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1999-07-27 第145回国会 参議院 国民福祉委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  七月二十一日     辞任         補欠選任      久野 恒一君     有馬 朗人君  七月二十二日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     久野 恒一君  七月二十六日     辞任         補欠選任      水島  裕君     加納 時男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         尾辻 秀久君     理 事                 清水嘉与子君                 常田 享詳君                 朝日 俊弘君                 渡辺 孝男君                 小池  晃君     委 員                 加納 時男君                 久野 恒一君                 塩崎 恭久君                 中原  爽君                 櫻井  充君                 直嶋 正行君                 堀  利和君                 沢 たまき君                 井上 美代君                 清水 澄子君                 入澤  肇君                 堂本 暁子君                 西川きよし君    国務大臣        厚生大臣     宮下 創平君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        運輸省自動車交        通局長      縄野 克彦君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        厚生大臣官房障        害保健福祉部長  今田 寛睦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○社会保障等に関する調査  (脳死臓器移植実施状況と今後の検討課題に  関する件)  (介護保険を円滑に実施するための施策基盤  整備充実に関する件)  (歯科医療診療報酬の在り方に関する件)  (医療過疎地域における救急医療体制に関する  件)  (障害者移送補助システム充実に関する件  )  (医療事故再発防止に関する件)  (卒後臨床研修必修化に関する件)  (患者権利擁護に関する件)  (障害者雇用確保精神障害者施策充実に  関する件)  (心停止後の腎臓角膜移植に関する件)     ─────────────
  2. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十六日、水島裕君が委員辞任され、その補欠として加納時男君が選任されました。     ─────────────
  3. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 社会保障等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 おはようございます。  私は、先般この委員会で御報告いただきました臓器移植の問題について若干お伺いしたいと思います。  平成九年十月に臓器移植法が施行されましてから一年四カ月たったことしの二月に第一例が、そしてまた引き続き今日まで四例の脳死下での臓器移植が行われました。まず、生前に臓器提供意思を表明された四人の方並びにそれに同意された御家族の皆さんの御決断に敬意を表したいと思います。また、臓器移植を受けた方々すべてが予後良好ということで、大変うれしく思っている次第でございます。  さて、国民的に大変関心を集め、そして国会でも時間をかけて審議されました法律でございますので、この実施に当たっては厚生省におかれましても大変神経を使った作業を進めてこられたというふうに思います。しかし、実際にこの四例の経験を通しまして、準備をいろいろされた中でもいろんな問題があったんじゃないかと思うんです。また、来年には法律見直しもしなきゃいけないということもありますので、今後検討すべき課題等につきまして大臣の方からお伺いしたいと思います。
  5. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今御指摘のように、脳死移植は第四例目まで実現を見ております。第一例目と第二例目につきましては、公衆衛生審議会臓器移植専門委員会検討していただきました。その中で特に問題とされている事項は、以下の主要な三つだと思います。  第一は、移植医療透明性確保臓器提供者プライバシー確保の両立の問題をどう考えるか、どうしていくかということ。二番目は、脳死判定体制などについての臓器提供施設臓器提供病院等でございますが、この支援をどうしていくか。三番目に、日本臓器移植ネットワークあっせん業務によりまして行われておりますが、この人的、物的体制充実というようなこと、大体以上の三つが主要な検討課題だと思われます。  厚生省といたしましては、この審議会の御指摘を踏まえまして、必要な措置検討し、今後対策を講じてまいりたいと思いますが、今後とも臓器移植についての国民の理解がいよいよ深まっていくだろうと私も思いますし、それから当然そうなれば脳死下における脳死移植事例が増加することも予想されますから、そのような状況に適切に対応できるような臓器移植体制を構築していくことが今後の重要な課題であるというように考えておる次第であります。
  6. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今御指摘の中にもございましたけれども、臓器提供施設について少しお伺いしたいんです。  このいただきましたデータを拝見いたしましても、臓器移植を希望する人に対しまして提供される臓器が非常に少ないという実態でございます。最近では生体からの腎臓あるいは肝臓移植が行われている、昨日も二例目の肝臓ドミノ移植が行われるというようなことでございまして、これはしかし臓器が得られないためにやむを得ぬ補完的な措置だというふうに私は理解しているわけです。そうなりますと、この法の趣旨が十分生かされて移植医療が進むためには、臓器提供施設充実ということがどうしても問題になろうかと思います。  資料で拝見いたしますと、このガイドラインに規定された臓器提供施設というのが四つカテゴリーに分けられている。そして、これで数えますと三百五十三施設ですか、この施設を対象にした調査によりますと、既に臓器移植提供施設として体制が整っているのが約七〇%、まだ整えていないけれども今後整備しようというのが約二九%、整備もできないし今後も整備する予定がないというのが一%というような状況でございます。  まず、整備が今日までおくれている大きな理由はどういうことなんでしょうか。
  7. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 臓器移植につきましては、臓器提供があって初めて成り立つ医療でございまして、臓器提供施設体制整備というのは非常に重要な課題であると考えております。  今、委員指摘のように、四つカテゴリー臓器提供施設三百五十三施設につきましてこの四月末の調査は御指摘のとおりでございます。まだ約三割弱のところが体制が整っていないわけでございますが、一つ院内合意形成にかなり時間を要しているというようなことでございますとか、さらに病院としての対応マニュアルがまだできていないというようなことが主な理由であるというふうに承知をしております。  したがいまして、厚生省といたしましてはこれらの状況を踏まえまして、関係学会とも連携を図りながら、脳死判定基準についてのわかりやすいマニュアル作成でございますとか、これまでの事例における提供施設経験を踏まえまして、御家族の方の同意書の様式のサンプルでございますとか、メディアへの対応なども含めた臓器提供マニュアル作成、及び日本臓器移植ネットワーク臓器提供施設自治体等を交えまして、情報提供及び経験の共有を行うためのブロックごと会議の開催などを通じまして、まだ未整備施設の円滑な体制整備に資するよう、各般の施策を講じていきたいと考えているところでございます。
  8. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 この四つカテゴリーに分けた三百五十三施設でありますけれども、実際にこの中に入っていても臓器提供施設になるかならぬかというのはそこの施設が決めることであって、厚生省がやれと言ってもそれはできる話じゃないと思いますし、今そうなっても実際問題余り病院自身メリットはないわけですね。経済的にもかえって大変な負担がかかるのかもしれません。しかし、とにかく臓器提供施設というのがこういうふうに今は限定されているわけです。ここで何とか道を開いていただかなければ臓器移植は行えないということもありますので、今、局長は一生懸命おっしゃいましたけれども、ぜひ受け入れ準備を進めていただきたいというふうに思います。  それと、実際にこの四つカテゴリー以外でも非常に意欲的に院内準備をしている病院があるやに聞いておりますけれども、将来この臓器提供施設をさらに拡大するというお考えがあるんでしょうかどうでしょうか、伺いたいと思います。
  9. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 臓器提供施設につきましては、当初、大学附属病院でございますとか日本救急医学会指導医指定施設に限定してスタートしたわけでございますが、臓器提供が非常に少ないということと移植医療を進めていくためには臓器提供施設を拡大する必要があるということでこの四つカテゴリーに拡大したわけでございますが、先ほど現状を御説明いたしましたとおり、この四つ施設でも必ずしもまだ万全の体制を整えているとは言いがたい状況でございます。  したがいまして、今後さらにこれを拡大するかどうかということにつきましては、私どもとしては当面この状況を見ながら慎重にといいますか、余り急速に拡大をいたしまして不十分な整わない体制の中で提供が行われるということはまた問題を引き起こしますので、やるからには十分な体制を整えていくという考え方で慎重に対応していきたいと考えているところでございます。
  10. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 御意見はわかりましたけれども、実際問題、現場の中で随分いろんな動きがあるんじゃないかというふうに思いますし、そういう能力を生かそうという病院ができているとすれば、ぜひその辺の実態も聞いていただいて、本当にできるのかどうかということを客観的に評価していただいて、道も開けるのであれば開いていただきたいなというふうに思います。  次の問題として、子供臓器移植可能性の問題です。  この臓器移植法は大変厳しい条件がついているわけでございまして、生前に臓器移植同意するかしないかということをはっきりと文書で書いておかなきゃいけないということもありまして、今は十五歳以下の子供はドナーにはなれない、また六歳以下の子供については脳死判定基準もできていないという状況であるわけですね。  肝臓はこのごろ大人のものも部分的に移植するという技術ができて、そしてそれが可能になったということで、このことによって、今まで子供海外肝臓をもらうというような例があったわけですけれども、これもずっと少なくなったというふうに伺っているところでございます。  しかし、問題はやっぱり心臓なんでしょうか。このデータを拝見しますと、九年の十二月までに海外心臓移植を受けたのが三十八例、このうち十五歳以下が十二例あったわけです。現在、心臓移植を希望している、登録している人が二十一名。これは日本ではできないわけですから子供は含まれていないと思いますけれども、現在でも海外移植を受けようと思って待っている子供がいるんだろうと思うんです。  それは、厚生省実態をつかんでいないということでございまして全くわからないのですけれども、日本脳死からの移植が始まったのに子供だけはできない、相変わらず子供は外国でもらっていらっしゃいというのでは問題があるのではないか。恐らくこれは三年後の見直しのときにも大きな問題になるんじゃないかと思うんです。実際には肝臓部分移植ができるといっても、やっぱりそれは子供同士の方が適切に決まっているわけですし、肺なんかも子供でなければ無理だというふうに伺っております。  そういう意味で、子供同士移植医療を実現するために当然今のような規定では難しいわけでして、親の同意あるいは親権者同意ということで行われるようなことも可能かどうかということを検討しなきゃいけないと思うんですが、そういったことにつきまして、つまり子供同士臓器移植可能性について厚生省はどうお考えでしょうか。
  11. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 現行の臓器移植法におきましては、先生指摘のとおり、十五歳未満の児童からの心臓等臓器提供は事実上不可能になっているわけでございます。これは、現在の移植法が生前の書面による臓器提供意思表示ということが条件になっておりますので、臓器移植法国会審議の過程におきましても、意思表示能力というものにつきまして、合理的な判断能力につきまして民法上の遺贈が可能な年齢を参考にして設定されたものでございます。  したがいまして、今後、子供から子供への移植ということを考えていく場合に、生前の本人の意思表示というものを法的にどのように考えていくかという点の検討と、もう一つ技術的に脳死判定というものができるかどうかという、その二つの面から検討する必要があるわけでございまして、御指摘の点につきましては法施行後三年目を目途といたしまして制度全般について検討することとされておりますので、その中でこの問題も議論されるものと考えているところでございます。
  12. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 それでは次に、移植医療の経費の問題について少しお伺いしたいと思います。  現在、厚生省からいただいた資料によりますと、腎臓角膜移植摘出保険適用される。肝臓については、生体移植については摘出移植もいずれも保険適用される、脳死移植については高度先進医療適用される。しかし、心臓、肺、膵臓、小腸、これは摘出移植保険適用されていない。そして、これは今は行った医療機関負担しているというふうに伺っているわけでございますけれども、このほかに臓器運搬費用なども相当かかっているんだろうと思います。これもどこが払うか決まっていない。今はこんなに例が少なくて、病院の方の負担ということで何とかやっていただけるのかもしれませんけれども、いつまでもこれは放置しておけない問題であろうというふうに思います。  一方におきまして、医療保険制度の中で一部の高額医療を使っている方々が非常に医療費用の中で問題になっているということもございまして、これは一体どう扱うのかということは非常に大きな問題かなと思います。大体一千万くらいは一年間でかかる。心臓で一千万とか、肝臓でもそうですね、肺なんかでもやっぱりそのくらいの費用がかかるというふうに伺っておりますけれども、こういったものの扱いをどういうふうに考えていくのか、もしお考えがあったら教えていただきたいと思います。
  13. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先生仰せのとおり、現在移植医療につきましては、普及動向等によりまして、今、腎臓あるいは角膜、骨髄の移植だとか生体部分移植等については既に保険適用をいたしておりますけれども、脳死体からの肝臓移植につきましては、お話しのように、高度先進医療としての承認ということにいたしております。  そういう流れで申しますと、脳死体からの心臓等移植につきましては、我が国におきましては新規の技術ということでございますので、今後の実績をもとに高度先進医療としての適用検討課題になってくるということになると思います。  しかし、いずれにいたしましても、御指摘移植医療につきましては、先生も御指摘のありましたとおり、一方において我が国移植医療の推進あるいは患者負担軽減等、こういった観点と同時に、その普及動向でありますとか医療保険全体を考えました場合に増大する医療費の効率的な配分、あるいは医療財源の使われ方の優先度合いというような観点をも踏まえながら、最終的には中央社会保険医療協議会における議論を経ましてその対応をやってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  14. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 手術をすることによって、しなかったときのずっと治療をしている費用の問題だとかいろいろ考えてみて、やっぱりここに費用を投ずる、国費を投ずる、あるいは保険料を投ずることのメリットというのはあるんだろうと思いますけれども、その辺、ぜひ国民にわかりやすく表示していただきたいというふうにお願いをしておきます。  それから次に移植コーディネーターの問題、これもやはり問題になっていると思います。  先日、日本臓器移植ネットワーク移植コーディネーター教育をしようと募集したら、非常にたくさんの人が集まってきたというふうに聞いております。これはそれだけ関心が非常にあるんだと思いますし、臨床検査技師だとか看護婦だとか、こういった直接そういうところに医療の分野で働いている、しかもそういう移植医療にかかわっているような方々関心が非常に高くなっているというふうに思うんです。  一体この人たちに数的にも質的にもどのような教育が必要なのかということをぜひ伺いたいと思いますし、またこれは、今はネットワークの中にいる方々が大活躍していらっしゃるわけですけれども、やっぱり臓器提供施設にもこういった教育を受けた方々が配置されるということが必要ではないかなというふうに思いますので、その辺についてお伺いしたいと思います。
  15. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 現在、移植コーディネーターにつきましては、日本臓器移植ネットワークに所属するコーディネーター都道府県医療機関等に属するコーディネーターの二種類がありますが、ネットワークコーディネーターが十六人、都道府県コーディネーターが五十六人というのが現状でございます。  コーディネーターの質及び数の拡充につきましては、公衆衛生審議会臓器移植専門委員会におきましても指摘されていることでございまして、これまでの脳死下での移植事例検証におきまして、今後脳死下での臓器提供事例が増加した場合に対応できる人材が育っていないことから、コーディネーター候補者教育訓練体制拡充し数をふやすことが必要であること、これまでの脳死下での臓器提供事例に関与したコーディネーターが他の若いコーディネーター教育、育成に従事することができる環境をつくることが重要であるというようなことが指摘されているところでございます。  したがいまして、厚生省といたしましては、円滑な臓器移植が行われるためにはコーディネーターの数、質の拡充が重要であると認識しているところでございまして、この審議会での指摘を踏まえて具体的な方策について検討してまいりたいと考えております。
  16. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ぜひまたよろしくお願いしたいと思います。  それから、もう一つ第三者検証機関の問題です。臓器移植について多くの国民が心配していたことは、一体脳死判定が本当にきちんと行われるのだろうかとか、それが密室の中で行われちゃうんじゃないだろうかとか、あるいはレシピエントが公平公正に選ばれるのだろうかといったような、どちらかといえば医の倫理にかかわるような問題が非常に多かったわけでございます。  このことについては、先ほど大臣もおっしゃいました公衆衛生審議会臓器移植専門委員会検証して、二例ではございますけれども中間報告をまとめていらっしゃるわけですけれども、その中にも第三者による検証機関必要性指摘されているわけでございます。私もぜひこういったことは必要だと思っているんですけれども、今後もこの専門委員会がこういった機能を続けていく方がいいのか、あるいは移植医療国民の中に広く容認されるためには、こういった専門家だけでなくて例えば遺族の立場あるいは臓器移植によって命を取り戻した患者さんの立場、そういった意見も反映させながら移植医療検証できるようなものが必要なのかなという気もしますので、第三者機関というのをどんなふうに考えたらいいのか、そのことについても御意見を伺いたいと思います。
  17. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 移植医療につきましては、今、委員指摘のように、救命救急医療が十分に行われたかということ、それから脳死判定が法的にも手続的にも適正になされたか、それから臓器配分が公平に行われたかという、これらの点につきましてやはり国民にわかりやすい形で説明できるような体制が必要だと思います。したがいまして、今、公衆衛生審議会臓器移植専門委員会におきまして御議論いただいているところでございます。  中間報告におきまして、リアルタイムでの情報開示を行わない場合の条件として第三者検証機関設置必要性について意見が出されているところでございます。しかしながら、構成員に法的な守秘義務を課すのかどうか、また組織の事務局をどこに置くのか、また財政的な基盤をどこに求めるかなど、いろいろ具体的な点につきまして引き続き議論する必要があるということでございまして、厚生省といたしましては、中間報告に引き続きましてこの委員会で御議論をいただくということになっておりますので、その結論を踏まえまして対応していきたいと考えているところでございます。
  18. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。いろいろと問題があろうかと思いますけれども、ぜひ国民の中にこういった臓器移植の問題が広く浸透していって一般的な医療として行われますように、そういう環境を整えていただきたいということをお願いしておきます。  次に、結核の問題についてお伺いしたいんですが、昨日、厚生大臣結核緊急事態宣言というのを発表されたわけでございますが、まずこのねらいと意義、そしてまた今日の緊急事態に対してどのような具体的な提案が含まれているのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  19. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ことしの六月三十日に公衆衛生審議会から「二十一世紀に向けての結核対策」という意見書が提出されたところでございます。この意見書の内容に基づきまして、御指摘のように、昨日、結核対策連絡協議会を開催いたしました。そして、医療関係団体関係省庁方々にお集まりをいただきまして、私の方から結核緊急事態宣言を発表いたしまして、各関係団体に対しまして結核対策の強化をお願いしたところでございます。  この結核緊急事態宣言趣旨あるいは目的といたしましては、まず第一に医療関係者とか行政担当者を含めた国民一人一人が結核を過去の病気としてとらえるのを改めまして、国民の健康を脅かす大きな問題として取り組んでいただきたいということ。それから、厚生省みずからが結核対策を強化していくとともに、地方自治体あるいは医療関係団体に対しましてもおのおのの立場から結核対策を強化していただきたいということ。それから、国民各位におかれましても、結核に対する正しい知識を理解されて結核の予防に努めていただくこと等々を宣言で述べております。  今後、この宣言趣旨に沿いまして、医療関係者行政担当者を含めた国民一人一人に定着していきますように努めていくと同時に、具体的な結核対策につきましては、公衆衛生審議会から提出された、先ほど申しました意見書に基づきまして、再興感染症としての結核の知識の普及啓発、必要な調査、健康診断の充実、多剤耐性結核や高齢者の結核対策の推進、集団感染とか院内感染対策等の強化を総合的かつ集中的に進めて結核の撲滅に努めたい、このように思っておるところでございます。
  20. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 結核が、非常に高齢者の発病が多いとか、あるいは多剤耐性結核など厄介な問題を抱えているというのはかなり知られていたわけですけれども、最近問題なのは集団感染のニュースが非常に多いということだと思うんですね。そのことはもちろん緊急事態宣言の中にも入っているわけでございます。  データによりましても特に平成九年、十年に集団感染が多くなっている、学校、医療機関、事業所で。中でも気になりますのは、医療機関の中での集団感染事例がふえている。特に精神病院などでは多数の要治療者が出ている。ああいった閉鎖的なところでそういった人たちが出ているということについて、どうしてなんだろうかという気持ちがあるわけです。病院患者から感染したりするなんということは、一般には専門家としては本当に恥ずべきことだというふうに考えられているわけですし、まして医師が自分の病気がわからないで結核菌を患者に感染させるなんということはちょっと考えにくいわけですけれども、全体的に医学の関心結核からそれていってしまったんじゃないかという気がするんですね。  今、厚生省病院・療養所のネットワーク結核に関してもつくるということでございますけれども、いろいろ現状を聞いていますと、療養所の中でも結核専門家と言われる人が本当に何人かになってしまっているとか、そういう実態を聞くわけでございます。ぜひお医者さんたちの、研修と言ったら失礼ですけれども、それをもう少しきちんとしていただく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  21. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 結核がなぜ今日のような状態になっているか、幾つかの要因が考えられるわけでございますが、先ほど大臣からも申し上げたとおり、特に医師及び医療関係者結核に対する基本的な知識の再確認ということが必要になってきているというふうに考えているわけでございます。  WHOも数年前に非常事態宣言を出しておりまして、四つの要因を挙げておりますけれども、その中でやはり結核に対する関心の低下というものを最大の要因として挙げております。私どもといたしましては、医師を含め医療関係者に再度、結核に対する基本的な知識の習得等、医学教育を含めまして対応考えていく必要があると考えております。
  22. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 結核による死亡率というのは戦後ずっと飛躍的に減少してきたわけです。しかし、今日、先進諸国と比較するとまだ日本は高いんですね、死亡率が。この機会に結核が大変な感染症であるということを再確認していただく。と同時に、ぜひ厚生省は医学界の英知を集めて、せめて先進国並みに死亡率を低下させるという目標くらい掲げて施策充実を図っていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  23. 中原爽

    ○中原爽君 自民党の中原でございます。  介護保険準備段階でありますので、きょうはホームヘルパーにつきましてお尋ねをまずしたいと思います。  三月十五日の日付でありますけれども、医療保険福祉審議会の老人保健福祉部会長並びに介護給付費部会長から宮下厚生大臣に答申書が出ておりまして、介護に係ります訪問介護について二点答申がございました。  内容については、「介護サービスの量的な拡大を図る観点から、訪問介護を担当する者の要件については、当面、三級研修を修了した者もその対象とすることはやむを得ないと考えられるが、その場合においても、採用後の研修機会の確保等を通じて、サービスの質の向上に努める」ということが一点、それから「チーム運営方式による質の高い訪問介護の提供が可能となるよう、事業規模に応じたサービス提供責任者の配置を適切に行うとともに、介護報酬の設定に当たっては、二十四時間巡回型サービスなどサービスの提供形態に応じた実態を十分に踏まえる必要がある。」と、こういう答申でございました。  その後、七月七日に部会が開催されまして、また昨日は最終的にこの三月の答申に沿った形の審議が進められておるわけであります。  現在、厚生省の新ゴールドプランによりますと、平成十一年度のホームヘルパーの養成につきましては十七万八千五百人という予算ベースを計上しておりまして養成に努めているわけでありますけれども、実際には現在養成の研修修了者については二十九万二千名ほどおられるということでありますけれども、その約半分が三級の資格者でありまして、十五万八千人ほどおられるということであります。  先ほどの答申あるいはその後の部会において審議されました内容については、資格に対応した介護報酬について、特に二級と三級の間で線引きをいたしまして、三級については二級に比して報酬を低減するということが進められているわけであります。  しかし、本来の目的といいますのは、先ほどの答申書にもありましたように、三級の研修を修了した者もその対象とすることはやむを得ないけれども、採用後の研修機会の確保を通じてサービスの質の向上に努めるということでありますから、すなわち三級の方々を二級という資格に昇格する、ステップアップすることで質の向上を図るということが趣旨であろうかというふうに思います。すなわち、その報酬に差があるということが主体ではないということであろうかと思います。  この辺の今後のステップアップと同時に、質的向上をするという意味合いにおいては、現在、三級のホームヘルパーの養成の基準は五十時間という研修の養成期間になっておるわけでありますけれども、二級の場合には百三十時間、一級の場合には二百三十時間という研修の養成時間が必要になるわけであります。しかし、三級については非常勤という取り扱いになっておりまして、二級以上の常勤の職とのかかわりが勤務形態によって違っている格好になっております。  そういうことも含めて、三級の方々を二級に昇格し、かつ質的向上を図るためにはいろいろ実習などの研修を積み重ねていくということになるわけでございますので、このあたりを実際上の問題としてどういう形でこの研修、要するにステップアップのシステムを考えるかということを、都道府県単位で考えていくことも必要でありますけれども、もともとの厚生省としてのお考えをまずお聞きしたいと思います。
  24. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先生指摘のとおり、昨日の医療保険福祉審議会におきまして、三級課程の修了者によります訪問介護、ホームヘルプでございますけれども、これを低く設定する、こういう提案をさせていただいたわけでございます。  したがいまして、審議会でもいろいろ御議論がございましたが、今後、三級課程の修了者のホームヘルパーが可能な限り二級あるいは一級に、上位の資格を得られるように受講等の受け皿みたいなものをつくっていく必要があるというふうに思っております。ただ、三級ヘルパーで上位にならない方も当然いらっしゃるわけでございますので、そういう方がいつまでも三級のままでとどまっていいのかという質的な面で問題があるわけでございまして、年限を区切ってやったらどうか、こういう御意見もあるわけでございまして、そういうことも含めて今後の検討課題ということで検討させていただきたい、こういうふうに考えております。
  25. 中原爽

    ○中原爽君 ありがとうございました。  先ほど申し上げましたように、養成の時間数が三級は五十時間、二級については百三十時間ということでありますけれども、これを今お話しのように昇格をしていくというステップアップの段階でありますと、一番問題になるのは実習をどういう形で積み上げて二級に昇格できるかということであります。すなわち、実習を行う施設というのは限度がありまして、無限にその養成の施設があるわけではありません。  したがって、実習を受けたいと思っても時間待ち、順番待ちというようなことが起こり得るわけでありますので、そのところを踏まえてヘルパーの資格の状況を積み上げていきませんと、大半が三級のヘルパーである、ホームヘルパーの半分が三級のままにとどまっているという状況は大変ぐあいが悪いというふうに考えているわけであります。  もう一点、ホームヘルパーのチームの運営方式につきまして答申が出ているわけでありますけれども、厚生省のお出しになっておりますパンフレットの中で、先ほどの十七万人の養成のほかにホームヘルパーのステーション、これを一万カ所ふやすということがあります。これは予算措置ではありませんで、努力目標ということであろうかと思いますが、先ほどお話が出ておりますホームヘルパーのチーム運営方式を推進するという事業計画とあわせて二十四時間対応のヘルパーの巡回型の事業を推進するということでありまして、これはその推進のいろいろな規則が既に定められているわけであります。  特にこのホームヘルパーのサービスについては、これから一級のホームヘルパーの方々が中心になりまして、ホームヘルプステーションあるいはホームヘルプサービスを行います運営方式について、看護婦さんであるとかケースワーカーであるとか、そういう方々と協力をしながらチームの運営を行うということについて、一級のホームヘルパーが主任という形、ホームヘルパーだけのチームでありますと主任ヘルパーという言い方になるわけでありますけれども、いずれにしても一級の資格ということが必要になってまいります。したがって、ここで言っておりますホームヘルプサービスのチーム運営あるいは二十四時間対応の巡回型の事業ということについて、一級の資格者のかかわり、あるいはその整備状況についてお尋ねをしたいと思います。
  26. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) ホームヘルプサービスチームの運営方式でございますけれども、これは他のサービスとの連携調整を行います主任ヘルパーが当然配置されていなきゃいけないわけでございまして、その主任ヘルパーを中心にいたしまして他のホームヘルパーを指導する、こういう体制ができているのをチーム方式と言っているわけでございます。  平成三年度からこの方式で推進を図っているところでございまして、平成九年度末で全国で二千八百十一チームができているわけでございまして、本年度からはすべての市町村でチーム運営方式で実施することを原則といたしているわけでございます。  また、二十四時間対応の巡回型ホームヘルプサービスでございますけれども、これにつきましては平成七年度から加算制度を設けましてその体制整備に努めてきているわけでございまして、平成十年度末現在で百七十八の自治体で加算を受けて実施しているということで、そのほかにも二十四時間対応でやっているところもあるわけでございます。  こうした中で、主任ヘルパーにつきましては、これまでは先生指摘のように介護福祉士と一級の研修修了者に限定してきたわけでございまして、これまでは特段支障なく確保できていたというふうに認識しているわけですが、これからふえてくるわけでございます。特にホームヘルパーの就業実績を重視するということで、介護福祉士と一級の研修の方に加えまして、就業実績がある方は、二級課程の修了者でございましても三年以上の実務経験がある方は主任ヘルパーにできる、こういうふうな予定にいたしているわけでございます。したがいまして、こういう措置によりまして主任ヘルパーは円滑に確保できるんじゃないか、こういうふうに思っております。
  27. 中原爽

