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1999-02-04 第145回国会 参議院 財政・金融委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員氏名     委員長         勝木 健司君     理 事         石渡 清元君     理 事         金田 勝年君     理 事         伊藤 基隆君     理 事         益田 洋介君     理 事         池田 幹幸君                 石川  弘君                 岩井 國臣君                 片山虎之助君                 西田 吉宏君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 浅尾慶一郎君                 広中和歌子君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君     ─────────────    委員異動  二月三日     辞任         補欠選任      石川  弘君     脇  雅史君  二月四日     辞任         補欠選任      西田 吉宏君     加納 時男君      脇  雅史君     岸  宏一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 金田 勝年君                 広中和歌子君                 益田 洋介君                 池田 幹幸君     委 員                 岩井 國臣君                 加納 時男君                 片山虎之助君                 岸  宏一君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 脇  雅史君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 笠井  亮君                 三重野栄子君                 星野 朋市君                 菅川 健二君    衆議院議員        大蔵委員長    村井  仁君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君    政府委員        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 成宣君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君        日本銀行総裁  山口  泰君        日本銀行理事   黒田  巖君        日本銀行理事   引馬  滋君        日本銀行理事   小畑 義治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○国政調査に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  ) ○平成十年度の緊急生産調整推進対策水田営農確  立助成補助金等についての所得税及び法人税の  臨時特例に関する法律案衆議院提出)     ─────────────
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、石川弘君が委員辞任され、その補欠として脇雅史君が選任されました。     ─────────────
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 理事辞任についてお諮りいたします。  伊藤基隆君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事広中和歌子君を指名いたします。     ─────────────
  6. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、財政及び金融等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会日本銀行役職員参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認めます。  なお、人選につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  11. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 財政及び金融等に関する調査を議題といたします。  日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について、説明は去る十二月十日に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 岩井國臣

    岩井國臣君 自由民主党の岩井國臣でございます。  きょうは速水日銀総裁質問させていただくということで若干緊張ぎみでございますけれども、どうかひとつよろしくお願いしたいと思います。  我が国経済はまさに危機的状況で、今後どうなっていくのか、いろんな方が見通しを言っておられますし、経済企画庁長官長官としての見通しをもう既にお述べになっておるわけであります。予算委員会でもそういったことがいろいろと議論になっておるわけでございますので、私はきょうはその話はしないでおこうと思っておったんですけれども、昨日の日本経済新聞におきまして、大蔵省榊原財務官が割に明確な見通しをおっしゃっておるものですから、ちょっとそのことについてやっぱり総裁の御見解を聞いておかなきゃいかぬなということでございます。  榊原財務官は、銀行が今まで以上のリストラそして資本注入を決めれば、そういう仮定というか前提条件があるわけでありますが、少なくとも日本金融危機は終わると。そのことは十分理解できるわけであります。そして、金融危機が終わればことしの年央に日本景気は底を打つと、はっきり時期を明示された形でこれからの予想、予測というものをおっしゃっておられるわけでございます。  この点につきまして速水総裁の御見解はどうなっておりますでしょうか、大体同じような見通しをお持ちなのかどうか、ちょっとお聞きしたいわけであります。
  13. 速水優

    参考人速水優君) おはようございます。  本日は皆さん御多忙の中を日本銀行半期報審議のために長時間お当てくださいまして、私どもに御質問にお答えする機会を与えていただきましたことを一同を代表いたしまして心から厚く御礼申し上げます。  ただいま岩井先生から御質問がございました榊原財務官の御発言につきましては、私も正確に読んでおりませんので、この場ではあくまで私ども判断につきまして簡単に申し述べさせていただきたいと思います。  まず、景気現状につきましては、私どもでは悪化テンポが徐々に和らいできているというふうに判断いたしております。また、企業金融金融機関の資金繰りもひところに比べますとかなり逼迫感が緩和してきているというふうに見ております。これには、私どものいたしました金融緩和政策のほかに、公的資本注入とか金融機関リストラあるいは再編が進みつつあるといったようなことが影響をし、市場もそれを期待しているのではないかというふうに判断いたします。  こうした足元の変化に加えまして、政府が昨年春以降お決めくださいました緊急経済対策、これらが本格的に実施されていくことを考えますと、先行き、本年前半には景気悪化は一たんは歯どめがかかるのではないかというふうに日本銀行としては見ております。  しかし、企業家計コンフィデンスにつきましては、まだまだ低迷を続けておることは御承知のとおりでございます。企業収益もよくありませんし、雇用・所得環境も厳しさを増しております。需給ギャップというものは依然としてかなり大きな金額になっているように思います。  これらを踏まえますと、現状では、景気悪化に一たんは歯どめがかけられると思いますけれども、それから先どうなるかということになりますと、やはり先ほど申し上げました民間の企業経営者あるいは家計コンフィデンスがその間にどの程度前向きに動き出すであろうか、そのことによって、一たん歯どめがかかったものが底をはっていくのか、さらに下がるのか、あるいは少しずつは上がっていくのかということが決まっていくんじゃないかというふうに見ております。  以上が景気に関する私ども現状認識でございまして、いずれにしましても今後の情勢の展開を引き続き注意深く見ながら私どもとしても適切な措置をとってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  14. 岩井國臣

    岩井國臣君 いろんな見方があろうかと思います。しかし、私の見方というか印象程度のものでございますけれども榊原財務官見方は若干甘いんじゃないか。それから、経済企画庁長官も、これはまあ何とか消費者のマインドを高めるために多少前向きにおっしゃっている向きがあるのであって、私は日本経済はまだまだ大変だろうという感じもするんですね。あれだけの手を打ってきましたので、よくなる可能性も十分あるわけでございますけれども、御案内のとおり長期金利が今大変高くなっていますね。この辺がやっぱり懸念材料だと思います。  昨日は長期金利長期金利というか国債の流通の利回りですけれども、二・四%まで一たん行っているんですね。せっかくコールレートを意識的に下げようとこれから努力をするわけでありますけれども、一方で長期金利は上がっていくということで、果たしてどうなのかというような問題が実はあるわけですね。  したがって、私自身とすれば、既にもう手を全部打ったんじゃなくて、金融政策としてまだいろいろ打つべき手があるのではなかろうか、日銀としてまだ弾力的に適時適切に打つべき場面というのが来るのではなかろうかというような感じもするわけでございまして、現時点景気見通し経済見通しについてどのようにお考えになっているのかということをまずお聞きしたわけでございます。  さて、小渕総理施政方針演説の中で述べておられますけれども、言うまでもなく今は明治維新、そして戦後の改革に次ぐいわゆる第三の改革の時期でございます。すべての分野でいろんなことが変わっていく、そういう時期に入っておるように思います。  私が建設省に入りましたころ、私は入省は三十七年でございますけれども、私らは知らしむべからず、よらしむべしというふうに教えられたんですね。いたずらに国民を惑わしちゃいかぬ、そう言われた。ああ、なるほどな、民心の安定というのはやっぱり大事なんだなと私らは勝手に納得しておったような面もあるわけでございます。しかし、そういったことは建設省だけじゃなくて、大蔵省でもそうだったんだろうと思うし、通産省でもそうだったんだろうと思うし、日銀でもやっぱりそういうことだったんじゃないか。おおよそ公的なところは全部そうだったんではなかろうかという気もするんですが、ちょっと言い過ぎかな。  要するに、私たちが国を支えているんだという自負心というものを持っておったと思うんです。したがって、私たちが国を支えているんだ、だからつべこべ言うなとか、そこまではないかもしれないけれども、若干そういう気があって、いろんな接遇もございました。私も随分接遇を受けてきた。ですけれども、それは当たり前じゃないかという感じもあったんですよ。建設省官舎は悪かったんでが、日銀官舎はかなりいいですけれども、そういったこともそれは当然じゃなかろうかという気分、そういう感じも私は十分理解できるというか、そういうことではなかったのかなと思います。  しかし、時代は変わりました。完全に変わりましたね。新しい価値観で、新しいやり方でやっていくようすべてを変えていかなければならない。チェンジなんですよ。国際的にも我々はこうやっているんだと胸を張って言えるようにすべてを変えていかなければならないんじゃないか。日銀もその例外ではないと思います。やっぱり改革の時期だ、すべてにおいて日銀は変わっていかなければならないというふうに思うわけでございます。  そこで、総裁改革ということに関しまして、歴史的認識というか時代的認識というか、どのように認識をしておられるのか、そこの認識をちょっとお聞きしておきたい、こう思うわけであります。
  15. 速水優

    参考人速水優君) お答えいたします。  天下の流れにつきましていい御質問をいただきまして、私ども考え方を言わせていただける、大変ありがたいと思います。  新日銀法施行になりまして、金融政策独立性というものが名実ともに確立されたわけでございます。あわせて、政策及び政策決定過程透明性といいますかアカウンタビリティー、そういうものを高めていくことが私どもの新しい重要な責務になっております。これは戦後五十年余りにわたって戦時立法であった旧日銀法のもとで私ども業務を続けてきたわけでございますけれども文字どおり時代節目新法施行されたということは私どもにとっては大変ありがたいことであった、国会には本当に感謝申し上げなきゃいけないというふうに思っております。  日銀法改正論議が始まりました当時は、我が国社会の変容、国際化のうねり、そういった中で、これまでの経済の仕組みとか取引慣行などが厳しく問われ始めたころとちょうど符合しておったわけでございます。いわば我が国全体が時代節目を迎えたというころであったと申すことができるように思います。  私自身のことになりますけれども、私は一九九一年から九五年までたまたま経済同友会の代表幹事を承りまして、そのときに財界のリーダーの一人として初めから言い続けましたことは、ベルリンの壁が崩れて世界経済全体が大変革を起こす、グローバル化が起こっている、ボーダーレス化が起こっている、しかもメガコンペティションといいますか、世界全体が競争し合っていくことで一つ市場になっていくんだ、そういう中で我々も改革をしていかなければいけないが、その前提として政治改革あるいは行政改革、小さな政府といったようなことをぜひ実現させていただきたいということを時の政府にも随分申したつもりでございます。  日本経済にとりましては、これまでのいわゆる行政指導を中心とした経営でなくて、創造的な経営への自己革新ということをやっていこうじゃないかということを財界に強く呼びかけてきたわけです。そのかわり、やはり自己責任なんだ、市場でのリスクテーク、競争での勝ち負けというのは資本主義経済では当然つきまとうものなんだと、そういうことを言い、かつ日本銀行に対しては憎まれ役に耐えてくださいよということを申してきたつもりでございます。  図らずもそういうことを言ってきました私に、たまたま日銀法が変わります、施行になる日と相前後して総裁の重任を負わせていただくことになりまして、それこそ私が今まで申してきたように、日本銀行は新しい経済に対応できるような自己改革を行っていくべきだという決意を持って過去十カ月仕事をしてまいったつもりでございます。  日銀もまた例外ではなくて、政策運営面だけでなく、組織運営面でも新しい社会の要請に対して厳しい自己改革でこたえていかなければならないという認識を皆持っております。確かに新日銀法という入れ物ができたわけでございますから、その中身を実質的にどう変えていくかということは私ども努力いかんにかかっているように思います。既にこれまでも金融政策運営透明性向上とか内部管理面での見直しとか、いろいろな改革に着手をしております。その作業は急がなければならないと思っております。  私の座右の銘として、ある神学者の有名な言葉があるんですが、神よ、変えることができるものは変えていく勇気を、変えられないものはそれを受け入れる冷静さを、そして両者を見分ける知恵を私にお与えくださいという、これを私は座右の銘にいたしております。常にこの言葉を旨として、よりよい日本銀行をつくるべく、職員にも同様の気持ちを持ってほしいということを願いながら努力を重ねていきたいと思っておる次第でございます。  お答えになっていたかどうか知りませんが、私の決意を言わせていただいた次第でございます。
  16. 岩井國臣

    岩井國臣君 日銀法改正が一昨年の六月に行われました。施行は本年度、つまり平成十年四月一日からということでございますけれども、御承知のように、新日銀法そのもの平成九年六月十一日に参議院で可決されまして、七日後の十八日に公布ということであったわけでございますので、新日銀法が公布されてから施行されるまでのその間に、現職課長逮捕劇現職理事の自殺などの問題が起こっておりますね。一連不祥事日銀の再生がほぼ同時期に起こっております。  私はこれは偶然ではない、偶然の出来事ではないというふうに思っております。歴史的と言っては大げさかもしれませんけれども時代流れから日銀は変わるべきときに来た、日銀は変わるべくして変わるんだ、私はそう思います。一連不祥事もそのために起こった、そう考えないと鴨志田さんは死んでも死に切れませんよ。しかし、日銀は必死になってどのような改革に取り組んでおられるのか、実は私なんかにはよく見えないところがあるんですね。  速水総裁日銀は必死になって諸般の改革に取り組んでおられると思うんですけれども吉沢課長逮捕劇以降どのような改革に取り組んできておられるのか。問題を接遇問題とかあるいはレポオペの銀行選定問題などの、言うなれば表面に出た問題だけに矮小化しておるというようなことはございませんでしょうか。人事ども含めて全般的な改革に取り組んでいかなければならないと思うわけでございますけれども、その辺はどのようになっておりますでしょうか。
  17. 速水優

    参考人速水優君) 私どもの方では、新法に基づきまして、先ほど申し上げましたような認識のもとに、三つの改革の柱を持って今進めつつあるわけでございます。  第一の柱は、質の高い仕事をタイムリーに実現していくために、人事組織面職員働きがいのある環境を整備していくとともに、高い成果に対して正当に報いるということを念頭に、人事給与等改革を実施いたしております。  第二は、政策業務運営における透明性ということでございますが、公正な職務の執行という点では服務準則日本銀行員の心得を制定いたしました。その遵守確保するために規律委員会というものを設けますとともに、接待をめぐる先ほど御指摘の事件等、苦い経験を踏まえて、コンプライアンス委員会というものを設置いたしまして、法令遵守の観点から業務運営体制全般見直していく作業を行っております。  三本目の柱は、透明性向上という点では、政策業務関連事項だけでなくて、給与等支給基準の制定とか、あるいは保有資産見直しとか、そういった内部関連事項につきましても、政策委員会で決定した事項は原則としてすべて開示するということを行っております。  私どもでは、今後ともこうした改革努力を続けていくことによりまして、よりよい日本銀行を実現してまいりたいというふうに考えております。  個々の件につきまして、御質問に応じてこれから答えてまいりたいと思います。
  18. 岩井國臣

    岩井國臣君 最近また日銀支店長宅の問題とか、各地にある福利厚生施設の問題なんかがマスコミで取り上げられてきております。これをどういうふうに考えるのか、私自身はちょっと判断に迷うところが実はあるわけでありますが、日銀は特にいい人材を集める必要がございますね。だから、そういうためなら必要なものはやはり必要だというか、しかしかくかくしかじかでこういうふうに必要なんだとはっきり言うべきことは言うべきではなかろうか。国民に対して十分説明をし、納得ができるようにしていく必要があるんじゃないか、そんなふうに思うんです。  この点につきましてどのようにお考えになっているのか、もし差し支えなければ現時点でのお考えというものを述べていただければと思います。
  19. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 先生が御発言なさいました人材確保という点でございますけれども、これに関連してはやはり働きがいというものが非常に重要な要素であろうというぐあいに思います。この点で言いますと、一つの大きな要素というのはやはり中央銀行に対する国民理解、ひいては国民からの信頼というものが確保されているということが何より大切だろうというぐあいに考えております。  こうした点を念頭に置きまして、今回私どもが決定いたしました保有資産見直しという点をどのように関係づけ、考えるかという点でございますけれども、この点につきましては、私ども日本銀行の公的な性格というものにかんがみまして、国民皆様から理解が得られる資産保有のあり方とは一体どうなのかという点を重視いたしましたほか、業務上の必要性あるいは職員福利厚生面からの必要性等々も念頭に置きまして、是は是、非は非という基本的なスタンスで総合的に検討したということでございます。  その結果、支店長舎宅につきましてはマンション等へ切りかえていく、あるいは複利厚生施設については保養所運動場はすべて廃止するということが適当であろうというぐあいに考えまして、そのための調整を開始することとしたわけでございます。  こうした措置といいますのは、いずれも私どもの大事なテーマでございます適正かつ効率的な業務運営というものを実現していく、そういうものを目指して私ども今さまざまな改革努力をやっているわけでございまして、今回の措置はその一部にすぎないわけでございますけれども、こうした措置をとることによりまして、国民皆様から日本銀行への信頼、ひいては信認というものが確保されるであろうというぐあいに考えております。こうしたことが先生発言の御趣旨の私ども人材確保の面にも必ずやプラスに寄与するであろう、このように考えているということでございます。
  20. 岩井國臣

    岩井國臣君 昨年、あれは十二月に入っていましたかね、財政金融委員会で行われました日銀総裁報告、新日銀法になって初めての国会報告だったわけです。通貨及び金融調節に関する報告書、この報告書が十一月二十七日に国会に提出されたわけです。  以下、私はこの報告書を単に報告書と呼びますけれども、従来は年に一回でよかったものが、今回、新日銀法によりまして年に二回報告書国会提出しなければならないというふうになったんですね。年に二回、おおむね六カ月に一回ということになるわけです。四月に新日銀法施行になりましたので今回は十一月の報告ということになった、そういうことだろうと思います。  山口副総裁にお聞きいたしますが、今回の報告書が今までと大きく違うところはどういうところなのか、それから欧米の中央銀行のそれと比べて報告書のできばえはどのようにお感じになっているのか、あるいは今回の報告書の作成で苦労された点はどういうところにあったのか、その辺をちょっと教えていただければと思います。
  21. 山口泰

    参考人(山口泰君) お答え申し上げます。  旧日銀法のもとでの国会への報告、それから新法に移りましてからの報告につきましてただいま先生から制度的な面での御指摘がございまして、そのとおりでございます。それにのっとりまして、今回お手元にやや分厚い報告書を提出させていただいた次第でございます。  今度の半年に一回の報告書の特徴というのを一言で申し上げますと、やはり金融政策運営に絞りまして、どういう政策を決定したのか、それから決定に至るまでの考え方やプロセスというのはどういうことであったのか、それから賛成意見、反対意見というものはどういうものとして提出されたのかというようなことをできるだけ国民の前に明らかにさせていただくという、この点でございます。半期報告書の後ろの方に議事要旨というものが載録されておりますが、それをお読みになれば今申し上げたようなことが御理解賜れるのではないかと存じます。  それから、御質問の中で欧米などの中央銀行報告書と比べてどうかという点がございましたが、こういうそれぞれの国の実情に応じまして議会報告などをやっておる中央銀行はほかにもございまして、そういう前例を大いに参考にさせていただきました。私どもといたしましては、国際的に見て遜色のないものをつくれるようにということでできるだけ努力をしたつもりでございますが、できばえにつきましては先生方、委員各位の御判断にこれはむしろゆだねさせていただきたいと思います。  それから、どういう点で苦労したのかというお尋ねもございました。何といっても今回は新日銀法のもとでの最初の報告書を提出させていただいたということで、最初の試みでございました。新法の求めるところにできるだけ沿うように努力したつもりでございまして、それは透明性をもって私ども考え方を国民の前にできるだけ簡明にかつ十分に説明をさせていただきたいというところに意を用いたつもりでございますが、何分最初の試みでございますので、またいろいろ今後御意見などを賜りながらできるだけ改善に努めてまいりたいと思っております。
  22. 岩井國臣

