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1999-03-30 第145回国会 参議院 国民福祉委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月三十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      櫻井  充君     内藤 正光君  三月三十日     辞任         補欠選任      内藤 正光君     櫻井  充君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         尾辻 秀久君     理 事                 清水嘉与子君                 常田 享詳君                 朝日 俊弘君                 渡辺 孝男君                 小池  晃君     委 員                 久野 恒一君                 塩崎 恭久君                 武見 敬三君                 中原  爽君                 水島  裕君                 櫻井  充君                 内藤 正光君                 直嶋 正行君                 堀  利和君                 松崎 俊久君                 沢 たまき君                 井上 美代君                 清水 澄子君                 入澤  肇君                 堂本 暁子君                 西川きよし君    国務大臣        厚生大臣     宮下 創平君    政府委員        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        社会保険庁次長  宮島  彰君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        厚生大臣官房障        害保健福祉部長  今田 寛睦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十九日、櫻井充君が委員辞任され、その補欠として内藤正光君が選任されました。     ─────────────
  3. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 おはようございます。民主党の直嶋でございます。  きょうは、今議題になっております法案を含めまして、年金の問題について大臣初め厚生省にお伺いしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、今回、年金保険料凍結をされることになりました。その凍結に関連して、先般、政府与党でおまとめになりました大綱の中に国庫負担引き上げについて記載されております。まずそれについてお伺いしたいのですが、この費用負担国庫負担を今後財源等も含めて議論しながら「二分の一への引上げを図るものとする。」と、こういう規定大綱にうたわれておるわけです。これは、当然今度の法律上明記をされるということになるのではないかと思うのでありますが、まず現時点でこの扱いをどのように考えておられるか、お伺いしたい。  実は五年前にもこの国庫負担を二分の一に引き上げようということで、国会の与野党の議論の中ではかなり強い意見として出ました。それで附帯決議等もつけられたわけですが、法律上は検討規定附則の二条として記載をされた、こういう経緯がございます。今回、そういうことを含めて考えますと、五年来議論をしてきた問題でありますし、この表現も五年前のものに比べるとニュアンス的にはやや踏み込んだ感じになっているというふうに私は受けとめておりまして、これはできれば本則上に記載をしていくということが望ましいのではないかと思うんですが、法律の立て方とか、法律としての掲載の必要条件等もあろうかと思いますので、そういったことも含めてお答えを賜れればと思います。
  5. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 今回の年金制度改正案大綱におきましては「平成十六年(二〇〇四年)までの間に、安定した財源を確保し、」「国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」、こういうことを盛り込んでいるわけでございます。これは、当然法律規定するということを考えておるわけでございます。  ただ、本則にというお話がございましたけれども、私どもとしては附則規定することを考えております。と申しますのは、この国庫負担引き上げといいますのは、やはり安定した財源を確保するということが一番重要だと思っておりまして、この安定した財源の確保と一体となって検討する必要がある、こう考えておるわけでございまして、現時点では安定した財源の中身というのがまだ確定しておりません。したがって、本則に書くのはなじまないのではないかということでございます。  本則に書く場合には、財源を明定する、また共済年金を含めて関係各法をすべてきちんと改正しなきゃいけない、それからまた、細かいことですけれども、過去の免除期間の取り扱いをどうするか、こういったことも国庫負担引き上げと密接に関係する問題でございますので、こういった問題につきましてもあわせて規定しなければいけない。そういうことでございますので、今回の大綱規定附則規定するということを考えておるわけでございます。
  6. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 この点はまた議論させていただきたいと思いますが、今の書き方だと私も本則に入れるのはなかなか難しいかなというふうには思っております。先ほど言いましたように、過去もう五年来これは議論してきたことでございますし、なかなか難しい問題ではありますが、しかしそろそろ結論を出さなければいけないというふうに思っておりますので、また改めて議論させていただきたいと思います。  それで、大臣にお伺いしたいのでございますが、先日、私は本会議でこの法案について質問させていただきました。そのときに大臣お答えをちょうだいしたのでありますが、その中で財源の問題については「今後の国民的な議論によって検討されるべき課題である」、このように御答弁をされております。やや、とりようによっては、みずから積極的に提起をして議論しようというふうな感じには私は受けとめられなかったのでありまして、むしろ積極的に議論を巻き起こしていただくべきではないかというふうに思っておりますので、大臣のお気持ちをちょっとお伺いしたいということ、これが一点であります。  それから、なぜそういうことをお伺いするかといいますと、今回の保険料凍結国庫負担引き上げの決定が同時期になっております。これは、大綱の方にもそのように明記されております。したがいまして、財源問題をクリアしない限りは保険料凍結がずっと続いていく、こういうふうに私は理解しておるんです。そうすると、この議論が長引けば長引くほど、やはり年金財政に大変大きな、あるいは場合によっては深刻な影響を与えかねないというふうに思っております。そういうこともございまして今お伺いしたような次第なんですけれども大臣のお考えをよろしくお願いいたします。
  7. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回は国民年金法律で法定されておりますものでございますから、これを据え置き、凍結するために法案を提出させていただいております。なぜかといいますと、基本の大きな世帯である厚生年金の方、これについては私ども改革案を取りまとめておりまして、現在御指摘のように政府与党間で大綱を取りまとめさせていただいております。  その中で、平成六年の改正では抽象的に附則で書かれただけで、あと三分の一の問題は附帯決議等で言及されておるということでございましたが、私どもとしては、今回は法律の中にこれを明定する、つまり三分の一の国庫負担基礎年金部分について二分の一にすることを明定するということで、かなり思い切った決断をいたしたつもりでございます。これは、二〇〇四年までの間に安定した財源を得て、そしてこれを実施したいということが記述されておりますが、しかしそれでは一体いつなのかという点がございます。  一方、私どもとしては保険料凍結をいたしております。これは国民年金だけでございますと千百億くらいでございますが、厚生年金の方を見ますと、よしんば今一七・三五を一九%ぐらいに上げるとしても二兆一千億くらい可処分所得の吸い上げになります。  そういうこともあって、今の景気状況からして、あらゆる手段を講じて景気をよくしなければいかぬということも理解できるわけでございまして、長期的な制度だから本来はそういうことなしに切り離して処理すべきだと建前は思いますけれども内閣全体の姿勢として景気優先ということで凍結をさせていただきました。  しかし、それではいつ解除していくのか、保険料引き上げその他をやっていくのかという点でございますが、これは法律にはそこのリンクの仕方は法定できないと思いますけれども、事実上、この三分の一から二分の一に引き上げることと凍結解除セット考えたい。  つまり、三分の一から二分の一にいたしますと、保険料で一%くらいは軽減されますし、国民保険の方でいいますと月三千円減ります。ですから、そのときにまた設計に基づく保険料引き上げも同時にお願いすれば、比較的緩和してうまく機能するのではないかという配慮も背後にあります。  そういうことを考えてやったものでございまして、私どもとしては、年金制度改革にかなり積極的な意思を表明したというように考えておりますが、これが何となしにあいまいだという感じを与えていることもまた否定できないところだと思います。経済が早く復興したりいろいろ財政状況がよくなる、あるいはこれは直間比率見直しも排除するものではございませんから、総合的に判断をして、そして条件が整ったらなるべく早く三分の一から二分の一にすると同時に、保険料凍結解除したいということでございます。  そんなことを今考えておるところでございます。
  8. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今、大臣お答えの、特に経済の問題について回復をするという筋書きどおりいけばいいと思うんですが、一つ気になるのは、今回、大臣おっしゃったように、保険料を上げるということは可処分所得にいろいろ影響するから経済対策として考えて据え置いたんだ、こういうことなんです。  そうしますと、事は経済の問題を念頭に置いて今回お決めになったんですけれども、これは逆に言いますと、経済状況によってはどうなるかなかなか難しい面もあると思うんです。片方では、年金財政というのをいかに安定させていくかということが非常に問われてまいるわけです。ですから、ちょっとそこのところが私は、むしろ経済回復前提にしちゃうと、かえって年金財政そのものにいろいろな心配を与えることになるんじゃないか。  ですから、私も、経済の今の状況は深刻だと思いますから、やはり早く回復しなければいけないと思う気持ちは全く同じなんですが、どこかの段階でそのことをきちっと整理して臨んでいただかなければ、経済回復セットだよということになってくると、非常にこれはややこしい複雑な問題になってくるんではないかということを危惧いたしておりまして、そこら辺の話をもしコメントがございましたらお伺いしたいと思います。
  9. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回そのような決断をいたしました理由は、最近の経済状況というのは、ちょっと普通の景気循環とは違いまして、構造的な要因がずっと続いております。したがって、小渕内閣としても経済の再生にすべてをかけるということでございまして、私どもとしては、今、委員のおっしゃるように、経済経済、長期的な安定制度としての年金制度年金制度というのが本来の建前であることはもう全くそのとおりだと存じます。  しかしながら、こういう異例な事態でございますので、特に平成六年の年金財政改正によりましてことしの十月くらいには年金保険料をこのままでいけば上げるということになりますから、今、景気の動向が非常に微妙な段階で、所得税減税を四兆円以上やるといっても半分以上を吸い上げてしまうというようなことになると経済効果は減殺されることも十分よくわかりますので、臨時異例な措置としてこのような措置をとったと御理解していただいていいと思います。  こういう年金制度というのはやっぱり中期的な安定性というのが極めて重要でありまして、それが国民に安心を与えるゆえんであることは委員の御指摘のとおりでございますから、本筋はもうそのとおりでございます。したがって、景気回復を待って、なるべく早くこの条件を成就して、クリアしていきたいというのが私どもの本当の気持ちでございます。
  10. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 この点もう少し議論したいんですが、時間の関係もありますので次に行きます。  それで、もう一つ、さっきのお答えの中で、直間比率見直しについてもというお話がございました。いろんな検討材料一つとしてそういうことも大臣の頭の中にあるというふうに承ってよろしゅうございますか。
  11. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私は社会保障責任者でありますから、税制面について云々する立場にはございません。そのことをまずお断り申し上げておきます。  しかし、政策責任者の一人としては、法人税も減税する、それから所得税もフラット化していく、しかもその水準を下げていくということになり、また相続税も高過ぎるからこれは引き下げろというようなことになりますれば、国家の財政はどうなるのかと。いつまでも赤字国債を続けるわけにいかないということになれば、行政改革によってスモールガバメントにするとか、あるいは二十一世紀を見据えて直間比率議論がされることもそれは当然あり得るのではないかと思うんですが、今直ちに私どもはこのことによって消費税引き上げを提起するつもりはありません。しかし、背景としてそういうことも否定できないということを先ほど申し上げたわけでございます。
  12. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 それでは、次の問題に入りたいと思います。  今回の凍結に関連して、もう一つ私が非常に重要だなと思いますのは厚生年金基金の問題でございます。  もうこれは大臣も御承知のとおり、最近、積立金運用環境が悪くなってまいりまして、厚生年金代行部分基金の当事者にとっては大変大きな負担になってございます。そういうこととあわせまして、御承知のとおり二〇〇〇年度から企業会計が変更されます。会計基準の変更に伴いまして、企業の膨大な積立金不足が今度は格付等も含めまして企業に非常に甚大な影響を与えるのではないかということが言われております。  したがいまして、私は、直ちにこの代行部分を廃止するということがいいかどうかわかりませんが、むしろこの制度そのものも含めてやはり早急にこれも議論が必要な項目の一つだというふうに思っているのであります。今度の大綱でも特に基本的なところは触れられておりませんし、場合によったらこの議論もこの凍結と一緒に凍結かな、こういう感じもいたすのですけれども、この扱いについて大臣は今どのようにお考えでございましょうか。
  13. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これは、代行部分保険料につきましても凍結をいたしておりますし、それから積立金等措置についても現状維持といいますか凍結といいますか、そういう措置をとらせていただいておりますが、代行部分につきましていろいろ問題のあるところは、今、委員指摘のとおりでございます。  私どもとしては、この代行部分を、厚生年金の一部を代行していただくと同時に、上乗せ部分は一種の企業年金として構築されておりますので、この健全な発達といいますか維持は非常に重要なことだと考えております。  今いろいろ議論されておりますけれども、今、委員の御指摘のように、国際会計基準によってそこの赤字がとにかく表に出てくる、格付にも影響するというのはこれは事実でございまして、そういう面からして、株式の引き受けを認めるかどうかというような議論が今なされておるのもその一つでございます。  それからもう一つは、こうした企業年金についてはやはり充実を図る必要があると存じますので、確定拠出型年金等々、いろいろ各種の年金制度についても検討を、戦略会議では提案がございますが、これをさせていただいておるということで、総合的に企業年金の一部として、できれば基本法くらいはつくって、そしてはっきりした位置づけにしたいというように考えておりますが、今回の改正大綱ではこれは特に触れておりません。これは、年金調査会でも議論をされておりますけれども、一応今の制度前提にして、今度の改革では特に触れておりませんけれども問題意識としては周辺筋を含めて企業年金のあり方の問題として検討し、充実を図っていく必要があるというように考えております。
  14. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今、積み立て不足に関しての株式お話が出ました。これはまた改めて議論させていただきたいと思いますが、ただ私の今の感じでいいますと、なかなかこういう程度のことでは、全体の積み立て不足額が巨額でございますので、場合によっては難しいかなという感じもしておりますので、また改めて調査もさせていただきまして議論させていただきたいと思います。  次にお伺いしたいのは、今、大臣お答えの中にもございましたが、年金基金の今度の措置大綱の中にも免除保険料凍結する、あわせまして、その関係でということなんでしょうか、最低責任準備金凍結をする、こういうふうになっております。そうすると、今度の前提計算でもそうですが、予定利率を五・五から四%に変えていくということになるわけです。そうすると、今回の凍結でことしの十月を起点にして五・五の予定利率のまま凍結をされるということになりますから、結局、さっきちょっと議論した過去勤務債務は結果的には一時棚上げになってしまう、こういうことになるわけなんです。この点についてはそういう理解でよろしゅうございますか。
  15. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 結論からいえばおっしゃるとおりでございます。いわば厚生年金本体保険料凍結になる、こういうことでございますので基金免除保険料率についても凍結せざるを得ない、こう思っております。しかし、凍結いたしますと、代行部分を賄うのに本来必要な免除料率基金に与えないわけですから、最低責任準備金をそのままにしておきますと、これは運営に問題が出てまいります。したがって、最低責任準備金につきましてもあわせて凍結をする、そういうことによって基金事務運営支障が生じないようにしたいということで対応したいと思っております。
  16. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 整合性からいうと、そういう処理を当面せざるを得ないということは理解できないこともないんですが、結局、さっき申し上げたように五・五から四への移行に伴って処理しなければいけない、債務が一時結果的に棚上げになってしまいますから。それからもう一つは、保険料率凍結期間中は今御答弁があったようにそれでいいのかもしれませんが、今度凍結解除した段階凍結期間中のいわゆる積み立て不足、この部分も表面に出てくるわけです。そうすると、この金額がかなり巨額になるというふうに思うんですが、この点はどうなんでしょうか。  ただ、全体でいいますと本体部分も同じような問題が出ると思うんですが、これはさっき議論しましたように国庫負担引き上げというのが一方で解除セットになっていますから、そこはカバーされるんじゃないか。そうすると、基金の出てきたものについてはどう処理をするか、あるいは本当にこれでいいのかなというのはちょっと疑問としてあるんですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  17. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) これは、凍結期間中の必要な免除保険料率を与えなかったその部分凍結解除後にどうするのか、こういった問題が当然あるわけでございます。それからもう一つは、予定利率を今回五・五%から四%に下げるとそれによって過去期間分につきまして積み立て不足が生じる、こういった問題をどうするのか、これもまた別途ございます。こういった過去期間分それから凍結時期の不足分、こういったものをどうするのかということが非常に大きな課題になるわけでございます。  こういった問題というのは、凍結期間がどの程度続くのか、二年ぐらいで凍結解除になるのか、あるいは五年も凍結期間が続くのか、こういったことによっても処理の仕方が変わってまいります。これは、凍結解除する時点でいろんな観点から総合的に勘案して基金運営支障が生じない、こういう方法を講ずるしかないということでございまして、現時点では明確な方針を持ち合わせているわけではございません。
  18. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今お答えのように、それは解除のときにどうするかということを決めればいいということかもしれません。  やや先走るかもしれませんが、そのときの対応というのは、結局選択肢としては二つしかないんじゃないか。一つは、解除した段階免除保険料率をかなり引き上げてその部分の吸収を図るというやり方。それから二つ目は、何らかの手段基金外部から財政援助をする。これはできるかどうかわかりませんが、要はそういうことしか考えられないんじゃないかというふうに思っておるんですけれども、この点はいかがでございましょうか。まさか基金に持てということにはならないんじゃないかと思うんですけれども
  19. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 厚生年金基金は、御承知のとおり、厚生年金の一部を国にかわって支給をする、そのために免除保険料というような形で必要な保険料を免除してあげる、こういう仕組みになっているわけでございます。今回、凍結によって本来必要な免除料率基金に与えない、こういうことになるわけですから、穴があくわけでございます。その穴を何らかの形で埋めなきゃいけないというのは御指摘のとおりでございます。  ただ、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、凍結期間がいつまで続くのか、こういった問題とも大いに関係がございます。それからまた、厚生年金本体に迷惑を与える、こういうことはやっぱりあってはならないことでございます。ここは基金加入員の方、それから基金に加入しなくて厚生年金にだけ加入されている方、こういった方々との公平性ということも非常に大事な視点でございます。そういったことを考えながら凍結解除時において必要な手当てを講じたい、こう思っているわけでございます。
  20. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 結構大きな問題があるということを今の議論の中でぜひ大臣にも御認識を賜りますようお願いしたいと思います。  ちょっと時間の関係がございますので、次の問題に行きたいと思います。  今から少し基礎年金についてお考えをお伺いしたいと思います。その前に、ちょっと前提として私の考えを申し上げたいのでありますが、私は基礎年金制度というのは国民年金を支える上で非常に重要な制度である、こういう認識を持っております。これからいろいろ議論させていただきますけれども、ただ現在の制度はそういう視点から見ますと幾つか問題点がある。ですから、そういうものを解消いたしまして、本当に国民生活における老後生活一つセーフティーネットとして充実をさせなければいけない、こう思っております。そういう立場でこれを議論させていただくということで御了解いただきたいということであります。  それからもう一つは、多分きょう残りの私の持ち時間だけではとても終わらないと思いますので、また機会もあろうかと思いますから、この問題は少し何回かにわたって議論させていただきたいというふうに思っております。  それで、まず最初にお伺いしたいのは、前回、一般質疑のときにも御質問をさせていただきましたいわゆる未納者あるいは未加入者の問題でございますが、大変大きなウエートを占めておりまして、私はこのままでいきますと制度自体が成り立たなくなるのではないか、国民全体で基礎年金を支えるんだと、そういうことにはなっていかなくて、制度全体がおかしくなるのではないかという危機感を持っております。  それで、前回もちょっと申し上げましたが、例えば総理府のまとめました世論調査を見ましても、年金に関心がないという方が結構いらっしゃいます。その中を見ると、まだ若いからと、こういう方もいらっしゃる。これももちろんそうだと思うんですが、一方で、簡単に言ってしまえば自分でやるからもういいんだ、老後のことは自分で考える、だから公的年金にはそう頼ろうとは思っていない、こういうお答えをされる方が前回の同様の調査に比べるとふえてきているんです。  ですから、そういう意味で言うと、この未加入とか未納の問題というのは、単に手続をどうこうする、あるいは手続面でいろいろ今厚生省は努力されているんですけれども、そういうことで解決できる問題じゃない、私はそういうふうに受けとめておりまして、これを解決するためにより根本的なことを考えていかなきゃいけないんじゃないか、こう思っておりまして、前回もかなりしつこく質問させていただいたわけでございます。  まず、これまでのところの厚生省の御判断をお伺いしたいと思います。
  21. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 国民年金の未納・未加入問題につきまして、先生御指摘のように、年金制度の信頼を確保し、安定的な運営を行う点が非常に今重要な課題であるというふうに我々も認識しております。  この問題の解決のためには、今、先生おっしゃいましたように、制度面の問題と事務執行上の問題、両面の問題があろうかというふうに思います。  事務執行面についてまず申し上げますと、未加入者対策につきましては、私ども平成七年度から三カ年計画で重点的に進めてきております。一つは、国民年金は二十歳からの適用になりますけれども、二十歳に到達した方々をすべて適用するという方針から、まず届け出の勧奨といいますか、届け出を出していただくということを行っております。仮に届け出が出されないという場合であっても、年金手帳を送付いたしまして二十歳に到達した人についてはすべて適用するという対策を今進めてきております。  それから二つ目は、国民年金の未加入者を見ますと、その約七割が国民健康保険の方には加入しているという方々がいらっしゃいますので、国民健康保険と情報の活用を図りまして、国民年金の未加入者を解消するという対策も進めてきているところでございます。  さらに、平成九年一月から基礎年金番号ということで、一人一番号という形でのいわゆる年金番号の統一化をさせていただきました。これによりまして、一度基礎年金番号を付番いたしますと、あとはいわゆる種別の異動等がありましてもずっとフォローしていくことが可能になりましたので、そういう意味では途中段階での適用漏れということがかなり防止できるかというふうに思います。こういった対策をとりまして、相当の成果を上げてきたのではないかというふうに考えております。  次に、未納者対策の方でございますけれども、これにつきましては、御案内のように国民年金の場合、四十年という非常に長期にわたって保険料納付を続けていただくことでございますので、まずもってやはり制度に対する理解というものをきちんと持っていただくことが重要かというふうに思いますので、そのためのいろんな周知、広報を充実しております。特に、若い世代の方々につきまして、中学生、高校生といった方々につきましても、学校教育の中でいわゆる年金教育という形で年金制度に対する教育をしていただくというふうなこともやっております。  それから二番目には、納付しやすい環境づくりということで、できれば口座振替という形をどんどん推進していきたいと思っています。現在大体四一%ぐらいが口座振替になっておりますが、これをさらに進めるということと、現在郵便局の利用がまだ四割程度でございますので、これをさらに進めていくということ、それから休日などにおきまして、デパート等比較的人が集まりやすい場所において年金相談を兼ねながら徴収もするという形の方法もとっております。  それから、未納者に直接アプローチするということで、文書なり電話、戸別訪問という形で納付督励の対策を行っております。特に都市部の場合、昼間なかなか家にいらっしゃらない方が多いものですから、休日なり夜間においてそういう活動を行うというようなことで未納者対策の推進ということにも力を入れているところでございます。
  22. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、いろいろ厚生省が今やっておられることをお聞きしたかったんじゃなくて、それはもうお伺いしてよく存じ上げております。今お述べになったことは、いろいろあの手この手で、ちょっと言い方がよくないかもしれませんが、いろんな手段を使って今の未加入・未納問題を解決していこう、こういうことなんです。  問題は、さっき言いましたように、国民の皆さんの中には今の年金制度じゃどうも心配だからということもあると思うんです。もういいんだ、ほっといてくれ、こういう意識を持つ人がふえてきている。だから、今るる説明されましたけれども、しょせんそれは技術的にどうしていくかという話であって、根本解決にはならないんじゃないかということをさっきお伺いしたんです。時間の関係もありますので、ぜひ質問に的確にお答えいただくようにお願いしたいと思います。  それで、この問題も含めて後ほど議論したいと思いますが、その前にもう一つ保険料免除についてお伺いをしたいと思います。  最近のいろいろな調査を見ますと免除率、特に免除の中に二種類ございまして、法定免除と申請免除というのがあります。これは厚生省がお出しになった数字だと思いますが、過去二十年の免除率と検認率の推移表が調査室でおつくりになった参考資料の中にございます。  特にこれで著しいのは、平成九年度になってこの検認率、実際にお支払いになっている比率が八〇%を切っておるということが一つございます。それから、免除率が近年どんどん上がってきています。それも法定免除ではなくて申請免除が、特に前回の再計算のございました、いろいろ議論が始まった平成五年、六年くらいからかなり高くなってきていまして、大体今二けた、平成九年度などは申請免除率だけで一四%を占めています。免除率を合わせますと一八・六%という数字なんです。  まず、この数字の変化についてどのように見ておられるのか、御見解をお伺いしたいと思います。
  23. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 先生今御指摘のとおり、最近国民年金の検認率が低下傾向にございます。特に平成九年度におきましては残念ながら八〇%を切りまして七九・六%ということで、前年度比三・三ポイントの低下になっております。  この原因といたしましては、大きく二つぐらい考えられるかというふうに思いますが、一つは先ほど申し上げましたように、いわゆる未加入対策というものに相当これまで力を入れてやってまいりましたので、かなりその部分の成果が上がりまして、検認率の分母といいますか、加入者がふえてきているということです。ただし、最近入ってきています被保険者はどちらかというと若い人中心の層でございますので、いわゆる保険料納付に結びつくという点ではなかなか難しい層であります。そういう意味では、それが直接納付ということに結びつかない面もありまして、結果的に今検認率を低下させているという面が一つあるかというふうに思います。  それから二つ目は、これは全般的に言えることでありますけれども、いわゆる完全失業率の上昇など非常に近年の厳しい経済状況を反映したために検認率が低下しているという要因もあろうかというふうに思っております。  いずれにしましても、検認率の低下というのは非常に重要な問題でございますので、我々としても重く受けとめて、先ほど申しましたような未納対策を重点的に行っていきたいというふうに思っております。  それから、免除率がふえております背景も、平成三年に学生適用が行われましたとき以来、学生免除の比率が結構高い率がありますので、その影響一つあるというのと、それから全般的にはやはり昨今の経済状況を反映して免除率が高くなっているということがあろうかというふうに思っております。
  24. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ですから、これは二つの問題があるんです。より根本的な問題でいうと、今お答えの中にもありましたように、未加入対策としていろいろ手を打っている。これは前回も私は申し上げたんですが、未加入者を形式上加入したようにするという意味でいいますと、これは未加入の未払い化とか未加入の免除化、こういうことにつながってくるわけです。ですから、さっきも申し上げたとおり、これは年金の空洞化を埋めていく、対応していくという意味でいいますと根本的な部分ではないということですね。  それからもう一つは免除率の話で、確かに平成六年の再計算以降、学生も適用の対象になりました。だから、免除率が上がるということは論理的にはわかるんです。ただ、これは平成八年度の数字ですが、例えば都道府県別の免除率を調べてみたんですけれども、学生の多そうな都道府県、例えば東京は実は申請免除率で七・九なんです、平均一三%ですけれども。神奈川県なんかも五・一なんです。どこが高いかといいますと、これは地域事情があるかもしれませんが、むしろ沖縄とか南九州とか東北だとかで、必ずしもさっきの御説明とつながるような数字にはなっていないんです。これは検認率の方も同様のことが言えると思うんです。  ですから、恐らくこれは、もちろん二つ目におっしゃった経済影響というのも多少はあるかもしれませんが、もう少しよく内容をチェックしてみる必要があるというふうに思っておりますので、御指摘だけさせていただきたいと思います。  次に、国民年金制度上の問題について申し上げたいのでありますが、私も今度年金問題をやるについていろいろと勉強させていただきました。  例えばヨーロッパ諸国なんかも、日本は昔、ヨーロッパの年金制度などを参考にして今の制度をつくったわけですけれども、源泉徴収のできない被用者以外の方から保険料をどうやって集めるかというのは、結構これは難しい問題なんです。当初からいろんな議論があったんですけれども、特に外国では、ここから集めるのはなかなか大変なんだ、必ず払わない人が出てくるんだというのはもうある種定説になっているわけです。  ですから、例えばオーストラリアのような国なんかも、社会保険方式でいくのか税でいくのか、基礎年金制度を持っているところについていいますと、いろいろ議論した結果、特定の人はなかなか払いづらい社会保険方式じゃなくて税制でやろうじゃないかという結論を出した、それで今基礎年金は税方式になっている、そういうふうに伺っております。そういう意味でいうと、非常に難しいということを言われているわけです。言われている中で、この日本は相変わらずその仕組みをとっているということなんです。  それからもう一つ言われていることは、取るのが難しいのと同時に、社会保険方式でやっていこうとすると管理コストが、膨大なお金がかかる、だからコストの面から見ても税と一緒にやった方がすぐれている、こういう見解が多いんです。  それで、実はきのう厚生省の方から書類をちょうだいいたしまして、社会保険庁の方で今申し上げた事務費がどれぐらいかかっているかということをお尋ねしまして、数字をいただいています。これは必ずしも厳密な数字じゃないという前提でちょうだいしたんですが、平成九年度で年間大体一千六百億円、このうちさっきお話があったように市町村がいろいろおやりになる上で補助金の形で出ているのが一千億円強だというお話をちょうだいしています。これを単純に国民年金保険料収入、これは平成八年の数字しかありませんが、平成八年の同じ数字で計算しますと、この事務費が保険料収入に占める比率は八・四%になります。  一説に、千円の保険料を集めるのに百円かけているというふうなことも言われておりますが、百円かどうかは別にして、かなりの費用がかかっていることは事実でございます。恐らく市町村へ行きますと、国からの補助金だけじゃ賄い切れない、したがって自腹を切っているといいますか、自分たちで一般会計から出しているところも幾つかあるように聞いていまして、実態はもう少し大きいと思うんです。そんなことを考えますと、私はちょっと取り方も、お金をやたらかけるばかりでなかなか、いろいろ努力されていることは認めますけれども、実は非常に効率の悪い努力をされているんじゃないかなというふうに思っています。  ちょっとお聞きしたいのは、例えば社会保険方式をとっているヨーロッパのイギリスとかオランダというところは、保険料を税務署で徴収しているんです。税と一緒に徴収している。日本でもそういうシステムを考えられないのかどうか、本気でやるならやっぱりそういうことも含めて考えていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、この点についていかがでございますか。
  25. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 今お話のございました保険料を税と一緒に取る方式ができないかという御指摘でございますけれども一つは社会保険方式という前提での保険料徴収ということを考えますと、徴収の前提として被保険者の種別の異動も含めた被保険者比較の確認といいますか適用というものがまず必要になって、その上での徴収ということになります。  それから、保険方式ですので、徴収した納付実績が給付に反映されるということになりますので、非常に長期にわたって納付実績を記録、管理して給付と結びつけるシステムが必要になるというようなことを考えますと、現在、私どもは、こういう適用、徴収、それから給付、それに伴う相談といった一連の年金業務を一体的に行うという形が一番効率的ではないかというふうに考えております。  この部分から徴収だけを分離してやるということになりますと、事務がある意味で二元的になりますし、お互いにさっき言ったような納付実績の情報のやりとりといったようなことも行っていくので、効率的に少し問題が出てくるんではないかというふうに思います。  それから、被保険者や受給者の方々につきましても、給付の関係は社会保険の事務所が窓口になりますし、徴収は税務当局が窓口になるということで、窓口も二元化してしまうという点で、利便性の点でもいかがかというふうに思っておりますので、私どもとしては、適用から徴収、給付という一連のものを一体的に行うという形が一番効率的であり、利便性もその方がいいんではないかというふうに考えております。
  26. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私の時間がございませんので、最後に大臣に。  今申し上げませんでしたが、国民年金保険料が定額徴収になっています。今度も半額徴収制度というのをお入れになりますが、いずれこれが推計計算によりますと将来二万数千円になっていきますから、倍ぐらいになっていくわけです。そうすると、また同じような問題が出てくる。ですから、定額徴収というのも集めにくい一つの材料になっているんです。  大臣に伺いたいのは、こういうことを考えていきますと、やはり税方式がいいと私は思うんですけれども、真剣にお考えになった方がメリットが大きいんじゃないかと思うんです。さっき財源の話がありましたが、財源の話はちょっと置いておいて、ひとつそういうことも基礎年金制度として非常にメリットが大きいんじゃないかと思うんですが、この点、いかがでございましょうか。
  27. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、国民年金について、免除者あるいは未加入者、未納者の問題、社会保険庁次長からもるる努力していることを御説明申し上げました。  私どもは、この制度が完璧であるかどうかよく念査しなきゃなりませんが、現行制度というのは、国民年金とそれから厚生年金のうちの基礎年金部分にずっと共通した、とにかく加入者が七千万人おるその基礎になる部分です。したがって、それを簡単に税でいいのかどうか。国民年金の未納者、滞納者あるいは免除者が三割に達しておるからそれは解消できるんだと。税でやれば確かにそれは解消できます。  いろいろの大議論がある、あえて時間の関係で申し上げませんが。しかし、税がいいか社会保険がいいかといった場合に、税金でそれを全部やるということになりますと莫大な税金を要します。八兆八千億と私ども推定しています、今、三分の一で五兆円くらい投入しておりますけれども。  したがって、税でやるといった場合にそれを増税でやるのかどうか、それは大変いろいろの側面があることももちろん御承知おきいただいておると思います。そういった全体的な中で、私どもはこの制度を安定的なものにしようというぎりぎりの努力をさせていただいておるというように理解していただくしかないと思うんです。  外国では税でやっている例はあるじゃないかという御指摘もしばしば受けます。しかし、外国でも高額所得者に税で全額所得給付をやっていいのかというので、例えば高率課税でそれを吸い上げるとか、逆にそういう手法をとっているところもあるようですし、これはいろいろ検討しないと、なかなか一概に断ずることはできません。  国民年金のこの三割の問題をどうしても私どもは解消したいと思っておりまして、これの一助にということで半額年金制度あるいは学生の納付猶予等々を今回の改正で織り込みます。それが唯一の解決策だとは思っておりませんが、なお未納、未加入それから徴収率の向上とか、そういうことを精力的にやらなくちゃいけないなという認識に立っておることだけ申し添えておきます。
  28. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 これで終わります。今の問題は、また引き続き議論させていただきたいと思います。
  29. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  同僚議員の質問に関連して、私の方からは残された時間を無年金である障害者の問題について絞って幾つか伺いたいと思います。ただ、その問題に入ります前に一言だけどうしても申し上げておかなければいけません。お答えは結構です。  そもそも今回、予算関連法案として国民年金保険料凍結する部分だけがこのような形で提案されて、年金制度全体の改正案についていまだコンプリートになっていないという状況の中でこの法案を審議せざるを得ないというのは、極めて私は異例なことであるし、残念なことだと言わざるを得ません。本来であれば、予算関連法案として年金制度改革全体を一括して上程していただきたかったというふうに思っています。  そういう点では、今なお与党間での協議も完全には詰め切れていないというお話でありますけれども、引き続く年金制度改革の提案について積極的な御努力をぜひともいただかないと、これだけを云々して本体の制度改正論議を先送りなり後回しにすることは許されないということだけははっきり申し上げておかざるを得ないと思います。  その上で、前回の制度改正のときに本院の厚生委員会において附帯決議がなされております。思い出していただきたいんですが、「無年金障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること。」、こういう附帯決議がなされているわけです。速やかにということですから、せめて私は一、二年のうちにというふうに通常は理解するんだろうと思いますが、既に五年がたっています。この附帯決議を受けて以降、この問題についてどんな検討がなされてきたのか、この状況についてお伺いをします。  去年十月に年金審議会がこの問題についての意見を取りまとめられたと伺っています。その内容についてかいつまんで御紹介をいただき、あるいは基本的な考え方について御説明をいただきたいと思います。
  30. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 前回の年金改正のときにこの無年金障害者の問題が附帯決議の中で早急にその対応策を取りまとめるように、こういう附帯決議が行われたということは十分承知しておりますし、今回、年金審議会で一昨年五月から本格的な御審議をお願いしたわけですけれども、そのときの検討項目の一つとしてこの無年金障害者の問題があったわけでございます。  具体的に資料を出しまして年金審議会で御議論いただいたのは五月十五日でございますけれども、この場におきましては、どういった方が無年金障害者になられておるのか、無年金障害者が発生した理由ですとか、それからこういった方々に対しまして年金制度として対応するという考え方と年金制度では対応できないんじゃないか、こういう立場とそれぞれ分けまして、論点を整理して、そういう資料をお出しして御議論いただいたわけでございます。  その後も累次にわたりましてこの無年金障害者の問題についての御発言もございまして、最終的には十月に意見書が取りまとめられたわけでございますけれども、その中では「年金制度に加入していなかったり、保険料を納付していないことによる無年金障害者の問題については、社会保険方式をとる現行の年金制度では、年金給付を行うことは困難である。今後、障害者プランを踏まえ、適切な検討が必要である。」、こういう意見書になったわけでございます。  つまり、我が国の年金制度といいますのは、社会保険方式をとっておるということでございまして、これは制度に加入して保険料を納める、これが給付に結びつく、こういう基本的な仕組みでございます。したがって、制度に加入していなかった、あるいは制度に加入しても必要な保険料を納めていなかった、こういった方を年金制度の中で救う、給付するということは制度の根幹に触れる問題で年金制度としては難しい、こういう意見書の取りまとめになったということでございます。
  31. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今のところ、要するに「社会保険方式をとる現行の年金制度では、」というふうに表現されています。しかも「年金給付を行うことは困難である。」と。かなりはっきり書いているというふうに私には読みとれるんです。  ところで、「社会保険方式をとる現行の年金制度では、」という前提は、先ほど同僚議員からもお話がありましたけれども、言いかえれば年金制度改革の中で、例えば基礎年金部分を全額税方式で賄うなどというかなり根幹にかかわる制度改革がなし得れば、そういうことの中で再度この無年金障害者の問題についての検討の余地は当然にあり得ると私は理解をしているんですが、この点についてはどうですか。
  32. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) これは仮にでございますけれども基礎年金を全額税方式にした場合を考えてみますと、将来に向かいましてはこの無年金者という問題はなくなると思います。  ただ、過去におきまして制度に加入していなかった、あるいは保険料を納めていなかったという方を過去にさかのぼって全員救うのかという問題については、保険料を納めていた方との間の、不公平じゃないか、不均衡じゃないか、こういった問題も出てくるでしょうし、これは改めて議論しなければいけない問題じゃないかと思います。  それからもう一つ、全額税方式にした場合は、基本的には将来に向けては無年金の問題というのはなくなりますけれども、これは全額税で賄うということからしまして、所得の高い人は年金は御遠慮願うべきじゃないか、つまり所得制限を導入したらどうか、こういう議論も必ず出てくるでしょう。それからまた、年金額につきましても、全額税で賄うということになると、税収との見合いで、現在の基礎年金は六万七千円でございますけれども、こういった水準の年金額が維持できるかどうかという点についても、これは別途またいろいろな御議論があろうかと思います。
  33. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今お答えの後半の部分は、私が求めた答弁の範囲を超えているわけです。私が申し上げたかったのは、要するに年金審議会でかなりはっきりと現行の制度では困難ですよということをおっしゃっている。逆に言えば、これは考えるとすればかなり根幹にかかわる抜本的な改革の中でしか検討のしようがないよということをおっしゃっているんだと思うんです。ですから、そういう意味では、この問題だけに限りませんが、無年金である障害者の問題を解決していくためにも改めて基礎年金の全額税方式、国庫負担方式を再検討してみることはあり得ると私は理解するものであります。  さて、そのことについてきょうは論争をする気はありませんので、その次に、もう一方で、平成六年の附帯決議を受けてということだと思いますが、障害者にかかわる三つの審議会の合同企画分科会がこの問題について、ことしの一月、一定の検討結果を取りまとめております。附帯決議の中で、大変微妙な言い方で、福祉的措置を含めて検討しろということですので、一方で年金制度の中で何とか解決できないかということを検討していただくと同時に、福祉的措置の中であるいは障害者の保健福祉施策の中でどう検討できるかということも一つ宿題になっていたと思います。この点について御説明をいただきたいと思います。
  34. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 御指摘の合同企画分科会でございますが、身体障害、知的障害、精神障害、それぞれに係ります関係審議会におきまして障害者施策全般について御議論いただいたわけであります。この意見具申の中におきまして「障害者の所得保障については、年金制度における対応も勘案しつつ、税を財源とする障害者施策としてどのように取り組むべきか、引き続き幅広い観点から検討する必要がある。」、このようにされたわけでございます。  審議の状況を若干御紹介申し上げますと、無年金障害者対策も含めまして、障害者の所得保障の重要性というものにつきましてはいろいろな意見が出されました。しかし、年金制度とも深く関連する問題であることから、引き続き幅広い観点から検討する必要があるということで意見が集約されたものと考えております。  この問題につきましては、平成七年十二月に策定されました障害者プランにおきましても検討課題ということで位置づけられておりますので、今回の意見具申を踏まえまして、今後とも引き続き幅広く検討を行ってまいりたいと考えております。
  35. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 幅広く検討していくと言われると何となく問題を薄めてしまいそうな危惧を感じるので、決してそういうことがないように検討をお願いしたいと思います。  さて、今お聞きのように、一方では、年金審議会は、この問題については現行制度のもとでは困難というふうに言っている。一方、障害保健福祉施策の今後のあり方を検討する合同企画分科会では、年金制度における対応も勘案しつつ幅広く検討する、こういうふうに言っている。率直に言えば何か責任のなすりつけ合いというかボールの投げ合いというか、おれは知らないよと逃げっこをしているようなニュアンスがどうしても否めないんですね。  確かに、ワンパターンじゃないから、幾つかのケースがあるから、これですべてという解決策は難しいと思うけれども考えられる、想定される無年金となるケースを個々に検討して、さて今後どの部分がちゃんと責任を持って引き受けてこの問題について回答をつくり出していくのか、見出していくのかという点を、ぜひこれは大臣の方からお考えをお聞きしたいわけです。つまり、附帯決議がつけられてからもう既に五年たっている。それぞれ関連する審議会なりで検討されている。お互いに難しい難しいと言いながら五年がたってしまった。これでは障害者の皆さんは気持ちがおさまらない。  こういう経過を踏まえて、今後、大臣としてはどちらに力点を置くのか。多面的に検討が必要だということは認めます。しかし、どこが責任を持って、どの辺に力点を置いてこの問題についての解決策を見出していこうとされているのか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  36. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今御指摘のように、障害者の無年金者、それから一方で障害者福祉施策をやっております、その谷間にあるといいますか、そういう状況にあるんじゃないかなと思うんです。何か責任のなすり合いみたいな審議会じゃないかという御指摘ですが、これはそれぞれの、身体障害者なら身体障害者という角度から検討すれば、当然、既存の身体障害者のいろいろの、特別障害者手当でありますとか障害基礎年金を支給するとかいろいろ体系がありますから、恐らくそういう関連を中心に指摘されていると思うんです。  一方、無年金者の発生原因等はいろいろあるようでございます。それが本人の意図するところ、故意に保険料を納めなかったというような状況であるかないかは、これは個別の事情によって違うと思いますから、原因別によく念査をして、そして本当に不可抗力的なものは年金で対応できるかどうか検討すべきように私も思います。  ただ、一般論として、全部を税方式でやればすべて解消できると。そのとおりです、税でやれば。これは、年金局長からいろいろ説明がありましたけれども、過去の分は問題が残っているにせよ、将来的には全然問題ないことになるわけですね。したがって、それ自体では問題はなくなるけれども、先ほど直嶋委員の方にもお答え申し上げたように、背景としてはいろいろのもっともっと大きな検討課題があるということを申し上げざるを得ないと思うんです。  したがって、福祉施策として今の類型、一級から六級までの身体障害者の分類、それよりももっと拡大すべきかどうかという視点もどうしても必要です。そしてまた、今言ったように不可抗力といいますか、やむを得ない事情でそういう状況になった方、あるいは意識的に保険料を納めなかった方、そういうものも分別しながら検討はさせていただくつもりです。特に対象となる方々が身体障害者ということであれば、身体障害者福祉法による類型の中へおさまっている方々だと思いますから、それとの関連で十分対応して検討はしてみるつもりでございます。
  37. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 終わります。
  38. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男です。国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に関連して質問いたします。  まず、本改正案に関しまして質問させていただきます。  厚生大臣にお伺いしたいんですけれども国民年金保険料額の引き上げ凍結平成十年度と同額の月額一万三千三百円とする改正を行う理由としまして、厚生大臣は「現下の社会経済情勢にかんがみ、」と述べておられますけれども保険料引き上げ凍結せざるを得ない社会経済情勢とはいかなるものなのか、具体的に示していただきたいと思います。
  39. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 端的に申しまして、国民年金保険料凍結法案だけで判断いたしますと、凍結によって一年間に浮く保険料額が約一千百億円くらいでございますから、これが経済に対してどのような影響を与えるかということは、そう大きなものではないと率直に思います。  しかし、私どもは、今御議論いただいておりますように、これからまた御提案申し上げなきゃならない厚生年金の本体の問題を議論しておりまして、それも本年度の十月から予定されておった年金保険料凍結いたしました。そちらの方は、想定にもよりますけれども二兆円を超す保険料収入になります。つまり、それだけ可処分所得を減らすことになります。  そういう意味で、経済情勢というものを判断しながらセットで、とにかく当面は景気振興をやらなくちゃいけないということで、一方減税も大幅にやっておるわけですが、所得税減税の半分も吸い上げてしまうようでは経済効果が減殺されます。したがって、こういう制度は中期的な視点考えなくちゃいけませんから安定性を阻害するようなことはあってはなりませんが、先ほども申し上げたとおり緊急避難的な、そして構造的な不況でございますから、この対応をきちっとしようという決断でこのような措置をとらせていただいた。  しかも、国民年金の方は法律で額まで明定されておりますから、これが四月一日から適用になりますので、時限法としてこれを凍結するという法案を出させていただき、審議をお願いしましたが、全体の年金改革の一環として御理解をいただきたいと思います。
  40. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今のお答えでもよくわからないんですけれども、「現下の社会経済情勢にかんがみ、」ということでありますので、やはり何らかの具体的な指標があってしかるべきかなと。そうでなければ、将来もまた同じような状況になったときに凍結をするとかそういう話になるものですから、余りにも抽象的なものではなくて何らかの指標があった方がよろしいというふうに私は考えるわけです。時の政府の裁量によって中長期的制度である年金制度が安易に変更されてしまうというのはやはり大きな問題ではないかと思うわけであります。  そういう意味で、凍結をせざるを得ない社会経済情勢というものがどういうものなのか、もうちょっと具体的な指標といいますか、そういうものがお示しいただければと思うんです。例えばGDPが二年連続マイナス成長になりそうだとか、あるいは可処分所得が何%ぐらい下がっているとか、何かそういう客観的な指標というものはないんでしょうか。
  41. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これは、先ほども申し上げましたとおり年金制度でございますから、経済状況によって変動すべきものではないと私は思っています。したがって、基本的にはこういう措置をとることは臨時異例的なものでございます。  したがって、私どもが判断いたしましたのは、マイナス成長が三年続きというようなことで構造的な要因がございまして、もうとにかく需要政策あるいは供給政策、サプライサイドの政策を含めてあらゆる政策を総合的に一点そこに打ち込んでいかないと、経済が低迷状況が続きますと保険料収入もなかなか入りませんし年金財政もさらに悪化が懸念されますから、私どもとしては決断をさせていただいたということです。指標によって、別に経済の情勢やGDPが何%以上になった場合はやるとかやらぬとか、そういう性質のものではないことは御理解していただきたいと思うんです。
  42. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今のお話は、何らかの客観的な指標があれば凍結解除考える上でも参考になるのではないかということで質問させていただいたわけです。将来凍結解除を行う、将来といいますかできるだけ早く凍結解除を行えるような状況になることがいいわけでありますけれども、ではその凍結解除をするための何らかの客観的な指標、あるいはどういう状況になったら凍結解除をしますという条件というものをお示しいただければと思います。
  43. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 国庫負担引き上げの三分の一から二分の一、これだけでも二兆二千億かかるんです。これは年々増加してまいります。そういう状況が一方ございますのでそれはしたい。しかし同時に、保険料引き上げも現下の状況では無理だ。なれば、そういう軽減策が二兆二千億もとられる、厚生年金の方の基礎年金保険料自体で。そうなりますと、保険料引き上げをやってもまあまあ相殺といいますか、ある程度緩和されます。  私どもは、三分の一から二分の一にすることによって保険料で一%強軽減される、それから国民年金でいきますと月三千円軽減できると想定していますから、それと引き上げの問題がセットにされておりますので、そういった配慮をしながら、言うならば経済状況がよくなる、プラス成長になってくるということがもちろん前提でありますけれども、そして財政状況改革その他が行われて安定した財源が確保できるようになる。それで私はあえて直間比率の問題も否定はできませんということも申し上げておりますが、総合的にそういう安定した財源が得られるようになればその二つを一挙に解決していきたいというのが全体構想でございます。そういった点を御理解いただきたいと思うんです。
  44. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今のお話ですと、基礎年金に対する国庫負担の割合を三分の一から二分の一に引き上げる時期と凍結解除の時期というのはおおよそ関連しているというようなお話かと思います。私の考えでは、社会経済状況が好転するためにも、やはり国民保険料負担を軽減することがそれにもプラスになるんではないかということで、凍結解除の問題もありますけれども、早目に国庫負担の割合を二分の一に引き上げることが経済回復にもつながるんではないかということで、早期の国庫負担引き上げというものを求めたいと考えているわけであります。  今の大臣お話ですと、今回の保険料凍結というのは緊急避難的なもので、現在の経済状況が大変な不況であるということで、それを考慮してのお話だということでありますけれども、やはり年金制度から考えると、凍結していくと将来の若い世代に後々負担が大きくなってくるという問題点を含んでいると思います。そういう意味では凍結解除後の国民年金保険料の再引き上げのレベルをどういう形でやっていくのか、厚生省の方針をお聞きしたいと思います。
  45. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 設計としては二〇二五年までの期間を想定いたしまして年金財政再計算をやっております。したがって、その中でどうなっていくかなんですけれども、一定の想定は置いてございますから、やがて条件が整えば凍結解除していくと。しかし、その時期がおくれればおくれるほど、そういう財政再計算のトータルとしての計算の中では後半に上げ幅が大きくなるというのは、これはもう理論的にそうなります。  ですから、なるべくそれを避ける意味でも早く凍結解除し、三分の一を二分の一にすることが可能な条件というものができることが望ましいと私ども考えておりまして、今、委員のおっしゃるとおり、年金年金だ、こういう格好は異常だという御指摘は私どももいたくそれを感じつつ、こういう総合判断をさせていただいた結果でございますので、御理解をいただくしかないなと思います。
  46. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 いずれ経済状況回復したときに保険料凍結解除して、また凍結期間不足分をその後保険料引き上げ回復していく、これは将来世代のためにはやむを得ない措置である、そういうことがなければ安易に凍結というのはするべきではないというふうに考えます。  そういう意味で、これまでの大臣答弁も今のお答えもお聞きしまして、今回の国民年金保険料引き上げ凍結に関しては、平成大不況と言われておりますけれども国民の家計が厳しい状況であることを考えれば、やはり私も緊急避難的措置としてやむを得ないんではないかな、そのように考えるわけであります。  次の質問になりますけれども、これも大臣にお伺いしたいんです。  平成十一年二月二十六日の経済戦略会議による「日本経済再生への戦略」の答申では、年金改革部分に触れまして、「基礎年金部分財源は、二十一世紀のなるべく早い時点で税による負担割合を高め、さらに将来的には税方式に移行することが望ましい。」と意見を表明しておるところでございます。この点に関しまして、先ほども委員から質問があったところでございますけれども厚生大臣の見解をもう一度お伺いしたいと思います。
  47. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 戦略会議というのは、総理大臣が諮問をいたしまして御意見を求めたものでございます。しかし、これは政府で決定した内容のものではございません。  しかしながら、年金については、今御指摘のように、特に基礎年金部分財源は二十一世紀のなるべく早い時期に高めよう、そしてさらに最終的には全額税方式が望ましいということを御指摘になっておられます。私どもとしては、社会保険方式を維持した方がいいと思っておりますから、三分の一を二分の一にすることは当面必要なことだと思いますが、それ以上に全額税でやるということにつきましては異存があります。  それはなぜかというと、全額税ですから社会保険方式のよさを失うことになります。それから、先ほど来いろいろ議論がありますように、税金によって全部所得保障するということですから所得制限等の問題が出てまいります。だから、所得の高い方々、我々国会議員も同じように税金で集めた給付を平等に受けられるかどうかという、そういう問題に逢着します。したがって、これは資力制限がどうしてもかかると思います。そうすると、だんだん突き詰めていくと、今は福祉年金の一部とか生活保護費は全額税でミニマムな所得保障はしています。そういうところに限りなく近づく可能性がありまして、社会保障としての水準の維持が困難になるだろうと、私どもはそれを憂慮いたします。  それから、莫大な財源を要しますから、それは税でやるのかどうか。今、三分の一で五兆円を投入しています。それが八兆八千億くらいさらに追加的に出てまいりますから、これの財源を一体どうするのか。赤字国債はいつまでも続けるわけにはまいりません。そうすると増税とかいう話になってくる可能性もあります。もちろん経費の節減とかそういう問題も欠かせません。  そういういろいろなことを考えまして、私どもとしては何としてもこの厚生年金の体系だけは維持していきたい。それには基礎年金を二分の一までの限度で社会保険として残していこうと。それで、報酬比例部分戦略会議では廃止を言っておりますね、これは民間の自主的なあれに任せた方がいいと。しかし、中小企業者とかそういう働く人たち、将来の所得層を考えた場合に、それは絶対にできないと私は思っているんです。  そういうことで、戦略会議の意見は全面的にというわけにはまいりませんが、ある程度、例えば確定拠出なんかは取り入れますが、同時にどうしても受け入れがたい意見のあることも事実でございます。これは、将来の我が国の年金制度に非常にかかわりのある重大な課題でございますから、私は率直に申し上げさせていただいておるところでございます。
  48. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 全額税方式は厚生省としては今の段階では考えていない、社会保険方式をとっていくんだというお答えであったかと思いますけれども、私は基礎年金部分はやはり国の責任として全額税方式に早期に移行すべきであるというふうに考えているわけであります。  先ほどの各委員からの質問にもありましたけれども、未加入者・未納者問題、それに伴う無年金者の問題、それから保険料徴収の事務費の負担の問題等々、また老後を安心して国民が生活できるんだという、そういう不安を解消するという意味でもやはり全額税方式でやった方がいいのではないかというふうに私自身は考えているわけであります。これを一つの重要な選択肢としてやはり今後とも検討を進めていただきたいと、そのように主張させていただきたいと思います。  では、次の質問に移らせていただきます。これは今後の年金制度改革に関連した質問になりますけれども、先ほども委員の方から質問がありましたが、無年金障害者について質問させていただきたいと思います。  国民年金制度であるはずですが、実際には障害者であって年金受給権のない人、いわゆる無年金である障害者の問題がいまだ解決されずに残っているのが現状でございます。いわゆる無年金障害者が生じている原因、さまざまあると思うんですが、これは分類しますとどういうものがあるのか、教えていただきたいと思います。
  49. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 無年金障害者の発生原因でございますけれども一つは昭和五十七年一月の国籍要件撤廃前に障害になられた在日外国人の方、こういう方がまずいらっしゃいます。これは難民条約を批准するということで、それに伴いまして昭和五十七年一月から国籍要件が撤廃されまして、在日外国人の方でも年金制度に加入できるようになったわけでございますけれども、それ以前は在日外国人の方は年金に加入できなかったということで、その間に障害になられた方でございます。  それから、在外邦人につきましても、昭和六十一年四月前は任意加入もできなかったわけでございまして、昭和六十一年四月前に在外邦人の方で障害になられた方、こういった方もいらっしゃいます。  それから、サラリーマンの妻につきましては、昭和六十一年四月から第三号被保険者ということで国民年金が強制適用になったわけでございますけれども、それ以前は任意加入ということでございまして、任意加入期間中に加入しなかった人、こういった方で障害になられた方でございます。  それから学生につきましては、平成三年四月前は学生も任意加入でございまして、その任意加入期間中に加入していなかった方、それで障害になられた、こういった方でございます。  それから、もともと制度に加入されていない方ですとか、制度に加入しても必要な保険料を納めていない方、こういった方は当然障害年金は受給できない、こういうことになるわけでございます。
  50. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今御説明がありましたけれども制度そのもの年金制度に加入できなかった方がいる、あるいは任意加入であったためにたまたま年金制度に加入しなかった方もいる、そういう状況で無年金障害者の問題が生じているということでございます。  そうしますと、現在そういう原因別の無年金障害者の方というのはどれくらいおられるものなのか、もしおわかりであれば教えていただきたいと思います。
  51. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 無年金障害者の方、しかも原因別ということでございますけれども、これは正確な数字というのはなかなか把握が難しゅうございます。年金を受給している方につきましては、幾ら受給されているか、何人受給されているかというのは正確にわかるわけですけれども、そもそも受給されていない方を調べるわけですから、なかなかこれは難しいわけでございます。それからまた、障害となった理由とかその時期とか原因、こういったものを把握すること自体がまたなかなか難しいということでございます。  それで、身体障害者の実態調査等、既存の調査結果をもとに、かなり大胆な推計でございますけれども、それを行いますと、十万人強程度無年金障害者の方がいらっしゃると考えております。  発生原因別の数とか今後の推移につきましては把握しておりません。
  52. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 この無年金障害者の問題を真剣に解決しようとすれば、やはりきちんとした実態調査を行って、解決するためにはどれくらいの費用が必要なのかということをきちんと調査すべきではないか、そのように思うわけであります。  今、大まかな推計としましては十万人程度というお話でありまして、もし真剣にそれを解決しようということであれば、障害基礎年金を支給する場合どれくらい費用がかかるのか、お教えいただければと思います。
  53. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) そういう無年金障害者の方の数ですとか障害の程度、これがわかりませんので正確な試算というのは非常に難しいわけですけれども、非常に大ざっぱな前提を置きまして計算いたしますと、例えば無年金障害者の方が約十万と考えまして、それから一級の方と二級の方がほぼ半々ずつの五万人だと、こういうことを前提にいたしますと、今、一級が年間百万、二級が八十万、こういった年金額で試算いたしますと年間で九百億、こういう数字になろうかと思います。
  54. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 十万人ということで、現在、障害基礎年金をいただいている人の平均額が七万五千五百四十八円ですか、これを参考にしますと大体年額で九十万円、それが約十万人で九百億というふうになるのではないかと私もちょっと大まかな計算をしてみたわけでありますけれども、やはり九百億円ぐらいかかるというようなお話でありました。  確かに莫大な財源が必要でありますけれども、これは制度の不備という面も入っていた。それから、本来稼得所得の少ない、あるいはない学生等も任意加入で年金制度に入ることになっていたというような制度上のやはり不備があったということで、これは国の責任もあるということですので、九百億円かかりそうだということでありますけれども、解決に向けてきちんとした対応を検討すべきであるというふうに考える次第でございます。  外国でも同じような問題が起こっているのではないかというふうに私は考えるわけでありますけれども、諸外国の障害者年金制度で無年金障害者というのは日本と同じように存在しているのかどうか、もし存在していればそれに対する解決策はどのようにしているのか、その点に関しまして厚生省より御説明いただきたいと思います。
  55. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 年金を税方式でやっている国は、障害者の方で無年金という方は基本的にはいらっしゃらないわけです。それに反しまして、社会保険方式で実施している国、具体的に言いますとアメリカとかイギリスとかドイツ、こういったところは社会保険方式で実施しております。そういったところでは、制度に加入して保険料を納める、これが受給の要件になっているわけでございまして、こういった社会保険方式をとっている国では無年金者というのが当然発生するわけでございます。  こういった方に対しましてどうするのかということでございますけれども、これは年金制度で対応するのは難しいわけでございますので、我が国の生活保護みたいな一般の所得保障制度で対応していると理解いたしております。
  56. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 諸外国でもやはり無年金障害者というのは保険料の未納あるいは加入期間の不足等で生じ得ることだということでございました。その場合、対応としては福祉的な対応をしているというのが現状かなというふうに私も推測します。  平成六年十一月の年金改正時の参議院の厚生委員会の附帯決議では「無年金障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること。」とされておりました。  厚生省としましては、今のところ、この無年金障害者に対する所得保障についてどのような解決策を考えているのか、厚生大臣の方からお話を聞きたいと思います。
  57. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 先ほど来御議論をいただいておりますが、無年金障害者につきましては、私どもとしては、年金審議会の答申等もございまして、年金制度において何らかの給付を行うことは極めて困難だということを承っております。一方、前回改正の附帯決議の趣旨もございまして、福祉的措置による対応を含めて検討するということが附帯決議で要求されておるわけでございます。  私は、率直に申しまして、先ほども答弁申しましたように、無年金の障害者の方々が本当に本人の、保険料を納めないぞというようなことで、言うなれば悪意でやられた場合と、あるいは事情やむを得ざる状況によってやられた場合では若干趣を異にするかなという感じはいたしますので、そういった点は調査をしてみたいと思っています。  なお、福祉的措置につきましては、一級から六級まで指定をいたしまして、そして障害基礎年金を支給したり特別障害者手当を支給したりして現在の制度が成り立っておるわけですから、それの補完的な措置でそういうことは可能なのかどうか。六級の人たちなんかもそんなに財政的支援はございませんので、体系自体を変えないといけないという問題にも逢着するかもしれません。しかも、そういう谷間の問題でもありますから、身体障害者という通常の方々と違ってハンディーを負って生活をなさっている方々でありますから、そのはざまの問題として検討はさせていただくつもりでございます。
  58. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今回、厚生省の方では年金制度改正案大綱を示されたわけですけれども、現存する無年金障害者に対する解決策が盛り込まれていなかったということであります。その理由について御説明いただきたいと思います。
  59. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) この問題につきまして年金審議会でも御議論いただいたわけですけれども、無年金障害者の方に年金を支給するということになりますと、保険料を納めていた方との均衡をどうするのか、こういう問題がすぐ出てくるわけでございます。今の制度は社会保険方式でございますし、制度に加入して保険料を納めるということが給付を受ける大原則になっているわけですので、そういう大原則に抵触する、こういうことでございます。  それから、この問題というのは、無年金障害者の方だけが問題になっておりますけれども、遺族年金とか、それから非常に多いのは老齢年金でございます。こういった方につきましても同じような問題を抱えておるわけでございまして、こういった方との関連も考えますと、年金制度の大原則を崩すわけにはいかないということでございます。  そういうことで、今の社会保険方式のもとでの年金制度におきまして、無年金障害者の方を救うことは非常に難しいということにされたわけでございます。
  60. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 私は、基礎年金を将来完全に税方式で行った方がいいのではないかというふうに考えているわけでありますけれども、この無年金障害者に対する障害基礎年金も完全税方式になると支給されるというふうに考えるわけであります。  厚生省の方は、そのとおりでよろしいのでしょうか。その点、考え方を示していただきたいと思います。
  61. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 税方式を導入いたしますと、将来に向けては無年金者というのはなくなるわけでございます。ただ、過去において制度に加入していなかったり保険料を納めていなかったということで無年金になっている方、これを救うかどうかというのはまた別問題でございまして、もしそういった方も年金制度で救済するということになりますと、保険料を納めていた人との均衡の問題をどう考えるのか、こういった問題が出てくるわけでございまして、過去にまでさかのぼって救済をするというのはなかなか簡単な問題ではないのじゃないか、そのように考えております。
  62. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 特に学生の問題です。学生の無年金障害者というのは過去の制度のときには問題になったわけでありますけれども、現在もやはり学生の国民年金未加入者あるいは滞納者が多く存在している。今後もそういう方々が無年金障害者となる可能性があるわけであります。  今回の厚生省年金制度改正案大綱では、この問題解決の一つとして、学生特例を設け、その間の障害事故に対しては障害基礎年金を満額支給するという方向を打ち出しておるわけであります。この制度はやはり早期に実施すべきであるというふうに私も考えるわけであります。  また、この制度の実施にあわせて、過去に生じた学生無年金障害者に対しても、特別な措置として基礎年金を支給することを考えていただきたいというふうに私は思うわけでありますけれども厚生大臣のこの点に関してのお考えをお聞きしたいと思います。
  63. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 学生の納付特例の創設というのを今度いたすわけですが、これはあくまで今回の改正以降において一定以下の所得の学生について猶予期間を設けるということでございます。これを今度の改正の施行日以前にさかのぼってやるということが今議論になっておるところなんですが、年金局長の方からもお話しのように、過去の問題について、ほかの保険料負担している方々とのバランスその他がありまして、なかなかそれを一義的に解決するのは困難だと私も思います。  しかし、先ほど申しましたように、学生で身体障害者になった方々のことでありますから、これから福祉政策の中でどういうものが講ぜられるか、あるいは年金制度というのは本来そういう政策的な要素は余り加味しない方が私はいいと思うんです。ですから、そういう点を踏まえつつも、無年金の障害者という問題は存在しているわけですから、検討はさせていただきます。
  64. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 学生時代にいろんな激しいスポーツをされる方もありまして、予期せぬ大きな事故で障害者になってしまった、たまたま年金制度に加入していなかったということで、若いときから大きな障害を持って苦労しながら生活している人が実際おられるわけで、学生の特例ができるときにあわせてそういう方々を救済できるような特別な制度というか施策というか、そういうものを実施できればというふうに考えておりますので、よろしく御検討をお願いしたいと思います。  それから、次の質問になりますけれども平成大不況の影響で、大学生あるいは専門学校の卒業生等も就職がかなり厳しくなっているということであります。  労働省のデータでは、平成十年十二月一日現在の就職内定率は、大学新卒者では八〇・三%、前年度比マイナス四・五%ということであります。短期大学新卒者では五六・六%、前年度比マイナス三・九%。高等専門学校は九七・三%、これは前年度比プラス一・三%になっているということでございます。しかし、専修学校の場合は五一・八%、前年度比マイナス三・七%となっております。高等専門学校新卒者を除いて、前年度比おおよそマイナス四%程度に学生の就職内定率が落ち込んでいるということであります。  したがって、今後、未就職の卒業生というのも出てくる可能性が高いと思うんですけれども、このような未就職の卒業生は学生と本質的に収入等変わらないのではないかというふうに思うわけでありまして、国民年金保険料を納めることが厳しいのではないか、そのように考えるわけです。  こういう未就職卒業生に対しても学生特例と同様の特別な保険料納付制度を設けてはどうかというふうに考えたわけでありますけれども厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  65. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 学生の特例を設けるというのは、学生というのは一般に収入がございません、卒業したら通常は働いて収入がある、こういうことで学生期間中は免除いたしましょう、出世払いをしてもらいましょうということで特例制度を設けようとしたわけでございます。  ところが、未就職の卒業生、こういった方についてまで特例を認めるということになりますと、一般の求職者、一般の失業されている方との公平性の問題とかいろいろ問題が出てまいります。したがいまして、大学を一度出たからには、未就職で収入がないという方は一般の免除制度を申請していただくとか、あるいは今度、半額免除制度というものの導入を考えておりますので、こういった制度を活用していただくということが適当だと考えております。
  66. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 やはり若い方の就職難というのも大きな問題でありますので、そういう学校を卒業しても職につけないという方がありましたら、かなり保険料を納めるのも大変だ。その分、お父さん、お母さん、そういう扶養している方が負担するということにどうしてもなってしまうわけでありまして、やはり何か特別なそういう方々に対しての配慮も必要なのかなというふうに考えるわけであります。  時間がなくなってきましたけれども、最後に一つだけちょっと質問したいんです。  育児休業期間中の厚生年金被保険者保険料は免除されていますけれども、介護休業時の被保険者保険料は免除されているのかどうか。今のところいないと思うんですけれども、この対応の違いについてどういう理由なのか、御説明いただきたいと思います。  これで質問は終わります。
  67. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) この公的年金制度といいますのは世代と世代の助け合いでございまして、新しい世代が育つということが年金制度を永続させる一番の条件になっているわけでございます。したがって、年金制度といたしましては少子化対策にむとんじゃくではおられないわけでございまして、年金制度としてもできるだけの少子化対策を講ずべきじゃないか、こう思っております。そういう観点から、育児休業期間中につきましてはその保険料を免除するということを年金制度として考えたわけでございます。  ところが、介護休業期間中の保険料免除につきましては、年金制度にとっては育児の問題とは性格を異にするんじゃないかということでございます。それからまた、これから保険料負担が厳しくなっていく中で、しかも今回凍結という話もある中でさらに免除対象者をふやしていくということは年金制度にとっては非常に厳しいわけでございまして、この介護期間中の保険料免除の問題につきましてはよくよく慎重に考えるべき問題じゃないかと思っております。
  68. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 時間がないので、介護休業時の被保険者の保険料免除あるいは企業の方の保険料免除についても今後とも検討していただきたい、そのように申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  69. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  70. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、内藤正光君が委員辞任され、その補欠として櫻井充君が選任されました。     ─────────────
  71. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 休憩前に引き続き、国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  国民年金保険料凍結は、現下の深刻な消費不況、国民生活の実態からすればこれは当然のことだ、さらに九四年の衆参両院での附帯決議にあるように基礎年金に対する国庫負担を二分の一に引き上げを先送りすることなく保険料の引き下げこそ今行うべきだ、その立場で質問をしたいと思います。  なぜ保険料の引き下げを主張するのかということですが、それは特に低所得者にとって年金保険料を初めとする社会保険料負担が極めて重いということであります。  お配りした資料を見ていただきたいのですが、これは納税者の給与階級別の税負担と社会保険料負担との比較のざっとした表であります。これを見ていただくと、年収二百万以下の給与階級では社会保険料が五倍、四百万以下では二・七倍と重いわけであります。一千万円以下まで行っても一・三五倍ということになっていて、一千五百万というラインになってようやく税負担の方が重くなってくる。給与所得者のほとんどである九三・七%が税負担よりも社会保険料負担の方が重い。特に低所得者ほど重くなっているということが見てとれるのではないかというふうに思います。  そこで大臣にお聞きしますが、これを見れば所得の少ない者ほど税負担に比べて社会保険料負担が重い、このことは認められるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  73. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 配付資料のおおよその傾向はこのとおりだと存じます。  なお、租税負担と社会保険料負担の違いでございますが、租税負担の方は所得税を中心に考えておると思いますけれども、これは所得の多寡において累進税率を課しておるという点が一つあります。ところが一方、社会保険料の方は標準報酬月額というものを設定いたしますので、所得の多寡は反映されますけれども定率負担で、今でいいますと厚生年金では一七・三五ということでございますので、やはりこういう現象が起きる可能性は制度としては十分あり得るというふうに思います。  改めてこの委員の作成された資料を拝見しまして、確かに税と社会保険料負担というのは、ある意味では性格を異にしていますが、しかし同時に同じような側面もありますから、注目していかなければならない資料だなというふうに思います。
  74. 小池晃

