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1999-04-20 第145回国会 参議院 国民福祉委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十日(火曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     堀  利和君  四月二十日     辞任         補欠選任      堂本 暁子君     奥村 展三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         尾辻 秀久君     理 事                 清水嘉与子君                 常田 享詳君                 朝日 俊弘君                 渡辺 孝男君                 小池  晃君     委 員                 久野 恒一君                 塩崎 恭久君                 武見 敬三君                 中原  爽君                 水島  裕君                 櫻井  充君                 直嶋 正行君                 松崎 俊久君                 沢 たまき君                 井上 美代君                 清水 澄子君                 入澤  肇君                 堂本 暁子君                 西川きよし君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    参考人        財団法人全国精        神障害者家族会        連合会常務理事        弁護士      池原 毅和君        社団法人日本精        神病院協会会長  河崎  茂君        社会福祉法人全        国精神障害者社        会復帰施設協会        会長       谷中 輝雄君        大阪精神医療人        権センター事務        局長       山本 深雪君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十五日、千葉景子君が委員辞任され、その補欠として堀利和君が選任されました。     ─────────────
  3. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案について四名の参考人方々から意見を聴取することといたしております。  参考人方々を御紹介いたします。  財団法人全国精神障害者家族会連合会常務理事弁護士池原毅和君、社団法人日本精神病院協会会長河崎茂君、社会福祉法人全国精神障害者社会復帰施設協会会長谷中輝雄君、大阪精神医療人権センター事務局長山本深雪君、以上の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  参考人皆様から忌憚のない御意見をいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方でございますが、まず参考人皆様からお一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見の陳述、委員質疑及び参考人の答弁とも発言は着席のままで行うことといたします。  それでは、まず池原参考人から御意見をお述べいただきます。池原参考人
  4. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 精神保健福祉法等の一部改正の御審議に当たり、意見を述べさせていただく機会を賜りましてありがとうございます。  私は、財団法人全国精神障害者家族会連合会、略称全家連と申しておりますけれども、その団体の常務理事をしておりまして、今回の法改正に当たりましては、公衆衛生審議会精神保健福祉部会に設置されました精神保健福祉法に関する専門委員会委員として、昨年、精神保健福祉法問題点をいろいろと議論させていただき、ことし二月十七日付の公衆衛生審議会の答申には、審議会委員としてかかわらせていただいております。  今回の法改正は、精神病者監護法ができましてからおおむね百年、精神衛生法がつくられましてから約五十年、さらに精神保健法になりましてから十年目という大きな節目に当たる法改正でありまして、内容的にも大変歴史的な意義を多く含んだ改正が行われるものと期待をしております。  今回の法改正の全体につきましては、今後とも、より望ましい精神医療福祉あり方を目指した法改正努力を継続していく必要があると考えますけれども、二十一世紀に向けてあるべき方向を示す法改正第一歩として、全体的には評価できる改正内容であるというふうに考えております。  私どもが第一に評価したいと思いますのは、保護者制度に初めて実質的な手直しが加えられたという点であります。  全家連家族生活実態調査は、お手元にお配りしたレジュメ統計数字が示されておりますけれども、保護者をしている人の約八割は父または母でありまして、その年齢は、六十歳以上が六三・八%、七十歳を超える人が約三割、年収三百万円以下の方が半数を超え、年金生活者が約四〇%、健康状態が良好でないという人が三割を超えているという状況であります。  現行法は、病に悩み、障害に苦しむ精神障害のある人を、こうした高齢で、経済的基盤も十分ではなく、健康状態もすぐれない老父母に対して、老いてもなお障害のある子をみずから支えよと命じてまいりました。こうした旧来の保護者制度あり方は過酷であり、障害者家族の共倒れを招き、精神障害者自立を支える方法としては極めて不十分で、前近代的な方法であったと評価するしかありませんでした。  こうしたことから、全家連では、保護者制度廃止し、地域医療地域福祉あるいは公的な後見制度の支えのもとで、本当の意味での精神障害者自立支援を図り、精神障害も特別な病気障害ではなく、家族のだれかが一般病気障害になってしまった場合と同じように、法による強制や法による義務ではなくして、家族が本来持っている愛情によって接することができるようになることを実現していただきたいとお願いしてまいりました。  保護者制度廃止は、精神障害者に対する法制度あり方を、一般医療一般障害者福祉施策の通常の取り扱い方と同等にしていただくという意味で、ノーマライゼーションの実現という意味も持っていると申し上げてよいかと思います。  法改正案では、保護者制度廃止までは実現されておりませんが、保護義務を果たすべき時期が限定され、自傷他害防止義務を削除するとしております。これは、保護者制度廃止への第一歩として評価できるものでありますし、殊に精神障害者本人自己決定権保障という観点から見たとき、今回の保護義務の限定は重要な意義があると考えます。  レジュメの「精神障害者の実像」というところの数字をごらんいただきながらお聞きいただきたいと思いますが、精神障害者数二百十七万人に対して、医療保護入院になっている方は十万人弱、措置入院になっている方は五千人弱であります。医療保護入院者を、自主的に治療を受け入れることが困難な方々、つまり判断能力が損なわれている状態にある方々と見ますと、その割合は全体の五%以下であります。また、措置入院者を自傷他害の危険のある方々と見れば、その割合は全体の約〇・二%にすぎません。精神保健福祉法第二十二条の保護者治療を受けさせる義務というのは、本人判断能力が損なわれているために、自主的な治療が成り立たないときに必要になるわけですから、それは精神障害者全体の五%で足りるということになります。また、自傷他害防止義務については、〇・二%の可能性のために精神障害者全体を危険視し、保護者監督義務を課すことで、どれほど多くの精神障害者偏見とスティグマを課すことになるか、立法政策上、その弊害を知らなければならないと思います。  こうした点から、保護義務を主として医療保護入院措置入院の場合に必要なものと限定し、自傷他害防止義務を削除した改正案は高く評価すべきものと思います。  第二に、家族会として注目しておりますのは、改正案三十四条の医療保護入院のための移送規定と、三十三条の医療保護入院要件であります。  移送につきましては、精神障害の方が適時に適切な医療を受ける権利をどのように保障すべきかという難しい問題がございます。国民適時に適切な医療を受ける権利保障するためには、一般的には、医療資源を十分に確保しておけば、医療資源へのアクセスは各自が自主的に、いわば自己決定をすればよいということになります。しかし、精神障害の場合、先ほども申しましたように五%以下程度ではありますけれども、自己決定が困難な状態に陥る場合が想定されます。ここで九五%以上の精神障害の人には自主的な治療が成立することを強調してし過ぎることはありませんけれども、自主的な治療を成立させることが困難な事態が、少数ではありますが存在することは否定することができません。  一九九一年の国連の精神障害者保護及びメンタルヘルスケア改善のための原則においても、精神障害者に対してインフォームド・コンセントを行うべきことを強調した上で、しかし例外的にインフォームド・コンセントが行えない場合について規定をしております。  私は、現行法で問題だったのは、この原則例外を区別する基準を法が責任を持って明示していなかった点にあると考えております。そのために、熱心さから、あるいは思い余って、民間警備業者などを使って精神障害者強制的に病院に搬送させる事態や、逆に医療にアクセスできないままに病状が悪化している人を、責任追及を恐れて放置してしまう、関係機関の職員の事なかれ主義とも見える姿勢などが見られないではありませんでした。こうしたむやみな強制や無責任な放置を防ぐためには、法律責任を持って適時に適切な医療保障するためには、どのような基準本人自己決定保障していくのかということを示すべきであると私は考えます。この点で、移送規定を新設したことは評価できると思います。  また、改正法案が、医療保護入院について、本人同意能力がなく自己決定ができない場合であることを示す趣旨で、任意入院が行われる状態にない場合という要件を加えることにしている点も、インフォームド・コンセント原則例外基準化するものとして評価できるものと考えます。  ただ、これらの規定には残された課題もございます。  まず、移送医療保護入院も、保護者制度を前提とし、保護者同意要件にしております。しかし、入院を拒否し家族葛藤関係にある本人に対して、家族保護者として強制権限発動にいわばゴーサインを出すということが、家族関係に深い心の傷を残すことは容易に想像できるところです。また、入院について利害が対立する関係もあり、葛藤関係にもある一方の者に強制権限発動のイニシアチブを持たせるということは、精神障害者人権を守る上で適切な方法とは言えません。さらに、医療保護入院については、入院強制できる根拠がどこにあるのかも実ははっきりしておりません。こうした点では、これらの規定は、将来的にはよりよいものにしていく努力が必要であろうと思います。  こうした観点から、レジュメでは一ページ目の下の方の「残された課題」というところでございますが、六点ほど、今後の課題としてお願いしたいことを列挙しております。  第三に、改正法案が、精神障害者地域福祉の面において、市町村という身近な行政単位にその業務を担っていただく方向を示したこと、また精神障害者居宅生活支援事業等を定めたことなど、ようやく精神障害者一般障害者と同じように、地域福祉資源を使って地域社会自立生活を営んでいく兆しが見えてきたように思います。精神障害者地域福祉の促進という面では、法制度上のメニューはほぼ出そろってきたものと言えると思われますが、量的な少なさに問題の要点があると思います。  三十万人を超える入院者の数は、精神衛生法精神保健法に、そして精神保健福祉法に変わっても、相変わらずほとんど変化していません。その大きな原因一つ地域社会資源の不足にあることは疑いのないところです。精神障害者数二百十七万人に対して、身体障害の方と知的障害の方を合わせた数は約三百六十万人になります。他の二障害者の数は精神障害者の数の一・六五倍ですが、法定施設の種類では七倍、箇所数では十倍、定員数では四十倍を超えるという報告もございます。  ちなみに、レジュメの二枚目に、施設について障害者白書から抜き書きをしたものをお示ししましたが、ほかの障害と比べて精神障害の方に対する福祉施策がまだまだ量的に不十分なことは明白と言ってよろしいかと思います。  精神障害者障害者として法的に認知されましたのは平成五年の障害者基本法によることを思いますと、精神障害者の問題が余りにも長く医療だけで解決されるべき問題であるとされ、福祉的な援助必要性に対する認識が遅かったことが、長期入院者を残存させ、社会的入院の解消をおくらせている原因であったと言っても過言ではないと思います。  また、地域自立した生活を果たしていくためには、所得保障という面も極めて重要な課題であります。精神障害の場合は、初診時のカルテが保存期間を経過して廃棄されてしまっていたり、年金払い込み前の二十歳を過ぎた学生時に発病する場合も少なくないなどの理由から、障害年金を受給できないいわゆる無年金者問題も存在しております。  年金問題は、精神保健福祉法それ自体の問題ではありませんが、こうした福祉的側面を総合的に御勘案いただき、精神障害者地域自立生活を支える医療福祉の法としてよりよい精神保健福祉法となりますよう御審議をいただき、また、附帯決議等で将来、再度、法見直し機会をお与えいただいて、よりよい精神保健福祉法実現を果たしていただきますようお願いいたしまして、私の意見を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  5. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  次に、河崎参考人にお願いいたします。河崎参考人
  6. 河崎茂

