○
政府委員(辻村哲夫君)
文部省の初等中等
教育局長でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、座って
説明させていただきます。
お
手元に「少子化に
対応した
教育施策の推進について」といった
資料がございます。それに沿いましてお話をさせていただきたいと思います。
テーマを大きく
三つに分けまして
資料を整えました。
一つは、「
子どもの
心身の
健全育成について」ということで、心の問題、心と体の健康の問題でございます。それから
二つ目が
社会の
変化に
対応した
教育ということで、
国際化、情報化、科学技術の進展、
環境問題への
対応、
教育が今どのように取り組んでいるかといったことをまとめさせていただきました。それから
三つ目は、魅力ある
学校づくりということで、カリキュラムの問題、中高一貫
教育の問題、高校
教育改革の問題、この
三つをそこに載せさせていただきました。
説明に入ります前に御
参考に御
報告させていただきたいと思いますが、現在、幼稚園、小
学校、中
学校、高等
学校、それから盲・聾・養護
学校、これらの
学校に通っております生徒は、昨年の五月一日現在でございますけれ
ども約千八百二十万人でございます。
学校数は五万六千六百校。五万六千六百校のこうした初等中等
教育学校に千八百二十万人余が学んでいる、こういう
状況でございます。
それでは、
資料に沿いまして、まず一
ページをお開きいただきたいと思います。
子供の
心身の
健全育成関係でございますが、まず冒頭に載せましたのは、
平成九年
総理府において行われました
全国一万名を
対象といたしました、有識者が現在の
教育をめぐる問題をどのように考えているかといったものでございます。
そこにございますように、一番左側が
家庭のしつけが不十分だとする人、それから学歴を偏重する
社会の
意識を問題とする人、
子供を取り巻く
社会環境の悪化が問題とする人、
学校、教師の
指導力の低下が問題であるとする人、大きく四分されたような
状況で有識者は現在の
教育問題を見ているということでございます。
それから次に、主として
家庭の問題ということで、これは私
ども、昨年の七月に
全国の小
学校二年生、四年生、六年生、中
学校の二年生を
対象にいたしまして、それぞれ二千五百人から三千人くらいの
調査をしたものでございます。
そこにございますように、
生活習慣の点で申しますと、食事をとるとか顔を洗うといったことはもうほとんどの
子供は行っているわけでございますけれ
ども、三段目、四段目、起こされないで起きるとかあるいは布団の上げおろしといったことになりますとややばらつきが出てくるといったこと。それから家でのあいさつあるいは知人へのあいさつといった点ではそこにございますようにおおむね行われておりますけれ
ども、悪いことをしていたらやめさせる、あるいは席を譲るといったことになりますと、そこにございますようなばらつきを生じているといった結果が見られたところでございます。
それから二
ページ目でございますが、同じ
調査でございますが、
子供たちに日常
生活の注意あるいは倫理観、道徳観にかかわる
指導をお父さんから言われますかお母さんから言われますかということで聞いたものでございます。そこにございますように、
テーマによってばらつきがあるわけでございますけれ
ども、右側がお母さんから、左側がお父さんからということで、お母さんからと答えた者が圧倒的に多いわけでございまして、
家庭におきます
父親の関与の問題がここにうかがわれるというふうに我々は分析をしているところでございます。
それからその下でございますが、
子供たちがどのような
生活体験、自然体験をしているかということで、左側が男子、右側が女子ということで見たものでございますが、そこにございますような
テーマ、男子、女子、余り性差はございません。
上にございますようなタオル、ぞうきんを絞ったことといったことはもちろんほとんどの
子供が経験しているわけでございますけれ
ども、上から三段目のナイフや包丁で果物の皮をむいたり野菜を切るということになりますとばらつきが出てまいりまして、さらに下の方の道路、公園などに捨てられているごみを拾うといったことになりますとかなり無関心といった様子がうかがわれるところでございます。同じように、自然体験でございますが、海や川で泳ぐ、あるいはチョウやトンボを捕らえるといったものは多くの
子供が経験をいたしておりますけれ
ども、下のようになりますと経験が非常に少ないといった
状況がうかがわれます。
なお、表には載せてございませんけれ
ども、親に対しましても同様の
調査をいたしておりますが、親の世代と比べますと
子供たちの体験の
機会が減少しているといったことがこの
調査によって知られたところでございます。
次に、三
ページを見ていただきたいと思います。
子供たちの
学校生活で問題とされるものでございます。
一番上はいじめの発生
学校数でございます。一番右側が九年度の
状況でございます。小中高合わせまして一万一千五百校の
