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1999-05-13 第145回国会 参議院 国土・環境委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十三日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松谷蒼一郎君     理 事                 市川 一朗君                 太田 豊秋君                 小川 勝也君                 福本 潤一君                 緒方 靖夫君     委 員                 上野 公成君                 田村 公平君                 長谷川道郎君                 山下 善彦君                 脇  雅史君                 岡崎トミ子君                 佐藤 雄平君                 弘友 和夫君                 岩佐 恵美君                 大渕 絹子君                 泉  信也君                 奥村 展三君    国務大臣        建設大臣     関谷 勝嗣君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        水産庁長官    中須 勇雄君        運輸省港湾局長  川嶋 康宏君        建設省河川局長  青山 俊樹君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 〇海岸法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) 〇環境事業団法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただいまから国土環境委員会を開会いたします。  海岸法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 小川勝也

    小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。  海岸法の一部を改正する法律案ということで、参議院に参る大分前から、こんな法案を用意していますという御説明をいただいておりました。思うところはいろいろあるわけですけれども、大体御説明を聞きながら、あるいは自分で深く掘り下げていく中で妥当な改正であろうかと、そんな考えでおります。しかしながら、この改正の中にも重要なポイント幾つ幾つもありますし、未来に向けて果たしていかなきゃならない責任がたくさんあるなと、そんな期待を持って審議を迎えさせていただきたいと思います。  まず一つは、当然のことでありますけれども国土侵食をされておる、これはゆゆしき事態なわけであります。そんな中で一つ、今改正にもあります沖ノ鳥島の問題、これはいわゆる行政区分東京都にあったもので、東京都にも多大な負担をかけていたのを今度は国が直轄して面倒を見ようと、当然の内容であり賛成をいたします。特に、経済的な意味合いの大変大きい我が国土の一部でございますのでしっかりと管理をしていただきたい、そのようにまず冒頭申し上げさせていただきます。  そのほかにも、世界地図を見ますと、日本国土は大変小さい、狭いと言っては恐縮ですけれども大変人口の割に狭い国土、一平方メートルたりともむだにしたくない、そんな気持ちの中で、この海岸侵食の問題も大変大きな問題だと思います。  いろいろ原因があろうかと思いますけれども海岸侵食原因の主なものはどういうものか、まずお答えをいただきたいと思います。
  4. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございました海岸侵食の問題でございますが、この原因砂浜に供給されます砂の量と流出していく砂の量とのバランスが崩れることによって起こるというふうに考えております。  このバランスが崩れる理由といたしましてはいろいろ考えられるわけでございますが、例えば河川からの砂利採取、また現行の海岸法が成立されます前の状態、昭和三十年代では海の砂浜から直接砂利採取するというふうなことも行われておったわけでございます。そういった砂利採取などによる土砂供給の減少、それから海岸部がけがございますが、このがけが崩壊することが逆に土砂供給につながっていたという面もあるわけでございますが、この崩壊防止が行われますと、逆に供給される土砂が減るわけでございます。また、海岸部におきまして構造物をつくりますと、その設置で土砂移動が遮断されますので、逆に遮断された方の下流側砂浜はえぐられるというふうな問題もございます。  いずれにしましても、沖合の海底深いところに砂が持っていかれれば、トータルで海岸を動く砂の量が減るわけでございますから、そういったことが海岸侵食原因かと考えております。
  5. 小川勝也

    小川勝也君 北海道でいろいろとこの海岸の問題を研究されておられる民間の方がいまして、いろんな資料をお届けいただいて勉強させていただきました。  北海道を例にとりますと、私の記憶はないんですけれども洞爺丸台風のころまでは海岸侵食はそんなになかったんじゃないか、こういうふうなデータをいただきました。あるいは、自然の摂理の中で山が削られ、川に土砂が流入をして、それが当然のことながら海に行く、海の波の作用でそれなりに土砂や礫や砂を適当な形でつくっていった、そういうことで自然の循環があったのではないか。当然、山が削られたり、あるいは一部の海岸が削られたりということはあったと思います。  しかしながら、いろいろな文明や私どもの生活が変わっていく中で、当然のことながら自然災害を少しでも減らしていこうという努力の中で、自然に私たちの歴史として少しずつ手を加えてまいりました。例えば砂防ダムをつくる、あるいは河川ダムをかけるなんということも、いわゆる海に土砂が十分に来なくなったということもいろいろあるかと思います。  今国会にこの法案が出されたときに、私は少しうがった見方をいたしました。最近、ダムを建設するということが大変に世論の同意を得られにくくなったのではないかな、河川局関連ダム予算を予定どおり執行できなくなったので、その分海に活路を求めたのかな、そんなうがった見方もしましたけれども、実は逆にダムをたくさんつくったせいで海岸お金をかけなきゃいけない状況になってしまったんじゃないかな、むしろ逆の考え方が浮かんでまいりました。何はともあれ、海岸にこれからまだまだ手をかけていかなきゃいけないということは事実だろうと思っています。  それで、北海道のことで恐縮ですけれども海岸侵食という日本国土がいろんな形で削られておる中で北海道の占める割合というのはどのぐらいでしょうか。
  6. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 前段のお話に関連したお答えを少々させていただきたいと思いますが、海岸侵食原因一つとしてダムによる堆砂があるというのも事実でございます。ただ、いろんな全国的な分析をしている最中でございますが、ダムの堆砂量よりは河川砂利採取量の方が多いということもございますし、また河川砂利の方が海に直接近いということもございますので、むしろそちらの原因の方が大きいんじゃなかろうか。海の砂浜の砂を取ればそれが一番影響力が大きいわけでございますが、ダムよりは河川砂利の方が大きいんじゃなかろうかというふうに思っております。  また、ダムについては、実態を申し上げますと、三百三十六事業やっておるわけでございます。マスコミ等で取り上げられます十数ダム事業地元の反対、水没地の反対等あるわけでございますが、ほかの三百を超す事業水没地の方の御理解も含めて極めて順調に推移しておりまして、むしろ予算が足りなくて困っているというのが実態でございます。  また、海岸侵食について全国に占める北海道割合いかんというお尋ねでございますが、これにつきましては現在、年平均約百六十ヘクタールの侵食面積全国であるわけでございます。これは明治時代侵食面積の約倍の数字でございますが、そのうち北海道におきます侵食面積年平均約八十六ヘクタール、約半分を占めているというのが実態でございます。
  7. 小川勝也

    小川勝也君 百六十ヘクタールのうち八十六ヘクタールといいますと半分以上ですね。地元のことで大変申し上げにくいわけですけれども、私にいろいろと情報を提供してくれた方によりますと、いわゆる河川ダムに使われる予算に比して海岸のために使われる予算というのは少な過ぎた、少な過ぎる、こういう御指摘なんです。  北海道全国に占める割合が半分以上だということをお伺いしたので、ついでにお伺いしますが、いわゆる海岸を守るため等に使われる予算というのは、全国の中で北海道が占める割合というのはどのぐらいでしょうか。
  8. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 年代的にかなり変化があるわけでございますが、昭和四十一年での海岸関係省庁合計北海道シェアが四・九%でございます。平成八年時点では六・九%、また十一年度予算でまいりますと全国事業費ベースで約千九百十六億円でございますが、うち北海道分は約百三十六億円でございますので、七%というシェアになっております。
  9. 小川勝也

    小川勝也君 これは単純に数字で比較することはできないと思いますけれども全国の中で半分以上の侵食北海道なのに、その予算シェアが四・九、六・九、七・〇、これはどう考えても妥当な配分ではないんじゃないかなという気がいたします。  私は、工事のこととか予算のことは専門家じゃありませんのでわかりませんけれども予算硬直化という問題があるんじゃないかなというふうに思います。例えば各県別シェア、それともう一つ事業別シェア、特に建設省で言いますと道路がこのぐらい、河川がこのくらい、海岸がこのくらいというふうに大体割合が決まっておるように思うわけでございます。やっぱり時代ニーズ、そして未来に向かってどこに重点を置かなきゃいけないか、いろいろ変わってくると思うんです。各県別事業別シェアもフレキシブルに重要なものに変えていく、あるいはポイントに注ぎ込んでいく、こんな工夫が必要だと思います。  大臣もうなずいておられますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  10. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 私は、全くそういう時代になってきておると思うわけでございます。終戦直後から最近までは、どうしても全国に平等にというか平均的に予算配分するということが流れであったと思うわけでございますが、まだ多少そういう硬直化が見えるというのは、いわゆる省庁間におきましてはそういうようなことがありますけれども、今は事業内容が大きく変わってきておりますし、また県別配分も変わってきております。  そういうようなことで、二つの問題は先生指摘方向に進んでおると思うわけでございますが、今は省庁別をどのように対処していくかというところに来ておると思うわけでございまして、時代の動向に即した的確な社会資本整備、その分配ということに努力していきたいと思っております。
  11. 小川勝也

    小川勝也君 あえて申し上げますと、海岸侵食から守るということに関しますと、県別に幾らというやり方あるいはパーセンテージもまことに当を得ないと思うんです。  ここに資料があります。海岸線延長、一位北海道四千三百五十四キロ、二位長崎四千百六十五キロ、こうあるわけです。これは北海道面積事業規模で一割とか言われていますけれども海岸線延長ということになると相当な距離になるわけです。ぼろぼろと削られて泣いている地域もあるということをここでしっかりと御認識いただきたいと思います。北海道だけたくさん金が行き過ぎるということも当然御批判があるかもしれませんけれども、これは我々の国土海岸線を守るということですので、延長線の長い県にはそれだけたくさんの予算が行かなきゃいけない、これは当然のことだと思うので御理解をいただきたいと思います。  それで、北海道予算をたくさん欲しいというのも当然あるわけですけれども、この改正案未来に向けて非常に希望を持てる法案だということで意を強くしております。例えば、海岸線に護岸をつくるというのは人々の暮らしを守る、高波や津波からその地域を守る、あるいは侵食からその地域海岸線を守る、こういう当然の理由がありました。今回の改正には、そのほかのさまざまな目的時代に即応したニーズを入れていこう、これを私は拡大解釈したいと思います。  海岸線を守るという意義については、今申し上げました侵食から守る、災害から守る、高潮津波から守る、景観を守る。それからうまく利用できるようにする、レジャーその他で親しめるようにする、漁業とも密接に関係をしておりますので漁業に寄与する。あるいは、私もこれは勉強したばかりでわかりませんけれども海洋には水をきれいにするという作用があります。それから、化学物質分解するという作用も今研究されているらしいんです。せっかくの改正ですので、私は大いに欲張って、いろんな目的を一度に果たせるような研究をこれからもどんどん進めていっていただきたいというふうに思います。  一つは、もう大分証明されてきておりますけれども、例えば人工リーフ的なもの。これを工夫することによってそこに藻が生え、魚が卵を産めるようにするなどということもたくさん研究されておりまして、事実、北海道の一部にも利用されているところがあります。例えば、森林と河川と海というのはつながっておりまして、森から栄養素を含んだものが河川に流れる、河川で良質なプランクトンが育てられて、それが海に行くことによって魚のえさになるということもあります。  それを含めまして、漁業の分野で海岸あり方、あるいは人工リーフでも構いません、どのように把握をしておられるのか。水産庁から長官に来ていただいておりますので、御認識をお伺いしたいと思います。
  12. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) ただいまお話がございました一つの例ということでございますが、人工リーフという工法がございます。離岸堤一つでございますが、環境保全観点から沖合水面下構造物を人工的に設置する。もちろん波を消波するという効果が大変大きい、そこが主目的であるわけでございますが、同時に実は水面上まで構造物があらわれないためにかなり広い面積をとらなければならない、平面的な広がりを持った施設になる。  そういうことになりますと、この人工リーフは一定の時間がたちますと海草類が繁茂して、例えば典型的にはアワビとか伊勢エビのような有用水産資源の生息の場になる、あるいはソイとかカサゴみたいな岩礁性魚介類の生育の場、稚魚が大きくなっていく場として大きな役割を果たす、こういうことがございます。  ですから、そういった観点海岸事業海岸防護ということを大きな目的としながら、同時にこういう人工リーフを推進することによって漁業の面でも大変大きな寄与をしていただける、そういうことをこれからも大いに進めていただきたいし、また私ども自身も進めていきたいというふうに思っているわけであります。
  13. 小川勝也

    小川勝也君 もう一点、これはまだ研究途上であって広く御認識いただいていないことかもしれませんけれども、例えば今海が汚れる原因というのはいろいろあります。一つ農業、水田、畑から流れてきます農薬系の問題があります。これは化学物質であります。そして、波に洗われることによって海面に近いところにその化学物質が来たときに光合成あるいは紫外線によって分解される、こういう研究がなされているやに聞いています。  それからもう一つは、例えば家畜のふん尿大腸菌など、これはO157というような病原性のものを含んで、これも海が汚れる原因になっております。これも海岸事業の設定の仕方、今お話がありました離岸堤とか人工リーフとか、波の動きを人為的に変えることによって海洋の持つ分解能力あるいは浄化能力が変わってくるという研究がなされているやに聞いています。  水産庁長官は、この話を聞いたことがありますでしょうか。
  14. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 人工リーフの問題を含めまして海岸域というのは陸と海の接点ということで、そこに波が生ずることによりまして波浪の効果と相まって曝気といいましょうか空気に触れる面積が非常に広くなる、そういうことを通じて例えば有機物の分解というか浄化作用がある、こういうことは古くから言われてきたわけであります。  ただいま先生から御指摘がございました化学物質分解ということについては、私どももまだ十分な知見を持っておりませんけれども、そういう意味を含めまして、海岸域というのが自然の浄化能力という点で大変大きな力を持っているということは私どもも十分認識しているところでございます。そういった意味で、私ども固有事業として藻場、干潟の造成だとかそういうことに取り組むと同時に、先ほどお話し申し上げましたような人工リーフの問題なんかについても積極的に取り上げて努力をしていきたいというふうに思っているわけであります。  こういった海の浄化作用、そういう問題については我々も十分関心を持って、今後民間でのいろいろな研究もなされているというふうに伺っておりますので、注目し、できるだけそういうものを吸収していきたいというふうに考えております。
  15. 小川勝也

    小川勝也君 私は欲張り、そして合理主義者なものですから、せっかく海を守ろうとしてあるいは陸を守ろうとして巨額の税金を投入するわけですから、さまざまな観点から最大限の効果をねらうような事業であってほしいと思います。そして、今国会に提出されましたこの海岸法改正というのは、まさにその意図が大きく盛り込まれた法案だということで評価をしております。  例えば、港湾管理する運輸省漁業管理する水産庁、そして当然のことながら海岸事業を所管している建設省、今まで以上に省庁間の連携特段に必要になってくると思います。その辺、大臣、いかがでしょうか。
  16. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) おっしゃるとおりでございまして、この三省で今日までも海岸関係省庁として協力してきたところでございますが、今後は新しく防護環境、利用という調和のとれた総合的な海岸管理が行われるよう、関係省庁連携を密にしていきたいと思っております。  また、この中でも運輸省と我が建設省は二〇〇一年から一緒になるわけでございますから、なお緊密な関係というものがそこでできてくるものと考えております。
  17. 小川勝也

    小川勝也君 それで、いい話ばかりだったんですけれども、この法改正で心配な点は、やはり財政状況ニーズとの関係です。パンフレットなんかを見ますと、きれいな海岸線侵食から守って人々が親しめるような、そして魚も定着する、いい話ばかりですけれども、大変たくさんのお金が要る事業だと思います。  その辺、どこからやっていくのかというのも非常に大変な問題ですし、海岸線の総延長などというのは恐ろしい距離になるわけでございます。このまま日本の国が破産するまで海岸を美しくしていくのか、その辺の考え方、ちょっと局長にお伺いをしたいと思います。
  18. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございましたように、非常にこれからの厳しい財政状況考えますと、やはり重点的な投資をしていくという方向になっていくんだろうと思います。  海岸整備に当たりましては、近年どんな被害があったかという被害状況や、防護区域内に資産、人口がどの程度あるかといった状況等によりまして優先順位を判断し、効率的な事業の実施に努めているところでございます。  また、四省庁合計箇所数を減らすことが結果的に重点投資につながるんじゃないかということでいろいろ努力しておりまして、例えば平成七年度では千四百八十五の海岸事業をやっておったわけでございますが、十一年度、四年後には千百五十五という数字に、五年間で三百三十カ所、箇所数としては削減を行ったわけでございます。その結果、一カ所当たりの事業費が十一年度においては一億六千万円というオーダーでございまして、平成七年度に比べますと二二%多いというふうな形でございます。まだまだ不十分かもわかりませんが、そういった形の重点投資をしていきたいと思っております。  また、北海道につきましては、平成七年度で百十四海岸だったわけでございますが、平成十一年度は九十一海岸ということで、五年間で二十三カ所の絞り込みになっております。  また、侵食対策と同時に高潮対策も非常に重要でございまして、実は旧海岸法といいますか、ほぼ四十年前に成立されました海岸法の議論のときには高潮被害が非常に多い、ジェーン台風とか二十八年の台風だとかという状況があったものでございますから、高潮被害の非常に多い地域での高潮堤防の築造というものにも非常に力を入れてきたという経緯もございます。それは、つながっていないことには意味をなさないものでございますから、そういった一連施設を完成させるというふうなことも考え方としてあったわけでございます。  これからも重点的かつ効率的に事業を実施してまいりたい、貴重な財源でございますから大切に使ってまいりたいと考えております。
  19. 小川勝也

    小川勝也君 せっかくいい改正をして、これまでの海岸あり方あるいは考え方を変えていこうということなので、私は今の例えば事業箇所数を減らしていくというのはちょっと違うのじゃないかというふうに思います。これは難しいことだと承知ですけれども、コストを下げる努力をもっともっとしていただいて、いい海岸事業一つでも多くできるように御努力をいただきたいと思います。  そんな意味でも、先ほど私は不確実な情報も申し上げました。しかしながら、今回のこの海岸法改正が二十一世紀に向けていい改正になるかどうかというのは、新しい試みをどこまで具現化させていけるかに尽きるだろうと思います。例えば、高潮からその地域を守るということで言いますと、堤防を高くすればいいことでありまして、もっともっと二十一世紀に使える技術というものをつくっていっていただきたいと思います。  そんな中で、一つ要望というか提案をしたいと思います。  今回の海岸法をよく読みますと、先ほど申し上げましたように、幾つもの目的を一遍にできる事業というのが可能になってくるわけです。そんな意味からも、例えば漁業の問題、漁業が盛んである、あるいは北海道農業もたくさんあって、それから酪農もある。特に十勝地域というのは、これは酪農畜産王国でございまして、ふん尿の量が人口に換算すると一千万人に匹敵するんだそうです。昔のように垂れ流しになっているわけじゃありませんけれども河川相当数ふん尿関連あるいは大腸菌等が流出しているわけであります。  まだ発展途上技術でありますけれども、そんなこともあわせ考え、あるいは先ほどの海岸の総延長予算シェア特段に少ない、そんなことを含めまして、私は北海道にこのモデルになるようなさまざまな、欲張りなアイテムを満足させられるだけの研究的なモデル事業をぜひやってほしいと思います。  いい形で海岸を守るだけじゃなくて、魚が集まってきて、あるいは離岸堤人工リーフを工夫することによって海水の浄化、こういう形にすれば一番きれいになる、大腸菌も減る、あるいはダイオキシンも分解するなどという説も出ているんです。そんなことを総合的に研究する施設をできれば北海道道東太平洋岸に私は実施していただきたいというふうに思います。これは要望になりますので大変言いにくいわけですけれども局長大臣、この私の提案に対するお答えをいただきたいと思います。
  20. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今、小川先生おっしゃったとおり、いろんな目的で前向きにより美しく安全な国土をつくるということで取り組んでまいりたいと思っておりますが、例えば現実に建設省北海道の胆振海岸、これは苫小牧市白老町でございますが、タンデム型人工リーフというのがございます。これは、人工リーフを二山にしまして、そうしますと表面積が非常に広がるものでございますから、いろんな機能がある、水産効果にもすぐれている、そんなこともございますし、あとは大臣の御指導のもとで魚をはぐくむ海岸づくりといったセンスも持ちながら仕事をしてまいりたいというふうに考えております。
  21. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 御指示のように、確かに財政的な問題もこれあり、その中でどのように海岸を豊かなものにしていくかということでございますから、一方を重きをすれば逆が軽くなるというようなこともありましょうけれども、極力総合的に豊かな海岸をつくるべく努力をしたいと思っております。
  22. 小川勝也

