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1999-05-27 第145回国会 参議院 国土・環境委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)    午前九時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松谷蒼一郎君     理 事                 市川 一朗君                 小川 勝也君                 福本 潤一君                 緒方 靖夫君     委 員                 上野 公成君                 坂野 重信君                 田村 公平君                 長谷川道郎君                 山下 善彦君                 脇  雅史君                 岡崎トミ子君                 北澤 俊美君                 佐藤 雄平君                 弘友 和夫君                 岩佐 恵美君                 大渕 絹子君                 泉  信也君                 奥村 展三君                 島袋 宗康君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    参考人        横浜国立大学工        学部教授     小林 重敬君        全国公団住宅自        治会協議会事務        局長       井上 紘一君        中部大学工学部        教授        JWA建築・都        市設計代表    渡辺  純君        埼玉大学経済学        部教授      岩見良太郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 〇都市基盤整備公団法案内閣提出衆議院送付  )     ─────────────
  2. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただいまから国土環境委員会を開会いたします。  都市基盤整備公団法案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、四名の参考人方々から御意見を聴取することといたしております。  参考人は、横浜国立大学工学部教授小林重敬君、全国公団住宅自治会協議会事務局長井上紘一君、中部大学工学部教授JWA建築都市設計代表渡辺純君、埼玉大学経済学部教授岩見良太郎君でございます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人方々には忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の会議の進め方について御説明いたします。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人方々意見陳述は着席のままで結構でございます。  それでは、まず小林重敬参考人お願いをいたします。小林参考人
  3. 小林重敬

    参考人小林重敬君) 小林でございます。よろしくお願いいたします。それでは、着席させていただきます。  私の意見陳述については、発言要旨がお手元に渡っていると思います。  新しい公団が担う役割一言で言えば大都市地域等都市基盤整備業務重点を移すということについては、私は大変結構なことだというふうに思っております。それは国の総合計画において大都市リノベーションが大切であるとか、あるいは都市計画中央審議会都市の再構築が必要であるというようなさまざまな形で意見が出ていることとあわせて、私はここ十年来ぐらい、都市づくりが大きく変わってきているということを一貫して主張してまいりました。そのために、都市づくり仕組み自体を大きく変えていかなければいけないのではないかというお話機会があるごとに申し上げてまいりました。  そこで、そのお話に関連して、きょうは二点についてお話しさせていただきたいと思います。  一つは、都市づくりが歴史的に変わっている、そういう転換期にあるということでございます。その結果として、もう一つはそういう都市づくりを担う担い手がこれまた変化しているという二点でございます。その二点についてお話をさせていただきたいと思います。  最初に、1のところに「都市づくりの歴史的な変化」とございます。御案内のように、都市計画の従来の基本的な役割というのは、大都市を含めて都市人口集中し都市化が図られ、その都市化動向をどうやってうまく制御していくかというようなことに都市づくり重点が置かれてきたわけでございます。そういう時代都市づくりをここでは都市化社会都市づくりと呼んでおります。  その時代都市づくりは、新規市街地形成、具体的には、規制その他でスプロールを防止し、あるいはニュータウンその他をつくることによって新市街地整備を行うということを中心とした都市づくりが行われてきたわけで、現在ある住宅都市整備公団の前身である日本住宅公団は、この新市街地整備という役割を担うということで昭和三十年に誕生したかというふうに思っております。その後もこのような動きを進め、一九六〇年代あたりがまさに我が国新規市街地形成のピークであったと思われます。  しかし、その後、特に一九八〇年代ぐらいになりますと、そういう新規市街地形成中心とした都市づくり一定の収束を見てくる。それはその下に「背景」ということで四点ほどまとめてございますが、一つは、人口減少局面の到来ということで、先日、人口問題に関する国の機関である厚生省人口問題研究所が二〇一三年に人口減少ということをはっきり研究所として意見を述べたようですが、そういうものも含めて新規市街地形成のニーズが極めて減少してきているということでございます。  それとあわせて、もう一つの大きな要因として、都市をつくっていくに当たっては環境面を重視しなければいけない。つまり、省エネとか緑地保全というような環境上の課題から、できるだけコンパクトに都市をつくるべきではないかという要請がこれまた近年、ここ十年ぐらい非常に大きな声として出てきたということでございます。  あわせまして、既成市街地を特に問題として、災害への対応力を強化した安全と安心の都市づくり要請が阪神・淡路大震災を契機としてさらに強く言われるようになりました。  さらに四点目としては、経済グローバル化とかあるいは産業構造転換に伴う新しい魅力ある都市をつくるためには、既成市街地を何らかの形でつくり変えなければいけないのではないか。あるいは産業構造転換に伴って工場跡地その他遊休地が出てくる、それをどうやって有効利用していくかというようなことを都市づくり一つの大きな要素として考えていかなければいけないのではないかという議論が出されてきたわけです。  そういう時代都市づくりを、私は都市型社会都市づくりという名前で呼んでいるわけであります。そこでは、先ほどから申し上げておりますように、既成市街地再編整備し、できるだけコンパクトに、郊外部に大きな開発を展開するのではなくて、できるだけ既成市街地再編整備して都市をつくるということに都市づくり重点が移っていくという、そういう時代に変わってきているのではないか。そのことを表現して、国土審では大都市リノベーションとか、あるいは都市計画中央審議会の答申では都市の再構築という言葉が使われてきたわけでございます。  ところで、こういう都市づくり変化は必ずしも我が国だけではなくて、欧米先進諸国ではいずれの国でも一九八〇年代に同じような動向を実は見せているわけで、アメリカヨーロッパでも同じような都市づくり変化が見られるわけです。中でもドイツは、一九八七年に我が国で言う都市計画法を改正いたしました。その都市計画法を改正する大きな理由として二つ挙げてございます。それは、これからはもう新規市街地形成という時代は終わった、都市人口が集中する時代は終わって、むしろ既成市街地再編だということを明確に打ち出すと同時に、やはり都市周辺緑地自然地をできるだけ保全していく。その二つの視点に立てば、これからの都市づくりは私が言っている新しい都市型社会都市づくり変化していくはずであるというお話でございます。  ところで、それではそういう形で既成市街地再編整備都市づくりの流れが大きく変わったときに、先進諸国であるヨーロッパアメリカ我が国を考えてみると、一つ大きな違いがあるということでございます。私のメモの中に、既成市街地再編と再整備という二つ言葉が実は連ねてございます。  例えば、先ほど申し上げましたドイツでは、恐らく既成市街地再編という言葉だけで済むのではないかというふうに思っております。既成市街地都市づくりの中で、例えばドイツではこういう既成市街地再編を行っているわけです。広幅員道路があるとすると、その広幅員道路が余りにも人々が集まる中心市街地としては広幅員過ぎる、もっと歩行者を優遇した道路をつくるべきだ、広幅員道路をもっと縮めて車線を小さくするというようなことが実は既成市街地再編一つの大きな力になっているわけです。ところが、我が国既成市街地再編整備を考えてみたときに、そういう再編整備は実は我が国既成市街地にとっては中心的な問題ではないわけでございます。  (2)に移らせていただきますと、「わが国の既成市街地再編整備上の諸課題」と書いてございますが、我が国既成市街地再編整備しようとすると、そこに書いてございますが、有効利用するための基盤整備必要性とか、あるいは細分化された権利統合調整による敷地統合整序、街区の再編必要性というようなことが大きく浮かび上がってくるわけです。それは、「背景」にございますように、道路オープンスペースなどの基盤整備地域我が国大都市ではかなり多く存在しているということでございますし、それから敷地規模が極めて狭小であり、さらに権利が錯綜しているということでございますし、それから低未利用地遊休地がさまざまな形で存在しているということでございます。  こういう問題は我が国都市のあらゆる面に出てきているわけですが、中でも、私は三大都市圏がこういう意味での都市基盤整備状況に大きな課題を残している地域ではないかと思っております。我が国経済の成長をリードしてきた大都市において、ある意味生活環境面での公的な投資が不足し、今なお基盤整備の問題が主要な課題として残されているのではないかというふうに思っているわけでございます。  二枚目をごらんいただきたいと思います。  そういう基盤整備を行い、都市づくりを行い、土地有効利用を行うという仕組みについては、従来は地価上昇期に当たっておりました。したがって、従来も既成市街地の再開発がやられていなかったわけではありません。御案内のように、都市中心部、駅前を中心として点々とそういう基盤整備を含めた都市づくりがやられてきたわけですが、そういう都市づくりを動機づけ、それを成立させてきたという要因としては、地価上昇期都市づくりがあるのではないかと思っております。  先ほど申し上げましたように、既成市街地の狭小な敷地権利整序して、錯綜している権利をうまくまとめて、基盤整備を行って都市をつくっていく。さまざまなコストがかかるわけですが、そのさまざまなコスト地価上昇で吸収する都市づくりが行われ、その都市づくりを行うに当たっては積極的に土地先行取得が行われ、土地先行取得しても地価上昇していったために、そういう意味での計画的な都市づくりがその後展開し得たという時期があったのではないかと思います。  しかし、御案内のようにバブル経済期以降地価が相変わらず下落しておりますし、これから地価の下落がとまったとしても、従来のように地価が急上昇するというような時代はなかなか来ないのではないかというふうに言われております。そういたしますと、従来、我が国既成市街地の狭小な敷地基盤整備が整っていないところで都市づくりを行う、そこに伴うリスク、それを地価上昇で吸収することが基本的に難しくなってきております。その背景には、そこに書いてございますように、長期的に資金が固定化する土地保有コスト存在土地保有リスクのような問題とか、あるいは地権者調整行政折衝等開発期間リスクとか、さまざまな開発に伴うリスクがございますし、それから一方で自治体財政が逼迫化しているという状況がございます。  そういたしますと、リスクに伴う諸コストを軽減する仕組みというようなものを都市づくりの中にビルトインしていかなきゃいけない。私はその軽減する仕組み一つとして新公団があるのではないかというふうに思っておりますし、新公団法内容を拝見いたしますと、例えば外部性の高い公共施設整備とか、あるいは土地整序敷地統合というようなことが大きな役割として出てございます。そういう土地リスクに伴う諸コストを軽減する仕組みを導入することによって、恐らく民間がその上に乗った形での都市づくりが今後展開する可能性が大きく開けるのではないかというふうに思ってございます。そういう仕組みがなければ、我が国都市づくりはなかなか動かないという状況が今日の状況ではないかと思います。  時間がかなり押しておりますので、2に移らせていただきます。  そういう都市化社会から都市型社会に移ったことに伴って、都市づくり担い手も大きく変化しています。従来の都市づくりというのはどちらかというと公共主導都市づくりで、公共が持っていた規制権限とかあるいは補助金というようなものを資源というかリソースとして、それを大きな力として都市をつくってきたわけでございますが、近年はそういう仕組みだけではなくて、むしろ公民協働都市づくり公共民間がそれぞれ持っている資源、それを出し合って都市をつくっていくということの必要性がいろいろな面でうたわれているわけです。都市づくりへの市民参加要請とか、あるいは民間活力利用要請というような背景ベースにさまざまな主体が協働して都市をつくっていくという、そういう時代に変わってきているのではないかというふうに思うわけでございます。  しかし、我が国公民協働都市づくりを考えてみた場合、幾つかの課題がございます。それは、そこに書いてございますように、専門性を持った支援組織必要性であったり、あるいは的確な情報提供手続透明性による信頼関係構築し得る組織必要性ということでございます。  背景といたしましては、市町村の基礎自治体都市づくり一つ担い手としてやはり大きな力を発揮しなければいけないわけですが、なかなか都市づくり能力という面で課題がございます。例えば、再開発をやっていく、自治体人事で二、三年でかわってしまう、私はいろいろな局面でそういう目に遭ってございます。そうしますと、一緒にやっていた地権者が何だというようなことになります。自治体はそういう人事ベースに人が動いているものですから、なかなか専門性が育たないというような側面がございます。  それからもう一つは、地方分権化に伴う都市づくり多様化ということで、公民協働都市づくりにおいては民間企業というようなものも大きな都市づくり主体として出てくることが期待されているわけですが、ますます地方分権が進み、どの都市でどういうスタンスで都市づくりに入っていったらいいのかという情報民間企業があまねく知っているということが非常に難しくなってきた。そういうものを総合的に経験を深く持っている組織というようなものも必要ではないかと思います。  それから、市民組織についても最近さまざまな形で活発に活動はしておりますが、町づくりへの合意形成意見調整という意味ではいろいろ問題も実は持っているわけでございます。そういう意味で、関係者調整等コーディネート機能とか、ソフトな技術提供を行えるとか、あるいは民間企業に透明な手続により参加を促すというような、そういう機能を持った新しい公団我が国都市づくり一つ主体として参加するということについては、私は大きな意義があるのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  4. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  次に、井上紘一参考人お願いをいたします。井上参考人
  5. 井上紘一