    岩井國臣君 日銀法改正のねらいは日銀独立性と意思決定の透明性を高める、そういう点にあったかと存じます。その点では、政策委員会大蔵省代表の委員経済企画庁代表の委員が廃止されまして、そして日銀総裁の二名が加わりました。一応その点で日銀独立性が高まったと言えるのじゃなかろうかというふうに思います。そして、ただいま山口副総裁が御説明なさいましたように、今回の報告書におきまして金融政策決定会合の議事要旨がきっちりと報告されておる、ずっと。私も読ませていただきました。日銀の意思決定の透明性が高まったということは間違いないところかと存じます。大いに評価できるところでございます。  しかし、この報告書を見ただけではよくわからない点がございます。金融の専門家でない私のような者にも理解できるようにするには何か副読本的なものも要るのかなとも思ったりしておりますけれども、それはともかくといたしまして、せっかくの機会でございますので、私自身の勉強の意味もございますが、ざっくばらんにこれから若干の問題について質問させていただきたいと思います。  昨年九月の金融緩和措置の際にお出しになりました「金融市場調節方針の変更について」という対外的に公表された文書がございます。そこには景気の回復と金融システムの立て直しについて関係各方面が一丸となって取り組み、そして強化を図る旨期待するという日銀としての期待表明がなされております。この辺についてもう少し具体的に説明していただきたいというふうに思います。 どういう機関がどういうことをやればいいのか、どういうことを期待しておられるのか、またこういったことにつきまして関係機関にどのように日銀としての指導をそれ以降なさっておられるのか、これも山口副総裁にお聞きしたいと思います。
  23. 山口泰

    参考人(山口泰君) お答えさせていただきます。  昨年九月の金融緩和措置につきましては、当時、金融経済情勢が悪化を続けておりまして、かつ八月にロシアの金融危機というものが勃発いたしまして国際的な金融・資本市場の不安が一気に高まる、こういう状況にございましたので、そういう内外の経済情勢を踏まえまして、我が国経済がいわゆるデフレ的なスパイラルに突き進んでしまうことを極力防止したいというようなことを念頭に置いて講じた措置でございました。  ただ、ただいま申し上げましたような当時の経済全体の状況というのは、ただ単に金利を若干下げる、あるいは流動性を潤沢に供給するということだけでもって食いとめるというのはなかなかこれは容易ではないというふうにも私ども考えておりました。といいますのは、経済悪化の背景に、当時から指摘されておりましたように、残念ながら金融システムの弱さというのがいろいろな意味で影響を及ぼしているということがあったと思いますし、その他日本経済のもろもろの構造問題というのも経済情勢の悪化の背後にはあったというふうに考えられたからでございます。  したがいまして、御指摘いただきましたように、関係各方面が一丸となってというふうに私どもなりの期待を表明させていただきましたのは、例えば財政面からの経済のサポートでありますとか、あるいは金融システムの立て直しでありますとか、さらには構造改革に向けたさまざまな取り組みなど、そういう日本経済を強くしていくための総合的な動きというのがやはり必要であろうと考えて、それに向けての期待を表明させていただいたということでございます。  一例を申し上げますと、そうした観点に立ちまして、例えば金融機関に対してもディスクロージャーを強化してほしいとか、あるいは不良債権の処理をスピードアップしてほしいとか、そのような期待を表明してまいったところでございます。
  24. 岩井國臣

    岩井國臣君 「シークレッツ・オブ・ザ・テンプル」というアメリカの中央銀行のことを書いた本がございます。なぜ中央銀行の建物が非常に古色蒼然としていかめしいたたずまいをしておるのか、そんなことが書いてあるんですね。中央銀行というのはある種の権威がないと通貨が守れない、そういうことのようなんです。その本はそう言っている。私はそういうことがあるんじゃないかなと思うんですね。権威とか神秘性、こういったものはやっぱり大事なんですね。  今を時めく哲学者で中村雄二郎さんという方がおられますけれども、宗教と科学ないしは芸術と科学、そして神秘主義と合理主義、そういった一見相反するものの統合というものがこれから二十一世紀における大きな課題だ、そうおっしゃっておるんです。中村さんによりますと、それをなし得るのはリズムと共振、ハーモニーですね、そうおっしゃっておるんです。  その辺はちょっと横へ置きまして、私なりに翻訳して申しますと、どうも二十一世紀は共生、コミュニケーション、連携、そういう三つのキーワードかなと思ったりするんです。この話をし出すと切りがないので横へ置きますけれども、いずれまた機会があったらやらせていただきます。  要は、二十一世紀はコミュニケーションの時代なんですね。中村先生はリズムだとおっしゃっておるんですけれども、私はコミュニケーションだと思います。権威というものは茫漠としたものだと思いますけれども中央銀行にはそういった権威というものが必要だと思いながら、かつコミュニケーションというものも必要だなと思うんです。  中央銀行としての日銀は引き続きある種の権威というものが必要だろうと思います。そして、今お述べになりました国民とのコミュニケーションを深めていかなければならない、そういうことだろうと思います。それは関係機関とのコミュニケーションだけじゃなくて、国民一般とのコミュニケーションというものを今後十分意識していただきたい、そう思うわけでございます。アカウンタビリティーを果たすということによりまして透明性確保されるわけでございます。  しかし、そのことと独立性とはある程度矛盾する面があるようです。透明性独立性、矛盾する面があるようでございます。ドイツ連銀などの例を見ていると、独立性は高いけれども必ずしも透明性は高くないというようなことを言う人もあります。独立性を保ちながら透明性を高めていくということはそう簡単なことじゃない、容易なことじゃない、なかなか大きな課題だろうと思うんですね。これも中村雄二郎さんじゃないけれども、統合の問題だと思います。河合隼雄さんの言われる矛盾システムというのがあるんですけれども、私はそうじゃなくて、中村雄二郎さんの言われる統合システムでこれから我々は生きていかなければならないのじゃないか、こんなふうに思うんです。  そこで、そういったことと関連いたしまして質問させていただきますが、アカウンタビリティーに関して日銀はどのような取り組みをされようとしておられるのか。中央銀行としての権威というものを保ちながらどうアカウンタビリティーを高めていくのか。これはなかなか難しい問題でございますけれども、お答えいただければと思います。
  25. 山口泰

    参考人(山口泰君) ただいま御指摘ございましたように、確かに独立性透明性との関係をどう考えるのかというのは実は各国の中央銀行によって若干考え方の食い違いみたいなものもございます。それは御指摘のとおりだと存じます。  日本銀行はと申しますと、冒頭に速水総裁から申し上げましたような時代認識のもとで金融政策について独立性を与えられました以上は、国民皆様方に対して十分にアカウンタビリティーを高く保っていなければいけないというふうに考えております。独立性とアカウンタビリティーというのはそういう意味では表裏一体をなしている概念であろうというふうに日本銀行では考えております。そのアカウンタビリティーといいますのは、恐らく一般的な理解では金融政策の決定の考え方でありますとか決定のプロセスにつきまして十分に機会を設けて説明をさせていただくということだと存じます。  以前から日本銀行ではさまざまな機会でそういうことに努めてきたつもりでございますけれども、法律も新しくしていただきまして、新法のもとではますますアカウンタブルでなければいけないという要請が強まっているというふうに認識しております。  そういう意味で、いわば新法下での目玉といいますか、それを申し上げますと、金融政策につきまして半年に一回国会報告書を提出させていただきまして、例えばこういうふうな場でまとまった時間を与えていただき、私ども考え方について御質疑をちょうだいするというようなことが一つございます。  またもう一つは、金融政策を決定する会合というのを定期的に行っておりますけれども、その会合が終了しましてから約一カ月ぐらいたったところで議事の要旨というのを公表させていただいております。これは、要旨という名前ではございますけれども、その中でなぜこういう政策決定に至ったのかという議論の流れがはっきりとわかるように意を用いているつもりでございまして、おかげさまでマーケットの中あるいはその他におきまして比較的これは好評を得ている要旨であるように思っております。  もちろんこれで足れりということではございませんで、引き続きアカウンタビリティーを高めることができますように努力してまいりたいと思っております。
  26. 岩井國臣

    岩井國臣君 既に講じられてきました金融緩和措置に比べまして、今回の措置による影響は比較的小さいのかもしれない、そんなふうに思いますので、ここでは今まで講じてこられました金融緩和措置について質問させていただきたいと思います。  公定歩合でございますが、一九九〇年八月には六%だったんです。バブルが崩壊いたしました。九一年七月に五・五%に引き下げられました。以降、数回にわたり引き下げられまして、九三年九月に一・七五%、そして九五年九月八日についに今の〇・五%になったんですね。  このような異常な低金利、しかも長期間続いているという状況は、他の資本主義諸国、また歴史上も余り例のない極めて異常な事態ではないかと思うんです。この異常な低金利を政府財界が維持しているのには、一つにはアメリカからの強い要請があるという向きがあります。  アメリカにとって日本からの資本流入を増加あるいは拡大させるためには絶えず日本が低金利であることが望ましいわけでございまして、このことでアメリカの株式市場の高水準維持が可能となっているんだ、こういったまことにうがった見方に対しまして、日銀としてどう説明されるのかというのはちょっと問題があるんですが、時間がなくなってきましたのでこれはやめます。私は結果と目的を混同するような議論はおかしいと思っているんです。ですから、今こういう批判は当たらないというふうに思っております。  もう一つ日本金融機関が抱えている巨大な不良債権に対する救援策として行われているのではないか、こういう見方がございます。異常な低金利であれば銀行は預金者へ利息をほとんど払わなくていい。これも結果だけをちょっとつまみ食いしたようなまことにうがった見方だという気もするのでございますが、日銀はこういった見方に対してどう説明するのか。アカウンタビリティーがあるんですね。これにつきまして、山口副総裁がいいんでしょうか、どなたでも結構ですが、このとおりなのかどうなのかというのをちょっと説明していただきたいと思います。
  27. 山口泰

    参考人(山口泰君) 先ほど、昨年九月の金融緩和措置に即しまして当時の私ども考え方を申し上げましたが、それはデフレスパイラルに経済が突き進むことを極力防止したいという趣旨によるものでございました。これは一例でございまして、ここ数年間私どもがとってまいりました金融緩和政策というのも、あくまでも経済全体をできるだけいい形に持っていきたいと。それは日銀の使命に即して申しますと、物価の安定を前提にして持続的な経済成長を実現していきたいということになるわけでございますが、それを目的とし、趣旨を趣旨として運営してまいったつもりでございます。銀行の不良資産問題に的を絞って、銀行収益を支援するというようなことでこういう政策を続けてまいったということでは決してございません。  金利低下の銀行収益についての影響というのはいろいろな計算ができると思います。金利が下がり続けているときというのは資金の利ざやが拡大するとかあるいは債券の価格が上昇いたしますので、そういうさまざまなチャネルを通じまして銀行収益が増加するのは事実でございますけれども、それはいずれ一過性のものとして終わる性格のものでございまして、実際に全国銀行のいわゆる業務純益というその時々の収益を比較的正確に反映する指標をとってみますと、九五年度以後になりますとむしろ減少傾向になってきております。  そういう意味で、預金金利の低下あるいは金利全般の低下は利ざやとして金融機関の手元にそのままとどまっているというようなことではございませんで、貸出金利が下がり企業がその恩恵をこうむるとか、あるいは住宅ローンを利用なさる家計の方々にとっては住宅ローンの金利負担が軽くなるとか、そういうような形での金融負担の減少につながっているというふうに考えておりまして、私どもではそういうようなことを通じまして経済全般に対していい影響が及ぶということを期待して今日の政策をとっている次第でございます。
  28. 岩井國臣

    岩井國臣君 大分時間がなくなってきましたのではしょっていきますが、要するに現在の超低金利政策国民生活に及ぼす影響、やはりもっと苦渋の選択であるというところがわかりやすく伝わる、そういう説明をぜひお考えいただきたいと思うんですね。それはお願いだけしておきます。  それからもう一つ、きょうの新聞にも出ておりますが、日銀の国債の直接引き受けの問題、長期金利が特に上がってきておる、これが景気の足を引っ張るんじゃないかと。そしてまた、アメリカとの金利の差が少なくなってきて、要するにアメリカへの資金のフローが細っていくのではないか、アメリカのバブルがそれではじけるんじゃないか、大変なことだという議論があります。  この問題は大変な議論でございまして、ちょっと質問をしようと思っておったんですけれども、時間もなくなってきましたし、これはちょこちょこっと話をするような問題じゃないので、また予算委員会その他別の場で議論をさせていただくということにして、これは飛ばします。  それでもう一つ、ちょっと大事な話ですが、物価の番人と言われておりますように、物価安定というものがやはり日銀の最も重要な役割なんですね。そして、この場合大事なことは、ここ数年物価は下落傾向にあるのでございますが、そこはやっぱりデフレの心配が出てきておるのではなかろうか。物価は安ければよいというわけにもいかぬわけですね。  そこでお聞きしたいわけですけれども日銀は物価の現状というものをどのように見ておられるのか、そして物価の安定は達成されているのかどうか、それともデフレと見ておられるのかどうか、その辺をちょっとお聞きしたいわけであります。
  29. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えいたします。  物価についてでございますが、消費者物価を見ますと、生鮮野菜がこのところ値上がりしておりましたので、消費者物価は前年比で見て最近下落でなく上昇しているという状況にございます。一方、生鮮野菜等を除いた基調的な消費者物価と申しましょうか、こういったものは小幅の下落傾向にあるというふうに申し上げてよろしいかと思いますが、これまでのところ、その下落のテンポはどんどん加速していくというような状況にはございません。  ただ、国内経済需給ギャップは依然大きいという状況にございます。また、賃金も下落の傾向にあるわけでございます。また、昨年秋以降、円高も進んでいるわけでございます。  こうした状況を踏まえますと、先行きにつきましては、物価の下落が加速しながら経済が収縮していくというようないわゆるデフレスパイラルと申しましょうか、そういった状態に陥るリスクも完全には排除できない、頭の中に置いておかなければいけない状況にあるということかと思います。  したがって、現状、物価の安定が既に損なわれてしまっているというふうには私ども考えておりませんが、現時点で見て、先行きのリスクということを考えますと、インフレ方向よりもデフレ方向にあるという認識に立っております。
  30. 岩井國臣

    岩井國臣君 軽微だけれども傾向としてはデフレ傾向にある、いろいろと今後心配な面はあると。  消費者物価指数、CPIでいろいろ判断を我々はしておるわけでありますけれども、CPIで判断することにちょっと問題があるのではなかろうか。日銀の白塚重典さんの研究によると、CPIではかったインフレ率は真のインフレ率を一ポイントほど上回っておる、そういう調査結果を出しておられるかと思います。したがいまして、CPIインフレ率をゼロではなくて一%押し上げるような金融緩和政策が必要ではなかろうか、そんなふうに思ったりもするわけでございます。  コールレート金融調節の操作変数とする現在のやり方、コールレートのターゲットがオーバーナイトで〇・二五%、ほとんどゼロに近いわけですね。もうこれ以上下げていく余地はない、緩和していく余地はもうない、もう限界に来ておる。財政政策につきましてももう限界に来ておるような感じもするわけですね。したがいまして、今後の話ですけれども、私は金融政策にもっと弾力性を持たせる必要があるのではなかろうか、もっと必要に応じて活力が出せるようにすべきではなかろうか、こんなふうに思うんです。  かかる観点から質問させていただきますが、コールレートのコントロールというものはやめて、マネタリーベース、現金プラス市中銀行日銀に預けている準備預金を合計したものですが、マネタリーベースにターゲットを定めて必要なコントロールというものをやるべきではなかろうか。これはちょっと解説的な答えになろうかと思いますので担当理事さんでも結構ですけれども、その辺のところをどのようにお考えになっているのか。私はそういう方向で検討していった方がいいんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  31. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えさせていただきます。  金融政策は常に弾力性を持って行われなければならないということにつきましては、ただいま先生御指摘のとおりというふうに考えております。  そこで、その金利というものとマネタリーベースのような量というものとの関係でございますが、これにつきましては、一般論といたしましてはいわばこの二つはコインの裏表のような関係にあるということでございます。したがいまして、御指摘のとおり、理屈として、金利を見て量の方を動かしていくのか、量を操作目標とするのか、量を見て金利の方が動くようにしていくのかという選択肢が従来から論じられてきたわけでございます。  しかし、実際の場におきましては、主要国のいずれの中央銀行も現在は金利を操作目標として政策運営を行っているという状況にございます。マネタリーベースといった量的な指標に注目して政策運営を行おうといたしますと、現在のように金融システム不安からマネタリーベースに対する需要が大きく振れる、人々が銀行券、日銀券をたくさん手元に持っておきたいというふうに思いますと急にこのマネタリーベースというのはふえるといったようなことが例えば起こるわけでございますが、そういったような不安定な状況下においては、それを見てやっておりますとむしろ政策運営を誤る危険もあり得るというふうに考えられます。  つまり、信用不安などをきっかけに家計企業が手元現金を積み増したり銀行が準備預金を厚目に積もうとすると、マネタリーベースに対する需要が大きく増加してしまいます。こうしたケースでマネタリーベースを目標値内におさめようとするようなことを誤ってやってしまいますと、むしろ金融を引き締めて流動性に対する需要を抑え込むというような矛盾が生じてしまうおそれもあるわけでございます。  このように、特に最近のような金融システム不安の強い状況におきましては、やはりコールレートを注意深く日々見ながらその安定に努めるやり方の方が相対的に的確な政策運営を実施していけることになるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  32. 岩井國臣

    岩井國臣君 大体そんなところかと思いますが、これは国債の直接買い入れの問題とも関連して、こういったことについて要するに研究というのですか、検討してもらいたい、そのことだけお願いいたします。  新日銀法につきましては、法解釈だとかあるいは実際の運営面においていろいろと問題があると言う人もあるのでございますが、私は新日銀法の精神にのっとって適切な運営が行われていけば我が国における日銀の名声というものもとみに高まっていくのではなかろうか、こう思うのです。国際的にも高い評価を受けられるような理想的な運営をぜひやってもらいたい。  最後に、今後の運営に寄せる総裁の御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 速水優