    ○小池晃君 この社会保険料の比重が大きい中低所得者のためにも年金保険料の引き下げで負担軽減に努めるべきではないか。九四年の国会決議にもあるわけですから、国庫負担を直ちに二分の一に引き上げ年金保険料を引き下げることと。これは、特に中低所得者の家計を温める効果が高いと思うんですが、今こそ行うべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  75. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 厚生年金制度というものは、なるべく中期的な視点に立ちまして、展望が持てる安定した制度であることが必要でございます。そのためには、やはり負担と給付の関係がバランスのとれたものであり、そして多くの方々が納得のいくものでなければなりません。  そういう意味で、今回保険設計をさせていただいておりますが、保険料につきましては、私ども、ことしは凍結をいたしております。今御審議を願っておるのは国民年金でございますが、厚生年金の方も十月に予定されていた引き上げ凍結いたしました。これは主として経済情勢を勘案しての話でございますが、そのようにさせていただいております。  今後とも、この年金制度を長期的な制度として持続するためには、やはり一定の年金保険料を納めていただくと同時に、給付の方もそれに即応して均衡のとれたものでなければなりません。特に、これから少子高齢化を控えておりまして、年金受給者がどんどんふえてまいりますから、今回の改正のように年金保険料もある程度上げることを前提にして設計する、給付の方も給付水準の調整をせざるを得ないというようなこと、あるいは年金支給開始年齢の引き下げ等の問題も御提起申し上げようとしておるところでございます。
  76. 小池晃