    参考人河崎茂君) こういう機会を与えていただいて、ありがとうございます。  私は、日本精神病院協会会長を現在しております。このたびの精神保健福祉法の一部改正に当たりまして、専門委員としてその審議の場にも加わらせていただきました。  現在、約二百十七万名の精神障害者と称する方が国民の中におるということで、そのうちで約三十四万名は入院しております。外来として医療を受けておる方が一日平均六万八千名、そのうちで公費負担制度を利用されておる外来患者が約四十七万名。考えてみますと、人口精神障害者と称される方との比率は、他の疾患に比べて決して少ない数ではないというように思っております。  日本には、現在、国立、県立あるいは市町村立の公的な精神病院、もちろんその中には大学の精神科あるいは総合病院も含まれておりますけれども、それと法人個人精神病院等で約千六百八十の医療機関がありまして、法人個人は約千四百が現在精神科医療機関として許可を受けて医療に携わっております。  日本精神病院協会会員が現在千二百五病院。考えてみますと、北海道から沖縄までに、約人口十万に一カ所ずつ民間病院が配置されており、各都道府県に一カ所あるいは二カ所の公的医療機関があるというのは、これは世界に類を見ない、日本だけが持っておる一つ精神科医療資源ではないかと思っております。三十四万床のうちで約三十万床は民間医療機関が担当しており、それがうまく全国に配置されておる。この医療資源がよくならなければ日本精神科医療がよくならないんだというような一つの自覚を持っております。  ただ、悲しいことに、十年、十五年前から毎年起きる民間精神病院における人権問題あるいは医療の場における不祥事件に対しては、我々自身が挙げてお互いピアレビューをやりながら、再びこういうことが起こらないよう努力は重ねておりますが、まことに遺憾なことであるとみずから反省をしております。  ただ、そこに精神科医療一つ問題点の、日本人口との割合ベッド数、もう一点の在院日数の長さ。十年前と比べて、五百何十日が現在四百日前後になった。十年かかって在院日数が百日短縮された。でも一方、三十四万という入院患者の数が、人口比較して十年たって約一万のベッドが少なくなった。これだけで今後のことを考えていった場合に、やはり日本精神科医療の大きな問題点として、社会復帰推進ということにより一層努力をしていかなければ決して精神障害者方々人権は守られていかないんだという気持ちは、日精協挙げて持っております。  ただ、いかにして社会復帰推進していくか。何年かかかって努力をしてもいまだに遅々として進まない。これには幾多の原因があり、その原因一つ一つ打破していかなければ、先ほどの参考人のお話のように、身体障害あるいは知的障害者方々と比べて日本精神障害者方々に対する生活援助福祉の分野が大きなおくれを持っておったということも、これも一つであります。  また一点、我々千二百五病院のそれぞれの地域における社会復帰推進の場合に、社会復帰施設病院の外に、例えば援護寮福祉ホーム、グループホームを建設しようとしたときに、地域住民方々が挙げて総論賛成であり各論反対である、精神障害者方々が退院してこられてここに何人かが生活すること自身が、やはり我々が怖いんだというようなことが現実あるわけなので、これをどうして打破し、そして地域住民方々との話し合いにおいてようよう話がついて社会復帰施設病院外に設立したというその努力を一方においてやりながらも、なかなか思うようには進んでいかないのが現状であります。  もう一点、いわゆる公と民との比較において、あるいは公民をなべて、他科との比較において、現在、精神科の特例と称して四十八人に対して一名の医師、あるいは六対一の看護体制、これ自身が今後どうあるべきか、これも日精協の大きな課題として、先ほどの長期在院者社会復帰に対する手段、そして今の在院日数を少なくし、ベッド社会復帰に回っていくその方法をどうするかということは、現在我々自身も、また厚生省においてもそのことを考えながら、特別委員会を組んで検討はしております。  ただ、現在、いわゆる精神保健指定医が約一万名を超しました。でも、実質は、日本精神病院協会の三十万床、千二百五病院で勤務している指定医の数は約四千名。そして、指定医がふえていくのが年間約三百二、三十名。十年かかっても三千人しかふえていかない。そして、現在の人権尊重第一歩指定医制度、大きい義務、任務を負わされておる指定医自身がそれだけしかおらないところに我々の一つの悩みもあります。  またもう一方、高齢化社会における老人性痴呆疾患のうちで、特別養護老人ホームあるいは老人病院あるいは老健施設対応でき得る痴呆疾患方々、それが対応できない夜間徘回、妄想、そして問題行動のある痴呆性老人人権を尊重しながら指定医または専門精神科医対応をしていかなければいけない方が約七万五千名、その中で現在、老人性痴呆疾患精神病院入院しておる方が約二万名余り。いまだに約五万名の方が、これはそれだけの設備とそれだけの人間がおるところの精神病院医療を行わなければいけないにもかかわらず、思うようにはいっておらないのも現状であります。  あれやこれや検討して現在、日本精神病院協会会員自身で、この十二月末で約六〇%の病院がハードの面において明るく、そして格子を取り、そしてかつては、昔はどうしたって精神病院にだけは入院したくない、あるいはさせたくないと国民から言われたものを、もっと親しみのある精神病院にまず姿形から変えていこうということで、現在約六〇%の病院が大改装なり、ちょうど二十何年間の時期も来ておる病院が建てかえなりをして、新しい精神病院のイメージチェンジに努力をしておるところであります。  もう一方、男子看護士、これも、日本看護というのは看護婦さんに限られておったのを、男子学校がなかった、教育機関がなかったのを、これも日精協で十何年前から取り組んで、現在、約一万六千名の男子免許証を持った看護士精神病院において勤務しておる。これは、やはり男子でなければいけないということではないんだけれども、三十何万名の入院患者の中には触法、法を犯した方もおりますし、また強制入院措置入院患者の中でどうしたってやはり夜間勤務男子でなければというような場合もあり、また男子精神科看護という面に自分の生涯の働き場を求めて資格を取ってというような強い希望もありまして、約一万六千名の有資格者と、五千七百から八百名の現在学校に通っておる、今は無資格なんだけれども、近い将来有資格者になる男子が現在精神病院で勤務しているというのも実態であります。  このたびの法改正において、きょうお手元日精協要望書と称してお配りさせていただいております。我々としては、何回かの試練を受けて、また日本国民だけではなしに国際的にも調査団を受けて、そして調査を受け、試練の場をくぐり抜けてきた現在の日本精神科医療人権という問題に関しては、頭の中に強く我々自身が守っていかなければいけないんだということが徹底しておりますし、いわゆる人権を尊重した日本精神科医療というものにお互いに励まし調査をし合いながら、いわゆるピアレビューと称して日精協ブロックごとに、また支部ごとに現在行っております。  その中で、一番に社会復帰対策推進という問題を取り上げまして、二番目に精神障害者に対する偏見差別撤廃というのは、これは我々も、現場においてそれぞれの伝統を持っておる病院、もう古い病院は三代目の院長が出てきております。ほとんどが二代目にかわってきております。精神病院の中で生まれて、子供のときから精神障害者方々病院の中で遊び戯れた連中は、現在、二代目、三代目の院長としておるんだということも、これもいろいろと長短あるにしても、これはやはりその土地の文化と伝統を重んじながら、その土地で生まれて育って、そして子供のときから精神障害者のよき遊び相手として育った連中医師になり、指定医になり、院長になりしておるというところで、地域偏見差別については身をもって撤廃をしようと努力はしておりますが、国を挙げての一つ施策としてよろしくお願いしたいと思います。  三番目の救急医療、四番の公と民との機能分化、その他、保護者の自傷他害防止義務、これもよくわかるんですけれども、やはり本人家族と我々とで三位一体となってやっていきたい。あと、精神科医療の適正なる診療報酬確立という面で、特別な今の二二%のベッド数を持ちながら医療費は五・一%にすぎない、技術料というものの評価をお願いしたい。  最後に、触法精神障害者対応というのは、厚生省だけではいかないと思うんですけれども、法務省、警察庁と相まってよろしく先生方にお願いをして、今後の触法精神障害者対策というものについての御配慮もお願いしたいということであります。  時間を超過して済みません。終わらせていただきます。ありがとうございました。
  7. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  次に、谷中参考人にお願いいたします。谷中参考人
  8. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 今回の法改正に当たりまして、意見を述べる機会を与えてくださいまして感謝いたします。  私は、全国にあります社会復帰施設、これを束ねている会長として、それからもう一つの立場は埼玉県大宮市にありますやどかりの里、創設してことしで三十年目になります、現在も精神保健領域におけるソーシャル・サポート・ネットワーク、地域の中に在宅される方々を支え続けている活動を続けていますが、その立場から、すなわち社会復帰促進の面から意見を述べさせていただこうと思っております。  三十年目になりましたやどかりの里のことについて少し触れさせていただきますと、活動を開始した年は一九七〇年、昭和四十五年のことであります。まだ精神衛生法の時代でありまして、専ら精神障害者入院させるという法律のもとに、社会復帰促進すなわち社会復帰活動が十分になされていなかった時代のことです。ですから、私は今振り返ってみますと、昭和の時代は、我々並びに精神障害者社会復帰促進に関しましてはもう冬の時代であった。やどかりのことで申すならば、十八年間、無認可施設、補助金なしで社会復帰促進を続けてまいりました。  平成になりましてから、すなわち精神保健法の時代になりましてから、社会復帰施設が認可され、グループホーム、生活支援センター等、少しずつではありますが地域で活動の基盤をつくることができるようになりました。私は、平成の時代は春が来たと。とはいうものの、現実に社会復帰施設をつくるのは容易でございませんでした。何といっても地域住民の協力と理解を得ることが大変困難だったからです。加えて、施設を建設する際の財源の問題が私たちの法人を大変圧迫いたしました。思ったようになかなか社会復帰施設が進まない。少し焦りました。  しかし、平成七年に障害者プラン、平成十四年までにこれだけの施設の数の目標を達成しようと。既に資料がお手元にあるかと思いますが、これが立てられたとき、私の率直な感想を申し上げますと、いや、こんなにできるのかなと。例えば、援護寮が三百カ所、さらには授産施設が四百カ所。その当時は、この数を達成するなんというのはもう本当に夢のまた夢と思いました。しかし現在、私たちの仲間たちが各地で施設建設をしまして、ひょっとするといい線いくのではないかなという希望が持ててまいりました。相変わらず地域住民方々の協力、理解を取りつけるのは困難でありますし、財源も十分ではございませんが、現在、精神病院入院している方々を何とか地域社会に迎えようという努力が少しずつ実を結んできたのではないかというふうに考えております。  加えて、精神保健福祉士が誕生いたしました。私はここに期待をかけております。精神病院の中で長いこと入院している方々地域に出すべく努力をする傍ら、地域の中に、精神保健福祉士が彼らをサポートする人としてその役割を期待しております。  振り返って考えてみますと、私は自分が社会復帰活動を推進してきた身でありますから、お金のないこと、地域住民の理解のないこと、なかなか医療との連携が図れなかったこと、いっぱい問題を抱えて、もうとても諸外国と比べますと日本精神保健は絶望だ、こんなふうに長いこと思っていましたが、少し時間を置いて考えますと、この十年間の社会復帰促進はすばらしいものがあると。こんなふうに立ちどまってみますと、これは結構いい線いけるぞというふうな気もしてまいりました。  そこで、今回の法改正の重要なポイントは、その点から考えてみますと私はこんなふうに考えております。従来、精神病院から社会復帰施設へという流れをつけて、さらに社会復帰施設から地域の中へという流れをつけていきましょう、これが公衆衛生審議会における大方の御意見でした。今回の法改正は、この地域ケア並びに在宅ケアを可能にするための第一歩だというふうに評価しております。  これはどういう点から評価したかと申しますと、まず地域生活支援センターを社会復帰施設の体系の中に位置づけてくれたことです。私は、これから在宅ケアを進める際の中枢の働きはこの生活支援センターが重要な役割を担っているというふうに思っております。  そして、精神障害者居宅生活支援事業が始まります。ホームヘルプ制度やホームヘルパーの導入やショートステイ、これらを市町村で取り組むということが一つ方向として出てまいりました。さらに、これらのサービス利用のための相談、助言が生活支援センターに委託できる。となりますと、今後、市町村に、サービスの利用に関する相談、助言、したがって市町村の中にケアマネジャーのような役割を持った方の配置が必然的に必要になってくるのではないかというふうに思われます。  さらには、精神障害者保健福祉手帳並びに通院医療公費負担の窓口を市町村にし、徐々に市町村を中心にしたケアシステムを目指していこうという、そういう基礎を今回の法律がつくられたというふうに私の目からは見えてまいります。  しかし、課題も多くあります。各委員会の中で一つの問題になったのは、今、市町村は、母子に始まって老人のことで大変だ、とても精神保健を受け入れる余地はありません、さらには精神保健のスペシャリストを養成するのには十年、二十年かかる、なかなかその体制づくりができません、こういう意見がかなり中心を占めました。私はもっともだろうなというふうに思いました。  しかし、ここで重要なことは、この地域生活支援センターを市町村は第三セクター、すなわち民間あるいは社会福祉法人格を持ったところに委託しながら、すなわち民間の力を活用しながらこの支援システムをつくっていくということが可能になってきたということであります。そして、今後これは、既に先行しておる老人の施策、さらには他の障害身体障害や知的な障害者精神障害者が統合した施策を目指して、市町村単位にこの支援システムをつくっていくべきであろうというふうに考えます。先ほども申しましたように、このことで市町村にケアマネジャーの導入を図る必要があろうかと思います。  私は、小さな市町村ではこれらの障害並びに老人も視野に入れて一本化した方がよろしいと思いますが、大都市におけるケアマネジメントを考えますと、それぞれ、老人、身体、知的、精神、これらを専門とした方々のネットワークをつくり、相談の窓口を一本化する、こういう努力が今後必要ではなかろうかと思います。  さらに、社会復帰施設のことでありますが、なかなか建設が思うように進まなかったのは、民間の手にこれをゆだねてあったからだと思います。むしろ市町村の役割を明確にして、社会復帰施設の設置、運営、査察、これらも市町村の役割、こういうふうに明記することによって中核の施設としての役割を担うことができるのではないかというふうに思います。  私は、各国と日本施策とを比較しますと、いろいろとまだおくれている部分は十分あるのですが、一番貧弱なのは住宅政策だと思います。  いろいろなメニュー、すなわちいろんな居住プログラムが用意されております。例えばグループホームにつきましても、ケアつきであるとか、仲間だけで生活をするとか、幾通りもの多様なメニューが用意されていて在宅ケアを可能にしております。  私どものメニューは随分そろったんですが、この住宅、すなわち公営住宅に優先入居する、あるいはさまざまな住宅に住むことができるようなサポーターを用意する、こういったマンパワーの配置がまだ地域の中に十分でないような気がしてなりません。  そこで、私は第二次障害者プランとも言われるべきものを平成十四年度以降に用意する必要があるのではないかと思っております。すなわち、これは社会復帰施設を中心にした施設の整備に加えて、マンパワーの配置だと思います。地域の中に精神障害者のもろもろの生活支援する方々をもっと配置することが在宅ケアを真に可能にさせることだと思っておりますので、今後の計画の中に第二次障害者プランなるものをつくり、十万人の方々精神病院から地域に迎えるべく準備に入る必要があるのではないかと思います。  私は、社会復帰施設をつくるだけでは、なかなか社会復帰促進が進むとは思いません。ここは、精神病院ベッドをカットして、その分で地域の中にきちっとサポートシステムをつくる、こういう思い切った政策がない限り、現行の精神病院ベッド数は今のままずっと行くのではないかと思います。  しかし、現実には、何らかのケアがあれば、精神病院の中でなくて地域の中で暮らすことが可能な方々が八万とか十万とか精神病院の中にいるということであるとするならば、早急にこれらの方々が町で住めるような施策を具体的に立てるべきときが来ているのではないかと思います。  この最後のお願いを申し上げまして、私の意見を終わります。
  9. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人
  10. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 山本深雪です。  本日の意見提供の場をつくっていただきましたこと、ありがとうございます。  私は、大阪での精神医療人権センターの事務局長の仕事をしています。片方で、大阪精神障害者連絡会のネットワーク委員もしておりまして、大阪府下の府の精神保健福祉審議会のお仕事もしています。その両方の立場から本日は意見提起をさせていただきたいと思っています。  まず初めに、先日の委員会で西川先生の方から取り上げていただきましたが、九三年二月に大阪の大和川病院の中でIさんが死亡するという事件が発生しました。病院の転院後ですね。その事件が報道されたことを受けて、私たちは中の医療の質がどうなっているのか非常に心配しました。それで、中からの訴え、職員さんからの訴え、遺族からの訴え、それらを一つ一つ丁寧に聞き集めていく作業を今まで積み重ねてきております。  その中で、できたこと、わかってきたこと、見えてきたこと、そういう大きく気になることが何点かあります。それらを整理して申し上げたいと思います。  まず一つは、大和川病院という病院は、精神科全体にそうだというふうに言えばそうなんですが、任意入院の患者さんが約八五%を占めていたにもかかわらず、全員が門の外に出ることはできていませんでした。私たちが当初面会に訪れた九三年の二月のときにも、病棟の外に出ることのできる、かぎのかかっていない病棟は一病棟しかありませんでした。事件の発生した病棟は終日完全閉鎖病棟でした。  入院患者が百人いるにもかかわらず、時には夜勤の職員が女性一名しかいない、そういうふうな日もあって、特にそういう夜勤の時間帯は怖い、そういうふうな職員からの訴えも多く聞きました。  つまり、精神科の特色というのは閉じ込められているということです。中に入ったときに、片方で利用者とか精神医療の消費者であるというふうに思いながら取り組みをしていきたいと私自身も思いますが、でも現実には閉じ込められている、そう思うしかないという現実があります。任意入院という入院形態で入っているにしろ、自分の意思で入ったという、その部分がきちんと担保されるような現在の法制度ではありません。  ですから、結局、医療機関の中で起こってしまった暗やみ、それが死亡、患者同士のけんかや、あるいは職員が目で合図することが患者への指示につながるというふうな、非常に時代錯誤のような空間がこの日本の中にもまだ残っている、そういうことが明らかになったということだと思います。  何があればそうした事態を防ぐことができたのか、一生懸命考えました。一番大切なのは、あの病棟の中に第三者が日常的に入り込むことができていれば、まるっきりあのような病棟構造、病棟の中の人間関係にはならなかったはずです。閉鎖され切った空間が成立していたことに対して、やはり一番重要だったのは人が入っていくこと、それによって中の実態を知っていくこと、そういう取り組みを日常的にする人がいたかというところの問題点を一番目に強く感じました。  二番目には、精神医療審査会という制度があって、電話相談窓口の電話番号が掲示されているわけですけれども、大和川病院の中に入っている患者さんたちは百人で五百円を使うしかない状態でした。つまり、小遣い銭が本人に渡されていません。そういう病棟は今もたくさん見受けられます。そういう中では、審査会という制度が片方でありながら、実態においては、みずからの気持ちでかけたいと思ったときに電話がかけられない状況が今も現場にはあるということです。決して大和川病院だけが特別ひどい状態であったというふうには私たちは認識していません。  確かに、日曜、祭日の面会をさせないとか、あるいは電話できる時間帯が夜の七時から八時の一時間に限られるとか、そういう非常に恣意的な、通信・面会の自由を奪い取るような行為をする医療機関というのは数が多いわけではありませんが、でもやはり今の現状においても、そういう職員サイドあるいは医療機関の経営者サイドにおいて恣意的に電話すら使えない状態が発生しているという訴えは今も届いています。  ですから、法文上明記されている通信・面会の自由、通知、通達で明記されていることと、現場において発生しているずれとをきちんと見抜いていく力、仕事、そういう業務をきちんとしていくことが大切だろうというふうに感じました。  そして三点目には、中の入院している患者さんたちが病棟の内部で発生して目の前で起こったことを、あるいは自分が体験したことを訴えても、そのことをきちんと聞こうとする外部の方が非常に少ないという事実です。それは、中に入院している患者さんなんだから、精神異常の方の話をまともに聞けますかという当初の柏原警察の担当課長の発言にも私たちは非常にショックを受けました。  世間がこのようにして、中に入院している人のせりふを、言葉を無効化してしまう、訴えを聞こうとしない。本当に本人は見たと言っているにもかかわらず、本当のことであるとはキャッチしてくれない。そうした壁が、閉鎖病棟の中に入院している者と外で暮らしている者との関係性の中に目に見えないバリアとしてはっきりと今も存在していることは事実であります。  ですから、私たちは、片方で人間の自由を奪って身柄を閉じ込めるのであれば、その人たちが一生懸命に中から発信している声を聞きとめる力と熱意を持った人間を、権利擁護をするための委員として制度化していくことが、今回のようなことを未然に防いでいくために一番必要だったのではないか、そういうふうに痛感しました。  今現在、審査会制度というのが明記されておりますけれども、行政からの独立性であったり、あるいは中に働く委員の質の部分の問題として、私は今後も十分検討の余地があることだというふうに思っています。  人権センターが中の患者さんたちから信頼されたのは、夜の十時であろうが十一時であろうが、訴えがあるときにはきちんと話を聞きました。時間が来たからといって帰ることはしませんでした。職員であろうが、遺族であろうが、家族であろうが、退院した患者さんであろうが、病院の中の実情を教えたい、情報提供したい、そういう意思を持っている方のお話は全部丁寧に時間外であろうと聞き取りをさせていただきました。そうした蓄積が結果的に、医療の中で行われているやみの部分を明らかにしていく作業に流れていったというふうに思っています。  お手元に配付させていただきました九七年九月二十二日作成の「大和川病院問題の経過」というのがあります。九三年に事件が発生してから九七年十月に医療機関としての取り消しに至るまでの間、なぜこのような長い時間が経過せざるを得なかったのか、片方で非常に悩みました。  その一つとして、私が私たちの取り組みの中で思った一点は、まず今の法の規定の中には死亡に関する報告件数の報告徴収義務がありません。ですから、大阪府の方にA病院の中において今年度一年間で死亡された方の人数を把握されていますかという質問をしたときに、していません、できませんという回答でした。  私は、いやしくも人の命ということをお預かりしている場では、その方が退院であったのか施設入所だったのか、あるいは死亡であったのか事故であったのか、そういう最低限死亡に関する報告件数と事故に関する報告件数は、報告徴収義務として行政側が把握しておくようなシステムが必要であろうということを思いました。行政側ですら知らないということではなかなか話が前に行きませんでした。  もう一つは、お手元の四十九ページのところにもありますが、当初大阪府の方も、私たち民間団体や退院患者の話を聞きながら、医療法人の方に改善計画の提出を求めていました。ところが、そのことを拒んだときに、平成五年九月の段階で大阪府の方は改善命令を出すべく準備をしていました。それがなぜ結果的に改善命令という形でそのときに下せなかったのかという疑問がずっと残っていました。  それらが少しずつ九七年になって明らかにされてきたものの一つに、お手元の五十ページ記載に、厚生省保健医療局長が安田系三病院に対する調査の延期を打診したということが書かれています。あるいは五十七ページの中にも、安田系三病院の同系列である安田記念医学財団という財団において厚生省の天下りの職員が二名入っていました。そうした非常に密接な関係づくりをしてきたこと。  系列病院である三病院の立入調査をしようとしていたやさきに、それを延期してほしいということが、厚生省の保健医療局長というポジション、ポストを使ったというふうに私たちには見えるわけですが、厚生省内部の部局やあるいは大阪府の担当部局の方に日程変更の問い合わせをするというふうなことがあっていいのでしょうか。これは、厚生省の中にあろうと行政の中にあろうと、許認可権を持って仕事をしている方と、指導や処分を下すお仕事をしている部局の方とは明確に区別されてあるはずですし、そうしたことが薬害エイズの反省の中で厚生省内部においてもきちんと議論されてきたというふうに思っていましたが、ここら辺がうやむやにされたままですと、私たち市民、国民の側からすれば、やはり厚生省の中にはまだ見えない部分があるなというふうに思っている実感があります。  ここは、九八年四月十四日の安田氏に対する刑事事件の判決の中でも触れられておりまして、遅くとも昭和五十三年以降から発生していた職員不足の指導を逃れるための道具として安田記念医学財団を使用してきた、そのように断罪しています。しかも、患者を道具にした不正請求、不正行為であった、そういうふうに裁判官も厳しく断罪しました。けれど、このことは、世間においてはこれ以上問題にされていないなというのが、私たちから見ればすごく不思議だなという気がします。できましたら、行政の中においてもう少し、何があったのか、財団法人からの寄附金が余りにも多額であったのかとか、あるいはそのことによってどのような力が発生してこのようなおかしなことになったのかという調査をきちんとしていただきたいというふうに思っています。  そうした行政と医療機関とが癒着をしてしまえば、医療機関の中で発生している事実を職員や患者や市民団体が訴えていっても非常にむなしいものがありました。私たちは、現場がそういう事態であっていいのかということに、これではよくないというふうに痛感させられました。  ですから、今、精神保健福祉審議会の仕事の中においても、大阪ではユーザー委員として私は入っていますが、全国の各都道府県レベルにおいても、消費者サイドの意見をきちんと反映できるシステムを取り入れていただきたいものだというふうに思っております。そうでない限り、絶大なる権限を持っている医療機関との関係の中では、お願いするしかない関係家族、そして黙っているしかない立場の患者、そういう構図が変わっていく可能性というのがなかなか見えづらいものがあるからです。  そういう意味では、長期的な視点に立って物を考えれば、私はやはり、患者の権利をきちんと守れるための権利擁護法というものを長期的には考えていかない限り、こうした事件の再発防止にはつながっていかないだろう、そのように思っています。  そして、宇都宮病院の事件の反省を受けてつくられたはずの任意入院制度を形骸化させないためにも、医療保護入院との違いとか、御本人自身がここに入ります、ここで治療を受けますといって夜間にタクシーでその病院に乗り込んで任意入院になったのであれば、その方の、何時から何時までは散歩したい、何時から何時まではポストに郵便物を投函してきたい、そういう気持ちを十分に反映することのできるような処遇基準を明記していただきたい、そういうふうに思います。そうでなければ、精神科医療を受ける者が安心してかかれる医療との関係というふうに見えてこないからです。  私たちが望むものは、拘禁ではなくて、安心してかかれる医療治療です。そのためには、医療機関との信頼関係が非常に重要ですし、医師と患者が信頼関係をいかにしてつくることができるのかという視点をきちっと持っていただいて、その上で、情報公開であるとか、病院を見学したいという方にはオープンに開きますよという病院との関係づくりであるとか、今回の、少なくとも大和川病院等で失われてしまった医療機関との関係の信頼回復に向けて、何があればもう一度こうした繰り返しがないというふうに私たちが安心できるのかということを長期的な視点に立って考えていく必要があるなというふうに思っております。  それは、先ほどからほかの方からも提案がありましたけれども、一つはやはり、地域で安心して暮らせる場の確保に向けた障害者の総合的な福祉法の確立でしょうし、一つは中に患者として入っている際の権利擁護法の確立でしょうし、もう一つには地域全体を考えた障害者差別禁止法というふうな関係を明確にすることだというふうに私は思っています。そういうことの中から、口先だけではないノーマライゼーションの関係を本当の意味地域においてもつくり出していくことができるようになっていけば、閉鎖空間である病棟の中においても対等な関係、ノーマライゼーションの守られた関係ということに向けた追求が可能になるというふうに考えています。  時間が来ているようですので、この辺で終わります。
  11. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 久野恒一