    参考人速水優君) 本日は新日銀法のもとでの私どものあり方につきましていろいろ御意見を賜り、また御質問をいただきまして大変ありがとうございます。  御指摘がございましたように、私どもが直面しております内外の情勢は大変厳しいものがございます。それだけに私どももよかれと思うことを一生懸命やっております。その成果が直ちによい結果が出るというものでもないかと思います。国民皆様に批判されることも当然多いと思います。しかし、そうした批判を恐れずに正しいと信ずる政策を果敢に遂行していくことができてこそ新日銀法独立性が与えられたゆえんやその意味があるというふうに考えております。  また、金融政策というのは専門家でも意見が分かれるところでございます。全国民に私ども政策理解していただくということは大変難しいことではないかと思いますが、我々としてはその努力を怠ることなく透明性の高い政策運営に努めてまいりたいと思います。すぐに称賛されることでなくても、後から振り返ってみてやはり日銀判断は正しかったと言われるような政策を行ってまいりたいと思います。  アデナウアーがかつて中央銀行のことを、中央銀行は大変不便な存在だけれども、これがあるから私は安心しておれるんだということを言われたことがございます。国債の引き受け問題、その他今当面の課題になっていることはございますけれども、私どもは憎まれてもこれが正しいと思うことをやってまいりたいと思っております。  どうもありがとうございました。
  34. 岩井國臣

    岩井國臣君 終わります。
  35. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 民主党・新緑風会を代表いたしまして質問をさせていただきます。  ただいま速水総裁の方から国債引き受けについてお話がございましたけれども、その点について冒頭お伺いさせていただきます。  最近の議論の中で、財政法五条に基づいて国会決議をした場合に国債を引き受けていただくことになるということだと思いますが、通貨の番人あるいはインフレファイターとして率直な御所見を、冒頭この国債引き受けについていただければと思います。
  36. 速水優

    参考人速水優君) 国債の引き受け、新規引き受けについて新聞もかなり大きく取り扱っておりますけれども、御承知のように、財政法、日銀法で引き受けは禁止されているところでございます。そういうこともございますし、私どもとしては今国債を新規に引き受けるというような考えは全く持っておりません。そのことはここではっきり申し上げたいと思います。  中央銀行が一国の国債を引き受けると、その国の財政節度が疑われるわけでございますし、また悪性のインフレを招くことになることは私どもも経験もいたしましたし、どこの国でもそのことを恐れてそういうことはやっておりません。そうなりますと、中央銀行に対する内外からの信認も失われてまいりますし、国債の格付がまた引き下げられるといったような可能性も全くないとは言えないと思います。むしろ、そうなると長期金利も上昇してしまう可能性も高いのではないか。主要国において中央銀行による国債引き受けが禁止されているのも、そうした考え方あるいは経験に基づいたものだというふうに考えております。  したがいまして、国債の引き受けは選択肢とはなり得ないということをまず申し上げておきたいと思います。
  37. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございます。  それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。  実は日銀平成十年九月三十日のバランスシートを拝見させていただきまして、この中に日債銀に対する八百億円の出資が金融安定化基金拠出金という名目の中の一千億円のうちの八百億円という形で入っております。  この八百億円は、御高承のとおり日債銀が債務超過であるということを勘案すれば、恐らく株価算定委員会が価値なしと判断するものと思われます。そうすると、この八百億円は損失処理をされなくてはいけないということになってくるのだと思いますが、どういう形で損失処理をされるのかという観点から、先ほどもお話に出ました支店長舎宅あるいはグラウンド、その他保養所の売却ということで、簿価が低いものでしょうから恐らくかなりの収益が上がるのではないかということで、当然それで相殺できる可能性があるのかどうか。その点について、固定資産税評価額から見て大体これぐらいの収入が支店長舎宅あるいはグラウンド、保養所を売却することによって得られるという数字があれば教えていただきたいと思います。
  38. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) お答えさせていただきます。  私ども保有資産でございますが、これはもう相当昔に購入いたしたものが大変多うございまして、したがいまして売却した場合には相当程度の利益が生ずる場合があろうというぐあいに思います。  しかしながら、私ども保有資産見直しという点でございますが、今申し上げましたような売却益を得るということを目的にしているわけではございませんで、あくまでも日本銀行の公的な性格というものにかんがみまして、国民から理解が得られる資産保有のあり方というのは一体どうなのかという観点、さらには業務上の必要性等々を踏まえた結果である、私どもの方針はそういう結果であるという点をまず申し述べさせていただきたいと思います。  こうした点を前提にいたしまして、お尋ねの点でございますが、現在私どもが売却を検討いたしております支店長舎宅、それから保養所運動場、そのほかの遊休不動産等々があるわけでございますけれども、これらにつきましては、私どもそれぞれの時価というのを正確に把握しているわけではございません。また、実際売却した場合にその価格がどのくらいになるかというのは不明ではございますが、先生の御質問でございますのであくまでも参考までにということで申し上げますと、固定資産税評価額と簿価との差額という点で申し上げますと、おおよそ三百億円程度の水準になろうかというぐあいに思います。
  39. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そうすると、今のお話、必ずしも収益を上げるためではないということはそうかもしれませんけれども、いずれにいたしましても日債銀に対する八百億円の出資は損失という形で処理をしなくてはいけないのかなということになってまいりますが、三百億円では恐らく足りないということで、ただ日銀の通期の所得あるいは利益という観点から見れば十分償却可能だというふうに考えられております。  加えて、世間あるいは新聞紙上で今言われております日銀の給与の問題について少しお話を伺いたいと思います。  給与というものが高過ぎる安過ぎるという議論は、どういう仕事をしたら幾ら払うのかという観点、あるいは同程度の仕事あるいは同程度の能力の方を民間から持ってきたらどうかということから考えるのも一つ考え方なのかなと思いまして、そういう観点から、例えば同じ中央銀行で諸外国がどういう観点から給与水準を決めているのかという点を伺わせていただければと思います。  ちなみに、事前にいただいた資料でわかっておりますことを申し上げておきますと、米国の連邦銀行総裁は年収千五百六十九万円、約千六百万円ぐらい。ただし、英国中央銀行あるいはドイツのブンデスバンク等になりますと四千五百万から四千万円ぐらいということで、物価水準を勘案すれば日本とそう変わらないのかなということはわかっておるんですが、その他のいわゆる役員あるいは職員の給与がどういうものと比較して諸外国で決まっているのかということを御存じであれば教えていただきたいと思います。
  40. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) ただいま先生から先生自身が相当お詳しい御発言があったわけでございますが、海外の中央銀行の給与の実情という点でございます。  これにつきましては各国それぞれの事情がございまして、また歴史的なそれぞれの経緯の中で決められてきている、そういうようなわけで一様ではないというのが概観かと思います。法令によって適用される給与表が決められている国もありますれば、あるいはまた中央銀行自身が独自に決めることになっている国もございまして、さまざまでございます。  御参考までに私ども承知している点を申し上げますと、先ほどアメリカ連銀の議長のあれがございましたけれども職員について申し上げますとFRBが独自に決定をいたしております。その給与水準を決めるに当たりましては、民間の競合先基準というようなことで、例えば銀行、証券あるいは法律事務所等々幾つかのポストを選びまして、そういう先の給与を参考にしてFRBが独自に決めているというものでございます。  それに対しまして、例えばドイツのブンデスバンクでございますけれども、こちらの方は役員につきましては役員個人と中央銀行理事会との協定によって定めているということでございます。通常の職員でございますけれども、こちらの方については公務員基準、公務員と全く同じではございませんけれども、本俸に一定の率の割り増し金を乗っけた形で給与体系を定めている、こういうのが海外中銀の実情かと思います。
  41. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 その点に関して二点ほどお伺いしたいんです。  一つは、FRBが民間の競合先というふうにおっしゃいましたけれども、恐らく競合先、いわゆるインベストメントバンクとかアメリカの法律事務所の方はかなり高給を取っておられるのではないかな、取っておられる人もいるというふうに聞いております。そういたしますと、先ほどの連銀の総裁よりも高い給与をもらっている人がいないとおかしいのかなという気がいたしますので、もしその点についておわかりになればというのが一点目です。  それからもう一点は、これはむしろ御所見を総裁に伺った方がいいのかもしれませんが、ドイツの場合は公務員プラスアルファという観点だったんでしょうけれども、いろいろな決め方がある中で、我が国の決め方、今四%下げておられるということだと思いますけれども、それが妥当であるかどうかという点の御意見を伺いたいということでございます。
  42. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 先生から、アメリカの例えば連銀の給与の体系について、一般の職員あるいは議長との関係はどうかということの御質問がございました。  これにつきましては、私どもも詳しく承知しているわけではございませんけれども、通常のアメリカ連銀の給与体系という観点で申し上げますと、職務給の考え方というのを基本にいたしております。したがいまして、職務ごとに職務の評価をいたしまして、ここから得られるある種の点数というもので給与のグレードを決めております。したがいまして、階段がずっと下から上に上がるというよりも、それぞれ職務の内容によって給与がゾーンで決められているということでございまして、そういう意味ではある部分それぞれの資格によっては給与が逆転しているといいましょうか、職務の重さによって逆転している、そういう体系になっているというぐあいに理解をいたしております。
  43. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 余り給与の話ばかりしてもあれなんですが、二点目のドイツ連銀、ブンデスバンクの決め方と我が国の決め方について、今いろいろ給与改定をされているという観点から伺わせていただければと思うんです。  一般の職員について四%下げられたというふうに承っておりますが、それと、ドイツの場合は公務員の給与をベースに決めておられるということを考えた場合、あるいは言い方を変えますと、現在デフレの中で四%というものは市場の、市場のというか、労働市場においても給与が四%程度下がっているというのが恐らく平均値だというふうに聞いておりますから、そうだとすれば、別に私は高いから悪いとかそういうことを言いたいわけではないんですけれども、絶対水準あるいは相対水準という観点からいえばまだ高いのではないかなというふうに思います。一方、今ドイツ連銀のお話を伺ったので、それについて、別の決め方の観点もあるのではないかなということからもし御所見をいただければと思います。
  44. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 私ども職員の給与につきまして、先生御指摘のとおり、昨年の秋に四%程度の水準の引き下げ調整を行ったわけでございますが、この水準の引き下げ調整に当たりましては、まず新しい日本銀行法で求められております職員等の給与の支給基準、こういうものを定めまして、それを念頭に置いて水準を定めたということでございます。  問題の職員給与の支給基準考え方でございますけれども、一言で申し上げますと、私どもとしては中央銀行サービスの維持向上を図っていくために何といっても人材が大事でございます。やはり十分競争力のある体系にする必要がある、そういう意味で主要民間金融機関のほか主要民間企業等における処遇の実情を勘案して決める、こういうものを基本的な考え方に据えたところでございます。  では、具体的に四%という点でございますが、この点につきましては主要な民間金融機関あるいは企業等の給与の実情というものも大いに参考にいたしたわけでございますし、さらにつけ加えますと、私どもの給与体系自体は職務給へかなり傾斜をした体系になっております。これは昨年の四月からそういう方向に傾斜したわけでございまして、そういう意味で民間のコンサルティング会社等々の意見も聞きまして、私どもの主要なポストの職務の評価、これが民間との関係でどうかといったような点も点検をいたした上で四%程度の引き下げというのが今申し上げましたように給与の支給基準に照らして妥当であろう、こういう結論に至って水準を設定したということでございます。
  45. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 給与の点につきましてはいろいろな決め方があるだろうということで、先ほどドイツのお話を教えていただいたので、それについて別途御検討をいただくか、あるいは今のが一番いいということであればその理由をまた別途御説明いただければと思います。  次に移らせていただきますが、日銀平成十年九月三十日のバランスシートから見ますと、手形貸し付けという形で北海道拓殖銀行あるいは山一証券に対する、山一についてはこれは間接的というふうに伺っておりますが、いわゆる特融を行っておられる。これが大体三兆円ぐらいあるように見えます。  そこでお伺いしたいのは、バランスシートの後の方に書いてありますけれども、山一については引き当てを二五%積んでおられる、北海道拓殖銀行については一〇%積んでおられるということでございます。山一の場合は破綻懸念先というか破綻してしまった先ということから考えると少なくとも七五%は積むべきなのではないかなというふうに思うわけでございますし、あるいは北海道拓殖銀行についても、果たして一〇%というと、今いろいろ議論がある中で、Ⅱ分類についても一五%積んだらどうだろうかと金融監督庁はどうも指導しておるようでございます。この山一に対する二五%の引き当て、あるいは北海道拓殖銀行に対する一〇%の引き当てというのは余りに低過ぎると思うんですが、この点についていかがでしょうか。
  46. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  先生御指摘のいわゆる特融でございますけれども、御指摘の北海道拓殖銀行分につきましては、御案内のとおり北洋銀行と中央信託にそれぞれ営業譲渡が行われておりまして、私ども現時点ではそれは完済を受けております。もう一方の山一証券のいわゆる特融でございますが、これにつきましては現在残高は四千九百億円でございます。  少し長くなって恐縮でございますが、山一への特融につきましては、臨時異例の措置として、私どもその当時の金融情勢にかんがみまして、要するに内外の金融市場の混乱をぜひとも回避したいということと、顧客資産の円滑な返還あるいは今までの取引の約定が円滑に行われるというようなことで特融を実施したわけでございますが、私どもはそのときに特融を実施する場合に原則を設けております。その一つの大きな原則が財務の健全性、資産の健全性を維持する、そういう方針で運営いたしております。  山一へ特融を実施いたす場合にもそこを私どもは十分考慮したわけでございますが、先生承知のとおり山一へ特融いたします場合には大蔵大臣談話も同時に発表されておりまして、政府大蔵省におかれましては、この日銀特融の、要するに私どもから見れば債権保全ということでございますが、それにつきましては、当時、寄託証券補償基金というのがございまして、こういう寄託証券補償基金の整備改善も含め山一の最終処理については政府が責任を持つという談話を発表しておられました。私どももそれを前提に山一向けに特融を実施したわけでございます。  去年の六月の金融システム改革法によりましてその寄託証券補償基金というのが投資者保護基金というような仕組みで山一の特融が引き継がれる仕組みができておるわけでございまして、私どもはこういう投資者保護基金への関係者の理解を得て私どもの特融の、要するに債権自体が引き継がれ、私どもから見れば特融の返済財源が確保されるということを認識しておるわけでございます。  引当金の積み方自体については引馬理事の方からちょっとお答えさせていただきます。
  47. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 特融に対する引当金の考え方ということでございますけれども、これにつきましては、発端は平成七年の上期末でございました。当時、破綻先金融機関向け特融に対する引当金の率でございますけれども、特融の期末残高の二五%相当額を積み立てていたわけでございますが、平成九年の下期末からは預金保険制度の対象となる金融機関向けの特融というものについては一〇%に引き下げることとしたわけでございます。  この背景でございますけれども、これは先生御案内のとおり、預金保険制度を活用いたしました破綻処理の枠組みというものにつきまして数次にわたる預金保険法の改正がございまして、いわゆる公的資金の導入等を含む制度の整備拡充が進められてきた、こういうことを私どももしんしゃくいたしまして、いわば破綻金融機関に関する処理方策が実施されないリスクというものが従来に比べて減少してきたという判断に立ったものでございます。  一方、山一証券向け特融につきましては、平成九年九月末、それから先ごろの十年度の上期末とも以前と同様の水準である二五%相当の引当率を適用しているわけでございますが、この点につきましては、山一証券は預金保険制度の対象ではございませんし、また山一証券の最終処理がいまだ明確になっていないと当時判断されたこと等々を踏まえて今申し上げたような率を採用したということでございます。
  48. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 簡潔にお答えいただければ結構なのでございますが、山一証券に関してでございますけれども、特融を出された金額に対して二五%ということで、それでもうそれ以上の損失は出ないというふうに合理的に判断されておるという理解、今の御答弁ですとそういうことだと思います。寄託証券補償基金その他を使ってそれ以上の損失は出ないだろうという理解だと思いますけれども、そういう判断をされておるということでよろしいですか。簡潔で結構です。
  49. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、山一証券の特融の返済財源につきましては、関係者の理解を得まして投資者保護基金によって、万が一山一証券が債務超過で返済財源はそこへ引き継がれるという形で私どもの特融が返済されるというふうに思っております。
  50. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、山一証券あるいは特融の話から次のバランスシートの項目に移らせていただきます。  同じ資産の中で、買い入れ手形という項目が十兆円ぐらいあると思います。あるいはまた、本日いただきましたこの報告書の中でも、買い入れ手形に関していわゆる事業法人が発行しておりますCPもその対象になっておるというふうに記載されております。  CPにつきましては日銀の方で信用力を調査されるということでございますけれども、この調査をされるセクションが金融市場局というふうに伺っております。一方で、日銀銀行の考査、いわゆる一般的に思われるところの検査と同じだと思いますけれども、考査に入られる場合に、多分分類債権というか、二期連続赤字のところは分類されると第Ⅱ分類になりますよというふうになるんだと思います。  質問させていただきたいのは、考査局でここの企業は第Ⅱ分類ですねというところも、金融市場局ではCPオペの対象になっているところもあるんではないかな、それがいい悪いということではなくて、あるんではないかなというふうに思いますが、十兆円強の買い入れ手形のうち、大体どの程度が第Ⅱ分類相当になるのかということを教えていただきたい。要するに、全国銀行で第Ⅱ分類がどれぐらいあるかということを公表しておるわけでございますけれども、もちろん二〇〇一年三月までは仮に第Ⅱ分類であってもこれは銀行からの買い入れだから全額金融再生法で保護されているということはあるんでしょうが、大体どの程度が第Ⅱ分類であるかということを教えていただきたいのと、それからまた金融市場局と考査局との間で情報のすり合わせをやっておられるかという二点についてお答えいただきたいと思います。
  51. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えさせていただきます。  考査については考査局が担当し、オペにつきましては審査も含めまして市場局でやっている、御指摘のとおりでございます。  そのように分けておりますのは、考査において得られた情報がみだりに違う業務のために使われてしまうということが過度に行われますといろいろな弊害が考えられる、あるいは考査の資産査定とCP等のオペに伴う資産の査定とはいろいろ具体的な中身が違っていて一対一の対応関係にはないといったような業務上の違い、こういったようなことから別にやっているわけでございます。したがいまして、そういうことで自由に考査結果を、特にその生のデータを参照するということは私どもむしろ厳しく自粛しております。  しかし、御指摘のとおり、これがもし考査の判断というようなものが有用だと考えられる場合には、そういう厳しく制限した上で参照させていただくということはやっております。  先ほど御指摘の分類資産に該当するものがどれぐらいあるかという点でございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、担保の適格性の審査とこの考査の査定資産、これは事務的には一つ一つの資産について行っていくわけでございまして、一対一に対応するものではございません。したがって、これは当然考査であれば何々になるというふうなことをあらかじめ申し上げることは大変難しいというふうに考えております。
  52. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 同じ質問をもう一度させていただきますけれども、後段の部分で、二〇〇一年三月までは多分金融再生法その他で銀行の裏書きがあれば仮にその銀行が破綻した場合には国の財政から補てんされるということで問題はないというふうに思われますが、二〇〇一年三月を越えた場合に、ですから今から準備をされた方がいい、あるいは与信管理ということを考えた場合には今から考えておかれた方がいいんではないかという観点からなんです。  例えばA社という会社がⅡ分類に該当しますというときに、そこのCPを買っておられるケースもあると思うんです、それは何とか銀行を通してでしょうけれども。そういうものがどれぐらいあるかということは、情報をみだりに考査局から金融市場局に回すべきではないという御指摘もありましたけれども、一方で、つい最近の日債銀の件では大蔵省の検査結果が回ってこなかったがために損失になってしまったということもあるわけでございますし、同じ日本銀行という組織の中で情報をそれほど厳密に管理する必要性があるのだろうか、あるいは管理することによって守られる利益とそれによって劣化する資産とどっちが重要なのかという点なんですけれども、その点についてお答えをお願いします。
  53. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えをさせていただきます。  ただいま先生の御指摘の点はまことに重要な点であり、かつそのたびごとに私どもその二つの観点を十二分に認識を新たにしながら、これはどのように対応していったらよいかということをしっかりと踏まえて対応すべきものだと思っております。  私どもは、情報を回す範囲、中身についてはいわゆるニード・ツー・ノーの原則で、一人一人につきまして不必要な人には一切情報を知らしめないためにはどうするかという原則でやっております。他方、先生御指摘のとおり、それが流れなかったために不当な事態に至らないようなニーズはどこまであるか、この両方を常に対比しながら最も適当な方法を工夫していくということで今後ともやらせていただきたいというふうに考えております。
  54. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今、二〇〇一年三月までは大丈夫ではないかということで申し上げさせていただきましたけれども、加えてもう少し広い範囲でお話を伺わせていただきます。  二〇〇一年三月までは大丈夫だと思われるんですが、最近、日本長期信用銀行が特別公的管理に入りまして、自己資本比率の観点からCPオペから外されたという報道がされておりますが、それは逆に言うと自己資本比率だけでCPオペの対象を選んでおられるんでしょうか。
  55. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) 私どもがCPオペを行います場合には、CPオペの私どもの取引の相手方となる対象先につきましてはその基準自体を公表いたしまして、その公表された基準を見た上で我はと思う方から希望をいただき、その中で基準に合致していると私ども判断させていただいたものにつきましてこれを対象先に選ばせていただきまして、そしてその結果をまた通知するということにさせていただいているわけでございます。  先生質問の点でございますが、その公表されております基準の中で自己資本比率というものも一つの基準とさせていただいております。しかし、それがすべてではございません。例えば、そもそもオペの対象先でございますので、その対象先になった場合にはしっかりと私どものオファーを見ていただいて、それに対応していただくという必要がございます。さらに、それが市場においてある程度の実績といいますかプレゼンスがある、これはもちろん今まで市場がなかった新しい取引の場合はそういうことはできませんが、それはケース・バイ・ケースでございますけれども、そういったほかの基準もあわせて検討している、こういうことでございます。
  56. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今の点に関連いたしまして、CPオペで基準を決めておられる、あるいは国債のレポオペで対象先を決めておられるということだと思いますが、一方で民間の金融機関企業に与信を行う場合、融資をする場合は、総枠でこの会社だったら幾らまで与信、融資をしてもいいだろうかという与信管理、枠管理というものが当然あるんだと思いますが、日本銀行においてはオペごとの枠、枠というかオペごとの対象か対象でないかという管理はされておるんでしょうけれども、総額として何とか銀行に幾らまでだったらリスクがとれるかという管理をされていないんではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  57. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えさせていただきます。  私どものオペはいわゆる価格競争の入札方式でございます。したがいまして、先生御指摘のとおり、そういう意味では価格の競争原理を第一に考えておりますので、私どもでそもそも今回この企業に対して与信するとか、ましてや幾ら与信するというようなことを私どもの裁量で決められるわけではございません。しかし、先ほど来お話に出ておりましたように、そうした入札に当たりましては、適格性につきまして、あるいは相手先につきまして透明な基準あるいは厳重な管理をした上で入札していただいているというのが実情でございます。  もとより、日本銀行全体としてのバランスシートのあり方が大変重要だということは先生御指摘のとおりだと思います。そこに当たっては健全性あるいは中立性といったような点も大切なポイントだと思いますので、私どもとしては、そういった残高につきましても折々チェックをしながら、競争原理は尊重しつつもそちらのチェックもさせていただきながら進めているという状況でございます。
  58. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 この点は私は大変重要な問題だと思いますので、もう一度伺わせていただきたいと思います。  今申し上げましたように、二〇〇一年の三月まではたとえ相手先の金融機関が破綻した場合でも金融再生法によって損失分は補てんされるということで問題はない、こういう考え方もできるんだと思いますが、では二〇〇一年三月を越えた場合には当然、個別具体的な銀行名で言うと問題があるのかもしれませんが、大変信用度の高い何とか銀行とそれからもうほとんど破綻寸前だと思われている何とか銀行が、それぞれ与信において枠がなく無制限に、要するに日銀の応札に応じて一番安いのを出したんだから無制限にそこに出してもいいということにはならないんではないかなというふうに思いますし、またオペごとにやっておるということになりますと、CPもあり国債のレポという形でもできるでしょうし、いろいろな形で日銀が与信をしておるケースもある。あるいは外為ということも含めればかなり幅広い与信をされておるんではないか。  そういたしますと、やはり個別の銀行に対して総額という、枠という考え方をつくるべきなんではないか。翻って、考査に入ったときに、入られた銀行がそういう枠を持たずに何とか会社というところに対して、いや、これはこういう貸し付けだから、これはこういう形だからということで積み出しが上がっていたらそれは多分指摘されるんではないかということを考えますと、そういう枠をつくられるべきではないかと思いますが、この点について総裁の所見をいただきたいと思います。
  59. 速水優