    ○小池晃君 今後の制度改定の問題は後でお聞きをしたいと思います。国庫負担引き上げを直ちに行って保険料の引き下げをやるべきだということを主張した上で、国庫負担引き上げ財源の問題についてお聞きをしたいというふうに思います。  大臣は、三月十六日の衆議院の厚生委員会でこの財源について、経済成長による税収増、行財政改革、それから直間比率見直し、すなわち消費税率の引き上げということをおっしゃりたいんだと思うんですが、こういったものを列挙されております。国庫負担二分の一引き上げ財源としていわゆる安定した財源と言われていますけれども、今挙げたこの三つが想定されている主なものであると考えてよろしいんでしょうか。
  77. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 基礎年金を三分の一から二分の一にいたします場合に、本年度で申しますと二兆二千億くらいかかります。したがって、毎年これが拡大して継続して負担しなければなりませんので、そういったものでなければなりません。  したがって、今回御提案申し上げようとしている厚生年金改正等におきましては、基礎年金部分については安定した財源を確保した上で別に法律の定めるところによりまして三分の一から二分の一にする、しかも期限は次期再計算期の二〇〇四年までの間にということですから、なるべく早くやりたいと思っております。  ところで、一体安定した財源とは何かという御質問でございますが、私としては、これは総理も抽象的に国民的な合意を得て財源を確保するというように言っておりますが、衆議院でのいろいろな論議の過程の中で、やはり経済成長が今みたいな低成長であると自然増収も上がりません。一定の租税弾性値を前提としても税収が上がらないことにはこれはどうにもなりません。  それからまた、小さな政府とか行政改革その他の点もこれは無視できません。それからまた同時に、今、経済対策としてもやっておりますが、税制のあり方として所得税あるいは法人税等の直接税、さらには相続税の引き下げ等も取りざたされておるこのときに、やはりこれだけの負担あるいはほかの財政需要を賄うためには直間比率の是正の問題も排除はできませんので、それらを含めて総合的に勘案して安定した財源が得られたら実施しましょうということを申し上げておるところでございます。
  78. 小池晃

