運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-03-12 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十二日(金曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月十二日     辞任         補欠選任      平田 耕一君     佐藤 昭郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 益田 洋介君                 池田 幹幸君     委 員                 岩井 國臣君                 片山虎之助君                 佐藤 昭郎君                 西田 吉宏君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君    政府委員        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        大蔵政務次官   中島 眞人君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        坂  篤郎君        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        国税庁次長    大武健一郎君        国税庁課税部長  森田 好則君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        郵政大臣官房長  高田 昭義君        郵政省貯金局長  松井  浩君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    参考人        国民金融公庫総        裁        尾崎  護君        日本開発銀行総        裁        小粥 正巳君        日本輸出入銀行        総裁       保田  博君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付)、平成十一年度特別会計予算内閣提出  、衆議院送付)、平成十一年度政府関係機関予  算(内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管金融再生委員会金融監督庁)  、大蔵省所管郵政省所管郵便貯金特別会計  、簡易生命保険特別会計)、国民生活金融公庫  、日本開発銀行日本輸出入銀行日本政策投  資銀行及び国際協力銀行) ○平成十一年度における公債発行の特例に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  去る三月十日、予算委員会から、三月十二日から十六日正午までの間、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち金融再生委員会及び金融監督庁大蔵省所管郵政省所管のうち郵便貯金特別会計及び簡易生命保険特別会計国民生活金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行日本政策投資銀行並びに国際協力銀行について審査委嘱がありましたので、本件を議題といたします。     ─────────────
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  委嘱審査のため、本日の委員会参考人として国民金融公庫総裁尾崎護君、日本開発銀行総裁小粥正巳君、日本輸出入銀行総裁保田博君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) それでは、委嘱されました予算について順次政府から説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平成十一年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は八十一兆八千六百一億二千二百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十七兆一千百九十億円、雑収入は三兆三千二百五億七千二百万円、公債金は三十一兆五百億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は二十三兆八千五百六十億八百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計繰り入れは一千五百九十五億三千三百万円、国債費は十九兆八千三百十九億二千三百万円、政府出資は三千三百一億二千万円、公共事業等予備費は五千億円、予備費は三千五百億円、決算調整資金繰り入れは一兆六千百七十四億一千三百万円となっております。  次に、当省所管の各特別会計歳入歳出予算について申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも二百七十五億九千六百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算について申し上げます。  国民生活金融公庫におきましては、収入三千四百三十五億六千五百万円、支出三千五百二十二億二千百万円、差し引き八十六億五千六百万円の支出超過となっております。  このほか、日本政策投資銀行等の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、既に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださいますようお願いを申し上げます。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  7. 勝木健司

  8. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 平成十一年度における総理府所管金融再生委員会及び金融監督庁歳出予算要求額について、その概要を御説明いたします。  金融再生委員会平成十一年度における歳出予算要求額は十二億四千七百万円となっております。これは金融再生委員会に必要な経費として計上いたしております。  次に、金融監督庁平成十一年度における歳出予算要求額は六十八億四千七百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、金融監督庁一般行政に必要な経費といたしまして五十五億九千万円、金融機関等監督等に必要な経費としまして八億六千八百万円、証券取引等監視委員会に必要な経費といたしまして三億二千七百万円を計上しております。  以上をもちまして、平成十一年度総理府所管金融再生委員会及び金融監督庁歳出予算要求額概要説明を終わります。  よろしく御審議くださいますようお願いいたします。
  9. 勝木健司

  10. 高田昭義

    政府委員高田昭義君) 平成十一年度郵政省所管特別会計歳入歳出予算案につきまして御説明申し上げます。  まず、郵政事業特別会計におきましては、歳入歳出予定額はともに七兆六千百七十億円となっております。  なお、収入印紙等印紙に係る業務外収入支出分を除きますと、歳入歳出予定額はともに五兆七百三十八億円となっております。  次に、郵便貯金特別会計におきましては、一般勘定歳入予定額は十三兆四千九百三十一億円、歳出予定額は十兆七百五十一億円となっております。  金融自由化対策特別勘定歳入予定額は十三兆六千三百十六億円、歳出予定額は十三兆六千二百八十六億円となっております。  簡易生命保険特別会計におきましては、歳入予定額は十九兆六千五百六十億円、歳出予定額は十五兆二千九百四十六億円となっております。  平成十一年度におきましては、国民の皆様の利便性向上を図るため、郵便局サービス充実を図る施策を中心に実施してまいりますが、このうち為替貯金事業及び簡易生命保険事業に関する主な事項について御説明申し上げます。  まず、少子高齢化が進展する中で、高血圧や糖尿病に罹患していても日常生活を支障なく過ごす方々が加入できる簡易保険を創設いたします。  次に、民間金融機関とのATM提携サービスの提供の円滑化を図るとともに、インターネット上で口座間の送金サービス等を行うインターネットホームサービスの実証実験を行うこととしております。  また、郵便局舎及び簡保加入者福祉施設バリアフリー化充実にも取り組んでまいります。  さらに、郵便貯金簡易生命保険資金運用の対象に資産担保証券を加える等の制度の改善を図ってまいります。  以上、郵政省所管特別会計につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  11. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で説明の聴取は終わりました。  なお、大蔵省所管予算説明については、お手元に配付しております詳細な説明書を本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 林芳正

    林芳正君 自由民主党の林芳正でございます。  予算委嘱されてまいりましたので、ちょっと準備する時間も少なかったものですから、余り細部に至らずに一般的な質疑をしてまいりたい、こういうふうに思っております。  まず、論議をし尽くされた感もあるわけでございますが、財政赤字というものが果たしてそのものずばり悪いものであるか。こういう問題につきましてはかなり論議が尽くされまして、マスコミ的にいいますと赤字というのは悪いんだというようなことになるのかもしれませんけれども、果たして本当にそうであろうかというあたりをお聞きしてまいりたい、こういうふうに思うわけでございます。  今のように、フローで一〇%を超える、ストックで一〇〇%を超えるような赤字状態というのは、これはこういうことではいけないということはもう当然のことである。参考になりますのは、マーストリヒト条約というのがございまして、ヨーロッパの通貨統合に当たって入っていけるレベルというのがこのマーストリヒトで決まっておりまして、これはフロー、つまり単年度財政赤字GDP比三%、それからストック債務残高GDP比六〇%、こういうことが決められておるわけでございます。  この間、この委員会懇談会ということでECBの理事をお呼びしてお話をお伺いしましたけれども、そのときも同僚の金田委員から御指摘があったように、ECBができますと金融は一本化されるわけでございますが、財政政策というのはそれぞれの政府がやっていく、そこが非常に難しいのではないかという御指摘があったところであります。マーストリヒト条約でもそこに配慮をしまして、入った後も財政安定成長協定、スタビリティー・アンド・グロース・パクトというのをつくりまして、その目標をさらに三%、六〇%よりも高いところに置きまして、そこへ向かっていく、こういうような協定を結んでおるということでございます。  そういうことはございますけれども、我々が議論いたしまして、今凍結されておりますけれども財構法のときもそういうプライマリーレートの議論がございました。  一方で、数%内にとどまっている限りはやはり功罪の功の部分もあるのではないかという議論があるわけでございます。  例えば、国債発行して橋をつくる。これを後世代がそのときの税収でやるよりも、土地や物が安いときにあらかじめお金を借りてそれを手当てしてつくっておいた方がそのときにつくるよりも安くできるのではないか、こういうような古典的な議論もあるわけでございます。後世代へツケが回る、こう言いますけれども、逆に国債を持っている人との間というのは同世代間の所得の移転ではないか、こういう議論もあるわけでございます。  会社でよく言われますのは、借金をしながらだんだんとゴーイングコンサーンで大きくなっていくということもあるわけでございます。トヨタのように無借金でやっているところもありますけれども、大半の企業借金をしながらゴーイングコンサーンで大きくなっていく、こういうようなこともあるわけでございまして、いろんな議論があると私は思っておるわけでございます。  そういった中で、今の状態がいい悪いというのではなくて、一般論として財政赤字というものについて、後世代への負担の問題も含めて功罪についてどういうふうにお考えになっているか、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今でこそ大変に大きな赤字財政をやむを得ずいたしておりますが、この際赤字というのはいいこともあるということを、ちょっと一般論として少しそぐわないかもしれませんけれども、基本的には私自身林委員の言っておられることにかなり共感をいたしております。自分のかなり長くなりました政治生活におきましても、ほぼそういうふうな考えをしてまいりました。  ただ、それは日本経済興隆をいたしましたものですから、幸せにそういう話が割に通りやすかったということもあるかもしれませんけれども、基本的に赤字財政というものはそれ自身が悪だというふうには考えておりません。  今、マーストリヒト条約お話がありまして、ああやって単年度赤字あるいは累積赤字を一定の枠の中に抑え込んで、将来もそれを守っていこう、守れない場合はペナルティーを科するというようなことですが、よくああいうことができたと。殊に、失業率が二けたの国が相当ございますから、将来もああいうことが本当にやっていけるんだろうかという疑念は持ちながら、しかしああいう合意ができたということはやはり大したものだというふうに考えます。  それからいいますと、我が国の今の状況はいかにも度外れておりますから、こういうことが永続していいとは思っておりません。今の世代間のことであるとか、いろいろこれについては両様の議論がございますから、赤字財政そのものが悪であるというふうに私は思っておりません。  ただ、大蔵大臣をいたしております実感は、いわゆる公債費が、ただいま御審議中の予算の中でも十九兆八千億でございますか、公債費が二割ちょっとある。これがなければこれだけの金がいろんなことに使えるんだがなということはしょっちゅう実は思うことでございます。そういう観点からいいますと、余り赤字が大きくなるというのはそれはそれなりにどうもなかなか問題もあるなと思っております。  しかし、二割というのは、ここしばらくほとんどそのぐらいのものでございます。やっぱり財政からいいますと、二割をそういう国債関連の処理に使われるということはかなり痛いという思いがいたすことは事実でございます。
  15. 林芳正

    林芳正君 ありがとうございました。  本質論的な部分というのはなかなかこういう状況ではいろんな制約があって議論がしにくいところもあるわけですが、大変御丁寧な答弁をいただきました。  そこで、最近ちょっと落ちついておりますけれども長期金利上昇というのが一時大変に世間を騒がせました。長期金利上昇といいましてもこれは国債値段だ、こういうふうに思うわけでございます。では、あのときに企業が、国債ほど長期ではないんですが、割と長目の資金の調達をしているときの実際の金利はどれぐらいかなと見てみましたら、一%行かないぐらいのところで、企業の本当の需要というのは満たされておったということでありますから、その辺は分けて議論をしなければならない、こう思うわけでございます。やはり財政赤字、それから国の財政に対する姿勢みたいなものが市場評価をされて長期金利上昇してくるということはあるのだろう、こういうふうに思うわけでございます。これは財政がこういう状況であれば、ある程度それを市場で反映するというのは当然の話だ、こういうふうに思っております。  ただ、今ちょっと申し上げましたように、これが実際に企業が必要としております資金需要、特に長期資金需要に対して影響するということになりますと、これはいわゆる学者が言っておりますクラウディングアウトという状況になってくるのかな、こういうふうに思っております。この間の一時的に二%台に乗せたときはどうもそういうことではなかった。クラウディングアウトという定義にもよりますけれども民間資金需要を押しのけて入っていくという意味では、厳しい意味でのクラウディングアウトに当たらなかったのかな、私はそういう印象も持っておるわけでございます。  その点に関しまして大臣の御見解を賜りたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 結論としてはクラウディングアウトに当たらなかったと私も思っております。  昨年の十年国債の利回りを見ておりますと、昨年の九月半ばには〇・六七というまことに常識では考えられないような金利になっておりました。それが今、林委員の言われました二という台に乗せましたのは暮れでございますが、そして結局ピークが二・三六まで行ったようでございます。それからずっと落ちつきまして、きょうは一・七とか八とかその辺で、これは公債値段でございますから上がったり下がったりいたしますが、その辺で落ちついております。  昨年の二を突破いたしましたことにつきましては、国債発行者としての私どもも少し不注意であったという反省をいたしております。つまり、平成十一年度というのは非常にたくさんの国債が出る。これは御存じではあるものの相当大きいというところへ、資金運用部が別の事情によりまして市中から毎月買っておりました既発債を一月以降は買うのをやめる、来年度は買わないというようなことを発表いたしました。  ただ、これは国債の七十兆というような、一般で申せば六十兆でございますけれども、その中で月で二千億ぐらいなものでございますから、これが全体に影響を及ぼすということは平均的には考えられないことですが、マージナルに受け取られたかもしれません。やはり過剰反応であったと私どもは思いましたが、そういう過剰反応を起こさせることはやはり行政としては決して賢くないと思いました。  その後、資金運用部でもいろいろ財産運用について検討したりいたしまして、二月からはまた年度内は買うようにいたしたわけですが、そういうこともございまして金利は再び下降いたしまして、殊に最近になりまして日本銀行が短期金利をほとんどゼロで運用するような政策をとられましたので、その余った金といいますか、結局少し長いもの、長期まで幾らか出てくるような感じがございまして、金利はさらにそれより下がったというところでございます。  でございますので、この間の状況を見ていますと、幸か不幸かクラウディングアウトが起こった、あるいはクラウディングアウトの心配があるというような現象ではどうもなくて、多少過剰反応ではありましたけれども国債発行者である我々ももう少し注意をすべきである。殊に、国債の期間何年物というようなことについてもバラエティーをつける方がいいというようなことを思っておりまして、消化そのものはシンジケートでお話は順調に進みますし、発行条件も最近のものはクーポンレートが一・九でございますが、決して無理をして一・九にしているわけでもございません。取引はパーより上でできておりますから、まあまあここで落ちついております。  クラウディングアウトのような様子が見えましたら、これはかえって日本経済興隆の兆しありということですが、それも気をつけておると申しますか、そういうことも見ながら、国債発行者としては十分注意深くやってまいらなければならないと思っております。
  17. 林芳正

    林芳正君 今、大臣もちょっと触れられましたように、発行者としてマージナルなところとおっしゃいましたし、また私は大変市場が過剰に反応したんではないか、こういうふうに思っております。  それにかかわります問題として、この財政投融資制度改革というものが今スケジュールにのってきておるわけでございまして、二〇〇一年四月をめどに預託をやめると。こうなってまいりますと、余り過剰に反応しなくなるのかなというような期待も持っておるわけでございます。  ちょっと余談になりますけれども、円の国際化に絡めましてFB、TB、これの市中消化ということもスケジュールに入ってまいりましたし、大臣も今ちょっと触れられましたように、中期物というんですか、国債もいろいろバラエティーが出てきたというこのサプライの方の話と、それから今度は理財局へ全部いろんな公的資金が行って、それが財投へという形でまとめて出てくるという形から、それぞれが市場参加者として、郵貯とか簡保とか年金というお金がそれぞれ市場のプレーヤーとしてやっていくというような形に変わっていくということだと理解をしておりますけれども、これは大変未曾有のことでございまして、いろんな検討をしながらやっていかなければならないんではないか、こういうふうに思っております。  この財投制度抜本的改革に関するこれまでの検討状況と今後のスケジュールについてお聞かせ願えればと、こういうふうに思います。
  18. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 財政投融資改革につきましては、昨年六月に成立いたしました中央省庁等改革基本法第二十条第二号におきまして、「財政投融資制度を抜本的に改革することとし、新たな機能にふさわしい仕組みを構築すること。」とされているところでございます。  財政投融資有償資金を用いて国の各般の施策を効率的、効果的に実現する仕組みでございまして、二十一世紀においても重要なシステムであると考えており、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスなど諸外国においても広く存在している制度でございますことから、その機能を有効に発揮するために必要な改革を進めつつ、今後とも住宅、中小企業等施策に適切に活用していく必要があると考えているところでございます。  現在、財政投融資制度抜本的改革につきましては、中央省庁等改革基本法資金運用審議会懇談会とりまとめを踏まえまして検討を進めているところでございます。具体的には、資金運用審議会懇談会のもとに部内での検討に当たってのアドバイザリーグループといたしまして、制度問題検討会コスト分析評価検討会債券発行検討会の三つの検討会を設けまして、委員先生方のアドバイスを受けながら進めているところでございます。  今後とも、引き続き財政投融資制度抜本的改革に向けて、関係省庁とも協議しながら具体的検討を進めてまいりたいと考えております。  財政投融資制度抜本的改革スケジュールにつきましても、中央省庁等改革基本法第二十条第二号を踏まえ、関係省庁とも協議しながら検討してまいりたいと考えております。
  19. 林芳正

    林芳正君 少し変わった話題になりますが、この委員会でもたびたび私は取り上げてきた問題でもございますけれども、今ちょっとほかの問題がいろいろ出てきているものですからやや忘れられがちかもしれませんが、アジアで金融危機が起こったときに、その反省といたしまして、短期の資本が国際間で余りに速い足で移動するものですから、それがエマージングエコノミーにとって非常に壊滅的な打撃を与えたのではないか、それがLTCMみたいな事件が出てくることと相まって、少し規制をしたらどうかという議論が出てきているわけでございます。  たしかG7に行かれる前に本会議大臣の御答弁をお聞きした記憶がございますが、なかなか直接的な規制というのは難しかろう、どこまでが短期、どこから長期というのもなかなか難しいと私は思いますし、間接的に銀行がそういうところへ資金を供給したことについては、これはディスクロをさせるという方向で考えておられるというような御答弁だったと記憶をしておりますが、私は、その方向で今回のG7のコミュニケにこれが盛り込まれたというのは画期的なことではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  今グローバルスタンダードと言われておりまして、それはイコール、アメリカンスタンダードではないか、こういう議論があるわけでございますが、我が国がいろんな主張をしていくことがグローバルスタンダードに入っていくという意味で大変に画期的なことであったと私は思っておりますが、そのとき実際に会議にお出になってどういうような状況だったか。新聞によりますと、ヨーロッパは少しぐらい間接的な規制という方向性があるようでございましたが、どうもアメリカが全部自由だ、こういうような主張をしておったというふうに新聞では拝見しておりましたけれども、実際に御出席されてどういう状況だったか、大臣にお伺いしたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題につきましてG7等々、いろいろ議論をいたしました今の現状は、林委員が最初におっしゃいましたように、何とかしたいんだけれども、しかしヘッジファンドというようなものは勝手なクラブみたいなものでございますから、何人かが集まってやって、それで終わりみたいな、どうも実態をつかまえられない、つかまえようとすればどこか遠い国へ行ってしまうというような点があります。  そこで、つかまえられる部分はどこかといえば、これに金を貸した金融機関、これは確かにつかまえられる。金融機関が自分でやっているのはもちろんでございますから、そこのところまではみんながそのとおりであると。金融機関に対して厳しく監督をするし、ディスクローズもさせる、そこまではみんなの意見が一致しておると思います。  しかし、その次に今度はヘッジファンドなる実態をつかまえるという部分は、ある意味では法的な実態はないわけでございまして、この関係者が脱税でもしておれば、それは別の話です。しかし、それはヘッジファンドをフィナライズすることになりませんから、どうもそこのところから先をどうしていいかということが、言葉の上ではヘッジファンドの実態を解明するとか報告させるとかディスクローズするとかといっても、法的な実態がないものに対して何ができるか、そこのところで今議論が行ったり来たりしておるという感じだと思います。  確かにヨーロッパの対応とアメリカの対応は少し違っておりますが、アメリカの例の長期ファンドのときにニューヨーク連銀が素早く収拾に出たということについては、これは一般的には事なきを得たという感じでしたが、しかし、全くノンバンクであるヘッジファンドに何で連銀が出たのか、アメリカという国はそういう国かという相当深刻な議論が御承知のようにあったりいたしまして、この話はアメリカの当局者はちょっと恥ずかしいような、余り深入りしたくないようなところがございます。ただ、それにしても銀行はどうも抑えなきゃいかぬなというようなことまでは合意しております。  我が国は、おっしゃいますように東南アジアでああいうことが身近に起こりましたし、またその対応についても我が国はどの国よりも先へ進んでおりますから、マハティールさんの言うことをそのまま受け売りするつもりはありませんけれども、しかしやっぱりそういうことに無関係だとは言えないよというようなことで、比較的明快な立場をとってまいっております。
  21. 林芳正

    林芳正君 宮澤大臣はもう我が国のお知恵の最高峰にいらっしゃる。私はかねてから大変お世話にもなっておりますし、尊敬を申し上げておりますので、ぜひ知恵を絞ってやっていただきたい、こういうふうに思います。  時間も迫ってまいりましたので、金融監督庁の方に一問だけお聞きしたいと思います。  今、検査マニュアルというものが出ておりまして、これが大変進歩的だと思いましたのは、いわゆるパブリックコメント手続というのを経られて、最終的に決める前にいろんな方から御意見を聞いてから決めるんだ、こういうことでございまして、いろんな方の専門的な意見を今聞かれているところだというふうにお伺いしております。一方で、一番強いマネーセンターバンクと上下といいますか、リージョナルバンクも信組とか信金とかまで行きますと、同じところでやるのはどうだというような声を私も地元に帰るといろんな方から聞くわけでございますけれども、各界からどういう意見が出ている状況にあるのか、また今後どういうスケジュールでこれをおまとめになっていくのかをお聞きしたいと思います。
  22. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) お話のありました金融検査マニュアルは、昨年の十二月二十二日に中間取りまとめをパブリックコメントに付しました。その結果、各方面からコメントをちょうだいいたしました。四十七先から約六百件ということで、ペーパーの量にいたしますとマニュアルの倍近い量のコメントをちょうだいしたということでございます。このコメントの内容につきましては、記者発表もいたしましたし、またインターネットで公開をしておりますので、どういう方がどういう御意見を出しておられるかというのはインターネットでもアクセスできるようになっております。  いただきました御意見としては、金融界あるいは経済、産業界、こうしたところから、一つはこの金融検査マニュアルというのが何か法的な拘束力を持った性格を有するのであるものかどうか、そうでないのであれば、それを明記する必要があるのではないかといったような性格論の御意見。それから、金融機関にとりましてリスク管理というのは経営の根幹でございますから、このリスク管理に関して取締役会においてさまざまな決定をするということをチェック項目に加えておりますけれども、こういった点について、リスク管理という大事な話であっても、物によっては取締役会以外の機関にゆだねるというようなことを認めてもよろしいのではないだろうかといったような御意見。それからもう一つ、中小企業向けの与信を含めまして信用収縮という状況が今あるのではないか、これに対する配慮をした検査マニュアルにするべきではないかといったような御意見。そして、ただいま先生から御指摘がございましたが、金融機関の規模あるいは特性、これに配慮をしたものにしていく必要があるのではないか、こういったような御意見をちょうだいしております。  他方、個人の方からは、公的資金金融システム安定のために入れているような現状にかんがみれば、銀行監督というのは厳しく行うべきであり、こうしたマニュアルをつくるということは大変意義のあることであるといったような御意見もいただいております。  こうしたものを踏まえまして、この中間取りまとめを作成いたしました外部専門家も含めました金融検査マニュアル検討会、これを再開いたしまして、二月二十六日から昨日まで四回開催いたしましたが、週一、二回程度の頻度で検討を重ねました。ここでいただきました今御紹介したような論点につきましては、必ず土俵にのせてこれを検討していくということにしております。  なお、その際、金融検査といいますのは預金者の方が本当に安心してお金を預けられる銀行であるかどうかということを調べるのが基本でございますから、そういった意味で預金者の方の立場から見ても満足な内容になっているかどうかという点にも留意をしてつくっていく、こんな姿勢で検討会でも議論が進んでおります。予定といたしましては、今月いっぱい、三月末を目途に成案を得てこれを決定、公表したいと考えております。
  23. 林芳正