    ○中原爽君 ありがとうございました。  御指摘の介護福祉士に対しますホームヘルプサービス事業の委託ということは既に行われているわけでありますけれども、ただ介護福祉士の免許を持ったばかりの方がこのホームヘルプサービスにかかわるということも実務の経験としては不足であろうかということでありますから、あくまでもこのホームヘルパーの、今御指摘の二級も含めてこういった主任の仕事をするということをふやしていく必要があろうかということであります。これは都道府県がホームヘルパーの養成をするという格好になっているわけでございますので、厚生省からの御指導もひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  先日、ケアマネジャーの資格試験などもございましたけれども、ケアマネジャーはケアプランを立てられるというところでありますけれども、その立てられたプランを実質的に実施するのがこのホームヘルパーの方々であろうかということでありますので、実態としてはこちらの方が、ホームヘルパーの仕事の方が重要ではないかという意見もあるわけであります。  それでは、もう一点お尋ねをしたいと思います。  お手元に資料を三部ほど配付させていただいております。  先般、五月十八日に衆議院の方の厚生委員会で吉田幸弘衆議院議員が医科と歯科の診療報酬の改定率の差異、それから医科と歯科の初診料、再診料の差について質問をされておりまして、そのことについて歯科領域の立場から確認をさせていただこうと思っております。  吉田幸弘衆議院議員は歯科医師でございますので、そういうお立場での御質問をなすったわけであります。それで、その質問に対する政府委員のお答えは大体概略次のようでございました。  かつての改定率でいえば歯科が高かったこともある、また医科が高くなったこともある、直近の平成十年度の改定においては医科、歯科ともに改定率は一・五%であった、こういう御回答でありまして、これが一つ。  それからもう一点は、初診料と再診料というところだけを取り上げて目を通しますと、医科と歯科の間では確かに差があるということはそのとおりであるけれども、それは今まで歯科の領域が改定の点数配分について、歯科特有の補綴、要するに義歯、入れ歯の領域に技術料の部分を振り分けて、初診料の方には点数を配分されなかったというようなお答えがあったわけであります。そのことについて確認だけとらせていただこうと思います。  お手元の資料1でありますけれども、昭和四十二年からの医科と歯科の診療報酬改定率のパーセントの比較であります。  昭和四十二年から五十三年までは確かに歯科の診療報酬改定率の方が上でありました。たまたま四十七年二月は一三・七ということで同じ比率でありました。しかし、線引きをしておりますが、昭和五十六年以降は逆転をいたしまして、はるかに医科の改定率の方が高いという状況が続いておりまして、先ほどお答えがありました平成十年四月は一・五、一・五ということで同率になっているということであります。このことを言葉でお答えをいただきますと先ほどのようなお答えになるわけであります。  問題は、四十二年から五十三年までは歯科の改定率が高かったわけでありますけれども、五十六年から逆転をしたということでありまして、何でこういうふうになったかということを吉田衆議院議員はお尋ねになったのであろうというふうに思っているわけであります。  明らかに五十三年と五十六年の間で差が出たということでありますので、診療報酬改定についての改定の仕方がここで変わったのであろうというふうに思います。この点についてお尋ねしたいと思います。いかがでございましょうか。
  28. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 診療報酬の改定率につきましては、今、先生御提示のございました資料のような経過をたどってきたことは御指摘のとおりでございます。  これにつきましては、これまで診療報酬の改定率は、医科あるいは歯科につきましても同様に、医療機関の収入あるいは人件費、物件費などの諸費用の総合的なバランスという形の中で医療経済の実態調査などもしながら決めていく、その時々で大分やり方等についてもいろいろございますけれども、基本的にはそういった医療機関の収入と費用との総合的なバランスを見るという中で今日まで来たということでございます。  そうした中で、御指摘のような形で五十六年以降しばらくは改定率だけを見ますと医科の方が歯科よりも上がっているような状況が続き、それが平成十年には医科と歯科、同率の一・五%の引き上げということになったということでございまして、それぞれについて特段にこれはこういうことであったから低くしたんだということではなくて、総合的なバランスの中でその時々で決めてまいったということの結果だというふうに承知をいたしております。
  29. 中原爽

    ○中原爽君 今お話しいただきましたのは五月にお答えになりました内容と大差はないわけでございます。  どうして五十三年と五十六年の間でこういうふうにバランスが逆転したかということについては、恐らく五十六年の時代に第二次臨時行政調査会からの御意見がございまして、医療財源が枯渇をしてきた、そのために薬価を引き下げて、浮いております薬価を引き下げた分の経費を技術料に配分するという形が行われたようであります。したがって、薬を使う率の多い医科は技術料の上乗せ分が多くなった、しかし薬をほとんど使わない歯科については薬に基づいた医療財源配分がほとんどなかった、そういう状態のために五十六年以降こういう格差がついたということであろうと思います。  それと、平成十年については同じく一・五、一・五という御指摘でありますけれども、このときは御承知のように中医協の場で実態調査の結果に基づいて厚生大臣に中医協からの改定を要するという答申が出ないままで年が明けました。そして、当時の与党三党の政調会のところでこの一・五という人件費と物件費を出すということが決められたわけであります。まことに異例の決め方であります。この一・五の財源というのは当時千三十億円であります。それは、薬の差から、引き下げた分から財源を出したということではありません。全く別のところから厚生省としてこの一・五%の財源をお出しになったということでありまして、それで技術配分をすれば両者一・五になった、こういう経過であろうと思います。  それから、資料2でございますけれども、ただいま私が申し上げましたように医科と歯科の技術と薬の薬剤料の差であります。医科は薬を三一%ほど使っておられる、我々歯科は一・二八%しか薬を使っておりません。ということは、歯科の疾患というのは薬を飲んで治るような疾患ではないわけでありまして、点滴をしたから抜けた歯が生えてくるということはないわけでありますし、薬を飲んだから虫歯の穴がふさがってくる、そういうこともないわけであります。したがって、医科と歯科の薬の使い方というのはこれだけ格差があるわけでございます。したがって、三〇%の上に乗っている医療財源あるいは一・二八%に乗っている医療財源技術料に振り分けるということであれば、確かに歯科は損をするということになるわけであります。それを申し上げたいと思っておりました。  それで、今回、平成十二年度を目途に医療制度あるいは医療提供体制を改革するんだということが言われておりますが、平成九年当時の与党協の意見書では、新しい診療体系の構築については技術、物、ホスピタルフィーの評価をする、こういうふうにおっしゃっておられる。また、同じ平成九年の八月に厚生省意見書を出されておりまして、技術、物及び施設管理費用を明確に区分した評価体系の構築を提唱する、こういうふうに言っておられるわけであります。  それから、ことしの一月になりまして、医療保険福祉審議会の制度企画部会からはこういう意見書、作業部会の報告が出ております。薬や治療材料の物の評価と医療に係る技術評価の間に不均衡が生じている、これを是正しろ、こういうことであります。薬や治療材料の物の評価と技術医療に係る技術の評価を明確に区分してそれぞれきちっと評価をするんだ、こうおっしゃっておられるわけであります。こういう考え方でいけば、薬を使わない領域の部分とそれに対応した技術の部分ということで、当然医科と歯科の技術に対する考え方が違うということを申し上げたいと思います。  それから、資料3でありますけれども、これが吉田代議士がお尋ねになりました初診と再診の差異であります。ごらんいただきますと、特に初診料については、五十一年、医科が九十点、歯科が九十点でありまして、この時代から昭和五十九年までずっと同じ点数でありました。しかし、昭和六十年以降は大差がつくという状況が続いているわけであります。  私は、特に今回初診料で申し上げたいんですけれども、歯科が初診料に重点的な点数をつけないで、補綴すなわち義歯の領域に点数をつけたために結果的にこういうふうになったというふうにおっしゃっているわけです。しかし、先ほど来ごらんいただいておりますように、昭和五十六年以降、医科に比べて総枠の歯科の点数配分が少なくなったということを踏まえて、歯科の場合には医科と同じような形の初診料の点数を持ち上げられなかったという結果がこういう状況になっているというふうに理解をしているわけであります。  再診料については、それぞれその頻度によりまして診療科によって大差があるわけであります。全体的に申し上げますと、歯科の場合には医科に比べて再診の頻度は三倍ぐらい高いわけであります。したがって、同じ点数をつけようということを考えますと、医科に比べて三倍の医療財源を要する、こういうことでありまして、この点についても医科と歯科と同じような再診料の形はなかなかとれないということでございます。  こういう考え方でよろしいかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  30. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 初診料、再診料等の診療報酬の中身にわたってのお尋ねでございます。  今までの経過で申し上げますと、先生もお引きをいただきましたけれども、今までの経過の中で改定の中身としてどこに重点を置いていくかというときに、初診料、再診料については、今までは歯科領域についてはどちらかというと他の技術配分に重点を置いてきたということもあってこんなお挙げをいただいた資料のような状況になってきたものというふうに思っております。  しかし、いずれにいたしましても、歯科も含めまして、診療報酬改定のあり方につきましては医療保険の抜本改正の課題一つでございます。その中で、いわゆる技術の評価重視あるいは歯科についていえば、歯科の特性をどう配慮していくかということは抜本改正の中においても大きな課題だというふうに挙げられております。  したがいまして、今、具体論としては中央社会保険医療協議会での御議論が出ておりますので、そうした中で全体の医療の質の向上、給付と負担の均衡の確保あるいは医療資源の効率的な配分といったような観点も含めまして総合的な検討をしていただく。また、その前提として目下医療経済実態調査実施中でございますから、この結果をも踏まえまして、そういった中でそれぞれの医療経済がどういうふうになっているかということをも踏まえて最終的に結論を出していくことになろうかというふうに思います。
  31. 中原爽

    ○中原爽君 ただいまお答えをいただきましたとおり、先ほど来から申し上げておりますけれども、平成十二年度を目途に医療保険制度並びに提供体制について抜本改正が行われるわけでありますので、私が今申し上げたこと、すなわち医科の領域と歯科の領域というものがそれぞれ担当しております疾患形態に対しまして対応の仕方が違うということを十分に今後お考えの上で改革を進めていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  32. 久野恒一

    久野恒一君 自由民主党の久野恒一でございます。  ただいま清水先生、中原先生のお話を聞いておりまして、九問中六問は大体同じような質問になってございます。そういうことで、視点を変えながらお話を進めていきたい、そういうふうに思うわけでございます。  私ごとで恐縮でございますけれども、私は昭和三十八年に千葉大学医学部を卒業いたしまして、以来、医師として患者さんとともに歩み、昼夜を問わず患者さんと接してまいったわけでございます。  県会議員になりましたのが五十四歳のときでございました。その動機は、ただいま中原先生も御指摘になったように、介護保険制度がこのままの状態で入ったのでは大変患者さんが困るであろう、そういうことでもって県会議員に突如として手を上げて立候補して、たまたま当選しました。  そういうわけで、茨城県というところは医療も福祉も多少おくれているところでございまして、私が自分では政治的な手腕や素質もないのに県会議員として何をすべきか。私は、この介護保険がうわさされ、ゴールドプランがうわさされたときから、何とかこれをまとめていかなければ茨城県というのはだんだんなくなってしまうんじゃないか、なくなるという意味は患者さんにとって不幸な状態になるという意味でございまして、二十一世紀いばらき福祉の郷づくり懇談会の座長をやらせていただきました。学識経験者も含めまして二十数名から成る方々で提言を自民党茨城県支部の重要政策大綱として県に提案させていただいたわけでございます。  中身を見ますと、どうしても県では対応できない、そういうことでもって、県連会長に参議院に行ってこいということでもって、出ましたら当選させていただきました。これを言うためにきょうは出てきたわけではございませんが、しかしどうしても県単位ではできませんので、国でもってこの問題を取り上げていきたい。そうすると、ただいまも言いましたように、清水先生のお話とかあるいは中原先生のお話が重複してくるわけでございます。  ところで、臓器移植の法案ができましてからもう一年四カ月たつわけでございますけれども、この臓器移植は従来の社会保障制度の中には入っていなかったと思うわけでございます。医療とか福祉とか年金とか、そういうものがあるわけでございます。その制度の枠には入っていなかったわけでございます。したがって、その財源というものはやっぱり医療保険の中から全部使うとなると、年金とか福祉に影響が出てまいりますので、社会保障制度、この周辺も含めて質問をさせていただきたいと思っております。  この社会保障関係にかかわる費用は今後どんどんと臓器移植などによって増加してまいります。将来的な基準というものを立て、今のうちからそれぞれの制度改革をきちんと決めておかないと将来これまた混乱することになろうかと思います。今後の社会保障制度のあり方について大臣にお尋ねいたしたいと思います。
  33. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、委員臓器移植の問題を取り上げられまして、これがかなり高額な負担になります。したがって、医療保険で見る場合にかなりの負担になって、従来考えられなかったことではないかということを一つの例といたしまして、社会保障全般についてもっとトータル的な観点で物を考えたらどうかという御趣旨であると存じます。  私どもも今後の社会保障のあり方はそうでなければならないと思っておりますが、具体的には年金とか医療とかあるいは介護とか、そのほかの福祉の施策というように、個別政策にそれぞれの目的がありまして分かれておるわけでございますが、全体として、これから少子高齢化を迎えますと、かなり額もいろいろな面で多くなることはもう否めない事実でございます。そうした中で、今後、少子高齢化の現実というのが迫ってくる中で大体どのようなめどをつけるのかということは大変重要な観点だと存じます。  これにつきましては、かつて国民負担率という概念で社会保険料と租税負担の合計でその負担率を五〇%以下にするというようなことが、小渕内閣では明定しておりませんけれども、前の内閣等でそのようなことも決められたことがございます。私は一つの尺度ではないかと思うのでございますが、今後もやはりこうした全体的な鳥瞰とか展望を描きながら、やはり具体的には個々の施策に展開されるわけでございますので、それぞれの施策の展開の効率化、合理化を図りながら経済全体との調和も図っていくというようなことで、年金制度、医療改革問題、介護問題、福祉の問題等に取り組んでいかなければならないと思っておりますが、今直ちに数字的な目標値でどうのこうのということにはなっておりませんけれども、そういう考え方が極めて重要であることは委員のおっしゃるとおりだと存じます。
  34. 久野恒一

    久野恒一君 ありがとうございます。ぜひしっかりとした政策を立てて実施していただきたいと思います。  確かに、医療費が既に三十兆円になっております。これからも医療費はだんだんとふえてまいりまして、その意味では今のうちから大臣がおっしゃったようにいろんな社会保障費を大切に使っていく必要があるのではないか。年金は余り私は下げない方がよろしいという信念を持っております。  そこで、ただいま中原先生からも御指摘ございましたけれども、福祉も下げることもできない、そうすると社会保障全体の中で下げられるところは医療保険のむだを極力なくしていくことであろう、それからこれから新しく入ってくる臓器移植のようなものをどう取り扱っていくかということが大切であろうと思って大臣に御確認したわけでございます。  では、次に移らせていただきます。  若い人が余り病気にかかったことがないのに医療保険とか年金、将来もらえるかどうかわからない、そういう年金を一生懸命掛けているということは、将来の安心、そのために期待を持って掛けているのだろうと思います。そういう意味では、今回できましてどんどんやろうとしている臓器移植がそっちの方にどんどん使われていってしまうと、将来年金がもらえなくなってしまうんじゃないか、あるいは自分が病気になっても何十万も払わなくちゃならない、そういうことにもなろうかと思います。  そういうことで、この臓器移植の問題は医療費でもって取るか取らないか、あるいはもう自分の支払った社会保障、そういう制度の中でもってこれをとらえるということは、国民的な了解を得ないとなかなか使っていけないんじゃないかなと私は思うわけでございます。臓器移植医療だからといって、即医療保険を使っていくというわけにはまいらない、そういうふうに思うわけでございます。  確かに、人工透析をやっていた人が腎臓移植したら安くつく、だから透析はしなくて済むから腎臓移植した方がいい、そういうふうな発想だけで、これも一つかもわかりませんけれども、それだけでやるのではなくて、移植全体をどういうふうなとらえ方をしたらいいのか、やっぱり新しく考える必要があるのではないか、そういうふうに思うわけでございます。  そういう移植の財源というものに関して、何かお考えがあるようでしたらお聞かせ願えればありがたいと思います。
  35. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 心臓移植等のような臓器移植につきまして、費用の面につきましてのお尋ねでございました。  先ほど、清水委員からのお尋ねにもお答えを申し上げましたように、臓器移植につきましては、今日まではその普及動向等によりまして医療保険対応というものを段階的に考えてきているわけであります。ただ、心臓移植のような新規技術に関しましては、その流れで申しますと、まず高度先進医療としての技術的な評価を行うかどうかということが検討課題になろうかと思います。  さらに、それを超えまして、今、先生指摘のように、医療保険あるいはそのほかも含めまして、この財源をどうしていくかという点につきましては御指摘のような観点を含めまして、一方、また我が国移植医療の推進あるいは患者負担軽減等をどう図るかというような両面から、医療保険適用につきましては中央社会保険医療協議会における検討というようなものを経まして考えていかなければならない課題であろうというふうに考えておるところでございます。
  36. 久野恒一

    久野恒一君 私は、医療臓器移植というものは全く性格が違うのではないか、そういうふうに思っております。  医療とは、いつでもどこでも万が一のことがあれば、もう本当に日本全国津々浦々どこへ行ってもかかることができます。しかも、自由意思でもってかかることができます、保険料を納めていない人は保険扱いにはなりませんけれども。  臓器移植の場合は、指定されたところでもって遠いところへ行って、あるいは臓器をもらおうと思ってもドナーの関係でもって適合しないともらえない。そういうことでもって、運搬費もさることながら、いろいろな制約が加わってまいります。そうなりますと、自分の意思だけでもって臓器をもらえるかというと必ずしもそうではない。そういうこともありますし、先ほど十五歳の人の問題とか、学生などは保険なんかは掛けていないんだけれども、扶養家族の料金でもって臓器をもらうという場合もあろうかと思いますけれども、両者はやはり微妙にニュアンスが違っていると思います。  このように、違った性格のものを同じ財布といいますか医療保険の中から出していくというのはやはり問題があるのではないかと思ってお尋ねしたわけでございます。そういう意味で、ひとつ慎重にお決めいただければありがたい、そういうふうに思うわけでございます。  このようなことを考えますと、臓器移植の場合には、どうしても全体を乗っけてしまいますと医療費は上がってまいりますから、一つの提案でございます。高額医療費、普通の病人だと六万三千八百円ですか、そのくらいだったと思いますけれども、この臓器移植の場合に限って差をつけているわけではないのですけれども、やはり相当高額なもので民間の任意保険、特約つきでそういうものにかかるとか、何とかして高額療養費、これの上限をつり上げておいた方が、窓口で五百三十円を払うおばあちゃんの方と財布が一緒だった。二割負担、三割負担だったらそれなりのお金は取られるかもわかりませんけれども、何千万の二割と、それから本当に一万、二万の人の二割とではやはり多少違ってくる、そういうふうに思うわけでございます。  そういう意味で、高額医療費に差をつけたらどうかということに対して、難しい問題ですけれども大臣はどういうふうにお考えでしょうか、お尋ね申し上げます。
  37. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 臓器移植の場合に今保険適用されているのがだんだん定着していると思いますが、例えば心臓の場合、委員の御指摘のようにかなり高額な経費を要するということは事実でございます。したがって、先端医療高度先進医療としての評価をまずやった上で、その様子を見ながら医療保険でどのような形でこれを適用していくかという問題があろうかと思います。  高額療養費制度を今設けておりますが、近代医学の向上、技術の向上その他によってかなり高額な医療費を要する場合もございます。したがって、高額療養費制度というのが設けられていると存じますので、この制度の趣旨を生かしながらも、委員のおっしゃるように医療の効率化、合理化というのはどうしても考えていかなければなりませんので、なお引き続き検討はしてまいりたいと存じます。  ただ、委員のせっかくの御指摘でありますが、臓器移植の問題は医療保険の外枠であるべきであるというような考え方も一つ考え方かもしれませんが、現在のところは、私どもそのほかにも高額医療費を要する問題も多々ございますので、それらとのバランスを考えながら対応していくべきものではないかというように考えております。
  38. 久野恒一

    久野恒一君 いろいろと考え方もあろうかと思います。何とか医療費全体を抑えていかないと、将来の社会保障制度というものが二〇二五年には三百兆にもなってしまう。現在は七十兆でございますけれども、大体三百兆も払えるんだろうか、そういう問題にもつながっていきますので何とか医療費を抑制していきたい、それが私の考え方でございます。  次に、質問の四番は結核のことでございます。そして、質問の五番が緊急事態宣言結核の問題でございますので、四番、五番は省略させていただきます。  その中で、前回、国民福祉委員会の中で知的障害者法律の一部を改正する法律案を審議したところでございますが、結核病棟と精神病棟における入院時医学管理料が一般病院と同じなんです。その際、私は看護料の方も調べたんですけれども、看護料も一般病院と同じに書いてございました。このことは全く発想が違っておりまして、二週間から一カ月で治るような結核はない、そういうふうに私は思うわけでございます。  そういう中で、この結核というのは最初から慢性疾患でありまして、最初は確かに肺炎を治さなければならない、医療費もかかる、そういう意味で最初の部分はある程度高額でいいかもわかりませんけれども、一カ月単位でもってどんどんと入院費が下がっていくという一般病院と同じ扱い方を保険点数上しているということ、しかもめったに入ってくるか入ってこないかわからないところに二対一の看護体系をつける、これもやはりおかしな発想ではないかなというふうに思っております。三十日を超えるとペナルティーがある、二対一の看護体系に対しては。結核自身は慢性なのか急性なのか、疾病として。  そうなりますと、慢性で当初は医療費はかかるかもわかりませんけれども、しかし基本的には、落ちついてしまえば慢性でもって三カ月、六カ月、一年というような区分けをした方がいいんじゃないか、診療報酬の分け方として一般病院とは分けた方がいいんじゃないか、そういうふうに思うわけでございますが、どなたかの御答弁、よろしくお願いいたします。
  39. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 結核の病棟につきましての診療報酬上の扱いについてのお尋ねでございます。  まず、入院時医学管理料全体についての性格でございますけれども、この趣旨は、入院期間におきます医学的な指導等の患者管理を評価したものでございますけれども、入院期間が長くなるにつれまして一般的には医学的管理の必要性というものは減少する、そういうことを配慮いたしまして入院期間に応じて逓減するという仕組みをとっているわけであります。  しかし、今御指摘結核のように、その性格上入院期間がある程度長くなって入院患者に対する医学的な指導等の患者管理も長期にわたるという性格の疾病に対しましては、先生は今同じように逓減制をとっているとおっしゃいましたけれども、一般病棟に比べましてなだらかな逓減制にするというような配慮をいたしております。それからまた、平均在院日数といったような要件を課さないというような配慮もいたしておるところでありまして、そういった点で結核の病棟についての特殊性といいますものは現在の体系の中でも考えてきております。  しかし、御指摘結核の評価方法につきましては、さらにそれを敷衍して、先生も御指摘ございましたように、急性、慢性それぞれの評価のあり方ということにつきましては、診療報酬改革の中で出来高と包括の最善の組み合わせ等の議論を踏まえながら、やはり診療報酬改革の一つの取り組みの中での検討課題だというふうに思っておりますし、その中での逓減制をどういうふうに考えていくかということも検討課題であろうというふうに思っております。
  40. 久野恒一

    久野恒一君 どうもありがとうございました。  話は違うのでございますが、感染症のうちMRSAの患者、主に虚弱体質の老人とかあるいは小児とか、院内感染防止のために入院している間にはそれなりの気を使って入院させているわけでございます。ところが、一般病院の場合、一般病院介護保険適用になりますと、大体三十日ぐらいで出ていってもらいたいというようなニュアンスがあろうかと思いますけれども、MRSAが、例えば床ずれあるいは手術の傷口、こういうところにくっつきますと一カ月も二カ月も三カ月も治りません。そうなりますと、やはりなるべく短期でもって帰したい、急性病院は短期で帰したい気持ちだが、なかなか帰れない。  そこで、私は、この前の行財政改革のときにも大臣にお尋ねしましたけれども、介護保険適用になりますと一般病院の中から、今は急性期も慢性期も入っていますが、慢性期が外へ出るわけでございまして、このあいた部分の何とかうまい利用方法はないのかということでもってお尋ねしたわけでございます。  MRSAにかかると、時間がだんだん迫ってきたものではしょらせていただきますけれども、同じ病院の中であいた部分はMRSAの患者さんを置いておく、自宅に帰すとそれが老人とか子供に感染しちゃう、結核と同じでございますけれども、そういうような病棟も置いておく必要があるのではないか。それは看護体系をちゃんと二対一から十対一ぐらい、それをちゃんと区分けして、そういうような体制づくりといいますか、そういうようなものに病院を振り分けていった方がいいような気がするわけでございますけれども、大臣のお考えをちょっとお尋ねしたいと思います。
  41. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 診療報酬の決め方のやや技術的な部分も含めてのお尋ねでございますので、私から説明をさせていただきます。  今、先生指摘のございました看護料につきましては、現在それぞれの保険医療機関一つの単位といたしまして、看護職員の配置比率と平均在院日数との相関によって届け出によりまして評価をするという中で、先ほどの平均在院日数三十日の縛りというようなお話がございましたけれども、そういう仕組みになっております。  その際には、慢性期の医療を行います特殊疾患療養病棟だとか療養型病床群等の病棟を除きまして、急性期医療を行うこととされている病棟について平均在院日数等の計算をすることにいたしておりますので、そういう意味での病棟単位での効率的な医療提供というような点についても配慮しながらやってきております。したがって、急性期医療を行う病棟の中をさらに細分化するということが、医療提供の効率性という面ではいかがなことになるだろうかといったような点については少し検討が要るのではなかろうか、慎重に検討しなければならない点があるのではなかろうかというふうに思っております。  しかし、この点につきましても、先生の御指摘も含めまして、現在の診療報酬の抜本改正の課題といたしまして医療機関の機能分担のあり方というものをどう考えていくかという基本論がございますので、そういった大きな枠組みの中で考えていく課題ではあろうと思いますけれども、現在の仕組みを前提にして、今、先生おっしゃったようなことを余りに細分化することにしますと、かえって非常に弾力性を欠くようなことになりはしないかということを懸念しているということを申し添えさせていただきたいと思います。
  42. 久野恒一

    久野恒一君 ありがとうございます。  時間があとわずかになりました。現在、一般病床は百二十六万床のベッドが全国にあります。新ゴールドプランに沿って療養型病床群が十九万床、それから老人保健施設が二十七万床。こうなりますと、そういう病院を将来は一緒のベッドカウントにしますよというふうになりますと百七十万床になってしまうわけでございます。現在のベッド回転率が八三%でございますので、どうしても六十万床から七十万床ぐらいはベッドがあいてしまう、それを放置するとどうしてもそこを何とか埋めなくちゃならない、経営が成り立たない、そういうことがあってただいまのことをお聞きしたのでございますが、この回答は結構でございます。  あとは、時間がなくなってきたもので、医療過疎地のことについてお尋ね申し上げたいと思います。  病院がございません。そういうわけで、住民の方々病院がどうしても欲しいんだと言っておられますけれども、なかなかそういう過疎地のところへは病院は進出してまいりません。そういう場合の救急医療体制についてちょっとお尋ね申し上げます。
  43. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 先生がおただしの僻地における救急医療というのは、実は先生御案内のとおり大変難しい問題でございます。  と申しますのは、結局、救急医療というのは結構それぞれ専門がありまして、専門性の高いお医者さんがいていただかなくちゃならない。しかし、実際には、人口ベースがある程度なければ、逆に言うとその先生方が専門性を持っていてもそういう病院に行くというわけには実際としてなかなかいかないわけであります。そういうことで、僻地の方に、例えば救急医療のためにいい病院整備するということは実際上大変難しいかと私どもは思っております。  従来から、僻地保健医療対策というのは、一九五六年、昭和三十一年からずっと年次計画をつくってやってまいりまして、平成十二年までで第八次計画が終了します。平成十三年から第九次の僻地保健医療計画という問題に取り組む検討会を開くことにしておりますが、その中で先生が今おただしのような問題についてもよく検討していかなくちゃいけない問題だと思います。  今やれることとしては、僻地にあります診療所を助けるための中核病院との情報伝達、例えば画像を送ってアドバイスを受けるとか、それからどうしても動かさなくちゃならない患者さんが出た場合には、消防庁、場合によっては自衛隊の御協力を得てヘリコプターを使うなど、一部で行われているところでございますが、僻地等の人たちの救急医療を守るためには、そういう最近の文明の利といいますか、そういうものも活用した対策というのを考えていかなくちゃいけないのかな、こんなふうに今思っているところでございます。
  44. 久野恒一

    久野恒一君 時間が来たようですけれども、一分間だけ。  第三次医療法改正案の中に地域支援型の病院というのが位置づけられております。二次医療圏ごとにそれがある。ところが、なかなか地域支援型の病院というのに手を上げてくる病院が私はないと思います、三次救急ですから。したがいまして、二次救急までだったらできるんですけれども、三次救急となるとなかなか手が上げられない。  そうなりますと、やはり県の一カ所にちゃんとしたスタッフをそろえて、そこに二十四時間体制で専門医がだれでもそろっている。非常にむだなようかもわかりませんけれども、全県から集まってまいりますので、救急でもって専門的な治療ができる。画像処理だけではとても治すわけにはいきません。  そういう意味で、ヘリコプターを使う、このことを、時間がないのでお答え願いたいんですけれども要望にとどめさせていただいて、何とかヘリコプターを使って山の中からも中核病院に運べる、そういう体制づくりをよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  45. 常田享詳

