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政府委員(金子孝文君)
経済企画庁国民生活局長です。よろしくお願いします。
それでは、本日のテーマが二つあるわけですけれども、その
一つが「
自己の
能力を活かせる
雇用・
社会参加の
条件整備について」ということになっています。その関連として私どもがやっております消費者行政それからNPO行政について御
説明しようと思います。それを貫く
考え方というのはやはり
個人の自立ではないかということで、この
資料1のテーマとして、「
個人の自立の観点からみた消費者行政とNPO」ということにさせていただきました。
それで、両者がどう
関係あるのかというのをさらにもう少し「我が国の構造改革」というところから御
説明をさせていただきたいと思います。
私が改めて御
説明することもないかもしれませんけれども、現在進めている構造改革、その
一つというのは、
個人、企業、その持っている創造性を十分に発揮できるということを通じて
経済の
活性化を図っていこうということが
一つの
目的でありますし、もう
一つは、安心して暮らせる心豊かな
社会を
構築しようという、その二つが
目的だと思います。
しかし、その中で非常に重要なのは、
個人、企業の創造性の発揮、その創造性というものが活力に結びつくためにはやはりそこに市場が十分に機能することが重要だろうということで、この「改革の
基本」に掲げましたけれども、市場原理の尊重というものが
一つ非常に重要なんではないだろうかということだと思います。
それからもう
一つ、当然、市場原理の尊重という言葉を言った場合に、余り政府が市場に裁量的に介入しないということが
基本になりますから、そういう面で小さな政府の
実現というのがもう
一つの
目的ではないだろうかと。それから、心豊かといっても、これだけ価値観が多様化しているわけですから、それは民ができるものは民に任せるということになりますので、そういう面においても小さな政府の
実現ということが改革の
基本であろうということだと思います。
そういうことを考えた場合に、
個人あるいは消費者と言っていますけれども、一体それはどういうことが求められるんだろうかということであります。結局、政府が引っ込むわけですからその責任が減る。そうしますとあとの責任というのが事業者あるいは消費者がとっていくということになりますので、当然事業者の責任も非常に高まるわけですけれども、消費者の
自己責任もやはり十分に自覚して行う必要があるだろうということで、取引の
関係としては事業者と消費者ということになりますので、消費者のいわゆる
自己責任というものが重要になるわけであります。
それから、これまで政府が負っていた役割というのを
個人がそれを
主体的に担っていくということになりますと、
個人の
主体的な
活動が非常に必要になってくる。そういうことになりますと、私どもの行政でいえば、この消費者の
自己責任、これは消費者の
自己責任だけ言いますと何か消費者の
自己責任だけかということですが、決してそうではなくて、事業者の責任というものは当然あるわけですけれども、そうした
自己責任ということを考えて消費者行政を新たな方向に持っていくということが重要であります。
二番目は、先ほど申しました
個人の
主体的な
活動、これが重要でありますので、その
手段として特に
ボランティアがさらに盛んになってくる、
主体的な
活動ですから。そういう面で、私どもがやっておりますNPO
活動、これが
個人の
主体的
活動に大いに
関係あるのではないかということで、二つのことにつきまして
説明をさせていただくということであります。
それで、まず消費者行政ですけれども、これも改めて
説明することはないかもしれませんけれども、市場において消費者と事業者、その二人があるわけですけれども、当然事業者は情報力あるいは交渉力において消費者にまさっているということであります。しかし、これは
経済学の言うところの情報の対等性、これこそが市場をうまく働かせると言っているわけでありまして、そういう面で消費者に十分な情報を与える、消費者の交渉力を高めるということが市場の効率性を高めるということにつながって、もう
一つ、先ほど言いました
経済の
活性化、これにも当然つながるわけでありまして、もう
一つはそういう情報力をしっかり持つということがやはり安心にもつながるのではないかと。そういうようなことのためには、それを通じて消費者が
主体的、合理的に行動できる環境を
整備していく、これが消費者行政の
目的だと思います。
それで、今申し上げましたことをもう少し細かく申しますと、
課題としては、
一つは、消費者が自主的に意思決定ができるということが非常に重要でありますので、自主的に意思決定ができるような情報を事業者が消費者に与えるようにそういう条件を
整備していくということが消費者行政の
一つの
課題であります。
二番目ですけれども、情報だけ与えればいいのかということですけれども、例えば医薬品だとかそんなものは消費者が安全かどうかなんということはわかるはずがないわけですから、それはやはり事業者がその製品の安全性あるいは取引の適正な内容の確保を図るように条件を
整備していくということ、それがもう