    ○小池晃君 総合的にという意味、これはどういうことなんでしょうか。三者全部そろっていないとだめだということなんでしょうか。それとも、消費税アップというのは必ずその財源として含まれていないと実現は不可能であるというふうにお考えなのかどうか、お聞きしたいんです。
  79. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 現在こういう経済状況でございますし財政状況でありますから、今直ちに引き上げはできない。したがって、この財源を確保しなければなりませんが、これはいろいろな条件によって生まれてくるものでございますから、今、一義的に消費税でやるとかどうとかいうことを申し上げているわけではございません。  しかし、二〇〇四年までの間にはそういったことを全体として含めて総合的にと申します以外にないわけですが、いろいろな条件を総合的に判断して決定してまいりたい、こういう趣旨であることを申し上げておるわけでございます。
  80. 小池晃

    ○小池晃君 今お答えにあったように、消費税ありきということではないが、総合的にということで、その中の一つ消費税ということも考慮せざるを得ないということですが、九七年の消費税の増税がこれだけの今の消費不況の元凶となっているわけであります。そして、景気回復のために何が一番必要かとどこがアンケートをやっても、第一に答えられるのは、消費税を三%に戻せという声が今でも一番多い。それなのに、消費税の減税どころか逆にその税率を引き上げる。こういうことは、全く国民の生活実態を無視した議論ではないかと言わざるを得ないわけであります。  二〇〇四年までに消費税率を引き上げる、こんなことは到底国民の理解を得られるものではないだろう。消費税率の引き上げのみを国庫負担引き上げ財源というふうに考えている限りは、逆にその国庫負担引き上げ自体もできないという事態に陥りかねないのではないかというふうに考えます。  私は、国庫負担二分の一の引き上げ財源として消費税の税率引き上げを充てることは断じてすべきでない、また現実問題としてもこれは不可能であると思う。消費税引き上げ国庫負担引き上げ前提とする限り、国庫負担引き上げもできなくなる危険性をはらんでいるのではないか、そのように考えるのですが、大臣いかがでしょうか。
  81. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私は、衆議院の委員会におきましても、消費税引き上げをやるということを申し上げてはおりません。しかし、直間比率見直し問題等が財政構造改革上の問題からしても避けられない時代が、すぐにはできませんが、やがてやってくるだろうということもこれは否めない事実じゃないかと思うんです。今回のこの三分の一から二分の一は、私どもは直ちに消費税で賄うということを考えておるわけではございませんが、しかしそういうことも含めて総合的に検討する必要があるということを今の段階では申し上げておるわけでございます。  財政赤字によってこれを賄うというようなことは、毎年毎年これは増嵩していく経費でございますから、また制度的な補助になりますから、到底そういうことは考えられないわけでございまして、総合的に考えていく。最近は租税弾性値も落ちておりますが、しかし経済がよくなれば税収もある程度上がる。経済が悪くなれば下がるということもありますけれども、こういう構造的な現在のような状況というのはそんなにいつまでも続いては困るし、また続けてはいけないと思うわけです。  それからまた、いろいろ言われるような行政改革その他、小さな政府を目指す努力もこれからさらにされなければなりません。その上で、さらに将来の財政構造改革をどうしていくかというようなことも否定できないわけでございまして、それらを含めて総合的にと、こう申し上げておるわけでございます。
  82. 小池晃

    ○小池晃君 財源として消費税率の引き上げをやれる時期は、すぐにはそれはできないだろう、やがてやってくるだろうというふうにおっしゃいましたが、私はやがてもやってこないだろうというふうに考えます。  そういうことで、すぐにはできないと率直におっしゃいましたけれども、そういうことであるならば国庫負担の二分の一の引き上げ、これはできるだけすぐやる必要があることでございます。やはり年金制度維持して国民の将来不安を取り除くためにも速やかに行うべきであり、その財源として消費税ということを考えるのではなくて、大型公共事業のむだ遣いあるいは銀行に対する公的資金の投入、こういったものをやめれば十分財源はあるわけですから、そういう道こそ選ぶべきだということを指摘しておきたいというふうに思います。  その上でお聞きしたいのは、果たして現在のような年金積立金が必要なのかという質問であります。  現在の積立金の正確な数字をお聞かせ願いたいんですが、厚生年金厚生年金基金代行部分国民年金それぞれ、それから合計について数字をお願いします。
  83. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 平成八年度末におきます積立金の額を申し上げますと、厚生年金で約百十八兆五千億円、国民年金で約七兆八千億円、基金代行部分で約二十四兆四千億円であります。この三つを合計いたしますと約百五十兆七千億円となります。
  84. 小池晃