    ○久野恒一君 自由民主党の久野恒一でございます。  きょうは、四人の先生方の貴重なそれぞれの立場に立った意見を聞かせていただきまして、私も茨城県でもって病院を経営する者の一人として、特に山本先生の御発言、身につまされるような感じで聞いておりました。  きょうは、四人の先生方、それぞれお忙しいところを当委員会に御出席賜りまして、我々に御教示くださったいろんな問題点とか、あるいはこれからのあるべき姿とか、そういうものを示唆していただいて、本当にありがたく思う次第でございます。  今申し上げましたように、山本先生からは大和川病院の悲惨な状態、そして厚生省対応の悪さ、これを直していくのにはやはり地域が重要であると、そういう御指摘もございました。  また、河崎先生の方からも、医療現状問題点、具体的な数字を上げていただいて、二二%のベッドを持ちながら五・一%の医療費しかない、こういう現状について、非常に病院経営も苦しいというお話もございました。  いずれにいたしましても、これからのノーマライゼーションを進めていくためには、市町村が大切であるということを谷中輝雄先生から教えていただいたわけでございます。地域ケアとか、平成七年度に障害者プランがつくられ、そういう中で今後の課題として市町村はどうあるべきなのか、そういうものも教えていただいて、本当にありがとうございます。  最後になりましたけれども、池原先生の方から、保護者の問題でもって、地域でもって保護、介護する人が高齢化している、あるいは病弱である、あるいは年金受給者が四〇%近くもいると、そういうお話もいただき、それに対しての御意見もちょうだいしたわけでございます。  立場が変わるといろんな問題が出てくる、そういうふうにつくづく拝聴した次第でございます。  そういう中で、私は違った視点でもってお尋ねしたい問題がございます。その問題と申しますのは、現在、社会保障費、年金とか医療福祉、こういう問題が実に七十兆円にも上っているわけでございます。厚生省の統計では、二〇二五年ですか、恐らく三百兆円にも達するだろうと。また、現在国民の貯蓄金額は千二百兆もある。そういう中でもっていろいろと施策をしているわけでございますが、現状の問題は現状の問題として私は受けとめてこれから活動の中に生かしていきたい、そう思いますけれども、三百兆に達する、七十兆から四倍強に達するこの財源はこれからいかにして出てくるんだろうか。今の経済成長率、そういうものの中で四倍強になる三百兆という社会保障制度、これが予測されています。また一方では、貯蓄も、一千二百兆から恐らく二〇二五年には約半分になってしまうだろうと。そういう社会保障制度も我々は確立していかなければならない問題だと思います。  時間が非常に短いので、十五分でございますので端的にお話をさせていただきますけれども、いろいろなノーマライゼーションに基づく施策が講じられようとしておるわけでございます。ゴールドプランとか障害者プランとかエンゼルプランとか、いろいろ厚生省の中にもプランがございます。私は、そういうプランに合わせていろいろと物事をつくっていくのではなくて、もっと根本的に大きく、法の一部改正じゃなくて、法を大きくつくり直していく、にわかにはできませんけれども、そういうものも必要ではなかろうかな、そういうふうに思うわけでございます。  現状のような景気低迷の中、低迷している社会情勢の中で、しっかりとしたかじ取りをやっていかなければならないのが我々国会議員の使命であろう、そういうふうにも思っているわけでございます。  そういう意味で、我々国会議員としては、事例を挙げて教えていただくのも結構でございますけれども、こうせよというものを、社会保障費が上がる、預金が下がっていく、こういう中で、先生方に御意見がございましたら教えていただければ、私のライフワークとしてそれをやっていきたいなと思うわけでございます。  時間が短いので、短くてもよろしかったら四先生全員にこのことを、ちょっとずつで結構でございます、お答え願えればありがたいなというふうに思うわけでございます。
  13. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) それでは、各参考人、御指名申し上げますので、お一人ずつお答えいただきたいと存じます。
  14. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 大変難しい御質問で、すぐにどうお答えしていいか、必ずしも適切でないかもしれませんけれども、一つは、私が本日申し上げた部分というのは、比較的予算の裏づけというものの必要が少ない部分であったというふうには思います。ある意味では、精神障害の方の能力といいますか、自活力といいますか、そういうみずから人生を切り開いていく力というのを、あるいは精神保健福祉法は過小評価し過ぎていなかったかという点を考えております。  そういう意味では、もちろん、福祉の対象になる精神障害の方がおられないという意見ではありませんけれども、かなりの方が比較的ソフトなといいますか、経費的にもそれほど大きな費用のかからない援助をすることによって、例えば一般雇用でみずから収入を上げるという方法も、現在のところはいかにも不可能のように見えておりますけれども、例えばアメリカのADA法なんかを見ますと、障害があってもそれなりの所得を得る、就労の機会というものが得られる方法がある。そういうもともとお力をお持ちの障害のある方、これは精神障害の方もそれ以外の障害の方も含めてですが、そういう方にももっと広く社会でその能力を発揮していただくというような方向性を広げていくということは、費用の面でもある意味では経費がかかりませんし、また本人が社会の中でともに生きるといいますか、自分の生きる生きがいを見つけていくという意味でも非常にいい効果があると思っております。  まずは、障害があるから何もできないんじゃないか、あるいは福祉保護してあげなければいけないのではないかというふうに最初から決めてしまわないで、やはり引き出せる能力は可能な限り引き出すような手だてをして、そしてどうしても支えが必要なところに限定して充実した支えをしていく、抽象的なことですけれども、そのような考え方がこれから必要なのではないかというふうには思っております。
  15. 久野恒一