    小川勝也君 ぜひ、未知の分野であろうかと思いますが、先ほど来こだわっております海岸域の工事の仕方によって大腸菌を減らしたりダイオキシンを分解したりという研究も、途中で頑張っておられるということでございますので、その欲張りな目的達成にも御努力をいただきたいなと思います。  私の質問はこれで終わりまして、岡崎委員にバトンタッチをしたいと思います。
  23. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 よろしくお願いいたします。  まず、四月二十七日に関谷大臣が記者会見で発言されました吉野川可動堰に関することについて、改めて委員会で正式に真意をお伺いしたいというふうに思います。  それともう一つは、もし住民投票で反対して事業がとまりましたら必要な事業もやってもらえなくなるのではないかという心配をしている人たちがいるわけなんですけれども、反対したら何もやってもらえないというのは、やはりこれはお上に逆らったら怖いという心配だろうと私は思うんです。必要な課題を自分たちで見つけて、それにどういうふうに対処するのかを含めて自分たちで制度面からの取り組みを考えていくというのが、そして、その結果住民の判断に従うというのが私は民主主義のルールだというふうに思うんです。そのためには、情報公開法も通りましたけれども、住民とそれから省庁が持っている情報というものがきちんと共有されていなければいけないだろうというふうに思うんです。  ですから、住民の皆さんたちの反対している人たちに対して、この民主主義のルール、そして一般的なルールにするための制度面での取り組みということも含めて、力強い発言で心配を払拭していただきたいと思いますけれども、まずよろしくお願いします。
  24. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 少し時間をいただきたいと思いますが、先般の私の発言は両論ございまして、これはなかなか表現は難しいのでございますが、この方が賛成、よくやったという立場の方かなと思う方が、それはもうそういう時代だと言う方もいらっしゃいますし、とんでもないと言う方もいらっしゃるわけでございまして、確かにこれはいろいろなことが絡んでおるわけでございます。  閣議の後の記者の質問はこういう質問でございました。先般の地方統一選挙で徳島市の新しい議員、その新しい議員を分析すると、定数四十名の中で二十二名が可動堰に反対の方である。そうすると再び住民投票条例が提出されるのではないか、それで、それが可決された場合には住民投票をやる、その結果がどうだった場合はどうなるんだというような質問でございました。  ですから、私はそのまま素直に答えたわけでございます。ただ、その後振り返って見ますれば、普通にいけば、住民投票条例はそういう方々が当選したとするならば可決をされることだろうと思います。しかしそのときには、私は、いかに選挙で投票をするか、投票に行くかということが住民の責任である、いかに大切な義務であるかということをこの機会に自覚してもらいたいというような思いもございました。  ただ、そういう結果が出るとは思っていなかったんでしょうし、そういうことになっても、先生今御指摘のように建設省はあくまでも、もちろんのことでございますが、国民の安全、財産、生命の確保のためにこの可動堰が必要であるというふうに今でも私も思っておりますが、そういうようなことでやってくれるだろうというようなことで、逆に言えばそういう運動が起こっていなかった。その結果がその議員の数の結果に出てきたのではないかというようなことも私は思いまして、この機会に、選挙がいかに重要なことであるかということをぜひ私は有権者の皆さんに御理解いただきたいと思う気持ちもございました。そういう中で一石を投じたようなことになりました。  一市六町の方々が今日まで何度となく水害に遭っていらっしゃるわけです。ですから、その方々から、何ということを言うのかというおしかりの声をたくさんいただきました。ですから、そういう方々が、なお徳島市の議員の方々あるいは住民の方々にこの必要性というものをぜひ訴えていただきたい。可動堰に賛成の皆さんがそういう大きな住民行動を起こしていただく必要が私はあると思うんです。そして、その方々の生命、財産、安全のために私はこの可動堰は必要と思っておりますから、そういうようなことで大きな住民行動をとっていただいたら必ずや御理解をしていただくことができる、そのように思って私はあのような発言をしたわけでございます。  片や、こういうようなことは、国民の安全を確保するという立場の建設省のものを住民投票にゆだねるというのはなじまないのではないかという声もたくさんございます。そのことも、私はまたこの機会に論議をしていただきたいと思っているわけでございます。  ただ、素直に私はそのときには投票の結果の神聖さといいましょうか重さといいましょうか、当然のことでございますが、それはそれに従わなければならないという基本的な考え方で答弁をしたわけでございます。
  25. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 わかりやすく私も言いたいんですけれども、結局、大臣は今五分以上もかかって私が歓迎したこととは違うような形になって答えられたんですけれども、反対した人たちが今の第十堰でいいというふうに言った場合、あれは穴があいている、それは補修しなければならない部分があるんですけれども、もし反対派の意見が通って住民投票がそうなった場合には、その穴のあいたところの補修であるとかそういうことはしてもらえるんでしょうねと、そういうことについてはどうですか。
  26. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) そういう結果になったときにはもちろんそういうようなことをやっていかなければならないと思いますし、あるいはまたいろいろな考え方があると思うんですけれども、可動堰でもまたいろいろな方法があるようでございますから、これは技術的なことでございますが、そういうようなこともまた住民の方々と話し合って、それを理解してもらえることができるならば、私はそれでまた進めることもできると思っております。
  27. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それでは、この海岸法に入っていきたいと思いますけれども、私は海のことを考えますときに、真っ先に思い浮かべる言葉がございます。それは「森は海の恋人」という、宮城県気仙沼で植林活動を十一年行っている畠山重篤さんというカキ・ホタテ業者のこの運動のことなんです。  漁師が山に登って木を植える。現在、環境保護運動の主流となっている海を守るために木を植える活動をしてきているわけなんですけれども、それは畠山さんが約四十年前にフランスの海で、潮が引き始めると潮だまりがあって、そこには小動物がうごめいていて、その名もない動物が動いていることこそが海が健全であるという証拠なんだと、これら小動物が生きているか、いかに多いかというのがバロメーターになるんだということでありました。  豊かな海に流れる水は豊かな森、健全な川と生態系が大事であること、このことを教えておりまして、「森は海の恋人」はことしの小学校五年生の社会科の教科書にも登場するわけなんですけれども、私は、この前面に広がる浅海域と連続して広がる湿地などの後背地と一体の自然環境として今度の海岸法というのはぜひとらえていただきたい。  そこで、大臣、生態系の仕組みに位置づけられてこその海なんだということで、森は海の恋人ならば川はその仲人、漁に携わる人たちがそういう目線で考えているということも含めて、この海岸法改正に当たっての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  28. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 私も全くそのように思うわけでございまして、いわゆる海岸環境の保全というものが今回追加されたわけでございます。人工的なものでない、昔の自然の海岸、本当に昔の我々の子供の時代海岸は最近私も余り見たことがございません。海岸には大きな壁ができたり、消波堤が沖合にあったりというようなことでございまして、そういう意味において、これからは開発と環境保全、どちらをとるかといえば、私は環境保全をまず第一義的に考えてやっていきたいと基本的に考えております。
  29. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 そこで、海岸という言葉から思い浮かべるさまざまな声なき声も考えました。  まず、私ども地元の仙台にあります蒲生の干潟なんですが、三十年以上もこの干潟を見守り続けている蒲生を守る会の皆さんたち。これは、太平洋沿岸のコアジサシの営巣地としては北限でありまして、わずかな悪条件でも巣をつくるということを放棄してしまう、そういう可能性があるわけなんです。  この蒲生の干潟、一九六七年に仙台港の建設工事が行われて、半分以上が埋め立てられてしまいました。そこで、これは一九九三年の日本鳥学会の大会でも報告していることなんですが、一九七六年から八三年までは二百から三百の営巣が認められたけれども、その後、一九八六年に国際貿易港が整備促進されて、八九年以降はずっと営巣が定期的には認められなくなってしまったということがございます。  こうした港湾における工事に関しては干潟に与える影響が非常に大きいわけで、これからこの海岸法整備されるということも含めて配慮していくお考え、殊に今、ラムサール条約の会議がコスタリカで開かれているわけなんですけれども、この国際会議にぜひともこのことについての配慮を、運動の皆さんたちもお聞きしてほしいということでしたので、運輸省にまずお伺いしたいと思います。
  30. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) 今、先生のお尋ねは、港湾整備に関連いたしまして干潟の環境保全についてどうかということかと思います。私ども港湾整備に当たりましては、まず港湾計画の策定段階におきまして、また実際にそこで事業を行いますときには、公有水面埋立法等の関連におきまして環境影響評価等を実施しながら環境への影響というものを最小限にするように努力しているところでございます。  また、名古屋港の藤前干潟につきましても、港湾計画の見直しというようなことについて今やっているところでございます。そういう関連でも、干潟等については生態系の重要な浅海域であるということについては十分認識をしておりますので、干潟の保全はもちろんのことでございますけれども、干潟の造成によって環境の創造を深めていくんだというふうなことも含めまして、今いろんな検討をさせていただいているところでございます。
  31. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 これから仙台港での国際港整備はどのぐらい続きますでしょうか。
  32. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) どれぐらいという御質問は何年ぐらいということでございますでしょうか。  今、ここにちょっと持参しておりますのが仙台港の将来計画ということで、(資料を示す)現在まだこのあたりのところまででございますが、将来はこちらの方も計画をということでございます。それを全部実施するということについては、予算の問題とかそういったことによって進捗が違ってまいりますが、今の計画でいきますと十年以上かかるというふうに認識をしております。
  33. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 そうしますと、今配慮されることについてもお伺いしましたけれども、これから先、本当に干潟に影響があるということを十分お考えになっていただいて、私たちも、地元としてはそのことを県にも言いながらやらなければいけないのかな、大変苦しいなというふうに思うわけなんです。今後とも、港湾行政、運輸省には配慮を十分していただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。  それから、私は、岩佐さんも環境委員で、衆議院の環境委員会のときに、屋久島でウミガメを守る人たちにも出会いました。それから、遠州灘でやはりウミガメを守るために十年以上も毎朝三時に起きて浜辺をパトロールしているという、サンクチュアリジャパン代表の馬塚丈司さんという方のお話も伺いました。  また、七里ヶ浜でのサーファーたちの海を守る闘い。これは情報収集をしたり、役所へアタックしたり、有力者へのコンタクトをとったり、ビラ配りをしたり、数万部に及ぶコピーをとって、署名、意見書集め、デモ行進。また、自分たちのライフスタイルを守るために、テレビや新聞の取材、官庁へのアタック、学識経験者も含めてシンポジウムを開催したり、市長へアタックしたり、ありとあらゆることをしながら守ってきたというお話も伺いました。  また、私どもの宮城県では鳴き砂という、歩くときゅっきゅっと音がするという鳴り浜があるわけなんですけれども、宮城県にはこれが五カ所あって、環境のセンサーと言われる鳴き砂海岸、これを守る人たちの姿、この話も伺ってまいりました。  調べる中で、自然を守る人たちが本当に日夜活動をしている、大変な御苦労をされているということを知りましたので、その人たちの思いを受けとめるつもりでも審議に臨んでいきたいというふうに考えます。  まず最初に、目的に掲げられております「海岸環境整備と保全」、この意味をお伺いしたいと思います。自然環境の保護は十分に含まれておりますでしょうか。
  34. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今回の海岸法改正におきまして目的に追加されました「海岸環境」というのは、陸と海とが相接する特色のある空間である海岸の特性に由来する自然環境、これを保全するという意味を十分に含んでおると私ども認識しております。
  35. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 この改正案は、昨年十二月二十五日の海岸管理検討委員会の提言で、「美しく、安全で、いきいきした海岸を目指して」、これを受けた法改正案と理解しておりますけれども、提言はこの改正案には明記されておりません。  防護環境、利用、この調和を重視しているわけなんですけれども、この改正案の趣旨もやはり防護や利用と自然保護あるいは生態系との調和にあると考えておいてよろしいでしょうか。
  36. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 先生指摘のとおり、「美しく、安全で、いきいきした海岸を目指して」という御提言を海岸管理検討委員会の方からいただいたわけでございまして、また今回の法改正は、この提言を踏まえて、今までの防護だけでなく、環境、利用というのも目的に加えたというのも先生指摘のとおりでございます。  海岸環境につきましては、動植物の生息地だとか、また微生物が非常に多いとか、いろんな海岸特有の多様な生態系といいますか自然環境があるわけでございます。当然、この環境の中に自然環境というものが含まれているというふうに私どもも認識しております。また、精神としましても、そういったことで自然環境の保全が非常に大切であるという精神でもってこの環境の保全ということが盛り込まれているという認識でございます。
  37. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 そうであるとすれば、調和のとれた海岸づくりを進める上で最も基本的な考えであります海岸の位置づけ、これは目的に書かれてありません。これは明記すべきだったのではないかと私は思います。  海岸管理検討委員会の提言でも、海岸は国民の共有財産である、そしてまた人間活動の場であるということとともに、多様な生物が生息・繁殖する貴重な場であるという認識が示されております。ぜひとも目的海岸の位置づけを明記していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  38. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 私どもは、海岸法改正でその目的に「海岸環境整備と保全」とはっきり書いてあるわけでございまして、そういった意味で、海岸が非常にすぐれた景観も含めた自然環境を持っているということを踏まえた上での目的への書き込みであると認識いたしておるわけでございます。
  39. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 この海岸法に基づいて行われる海岸環境保全と、もともと環境を守るための問題認識でつくられた自然公園法と自然保護法、この環境保全との関係はどのようになりますでしょうか。  海岸環境保全海岸法をメーンに行うということではなくて、両方の制度が連携をして環境保全に当たるというふうに私は理解しておりますし、環境法令による海岸環境保全の足を引っ張るようなことにはならないだろうというふうに考えておりますけれども、確認をさせていただきたいと思います。
  40. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 御指摘のとおりでございまして、海岸法と自然環境保全法、自然公園法等の環境関係の法律はそれぞれの目的を持っておりまして、相互に排除するというものではなくて、同じ区域を対象とした場合に双方の法律が適用されることは十分あり得るわけでございます。  海岸には、美しい景観を有する自然公園区域や、生息する動植物等の自然環境がすぐれている自然環境保全地域等が存在いたしますことから、海岸の良好な環境を次世代に引き継いでいくためには 環境行政との連携も非常に重要であるというふうに思っておりまして、十分環境部局とも調整をとりながら進めてまいりたいと思っております。
  41. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 次に、基本方針の内容としてどのようなものが想定されているか、お伺いしたいと思います。  法律には、海岸環境の保全という私たちにとっては耳なれない言葉しか書いていないのですけれども、生態系の保全、生物多様性の確保、希少動植物の保護といった語句が盛り込まれるでしょうか。この法改正でウミガメ等の生息地の保護ができるようになるという期待が非常に大きいこともありまして、海浜動植物の生態環境の保護といった文言は入れられないでしょうか。
  42. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 海岸保全の基本方針につきましてはこれからの話になるわけでございますが、全国的な観点から海岸保全全般にわたる基本方針を定めていかなければならないだろうというふうに思っております。  具体的には、一連の広域的な海岸として一体的な海岸保全基本計画を策定すべき海岸の区分に関する事項、これはどこからどこまでは何海岸というふうな区分に関する事項。それから二点目は、防護環境、利用の調和のとれた海岸保全の基本理念。三点目は、海岸環境を含む海岸の保全に関する基本的な考え方。四点目は、海岸防護に関する重要事項というふうなものについては定めていきたいと考えておるわけでございます。このほか定めることがあるかもしれませんが、今の時点ではこの四つの点について定めていきたいと考えておるわけでございます。  海岸環境の保全につきましては、今回の法改正によりまして海岸管理の重要な目的一つとなりますことから、そういったことを十分頭に置いて文章の記述は原案をつくりたいと思っておりますし、またその策定に当たりましては環境庁などとも協議をしながら希少生物の保護などの必要な事項について記述してまいりたい、かように考えております。
  43. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 希少動植物の保護について相談していくということですけれども、基本計画についても続いて伺いたいんですけれども、そういうことを相談していくということであれば、基本計画の方でもいいんですが、具体的にアカウミガメの生息地を守るという趣旨の文言を明記することは想定されているでしょうか。
  44. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 当然基本計画におきましても、これは県知事さんが策定されることになると思いますが、今先生指摘のような貴重な動植物の保護といった問題は非常に重要なテーマになろうかというふうに考えておりますので、記述されることは十分期待しているわけでございます。
  45. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ありがとうございます。  もう一回方針に戻りますけれども、基本方針の内容は政令で決めるとされております。この基本方針には海岸の保全に関する考え方、理念、そして海岸防護に関する重要事項が記載されるということですけれども考え方、理念、この内容こそがすごく大事で、私はぜひとも法文で規定すべきだというふうに考えているんですけれども、どうでしょうか。
  46. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございましたように、この法律につきましては目的のところで海岸防護に加えて「海岸環境整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用」というのを追加して、防護環境、利用の調和のとれた海岸を形成していくというのが一番基本的な海岸に関する理念だろうと思いますし、それはこの法律の目的規定で明記されてあるわけでございます。  さらに、海岸の区分の問題だとか、個別の海岸でどこからどこまでが海岸区域である、また海岸保全の防護環境、利用の調和について具体的にどのような理念でやっていくのかというような問題につきましては、これは政令の方がなじむのではなかろうかという判断でこのような提案になったものでございますが、防護環境、利用の調和を図るという根本的な理念については、海岸法第一条の目的の段でもう明記されているというふうに理解いたします。
  47. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 次に、環境庁にお伺いいたしますが、環境庁長官は基本方針を定めるための協議にどのような方針、態度で臨まれるのか。環境基本計画には外れていないというチェックにとどまらずに、積極的に参加していただきたいと思いますが、期待にこたえる覚悟を示していただきたいと思います。
  48. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 環境庁では、これまで自然環境保全基礎調査で全国海岸の自然環境についてのデータを蓄積いたしますとともに、全国海岸の五割以上の地域を国立公園などの自然公園として、海岸の自然環境保全に取り組んできているところでございます。  海岸保全の基本方針の協議に際しましては、先生お話しの環境基本計画において定められておりますさまざまな事柄、多様な自然環境、ウミガメの産卵地を初めとする生物の重要な生育地、またすぐれた自然海浜の風景地といったような多様な自然環境の保全、また人と自然との豊かな触れ合いができる場としての自然海浜の確保といったようなことが十分に図られるように必要な調整を図ってまいりたいと考えております。
  49. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 環境保護の観点から、少しでも怪しい点があれば頑張って粘っていただきたいと私は思います。  環境庁が説得力を持つためには、環境庁自身の取り組みが大切だというふうに思います。予算的な制約もあって、環境庁の海岸に対する環境対策が十分見えていないという環境団体などからの失望の声を聞くことも少なくないわけなんですが、今後どう海岸海洋環境の保全を強化するのか。特に、九一年六月の海浜環境保全対策検討会の提言、「海浜環境保全対策の今後のあり方」には見るべきものが非常に多いと思います。本当にすばらしいものだと思いますけれども、その後の取り組みがどんなふうになっているか、お伺いしたいと思います。
  50. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 今、先生お話しの海浜環境保全対策につきましては、特に海浜につきまして地形や景観面からの評価、生態面からの評価、さらには生活文化的な面からの評価という視点からの検討がされているところでございます。  私ども環境庁といたしましては、全国の自然環境の重要な構成要素であります海岸についての概況を把握する調査を長く実施してまいっております。また、ウミガメ産卵地を初めとします生物の重要な生息・生育地、さらには風景地などのすぐれた自然を有する海岸地域について、自然公園法などに基づきましての国立公園などの地域指定を行いまして、車馬などの乗り入れの行為規制あるいは自然環境保全のための調査、さらには海浜の清掃業務といったような保全のための措置もとってまいっているところでございます。  環境庁みずからも、さらに海岸の自然環境の調査、さらには自然環境のすぐれた海岸地域の指定を進めるなど、積極的に海岸環境保全に取り組んでまいりたいと考えております。
  51. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 基本計画は都道府県が定めるわけなんですけれども、ここでは学識経験者の意見を聞くこと、関係住民の意見を反映させる規定があります。それなのに、国が定める基本方針にはこうした規定がないというのはなぜなんでしょうか。  委員会が設置されるんだろうと思いますけれども、その場合の構成にどう配慮するのか、お伺いしたいと思います。
  52. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 海岸保全基本方針の策定に当たりましても、広く学識経験者等の意見をお聞きしてまいりたいというのは基本的な姿勢として持っております。  なお、法律上、国の基本方針の策定に当たり第三者機関等に意見をお聞きするという場合には審議会にお聞きするという形をとるのが一般的でございまして、法律で書くとすればそういうことになるわけでございますが、審議会の統廃合を進めるという行政改革の流れの中で新たな審議会を設置することは適当でないというふうなことから、御提案申し上げている条文の規定にしているところでございます。  そういった意味で、実質的には学識経験者の方々の御意見を聞いてまいりたいと思いますが、幅広い人選をさせていただきながら環境面も含めた学識を持った方々の御意見も聞いてまいりたいというふうに思っております。
  53. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ただいまの幅広い中に、関係住民の意見を反映させるというふうに確認してもよろしいんでしょうか。
  54. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 幅広いと申し上げましたのは、学識経験者の幅が広いという意味でございます。
  55. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それでは、私からの要望として、なるべく早い時期に事業の段階で内容を公表して意見を集約するという考え方をとっていただきたいというふうに思います。  もう一回、関係住民になりますけれども、先ほどちょっと触れました地元に住んでいないサーファーたち、こういう人たちの意見もあります。先ほど闘いを詳しく申し上げましたのは、そういうふうにして守ってきたということがあるから申し上げたわけでありまして、そういう人たちの意見がどこかで反映されなきゃいけないというふうに思うんですけれども、それでは局長はどんなふうに考えていらっしゃるんですか、そういう人たちの意見は。
  56. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 海岸を利用するということを非常に長年続けてこられた方、また海岸について非常に詳しい方、いろいろそれはそれで一つ海岸に関する学識を非常に詳しい方なんかはお持ちになっているんだろうというふうに思っておりますので、学識経験者の中で、やはりひときわすぐれた海岸に対するいろんな意味での知見をお持ちの方がメンバーに入っていただくということは十分あり得ることだろうと思っております。
  57. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 どうしてもやはり学識経験者のところだけにこだわられている。  私は、最後のところでもう一回教育のことで触れたかったんです。サンクチュアリジャパンの馬塚代表が、ウミガメを守るということのためにはどういうふうにしたらいいかを考えましたときに、子供たちにも海に来てもらって自然環境を見てもらって、そういう人たちにアンケートをとった。それには、国やあるいは県、市、そして環境保全団体、保護団体、それプラス住民たちの声を聞くことが大事だという答えが七一%ありました。市民たちの声を反映させることはすごく大事だということをぜひ踏まえていただきたいなというふうに思うんです。  その馬塚代表は、自然を守る心が大事なんだ、そしてそれは環境施設などをつくってぜひとも海辺、海岸というものを島国日本の教育の現場にしていただきたいと。そういう意味でも、そのことを踏まえて、やっぱり関係住民を初めほかから来た人たちでも、そういうことを大事にするということについて何か一言いただかないと、私もあと五分ぐらいしかありませんので、いつまでもこのことにこだわるわけにいかないのでよろしくお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  58. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今、河川の方でも川に学ぶ小委員会というのが河川審議会でございまして、いろいろまた子供たちが水辺の学校というふうな形で水に学んで、子供たちの教育を非常に効果的にやっていけるんではなかろうか、こんな取り組みもございます。  海はもとより、非常に水に学ぶ機会が多いわけでございます。そういった形で、海岸の美しい環境、またすばらしい自然環境を守るという知見を持った方というのも非常にすばらしい学識を持った方だろうというふうに理解しておりますので、この辺は基本計画なんかで県知事が意見を聞くメンバーを選ばれる際に、そういった取り組みをされているような方を対象にされるということも十分あり得るだろうというふうに思っております。
  59. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それじゃ、環境庁にお伺いしたいと思います。  こうした環境保護をしていらっしゃる市民運動の方たちは、何か集まるステーションがない、例えば親ガメは見たけれども子ガメはどうなっているだろうかとか、そういう受け皿がないから啓発活動というのは大変難しいというふうに言っているわけなんですけれども環境施設、教育施設というかネーチャーセンターのようなものをやっぱり今後ともぜひ整備していかなきゃいけないという教育施設の大切さ、守る心を育てるという意味環境庁はどうお考えでしょうか。
  60. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 海岸を含めて自然環境の保全を図る上で、環境教育による情報の提供や知識普及、意識啓発が重要だと考えておりまして、主として国立公園、国定公園でありますけれども海岸部に十カ所以上のビジターセンターを整備いたしまして、パークボランティアの方がそこに入りまして環境教育の拠点にいたしているところでございます。  さらに、自然公園の区域外におきましても、新たにふるさとふれあい水辺整備事業といったような環境教育の事業、また環境教育に関する施設整備、総合環境学習モデルゾーンということも十五県でスタートいたしておりますが、これらを実施いたしておりまして、今後とも積極的に展開してまいりたいと考えております。
  61. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 続けて環境庁に伺っておきたいと思います。  海岸管理をめぐる問題を考えますと、防護環境の調整だけでなく、藤前干潟の問題を見てもわかりますように、広い意味で両方とも環境問題に数えられて、また環境省の課題となります廃棄物の処理と自然保護の間の調整が重要になってくると思います。リサイクルの推進、広い意味でのアセスメント制度の充実が欠かせないと思いますけれども環境庁はどのような認識を持って、どういう態度でこれに臨まれますでしょうか。
  62. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) ただいまの先生の御質問にお答え申し上げます。  私ども、廃棄物の問題については発生抑制に努めることがまず第一だと思っていまして、その上でリユース、リサイクルを進めていく。そのためにいろんな取り組みをしているわけでありますし、環境庁自身も企業におけるゼロエミッションに向けた取り組みや支援等を行う、こういうことをやっておるわけでございます。そうした努力をして廃棄物の発生抑制をする、リユースする、リサイクルする、それでもなおかつどうしても発生する廃棄物というものが出るわけでございまして、これらについて適正な処理が必要だということになります。  そういう場合に、一方で埋立事業が計画されることの多い干潟等浅瀬あるいは浅海域という問題が常に着目される面がございまして、ところがそちらはそちらで今度は渡り鳥の渡来地や多様な魚類の産卵、生育の場として生態系の保護の観点から、また生態系の働きによる水質浄化機能の観点からも非常に重要だということで、先ほどもちょっとお話が出ていましたが、私ども現に藤前干潟の問題等について実際に随分いろんな自治体との議論を重ねるような場面も出てまいったわけでございます。  こんなことがございますので、これから私ども、今御指摘のように環境省になれば当然廃棄物処理の問題も合わせ所掌するわけでございますので、一方で環境影響評価法に基づきまして厳正に審査をするということが当然なのでございますが、前段に申し上げましたようなリサイクル等々によりましてごみの発生そのものをとにかく抑制するということに取り組むと同時に、実際問題こうした処理につきまして自治体との間でアセスメントで適正に審査をし物を言うというだけではなくて、前広な議論の積み重ねをしていくことが必要だというふうに思っております。
  63. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 最後に一言要望して終わりたいと思います。  先ほどちょっと触れましたラムサール条約の会議がコスタリカで開かれておりますけれども、やはり命とのつながりというテーマで今行われているわけなんです。本当に干潟が大事なんですけれども、この中でたくさんの教訓があります。例えば重要な変更が予定されている、つまり日本の政策に反映させる必要があるという点で三つ申し上げておきたいと思います。  多様な機能に着目する変更ということでは、鳥の数といった限られた基準だったけれども、今度は干潟の浄化作用にも注目することが一つ。そして、政策の変更を促すという、これは大切な視点なんですが、自治体で計画アセスを採用している場合、当然海岸保全施設も審査の対象になるということ。それから、先ほど明快な答えがいただけませんでしたけれども、やはり海を守るためには二十一世紀に向けて新しいパートナーシップのそうした社会を目指すためにもNGOとの協力が大事になってまいります。このラムサール条約の中でも、そのことが大変重要だというふうに言われております。  海辺は生命のふるさとであり、人の財産だけではなく命を守るという観点からも、こうした原点を大事にしていただきたいというふうに思います。  これで質問を終わります。(拍手)
  64. 福本潤一

    ○福本潤一君 公明党の福本潤一でございます。  今回、海岸法の一部改正ということで、防護に加えて環境と利用を加えるということになりました。  私は幼いときからほとんど瀬戸内海沿岸で生活し、今も愛媛県に住んでおるという人間でございます。先ほど小川委員から、北海道海岸線一番で二番目が長崎だというお話がありましたけれども、三番目は海岸線で言うと鹿児島、四番目は愛媛ということで、建設大臣のおられる愛媛県は要保全海岸延長という意味で三位、また海岸保全区域延長でも三位ということで、ほとんどの場合、海岸線に関しては三位のところにあるぐらいリアス式海岸をたくさん持っていますし、また島も持っていますということで非常に大きな改正になると思います。  今回、環境と利用というものを加えたわけでございますが、私どもから見ますと、幼いころはきれいに泳げた瀬戸内海が、特に中国側、本州側の方はほとんど工場用地、また護岸等で海から若干遠ざかっていったような状況、愛媛の方は四国の方ですからまだまだ海水浴にもすぐ行けるような状況が残ったりしております。私から見ますと、これは非常に遅い段階での変換ではなかろうか。環境、また利用というものをむしろ位置づけておくべきだったのに、遅きに失したというのが実感としてはあります。  とはいえ今回、遅まきながら改正に入った。二年前河川法でも環境を入れた、そのときもやはり遅いなというふうに、現実に荒れ果てると改正になる。若干遅まきな行政ではなかろうかと思いますが、立法作業を今回閣法でとりかかっていただいておるわけですので、最初に大臣に、今回の環境、利用を位置づけた問題意識、ねらい、これを述べていただければと思います。
  65. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 先生指摘のように、私も環境の保全というものが入れられるのがいささか遅かったと思うわけでございますが、今さらバックデートもできませんから、今急ぎやっておるということでございます。  言うまでもなく、先生御承知のように現行の海岸法というのは、何といいましても津波であるとか高潮等の被害から海岸防護するということであったわけでございますが、今後は良好な海岸環境の保全というものが重要になってまいりまして、それからまた海岸利用に対します人々ニーズの高度化、多様化に対応していこうということでございます。  ですから、私の個人的な感覚を述べても意味がないかもしれませんが、先ほどの岡崎トミ子先生の質問で、海岸法改正は自然環境保全法と自然公園法との環境関係の相反する点はないのかという質問がございまして、河川局長は相互に排除するものはないと言いましたけれども、それは一〇〇%ないなどということはあり得ないわけでございましょう。そこで、私の考え方は、そういう相反することが出た場合には環境保全を優位に置くという考え方で行きたいと思っております、大変失礼でございますが。私は、そういうような考え方でこの法律は進めていきたいと思っております。  ですから、どうも岡崎先生のことだけに関係してちょっと失礼でございますが、先ほどのウミガメの問題、そういうようなことを本当に何十年とされている方の意見というのは必ず取り入れますから、それは御安心をしていただきますようにお願いいたしたいと思います。  それで、福本先生指摘の問題につきましては、あらゆる角度から学識経験者とか関係住民等の意見も十分に反映をしてつくっていくというようなこともやっていきたいと思っております。
  66. 福本潤一

