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1999-04-15 第145回国会 参議院 交通・情報通信委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月十五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         小林  元君     理 事                 加藤 紀文君                 景山俊太郎君                 寺崎 昭久君                 森本 晃司君                 渕上 貞雄君     委 員                 岩城 光英君                 鹿熊 安正君                 田中 直紀君                 野沢 太三君                 山内 俊夫君                 山本 一太君                 若林 正俊君                 内藤 正光君                 本田 良一君                 松前 達郎君                 鶴岡  洋君                 筆坂 秀世君                 宮本 岳志君                 戸田 邦司君                 岩本 荘太君    国務大臣        運輸大臣     川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君    政府委員        運輸省運輸政策        局長       羽生 次郎君        運輸省自動車交        通局長      荒井 正吾君        運輸省海上交通        局長       宮崎 達彦君        運輸省海上技術        安全局長     谷野龍一郎君        運輸省港湾局長  川嶋 康宏君        郵政省通信政策        局長       金澤  薫君    事務局側        常任委員会専門        員        舘野 忠男君    説明員        運輸省自動車交        通局技術安全部        長        下平  隆君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○道路運送車両法の一部を改正する法律案内閣  提出) ○船舶法の一部を改正する法律案内閣提出) ○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき  、関東運輸局栃木陸運支局自動車検査登録事  務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出  ) ○特定公共電気通信システム開発関連技術に関す  る研究開発推進に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○通信放送機構法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 小林元

    委員長小林元君) ただいまから交通情報通信委員会を開会いたします。  道路運送車両法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 山本一太

    山本一太君 自由民主党の山本一太でございます。  この道路運送車両法の一部改正法律案をきのうの夜、一ページ目からずっと見てきたんですけれども、結論から言うと余り大きな問題があるようにも思えないので、きょうはそんな難しい質問はありませんので、大臣は御安心の顔をされていると思うんです。  規制緩和流れの中で今までも検査とか点検整備制度というものは見直しを行ってきたということなので、これは規制緩和の大きな流れの中の一環だというふうに思いますし、自動車技術進歩とかあるいは使用形態変化とかに対応した見直しでもあるということで、その考え方も非常にクリアだという気がいたします。  さらに、この改正運輸技術審議会の昨年の答申に基づいているということで、その委員の名簿を集めてみたところが、関係業界とか関係者要望もかなり踏まえた上の改正ということで、これについても大きな問題はないのではないかというように感じております。  あるとすれば、制度を変えるときに、あるいは今回の場合は規制緩和ですけれども、規制緩和をするに伴って生じる負の影響といいますか、この場合ですと恐らく安全性とか環境保全とかそういうことになるんでしょうけれども、これをどうやってフォローアップしてバランスをとっていくかという、このくらいかなという感じがするんですが、私はトップバッターということですから、きょうは制度の基礎的なところからちょっと伺っていきたいと思います。  一問目は大臣に御質問させていただきたいと思うんですけれども、今は経済の調子も悪いということで、景気回復の上でも規制緩和を進めることで経済を活性化するというのは大きな流れだと思いますし、その中で国民負担軽減していくというのも政府政策課題としては主要なものだというふうに思いますが、そういうことを踏まえた上で、今回の検査点検整備制度見直しというものがどういう背景で行われるのか。もっと言うならば、この改正に係る根本的な思想みたいなものを大臣の方から一言まず伺いたいと思います。
  4. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 山本委員から基本的な認識をお尋ねいただきました。  まず、十年度末で自動車保有台数は七千四百万台でございます。この数についてはいろいろな議論のあるところでありますけれども、国民がまさに広く利用される自動車になってきておるということは間違いないだろう。したがって、政治の一番基本的な方針として、現在の日本の高コスト構造をどう下げていくか。そういった意味では、自動車に対する負担というものを下げる、これによって国民負担というものがかなり下がる、これは間違いないと思っております。規制緩和によって、自由化によって高コスト構造を変えていく、その基本流れの中で今回見直しになった。まず第一に昭和五十八年の改正、それから平成七年の改正、二度にわたって改正をいたしてきております。今回もある意味では同じ流れの中でさせていただいております。  それから、当然、規制緩和になって負担が少なくなる一方で、環境と安全が負になるのではないかというお話をいただきましたが、これはあってはならぬのだろうと思っております。ここは自動車技術進歩というところで、ここまでは規制を緩めても大丈夫だなというものが担保されて初めて実は今回の踏み切りになった。  ある意味では、マイナスになってまいりますのは整備業界ということになるのだろう。景気の厳しい中で規制緩和をする、国民負担は少なくなる、国民負担が少なくなるということは、片一方で業界としてはマイナスになる可能性があるわけでありますから、そこに対する措置をどうしていくかというところが我々の課題であろうと思っております。  いずれにせよ、安全性と今日の課題であります環境、この二つはきちっと守りながら、国民負担を少なくしていくということで今日御提案をさせていただいております。
  5. 山本一太

    山本一太君 極めて明快な御説明だと思います。  整備事業への影響まで言われてしまうと、もう質問することがなくなってしまうので困っておるんですけれども、今おっしゃったような国民負担軽減の中で、ユーザーサイド負担軽減というのも一つの大きなテーマであると思うんです。これは法律改正内容にかかわるところだと思うんですが、今度の改正について、ユーザーにどのような負担軽減といいますかメリットがあるのかということについて、政府側からちょっと一言伺いたいと思います。
  6. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今度の改正は、検査期間点検整備簡素化が二本の柱でございます。  検査に係るユーザー負担軽減といたしましては、検査費用は国に納付する手数料は自家用乗用車千四百円、その他千五百円と軽微でございますので、その分わずかでも軽減されるということでございますが、より大きなユーザー負担軽減整備費用でございます。  今般の見直しにおきましては、技術進歩を踏まえまして点検整備簡素化を行うということでございますが、その内容といたしまして、一カ月ごと点検整備を廃止、三カ月、十二カ月の点検項目については削減、それから走行距離を加味した弾力的な運用を図るということでございますので、その分ユーザー負担軽減に寄与するものと思います。  さらに、ユーザー走行距離、よく走られたりそうでない場合について、点検整備を弾力的に行えるように整備メニュー充実するということも、これは法律の外でございますが関係してくると思っております。
  7. 山本一太

    山本一太君 今整備料というかお金負担軽減されるということをお話しになったんですが、具体的に言うとどのぐらい軽減されることになるわけですか。
  8. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 業界試算でございますが、今回の措置を講じられますれば、全体として約千五百億円程度軽減という試算が出ております。
  9. 山本一太

    山本一太君 わかりました。  さっきの大臣お話にも、とにかく安全性がきちっと担保されないとこれは意味がないというお話がありました。御存じのとおり、交通事故状況は残念ながらなかなか改善をされていないということで、やはり安全性というのは非常に大事なことだと思います。  この制度改正に伴って、安全確保ということについては政府としてどういう取り組みをしていくおつもりなのか、そこら辺のことについてもお聞かせいただきたいと思います。
  10. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 交通事故は大変重大な状況でございます。死者数は減っておりますが、事故件数は減っておらない状況でございます。  交通事故の原因でございますが、車だけじゃなしに、運転手の不注意、道路あるいは交差点等の問題があるわけでございますが、運輸省守備範囲は、特に今回の道路運送車両法守備範囲車両安全性確保という点でございます。  その今後の安全性確保状況でございますが、今回のいわゆる規制緩和におきましても、審議会での検討過程安全性支障がないかということを約五十万台の基礎データを収集して今後発生が予想されるふぐあい状況を調査いたしましたし、運輸審議会におきましては、関係者から広く意見を聴取いたしまして、自動車使用状況技術進歩状況というようなことを、安全確保をするということを前提に総合的な検討を行ったところでございます。  自動車安全確保ということにつきましては、規制緩和をいたします反面、何よりも日ごろの保守点検基本であろうと思います。基本的には、自己責任による自動車保守点検基本だと思いますが、ユーザーの方がその必要性を十分感じられ、かつ事業者にゆだねられる場合であっても、過不足のない整備であるという納得感が生じないとそのような点検整備のサイクルが健全なものに発達しないと考えておりますので、国におきましては、車両の安全を通じた自動車事故軽減という観点からは、確実な点検整備実施のための指導、街頭検査充実強化あるいは運送事業者取り組み充実、あるいはユーザーへの情報提供充実といったような点に重点を置いて対策を講じていきたいと考えております。
  11. 山本一太

    山本一太君 今点検整備を適切にユーザーにやっていただくための推進をする必要性についてお話があったんですけれども、必ずしもユーザー方々の間の保守管理についての意識が十分でない側面もあるというふうに伺っております。  私がちょっと調べたところでは、トラックの営業車の場合で半分ぐらいというデータがあったり、自家用車についてはもしかすると三、四割ではないか、こんなデータも一部あるわけでございますので、これはぜひ、意識の啓発というものは国が率先してしっかりと行っていただきますように、これがないとシステム全体が機能しないと思いますので、重ねて要望申し上げたいというふうに思います。  さらに、先ほど大臣の方からも冒頭ございましたが、この改正に伴って起こると思われる負の影響といいますかマイナス影響一つは、やはり整備事業者に対する影響だというふうに思います。ユーザー自動車整備を行う場合には、多くの部分は整備業者に仕事を頼むということがまずありますし、大体整備業者方々というのは中小零細企業が多いわけなので、ここら辺について、この制度改正に伴って国側としてどのような支援策を考えているのかということを伺いたいと思うんです。  たしか、平成七年の改正規制緩和のときには近代化資金制度を再構築したということを伺っております。業界側が三十億で国の方が三十億円の補助金で、六十億か何かの基金で六百億規模債務保証をしたというようなデータもあるんですけれども、この取り組みについては今国側としてどのように考えているのかお聞かせいただきたいと思います。
  12. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今委員指摘されましたように、自動車点検整備を主に受け持っておりますのは整備業界でございます。全国に約七万二千企業がございますが、その四分の三、七五%以上が従業員規模十人以下のいわゆる零細企業でございます。全体としては六兆円を超える売り上げの業界でございますが、規制緩和業界への影響、あるいは業界の健全な発達への支障ということでございます。  今御指摘がありましたように、中小企業支援といういろんなスキームを通じてその都度充実をしておるわけでございますが、従来は中小企業近代化促進法に基づく低利融資、あるいは課税の特例、いわゆる構造改善事業整備事業全体として実施しております。あるいは中小企業信用保険法保険限度額の倍増といったことも昨年実施いたしました。今御指摘のありました指定整備事業者に対する設備資金についてのいわゆる自動車整備近代化資金制度もかつて充実されました。  今回どうかということでございました。その充実も含めまして、検討していく必要があろうかというふうに感じております。
  13. 山本一太

    山本一太君 今おっしゃった話、中小零細整備事業者に対するサポートというのは、環境保全、安全の確保と並んで大きなポイントだと思います。この二つがしっかりとなされて初めてこの制度改正がきちっとした効果を発揮するというふうに考えますので、ぜひともきちっとした取り組み要望したいと思います。  次の質問に移らせていただきます。  自動車産業というのは、これはもう国際的な産業でありまして、自動車自身が国際的な商品と言えるわけでございますけれども、今回の見直しはその国際的な水準から見るとこれにしっかりと整合したものかどうかという点について伺いたいと思います。
  14. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 自動車のいわゆる検査制度車検制度でございますが、外国においても車検制度はむしろ充実強化の趨勢でございます。車検やり方として、期間をとってやるということが普通でございます。その期間程度ということにつきましては、車種ごと期間程度を比較いたしますと、国際的な整合性といいますか、横並びで見ますとそれぞれ似たような制度を持っておるような実情でございます。  なお、点検整備につきましては、外国におきましては我が国よりむしろユーザー責任という意識がやや強いように考えております。今後の方向として、先ほど委員指摘がありましたように、我が国におきましてもユーザー自己責任による点検整備という意識の醸成というような方になるべく向かうことが望ましいというふうに考えております。
  15. 山本一太