    ○小池晃君 九六年度合計で実に百五十兆七千億円という数字が出されました。九七年度も、概算で計算してみると大体百六十一兆円ぐらいになるのではないか、恐らく現在では百七十兆を超えていることは間違いないだろうというふうに思うわけであります。  さらに、これにはいわゆる国庫負担の繰り延べ額、戻っていない部分がかなりあって、平成十年度末、九八年度末で二兆七千九百億円というふうにお聞きしました。その他もろもろ、年金会計に戻っていないお金が大体五兆円はあるだろうという話であります。また、共済年金国民年金基金上乗せ部分など準公的な年金積立金、全部合計したものを社会保障制度審議会の事務局が出しておりますが、これが九六年度で二百十七兆二千六百十億円、これにさらに国庫負担の繰り延べ分が加わると今の積立金の数字になるのではないかなというふうに思います。  今後の推移についてお聞きしたいんですが、年金の受給者に対しての被保険者が最も少なくなるその時期は、厚生省の試算では二〇五〇年ということになっているようなんですが、その時点での積立金が総額で幾らになるのか、それからそれが何年分の積み立て度合いになるのかについてお聞かせ願いたいと思います。
  85. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 今回保険料凍結しているわけですけれども、これを五年後に凍結解除する、そしてそのときに国庫負担を二分の一にする、こういう前提で計算いたしますと、厚生年金の場合、二〇五〇年時点で積立金が名目で四百五十兆円、十一年度価格で百二十五兆円、積み立て度合い、何年分に相当するかということでございますけれども、これが三・四年分でございます。  それから、二〇〇四年時点で国庫負担引き上げをもし行わないということで三分の一国庫負担がずっと続く、こういう前提でいたしますと、二〇五〇年時点で厚生年金積立金は名目で三百九十二兆円、十一年度価格で百二十一兆円、積み立て度合いが三・三年分でございます。  それから、同様に国民年金の場合でございますけれども、二〇五〇年時点で国庫負担三分の一のケースが名目で四十二兆円、平成十一年度価格で十三兆円、支出の二・八年分でございます。これが国庫負担二分の一ということになりますと、それぞれ四十一兆円、十三兆円、二・六年分、こういう数字になります。
  86. 小池晃

    ○小池晃君 この厚生省の計算でも、最も受給者比率の高くなる、すなわち最も負担が重くなる二〇五〇年でも、今お話があったように大体約三年分、厚生年金代行部分も含めての数字だと思うんですが三・五年分にもなる。なぜこのような積立金が最も負担が厳しくなる時期においてすら必要なのか、この理由をちょっと説明していただきたいと思います。
  87. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 我が国は少子高齢化が非常に急速に進むわけでございまして、そのピークが二〇五〇年、こういうことが人口推計の方で見積もられているわけでございます。そういう中で、現在の年金の抱える一つの大きな問題というのが世代間の負担の不公平ということでございます。これから段階的に保険料引き上げていく、そういうことになりますと、将来の現役世代というのがどんどん負担が重くなるということでございます。  そこで、こういった世代間の不公平というのを少しでも是正する必要があるわけでございまして、そのために保険料を前倒しで上げていく、そして積立金の運用収入を活用いたしまして、将来の保険料負担を抑えるということでございます。  今回の改正案では、最終保険料を将来にわたって二七・六%で据え置くということにしておるわけでございます。これは今申し上げたような積立金の運用収入を活用して保険料を軽減する、こういうことで二七・六%におさめられるわけでございます。  これを、積立金を保有せずに完全賦課方式といいますか、そのとき必要な年金をそのときの保険料で納めるということになりますと、二〇五〇年時点で月収ベースで約三四%に保険料が上がってしまうわけでございます。つまり、高齢化のピーク時におきまして、この三四%と二七%の差約六%でございますけれども、六%最終保険料を鋭意引き下げる効果があるということでございます。  そういうことで将来の現役世代の負担を過重なものにしない、こういうことで積立金を活用しておるというわけでございます。
  88. 小池晃

    ○小池晃君 今、二〇五〇年で三四%の保険料率を六%引き下げられるんだというお話でありましたが、これはすぐに完全賦課方式にした場合と比較しての話ですね。ですから、おかしな話だと思うんですよ。今の百七十兆円の積立金は全く捨象した議論じゃないですか。それを踏まえて計算していない。  大体、国庫負担も三分の一、運用利回り四%での計算であります。我々は、積立金をいきなりゼロにしろと言っているわけではないのであります。ゼロでいいとは言っていない、計画的に取り崩せというふうに言っているわけでありまして、今のは全く説明になっていない。  今積み立てておけば将来の保険料を下げられるというのは、これは当たり前の話なんです。その結果、現在の保険料引き上げられている、あるいは給付が引き下げられていることが問題なんだ、このままでよいのかという問題であります。それは、もう百年分積み立てればもっと下げられるという話になるわけです。世界でもこのように積立金を持っている国はない。  さらに、消費が振るわなくてこれだけ貯蓄から消費へと政府を挙げて政策をとっているときに、なぜこういう公的年金財政の黒字を出すような積立金を毎年積み上げていくようなことが必要なのか。積立金を計画的に取り崩して保険料の引き下げや給付の維持に努めるべきではないか。同時に、それをやりながら国庫負担引き上げなど抜本的な対策を打つべきだ、こういう対策をまともに検討すべき時期に来ているのではないかというふうに考えるわけであります。  局長は、二月四日の全国保険・国年課長会議で、この積立金を引き下げるという議論を、厚生省から見ると目先だけの議論あるいは無責任な議論が少なくないというふうにおっしゃっていますが、そういう無責任なことを言っているわけではない、きちんと計画的に取り崩しながら手を打つべきだということを主張しているわけであります。そういうことについていかがお考えですか。
  89. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 今のお話には幾つかの誤解があったんじゃないかと思います。私は、国庫負担二分の一のケース、三分の一のケース、両方お示しをいたして、それぞれについて今こういった積み立て度合いになるということを申し上げたわけでございます。  それから、二〇五〇年時点で六%の引き下げ効果があると申し上げましたけれども、この二〇五〇年以降も急速に受給者が減るわけじゃございません。二〇五〇年時点でピークに達した後、なだらかに減少する。そしてまた、最終保険料が二七・六%と申し上げましたけれども、これに対しまして、賦課方式でやりますとさらに二%ぐらい保険料が高くなるということでございます。したがいまして、要は二〇五〇年以降もかなり受給者の高原状態が続くということでございまして、これに備えても保険料積立金を保有する必要があるということでございます。  それから、外国で積立金を持っている国が余りないというお話でございますけれども、これは外国と我が国とは高齢化のスピードが違うわけでございます。諸外国では、既にかなりの高齢化に達しまして、それから年金もかなりの成熟度に達しておりますし、保険料も年収ベースで見て二〇%程度。我が国の場合は、月収ベースで一七・三五でございますけれども、年収ベースで見ますと一三・六%ぐらいでございまして、外国と比べますと六%から七%ぐらい低い保険料率で現在やっているわけでございます。  ところが、我が国の場合には急速に高齢化が参るということでございまして、今のまま、保険料を持たない、あるいはこれを食いつぶすということになりますと、世代間の不公平が一挙に高まってしまうということでございまして、諸外国の場合と日本の場合とは加入員とか受給者の実態が違いますので、同じようなことにはならないということでございます。
  90. 小池晃

    ○小池晃君 国庫負担の二分の一、三分の一の問題は、それは積立金のことではおっしゃいましたけれども、料率を引き下げることについては言われていないと思います。  それから、二〇五〇年以降のことをおっしゃいますけれども、その時期の被保険者というのはまだ生まれていないわけですから、それはこれからの少子化対策の中でやはり抜本的に手を打つべき問題なんです。そのことを議論して今の積立金の問題を議論するのはナンセンスだというふうに言わざるを得ない。  ですから、この問題は、本当にまともに検討に入るべきだ、国民に納得のいくような説明をする必要があるということを指摘しておきたい。この問題は、本格的審議の中で引き続き外国の問題なども含めて質疑をしていきたいというふうに考えております。  その上で、もう議論に入ってしまっていますけれども年金制度改正案大綱の中身について若干質問したいと思うんですが、これは結論から言うと、将来世代の負担増と大幅な給付の切り下げということが内容となっております。とても認めるわけにいかない中身であります。法案提出には至っていないけれども、主な内容についてここで質問させていただきたい。  まず、現在年金を受けている人々に直接及ぶ被害でありますけれども、九九年度の基礎年金額の政策改定による引き上げ額、これとその根拠を説明していただきたい。
  91. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 今回の年金制度改正案大綱におきましては、基礎年金額を年額八十万四千二百円、月額では六万七千十七円というふうにすることを考えております。  これは、この五年間、つまり平成六年改正時以降でございますけれども、全世帯の消費水準の伸びというのがほとんどないわけでございます。消費水準の伸びが〇・六%、それからその中で基礎的消費支出の伸びも二・二%ということで、この間の消費水準の伸びというのは非常に低い状態になっているわけでございます。一方、物価上昇率というのはこの間三・一%ということでございまして、消費水準の伸びがほとんどないという状況から、物価上昇率に見合って三・一%の引き上げということで、先ほどお示ししたような年金額に改定をしたいということでございます。
  92. 小池晃

    ○小池晃君 前回、五年前の政策改定では一七・一%の引き上げがされております。それに対して今回は今の御説明のとおりの結果で三・一%だと。全体の消費水準が物価の伸びを下回ったから実質物価スライドになってしまったと。これは当たり前であります。生活を切り詰めているから消費水準は下がっている。これを基準に物価スライドだけにするということであれば、さらに消費を冷え込ませることになるのではないか。  今御説明があったように、昨年が月六万六千六百二十五円、ことしから六万七千十七円ですから、わずか月三百九十二円なんです。そして、これも四十年間毎月毎月一カ月の滞納もなしに払った、そういう最高額の場合でありまして、国民年金の老齢年金の平均年金月額は九七年度末で四万七千五十八円と聞いておりますが、これのアップ額は大体二百七十円ぐらい。  来年四月からは介護保険料の徴収が始まるわけであります。月一万五千円という超低額の年金からも保険料を天引きするという過酷な取り立てが待っている。九七年四月に消費税率が上がって、九月に医療保険の改悪で窓口負担がアップした。これが全部年金生活者の家計を直撃しているわけであります。年金生活者の負担が増大している中で、さらに四月からは介護保険の保険料を徴収される。それなのに年金額は、ほとんどスズメの涙というか、アリンコの涙ぐらいのごくわずかのアップでしかないわけであります。  多くの方は、ことしは五年ごとの財政再計算の年だから少しは上がるだろう、それなりに上がるだろうと期待をされていたと思うんです。苦しい中、辛抱されて頑張ってこられたと思うんですが、そういった中で、政策改定というのであればそれこそ政治判断で、国民生活の実情やあるいは介護保険制度との関連などからいっても思い切って引き上げるべきではないか、そういうふうに思うんですが、大臣いかがでしょうか。
  93. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) この年金保険料引き上げにつきましては、ただいま年金局長から報告のありましたように、中長期的な観点に立って計算をさせていただいております。したがって、それ相応の保険料引き上げ前提とせざるを得ない。特に少子高齢化が急速に進んでまいりますから、そのようなことは避けて通れない。  それから、給付につきましても、やはり給付を維持できるということであれば非常にいいわけですが、年金財政負担と給付の関係が均衡がとれているということはぜひ必要でございますから、今回予定されている改革法案につきましても、いろいろ案がありましたけれども、私どもとしては給付水準の調整を最小限度にしようということでお願いをしようとしております。  そんなことで、いろいろ配慮しつつ、おっしゃるような点は理解できないことはありませんが、何にしてもこれだけの制度を長期的に安定したものとして維持していきたいという配慮からいろいろの検討をさせていただいておるということでございます。
  94. 小池晃

    ○小池晃君 厚生年金で見ても物価スライドのみで〇・六%のアップ、月にして千二百円ということであります。夫婦での生活費というふうに見れば一人当たり六百円、基礎年金引き上げ水準と大差ないわけであります。これも、平均受給額の十七万円余りということで見れば大体四百円ぐらいになってしまうんではないか。今度の年金制度の改定は将来のものだというふうに考えている国民も多いわけですけれども、現実の年金生活者の生活に本当に打撃的な影響を与える、大きな影響が出る問題だということを指摘しておきたい。  それから、現役世代の手取り収入の六割を確保するという問題ですが、法案大綱に書かれていますけれども、これは新規裁定時のみの確保ということだと思うんです。既裁定者については賃金スライド廃止ということになるわけですから、現役世代との収入格差はどんどん広がっていく。六割確保の保証というのは新規裁定時のみでその後は保証しない、既裁定者については今後は保証しない、これからは厚生省はそういうやり方でいくんだということなんですね。そのことを確認しておきます。
  95. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) これから少子高齢化が急速に進むということで、将来の現役世代の保険料負担等が大変重くなっていくわけでございます。そういう中で、この公的年金制度を何とか維持していく、こういう必要があるわけでございまして、そのためには負担についてはある程度上げていかざるを得ないと思います。  それからまた、給付につきましては、これはある程度我慢していただかないと制度自体が長期的に安定した制度として機能できなくなる、こういう心配があるわけでございます。そういうことで、今回裁定をされて、六十五歳以降におきましては物価スライドだけで年金を伸ばしていく、五年ごとの賃金スライドは当分辛抱していただく、こういう制度改正考えているわけでございます。  したがいまして、現役手取り年収のおおむね六〇%、こういう水準というのは確かに今おっしゃられましたように裁定時の水準でございます。その後は物価スライドだけで伸ばしていただく。ただ、永遠に物価スライドだけでやっていきますと現役との生活水準の差が開いていくわけでございまして、これはどこまでも続けるというわけではございません。賃金スライドした場合と物価スライドした場合の格差というのがある一定以上広がりますと賃金スライドを再開してきちんとした年金額を支給する、こういうことも考えておるわけでございます。  ちなみに、諸外国では年金裁定後どういう措置をとっているかといいますと、日本のように賃金スライドも実施する、それから物価スライドも実施する、こういう国は実はほとんどございません。ほとんどの国が物価スライドだけ、あるいは中には賃金スライドだけという国もございますけれども基本的に私どもは両方やっている国はないと聞いております。  そういった点からも物価スライドはしっかり守っていきますけれども、賃金スライドにつきましては厳しい年金財政状況というのを考えてこれはしばらく我慢していただく、これもやむを得ない措置じゃないか、こう思っているわけでございます。
  96. 小池晃

    ○小池晃君 既裁定者については六割保証ということはしないということになります。これは重大な政策変更だと。  それから、外国のことをおっしゃいましたけれども、これは諸外国の賃金体系のあり方やあるいは他の社会保障制度等、全体のバランスを考えなければそんなことは言えませんよ。現役世代の総収入との比較で言えばもっと高いはずです。そのことはいずれまた議論していきたいというふうに思います。  その上で、今度の給付の抑制の問題ですが、報酬比例部分五%カット、それから報酬比例部分だけでこれは八五年改定から見れば計三〇%の引き下げになるわけです。また、六十五歳以降の賃金スライドの廃止がある。そして、報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げだ。全体、こういった一連の改定の結果、モデル世帯のようなものが生涯受け取る年金額が今改定でどれだけ変化するのか、そのことについての試算をお示しいただきたい。
  97. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) これはいろんな条件がございますので厳密な計算をしなきゃいけませんけれども、まだそういうのができておりませんので、非常に大ざっぱな計算でございます。  それを御紹介いたしますと、二〇二五年度に六十歳で退職する夫、これは四十年加入で平均的な給与を受けていらっしゃる、この方とその奥さん、夫と同年齢で専業主婦、こういうことで今回の制度改正が完全に実現いたします二〇二五年時点で新規裁定をされた、こういった方をモデルにとりまして、生涯に受け取る年金額が改正前と改正後でどう違うかというのを、簡単なモデルを使って試算したものでございます。  その結果によりますと、改正案の場合は生涯の年金額が四千三百万円、これは現行ですと五千三百万円でございますので、総額で見ますと二割程度減少するということでございます。
  98. 小池晃

    ○小池晃君 大変な数字なわけであります。私も計算してみたけれども、大体一千万を超える数字。今回も一千万を超えると。さらに、これ以外に遺族年金の分もあるはずなんです。遺族年金の支給減の影響というのは計算がなかなか難しいようですけれども、妻の遺族年金、遺族厚生年金の賃金スライドの廃止、それから五%カットの影響がこれに加わるということであります。  今回の改悪というのはこういう数字なんだと。生涯受給年金が一千万ダウンする、これに遺族年金分が加わる。その上、既に決まっている基礎年金部分の六十五歳支給化によるマイナス額、これが大体四百万ぐらいあるはずです。ですから、合計して実に一千五百万円もの年金が、もう既に決まった部分を含めて、これからやられる改悪の結果減少することになる。  私は、実は二〇二五年に六十五歳なんです。ですから、私以降の世代というのが今計画をされている諸改悪の制度をすべて丸ごと受ける世代になるわけです。ですから、現在価格にして私以降の世代というのはこれだけの被害を受けることになるんだと。これは大変な問題ではないか。このような大改悪は、まさに国民の今の将来不安をかき立てるものではないか、年金に対する不信をあおるものではないかというふうに考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。
  99. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、年金局長が仮定の計算例をお示ししたわけでございます。絶対的なものではないように私も思いますが、いずれにしても給付水準の調整はやらざるを得ません。しかし同時に、少子高齢化が進んでまいりますと、やはり年金受給者の人数も多くなりますし、また年を追うて物価スライドだけでもかなり年金は増嵩します。そういうことを考えますと、やはり負担と均衡の関係をきちっとしておかなければなりませんので、私どもとしては今回の改正、大変中長期的な、特に中期的な改革だと存じますが、なるべく少子高齢化に対応するのに、余り急激な変化を来さないで制度を持っていこうという配慮でやっておりますので、累積した給付額の生涯受給額というようなことになりますと、どのくらい年金受給されるかというような想定が全部ありますので一概には言えないと思いますが、とにかく五%の給付水準の調整はお願いするということだけは今度提案させていただくつもりです。  そんなことをいろいろ考えますと、確かに今の給付水準よりも将来の人たちが下がる可能性は若干否定できませんけれども、しかしそれにしてもこれは国家のやる所得保障の年金でありますから、これが少子高齢化の実態を踏まえてある程度調整されるにしても、こういうことがきちっと決まって、若い人たちが、ああそういうものかということで、それはもうゼロになることはないんだなとか、あるいは半減することはないんだなというようなことがきちっとしていくことはとても重要なことです。私どもは、それを最小限に抑えて、五%だけの削減にとどめておこうということであります。
  100. 小池晃

    ○小池晃君 もう最後にしますが、五%じゃないんですよ、今あったように。二〇%減るんですよ。この一千万という中のかなりの部分は報酬比例部分を六十五歳にした分の影響が極めて大きいんです。ですから、五%という議論は通用しない。ゼロでなければ安心できるなんてそんな話じゃないですよ。現役世代の手取り総報酬の五〇%ですね、大体。こういう想定になっていると思うんですが、これでいいというほど国民も若い世代も甘くないと。このような大改革をそのまま国会に提出することなど到底許されるものではないというふうに考えます。  現在、法案要綱で打ち出された年金制度改定は全面撤回すべきだ、そして国庫負担を速やかに二分の一に戻す、積立金を計画的に取り崩すことによって保険料の引き下げと給付の充実に努めるべきだ、そのことを今やるべきだということを強く求めて私の質問を終わります。
  101. 清水澄子