    ○常田享詳君 自民党の常田でございます。  まず、緊急の通告で申しわけなかったんですが、介護保険制度について一点お伺いをさせていただきます。  厚生省は、昨日、介護保険制度で六十五歳以上の高齢者が支払う保険料に関する全国調査の中間集計を医療保険福祉審議会に報告されたわけであります。その結果は、平均二千八百八十五円、最高六千二百四円、そして市町村格差四・四倍という結果が出たわけであります。  そこで、この結果を踏まえて、来年四月実施に向けての介護保険制度に対する厚生大臣の改めて不退転の決意をお尋ねしておきたいと思います。  また、中原先生からも御指摘がありましたが、高いか安いかという議論も大切でありますが、要は安くて良質なサービスがなされるかどうかということが最も大切なわけであります。そこのところに視点を置いてのこれから来年の四月に向けての諸施策が打たれていかなければ、私は本来の諸施策の姿を見失うのではないかという危惧をしております。そのことに対しましての御所見もあわせて厚生大臣にお尋ねいたします。
  46. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 保険料がどの程度になるかというのは非常に関心がございました。  そこで、厚生省としては介護事業計画の基礎になる各市町村保険者の見込みを聴取いたしております。そして、それを発表させていただいております。今御指摘のように、平均二千八百八十五円という金額になっておりますが、実態はばらつきがいろいろあるわけであります。二千円から四千円未満で大体市町村割合で九〇%を超えておりますし、人口割合でも九八%程度になっております。したがって、例外的に高いところもございますが、また例外的に千五百円未満のところもございます。  そのようなばらつきはございますが、私どもとしては、今おっしゃられたように安くて良質な介護サービスをいかに提供できるかという観点は非常に重要な視点だと思っておりますので、これらを見ながら、また介護施設基盤整備状況も近くはっきりいたしてまいりますので、総体的に判断いたしまして円滑な実施ができるように、そして何よりも私は所管大臣でございますが、法定されたとおり、来年の四月には介護保険実施に持っていきたいと思っておるところでございます。
  47. 常田享詳

    ○常田享詳君 大変力強い厚生大臣の決意を承りまして安心いたしました。  それでは次に、医療保険制度の抜本改革についてお尋ねしたいと思います。  本来、医療保険制度の抜本改革は平成十二年度から実施されるわけでありますから、来年度予算の概算要求シーリングまでにはその全体像が明らかになり、基本的な方向性を国民の前に示すことが必要であるわけであります。ところが、非常に残念なことに意見調整が難航いたしておりまして、いまだに明確な改革の方向性が出ていないわけであります。その一方では、健保組合の不払い運動等に見られるように、国民の間にはいろいろ各界各層でいら立ちも起こってきているわけであります。  私も地元に帰っていろいろお話を聞いてみますと、アンケート調査等にありますとおり、国民の不安は雇用の問題、健康の問題、老後の問題であります。やはりこの三大不安を解消することが政治の緊急の課題であるというふうに私は思っております。二十一世紀の医療、介護、年金、いわゆる社会保障制度の全体像というものが見えてこないところに国民の財布のひもがなかなか緩まない大きな原因がある、私は地元を歩いてみましてそのことを実感するわけであります。  そこで、まず一点目として、医療保険制度改革の今後の見通しについてお伺いしたい。あわせて私は、今申し上げたように、小渕内閣に国民が期待しているのは二十一世紀の社会保障、先ほど久野議員から、七十兆がこのままでいくと三百兆にまでなるというようなお話がありましたけれども、医療と介護と年金の全体像が早急に国民の前に明らかになるということが大切ではないかというふうに思うわけであります。こういったことに対する厚生大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  48. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今御指摘のように、当面の課題としては年金制度の改革と医療保険制度の改革、そして介護保険の円滑な実施というように大きな三本柱だと私ども考えております。  そのうちで、今御指摘医療保険制度の抜本改革につきましては、私どもは十二年度中にこの改革をなし遂げたいということで所要の結論を急いで、そして法案化して十二年度からやりたいと思っておるわけでございます。  御案内のように、精力的な検討は行っておりますが、いろいろ関係者の意見等の調整も手間取っておりますし、なかなか合意が得られないという点、私どもの不徳のいたすところでございますけれども、何としてもこれは概算要求までにはあらあらの方向だけを出しませんと概算要求ができませんから、その最後の努力もずっとしておるつもりでございますが、なお引き続き概算要求までに方向性を出せるものなら出していきたいというように思っておるところでございます。  なお、国民が安心、安定できる全体的な社会保障制度の確立というのは極めて重要な課題でありまして、小渕内閣としても将来への安心ということで大きな柱にしていることは事実でございます。したがって、これらが全体的にどう展開していくのかという姿をお示しすることもぜひ必要かと思っております。  今までの検討のところではこれをどういう数値であらわすかでございますが、租税負担率と社会保険負担率、これはいずれも強制的な負担率になりますから、それらが余り高いものになっても困るという点がございますので、かつては五〇%以下に目標値を定めたこともございます。そういうことも頭に置きながら全体としての視野を失わないように、しかし同時に、個別のそれぞれの特色がありますから、その合理化、効率化を図って、全体として社会保障制度の構造改革を進めていかなければならない、このように存じておるところでございます。
  49. 常田享詳

    ○常田享詳君 宮下厚生大臣に大きな期待をかけておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  やや細かく入りますけれども、また厚生大臣としても答えにくいことかもしれませんが、タイムリミットが来ておりますので、あえて聞かせていただきたいと思っております。  七月二十一日付の日本経済新聞の一面トップに「健康保険料実質引き上げ」、「介護保険料は別枠」の表題で、厚生省介護保険料を健康保険料の法定上限内におさめる当初の方針を撤回し、別枠にする方針と報道されております。  これも、先ほど来申し上げておりますような医療保険制度改革の大幅なおくれに起因するものと思われますが、まず、この点についての御所見を承りたい。  あわせて、薬剤に係る定額一部負担を来年度から廃止することが検討されているというふうに聞いております。その影響額は波及分を含めると八千百億円になるわけであります。これは厚生省の試算であります。平成十二年度のシーリングを目前にして八千百億円に相当する財源を一体どこに求めようとしておられるのか、このこともあわせて簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  50. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この健保組合あるいは政管健保の料率でございますが、これは御案内のように法定されております。従来、介護保険議論の中では、その法定の枠内に介護保険料の二号保険者の負担もおさまるであろうという前提で議論されたように承知しておりますが、現実には健保組合の財政状況というものは、やはり賃金が上がりませんし、完全失業者の数も多いというようなこともあって、かなり経済との関係で悪化している状況にございます。  したがって、二号保険者の保険料をこの上付加して、そのシーリングである料率、例えば千分の九十五の範囲内におさまるかどうかという問題もございますので、私どもとしては、やっぱりそれらを頭に置きながら、場合によりますとその法定枠の修正もお願いしなきゃならぬのかなというような一面も考えつつ、健保組合等あるいは政管健保の維持も図っていくということを考えておるところでございます。  なお、八千百億円の財源の問題でありますが、これは薬剤費定額負担との絡みもございます。私どもは抜本改革をやるまでの暫定的な措置として、特に老人医療、七十歳以上の方々は国がこれを立てかえ払いする制度にしてありますが、あくまで抜本的な改革を前提とした措置でございますから、今お話しのように医療保険の改革をぜひともなし遂げていきたいというように思います。  単純に薬剤費の定額負担をやめるということであれば、今言ったようなことが負担としてのしかかってくるわけでありますので、私どもとしては、やはり少なくとも患者負担の水準としては薬剤定額負担がある場合と同水準になるような、少なくとも最小限中立的な考え方によって対応する必要があろうかと思います。  いずれにいたしましても、この医療保険の問題は最終的には与党の中での協議を踏まえて、先ほど申しましたようになるべく方向性を早く打ち出していきたい、そのような努力をさせていただくつもりでございます。
  51. 常田享詳

    ○常田享詳君 医療保険制度の改革につきましては、与党内、自民党内でもかなり努力をしているわけでありますが、もうシーリングの時期が来ておりまして、やはり私はここで厚生大臣のリーダーシップというものが問われているんではないかと思いますので、そのことに大きな期待をかけて次の質問に移らせていただきたいと思います。  医療提供体制についてお尋ねをしたいと思います。医療機関の評価についてであります。  先般、これも報道で出ておりましたが、日本の五つの病院で心筋梗塞の治療法を比較した結果、ある病院ではバイパス手術ばかり、別の病院では血栓溶解剤の投与、さらに別の病院では血管にカテーテルを入れて広げるという方法ばかりというようなことで、一つの疾患に対しても治療法に極端な隔たりがある。そして、死亡率にも最大五倍の開きがあったということが報道されておりました。まさに、治療法が標準化されていない結果だというふうに思うわけであります。  我が国でも二年か三年前に財団法人日本医療機能評価機構を設立したわけでありますけれども、病院施設や薬剤管理、人事管理の適切さ等の評価を初め既に二百二十八の病院に認定証が発行されているというふうに聞いております。  一方で、現在、広告規制の緩和が検討されているわけでありますが、病院が認定を受けてもそれを広く国民が知ることができないわけであります。国民病院を選ぶときに、やはり認定を受けている、受けていないということがはっきりわからないと認定されている意味はないわけであります。  そこで、厚生省に伺います。広告規制緩和の動きにあわせて、機能評価の認定の内容を広く国民情報開示すべきだと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  52. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 厚生省の私どもの局では、医療提供体制見直しということを昨年の九月以来ずっと審議会議論をさせていただきました。そして、この七月一日に医療審議会中間報告をまとめていただいたわけでございます。  そのまとめに当たって、今、先生がおっしゃられましたような医療機能評価を受けたものの結果をどうするかとか、それからその他、広告のことをどうするかということについても十分な議論が行われたところでございます。  この報告の中で、患者が適切な医療機関を選択するために必要な情報は可能な限り患者国民に対し提供していくことが望ましく、医療機関医療従事者についての事実や客観的情報、中立的な医療機能評価機関が行う医療機能評価の結果など、検証が可能な情報については幅広く広告することができるようにすべきであると述べられているわけであります。  御指摘の点も含めまして、厚生省といたしましては、広告規制の緩和についてこの報告の内容を踏まえまして、今後の医療提供体制見直しの一環として関係者の合意を得つつ、成案を得るべくさらに検討を深めてまいりたい、このように思っております。
  53. 常田享詳

    ○常田享詳君 広告規制の緩和に従って国民情報開示していただく、そういう方向で進めていただきたいと思います。  次に、同様に医療提供体制に関連いたしまして、EBMについてお尋ねをしたいと思います。いわゆる根拠に基づく医療についてであります。  厚生省医療技術評価推進検討会では、医療資源を効率的に活用し、医療の質と患者サービスを向上させる手段として、根拠に基づく医療、いわゆるEBMの普及、推進について検討され、報告書をまとめられたと伺っております。  そこで、厚生省に伺います。実際にEBMを導入することにより、どのような効果を期待しておられるのか。加えて治療ガイドラインの作成、普及について今後どのように取り組まれる予定なのか。また、EBMは治療のみならず予防、診断、予後、副作用などあらゆる臨床上の疑問を取り扱うことから、医師はもちろんのこと薬剤師や看護婦を初めとする他の医療従事者との間で有用なエビデンスの共有が重要になりますが、この点についてお尋ねをいたします。
  54. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) まず、EBMに関しまして、EBMというのは略語でございまして、英語のエビデンス・ベースド・メディシン、日本語に訳しますと根拠に基づく医療という言葉でございます。  このEBMに関しまして、医療技術評価推進検討会というのを起こしておりまして、今、先生がお話しされましたように、ことしの三月二十三日に報告書を出させていただきました。  このEBMと申しますのは、インターネットだとかCD—ROMを利用いたしまして入手した最新の科学的根拠に基づいた医療を行うという行動様式と受けとめておるわけであります。  このEBMの効果といたしましては、経験の浅い医師や医学雑誌等の情報の入手が難しい遠隔地に勤務する医師等を含め、すべての診療の場で最新かつ最適な情報に基づく治療法等を容易に活用することができるわけであります。二つ目に、治療法等の選択の難しい疾患の場合においても、最新かつ最適な情報に基づく治療法等を容易に活用できる。それから三つ目に、根拠を明示するためにインフォームド・コンセントの実践にも役立ち、医療の透明性を高め患者と医師等の間の信頼関係を構築するということなどが挙げられているわけでございます。  現在はこのEBMという考え方に基づいて、先生方はお忙しいので、そのたびにコンピューターを起こしてCD—ROMを見るとか、インターネットにつなぐというのは大変なことでございますので、大変ポピュラーであったり、なおかつ重要な疾患であるというようなものを選びまして、今、五疾患について実は治療のガイドラインというものをつくることといたしておりまして、既に作業を始めておるところでございます。  これができますと、先生方には、患者さんを診られたときに、このガイドラインにはどう書いてあるのか、それと自分の目の前の患者さんを照らし合わせてそのとおりいくことがいいのか、またこの人は日本人特有の何か体質があるんじゃないかと、こういう人はまたそれを少しもとにして変化をさせていくというようなことを考えていくということによってよりよい医療国民提供していただく。  先ほど先生が御指摘になられましたように、各大学によって心筋梗塞の患者さんの治療法が違う、そしてその効果も違うというようなことであっては、限られた医療資源を適正に使うということから見ると問題があるということでございまして、これは先進国ではこのEBMの考え方に基づいていろいろガイドラインをつくってやられておるところです。残念ながら日本にはまだ日本人向けのものはでき上がってはいないのでございますが、今つくり始めた、こういうことでございます。  今のところ一番大事なことは、全国のすべてのお医者さん、これはこれから卒業してくる若い医学部の学生さん、そういう方々にEBMというものの考え方、科学技術に基づいた医療をきちっとやりましょうと、こういう考え方をまず御理解していただくことが一番大事かと思うのであります。  そして、目の前の患者さんに最適な医療をやっていくという考え方が大事ということで、厚生省もその考え方の普及を私どもの局で必死に今いたしているところであり、実は日本医師会の方でも同じ考え方に立ってこれはやっていただいているところでございまして、そういう意味では、比較的最近短期間の間に多くの方々に御理解をいただくようになったわけであります。  そして、今、先生がお話しのように、これは医師だけの問題かというとそういうことではないのでありまして、医療というのは医者だけでやるわけではありません、歯医者さんも薬剤師さんも看護婦さんも、それぞれいろんな方々がいらっしゃいます。そういう人たちと協力して医療をやっていくわけですから、このEBMについても、関係者一同、いろいろ御意見をいただきこの施策を進めてまいりたい、このように思っておるところであります。
  55. 常田享詳

    ○常田享詳君 期待をしたいと思います。  次に、院内調剤業務の外部委託について伺いたいと思います。  薬剤師は、医師、看護婦と同じようにその業務の専門性と特殊性が重視されるべき職種であります。ところが、最近、医療機関院内調剤業務について外部委託を検討すべきとの声が一部出ております。院内の調剤業務を外部委託することは、チーム医療の進展や医薬品の適正使用の推進、安全性確保を妨げるだけでなく、医療事故の防止など広く病院内で行われているリスクマネジメントに果たしている薬剤師の役割から見ても問題が大きいということで、私は反対であります。  そこで、厚生省に伺います。院内調剤業務を外部委託にすることについてどのようにお考えか、御所見を伺います。
  56. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 現在、医療機関の行う業務のうち、一部の業務につきましては外部委託をすることが認められております。その業務は、検体検査業務、給食業務、清掃業務、患者搬送業務、医療機器の保守点検、医療用ガスの点検、洗濯、そんなようなことが入っておるわけでございます。  しかしながら、医師の診断業務等医療機関みずからが行うことが必要である業務につきましては、外部に委託することは認められておりません。御指摘院内において行う調剤業務についても、外部委託することは認めておりません。
  57. 常田享詳

    ○常田享詳君 外部委託は認めないという明快な答弁、ありがとうございました。  最後に、医療事故の問題についてお伺いいたします。  医療事故が多発しておりますが、専門家の間ではこれは氷山の一角にすぎないとの指摘もあります。日本看護協会出版会の「「看護事故」防止の手引き」という本が出版されております。そこでは、平成七年九月に行った調査四千七百九件の事故事例の分析として、看護上の主な事故事例の第二位が注射の事故、第四位が投薬の事故であると指摘されております。  つまり、医療事故を防止するためには、注射剤の混合や処置薬、消毒薬の調剤における薬剤師の役割を明確にすることが非常に重要だと考えております。  そこで、病院におけるリスクマネジメントにおける薬剤師の役割について厚生省はどのようにお考えになっているのか。また、国公立病院、国立大学附属病院を初めとする各病院に対して具体的にどのような指導を行っておられるのか。以上二点、お尋ねをいたします。
  58. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 先般まとめられました患者誤認事故防止方策に関する検討会の報告書におきましても、医療事故を防止していく上で、医師を初めとする職員の理解と積極的な参加を得ることや事故防止に有用な情報は職員全員で共有することなど、組織全体で取り組むリスクマネジメントの手法の導入が重要であると指摘をされておるところでございます。  このように、医療事故を防止していくためには、医療従事者のそれぞれがその役割と業務に応じて積極的な参加を果たしながら組織全体として取り組むことが求められると理解をいたしております。こうした観点から、病院における薬剤師についても、チーム医療を担う医薬品の専門家として医療事故の防止の取り組みにおいても積極的に役割を果たしていただくことが期待されるものと考えておるところでございます。  そして、これは厚生省の医薬安全局の企画課長さんからも、消毒剤による医療事故防止に係る日本病院薬剤師会の提言というのがあって、これも各関係機関に通知をされております。例えば、「医薬品の適正使用を推進する観点から、注射剤の混合、患者への配薬、処置薬や消毒剤の調製などの病棟における薬剤業務についても、薬剤師が行う業務として位置づけることが望ましいものであること。」。それから「消毒剤で傷口などを加圧洗浄するときの注射器は、着色した注射器や注射針が装着できない注射筒様のものを使用することが適正であること。」。こういうような注意書きも連絡を出しているところでございます。  それからあと一つ厚生省の方としては、先ほどありました患者誤認事故防止方策に関する検討会の報告書を受けまして、ことしの五月二十八日に私どもの局の総務課長名で関係機関にこういう防止策を講じていただきたいということの通知を発し、それからこの検討会の報告書を全部で一千冊つくりまして関係機関に配付をしたところでございます。それによりまして、関係機関も相当進んでいる、まだ細かいデータまでは持っていませんけれども、この事故防止対策ということについて相当努力をされているというふうには伺っておるところでございます。
  59. 常田享詳

    ○常田享詳君 時間が来ましたので、質問をやめて要望で終わらせていただきたいと思います。  医薬分業をさらに推進していただきたいということであります。  日本薬剤師会が八百五十三薬局を対象に平成十年度の調査を行いました。その結果、調査期間中の疑義照会の処方せんは二・一八%でありました。これはそれだけ見ると少なそうに見えますけれども、平成十年の全処方せん発行枚数四億枚に換算すると、年間八百万枚以上の処方せんについて疑義照会が行われているということであります。これだけを見ても、いかに医薬分業がダブルチェックの機能を果たしているか、また重要な役割を果たしているということを御理解いただけると思います。  あわせて、平成九年九月の薬剤費負担導入により院内処方で多剤投与が一割減りました。しかし、既に医薬分業の実施のもとでは一割は多剤投与が減っております。ということは、医薬分業はそういう多剤投与そのものに対しても非常に効果があるということでありますので、厚生省では医薬分業を進めていただいておりますが、さらに進めていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  60. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時開会
  61. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、社会保障等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  62. 堀利和

    ○堀利和君 臓器移植法が施行されましてから、ことしになって四例の実施が行われたわけです。この臓器移植というのは、人の死を前提、特に脳死という新しい死の概念を国民が受け入れたところでの臓器移植医療ということですから、私はこの問題については国民的にも非常にこれは関心を持ち続け、またその移植医療の透明性、厳格さあるいは公平性、公正に行われる、こういうことに注意を払わなきゃいけないだろうと思います。  そこで、この間の四例を見る中で、厚生省としては、臓器移植法、規則、ガイドライン、そしてこれを補足する形でマニュアルというのがございますけれども、現行のマニュアルでは不十分だということで新たに改定をしようというふうに伺っておりますけれども、そのマニュアル改定のスケジュールをまずお伺いしたいと思います。
  63. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 今まで四例の中でこのマニュアルがわかりづらいということが理由でミスもあったわけでございます。したがいまして、今、八月を目途にマニュアルを新たにつくる作業を行っているところでございます。
  64. 堀利和

    ○堀利和君 実は、第一例目の高知赤十字病院における臓器提供に当たって、御案内のように手順を間違えたということがあるわけです。それは、現行のマニュアルが極めて不十分で、根拠条文あるいは参照先を示しているだけで、いわば現場でああいう状況の中でわかりやすく具体的に示されていなかったということが言えるかと思うんです。  ですから、本来、法的脳死判定に当たっては脳波測定をやってその後に無呼吸テストをやるところを、これが逆になりまして、無呼吸テストをやってその後に脳死判定をするというようなことが起こってしまったわけです。  その原因は、昭和六十年の古い資料に基づいたいわゆるハンドブックを参考にして実施されたというようなことがあったようなので、そういう意味では、まさにああいう緊急的な事態の中での実施ですから、だれが見てもわかるような、そしてこの一冊があれば間違えることはないというようなマニュアル作成しなければいけないと思いますけれども、この辺についての新しく改定するマニュアルの中身については今どのようなお考えでいらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  65. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 現行のものにつきましては、委員指摘のとおり、法律から施行規則からガイドライン等、いろいろ古いものも含めまして一冊になっているわけでございまして、現場におきましてはあっちこっち開き直さなきゃいけないわけでございます。  そういうことが事故の発生につながるということから、私どもといたしましては、先生指摘のように、この脳死判定の手順についてその一冊を現場で見ればだれにでもわかる、そういう考え方のもとに今作成をしているわけでございます。緊急事態の中でだれにでも理解できる、そういう考え方で今つくっているところでございまして、先生の御指摘も踏まえまして、今後の対応に当たっていきたいと考えております。
  66. 堀利和

    ○堀利和君 ぜひそのようなマニュアル作成を実現していただきたいことを改めてお願い申し上げたいと思います。  次に、臓器移植法に基づいて四例がございましたが、慎重に申し上げなきゃならないと思いますけれども、法律が制定される以前も脳死に限りなく近いグレーゾーンといいますかぎりぎりのところで臓器摘出がされた、そして移植がされたというケースもあったわけです。  そのときには、家族方々臓器提供することをよしとして、家族の中で亡くなっていくときに、その臓器提供によって新たに生命がよみがえるのであればということで承諾したわけですけれども、半年たちあるいは一年たつと、家族の者としては臓器提供して本当によかったのかどうかという不安あるいは後悔という気持ちもわいてくるわけです。そういう意味では、今後、ドナー家族に対してのフォローアップといいますか、特に精神面のカウンセリング等のフォローアップが必要ではないかというふうに私は思うわけです。  現行のマニュアルでは、ドナー家族に対しては提供臓器移植実施の報告あるいは厚生大臣の表彰状を贈るというようなことがあるわけですけれども、これでは不十分ではないか。先ほど申し上げたように、やはりドナー家族に対してその後も何らかの形でバックアップ、フォローしていくということが私は重要だと思います。そういう意味では、新しくつくるマニュアルなりあるいはその他の形で何とかそういう体制をとっていただきたいということをお願い申し上げたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  67. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 先生指摘のとおり、今後、我が国におきまして脳死下での臓器移植が定着するためには、臓器提供者の側であるドナーの御家族などに対しますカウンセリングなどのフォローアップが非常に重要な条件一つになるものと考えておるところでございます。  現在、御指摘のように、臓器移植ネットワークによるドナー家族への訪問、それから厚生大臣からの感謝状などがございますが、厚生省といたしましても、ドナー家族等へのカウンセリングなどにつきまして今後どのような措置を講じていくことが必要か。場合によっては、移植ネットワークコーディネーター教育なり体制の強化ということも必要になってまいろうかと思いますが、今御指摘のような点を踏まえまして今後検討させていただきたいと思います。
  68. 堀利和

    ○堀利和君 やはり家族にとっては、死というものが突然であり、しかもこれまで経験したことのない脳死判定に基づいて臓器提供をするということは、大変な精神的な苦痛といいますか、あるいはぎりぎりの選択だろうと思うんです。そのときにはマスコミなり国民が注目し、評価したりいろいろするのでしょうけれども、臓器提供してしまえばその後はもうそれっきりというのでは、余りにもこれはドナー家族に対して申しわけないというように私は思います。  そういう点で、半年後、一年後あるいは二年後、三年後、脳死という状況の中で臓器提供をしたことが悔いとして家族にのしかかってこないように、今後事例も恐らくふえてくると思いますから、ぜひともその辺はよろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、情報公開という問題でございます。  第一例目の高知赤十字病院では法が施行されて初めてのケースということで、国民の皆さん、とりわけ私から見ると少々行き過ぎだと思えるほど報道合戦、マスコミが取り上げていくというような形で、果たしてドナー家族にとって望ましい環境だったろうかということを心配するわけです。確かに一例目、二例目等はマスコミを通して、あるいは国民の皆さんが大変注目するわけですけれども、これが今後ケースを積み重ねていくとなれば、だんだん第一例目であったような注目するあるいは関心を持つということが薄らいでくるわけです。  このときに、私はかえってそういう意味で心配するわけであります。脳死というぎりぎりの状態で臓器摘出する、そして提供された臓器移植するという非常に特殊医療といいますか、そういう分野で行われるわけです。しかも、現在においても、脳死を人の死とする方もおれば、脳死を人の死とは認めたくないという方も当然国民の多くの方々にいらっしゃるわけです。  そういう意味では、この医療については厳格さあるいは透明性、そして国民の本当の信頼を受けて初めて脳死臓器移植が進められるというわけですから、そういう意味で家族等のプライバシーを守りながら、しかしどうやって透明性、信頼性を確保するかということが至って重要だろうと思います。  中間報告によりますと、この辺のところの基準あるいはそのありようについては臓器提供施設なり日本臓器移植ネットワークの方で検討するかのような形で示されておりますけれども、私はこれは公的なところでしっかりとこの基準なりそのあり方を検討すべきだろうというふうに思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
  69. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 移植医療におきましては、まず臓器提供者に対しまして十分な救命医療が行われたかということ、さらに適正な脳死判定が行われたかどうかということ、それから移植患者が公平に選択されたかどうか、これらの点についてその透明性を確保し、そして信頼性を確保していくということが極めて重要であると認識しているところでございます。  こういった観点から、移植医療透明性確保につきましては臓器提供者などのプライバシー保護との両立をいかに図っていくかということが大きな課題になっているわけでございます。厚生省といたしましては、移植医療に係る第三者検証機関のあり方をどのように考えるかも含めまして、今、先生指摘の点につきましては、それぞれのところというよりは、そういう基本的な問題につきましては臓器移植専門委員会においてさらに御議論いただきたいと考えているところでございます。  中間報告におきます「それぞれの立場から」ということについて若干補足させていただきますと、一例目から四例目までにつきまして厚生省が非常に表に出る形でいろいろ説明なり情報提供をしてきたわけでございますが、提供施設立場ネットワーク立場移植施設立場からそれぞれ、プライバシー保護と透明性確保という観点から、御家族の御了解の範囲内で厚生省が余り前面に出ることなく情報開示をしていくべきだという考え方をあらわしたのが「それぞれの立場から」というようなことでございます。  今、先生指摘のような情報開示の基本的なあり方なり透明性確保の基本的な考え方につきましては、今後ともそれぞれの立場というよりは臓器移植専門委員会におきまして御議論いただき、その結果を踏まえて厚生省として対応していきたいと考えているところでございます。
  70. 堀利和

    ○堀利和君 この法律を制定するには、党議拘束を外し国会議員一人一人の判断に任すというような対応もされてもおったわけでありまして、そういう意味では、国会議員一人一人はもちろんですけれども、国民一人一人にとっても今なお脳死を人の死として認めていいのかどうかという議論もございます。  加えて、これは率直に申し上げれば、昨今の医療ミスが報道で大分知らされるようになりましたけれども、ああいう医療ミスは今始まったことなんだろうか、いや、そうではなくて以前から大分あったのにそれが表に出なかっただけじゃないかというようなこともささやかれているわけでありまして、ある意味でそういう意味での医療のありようについての国民から見た不信感というものが全くないわけではない。  そういう点でいいますと、死というものを判定するということでありますから、特にこの脳死臓器移植医療については一段とその辺は厳しく求められることが内容として必要だろうと思います。そういう意味では、事後的な処理として、家族はもちろんですけれども、やはり国民が納得するようなものとして報告されなきゃいけないと思います。  そこで、一例目、二例目については専門委員会の作業班が医療機関からデータをいただいて医学的レベルで検証をして結果報告されたわけですけれども、現段階では三例目、四例目も恐らくそのような形になると思いますが、私としては、その辺のところの検証、医学的レベルからの結果報告がこの作業班のままでいいのかどうか。やはり国民が本当に納得できるような内容、つまりその内容を担保するものはいわゆる第三者機関といいますか、第三者立場で公平、公正、透明性を確保できる、まずそこの信頼がないと幾らどのような報告をしてもこれはなかなか受け入れられないわけですので、そこの信頼性を高めるという意味ではこのまま作業班でいいのか。やはり信頼のおける第三者手続に基づいた形をとるべきか。  この辺については午前中、清水先生も御質問されておりましたけれども、私の方も改めてお聞かせ願いたいと思います。
  71. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 三例目、四例目につきましては、六月二十九日の移植専門委員会におきまして移植専門委員会のもとに作業班を設けて検証するという形になっておりまして、現在その作業を進めているところでございます。  そこで、今後具体的にどうするのかということが問題になるわけでございます。現在、この中間報告におきまして第三者による検証機関の設置などにつきましていろいろ検討していただいておるわけでございますが、例えばこの第三者検証機関にかかわる人たち守秘義務の規定についてどのように考えるか、そしてどこに設置するか、それからその財政負担をどうするかというような点につきまして、具体化するためには引き続き検討する必要があるということで現在この委員会検討していただいておるところでございます。  厚生省といたしましては、この委員会検討結果を踏まえて、この検証のあり方について結論を得ていきたいと考えておるところでございます。
  72. 堀利和