    参考人井上紘一君) 全国公団住宅自治会協議会井上でございます。  都市基盤整備公団法案について、居住者団体としての意見を述べる機会をお与えいただきまして、委員長並びに委員各位に心から感謝を申し上げたいと思います。  公団賃貸住宅に住む居住者は、このたびの住宅都市整備公団改革につきまして、さまざまな不安を抱きながら検討作業の行方を見守ってまいりました。そうした中で、全国自治協に対しましてこれまでの間、亀井元建設大臣が、今までのように役所仕事ではなくて、住んでいる方にもっと満足していただけるようにしたい、入居者の御心配のない形でやっていきたい、管理レベル低下がないようにすると力強い約束、励ましをいただきました。また、瓦前建設大臣からも、管理については安心して住まい生活できるように考えたい、家賃問題では公営住宅とのかかわり、居住者負担部分の問題等さまざまあって、一般会計からの導入も図りながら考えていくとの発言もいただきました。建設大臣のこのような御発言によって、私たち居住者の不安が一定解消されてきたということは言うまでもありません。  検討の結果は、新公団法案となって本委員会に付託されているわけでありますけれども、この法案がこの間私たちが求めてきた要望に真にこたえていただけるものになっているのかどうかということについては、率直に申し上げまして気がかりなことも幾つかございます。国会における慎重かつ十分な御審議によって七十三万戸、二百万人の公団住宅居住者の不安を一掃し、安心して住み続けることができる公団住宅制度の確立、新公団づくりをしていただきたいと切に願う次第であります。  私たち心配していることの第一は、住都公団廃止都市基盤整備公団設立ということによって、四十四年間にわたって我が国公共住宅政策の重要な一翼を担ってきた公団住宅制度、これが今後どうなるのかということであります。  法案では、公団名称から住宅という文字が消えてしまい、また第一条の目的条項でも都市基盤整備重点が移されて、それが主たる業務となっています。賃貸住宅供給管理は、第二義的な従たる業務に位置づけられているというわけではないと思いますけれども、今の住都公団法目的条項住宅供給中心的業務にしていることと比べますと、今後の新規賃貸住宅供給はどうなっていくのかという問題がございます。その点で、今後賃貸住宅新規供給都心居住住宅などに重点化すると言われておりますけれども、これまでの公団住宅制度と大きく変わってしまうのではないでしょうか。  また、七十三万戸の既存賃貸住宅は新公団が引き継いで管理するわけでありますけれども、当面は公団賃貸住宅として維持されるものの、やがては公団住宅制度を廃止してしまうことや、あるいは公団賃貸住宅公共住宅でなくしてしまう、その公共的性格を弱めていくということがあるのではないかという懸念を抱いている次第であります。  第二に、新公団近傍同種家賃、すなわち市場家賃を導入することによりまして新規入居家賃が大幅に上昇し、そして継続居住者家賃は繰り返し値上げによって市場家賃に近づくような額となって多くの居住者が支払えなくなってしまう、住み続けられなくなってしまうというような心配が広くございます。また、建てかえ条項が設けられて、公団住宅もいわゆる法定建てかえとなることにより高家賃になる建てかえが一段と促進をされていって、住みなれた団地から出ていかざるを得なくなる方がふえていくということになるのではないかとの不安も募っておるわけであります。  第三に、住宅管理業務内容居住者サービスは一体どうなるのか、修繕や住環境のこれまでのレベルが後退してしまうのではないかという問題でございます。公団管理部門が縮小されて、居住者に最も身近な現地管理業務委託化採算本位住宅管理になってしまうのではないかと、各地の団地自治会が特に心配をしてまいりました。  住都公団改革検討する上では、公団住宅居住者実態を踏まえていただくことが不可欠だと思っております。  そこで、お手元にお配りいたしました資料の五ページ以降に、当協議会がことし一月に実施した「第五回団地生活住まいアンケート」の集計結果を入れておきましたので、ごらんいただきたいと思います。  全国二百二十三団地の約十一万三千六百世帯の回答の集計結果でありますが、まず七ページの「世帯主の年齢」をごらんいただきたいのですが、公団賃貸住宅では世帯主が六十歳以上の世帯が三九・一%と四割近くになっております。  次に、九ページの「世帯年間収入」をごらんいただきます。円グラフの右の半分、四百八十六万円未満、すなわち所得第一分位の世帯が五三・四%を占め、そして公営住宅対象階層である第一分位及び第二分位の合計は実に七二・一%となっています。このような居住者収入実態というのは、多くの地方公共団体公営住宅供給が低迷している中で、公団住宅公営住宅の不足をカバーしていることを示しているわけでございます。  そして、十一ページに、「今後の住まいについてどのように考えているか」を示してありますが、今後とも公団賃貸住宅に長く住み続けたいと考えている世帯が七四%を占めています。公共住宅としての公団住宅存在意義、その必要性を明確にするものであります。  居住者実態を踏まえ、住まいに関する不安を解消して公団住宅に安心して住み続けたいという願いを実現させるために、私たち全国公団自治協は、新公団法案について幾つかの要望をさせていただいております。  お手元にお配りした資料のとおりですが、二、三申し上げますと、第一に、新公団目的として、低中所得者向けの良質な賃貸住宅を健全な市街地形成と一体化して供給すること及び賃貸住宅の良好な管理業務を行うことを第一義的業務として明確にしていただきたいことであります。新公団名称も、公共賃貸住宅供給管理する業務を担っていることを明らかにするようにし、現行法第一条にある「福祉の増進に寄与することを目的とする。」との規定を削除しないでいただきたいのであります。そして、政府及び新公団が今後とも公団賃貸住宅制度を維持することを含む公共賃貸住宅政策を拡充する政策をとることを明確にしていただきたいのであります。  第二に、家賃制度について、法案三十三条の家賃の決定の部分ですが、公団家賃を高家賃になる市場家賃化することに私たちは反対しております。我が国では、大量の公共住宅家賃の基準となるような借家市場市場家賃は十分に形成されていないと思います。それは野放しの状態になっているわけであります。  市場家賃ではなく、公団住宅施策目的入居者負担能力実態に見合った政策家賃ベースにしていただきたい。継続家賃の変更に当たっては、居住の安定に配慮して、入居者負担能力実態をも勘案して定めるような制度にしていただきたいと思います。家賃減免については、低所得高齢者に対する一定減額制度を設けたことを評価するわけでありますが、しかし、これは継続居住者家賃の改定、値上げを前提としたものであります。また、公営住宅入居資格相当層すべてが対象となっていない。そのようになるような減額制度にしていただくことが願いであります。  第三に、賃貸住宅建てかえについてですが、これまで住都公団が実施してきた建てかえ事業は、既存住宅団地を廃止して新規住宅を建設するというもので、高家賃のため、多くの従前居住者建てかえ後住宅に戻りたくても戻れない、入居できないという状況にありました。昨年来、新たな制度改善が行われました。当該団地居住者はこれを大変喜んでおりますが、既に事業が進行している団地でも適用されるよう切望しております。第四十九条の建てかえに係る家賃については、戻り入居を希望するすべての従前居住者に戻り入居を保障する政策家賃を設定するようにしていただきたいと願っております。また、勤労者が払い切れないような高い家賃は、建てかえ住宅を含めて早急に引き下げていただきたい。  以上のことを含め、私たち願いを端的に申し上げますと、政府が公共住宅としての公団住宅をしっかり守り、居住者が安心して住み続けられるよう、その居住の安定をきちんと保障する。家賃制度建てかえ事業の改善を図り、修繕などで長年にわたって公団と自治会との間で積み重ねてきた約束事項を守って、団地管理を一層向上させるようにしていただきたいということであります。  公団団地は、住宅供給だけでなく、あわせて良好な住環境供給し、居住者は長年にわたって自治会や町内会をつくりコミュニティー活動を行ってまいりました。これこそが町づくりだと思います。阪神大震災のとき、公団住宅では住宅の倒壊等による犠牲者は一人もいませんでした。建物などハード面ですぐれているだけでなく、復旧業務など公団という組織のよい面を発揮しました。自治会が助け合い活動に頑張ったことも被害の拡大を防止しました。  住都公団には、もちろん高家賃問題を初め社会的批判を浴びてきたさまざまな問題点があり、それらはきちんと是正をしていただかなければなりませんけれども、四十四年間にわたって蓄積してきた集合住宅管理のノウハウを持っております。そのノウハウの蓄積には、公団本体や管理業務を補完する関連法人の職員の努力がありました。居住者も自治会を通じて、さまざまな形でノウハウの蓄積に参加してまいりました。  今や、我が国住宅総数の中で、団地やマンションなど共同住宅が五六%を占めるようになっておりまして、この比率は東京などではもっと高くなりますし、今後さらに共同住宅が増加することは明らかであります。そうした中で、公団住宅で培ってきた集合住宅管理のノウハウは貴重な共通の財産となるし、そうするべきだと思います。住宅ストック数の中で公営、公団、公社の公共賃貸団地は七%しかありません。ヨーロッパ諸国の公共住宅の占める割合から見ると大変低い数字です。  私たちは、二十一世紀初頭におけるあるべき住宅政策として、公共住宅の占める割合がイギリスやフランスやドイツに近づくようにふやすべきことを目指すべきだと考えます。公団住宅七十三万戸のストックを大切にし、これを基礎にして公共住宅政策の積極的展開を図っていただきたい。  以上、都市基盤整備公団法案に対する意見といたします。ありがとうございました。
  6. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  次に、渡辺参考人お願いをいたします。渡辺参考人
  7. 渡辺純