    参考人速水優君) 枠をつくるべきだと思います。しかし、その枠をつくる前に審査基準をはっきりつくって、それに照らしてそれぞれの担当が調べた上で上に上げてきておりますので、その点は公平にしかも健全性を維持すべく真剣に検討しているというふうにお考えいただいて結構だと思います。
  60. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 大変重要な問題だと思いますので、二〇〇一年三月までにはつくられるという理解でよろしゅうございますか。
  61. 速水優

    参考人速水優君) そう考えていただいて結構だと思います。
  62. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、次の質問に移らせていただきます。  今度は負債の方で、売り出し手形というものが大変ふえておる。これは短期の資金を吸収しているということが日銀報告書にも書かれておりますが、この短期資金の吸収の相手先がどういうところであろうかということをわかる範囲で教えていただければと思います。  と申しますのも、これは事実かどうか定かではありませんけれども、邦銀が海外での資産を持っておる、その観点からドルを調達しなければいけない。ところが、ジャパン・プレミアムその他の問題があってドルの調達が容易ではないと。であれば、日本においてドルと円を短期間交換するということで外銀からドルをもらい外銀に円を放出している。ところが、外銀はその運用先として実は一番信用力の高い日銀の売り出し手形を使っているのではないか。これは市場のことですから、それがいい悪いということを言っているのではなくて、ただそれによって多少外国の銀行が超過利潤を得ているのではないかなということも言われておるものですから、そのバランスシートの売り出し手形の相手先のうちで外資というか外国銀行が占める割合について教えていただければと思います。
  63. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えいたします。  オペ落札先の個別金融機関名、その額等につきましては申しわけございませんが申し上げられませんが、先生御指摘のとおり、安全な円資産に対するニーズが強い外銀が一般論としてその購入の中心になっているというふうに認識いたしております。
  64. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今の点についてもう一つお伺いさせていただきたいんですが、一般論で結構でございますけれども、金利が比較的他の指標と比べて高いのではないか、それがいわゆる超過所得になっている可能性もあるのではないかという点があるんですが、その点についてお答えいただければと思います。
  65. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えいたします。  金利につきましては、オペのたびごとに状況が違っておりますので一概には言えませんが、例えば最近では先生御指摘のような傾向があったことは事実だというふうに認識いたしております。そして、これまた先ほど先生からお話のありましたとおり、日本金融機関あるいは日本企業の外貨資金繰りが大変厳しい中で、外銀が外貨を供給するときに円と交換する、その円の安全な運用先という意味で私どもの売り出し手形を買うというようなことが典型的な姿としてよく言われてきたところでございます。  ところで、その場合の金利でございますけれども、私どもは売り出し手形につきましても価格競争入札を行っております。したがいまして、一方的にこのときに高い金利を得ようといたしましても、競争において負けてしまってその売り出し手形が入手できない、こういう仕組みを取り入れているわけでございます。  にもかかわらずなぜそういうふうに高くなっているのかということにつきましては、外国金融機関日本金融機関と取引をする場合に、いわゆるジャパン・プレミアムというものがございます。それとの関連で、そうした高い金利を比べてみながら損をしないところまで対応してくる、こういう関係にあったわけでございます。  私どもは決して特定の金利が高かったり低かったりすることを好ましいというふうに思っているわけではございませんが、そうした外貨資金繰りに資するという観点からこうしたものを行ってきた、こういうことでございます。
  66. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今のお話を伺っておりまして、ドルの金利のゆがみ、あるいは邦銀に対するドルの金利のゆがみが円の金利のゆがみにつながっている部分もあるのではないかなということがしんしゃくされるわけでございますが、だとすれば一つ調整手段として、まだ日銀がやっておられないことだと思いますが、いわゆるドルと円のスワップ市場に参入をされて、邦銀のスワップの相手方になることによって調節するということもひとつ可能なのではないかと思いますが、この点についてお答えいただければと思います。
  67. 山口泰

    参考人(山口泰君) 時々ただいま先生御指摘のような御意見を承ることがございます。これは言うまでもなく、外貨のマーケットにおきまして、日本金融システム不安を背景にいたしまして邦銀の外貨資金の調達が難しくなっていた時期があったものでございますから、最近これは少し緩んでおりますけれども、去年の夏から秋にかけて急速に引き締まった時期などにそういうような御提案をさまざまな方面から承ったことがございました。  これは我が国の外貨準備の一部を使うということになりますので、もともと日本銀行の持っております外貨資産というのはそれほど大きいものではございませんから、そういう量的な制約ということが一つございます。  その点は別にいたしましても、私ども一つ懸念いたしましたのは、そういうオペレーションを実際に日本銀行が始めるということになった場合に、それが果たしてマーケットにいい影響を与えるのか悪い影響を与えるのかという点でございました。恐らく日本金融機関についての悪いイメージをさらに膨張させるというようなマイナスの方が大きいのではないかというふうに私どもは当時判断いたしました。  また、そういうふうにして邦銀が公的なドル資産に依存するということ自体がいわゆる邦銀のモラルハザードを助長しはしないかというようなことも懸念いたしまして、そういうような配慮に基づきましてそのようなスワップオペレーションということはとらないというふうに考えてきた次第でございます。
  68. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 これは確認でございますが、そういたしますと、ドルの金利のゆがみ、あるいは円のゆがみはあるけれども、それの解消のために日本銀行が邦銀を相手方にドル資金を供給するようなスワップということをやると、より悪影響の方がそのゆがみを是正することよりも大きいという判断でやられないということでよろしいわけですね。
  69. 山口泰

    参考人(山口泰君) ただいま私が申し上げました中にはそういうような考え方が明瞭に入っております。  あえてもう一つつけ加えさせていただきますと、邦銀が外貨と円のスワップ市場において取引の相手方を見つけられるという限りにおきましては、邦銀が東京の市場において円資金を調達できますならば、それでもって外貨を取得するということが可能になるわけでございます。私どもはあくまでも円を供給する日本中央銀行でございますから、円資金の供給だけは潤沢にし続けなければいけないということにかたい決意を持って取り組んでまいりまして、そのことを通じまして邦銀のドルの資金繰りについても何がしかの貢献をしてきたのではないかというふうに考えております。
  70. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ちょっともう一点今の点についてお伺いしたいんですが、多少マーケットのゆがみはしようがない、それは円の供給でもってゆがみがあるけれども邦銀のそういうオペレーションを助けていこうというお答えだという理解でよろしゅうございますか。
  71. 山口泰

    参考人(山口泰君) 日本金融システム不安を背景にして出てきました先生御指摘の金利のゆがみなるものは、日本金融機関にとって資金をいつでも円滑に調達できるんだろうかという流動性についての不安と、それから日本金融機関のバランスシートそのものから出てくる不安、信用リスクについての不安と両様あったというふうに思います。  中央銀行が基本的に対処できますのは流動性についての不安の部分でございまして、これには万全を期したいと思います。信用リスクについての不安につきましては、金融システム全般に対する対策というのがオーソドックスな答えになるのではないかと思います。
  72. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今、信用リスクということをお答えいただきましたけれども、その点について二点ほどお伺いさせていただきたいと思います。  まず一点目は、日本銀行の九月三十日のバランスシートに載っております預金保険機構住専勘定拠出金というところに一千億円資産が出ております。これはいわゆる住専の処理に関して日銀から出されたものだと思いますけれども、まだ住専処理で幾ら最終的な損失になるかわからない。この一千億円が場合によっては損失になる可能性もあるというふうに聞いておりますが、これについて、仮に一千億円全部なくなった場合は半分は国が負担する、残り半分は民間の銀行、恐らく母体行だと思いますが、が負担をするというふうに聞いております。  ここで質問の一点目は、これを仮に母体行が負担するとすると、結果が出るのが二〇〇一年三月を越えていますと、先ほど枠の話をさせていただきましたが、そうすると長期の間接的な銀行のリスクをここで五百億円に関して負っておるのではないかというふうに思いますが、この点についての管理というか、これはどういうふうに考えておられるか、伺わせていただければと思います。
  73. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  先生御指摘の住管機構への出資一千億円でございますが、これは御案内のとおり、整理回収銀行と住管機構が合併いたしまして、この四月一日から日本版RTCと言われます整理回収機構に生まれ変わる、昨年末そういう合併契約が結ばれ、株主総会を近々開きまして、そういう流れが今ございます。  私どもは住管機構へのこの一千億円の出資というのは整理回収機構へ引き継がれるというふうに認識いたしておりますけれども、この法律自体、住管機構への出資というのは住専の処理が完了した時点ですべて出資等をどうするかを考えるということでございます。  今後、合併後の整理回収機構が要するにサービサーとして永遠に営業を継続していくのかどうか、そこら辺につきましては私ども現時点では知り得ないところでございまして、法律の建前から、繰り返しになって恐縮でございますけれども、住管機構が整理回収機構へ行き、そしてその整理回収機構の業務がすべて終了した時点で先生御指摘のようなロスが仮に残るというようなことがあれば、そのロスをどういうふうに分け合うかとかという問題が具体化してまいろうかと思っておりますけれども、今のところは私ども認識は整理回収機構に引き続きその債権が引き継がれていくというふうに認識いたしております。
  74. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今のお答えですと、場合によっては、現在は具体化していませんが、将来具体化する損失を先送りしているという可能性があるんではないかというふうに聞こえましたけれども、それは今の段階では日銀として議論してもしようがないということでよろしいんでしょうか。  もう一度申し上げますと、現段階ではロスが具体化、現実化していないので将来に先送りしている可能性があるという認識でよろしいわけですか。
  75. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) 大変申しわけございません。私、先生の御質問を先ほど勘違いいたしました。  先生は預金保険機構の中にございます住専勘定への拠出金ということであったと思いますけれども、これにつきましては住専処理法に基づきまして法律上全額返済されるという手当てがなされておりますので、私どもとしては債権保全上問題ないと認識いたしております。
  76. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 法律上というのは、先ほど申し上げましたように、半分は国で半分は民間銀行というふうになっておるというふうに思いますけれども、だとすると民間銀行分は本当に大丈夫ですかという質問だったんですが。
  77. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  民間分につきましては、やはりその時点で法律に基づいた対応が図られていくと思いますし、またいくべきであるというふうに考えておるところでございます。
  78. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それ以上求めても無理でしょうから、この程度にしておきます。  今の関連でもう一点、これは総裁にお伺いしたいことでございまして、直接的な関連ではないんですが、去年の三月にいわゆる佐々波委員会におきまして、優先株の引き受けの検討がいろいろな金融機関に対してなされました。その佐々波委員会委員のお一人であったということでお伺いさせていただきたいんですけれども、この優先株の中でちょっと取得の仕方に問題があったのではないかと思われる点が一つありまして、それについて御意見をいただければと思うんです。  優先株を取得するに当たって、その契約書では当該金融機関が破綻した場合、いわゆる清算になった場合については残余財産について優先的にお金が返ってくるということが契約書上で書かれておりましたけれども、清算されない場合、もっと具体的なケースで申し上げますと、例えば昨年議論されました日本長期信用銀行の場合、当初、日本リース、エヌイーディーあるいはランディックといったところに対して七千五百億円の債権放棄を計画されました。七千五百億円の債権放棄をするためには優先株で注入された資金も使わなければできなかったわけでございますが、その優先株を入れるに当たって、契約書上は償却原資として使っても構わない、構わないというか何にも規定がされていないわけですから当然償却原資として使える規定になっておったわけでございます。  ここで問題なのは、国民の財産あるいは公的資金という形で優先株が入っておるわけでございますから、償却資金として使われるとしても、いわゆる普通株、株主責任をまず最初に明確にする形で使われるように契約を結ぶべきだったんではないかと思いますが、実際の契約はそういうふうになっておりません。  その佐々波委員会委員であった総裁にちょっと御意見を伺いたいと思いますのは、私はそういうふうに思いますので、これからいろいろな形で優先株という形で民間の金融機関に出資がなされるわけでございますけれども、これから行われる分については当然株主責任を、仮にいろいろな形で償却原資にする、不良債権の償却原資にするという場合には優先株で入れられた資金については順番を後にするべきではないかと思いますが、その点についてはいかがでございますでしょうか。
  79. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  先生御指摘の優先株式の商品性をどう考えるかということでございますけれども、これは発行企業によりまして定款により区々の定めが御案内のとおりあるわけでございます。優先株は一般的には議決権はないけれども配当や残余財産の分配については普通株式に対して優先権が与えられているというのが一般的なあれでございますが、ただ不良債権処理のために資本準備金を取り崩すことはございますけれども、これはあくまでも会計上の処理の問題でございまして、個々の株式の請求権に影響が出る、影響を与えるものではないというふうに考えておるわけでございます。不良債権処理のために仮に資本準備金を取り崩しました場合におきましても、それによりまして優先株式の普通株式に対する配当、残余財産の分配に関する優先権が影響を受けるわけではないということでございます。  現に今、健全化法に基づきまして大手行を中心に公的資本注入の審査が再生委員会で始まっておるところでございますが、公的資本注入についてはなるべく資本性が高いものということで、この優先株の注入が不良債権の思い切った償却かたがた各行ともこれの導入についていろいろと検討を進めておるというふうに理解しておるところでございます。
  80. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今の点についてもう一度お伺いいたしますけれども、議決権がないわけでございます、優先株というものについては御指摘のとおり議決権がない。そうすると、金融機関が恣意的に、仮に恣意的にある会社に対して債権放棄をすると決めた場合であっても、優先株主はそれに対する異議申し立てはその段階ではできないわけでございます。結果として資本がすごく薄くなって債務超過になって倒れてしまうということもあるかもしれないということを考えると、私は、優先株式の資本は資本準備金に入れるのではなくて、いわゆる資本金の項目に入れるよう、それを条件として引き受けるべきではないか、優先株式を整理回収銀行資本注入の際に引き受ける条件にするべきではないかということを申し上げたわけでございまして、その点についてお答えいただきたいと思います。
  81. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) 先生御指摘の考え方もあろうかと思いますけれども、そういうお考え方も踏まえいろいろ検討された結果、今再生委員会公的資本注入の形態のあり方というのはそれも含め検討が進められているところだというふうに承知いたしておるところでございます。
  82. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 時間が来たようでございます。  どうもありがとうございました。
  83. 益田洋介