    山本一太君 今回は、審議会答申なんかも踏まえ、あるいは関係業界のいろんな要望も踏まえ、さらには何十万台という自動車検査なんかも踏まえていろんな角度から検討した結果、この見直しが行われたということであります。これからも自動車技術というのはどんどん進んでいくということ、また使用形態も時代によってだんだん異なっていくということですから、当然これはさらなる見直し状況というものが出てくると考えられるんですけれども、今後のそういった状況変化に対応した制度見直しについて、その考え方を最後に大臣に伺って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  16. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 委員指摘のとおり、自動車技術進歩というものは目覚ましいものがあります。また一方で、環境に対する規制国民的なある意味では理解といいますかニーズといいますか、そういうものはますます進んでまいると思います。そういったものを勘案しながら、今御指摘いただいた外国状況、これも把握しながら、常にまず私どもが情報をしっかり把握しながらやっていく必要があるだろうと思っております。  一方で、最近少し残念なことが続きました。これはメーカーによるリコール隠しでございます。やはり個々のメーカーのマナーというものもしっかりしてもらわなきゃならない、このように考えております。お互いに自動車というものに、特に自動車技術というものに信頼を置いておる、また信頼感というのは高まってきておる時期であるだけに、メーカーが実際に自分のところが技術的に問題があってもそれを隠して自分たちだけで直そうとする、こんなことが私が運輸大臣になりましてからも二回ほど続きました、それが発覚しましたことが。そういう意味ではやっぱりメーカー側にもきちっとした対応を求めてまいりたい。そういったものを勘案しながら、言われますとおり、常に高コスト構造改善していくために努力をしていかなきゃならない、このように思っております。
  17. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 最初に、車検期間設定について、その基準明確化、客観化できないものだろうかという観点から質問をさせていただきたいと思います。  当該車両検査間隔、つまり車検期間が妥当か否かを判断するには、言うまでもなく安全上のチェックであるとか経済的な側面であるとか、あるいは日常における点検整備であるとか、いろんなファクターを勘案しながら決めるわけですから、客観的に基準をつくるとか、あるいは何年にするのが妥当かということを決めるのはなかなか容易なことではないということはわかりますけれども、それだけに私は、この延長問題を考える場合には、できるだけ恣意的に決めているんではないよということを理解してもらう、その努力が必要であろうと思っております。  では、実際にどうなっているのかということで、例えば昨年の十二月十日に運輸技術審議会から出された答申を拝見しますと、有効期間についてこのような記述になっております。  「ダンプ車コンクリートミキサ車については、比較的走行距離の短いものがあるものの、一般貨物車に比べ」「不具合率が高いことから、有効期間現行どおり一年とすることが適当である。」と。ああ、そうかと、これを読みまして、一般貨物車基軸になって書かれているんだなということで、例えば車両重量トン八トン未満の貨物車記述を見てみますと、そこには、走行距離が約一・五万キロなので、二倍すると自家用乗用車の三年分の走行距離に匹敵する。「不具合率は四七%と比較的小さい。」、よって、「初回有効期間を一年から二年に延長することが可能である。」と。これを読みますと、自家用乗用車使用状況ふぐあい基準にして決めているのかと思うわけであります。  今度は自家用乗用車の方を見ますと、「有効期間を延長した場合の不具合率の増加が大きく、また、」「保有台数が多いことから、交通事故交通渋滞など社会的影響が極めて大きい」ので、有効期間初回三年、以降二年とすることが適当となっていると。これでは堂々めぐりでありまして、結局何を基軸にして一年にする、二年にすると決めたのか全くわからないわけであります。  ほかにも同様の記述がございます。例えば、「不具合率が六九%と高い」とか「五九%と高い」とか「高い安全性が求められる。」とか「不具合率も比較的小さい」とか、言ってみれば文学的、定性的な表現が多くて何を基準にして一年、二年を決めているのかというのは全く想像できないわけであります。  そこへもってきて、例えば昨年三月十九日、運輸省主催で「フォーラム「車検」を考える」ということをやられたそうですが、その報告を拝見しますと、出席した関係者の多くは専ら負担軽減とかあるいは収益性確保といった経済的側面に力点を置いた御発言をされている。そういったことを勘案しますと、全く事情のわからないユーザーは、やっぱり車検期間というのは声の大きさだとか天の声で決めているのかなという勘ぐりすら出てこないとも限らないわけであります。  実態は決してそんなものではないと私は思います、またそうあってはならないと思うわけでありますけれども、もし車検期間設定等について信頼性が損なわれれば、車検制度とかこういう有効期間設定することに対する信頼が失われるということは、制度が崩壊するということにもなりますし、また幾ら日常点検整備が必要だと言ったところで、もとになる考え方が理解されていないわけですから、なかなか点検整備も行われないんではないかと懸念するわけであります。  それで、どうするかということですけれども、運技審答申でも、車検有効期間見直し考え方という中で、車検有効期間を決めるのは、走行距離が延びればふぐあいもふえる、そして整備不良による事故もふえる、だけれども走行距離による管理は困難なので期間で定めるというようなことをおっしゃっているわけでありますから、いろいろ問題は難しさもあると思いますけれども、これまでのやり方というんでしょうか、表現の仕方というものを全く改めまして、走行距離ふぐあい率基本にして、その他必要なオプションを加えて、大体この範囲に入っていれば有効期間は一年にします、二年にします、三年にしますというようなことを考えるべきではないかと思いますけれども、運輸省のお考えをお尋ねします。
  18. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 検査有効期間設定する際の基準でございますが、委員申されましたように、明確かつ客観的に決めるというのは全くそのとおりでございますが、事実上はなかなか単純には決められないという事情にあるように拝察いたします。  今度の運輸技術審議会答申におきましても、見直し考え方考慮事項として六項目挙げられておるわけでございます。ふぐあい発生状況、それからそのふぐあい交通事故及び環境汚染に与える影響走行距離が長いかどうかなど自動車使用実態、広く多くの人が利用するかなど自動車公共性自動車ユーザー保守管理状況、諸外国における自動車検査間隔というような項目が挙げられております。  これらの項目を総合的に勘案して決めるということでございますが、運輸技術審議会答申にあります記述はその後がよくわからないじゃないかという御指摘でもあろうかと思います。単純な結論記述したということでございますが、審議会審議状況を見ておりますと、大変複雑なかつ緻密な議論が実は展開されておりました。私も傍聴あるいは参加いたしましたが、その詳細をなかなかまとめて言うことは答申内容として記述技術としての制約があったかというように思います。  このように、今述べられましたような要約の仕方でございますので、その要約どおりではなかなか議論の経過が説明できていないというふうには私も思いますが、今後はそのような過程をどのように説明するかという課題はあろうかと思いますが、審議会検討内容といたしましては相当オープンにかつ客観的な議論がなされたというふうに私自身は経験したところでございます。
  19. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 客観的な基準を設けることの難しさは私もそのとおりだと思います。しかし、今私が指摘したのは、せんじ詰めて言うと、よらしむべし知らしむべからず的な結論を持ってこられても信頼は生まれないんではないかということであります。さらに言えば、場合によっては官業癒着しているんではないかという勘ぐりも生まれかねませんよ、あるいは信頼がなければ車検制度そのものが崩壊するおそれだってないとは言えませんよ、点検整備を督励しても実施されないんではないでしょうかというようなことを考えながら、できるだけ客観的にそうかと思えるような基準をお示しいただきたいということでありますので、この問題はまた後ほど触れるかもしれませんが、ぜひ御検討いただきたいものだと思っております。  ところで、運技審答申にもしばしば「不具合」という言葉が出てまいります。だけれども、実際にふぐあいというのはどういうことかという説明を求められたとしても、例えば私には説明能力がありません、はっきり言って。どういう状態がふぐあいだということを説明できる人が何人いるでしょうか。まして、どの部位あるいはどの性能を検査した結果ふぐあいだと言っているのか。あるいは、そのふぐあい点検項目というのは何項目あるのか。それが十年前と今と同じなのか違うのか。ブレーキのききが甘いというのは交通事故にもつながりやすい大変な問題ですけれども、例えばヘッドライトがちょっと上向きである下向きであるといっても直ちにそれは交通事故に結びつかないと思うんですが、そうしたウエートづけというものがあるのかないのかというようなことを尋ねられると、全く答弁は不能だと思うんです。  日本には今七千四百万台の車が走っていますし、同数程度の免許を持っている人がいるわけであります。この人たちが理解しないことには日常点検整備というものもなかなか進まないし、幾ら点検整備をやりなさいと言ったところで、かけ声倒れになるおそれすらあるんではないかと思うんです。  そこで、ふぐあいの定義あるいは判定方法、検査項目、ウエートづけ、そういったものについて概括的な説明をしていただけますか。
  20. 下平隆

    説明員(下平隆君) 技術的な点でございますので、私の方から説明させていただきます。  自動車検査有効期間の今回の検討に当たりましては、継続検査のために全国の指定整備工場に入庫いたしました約五十万台の自動車について、点検整備をする前の状態で基準に適合しているかどうかを自動車検査員がチェックいたしまして、その結果を取りまとめた調査結果に基づいて検討いたしております。  この調査におきますふぐあいと申しますのは、例えばブレーキパイプに損傷があるとか、あるいはトランスミッションから油が漏れるというふうに、自動車の安全基準でございます道路運送車両の保安基準に適合していない状態であると自動車検査員が認め、かつ整備が必要であると判断したものをふぐあいというふうに定義をいたしております。  この調査項目でございますけれども、調査をいたします対象は、入庫いたしました自動車自動車点検基準に基づきまして点検をした場合の調査結果でございますので、点検基準に基づく項目数ということになるわけでございます。これは点検基準でございますので、定期点検項目と同じ数ということになろうかと思います。
  21. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 保安基準に適合していないのをふぐあいと言うというお話でございますけれども、運技審答申によりますと、車両重量トン八トン以上の貨物車ふぐあい率は六九%と高い、八トン未満の貨物車は四七%と比較的小さい、タクシーのことでしょうが、事業用乗用車は五九%と高いというようなことが書いてあるわけであります。  私は、この数字を見ますと、ふぐあい率六九%なんといったらもう三台に二台はすぐにもとまるんではないか、事故につながるんではないかというようなイメージで見るわけであります。にもかかわらず、「四七%と比較的小さい。」と。これは何をもって安全だと考えているのかという疑問になるわけであります。  何%だったら絶対安全とは言いませんけれども、低いとか高いとかというのは何を基準にしておっしゃられているのか。それから、有効期間を決めるに当たって、どういう因果関係というんでしょうか相関関係でこのふぐあい率をとらえていらっしゃるのか、その辺についてお尋ねします。
  22. 下平隆

    説明員(下平隆君) 自動車は、使用条件にもよりますけれども、走行距離が増しますとどうしても摩耗・劣化が進みましてふぐあいが増加をいたします。また、ふぐあいがふえますと、例えばふぐあいが同じであったとしても走行距離が非常に長い車の場合にはそれだけ整備不良による事故になる確率が高いということもございます。したがいまして、先ほども委員からお話がございましたけれども、有効期間を考える場合には、自動車ふぐあいというものの発生状況、それから年間の走行距離というものを基本として考えるべきであるというふうに私どもも考えております。  しかし、走行距離あるいはふぐあいというものがどういうふうな数字であるかというふうにその数字をもって一律に決められるものではなく、この有効期間はそれ以外に、自動車ふぐあい交通事故等に与える影響であるとか、あるいは広く多くの人が利用する自動車であるのかどうか、ユーザーの日ごろの車の管理状況はどうなっているか、諸外国がどうなっているかというふうな観点を総合的に検討いたしまして決めるべきものというふうに考えておりますので、今のふぐあい率は大変重要な数値でございますけれども、その数字の高低をもって一概に決めるというものではないというふうに思っております。
  23. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 私に限らず、一般の人はふぐあい率六九%なんといったら、これは欠陥車六九%だという読み方をするんではないかと思うんです。今の私の質問に対して答弁とちょっとかみ合っていないように思うんですけれども、この六九%というのは、本当に放置しておいて、放置しているとは思いませんが、それでも有効期間を一年にする、二年にするなんという決めるだけの根拠になるんでしょうか。
  24. 下平隆

    説明員(下平隆君) 例えば六九%ふぐあいがある車種と申しますと、調査をいたしました車の車種の中で一カ所でもふぐあいがあったものの車の割合、こういうことになるわけでございます。  その数字が高いから非常に危険ではないかということでございますけれども、これは整備をする直前の状態でございまして、したがいまして、整備をいたしましてこれを基準に適合するように原状に復帰する直前の状態を調査いたしております。  それから、ふぐあい内容、先ほどウエートづけというお話がございましたけれども、確かに項目によりまして、非常に軽微な項目、それから安全上非常に重要な項目、いろいろございますけれども、これはすべて等しく同じ数字で評価をいたしておりますので、その数字の高い低いだけをもって非常に危険であるというふうなことが直接言えるということにはならないというふうに思っております。
  25. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 運技審答申は、高いとか低いとかそういう表現で、一年に据え置くべき、二年にしてもよろしいというようなことを言っているので、要は、ユーザーとかにはわからない表現で書かれていますよ、これを改善してくださいということを申し上げているわけであります。
  26. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) ちょっと素人的な感じの発言でございますが、ユーザーの方は機械の専門でない方がほとんどでございますので、間隔なり点検整備必要性をうまく説明できればしたいと思いますし、努力をしたいと思います。  自動車点検整備検査は人間ドックのような体の検査と比較すると当たっているなと思うことがよくございます。人間ドックの検査だけ、検査でございますので、人間の体のふぐあい率というのは、体ではございませんが、どこが調子が悪いというような項目はいつも出るわけでございます。そのふぐあいが致命的かどうか、事故に直結するかどうかという点が情報として欠けているというふうに私自身も思っておりました。  したがいまして、全部のふぐあいを合計するとこういう比率になるよというだけでは、厳しさといいますかシリアスな程度というのがわからないんじゃないかというふうには思っております。事故直結のふぐあいとそうでないのとというふうに分けるとか、いろんな工夫が要ろうかと思います。  今後、見直しを兼ねまして、そういう表現あるいは信頼をかち取るための説明の仕方ということにさらに格段の努力をしていきたいというふうに思います。
  27. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 意見だけにとどめますけれども、今回、レンタカーの延長が初回二年、以降継続については一年ということになっておるわけでありますけれども、例えばレンタカーの初回を二年にした理由を見ますと、走行距離ふぐあい率自家用乗用車と大きな差がないと、これをもって理由にしているんですけれども、それだったら自家用乗用車と同じように初回三年、継続二年にしてもいいんじゃないかというように思うわけであります。その辺の説明が全然なされないまま結論だけ出しているというのはぐあいが悪いですよと申し上げているんです。これは意見だけにいたします。  ところで、今回の見直しに当たっても、運技審の方は国や自動車ユーザー等に対して確実な点検整備を実施するよう要請しているわけでありますけれども、これまでも街頭検査をやったりあるいはいろんなことをやっておられると思います。とりわけ経済的なインセンティブの可能性も考えろというようなことが答申に盛られているんですけれども、そうした御検討はされる予定でしょうか、どうでしょうか。
  28. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 確実な点検整備経済的なインセンティブというのは、すぐに思い浮かびますのは、保険の料率を点検整備状況に応じて変える、委員御専門のところでございますが、そのようなアイデアはございます。  今後、先ほど御指摘ありますように、ユーザーが納得して、その結果、信頼して点検整備検査制度というものを見ていただくという、全体をどうするかというのは大きな課題でございますが、差し当たり経済的なインセンティブがあればどうしよう、それが納得感一つの手法にもなるという面もございますので、なぜ保険が安いのか、それは点検整備をしているからだ、あるいはマニュアルに従っての点検整備後は整備されているからだというようなことも考えられますので、そのような検討は事務的に進めたいというふうに考えております。
  29. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 インセンティブを考えることも必要ですけれども、場合によっては罰則を加えるということも検討してもいいんではないかと私は思います。  例えば、高速道路を使用していて、ガス欠で自動車がとまってしまい、それが原因で渋滞が起きた、それにより大変大きな経済的損失が出たという場合は、今の法律上は取り締まり方法はないわけであります。ガス欠の場合には道路交通法で取り締まりの対象になりますけれども、もしパンクしちゃったらこれは取り締まりの方法はないわけでありますね。だけれども、多くの人に迷惑をかけていると。今は恐らくお互いさまだということであきらめているのかもしれませんが、整備もせずにそういう故障を起こしたというのはやはり何らかの制裁を加えられてもいいんじゃないか。  例えば、外国、これは例は違いますけれども、フランスやイギリスなどでは例の携帯電話を使用しながら運転するのは危険運転とみなされているわけであります。事故を起こすと罰金が科せられる、つまり通常の事故による損害のほかに重科されるというような仕組みをとっているわけであります。英国の場合でも、危険で不注意な運転ということで最高千ポンドの罰金が科せられることになっているというようなことがあるわけです。  やはり、一方ではあめ、一方ではむちというようなことも考えながら、私は点検整備を励行してもらうように指導する、そういうことを考えなければいけないんじゃないかと思いますけれども、むちの方はどうですか。
  30. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 自動車は大変便利なものでございますが、使い方によっては凶器になる、事故を起こすと加害性が非常に強いということでございます。その原因の大きな一つ車両ふぐあい、故障による事故発生ということにあるものでございます。  ただ、技術的な難点がございます。先ほどのパンクというようなケース、高速道路のパンクあるいはブレーキのききが悪いと事故につながるわけでございますが、現実に、一つのタイヤがパンクして高速道路で蛇行して、たまたま車が滑りやすい雨の日で車がそばに走っていて大事故につながったということがございます。その事故の原因が複合的に発生するという点と、もう一つはそのパンクというふぐあい整備の未整備により発生したものか、たまたま何かの異物に当たって発生したものかというその原因追及がある面しにくいという面がございます。罰する場合には大変客観的にしなきゃいけないというふうな面もございます。  これは事故原因の調査の技術をさらに高度化せにゃいかぬということを促すものであろうかと思っております。それが車両ふぐあいあるいは整備必要性ということに情報を与えてくれるものだと思っておりますので、そのような方向の努力はしていきたいと思っております。  罰則をかけられるものかという点につきましては、今申し上げました種々の難点はあるというふうに思っておりますけれども、外国におきましては、そういうことも大変厳しい面もございまして、加害性という点により深刻に社会が世論が向かうという状況にございますので、その点も含めて今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
  31. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 もう時間がありませんので、最後に大臣に二点御質問させていただきます。  一つは、先ほど山本委員からも質問がございましたけれども、自動車整備近代化資金制度充実ということでございます。今回の法改正によって整備業界が幾らかの経済的な打撃を受けるということは、それはやむを得ないことだと私は思いますが、さはさりながら、激変緩和を考えなければいけないし、単にそれを放置しておくだけではなくて、技術の向上だとかコストの削減を図るための近代化だとか、そういったものは大いに促進する必要があると思いますので、そういったことを念頭に置きながら来年度予算でもぜひ措置をしてもらいたいということが第一点であります。  それからもう一つは、冒頭でできるだけ有効期間設定する場合には基準明確化してもらいたい、客観化していただきたいということを申し上げましたけれども、先ほど申し上げなかったもう一つの理由として、今後こういう車検制度だとかあるいは検査制度というのは国際基準というようなところに発展していく可能性もあるんだろうと思うんです。それだけに、内々でわかる言葉でやるんではなくて、なるべく明確化する必要があると思いますので、その辺の取り組みについてお考えがございましたらお示しいただきたいと思います。
  32. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) まず最初に、この法案が御可決いただければその施行をいつにするかという議論に当然入ってまいります。そのときに、ユーザー負担は削減されるけれども、整備業界影響が出てくる業界が出てくる、そこに対して我々としてどのようなことができるか。寺崎委員から自動車整備近代化資金制度、これについて充実を図るように、こういう御指摘をいただきました。運輸省としてもその方向で努力をしてまいりたい、このように思っております。  第二番目につきましては、先ほど荒井局長から少し答弁をさせていただきましたけれども、まさに、私が聞いておりましてもなかなかわかりにくい我々側の答弁だったと思っております。やはり致命的な欠陥と一部的なふぐあい、この辺はしっかり分けながら、国民の理解のしやすい、理解をしていただけるような制度になるべく一層努力をしていかなければならないだろう。そういった意味では御指摘をいただいたことを受けながら、我々も格段の努力をしなければならない、このように思っております。  基本は、やはり議論の経過というものは常にオープンであり、そして国民の理解の中で制度が変わっていくということが一番必要だろうと思いますので、また御指導を賜りたいと思います。
  33. 森本晃司

