということが本筋なのであろう。そういうことは効率と必ずしも一緒になりませんが、立案をいたしますときにやはり考えておかなければならない問題だということを、今お話がありまして私も強く感じておるところでございます。
  38. 日出英輔

    ○日出英輔君 次に、租特法の関係でちょっと伺いたいのでございますが、個別の内容につきましては先ほど金田議員の方からいろいろ、住宅ローン減税の話やら投資促進税制等々お話がありました。私は、余り議論が出ていないのかもしれませんが、この租特の措置の整理合理化といいますか、そういった方をちょっと伺いたいのでございます。  私も実は公務員時代に、要求する側の方というとなんでありますが、この租特につきましては要求する側の方でございました。確かにそのときも一つ一つにつきましてかなり丁寧に、政策目的が合理的であるかどうかとか、あるいは政策手段として妥当かどうかとか、あるいは利用の実態が低調となったり一部のものに偏っていないかとか、いろんな点からその時々のチェックといいますか、要求自体がなかなか通らぬぐらい厳しい、そういうような経験もいたしております。  ただ、この十一年度はある意味では法人課税につきまして、特に税率引き下げというようなこともございます。本年はこの租特の措置につきましていろんな議論が大蔵省内部であったと思いますが、この整理合理化については数として、数としてと言うとなんでありますが、幾らあって、幾ら縮減合理化したと、主な特徴がもしお話しいただければ、そういった数字と、この整理合理化のことしの方向といいますか方針といいますか、そういうことについて伺いたいと思います。
  39. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 今回、法人課税実効税率を大幅に引き下げましたが、この租税特別措置につきましては、いわば税制の公平ということを犠牲にしてある特定の政策目的を実現するために講じているものでございますから、これは常に厳しい目で点検していかなければならないということだと思います。そういう意味で、実は今年度の改正においても相当な整理合理化を行っておりまして、現行企業関係の租税特別措置の項目は八十一でございますが、四項目について廃止、そのうちの二項目がいわばスクラップ・アンド・ビルドで創設されました。それで、改正後七十九項目ということになっております。  なお、縮減合理化した項目は三十一項目ということで、これは見直した範囲で申し上げますと、昭和五十年代の後半から初めてぐらい並みの久しぶりの大幅な見直しをやったわけでございます。
  40. 日出英輔

    ○日出英輔君 今のお話を伺ってちょっと、安心と言うとなんでありますが、しているわけでありますけれども、なかなか私ども要求する側の方からは余りこういうことは申し上げにくいのでありますが、やはりこの整理合理化も厳正に勇気を持ってやっていただかないといけないものだろうと思っております。  それから、質問ではないのですが、私の意見を少し述べさせていただきますと、この整理合理化のときに、産業政策的なもの、あるいは景気回復といいますか、そういったものからできておる租税特別措置と、中小企業だとか低所得者だとか、最近ですと環境なんかもあるかと思いますが、余りいい言葉ではありませんけれども、社会政策的なといいますか、そういう観点からできているものがあるように思います。  いつもそうなんでありますが、二年とか三年とかという期限つきでやっておりましたときに、後者の方で申し上げた、社会政策的なという言葉がいいかどうかわかりませんが、そういうものについては見直しをもう少し中期的に、それから産業政策的なものは短期的にという気持ちがございます。そうしませんと、制度をつくりました後、短期間に効果を上げろというのは中小企業対策その他のときにはなかなか難しい感じがいたしております。これは私の意見でございます。御答弁は結構でございます。  それからもう一つ、有取税の方の関係についてちょっと御質問をしたいわけですが、先ほど金田議員が御質問になりまして、話の筋道等につきましては私も大体伺ったわけでありますが、この有取税なり取引所税につきましては一年前倒しをして廃止する、こういうことをやったわけであります。  実は一方で、株式等の有価証券ではございませんが、商品先物取引あるいは商品オプション取引に係る損益についての問題がございます。今ビッグバンということでこういった制度の整備というものが急がれている中でありますが、一方でこういった株式等の有価証券についてとこの商品先物取引なりなんなりにつきましての損益の扱いがかなり大幅に違っているという感じがいたしております。  これはなかなか技術的に難しい問題があるように聞いているわけでありますが、有取税の方は一年前倒しをして廃止し、一方で、個人投資家からしますとどちらを選択するかという議論がある中での先物取引の損益の扱いにつきまして、今のままで据え置かれたということについてある種のバランスがとれていないような気もいたすわけでありますが、ちょっとその点につきまして御意見を伺いたいと思います。
  41. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 今、先生からお話がございました商品先物取引、商品オプション取引でございますが、これは現在、所得の分類では雑所得という形で総合課税の対象になっているわけでございます。そういう意味では、株式譲渡益課税の取り扱いと違うことは事実でございます。ただ、株式譲渡益課税につきましても、長年、課税適正化という流れの中でいわば現在の位置があるわけでございます。  いずれにいたしましても、これらの課税をどうするのか、まさに公平、中立、簡素という見地から今後ともまた検討していかなければならない、こういうふうに考えております。
  42. 日出英輔

    ○日出英輔君 それから、これはちょっと初歩的な質問で恐縮でございますが、十年度の税制改正のときに、十一年度末までにこの金融システム改革の進展状況なり市場の動向を勘案して見直しをして、株式等の譲渡益課税適正化とあわせて廃止するということを昨年言われたわけでありますが、ことしの税制改正では、先ほど金田議員もお触れになっていましたけれども、源泉分離選択課税制度を十三年三月三十一日まで適用してその後廃止すると。この関係だけで今の株式等の譲渡益課税適正化議論は大体終わりということになるのでございましょうか。
  43. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 所得税については、恐らく今後の見直しでは聖域なくいろんな点について検討していく必要があるだろうと思っております。したがいまして、株式譲渡益課税あり方についてももう一度新たな目から今後の検討の対象になっていくであろうと。特に課税方式議論といいましょうか、分離課税がいいのか総合課税がいいのかという議論もございます。もう一度検討の土俵にはのってくるだろう、こういうふうに考えております。
  44. 日出英輔

    ○日出英輔君 最後に、大蔵大臣にちょっと伺いたいと思いますが、企業なり資本の関係で、各国で資本誘致のために行き過ぎた税の引き下げ運動が行われているというようなことが新聞等で紹介がありました。この両税の廃止は世界の金融センターとして我が国が頑張りたいという一つの信号といいますかシグナルだろうと思っておりますが、読売新聞によりますと、何かEUでそういう議論を、税制の調和ということで、ユーロの導入に伴って各国で持っておるそういった企業誘致なりその他の税制を廃止したいという議論をしておるんだという記事が出ておりました。  今のような話を踏まえて、前倒しをすることによりまして世界の金融センターとしての我が国の立場がどんなふうに強化されるというふうに考えておられるのか。アジアの例えばシンガポールなり香港なりとの関係も見ながら、どういうふうなことになるのか、これについて最後にお尋ねをして終わりにしたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたびの税制改正でもお願いをいたしておりますような所得課税あるいは法人課税等々は、我が国のいわゆる国際的な立場、グローバリゼーションと言われるものとの関連でいろいろ考えてお願いをしておりますことは事実でございますが、そのほかにいわゆる流通税のようなものにつきましてもそういう意識を持っております。それは一種の国際化ということからくる動きでございますし、またどちらかといえば私どもはスリムな政府を志向しておりますから、どういう圧力であれ税金というものが、殊に流通税のようなものが減っていくということは競争の結果という意味で必ずしも忌避すべきことではない、そういう気持ちを持っております。  持っておりますが、ただ今シンガポールあるいは香港というようなこともおっしゃいましたけれども、こういう国は人口が大変少ないものでございますから、貿易あるいは資本の取引等々が国の大きな部分であるというようなこともございまして、そういう国とイコールに太刀打ちできるかどうかということは問題がございます。いろいろ国内的な理由あるいは物の考え方もございますから、それはすぐにイコールにできるとは思いませんけれども、いわばかなりの人口を持っておる、大国という言葉は語弊がございますから申しませんけれども、そういう間でただ競争のために競争するということになりますと、国内要因というものが無視されることがございますから、その点は注意しつつ、しかし全体のグローバリゼーションの動きには乗っていきたい、こう考えております。
  46. 日出英輔

    ○日出英輔君 税制の抜本的改革に大いに期待をしております。ありがとうございました。  終わります。
  47. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時二十五分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  48. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案所得税法の一部を改正する法律案並びに児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案の五案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  49. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 民主党・新緑風会の峰崎でございます。  本来であれば、金曜日の日に行われました公債発行の特例問題などについても質問したかったわけでありますが、時間の関係できょうは税制質問の前に公債発行の特例問題に関連して大蔵大臣を中心にお話を聞かせていただきたいなと思っております。  そこで、資料を皆さんに配付したいと思いますが、よろしゅうございますか。
  50. 勝木健司