    参考人渡辺純君) 渡辺でございます。  私は、今回の御指名をいただきましたときに、私どもの日々を取り巻く環境をよくする、そういったことに協力させていただけることを非常にうれしく感じました。  私どもの日々を取り巻く環境をよくする、この一言をちょっと御留意願いたいわけなんですが、そこでは私どもの日々とはっきり申し上げているわけです。これは私どもが日常的に生活している個々人として考えたい、そういった視点です。またその者たちの日々という、日常性を特に強調しております。そして、ふだん着姿の生活者起点というところを踏まえたいという強い願いをこの最初の言葉でお感じいただければと思うわけです。  公団をどうするかという今回の法案を考える際に、私は公団の側からでもなく、民間企業のビジネスとしてのものでもなく、つまりそういった社会的立場がもたらす上下の縛りを離れた一個人として、また市民としてごくごく自然体に素直に事を考えてみたい。そういった姿勢をまずはっきりここで申し上げたいというところから始めたいと思っておるわけです。  次に、都市を扱うという場面にあって、都市計画という分野とアーバンデザインという二つの専門分野があります。後者のアーバンデザイン、それは私の専門分野なのですが、そこにおいては特に人間の皮膚感覚の延長、質の話として都市をとらえていく傾向が強いです。空間の質を問題にしているわけで、つまりは行政をつかさどる側の計画者、行政官としてのそれではなく、実際に物を扱って人々がそこで事を営む空間をつくるデザイナーとして考えようとの視点です。  また、私事になりますが、アメリカの大学で私はかつてアーバンデザイン理論、その理論のそこのところを中心に扱った授業を六年にわたって講じた経験がございます。そのときに、市民社会における市民としてのあり方とはといったことをずっと考え続けた経験があることからも、こうしたことを申し上げております。要するに、足をしっかり踏ん張って腰を据えて、とらわれない目で我々を取り巻く環境そのものをありのままに見詰めてみる、このときに公団の今後を考えるこの法案の本質がよりはっきりと見えてくるのではと考える次第です。  というわけで、まず我々を取り巻く環境、すなわち日本における居住空間を素直なまなざしで、生活者起点というごくごく普通のレベルで見詰めてみたいと思います。  日本における居住空間は、はっきり申し上げて見るにたえないものがあるというのが私の考えです。土地を細分化し尽くしたかのような郊外住宅地のミニ開発、それの延々と続くありさまはやはり劣悪な風景と呼んでよいものと私は考えます。アメリカ社会においては郊外、サバーバンという意味なんですが、その形容詞を口にしたときの高級感ある響き、そういったものがあるわけですが、それとは全く正反対のものに日本のものがなっているのは申すまでもありません。東京、大阪のような大都市も、海外旅行から帰ってきたときに私どもがごく自然に感じる貧相ぶりは、国民の多くが口にするところであります。はっきり申し上げまして、どこの国々の大都市よりもさらに貧相であるのではとの声すら聞こえてくるのではないでしょうか。  私どもの日々を取り巻く環境をよくする、私が提起しておりますこうした方向へ、住宅公団から住宅都市整備公団、そしてこのたびの法案でねらっている都市における居住環境整備に的を絞った新しい公団が移らんとしていることを、私は高く評価したいと思うわけです。郊外の開発ということで都市化をどんどん進めた時代は既に終わった。これは、先ほどの小林先生の御指摘、都市化社会というところでの御指摘だったと思うんですけれども、この言ってみればパラダイム、そういったもののシフト、これをはっきり認めてこれからの都市型の社会を再構築していこう、こうした姿勢は非常に説得力のあるものがあります。  さまざまな経緯があってここに至っているというのは、重々私は承知しておるつもりなのですけれども、この際必要なことは、より積極的な姿勢、ポジティブな姿勢で今回の問題を受けとめること、またそれを絶好の機会とみなして、正しいと私自身も考えますこの方向をとことん追求していくこと、そういった姿勢を見せることだと私は思います。法案資料の冒頭一に、「住宅住宅地の大量供給から都市基盤整備へ」とうたっている部分こそ、国民が最も望む方向性を打ち出すと私は期待申し上げております。  以上、総論において大変に評価すべきといった私の考えを述べさせていただきました。以下、各論における気のつくところを時間の許す限り述べさせていただこうかと思います。  まず第一は、名称についてであります。  今、引用させていただいた箇所にも「都市基盤整備」とあります。また、公団の新名称にもこの都市基盤整備、これは登場いたします。別な場面にて参考人として招かれて公団住民代表として意見を述べた楓氏は、次のようなエピソードを紹介していらっしゃいます。あるとき、一住民が、これまで他人に対して住宅公団に住んでいるとみずからを紹介し続けていくことができたのに、これからは基盤公団に住んでいると言わなきゃいけないんでしょうか、まるで造成の工事現場に住んでいるような感じだと、そういった心持ちを述べたというエピソードを紹介していらっしゃいます。また、同じときの参考人として慶応大学の伊藤滋氏は、町づくり公団とか暮らし公団と言った方がずっといい公団になるのではともおっしゃっております。  私自身は次のように考えております。  ちょっとやわらかい例えなのですけれども、基盤整備の趣旨は、言ってみれば孫悟空がお釈迦さんの手のひらの上で踊ったときのお釈迦さんの手のひらをきちんとしよう、そういったことだと思われます。そして、孫悟空の側はだれかといえば、それは自由競争原理に基づいた活力に満ちた民間とのことになるでしょう。このときに問題になるのは、活発きわまりない孫悟空側がどれだけ社会的弱者としての老人あるいは身障者のために社会的な空間を総体としてつくり出せるかということにかかっております。  これは、この国会の周りの東京都心部五キロ四方をざっと見渡してみれば一目瞭然のことかと思うわけです。公団民間による都心部での集合住宅で庭つきのものはまず見当たりません。ここでイメージしております庭つきというのは、個々のユニット、個々の住戸に庭がついている。これはなかなか世界的にも例は少ないのは確かなんですけれども、一部、モントリオールのハビタ67という有名なプロジェクトがあります。また、老人たちが日々の社交、ソーシャルライフを日常的にエンジョイしようと気軽に立ち寄りたくなるような、そういった公園もこの東京都心部、国会前の五キロ四方にまず見当たりません。  確かに、多くの集合住宅はあります。しかし、それらはお金持ちのためのそれか、高収入のDINKS、これは妻、夫両方とも収入があるというそういうことを引っくるめてDINKSと呼ぶわけなんですけれども、DINKSと呼ばれる核家族のためのそれに結果的になってしまっているようなのです。  つまり、市場原理はあくまで強者の論理であるせいなのか、都心居住を三世代型としてイメージすることは大変難しいようです。心地よさあるいは多様性というもののすばらしさ、そういったものよりもホテルに近い利便性のみが強調される、そういった集合住宅になりがちです。そして、コミュニティーとしての多様性、厚み、そういったものを失わざるを得なくなり、子供の教育その他を含め多くの社会問題を生み出しかねないと申さねばなりません。こうした見解は、広く計画理論上認められたことであると指摘したいと思うわけです。  健全な社会をこれからの世紀、二十一世紀に対してもたらそうとする場合、公団が孫悟空側に立って活発に動き回って、先頭を切ってよりよい社会を都市構築していくのだという強い意思が私は望まれるのではないかと考えるわけです。  理念の表明としてやはり名称は大切であり、私は基盤整備との一歩引いた意思を示すことをやはり差し控えた方が、今後の公団の目指すところを国民に対してより強くアピールしていけるのではと思うわけです。いっそのこと、都市整備公団とシンプルな形にするのがよいのではと個人的には考えておる次第です。都市ということには当然に、住む、ほかに働くですとか憩うですとか学ぶですとかいろいろな要素はあるんですが、都市ということを指した場合、住むということがまず第一義に来るのはこれは自明の話なわけで、ここで申します都市整備公団に住むというニュアンスが強く来るのではと私は思うわけです。  また、補足的に申し上げれば、民間活力を当てにした都市基盤整備を担当する仕組みが既設のものとして既にある、つまり民間都市開発推進機構という財団法人なのですが、今回、合理化との国の方針に照らしても、重複的性格その他考えるべき問題点をそこにもたらしはしませんでしょうか。  この名称の問題以外に私の気のつくところとしては、国家としての観点から、首都圏、関西圏、名古屋圏といった大都市の再構築を本腰を入れて行うべきこと。また、都市計画理論上の最新の傾向を積極的に取り入れることによって、お絵かき、要するに最初のすばらしいイメージとしての計画そのものというよりも、計画の中に遂行の過程により力を入れることをはっきりとうたうこと、インプリメンテーションという英語がこれに当たるわけなんですけれども、そういったこと。また、既に条文化されつつはあるのですが、公正さ、透明さ、アカウンタブル、またこのアカウンタブルという英語も日本語に若干訳しにくいんですが、専門用語でこういったことはよく使うんですが、きちんと説明をすること、そういうことになっております。こういったこと等をもっともっと強調してしかるべきと考えます。  これらにつきましては若干複雑な理論上のお話が入らざるを得ず、細かな話をくだくだしく述べるわけにもいかないので、項目の指摘だけにとどめさせていただきたいと思います。  以上、生活者起点というところから、私どもの日々を取り巻く環境をよくするためにはといったことを述べさせていただきました。  どうもありがとうございました。
  8. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  次に、岩見良太郎参考人お願いをいたします。岩見参考人
  9. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) 埼玉大学の岩見です。座って意見を述べさせていただきます。  この法案につきまして、私の方からは三つの問題点を指摘したいというふうに思います。  その第一点は、名称から住宅を外したことに象徴されますように、公的な住宅供給役割を大幅に後退させることの問題でございます。つまり、来るべき二十一世紀の住宅都市づくりのあり方を考えるときに、公的セクターの役割は今後ますます大きくなるのではないかというのが私の判断でありますけれども、今回の法案はそれに逆行するのではないかという点の問題でございます。  先ほど小林先生の方からも指摘されましたけれども、二十一世紀というのはかつてのように右肩上がりの成長を期待できない時代に入ります。その端的な例が人口動向です。人口問題研究所の予測によりますと、二〇一〇年ごろには我が国人口はピークに達します。同じく国土庁の予測によりますと、同じころにやはり東京圏の人口もピークに達します。そして、二〇二五年、この段階では高齢化率が二六%、世界最高の水準に達するということが予測されているわけです。明治以来、一貫して続いてきた都市膨張の時代、成長の時代というのは終わったんだということです。人口が減る、あるいは都市が収縮するというかつてない経験をする、そういう時代に突入しつつあるということなんです。  ところが、これまでの都市計画、その発想、ツール、論理、これは一貫して右肩上がりを前提にして組み立てられてきたものです。したがって、この新しい時代に対応するにはこれまでの都市開発の発想を根本的に転換しなきゃならない、かなり深く転換しなきゃならない、これは極めて困難なことだというふうに思います。その転換、例えばこれまでの都市計画課題は基本的には計画的拡大であったわけです。しかし、これからは都市の再構築ということが最大課題になるわけです。これまで、高度経済成長の中で乱開発によって都市が痛めつけられ、負の遺産というものが蓄積されてきたわけですけれども、そういった負の遺産というものを改めていかなければならない。  この課題転換必要性というのは、最近の都市計画中央審議会の答申でも確認されているところですけれども、その場合私が強調したいのは、巨大開発でいわば町の中をひっくり返して住宅をつぶして、そしてそれにかえて大きなビルやマンションを建てていく、そういった再開発をするやり方、これはまさに右肩上がり時代の発想ではないかというふうに思うわけですけれども、こういったやり方そのものは修正されなければならない、こういうふうに考えるわけです。  そこに住む住民の居住あるいは長い間築かれてきた親密なコミュニティー、こういったものが継続し得るような都市の再構築、再開発、こういったものを追求しなければならないということです。とすれば、その場合、住み続けられることができる住宅づくりということが最大の課題になるのじゃないかというふうに思うわけです。この住宅づくりを後退させて本当の町づくりということは不可能ではないかというふうに思います。さらに、住宅をつくるだけではなくて、高齢者福祉施設等もあわせて高齢化社会に向けて整備していかなければならない。こういった課題を考えるときに、この公的セクターの役割ということはますます今後重要になってくるのではないか、こういうふうに思うわけです。  それから、この都市計画あるいは都市開発の発想の転換すべき第二のポイントは、これまでの都市住宅開発の手法の多くは地価の右肩上がりを前提としたものでありました。つまり、開発利益に依存した手法でした。しかし、これからは開発利益がほとんど期待できない、そういう都市づくり時代に入っていくわけです。そうしますと、開発手法も開発利益に依存しない方法というものが大いに模索されていかなければならないというふうに思います。  例えば、これまで開発利益に依存した典型的な手法として区画整理、再開発、そういった手法がございます。保留地とか保留床を売ってそれで事業費を賄って、そして独立採算的に再開発をやっていく、そういう手法なわけですけれども、しかし今地価が低迷しておりまして、こういった開発利益依存の手法が全くうまく動いていないわけです。いわば、莫大な赤字を抱えたままストップしている事業が続出しております。  例えば、これは公団施行ではないんですけれども、横浜西口の第二種再開発なんですけれども、保留床を買ってくれるキーテナントが応募せず、結局事業計画を決定したまま今ストップの状況になっております。あるいは郡山駅の西口再開発、これもやはり保留床の買い手がない、そういうことで三つの県立定時制高校を統合いたしまして、それが入居して埋め合わせる、こういったことをやっておるわけです。  あるいは、これまで開発利益をてことした手法として、都市計画規制緩和手法というものが大々的に進められてきました。バブル前から都市計画規制緩和策が次々と打ち出されていましたけれども、例えば規制緩和と住宅供給促進を結びつけることを目的としました市街地住宅総合設計制度や最近新たに設けられました高層住居誘導地区制度、こういった規制緩和の制度ですけれども、これは右肩下がりの時代では、この規制緩和によって都市開発あるいは住宅供給を促進するという効果は、これからはもはや期待できないのではないか。もっと言えば、そもそも開発利益を目的とした民間による再開発とか住宅供給、これは今後行き詰まってくるのではないかというふうに思うわけです。  そういう意味で、都市開発住宅供給における公的セクターの役割というものは今後ますます重要になってくる、二十一世紀においてこそますます重要になってくる、こういうふうに思います。そういう意味で、住宅都市整備公団役割というのはあるいは存在意義というのは実はこれからの時代にあるんだということを言いたいわけです。  もう一つ補足したいことがございます。  右肩上がりの条件がなくなったということで、住民の主体的な町づくりが極めて困難になってきたという状況が生まれてきているのではないかと思います。これまで、極めて厳しい条件の中で住民は環境を守りながら住み続けられる町づくりを模索して、さまざまな実践の蓄積を積み重ねてきました。  例えば、埼玉県上尾市の小さな都市開発の例がそうじゃないかというふうに思います。バブルのさなか、指定されている容積率四〇〇%を半分の二〇〇%にダウンゾーニングして、環境を守りながら、かつそこにもといた借家人がもとのままの家賃で生涯住み続けられる、そういったマンション開発を行ったわけです。この地域は旧中山道沿いでありまして、いわゆる短冊形のウナギの寝床のような細長い宅地がずっとつながっているところですけれども、バブルのさなかマンション化が進んできたわけです。マンションが建つとその隣は真っ暗になる。それで地主さんたちは、あんな再開発はしたくない、マンションを建てたくないということで新たな開発のあり方を模索していましたけれども、上尾市あるいは埼玉県の職員あるいはコンサルタント、これが力を合わせて住み続けられる町づくりをスローガンにしてこの見事な例をつくり上げたわけです。  これができましたのは、もちろん公的な資金的な援助があったということはありますけれども、今振り返ってみれば、やはり右肩上がりの家賃上昇という条件があったからではないか。すなわち、新たにマンションに入居する人たち家賃上昇ということがあって、それが今までいた借家人の家賃の高騰を可能にした、こういうふうに思います。これから、こうしたことが難しくなるということです。  少し前、このマンションに調査に出かけましたけれども、今は空き家が目立っております。ということは、地主さんが将来にわたって安心できる生活設計を考えておられたわけですけれども、それが崩れようとしているわけです。そういった状況を考えますと、民間町づくりのエネルギーを吸収して町づくりにつなげるためにも、やはり公的セクターの役割住宅都市整備公団役割というものは今後ますます重要になってくるのではないかというふうに思います。  確かに、法案では新公団は密集市街地の再開発というものをやるということを言っております。しかし片方で、基盤整備工場跡地の大規模再開発に力を入れる、そういったことにシフトをしていく中で、どこまでそういったところに力が注がれるのだろうかということを私は非常に不安に思っているわけです。  第二番目の問題点を指摘したいと思います。  それは、家賃市場家賃にするという問題です。この問題を町づくりの視点から述べてみたいと思います。  これまでの事例から申しますと、市街地開発、区画整理、こういった事業が行われた場合には借家人のほとんどは住み続けることはできなくなり、住みなれた地域を離れていくということがよく起こっております。とりわけ市街地開発、特に借家人の場合は深刻であります。  例えば、今、震災復興事業として西宮で公団施行の再開発が行われておりますけれども、借家人はだれ一人としてそのビルに入れませんでした。さらに言えば、年寄りさえ入ることは困難なんです。なぜかと申しますと、六割の方は七十平米未満の零細な権利者なんです。そうしますと、ビルに入るためにはやはり大きな借金をしなきゃならないということで、結局経済的に入れない、こういう問題が起きているわけです。もし市場家賃化ということがなされれば、こういった事態に一層拍車がかけられるのではないか、こういうふうに思います。  先ほど、いわゆる密集市街地等の再開発公団がなされるということを聞きました。しかし、市場家賃ということと連動して再開発した場合には、やはり今までそこに住んでいた借家人の多くは出ていかざるを得ないのじゃないか。そうしますと、住民が残れない、あるいはそれまで住民が築いてきたコミュニティーそのものが破壊されてしまう。これは、本当の町づくりということにならないんではないか。あえて言えば、町破壊ということにつながるのではないかということを懸念しております。  ちょっと時間がございませんけれども、第三点目の問題を手短に申し上げて……
  10. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 岩見参考人、時間がございませんので。
  11. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) そうですか、それでは、第三点目は住民参加にかかわる問題ですけれども、これはまた質問の中でお答えしたいというふうに思います。  以上です。
  12. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 脇雅史

    ○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。  本日は四人の先生方に、大変お忙しい中、貴重な御意見をちょうだいいたしました。本当にありがとうございました。私からも御礼を申し上げます。  参考人の先生方をお呼びする機会というのは、こういう委員会としてはよくあるわけであります。先生方の御意見を伺っていますと、かなり違う御意見をいただくことが多いわけでありますが、きょうの場合は、お伺いしていますと、時代認識でありますとか基本的な部分はかなり共通点が多かったのではないかな、そんなふうに感じました。  お話を伺いながら、私ごとで恐縮ですが、私が生まれて育った町の変遷をずっと思い浮かべてみました。私は杉並区、東京都二十三区の一番西側、西荻窪というところで生まれ育ったわけなんですが、私が生まれたころは戦後すぐの時代でありますが、非常に空き地も多い、自然環境のいい、いわば郊外の住宅地といった風情のところでありました。非常にいい環境に育ったわけでありますが、原風景とも言うべきその風景は今はすっかりありません。  私のふるさとは私の頭の中にしかなくて、今行くと全然違う風景しかないんですが、町づくりで何が変わったかと考えてみますと、基本的なインフラ部分道路は一切変わっていません。私の生まれ育った周辺は一切変わっていません。舗装されただけであります。結局、空き地に集合住宅が建って、多分住んでいる方々人口は倍ぐらいになっているかもしれません。鉄道もJRの中央線があるだけで、名前が国鉄からJRに変わりましたが、高架になって複々線化しましたけれども、余り変わらない。河川は、神田川の上流の善福寺川という、昔は小さい小川でありましたが、今は都市型の下水路のような掘り込みの川になっております。一体、これを戦後五十年でこんな町に変えた考え方は何だったのだろうかなというのを今思い起こしております。  そして、小林先生が言われた、まさに新規の市街地形成から既成市街地再編整備に移るんだと。私の生まれたところで振り返ってみますと、あいているところにどんどん家が建って町が変化してきただけだったけれども、もう一回住みよい町にするにはまさに再編成をどうしたらいいだろうかということを本当に感じました。  そこで先生方は、町づくりの歴史の中で、新しい公団にかわることが非常に時宜を得た適切なものであるというふうに言われましたが、これは新しい再編をしていく中での一つのステップではありますけれども、これだけですべてができるとは到底私にも思えません。幾つかの手法が積み重ならなければいけないと思うんです。  小林先生にお聞きしたいのでありますが、本当に暮らしやすい新しい町をつくっていくための道具といいましょうか手段といいましょうか、新しい公団をつくるのは一つ結構な話でありますが、それ以外にどんなことが必要だとお思いでしょうか。
  14. 小林重敬