    ○森本晃司君 今回の車検延長というのは、貨物トラックについては四十七年ぶりの規制緩和で、いろいろともっと多くという御意見もトラック業界の方からあったようでございますけれども、八トン未満という形で落ちついて、トラック業界の皆さんにとっては長年の課題を解消するものとなって、待ちに待ったものであるというふうに思われますし、コスト削減が図られるものだと思うんです。  先ほど、山本委員質問の中に、コスト削減費用は一千五百億という御回答があったようでございますが、私は、今回の改正一つはコスト削減、規制緩和ということで、それはそれでトラック業界の皆さんも大変喜ばれることであろうと思いますが、その一方、一千五百億の削減ということは自動車整備業界にとって一千五百億の収入がなくなるということになってくる、この点があるのではないかと思います。  同時に、もう一つの大きな点は、我々町を歩く者にとっては、トラックの車検が一年延びたということで、ああよかったなというよりも、むしろ安全性はどうなるんだろうかと、そういったことの不安、思いがあるのではないだろうか。よき面、そうでない面と二つありますが、私は、これから質問させていただき、殊に安全性については今後もしっかりとやっていただきたいと思うところであります。  そういった点から考えますと、まず、一カ月定期点検の廃止ということになったわけでございますが、先ほど来寺崎先生からふぐあい率云々とおっしゃっていただいておりますが、我々にとっても何がふぐあい率かなかなか理解しがたい点であります。  事業用貨物トラックの初回の継続検査時のふぐあい率が四七%、これが小さいということで延長の理由の一つになっているわけでございますけれども、一方、二年目の車検費用が一回目のそれより結構高くなっているという点からすれば、今回の改正によって二年目のふぐあい率はより高くなるのではないかということが推測されますが、この点についてどのように考えられるのか。  また、今回の対象車種が改正の恩恵を受けて新規登録二年後の第一回の車検のときに実際どうなっているのかということをよく調査する必要がある、価値があるのではないかと思います。同時にまた、それをしっかりとこれから調査していかなければならない、こう思いますが、いかがですか。
  34. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 車検期間を延長した場合のふぐあい率の一年目、二年目の経過をどのように見るかという点が第一点目の御質問かと思いますが、総論的にいえば二年目のふぐあい率というのは高まるものでございます。その高まりぐあいがどのようになるのか、あるいは致命的な事故に直結するようなふぐあい発生の仕方かどうかという点が大変気になるところでございます。  その点については、いろんな車種がございますし、使用状況も異なりますので、機械を自動的に判断することがなかなかできないわけでございますが、過去の経験とか状況あるいは今回の改正に応じて今後発生する状況を調査して、その結果を今後の見直しに反映せねばいかぬというふうには考えております。  したがいまして、この見直し後の実態を、車種ごとふぐあい状況あるいは自動車使用実態等について継続的な調査を行うべきかと考えております。その中で、今委員指摘の二年目の検査時のふぐあい率というのも大事なポイントでございますので、それも含めて調査をしたいというふうには考えております。
  35. 森本晃司

    ○森本晃司君 一カ月点検が廃止になるわけですが、これの実施率、事業用貨物トラック等々については二七・三%、それからバスが七〇%、タクシーが九六%ということになっておりますが、事業用トラックが一カ月点検を今日まで極めて実施してきていなかったということになるわけです。そのような状況で一カ月点検を全面的に廃止することがいいのか、また今回の改正で一カ月点検が三カ月に移行されるわけでございますが、それでよい結果を生むのかなと、今まで余り実施もされていなかったのに。  もう一つは、これが廃止になったのは、今まで余り実施されていなかったからそれで廃止にしようかということなのか、この辺、審議会はどういう観点から簡素化されたのか。二七・三%だからもう少し強化しようというのか、二七・三%しかやっていなかったからもうやめようというのか。こういった状況、今までの一カ月点検の功罪もあると思います。また実績もある。では、今度一カ月がなくなって三カ月に一回するようになった、それでも点検率が相変わらずほかのものに比べて低い、そういう状況が起きかねないとも思うし、その点はやっぱりしっかりと指導をしていかなければならないのではないか、このように思いますが、本当に確実な点検整備が三カ月になって行われるかどうかを伺います。
  36. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 一カ月点検の実施率が特に事業用貨物自動車が二七・三%と低い、このこと自身は大変遺憾なことでございます。従来まですべきことをされていない率が多いということで、ただ実施率が低いから延ばすということではもちろんございません。  一カ月点検の意味ということになろうかと思いますが、現在、一カ月点検の事業用トラックの点検義務の対象といたしましては、例えばブレーキのホースの点検でございますとかエンジンのファンベルトの点検でございますとか、特にがたとか緩みが生じやすいところを一カ月で見なさいというふうになっておるところでございます。  今回の見直しに際しましては、約一万台の自動車点検整備状況を調べまして、ファンベルトにしろブレーキにしろ、部品の性能の向上、耐久性の向上等が反映されているのかどうかということを検査いたしまして、一カ月点検の項目につきましては、日常点検に回すのと三カ月点検で安全上の支障はないというふうに判断されたところでございます。  ただ、三カ月点検になっても実施率が低いと意味がないということはそのとおりでございます。現状でございますと、事業用貨物自動車は三カ月点検になりますと成績はややよくなりまして五六・六%というふうになっておるわけでございます。  これはどうしてこういうふうになるのか。一カ月点検というのは意味がないとユーザーの方が思っているのか、あるいは単にサボっているだけなのかというようなことで、背景を探る必要はあろうかと思いますが、先ほど一カ月点検の功罪という表現をされましたが、一カ月点検、三カ月点検の内容は、信頼を得るような、納得感のあるような内容でありますよということを説明せねばいかぬと思っております。いずれにしても、点検というのは自身のためでございますので、自身のためだということをよく認識していただきたいと思います。  トラック事業者の方は、点検をして事故を起こしてはいかぬということは十分言われるわけでございますが、では、点検というのは実際にどのように行われているか知っておられる社長さんとか経営者の方は比較的少ないという面もございますので、経営のトップの方がなるべくそういう認識を持っていただくような広報、啓蒙というのはさらに必要があるというふうに感じております。
  37. 森本晃司

    ○森本晃司君 次に、自動車公害訴訟の中でも貨物トラックというのは公害の主犯者のように言われているわけでございますけれども、現在の車検点検整備において排ガスのチェック体制というのはどのようになっているかを伺います。
  38. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 現在の点検整備体制における排ガスチェック体制の現状について御説明申し上げます。  新車につきましては、自動車の型式指定ということでございますが、その際に、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、黒煙等の排出量の審査をしております。さらに、排出ガス対策装置の耐久性についての確認をしております。  問題になります継続検査でございますが、継続検査時におきましては、ガソリン車はアイドリング時の一酸化炭素及び炭化水素につきまして、ディーゼル車につきましては黒煙濃度につきましてそれぞれ検査を実施しておるという実情でございます。
  39. 森本晃司

    ○森本晃司君 運輸省は、運輸政策審議会総合部会で自動車から排出されるCO2の削減を図るために自動車税制のグリーン化について検討中であると聞いています。五月にも最終結論を出すということでありましょうが、この場合の燃費は一体何を基準にして算定しようとされているのか。  それから、現在の車検・継続検査では燃費については検査ラインがないと思うわけでございますが、税制グリーン化における公平なランクづけを必要とする。そういう意味では中古車において平均的な燃費を測定するようなシステム検討する必要はあるのではないかと思いますが、お答えいただきます。
  40. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 自動車の燃費の測定方法でございますが、俗に十・十五モード法という方法による測定値を採用しております。十・十五モード法と申しますのは、都市内での自動車走行を模擬した試験装置上での燃費測定方法でございます。  具体的に申しますと、加速、定時走行、減速ということが道路では繰り返されるわけでございますが、その加速、定時走行、減速というのを一つのパターンで十変化を起こすパターンを一つ、それを十モード、それを三回繰り返すとともに、さらに高速走行を加味いたしました十五変化のテストパターン、十モードを三回、十五モード一回を試験装置上で測定いたしまして、その際の燃費を測定するという方法を一般的に用いております。その測定結果の表現方法は、燃料一リッター当たりの平均走行距離というふうにあらわされております。  その際に、そういう燃費を測定してある車についての燃費の水準というのは出るわけでございますが、税制のグリーン化なりいろんな規制に際してそれがチェックができるかどうかという二つ目の質問でございますが、燃費についての検査は現在車検体制の中で行っておりません。排気ガスについては先ほど申しましたとおり行っている。  燃費の検査、特に中古の自動車の燃費測定は意味があるんじゃないか、あるいは新しいシステムが必要ではないかという御質問内容でもあろうかと思いますが、燃費につきましては、排出ガスに比べまして使用過程が進みましても新車と比べてそんなに変化がないという特徴があるようでございます。排出ガスは大変悪化するというふうに聞いておりますが、新車時からほとんど変化しないというような認識でございます。  したがいまして、使用過程車において、特に新しいシステムということよりも、新車時の燃費を用いることでおおむねの公平が確保されるというふうな認識をしているものでございます。
  41. 森本晃司

    ○森本晃司君 昨夜遅く、NHKの「あすを読む」という番組で、ITSの開発がどんどん進んでいるということを報道していました。これから新しい自動車の時代に入っていくんではないか。それからもう一つは、CO2削減、環境問題に対応するハイブリッドカーとか電気自動車とか、そういったものができてきている。そういったことが急速に進むんではないか。最近の自動車では車間距離をきちんと自動車自身が測定して安全性を図るというようなものも出ているようでございますけれども、こういった高度化された自動車に対する車検体制、私は、これはやっぱり考えていかなきゃならない時代に入っていくのではないかなと、こう思います。  私もいろいろな電子のことの詳しいことは余りわかりませんが、ナビゲーターが音声で事故があるぞということを伝えたり、居眠りしそうになったらそれが呼びかけるとかにおいが出てくるとか、そういう話もあるようでございますが、そういったものが高度化されて、きちんとされていなかったら、今度逆にまた事故につながっていくことにもなるかと思います。それに対する体制について。
  42. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今委員指摘になりましたように、自動車の高度化あるいは知能化ということが現在大変進んでおります。具体的には、例としてITSの技術、あるいは低公害車の燃料電池、ハイブリッド、電気自動車等の分野でございますが、その自動車の高度化、知能化に対応する安全性環境面からの検査体制の変化、あるいは改善ということでございます。  まさしくそのとおりでございます。特に、ハイテク化した車両についての検査は、航空機の部門で大変進んでいるように思いますが、自動車の部分は追いかけておりますが、特に検査体制ということになると、まだ未知の領域でもございますし、まだ検討が進んでいない面もあることは正直申しましてございます。今後、自動車の高度化に対応した検査、あるいはユーザーの方の点検整備体制というものを検討し、かつ提言していかなきゃいけないというふうには強く感じておりました。
  43. 森本晃司