    委員長勝木健司君) はい、許可いたします。    〔資料配付〕
  51. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 この資料はつい先日のある学習会であるエコノミストからいただいたものですが、過去七世紀間、つまり過去七百年間にわたるインフレ率、それから消費財の総合価格という資料でございます。イギリスという国は、こんなに長い間、七百年間も物価統計をとっていたんだなということを見て、一三〇〇年といったら一体日本ではいつの時代だったのかななどと思っているわけでありますが、一八〇〇年からはアメリカ合衆国も統計をとっております。  私は、この数字を見て、過去の歴史を振り返ってみると、物価というのは確かに上がっているときもあるけれどもかなり停滞をしている、あるいは下がっている、そういう傾向もあるわけでありますが、大蔵大臣、この表を見て、この過去七百年間にわたる物価上昇のトレンドを見てどのようにお考えになられるか、ちょっと感想があればお聞きしたいと思います。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと考えさせていただきませんと、何を申し上げていいかわかりません。ただ、えらいものだなと、一二六四年からとっておるわけですか。驚くばかりでございます。
  53. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 実はこのインフレあるいは物価の動きを見て、ある意味では物価というのは一度傾向的に上がり始めると、五十年、百年、あるいは長いときは百五十年ぐらいにわたってそのトレンドは変わらないというふうにこの表から読み取ることができるんじゃないか、こういうふうにそのエコノミストはおっしゃったわけです。そして、一九二九年恐慌といいますか、あるいは一九四四年のブレトンウッズ体制以降、インフレが非常に激しい時代に一九四〇年代から今日まで至っているというふうに思います。  ところが、私自身の体験なんですけれども、国会議員になった一九九二年、今から七年前でございますが、それ以降ずっと見ていて、物価が上がらない、つまりインフレの時代ではなくてむしろデフレの時代に入ったんだと。私は、一九九五年の秋の予算委員会で、今の時代はもうデフレの時代に入ったのではないかということを指摘したことがございます。  インフレの時代からデフレの時代に入ったんだというふうに私どもは認識していいかどうか、そしてこのトレンドはこれからしばらく続くぞ、こういうふうに考えていいものかどうか。この点、ずっと経済をウオッチングしてこられた宮澤大蔵大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) とても御期待に沿えませんけれども、私もかつて経済企画庁長官を前後五カ年間いたしましたが、経企庁長官にとっての一番の悩みは常に物価でございました。六%とか七%とかいう物価上昇の時代でございまして、しかもそれが生鮮食料品によって影響される度合いが非常に大きゅうございました。  今そのことを思いますと、ある意味ではエンゲル係数が下がったと言っていいのかもしれませんが、物価を構成するバスケットの中における生鮮食料品のウエートというものがかなり下がってきているのであろう。逆に申しますと、それ以外の、人間がつくるといいますか、マニュファクチャーとかサービスとか、そういったようなもののウエートが多分大きくなってきておるのだろう。しかも、サービス価格というものが多分余り急激には動かないでおる結果、生鮮食料品という非常に動きやすい部分が物価構成要因としてウエートが小さくなってきた、あるいは逆にそれ以外のマニュファクチャリングの対象が大きくなってきて、その大量生産による価格下落というものが大勢を占めるに至っておるというふうに言えるのではないだろうかと思っております。  サービスの方が上がりそうなものでございますけれども、実はサービスというのはある意味で自分の努力によって借りかえられる部分がございますから、そういう意味で物価の中に占める程度のサービスの価格というのは実は余り大きく響いていないのかもしれないという感じでございます。
  55. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 私はどうもこれはトレンドとしてしばらく続くんじゃないかと思っているんです。その理由を二点ちょっと挙げてみたいと思っているんですが、この点でまた御意見を伺いたいと思います。  一つは、冷戦が終わって、かつての社会主義国と言われた膨大な国々が市場経済へ入ってきた。あるいは、エマージングマーケットと言われているような途上国の国々がいわゆる市場化へ進んでくる。何十億という単位で、ある意味では非常に安価な労働力を持った製品というものが世界にどんどん広がり始めた。ですから、アメリカの物価統計なんかを見ても、あれだけ景気がよくて失業率が下がっているのに物価が余り上がっていかない。日本においては、卸売物価なんというのはずっと低減しているんですね。つまり、デフレーションといいますか物価が非常に下がり始めている。一つの要因は、私は、冷戦の終えんで市場経済というものが非常に大きなマーケットになってきたと。  第二点目は、収穫逓減の法則というのを私たちはよく経済学の教科書で聞いたことがあるんです。要するに、だんだん収穫をふやそうと思うと非常に条件の不利なところにいってしまって、収穫をふやそうとすればするほど逓減していくという収穫逓減の法則です。ところが、最近のハイテク商品というのはむしろ収穫逓増の法則にある。これはだれが言い出したかは別にしても、今日の世界でハイテク商品と言われているものはある意味では、例えば日本の一番おはこのところでいえばファクシミリ、これは世界の市場で日本製品が圧倒的に占めちゃう。そうすると、生産性を急速に高めることによって価格が非常に低落をしていく。これはICのチップなんかもそういうふうになる。  そして、賃金インフレの可能性は、さっきお話ししたように、低賃金労働者がふえてくる。それから、いわゆるハイテク商品を中心としたところは収穫逓減から逓増へと移ってくると、これも非常に急速に生産性を高めることができる。  そうすると、どう考えても、これからややしばらくの間は物価というのは上がらない、インフレーションではなくてもうデフレの時代に入ったんだというふうに私はトレンドとしてとらえるべきだと思うんですが、私が今そういう解釈をしていることについて大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おっしゃいますことに、基本的に私も同じ考えを持っております。  ここに経済企画庁の統計がございます。総合卸売物価指数ですが、この一月が前年同月比でマイナス四・九、二月がマイナス三・八。為替が急にここできいているはずはございませんから、かなり著しい卸売物価の低下でございます。  さっき言われましたように、一つはそれこそ国際的な自由化というのでございましょうか、安い労働が先進国のマーケットに自由に入ってこれるようになりましたので、そういう意味でサービスの価格というものが抑えられていく。それから、マニュファクチャリンググッズは、おっしゃいますように、収穫逓増もありますし、そうでなければ賃金の安いところへ行ってつくるということができますので、これも価格としては上がっていかない、逆に下がっていくと。そういう点では、世界全体の貿易の自由化あるいは資本の自由化ということもプラスしているかもしれない。ただし、それはそういう発展途上国の労働が先進国と同様の消費を始めるときに終わるかもしれませんが、そうでない限りは当分続きそうな感じはいたします。
  57. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そうしますと、インフレのときは借金をすればいい。私自身が自分で最初に家を買ったときを思い出すんです。公団住宅を買ったときに、頭金七十万円、そして月々、連れ合いと一緒に働いておりまして、半分は全部飛んでいっちゃう。しかし、物価は上がっていくし、やがて自分の賃金も上がっていくし、インフレの時代なんだから借金をしても軽くなっていく、こういう発想で借金をし、現にそうだったわけです。  ですから、インフレーションの時代に借金をするというのは非常に合理的なというか、だれかがそのことによってツケを払うことは間違いないんですが、デフレの時代に借金をふやすというのは私は最悪の選択じゃないかと思うんです。その点はどのようにお考えですか。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 伺っておりましたら、どうも大きな国債を発行する財政は余り利口でないぞとおっしゃったことになると思いますが、ただ通貨の方が、従来のように金本位制とかいうものがなくなってかなり通貨の発行が管理される状態になりましたから、その点は従来とは違う要素があるかもしれないとも思います。
  59. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 確かに通貨の管理の問題は新しい時代だと思います。  ただ、私は、今までの国の行政、今は財政の問題をお話ししているわけですが、日本の戦後のいわゆるさまざまなシステムというのはすべて右肩上がりの経済成長、そして物価というものもある意味ではインフレーションを土台にしていた。端的に言うと、その土台には土地神話というのがあって、土地の価格というのは永遠に上がり続けるんだ、こういう考え方があったと思います。  私はどう見ても、今、小渕内閣を中心としてとられている方策あるいは一九九〇年代にとられた方策というのは、インフレーションがやがてまたいつか起きてくるだろう、あるいは少なくとも物価というのはやっぱり上がっていくし、そういうことを土台にしてさまざまな政策をとり続けてきたわけです。そのことが一九九二年から始まったバブルの後始末、そのことによって大変膨大な借金を国、地方が抱えてしまったわけですね。  これを将来私たちが返済しなきゃいかぬと考えるときに、今確かに通貨の問題は多少管理できるようになりましたというのはあるのかもしれませんが、それとても短期金利を中心にしたところだけだと思うんです。長期金利はまた後で問題を指摘したいと思います。  そういう意味で、今インフレの時代からデフレの時代に大きく転換をしたというふうに考えたときには、我々はとんでもない誤りを犯してきているんじゃないかという思いを私自身も最近非常に強く持っているわけでありますし、たしか財政の中期展望と称する大蔵省の試算を見ると、何にもしなくても、一・七五%の経済成長率を前提にすればこれから毎年少なくとも三十兆円の新発債を発行しなきゃいかぬということで、私もびっくりしたわけなんです。  大蔵大臣、私は、もうこういうやり方を引き続き続けることは日本の将来にとって大変なことをもたらしているんじゃないだろうか、そういう危機感でいっぱいなんです。  その意味で、もう一つ、私は非常に重要なことだと思うんですが、大変なバブルの後始末も含めて、日本経済は初めて世界の主要先進国の中で本格的にデフレのつらさを今味わっているときだと思うんですね。そのときの経済政策のあり方というのは、従来のあり方とは違った、日本がまず最初にその問題に取り組んでいるんだという意味で、国際的な環境、国内的な環境を含めて、大きく転換をすべきときに来ているんじゃないかというふうに思えてならないわけなんですが、もう一遍そのあたりの大蔵大臣の御意見をいただきたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 戦後五十年間、確かに日本経済は右肩上がりの成長をしまして、それは信用を創造しつつ成長してきたということは事実でございます。峰崎委員もそうでいらっしゃいますし、私自身もそういう中でずっと育ってまいりまして、そのことは否定のしようもございません。  ただ、いわゆるブームがありまして、ブームがはじけました後多くの人々が見誤ったことは、政府もそうだと思いますが、不良債権の担保になっているところの不動産というものはやがて価格を回復する、だからもう少し待っておれば問題は片づくんだと大変たくさんの人が思っていたのは事実でありますし、それが片づかなかったがために不良債権が残ったわけですが、きょう現在でもその問題は実は片づいていない。いわゆる資産効果でない、逆の資産効果というものが働いておるということをみんなが今日はもう嫌というほど感じておりますから、過去に右肩上がりの成長をしてきましたけれども、そこで生まれた心理というものは、最近の逆資産効果なんかを見ていますと、意外に現実というものを見ているんではないか、見ているがためにまた物が上がらないということにもなるわけですけれども、そういうことがあるんではないかと思います。  今おっしゃっていらっしゃいますように、少なくとも政府は、現在の経済状況、国債の発行等を含めまして、これが将来ありそうなインフレということによって解決を助けられるというふうな期待はしてはならぬと、それは私はおっしゃるとおりだと思います。
  61. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ポール・クルーグマンさん、あるいは日本でいいますと総理の経済戦略会議におられた伊藤元重さんなんかも、やはりある程度物価を上げることが今の日本のいわゆる資産デフレといいますか、そういうところから脱却する一番いい方法なんだというお話を先日なさいました。問題提起をされていました。  私もなるほどそうなればいいがなと思うんですが、恐らくなかなかそうならないんだろうというふうに思っている一人なんです。そこで、もう余り抽象的なことはやめて、債券市場の規律問題について触れていきたいと思います。  私は、一月二十二日だったでしょうか、今年度の四大臣のいわゆる所信表明演説に対して、大蔵大臣にも財政の規律問題が大変心配だということをお話しいたしました。  特に、いわゆる財投資金、とりわけ郵貯の二〇〇〇年問題について、これで五十数兆円の金がある意味では郵貯から出ていってしまう、そうなるとますます新発債あるいは借換債も含めて債券市場の規律問題として大きな問題が起きるのではないかということを指摘いたしました。  そのときの答弁を見まして、さすがは宮澤大蔵大臣、御指摘のことについては非常に注意深く見ていきたいということでした。再び財投からいわゆる国債を買うということについて解禁をなさって、また少し変わってきているようなんですが。  そこで、私は、この債券市場自体がビッグバンあるいはグローバル化した今日の世界市場の中で非常に大きな特徴点が一つあるのではないかと思います。それは、債券市場が今日のような状態になってくると、いわゆるインフレを起こしたい、ところがインフレ以上に金利が上がってしまう、こういう危険性が私は出てきているのではないかというふうに思うのであります。  ですから、今回でもたしか〇・六%ぐらいまで下がっていたのが二%近くまで上がりましたね、またちょっと下がっているようでありますが。これは大魔神を一回から投入されていますから、いよいよ途中で景気が途切れてしまうと、恐らく大魔神以上のものを再び投入するというのはなかなか難しい。もう一人アメリカの大リーガーか何かを呼んできて救援させるしかないんだろうと思うんですが、そこでまた国債を担保にして新発債を発行するということになってくると、物価の上昇率、インフレ率以上に金利が上昇するという大変大きな問題が起きてくるのではないかと思います。  逆に言えば、そのことはマーケットの方がこのインフレというものをチェックしてしまう、そういう作用が今働き始めているんじゃないかというふうに私どもには見えるんですけれども、今後の債券市場というものはどのように推移をされると考えておられるのか、この点、大蔵大臣の見解をお伺いします。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 経済企画庁の計算によりますと、平成十一年度の企業設備投資は六十二兆九千億円でございますからGDPの一三%ぐらいでございますか。しかし、これは実は異常に低い数値であって、九年度は七十九兆ございますから、設備投資がこの程度でとどまっておりましたら今の長期金利の問題は何とかやっていけるのじゃないかと思います。  幸か不幸かと申し上げますが、仮に設備投資が動き出しましたときに国がなお国債から脱却できない、しようとしてもできないような財政構造になってしまったときはまさにおっしゃるようなことになっていく危険が大きいので、幸いにして設備投資が動きそうなころになりましたら、何とか国債から手をだんだん引いていくことをいたしませんとおっしゃるようなことが起こるのではないかと、それは非常に用心すべきことだと思います。
  63. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そこで、ムーディーズという格付会社が日本の国債の格付を昨年大きく変えましたね。最初、九八年四月二日に日本の国債を安定的なものからネガティブに変えた。ちょうどこのときは十六兆円のいわゆる景気対策ですね。昨年の予算委員会審議のときに、だれもがもうこの予算ではだめだということがわかっていながら最後まで固執されて、そしてようやく予算が通って十六兆円の補正予算を組まれております。このときに安定的からネガティブに変えました。  七月二十三日に外貨建てのカントリーシーリングと円建ての債務の格付を引き下げの方向で見直しをしている。このときは景気対策で大規模減税をやるということを発表したんです。  そして、十一月十七日に国債を結果的にAaa、トリプルAからAa1に下げましたね。このときは二十四兆円の大変な大規模景気対策を出した。  この国債の格付に対して、当初、これはどなたが発言されたかわかりませんが、大蔵省筋の方からは、このムーディーズの格付に対して、とんでもない、日本というのはほかの国と違いますよ、なぜならば、確かに財政は赤字かもしらぬけれども、貿易収支も黒字だし家計も黒字だし、何よりも千二百兆円のいわゆる預貯金もあるじゃないか、個人貯金もある、だからこういうとらえ方というのはやはり的を射ていないんだ、こういうお話だったんです。  しかし、ことしに入ってから、あるいは去年の十二月から国債に対する金利が、十年物の金利が上がっていったことを含め、今になって見たときに、このムーディーズの格付はやはり正鵠を射ていたというふうにとらえるべきだと私は思うんですが、大蔵大臣、これはどのようにお考えになりますか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おっしゃることはよくわかります。  ただ、ムーディーズが国債の格付を下げたときに日本経済がインソルベントだと思ったわけではなくて、私が想像しますのに、昨年の九月ごろの国債の長期金利は〇・六でございますから、その〇・六であった経済が今や仮に二まで行ったというときには確かに国債の発行主体の経済状況は悪くなっている、それはもう問題なくそうでございますから、それを反映したのではないか。ちょっとやそっと悪くなっても我が国はインソルベントになると思いませんけれども、それを言っているわけではなくて、〇・六のときも二のときも国債に同じクレジビリティーがあると考えることにムーディーズは異存があったのではないかと思います。
  65. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そのインソルベント、すなわち日本というのはそういうものは解決し得る能力があるんだという前提条件は、大蔵大臣はなぜそういうふうに、要するに解決可能だと思っておられる根拠はどういう点にあるんでしょうか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは基本的には我が国経済の顕在力及び潜在力、それが例えば家計がプラスであり海外に資産を持っているということでございますから、政府自身は貧乏でございますけれども国は決して貧乏ではない、そういうことが私は基本だと思っております。
  67. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そこで、その点でちょっと私は御意見を伺いたいと思っているわけでありますが、確かに日本は家計貯蓄が一千二百兆円あると言われています。一千二百兆円が今どこにあるのかというのは、これはなかなかもうどういうところに投資されているかわからないところでありますが、そのかなり多くが郵便貯金であるとかさまざまなルートを通じながら、本当にこれは不良債権になっていないんだろうなという疑いはもちろんあるんですが、そのことはきょうは問わないとしても、国内の貯蓄というのはあのビッグバン以降は国籍を失ってしまっているんじゃないだろうかと思うんです。  ということは、日本の国債を買うのか、あるいはアメリカの国債を買うのか、あるいはニュージーランドの国債を買うのか、あるいは外貨預金するのか、その点に関しては全くもう国内貯蓄というのは国籍を失ってしまっている。だから、財政規律のある国の国債やボンドしか買わなくなっているのではないか。  やはり従来の国内の金融市場というものを、ビッグバン以前の資本取引を含めて全体を一国のいわゆるナショナルエコノミーの中でコントロールできた時代と今日とでは明らかに違っているんではないか。これが私は今のインソルベントだということをおっしゃっていることに対する第一の疑問なんです。  第二点目は、経常収支が黒字から赤字に転落することは時間の問題になってきやしないかなという危険性があるのではないかと。これは難しいマクロ経済の話はちょっと別にしても、経常収支というのは大体民間貯蓄マイナス財政赤字ですね。そうすると、民間貯蓄というのは家計貯蓄であり企業貯蓄であり、この二つと財政赤字というものとが、財政赤字がこのテンポでふえていく、そして企業貯蓄は、今御存じのような経済実態ですから、一体これがどのようになっていくのかな、家計貯蓄の方は高齢化を前にして一体トレンドとしてふえていく可能性があるんだろうか。  こんなことを考えていくと、二十一世紀の初頭、ことしとか来年とかに直ちにそれが双子の赤字になると私は思わないんですが、日本の持っている預貯金だとか対外資産だとか、こういうものは意外に危ういものではないんだろうかなと思うんです。世界最大の債権国だったアメリカが世界最大の債務国に転落するのを私たちは目の当たりにしたわけでありますけれども、この今のテンポで行った場合に本当に双子の赤字は生じないものかなと。この点について、大蔵大臣、今私は二点申し上げたんですが、ちょっと危惧をしているんですけれども、御見解をお願いします。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 個人貯蓄の対象が日本の国債であれニュージーランドであれ、あるいはアメリカであれ、とにかく有利な投資をなされている限り、それは日本人の財産であります限り、投資対象がどこであれ、私は余り気にいたしません。  ただ、おっしゃいますように、これから少子高齢化ということになっていくと、家計の貯蓄は恐らく今までのようにどんどんふえるというわけにはいくまいということと、財政の需要はどんどんふえるということになりますから、その間の関係というものは今までと非常に変わってくるだろう、それは少子高齢化ということはある意味で非常に恐ろしいといいますか大きな影響を与えるだろうということは十分考えておかなきゃなりません。それはそういう時代を待望しての財政あり方が今までと違うということは、まさに適切な御注意をいただいているとおり、私もそう思います。  それからもう一つは、国際収支のことは何ともちょっとわかりかねておりますが、為替レートによるかもしれません。しかし、それもいつまでも必ず黒字だと安気に考えるなよとおっしゃる意味では注意しておかなきゃならぬかもしれないと思います。
  69. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 これはこれから先の展望でございますから、また我々自身が本当に将来の世代の責任を含めてしっかり見ておかなきゃいけない点だろうと思うわけであります。  そこで、大蔵大臣、先日の予算委員会でケインズの経済政策についていろいろやりとりがございました。私もケインズの経済政策というのは六〇年代に非常に風靡をしてまた大きな影響力を持ったと思うんですが、しかしずっと後でまた税制のところでも出てくるんですけれども、このように考えてくると、今の時代の経済政策としては、どうも日本経済に問題があるのは供給側に問題があるんではないか。つまり、供給重視の経済学とよく言われているんですが、従来の伝統的な、不況になって需要が足りない、そして需要を喚起するためにさまざまなスペンディング政策をとってきたわけですが、どうもそういう政策が有効性を失い始めてきているのではないかという指摘を受けて、私も先ほどこんなグラフをお見せいたしました。  物価がぐうんと上がっているのは、ブレトンウッズ体制のもとでそれぞれの物価上昇が進んできて、これではもう通用しなくなった、グローバルな経済のもとでは。そういう時代に入ってきているときに、果たしてケインズ政策というのは一国単位的に見て通用し得るんだろうかという疑問を持っているので、この点、改めてまた大蔵大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この間ケインズのことを申し上げましたのは、いわゆる乗数効果というものは無視できないということを申し上げようとしたんですが、ただいま峰崎委員の言われますことは、問題はサプライサイドにあるのではないかと。  今お互いが不良債権と呼んでおるものはかつてはみんな優良債権と思ったものでございますが、その優良債権と思ったものに対応してそれだけの経済活動がそのときはあったはずであります。片方は今不良だと言いますが、経済活動だけは残されていて、あのときバランスしていたはずのものがこっちは不良債権で落ちてしまいますから、バランスが外れている状況というのが今あるのではないか。つまり、それはもっと端的に申しましたら、企業が持っておる設備の中で、稼働していないと言いますけれども、もう稼働できないもの、実際はもうある程度技術等々の理由によってオブソレッソントになったものをなお稼働し得る設備と考えている可能性が私は高いと思うのでございます。  今度、総理大臣が呼びかけられて産業再生会議なるものを考えられていることの中に、きっと企業側が持っている有効な設備と考えているものに実はもうそうではないものがあるのではないか、それまで勘定するからデフレギャップというものが実は非常に大きくなるはずであって、それを落とさなきゃならぬのではないかということは私も実は思っております。それは企業でもきっとかなり気がついておられるのではないかというふうに思います。ディマンドサイドにも消費が振るわないというのはございますけれども、サプライサイドにも問題がありそうだということは、私もどうもそうではないかと思います。
  71. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 これまでの既存の、例えば自動車産業は一千四百万台製造能力を持っている、しかし実際は一千万台しか需要がない、四百万台過剰です。あるいは鉄鋼メーカーでいけば、一億三千万トンの設備能力があるけれども一億トンを切ってしまう。そういう意味での既存産業における過剰設備というのは私もそうだろうと思うんです。  もう一つ、実は一九八五年のプラザ合意あたり以降から日本経済というのは恐らく世界で最も高い水準に行って、そこから先に新しい産業というもの、いわゆるリーディング産業、日本経済を引っ張っていく産業が見当たらなくなってきているのではないか。その産業構造の転換というものが従来のやり方、すなわちケインジアンのやり方では、その古い産業構造そのものを引き上げたり下げたりするということではなくて、産業構造を情報通信やさまざまな産業に大きく転換しなきゃいけない。  そのときに、財政拡大というものを中心にした従来の、従来型と私たちはよく呼んでいますが、そういうスペンディング政策をとること自身が、今日の日本経済が直面している課題にとってどうもやはり間違った方法をとっているのではないだろうかなと思うんです。  確かに景気が悪いわけですから、一時的に公共事業を中心にして、私の今いる北海道なんかはもう干天の慈雨のように待っている企業や自治体がたくさんおります。それは多分に私は失業対策だと思う、雇用対策だと思う。新しい産業にどうやったら変わっていけるのかということをマクロ経済政策としても考えていかないと、従来のやり方の延長線上では、冒頭申し上げたような公債発行を進めていくとこのデフレ時代だから大変な目に遭いますよということと並んで、産業構造転換そのものに余り今回の、余りというよりもむしろ逆行してしまうのではないのか、その危険性の方が大きいのではないだろうかというふうに私どもは見ているんです。  これは公共事業は要らないとかそういうことを私は言っているのではないんです。どういう意味での政策が必要だったのかなということについて、やはり今回の何でもありというふうな、私は後で税制のところでもそれを申し上げたいと思うんですが、財政も何でもあり、金融も何でもあり、税制も何でもあり、こういう状態がもたらしたものというのは取り返しがつかないところへ来ているのではないだろうかなという気がしてならないわけでありまして、そのあたり、また大蔵大臣の御所見をいただければと思います。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) プラザ合意の後、おっしゃいますようにアメリカは猛烈なリストラクチャリングに金融業も製造業もすべて入りまして、今だからわかることですけれども、非常な苦労をして、そして新しい産業、殊に情報等々いろいろ起こりました。  ただ、その間やはりアメリカに幸いだったと申しますか、我が国状況が違うと思いますのは、かなりのレイオフというものができて、そして労働者側はレイオフが恐ろしいから余り賃金要求をしなかった。今日アメリカの経済は未曾有の繁栄ですけれども、製造業、サービス業を含めた賃金水準というのは実は従来より上がっていないということは広く認められておりますから、こういう繁栄の中でレイオフというものがあり、労働側が非常ないわば自重をして、そして賃金水準は上げないまま生産性が上がっていった、それが今日のアメリカの姿ではないかと思うのでございます。  その中で我々にできないことはレイオフの部分であろうと思います。これは不平を言っているつもりではありませんで、我々の国はそういうふうにできておりませんから、そういう意味でリストラの行き着く厳しさというのはやっぱりおのずから限定がある。したがって、そういうレイオフを起こさないように、なるべく雇用というものを大事にしながらリストラをするとなりますと、やはりそこは政府がかなりいろんなことをしなければならない。私はそういう国だと思いますから、少しもそれを悪いと思いませんけれども、比較して申しますと、そういう意味で厳しさが足りないと思います。  峰崎委員のおっしゃいますことは、そういうことをやっていると本当のリストラクチャリングができないんじゃないか、徹底したことはできないよとおっしゃっているのだろうと思いますが、私もそうかもしれないと思います。しかし、長い時間がかかってもそれは国の中のハーモニーというものを、雇用問題というのはやっぱり大事にしながらこの病気を治していくという、どうも我が国としてはそうすることが正しいのであろうし、そうしないことを、アメリカ的なやり方をするということはやっぱり我が国に向かないのではないか、お答えにはなりませんけれども、私はそういうことを感じております。
  73. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大変含蓄のあるお話を聞いて、経済政策のあり方として、この間の経済戦略会議の答申などもちょっと見ながら、確かにこういう方向でドラスチックな改革を進めていく方法がいいのか、今おっしゃったように漸進的な形で進んでいくのがいいのか、このあたりがまだ自分自身も十分納得できていないというところがありますので、これらについてはまた時間をとって質問どもさせていただきたいと思います。  ついては、この際、この問題で二点要請しておきたいことがあります。  一つは公的部門のバランスシートの問題、いわゆる企業会計システムといいますか、これはやはりきちんとつくっていかなきゃいけないんではないかというふうに思います。  とりわけ第三セクターの問題あるいは財投機関の問題を含めて、国民はもうだんだん薄々と感づき始めてきております。自分の納めている郵便貯金は一体どう使われているのか、あるいは自分の厚生年金の掛金は一体どうなっているのだろうか、そういったものを、やはり公的な会計もバランスシートをきちんと示すということがもうこの時代にはやむを得ないことではないだろうか、必要なことではないだろうか、これが第一点です。  第二点目ですが、財政の中期展望というのを出されました。これはある経済学者からすると小学校の算数だと言うんです。一・七五%のいわゆる経済成長率というものを前提にして、どれだけこれがこれから伸びるかということを、前提条件を置いたらどれだけの金額が必要になるかという、それは実は本当の意味の推計ではないんだと。  アメリカの大統領の経済諮問委員会の報告書だとかそういったものにあるように、毎年きちんとシミュレーションをして、一体これからの日本財政経済展望というものはどうなっていって、どう予測していて、そしてそれに対して政府はどのように経済政策をとろうとしているのかということについてのきちんとしたシミュレーションを入れた展望を明確にすべきではないか。私はこの二点を注文しておきたいと思うんですが、この点、何かあればお答えください。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前の問題については私も同感でございます。つまり、一般会計が事業会計でないことにかまけまして、その他の特別会計とかあるいはいろんな事業主体であるものが事業会計であるのにそういうバランスシートを持っていないということは私は問題があると思います。ですから、それはできるだけ、そういうふうに今事業会計でやっているものも特別会計でございますけれども、なるべくそういう努力は広げていくべきだと思います。  それから第二の問題は、この中期展望というのは昭和五十年代からやっておりまして、ただいま小学校の算術とおっしゃいましたけれども、時代離れのしたものになっている。しかし、毎年御審議の資料に使っていただいているので出さないわけにもいかないし、ちょっと私自身も頭痛に思っております。  ただ、将来の展望ということになりますと、我が国は単年度会計でございますものですから、経企庁がモデルをつくってシミュレーションをやるということがなかなかできない、できないと申し上げた方がいいんだと思いますが、そういうこともございまして、どういうふうにしたら今の仰せのようなものができるか。ともかくこれは少しいろいろ工夫をいたしませんと、時代の要請にこたえていないということは反省しております。
  75. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 公債発行の問題についてはそれぐらいにさせていただきたいと思いますが、我々自身も、この公債発行に依存せざるを得ない経済からどう脱却できるか。とりわけプライマリーバランスの回復という問題を急がなきゃいけないし、私どもは早く財政構造を、景気の回復ということももちろん重要なんですが、その一方でその先を示さないと、また景気の回復にも役立たないのではないかというふうに考えております。  それでは、税制問題に移っていきたいと思います。  そこで最初に、またやや大きい話になるのでありますが、世界的な税制改革の潮流をどのようにとらえたらいいのか。  とりわけ一九八〇年代のレーガンの税制改革ということがよく注目されます。一時期は余り評判がよくありませんでしたけれども、最近、アメリカ経済とイギリス経済が非常に好調である、そのことが反映してかどうかわかりませんが、もう一回レーガン税制改革見直してみようというような動きもあるやに聞いております。日本における今回の税制改正は、先ほど私は何でもありというお話をしましたけれども、そのバックに流れている思想というのはどうもその延長線上にこういう政策がとられている面もあるのではないかなというふうに思ったりするわけであります。  そこで、その一九八〇年代のレーガンの改革以降の税制改革の潮流をどのようにとらえておられるのか、まずその点をお聞きしたい。
  76. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) まず、米国の方からの認識でございますが、レーガン時代になりましてからまず第一期の減税があったわけでございます。これは所得税税率引き下げ、あるいは租税特別措置の拡充というようなことをやった。サプライサイドからと言われたわけでございますが、結局、期待したほどの成長率は達成できなかったように思います。他方、歳出の抑制も不十分でございましたし、税収の伸び悩みというものと相まちまして、財政赤字、長期金利高、ドル高の進行、あるいは経常収支も赤字傾向が続いたというふうに認識しております。  そういうこともございまして、第二期の一九八六年のレーガン政権でございますが、税制面からいたしますと歳入中立にしている。つまり、所得税法人税につきましては税率引き下げを行うと同時に、課税ベースの拡大、適正化を行う。いわばこの課税ベースの拡大、適正化という意味で言いますと、税制からはなるべく産業なりの構造に中立的であろう、こういうような思想があったものというふうに理解しているわけでございます。  なお、その後のブッシュ政権あるいはクリントン政権でございますが、いずれもOBRA等におきまして歳出削減と増税があわせて実施され、財政健全化の基調がつくられたのかなと思います。  イギリスでございますが、サッチャー政権以降、まさに経済を活性化するということで、あるいは所得課税から消費課税への転換を図るということで、所得法人税率の引き下げ、付加価値税率引き上げ、あわせて課税ベースの拡大を行っております。  ドイツ、フランスでございますが、時間の関係もございますので、なかなか傾向を一概に言うのは難しいなというふうに思っております。
  77. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 レーガンの税制改革、マークⅠ、マークⅡ、特に一九八六年の二回目の税制改革が非常に高く評価されているというふうに私どもも聞いているわけです。そのときの考え方というのは、課税ベースを拡大しながら税率を低下させていくという、歳入中立という考え方ですね。私はこれは非常に重要なポイントだというふうに一点考えておくべきだろうと思います。  もう一つ、実はこれは統計的にそういうことが確かめられるのかどうか私もわからないんですが、一九七〇年代までは、租税負担率と社会保険料、日本でよく言う国民負担率、余りこの言葉は私は好きではありませんので使いたくない言葉ですが、国民負担率と経済成長率に余り相関関係がなかった。つまり、国民負担率が高くなっても経済成長率が高いところがある、あるいは逆のところもあったりするということで、そこに余り相関関係がなかったのが、一九八〇年代になってくると、国民負担率の上昇に伴って経済成長率が実は逆相関になった。すなわち、国民負担率が高いと経済成長率が下がる、そういう傾向が出始めてきているというふうに統計的にとらえた学者がいるそうです。  そこで、消費税についてはいろいろ見解があるのでありますが、どうも一九八〇年代に、法人所得とか個人所得とかそういう所得税というものに依存する、基幹税をそこに置いてその国の財源を調達するという考え方から、ヨーロッパでの付加価値税あるいは日本で言えば消費税、そういう経済に対して中立的な要因を持っていると言われる消費課税に基幹税がシフトしていく、そういう大きな流れが八〇年代に起きたんではないかというふうに私自身もとらえているんですが、この点はどのように大蔵省としてはとらえているのか。大臣ももし御所見があればお聞かせください。
  78. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 大変難しい御質問で、我々も悩んでいるところでございますが、一つ申し上げられますことは、経済が国際化してまいりますと、我が国法人税実効税率が国際的に見て高いところにあったわけでございますが、そのまま放置していきますと経済が沈滞化しかねないというような状況になってくる。そうなりますと、法人税率もおのずと国際的な水準にさや寄せされてこざるを得ないということになろうかと思います。  それから、所得税の話でございますが、ここはもう少し複雑な話であろうというふうに思うわけでございます。  確かに金融課税の分野その他、まさに国境のない世界ができつつあるわけでございますから、今回の最高税率引き下げ、五〇%ということを御提案しているわけでございますが、そういう国際化の流れの方からおのずと制約してくる面がある。ただ、所得税について国際的な比較をさせていただきまするならば、全体として我が国所得課税負担率は国際的に見ても低い方の部類に属するかな、こういうふうに思っております。  そういう意味で、消費税のお話がございました。実は消費税を導入いたしましたときも、もちろん少子高齢化時代の財源をどうするかという話もございましたが、個別間接税、それまで物品税とか入場税とかいろんな税がございました。この考え方は、いわば国がこれはぜいたくであるというふうに個別の特定の品目にかけて税金をいただいておったわけでございますが、それではもう国際的な摩擦の種にもなってまいりましたし、国自身が何がぜいたくで何がぜいたくでないかという判断の基準を絶対的に持つというのもなかなか難しい時代になってきました。  あわせて、消費税といいますのは国境税調整のある税でございますので、経済に対しては大変中立的な税制でございます。そういう意味で、これから経済の国際化が進展する中で、そういう側面から眺めた場合、先生から今御指摘いただきました中立性というのはこれからも重要な概念になってくるであろうと思います。
  79. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ちょっと抽象的な話は別にして、実はEUが発足をしたわけですね。EUの共通通貨ユーロも発足した。これから税制財政はどうなるんだろうなというのが我々の一番興味深い点なんですが、一つ言えることは、ただいま尾原主税局長も、金融ビッグバンといいますかグローバル化した経済なんだと。  そうすると、どうも今まで、一国、主権国家と呼びましょうか、その一国の中でマクロ経済政策をとり、経済成長をし、またその財源を調達していくという従来進めてきた政策がございますが、これが所得税とか法人税とか所得に依存するものを高くすると経済成長に阻害になってくるというふうに一般的に言われています。それが本当かどうか、ちょっと私も十分確かめる素材を持っていませんが、従来は所得税を中心にして、しかも累進課税を入れて、そこからかなり所得再配分政策という形で福祉国家なり経済を運営してきたわけですね。  だんだんそういうものが機能を失ってくる。そうすると、EUに見られるように、主権国家のレベルでやり得る範囲というのはローカルに移る。地方分権という形でいくか、あるいはEUという形でリージョナルなものに転換をしていく。恐らくアメリカなんかだったらNAFTAといったところにまた行くのでありましょうか、あるいはAPECなんでしょうか。そして、一国内的に言えば、ヨーロッパは一九八五年に地方自治憲章ができた。そのときの原則というのはサブシディアリー原則、要するに必要なものをまず市町村でやる、それで中間段階に行く、そして国にやらせる、そういう形で見直しが始まっていきました。  その意味で、主権国家で、従来大蔵省を中心にしながら税財源をきちっと調達し、そしてマクロの経済政策を運営してくるというやり方がだんだん通用しなくなってきているんじゃないか、あるいは効果が薄くなってきているんじゃないか。そして、日本においても今求められているのは、地方自治体にもっと権限、財源、税源を移していくということではないんだろうかというふうに思うんです。  この点、まず大蔵大臣に、主税局長に聞いたらきっと、いやいや、そんなことはないと言うかもしれませんので、大蔵大臣の見解をまずお伺いしたいと思います。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一つは、国によりますけれども我が国のようにかなり円熟した国になりますと、かつて言われていたようなナショナルミニマムとかシビルミニマムとかいうものがある程度達成されておるのではないか、そうだとすれば、それ以後の仕事はむしろ地方に重点が置かれるのではないかということが私は自然の勢いであろうと思います。  もう一つは、多分戦争の危険が少なくなってきていると思いますから、そういう意味で中央の国家に、これは油断をしていいという意味ではありませんが、非常に大きな財政負担であった部分が少しずつ軽くなる可能性というものはあると思います。  それはまたもう一つ地方地方のニーズを充足するために使うそれだけの財源が浮いてくるといったような両方のことから、もし世界がもう一度戦争という方に明らかに向かわないということがはっきりしてまいりますと、傾向は私はそういうことにならざるを得ないだろうと思っています。
  81. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 自治省にちょっとお聞きします。  最近の地方財政の現状は大変厳しいという状況ですが、経常収支の比率であるとかあるいは地方債の比率が一五%を超えている自治体だとか、簡潔で結構でございますので、どんな状態かを少し教えてください。
  82. 林省吾