    ○福本潤一君 今回、環境と利用というものを取り入れていただいたというときに、先ほど岡崎委員からも五分間にわたって第十堰の話を述べていただいたということがありました。第十堰というテーマが新聞紙上、建設大臣の発言に対応して真意を問うということで出ておるようでございます。  私としても、四国の中で第一の河川、吉野川、四国三郎と言われている河川でございますが、そこの河口堰にかかわる問題でございますので大変な関心を持っておりますし、統一選のときは市議会公明としてはどう対応したらいいのかというふうに私も聞かれまして、住民投票賛成、また第十堰賛成、これで行きなさいということで私は対応させていただいたわけでございます。ですので、住民投票があったからといって反対になるわけではないと思います。  と同時に、長良川の河口堰で環境問題等々含めて難しいという形にはなりましたけれども、ある意味では第十堰を河口堰として新設するということの必要性を建設省はむしろ有識者の方という形で知識人とかに頼っておりますが、対応の仕方が逆に適切に行われていない。重要性というものの認識の仕方を、何か自然保護とか環境という声が上がると途端にひるんでいるのかなんか知りませんけれども、要は公共土木事業でさまざまな形で有益な新しい創造も環境創造という形でやってきておるわけでございますので、自信を持って事業の必要性があるならばあるということを地域住民にも理解していただかないと、住民投票で一たん反対になったらなかなかできない現実があるわけです。  特に、第十堰は四国四県に皆かかわっている河川です。吉野川が流れているのは三県だけで、香川県には流れておりませんけれども、あの河川、実に香川県だけは、吉野川の上流の早明浦ダムから、野球で有名だった池田のある池田ダムで、四国山脈を山越えして香川県は水利用で一番恩恵を受けている。ただ、一たん早明浦ダムが干上がりますと役場の廃屋が出てくるというところで、渇水のときには大きな取り上げられ方をするダムでございますが、このダムをつくるときに、地元住民また当局者の要望で第十堰が必要だという経緯があった上で事業を採択されている。現実に河口堰というものに対しても、むしろ理解をしてもらうエネルギーがおくれているのではないか。  やはり、吉野川といいますと高知と徳島には水害を及ぼすとんでもない河川だったわけです。本川で大河川ですから、池田から徳島市まで行く間は何と河川を見ながらずっと延々と走れる大河川です。東京近辺ではほとんどない、運転しながらでも景観を楽しみながらでも行けるようなそういう自然が残っておる大河川なわけです。しかも、南北でなく東西に延々と流れている、そういう大河川で、なおかつ愛媛県側はその支流がある。その支流にダムをつくるときには、明治議会で徳島県側と愛媛県側の議員が延々と論争して、百年戦争の結果できたような金砂湖と言われるダムがあるわけです。  ですから、単純にひるんで、住民投票、住民らの説得、そういうものをしないまま安易にダム建設をやめるというような形の行政をやるんじゃなくて、信念を持ってやはり必要なものは必要である、治水にも必要なものは必要だと。また、水不足である瀬戸内海沿岸の香川また愛媛を含めて、きちっと水不足側で吉野川の恩恵を受けている、その最も河口部にある第十堰。  本川というのは、ほとんどコンクリート利用がなかった時代には利用できなかったんです、支川しか利用できない。それが、本川は基本的にコンクリートができて初めてせきとめたりすることができるようになった。ただ、あそこは石積みでやれた時代に細々とやっていた。はっきり言いますと水車とポンプという時代。ポンプがない時代には水車も優雅でございましたけれども、九州の三連水車、風情としては非常にいいんですが、地元の農家は、これでやっていたんでははっきり言って農業はできない、ポンプにかえたいと。いや、景観の上で見ておいてくださいと言いながら残した上でまたポンプ利用もしているということですから、その水車、風車に当たるもので治水事業を完結できないということならば、徳島の住民のためにも河口堰の建設を大いに進めていただくという建設省全体の、建設大臣はよくおわかりだと思いますが、河川行政にかかわる人も建設省としてもよくよく理解した上で地域住民を説得していただきたい。若干関心が強かったので、長くなって申しわけありません。  ところで、今言った絡みで若干先に聞いておきますと、河川海岸の区切り、大体どこらなのかというのが今話していて私は重要な関心事になってきました。河口堰を今回つくろうとしておるわけですが、川の部分と海岸の部分、区切りはどこで指定されているのか、お聞きします。
  67. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 河川法では河川区域の指定ということをすることになっておりまして、河川区域の指定を海側に対してもいたしますので、その河川区域を指定した残りが海で、河川区域の指定をした区域は河川法の適用区域ということになるというふうに理解しております。
  68. 福本潤一

    ○福本潤一君 法律上の区切りでございますので、私も一級河川と二級河川、また普通河川、準用河川、そういう違い等々に関しては法律上の違いでございますからはっきりわかっておるつもりでございます。  具体的に地理的にそこの区切りというのが、地図上ではここまでは河川ですよ、河口ですよとあると思いますけれども、今回、例えば河口堰というものが各地でさまざまな問題になっている。河口堰ですから、河口にあるんですから河川だと思いますが、地理的にどういう形で区切りをしておるかというのを教えていただければと思います。
  69. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 少し長くなるかもしれませんが、例えば水の流れ、これは真水と海水と両方あるわけでございますが、洪水のときは上空から見ますと川の河口部から非常に濁った水が海の方に丸く円弧状に広がっているのが見られるわけでございます。そういった場合には、洪水が海水の上を流れているというふうな状態になるわけでございます。また、水質という面からいきますと、海の塩水も潮の干満につれまして川の中に入ってくるわけでございまして、川の中の河口部分は海の水と真水とがまざり合う区域というふうな状態になるわけでございます。河川そのものを考えた場合でも、干拓等を繰り返してまいりますと干拓堤防の先が河川というふうな形状を呈しているところもございます。  そういった形で、水の流れ、堤防状況等でぱっと見てこの区域は河川だというふうなことは明確にはなかなかわかりにくいのも実態でございます。
  70. 福本潤一

    ○福本潤一君 地理的にはなかなか区切りというのは明確につけにくいということで、周辺事態の地理的概念ではないというのと似たようなところがあるようでございますが、水質に関しても、河口から川をさかのぼって海水が入っていく、それで延々と上流まで行ってどこが真水でどこが海の水かというのも、時期的に変わっていきますし、なかなか区切りがつきにくいと思います。  ただ、それを利用して四国側関係ではアオ取水ということで淡水を取水したりしておるようでございますので、この区切り、不明確で話を進めさせていただきますと、具体的に海岸、これを管理しているその主体というのはさまざまあるようでございます。今回、海岸環境と保全というものを念頭に入れたときにどのような管理が今まで行われていて、今度の法改正でどういうふうに変わるのか、これを教えていただきたいと思います。
  71. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 現行法におきます海岸保全区域の管理につきましては、港湾区域は運輸大臣、漁港や土地改良事業等により管理している海岸保全施設、例えば堤防等の海岸保全施設のある区域は農林水産大臣、その他は建設大臣がそれぞれ主務大臣になるのが原則という区分分けが現行法でございます。  改正法におきます区分分けでございますが、この海岸保全区域の主務大臣の区分も従来と同様でございます。そういう点では変わりません。また、一般公共海岸区域というものが新設されるわけでございますが、この主務大臣としましては原則として建設大臣がなるわけでございます。海岸保全区域、港湾区域または漁港区域に接する区域につきましては、これらの区域の管理者と都道府県知事との協議によりましてこれらの区域を所管する大臣が主務大臣となることがあるわけでございます。
  72. 福本潤一

    ○福本潤一君 法律的な管理主体の区分、今回、若干新たに加わるところが出てくるという法律改正が行われるわけでございますが、私ども愛媛県に住んでおりますと、海岸がかなりまだまだ自然のまま残っている。そういう意味では、広島県とか岡山県側と若干状況が違っているという現実があります。  そうしますと、日本全体で言うと数少なくなった海水浴にも使える自然な砂浜、これが今までは十二分に入れていたのに最近入りにくくなっているというようなところが結構起こっています。県の事業計画とかいろいろなことがありますと、山村で言うと入会権という権利が地域住民に、法的に確立した権利というよりも慣行的な権利かもわかりませんけれども、入浜権というのを主張されて、愛媛県で住民運動、また自然保護運動、環境保全運動をしていた方が、今回愛媛県では初めて県議会の議席を阿部さんという女性議員が、当選されて県議に入られたということがあります。  この入浜権という権利はまだ確定した概念でないとは思いますけれども、今言われた海岸管理と、また今まで入れたものがどこが所有権を主張されるのかわからないけれども何か入りにくくなった、十二分に地域住民が使えなくなったという問題が起こっていますので、この入り浜権というものの考え方と今回の海岸管理改正と、そういう形での住民に保護されるような形で考えていけないものか。これは、現実にはそこの権利を争って裁判になったりしておりますので、建設省考え方を聞いておきたいと思います。
  73. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございました入り浜権というものでございますが、この法的性格につきましては、海浜地の自由な使用はだれでも行い得ることであって、排他的な権利の存在を認めることとは矛盾するのではなかろうかということで、また権利の主体が不明確であること、さらに海岸という公共用物の自由使用の性格と対比して、特別な権利性を付与するにはその内容が不明確ではなかろうかというふうなことから、大方の意見はその権利性を否定しているというのが現実だというふうに私どもも認識いたしております。  また、海岸は海水浴やマリンスポーツなどのさまざまな利用の場であるというのも事実でございまして、国民共有の財産としてもだれもが自由にかつ適正に利用することができる対象というふうに考えておりまして、この入り浜権を主張するという方の背景には、これは推測でございますが、自然環境の保全への志向があるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。それであれば、今回の改正におきまして海岸環境整備と保全、また公衆の海岸の適正な利用というのを海岸管理目的に明確に位置づけているわけでございますので、そういったことであればこの流れに沿ったものではなかろうかと思っておりますが、入り浜権そのものの法的性格というのはやはり権理性は否定されているというのが大勢であろうというふうに認識しております。
  74. 福本潤一

    ○福本潤一君 法的権利関係では確立されていないということでございます。  ただ、今回大きな柱として、河川法の場合は環境だけでしたけれども、今回、利用というのが目的に位置づけられております。そうしますと、日本の公共土木事業、非常に不人気な一つは、利用というのがなかなかしにくくなる。安全のためということで、河川の堤内地、堤防で区切られていますけれども、堤外地の方にゴルフ場がたくさんありますけれども、そういったものの利用に関してもなかなか難しい。安全のためということでございますが、海岸の利用の場合、やはり国有地、また公有地、こういったものに関する権利関係というものが住民にとっての公有地なのか官公庁にとっての公有地なのかという区切りが住んでいる方々がわかりにくいところがありますので、利用というものの位置づけの部分を、では具体的に、今回環境の話はいっぱいありますけれども、どういう形で目的に位置づけておるのか、これをお伺いしたいと思います。
  75. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今回の海岸法改正で対象となります公共海岸、それからまた海岸保全区域、これは基本的に、民地も海岸保全区域が一応ございますが、国有地の場合は国民共有の財産である、海岸というのは国民共有の財産であるというのが一番基本的な認識でございます。  その国民共有の財産である海岸環境も保全しまた適正に利用し、かつ大切な防護の役割も果たさせなければならない、そういったものを調和させながら管理していかなければならないのではないかというのが、今回の法律の基本的な目的で書かれていることだということでございます。
  76. 福本潤一

    ○福本潤一君 国民共有の財産というのは、ある意味ではもともと当たり前な話でございまして、それから国民というときに、国家とちょっと似ていますけれども、官公庁なのか、それともそこに住んでいる方々含めて国民、住人なのかというところがある意味では問われているというのが今回の利用ではないかと思います。  では、国民共有財産ということに関して、今回、利用ということでやっておるということになりますと、今回の改正で利用の面ではどこが具体的に変わったのでしょうか、従前もそうだったわけでございますから。
  77. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今までは防護というものが法律の目的でございまして、利用に関しましては、国有の海浜地については国有財産管理という形での関与しかなかったわけでございます。  したがいまして、例えば具体的に申し上げますと、海の家というのが夏になると建つようなケースがあるわけでございますが、いわゆる単なる国有財産管理では、そこのところに非常に大きな砂浜全体を占領するような海の家が建って、それが冬の間もずっと撤去されずに残っている、そしてほかの利用を妨げているというふうなときに、その海の家を行政処分として撤去するというのはなかなか難しかったわけでございます。例えばそんなこともございまして、多くの方がともに原則自由使用という形で海岸を広く利用していただくための形をきちっと整備する、また必要な場合には行政処分もしていくというふうなことが今回の法律改正で初めて可能になったわけでございます。
  78. 福本潤一

    ○福本潤一君 法案改正の大きな目的環境と利用というときに、環境の方が見やすいんですけれども、利用は若干見えにくい。公共土木事業一つの安全を保つため、また防護のためという形で、河川で言うと治水のような側、安全を守るということで対応してきておるわけでございますが、私がこの利用というのを最初にお伺いしたときに、例えばもとの中華民国、今は先ほどの話からいうと、台湾と言うと中国の一部ということになるのでございましょうけれども、その台湾や何かに行きますと、公共土木事業を大いに利用に提供しておるわけです。  例えば、あそこで言いますと、ダムをつくる、自然にできた湖、この利用に関しても、その上に遊覧船を走らせて、日本人がつくった大きなダムというので、嘉南大シュウという嘉義と台南のちょうど中間に八田與一という人が、日本の二宮尊徳みたいに銅像が立っている人でございますけれども、その人がつくったダムですら一般提供に供用している。  さらには国有林、もともとは日本の国有林がかなり現在あちらにもある。大学の演習林というのがありますけれども、大学の演習林、もちろん国庫のものですから国有林でございますが、例えば東京大学の国有林だったところが今、台湾の何と台北大学の国有林になっている。それも日本の国有林、演習林というとほとんどが閉鎖的に使われているけれども、大いにかえって日本の軽井沢のように料金を取って、むしろそちらの利用側の方からもレジャー、観光も含めて、利用に提供している。  こういう形での運用を考えたのかなと私なんか思っていましたので、むしろそういうような時代で、公共事業といっても税金でつくられておるわけでございますので、税金でつくられたものをむしろ税金を払った側の人間に大いに利用できるような形を考える時点がもう来ているのではないか。  例えば土地改良法というのがあって、組合の関係で、ある意味では組合の所有地というようなものがあります。例えば台湾へ行きますと、松山空港という台湾の空港、あそこももともとは桃園土地改良区水利組合の土地で、貸して、それで大いなる利益を上げて対応しているというような形で、ある意味では官のものを民間に大いに利用して提供していただくというふうな形の運用も考える必要があるんじゃないかと思います。  その点、建設大臣も含めて、投げていませんでしたけれども建設大臣はさまざまな形で我々の要望に関しても即座に御返事をいただけたりしておりますので、ぜひとも建設大臣、そういう利用の面で大いに民間にも利用してもらえるような形を考えないかということを。
  79. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 確かに、私は先生の意図したところも、そういう時代になってきておるんではないかなと。  ただ、ダムなどを一般公開といいましょうか、表面というか水面といいましょうか、それを使わせていなかったというようなことは、事故が起こった場合などに困るという感覚が役所にはあったのではないかと思います。今後は、あらゆる分野でとにかく自己責任という時代でございますから、そういう危ない箇所はもちろん整備をする、その他のことに対しては自分が責任を持ってそこで楽しむという時代になってまいりましたから、国有林にしても大いに利用させるようにすべきではないかと思います。
  80. 福本潤一

    ○福本潤一君 建設省河川局長お答えしていただく以前に、大変我々としては頼もしい答弁がありましたので、今後その推進方を含めて検討していただければと思います。  続きまして、事前に私も投げさせていただいた質問で、今回法案改正の柱の中に沖ノ鳥島、これを全額国の負担により国が直接管理できるように推進するという大きな項目があります。  これは昭和六十二年に参議院に土地特別委員会がありまして、土地高騰、また地上げ問題が集中したときに、公明党が国土保全のために国が責任を持って保全すべきである、その保全によって、日本面積が三十七万平方キロメートルでございますが、海上の面積四十万平方キロメートルが日本の領海として残るかどうかのかなめがこの鳥島にかかっているということを提案して、その年のうちに越智建設大臣がその重要性から七十五億円を投入してつくられたものでございます。今回、この鳥島に国の財産を投与するという形ができるようになった背景を私としてはそういうふうに認識しております。  この排他的経済水域、先ほど言った領海というのは排他的経済水域でございますが、その四十万平方キロメートルが確保できるかどうか、なぜこんなささやかな島にこういうふうに重大な費用をかけてやっておるのかということへの一つの回答がそれだろうと思いますが、漁業活動から見て、沖ノ鳥島の重要性というのはどういうふうに考えておられるでしょうか。
  81. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) ただいま先生からお話しございましたとおり、沖ノ鳥島は大変大きな排他的経済水域というものを持っているわけでありまして、現在この沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域におきましては、我が国のカツオ、マグロ漁業というものが操業をしております。  年によりもちろん変動はあるわけでございますが、過去のデータで年間約四千五百トン程度のカツオ、マグロの漁獲量があるということで、大変重要な漁場の一つだというふうに私ども認識しております。
  82. 福本潤一

    ○福本潤一君 大きな一つの排他的経済水域というものがございますが、ここの地図を見ますと、ちょうど中間に飛び地のように排他的経済水域ではない公海を含み、その周りが全部排他的経済水域という状況でございます。  若干わかる方がおられれば聞きたいと思うのは、その飛び地のような公海に例えば工作船が、この前北朝鮮が入りましたけれども、あそこに存在していたということになると、排他的経済水域を通ってそこの公海に行ったという空き地がありますけれども、そこに例えば不審船がいたというようなときはどういう対応になるか。  これは担当部局がおられないから、もし手を挙げておられなければ答えようがないのかもわかりませんけれども、後ろの方にもおられませんね。そういうふうに特殊な沖ノ鳥島によって一つの保全ができたわけでございますが、これはまた別個の委員会で聞かせていただく機会があるかと思います。  沖ノ鳥島というのを直接に管理しなければいけない。今までかなりの費用をかけてやった。住所はあそこも東京都でございますね。そうしますと、今回鳥島を管理するメリット、また理由。今までそういう形で保全したために残っている排他的経済水域を、今回あえて法改正までして国が直接管理できるようにした理由、これも聞いておきたいと思います。
  83. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 沖ノ鳥島につきましては、福本先生の方から今お話しございましたように、四十万平方キロ以上もの排他的経済水域が確保される極めて重要な島であるということは一つ事実でございますし、またこういったものは国にとって極めて重要な島であるという認識を持っております。  東京都が今の海岸法では管理するという形になるわけでございますが、地図を見ていただいたらおわかりいただきますように、あれは東京都というよりもはるかに日本の南方海上にあるわけでございます。一東京都が管理するというよりも、国みずからが全額国費で直接管理することが適切ではなかろうかという観点でございます。  また、実際、今まで昭和六十二年度から建設省で護岸の設置等の保全工事を実施したところでございますが、この場合、海岸法の規定では国が負担いたしますが、都の方の負担もあるわけでございます。むしろ、国全体でその利益を享受するような沖ノ鳥島の保全工事に対して、一東京都だけが負担をするというのもやはり不合理ではなかろうかというふうな思いもございまして、今回、昨年末でございますが、予算折衝の際に大蔵省との折衝を行いました。また、政府原案でこの直轄管理化を入れ込んだところでございまして、それを受けて今回の海岸法改正でもしっかりと法律的な位置づけをさせていただきたいというふうに考えているところでございます。
  84. 福本潤一

    ○福本潤一君 そういう意味では、さまざまな形で海岸保全事業、ある意味では水域の画定のことにまで影響を与えるような重要な事業がたくさんあるわけでございます。  私は、瀬戸内海はやはり日本の大きな財産だと思っておりますけれども、この瀬戸内海の海岸侵食、具体的にかなり保全をやっておるわけですけれども、瀬戸内海で起こっている現状認識とこの原因、これを最初にお伺いしたいと思います。
  85. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 瀬戸内海での海岸侵食状況でございますが、昭和五十三年から平成四年までの十五年かけまして、年平均で八ヘクタール程度の海岸侵食が進行しているわけでございます。  砂浜侵食といいますのは、災害時の危険性を増大させますし、また海岸環境の保全や海辺の適正な利用の観点からも支障が生じるということでございまして、この瀬戸内海でも砂浜に供給される砂の量と流失する砂の量のバランスが崩れているという認識をいたしております。
  86. 福本潤一