    参考人小林重敬君) お答えいたします。  さまざまな考え方が私はあると思っております。先ほど私は申し上げましたけれども、地価上昇しない中で基盤整備をどうやっていくのかという、ただその一点に絞りましても、これはかなり難しい議論でございます。  たまたま、昨年の晩秋にアメリカに行く機会がございまして、実はアメリカでも我が国が持っている特に中心市街地の問題をかなり抱えておりまして、その中心市街地の問題というのは、大都市、中小都市、おしなべて同じような問題を抱えておるわけであります。中心市街地を再整備する、その仕組み一つとして、どこの都市に行っても言われたお話が、要するに町をつくっていくためには一定のお金が必要である、そのお金を単に国から出すということではない、それから地価上昇するその上昇開発利益をもとにやるのでもない、そこの考え方でTIFという考え方が出されていました。タックス・インクリメント・ファイナンス。それは、この地域をこういうようにつくり変えれば、例えば既成市街地をつくり変えますと、その結果として、かなりしっかりした市街地がつくられるわけです。しっかりした市街地がつくられれば、当然固定資産税が大きく変化するわけでございます。大体数倍、あるいは場合によっては数十倍の固定資産税が自治体に入る。そのことをある程度見越しまして、ここを開発するに当たって、その開発をする区域について開発事業にかかわる主体が債券を発行できる。それは固定資産税の上昇分をほぼ予測して債券を発行する。ある意味で証券化したのと同じなんですが、それを流通させて資金を回収する。  自治体は、従来から持っていた固定資産税分は継続的に受け取る。しかし、上昇分についてはその事業に生かせる。とりあえずはその固定資産税は入らないわけですけれども、ある一定期間償還が終われば将来はまた自治体にお金が入るというような例えば仕組みをとることによって、地価上昇しない、しかし建物をしっかり建てればそれだけ土地利用価値が上がるわけですから、それに伴う原資をもとに開発を行っていくというような仕組み、そんな仕組み一つこれからの都市づくりの枠組みの中では考えていくべき手法ではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  15. 脇雅史

    ○脇雅史君 大変ありがとうございました。  いずれにしても、よい町をつくっていく、暮らしやすい町をつくっていくために変えていこうと思えばお金が当然必要なわけで、そのお金をだれがどのように負担するかということが極めて大事な話であります。国がやるにいたしましても当然財源が要るわけですから、どこかできっちりとした財源を見つけてこなければできないということだろうというふうに思います。非常に貴重な御意見だと思います。  また、私ごとで恐縮でありますが、実は私の卒業した小学校で何十年ぶりか、四十年ぶりぐらいになるんでしょうか、クラス会をやろうということで昔の名簿を小学校へ行って持ってきまして調べました。五十人ぐらいのクラスであったわけですが、もちろん住居変更で住所は変わっているんですが、小学校のときに住んでいた場所に住んでいる人間、女の方は結婚されたりしますけれども、男女問わずもう四、五人しかいないんです。実家すらそこにない。本当に戦後五十年というのが大変な人間の移動の時期だったなということを実感するわけであります。  町づくりの中で大事な観点は人間でありますから、岩見先生も渡辺先生も言われておりましたけれども、そこに住まう人間がいかに住むか。私は、ある種の継続性が大事だと思うんです。今申し上げたように、私の生まれたところのようにみんな変わってしまう町では、町を愛する心とかコミュニティーというのが成り立たない。何割がいいかわかりませんが、六割とか七割とかかなりの人が継続的に住んで、また入れかわる人はどんどん入れかわっていく、そういうことで新しい風も入れながらいいコミュニティーができ上がっていくのではないかなというふうに思うんです。  今回の公団の話だけでそんなことにまで話を広げると広げ過ぎかもしれませんが、人を定住させていくという、さっきちょっと岩見先生がおっしゃっておられましたけれども、どんな工夫があって、それをやると実際どのくらい実効性があるのかといったようなことについて、岩見先生からお話を伺えればと思います。
  16. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、住民が住み続けられるということ、この保障をどのようにつくっていくかということです。  そのときに、最大のポイントは家賃、例えば借家人の場合はやはり安定した家賃ということが重要じゃないかというふうに思います。持ち家の人にしましても、今大変な思いで借金してマイホームを手に入れております。いつ自分がリストラに遭ってやめざるを得ないかわからない、そういった非常に不安定な状況の中に今置かれておるわけです。  そうした中で、やはり安定した居住を提供しなければならない。その場合に、やはり公的な役割ということは否定できないのではないか、もっともっと公的な助成ということが強くなければならないんじゃないか、こういうふうに思っておるわけです。
  17. 脇雅史

    ○脇雅史君 公的なセクターの助成、どこかからお金を出してそこへ入れるということなんでしょうが、我が国全体としてそういう面での公的な資金の使い方がどうであったのかということの検証は必要だと思うわけであります。  この新しい公団にいたしましても、やはり独立採算制といいましょうか、余り公的な資金が入ってこないのかなというふうに私は思うんですが、きょうおいでの先生方あるいは多くの方々の御意見は、そういった住まいづくりといいましょうか暮らしの環境、日々の環境をよくするというふうに渡辺先生は言われましたけれども、そういう部分にもっともっと重点的な投資をしていかなければいけない時代なのかなといったようなことも感じたわけであります。  さて、きょうもたくさん後ろにもおいででありますが、二百万人の方が現実に公団にお住まいになっておられるという現実があるわけです。今回、世の中の動きの中で公団一定の使命を終えて新たな公団に変わっていく、それはそれなりに意味がある、大きな価値があるということでありますが、既に住まわれている方々にしてみれば、井上先生からもお話がございましたが、大変御心配だろうと思います。  どんな行政でも、多くの方々心配を与えるということはあってはならないことで、衆議院の審議を通じてもさまざまなお話が出ておりましたが、参議院の審議を通じて、お住まいになっておられる方々の不安を少しでもなくすことができるような審議をしていきたいというふうに思っているわけであります。さまざまな御意見をもう既にお聞きしておりますので、ここで改めて井上先生からお聞きすることは時間もありませんので省略をいたしますが、私はそのように思っております。  ただ一つ、これは余分なことかもしれませんが、私として申し上げておきたいことは、二百万人の方々に安心してお住まいいただけるような措置が当然必要でありますが、それ以外の方々公団住宅に入れなかった方々公営住宅の方、あるいは実際に個人的に私的な部分でお借りになってお住まいになっておられる方、自分で家を買って住まわれている方々、やはり社会的公正の実現といいましょうか、高齢化社会、福祉型の社会を迎えていくに当たって本当に困っておられる方々をみんなで助けてあげられるという社会の実現が大事だと思っておりますので、言わずもがなでありますが、そういった観点も踏まえながら皆様方の不安がなくなるように努力させていただきたいというふうにお話を申し上げて、終わらせていただきます。
  18. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 参考人の皆様、お忙しい中、また大変強風の中を国会においでくださいましてどうもありがとうございました。皆さんの御意見をしっかり受けとめて審議させていただきたいというふうに思っております。  まず、この住都公団改革を議論いたしますときに一番大切なことは、七十三万戸、二百万人の方々が安心して住み続けることができるということだというふうに思っております。この法案は将来への不安を解消できるものにはなっていない、このことを大変懸念いたしております。余りにも景気対策でありますとか不良資産処理という観点に偏り過ぎているとか、あるいはまた特殊法人改革としても不十分ではないかという点もございます。  こうした問題をきちんととらえて、また二十一世紀に向けての土地政策やまた都市政策住宅政策、高齢者の皆さんに対するあるべき政策、こういうことを踏まえて、きょうは特に安心と改革、この両立について将来に対しての示唆を得たいということでお話を伺っていきたいというふうに思います。  まず、小林参考人にお伺いしたいと思いますが、都市づくり重点として、既成の市街地の再構築は政府の方も大変重要な課題として取り上げております。でも、野方図な規制緩和、これで望ましい解決は得られないというふうに思っております。これをきちんとしていくために、協議を通していろんな機能を複合して都市空間をつくり出していくということ、このことが大変重要なときに、市民の皆さんの役割についてもう少しきちんとした形で伝えたいというふうに思っていらっしゃるのではないかと思いますので、市民の皆さんたち役割についてお話を伺いたいと思います。
  19. 小林重敬

    参考人小林重敬君) お答えいたします。  先ほど私が申し上げましたように、これからの町づくりは、従来の公共側が先導して、主導して町をつくっていくというような時代はもう既に終わった、それははっきり申し上げているわけでございます。公共民間が一緒に働く。民間の中には当然民間企業がありますし、一方で周辺地域住民のそういう意味での民という立場も当然あるわけでございます。こういう周辺住民、地域住民の町づくりの活動というのが近年非常に活発化しているというのは御案内のとおりでございます。  しかし、具体的に町をつくっていくという立場に立つと、最終的にはある人たちが持っている財産権に触れなければいけない。その財産権に触れる調整を住民に任せるということがどこまでできるのかなという感じがするわけです。お互いに、自分たちの財産をどうするかということを話し合って決めるということがどこまでできるのか。  例えば、神戸で町づくり協議会というのがございまして、町づくり協議会町づくりの住民参加の非常に典型的なものである、非常に立派な活動をしている、私もそのとおりだと思っております。しかし、現実に自分たちの町を具体的に権利にさわってつくっていくとなると、町づくり協議会は本当に代表性を持ってそういうことを決めることができるのかという問題も提起されてきているわけです。  そういうものを調整するある意味での中立的な機関、あるいは公的な性格を持って信頼できる機関として、私は公団とか、あるいは公団だけではなくて公社とか、そういう組織が住民組織と一体となって働くということがこれからの町づくり一つの大きな動き方ではないかというふうに思っておりまして、住民が一生懸命やればやるほど逆にそういう組織が必要ではないかというふうに思っております。  以上です。
  20. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 住民の立場から声を出していくということを私も大変重要だというふうに考えております。  次に、井上参考人にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど市場家賃を基準にするのは公団賃貸住宅にはなじまないので、政策家賃を基本にするべきだというふうにおっしゃっておりましたけれども、もし具体的に先ほどおっしゃったことで足りない部分があったらそのことについて、政策家賃をどういうふうに考えていらっしゃるのかについて触れていただきたい。  きょうは、これだけ不安だということに関して、傍聴人の方が自分の目で耳できちんと確かめたいという思いで傍聴されているだろうというふうに思います。先ほど渡辺参考人お話も伺ったときに、二十年前にウサギ小屋というこの言葉、外国から見たら日本というのはそういうふうに映っているということと、その時代に言ってみたら本当に仕事仕事ということで仕事中毒だった人たちが今高齢期を迎えて、また将来に対してどんなふうになっていくのかなというときに、低所得者の皆さんとか高齢者の皆さんたちに対する配慮、減額制度ということを想定しているわけなんです。法案もそれは考えているわけなんですけれども、この減額制度についての評価をきちんとお聞かせいただきたいということ。  それから、情報公開。このことは国の方も大事だといってこの法律も決まりましたし、また皆さんたちが、実はこういう情報が必要なんだ、これまでにこの情報がなくて困ったというようなことがあった情報不足について、どのように提供されるべきだというふうに考えていらっしゃるか。ちょっと質問を一まとめにしましたけれども、まとめてお答えいただきたいと思います。
  21. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えいたします。  家賃の問題でありますけれども、私どもは高家賃化になるような市場家賃というのは、やはり公団住宅が採用するにしては非常に問題があるのではないかというふうに考えております。と申しますのは、日本では特に中古の借家市場におきまして市場家賃が果たして形成されているのかどうか。学者だとかいろいろな専門家の先生方は、いや、されているんだという議論とされていないという意見といろいろありまして、これが市場家賃だというみんなが納得できるようなものがないというふうに思うわけです。  というふうなときに、七十三万戸というこの膨大な借家を律する家賃の基準をそこに根拠を置いていいのかどうかということは非常に問題があるということであります。いずれは市場家賃というものがちゃんと形成されるような時期も来るかもわからないと思いますけれども、そのためにいろいろ各方面で努力しなきゃいけないかもわかりませんけれども、現時点ではそういうふうに思うわけです。  そこで、差し当たり公団住宅でとるべき家賃政策としては、政策家賃ベースに置いた方向というのが必要だということであります。公営住宅家賃にも市場家賃公営住宅法の改正によりまして適用されるということになりましたけれども、それは収入超過世帯に加算家賃を課す場合の算定の上限額というふうな形で市場家賃を採用しております。基本的には、公営住宅は応能を主にした居住者負担能力重点を置いた政策家賃であります。したがって、公団家賃公営住宅制度的に直ちに一元化するということは現時点ではなかなか無理だと思いますし、将来的な方向はそういうことがあるかもわかりませんが、少なくとも家賃については同一所得階層が同一家賃になるような、そういう統一的なものを追求していく必要があるのではないかというふうに思っております。  それから、二番目にお尋ねの減額制度のことでありますが、私どもはかねてから、公団住宅居住者公営住宅の入居階層と重なってきている、それは公営住宅の不足をカバーしている部分があるということで、そういう意味では公団住宅家賃制度にも公営住宅に準じた若干福祉的な部分を入れた家賃制度を導入すべきだということをずっと訴えてまいりました。今度、この法案にその考え方が一部採用されたというふうには思っています。そういう点では非常に御努力を評価しているわけです。  ただ、この制度家賃改定時の制度ということが基本なわけです。だから、高優賃という住宅の中で、抑制という部分で国の財源を投入する制度もつくっていただくわけですけれども、既存公団住宅の中でも公営住宅に入居する階層には家賃減額制度なりが適用されるような部分、それは先ほど申し上げた応能的な部分を加味した制度を考えていただけないかということであります。  三つ目の情報公開につきましては、これまで私どもは必ずしも公団情報公開は進んでいるとは思いませんでした。閣議で特殊法人のディスクロージャーの決定がございまして、それ以後、公団におきましても経理関係の資料などを開示するようになりましたけれども、居住者が知りたいような情報、例えば家賃の積算がどうしてこうなるのかとか、経営上もさまざまあるからすべてをというわけにはいかないかもわからないけれども、公団居住者が疑問を持たないような、経営、運営に疑問を持たないような資料の公開、情報の公開というのはまだまだやっていただける余地があるのではないかと思っております。  公団が発行したパンフレットなども居住者にすぐ行き渡らないとか、あるいは公団がやった定期調査なんかもなかなか全貌が発表されないとかいうようなことがありますので、そういうことについてどしどし積極的な情報公開の方向をお願いしたいと考えております。  以上です。
  22. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 渡辺参考人にお伺いしたいと思いますが、公団に住んでいる生活者の人たち、住民の声を生かしていくというときに、住民たちの想像力とか、また建築家、市民プランナー、都市プランナー、そういう人たちのそれぞれの想像力というものが相乗効果を生むような、そんなケースを、もしかかわってこられた中でございましたら紹介していただきたい。こういうようなケースをふやしていくための条件について、御示唆をいただければというふうに思っております。
  23. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答えいたします。  住民参加そのものがそういった案をつくる場合、これは基本的に大変いいことだと、これはもう自明のことであるというのが私の考えです。  それで、住民参加をすることによってもとの案がよりよくなる。これは例えば、先ほどやりとりのちょっとありました住む、長く住むというようなお話のときに、私は、やはりそこで実態的な意味での住むという事実だけじゃなくて、意識として、住んだ、あるいは住み続けているんだ、そういうことをしっかり確認する意味でもその案に対して貢献することが多いものがある。  一つのよく知られた例で、これは直接私はかかわってはおりませんけれども、世田谷の町づくりのときに、バリアフリーの歩道を町並みの中につくって、人に非常に親しみやすい、バリアフリーですから、なおかつアメニティーに富んだ、そういう歩道をつくろうという計画のときに住民参加を積極的に行った例があります。  そこで、私が大変によかったと思うのは、小学校の子供たちに陶板のもとになるような絵をかいてもらって、その陶板を歩道に埋めた。これは、今私が申し上げようとしておりました愛着を持った自分たちのものであるという町をつくっていく大きなステップじゃないか。そういったことは、これは住民の参加なくしてやはりできるものでもないし、住民の参加、そういったもののこれまでの蓄積、たくさんあるわけなんですけれども、そういう過程で、そういう方向をプランナー側、計画を全体的にコーディネートする側がよかれということで結果的にうまくいった例かと、そういうふうに思います。  愛着を持たせるという意味で、住民参加での改善というのが図れるというのが私のお答えです。
  24. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ありがとうございました。
  25. 弘友和夫