    説明員(林省吾君) 地方財政状況につきまして御説明を申し上げたいと思います。  現在の地方財政は、我が国経済が引き続いて低迷状況にありますことを受けまして、大変厳しい状況になっておるわけでありますが、地方税の落ち込み、地方交付税の原資となっております国税収入の落ち込みによります交付税の減収、あるいは歳出面では、数次の景気対策によります公共事業の追加、さらには減税の実施等によりまして、地方財政の借入金残高について見ますと、平成十一年度末には百七十六兆円に達すると見込まれる状況にございます。  また、個別の地方団体の財政状況について見てみましても、例えば公債費の負担比率という指標がございますけれども、この比率が財政運営上一五%になりますと警戒ラインというふうに私ども考えておりますが、この一五%以上の団体が約六割に達している状況にございます。  さらにもう一つ、私ども財政状況を見ますときに用います指標で経常収支比率というものがございまして、これは一般的には七五%程度が妥当な水準ではないかというふうに考えておりますが、現在はこの水準を大きく上回っておりまして、全国平均で八七・四%となっております。一〇〇%を超える団体も二府県二十二市町村となるなど財政の硬直化も進んでおりまして、大変厳しい状況にある、こういうふうに認識いたしております。
  83. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今、景気が悪いから、税収が不足だからとおっしゃいました。確かに法人事業税は都道府県の基幹税になっていますから、裕福な自治体と言われていたところが落ち込んできているということはそのとおりだと思うんです。ですから、かねてからこの税は不安定で、本来このように景気動向に左右されるのは地方財源として望ましくないんじゃないかという意見がありましたが、それだけじゃないんじゃないか。  私は二つあるのではないかと思いますが、バブルの後始末で景気対策に完全に地方自治体の財政は組み込まれていった、これが第一点です。  それから第二点として、これまで地方自治体は、国の政策にとにかく従っておれば補助金もついてくる、あるいはそこで裏負担として起債をしても国の政策に従う限りにおいては後で交付税で負担をいたしますよと。要するに、国の方針に従っておれば余りつくる必要もない。あるいは、そうでなくて本来であればもっと別のものだけれども、国がちゃんと面倒を見てくれるし最後は交付税の措置もされる、起債も認めてもらえる、ある意味では国の政策に追随することによってすべて、すべてと言ったらちょっと語弊がありますが、かなり部分が面倒を見てもらえる、そういう仕組みが実はこの地方財政というものの中にビルトインされているのではないか。  だから、景気変動があったら、政府がこれをやるぞ、景気対策を打ってくれ、皆さん方も地方単独事業をふやせというふうに言われると、景気刺激政策ということで全部それが一斉に動き始める。それがさっぱり景気がよくならないから地方債の赤字がどんどん膨らんでいった。  林審議官、この点はそのようにとらえたらまずいでしょうか。どうお考えでしょうか。
  84. 林省吾

    説明員(林省吾君) 地方団体は、財政自主権に基づきまして地域の諸課題に適切に対応していくという使命があるわけでございまして、もちろん地域の実態に応じまして、地方団体にゆだねられました、また地方団体が執行していかなければならない仕事を実施するのが本来の責務であろうと思っております。その中の一つには地域経済の振興あるいは活性化という大きな課題もあるのではないかと思っておりまして、景気対策がすべて国の責任ということではないのではないかと思っております。  もちろん、主として景気対策には国が主体となって対応していただきたいというのが地方団体の考え方ではないかと思いますが、地域経済の活性化というような観点考えますと、地方団体も無関心であっていいわけではありませんので、とりあえず現下の景気状況考えますと景気の回復に最大限協力できる範囲で国に協力するということも必要なのではないだろうかと思っております。  その際の財源になりますが、現在、地方団体が課税することのできる税源というのは大変限られております。いろいろな諸課題に対応いたします際には、その限られた税源の状況あるいはまた税源が地域によって偏在しているというようなことも考えますと、全国いろいろな地域で国家的あるいは地域的な諸課題に対応していくために、地方財政が支障を生ずることがないように運営できるような財源を保障するという制度も大変重要な課題ではないだろうかと思っております。  そういう中で、国の状況考えながら、特にこれからは地方団体に課されました役割は大変大きいものになると思いますので、そういう点を考えて、地方団体としても課税自主権を尊重しながら財源の確保に努めて諸課題に対応していかなければならない、こういうふうに考えるべきだろうと思っております。
  85. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 政府委員からお答えするときっとそういう答えしか出てこないんだろうと思うんです。  実際に、地方自治体が自主的に課税権あるいは起債の問題も含めてどのように制限されているのかということは地方自治体に従事されている人だったらみんな知っているわけであります。  その意味で、私はこれは宮澤大蔵大臣にぜひ御見解を求めたいんですが、今の地方自治体の状態というのは、林審議官が今おっしゃったような大変な実態にあると同時に、みずからこの状態を改革していこう、要するに自分のところの自主税源というものを持って、自分のところの責任で、そして何か問題が起きればそれは自分で解決するんだ、そういう仕組みに今の地方自治体の財政、税財源というのはなっておらぬというふうに私は思っているんです、きょうは時間がありませんからそれは地方行政委員会でやった方がいいのかもしれませんが。  かつて税収入の比率は国二、地方一、歳出は国一、地方二だった、その間を埋めるのが補助金でありまた交付税だと言われております。そういうやり方で、ほとんど努力をしても努力をしなくても余り変わらないような形で面倒を見れる仕組み、やはりここを変えないことには本当の意味地方自治体は自主的な地方自治というものを充実できないんじゃないのか。  その意味で、先ほど私は主権国家がどうやら自分のところの経済を、財源の再配分機能を含めてだんだん弱まってきたという話をしました。つまり、国税で今まで面倒を見ていたところはだんだんとこれからは地方自治体がやらざるを得なくなってくる。だとすれば、今まで国税の中で大きな役割を占めていた所得税の一〇%部分地方に税源移譲する、そのことによって私たちが計算すると税収の比率は大体一対一になってきます。もちろん、これには交付税をどうするかとかいろいろややこしい問題が出てまいります。  それぐらいの税源配分を今日行う時期に、先ほど言ったいわゆる主権国家というものの存在が非常に弱まってきている、自分がやらなきゃいけない課題地方自治体がやらなきゃいけないというふうになってきたとすれば、そこに税源移譲するという考え方はどのようにお考えになるのか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだっても、昨年も自治大臣といろいろ地方財政お話を何度も何度もいたしまして思うことがございますけれども、ただこれは私がよくわからぬで思っている危険もありますので、あらかじめお断りしておきます。  おっしゃいますようにこの地方と中央との関係は、本当に行財政をもう一遍基本的に新しく再配分する、それは二十一世紀になるかもしれませんが、そういうことでないといけないし、大蔵省もそういう気持ちでないとこのことは申し上げられないんですけれども、そういうことを覚悟して考えますと、やはり地方の行政も財政も文字どおり地方の自主的な運営というものがもう少し認められてもいいのではないかと思います。  ただ、仮に給与のことで申しますと、かつてラスパイレスなんということが御承知のようにございまして、非常に地方の給与が高かったというような時代がございます。そういうことは恐らく自治大臣としても看過できないというお立場でございましょう。それは私どももそうですが、そういうこともきっとあったんだろうと思います。  文字どおり、中央と地方の行財政を本当に再配分するということを覚悟した上でならば、やはり地方には地方のもう少し自主的な運営というものがあるのではないかという感じは持っております。  これは間違っておるかもしれません、私が中から見ておりませんから。
  87. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 特に来年、介護保険の問題がやってまいります。あるいは医療保険、国民健康保険といって市町村を保険者にしてやっていく仕組みがございます。あるいはエンゼルプランも含めてそうです。そういう意味で、これからの地域社会あるいは我々の国民生活の大きな部分というのは、確かに国が年金だとかさまざまな部分でやらなきゃいけない分野もあるけれども、徐々にそういう現物給付といいますかサービス給付といいますか、そういったところを地方自治体でしっかりセーフティーネットを組まなければいけない分野がふえてきている。そうしたら、それにふさわしい税源を私どもは移譲すべきだというふうに考えています。私どもは現在そのことを検討しておりますので、この点はまた分権法案の対案として出していきたいと思っております。  時間も大分迫ってまいりましたので、今回の改正に即しながら少しお話をさせていただきたいと思います。  これは予算委員会で私どもの今井澄委員からちょっとお話ししかけた問題でございます。厚生省にお聞きしますが、ジニ係数は一体どのようになっておりますでしょうか。時間ありませんので端的に答えてください。
  88. 真野章