    ○堀利和君 いずれにしましても、とにかく信頼性、透明性の確保が大事だろうと思いますので、そのような形でぜひお進めいただければと思います。  それでは次に、これから本格的な少子高齢社会を迎えるわけでありまして、その先頭を切っているのが私なりに言えば障害者の問題といいますか課題だろうと思います。  体が不自由になってくると、なかなか公共交通機関を利用するにもこれは大変なことでございます。都市と都市を結ぶ広域的な鉄道等の交通整備については、これはもう純粋に運輸省の所管であると思うんです。その一方では、地域福祉と言われながら、地域で暮らす場合に体が不自由な者が乗り物等をなかなか利用できない。しかも、マイカーと言われる車の時代であり、過疎化が進むと路線バスが廃止されるとか、社会情勢としてもなかなか私たち体の不自由な者にとってはままならないわけでございます。  そういう意味では地域内の移送システム、ドア・ツー・ドアといいますか、そういうスペシャルトランスポートシステムという形で組み立てていかないと、やはり高齢者なり障害者が地域社会の中で必要な用を足すためにも自由に移動できないという事態になるわけです。そういう意味で、まず厚生省にお伺いしますけれども、このような施策現状というものをどう考えて、どういうふうにそこを把握していらっしゃるか、まずお伺いしたいと思います。
  73. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 御指摘のように、障害者あるいは高齢者に対しまして社会参加を促進するという観点からいたしますと、移動の手段を確保するということは大変重要なことだというふうに認識をいたしております。  このようなことから、厚生省におきましては、従来から市町村が行っております移動を支援する必要のある障害者に対してリフトつきの乗用車を運行する事業、あるいはリフトつきの福祉バスを運行する事業、こういったものに対して補助を行っておりますし、また寝たきりあるいは車いすを利用している高齢者に対するリフトつき車両等による送迎事業に対しても補助事業を行っているところでございます。  このほか、都道府県あるいは市町村の社会福祉協議会、あるいはボランティアの皆さん方によります福祉サービス団体等が独自に移送サービスを行っているというふうに承知をいたしております。
  74. 堀利和

    ○堀利和君 私が何を聞いても不十分だと言うと、頑張っていらっしゃる厚生省の方には申しわけないんですが。  そこで、地域内で移動するためには、もちろんこれは厚生省の福祉的な対策だけでなくて、当然交通機関対策を所管する運輸省も重要だと思うんですけれども、この辺のことは運輸省と厚生省というのは協議という形をとっているんでしょうか。例えば、情報関係ですと郵政省と厚生省、あるいは福祉機器の技術開発の関係ですと通産省と厚生省というのはかなりきちっとした連携をとっているんですが、この辺の連携はこれまであったのか。あるいはもしそういう協議がなければ、今後、厚生省としてはやはり運輸省ときちんと協議を重ねていくつもりなのか。また、きょうおいでいただきましたけれども、運輸省としてもこういう協議を今後恒常的に厚生省と行っていくつもりがあるかどうかお伺いしたいんです。  つまり、地域内移動の場合に、簡単に申し上げますとボランティア、NPOの方々が自然発生的といいますか必要に応じてやってこられたハンディキャブという会員制をしいての運行を実施したり、あるいは自治体等が補助金を出して、タクシー事業者に福祉専用というか、使い先を明確にした福祉タクシーといいますかそういうものがあったり、あるいは最近では車いすの方も乗れますし、一般の乗客にも使えるようなユニバーサルデザイン型のタクシーというのも出てきました。  そういう意味で、今後地域の中の移動をどうするかというのは重要だと思うんですが、この辺をまず厚生省にお聞きして、その次に運輸省からも御意見をお伺いしたいと思います。
  75. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) まず厚生省といたしましては、障害者あるいは高齢者の自立あるいは社会参加という観点から一つ障害者プラン、こういったものに沿いまして関係省庁と連携を図りながら推進を行うということでこれまで取り組んできたところでございます。  御指摘の社会参加の支援という観点からいたしますと、バリアフリーということを確保する必要があろうかと思いますが、こういったことにつきまして、私ども福祉のサイドから福祉バス等の充実を図ることは当然これからも充実していかなければならないと思いますが、一方でそういったバリアフリーの観点から幅広く交通機関が使いやすいものとなる、そういう視点に立って今後とも運輸省とも十分な情報交換、連携を図っていかなければならないというふうに存じております。
  76. 縄野克彦

    政府委員(縄野克彦君) 今、委員指摘の問題は、運輸行政から見ましても、これから進展するであろう高齢化を控えまして高齢者の方あるいは障害者の方の移動、交通の手段をどのようにして確保するかということは大きな問題でございます。そういう中で、公共交通機関のいわゆるバリアフリー化もさることながら、高齢者、障害者方々の移動交通手段をできるだけ便利なもの、そういうシステムを確保していくということが運輸行政上の課題でございます。  それはまた、福祉の行政を担当される厚生省の問題でもあるということでございまして、これまでもいろんな具体的な問題につきまして厚生省初め関係省庁と協議をいたしまして、自治体ともども施策を講じてきたところでございます。例えば、障害者の方の交通の場合の負担の問題でありますとか、例を申し上げますと、自治体が福祉目的で運行しているバスの利用の仕方の問題でありますとか、個々具体的に意見交換を行いまして、その結果を行政に反映しようとしてきているところでございます。  今後とも、今、委員からも御指摘がございましたが、特に輸送機関として個別の機動的な移動のシステムというものは大変大事になるというふうに思っておりまして、例えばタクシー事業者の側から車いす対応のリフトつき車両の導入とか、運転者に資格を取得させて介護サービスを行うというようなサービスが広がりつつございます。このようなサービスは現状ではまだ一般の利用に比べれば需要が少ないために、事業者は一生懸命経営努力をしようとしておりますけれどもさらに拡大をしていくということのためには、福祉の行政の観点からのお知恵もおかりしまして、私どもと連携、協力をしてやっていくことが必要ではないかというふうに考えております。  今後とも厚生省を初め関係省庁と連携を保って適正な、適切な施策を講じてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  77. 堀利和

    ○堀利和君 二十一世紀の地域内移送システムを実現するためのビジョンを、両省でぜひ御協力をお願いしたいと思います。  次に、一人ではどうしても出歩けない身体障害者あるいは知的障害者がございまして、これにはガイドヘルプサービスが法律によって実施されておりますけれども、厚生省としてこの全国的な実施状況をつかんでいるんでしょうか。その辺の状況をお聞かせ願いたいと思います。
  78. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) まず、障害者の外出時におきます移動の介護を行うホームヘルプサービスにつきましては、大きく二つの視点で実施をいたしております。一つは、身体障害者に対しまして、身体障害者ホームヘルプサービス事業の一つの類型といたしまして、重度の視覚障害者、全身性の障害者を対象といたしまして、外出時における移動の介護を行うガイドヘルパーの派遣が行われております。それからもう一つは知的障害者でございますが、これは心身障害児あるいは者に係りますホームヘルプサービス事業のサービス内容の一環として必要に応じて外出時における移動の介護が行われる、こういった二つの事業を行っております。  実績でございますけれども、知的障害者につきましてはホームヘルプサービス事業の中でカウントしておりますので具体的な実施状況が把握できておりませんが、身体障害者につきましては、このガイドヘルプサービス事業に取り組んでおります市町村は平成十年度で約六百七十市町村でございます。平成十一年度にはこれが七百十市町村で実施が見込まれているという状況にございます。ガイドヘルプサービス事業につきましては市町村は少しずつふえてきているということでございますが、今後ともその推進に努めていきたいと考えております。
  79. 堀利和

    ○堀利和君 六百、七百実施している市町村の数を多いか少ないか、これはそれぞれなんですが、私はまだなかなか進んでいないなという気持ちでおります。  私の立場からしますとなぜこんなに進まないのかと思うんですが、これはどこに原因があると思いますでしょうか。
  80. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 非常に頑張っていただいている市町村も多々あろうかと思いますが、またそういったサービスそのものを十分に知る機会があるのかどうかといった点も考慮する必要があろうかと思います。  私どもが今考えておりますのは、一つ大きな問題としてガイドヘルパーの確保が非常に十分じゃないんじゃないかというような御指摘がございます。このガイドヘルプサービスを推進するということについては、それに係る人材の確保が重要だということから、平成九年度以降、ガイドヘルパー養成研修事業を実施いたしまして養成、確保に努めようということにいたしております。  今後も、こういった意味でガイドヘルプサービスがより有効に活用されますよう、努力をしていく必要があろうかと思います。
  81. 堀利和

    ○堀利和君 ぜひマンパワー確保を何とかして、一人で出歩くことのできない障害者に対していつでも必要に応じて外出できるように施策をぜひ進めていただきたいと思います。  ところで、当然こういう事業には要綱というのがございまして、私も要綱を見て問題を感じました。つまり、必要不可欠な外出先として公的機関あるいは医療機関がございます。さらには、その他社会参加のためにということもあります。私も地方に出かけますと、市町村では、病院や役所や役場に行くときにはガイドヘルパーは認められるけれども、その他の会合やらいわゆる社会参加のために外出をしたくてもその場合にはこの要綱があるためガイドヘルパーを派遣してもらえないというふうによく言われるんです。  確かにその他の社会参加のためということもございますけれども、必要不可欠なというところで医療機関なり公的機関ということが書かれているために今のような制限があるんですね。ですから、私は基本的にこういう要綱の書き方を改めるべきだというふうに思いますが、そのことが一点。  さらには、私の仲間も九時から五時というか、昼間治療院で働いていて、さてこれから外出だということで、夜あるいは日曜日にガイドヘルパーの派遣がないんです。つまり、昼間働いているときには必要ないんだけれども、それ以後、日曜日なり夜なりとなると逆に派遣がないということで使えない。ですから、この辺の使い勝手のよさということを検討していただきたい。  同時に、外出も、狭い地域だけじゃなくて県をまたがった場合、自治体の施策ですから広域的なネットワークで協力したシステムをどうつくるかということも、厚生省も取り組んではいらっしゃいますけれどもなかなか実際進まないということで、この辺も含めてぜひ前向きに御検討願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  82. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) まず最初に、運営要綱に係ることでございますけれども、このガイドヘルプサービスを利用する場合の目的といたしまして、委員指摘のように「市町村、福祉事務所等公的機関、医療機関に赴く等社会生活上外出が必要不可欠なとき」が一つの要件となっております。また、「社会参加促進の観点から実施主体が特に認める外出をするとき」ということで、若干例外を設けております。つまり「通勤、営業活動等の経済的活動に係る外出、通学等の通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上本制度を適用することが適当ではない外出」、こういったものを除いてガイドヘルパーの派遣が認められているということであります。  御指摘医療機関と福祉事務所しか対象ではないというふうな市町村もあれば、またそういったものも含めて適用されている市町村もあるというような御指摘かと思います。この利用目的が例示されているということで地方公共団体において運用の不公平感みたいなものが生じているということであると、これは公平性の観点からは必ずしも望ましいことではなかろうかと思います。例示のあり方につきまして、御指摘の視点も踏まえながら検討していきたいというふうに思います。  それからもう一つ、休日、夜間のガイドヘルパーの活用でありますけれども、基本的には必要不可欠な場合のガイドヘルパーは別に平日でなければならないということを規定しているわけではございませんが、市町村によりましては、あるいはガイドヘルパーの確保の状況などから必ずしも十分な活用が図られにくいというような御指摘かと思います。こういった制度があるのですから、必要不可欠な場合にはできるだけ活用できるようにという意味においては、その点も充実一つの大きな柱として、今後、各市町村等を通しながら充実に努めていきたいというふうに思います。  さらに、市町村で完結しない移動がございます。これにつきましては、障害者の明るいくらし促進事業の中で広域的な移動に対してガイドヘルパー同士が円滑に業務を引き継ぐことができるような、そういう事業につきまして補助をしているところであります。これにつきましても、必ずしもそれが十分に普及しているかという点につきましては、まだまだという感がございます。  今後とも、そういった視点に立って適切な利用が図られるよう必要な充実についての努力及び指導をしていきたい、かように思います。
  83. 堀利和

    ○堀利和君 私の時間がなくなりましたので、最後に大臣に御決意をお伺いしたいんですけれども、地域内で体の不自由な方々が必要に応じて自由に移動できるためのドア・ツー・ドア、ST、スペシャルトランスポート等の移動システムを運輸省と御協力をお願いしてぜひ二十一世紀には確立するような形でやっていただきたいし、ガイドヘルパーも含めて地域で自由に移動できるような方策をとっていただきたい。まさにこれを二十一世紀のビジョンとして今からきちっとやらないとならないかと思うんですけれども、その辺の大臣の御決意をお伺いして終わりたいと思います。
  84. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 障害者方々の自立とか社会参加のための移送のための交通手段についての具体的な御質問を賜ったところでありますけれども、こうした外出時の移動の場合の、ただいま議論がありましたガイドヘルパーの問題の充実、あるいは障害者プランに基づきますバリアフリー化等の促進、これは大変重要なことであると存じます。  御指摘のような趣旨に沿って、今後一層その充実を図ってまいる所存であります。
  85. 堀利和