    弘友和夫君 公明党の弘友でございます。  参考人の先生方には、本当にお忙しいところをありがとうございます。  先ほど来、貴重な御意見もお聞かせいただきまして、またいろいろ同僚議員から質問もあったんですけれども、三人の参考人の方から今回のこの名称についてのお話もございました。  私は、名は体をあらわすといいますか、やっぱり名称というのは、その人なり、今回は公団の何をやっていくかという、そういうものが非常に端的に象徴されるのが名称だと思うんです。今回、住都公団は分譲業務から撤退するけれども、賃貸七十三万戸、二百万人の方の住まわれる賃貸、それから都市基盤整備、大きく言えばその二つをやっていかれるわけですが、今回のこの名称は、その中で基盤整備に重きを置かれているんじゃないかなという印象を受ける。やはりそこに、先ほど井上参考人が言われた住宅だとか居住だとか環境だとか、何かそういった名称一つその中に入れることが必要なんじゃないかなという、名称についての御質問をさせていただきます。  それと同時に、先ほど小林参考人は、都市基盤整備の面を重点的にされておりまして、今回、賃貸については、時間の関係でしょうけれどもお話はなかったんですけれども、二百万人の住まわれる賃貸と都市基盤整備一つ公団でこれをやっていくという意味、私はこれは非常にあるんじゃないか。  ある方は、もう賃貸は賃貸で特化して、この公団は賃貸なら賃貸だけやる、また別の公団は、何か別のシステムで賃貸だけやって都市基盤整備は別にしたらいいんじゃないかと、こういう考えの方もいらっしゃいますけれども、私は一緒にして、先ほど渡辺参考人が言われた、日々を取り巻く環境の中で住み続けるというか、そういうものが必要なんじゃないかと思います。  まず、順次、井上参考人にはその名称の件と、別の管理団体みたいなものがやった方がいいのか、それともやはりこの新しい公団の中で賃貸の部分業務としてやった方がいいのか、これをお尋ねします。それで、小林参考人には、先ほどお聞きしましたように賃貸部分といいますか、そういうような都市基盤整備の中でどういう位置づけをされるのかということ。また、渡辺参考人にも同じ観点から、岩見参考人もございましたらちょっとお聞きしたい。簡単に、時間が余りございませんので。
  26. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えします。  名称につきましては、私どもは、先ほど楓さんの話がちょっと紹介されましたが、都市基盤整備公団というのはすごく違和感を持つので、やっぱり住まい住宅というものをきちっとイメージできるような、先生の言われた名は体を呈すという観点から変えていただきたいというふうに思っております。  それから、私どもは、住宅都市整備公団賃貸住宅中心とした住宅供給中心業務でやってきた経緯を踏まえて、それからその蓄積を踏まえて、今度の新公団もやはり住宅供給管理中心にした、それを前面に出したそういう仕事をおやりになっていただきたい。その上でさまざまな他の業務も、もちろん町づくり都市開発というようなこともあると思います。そういう点は、当然おやりにならなきゃいけないと思います。ただ、経理上区分をきちっとやっていただくとか、国民にもはっきりわかるような形で業務の展開をしていただきたいというように考えております。  以上です。
  27. 小林重敬

    参考人小林重敬君) お答えいたします。  新しい公団がこれから基盤整備をやるということは、何も広幅員の道路をつくるとかそういうことではなくて、既成市街地を再整備するというそのための基盤整備ということでございます。既成市街地を再整備するということは、既成市街地土地利用をより有効に、しかも環境をよくするという役割を担う、そういう意味での基盤整備だというふうに私は理解をしております。  そのことによって、ある部分民間がその上に住宅建てるかもしれない、地方公共団体がその場で住宅建てるかもしれない、あるいは公団が必要に応じては、その地域になかなか民間が提供できないような住宅建てるかもしれない。そのことによって、住宅はマーケットでございますから、従来からある公団賃貸住宅を含めて、より潤沢なマーケット、住宅市場をつくり出す可能性既成市街地の中で生み出すというそういう役割ではないかというふうに思っております。  以上です。
  28. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答えいたします。  私が今の御質問の意味を理解したという部分では、一つ組織体で賃貸部門あるいは管理部門と、今後目指そうという都市基盤整備といいますか全体のマクロなところを同時並行的にやる場合に、賃貸部門、そういったものがどういうふうにあるべきかと、そのような観点で御質問を理解したものでお答えさせていただきます。  現在、公団には四千八百人いらっしゃる。それで共通部門が大体七百人いらっしゃって、残りの四千人が大体半々で、これまでつくったものの管理が二千人、それから技術系で建設業務あるいは宅地開発業務に約千人、大体こういった四千八百人の内訳と伺っております。  この趣旨は、当然の話、今後どのような名称になろうとも、公団が自分がつくったものをその後きちんと管理していく、そういう業務を、この五〇%という数字はかなり重きを置いてこれまでなしてきたわけだし、それを今後引き続き、この数字自体は若干少なくなる可能性は秘めておりますけれども、体制として趣旨としてきちんとやっていこう、そういうことに変わりはない、そのように私は理解したいと思うわけです。そうすべきだと思うわけです。  賃貸部門につきましても、それが今回変わりつつある公団の中においてどの程度重きを置くか。これは、都市整備するという観点から今後臨機応変に考えを進めていくべきだ、その中で解決していけるのではないか、そのように考える次第です。  以上です。
  29. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) お答えします。  私は、町づくりにおいて、住まいづくりというものがかなめではないかというふうに思います。比喩的に言えば、住まいづくりに成功すれば八割方町づくりは成功した、こういうふうに言えるのじゃないかと思います。これは現在進めています阪神・淡路大震災の復興事業、これを見てもわかるところです。  震災地で区画整理や再開発基盤整備が進められております。しかし、現地へ行ってみてわかりますように、区画整理で基盤整備がされても、なおかつまだ住宅が三分の一ぐらいしか建っていない。すなわち、住宅の手当て、住まいづくりということがなおざりにされた結果ではないか、こういうふうに思います。そういう意味で、私は住まいづくりと町づくりは一体として進めるべきだというふうに思うわけです。  今、新たな公団基盤整備というところにシフトしていくということ、これは別のいろんなセクターが上物の利用を、住宅供給すればいいじゃないか、そういった議論もあろうかと思いますけれども、今までの町づくりの実際を見ておりますと、その地域に住んでいる住民の要求がどこまでそういった切り離した形で組み入れられていくのかどうか、この点を非常に懸念する次第であります。  以上です。
  30. 弘友和夫

    弘友和夫君 渡辺参考人小林参考人にお尋ねします。渡辺参考人の履歴を見させていただきますと、日本とアメリカの大学で学ばれ、そして日本とアメリカの大学で教鞭をとられ、両方の町づくり小林参考人都市計画といいますか、そうした御専門でございます。  先ほどちょっとお話がございましたが、日本と欧米の町、そしてまた住環境なり住という概念、先ほど渡辺参考人から日本に帰ってきた途端に町づくりは何か本当に世界の中でもおくれているというようなお話がございましたけれども、そのどこに大きな違いがあるのか、お二人にお尋ねしたいと思います。
  31. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答えいたします。  欧米というときに西欧とアメリカ、そこの社会と日本という観点でちょっと私の思うところを述べさせていただきます。  やはり市民社会あるいは成熟社会ということを強く私は感じて、それに対する我が国、そういうことでこの問題がいつも目に入ってくる、そういうのが概略です。  特に今回の居住環境町づくり、こういうものにおいてこれまで日本がやってまいりましたいろいろなものが、その時代その時代には大変に意味のある、例えば今回の公団の一九六〇年代の倍率というのは物すごいものがあった。社会的な現象に近いぐらいにもてはやされたものが、時代が経るに従って今こういう審議の状態になって、次の方向へとシフトしようとしている。そういった日本の中における個々の時代によかれと思ってやってきたものが、今振り返ってみると何が欠けているかというと、冒頭で申し上げました市民社会、成熟社会、それに日本が近づきつつあるようで、まだ欧米で見られるそこにまで至っていないのではないか、そういう図式かと私は思うわけです。  それで、居住の問題、日本の今後を考える場合、やはり限られた社会の器の中でそれをよりよくするというのは非常に重要な話です。経済の原理からいいましても、まずは限られたパイということを認めて、その中における産業のあり方は、それを充足していく方向、よりよくしていく方向、そういうところにいろいろな経済活動の動きを見出すという観点からも今後ますますきちんとこの問題に取り組んでいかなくてはいけないのが日本である、そういう気持ちが強いです。  完全なお答えになってはおりませんが、以上概略なんですが、私の考えを述べさせていただきました。
  32. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 小林参考人、時間がないので簡単にお願いします。
  33. 小林重敬

    参考人小林重敬君) 簡単に申し上げます。  基盤整備の点は、既に申し上げたところでございます。  私は、欧米、特にアメリカ都市を見て、アメリカ都市づくりの第一がセーフティーだ、我が国では第一にならない。それはなぜか。継続して住み、さまざまな人がソーシャルミックスして住む、そういう都市一定程度我が国ではでき上がっているからである。そのよい点はやはり守るべきだというふうに考えております。
  34. 弘友和夫

    弘友和夫君 ありがとうございました。
  35. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  四先生方、本当にきょうは貴重な御意見を陳述していただきましてありがとうございました。  私は、まず最初に岩見参考人にお尋ねいたしますけれども、先ほどの御発言の中で、都市開発の最大課題住宅、特に公的セクターの役割が大きいと言われたこと、このことは非常に私も大事な点だなと思いました。今回の法案というのは、住宅からの原則撤退、そして都市基盤整備重点にするという内容なわけですけれども、そういう先生が述べられた点からして、この法案の方向というのはどのようにお考えになるのか、まずそれをお伺いいたします。
  36. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) お答えいたします。  まさに今回の法案住宅から原則撤退ということ、そして基盤整備にシフトしていくということ、そしてあわせて市場家賃化ということ。私は、町づくりの基本は、かなめは住宅にあるという立場からすれば、これは極めて残念な状況になるのではないか、こういうふうに思っております。  と申しますのは、先ほども一つの例を出しましたけれども、今いろんなところで住民の住まいを考えた町づくりが進んでおります。そういったものを壊しはしないかということです。  一つの例を出したいと思います。尼崎市の潮江の再開発です。  ここでは、最初にその案が持ち出されたとき、これは公団施行そして市施行の再開発だったわけですけれども、住民がそれに対して大きな反発をした。それはその再開発によって本当に自分たちがそこに住み続けることができるのか、この保障がなかなか得られなかったからです。住民は、その事業に対してストップをかけたわけです。  それ以後どういうことが展開したか。これは住民運動の非常に大きな力だと思いますけれども、それに対して公団と市がうまく協力していったということです。どういうことをやったかということなんですけれども、都市計画決定をとりあえず見合わせたわけです。本当に今まで住んでいる方々がそこに住み続けられるだけの住宅のプラン、住まい政策、これを煮詰めていったわけです。その場合に、施行者である公団あるいは市並びに住民運動が推薦しました学識経験者、そしてさらにコンサル、この四者が顔を突き合わせましてそうした住宅の計画を練ったわけです。そして、地元の人たちがこれで自分たちは住み続けることができるんだということを確信した段階で初めて法的な都市計画決定の手続を進めていった、こういうことです。その地域では、そこに住み続けたいと思っているすべての人たちがその住宅に残ることができました。  これはまさに官民共同のすばらしい町づくりの例だと思いますけれども、今回の法案のように住宅から原則撤退して、そして市場家賃化していく、そういったことをやった場合には、本当の住民参加による住み続けられる町づくり、こういった可能性が破壊されていくのではないか、こういうふうに危惧するわけです。  以上です。
  37. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 小林先生にお尋ねいたしますけれども、先生の都市づくりの御発言の中で住宅という言葉が余りなかったように思われますけれども、そういう都市づくりの中での住宅役割、またとりわけ公的住宅役割、それをどのようにお考えになっているのか、お尋ねいたします。
  38. 小林重敬