学校においていじめが発生しているということでございます。
それから、真ん中が暴力行為の発生件数でございます。暴力行為は対教師暴力、生徒間暴力、対人暴力、生徒以外のよその人という意味ですけれ
ども、それから器物損壊といった四つの形態がございますが、トータルいたしまして小中高合わせて七千三百七十一件が発生しているということでございます。
それからその下でございますけれ
ども、
学校嫌いを理由として
学校に来ない、その欠席日数が三十日以上の者の数でございますが、ずっとふえてまいりまして、十万人を超えたということでございます。小
学校におきまして二万人余、中
学校におきまして八万人余ということでございます。こうした
現状になっております。
それから次の
ページでございますけれ
ども、これは
文部省が
平成十年の二月に行った
調査でございます。
真ん中のところ、米印のところで、
全国の小
学校百校、中
学校百校とございますが、中
学校は七十校でございますので、申しわけございません、御訂正いただきたいと思います。そして高等
学校五十校を
対象に行ったものでございます。
子供たちが
学校生活で楽しいと感ずることは、友達との遊び、
交流、
学校行事といったものが大きな数を占めているということでございます。それから、
子供たちは
家庭や
地域社会でどんなことをしたいか、あるいはしてもらいたいかという問いでございますが、それに対しましては友人との
交流といったものを挙げた
子供が小中高を通しまして圧倒的に多いという数字が出てございます。そして
保護者もそのことを望み、教師もそれを望んでいるという
状況でございます。
次に五
ページでございますけれ
ども、幾つかのサンプルで
子供たちの
状況の一端を御
報告したわけでございますけれ
ども、こうした
状況を踏まえまして
対応施策でございますが、まず昨年の六月、中央
教育審議会から「
幼児期からの心の
教育の在り方について」の
答申をいただきまして、それに沿った
施策を進めているということでございます。
答申の
ポイントは十七
ページにございますので、後ほど見ていただければと思います。
それから
二つ目といたしましては、
平成十四年度から完全
学校週五日制が進んでまいります。そのためにはこれまで以上に
地域あるいは
家庭の学習
環境、
教育環境といったものを
整備していく必要があるわけでございます。そこで、
全国子どもプラン(緊急三カ年戦略)といったものを策定いたしまして、このプランに沿いまして
施策を進めているところでございます。
具体的な
内容は十九
ページ以降
参考2として載せてございますのでお目通しいただければと思いますが、
ポイントだけ申しますと、重点
施策のところにございますように、
子ども放送局の創設、
子どもセンターの
全国展開、
子供の
活動の
機会と場の拡大、それから
子供や親の悩みにいつでもこたえ得る相談体制の
整備、
家庭教育への支援といったことで、
子どもホットラインあるいは
家庭教育手帳の作成、配布等を行っているところでございます。それから、
学校教育におきます道徳
教育の充実、同じく
学校教育におきますスクールカウンセラーあるいは心の教室相談員の
配置等によります相談体制の充実等を進めているところでございます。
次を見ていただきたいと思います。六
ページでございますが、六
ページは心と体の健康の
状況でございます。
上の表は、小学生、中学生、高校生の体力診断テストの推移でございます。体力診断テストと申しますと、反復横跳びですとか背筋力とか握力とかといったもので点数を出して見るものでございますけれ
ども、横ばいないしやや低下ぎみといった
状況がうかがえます。
それから、右側が運動能力テストでございますが、これは五十メートル走とか走り幅跳び、ボール投げ等によってはかるものでございますが、これも横ばいないし低下ぎみといった
状況かと思われます。
それから、下は
子供たちの肥満
傾向でございますが、
昭和六十二年度が左側、
平成九年度が右側でございます。五歳から十七歳までいずれの
年齢層におきましても肥満
傾向が進んでいることがうかがえるところでございます。九歳、十歳、十一歳といったあたりはこの
傾向が特に顕著だということがうかがえるわけでございます。
次、七
ページへ参りまして、覚せい剤事犯検挙者の推移でございます。
上が全体でございまして、第一次、第二次、第三次と
ピークがございます。下が
子供たちの
状況でございます。一番右側を見ていただきますと、
平成九年度の
状況でございますけれ
ども、二百十九、これは高校生の検挙者数でございます。それから、下の四十三、これが中学生の検挙者数。以下、同様に
昭和五十二年から載せてございますが、推移がございますけれ
ども、この
平成七年、八年、九年度、特にこの棒グラフの伸びが顕著だといったことがうかがえるところでございます。それから未成年者の比率も、一時低下をしておりましたが、この七年、八年、九年あたり上昇
傾向に転じているという
状況でございます。
八
ページを見ていただきまして、こうした
子供たちの心と体の健康に関しまして取り組んでおります