    ○福本潤一君 そこで、瀬戸内海各地の島、今回しまなみ海道が通りまして、たくさんの島がある多島海でございます。ある意味では地中海以上に美しい自然を残しているんではなかろうかというふうに思いますが、そこの島で、香川県に男木島という島があります。男の木の島と書くわけでございますが、女性の木の島という女木島というのが隣にありまして、女木島の方がやはり大きい。ペアのような島で、鬼退治の島だったという地元の伝説があります。  この男木島に関しまして、事前に護岸工事をやられて、今侵食されて道路がなくなっているという状況でございますので、それの対策方法について具体的にあればお伺いさせていただければと思います。
  87. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 男木島につきましては、男木東海岸におきます護岸工事等がなされているということも聞いておりますが、また男木東海岸の北側地域では侵食が非常に進んでいるというふうにも承知いたしております。特に、北東部は周回道路もなくほとんどが山林になっておりまして、そのがけのような部分がどんどん侵食されているということじゃなかろうかと思いますが、現状では背後地のほとんどが山林でございまして、公共施設や民家もほとんどないわけでございまして、そういったことから海岸保全区域の指定は現在は行われておりません。  そういったことで、保全区域の指定が行われていないということは保全施設整備も実施されていない、またする体制になっていないということでございます。  今後、周辺の土地利用の変化などで海岸保全施設整備を行う必要が生じた場合には、都道府県知事が海岸保全区域の指定を行い、適切な対策を講じるということになろうかと思います。
  88. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 まず最初に、大臣に、この法改正でこれまでと今後の海岸事業が大きく言ってどう変わるのか、御説明いただきたいと思います。
  89. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 先ほども少し関連の御答弁をさせていただいたわけでございますが、現行の海岸法は、津波であるとか高潮等の被害から海岸防護するということがその主流であったわけでございます。今後は、必要な保全施設整備を行うことを主たる内容とするものでございまして、良好な海岸環境の保全を求める社会の要請や海岸利用に対する人々ニーズの高度化、多様化に十分対応できていない状況であったものでございますから、今後はその角度から対応をしていきたいということでございます。  今回の法改正を受けまして、大きく三つほどございますが、海岸保全施設整備に際しましては、海岸環境の保全や海岸の適正な利用の状況に十分配慮をして行うこと。二つ目は、海岸管理者みずからが海岸のすぐれた環境の保全や公衆の適正な利用を確保するために必要な規制等を行えるよう措置すること。この規制ができるということも私は大きないいことだろうと思っております。三番目に、海岸保全のための計画については、学識経験者や関係住民等の意見を十分に反映してこれを策定すること。  こういうようなことを加えまして、防護だけではなくして、あと環境、それから利用、そして防護の調和のとれた海岸を形成して、これを将来に引き継いでいきたいということでございます。
  90. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 建設省の統計では、砂浜海岸全国で約九千五百キロ。それが一九七八年から九二年までの十四年間で四千六百ヘクタールが侵食をされ、実質二千四百ヘクタールが消失をしています。一九〇五年以降では七千四百六十ヘクタールも消失をしていて、これを全国砂浜海岸の幅に当てはめてどのぐらい侵食されたかということを見ると、平均七・八メーターも削られている、そういうことになります。  侵食の主要な要因、これは波や風による、あるいはダム建設や川砂利採取などで河川からの土砂供給が減る、こういうことなどもありますけれども、多くの場合、防波堤などの構造物をつくることによって沿岸漂砂、これを遮断してその直接的な引き金になっているということがあると思います。    〔委員長退席、理事太田豊秋君着席〕  個々の構造物はそれなりの理由があって設置をされるとしても、構造物によって漂砂の流れが遮断をされる。先ほど説明がありましたけれども構造物の反対側の砂の供給が断たれるということによって海岸侵食が起こります。その防護のために新しい構造物がまたつくられるというような悪循環に陥っている例が各地にあります。  今後は、建設省として、線的防護から、離岸堤とか人工リーフ養浜事業などによる面的防護を中心にしていくという説明がありましたけれども離岸堤でもその隣接部で侵食が起こるという点では私は問題は同じだというふうに思います。  重大なことは、計画の段階で個々の構造物の設置が周囲の海岸にどういう影響を与えるかということを十分検討しない、新たな被害が起こればそこにまた防護施設をつくるというやり方をとってきたことにあると思います。  海岸事業というのは四省庁地域割りされているわけですが、各省庁が所管する海岸海岸保全施設やあるいは防波堤などを設置する際に、他の省庁が所管をする隣接海岸への影響あるいは砂浜への影響などについて、お互いに十分検討、調整していくのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  91. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今、先生おっしゃいましたとおり、海岸での砂の動きといいますのは非常に複雑でございますし、またそれに対する対応策を考えます場合にも、全体的な姿、それからその着手順序、また潮の流れはどうなっているかというようなことで、いろいろ緊密に連絡をとり合いながら考えていくことが大変重要だろうというふうに思っております。  それぞれの港湾だとか漁港だとか干拓堤防管理者または建設海岸管理者というふうな関係省庁が分担して海岸事業を実施しているところでございますが、基本的には各都道府県で連絡調整機関を設けておるというのが実態でございます。これは同じ県知事のもとでの各都道府県での連絡調整でございますので、必要な調整をかなり有機的に図っていけるんではなかろうかというふうに思っております。  また、私ども関係省庁でいろいろ緊密な連絡をとり合いまして、例えば漁港内のしゅんせつ土砂、これは漁港の場合は航路に砂がたまるのは困るわけでございます。それを逆にしゅんせつして海岸に持っていくというふうな、渚の創生と呼んでいるわけでございますが、そういった事業も進めているところでございまして、これからも緊密な連絡を図って実施してまいりたいというように考えております。
  92. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 縦割りで勝手に工事が行われるということになったら大変だと思います。  そこで、先ほども紹介がありましたけれども、数年前に屋久島に行きました。全国一のアカウミガメの産卵地です。ところが、その産卵適地の砂浜がどんどん減って産卵も少なくなっている、そういう訴えが現地でありました。  今回、改めて状況を聞いたんですけれども、昔から観察している人の話では、数十年前に比べて浜が半分くらいになってしまった。一九九〇年ごろは、田舎浜、中間浜、そういう浜があるんですが、そういう浜だけで二千五百頭くらい上陸していたウミガメが、昨年は屋久島全体で延べ千五百頭に減っている。しかも、条件が悪いと上陸しても産卵しないで海に戻ってしまう。それを繰り返しているうちに海の中で卵を産んでしまうというような悲劇も生まれています。  ここの砂浜が減った原因一つに、隣接した港の防波堤の延長の影響が大きいのではないかというふうに言われているわけですが、防波堤建設の際にこういう影響についてきちんと検討しているのでしょうか、運輸省に伺います。
  93. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) 港湾の防波堤建設によって漂砂の流れが変わるということがあるわけでございまして、そういうことに関連いたしまして防波堤を建設する場合には所要の環境影響評価をやりまして、海岸線の変化を予測しながら対策を講じながらやっているところでございます。  先生指摘の屋久島の田舎浜海岸というのは両端が岬に挟まれた海岸でございまして、その岬の隣の方に上屋久永田港というのがあるわけでございます。一応、地形的には岬によって分断されている浜と港ということになっているわけでございます。昨日、上屋久町の担当の方にも電話でお聞きしたところでございますが、過去一昨年とその前の年に二回台風がありまして、そのときにかなり大きな侵食があったというふうに聞いておりますけれども、防波堤を建設したことのみの理由ではないのではないかというふうなお話を伺っております。    〔理事太田豊秋君退席、委員長着席〕
  94. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 実態を調査して、そしてウミガメが産卵できるような砂浜をちゃんと回復するという手だてを私はとるべきだというふうに思うんです。その点、どうですか。
  95. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) 私ども港湾事業の中にも四省庁共通で事業を実施しておりますが、いきいき・海の子・浜づくりでありますとか、そういう関連の海岸整備事業の中で、いわゆるウミガメの産卵地を確保するための事業でありますとか、そういったものを実施しているところでございまして、先生指摘のようなことについても十分配慮しながら、いわゆる面的防護の中で整備をしていきたいというふうに思っております。
  96. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 一般論ではなくて、この屋久島の件について、台風でそういう被害が出た。台風で一過性だったのか、それとも構造上の問題だったのか、その辺きちんと調査をして、被害が出ているわけですから、ウミガメが産卵しやすいような砂浜に復元をするということについてきちっとやっていっていただきたいということを申し上げているんです。
  97. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) 御指摘のような事態につきましては十分調査をいたしまして、先ほど河川局長の答弁にもありましたように、必要とあれば海岸保全区域に指定いたしまして必要な措置をとっていく必要があるんだろうというふうに考えております。
  98. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 構造物による連鎖的な侵食の影響を考えれば、できる限りそうした構造物に頼らないでやる方がいいと思います。特に、砂浜が残っているところではどうしたら大きな構造物に頼らないで良好な海岸環境を保全できるか、そういうことを追求するべきだと思います。  先日、鎌倉市の七里ヶ浜に行ってまいりました。相模湾に面した稲村ヶ崎から小動岬までの三キロメートル弱の砂浜でした。その西の端の小動岬に接する部分で腰越漁港整備事業とあわせて海岸環境整備事業が計画をされました。事業は、砂浜に突堤や離岸堤をつくって養浜対策を行うというものでした。サーファーや市民の反対運動があり、またそこの調査をした結果、侵食と堆積を繰り返しながら結果的には安定した海岸になっている、そういう報告書が出されて市の事業としては中止になりました。しかし、この一帯は海岸保全区域に指定をされております。七里ヶ浜全体に四基の人工リーフをつくるという構想もあるということです。  こういう侵食と堆積を繰り返した安定した海岸になっている砂浜海岸環境整備の名でこういうことが進められるというふうになれば、私は大問題だというふうに思います。海岸の保全区域一万四千キロメートルのうち砂浜はどのぐらいあるんでしょうか。
  99. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 九千キロ程度の砂浜と申しますか、砂だけではなくて礫浜だとか、砂よりもっと粒径の細かい泥のようなものも含めてのいわゆる浜というのは九千キロだったというふうに記憶しています。
  100. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 そこで大臣、今度の法改正では、離岸堤砂浜をつくるということも海岸保全施設として位置づけられているわけです。コンクリートで固める海岸防護から砂浜の保全を図る海岸事業に転換するということであれば、これはもう非常に改善の方向だと思います。  ところが、反対に養浜と称して砂浜離岸堤とか人工リーフだとかヘッドランドなどを次々とつくって全面的に人工的な海岸にするということになったら大変、そういう不安があるというような声も寄せられています。そういうことがあってはならないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  101. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) それは全くそのとおりでございまして、人の手を加えずして海岸が保全できるというのが本来でございます。したがいまして、そういう御心配はないように監視をしていきたいと思っております。  そしてまた、今回の改正いたします海岸法では、海岸管理のための計画制度を見直し、学識経験者や関係市町村の意見を聞くということになっておりますので、そういうようなことがありますればそこで当然問題化されますので、事業の透明化それからまた客観性というものを確保して、せっかくそういう自然でできておるのを人工的にどうこうするというようなことは絶対ないようにいたします。
  102. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 そこで、屋久島や七里ヶ浜の例を挙げましたけれども、個々の施設計画の範囲内の検討だけじゃなくて、その海岸全体の生態系あるいは砂や海水の動態を全面的に調査検討することが大事だし、情報公開して専門家や住民、海岸利用者などの意見をよく聞いて計画を策定することが大切、これは今言われたとおりです。  今回の改正で、海岸保全基本計画を定めるに当たって学識経験者や関係市町村長の意見を聞く、あるいは海岸保全施設整備の案を作成する際に公聴会などで関係住民の意見を反映させると明記したのは前進だと思いますし、評価できると思います。その場合、関係住民というのはその地域の住民だけなのか、それとも海岸の利用者や全国的なNGOなども含めるのかどうか。先ほど学識経験者ということにこだわられましたけれども、NGOの中にはそういう方もおられるでしょうし、サーファーの中にも学者のサーファーもいるかもしれないし、いずれにしても広義の意味では含まれるのかなというふうに思ったりするんですが、その点いかがでしょうか。
  103. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今、先生がおっしゃったとおりでございまして、学識経験ということで私どもが期待しているのは、海岸に関して種々の専門的な知見を有した方ということでございまして、例えば波の動きについてよく熟知した方ということもあるでしょうし、そういった方を学識経験者として都道府県知事が選定することができるという趣旨で先ほども申し上げたわけでございます。
  104. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 そこで大臣に重ねて伺いたいのですが、個々の施設の是非を個別に検討するのじゃなくて、その海岸を全体として把握してどういう海岸にしていくか、そういうコンセンサスを確立していくために海岸事業専門家はその海岸を長年見ていて熟知しているホームドクターのような存在が大事だと、お医者さんに例えているんですが、なるほどうまいことを言うなというふうに思ったんです。  その意味で、法律では個々の施設計画についてしか公聴会の規定はないわけです。海岸保全基本方針だとか、あるいは今計画にそういうことを入れられるということでしたけれども、とにかく行政や一部の専門家だけで検討するわけじゃなくて、広くそういう人たちの知恵を集めるということが必要だというふうに思います。基本計画のみならず基本方針にもそういうことが反映できるような形で考えていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  105. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) それはこの法案に限ったことではございませず、私は今後つくられますあらゆる法案について、全国的な専門家の意見を聞くというのは当然と思っております。
  106. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 次に、水産庁に伺いたいんです。  砂浜海岸防護の役割が見直されてきておりますけれども、浅い海や干潟は、海の浄化の上でもまた稚魚の生育の上でも重要な環境です。水産庁は、沿岸漁業の資源確保の見地からそういう海岸をどう評価しているのか。稚魚の生育に重要な役割を果たしている海岸全国にどのぐらいあるんでしょうか。ふえているのか減っているのか、そこでの稚魚の生育が漁業資源の生産にどのくらいフィードバックされているのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  107. 中須勇雄

    政府委員中須勇雄君) 今お話しのございました特に海岸域というのは、陸域と海域が移り変わる地域ということで、生物にとって大変多様かつ複雑な生息環境、こういうものを提供しているわけでございます。海岸という特別な環境に依存した固有の生物というものも数多く存在しているということが知られております。また同時に、砂浜などは、そこで生息する各種微生物の作用、あるいは潮の干満とか波浪ということと相まった曝気効果等によりまして海水の浄化を促すといった機能も持っております。  こういった意味で、大変多様多種な水産動植物の生息・生育空間としてこの海岸域、特にまたそういう意味では今お話しのございました浅海とか干潟は大変重要な役割を持っているというふうに我々水産の立場から、漁業の立場から評価しているわけでございます。  では、実際にそういうような海岸がどの程度あるのかということに関しましては、率直に言って直接的なデータは持っておりません。ただ、ごく大局的につかみまして、各種の臨海開発事業だとか、先ほど来いろいろお話の出ております土砂の供給と流出のバランスが崩れるということに伴う海岸侵食の進行ということがございますので、率直に申しましてそのいわゆる延長自体は減少しているというのが現状ではないかというふうに認識しております。
  108. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 水産庁の東北区水産研究所資源増殖部の山下洋研究室長が行った仙台湾のイシガレイの研究によりますと、内湾や干潟の稚魚は外海に面した砂浜海岸の浅海域に比べて稚魚の成長速度が高い、エビジャコの捕食による稚魚の減少率は内湾や干潟では低い、漁獲された大型魚の約半分は内湾や干潟を生育場としているなどが明らかにされました。  水産庁の資源生産推進部研究指導課は、干潟域は魚類の生育場として重要な役割を果たしていると言われるが、それを定量的に調べた研究は世界的に例がないと評価して、干潟がなくなると沿岸性カレイ類資源は半減する、干潟の持つ機能を定量的に評価し、その保全に努めることが緊急かつ重要な課題である、こう言われているわけです。  私は、この報告を新聞でちょっと見たので、現地にすぐに問い合わせて取り寄せて読ませてもらいましたけれども水産庁としては大変いい仕事をしているというふうに思いました。そういう仕事を一方でしているわけですから、一体こういう漁場がどういうふうになっているのか、全体として減っているということで手をこまねいているんじゃなくて、しっかりとそれを守っていくということで真剣にやっていただきたいというふうに思います。そこは要望しておきたいと思います。  環境庁に伺いたいんです。今、コスタリカでラムサール条約の締約国会議が行われていて、干潟の重要性の評価がさらに広げられ、強められようとしているわけですが、どういうことが検討されているのでしょうか。
  109. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 今月十日からコスタリカで開催されておりますラムサール条約締約国会議で、世界的な湿地保全への意識の高まりを踏まえまして幾つかの議論がされております。  一つは、国際的に重要な湿地リストを拡充していこうという決議案でございます。また、国内湿地政策の立案と実施に関するガイドラインを見直していこうという検討、さらには湿地の保全と適正な利用、これは潮間帯湿地というふうに言われておりますが、これについての決議案が検討されるものと承知をいたしております。  我が国といたしましても、この締約国会議におきまして東アジアのガンカモ重要生息地ネットワークを立ち上げるべく、我が国の湿地十四カ所が参加するネットワークの形成を始めますとともに、新たな条約適合湿地の登録につきましては、沖縄県漫湖を条約登録湿地にするということで、さまざまな湿地の保全についての取り組みを進めてまいりたいと考えているところでございます。
  110. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今、国際的に干潟の保全の重要性というのがさらに強調をされているわけです。海岸法では海岸環境保全が位置づけられたわけですけれども海岸における干潟の保全は海岸事業の中でどう取り組まれていくんでしょうか。
  111. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今回の海岸法改正におきましては、潮の干満によりまして一時的にでも陸地としてあらわれる部分については、海岸保全区域であるかどうかを問わず、都道府県知事の指定によりまして公共海岸の一部として位置づけ、海岸法の対象とすることができる仕組みになっております。これによりまして、この干潟に工作物を設置するとか自動車を乗り入れるといったことに対する規制を行えるような仕組みになっております。  ただ、具体的には、個別の海岸についての海岸保全基本計画におきまして都道府県知事がこういったことをきちっと整理するということになろうかと考えております。
  112. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 国際的にも、先ほどの水産庁研究でも環境庁の報告でも、干潟保全の重要性というのはますます高まっているし、取り組みが強まっているわけです。その中で逆の流れをしているのが農水省だと思うんです。それが、広大で豊かな干潟を死滅させる諫早干拓事業に固執しているということなんです。  農水省は、調整池の水質をモニタリングしていますが、締め切り以降の状況はどうなっているんでしょうか。
  113. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 毎週モニタリングをやっております。工事中ということもございまして数値は変動いたしておりますけれども、工事終了後の目標値、つまり環境基準に比べまして現況は、CODあるいはトータルの窒素、トータルの燐はそれぞれやや上を行っている、そういうふうな状況にございます。
  114. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 締め切り後の九七年四月十五日からことしの四月二十日までに百五回の観測が行われているわけですが、化学的酸素要求量、CODは、県が定めた環境保全目標値五ppmを超えたものが調整池内の二つの観測点でそれぞれ七十八回、七十九回もありまして、基準以内は四分の一にしかすぎません。基準の二倍以上のデータが合わせて二十八回もあります。昨年四月には、一六ppm、二一ppmと、基準の三倍から四倍というひどい汚れもあらわれています。一〇ppm以上というのはどぶ川の状態だと言われています。猶予できない事態です。どういうふうにされるんですか。
  115. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) まず初めに申し上げておきたいのは、この環境基準というのは、工事が終了した時点でクリアすることが望ましい水準というふうに私ども環境影響評価でやっております。それから、今先生が回数を指摘されましたけれども、この環境基準の達成状況というのは年間を通じてはかるということになっております。  さらに加えまして、現在工事が進行いたしておりますし、あわせて私どもは営農の形態をどう持っていくか、それから生活排水その他、排水処理をどうするか、そして水生生物等による水質浄化策をどう進めるかということを一緒に走らせておりますので、工事が完了いたしました暁にはこの環境基準が達成されますよう全力を尽くしているところでございます。
  116. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 工事によって、環境が悪化したことによって生物は大きな影響を受けているんです。要するに、自然の浄化力を殺す、ギロチンでもって締め切って、中でごちゃごちゃ工事をやっているからますます大変になっているわけです。だから、下水道を整備するというふうに言っているけれども、自然の浄化の方がずっとお金がかからないわけですね。巨額な財政負担とか地元負担がかかるようなそんな下水道整備をして税金のむだ遣いだ、そういう声が上がっているのは当然のことだと思います。  水質悪化は調整池だけじゃないんです。潮受け堤防の外側でも、去年七月と十月に大規模な赤潮が発生しています。七月の場合は、諫早湾口北岸で、シャトネラアンティカという植物プランクトンが大発生したものです。赤潮原因のプランクトンの中でも最も危険視されているもので、一ミリリットル中百個以上で警報を出すというのに、何と五万一千個もあったということです。スズキやクロダイ、ボラ、エイ、ウシノシタなどの天然魚が大量に死にました。その後、アサリの大量死も発生して、漁業に甚大な被害をもたらし、現地では大問題になっています。十月末の場合は、北部排水門周辺で、フィブロキャプサ・ジャポニカ、こういうものが一ミリリットル中二千個発生して北側へ帯状に広がり、佐賀県境に向かって幅二キロ、長さ十キロに達した。いずれも締め切り以前の赤潮とは種類が違うということです。  諫早湾の締め切りで、従来干潟の生物がしていた浄化をしなくなったことによって、栄養塩がそのままたまって富栄養化状態になって環境が一変したんですね。そうすると、プランクトンの種類も、今までは鞭毛を持たないで走り回るようなものじゃなかったわけですが、今言ったように鞭毛を持って動き回る増殖の激しいプランクトンが異常にふえたんです。このプランクトン、先ほどの舌をかみそうなシャトネラアンティカとかフィブロキャプサ・ジャポニカ、こういうのは鞭毛を持っていてあっちこっち走り回る。だから余計増殖が速いわけです。異常発生したわけです。締め切りの影響を疑うのは当然だと思います。  このプランクトンの異常発生というのは、締め切りとは一切関係ないということなのでしょうか。
  117. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 冒頭申し上げましたように、モニタリングはこれまで以上にしっかりやっておりますし、注意深く工事はやっているところでございます。  御指摘がありましたように、昨年諫早湾の湾口部等で赤潮が見られたわけでございますけれども、諫早湾の湾口部とそれから湾の中央部で実施をしている調査結果によりますと、締め切りの前後で水質に明確な差は生じていないという状況でございますので、私どもとしては干拓事業の影響であるという判断はしておらないところでございます。  ただ、このモニタリングというのはしっかりやらなければいけませんので、これは今後も継続して実施をし、さらにその結果につきましては学識経験者で組織をし、環境庁にも入っていただいております水質調査委員会の御意見を賜って、またいろいろなことを考えたいと思っております。
  118. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 それだけの被害が出ているのに関係ないなどと言うのは本当に納得できないですね。  諫早干拓の影響というのは、干潟の生物だけじゃないんです。有明海の魚類全体に大きな影響を与える。有明海には二百種類以上の魚類が生息をして、そのうち七種は有明海だけに生息する特産種だということです。準特産種も十七種類。有明海は一万八千年かけて極めて特殊な生物相を構成してきている。それを支えてきた産卵、生育の場、これが有明海の奥部の海域と潮の干満が及ぶ河川の干潮域だということだそうです。  諫早干拓による乱暴な締め切り、これは一万八千年に及ぶ長い歴史の遺産、これを一挙に破壊することになったのではありませんか。環境が大きく変わったということは厳然たる事実なんです。今までなかった。それを、締め切りによってそういうことが起こっているわけですから、長期にわたって形成されてきたそういう生態系に影響がないなどということは絶対言えないというふうに思います。もうここで議論をしていても時間がありませんので、そのことはまた改めて議論をしていきたいと思います。  そこで、潮受け堤防の工事のために、湾口部の三百ヘクタールで大量の土砂採取した、その後のくぼ地で低酸素水塊が形成され、広がっている、そういうことも指摘をされております。目標採砂量は二千万立米ですが、これまでどれだけ取ったんですか。それから、今内部堤防の建設をやっておりますけれども、そのためにどれだけまた新たに掘るのか、あるいは他のところから採取をするということだとすれば、どこからどれだけ取るのでしょうか。
  119. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 今御指摘がありましたように、潮受け堤防等の材料としてこれまで二百六十万立米採取をいたしました。これから内部堤防の築堤にかかるわけでございますけれども、工事の効率性というふうなことも考えまして、今後はしゅんせつ土の有効利用、あるいは砂であるとか山土、石材、こういうものの購入によって対処することにいたしております。  今後、今おっしゃられたような採砂地からの採砂はしないということにいたしております。
  120. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 全長十三・八キロの内部堤防の工事は三月に始まりました。私も見てまいりました。総事業費は幾らになるんでしょうか。今年度の予算は幾らなんでしょうか。何キロやるんでしょうか。二〇〇〇年までに完成するのでしょうか。
  121. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 三つぐらいのことを御質問がございました。  十一年度は、現在百四十六億円の事業費を計上して工事を行っておりますけれども、内部堤防工事には約百億円を投入することにいたしております。内部堤防の工事費は総額で三百億円を予定いたしておりまして、十一年度までで百七十億が消化をされるということになっております。  それから、内部堤防の進捗状況でございますが、大江干拓地の内部堤防につきましてはおおむね完成をいたしております。中央干拓地の内部堤防につきましては、平成十一年度に全長約十四キロの地盤改良を実施いたします。それから、この十四キロにつきまして、四キロメートルは盛り土を概成させる、それから残りの十キロにつきましては約二メートルまで盛り土をいたしまして基礎を固めるというふうな状況になっております。十一年度、十二年度、残されている期間、内部堤防あるいは幹線道路等、地区内の整備に全力を挙げたいと考えております。
  122. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 諫早干拓については二〇〇一年度が事業再評価の年になるということです。干拓地の利用のめどが立たない、水の汚れで農業用水として利用もできない、下水道事業費がかかる、漁業に悪影響を与える。これだけの問題があって、再評価で費用対効果を全面的に算定すれば、恐らく私はクリアはできないと思います。そうなれば投資はむだになります。  これだけ問題があり、大きな批判があるんですから、本当に事業に自信があるならば、何も二〇〇一年を待たずに、本格的に内部堤防建設にかかる前に再評価を行うべきじゃないですか。
  123. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) ただいままでの御指摘の中で私がお答えしなかったことの一つとして、防災効果という大変重要な機能がございます。これは、潮受け堤防が完成をし、調整池の水位をマイナス一メートルに保つことによって、長年のその地域の方々の悲願であった高潮からの被害の防止、そして洪水からの被害の防止、これに現に役に立っておるわけでございまして、事業の一部はもう既に効果としてあらわれてきております。  それから、再評価の問題につきましては、こういったものはやはりルールどおりきちんと一定の期間ごとに進めていくというのが私は筋だろうと思っておりますので、五年ごとの評価の年に当たれば実施をいたしますし、その結果についてはまたそれぞれ必要な対処をいたしたいと考えております。
  124. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今の防災効果の件ですけれども、現地では、外側の堤防について、どんどん下がっている、壊れたりしている。それで、有明海の問題について言えば建設省の工事の方がずっといいというような話が出ているんですね。何で農水省が防災対策をやらなきゃいけないんですか。そんなのは本当にわけがわからない話じゃないですか。  そういう意味で、駆け込みで工事をやって既成事実をつくる。そういうやり方というのは、本当に正々堂々としていないというふうに思うんです。財政的にも負担が大きいし、何よりも環境に絶大なる影響を与えるんです。ゴールドマン賞を受けた諫早救済本部の山下弘文氏は、ムツゴロウやシオマネキは二代目が生まれている、まだまだ死んではいない、今なら潮受け堤防の水門をあければ間に合うと言っているんです。それをあけないで頑張って、そして内部堤防を見通しもないのにつくるというようなことは本当に許せないと思うんです。こういう工事というのは見直さなければならないというふうに思います。  時間がなくなってきたんですが、あと一問だけよろしいでしょうか、済みません。  海岸のごみの大きな問題なんですが、神奈川県大磯町の住民から、相模川や花水川の河口と大磯港の堤防に挟まれた大磯の海岸に大量のごみが漂着している、そういう訴えがあるわけですが、木のかすだけじゃなくて、プラスチック、タイヤ、さらにはテレビや冷蔵庫まであるわけです。  神奈川県の海岸清掃を担当している財団法人かながわ海岸美化財団というところが、ここにあるんですが、九二年十一月から九五年二月までの海岸ごみ実態調査報告書を出しているんですが、ごみの種類というのは、草や木、わらくずなどの自然系ごみが四七%と半分近くを占めて、そして次にプラスチック一八・四、金属くず一四・二、ガラスくず七・一、紙くず三・八となっています。特に、自然系ごみが年々減少傾向にあるのに廃プラなどはふえているということです。ごみの三分の二以上が漂着ごみ、上流の方から来ているということなんです。つまり河川から来ているということなので、全国海岸ごみの実態調査をするとともに、上流部の河川対策をきちんとすべきだと思いますが、その点伺いたいと思います。
  125. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今御指摘のように、ごみの問題につきましては、良好な海岸環境の形成や海岸の適正利用の観点からも重要な問題だと認識いたしております。  また、ルーツはいろいろあるわけでございますが、河川も含めて、また外国から来るようなケースもあるわけでございまして、実態を調査して対応策を関係機関とも連携をとりながら考えてまいりたいというふうに考えております。
  126. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 終わります。
  127. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  128. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) ただいまから国土環境委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、海岸法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  129. 脇雅史

    ○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。  海岸法が三十一年に制定以来、久方ぶりの大改正がなされるということで法案が提出されたわけでございます。四省庁体制でやっておられる海岸法改正するのはいろんな意味で難しかったと思うんですが、このように立派な案となって出てきたということで、四省庁の担当の方々の御労苦を多としまして、私からも感謝を申し上げたいというふうに思います。  午前中からもお話がございましたが、環境について今回、目的に入れるということでございました。それにつきましては、今さら環境か、遅過ぎるのではないかという意見がございました。実際問題のところは、私は環境ということについて海岸管理者四省庁の方々は随分前からその重要性について認識をされて努力されてきたというふうに思うわけですが、今回の改正改正として、これまで一体いつごろからどのくらいお金をかけて、どんな海岸環境整備をされてきたか、概要について初めにお伺いしたいと思います。
  130. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございましたように、海岸法昭和三十一年に制定されたわけでございます。それは災害を未然に防ぎ、人の生命や財産を守るためにということが目的でございました。当時は速やかに背後地の安全性を確保するために、海岸線に直立堤防だとか護岸や消波工等を設置するいわゆる線的防護が中心でございました。  ただ、海岸の景観、白砂青松という美しい砂浜を実現させたいというのは私どもの共通の願いでございまして、そういった自然環境の重要性、また海浜を生かした地域づくりや海洋性レクリエーションといったことに対しても非常に重要なことではなかろうかという認識が高まってまいりました。  そういった背景がございまして、海岸事業におきましても、堤防を直立堤防から緩傾斜と申しますか緩やかにするというふうなこと、また養浜をいたしまして砂浜の復元創造を行うこと、あるいは生態系や自然景観等周辺の自然環境に配慮した海岸を形成するいわゆるエココースト事業と呼んでおりますが、そういった事業や公園事業、下水道事業等と連携して親しみやすい海岸を創出する、いわゆるCCZ、コースタルコミュニティーゾーン等の整備を行ってきたところでございます。これらをなお一層推進するためには、法律上も環境整備と保全というのを明記する必要があるというふうに考えておるわけでございます。  また、海岸保全区域以外の海岸につきましても、今まで法律の対象になっていなかったわけでございますが、最近頻発しております油流出への適切な対応、また自動車の乗り入れ等による海岸環境の破壊から貴重な動植物の生育、生息環境を保全する上でも現行の海岸法においては十分な対応ができないために、海岸管理者において適切な措置が講ぜられるよう所要の改正を行う必要がある、かように考えている次第でございます。
  131. 脇雅史