一つ重要なことでありまして、それが言ってみれば安心だと思います。例えば電子商取引などが今だんだん大きな取引として進んできているわけですけれども、この電子商取引などに対する安心感がなければやはりこの電子商取引は広がらないということで、消費者が安心を持つということは、その業が拡大すること、それはひいては
経済の
活性化、そういうことにとっても非常に重要であるということだと思います。
それから三番目は、こういう形で事業者がいろんなことをやることを促すわけですけれども、片方では、やはり消費者自体が情報力、交渉力を持つような
能力を自発的に高めていくというために、消費者の
教育あるいは消費者への情報
提供を国みずから、政府みずから行っていくということが必要だと思います。そういう面で消費者行政は
三つの
課題を持っているということだと思います。
そういう
課題をこれまでどういう形で進めてきたかということでありますけれども、これまでは、例えば情報の
提供だとJAS法だとか家庭用品品質表示法というような事業者の規制を通じてしっかり情報
提供をしろということでやってきたわけでありますし、それから薬事法あるいは食品衛生法のようなものについては、事業者規制を通じて安全を確保するという形をしてきたわけであります。
③の
課題につきましては、いろんなことがあるわけですけれども、消費生活センター、これは
全国で今三百三十幾つあるわけですけれども、そういうものを設けまして消費者支援を
実施し、消費者の情報や交渉力を高めるお手伝いをしてきたということであります。
それがこれまでの消費者行政ですけれども、二
ページ目になりますけれども、今後は、その事業者が必要な責任を果たさなかったことによっていろんな被害が生じてしまう、例えば安全性を十分に確保しなかったためにけがをしてしまうとか、あるいはしっかりした情報
提供をしなかったために、本当ならばそんなような取引をしなかったのにしてしまったというようなこと、そういうことがあったときにそれを救済する民事ルール、こういうものを設定することによってさっき申しました①、②の
課題を達成していこうということであります。
したがって、国、政府がやることはルールの設定でありますから、政府が裁量的にいろんな取引に入っていくことはない。それから、それは市場の中でそういうことが解決されるわけですから、市場原理の尊重という先ほど申しました改革の二つの
基本と整合的な形で
課題が達成されるということ。そういう方向に今後消費者行政は向かっていくのではないか。
そういうことで、ルールを設定するということは、結局事業者がどういう責任を果たし、その裏として消費者も
自己責任というものを求められるわけですから、そういう面で責任のありかが明確になるということで、それをしっかりやっていくということがやはり消費者の自立ということにもつながっていくのではないか。それからさらには、こういう責任を果たせるために、先ほど申しました消費者の支援という政策が今後一層重要になっていくのではないかと思われます。
それで、民事ルールの設定ということですけれども、一体それはどういうことなのかということです。これは既に製造物責任法、PL法、これが
平成七年に施行されたわけですけれども、これは製品関連事故における被害者の円滑かつ適切な救済の観点から、損害賠償に関するルールを民事の一般原則である過失、過失があるかどうかということを問うたわけですけれども、過失の立証は非常に難しいわけでありまして、それを欠陥、つまり製造物が通常有すべき安全性を欠いているということがあれば、それについて責任を求めるという形で被害者の立証負担を軽減するという形で製造物の安全の面についての民事ルールは既に設定されたところであります。
それで、今政府としてやろうとしていることが消費者契約法の検討ということであります。
消費生活センターなどに寄せられる苦情を見てみますと、
平成元年に十七万件だったわけですけれども、最近ではそれが四十万件ぐらいになっていまして、その八割が契約とか解約あるいは販売
方法に関する問題になっている。ここにおいて、やはり新たな民事ルールを設定することで対応していく必要があるんじゃないかということであります。
二つ分かれまして、
一つは契約に関する重要事項、これについて情報を
提供しなかった、あるいは不実のことを告げた場合、あるいは大勢で取り囲んで強引に契約させてしまうというような、例えば威圧をするような言動をした場合、こういう場合には消費者は当該契約の取り消しといったみずから救済に資する措置をとることができるようにしようというのが
一つの
考え方であります。
もう
一つは不当条項、つまり事業者の定める契約が非常に不当であった場合、例えば事務内の事故で何かあっても私どもは一切責任負いませんなんという条項が今あるわけですけれども、それは消費者に不当な不利益だということで、その条項を無効にしようと。そんなようなことを内容にする法律を現在検討しているところでありまして、お手元の
資料2に、一月に
国民生活審議会消費者政策部会から「消費者契約法の制定に向けて」という部会報告をいただきましたので、その概要をお配りしております。
もう
一つが特定非営利
活動促進法、NPO法であります。これについて御
説明します。これは
基本的には
ボランティア活動になるわけですけれども、その意義はどういうものかということでありますけれども、四つぐらいあるのかなと、こう考えられます。