    林芳正君 まだお聞きしたいこともありますが、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  24. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 民主党・新緑風会の伊藤でございます。  まず、質問の前に大蔵大臣にちょっと聞いていただきたいことがありまして、時間を少しそれに使います。  実は税関の業務及びその体制の問題につきまして、昨年十二月十日の本委員会において大蔵大臣にお聞きいたしました。大変厳しい状況下での仕事で成果を上げているということについて、大蔵大臣も十分承知されておって、私と同一の認識を持たれておったというふうに当時の答弁でお聞きしております。  私は、そのことは大変よかった、実際上すぐに効果が上がるというふうには思いませんでしたが。実はその後、税関の定員問題で、平成年度に八年ぶりに減員をされた、四名の減員であります。十一年度に十二名が減員されるということになっておるようであります。大蔵大臣が大蔵省内において何とか措置できないかということをおっしゃったということも漏れ承っておるのでございますけれども、現実はそういう状況でございました。  先日、私のところに、税関の第一線で働いている人が来まして、その十二月の委員会質疑について大変感激して帰りました。特に大蔵大臣の姿勢について心確かなるものを感じたような気がいたしました。ところが、現実には減員されたために大分がっかりしたというか、報われないような感じを持ったこともあったようでありますが、それによって士気を喪失したかというとそんなことは全くないわけでありますけれども、頑張っている者にとってはその立て直しにはかなり我慢をしたというような感じで私としては受けとめたところであります。  一月七日に、実は浜田において、税関と島根、広島、千葉県警及び海上保安庁等によって覚せい剤百キログラムが発見、押収されました。こういう日本の社会を不安に陥れる、安定化を失わしめる大変危険な社会悪物品を水際で阻止するという努力が今もずっと続いておるわけでございます。それらは国の安全の問題と十分にかかわる、特に金融の問題についてもそうでありますし、武力の侵入を受けたときに相応する被害というものを日本にもたらす、そういう薬物の侵入であります。特に背後に極めて強力な組織が存在するというふうに言われておりますから、それらが武力行使を現場において行う危険性もあるのではないかというふうに心配をしております。  ぜひこういうことについてなお今後とも御検討いただきたい、早急な手当てを日本の安全のために措置していただきたいというふうに御要望申し上げておきます。  さて、きょうは委嘱審査でございますが、私としては、先ほど林議員からもありましたが、特に財投問題を中心にお聞きしたいというふうに考えております。  一九九八年十二月二十日に、大蔵省は平成十一年度資金運用部の新発国債購入を中止することを公表しまして、これが昨年末以来の長期金利上昇を招くきっかけとなったことは周知のとおりでございます。その後、日本銀行の国債購入をめぐるさまざまな論議を経て、資金運用部の新発国債の購入は継続されることとなったようでございますが、このてんまつは一体どういうことだったのか。  この昨年の新発国債購入中止の背景には、一つには相次ぐ経済対策の実施に伴う国債の増発に加え、資金運用部資金を利用した政府金融機関による貸し渋り対策を実施したために資金が窮屈になったり、長期国債を買い切る余力がなくなったとか、あるいは資金運用部の原資である年金資金が年金の成熟化を受けて期待できない上に、郵便貯金が二〇〇〇年から二〇〇一年に多額の満期を迎えることから、資金運用部資金繰り上、長期国債の買い切りが難しくなったとか、さまざま考えられております。  国債の種類の多様化を欧米並みにということを理財局長が三月十一日の記者会見で言っているようでございますけれども資金運用部による新発国債の購入を中止すると言ったり、または継続すると言ったりしたこの経過は一体どういうことだったのか、真意について大蔵省、大蔵大臣説明をお伺いしたいと思います。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最初に、税関職員の問題につきまして、かねて関心をお示しいただいてありがたく思っております。それにもかかわらず十分なことができておりませんで気の毒に思っております。何とかおっしゃいますようにできるだけいろいろ機動的に考えまして、余り不自由のないようにいたしませんと、今おっしゃいますように、白とか黒とかいう非常に危険な物質の国内への流入を一生懸命防いでおるわけでございますので、その点一生懸命努力いたします。  次のお話でございますが、やがて財投というものの姿が変わっていくということを当然予期いたしておりますので、資金運用部もそういうことを展望しながら資金運用について考えていかなければならない立場にございますことは御理解いただけるところだと存じます。  そういう立場から、平成十一年度あるいは十二年度にかけましてどのように原資の変化があるかというようなことは、実は非常に予知することは難しい問題でございます。その中で、一つだけ恐らく今確かであろうと思いますのは、郵便貯金のいわゆる集中満期の問題でございます。十年前にいたしました定額貯金が満期になりますので、平成十二年あるいは十三年度においてどのぐらいの定額貯金が満期になって郵貯から離れるか、俗に百兆円と言われているあのことでございますけれども、これは実は予測が困難でございます。困難でございますが、少なくとも相当の影響を資金運用部の原資が受けるであろうということは恐らく間違いがない。マイナスの貢献になるかもしれないというようなことを考えております。  それから、平成十一年度予算編成に際しまして、資金運用部に対しては大変大きな資金需要が求められたために、そういう点からも手元が窮屈になるというようなこともございまして、私に相談が暮れにございまして、毎月千億ずつ二度ずっと市中から買ってまいりましたが、一月からはそれをやめたいということがございました。それはそれで資金運用部から申せばもっともなことであると私もいっとき考えましたが、おっしゃいますようなことで、このことがかなり過剰に市中から受け取られたということもございまして、金利が大変に上昇をいたしました。  そういうこともあり、さらによくいろいろ資金運用部について事務当局の諸君とも一緒に検討してみましたところ、いわゆる満期集中というのは傾向としてはもう避けられないと思いますが、実態的にどのぐらいの数字になるのかということも必ずしも明確でありませんし、またその後の運用を見ておりますと多少の余裕がないわけではないというようなこともございまして、とりあえず二月、三月につきましては、もう一遍従来どおり資金運用部が月に二千億円程度、一回千億円程度でございますけれども市中から買おうということを決定したところでございます。  これから先、新年度になりましてどうするかということにつきましては、この間の暮れの教訓、やはり国債発行者としては、バラエティーをつけるとか、あるいは発行の方法についていろいろ工夫するとか、一本調子ではいけないという教訓を得ておりますので、資金運用部のこの運用につきましても市中の様子を見ながら弾力的に考えてまいることが必要であろうと。国会のお許しの点もございますから、その点についても十分に考えながら現実に柔軟に対応していくことにしようではないかと。ただ、それは市況によることでございますから、それも見ながら、まだ将来のことでございますので考えていこうと、とりあえずそんなふうに思っておるところでございます。
  26. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 大蔵省は、一九九八年十一月の緊急経済対策以降、資金運用部における国債引受割合を減らしてきております。九九年度当初予算案では国債発行額七十一兆一千億円、新規財源債、借換債含めての額でありますが、これに対して運用部の引き受けは借りかえのみで二兆八千億円でございます。発行額が前年よりも十三兆円余りふえるのに、引受額が九兆円余りも減る計算でありまして、その結果、市場には前年度に比べて二十三兆円も余分に国債が出回ることになります。  この発行と引き受けのちぐはぐな対応は一体どういうことから起こってくるんでしょうか。同じ大蔵省で扱っていることでそういうことが起こってきております。これは資金運用部の限界を示すものなのか、あるいは二〇〇一年の財投改革をにらんだ予備的対応が始まっているんだろうか。市場への影響、二十三兆円というものが市場に出回るということに対する影響をどう考えておられるのか。大蔵大臣考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  27. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 資金運用部国債の引き受けでございますけれども平成十一年度におきましては、ただいま先生御指摘のように二兆八千億円の借換債の引き受けを予定しているわけでございます。これは、ただいま大臣から申し上げましたように、平成十一年度財政投融資計画等におきまして資金運用部に対しまして相当規模の資金需要が生じてきていることや、あるいは郵便貯金等の原資の動向等を総合的に勘案いたしまして資金運用部の引き受けが二兆八千億円程度になったわけでございます。  従来から、国債発行計画の中で資金運用部の引き受ける割合といいますのは、その時々の資金運用部資金需要あるいは原資の事情等を勘案いたしましてかなり大きく年によって変動しているわけでございます。従来、時系列で見てみましてもいろいろな年がございます。それはそれぞれの年の国債発行額全体の状況資金運用部資金需要あるいは原資の事情等がそれぞれの年によって変動していることによるものでございます。  結果といたしまして、先生今御指摘のように、民間消化分が平成年度の三次補正後に比べますと十兆円程度、十年度の当初に比べますと二十三兆円程度ふえるという形になるわけでございます。この点につきましては、昨年末、市場関係者の方々と十分に意思疎通を図りまして、シ団引き受けにつきまして十年債で二十兆、公募入札で四十兆、これは二十年債、六年債、四年債等の年限債でございますが、また短期国債につきましては二十二兆、こういったような発行計画でもってシ団関係者とも合意を見て国債発行懇談会の御了解もいただいたところでございます。  私どもといたしましては、これから市場のニーズを十分踏まえて適切な発行条件等を設定することによりまして、円滑かつ確実な消化が期待できるというように考えているところでございます。
  28. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 さて、今さら言うまでもございませんけれども財政投融資仕組みは、郵便貯金国民年金等の資金を七年から十年の期間でいわゆる預託利率で調達して、その多くの資金を預託利率と同じ水準の財投金利で平均十七年程度の期間で投融資するものであります。財政投融資政策金融を支えている意義は、その金利市中金利に比べて低目であるということと、長期固定金利であるということであるというふうに思われます。  我が国は、バブル崩壊以降、長期金利低下の道を歩んできまして、平成三年に六%台であった預託利率は現在二・一%と長期にわたり大幅な低下をしてきました。短期金利ではゼロ金利が標榜されるほどの低金利状況となっております。これから先、一体金利はどう動くのかと皆戦々恐々としている状況にあるのではないかというふうに思います。長期金利の動きは財投運用にどのような影響を与えていると大蔵省は認識しているのか。  下がり勾配の中での長期固定金利は、資金運用全体の中ではそれによって利益を上げ得ることができたと思います。常に下がってきました。しかし、今後、長期金利が急速な上昇をするような局面が起こってきた場合に、従来、資金運用部資金運用を支えていた構図がそこで崩れるというふうに見なければなりません。すなわち、長期固定融資で成り立っていくのかどうかという問題がこの金利の動きで起こってくるわけであります。  この点について、資金運用部財政は確保していけるのかどうか、理財局長にお伺いしたいと思います。
  29. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 長期固定金利というのは、いわゆる財政投融資の民業補完という役割から、従来からこうした形での貸し付けをしてきたところでございます。今後の長期金利の動向について見通すことは困難でございますので、確たることは申し上げられないわけでございますが、いずれにいたしましても資金運用部資金運用に当たりましては、やはり今後の金利の変動ということも考えていかなければなりませんので、私どもといたしましては適切なALM管理、資産負債管理を図りつつ、効率的な運用に努めてまいりたいというように考えております。  資金運用部の主要な原資は郵便貯金、年金等でございますけれども、この原資の動向あるいは財政投融資改革を見据えて、今後、資金運用部資金の調達の方がどうなるのか、そして貸し付けの方はどうなるのか。調達、運用のいわゆる期間のミスマッチリスクをどのように考えていくのかということは大変大きな課題でございまして、特に資金運用部資金の貸付金利のあり方につきましては資金運用審議会懇談会とりまとめにおきましても、「財政投融資の対象事業の性格やニーズを踏まえ、基本的には、貸付期間に応じ市場金利を基準として設定すべきである。」等の御指摘をいただいておるところでございます。こういった御指摘も踏まえ、今後さまざまな角度から検討してまいりたいと考えております。
  30. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 今の答弁で果たして大丈夫なのかなという気がするわけでございます。というのは、長期金利が、これ以上下がるということもあり得るかもしれませんけれども一般的には上がっていくんじゃないか、変化が起こってくるんじゃないかというふうに見られています。  中川理財局長は、本日の新聞記事によりますと、五年債などを課題として検討していくということを言っております。財投の性格からいくと、長期固定低金利ということからすれば五年債、今では七年償還となっていますけれども国債引き受けなんかでも資金財投債となっているわけですが、そういうものを引き受けていった場合に、長期固定金利による十七年から長いものは二十五年、三十年というそういう事業に対して果たして効果的な資金注入ができていくんだろうか。  私が先ほど心配しましたのは、長い間の下り勾配の長期金利の低下傾向の中で、四%の預託率で引き受けたものを四%で運用する。資金を返還するのは七年で返還する、しかし貸し付けは平均十七年と。七年経過する間に利率は四%が三%ぐらいに下がってきたわけです。そうすると、四%でさらに十年の運用をするわけですから、そこに利ざやが生まれるわけですよ、個別には別にしても、総体として。そうしますと、今後下り勾配の低下ということがなくなってきたときに、財投の、利益を上げないまでも、運用を確保する条件が変わってしまうんじゃないかと、市場の。そうしたときに財投は根幹から成り立たなくなるんじゃないかというふうに心配をするわけですよ。そのことについてどうなのか。
  31. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 今、先生から御指摘ございましたように、現状は郵便貯金、年金の資金運用部に対する預託は大部分が預託期間七年でございます。それに対しまして、貸し付けの方はただいま先生御指摘のように十七年程度になっておるかと思いますが、預託の方は七年で満期一括償還ということになっております。それに対しまして、各財投機関に対する貸し付けの方は元金均等あるいは元利均等ということになっておりますので、平均で十七年の貸し付けをいたしておりましても、デュレーションということで見ますとその半分近くになるわけでございまして、おおむね預託期間と貸付期間が見合っているということで長い間運用してきたわけでございます。  ただ、厳密に言いますと、先生おっしゃるように、そのデュレーションということで見ましても預託期間と貸付期間の間に若干のずれがある。確かに貸付期間の方が若干長かったと思います。ただ、これは今申しましたように七年と十七年の差、十年長いということではございませんで、元利均等、元金均等ということでずっと残高が減っていきますので、ほぼマッチングしていたわけでございますけれども、厳密に言えば若干貸し付けの方が長いと。何とかそこで預託金利と貸付金利を同一にいたしましても、そこで運用経費を出したりあるいは短期運用部分で逆ざやになったりしておりましても、全体として収支相償う形で運用できてきたことだと思います。  今後の財投の運営でございますけれども財投改革の後、例えば財投債で調達するということになりますと、いろいろな期間の財投債を、もちろんこれはその時々の市場のニーズもございましょうし、いろんな要素を勘案いたしまして適切に発行していくということになろうかと思います。今後はその貸付期間とそれから調達期間がマッチングするような形で、いわばALM管理が適切に行えるような形での調達、そして場合によったら、貸付期間の方も長期固定ということだけではなしに、例えばマイルドな変動金利制を導入するとかいろいろな工夫をしながら円滑な運営が、そしてまた財政投融資の効果が今後とも発揮できるような姿を考えていかなければならないと考えているところでございます。
  32. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 ただいまの答弁は財投改革の中にかなり踏み込んで考えておられることが私にも推察できまして、もう少し私の方も考えて、さらに別の機会でやってみたいと思っています。  資金運用部の主要な原資であります郵便貯金が、先ほど大蔵大臣も触れておりましたけれども、現在二百六十兆円の残高となっています。二〇〇〇年度から二〇〇一年度にはかつて一九九〇年から九一年度に大量に預けられた定額貯金が十年の満期を迎えることになります。九八年度末で六割程度の元金が残っていると言われておりまして、今後多少払い戻しがあったとしても、大臣がおっしゃるように百兆円の規模の満期が二〇〇〇年から二〇〇一年度にかけて到来するわけであります。  このうち、二〇〇一年にはいわゆる財投改革が行われて、資金調達は財投債等の発行によるとされております。二〇〇〇年には間に合いません。また、二〇〇一年にも本当に財投債は十分な額を発行できるのでしょうか。運用の仕方に対してもさまざまなバリエーションをつけなきゃならないということになったときに、財投債の発行についてどのような考えでいるのか、お伺いしたいわけです。これが恐らくは資金運用部の運営について重大な転換点になるというふうにだれしも思っているわけでありまして、さらにどのように考えておられるか、原資が非常に逼迫する中で長期固定金利政策金融は果たして維持できるのかどうか、この辺についてお聞かせいただきたいと思います。
  33. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 平成十二年度、二〇〇〇年におきましては従来どおりの財政投融資計画を編成していくということになるわけでございますが、先生御指摘のように、郵便貯金の集中満期、これが平成十二年度から始まるわけでございます。ただ、この集中満期につきましては、どの程度の金額が郵便貯金から流出するのかにつきましては、これはいろいろな今後の要素があるかと思いますので、現時点で予測することは困難でございます。  私どもといたしましては、平成十二年度財政投融資計画、これはやはりいろいろな面で各般の要請にこたえられるように適切な運営をしなければなりません。そのためにはいろいろな工夫をしていかなければならないかと思いますが、いずれにいたしましても十二年度財投編成の過程でいろいろな工夫を検討しながら、適切な運営が図られるように努力をしてまいりたいと考えております。  そして、十三年度以降の財投の姿、これはまだ財政投融資改革案につきまして政府部内でまだ検討中の段階でございまして、まだ国会にお諮りできるような段階にはございませんので、財投債等の問題につきまして現時点で確たる姿をお示しすることはできないわけでございます。いずれにいたしましても、財政投融資改革後も財政投融資に課せられた各般の需要、また機能というものが今後とも有効に効率的に発揮できますように配慮していかなければなりませんので、そうした点を十分に入れて今後検討を進めてまいりたいと考えております。
  34. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 郵政省に、これは通告していなかった課題でありますけれども、ただいま理財局長の答弁にありました元利合計でおおむね百兆円規模と言われるこの定額貯金がどのぐらい郵便貯金として引き続き残るようになると予測しているか、また目標としているか、お聞かせいただきたいと思います。
  35. 松井浩

    政府委員(松井浩君) 先ほど来話題になっておりました定額貯金の集中満期でございますが、先生御案内のように、前年度の三月末で申しますと約六十三兆の残高がある、元本があるということでございまして、直近で申しますと大体三兆ぐらい減っているということです、おろされる方がいらっしゃるということでございますが。それに恐らく平均して八%ぐらいの利息がついていますので、十年いっぱいだと十年分の約八〇%金利がつくということで、大体百兆円強ということになるということだと思いますが、問題はその後それがどのように再預入されるのかということでございます。  御案内のように、利子課税がございますから、利息に対して二〇%の税金がかかります。私ども郵便貯金をお預かりしておりますから、お客様の分をお払いするということは間違いなくございます。  それから、限度額が一つございます。かつて預けられたものも利息が加わりますと、今度は元本に編入されまして一千万円の限度額をオーバーするものが出てきます。そういうこともございます。ただ、それがどの程度かということはすぐには申し上げられません。  それとか、あと実際には他の金融商品との比較選択ということになろうかと思います。信用度の問題だとかあるいは魅力、ハイリターンを望む、そういう可能性に関する選好が預金者の側に働くかどうか、他の金融商品との比較ということもございます。それから、郵便貯金のその時点における金利水準だとか、金利上昇局面か下降局面か、いろんな要素が絡みますので、先ほど来お話がありますように、再預入率がどれだけになるのかということを端的に申し上げるのは困難といいましょうか、今の時点で申し上げるのは無理があるというふうに考えております。  過去の経験で申しますと、十年前では七割の再吸収を目標にして、その時点においては大変高金利になったとか限度額の改定もあったとかいろんな予想しなかった状況がありまして、今とはまた違う状況がありましたのでかなりの程度で再吸収されたという過去の経験がございます。  ただ、同じ条件が次の平成十二年度の時点で生ずるかどうかについては、今はだれも申し上げられかねることかなというふうに考えております。
  36. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 答弁のとおりだと思いますけれども、何せ額が百兆円でありますから、およその見当をつけて、どのぐらいまた郵便貯金資金に残るかというのは察しがつくわけでございますけれども。  理財局長に先ほどの答弁とのかかわりでお聞きしますが、二〇〇一年の財投改革、まだ財投債について発表できる段階ではないと申しておりますけれども、二〇〇一年で財投改革が行われると。郵便貯金資金が再預入されて、今の制度資金運用部に義務預託ということにここの集中満期はなっていくんだろうか。  新しい制度下において郵政省自身の判断によって運用されるというか、任意の預託は行えるかもしれないけれども財投債等の方向に金が流れていくかどうか。二〇〇一年を目途に改革するでありますから、果たして二〇〇一年のいつなのか、二〇〇一年の四月一日からやるのかどうかということは資金量の問題とのかかわりで極めて微妙だと思うんです。その辺のところはどうなんでしょうか。
  37. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 財政投融資改革スケジュールにつきましては、先ほど申し上げましたように、中央省庁等改革基本法の規定にのっとり、私ども関係省庁と今スケジュールにつきましても検討を進めているところでございます。現時点におきまして、何年の何月からというようなことは申し上げられるような段階にはなっておりません。  ただ、いずれにいたしましても財政投融資改革市場に影響を与えないように、これは資金運用審議会懇談会とりまとめにおきましても、激変緩和措置を十分にとって、十分に時間をかけてその辺の影響が大きくならないよう経過措置を真剣に考えるようにというような趣旨の御指摘をいただいているわけでございます。  いずれにいたしましても、中央省庁等改革基本法にありますように、市場原理にのっとった資金調達ということになりますと、財投機関債あるいは財投債といったような債券発行による資金調達になるわけでございますので、今の預託がそういった形に変わることに伴う激変緩和措置というものは十分に講じるように関係省庁とも協議を重ねて、円滑な移行に努めるようにしてまいりたいと考えております。
  38. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 さまざま質問を用意して通告したのでありますが、時間がありませんので少しはしょりまして、それぞれの方は別途の機会にやりたいと思っております。  後々のために理財局長にただいまの財投改革にかかわって一つ聞いておきたいと思います。  平成九年十一月に資金運用審議会懇談会とりまとめということで「財政投融資抜本的改革について」という文書がございます。その中で、自主運用のあり方として、大蔵省はもちろん御存じでありますが、   郵便貯金及び年金積立金の自主運用については、結果として納税者の負担となるような仕組みは是認できるものではなく、郵便貯金及び年金積立金が公的資金である限り、運用責任の所在を明確にすることに加え、安全・確実な運用を基本とすべきである。 云々、   郵便貯金の自主運用については、運用の失敗が結果としての国民負担につながることのないよう、独立採算の事業である郵便貯金事業の責任において対応する仕組みが必要である。 さらに、   年金積立金の自主運用については、期待した運用収益が上がらなかったり損失が生じたりすれば、年金の給付水準の引下げ又は保険料の引上げといった形で年金加入者が負担することにならざるを得ないことから、運用リスクをとることについては慎重でなければならない。 ということがございます。これはまさにそのとおりなのであります。  さて、財投資金が自主運用となった場合、民法六百四十四条の規定によって、受任者、すなわち郵政省、大蔵省、政府金融機関などに受任者としての委任事務を処理する義務、すなわち注意義務、忠実義務を負うことになると考えますけれども、これについてはどうでしょうか。
  39. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 財政投融資、特に資金運用部資金運用につきましては、これは資金運用部資金法の規定にのっとりまして確実かつ有利な運用をしていかなければならないというふうにされておりまして、これは当然財政投融資改革が行われましても同様でございます。現在は同様であるというふうに考えております。  現在は国債とか地方債への運用、そして国の監督権限が明確にされております特殊法人等への貸し付けといったような、まさに確実で安全な運用に限定されているところでございます。そしてまた、この資金運用部資金運用計画を定めるに当たりましては、資金運用審議会にお諮りをいたしまして、また長期運用法の規定にのっとりまして、国会の議決もいただくようになっているわけでございます。  私どもといたしましては、今後ともこうした確実で安全な運用に努めるという方針に変わりはございません。
  40. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 その方針に変わりはないのはわかるんですけれども市場原理に基づいてということが入ってくるわけですよ。自主運用とか自主運用で集められた金が別の形で財投債、財投機関債というふうになってきたときに、例えば年金基金の運用について、厚生年金法で個別に注意義務や忠実義務について規定しているようなことが求められてくるんじゃないかというふうに私は思っているわけです。これはぜひまた後々見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。  さて、最後に大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  我が国は現在、大きな転換期にございます。金融の自由化が進展し間接金融優位の時代から直接金融の比重が高まる中で、市場においても、さまざまなプロジェクトも短期的に資金回収ができるかが厳しく問われるようになってきております。財投でも、個々のプロジェクトについては将来にわたるキャッシュフローを踏まえて審査していくように聞いておりますけれども、短期的な視点では政策金融は成り立ちません。また、直接経済的な価値にあらわれない外部経済を踏まえなければ政策金融ということにはなりません。  ビッグバンの中で財政投融資が我が国の社会基盤、インフラ形成にどのように役立ち得るのか、あるいは役立ち続け得るのかということについて、大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどからるる、将来、現在の財投のあるべき姿についてお話があり、また伺っておって非常にもっともだと承るような御懸念もお話しいただきました。  いずれにしても、我が国全体が変わらなければならない時期でございますが、長い間やってまいりました財投というものがいわば一変をするわけでございます。今まで果たしてまいりました機能も少なからずございましたが、またその弊害も言われておりますので、それに対して、いわば過去にこだわらずに新しい機能にしなければならない大改革になると思います。資金運用部そのもの資金運用は、先ほど理財局長が申しましたようなプリンシプルは変わらないと思いますけれども、しかし財投債あるいは財投機関債といったようなものの発行等々を通じましていろんなことが大変に変わってまいらなければなりませんので、今十分な未来図が描けない状態ではないかと思います。  もう余り時間もございませんから、これからどういうふうにしていくか、政府全体を挙げて、またおっしゃいますように外部経済のことも考えながら、新しく行く道をはっきりさせてまいらなければならない非常に大切な時期に差しかかってまいったと思います。またいろいろ御示唆もいただきながら、間違いなく未来の構図を描いていきたいと思います。どうぞよろしく御指導賜りますようにお願いを申し上げます。
  42. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 どうもありがとうございました。  終わります。
  43. 益田洋介

    ○益田洋介君 まず、大蔵大臣に御所見をお伺いしたいわけでございます。  借金地獄と言われておりますのは古今東西を問わず個人、企業にあるわけでございますが、国家におきましても、借金地獄にあえいでいる貧困国の債務が今非常に肥大化しているという現状がアフリカ、アジア、それから中南米諸国において見られるわけでございます。これはそれらの国家におきましては今大変大きな負担になってのしかかってきております。やはり債務の救済がなければ貧困からの脱出というものは基本的に望めないわけでございまして、これはひとりそうした関連の貧困国の問題でなくグローバルな目で、私ども日本を含めた先進諸国あるいは国際金融機関が真剣に取り組んでいかなきゃいけない問題であるというふうに考えるわけです。  この救済問題に関しては、一九八〇年代から実際に議論がなされております。特にこの段階ではIMFが先に積極的に乗り出した。そして、六月に行われますG7、これは大蔵大臣も御出席なさるわけでございますが、いわゆるケルン・サミットにおきましてはシュレーダー・ドイツ首相が先頭に立って、もっと大幅な債務の削減をこれらの国家になされなければ先行きが非常に不安である。貧困というのは、清貧洗うがごとしというのは、これは清く潔いという観点からすればいいんでしょうけれども、貧困が社会悪を招く、犯罪を誘発するということも多いに考えられることでございます。  日本は今四十一カ国に対して円借款で約九千億円の債権を持っておりまして、G7の中ではフランスに次ぐ債権国である。シュレーダー・ドイツ首相の決意もさることながら、アメリカ政府、またイギリス政府は同調して、今度の六月のケルン・サミットではこの問題を積極的に討論したいと。気になるのは、日本がこの件に関して沈黙を守っている。こういうときこそ第二の債権国である日本がもっと積極的に、世界のこうした経済状況の中にあって救済の手を差し伸べる件について積極姿勢を示さなきゃいけないのではないかというのが私の意見でございますが、大蔵大臣、いかがお思いですか。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的にはただいま益田委員の言われたように考えております。  この問題は、従来、いわゆる首脳のサミットがございますたびにフランス等々から、殊にサブサハラについて提起されておりまして、常に首脳間の話題になっておるところでございます。殊にことしのケルン・サミットでは、たまたまここで二〇〇〇年というものが終わって新しいミレニアムを迎える、そのため、幾らか宗教的な背景も持ちまして、この際こういう長期債務を処理すべきではないかという議論が盛んになっておりますことはおっしゃいますとおりでございます。我が国もまたその中では結構大株のいわば債権者であることも事実であります。  正直を申しますと、いろいろ申したいことがないわけではありません。我が国以外の多くの国がその債権債務の関係は植民地時代の関係にさかのぼる、そういう自然な関係、宗主国と申しますか、もうそういう言葉はございませんけれども、そういうことである部分が相当多かったのに反して、我が国はもとよりそういういきさつはございません。いわばより純粋な援助をしてきたという立場でもございますので、言いたいことは幾つかございます。ございますが、ただやはり一つにはただいま益田委員の言われるようなことになるであろうと思います。  ただ、その際に、我が国の従来の考え方としまして、そういう全面的な債務免除をいたしました場合にはニューマネーをそこへ投入することが非常に困難になる。これは会計検査院と申しますか、いわば債務の支払いができなかった国に対して新しくまたニューマネーを投入するのかということはいろいろに議論の存在するところでございますので、そこのところでちょっとひっかかりがございます。  恐らく債務の免除をしてほしい国こそ新しい資金需要が大きい国でございましょうから、免除はいたしますがそのかわりこれからは当分お金は差し上げられませんというようなことでは、これは恐らく話はおさまらないのかもしれないというようなことをどのように、これはむしろ国内の問題が主でございまして、G7あるいはサミットの場なんかでそういうことを申しましてもどうしようもないことでございますが、国内的にそういう難しい問題がございますので、どういうふうにいたしますか。いずれにしても、サミットまでに基本的なその辺の考え方は決めていかないといかぬだろうと思います。  あれこれ申しましても、やはり益田委員の言われるような、基本的にはそういう態度にならざるを得ないのだろうと思いますけれども、いろいろ検討すべき事項がございます。
  45. 益田洋介

    ○益田洋介君 ぜひ十分に英知を集めて御検討いただきたい、そしてケルン・サミットに臨んでいただきたいと期待をいたしております。  おっしゃるとおり、援助をいたしましても有効に利用されないと、当然のことながら公正で透明なチェック手段というのも必要になってくるでございましょう。さらに、私個人としましては、債務を削減した分は教育ですとか医療機関の充実、また貿易産業の育成などに回していただく、これがやはり民主的で平和的な国家を助成していくための一つのポイントではないかというふうに考えております。  次の点でございますが、先般、経済戦略会議の最終報告が発表されました。さまざまな面から問題の核心をついた非常に実務的なプログラムであるという評価がございますが、その一方で、相変わらずスモールガバメントを標榜し続けている。その裏づけとしては、規制緩和規制緩和ということをオウム返しのように言っている。  私は、本来の政府の果たすべき役割というのは非常に過小評価されている面があるんではないかという印象を受けるわけでございます。規制緩和はもちろん大事でございますが、同時に、その先にどういうふうな新しいルールあるいは秩序づくりをするのか、その議論がもうそろそろなされなきゃいけないんじゃないかと思うわけですが、この点はいかがでしょうか。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 規制緩和ということは、従来、行政がいわば消費者に対して過保護であったという反省に基づいて、行政も退く、そのかわりあとは消費者御自身の御判断ですよと、そういう部分をたくさんに持っておるわけでございます。それは決して間違ったこととは思いませんけれども、今まで我が国の消費者がとかくそういう過保護な状況になれてまいりましたから、今度はあなたの責任ですよと言われたときにちゃんと責任のある選択ができるかどうかということは、問題なしといたしません。  それはしょせん学ぶしかないのですけれども、しかし同時に、消費者が賢い消費者であるためのマニュアルであるとかあるいはそのための法制であるとかということがまた整備されなければならないということは、これもまた統制解除後の問題としてしばしば議論されるところであります。  また同時に、いわゆる規制緩和ということは、ともすればレッセフェールになりやすい。それが目的でございましょうが、その際生ずる弱者に対してのセーフティーネットをどうするかということも同じように議論されつつございますし、またそういう例は先進国でも多うございます。  ですから、今としましては、ともかくこの規制を取っ払うということがまず先決であろうと思いますが、同時にただいま益田委員の言われるような問題が当然あるわけでございます。恐らく戦略会議が主としてエネルギーを注がれた部分は、本当に規制解除ということをしっかりやれよ、まずそれが第一ですよということを言われようとしたのであろう。しかし、セーフティーネット的な部分もその中で見えますので、決してそれを忘れておられるわけではないのでしょうが、主たる重点をまず規制解除に置くというスタンスであったのではないかと思います。
  47. 益田洋介