    政府委員(真野章君) 厚生省の所得再配分調査におきまして、所得のばらつきを見ますジニ係数というものを公表いたしております。  二種類公表いたしておりまして、まずいわゆる調整をしておりません当初所得のジニ係数というものでございますが、数字を申し上げさせていただきますと、昭和五十六年、一九八一年が〇・三四九一、五十九年、八四年が〇・三九七五、六十二年、八七年が〇・四〇四九、平成二年、一九九〇年が〇・四三三四、平成五年、一九九三年が〇・四三九四となっております。また、税、社会保険料、それから社会保障給付によります再分配後の再分配所得のジニ係数は、同じく昭和五十六年、一九八一年が〇・三一四三、三年ごとに〇・三四二六、〇・三三八二、〇・三六四三、〇・三六四五ということになっております。  ただ、この間、高齢化が進みまして高齢者の世帯がふえている、またはこれに伴います単独世帯がふえているというような世帯の変化というものを十分留意する必要があるというふうに考えております。
  89. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今の数字は、先日も今井澄委員から、そして最近の岩波新書の橘木さんの「日本経済格差」の中にそのとおり大体出ておりまして、再確認をしたわけなんですが、私はこの数字を聞いて最初一瞬びっくりしたんです。なぜこんなにジニ係数が上昇したのか、しかも短期間の間に。しかも、それはアメリカやイギリス、日本というのが一つのグループをなしていますね。そして、福祉国家のグループであるスウェーデンとかドイツだとか北欧諸国は非常にジニ係数が低いですね。  そうすると、私どもが今回の税制改正をやる場合に、最高税率六五%を五〇%に下げたんですが、どうも日本かなり平等な社会だ、むしろ悪平等と言っていい。それは私が言っているんではなくて、先日総理大臣に手渡されましたが、アサヒビールの社長が出された経済戦略会議の皆さん方の共通認識にも、日本は平等な社会であってそれがやる気を失わせているぐらいなんだ、もっと格差があって当然なんだと、こういう土台になっているわけです。そして、今回の六五%から五〇%に下がったことを非常に評価されているわけですね、一面。しかし、どうもこの数字を見るとそうなっておらぬのではないかなと思うんです。  ただ、もちろん資産格差の問題を調べてみると、なかなかまだまだ日本はアメリカのようになっていないとか、あるいは大会社の社長が普通のブルーカラーの労働者の百倍も二百倍も取っているとか、そういう大きな格差からすれば日本はそんなことないじゃないかと、そういう理屈になっているわけですが、大蔵省はこの資産格差が拡大したことをどのようにとらえておられるのか。これは単に所得格差が拡大したということだけの要因なのか、それとももっと別の要因があってこうなったと考えているのか、そのあたりどのように考えておられますか。
  90. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) このジニ係数はそれぞれの国でそれぞれのとり方をしておりますので、比較がなかなか難しいと思っております。  ただ、我が国の厚生省の所得再分配調査を見ていると係数が上がってきているわけでございます。その主な原因は、給与の最初の段階での散らばりぐあいというのはあるかもしれませんけれども、むしろ高齢化が進展している、あるいは単独世帯、女子労働者の増加といった社会構造の変化の要因も相当大きいんじゃないかと思っております。ただ、こういう所得再分配の統計はなかなか読み方が難しいというのも事実でございまして、そのように考えてございます。  なお、私どもは今回最高税率五〇%の御提案を申し上げておりますが、今の我が国所得分配の状況から見ますと、それを非常に気にして引き下げないでいいのかというと、そうではないような気がしているわけでございます。
  91. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そこで、最高税率引き下げる問題に移っていきたいと思うんですが、最高税率を下げる、その際、先ほどレーガンの一九八六年の改革では国際的な潮流としてはどういう潮流ですかと尋ねたときに、それはレベニュー・ニュートラル、つまり課税ベースを広げて税率を下げるということだと。今回その方法をとっていないですね。それは恐らく景気刺激を最大限考えたから、課税ベースを広げると増税要因にもなる可能性があるから、そういう増税要因になるような要素は一切考えなかったと、こういう理解でよろしいですか。
  92. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) この最高税率の問題は、政府の税制調査会でも、まさに事業意欲の問題あるいは租税回避を招きかねないだろう、あるいは会社人間をつくるのかというようなことでかねての宿題になっております。したがいまして、私どもは今回五〇%に引き下げを行うこととしておりますが、これはいわばそれを実現したものだと思っております。  ただ、課税ベース適正化が伴っていないじゃないかということを先生から今御指摘いただいたわけでございますが、実は今度の五〇%といいますのは構造改革的な意味合いと同時に景気対策的な意味合いがございます。それで、今回の法案で御提案申し上げておりますように、いわば所得税といいますのは課税ベースを含めて総点検をしなければならないということで、我々は今勉強に着手しているところでございます。確かに時間もゆとりもなかったということもございます。それから、当面の経済に対する影響を考えた場合、課税ベースという問題も今回まだ取り入れられなかった要素でもございます。  いずれにいたしましても、課税ベースの問題は今後の抜本的な見直しへ向けてこれからも検討を進めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  93. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ここでどうしても納得できないことがあるんですね、課税ベース問題で。というのは、三百六十一万円という夫婦子供二人の四人世帯、今回またこれが上がったんですね。課税ベースをまた侵食しちゃったんでしょう、結論からいうと。前の総理大臣はたしか三百六十一万円は高過ぎる高過ぎるとおっしゃっていたけれども、しかしこれを下げる勇気はないと。今回の小渕総理のもとでは、これをぐっとまた上げる勇気はあったんですね。そして、そのことはきっと将来の所得税の大改正をする場合には大変な障害になるんじゃないですか。  そういうところが何でもありになっていて、七百九十二万円以下の層については、いや、これは今まで特別減税だったんだから、去年は特別だったんですと、四兆円。だから四百九十一万円まで上がったんです、これは三百六十一万円までおろす以外ありませんと、ここだけは何となく原則的なことをおっしゃって、そしてそれ以外のところは全部、いや、原則はそうだけれども景気対策にこれは及ばないからと。一貫性がないんじゃないですか。しかも、消費性向というのは中堅所得層以下の方が高いはずですね。高額所得者よりもたしか低所得になる方が消費性向は高いんじゃありませんか。  そういうことから考えれば、景気対策なんだといえば、では七百九十二万円以下の層に対しても何らかの手当てをしようじゃないかと、このぐらいのことがあったって、これだけ何でもありの世界をつくっちゃったら、ある意味ではそこも何でもありだって別に問題はないんじゃないかなと思うんですが、なぜそこだけ、これは特別減税ですからということだけこだわられたのかどうしても理解できない。この点について説明してください。
  94. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 今回の個人所得課税改正におきまして、扶養親族に係る扶養控除、それから特定扶養控除引き上げというのをお願いしているわけでございます。十六歳未満の扶養親族と十六歳から二十三歳までのところでございます。この結果、委員今御指摘のとおり、夫婦子二人、そのうちの一人は十六歳から二十三歳という家庭をとっておりますので、三百六十一万六千円から三百八十二万一千円と引き上げられるのは事実でございます。  しかし、今回のこの措置は、少子高齢化が進んでいるというような構造変化のもとで、いわば子育てや教育などの支出のかさむ所得者層への配慮を相対的に高めるべきではないかというような御議論もなされまして行ったわけでございます。また、ここの扶養控除、特定扶養控除のところを配慮することによりまして、いわば昨年との比較で、これは比較すべきではないと思いますけれども、少しでも負担の緩和にもなるというようなことでございます。  課税最低限が引き上がることになるのは事実でございますが、今言いましたように、子育てや教育などの支出のかさむ階層には相対的な配慮をすべきではないかということでございまして、何とぞ御理解いただきたいというふうに思う次第でございます。
  95. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 どうしてもそこのところが今回の改革の中では頭の中で一貫性が出てこないような気がするんですね。ですから、どうしても理解できない。私たちが提案している扶養控除というものは、一回限りでなくて、将来的に税制の中にさまざまなそういう社会保障の再配分機能を持ち込むよりも、むしろそれは財政支出でもって対応する方が正しいのではないかというふうに考えております。この点はまた税制のフラット化の問題と絡んで議論をしていきたいと思っています。  さて、一つどうしても聞いておきたいことがあるんです。これは大蔵大臣にぜひお聞きしたいんですが、相続税あるいは贈与税の問題なんです。  これだけ最高税率を下げますね。それから、直間比率を変えていく。当然、累進性が緩和されていきます。先ほどのジニ係数でも、徐々にフローとしての所得に対する格差も大きくなってくる、資産格差もだんだんと高まってくるんですね。  そうした場合、日本は平等な社会というんですが、贈与税あるいは相続税と言われているものはこれからは高くしていかなければいけないのか、それとも高過ぎるから低くしろという声があるけれども、これはどちらにカーブを切ったらいいのか。  と申しますのは、一代限り収入はどんどん上げて結構です、少々税率も下げましょう、そのかわり現役世代のときにどんどん使ってくださいと。確かに自分の息子や孫はかわいいけれども、いわゆるダイナスティーモデル、王朝モデルがずっと続いていったのでは、これは機会の平等という民主主義にとって重要な原則からは逸脱するんじゃないか。そういう観点からすれば、相続税、贈与税の世界というのは強めるべきではないかというふうに私自身は考えておるんですが、この点は大蔵大臣はどのようにお考えなのか、お聞きしておきたいと思います。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その前に、どうしてもわからぬとおっしゃったさっきの話は、あのときの経緯で申しますと、もとより教育等の減税が大事だということがあったわけですけれども、前年の一遍限りの定額で、八百万人ぐらいの納税者が一遍納税者でなくなってまた入ってこられる、前年の平成十年分の負担と十一年分の負担が多いところでは十万円近く多くなるという問題がありまして、それはそれで理屈のあることで御説明を申し上げたものの、余り違っていることに私どももちょっとひるんでおりまして、何か少しそれを緩和することはできないかなという気持ちがありましたことを申し上げておきます。  後のことは、やはり課税というものは所得にも課税するし資産にも課税するし、いろいろバランスが要るのだと思いますが、今相続税で一番気になっておりますのは、土地の値段が少しは下がりつつございますけれども、殊に中小企業あるいは家計における事業の継続、受け渡しというようなときに、相続税が重くてそれができなくなってしまうということは、社会そのものに税制中立以上の影響を及ぼすということがございますものですから、それがやっぱり一番気になっております。  富の再分配ということはわかるんだが、いわゆる中小企業が個人によって承継されるということ、あるいは町と言ってもいいかもしれませんが、それが相続税のゆえに壊れていくといったようなこと、そういうことは税としてはやっぱり心しなければならないことではないかというような点が相続税を考える上で一番難しい問題じゃないかと思っております。
  97. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 確かに難しいなと思います。思うんですが、これからの日本の社会をどういう社会にしたらいいのかなということと非常に密接に結びついているんじゃないかなという気がするんです。  よく政治家同士で話したときに、おまえさんは結果の平等主義者だ、いやいや、機会の平等主義者だとよく議論するのでありますが、機会の平等が重要だという方に、では相続税はどうするんだと聞くと、途端に、いや、それは相続税は軽い方がいいと、こういう話になって、一貫性がないんじゃないかとよく話をするのであります。しかし、これは日本の社会の一つの大きな特徴点といいますか、そういうものも含んでいるんだろうというふうに思います。これは引き続きまた大いに議論をしていかなきゃいけない点であります。  最後に、私も午前中の金田委員質問と同じように徴税体制の問題、国税庁の体制の問題について申し上げておきたいと思います。  最近のいわゆる国際化については先ほどお話し申し上げましたし、あるいは電子商取引といったような新しい大きな商取引の変化だとか、そういうものも非常に進んできているわけですが、そういったことに対応できるような徴税システム、そのことに現場では非常に苦労されているやに私も聞いているわけであります。  実は最近、岩波新書で「東京国税局査察部」という本が出ました。これは例の金丸さんのあの金の延べ棒のところをどういうふうにしてこじあけていったのかという、その生々しい記録でございます。私も読んで、本当に臨場感あふれる物語でした。いわゆる査察マン、マル査ですけれども、その方が結局肝臓がんで早く亡くなられる。そういう日夜をたがわず現場の第一線で苦労している人は、ああいう業務に入ったら少々体が悪くても無理しながら仕事をしているという実態を見て、つくづく国家公務員として本当に表彰ものだなというふうに思いながらこうべを垂れたわけであります。  その意味で、今第一線の国税職員の皆さん方はいろいろ現場で大変な苦労をされているんだろうと思いますが、そういった労働環境、あるいは国際化、機械化、ハイテク化が進んでいる今日の大変厳しい環境の中で頑張れるような、そんな労働条件をぜひとも確保していただきたいものだなということをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  98. 益田洋介

    ○益田洋介君 日銀総裁、御苦労さまでございます。  先週の金曜日、十二日ですが、日銀は政策委員会及び金融政策決定会合を開かれて、当面は金融政策を変更しないで、短期金融市場の無担保コール翌日物金利を〇%に誘導する方針を維持するんだ、そのようにお決めになられました。  一方で、市場は、ゼロ近辺まで低下した翌日物金利に加えて、一週間から三カ月物などの短期金利を一段と低目に誘導する。さらには、願わくば準備預金の増加など、こうしたことをコアにした追加の緩和策に対する期待感もある。  しかし一方では、今回手控えたとはいえ、次は二十五日に会合があるというふうに聞いていますが、株価の下落とか長短金利の反転の上昇、さらには円高という事態を回避するために、追加緩和の最後のカード、次のカードを切らざるを得ないんではないかという声もあります。  この点、総裁、いかがお考えでしょうか。
  99. 速水優

    参考人速水優君) 益田委員には、金曜日にお招きをいただいていたんですけれども、ちょっと決定会合の議長を務めなきゃなりませんので、一日かかって議論をいたしました。  私どもの現状に対する判断というのは、経済自体は、公共投資の増加あるいは在庫調整の進捗などで、ひところに比べれば全体として悪化に歯どめがかかっていることは間違いのないところだと思います。  金融面でも、一段の金融緩和措置や銀行に対する公的資本投入が決まったといったようなことを反映しまして、長短金利の低下、ジャパン・プレミアムがほとんどなくなった、そして株価が上昇してきたと、これらの各種の指標の改善が見られることはごらんのとおりでございます。  ただ、企業収益、それから雇用、所得、これらの環境が依然として厳しくて、民間需要は弱い状況といいますか、民間の企業、家計のコンフィデンスがなかなか回復してこない。景気の先行きについては、こういうものが上向いてこないと、明るくなってこないとなかなかよくなっていかないという意味で不確実性が残っているわけでございます。  先週金曜日の政策決定会合におきましては、おおむね今申し上げたような認識が委員の間で共有されまして、現在の思い切った金融緩和スタンスをそのまま続けていくことが適当であるという判断に至ったわけでございます。  なお、議論の詳細につきましては、約一カ月後、四月十四日に公表される議事要旨で明らかにいたす予定でございます。  次の何かを考えたのかといったような御質問がございましたので、それにつきましても少し触れさせていただきますが、今回は、一月前の二月十二日に決定いたしました私どもの金融市場調節方針、市場に混乱を生じさせないよう十分配慮しながら資金を潤沢に供給することによってオーバーナイト物コールレートをできるだけ低目に、すなわちできるだけゼロに近い水準で推移するように促していくという、この決定をそのまま引き継いだわけでございます。  私どもではこうした調節方針に従いまして日々の金融の調節を実施しておるわけでございます。その結果、オーバーナイトレートは先週末には〇・〇三%と極めて低い水準にまで低下しております。  金融政策運営の手法につきましては、私どもは常日ごろから基礎的な研究をして討議を重ねておる次第でございます。ただ、先週末の金融政策決定会合では、あくまでも現状を維持して、従来同様のオーバーナイトレートをターゲットとする手法を用いてこれをできる限り低下させていく、それを長引かせていくと。その際、市場取引の縮小に伴って資金決済等の面で支障が生じるといったことのないように、市場の動向を十分慎重に見きわめるということが確認されました。  今後とも、金融政策の運営につきましては、心を広く持って政策委員の間で十分に討議を尽くして政策に誤りなきを期したいと思っておりますと同時に、こうして方針を決めましたことを、私どもの執行部隊はセントラルバンカーとして長年鍛えた経験を持っておるわけでございまして、彼らが一生懸命に日々の市場の動きを見ながら市場の調節を行っておるわけで、このようにして今後も全力を挙げてこの難局を乗り越えていきたいというふうに思っております。
  100. 益田洋介

    ○益田洋介君 よくわかりました。  具体的な新たな金融の調節手法の採用の問題でございますけれども一つは、翌日物金利の金利目標の延長線上にありますいわゆる期間物金利目標というのは我々素人にとってもわかりやすいわけでございますが、さらにもう一つある議論は、従来日銀は政策手法を金利だけに置いてきた、一方では、エコノミストの間では、これにさらに加えて量を指標にしたらいかがかと。金利目標に加える形で豚積み目標を採用することが現実的なのではないかと。  しかし、かねてから日銀はマネーサプライ、通貨供給量やベースマネー、現金と準備預金の総計は日銀が制御できるものではないという立場をおとりになってこられて、地に足のついた金融調節手法とすることには無理があるんだと、こういうふうな議論をされてきております。この点は私はよくわからないんですが、総裁、どういうふうにお考えですか。
  101. 速水優