    ○脇雅史君 現行の海岸法は、これはまさにつくられた方もそうでしょうけれども、海を防護する、いろいろな災害から守るということを目的にしてつくられた法律でございます。ですから、それ以外の目的は厳密に言えば入っていないんですが、もともと海岸整備するときによりよい環境、人が使いやすいとかいろんな意味で住民にとって住みやすい、暮らしやすいという意味でのよい環境をつくる、自然環境もひっくるめていいんですが、そういうものが内在をしていたと思うんです。  ですから、そういったことも考えながら整備を進められてきたわけでありますが、それ以外に環境に特化した事業海岸環境整備事業といいましょうか、そういったものもおやりになっていたと思うんですが、その概要をお聞かせいただけませんでしょうか。
  132. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 海岸環境整備事業といいますのは、昭和四十八年に環境整備事業が始まっておるわけでございますし、また海域浄化事業といいますのが昭和五十年に始まっております。そういった意味では、かなり以前から環境整備事業の重要性は内在的には承知いたしておるところでございます。
  133. 脇雅史

    ○脇雅史君 今のお話ですと、既に昭和四十八年から海岸環境整備事業という仕事をされていたわけで、だから海岸法でない部分でやっていた、厳密に言うとそうなるのかもしれませんが、海岸管理する方々にとって環境整備をするということが頭にあって進められていたわけです。そのときに海岸法改正するということをやらずにやっていた。  これはいろんな意味合いがあるんですが、一概に悪いともいいとも言いにくい部分だと思うんです。従来我が国において、これは国会、立法府と行政府との関係にもなるわけですが、行政の裁量の範囲内において必要な事業をやる、それは必要な法整備ということ、法の精神を酌み取りながら毎年の予算という格好で大蔵省を通じて国会に審議していただいて、その上で事業をするという道があるわけです。私は、それは必ずしも悪いことではないと思いますし、必要に応じてやるべきだと思うんですが、本来、海岸法のようなケースですと、私は今思うに、昭和四十八年に海岸環境整備事業をやるときに改正すべきではなかったかというふうに思うんです。今やられた方々を決して責めているわけではなくて、当時おられた方にそうしていただきたかったなというふうに思うんです。  私自身の経験から申しましても、必要な事業をどうしてもやろうという熱意が物すごくあるわけですが、法を改正してまでやるというのは、我が国では行政官にとっては非常に荷が重いんです。ですから、それ以外でやれればやろう、国民が欲しているものは事業の中身なのであって法改正ではないじゃないかというような解釈もあり得るわけで、それがいろいろな場面で我が国でいろんな法律の改正が遅くなっている一つの要因なんです。  これはむしろ我々立法府の問題かもしれませんが、せっかく法律で税金を集めて、そして法律で使い道を定めていくという中で、厳密に言うと使い道を定めていく方に抜けがあるんです。それは各予算ごとに分科会その他でチェックしているはずなんですけれどもそこまでやり切れなくて、要するに法に基づく負担をしている部分と法に基づかずに予算の範囲内でという事業があるということなんです。これは私は、それを全くやらずにすべてしゃくし定規にやったら、これはまたお役人仕事だということになってしまってどうにもならないわけで、この場で全部そうしろなんて言う気は毛頭ありません。お互いに適切に見るべきだと思うんです。  本来、集めたお金の使い道、補助率といったようなこともひっくるめて、私は立法府がきっちりと目を通しておく責任があるというふうに思っておりまして、これは御同僚の皆様方に御賛同いただけるかどうかわかりませんけれども、そんな方向で立法府が努力をすべきではないかなというふうに思っているということを申し上げておきたいと思います。  さて、そこで今回の法改正で、目的環境の部分と利用、調整といった部分を入れたというわけでありますが、私はやや手ぬるいなと。岡崎先生からも若干話が出ていましたが、この目的を読みますと、もともとの目的は、自然の災害から「海岸防護し、」、守って、それで、「もつて国土の保全に資することを目的とする。」。まさに防護することは手段であって、海岸国土の保全に資することが目的なんですね。今回どう変わったかというと、「海岸防護する」というところに並べて、「環境整備と保全」、「公衆の海岸の適正な利用」というのを入れたんです。ですから、これは厳密に言えば国土の保全の手段だということになりますから、もう一つ先へ進んでいただいて、私がもし許されてつくるとしたら、「もつて国土の保全に資すること」ということに、例えば、及び国民の福祉の向上とか増進とかそういった言葉を入れて、手段としての海岸防護、それから環境整備、それと適正な利用という部分、それら三つの調整を図ることが大事なのであって、そういうふうに変えた方が、河川法はそうなっているんです。  私はいただいてから、こんなことを言うと後で余計なことを言うなと怒られちゃうかもしれませんが、やはりそこは法律をつくったら非常に大事な話なんですから、目的というものはきっちりと、私は法律はいつも目的にこだわるんですが、目的の条項をそうした方が国民の皆様方の要望に合致するのではないかなというふうに思うわけでございまして、御意見を賜りたい。
  134. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) いかなる法律も究極的には公共の福祉の増進を目的とするものである。それはそのとおりだろうと思います。それぞれの法律の目的、規定の書きぶりにつきましては、各法律の趣旨、目的を正確にかつ簡潔にあらわすことが求められているというふうに認識しております。  海岸法は、従来海岸防護による国土の保全を目的としてきておりまして、今回の法改正におきまして、海岸防護に加え、「海岸環境整備と保全」、または「公衆の海岸の適正な利用」もその目的規定に位置づけるというのは脇先生の御指摘のとおりでございます。  具体的に創設される制度としては、一般公共海岸管理制度、国の直轄管理制度、海岸の保全上支障のある行為の禁止等でございまして、その目的とするところは、国民の共有の財産としての海岸の保全であるということから、従来の「国土の保全」という表現は変更する必要はないと判断したものでございます。  今後、防護、保全、利用、それぞれの目的の調和を図って公共の福祉に資するものとなるように努めてまいりたいと考えておりますが、河川法との関係を少し触れさせていただきますと、河川法はおっしゃるとおり目的規定に公共の福祉の増進というのがうたわれておるわけでございます。これは、河川管理に関しましては、河川の適正な利用の中に、例えば水利使用だとか、また水資源開発等、国土の保全という概念だけでは包括し得ない内容もあるのではないかということでございまして、いわゆる国土の開発ということも目的として示す必要があって、国土の保全と開発という並び立つ目的を調和する究極の目的として公共の安全の保持、公共の福祉の増進という規定があるわけでございます。  いろいろ各種法律の目的を調べてみましたら、おっしゃるように公共の福祉の増進と書いてある法律も数多くございますし、また書いていない法律も数多くございます。その辺、それぞれの法律の趣旨、目的を正確かつ簡潔にあらわすという趣旨からこういうふうな形になっているんだろうというふうに認識しております。
  135. 脇雅史

    ○脇雅史君 お話によりますと、「国土の保全に資する」ということの意味を非常に広くとらえて、そういう解釈であればそういうことはあり得るのかなというふうに私も思いますが、精神としては河川局長と私と隔たるところはないと思いますので、そういう運用を図っていただきたいというふうに思います。  これはまた後で出てきますけれども海岸保全基本方針、海岸保全基本計画ということ、これも若干絡めて、私自身としてはおもしろくないというか、やっぱり海岸保全基本方針というとやや狭いのかなと。海岸管理基本方針とか、何かもうちょっとうまい言い方があるのではないか。それはすべて目的のここに集約されるんですね。結局、それは法技術上か何かよくわかりませんが、そうなってしまうのだろうということもひっくるめて、もう少しわかりやすかった方がいいのではないかという感想であります。  それから、この目的をもう一回読んでみますと、新たにつけ加えられた中に、「公衆の海岸の適正な利用を図り、」という、これはお持ちの方は見ていただきたいんですが、これも悪口を言うわけではないんですが、日本語としても余りよくないのじゃないか、「の」がいっぱいつきまして。「公衆の」なんてなくてもいいのかなというふうに思うわけですけれども、「公衆の」ということを入れたからにはそれなりのやはり理屈があるんだろうというふうに思います。  特に、「公衆の」ということをここに入れられた意味というものについて、お聞きいたしたいと思います。
  136. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 確かに、河川法第一条におきましては、「河川が適正に利用され、」となっており限定がなされていないわけでございます。河川利用におきましては、自由使用もあるが、例えば特定の水利権者による水利使用、また舟運、水面や土地の占用など、自由使用以外の特別な利用のウエートが大きいということから、「河川が適正に利用され、」というふうな表現になっているんだろうと思います。  この場合の「公衆の」というのをつけた理由は、自由使用に極めて大きなウエートが置かれている海岸のようなケースについては、そういったことをはっきりとさせるという意味で「公衆の」と。言葉自身のいろんな語感の問題はございますが、海岸港湾、漁港を含め非常にいろんな利用が海岸はなされているわけでございます。特に、マリンスポーツだとか車の乗り入れだとか船舶の係留だとか、海岸利用に関する人々ニーズは非常に多様化しておりまして、また輻輳化しておりまして、その自由使用というものを調整するという観点からの海岸管理が必要になってきているという背景で、この自由使用というものを頭に置いて目的規定において「公衆の」という言葉をつけたというふうに御理解いただければと思います。
  137. 脇雅史

    ○脇雅史君 ありがとうございました。  建設大臣がお見えになりましたので、おられない間にちょっと進めさせていただきましたが、今まで目的の書き方につきまして、利用の関係環境関係を入れるということについて、これは非常にいいことだ、ぜひともそういう方向でやりたいと。午前中の質疑もそうでありましたが、そうであるとすれば、この目的の書き方も、これは「もつて国土の保全に資することを目的とする。」と最後に言っていますから、どうしても目的語の目的国土の保全ということになってしまうので、もうちょっと広く、こっちの方で環境の問題も利用の問題も全部ひっかかるような、言い方をもう少しわかりやすくした方がいいのではないかという御意見を申し上げたんです。  大臣、お聞きでなくて恐縮なんですが、感想で結構でございますから一言。
  138. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 「もつて国土の保全に資することを目的とする。」という、この「もつて」が的確でないということでしょうが……
  139. 脇雅史

    ○脇雅史君 そうじゃないんです。
  140. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) そうじゃないんですか。  途中からでございましたので局長に答弁させます、ちょっと聞いておりませんので。
  141. 脇雅史

    ○脇雅史君 それでは、先ほど河川局長から承りましたので答えは同じだと思いますので、これから運用についてよく建設省内あるいは関係省庁と御一緒に検討をいただければというふうに思います。  それでは、次の質問に移らせていただきますが、自然の砂浜が大事である。今回、特に自然の砂浜海岸保全施設施設というものに本来なじまないわけでありますが入れようという、これも一つの英断なんですね。砂浜がいいに決まっているんですが、午前中の質疑にもありましたが、砂浜をほっておいてそのまま維持できればこんないいことはないんですが、海岸というのはそんな単純なものではなくて、ほっておけば動くものですから、動くということもあるもので、なかなか施設にもできなかったわけです。これが施設にまで格を上げられる一つ理由というのは、海岸法に基づいて全国さまざまな場所で何とかして砂浜を保持しようといういろいろな試行、試みをやって、そのいろいろな技術的な知識の集約のもとに初めて砂浜といえども施設として維持できるぞということになったんだというふうに思うわけです。  ですから、砂浜がいいに決まっていますけれども、そう簡単にはいかない、技術力の存在があったというふうに思うわけです。ここでも私は、この改正法案では新たにつくったものをやると言っているわけですが、せっかくここまで技術が向上してきたわけですから、ついでにと言ってはなんですが、それなりの条件を備えた砂浜は自然の砂浜であっても海岸保全施設ですという位置づけをしてもいいのではないか。これは、実際そういう指定をしたから現実の問題として何か違いが出てくるかというと、大した違いは出てこないとこの法律上は思うんですが、海岸管理者の姿勢としてそこまで行けたということにはならないのかなということでお尋ねを申し上げたいのです。
  142. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございましたように、砂浜というものの海岸防護する機能というものに対する認識が、当初、四十年前に比べてはるかに重要な存在であるという認識が深まってきたのも事実でございます。  例えば波のエネルギーを吸収するというのも、かたい構造物よりは柔らかい砂浜の方がはるかに波のエネルギーを柔らかく吸収する。したがって、景観的にもいいわけでございますが、防護的な機能を持たせる上でも砂浜というのは非常に大切な存在だということでございます。そういった認識が深まってまいりまして、私ども砂浜の持つ防護機能というのをどんどん高めていかなければならないということから、海岸保全施設に明確に位置づけたわけでございます。  また、天然の砂浜につきましても、確かにその効果の大小は別といたしまして、波のエネルギーを弱める防護の役割を果たしているというのも脇先生指摘のとおりでございます。そういったことからいって、天然の砂浜海岸保全施設に位置づけすることはどうかというお尋ねだと思いますが、ただ、この海岸保全施設に指定いたしますと、これを損傷したり汚損したりした場合の罰則の規定がございます。こういったものが全部の砂浜に適用されるということになりますと、これはまたこれで非常に規制としては厳し過ぎるんではなかろうかということで、現在の考えとしましては必要最小限の砂浜に限定したい。  また、ヘッドランド工法なんかでごらんいただきますと非常によくわかりますが、岬と岬を出して弓状に砂浜を人工的に養浜しますと、それは非常に安定した形で、弓状でございますので直線の場合よりもはるかに波のエネルギーを吸収する率は高いわけでございまして、そういった形での安定した砂浜がある。こういったものは海岸保全施設として明確に位置づけておいた方がいいんじゃなかろうか、このような考え方でおるわけでございます。
  143. 脇雅史

    ○脇雅史君 以前は海岸の保全というと、砂浜を守る、ある砂浜を守るというのが保全なんですが、もう少し考えると、砂浜で守る、砂浜があることによって後背地を守ることができる、砂浜というのはそういうすばらしい機能が海岸防災上もある。  だけれども、その砂浜を維持するということはそう口で言うほど易しくなくて、台風が来たら一瞬のうちになくなってしまって、また平穏な日々の間に戻ってくる。昔はずっと安定していたというふうに思われがちですけれども、これは常に動いているんですね、国土というのは。砂浜というのはそういう消長を繰り返しながら、ある浜ではだんだん伸びていく浜もありますし、だんだん減っていく浜もある。それを人間が手を加えてある程度の安定にしてやろうということが砂浜意味ですから、今回砂浜というのが海岸保全施設ということに組み入れられたことを契機に、やはり国民の皆様の間にも砂浜というのはそういうものだ、ほっておけばじっとしているなんというものではない、守るにはそれなりの相当の知恵とお金が要るんだということを、これは私の意見でありますが、海岸管理者の方々は重々承知の上で管理をしていただいているわけでありますから、今後ともそういった砂浜の役割をきっちりと生かすようにしていただきたいと思います。また環境面では、これは本当に大変大事な場所でございますから、そういう意味でも全国についてできるだけ多く砂浜がふえていくように、そういう管理をしていただきたいというふうに思います。  それから、次の質問に移らせていただきますが、改正海岸法の第二条の二、三、先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、海岸保全基本方針、海岸保全基本計画ということを新たに、砂浜海岸の憲法というものをつくろうということで、これは非常にすばらしいことで、多くの方々の意見を入れながら、我が国にとってふさわしい、我が国は海の国と言われておりますが、言われているほどには海は利用していないんですね、外国と比べましても。たまに海水浴で行くぐらいで、日常生活できっちり海と向き合って生活しているわけではないんです。ただ、海と親しくなりたいという希望を持った方は随分多いわけで、ぶらっと海岸に出て気分転換するだけでも非常にすばらしい場所なわけです。  そういう意味で、この憲法がさっき申し上げたように保全という意味をうんと広げて言っているわけですけれども、その中身はやはり環境の問題、利用の問題、非常にきめ細かい海岸国土として、非常に貴重な国土の一部としてうまく使うという趣旨を存分に盛り込んだものにしていただきたいわけでありますが、現在お考えになっている概要をお話しいただければと思います。
  144. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 海岸保全基本方針につきましては、全国的な観点から海岸保全全般にわたる基本方針を定めるものということでございまして、海岸保全基本計画はこの海岸保全基本方針に基づきまして、広域な海岸を対象として総合的な視点に立った海岸保全を行うため都道府県知事が定めるということになっています。方針、計画ともに環境、利用を含む海岸保全全般について定めていくという性格のものでございます。  具体的には、海岸保全基本方針といいますのは、まず海岸の区分に関する事項を記述することになるであろう。これは一連の広域的な海岸として一体的な海岸保全基本計画を策定すべき海岸というのはどこからどこまでかというふうな区分を書くことになろう。二点目は、防護環境、利用の調和のとれた海岸保全の基本理念を書くことになろうかというふうに考えております。また三点目は、海岸環境を含む海岸の保全に関する基本的な考え方、例えば貴重種は守られなければならないとかいったふうなことも含めての海岸の保全に関する基本的な考え方。四点目は、海岸防護に関する重要事項について定めようと、そのように考えているところでございます。
  145. 脇雅史

    ○脇雅史君 ありがとうございました。  次に、今回の一つの目玉でもあると思うわけでありますが、一般公共海岸区域というのが新たに設けられて、従来、法の網がかからなかったところを管理という面から法の網をかけたということでございますが、この意義について御説明いただきたいと思います。
  146. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 一般公共海岸区域は、今回の海岸法改正によりまして海岸保全区域以外の海岸を公共海岸区域として位置づけようとするものでございます。防護だけでなくて環境や利用も海岸法目的に加え、良好な海岸環境の形成や海岸の適正な利用の確保の観点から、海岸保全区域外の国有の海浜地についても海岸法の対象にする必要があるわけでございますが、防護のための海岸保全施設の設置等の管理の必要性の有無により従来海岸法の対象としてきた海岸保全区域と区別するために、新たに一般公共海岸区域という概念を導入したということでございます。  また、地方分権推進計画におきましても、都道府県知事が国有財産法に基づく機関委任事務といたしまして財産管理を行っている法定外公共物である海岸、これはまさに公共海岸のうちの一般公共海岸区域になるわけでございます。こういった海岸の取り扱いについても検討する必要があるんではないかという指摘もございまして、この指摘にも適切に対処したものでございます。
  147. 脇雅史

    ○脇雅史君 お話しのように、一般公共海岸区域を新たに定めるということは非常に意義深いというふうに思うわけでありますが、ここを適切に管理していくということになりますと、都道府県知事さんもさることながら、市町村長さんにかなりそれをゆだねる場面が当然考えられるわけであります。  こういう国土の面的な管理をする、公物管理をするのは、できるだけ住民に身近な方が管理をしていくということは、ある意味では非常にすばらしい、いいことなんですが、またある意味では間違うとひどいことになる。公物管理を机上ではなくて実際におやりになると、私も若干の経験があるものですから申し上げるんですが、非常に難しいんですね、いろんな方々が使わせろと言ってくるわけですから。基本的には国民の皆さんにうまく使っていただくということなんですが、特定の方が特定の利益を上げるために使うということは排除しなければいけないし、できるだけ自由使用に供する。いろんな使用の形態がありますから、それを適切にさばくというのは極めて難しい仕事で、人手とお金のかかる話なんです。  ですから、地方分権地方分権で下へおろせばうまくいくんだということが若干風潮としてありますが、実際に管理をする場面では、国が管理しているということの意味はいろいろあるんです。市町村とか県で断りたいけれどもどうしても断れない。おれが知事のところへ行って話をつけてやるからがたがた言うな、こういう人がたまにいるわけです。そういうときに、いや、私たちはよくたって国が許してくれませんと言うと、なかなか国までは来ない。  そういう意味で、人の問題とかいろいろな問題がありますが、国とか県とか市町村というふうにそれぞれ適切な管理の役割分担をするということが極めて大事なんです。これは、今回の改正法では基本方針と基本計画ということで分かれてくるのかもしれませんが、現実の場面でもよほどうまくやっていかないと、一度悪い管理をしちゃうとどうにもならない。  これは例は違いますけれども河川でも同じことがあるんです。国が直接管理する川と都道府県が管理する河川、あるいは市町村が管理する河川、その河川の公共的な空間に住みついちゃう人がいる。不法占用といったようなことがありますが、そういったことが出てきたときに、一度住まわせてしまうと後でいかに大変な目に遭うか。戦後、建設省全国各地でその排除に大変な苦労をして、現在ではこんなにきれいになってきたわけであります、もちろん時代の背景もありますけれども。  そういったことを十分考慮していただかないと、ただただ地元の身近な人がやればうまく管理ができるというのは、これはまた幻想、幻想という言葉はちょっと言い過ぎかもしれませんが、非常に多くの問題点があると思うわけであります。その辺、いかがでございましょうか。
  148. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) おっしゃるように両面あろうかとは思います。  これまでも、海岸の清掃などにつきまして地先の市町村が行ってきているというふうな実態もあるわけでございまして、海岸保全施設の工事などを除き、占用の許可なども含めた日常的な管理はできるだけ地先の状況がよくわかっている市町村に任せることが望ましいという意見もあるわけでございます。また、先ほど脇先生から御指摘のあったようなこともあるわけでございまして、ここのところは知事と市町村との協議と申しますか、それで協議が成立した場合には市町村も管理することができるという仕組みを用意したということでございます。  実際にどうしていくかということでございますと、初めての制度でもございますので、当面は市町村ごとに確かに管理能力、執行体制、またこれまでの実績等変わるわけでございましょうから、そういったものを勘案して都道府県と市町村が十分に協議していただく。ある意味では、先行的に信頼の置ける市町村から管理を始めていただくというふうなことが現実的かと思いますが、そういったことで、こういうふうな仕組みが活用されていくということを期待しているわけでございます。
  149. 脇雅史

    ○脇雅史君 ありがとうございました。  そういうことで、日常管理を市町村なり都道府県なりが責任を持ってやらなければいけない。新たな行政がふえてくるということになるわけでありますが、これはもう紛れもなくお金が要るわけであります。特にごみ処理といった問題については、従来は海水浴場といったようなところについてはやられていたわけでありますが、今回こういう格好で新たにきちっと区域が定められますと、責任が重くなるわけですから、ごみが放置してあるとすぐきれいにせよということが特に市町村あたりに行くのではないかなというふうに思うわけです。  その辺の財政措置が必要になってくるのではないかというふうに思うわけでありますが、自治省の方にお伺いしたいと思います。
  150. 二橋正弘

    政府委員(二橋正弘君) 従来から海岸管理に要します経費につきまして地方財政措置を行ってきておるわけでございますが、これまでのやり方は、基本的に海岸保全区域につきまして都道府県が管理をして負担するということになっておりますので、それにつきまして普通交付税において必要な財源措置をするというやり方をしてきておるところでございます。  今回の法改正によりまして、今お話に出ておりましたような一般公共海岸区域というのは新たに法律で位置づけられるわけでございまして、これにつきましても都道府県知事が管理を行うとともにその費用を負担するということになるわけでございます。  この具体的な財源措置のやり方につきましては、これまでとってまいりました海岸保全区域に対します財源措置等も考えながら、これが施行されるまでに関係省庁あるいは関係の地方団体の意見も聞きながら決めてまいりたいというふうに考えております。  なお、今ごみのお話がございましたが、海岸にごみが大量に漂着してその処理に多額の経費を要するというようなケースがございます。こういうものにつきましては、従来から、それぞれの団体で財政運営に支障が出ないように、これは特別交付税の算定に当たって配慮してきておりまして、関係の市町村からそういうことに要した費用の報告をいただいて、それに対して財源措置をしてきておるところでございます。これにつきましては、引き続きそういう方向で取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  151. 脇雅史

    ○脇雅史君 非常に前向きといいましょうか適切なお答えをいただきましたが、現実の問題としてお金がないと何もできないわけですし、国も地方も非常に財政が厳しい時期でございますので、海岸管理者と自治省あるいは都道府県、市町村とよく話し合ってうまく円滑に進めていただくようにお願いをしたいと思います。  それから、海岸利用という面で見ますと、いろんな場面で利用者間の競合といいましょうかそういった場面がありまして、例えば一生懸命漁業をやっている人のところへ遊びで潜りに来た人が貝をみんな持っていってしまうとか、そんなようなことも過去に随分問題になったことがありました。また、海水浴場に水上バイクとかサーフィンとかウインドサーフィンとかで危ないとかそんなこともありますし、大変きれいな自然海岸に車が乗り入れちゃうとか、いろんな利用を海岸でしたい人がいるわけですから、ほっておくとそれぞれがぶつかってしまう。  今回、こうやって管理について区域を定めるわけでありますから、内容を見てみますと若干そういうことが軽減される、あるいは防止できるのかなというふうに思いますが、私がただいま例示したものもひっくるめて、どんな調整が今回の法改正でなされるんでしょうか。
  152. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話がございましたように、水上バイクと遊泳者の問題だとか、また漁業者とレジャー客の問題だとか、そういった利用調整の必要な事例が多くなってきているのも事実でございまして、海岸における利用調整は大変難しい問題だなという認識を持っているわけでございます。  今回の法改正におきましては、陸域につきましては一般公共海岸区域を定めて、新たに海岸管理の対象区域として加えるという形での管理者をまずはっきりし、対象区域をはっきりするという措置をとると同時に、例えば海水浴場等になっていて利用の盛んな海岸へ船舶の放置等が起こりますと、そういった行為を禁止するというふうなことが行われるようになったわけでございます。陸域については、かなりはっきりとした規制が必要な場合にはできるという方向になったわけでございます。  ただ、海の部分といいますか低潮線より沖合につきましては、基本的に海岸法の対象としていないものでございますから、この辺の調整は課題として非常に残っている。また、何よりも根本的には陸域、水域含めて利用者間のモラルという問題も非常に大切なことだろうと思います。  そういったことも踏まえまして、十分地元関係の方、また海岸管理者、利用者、十分な調整が図られることを期待しておるわけでございますが、海の部分についてはなかなか難しいということが事実でございます。
  153. 脇雅史