    ○森本晃司君 最後に、大臣の所見を伺いたいわけでございますけれども、車検点検整備というのは、いかに自動車が高度化されて立派なものになったといえどもその必要性はなくならないものだと思っておりますし、殊に安全という面から考えると、さらにいろいろとチェック体制をしていく必要があるのではないか。コスト削減ということも大事なことではございますが、私は、安全という面がより大事なものだと思っておりますので、簡素化安全性を低下させてはいけないというふうにも思っております。  もう一つ、最初に申し上げましたが、中小の車検業界が打撃を受けることはこれはもう間違いございません。これに対してしっかりと支援もやはり同時に考えていかなければならないのではないか、こう思っておるところでございます。  あわせて、大臣の決意のほどをお伺いしたいと思っております。
  44. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 御指摘いただきましたように、安全とそれから今日的課題であります環境、この両面を考えていきましたときに、自動車車検制度というものは極めて有効なものであろうと思っております。かつてアメリカではその必要がないという議論があったように思いますけれども、最近はアメリカでも逆に厳しくなってきている方向のようでございます。そういった意味では、私ども、車検制度というものを少しずつ改善をしながら、時代の変化にも合わせていかなきゃならぬと思っております。  特に、今委員から御指摘いただきましたように、車の情報化、高度化。それだけに機械に頼るという面がふえてくる。人の力より機械に頼る面がふえてくるということは、逆に言えば大変な事故につながる可能性も出てまいります。それだけにきちっとした制度をつくっていかなければならないなと思っております。  一方で、当然ユーザー負担軽減なりユーザーの希望に合った車検という、例えば時間の問題なんかも出てくるだろう。そういう意味では、独立行政法人という中で、これも、もちろんこれから国会で御審議いただいて御理解をいただいたらでありますけれども、国会でそういう形で御可決をいただくならば、少し自由裁量の中でユーザーの希望というものに合わせた車検制度というものもつくっていけるのではなかろうかなと、このように思っております。  また、先ほどお答え申し上げましたけれども、この法案が可決いたしましたならば実施時期というものが決定をされてまいります。そうしたときに、影響を受ける整備業界に対してどのような施策を展開できるか、近代化資金の充実等の問題に取り組んでまいりたい、このように思っております。
  45. 森本晃司