    ○益田洋介君 さらに、最終報告ではこのように述べております。デフレの回避と長期金利上昇を抑えるために国債買い切りオペ拡充などあらゆる手段を総動員する覚悟が政府にとって必要であると。  これは確かにおっしゃるとおりなんですけれども、簡単に考えても、本来は物価が下がれば当然買い手が増すわけでございます。そして、そういうことによって需要が喚起され、マーケットで経済が活性化されるというのが自然の摂理でございますから、必ずしも物価が下がることは悪いんだ、デフレは悪いんだということではないという気がいたします。  またさらに、金利に関しましては、金利が上がれば当然資金が集まりやすくなるわけでございます。したがって、長期金利を利潤率とリスクに見合った適正な水準、こういう状態に戻すということは資金の流れをよくする一番の近道ではないかというふうにも考えられます。  ですから、この報告で、デフレの回避と長期金利上昇を抑えるために国債買い切りオペ拡充などいろいろな手段を用いる覚悟が必要だという一方で、私が今言ったような議論も当然出てくるんじゃないかと思います。むしろ、私の言っている方が経済原理に沿った考え方あるいは政策の基本になるんじゃないかというふうに、そういう疑念が生じたわけでございますけれども大臣、いかがでしょうか。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あの報告を拝見しますと、長期的なもの、短期的なもの、いろいろあるように読んで思っておりますけれども、いずれにしても経済原論的なことを言おうとしておられるようには思いません。  今、益田委員の言われましたことは私も実は感じていることですが、その部分は恐らく短期的に今のこういう現象に素早く対応するのには何かという、かなり短期的な部分の叙述であろうと。全体にそういう部分ともう少し十年ぐらいを展望した部分とございまして、それはそういうふうに読み分けるのかなと思って私は読んだわけでございます。
  49. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは次に、バブル崩壊後、長い間日本を取り巻いてまいりました二つのリスク、信用リスクと市場リスクが若干減少し始めているという兆しが見えている。これは必ずしも長期的なことだというふうに楽観はできないわけでございますが、そういった兆しがあります。  信用リスクにつきましては、七兆四千五百億円の公的資金の大手十五行に対する投入、賛否両論、また将来的に結果がどうなるかというのはもう少し慎重に見守らなきゃいけないわけでございますが、これは明らかに金融不安を和らげて、信用リスクの減少に貢献していると私は考えるわけでございます。  その証左としまして、例えばスイス系の大手証券が非常に日本経済に懐疑的だったわけでございますが、先週から邦銀保証の社債の買いに出始めている。この結果、上位の邦銀が保証した一年物の社債の場合、LIBOR、ロンドン銀行間取引金利に対する上乗せ幅が一週間で実に半分になっていることや、アメリカやイギリスの機関投資家が三月にかけて日本株の組み入れ比率を引き上げようとしている。これは言ってみれば、現況においては信用リスクの低下のメカニズムが働いているわけで、非常に明るいニュースであると言えます。  一方で、市場リスクについては、きょうは日銀総裁がお見えになっていないので伺いませんが、日銀による昨今の捨て身のゼロ金利が功を奏しつつある。きょうは政策決定会合で実際ゼロ金利に近い状態になった、コール金利がゼロ金利で、日銀の誘導でもう緩和余地がなくなっている。だから、経済指標としては役立たなくなっている。現在、日銀の本店でこの問題、コール金利にかわる新指標の検討をしているところだということでございます。いずれにしましても、そういうことで信用リスクと市場リスクは減少しつつあるように思います。  この点について大蔵大臣はどのように観察されていらっしゃいましょうか。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は日銀総裁とそのことで最近お話しいたしておりますが、ともかくこの際、徹底的に低金利の誘導をしようと。〇・〇二というようなことも、これは実はオーバーナイトとしては手数料を払えば何にもなくなるような金利でございますけれども、それもやむを得ない。それによって期間物の方へ多少それが移っていって、そして現実には国債の価格にまで影響しているわけでございますが、次のステップというよりは当分こういうことで為替にも悪い影響はないし、かなり思い切ったことではあるが、これで様子を見ていたい。量的なこともお考えであろうと思いますけれども、当面この政策は成功しつつある。ただ、内外ともにオーバーナイトがゼロという金利は極めて異常なことでございますので、次にどういうことをお考えなのか、何も承っておりませんが、市場を慎重に見ておられるということではないかと思います。  財政の方の立場から申しますと、とりあえずかなり好ましい現象があちこちに出ているように思いますし、国際的にもここでジャパン・プレミアムがなくなりました。ジャパン・プレミアムがなくなりましたのはしばらくぶりのことで、これは柳沢大臣の方で金融の信用、いわゆる公的資本の問題を処理されたからでもあると思いますけれども、内外ともにいい効果が当面あらわれているように見ております。
  51. 益田洋介

    ○益田洋介君 さまざまな指標で、経済のファンダメンタルズで少しずつ明るさが見えかけてきたような印象がございます。  昨今の株高でございますが、これをてこにして政府が景況感を明るくして経済政策の効果を高めようとする、それはいいことなんですが、九〇年代のバブル崩壊のときは非常に株高だったわけです。ところが、それは裏づけのない株高だったわけですね。すぐにメッキがはがれてしまった。株高だけに頼っているのは非常に危険だと思うんです。やはり実体経済と、それから企業がどのようにしてその株高を利用していくのかということにかかってくるのではないかと思うわけでございます。  そこで、追加的な経済政策を進めるべきだという論議がある一方で、今この株高のうちに情報通信産業ですとかソフト産業などの規制緩和を実行して、こうした産業が今本当に足をしっかり踏ん張って産業として育ってもらいたい。そして、現在の雇用不安をこういう面で、実際は受け皿を新たにつくることによって失業率も低下させていく。そうして、また規制緩和に戻ってしまうわけでございますが、こうした情報産業、ソフト部門の規制緩和を今政府検討すべきじゃないかというように考えますが、いかがでしょうか。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 詳しくは存じませんけれども、今市場評価されている株というのは、いわゆるかつての大型株であるよりは大小にかかわらず新しいリストラクチャリングを積極的にやっている、そういう部分市場が買っているように聞いております。それは今おっしゃいますように、二十一世紀に向かって競争できる、あるいはそれに対応して太刀打ちできる産業、サービスを市場評価しているということになるのではないか。このたび御審議中の予算におきましてそのような二十一世紀に対応する部分に重点を置いておりますのも、殊に情報産業はそうでございますが、そのような考えでございます。
  53. 益田洋介

    ○益田洋介君 昨年の十月に政府・自民党、当時の公明、衆議院では平和・改革と言っておりましたが、それに民主党の三者が協議をいたしまして、二〇〇〇年の一月までに財政金融の完全分離をするんだということで合意がなされました。それから半年もたたない今月、政府・自民党は二〇〇〇年一月を一年間先送りにして二〇〇一年に、財金の完全分離でなくて、金融行政の企画立案については金融庁設置後も大蔵省と金融庁の共管事項にする、こういうふうに考え方を変えてきている。野党がこの政府案に対して態度を硬化させておりまして、今なされておる議論はどういうようなことかわかりませんけれども金融行政の企画立案は金融庁の専管とするけれども、一方で大蔵省と協議する形を残すなどと、何かはっきりしない。  大蔵大臣、この点についてどう思いますか。今、金融財政の分離をきちっとするための一番いいチャンスだと思いますよ。こんな総花的などっちつかずのような話をしていたんでは、私は金融改革、税制改革はできないのじゃないかと思います。せっかくいいチャンスに立ち至っているのじゃないか、そう思いますが、いかがですか。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは昨年の国会におきましていわゆる三党のお話し合いがあり、それに従いまして今お話しのように三党間での御協議が今日に及んでおるわけでございます。  確かに時間的にはかなり迫ってまいりましたが、いろいろそれなりに三党間でただいま現在御協議中のことでございますから、私どもとしてはまさに渦中の役所になるわけで、これにつきまして何か申しますことは私は控えておるべきだろうというふうに存じておりますので、お尋ねではございますが、そのように考えております。
  55. 益田洋介

    ○益田洋介君 今月九日、当財政金融委員会におきまして、今月の一日に大手流通会社であるダイエーと西武百貨店にそれぞれ開銀が三百億円の融資を申し込んで、さらに長崎屋からは開銀に対して百億円の融資を申し込み、三月中にこの融資が受け入れられる見込みである、さらに七日明らかになったところによると、今度は鉄鋼大手のNKK、それから住友金属工業、神戸製鋼所に対してそれぞれ四百億から四百五十億の融資を開銀が決定していると申し上げました。  私がこのときに大蔵大臣にお伺いしたのは、昨年十二月に開銀法を改正したその背景にあった考え方というのは、中小企業の貸し渋りはもういかんともしがたい状態になっている、だから政府として三兆円の融資枠、そして二兆円の債務保証の締めて五兆円の枠を開銀に与えて中小企業に対する貸し渋り対策の方途にしようじゃないかということで、私どもは十二月に当委員会において真剣に審議をした。法案が通って出てきた結果は、大企業にだけ貸し出ししている、この現状をどう思いますかというのが私の質問でございました。  これに対して、大蔵大臣は、わかりました、今おっしゃいました企業に開銀はずっと融資をしておりますし、それをやめろと言ったわけではございませんが、この間の改正は開銀に新しい機能を与え、おっしゃるとおり大きな精力を注いでいくという趣旨であるし、総裁もここで答弁をなさっておりましたのを覚えております、今のお話は私から銀行に伝えますと。  そして、私はさらに、この三兆円、二兆円、それぞれの枠を大手企業にだけ使い果たしたらもう中小企業に回るのがなくなります、その際どうするんですか、新しい枠を設けるんですか、新しい枠を設けても、また大企業に貸すんだったら同じじゃないですかと、そういうふうに質問しましたところ、大臣は、片っ方の方に貸す金がないというのは計数上の連関がないと思いますが、そういうことをするから与えられた中小企業への務めを果たせないというようなことが少なくとも起こりませんように私の方から開銀に伝えますと、このように答弁なさっている。これは伝えていただきましたか。その結果はいかがでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだって御指摘のございましたことは私から開銀総裁に伝えました。及び、十二月の法改正によります中堅企業への新しい融資がどうなっているかということについても総裁から御説明を受けました。  それによりますと、与えられた中堅企業に対する新しい制度が開銀によって極めて順調に活用されておるということを知りました。その詳細につきましては、要すれば関係者から御説明を申し上げますけれども、その点については遺漏ないようにやっておるように判断をいたしております。  なお、開銀は本来の業務がございます。それはいわば大きな方の企業に融資をしていくという、このことは本来どおり行って、その上で新しい業務を立派にしてもらいたいということを言っておりますので、本体業務が大きいということは、これはもともと大きいのでございますから、それと中小に対する比較で、何か中小、中堅企業に十分でないというふうに考えるべきではないであろうと。しかし、御趣旨は十分に伝えまして、銀行もそのような努力をさらにせられるように聞いております。
  57. 益田洋介

    ○益田洋介君 終わります。
  58. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  きょうは税務行政に関して伺いたいと思います。  今ちょうど確定申告の時期で、税金に対する国民の関心が高まっております。また、ことしは国税庁が設置されてちょうど五十周年に当たるそうでございます。そういったことで、国税庁が発行している「国税広報」というものを見せていただきますと、薄井国税庁長官が訓示をしておられるんです。そこでは、「この時期」、この時期というのは確定申告の時期ですが、「この時期が最も国民の税への関心を集める時期であり、税務行政に対する国民の信頼をより高めるため、納税者の立場に立った的確な対応をお願いしたい。」というふうに訓示しておられます。非常に結構なことだと思うんです。こういった訓示があるというのも、ずっと現場において税務行政のトラブルが起きてきておるということが背景にあるわけです。  最初に伺いたいんですが、この長官の訓示は一九七六年に定められた税務運営方針、これに沿ったものだと思います。それでは、この方針の職員への徹底、これはただ単に訓示するだけじゃないと思うんですが、どういったことがなされておりますか。
  59. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 税務運営方針につきましては、国税庁で行っておりますそれぞれの研修その他において徹底を図っているということでもございますし、各税務署におきましても徹底を図っております。
  60. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 研修をしておられるようなんですが、それがきちんと履行されていない。それどころか、税務行政に対する国民の信頼を崩すといいますか、そういった事例が相次いでおります。しかも、人権じゅうりんとしか言いようのないような事件が頻発していることを私は指摘したいと思うんです。  まず、具体的な事例を一つ挙げたいんですが、京都の北村正治さん外二名が原告になって国を相手にした損害賠償訴訟事件というのがあります。これは平成七年三月に京都地裁で判決が出て、そして昨年三月に高裁の判決、既に確定した事件なんです。この内容というのは、任意調査において承諾を得ることなく自宅に上がり込んでたんすなどをかき回した、そういったことが質問検査権行使を逸脱した違法行為だというふうに認定された事件なんです。  私がこの事件を取り上げるのは、質問検査権を逸脱した行為、それが特異なものじゃないということなんです。いわゆる料調と言われておるそうですけれども、国税局の資料調査課の職員による検査、これが普通に行われてきたわけですけれども、この国税局が任意調査では当然の行為として職員を指導してきたことが違法とされたわけです。だから、非常に重大な問題であります。  この判決は既に確定しておるわけです。昨年の四月ですから、既に一年近くたっております。そこで、国税庁はこれをどう受けとめて、税務行政にどう生かしてきているのか、御説明願います。
  61. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 一般論として申し上げさせていただきますと、税務行政を執行するに当たりまして、税法に基づいて正しくその権限を行使し、行き過ぎることのないよう配慮しているところでございます。  今、先生からお話のありました判決に係る税務調査については、国側の主張した事実関係が裁判所に認められなかったということは残念でございます。今後とも行き過ぎることのないように配慮していきたいと考えているところでございます。
  62. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 今のそれだと、判決では国が主張したのを認められなかった、残念だと。もう既に確定しておるわけですけれども、どうも裁判所の判決は間違っておると、そういうことですか。
  63. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) これも一般論でまず申し上げますと、税務調査自体、公益的必要性と納税者の私的利益との考量において社会通念上相当と認められる範囲内で納税者の理解と協力を得て行うものでございまして、与えられた権限の範囲内でそれぞれ適切に実施してきているというふうに我々は考えております。  いずれにしましても、本判決を我々は厳粛に受けとめさせていただきつつ、今後とも行き過ぎることのないよう配慮していきたいということでございます。
  64. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 厳粛に受けとめた、行き過ぎることのないようと言うんですが、行き過ぎておるという判決なのか。そうじゃないんですよ。今申し上げましたように、あなた方が料調と称してやっておる行為が違法なんだ、承諾なしにやることが違法なんだと、それは任意調査の範囲を超えているんだというのが判決でしょう。指導していることがちょっと行き過ぎたからということじゃないんですよ。あなた方が指導してやっているそのことが違法だとされているんです。そのことをどう考えているんですか。それでもって厳粛に受けとめたと言えるんですか。
  65. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) ただいま御質問のありました資料調査課における調査は、まさに先生も言われますとおり、あくまでも各税法に規定されている質問検査権に基づく任意調査でございます。その実施に当たりましては、調査の公益的必要性と、先ほども申し上げた納税者の私的利益との考量において社会通念上相当と認められる範囲内で納税者の理解と協力を得て行っているということは署と同様でございます。  ただ、税務調査におきましては、備えつけられた帳簿などにつきまして、単に計算、集計等を行って形式的にその正否を検討するだけではなく、帳簿の記載内容が事業等の実態を正しく反映しているかどうかなど、各種の書類、物件等から多角的に検討する必要があるということでございます。  こうした税務調査の必要性に基づきまして、場合によっては納税者の了解を得た上で居住部分等についても確認を行うことがあるわけです。その場合には、調査の公益的必要性と納税者の私的利益との考量を図るということを十分念頭に置きましてその要否の判定について慎重を期するとともに、その範囲、方法についても行き過ぎることのないよう配慮するように、我々としても研修その他で指導してきているところでございます。
  66. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 もう具体的な話をしなくても済むのかなと思っておったんですが、今の話を聞きますと、一般論で答えておられるんですね。この判決はそんなものじゃないんですよ。  もう重々承知だと思うんですけれども、この事件の原告の北村さんという方は京都と滋賀県の唐崎というところに二つの衣料品、アパレルの店をお持ちなんです。その京都店に入った資料課の二人の行動というのは、二人の女性が阻止するのを振り切って二階に上がって、そして居間に入ってたんすを引きあけるという形で、下着までひっくり返して検査をしたといった行為があったわけです。これについて、承諾なしで二階へ上がっていった行為は明らかに違法だという形で認定しているわけです。今おっしゃったように、社会的通念をはるかに超えているという認定をしているんですよ。  あなた方はそのことについて、我々の主張が認められなかったことは残念だと。これじゃ何も判決を重視していることにならないし、まるで裁判所よりも私たちの判断の方が上だと言わんばかりのことで、とんでもない話です。しかも、二階に上がってさらにやったその行為については、そもそも二階に上がったことが違法なことに加えて、とんでもないことをやっておるという一つ一つの認定まで下されています。  そしてまた、店の方ではレジの金銭まで調査した。これも承諾なしにやったということだから、これも社会的通念を超えておる、違法だという形で見ているんですね。さらに今度は、従業員のバッグまでひったくって、店のものじゃないんですよ、従業員のバッグまでひったくって中身を調べた。こんなことはとんでもないということで認定されております。  あなたがおっしゃった言葉で言えば、社会通念上の相当性を欠くものであって、明確に違法と言わざるを得ない、そういう明文化された判決が下されているんですよ。そうでしょう。それなのに、あなたは何か全くもう一般的なことのようにおっしゃる。とんでもないことだと思うんです。私としては、その点どうなんだと。全体としては敗訴になっているわけでしょう。そのことは認めるわけでしょう。とするならば、こんな行為をやったこと自身は悪かったという認識はあるんですか、ないんですか。国税庁として、やったことが悪かった、責任をとらなければならないという認識はあるんですか、ないんですか。
  67. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 訴訟の当事者であります行政庁が判決の個々の内容についてコメントするということは適当ではないと考えておりますが、先生御指摘のとおり、大阪高等裁判所において、税務調査の一部に違法があったと認めて国側に八十万円の損害賠償金の支払いを命じた判決があったということは十分承知しております。  我々としても、この判決を厳粛に受けとめて、調査については行き過ぎのないように配意していきたいと考えているところでございます。
  68. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ということは、やった行為が間違っていた、行き過ぎだというのであれば、自分たちが決めた運営方針からも逸脱しておったということですね。  そうだとするならば、やった本人は当然のことながら、監督に当たった幹部、これに対して当然処分がなされたんだろうと私は思うんですけれども、どうなんですか。
  69. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 職員の非行事件につきましては、それぞれの事案に応じまして厳正に対処してきているところでございます。本件につきましては、職員に対しそれぞれ担当の上司から指導を行ったところでございます。  今回の判決を厳粛に受けとめ、今後とも行き過ぎることのないよう配慮していきたいと考えております。
  70. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 行政処分はしたんですか、していないんですか。
  71. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 本件につきましては、いわゆる通常の非行事件とは性格を異にしておりますので、職員に対しては、今後行き過ぎることのないように担当上司からそれぞれ指導を行うという形でやらせていただきました。
  72. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ちょっと聞き取れなかったんだけれども、何と違うんですか、この事件は。
  73. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 本件につきましては、一般の非行のように個人的利益を追求したものではなく、通常の非行事件とは性格を異にするということでございます。したがいまして、職員に対しては、今後そういう調査について行き過ぎることのないよう担当上司から指導を行ったということでございます。
  74. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 いわゆる国税庁の行っておる料調というやり方、承諾なしに行うやり方、これが違法だとされたわけです。そうすると、職員の処分はしなかった、それはそれとしておいておくとして、これは私は正当だと思わぬけれども、そういった行為自身についての反省はどうなっているんですか。
  75. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 今、御質問のございました資料調査課というのは、大蔵省組織規程百二十六条第四号及び第五号によりまして、調査を受ける方の所得の金額、事業の規模あるいは財産の価額などに照らして、国税局長が特に必要と認めた事項について調査を行っているものでございます。  この資料調査課の調査も各税法に規定をされている質問検査権に基づいて行っているものでありまして、その調査の公益的必要性と納税者の私的利益の考量において社会通念上認められる範囲内であくまでも納税者の理解と協力を得て行っていることでございまして、納税者の了解なしに調査をするというものではございません。
  76. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 何度も言うんですが、その質問検査権、これを超えてやったから違法だということで認定されたんでしょう。それをあなたは質問検査権の範囲でやっているというふうに今も主張しているわけでしょう。さっき判決を重く受けとめて重視すると言ったのと全然違うじゃないですか。こんなものは認めないという態度でしょう。
  77. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 今の個別の事件について私は申し上げているわけではなくて、資料調査課の一般論として申し上げているわけで、資料調査課というところはあくまでもそれぞれ納税者の了解のもとに調査をさせていただいているということでございます。
  78. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 先ほど私は言ったでしょう。普通にやられておるあなた方の質問検査権に基づく調査そのものが、そのやり方が違法だと言われたんだから、あなた方は反省すべきだろうと言っているんだけれども、全然話がかみ合っていないじゃないですか。この判決は、個別の案件のそれを踏み越えて、あなた方のやっている料調というものそのものについての違法性に踏み込んでいるんですよ。そうでしょう。そのことに何にもあなたは触れてこないじゃないですか。
  79. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 判決につきましては、あくまでも個別の事案についての判決だと認識しております。あくまでも我々としては、申し上げたとおり、資料調査課自体が通常の質問検査権の範囲内で、すなわち納税者の了解のもとにやる検査であるということでございます。
  80. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 どうもあなた方は、自分たちがやっていることは質問検査権、これは納税者の了解を得たもとにやっているんだと。しかし、実際そういうことじゃなかったからこういう事件が起こっているし、次々と事件が起きている。  特に今伺っていて、私はなるほどなと思ったんだけれども、去年の四月にこういう判決が確定したが、今のあなた方の考え方だと、改めるつもりは全くないわけだ。だから、同じような事件が起きていますよ、同じような人権侵害、しかも同じようなことですよ。  幾つか例を挙げましょう。東京の立川です。ここでビデオシアターを経営している神山守久さんという方がいらっしゃるんです。去年の十一月に税務署から調査したいと連絡を受けた。連絡を受けたときに、この方は、経理事務担当は奥さんがやっておられる、奥さんは今手術後で通院しておってどうも大変だから、もうちょっと待ってくれと言った。診断書まで出してそれを訴えたんだが、言うことを聞かないで強引に事前連絡もなく入ってきて、そしてボックス金庫をこじあけて売上伝票を持っていった。自宅にも踏み込んで、二階の洋服だんす、衣装箱をあけて、商売とは関係のない書類まで全部持っていった。これは強制捜査じゃないんですよ。あなた方の言う任意調査なんです。こういうことを実際やっているわけです。そのためにとうとう奥さんはショックを受けてまた入院しちゃったんですよ。こんな事件が起きている。人権問題じゃないですか。  例えば西福岡、これは起きたのが九七年四月ですから、その調査が起きた時点はこの判決の前ですけれども、今もこれは続いておるわけなんです。ここでも、これは左官業の方だけれども、左官の原田さんは出勤した。その後、奥さんは体が悪かったので寝ていた。そこへ入ってきたんですよ。そこへ調査と称して入ってきて、そして布団部屋にまで入ってきて、布団をまたいでたんすをひっかき回した。感謝状等々を見て、それもメモして帰った。その後すぐに取引先の反面調査をやった。このためにとうとう仕事ができなくなったというんですね。生業まで奪い取っているじゃないですか。  金沢の例、これはお好み焼き店をしている寺井さんという方なんだけれども、この場合も女性一人のところへ入ってきて、二階に上がってドレッサーの引き出しやクローゼットにある書類を持っていっちゃった。これはもちろんやめてくれと言っているんですよ。ところが、この場合なんかとんでもない話なんだけれども、最初に検査に協力してくれますか、それは協力しますと本人は言った、その言葉があるからといって、もうクローゼット、ドレッサーまでひっかき回したというんです。人権問題も甚だしいということで、これは金沢税務署の統括官に抗議したけれども、これは最悪ですね。私の部下は絶対そんな教育をしていないんだから、やるはずがない、やっていませんと言う。だから、全然受けつけない。仕方がないからこれは人権救済の申し立てを裁判所にした、こんな事件です。  こんなのが次々と起きているじゃありませんか。昔の話じゃない。今の話ですよ。これは質問検査権の乱用であることはもう明らかなんです。こういう事実は、私のところへ来た特にひどいのを三つほど紹介したんだけれども、どうなんですか、どれぐらい起きているんですか。特に判決後何件ぐらい起きているんですか。
  81. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 今お話のありました平成十年三月以降、大阪高裁判決と同様に調査の手続の違法利用をした損害賠償を求める訴訟自体は現在は一つもございません。  そういう実態でございますが、過去、それではどのぐらいそういう調査手続の違法利用とするものがあったかというと、例えば平成年度には三件提訴されております。
  82. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私が申し上げたようなものも入っていますか。
  83. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 金沢の事例等につきましては、それらの話は入っておりません。それはまだ提訴という話にはなっていないのかと存じます。
  84. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ほかは入っていますか。
  85. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 立川なども十一月以降と聞いていますので、今お話がございましたので、それも入っておりません。平成十年三月以降は、具体的な損害賠償を求める訴訟が調査手続の違法利用としてなされたということは現在まで知っておりません。
  86. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局お聞きのとおりなんですよ。こんな事件はほとんど上に上がってこないんです。あなた方の耳にはほとんど入ってこないんですよ。三件しか起こっていない、とんでもない話ですよ。ここにちょっと事例があるんですけれども、私のところで聞いただけでも十数件上がっているんですよ。あなたのところに全然上がってこない、これは非常に問題だと思うんです。  というのは、この金沢の事件なんかは人権救済の申し立てがなされているんですよ。それも聞いていないですか。それは聞いているわけですか。
  87. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) ただいま申し上げたのは、あくまでも話としては金沢国税局からそういうトラブルがあるということは聞いております。  しかしながら、御質問のように、調査をめぐる具体的なトラブルというのをどうとらえるかということになりますと、先生の御質問に言う件数はわからないということで、あくまでも我々としては訴訟になされたものという形でとらえざるを得ないものですから、そのような答弁をさせていただいたということでございます。
  88. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうなんです。だから、金沢の場合なんかは抗議に行った。抗議を受け付けない。抗議を受け付けないということは記録に残らない。記録に残らないということは何もなかったことになるんですよ、これは。それがあなた方の中で処理されているんです。当たり前ですよ。なかったことを報告しませんよ、税務署は。  ところが、一方であなた方は何ということを言っているか。私が最初に紹介した税務運営方針にいいことが書いてあるんですよ。「納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。」と、こう言っているんですよ。  伺いたいんですが、この運営方針というのは職員の心得だけを言ったものですか。
  89. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 今御質問のありました税務運営方針については、あくまでも我々の税務調査をやらせていただくときの心構えということでございます。  ちなみに、質問検査権等々については、これは最高裁の判例等でもありますように、あくまでも具体的には質問検査自体については、そうした質問検査権と相手方の私的利益との考量で社会通念上相当な限度にとどまる限り、そこは合理的選択にゆだねられているという解釈がなされているのかと存じます。
  90. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうだとすれば、職員の心構えということを言っているものだとすれば、それはその範囲にとどめるべきじゃないだろうなと思います。だけれども、昭和五十一年に出されたそれを見ると、心構えだけではないように私は思うんです。この目次だけを見ても、事務合理化の推進であるとかなんとかかんとかと、そういったことまでかなり踏み込んできておりますので、今おっしゃったのは私は少し間違っているだろうと思うんです。  それで、どうしても私がここで言いたいのは、そういう形であなた方が言うように職員の心がけだけやっているものだとするならば、それは改めて、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならないと言うのであれば、それをちゃんと受けとめるシステムをつくるべきじゃないですか。今のように、苦情を申し込まれておっても全然上がってこない。それはそうですよ、税務署がこんなものはだめだとはねつける。受け付けていないんだから報告に上がらないですよね、それは。これを改めるシステムにすべきじゃないですか。
  91. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 苦情につきましては、基本的には各税務署の総務課あるいは局でそれぞれ窓口を設けて受け取らせていただいております。先生の今御質問のございました手続に関する苦情だけではなくて、種々の苦情があることは十分我々も存じておりますし、各総務課からそれぞれ担当の課へ連絡が来ているところでございます。  それからなお、こうしたことにつきまして、納税者とのトラブルをできるだけ避けるためにも、我々としては税務相談等々、単なる調査だけではなくて指導、広報そして相談という体制でやらせていただいているということでございます。
  92. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 やっているやっていると言うんだけれども、今こんな事態が起きているわけですよ。あなた方がおっしゃるように、きちんきちんとやっているんだったらそんなことは起きていないし、そしてまた、先ほどから聞いたように、そういった苦情や不満が出ておって、きちんきちんとやっておるんであれば、定期的にあなた方は報告を受けているんでしょう。そうしたら、どこどこの税務署で何件の苦情が起きておる、不満が起きておる、抗議をされているというふうなことを全部つかんでいなければおかしいじゃないですか。ところが、九年度で三件だけでございますと、こんなばかなことはないんじゃないですか。指導をしているからうまくいっているなんというのは、これは余りにもずさんですよ。それがどうやって実施されているのかということをきちんと吸い上げる、そういうシステムはあるんですか、ないんですか。
  93. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 先生の御質問が手続に関するという、言ってみれば理由ごとに受けるという形にはなっておりません。それぞれ納税者の方々については、手続のみならず、いろんな御意見なりもあるわけでございます。それらはそれぞれ主務課の方へ連絡が来ておりますし、きょうまさに確定申告の最中においてもそれぞれどういう問題があるかというのは、我々の方への報告が図られているところでございます。
  94. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ともかく後の問題をやりたいので終わりますが、しかし少なくとも国税庁自身が自主的に出しておる税務運営方針、この中身については私は評価するわけですよ。そうならばこれを実施すればいいわけで、そしてそれが実施されていないとすれば実施できるようなシステムをつくり上げていかなければいかぬでしょう、自浄作用をつくらなければいかぬでしょうということを申し上げているんです。  ですから、伺いたいんだけれども、この税務運営方針というのは全職員が所持しているんでしょうか。
  95. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) 税務運営方針につきましては全職員が持っております。
  96. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私はそうは伺ってないんだけれども、もしそうであれば、きちっと徹底している、保持しているんですね、全職員が。間違いないですね。
  97. 大武健一郎