    参考人速水優君) 金利がいいのか量がいいのか、この点はとにかく市場関係者あるいは学者や評論家などから、日本銀行は量的緩和を行おうとしているのではないか、行ってはどうかといったような次の手段についていろいろな意見が出ておることは私どもは十分承知いたしております。  私ども考え方としては、金利と量というのはコインの表と裏の関係にあるものでありまして、私どもとしても今回の一段の金利の引き下げが金融機関行動や資金需要の変化を呼び起こしてマネーサプライなど量的な金融の増大につながっていくことを期待しておるわけでございます。  ただし、現在の金融調節方針は、あくまでも従来同様、オーバーナイトレートをターゲットとするものでありまして、そうした手法を用いてこれをできる限り低下させていこうとするものであります。現実に二月十二日に決めたことでオーバーナイト物の金利が下がりまして、〇・〇三とか〇・〇四とかいう運用ぎりぎりのところまで来ましてから二週間前後、二週間ぐらいたっておるわけでございまして、その間にどういうことが起こりつつあるかということを私どもは注意深く見ておるのが現状でございます。  現在の金融調節方針はあくまでも従来同様オーバーナイトレートをターゲットとするものでありまして、そうした手法を用いてこれをできる限り低下させていこうというふうに考えております。先週末の金融政策決定会合におきましても、討議の結果、こうした方針が確認されたわけでございまして、私どもとしても、金融政策運営の手法については今後とも、先ほど申し上げましたようにどれかにとらわれるということでなくて、広い気持ちを持って討議を重ねていきたいというふうに思っております。
  102. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、名目金利と実質金利の問題で日銀総裁にお伺いいたします。  今のようなデフレ状況にありますと、たとえ金利がゼロで企業が借り入れをしたとしても、例えば製造業の場合、製品の価格が下がるわけでございますので、その分だけ金利を払ったのと同じことになる。つまり、実質金利という見方をすると金利はやはりプラスなんです。ですから、もう名目金利だけいじるのは限界に来ている、金利だけを操って経済は動かせない、そういう局面まで今来てしまっているわけでございます。これで不況が続いて物価の下落がさらに継続すると実質金利は今後上がる一方になってくる、こういう状況が今懸念されておるわけですが、この点、総裁、いかがお考えですか。
  103. 速水優

    参考人速水優君) 金融を緩めていくやり方にはいろいろあると思いますが、今私どもは、先ほど申し上げましたように、翌日物の無担保コールレートを基準にしてできるだけの資金の供給を行っていくということで、かなり効果が上がってきているというふうに思います。  おっしゃるように物価がどうなっていくか、これは私どもとしては最も関心の深いところでございまして、実質金利というお言葉を使われましたけれども、実質金利が今どうなっているかというのは実際問題としてはなかなか難しいわけでございます。私どもとして最も心配しておりますことは、むしろ生産がふえず、景気がよくならず、そのままで金だけが出ていくという、流動性のわなとかいった言葉がよく使われますけれども、こういうことにならないように、一方では政府その他から、これから大事な構造改革といいますか、民間の企業、それから民間の家計が積極的に前を向いて動き出せるような空気をつくっていただくことが最も大切だと思っております。  金利につきましては、私どもが最も心配しておりますのは、やはりインフレ不況といいますかスタグフレーションといいますか、金が出て物価が上がっていくけれども物ができていかないという事態が起こるとすれば、これは庶民にとって最も大きな痛手といいますか経済の破綻をもたらすものだということを心配しております。  そういう意味でも、金を潤沢に出すと同時に、将来のインフレの種をつくらないように十分注意をしながら政策を考えていきたいというふうに思っております。
  104. 益田洋介

    ○益田洋介君 同じく先週の金曜日、十二日に金融再生委員会は大手の銀行十五行に対して総額七兆四千五百億円余の公的資金を投入することを決定し、今月末に支払いがなされる、投入がなされるということになっているわけでございますが、この総額七兆四千五百億のうちの大半の約五兆円程度のものは政府は日銀からの借り入れにしたいという意向で今調整を進めているということですが、これは間違いございませんか。
  105. 速水優

    参考人速水優君) 公的資金の注入が決まりまして今月の終わりに行われることは、私どもは前からそのことの重要さを申してまいりました立場からも非常に喜ばしいことだというふうに思います。  ただ、この金融再生法ができましたときから、つなぎ資金を日本銀行に依存するということが法律に書かれておりましたのを見まして、金融再生法が施行になった直後に最も私が心配いたしましたのは、預金保険機構への我々の貸付金がふえていかないか。今、日債銀、日長銀だけでも五兆近い貸し出しをしておるわけでございまして、そこへこの七兆五千億の相当部分が日銀借り入れということになったとすると、政府保証といいながらこれが長く続くようなことになっては大変だということを心配いたしまして、そこにおられます宮澤大蔵大臣や柳沢金融再生担当大臣あるいは預金保険機構の理事長に極力、日銀の立てかえといいますか、つなぎ融資を少なくしてほしいと。  そのためには、預金保険機構は収入の手段を持っておるわけでございまして、保険料にしても、あるいは銀行から買い取ったりした資産の売却代金にしても、あるいは民間から一般公募という形で資金の調達を今までも行っておりますし、これからもできるわけでございます。金利の安いときですから、一般の金融機関も少し有利なものであれば政府機関でございますから喜んで出してくるわけでございます。それにもう一つ、政府保証債というのを発行できることがあの法律で認められておるわけでございまして、一刻も早く政府保証債などを出して、私どもの立てかえといいますか、つなぎの融資を最初なるたけ少なくすると同時に、一刻も早く返していただきたいんだということをお願いいたした次第でございます。  大体、金額と期間が決まってまいりまして、六カ月単位ということで国債担保と同じ、今だと〇・五%という公定歩合でお貸しすることにいたしましたが、最初の七兆五千億の半分以下で私どもが立てかえするといいますか、つなぎ融資をすることになっております。これをなるたけ早く返していただくように柳沢委員長にもいろいろお願いをし、話し合って決めた次第でございます。その点は私どもも十分気を使って心配しておりますことだけに、今後ともよく見てまいるつもりでございますので、どうぞひとつその点につきましても御支援を賜りたいというふうに思います。
  106. 益田洋介

    ○益田洋介君 問題は総裁が御指摘になったとおりでありまして、預金保険機構への日銀からの融資に関しましては政府保証が全額ついている。しかし、この政府保証というのは余り当てにならないんです、最近は。  九七年の春に日本債券信用銀行に日銀は八百億の融資をした、出資したわけですが、これはもう最近になって全額損失になるんだ、不良債権なんだ、返ってこないということがわかったわけです。またここで国民負担をかける。今回の預金保険機構の場合は資本注入枠として二十五兆円用意されている。用意しなきゃいけないわけですが、今銀行に対して七兆四千五百億、さらに地銀や第二地銀に対してはまだ審査をしていないと再生委員会は言っていましたし、また十五行についてもこれだけでおさまるのかどうか。私自身は信用していない、さらにふえるだろうというふうな気がしております。  それで、注入額がふえるたびにまた日銀が同じような形で貸し出しをしていくということになれば、これは国債の引き受けや国債の買いオペの増額をするのと同じように、日銀の財務体質、財務内容の健全性が失われていくんじゃないか、こういう心配をする、懸念をする声があります。この点はいかがですか。
  107. 速水優

    参考人速水優君) 御指摘のとおり、私どもは最後の貸し手、レンダー・オブ・ラスト・リゾートという役割を持っておることは確かでございますが、あの八百億円を出したときには今のようにそういう事態を考えた金融再生法あるいは早期健全化法といったようなものは全くなくて、ああいう破綻が起こって、これをほうっておけば内外に直ちに金融システムの混乱を呼ぶことは目に見えておったわけでございまして、そういう環境の中でああいう金集めというものが行われたと。それに対して大蔵省からも強い要請があり、そして日本銀行がまず出して、それにつれてほかの銀行も出すといったような形であれが決まったということがあったわけで、今と全く情勢が違ったということをまず一つ指摘させていただきたいと思います。  それから、日本銀行にとりましては、先ほど申し上げましたように、いかにLLR、レンダー・オブ・ラスト・リゾート、最後の貸し手として金融システム混乱予防のために金を出すという場合でも、かなり厳しい原則を設けて政策委員会で条件を決定するようにいたしております。その点は最も私どもが懸念しておるところでございますだけに、御指摘の点につきましては今後さらに一層よく注意してまいりたいというふうに思っております。  また同時に、この八百億、これは間接的には税金になるのかもしれませんけれども日本銀行としても、こういう役割を持たされている以上、どういうことが起こっても資産が悪化したりバランスシートが悪化したりしないように内部でのいろいろなルールをつくっております。その一つとして、銀行券発行残高は今五十兆ぐらいございますけれども、それの一割に相当する自己資本を積んでおります。それはそういった事態に備えてのものでありまして、それがあるから税金は使わなくてもいいのだということではございませんけれども、その辺のところは十分資産を悪化しないように準備が整えられておることだけは申し上げていいかというふうに思っております。
  108. 益田洋介

    ○益田洋介君 間接的な税金という言葉を総裁はお使いになったけれども、公的資金というのはこれは英語で言えばタックスぺイヤーズマネー、結局は税金なんですよ。八百億返してください、国民の皆さんに。この議論は予算委員会でしました。資料請求した。その資料が出てきていない。出てきたと思ったら中身のない資料だから、コメントをつけて予算委員会にお返ししましたので、真摯に受けとめて回答してください。  それから、先週の金曜日、十二日ですが、総裁、当委員会で何が行われていたか御存じですか。
  109. 速水優

    参考人速水優君) 三月十二日は私ちょっと記憶しておりませんが、恐らく日本銀行の支店長舎宅の切りかえその他に対する予定を知らせろということを委員の方から言われたというのは出席した者から聞いております。  それにつきましては、既に二月二十五日に参議院予算委員会理事会あてに氷川分館と大阪支店長舎宅の保有について私どもの方針を書面でお伝えしておると思います。そのほか、保有資産の状況につきましても必要な資料をお出ししておるというふうに理解しております。
  110. 益田洋介

    ○益田洋介君 十二日の金曜日はそんな話をしていない。第一、日銀の人はだれも来ていなかった。  十二日、当委員会においては平成十一年度の本予算案についての委嘱審査が行われた。非常に重要な会合だった。日銀からはだれも来ていない。  私は、総裁以外の人だったら来てもらっても責任のある答弁ができないから、総裁に来ていただきたいと。先ほどお招きにあずかったと言ったけれども、お招きしたわけじゃないんです。招請したんです。  それでは、総裁、三月二日火曜日、本院で何が行われていたか覚えていらっしゃいますか。
  111. 速水優

    参考人速水優君) 手元にメモがございませんので、間違ったことを申し上げるといけないと思いますので、失礼させていただきます。
  112. 益田洋介

    ○益田洋介君 三月二日火曜日は第一委員会室で予算委員会の総括質疑が行われていた。これは全大臣そろって、やめた中村法務大臣もいらっしゃいましたよ。いないのは日銀総裁お一人でしたよ。  要するに、三月二日というのは政策決定会合がやっぱり開かれていた、十二日の前の政策決定会合。こういう大事な国権の最高機関である国会で国民の負託を受けた国会議員がまじめに予算の審議をしようというのに、何で出席できないんですか。余り本院を甘く見てもらっちゃ困るんですよ、総裁。これは国会のべっ視になりますよ。よろしいですか。
  113. 速水優

    参考人速水優君) 政策委員会政策決定会合は月二回ということで日にちが決まっておりまして、その日は私は議長を務めなきゃなりませんし、日にちを変えるわけにいかないということがございますので、その日はなるたけ避けて、私どもに課されている政策の決定ということに専念したいというふうに思っております。  今後、お呼びいただいたときにはなるたけ出れるようにいたしたいと努めますけれども、そこだけは御勘弁いただきたいというふうに思っております。
  114. 益田洋介

    ○益田洋介君 事前に当委員会会議の日程を教えてくださいよ。十一日のお昼も当委員会の理事会を開いていた。その場でだれも知らないんだから。  大体、国会の開会中に朝から晩まで政策決定会合をして、国会に出席できないというのはおかしいじゃないですか。違いますか。そういう大事な政策決定会合を国会の開会中にやるんだったらば、週末にやればいいじゃないですか、土曜とか日曜に。欧米の大企業の幹部たちは重要な会議というのは週末にやりますよ。そんな平日、国会の開会中に朝から晩まで会議なんかしていて、国会に出てこれないんじゃしようがないですよ、総裁。週末ということをお考えになりますか。
  115. 速水優

    参考人速水優君) 政策決定会合につきましては半年間の日程が決まっておりまして、御出席いただく方々も皆それに合わせて出席してくださることになっております。  それから、今後お呼びがありましたときにはなるたけ出てくるようにいたしますが、どうしても私が出なければ務まらない仕事が金融の責任者としてあるわけでございますので、そういう場合には副総裁その他、最もよくわかっている責任者に代理で出ていただくこともお許しいただきたいというふうに思います。
  116. 益田洋介

    ○益田洋介君 日にちが決まっているんだったらその分はしようがないとして、それから先の予定については、特に国会開会中は土日にしていただけますか。そういうスケジュールを組んでいただけますか。  それから、よくわかっている代理の者なんて、代理なんか必要ないんですよ。そうでしょう。大蔵省だって大蔵大臣出席いただいているじゃないですか。何で日銀総裁は来られないで代理を出すんですか。  この二つ、検討願いたいと思います。
  117. 速水優

    参考人速水優君) まず、政策決定会合はどうにもならないと思います。これは半年間日程が決まっております。  あとの国会の緊急のお呼びつけにつきましては、なるたけ私が出られるようにやりくりしてまいりたいというふうに思っております。
  118. 益田洋介

    ○益田洋介君 週末に政策決定会議を開くようにスケジュールを組むことの御検討をお願いして、総裁に対する質問を終わります。どうもありがとうございました。  次に、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  これは景気対策に関してなんですが、景気がこれだけ低迷してきて、多少ファンダメンタルズが上向いたというような兆しが見えなくはないわけですけれども、やはり私は一番効き目があるのが減税である、さらなる減税を続けることではないかというふうに考えております。加えて、あらゆる産業に存在しています過剰設備の償却、それから廃棄に向けての支援を政府としてこれから政策的に実施するのが必要じゃないか、このように考えます。  この点で非常に興味があるのは、経済戦略会議の提言でございまして、最終報告書でこういうことを言っております。資本の生産性が落ち込んでいることが大問題だ、短期間のうちに過剰設備を処理することが重要であるとした上で、具体的な支援措置として、設備廃棄に伴う欠損金の繰越期間を現行の五年から十年以上に延長してはどうか、二番目、設備廃棄を伴うMアンドAに対して譲渡益課税の減免などの促進税制を導入したらどうか、三番、設備廃棄に伴う遊休地の流動化促進のために土地利用上の規制を緩和する、そうした政策をとるというふうなことを提言しておりますが、大蔵大臣、この点についてどのようにお考えでしょうか。
  119. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどの峰崎委員の御質問でございましたか、産業側の遊休設備あるいは老朽設備等についてお尋ねがあって、私は、それは確かに今の日本にとって一つの問題であって、速やかにそれを処理されることが望ましいということを申し上げましたし、またいわゆる産業再生会議というようなものを設けるという総理大臣のお考えも、一つはその問題について各業界間でいわば推進をしてもらいたいというお考え思います。  それについて税制等でどのような援助ができますか、具体的な問題をもう少し通産省あたりから聞かせてもらいませんとすぐに今お答えできませんけれども、政府全体としてそういう設備の廃棄あるいは破棄が望ましいと考えておりますことは御指摘のとおりでございます。
  120. 益田洋介

    ○益田洋介君 この三カ月間、金融再生委員会は公的資金の投入の検討を大手十五行について、その他の銀行も最初は入っていたのか知りませんけれども、続けてきました。そのときに経営の健全化計画を提出しなさいということで、各行ともそれぞれの計画を提出した。  私は、この計画の中で一番大事なことは、やはり今後金融機関は経営力を強化していく必要があるんではないか、これがベースになる。やはり欧米の金融機関みたいに機動的で思い切った判断ができる、ディサイシブなクイックなディシジョンをしていく経営者が望まれる。そういう経営が今の銀行には要望されている。そうしないと、資本金を注入されるだけでは銀行の体質は本当の意味で変わらない、そういうふうに私は思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  121. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 同感でございます。
  122. 益田洋介

    ○益田洋介君 三月八日、この日は公的資金を申請した十五行の頭取と再生委員会が面談をした日でございます。実質的にこの日に投入が決定されたわけでございますけれども、その後の記者会見であさひ銀行の伊藤頭取はこういうことをおっしゃった。当行は九八年三月に既に相談役制を廃止して新たな特別顧問制度を導入したと、こう胸を張って言ったらしいんですが、七十五歳以上の特別顧問は今後は名誉顧問についていただくと。こういう感覚なんですよ、大蔵大臣。頭取とか会長OBは最後まで処遇する、こういう基本理念は変えていないんです。こういう数多くのトップ経験者を抱えたまま大きな改革をやっているわけですよ。だから、意思決定のスピードなりプロセスなんというのはちっともよくならない。欧米の会社にかなわないですよ、こんなことをやっていたら。違いますか。  例えばこういう例がある。欧米の金融機関というのはかなり巨大化して、数も少ないわけですけれども、トップは退任後一切経営には口を出さない、業務に関係しない、それが大原則であるのが一つ。  最近の例では、アメリカのシティコープとトラベラーズグループが合併したけれども、その合併に関する話し合いというのは、リード会長、ワイル会長、両会長のトップ会談で円満に即断即決したという。こういう企業と伍していかなきゃいけないんです、これから日本の銀行は。頭でっかちのこの重たい今の経営陣、これを何とか指導して改善していかないと、国にぶら下がってお金がかかるばかりでちっとも経営体質はよくならない、そういう印象を受けますが、いかがですか。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は所管大臣ではございませんので公に所見を申し上げる立場にはございませんけれども、個人といたしまして、益田委員が持っておられるような感じは私も時々自分でも感じることがございます。
  124. 益田洋介