施策の主なものでございます。
まずは、体育と保健といったものの関連を図った
指導の充実ということ。それから学習
指導要領におきましても、
子供たちの心の健康に対する
指導を充実させるということ。それから
三つ目でございますが、薬物乱用
防止五か年戦略といったものを踏まえまして、
子供たちに薬物乱用の持つ
問題点等についての理解、啓発の充実といったこと等に努めているところでございます。それから、あわせまして、望ましい食習慣の
形成といったことにつきましても
努力をしているところでございます。
次、九
ページを見ていただきたいと思いますが、大きな
テーマの
二つ目でございます。
社会の
変化に
対応した
教育ということで、それぞれどのような
取り組みをしているかということの
ポイントを載せたものでございます。
まず、
国際化への
対応でございますけれ
ども、これは
平成十四年から始まる新しい学習
指導要領、完全
学校週五日制とともに実施されます
内容を主として書いてございます。
小
学校におきましても、総合的な学習の時間といったものを設ける。これは一週間にならしまして三こま設けられる予定になっておりますが、そうした時間を使って、小
学校の段階からも、各
学校の実情に応じて、
外国語に触れたり、
外国の
生活、文化などになれ親しむといったことに取り組んでいこうということでございます。それから中
学校におきましては、現在選択でございますけれ
ども、
外国語を必修にするということ。それから高等
学校も、同様に現在選択でございますけれ
ども、これも必修にする方向で今学習
指導要領を
検討いたしております。
それから、コミュニケーション能力の
育成ということで、ネーティブスピーカーを招聘して、各
学校で
外国語の
指導に当たっていただくJETプログラムといったものを推進しているところでございます。現在、
全国で五千余校に
配置をされております。
それから、
二つ目の情報化への
対応、これも新しい学習
指導要領におきます
状況を
中心に書いてございますけれ
ども、小
学校でも総合的な学習の時間等を使いましてコンピューターや情報ネットワークに触れるということ。中
学校ではこれまで選択でございました情報とコンピューターを必修にする。それから高等
学校につきましても、これまで各
学校の選択でございましたが、新しい教科として情報というものを設けまして二単位、これを必修にするという方向で
検討いたしております。それから
指導に当たる教師に対しましてもこれを必修とするということでございます。
それから、ハードの
整備につきましても、そこにございますように、
全国の
学校にコンピューターを
整備すべく地方交付税によって措置をしているということでございます。次の十
ページ、同様にインターネットにつきましても十年度から十三年度までの間にすべての公立
学校をインターネットで接続すべく交付税によって計画的に
整備をいたしておるところでございます。
それから、
三つ目の科学技術の進展ということでございますが、今回の学習
指導要領の改訂におきましては、教える
指導内容を思い切って厳選する、その生み出された時間を使って調べ学習とか体験的な学習、あるいは自然に触れる学習、こういったものをふやしていこうと。そうした形で
子供たちの科学技術への知的好奇心を高める、あるいは科学的に調べる能力、問題解決能力といったものの
育成を進めようということでございます。
それから、四番目の
環境問題も同様でございまして、新しい学習
指導要領におきましては、
環境を調べる、あるいはよりよい
環境を創造するための意欲、態度といったものを培うべく
指導要領の改訂を行ったところでございます。
それから次の、大きな
テーマの
三つ目でございますが、魅力ある
学校づくりの
関係でございます。
これも昨年の二月に行いました
調査の結果でございますけれ
ども、小
学校の三年、五年、そして中
学校の二年生、高校の二年生にアンケート
調査をいたしました。その結果でございますけれ
ども、小
学校の段階では、
学校を楽しい、あるいは少し楽しいとする者が圧倒的であるわけでございます。中
学校におきましてもその
傾向は維持されておりますけれ
ども、高等
学校にまいりますとその数が相当に減少してきているという
状況が見てとれるところでございます。
それから、
子供たちがどのくらい授業がわかるかということで聞いたものでございますが、これも小
学校の段階では、よくわかる、大体わかるとする者が七割前後であるわけでございますけれ
ども、中学生になりますとその数が減り、高校生になりますとさらに減るといった
傾向がうかがわれるところでございます。
次の
ページでございますが、では
子供たちはどんな
学校であってほしいかということでございますけれ
ども、そこにありますように、楽しく、伸び伸びと過ごせると回答した者が小中高を通しましてトップといった
状況でございます。
それから、
学校教育で身につけたいもの、身につけさせたいものということでございますが、
学校種を超えて、友達をつくったり、自分の周りの