    政府委員大武健一郎君) それぞれ税務職員が研修の場で、最初に税務職員になりますときにこの税務運営方針をもらっているということでございます。
  98. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ともかくこういったことが起きて解決されていないことは事実なんですから、きちんとした形でこれを処理していただきたいというふうに私は強く要求しておきたいと思うんです。  時間がもう三分しかございませんので、申しわけございませんが、再生委員長にはまとめてお伺いしたいと思います。  再生法がつくられるときに論議されてきたことなんですけれども、再生法の場合も預金保険法に基づく破綻処理も同じなんですが、破綻した銀行、そこで債務者がいる、まじめな債務者がいる。ところが、中小企業の場合には、銀行がつぶれてしまうとどうも受け皿銀行の方が引き取ってくれない、引き受けてくれないという問題があります。こういうことが起こったときどうするんだと。特に七割が中小企業だ、中小企業のうちの七割がもう既に赤字だ、赤字の場合にはなかなか引き取ってくれないということがあるけれども赤字でなくてもかつかつの経営をやっておるところについては、これはもうとてもじゃないけれども引き取れない、第Ⅱ分類債権に入れられておってもだめだという状況が起きておる。これは現実の問題として起きているわけです。  こういったものは、まじめに返済しておるそういった業者についてはきちんとした受け皿銀行に何としても引き取ってもらえるような指導をするということが大事だと思うんです。長銀の場合を見ますと、大企業の場合にはほとんどきちんと整理回収銀行に回すのじゃなしに受け皿銀行の方に回しているんです。ところが、中小企業の場合はそれがほうり出されて整理回収銀行行きという形になっておるということがあります。こういったことについてきちんとした是正を行っていく必要があるのじゃないかということが一つです。  というのは、これは私企業ですからなかなかそれは難しいんですけれども、拓殖銀行と北洋銀行の場合にはかなりちゃんとしたことがやられておって、一億未満の中小企業、これはⅡ分類であっても北洋銀行に引き継がれたわけです。その際、一億円未満、これは原則として受け継ぐということをきちんと決めて北洋銀行は受け継いでいるわけです。そのおかげで九十数%の中小企業が北洋銀行の方に引き継がれたということになっております。  これはきちんとやればこういうこともできるわけですが、長期信用銀行の場合、こういった北拓の場合とは違ったあらわれ方をしておる。こういったことについては、特に中小企業に対してはきちんとした処理をすべきじゃないかということを申し上げまして、終わりたいと思います。
  99. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 金融機関の破綻があった場合に、預金者とともに善良かつ健全な債務者と申しますか貸出先をどのように救済していくかということは、大変大きな問題として立法の過程でもかなり高い認識のもとで立案がされたということは先生御指摘のとおりでございます。  今お話があったのは、再生法と預金保険法による救済のスキームではどうも中小企業とかあるいは大企業をめぐって少し扱いが違うんではないか、こういうお話でございますが、実は長銀の方はまだ承継銀行が、あるいは事業譲渡、営業譲渡を受ける、いわば受け皿銀行とあえて言わせていただきますが、受け皿銀行が決まっておりません。したがって、どのような債権あるいは貸出先が承継をされていくかということについては最終的な決定を見ていない。やはり受け皿銀行が自主的に判断をするということは尊重せざるを得ないというスキームでございまして、今そういう前提で手続が進んでいるという経過の中にあるということ、これは御承知おきを賜りたい、このように思います。  預金保険法によるいわば資金援助のスキームにおきましても、そのあたりはかなり同じような扱いになっております。破綻をした、それで救済金融機関があらわれたというときにどのような貸出先を最終的に救済銀行に引き継ぐかということについては救済銀行の判断をまつ、そしてそれ以外のものについては貸出先がみずから他に新たな取引先である金融機関を探すか、あるいはそういうことがどうしてもできなければ整理回収銀行回しになるというスキームになっております。このスキームをどのように運用していくかということは、結局はその地域の経済あるいは社会経済の実態に即して今の救済銀行が考えていただくということになっていると言わざるを得ない状況でございます。  再生法の場合には、大体において我々再生委員会が資産の判定というものをやりますけれども、これはあくまでも保有し続ける債権かどうかということを判定するにとどまるわけでありまして、それが最終的に受け皿銀行の方で受け入れられるかどうかということを何か強制的にあるいは行政指導的になし得るかというと、なかなかこちらの方もそういう仕組みには必ずしもなっていないということを申し上げざるを得ないと思います。
  100. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  郵貯関連と財政投融資関連につきましてお尋ねをいたします。  まず、郵貯シフトの問題でございますが、民間金融機関に対する信頼の低下を反映してといいましょうか、郵便貯金の残高は本年一月ついに二百五十兆円を突破いたしました。まず、こうした郵貯シフトに対しまして大蔵大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  101. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  今、先生が言われましたように、いわゆる郵貯シフトということにつきましては、個人の預貯金全体に占める郵便貯金の残高シェアは平成十年九月末現在で三六・一%でございまして、前の年の同月と比較しますとわずかながら増加しているというのが現状でございます。現段階では、郵便貯金残高の過去の動きから判断いたしますと、この変動がとりたてて大きいとは言えないというぐあいに考えております。  しかしながら、郵便貯金につきましては、民業補完としての役割、あまねく公平な貯蓄手段の提供を逸脱しないことを基本としながら、民間金融システムに悪影響を及ぼさないように配慮していく必要があると考えております。
  102. 三重野栄子

    三重野栄子君 余り大きく伸びているわけではないということでございますけれども、いつもそのことが議論されるわけでございます。民間金融機関側からは、こうした郵貯肥大化、私はこういう言葉は好きじゃありませんけれども、そういう要因は競争条件がイコールフッティングでないからである旨の主張が常套句のようにされております。これに対しまして、郵政省としては、郵便局が固有に担っているユニバーサルサービス提供義務と税金の非負担等の優遇とのトータルバランスを考慮するならば、そうした批判は当たらないと真っ向から対立した意見を出されていることは再三ニュースにも出ているところでございます。  これにつきまして、先日出されました経済戦略会議の答申におきましても、「二十一世紀に相応しい金融システムを構築するには、競争条件のイコール・フッティングを確保できる環境整備を行っていくことが重要である。」と問題提起がなされました。この点に関しまして、大蔵大臣並びに郵政省の貯金局長にそれぞれ御見解を伺いたいと存じます。
  103. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 郵貯シフトという言葉をお使いになりました。確かに民間金融機関に対して相対的な関係郵便貯金の方に少しずつ有利になっているということは、結果として私はそうだと思います。しかし、そのことにつきましては、もう十年、もっと前からいわゆるイコールフッティングについての議論がありまして、一応議論としては終息をしたんだと思いますが、ここへ来まして民間金融機関側に大小にかかわらずいろんな問題が生まれました。そういうことが民間金融機関の活動を少なくとも鈍くしましたし、それに対する何がしかの預金者あるいは貯金者の信用に多少の陰りが出たことがあったのではないか、それは想像することでございますけれども、という感じがいたします。しかし、制度上大きな問題があるかないかということは既に結論が出ておると思います。  そこで、今度の戦略会議お話ですが、恐らく戦略会議としては、いわゆる郵政三事業の民営化云々につきましては政府は既に中央省庁の行政改革ではっきり結論を出しておるわけでございまして、民営化ということはしない、そしてあるときに公社に移行する、公務員であるというようなことを決めておりますので、戦略会議はそれにチャレンジをされたのではないようであります。  ただ、この言葉遣いから見ますと、それは決まったことはわかったが、いろいろ問題もあることであるから、今後これについては、中央省庁等改革法にのっとった改革を進めるべきであると、いろんな問題点を指摘しながらそう言っておられるので、これは戦略会議のメンバーの中に政府が決定した方針について必ずしも飽き足らない方がいらっしゃったことを反映しているのではないかと思いますが、政府としては決められました方針を変えるつもりはございません。
  104. 松井浩

    政府委員(松井浩君) 最初に、郵便貯金のシェアの移動のことを郵便貯金シフトという言葉でお話しになりましたが、これについて個人預貯金という立場で大蔵省の方からお話がありました。  私どもは、個人金融資産、ちょっと概念が違いますが、例えば保険だとか有価証券だとかそういうものを含めまして個人金融資産と全体としてとらえておりますが、そちらの方で見ますとおおむね二割でほとんど横ばいでございます。そういうことをちょっと一つだけ申し上げます。  あと、イコールフッティングに関連してのお話でございます。  申すまでもなく、郵便貯金は国みずからがやっておりますので、当然法人税等の負担、支払いはございません。そうなんですが、先生御案内のように、山間僻地とか離島を含めたそういったユニバーサルサービスとして提供しているということのほかに、例えば私どもは国だからでありますけれども民間であれば基礎年金について三分の一の国庫負担がありますが、そういうものもみずから自分でやっております。それから、例えば郵便貯金の限度額が一千万円だとか、いろんなサービス面で法令上の制約があるだとか、それから資金運用で大蔵省の方に全額預託させていただいている。一〇〇%安全資産で構成されている。企業貸し付けも個人貸し付けも与信としては一切やっておりません。それから、よくある議論で申しますと、日本銀行との関連で言えば、他の金融機関との決済にも口座も使っておりませんし、短期金融市場にも参加しておりませんし、いろんな状況がございます。トータルな御判断ということについての先生の御指摘もございましたけれども、一々それを計量化するというのは難しいと思いますが、そういったことも含めてトータルな御判断を賜ればというふうに思っておる次第でございます。
  105. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。これからの課題についてはっきり伺いまして、安心したというような感じでございます。  定額貯金の集中満期問題につきましてお尋ねをいたします。  これは先ほどもちょっと出ておりましたけれども平成二年及び平成年度に預入されました高金利の定額貯金が平成十二年度から集中満期を迎えまして、大量流出の可能性がある、そういう問題でございます。当然、郵貯の限度額一千万円を超える部分は流出することになりますが、その他の部分についてはそのときの金利情勢及び民間金融機関がどの程度の体力を強化し預金者の信頼を回復しているかにもよるのでありましょうけれども、ちまたで言われているほど大量な流出があるかどうかにつきまして、現段階で断定的に言うことはできないのではないかと思っております。  大蔵大臣は昨年十二月の資金運用部による長期国債買い入れの中止発表の一つの原因としてこの問題を挙げておられるようでございましたけれども、定額貯金の集中満期が金融環境に与える影響につきまして大蔵大臣の御見解を伺いたいと存じます。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 詳しくは政府委員から、郵政省の方からお答えいただけるのかと思いますけれども、今推定六十二兆九千億円ある、元利を合わせますと平均でその一・八倍と言われました。ですから、百兆というようなものでございましょう、結局。それがどういうふうに貯金にとどまるか、流れるかということは、全くちょっと類推の方法もないんではないかと思います。  しかし、いずれにしても従来郵貯からは資金運用部は毎年毎年随分原資をもらっております。その流れは平成十二年、十三年度にはかなりの影響を受けるであろう。かなりというのははっきりわからないことでございますけれども、少なくともネットでマイナスになるかもしれないというようなことを資金運用部としては当然のことですが考えております。十一年度にはそういうことはございませんでしょうが、十二年度、十三年度はもうそれがわかっておりますし、かねてまたその財投という問題があるわけでございますから、運用についてはできるだけ慎重にしたいという気持ちが運用者にはございます。そこで、その一つとして、月中二千億円ずつ買っておりましたことはこの際見直したい、そういうことが昨年の暮れにあったわけでございます。  それがおっしゃいますように金利に影響を与えたということであったかと思いますが、そういうこともありまして、もう一遍よくいろいろ精査をしたりしていまして、ともかくやってやれないことでもないということから、また二月、三月は買おうということになったわけでございますけれども、決して資金運用部が無理をしておるわけでもございません。市況にかんがみてということだと思いますが、ある意味で集中満期がどのぐらい原資に影響を及ぼすかということがなかなか一元的に言えないものでございますから、多少そこに余裕をとってというようなことの裏側で、それならやれないことでもないなというような判断をいたしたわけでございます。
  107. 三重野栄子

    三重野栄子君 その点に関連するわけでございますけれども、従来、郵政省は集中満期を迎えるたびに預入限度額を引き上げることによって再吸収を図ってこられたというふうに思うわけでございますが、今回は限度額を据え置く方針を決定されているところでございます。私は、あまねく国民に少額の貯蓄手段を提供するとのナショナルミニマムをうたいました郵貯の本旨にのっとるならば、今回の方針は妥当であると考えております。また、二〇〇一年四月からは郵貯は全額自主運用へ移行する見通しでありますが、そうした点にかんがみましても、今後はいかに効率的な資金運用を確保するかに重点が置かれるべきでありまして、いわゆる残高至上主義から決別することが正しい方向ではないかと思っております。  今回、郵政省は限度額を据え置くという方針でございますが、そういうふうになられた経緯、それから当分の間はということでございますが、当分の間というと具体的にはどれぐらいの期間ということになりましょうか、貯金局長の御見解をお伺いします。
  108. 松井浩

    政府委員(松井浩君) 郵便貯金の限度額の引き上げについてのお尋ねでございますが、当分の間という言葉がございましたのは、平成九年に郵政審議会から郵政事業のビジョンについての答申をいただいた中にそういった表現がございます。私ども行政サイドとして今の時点でクリアに申し上げたことはないと思っております。まず、それを明確に申し上げたいと思います。  ただ、この参議院でも別の委員会で、予算委員会だったと思いますが、御質問があったときに大臣等もお答えしておりますが、今のところそういう具体的な引き上げの検討はしていないという点で申し上げていたんだと思います。  すべてそういうものも情勢によりますので、厳密に申し上げますと、例えば経済が皆様の予想と大幅に違いまして急にインフレになるというふうなことでありましたら、家計の貯蓄目標額も動くでしょう。ただ、私どもの今認識しております情勢と申しますと、個人の世帯の貯蓄目標額がここしばらくずっと二千三、四百万円ほどとほとんど動いていないわけでございます。そういった基本的な私どもの物を考えるときの物差しとなるような数字が動いていないということを踏まえて申し上げているということでございます。
  109. 三重野栄子

    三重野栄子君 民間との協力の問題で、ちょっと最後に大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  本年一月からATM相互接続やデビットカードによるサービスが開始されまして、これまで激しい対立関係にありました郵貯と民間金融機関の官民関係も共生への道を歩き始めたのではないかというふうに理解しております。こうした方向性は望ましいものであると思いますし、一層の推進を祈念するわけでございますけれども金融分野における望ましい官民関係のあり方に対する大蔵大臣の御見解を伺えればと思います。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 郵貯に対する民間金融機関の批判というのは非常に長いこと、本当に長いことございましたし、今ももちろんないわけではありませんけれども、そうした中で、むしろそういう議論をしているよりは一緒になってやったらどうだと。よくアメリカ人が申しますが、勝てないなら手を握ろうという例のやつですね、どうもそういうことが起こってきたように見ておりまして、それはそれで私はいいんじゃないかなと、大まかにはそう思います。
  111. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。
  112. 星野朋市

    ○星野朋市君 私は金融再生委員会に絞ってお尋ねをいたします。  きょう三月十二日、七兆四千億に上る公的資金が正式に決定されるわけでございます。柳沢委員長、大変御苦労さまでございました。  きょう決定されて、実際には各行にいつ注入される予定でございますか。
  113. 森昭治

    政府委員(森昭治君) 三月三十日に払い込みまして、商法上の規定に従いまして資本増強されるのは三月三十一日でございます。
  114. 星野朋市

    ○星野朋市君 これによって各行とも三月末に約九兆円余に上る不良債権の償却は全額清算できるんですか。
  115. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 不良債権の処理、こう一言で言う場合が多いわけでございますけれども、この不良債権の処理というものを一体具体的にどういう措置をもって行うかということは、先生御案内かと思うんですが、かなり区々でございます。  もちろん一番いいのは、バランスシートから完全に消し去るように、バルクセール等がそうですけれども、どこかにそういう不良債権を売ってしまう、あるいはSPC法というような最近できました法律に基づいて、そこに譲り渡してそれを証券化して、そして徐々に回収しながらその証券の払い戻しをしていく、こういうような方式もそうでございます。  それから、一方では引き当てという方式があるわけでございまして、例えば破綻先あるいは実質破綻先と言われる先に向けての債権については、見合いの勘定としての引当金を一〇〇%積むことで処理したということにする、こういうような方式もございます。もちろん毀損の程度、劣化の程度によりましてその引当率というものは必ずしも一〇〇%でない、そういう引当率でもって合理的な引き当てが行われた、そういう意味に解されて不良債権の処理が行われた、こういう理解が行われることもございます。  今回、九兆円というものが具体的にどういう形をとるかでございますけれども、まず破綻先、実質破綻先については流動化しなさいということを私どもは経営健全化計画の中でもなるべく奨励する、そしてそのメリットを優先株の配当等の条件に反映するというようなことをしております。  銀行の側も、何千億をバルクセールして一遍に売り払ってしまうというようなことをうたっている向きもあるようでございますが、押しなべてまず私どもが一番強く今度申し上げたのは、今までの引き当てというのが、御案内のように監査人との間で、いわば金融機関の側だけで引き当てが行われる、それは多分合理的に行われているであろうというような推定のもとで今まで制度運用されてきたというようなことがありましたが、今回、私どもが行ったのは、そういうような会計監査人あるいは公認会計士協会の実務指針というようなものに基づくやや抽象的な基準によるのではなくて、定量的に、破綻先、実質破綻先について一〇〇%はもとよりのこと、破綻懸念先については七〇%を積んでもらいたい、あるいは要注意先のうちの要管理債権については一五%積んでいただきたい、その他の要注意先債権については債務の平均残存期間に見合う貸し倒れ実績率をきちっと積んでもらいたいと。こういうような引当率を定量基準で示すということでもって、外側から余り見てわからないというようなことでなく、その点をきちっとやっていただく。こういうことによって不良債権の処理というものが確実な形で、明確な形で行われたということを外部からもよくわかるようにしていただきたい、こういう形にいたしたわけでございます。  そのことによって、私どもはきょう、そういう意味合いにおいて今回申請された十五行の不良債権についてはこの三月期でもって処理が完了するということを明確に申し述べようと、このように考えている次第であります。
  116. 星野朋市

    ○星野朋市君 実はなぜそれをお聞きしたかといいますと、一つには、おととしの秋に発生した東南アジア通貨の混乱によって相当問題の債権が生じたはずなんです。ところが、たしか昨年の一月十二日に発表された大蔵省の問題債権、その中にはこのとき多分生じたであろうと思われる問題債権が載っていないんです。その後、この東南アジアの通貨混乱によってどういうような問題がどれぐらい起きたかというのが明らかにされていないんです。  私は、今度再生委員会が各行の内容を実に詳しくお調べになって、今おっしゃったような多少過酷かと思われるような引き当てまで命じてお調べになったわけですから、そのときの問題というのがこの中では明らかにされていると思っているんですが、いかがでございますか。
  117. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 私の立場は、監督庁の指揮監督をする立場ということが設置法上与えられております。しかし、先生御案内のように、検査そのものについては金融監督庁に完全に委任をされておる、こういう法的な立場におるわけでございます。  今回の私どもの資本注入に当たっては、もちろん検査結果について検査当局から報告、説明を聴取いたしましたけれども、一件別に一々各行、十五行についてすべてを聴取したということではございません。一行別に事情を聴取いたしましたけれども、それはおおむね集計された計数によって説明を聴取するということでございましたので、それをさらに個別案件ごとの判定がどうであるかというようなことについて、正直言って一々事情を聴取するということは実はいたしておらないわけであります。  そういう経過でございますので、今の先生のお話に対して私が具体的に、先生が何かの案件を挙げられたとき答え得るかと言われれば、それはお答えすることは正直言ってかなわないという状況にございます。  しかし、検査部の検査というのは、これは従前の検査と違いまして非常にシビアな検査を、資産判定をするというふうに外側からも言われておりますとおり、かなり厳しい検査が行われたというふうに認識しておりまして、それに基づいて我々は資本注入の手続を進めさせていただいた、こういうことでございます。
  118. 星野朋市

    ○星野朋市君 再生委員会の存続は二〇〇一年の三月までと、あと二年間でございます。その間に、今回聞き取り調査をした各行のいわゆるリストラ計画とか収益の目標であるとか、そういう項目を半年ごとに一々チェックして、それがその目標に達していないならば業務改善命令を出せる、こういうふうになっていると思うんですが、各行の聞き取り調査に対するいわゆるリストラの計画であるとか収益目標であるとか、それをいつまでにどうするんだというような計画表というのはできておるのでございましょうか。それで、それは公表されるべきだと思っておるんですが、いかがでございますか。
  119. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 経営健全化計画というものは、法律に命じられた順番でそれをさらにブレークダウンした形でフォームを決めさせていただきまして、それにのっとって計画内容を定めていただいて私どもの方に提出をお願いしたと。そして、これはすべて公表するということになっておりますので、月曜日においてすべて公表されるということになっております。  それで、その中身ですけれども、それは項目によって、例えば海外の支店はいつ撤退するなどというようなことは、十二年の三月末だとかというようなことに、これは銀行によってですが、そういうふうに経過年度のうちに示すものもありますが、基本的には十五年の三月までの計画を載せておるところが多いという状況でございます。
  120. 星野朋市

    ○星野朋市君 いずれにしましても、それは公表されるわけですね。  どうして今それを要求しているかというと、さっきお聞きしたように、三月三十日には公的資金が注入されちゃうわけです。本来ならば少なくともこの委員会あたりには、これがきょう決定されて三十日には実行されるというんだったらそのぐらいの報告はあってしかるべきだと思っているんです、もう聞き取り調査はできているわけですから。新聞なんかに時々出るのは、各行のリストラはこういうふうにやりますよというようなものがリークされて出てくるんだけれども、いつまでかというのはほとんど出てこないわけです。  やっぱりこれはいつまでにどこまでやるんだということがはっきりするのが大切なことだと思っておるんですが、それをお願いいたしておきます。
  121. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) これは特にリストラ絡みで、例えば給与総額をどうするとか人件費をどうするとかいうようなものは、大体先ほど申したように十五年三月までの目標値が掲げられておりまして、それに基づいて計画の実現が図られていく、こういうことでございます。  国会については、健全化法上、大体六月に一度委員会の活動の状況を報告するようにという規定がございまして、私どもとしてはそれを念頭に置いてやっております。基本的に我々は行政でございますので、法律に基づいての行政ということになるわけでございまして、例えば健全化計画については公表をしなさい、こう書いてありますので、それに基づいて公表するということで国会の皆さんにもそのことを通じて御承知いただく、こういうことを想定しているわけでございます。
  122. 星野朋市

    ○星野朋市君 時間がございませんので、最後に一つだけ。  これは多少しつこいんですが、私が昨年の通常国会で、あのときも一千億ほぼ横並びで十八行に注入したわけですけれども、それに先立って、要するに各行とも不良債権をバブルのときにほぼつくってしまった、その当時の責任者が各行とも相談役みたいな形で残っているのは何事だと、こういうことを当時の橋本総理に質問をいたしまして、橋本総理もしかるべくお答えになった。その後、十八行のうち八行が相談役制度をやめたんです。秋になってまだなかなか相談役制度というのをやめないところが出てきた。さくら銀行が相談役を顧問というのに変えた。それから、東海銀行の、名前は挙げたくないんですがお二人が相談役、そのことを当時の松永大蔵大臣に私はまた詰問をいたしました。松永大蔵大臣からも、これはとんでもないことだという御表明があったんですが、東海銀行は愛知万博のためにどうしても必要なんだと居直ったわけですよ。  今度、再生委員会がこの問題についてどれだけ厳しい注文をつけたのか、今度が締めくくりなものですから、お伺いいたしたいと思います。
  123. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) まず、先生、その関係のことがこの法律にどう書いてあるかと申しますと、「経営の状況を改善するよう自主的な努力を促す」と、こう書いてあるんです。ですから、これがどう行政に作用を及ぼしていくかでございますけれども、やはり我々としては基本的にこういう考え方に基づいていろんなスキームを考えさせていただいた、こういうことでございます。  具体的にどうしたかと申しますと、私どもは経営健全化計画に役員、顧問を廃止する方向でやれば、それはメリットとして何点与えて、そのことによってそれは優先株の配当等の条件に反映させますよということでこれを誘導したということでございます。  いわばOBの処遇としての相談役、顧問等については、名前のいかんにかかわらず大体廃止あるいは任期を決めるとか、おおむねそういうような方が多かったというふうに記憶いたしておりますけれども、それと同時に、本当に特定の目的がある場合の顧問ということについては、この一名はこういう目的でございますからというようなことの御説明をする向きもございました。  そういうような形で、いずれにしても私どもとしては、自主的な努力を促すということによって所期の目的を確保しようとしてそれなりの成果が上がったというふうに考えておりますが、これはまた現実の健全化計画がオープンになった折に、詳細具体的には先生にも御承知おきを、御了知をいただきたい、このように考えます。
  124. 星野朋市

    ○星野朋市君 最後でございますが、今度七兆四千億、富士銀行に至っては一行で、これは安田信託へ通ずるものも含めてでしょうが、一兆円というような巨額な資金が投入されるわけでございます。我々は、この成果を注意深く見守っていきたいと思います。  ジャパン・プレミアムがなくなったという先ほど大蔵大臣の御答弁がございましたけれども、今度の問題で日本の金融不安がなくなる、早期健全化法に基づく実行でございますので、これが本当のいい意味で日本の金融が非常にうまく回転するように望んで、質問を終わります。
  125. 菅川健二

    ○菅川健二君 金融問題についてお聞きいたしたいと思います。  まず、金融監督庁にお聞きいたしたいわけでございます。  午前中も若干ございましたけれども金融検査マニュアルにつきまして、センターバンクから中小の信組、信金に至るまでのマニュアルについて、とりわけ中小零細企業を対象にいたします信組、信金につきまして、今出されておりますマニュアルを厳格に適用しますと大変な貸し渋りが起こって地域に大変な影響を及ぼすというおそれがあるわけでございます。  そこで、二、三具体のことを申し上げますと、例えば破綻懸念先につきまして、零細企業につきましては企業と個人資産というものを截然とせず経営しておる者もあるわけでございます。それらは実態に応じて破綻懸念先というものを判断していただくとか、あるいは要注意債権の貸倒引当金につきまして三年間の引き当てを積めというようなマニュアルになっておるわけでございますが、それを例えば一年間にするとか、より零細企業向けの金融機関に合ったような弾力的な対応をしていただきたいと思うわけでございますが、その点についていかがでしょうか。
  126. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 今お話のありました特に中小企業をその主な貸付先といたします協同組織金融機関に関しまして、パブリックコメントでも業界の団体から御意見をちょうだいいたしております。その中に、先生御指摘がありましたように、いわゆる中小零細企業というのは大企業と違いまして帳簿が不備であるとか、あるいは経営と所有が必ずしも截然と分離されているわけではないというようなことから、貸付先としての中小企業の特性に応じた運用が必要なのではないかということ、それからそもそもそうしたところを中心に貸し付けておりますこうした協同組織金融機関の経営の実情から見まして弾力的な運用を、例えば引き当てなどについて行えないものか、こういったことをいただいております。  原則をまず申し上げた上でその後の検討状況を御説明したいと思いますが、原則といたしましては、金融機関でございますのでリスクをとって貸し付けを行い、そしてそのリスクに見合ったリスク管理、例えば引き当てを行う、それによって貸し付けの原資でありますお金を預けておられる預金者の皆様が安心できるような健全な経営をしていただく、これが原則でありまして、預金受け入れ金融機関であります以上、その経営形態や規模がどうであれ適切なリスクテークと適切なリスク管理をしていただく、これが基本でございます。マニュアルの中間報告もそういったものを基本哲学としてつくられております。  さてそこで、中小金融機関のケースでございますけれども、例えば規模が非常に小さいことに伴いましてリスク管理の手法ややり方が大銀行の場合とは違うというケースがあり、引き当ての期間がどの程度でいいかという点は公認会計士さん等の専門家の御意見も聞く必要がございます。  コメントが出ておりますので、今後議論されていくことになりますが、例えばリスク管理手法の中でもコンプライアンスを維持するための管理の仕方、こういったようなことに関しましては、非常に規模の小さい支店ですとか営業所あるいは金融機関におきましては、大銀行のようなある程度人員間の融通がききやすいところと違って、職場の離脱を一定期間するというようにしましてもなかなか限界がある、こういったような御指摘がございます。このような金融機関の規模、形態において特殊性がある場合にどういった扱いにしたらいいかということが今金融検査マニュアル検討会議論になっております。  協同組織金融機関の皆様からは今月八日に全国信用金庫協会等から御説明がございまして、こういった点も委員の皆様は非常によく理解できたということでございまして、今後検討していこうということになっております。  なお、このマニュアル検討会には今回のコメントを踏まえて議論を深める必要があるということで、信用金庫あるいは信用組合、こういったところで実際にリスク管理や経営の実務に携わっておられる専門家の方に新たにメンバーに加わっていただきまして、こうした方からも積極的な御発言をちょうだいしております。  次に、中小企業なり零細企業というところへの貸し付けのリスク管理のあり方にやはり特別な配慮が要るのではないかというお話がございます。これに関しましていただきましたコメントの中に、具体的に先ほど申しました帳簿の問題ですとか、あるいは経営者と会社の資産が混然一体となっているというようなケースもあるということから、中小企業赤字企業の場合の資産査定のあり方というのはほかと少し違うやり方があるということが中間報告の中にも既に一、二出てきております。  ただ、それだけで本当に十分なのか、もっといろいろ実務を踏まえた具体的な規定ぶりが必要なのではないかというのが三月八日のヒアリングでも出ておりますし、昨日は農協系統金融機関の皆様から御意見をちょうだいしましたけれども、やはり同じ御意見が出ておりました。  そこで、そういった点をもう少し突っ込んで議論して、マニュアルの中にこういう特性を持った貸付先の資産査定についてどういうやり方をしたらいいかということをもう少し書き込んでいくべきであるというのが委員の皆様の意見の大勢でございまして、今そういった方向で検討を進めております。  なお、運用の弾力化という点につきましては賛否両論ございます。金融検査マニュアルというのはもともと行政の裁量性をなるべく狭くして、受検なさる金融機関の方にも検査官の自由裁量で厳しかったり甘かったりするということがないようにという趣旨もございますので、弾力化を行います場合には、そこはそこでその弾力化が必要な状況とか目的というのをよく考える必要があろうかと思います。  なお、長くなって恐縮ですが、最後にこの金融検査マニュアルと申しますのは、あくまで検査官の検査に当たっての手引書でありまして、ここに書いてあるやり方とは違うやり方のリスク管理の方が自分たちの銀行に合っているという場合には違うやり方をとっていただいて一向に構わない。ただ、違うやり方で合理性があります、リスク管理はできますということを検査に当たる検査官に御説明いただけばいい、こういう性格のものでもありますので、むしろ中小金融機関の皆様方もそういった点で自分たちの業態の特性を踏まえたリスク管理手法というのを積極的に開発なさり、あるいは御提言なさるということも必要であろうと思います。
  127. 菅川健二