一つは、所得水準が上がっていきまして価値観が非常に多様化するということになります。そうすると、やはり政府では対応できない多様なニーズが出てくるんではないか、そういうものを自主的に
個人が
グループとなって対応していくということにあるのではないか。
それから二番目は、先ほど申しました市場がどんどん重要になっていくわけですけれども、市場というのは
基本的には利己的な
活動をもとにするわけですが、私ども、単に利己的ではなくて利他的な
活動を通じて
自己実現を図りたいという欲求もあるわけですから、そういう面で
ボランティアというものが一層盛んになってくるのではないか。
それから三番目でありますけれども、政府の場合には法律、予算、企業の場合には収益が上がらなければいけないという、そういう
制約がありますから、
活動の展開はそれほど柔軟にできるわけではありませんので、
ボランティアの場合にはそういう
制約がないということで非常に柔軟な
活動が展開できる。それを
利用しまして新規分野のいろんな開拓をしていく。それ自体が政府に採用されたりあるいは企業
活動に採用されたりするということになるのではないかということで先駆的な役割を果たすだろうと。
それから、
ボランティア活動自体をすることによっていろんな知識が高まるわけですから、その知識を
利用して政府や企業の
活動に対する監視機能を果たすということもあるのではないかと思われます。
それで、恐縮ですが
資料3を見ていただきたいと思いますけれども、市民
活動団体の実態について
経済企画庁で
平成八年に
調査をいたしました。その結果について御
説明したいと思いますが、
全国で約八万六千
団体ほどこういう
団体があるということであります。どんな
活動分野かと申しますと、
社会福祉系、この下にありますけれども、
高齢者福祉だとか児童・母子福祉、そんなようなこと。さらには、
教育・文化・スポーツ、
地域社会、環境保全、こういうものが多いという結果になっております。
それで、次の
ページ、二
ページですけれども、こういう
団体、さらにちょっと申しますと、こういう
団体に一体法人格になる必要を感じているかどうかという
調査をしているわけですけれども、そのうち一二%の
団体が法人格が必要であるという返事をしているわけであります。そんなようなことがありまして、
平成十年三月に議員立法によりまして特定非営利
活動促進法という法律が成立をしたわけであります。この
目的は、一定の要件を満たす非営利の
団体に簡易、迅速な手続で法人格を与えようということであります。
それで、特定非営利
活動は何かというと、ここにありますけれども、十二の分野がこういう「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与すること」を
目的として、こういう十二の
活動分野に入っているものを特定非営利
活動ということで定義をしています。
法人の定義及び要件ですけれども、今申しました特定非営利
活動を主たる
目的とする、それから営利を
目的としない、さらに次のいずれにも該当するということで、社員の資格の得喪に関して不当な条件を設けないとか、あるいは報酬を受ける役員が全部の三分の一以下だとか、あるいは一番
最後にありますけれども、十人以上の社員を有するというようなことであります。
それで、これを申請するときには
都道府県知事に申請する。所轄庁は
都道府県知事だということを
基本としますけれども、事務所が二県以上に分かれるときには
経済企画庁だということになっております。
次の三
ページですけれども、設立、これは要するにさっき挙げました法定要件に合致すれば裁量の余地が非常に少ない形で認証しようということで認証をしまして、それを受けまして登記をすることによって成立するということであります。
そういうことでありまして、それで、この促進法によって法人になるそのメリットは何なのかということなんですけれども、これは先ほどの
資料1の(3)にありますけれども、その法人の名前でないと、代表者がかわると例えば銀行口座を変えなきゃいけないとかあるいは登記を変えなきゃいけないということですけれども、
団体になることによって法律行為をその名によって行うことができるということであります。
また、非常に重要なことは、これは情報が十分に公開されるということになりますから、情報の公開こそまさに
団体に対する
社会的信用を高めるということになりますので、当然その
団体の
活動にとって非常によい効果を持つのではないかということだと思います。
それで、現在どのくらいの申請があるのかということが
資料3の四
ページに載っていますけれども、当初どうも申請が少ないんじゃないかというようなこともあったんですけれども、その後着実にふえてまいりまして、十二月一日から始めまして二月五日まで、全体で二百八十九、
都道府県が二百六十五、
経済企画庁が二十四という
状況になっておりまして、まだ認証は出しておりませんけれども、申請が今後も着実に出るとともに認証も行われていくのではないか、こう考えております。
そういうことで、消費者行政というものが消費者の自立を促す方向に変えていこうということを考えておりますし、NPOも
個人の
社会活動に
主体的な参加をする
機会を拡大するということによりまして、やはりこれも
個人の自立を促すという非常に大きな効果があるのではないか、こう考えております。
以上です。