    ○森本晃司君 終わります。
  46. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 宮本です。質問いたします。  自動車保有台数は今や七千四百万台と先ほどお話もございました。毎年二%から三%の増加を見ております。先進諸国と比較しても可住地面積当たりの自動車台数というのはかなり多くなっております。こうした状況のもとで、交通事故件数は七十八万件、死亡者は約一万人、負傷者は約九十六万人と増加傾向にございます。環境汚染交通渋滞等も大きな問題になっているわけであります。それだけに、自動車の安全の確保対策、公害対策が極めて重要な課題となっておりますけれども、そのことを担保していく上でも車検制度の果たす役割は大きなポイントと言えると思います。  今度の改正は、八トン未満のトラックの新車に限って車検期間を一年から二年に延長するものでございます。ただ、この延長によって、先ほどから議論がございますように、安全確保や公害対策が後退することになってはならないと思うんです。  ところが、この運輸省の調査、資料を見せていただきましても、一つふぐあい率、先ほど来議論になっている点ですが、これが六%ふえるという調査結果が出ております。つまり、八トン未満トラック全体で言いますと、二年目で七〇%がふぐあい車両ということになってまいります。  二つ目は、整備不良による交通事故、死傷者数がどれぐらいふえると調査の結果予想されるかと言いますと、トラック全体では、自家用で一・一%から二・一%、事業用では二・五%から四・三%ふえる、こういう結果も出ております。その他、整備不良による交通渋滞自動車排出ガスの環境汚染など、社会的影響が出てくることを指摘をしているわけであります。  九七年三月の閣議決定に照らしましても、安全確保そして公害防止、これに後退があってはならないというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  47. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今度の車検期間の延長、点検整備簡素化は、規制緩和という面でユーザー負担軽減ということを大きな流れの中で目標としておるところでございますが、一方、車の加害性にかんがみまして、車の安全の確保環境保全ということが後退のないようにということでございます。  今回の車検期間の延長に際しましては、延長による社会的な影響、特に交通事故環境影響の少ない車種について限定して実行するということが答申の中で盛り込まれておったところでございます。数字の説明がなかなかうまく納得感のいくようにならないという先ほど寺崎委員指摘されたような面もございますが、それを考えても大変慎重な検討運輸技術審議会で行われた結果だと考えております。また、点検期間間隔の延長に際しましても、環境あるいは安全に影響のない範囲での見直しというふうに答申されておるように考えております。  安全確保環境保全上の問題、そういう面で最小化されているというふうに思っておりますが、安全と環境の問題に対応する別途の措置もなおあわせて考えていくべきというふうに思っております。
  48. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 この運輸技術審議会答申を読ませていただきましても、私は納得のいかない点があるわけです。  例えば、走行距離が平均一・五万キロだからいいかのようなことを書いておるわけですけれども、八トン未満のトラックは九百十三万台あるわけであります。ですから、平均が一・五万キロだといっても、それは幾らでも長距離を走っている車ももちろんあるでしょう。特に事業用のトラックは何万キロも走ると思うんです。画一的にはいかない。  それから、先ほども少し議論になっておりましたが、「不具合率が四七%と比較的小さい。」と。この認識は極めて問題だというふうに思います。ふぐあいというのは、先ほどもあったように、保安基準に適合していない、つまり車検に合格できない車ということですから、本来走ってはならない車という理解だというふうに思います。これが四七%もある。  しかも、その四七%ではなく、二年目のこの調査結果では六四%、これが六%引き上がるわけですから七〇%なわけですね。二年目の車検直前には十台のうち七台まで基本的には走ってはならないとされるような車になっているということを意味しているわけですから、極めて重大だと思うんですが、いかがでしょうか。
  49. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 先ほどからの議論で、ふぐあい率意味あるいは事故に直結する要件、あるいは許容の範囲というのがあるのかどうかというような議論がなされております。  今、宮本委員が申されました中で、一つ目の論点の走行距離が一万五千キロ、平均でございますのでたくさん走るものとそうでないものがあるじゃないかということが例えば車検期間に反映されないかどうかという議論は、この審議会でもあったわけでございます。  例えば、走行距離に応じて車検の義務をつけたらどうかというような、ある面合理的な面があろうかと思いますが、一方、その走行距離に応じて車検をするということに技術上の難点もある。あるいは外国ではわかりやすさという観点を重視して期間でやるということがございますが、少々はしょって制度ができているという面は否めないものと思っております。  走行距離とか使用状況に応じて安全確保をするという点は、むしろ点検整備の弾力的な実行ということで今後図っていくべきというふうに考えております。走行距離が増したり、あるいは悪路を走行した場合には整備を加重にやるとかあるいはそういうことを推奨するとか、あるいは逆に走行距離が少ないときは整備を省いていいというふうに義務を減らすとかというふうにしたいと思っております。  なお、結論的なところで、ふぐあい率説明の仕方はいろいろ改善をしなきゃいけないかというふうに思いますが、全体として、運輸技術審議会委員の方たち、我が国における最高の技術的な専門家をそろえて多角的な御議論をしていただいた結果だと私どもは認識しております。安全上の支障は非常に少ない、最小なものであるというふうに認識しているところでございます。
  50. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 定期点検整備を進めていくということは、これは大いに結構なことでございます。ただ、この推進をどう図るかというところが問題だというふうに思うんです。  それで、時間がございませんので少しはしょりますけれども、いただいた資料によりますと、八トン未満の自家用トラックの定期点検整備の実施率は三〇・九%とお伺いしております。それから、これは八トン未満でとっておらないということですけれども、事業用貨物車は三カ月点検で見ますと五六・六%というふうにお伺いをしているわけであります。  そういたしますと、逆に言いますと、自家用トラックで定期点検がされていないものが六九・一%、事業用では四三・四%が定期点検されていないということになります。八トン未満の自家用トラックは八百四十七万台、事業用は六十六万台あるというふうにお伺いしておりますが、合わせて九百十三万台のうち、点検整備をしていないのを計算してみますと、ざっと六百十三万八千六百台、六百十四万台ぐらいになると思います。  こうした状況を放置したまま、つまりふぐあい車両がふえるのが当然の状況を放置したまま、このままでの車検の延長というのは問題があると私どもは考えるものです。  こうした問題の背景として、九五年の法改正で前検査整備でも可能というふうにしたわけです。つまり、整備してから検査を受けなければならなかったものを、先に検査を受けてそれから整備すると。そのときの審議で、我が党の高崎議員が、整備をしないでいきなり検査に持ってくるケースがふえる、そのことにより定期点検整備が形骸化されるおそれがあると指摘をしておりますけれども、事態はそのとおりになっているんじゃありませんか。いかがですか。
  51. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) いろんな多角的な論点を申されたと思いますが、最後の前検査整備の導入は前回の改正の大変大きな改正点でございました。いろいろ意味があろうかと思いますが、整備前置主義ということは当時大変問題視されておりました。特に、過剰整備につながるのではないかということでございました。最小限の整備をして検査を通って自分なりの整備をしたいということでございましたので、ユーザー車検の導入ということにつながったわけでございます。  そういういい面があったかと思っておりますが、一方、定期点検の整備実施率が一部の事業用自動車について低いという実態が別途あるわけでございます。前検査整備は特にユーザー車検を望まれます自家用乗用車を中心にして行われたと思いますが、逆に事業用自動車の定期点検の実施率が低い。これはプロの、職業として車を使っておられる、さらに道路で商売をされている、言ってみれば道路が職場であるという方たちの定期点検の実施率が低いということはむしろ大変大きな問題であろうかと思っております。  車を走らせるのをなりわいとされている方の安全性確保が低いということは労働災害にもつながりますし、公共の場での事故発生、社会的な問題になると思います。定期点検の実施率の向上ということについて格段の努力をしていくべきだと思っております。特に、貨物自動車は日ごろ、整備事業者に預けなくても自家用の整備ということも可能でございますので、そのようなことをどのように図るかということについて格段の努力をしていきたいと思います。
  52. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 この質問をするに当たって、私は、大阪の自動車整備振興会の役員の方々整備業者の皆さんにもいろいろお話をお伺いして、勉強させていただきました。  そこで、具体的にお伺いしたいと思うんです。  一つは、定期点検整備車両法四十七条で定められた法的な義務だということであります。そのことをユーザーにどう徹底し御理解いただくか、これがやはり大きなかぎとなっていると思うんです。  そこで、ぜひ検討していただきたいんですけれども、一つは、自動車検査証の留意事項にその旨を書き込む、法的義務ですよということを書き込む、あるいははがきの送付をするなど、幅広く活用して徹底を図るべきではないかということ。  もう一つは、点検整備をしない場合に勧告をするという、これも車両法第五十四条四項に基づく制度がありますけれども、これはお伺いしますと二年間で勧告というのはわずか七件だと聞いております。これでは効果が上がらないというふうに思うんですが、こういう点、いかがでしょうか。
  53. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 点検整備を実施していただくための方策として、今三つ御指摘になりました。いずれも有効な方法かと思います。  一つ目の自動車車検証の書き方でございますが、現在もその点は書いてあるわけでございますが、義務づけとかというふうには書いていないという面がございます。この点検整備というのは、ある面役所が自主的にされるべきところを押しつけるという面が、七千万台の車のそれぞれのユーザー点検整備でございますので、役所としてもある面表現に気を使う面がございます。検査証を使うという面もありますし、ほかの方法での自主点検の意識を定着させるという課題我が国に残されているというふうに思います。  二つ目のはがきによってお伝えする。特に、前検査の後の後整備をされない、検査のときには検査は通るけれどもある程度時間を経るとこういうところが劣化するので整備されたらいいですよというようなアドバイスもできるわけでございます。今後ますますそういう検査時のサービスも重要であろうかと思いますが、それをはがきによってさらに徹底するということも、委員会で指摘されたこともございますので、予算をつけて充実しているところでございますが、今後さらにその成果を見つつ励行したいと思っております。  三つ目の勧告を利用する、確かに勧告制度検査の勧告というのは役所もちょっと大変な武器を使うというようなイメージがございまして、使いにくい点があったわけでございますが、検査時の点検不履行の発見の際の点検整備の励行ということも一つの強力な手段であろうかと思いますので、そのことも含めて今後整備励行の努力を図っていきたいと思います。
  54. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 時間が押してまいりましたので、ぜひ検討していただくとして、運輸大臣にまとめてひとつお伺いをしたいというふうに思うんです。  一つは、ことしの点検整備自動車検査円滑化のための対策費ですけれども、四千九百万というふうにお伺いをしております。それで、大阪のこれも整備振興会でお伺いしたんですが、この振興会では年間四千万円を使って二カ月間テレビ放映をしてさまざまなキャンペーンを行ってくださっている。ラジオでも土日に毎回四十五分間、計二百五十八本も流しているという話でございました。このように大阪の整備振興会だけで国の予算と変わらないぐらいの予算をつけて頑張ってくださっているわけであります。ぜひ、こうした点に照らしても国の予算を大幅にアップをするために頑張っていただきたい。  同時に、整備をしないで前検査するユーザーに対して運輸省点検整備をするようはがきを送付しておりますけれども、昨年度は六万八千人に送っているとお伺いしております。ところが、前検査を受けているのは二十万人いらっしゃるわけです。だから、十三万人ほどの人には送られていないということになると思います。すべての人に送付できるように予算対策を検討していただきたい。これも予算のことですので、大臣にお伺いしたい。  最後に、車検有効期間が延びることによって、先ほど来お話がありましたように、整備業者の皆さんの営業に深刻な影響が出てくることが予想されます。大阪の整備業界に聞きますと、一〇%売り上げが減少するのではないかというお話もございました。特に、トラックが主体の業者は約三〇%も減るだろうという声もございました。全体に影響する額は大阪でおよそ八十六億九千万円と試算されるというような話もございます。そのための対策を真剣にやっていただきたい。  我が党がこれまでも指摘してきたように、近代化資金の抜本的な充実設備資金の返済期間の延長であるとか、自動車重量税の立てかえの対策であるとか、あるいは新たな構造改革事業の策定など、整備業者の御意見を十分聞いていただいて対策を立てて御努力いただきますようにお願いして、御答弁いただいて、質問を終わります。
  55. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 具体的な御質問と全体的な立場からの御質問があったと思います。  まず第一に、前検査受検者のはがきの問題ですけれども、二十万人全員に出すようにいたします。  それから、十一年度予算において国の検査場での点検整備励行指導に関して予算措置をいたしておるわけでありますけれども、来年以降もう少し頑張れという御指摘をいただきました。私どもも予算の確保に努め、点検整備実施率向上施策の充実に努め、自動車の安全の確保及び環境保全に努めてまいりたいと思っております。  それから、先ほどから多くの方々から御指摘いただいております整備業界、特に整備事業者は七万二千企業のうち従業員規模十人以下が七五%、こういう状況にあります。したがって、中小企業近代化促進法に基づく低利融資、課税の特例措置の活用に係る構造改善事業推進中小企業信用保険法の保証限度額を倍増する特定業種の指定、信用保証制度のさらなる活用、こうした措置中小企業全体としてとらせていただいておりますけれども、同時に、先ほどから御答弁させていただいておりますとおり、来年度予算、より充実ができるように近代化資金等を準備してまいりたい、このように考えております。
  56. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 終わります。
  57. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社民党の渕上であります。  道路運送車両法改正の根拠につきましてお伺いをしたいんですが、まず大臣に、自動車社会の伸長というのは生活を大変便利なものにいたしました。しかし、一方で交通事故交通渋滞、騒音、環境汚染問題等、社会的悪影響が今日なお解決しなければならない課題として存在いたしておりますけれども、これらの問題についての解決に向けての努力について大臣からの見解をお伺いいたします。
  58. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 渕上委員からは、交通全体に対する御意見の中で、これ以上自動車による破壊がどんどん進むということについてどう考えるか、こういう観点から再三御指摘をいただき、いろいろな御指導もいただいておるところでございます。  基本的には、政府全体として、建設省の立場、警察の立場、また環境を所管する環境庁の立場、そして私ども運輸省の立場、こういうものが総合的に自動車の安全対策なり環境対策、そして将来の社会をどう考えていくかということをしっかり考えていかなければならないだろうと思っております。  特に、第一の課題として、公共交通というものをやはりしっかり整備をしながら利用促進を図っていくこと、それから貨物輸送の効率化、これも大きな課題であると思っております。それから、既に取り組み始めております地球温暖化防止、また大気汚染防止のための低燃費、低公害の車への誘導、これは税制が主体になっておりますけれども、既に実施をしているものもありますし、またグリーン課税ということで議論を始めたものもあります。それから、自動車全体のリサイクルのあり方、こんなものも大きな議論であろうと思っております。  そして、自動車だけの立場から見ますと、審議会自動車部会において自動車運送事業に係る安全確保車両安全性向上、こういうことで今議論をいただいておるところで、そうしたものを受けながら私ども努力をしてまいりたいと思っております。
  59. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、車検有効期間の延長及び点検項目の削減がなされた場合、基礎調査検討会の調査ではいずれも悪化するとの予測がなされている。にもかかわらず、このような改正法が提案された最大の理由は何でございましょうか。
  60. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今、渕上委員が述べられました基礎調査検討会の調査といいますのは、議論の出だしのときに調査がされたもので、平成十年三月三十日の調査結果でございます。そのときの調査は、単純に延長した場合にはふぐあいがどの程度増加しますよという計算でございました。これは、いろんなことを考えないとそのようになりますよということで、実は規制緩和のために車検期間の延長、点検整備項目見直しが可能かどうかを諮問するに際しましての議論の出発点となるデータでございました。そのデータの中身はそのようないずれも悪化するということでございました。  今回の運輸技術審議会における答申結論でございますが、基礎調査検討会の調査結果を再度確認するとともに、車種区分を細分化いたしまして、より細かなデータ分析によりまして問題がどの程度発生するのか、その深刻さはどうかというようなことが検討されたわけでございます。特に、有効期間を延長した場合でもふぐあいの増加が少ない、あるいは社会的な影響が許容できるといった車種に限定するというふうな作業が行われたものでございます。  大変慎重な検討であったかとは思いますが、そのような検討を、さらに点検期間の延長とともに確実な点検整備の実施ということを諸対策を講じるということをあわせていたしまして、平成十年十二月、約九カ月かかって答申が出されたものでございます。経緯の御説明でございます。
  61. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 自動車における検査の延長は、単に安全の問題だけではなくて環境問題にも大きくかかわる。自動車検査証の有効期間延長や定期点検期間の延長によって、当然排気ガスの排出量の変化や騒音量の変化が出てくると思います。環境に対する変化が想定されるが、運輸省は具体的な数値を持っているのかどうか。また、これらの期間の延長による路上故障の増加があると思われますけれども、どれぐらいになると想定されているのかお伺いをしたい。  仮に、排気ガス排出量等が増大するのであれば、いわゆる京都議定書で確認された排出ガス削減のための努力とは相反するのではないかと思うのですが、いかがですか。
  62. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 検査証の有効期間の延長によりまして、特に環境面への悪影響の数量的把握という面でございますが、先ほど申しましたように、有効期間の延長は安全と環境影響が極めて少ないものに限定して行うとされたものでございます。  安全のふぐあい率発生あるいは排出ガス等の発生程度でございますが、今回の見直しによってどの程度発生するか、あるいは増加するか増加しないのかという数量的な把握は現在においてはされていないものでございます。ただ、今回の見直しが行われました後、事後調査というものを継続的に実施するつもりでございますので、安全と環境の数値の変化ということをフォローしたいと思っております。  検査は延びても点検整備が十分されますと、逆に点検整備をすればその悪影響は少なくなるものでございますので、その点を充実するとともに、調査をして今後の対策に反映するべきというふうに考えております。
  63. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、自動車検査証の有効期間の延長の根拠についてお伺いをいたします。  今回の法改正での対象車両は、車両総重量八トン未満のトラック等が初めて交付される自動車検査証の有効期限を一年から二年に延長するものでありますけれども、なぜ車両総重量八トン未満のトラック、乗用レンタカーも含めますが、なのか、八トン以上はなぜ対象にならないのか。
  64. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 先ほど来議論がありますように、車検期間が延長できるかどうかというのはたくさんの要素がありますが、とりわけふぐあい率発生と年間走行距離というのが枢要なファクターであろうかというふうに運輸技術審議会の中で議論が進んでおりました。その際、事業用貨物自動車あるいは自家用貨物自動車車検期間の延長が可能かどうかということが議論されましたときに、車種を八トン未満と八トン以上の調査をされた結果、走行距離ふぐあい率に相当の格差があるというふうに発見されたものでございます。  議論の最初の出だしではもちろん結論は何も予想されないで議論が始まったわけでございますが、九カ月の議論を経まして、あるいはその途中で細分化した情報を集積していく過程で、八トンで切ったときの走行距離及びふぐあい率の差というのが無視し得ない差というものでございました。  八トン以上のものは、走行距離が長いということは一年間延ばすと大変走行距離による劣化が著しくなるということ、したがって走行距離が多いということは事故に出会う可能性も高いということ、その結果またふぐあい率が高くなるということで、要すれば大変怖い、まだ延長について慎重な対応を要するものというふうに判断されたものと認識しております。  一方、八トン未満についても、ふぐあい率というような観点からはマイナスという数字は出ないわけでございますが、いろんな条件を勘案いたしまして、安全性確保という観点からは延長しても支障がないという結論が判明したものと考えております。  レンタカーの特に乗用車につきましても、年間平均走行距離が一万六千キロと短いこと、あるいはふぐあい率が四二%と低いということでございます。初回有効期間を二年にした場合の予想ふぐあい率も八トン未満のトラックよりも低いというふうな比較考量がなされて、安全性への影響が許容の範囲というふうになされたものと認識しております。
  65. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 今回、トラックなどの延長はありますけれども、バスやタクシー、これがなぜ対象とならなかったのか。
  66. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) バス、タクシーにつきましては、一つには多数の乗客が利用する。バス一台につきまして年間三万人、タクシー一台につきまして年間一万人が利用され、見ず知らずの他人が利用されるという面で信頼性の維持が重要だという面もあります。  一方、先ほどの議論の延長でもございますが、年間走行距離あるいはふぐあい率ということを勘案いたしますと、特にバス、タクシーの年間走行距離がバスは約二・三万キロ、タクシーは約六・一万キロと大変長い距離を走りますので、それを延長しますと、一年間でそれだけ余計に走るという点で安全上より慎重な判断が必要かというふうにされたと考えております。  なお、諸外国におきましても、事業用自動車の業としての安全への信頼性確保するために有効期間が一年または半年となっております。また、業界点検整備についての労はいとわないというふうな反応もございましたので、その関係で現行に据え置かれたものと認識しております。
  67. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  68. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 あと、予定で考えますと二十分余ということになっております。岩本委員もいろいろと質問があるということですので、そこで私は、私の考え方といいますか感じたところをまずお話ししておきたいと思います。  この道路運送車両法、私もつらつら眺めてみまして、まことに特異な法律であるなという感じを深くしております。  まず第一条についてそう思いました。後段に、「あわせて自動車整備事業の健全な発展に資する」ということが書かれております。整備事業業界が健全な発展をすれば適切な整備が行われ安全性が向上するという趣旨で私はこの文言が書かれたと解しておりますが、きょうこのごろの法律審査であるならこのような文言が入ったかどうかと思われる点ではないかと思っております。車を持っている人あるいは運送事業者、それから整備事業者、そういったところに偏ってこの法律が運用されてはいけないと思いますし、現時点でもそういうような偏った運用がなされているとは私は思っておりません。  そこで、運輸省関係で安全関係法律が幾つかあります。自動車についてはこの道路運送車両法、船については船舶安全法、それから航空機については航空法、それぞれのモードの輸送について安全の確保のための法律があるという立て方になっていると思います。  これらの法律の仕組み、そういったものについては、条約で規制されていてそれがもとになっているものもありますし、自動車については欧州経済委員会での検討が大分定着してきておりますから、そこでの仕組み、やり方基準、そういったものが世界的に広まっていっているということではないかと思います。  そこで、自家用とそれからそうでないものとの区別がその中にあると思いますが、それについてはそれぞれの法律でそういった点がはっきりと書かれているものがありますが、先ほど荒井局長からもお話しありましたように、特に自家用の場合の自己責任というようなことについては、今後、こういった安全を考えていく場合の基本的な柱の一つとして重要視していかざるを得ない、こう思っております。  そういった観点から考えまして、モード別の安全確保、その仕組み、それから実施の方法も含めて、それぞれに背景が違っているところはあると思いますが、できるだけ基本的な考え方については運輸省内でしっかりと意見の交換をしていただき、考え方の原則をきちっとしていただいておくべき問題ではないかと思っております。  そこで、先ほど来整備事業者の話も多々出てまいりました。私は、整備事業者が事業を維持していけるかどうかということについては、法律がどう変わっていくかということに相当影響される面があるとは思いますが、そこは法律基準あるいは検査の実施その他についてそういう点とは一線を画した不偏不党の考え方で進めていかなければならない面ではないかと思います。そういった点については、先ほど寺崎委員からも御指摘がありましたように、科学的裏づけに従って透明で説得力のある考え方に基づいて進められなければならないということではないかと思います。  整備事業者の中には相当零細な人たちもおります。この零細な人たちにとって、法律の中身がどう変わっていくかということについては死活の問題にもかかわってくるかと思いますが、私は、一般的に申し上げまして、整備事業者がこれからどういうふうにして、発展までにはいかないにしても自分たちの業務を全うしていけるかということについては、この法律に依存するだけではなくて、もう少し営業活動といいますか、そういった面もしっかりやっていただければと、こう思っております。  私もオーナードライバーでありまして、今乗っている車は十万キロをもう既に超えております。そういった車に乗っておりますので、車の整備だけは相当気をつけているつもりでおります。定期点検などに入れまして、その請求書が参ります。そうすると、どういうところを直したかが請求書に書いてあります。私はもともと技術屋ですから眺めればどこを直したかというのはわかりますが、一般の人はここをどうして交換したんだ、なぜここを直したんだというようなことは普通わからないんじゃないかと思います。そこは私は整備事業者の怠慢ではないかと思っております。  整備については、法定の整備もありますけれども、安心安全のために自分で進んで整備してもらうといいますか、そういう考え方をもっと大幅に取り入れられてしかるべきじゃないかと思います。これは自動車整備というのは一種の保険ではないかと考えております。そういったことを大々的にキャンペーンするとか、あるいは自分の事業を営んでいる周辺の人たちに一々当たって、うちではこういう整備をしますということでお客さんをふやしていく、そういった努力もあってしかるべきではないか、こう思っております。  いずれにしましても、今度の法律改正、これが先ほど来の説明されているところに基づいてなされるということについては、適正に科学的根拠に基づいてそういった結論を出されたということだろうと思いますので、法律内容についてはこれ以上申し上げませんが、第一点、法律あるいは基準の適切さ、そういったことについてはさらに一層御研究いただく。それから、この法律改正で非常に影響を受ける整備事業者に対しては、もっと整備点検の重要さというものを認識していただくようにお願いいたしまして、最後に大臣の御感想をお伺いしまして終わりにしたいと思います。
  69. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 大所高所からいろいろな御意見を賜りまして、今回、国会で御審議いただきます法律はほとんど規制緩和法律でございます。我が国の高コスト構造を自由な競争によって克服していかなければならない、改善をしていかなければならない、こうした大きな課題の中で運輸省規制緩和問題に取り組んでいるところでございます。  特に、今日自動車につきましては七千四百万台、まさに国民の足、国民生活には欠くことができないものになっております。そのコストというものを少しでも削減していく努力規制緩和によって国民負担を低減していく、極めて大きなことであろうと思っております。しかしその大前提としては、安全と環境というものがしっかり担保された上で、技術進歩に合わせた制度づくりということに当然なってまいるだろうと思っております。  その中で、今回御提案をさせていただきましたけれども、一つ整備業界の問題、規制緩和国民負担軽減される、明の部分であると同時に、整備業界は影の部分になってまいります。そこに対するさまざまな施策の充実は先ほどから御指摘のとおりでありますし、我々もしっかりやらなければならないと考えております。同時に、整備業界みずからも御指摘いただいたような努力をしていかなければならないだろうと思っております。  それから、制度を変えていくときは、国民にわかりやすい形でしっかりやっていかなきゃならないという御指摘も先ほどからいただいております。  今後とも、十分注意をしてまいりたいと思っております。
  70. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 参議院の会の岩本荘太でございます。  私も車検有効期間についての質問を準備いたしたんですが、先ほど来の質疑で大体出尽くしているような感もございますし、ただいまは要望等もございました。余り質問することがないんですが、なるべく重複を避けて一、二点お伺いをいたしたいと思っております。  車検有効期間は、私もごく一般的に考えまして、やはり自動車の性能は進んでいる、道路整備もいい、どんどん進んでいるということであれば延びるのが当たり前じゃないのかなというような基本的な認識をしております。その際に、いろいろお考えのあることは先ほど大臣並びに幹部の方からお話を伺いました。  しかし、延びるということについて、これも先ほど来多々出ておりますけれども、いわゆる経済活動の面からですと整備工場に対する影響が非常にあるということでございます。それに対して近代化資金等の対応をされているというようなことをお聞きしたわけです。  私が言うまでもないと思いますが、今までもこういう制度改正をしているわけでございますが、特に大きな影響があったんじゃないかなと思うのは自家用乗用車だと思うんです。一度は、昭和五十八年七月に初回のみ二年間を三年間に延ばした。さらには、平成七年に六カ月点検を廃止されたというようなことで、こういうことが整備業界に対する影響があったんじゃないかなという気がするんですが、具体的に本当にそういうことがあったのかどうか、数字的にもしお示しいただければと思います。  また、それ以外に近代化資金等の対応がありましたら教えていただきたいと思います。
  71. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今委員が申されましたように、前回、前々回の大きな改正は昭和五十八年と平成七年の改正でございます。昭和五十八年の改正は、自家用乗用車有効期間を新車初回二年を三年という大きなものでございます。  その際の売上高の変化でございますが、昭和六十年、実施された後では対前年度比約四%の減でございますが、千六百億円の売上高の減少が生じております。さらに平成七年の制度改正、これも大きな改正でございましたが、十一年を超える自家用乗用車検査証の有効期間を一年から二年、あるいは六カ月点検の廃止、前検査の実施と容認というようなことでございました。この際も対前年度比約四%減少いたしまして、二千四百億円の減少になっております。  一方、整備業界全体として見ますと、自動車保有台数の増勢が随分続いておりましたので、売上高としては全体としては伸びておりまして、最近では、平成九年度の売上高は約六兆五千億でございまして、改正のある前、昭和五十七年度に比べまして約七割以上の増というような業界になっておる実情にございます。
  72. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 私も実は運輸省の方から資料をいただいております。今の御説明で、六十年度の改正のときに落ちておりますけれども、それが大体二年後ぐらいですか、また回復しているんです。それから平成七年につきましても、これはまだ九年度では回復しておりませんけれども、これもおいおい回復するんだと思うんです。確かに保有台数といいますか自動車台数がふえた。昭和五十七年が四千二百万台、これが九年度に七千二百万、今のお話のとおり、これだけふえたことで、それほど影響がなかったんじゃないかなという気がいたします。  またさらには、これは全体としてのつかみ方ですから、中小零細企業がどのような影響を受けたかということは別だと思いますけれども、今までは全体的に台数の増加でそれほど大きくない影響に終わったというのが実態ではないかなと思います。これからは、環境問題等がございますから、片や期間を延ばした場合に受ける影響というのは、自動車保有台数で救うということにはなかなかいかないんじゃないか。その点についてはこれからの話ですからここで御意見等を伺ってもしようがないと思いますけれども、その辺の御配慮もぜひお願いいたしたいなと思う次第でございます。  それともう一つ、先ほども渕上委員の方から、八トン以外の車はどうしたのかというような御質問がございましたけれども、こういう過去の経緯を見てみますと、道路運送車両法の制定が昭和二十六年、それで、最初の改定というのが昭和二十七年、その次が三十七年、その次が四十八年、五十八年。数字からいきますと何か十年ごとというような感じで、このぐらいにやっているのかなという気がするんですが、それがどうかということでなくて、それはそれでいいんでしょうけれども、いわゆる八トン以外のほかの車については、例えば調査をするなり、どのようなお考えで対応しておられるのか、それをぜひお伺いしたいと思います。
  73. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今回の改正は安全にかかわる問題でございますので、ごく慎重に、できるところから慎重にやるというような姿勢であったかと思いますが、今回、規制緩和の対象にならなかった八トン以上の車、あるいはトラックの中におきましてもいろいろな車種がございますので、もう少し細分化したらどうかという意見もございました。あるいは事業用バス、あるいはタクシーというような車の今後の扱いでございますが、今回の法の施行に際しまして、今後のふぐあい率発生、あるいは事故発生、あるいは点検整備の実施率の状況等、あるいはユーザーの方の保守管理状況等を継続的に調査するということが必要かということで、今回、そういうことを大々的にやるのは今までの改正と違う点でもあろうかと思います。そのような状況を継続的に調査いたしまして、次回の改正に備えるということであろうかと思います。  次回の改正が十年かかるかどうかということはよくわかりませんけれども、大変検査充実せにゃいかぬのと、もう少し技術進歩して耐久性が向上して、点検整備の面ではそう手を入れなくてもいい面と、いろんな要素が加わってきますので、内容が相当変わってくるという感覚がございますが、その点も十分勘案せにゃいかぬかと思います。  いずれにしても、これだけの車が我が国にあるということでございます。世界第二位の保有国、世界の一割が日本の国にあるという車社会でございますので、そういう実情を踏まえて安全性確保、あるいは京都会議でもありましたように環境に与える影響環境保全ということは最重要課題だと思っております。そのような姿勢で今後臨みたいと考えております。
  74. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ぜひともそういうことで、これからも適正な有効期間設定、それも、先ほど来ありましたように、透明性のあるといいますか、根拠のないことを言うのはこういう席で大変失礼なんですけれども、どうしても一般的に考えまして、何となく一般の中にどうしてかなというような疑問があるのが正直なところだと思います。その辺をよろしくお願いいたしたいと思います。  そういうことを踏まえて、最後に大臣にこれからどうお取り組みになるのか質問するつもりでございましたけれども、これは山本委員並びに森本委員ほかたくさんの御質問にお答えいただきましたので十分わかりましたので、私は、ただいま申し上げましたような透明性のある基準で適正な有効期間設定するということに努めていただきたい、こう御要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  75. 小林元