    ○久野恒一君 ありがとうございました。  私の持ち時間が二十九分まででございますので、あと四分足らずでございます。
  16. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 久野先生の御意見にそのままそっくりいくのかどうかはわかりませんけれども、我々の考え方の一つとして、現在、精神障害者になった方に対してのいろいろな治療とか、あるいは社会生活福祉の面を考えておりますけれども、もう一つ、予防というのか早期発見、早期治療、あるいは六五%を占めておる分裂病の方々に対する治療というもの、研究というものにもう少し予算をとってもらえないかという希望があるわけですけれども、よろしく。
  17. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 財政の問題ということから考えますと、私はイタリアであるとかイギリスに見習うべきではなかろうかというふうに思っております。それは、精神病院の五十床のベッドを減らすにつきまして、五十床減らしたその予算を地域にそのまま振り分けながら、その精神病院のドクターやナースも地域の中で働くという形で在宅ケアを促進してきました。  ただ、日本においてこれができづらいのは、八〇%強の民間精神病院にこのことをお任せしているので、なかなか仕組み上できづらいです。しかし、例えばバンクーバー。五千床を二十五年かかって七百五十床に減らし、さらに二〇〇〇年には五百床に減らすという。こういう病床を減らす、すなわち医療費福祉費の方に転ずるという、このことを通じてやはり私は地域ケアを促進すべきだというふうに思っております。  地域ケアというと比較的安上がり政策というふうに思われがちですが、医療費との案分で考えるとするならば、多少医療費よりも安くて済むということも事実ですが、財源の問題はこのようなことで、一歩も早く在宅ケアを実現すべく、そういう流れの中で努力すべきだというふうに思っております。
  18. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 答えがそのまま合うのかどうかよくわかりませんが、大阪では、身体障害者の介護をするお仕事であったり、高齢者の紙おむつを運ぶ宅配サービスであったり、入浴介助サービスであったりを、地域で暮らしている精神障害者が横の連携をとり合いながら一緒に取り組んでいます。そういう形で、地域で暮らしている障害を持つ者自身が自信をつけていくような取り組み、そして新たな視点からの地域をつくり出していこうという歩みを、陽だまりであったり、松原市の方において行っています。  要は、そうした大切な部分さえ見失わなければ、一番そこが重要なのではないか、そういうふうに思っています。
  19. 久野恒一

    ○久野恒一君 どうもありがとうございました。  終わります。
  20. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  きょうは、四人の参考人の皆さん、御出席いただきまして大変ありがとうございました。私もかつて精神科の臨床に身を置いたことがある者として、今回の法改正については、いささか戸惑いながら、半歩あるいは一歩前進なのかなというふうに受けとめているところでございます。  限られた時間ですので、すべての参考人の皆さんにお尋ねすることができないかもしれませんが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。  まず最初に、大阪からわざわざおいでになった山本参考人にお尋ねしたいと思います。  強調された、精神障害者あるいは患者さんのための権利擁護制度をぜひつくっていく必要があるという御意見については私も全く同感です。民法の改正で成年後見制度の創設が検討され、あるいは一方で社会福祉事業法の改正障害者権利擁護制度がつくられようという動きがあるわけですので、ぜひその中で、どの法律でどういうふうに位置づけたらいいのか、精神障害者のための権利擁護制度をつくっていく、できれば今回の改正がその第一歩になればいいなというふうに思っているわけです。  お尋ねしたいのは、そのこととは別に、今回の法改正の中で、任意入院の患者さんについては開放処遇とするんだと。これはある意味では当たり前のことなんですが、その基準法律に基づいてちゃんとはっきりしましょうと、こういうふうに法律が変わるわけです。ただ、これは意外と開放処遇といっても何を開放処遇と言うのか、開放処遇と開放病棟とは違うのかどうなのか、結構難しいというか、定め方が現実をちゃんと踏まえて定めないと何のことを言っているのかわからない、あるいは逆に、言葉は悪いんですが、しり抜けになって何らの意味も持たないような規定になりかねない。先ほどのお話の冒頭で、閉ざされた空間に閉じ込められていることの問題というのを強調されたわけで、任意入院患者さんは開放処遇とするということの基準の定め方について御意見があればぜひお聞かせいただきたいと思います。
  21. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 最近見た資料によれば、任意入院の方で、二十四時間、終日閉鎖病棟に入っている方が五四%いるというふうなデータがありました。  私は、こういう終日閉鎖病棟の中に任意入院の方が入れられてしまっているという現実はあってはならないというふうに思っています。  具体的には、開放処遇というのは、扉があいていることという現状規定を超えて、例えば時間を一時間半という形で詰所に書き門の外に買い物に行ける、そういう行動範囲を含めて、開放処遇だと入院した御本人が思える内実にしていただく必要があるだろうというふうに思っています。
  22. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 その点について、ちょっと立場は違いますけれども、河崎参考人の方にお尋ねをしたいと思います。  精神病院における開放化についてはいろんな形でかなり努力をされているし、少なくとも十年、十五年前に比べると少しずつ開放化に向かって進められていると思います。ただ、実際の病棟の運営の実態といいますか、あるいは患者さんの処遇の実態ということになるとかなりばらつきというか、それぞれ違いがあって、なかなか任意入院患者さんは開放処遇とするんだよというふうに決めるとしても、さあ一体どこをどう決めたらいいのか結構難しい面が現実にはあるんじゃないかと思うんですが、御意見があればお聞かせいただければと思います。
  23. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 朝日先生のおっしゃるとおりで、例えば任意入院専用の病棟あるいは医療保護の病棟というふうに病棟別になれば開放が物すごく楽なんですけれども、まだそこまで行っておらないんであって、今でも一つの病棟の中に医療保護の方も任意入院の方も同居しているような感じなんです。任意入院の方が一日に大体八時間が本人の意思によって開放されるという、希望があればというようなことなんです。  もう一つは、病院の病棟の配置によっては、全部の病棟が朝の九時から夕方の五時までは運動場を取り囲んだ病棟配置であれば全部出られるわけなんですけれども、そうではなしに、病院外に自由に出ていくということについては一戸病棟、病棟全体をそのようにするわけにはいかないところに我々の悩みがあるわけなんです。  今後、病棟のつくり方、配置の仕方なんかを工夫して、できるだけ任意入院の方は任意入院病棟、閉鎖病棟に入られる医療保護の方は医療保護病棟というような、病棟のつくり方から我々も検討していかなければいけないというように思っております。  今のところ十分に満足するような開放状態にはなっておらないのが事実なんです。
  24. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今お話がありましたけれども、私も今からもう三十年ぐらい前になるんですが、ある病院にいて、明らかにかぎが二十四時間かかっていて閉鎖病棟なんですけれども、中庭に向けてオープンになっているのでこれは開放病棟だという説明を聞いてびっくりしたことがあるんです。  やっぱりポイントは、先ほど山本参考人もおっしゃったように、外とのコミュニケーション、第三者がどの程度出入り自由となるのかという、あるいは中の情報が外へ、外の情報が中へどの程度入ることができるのかというその度合いなんだろうと思います。  そういう意味では、今回法律任意入院の患者さんは開放処遇とするんだよと、その基準についてはいろいろ明確に概念を決めたいと、こういうふうになっているわけで、そこは一歩評価をしたいと思うんですが、実際にこれを運用するとなるとかなり現場での御努力も必要になると思いますので、ぜひ河崎参考人にはそのことについても御尽力いただければと思います。  せっかくの機会ですから、あと一つだけ河崎参考人にお尋ねします。  先ほどの冒頭のお話の中で、平均在院日数もかなり短くなってきている、あるいは病床数も右肩上がりではなくて、やや減少方向を向いているというような大きなトレンドについてお話がありました。私は、今から十五年前もそうでしたし、今でも改めてそう思うんですが、日本の精神病床数はやはり多い、あるいは多過ぎるのではないかとどうしても考えざるを得ないんです。これはきょう改めていろいろ資料を、数字はお示ししませんけれども、OECD各国における人口千人当たりの精神病床数というのはどう考えても日本は多い。さまざまな社会復帰への努力で少しずつ少なくなっていくのかなというふうに大いに一時は期待をしたんですが、残念ながら必ずしもその期待したとおりには進まなくて、現在やっぱり三十四万床あるんですか、平均在院日数にしてもまだ四百何日あると。一体どうなんだろうかと。  先ほどお隣の谷中参考人もおっしゃったように、相当病院、病床数を削減して、社会復帰にコストをシフトした方がいいんじゃないかという御指摘があったんですが、その点について参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  25. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 病棟の三十五万床あるいは実質三十四万というのは、なかなか十年かかっても同じようなところでおるんじゃないか、在院日数が十年のうちに百日短縮したってそれも大して影響を及ぼしておらないんじゃないかと思います。  日精協調査によりますと、ごく最近入院しておる、ここ二、三年前からの入院は、六カ月ぐらいで約七〇%ぐらいは一たんは退院できるわけなんです。一年余りで九〇%ぐらいは一応退院はしているわけなんです。でも、五年以上の入院患者が約半数、五〇%いるわけなんです。  この長期在院者をどうするか、これが一つの命題になっておるわけです。そのために厚生省委員会をつくって長期在院者対応をどうするのかという研究班で現在やっておるわけなんです。この四月、五月ごろには結論は出るだろうと思うんですけれども、一応社会復帰の中間施設的なもの、例えば日精協が唱えておる心のケアホームという中間施設的なもの、あるいは老人保健施設と同じような精神保健施設のようなもので、一応百床に対して医者が一人か二人で、長期在院者で二十四時間、三百六十五日入院の必要のないような方を精神保健施設というような施設に病床を転換して、そこに持っていったらどうかというような案、幾つかのメニューは現在出ておるわけなんです。  我々としては、ここ十年間、中間施設という援護寮福祉ホームあるいはグループホームがなかなか遅々として進まない現状であるから、思い切って病棟の一部を変更して、そして中間施設的なものに持っていったらどうかというようなところで検討を加えておるわけなんです。検討ばっかりやっておっても実質なかなか進まないから、早く結論を出して、幾つかのメニューで食えるものは食っていけというような状態に持っていくべく現在最終的なところに来ておるわけなんで、いましばらく経過を見ていただきたいと思います。
  26. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 時間ですので。ありがとうございました。
  27. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。  きょうは貴重な御意見どうもありがとうございました。時間も短いので早速御意見を伺いたいと思います。  谷中輝雄参考人にお伺いしたいのですけれども、現在いろんな事情で社会環境が伴っていないということで数十万人の方が入院されている。条件が整えば数万人の入院患者さんは社会復帰施設あるいは在宅医療に移れるというようなことが言われております。障害者プランは、先ほどある程度満足できるようなお話がありましたけれども、この数万人を社会復帰させる、あるいは在宅医療に持っていくためには、障害者プランの目標を現在よりももう少し大きくして実施を早くすべきではないかなというように考えているわけでありますが、谷中参考人の御意見をお伺いできればと思います。
  28. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 私の実践のことを一つ例に挙げますと、最近、入院期間が二十年から三十年の方々を私どものところにお迎えしております。そして、この方々地域で暮らしていくためにどうするかというときに、従来の中間施設的な生活指導とか生活訓練ということがもはや十分効果を発揮しなくなりました。  すなわち、夕食のお弁当を届けてあげますよ、だから食事をつくることをしなくても暮らしていけますよ。さらには、買い物はどなたか職員なりお仲間が一緒に行くから大丈夫ですよ。日常の生活のもろもろのこと、まさに生活支援です。そういうサポーターが周りにいることによって、それは患者さん同士の助け合いであったり、あるいは近隣の方々の御協力であったり、ホームヘルパーの方々のお力であったり、こういうシステムを地域に持っていれば、これは長いこと入院している方々地域で暮らすことは可能です。  先ほどの障害者プランのことに関して言うならば、平成十四年まではまず設備を何とか整えましょう。余り好きな言葉じゃありませんが、受け皿づくりということで今現在進めておりますが、さらにここにそういう生活のサポーターを、地域の中にいろいろな方々にサポーターとして登場していただくというマンパワーのことを同時に盛り込むことによって、先ほどお話ししたように地域で暮らすことは可能である、こんなふうに思っております。
  29. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 どうも貴重な御意見ありがとうございました。  続きまして、池原毅和参考人にお伺いしたいのですけれども、やはり地域社会復帰するためには地域住民あるいは国民のそういう精神障害者に対する理解というものが非常に大事だということでありますが、その理解を深めるために国はどういう啓蒙活動をしていったらいいのか、その点に関しまして御意見をお伺いできればと思います。
  30. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 私たち全家連差別偏見の解消についての実態調査といいますか、アンケート調査をしたことがございます。  この中で、差別とか偏見が発生しやすいのは、実際に精神障害の人とか、あるいは別の種類の障害でもそうなんですけれども、そういう方々と接触した体験のない方の方がむしろ差別とか偏見が強いという、そういう調査結果が出ているんです。  そういう意味では、これは精神障害の方がもっといろいろなところで社会に参加できる機会を与えられて、そして一般の市民の方と接触する機会をつくっていただく、そうすることで大多数の、ほとんど圧倒的多数の精神障害の方が非常に心の優しいむしろ尊敬できるすばらしい方々だということを御理解いただけるだろうと思います。  これはそれ以外の障害の方についても同様でございまして、やはりある種の障害とか病気を持った人を社会の片隅に寄せ集めてしまうということではなくて、それを社会の中にむしろ広げて、いろんな場面で接触する機会をつくっていただくことが結局は一番障害に対する理解を深めていくことになると思っています。
  31. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 同じ観点からの質問になると思いますが、谷中輝雄参考人にお伺いしたいんです。  先ほどもお述べになりましたけれども、社会復帰施設建設の場合に地域住民の反対運動も起きやすいということでありまして、そういう住民との意見交換とか、そういう反対運動等が起こらないようにするために今後どういうものが必要なのか、参考に御意見をお伺いできればと思います。
  32. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 偏見というとすごく強く聞こえますが、今、池原さんが言われたように、どうも先入観がおありなのです。  私が聞くところによると、精神障害に対する先入観の一は、何をされるかわからない、危険である、不気味であるということ、それから何を考えているかわからない、このあたりが大変強いものですので、住民をいろいろと啓発するとか啓蒙するとか今までやってきたのですが、これはどうも余りうまくいきませんでした。先ほどの話でいきますと、私どもは住民との間のイベントを通じた交流を盛んに起こして、そしてその先入観をともかく改めていただくと。  ですから、これはいろんなキャンペーンもイギリスあたりではされたようですが、これも有効だと思いますが、例えば私どもの実践の方からいくと、精神障害方々地域住民の交流を頻繁に繰り返すことによって地域住民方々の理解を得るということ、これが一番功を奏してきたのではなかろうかというふうに思います。  もう一つの問題は、実際には費用の問題もありまして、我々が施設をつくるときに地域住民方々の理解と協力を得るということがいま一つ進まない。これは裏側に行政、例えば市町村の支援等もいただきたいというふうに思っております。これが民間だけの活力だけではなかなか発動しないときもございますので、むしろ市町村が何らかの役割、すなわち公営の社会復帰施設を設置するあるいは建設するというところに市町村の絶大な支援をいただきたいというのはそのことでございます。
  33. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 続きまして、池原参考人にお伺いしたいのですけれども、先ほど御意見を伺いまして、「残された課題」というところがございました。その一番目に、保護者同意にかわる適切な権利擁護システムをつくる必要があるということが述べられておりますけれども、具体的にどういう形でそのシステムをつくっていったらいいのか、そのことに関しまして御意見をお伺いできればと思います。
  34. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 諸外国の強制入院のシステムを参考にしますと、国際的な水準でいえば、基本的には裁判所のような第三者機関が入院必要性があるのかどうか、あるいは本人判断能力が失われているのかどうかということを判定するのが最も厳格で人権保障という点ではすぐれている方法だと思います。  ただ、我が国の場合に、裁判所が現実にそこまでの機能を果たせるかということになりますと、現実的にはなかなか難しい問題もございます。当面考えておりますのは、例えば十分に訓練を積まれた指定医の方二名の判定によってその要件を判定していただく、そのかわりに事後的に精神医療審査会の機能をもう少し強化して、必ずその入院についての適否をチェックできるようにするというような方法日本の場合は現実的なのではないかというふうに思っております。
  35. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 次に、河崎茂参考人にお伺いしたいのですけれども、やはり現実問題として、新聞紙上等では触法障害者による残念な事件もごくまれでございますけれども起こるということでございます。先生の場合は、そういう触法障害者の処遇をやはり日本としてもきちんとしていくべきである、適切な医療を提供するような体制をきちんと組んでいくべきであるというようなお考えのようでございます。これを国としてやっていくべきだというような御意見のようでございますけれども、その点に関しまして何かつけ加えられることがございましたら御意見をお伺いしたいと思います。
  36. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 触法精神障害者、そのうち職場で我々自身が問題にするのは、特に重大な犯罪、傷害事件とかあるいは殺人とかそういうような犯罪を犯した方の受け入れというのは、現在民間病院が数が多いから民間病院がほとんど受けておって、公的病院数は少ないから当然公的に行っている方が少ないのですけれども、決してこれは公的病院だけの責任というよりも、やはり公民なしにちゃんとやって、最終的には民間でどうにもできないような大変な患者さんもおるわけなので、そのような場合はやはり国立なり公的に後ろの控えとしてお願いしたい。  そして、日本の現在の状況では、不起訴のまま精神病院入院して三月たって、そこは退院して社会生活して、また同じような犯罪を起こす方もやはり例としては数多くあるわけです。その辺を、触法患者の対応というのを厚生省だけではなしに法務省も一緒になって基本的に根本的に対応策を検討していただく時期に来ておるのではないかというような希望を持っております。
  37. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 数が多いかどうかというのはちょっとわからないのですけれども、その場合に何か被害者に対しましては国家賠償制度みたいなものをつくったらいいのではないかというような、被害者国家救済制度を確立した方がいいというような御意見河崎参考人の方の文書ではあるのですけれども、これはどのような観点で、どのような形でつくっていったらいいのか、何か参考になる御意見があればお伺いしたいと思います。
  38. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 我々としては、自分が先ほど申し上げたようなところが現在の考え方なのですけれども。
  39. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 被害者の救済に関しまして責任を問えないわけでございますから、加害者に関しましてはそういう意識、病識がないわけでございますので、被害者の救済制度というのもやはりきちんとしていくべきであるというふうに考えるのですけれども、その点に関しまして日本精神病院協会の方では何か被害者国家救済制度をやはりつくるべきだというようなお考えを示していると思いましたので、その点に関して何か御意見があればと思ってちょっとお伺いしたわけでございます。
  40. 河崎茂