    ○清水澄子君 社民党の清水でございます。  先ほどから質問があるんですが、私もあえてお尋ねしたいのは、今回のこの国民年金改正案というのは、その制度の持っている矛盾とか基本的な改革ではなくて保険料凍結案であるわけですけれども、これは何年まで続けていかれますか。
  102. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今回お願いしているのは国民年金保険料凍結ではございますが、これは厚生年金全体の凍結セット考えておりまして、こちらの方は抜本改革といいますか、改革案をこれから提案して御審議をお願いするわけですが、それの一つのバランス上、国民年金保険料も四月から、法定されておりますけれども、その引き上げ凍結しようということでございまして、バランスのとれたものであるということ。  それから、凍結はいつ解除できるのかというような点は、これは二〇〇四年までの間に、先ほど来議論のありますように、基礎年金国庫負担三分の一を二分の一にすること、そして同時にそれと同時期を目標にして凍結解除していくということによって対応しようということでございますので、それじゃ一年でどうなるのか、二年後にどうなるのかというようなことを、今確たることを申し上げるわけにはまいらないということがございます。
  103. 清水澄子

    ○清水澄子君 昨年の十月十五日の参議院の予算委員会では、凍結も二分の一引き上げ考えていないというお答えがありました。そして、ここの国民福祉委員会ですが、昨年十二月三日に、私の基礎年金国庫負担割合二分の一への引き上げを求めた質問に対しまして、大臣は新たな財源確保のための具体的な方法と一体として考えていかなきゃいけないとおっしゃったはずです。それから、しかし、この問題は将来の検討課題であって、総合的に考えていかなければなりませんという御答弁をいただいたわけです。将来の二分の一への引き上げには賛成しつつ、そして今回改正での引き上げはできないという、そういう点で具体的な実現時期については明言されなかったわけなんです。  今度、二月二十六日に厚生省が取りまとめた年金制度改正案大綱には、今おっしゃった「二〇〇四年までの間に、安定した財源を確保して、別に法律で定めるところにより、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」というふうにおっしゃったわけです。そういうふうに私たちは大綱の説明を受けました。それで、三月五日に今度また大綱が修正されまして、今度は「安定した財源を確保し、」と。前は「確保して、」とあって、今度は「確保し、」となったんですが、この一連の整合性というのはどのようにとらえたらよろしゅうございますか。
  104. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御指摘のような議論の経過をたどったと思います。私もそのような答弁を申し上げたように思いますが、これは法律案として閣議決定を受けた段階で最終的に固まるわけでございまして、それまでには政府与党の中で調整が行われます。そうした結果を踏まえて、その時々の流れに従って申し上げてきているわけで、基本的には私の考え方は変わっていないんです。  私も、当初から、全額税方式は無理だけれども、二分の一くらいまでは考慮すべきことかなと思いつつも、それも財源的に恒久的な、二兆二千億以上の財源を毎年確保していかなくてはなりませんので、かなり大きな課題であるという意識を常に持ちつつこういう決定にさせていただいたわけであります。  「安定した財源を確保し、」あるいは「安定した財源を確保して、」というような問題は、これは与党内の詰めで法律上どう表現するかというような議論の一端があらわれていると思いますけれども、最終的にはこれから詰めさせていただいて、基本的には現在申し上げているような形で法案をつくって御審議をいただきたい、こう思っておるわけでございます。
  105. 清水澄子

    ○清水澄子君 では、その「安定した財源を確保して、」というときの財源は何が想定され、「安定した財源を確保し、」といったときの財源は何が想定されているんでしょうか。
  106. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これは、てにをはみたいな話になりますけれども、私どもとしては実態的にはそう大きな変化はないと感じております。  ただ、文脈上「して、」と言うのか、「し、」と言って切るのか、そういう議論もあったわけでございますけれども基本的には実態的にそんなに変わったものではございません。
  107. 清水澄子

    ○清水澄子君 単なる文脈上ですか。そこでは何か消費税引き上げとか、そういうふうなことは全然考えられていないんですか。
  108. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) そういうことは一切ございません。特定の財源に言及して、それがあの表現につながってきているというものではありません。
  109. 清水澄子

    ○清水澄子君 私ども社民党は、年金制度改革の最大の課題というのはやはり国民年金制度基礎年金制度の空洞化をどうするかという問題だと思います。  現在、本来国民年金に加入すべき者のうち、既に三分の一が未加入とか未納とか滞納とか免除者という非常に深刻な事態が生じているわけですが、大臣はこの現状をどのように認識し、改革をしなければとお考えですか。
  110. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 国民年金はおおよそ二千万人弱でございますが、そういう大きな単位の保険集団でありますが、国民年金の約三割、つまり六百万、免除者は政策的免除でございますが三百五、六十万あるでしょう。その残りが未納者と未加入者になっております。これが減っていくことが望ましいのでありますが、若干ずつふえてきているという現状は、私どもとしては看過できないと思います。したがって、未加入対策、未納対策等は徹底的にやった方がいいと思っております。  それからもう一つは、今度の改革におきまして、二分の一の保険料負担で給付額をある程度逓減したものを差し上げるという制度をとったらいかがかというようなこと、あるいは学生の保険料納付の猶予という制度も導入するというようなこともあわせてこの制度維持してまいらなければならぬ、こう思っておるわけです。
  111. 清水澄子

    ○清水澄子君 そうしますと、今回のこの法案財政再計算における試算の基礎数は、未納者は織り込んでいるわけでしょう。免除者は織り込んでいない。しかし、未加入の人とか、そういう意味で結局この国民年金における三分の一の空洞化の実績を前提としてこの基礎数が計算されているんじゃないんですか。
  112. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 財政計算上、未加入率、滞納率、免除率、これをどのように置いているかということでございますけれども、今般の改正におきましては従来の方法、従来といいますと平成六年財政再計算でございまして、このときは未加入者というのは将来的には住所不定等の五十万人ぐらいに減少するだろう、それから滞納、免除につきましては直近の実績が将来も維持されるだろう、こういうことで前回見込んでおりました。  今回は、前回のそういう見通しに加えまして、半額免除制度ですとか学生の納付特例制度、こういったものを盛り込んでおりますので、さらにこういった影響も織り込んで推計したわけでございます。
  113. 清水澄子

    ○清水澄子君 国民年金が創設されたときの国会論議を読んでみましても、やはりこのやり方は非常に問題がある、職業も所得も正確に把握できないそういう人たちを対象にして保険料徴収というのは無理があると。だから、これは税方式というものがやはり議論されていて、そして厚生省もそれらの問いに対して、保険料納付率は七割行けば大成功だとその当時も答弁しておられるんです。ですから、三分の一が空洞化するのは当たり前という想定の上でやってこられたんだと思います。  しかし、そういうふうに当初から問題になっていたこの制度を、また今後もそれを基礎にして続けていかれるということは、これは年金制度基本が崩れるという意味で大変私は危機的な状況にあると思います。  そこで、私ども社民党では、基礎年金は老後の所得保障のナショナルミニマムと位置づけておりますので、税方式に移行するということを主張しておるわけです。  これをそのように実行すれば、前にも申し上げたと思いますが、未納者とか未加入とか第三号被保険者とか学生とか、いわゆる低所得者をめぐるいろんな問題もそういう税方式への移行によって解決していく。また、諸外国でもやはり基礎年金部分は皆年金に、ユニバーサルペンションとして税方式で運営されているところは幾つもあるわけですから、その点につきまして大臣基本的なお考えをぜひお聞かせください。
  114. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 委員のおっしゃるように、未加入とか未納とか、あるいは先ほども議論があった障害年金をもらえない人たち、こういったいろいろな課題、あるいはさらに広くは第三号被保険者問題まで及びます。税方式でやりますと、確かに負担がございませんから、未納とか未払い、未加入というような問題は全然なくなるわけです。これはもう当然です。しかし、私どもは、それだけの理由をもって国民年金を税方式にすることについてはいろいろな角度から問題があるということは、かねて申し上げているとおりでございます。  それは、社会保険方式をある程度貫いた方がいい、また莫大な財政負担も要する、その税財源は一体どうするのか等々かなり問題もございます。それからさらに、この国民年金はそれだけで独立の領域ではございませんで、申し上げるまでもなくサラリーマン等の基礎年金と対になっているわけです。  したがって、報酬比例部分との問題の関係とか、いろいろ検討すべき課題が多過ぎますので、私どもとしては、今の制度を直すのは、例えば基礎年金は二分の一、半分くらいまでが限度で、とにかく社会保険方式を維持したいという建前で、今回法律上そのことを、時期は二〇〇四年までということですが、明記させていただくつもりでございます。  そんなことを考えておりまして、未納、未加入等々の問題だけに焦点を合わせれば、税方式になればすべてそれは解消します。しかし、そのことは承知の上で、なおかついろいろの資源配分としてそういうことがいいのかどうかまで含めて私どもとしては全体的な立場検討申し上げておる、こういうことでございます。
  115. 清水澄子

    ○清水澄子君 この問題についてはまたいずれ本体の議論のときに申し上げたいですけれども、それは財政の使い方の問題があると思います。先ほどからも積立金の問題もありますし、そういう点では全然今おっしゃる答弁では納得できないという考えを持っております。  次に、私どもが要求しているこの基礎年金の税方式については、総理もそうおっしゃったわけですが、給付と負担関係が明確な社会保険方式の長所が失われるのではないか、そして年金の性格が生活保護と類似のものに変質するのではないかというような答弁がありました。  私は、この三分の一の空洞化の現状とか第三号被保険者の問題をそのままにして給付と負担関係が明確などと言えるのかどうか、そしてまた生活保護と類似のものに変質するというのは一体どういうお考え方でおっしゃっているのか、その点につきましてぜひ御答弁ください。
  116. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) その税源が所得税であれ法人税であれあるいは消費税であるかもわかりませんが、税金でもって全額所得保障をする、そういう前提に立つわけでございますけれども、そうなりますと、今税金でミニマムな所得保障をしているのは福祉手当の一部でありますとか、あるいは生活保護者の生活費、そういうことが一方あるわけです。  したがって、どうしても税金で所得保障をするということになると、私も極端な話とおっしゃっておしかりを受けるかもしれないけれども、総理大臣までそんな定額をいただけるのか、税金で全部賄うものを。私ども会議員といえどもそういうものを本当に資力に関係なくもらっていいのか、所得の関係なくもらっていいのかという問題がございます。そこで、やはりどうしても出てくる問題は、所得の高い人は遠慮していただきたいというようなことになる可能性は十分あります。  そうなると、国民感情としてその理解が得られなければ、そういうことになっていきますと、最終的には税金による所得保障でございますから、現存しておる制度としては生活保護世帯のようなミニマムな所得を全額税で保障する制度が片やあるわけですから、それに限りなく近づくのではないかということを申し上げておるわけでございまして、決して生活保護がどうであるからという価値判断の問題じゃありません。そういうことになる可能性があるし、国民的な理解がなかなか得られないんじゃないかなというように思うわけです。
  117. 清水澄子

    ○清水澄子君 生活保護というのは、これは生活に困窮するすべての国民に対する最低限度の生活を保障するという生活保護法の目的というのは明確にあります。それと年金というのは全然違って、これは老齢とか障害または死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯で防止して健全な国民生活維持及び向上に寄与することを目的とするとちゃんと法律にそう書いていて、生活保護法とは全然違います、年金の趣旨が。基礎年金を税方式にするということは政策的に考えることで、これを生活保護と同じだという考え方の方がむしろ厚生大臣としては私は間違っていると思います。全然趣旨が、目的が違います。  そして、所得の高い人には年金を受給した後、そこからまた税金で返してもらうこともできるわけで、いろいろ政策のやり方はあります。ですから、そういう意味で私はこういう何か生活保護ということに対して非常に間違った考え方をここで示されることは撤回していただきたいと思います。  次に、またもう一度基礎年金財源に戻りますけれども、これは何を充てるのかというのは、何か財源を確保してとか言われますと、それがいつでも消費税との関係で出てくると思うんですけれども、私ども消費税だけに限定するというんじゃなくて、本来一般財源とそれから先ほど積立金やいろんな問題を考えていくということとのミックスであるべきであって、その点でももうあと五年後の二〇〇四年という間のことで、何もまだ目標なり政策的考え方もないというのはとても私は無責任だと思います。だから、考え方というものをぜひお示しいただきたいと思います。
  118. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) まず最初の、先ほど御質問ございました生活保護と年金は性格の違うことは私も重々承知した上で、全額税でやった場合にはそういう可能性があるのではないか、あるいは税負担国民にお願いしてその財源でやるわけですから国民的合意が本当に得られるかどうかという、そういうことで申し上げているわけでございまして、全く同じであるということを申し上げているつもりは全くございません。  それから、安定した財源のめどもつかないのにどうだという御議論、これはなるほどそのとおりでございます。しかし、今の経済状況からして、それでは十一年度から三分の一を二分の一にするのに二兆二千億かかります。平成十二年度にはさらにそれが二兆何千億かに膨れていきます。そういう恒常的なものを私どもとして赤字財政赤字国債の増発によって賄うというのは、一過性のものであればともかく、恒常的なものでございますからなかなか困難である。  しかし、さはさりながら三分の一を二分の一にするということもまた保険料引き上げざるを得ない状況の中では非常に考慮すべき点かなというようなことを考えて、二〇〇四年までにはとにかく早いうちに財源を確保して二分の一にしよう、そのときには同時に凍結解除してやっていけば保険料引き上げ等も緩和されるわけです。そういうことを描いてセットをさせていただこうとしているわけでございます。  ただ、年限が来年とか再来年とか明確になっていない点は、今後の財政事情あるいは経済事情等によって違ってくるわけでございますので、その中で鋭意努力をして、そしてその方針を実現できるようにしていきたい、こう考えておるところでございます。
  119. 清水澄子

    ○清水澄子君 だけれども国民は非常に不満と不安を持っております。一方では従来型の公共事業にはどんどんお金が出ていく。そして、この基礎年金を三分の一から二分の一に引き上げても二・二兆円を加えることでそれが実行できるということがわかっていても、その二・二兆円ということになると莫大なお金がかかりますということをお答えになって、その他のところには莫大な想像を絶するような予算の使い方がされているというところに、国民はやっぱり納得をしていないわけです。  そして、消費税の増税にだけ財源を求めるという、そういうふうには今おっしゃいませんでしたが、それは絶対にそういうことはなさらないということを私は約束してほしいんです。  そして、先ほどからも議論がありましたけれども、所得課税における不公平な問題、それから法人税等の問題も解決しなければならない、そういう財政や税制の構造的なものを解決する、そういう中で国庫負担財源というのはみんなあるということを思っているわけですから、そこを明確に今後やはり真剣にすぐ検討を始めていただきたい。いかがですか。
  120. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) よく今の景気対策の中で重視されております公共投資等の支出につきましていろいろ御批判をいただいておるわけですが、これは景気対策としての手法で、私どもはそれが有効であるということを考えて、今の構造的な景気対策に対して需要面から景気回復を図ろうという手法でありますので、この点は政策の価値判断を若干異にしていると思います。  私どもとしては、これは毎年それだけ行っていくわけじゃなくて、景気回復するための一つの大きなてことして考えておるわけでございますから、資源配分としては適切なものでないかというように思っておるので、それを充てるというようなことは考えておりません。  したがって、限られた資源の中で公債発行にも頼らざるを得ませんし、そういう中で現実に毎年毎年継続的に支出を要請される基礎年金部分の増額について、やはり安定した財源をとるということは絶対必要です。  そこで、私は申し上げているんですが、まず前提条件は、構造的なこの不況を脱してプラス成長に早く持っていくということがぜひ必要だと思うんです。経済のことですから、それが回復したからといって永久に続くものでもないことは承知しておりますが、そういう基盤ができませんと、今のマイナス構造でありますと到底いろいろの施策が思うように進みません。したがって景気回復がまず第一。  それから、行革も言われているように小さな政府を目指そうということで、いろいろ政府でも今、けさも行政改革の規制緩和その他をやっておるわけですが、そういうことが必要であるし、それから同時に、委員の御指摘のように、法人税所得税の減税を徹底的に行えばどうしたって財政構造、税制構造を見直すという問題に逢着せざるを得ないと思うんです。そういうことまで含めて私ども考えようということでございまして、ただこの基礎年金を三分の一を二分の一にするためにのみ消費税を上げるというようなことは、現在のところ考えておらない次第であります。
  121. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、賃金スライドを私はやっぱり維持すべきだという考えです。  今回の改革では、賃金スライドを凍結して、これまでの総合勘案方式が放棄されようとしているわけですが、来年四月一日から介護保険制度が導入されますから高齢者も第一号被保険者として保険料が賦課されるわけです。年金からの天引きになったときに、現在のこういう年齢の皆さんたちの受け取っている年金というのはとても額は少ないわけですから、高齢者の可処分所得というものを考慮すべきです。そして、現役とのバランスのとれた給付水準を私は確保すべきだというふうに考えます。そして、大臣には絶対賃金スライドを維持するということを私は求めたいわけですが、今度の法案はそれをしないとなっているんです。  そこで、前に私ども厚生省から説明を受けたときには、将来、物価スライドで改定した額が八〇%を下回るときには賃金スライドを行うと言っておられましたね。今回は数字はなくなっちゃって、賃金スライドを行ったときと物価スライドを行ったときとの額の乖離が過大にならないようとなっているんですが、乖離というのは一体何%ぐらいを考えていらっしゃるんですか。
  122. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 乖離幅の問題でございますけれども、賃金スライドをずっと実施していった場合と物価スライドだけで延ばした場合の差が二〇%開いたら賃金スライドを再開する、こういう考え方を当初大綱案でお示ししておったわけでございます。  この問題につきましては、賃金スライドといいますのは、実は法律上は、賃金スライドをしなきゃいけないんだとか賃金スライドをするんだとか、そういった条文はどこにもないわけでございまして、五年ごとの財政再計算のたびに過去の報酬を現在時点で再評価することによって結果的に賃金スライドを実現する、こういう手法をとっているわけでございます。つまり、法律上は五年ごとに判断をしてそのたびに決める、これが賃金スライドの決め方でございます。そういうことからしますと、二〇%乖離するというのは二十年以上かかるわけです。今の物価とか賃金とかこういったものを前提といたしますと随分先の話でございまして、そういった先のことまで今の時点で法律上明確にする必要はないんじゃないか、こういうことで大綱から削除しております。  ただ、私どもが将来の保険料を推計します場合の前提といたしましては、この乖離が二〇%になりましたら賃金スライドを再開する、そういう前提で将来の保険料を算定しているわけでございます。
  123. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 時間が来ておりますから、手短にお願いします。
  124. 清水澄子

    ○清水澄子君 それでは、最後に一つだけ。  無年金障害者の問題についてはいろいろ御質問もあるわけですが、これは九四年の年金法の改正のときに次の財政再計算期までに検討するとあったわけですね。それがまた今後も検討すると延ばしていらっしゃるんですが、これは絶対にいつまでにやるということをここでお約束いただきたい。そのことをぜひ大臣、お願いいたします。
  125. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 附帯決議の問題であろうかと思いますが、無年金障害者、それから障害年金の無資格者、無年金者、そういう方々と身体障害者の福祉施策との関係は、これはいろいろ検討すべき課題は多かろうと思います。現在の身障者の方々の問題も、級別に程度を設定いたしましていろいろの手当てをしておるわけですが、恐らく十万人くらいだと想定されておりますから、それよりもはるかに多くの人たちがそういう状況にあるということもわかりますので、これは一回調べさせていただきたいなというように思っております。
  126. 清水澄子