    委員長小林元君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  76. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、道路運送車両法の一部改正案に反対の討論を行います。  今度の法改正により車検期間が延長されることにより、対象となる八トン未満のトラックの整備不良車が六%に増加する上、それに伴う交通事故で死傷者が増加することが運輸省の調査でも示されており、こうしたことが明らかな以上、反対をせざるを得ません。  運輸省の調査によれば、保安基準に適合しない、つまり車検に通らないふぐあい車両が六%ふえることにより、二年目のふぐあい車両は七〇%にもなることが明らかであります。また、整備不良による原因の交通事故死傷者が五十人から六十人もふえることが予想されております。このように、大幅とは言えないものの、安全や公害対策が後退することになっているからであります。  車検制度にとって今最も大きな課題は、定期点検整備を確実に実効あらしめることであります。ところが、その実施状況は事業用トラックで五六・七%、自家用トラックは三〇・九%にとどまっております。このような点検整備実施状況のもとでの車検期間延長には問題があると言わざるを得ません。  こうした問題の背景に、九五年車両改正により、前検査整備を可能としたことがあります。我が党は、整備をせず、いきなり検査に持ってくることは定期点検整備が形骸化されるおそれがあると指摘しましたが、事態はそのとおりになっており、改めて対策を求めるものです。  第一に、定期点検整備の実施には法的な義務があることをユーザーに徹底させるため、自動車検査証の留意事項にそのことを明記することや、はがきを送付するなど、幅広く活用して徹底すべきであります。また、二年間で七件にとどまっている点検整備勧告制度を活用することです。  第二に、点検整備推進の啓発活動についての対策予算を大幅に増額することです。質疑でも明らかにしましたが、大阪整備振興会では、年間四千万円を使ってラジオ、テレビで啓発を行っています。ところが、国の予算はわずか四千九百万円であり、国の姿勢が問われています。  第三に、定期点検整備の実施状況を把握することは適切な対応策をとる上で極めて重要であります。そのためにも、九七年度に一度しか実施されていない調査を継続的に行うべきであります。  最後に、法改正に伴う整備業者、特に中小の整備工場への影響対策です。  今度の改正で、車検期間の延長や点検整備項目の減少、それに今指摘した定期点検整備の実施の低下、加えて不況、こうしたことで、整備業者の営業に深刻な影響が出てくることになり、大阪では整備業界全体で売り上げの一〇%、九十億円近い影響が出ると試算されております。  そこで、近代化資金の抜本的見直し自動車重量税の立てかえ対策、そして、新たな構造改善事業の策定などが必要であります。  政府は、整備業者の意見を十分聞き、必要な対策を早急に行うことを強く求めて、討論を終わるものであります。
  77. 小林元

    委員長小林元君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  道路運送車両法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  78. 小林元

    委員長小林元君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 小林元

    委員長小林元君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  80. 小林元

    委員長小林元君) ただいまから交通情報通信委員会を再開いたします。  船舶法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 自民党の山内俊夫でございます。  きょうは船舶法ということで、少しだけなんですが勉強させていただきました。そうしましたら、一八九九年、明治三十二年に船舶法というのはでき上がっておりまして、ちょうどことしで百年ということになります。基本的な法律が百年変わっていないというのは、私もちょっと調べてみましたら、失火ノ責任ニ関スル法律船舶法、私の知り得る限りでは二つぐらいだったと思うんですが、今回船舶法は変わるということで、それも基本的なところが変わるということでして、大変私いいことだと思って質問をさせていただきます。  海というのは私昔から大好きです。香川県出身なものですから、瀬戸内海、特に備讃航路という非常に海路の要衝に当たるところなんです。海の歴史は大変古くからございまして、古くは遣唐使船とか近年においてでも黒船の来航とか、いろんなことが必ず歴史の中では海というものが接点になってきているような気がするわけなんです。  特に海のことに関しては非常にロマン的なことも多いので、私の年代、多分川崎大臣も昭和二十一、二年生まれだと思いますが、私の生い立ちの中で、映画、特に日活映画とか東宝映画というのが非常に活発なときで、小林旭とか、つい最近何か知事になった方の弟さんの石原裕次郎というのがおりまして、東宝では加山雄三と、大変海に関係する映画というのは盛んになっておりました。それ以来、海には非常に興味もありロマンもあるということで大好きなんですが、今回の船舶法、日本は四方八方海に囲まれて、なおかつ海で生活をしてきた方も多い、また海運で生活してきた方々も大変多いということでございます。  そういったことで、海事関係については私つい一週間前十三、四団体に話を聞いてまいりました。その中で大変いろんな問題があるわけですが、きょうは限られた時間でございますので、次の機会に問題点は質問させていただこうと考えておるところでございます。  そして、今回の船舶法の前に少し現況を把握したいと思います。日本商船隊の隻数とか総重量トン数並びに日本籍船が占める割合というものを基本的なところをちょっとお教えいただけたらと思うんです。
  82. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 外国貿易に携わります日本商船隊の隻数、重量トン数及び日本籍船についての御質問でございます。  昨年でございますが、平成十年七月一日現在の数字でございますけれども、商船隊全体としましては千九百七十隻、重量トンにいたしまして九千八百九十九万重量トンでございます。その中で日本籍船の割合につきましては、隻数は百六十八隻、商船隊の中では八・五%、重量トン数は千七百六十万重量トン、一七・八%という現状になっております。
  83. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 今大体お聞きしたとおり、日本国籍船というのは非常に少なくなっているんですね。何かリベリアとかパナマ船籍というのが大変多くなっています。この原因についてはまた別の機会でいろいろお聞かせをいただけたらと思うんですが、日本の海上輸送による輸出入、これは内航船を別にいたしまして、外貿船についてのことで少しお聞きしたいんですが、日本籍船が取り扱っている量というのは大体どのぐらいあるんでしょうか。
  84. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 平成九年の実績でございますけれども、我が国の輸出入量ということになりますと合計で八億七千八百万トン、そのうち日本籍船によります輸送量が一億三千百万トン、それをいわゆる積み取り比率ということで比率を出しておりますが、一四・九%、約一五%という実態でございます。
  85. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 それでは、今回の船舶法改正についてちょっとお聞きをしたいんですが、今回の改正内容の大枠を教えていただけたらと思うんです。
  86. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) 今回の改正内容について大枠を御説明申し上げます。  現行船舶法の第一条第三号において、日本船舶の国籍要件を会社の役員の全員が日本国民としておりますけれども、これを代表者全員及び業務を執行する役員の三分の二以上が日本国民とする規制緩和を行うものであります。  具体的に株式会社に当てはめて御説明した方がわかりやすいと思いますが、取締役の全員が日本国民である会社の所有する船舶を日本船舶としていたものがこれまでの規制でございますが、これを代表取締役の全員及び取締役の三分の二以上が日本国民である会社が所有する船舶を日本船舶とするもの、これが改正内容でございます。  なお、罰金額の引き上げ等所要の改正もあわせて行わせていただきたいと考えております。  以上であります。
  87. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 この船舶法改正のきっかけというのは、商船三井がジョージ・ハヤシ氏を役員に迎えたいというところが発端だということを聞いておりますが、大変これだけ海運国でありながら、数百年の歴史を持っている日本がこれまで百年もの間この基本的なところを変えられなかった理由というのをお聞かせいただけますでしょうか。
  88. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答えを申し上げます。  船舶法は、先ほど先生から御指摘ありましたように大変古い法律でございます。ただ、船舶法基本的な仕組みの中で、今回改正に至りました内容は国籍の要件を変更する、こういうことでございます。そのときに、国籍につきましては、旗国が当該船舶に対して一定の保護を与えまして、そしてまた必要な監督責任を負う、こういうことが一つの旗国主義という概念で規定されております。したがいまして、一般的には社会情勢等に特段の変化がございません場合は、国籍要件を積極的に改正するということについてはやや慎重であったというのが実態でございます。  一方、ここ数年、外航船舶をめぐる国際競争が非常に激化しておりますので、ジョージ・ハヤシという固有の方のお名前がございましたが、船主協会あるいは経済界からも御要請がございまして、これを一つの社会経済情勢の変化と認めて今回改正を提案させていただいた次第です。
  89. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 そういった背景も多少あったんだろうと思いますけれども、きっかけになったと思いますが、今回の改正の政策的なねらい、これをぜひ教えてほしいんです。
  90. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) きっかけは先ほど海上技術安全局長から御説明したとおりでございますけれども、最近でございますが、外航海運をめぐります国際競争というのは非常に厳しいもので、激化してきております。そのような中で、各国の海運企業とともに国際的な集約化、グループ化ということも進んできております。我が国外航海運企業におきましても、海外企業との提携また海外における営業活動の強化といったようなことを進めつつありまして、その中で、今商船三井の話が出ましたが、外国籍の非常に有用な人材を活用するといったような要請も出てまいったということでございます。  ところが、先ほど御説明いたしましたように、船舶法の規定に一人でも外国人役員がいますと日本籍船が持てないという規制がございますために、一言で申し上げますれば、外航海運企業の国際化に伴います規制緩和という趣旨で今回の改正をお願いいたしておるということでございます。
  91. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 これだけ国際化してきたということで、今回の改正が日本の商船のパワーアップにつながるということになれば私も大変いいことだと思っているところでございます。  船舶法についてはこれだけにさせていただいて、残された時間で、船舶法改正されそしてもう一度日本の海運業が日の目を見るということになってきましても、実は港湾整備がここのところ少し見落とされているのではないかなという気がするんです。今までは確かに海のことと陸のことが大きな二つだったんですが、航空路線もいろいろ飛行機関係も伸びてまいりまして、少しそちらの方にシフトしかかっております。  ですから私は、海というのは大量輸送という大変コストの削減できる輸送手段だと思っておりますし、特に最近CO2のことをよく言われておりますが、そのCO2削減に対しても大変有意義なことであるし、これは国内的にも国際的にもかなり今注目を浴びている問題だろうと思うんです。  そこで、先般、阪神・淡路大震災によって神戸港が大変大きな打撃を受けたということなんですが、この神戸港の荷役の取扱量がその後どこまで回復してきているかちょっとお知らせいただきたいと思います。
  92. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) 神戸港の取扱荷物量についての御質問でございますが、まず外貿関係の取扱量でございますけれども、震災直後の平成七年二月には、対前年同月比で申し上げますと一割ぐらいまで激減をいたしました。しかしながら、その後港湾施設の復旧をしてまいりました結果、平成八年の当初には、六年の同月に対しまして八割程度まで回復をしたというところでございます。ただ、平成九年当初から若干の経済の停滞等の影響を受けまして、平成十年は平成六年度同月比で七割程度というふうな状況にとどまっております。  また一方、内貿貨物につきましては、平成九年度当初に一たん震災前の状態まで回復をいたしました。しかしながら、御承知のとおり、平成十年四月に明石海峡大橋が開通をいたしまして、神戸港の貨物の大体六割ぐらいはフェリー関係の貨物でございます、そういう意味で、航路がなくなりました関係で、現在では大体震災前の四割程度の水準にとどまっているというふうなことでございます。神戸市等で貨物の増大に対するいろんな運動をしていただいておりますので、平成十年十二月、平成十一年一月とこのところ二カ月は連続して回復傾向を示しているというふうな状況でございます。
  93. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 それで、神戸の方もそれだけ復興してきて、確かに今外貿コンテナ量の扱いというのは、つい最近では東京港が横浜を抜いて一位になったということも聞いておりまして、神戸が多少復活してもなかなか復活し切れない問題もある。  その原因は何かといいますと、例えば東南アジア関係、釜山港とか台湾の基隆、そして香港、シンガポール、従来の外貿コンテナ港を持っていた港にプラスして、最近上海でもかなり浦東地区に大型のコンテナヤードを設けようという動きがあります。  実は平成七年の阪神大震災後、私はちょうど一、二カ月後に上海へ行ったんですけれども、彼らは、東京の副都心開発をやめたとか阪神大震災があったとかという、それ行け、今がチャンスだぞということで随分ハッパがかかっておったような気がするんです。釜山港も少し調べてみますと、今かなり大型の開発をかけておりまして、二〇一一年完成目標で釜山の加徳島新港建設が非常にダイナミックにやられておりまして、新しい港づくりということで大変力が入っておるようなんです。  ただ一概に、上海とか釜山港、海のことを一生懸命やられているんですが、陸との接点の仕方、また陸送輸送に関するトータル的な計画というのがないんです。そういうことで、彼らはダイナミックに動いていますけれども、まだまだ追い越されることはまずないだろう。ただし、安心しちゃいけない。やはり今後の港湾というのは、私は二十年、三十年サイクルで物事を見なきゃいけないなと思っているんです。  ですから、最近はよく公共工事がどうのこうのという大変後ろ向きな話が余りにも多いんですが、私はそうじゃない、やはり日本は基本的に海運国であるということ、四方八方海に囲まれているということをきっちりと認識して、三十年先、五十年先を見据えて海のことを考えていかなきゃならないと思うんです。  今世界的な流れは、十五メートルから十六メートルぐらいの水深を持った港づくりということが盛んに行われております。私も二年前に、上海から百五十キロぐらい揚子江の中へ入った張家口という町があるんですが、人口八十万強の町ですが、十六メートル水深で直線で五キロの岸壁を持っているんです。まだ二キロ延ばすという話もあります。非常に諸外国はダイナミックに動いておりますから、これは下手をすると日本も追い越されてしまうのではないか、そんな気がするんです。  我が国の今後の港湾計画、全国見渡してのコンテナターミナルだとか、いろんな話もあります。特に最近では、CGCというんですか、カー・ゼネラル・キャリア、これは車を運ぶんだけれどもいろんな種類、コンテナも運べるというような新しい方式が出ておりますけれども、やっぱりこういう船で物を運ぶ場合は海との際、接点というのが私は非常に大切だと思うんです。それをもう少し機能的に、なおかつ次世代の運送、運航のやり方というものを新しい研究もやっていきながら今後の港湾計画というものをしっかりもう一度見渡していただいて、決して後退することなく思い切った政策また答申もしていただきたいと思うのです。  そのあたりを最後にお聞きいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  94. 川嶋康宏