    参考人河崎茂君) またよく検討しまして、お話しさせていただきます。
  41. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 最後になりましたけれども、一言山本深雪参考人にお伺いしたいのですけれども、今回指定医の役割というのが強化されることになっております。これに関しまして不十分だとか、これでよろしいというような何か御意見があれば、ちょっと時間が短くなりましたので簡潔にお答えいただければと思います。
  42. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 指定医の権限で隔離、拘束等されていくわけですから、そのことをきちっと病院長等に報告しなければいけないというふうに書き込まれたのは安心できるのかなと思う反面、そのことを報告してもし病院の管理者に盾突くような意見指定医として進言しなければいけないような場合が病棟の看護との関係で発生します。そういうときにきちんとした指定医としての本来の仕事を全うしようと思ったらかなりの覚悟が要るようになってくる、そういう現場が予測されるので、本当に有効性があるのかなというところは、ちょっと首をかしげています。
  43. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ありがとうございました。
  44. 井上美代

    ○井上美代君 私は、日本共産党の井上美代でございます。  四人の参考人方々のお話を伺いまして、本当にその熱意、これまで御苦労を重ねてこられたというふうに思いますけれども、短い時間でありましたがそのことを非常に強く感じました。また、深刻な状況についても今後の精神障害者福祉施策に非常に深い示唆になるものをいただきまして、生かしていかなければいけないというふうに思いました。  きょうは時間が限られておりまして、私は社会復帰施設関連について特にお聞きしたいというふうに思っておりますので、池原参考人谷中参考人になるかなと思ったりしているんですけれども、よろしくお願いしたいと思います。  私も精神障害者がふえてきているということについて大変心配をしております。今日の社会が非常に複雑に動いておりますので、そういう点も関連するかなというふうに思っておりますけれども、特に先ほどから参考人のお話でも出ておりますように、二百十七万人ということで、これは大変な数であるということを感じております。特に、知的障害者についてもかなり社会的には言われているんですけれども、三十九万人というふうに聞いておりますので、相当上回るなというふうに思っております。  私は、先ほどからいろいろ出てきております社会的入院の問題、この問題を数字的にも明らかにして、そしてやはり抜本的に減らしていくということが大事だというふうに考えております。障害者の人たちが、暮らしだとか、そしてまた働くということ、人間として生きる地域社会復帰施設がそういう意味でもまだまだ不十分です。総合的にそういうものができるようになっておりませんので、そういうものを含んだ社会復帰施設がつくられることが大事だというふうに一つ思っております。  それからもう一つは、これも先ほどから出ているんですけれども、私は一九九三年に障害者基本法の二条できちんと精神障害者が位置づけられたということを大変喜んでおります。そこから始まっているというふうに思いますし、三条のところでは、人権が尊重されなければいけない、個人の尊厳がなければいけないということがるる書いてあります。これがやはり一日も早く現実のものとなるということが大事なのじゃないだろうか。  そのときに、障害者プラン、この七カ年計画、これがどうしても現実に本当に定着していくということが大事だというふうに思っているんですけれども、数字は挙がっているんです。そして、もう既に三年、四年目を迎えているわけなんです。これが、予算上の数字ははっきりしているんですけれども、では一体どういうふうにできているのかというのがはっきりしていないんです、数字が。だから、そういう点についてもはっきりさせて、そして現実にそれができていっているというのを我々自身が確かめられるようにしていかなければいけないんじゃないだろうかというふうに思っております。  もう一つは、オランダの例で計算をしてみたんですが、人口が二十万から二十五万人を一つの単位としてオランダではやっているということなんですが、例えば日本援護寮があるんですけれども、オランダには共同住宅というのがあって、我々の援護寮と似ているわけです。それを計算してみますと、全国で六万三千人分ぐらいになるんです。そうなるとこれは相当の数だというふうに思うんですけれども、小規模作業所等についてもそういう計算ができるというふうに思いまして全部を計算してみたんです。もう時間がありませんのでそれは出せませんけれども、相当数が多いんです、もう圧倒的に多いんです。そして、運営費も一〇〇%国から支給されているというのがあります。だから、そういう点で、国もお金がなかなかないから、財源の問題も先ほど出ておりましたけれども、私はやはりそういうものを諸外国から学ぶということが大事じゃないかなと。  そういう上に立ちまして、私は四つの質問をしたいというふうに思っております。  一つは、都の調査入院患者の三割が社会的入院だというふうにされているんですけれども、この数を一体どのぐらいだというふうに先生方は見ておられるのかということと、その原因がどこにあるのかということ。そこについてぜひお聞かせ願いたい。これがやはり地域に受け皿をつくるという点で重要なんじゃないかというふうに思いますので、それを聞かせていただきたい。  二つ目は、障害者プランの目標なんですけれども、これが予算上の数字だということで、私は達成できるかということを非常に心配しております。達成させていかなければいけないというふうに思いますので、それについての評価、そしてまた見直しということについて先ほども谷中先生から非常に貴重な提言をいただきましたけれども、それについてどういうふうに評価されているか。  それから質問の三として、今度の法改正があるわけですけれども、その中にホームヘルパーとかショートステイというのが入って、初めて法定事業というふうになって試行的にやられるということなんですけれども、このあり方についてこうした方がいいよというような提言があるんじゃないかというふうに思うんです。だから、ぜひそれを聞きたいということ。  四つ目には、身体や知的障害者ではやられているデイサービスが精神障害者の場合にはないんです。それで、医療中心のデイケアだけでは居場所がないということがあります。小規模作業所では、働くことや、それから食事、レクリエーションなどを今やっているわけなんです。私も何カ所か訪れましたけれども、そこで食事を自分たちでつくりながらコミュニケーションをしておられたんです。ああいうのは治療の点からも、そして自立して暮らしていく点からも非常にすばらしいというふうに思ってきたんですけれども、そういうものをつくって、やはり精神障害者方々にも内容豊かな自立に効果があるようなそういうデイサービスが保障されなければいけないんじゃないだろうかというふうに思っております。それに対する意見をぜひ聞かせていただきたい。  以上です。
  45. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 質問が多岐にわたりましたけれども、簡単にお答えいただきますようにお願いいたします。
  46. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 四つについて私なりの考えを述べますが、重要なのは、家族的な機能を家族自体が高齢化現象でかなり失いつつありますので、池原さんにその辺も含めて補っていただくことにいたします。  一番目の問題は、さまざまな調査が行われて、その調査の都度、社会的理由で入院している人の数は変わってまいりました。しかし、先ほどの御指摘のように三分の一、八万から十万は何らかのケアがあれば、すなわち家族にかわるようなケアがあれば病院にいなくとも地域の中で暮らすことの可能な数字ということが一般的に言われております。  それから二番目の問題ですが、御指摘のとおり、社会復帰施設は数はかなり達成されて、先ほど私も、平成十四年にはいい線にいく、こう申しましたが、その内実ですね、どれだけ利用されているのかとか、どれだけの人が精神病院から地域に出ていったのかということについてはまだ十分に機能していない点がございます。  ただ、これは社会復帰施設の充実ということが手おくれになっているということだけではなくて、現に生活保護方々社会復帰施設に出ますと利用料が必要になってくる、むしろ入院をしていた方が費用がかからない、こういうもろもろのことも含めまして社会復帰施設が効率よく利用されていないということは御指摘にあった一つの問題だと思います。ですから、数だけでなくてこの見直しのところでは社会復帰施設をいかに効率よく使っていくかというようなこと。  それから、先ほど池原委員も言われましたが、絶対的な量が不足しております。それから、地域にばらつきが目立ちます。重要なことは、こういうことを全国的に、例えば人口十五万にこの社会復帰施設をともかく配置するとか、そういう適正な整備が必要かと思っております。  それから三番目は、これは私はすごく重要な点だと思いますが、精神障害者の居宅生活支援の中でホームヘルパーの活用、それからグループホーム、それからショートステイ。既にホームヘルパー制度は仙台市ではもはや先行しております。そして、数は多くはございませんが、いろいろな心配もあったんですが、かなり有効であると私は見ております。  これに加えて、例えば病院に診察に行くときに一緒に行ってあげるよという移送サービスであるとか、お弁当を運んであげるとか二十四時間の電話の相談、もろもろの在宅支援の事業がここに盛り込まれていくことによって私は生活をする際のサポートになるかというふうに思いますので、この辺の在宅者へのサービスメニューをもっと盛り込むべきだというふうに思っております。  最後の四番目のデイサービスに関しましては、私どもの今やっているところでは小規模作業場がそのような役割を少し担っております。それから生活支援センターは、どちらかというとたまり場あるいは憩いの場的な形で利用しようと思えばできますので、一部そういうふうな機能は持っておりますが、ここで重要なのは小規模作業場をもっと補助金をきちっとして法内施設に位置づけるなり、今の小規模作業場が法人格を持つことができるように社会福祉事業法の規制を緩めるなり、こういう形でこの小規模作業場がもっときちっと位置づけされなければならないかと思います。もしこの位置づけがきちっとされれば、先ほど申されましたようにデイサービス等がこの小規模作業場の中で十分に行っていけるというふうに私は思っております。
  47. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 重複する部分があると思いますので、多少違っているというかつけ加えたいことだけを申し上げたいと思います。  まず一つは、社会的入院の比率の問題ですけれども、これはやはり確定した数値というのはなかなかありませんで、十万、十数万、三分の一とか少し多目に見ると六割くらいいると言う方もおられるようです。ただ、このときに私が思いますのは、それは退院可能な状態のイメージをどう考えるかということによっても違うと思います。  例えば、離れた例ですけれども、町の中に段差があれば車いすの人は外に出られません。しかし段差がなくなれば外に出られます。それと同じように、精神障害の方を受け入れてくださる社会のシステムがどうなっているかによって退院が可能である場合もあれば不可能である場合もあるということになります。  ですから、自炊ができなければ退院は不可能だと考えればその人は社会的入院ではありませんが、ホームヘルプサービスがついて食事の世話はやってもらえるんだ、だから食事の支度ができなくても生活はできるよということになれば、それはある意味では社会的入院者としてカウントされる側に入っていくことになるという意味で、この数値というのは、どのような社会・地域生活観を持つかによってかなり違っていくんだろうと思います。  つまり、今までは精神障害の方が病気を治して社会に出る、こういうイメージだったかもしれませんが、病気障害が残っていてもそれを補うものが社会にあれば十分社会で生活できるんだ、社会がもう少し優しく姿を変えていかなければいけないんだというふうに考えれば、これは相当の数の社会的入院者ということがあるということになると思います。  それから、障害者プランの目標達成については特につけ加えることはございませんが、もちろん達成していただかなければ困りますし、達成してなおまだ不足が多いということを申し上げておきたいと思います。  三番目のホームヘルプサービスについては、精神障害の方の生活障害と呼ばれますけれども、障害の特色というのがなかなか理解されにくいというところがあります。身体障害の方はどういう部分に障害があるのかということをイメージしやすいけれども、精神障害の方についてはそれがなかなかわかってもらいにくい。したがって、ホームヘルプサービスがどういう部分でかみ合っていくと障害を補って生活ができるようになるのかということがなかなかわかりにくい部分があります。  私は、いろんな部分があると思いますけれども、精神障害の方が特に長期の入院で社会生活の経験が乏しかったり、あるいは精神障害に基づく障害があると、自分で生活を組み立てて管理していくということが下手だなと思われる方が多い、多いとは申し上げませんけれども、そういう方がいらっしゃると思うんです。ホームヘルプサービスは、先ほど谷中参考人の方からもおっしゃられていましたけれども、いわばそういう自分の生活全体をうまくマネージしていくというか安定した生活を組み立てていくというか、そういうところに、つまり単純に御飯をつくってあげるということだけが必要なのではなくて、一日の生活の中に食事というのがどういうふうに組み込まれて生活のリズムができ上がっていくのかを配慮したホームヘルプサービスがありませんと、ただ御飯があればいいということではないというあたりがちょっと特色かなというふうに思っております。  それから、最後にデイサービスの関係ですが、これは大変大事な御指摘だと思います。これは精神障害の人だけに独特のことではありませんけれども、やはり社会経験といいますか、地域の社会の人とか、あるいは患者の仲間同士と触れ合って日中を過ごすという、そういう経験の場というのが精神障害の方には非常に乏しいわけです。それは、今、小規模作業所が先ほど話も出ましたようにそういう役割を一部担っているところもあります。  アメリカなどではドロップインセンターなどといって、別に仕事をするわけでもない、何をするわけでもないけれども、そこに集まると仲間がいるよ、仲間といろんな話ができるよという、そういう場所と時間を提供する施設といいますか、そういう場所があります。ソーシャリゼーションを高めるというんですか、そういうものがだんだんでき上がっていって、しかもそこに精神障害の人だけではなくて地域の人も気軽に出入りする、お年寄りもいらっしゃるし子供さんもいらっしゃるし奥さんもいらっしゃる、そういうものができていきますと、精神障害の方の地域での人間関係というのが広がって、先ほどの偏見というのも徐々に減っていくというようなことも期待できるので、ぜひそういうものが今後広まっていくとよいのではないかというふうに思っております。
  48. 井上美代