    ○益田洋介君 この十五行が提出しました健全化計画が実行されたとする、リストラが計画どおり進んだとしますと、十五行の総資産に対する営業経費の比率が〇・七%になり、欧米の有力といいますかBクラスと言われている銀行とほぼ横並びになる。しかし、利益率ではとても追いついていけない。これは貸し出しの利ざやの拡大が進まない限りとても追いつかない。  それでは、欧米並みの利益率を確保するためにどうしたらいいか。これは業務純益に経費を加えた業務の粗利益を現在の八兆円から十二兆円まで上げなきゃいけない。五割の増収をしなきゃ追いつかない。  何でこんなところまで日本の銀行が落ち込んだかというのは今議論してもしようがないんですけれども、要するに五割増収を実現するためには、企業の銀行への利払いの負担をGDP、国内総生産の一%近くふやさなきゃいけない。現実的じゃないですよ。資金の需要が伸びない中でこの目標を達成するというのは大変なことですよ。  増収が全く望めないというふうに仮定したらば、大手銀行は何をしたらいいか。営業経費を半減させる、こんなことをしたら現実的に市場では生き残れなくなっちゃいますね。  私はこの経営健全化計画というのは非常に現実的でないような印象を持ちます。ですから、先ほどの経営体質の強化と同時に、今後の不良債権や株式損を処理するためにも、会社の再編を含む抜本的な収益力の改善にもっと日本の銀行は努めていかなきゃいけないんじゃないかという印象を持ちますが、いかがでしょうか。
  125. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は自分の所管の事項でございませんので公の意見は申し上げられませんが、容易ならぬ再編に取りかかりつつあって、従来のようなやり方ではなかなか欧米に対抗できるような金融機関には容易になっていけない、非常な努力が要るだろうということは私も感じております。
  126. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは次に、行財政改革についてお伺いをしたいと思います。  結局、財政赤字が増大したというのは、私は一つの原因は行財政改革を先送りにしてきてしまったからだと思うんです。それともう一つは、やっぱり政策当局の事実関係の認識のずれ。それから、繰り返しこれは去年行われてきたことですけれども財政出動の初期動作の出し渋り、小出しにしておったことです。減税も小出しだった、恒久的じゃなかった。  そういったことが重なり合って財政赤字が累増してきたわけですけれども経済の実勢から遊離した長期金利の上昇と実体経済の悪化、そういった悪循環がこれからも繰り返されるのじゃないかという懸念がある、行財政改革をこのままにしておいたら。スモールガバメントと口では言っているけれども、何にも実行していないじゃないですか、現内閣では。いかがですか。
  127. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっとお言葉が十分聞き取れませんでしたけれども、私が見ておりますところ、ここのところでの行財政の行き違いは毎年歳入欠陥を生じたということが非常に大きかったのではないかと思います。  歳入欠陥が生じました一番の当面の理由は、政府の経済見通しというものが経済成長を過大視しておったと。現実に五四半期マイナスが続いている経済の現況について、的確にこれを予想しておりませんでしたから、したがって税収見積もりもそのベースで行われておって、現実にその成長が達成せられませんでしたときに歳入欠陥を生じてきた。現に平成十一年度の税収見積もりは昭和六十二年の税収とほぼ同じでございますから、十何年押し倒されたということになりますが、これはやはり成長が予定どおり起こらなかったということに一番関係しておると思います。
  128. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、国債の発行方式について御所見をお伺いしたいと思います。  日本の場合は財政当局の便宜性や五年物の金融債を主力商品としておりました長期信用銀行の既得権の保護など、発行者側の都合で十年債中心の国債発行方式をとり続けてきたわけでありまして、発行残高に占める十年物の比率は現在実に六二%になっております。これもグローバライゼーションという観点からは非常にいびつな、利回り曲線のゆがみとか長期金利の乱高下、価格変動リスクを警戒して機関投資家が買い控えをするようになってしまった。  ですから、私は、四月から導入される政府の短期証券、FBの市中公募導入を契機にして、やはりアメリカやイギリス、フランス、さらにはドイツのように、短中長、それから超長期の国債のバランスをよくミックスして見直す必要があるんじゃないかと思います。こういうことをすることによって投資家の多様にわたるニーズにこたえられる、適合できるようなマーケット本位の、市場本位の発行方式我が国改革していくべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  129. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御指摘の点はそのように考えております。国債発行者としては、やはり発行の方法、態様、時期等々、いろいろ工夫をしなければならないと考えておりまして、新年度におきましてさらにそれを具体化いたしたいと思っております。  同時に、ファイナンシャルビルのような短期証券につきましては、日本にそういう円の取引市場もつくりたいと考えておりますので、いわゆる源泉所得税を取らないといったようなことで取引が円滑に行われるようにいろいろ工夫をしてまいりたいと考えております。
  130. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、信用保証協会についてでございますけれども中小企業向けに政府が資金繰りの支援策の一環として特別保証制度を導入したわけでございますが、保証枠の二十兆円のうち実に二月末現在で十三兆三千億を使い切った。これは中小企業の方には非常に喜んでいただいております。  しかし一方で、昨年末の資金繰りをするために兵庫県のある製缶会社がこの特別保証制度を利用して五千万円調達した。そうしたら、従来の取引金融機関から以前借りていた資金の返済を要求されたと。結局は差し引きゼロで資金繰りに行き詰まって、ことしの一月にこの会社は和議申請に追い込まれてしまった。  こういうことで、保証協会が保証した資金が焦げついたわけでございます。これは債務を肩がわりして代位弁済をすることになるわけですが、さらに保証協会というのは中小企業信用保険公庫に再保険をしている、全額ではないようですが。そうすると、こうした保証した資金が焦げつくと、結果的には最終的に国の予算で埋め合わせをしなきゃいけないことになる。それで、九八年の四月から九九年一月までの実績では代位弁済額は六千億円を突破して、九七年の実績を一千億円以上上回っている。  結局、こういうことで保証した資金の焦げつきがふえていくと、最終的に負担国民を直撃するような結果になりかねない、そういう懸念が一方ではなされている。この点はいかがでしょうか。
  131. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最初に旧債の振りかえのことをおっしゃったと思いますけれども、その点は、信用保証協会と金融機関の間で保証契約を結びますときに、原則として旧債の振りかえを認めないということが契約に書いてあるはずであります。これに違反した場合は信用保証協会は金融機関に対する保証債務の履行責任を免れるということにまでなっております。この点につきましては二、三例がありまして、金融監督庁が注意を促したというふうに記憶しておりますが、最近は改まってまいったと聞いております。  なお、信用保証協会はこれを保証し、政府は信用保証協会に損失の出ましたときにそれを政府として処理するということは予算の上でも承知の上で考えておりますので、そういうものが生じましたときには信用保証協会に対して保証をするということになろうかと存じております。
  132. 益田洋介

    ○益田洋介君 十三日の土曜日、与謝野通産大臣は、福井市内で地元の経済界の方との懇談会の席上で、今この貸し渋り対策として設けた中小企業金融安定化特別保証制度、総額二十兆円、この枠の追加を当然検討しなきゃいけないと。これは先ほど申し上げたように、昨年十月からことし二月までの間に十三兆、五カ月間で総額の七割に匹敵する十三兆五千億を利用されたわけでございます。さらに通産大臣は、九月ごろで枠を全部使い切ってしまうことになるだろう、取り扱い期間の二〇〇〇年三月まで枠を確保するために大蔵省とよく相談して追加を検討したいと。こういう相談はありましたか。
  133. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのことも通産大臣の御所管のことで……
  134. 益田洋介

    ○益田洋介君 相談があったかどうかを伺っているんです。
  135. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 該当する政府委員が来ておりませんので、そういう事実があったかないかが実は私にわからないわけでございます。が、それにしましても、私に関します限りまだそういう御相談はございません。
  136. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。
  137. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。  税制の法案に関連して伺っていきたいと思います。  来年度の税制改正を提案した昨年十二月の政府税調答申なんですけれども、こうありました。「今回の減税のうち、個人所得課税最高税率及び法人課税実効税率国際水準並みへの引下げは、将来の税制の抜本的改革を一部先取りしたものであり、将来の抜本的改革へのいわば架け橋としていかなければならない」、かけ橋として抜本改革への先取りだと。午前中もこの「将来」というのはいつごろかという議論がございました。私は、この税調答申を読んでおりまして、抜本的改革というのが何かというのがいま一つよくわからないんですけれども、この答申の中で抜本的改革とうたっていることの意味について大蔵大臣はどう受けとめていらっしゃるか、どう考えていらっしゃるか伺いたいんです。
  138. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) この抜本的見直し意味についてお尋ねがございました。実は所得課税あり方については最近点検が行われておりません。そういうこともございまして、今後の社会構造の変化を展望しながら、現在政府税制調査会でワーキンググループをつくっております。詳しくは申し上げませんが、例えば諸控除の課税ベースあり方はどうなんだ、課税方式についてはどう考えるんだ、あるいは捕捉手段としての納税者番号制度のようなものをどう考えるのかというような、今現在ありとあらゆる論点を挙げているところでございまして、その抜本的な具体的な姿がどうなっていくか予断をもって申し上げるわけにはいきませんが、まさに現在所得税制所得課税全体についての論点を洗っているところでございます。いずれまた、この審議が進めていかれると思っておりますので、税制調査会議論をまちたいと思っているわけでございます。
  139. 笠井亮

    ○笠井亮君 八九年のときには税制の抜本改革ということで、その一環として消費税が導入されました。それ以降、法人税所得税ということで個々の改正はやってきたわけです。しかし、税制全体の改革ということではなかなかなかった。今見直しをして洗っているところだと伺ったんですが、今度はある意味では八九年に匹敵するような抜本的改革ということですから、何かここで大規模なものとしてやっぱりやろう、そういう規模のものということで検討の方向を念頭に置かれているのか、その辺はどうなんでしょう。
  140. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 抜本的というのはこれまでも使ったことがございました。要は、税制といいますのは社会構造の変化に対応していかなければならないものでございます。また、財政の歳入調達手段でございます。やはり何年か置きには税制の点検をしていく必要がある。そういう意味で、所得税制についても点検が始まったところでございますし、法人課税、これも詳しくは申し上げませんが、さらに点検していかなければならないたくさんの課題があるというふうに承知しております。
  141. 笠井亮

    ○笠井亮君 税制改革というとやはり理念というのが当然出てくると思うんです。去年も理念の問題は若干局長とも議論したことを記憶しているんですけれども、抜本改革ということでいかなる理念を念頭に置きながら、そういうようなことはあるんでしょうか、いかがなんでしょうか。
  142. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) これはまことに難しい話でございますが、税制一般論で申し上げまするならば、やはり税制といいますのは歳出を賄うための調達手段でございますので、サービスを賄う、まずその観点一つあろうかと思います。当然その際には、歳出をどう考えるか、行財政改革お話もございます、それとの関係での税制全体をどう考えるか、量的な話が一つあるわけでございます。他方、全体として公平、中立、簡素という三つの要素がございます。これはそう一言で言えば簡単そうでございますが、その時々によっていろんな考え方があるわけでございまして、極めて抽象的な話になるわけでございますが、やはりこれからの我が国の社会構造の変化に合わせた公平、中立、簡素とは何かということを検討してまいる必要があるだろうと思っております。  あわせて、昨今でございますれば、いわば国際的な動きといいましょうか国際的な調和とでもいいましょうか、もとより税制は極めてそれぞれの国が独自に考える必要のある問題でございますが、国際的な動向も無視できない、そういうところがこれからの検討になっていこうと思っております。
  143. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうすると、これからいろいろ洗いながら所得税法人税を含めて理念のこともどう具体化していくかということを検討するということなんですけれども、先ほど私が冒頭に引用した税調の答申の中で、「今回の減税のうち、個人所得課税最高税率及び法人課税実効税率国際水準並みへの引下げは、将来の税制の抜本的改革を一部先取り」というふうに言っているわけです。一部先取りということは、ちょっと私なんかが考えますと、もう一定の方向や理念があるんだけれども、検討しながらまだ表には出していない、しかしそれを先取り的に出しているという意味なのかなというふうにここを読んだんですけれども、そういうことではないんですか、これは。
  144. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 今、先生おっしゃいましたように、個人所得課税の五〇%の問題、これはかねて政府税制調査会でもそのぐらいをめどに引き下げていくのが適当であろうとされてきたことでございます。それからまた、法人課税実効税率の問題、これもかねて国際的な水準から著しくかけ離れるのは好ましくない、そういうことで全体の課税ベースを広げながら第一段階として国際水準引き下げてまいりました。それで、今回が第二弾目になるわけでございますけれども、これもこれまでの政府税制調査会から負わされておりました課題であったかと思います。  そういう意味で、この政府税制調査会で一部先取りしたと申し上げますのはそのとおりでございます。当然、課税ベースその他まだ残っている問題がたくさんございますので、そういう意味でかけ橋としていかなければならないというふうに書いてあるものと読ませてもらっております。
  145. 笠井亮

    ○笠井亮君 今のかけ橋のところなんですが、ちょっと私も含意を確認したいんです。かけ橋ということはある地点から別の地点につないでいくということになると思うんですけれども一つは、ただいま局長も言われたのかなと思うんですが、今回、所得税最高税率引き下げとかを中心とする累進性の緩和とか法人税減税をやるわけですね。だから、将来の抜本改革というのは、それ自身のそういう中身もかけ橋としながら、さらに累進性を緩和して、そしてまた法人税もさらに軽減していくという方向へ向かってのかけ橋をつなごうとしているという意味なのか、それとも所得税法人税はこれでやる、それ以外のところについてこうやっていこうという意味であるのか、その両方なのか、その辺はどういうふうにこれを見たらいいんでしょうか。
  146. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) かけ橋というのがいささか文学的な表現なものでございますからあれなんですが、ただ言えますことは、まさに法人課税については国際的な動向をこれからもよく見て、日本経済そのものが衰退することのないように、税制面からそういう点についてはこれからも気をつけていかなければならないだろうというふうに思っております。  それから、現在の所得課税について申し上げますと、最高税率の五〇%というのは、大体そこらがまさに国際的な水準と私どもは理解しておりまして、このかけ橋の解釈になるわけでございますけれども、今論点を挙げているところでございますので、予断を持たずにこれから検討していかれるべき課題であろうと思っております。
  147. 笠井亮

    ○笠井亮君 定率減税ということが今回の所得減税のもう一つの柱になっておりますけれども、先ほどの答申でこの部分を見ますと、抜本改革へのかけ橋からいわば除かれている、書いていないわけですね。  政府は今回の減税恒久的減税だから景気にも効果があるというふうに言われていたわけですけれども定率減税部分というのはいわばこの抜本的改革にはつながない。「的」というのはそういう意味なのかなというのをここからも改めて私は感じ取ってみたわけなんです。午前中の質疑でも、大蔵大臣の御答弁で「的」ということについて言及されたので、恐らくそういうことではないかと思ったんですが、一応ちょっと大臣に確認をしてみたいんです。  景気の回復が軌道に乗る、先ほど二%という話も一つ具体的にありましたけれども、そういうことが軌道に乗って実現した暁にはこの恒久的減税定率減税については取りやめていくということをお考えなんでしょうか。ちょっと先ほどの延長で確認的なことなんですけれども、その辺はどうでしょうか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私が頭に描いておりますことは、二%程度成長が一遍できただけではなくてほぼ日本経済がその軌道に乗ったと判断されたときに、その時期に行われますことは恐らく、税制の抜本的改革ばかりでなく、財政もそうであるし、中央、地方の行財政関係もそうである。つまり、二十一世紀の初頭のある段階においてしばらくの間二十一世紀日本を支えられるような基本的な改革をそれらの分野でしなければならないのではないかと思っております。そういたしますと、少子高齢化ぐらいのところまでは今から読めておりますけれども、その他どういう問題が二十一世紀の初めの部分日本についてあるのかというふうなことは、どうも今から十分私は想像ができないような気持ちが正直言っていたしております。  したがいまして、そのときに行われる抜本改正というのはもう少したってみないと、どのような環境においてどのような日本を目指すのか、はっきり私は今自分の頭に描けない感じがいたしますものですから、具体的に所得税がどうなるのかといったようなことは今から的確に申し上げかねる、間接税の問題もございますし、と思います。  ただし、先ほど主税局長が申し上げておりましたとおり、六五%というような所得課税は将来とも我が国としてはもうやめなきゃならないのではないか、あるいは四〇%程度法人税は将来とも国際関係考えてもそれより超えていくということは問題があるのではないか、そのぐらいのことは今から多分予測できることでございますので、それらあたりは恐らくそのときの税制改正でも残っていくのではないか、このぐらいのことは考えております。
  149. 笠井亮

    ○笠井亮君 次の問題なんですが、答申ではさらに個人所得税の抜本的見直しということが書かれておりますけれども、どういう改革なのかという問題なんです。  答申によりますと、低中所得者層の税負担所得課税国民所得に対する比率が主要先進国中最低であるということが強調されております。そういう認識の上で所得税の抜本改革をするということになりますと、やっていく方向というのは低中所得者層への課税の強化によって所得税を増強するということになるんじゃないか、これを読む限りはそういう方向なのかなというふうに思うんですけれども、その点はどうなんでしょう。
  150. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 日本所得税制の特徴として、まず税制をいろいろ設計、見直し、検討いたします場合、我が国税制がどうなっているかという現状はしっかり把握していかなければならないということで比較してみますと、おっしゃいますように、大体、個人所得課税国民負担率でいきますと、アメリカの一三・二%に対しまして日本は六・六%でございますから、半分でございます。それは事実でございます。  しかし、先ほど申し上げましたように、今後の税制の抜本見直しをどう進めていくのか。最後は当然国民的な議論によって検討されるべき課題だというふうに思いますけれども税制調査会におきましては、そういう事実認識を初め全体の問題の摘出をちょうど始めたところでございまして、国民負担率が低いからそれを上げるべきだというようなことには、直ちにそうなるものではないだろうと思います。  いずれにいたしましても、所得課税所得課税といたしましてこれからも基幹税的な地位を持っていくべき税だと思います。また、経済社会が変わっていく中で、これからの日本に合った公平で中立的でかつ簡素な税制は何かといういつも課せられている点を、この個人所得課税についてもこれから検討がまさに進められていくだろうと思っております。
  151. 笠井亮

    ○笠井亮君 所得税についてはできるだけ多くの人から幅広く負担をというふうな御答弁もあったと思うんですけれども、先ほど申し上げた税調答申やそういう考え方からいくと、理屈で言えばこの課税最低限というのも限りなく下げていくことになっていくのかなというふうに思うんですが、まさか最低限はない方がいいというふうにお考えではないだろうし、先ほど大臣が、これ以上高くなってはというふうなことでしたか、おっしゃっていたと思うんです。  我々はこの課税最低限というのは生活費非課税ということが大事な問題としてあるのではないかというふうに思っているんです。政府はしばしば外国より高過ぎるということを言われますけれども、この課税最低限というのはどの辺のことを基準にして考えているんですか。外国との比較ということじゃなくて、これ自身についてはどういうふうなことをお考えでしょうか。
  152. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) これまた非常に難しい御質問でございますが、かつて昭和三十年代あるいは四十年代の初めごろといいましょうか、いわば高度成長を続けている時期、まだ日本が今のような豊かさはなかったわけでございますが、そういう時代においては最低生活費ということもまさに所得税を設計する場合、議論されたときもございます。しかし、その後経済が大きくなってまいりましてからは、いわゆる最低生活費ということも重要であるが、それ以外のファクターも極めて重要であろうということで、まさに税は国の公共サービスの対価でございますので、皆さんに負担してもらうという考え方もあるわけでございます。  それから、あるいは税率とともにどの程度所得税累進構造がいいんだろうか、家族構成に応じた負担の調整はどうあるべきなのか、さらには先ほど御指摘がございましたように、課税最低限がゼロということになってしまいますと税務執行はどうなるのかというような問題もあるわけでございまして、さまざまな観点を総合的に勘案していくべきであろうと思います。  ただ、国際的に見ると、日本課税最低限は高いということが言えるような気がいたします。
  153. 笠井亮