    ○堀利和君 終わります。
  86. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。  きょうは一般質疑ということですが、介護保険あるいは医療制度を中心に若干お伺いしたいと思います。介護については午前中の質疑でも幾つか出ていたわけでありますが、改めて少しお伺いしたいと思います。  けさの新聞にも保険料の中間集計が発表されていたわけであります。来年四月の実施を前に準備がいよいよ佳境に入ってきたということではないかと思うんです。一方で、最近、介護の実施をめぐってさまざまな議論がなされております。さすがに最近は実施延期論というのは少なくなったかもしれませんが、四月の実施を延期すべきであるという意見、あるいは保険料負担に関してお年寄りに負担させる保険料を軽減するために半額ぐらい国費で負担したらどうかとか、また介護の中で施設介護は公費で、在宅は保険でというような主張もある政党の方から出ております。  私は、こういう議論というのは、いずれも介護保険制度のある意味では基本的な部分にかかわってくる議論だというふうに受けとめておりますが、一連のこういったさまざまな意見について厚生大臣として今どのように受けとめておられるのか、あるいはお考えになっているのか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  87. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 介護保険制度につきましては既に法律で定められておりまして、私ども所管大臣といたしましてもこの円滑な実施を目指しておるところでございます。  一方、いろいろ政策遂行に当たりましては与党間、今、自自の与党でございますがさらに加わる可能性もございますので、そうした与党間の合意と信頼というものも極めて重要なことでございまして、与党間の粘り強い協議と理解を求めて所定の目標どおり四月にこれを実施してまいりたい、このように思っております。  なお、保険料の二分の一の点につきましては、これは我が党の一部の議員の見解でございまして、私どもとしてはこれを決定したわけではございません。したがって、円滑に施行するためにはどういうことが可能かどうかをよく検討した上で、与党協議の中で結論を得ていきたいというように考えております。
  88. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ということは、円滑に実施をするためにいろんな議論も少しは取り入れる可能性があるというような感じで受けとめさせていただいたわけです。  その中で、今、大臣のお話の中にも出ました例えば半額負担するというようなお話ですが、仮にこういうことを考えた場合、私はさっき申し上げたようにかなりこれは制度の根幹に触れてくるんじゃないか。いつまでにとかいろんな話もありますが、これから当然高齢化が本格化してまいりますから、介護費用は当然増大するというふうに見込まれるわけであります。  例えば、きょうの新聞発表ですと二千八百八十五円ですか、アバウト三千円弱として、それをある程度導入段階で少し公費で補てんをする。こういうことになりますと、今言ったようにこれからいろいろ費用が増大してくる中で、少なくとも保険料を三千円ぐらいからさらに必要になれば上げなければいけないわけですけれども、そういうことも難しくなるというふうに思うわけであります。  また同時に、かなり国費で保険料を補助するということになると、これはいろいろ議論されていますが、介護保険ということなんですが、しかし実質もう既に公費が半分入るわけでありますから、さらにそこに公費を加えるということになると実態としてはかなり税方式に近いといいますかそっちへ近寄ってくる。施設介護を公費で、在宅を保険でというのも、施設と在宅のいろいろな費用予測を見ますとこれはかなり税方式に、税のウエートが大きくなってきてしまう。  つまり、そういう意味では、さっき言ったようにやりようによっては介護保険だと言いながら相当変質してくるし、先行きのことを考えてもいろいろ問題を生じるということになりかねないと思うわけですけれども、もう少しこの点について大臣の御所見を伺えればと思うんです。
  89. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この介護保険制度は長いこと国会議論されまして結論が得られておりまして、介護総費用の半分は公費で賄う、あとは一号保険料と二号保険料で賄うというシステムになっているのは御案内のとおりでございます。  私どもとしては、その法定された基本を踏まえながらも、実際どのような保険料のばらつきになり不均衡が存在するかどうかをよく見きわめる必要がございますので、このたび報告をとっております。お話のように全国平均では二千八百八十五円ということでございますが、大体二千円から四千円の間に九割以上の市町村ないし人員がおさまっております。例外的にそれを超えるものあるいはそれを下回るものがございますが、これは保険者を市町村にいたしておりますので、そういう格差が存在することはそもそもやむを得ない面がございます。  将来的にはやっぱり負担と給付の関係は保険者間でもある程度均衡がとれた方がいいのではないかという感じを私は持っておりまして、将来的な課題としては施設サービスと在宅サービスをどうするかとか、いろいろな観点検討が必要かと思われます。  そんなこともございますが、特に今、委員の方は保険料の補助についてのお尋ねもございまして、先ほど申し上げたとおりでございます。私ども、これは党側の一部の意見として承らせていただいておりますが、この保険制度をやはり円滑に実施するということが所管大臣として私に課せられた使命でもあると存じております。  何ができるか、何をしなければならないかというような点は、これから概算要求に向けまして私どもの考えをまとめ、なおかつ与党との協議も経て取りまとめていきたい、そして円滑な実施に持っていきたい、そのように感じておるところでございます。
  90. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 大臣がこれからいろいろとまた意見を聞きながらということで、なかなかはっきりお答えしづらい状況のところで申しわけないんですが、この問題はやっぱりきちっと議論しておいた方がいいと思いますので、もう少しこの問題に踏み込ませていただきたいんです。  今、大体三千円弱ということで集計も出されたわけでありまして、大臣おっしゃったように大半が二千円から四千円ぐらいの間で、だから当初心配されたようにとんでもない大きなばらつきというのはなくなった、こういうことなんです。それで、この保険料について介護保険を企画した当初は二千五百円ぐらいということですから少し高いじゃないか、こういう議論も当然出ているわけです。  それで、費用が高いか安いかということについて私なりに整理してみたんですけれども、要は当初見込みに比べて少し大きいじゃないか、こういう議論もあるんですが、もう少しこれを整理してみると、例えばこの保険料考える場合に、現実にいらっしゃる、お支払いになる高齢者の皆さんの負担能力から見て高い安いという議論も当然あると思うんです。これは導入のときかなり議論されたと思うんです。  それから二つ目の話としては、これは基盤整備にかかわるんですが、では提供できるサービスと比べてどうだと。だから、今の大臣のお話にあったように、市町村に多少差がついてもサービス水準が違うからある程度の格差はという話もあります。  それからもう一つは、今の話で地域間、要は隣の町と比べて、近所の町と比べて高い安い、こういう議論もあると思うんです。  それからもう一つ取り上げますと、朝も議論があったようですけれども、本当は効率を考えればもっと安くできるはずなのにどうも制度上高くなってしまうんじゃないかと。これはこれから実施していく中でいろいろ出てくるかもしれません。それと最初に申し上げたいわゆる当初に比べてどうだと。こういういろんな保険料の高い安いという議論も、とらえるとらえ方によって議論がさまざまにあるいは考えることができると思うんです。  そこで、いわゆる高齢者の負担の問題ということからまずお伺いしたいんです。  というのは、これから現実に、例えば年金から天引きをされるということに四月以降なってくるわけですが、その場合、高齢者の御負担考えるときに介護保険料だけが高いか安いかというだけの視点で議論をしても私は不十分じゃないかと思うんです。当然介護でいえば一割負担、これは御本人が出されるか家族負担されるかということはありますし、医療保険制度も今いろいろと、まだまとまっていませんが議論されています。例えば、老人医療保険という制度ができたときにその保険料をどうするかという議論も当然これから出てくるわけですね。  ですから、結局そういう一連の出ていく方のお金と、今度はようやく年金の方はまとまりましたけれども、では収入のもとになる年金等はどうか。こういう入る方と出ていく方のバランスを見ながらやはり厚生大臣は特に判断をしていただかないといかぬと思うんです。厚生省でお調べになったデータを見ましても、高齢世帯でいわゆる常時収入を持っている方、どこかで働いているとか自営業だとか、それ以外の方が大体八割ぐらいなんですね。その収入の大体八割は年金なんです。  そうすると、これからのことを考えますと、いろいろ介護保険制度をつくる、老人医療保険制度をつくる、こういうことを考えた場合に、私は逆に言うと、そのときには年金の給付水準はやはりそれなりのレベルをきちっとキープしておかないと、入る方は削られ出る方はふえるということになると、まさに高齢者の負担としてこれは大変なことになる、こういうふうに思うんです。  ですから、一つ申し上げれば、きょうのメーンの話じゃないんですが、まだ法案は出ていませんが年金の給付水準を今度減らす、こういう方向でお決めになったことがどうしても私は腑に落ちない。ですから、今申し上げたような収入と支出両方のバランスをとっていくということについて私はこれから本当に一番大事な視点として考えなきゃいけないと思うんですけれども、この点はやはり厚生大臣考えていただかないといけない問題じゃないかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  91. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員の基本的な考え方は私も同感でございます。できる限りそういった総合的な視点といいますか、トータルアスペクトというのはどうしても必要だと思います。しかし、それでは具体的にそれぞれどうかといいますと、個別の政策あるいはシステム単位で議論がされてまいりますので、ちょっとばらばらな感じを与えていることはやむを得ない点があろうかと存じますが、私どももやっぱり最小限そういうことが両立できるようなことを頭に置きながら検討すべきものだと考えております。  年金についての御指摘もありましたが、これはまた年金法が国会に提出されますれば御議論いただけることと存じますけれども、これからの高齢化社会というのは年金受給者が非常に多くなるものですから、結局今回の年金改正は、保険料がほっておけばかなり上がる、あるいは給付水準をそのままにしておけば保険料はうんと上がるというような状況がございますので、保険料の上げをなるべく少なくする、それから給付の水準も調整もなるべくこれを少なくするというようなことで、給付水準を下げるのではないかとか、あるいは保険料も上げるのではないか、それはけしからぬというような、それだけごらんになるとそのような現象がありますが、私どもとしては精いっぱい高齢化社会に向けて永続的な制度として成立できるように考えて、そういう視点で構築をしておるということを申し上げさせていただきます。  なお、年金と高齢者の負担の問題、大変重要な課題でありますから、私ども、今後もこの関係は十分注意していかなければならないと思います。
  92. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今の大臣のお答えの中で、ちょっと私の方から言わせていただいてよろしいですか。  総論的にはそのとおりだというふうにおっしゃっていただいたんです。恐らく認識は御一緒だと思うんです。ところが、今我が国のこの制度を見ますと、さっきもちょっとおっしゃいましたが、年金は年金という一つの社会保険制度になっている。それから医療医療という一つの制度。今度は介護という新しい制度をつくっていくと。結局これまでの議論を見ますと、今までもそうなんですが、きょうもまさにそうかもしれませんが介護の議論をしている。年金はちょっと横に置いておいて、医療のときには医療の中での議論をする。これのずっと繰り返しなんですね、ずっと我が国の制度の推移を見ると。  だから、例えば年金でいえば、昭和六十年のあの大改正のとき以来、大臣おっしゃったように、永続的な仕組みにしなきゃいけないからということで、要するに給付水準は下げて保険料は上がる、その見通しをつけながらだんだん来たと。まさに医療医療でまたそういう財政問題に突き当たっているわけですね。  ですから、それぞれの議論を私は決して否定するものではありませんが、人口構造的にそれぞれのシステムがやっぱりお金がかかって給付が苦しくなるという背景にあるわけですから、これを横に切ってどういうものがトータルとしていいんだということを考えていかないとますますこれは先行きが心配になってくる、こういうふうに国民の方から見ると先行きが心配でしようがない、こういうことになってくるんじゃないかというふうに思いますので、さっきのトータル的に見るという大臣のお言葉、ぜひ実行していただきますようお願いを申し上げたいと思います。  それで、話を介護の方にちょっと戻したいのでありますが、来年の四月から介護保険がスタートしますと、今度対象になる人たちというのは、ある意味でいいますと今までのいわゆる措置制度でやってきたものから保険に切りかわっていく、その対象の方はまさにそれを初めて体験をされるということになるわけですね。  その点について幾つか議論したいと思いますが、まず全体的に今言われていることは、私もあちこち何カ所か歩いているんですが、基盤整備の部分でいいますと、これは施設ではなくて、特にヘルパーの問題とかあるいはデイサービスだとかグループホーム的なものだとか、いわゆるどっちかというと在宅にかかわる部分の整備がおくれている、押しなべてそういう声が強いわけでございますけれども、今の状況についてどのように受けとめておられるか、御説明いただければと思います。
  93. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 介護保険制度が円滑に導入されるためには、在宅サービスを初めといたします介護サービスの供給体制整備するというのが非常に大事であるわけでございまして、私どもは新ゴールドプランの達成を目指して施策を推進してきたわけでございます。  この新ゴールドプランの達成状況でございますけれども、平成九年度末ということで、まだ施行までに二年を残した時点でございますけれども、ホームヘルパーの関係は八〇%でございます。二年間のうちに目標の達成は十分できるというふうな見通しでございます。それから短期入所生活介護、ショートステイでございますが、これが七三%ぐらい、それから日帰り介護、デイサービスでございますが、これは五七%ぐらいでございまして、残念ながら施設サービスに比較いたしまして在宅サービスは先生の御指摘のとおり立ちおくれが目立つわけでございます。これは、一つにはホームヘルパー等の需要そのものが顕在化していなかった、こういうことも理由だと思います。  今後、介護保険制度が導入されますと在宅サービスにつきましても利用者の希望というのはどんどんふえてくるだろう、こういうふうに思っております。市町村の方で介護保険事業計画をおつくりになるわけでございますので、これに基づく供給体制整備、これにつきまして私どもも一緒に頑張って充実していかなければいけない、こんなように考えております。
  94. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それで、今のお話の中にも少しあったのかもしれませんが、私もいろいろ意見を聞いていまして、さっき申し上げたように措置制度から保険制度に変わる。そうすると、これからは保険制度になりますと、保険料を払われている方は、まさにこの介護保険導入の中にもございますが権利として今度は介護のサービスを受けることができる、こういうふうになるんですね。そうすると、措置制度のときには介護の対象として挙がってきていなかったような数の人が思いがけない形で実際にはサービスを求めてこられる、そういう声を結構お聞きするんです。  例えば、私がいろいろ調査させていただいた、これはある市なんですけれども、具体的に言いますと、今までは三千人弱ぐらい想定していたのが、どうも最近になって調べてみると千人以上ふえるんじゃないか、こういう見込みになってきて、だから対象になりそうな方が四千人を超えてしまうんじゃないかというような話が出ていまして、いわゆる整備率というんですか、四〇%を前提にしていろいろお考えになっていたのが、どうもそこら辺がいわゆる誤差が出てくるんじゃないか、もっとたくさん立ち上がり段階から需要が出てくるんじゃないか、そういう感が非常に強いんですけれども、この点についてはどうでしょうか。  私は、だから当初の目標設定がちょっと甘かったんじゃないか。今、局長がお答えになったように、その目標設定において、なおかつ在宅部分が少しおくれている、こういうことになると、かなり心配をしておるんですけれども、この点の御認識はどうでしょうか。
  95. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先ほども申し上げたように、やっぱり在宅サービスの需要というのはこれからふえてくると思います。ただ、今まで施設に偏重してきたような市町村もございますので、そういうところにおきましては、在宅サービスが伸びますと、比較的ということでございますけれども、施設の関係の伸びといいますか需要というのは抑制されるだろう。  こういうことで、やはり在宅サービスとそれから施設サービスというのは両輪でございますから、両方がうまくバランスのとれた形でやっていく、しかもこれが地域差がなくなっていくというのが一番望ましい形だということでございますので、そういう方向を目指して私どもも施策を進めていく必要がある、こういうふうに考えております。
  96. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 介護の問題で大臣にお願いがあるんですが、今、局長のお答えはバランスをとってということなんですが、私はやはり立ち上がりに向けて相当思い切って基盤整備の方をもっとテンポを上げて取り組んでいかなければいけないんじゃないかというふうに今受けとめております。  それで、先ほど保険料の話で補てんするとかいろんな話が出ているということでちょっと議論させていただきました。これはある新聞の世論調査の中にも少し出ていましたが、これからの国民の不安の中でやはり介護というのは非常に大きな不安材料だと。大体皆さんどう思っておられるかというと、もちろん安くていいサービスがあればいいんでしょうが、どちらかというと、保険料を安くしてもらうよりも、むしろきちっとしたサービスがしてもらえるなら少しぐらい保険料が高くてもいい、先日もある新聞の世論調査でそんな数字が出ていましたが、こういう方が私は多いと思うんですね。  ですから、ちょっと言い方は悪いんですが、保険料を補てんして、そこでお金を食いつぶしてしまうぐらいなら、思い切って基盤整備にその分を振り向けていく、手厚くして、その立ち上がりの不安をなくしていくというようなことをぜひ御決断いただきたい、こう思うんですけれども、この点については大臣いかがでございましょうか。
  97. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 保険料の減額と基盤整備の関係についてお尋ねでございますが、私どもは一応それは別個のものだと考えて、基盤整備基盤整備として整備率の目標に応じて整備すべきものだと考えております。  なお、今、委員の御指摘のように、新聞等の世論調査によっても、やはり多少保険料負担はしても良質なサービスをということが割かし多いということも私も拝見をいたしました。それはある面ではそういうことがあろうかと存じます。しかし一方、低所得の方々がどのような対応をするかということもまた私どもの大きな関心でございます。  要は、基盤整備をやって、そして在宅と施設とのバランスがよくとれて、それからさっき局長の言ったような地域的なバランスも許容される限度内で併存できるというようなことが望ましいわけでございまして、措置費から保険に変えるわけでありますので、直ちにそれを実現することは実際問題難しいかもしれません。しかし、将来的にはやはりそういう方向を目指して、給付と負担の関係が大体すべての人が許容し得る範囲内におさまるような方向へ持っていかなければならぬだろう、こう考えております。
  98. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 あと、ちょっと実務的な点で一つお尋ねしたいんですが、いろんな市町村を歩いていましてよく言われるのが、例えば市町村が主体で一つのデイサービスセンターならデイサービスセンターという施設をつくった、これから介護をやるに当たって民間の事業者に経営主体も含めて移管をしてやりたいんだ、その方がもちろん民間の活用にもつながってくるということなんですが、いわゆる行政財産をそういうふうに民間の経営主体にそのまま任せる、公設民営というんですか、そういう格好にするのは難しい、普通財産に切りかえればいいんだけれども、そのときには国とか都道府県からもらっている補助金を返還しなければいけなくなる、だから非常に実務的には現場レベルではやりにくいんだがと、こういう声が結構あるんです。  できればこれはこの介護を機に、やはり民間の事業者もいろんな意味で活用しようということになっていますので、うまくできるような仕組みをぜひお考えいただきたい。何か補助金に関する法律の一部が問題になるというふうにお聞きをしているんですが、この点についてお答えいただければと思うんです。
  99. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 例えば施設の補助金は、これは補助金でございますので補助金適化法の適用がございます。それはかなり厳格な要件で補助要綱というのはつくられておりますので、今御指摘のように補助金でつくられたもの、それは市町村の設立であれば行政財産としてありますが、それを民間に活用させた方がより効率的で有効だというような場合には、やはり普通財産に転換するなりなんなりして、補助金適化法との調整を必要とすると存じますが絶対不可能ではないと存じますので、そういった弾力的な運用も可能になる方向で検討はいたしたいと思います。
  100. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。私、行くところで大体そういう話が出ますので、重ねてお願い申し上げたいと思います。  それから、多分そのときに、国の補助金と同時に、市町村ですと都道府県からも補助金をもらっていると思いますので、そういうものもセットで御配慮いただければありがたいと思います。  それでは次に、医療制度といいますか保険制度の問題について残りの時間、余りなくなったんですが、御質問させていただきたいと思います。  一つは、今の健保財政というんですか、これは大変厳しい状況にあるということはもう御承知のとおりであります。それで、今度介護保険制度が実施されますと健保の保険料に介護の部分が上乗せされるということになるんですが、当初、この介護保険制度をつくるころの議論では、上乗せになるんだけれどもかなりの部分が医療から介護の方に置きかわる、置きかわることによってそんなに大きな負担にならないんだと。  当時の厚生省の試算を見ますと、医療関係といいますか医療保険のトータルで見ますと、介護負担増分と医療負担減分を相殺しますと年間差し引き約五百億のプラスと、こういう試算が出ておりました。例えば、これを健保組合に限定してみますと今の五百億がプラスの三百億、国保の場合にはマイナス五百億、こういう数字が出ていたんです。  それで、話が複雑になるといけませんので健保に限定してお伺いしたいと思いますが、いわゆる健保の場合は保険料が法定で上限が千分の九十五ということで決まっているんですが、実はこの間の新聞報道で、従来千分の九十五の中で医療の部分に介護を乗っけて対処すると、こういう方針で、さっきお話ししたようにそれは十分相殺関係があるからできるんだと、こういうことで来たわけですけれども、どうもそうじゃないと。  今、健保組合はかなりのところは赤字になっていまして大変厳しい状況になっているので、重ねてやるんじゃなくて千分の九十五とは別枠に介護の部分を設定するんだと、こういう報道がなされたのでありますけれども、まずこういうことを今厚生省の中では議論をされているというように受け取ってよろしゅうございますか。
  101. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 健康保険組合と介護保険料の二号保険料との上乗せの問題でございますが、政管健保と健保組合、若干内容を異にしておりますが、健保組合も今の経済情勢の中で非常に困難な状況にだんだんなってきているというのは御指摘のとおりでございます。  この立法過程におきましては、今御指摘のように医療部分が介護に移るというようなことどもももちろんございますからその中で措置し得るかなと、シーリングの中でできるのだろうという議論だったというようにお聞きしておりますけれども、どうしてもこれが上限に張りついているような組合もございますから、その場合は、結局それで中で押し込んで介護保険料の二号保険料をいただくということになれば、いろいろな付加的な給付なりなんなり影響しないとは限りません。そういうことの合理化もお願いしなくちゃいけませんが、しかしそれだけで本当に対応できるかどうかはよくこれから検討させていただきますけれども、特に政管健保の場合は困難な事情があるようでございます。  したがって、場合によりますと、シーリングを上乗せするなり、あるいは別枠でお願いするなり、それは当然立法措置を要すると存じますけれども、そういうことまでも含めて今それをやるということを決めているわけではございませんが、問題意識としてはそういうことも考え検討の対象にしておることだけは申し上げさせていただきます。
  102. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 もう持ち時間がなくなりましたので、この問題はまた改めて議論をさせていただきたいと思います。  ただ、大臣、一言だけちょっと申し上げさせていただきますと、こういうふうになってきた背景、要因の一つは、やはり医療保険制度の抜本改革がいまだに実現していないということが根本だと思うんです。ですから、私はこの委員会の席でもこれまでに厚生大臣に三度、二〇〇〇年四月からの抜本改革は大丈夫ですねと、最初二回は小泉厚生大臣でしたが、この間は宮下厚生大臣に確認をさせていただいたんですが、残念ながらまだそういう状況にある。ぜひこれをやはりきちっとしていただきたいということ、これが一点。  それからもう一つは、特に健保組合という立場でいいますと、もともとこれは一つの企業なら企業という仲間内が集まって自分たちのいざというときのための医療制度としてできた制度ですね。ところが、これが自分たちのための保険制度だと思ってずっとやってきたのが、いつの間にかそのうちの四割が老人医療の拠出金に行ってしまっている。今度は介護の第二号保険者ということで六十五歳以上の介護を必要な人のためにそれが払われる。つまり、自分たちのためだと思ってお金を集めてつくった制度が、いつの間にか半分ぐらいはもう要は世代間の扶助の組織に変わっちゃった、仕組みに変わっちゃったと、こういうことなんですね。ですから、これはやはり本来の制度からいうと本末転倒だと思うんです。  ですから、そういうものを含めてやはり医療制度というのをきちっと早く見直していただきたい。このことを重ねて要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  103. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。  私は、去る七月十三日に厚生省より報告されました臓器移植実施状況等に関する報告書に関連しまして質問させていただきたいと思います。  質問に先立ちまして、脳死あるいは心臓死の状況下で善意の臓器提供をなされました方々並びに御遺族の方々に対しまして敬意を表させていただくとともに、その善意のもとに移植手術を受けられました方々の順調な回復を心よりお祈り申し上げます。  質問に入らせていただきます。  最初に、厚生省にお伺いしたいんですけれども、本年六月三十日現在で脳死臓器移植がなされたのは四例でありますけれども、脳死下での臓器提供意思を記載した臓器提供意思表示カードを持っていてお亡くなりになった方々は八十八例あると聞いております。これらのケースで臓器提供に至らなかった事例もあると聞いておりますので、その原因あるいは理由について分析されていればお伺いしたいと思います。
  104. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 日本臓器移植ネットワークからの報告によりますと、臓器提供意思表示カードを所持していたにもかかわらず脳死下での臓器提供に至らなかった事例は、臓器移植法の施行後、六月末まで八十八件でございます。  その主な理由といたしましては、一つ臓器移植ネットワークへの連絡が心停止後であるというふうなケースでございますとか、御家族脳死下での臓器提供を希望されなかったということ、また当該施設臓器提供施設に該当していなかった、これらが主なものでございます。
  105. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ドナーカードを書いておられても、家族が知らなかったとか周囲の状況でわからなかったという事例がまだまだ多いようですので、今後ともドナーカードに対する啓蒙、周知を徹底していくように努力していただきたいと思います。  二番目の質問ですけれども、これまで脳死下での臓器移植の四例の中には、第一例、第三例のように肺移植も当初予定されていたけれども医学的理由から実施されなかったと。この医学的理由とはどういうものなのか、あるいは今後も脳死下での肺移植手術というのは可能性が低いのかどうか、諸外国ではこのような脳死下での肺移植というものはどの程度行われているのか、これらの点に関しましてお伺いしたいと思います。
  106. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 肺移植についてお尋ねでございますが、肺につきましては、脳死状態で数日間の管理が行われますと、肺に関しましては人工呼吸器の装着による強制的な換気を強いられることによりましてガス交換を行う肺胞が障害を受けやすいということ、また免疫力が低下した状態で直接外気に触れるため感染症を併発しやすいことなどの医学的理由から、同じ提供者からでありましても心臓肝臓などに比べまして移植に用いられる割合は低いと承知しております。  諸外国におきましても同様な傾向でございまして、具体的には、例えば一九九七年のアメリカにおきましては、心臓移植が二千二百九十二例行われておりますが、肺移植につきましては九百四十二例となっているところでございます。
  107. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 なかなか肺移植の場合にはドナーの方が承諾しておりましても難しいという状況を今お聞きしたわけでありますけれども、今後の医学の進歩におきまして何とかそれが可能になるような技術開発をしていただければと思います。  三番目の質問ですけれども、先ほども清水委員の方から質問があったんですけれども、臓器提供施設として必要な体制を整えている施設が本年四月三十日現在で二百三十六施設、しかし施設となり得る可能性のあるものとしては三百五十施設程度あるはずというふうに言われております。残りの施設はどのような条件を欠くために臓器提供施設になり得ないのか、その分析結果と改善策につきましてお伺いしたいと思います。
  108. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 脳死下での臓器提供施設につきましては、ガイドラインのもとで、当面、大学附属病院等の救急医療等の分野において高度な医療を行う施設、そういうもののうち適正な脳死判定を行う体制などが整った施設に限定をいたしております。ガイドラインの四類型で該当する施設としては三百五十三施設ございますが、うち体制が整った施設は二百三十六施設と、今御指摘のとおりでございます。  いまだ体制整備が整わない理由といたしましては、当該施設における院内合意形成に加えまして、適正な脳死判定実施するに当たっての必要なマニュアル作成等に時間を要していること等が主な要因として考えられております。  私ども厚生省としては、これまでの脳死下での臓器移植経験を踏まえまして、関係学会とも連携をとりながら、一つ臓器提供施設体制整備するに当たって専門家の助言が得られる体制を確保していくことが必要である、二番目に脳死判定の手順についてのわかりやすいマニュアル作成する必要があるということ、それから三番目に家族臓器提供承諾書など臓器提供施設が備えるべき各種書式例を含む臓器提供マニュアル作成などが必要でございまして、こうしたものを整備することによって対応してまいりたいと思います。ちなみに、脳死判定の手順等のマニュアル作成は本年八月の完成を目標としておるところでございます。
  109. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 これまでも脳死判定で十分でなかったという反省点も指摘されていることでありますので、やはり脳死判定というのは非常に大事なことではないかなというふうに思います。  私も日本脳神経外科学会に所属しておりまして、日本脳神経外科学会としても脳波検査などの脳死判定に対して専門家を派遣するとかいろんな支援体制を整えていくように決めているところであります。また、情報公開に関しましてもやはり病院として悩むところでありますので、情報公開に関してもそういう資料提供等を行って、施設として整備が整えられるように努力していくということを聞いておりますので、いろんな関係者の方々の努力によりまして施設に該当する条件を整えて、できるだけ多くの施設条件を整えた上で、ドナーの方の善意をむだにしないようにしていただきたいというふうに思っております。今後とも、厚生省としてもそういう努力をしていただきたい、そのように考えております。  次に、乳幼児の脳死判定に関しまして質問させていただきたいと思います。  六歳未満の乳幼児では脳死状態から心停止までの期間が長い傾向があり、脳死判定を特に慎重に行わなければならない、そういう判断で現行法では六歳未満児の場合は脳死判定の対象から除外されているということであります。  本年二月の新聞報道によりますと、兵庫県内の乳幼児例で脳死判定後三百十二日間心臓が動いていたとの報道がありました。この点に関しまして、厚生省としましては厳密な検証をなされているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  110. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 小児におきます脳死判定基準についてどのような対応をするかということで、平成九年度に厚生科学研究によりまして研究班を設置いたしまして検討を行っているところでございます。  御指摘事例は兵庫県立医科大学の事例だと存じますが、この研究班におきましてこれら小児の脳死事例を百五十例ほど集めました。一般的に言われておりますのは、成人の場合は脳死後、心停止まで四日から五日、長くて二週間、小児の場合は通常一週間で、百五十例中十例以上が数十日以上というのは聞いているわけでございます。  したがいまして、本研究班におきまして、今御指摘事例も含めまして、医学的経過、脳死判定の内容などを把握いたしまして、他の事例とあわせまして専門的見地から精査をしていただいているところでございまして、その結果は今後の小児における脳死判定基準作成に反映されるものと考えております。
  111. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 成人と違って小児の場合は非常に蘇生力が強いということで、脳死判定が行われても、心臓の方もその後、心停止までに成人以上の長期間心臓が動いているというような状況もあるという現実のそういう症例をもとにして、やっぱり乳幼児の脳死判定に関しては慎重に検討していくことが大事かなというふうに思っております。  それで、厚生省の方でも六歳未満の乳幼児の脳死判定基準、これを現在検討中ということを聞いておりますので、いつごろまでにそれができるのか、その見通しについてお伺いしたいと思います。これは大臣の方からお伺いしたいと思います。
  112. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今お尋ねの小児における脳死判定基準作成につきましては、平成九年度から厚生科学研究班を設置して検討いただいております。  現在、本年度中の基準作成を目標といたしまして、平成九年度に研究班が提示いたしました暫定基準案につきまして、先ほど局長から言われましたように、全国から報告された百五十例の症例をもとにして専門的見地から精査を行っておるところでございます。そして、脳死判定基準作成、公表を年内に行いたいということでございます。
  113. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 また別な質問になるんですけれども、厚生省の方の臓器移植の法的事項に関する研究班による「現行法の三年目の見直しに向けての提言」、こういうものが出されているわけでございます。  この提言の中に、三年後の法改正の見直しについての提案もなされているわけであります。その提案の条文としましては「死亡した者が当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が臓器移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示したとき」にも脳死臓器移植を可能とすることを含む見直し案ということでございます。簡単に言いますと、家族承諾による脳死臓器移植をも認めるとの見直し案ということになります。  こういう提案がなされているわけでありますけれども、厚生省としましてはこの提案に対して今後どのような対応をしていくのか、方針をお聞きしたいと思います。
  114. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 臓器移植法におきましては、ただいま仰せられたとおり、本人の書面による提供意思の表示を必要とする扱いになっておりますが、本人の臓器提供意思が不明な場合には家族の書面による承諾によっても臓器提供が可能となるように研究班が法改正を提言したものでございまして、臓器移植法についての一つ考え方を提示したものだと受けとめさせていただいております。  しかし、いずれにいたしましても、臓器移植法においては法施行後三年、平成十二年の十月でございますが、それを目途として制度全般について検討することとされておりますので、小児に係る臓器移植の問題についてもその中で議論していただけるものというように考えております。
  115. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 先ほどの見直し案によりますと、例えば親権者同意によりまして十五歳未満の児童からの脳死臓器提供も認められる、そのようになるのかどうか、厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  116. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 仮にこの厚生科学研究班の提言の趣旨に沿って法改正が行われた場合には、小児についても親権者を含む遺族の意思により臓器提供が可能になり得ると考えられます。
  117. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 日本ではまだまだそこまで国民的合意に達していないというふうに私は今考えているわけでありますけれども、諸外国での児童からの脳死移植臓器提供状況はどのようになっているのか、また小児での臓器提供を可能にしているそういう実施国においてはそのことが妥当なのか、あるいは再考を要するとか、そういう直近の評価はどのようになっているのか、お伺いしたいと思います。
  118. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 小児からの臓器提供に関する諸外国における考え方は一律ではございませんが、本人の意思が不明な場合には親権者などの遺族の承諾により小児の臓器摘出を可能とする立法例が多いと承知をしております。  なお、UNOS、全米臓器配分ネットワークデータによりますと、米国におきましては十八歳未満の者からの臓器提供は一九九七年におきまして全体の約二〇%を占めていると聞いているところでございます。
  119. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今回の研究班の法改正の提案というのは、主にメンバーの方が法律関係者だけであるということで、今後幅広い国民のいろんな方々意見を聞きながら慎重に検討していただきたい、そのように思っております。  最後の質問になりますが、今後、脳死臓器移植に関しての情報公開、これが一番問題になると思うんですけれども、どのように厚生省として進めていく方針なのか、大臣にお伺いしたいと思います。
  120. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 移植医療におきましては、臓器提供者に対して十分な救命医療が行われているかどうか、あるいは適正な脳死判定が行われたかどうか、また移植患者が公平に選択されたかどうか等について評価が行われる必要がございまして、その透明性を確保することが極めて重要だと考えております。  なお、同時に、臓器提供に関する御家族の承諾についての任意性を確保し、個人のプライバシーの保護ということも極めて重要な点でございまして、これらの両立を図っていくことが必要だと考えております。  移植医療透明性確保臓器提供者のプライバシー保護の両立の論点につきましては、これは公衆衛生審議会臓器移植専門委員会においても議論をいただいて、先般、中間報告をいただいたところでございますが、この問題につきましては第三者による検証機関の設置を含めましてさらに引き続き同委員会で御審議いただきたいと考えておりまして、私どもとしても同委員会における検討結果を踏まえて適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  121. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 第一例目の脳死臓器移植に関しましてマスコミの報道姿勢が非常に問題になりましたので、今後、情報公開に関しましては厚生省としても報道機関との合意形成あるいはそういうルールづくりに関しましても会話を重ねて、国民にわかりやすい、あるいは納得できるような形で報道、情報公開のあり方を決めていただきたいというふうに思っております。  僕なんかも脳神経外科でそういう脳死状況患者さん等を診ていたわけでありますけれども、お見舞いの方とかそういう方に対してはやはり家族の承諾を得ながらいろんなことをお話しするということになっておりまして、臓器移植の場合も家族の承諾がない情報提供というのはやはり問題があるのではないかというふうに考えますので、その点も慎重に、家族のプライバシーを守るということを大前提に置いてやっていただきたいと思うわけであります。  関連で沢委員が質問しますので、これで私の質問は終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
  122. 沢たまき

    ○沢たまき君 よろしくお願いいたします。  私は、最近とみに全国各地の病院で信じられないような初歩的な医療ミスの事故が起きておりますので、その件について伺わせていただきます。大変時間が短うございますので、端的に伺ってまいります。  本年の一月十一日、横浜市立大学の医学部附属病院患者を取り違えるという事故がありました。二重、三重、また四重のチェックがあったにもかかわらず最後までだれも気づかなかった。関係者の中にはおかしいと思った方もいらっしゃったようですが、最後までまさかということで見過ごしてしまったようです。  病院の中における医療ミスとか事故につながる、冷やりとかはっととかという事例は、先ほども先輩の議員もおっしゃっておりましたけれども、日常的に起きているわけで、表面化していないだけではないかと思っております。  七月十五日、「厚生省 医療事故防止へ初の調査」という報道がされておりましたけれども、その内容が厚生科学研究費による三年間にわたった調査というふうに伺っておりますが、それから対策を講じるというのでは余りにもゆっくりしていないでしょうか。今日の医療ミスとか事故に対する厚生省の認識に緊迫感がないのではないか、こう思ってしまったのですが、厚生大臣医療ミス防止に対して緊急に対策を講じるようにお臨みになるべきではないでしょうか、まず質問いたします。
  123. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 国民の命を預かる医療施設でございますから、横浜市立大学医学部附属病院患者取り違え事故みたいなことがあってはならないことでございまして、これは緊急に有識者による検討会を組織いたしまして、去る五月十二日に報告書を取りまとめて、それぞれのところに通知をし、その事故防止の取り組みについて徹底を期したところでございます。  一方、委員指摘の七月十五日の「厚生省 医療事故防止へ初の調査」という報道に言及されましたが、これは五月の検討会報告書において引き続き調査研究を進めるべきだという趣旨の提言が先ほど申しました提言の中にございますので、厚生科学研究費により実施することといたしたものでございます。  なお、三年間もかかってのんびりしたことではないかという御指摘かと思いますが、これは一年目にはすべていろいろのそういった細部の事項を含めて実態を明らかにしていくということが必要でございますが、一年目には全部調査を完了いたします。そして、二年目以降はそれらに対応してどういう研修、トレーニングをやればいいかとかというようなことを含めて年次がまたがるわけでございまして、私どもとしてはこうした緊急性にかんがみまして早期にこの結論を得たいということにおいては変わりございません。
  124. 沢たまき

    ○沢たまき君 ありがとうございました。  一年ごとにやってくださるのなら。三年たってからやるのかと思ったものですから。  次に、端的に伺いますが、現在、卒後臨床研修必修化を目指していらっしゃいますけれども、未研修でお医者様あるいは歯医者さんになられた方は平成九年度でどのくらいいらっしゃいますでしょうか。また、昭和四十三年以降、トータルでは何名いらっしゃるでしょうか、その実態を教えていただけるでしょうか。
  125. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 医師で臨床研修を受けなかった者の数ということでございますが、この臨床研修必修化をやめたのが昭和四十三年。四十三年にやめて四十五年からデータがとってありますが、これまでの間に未研修者は研修対象者三十七万人に対して八万二千人、二二・四%の方が医科の場合は未研修でございます。  最近のデータでいきますれば、平成九年度では一万五千七百九十八名が対象でありまして、研修を受けなかったのが二千二百二十七名ということですから、約一四%が受けていないということになります。  それから一方、歯科医師につきましては、平成八年六月の歯科医師法の一部改正によって一年以上の臨床研修を行うことが義務づけをされまして、平成九年四月から実施をされているところでございます。このときは対象者が二千七百十名に対して約五〇%、半分の千三百五十名程度が実は未研修である、こういうことでございます。
  126. 沢たまき

    ○沢たまき君 未研修の歯医者さんが五〇%というのはちょっとびっくりしたわけでございます。  私、音楽療法士をやっておりましたときに、聖路加の有名な日野原先生が、あの時代はソクラテスはアート・オブ・メディシンと言って医学というのは芸術なんだとおっしゃっておりました。進歩をするのは大変いいけれども、サイエンスだけになってしまったのは非常に残念だとおっしゃっておりました。  私は、厚生省もそれから大臣もアメリカでの臨床研修制度がどのぐらい徹底しているかということはよく御存じだと思いますけれども、PLMEの八年間では人間性豊かな医師の育成の一貫教育を目指しています。  PLMEの学生は、八年間のうち前半の四年間は一般教養科目の中から自分が選択した専門の分野で学士課程を過ごしまして、後半の四年間がメディカルスクールとして医学の専門教育を受けます。在学中にアメリカの医師国家試験のステップ1、2を受けて、卒業のときにはメディカルドクターの称号が与えられます。これが終わって待ち受けているのがレジデンシーと称する研修医としての初めての就職でございます。これはドクター・オブ・メディシンを取得して初めての就職で、専門分野に分かれての専門科の研修でもあります。将来何科に進もうと、医学部の学生である間は、内科、小児科、外科、産婦人科、放射線科、眼科、耳鼻科、皮膚科などオールラウンドといいましょうか、すべての実習を行っているんです。  医学部の三年の後半でまさに自分の専門を決めて、卒業後の研修医に募集するときに眼科なら眼科、小児科なら小児科の専門のプログラムに応募する。そして、そのレジデンシーが修了すると専門医認定試験を受ける資格が与えられて、合格者はみずから眼科医だとか小児科医と称することができる。その研修の期間は、小児科とか内科は三年、外科だけが五年となっているわけです。  私は、こういう徹底した臨床の中から、患者さんとの問診がうまくできたり説明責任ができたり患者さんと数多く接する、そういう臨床医としての訓練を徹底して行われるところに人間性豊かな医師、それから患者中心の医師、アート・オブ・メディシン、医療というのは人間の健康をつくるアート、芸術なんだという心も養われていくんじゃないかなと思っているんです。  アメリカのシステムが全部いいとは申しませんけれども、研修制度を努力義務にしたのは私は大変不的確だったんではないか。先ほど申し上げたようにサイエンスのみになってしまったのではないか。胃なら胃、頭なら頭と、その専門だけでトータルで見ることができない。ですから、有休でもいいですから、インターン制度の廃止の時点でまたすぐに新たな研究制度をつくるべきではなかったのかと私は思っておるんですが、我が国の医師、卒後の育成体制の抜本的な改善も必要じゃないかと思っているんですが、厚生大臣、いかがでございましょうか。
  127. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今御指摘のように、インターン制度がとられておったわけですが、これはインターンの地位とか身分が不明確であるとか、あるいは指導体制が不備であるといった問題がございまして、四十三年に廃止されたものでございます。それにかわりまして、医師の免許取得後の臨床研修制度におきましては自発的な努力を期待する趣旨から臨床研修を努力義務として位置づけられたところでございます。しかしながら、医療技術の進歩等もありまして、医療の高度化、専門化が進みますので、個々の患者のニーズに応じた適切な医療提供していくためには医師の資質の向上を不断に図っていくことが極めて重要であると考えております。  今後とも、臨床研修必修化していくことは必要と考えておりまして、医療審議会の七月一日の中間報告におきましても「医療関係者審議会が提言している医師、歯科医師の卒業後の臨床研修必修化については、早急にその実現を図ることが望まれる。」という御指摘もございますので、私どもとしては前向きにこれに取り組んでいきたいと考えております。
  128. 沢たまき

    ○沢たまき君 ぜひ必修化を目指していただきたいと思います。その中で、この初歩的な冷やりとかはっととかというのがなくなっていくんではないかなと思っております。すべからく、部分ではなく人間を全体人間として掌握していただいて、患者側はそのお医者様に全幅の信頼を置いてかかるわけでございますので、ぜひよろしくお願いします。  アメリカのようにセカンド・オピニオンが大丈夫だというんならいいんですけれども、私の知り合いでニューヨークでトランペットを吹いている方がいます。首にしこりができました。がんだと言われたんです。どういう治療法をとられたかですが、その方は十人も医者をかえて最終決定をしたと。日本では考えられないことでございますので、そういうこともと思っております。  インターン制度の廃止から卒業後の研修が努力義務になっていますが、未研修のお医者様が二二%あるいは五〇%というのは責めることはできませんけれども、したがって今日、医師として臨床能力の向上のために必修にするとおっしゃってくださって安心しておりますけれども、未研修でお医者様になった方々について何らかの措置を講じた方がいいのではないかと私は思っております。  いかがでございましょうか。何か門戸を開くとか講じていただければと思います。
  129. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 臨床研修必修化につきましては先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、現在、臨床研修を受けていない医師、歯科医師につきましても研修の機会を与えられることが望ましいと考えます。したがって、現在と同様に、仮に本人が研修を望んだ場合には研修を受けることができるようにすることが適当ではないかと考えております。
  130. 沢たまき

    ○沢たまき君 ありがとうございました。  この委員会はもうお医者様が多い中であれでございますが、しかし一患者立場として医療はアートであるとぜひ皆様にも再度申し上げて、冷やり、はっとをなくしていただきたいと思っております。  大変ありがとうございました。
  131. 小池晃