    ○菅川健二君 ひとつ実態に合った対応をしていただきたいと思います。  それから、先ほど星野委員からございましたいわゆる公的資金の導入の問題でございますが、金融再生委員会におきましても大変御尽力されたわけでございます。いずれにいたしましても、不良債権の一掃という面ではかなり力を注がれて、リストラ等につきましてもそういった面での厳しい対応がなされたと思うわけでございますが、センターバンクということになりますとやはり国際的に競争に打ちかっていかなくちゃならぬ、そういうことになりますと、ポイントは収益力になるんじゃないかと思うわけでございます。  この点、ROEとかROAとかいろいろ手法がございますけれども、欧米の水準からすると、仮に健全化計画どおりにやったとしてもかなりまだ水があけられておるというような状況下にあるのではないかと思うわけでございまして、収益構造は期待薄というような記事も出ておるわけでございます。  そこで、再生委員長さんには、この健全化計画で収益力向上にどういった点についてポイントを置かれたのか、あるいは将来の見通しはどうなのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  128. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、一つには今回の資本注入の目的である不良債権の処理、それからまた信用供与の円滑化、これを本当になし遂げるためにもどうしても収益力の確保、向上というものが不可欠だというふうに私ども考えました。  もちろん法律の枠組みもそういうふうになっておりまして、経営効率の向上というようなことからいろんな御注文を法律上にもいただいておるわけでございますが、私どもといたしましては、これを二つの方面から考えたということでございます。  一つは、現に行われている業務の経費、必要とされる経費の削減ということでございまして、一連の人件費の抑制であるとかあるいは物件費についても情報関連以外は抑制しなさいとかというようなことで、できるだけ経費を抑えていく、こういうことを指導というか勧誘いたしたということでございます。  もちろん先生御案内かと思うんですが、日本の経費率というのは国際的に見ると実はかなり低いんですけれども、低いにもかかわらず、まだ外側から見ると、例えば人件費が高過ぎるんではないか、あるいは余分ないろんな施設を持っているんではないかというのも目の当たりにするわけでございまして、そういう意味でそこらあたりのことについての自主的な努力を促したということでございます。  しかし、それで十分かといいますと実はそうではなくて、もっと利ざやの稼げるというか収益を上げる分野を開拓し、あるいはそれを既に持っているんでしたらそれを拡大していくというような、そういう業務そのものの再構築というか、リストラクチャリングというものが必要であろう。場合によっては、そういうことをやる中でやはり合併であるとかあるいは提携であるとかというようなことも必要になってくるんじゃないか。いわゆる金融界の再編でございますけれども、これも法律がこんなことまで述べていただいておるというのは本当に踏み込んだ規定だと思うんですけれども、法律自体にもそういうことがございますので、私としてもそういうことで大いに発言をしてそれを促してきたわけでございます。  この点につきましては、率直に言ってこの一月の初頭から今の三月の半ばまでにそういう合併話あるいは提携話というようなものを大幅に進捗せしめるというのは、時間的にちょっときつい話でありますが、それでもかなりの話をしていただいた、合併のもくろみを明確にしたところもございますし、資本あるいは業務の提携等についてはそこここであったし、また子会社化というような動きもあったわけでございますけれども、その状況をあえて評価させていただきますと、まだ緒についたばかりかという感じが私としてはしておるわけでございます。  したがいまして、これからさらにその面については大いにドライブをかけるような努力をお願いしたいと考えておりまして、私どもは、そうした動きがあることについては、この健全化法が効力を持つ限りにおいてはこの枠組みの中で支援もしてまいりたい、このように考えて、何とか競争力のある金融システムというものを構築したいというように考えている次第です。
  129. 菅川健二

    ○菅川健二君 今御指摘のように、特に利ざやの稼げる収益力というものの力を今後つけていただく必要があるんじゃないかと思うわけでございまして、あわせてやはり純益が出ませんと七兆四千億何がしの大変な公金を投入いたすわけでございますので、その返済が滞るということになりますと大変なことになるわけでございます。  そこで、これは確信を持って言われるということは難しいかもしれませんけれども、今の段階で委員長として七兆四千億は完全にプラスアルファをつけてでも返してもらうんだというような御決意があればちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  130. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) もう何もかも言っていただいたような気持ちもするわけでございますけれども、一応今、計画上も回収見込みと申しますか、向こうからしますと消却の見込みの年数というものを経営健全化計画の中でもうたっていただいております。  平均のコア純益でもって資本増強の申請額を割って単純に計算するとどうかということを見て、私どもはその計画上の年数についてのある程度の評価もさせていただいておりますけれども、大体五年から七年くらいで、もちろんもっと短いところも計算上はあるんですけれども、優先株についての消却を終わるというような計画の数字を示していただいておるということでございます。  私どもとしては、もう本当にこの点は再び長銀とか日債銀の轍を踏んではならない、このように思いまして、この回収の確実性というものを確保するということで十分なフォローアップをしてまいりたい、このように考えております。
  131. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ回収について確実性を確保していただきたいと思います。  最後に、二〇〇一年四月からペイオフが行われるわけでございますが、諸外国におきましても実態としてペイオフというのはほとんど行われていない。確かにペイオフが実際行われるということになりますと大変な混乱が起こると思うわけでございます。  そうしますと、今回の大手行につきましてはそれなりの手当てをやって、あといろいろなケアをしていかなくちゃいかぬわけでございますが、その他、大手行以外に地銀とか信組、信金に至るまでたくさんの金融機関があるわけでございます。そこで幾つか保証するということになりますと、またこれは大変な不安材料になるわけでございます。  今後、その他の銀行に対する不良債権の処理なりあるいは銀行の健全化に対する対応はどうお考えになっておるか、お聞かせいただきたいと思います。
  132. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 金融機能早期健全化法はただいま先生御言及になられたそうした中小の金融機関にも当然適用になっているわけでございます。ただ、現実、今地方銀行ですら申請があったところは横浜銀行のみということでございまして、ほかは健全性の確保の面で大丈夫なのか、こういう御懸念かと思います。  率直に言って、このような必要性を感じておるところもあるやに聞いたりもしておりますけれども、これがタイミング的におくれているのはひとえに一斉検査というものとの絡みでございます。十五行等については御案内のとおり昨年の三月期の決算を一斉検査させていただいたということでございましたが、今の金融監督庁のマンパワーからいたしますと、それでもすべては自分ではできなかった、五行くらいのものは日本銀行の考査で補わざるを得なかったということでございます。  それに基づいて私どもの今の資本注入の手続というのは行われているわけでございまして、中小金融機関を含む地方の金融機関については、今後、検査と結びついた形で、こうしたことが必要なところからは申請が出てまいり、我々がそれに適切に対応していかなければならない、このように考えておる次第です。
  133. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ二〇〇一年の四月のペイオフの時期を迎えるまでにひとつ条件を整備していただきたいと思います。  以上でございます。
  134. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上をもちまして、委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後二時十分まで休憩いたします。    午後一時二十三分休憩      ─────・─────    午後二時十分開会
  136. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、平田耕一君が委員を辞任され、その補欠として佐藤昭郎君が選任されました。     ─────────────
  137. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 平成十一年度における公債発行の特例に関する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  138. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 午前中の委嘱審査で益田先生の方から財金分離問題が出されました。日ごろ私は益田先生には大変尊敬の念を寄せておりますし、同感に思うことが大変多いわけでありますけれども、この問題だけはちょっと意見が違いますので、私の意見を述べさせていただきたいと思う次第でございます。  国際金融市場には、いろいろ今話題になっておりますヘッジファンドなどの投機筋によるいわゆる市場の暴力が働くことがある。私はいろいろなところで何度かそんなことを言っておるわけでありますが、それに対する対応策でございますけれども、午前中もちょっと話が出ておりましたけれども、やはり何がしかの国際的な取り組みというものが当然必要であろうと。それはそう思うわけでございますが、しかしながら基本的には国としての対抗力、ガルブレイスの言うところの対抗力、そういったものが要るのではなかろうか、こういうふうに私は思っておるわけでございます。  厚生大臣及び郵政大臣が、去る三月三日の予算委員会で年金や簡保などの運用としてPKOはやるべきでないという旨を述べておられました。当然のことだと思います。したがいまして、月原先生が述べておられましたような三月の決算期を意識してのPKO、そういったものはまことに無謀といいますか、余り意味のないことであろうと思っております。  しかし、年金だとか簡保などで購入した株式が何らかの理由でヘッジファンド等投機筋の売り浴びせに遭うというようなことがないのかどうか、頭の体操みたいな話でございますけれども、私はあり得ない話ではないのではないかと。やはり、こういったことは考えておかなければならないことではなかろうか。しかも、これからの時代はストック経済に入ってくるわけでございますから、特にそういうことが重要であろう。株式というストックについても、その管理を国全体としてどうするか、これは今後の極めて重要な課題であろうかと思うわけでございます。強くアピールしておきたい。  さて、昨年の金融経済特別委員会で、私はヘッジファンドなどの動きも含めまして国際金融に関する情報収集の必要性について言及させていただきました。大蔵省はそういった国際金融に関する情報収集が必ずしも十分でなかった点をお認めになりました。今後、できる限り多角的な情報の収集に努めていきたいというふうにお答えになったわけであります。  私は、大蔵省がそういった国際金融についての情報収集を行って我が国の財政金融のありようというものを考えていくことは当然のことであって、財政金融は完全に分離しなければならないという考え方、すなわち金融問題は大蔵省の所掌から一切外すんだというふうな考え方はちょっと問題があるのではないかなと思えて仕方ないんです。個々の金融機関に対する監督指導というのはもちろん金融庁、今度金融庁ということになるのかわかりませんが、金融庁の所掌であろう。しかし、財政とも密接に関係し、経済全般と深くかかわってくるような問題については、金融問題であっても個々の金融機関の問題でない限り大蔵省として調査をし、分析し、そして必要なコミットをしていくということはやっぱり大事なことではないのかな、こう思う次第でございます。  きょうもケルンのサミットの話が出ておりましたが、その前四月にはIMFの総会に合わせてワシントンでG7の蔵相会議が開かれるやに聞いておりますが、大蔵大臣はそのG7でヘッジファンドの情報開示の義務づけを提案されるのではないか、そんなこともちょっと実は耳にしておるわけでございます。ぜひそういう御提案をしていただきたい。アメリカの強い抵抗があろうかと思いますけれども、やはり私は日本として頑張っていただきたい、こんなふうに思うわけでございます。  そこで質問になるわけですが、きょうはまさに渦中にあるのでちょっと答弁しにくいという話をされました財金分離問題です。しかし、私は、大蔵省は国際金融に関する多角的な情報の収集を進めていって、財政金融両方をにらみながら、国際的な動きもにらみながら、これからの日本の財政はどうあるべきか、経済はどうあるべきかを考えていかないと、金融問題は関係ないんだということでは済まされないのではなかろうかと思うんです。  財金分離の問題はもちろん党レベルの問題でございます。しかし、これは同時に政府としても重大な問題であるはずでございます。大蔵大臣といいますか大蔵省におかれましては、大蔵省がどうのこうのということよりも、やっぱり我が国の経済社会の行く末がどうなるかという観点から、政府として国会に対しても党に対してもやっぱり言うべきはしっかり言うべきである、そのように思うわけでございます。ちょっとお答えにくいのかもわかりませんが、ノーコメントならノーコメントで結構でございますけれども、もしお答えいただけるならちょっと冒頭にその点御質問させていただきます。
  139. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろ深い観点からの御卓見を聞かせていただきまして、謹んで拝聴いたしました。  せっかくお誘いをいただいておるわけですが、先ほど申し上げましたような理由でこれは各党でいろいろに御検討中でございまして、また我が党からも当然そういう各党の中の一党としていろいろ討議に加わっておるわけでございますので、これはその方々の御検討の結果を待ちたい、こう思っております。不測のことを申しまして、せっかく各党間で真剣に御検討中のことをお妨げしてもいかぬという気持ちがございますので、お話は大変意義深いお話として承りました。
  140. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 なかなか高度な話ですので私も話しづらい点があるんですけれども、その程度にとどめまして、本論に移らせていただきたいと思います。  平成十一年度予算はなるほど当初予算で比べますと五%増というようなことになっているんですけれども、しかし、十五カ月予算といいますか、平成年度の補正予算の執行状況というものを考えたときに伸び率がどうなるのか、三月末までにどの程度消化できるかということとも関連するわけですけれども、その辺がちょっとどうなのかよくわからないのであります。私は、平成十一年度平成年度と同じような感じで、やっぱりアクセルを踏み続けていかないと我が国経済はなかなか上向いていかないのかなと。政府の言うプラス成長を達成するために、その辺がちょっと気になっているところでございます。政府の方で、マクロ計算で確かにプラス成長になるんだと言われても、本当かなと心配にもなるわけでございます。  IMFは、昨年十二月の時点で実質経済成長マイナス〇・五%というような予想をしておりましたが、最近の新聞によりますと四月の改定で下方修正、上方修正じゃなくて下方修正するというような話もあったりするので、その辺がどうなるのかなと。  経済企画庁長官が言われますように、今はまさに底を探る動きが続いているのかもわかりませんけれども、いずれにしろ現在は経済危機が続いている、こういうことだろうと思います。今はまさに危機からの脱出というものが最大の課題でございます。しかも、私は今申し上げたような心配すら持っておるわけでございますので、赤字公債発行はやむを得ないと存じます。賛成の立場を最初に明らかにさせていただいた上で、いろいろと関連の質問をさせていただきたいと思う次第でございます。  我が国の財政制度におきまして、法的にも建設国債赤字国債というのは厳に峻別されておるわけです。しかし、建設国債赤字国債を区別するのはおかしいんじゃないかという意見もいろいろとあるようです。自民党の中でもそういうことを言われる人がおられるのでございますが、念のため私の考えを述べさせていただいて、御意見を賜りたいと思います。  仮の話ですけれども、私の子供がおって、結構若いときからまじめに働いて貯蓄して金を持っておると。私の住んでいる家が古くなったので増改築しました、金がちょっと足りないので子供から借りましたと。これは借金なんですけれども、子供に利息を払ってもいいんですが、そういうのは借金借金ですけれども、ちょっと通常のよそから借りる借金とは違うんじゃないかと。いずれ私の家は子供に移るんですからね。ですから、国と国民の間でも同様のことが言えるのではなかろうか、こんなふうに思うんです。ちょっと例えが悪かったかもしれません。  いささか古い文献で申しわけないんですけれども、北欧学派の元祖と言われているヴィクセルでございますけれども、そのヴィクセルがこう言っているんです。もし借り入れが外部から行われるならば、言いかえれば国家が外国から借り入れをするのなら債務を次世代に負担させるべきでない、そういう素人の意見は明らかに肯定できると。しかしながら、もし資金が国内で調達されるのなら、専門家がしばしば指摘するようにこのような意見は明らかに誤解に基づくものである、こんなことを言っておるわけでございますが、ひとつそういった考え方といいますか、そういった問題について大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  141. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先刻、公共事業のお話がございまして、平成年度の補正予算におきましても、また御審議中の十一年度予算におきましても、公共事業には大きな重点を置いております。  いろいろ批判がございますから、それはもういろいろ工夫をすることが必要でございますし、またいたしておるつもりでございますけれども、これが景気回復の大きな力であることは間違いありませんし、先ほど岩井委員が言われましたように、これからもアクセルを踏み続けなければならない、私もそうであろうと思っております。  したがいまして、先ほども国債につきましてそういった観点でお話がございましたが、私もこういうときに国債発行して公共事業をやるということはやはりオーソドックスな手法であると考えております。  それで、今お話のございましたことは、我が国で恐らくエコノミストとしては第一人者で経済企画庁長官をされた宮崎勇君が最近もそれに似たことを言っておられまして、借金をしてそれを子孫が受け継ぐということは、外国人が受け継ぐんじゃないですよ、日本人同士の話ですよということをまさに言っておりまして、私も同感でございます。
  142. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 これまた古典的な議論で申しわけございませんが、生産能力の増大に寄与しないと言うと言い過ぎなのかな、赤字国債につきましては、やっぱり余り発行し過ぎますと後年の物価上昇の要因にもなる、そんな議論が古くからあるようでございますが、そういった議論について大蔵省の見解というのはどうなっているのか。それからまた、我が国の法律制度の中で建設国債赤字国債が厳に峻別されておるということの理由といいますか、その辺をちょっと改めて説明していただくとありがたいと思うのでございます。
  143. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはもういきさつは岩井委員がよく御承知のとおりのことでございますが、戦後一切赤字国債というものは出さないというふうなことからいろいろ変遷がございました。  しかし、廃墟になった日本が立ち直るためにどうしても建設インフラストラクチャーというものは必要であって、それはできればその時々の金でやるべきであるけれども、しかし国力さえあればそういうものをつくっておけば必ずその借金は返すことができるというようなことから、建設国債というものはやっぱり認めようではないかということになってまいったわけでありまして、基本的にはそれはやはり資本勘定に属すべき一種の投資的な支出であると考えるべきではないかと思います。  それに対して、しからざるものはカレントエクスペンスと言っては言い過ぎですけれども、非投資的である経費を賄う、そういうことでございますから、考え方としては明快な考え方であると思います。  ただ、年が進むに従いまして、何が資本的経費であるか、何が投資的であるかということにつきまして、例えば研究施設のようなものはどうであるとか、あるいは学校にテレビを置くのはいけないだろうがテレビを置くために校舎の改造をする部分はどうであるとか、いろいろ問題は出ております。したがって、これは余り区別する意味はないんだという御議論もこのごろ盛んにございますけれども、事の起こってきたゆえんは大変はっきりしておって、私はやはり投資的経費は投資的経費として尊重されるべきではないかと思っております。
  144. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 やはり時代とともにその解釈が変わってくるのは当然でございますけれども、そもそもの基本的な物の考え方が変わるということになると大変なものですから、中身が多少変わるのは当然だといたしましても、建設国債というものと赤字国債というものとは厳に峻別されなければならない。それをごっちゃにするような議論はちょっとやっぱりおかしいのじゃないかということを私の意見として述べさせていただきたいと思います。  さきの予算委員会で、私はこれからはストック経済の時代でありまして、それを意識しての財政運営というのが重要になってきておるのではなかろうか、そんな観点から大蔵大臣に質問させていただきました。しかし、ちょっと私の質問の仕方が悪かったのと時間がなかったせいで期待していた答えがもらえなかったので、きょうも余り時間はないのでございますけれども、少し論点をはっきりさせて質問させていただきます。  ストック経済における重要な課題の一つに、国内資産と海外資産のバランスの問題があるのではなかろうかと思います。これは野口悠紀雄さんの言っておられることでございますけれども、私も同感なんですが、貿易黒字によって今後しばらくの間は海外資産は増大していくであろう、現在もかなり大きくなってきておりますが、そうであれば、やはり我が国は、当然内需拡大の観点からおくれている社会資本の整備に力を入れるべきではないか、こういうことです。  もちろん、そういった公共事業につきましてはむだのない効率的なものでなければならないわけでございますけれども、貿易黒字が続く間は、私の考えといたしましては、PFIを活用するなどして、全体としてやっぱり公共事業を伸ばしていくという考え方がいいのではないか。いいのではないかというよりももっと積極的に、貿易収支、経常収支を考えますと内需振興、内需拡大というのがやっぱり国際社会に対する一つの義務ではないか、そんなふうに思うんです。  午前中、林先生からマーストリヒト条約の話が出ましたので、ダブりますからその点は割愛させていただきますけれども、もうちょっと大きな基本的な問題といたしまして、国内資産と海外資産とのバランスの問題でございます。  今後も海外資産はふえていくと思うんです。ストック経済におきましては、国内の資産とふえていく海外資産とのバランスというものを考える必要があるのではないかなと思うんですが、そういった点につきまして、大蔵大臣の御所見をお伺いできればと思います。
  145. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一昔前に日本の経済が大いに世界に雄飛しておりましたときに、何で何もかにも輸出してくるんだと。行ってみると、本人たちはウサギ小屋に住んでいるじゃないかと言われたことがあって、私はあれは今でも真理だと思っていますから、これだけ海外に輸出する力があるのならば、やっぱり自分のところのインフラストラクチャーをもっとしっかりしなきゃいけない、貿易が危なくなったら別でございます、それは別の話です。私は、基本的に全くそう思っております。
  146. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 最後の質問になろうかと思いますが、ストック経済でございますけれども、これからやはりストック、社会資本というストックがありますし、土地があり、株式があり、住宅があり、いろいろストックがあるわけですけれども、やはりそういったストックをうまくコントロールしながら安定的に経済を維持あるいは成長させていくということが肝要ではなかろうかと思うんです。  アメリカ、イギリス、フランスなどではストックフローに転換する仕組みがいろいろと考えられておるようでございます。それらは一口で言いましてモーゲージの逆のやつです。毎月の生活費の分割貸し付けを受けて、死亡した時点で住宅を処分して元利合計を一括返済して清算する、そういういわゆるモーゲージの若い人がやるものの逆です。これによりまして高齢者が老後資金を賄うことができるわけでございます。大変魅力あるんですね。我が国もこれから高齢社会に突入していくわけでありますので、やはりそういったストックフローへの転換、そういうものを考えていくべきではないか、こんなふうに思うわけでございます。  ストック経済におきまして、ストックフローに転換する仕組み、今後我が国においてその辺がどうなっていくのかいろいろ期待もあるわけでございますが、その点につきましてひとつ大蔵大臣の御所見をお伺いできればと思う次第でございます。
  147. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はちょっと法律関係に詳しくございませんので、どういう問題がございますか申し上げられませんが、経済の方からいえばそれはもう至極当たり前のことであって、モーゲージというものがございますし、それから殊にある意味で、例えばマンションのあるフラット、自分の所有している部分なんというのは、これは市場価格としては比較的明らかでありますし、また証券化しやすい部分でございますから、それを自分の死んだときにだれかに買ってもらうというようなことは、これはできない方がおかしいと思っておりまして、経済の方では当たり前だと思います。ちょっと法律面は存じませんので申し上げられませんが、そういうことは恐らく当然行われるようになるのではないかと思っております。
  148. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 日本の場合はなかなか遺産相続の問題があってそう簡単ではないということのようなんですけれども、しかしこれからストック経済に我が国も入っていくとすれば、そういったこともやっぱり真剣に考えていかないといかぬのじゃないか。せっかくSPC法もつくっていただいたわけでございますので、少し新しい経済にチャレンジしていくことが必要ではなかろうか、その点を申し上げまして私は質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  149. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 民主党の浅尾慶一郎でございます。  きょうは、七兆円強の資本注入の記者会見をされる大変お忙しい中、柳沢国務大臣にも御出席をいただきましたので、お許しをいただいて先に柳沢大臣の方に質問をさせていただいて、それから大蔵大臣の方に質問をさせていただきたいと思います。  まず、先般の代表質問の際にも質問させていただきました件でございますが、昨日、益田委員の方からも、銀行がいろいろな債権放棄に応じて、いわゆるゼネコン救済ではないかといったような御指摘もありましたが、昨年、佐々波委員会が講じました優先株の取得に際しましても、その後の日本長期信用銀行の再建計画の中で七千億円強の債権放棄が計画されておりました。  実は、七千億円というのは、優先株も普通株も順番を同じにして計算をすると債権放棄をしても別に経営に影響はなかったわけでございますが、優先株の方が経営に対する距離が議決権がないということを考えれば遠いということを考えますと、優先株と普通株を同類に扱うのはいかがなものかという問題意識から、先般代表質問でさせていただいたことでございます。  具体的にもう一度、委員長のお許しをいただきまして本日配付資料がございますので、これに基づいて質問をさせていただきたいというふうに思いますが、よろしいでしょうか。
  150. 勝木健司

    委員長勝木健司君) どうぞ、理事会で許可をいただいておりますので。    〔資料配付〕
  151. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今、配られると思いますが、少し申し上げさせていただきますと、もう国務大臣御存じのように、商法二百二十二条第三項におきまして、会社が何種類か別の株式を発行している場合には、資本減少の際には別の定めをすることができるということが書かれております。それが今お配りしております「減資・会社整理・清算・特別清算」といった参考書類に書かれておることでございますけれども、このことは商法上明記されております。  また、商法の三百四十六条あるいは三百四十五条一項を見ていただきますと、仮に減資の際に普通株主と種類株主、優先株と別の取り扱いをする場合には、あらかじめ定款で定めておくか、あるいは種類株主総会においてその定めをするべきであるということも規定をされておるわけでございますけれども、いずれにしてもこれは商法上できると書かれておることは明らかではないかと思っております。  そこで、質問に戻らさせていただきますが、実は昨年の金融特別委員会においても長銀の債権放棄の点についてこれは問題ではないかと。もう一度繰り返しますが、議決権がない優先株と議決権がある普通株、これが債権放棄をすると当然資本の部にも手をつけなければいけなくなってくる、優先株も普通株も同じように減資をしていくということはかえって不公平なのではないかということを指摘させていただきました。  今般また優先株を取得されるわけでございますが、当然債権放棄によって資本金あるいは資本の部に手をつけるということも可能性がないわけではない。ないわけでないとするならば、しかも事前にわかっているとするならば、事前に定款その他において優先株に手をつける場合には普通株とは別の取り扱いをするべきではないかという御指摘をさせていただいております。なぜそういうことをしておられないのか、この点についてまず御答弁いただければと思います。
  152. 森昭治

    政府委員(森昭治君) 先生御指摘のとおり、優先株を引き受けるに当たりまして政府が不利益をこうむることのないようにすることが重要ではないかと存じますし、確かに商法上は優先株につきまして特別の定めをすること自体が許容されていることもまさに先生のおっしゃるとおりかと思います。  しかしながら、どのような定めであっても許容されるのかどうかにつきましては種々学説があるようでございまして、例えば、定款の定めがある種類の株主に余りにも大きな不利益を及ぼすようなものである場合には無効と解される余地があるとする説や、定款で定めた権利調整の方法が著しく不当な場合にはそのような定款の定めは無効と解すべきであるという説があるわけでございます。したがいまして、定款の定めによってある種の株主を有利に扱うこと自体は許容しつつも、一定の場合には定款の定めが無効とされる可能性が種々指摘されているわけでございます。ただ、具体的にどの程度の定めをした場合に違法とされるかにつきましては、実は明確な基準を提示している学説はございません。  また、定款によらずに特別の定めをする場合につきましては、客観的に明白に実質的公平に反する格別の定めはたとえ不利益を受ける種類の株主総会の決議があってもその瑕疵は治癒されないという学説がございます。  以上のような諸見解を踏まえさせていただきますと、せっかくの御指摘ではございますけれども金融再生委員会といたしましては慎重な解釈に立脚せざるを得ないことを何とぞ御理解いただきたいと思います。  なお、金融再生委員会といたしましては、政府が不利益をこうむることのないよう優先株等の引き受けを行い、またその後の投資資本の回収の確保が図られるよう万全の努力をしていく所存でございます。
  153. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今の御答弁に対してちょっと確認させていただきますが、そうすると金融再生委員会としては、仮に減資が行われた場合には優先株も普通株も同じ割合で減資を行うことが公平だというふうに認識されているということでよろしいんですか。
  154. 森昭治