    ○笠井亮君 国際比較の問題はこの間もやってきたことなので、また次の機会にしたいと思います。  もう一つ法人税について聞いておきたいんですが、九八年度、九九年度と連続引き下げ実効税率が約五〇%から四〇%ですか、正確には四〇・八七ということで大幅に下げられたと思うんです。これによって、実効税率ベースで見ますとアメリカとほぼ肩を並べる、そしてドイツ、フランスを下回る状況というふうになっていると思うんですけれども実効税率だとアメリカはその州によって違いますから、表面税率国税だけで見ると、我が国改正後三〇%ということですから、アメリカが三五ということで、大きく下回るばかりか、主要先進国の中でも最も低いと言われているイギリスの三一よりも低くなる。  こうなってみますと、今回の措置によって主要先進国中最低レベルということになっているわけですね。そのことは間違いないですか。
  154. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) この法人所得課税地方税の負担も合わせたところでの概念でございます。したがいまして、地方の法人所得課税が各国でどうなっているかというところまで比較いたしませんと実は言えないわけでございます。国税だけで比較せよということになると御指摘のとおりでございますけれども、かねてこの実効税率地方課税も入れたところで見るというのが正しいと思いますので、日本の四〇・八七、アメリカ四〇・七五、イギリス三〇、ドイツは現在五一・六七でございますか、フランスが四〇、こういう状況になっておりまして、日本も今回の改正で国際的水準になったということかと思います。
  155. 笠井亮

    ○笠井亮君 我が国の場合は、諸外国に比べて引当金などによって法人税課税ベースが狭められていますから、実質負担はもっと低いというふうに考えられると思うんです。にもかかわらず、経済戦略会議の答申を見ますと、法人税減税を引き続き行うということもうたっているわけです。政府が今後やっていこうとしている税制の抜本的改革では法人税のさらなる引き下げもその一つ検討課題になっていくということなんでしょうか。先ほどちょっと言及がありましたが、改めてちょっと確認したい。
  156. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 税制の点検に当たっては聖域なく点検していかなきゃならぬと思っておりますが、この実効税率水準について申し上げますなら、そこはいわゆる国際的な水準がどの辺にあるのかということはその時々点検していくべき点であろう、こういうふうに思うわけでございます。  それから、今後の法人課税について、課税ベースお話がございました。今回、課税ベースの話といいますのも税制ある限りの課題でございまして、今後とも法人課税課税ベースあり方については検討していかなければならない、こういうふうに考えております。
  157. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間がありますので、もう一つ聞いておきますが、直間比率の問題、このことを見ますと、近年、間接税の比率が急速に引き上がってきているというふうに思うんです。  九九年度予算では、国税だけで見れば間接税の比率が四二・八%ということで四割を超えております。地方税合わせた合計でもふえ続けていて、九九年度予算では三二・一%ということですけれども国税だけのベースで見ると、間接税の比率が高いヨーロッパ、少なくともイギリス、イタリア並みになったというふうに現状は言えるんじゃないかと思うんですが、そこはどう見ていらっしゃいますか。
  158. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 直間比率のあり方、そこだけで申し上げますと、何が正しいということがアプリオリに初めからあるものではなかろう、こういうふうに思っております。そのときそのときの税体系のあり方考えながら結果的に出てくるものかと思っております。  なお、最近、直間比率の間の部分が非常に高くなっていることは事実でございますが、これは特に法人税所得税が大変昨今のような景気状況で落ち込んでいる、それから何としてでも景気をよくしなければならないということで恒久的減税をしなければならないというような状況で上がっている面があるということも忘れてはならないと思っております。
  159. 笠井亮

    ○笠井亮君 最後に言われたところは、私は最近の景気情勢だけにとどまらないと思うんですよ。  この間、資料を拝見しましたけれども、傾向的にやっぱり間接税はずっと上がってきているわけでありまして、現状としては四割を超えてヨーロッパ並みになっている、よく政府は国際比較されるわけですけれども。この点では政府は、さらなる直間比率の見直し課題となる、こういうことは思っていらっしゃるんですか、この今の現状を踏まえながらですが。
  160. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) まさにどのような税体系があるべきかという観点から結果的に私は出てくるんだろうと思います。  直間比率という言い方もございますし、所得、消費、資産という言い方もあろうかと思います。要はバランスのとれた税制である、税体系全体として公平な税制は何かという観点、それからそれによって得られる税収と財政との関係をどう考えるかというようなことから決まってくる数字だろうというふうに思っております。
  161. 笠井亮

    ○笠井亮君 冒頭に将来の抜本的改革ということの意味を伺いながら今幾つか伺ったんですけれども、これから検討していくというか、いろいろ見ていかなきゃいけないというお話でありまして、抜本的改革であり、かけ橋として先取りということが言われているんですけれども、どうもいま一つ見えてこない、お持ちなのにお示しにならないのかなということも思ったりするんですけれども。  しかし、実際は先取りとしてやっているということでいいますと、私どもが思うのは、やはり大企業や大金持ち減税になり、庶民増税だということが見えてくるわけでありまして、それを一層進めるものでしかないのかなと思わざるを得ないような感じがしております。さらに今後質疑をしていきたいと思います。  私の質問を終わります。
  162. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 引き続いて、日本共産党の池田幹幸でございます。  けさほどの大蔵大臣お話の中にもあったんですが、所得税減税をめぐりましては、金持ち減税、庶民増税ではないかということが予算委員会でもいろいろ論議されてきました。  三月三日の予算委員会での大蔵大臣の御答弁で、私は非常に興味を持ったんですが、これは当然、金持ち減税、庶民増税、これをやって本当に景気対策になるのか、今度の九兆円の減税景気対策だと言っておるけれどもそうならないんじゃないかという論議の中での御答弁なんですが、こう言っております。  何で景気回復を目指しているときにそういうことをしたかとおっしゃれば、私ども景気回復するために何でもしなきゃならないと思っていますが、将来の日本に明らかに害になるようなことだけはしてはいけないだろう。すなわち、二度続けてその四百九十一万円という最低限の減税をいたしましたら、恐らくこれをもう取り戻すことはできません。そういたしますと、日本は非常に高い課税最低限と非常に低い税率、それを持って二十一世紀に向かわなきゃなりませんから、とてもそれでは私は財政はやれないという思いがいたしました。 こうおっしゃっているんです。  私はこれを伺って、何でもありだけれども将来の日本に明らかに害になるようなことだけはしてはいけないという御発言について、私は非常にうなずいたんです。この点では同感なんです。もちろん、何をもって害となすかということでは、私たちが考えておるのと大蔵大臣のお考えとは大きく違うだろうと思います。課税最低限問題についても、ただいま笠井から質問しましたけれども、そうだと思うんですね。  そこで今、ちまたと言ったら失礼ですけれども、総理大臣もそうなんですが、ともかく景気回復かそれとも財政再建かという命題を立てまして、両立はできないんだといった立場に立っておられる、そういった意見が多いんです。その中で、大蔵大臣の御答弁は非常に微妙な内容を持っておるなと私は感じたんです。  そういう点で、私自身は、景気回復と財政再建は両立できるし、させなければならぬという立場に立っておるわけですが、そういった立場から見て、今の二者択一的な景気回復か財政再建かという考え方、それはやっぱりそこまで偏っちゃいけないというふうに考えての大蔵大臣の御答弁じゃなかったのかなと思ったんですが、ひとつその真意をまずお伺いしたいと思います。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回の予算編成で非常に大きな国債を発行しておることにつきまして、国会でも非常な御批判を受けております。私自身、当初からこれだけ大きな国債を発行しなきゃならない財政というのはまことに正常でないと考えておる人間でございますが、この際としてはやむを得ない。しかし、こうやって国債が今後ふえ続けるということになれば、それはゆゆしい事態でございますから、どこかでそれは食いとめなければならないと思っておるわけです。  そのためには、やはり税収がプラス成長とともに少しずつでもふえてまいりませんと、そういうきっかけはつかめないと思っております。願わくはプラス成長に入って、そして所得税が、あるいは法人税もそうでございますけれども、少しずつでもふえてほしい。  今お尋ねになられましたのは所得税のことでございましたが、そういうことを期待する際に、課税最低限が四百九十一万円というようなことではとても所得税増収というものは考えられない。何とかそれは、三百六十一万円でなくても三百八十二万円でもよろしゅうございますが、そういうところで多数の納税者から少しずつでも所得税を払ってもらうということでなければ、税収の増加を期待して国債を減らしていくという政策は成功の可能性が乏しい、こう思っておりますものですから、それで何とかして四百九十一万円というような高い課税最低限は将来に残さないように、将来に累を及ぼさないようにと考えておりますためにああいうことを申し上げたわけでございます。
  164. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 その害の中身としての四百九十一万円ということで、それは私は意見が違うと申し上げたんです。要するに、今景気回復さえ図ればいいんだ、財政再建はずっと先送りだという考え方に本当に立っていいのかどうかという点では、私はそれはよくないだろうと考えているんです。  その点で、これは今国会の最初の段階から私たち共産党は主張しておるんですが、ことしの不破委員長の代表質問でこういうことを総理大臣に伺いました。  「今日のような空前の財政危機に直面しながら、政府がその解決の見通しもなしに、浪費に明け暮れるなどは絶対に許されません。あなたがこの財政危機を解決する、どのような方針と見通しを持っているかを伺いたいのであります。」、方針と見通しを伺ったのに対して、小渕総理のお答えは、「経済が回復軌道に乗った段階におきまして、財政税制上の諸課題につき、中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆さんにそのあるべき姿を示さなければならないと考えます。」ということなんです。つまり、今話がありました二%かどうか知りませんが、景気回復が軌道に乗った段階考える、そこで検討するというんです。  これはもうとんでもない話だと思うんです。ともかく景気回復が軌道に乗った段階考えるといっても、先ほどもおっしゃったように、今膨大な赤字国債を発行した、そうすると軌道に乗ったと考えられるときには財政赤字は大変な状況になっておる、取り返しがつかないような状況にまで悪化してしまっているということが考えられるわけです。  少なくとも宮澤大蔵大臣のお考えは、こういった取り返しのつかない状態にしない、そういった手だてを今の段階で打つべきだとおっしゃったんじゃないかというふうに私は聞いておったんですけれども、そうではなかったんですか。
  165. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平成十一年度に我が国経済がもし〇・五%成長いたすとしますならば、年度末には何がしかの自然増収が出てくるはずだというふうに思っているわけでございます。〇・五ぐらいではそうでないかもしれませんが、しかしマイナス成長でなければ税収も何ぼかプラスになる可能性がある。それが続いていけば、そう大きな額でなくても税収が少しずつ伸びてまいりますから、そういう状況の中でやがて二%成長がサイクルになりましたときには税収は四十七兆よりはかなりふえているはずである、またそういう状況にして財政改革考えたい、こう思っておりますから、そのときにというのではなくて、既にこの平成十一年度において、十二年度にかけてというふうに私自身は考えておるわけでございます。
  166. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 今伺ったら、どうかなと思うんです、大蔵省の「財政構造改革を進めるに当たっての基本的考え方」というのを見ますと。  要するに、景気回復に向けて全力を尽くすために財政構造改革法も凍結したということは国債をどんどん発行しますよということですね。それから、「我が国経済が回復軌道に乗った段階において、改めて二十一世紀の初頭における財政税制課題として、根本的な視点から必要な措置をとらなければならない」と。だから、どう見たってこれは先送りなんですよ。  今、大蔵大臣は〇・五%の成長があれば、この〇・五というのも既に怪しくなっておりますけれども、あればとおっしゃっている。そういう期待ではなしに、もっと今の段階できちんとした見通しを持ったことをやらなければいけないんじゃないかと私は思うんです。  要するに、ここで財政の展望を示して、その上で今のことをやっているんだということで国民が納得できればいいわけですけれども、そういったことは何ら示されておらないで、言われておることはこういうふうに先送りということがだっと出ております。また、事実出ておるというよりもこれが真実だと私は考えるんです。  大蔵大臣が今おっしゃったようなことについての説明はなかったし、またその程度のことではとても納得できるものではないと私は考えるんですが、いかがでしょうか。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つまり、財政構造改革についての法律があったわけですが、そのときには財政構造改革ということをかなり意識的にその段階で将来に向かって考えていたわけです。しかし、それは一遍やめましょうというふうに私は思っておるわけです。とにかく今は不況脱出一途に行こう、こういうふうに思ってまた申し上げております。  しかし同時に、だからといって将来の日本に邪魔になるようなことだけはこの際しないようにしようとも申し上げております。その点で、今の四百九十一万円という課税最低限は将来の日本の邪魔になると考えました。国会の御質問によりますと、それだってもっとも購買力を大きくするじゃないかと、それはそうだと申し上げながら、しかしそれは将来の日本のために私はとりませんと申し上げておりますのは、将来の財政改革をするときにそういう高い課税最低限を持っておったのではできない、こういうふうに思っておるからでございます。
  168. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 もう一つ考えておられるのは消費税の問題があるんだろうと私は思うんですが、私たちは将来害になるというのは、むしろ消費税をこれから上げていくことが害になると考えているんですけれども大蔵大臣はその逆のことをお考えだろうと思うんです。  そういった点もお考えだろうと思うんですが、課税最低限のことについて今私は問題にする気はないんです。要するに、ただいま私がお尋ねしているのは、何の展望も示さないで、指針も示さないで突き進むといったやり方について改めるべきじゃないかという観点からお伺いしておるんです。  その点では、昨年末に企画庁が出した「経済の回顧と課題」というのがあります。この中で、この点では私はいいことを言っていると思うんですが、「財政面では、財政赤字の拡大が将来の負担増に結びつく可能性についての認識が高まったことを背景に、需要喚起効果が減殺されている可能性がある。」と。要するに、赤字国債をどんどん出した、建設国債もどんどん出した、大型公共事業をやる、これで国債残高が膨れ上がるということを見て、国民はこれは将来増税だと考えたということですね。だから、需要がおっこちたんだという分析をしています。その上で、こういったことを改めて、「短期的には景気回復に向けた財政面からの需要刺激策をとる一方で、中長期的には、明確な財政運営の指針の下で、財政再建に取り組み、将来への不安感を減らしていく必要がある。」と言っているんです。  これは私は全くそうだと思うんです。運営の指針も示さないでやっている。国会で指針を示すべきだと言われたら知らぬ顔して軌道に乗ったら考えますでは、これでは国民は全く信頼しないと思うんです。  経企庁が勝手に言っていることだとはおっしゃらないと思いますが、大蔵大臣のお考えはどうですか。
  169. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その文章もよろしいですし、戦略会議の方々の言っておられることも結構なんです。この際とにかく突破しよう、しかし先々はこうだよと。それはまことに見事なお話なんですが、現場におる者からいたしますと、とにかくこの際不況を突破しようと明確に言うだけでもう精いっぱいでありまして、その先のことまで言ったってだれもそんなものは聞いていないし、またそんなものは今から計画も立ちません。  ただ、そうは言っても、やっぱり本人はそれを忘れるわけにはいかない。だから、なるべく先の邪魔になるようなことだけはしないようにしたい、こういう気持ちでございます。
  170. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私はあした消費税減税問題について質問したいと思うんですが、だからこそ消費税減税じゃないかということを本当はここで申し上げたいんです。  時間がないので、法人税減税問題について伺います。  昨年度、法人税は大幅な減税がなされまして、課税ベースも広げられた、そういう改定をやられました。ことしは課税ベースは全く手を触れないで減税だけやるということがなされました。もともと政府の考え方としても、法人課税については財源、税体系に占める重要性にも留意しつつ、課税ベースを拡大しつつ税率引き下げるという基本的方向、これを追求してこられたはずなんですね。今回、課税ベースと切り離して税率引き下げだけをやられた、これはどういうことからやられたんでしょうか。
  171. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一番やっぱり問題だったのは法人事業税のことだったと思っております。いわゆる利益を生じない法人に対しては事業税の課税のしようがないということであるんだと思いますけれども、世の中でしょっちゅう言われますように、いろいろな社会的な施設を利用したり、少なくとも法人も社会的存在であるときに全く何にも払わないでいいのかという議論は十分に私は説得力があると思います。しかし、そのことはすぐに赤字法人に外形標準課税をするかという議論に転嫁をして、それはなかなか一遍で国民的な合意を得られないという問題がございましたから、結局その議論は表面化せずに終わった。ただ、将来に向かって、赤字法人だからといって何にも出さないのかねと、外形標準で何かを出してもらうべきじゃないかという議論は私は殊に課税当局には根強くあるんではないかと思います。また、それは今まで何にも払っていらっしゃらない会社に対しては増税になりますから、それだけで突っ張っていけるものでもないかもしれませんけれども、これは将来に向かって私は議論が残っておるというふうに思っております。
  172. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 それもあったのでしょうが、党の税調で考えられたのはもっと別のことだったようです。  ちょっと読ませていただいたんですが、「税経通信」というところで加藤税調会長と党の林税調会長が会談しておられるんですが、それを読ませていただきますと、要するにこういうことのようですね。  課税ベースを今度拡大しなかったのはいろいろあるけれども、今度の場合景気の問題があるんだ、今度の課税ベースの拡大ということになるとフリンジベネフィットとか退職給与引当金の問題になってくる、これは考えていかなきゃいかぬけれどもと、こういう話なんですね。  私はこれ自身もきょうも問題にしたいと思うんですけれども、確かに今度の政府の政策として、九兆円の減税景気回復の景気対策だとあって法人税減税もその中に入っているんですが、今度の法人税減税景気対策になるというふうに本当にお考えなのでしょうか。もし、お考えだとしたら、どういう形でそれが景気回復につながるんでしょうか。
  173. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 法人の経営者といたしましては、今年の四月に始まる年度からは税負担がこれだけ減るということは会社のあらゆる計画、将来に向かっての設備投資を初めとするあらゆる計画に当然影響を及ぼすわけでございますので、これはもう最も敏感に法人の経済活動に影響を与えるというふうに思います。
  174. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 どうも私はそうは思わないんです。  これは九〇年代ずっと続く不況の中で九六年段階法人課税委員会報告というのが出ました。これを読ませていただいても、こういった小委員会の中でも実質的な税負担の軽減を行う環境にはないんじゃないかという意見を述べておられます、御存じと思いますけれども。そういう結論に達するのは、要するに法人税の実質的な軽減を行うとした場合には、減税財源を公債発行で賄うことは適当ではないし、財政赤字の削減が先決なんだと。そのために赤字公債の発行や歳出の削減を仮定せずに法人課税税負担を実質的に引き下げるとすれば、ほかの税目で増税しなきゃならなくなってしまうということがあって、そんなことはなかなか難しいと。将来において法人課税の実質的な税の軽減ということの可能性が議論として出てきたとしても現時点ではそれは無理だ、そういった環境にはないという意見が出されております。  九六年ですから、実質二年ちょっと前ですよね。この段階でこういう立場に立っておられたはずなんです。それがどういうことで、環境がどう変わってそうなったのかというふうに私は不思議に思うんですけれども、どうなんでしょうか。
  175. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 税制といいますのは歳入調達手段でございますから、減税をする場合には、ではその財源をどうするかということは当然議論すべき話だろうと思います。  ただいま法人課税委員会の報告のお話を先生の方からなさいました。まさに計画的に財政再建をどう進めていくべきかという中にあってこの議論がなされたというふうに承知しておりまして、恐らくその財源論のところも、ただいま先生のおっしゃったように、ではほかにどうするんだと、課税ベースの拡大をするレベニュー・ニュートラルがいいんじゃないかということで書かれているんだと思います。  御承知のように、現在の景気状況を眺めてみますと、一刻も早くとにかく安定成長に乗せなきゃならぬ、そういうことで財構法の方も凍結になっているわけでございます。そういう全体の流れの中で考えてまいりますと、法人課税国際水準並みへの引き下げ、これはいずれの日にかは今の地方税の外形標準課税の問題の実現とあわせてやるべき課題とされております。しかし、景気の現状を考えれば外形課税をすぐ入れるわけにはいかない。そういう中で、国際水準並みにするというようなことで今回の法人課税実効税率引き下げが行われているわけでございます。
  176. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 今、法人税引き下げれば、確かに利益を上げて減税の恩恵を受ける企業についてはああ助かったと、大臣がおっしゃったように思うでしょう。だけれども、では助かったと考える、これで少し経営が楽になるなと考えるということが本当に景気をよくする方向に回転していくとすれば、その企業が国内で設備投資するなりという方向に向かっていかなければその効果はないはずなんですね。では、今そういう環境にあるのか。それはないんじゃないでしょうか。  先ほどからの議論の中でもあったのは、むしろ大蔵大臣の頭の中で考えておられるのは設備廃棄、これを大いに進めようと。設備廃棄が進めば今度は設備投資意欲が出てくるというふうにお考えなのかもしれませんけれども、短期的に言えば、むしろそういったリストラの方向に向かうんじゃないかというふうに私は考えるんです。  したがって、今法人税減税をそういう形でやるべきじゃないというふうに考えるわけですが、時間が来てしまいました。これはあしたまた引き続いて議論させていただきたいと思います。
  177. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  本日は委員会が錯綜いたしておりまして、かわりがおらないものですから、開会当初から出たり入ったりいたしまして大変恐縮でございます。したがいまして、今まで議論されました流れもよくわからないまま質問させていただきますが、よろしくお願い申し上げます。  まず、所得税減税についてでございます。  政府税制調査会の加藤会長は、現在の日本経済の無力感は努力しても報われないことにあるとして、この無気力を打破することが今回の税制改正の一番大きな目的だとして、最高税率引き下げの意義を強調しておられます。また、十一年度の政府税制調査会の答申や自民党の税制改正大綱を見ていましても、今回の最高税率引き下げは勤労意欲を引き出すためのものであることが強調されているところでございます。  しかし、私がちょっと疑問に思いますのは、努力や勤労意欲に報いるための減税というのは何も最高税率の適用者だけの問題ではないと思うのでございます。国民各層がそれぞれ努力をしているわけでございますから、最高税率の適用者だけが一番努力しているわけではない。もし、努力に報いたり、勤労意欲を向上させることが税率引き下げの趣旨というのであるならば、全所得階層でそれぞれ税率引き下げを行うべきではなかったかと私は思うんですけれども大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  178. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実際に全階層で税率引き下げが行われたわけでございますが、頭打ちはございますけれども、その中で一番高い階層により多くの負担軽減が行われたことは言われるとおりでございます。  ただ、いかにもこの六五という高い税率を、以前から税制調査会ではやはり日本の対外的なイメージのためにも、国内の勤労意欲のためにもと言っておられた。やはりこの際その機会だろうと考えましたのと、これによりまして将来、新しい抜本改正のときかと思いますが、税率構造を描きますときに、やっぱりトップを高くしておきますことはかなり厳しい累進をするということになりますので、トップをこの際下げておくことによって、将来余り厳しい累進というものでない、もう少しモデレートなものをつくれるのではないかというような気持ちもございまして、この際長年の課題を解決しようといたしました。  確かに三重野委員の言われますように、そういう余計なことをしないで、ここで余った税収を一般の減税の方へ振り向けたらよかったじゃないかというお考え一つ考えであると思いましたけれども、やはり先を考えますと、この六五というレートだけは取り払っておいた方がいいという判断をいたしたわけでございます。
  179. 三重野栄子

