○
政府委員(五味
廣文君) 今
お話のありました特に中小
企業をその主な貸付先といたします協同組織
金融機関に関しまして、パブリックコメントでも業界の団体から御意見をちょうだいいたしております。その中に、先生御
指摘がありましたように、いわゆる中小零細
企業というのは大
企業と違いまして帳簿が不備であるとか、あるいは経営と所有が必ずしも截然と分離されているわけではないというようなことから、貸付先としての中小
企業の特性に応じた
運用が必要なのではないかということ、それからそもそもそうしたところを中心に貸し付けておりますこうした協同組織
金融機関の経営の実情から見まして弾力的な
運用を、例えば引き当てなどについて行えないものか、こういったことをいただいております。
原則をまず申し上げた上でその後の
検討状況を御
説明したいと思いますが、原則といたしましては、
金融機関でございますのでリスクをとって貸し付けを行い、そしてそのリスクに見合ったリスク管理、例えば引き当てを行う、それによって貸し付けの原資であります
お金を預けておられる預金者の皆様が安心できるような健全な経営をしていただく、これが原則でありまして、預金受け入れ
金融機関であります以上、その経営形態や規模がどうであれ適切なリスクテークと適切なリスク管理をしていただく、これが基本でございます。マニュアルの中間報告もそういったものを基本哲学としてつくられております。
さてそこで、中小
金融機関のケースでございますけれ
ども、例えば規模が非常に小さいことに伴いましてリスク管理の手法ややり方が大銀行の場合とは違うというケースがあり、引き当ての期間がどの程度でいいかという点は公認会計士さん等の専門家の御意見も聞く必要がございます。
コメントが出ておりますので、今後
議論されていくことになりますが、例えばリスク管理手法の中でもコンプライアンスを維持するための管理の仕方、こういったようなことに関しましては、非常に規模の小さい支店ですとか営業所あるいは
金融機関におきましては、大銀行のようなある程度人員間の融通がききやすいところと違って、職場の離脱を一定期間するというようにしましてもなかなか限界がある、こういったような御
指摘がございます。このような
金融機関の規模、形態において特殊性がある場合にどういった扱いにしたらいいかということが今
金融検査マニュアル
検討会で
議論になっております。
協同組織
金融機関の皆様からは今月八日に全国信用金庫協会等から御
説明がございまして、こういった点も
委員の皆様は非常によく理解できたということでございまして、今後
検討していこうということになっております。
なお、このマニュアル
検討会には今回のコメントを踏まえて
議論を深める必要があるということで、信用金庫あるいは信用組合、こういったところで実際にリスク管理や経営の実務に携わっておられる専門家の方に新たにメンバーに加わっていただきまして、こうした方からも積極的な御発言をちょうだいしております。
次に、中小
企業なり零細
企業というところへの貸し付けのリスク管理のあり方にやはり特別な配慮が要るのではないかという
お話がございます。これに関しましていただきましたコメントの中に、具体的に先ほど申しました帳簿の問題ですとか、あるいは経営者と会社の資産が混然一体となっているというようなケースもあるということから、中小
企業で
赤字企業の場合の資産査定のあり方というのはほかと少し違うやり方があるということが中間報告の中にも既に一、二出てきております。
ただ、それだけで本当に十分なのか、もっといろいろ実務を踏まえた具体的な規定ぶりが必要なのではないかというのが三月八日のヒアリングでも出ておりますし、昨日は農協系統
金融機関の皆様から御意見をちょうだいしましたけれ
ども、やはり同じ御意見が出ておりました。
そこで、そういった点をもう少し突っ込んで
議論して、マニュアルの中にこういう特性を持った貸付先の資産査定についてどういうやり方をしたらいいかということをもう少し書き込んでいくべきであるというのが
委員の皆様の意見の大勢でございまして、今そういった方向で
検討を進めております。
なお、
運用の弾力化という点につきましては賛否両論ございます。
金融検査マニュアルというのはもともと
行政の裁量性をなるべく狭くして、受検なさる
金融機関の方にも検査官の自由裁量で厳しかったり甘かったりするということがないようにという趣旨もございますので、弾力化を行います場合には、そこはそこでその弾力化が必要な
状況とか目的というのをよく
考える必要があろうかと思います。
なお、長くなって恐縮ですが、最後にこの
金融検査マニュアルと申しますのは、あくまで検査官の検査に当たっての手引書でありまして、ここに書いてあるやり方とは違うやり方のリスク管理の方が自分たちの銀行に合っているという場合には違うやり方をとっていただいて一向に構わない。ただ、違うやり方で合理性があります、リスク管理はできますということを検査に当たる検査官に御
説明いただけばいい、こういう性格のものでもありますので、むしろ中小
金融機関の皆様方もそういった点で自分たちの業態の特性を踏まえたリスク管理手法というのを積極的に開発なさり、あるいは御提言なさるということも必要であろうと思います。