    参考人小林重敬君) 私も、都市の中の土地利用の過半を占める住宅あるいは住宅地をどうするかということが都市づくりで非常に大きな課題だと思っております。  先ほどから申し上げておりますように、都市基盤整備するということは基盤整備するために都市基盤整備するわけではなくて、その上にいかに土地利用がされるか、そのために基盤整備するわけでございます。そういう意味では、基盤整備された上に土地利用の過半を占める住宅地づくり、そのことが都市基盤に直接結びついていることは申すまでもないことだと私は思っております。  しかも、基盤の中で、先ほど申し上げましたけれども、何も二十メートルとか三十メートルというような道路整備するということではなくて、これからの既成市街地整備には、八メートルとか場合によっては六メートルとか十メートルとか、そういう住宅地の基盤をどういうふうに整備していったらいいかということが整備一つ課題になってきているのではないかと私は思っております。  今いろいろな制度を考えてみますと、国を中心にして、大きな道路をつくる、そういう仕組みがあるわけです。一方、住民は、四メートルの道路については自分たちで出しなさい、そういう仕組みが建築基準法であるわけです。しかし、その間の八メートルとか六・五メートルとか、そういう道路既成市街地の中にどうつくっていってより快適な有効な利用をするかという仕組みは、我が国には欠けているわけでございます。  その部分公団基盤整備の一部で担っていくという可能性、あるいはそのための権利調整というソフトな部分を担うことになるのかもしれませんが、そういうことが重要だと思っております。その結果として、住宅市街地既成市街地の中で十分な環境を持ってつくられていく、その可能性に期待している。私は期待しているわけで、今回公団が新しくなるから必ずそうなるというふうに思っているわけではありませんで、努力していただかないと私の期待は実は実現しない、そういう意味で申し上げているつもりでございます。
  39. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 井上参考人にお尋ねいたしますけれども、先ほど発言の最後の方で自治会の役割それからまた集合住宅管理のノウハウ、そのことに触れられました。  私は、その点はこの間ずっと蓄積を積んでこられた井上参考人がそう述べられたという点で大事だと思います。管理への居住者参加は非常に大事な点だと思うんですけれども、その点について御見解をお尋ねいたします。
  40. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えします。  私どもは、全国で各団地に自治会ができて自治会活動をしておりますが、公団住宅の全体的にすぐれた点の一つはこの自治会活動だと思っております。要するにコミュニティー活動。  先ほども申し上げましたが、町づくり住まいというのはコミュニティーがなければ本来の住まいではないと思います。確かに、住宅供給とかそういうのは建設省なりが一生懸命お考えになって国としてやっていただきました。その住宅をどういうふうにしていくのか、どう維持し町をつくっていくのかとなるとやはり主人公は居住者じゃないかということでありまして、その辺のところで、今度新公団がこれから新たに展開するに当たって管理の面でも従来の枠を越えた新たな展開ができないかということで、そういう点でも要望しているわけであります。  住宅経営というのは、単なる管理をしてあげるという一方的なものではなくて、やはり入居している人たちも、自分たちもそれに参画していくというところがなければならないと思います。そういう面で、新たな点としてコミュニティーベースのマネジメントといいますか地域密着型の団地管理、それから住宅と住生活を一緒に改善していくという視点、あるいは管理における居住者の民主主義というような、そういう分野をもっともっとみんなで考えて、政府、公団管理をするというのではなくて、居住者がそこに参加をして一緒にやる、お互いが役割を分担し合ってよりよくしていく。それが二十一世紀型の集合住宅のあり方だし、住都公団公団住宅でそのことをずっと蓄積してきた基礎があると思いますから必ずできるというふうに思っておりますので、私たち団地の自治会もその点で頑張っていきたいと思っております。
  41. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 井上先生に引き続きお尋ねしますけれども、ハビタット2という国際会議がありました。私は、その宣言が非常に大事だということを痛感しているんです。  そこでは、居住権が人権の一つとして認められ、そして各国政府がそれを保障していく、そういう方向が打ち出された。その点で、最後の方でフランスやイギリスの水準にという話が出ましたけれども、私はヨーロッパに長いこと住んでおりまして、フランスのHLMとか、あるいはイギリスの住宅、それを見て、確かに住宅に対する好みとかあり方はまるっきり違うけれども、公共性、公共が保障する、その点では共通しているなということをフランスやイギリスの例も見て痛感いたしました。  そういう国際比較からして、日本の公共住宅公団住宅の望ましいあり方、その点についてお伺いいたします。
  42. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えします。  ハビタットのイスタンブール宣言、一九九六年に出されまして、私どもの団体も自治会の役員さんがみんなでこれを勉強しました。そして、大変感動し、勇気づけられました。世界の大半の国が参加して、元大統領であるとか現職総理大臣だとか、そういう方々参加してこの居住権利宣言を採択されたわけでありまして、これは本当にこれから我が国においても住宅問題を考えていく上では重要なことだというふうに思っております。  やはりそういうイスタンブール宣言に基づいた居住権を保障するような住宅制度住宅法制などもこれからいろいろ必要になるのではないか、住宅保障法といいますか、そういうようなものも必要になっていくんじゃないかというふうに思います。国会でも、ひとつその点は多いに議論をお願いしたいなと思っております。  そういうことの中で、公共住宅というのはやはり我が国では本当にまだまだ少ない。これを邪魔者だというような議論もこの間ありましたが、とんでもないことだと思います。やはり公共住宅は、これから形態はどういうふうに変化していくのか、発展していくのかというのはあると思います。現在の形がパーフェクトだというふうには思いませんけれども、これを発展させながら公共住宅のシェアをふやして、それが民間住宅一つのリーダー的な役割を果たしていく、あるいはシェルターの役割を果たしていく、そういうような存在でなければいけないし、イギリスとか、ドイツの社会住宅といいますかフランスのHLMといいますか、そういう役割を果たしていると思うんです。  日本の公共住宅が、ぜひとも二十一世紀の初頭にはそういうふうになっていただきたいと念願しているわけであります。
  43. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 最後に、岩見参考人にお尋ねいたします。  先生の御専門の立場から、やはり安心して住み続けられる公共住宅というのは非常に大きな要求なわけですけれども、居住の安定性を図るためにはどういうことが必要なのか、その点、お尋ねいたします。
  44. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) その点につきましては、これまでたびたび発言させていただきました。  やはり市場に住宅をゆだねるということ、これが非常に住宅問題の深刻さを増していく方向につながるのではないかということを常々考えております。バブルのときにはまさに余り高くて買えない、バブルがしぼめば今度はまた景気低迷で購買力が落ちて買えない、そういうことなわけです。  市場に住宅供給をゆだねるということは、まさにそういった住むための人権ということの住居、これが極めて不安定な状況に置かれる。ということは、人間のいわば尊厳を支えるのは住宅だろうと思いますが、それが極めて粗末な状況に置かれてしまう、こういうことではないかというふうに思います。
  45. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ありがとうございました。
  46. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 社会民主党の大渕絹子でございます。  四人の参考人の皆さん、きょうは本当に御苦労さまでございます。貴重な御意見を聞かせていただきまして、これからの法案審議に資していきたいというふうに思っておるところでございます。  私は、今回のこの法案が出されてくる経過が、そこに住まわれている人たちの住民の皆さんの意見とかあるいは国民の要望とかというところからスタートをしておらないということに私は大きな不信感がございます。それは、金融機関や建設会社が持っております不良債権、その不良債権であります土地が有効に利用されないという状況の中で、何とかこれは国が関与し、その土地の流動化を図っていく中で都市基盤整備もつくっていきたいというようなことがありまして、景気対策の一環が盛り込まれて今回の法改正に至っているという経過でございます。  住都公団が果たしてきた役割は、国民の住居の不足ということに最大限力点を置かれてこの四十四年間活動が続けられてきた。そうであるならば、当然新しい時代に即応した国民の住居のニーズというものをしっかりと勘案し、さらに発展的に住都公団を大きく構築していくという方向が法改正の主眼であるべきはずなのにそこが逸脱をし、その果たしてきた役割は従の部分、いわゆる第二の目的の方に置きやられてしまいまして、景気対策としての土地の流動化だけが先行する法律改正になったことが最もこの法案の問題点ではなかろうかということでございます。  そこで、渡辺参考人にお聞きをいたします。  渡辺参考人は、最後のところで、民都開発機構との重複の部分を少しお触れになってくださいました。私もこの国土環境委員会に配属をされましてさまざまな法案審議する中で、民都開発機構だとかあるいは土地区画整理組合法があったり、あるいは都市公園法があったり都市基盤整備法があったり、もろもろ都市開発に国家が関与していく、公的資金で土地を買い入れていく仕組みは既にあるわけでございます。法律の中にもさまざまあります。  そして今回、さらにまたこの都市基盤整備公団法の中で、虫食い状態になった土地の買い上げや、あるいは低利用地工場跡地などを市街地にしていくために公的資金が注入をされるという枠組みがこの法案でできていくわけですけれども、余りにもさまざまな法案によって金融や建設ゼネコンがもたらしている不良債権の処理をわかりづらく処理していこうとする意図が見え見えだというふうに思うわけでございます。  その点につきまして、参考人が多少重複があるのではないかということを触れておられますので、どんなふうにお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  47. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答えいたします。  今の御質問の前におっしゃったのは土地の流動化のお話で、公的資金投入、虫食い状態の土地を買い上げるという部分で国の費用を使う、そこが今回審議をしておりますこれの大きな引き金であったと、そのようなお話があったわけではありますが、私はやはりそのきっかけという部分のよしあし、それ以前に、今後我々を取り巻く環境居住環境をよくするという時代に至っているという認識から、そのきっかけはともかくとして、今回のこの流れは大変すばらしいということをまず申し上げたいわけです。  そのときに、重複の問題。私は問題とまで申し上げているつもりはなくて、こういうほかのものもありますし、ここで完全に今回の公団の動きがわかりづらい方向に行くのはまずいのではないか。まずいということでもないんですけれども、そこのところもきちんと視野に入れなくてはと、その程度の指摘のつもりでございます。  やはりここで、民間都市開発推進機構と今回の公団を比べますと、民間都市開発推進機構の方はあくまで財団法人でありまして、その財団法人の持っているノウハウで非常に複雑な都市開発その他、そこの場面で登場するという立場と、住都公団、いわばもっとさらに国の公の立場で町をよくするんだと。今、住都公団と申しましたが、その名前は今後変わります。公団という形で国の公の顔として我々の町をよくするんだと、はっきりした社会的使命を帯びてそれでやるのとは、少しばかりやはりそこで線引きをきちんとすべきだというのが私の申し上げたかったことです。そのように御理解いただいて、今のお答えとさせていただきます。
  48. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  岩見参考人にお聞かせをいただきたいと思います。  先ほど、井上参考人の方からもハビタットにおける居住権利宣言ということがお話にあったところでございますけれども、岩見参考人お話を聞かせていただきまして、町づくり住まいづくりであるというその観点は、まさに人間の居住権利というのを基本的人権としてとらえた物の考え方だというふうに私自身も考えたところでございます。その居住権利宣言の中で、阪神・淡路大震災のときに大変大きな町が崩壊をしましたけれども、災害や風雨によって倒壊をするようなものは住居とは言わないのである、安心して住めるところでなければ居住権の権利には当たらないということがその宣言の中にも盛り込まれてあったというふうに覚えておるんです。  そういたしますと、日本の至るところにある住宅がそうした阪神・淡路のような地震に耐えられないとするならば、そのハビタットでうたわれた居住権利には当たらないということになっていくのではなかろうかというふうに思いますけれども、この日本の住宅のあり方と居住権利ということにつきまして、何かお考えがあったらお聞かせをいただきたいと思います。  先ほど、参考人が少し時間がなくて言えなかったところがありますので、私の持ち時間が十八分まででございますけれども、もしございましたらどうぞ続けて御発言をいただけたらというふうに思っております。
  49. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) それでは、お言葉に甘えましてお答えさせていただきたいと思います。  私は、まさに住まいは基本的な人権である、それがきっちりと本当に日本において確立されていたならば、まさに阪神・淡路大震災の被害は起きなかっただろう。ほとんどが建物の圧死で亡くなったわけです。そういったすばらしい住まいというものをこれからつくっていかなきゃならない。  その場合に私は、これからいろんな仕掛けが必要だろうと思います。もちろん財政ということです。今、財政で非常にそういった住宅に対して冷たくなっておりますけれども、私は住宅に対するコストということは極めて価値あるコストではないかというふうに思っているわけです。しかも、単なる住宅を守るというだけじゃなくて、立派な住宅供給されるということは、これはまさに福祉の基礎あるいは医療の基礎になるわけです。そういう意味で、立派な住宅供給されるということは、回り回ってその面の財政的なコストというものは圧縮できるわけです。そういう意味で、住宅単体だけでコスト論をやるという考え方、これは私はくみしないわけです。  そういう意味で、今本当に町づくりで最大課題である住宅づくりに財政を投資していくということ、これは私は今後もっと強めなきゃならないのじゃないかというふうに思います。  それから、そういったことが実現する場合に、もう一つ、先ほど申し忘れましたけれども、住民参加の問題だろうと思います。今回の法案で、運営を透明化するということが言われております。しかし、私は運営の透明化ということは実はその末端のところまでそれがなされなきゃならない、すなわち住民に対してその地域において、その事業において透明化がなされなければならない、こういうふうに思うわけです。  例えば、区画整理事業、再開発事業におきまして区画整理審議会とか再開発審査会とかそういった住民参加の機関がございます。しかし、そこに現在のところ本当に住宅が困窮している借家人、それは住民参加ができないわけです。ですから、本来ならば町づくりということを重視するならば住民参加を強化しなきゃならない、それならばもっと公団は住民参加ということ、借家人がそういう審議会に加わるということまで含めましてもっと強化していかなきゃならないのじゃないかということだと思います。  それからさらに言えば、そういった審議会の公開というようなことも必要じゃないかというふうに思っておるわけです。今、例えば東京都なんかは区画整理審議会の公開を徐々に進めつつあります。しかし、公団につきましてはそういった公開の動きということは全くないわけです。  そういう意味で、住宅ということを本当に強化するならば、まずなすべきなのは住民参加ということです。この制度改革をまずやるべきではないか。そういった基盤がない限り、本当にそれによって居住権が保障されていくかどうかということ、これはやっぱり期待は持てないわけです。  今までいろんな地域地域町づくりを見ておりますと、やはり住民参加を通じて住要求して、そして本当に行政と住民が話し合う、そういう土俵をつくって、その土俵が充実して、それがばねになってそういう居住権ということが極めて困難な条件の中でいわば奇跡的に実現している。そういったことを考えますと、住民参加というのはもう一つの重要なポイントではないか、必要条件ではないか、こういうふうに思います。  以上です。
  50. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  終わります。
  51. 泉信也