    ○小池晃君 私は、介護保険保険料の問題を中心にお聞きします。  実施まで九カ月を切り、国民の不安が広がる中、きのう第一号保険料が二千八百八十五円と発表されました。  厚生大臣にお伺いしますが、家計消費は依然として回復をしていないわけであります。こうした中で、四十歳以上のすべての国民保険料負担を求める。両方第一号の夫婦だとすると月五千七百七十円の負担になります。この負担は率直に言って極めて重いのではないだろうか。消費税率のアップ、医療費の自己負担増に続く家計消費への打撃となるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  132. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回の介護保険のシステムは、四十歳以上の二号保険者と六十五歳以上の一号保険者の負担する保険料によって介護費用の半分を賄っていただくということに相なっております。半分は公費負担でございます。  厚生省として、保険料がどの程度になるか、介護事業計画の基礎にいたします各市町村、保険者の見込みを収集する必要がございますので、先般これを収集いたしまして、全国平均でございますが二千八百八十五円ということをお示しした次第でございます。  なお、これについてはいろいろまだ未調整あるいは県との調整の問題等も残されている市町村もあるようでございますが、おおよそ二千八百八十五円ということでございますから、厚生省が今まで試算としていろいろお示ししたものに近いものではないかと思います。  しかし、各市町村、保険者によって違うわけでございまして、具体的には二千円から四千円の間に大体九割、九〇%以上、それから人口割合で九八%近くが占められておりまして、四千円を上回るもの、六千円以上というのも二カ町村あることが示されておりますが、これは極めて例外的なものでございまして、おおよそ九割以上は二千円から四千円の間におさまっておる。千五百円未満のものも二カ町村くらいあるということでございまして、私どもとしてはこれを率直に受けとめさせていただきまして、今後の運営上の参考にはさせていただくつもりでございます。  なお、保険料負担の仕組みは、申し上げるまでもございませんが、政令によりまして住民税の本人の非課税等のものを標準的な基準額として前後に五割引きあるいは五割増まで条例等でできることになっておりまして、まあまあ制度としては低所得にも配慮したものというように考えております。
  133. 小池晃

    ○小池晃君 今、低所得者にも配慮しているとおっしゃいますが、最低段階の〇・五倍を見てもこれは老齢福祉年金ということになります。これは事実上八十五歳以上だけの年金であります。老齢福祉年金の平均受給額月三万四千円、八十四歳以下の国民年金、老齢年金受給者で老齢福祉年金受給以下の方は約二百六十万人いらっしゃる。こういう人たちはこの半額免除対象ではないわけです。  それから、住民税非課税というお話がありましたが、同居家族の中に一人でも住民税を払っていれば、この方は本人非課税でも満額徴収になるわけです。五段階の軽減措置があるというけれども、私は低所得者対策になっていないというふうに考えるんですけれども、いかがでしょうか。
  134. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 低所得対策として十分かどうか、あるいはこれは重過ぎるのではないかという御指摘だと思いますが、従来の措置制度から保険制度に切りかえるわけでございまして、従来の措置制度でございますと保険料負担とかそういうことなしに給付が受けられている方々もいらっしゃるわけでございます。所得の多い人は利用負担をいただいておったということでございますが、今回は、すべての方に一応保険料をおさめていただく、そしてその割合は低所得の方ほど低減をするという枠組みでございますし、給付の方もそうでございますが、そのような配慮をしておるということは御理解をいただきたいと思います。
  135. 小池晃

    ○小池晃君 私は、低所得者対策にはこれはなっていないというふうに思います。負担軽減のための措置というのはどうしても必要ではないか。  私は、先日の予算委員会で国庫負担による法定外の負担軽減のための措置は否定しないという答弁をいただきました。与党の内部からも負担軽減のための財政動員、財政支出、これを検討されているというふうに聞いております。国庫負担保険料の軽減のために充てる、これはどうしてもやはり求められる措置ではないかというふうに考えるんですが、大臣の見解はいかがでしょうか。
  136. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 保険料負担につきましては、先般たしか小池委員に対しましてそういうことまで含めて否定はいたしませんと申しました趣意は、具体的にこれから何が必要であり何が可能か、円滑な実施のためには何が可能であり何をすべきかというような点を総合的に判断するわけでございますので、その保険料の点も絶対にそれじゃだめかといえばあえて排除はしないと、こういう趣旨で申し上げたわけでございまして、そういうことをやるということを申し上げたつもりではございません。  自民党の一部に保険料の半額負担をすべきであるというような御意見のある方も承知はしております。しかし、私どもとしてはこれからこうした府県からの事業計画に基づく実態をよく把握した上で、委員のおっしゃるような低所得対策その他、何が可能なのか、どういうことをすべきかというようなことを含めて検討してまいりたい、こう思っておるわけです。
  137. 小池晃

    ○小池晃君 円滑な実施のためには、保険料の軽減は検討すべき項目の一つであるということは、これは大臣も認められることだと思うんです。  さらに、この保険料自体どう見るのか。これ自体がかなり極めて意図的に低く抑えられた数字ではないかということを申し上げたい。  保険料算定の基礎として介護サービスの参酌標準があります。これは施設サービスは六十五歳以上人口の三・四%、老人福祉施設、老人保健施設、療養型医療施設の比率が八対七対五ということであります。この基準を参考にして必要な介護サービス料を各自治体に計算させて、それをもとに保険料算定をさせているわけですね。この参酌標準を来年四月の高齢人口二千二百万人に当てはめると、各施設サービスの全国の合計数というのは幾らになるでしょうか。
  138. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 平成十二年度の高齢者人口の推計値にこれらの数値を乗じますと、特別養護老人ホームで約三十万人、老人保健施設で二十六万人、それから療養型病床群で十九万人ということでございます。
  139. 小池晃

    ○小池晃君 新ゴールドプランの特養老人ホームの目標は二十九万人です。補正予算の追加で三十万人になった。それから老人保健施設の目標は二十八万人。これより抑えた数字になっているわけですね。要するに、今度出された保険料の数値というのは、施設は新ゴールドプランの施設の目標の範囲内に抑えた、さらに在宅に至っては目標の四〇%という算定をしている。こういう極めて低い組織の基盤整備の目標を前提にした、いわば無理やり低く抑えた保険料というふうに言えるんだということをまず指摘しておきたい。  さらにお聞きをしたいんですが、二千八百八十五円というふうに言われていますが、実際の段階ではこれよりもっと上がってくるんじゃないだろうか。厚生省は一号保険料算定のためのワークシートを示しましたが、これは市町村は大変混乱したと言われています。なぜなら、このワークシートの算定には介護報酬の地域格差、それから第二号被保険者の介護サービス費用は含まれないという欠陥があったというふうに聞いております。  最初にお聞きしますけれども、二千八百八十五円という全国平均値、これは介護報酬の地域差は勘案されていないということでよろしいですね。
  140. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 今回の保険料の算定につきましては、地域差は勘案しておりません。
  141. 小池晃

    ○小池晃君 入ってないんです。昨年十月の介護報酬の中間取りまとめでは、国家公務員の調整手当の級地区分を基本にして地域差を勘案するという方針が出されています。これによれば、東京二十三区は一二%加算です。実際に東京の荒川区とか台東区では、厚生省が示したワークシートによる保険料と、区が独自に予想される大都市加算などを行った保険料と二通りの数字を公表しているんですね。  例えば荒川区、ここは厚生省の示したワークシートの計算では二千九百三十一円。一方、独自に大都市加算を一二%と想定して加味した保険料として三千四百九十八円というのを区民に示しています。台東区もそれぞれ厚生省基準三千三百四十五円、それから独自の計算で四千四十五円というのを示しています。それぞれの区の説明では、多分この高い方の保険料が実際の保険料に近くなるだろうという説明を区民に対してしているんですね。  一方、この厚生省発表の二千八百八十五円というのはこういう地域格差を考慮しておりませんから、いわば今言った低い方の数字を集めて集計したわけであります。したがって、実際の保険料はこうした加算により各市町村がワークシートで計算した保険料よりも高くなる。したがって、全国平均ももっと高くなる、実施段階では。これははっきりしているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  142. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 介護報酬につきましては、事業所や施設の所在する地域等を勘案して定めることになっておりまして、大都市部におきましては今御指摘のように人件費が高いことから地域加算を設けることとなろうかと存じますが、その結果として保険給付に要する費用の額は高くなるために保険料の水準もある程度上昇することは予想されます。  なお、地域加算の水準等につきましては、現在行っております介護報酬に係る実態調査の結果を踏まえまして、今、審議会を中心に検討中でございます。
  143. 小池晃

    ○小池晃君 今、大臣も認められましたように、二千八百八十五円というのはこれでとどまらないんですよ、さらに上がるんだと。特に地域加算、離島などの僻地は特別調整交付金によって保険料に反映されない道はある。しかし、大都市部の加算は保険料にはね返ってくるわけですね。今出ているような一〇%以上というような加算がされたら、これは大変な負担になることは間違いないだろうというふうに思うわけであります。  そもそも今回発表された保険料自体が基盤整備の非常に低い目標に抑制した結果の数字として出されてきている。さらに、実施段階では、今、私は地域格差の問題を言いましたけれども、介護報酬自体見直されるわけであります。それから、収納率の低下の予測もされています。そして、地域格差の加算の問題もある。保険料実施段階では二千八百八十五円を超えてかなり高くなることは間違いないというふうに言わざるを得ないわけであります。  今までの厚生省のやり方を見ると、当初は二千五百円と発表した。二千五百円というのが全国に行き渡ったわけです。昨年の三月に衆議院予算委員会で我が党の児玉議員の質問に対して二千六百円という答弁があった。そして、今回二千八百八十五円と徐々に上がってきているわけですが、これまで一貫して保険料を過小に示してきた。こういうあなた方の今までのやり方からすれば、来年四月の実施段階にはもっと高くなるんだろうな、こういうふうに言われても仕方ないんじゃないだろうか。  そこで、大臣にもう一度お伺いします。こうしたことを踏まえて、円滑な実施というのであれば保険料の軽減、これは手段はいろいろあると思うんです、方法は。保険料の軽減がどうしても必要になってきているのではないかというふうに思うんですが、改めてお伺いしたい。
  144. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 法定されておるこのシステム自体に影響するようなことは、今、私ども、成立した法律を施行する責任を負わされている所管大臣としてはいたしかねるところでございます。したがって、結果として保険料負担とか総合的に負担の問題を考える必要があろうかとも存じますけれども、具体的に今御指摘のような点についてまだ御返答する立場にはございません。どういうことが可能であるかどうかはこれから概算要求の段階で詰めまして、与党の中の協議も経て合意形成を図って、そして来年度の施行に備えたい、こう思っておるところでございます。
  145. 小池晃

    ○小池晃君 私は、きょうは保険料問題を中心にお伺いしましたが、そのほかにも多々問題はあるわけであります。要介護認定の問題もある。基盤整備が十分でないという問題もある。利用料負担についてもかなり重いと。ほかにも問題が山積しているわけであります。このまま保険料徴収を始めてもそれにこたえるサービス提供ができない。保険というのは契約で成り立つわけですから、サービス提供ができないのに保険料徴収を行うということは、これは国家ぐるみの契約違反ということになりかねない。私は、このままでは国として取り返しのつかない誤りを犯すことになるというふうに考えるわけです。  そこで、一定の基盤整備と制度改革ができるまで私たちは保険料徴収を延期すべきだというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。
  146. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この制度の趣旨から申しまして、私どもは保険料徴収を凍結する、あるいは延期するというようなことは考えておりません。
  147. 小池晃

    ○小池晃君 そのことは引き続き求めていきたいということで私の質問は終わって、井上議員にかわります。
  148. 井上美代

    ○井上美代君 日本共産党を代表して、質問をいたします。引き続き、私も介護保険問題で質問をいたします。  いよいよ四月からということで、もう一カ月があっという間に過ぎていきますので、どうしてもやっていただきたいということがありますので、短い時間ですができるだけ早くに質問をいたしますので、よろしくお願いをいたします。  保険である以上、在宅であっても施設であっても希望するすべての人にサービスが提供されなければいけないというふうに思います。ところが、多くの自治体が介護サービスの基盤整備のおくれを訴えている。しかも、非常に深刻である。  ことしの五月にNHKが調査をいたしました。三千二百五十二の自治体と二十三区でのアンケート調査でありましたけれども、これによりますと、介護サービスの提供が十分できると答えた自治体はわずか三%だけです。一部不足というのが五七%。そして、かなり不足というのが一一%でした。  皆様方のお手元に資料を配付いたしました。この調査日本共産党の東京都議団がやったものです。東京都内の自治体に対して行った調査の一部です。  この調査では、介護保険スタート時の来年度の介護サービスの必要な量と現在のサービス量が明らかにされておりますが、そのギャップが非常に大きいわけです。ヘルパー、デイ、ショートというふうに略して書いてありますけれども、特にこれのJKLというあたりの自治体を見ていただきたいと思います。自治体は皆ABCになっております。ここではヘルパーでも三二・五とか、デイでいきますと一一・〇、一二・〇、ショートでも九・七、一四・八というように、非常に実態が深刻になっているのが数字で示されております。  厚生省は介護サービスの必要量の実態を早急に明らかにして、そして新たに施行までの整備目標を持ってほしいというふうに思うんです。そして、緊急に介護基盤整備を進めるべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。大臣、よろしくお願いします。
  149. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 介護サービスの基盤整備につきましては、新ゴールドプランで私どもとしては最大限努力をしてまいってきております。その進捗状況を見ますと、全国ベースではおおむね順調でございますけれども、地域や介護サービスの種類によって差があるのも事実でございます。今、東京都の例の資料も拝見いたしました。  総じて、平成九年度末時点の実績を見ますと、例えば特別養護老人ホームにつきましては全都道府県において順調に整備は進んでおりますけれども、京都府とか神奈川、千葉、埼玉などでは若干達成率が低くなっておるとか、あるいは老人保健施設につきましては全国的なばらつきが大きくて、秋田や石川で既に目標値に達しておる一方、神奈川、京都府、東京都、千葉県などでは達成率が低くなっておる。日帰り介護、デイサービス事業につきましては、福井県等では目標値に達しておりますが、千葉県、埼玉県などで達成率が低くなっておるというようなことどももございます。また、ホームヘルプサービス事業についても、東京都や岐阜県などは順調に整備が進んでいる一方で、千葉県、埼玉県、茨城県などで達成率が低くなっておるという状況にございます。  私どもとしては、充実を図って、地域のバランスがなるべくとれるように努力していきたいということでございます。
  150. 井上美代

    ○井上美代君 新ゴールドプランというふうに言われたんですけれども、それをやはり一〇〇%目標達成してやり抜いていくということは非常に重要であるというふうに思います。しかしながら、それが達成されたとしても、特養老人ホームには九万人余りが入所できないという現実があります。在宅サービスはもともと初年度で必要な要介護者の四割しか準備ができない。このように政府の計画自体が非常にやはり現実とは甘い見通しの中で進められていると私は思っております。今、新ゴールドプランさえも、多くの自治体が調査を出してきておりますけれども、達成の見通しがないというところがかなりあるわけです。  日本共産党は、新制度に見合った介護需要を見込んで目標を見直すことを一貫して主張してまいりました。今からでも私は遅くないというふうに思っておりまして、希望するすべての人にサービスが提供できるよう目標をやはり引き上げてほしい、そして基盤整備を軌道に乗せてほしい、そうであってこそこの介護保険が何とかやっていけるんじゃないかというふうに思っているわけです。質問時間が少ないですので、私はそのことを指摘いたしまして、さらにぜひお聞きしたいことがありますので、そこへ進んでいきたいと思います。  次に私がどうしてもお聞きしたいと思っているのは、これらの調査の中で出てきている内容でございますけれども、基盤整備がおくれている大きな要因の一つに土地取得の問題があるということです。特養老人ホームやデイサービスセンター、老人保健施設を建設する際の土地取得に、特に都市部では大変な費用がかかるために社会福祉法人も自治体ももう困難にぶつかっているというのが調査で出てきております。  六月に東京都が来年度予算への重点要望というのを出しました。大臣もきっとごらんになっていると思うんですけれども、用地取得費への政府の財政的支援を強く求めております。二ページにわたって用地取得についての要望の内容がいろいろありますけれども、例えば用地取得費や敷地の造成工事費を補助対象とされたいとか、また国有地の売り払いを今後とも積極的にやってほしいとかいろいろあるんです。  そして、これは東京だけではなくて京都でも同じ要望が独自に出されておりますし、また東京のほかにも大阪だとか京都だとか札幌だとか十二の大都市と言われるところがありますけれども、ここの十三大都市の要望書にも同じことが書かれているわけなんです。  大臣基盤整備が困難な理由一つに土地取得に費用が大変高くかかるという問題について、どのように御認識でございましょうか。
  151. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御指摘のように、都市部等の土地の取得が非常に困難な地域もございまして、デイサービスセンター等の施設整備がおくれておるのも承知をいたしておるところでございます。  都市部において施設整備する場合には、国や地方自治体以外の者から借り受けた土地でも差し支えないというように配慮するとか、あるいは高層化施設に対する面積の加算補助をいたしますとか、補助単価の割り増し加算などの促進策を講じております。また、公立学校の余裕教室の転用も進めておりますが、一般的には、土地問題は国の助成のあり方として地方債の起債の対象として措置しておるのが通例でございまして、この場合もデイサービスセンター等の用地を取得する場合も地方債の起債が認められておりますので、そういった措置によって対応を図っていきたいなと。土地取得に対する直接的な国庫補助というのはなかなか困難ではないかと考えております。
  152. 井上美代

    ○井上美代君 今言われたんですけれども、昨年度の補正予算で起債、地方債の発行を認めるということで出されておりまして、これは特に平成七年の国勢調査の人口集中地区の市区町村を対象にして昨年度と今年度の二年間でやっていくというものであります。あくまでもこれは起債ですので借金をするということなんです。だから、借金漬けで苦しい自治体にとってはまだまだ十分な施策とは言えないと思うんですね。  だからこそ、先ほど挙げたように、来年度に向けまして多くの自治体が本当にさまざまな努力と苦労をやっているところなんですね。そういう意味で、財政支援の要望が出ていることについて何とかこたえられないだろうか。お金を出すということは非常に大変ではあるというふうに思いますが、何とかそこを、新たな方策がないものかということをお願いしたいというふうに思うんです。  今言われました起債については今年度で終わりますので、引き続き地方債を認めてやっていくということが、これだけの大事業でもう歴史的にも初めてのことをやろうとしているんですから、私はそのことが必要であるというふうに思っております。やはり国の支援が今必要だということです。  大臣、介護基盤整備のための土地取得、特に自治体が社会福祉法人などに貸し付ける目的で用地取得をする際に何らかの国の財政的な支援ということ、起債もお願いしたいと思いますが、国の財政的な支援が必要だと思いますけれども、検討していただきたいと私は思っております。いかがでしょうか。
  153. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 土地の取得に対する国庫補助制度は先ほど申し上げましたとおりで、起債も平成十年度の一次補正と平成十年度、十一年度における特例措置として地方債の起債を認めたところでございます。  今後どうするかという点は、十分関係省庁とも連絡をとっていきたいと思いますが、今まで実施したのはそのような趣旨に基づくものでございます。  なお、今後検討はさせていただくつもりです。
  154. 井上美代

    ○井上美代君 土地の問題というのは基盤整備にとって非常に重要ですので、私はこの問題を切り開かないで基盤整備というのはなかなか大変だというふうに思っております。  まず現在、建設省が公営住宅等の供給促進緊急助成事業というのを始められているんですけれども、この中で地方公共団体が建設する公営住宅の用地取得のために自治体に補助金を出すというものなんです。これは五年間の事業でやられておりますが、建設省ではそういうこともやられておりますし、また過去にさかのぼりますけれども、高度成長以降の一九九五年度まで人口急増地域に小中学校を建設する際の用地取得にも補助がされていたわけなんですね。だから、既にこうした土地取得への助成は国としてはやられていたわけなんです。  私は、今度の介護保険が皆保険ということで、今までやらなかったことをやっているわけですから、そして介護保険基盤整備は来年の四月までで大変緊急性を要しておりますので、政府が思い切って土地取得のために財政的に支援制度を創設してくださることをお願いして、次に移りたいと思います。  次に、私は認定漏れの、いわゆる要介護認定で自立と認定された人たちが出てくるということ、これは大変今悩みでございますけれども、調査の中でもそれがたくさん数字としても出てきているわけです。  特に、例えば従来受けていたサービスが介護保険の認定によって打ち切られてしまう高齢者にとっていろいろ非常に切実なことがあるんですけれども、ホームヘルプサービスでは、既に厚生省が明らかにされておりますように、四万人を超える自立と認定される人が出るわけです。これらの人の中に家事援助型のホームヘルプサービスを受けている人がかなりおられるんですね。  自治体の関係者からも、特に男性のひとり暮らしの高齢者を心配している声が上がっております。体が動くからと自立になってしまったけれども、食事だとか掃除、そして買い物、こういうものができないということで生活が荒れて体が弱っていってしまう。そういうことで、自治体が何とかこれをしなければいけないと悩んでおります。こうした人たちに家事援助型のホームヘルプを検討することが大事ではないかと思っているわけです。  七月二十一日に読売新聞の報道がされましたけれども、そこの中で在宅高齢者保健福祉推進支援事業を今年度の百億を拡充すると。三百億というふうに数字は出ておりましたけれども、この中で外出支援サービスなどという新しいものが入っております。これは生活支援の一部かなと思いながらいたんですが、私は家事援助型のホームヘルプサービスというのがどうしても必要だと思うんです。もう男性たちのためにも必要だと私は思っているんです。  そういう意味で、家事援助型を含んだホームヘルプサービス、これをやはり検討してほしいというふうに思います。そして、調査でも明らかになっておりますが、これへの努力を自治体がかなりやっているんです。だから、そこに対する財政的なバックアップもしてほしいというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  155. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 配食とか移送等の生活支援サービス、今、家事援助型サービスと言われましたが、そういったもの等を含めまして、自立と判定される方が出るわけでございますので、しかし独居老人であってみたりなかなかお気の毒な立場にもある方もいらっしゃると思います。そういうことで、在宅高齢者保健福祉推進支援事業ということで今年度は百億円を計上いたしましてこれらの実施を図っておりますが、来年の四月以降も、こうした状況を踏まえながら、今年度の執行状況とか地方自治体や関係団体の要望も含めまして検討して、その充実を図っていきたいと思っております。
  156. 井上美代

    ○井上美代君 もういよいよ時間がなくなりました。  私は、今の件については四月十三日に大臣に質問をいたしまして、検討するという御答弁をいただいておりますので期待をしておりますが、ぜひやっていただきたいというふうに思います。  最後に、私は生きがい対応型のデイサービスについて質問をしたいというふうに思うんです。  これもやはり自立と認定されてサービスを受けられなくなる方たちにとって非常に重要な内容であるというふうに思っておりますけれども、特に生きがい対応型のデイサービスでは運営費は補助するというようになっているんですね。しかしながら、その運営費が幾ら出るのかはわかりませんけれども、グループホームをやるということで今全国で百カ所ほどですけれども出てきているわけです。これも非常に重要な中身だというふうに思いますが、これを見ましたときに運営費と初度設備費というのが出ているんです。  それで、今百カ所ぐらいなんですけれども、このような補助をやはりこの生きがい対応型のデイサービスにもやっていただきたい、そして地域にこうした自立と言われるお年寄りが生き生きと生活ができるようにしていかなければいけないのではないだろうかというふうに思います。その点をぜひ財政支援的にも、運営費の拡充と、そしてこのグループホームのように初度設備費を出してやってほしいということを要望いたしまして、終わりにしたいと思います。よろしくお願いします。
  157. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 要介護認定におきまして自立と判定された場合でも、高齢者が老人福祉センター等に通所したり、健康・文化活動等の生きがいサービスを利用できるように高齢者生きがい活動支援通所事業、いわゆる生きがい対応型デイサービス事業というのを平成十一年度に創設してございます。先ほどお話し申し上げました百億円の範囲内の話でございますが、こうした趣旨を踏まえまして、今後とも御指摘のような点を含めて検討をさせていただくつもりでございます。  そして、自立と認定された方々であっても、従来福祉の恩恵に浴しておられた方々をいきなり切り捨てるわけにもいかないという事情もよくわかりますので、そういった点を含めて検討させていただきます。
  158. 井上美代

    ○井上美代君 ありがとうございました。
  159. 清水澄子

    ○清水澄子君 脳死段階の臓器移植事例が非常にふえてきておりますが、これまでの事例臓器提供施設臓器移植ネットワーク体制整備に問題があるということがわかってきたと思います。  しかし、先般の国会報告ではいろんな問題が時系列に並べられているだけで、しかも公衆衛生審議会部会の作業班で検討されている状況が報告されておるだけで、問題点に対する十分な分析や、今後政府としてはどういうふうな対応を迫られているかというような、そういう報告にはなっていないと思います。それではこの臓器移植に対する国民の信頼性を高めることは非常に困難だと思うわけです。そこで、幾つかお聞きしたかったんですが、先ほどから皆さんたちがお聞きになっておりますので、そこは時間もありませんので飛ばします。  臓器提供施設における課題につきましても、本当に患者に対する救命医療が最善を尽くされたのかどうか、それらもただ尽くされましたという報告になってはいるんですが、本当にそれは検証されたのかどうか。その中で何か問題は、今後改善すべきことがあったかどうかとか、そういうふうな分析的な報告が必要だと思うんです。  それから、臓器移植ネットワークにおける課題の面でも、非常に患者選定ミスや情報開示での不手際があったわけですけれども、そういう場合に、今後どういうふうに有能で良質な移植コーディネーターの確保を行っていくのか、こういうふうな課題ですね、どのようにやっていくかということがやはり報告されてこそ理解が進むと思うわけです。  そこで、私は大臣に要望いたしますが、国会に対する年次報告のあり方をやはり改善される必要があると思います。法定白書と同様に、移植医療現状と政府として今後講じようとする施策の二部構成にして、国民検証にたえ得るようなそういう高い水準のものにすべきだと考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  160. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員の御質問は、臓器移植に関する国会報告についてというように承ってよろしゅうございますね。  その点につきましては、特別委員会の附帯決議を踏まえまして、臓器移植実施状況とか移植結果等を中心に報告をさせていただきました。脳死移植事例を踏まえました課題等につきましても報告をさせていただいたつもりでございますが、この国会報告におきまして、公衆衛生審議会臓器移植専門委員会中間報告でも、移植医療透明性確保とプライバシーの保護の両立、脳死判定に係る医学的評価等について言及もさせていただいておるところでございます。  今後、国会報告をどのような内容とするかにつきましては、本委員会における御論議も踏まえまして検討させていただくつもりでございます。
  161. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、患者の権利について質問したいと思います。  最近、単純な医療ミスといいますか医療事故が続発しているわけですが、この医療事故の発生を未然に防止し、あるいは日本医療患者本位にしていくためには、医療サイドの自主的な改善努力だけに期待しているというのはやはり無理だと思います。  午前中、やはり同じような話がありましたけれども、さっき小林健康政策局長は、医療とは医者だけではなくて看護婦、薬剤師等医療関係者の協力と言われたんですが、私は医療とは患者医療提供者との信頼関係をどうつくっていくのか、こういうことが基本ではないかと思います。先ほどのお話の中では、医療というものに患者がいつでも抜けていると思うわけです。ですから、医療の世界でも、一般社会における人権と同様にやはり患者の権利を法的に確立していくことが非常に必要だと思うわけです。  医療サイドが患者の権利を認めてそれを尊重していくということが、私は我が国医療に対する信頼を深めていくと思うわけですけれども、厚生大臣はそういう患者の権利という問題についてどのような御認識をお持ちか、そして政府としてもこの問題に対する取り組みをどのようにしておられるのかということをお尋ねしたいと思います。
  162. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 医療従事者と患者の信頼関係が極めて重要であるというのは申し上げるまでもございません。この観点から、医療法を平成九年に改正いたしまして、インフォームド・コンセントの規定を盛り込んだところでありまして、その普及、定着を図っております。昨年来、医療審議会におきましても、診療記録等の診療情報の提供のあり方や医療機関の広告規制のあり方など、医療における情報提供の推進についても議論を進めてまいっております。  委員指摘患者権利擁護というのは、権利擁護というか人間尊重の精神は当然でございますが、ただ患者の権利を確立するために法制化するとなりますといろいろな問題がなしとしないというように思います。つまり、患者の権利のみを強調することが医者と患者との信頼関係の確立に本当に資することになるのかどうか、あるいは医療関係者が責任回避のために画一的な対応に陥ってしまうおそれはないか等々いろいろな問題も考えられます。関係者の間でもさまざまな意見がございますので、これは慎重に検討する必要があると考えております。
  163. 清水澄子

    ○清水澄子君 やはりもう少し研究していただきたいと思うんです。今、患者の権利のみを主張することはとおっしゃったんですが、患者は今医療との関係では医療関係者と対等な関係にはなっておりません。患者の方は、自分たちのいろんな問題、政策決定にだってほとんど参加できていない状況ですから、決して対等ではありません。権利のみを主張するどころか、まず対等になるということが権利なんだと思うんです。  そういう意味で、大臣、一九九四年の三月末、WHOの支援でオランダ政府の主催のもとにヨーロッパにおける患者の権利の促進に関する宣言というのが採択されています。それは、これからの医療保障改革と患者の権利を促進するための原則、そしてそのための戦略を決定しているわけです。そういうことが諸外国で、特に日本と同じような先進国で進んでいる。そういう状況のもとで、日本では患者の権利というといつでもすごく何かはれものにさわるような扱いをされておるのは、私は日本医療改革にとっても決してプラスにならないと思うわけです。  ですから、そういう意味でも、厚生省はこういうふうな国際的に進んでいる状況、情報をもっと皆さんに知らせて、これらについてどういうふうに日本医療改革の中に取り入れていくのかということをぜひ御審議いただきたいと私は思いますが、いかがですか。
  164. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今御指摘のWHOの考え方、扱い等について私ども十分承知しておりませんので、また勉強させていただきまして、いい医療制度がつくられるように努力はさせていただきます。
  165. 清水澄子