    ○脇雅史君 どうもありがとうございました。  海岸法というのは非常に珍しい法律で、四省庁体制、建設省運輸省、農水省、水産庁を入れて四省庁ということであります。四省庁体制ということでよく言われますのは、縦割り行政の最たるものだという悪い例として挙げられることが多いんです。実際に我が国の行政をずっと見てみると、いろんな問題で一つ省庁だけで済むというのはむしろ少ないのであって、こうやって四省庁一つの法律でうまく協議をしながら法改正にまで進められるということは、私はその縦割り行政の弊害を排除する格好でのそれぞれの努力があったというふうにむしろ評価したいわけであります。  海岸というのはいろんな役割があるわけですから、これからも幾ら省庁再編をやりましても単独省庁になるわけはないので、そういう精神を持ち続けて国民のためになる海岸管理をしていただきたいというふうにお願いしたいと思います。  そういうことをひっくるめまして、最後に大臣の方から、今回の法改正は出発点だと思うんですけれども、さらによりよい海岸管理行政をしていただくことの決意を一言いただければと思います。
  154. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 今回、やはり時代の要求に沿ってこの海岸法改正されるわけでございまして、それに並行して、おっしゃられますように中央省庁の統合も行われるというようなこともございます。  ですから、この対策がいささか遅きに失したという御意見の先生もいらっしゃいましたが、そういうようなことはあると思いますが、いずれにしましてもこれがすばらしい法案として皆さんに受け入れられるように努力をしていきたいと思っております。
  155. 脇雅史

    ○脇雅史君 ありがとうございます。  私に与えられました時間はもう少しありますので、せっかくの機会でございますので、午前中もお話が出ておりましたが、私も徳島県の関係者の一人でございますので、第十堰についてちょっと触れさせていただきたいというふうに思います。  建設大臣が四国の大臣であるということで、四国は一つとかいろいろ言われておりますが、非常に四国のために頑張っていただいて我々はうれしく思っているわけであります。本件についても頑張っていただきたいわけで、住民投票といったことが話題になったわけでありますが、住民投票はさておいて、公共事業をいい悪いを言うときに、非常に多くの数の公共事業全国で展開されているわけでありますから、いたずらに総論として公共事業不要論とかいったことに惑わされることなく、一つ一つ丹念に必要性について考えていかなければいけないというふうに思うわけであります。  この第十堰につきましても、河口堰という何かレッテルを張って、河口堰というのは悪いものだ、四国の吉野川にも第十堰という堰をつくるんだからだめという非常に単純な三段論法で反対をしている人がいるのではないかという心配もしているわけです。やはり第十堰の中身をよく知っていただいた上で、どういう意義がありどういう問題があるのか、その上で賛成なのか反対なのか、あるいは単純にイエス、ノーではなくていろんな意見、いろんなやり方があるのかもしれません、そういうことを決めていかなければいけない。我々もひっくるめてどうも気が短い人が多くて、イエスかノーかということばかり出てしまうわけでありますが、国の将来を決めていく大事な社会資本、基盤整備でありますから、慎重な上にも慎重に、そして的確に判断をしていかなければいけない。  そういう意味で、今までもこういった場で出た問題かもしれませんが、もう一回おさらいとして第十堰というのは一体何なんだろうと、本当はこの辺でスクリーンでも出してきっちりとしたデモンストレーションをしていただいた方がいいんですけれども、そうもいきませんので、青山局長は非常に説明がお上手ですから、第十堰の計画の中身についてしっかりと我々がわかるように御説明をいただければというふうに思うわけであります。
  156. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話の出ました第十堰の問題でございますが、江戸時代にさかのぼるわけでございます。第十堰下流の吉野川本川といいますのは、もともと江戸時代に人工的に開削した水路だったわけでございます。それまでは現在の旧吉野川に吉野川は流れておったわけでございまして、第十堰付近から左に大きく回って海に注いでいたわけでございます。  その後のことになるわけでございますが、人工的に開削した今の本川ルートの方が真っすぐになっているものですから、洪水が真っすぐに流れるということからいきまして新しく開削した水路の方に洪水が非常に流れやすくなっている。逆に言えば、旧吉野川沿いで水を利用している方、これは水利用からいけば圧倒的に多うございまして、本川の方は人工的に掘った川でございますから水利用はほとんどなくて、むしろ旧吉野川沿いで農業用水または飲み水等の水利用は非常に盛んだったわけでございます。そこに水が流れにくくなったものですから、これは堰をつくって旧吉野川の方にちゃんと水を流すようなことをしなければならないということになったわけでございます。  そのために、むしろ吉野川本川へは水が流れないように、平常時旧吉野川の方に水が流れるように約二百五十年前につくった堰が固定堰と呼んでおるタイプでございますが、現在の第十堰の前身でございます。  ただ、当時の技術としましては当然石積みだとかいうふうな技術しかなかったものでございますから、洪水のたびに流れるわけでございます。それをまた補修し、また洪水で流れるという格好で、改築、補修が繰り返されてきたわけでございますが、昭和に入りましてからはコンクリートというふうなものが出てまいりましたから、そのコンクリートで固めた堰というのが現在の状況でございます。  旧吉野川の方の水利用する方は、壊れても非常に困るわけでございまして、また壊れなかった場合にはこれは洪水時大変な状態になるわけでございます。  もう少し時間をいただきまして御説明させていただきますと、現在の第十堰はそういったコンクリートで覆われた堰だというふうに申し上げましたが、かなり老朽化しております。また、洪水時に壊れるおそれもあるわけでございます。仮に、堰が壊れた場合には、過去に幾度も生じましたように旧吉野川へ水が流れなくなりますから、生活用水等の取水ができないで利水上大きな被害が発生するということでございまして、壊れても困るわけでございます。  ただし、川の中にかたい構造物であります固定堰がありますと、壊れなくても困るわけでございます。どういうことかといいますと、昭和四十九年に多摩川で水害が発生いたしました。あれは宿河原堰という固定堰が多摩川にあったわけでございまして、その土よりもかたい固定堰があったがために洪水の流れが非常に複雑になりました。「岸辺のアルバム」という番組でも報道されたと思っておりますので、皆さん御記憶あろうかと思いますが、家が一軒一軒流れていくというふうなことになったわけでございます。あれはかなり地盤が高かったから家が一軒一軒という形でございますが、吉野川の第十堰地点は堤防が非常に高うございますので、逆にああいうふうな現象が起こりますと堤防が根こそぎ壊れて、そのはんらん流はどっと徳島平野に流れ出るわけでございまして、第十堰地点で破堤した場合には、左岸、右岸合わせまして約十一万人の方が被災されるという非常に悲惨な状態になるわけでございます。  この固定堰は川の断面をふさいでおります。河積阻害率と私ども専門的に呼んでいるわけでございますが、全国有数の河積を阻害している固定堰でございまして、そういった洪水時には複雑な流れを起こし破堤させる可能性が非常に高い極めて危険な状態になっているというふうに認識しているわけでございます。  私どもは、こういったかたい固定堰という構造物を、やはり平常時は例えばゲートを立てれば水をためるという固定堰の機能を持ち、洪水時にはゲートが倒れ、その上を洪水がスムーズに流れるというふうな両方の機能を持った可動堰に改築する必要があるのではなかろうかと強く思っているわけでございます。こういった固定堰に可動堰の機能を持たせようと思っても無理なのでございますが、可動堰は固定堰の機能も、また洪水時、安全な機能も両方持つことができるわけでございまして、そういった意味でも圧倒的に可動堰の方が機能的にはすぐれているという認識をしているわけでございます。    〔委員長退席、理事太田豊秋君着席〕  この改築は人命、財産にかかわる話でございますので、かなり急いで全国有数の阻害物であります固定堰を可動堰に改築する事業を進めなければならないというふうに思っているところでございます。
  157. 脇雅史

    ○脇雅史君 どうもありがとうございました。  口だけで説明するので難しかったかもしれませんが、私の理解しているところでは、川がありまして、川の中に流れを阻害する、洪水を流すという意味では邪魔になるものがある。それは動かせないものですから、動かせるものに変えていこうというものだと思うんです。  今、最高裁のといいますか多摩川の話が出ましたが、実は建設省は多摩川の水害訴訟で負けたわけです、最高裁まで行って。負けたのは、そういうかたいものがあって、過去にそんな壊れ方をするというのは、私も河川技術者なんですが、河川技術者としてもとても想像できないような壊れ方をしたわけですが、全国のいろんな堰を見ると、規模は全く違いますが、ちょっと似たような壊れ方をした例が実は一件ほどあった。それは後からわかったわけですが、裁判の中では、そういう壊れ方をしたことが多摩川の水害が起こる前にあったわけだから、河川管理者はそれを見れば当然に多摩川が危ないと思わなければいけない、直しておくべきだった、そういう義務があったという判決を実はもらっている。  そうしますと、この吉野川の第十堰があれば、当然危険は、今危ないと言っているわけですから認識している。予算があれば手をつけなければいけない。むしろ、これは河川管理者としての義務になるわけです。非常に大事な責任を持っている。河川管理者というのは、自然を相手にする河川について、いつ降るかわからない雨に対して、国民の安全を段階的に全国にわたって順番に安全度を上げていかなければいけないという非常に重い責務を持っている。地方ごとにやらせたのでは大変だから、いろんな問題も出るから、建設大臣河川管理者として一級河川管理されている、安全を確保するという非常に重たい責務を負っておられるわけであります。  こんなことは百も承知の話を申し上げて恐縮でありますが、そんな性格の工事であるということを前提にして、現在、建設大臣はこの工事についてどのようにされようとしているのか、方針をお伺いしたいと思います。
  158. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 今、局長のるる説明もございました。私も改めて聞いておったわけでございますが、また脇先生のそれを要約された説明、固定堰では洪水の水を流すことができない、したがって可動堰にするということ、私もそういうふうに理解をいたしております。  ですから、正直言いまして、可動堰に反対されている方の御意見を伺うと、そういう歴史的なものであるとか、あるいはまた可動堰の位置を下流に持ってくると生態系が狂ってくるとか、水が汚れてくる等々も言われておるようでございます。しかし、いろいろそういうことも頭に入れてといいましょうか論議をいたしまして、十年七月に第十堰建設事業審議委員会がございまして、これを可動堰にするのが是か非かということ、いいか悪いかということを御承知のように論議いたしまして、これは可動堰にするのがよろしいという結論も出てきておるわけでございます。  ですから、そういういろんなことを考えて、私はこのことは国民のいわゆる住民の方々の生命、財産の安全確保ということからも整々粛々と進めていきたい、そのように考えております。
  159. 脇雅史

    ○脇雅史君 整々粛々という言葉もいいんですけれども、お願いですけれども、やはり住民の方は数多くおられますから、賛成の方も反対の方もおられます。ですけれども、こうした人の生命、財産にかかわるものについては、全国的に考えてやっと徳島の番が来ましたよということですから、しかもほっておけばいつ雨が降るかわからないんです。きょうは先ほど福本先生からもお話がありましたが、反対されている方々に実は危ないんですよとむしろ説明責任があるのであって、反対している人にはこういうことなんだからぜひとも必要ですよという、そういうお立場にあられると思うんです。  話は変わりますけれども、阪神・淡路大震災のときに木造の密集家屋があれだけつぶれました。例えば前の年にあそこに行って、あなたたちの家は危ないからどいた方がいいですよと言っても、いやほっておいてくれとだれも賛成しません、それはしないと思います。だけれども、それを説得してでも安全なふうに施策を講じていくのが安全をつかさどっている方の責務だと思うわけです。ですから、反対したからただやめるとか、そんな性格のものではないというふうに思うわけです。    〔理事太田豊秋君退席、委員長着席〕  私は、特に危惧しておりますのは、住民投票というのはいろんな意味で物を決めるということについては問題があると思うんです。住民の方々のいろんな意識を調査するということでは大事なことですし、投票することに反対するものではありません。いろんな手段を使って、何をお考えになっているかということを、住民投票によらずともいろんな説明会その他で住民の方々の意見を吸い上げていくというのがむしろ河川局の今の姿勢ですから、それは当然そうすべきだというふうに思うんです。  投票でイエスかノーかというのは多数決、多数決は民主主義というんですけれども、極めて危ういのは、洪水で危ない人というのは少数派なんです。日本の半分の人口がはんらん源に住んでいるとはいっても、堤防が壊れて水につかるというのは地域としたって、本当に危ない人は一割とかそんな方なんです。みんな八割九割の方は安全だから、多数決でそんなことをやらなくても、先でもいいじゃないかと言ったらいけない、とんでもないことになる。結局、下手をしたら少数の方の意見を殺すことにもなりかねない。これはよほど注意をしておいていただきたい、イエス、ノーを決めるときに。  徳島のいろいろな方々から私のところにも意見が来ています。昔の洪水の経験のおありの方が、本当に危ないんだ、何とかやってほしい、見捨てないでくれと。それを何か知りませんが、住民投票を仮におやりになって、もうだめになったんだからあきらめろと。見捨ててくださるなというのが水害に遭う危険性の高い方々の本当の意見なんです。これはそういう多数決で決める話ではないと私は思います。  いろんな方々の意見を集約することは、極めて大事でありますけれども、そこはまかり間違ってもそうなってほしくない。ですから、あえて苦言を呈して恐縮でありますが、大臣の真意が伝わっていないのじゃないかというふうに私は思うんです。  さきの一問一答の大臣の御発言を読みますと、何か反対したらもうやめざるを得ないというか、やめてもいいというようなニュアンスに受け取られる部分があったのでありますが、私は、もし間違った計画であればそれは取り消さなきゃいけませんけれども、間違いのない計画であれば、反対があっても、百万の敵があってもやるべきだというふうに思うわけで、そこはやっぱりきちっとしてほしい。  ただし、反対がいる中で強行してまで仕事をするか。これは四国の中で見ましても、我が徳島県以外に、隣にハイエナみたいに仕事が欲しい人がいますから、徳島で要らないんだったらこっちへもらうと、そういうことがあるわけです。予算は限られているわけですから、大事な予算が要らないのならもらいますよということで、大臣にしても、地元が反対して使えないところに予算をつけてもしようがないから、これは……
  160. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) そろそろ時間です。
  161. 脇雅史

    ○脇雅史君 田村さんと話をしておりますので。  要は、住民の方々が、反対はいても、いい悪いを決めるのはそこではやってほしくない。だから、そういうふうなニュアンスで受け取られたら困る。  予算のことですから、予算配分は抑えられることはあるかもしれない。それで、結果的に必要な事業であっても、地元理解が得られないがゆえにおくれるということはあり得る話だと思うんです。ですから、大臣の言われたことは、結果として遅くなるよ、やめるのじゃないけれども遅くなる可能性があるよと。だから、住民の方々はしっかり心してその辺のことを、反対されてもいいけれども理解してほしいという趣旨だと私は勝手に思っているわけであります。  そこで、ただいま申し上げましたような、住民の方々の意向も大事にしながら河川事業を進めていくという中で、もう一度、第十堰について、大臣の御決意を承りたいと思います。
  162. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 私の父親が亡くなりまして十三年ほどでございますが、久々に父親から説得されたような思いを抱いておりました。本当に、脇先生のおっしゃることは十分に理解ができるわけでございます。  私は、逆に今日まで、正直に申し上げまして、今の立場になって、予算委員会とかいろいろな委員会において公共事業が何かもう時代おくれであるような等々、いろいろなことを言われました。  しかし、そのときには宮澤大蔵大臣も関連で答弁しておりましたが、公共事業がよくないようなことを言うけれども、それはゼネコンの不祥事と連結して見てそういうようなことを言っておるのではないかというふうに大蔵大臣宮澤喜一先生もおっしゃったりいたしました。いずれにいたしましても、建設省が行っておりますいろいろな公共事業は、本当にその地域の発展のために、そして住民の安全のためによかれと思ってやっていない事業一つもありません。すべてそれだけ一生懸命やっておるんです。  ところが、この第十堰のことにおきましても、マスコミ等々におきましても報道されるのは、その反対の方々のことが報道されるだけであって、本当に水害に遭う一市六町の方々の声というのは伝わってこない。また、その方々もそういう熱心な運動をしていないということもあるのじゃないかと思います。このことは、建設省が責任を持たなければならない、国が責任を持たなければならないことであるから、ほっておいても、それだけの努力をしなくても建設省がやってくれるというふうに思っている部分もあるのではないか。  正直言いまして、もう私も業を煮やしまして、それなら投票をやってその結果でおやりなさい、それで水害で何万の人が亡くなっても建設省の責任ではありませんということを、ちょっとかっとして思っておったのも正直な私の感じでございましたが、今、脇先生に説諭されまして本当に反省をいたしております。やはり正しいことは世間でどんなに悪く言われてもやっていかなければならないという思いをいたしたわけでございます。  ですから、住民投票をしてその過半数の方が反対ということになったら、議会制民主主義において反対が過半数であれば、私はそれを動かそうということは今でも思いません。それはやっぱり議会制民主主義の一つのルールであると思うんです。  そこで、私は何を言いたいかといいますれば、本当に真剣に我々は考えておる、そして生命を維持するためにはこれがなければならないんですから、そのことを局長どももっと現地に入って今のように懇切丁寧に説明すれば、必ず私はその投票は勝つと思います。勝つといいますか、可動堰をやってほしいという方が過半数以上に私はなるという自信を持っております。やっぱり世の中は正しいことが勝ちますし、常識が世の中は通っていくものだと私は思っております。勧善懲悪主義と言うとおかしいのでございますが、正しいことは正しく生きていく世の中であろうと私は思っております。  そういう意味で言いましたが、住民投票で過半数ならば云々ということは、先生の説諭に従いまして少し和らげて進めていきたいと思っております。
  163. 脇雅史

    ○脇雅史君 ありがとうございました。終わります。
  164. 田村公平

    ○田村公平君 田村公平です。  海岸法の質問をさせていただく前に、ちょっと脇さんと関連して言わせていただきたいと思います。  海岸もそうですけれども河川もそうですが、吉野川水系は御案内のとおり一級河川でありまして、石鎚山系にその源を発し、私どもの高知県を抜けて徳島市まで流れております。「四国のいのち」という銘文が入った大きな石が早明浦ダムの直下に建っております。これは慢性的な水不足にある香川県の方々に香川用水として水を提供し、そしてあわせて広域的な意味での徳島県、徳島市を含めた災害を防ぐための多目的ダムとして、私どものところにそのダムがあります。  私は、大変不愉快な思いをしております。というのは、ダム湖に沈んだ旧大川村役場。毎年適正な雨が降ってくれればいいんですが、そういうわけにはいきません。去年のように、大臣も来ていただきましたが、九月の二十四、二十五日、一日で千ミリも降ります。二万四千世帯が床上床下浸水します。晴れると水はなくなります、水を分けてあげぬといかぬわけですから。なぜかというと、それは分水計画に基づいていろんな約束をしておるものですから。だから、水利権というのは時として血の雨が降り、殺人事件にまでなるような大変な問題であります。干上がったときになると観光客がいっぱい来ます。  私は、この前もここの委員会でも言いましたけれども、大川村の人口は六百三十人です。当時はダム周辺整備事業というものが確立されていなかったものですから、約束したのを全部ことごとくというほど破られまして、村は袋小路になっています。だから、土砂崩れがあると村長さんは県道を伝って町の方、県庁に出てこれません。そういうところにダムがあります。  移転をさせるために私も説得に行きましたし、私の父親も大変な説得をして、その恩恵は香川や徳島の方々が受けておる。そういうときに、我々の反対運動にだれかが協力してくれたかというと、だれも協力してくれませんでした。逆に言えば、先ほどの脇先生の質問にありましたけれども、窪川原発というのもありまして、これも住民投票を全国初めてでやってみて、途中で電力事情が変わって窪川原発を四国電力さんもやめるということになって、平和な農業漁業を中心にした窪川町に大変大きなしこりといいますか溝が残って、それを解消するのに十年以上かかりました。  そういうつらさがあるものですから、四国は一つと言いながら、島内の高速道路ネットワークもできておりませんし、高知県に関して言いますと少なくともJRもディーゼルカーでがたごと走っております。  そういうことを考えたときに、では我々の仲間が集まって住民投票に基づいて、例えばの話、高知県中村市まで高速道路を可及的につくってほしいという圧倒的多数の賛同が得られた場合に、建設大臣は道路公団に施行命令を出してくれるのではないかな、こういうような思いもいたしておりますが、そのことについては私はもう何も申し上げません。  関連で締めくくりをさせていただきたかったものですから、地方の声というよりも思いを理解していただきたいということであります。  そこで、質問に入りたいわけですが、十三ぐらいお願いしてありましたところ、小川先生から始まりまして、ここまで来ますとそのうちの五つはダブりになってきまして非常に困ったなと思っております。  実は、二月十一日にモロ民族解放戦線兼ミンダナオ自治州の州知事を兼ねておりますミスワリ議長兼知事から案内状をいただきまして、ミンダナオというところに行ってまいりました。外務省は日本人というか、渡航禁止区域となっております。そこにスル海峡というかスル諸島というのがありまして、ほとんどインドネシアに近いところであります。戦争に行った方はここにはおられぬと思いますけれども、スル諸島及びスル海峡というのは大変激戦区でもあったところであります。  諸島で、もちろんフィリピン自体が島がいっぱいあります。白砂青松じゃなくしてマングローブ、熱帯、亜熱帯のところでありますから本当に自然と調和した美しい島々を高速艇で縫いながら、原則的に言いますと構造物である波止場といいましょうか港はサンボアンガを除いてほとんどないような状況ですから、くいを打ってそこに船をとめながら行くんです。  一番のごちそうは、実は生まれて初めて食べたんですが、ウミガメの卵であります。それから、私ども田舎でモンパと呼んでおりますけれども、昔はいっぱいとれましたけれども今はほとんどとれない、非常に深いところにすんでおる身がいっぱい詰まったカニとエビとミックスしたような形をしたのがおるんですけれども、私の田舎の言葉でモンパと言いますのでフィリピン語でどう言うかよくわからぬかったんですが、そういうのもいっぱいとれます。それはなぜかというと、物すごく不便です。不便だけれども、住んでいる人間と周りの自然とが調和がとれているからウミガメの卵も大変なごちそうだ。勧められて、こんなもの食べたことないからといって食べ方も教えてもらって食べたんですが、それは貴重なやっぱり動物たんぱくを、自給自足のところですからやっておる。  そういう今段々の質問を聞きながら海岸というものを考えたとき、河川もそうです。僕らの子供のころは川にしろ海にしろ山にしろ、本当に身近なというか一緒に住める、遊び場でもあり生活の糧を得る場所でもあった。  そういう観点からいくと、今度若干ダブっておるところもありますけれども、一般公共海岸区域というのが新たに定められて、それで海岸というのも自然のままほうっておいたら、これは自然の力は偉いですから流されたり、一番いい例は主要地方道春野—赤岡線というのが月の名所の桂浜というところの近所を通っております、海岸線沿いに。これは、通称桂浜花街道ということで、老人クラブの方なんかが景観をよくするためにいっぱい四季折々の花を植えてありまして、春野—赤岡線はちょうど太平洋に向かってずっと海岸線を走っています。  ところが、太平洋の波というのは非常に荒いものですから、例えば水産庁の漁港部建設課あたりが積算をするのに、瀬戸内海の漁港の建設単価を一といたしますと、我々太平洋岸は三の建設単価が要ります。つまり、愛媛で、大臣のところで漁港を一つつくるのに十億円だとするとうちは三十億円かかる。そういうところですから、どんどん掘られまして、いわゆる県道が陥没をする。だから、守るべき海岸もあれば、守らなくていいという意味じゃないですが、自然の景観に任せていいという海岸、工事をしなくてもいいというところもあると思うんです。  これだけ広い面積を新しい海岸法管理するというか、そういうことになっていくと思うんですけれども、そういう場合の管理方針というか、僕は逆に工事してもらいたいところにはどんどん工事をやってもらわないと、生活道、幹線道が流されてなくなります。そういう意味では、直轄海岸、高知海岸としてもっともっと僕は直轄区域を広げていただきたいという逆に思いがある。その中で、守らぬといかぬところもある。そこいらの管理方針というのを河川局長の方から教えてください。
  165. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございましたように、現在の海岸保全区域は三万五千キロのうちの一万四千キロでございます。また、今回の改正で新たに一般公共海岸区域となる部分が一万四千キロというほぼ同距離あるわけでございます。  海岸保全区域における海岸施設整備レベルというものを考えますと、実はまだ低うございます。たしか四割程度じゃなかったかと思います。そういった状況でございますので、私は海岸保全区域内において、かつ重点的に、効率的に整備水準を上げる。それも面的防護という形での砂浜を十分生かした防護の方式をとっていくというのが基本的な考え方じゃなかろうか。  新たに追加されます一般公共海岸一万四千キロにつきましても、これは原則、工事を一切しないわけでございますが、どうしても非常に緊急にやらなきゃいかぬということになれば、海岸保全区域を新たに指定して、それに対して対応するということになろうかと思いますが、現在の海岸保全区域のうち、特に重点的に整備をしなければいけないところを面的防護を中心に重点的にやっていきたいというのが基本的な考え方でございます。
  166. 田村公平