    ○泉信也君 参考人の先生方ありがとうございました。  まず、小林先生にお尋ねをさせていただきます。  都市型社会という新しい時代に入ってきたという御指摘は私にとりましても思いもよらぬ御指摘であって、大変すばらしい御指摘だと思っております。  そこで、今回の公団の改組と申しますか、先生が御指摘いただきました公民協働都市づくりといったときの公の役割を新しい公団が本当に果たせるような今回の法律になっておるのか。私の思いでは、むしろ自治体が本来の役割を果たすべき立場なのではないか。先生おっしゃいましたように、コーディネートするとかあるいはソフトな役割を担うというのは、もしもこれから公民協働だということになりますならば、今回の公団法の改正はちょっと違うかなというような思いもしますが、いかがでしょうか。
  52. 小林重敬

    参考人小林重敬君) お答えいたします。  私は、今回の公団法における公団役割というのはいろいろな面を持っているのではないかと思っております。  一つは、先ほど私が申し上げました、むしろ自治体が主役になって住民と一緒に町をつくっていくけれども、自治体にはそれなりの力をお持ちのところもかなりありますけれどもまだまだ限界のある自治体も多いわけでございますから、そこに協力して、ある場合には住民と行政の間に立ったり、あるいは住民が情報が不足であれば情報を提供したり、あるいは自治体側が力が不足であればそれを補う、そういう役割を担う部分がある。  それからもう一つは、そうはいっても、むしろこれから遊休地とか大規模な工場跡地、こういうところをより有効に使ってこれからの大都市が担っていくべき経済的な力をつけていくというような役割を担う場面においては、公団はより積極的に具体的に基盤整備を行い、その上に民間の活動、これは場合によっては公団がその上に活動する場合もあるかもしれませんけれども、そういう活動が展開できる、そういう働きをする場面も出てくる。  私は、そういう意味で今度の公団法は百面相だと思っているんですけれども、公団がいろんな顔をして都市づくりに出てくる、そういう意味では非常に難しい役割を実は公団に与えているわけです。本当にそんなことができるのかなという感じもしないではないんですけれども、ぜひ頑張っていただきたいということでございます。
  53. 泉信也

    ○泉信也君 確かに、自治体が担うべき役割を認めた上で、先ほど先生が御指摘になりましたように、人事異動等で担当者がかわってコミュニケーションがうまくいかなくなるというようなことも事実だと思いますし、今御指摘いただきました公団には、新たな機能を十分果たせるように頑張っていただきたいという気持ちも私は持っております。  そこで、井上先生にお尋ねをいたします。  政策家賃のことにお触れになりました。確かに、資料を見せていただきましてもいわゆる低い所得の方あるいは高齢者の方というようなことが実態上出てきております。したがって、公営住宅機能と基本的には同じような役割を十分担っておるという御指摘だったと私は思います。このことは大変重要なことでありますし、今回の法案改正の中にも、御満足はいただけないかと思いますが、先ほどのお話のように幾らかそういう配慮がなされておる、これは大切なことだと思います。  しかし、公団住宅にも入れない、そういうチャンスもない地域に住んでおる方々が、苦労して土地を買い家を建てて、厳しいその借金を返しておられるような方もいらっしゃるわけですね。そういう方々との公平性というようなものについては、参考人はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  54. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えします。  その公団住宅に入っていらっしゃる方、それから入りたくてもなかなか当選しない方、それから自分で努力して持ち家を持つ方、いろいろさまざまいらっしゃって、国の施策としては当然公平を維持していくということは、私どもも全くそのとおりだと思います。そうしていただかなければ、また公共住宅の使命も発揮してこないのではないかというふうに考えております。  ただ、我が国の場合に、先ほど来申し上げておりますように公共住宅のシェアが非常に少ない、七%ちょっとしかないということから、どうしても何か特権を持っている人じゃないかというふうなそういう目で見られがちだと思います。ヨーロッパだと、やはり三〇%だとかそういうふうなことになってきますと、民間のさまざまな住宅負担費を規制していくとかいうふうな形になっておりますし、その辺を私どもは当然この矛盾を拡大していく方向じゃなくて、入居者とそれから公共住宅以外のところにお住まいの方とが考え方が接近するような努力をしていかなきゃいけないし、そういう取り組みもしている次第でありますけれども、そのためにも、公共住宅をふやす方向でそこであるべき家賃を確立していくということが必要じゃないのかというふうに思っている次第であります。
  55. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。  渡辺参考人にお尋ねをさせていただきます。  先生の御指摘の中に都市型社会の再構築というお言葉をいただいておりまして、パラダイムの変化が必要だという御指摘をいただきました。  そこで、孫悟空の例をわかりやすく出していただきましたけれども、先ほど小林先生にお尋ねさせていただきましたが、本当にこの公団がそういう機能を果たせるのか。先生は、むしろ都市整備公団というふうに命名した方が先生のお気持ちの機能を果たせる公団になるのではないかというふうにおっしゃっていただきましたけれども、先生のお気持ちからしますと、今回の公団法ではその機能が果たせない、パラダイム変化に対応できない。あるいは先生がお書きになりました冊子の中に、都市型社会都市づくりというのは諸機能を複合化していく、そういう都市空間をつくり出していかなきゃならないという御指摘がありますが、そういうことが今回の公団法ではできない可能性があるというふうにお考えなのでしょうか。いかがでしょうか。
  56. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答えいたします。  私がここで申し上げたいなと思いましたことは、この機会を最大限に利用して、今の日本の世の中にとってどう考えても一番の問題である、私はその分野に携わっておることで特にそう申し上げているのですけれども、我々の周りを取り巻く環境をよくするべきだ。そこの先頭を切って孫悟空のようにひっちゃきになってやれる能力が、これまで培ってきた再開発の何十年もやった経験を持った人がごろごろいる、そういった技術者を物すごくたくさん抱えている公団により期待されるべきではないか。一歩引き下がってしまうのはもったいないなと、そういう趣旨で今回の私の意見を述べさせていただきました。  ですから私は、今回の法案がそういう多機能を持った都市居住、そういったものの実現には足りないとか、そういうふうには思っておりません。ただし、そういうところを目指したとしても、現実にこの国会議事堂の四方を見渡して、五キロと私はここではちょっと書いてみたんですけれども、幾らそういった使命を感じ、それに向かって頑張ったとしても、結果的にでき上がるものというのはなかなかそういうものを含みにくいのは、これは自明の理なんです。それをあえて踏み込んで、孫悟空のようにひっちゃきになってそちら方向を頑張るんだと意思表示をもっとすればさらにきちんとしたものになるのではないか、そのように考える次第です。できないと申し上げてはおりません。
  57. 泉信也

    ○泉信也君 渡辺先生にもう一つだけ。  インプリメンテーション重視という括弧書きの御説明をいただきましたけれども、このことについて簡単にどういうことかということをお話しいただけませんでしょうか。
  58. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答えいたします。  インプリメンテーションは英語で、日本語に訳しますと遂行というふうに訳すと適切かと思います。ここでインプリメンテーション重視、遂行重視と申し上げたかった意図は、やはりこれまで都市計画上、二百年、三百年の歴史を持って案を考えるということはさんざんになされてきた。ところが、絵にかいたもちというようなお話もあるんですけれども、案を考えるというこれまでの蓄積は十分にあるという観点に立って、最近の都市計画分野、アーバンデザイン分野で特に議論がなされて、私も同意するのが、実は案というものは場合によっては間違っているということを途中の遂行の過程で発見されちゃう場合もあるだろう。  むしろ、臨機応変に遂行の過程を重視することによって、その案を最善の方向へ変えていくことも場合によっては必要だし、その遂行の過程そのもの、そこにはどうやってプロジェクトを成り立たせるかという経済的な側面、それから住民の意思尊重、先ほどの住民参加もそこに含まれると思うんですけれども、プロセスというそのやっていく最中のもろもろのことをより最終化するものに入れ込んだ方が、最初に絵にかいたもちをそのままがむしゃらに最後までやらなくちゃいけないんだということで突き進めるよりははるかにいいものができる。私はそれは当然の話で、それはこれまでの都市計画上のさまざまな失敗事例をアカデミックな分野で議論した結果そういう流れができたとはっきり思いますので、ここで申し上げたわけです。  それで、技術者をたくさん抱えて、再開発の事例に十年、二十年携わった経験のある人を常に抱え続けております公団が技術としてのそういった蓄積をさらに次の世の中に対してより強烈な形で発揮すべきと本当に思うわけで、ここに申し上げた次第です。
  59. 泉信也

    ○泉信也君 時間が参りましたので、岩見参考人には恐縮でございますけれどもお尋ねを遠慮させていただきます。  ありがとうございました。
  60. 奥村展三

    ○奥村展三君 参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。  冒頭、いろいろなお話の中に名称の問題も出てきたわけでありますが、この団体は昭和三十年だったと思いますが設立をされて、当時は住宅公団でございました。私の地元、滋賀県の片田舎でございますが、なかなか財政力もないということで、私ごとで大変恐縮ですが、私のおやじが町長をやりましたときに、当時の住宅公団お願いをいたしまして、埼玉には住宅公団が工業団地をおつくりになったわけでありますが、どうしてもその工業団地を誘致したいということでやっていただいたときに、日本で初めての内陸工業団地をつくっていただきまして、住宅団地とそして工業団地と道を挟んで、いろんな皆さんの御意見を聞いてつくっていただきました。今そこには約七十社の会社が立地をいただきまして、住宅とそして工場が両立をしながら頑張っていただいております。そのおかげで当時の人口が一万だったのが、今四万二千まで四十年間で膨れ上がってきたわけであります。そのことを考えますと、当時、住宅公団と言いながら工業団地をおつくりになっていたんだなというような、逆の発想で私はこの間建設省の人とお話をいたしておりました。  ちょっと余談になったかもわかりませんが、そういうようなことで、今日までやはり公団の歩んでいただいたことにつきまして、私は日本の経済発展とともに歩んでいただいた、大きなシェアを占めていただいたところだというように認識をしておるものであります。  しかし、衣食住の中でまだまだやはり住というものの感覚が諸外国から見ましても充実をしていないなというように思いました。  私は、先週、日中友好議連で中国へ寄せていただいたときに、夕方ちょうど車に乗せてもらって市内を走っておりましたら、十人ばかりがずらっと夫婦で並んでおられました。これは一体何なんですかと言ったら、実は今度ここに新しい住宅ができた。トイレだとか衛生陶器だとかあるいは壁紙を実はここで全部売っているんだと。これはもう個々に自分が思い思いで買って、そして自分の城をつくられるんだという思いでここに並んで、実はこれが頻繁に最近は起こっているんだというようなことを中国の要人の方にお聞きしたんですが、そうですか、もう市場経済、自由社会と一緒ですねというような話まで、いいかげんなことも言っておったんです。  そういうことを思いますときに、住というものは個性があって自分みずからの城をつくり上げるわけですから、今までの住宅公団としてやってきたことが、その気持ちがやはり今後も伝わっていかなければ私はだめだと思うんです。これが一番の根本、たとえ名称が変わろうとも、そこに心というものがお互いに、公団と住民の方々との心のつながりがなければ私は無に終わってしまうのではないかな、そういうことをしてはならないというように思います。  それともう一つは、先ほど都市づくりとかいろんなお話をいただきましたが、これはやはり利便性を求めて都市の方にいろんなことが行われてきたと思うんですが、私の滋賀県の田舎やなんかにおきましては、公団住宅というのはないところがほとんどなんです。持ち家ばっかりなんです。しかし、それと同時に私は思うんですが、四年前にこの地に国会議員として寄せてもらったときに、東京というのは緑が多いところだなと思いました、大阪から比べますと。本当に大阪はほとんどないんです。先ほど、脇さんが冒頭に質問されました。あの人は近畿地建の局長までやられて、いろいろなことをやられた方なんですけれども、本当に私は東京にはこれだけ緑があるんだなというような思いをさせていただきました。それだけに、ある程度都市計画の中でそういう御努力をいただいておるんだと思うんです。  余談になってしまいましたが、これからもそうでありますが、今日までも経験上そうなんですが、町づくりをしていくときに一番問題は環境問題です。すぐ環境環境という言葉がひとり歩きして、開発というか乱開発だということで、住民の皆さんとのコミュニケーションをとりながら町づくりをしていこうと思ったとしても、そこに突き当たってしまうんです。そして、京都だとか滋賀だとか奈良というのは、東京もそうですが、文化財が多いんです。そうすると、またそこでぼんと突き当たってしまって何にもできないようになってしまうんです。せっかくいい居住空間をつくって、庭つきのいろんなところもつくりながらというようなこと、あるいはまた公営住宅にしても大きくつくっていこうと思ったとしても、それがつくれないというようなことで板挟みになってしまうことが多いんです。  まず、そこらを専門家の小林先生と渡辺先生にお伺いいたしたいと思います。
  61. 小林重敬