    ○清水澄子君 そうした意味から考えますと、診療記録であるカルテの開示というのは、患者の権利から見ても非常に重要な課題だと思っております。患者に最善で良質な医療提供していくためには、最低限カルテ開示を法制化するということが、やはり患者自身も自分の健康についてきちんと認識する、それから患者も自己決定権という権利を行使できる情報とか知識を持つという意味でも、患者と医師との信頼関係の構築をむしろ制度的に社会的に支援していくということになると思うんです。  そういう意味で、厚生大臣の御認識とこの問題に対する政府の取り組みについて御見解を伺いたいと思います。
  166. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今般まとめられました医療審議会中間報告におきまして、カルテ等の診療記録の開示について触れられております。今後、インフォームド・コンセントの理念に基づきます医療を一層推進するためにも、診療記録等の診療情報の患者への提供を積極的に行っていくことが必要である旨提言をされております。  一方、診療情報の提供、診療記録の開示をめぐりまして法定するかどうかにつきましては、医療審議会におきましても、早急に法制化すべきであるという意見医療従事者の側の自主的な取り組みにゆだねるべきであり法制化すべき性格のものではないという意見が出されておりました。  こうした状況を受けまして、中間報告では、今後の取り扱いについて、今後の患者の側の認識、意識の推移とか、あるいは医療従事者側の自主的な取り組みとか診療情報の提供、診療記録の開示についての環境整備状況等を見つつ、さらに検討すべきであると結論づけておられます。  厚生省といたしましても、こうした医療審議会中間報告の内容を踏まえつつ、この方向性は尊重すべきものでございますので、方向性というのは開示の方向性ですね、それは尊重する方向で検討をさらに進めてまいりたいと思っております。
  167. 清水澄子

    ○清水澄子君 ぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思います。  次に、保険者機能の強化についてでございます。  医療事故の防止や医療の質的向上のためには、保険者が果たすべき役割というのは本当は大きな意味があるんだと思います。しかしながら、実際には、健保組合とか政管健保を担っている社会保険庁とか、あるいは国保を担っている市町村や国保組合等の主な活動というのは財政運営に偏重していると思います。  私は、保険者がもっと保険加入者に対して医療についてのいろんな情報を提供するとか、それからまた相談の窓口あるいは苦情処理の機関を設置していくなど、患者の代弁者としての機能を強化していくということも非常に大切なのではないかと考えておりますが、これについては厚生省はそれを問題意識としてお持ちでしょうか、それとも何かもう既に対策をお考えでしょうか、お尋ねします。
  168. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 御指摘保険者機能の強化の必要性なりその具体的なあり方につきましては、私どもも認識といたしましてはそういった方向で保険者機能の強化を図っていくべきであるというふうに考えております。現実、非常に今医療保険財政が厳しい中でなかなかそういった余裕がないという要素もありまして、現状が十分であるかという点については十分であるとは私どもの方も考えておりません。  この点につきましては、各方面からもいろんな意見が寄せられております。私ども、基本的には医療保険制度の安定的な運営とそれから今おっしゃるような良質な医療サービスを患者に確保していくということで、そういった保険者の果たすべき役割はもっと大きいものがあるというふうに思います。  関係審議会等におきましても、今、先生具体的にお挙げいただいたような点に関しまして、保険者機能強化の具体的な方向といたしまして、良質な医療サービスの提供のために相談窓口を設ける、あるいは被保険者や患者への医療情報を提供する、そういった面でもっと保険者機能を果たすべきところがあるではないかということを御指摘いただいておりますので、私どもの方も問題意識を持ってさらに検討してまいりたいというふうに考えております。
  169. 清水澄子

    ○清水澄子君 ありがとうございました。  次は介護保険制度についてですけれども、この準備スケジュールでは、今年度の四月から六月の間に各市区町村の介護サービス基盤準備状況を取りまとめるということになっておったと思うんです。その基盤整備率というのはどの程度進んでいたかということについてお尋ねしたいと思います。  また、その基盤整備に対する国としての財政的な支援策は来年度の概算要求ではどのような形でそれを要求していらっしゃるのか、その点をぜひひとつ大臣お答えください。
  170. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 介護保険実施を控えまして前広に介護サービス基盤整備を図るということは極めて重要なことであると認識いたしておりまして、平成十年度の補正予算等においてもかなりの額をふやしてその対応をしておるところでございます。今後も高齢化が進みまして要介護者の増大がいろいろ見込まれております。例えば、施設整備必要性は増大すると存じます。したがって、優先的にそういうものは確保すべきだと存じます。ただ、この在宅サービスと施設サービスとのバランス、あるいは施設サービス内の老健施設あるいは特老あるいは療養型病床群等のバランス等々は十分頭に置きながら整備を図っていくべきものと考えております。  なお、この整備率につきましては、介護保険事業計画を市町村ごとに立てられますので、それの前提となる整備実施状況、これは今集計中でございまして、八月終わりから九月の初めごろには大体集計ができると存じますので、また保険料と同じように全国的な体制をお示しすることができるんじゃないかと思っております。
  171. 清水澄子

    ○清水澄子君 来年四月の介護保険制度の導入によって従来の措置制度による支出分というのは減少するはずですから、やはりその分は必ずポスト新ゴールドプランの基盤整備に充てていただきたい。これはもう何回も申し上げておりますので、その点はぜひひとつ強化していただいて、介護保険制度を一日も早く充実、安定化を図るというために急いでいただきたいと思います。  次に、先ほども質問があったんですが、昨日、介護保険料についての発表がありました。しかし、これを見ますと市町村ごとに格差があるわけなんですが、二千円から四千円までというのは大体九七・五%となっておりましたけれども、基盤整備を一律四〇%に抑えて、とにかく今回は保険料を低目に試算するというために何か操作されたような印象を持ちました。ですから、非常にそういう矛盾を感じたわけです。  本当はもう少しいろんな進んでいる県や市町村がありまして、基盤整備でもよくここまでやっているなというところも四〇%どころか六〇%ぐらいいっているところもあります。そういう意味で、これを抑えたことによってやっぱり四〇%しかサービスは提供しないということを宣言したような感じで受け取られている面もあります。ですから、市町村がこれからつくる介護保険事業計画をこの四〇%ということで縛るということはないというふうに見てよろしいんですか。
  172. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この四〇%の整備率という概念が多少誤解を受けておられるように、先生ばかりじゃございませんが、一般的にあるように思われます。つまり、一〇〇%というのは求めるべき計画値、あるべき計画値と考えるのはこの整備率の概念からするとちょっと外れておりまして、市町村がやはり本当に将来どうあっていいのだろうという希望的な水準をとったものだと私は考えています。  したがって、現実には四〇%ということになりますと、新ゴールドプランの水準で大体達成できる状況にございますので、どうしても一〇〇%を政策目標としなければならないというように私どもは考えておりません。したがって、四〇%というといかにも何か抑制的に今、委員のおっしゃられるように感じを与えますが、私どもはこれは徐々に施設サービスの水準は上げていく必要性はどうしてもあると存じますけれども、必ず一〇〇%が目標でなければならないということはないと思うのでございます。  そんな点で、先ほど申しましたような施設と在宅とのバランスその他を考えながら、そして介護者の状況等をにらみながら整備して各保険者間の均衡もある程度とれていくということが必要だと思っております。
  173. 清水澄子

    ○清水澄子君 これは先ほどから否定されているんですが、報道によりますと、自民党は新たな国費を投入して三年程度の時限措置として六十五歳以上の保険料を一律に半額にするということが報道されているんです。これは厚生省としては決めていないということでございますので質問することもはばかられるんですけれども、この場合、保険料を低くしたいというのはとてもいいことなんですけれども、いいことというのは当面の施策としては必要かもしれないんですが、これでいくと、高額所得者には厚く低所得者に薄い措置になってしまうわけです。  ですから、今後、私どもも、非常に難しい考えではあるんですが、やはり一九九八年度の単価で一応厚生省が二千五百円という基準額を示された。そのことが非常に皆さんの頭に定着をしているわけですから、私はこの二千五百円を上回った場合はやはり三年間ぐらいは暫定的にそれを据え置くという提案をずっと主張しているわけですが、それに加えて、むしろ低所得者の保険料の軽減というものをどう考えていくのか、その施策が非常に大事だと思うんです。  それともう一つ一緒に、時間がなくなってしまいますので、同じように低所得者が今度介護サービスを受けたとき、一割の負担を受けますね。これは一カ月だけならばそれは何とか自分の預金を集めたりできる人もあるかもしれませんけれども、最高のところにいくとこれが何カ月も長期的な介護を受けることになった場合に、この人たちはもう結局介護サービスを受けられなくなる。そういうことになると、この介護保険とは一体何なのかということになりますので、低所得者対策ということについてはよく研究してその対策を十分に考えていただきたいと思うんですが、この二つの点についてひとつ大臣、お答えいただきたいと思います。
  174. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) まず、保険料の平均額の二千五百円ということでございますが、これは平成七年度の単価を用いまして、当時介護保険国会での御審議の参考として提示されたものだと私は理解しております。したがって、委員の所属する政党としても、社民党は保険料は二千五百円でそれ以上は何らかの措置が必要であるという御主張のようでございますが、私どもは二千五百円の性格はそのように理解しておるということを申し上げさせていただきます。  なお、低所得者対策でございますが、これは私ども全体としてどういうことが必要でありどういうことが可能か、どういうことをすべきかということを今検討中でございます。今ここで具体的なことを申し上げる段階にはございませんが、何としても円滑な実施のためには、従来の措置制度から保険制度への乗り移りでございますから、これは与党間の協議も経ながら円滑な滑り出しができるように努力をしたいということだけ申し上げさせていただきます。
  175. 清水澄子

    ○清水澄子君 もう一つだけ、済みません。  今度、介護事業に参入する民間企業に対して厚生省が、介護サービス価格を低くすることを認めて業者間の競争を促しているわけですが、そういうことでヘルパーのダンピングが起きないように、それの防止策をどのように考えていらっしゃるかということ。  それから、今後、介護報酬を決められるわけですが、介護報酬はサービス単価を示すものですからヘルパーの賃金水準に大きな影響を与えると思います。現在でもヘルパーというのは物すごく低い賃金で低い待遇を受けておりますし、先日もテレビを見ていましたら、ヘルパーの方が自分の車で行き、自分でガソリン代を払っているということを言っていましたけれども、非常にこの点、物すごくいろいろな状況がありますね。低いですね、所得も待遇も。  ですから、介護報酬の決定は八月末と聞いているんですが、決定に当たっては、やっぱりもっときちんとヘルパーの身分を確保しないと、きちんとした質のいいヘルパーを確保できない。ですから、安かろう悪かろうの介護ではなくて、介護の質を左右するヘルパーの介護技術を高めるシステムと、そして介護技術のしっかりしたベテランヘルパーをきちんと評価した内容のものにしていっていただきたいと思いますが、その点についての御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  176. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) ホームヘルパーにつきましては、基準額より低い価格でサービス提供できるという形になっているわけですが、安ければ質が低くなるということは困るわけでございますので、当然のことながらヘルパーについては資格要件を定めているわけでございます。  そのほかにも、介護保険事業者が指定を受けるための条件といたしまして、訪問介護員に対します技術指導等のサービス内容の管理を行うサービス提供責任者を配置する、あるいは利用者一人一人につきまして訪問介護計画を作成する、こういったような義務を課することによりまして介護保険事業者を牽制すると同時に、いろいろ問題があるケースもあろうかと思いますので、国民健康保険連合会とか市町村等におきまして苦情の受け付けあるいは調査を行うということで、その調査を踏まえて指導、助言を行う、こういうことで質の確保を図りたい、こういうふうに思っているわけでございます。  介護報酬につきましては、最終的なものは来年までずれ込むわけでございますけれども、仮単価という形で、八月には介護報酬につきまして実態調査結果を踏まえまして仮の単価を決める、その後さらに正式なものは、予算との関係もございまして来年の一月ぐらいに決めたい、こんなようなことでございます。
  177. 入澤肇

    ○入澤肇君 私は、まず介護保険制度に関連することにつきまして、若干お聞きしたいと思います。  ことしの四月から国民年金、厚生年金の保険料の引き上げが凍結されたわけでございます。そういう中で来年の四月から今度は介護保険料が徴収される、極めて矛盾した状態が出てくるわけでございますけれども、まず事実関係についてお聞きしたいと思います。  国民年金それから厚生年金の保険料引き上げ凍結の実態、一人月額、国民年金であれば平均幾らか、それから厚生年金であればそれは幾らか、それはマクロとして金額的には幾らかということをまずお聞きしたいと思います。  次に、介護保険料の、二千八百八十五円で結構でございますから、その平均保険料の経済効果、要するに六十五歳以上の場合二千八百八十五円、それから四十歳から六十四歳まで、一%だとかあるいは千五百円だとかいう数字はございますけれども、それで夫婦で幾らになり、それから全体として何兆円ぐらいになるのかということを教えていただきたいと思います。
  178. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) まず、国民年金でございますけれども、ことしの四月から一万三千三百円を一万四千円に引き上げるということが決まっておったわけでございますけれども、これを凍結することにしたわけでございます。したがいまして、被保険者一人当たりで見ますと月額で七百円、年額でその十二倍で八千四百円になります。それから、国民年金制度全体では年間一千億の影響がございます。  それから、厚生年金でございますけれども、これは、ことしの十月から現在の一七・三五%を一九・〇%に引き上げることを予定しておったわけでございますけれども、これを凍結する、こういうことが決まったわけでございます。この影響額でございますけれども、平均的なサラリーマンで見ました場合に月額で三千円でございます。年額では三万六千円ということになります。それから、制度全体で見ますと、満年度ベースで見ますと厚生年金で二兆一千億の影響がございます。
  179. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 介護保険料の関係でございますが、昨日発表いたしました平成十二年から十四年までの三年間におきます平均額が二千八百八十五円ということでございますので、この額をもとに申し上げたいと思います。  ひとり暮らしの場合は当然この額でございますが、二人の場合はその倍で五千七百七十円でございます。それから、二号の被保険者の保険料、まだ精査中の粗い試算でございますけれども、四十歳から六十四歳の被保険者、平成十二年から十四年度の平均の保険料額で申し上げますと、これも機械的に本人負担ということで申し上げたいと思いますけれども、国保の場合では国庫が半分でございますから千四、五百円でございます。それから、例えば政府管掌でいきますと、保険料と事業主負担を除きますと約千七百円ぐらいではないかというふうに思っております。  それで、総額でございますが、これは十二年度の数値ということで申し上げますと、先ほど申し上げましたのは十二年度から十四年度でございますが、十二年度のこれは大ざっぱな試算でございますけれども、総給付費の一七%、こういう計算で約七千億円でございます。それから、二号の保険料でございますけれども、これは三三%相当が約一兆三千五百億円ぐらいになるわけでございますが、そのうち国庫負担が三千億円ございますので、さらにその中に事業主負担がございますので、約五千億ちょっとの本人負担ということになろうかと存じます。
  180. 入澤肇

    ○入澤肇君 今御説明がありましたように、国民年金等の保険料の引き上げの凍結、これは、例えば国民年金でいえば年間八千四百円、それに対して、今度は介護保険料を取るようになりますと五千七百七十円として年間七万円ちょっとの保険料が徴収される。こういうふうなことでは、何のためにそれでは国民年金の保険料の引き上げを凍結したのか。九兆円に上る可処分所得を奪ってしまったために全体として景気が悪化したということで、その一環として保険料凍結ということを決定して全会一致で法案が通ったわけでございますけれども、全く相矛盾する政策がこれから出ていくわけでございますが、これについての大臣のお考えをまずお聞きしたいと思います。
  181. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ちょっと中座しておりまして、恐縮です。  国民年金と厚生年金の保険料の本年度における凍結問題は、これは私どもは年金保険の改正案は改正案として検討いたしましたが、特に経済情勢がこういう状況でございまして、特に国民年金の方は、今数字の御説明があったかと存じますが、一千億円程度ですが、厚生年金で申しますと、一七・三五%を一九%に仮にいたすとしますと二兆円以上の額の引き上げになります。つまり、勤労者にとって可処分所得をそれだけ減少させることになります。一方、私どもは大幅な所得税減税等もやりながら景気対策を何よりも優先してやっておるわけでありますから、こうした問題も、やはりこの際経済優先ということでとりあえず凍結しようということを決断した次第でございます。  したがって、介護保険の方の問題は問題として、来年四月からでございますが、そこまで、そっちを上げてこっちを凍結というのは矛盾ではないかという御指摘かもしれませんが、ねらいはそういうことだということで御理解いただきたいと思います。
  182. 入澤肇

    ○入澤肇君 ねらいは私どもはわかっているわけでございますけれども、政府の政策として、一方は凍結して、また一方で個人負担で見れば相当な金額を徴収するということでございますから、これはやっぱり日本の経済動向等を踏まえてよくよく慎重に考えていかないと、またもとのもくあみになってしまうことを私は心配しているわけであります。  その次に、第二問でございますけれども、介護保険の国庫負担割合とか、それから市町村の保険料負担割合がかなりいろんな数字があるんですね。  例えば、総経費をもとにして負担割合を計算しますと、通常は二五%が国庫負担割合と言っていますが、二二%になるとか、これは利用料負担を総経費の中に全部含めてやっているものですからそうなるんですが、余りいろんな数字が出るとわかりにくいので、ここら辺は統一した数字をお示し願えませんでしょうか。  一割の利用料を入れて、例えば四兆二千億で結構でございますから、四兆二千億の総経費を国、都道府県、市町村、それから一号、二号の保険者がどのような割合で負担するかということをちょっと計算としてお示し願えませんか。
  183. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 総額の経費はいろいろ数字がございますので、どういう負担割合かというのを中心にちょっと御説明申し上げたいと思います。  総給付費は八年の推計では四兆二千億程度でございますが、その一二%ぐらいが食費とか一割の負担、こういうことで、それを除きまして、私どもが今まで御説明したものにつきましてはこれを除いて一応数字を述べさせていただいております。その除いたものがまさに給付費になるわけでございますが、その給付費のうちで公費として、国が二〇%、それから都道府県が一二・五%、それから市町村が一二・五%、これで全体で四五%でございます。それに加えまして、五%は国費で調整交付金で給付をするということで、これは市町村間の保険料の格差を是正する、こういう趣旨のものでございます。  残りの五〇%でございますけれども、これは保険料で賄うということになっておりまして、平成十二年から三年間におきましては一号被保険者と二号被保険者の比率でこの五〇%を分け合うということでございますので、これは年々変わってまいりますが、十二年度から三年間につきましては、給付費の三三%を定率で二号の被保険者、いわゆる医療保険の現役の方に負担していただくということでございまして、残りの一七%、これは平均であるわけでございますが、残りの一七%を六十五歳以上の高齢者が負担していただく、十二年度から三年間の割合がそういうことになっているわけでございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、第一号被保険者の保険料で賄う割合は平均で給付費の一七%になるわけでございますが、国費の五%分を調整交付金という形で、後期高齢者の加入割合でございますとか所得段階別の被保険者の構成割合の相違から生じます市町村の保険料額の格差を調整する、こういうことで調整交付金の交付割合によりまして第一号被保険者の保険料で賄う割合が変わってくるということでございます。  端的に申し上げれば、所得が高くて後期高齢者が少ないような大都市では調整交付金が五%を割るということで、保険料の方が一七%を超えると。反対に所得が低くて後期高齢者が多い、地方に多いわけでございますが、これは五%を超える、この場合には一七%が減る、こういう関係になっているわけでございます。  以上でございます。
  184. 入澤肇

    ○入澤肇君 それは私どもが今まで聞いてきた説明なんですね。私は、実質的な負担割合を、要するに利用料を入れた総経費だと具体的にどういう負担関係になるかということを聞きたかったわけであります。これが毎日新聞か何かに今までにあなたが説明したような数字と余りに違う数字が出ていましたので、確認のために今聞いたわけでございますけれども、あれはもし厚生省がオーソライズした数字であれば、後で教えていただきたいと思います。  そこで、この点に関しまして、先ほどから各委員からお話がございましたけれども、保険料の市町村間のアンバランスを調整する、あるいは個人間のアンバランスを調整するために、何か別途財源措置が簡単に行われるかのごとき報道もあるわけです。私は、そう簡単じゃないと思っているんです。  この制度は、今、局長から御説明がありましたように極めて精緻に負担関係を法律に書いてあります。別途財源措置というのは事務費の補助だとかいろんなことは法律にも書いてありますけれども、直接保険料の軽減につながるような助成措置を予算措置だけでできるというふうには書いてありません。その場合には必ず、当然のことながら法律改正が私は必要だと思っていますけれども、局長の見解をお聞きしておきたいと思います。
  185. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 法律的な問題でございますので、最終的には法制局とも御相談を申し上げなきゃいかぬと思いますけれども、ことし薬剤の別途負担を行ったわけでございますが、これにつきましては相手方に利益を与える、こういうものにつきましては予算上の措置で足りると、こういうふうな見解もあるわけでございます。  ただ、一律にこうである、こういうふうなもので例えば二分の一とかいうふうな形になれば恐らくそういう法に触れる可能性が多いと思いますけれども、そういう形でない場合にはどういう形をとるかは別にいたしまして、いろいろ検討の余地というのはあるのかな、こういうふうに思っております。
  186. 入澤肇

    ○入澤肇君 そこら辺が既に、私はそんなに深く鋭く追及するつもりはないんですけれども、保険制度が成り立たない一つの証拠じゃないかと思っているんです。  保険というのは、国民の権利義務、被保険者の権利義務に関することでございますから、保険料率は極めて精緻にできているわけです。これは租税の法定主義と全く同じ人頭税ですから、同じように厳密に書いてあるのでありまして、それをその時々の都合によって調整するなんということがあったらこれは許されるべきことじゃなくて、やっぱりここは真剣にもう少し制度の根幹に即して議論がされてしかるべきじゃないかと私は思います。これだけは言っておきます。  それから、あとはアトランダムな質問になるのでございますけれども、実は中村製作所の倒産がございまして、暴力問題もあったと。私は厚生省のお勧めで障害者のシンポジウムに出まして、障害者の皆さんが一生懸命にやっていることに非常に感銘を受けました。この製作所の経営者は以前優良な経営者として大臣表彰も受けている。それが急に夜逃げしてしまって、非常に雇用が困難なときに職を奪われてしまって困っているということでございます。  このような事例についてどのように実態を把握しているか、また中村製作所に勤めていた障害者人たちの救済策、個別の企業に関係する救済策ということじゃなくて、特別にこのような目に遭った人たちの一般的な救済策を厚生省としては用意しているかどうかについてお聞きしたいと思います。
  187. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 中村製作所の話ですが、これは障害者を雇用していただいておりまして、それなりの助成金も受けてやっておられたわけでございますが倒産をしたと。そして、その経営の実態等につきましては、倒産の当時わからなかったような事実が次々と判明したようで、残念なことでございます。  しかしながら、身体障害者方々の雇用の道をさらに探らなければならないというのは当然でございまして、これは労働省ともよく相談して、中村製作所の仕事にかわる仕事を見つけてあげる責任があると私は思います。  そして同時に、そういう方々が生活の拠点を失った場合には、いろいろの支援施設等の活用もそれは積極的に受け入れるべきだと私の方では考えております。
  188. 入澤肇

    ○入澤肇君 それで、報道がありましてから、そのような救済策に既に厚生省としては乗り出すように指導したのかどうか、いかがでしょうか。
  189. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) このたび倒産に遭われまして結局行き場を失われた方々がおられまして、そういった方々に対しまして、一つは労働省の方から職業のあっせん等を現実に行っていただいているケースもありますが、多くの方々が現実的には行き場を失っているという状況もまた事実でございます。  それに対しまして、私どもの方からそれぞれの障害者方々に当たりまして、少なくとも今まで自宅から就労の場へ通っておられた方々が行くところがなくて家におらざるを得なくなる、そこでその人がまた再び職へつくときにまた一からやり直さなければならないというようなことになっても困るということから、入所授産施設あるいは通所授産施設に一たん来ていただいて、そこで作業訓練というものを継続していただいて、それでまた今労働省にもお願いをしながら改めて雇用の場を探すまでの間お預かりをするということを提案させていただいております。  ところが、現に定員いっぱい持って機能していらっしゃる施設が多いものですから、受け入れられないということがあっても困るということもありまして、このたび一〇%の定員オーバーについてはこれを認め、なおかつそのオーバーした部分について、一定の職員の確保をしていただくということであれば補助もそれに対して行うというような形で厚生省としてのバックアップ体制を組んでいるという状況でございます。
  190. 入澤肇

    ○入澤肇君 ぜひ具体的に救済策を講じていただきたいと私は思います。  それから、これはだめ押しの質問で申しわけないのでございますが、予算委員会で私は障害者の共同作業所に仕事を与えてくれということを申し上げました。特に中央省庁の再編に伴いまして、局とか課の看板それからネームプレートあるいはちょっとした座卓とか、共同作業所でできるような調度品、こういうものは一括して厚生省があっせんをして、要するに各省庁に話をして一括して共同作業所で作製してもらって買い上げるというふうなことをしていただきたいということを提案したんですが、いかがでしょうか。
  191. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 障害者が通所して作業を行います共同作業所のようないわゆる小規模作業所のような活動につきましては、保護者団体が熱心に取り組んでいただいているということで、しかもこのことが自立あるいは社会参加に大いに役に立っているということは御承知のとおりかと思います。  その授産施設や小規模作業所につきまして、景気の影響を実は受けておりまして受注量が減少しているという状況がある、このように聞いております。  そのような中で、一つは製造業だけが授産のためのメニューではなくて、例えばサービス業にも目を向けた形の訓練はいかがなものかということも当然やっていただきたいと思いますし、一方、御指摘のように施設に対してできるだけ物品の購入あるいは業務の委託、例えば公園の清掃でありますとか、いろんなものがあるかと思いますが、そういったものに対して委託をするようにできないかという御指摘かと思います。  私ども、都道府県に対しましては、御指摘を踏まえてそういった業務の委託を行うように御指導申し上げたいと思いますし、それから厚生省においても同様な観点から必要な努力はしていきたいと思います。  また、他省庁におきましても同様にそういった作業所が行っております事業内容を十分把握していただいて、適切な受注ができるよう働きかけも行っていきたいと思います。
  192. 入澤肇

    ○入澤肇君 一般論の余り生ぬるいような答弁は必要ない。要するに、やるかやらないかということを、厚生省が本当に障害者対策考えているのであれば、この不況のときに、仕事がないときに各省庁に呼びかけてやるぐらいの配慮があっていいんじゃないかということを申し上げているのであって、一般論を聞いているんじゃありません。  最後に、同じ障害者問題なんですけれども、今回のANAのハイジャック事件の犯人の名前、これは各紙とも自制しているのか何か実名を出していなかった。きょう、実は産経新聞の一紙だけ出しました。  産経新聞の報道によりますと、精神障害で通院した経歴はあるけれども、実行計画を見ると極めて具体的で、とても精神障害と思えないということで、その責任を明らかにした方がいいんじゃないかということで名前を出したと言っております。  精神障害者であるかどうかということはともかくとしまして、このような事件に対する厚生省の見解をお聞きしたいのと、もう一つは、今回の事件は、通り魔殺人の被害者に対する見舞金制度等がございますけれども、その対象になるかについてお聞きしたいと思います。
  193. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) まず、報道における実名等を含めた取り扱いに関する御質問でございますが、これは報道各社のいわば自主的な判断に基づいて実施されているということでもありまして、厚生省としてこれにお答えをする立場にはないのではないかと思います。  それから、第二点目のいわゆる通り魔殺人的なことでございますけれども、もちろん通り魔殺人というのが精神障害者による事件であるということではありませんで、どんなところだって起こり得るわけであります。委員の御質問を犯罪被害者に対する救済対策としてどうかというふうな形でお答えをさせていただきたいと思いますが、犯罪被害者に対する公的な補償制度ということは、現在、警察庁が所管をしております犯罪被害者等給付金支給法という法律がございまして、これは犯罪を犯した者の責任能力の有無を問わずすべての犯罪がその対象になっているというふうに言われていることを御紹介申し上げて、御答弁にかえさせていただきたいと思います。
  194. 入澤肇