    ○井上美代君 ありがとうございました。終わります。
  49. 清水澄子

    ○清水澄子君 社民党の清水澄子です。  四人の皆様方、さまざまな立場からの御意見、本当にありがとうございました。  まず私は、谷中参考人にお聞きしたいと思います。  谷中さん自身がやどかりの里という精神障害者地域施設の非常に草分け的な活動をしてこられたということに本当に敬意を表したいと思います。  谷中さんからごらんになって、今回のこの法改正案、先ほどのお話では非常に評価されておりますが、実際にこの改正案で現実に生活する患者さんのニーズに対応できるかどうかというのが私どもはちょっと不安なところがあるんです。そういう点について率直な、これだけは今回はきちんと具体化してほしいと思うところがおありになればお話ししていただきたいと思います。  もう既にどうあるべきかということでは、地域での福祉というのを非常にたくさんいろいろお話しいただいて、そういうものがぜひ実現されていくように私どもも努力したいと思いますけれども、地域施設の質の保障で最も大切なことという点で御意見を伺わせてください。  そしてもう一つ続けて、今度の改正案では精神障害者社会復帰施設等の利用とか相談、助言、あっせんの業務を市町村が行うということになっているわけです。市町村は今度は地域生活支援センターに委託できる。今度、都道府県はこのあっせんに関して保健所による技術的協力等を行うとされているんですが、市町村がそこまでのいろいろな業務とか実際に精神障害者にかかわる問題をまだ余り扱っていないというところで非常に心配なんですね。それと、保健所がどういう機能を果たせるか、それから何が問題かということがおわかりになれば、ぜひその辺をお聞かせいただきたいと思います。
  50. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 言いたいことを言わせていただく機会を与えてくださいましてありがとうございます。  私は、これから精神障害者地域で暮らすことの第一歩ですと申し上げました。それは、こういうメニュー、サービスそして仕組み、こういう方向性が定まったというところを評価したわけですが、では現にそれが来年、ことしから精神障害者の手にすぐ入るかというと、ちょっと違うんですね。  例えば、先ほど申しました精神障害者居宅生活支援事業の開始は平成十四年というふうにずれております。それから、御指摘のとおり、市町村でやるといっても、市町村のやる意欲とか体制とかマンパワーとかは整っていますかと言われると、まだ保健所と市町村との役割をどうしましょうかというレベルでありますから、かなり遠い話のことであります。  加えて、私は社会復帰施設のメニューはほぼそろったというふうに思っておりますが、内容が貧弱です。一番貧弱なのは、これは日本福祉制度がそうであったんですが、箱をつくって人を配置する、この人の配置がとても少ないんです。  これからの精神保健、老人も同じですが、マンパワーの配置とそのマンパワーの専門性の質の高さ並びにもっと一般的な先ほど申しました生活支援のサポーターまで含めますと、いろいろな方々がこの事業あるいは精神障害者を支えるという仕組みをつくるまでにはかなりの時間がかかってくる。そして、建物すなわち箱物にではなくて人に何らかの補助金をきちっと保障するということが、地域のケアシステムを充実させていくことだというふうに思っておりますので、今回の法改正はそこがまだ盛り込まれていない。これはむしろ予算的な措置だというふうに思いますが、そういう意味では、まだまだ先ほど申しました十万の方々地域にどうぞというわけにはいかないと思います。  ただ、流れとしましては、この対人サービスは保健所から市町村に、そして保健所は今度はこの市町村のさまざまな支援システムを後方から指導したり応援したり、それから先ほど来から出ていますが住民の、市民の方々の啓発、そしてさらには、ここは私は重要だと思うんですが、サポートするときの保健所の支援、すなわちもっと環境とか生活の条件とか、こういうことを整えていただくための保健所の役割というのは大変大きいと思いますので、市町村がこのことをしっかり受けとめていただくということと同時に、保健所の役割、機能がもっと幅の広い心の健康ということでチェンジする、そういう時代をどうやら迎えているのではないか。  しかし、先は見えてきているんですが、まだ精神障害者のニーズがこれらのサービスによって今すぐ手に入るというふうには私には思えないものです。これは、でも先が見えてきたので、これから手厚く一つ一つのサービスメニューのところに予算を盛り込んでいくべきだというふうな考えで、正直言ってこれで精神障害者地域で暮らしていけるよというふうにはとても申し上げることはできません。でも、形ができ、先が見え、そしてシステム立ったものがこれでいけるということになりましたので、もうそろそろ社会的な理由で入院されている方々を町に迎え入れるときが来つつあるのではないか、そんな率直な感想です。
  51. 清水澄子

    ○清水澄子君 ありがとうございました。  次に、山本参考人に質問させていただきます。  精神医療審査会の構成員は医者が三人とか決まっていますね。構成員は私は患者の立場に立って人権問題に取り組んでいる人の数をもっとふやすべきじゃないかということを先日の委員会でも質問したわけでありますけれども、山本参考人は、現状のこの精神医療審査会の問題点というのは何かということについてお考えがあれば述べていただきたい。そして、改善すべき点、こういうことを改善すべきだということがあれば教えていただきたいと思います。  もう一つは、患者さんの立場をサポートする病院から独立した何かがないと、本当の意味で患者の人権をフォローしていけないんじゃないかと思うんですけれども、そういう場合には審査会だけではカバーできないんじゃないかと思うんですね。そういう点ではどのようなシステムが必要だとお考えでしょうか。この二点をお願いいたします。
  52. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 今のシステムの中で気になっていることは、医療上の判断をメーンにして医師の裁量権で決定されているように思います。合議体五人のうちの三人までが医療委員イコール医師という構成になっていると思いますが、私はそこを入院患者人権を守るためのシステムであるというふうに考えていくのであれば、医療委員という枠の中に生活支援を一緒に考えていただけるはずのPSWの方々にぜひ入っていただきたいというふうに思います。  そして、医療委員が五分の三という比率自身もやはり長期的には見直しをしていっていただく必要があるだろうと思います。その方が、帰る場所がない場合でも、本人がここをもう出たいんだと、医療上ここにいても変わりはないですよというときに、これは一例ですが、私たちであれば、住む場所を探してきて、契約する準備をして退院というふうなサポートをしていくわけですね。そういうふうな気持ちでもってきちんとサポートしていける、そういう委員審議会の下に専門委員会があるような形の二重のあり方で考えていくことの方がはるかに実効性があるのではないかというふうに思います。  そう思ったときに一つ参考になったのは、九七年にカリフォルニア州の方に研修に行ったんですけれども、そこにはPAIMIというアメリカ精神障害者権利擁護法という法律があって、そこに規定されて働いている公益法律事務所というのがありました。患者の権利を守る事務所なんですけれども、そこで働いていたのは、法律家は一名そこの事務所で雇用されていましたけれども、あと三名が精神医療のユーザー体験者が働いていました。それぞれに任務分担をうまくやって連係プレーを持ちながら、必要に応じて適宜御本人の話を聞きに行く、そして家族関係の調整をしたり、住む場を探したりというふうな、そうしたフォローも含めて、審査会の委員といいますかとしてやってはりました。あれはとても有効だなというふうに思いましたので、日本においてもぜひそういう、実際に機動力のある患者にとって有効な制度にしていく必要があるだろうというふうに思います。  それと、独立性の問題で言われたんですね。確かに都道府県の精神保健課というのは措置入院の窓口にもなっているわけですから、そういう強制執行している窓口とイコール権利擁護を担う窓口の電話先が同じであるというのは、かける側の患者からして、こんなのでいいのかなという非常に不安感があります。本庁の中に置くのではなくて、せめてセンターの方に移していただきたいというふうにとりあえず思います。それでなければ本当に信頼できないよというのが気持ちとしては患者サイドではあります。  あともう一点は、これまでの歴史的なあり方、大和川病院のときもそうでしたが、現状を私たちよりももっと御存じのはずかなと思っていた業界の方は事前には批判しなかったですね。審査会の中にドクター委員が五分の三いらっしゃいますけれども、余り批判をやはりされませんね。  それは、医師法の倫理規定か何かに、そういう他人の見立てについてはほかの医者は批判してはいけないというふうな倫理規定があるそうなんですけれども、私たちはむしろ本人が出たいと言って審査請求されたのであれば、出ていいのかどうかという医療上の判断は入ることは認めますけれども、出たときの生活のサポートの方がはるかにウエートが高いというふうに思いますので、今の五分の三の見直しを含めて生活面のサポートをしていく委員をもっとふやしていく、そしてさらに、学識経験者だけではなくて、退院患者も含めて本当に生活をサポートしていく仕事に取り組んでいる人たち、そういう人たちが委員になっていけるような制度というのが実際に一番実効性が高いというふうに思います。
  53. 清水澄子