    益田洋介君 公明党の益田洋介でございます。  まず冒頭、私は日銀総裁にお礼を申し上げたいと思います。  一月二十九日、「保有資産見直しについて」という三枚紙の文書を発表されまして、保有資産見直しに対する方針の御決定を公表されたわけでございます。私は、日銀保有資産のみならず、国家財産、国有財産、また特殊法人などが持っております公有財産の処分について繰り返し参議院の幾つかの委員会で時を変え場を移して主張をしてまいったわけでございます。  まず最初は、昨年の五月二十九日、当委員会ではございませんが、行財政改革・税制特別委員会におきまして大蔵大臣質問をいたしました。これは、関東財務局との間で目黒雅叙園が契約しております国有財産有償貸付契約書、これによって、これは物納財産でございまして、相続税が払えなかったときに物納したもの、したがって今関東財務局の所管になっております。固定資産税を払おうとすれば年間二億九千万円かかる。しかし、地代、要するに家賃を払っている場合には一億二千八百万円。したがって、この差額というのは利益供与に当たるんではないか、こういうふうな質問をいたしましたが、この答えはいまだにまだ明確になっておりません。やはり国税庁も国有地の換地処分は物納不動産を含み早く処分すべきである、こういうふうに大蔵省に申し入れた。  この同じ特別委員会で私は総裁に初めて日銀保有資産についての処理をすべきであろうというふうにお訴えをいたしました。このときの直接的な原因は、大蔵省日銀の監督の不行き届きに端を発した兵庫銀行の破綻の受け皿であったみどり銀行がもう既に受け皿となって二年十カ月で六千億とも一兆円とも言われる負債を抱え、債務超過になっておる。ですから、日銀はやはり少しでも国民の負担を軽減するために御自分の保有資産を処分して、この一兆円というまた国民に押しつけるこうした負担を軽減させるべきだ、これが私のこの日の主張でございました。  そして、五月二十一日、ちょっと日にちが前後しましたが、一番最初は五月二十一日でございまして、二十九日が二回目でございました。最初の五月二十一日は、一覧表をつくって支店長宅のレンタル料を提出していただきたいと。総裁、これはまだ提出されておりません。  支店長宅が必要であれば、一たんお売りいただいた後、新たな買い主から賃貸でお借りください、それで十分体面は保てるでしょうし、地方の支店長としての社交的な機能にも支障は来さないはずですと私は申し上げました。そして、これら高額の支店長宅にお住まいの方は実際は給与所得として申告しているんでしょうね、もししていないとすれば、これは源泉徴収すべきだとあのとき申し上げました。  それで、国税局が査察に入りまして、昨年の暮れからでございますが、今回その結果が発表になりました。それは、昨年末までの五年間にやはり私の主張どおり二千五百万円の源泉所得税の滞納がある、あるいはやみ給与という疑惑も生まれると。これは私が五月二十一日に主張したとおりの結果が出たわけでございます。  さらには、今回の「保有資産見直しについて」、一月二十九日付についてでございますが、これを拝見いたしまして、支店長宅について売却するとか、あるいは大阪支店長宅の場合は公館機能への特化であるとか、保養所及び運動場の全廃、ゴルフ会員権の積極的売却、こういったものがありますが、五月二十一日に私が指摘をいたしました氷川分館については触れておられない。  先ほどの御説明では、今回の売却計画が順調に進めば約三百億程度の収益になるとおっしゃっておりましたが、私がこのときに主張したのは、氷川分館を売却した場合は、氷川分館に近い赤坂のホテルニュージャパンの売買実績からいたしまして、これは坪約千五百万から千七百万で取引をされたと言われておりますが、仮に氷川分館の土地が坪一千五百万としても五百四十億。支店長宅を処分したり運動場や不要の土地を処分しても三百億。氷川分館をお売りください、これは重ねて申し上げます。そうすれば、先ほどの御指摘にあった日債銀への八百億の資本の投入、これは損を出さないで済む、これが私の主張でございますが、いかがでございますか。
  84. 速水優

    参考人速水優君) 益田委員にはかねてから本行の資産につきましていろいろタイムリーなアドバイスをいただきまして、私どももその方向に沿って一つ一つ進めた結果、今度の総合的な日銀保有資産見直しというところまで持ってまいったわけでございます。  日本銀行が保有不動産を売却するに当たりましては、原則として競争入札ということにしておりますので、この計画が全部完了するまでにはまだ一両年かかるだろうと思っております。二十カ店の支店長舎宅をマンションにかえますし、保養所運動場全廃に向けて所要の調整を完了したいと考えております。  ただ、今最後におっしゃいました氷川分館につきましては、これは私どもはいわゆる公館として使用いたしております。昨年の夏もBIS、主要国の中央銀行総裁の会合が東京で行われまして、そこで会合をいたしました。そのほかにも、内外の金融機関のトップの方々とか、やはり銀行の中でするよりもああいった場所で対で話し合って、お互いに心を開いて話し合う、あるいは少数の会議を開くといったような意味では、地理的に国会にも近く、またホテルその他にも近くて便利でございます。  ホテルでやるというのは、私どもとしてはやはり機密の保持その他につきまして懸念がございますので、氷川分館につきましては、せっかくの御提言でございますけれども、私どもはこれを有効に使って、これからの国際的なあるいは金融機関との話し合いの場所に使ってまいりたいというふうに考えております。その辺はよろしく御理解いただきたいと思います。
  85. 益田洋介

    益田洋介君 非常に有用な資産であるということは、私自身も実際に中を拝見させていただきましてよく理解をしております。しかし、一回処分をして、お借りになって、そして機能は今のままお使いになられたらいかがでしょうかというのが私の主張でございます。さらに、昨年十月九日、私は金融問題特別委員会でも同じことを御提言申し上げました。ぜひとも再考いただきたい件でございます。  これに先立つ六月九日、私は行財政改革・税制特別委員会大蔵大臣にさまざまな質問をいたしました。関東財務局管内に実に六万二千件の資産を所有しているわけでございまして、例えば赤坂の氷川神社の近く、つまりこれは氷川分館の隣でございますが、赤坂六丁目にあります郵政省の官舎、これは敷地面積四百五十五坪で、わずか十三世帯しか職員が住んでおらない。そして、賃貸料は月額一万八千円。これについては大蔵大臣は私に是正を約束してくださいました。  さらには、千代田区役所の向かい側にあります竹平寮、元陸軍の宿舎、これも時価百五十億円と言われている。そこで、私はこれに先立つ五月二十一日の委員会大蔵大臣に国有財産の資産の総点検を依頼いたしましたところ、六月九日の特別委員会大蔵大臣は、五月二十五日付で各財務局長に行政財産の使用状況の実態調査報告するようにと文書で通達を出して、ここまで大蔵大臣努力をしてくださっています。  日銀総裁日銀も同じように保有資産の使用状況の総点検をしていただきたい。そして、それを当委員会に提出をしていただきたい。よろしゅうございますか。委員長、よろしゅうございますか。
  86. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) お答えをいたします。  保有資産の状況についての総点検ということでございましたけれども、私ども今回、保有資産見直しを行いまして、支店長舎宅の売却あるいは保養所運動場の全廃というものを決める過程におきましては、保有資産のありようというものを十二分に点検した結果でございます。  こうした不動産以外にも、通常の職員が入っております社宅が遊休化いたしているものもございまして、こういうものも実はここ一両年かなり積極的に売却をいたしている実情でございます。そういう意味では、常日ごろから保有資産のあり方としてどういうものが望ましいのかというあたりを十二分に踏まえながら対処しているということでございまして、こういう私どもの姿勢というものをぜひとも御理解を賜ればありがたいかなというぐあいに考えているところでございます。
  87. 益田洋介

    益田洋介君 それでは、その調査結果、点検結果を提出していただけますね。
  88. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 先生発言の御趣旨を十分踏まえまして、対応につきましてよく考えさせていただきたいというぐあいに思います。
  89. 益田洋介

    益田洋介君 考えるだけじゃだめですよ。これだけ国の財政が逼迫している状態なんだから、もっと国民に対して真摯な対応をしていただきたい。よろしいですか、調査結果の提出。
  90. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 先生発言国民に対する真摯な対応というのはまさに私どもも十二分に肝に銘じているところでございまして、十分先生の御発言の御趣旨を踏まえて検討させていただきたいというぐあいに思います。
  91. 益田洋介

    益田洋介君 昨年十二月十五日でございます。東京地方裁判所は日銀の元営業局証券課長であった吉沢保幸被告に対して判決公判を行った結果、懲役二年六カ月の実刑、執行猶予が三年ついておりますが、追徴金四百十二万円という判決が下された。これについては、前回、総裁の御意見を伺ったところでございますが、この方は興業銀行それから三和銀行に対して、日銀内部の金融調節に対する短期金利の誘導といったことについて内部情報を漏らした、それが便宜供与に値するという判断が下されたわけでございまして、八十七回両行から接待を受けていた。この吉沢さんが逮捕された責任をとって松下総裁辞任されました。  松下総裁は接待汚職の引責辞任をしたわけでございますが、このときに退職金を三千四百五万円もらっている。さらには、一身上の理由で任期途中で辞任いたしました福井俊彦副総裁は六千百六十万円を受け取っている。引責辞任をした幹部がこれだけ高額の退職金をもらっていいとお考えですか、総裁
  92. 速水優

    参考人速水優君) 今、松下総裁のお話をされましたが、松下総裁は接待をめぐる事件の責任をとってみずから辞任されたわけでございます。吉沢君のことだけでなくて、そういった問題を起こしたことについて、あるいはそういう指導をしてきたことについての監督者の責任をとったわけでございまして、私どもとしては退職金の返還あるいはそれ以上のことは対応をする必要はないと考えております。
  93. 益田洋介

    益田洋介君 この辺が一般の国民の方にとっては非常にわかりにくい日銀の姿勢なんですよ。去年の四月に新日銀法施行されましたけれども、あの精神にのっとったお考えじゃないじゃないですか。違いますか。三千四百五万、六千百六十万というような退職金を引責辞任した幹部が受け取っていいと国民は納得すると思いますか、総裁
  94. 速水優

    参考人速水優君) 益田委員の御主張もわからないわけではございませんけれども、松下総裁及び福井副総裁はいずれもかなり厳しい中で日銀法改正等について非常に大きな貢献をなさって、それが一段落したところで旧法のもとで引退していかれたわけでございますが、私どもとしてはこれはそれなりの御貢献に対する報いる気持ちをあらわしたいというふうに思っております。
  95. 益田洋介

    益田洋介君 私はこれは再考していただきたいと思います。企業の場合、引責辞任すればそんなことじゃ済みませんよ、仮に貢献していたとしても。  長銀の前会長が七億八千万円という退職金をもらってやめた。そのときは引責じゃなかった。しかし、後に、数々の露見した不祥事が起こっていたのは実際頭取の時代、会長の時代であったということで、マスコミ等々は今この七億八千万円という退職金は返してもらうべきじゃないか、そういう議論がほうふつとしております。巷間聞くところによれば、もう既に現金は残っていないので所有されている東京の自宅を処分される御意向であるというふうに伺っています。こういう考え方の方が私は国民の納得がいくと思いますよ。いかがですか。
  96. 速水優

    参考人速水優君) 私は今おっしゃったケースはよく存じませんけれども、松下前総裁辞任ということで十分の責任をおとりになったというふうに考えていいと思っております。
  97. 益田洋介

    益田洋介君 押し問答していても始まらないのできょうはこれで終わりにしますが、ぜひともこれは再考をお願いしたい。私は次の機会にまた新たな観点から総裁にお願いするつもりでございます。  こういうことばかりにかかわっていてもしようがないので、多少はアカデミックなお話も伺わせていただきたいと思います。  先ほど他の同僚議員が質問をされると言って途中でおやめになってしまいましたけれども、機関投資家が日銀に対して信用度がナンバーワンの運用相手だと、米系あるいは欧州系合わせてですが、特に短期金融市場でそういう認識を持ち始めていると。日銀発行の手形の売りオペの残高が一月十日現在で二十一兆円強だと。そして、マネーの供給源でございます日銀が資金を市場から吸い上げているわけでございますから、その背景にはマーケットに対する信用収縮がある、そういうふうな認識が持たれているところでございます。  先ほど来、国債増発による長期金利の上昇が非常に懸念されているんだということで、その金利上昇を抑えるために日銀は国債を買うべきであるという議論が今ほうふつとしております。特にマサチューセッツ工科大学のクルーグマン教授はイギリスのファイナンシャル・タイムズ紙上でそのことを強く主張しております。  総裁はこの考え方には反対のようでございますが、一方、また昨日の債券市場では、自民党内で日銀の国債引き受け論が強まってきているという報道が裏目に出て債券の売り材料になっている。総裁の御意見は、財政の規律が失われる、それが一段の国債の格付の低下につながるんだと、こういうふうな御議論でございますが、一方で三和総合研究所の嶋中雄二主席研究員らの方は、まず段階的にもう一段の短期金利の低目誘導をすべきであり、続いて既発の国債の買いオペの拡大をし、最後の手段として新発の国債の引き受けを日銀が行うべきであると、このような主張をされているところは皆さん御存じだと思います。  ところが、一たん日銀が引き受けを始めると今度は歯どめがきかなくなるんじゃないかという懸念がありまして、ですからやめるときには今度は引き締め効果が非常に強力に働くので、減税と同じように継続を迫られてしまうんじゃないかという懸念があるので、時限立法でしかも引受額に上限を設けてオペレートしてはどうかということが、これは三日付のイギリスのファイナンシャル・タイムズにも提言されております。例えば、具体的には二年間の限定で五兆円程度の引き受け、これをなされたらいかがだと。さらには、日本ばかりでなく、今言ったイギリスのファイナンシャル・タイムズもそうですが、アメリカのルービン財務長官も、アメリカだけが世界経済の牽引車の役割を続けることはもうできないから日本にもぜひそうしたドラスチックなアクションをとってもらいたいと、そういうことがあります。  そしてまた、長期金利の上昇が続きますれば円高と株安が今の悪い景気をさらに悪化させる懸念がある、そうしたリスクを懸念する声も海外から聞こえてまいります。この点、いかがでしょうか、総裁。     ─────────────
  98. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 委員異動について御報告いたします。  本日、西田吉宏君が委員辞任され、その補欠として加納時男君が選任されました。     ─────────────
  99. 速水優

    参考人速水優君) この時点で日本銀行が国債を引き受けるということは私どもは全く考えておりません。これは財政法、日銀法でも禁止されておるわけでございますし、どこの中央銀行もそういうことはいたしておりません。一度こういうことが決まってしまいますと、財政の節度もございますし、引き受けというのは時限を決めて途中でやめるというようなことはなかなかできにくいことではなかろうかと、私どものこれまでの体験からもそう思っております。したがいまして、中央銀行による国債の引き受けは私どもとしては選択肢にはなり得ないというふうに考えております。  金融調節につきましては、御指摘の日銀のバランスシートの資産負債額が膨らんでいるとか、あるいは市中から買って質が落ちているとかいったような記事や御批判をされる方がございますけれども、昨年ふえました総資産というのは、レポオペといったような長期の買いオペをやって、それを引き締めるときは売り出し手形を出して引き締めていくといったようなことが影響しまして総資産がふえておりますけれども、ここへ来て減り始めております。  それに、今後考えられますことは、CPなどが市場に売れていくこともございますし、FBなどが四月から公募入札を控えて、私どもも今二十数兆持っておりますけれども、こういうものをそれこそ市場でいつでも売却して内外の円に対して投資をする、あるいは決済をするときに必要な資産として買おうという人たちに対してよき玉を与えていくということが円を国際化していくファーストステップであるというふうに考えております。そういう資産を使いながら売買をしていくことによって、これまでのように全体の資産負債の総額が膨らんでいくというようなことは起こらないと思っております。  それから、国債の買い切りオペにつきましては、従来から銀行券がふえていくのに対応して買い切りオペの残高をふやしております。この方針は今後も続けてまいりたいと思っておりますので、今持っている長期国債を減らしていくというふうにはならないと思っております。これからの短期の金融調節につきましては、私どもは引き続き経済活動をしっかり下支えしていく観点から、CPオペとかレポオペとかあるいは短期の金融調節手段を駆使しながら思い切った金融緩和スタンスをとってまいるつもりでおりますので、その辺のところはそういう調節で十分効果を果たしていくものと思っております。
  100. 益田洋介

    益田洋介君 私は、財政法の五条だとか日銀法の三十四条に禁止される引き受けをしてくださいというふうにお願いしているわけじゃなくて、今時限立法で引受額に上限を設けた、そうした条件つきの実施というのを検討されてはいかがか、このように提言させていただいているわけでございます。  二月一日、旧住専問題で住専管理機構と住友銀行の間で行われていた訴訟の和解が成立いたしました。これは紹介融資、最近は余り聞かなくなりましたが、融資案件を住専に紹介して見返りに銀行は協力預金などを得ながら、焦げついたら知らぬ顔をしていたと。住専の中坊社長は、銀行には高い倫理性が求められているということは周知の事実であるからとんでもない不公正な取引行為だ、そういうことで責任を追及し、本来非公開のはずの弁論準備手続を公開させてまで訴訟を進行させようとしていた。  この問題について、銀行のモラルハザードということだと思いますけれども、一般論で結構でございますが、また住友銀行だけじゃなくて、こうした今回の和解が賠償訴訟において、これは判例がないそうでございますが、紹介融資に対することというのは。しかし、和解といっても事実的な判例となるわけでございます。こうしたことに対して、日銀の、中央銀行総裁として、中坊社長の主張が通った形になりましたが、どのような御所見をお持ちかお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  101. 速水優