    ○田村公平君 そこで、今御案内のとおり四省庁の共管といいますか、そういう形になっておりますけれども、例えば漁港区域があって港湾区域がある。そうすると、農水省というか水産庁運輸省が入ってくる。御案内のとおり建設省が所管すべき海岸と農水省の漁港、例えばうちらも漁港もいっぱいありますけれども、漁港区域となるとその線引きの問題が出てきます。漁港の施設だけがきちっとした漁港区域にはならないんです。過去に、秘書時代にそれで大変な苦労をいたしました。というのは、地図は二万五千分の一とか、もう少し縮尺の細かいのもありますけれども、線というのは、A地点からB地点を直線で結んだのが線でありますから、鉛筆の当てぐあいによっては現場サイドにおりたときには数十メーター、数百メーターの遊びが出てきてしまいます。  構造物をつくると、これは水産庁であろうと運輸省であろうと、それは現場の事務所の方々が、僕は専門家じゃないですけれども、いろいろ調べてやっておりますけれども、自然の方がもっと偉いものですから、防波堤をつくったり突堤を出したことによって潮の流れ、砂の流れあるいはそのときの台風の来るぐあいによって通常、波が越してこなかった民家に波が越してくる。では、これは一体どこがという縄張りの問題です。  そうすると、県に行っても実際の話は、またこの夏から秋にかけて台風が来るときにどうするかという陳情に行ったときに、なかなかそこがうまく機能しないのが実務をやってきた僕らとしては切ないものがいっぱいあります。だから、今度の法改正でそういう四省庁管理の中の部分が少しは解消されていくんでしょうか。
  167. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今お話しございましたように、海岸の中には漁港もあり港湾もあり干拓堤防もあり、また普通の海岸もありというふうな形で、それを建設省運輸省、農水省で所管しているわけでございます。基本的に、今回の改正におきましても、海岸保全区域、この三省といいますか四省庁が所管するという区分については変わりございません。  これは今、田村先生がおっしゃいましたように、地先の人にとってみれば、仮に海岸管理者というのをある省に一本化した場合、その海岸の中に漁港がありましたと、水産庁長官が漁港を所管するわけでございますが、漁港所管のところに海岸管理者という別の人格の人が入るわけです。そうなると、漁港内の非常に接近している場所で、ある行為をしようという人は、漁港の管理者にも許可なり届け出なりをしなきゃいかぬし、また海岸管理者にもやらなきゃいかぬというふうな二つの相手に対する手続が要ることになるわけです。そういったことよりは、漁港区域内は漁港管理者が一括して海岸管理者になってやるという方がその地先の人にとってはいいわけでございます。  ただ、逆に言えば、海岸管理者が異なることによって堤防の高さの基準が違うとか、そういうちぐはぐな部分が出てくるというのも過去においてなきにしもあらずでございまして、全くなかったとは申し上げませんが、そういったことについては、四省庁連携を深めて技術的な意見交換も十分にやることの中でおのずから解決される問題ではなかろうかというふうに思っております。  先ほど脇先生からも御指摘ございましたが、一つの法律を四省庁が一緒になって審議をお願いし、またここまで持ってくるというのは連携がなければ到底できないことでございまして、私どもそういった意味で四省庁連携をもって仕事をしていくということについては、ある意味では今回の改正によりましてより深い自信を持って、また将来に対して明るい見通しを持ってやっていけるというふうに思っているところでございます。
  168. 田村公平

    ○田村公平君 青山局長、ぜひそういう意味で、省庁間の垣根がないとよりよくなるということであれば、私がまた秘書じゃなくて今度は国会議員として陳情で四省庁を走り回る必要のないようによろしくお願いいたしたいと思います。  今回の改正海岸保全施設の定義に新しく砂浜を追加した。その理由は、もう脇さんが質問をされました。それに関連してでありますが、プレジャーボートとか漁船とか、あるいはひどい場合にはもうちょっと小さな木でつくった船もありますけれども、最近はまたFRPでできている、そういう放置船等に対して簡易代執行の制度を導入する、こういうふうに出ております。  では、その簡易代執行、僕は弁護士でもないからようわからぬのですけれども、具体的にだれがどういうふうにそれを撤去し、かといって、おかに上げてFRPなんか燃やした日にはえらい煙が出てきて、まさにダイオキシンじゃないけれども、船なんというのは簡単に始末ができるようでできづらい。そういうことはどういうふうになるんでしょうね、具体的には。
  169. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 船などが海岸に違法に放置されて、またその物件の所有者が特定できないというふうな場合に対応するために簡易代執行制度を導入するということになっておるわけでございます。  概略の手続といたしましては、まず海岸管理者が相当の期限を定めて放置物件の移転または除却等の措置を行うべき旨を公告するわけでございます。その期限までに措置が行われない場合、始末をしてくれない場合には海岸管理者がその物件を除却することができるということでございますが、除却というのはその場所から移すという意味でございます。その後は一定期間保管しなきゃいかぬわけでございます。一定期間保管しても、その所有者に返還できない場合には物件を売却することができるということでございます。ただ、売却しても買い受け人がいない場合、これも十分あり得るわけでございますが、それは物件を廃棄することも可能である。  ただ、これらの手続にはやはり費用がかかります。おっしゃるとおり物件の所有者の負担となるわけでございますが、物件の売却代金等でその費用が賄えない場合、これも多々あるわけでございます。その不足分を物件所有者から徴取するということになるわけでございます。この場合の徴取はかなり強制的な強制徴取の規定になっております。  仕組みとしてはそのようなことがございます。    〔委員長退席、理事太田豊秋君着席〕
  170. 田村公平

    ○田村公平君 話としては非常にきれいでいいんですけれども、現実はそんなものではないんです。  もし僕が五十尺の船を持っておって、使い物になるいい船だったら、絶対そんなのを放置しないです。アルファロメオに乗って駐車違反しておいて、罰金一万何ぼ取られるからといって、そのアルファロメオを僕は置くわけないじゃないですか。最高のボートを持っておって、駐車違反みたいに置いてあって、言われたからといって、はい、じゃまた別のところへ動かしますと。  要するに、行政なりが処分をせぬといかぬのというのは、はっきり言えば無価値どころか、それを処分することの費用の方がはるかに高い。レッカーをかけるにしても、他人の物を壊したら器物損壊になりますから、物すごく養生したやつで下からすくい上げる。フォークリフトで上げて転んだら大ごとです、船というのはこういうようになっていますから。だから、ここで言う話と現場の処理の話とは全然違います。  それから、一時保管すると言うけれども、保管場所が大変なんです。もし僕がたちの悪い所有者だったら、おまえここへ傷つけたな、どうやって話をつけてくれるんやと。  だから、そういうことをきちっとしておかないと、大臣大臣でこうあって、それが市町村に分権やどうのこうのと言うていくけれども、現実問題、対応する役所の人は、そんなおっかない人に、ここへちょっと傷がついた、おまえ、どうやって落とし前つけるんやと言われたら、あいつに言うのやめとこうという話になる。それが現実ですから、そこいらもよく対応していただきたいと思います。  それから、ちょうど昭和六十二年当時、僕はいろんなことをやっておりまして、沖ノ鳥島の領地が消えるということで、当時、プラント船を出してきて生コンを打設するんですけれども、京浜工事事務所だったと思います。それで、ヘリコプターで二トンしか積めないんですね、プラント船から現場まで。三トンか四トンのヘリコがないかということで、僕はどういうわけかそのヘリコプターを探す役をやらされてえらい迷惑したんです。  それで、大変なお金をかけて沖ノ鳥島はよくなった。それは午前中の質問で福本委員からもありましたけれども、今、沖ノ鳥島は、ちゃんと元気に生きておるんですか。
  171. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 元気でございます。  今まさにおっしゃったとおり、六十二年度から護岸の設置等の保全工事を実施してきたわけでございまして、具体的には、直径約五十メートルの円形状に三・五トンの鉄製の消波ブロック約一万個を置きまして消波堤を設けまして、内部にコンクリートを充てんするという状態でございまして、その真ん中に、島は直接の波浪により侵食される危険性はないという状態であるというふうに思っております。
  172. 田村公平

    ○田村公平君 それは東京都じゃなくして、あのときは建設省代行でやったんですか。
  173. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) あのときは、直轄の災害復旧工事で実施したわけでございます。
  174. 田村公平

    ○田村公平君 建設省というのはいろんな知恵が出てくるんですね。直轄の災害復旧と、うまいことを。高知も災害が多いから、そういうのを物すごく活用してもらいたいと思いますけれども、元気でやっておるということで、大変ありがたいと思っております。  日本は火山列島でありますし、何百万年もかからないうちにハワイがもっと日本に近くなって、うまくいけば土佐沖に来てくれたらいいなと思っておりますが、今後もし火山島として明神礁のようなケースが起きて、沖ノ鳥島のような海岸というか島ができたときは、同じような処置を国はとるんでしょうか。
  175. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 現在のところ、例えば排他的経済水域というふうなものを考えた場合に、かなり沖ノ鳥島は南でございますし、また東方でございます。あれに匹敵するような排他的経済水域というのはなかなか出てこないんじゃなかろうかという気はいたしております。  そういったいろんな現象が起こったときにどうするかというのは、またそのときどきの状況を見ながら考えていきたいと思っておりますが、現在はこのような沖ノ鳥島のような例は沖ノ鳥島だけであるという認識でおります。
  176. 田村公平

    ○田村公平君 今の海岸法を今度改正されたとして、ちょっと架空的な質問で申しわけないんですけれども、例えば阪神・淡路のような大震災が、かつて私どもの四国も南海道大地震というのがありまして、日本は先ほど言いましたように火山列島ですから、どこで大地震が起きてもおかしくない。そういうときに、例えばの話ですが、海上自衛隊の上陸用舟艇、強襲艦等が海岸に乗り上げて、当然そのときには港が破壊されておる、接岸できないということも想定されると思います。これは、後でメガフロートとかミニフロートの話につながっていくので聞いていただきたい。  そういうとき、一朝事あるときに、艦船等が港の機能を持っていない海岸に、一番わかりやすいのは強襲艦もしくは上陸用舟艇を想定しているんですが、そういう場合の取り扱い、協議、要請というのはどういうふうになるんでしょうか。
  177. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 基本的には海岸法は有事を想定した法制度とはなっていないわけでございまして、海岸でそういうことをやろうとしたときは、その行為をあらかじめ協議して海岸管理者としてオーケーを出すという手続が必要だというのが原則でございます。
  178. 田村公平

    ○田村公平君 だけれども、チャートを見たら、等高線の逆と同じように海図には全部ポイントを打ってありますから、そうしたら下に岩があるのか、それから深掘れしておるのか、そのままざっと砂浜なのか、そういう地点はわかるはずなんです。  だから、海岸海岸線でとらえるだけではなくして、広い意味での海岸というのを考えておかないと、それは運輸省あるいは海上保安庁の水路部というのか航路部というのか知りませんけれども、そういうところの関連をきちっと持ってやらないと、いわゆる四省庁の協議というものがいざというときには空洞化しますよということを言いたくて、そういうことをちょっと申し上げたので、事が起きてから協議するんじゃなくして、常日ごろそういうきちっとした連携をとっておいてもらいたいと思います。  それから、運輸省にお尋ねをいたしますけれども、最初は、日本造船工業会というのが正式な名前かどうか僕も記憶が定かではありませんけれども、造船不況ということで、浮体によるメガフロートとかいろんな言い方をしていますけれども、大きな鉄の箱をつくって、それをつなげて飛行場とか浮き桟橋にしようとかいうことで、そうこうしているうちにそれがココムの違反になるんじゃないか、当時のソ連にドックとして使われるといけないとか、ちょっとそういう議論があって、ここちょっと議論が落ち込んでいたのを、今横須賀の方にもそういう実験的な設備ができておるようです。  そういう大きな、今僕が言っているのはメガの方ですけれども、小さいので震災等に遭ったときの仮設の桟橋というか、タグで引っ張っていけるはずですから、そういうのを幾つか連結してどうのこうのというのを運輸省でやっておられるように聞いておるんですけれども、そういうものとこの海岸法、さっきの万が一のときの話に関連してくるんですけれども、そこいらの関係、それから事業内容等々を教えていただきたいんです。
  179. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) 先生お話にございました浮体式の防災基地といいますのは、港湾におきまして大規模地震対策として機能するために考え出したものでございます。  今、予算化をしていただきまして、考えております防災基地というのは三基考えておるわけでございますけれども、幅が二十五メートルから約四十メートルぐらい、それから長さが八十メートルから百メートルぐらい、それから高さ方向は大体四メーターぐらい、そういう鉄、ないしコンクリートと鉄との、ハイブリッドと申しておりますけれども、そういう構造物を今考えております。  これは、常時は係留施設等に利用するわけでございますけれども、緊急時におきましては被災地の沿岸部へ曳航可能な構造物としてつくりたいというふうに思っております。  緊急時におきましては、物資の輸送でありますとかあるいは人員の輸送に対してそういう船が係留できるようにすることはもちろんでございますが、浮体構造物の表面にはヘリポートでありますとかあるいは緊急物資のストックヤードでありますとか、そういったものに使えるようにしていきたいというふうに考えております。  先ほど申し上げましたように、東京湾、大阪湾、伊勢湾の三大湾にまず一基設置をしたいということで、平成十一年度中にも完成させるように努力してまいりたいというふうに思っております。
  180. 田村公平

    ○田村公平君 では、三大湾に一基ずつ配備されたとして、例えばうちの土佐湾がおかしくなったというときに、この前のうちの災害のときに、もう本当に大臣のおかげだったんですが、内水面、湛水防除は農水省の施設のポンプですから弱くて、毎分十五トンとかいう大変なポンプ車が中国地建や近畿地建から助けにきてくれて、かなりの大きな被害だったんですけれども比較的短時間で内にたまった水を排水できました。それと同じように、タグで引っ張れば大阪湾からだったら一日半か二日あれば何とか土佐沖にも来られるんじゃないか、そういうことまでは考えておられるんでしょうか。
  181. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) 先生の御地元の高知港につきまして二百メートルあるケーソンを大阪湾の中から曳航していった実績もございます。そういう意味で、今回の鋼製等の構造物でございますので、十分曳航していけるというふうに考えております。
  182. 田村公平

    ○田村公平君 あと十分ぐらいありますけれども、大体もうさっき冒頭申し上げました五つ、僕の通告ダブりましたので、時間を余らせて申しわけないですけれども、これで終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  183. 泉信也

    ○泉信也君 吉野川の問題については、私も大変建設大臣の御発言に関心を持っておった者でございます。しかし、先ほど来の質疑の中で大臣の真意を伺わせていただきましたので、ここでお尋ねすることは取りやめさせていただきます。  公共事業に対する一般的な批判はもちろんよく受けとめなければなりませんが、それぞれの、ある意味ではプロの立場で国民の生命、財産を守る、あるいは地域の発展を図るというような事業を進める上においてはよく御説明する、御理解をいただくということは当然必要だと思いますし、またやらなきゃならない。しかし、一方では、先ほど来の脇先生等のお話のように、本当に説得を重ねて進めなきゃならない事業もたくさんあるというふうに私は思っております。  そこで、海岸法の問題についてお尋ねをさせていただきます。  行政の一元化ということについて、今回の行革の中央省庁の改編の中でも、この海岸の四省庁にまたがる話は一つのテーマだというふうに私は思っております。それが今直ちにやるべきことなのかどうかということはもちろん考えなければなりません。  そこで、少し観点を変えてお尋ねさせていただきますが、二条の二の基本方針というものの具体的な内容、それから策定の手続、このことについて、余り私は時間を持っておりませんので、簡潔に御説明ください。
  184. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 基本方針でございますが、具体的な内容は、一つ海岸の区分に関する事項がございます。海岸保全基本計画を策定すべき海岸はどの海岸、どの海岸、どの海岸だというふうな区分の事項でございます。二点目は、防護環境、利用の調和のとれた海岸保全の基本理念でございます。三点目は、海岸環境を含む海岸の保全に関する基本的な考え方。四点目は、海岸防護に関する重要事項、こういったものを海岸保全基本方針について盛り込みたいと思っておるわけでございます。  具体的には政令で中身が決まることになると思いますが、三省で原案をつくりまして、これに関係省庁で法律に基づく協議をいたします。この場合の関係省庁と申しますのは、環境庁、国土庁、それから文部省というふうに考えておりますが、そういった関係省庁に法定協議をした上で定めるということになるわけでございます。
  185. 泉信也

    ○泉信也君 関係省庁への法定協議ということでございますから、それはそれで意味があるんだと思いますが、策定の過程では、特に学識経験者というようなところの御意見を承るというようなことはあるんでしょうか。
  186. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 基本方針を策定する、原案を策定する前に学識経験者の方々からの御意見はお聞きしたいと思っておりますし、また真摯に耳を傾けていきたいというふうに考えております。
  187. 泉信也

    ○泉信也君 では、二条の三、基本計画の内容はどういうことを定められることになりますでしょうか。
  188. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 基本計画におきましては、まず具体的にはこれは県知事さんが定めるということになるわけでございますが、一点目は海岸の概要という、この海岸はどんな海岸であるという概要を書くことになろうかと思います。  それから二点目は、海岸保全の基本事項を書くことになろうかと思います。具体的には、特性の似通った地域ごとにゾーニングを行いまして、例えば防護すべき海岸の範囲、防護の目標に関する事項だとか、また自然環境保全考え方、さらには公衆の利用のための配慮事項といったものをゾーンごとに記述するということになろうかと思います。  また三点目は、海岸保全施設整備に関する事項を書くことになろうかと思います。これは具体的には各県知事がお定めになるわけでございますので、こちらの方からこうだというふうなことを言うのはできるだけ控えたいと思っておりますが、具体的なイメージとしてはそのようなものを考えております。
  189. 泉信也

    ○泉信也君 主務大臣の基本方針、そして知事の定める基本計画、こういうふうに物事が決まってくる、そして十四条の「技術上の基準」というのがまた定まってきますね。そうしますと、全国海岸を、極端なことを言いますと、だれがやっても物の考え方は変わらないんじゃないか。このゾーンではこういうふうな配慮をすべきだとか、整備に関する基本的な事項はこうだというふうに定めてある。それなのに、なぜ海岸管理者というのは、国で言いますと四省庁に分かれて事を行うような話になるのかというのが理屈の上では大変理解しにくいんですが、いかがでしょうか。
  190. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今おっしゃいますように、三省一緒になって基本方針をつくる、また学識経験者の意見も聞き、関係省庁に協議してつくるわけでございますが、これで、理念の部分は法律の高い理念があって、その下で基本方針という理念があるというのがそろうわけでございます。また基本計画については、各県の知事さんがそれぞれにゾーニング等をしながら各海岸の特性を考えながらやるわけでございます。知事というところではそろうわけでございます。  それからもう一点、関係省庁において、今までの法律制定の間の連携も含めまして、非常に緊密な連携をとりながらこれからも進めていく、またその自信も持っているというのも事実でございます。  一方、それなら一本化すればいいじゃないかということでございますが、ある省に、海岸は全部担当だという格好で仮に一本化したとしますと、例えば漁港が一本化した海岸管理者と違う漁港管理者が入るということがあるわけでございます。そうすると、その漁港区域で何らかの行為をしようという方にとってみれば、海岸管理者である○○省、それから漁港管理者である水産庁、両方に許可を出さなきゃいかぬということになるわけです。  だから、それぞれの地域の人のことを考えれば、それよりは、漁港区域内は漁港管理者だけにお話をした方がかえって効率性はいいわけでございます。海岸全体をどうするとか、海岸堤防の構造基準をどうする、技術上の基準をどうするといった話の方がむしろ連携がとりやすいといいますか調整がとりやすいといいますか、基本的な問題であるがゆえにそういった連携調整がとりやすいテーマであろうかというふうにも思います。  そういった意味では、港湾法なり漁港法なり土地改良法なりというそれぞれの法律に基づく海岸に非常に密接にかかわりのある管理者がおられて、それと海岸管理者という存在があるわけですから、どこかで線を引かないことにはなかなか難しいというのが現実じゃなかろうかと思います。私どもは、そこはそれぞれの管理者の方を地先地先で優先させて、逆に海岸管理者としては連携を密にしていくという方向の流れではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  191. 泉信也

    ○泉信也君 今、局長が御説明のように、海岸管理者と港湾管理者という二つの管理者に、例えば手続をするというのは大変だということ、それは事実そうかもしれません。しかし、海岸という国土を守る、今回の利用目的環境ということもございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、基本方針は知事がつくるとはいえ、そう変わったものができるとは思えない基本計画、そして技術基準というものを駆使していけば、手続的に若干問題があるとしても一元的管理の方が私は望ましいのではないかという思いを持っております。  そこで、五条の四項、五項という、管理者が異なる場合の管理あり方あるいは施設の扱い方について、これは特例というんでしょうか、柔軟な対応という条項だと思いますが、このことは実際ここに書いてあるようにうまくいっておるんでしょうか。  私が経験した時代のことを申し上げては変ですが、建設海岸を運輸海岸にするという、Aという港でそういうことをお願いすると、Bというところでは逆に港湾海岸を建設海岸にお渡しするというような取引が行われておる。しかも、そのAとBという海岸は全く違う県であったりするということで、一つの県の方は知事のもとで話し合いがついておるという状態の中でも、建設省運輸省建設省と農水省の間で話がつかなくてうまく進まないというような時代があったわけですけれども、最近はどうなんでしょうか。
  192. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 現場現場でいろんなことがあるんだろうということは、私も想像がつくわけでございます。  ただ、基本的に、今回四省庁足並みそろえてこの海岸法改正という法律を国会に御審議をお願いするというところに来るまでにはいろんな長い道のりがあったわけでございます。それが今回、国会で御審議いただくに際しても、四省庁本当に心を合わせて取り組んでこれたと思いますし、また私自身は四省庁の事務担当の方々と極めて強い連帯感を持ってこの法改正に取り組んでこれたのではなかろうかと思っております。そういった意味で、ある意味では自信を持っておりますし、また後輩たちがやる際にも非常に明るい見通しが出てきているのではなかろうかと思います。  そういった意味で、泉先生が御苦労なさったようなことを後輩たちに苦労させないためにも、私ども、より連携を深めながら調整していきたい、共通の理念のもとにやっていきたい、かように考えております。
  193. 泉信也

    ○泉信也君 局長の御答弁を大変評価させていただきまして、この法律をまとめるに当たって御努力なさった、その結果として四省庁間の連係プレーがより有効に働きますように、五条の四項、五項が柔軟に対応できますように、地域の方々に心配をかけないように、ぜひ関係者と一緒に御努力をいただきたいと思います。  次に、三条の海岸保全区域のことについて少しお尋ねをさせていただきたいと思います。  目的のところに、先ほど脇先生からの御指摘もございましたように、環境と利用というような言葉が入ったにもかかわらず、海岸保全区域というものの考え方はやっぱり防護ということに限定をされておる。目的という言葉で現行法は書かれておったわけですが、今回の新法はかなり書き方を仕分けしておられる。ここにも私は、せっかく目的に掲げながら、環境と利用については若干扱い方の違う対象としようとしておられる姿が出ておるのではないかと思うんです。  ですから、全体を保全区域に指定するというようなことはこの定義からは難しいと思いますけれども目的を十二分に生かすためには、一般海岸とかいうようなところではなくて、海岸保全区域の設定に当たっては環境も利用も考えた上で設定するというようなことはできるんでしょうか。
  194. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) おっしゃるように、第三条は「防護すべき海岸に係る一定の区域を海岸保全区域として指定することができる。」ということでの防護という言葉しか出てこないわけでございますが、当然、第一条の目的のところに環境それから利用があるわけでございます。  また、私ども実態的に、海岸法におきましても、防護工事をやる際に、近年では環境の必要性、非常に大切だ、また利用も非常に大切だという認識から砂浜重視、面的防護重視の海岸防護の工事をやってきているわけでございまして、その例が人工リーフでありヘッドランドであり、また養浜工であるわけでございます。  そういった意味での砂浜というものは非常に大切な存在だ。それも防護面だけでなく、利用面でも環境面でも大切な存在だという認識のもとに防護のための仕事もしてきているわけでございまして、この海岸保全区域におきましても当然、環境の保全、適正な利用という目的をかなえるべく努力していかなければならないと思っておるわけです。
  195. 泉信也

    ○泉信也君 砂浜の問題を大切にしていただいておるということはよくわかるわけですが、例えば第二条の砂浜というのは指定したものに限る。これは、いわゆる海水浴場のための砂浜みたいなものは、海岸事業ではどういう扱いになりますでしょうか。
  196. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 確かに、養浜工できちっと持ってきた砂浜等は海岸保全施設になるわけでございますが、天然の砂浜、特に一般公共海岸におきます天然の砂浜というのは海岸保全施設にならないわけでございます。  これは、波のエネルギーを吸収する、それもやわらかく吸収するという意味では非常に大きな働きを持っておるわけでございまして、国土防護するという意味では防護機能を持っておるわけでございますが、これを海岸保全施設に指定いたしますと、罰則規定も含めて規制が非常に厳しゅうございます。汚損をしてはいけないというふうな禁止規定がございまして、やはり規制は最小限度にとどめるべきであろう。そういった意味では、ヘッドランド工法等で人工的に養浜した区域の砂浜等を海岸保全施設として位置づけるのが適切ではなかろうかという観点から、このような限定した表現になっているわけでございます。
  197. 泉信也

    ○泉信也君 では、ちょっとまた違うことをお尋ねいたします。  地球温暖化が心配をされておる中で海水面の上昇という話が言われております。現在の海岸施設はそういうことをどの程度織り込んでおられるのか。全く想定をしておられないのか。この点はいかがでしょうか。
  198. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 基本的に、日本海岸線というのは非常に地盤が低うございます。海面が上昇するということになりますと、これが非常に心配なのも事実でございます。  どれぐらい上昇するのかということは非常に予測がつきにくい。例えば、縄文時代は今から四、五千年前でございますが、貝塚の分布なんかを見てまいりますと、海抜七メートル、八メートル、十メーターぐらいのところに貝塚の分布があるわけでございます。そういったことからいきますと、縄文時代の海水面は今より七、八メートル高いところにあった、ほとんどの平野部分は海の底であったということになるわけでございます。  また、どの程度上昇するかによりましては、沖ノ鳥島のような岩については、これは満潮面からたしか五十センチぐらいしか出ていないわけでございますので、非常に微妙なことになるわけでございます。そういった意味でも、地球の温暖化、またそれに伴う海水面の上昇という問題は非常に重大な関心を持って見ているわけでございます。    〔理事太田豊秋君退席、委員長着席〕  それで、具体的に海岸について現在どうしているかというお尋ねについては、今のところはそこは重大な関心を持って見守っているということしかお答えできないのではなかろうかと思います。
  199. 泉信也