    政府委員(川嶋康宏君) アジアの国際コンテナに関連いたしました港の中で、先生御指摘のように、相対的に我が国の港湾の地位が低下してきているということは事実でございます。それにつきましては、御質問の中にもございましたように、いわゆるオーバーパナマックスという、パナマ運河を通らないことを前提にしてつくられました船が世界のコンテナ航路の中心になって動いているものでございます。その船は水深が十五メートルないし十六メートルというふうなものを要求する船でございまして、そういうためのコンテナバースの整備を急いでいるところでございます。現在鋭意整備を進めておりまして、来年度、二〇〇〇年度におきましては、日本の中で十四のバースが稼働できるように今整備を進めさせていただいているところでございます。  また、御指摘のございました次世代港湾ということの中では、二十一世紀にどんな船が来るかということに対する検討というものも進めております一方で、コンテナターミナルの中の効率化という観点から、いわゆる無人化といいますか、すべて機械でそういうことができるようなシステムが適用できないかとか、そういうことについても種々検討を進めた上で整備をさせていただきたいというふうに思っております。  ありがとうございました。
  95. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 どうもありがとうございました。
  96. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 まず、船舶法の制定の経緯についてお尋ねしたいと思います。  船舶法というのは、言うまでもなく日本船舶の国籍要件を定めたものでありますけれども、その制定が、先ほどもお話がありましたように、何しろ明治三十二年と大変古くなっておりますので、私もいろいろ調べてみましたけれども、ちょっと制定経緯がわかりかねるところがございます。  株式会社の取締役の全員が日本国民であるものの所有に属する船舶を日本船舶と言うということが書いてあるんですけれども、そういう規定を設けた経緯、制定の理由について確認しておきたいと思います。
  97. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答えをいたします。  先生御指摘のように、現行船舶法というのは大変古い法律で、明治三十二年に制定をされております。  ちょっと過去の経緯をひもといてみましたところ、制定当時、ドイツを参考にさせていただきまして、ドイツの船舶の国籍要件を一つは参考にさせていただいたということと、それからもう一つは、我が国海運業の当時の状況から見て保護、奨励を考えなければいけない、それからもう一つは、国防上の要請といったものもその当時は大変強いものがあったということで、こうした政策上の必要性にもこたえるという観点から、日本法人のうち役員の全員が日本国民であるものが所有する船舶に限って日本国籍を与えたということであったようであります。
  98. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ところで、欧米の主要海運国にあっては船舶の国籍要件について既に緩和しているところが少なくないわけであります。若干の中身の差はあるにしても、海運会社の取締役に外国人の就任を認めているところも少なくございません。そうした中で、我が国が今日まで認めてこなかった一番大きな理由は何でしょうか。
  99. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答え申し上げます。  先ほどちょっと山内先生の御質問にも関連してお答えをさせていただきましたが、船舶の国籍は旗国主義に基づきまして、旗国が当該船舶に対しまして一定の保護を与え、また必要な監督責任を負うということになっております。したがいまして、社会情勢等に特段の変化がない限りは国籍要件を変更することは慎重であるべきと考えておりまして、これまで御提案しなかったということであります。  一方、ここ数年、外航海運をめぐる国際競争が大変激化してきておりまして、先生御指摘のように、各国の状況も変わってきております。また、国内の関係団体からも御要請いただいておりますし、具体的なニーズも出てまいっておりますので、今般、改正提案をさせていただいたということでございます。
  100. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今回、取締役の就任について一部であれ認めたということは、この船舶法を制定したときと事情が大きく変わったということなんだろうと思いますけれども、どの辺が変わったのか。単に国際化というだけではわかりづらいので、例えば国防上の云々とか、そういう例を先ほどおっしゃいましたけれども、どの辺が変わったから今回は外国人の就任を認めることになったんでしょうか。
  101. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 一つ大きなことで言えますのは、先ほどもお答えしたとおりでございますが、国際的な外航海運企業同士の提携といったようなことが国際競争の激化に伴いまして行われてきておりまして、また日本の海運企業外国において営業活動を積極的に展開する。そうしました場合に、そこの当該国の外人さんをしかるべき役員に登用していって士気を高めると申しましょうか一生懸命頑張ってもらうというようなことも必要性が徐々に高まってきておりまして、そういったことを基本に船主協会さんからの御要請ということもあったかと思います。具体的なきっかけといたしましては商船三井さんで具体例が出てきた。そういったところが、多分明治時代にはそういう事態はほとんどなかったのではなかろうかというふうに思っております。
  102. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 次に、登記・登録の一元化の問題についてお尋ねいたします。  船舶法第五条には、船舶の所有者に対して所有権保存登記と船舶原簿への登録を義務づけているわけでありますけれども、従来から学者の間でも一元制度を採用した方がいいのではないかという意見があったり、またそこまで行かないまでも、海運業界からは登記・登録は二度手間なので何とか一度で済むように改善してもらいたいという要望があったように聞いております。  この一元制度の是非、それと手続の便宜向上について、現状及び今後の取り組みについてお尋ねしておきたいと思います。
  103. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答え申し上げます。  船舶の登録制度は、船舶の国籍を公証するということ、それから行政上の取り締まりでありますとか、あるいは管理に資するという公法上の目的を持っております。一方、船舶の登記は、船舶に関する権利変動を公示しまして取引の安全を図るという私法上の目的を持っているという違いがございます。  こうした二つ制度の一元化問題については、先生御指摘のように、従来から運輸省及び法務省の両省においてずっと検討をいたしてきておりますが、この検討の中で、船舶所有者の事務手続の負担の専ら軽減に資する観点から、登録事項と一致している名称あるいは船籍港など船舶登記の表題部に関する事項の変更に際しましては、とりあえず地方運輸局等に変更を申請いただきまして、その申請していただいたことをベースにして登記の変更も同時に行うワンストップ化を検討いたしております。  引き続き、さらなる制度の合理化については検討していきたいと考えております。
  104. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 次に、日本商船隊における日本籍船の確保についてお尋ねしたいと思います。  平成七年五月に外航海運・船員問題懇談会報告書というのが出されましたけれども、このときの中心テーマというのはいわゆるフラッギングアウトの防止であったかと思います。そのためには国際船舶登録制度の創設が必要だということも提言されたように思いますし、その後、その方向に沿った措置がなされてきたわけでありますけれども、この報告書では、あわせて今後国による支援措置をぜひ講ずるべきだということから、こんな数字も載せてありました。日本籍船五百隻、六千五百人の日本人船員数を維持するには、年間二百ないし三百億円規模の国家支援が必要であるという記述があったかに思います。  その後の推移を見ますと、先ほども触れられたように、一向に減少に対する歯どめがかかっていないというのが現状であるわけであります。この現状に対してこのまま放置していいというふうにお考えなのか、あるいは最低でもこの船舶数ないしは船員数は維持しなければならないという目標を持って今後の措置を考えようとされているのか、まずその辺をお伺いしたいと思います。
  105. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) かねてより日本籍船の確保につきましていろいろな懇談会なり審議会の場で検討していただいておりますことは、先生の御指摘のとおりでございます。我々も、貿易物資の安定輸送という観点から日本籍船の一定程度確保というのは必要であろうというふうに思っておりますが、現在、円高傾向等によりまして、また便宜置籍船の拡大ということによりまして日本籍船が非常に減少傾向にございます。  我々といたしましては、少なくとも現状程度の日本籍船は確保していくべきであろうというふうに考えておりまして、そういったために国際船舶制度充実などで政府、国家としての支援を行っていきたいと思っております。
  106. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大臣にお尋ねいたしますが、今も国際船舶制度充実というお話がございましたけれども、それでは我が国の場合に外国、特にヨーロッパの海運国に比べて国による手厚い措置が行われているか、助成が行われているかといえば、必ずしもそうではないように思われます。例えば、外国が実施している所得税の軽減や免除という措置あるいは運航格差補助というものがあるわけでありますけれども、日本ではまだこれは実施されていないと承知しております。そうしたことからいうと、まだまだこの減少に歯どめをかけるための措置というのはあるのではないかというように考えているわけであります。  私は、日本商船隊の維持、とりわけ日本籍船の維持というのが大事だと思っておりますし、そのためには、言葉で重要だと言うだけではなくて具体的な措置を伴わせることが必要なのではないかと思います。平成九年五月の海運造船合理化審議会海運対策部会の報告の中でも、この点を指摘しているわけであります。  それで、大臣にお尋ねしたいのは、今後さらなる助成措置等を講じる余地があるのではないかと思いますけれども、お考えをお尋ねしたいと思います。
  107. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 寺崎委員指摘のように、平成八年に国際船舶制度を創設いたしております。登録免許税、固定資産税の軽減外国資格受有者に対する承認制度、若年船員養成プロジェクト等の施策で今日まで来ております。どのぐらいの効果をこれでなし遂げたかということを私どもはまた判断する時期にそろそろ来ているのかなと思っております。  一方で、我が国が自由貿易で極めて大きな利益を受けている国であることも事実でございます。ある意味では、他国の保護政策に対して海運については自由というものを強く我が国が主張しておることも事実でございます。そこのバランス論をどうとるか、政治的な判断はしていかなきゃならないだろうと思っております。  運輸省の立場としては、今お話し申し上げたとおり、これ以上減らすことがあってはならぬなという立場でありますけれども、日本全体のバランスというものも考えながら努力をしてまいりたいと思っております。
  108. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 次に、強制水先制度についてお尋ねします。  昨年の七月、神戸港が三百総トンから一万総トン以上の船に強制水先をつけるように措置しました。また、去年の十二月九日には、海上安全船員教育審議会というところが横浜港、川崎港においても三百総トンから三千総トンに船舶の強制水先を引き上げてもいいのではないか、そうするべきであるという答申を出されたと承知しております。そういう背景には競争力の確保あるいは維持というものがあるのかもしれませんけれども、これは航行の安全ということにもかかわって大変大事な問題だと思いますし、慎重に考えなければいけないと思うわけであります。  それで、答申が出された、あるいは既に強制水先の引き上げが行われた神戸、川崎、横浜は別にしまして、三百トン以上で強制水先を義務づけているところは日本ではどういうところがあるのか、何カ所ぐらいあるのか、御紹介いただきたいと思います。
  109. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答えいたします。  今先生横浜は除いてとおっしゃいましたので除かせていただいて、三百トンの強制区はあと四区ございます。横須賀区、関門区、佐世保区、那覇区でございます。
  110. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今挙げられた港湾においてはやはり強制水先の義務を引き上げる、総トン数を引き上げるということを検討されているのかどうかということと、それから、報道によりますと運輸省が今全国の港湾というか、その四カ所かもしれませんが、強制水先の緩和を見直す際の統一基準づくりに乗り出しているというような報道もあるわけであります。  したがって、今挙げられた四港の引き上げについてどんな検討がされているのかされていないのか、あるいは統一基準づくりについての検討状況があるのかどうか、御紹介いただきたいと思います。
  111. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) まず最初の、三百トン区の強制区についてさらなる見直しを行っているのかどうかということについて、現状をお答え申し上げたいと思います。  先ほど先生御指摘がありましたが、海上安全船員教育審議会という大臣の諮問機関でございますが、これに平成九年七月に諮問をいたしております。そして、先ほど御指摘の横浜区については中間答申としていただいたわけでありまして、したがいまして、現在、引き続きその他の水先区についても今後のあり方を検討しているというのが現状でございます。  強制水先の見直しは、事安全とか環境にかかわる大変重要な問題でありまして、三百トン区の見直しにつきましても十分かつ詳細な検討を行ってその上で将来のあり方を考えていきたい、こういうふうに考えております。  それから二点目の、強制水先区の見直しを考える際に統一的な基準検討したらどうかという御指摘でございます。  実は横浜区の強制水先のあり方について昨年答申をいただいたんですが、その中で海上安全船員教育審議会の御意見といたしまして、強制水先の対象船舶の範囲設定に当たっては、例えば地理的条件でありますとか、あるいは自然条件でありますとか、船舶のふくそう状況でありますとか、海難の発生状況でありますとか、個別の強制水先区ごと状況が大変異なりますので、そういう多様なこれらの要素を総合的に勘案して判断すべきではないかという御指摘をいただいております。  したがいまして、これからの見直しについては、そうした御指摘を踏まえながら、基本的には個別の強制水先区ごと検討を進めてまいりたいと考えておりますけれども、先生御指摘の統一的な基準可能性についても、そういう枠組みの中で果たして考えられるのかどうか、それらも含めて検討していきたいと思っております。
  112. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 強制水先基準の緩和につきましては、経済合理性を追求するという観点から大事であるという意見がある一方、自国の主権だとか船舶の航行安全確保のためには慎重であるべしという意見もあることは今お話のありましたとおりでございますので、ぜひ十分なる御検討を願いたいと思います。  次に、海賊行為への措置等について伺いたいと思います。  日本の海上物資の主要輸送ルートであるマラッカ・シンガポール海峡で最近も海賊行為が頻発しているというニュースに接しております。どれぐらい多いのが頻発なのか、あるいは報道されていることがすべてなのか、調べてもちょっと判然としないところがあるんですけれども、その状況とあわせて、去年の九月に三億五千万円相当と言われるアルミインゴットを積んだ貨物船テンユウが、これは神戸の船だったと思いますが、インドネシアを出航して以来消息を絶ったというニュースがございました。その後、どうも船名も変わったり、船員も全部かわったんじゃないかというような報道もあるわけでありますけれども、そのてんまつについてもあわせて御紹介いただきたいと思います。
  113. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 国際商業会議所という国際機関がございまして、そちらの国際海事局の年次報告というのがそういう海賊行為につきましての件数などを掲げてございます。世界で毎年約二百件前後の海賊行為が行われておりますが、その中でマラッカ・シンガポール海峡ということに絞りますと、最近五年間での海賊行為の発生件数は二十二件ということになっております。  同じその五年間にどれだけ日本関係船舶、いわゆる日本籍船及び日本の船社がオペレート、運航している、日本の海運会社が責任を持っているという船につきましての件数を見ますと、海賊行為の発生件数は二件ということになっております。ただ、それは去年までの五年間でございまして、ことしに入って新たに二件の日本関係船舶に対する海賊事件が発生しております。  それで、さらにその個別案件でございまして、テンユウという船舶に係る案件でございますけれども、昨年九月二十七日、船籍はパナマ船籍でございます。乗組員十四名、韓国人二名、中国人十二名でございます。アルミインゴットを積んでおりまして、時価三億五千万円相当という貨物であったそうでございますが、インドネシアから韓国に向けて出航した後消息を絶ったと。  その後、同じく去年の十二月二十一日でございますが、中国の上海付近の港でありますチャンジャカンというところで中国の公安当局によりテンユウと思われる船舶が発見されましたけれども、先生御指摘のとおり、船籍も船名も変えられておりましたし、乗組員もすべて入れかわっておったということでございまして、旧乗組員十四名の行方は現在まで確認されておりません。何らかの犯罪に巻き込まれた可能性が高いのではないかということで、現在中国当局により捜査が行われているということでございます。  これは船籍はパナマ船籍でございますけれども、運航しておりました会社及び実質的オーナー、出資者でございますけれども、日本の神戸の法人ということでございまして、外務省を通じまして中国に対しまして事実関係の確認を申し入れておるという現状でございますが、結果はまだ受けておりません。  以上でございます。
  114. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 私も海賊対策について何か決め手になるようなものがないものかということで関係者にもいろいろ尋ねてみたんですが、これという妙案も浮かばない。例えば、向こうを上回るような武器を持つと、そうすればそれを上回るようなものを向こうが用意するかもしれないというようなことで、いろいろ問題これありというようなことから、せいぜい放水で追っ払うぐらいかなというような話も聞きました。ないしは、悲しいことに、ホールドアップされたら何ドルかすぐ出せるようにして勘弁してもらうというようなことをやっているのが実態だというようなことも聞きました。  さはさりながら、日本の国民の生命、財産が脅かされているわけでありますから、これを守るのは言うまでもなく国家の基本的な任務でございますので、放置していいというわけではございません。結局、いろいろ考えられるけれども、自衛手段は講じるにしても、やはり海峡周辺の国々の御協力をいただく中で、何とか海賊行為に遭わないような措置を講ずるということがまず基本、出発点になるのかなというような感じもしているわけであります。  大臣にこの点について、現在どういう働きかけをされているのか、今後の見通しなども含めて見解を伺いたいと思います。
  115. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 実は、寺崎委員お話しいただきましたように、これという決め手を持っておりません。今私どもがやっておりますのは、日本関係船舶に対する海賊行為に関し、これまでも外務省を通じて沿岸国に海賊発生海域の警備強化等を申し入れております。一方で、国際海事機関、IMOにおける海賊問題の検討に今参加をいたしているところでございます。  実はこの御審議の前に私も少し議論をしてみたわけでございますけれども、例えば先日の北朝鮮の不審船の問題、これは今韓国の海上保安庁、海上保安庁という名称ではございませんけれども、海上警察機能を持ったところ、またロシアにおける同様の機関、こういうところとやはり私どもが定期的に協議を重ねながらああいう不法行為をさせないということが大事であろうと思っております。  またもう一つは、中国が多いわけでありますけれども、密航者の問題、大量に船に乗ってきております。これも外務省を通じて中国側に、基本は中国から密航者が出てくるわけでありますから、そこを何とか断つ算段が立たないものかということで、強く申し入れを行っているところでございます。  冒頭申し上げましたように、これという決め手を今現在持っておりませんけれども、やはり関係諸国と粘り強く交渉を進め、またお互いに警察警備機能を持つ者がそれぞれの職責を果たしていくという国際的なルールというものをつくるべく私ども努力をしてまいりたい、このように思っております。
  116. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 終わります。
  117. 森本晃司