    参考人速水優君) この件につきましては、特別コメントをすることもできませんけれども銀行については一般の高い信認が保たれていかなければいけないということは基本的なことでございますので、その点は十分踏まえて今後の銀行対策を考えていきたいと思っております。
  102. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございました。
  103. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 本件に対する残余の質疑は午後に譲ることといたします。     ─────────────
  104. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 平成十年度の緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案を議題といたします。  提出者衆議院大蔵委員長村井仁君から趣旨説明を聴取いたします。村井大蔵委員長
  105. 村井仁

    衆議院議員(村井仁君) ただいま議題となりました平成十年度の緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。  本案は、去る二日、衆議院大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出したものであります。  御承知のように、望ましい水田利用形態に可能な限り誘導する見地から、稲作転換を行う者等に対し政府等から緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等を交付することといたしておりますが、本案は、平成十年度の同補助金等に係る所得税及び法人税について、その負担の軽減を図るため、おおむね次のような特例措置を講じようとするものであります。  すなわち、同補助金等のうち個人が交付を受けるものについては、これを一時所得の収入金額とみなすとともに、転作に伴う特別支出費用等はその収入を得るために支出した金額とみなし、また農業生産法人が交付を受けるものについては、交付を受けた後二年以内に事業の用に供する固定資産の取得または改良に充てる場合には圧縮記帳の特例を認めることといたしております。  なお、本案による国税の減収額は平成十年度において約三億円と見込まれるのでありまして、衆議院大蔵委員会におきましては、本案の提出を決定するに際しまして内閣の意見を求めましたところ、稲作転換の必要性に顧み、あえて反対しない旨の意見が開陳されました。  以上が本案の提案の趣旨とその概要であります。  何とぞ速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  106. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  質疑、討論も別にないようですから、これより直ちに採決に入ります。  平成十年度の緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  107. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      ─────・─────    午後一時四十五分開会
  109. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、脇雅史君が委員辞任され、その補欠として岸宏一君が選任されました。     ─────────────
  110. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について、休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  111. 池田幹幸

    池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  午前中、景気認識については総裁から伺ったわけですが、そこでは企業金融については少し緩和されたかなというお話がありました。その他については、大体一月の金融経済月報で示されておりますように、総括的には依然として厳しいということだったと思います。  要するに、つづめて言えば、今の不況を私たちは消費大不況と言っておりますが、消費大不況の実態というのは依然として深刻ですし、金融機関の貸し渋りもなくなる兆しはない、むしろ依然として続くという評価をしておられますし、それからまた国民の将来不安についても高い状態のままだということで、将来その不安がなくなるようにしていかなけりゃいかぬということが記されておりますが、それはそのとおりだろうと思うんです。  今、私たちはこの消費大不況に対して何をしなければならないのかということで、昨年来ずっと政府に対しても強く要求してまいりましたのは、消費税の増税、九兆円の負担増で国民に負担をかけておる今の実態をまず改めなければいかぬ、つまり個人消費にウエートを置いた対策をとらなければいかぬということで要求してまいりました。  政府としての対策は今度の予算にもあらわれておるんですけれども、結局は公共事業中心という従来型になっております。それでも口に出して言われるのは、ともかく何でもありの対策だということでございます。ただ、私たちが要求しております消費税を三%に戻せという消費税減税についてだけはやらない、その他は何でもあり、そういう対策になってきております。  日銀として景気対策でなし得ることというのは行政当局とは違うものであることは当然なんですけれども、私は、ここでやらなけりゃいかぬのは、日銀として今何をなし得るのか、何をしなければならないのかということと、それから大事なことは何を今しちゃならぬのかということ、これをはっきりさせていくことだというふうに考えます。  それでは、まずやるべきことは何だということなんですけれども、残念ながらかなり後ろ向きになってしまう。ともかく国民信頼を回復すること、これが第一番じゃないかなと思うんです。国民の不安を取り消すといっても、政府日銀金融通貨当局に信頼がなければこれは何にもならないわけで、その信頼が今ある意味では地に落ちているといいますか、大変な状況になっております。  今週の月曜日に衆議院で日債銀をめぐる問題が論議されました。総裁参考人としてそこに御出席になっておられていろいろと答弁もしておられるわけですけれども、そこでの問題は、要するに日債銀に対する公的資金の注入、特に昨年の三月、佐々波委員会における論議、そこに提出された資料をめぐっての問題でありました。  どういうことかといいますと、一昨年の日債銀に対する、日銀でいえば八百億円の優先株の購入、その他の公的資金を合わせて二千数百億になるわけですけれども、それをめぐって大蔵省は日債銀に対する査定を行った。そうすると、日債銀から自己査定として出されておる不良債権七千億円というのは到底そんなものじゃない、大蔵省は一兆一千二百四十億あるという査定を行った。そういう事実がありながら、昨年三月の佐々波委員会にはそのことが報告されないで、大蔵省調査したということは報告されないで、日債銀の自己査定七千億円という数字だけが出て、それが審議の対象になり、そのまま公的資金の注入六百億というものが決められていったということの過程なんです。  そこで、一体どこに、だれに責任があるんだということが衆議院では論議されております。そこのことを伺いたいんですけれども、余り時間がありませんので、この点については一つだけ伺っておきたいなというふうに思うんです。  というのは、月曜日に行われた衆議院予算委員会で預金保険機構理事長の松田参考人が答えているわけですけれども、要するに一昨年九月に大蔵省がやった検査の結果は、その資料は佐々波委員会に出されなかったと。そこで、その場で「検査や考査の権限を過去にお持ちで、実際にやっておられて、検査官もたくさんおられる大蔵省日本銀行に、こう出してきた数値の信憑性について至急お調べいただきたい、その結果をメンバーである日銀総裁大蔵大臣からお答えいただきたい、それによって審査会としてはさらに審議を進めましょう、こういうことでやった経過でございます。」という証言がございます。  そこで、総裁にお伺いしますが、日銀はこれにこたえて新たな調査を行って佐々波委員会に提出されたんでしょうか。
  112. 速水優

    参考人速水優君) 昨年の三月五日から九日までの間に私どもの方と大蔵省で日債銀からのラインシートなどをもとにして調査をいたしました結果、債務超過でもないし、特に問題ないということを報告したはずでございます。
  113. 池田幹幸

    池田幹幸君 三月の佐々波委員会ではそうなんでしょうけれども、その後さらに調査をして出してくださいという依頼にはおこたえになったんですか。この委員会調査をして、さらに資料を提出してくださいということを言われて、大蔵省提出しなかったそうです。これははっきりしております。日銀は提出なさいましたでしょうか。
  114. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  日本銀行も特段その後も資料を提出したということはございません。
  115. 池田幹幸

    池田幹幸君 ということは、日銀としての立場ははっきりしないんですが、大蔵省は当然のことながら自己査定七千億、大蔵省自身の査定は一兆一千二百四十億、知っておりますね。日銀はそのとき、実際の不良債権、それが七千億だというふうに認識していたのか、それとも大蔵省と同じように、そんなものじゃない、一兆一千二百四十億近くあるんだというふうに認識しておられたんでしょうか、どちらでしょうか。
  116. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、私どもは第Ⅲ分類は約七千億円程度という認識で、去年の十二月十三日、日債銀が特別公的管理銀行に移行しました時点で監督庁が第Ⅲ分類は一兆一千二百億余りという数字を発表されたわけでございます。私どもはその時点まで第Ⅲ分類は約七千億円という認識で来ております。
  117. 池田幹幸

    池田幹幸君 午前中の浅尾委員質問の中にもあったんですけれども、結局この八百億というのは、株価査定は恐らくゼロになるだろう、だからもう戻ってこなくなるだろうというお話がありました。そうなるだろうと私も思います。  そうしますと、この八百億を失ったということ、日銀の責任はそれだけじゃないんですね。日銀もそういうことで優先株を八百億引き受けるということをやったがゆえに、日債銀の不良債権は七千億だということを信じて民間銀行も奉加帳に求めに応じて金を出したということでしょう。そういうことから考えると、日銀の責任というのは極めて重いというふうに私は思うんです。  特に、今お聞きして、昨年の十二月までそれを知らなかったというのはどういうことですか。日銀独自の査定、これはできるんですからね、ほかの民間銀行と違って。また実際やっているわけですから。本当にそれを知らなかったんですか。七千億しかないと本当に信じていたんですか。
  118. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) 私ども実は日本債券信用銀行に考査に入りましたのが平成七年二月でございます。一昨年の四月、日債銀が思い切ったリストラ、再建計画を出しました直後に大蔵省検査が入りまして、去年の一斉考査でも大蔵省検査が入ったということでございまして、私どもは考査につきましては平成七年二月以降実施いたしておらないわけでございます。  私どもは、もう一つ、そういう考査以降のフォローアップといたしましては、日本債券信用銀行からいろんな経営関連指標の計数を徴求する、特に関連ノンバンク等の不良債権処理の計数とかその進捗状況あるいは金融債等の調達状況を含みます資金繰り状況等、私どもはそういうモニタリングをオフサイトモニタリングと呼んでおりますけれども、そういうオフサイトモニタリングによって日債銀の要するに経営内容、業況を注意深くフォローしてきたところでございます。  実際に再建計画発表後も景気悪化傾向をたどっておりましたし、株価も軟弱でございましたので、日債銀自体の資産内容は平成七年二月に実施いたしましたときの資産内容よりも、例えば処理すべき不良債権は増加傾向にあるという認識自体は持っておりましたし、有価証券の含み損も増加傾向にあるという認識は持っておりましたけれども平成九年四月の思い切ったリストラ、あるいは昨年のいわゆる佐々波委員会公的資本注入に当たりましての私ども判断というのは、その時点では債務超過ではないという認識を持っておったわけでございます。この点は日本債券信用銀行からの自己査定に基づきます私どものチェックもございますし、報告も受けておったところでございます。大蔵省自体も再建計画から去年のいわゆる佐々波委員会による公的資本注入に至るまでそういう債務超過でないという認識は共有していた、要するにそういう経緯だということで御理解いただきたいと思っております。
  119. 池田幹幸

    池田幹幸君 結局、九五年の段階で調べたと。その後、経営内容は悪くなったろうけれども、債務超過まで行っていなかったろうと思っておったと。そうはおっしゃっても、昨年の三月に佐々波委員会で改めて調査してくださいよ、そして改めて資料を出してくださいよと言われたにもかかわらず、しなかったわけですね。しなかったから調査資料も出さなかった。私、最初に申し上げたんですが、国民信頼が地に落ちているというのはこういう態度が問題なんです。やるべきことをやらない。それで、債務超過じゃないと信じて、八百億円投入は、はい、オーケーと。こういうことをやる態度では到底国民信頼は回復できないんじゃないかなというふうに思うんです。  ともかく、こればかりやっておれません。こういったことではだめなんで、本当に国民信頼をかち取ろうと思えばこういう態度を改めていただかなければいけないというふうに思います。  さて、報告書についての質疑に入っていきたいと思うんですけれども、まず午前中の質疑にもありました国債の直接引き受け等を含みます問題ですが、その前に、調整インフレ論というのが昨年来ずっと出てまいりました。  この調整インフレ論については、ともかく物価を引き上げて通貨供給量をふやしてやっていこうということで、国民の預金が当然目減りもしてまいります。私たち日本共産党は当然こういったことには反対でございます。そういった立場をとっておるわけですが、幸いにして日銀報告書もその点については明確に書いておられて、一人の反対もなく調整インフレ論については受け入れることができないとの判断、これは共有されたというふうに書かれております。  その点では非常に安心なんですけれども、先ほどから論議されているのは調整インフレ論の最も最悪な形として出てくるであろう国債の日銀引き受け、この問題なんです。  総裁は明確に否定されたのでそれはそれでいいんですが、ただ一般的な状況の中ではそれは言えるんですけれども、非常に心配なのは、与党である自民党の中でこれが具体的に検討されているということが一つ。それから、昨日の報道にありましたけれども、自民党の加藤前幹事長が国際会議でアメリカのルービン財務長官に会って、そこで要請といいますか希望といいますか、そういったことを言われたという報道があるんです。要するに、国債の日銀引き受けをできるようにしてくれ、デフレスパイラルのおそれがあるので何とかそういう方向でやってもらえたらありがたいということを言われたということをわざわざ総理大臣に報告されたというんです。  このことを考えますと、ともかくアメリカに弱い自民党政府、大体言いなりになる、そういった歴史がずっとあるわけでして、しかも自分たちのやりたいことを外圧を利用してやろうという手法も自民党はとってきておられる。そういう中で、圧力がますます強まってくるだろうと私は思うんです。総裁に対する圧力も強まるだろうと思うんです。  そういう中で、先ほどは憎まれてもそんなことはやらないとおっしゃったんですけれども、本当に自民党政府の圧力があっても断固としてはねのけるんだという強い決意を改めてお伺いしたいなと私は思います。
  120. 速水優

    参考人速水優君) 私はルービンがダボスで何を話したのか知りませんけれども、私の感じでは、アメリカは一切認めておりませんから、ルービンがそういうことを言うのはちょっと想像しにくいんです。どういう会話があったのか、その辺は承知しておりませんが、いずれにしましても日本銀行としては国債を新規に引き受けるということは全く考えてもおりませんし、やるつもりはございません。  御承知のように、財政法、日銀法でも引き受けは禁止されておりますし、先ほど申し上げましたが、中央銀行が一国の国債を引き受けるということはその国の財政節度を失うことになりますし、また悪性のインフレを招くということは今までの私どもの苦い経験で代々語り継がれてもおりますし、私ども自身も見てきたところでございます。  そうなってまいりますと、国と中央銀行いずれも内外から信認を失うということはもう明らかだと思うんですね。国債の格付が引き下げられるぐらいのことで済めばいいかもしれませんけれども、そんなことも今この時期に行われるとえらいことになるというふうに思っております。長期金利もこういうことがあるとむしろ上昇していくと思いますし、まず主要国では国債の引き受けというのは大体禁止されております。  今度のユーロのヨーロピアンセントラルバンクにおいてもこれは禁じているわけですし、そうした考えを今なぜ日本がやらなきゃならないのか。そのほかの調整手段でこれからの金融調節についてできるだけのことをしてまいりたいと思っておりますから、今私どもとしては国債の引き受けということは選択肢とはなり得ないというふうに強く考えております。
  121. 池田幹幸

    池田幹幸君 そういうことで貫いていただきたいというふうに思います。  次に、短期資金の規制の問題について伺いたいと思うんです。  一昨年秋のアジア通貨危機以来、短期資金の急激な導入それから流出、これが極めて重大な問題だということについては国際的に論議されてまいりました。特に最大の被害者でありましたアジア諸国の中でマレーシアのマハティール首相が提唱して、短期資金の規制をやろうじゃないかということが言われて、最初はかなり反感も買ったようですけれども、最近ではそれが一つの国際的な潮流になってきておるというふうに私は考えます。  昨年秋以来の動きを見てみましても、十月にはG7で一定の宣言がなされたし、十一月にAPECがありました。それから、ことしに入ってASEMの会議でも、それぞれ強弱はございますけれども、何らかの規制の方向ということがこの中で打ち出されてきております。  この報告とは別に、大蔵省の外郭団体国際金融情報センターというのがありますけれども、そこでファイナンシャル・レビューというのを出されております。それから、ちょうど同じころにOECDの日本経済レポート98というのも出されました。それぞれ見てみますと、今度の短期資金の規制の問題についての今申し上げましたような国際的な流れを肯定すると同時に、やはりこの中での日本の責任というものについて、そういう言葉は使っておりませんが、日本の責任というものについても一定の方向を示す動きが出てきておるんじゃないか。  そこで、まず総裁に伺いたいんですけれども、短期資金、特にヘッジファンド、これに対して何らかの規制、これは日本だけではできませんが、国際的に協力してこういった規制を進めていく、日本だけでもできる面もあるんですけれども、そういった方向を追求すべきだと思うんですが、それについてのお考えを伺いたいと思います。
  122. 速水優

    参考人速水優君) 新興市場国で通貨経済危機に際して短期資本の急激な移動が相場変動などを大きく増幅させたといった面があることは事実でございますし、そういうものをどうやって規制しようかというのは国際通貨の諸会議でも再三話題になっておりますことも事実でございます。  しかし、私ども考え方あるいは経験からいいますと、自由な資本市場の資本の移動というものが世界経済の発展にいかに大きな貢献を果たしてきたかということはこれもまた事実でございますし、大切にしていかなきゃならないことだというふうに思っております。  短期の資本の規制ということは必ず長期の規制につながっていくんですね。例えばデリバティブとか短期金融取引というようなものがしばしば長期資本取引のヘッジに使われていく、そうすれば長期資本を結果としては規制したことになっていくわけですね。こういうふうに、せっかく自由化されてきて資本の流れ世界じゅうを自由に移動できるというふうなグローバルなマーケットになってきているときに、一方的な短資規制といったようなものが健全な資本取引全般を阻害していくことを私どもは非常に恐れるところでございます。  こうしたことを踏まえまして、私どもとしてそれじゃ何ができるかと聞かれるならば、最も重要なことは、やはり各国が適切なマクロ政策、プルーデンス、信用秩序の維持、この政策を実行していくことを通じて、それは生ぬるい、間接的であるかもしれませんけれども、結局これが物を言うのであって、その上で国際的な資本移動に関しましては各国が適切なマクロ政策を発動できるように基礎的なデータを整備していく、それが優先的な課題になるのではないかというふうに考えております。  そうした枠組みのもとで、ヘッジファンドなどの国際的な投資機関などに関連しては、そういう機関投資家に資金を供給する金融機関がどういう健全性、資産負債を持っておるのかといったようなモニタリングが十分行われていくということが大切なことではないかというふうに考えております。
  123. 池田幹幸