    ○入澤肇君 終わります。
  195. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 臓器移植もこれまで四回行われたわけなんですが、私は、きょうはこの問題の透明性の確保というところに焦点を絞って質問させていただきたいと思っております。  一例目のケースですけれども、法的な脳死判定中に脳波測定が無呼吸テストの後で行われたというふうな手順のミスがございました。厚生省は二月二十六日にこの事実をもう既に知っていたそうですけれども、これは公表されませんでした。  こういった恣意的に公表したりしなかったりケースによって違うということは、非常に問題ではないかというふうに思っております。やはり脳死判定のプロセスの中で何をどう公表するのかということがきちっと決められるべきなのではないかと思いますが、この点について大臣の御所見をまず伺いたいと思います。
  196. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 臓器移植につきましては、特にプロセスの透明性の確保というのは極めて重要な視点であるのは臓器移植専門委員会でも指摘されているとおりでございます。同時に、臓器提供に関する御家族の承諾についてこれを尊重していく、プライバシーの保護を徹底的に図っていくこともまた極めて重要だということが指摘されております。  私どもといたしましても、透明性確保とプライバシー保護の調和をどうやって図っていくかという点は非常に重要な視点でございまして、四例が行われましてそのプロセスの情報の開示問題その他で多少の問題なしとしない点もあったかと存じますけれども、基本的にはその二つの原則を調和して国民一般が納得のいく形で対応していかなければいけないと思います。
  197. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 けさから透明性とプライバシーという言葉がずっと出ているわけですけれども、次に質問する精神医療の場合でもプライバシーという名のもとに透明性がずっと失われてきた。その中で宇都宮病院のような事件が起こったわけでございまして、やはりプライバシーという言い方の中で透明性が失われるということは、人の生命にかかわるこういう問題について相当しっかり決めておくことが非常に大事であって、その都度一々ぐらぐら動くというようなことに関してはいかがかと私は思います。  けさからずっと同じ質問が出ているものですから質問を繰り返すことは避けさせていただいて、私はむしろ局長の御答弁の中から質問と意見を申し上げたいというふうに思っています。  けさの御答弁の中で、臓器提供が少なかったので臓器提供施設の拡大を図るというふうに言われました。それとまた全然別のところで、脳死下での判定コーディネーター能力不足がある、どうやって数を確保するかということが問題だ、それに努力したいという御答弁もございました。  例えば、まさに高知の日赤などは未整備な状態のままあった病院一つだと思いますけれども、臓器が足りないからという形で拡大することがあっていいのかどうか。私は、御答弁の中でこれは非常に矛盾していると思うんです。きちっと判定できるそれだけの人がいて初めて次に行けるのであって、この御答弁はいささか不整合性があるのではないかと思いますが、局長にもう一度この点についてお答えいただきたい。
  198. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) まず、臓器提供施設についての考え方でございますが、臓器提供施設につきましては救命救急医療などを行う医療機関、これは四つカテゴリーがございますが、その四つカテゴリー医療機関の中でそれが自動的になるということではございませんで、院内に倫理委員会などを設置いたすことについて、臓器提供施設になることについて施設全体としての合意が形成され、そして人的、施設設備につきまして一定の条件を満たすところにつきまして臓器提供施設になっていただくという考え方でございます。  したがいまして、当初、臓器移植法の施行後、大学病院等二つのカテゴリー病院臓器提供施設カテゴリー病院として示したわけでございますが、いろいろ関係方面から我が国におきまして臓器提供の機会を拡大していく必要性も非常に指摘されましてこの四つカテゴリーに拡大をした、こういう経緯でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この四つカテゴリー病院の中で条件を満たして十分な脳死判定等ができる、そういう医療機関に限定をして臓器提供施設になっていただくということでございますので、現在、これから整備をしていくという約二九%の医療施設に対しましても、国としてもいろいろ支援をしながら適切な脳死判定等が行われる臓器提供施設になるようにという考え方でございまして、私はきょうの御答弁につきましては矛盾するものではないというふうに理解しているところでございます。
  199. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 けさから伺っている同じ御答弁なんです。  そうすると、ここは見解の違いということになりますけれども、臓器がなかなかないからというふうなおっしゃり方でした。提供が少なかったのでという言葉でおっしゃったんですが、提供が少なかったから広げるという性格のものではないんじゃないか。ましてや後段で、一体どうやってコーディネーター能力不足を補うのかということをおっしゃっているわけですから、そこは整合性というか、そこまでまだ体制が成熟していない、成熟することがいいのか悪いのかということに関すれば私は必ずしもそういう立場をとりませんけれども、しかし乱暴に拡大していくことは絶対にやるべきではないということは意見として申し上げさせていただきます。  次に、私どもは対案を当時出させていただきましたが、そのときに血管とか皮膚などについては、私どもが出させていただいた法律の中には、その他の組織の移植についてはこの法律適用を含めて適正な実施に資するための措置検討を加えるということを書いております。ところが、現行法ではそれが書いていない。  二例目では組織がドナーに提供されたそうですが、四例目では組織が提供されたかどうかについて全く公表されていないというようなことがあります。こういった組織についてもきちっと法律に基づく措置であるべきだと思うし、ここも公表があいまいです。その辺のところも透明性がきちっととられていないのではないかと思うので、この点を伺いたい。  そして、もう一つ最後に質問をしたいんですが、厚生省のホームページで、公衆衛生審議会臓器移植専門委員会を公開するというふうにおっしゃっているんですが、これはきのう出したものですけれども、三月二十三日のしか出ていないんですね。大臣、これが厚生省のホームページですけれども、三月二十三日というのは余りにも遅い。  アメリカの議会の議事録でさえ私たちは翌日読めるんです、日本で。そのときに、日本語でもって書かれているこのホームページが三月というのは、まあ何か全部の委員に回してからとかいろいろ理屈はつくんでしょうが、それだって十日おくれぐらいでよろしいじゃないかと。そういうことはこの情報化時代に透明性がないとしか申し上げようがない。こういったことで、私は、一番怖いのは、本当に透明性を確保しようという姿勢が厚生省に見えないように思うのですが、以上の二点について伺いたい。
  200. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) まず、ちょっと順序が逆になりますが、議事録の厚生省のホームページの件についてお答えをさせていただきたいと思います。  これは御指摘のとおりでございまして、現在、移植専門委員会は十八回、六月二十九日まで開催されておりますが、議事録は三月二十三日の十三回目までしかホームページに載っておりません。これは、御指摘のとおり私どももできるだけ迅速に公開したいと考えているところでございまして、今後可能な限り早急に公開できるよう努力してまいりたいと思います。  それから、組織移植事例でございますが、これまで脳死下での臓器提供事例におきまして、一部の事例で組織の提供が行われてきたところでございます。  この組織の摘出につきましては、臓器移植法による明文の規定はございませんが、臓器移植法の運用ガイドラインにおきまして、遺族などから書面により承諾を得るべきことが運用上適切である旨規定し、関係者に通知しているところでございます。  組織移植につきましては、これまで厚生科学研究班におきまして倫理基準や安全基準の研究が行われ、一定の成果が取りまとめられたところでございますが、今後さらにこうした研究を深めるとともに、組織移植実施状況等も踏まえまして、どのような対応が必要かにつきまして検討してまいりたいと思います。  つけ加えまして、先ほどの移植臓器提供施設の拡大の件でございますが……
  201. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ちょっと次の質問があるものですから、それは後で伺わせてください。ありがとうございました。  次に、精神保健法の改正に関連して伺いたいんですけれども、今回の改正は病院の収容から脱却して地域で暮らせるという法改正だったと思うんですが、まずこのことで伺いたいのは、地域精神保健活動をするのであればそれは保健所を充実させることがまず大事であると。ところが、精神保健法は保健所の機能強化をうたっていながら、この二年間で全国の保健所は四分の三に減少してしまった。八百四十五カ所が六百四十一カ所になったということです。  しかし、難病と精神保健については市町村の保健センターに委託するのではなくて、保健所の業務として残された。しかも、保健所には精神保健福祉課、少なくとも精神保健福祉係を設けるというようなことが決められているにもかかわらず、実際に課も班も係もない保健所が全国で七〇%を占めている。そして、今後設置する予定がないとしているところが八四%。これも法改正と実態との間にいささか整合性がとられていないんではないかというふうに思いますが、これは大臣にぜひ御答弁いただきたいんですが、お願いします。
  202. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 先般成立をさせていただきましたいわゆる精神保健福祉法におきまして、保健所の役割というのは、県の機関でございますから、指導的な、監督的な役割に特化してくるということが特徴であったかと存じますので、そういった意味で保健所が従来と違って機能的にはある面で強化されなければならないと存じます。  今、保健所の数の減少等の御指摘もございましたが、私もちょっと数字等明らかにしておりませんけれども、この精神保健福祉法の趣旨はそういうことで保健所を軽視しているものではないと思われますので、よくチェックをしていきたいと思います。
  203. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 もう一つ事を複雑にしているのは、この間の機構改革で、今までと違って多くの保健所は福祉事務所と合体をした、あるいは振興局の一部分となったりして、今までドクターだったトップが専門性のない行政官になってしまったということがあります。保健婦さんも、自分の専門以外の行政官等の仕事が付加されてしまった。そういった二重三重のことが重なって、実際に制度としては保健所がやれということを決めていながら、やれる人というのが確保もされていないし、それから仕事の内容も変わってきている。これではやはりうまくいかないと思うので、ここは十分にチェックをしていただいて、局長にもお願いしておきますが、あとそれの対応をぜひとも考えていただきたいというふうに思います。  次に、精神保健法の中で、開放化というのは十年前から言われてきていることで、きょうも小林局長いらっしゃいますけれども、小林課長の時代から開放化、開放化とずっと言ってきたわけですけれども、全国の統計によりますと閉鎖病棟がまだ六割を占めている。しかも、当時決めたことですけれども、任意入院の人は閉鎖病棟には入れないで自由に出入りできるはずですよね、局長。これはもうそこに座っていらっしゃる局長方は全部御存じのことのはずなのに、任意入院した患者さんの五割がいまだに閉鎖処遇を受けている。十万人は自発的に入院しているにもかかわらず、自由に病棟の外に出ることもできない。三十三万人も精神病院に入院患者がいるということ自体が私は日本としては非常に恥ずべきことだと思いますが、この任意入院している患者さんたち、当事者の方たちがかぎの中に閉じ込められているという実態はぜひとも早く解決していただきたいと思いますが、これも大臣にぜひ御答弁いただきたいと思います。
  204. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御指摘のように、精神保健福祉法では任意入院のあり方について改正されておったと思います。閉鎖処遇は原則的に行わない、行う場合は適切な条件のもとにのみ行われなければならないというように記憶をさせていただいておりますけれども、この閉鎖処遇の基準について検討を行うために、今、公衆衛生審議会の精神保健福祉部会で専門委員会を設置いたしておりますので、この閉鎖処遇につきまして、委員会の審議を踏まえまして処遇の基準としての要件及び手続を明確にして、この基準に従い適切な処遇が確保されるように努めてまいりたいと思っております。  なお、委員指摘のような実態が存在することも容易に想像はされますので、これらは十分実態調査をしながら是正を図っていくべきものだと思います。
  205. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ぜひよろしくお願いいたします。  私、最近二冊本を読んだんですけれども、十年前と比べてとても違っていると思ったことは、一つは「べてるの家の本」という、これは北海道ですが、教会の中に退院した方たちが住み込んで非常に自由に生きているという本です。それからもう一つは、沖縄タイムスの記者が沖縄の実態を書いたものなんですが、まだ制度が整っていなかったり差別が非常に強かったりする中で、十年前と本当に変わったと思うのは、当事者の方たちがとても元気になっているということ、それから周りの方たちのボランタリーなサービスというか、本当にそういうボランタリーな方たちが活動しているという印象を受けました。  あとは、やはり今の保健所の問題、それから入院のあり方の問題、そういったところは当事者にも周りのボランティアの方にもどうすることもできません。もう精神の問題というのは国で決めていただく以外にないことがたくさんあるわけですので、そこのところを対応していただければ、今タイミングとしてはますますよくなっていくだろうと思います。これから見直しがあるわけですけれども、その見直しの前でも、政令の段階とか省令の段階でできることはどんどん実行していただきたいというお願いをいたします。  そして、最後にまだちょっと時間があるので、介護保険について質問させていただきたいと思います。  保険料の問題については、もう皆様お聞きになったのでその質問はいたしません。私はむしろ介護報酬の単価の設定、これが、きのうも審議会が開かれたわけですけれども、枠組みは決まってもその仮単価も決まっていないという状況の中で、多分地方自治体もそれからいろいろな施設も大変困っているのではないかというふうに思います。特別養護老人ホームなどでも、来年度の経営設計をつくったり、それから人員配置、そういったものについてもどこまでどうやっていいのかということで大変戸惑っているのではないかという心配があります。やはり適切な介護報酬の設定を一刻も早くすべきではないかというふうに思っております。それが一つです。  それからもう一つは、先ほど井上委員からも質問がありましたけれども、自立判定を受けても実際には生活面で自立できないという高齢者の方が大勢いらっしゃる。こういった方たちは、確かに歩けるのにもし歩いちゃったり、それからどんどん自分で食べられたりするともう介護保険の対象にならないということで、そういう意欲を失ってしまうのではないか、どんどん自分でより健康であろうという意欲を失ってしまうのではないかという不安を持っております。今実際に施設に入っておられる方は五年間はそこにいられるというようなことですけれども、八十の方が八十五になってもますます元気になることに対して非常に不安を持つ。これは余りいいことではないというふうに思いますので、そこのところには今後どういうふうに対応なさるのか、この二点について御答弁をお願いします。
  206. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 迅速に介護報酬を定めよということは私どももそのとおりと考えておりまして、厳密に言いますと何か確定値が来年の四月からでありますので予算編成で確定するというように考えがちでございますけれども、これではもう間に合いません。したがって、今、審議会でもいろいろ御議論いただいておりますので、八月中くらいには遅くとも介護報酬の決定といいますか、これは最終決定は予算の編成になるかと思いますが、ほとんど変わりないような状況のものをお示しいたしたいと思っております。  それから、先ほどもお話ございましたように、要介護認定で自立と判定された高齢者であっても、かえってそういう方が要介護状態にならないための施策というのは非常に重要だと思います。そんなことでいろいろのサービス面におきましても、先ほど申しましたように生きがい対応型デイサービス事業というようなことを平成十一年度から在宅高齢者の保健福祉推進支援事業の一つとして行っておりますが、これはことしはまだ本格的に介護保険がスタートしておりませんから、来年はもっともっとこれが重要度を増すのではないかと思っておりますから、十分力を入れて配慮していきたいと思っております。
  207. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 終わります。
  208. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願い申し上げます。  私の方からは、まず、従来行われてきました心臓停止後の角膜腎臓移植について本法の施行後どういうような影響が出ているのか、私なりにまた理解をしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  今回、改めて法案審査当時の会議録に目を通させていただきました。その中でも、例えば臓器移植法が討論され始めてから従来の腎臓移植も少し停滞ぎみになっている、あるいは心臓死下の提供脳死下における提供が混同している、このような議論もございました。また、腎臓患者さんの団体でも、こうした心配から、死後の腎提供についてのPR、キャンペーン等々に取り組まれているわけです。本法施行後の心臓停止後の角膜腎臓移植への影響、大変注目されているところですけれども、この間における心臓死から移植実施状況の推移についてまず御答弁いただきたいと思います。
  209. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) まず、臓器移植法の施行前後におきます年度ごとの心停止後の腎臓及び角膜移植の実績につきまして、以下のとおり数字を申し上げたいと思います。  まず、腎臓移植の件数の推移でございますが、平成七年度が百六十一件、八年度が百八十件、九年度が百六十六件、十年度が百五十八件となっております。この十年度につきましては、うち脳死下での提供二件、この一名を含んでおります。  また、角膜移植件数の推移でございますが、平成七年度が千五百四十五件、八年度が千六百七十六件、九年度が千七百四十八件、十年度が千七百十六件でございまして、このうち脳死下での提供が二件含まれております。  また、腎臓移植を希望する登録者の数の推移でございますが、日本臓器移植ネットワークに登録されている腎臓移植希望登録者数につきましては、平成八年度末が一万四千九百八十七人、平成九年度末が一万五千二百七十三人、平成十年度末が一万三千二百九十一人と推移しておりまして、九年度から十年度にかけて約二千人ほど減少しております。  十年度からのこの二千人の減少についてでございますが、原因につきましては現在のところ詳細な分析は行っておりませんが、日本臓器移植ネットワークにおきます移植希望登録者の更新作業によりまして、二年以上の長期にわたりまして連絡がとれない方、それから移植希望の意思を確認できない方について登録抹消が行われたことも主な原因の一つであると考えております。  いずれにいたしましても、腎臓移植希望登録患者数の変化及びその原因につきまして今後分析を行って対応考えてまいりたいと考えております。
  210. 西川きよし

    西川きよし君 この移植実施数は、ふえる、減少するといった場合に、やはり真っ先に臓器提供者の数が多くなったり、そしてふえないんではないかなというようなことが頭をかすめるわけですけれども、その一方で、例えば移植ネットワークに腎移植を希望する患者さんの登録が減少している、このようなお話もお伺いします。この希望登録者数の推移をお伺いしたいと思います。
  211. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 移植ネットワークに登録されている腎臓移植希望登録者数につきましては、平成八年度末が一万四千九百八十七人、平成九年度末が一万五千二百七十三人、平成十年度末が一万三千二百九十一人でございます。
  212. 西川きよし

    西川きよし君 昨年の十月三十一日現在で一万五千二百七十三人、ことしの五月三十一日現在では一万三千百十九人。この数字をブロック別に見ますと、全ブロックで減少しているわけですけれども、その中でも九州・沖縄ブロックでは千六百二十六人が千百十三人、また近畿ブロックになりますと三千三百九十九人が二千百五十人と大きく減少しているわけです。これについて厚生省の方から御答弁をいただきたいと思います。
  213. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) ブロックごと状況につきまして、なぜそういう状況になっているのかということにつきましては、現状におきまして正確な状況を把握しておりませんが、その辺もあわせまして現状分析等を行いまして、その対応考えてまいりたいと考えております。
  214. 西川きよし

    西川きよし君 この点について、例えば先月六月九日の西部読売新聞、九州・沖縄ブロックの実情についてというのを拝見させていただいたんですけれども、脳死者や心停止で死亡した人からの腎移植を希望して日本臓器移植ネットワークに登録している患者さんのうち、九州・沖縄ブロックの登録者数はこの二年間で五百七十九人減っていると。ネットワークがこれをまとめたわけですけれども、患者の高齢化に加えて、移植に結びつく確率の低さを登録の見送りの理由に挙げている声もあります。慢性的な臓器提供者不足が移植医療の壁になっているという実態が浮き彫りになっていると、こういうふうに書いてあります。  九五年四月に日本腎臓移植ネットワークが発足したのを機に登録内容を整理した結果、九六年度末の登録者数は二千百三十三人、その後は年に一度移植を希望する医療機関での受診が義務づけられたほか、登録更新料が五千円、これがスタートしたわけですけれども、登録患者は九七年で千九百八十人、九八年度末で千五百五十四人、かなりの減少でございます。このネットワークがことし三月までに登録更新料の振り込みがなかった患者さんに意思確認したところ、高齢で体力的に移植に耐えられそうにない、手続が面倒といった声に加えまして、移植を希望しても実現する可能性が低いというような理由が挙げられております。  また、三千三百九十九人から二千百五十人と大きく減少している近畿ブロックにつきまして、患者さん、団体等いろいろ手分けをして実情をお伺いしました。そうしましたところ、この移植ネットワークの発足後、平成八年十月一日より新規の登録料が一万円、そして一年ごとに五千円の更新料が徴収されるわけですけれども、ここからですが、さらに平成十年四月一日からこの新規の登録料は一万円から三万円と三倍に引き上げられております。ここで数字が大きく減少するわけです。  例えば、患者さんから直接お伺いをいたしますと、そのまま紹介したいんですけれども、大阪の方ですので、宝くじを当てるようなもんにそんなお金は払われしまへんがなと、仲間の方もみんなそう言うてはりますというふうにお答えを聞いたんですけれども、これが本当に正直なところではないかなという気もいたします。  どちらでお伺いいたしましても、この減少の原因は、この金額それから更新手続の負担が最も大きな原因ではないかなというふうに思うわけです。ある程度、患者さんの負担についてもやむを得ない、また減免制度をとられていることも承知はいたしておりますけれども、ただ登録したい患者さんがその費用負担によって登録ができない、そういったことがあったのでは、これはお気の毒ではないかなというふうに私自身思います。そういう意味におきましても、この点について厚生省でも今後どのようにお考えなのか、まずここは厚生大臣にお答えいただければと思います。
  215. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、委員の御指摘のように、移植希望者の臓器移植ネットワークへの登録と更新につきましては、平成十年から新規登録の場合に一万円から三万円に値上げされております。更新料は五千円で据え置きということでございます。  新規の登録料につきましては、日本臓器移植ネットワークにおきまして、登録に要する実費を勘案して患者団体等とも調整の上決定されたものであると承知はいたしております。また、更新手続につきましては、希望登録者本人への郵送とか希望登録者が継続的に受診しております透析医療機関での所要の手続を経て行われるというように伺っておりまして、更新に際しての手続は必ずしも煩瑣なものではないと思っております。  いずれにいたしましても、御指摘のように登録したい患者負担が過重なために登録できないというような状況であれば、移植機会の幅広い提供という観点から適切でないと私も考えます。  したがって、今後の臓器移植ネットワークの活動状況移植実施状況等を総合的に勘案いたしまして、必要に応じ指導して適切な措置をやってまいりたいと思います。
  216. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願い申し上げます。  たくさんお伺いしたいのでちょっとスピードアップさせていただきますが、心臓死下と脳死下、この二通りの臓器提供につきましては、臓器提供を希望する側にとっても現状においてはまだまだ混同される方が多いわけですけれども、そういうシステムについて一般生活の中ではまだまだ浸透していないのが実情ではないかなというふうに私自身感じるわけです。  例えば、従来からの腎臓バンクに登録される方に対して通知をこうして送ってくるわけですけれども、この中には現行の臓器提供意思カードと腎臓提供者カードと二枚送ってくるわけですが、本法施行後の日本臓器移植ネットワーク、それから腎臓バンクあるいはアイバンク、それぞれの役割というものをここでちょっと詳しくお伺いしておきたいと思います。
  217. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 日本臓器移植ネットワークは、眼球を除くすべての移植臓器に関しまして移植希望者の登録を行うとともに、臓器提供時のあっせんの手続を全国一元的に行っているのを役割としております。  それから、各都道府県の腎バンクは、地域の実情に応じて献腎登録を行うとともに、腎臓移植のみならず多臓器移植も視野に置いた移植医療全般に関する啓発普及を行うなどの役割を担っております。  また、眼球につきましては、全国で五十一カ所のアイバンクが角膜移植に係るあっせん業務を行っているところでございます。
  218. 西川きよし

    西川きよし君 そこで、この臓器移植ネットワークのあっせん業とアイバンクの行う眼球あっせん業の関係についてお伺いしたいと思います。  眼球を含む複数の臓器移植におけるあっせんの場面では、移植ネットワークコーディネーターが眼球以外の臓器提供について御家族にまず説明を行うわけですけれども、そして眼球の臓器提供については移植ネットワークから連絡を受けたアイバンクが別にまた御家族に説明するということでございます。つまり、二度の説明、いわゆる承諾の手続が行われるわけですけれども、御家族負担を和らげるために改善策が検討されているというふうにお伺いしておりますが、お願いします。
  219. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 臓器提供時の御家族への説明、承諾手続におきまして、日本臓器移植ネットワークとアイバンクが別々に行っている実態に対しまして、同様の手続を二度行うのは御家族への負担が大きいとの指摘がなされているのは承知しているところでございます。  この問題につきまして臓器移植専門委員会でも議論がなされまして、今後は眼球を含む多臓器提供される場合には、日本臓器移植ネットワークコーディネーターが眼球の提供についても御家族へ説明し、承諾手続を行うことができるようにという提言をいただいておりまして、その方向で検討していきたいと考えております。
  220. 西川きよし

    西川きよし君 今回のこの報告書の中にも、腎臓のレシピエントの選択については、心臓死下での提供から脳死下提供に移行する場合には手続が複雑になるという意見もあるわけですけれども、この点いかがでしょうか。
  221. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 第一例目の事例の御指摘だと思いますが、この第一例目の事例におきましては、当初、心停止後の腎提供を前提にいたしまして日本臓器移植ネットワークの中国四国ブロックセンターを中心に手続が進められたわけでございます。その関係で一たんはブロックセンターでレシピエントの選定まで終了していたわけでございますが、その後、脳死下での臓器提供に移行したため、他の臓器とあわせて再度ネットワーク本部におきましてレシピエントの選択を行ったと、こういう経過がございます。  結果的には、レシピエントの選択結果が異なるものではなかったわけでございますが、心停止後の臓器提供脳死下での臓器提供に関しまして、対応する主体が日本臓器移植ネットワークの本部あるいは地域ブロックセンターと異なる上、それぞれ別々のマニュアル整備されているということから今後総合的なマニュアル整備などを行う必要があると指摘されておりまして、私どもとしては今後円滑に事業が進むような体制整備を指導していきたいと考えているところでございます。
  222. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願い申し上げます。  この眼球、腎臓については、経過措置といたしまして「当分の間」と、こう書いてあるわけですけれども、本人の生前の意思表示がなくても、遺族の書面による承諾がある場合には心臓死体から摘出が可能とされております。  一つお伺いしておきたいのは、「当分の間」というのはぜひ厚生大臣にお答えいただければと思います。
  223. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 臓器移植法の施行前の旧法下におきましては、遺族の書面による承諾を要件として、心臓停止下の腎臓及び眼球の摘出を可能としております。  御指摘の規定につきましては、臓器移植法の本則において、臓器提供の際に本人の書面による意思表示が必要であると規定されたために、それまでの心臓停止下における腎臓及び眼球摘出についての旧法における取り扱いを経過措置として残したものでございます。  こうした経過措置とは別に、臓器移植法において本人の臓器提供に係る意思が不明な場合における遺族の意思の取り扱いについては、立法当初から議論された制度の根幹にかかわる問題でございまして、そのあり方については、国会等における幅広い御議論を踏まえ慎重に対応する必要があると考えております。
  224. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願い申し上げたいと思います。  次に移ります。ドナー管理に必要な医療費負担についてお伺いしたいと思います。  これまでの脳死判定後のドナー管理ということで、具体的にどのような処置が行われてきましたのでしょうか。そしてまた、費用についてですけれどもどの程度であったのか、お伺いしたいと思います。
  225. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 法に基づきます脳死判定後の臓器提供者に対する処置につきましては、呼吸を維持するための人工呼吸器の装着や循環動態を維持するための血圧測定や投薬が行われるものと承知しております。  そして、その費用でございますが、具体的に把握しておりませんが、平成九年度の厚生科学研究によりますと、現行の診療報酬における評価をもとに推計をいたしますと、法に規定する脳死判定のための費用が約三万五千円、処置等のための費用が約五万円、これは一日当たりでございますが、とされているところでございます。
  226. 西川きよし

    西川きよし君 そこで、この費用負担のあり方についてですけれども、附則の十一条の運用についてどのように行われたのかというのを御答弁いただきます。
  227. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 臓器移植法の附則第十一条の運用状況でございますが、この十一条の規定につきましては、まず法に基づき脳死判定された場合、当該者は臓器移植法上死体に含まれる。一般に死体に対する治療行為はあり得ないことから、本来は保険給付などを受けることができなくなる。しかしながら、法に基づく脳死判定を受けた場合に、判定後の保険給付などを一律に打ち切ることは医療現場の実情を考慮した場合に適切と言えないため、保険給付等ができるよう法的規定が整備されたものと理解しております。  実際に脳死下での臓器提供が行われた場合に、この規定によりまして脳死判定後から摘出までの処置に要した費用につきましては保険給付に係る自己負担分が生ずることになりますが、臓器移植法脳死判定された者が自己負担分を実際に支払うことについては必ずしも適切とは言えない。このような考え方から、脳死下での提供を行った臓器提供者側の脳死判定から臓器摘出までに要した費用の自己負担分につきましては、日本臓器移植ネットワークにおきまして提供者側の負担とならないように運用することとしております。  具体的には、提供者側は自己負担分を一たん医療機関にお支払いいただきまして、移植を受けた側は提供者側の自己負担相当額を分担いたしまして提供者側へお支払いするということ、そのような運用を移植ネットワークが行っているわけでございます。
  228. 西川きよし

    西川きよし君 私ももちろんカードの方はいつも携帯しておるわけですが、皆さん方にも御理解していただくようにPR等々もさせていただいておるわけですけれども、きょう一問目からただいままでいろいろと御質問申し上げました。  やはり皆さん方、素朴な疑問、不安、そういうものをいつもお話をお伺いするわけです。このドナーカード、御一緒に送っていただいたわけですけれども、説明書には、提供者側には提供のための費用は一切かかりませんというふうに書いてあります。実際には今御答弁いただいたように臓器移植ネットワーク負担をされているということですけれども、この点については制度の上でも提供者の負担とならないような仕組みにしなければならないと思うわけであります。厚生省では今後このあたりについてはどのように考えていかれるのかということを最後に厚生大臣の御答弁をいただいて、最後の質問にしたいと思います。
  229. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ただいま臓器移植法の附則十一条の規定につきまして局長の方から答弁をしたところでございますが、摘出までの処置に要した費用が自己負担として生ずるということは、これは必ずしも適切でないと思います。こうした問題は、現在、日本臓器移植ネットワークでは提供者側の負担とならないよう事実上は運用しているのは今お話しのとおりでありますが、今後とも適切な費用負担のあり方についてこれは検討してまいりたいと思います。
  230. 西川きよし

    西川きよし君 終わります。
  231. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五分散会