    政府委員(森昭治君) 減資という事態に立ち至った場合にどちらがどうということはそのときの種類株主総会の際に決められることではないかと思いますが、先ほども申しましたように、最初から減資については、二つ種類株主があるといたしまして、一方の種類株主の株のみ減資ということを最初に定めておくということは、先ほどの種々の学説から申しまして、そういう定めを最初からすることについては慎重にならざるを得ないと申し上げたわけでございます。
  155. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 お答えいただいていないと思うので、もう一度確認いたします。  例えば減資の場合でも、優先株を一株減資する間に普通株を二株減資するといったようなことも当然考えられるわけでありまして、また繰り返しになりますけれども、今回取得されております優先株は議決権がない優先株ということでございますから、当然経営に対してある程度距離が普通株よりはあるのではないかと。そうすると、減資になるということは、例えばきのう益田委員が御指摘され、柳沢国務大臣も債権放棄をするというのは各銀行の経営判断だ、特に金融再生委員会としてそれについて口を挟むことはないというふうにおっしゃっておりましたけれども、債権放棄をして仮に減資をした場合にでもそれは同等に扱って構わないということなのか。  なぜそういうことを申し上げるかといいますと、実際これは起きなかったんですが、計画としてあらわれていたことで申し上げますと、昨年の長銀の再建計画の中では七千億円強の債権の放棄が当初計画されました。これは減資を伴わないとできない金額だったと思いますが、その減資をするに当たって、普通株の資本金と優先株の資本金とを同列に扱う計画であった。私は、これは余りにも逆に不公平なのではないか、優先株は経営にタッチできないんだから、そういうふうに同列に扱うのは不公平なのではないかというふうに御指摘をさせていただいたわけであります。  そういったようなことが既に昨年長銀の中で計画されておったわけでありますから、繰り返しになりますけれども、そういうことがないとは言えないのではないか。今後においてもないとは言えないのではないか。しかも、商法上可能だということであれば事前に想定をしておくべきではないかということなんですが、その点についてはいかがでしょうか。
  156. 森昭治

    政府委員(森昭治君) 先ほども申しましたとおり、今回臨時株主総会を開いて定款の変更をいたしまして、優先株の引受限度を上げる等の定款の変更をこの十五行のうちの多くの銀行におきましてしたわけでございますけれども、その際の定款の変更事項の中には減資については扱っていないと理解しております。  そうした上で先生の御指摘について考えますと、通常はやはり同じ割合でするというふうに考える方が普通ではないかと思います。ただ、一言先生のお出しになった事例で申し上げたいのは、債権放棄につきましては、この十五行につきましては不良債権要処理額の中にこの放棄額を含めて経営健全化計画を出してきておるわけでございまして、そういう意味におきまして、債権放棄をすることが自己資本の毀損につながるということはこの十五行の現在の計画の上では考えられないというふうには言えるのではないかと思います。
  157. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今、今回の臨時株主総会の中で減資については定款で定めていないという御答弁をいただきましたが、実はその前に事務局の方にはその点も踏まえて定款の中に入れておくべきではないかと指摘はさせていただいておりました。その点は御高承のとおりだと思いますけれども、何かいろんな事務の流れの中で新しいことを入れるとなかなか難しいということでそれをやられなかったのかというふうに理解をいたしております。  しかしながら、繰り返しになりますけれども、この点については明らかに商法上も可能であるということでありますし、またそういったことが今後起きることも十分想定されます。まだ少し予算が残っているわけでございますから、今後優先株を引き受ける際にはその点も踏まえて引き受けるかどうか、その点の御答弁をお願いしたいと思います。
  158. 森昭治

    政府委員(森昭治君) 先生御指摘の点は、確かに昨年秋に御指摘いただいた以降、内部で十分検討させていただいております。  また、先生が御懸念されるのはあくまで公的資金の毀損という点であろうかと思います。そういう点を留意いたしながら引き続き検討していきたいと存じますけれども、基本的には、今回の公的資本注入は健全行に対しまして資本を充実することを一番大きな目標としてやっておるわけでございまして、今回の十五行につきましては、我々の頭の中では減資というものを考えていないということは御理解いただきたいと思います。
  159. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 健全行というふうに今おっしゃいました。私も当然健全行だと思いますが、ただし昨年の佐々波委員会の際にもすべて健全行であったわけでございます。  だから、今現在想定されていることが、健全行だからそういうことは絶対起きないんだということでなくて、そういうことが起き得るということを考えた場合には、今申し上げたような差別的な扱いをした方が国民財産の保護にもなりますし、かつ公平な扱いなのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  160. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) まず、今度の資本注入に当たって、株主の責任を問うて減資をまずして、そしてその後我々の資本増強によって増資をするというようなスキームはどうなんだろうか、こういう議論は当然いたしたわけでございます。  しかし、今我々がやろうとしていることは資本の増強である。こういうことから、やはりこれは増減資、増資を先にしてそれで償却をして増強された資本をまたいつの日か減資する、こういう形にならざるを得ないのではないかということを私どもは結論として今日の手続を進めておる、これが第一点でございます。  それからもう一つ、これは浅尾先生は非常によく御存じの方だと思っておりますが、我々が今度の増資をするに当たってもダイリューション、あるいはこれ以上申しますのはちょっとどうかと思うんですが、転換を利用して株価を人為的に上下させて利益を上げるというようなことが現に優先株をめぐってはあり得るわけでございます。そういう意味で、我々はマーケットの対応というものに、これまでもそうですし、これからも大変注意していかなきゃいけないというようなことを念頭に置いておるわけでございます。  そういう意味合いで増強された資本の減資を考えてみますと、これは殊のほか大事にしなければならないという先生のお考えもわかりますけれども、現に発行されておる株式の値段というものの推移についても我々は十分な配慮をしていかぬといけない、このように考えておりますことも、いろいろ私ども考える中で念頭にあったことだということで御理解を賜りたいと思います。
  161. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私の指摘させていただいていることは減資をしろとかそういうことではなくて、減資をする際には優先株と普通株は差別的に取り扱った方がかえって公平なのではないか。その理由は優先株主は経営に対して距離がありますよということなのでありまして、現段階で減資をしなさいということではないということだと思います。  今後もこういったようなことは十分起き得るわけでございますし、また予算が二十五兆円に対して七兆円しか使っていないということであれば残っているわけですから、これから引き受けられる優先株については当然そういったようなことを研究していただきたいと思います。また、私といたしましてもいろいろな学者の先生方にも御意見をいただいてフィージブルなプランを御提示したいというふうに思いますので、それに基づいて具体的な御意見をいただければというふうに思います。  この問題についていろいろやっても、多分きょうは余りお答えいただけないだろうと思いますので、次に移ります。  もう一点だけ金融再生委員会の方に伺いたいんですが、特別公的管理に移りました日本長期信用銀行あるいは日本債券信用銀行が、今後また再度民営化されるというふうに理解をいたしております。  その民営化に当たりまして、いわゆる財務アドバイザー、フィナンシャルアドバイザーを雇ったというふうに聞いております。簡単で結構ですが、これを雇用した先はどこでしょうか。金融再生委員会でしょうか、それとも長期信用銀行でしょうか。
  162. 森昭治

    政府委員(森昭治君) 日本長期信用銀行でございます。
  163. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは伺いますが、世間的な常識で考えてみますと、破綻をしてしまった、破産をしてしまった会社が自分の身売り先を探すためにアドバイザーを雇うということが果たしてあり得るのかなと。あり得るとしたら、そこの管財人という形になった金融再生委員会なのではないかなというふうに思いますが、この点について柳沢国務大臣、どのように思われますでしょうか。
  164. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 当初はフィナンシャルアドバイザーをというような考え方は実はなかったわけでございますけれども、私ども、今回の長期信用銀行の処理、これはできるだけ早く処理しないとだんだんいろんな意味の価値の劣化が起こる、こういうことを考えまして、ここは顔の広い日本の金融界等あるいは国際的にもいろいろ知見の多い経営陣を選んではいるけれども、しかしできるだけ早期に受け皿を見つけたいということで、国際的な知見をさらに大きく持つところのフィナンシャルアドバイザーを雇うということにいたしたわけでございます。  先生のお考えのとおり、それは一体再生委員会が雇うのがいいのか、あるいは長期信用銀行が契約するのがいいかということを一応俎上にのせたんですけれども、実は再生委員会にそういう予算がないということがわかりまして、もう長期信用銀行が契約の当事者になって支払いをするしか方法がないということが判明しまして、これは選択の余地がないということでこういう形になったというのが事の実態でございます。  もちろん、再生委員会もいろんな報告を徴して、いい選択先、受け皿が見つかるように当然協力はしていくわけでございますが、当事者ということについては以上申し述べたのが経緯でございます。
  165. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは伺いますが、長銀が雇っておられますゴールドマン・サックスという会社、いろいろ能力があるということはそういうことかもしれませんが、二点ほどそれについて伺わせていただきます。  このゴールドマン・サックスに長期信用銀行から人が行っているのではないかなと。その分野に行っているかどうかは別として、そこに元長銀のOBの人が行っていたのではないかなということも一つあると思います。  それから、もう一つ伺わせていただきたいのは、その報酬体系というものが成功報酬のみなのか、それとも毎月々何千万円というお金が行っているのか。私が聞いている情報では、月々のいわゆるリテーナーというものとサクセスフィーと両建てになっていて、月々の方は別に成功しようとしまいと入る、売却が成功した場合にはそれとは別に成功報酬が入る体系になっているということを聞いておりますが、この二点について、ゴールドマン・サックスに長銀から人が行っているので選ばれたのではないかということと、それからその報酬体系がどういうふうになっているかという点について御質問させていただきます。
  166. 森昭治

    政府委員(森昭治君) まず最初の点でございますけれども、長銀の方がゴールドマン・サックスに行っているのではないかと。御趣旨の点は恐らく利益相反問題が起きているのではないかという御質問かと思いますけれども、まず申し上げたいのは、金融界は今非常に流動的でございまして、ヘッドハントも起こっていればいろいろな銀行に移るということはビッグバンの中では通常のことで起こっております。したがって、私はよく承知はしておりませんけれども、長銀にいた方が今ゴールドマン・サックスにいたとしても不思議はないと思います。  ただ、ゴールドマン・サックスと一言で申しましてもいろんな部門があるわけでございまして、今回契約をして受け皿銀行探し、平たく言えばそういう任務を負っていますのはゴールドマン・サックスの中でもMアンドAの部門だと思います。ここについてはその他の部門とは高いファイアウオールをしいておりまして、そのファイアウオールの中で仕事をする人につきましても厳格な守秘義務協定もまた結ばれております。したがいまして、御指摘のような利益相反が起こるような人間が相手にいるということは絶対にないと認識しております。  それから、第二の点で、一言で言えば契約の中身はどうなっているのかという点でございますけれども、当該契約はあくまで長銀とフィナンシャルアドバイザーでございますゴールドマン・サックスの両当事者間で交わされたものでありますので、具体的な中身の答弁については差し控えさせていただきたいと思います。
  167. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それは大変おかしい話だなというふうに思います。  まず第一点、ゴールドマン・サックスに長銀から人が行っていないかどうか、この点について利益相反がないというふうに思われるということでございますけれども、選定の過程において長銀の方で多分そのフィナンシャルアドバイザーを選定したと。本来であれば、倒産した会社の人が自分の身売り先を選ぶということ自体が私はおかしいと思う。自分が選ぶということによってかなり問題が出てくるということは明らかなわけであります。  具体的に言いますと、長銀の人が選べば当然自分たちの雇用を守るということをどこか頭の片隅に、あるいは頭の大部分に置くのではないかなということがあると思いますけれども、そのゴールドマン・サックスの相手方のMアンドAのセクションに長銀の人がいたかどうか、ぜひこれは調査していただきたいということを要請させていただきます。  二番目に、その報酬体系は私企業の契約であるから明らかにできないということでございますけれども、果たして本当に今長銀が私企業と言えるのか。あるいはまた、その払われるお金というものは要するにコストでありまして、結果として長銀が債務超過ということであれば税金で補てんされるわけですから、この体系についてはぜひこの場で明らかにしていただきたいと思います。その部分を明らかにしていただくことをぜひお願いいたします。
  168. 森昭治

    政府委員(森昭治君) 先生の御指摘ではございますけれども、こういう長銀とフィナンシャルアドバイザーの契約、これはまたこれから将来を見渡しますと、日債銀も同様なやり方で受け皿銀行を探すということになるかと思います。そういう私企業間の契約の内容というのをこの場で御披露するということはいろんな意味でこれからの私企業間の取引に影響を及ぼすものであると考えられますので、何とぞ御容赦のほどお願い申し上げます。
  169. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それは納得できませんので、ぜひ委員長に資料を提出していただきますようにお願いをいたします。
  170. 勝木健司

    委員長勝木健司君) この件につきましては、理事会でしかるべく協議いたします。
  171. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そして、今御答弁いただきましたように、日債銀についてもあるということでございますが、この点について、日債銀ももしかしてまたゴールドマンを選ばれるということもあり得るのかなと。これは売り主のアドバイザーがこっちもゴールドマン・サックス、こっちもゴールドマン・サックスということになるとまさに利益相反なんじゃないかなというふうに思いますが、この点はいかがお考えになられるでしょうか。国務大臣、お願いいたします。
  172. 柳沢伯夫

    国務大臣柳沢伯夫君) 今はまだ過程にあるわけでございますけれども、少なくとも今私どもが承知しておるところでは、ただいま先生御指摘の問題ありというふうに考えておりまして、そういう意味でゴールドマン・サックスは応募しておらないというふうに承知をいたしております。
  173. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、今の報酬体系について、日債銀についても委員長にその資料を提出していただきますようにお願いいたします。
  174. 勝木健司