    ○泉信也君 確かに、十センチ上がれば海岸投資は現在の投資の何倍という形で必要になってくるような影響があるということでしょうから、重大な関心を持っていただくということが限界かもしれません。  もう一つお尋ねをいたしたいのは、東京湾を例にとって、津波に対する対策が十分なのかなと。お話を伺いますと、高潮による影響の方が大きいということで、高潮の対策で津波を防げるという御説明をいただいております。ただ、東京湾の外側に津波の発生源がある場合は確かに湾口で絞られて御説明のようなことになるかもしれませんが、最も危険な場合、東京湾の湾央で地震が発生するというような場合、これは極端な例ですけれども、もう少し津波に対する配慮をしておく必要があるのではないかという思いをいたしますが、どんなことでしょうか。
  200. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 詳細な数字を手元に持っておりませんので定性的な御説明で恐縮でございますが、確かに津波はどんと海底の地形変化で海水の塊が動くということでございますので、東京湾の中でどんなタイプの地震が起こるのか、どの程度の規模の地震が起こるのか、地震の方での御研究等もいろいろあろうかと思いますし、またそれに関連してのシミュレーションはやれる道具を私どもは持っておるわけでございます。  今のところ、私は、高潮の方が危ないとか津波の方が危ないとかいうよりも、相手は自然現象でございますから、やはりいろんなことを想定して考えておかなきゃいかぬのではなかろうかと思っております。  いずれにしましても、東京湾周辺、特に東京周辺にはゼロメートル地帯が非常に広く広がっております。干潮面よりも低いゼロメートル地帯、これまであるわけでございまして、まして満潮面よりも低いゼロメートル地帯が非常に広い範囲で広がっておる。たしか私の記憶では、二百数十万の方がそのゼロメートル地帯にお住まいになっているということでございまして、ゆゆしきことだろうと思います。  そういった方々の安全ということを考える場合でも、地下街も発達しておりますし、警戒避難も含めて、ソフト、ハードを含めてやはり常日ごろから備えを考えておかなければならないのではなかろうかという感を強くしているのが現状でございます。
  201. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。  海岸関係する省庁の方々が大変きれいな海水浴場をつくるとか災害に備えていただいておるということを私は承知いたしております。ただ、一方では、日本海岸線に自然海岸がなくなったという、いかにも何か皆さん方の努力を卑下するがごとき報道がなされることが私にとっては大変不満であります。必要なことをやっていただいておるというふうに思っておりますだけに、ぜひ海岸関係省庁が力を合わせて、海岸を守ることの重要性をもっともっとわかりやすく国民へPRしていただきたいということをお願いして、質問を終わらせていただきます。(拍手)
  202. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 大渕絹子でございます。よろしくお願いをいたします。  きょうは、野党の立場に立って質問をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。  現行の海岸法は、津波高潮等の被害から海岸防護するために必要な海岸保全施設整備を行うことを主なる内容とするものでございまして、先ほど来ありましたけれども、現行法の第一条の目的のところにも、「この法律は、津波高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸防護し、もつて国土の保全に資することを目的とする。」と、こう掲げられております。この法律ができて四十年になるわけでございますけれども、この目的が果たして着実に成功してきているのかどうかというところが非常に私は問題だと思うんです。  今回の法改正におきまして、環境とか利用とかという美名を盛り込むことによって、旧来やってきた防護工事そのものを全面的に覆していく、変えていかなければならないということが覆い隠されているように思えて仕方がないわけでございます。さっき脇委員の御指摘の中にも、目的に沿った法律の中身でなければならないということが指摘をされているわけですけれども、そういう観点からいたしますと、防護環境や利用を入れることによって、良好な海岸環境を求める社会の要請とか海岸利用に対する人々ニーズの高度化、多様化にこたえようとするものというふうにうたっておりますけれども、本当に今までのこの海岸法によってなされてきた事業そのものに対する反省点というのが見えていないような気がいたします。  私は、大臣趣旨説明の中にもそのことが全く触れられておらないということに対して少し不満がございます。それはなぜかというと、今までの線的防護という状況は、海岸侵食が本当に限りなく拡大してくる、過去十四年間で膨大な国土が消失をしているという状況にありますと、この海岸法がつくられたときの目的は達せられていない、むしろ後退をしていると言っても差し支えないというふうに、これは問題、議論があるところだろうと思いますけれども、そのことについて、私が主張することについて、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  203. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 先生の御質問は大変技術的なことも含まれておるんだろうと思うわけでございます。今まで防護ということを目的としていてそういう砂浜侵食が進んできておるということであるから、そのもとの目的がまだ十分達せられていないのではないかという御意見でございます。  確かに、その後いろいろな海岸侵食というのが進んでいたのは事実でございまして、それで短期間でそれを守っていこうというようなことで、直立の護岸をつくったり、その前面に消波ブロックを設置する手法の海岸整備が数多く行われた。そのことがすなわち景観を悪化させたというようなことでございます。ですから、数値的といいましょうか、かつての法律のもとでの目的がどれぐらい達せられているかは局長から答弁させていただきますが、確かに先生指摘されることをすべて否定できるだけの結果を得ていないというのが事実であろうと思います。  そういうような状態のもとで、今度は環境と利用の調和のとれたものをつくっていくというわけですから、ちぐはぐといいましょうか、二律背反とまでは言えませんですけれども、ちょっとおかしな感じがあることは正直なところでございます。  前の法律、海岸法でもっての目的が実際にどれだけ達成されたかということは、数値的なことを局長からちょっと答弁させていただきたいと思います。
  204. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今回の改正は、従来の海岸法が抜本的にもう本当に根底から変わる法律、新たにつくったと同じぐらい変わる法律というふうにとらえなければならないのではないかと思うんです。過去においてやられた工事、保全施設そのものが海岸侵食をして、そして国土の保全に役立たないということがわかり、そこはちょっと言い過ぎかもしれませんが、それを改善するために線的な防護から面的な防護に変えていき、そして今まで工事が行われた地域にまた新たな資本が投入されようとしている。  午前中の小川委員の質問で、全く整備がされていないところは放置をされているということがございましたけれども、この四十年間の事業が行われたところに、今度は環境とか利用とかという名目をつけて、新たなヘッドランド工法とかあるいはリーフ、離岸堤、そういうものをつくって砂浜をまたつけていこうとするということで、またそこに予算が使われていくという状況でございます。ここは後でまた聞きますけれども、本当に法律の中身そのものが変わっていくんだろうと思います。  それはなぜかというと、第二条の一項に、「離岸堤」とか「砂浜」ということが今度入れられましたけれども、最近の防護工事はこの砂浜とか離岸堤が主なんです。その主に行われてきたものが今までの法律ではどういうことで入れられてきているかというと、第二条の規定の中で、「護岸、胸壁その他海水の侵入又は海水による侵食を防止するための施設」という、この「その他」のところで主なる事業がこの何年間かずっとやられてきているということに極めて問題がある。  こういう状況になったときには直ちに法律改正をし、事業の展開をしていかなければならないはずなのに、そのことを極めて怠慢だと私は言わざるを得ないというふうに思うんです。法律の不備を承知しながら、長年放置をしてきたこの責任は一体どうなさるのですかということでございます。
  205. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 非常に厳しい御指摘をいただいたわけでございますが、二、三点お話を申し上げたいと思います。  一点目は、現行の海岸法ができましたのは四十年以上も前で昭和三十一年でございます。そのころはどんな時代かということを考えてみますと、昭和二十八年に西日本を中心に大水害がございました。また、三重県等伊勢湾周辺に非常に大きな高潮水害がございました。また、三十三年には狩野川台風が参りました。三十四年は伊勢湾台風が参りました。これで名古屋を中心に五千人以上の方が亡くなった、そういう時代だったわけでございます。また、九州におきましても、高潮被害で有明海沿岸に非常な被害を受けておるわけです。要は、この三十年代といいますのは、毎年のように何千人という、もしくは千人オーダーの方がどんどん水害だとか高潮で亡くなっている時代でございました。  その中で、高潮に対して人命、財産を守らなきゃいかぬじゃないかということがかなり大きなきっかけになってきたわけでございます。そういった中で、まずは西日本を中心に高潮堤防をつくるということが非常に重点的に行われました。これは、北海道小川先生等の御質問とも関連するわけでございますが、高潮対策重点を置く余り結果的に侵食対策がかなりなおざりになったというのは事実でございます。それが一点。  それから二点目は、コンクリートのかたい堤防、それも直立している堤防をつくれば、これは波のエネルギーを非常に大きく反射して前の砂浜が削られるということがわかってきた。わかってきた上でどういう対策をとればいいのか。これは離岸堤のようなことをやって砂をつけるというやり方があるんじゃないか。これもすぐ簡単に出てきた工法ではございませんで、土木研究所の海岸研究室長等が日夜必死になって現場を見て、もうほとんど家にも帰らずに現場を見て歩いて、災害の中で波のしぶきを浴びながら現地を見て、そこでこういう離岸堤という工法があるじゃないかというのを提案してきたのが昭和四十年代でございます。  そういった歴史の中で、高潮対策、また侵食対策という中でいろいろ考えていきますと、一番のキーワードはどうも砂浜である。これは、かたいものにぶち当たって砂浜がなくなるということは、またより波が高くなる。それであれば、砂浜をつけることによって波のエネルギーも吸収できるし、また利用面でも環境面でも非常にいいじゃないかということで、初めて環境、利用、防護という三つのものを調和させるめどといいますか方向づけができてきたわけでございます。いわばそのかなめの部分が砂浜でございます。そういった意味では、この第二条に海岸保全施設で「砂浜」というのを書き入れるというのは非常に大きな意味があると思っております。  三点目でございますが、そういった格好でいろいろ工夫しながら防護のお仕事をしてきて、また砂浜がキーワードだということがわかってきたわけでございますが、この海岸法改正が非常におくれたのは怠慢ではないかというおしかりを受けるのはこれはごもっともでございます。私ども甘んじてそのおしかりを受けますが、これを機会に四省庁非常に連携を密にしまして、よりよい海岸をつくっていくべく努力していくということをお誓いして、またその姿勢をお見せすることが今までの怠慢へのおしかりに対するお答えであろうと思っておりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
  206. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 十四条の一項を見ていただきたいと思いますけれども、「海岸保全施設は、地形、地質、地盤の変動、侵食の状態その他海岸状況を考慮し、自重、水圧、波力、土圧及び風圧並びに地震、漂流物等による振動及び衝撃に対して安全な構造のものでなければならない。」、こうなっていますね。つくられたときに十四条はこういう形で入ってきている。  そうすると、局長は、四十年代までそういう工法は見つからなかったということで仕方がない状況があったというふうに言いますけれども、この中にも確かに「侵食」ということも入っておりまして、それに十分考慮をしなさいということにもかかわらず考慮されておらなかった。  これは海岸だけではないと思うんです。土砂の総合的な管理という観点からしますと、私たちは政党として、砂防ダムあり方、多目的ダムあり方、あるいは河川改修のあり方等々、土砂の供給の部分からもかなり指摘をしてきていたと思うんですけれども、そこが相まって、建設、土木、公共事業海岸侵食にことごとくかかわってきているという実態について、それではどのようにお答えになりますか。
  207. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 海岸侵食といいますのは、先生おっしゃるように土砂全体の動きの中から出てきた現象でございます。まさに山の上の水源地から途中の川を下り海に達して、最終的には海底の奥深く砂は落ちていくわけでございますけれども、こういった土砂の流れというのを流域の上流端から海まで全部一貫して眺めるという姿勢の必要性というのは、先生指摘のとおりでございます。  今、河川審議会におきましても、総合土砂管理というものの必要性というのは強く打ち出されておりますし、私どももまたその方向考えていかなければならないと思っておりますが、土砂の流れそのものを総合的にとらえていくということの必要性は先生おっしゃるとおりだというふうに認識いたしております。
  208. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その総合土砂管理小委員会の報告がございますけれども、モニタリングの推進をしながら調査研究していくということがございます。そして、さらに砂防ダムを、今まで砂防ダムとしてつくってきたものを今度はあけるというんですね。オープンするんですね。せっかくつくってきたのに、あけて砂を流す。洪水のときには砂が流れるようにする。洪水のときに砂が流れないためにつくったのが砂防ダム。ところが今度は、洪水のときに砂を流すためにその砂防ダムをオープンするという状況をつくるとか、さまざまなことが提案されています。それは時代の変遷の中で、現状に即して必要になってこういう提案がされてきているということは重々わかるわけですけれども、余りにも情けないなという気がします。先が見えていない人たちばかりでやっておるのではないかなというふうに思います。  そしてさらに、この小委員会が報告をされていることは、ある一定地域の流砂系というんですか、そこを今度指定するというんですけれども、それをモデルとして調査研究するというんですけれども、川は生きています。一つの川をモニタリング調査したからといって、隣の川が同じ状況にあって同じような状況をつくっていけば大丈夫なんということは絶対にあり得ないと思うんです。それがこの少しばかりの調査でお茶を濁されるような形で、また画一的な工事が全国的に広げられるんではないかということを私は非常に懸念するんです。  そこらはどうなんでしょうか。
  209. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 今おっしゃいましたように、まず砂防ダムでございますが、これは大洪水時に大きな岩だとか石が転がってくるわけでございます。それはとめなきゃいかぬわけでございますが、非常に細かい微粒径のものは下流にもっと流していいんじゃなかろうかということで、スリット式の砂防ダムというものを施工するようになったわけでございます。  また、従前の砂防ダムも、これは仮に砂防ダムが全部満杯になったとしましても、砂防ダムの調節効果というのがございまして、また洪水が来て土砂が流れてくるときには、その河床勾配が上流で少しきつくなるけれども、中小洪水で徐々に洗い流されてまたもとの階段状の勾配に戻るというふうな効果もございますので、一律に全部土砂をためてしまうという仕事ではないわけでございますが、スリット型の方がより効率的に細かい砂は下流に流し、大きな岩石は上流でとめるというふうな形でやれるんではなかろうかという考え方でございます。  それから、総合的な土砂管理を今までなぜやらなかったのかというおしかりでございますが、これも、私どもも問題意識はございました。昭和四十八年ごろでございますが、天竜川につきましては天竜川土砂動態調査というふうなこともやっているわけでございます。これは、まさに三十六年の伊那谷災害をもたらした大雨で天竜川に大量の土砂がたまった。それが佐久間ダムだとか美和ダムだとかそういったダムにもたまった。それがどのような土砂の動きで下流の海岸まで達しているのかというような調査も既にやったりはしているわけでございます。  今回のモデル流域に選びましたのも、例えば黒部川とか安倍川とか極めて典型的な川と申しますか、黒部川は上流が非常に急流の渓谷でございまして、その中に電力ダム、それから私どもの宇奈月ダム等のダムがあって、排砂ゲートというものをつくりながら土砂を海に流すという工夫をしている川でございます。また、安倍川といいますのは、上流に大谷崩れといいます非常に大きな崩れがございます。そこに砂防工事をやっているわけでございますが、途中にいわゆるダム一つもございません。それが静岡海岸、清水海岸に来て、三保の松原にまで通じている。  そういうふうないろいろ典型的なケースの例を選んで勉強、研究していこうと思っているわけでございまして、それをそのまま隣の流域に適用するというふうな考え方は持っておりません。むしろ、その中から生まれ出てきた普遍的なものをきちっと反映させるという考え方でおるわけでございます。
  210. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 何年待っていたら全国河川とか海岸が大丈夫になってくるのか、今のお話では全く見えてきません。  そうしますと、そこの地域に住んでおられる皆さんの知恵をかりる、あるいは地方自治体の知恵をかりて、この河川、この海岸はどういうふうに管理をしたらいいかというようなことをきちんとやる。今度は、その計画が都道府県やあるいは市町村でつくれるようになったのでこの法律は大変前進だというふうに受けとめておりますが、そういうことをやらないとだめだと思います。中央で、建設省でそういう調査を幾ら頑張ってやろうとしたって、それはもう本当に砂を拾うようなものじゃないかなということを指摘しておきたいと思います。  環境庁、来ておられますか。  先ほど泉議員も温暖化の問題を取り上げましたけれども、地球温暖化による海面上昇の予測ということが世界でなされておると思います。おおよそでいいのでございますけれども、その予測の中で、二一〇〇年、これから百年後というのはどのぐらい上がっていくのでしょうか。
  211. 浜中裕徳

    政府委員(浜中裕徳君) 地球温暖化による海面の上昇についての予測でございますけれども、国連で世界のこの方面の専門家を集めました気候変動に関する政府間パネル、IPCCという機関がございますが、そこが一九九五年に発表いたしました第二次評価報告書というのがございます。  これは、現時点で一番確からしいとされる科学的知見を集めたものでございますが、その報告によりますと、大気中の温室効果ガス濃度やその気候影響の強度などに関する、いろいろ予測の幅はあるんですが、中位の予測によりますと、二一〇〇年には約二度Cの平均気温の上昇、それから海面水位の上昇については、細かく申し上げますと四十九センチ、約五十センチメートルというような予測結果が出ているわけでございます。  ただし、ただいま申し上げましたように、この予測にはさまざまな不確実性による幅がございまして、低目の見積もりによりますと約二十センチ、高目に見積もりますと約九十センチあるいは予測によりましては九十五センチというものもございますが、大体そういうような中におさまるというふうに予測をされているところでございます。
  212. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  そこで、大臣、これは「海岸」という全国海岸協会が出されている本ですけれども、この本の中に「英国の海岸環境について」という項目がございまして、その中で、ディヴィッド・コープさんというイギリスの土木工学の先生なんでしょうか、その先生がおっしゃっていることは、イギリス人は海を恐れている、そして危険なところには住まない、あるいは住んだとして、その危険がもし自然によってもたらされたとしても、それは自己の責任において処理をすべき問題だということをきちっとこの講演で言っているんです。  そういうイギリスの考え方もありますけれども日本は徹底して公が守るという状況でやられてきているというふうに思うんですけれども、地球温暖化によって、百年後には中位に見積もって五十センチ、大きく見積もると九十六センチぐらい海面が上昇をするのではないかと言われているこの時期、ちょうど二〇〇〇年、もう目前です。  こういう時期に、この温暖化に対する準備といいますか、そういう観点もこの海岸法防護観点の中で加えていく必要があるのではないかなと思いながら、しかし、なかなかそれは狭い国土ですから、行政が指導しながら住むところまでということにはならないだろうと思いますけれども、ことごとく施設をつくっていくときにはこうした水位が上がってくるということを予測しながら工事する必要があるのではないかと思いますけれども、その点に関して大臣の御決意をお伺いして、終わります。
  213. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 先生、きょうは野党の立場で質問をと言いますから、私は今はもう自社さ体制は終わったのでどういう意味かなと思っておりましたが、本当に青山局長も顔面蒼白になるごとく、また事実をつかれておるわけでございますから、それは大したものでございます。  ですから、以前の海岸法が十分に機能していなかった。それは彼が認めた。そして、その後にこの新しい法律案ができたということですから、この法律案の中に、海水面が五十センチ上昇する場合等々はとてもとても考えられない状態であったんではないかなと思うわけでございます。  ただ、このことは本当に重要なことでございます。土木学会の試算なども聞いてみますと、海水面が五十センチ上昇すると、現状と比較すると新たに人口で約八十六万人の方々が満潮時の海水面より低い位置に住むというようなことになるようでございまして、これは本当に重要なことでございます。  ですから、これは長期的な対策になると思いますけれども、これをやっていかなければならない、そのように思っております。
  214. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。
  215. 奥村展三

    ○奥村展三君 関係省庁、力を合わせて、あるいはまた呼吸を合わせて、この法案をおつくりいただいて上程いただいたわけであります。  もう既に各先生方からお尋ねをなされております。重複は避けたいと思います。  国土全体を守る、海岸を保全していくということは大変重要なことでもございますし、私はこの法律について賛成をいたす立場であります。  侵食等のお話もたびたび出ておりますが、これはやはり自然的要因やあるいはまた地形的要素、そしてまた設置されておる構造物等によっていろいろ影響が出て、非常に複雑だというようにも思われるわけでありますが、私の地元は御承知のとおり、局長さんも奉職をいただいて御努力いただいた琵琶湖がございます。  海岸は当然でありますけれども、湖岸の侵食も大変な問題になっておるわけでございます。ちょうど私も県会議員当時、五十六年ごろからだったでしょうか、四年間ぐらい調査をやったりいろいろやってきましたし、そしてまた建設省の土木研究所の河川部の方にもお世話いただいて、いろいろと県と一緒になって調査をしていただきました。  しかし、御案内のとおり、琵琶湖だけの湖岸を見ましても二百三十五キロ、周辺あるわけです。そのうちの百六キロが自然的な湖岸になっております。そういうところに砂浜が点在をして、レクリエーションやいろんなことに大いに利用されているわけでございます。侵食原因究明というのは大変難しいようでございますが、台風などの気象状況あるいはまた自然現象によって変わってくるとも言われておるわけでございます。  いつも申し上げていることですが、琵琶湖そのものは琵琶湖河川空間管理計画等を策定したり、あるいはまた専用者に指導をしたりいろいろやっているわけです。そしてまたヨシ条例をつくって、局長も御承知のとおり侵食防止を目的としていろいろ方策を練っているわけですが、特に彦根の新海浜、そして守山のなぎさ公園、御存じだと思うんですが、あそこらは侵食されて松がばっさばっさ倒れていくという状況が続いているわけです。  そういう流れの中で、今日まで災害復旧等でいろいろ手当てをいただいて、海岸法のこの法律で今審議をしているわけですが、湖沼といいますか、湖岸のこういう問題についても対策が必要ではないかと私は思うんですが、御見解をお伺いいたしたいと思います。
  216. 青山俊樹

    政府委員青山俊樹君) 海岸同様、琵琶湖のような大きな湖の湖岸の砂浜について侵食災害が著しいというのも事実でございます。  私も先日、琵琶湖を見てまいりましたけれども、特に彦根の方だとか北湖西岸のマキノ町だとか非常に侵食の傾向が見られる。松が水面から伸びているという状態になっておって、琵琶湖水位がプラス十センチ程度であるにもかかわらず根は見えない。そこまで砂浜侵食されているというふうな状況を見て驚いたわけでございますが、やはりああいった大規模な湖では、台風や季節風によります波で湖岸侵食が発生するというのも確かに先生指摘のとおりだろうと思います。  この原因でございますが、湖岸に供給されます砂の量、これは流入する河川等から入ってくるものがほとんどでございますが、供給される砂の量と沖合のもう動かない深いところに出ていく砂の量のバランスが崩れて、沖合の方に持っていかれる砂の量の方が多くなると侵食が起こるということではなかろうかと思います。それはまた、湖岸の構造物等で土砂移動が遮断されますと、その土砂の流れの川下側にはさまざまな侵食が出てくるわけでございます。  いろいろと現地をよく見た上での判断が要るんじゃなかろうかと思っておりますが、今、県の方でも航空写真の分析とか深浅測量を実施して、また砂浜の粒径分布を見るとか漂砂を追跡調査するとかいろんな調査をなさっておるというふうに聞いておりまして、こういった調査がまず第一に必要だろう。それで、具体的な原因考えながらその対策を講じていくということが必要だろうというふうに思っております。
  217. 奥村展三

    ○奥村展三君 この海岸法が実施される段階におきましても、ぜひ湖岸の問題につきましても気をとめていただいて保全対策をしていただきたいと思うわけでございます。  なお、局長大臣も御承知のとおりでございますが、小渕総理が訪米前に、G8の首脳サミットを沖縄県で開催いただくということに決定なされました。今、真鍋長官もここにおいでをいただいたわけでございますが、長官の指導力を発揮いただきまして、環境大臣会議という環境サミットを同時期にこの琵琶湖で、滋賀県で開催していただくことになりました。自然環境保全という流れの中にもこの侵食の問題だとか、あるいは先ほどから各先生方がお述べになりましたいろんな問題等も出てくると思います。  そういうようなことを考えますと、海岸法とあわせて琵琶湖の大切さもより以上御認識をいただいて、そして世界に誇れる琵琶湖としてお認めをいただき議論していただく機会をぜひお願いいたしたいと思います。百三十万県民も心から歓迎いたしておりますし、私、一県民といたしましても大変うれしいことだと思って、真鍋環境庁長官を初め関係の皆さんに感謝を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  218. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  219. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 環境事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。真鍋環境庁長官
  220. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ただいま議題となりました環境事業団法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  環境事業団は、産業公害の防止、改善を目的として、昭和四十年に公害防止事業団として発足しました。以来、公害防止施設の設置等を促進するための建設譲渡業務と融資業務等を実施し、公害防止対策の推進に寄与してまいりました。また、産業公害のみならず、都市・生活型公害の防止、自然環境の保護及び適切な利用、さらには地球環境保全という時代の要請にこたえ、過去数回にわたる法律改正を行い、その業務の見直しを行うとともに、平成四年には名称も公害防止事業団から環境事業団へと変更されたところであります。  このような中で、特殊法人等の整理合理化の一環として、環境事業団の融資業務についての見直しが論議され、日本開発銀行を廃止して設立される新銀行へと融資業務が移管されることが平成九年九月の閣議において決定されました。他方、環境事業団は地球環境問題や廃棄物問題等の今日的な課題に適切に対処するなど、国民の環境に関するニーズに的確に対応していくことが強く求められております。  このような状況を踏まえ、環境事業団の業務の見直しを図るため、今般、この法律案を提案した次第であります。  次に、法律案の主要事項について、その概略を御説明申し上げます。  第一は、環境事業団の業務の追加であります。  最近における地球環境問題、廃棄物問題等をめぐる情勢に適切に対応するため、新たに環境事業団の業務として、地球温暖化対策の推進に特に資すると認められる緑地を設置し、及び譲渡する業務、産業廃棄物と一般廃棄物をあわせて処理する施設等を設置し、及び譲渡する業務、廃棄物の処理に関する技術の開発とその成果の普及や、廃棄物の処理の促進を図るため必要な情報の提供等を行う業務、公害の原因となる物質の除去に必要な機材の貸し付けを行う業務、並びに開発途上地域からの技術研修員に対する研修を行う業務を加えることとしております。  第二は、環境事業団の業務のうち従前行っていた公害防止施設、産業廃棄物処理施設等への融資業務をすべて廃止することであります。  以上のほか、環境事業団に毎年度長期借入金等の償還計画を立てることを義務づけるなどの所要の規定の整備を行うこととしております。  この法律は、公布の日から施行することとしておりますが、融資業務の廃止に関する規定の施行期日は、平成十一年十月一日としております。  以上が、本法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  221. 松谷蒼一郎

    委員長松谷蒼一郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十分散会