    ○清水澄子君 終わります。ありがとうございました。
  127. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今回の改正といいますのは、平成六年に決められました一万四千円ではなく、保険料を一万三千三百円に据え置こうというものなんですが、もうたくさんの質問が出ました。私は特に、世帯単位の年金制度について、女性の立場からきょうは質問をさせていただきたいと思っております。  いろいろな女性の問題を含めて問題が先送りされていると思うのですけれども、その一つがやはり女性と年金の問題ではないかと大変強く思っております。  大臣に一番基本的なことで伺いたいのは、第三号被保険者の制度ができたのが一九八五年、そして同じ年に男女雇用機会均等法も成立しております。ことしはさらにその中から女性の保護規定をなくす改正も行われました。今まさにこの国会に男女共同参画社会基本法も上程されようとしておりまして、男女が平等に、地域や職場や家庭などに共同に参画していく、一緒に働いたり一緒に地域社会をつくっていこうということが国際的にも国内的にもコンセンサスを得ながら大きな流れとなって進んでいるように思います。そして、日本政府もそういった女性の独立した地位を確立することを目指していると思うんですけれども厚生大臣としてもその視点は同じでいらっしゃいますでしょうか。
  128. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これから男女共同参画型社会で女性の職場進出もありますし、男性と同様に社会で貢献していく、さらに強力にそういうことが求められる時代になると思います。そういった意味で、あらゆる制度がそれに即応したものでなければならないことはもう委員の御指摘のとおりでございます。  特に年金制度の面でいきますと、女性の年金制度というのは、三号被保険者、いわゆるサラリーマンの奥さん方は御主人の給料の中から払われる年金保険料によって基礎年金も保障される、それから御主人が年金受給権を発生して亡くなられると遺族年金ももらうが、女性の低賃金で働いておる方々の独立した年金制度よりも四分の三の遺族年金の方が高いとか、いろいろ問題が指摘されています。したがって、この女性の年金制度の問題は大変重要な課題だと思います。  年金審議会でもこの議論がございましたが、なおいろいろな形でこれは非常に問題が多いんです。民法制度の問題、あるいは税制上の控除制度の問題等々、例えば所得を二分二乗したらどうかというような議論が昔からありますけれども、それもまだ実現されておりません。そういう税制の問題、民法上の制度の問題等々検討すべき課題の領域が非常に広うございます。  私どもとしては、これは大きな課題だと存じております。これは厚生省だけでもだめでありますから、検討会でもつくって包括してそういう制度改革に取り組むべきだと私自身は考えております。そういう方向で政府内で努力をしたいと思っております。
  129. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 大臣のお立場はよくわかりましたけれども、これは鶏か卵かというような議論ではないかと思います。今御指摘になったように、世帯単位の年金制度というのはまさにこの大きな流れに同調していない、シンクロナイズしていない、あるいはむしろ逆行していると言ってもいいようなところがあるんじゃないかと思うんです。  例えば、その審議会の中でも三人しか女性がいらっしゃらないようですけれども、そのお一人でいらっしゃる目黒依子さんが講演なさった記録をちょっと読んだのですが、個人的な考え方として、自分は個人単位にすべきだと考えている、その理由としては、あくまでもジェンダーの視点から見た場合に個人単位であるべきだ、これは世代間の平等の問題でもある、男性と女性の間の不平等があるということで、そこのところを指摘しておられます。今の年金制度の仕組みでは、社会的な単位として認められているのは夫であり男であって、女性が独立した社会的な単位になっていない、これは個人的に女性をないがしろにしているということではなくて仕組みそのものに問題があるのだというふうに目黒さんは指摘していらっしゃいますけれども、まさにそのとおりだと思うんです。  おっしゃるように、税制の問題ですとか民法の問題までいろいろかかわっていることは事実ですけれども、特に年金のような非常に現実的な問題、そういったものを包括的に考えなきゃならないからといってどんどん先送りにすることは、逆に言えば女性の経済的な自立を阻害する要因になっているというふうにはお考えにならないでしょうか。
  130. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 男女平等で社会に貢献していく、また女性の方の職場進出がこれからより多く求められるという社会にあっては、委員の御指摘のように個人単位で物を考えるということは、私は一つの大きな見識であり見方であろうと思います。  ただ、現実の問題として、例えば年金に限って申しますと、三号被保険者といっても千二百万人くらいの主婦の方が、御主人の内助の功といいますか専業主婦でありながら主人の給料から払っていただいておる、そして保障されているわけです。それを今度分離して、一種の剥奪ですね、そして独立して、主人の所得に源泉があるにもかかわらず保険料を納めさせるというような問題に直ちに逢着します。したがって、現実的にはいろいろ検討すべき点が多いので、鶏が先か卵が先かとおしかりを受けますけれども、そういう一つの例を申し上げただけでもこの問題の困難性というのはおわかりいただけるんじゃないかと思います。  しかし、そうだからといって本当はこれを放置してはいけないんです。ですから、私としては先ほど申しましたような総合的な視点検討してこれはやるべきであると思うんです。  特に、税制上の問題なんかは、妻の控除制度なんというのはおかしいと独立した職業をお持ちの女性からはしばしば私も税制にタッチしたころに言われました。これはそのとおりだとある面では思います。しかし、今の制度が現実にそう構築されておるものですから、これを大変革するというのは容易なことじゃないんです。  ですから、慎重な検討の結果、制度をどう仕組んだらいいか。こっちを立てればこっちが立たずというようないろいろな問題が発生してきますから、ひとつ慎重に対応していきたいなと思っておるところです。
  131. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 同じ内容のことをお答えいただいたように思います。複雑であることも、それから大変大勢の人数がそれぞれ一号被保険者、二号、三号というふうにいろいろあることはよくわかるんですけれども、だからこそ影響が大きい。いつまでもそれを後回しにしていたら、そのことのマイナスの影響の方が多く出てくると思います。  ここにありますのは、高齢社会をよくする女性の会、厚生大臣宮下創平殿と書いてある。これは陳情書で去年の十一月に出ているんですけれども、とてもおもしろい書き方だなと思ったんです。一人一年金の原則に反しますと。三号被保険者は基礎年金を受け取ることができるわけですけれども、これは一人分の保険料で二人分の年金が支払われることになり、一人二年金になっている、これはおかしいんじゃないか。それから、年金制度というのは一貫性がなければいけない。国民年金は個人単位です。これは女でも男でも個人単位です。にもかかわらず、共済年金厚生年金は世帯単位である。ここに一貫性を欠いていると。ですから、男女の問題だけを取り上げなくてもやはりここには相当制度としての矛盾がある。  それから、けさ朝日先生が質問なさいましたけれども、夫の職業の不安定さ。今どんどんリストラなんかが進んでいますが、そうなると今度は妻も一緒になって無年金になる危険性もある。そういったいろんな矛盾や問題点を包含しているということだと思います。  ですから、ジェンダーの視点で切り込んだ場合に、単に女性の問題を申し上げているのではなくて、この制度自体が持っている本質的な一貫性の欠如とか、それからそういった一人一年金ではない実態とか、そこのところはどのようにお考えでしょうか。
  132. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 確かに御指摘のように、国民年金はあくまで個人単位ということでありますし、厚生年金の方は言うならば世帯単位と見ていいでしょう、奥さんはそれによって国民年金を受給できるということですから。制度としては、整合性という点からいうと、今、委員のおっしゃられたように、どちらかに統一するという考え方も一つ考え方であるようにも思います。  これからいろいろ総合的に考える中で、そうした整合性その他も含めて検討させていただきたいと思います。
  133. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 それでは次に、遺族年金の支給者の問題に移りたいと思います。  遺族年金も実際に個人単位に移った場合には、遺族年金の是非ということがまた将来は問題になると思いますけれども、現行法の中で遺族年金の支給対象者が妻である場合にやはりいろいろ問題が起こってくる。一番の問題は、死亡時に八百五十万円以上の年収がある場合には、その翌年に年収がゼロになっても遺族年金が支給されないというのは不公平なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  134. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 今、先生御指摘のありましたように、遺族年金につきましては、被保険者の死亡時に生計維持関係が認定されませんと支給されない形になっております。具体的には、死亡した被保険者と生計を同じくして、今ございましたように年収八百五十万円以上の収入を将来にわたって得られない場合には生計を維持されていると認定しております。  しかしながら、この将来にわたってという部分でございますけれども、死亡時において年収が八百五十万円以上の場合であっても将来にわたって、おおむね五年程度を考えておりますけれども、五年以内には八百五十万円未満になると認められるような事情がある場合については生計維持関係があるものとして現在取り扱っております。
  135. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 最後のところがよくわからなかったんですけれども
  136. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 基本的には死亡時におきまして年収八百五十万円以上の収入がある場合は支給されませんが、死亡時点で仮に年収が八百五十万円以上であっても、おおむね五年以内には八百五十万円未満に収入が下がるということがはっきりしておるという事情が認められれば、生計維持関係があるというふうに認定して遺族年金を支給するという取り扱いに現在しております。
  137. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 その最後の部分ですけれども、例えば死亡時に妻が一千万の収入があって、翌年例えば何らかの形で失業してゼロになった場合は次は支給されるということですか。
  138. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 今おっしゃいました事情が死亡時にはっきり認められる、例えば年収が死亡時において八百五十万円以上あるということでも、我々どもで扱った実例を挙げますと、例えば御主人と一緒に共同経営をしていた会社で御主人が亡くなられたといった場合に、その時点では奥さんは八百五十万円以上の収入があったわけであります。ただ、御主人が亡くなられたために会社の経営が非常に急に厳しくなって、奥さんの収入もカットせざるを得ないという事情が死亡時にはっきり我々としても認められるという状況の場合については、死亡時に仮に八百五十万円以上の収入があったとしても、五年以内にはそれを下回る収入になるであろうという事情が認められれば遺族年金は出すという取り扱いを現在しております。
  139. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今の倒産の例以外に、例えば先ほど私が申しましたように、共稼ぎをしていた夫婦で何らかの事情で妻が失業したと。それは死亡時には予測できませんね。その場合はどうなるんですか。
  140. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 死亡時にそういった状況が我々として明らかに認められない場合については、これは支給しないという取り扱いになります。ですから、死亡時においてそういった事情が認められるかどうかという点が支給するしないの一つの基準になると思います。
  141. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 逆を伺いますが、それでは死亡時に例えば収入がなかった、それで翌年から、一千万でも二千万でもいいです、収入があった場合に、支給はどうなりますか。
  142. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) これはあくまでも被保険者の死亡時におきます生計維持関係の認定基準でございますので、その後の収入については一応問うておりません。
  143. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 大臣、これはとても私はおかしいと思うんです。幾つで亡くなるかということ、自分の死とかそれから自分の夫なり妻なりの死を予測することはだれにもできません。それから、その人が置かれている職業あるいは経済状態の一年後、二年後、三年後をどうやってそのときに予測できるでしょうか。そのことによって年金が支給されたりされなかったりというのは私は大変な不公平だと思うんですが、いかがでしょうか。
  144. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 年金制度におきましては、老齢とか障害、死亡、これが保険事故とされておるわけでございまして、こういった保険事故が発生した時点で権利関係が発生するのが基本でございます。そして、保険事故発生時点の生活実態に着目してその当時の収入を保障する、こういう取り扱いをしているわけでございます。  今おっしゃられるように、死亡時点だけじゃなくてその後の状況に応じて、例えば毎年所得調査をして年金を出したり出さなかったり、そういう考え方もそれはなくはないですけれども、そういうことは現在の社会保険方式でやっている年金制度基本に触れる問題じゃないか、こう思っておりますし、そういう所得調査というのをずっと一生涯にわたってやるということが果たして事務的にも対応可能か等いろいろ問題があるわけでございまして、こういった問題というのは慎重に考える必要があるんじゃないかと思うわけでございます。
  145. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 たまたま私、最近お会いした方から訴えられたことなんですけれども、仮にAさんとしましょう。生命保険の外交員をしていらして、五十八歳で御主人が亡くなった。御本人は五十四歳だったんです。その年は八百五十万以上の収入があった。しかし、三人のお子さんの一番末の息子さんが交通事故に遭われて半身不随になられた。御本人も病気になられて、そして仕事をやめなきゃならなくなったわけです。実際にことしの八月に仕事をおやめになったわけですけれども、夫が死亡した時期にはそういった状況にあったために年金が支給されない。御本人の年金も年齢的には支給されないわけですが、今の局長の御答弁だと全く要を得ない。  ですから、本当に今まさに世帯単位でということ、それから制度として遺族年金がある中で、こういったケースはまさに谷間に落ちてしまうようなケースなんですけれども、そうだとしたら何のための年金か。ずっと長いこと年金を掛けてきて、それでいながら支給されない。まさに私たちはそういったときの自分たちの生活のために年金を掛けているわけですけれども、それでいながら実際にそういった窮地に落ちたときに支給されないという現実、これはどうにかそこのところを救済する方法はないんでしょうか。
  146. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 一応、今制度的には、先ほど年金局長からもお答えしましたように、死亡時においてその方の生計状況の認定を行いますので、その時点で判断を下す。したがって、そこで要するに年金権が発生するかしないかが決定されるということです。  その際に、先ほど申し上げましたように、死亡時においては年収が八百五十万を超えていても、先ほど例に挙げましたような、例えば企業の経営が非常に明らかに厳しくなって収入が落ちるであろうことが死亡時においてはっきり立証できるというような場合においては年金を支給するということもございますが、死亡時においてそういったものが予測できないといいますか事情が判明しておらずに、死亡後におきまして、かつ年金権の発生するか否かの判定を決定した後におきまして、その当時において予測できないような、今言った交通事故とかいろんな事態が発生した場合については、今の制度では受給権がそこで復活するという形にはなっておりませんので年金は出ないということになっております。
  147. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 大臣年金の支給はほかの領域ではその人の収入を基準にしてということはありません。どうして遺族年金だけが八百五十万という収入によって支給するとかしないとか、これが八百万だったらされたかもしれない、たまたま八百五十万だったからこういう窮地に落ち込むわけです。やはり年金の本質からいってこれはおかしいと思いますけれども大臣はいかがでしょうか。
  148. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これは国民年金の遺族年金の話だと思うんですが、今、局長、次長からお話のありましたように、年金制度でございますから建前としてはそういうことになっていると存じます。ただ、年収の八百五十万円がどういう根拠でつくられているかという点はちょっと私も承知をしておりませんので、後で補足させていただきます。  ある時点で年金給付になっているかどうかという判断をすることも実に重要なことでありますが、例えばそれが無制限でありますと、さっき局長の言ったように毎年資力調査をやったりなんかして適格性があるのかどうかというのは、これはなかなか制度としては成立しにくいと思うんです。ただ、検討するとすれば、例えば二年とか三年とか、その範囲内であればその事由を認めるとか認めないというのはあるいは政策論として可能なのかなというようにお聞きしていて感じました。  いずれにしても、これは制度が今そうなっておる話でありますけれども、その合理性についてはひとつ検討させていただきますが、八百五十万円の水準についてはちょっと説明を別個にさせていただきます。
  149. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 逆の伺い方をしたいんですが、この八百五十万以外に、例えば六十五歳になって年金が給付されるときに所得制限があるということはないと思うんです。普通に私ども、私の場合でもずっと厚生年金を掛けていましたから、年齢になれば掛けただけの給付はあるわけです。それは収入が幾らであろうと、ある年齢に達したときは給付されるのが年金の本質だというふうに理解しているのですが、どうして遺族年金だけにこういった収入の制限をつけているのか。
  150. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ちょっと私なりに解釈してお答え申し上げますけれども、六十五歳になりますと国民年金は支給されます。しかし、今のお話でありますと五十代とかそういうことでありますから、年金を取得する資格要件をまだ満たしていないわけですから両方とも年金が受けられないわけです。しかし、法律上、制度的に、そういう方でも例えば十八歳未満のお子さんを抱えているような方については遺族年金を支給しましょうというような政策的な配慮があったと思いますから、そういうことになっているわけです。  したがって、六十五歳から支給を受ける年金受給者との関係は、これは言うならば年金制度というものは二十五年やらないともう一文も出さないわけですから、非常に非情な制度です。それからまた、受給を受けても一年でお亡くなりになればそれで打ち切りなんで、これも非情な制度といえば非情な制度なんです。  保険制度というのはそういう点がございますので、それをどう考えていくかという大きな問題がありますが、せっかく国民年金の遺族年金というものが存在している以上、その趣旨を生かすようにした方がいいとは思います、これは無年金者の人たちの問題でございますから。そんな感じがいたします。
  151. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ぜひ御検討をいただければうれしいと思います。何らかの形でそういうケースを考える方法があるかどうか。先ほど局長がおっしゃったように、五年ごととか毎年、亡くなってから一年、二年は最低もう一度追跡をするとかということをお考えいただけたら。夫が死ぬとやっぱり妻の方はいろいろ生活が変わるものですから、その年には収入があっても翌年はがたんとなくなることは多々あると思いますので、その辺のところを検討していただけたらうれしいと思います。  ただ、遺族年金というのはそういう意味で逆の不幸もあるというようなことを樋口惠子さんが指摘していらっしゃるんですけれども、例えば女性が職場でずっと働き続けて、そしてやっと年金を支給されるようなことがある。ところが、大変若い女性がある男性と若くして結婚したとする。そしてそれこそ一カ月ぐらいで夫の方が亡くなったとします。そうすると、この場合はまたずっと遺族年金が支給されるわけなんです。そうすると、まさに世代間の問題としてはどうなのかというような問題もあります。  ですから、やはり遺族年金のあり方というのはよほど考えなければならないし、こういう問題があればこそ、最終的には個人単位に行かないとこういう問題はなかなか解決できない問題だろう。不公平が必ずそこで増幅されていく。いろんな形の逆の不公平もあるわけです。  ですから、そこのところに問題が残ってくるんじゃないかと思いますけれども、現行の制度の中で妻の方は失業するケースも多うございますし、何らかの形で一年後なり二年後なりのフォローアップというのを御検討いただきたい、これを切に要望させていただきます。
  152. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) せっかくの御提案でございますから勉強させていただきますが、これは法律改正事項でございますのでなかなか容易ではないと思いますが、とにかく問題の所在はわかりました。  ただ、一言申し上げておきますと、委員のように個人単位の年金にいたしますと、今のような女性の方は六十五歳になりませんと年金受給権は発生しませんから、何にも得られないという状況になることはもう確実なことです。ですから、それはある程度今度は自助努力によって保障していただくしかないわけですが、今の制度の中での矛盾というか考え方を指摘されたものでありますから勉強はさせていただきます。
  153. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 よろしくお願いいたします。  私も実は二つ矛盾したことを伺っていて、現行制度の中の問題と、それから将来的には個人単位に移行していくことという二つ、非常に直近の問題と長期展望のことできょう伺わせていただいたわけですが、長期展望の方からまいりますと、今の百三十万という一つの額があって、そこで第三号というのが決まっていくということから、どうしても女性の側に抑止的なムードが出てきてしまう、ムードというよりもそれを利用するということが多いし、それから企業の方も年金負担部分を払いたくないということで社会保障をつけないということで、そこに問題があるというふうに思います。  ですから、制度が実際には一人一人のあり方を逆に規定してしまうという結果になりますので、また鶏か卵かということになりますけれども、やはり個人個人が十分に自分の能力なり自分の生きがいなりを発揮できるような制度に将来はぜひしていただきたいというお願いをして終わります。  ありがとうございました。
  154. 西川きよし