    委員長勝木健司君) この件につきましても、理事会で協議します。
  175. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 大変、国の税金を使う可能性があるということでございますので。  私が聞いております話では、成功報酬も含みますとかなり高額な報酬がゴールドマン・サックスに行くというふうに聞いております。それが報酬体系に見合ったものであればもちろん問題はないんだと思いますけれども、果たして破綻した会社、そしてその穴埋めを国民の税金でやるという場合に、それが公平かどうかということもありますので、ぜひ資料はいただきますようにお願いします。  それでは、大蔵大臣の方に質疑を移らせていただきます。  先般、代表質問の際にも、居住地ごとに所得税納税額は明らかにした方がいいんではないかということを質問させていただきました。それに対しまして、小渕総理からは、個人の所得については居住地の市町村に対して資料が源泉徴収義務者から行っている、そしてまた、居住地ごとの納税額を源泉徴収義務者から税務署に対して提出をさせるということは事務負担になるので御勘弁いただきたいといったような答弁をたしかいただいたというふうに思います。  そこで、質問をさせていただきますが、実は御存じのように源泉徴収票というのは三連式になっておりまして、一枚が居住地の市町村に行くわけでございます。そしてもう一枚が、五百万円以上であれば税務署に行く、五百万円以下だったらたしか捨てられているということだと思うんです。いずれにしても、居住地の市町村に三連式の帳票の一枚を出しているということであれば、所得が五百万以下の方についても各税務署に源泉徴収義務者から提出をしていただいた方がいいんではないかなというふうに思います。  この点について御答弁いただきたいんですけれども、その背景について若干説明をさせていただきますと、現在国から地方に税源の移転といったようないろんな議論がされております中で、所得税をもし仮に国から地方に移転した場合どうなるかといったようなシミュレーションも当然しなければいけないんではないかなというふうに思いますが、そのシミュレーションが今のシステムではできない。なぜできないかというと、居住地におきます国税、所得税をどれぐらい払っておられるかというデータがないからだというお答えでございました。なぜないかというと、今申し上げましたように、所得が五百万円以下の方については所轄の税務署に対して税額が幾らかということを源泉徴収義務者から連絡が行っていないからだということでございました。  しかし、また繰り返しになりますけれども、市町村についてはすべて所得金額が同じ三連の帳票で行っているということでありますから、三連の帳票のもう一枚を税務署に提出していただくように制度を変更して、そしてその上で今申し上げたような国から地方への税源の移転について実効性のある議論をしたらどうだろうかというふうに考えておりますが、この点について御所見をお願いしたいと思います。
  176. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 現在、所得税法で適正公平な課税を確保する必要がございまして、給与の今の源泉徴収票以外にいろんな資料をいただいているわけでございます。実は、それでは何でも課税当局がとってもいいのかということになりますと、ある一定の税体系のもとで、やはりお出しになる企業なりの事務負担はどうなのかということをどうしても考えざるを得ないわけでございます。今の源泉徴収票でございますが、先生もう御理解のとおり、現在五百万円ということで足切りをさせていただいているわけでございまして、私ども、今の所得税の体系のもとであるならば五百万円以上のものをいただければ適正公平な課税は確保できるということでお願いしているわけでございます。  それから、市町村の方でございますが、これは実は前年度課税の仕組みになっておりまして、まさに各人ごとにそういう意味で給与支払い報告書がすべて提出される。それに基づいて賦課決定を市町村が行う。また、課税最低限は国よりもさらに下の方になっているわけでございまして、おのずとそれぞれの税の目的、課税の適正公平が、どういう資料をいただいたらいいのか、さらには今のコストの問題がございまして、今の体系のもとでは私ども五百万で十分と思っているわけでございます。
  177. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ちょっとコストというところがよくわからないので大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、こういう三枚式の帳票になっておりまして、一枚はいずれにしても市町村に行く。もう一枚を税務署に出すということになると、どれぐらい源泉徴収義務者にとって、私が会社の経営者だとして、もう一枚税務署に出すのにどれぐらいコストがかかるか、その大体の感じを教えていただければと思います。もし仮に社長だったとして。
  178. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今、枚数でまいりますと、大体年収五百万以上で恐らく千九百万枚、これをいろんな申告書と突合しているわけでございます。これが恐らく全員の給与支払いをということになりますと、恐らく何千万枚というのが出てくるわけでございまして、これがお互いにそれだけのものをやれる限度もございます。御理解いただきたいと思います。
  179. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私がそういうふうにお聞きしたのは、御答弁がどうも納税義務者のコストというふうに聞こえたからですけれども、今のお答えですと税務署側のコストというふうに、多分お答えを少し変えておられると思うんです。  仮に税務署側のコストといたしますと、具体的にどれぐらい予算をふやせばそれに対応できるかということをぜひお答えいただければと思います。
  180. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今のなぜ給与支払いの源泉徴収票をいただいているかといいますと、給与以外にいろんな所得がございましたら当然申告書で出てまいります。その場合、他の所得のある方の申告書を見たとき、給与はきちっと総合課税になっているかというようなチェックをいたすわけでございますけれども、そういうところまで考えて適正公平な課税を実現していくという場合、所得がごくわずかであっても、給与の支払いが大概そういう方は年末調整で終わっているわけでございますから、やはりあるところで線を引くことがこれは私ども税務当局にとっても、変えたわけではございません、両者にとって事務負担ぎりぎりのところでやっているということかと思います。
  181. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 税務当局のお立場での御答弁はよくわかります。それは税務当局としてはコストをかけずに多くお金を集めるというのが当然のことであろうかと思いますが、今お聞きしておるのは、では多少コストがふえてもそのデータがあった方が国全体としてあるいは国家の運営ということを考えた場合、あるいは国家の長期的な税制ビジョンを考えた場合に、国税と地方税との比率を考えた場合は多少コストをかけても必要なんではないか、だから幾らぐらいコストがかかるんですかということを伺っておるわけでございます。ぜひ大蔵大臣の御所見をいただければと思います。
  182. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 恐らく事務全体で、これに限らず利子から配当から始まりまして資料があるわけでございますから、どのぐらいかというのは一概にこれはなかなか言えないわけでございます。ただ、一つ私ども申し上げたいことは、一般論とすれば課税の適正公平のためにはいろんな資料をいただきたいというのがもちろん私どもの立場ではございます。  他方、データを集める必要がある、こういうことを先生は今おっしゃいましたが、たしかアメリカの税制ではそういう意味でのデータを集めるための調査というのも認められているということを一度聞いたことがございます。私どももこれはもう少し勉強したいと思っておりますが、日本の税制の場合、調査、統計のためだけに、あるいはデータ収集のためだけに強制的な負担をおかけするというのはやはり税法の考え方からしていかがなんだろうかと、こういうふうに考えているわけでございます。
  183. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 いや、私は調査のためにデータが必要であるということを言っているんではなくて、当然税金を納めておられるということだから、仮に五百万円以下であって、主税局長にとってはそれは微々たる税金かもしれませんけれども、納めておられる方にとってみればそれは大変な税金を納めておられるんだと思います。そういった方々の税金を一応把握しておくことが必要なんではないかということが第一点でございます。  それからもう一つ、極端な例で言いますと、例えば朝の九時から五時まである仕事をして、夕方の六時から十二時まで別の仕事をする、それぞれ三百万円以下ですとこれは要するに把握しなくてもいいが、足すと税のブラケットが変わるような可能性というのもあり得るのかなと。ですから、言い方は悪いかもしれませんけれども、脱税の可能性もあるんではないかなということでございますので、そういうデータを国税あるいは徴税側の事情のみで今要りませんと言っているのであれば、そこはコンピューターもすごく発展しておるわけでございますから、変えられたらいかがでしょうかということを指摘させていただいておるわけでございます。  時間がありませんので、これと関連いたしまして、ではそれをするとどうなるかということで第二番目の御質問に移らせていただきます。  今、納税者番号制度というものが導入されようとしておるわけでございます。仮に納税者番号制度が導入されても、今申し上げたような五百万円以下の方についてもすべてその帳票をいただかないと納税者番号制度というのは機能しないと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  184. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 納税者番号制度はいろんな論点がございまして、今検討を進めているところでございます。納税者番号制度の使い方、今総合課税のお立場からお話があったかと思いますが、実は政府の税制調査会で検討をする場合、その一つだけに限らず三つの観点から検討がなされているわけでございます。  一つは、御承知のように大変な金融取引の量などが出てまいりまして、先生が今おっしゃいましたように、その資料を有効に活用する必要がございますし、今の国税の方のまさに電算機処理でもっと効率的にできないかという要請もございます。そういう意味で、事務の効率化のために納税者番号制度を入れていったらどうかという考え方が一つと、それから先生が今おっしゃられたように、総合課税にこれからしていくんだという立場、あるいは三番目の話といたしまして、資産課税、相続税などが一つの例になるわけでございますが、そういう資産の把握のために入れてはどうかと、三つの議論がございます。  それで、今の先生のお尋ねについて申し上げますと、総合課税にするのがいいのかどうか、今税調でいろんな議論がございますけれども、仮に総合課税ということを選択するのであれば、おっしゃるように幅広く給与についても資料をいただく必要が出てくるだろう、こういうことかと思います。
  185. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 総合課税については、それを導入する方向で検討するということで合意がなされたというふうに私は理解をいたしております。であるとすれば、納税者番号制度というものを踏まえて、早急に五百万円以下の方についても、納税者の立場に立てばそんなに事務負担がふえるわけではないんで、帳票を税務署の方に送っていただいて、それを把握されるように要請をいたします。  時間の関係で最後になるかもしれません。  納税者番号制度の導入の障害となるプライバシーといったようなものがいろいろ議論されておるかと思いますけれども、納税というものはこれは国民の義務であるということはもう申すまでもありません。そうすると、では幾ら納税したらいいのかということを隠すことが果たしてプライバシーという名前の上で認められるのかなということも考えられるわけですけれども、具体的に納税者番号制度を導入すると、どうプライバシーが侵害されるのか、この点について簡潔にお答えいただければと思います。
  186. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) プライバシーが片仮名だけに、まさに議論する人によってさまざまな議論があると思います。  一言で言いますと、納税者番号を使って行政当局側に膨大な個人資料がたまってしまうことに対する不安感とでも言いましょうか、そういうものがプライバシーリークされていると思います。  それで、議論を少し整理させていただきますと、一つは税務当局と納税者との間で課税の適正化、公平化のために資料を出していただく、これはやはりプライバシーには当たらないだろう、こういうふうに思います。しかし、納税者番号制度が仮に入ったとすれば、国民によく理解してもらう必要があるというふうに考えております。  それからもう一つは、今でもそうですが、仮に税務当局側に資料が集まったのはいいが、それが横流しされないだろうか、他の行政目的に使われるということはないんだろうかというような問題、これは個人情報保護法の問題になってくるだろうと思います。  それからもう一つは、実は資料を提出していただくのは民間の方から出していただくわけですが、そういたしますと、例えば銀行の方には預金に来た人は何番ですと、そういう情報が民間企業側に残るわけでございます。そうなりますと、その番号をキーにいろんなデータを使われることはないのかというような側面にこの納税者番号制度のプライバシーの問題が分けられるように思います。
  187. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 時間が参りましたので、最後に。  番号制度については、基本的に番号そのものがプライバシーを侵害するのではなくて、それを守るような制度的な側面をつくれば導入できるのではないかなというふうに理解しておりますので、そういう理解でよければいいと言っていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 納税者番号制度というのは国会でももう何十年御議論になっていまして、初めのころは社会党の方々が、これが徴兵に用いられるというふうに考えられたことがあります、今ではおかしいようなことですが。  しかし、いろんなことがございますが、今国民がどこかで考えていらっしゃることは、自分が番号をつけられて政府に管理をされている、そういうことへの本能的な反発があって、恐らくオーウェルの社会みたいな考え方、政府から自由でありたいという気持ちがどこかに私はあるんじゃないかと思っています。
  189. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 終わります。
  190. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 予算委員会財政収支展望について幾つか質問をさせていただきました。きょうは特例公債審議ということでございますので、この点から初めに若干質問をさせていただきたいと思います。  私も別に岩井委員議論に反対ではございませんで、公債発行の必要性あるいは公債政策の意義というのは十分理解しているつもりでありますが、私が危惧するのは、財政当局も含めて今の財政状況さらには今後の財政の展望について少し危機感が希薄ではないかという気がしてならないわけでございます。  この前の予算委員会質疑でいろいろ数字を申し上げながらこの財政収支の展望にあらわれている姿を見てみたわけですが、どう考えても出口がなかなか見つからない財政状況のような気がするんですね。  今、平成年度で減税分も含めると十兆円落ち込んだ。発射台が十兆円下がったから、これからどのような見通しを立てていっても、少なくともこの財政収支展望で描かれている五年の間にはもちろんのことでありますが、出発点の平成年度当初の税収見通しまでにも回復はしないわけでございます。収支差額が三十兆円、これは全部国債発行でやっていくということでありますから、国債の累積の度合いは五年後で既に四百兆を超えるところまで来るわけでございます。さらに、六年後も七年後も三十兆を思い切って減らせるという展望はなかなか描けないというふうに思います。  一つは、自然増収をおっしゃるわけですが、この前も指摘しましたけれども、この財政収支試算は三・五%の名目成長率のケースも計算しておりますけれども、収支差額がほとんど変わらないわけでございます。これは後で一つ問題を取り上げますけれども、成長率が上がれば当然金利も上がる、そうすると金利負担の面から国債費がふえるというからくりです。この状況はずっと続いていくと思うんです。ですから、高度成長期のようなめちゃくちゃな成長率が出てくれば、それはある程度改善するかもしれない。しかし、問題は単年度だけで改善するわけじゃありませんから、これが五年十年の平均値で見るとそういう想定というのはまず無理だろう。これは大蔵大臣質疑のときに御同意された。したがって、租税弾性値もそんなに高くなるという見通しは難しい、さらに税制構造を考えればむしろ租税弾性値はこれから下がっていく方向にいくだろう、そういうふうに思えます。  それから、マクロで見ると、我が国の政府支出というのはまだまだ世界的に見て小さい政府の段階にあると言えるわけで、国民負担の割合もそれほど高い国にはなっていないわけであります。  ただ、この前厚生省で年金改革について自民党に提示されたというような案もございますけれども、かなり思い切った改革をしようとしても保険料負担というのは高齢化のピーク時には大体倍近くになるわけであります。主として社会保障面からくる国民負担の割合、それは結局はマクロ的に見れば政府部門の支出増加につながるわけで、決してまだまだ大きな政府じゃないと言える状況がこのまま続くとは期待できないわけでございます。  ですから、私はこのままで何とかなるさというような財政状況には全くないというふうに思うわけですが、そのあたりについての御認識をもう一度大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 別の委員会でも浜田委員からそのお尋ねがございまして、中期財政展望は殊に浜田委員がお役所におられたときに最初におつくりになったお一人ですから大変思い入れも深いし、お詳しいんですが、今となっては当時とは大分意味合いがこの表は違ってきたと。私が申しますと余りお気に入らないのかもしれませんが。  今回のような大きな国債をいつまでも発行しているわけには私はいかないだろうと思います。殊に、幸いにして民間資金需要が起こってまいりますと、文字どおりクラウドアウトする可能性があるし、そういう意味ではクーポンレートも非常に高いものになる。今、一・何がしなんというのはそういう意味では夢のような安い金でございますが、そうはいかなくなることもあって、大きな国債発行は事実上できなくなる。ということになりますと、もうそれが歳出削減の圧力になってくるのではないかと思います。しかし、歳出の中には、さっきちょっとおっしゃりかけましたように圧縮できない歳出がだんだん大きくなってくることもどうも事実でありますから、そのときに恐らく国民が負担と給付との選択をせざるを得ないのではないかと思います。  おっしゃいますように、今国民負担は三六、七であろうと思います。二五と一二とか一三でございましょう。それはかなり低い負担でございます。五〇より上は行きたくないと多くの方が思っていらっしゃるわけですけれども、今の三六、七というのは実はまだそれには距離があるというようなこともありまして、高負担高福祉なのかあるいは中負担中福祉なのか、給付と負担との選択をその段階になりますと国民にしていただかなきゃならぬということになるのではないか。そうでありませんと、おっしゃいますように国債はいつまでもとおっしゃっても出せなくなる、あるいは非常に金利負担が大きくなる。事実上同じことでございます。そうかといって歳出を切っていっても切れないものが出てくる。その場合に、国民に負担と給付の選択をしていただく、そういうことに私はなるのではないかとひそかに思っておるわけでございます。
  192. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 繰り返しになって恐縮ですけれども、大蔵省という名前が間もなくなくなるそうでありますから、私は残念だなと思っている一人なんですけれども、国庫当局が相当強く責任を持ってもらわなきゃならない、これはもう激励の意味でも申し上げたいわけです。  実は、先ほどちょっと大臣お触れになりましたけれども、大蔵省というのは先のことを語らないという伝統だったわけです。それが財政収支の試算みたいな話で自分の予算査定権をみずから制約するような資料を出したというのは、昭和四十九年度の税収落ち込みが、当時は三兆八千億でしたけれども、これが相当響いたんです。これは何とかしなきゃならないという危機感が、今までのタブーを破って五年の展望を出そうというあのときの議論を私はよく記憶しておりますけれども、まなじりを決した議論だったというふうに記憶しておるわけです。  そのとき、もう既に百兆円の国債累積というふうな展望をしました。それ以上のテンポで実際の財政は、その後経済の好況なときも不調なときもありましたけれども、確実にその展望を上回って財政は悪化し続けたわけであります。でも、その展望を出して、当時は大平大蔵大臣、それが大平総理になられて一般消費税の提案につながったわけでありまして、それから鈴木内閣、そして中曽根内閣の売上税、そして竹下内閣で消費税、四つの内閣をかけて消費税を導入した。これは私は、税制全体からいうと大変大きな成果だというふうに思います。これから消費税というのが重要な税の項目をなしていくと思うわけです。  ただ、私が感ずるのは、そのとき以上の今回の事態であるというふうに思うわけです。だとすれば、これをどういうふうに展望を開いていくかという議論は、もちろん今は景気最優先でいいわけですけれども、それをやりながら始めなきゃならないだろう、そう思うんです。ですから、この前私は地方の行政改革ということを申し上げました。地方のことは地方だなどと言っている事態ではない。それから、それぞれ守ってきた制度があり、その制度には全部利害関係も郷愁もくっついているわけですけれども、そういう一つ一つにこだわらずに、歳出構造がどう変わるか、あるいは変えるかという本当の議論を始めなければならない。それから、多分マクロ的に見ると、消費税を導入したけれども、まだ税収の中でウエートは非常に低い。今共産党さんからは引き下げ論も出ているけれども、このあたりは将来は上げていく余地があるだろうと思っていらっしゃるんだと思います。  しかし、いや応なく福祉面からくる歳出圧力というのは、何といいますか収支差額、足らない分を補うという形で働くよりも、必要なものをさらに追っかけて出していくという方向に追いつくのが精いっぱいではないかという気がするわけであります。  財政金融分離論もある。大蔵省もさんざんたたかれてこられた。ある意味ではやる気がある程度そがれているのかもしれない。あるいはまた、自信も喪失されているのかもしれない。しかし、そんなことを言っているときではない。つまり、国庫当局としての責任を今最も鋭く自覚して、財政の展望を開くための取り組みを大至急やってほしい、私はこれは願いとして申し上げているわけでございます。  楽観できる展望ではない。むしろ、なかなか出口が見つからない財政状況にある。そういう認識をもっと鋭く持って、かつてまなじりを決してやったように大蔵省は頑張ってほしいというのが私が最初に申し上げたことでございます。  それで、質問に入りますけれども国債費というのは今、理財局長お見えになっていますが、二十兆円ぐらいですね。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 十九兆八千億です。
  194. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 十九兆八千億。これはどんどんふえていくわけです。  今、所得税というのは全部でどのぐらいあるんでしょうか。
  195. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 十五兆六千八百五十億でございます。
  196. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 十五兆。景気がいいときでも多分二十兆前後でしょう。国全体からかき集めた所得税で借金の利払いをしている、元金も若干入っていますからあれですけれども、そういう姿ですよね。  それで、三・五%の成長率を第二のケースで試算していらっしゃいますけれども、このときに、歳出削減、つまり歳出がちっとも減っていかないという理由はどこにあるんでしょうか。
  197. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  今、先生おっしゃいましたように、成長率が一・七五%の場合とそれから三・五%の場合で基本的にいわゆる要調整額といいますか公債発行額、いずれの場合も三十兆円程度ということで、おっしゃるとおり、基本的に財政状況というのは変わらないということでございます。  具体的にどのあたりにその歳出の増圧力要因があるかと申し上げますと、やはり一・七五%の成長に比べまして三・五%になりますと、過去の経験から申し上げますと、金利が高くなり得る可能性が極めて強いということでございます。  具体的に申し上げますと、一・七五%の成長率の場合には、金利につきましては十年物の国債、これを例にとりますと三%、あるいは三・五%の成長率の場合には四・五%という金利の設定になりました中期試算を行っているわけでございます。その結果といたしまして、国債費が当然のことながら大きくなってくる、これが第一の要因であろうと思います。  さらに申し上げますと、地方交付税、これにつきましても過去の弾性値に基づいて推計を行っているわけでございまして、具体的には一・二という弾性値で計算をいたしておるわけでございますけれども、税収がふえれば地方交付税も当然のことながらふえていくというようなことで、いろいろ要因はあろうかと思いますが、単純に申し上げまして、一つは国債費、二つ目が地方交付税の増、こういうあたりが今のような結果に結びついているということが言えると思います。
  198. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 四百兆になりますと、単純に計算して金利が一%違うと四兆円違うんです。四兆円の歳出削減なんというのは大変なことです。  理財局長にお尋ねしますが、今いろいろ工夫をしていらっしゃる、例えば今出していらっしゃる十年物の国債金利とそれから一番短いTBは何カ月物ですか、三カ月物ぐらい出しているんですか、ちょっと金利を比較してみてください。
  199. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 現在、十年物の国債クーポンレート、これは月々変わるわけでございますけれども、一・九%でこのところ出しております。短期国債の方は一番短いものは三カ月物でございます。これは毎日変わっておりますけれども〇・数%という非常にそれは低い水準にございます、特に今短期の部分が低くなっておりますので。
  200. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 簡単に言えば、十年物を三カ月物に借りかえれば一%、四兆円というのはそれは単純過ぎる計算ですけれどもそれだけ安くなるわけです、毎年毎年ですから。  アメリカの国債というのは、TBというのはどのくらいのウエートを占めているんでしょうか。
  201. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) アメリカの場合には、一年以下の国債が九七年度の実績ベースで五四・二%を占めております。
  202. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 あとは十年物ですか。
  203. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 国によりまして国債の年限別構成さまざまでございまして、アメリカにおきましては、今申しましたように一年物以下が五四・二%でございますが、あとは二年物あたりに一七・七%、五年あたりに一三・二%というような分布がございまして、一番長いところは三十年債、これが二・五%の分布を持っております。加重平均年限を求めますと二年十一カ月というようになっております。  それに対しまして、我が国の場合には同じ九七年度の実績ベースで比較いたしますと、一年以下が三六・八%、十年債が主力でございますのでそこに三八・一%という分布がございまして、加重平均いたしますと五年七カ月ということになっております。  ちなみに、フランス、ドイツも大体同じような加重平均年限でございまして、アメリカが極端に短くて、あとイギリスが非常に長い、イギリスの方は一年物が四・八%ということで非常に低くて、その分二十四年というところに二〇・八%の分布がございまして十三年一カ月ということでございまして、アメリカが一番短くイギリスが一番長く、その中間に日本、フランス、ドイツがある、こういった状況でございます。
  204. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 かつては短期国債というと外為証券だけというような時代が長かったわけですから、国債のこれだけの累積に対応するための金利への配慮というのはかなり大蔵省においてなされてきたということは評価をいたします。しかし、ぜひ研究していただきたい。アメリカは六割近くはTBだけれども、私はもうちょっとTBの割合が大きいだろうと思っておりました。  ですから、先ほど岩井委員の言われた、なぜ耐用年数の長いものをつくるのには長い国債でなきゃいけないと考えるのか、あるいは国庫の資金繰りということでできるだけコストを安くして考えていけばいいのか、それはいろいろ考え方もあるでしょうしマーケットの状況もあるでしょう。しかし、これだけ国債を累積させてしまったわけですし、ちょっとした金利の動きで予算歳出の削減というのは大変大きな数字になるわけですから、そこは大いに工夫をしていっていただきたい、私は要望を申し上げておきたいと思います。  それから次に、公共事業費について若干伺います。  私は建設国債赤字国債の違い、精神的にはよくわかるんです。でも、国債であることには変わりないわけでありまして、まず赤字国債を減らすというのが節度を考えた最初のやり方である、そこまでは同意いたしますが、しかし建設国債なら構わないという理屈には、幾らでも構わないということには同時にならないわけでありまして、私はこの前の予算委員会で申し上げましたけれども、我が国の公共事業というのは税金ではやらないんだ、全部借金でいいんだという頭になってしまっているような気がしてならない。そして、平気で日銀引き受けが出てくる。これは全く公債政策の節度という点からいったら問題であって、これは長い時間を考えると大きな禍根を残すような気がしてならないというふうに思うんです。  公共事業費の否定論ではありません。公共事業費の質的改善ということは言われ続けております。そこで資料をちょうだいしました。かつて私も公共事業の予算査定をしておって、何でこんなに各省ごとのシェアが変えられないんだろうということを痛烈に感じた記憶がございます。あれから二十数年たつわけですけれども、いただいた資料を見る限り、そんなラジカルな変化はないんです。ほとんど誤差の範囲というのは言い過ぎですけれども、余りシェアごとの事業別あるいは各省ごとというようなどの分類を見ても変わっていない。でもこれは不思議なことなんです。  国民のニーズというのは変わるわけでありまして、人口も移動するわけでありまして、にもかかわらず、あらゆる事業がほぼ同じような割合で資本投下されてきている。これはやはり私は問題だと思うんですね。質的改善ということをみんな言いますけれども、どういう工夫をしてこられているのか、教えてください。
  205. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  まず、先生の御指摘の具体的な公共事業関係費の配分、これがどのようになっているかということでございますが、現在御審議いただいております十一年度予算案におきましては、昭和五十年度以来二十四年ぶりの事業別あるいは所管別の変動になっているということでございます。ただ、これがいかにも少ないのではないかということかと思います。  そういうことでもう少し長期的な観点からの推移を申し上げますと、昭和四十年度から平成十一年度、若干具体例で申し上げますと、道路で申し上げますと四七%のシェアのものが二九%弱、あるいは港湾が六%弱から三・七%、他方、住宅につきましては五・四%が一一%、あるいは下水道が二%から一二%ということで、ややもう少し広いレンジでこのシェアの推移を見ますと、相当な配分の変更が行われているということが言えるんではないだろうかというように思っております。  そこで、具体的な二番目のいわば質的転換といいますか、配分に当たってどのような手法といいますか、考え方をとっているかということについてお話しさせていただきたいと思います。  御承知のとおりに、従前からいろいろな特別枠というものをいわばてことして、配分の重点化というものを行ってきたわけでございます。  十一年度で申し上げますと、十一年度の公共事業予算について三つの特別枠、具体的には生活関連枠、これが二千五百億円でございます。さらに物流枠、これが千五百億円、さらには二十一世紀枠一千億円、こういう五千億という特別枠でもってこの二十一世紀を展望する経済発展基盤、あるいは生活関連社会資本への優先的、重点的な配分というようなものに努めたところでございます。さらに、地域戦略プランの推進費ということで二千億円、これを国土庁に一括計上いたしたところでございます。こういうような特別枠をいわばてこといたしまして、具体的な配分の重点化、効率化に私どもとしては努めているということでございます。  なお、若干付言させていただきますと、社会経済状況の変化あるいは国民のニーズの変化に対応した公共事業の内容の見直しについて言いますと、今言いましたシェアの見直しだけにとどまるものではないと思っております。具体的に申し上げますと、年々のシェアの変動幅以上に、個々の事業の中身、これが変わってきているということもぜひ御理解をいただきたいと思います。  一、二例を申し上げますと、例えば道路整備、これは〇・七%増という十一年度予算案になっているわけでございますが、このうち高規格幹線道路整備、これはそのうち八・六%の増ということになっておりますし、同様に港湾で申し上げますと、全体としては押しなべて二・五%の増という中で、特定重要港湾等整備、これは一四・四%の増になっているということで、シェアの表のつくり方いかんにもよると思いますけれども、単にそれのみならず、内容的にも私どもとしては精いっぱいの努力をいたしているということを御理解賜りたいと思います。
  206. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 あと三分もないですから、最後の質問になりますけれども、生活関連枠というのも、これもう何年目ですか、かなりやってきましたね。  ただ、それはもう私が次長に申し上げるのは釈迦に説法ですけれども、この生活関連枠がどう配分されているかという中身を見れば、これはもう相も変わらぬ各省庁の取り合い、族議員のばっこ、これは別名与党枠と言われるわけですね。与党の中でさんざんもみ合ってでき上がったのがほぼ従前のシェアどおりというのが最初からですよ、生活関連枠。生活関連枠は、アメリカに言われて二千億というのがたしか最初に設けたときの経過ですけれども、それも入れて、あと物流枠とか二十一世紀枠、これは新設されたわけで、これは官邸枠とか言っているようですけれども、合計したって五千億じゃないですか。公共事業費幾らあるんです、今十兆円でしょう。わずか五%の部分で、しかも中身は結局は各省庁の取り合い、従来構造の配分の形から抜け切れていない、私はそう思うんです。  時間がありませんからはしょって言いますけれども、例えば拠点空港の整備なんというのは、これは日本の世界における経済的な立場というのを考えればもっと重視してもいい。ところが、特別会計でやっているじゃないですか。特別会計に税金入れているのはせいぜい二〇%から三〇%でしょう。だから、利用者負担でやるから世界一高い空港料とか着陸料になるんですよ。本当に拠点整備が必要ならばなぜ一〇〇%公共事業費でやれないんですか。これは枠をとれないからやれないんですよ。  それから、ダイオキシンの問題が大分予算委員会でも議論になりました。いろんな方法があるんでしょうけれども、私は、一つはやっぱり大規模焼却施設だと思います。たかだか二百億、三百億の世界です。これを重点的に整備しようとすれば、十兆円ある公共事業費の配分の中で考えれば、私は十兆円を必ず全部やる必要があるとは言っているわけじゃないんですけれども、それを前提として考えてみてもわずかな額じゃないですか。なぜ重点配分ができないか。これは皆さんが一番そう思っているだろうと思うんです。これはやっぱり仕組みを変えなきゃだめですよ。今のように各省庁ごとに各局の主計官、主査に要求をさせて、そして各省庁に議員の応援団がくっついてやっている、この方式では少しずつは変わっても思いきった集中投資というのは実現しません。  最後に、大蔵大臣、私は、審議会がいいのか総理直属の機関がいいのか、公共事業費の大枠の配分についてもっと合理的に、科学的とまでは言いませんけれども、時代のニーズに必要な配慮をもって大所高所から議論ができるそういう機構なり仕組みなりを、公共事業費の配分について常設の機関として設けるべきではないか。そういう議論を持論として持っているわけでありますけれども、御提案を申し上げて、質問を終わります。  できたら答弁をお願いいたします。
  207. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いや、おっしゃることをずっと伺っていて、全くもっともだと思って聞いていまして、随分何度も改めようとしていますし、さっき次長が話されたように結構改まっている部分もあるようにも思いますけれども、思いを新たにいたしましてまた努力をいたします。
  208. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 終わります。
  209. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。  法案に関連しまして伺っていきたいと思います。  まず最初に、基本的なことなんですけれども財政機能ということについてなんですが、財政機能といいますと、資源配分機能それから経済安定化というか景気調整機能とともに所得再分配という重要な機能があるというふうに言われてまいっております。これを政府は、市場機構だとか、それから財産相続から生じる所得や富の不公平な分配状態を租税だとかあるいは社会保障給付で是正しようとするという機能だというふうに言われていると思うんですけれども、こういう所得再分配の機能というのは今日なお重要な機能であるということについては、大臣、これは間違いないですね。ちょっと基本的なことであれなんですが。
  210. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 時によってその機能の働く程度が違いますけれども、そういう部分を持っていることは間違いありません。
  211. 笠井亮

    ○笠井亮君 財政の基本的な機能が幾つかある中で、私は今所得再分配ということを申し上げたんですが、その点から見まして、今予算委員会審議中でありますけれども、来年度予算というのを見てみますと、歳入面から見てもそれから歳出面から見ましてもさまざま問題をはらんでいるということを指摘せざるを得ないんじゃないかというふうに思うわけなんです。  まず、歳入面なんですけれども、来年度の所得税制改正の大きな特徴を見ますと、最高税率の引き下げと定率減税ということで累進性が大きく弱められる。その上に、土地譲渡の取得課税については段階税率が廃止されていわば単一の税率になったということです。既に単一の税率となっている利子課税とあわせて資産性所得についてもフラット化されるということで累進税率が適用されない状況となったわけで、全体として見て、こういう累進性の緩和ということが、負担能力に応じて負担していくという税の垂直的な公平という点から見ますと、これを損なっていくことになるんじゃないかと思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  212. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 冒頭の御質問に返りますけれども、我が国は高度成長時代に国民の五分位あるいは十分位で、所得格差が世界で一番少ない国でありました。富の格差の方は統計がありませんのでわかりませんが、恐らくその点でもそれに近いだろうと思います。  そういういわば所得格差の少ない安定した社会というのが高度成長中には非常に維持しやすうございましたけれども、成長がとまりますと、どうも少しずつそれが難しくなってくる傾向があります。したがって、一番いい方法はある程度モデレートな成長をしていくということが一番いいのだろうと思っています。我が国は今でも以前ほどではないが所得格差の小さい社会でございます。先ほど累進というようなこともおっしゃいました。累進課税というものはもとより必要なことでありますけれども、社会が成熟いたしますとその累進度というのは余り急激である必要はない。むしろ税率の刻みも少しずつ減らしてそしてみんなで税金を納めていくということの方がいいのじゃないかというふうに思ったりもいたします。ここのところでちょっと格差がやや開きかけておりますから、私はこれは早く順当な成長のサイクルに入ってそれが直るようにありたいと思っております。  所得税の最高税率を落としましたことについて御批判がありますが、いかにも六五というのは高うございまして、かねて税制調査会なんかからも言われておりましたし、また法人ほどではなくても、この際、どこへ行って住むのもみんなが自由になりましたから、やっぱり日本にもすばらしい人に来て日本に住んでもらってというようなことを思いますと、余り所得税率が高いということはよくないように思います。  そういうこともありまして、今度下げさせていただきまして、その点御批判を受けておることは存じております。しかし、いかにも六五というのは高かったろう、五〇ということで、これで先進国並みになるというふうに思っていまして、高額所得者に非常に甘いことをしたというそれほどのことではないように私は思うのでございます。
  213. 笠井亮

    ○笠井亮君 所得格差の問題について、それから今高度成長期のことを含めて言われました。後で見ていきますけれども、八〇年代以降はかなり相当部分広がってきているということがやっぱりあるんだと思うんですね。そして、今伺っていますと、累進性自体は否定されていない、むしろそれはあるけれどもモデレートにというお話があったわけです。そういう点で、私どもは垂直的な公平をモデレートにすると損なうということを実際感じるわけです。垂直、水平の両方相まって公平性を達成していくという方向に向かってどうするのかということが大事なことじゃないかと思うんです。  多くの人になるべく負担をというふうな御議論もありましたけれども、それを極端にいきますと課税最低限をなくすのかということまで行きかねないことがあるので、どこで線を引くのかというような議論はあると思いますが、いずれにしてもやはり累進性の確保ということは大事なことの一つなんじゃないかというふうに思うんです。  それから、ここではちょっと時間の関係でやりませんけれども、最高税率引き下げについては、欧米と比べましても、総合課税という問題もありますから、やはり実際のところは、日本の場合には今こういうことをやるのは金持ち天国になるんじゃないかと私たちは思っています。その辺のことは一つ申し上げておきたいと思います。  累進性の緩和の問題なんですけれども、もう一つ公平性ということでの議論がある。これをどこまで損なうかどうかと。私はそれだけじゃないと思っているんです。所得税の累進性ということを見ますと、景気が悪いときには税収が減るけれども、景気が回復したときに税収増になることによって経済を安定させるとともに財政のバランスを回復させていく、いわばビルトインスタビライザーといいますか、そういうような機能も持っているんではないかと。この機能は、やはり今の日本の財政やそれから税制のことを考えましたときに、あるいは将来のために、こういう機能自身というのはこれは将来に向かって維持していかなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、この点ではいかがでしょう。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そう思いますが、だんだん社会が成熟していきましたら幾つに刻みますかです。八つも九つもある必要はもちろんありませんし、少しずつ刻みが少なくなっていけばいいんじゃないかなという感じはしています。どっちみち、累進ということは、所得税にとっていえばやっぱり大事な部分ではないかと思います。
  215. 笠井亮

    ○笠井亮君 それでは、ビルトインスタビライザーという機能についてはどのようにお考えですか。
  216. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはそのとおりと思います。
  217. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうすると、この機能が損なわれるということになりますと、逆に言えば、景気が回復しても自然増収で税収がふえて財政再建につながるということも期待できなくなる。そして、結局財政再建が消費税増税とかということに頼ることにならざるを得ないというふうなことになってしまうと思うので、この辺の機能というのも本当に大事なことだなと。今、大臣もそういうふうに大事だということをおっしゃいましたのであれだと思いますけれども。その辺のことをよく考えていく必要があるんではないか。その点から見て今度の予算や税制がどうなのかという点検が必要だろうと思います。  他方で、では歳出面はどうかということなんですけれども、最大の歳出項目である国債費の問題というのがございます。先ほど来、来年度国債費は十九兆八千三百十九億円ということで、歳出の二四・一%を占めるという。大臣も午前中の質疑の中で、これがなければこれだけのお金はいろんなことに使えるなと率直なお気持ちをおっしゃったと思うんですけれども歳出の四分の一近くになっている。  この国債費の問題なんですけれども、ちょっと大蔵省に伺いたいんですが、元利支払いの形で国債の所有者に移転されていく支出ということだと思うんですけれども国債の保有状況の内訳、割合でいいんですけれども、どんなふうになっていますか。
  218. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 平成年度末での普通国債の残高は二百五十七兆九千八百七十五億円でございます。その保有者別の内訳を申し上げますと、政府等ということで四〇・九%、これは資金運用部、郵貯の金融自由化対策資金、簡易生命保険の合計でございます。日本銀行が一一・二%、市中金融機関が二二・八%、信託口一〇・二%、外国法人等二・九%、証券会社一・八%、個人一・二%、公益法人等一・六%、その他七・五%となっております。
  219. 笠井亮

    ○笠井亮君 今伺っていますと、大部分が国あるいは日銀とか銀行ということでありまして、個人ということでは一・二%ということであります。そういう程度の保有であるということですけれども、これも個人といってもかなり所得の高い人あるいは機関投資家ということが入っているのかもしれませんが、そういう部分ではないかと。  そうしますと、税金で集めたお金が個人としても所得層からいえばかなり上の方に行くということになるわけでありまして、二十兆円近くもの国債費支出というのが財政機能として、結局いわば所得の逆再分配といいますか、そういう役割を果たしてしまうことになるんじゃないかと思うんですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょう。
  220. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  今、先生おっしゃいました十一年度予算案で申し上げますと、全体として約二十兆円弱の国債費でございますが、このうち利払い費、これは御存じのとおり償還のための国債整理基金特会の繰り入れ等を除くわけでございますので、十一兆円程度になるわけでございます。この十一兆円余りにつきまして、おっしゃるとおり、国債を保有している者に対して利払いとして移転が行われるわけでございますけれども、これは国債という性格上当然のことでございまして、その所有者がどういう者であろうとも、そこは国としていわば借金した以上、約定どおり利払いを行っていくということでございます。  ですから、先生おっしゃいましたように、たまたま保有者が仮に高額所得者ということ、その部分だけに着目して言えばそういうことかと思いますけれども、それは国債というものの性格上、私どもからいえばある意味で当然の帰結であるというように考えております。
  221. 笠井亮

    ○笠井亮君 それはもう当たり前のことを言われているのでね。  ただ、所得再分配ということから考えると、国民が税金を納めて、そのうちの国債費というのがあって利払いの分は十・六兆ぐらいですよね。それは結局、個人といってもわずかの高額のところ、あるいはほかのところにも返っていくわけですから、これは再分配からいうと逆になるんじゃないかということを私、そういう財政機能としての論として伺っているんですけれども、そういう点はいかがですか。  結局、今の割合を伺っていますと、十・六兆ぐらいの利払いのうち六兆から七兆ぐらいというのは銀行などに支払われるという形になりますよね。そうすると、いわば消費税のうちの国に入る部分、大体税収部分に匹敵するぐらいになるのかなという感じはするんです。つまり、その所得再分配という機能の観点から見た場合に、これは逆になるんじゃないかということを私は伺っているんですけれども、そういう議論に対してはいかがですか。
  222. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) 先生おっしゃいましたように、その部分だけに着目して、そしてそれがいわば所得の配分、国の関与する予算という仕組みを通じてそれがどのような配分になっているか、その部分に着目してそこに限定して言えば、先生がおっしゃられるような配分になっているという客観的なその部分についての事実というのはあるいは言えようか、その部分に限定して言えばそういうことかと思います。
  223. 笠井亮

    ○笠井亮君 厚生省に伺いたいんですけれども予算委員会でも若干議論があったのであれなんですが、所得分配の不均衡の値を示すということでジニ係数というのがありますよね。所得再分配調査ということを厚生省が三年ごとに行われているということだと思うんですけれども、当初所得のジニ係数が八〇年代以降どうなっているかということで、その推移、ちょっと紹介いただきたいんですけれども
  224. 真野章

    政府委員(真野章君) 厚生省で行っております所得再分配調査によりますと、先生御指摘の社会保障給付、税、社会保険料による所得再分配前の当初所得のジニ係数は、昭和五十六年、一九八一年には〇・三四九一、三年後の五十九年、八四年には〇・三九七五、六十二年、八七年には〇・四〇四九、平成二年、一九九〇年には〇・四三三四、平成五年、一九九三年には〇・四三九四というふうになっております。
  225. 笠井亮

    ○笠井亮君 その次、三年ごとですから、九六年というのはいつごろ出ますか。
  226. 真野章

    政府委員(真野章君) 平成八年の調査を行っておりまして、現在集計中でございまして、できるだけ早く公表したいというふうに思っております。
  227. 笠井亮

    ○笠井亮君 今伺いましたけれども、所得格差の状況について、八〇年代以降格差が広がってきて所得分配が不平等化している事実というのがその数字からは出ているんじゃないかと思うんです。この十数年でいわば非常な勢いで拡大している、格差が広がっている、現実にはそういうことがあるんではないか。しかも、ジニ係数が〇・四台というのは相当高い水準というふうに言えるんじゃないかと思うんです。  アメリカの場合、〇・四程度ということで大体数字があると思うんですけれども、世界でも貧富の格差が一番激しいというか、相当激しいところにあると言われているあのアメリカよりも高いか同じ程度という水準になってきているという傾向があると思うんですけれども大臣、こういうことについてはどのような御認識をお持ちでしょうか。
  228. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども以前のことを申し上げたんですが、やっぱり今調子が悪いんですね、国全体として。前はこんなことでありませんでしたが、やっぱりそういう形で国の経済の悪さが国民生活に影響していると思います。  残念なことだと思いますし、それにつけても早く経済を正常にしてこういうことを直していきませんと、これは社会の安定というようなことにもかかわりますので、早く経済を正常化して直していきたいと思っております。
  229. 笠井亮

