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政府委員(東田親司君)
総務庁行政監察局長でございます。本日は、
特殊法人の
財務内容に関する
調査結果につきまして御
説明の機会を与えていただきまして、厚く御礼申し上げます。
私どもの
資料は「
特殊法人の
財務内容に関する
調査結果の要旨」という
横長の
資料でございます。
本
調査は、すべての公団及び
事業団、計二十九法人を対象に
実施しておりますが、これまでに取りまとめが終了した十三法人につきまして、三回にわたり、所管大臣に
調査結果を通知し、公表してまいりましたので、以下順次御
説明いたします。
まず、お手元の
資料の一
ページでございますが、「
調査の背景」について御
説明いたします。
平成九年六月、当庁が取りまとめの上提出し成立させていただきました
特殊法人の財務諸表等の作成及び公開の
推進に関する
法律が施行されました。これにより、すべての
特殊法人について、統一的なディスクロージャーが実現し、
特殊法人の経営内容を分析する基盤が整ったことを踏まえて、この
調査を
実施したものであります。
次に、「
調査の意義」についてでありますが、
特殊法人の財務の
状況を明らかにし、
国民にわかりやすく提示すること、法人が担う
事業の全体像を経営分析的な
観点から
評価すること、これら二つの
観点を通じて各法人が当面する大きな問題点や
課題を明らかにすることにあります。
これにより、所管省庁や
特殊法人における自発的な取り組みを促すとともに、
国民各界各層における論議の素材を提供するという
行政の
説明責任を果たすものであります。
以下、十三の法人の
調査結果の要旨を御
説明いたします。
資料の二
ページをごらんいただきたいと思います。
まず、石油公団につきましては、多額の公的
資金が投入されている投
融資・債務保証
事業を公団の財務諸表に即して分析しましたところ、投
融資残高一兆四千百億円のうち、投
融資先会社の解散などにより相当部分について回収の見込みが立っていない債権が三千五百億円強、利息が棚上げとなっている債権や長期未収金が四千二百億円強、損益計算上非計上の棚上げ利息が千六百億円強、それぞれ見られ、
資金の回収可能性について注意すべき
状況が明らかとなりました。
ただし、今後、投
融資先の生産活動が軌道に乗り、
資金回収が進む場合もあることから、原油価格や為替の変動に注意しつつ、損益の動向を見通し、的確な措置を講ずることが必要となっております。
次に、三
ページに移りまして、日本道路公団についてでありますが、高速道路
事業の現況について、百円の収入を得るのに何円の費用がかかるかを示す指標である収支率で見ると五七となっており、百円の収入のうち四十三円を元本の
償還に回せる
状況にあることから、
償還の現状は順調と考えられます。
しかし、収支率は路線別に見ると大きな格差があり、全体の好調な収支
状況は初期に開設した採算のよい路線が採算の悪い新しい路線の損失を補うことにより成り立っている
状況にあります。
したがって、今後、採算の低い路線の建設、供用が進むこととなれば、公団の経営に及ぼす影響が懸念される旨を指摘しております。
首都高速道路公団については、
事業の収支率は六九であり、
償還はほぼ順調と考えられます。
しかし、
償還が進むペースに比べ建設費、すなわち
借入金がふえるペースが早い
状況にあり、さらに道路資産がどれだけの収益を上げているかをはかる指標である資産効率を見ると、この十年間で四割も低下しています。これはバイパス的機能を果たす路線の建設が収入増につながらないことによるものと考えられます。
このような
状況のもと、長期的に適正な
償還のペースが維持できるよう
計画的に対処していくことが重要と考えます。
阪神高速道路公団については、
事業の収支率は九五と経営
状況が相当に厳しく、
償還の長期化は避けがたい
状況にあると判断されます。また、交通量は見通しを二割以上下回り、資産効率も十年間で半減している状態にあります。
このようなことから、
償還の確実な達成のためには抜本的な対策が必要となっております。
本州四国連絡橋公団については、
事業の収支率が二一一と料金収入で利息も賄えない
状況となっており、債務超過の状態にあります。これは交通量の見通しを大幅に誤った結果であると考えられます。
一方、公団の収支見通しでは、国と地元からの追加出資を前提として、
平成五十七年には
償還が完了するとしていますが、その前提となっている交通量見通しが現実的なものか否か、慎重な見きわめが必要と考えられます。
いずれにせよ、債務超過からの脱却がまず必要であり、さらに、
償還計画の基礎となる交通量見通しの不確実性を踏まえ、
償還が確実なものとなるよう
計画と実績の不断の見直しが必要であります。
次に、四