    ○清水澄子君 ありがとうございました。  時間がもう来てしまいましたので、池原参考人河崎参考人には失礼しました。ちょっと質問を持っていたんですが、これで終わります。
  54. 入澤肇

    ○入澤肇君 四人の方、大変貴重な御意見をありがとうございました。  最初に池原参考人にお伺いしますけれども、この法律は累次にわたって改正されているわけですね。今回、ある意味では人権社会復帰ということをテーマにして法律改正がなされたわけでございますけれども、本当のところを言ってもう少し高いレベルまで改正してもらいたかった、しかし我が国の精神医学界あるいはこの状況からしてやむを得ないレベルであるというふうにお考えになるのかどうか。どの点が不足していて、さらにこの次はどういう点を改善してもらいたいかということについて率直な御意見をお聞かせ願いたいんです。
  55. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 私は、先ほど最初にお話しいたしましたように、これは第一歩としての歴史的意義のある法改正であるというふうに思っておりまして、その第一歩を踏み出したという点は十分に評価しているわけです。ただ、もちろんこれですべてが解決できるわけではないということは、ほかの参考人の方の御意見からも既にあるところであります。  私どもがまず一つ大きく求めているのは保護者制度です。これ自体が今のところは今回残っているということでありまして、これは精神障害の方の自己決定を尊重していくという方向性にかなり問題を生じさせる、あるいは家族自体の負担がやはり解消されないという部分は残ってしまうと思います。ですから、理想を言えば、将来的には家族を支えとする保護者制度廃止をして、もう少し公的な地域医療地域福祉という形で精神障害の方を支えていくというシステムへの転換が必要だと思うんです。  それから、医療の分野でもう一つ大事なのは、山本参考人からも出ておりますけれども、精神障害の方がこの医療福祉の本来主人公であって、自分の病気を治すために治療を受け、自分が生活をするために福祉サービスを利用するわけですから、やはりこの方々が本来法の中心に据えられなきゃいけない。だから、本来理想として言えば彼らの自己決定権というものをまず高らかに法の中にうたっていただきたい、そして本人の判断と決定に基づいていろいろなことが動いていくんだという法のあり方にしていただきたいと思うんです。  そういう意味では、私ども、資料の中に全家連のパンフレットを入れてございますけれども、これはできれば政治的に将来御判断いただきたいことかと思いますが、この精神保健福祉法というのは、一般精神障害の方が一回読んでなるほどこうかというのがわかるようには規定されておりません。非常にわかりにくい。自分が入院させられたときに、一体何が言えて何が言えないのかということが一読してはとてもわからないわけです。  それでは権利を守る法律としては不十分であって、やはりもっとわかりやすく精神障害者の人はという、むしろ主語が精神障害者で始まって、権利主体なんですから、そしてこういうときにはこういうことができる、こういうときにはこういうことはできない、そういう規定ぶりに将来的には変わっていくことが、それはいわば患者の権利法という形に近づいていくのかもしれませんけれども、そういう姿になっていくことが望ましいと私たちは考えております。
  56. 入澤肇

    ○入澤肇君 今のようなお話はその第一歩だというふうに評価されるんですが、この法律改正は不十分である、おくれている、今までいろんな要望をしているんだけれども、なかなか取り入れられないというふうにお考えなのか。また、そういうふうにお考えであれば何がその理由なのか、原因なのかについて御意見ございますか。
  57. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 法改正自体がストレートに進まない要因という御質問ですね。  これは、社会復帰の側面、社会福祉的な側面について言えば、今まで再三出ておりますように予算の問題というものもあると思います。あるいは時間的に見て、精神障害という方々障害者として認められてまだ十年とたっていない、一番最後に障害者のグループに入った障害者であるという、そのおくれという問題があります。  しかし、医療の側面で言いますと、私たちも家族あるいは患者さんとお医者さん、こういう三者でいろいろお話し合いをすることがございますけれども、そういう中で、日本医療、特に精神医療において家族がどういう役割を果たすべきなのかということについて、医療側の方々家族の立場と患者さん本人の立場でなかなか合意点が得られないという部分があるんですね。  そして、河崎参考人からももしかしたら御意見があるかもしれませんけれども、河崎参考人の御意見の中にも、家族の協力なしには精神障害治療はできないんだという御意見がございます。私たちはそれは必ずしも間違いではないと思っているんです。  ただ問題なのは、心臓の疾患であれ肝臓の疾患であれ、病気はいろんな種類があります。しかし、家族の中に病人がいたときに、その病人のことを法律上の義務として何かしろと書いてあるのは精神保健福祉法だけなんです。つまり、家族はある意味ではそういう法律規定があろうとなかろうと、本来の家族としての気持ちに基づいていろいろなかかわりを持つということは一般医療では十分成立しているわけです。  ですから、私たちは家族が何もしないとか、やっちゃいけないということを申し上げているんではなくて、一般医療あるいは一般精神障害者福祉と同じような形で家族がかかわりを持たせてほしい。今まで百年間にわたって家族精神障害者を何とか最後まで見ていきなさいと、こういう法的義務を課されてきた、それはもう終わりにしていただくときが来ているんじゃないかというふうに私たちは考えています。
  58. 入澤肇

    ○入澤肇君 次に、河崎参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば精神科特例の問題とか精神科の診療報酬、こういうものが他の医療のレベルに比べて非常に問題、制約があるというふうなことを我々も聞いているんですが、そういうことに対する考え方。それから、社会を含めて本格的にもっと真剣にこの問題に取り組むのであれば、精神障害についての研究、官産学全部含めての研究体制。あるいは薬品の開発についても、外国ではかなり認可されているものも日本では認可されていないとか、いろんな問題が指摘されています。  精神科特例の改善の問題、精神科の診療報酬の改善の問題、それから研究開発等について専門家の立場から御意見をお伺いしたいと思います。
  59. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 御質問ありがとうございます。  我々の率直な気持ちは、やはり終戦までの日本一つの考え方というのか国の考え方、それが精神障害者対策に影響しておったんではないか。五十年たった今もいまだにそのこと自身が尾を引いておるんではないか。五年以上長期に入院しておる方々が五〇%、それともう一つは、格子を入れて社会から隔離して、医療というよりも隔離というようなことで来た、そのこと自身がやはりいまだに尾を引いておる。  抜本的に直さなければいけないのは、人権尊重という言葉で今あらわれておりますけれども、精神障害者方々治療と予防、精神障害になった方々に対してというよりも、もう一歩、予防にもっとお金を入れて研究体制を確立していって、再びこのようなことがないようにしなければいけないんです。  我々医療を行う医者としては、長期在院の方々をいかにして社会に復帰していただくかということと、もっとあらゆる法を見直さなければいけないんじゃないか。例えば、十六歳未満の人は監獄及び精神病院に勤務してはいかぬというような法がいまだに生きておるんです。監獄と刑務所と精神病院を同じ並列にして、そこで働いてはいかぬというような法がいまだに残っておるんです。  精神障害者方々に対していかに国が隔離だけを主にして来たものかということなので、今ようようここ十年の間に、国の力もあり、また我々医療従事者あるいは障害者自身の方あるいは家族方々みんなの力を結集して、そして一般医療と同じ体制に持っていかなければいけないという出発点にようよう来たような感じがしております。  もっと抜本的な面から精神保健福祉法を見直して、そして明るい体制を組み上げなければ、その責任は我々自身も、再三申し上げました九〇%を担っている日本精神病院協会、いわゆる民間病院自身がよくなって初めて日本精神科医療がよくなるんだというようなことは、何も我々自身を先によくしろとかじゃなしに、日本を代表する精神科医療を我々はやっておるんだという一つの自覚と責任、また反省もし、そして将来に対しての体制も我々は組まなければいけないという覚悟でおります。
  60. 入澤肇

    ○入澤肇君 ありがとうございました。  次に、谷中参考人一つお伺いしますけれども、非自発的入院患者のための施設基準、これについて大変な問題が指摘されていますけれども、現状では何が欠けていて、最も緊急に対応すべきものは何かということについて御意見がありましたらお伺いします。非自発的入院患者のための施設です、任意じゃなくて。施設の改善について、例えばさっきから開放系があるとか閉鎖系だとか言われていますね。何が今一番大事か、改善するのに。
  61. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 施設の側ですか。
  62. 入澤肇

    ○入澤肇君 施設です。
  63. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 先ほどの質問にちょっと答えながら今のことに触れてよろしいですか。  私は、今度の改正が評価できるということを申し上げたのは、これからの方向性の第一歩が見えてきたということ、その裏には知的障害身体障害方々と一緒に三障害の総合、統合、ある面ではこれは仕方がないと思いますが、そこの足並みがそろわないと進まなかったんです。したがって、理念型になって、具体的にメニューをというとやはり三障害の整合性を図らなければいけなかった。これは足かせとは思いませんが、私は将来的に統合、総合を目指すべきだと思っておりまして、むしろ医療とは別枠の福祉の総合化を目指すべきだと思っていますから、今のところこれはやむを得ないと思っています。  それから、もう一つ非常に残念なのは、やっぱり精神医療改革が全く進んでいないということであります。この精神医療改革が進まないこと、先ほど来申し上げています社会復帰施設が十分に活用されないこと、そして地域における支援システムがなかなかできないことが私は連動していると思います。  その意味でいろいろな問題はございました。医療費の問題や精神科特例を外そうというふうなことも現行の中では非常に厳しいということもわかりました。急性期と慢性期とを区分して云々とかいろいろ議論はありましたが、残念ながら精神医療改革は全く手つかず。私はこの点が大変残念です。  何度もその点を申し上げますが、これは病院地域とを分離して考えるべきではないんです。一体化して考えるべきなんです。この点で今後さらに進めなきゃいけないのは、これは河崎先生のおっしゃるとおりです。病院が収容施設であったところを、今度、病院治療施設としての形態を整えて、収容すべき人は地域の中に分散して、中間施設も要らないように思います。分散して、皆さんが普通の生活ができるようにそれを支援する仕組みです。  こんなことで私は、社会復帰施設のことに関しましてももっと欲しいという気持ちが半分ありながらも、本来的には施設、いわば収容施設の時代ではない、在宅ケアの時代だというふうに思いますので、この社会復帰施設をいっぱいつくるよりは、生活支援センターや作業所や先ほど出ましたグループホーム、居住するそういうプログラムをいっぱい用意して町に迎え入れるのが今後の日本精神保健活動を進めていく際の得策だというふうに思っております。
  64. 入澤肇

    ○入澤肇君 終わります。
  65. 堂本暁子

    堂本暁子君 きょうは本当に日々一番大変なお仕事を担っていらっしゃる方々にお越しいただきまして、御意見も大変うれしく伺いましたけれども、日常のお仕事にも敬意とそれから御努力に本当に御苦労さまと申し上げたいというふうに思っております。  今までの御質問の中で、日本精神医療、それから社会福祉と申しますか、そういったことの本質が何か随分見えたような気がいたします。河崎先生が、隔離という伝統がいまだに続いているというふうにおっしゃった、それが事の本質で、やはり接触がないと差別を始めるという、日本精神医療のそういったあり方差別をつくっていて、また社会への復帰を妨げているという悪循環を、きょう改めて地域でやっていらっしゃる谷中先生とお二人のお話を伺いながら思ったところです。  十五年ぐらい前に私はやどかりの里へお邪魔したことがございますけれども、あの当時、ちょうど精神衛生法から精神保健法に変わるときで、多分十年たてばやどかりの里が日本じゅうに何百とできるのではないかと思ったりもしたものですが、どうもそうもいきませんでした。  最初に、きょう参考人でお越しいただいて伺いたいことは、私も今でももう全く疑わずに思っていることはマンパワーだと。どんなに箱物を、中間施設だろうがデイケアセンターの建物だろうがつくってもだめで、いかに地域でサポートするマンパワー、それは専門性が高い方も必要でしょうし、それからボランティアの方がいらしてもいいと思うのですが、今どういうマンパワーが必要だというふうにお考えか、具体的に伺えれば伺いたいと思います。
  66. 谷中輝雄

    参考人谷中輝雄君) 私は、今度の精神保健福祉士の誕生に大変期待をしております。今、地域の面から考えますと、何といっても重要なのが、市町村にさまざまなサービスメニューがもしあったとすると、老人や身体・知的障害の方も含めてそのサービスを有効に使えるように患者さんのニーズと引き合わせる、こういうケアマネジャーの役割が重要です。精神保健におきましても、このケアマネージの導入を図りつつ専門性の高い方を配置すべきだと思います。それを精神保健福祉士に期待するところです。  さらに、先ほど山本さんのお話の中にありました人権センター、地域における患者さんの人権ということもこれからはさまざまな問題が出てくるかと思います。社会復帰施設の処遇の問題も含めまして患者さんの人権を擁護するということは、私たち社会復帰を進めている、すなわちケアを持っている人間と同一にすることはかなり問題があろうかと思いますので、むしろ人権センターなり、そういう役割のところにきちっとした人的な配置をすべきです。  さらに、成年後見人制度で出てきています金銭管理であるとか財産上の問題とか、これまた私たち実際に身柄を引き受ける人が金銭管理を同時に兼ねるということは大変な危険がございますので、しかるべきマンパワー、私はここに精神保健福祉士を配置してもよろしいのではないかというふうに思っております。  それから、専門性が高い方ばかりがサポーターではございません。私は、ホームヘルパーは十分有効なサポーターになっていただけるというふうに信じておりますし、一番私が頼りにしているのは患者さん同士の助け合いなんです。患者会活動とかそこに支援する、そういうお金や場所、そういうものがまだ今回の法改正の中には見えてきておりません。  私が一番重要視するこの生活サポーターは、病気をした当事者が御自分の病気を経験に、すなわち病気に関してや回復過程の専門家だと私は見ているんですね。ですから、御自分の経験を生かして友達を助ける、こういうような仕組みを今後のソーシャル・サポート・ネットワークの中に入れていかなければいけないというふうに思いますので、私はここの力をもっと十分に引っ張り出せるような何らかの支援対策というのが必要ではないかというふうに思っております。  そして、今のことで思い出したんですが、堂本先生がやどかりの里に来られたときに、御自分の実名を出してテレビに出られる人を紹介してくれと。私は、正直あのときちょっと大丈夫かなと思ったんですが、横式さん初め何人かの方が出てくださいました。この十年の変化は、私ども社会復帰施設が幾つできたかということよりも、当事者である患者さんたちが堂々と発言し始めたということに私はすばらしい力を感じておりますので、なおのこと、人権擁護あるいは生活サポーターに当事者のマンパワーをどんどん活用するような施策も今後検討していかなければいけないというふうに思っております。
  67. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。  山本参考人に伺いますけれども、先ほどこの資料の五十七ページで、まだ十分にここでいろいろ問題になったことが表に出ていないというふうにおっしゃったんですが、実際に裁判所や何かではきちっと言われていながら、厚生省の出張旅費を財団予算から負担していたことがわかったというようなことだと思いますけれども、まだきちっと調べてやらなければいけないことがあるんでしょうか。
  68. 山本深雪