    ○笠井亮君 今調子が悪いということで言われました。国全体がそういう状況だという経済的要因ということを主に述べられたんですけれども、こういうふうに格差が広がっていることについて、政策的要因といいますか、税制とかあるいは社会保障の給付の引き下げとかということがこういう格差の拡大に反映をしている、あるいは要因になっているということについては、そういうお考えはないですか。
  230. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 十分その格差をまた狭めようというほどの大きな貢献をしているとはどうも自慢して申し上げられませんけれども、それを拡大する結果になるようなことはできるだけ防いでおるつもりでございます。
  231. 笠井亮

    ○笠井亮君 現実には、これは私の意見ですけれども、最高税率の引き下げとかそれから社会保障の給付の引き下げというのが政策的要因としてはやはり実際には反映していると見ざるを得ない、調子が悪いということだけではなくて。そこはやっぱりリアルに見ていく必要があるんではないかというふうに思っておりますが、格差がこれだけあるということは一つ共通して認識があると思うんです。  今後のことなんですけれども、できるだけそうならないようなこととおっしゃった、二十一世紀を展望するということでこのような格差の拡大を放置するおつもりはない、そしてなるべく調子がよくなるようにとおっしゃったんですが、それでは私は、政策的な問題も含めてもう一回見直していただいて、アメリカのような貧富の格差の激しい社会というのをやむを得ないとして受け入れるのか、それとも二十一世紀の日本というのは格差の激しい社会じゃなくて公平さと平等というのを尊重するような社会を目指していくのか、ここに分かれ道があると思うんですけれども、その辺は大きくどちらの方向に向かってということで大臣はお考えですか。
  232. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはもう明白に後者だと思います。
  233. 笠井亮

    ○笠井亮君 その点で見ますと、最近刊行された「日本の経済格差」という本、これは橘木さんという方が書かれて、今こういう問題をめぐってなかなか、なかなかと言うと大変失礼なんですが、好著ではないかと私は思っているんです。  この本の中でいろんなことが書いてあるんですけれども、どの国が福祉国家でどの国がそうでないかの視点で世界の先進国を三つのグループに分けまして、福祉国家の典型は北欧諸国だ、そして中欧諸国もそれに近い、逆に非福祉国家の典型が日本とアメリカでありと、かなりずばっと書いてありますが、イギリスもそれに近いと。「簡単に図式化すれば、先進資本主義国は、北欧・中欧の福祉国家群、英米と日本の非福祉国家群、という二分化が可能である。」という結論を書かれているんですが、日本はそういう意味では世界の先進国の中でもアメリカと並んで非福祉国家として分類されているということでこの本ではなっているんですね。  こういう声についても、大臣、真剣に耳を傾けるべきではないかと思うんですけれども、それはいかがですか、その福祉国家という観点については。
  234. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと引用されました部分だけでありますので正確にお答えができませんけれども、少なくともアメリカあるいはサッチャーになりましてからのイギリス、こういうスランプになりますまでの我が国、やはりできるだけいわば機会の平等、結果の平等というよりは機会の平等ということが社会のプリンシプルになって、そして努力をする者が報われるということでいきたいと志向してきたことは確かだと思います。結果の平等ということも決して大事でないわけではないのですが、結果が平等になるという政策はともすれば怠けてもいいということになりやすうございますから、我々はそういうことは志向してこなかった。  成長がある程度ございますときはそれでパイが大きくなっていきましたからみんな多かれ少なかれそれを享受することができましたが、マイナスになりますとパイが逆に小さくなりますので、今のようなことは格差の拡大につながりやすい、私はそういうことだと思っております。
  235. 笠井亮

    ○笠井亮君 今度の経済戦略会議の報告というのを私も読ませていただきました。「日本経済再生への戦略」ということで書かれております答申がありますけれども、この中を見ますと、健全で創造的な競争社会を目指して、従来の過度に公平や平等を重視する社会風土を効率と公正を基軸とした社会に変革していく、こういうことがうたわれております。答申では、アングロアメリカンモデルでもヨーロピアンモデルでもない第三の道を目指すということを言われております。  しかし、現状においても日本は格差が拡大をし、世界の先進国の中でも最も貧富の格差が大きい国の部類に挙げられるという指摘も出るような状況になっている。そういうときに、そういう現実から目をそらして、公平や福祉の充実を求める国民の声を過度に公平や平等を重視する風潮といって退けて効率性や競争社会を目指すと、一応修飾語はついておりますが。私は、そういうことになりますと、これは結局第三の道と言いながらアメリカンモデルを目指すということにならざるを得ないんじゃないかと思うんですけれども大臣、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  236. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申しましたように、やっぱりちょっとおっしゃることと私の視点が違っておるのかもしれません。ジニ係数は悪くなっていますけれども、今、日本が世界で格差の一番大きな国だなんということは私はどうも余り聞いたことがありません。  ただ、経済の状況は悪うございますので、パイがどんどん大きくならずに縮小していくときには格差が大きくなりやすいということは事実である、そこは認めます。しかし、それは日本経済が今五四半期もマイナスが続いているということからくるのであって、仕組みそのものが格差の大きい社会を我々は願っているわけではない。やはり正常な成長に返って、いわゆる機会の平等というものがあって、そしてパイが大きくなって昔のように格差の小さい国に返っていくというのが私はあるべき姿だろうと思います。  ただ、もうあの時代から二十年も来ていますから、セーフティーネットというようなものはもっと整備されなければならない、それはそのとおりでございます。しかし、あくまで結果の平等を志向するのではなくて機会の平等を志向すべきだろうという戦略会議の基本的な考え方は、私はそのとおりだと思います。基本的に恐らく笠井委員はお気に入らないだろうと思うんですが、私はやっぱりそうでないといかぬなという思いがしておるんです。
  237. 笠井亮

    ○笠井亮君 その辺はもうこの時間ではなかなか議論が尽くせないので、また別の機会にもしたいと思うんです。  私は、きょうは財政機能の一つ、所得再分配機能ということから議論をさせていただきましたが、少なくともそういう機能は大事だという部分、側面はあるというふうに今おっしゃっていたので、やはり二十一世紀に向けてそういう機能がそれがふさわしく発揮されるような財政といいますか、歳出歳入にしていかなきゃいけないと思います。  具体的に中身に入りますと、これはまたいろいろ分かれてきます。私どもも、逆進性の強い消費税の税率というのはこれでいいのか、もっと下げろというような議論もあります。しかし、再分配機能にふさわしい、それが発揮されるような財政を確立するのは二十一世紀に向けて大事だということについては、大臣、これは御一緒ですよね。そこのところをちょっと最後に伺っておきたいんです。
  238. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) はい。
  239. 笠井亮

    ○笠井亮君 そういう点から、今度の予算それから特例公債発行をめぐってはさまざま多くの問題があるということを私は思っておりますが、きょうはその程度で終わりまして、さらに今後議論させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  240. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  資金運用部に関連して幾つか質問をいたします。  まず、昨年十二月のことからでございますが、大蔵大臣の御発言につきまして御説明をいただければと思うところでございます。  昨年の十二月二十二日の記者会見で、大蔵省資金運用部が債券買い入れを停止する可能性があるという質問に対しまして、大臣は、そうじゃないですか、大したことじゃないと述べたと報道されています。また、この段階で長期金利は一・五%にまで上昇していましたけれども、蔵相は、一・五%ではそれほど議論することはない、長期金利上昇するほど民間資金需要があるとは思えないという発言をしておられまして、長期金利上昇を静観する姿勢をお示しになったと理解しています。  この記者会見の後、資金運用部国債購入に回す資金の余裕がなくなっていることを理由に、既発国債の買い入れを停止する方針を決めました。そのような要因もありまして、長期金利はその後も上昇を続け、二月上旬には二・三%を超えるような水準になりました。  このような長期金利の動向もあったのでしょうか、大蔵省は資金運用部による二月、三月の国債の買い入れを再開し、現在では長期金利は一%台で落ちついています。このような大蔵省資金運用部の対応は新聞の報道でマッチポンプと評されています。これは日経のことしの二月二十三日でございます。  以上申し上げましたこれら一連の経緯につきまして、大蔵大臣の簡単な御説明をいただければと存じます。
  241. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはけさほど大体申し上げましたので余り重複いたしましてもいけませんが、今おっしゃいましたように、十二月の暮れになりまして国債の大量発行が決定をした。しかも、資金運用部のいろいろな原資見積もり等々から一月から月中の買い入れをやめようという決定をいたしまして、それが発表されました。それに金利あるいは十年物の国債価格が敏感に反応したということでございます。昨年の九月十八日には利回りが〇・六七でございましたが、十二月三十日に二・一になったというようなそういう経緯がございました。  これは、今年の民間消化が六十一兆でございますから、月に二千億というような話は全く影響を与えるほどの数字でないと考えましたのは、私が少し考えが足りなかったと思います。やはりマージナルな影響というものはあった。しかし、やはりそれは幾らか過剰反応であったなという思いもいたします。  その後になりまして、資金運用部の今年の原資等々を見まして、月に二千億ぐらいのものは別に買えないわけでもないなというようなことで方針を変えました。それは別に無理をして変えたわけではなくて、いずれにしても集中満期というようなことはもう一年先のことでどのぐらいの規模かわかりませんし、その間、資金運用部運用も生き物でございますから、別に大して大きなことを変えたわけではございませんでしたが、それで一遍おさまりました。二月になって、さっきおっしゃいましたように二・三六〇というのは二月五日でございますが、ちょっとまだ神経質な動きでありました。それから、やがて二月十二日に日本銀行が金融緩和の決定をいたしまして、そして今ごらんのようなオーバーナイトの金利はゼロというようなことから金利が非常に緩やかになりました。したがって、それが長期国債にも及びまして、金利は三月十一日一・七四〇と書いてございますけれども、今そんなところになっておる。二月二十三日に三月債の入札をいたしましたが、これは順調に行われまして、今クーポンレートは一・九でございます。  これでまあまあ落ちつくのだと思いますけれども、しかし相当大きな量の国債を出すことには変わりがありませんから、その方法なりあるいは品種、バラエティーなりにつきまして、いろいろ発行者として注意をしながらしなければいけないというのがこのたびの教訓であったと思っておるわけでございます。
  242. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変細かく御報告いただきまして、ありがとうございました。  これらに関連して、大蔵省の方から少しお話を伺えればと思います。  今申しました本年二月二十三日の日経新聞によりますと、一月末で資金運用部の原資は郵貯や厚生年金の増加によりまして前月に比べ一兆八千七百二十億円増加したとされています。  このような事実があったのでしょうか。本年一月は、資金繰り難を理由に資金運用部国債の買い入れを停止していた期間に当たりますが、これらの資金はどのように使われたのでしょうか。資金の増加によりまして余裕資金が一兆円発生し、長期国債運用できる余地があったのに短期国債運用に回したと報道されておりますけれども、実際はどうであったのでしょうか、伺います。
  243. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 資金運用部の資産、負債の残高は、十一年一月末日におきまして、前月末日に比べて一兆八千七百二十億円増加いたしまして、四百三十五兆二千八百十二億円となっております。  資金運用部資金につきましては、これは毎日、負債となる預託金の受け入れ、郵便貯金あるいは年金資金から預託を日々受け入れておりまして、また満期になりました預託金につきましては払い戻しをしているという動きがございます。それから、資産となります各財投機関への貸し付けを、これも日々と言っていいかと思いますが実行いたしておりますし、また各財投機関から資金運用部に回収金が入ってくる、こういった資金のいわゆる受け払いというのは日々あるわけでございます。  したがいまして、その残高も日々増減しているわけでございまして、資金運用部は毎月、資金運用部月報という形で各月の末日の時点でそういった残高の増減を整理いたしまして、前月末日に比べての増減をあわせて発表させていただいております。そういったことで、一月末日時点で整理いたしました場合に、前月末日に比べて資産、負債それぞれが一兆八千七百二十億円増加しているということでございます。  それで、負債のうち預託金の増加は主として厚生保険等の預託増によるものでございますが、例年一月は年金の給付月でないことから預託金が増加いたしまして、今度二月になりますと給付のため相当程度の払い戻しが見込まれるわけでございます。こういうように、月によって預託金の増減、受け払いが異なっているわけでございます。  また、資産について申し上げますと、一月末日時点で長期国債が七千七百三億円の増、短期国債が一兆五百九十九億円の増となっているわけでございますが、これはあくまで日々の資産の変動の中で、一月末日時点で整理した結果として生じた数字でございまして、一月中の資金の増加分が直接これらの資産の運用に回されたというものではございません。  いずれにいたしましても、二月、三月の年度末におきましては、例年、各財投対象機関に対する貸し付けが大幅に増加することが見込まれております。各機関とも年度末の資金需要が非常に強くなっているわけでございます。したがいまして、これらの貸し付けの増加、また預託金の払い戻し等に備えるために、一月におきましては流動性のある短期国債運用しておくことが必要であったものでございます。
  244. 三重野栄子

    三重野栄子君 四月以降のことについてお伺いしたいのでございますけれども、今も詳しく伺いましたが、それと私が申し上げることで足りないところがあったら、また御説明いただきたいと思います。  大蔵大臣は、最近の国会の質疑でも、長期金利短期金利と異なり基本的には市場の自主性に任せるしかないと発言されております。そのような発言の趣旨を一貫して貫くならば、いかに長期金利上昇しても資金運用部は方針を変更する必要はなかったのではないかと思うわけであります。それにもかかわらず、いろいろるる御説明いただきましたけれども、本年二月、三月に再度、資金運用部国債買い入れを再開した理由はなぜなのか。  また、大臣は、資金運用部による国債の買い入れを四月以降もこのまま継続するかどうかについて明言されておりません。四月が近づいておる現実におきまして、今も増という話がございましたけれども、今行っている措置をこのまま継続していかれるのかどうか方針を明示すべきではないかと思いますが、お尋ねいたします。
  245. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたが、九月に〇・六なんという金利があってみたり、また三月もたたないうちに二・三%になってみたりということは、長期金利というものはいわば債券、国債値段の裏側でございますから、そういう意味では市場的なものだと、これに決定的な影響を与えることはだれもできないんだというふうには思っておるのでございます。  ただ、先ほどのようにちょっと政府の、いかにもやや私は自分で不用意だと思っているんですが、ことがあったりしますと、それをきっかけに市場というのはそういうものでございますから動きますので、やっぱりそういうことは気をつけておかないといかぬなと思います。  したがいまして、四月からどうするんだというお尋ねでございますが、市場の様子を見ながら柔軟に対応していく必要があるだろう。いろいろな意味で、債券発行者でもございますから、そういう心構えでまいりたいと思っています。  したがって、今こういたします、こういたしませんというような気持ちを持っておりません。柔軟に市場を見ながら対応していきたいと思っております。
  246. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  十一年度資金運用部国債引き受けについてもう少し伺いたいと思います。  平成十一年度国債政府保証債の発行計画では、資金運用部長期国債の新規引き受けは行わないことになっていますが、その理由について御説明いただきたいと思います。  景気対策に伴う政府金融機関の貸し出し増加、郵便貯金の二〇〇〇年度以降の償還の準備等の背景があると思いますけれども、具体的な理由がございましたらお伺いしたいと思います。
  247. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 平成十一年度における資金運用部資金による国債の引き受けにつきましては、二兆八千億円の借換債の引き受けを予定いたしております。  これは、資金運用部平成十一年度財政投融資需要に対する状況、あるいは郵便貯金等の原資の状況等勘案いたしましてこういった数字に決めさせていただいたわけでございます。  資金運用部国債引受額につきましては、過去ずっと見てまいりましても、それぞれの年度におきまして全体の国債発行量との関係、そして資金運用部資金状況、とりわけ財政投融資計画に充てられる部分がどういうふうになっているかといった点、あるいは原資の状況等総合的に勘案いたしまして引受額を決定しているところでございます。  したがいまして、資金運用部のこういった国債の引き受け、さらには先ほど大臣が申し上げました買い入れにつきまして、いろいろな資金の事情を総合的に勘案した結果でございます。
  248. 三重野栄子

    三重野栄子君 あと一点ございます。  新規引き受けにつきまして、本年度と同様の方針を今後とられるかどうかということにつきまして伺いたいと思います。  資金運用部国債に果たす役割を縮小させたことが日銀の国債引き受け等の議論にもつながったのではないかと思うんですけれども、そこらあたりの大臣の御所見を伺いたいと思います。
  249. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日銀が国債新規発行を引き受けるかという話がいっときございましたけれども、私はその必要はないということを一貫して申してまいりました。いい悪いという議論の前に、その必要がない。国が発行者としてシンジケート団と話をして六十一兆円、条件がいろいろございますにしてもこの償還にほとんど問題がない。逆の意味では民間資金需要がないということかもしれませんが、問題がないと思っておりますから、私は日銀をそこで煩わす必要は全くないという意味で必要がないということを一貫して申しておったのでございます。それは今も同じ考えでございます。  と同時に、そういうことに反対か賛成かといえば、私は反対でございます。
  250. 三重野栄子

    三重野栄子君 終わります。  ありがとうございました。
  251. 星野朋市

    ○星野朋市君 大蔵当局に伺いますけれども平成十一年度末の国債それから地方債を合わせたいわゆる国、地方の借金、これの合計額はどのくらいになると見込まれておりますか。
  252. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  十一年度末の国の長期債務残高、これが四百四十六兆円でございます。さらに地方でございますけれども、地方が百七十六兆円、交付税特会の関係で若干の重複分がございますので、これを考慮いたしますと合計六百兆円ということが見込まれております。
  253. 星野朋市

    ○星野朋市君 そうしますと、これはGDPのどのくらいになると思われますか。
  254. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  十一年度末の対GDP比、約一二〇%弱ということが試算されております。
  255. 星野朋市

    ○星野朋市君 ここに一つの書類がございます。「欧州通貨統合への参加の条件」、「マーストリヒト条約は、厳格な基準による持続的な経済収斂が達成できない国は通貨統合に参加できないとし、その判断基準として、物価、財政、為替、金利に関する四つの経済収斂基準を設定した。これらの具体的な内容は、別途、本条約に附属する議定書において以下のように定められている。」とあって、そのうち財政部門では、「原則として財政赤字はGDPの三%、債務残高(グロス)はGDPの六〇%を超えないこと」と、こうあります。  仮に日本が欧州通貨統合へ参画しようとした意思を持ったとしてもこれはとても参加できないと考えますが、いかがでございますか。
  256. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 参加できないと思います。
  257. 星野朋市

    ○星野朋市君 先進国の中ではイタリーもかなり悪い数字でありますけれども、イタリーはここのところ着実に収れん状態なんですね。そうすると、残念ながら今の状態で悪化しているのは日本だけだ、こういうふうに考えております。  それで、私のところへことしの正月に来たあるエコノミストの年賀状に、これは日本型民主主義の一種のコストかなと、こういう年賀状が来たんですが、大蔵大臣、それはいかがお考えでしょうか。
  258. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ユーロの場合は、ただいま星野委員が述べられました条件がいわば入学試験の条件でございまして、入学した後そういうルールを外しますと罰金を取られることになっております。これはしかし、失業が一一%も一二%もある社会で私は本当によくやったと思いますと同時に、これから先、もうああいうものができてしまえば多少常識的な運営ができるのかなと思って見ておるんです。  ところで、我が国の場合は到底今入学試験に合格できませんが、プラザ合意以降のことを見ておりますと、我が国の経済にはやはり大きな潜在力が私はあるのだと思います。EC各国のようにでき上がった経済ではなくてまだ育てる経済だと思っておりますものですから、こういう今のような落第生ぶりもその裏側が出ていると、多少希望的かもしれませんが、自分としては強くそう信じておりまして、そのことをもってまだ日本の民主主義が成長過程にある、でき上がって成体的な社会になったのではないというような意味でそういうことを言われればなるほどなという思いが私はするわけでございます。
  259. 星野朋市

    ○星野朋市君 ことしの特例公債の件でございますけれども、建設国債で九兆三千億、それから特例公債が二十一兆七千億になります。それで、新規国債発行高が三十一兆と。この三十一兆のところだけが実は大きく出ておりまして、借換債を含めると実際には七十一兆の国債というものを一回市場へ出さなくちゃならないわけです。そのうち四十兆が借換債であると。だから、私の考えだとこれは七十一兆という国債というものを考えなくちゃいけないのであって、三十一兆だけの問題じゃない。  そうすると、理財局長はけさの中で多少答弁されておったと思うんですけれども、大蔵当局には七十一兆をどういう形で消化するかという計画はあったと思うんです。これがわかりましたら教えていただきたい。
  260. 中川雅治

    政府委員中川雅治君) 十一年度国債発行額は、新規財源債が三十一兆五百億円となりまして、前年度当初予定額に比べて十五兆四千九百三十億円の増加となっております。借換債を合わせた発行総額は、先生今おっしゃいましたように七十一兆一千三百十五億円となっております。  この国債を、国債発行当局といたしましては確実かつ円滑に消化する必要があるわけでございまして、国債発行計画の策定に当たりましては、このような観点から昨年末に市場関係者の意見を十分に伺いまして、市場のニーズを勘案して償還年限別、消化方式別に適切な発行額の計上をいたしまして、シンジケート団を含む市場関係者と合意を見たところでございます。  その内容を具体的に申し上げますと、資金運用部等の公的部門による引受額が十兆一千二百八十億円で、民間消化分が六十一兆三十五億円でございます。民間消化分の償還年限別の発行額は、シ団引き受け十年債で二十兆円、五年債で二千億円、公募入札で発行いたしますものが三十年債で四千億円、二十年債で二兆四千億円、六年債で五兆円、四年債で五兆円、二年債で五兆二千億円、短期国債で二十二兆八千三十五億円となっております。  今後、実際の発行に当たりましては、市場の実勢を反映した適切な発行条件等の設定に努め、また月々の発行額、年限別の発行額につきましても市場のニーズを十分に踏まえた適切な額を設定いたしまして、国債の確実かつ円滑な消化を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  261. 星野朋市

    ○星野朋市君 同じ資料だと思うんですが、資金運用部の引き受けがいわゆる公的部門のうちで二兆八千億、これは平成年度の当初計画に比べて九兆二千億のマイナスになっているんです。多分大蔵大臣がここら辺の問題に触れられて御発言なさったことが例の長期金利の引き上げという事態になったと私は推測しているんですが、その点はいかがでございますか。
  262. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おっしゃいますとおり、十年度の当初に比べて九兆二千億、それから補正後に比べますと十二兆四千億の減でございます。これは公になっておりますので、資金運用部が関与することが非常に少なくなっておって、しかも発行の総体は大きくなっておるということ、それは受け取り方としてそう受け取られたかと思います。
  263. 星野朋市

    ○星野朋市君 その後の問題については再三御答弁いただきましたので、私の質問はこれで終わらせていただきます。
  264. 菅川健二

    ○菅川健二君 予算案に関連いたしまして若干質問いたしたいと思います。  まず、若干さかのぼりますけれども、昨年末の財政構造改革法凍結法案の凍結の趣旨につきまして、こういう言葉があります。財政構造改革法については、財政構造改革を推進するという基本的考え方は守りつつ、まずは景気回復に向け全力を尽くすため、これを凍結する、大蔵省の提案理由はそうなっておるのでございますけれども、基本的な考え方は守りつつという、これは何を意味して、また来年度予算案ではこれについてはどのような形で生かされておるのか、ちょっと御答弁いただきたいと思います。
  265. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当時、与党の方々と御一緒に財政改革のための会議を一年間開きましてああいう法律をつくらせていただいて、それを目指したわけでございます。それを、この経済危機突破のために二兎を追うことはできないということを申し上げて凍結をしたわけです。  ただ、あのときの法律の中に、幾つかの長期計画につきまして将来の老齢化、少子化を見ますととてもこのままではやっていけないという明らかなもの、医療であるとか年金であるとかいうものの改革は実はあの法律が現存しております時代に着手をしたものでございましたし、また長期のいわゆる何々十カ年計画、公共事業等々のものにつきましてもキャップをかけるというようなこともいたしまして、そのことは現実に予算編成に生きていったわけでございます。  ですから、全くあそこに書いてあることがなくなってしまった、あるいは今何のルートも残していないということではございません。もとより、いつの日にかは財政改革をしなきゃならないという気持ちがございますので、そういうことを含めましてああいうことを申したわけでございます。
  266. 菅川健二

    ○菅川健二君 来年度予算案をそういった観点から見ますと、先ほど来ございましたように、一般会計予算で八十一兆のうち約四割近くの三十一兆円が公債金で賄われておるということは大変異常な数値でございまして、将来の財政見通しに対して大変私は危惧をいたしておるわけでございます。  もとより、景気回復に全力を尽くすという観点からの積極予算ということは是といたすわけでございますが、必ずしも景気とは関係ない非効率な投資とかあるいは行政経費の削減等、そういったものについての思い切ったメスが来年度予算でもなされてしかるべきではなかったかと思うわけでございますが、この点が全般的に水膨れになっておるのではないかということを思っておるわけでございます。そういう意味では財政構造改革のための基本的な考え方がもう完全に近い形で破られておるのではないかという気がいたしておるわけでございますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  267. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういうことがないように予算編成をいたしたつもりでございますけれども、菅川議員はよく行政のことも御存じでいらっしゃいますので、そういうお立場からごらんになりましたらあるいはそういう緩んでいるところがあるかなと、私どもは一生懸命やったつもりでございますが。  しかし、いずれにしても結局最後は国債が財源になるというような予算編成は余り何度もやってはいけませんので、これは全体がそういうふうに緩む心配がございますから、よく気をつけてまいります。
  268. 菅川健二

    ○菅川健二君 それから、最近いろいろ学説でも言われておるんですけれども日本経済の需給ギャップというものが、いろいろこれはとり方によってあるわけですけれども、大体四、五十兆円ほどあるんではないかと。ところが、来年度予算案で見たらわかりますように、その需給ギャップについては需要をふやすことによってできるだけギャップを少なくしていこう、そのためにどんどん公債発行しておるわけでございまして、そういった政策もこれ以上公債発行できないということになりますと限界が来るわけでございます。  むしろ、逆に供給を削減することによって需給ギャップを埋める、そういったスタンスに転換すべきではないかという議論があるわけでございますが、この点についていかがお考えでしょうか。
  269. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 間違いなく供給側に要らない、あるいはもう使えない設備等々があると思います。それが今企業のリストラということになっていっておるんだと思いますし、政府も近く産業再生会議のようなものを開きまして、積極的にそういう要らないもののリストラというものを国としても政策として考えていくことをいたしたいと思っておりまして、とにかく需要側に上がってきてほしい、これは一生懸命努力いたしますが、供給側に実はスクラップしなきゃならないものが相当あることも事実と思います。
  270. 菅川健二

    ○菅川健二君 そういった面では、御指摘のように設備の廃棄とか再編を促すための法整備、とりわけ税制上のいろいろな措置が必要ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  271. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今の設備の廃棄に関連しての税制上の措置についてお尋ねがございました。  そういうことで税制を考えますと、一種の租税特別措置を考えよということになるのかと思いますが、基本的に設備の廃棄といいますのは企業の自主的な経営判断で行われるということでございましょうし、また廃棄すれば損金になるということでございましょうから、この辺をどう考えるかということになろうかと思います。  いずれにいたしましても、税の公平をどう考えるかという問題とその政策目的との間のバランスとでもいいましょうか、租税特別措置をつくれということでありまするならば相当な理由がないとなかなか考えることは難しいだろう、こういうふうに思っているわけでございます。
  272. 菅川健二

    ○菅川健二君 いずれにしても、これからの持続的成長を考えます場合には、企業の新たな設備投資がどんどん進んでいくということが一番重要ではないかと思うわけでございますが、そういった面からすると、要らないものといいますかスクラップすべきものはスクラップしていく、ビルドしていくべきものはビルドしていくということが必要でございまして、まずスクラップを促進し、かつその中で新しい芽をさらに育てていくという構造改革にぜひ力を注いでいただきたいと思うわけでございます。  それから、最後に一問、中央省庁の基本法におきましては、大蔵省が財務省ということで衣がえすることになっておるわけでございますが、その後いろいろな方が、大蔵省はやっぱり懐かしいということで名称を存続したらどうかということも出ておるようでございます。いずれ各省庁の設置法の段階においてはこれが決定されるということであろうかと思うわけでございますが、財政金融を完全に分離するのか、あるいは若干はダブる部分を残すのかというのは今後の議論があるにしても、基本的に財政金融というのが分化していって大蔵省も新しい出発をするということからしますと、財務省という新しい名称にしていくことが新たな出発という点からふさわしいのではないかと思うわけでございます。  大蔵大臣、この点についての御意見がございましたら御見解をお聞きしたいと思います。
  273. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 中央省庁の再編成につきまして、いずれ法律案をつくらなければならないということになっておりまして、幾つかの省につきましてその名称をいかにすべきかということが未定になっております。最終的に総理大臣法律案を閣議決定いたします際に決定されるということで、全部総理大臣の御判断にお任せをしてございます。  そういうことでございますので、私としてはこれについてはお答えを控えさせていただきたいと思います。
  274. 菅川健二

    ○菅川健二君 終わります。
  275. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会