ページでございます。
新東京国際空港公団については、収支の好調な時期が続いたものの、第二旅客ターミナルビルの建設に伴い収支が悪化しております。他方、滑走路は飽和状態であることから、このままでは再び赤字経営になるものと思われます。
これに対し、公団は並行滑走路の供用により収支は好転するとの見通しを持っておりますが、一方で航空需要の停滞、空港使用料引き下げの国際世論など厳しい要因もあります。
したがって、健全な経営の
確保のため、収益動向に応じ、
施設の
整備、改修等を
計画的に行うなどの工夫が必要と指摘しております。
その下に記載してございます日本鉄道建設公団につきましては、その
財務内容は
基本的には健全であります。しかし、
整備新幹線に関し注意すべき点があります。
整備新幹線は公的
資金により建設する
仕組みとなっておりますが、オリンピックの開催に間に合わせるため、長野新幹線には例外として有利子
資金が投入されています。
現状ではその
償還に問題はないものの、他線にも有利子
資金の投入が波及することがあれば、貸付料による確実な
償還に影響を及ぼすおそれがあると考えます。
五
ページ目に移らせていただきます。
動力炉・核燃料開発
事業団については、
平成十年、高速増殖炉開発を中核とする新法人に改組されております。高速増殖炉の開発にはこれまでに多額の国費が投入されてきたものの、開発目標から見て依然としてコスト高であり、また確定年が示されていた開発目標年次についても弾力的に対応する方針に転換しております。
なお、米、英、独など諸外国では既に開発が中止されております。
したがって、今後の
課題として、研究開発に要する費用とその
成果を明らかにし、その妥当性を論議していくことが必要であると指摘しております。
国際
協力事業団については、
技術協力は多額の公的
資金に依存する
事業であり、より客観的な
事業効果の実証が検討
課題となっております。
また、開発投
融資事業に多額の余裕金が生じている一方で、移住
関係事業に不良債権が多い
状況が見られます。そこで、全体的な財務の
状況を踏まえ、開発投
融資事業の余裕金については、移住
関係事業の
財務内容の適正化に
活用することも含め、その有効
活用の
観点からの検討が必要と指摘しております。
六
ページ目にございます
環境事業団については、
民間企業向けの建設譲渡・
融資事業の延滞債権等が増大傾向にあり、そのうち五年以上延滞している債権の額だけでも貸倒引当金の計上額を上回っている
状況にあります。
このため、債権回収リスクの軽減や貸倒引当金計上額の
充実などの検討が必要と指摘しております。
社会福祉・医療
事業団については、老人福祉・保健
施設への
貸付事業の伸びに伴い、
政策的な利ざやのマイナスを補てんするための公的
資金の投入額が増大していることから、
事業の公的コストとその
効果を明らかにしていくことが
課題と考えております。
また、心身障害者扶養保険
事業は、最近の抜本的な
制度改正にもかかわらず、再び積み立て不足となるおそれがあることから、
年金資産の必要積立額の考え方を導入する等財務
管理のあり方の見直しや財務
状況に応じた適時適切な保険料等の見直しが必要と指摘しております。
七
ページに移りまして、金属鉱業
事業団については、
国内探鉱
資金融資等の投
融資部門で余裕金が生じていることから、今後とも財政投
融資資金の借り入れを抑制しつつ、余裕金の
事業資金への充当を図る等
資金の効率的な
運用が
課題と考えられます。
また、鉱害防止
事業基金は、
運用利回りの実績が期待値を大きく下回っていることから、今後、基金の
運用成績の
向上に努めるとともに、その
状況を踏まえつつ基金による安定的な
事業のあり方の検討が必要と考えております。
最後に、中小企業退職金共済
事業団についてですが、
平成十年に他の退職金共済法人と統合され、勤労者退職金共済機構となっております。
中小企業退職金共済
事業は、近年、
運用利回りが予定利率を下回り、
累積欠損が
拡大しております。その結果、責任準備金の積み立て不足の状態が続いております。したがって、今後、この
累積欠損金については、加入者間の公平性に配慮しつつ中長期的に解消する必要がある旨指摘しております。
以上、御
説明いたしました十三法人の当面する
課題につきまして、去る四月三十日と五月十二日、それに七月三十日に
総務庁長官から所管大臣に通知したところであります。
冒頭にも申し上げましたが、この
調査は新しい試みとして財務的な側面から
特殊法人が当面する大きな
課題を明らかにしたものであり、所管省庁及び
特殊法人の自発的な
改革努力を促すのみならず、幅広く
国民各界各層に議論の素材を提供するものであります。本
委員会における今後の御審議の参考として御
活用いただければ幸いと存じます。
ありがとうございました。