    池田幹幸君 今のお答えは昨年からの総裁のお答えと全く変わっていないのでいろいろと私も勉強させていただいてはおりますが、十二月半ばに宮澤大蔵大臣が、ことしの二月にG7に持っていこうという日本案について話されたことがあるんですね。それは少し総裁のお立場とは違うだろうと思います。そういったところで若干の変化でもあったのかなと思いましたけれども、全く同じお答えでした。  ただ、今おっしゃいましたように、それぞれの国における信用秩序の維持ということに努めなければならぬのだ、それはそのとおりだと思うんですが、しかし例のアジア経済危機もアジア諸国がひどい目に遭った、途上国が。日本はちょっと枠の外にあるような感じですけれども、そうじゃないんですね。  実際に、先ほど申し上げました国際金融情報センターのことしの一月に出された調査を見ましても、ヘッジファンドの財源、これがまさに日本の円を介してやられているということが出ているんです。いわゆる円キャリートレードという形で、要するに金利の低い円を調達してドルにかえて投機しまくった、こういうことが報告でなされております。そのおかげで今度はロシアでおかしくなったとかそうなってくると、危ないものだから、金を貸しておる外資系の銀行とか日系の銀行がさあ金を返せということで出てきたので、ヘッジファンドは返さなきゃいかぬということでまた円を調達したので円が急激に上がった、こう言われております。これが昨年の夏から秋にかけての円の急騰ということであったと思うんです。  そういう点では、日本経済もこのおかげで輸出がぐっとまた落ち込んだということで大きな影響を受けているわけです。だから、一国の信用秩序の維持ということを図る上でも、そういうことを考える上でもこの規制というのは大事になってくるし、もう詳しいことを申し上げませんが、少なくとも宮澤大蔵大臣は、今おっしゃったように短資の規制が長期資金の規制につながるおそれはあるけれども、しかしそれは遮断できるんだ、そういうおそれをきちんと遮断しつつ短資規制をやらなければいかぬのじゃないかということを提起して、今度G7で提起なさるのかどうか、そういう報道もあるわけですが、私はやはりこの点ではこういった方向をとるべきじゃないかなというふうに思います。日債銀の投資では大蔵省の言いなりになって十分な調査もなさらなかったという感じですけれども、こういう点ではむしろ大蔵省の提案にも耳を傾けられたらどうかなというふうに私は思います。  あと一問だけ別の問題を伺っておきたいんです。  これはいわゆる企業金融の問題ですけれども、臨時貸出制度というのをつくられました。これは要するに貸し渋りを受けておる企業に対して資金の供給を潤沢にしていこうという考えのもとにやられていると思うんです。  ただ、私は、これを考える上で非常に大事なのは、通常の段階でこういうことをやるのであればいいんですけれども、今貸し渋りが盛んにやられておる、貸し渋りが一般的にやられているもとで、それを何とかしなければいかぬという状況であるときには少し違うんじゃないかなという気持ちを持っているんです。  というのは、この対策は貸し渋りをやらないで貸し付けをふやしたところにインセンティブを与えよう、要するに誘導してもっとお金を貸すようにしてあげましょうという対策です。貸し渋りをやっている銀行に対しては効果がないんですよ。そうでしょう。これは今の時点ではむしろ、自己資本を注入しても貸し渋りはなくならなかったわけですから、だから今問題は貸し渋りをやっている銀行の行為にある、ビヘービアにあるわけです。ここに着目しなければならないときに、していない銀行にもう少し金を貸してやろうじゃないかということをやるというのはちょっと逆じゃないかなと思うんです。  やはり今、日銀として何がなし得るかということをちょっと考えなければいけません。頭を使わなければいけないと思いますが、そういったところにはペナルティー的なことも考えると。要するに、銀行に金を貸すのは日銀なんですから、貸す方が強いんですから。そういう立場で一定の対策ということをお考えになるべきじゃないかと思うんですが、総裁、いかがでしょうか。
  124. 速水優

    参考人速水優君) 昨年の十一月に発表いたしました三つの貸し渋り対策といいますか、企業金融への日銀の直接支援といいますか、その対策のうちの第二が今御指摘の臨時貸出制度で、銀行への貸し出しは原則としてやっていなかったわけですけれども、それを再開したわけです。これはうちの取引先すべてについて手を挙げてもらおうということなんですけれども、十二月と一月と二回いたしまして、これまでの実績ですと貸出先は七十行、貸出残高は合計で約一兆円ということになっております。こういうことで、企業金融逼迫感はかなり緩和されてきているというふうに私どもは思っております。  今御指摘の中小企業についてでございますけれども、昨年十一月に発表しました措置のうち、臨時貸出制度というのは中小企業に対してもかなりの金融緩和になっているというふうに思っております。それは大手金融機関だけではなくて、全国の日本銀行の本支店を通じて中小金融機関にも幅広くこれを適用したということでございますし、それから中小金融機関の担保力も配慮いたしまして、日本銀行が適格と認める民間企業債務に限らず、国債を担保として認めるということで、そういう工夫をしております。一〇〇%国債でもいいわけです。実際、この臨時貸出制度というのは中小金融機関に幅広く利用されておりますし、中小企業金融の面でも相応の効果が上がっていると考えております。  私ども金融機関の合理化、リストラ、そしてまた再編、不良資産の償却、そういった合理化を促進させ、これは大中小すべての金融機関について同じことだと思いますけれども、健全性とか採算性ということは当然問題になってくるわけですが、そういうことをやりながら片方で今の中小企業などで困っているところには貸し渋りが起こらないようにするという、この二つのいわば二律背反のようなことを同時にやっていくというのは非常に難しい局面であることは御理解いただけると思うんです。  そういうことをやらせるにもやっぱり銀行判断して、これはこういうふうに指導していけばこの中小企業が伸びていけるということを考えながら貸し出しを進めていくということが必要なんだと思うんです。私は、先ほど申し上げたような点を双方生かしながら合理化、健全性、採算性を考え、同時に中小の金融機関でも、これからどっちの方向へどうやって進んでいくかということを取引先の金融機関が指導しながら金を貸していくということが大切なんだということを考えて、そういう面での効果は上がりつつあるんじゃないかというふうに考えております。
  125. 池田幹幸

    池田幹幸君 時間がなくなりましたので終わりますが、一言だけ。  今効果を発揮しているんだとおっしゃった。私はこういった貸付制度を悪いと言っているわけじゃないんですが、しかし統計を見ますと中小企業向け貸し出しは四%減っている。十兆円以上減っているんです。実際、五業態全体としても落っこちております。ですから、貸し渋りをやっているところが圧倒的多数なんですから、そこの部分に何らかの手を打たなければいけないんじゃないかという私の提案だということを御理解いただきたいと思います。  終わります。
  126. 三重野栄子

    三重野栄子君 三重野栄子でございます。  日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書等に関しまして五点ほど質問をいたします。  まず、年報記載事項の件でございますが、新日銀法に基づいて今国会に提出されました報告書は従来の年次報告書から通貨及び金融調節に関する報告書と名称が変わりました。これに伴い、報告書の内容も変わり、破綻処理についての説明など金融システムの安定に関する事項等、従前の報告書にあって新しい報告書に盛り込まれていない事項がございます。また、これに加えて、日銀特融、日銀考査など、新日銀法において新たに位置づけが変更または明確化された業務もございます。  まず、今回提出されました通貨及び金融調節に関する報告書に含まれていない今までのこれらの重要な業務については、新日銀法五十五条に基づく業務概況書に詳しく報告されると考えていいのでしょうか。その点についてお伺いします。  また、新日銀法第五十五条によりますと、この業務概況書は公表されることになっていますけれども、その時期はいつごろで、どのような方法で行われるのか、お尋ねいたします。
  127. 速水優

    参考人速水優君) ただいまの三重野委員の御質問でございますが、確かに今回の新法による国会への報告は半期報告書でございまして、日銀法五十四条第一項の定めに従って、今回は半年に一回というのは一月から九月までの分をまとめたわけでございます。旧法下の政策委員会年次報告書に記載のありました信用秩序維持に関する業務などは、この報告書には盛り込んでおりません。  しかし、新日銀法では、半期報告書とは別に、年一回業務概況書を作成してそれを公表することということが五十五条で決められております。信用秩序維持に関する業務とかその他の業務、こういった財務の状況等につきましては、金融政策関連の業務とあわせて昨年の四月から本年の三月までの一年度分を、年度が終わったところで今年度の業務概況書として公表いたして、これは国会には特に出しませんけれども、一般に公表することになると思っております。これは発表できますのは恐らく五月末ごろではないかと思っております。どうぞそれをよくお読みいただきたいと思います。  それから、これらのことにつきましては国会報告には出ておりませんけれども、毎月私がやっております記者会見その他のいろいろな機会に全般の、今の金融システム関連の話とかあるいは信用機構の話とかそういうものは随時報告させていただいておるつもりでございます。そういうものを必要に応じてごらんいただき、また場合によっては御注文いただければ、私どもの方で手元にある資料その他で御報告できると思います。
  128. 三重野栄子

    三重野栄子君 今お話しいただきましたように、資料等をいただける場合はいただきますし、それからもし必要であればこの財政金融委員会にお越しいただきまして御説明いただくこともあろうかと思いますが、そのときはまたよろしくお願いいたします。  第二点は、平成九年の日債銀に対する出資のことでございます。  日銀では、昨年末に国有化されました日債銀に対して、社団法人新金融安定化基金を通じて平成九年に経営再建のための八百億円を出資されております。日債銀の国有化によりましてこの資金は回収が懸念されていますけれども日銀としてはどのような見通しを持っておられるか、お伺いいたします。
  129. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  先生御指摘の新金融安定化基金を経由いたします日債銀に対します私どもの八百億円の出資でございますけれども、昨年十二月、日本債券信用銀行が特別公的管理銀行に移行いたしましたので、現在は預金保険機構が全額その株式を取得しているということでございます。その対価につきましては、今後、金融再生委員会におきます株価算定委員会が決定することになるわけでございますが、御案内のとおり、先般の大蔵省検査におきまして、昨年三月末時点で日本債券信用銀行は債務超過となる見込みだというふうにされておりますことから、私どもの八百億円の出資は結果として毀損され得る事態となったというふうに認識いたしております。  この点につきましては、私ども日本銀行は非常に遺憾に思っているとともに、この痛みを伴います教訓を今後の日本銀行金融政策運営等に生かしてまいりたいというふうに思っております。  ぜひとも御理解いただきたいのは、この日本債券信用銀行に対します私どもの出資は、当時、現在のような公的資本投入による資本注入とか、あるいは特別公的管理銀行というようなセーフティーネットが十分でなかったわけですが、そのとき、私ども金融システムの安定、信用秩序のために中央銀行として最後の貸し手の機能を発揮しなきゃならない、そういう過程で私どもとしてはぎりぎりの判断を選択してきた、そういう結果としてこういうふうになっているということでございますけれども、重ねて私どもは今回のこの教訓を生かして今後とも政策運営に誤りなきを期していきたいというふうに思っておるところでございます。
  130. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変誠意を持ってお答えくださいまして、ありがとうございます。御苦労さまですが、頑張っていただきたいと思います。  第三点は、特融と引当金についてお尋ねをいたします。  報告書によりますと、平成九年以降増加した日銀特融につきまして、日銀の財務の健全性との関係で細心の注意を払っていく考えが表明されています。特融は預金保険機構の資金援助等を原資とする返済を前提にして、あくまで回収可能と判断されるものに対して実施されながらも、やはり無担保で行われることから、回収の不確実性も勘案して引当金を積むこととされています。  そこで、午前中、浅尾委員質疑の中でもございましたが、山一証券向けの引当率が二五%、みどり銀行向けが一〇%と異なっている理由につきまして、当時、山一証券の最終処理が明確でなかったけれども、その後、投資者保護基金が整備されたとのお答えがあったと理解しております。ところが、この投資者保護基金につきまして、現状は外資系証券会社が参加するものとそれ以外のものと二つが設立されているという予想外の事態となっているところでございます。  このような状況を踏まえて、現時点において山一証券の最終処理は明確で、日銀に引当金以上の損失は生じないと判断されていますけれども、私は適切な時期に財務の健全性に留意した判断が下されるべきだと考えますが、いかがでございましょうか。
  131. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 三重野先生の方から特融に関する引当金を積む御趣旨の御発言がございました。そのとおりでございますが、ただいま数字として引当率二五%と一〇%というのがございました。重ねての御説明になってしまうかもわかりませんけれども、その辺の趣旨をもう一度繰り返しながらお答え申し上げたいと思います。  特融の引当率でございますけれども、当初、これは平成七年上期末の時点でございますが、二五%の率を適用いたしていたわけでございますが、平成九年の下期末からは預金保険制度の対象となります金融機関向けの特融につきまして引当率を一〇%に引き下げたわけでございます。これは先生御案内のとおり、預金保険制度を活用いたしました破綻処理の枠組みというものが預金保険法の数次にわたる改正によりまして公的資金の導入等を含む制度の整備拡充が進められた、こういうことを踏まえまして、破綻金融機関に関する処理方策が実施されないリスクというものが従来と比べて減少してきた、こういう判断をしたことが背景であったわけでございます。  これに対しまして、山一証券向け特融につきましては、数字としては引当率二五%相当額、これを直近の平成十年上期末も適用いたしているわけでございますが、これは山一証券につきましては預金保険制度の対象ではないと。また、この決算処理を行いました当時、山一証券の最終処理がいまだ明確になっていないと判断されたこと等々を踏まえまして、引き続き二五%の引当率を適用したということでございまして、今後につきましては、期末の時点で特融の残高があるとした場合に、そのときのもろもろの状況等を判断いたしまして、決算方針を固める際にいかなる引当率を適用するのか慎重に検討してまいりたいというぐあいに考えております。
  132. 三重野栄子

    三重野栄子君 期末の状況を見て、また意見がございましたら出させていただきたいと思います。  それでは、第四番目としまして、国有化銀行の運転資金についてお尋ねをいたします。  拓銀の破綻時にはピーク時で二兆七千億円の特融が行われたことが公表されています。昨年秋に成立した金融再生法に基づいて、現在、長銀と日債銀が従来の破綻処理にかわって国有化されておりますが、預金保険機構を通じて日銀はそれぞれの銀行に資金繰りに関してどれくらいの規模の支援をしておられるか、お尋ねをしたいわけでございます。いかがでしょうか。
  133. 小畑義治

    参考人(小畑義治君) お答え申し上げます。  昨日時点でございますが、まず日本長期信用銀行向けが三兆七千億円でございまして、日債銀向けが五千億円。これは先生お話しのとおり、私どもの貸出先は預金保険機構でございまして、預金保険機構が長銀に私どもの調達したお金を貸している、そういう流れでございます。
  134. 三重野栄子

    三重野栄子君 もう少しお伺いしたいんですが、私の時間が余りございませんので、最後の質問にさせていただきます。  中央銀行の使命と情報公開につきまして、この点は総裁にお答えいただければ幸いに存じます。  従来からの特融と同様に、これらの預金保険機構を通じた資金繰り支援についても、日銀の財務の健全性との関係で注意が必要であると思います。日債銀の例を見ましても、政府の要請に従うことだけが中央銀行として最良の選択ではないのではないかと思うわけでございます。日銀政策国民から理解されるためにも、これら預金保険機構に対する支援の状況についても、例えばインターネットなど速報性のある方法で逐次情報公開していくことが必要であると思いますが、この点に関する御見解をいただきまして、私の質問を終わります。
  135. 速水優

    参考人速水優君) 情報公開の重要性につきましては、いわゆる金融政策運営だけでなくて、委員の御指摘のように金融システム安定化のための政策、さらには日本銀行の組織運営についてのあり方といったようなことも当然対象となって情報公開されていくべきものと考えております。  この点はこれまでも、重要な政策を決定した際には、決定内容はもちろんのこと、その背後にあります考え方なども含めて正式に対外公表をし、国会での御質問等にも、あるいは記者会見の場でも私ども政策業務運営考え方を説明してきたつもりでございます。特に新法施行されました昨年四月以降はこの点を強く意識して運営してきたつもりでございます。お尋ねの預金保険機構に対する貸出残高も含めまして、日本銀行のバランスシートの主要項目については今後も定期的に公表してまいるつもりでございます。  また、情報公開の手段という点では、インターネットを通じた情報提供にも積極的に取り組んでおります。日本銀行国民やマーケットから信認を得て政策運営してまいりますためには、独立性確保とともに政策運営透明性を高めていくことが必要であるというふうに認識しております。私どもとしては、今後とも政策に対する幅広い理解を得られますように、アカウンタビリティーの向上に真剣に取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  136. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。  終わります。
  137. 星野朋市

    星野朋市君 自由党の星野でございます。  けさほどから現状景気認識についてはしばしば質問も出まして、日銀のお考えはある程度わかっておるんですが、少し角度を変えた切り口でお聞きをしたいと思っております。  今、日本経済現状は果たしていわゆるデフレスパイラルに陥っているのかどうか。昨日、長期金利が急に高騰しまして二・四四%。きょうも、そういうことに嫌気を差して午前中の株価は一万四千円を割ってくる、円は百飛び台になろうかというような状態で、ちょっとそういうデフレのおそれがあると思うんですが、日銀はどう認識なさっておるか、お答え願いたいと思います。
  138. 速水優

    参考人速水優君) 私ども景気現状判断につきましては、けさも申し上げましたが、悪化テンポが徐々に和らいでいるというものでございます。  すなわち、公共投資が増加を続けており、生産の減少テンポも緩やかになっていることは事実でございます。企業金融面でも、政府日本銀行による各種措置の効果が次第にあらわれてきて、ひところ見られた緊迫感は緩和してきているように思います。しかし、企業家計コンフィデンス、将来についての自信や明るさといった面では依然余り変わっておりませんで、慎重なものがあるというのが私ども判断でございます。このために、景気悪化は一たん歯どめはかかることが見込まれますけれども、その後景気回復軌道に乗るかどうか、その展望までは現時点では持ち得ないというのが現状でございます。  物価面を見ましても、消費者物価は総合では、生鮮野菜の値上がりから前年比を見てこのところ上昇しております。一方、生鮮野菜等を除いた基調的な消費者物価を見ますと、ごく小幅の下落がまだ続いております。また、経済需給ギャップの大きさとか賃金の悪化傾向とか、あるいは昨年以来の円高の進行などを考えますと、現状では物価の安定が損なわれるリスクはインフレ方向ではなく、むしろデフレ方向にあるようにも思われます。  日本銀行はそうしたリスクを十分念頭に置きまして、経済活動をしっかりと下支えする観点から、現在の思い切った金融緩和基調を維持しているのが現状でございます。
  139. 星野朋市

    星野朋市君 政府の一部には、いわゆる景気の胎動が認められるとかという論も出てまいりましたけれども日銀とすれば全国の支店長会議というのを開催なさって全国の実情をお聞きになっている。ちょうど先月、支店長会議がございましたですか。その支店長会議の中でそういうような兆候が見られるような御発言があったかどうか。全般的に、地域的には非常に厳しいところもある、だけれどもこういうところもあるというような、いわゆる地域によって差があったのかどうか。それで、総合的にはどう御判断なさったのか。支店長会議というところから日銀の御判断をお願いしたいと思います。
  140. 山口泰

    参考人(山口泰君) 先月下旬に支店長会議を開催いたしまして支店長から報告を受けたわけですけれども、その際、若干例を申し上げますと、例えば公共工事が着実にふえているというような話は各地から聞かれました。個人消費の面で、例えばパソコンでありますとか、いわゆるオーディオビジュアルの機器でありますとか、一部に売れ行きが好調であるとか、あるいはよくなってきたというような話もございました。  ただ、問題は、そういう話がちらほらないではなかったんですが、もう一方で企業の設備投資マインドはさらに冷え込みつつあるとか、あるいは雇用情勢が悪くなっているものでございますから、やっぱり家計においてもなかなか明るい雰囲気になれないのではないかといった報告も同時にございまして、地方の経済全体としてはやはり厳しい情勢にあるというような報告が多かったように思います。  そういうことを全部総合いたしますと、結論といたしまして、私ども経済についての判断はただいま総裁が申し上げたとおりでございまして、景気の落ち込みの角度は大分緩やかになってまいりましたけれども、これで安心というところまではまだ行っていないということでございます。
  141. 星野朋市