    西川きよし君 どうぞよろしくお願い申し上げます。  大変奥行きのある、幅の広いといいますかいい委員会だなと、今聞かせていただきまして本当にそう思いました。堂本先生のことは僕の方からもまたお願いしたいと、そんな気持ちになりました。  まず、法案の内容についてお伺いをいたします。  先日の所信に対する質疑の際には、冒頭でこの問題に対する大臣の御見解もお伺いいたしました。その中で「やはり年金等は中長期的な財政計算における計算でございますので、そういう扱いを長期に続けますと、この問題が結局後送りになってくるということで後の保険料がより高くならざるを得ないという側面がございますから、私どもとしてはなるべく早くこの凍結解除したい」、こういうふうに大臣は述べました。  今後の年金改革においても将来世代の負担を過重なものにしないこと、このことが大きな課題一つである、これまでの政府側の答弁でもこれは再三述べていらっしゃるわけです。そうした中で、今回の凍結につきましてはまさしく将来世代への負担の先送りにすぎないのではないか、私自身はそう思うわけですけれども、この法案には私は反対の立場できょうは質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。  例えば、仮に五年間の凍結を行うといたしまして、現在五十五歳の方は凍結されたままで六十歳になってしまいます。一方、現在十五歳の子供たちは成人した時点でいわゆる先送りをされた負担を背負っていくということになります。これは、国会に十三年お世話になりまして、皆さんずっとおっしゃっていることですけれども、大人の責任として慎重な対応が必要である、後世に負担を残してはいけないと、もう耳にたこができるほど聞かせていただいたわけですけれども、将来世代の子供たちの今回の措置、これをぜひ冒頭で大臣よりお伺いしておきたい、こういうふうに思います。
  155. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これから生まれる世代の人たちあるいは今の若い世代の人たちに対して、今回の凍結がどういう意味を持つかということを直接説明するような手段もなかなかないわけでございますけれども、私ども気持ちとしては、こうした若い人たちが将来自分が年寄りになったときにも年金制度は国家の保障のもとできちっと確保されているんだよということをまず示すことが重要だと思います。短期的に見ると、今凍結したことは、保険財政が一定であるとすれば、やがて後年度に多少負担が及ぶわけです。そういう意味では負担が後送りになる、つまり後の世代ほど負担が重くなるということに理論上なります。  私どもは、なるべくそれを避けて中期的な見通しでなだらかに持っていきたいと思っておるんですが、若い人たちも自分たちの年金が掛金を掛けてももらえるのかなという不安感、あるいは元が取れるのかなという不安感、こういうものがあります。  それはもう承知しておりますが、しかし保険制度でありますから、そこは若い人たちにも国家がやる所得保障ですから信頼をしていただく、また我々はそれなりの責務を負って制度をつくらなきゃいけません。そういうことでやっていただくと同時に、やっぱり自分たちも納めれば必ず、それは元が取れるか取れないかは、これは長生きするかしないかによって違いますから、年金受給資格が得られた途端にお亡くなりになってしまったのではこれは元は取れっこないです。でも、それが百歳まで生きられれば元は十分取れるということになるわけです。  そういった性格の面がありますから、若い方々にも十分そういった面を御説明して、制度への信頼とそれからその利用、それは未来を担うあなた方の問題ですよということを申し上げていきたいなという感じでございます。
  156. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございます。  今、大臣に御答弁いただいたようなことを我々も日ごろ御質問を受けますので、いつもそういうふうに御説明申し上げるんですが、こういうことが出てまいりますと、今まで西川さんの言っていたことと違うじゃないか、我々もよくそういう御意見をお伺いするわけです。  大臣に続いてお伺いしたいと思いますが、凍結という判断をされたわけですけれども国民年金の場合は厚生年金とは違いまして、既に引き上げが決まっているものを法律改正してまでやめようと。この根拠をもう一度、自分なりに解釈したいと思いますので、お願いいたします。
  157. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私どもは、国民年金というものは基礎年金と同格に見ています。制度としては、国民年金は独立して支給する、しかし厚生年金の中には国民年金部分があるわけです。国庫補助も同じです。ですから、同じようにこれを見ておりますから、全体としてどうかという判断をまずした上で今回の提案をお願いしているわけなんです。  つまり、厚生年金の方が世帯が大きいですから、これは予定どおり保険料平成六年に改正した時点の延長線上で考えますと、ことしの十月に今の一七・三五%を一九%ぐらいにしなくちゃならなかったんです。そうすると、二兆円以上の保険料の徴収になります。一方、国民年金の方は据え置くと影響度が千百億です。  だから、これだけ見ますと、こっちはそのままでいいじゃないかという考え方もあるかもわかりませんが、私どもはそういう基礎年金の共通性とか制度としての整合性から判断して、経済がこういう状況だから可処分所得を減らすようなことをやっちゃいけないということで決断をしたわけなんです。  その一環としてでありますから、これだけを単発的にごらんになりますと、せっかく法律で決まっていて、しかも一千百億円程度の影響しかないのに、なぜこれをまた凍結するんだという御疑問はごもっともだと思うんです。しかし、私どもとしては整合性のあるやり方として考え措置をしたということで御理解いただくしかないなというように思います。
  158. 西川きよし

    西川きよし君 それでは次に、凍結期間についてお伺いいたします。  これまでの新聞報道を拝見いたしますと、当初厚生大臣は無期限の凍結には反対をされていらっしゃいました。その当時、大臣はどういうふうにお考えになっておられたのかということもお伺いしたいと思います。
  159. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 私としては、年金制度というのは独立した制度ですから、経済の動向によって著しく制約を受けることは困るんです。したがって、設計は設計としてきちっとしておきたい、そして上げるべきものは上げていくということであったのでありますが、今の景気対策、総合的に何でもやらなくちゃいけないという状況の中で、例えば所得税を四兆円減税する、二兆円以上を吸い上げてしまうということになると政策効果は減殺されます。そういう点から総合判断して、緊急臨時的な措置として私はこれを決断させていただきました。  そういうことでありますので、無期限の凍結なんかはもちろん反対でありますし、なるべく早く凍結解除する条件、つまり今度は三分の一を二分の一とすることと一応セットで物を考えておりますから、そしてなだらかに保険料引き上げも行い得るというように思いますから、問題は安定した財源をどうやって確保するかということです。そこに一点かかってくると思います。
  160. 西川きよし

    西川きよし君 そして、結果といたしまして、三月五日に発表されました年金制度改正案大綱では凍結期限が示されなかったわけです。  そうした中で、この法案を諮問された年金審議会の冒頭で、今度は矢野局長さんにお伺いしたいんですけれども、非常に厳しい経済状況のもと、一年ないしぎりぎりのところで二年の保険料凍結はやむを得ない、こういうふうにお話をされました。  一方では期間を明らかにしないとおっしゃっておられますし、一方では具体的な期間を話しておられるわけですけれども、だれがどのように考えていらっしゃるのか、我々は大変不安になってまいります。加入者にとっては大変これは不信感が募るわけですけれども、ぜひこのことを年金局長にお伺いしたいと思います。
  161. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 日本の公的年金保険料が高い高いと言われますけれども、約束された年金給付に対して今はまだ六割ぐらいの水準でございます。これは段階的にこれから保険料を上げていって長期的に収支のバランスをとる、こういうことで今の制度が成り立っておるわけでございます。  そういう点からいたしますと、保険料段階的に上げていかなきゃいけないわけですけれども、今非常に経済が厳しい、戦後始まって以来の不況だ、こういうことが言われておりますので、私ども事務方としましては、せめて一年かぎりぎり頑張って二年ぐらいしか凍結は続けられないんじゃないか、まずそういうことを考えたわけでございます。  しかし、与党との調整の結果、こういう厳しい状況に配慮して凍結ということになったわけでございまして、その点ではやむを得ないのかなと、こう思っておるわけでございます。
  162. 西川きよし

    西川きよし君 この年金制度改正案大綱では、当然一定の凍結期間を仮定した上で計算されているわけですから、やはりこれでは一人一人にとって将来の年金がどうなるか、保険料はどれくらいになるのか、こうした基本的なことがわからない中で果たして信頼される年金制度を築くことができるだろうか、かえって制度への不信感が増すのではないかというふうに心配するわけですけれども、この点については大臣にお伺いしたいと思います。
  163. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 年金制度は、御案内のように、少なくとも五年ごとに財政再計算を行っております。財政計算上、保険料は五カ年間凍結されるという前提で仮定計算を行っておりますが、私どもとしてはなるべく早く条件を整えて凍結解除したいというように思っています。  なお、不信感の問題でございますけれども、私どもはそういう前向きの姿勢といいますか、これは前向きじゃないよと怒られるかもしれませんが、三分の一から二分の一にするということも織り込みつつ、しかも将来の安定度を増そうという努力を懸命にやっておるわけでございまして、きちっきちっと保険料がことしから幾らになるよということは、まだ不確定な要素が多少残されていますから、確かに不安感というのか、そういうのはあると思います。しかし、これは国家がやる社会保障の保険であります。これは、大きく言えば国家に対する信頼の問題ですから、私どもはそれにこたえていかなくてはいけないし、無責任なことはできません。どうしてもこれを守り抜いていくという強い決意で制度改正に臨ませていただきます。
  164. 西川きよし

    西川きよし君 ぜひよろしくお願いしたいと思うわけです。  では、次に参ります。  昨年の六月に総務庁の行政監察局より報告がございました。年金に関する行政監察、総務庁の説明とそれに対する厚生省のお考えについてお伺いしていきたいと思います。  まず、この監察の目的について総務庁にお伺いしたいと思います。
  165. 東田親司

    政府委員(東田親司君) お答え申し上げます。  年金に関する行政監察「国民年金を中心として」の目的でございますが、国民年金につきましては、御承知のとおり、少子化、高齢化の進行によりまして、現在の年金の給付水準を維持していくということであれば長期的に保険料の値上げが避けられないという状況になっているわけでございます。  こういう中で、年金制度運営につきましては、多数の未適用者あるいは保険料の未納者等が存在して、制度の基盤を揺るがしているのではないかという指摘一つございます。それから、保険料財源とする国民年金福祉施設事業の見直しとか、国民年金基金運営の効率化等が求められているというのが私ども認識でございました。  このような背景等を踏まえまして、年金制度の安定した運営を確保することを目的といたしまして監察を実施しまして、昨年の六月に勧告したところでございます。
  166. 西川きよし

    西川きよし君 そこで、個別の案件について具体的にお伺いしたいと思います。  国民年金業務の適正化についての勧告の中で、老齢基礎年金の二十五年以上という支給要件についての監察と勧告が行われておりますが、よろしくお願いいたします。
  167. 東田親司

    政府委員(東田親司君) 御承知のとおり、基礎年金の受給権は、現行制度上、二十五年以上公的年金に加入していることが要件とされております。  この加入期間に関しましては、現在未加入の方、あるいは現在既に加入されている方の一部に二十五年以上の加入期間を満たすことができない者が存在するわけでございますが、制度上、強制加入であるために、これら老齢基礎年金の受給が見込まれない者についても加入をしていただくこととされているわけでございます。  私ども調査いたしました市町村の中で、多くの市町村から、年金受給権が発生しないことがあらかじめわかっている者について加入をさせることは実際上困難であるということで、加入勧奨等の業務を実施していない実態が見られたところでございます。  このような調査結果を踏まえまして、勧告といたしましては、適用しても加入期間が不足するため基礎年金の受給権が生じない者について、特例的に減額年金を支給する制度の導入を検討するよう勧告したところでございます。
  168. 西川きよし

    西川きよし君 この勧告が出されます前の月ですけれども矢野局長は、衆議院の決算行政監視委員会でこの問題について、六十歳から六十五歳、あるいは六十五歳から七十歳に任意加入できる制度をつくった、こういうふうにあらゆる手を尽くしたと答弁されております。  その翌月にただいまのような勧告が行われたわけですけれども、その勧告に対しての厚生省としての御見解をぜひお伺いしておきたいと思います。
  169. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 現在、二十五年の保険料拠出要件を年金受給の資格要件にしているわけでございまして、勧告はこの二十五年を短縮すべきだと、こういう趣旨かと思います。  ただ、この二十五年というのは、二十歳から六十歳までの四十年の期間の中での二十五年ということでございまして、決して無理な期間ではないんじゃないか、こう思っているわけでございます。そして、これをもっと短縮するということになりますと、かえって未納とか未加入がふえるんじゃないか、あるいは低額の年金がふえるんじゃないかとか、要は安定的な運営支障が生じるんじゃないか、こういう懸念をしているわけでございます。  一方で、この二十五年の資格要件につきましては、免除制度ですとか追納制度、あるいは空期間、外国にいた期間なんかは空期間というような形で認めているわけでございまして、この二十五年という拠出要件を短縮することについては問題が多い、こう考えております。
  170. 西川きよし

    西川きよし君 それでは、次に移ります。  保険料の免除の方に移りますが、この中では例えば生命保険料等の支払いの額の取り扱いについての監察なども行われておるわけですけれども、この保険料免除制度運用の適正化について、勧告の内容もまとめて、今度は総務庁の方からお願いいたします。
  171. 東田親司

    政府委員(東田親司君) 国民年金法に基づきまして、保険料を納付することが困難な場合には納付を免除する制度が設けられているのは御指摘のとおりでございます。  その際、保険料の免除の取り扱いを全国的に統一する観点から保険料の免除基準が定められておりまして、その基準の一つに、御指摘のように生命保険料の支払い額についての基準がございまして、これが一定額未満の場合には免除することができますし、一定額以上の場合には保険料の支払い能力があるものとして免除しないことができるということになっているわけでございます。  それで、私どもが実態を調査いたしました市町村の状況でございますけれども、この申請免除に係る事実確認を市町村でやっている際に、生命保険料の支払い額について的確に捕捉する手だてを市町村が持っていないという実態が一つございました。  それから、調査した社会保険事務所におきましては、そもそも生命保険料等の支払い額を免除の可否の判断の要素とすることは適当ではないと考えまして、基準を超える生命保険料を支払っていても免除をしているという実態も見られたところでございます。また、その他の免除の基準の運用におきましても、申請の理由の審査等が不十分なまま免除しているなど、適切を欠く状況も見られました。  このような調査結果を踏まえまして二点勧告しておりますが、一点は生命保険料等支払い額を免除の可否の判断要素とする方式を見直していただきたいということでございます。二点目は、申請免除に係る審査、決定の厳格な実施について指導をしていただきたい、この二点を勧告したところでございます。
  172. 西川きよし

    西川きよし君 目を通させていただいて、本当に複雑で大変難しい問題でありますけれども、この申請免除に係る審査の判断基準が本当に複雑ではないかなと改めて思うわけです。厚生省では今後この点につきましてどのように対応していかれるのか、ぜひお伺いしたいと思います。
  173. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 今回の勧告につきましては、私どもとしても、これは真摯に受けとめて改善しなきゃいけないと、こう思っているわけでございます。非常に複雑だとか市町村の取り扱いの格差が大きいとか、いろいろ問題点も言われておるわけでございまして、できるだけ簡素で明確な基準に改めていきたいと思っております。  この点につきましては、今回の制度改正で、学生納付の特例ですとか半額免除制度、こういった制度も設けたいと思っておりまして、こういった問題とあわせて現在の免除制度を抜本的に改善していきたい、こう思っております。
  174. 西川きよし

    西川きよし君 それでは次に、国民年金基金運営等の見直しについてお伺いをしたいと思います。  この点、設立単位のあり方、あるいは国民年金の委託金、さらに厚生省からの補助金についての監察、勧告が行われておるわけですけれども、その中でも国民年金連合会の役職員に対する人件費の報告がございますが、この点について総務庁よりお願い申し上げます。
  175. 東田親司

    政府委員(東田親司君) ただいまお尋ねのございました国民年金基金運営関係につきましては、調査した結果、四点ほど実態を提示してございます。  一点は、地域型基金が概して規模が小さくて、小規模な基金ほど固定経費である人件費の割合が高くて効率性に欠けるものとなっておりまして、事実上、国からの補助金の交付なしではなかなか運営が厳しい実態にあるということでございます。  それから、地域型基金がやっている業務につきまして、多くの業務を国民年金基金連合会の方にゆだねておりまして、地域型基金みずからやっておりますのは専ら加入勧奨の業務を行っているということでございました。ただ、この加入勧奨業務も広告とかダイレクトメール等が中心でございますので、必ずしも地域型基金を都道府県ごとに設置して業務を行う必然性が乏しいというふうに考えたところでございます。  それから三点目は、国民年金基金連合会と地域型基金に対しまして、国民年金基金保険料の口座振替等の促進事業というのが委託事業としてゆだねられており、委託費が交付されておりますけれども、地域型基金について見ましたところ、一律に定額が交付されておりまして、効果も乏しいのではないかという点がございました。  それから四点目は、御指摘のありました国民年金基金連合会の役職員の人件費につきまして、その全額が一般会計からの補助金で賄われているという実態でございました。  このような四点の調査結果を踏まえまして、勧告につきましては二点指摘してございます。  一点目は、地域型基金につきまして、小規模基金の統合を可能とするなどその設立単位のあり方を見直し、効率的な運営を図り、補助金を縮減していただきたいこと。それから二点目は、国民年金基金保険料口座振替等促進事業委託費につきまして廃止について検討していただきたいということ。この二点でございます。
  176. 西川きよし

    西川きよし君 この設立単位のあり方は、千円回収するのに百円かかるというふうないろんな話も朝から出ております。目を通しますと本当に難しゅうございますけれども国民年金委託金、そして補助金のあり方、こういうことに対して今度は厚生省に、今後それをどういうふうにお考えになって対応していかれるのかというのもお伺いしたいと思います。
  177. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 国民年金基金といいますのは、自営業者等の国民年金、一号でございますけれども、この被保険者の方の上乗せ年金ということで実施しておる制度でございます。  勧告で御指摘のございました中で、まず設立単位の問題でございますけれども、この問題につきましては、国民年金の加入ですとか、それから徴収ですとか、こういった一連の業務というのは都道府県単位で実施されているわけでございます。したがいまして、この国民年金基金の業務も、私どもは都道府県単位の国民年金業務と一体的に行うのが効率的じゃないかと考えておりまして、主としてこういった理由から、国民年金基金の設立単位は都道府県単位が適当じゃないか、こう思っておるわけでございます。  それから、地域型基金育成のための補助金でございますけれども平成三年度にこの制度が発足したわけでございます。立ち上がりは非常に弱体だったものですから事務費の補助金は出しておったわけでございますけれども、これは順次削減いたしまして、平成十年度限りで廃止したところでございます。
  178. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) ただいまの中の、国民年金基金への委託費の関係について御説明したいと思います。  委託費としまして、国民年金保険料口座振替等促進事業ということで、国民年金基金に委託費を交付しております。  これは、先ほどから問題になっておりますように、国民年金のいわゆる未加入・未納問題、この解決が我々としても最重要課題であります。そういった国民年金保険料の納付促進あるいは適用促進ということを考えますと、国民年金基金国民年金第一号被保険者のための上乗せの年金制度という一体の形になっておりますので、そういった事業を行っていただいております国民年金基金に、保険料の納付促進、適用の促進という、いわゆる本体部分についてもあわせて促進方をお願いするという趣旨でこういった事業費の委託をお願いしているところでありまして、我々としては、この事業については一定の効果があるのではないかというふうに考えております。  しかしながら、先ほどの勧告の中で、この交付の仕方が一定額、一律である、あるいは委託費についての評価が不十分であるというような指摘がなされております。  そういった指摘を踏まえまして、私どもとしても、こういった一律的な交付というものを見直しまして適正な執行に努めてまいるとともに、この事業の今後のあり方について、保険料の納付状況あるいは適用状況を踏まえながら検討してまいりたいというふうに思っております。
  179. 西川きよし

    西川きよし君 今回の年金に関する行政監察の結果報告ですけれども、対峙するところは対峙し、見直さなければいけないことも多々あるわけです。  この行政監察について、厚生省のお考え等々も含めまして、最後に大臣に総括していただきまして、質問を終わりたいと思います。
  180. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ただいま資格期間の問題でありますとか、地域的な国民年金基金の問題でありますとか、あるいは免除制度その他の問題について行政監察を行われたその結果に基づいての御議論がございました。  国民年金に関する行政監察に基づく勧告の中には、今申しましたように、必ずしも同意できない制度的な問題もございます。しかし同時に、学生の納付特例の導入とか保険料の徴収事務の適正化など、基本的に勧告の趣旨に沿って努力すべき点も多々あろうかと思っております。  そういうことで、勧告の内容につきましては真摯に受けとめながら、今後とも年金制度国民から信頼されるように制度の安定的な運営、改善に努めてまいりたい、こう思っております。
  181. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。
  182. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  183. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 尾辻秀久

    委員長尾辻秀久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十五分散会