    参考人山本深雪君) あると思います。病院側の職員の話によれば、厚生省の側がこの出張旅費等も含めて要請してきたというふうに言っています。形式的には出張費は公費で賄われた上で財団側から厚生省に要請したという形をとっているということですが、実態はそれとは違うという内部告発の話は、全員朝礼の場でいろいろ話がされているために、多くの方からの調書等がとられているようです。  ですから、刑事事件の方が確定すれば、その確定判決に基づいて証拠書類等が全部明るみに出るはずですので、そこで実態はどうであったのかということが明らかになる日が訪れるだろうと思います。今、最高裁に上告されました。ただ、その時間を待つのかなというところで、私は少し厚生省の自浄能力というところでクエスチョンを感じます。
  69. 堂本暁子

    堂本暁子君 委員長にぜひお願いをしたいんですけれども、精神病院の中で患者さんたちはなかなか自分から外に訴えることができないわけです。アメリカなんかですと、電話のところに、どこへ電話しなさいと。さっきのように五百円しかなくて電話がかけられない、あるいは電話がナースステーションのそばにあって全部看護婦さんに聞こえてしまうというような電話の置き方が結構日本病院に多いと私の見た限りではあるんです。  こういう問題がもしまだ残存しているのだとすれば、私はやはり委員会できちっと調査をしていただきたいと思いますので、この際、お願いをしておきたいというふうに思います。何らかの形で何かこういうあいまいさが残るということは、精神病院の場合にはよくないというふうに思いますので、きちっと調べてほしいというふうに思います。  次に、もう一つ質問をしたいんですけれども、さっき山本参考人が、第三者が病院の中に入っていくことが大変大事だというふうにおっしゃいました。それは、もう山本さんは十分おわかりになっていることだと思うんですが、私も当時記者の時代に日精協病院にもうかけまくったんですね。名簿をいただきまして、別に複雑に見るのではない、カメラを持っていくわけでもない、ただ院長にお目にかかったり病院のことを伺いたいという電話をかけまくりましたけれども、ほとんど九九・九%お断りをいただいた。そういう意味で、やはり日本精神病院は非常に透明性に欠けると思っております。  日精協の方で、例えばもう少しオープンに第三者が病院の中を、よほど悪いことをしていない限り、普通に治療さえしていたら病院の中に入って、病室にしても実際に見せていただいて、病気の特徴とか、それから患者さんにお会いしたりして、私たちはむしろ得るものの方が多くて、批判的に入っていくことよりははるかに、見せていただいた病院は特にいい病院でしたから、いろんなことを学びました。  そういう意味で、もっと病院を開放していただきたいというふうに思うんです。先ほど山本参考人がおっしゃったように、第三者が病院に入っていくことをぜひ進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  70. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 今おっしゃったこと、全くそのとおりだと思いますし、今でも各ブロック、支部を通じてそういう教育はしておるわけですけれども、今後より一層ちゃんとやるように、もう一回改めて各支部を通じて会員に教育をしていきたいと思います。ここでお誓いいたします。
  71. 堂本暁子

    堂本暁子君 私、それではまたあちこちの病院にぜひ見せてくださいとお願いをして、万一行かれないときは会長のところにお願いに参りますので、よろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。
  72. 西川きよし

    西川きよし君 本日は御苦労さまでございます。よろしくお願い申し上げます。  まず、山本参考人に冒頭お伺いしたいんですけれども、昨年の十月に大阪府がこの問題に対する報告書を出されました。平成五年当時ですけれども、大阪の精神医療人権センターなどからお訴えがございまして、医療監視を実施したけれども結果として虚偽の報告が発見できなかったと。これに対して改めてどう思われるか、お伺いしたいと思います。
  73. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 私は、そのことについては非常に不思議に思っています。今でもそうです。  裁判の過程で、平成元年から五年度までの医療監視のときに職員一覧表が病院側から行政に提出されました。私たちは、それをもとに働いていたか働いていなかったか等を調べましたところ、死亡していた方のお名前、それから旧姓と新姓で同一人物がダブっていたり、それから八十三歳の方が安田病院では週四十時間勤務し大和川で週三十二時間勤務するというふうに、素人の私たちがチェックしただけでもすぐにわかるおかしさが何点かありました。  本当にきちんとやる気が医療対策課の方にあったのであれば、私はあれは放置されなかったのではないかというふうに思います。看護婦さんの免許証番号というのがございますが、あれでチェックをかければわかったはずです。一人二人でもそういう妙なことが書面上あるということをこちらが具体的に提起していましたので、であれば、もっと真剣に調査し直す必要性があると、もっと早期に動けたというふうに思います。ですから非常に不思議です。
  74. 西川きよし

    西川きよし君 次に、河崎参考人医療監視体制についてお伺いしたいんですけれども、大阪府の報告書の中で、例えば医療法人、適正を欠く疑いのある病院に対しては事前に通知を行うことなく抜き打ちで医療監視を行う、こういう改善を行う一方では、医療法については、医療従事者に対する報告の徴収権限について医療法に明記すること、そしていわゆる抜き打ち検査においても必要書類が閲覧できるよう医療監視に必要な書類の保存、常備等についての法、そして施行令及び施行規則に詳細に規定すること、このように要望を出しているわけです。  先週、私も厚生省のお考えをお伺いしました。そういたしますと、このような権限の強化については、安田病院事件のようなケースに的確な対処をするためには有効であるが、しかし行政庁の権限強化になるというところで、これは大変慎重な検討が必要であるというふうに御答弁をいただいたんですけれども、この医療監視体制について河崎参考人の方からぜひお伺いしておきたいと思います。
  75. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 医療監視は厳密にやらなければいけないし、我々はやはり受けるべきだという考え方を持っております。  ただ、その前に、お互いに同僚審査というものを全国各支部で実施しております。ということは、この安田病院の場合に、前にある不祥事件がありまして、日本精神病院協会会員を脱会していただきました。その後、大阪の精神病院協会を通じて入会をということで当該病院からの何回かの申し出があったんですけれども、大阪の精神病院協会としては、日本精神病院協会に入っていただくにはもっともっとよくなっていかなければというようなことで入会を拒否したわけなんです。  逆に、入会を拒否したから会員ではない、会員でないところに我々自身がどのように指導していくのかということも我々の中で議論がありまして、少し悪いことをするとすぐ脱会さす、脱会させてトカゲのしっぽを切って、あといいものだけ残っておるんだったら一体どうなのか、指導できないじゃないかというようなことも我々としては議論をしております。  もう一つ、大阪は当該病院院長を役員会に呼んで、そしてこの問題が発生してから清く正しくやはり医療監視で行政の指導を受けなければいけないんじゃないかということを二時間にわたって本人に話をしたいきさつがあります。でも、本人自身が、うちは正しいんだということで突っぱねました。それ以上協会としてはどうもできなかったというようなこともあります。  我々としては、行政の手を煩わすまでも我々内部でやり、そしてその後、やはり行政の指導はどの病院でも年に何回か受けておりますから、それはやはりちゃんと受けるべきだというように思っております。
  76. 西川きよし

    西川きよし君 短い時間ですので、いろいろお伺いしたいと思うんですけれども、改めて山本さんにお伺いしたいと思うんです。  今も御意見が出ましたが、この医療監視を行政の特権として隠している現状に終わらせるのではなく、市民の目で医療を監視することができるシステムづくりを出す以外に市民の不信感はぬぐえないというふうに山本さんはおっしゃっておられますけれども、改めて。
  77. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 私は、医療監視の仕事を本来の趣旨に基づいてするのであれば、今回みたいににせものの書類を提出することができないようなシステム、それはイコール現場に働いておられる看護婦さんたち、スタッフの方々も見ることができるような従業員名簿の公開の仕方があってもいいのではないかというふうに思います。それが最もうそをつきにくいと思います。  今、とりあえずドクターの名前については曜日ごとに掲示がされていますが、看護婦さんに関しては掲示も何もありませんし、名札をつけていない病院もあります。国家資格に基づいてお仕事をしておられるわけですから、最低限名札をつけていただくことと、現場で働いている常勤の看護婦さんに対しては従業員の中で従業員名簿を見ることができるという情報公開をしていただければ、行政の手を煩わせることもなく不正はできないシステムになると思います。  二点目は、患者として、利用者としてその医療機関を利用したときに、見たいときに、現在では職員充足率のパーセンテージも含めて黒塗りでつぶされて出てきます。最低限そういうことがないように、医療サービスは特権ではないということを今の時代はきちんと確認していけば、そういう黒塗りの情報公開を市民にするということがなくなっていくのではないか、そういうふうな関係づくりこそが大切なのではないかというふうに思います。
  78. 西川きよし

    西川きよし君 考慮させていただきます。  もう五分ほどしか時間がなくなってしまいました、いろんなことをお伺いしたいんですけれども。  山本さんはヘルパーさんの研修のことも提言されておりますけれども、精神障害者を入れていくということのヘルパーさんのメニュー、どういうことを日ごろ研修していけばこういうお仕事に従事できる人がふえてくるかというようなこともお伺いしておきたいと思うんです。
  79. 山本深雪

    参考人山本深雪君) 私は、精神障害を持って地域で暮らしている人の具体的にお話を聞く機会、交流する機会をヘルパー研修の重要な部分としてつくっていただくことだと思います。そうしたら、その方の中にあった精神障害者へのゆがみのようなものがさあっと崩れていって、ああそうかという形で、一人の方としてどうサポートすればいいのかということはその方自身からお話を聞けばいいんだなというふうに身をもってわかっていただけると思います。  ですから、ヘルパー研修や保健所のスタッフ研修、それから地域方々のボランティア養成講座の中にぜひ精神障害を持つ方御本人の、会の方にお願いしていただいて、そこの方々との交流の場を十分持っていくプログラムをつくっていただくことが、今後のボランティア養成プログラムにおいても、ヘルパー養成プログラムにおいても、それから地域生活支援センターの運営プログラムにおいてもとても重要な部分がそこにあると思っています。
  80. 西川きよし

    西川きよし君 私もこちらへ寄せていただいて十三年になるんですが、法律改正というようなことも大切なことですけれども、日々の暮らしの中での生活というんですか、うちも三人の年寄りがおるんですけれども、そういう意味では、こういった生活をいかに地域の中で支え合うかというようなことも本当に大切なことだと思います。  せんだってもお便りをいただいて、ぜひ池原さんと河崎参考人にお伺いしたいんですけれども、高次脳機能障害福祉事務所や保健所、ありとあらゆるところに相談に出かけたというお便りをいただいたんですけれども、相談、援助が全く得られなかったと。この委員会厚生省にも質問をいたしました。厚生省といたしましても実態がよく把握できていないので、これからは実態の把握、福祉施策あり方について現在は研究中であるということでございました。  ぜひきょうお伺いしておきたいと思いますけれども、医療福祉の谷間というんでしょうか、高次脳機能障害に対する御意見をぜひお伺いしておきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  81. 池原毅和

    参考人池原毅和君) 必ずしも適切なお答えにならないかと思いますが、ただ、そういう、はざま障害者などというふうにも呼ばれますけれども、我が国の障害者福祉法制度というのがそれぞれの、身体の障害、あるいは知的障害精神障害というふうな縦割りのシステムになっておりますので、そのどれにも該当しないという障害をお持ちの方が結局何の福祉的な施策も受けられない、あるいは医療的な手当ても受けられないというような現象が起こってきているということは、私たちの弁護士としての仕事の中でも時々御相談になられる方がおられます。  ですから、こういう問題というのは、恐らく長期的には、長期的な解決を個々の方に申し上げるのは大変ある意味では無責任で酷なんですけれども、国の政策として考えるときには、先ほど谷中参考人の方からもお話が出ましたように、むしろ総合的な福祉法といいますか、つまり障害種別で縦割りにしてしまわない、すべての障害を、あるいは障害という枠も場合によれば取り払って、慢性的な疾患であるとか、障害であるとか、あるいは難病であるとか、そういうものを広く包み得るような総合的なケアシステムというものがやはり構築されませんと、必ずどこかで制度から漏れてしまう方が出てくるんだろうというふうに思います。
  82. 河崎茂

    参考人河崎茂君) 厚生省障害保健福祉部が約三年前ですか、できましたね。自分たちの考えでは、その障害保健福祉部で全部網羅するんじゃないかという感じがしておるんですけれども、だめですか。障害保健福祉部という部で全部の障害が、身体、知的、精神だけではなしに、そのほか先生がおっしゃっておったそういう分野も全部網がかぶっているような気がするんですけれども。
  83. 西川きよし

    西川きよし君 今、そういうふうに御意見をいただいたようなことを日々本当にお願いを申し上げているんですけれども、なかなか難しい内容でございます。  時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  御苦労さまでございました。
  84. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会