    三重野栄子君 厳しい累進の問題につきましては、後ほどまた対外的イメージも含めましてお尋ねしてみたいと思います。  今回、所得税最高税率を五〇%から三七%へ引き下げるとともに、税率の刻み数も五から四に削減することになっております。こうした背景には、地方財政に対する配慮が多分にあったにしても、国税としては最高税率三七%というのは少し低過ぎるように思いますし、それでまた税率の刻み数も四では少な過ぎると思うわけでございます。  例えば、先ほども対外的ということをお出しになりましたが、国際的に見てみますと、アメリカは所得税最高税率が三九・六%で税率の刻み数が五でございますし、イギリスは最高税率が四〇%で税率の刻みが三、フランスは最高税率が五四%で税率の刻み数は六となっております。  所得税は住民税と違いまして、戦後のシャウプ勧告以来、累進税率による垂直的公平の実現をより求められてきたことからしますと、今回の改正には違和感を覚えますけれども、ちょっと思い過ぎでしょうか。大蔵大臣のお考えを伺います。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の八月に、小渕内閣発足の当座に税制考え方議論したわけでございますけれども、私自身もこの六五を五〇にするについて、その五〇は国税を四〇にして住民税一〇ということができるのではないかと、これは私の認識不足であったのですけれども、そういうふうに考えたことがございます。  しかし、三重野委員が言われましたように、地方税の方のいろいろな御事情があって、単一レートというものにはできないというふうに考えられた。そしてまた、実際、地方財政の事情を伺うとそうであるというふうに大臣がしきりに言われまして、私も説得されざるを得ない。そうしますとどこまでということで、一三までだということで、それなら国税は三七になるなと。私自身も三七という国税のレートは、おっしゃいますように低過ぎるとまでは申し上げなくてもいいのかもしれませんが、低いなという感じは持っております。  それで、それこそ将来の抜本改正のことでございますけれども、このときには、何度も申しますように中央財政地方財政のこともひっくるめて議論をしなければならないと思うにつけまして、やはり住民税は二本のレートでなければならないのか、あるいはほかの地方財政と国の財政との関係いかんによってはそれはそれでいいとおっしゃるのか、そのときには三七ではなくて四〇の方が落ちつくのかといったような問題は私自身の気持ちの中には残っています。実は主税局長とこの話をしたことがありませんので、今打ち合わせできることでもないものですから、ちょっとそういう問題は私の気持ちの中には残っているには残っております。
  181. 三重野栄子

    三重野栄子君 これからの税制の問題について、もう一つの点についてお尋ねしてみたいと思います。  所得税課税最低限の問題でございます。続いて恐縮ですが、大臣にお伺いしたいんですけれども日本所得税課税最低限は主要国に比べてかなり高い、したがって将来的には課税最低限引き下げは必要とお考えでございましょうか。その点につきましてお伺いしたいのでございます。
  182. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろな事情で課税最低限は三百八十二万に今回なったわけでございますけれども、いろいろ考えまして、納税者にはぜひ我が国所得税にこの程度の貢献をしていただきたいというふうに考えるものでございますから、先ほど申しましたような四百九十一万という話は、とてもどうも将来にわたってこれは変えておかなければならないというふうに考えたわけでございます。おまけに、我が国課税最低限が高いことに加えまして最低税率が低い、一〇でございますので、両方でかなり諸外国に比べて軽くなっておるのではないかと思うわけでございます。
  183. 三重野栄子

    三重野栄子君 課税最低限をいろいろ決めるについても、控除の方法が幾つもあるものですから、それで混乱するという、混乱というか議論がしにくい面もあるかと思うんです。  それはおきまして、二月二十三日の参議院予算委員会におきまして、大臣は我が党の大渕絹子議員の質問にお答えになりまして、日本の三百六十一万円という課税最低限はイギリスの百十万円、アメリカのニューヨーク州の二百六十万円と比べると非常に高い、日本所得税制かなり社会主義国のそれに近いと思っていると発言をいただいております。  しかし、夫婦子供二人の標準世帯の所得税課税最低限は現行三百六十一万六千円でございますけれども、アメリカの二百八十八万五千円やイギリスの百二十四万八千円よりは高いんですが、ドイツの四百六十六万五千円、フランスの三百七十四万三千円よりは低いと思うわけでございます。これは大蔵省の資料でも明らかでございまして、さらに夫婦子供一人や夫婦のみの世帯、あるいは独身世帯の課税最低限で比較しますと、イギリスを除きますと日本は主要諸外国並みと言えるのではないのでしょうか。所得税課税最低限というのはその国の租税政策との関係で決まってくることでございますけれども、余り日本課税最低限が高い高いと言い過ぎではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  184. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 課税最低限でございますが、夫婦子二人について言いますと、アメリカ二百八十八万五千円、イギリス百二十四万八千円、ドイツの場合はちょっと税額控除その他がございますので四百六十六万円となっておりまして、こういう国からしますと、日本の三百八十二万円というのは私どもは高いんだろうというふうに認識しております。  それからまた、この課税最低限は世帯構成によって当然違ってくるわけでございます。夫婦子一人の場合、日本の場合は二百八十五万七千円というふうになっている。アメリカ二百五十一万七千円、イギリス百二十四万八千円、ドイツ三百八十万八千円となっていることも事実でございます。  したがいまして、それぞれ日本とちょっと違う、高いところもあるといえばそのとおりでございますが、総じて言えば日本課税最低限は高い部類であろうと思います。  それから、先ほど大臣の方からもお話がございました。課税最低限お話をさせてもらっているわけでございますが、日本個人所得課税負担を見ていただきますと、これは各国の中で低い。これはもう間違いのない部類でございまして、先ほど申し上げましたように、個人所得に対する割合ですが、アメリカの一三・四に対して日本は六・二と半分でございますし、イギリスは一〇・二、ドイツが六・八等々となっているわけでございます。  したがいまして、課税最低限の話が日本所得税制一つの大きな特徴になっておりますが、あわせて所得税議論をする場合、最低税率はどうなっているか等々についても議論の必要があるだろうと思っております。
  185. 三重野栄子

    三重野栄子君 私も税金は少なければいいというふうには単純に思っていないつもりでございます。納めた税金が正当に自分たちの暮らしに返ってくるという確信があるならば、必要な部分には税金は当然出すべきだというふうに思うのでございますけれども、今もう本当にちまたでは、いや私たちの税金は高いというような声が多うございますから、ただいまそういうことをお伺いしたところでございます。  先ほど、これからの税制の問題について大臣から伺いましたけれども、もう一度そこらあたりをお伺いしたいと思います。  政府税制調査会の十一年度答申によりますと、今回の税制改正は将来の税制の抜本的改革に向けたいわばかけ橋と位置づけてあります。  そこで、大臣にお伺いしますけれども、将来における所得税の抜本改革の姿としてどのような構想をお持ちでしょうか。その際、最高税率三七%、先ほどもちょっと伺いましたけれども、再見直しはあるのでしょうか。御所見をもう一度改めてお伺いいたします。
  186. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう抜本改正の時期は、私が自分で頭に描いておりますのは、前にも申し上げましたが、日本経済成長率が二%ぐらいのサイクルにまず乗ったころ、しかも税制だけでなく、中央と地方の行財政関係、あるいは社会福祉の給付と負担といったような一般的な問題まで合わさって議論をしなければならないのじゃないかと思っておりますものですから、それはすなわち二十一世紀の前半ぐらいにおける日本の進路、あるいは日本が持っている課題というものと結びつくように思われますので、今から実は正直を言って十分に自分の中で絵が描けないでおります。どういうことになるのか、あるいはどういうことに国民が関心を持たれるのかということも明白でありません。  ただ、今わかる範囲においてならば、やはり個人の所得課税が六五というようなことは避けたいし、法人も国際並みにはしておきたい、そのぐらいなことでございまして、おっしゃいますように、それなら個人の国税のトップレートは三七なのかそれとも四〇かといったようなあたりになりますと、私自身には十分その辺が描けません。今の日本とは随分違った日本考えることになるのではないかという程度のことがぼんやり思えるだけでございまして、十分申し上げることができませんけれども、そのときに邪魔になることだけは今しないでおきたいというふうには思っておるわけでございます。
  187. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。  二十一世紀こそは福祉とか環境とか教育とか、そういうものが安心できるような税制になってもらいたいというふうに思うわけでございます。  法人税減税につきましてお尋ねしたいと思います。  大蔵省はこれまで、日本法人課税税率は高いけれども課税ベースの比較が困難なために税負担が高いかどうかわからないと言われておりますし、法人税率の引き下げには慎重であったと思います。これは平成八年十一月に政府税制調査会が公表いたしました法人課税委員会報告でも明らかでございます。  その後、十年度税制改正法人税率を三七・五%から三四・五%に三%引き下げたことなどで、国と地方を合わせた法人課税実効税率は四六・三六%となりました。これはニューヨークの四六・〇八%と比べてもそれほど高いわけではありませんし、また日本課税ベースがアメリカと比べて穏やかであることなどを考えますと、日本法人税税負担は決して高くないとも言えるのではないかと思います。  今回、法人税率をさらに四・五%引き下げ実効税率国際水準並みの四〇・八七%に引き下げることとしておりますけれども税負担が高いかどうかわからない、あるいは税負担の国際比較ができないという中で、なぜ法人税率の引き下げが行われるのか、その理由がいま一つはっきりしないものでございますから、大臣、よかったら御答弁いただけますでしょうか。
  188. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) まず、今まで税調などの答申では税負担が高いかどうかというのはよくわからないということが書いてあったではないかというお尋ねがございました。  実は税制全般がそうでございまするけれども、その国々の企業によってそれぞれの企業慣行等が異なってまいります。例えば日本には退職金の制度がございますが、そういう面から退職金については引当金制度が認められるわけでございます。しかし、そういうものは海外にそういう慣行がなければないわけでございます。そうして見ますと、なかなか税負担の国際比較をやるのは難しいなというのはそのとおりでございます。  しかし、平成十年度の税制改正におきまして課税ベースを相当大幅に広げさせていただきました。私ども、国際的に全部精密に言えるわけではございませんが、課税ベースにおいては今や相当広いものになったのであろうというふうに考えております。  それから、法人課税実効税率でございますが、やはり国際水準並みにしておきませんと、かけ離れて高いというわけには少なくともいかない。ちょうど今回国際水準並みになったということだと思います。  一つ、例えばこういう例を考えていただきたいわけですが、これを引き下げることによりまして国内の設備投資なりに好影響を与えることはもちろん、海外の企業がそれではどこに立地しようかというときに、当然、税制面からの障害はこれでなくなってくるものというふうに理解しておりますし、また日本の今後の企業展開を考えますと、日本にリサーチ部門を残しまして、海外からノウハウ料を、例えばお金をもらってくるということがこれから多くなってくるだろうと思います。  そうなってまいりますと、海外の方の支店あるいは企業からノウハウ料、研究料をもらってきた場合、法人税率が高うございますともろにその税率がかぶってくるわけでございます。そうなりますと、せっかくこれから研究センターとしての日本もやっていかなきゃならない、技術立国の日本でもなければならないというところにも水を差す結果ともなりまして、今のようなことからも日本の国際的な経済活動に好影響を与えるものというふうに思っているわけでございます。
  189. 三重野栄子

    三重野栄子君 そうしましたなら、税収中立法人課税改革ということについてのお考えを伺いたいのでございますけれども、大蔵省はこれまで法人税改革については税率引き下げの財源は課税ベースの拡大で賄うという税収中立原則を基本としてこられました。しかし、平成十年度法人税改正におきましては約二千億円超の実質減税となっておりまして、今回の改正では減税幅が拡大して約一兆七千億円の大幅な実質減税となっています。しかも、今回は十年度改正とは違って法人税率の引き下げだけで課税ベース見直しは全く行われておりません。  いろいろ伺いましたけれども、大蔵省は税収中立法人税改革という基本理念はどうなったのでしょうかと思いまして、そこらあたりをお願いします。
  190. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) もう少し経緯論的に先ほど申し上げるべきでございましたが、この法人課税実効税率の問題は、いわゆる地方課税でございます事業税の外形標準化、そういう中で今後検討していこうということになっていた、経緯論からするとそうでございます。しかし、全体として景気が停滞する中で、日本経済を活性化していかなきゃならぬという課題がますますその後強くなってきたわけでございます。  それからもう一つ、それでは今のような状況において国際水準並みにさや寄せしていくという中で事業税の外形標準課税をすることが適当か、今年度そういうことをすることが適当かという問題が赤字法人課税との絡みでもございます。景気配慮すれば、これはことしは見送らざるを得ないだろうと。また、最近の経済状況の変化とともに国際標準にしていくということがますます強く要請されたわけでございまして、そういうことから、今回国税である法人税引き下げながら全体として実効税率を下げるということにしてございます。  ただ、先生今御指摘がございました課税ベース適正化の話、これは何もことしは必ずしも十分に行われているとは言いがたいわけでございまするけれども法人課税委員会指摘されている問題につきましてはこれからも引き続き当然検討していかなければならない課題だというふうに思っております。
  191. 三重野栄子

    三重野栄子君 それでは、最後にもう一点だけお伺いいたします。  将来の税制の抜本改革時における法人税課税ベース見直し課題としてどのようなことを予定されているかということで伺います。  その際、課税ベース見直しで今回の約一兆七千億円、国税分ですけれども減税財源は賄えるのであろうか、これらの点につきまして大蔵大臣の御見解を伺いまして、質問を終わらせていただきます。
  192. 尾原榮夫

    政府委員尾原榮夫君) 法人税課税ベースの項目としてどういうものがあるかということでございます。まず、今年もその整理合理化をやっておりますが、当然のことながらいわゆる租税特別措置をどう考えるかという問題がございます。それから、小委員会指摘されている問題といたしましては、長期金融商品あるいは配当の問題、寄附金の問題、福利厚生の問題、国際課税の問題、いろいろございます。  どのぐらい税収になるかといいますのはまさにこれからでございまして、今申し上げましたような課税ベースの問題についてこれからも検討を続けていく必要があるというふうに思っております。
  193. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。  終わります。
  194. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は明十六日午前十時に開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時三十五分散会