    参考人小林重敬君) お答えいたします。  実は、私が先ほどお話しした中に、都市開発をするときにいろいろなコストをどうやって吸収していくのかという議論をお話しいたしました。以前でしたら、地価上昇しておりますから、ぼんと文化財にぶつかって二年、三年かけて一生懸命調べても、その間に地価が上がっていますから開発はオーケーなんです。計画的な開発ができるわけです。  ところが、現在はそうではありません。もし文化財を発掘するので二年余計にかかるとすると、その分だけ例えば民間事業者であっても地方自治体であってもさまざまなコストをその間負担していくことになってしまう。それをどうしたらいいのかというのは、これからの大きな課題ではないかと私は思っております。いろいろな仕組みがあって、その一端は先ほど脇さんにTIFというような話をいたしましたが、そういうものも含めて地価上昇しない局面においてどうやって都市づくりをやっていくか、地価上昇しない局面都市づくりをやっていくその一つの手段として新しい公団が役に立つ部分がある。  公団があるから、すべてそういうものができるというふうに申し上げているわけではないんですけれども、そういう可能性を新公団は少し担っていける。そのことによってこういう時点における新しい都市づくりを一歩でも進める、そういうきっかけになるのではないかというふうに私は思っております。
  62. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答え申し上げます。  何かを開発するということにおいて、今おっしゃったような環境問題あるいは文化財の問題、何かそれとちょうど正反対の相対立するものが問題としてわき上がる、指摘される。これは、やはり当然のこととして受けとめるというのがこれからの開発のあり方だ。  それで、強制収用というような形で、かつてダムを無理やりつくったという時代もなくはなかった。そういったものの反省に立って、これから新しい特に大がかりなことをなすときには、痛みの部分をきっちり理解してきちんと処理するというかそちらにも目を配って、先ほど私がお答えの中で申し上げましたインプリメンテーション、遂行の部分での非常にデリケートな配慮をさまざまになしてやっていこう。  そういうことを前提に考えますと、今回の方向づけられております公団、これが特に今後の地価上昇を期待できない都市開発その他保留床における利益が出ないという部分を考えると、公の立場としてやるべきことは多い。しかも、先ほどのインプリメンテーション、遂行の過程を重視する、そういった部分ではノウハウの蓄積もたくさんにある。そういうことで期待したい、そのように思っております。
  63. 奥村展三

    ○奥村展三君 ありがとうございました。  井上先生、そしてまた岩見先生からは、お入りになっている立場だとか、あるいはまたそれぞれのお立場で御意見をお伺いいたしまして、参考にさせていただきました。  私は、生意気なようですが、先ほど申し上げましたように、やはり二百万人の方々がお住みになっているわけでありますから、皆さん方の心を体して、たとえ名前が変わろうとも、いろんな機構が変わっていこうとも、住としての基本だけはしっかり守り続けて公的な形での視野をしっかりと見詰めていかなければならないというように思います。  貴重な御意見を賜りましたので、今後の委員会審議に大いに活用させていただいて、十分に慎重に審議させていただきたいと思います。  以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  64. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 四名の参考人の皆さん、大変御苦労さまです。二院クラブ・自由連合の島袋宗康でございます。  現公団、いわゆる住宅都市整備公団の立法目的は、「国民生活の安定と福祉の増進に寄与すること」というふうになっております。新公団、いわゆる都市基盤整備公団の立法目的では、「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」とその目的が非常に微妙に変化しております。したがって、福祉の増進にかわって経済の発展がうたわれているというふうなことになっております。国の姿勢、そして国の政策の方向性がこのような形で多少変化しておるように見受けられるわけですけれども、どういうふうに先生方は受けとめられているのか。  まず、小林先生と渡辺先生それから岩見先生、御三名の方に御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いします。
  65. 小林重敬

    参考人小林重敬君) お答えいたします。  私は最初にお話を始めたときに、我が国経済をこれまでリードしてきた大都市圏において基盤整備が十分ではなかった、地方と比較しても十分ではなかった、そのことが、今日経済構造が変わり新しい産業が必要になっている時代に、それに対応する都市仕組みができ上がっているかというと、必ずしもそうではないのではないか。そういう面では、実は都市基盤整備するということが新しい都市をつくり新しい産業の基盤をつくるということに当然つながる、あるいはつながらなければいけないのではないかというふうに思っております。  これから、我が国で高齢社会を含めてさまざまな負担がふえるわけでございますから、そういう負担をどうやって国として、自治体として支えていくか。それは、やはり一定程度の経済をリードする大都市圏において支える経済的な基盤をつくる、そのことも私は必要であると思っております。  私は、一貫して余り住宅のことはお話ししませんけれども、住宅についても非常に関心を持っているんですけれども、私の役割はきょうはこちらだと思って発言しておりますので御承知おきください。そういうふうに思っておりますから、そういう新しい局面を迎えた新しい公団であるというふうに私は理解しております。
  66. 渡辺純

    参考人渡辺純君) お答えいたします。  私は、第一条の条文がある程度変化をした、むしろ変化をしたというところを今後ますます生かすべきではないか。そこに経済という言葉が入ったことが今の御指摘の趣旨だと理解してはおるんですけれども、やはりこれからの低成長と申しますか、限られた器の中でその器の中をどのように変えていこうかというような社会の中において、都市という差し当たっての問題を変えていくところ、それを豊かにしていくところにいろいろな経済活動を見出していく、そういう趣旨にそれをとらえれば、ここにおいて経済という言葉に対する何か特別な、何といいますか実利的過ぎるとか、そういうお話というのもないのではないかというのが私の考えているところです。
  67. 岩見良太郎

    参考人岩見良太郎君) お答えします。  私は、これからの都市計画の最大の課題都市の再構築にある、こういうふうに考えております。その意味で、基盤整備ということが極めて重要になっていると思います。ただ、その場合の基盤というのは、私は何よりも重視すべきなのは身近な環境としての基盤整備じゃないかと、こういうふうに考えておるわけです。  しかし、今回の新しい法律を見ますと、経済ということが全面に出ておるわけです。すなわち、ここでうたわれている基盤整備というのは、経済基盤としての基盤整備、こういうところにむしろ重点が置かれているんではないかというふうに思うわけです。そういう意味では、身近な環境づくりから乖離していく、そういった方向性がむしろ示されているのではないかというふうに思うわけです。  こういった基盤整備の方向ということで、先ほど来コストということがいろいろ問題になっておりますけれども、私は、こういった大規模な経済基盤としての基盤整備ということでのコストリスクというのはむしろ極めて大きいのじゃないかというふうに思うんです。本当に身近な環境づくりとしての基盤整備ということにこれから町づくり重点を移していくならば、むしろコストの問題はかなり軽減されるんじゃないかと、こういうふうに思っております。  そういう意味で、コストを下げながら、できるだけ軽減しながら、いかにして都市環境基盤整備を進めていくかということで私も考えておるわけですけれども、私はある非常におもしろい例を発見したんです。  これは住宅づくりではないんですけれども、防災公園づくりなんです。足立区のある防災公園なんですけれども、これは住民参加でつくった防災公園です。非常に小さな防災公園なんです。そのときに住民参加で住民が提案をしたのは、防災公園に果樹を植えよう、こういうことです。なぜ果樹を植えるということを住民は提案したのか。それは、結局果樹というのは世話が大変なわけです。結局、住民が力を合わせて世話しなければならない。そうすると、おのずとコミュニティーができ上がる。コミュニティーというのは防災のかなめなんです。  ですから、本当に防災基盤、例えばそういうことを考えた場合に、結局住民の力をいかにつくり上げていくか、それから本当の安全な町づくり基盤であるコミュニティーづくり、こういったものを追求するようないわゆる基盤づくり、それを目指したならば、少しでも現在の劣悪な水準を引き上げながら、かつコストの問題を最小限に抑えて、町づくりというのは着実に前進していけるんじゃないか。それに対して、経済基盤整備の大規模基盤整備というのはそういったことと真っ向から対立することではないか、こういうふうに考えております。
  68. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 井上参考人にちょっとお伺いします。  賃貸住宅に対する国の考え方の変化家賃の算定方式の変化などについて、もし御意見があれば承りたいと思います。
  69. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えします。  ちょっとその前に、先ほど緑の問題がありましたが、私どもは公団団地というのは非常に緑の多いすばらしい空間だと思っております。周辺の町の方々も皆団地に来て子供たちを遊ばせているというようなことなんかもありまして、そういう価値といいますか、居住者がみんな家賃を払いながらつくってきたというように思っています。  そういう意味では、町づくり団地居住者が長年ずっと団地に住み続けてきて家賃を払い、町づくりに参画をしてきたというふうに考えておりまして、その辺なんかも御理解いただきたいわけなんです。そういうずっと長く住んでくる中で、高齢化を迎えた、年金生活になった、しかも自分たちが住み続けた町を愛し、コミュニティー活動もずっとやってきたというふうな居住者方々が今後もそこに住みたいというときに、家賃のことで住み続けられなくなってしまうというのは一番情けない話ですし、そこのところはみんなが助け合いながら引き続き住み続けていくというような制度をつくっていくということがどうしても必要だということで、先ほど来意見を申し上げてきたわけであります。  私なども、ずっと長い間公団住宅に住んできて、そこで子供を育ててきました。きょう傍聴に見えている方なんかも、皆さん二十代、三十代のときに公団住宅に入って子育てをやってこられたわけなんだけれども、今一番憂えているのは、今後我が国の若い世代、ファミリー層だとか子育て世代、それからこれから結婚をして子供をつくり育てるというような若い夫婦の方々が住むところが都市には保障されていくだろうかというようなこと。  そのときに、私たちが享受した公共住宅公団住宅というのをこれからもそういう世代に提供していっていただきたいと思うし、それがやっぱり中核になるべきだし、そこのところでそういう若い世代たちが負担できるような家賃、今は公団の新設の家賃というのは物すごく高いわけなんですけれども、なかなか入れない。そういう新しい団地にも若い世代、夫婦が入れるような家賃を設定していただいて、そういう日本の未来の世代に提供していただきたいというふうに今考えております。
  70. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 国としてはできるだけ公営住宅といいますか、そういったものから手を引いて民間住宅に変えていこうという姿勢が見えているような感じがするんですけれども、例えば公団住宅民間のマンションといいますか、そういったものとの違いを、もし公団住宅にお住まいであられる皆さん方が、どういう違いがあるのかということをお聞かせ願いたい。
  71. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えします。  最近、私の家に配られている新聞にいっぱいマンションの広告が入っています。それで、そのマンション広告を拝見すると、例えば遊び場、公園、それから保育所とか幼稚園とかいうのは、全部私の団地のものが書いてあるわけです。近くにこういうのがありますよというようなことで、商店なんかも含めて。というくらい、マンションはそれはもう一生懸命頑張っていると思いますけれども、公団住宅というのは地域の中で、連帯の居住ということの中で大きな役割を果たしているなとつくづく思います。  先ほど申した、外からマンションの人たち団地に遊びに来る、お年寄りも団地の中の広場でゲートボールをやっているというふうなことがございます。あるいは団地の中では夏祭りだとか運動会だとかという、いろいろ居住者の取り組みがありますけれども、そういうのに周辺の方々参加してくるというふうなことになっておりますし、犬の散歩もどんどん来ます。  そういうことで、余り民間のどうのこうのと言う立場ではございませんけれども、やっぱり公団住宅は全体の町のためにも非常に大きな意味があるというふうに考えておるわけであります。
  72. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 阪神・淡路大震災における被害者、多くの方々が亡くなられたわけですけれども、公団団地にお住まいの方で一人も犠牲者が、犠牲者といいますか死亡がなかったというふうなことを聞かされております。多くの犠牲者が出ておりますけれども、団地にお住まい方々で一人もいわゆる犠牲者が出なかったということは、どういう特徴的なことが言えるというふうに思われますか。お伺いします。
  73. 井上紘一

    参考人井上紘一君) お答えします。  震災直後に私も現地へ行ってあちこちの団地状況を拝見しましたけれども、確かに公団住宅市街地のげた履き住宅で数棟傾いたとか、下の商店がだめになったから住めなくなったとかいうふうに破壊されたところもございましたが、とにかく建物が倒れなかったんです。傾いたのはありましたが、建物の倒壊等による犠牲者は全くいなかったということです。それからまた、テレビがおっこちてきたとか、家具はもうめちゃめちゃなわけですが、幸いなことに家の中で家具によっても人命は損なわれなかったというふうなこともありました。  いずれにしても、公団住宅の建物自体の建築基準法を満たしたよさというのはそのとき痛感いたしました。それが一つです。  それから、二つ目には、やはりそこで自治会がずっと長い間活動していたということです。これも驚きましたが、あるところでは、あそこにおじいちゃん、おばあちゃんが、老人が住んでいる。朝方ですから、顔が見えないから下敷きになっているのじゃないかということで、その家に自治会の役員さんが駆けつけた。そうしたら、案の定たんすの下敷きになっているわけです。それで、外からガラスを割って中へ入って、みんなで助け出すということで一命を取りとめたというようなこともあります。  そういう意味で、公団住宅全体の質の問題と、それからコミュニティーの問題だというふうに考えております。
  74. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 時間がございません。
  75. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 では、もう時間ですので終わります。
  76. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席を賜り、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午前十一時五十六分散会