    星野朋市君 公共投資の増加というのは、これはごく当たり前のことでありまして、通常でも年度末に向かって公共投資がふえるというのはもう通例でございますから、これは確かに数字上はそういういい方向に向かうということの一つであるけれども、これが実需に、民需に結びつくかどうかということはちょっと疑問なんですね。特にこの予算執行は十五カ月ということで今やっていますけれども、三月過ぎると途端にがくっと減るというような問題もございますので、ここら辺は注意して見ていただきたいと思います。  それで、問題は、先ほども申し上げましたけれども、この間まではちょっと上がったけれども一・七八ぐらいの長期金利でおさまっておった、こう安心をしておったところが、昨日ぼんと上がりまして二・四四%になってしまった。そこへ、タイミングとしていいのかどうか、先ほど来総裁が断固たる決意を示されたので安心しているんですが、いわゆる国債の日銀引き受けというようなとんでもない話が出てまいりました。  ただ、問題は、先日大蔵省が発表した中期財政展望、これはもう御存じだと思いますけれども政府の目標が依然としてまだ新しく改定されておりませんので、財政構造を伴ういわゆる経済政策の数字をそのまま引きずっているわけですね。ですから、構造改革が進めば日本経済成長は三・五%、そうでなければ一・七五%にとどまる、こういう形の中期展望ではありますけれども、そこにあらわされている数字はたとえ三・五%成長を遂げても国債費が増額をして毎年約三十兆ずつの国債残高がふえていく。そうなると、既に国債残高が四百兆に達するような状態では成長率が上がっても不足分が依然として同じような状態で続くというような形の中期展望というのが発表されたわけです。  現状の国債の消化とあわせて、この中期展望に対して日銀はどんなお考えを持っているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  142. 山口泰

    参考人(山口泰君) 財政の中期展望そのものは、ただいまも御質問の中でお触れになっておられましたけれども、ある種の前提条件のもとで仮定を幾つか置きながら、この仮定のもとではこうなるであろうという数字をいわば機械的に算出した、そういう性格のものではないかというふうに理解しております。そういう性格のものがそのまま放置されますと、それに伴う効果というのか影響、あるいは副作用というのがいろいろあるわけでございますから、それを政策的にどういうふうに受けとめて中期的にどういう財政政策を実際に実行なさっていくのか、これは政府それから国会のお仕事になるというふうに理解しております。  それで、この財政の中期展望に示されましたようないわば機械的な算出の結果が今後数年間における我が国財政の実際の姿だということになりますと、それはそれでいわばマイナスの影響の方が大きくなるのではないかなというふうに推察いたしますが、これはあくまでも私の暫定的な評価でございまして、これはもう少しきちんとした分析の上に立って、そういう御質問にきちんとまたお答えさせていただく機会を持ちたいと思います。よろしくお願いします。
  143. 星野朋市

    星野朋市君 確かにそのとおりなんですが、残念ながらこれにかわる数字というのは今できないんですね。結局一回つくったものは改定されるまではそれに縛られちゃうわけですよ。そうすると、今の堺屋経済企画庁長官は恐らく日本の潜在成長力は二%ぐらいと言ってますから、今度変わってくるのはそこら辺だと思いますけれども、それでも今度つくられた一・七五%という成長率、それから弾性値一・一の税収、そういう基本的なところは変わらないんじゃないかと思うんですね。そうすると、国債残高がこういう形でどんどん伸びていくという事態は恐らく変わらないんじゃないかと思うんです。この辺は何か抜本的な対策を講ずる、それは政治の世界の問題ですから日銀さんの所管ではないかと思いますけれども日銀としてもそれはやっぱり注意深く見ておいていただきたい、こういう要望でございます。  まだいろいろあるんですが、もう一つ、円の国際化の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  御存じのようにユーロができまして、下手をすると日本の円はローカルカレンシーに陥ってしまうというおそれがあります。ただ、日本の現在の貿易状況というのを調べてみますと、輸出が年に大体三千数百億ドル、輸入が二千数百億ドルという状態で続いておって、輸出に占める円建ての比率というのが大体三八%ぐらい、輸入に占める円建ての比率は一六から一八%ぐらい、ここ十年間ぐらいはそれでずっと変わらないんですね。そうすると、円がドルに対して十円動くと、今の規模で二兆五、六千億円ですか、マクロで言うと両方が相殺されてしまうというような状況が続くわけですけれども、それだけ大きくなった円というものがどうして基軸通貨になり得ないのか。  今までは日本市場が非常に閉鎖的であって、円を持った国がそれを運用しようとしてもなかなか思うに任せなかったという大体御説明だったと思うんですね。ところが、日本市場も完全にヨーロッパ並みになりまして、今度、取引税とか取引所税も廃止される。完全にヨーロッパと同じようなフリーなマーケットになったということで、これは輸出、輸入業者ともどもそういうふうに動かなくちゃいけないと思うんですが、円の割合をもっと高くすることによって為替変動というものも回避できるし、それから円の市場というものをもっと広げなくちゃならない、私は常にそう主張しておるんですけれども日銀さんとしてはこの円の国際化の問題についてどうお考えか、またどういうふうな施策をとろうとなさっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  144. 黒田巖

    参考人(黒田巖君) お答えいたします。  円の国際化の重要性、また最近の政府でおとりになっている諸施策、先生御指摘ございました点が円の国際化の基礎として役立つであろうということにつきましては私どもも全く同じ認識でございます。必ずやこうした措置が円の国際化に今後プラスしていくものというふうに考えております。  ただ、円の国際化、これは相手のあることでございますので、相手にもそれがわかってもらえないとなかなか進まないということであろうかと思います。したがいまして、今後とも努力を続けていくということによって初めてそうした状況が、先生御指摘の状況が促進、実現されていくものというふうに考えております。  私どもの観点から特に重要と思っておりますことは、これも先生の御指摘と同様でございますが、一に我が国金融・資本市場を自由で効率的で使い勝手のよいマーケットとすること、また一方におきまして、同時に金融政策運営を含めましてそうした努力を行いまして経済の健全な発展を実現し円の信頼感を高めていくというこの二点が基本であろうと考えておりまして、今後ともその方向で努力させていただきたいと考えております。
  145. 星野朋市

    星野朋市君 終わります。
  146. 菅川健二

    菅川健二君 参議院の会の菅川健二です。  最後ですので、もうしばらくよろしくお願いいたしたいと思います。  まず、しばしば御質問にありました当面の景気状況につきましてはお答えいただいたわけでございますけれども、特に最近における長期金利の上昇、そして急激な円高という新たな事態といいますか、新たな変化に対してやはり新たな対応が必要ではないかと思うわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  147. 速水優

    参考人速水優君) この長期金利の最近の上昇につきましては、市場では財政赤字の拡大に伴う国債の需給悪化を懸念して国債が売られ始めたというふうな理解が通用しているのではないかというふうに思います。ここへ来て市場の不安心理が相場の不安定な動きを助長しているということもまた一つの原因かもしれません。  円の対ドル相場につきましては、大きな振れを伴いつつ、昨年秋以前に比べて依然円高の水準にあると思います。これは相手が弱くなれば円は強くなるわけで、不安定な中南米情勢といったようなものがドルの為替相場を動かしていることも否定できないところでございますし、最近では国内の長期金利の不安定な動きも多少為替に影響をしているのではないかというふうに思います。  こういう中での金融政策運営でございますけれども、そうした相場面からの影響も含めて十分考慮に入れながら、国内経済全般がどのように展開していくかを見きわめて対応を検討していかなければならないと考えております。  御指摘のように、長期金利とか為替相場の動きというものは投資や輸出に何がしかの影響を与えることになるものと思います。しかし一方で、当面、公共投資が増加を続けるといった動きもございます。毎回の金融政策決定会合では、これらを踏まえて景気の動きを全体として的確に判断するように十分な点検を重ねていく考えでございます。
  148. 菅川健二

    菅川健二君 特に過度な円高というのは景気回復、とりわけ輸出産業に大きな打撃を与えるわけでございます。私の郷里の自動車産業のマツダなどは一円円高になりますと二十億円の損失になるという大変な事態に陥るわけでございます。  そこで、一月十二日ごろ一ドルが百十円を割り込みましたときに、巷間、為替介入が行われたやに聞いておるわけでございます。現状もそれに近いような状況になりつつあるわけでございますが、総裁としては、どの程度の水準が適正といいますか、むしろそれを割り込んではいけないというような御決意があればお話をお聞きいたしたいと思います。
  149. 速水優

    参考人速水優君) 為替相場のことにつきましては、私の立場で物を申すのは適当でないと思いますので、これは御勘弁願いたいと思っております。
  150. 菅川健二

    菅川健二君 これまで為替相場への介入については巷間いろいろな形では伝わってくるわけでございますが、明確な形での公表がなされていないわけでございます。もとより、事前にそういったことをお知らせするということは無理というのはわかるわけでございますが、介入後一定期間を経過後に介入の時期なり介入規模について公表するような姿勢が要るんではないかと思うわけでございますが、その点はいかがでしょうか。
  151. 速水優

    参考人速水優君) 為替介入につきましても、これは外国為替資金特別会計が行っておりますので、日銀はその窓口になってやっておるということでございます。事後的な公表を含めまして、介入の事実を公表するかどうかというのは所管の大蔵大臣判断すべきものだと思っております。したがいまして、コメントは一切差し控えさせていただきます。
  152. 菅川健二

    菅川健二君 金融行政あるいは金融の透明化という観点から大蔵大臣ともよく御協議いただきたいと思います。  これに関連いたしまして、これも大蔵省が主に所管いたしておるわけでございますが、現在二千二百億ドルにも及ぶ外貨準備高があるわけでございます。これにつきましても総額しか発表されていないわけでございます。その運用状況がどうなっておるのか、日銀との保有分担状況がどうなっておるかということは一切明らかにされていないわけでございます。このため、外貨準備の運用が適正に行われておるか、あるいはその運用におきまして現在米ドルに偏重しておるんじゃないかということが言われておるわけでございまして、ユーロの誕生を機会にひとつユーロもその中に十分セットしていくというような姿勢も要るんではないかと思うわけでございます。  そういった面で、この点につきましても、情報公開について特段の配慮を大蔵当局とともに日銀にもお願いいたしたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  153. 速水優

    参考人速水優君) 外貨準備は総額だけで内訳は発表していないと思いますが、一方で国際間の、ユーロ委員会ですか、そういうようなところでは外貨準備の透明性を出すべきだというようなことが議論の一つの課題になっております。そういう委員会での動きが今後どういうふうになっていくかわかりませんが、先般のアジアのときに幾つかの国が外貨準備の内容がわからぬままに非常に混乱が起こったということがございました。そういうこともきっかけになると思います。方向としてはそういう方向にあると思います。  もう一つのユーロをもっと使いもっと持ってはどうかというお話につきましては、今まだスタートしたばかりでございますが、当然ユーロの使用度というのは多くなっていって、第二の基軸通貨になるであろうと私は個人的に推測しております。今のところ、当面必要な欧州諸通貨のユーロへの切りかえというのは当然起こっておるわけでございますけれども、それ以上にユーロを持つかどうかということは今の時点で何とも申しかねるところでございます。
  154. 菅川健二

    菅川健二君 今の情報公開の点は、ヨーロッパにおきます一つのそういう前向きの動きと同時に、アメリカにおきましては、既にニューヨーク連銀において為替の介入規模を含めて四半期ごとに大変詳細な数値が発表されるようになっておりますので、ぜひひとつ早急に検討をお願いいたしたいと思います。  それから次に、日銀の閉鎖体質といいますか、新生日銀になられてから非常にオープンマインドになっておられるんではないかという面におきましては大変敬意を表しておるわけでございますが、なお残っておると思われる中で人事の問題、人事の中でも採用の問題があるんではないかと思うわけでございます。  日銀の内容に詳しい「日銀崩壊」という著書がございます。この中にも書いてあるわけですが、採用に当たって縁故採用が非常に多いんではないかと言われておるわけでございます。大変古いときでございますが、たしか私の同期の連中が日銀を志望したときにそういった縁故採用等についてのうわさがなきにしもあらずだったような状況もあったわけでございますが、いずれにしても事実についてはよくわからないわけでございます。ただ、この本によりますと、いわゆる一般的なペーパーテストは行われていなくて面接だけによっておると。面接というのは、私もいろいろな行政におりましてやったわけでございますが、人によってかなり差が、裁量が出てくるわけでございます。  そういった面で、採用におきます透明性といいますか、それから公平性ということが重要ではないかと思うわけでございますが、そういった面における採用面の改善といいますか、そういったことについて御見解をお聞きいたしたいと思います。
  155. 引馬滋

    参考人(引馬滋君) 採用に関する御質問でございますが、私どもの組織に限らず、いかなる組織にありましてもやはりいい人材を求めるということが一番大事でございまして、そういう意味では採用というのは大変大切な行事であるというぐあいに考えているわけでございます。  そこで、ただいま先生の方から、日本銀行の採用の関係で、縁故による採用が結構あるんではなかろうかというようなお話も出てきたわけでございますけれども、これは今申し上げましたように、私どもにとりましてはいい人材を何とかより多く採りたいということでございます。したがいまして、かなりたくさんの方に応募していただいているわけでございますが、文字どおり厳正かつ公正に選考しているということでございます。  その選考でございますが、私どもの選考のやり方は主として面接方式をとっております。職種が総合職、特定職、一般職という形で分かれておりまして、職種によりましてはペーパー試験を行うケースもございますが、例えば総合職のような例でございますと面接試験によっているということでございます。ただし、最終的に合格する人の面接回数というのは七、八回ぐらいになりましょうか、そういう意味ではかなりふるいにかけられてまいりますので、面接によって主観的な基準で恣意的に判断されるということはございません。これは多くの人のスクリーンを経て最終的に公正に選考されていくということでございまして、そういう意味で私どもとしては非常に厳格な採用を行っているということかと思います。  なお、採用の関係では、今申し上げましたのは新規の採用中心でございますが、いつまでもそういう形に頼っていたのではよりよい中央銀行はなかなかつくれないのではないだろうかというような意識もございまして、私どもかねてより中途採用についてはそれなりに積極的にやってきたところでございますが、ここに来ましてさらに一歩踏み込んだ形で中途採用、例えばエコノミストあるいは語学専門職等々について公募する形で踏み込んだところでございます。なるべくいい人材をということで私どもとしてはそれなりに工夫して対応しているというのが実情でございます。
  156. 菅川健二

    菅川健二君 ぜひ公平、公正な採用に心がけていただきたいと思います。  最後に、たびたび質問があったわけでございますが、いわゆる日銀特融につきまして慎重な配慮をされておるというのはわかるわけでございますが、こういった情勢下にあって幾つかやっぱり焦げつきが出てきておるわけでございます。日銀のバランスシートが著しく劣化しつつあるんではないかという批判もあるわけでございます。その点につきまして、最後に総裁の御決意のほどをお聞きいたしたいと思います。
  157. 速水優

    参考人速水優君) 日銀の資産内容が劣化しているんではないかという御懸念、これは一つは資産負債の総額がかなり膨らんでいるということと、それからもう一つは民間の企業金融債務を日銀が買い入れるようになっているということ、それからもう一つは最後の貸し手としてのいわゆるレンダー・オブ・ラスト・リゾート、金融システムを安定化するために日本銀行でなければ金が出ないというときに四つの原則をもって政策委員会にかけて決めておるわけでございますけれども、その三つの要因がしばしば劣化を起こしているんではないかというふうに言われております。  第一の総量の点につきましては、今まで日銀の持っている資産を市場に売るというのがなかなか難しかったわけで、特に市場で買われるトレジャリービルといいますかファイナンシングビルといいますか、外為証券その他、そういうものが市場性がなかったと。信頼のある、どこの国でも最も内外で買われる資産を日銀が全額引き受けて、金利も安いので市場に売れなかったというのが事実でございますが、そういうものが売れるようになってくる。それから、CPにつきましても、先ほど来議論がございましたように、今かなりのものを日銀が買っておりますけれども、これは売ろうと思えばいつでも市場に売れる、そういうものであること。それから、そういう資産の内容が、市場にいつでも売れる健全性あるいは流動性、そしてまた中立性といいますか、偏らない、売ろうと思えばそれを使っていつでもオペレーションができるというふうな資産に変わっていけば、今まであったレパーチェスオペレーション、レポオペと言っておりますけれども、そういうものが資産にあったり、その長期の買い入れオペに対して売り出し手形を負債でもって日銀発行の手形を市場に出して短期の資金の吸収を図ったといったようなことはだんだん変わっていくと思うんですね。そういう意味では、私は総額はこれ以上余りふえていかないと思っております。  それから、先ほどのFBなどがどんどん市場で売買されていくようになりますと、これはオペの対象、オペの玉としても非常に使いやすいわけでございますし、決してこれは内容が劣化していっているものではないと思います。各国中央銀行が皆そういうことを、市場企業の債務のいいものを買ったり売ったりしてオペに使っているわけですから、それは心配することはないと思います。十分しっかりした基準を持って、いいものを買って、いつでも売れるものを買っていくということをやっていくつもりでございます。  それから三つ目の、レンダー・オブ・ラスト・リゾートと言っておりますが、金融システム安定のためにどうしても日銀が出さざるを得ない。今それは特融と預金保険への貸し付けといった形でかなりの金額が出ておりますけれども、これは今のような情勢のもとでは最終的に日銀から出していかなければいけないということになりがちなんですが、これにつきましても特融は四つの原則を今のところかたく守ってやっておるつもりでございます。  一つ日銀がここで出さなかったらシステミックリスクにつながっていくということ、出し手としてはもう日銀以外にはないということ、モラルハザードを借りた者に起こさせないということ、それから日銀の資産内容、財務内容が悪化しない、この四つのことをよくチェックして貸しております。  それから、預金保険につきましては、今のところ資金がかなり膨らんでおりますけれども、これにつきましても、預金保険機構は保険料を取っているわけですし、買い取った資産を売却したりすることもできましょうし、あるいは市中から入札で資金を借り入れることもできるわけですし、また政府保証の債券を発行することもできるわけで、そういった市場から調達した資金でなるたけ早く日銀の今のつなぎの融資を返していただくということを預金保険の方にも大蔵大臣の方にも強くお願い申し上げております。  柳沢さんの金融再生委員会の方にもそういうことはよくお願いをしておるわけでございまして、この辺で余り資産が膨らみますと先ほど御懸念がありましたような声が出がちでございますので、一時的には少し膨らむことが起こるかもしれませんけれども、今後もなるたけ健全性、流動性、そして中立性ということを日銀の資産の三つの原則にしてまいるつもりでおります。  少し長くなりましたが、しかるべくよく御理解いただいて皆様に宣伝していただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  158. 菅川健二

    菅川健二君 終わります。
  159. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十四分散会