人々などと仲よくつき合ったりする力と答えた者がトップでございます。このことは
保護者や教師たちも同様に高い回答をしているという
状況でございます。
次の
ページ、十三
ページでございますが、これは
学校週五日制に関連して問うた問いに対する回答でございます。御案内のとおり、現在月二回、隔週で小中高お休みになっているわけでございますけれ
ども、それについての問いに対する回答でございますが、
子供たちはみんな土曜日を大歓迎しているわけでございますけれ
ども、
保護者、教師になりますと必ずしも積極的にばかり評価をしていないという
状況がうかがえたところでございます。
こうした
現状を踏まえましての現在の
取り組み状況でございますが、十四
ページを見ていただきたいと思いますが、まずカリキュラムの改訂ということでございます。
完全
学校週五日制、土曜日が完全にすべてお休みになるわけでございます。私ど
もといたしましては、ゆとりの中で特色ある
教育を展開し、
子供たちに覚える、覚え込ませるというよりも、みずから学びみずから考えるなどの生きる力を
育成するといったことをねらいとして学習
指導要領の策定に当たったところでございます。
新しい学習
指導要領は、幼稚園につきましては
平成十二年度から、小中
学校につきましては
平成十四年度から完全実施の予定でございます。
改訂に当たりましての基本的な視点といたしましては、四つを柱といたしました。豊かな
人間性、
社会性、国際
社会に生きる
日本人としての自覚の
育成が
一つ。
二つ目は、多くの知識を教え込む
教育を転換し、
子供たちがみずから学びみずから考える力の
育成ということ。
三つ目が、ゆとりのある
教育を展開し、基礎、基本の確実な定着と個性を生かす
教育の充実。四つ目が、各
学校が創意工夫を生かした特色ある
教育、特色ある
学校づくり。この四つを改善の柱といたしたところでございます。
あとは
説明を省略させていただきますが、
ポイントといたしましては、覚え込むあるいは学ぶ
教育内容というものを厳選するということ、それから心の
教育の充実、
国際化への
対応、情報化への
対応、それから十五
ページでございますけれ
ども、体育・健康
教育の充実、それから総合的な学習の時間の創設、それから⑦のところで一言、これまでの時間数、完全
学校週五日制になるということにも関連いたすわけでございますけれ
ども、現在よりも週に直しまして二こま、年間で七十単位時間を削減したということでございます。
一番最後、
平成十四年度からすべての
学校段階で一斉に完全
学校週五日制が実施をされるということでございます。
それから、十六
ページをお開きいただきたいと思いますが、魅力ある
学校づくりの
二つ目といたしまして、中高一貫
教育の推進ということでございます。
これは、昨年の国会におきまして
学校教育法の一部
改正が行われまして、この四月から施行される予定になっているわけでございますけれ
ども、
三つの種類がございます。中
学校と高等
学校を
一つの
学校種として、中等
教育学校という新しい
学校を設けるということ。それから、併設型と申しまして、中
学校、高等
学校、それぞれ独立して設置をいたしますが、同一の設置者、つまり県であれば県、市町村であれば市町村が設置をする、そしてこの中と高の間は無試験、無選抜でつなぐ、こういった併設型。それから
連携型は、現在の
学校制度を前提にいたしまして、市町村立の中
学校、都道府県立の高等
学校、設置者は違うわけでございますけれ
ども、その間を簡便な選抜によってつなぐ形で中高一貫を実施するといったものでございまして、この四月、
全国で三校ほどスタートをする予定になってございます。
それから、最後でございますけれ
ども、高等
学校教育の改革ということでございます。
中
学校卒業生のほとんどの
子供たちが今現在高等
学校に進学をいたしております。進学率は九七%となってございます。そこで、それぞれの生徒の実態に
対応した特色のある高等
学校づくり、これをねらいといたしまして高等
学校教育の改革に取り組んでいるところでございます。
二つ目の丸でございますけれ
ども、その
一つの例といたしまして総合学科、これは普通科と専門学科両方の
内容をあわせ持った
学校でございますけれ
ども、
全国で今百七校ほどになっているところでございます。そのほかにも、学年制を取り払った単位制高校等、特色ある
学校づくりに努めているところでございます。
それから、入学者選抜につきましては、学力検査、
調査書、これによって行われるのが一般的でございますけれ
ども、
学校の判断によってはその他の方法によって、学力検査、
調査書以外の方法によってこれを行うことができるといった
学校教育法施行規則の
改正を行いまして、これもこの四月から施行するところでございます。
あと、十七
ページのところは、先ほどちょっと紹介いたしました中教審の
答申の概要、それから
全国子どもプラン(緊急三カ年戦略)の概要、それから新しい学習
指導要領の
ポイント等を
参考に載せてございますので、後ほどまた御
参考にしていただければと思います。
以上でございます。