    ○森本晃司君 先ほど来、船舶法は百年ぶりの改正ということでございますが、これは一つは、このままでいくと日本の海運会社が国際競争にやはり勝っていくこともできないのではないか、こういうこともあっての改正だと思っております。  今回の改正では、取締役の三分の二以上が日本国民であるものが所有する船舶を日本船舶とするということでございます。一方、外国の例を見ますと、アメリカは二分の一、ドイツが過半数、フランスも過半数、イギリスが株式の過半数となっています。過半数の国が多い中、なぜ今回の改正で三分の二とされたのか、その点について伺いたいと思います。
  118. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答えを申し上げます。  国連海洋法条約上、船舶に国籍を与えた国は、旗国として当該船舶に対して一定の範囲で保護を与えるとともに、その監督責任を負わなければいけない、こういうことでございます。これの受け取り方ということであろうかと存じます。  我が国における他の法律を見ますと、航空法、電波法等でございますが、取締役の過半数が日本国民という要件とした場合には、日本国民の取締役が一人でも取締役会を欠席したときには外国人主導による決議がなされてしまうということにかんがみまして、一定の余裕を持たせて三分の二以上を日本国民が占めることを要件とした由と伺っております。先生御指摘のように、二分の一のところが外国の例としては多いということでございますが、日本の国内法につきましては今申し上げたような事情で、例がございます。  したがいまして、冒頭申し上げましたように、保護と監督責任をどう受けとめるかということについては、日本の他の法令の例を参照させていただきまして、今回三分の二以上を日本国民が占めることを要件とすることについて御提案をさせていただいております。
  119. 森本晃司

    ○森本晃司君 次に、代表取締役は全員日本国民でなければならないという縛りがありますね。外国人が代表取締役になれないその理由と、外国ではどのようになっているか、その点を伺います。
  120. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答え申し上げます。  旗国主義の原則をやや詳しく申し上げさせていただきますが、船舶に国籍を与えた国は、旗国として当該船舶に対して一定の保護と先ほど申し上げましたが、例示で申し上げますと外交保護等ということでございますが、これを与えることとともに、必要な監督、例えば船舶の堪航性の確保でございますとかあるいは事故調査等を行う責任を負うということでございます。これらは国際条約上は真正な関係というように位置づけておりますが、旗国と当該船舶の間に実質的なつながりが必要だということでございます。  こういった基本的な考え方をベースにいたしまして、海運先進国でも法人の代表権を有する者を自国民とする要件を課している国が先生御指摘のように多数存在しております。また、我が国の他分野の法律でも代表者を日本国民に限っております。この場合、株式会社の代表取締役というのは、実態上、会社のトップといたしまして意思決定の中枢機能を果たしているとともに、対外的にも会社の顔としての機能を持っております。また、法律上も対外的に単独で広範にわたる事項について会社を代表する機能を有しておりますことから、代表取締役は会社そのものであるというふうに考えられるかと思います。  こうしたことから、船舶法においても日本船舶を所有する会社の代表取締役については日本国籍を有する者であることが必要と考えた次第でございます。  それから、海運先進国の例ということでございますが、先生御承知だと思いますが、アメリカやフランスなどにおきましても、日本の代表取締役に相当する者全員が自国民としている例がございます。
  121. 森本晃司

    ○森本晃司君 今回の法改正は、商船三井がAPLの元会長ジョージ・ハヤシさんを取締役に迎えようとしたことが大きなきっかけになったというふうに報道されております。新聞報道によると、このハヤシ氏が取締役に就任できないということでいろいろと御陳情があって、運輸省が素早い対応をしたというふうにも報道されているところでございますが、今後、ジョージ・ハヤシ氏が代表取締役になろうという思いがあり、またそういう流れになったとき、また法改正はやりますか。
  122. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答え申し上げます。  現行の日本の法制、これは商法あるいは民法でありますが、これを前提といたしますと、法人としての意思表示や行動というのはその代表者によって行われることとされております。  したがいまして、日本船舶の要件としてその所有者であります法人が実質的に日本人により支配され行動することが必要であるため、代表者については日本国籍者であることを求めたものでございます。  なお、外国人代表者の就任につきましては、先生の御指摘がありましたが、要望ももちろん大変大事だと思いますけれども、今申し上げましたように、基本的には今後の法制度等のあり方によって考えるべきものではないかと考えております。
  123. 森本晃司

    ○森本晃司君 次に、先ほど寺崎先生からも我が国の商船隊の減少問題についてお話がございましたが、私も重ねることになりますが伺いたいと思うんです。  一九八五年には一千隻、それから昭和六十二年で八百十六、平成元年で五百三十二、ずっと見てみますと、平成七年で二百十八、平成八年で二百を切って百九十一、九年百八十二、十年百六十八、どんどん日の丸商船隊が減っていっているわけでございます。  日本は海に囲まれた国であります。タンカーを初めとして、いろいろな物を日本の船によって日本の国へ運ばなきゃならないし、日本で加工した物を外国にまた船で運んでいくということがなされるわけです。同時に、日本の優秀な海運技術、こういうものを伝承していかなければならないんですが、この状況を見ますとここ十年ぐらいで極度に落ちていますが、運輸大臣はこのような状況についてどのような見解を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  124. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 運輸省の立場だけでなく政府全体として、例えば製造業の国内空洞化の問題、また中小企業技術を伝えるべき後継者がいない、こういう問題を日本の中にまさに大きな悩みとして抱えております。特に海運はそういう意味ではその一番最初を走ってしまっておるということも事実だろうと思います。企業は大きくなっていっておりますけれども、日本人全体の雇用また日本籍船の問題は御指摘いただいておるとおりでございます。  そのような状況下で、平成八年に国際船舶制度を創設し、登録免許税や固定資産税の軽減外国資格の受有者に対する承認制度、先ほど寺崎委員にもお話し申し上げたところを実施してまいりました。三年目をこれから迎えるわけでありますので、そろそろこれがどのぐらいの効果を上げたかというものを判断し、同時に、新たなる施策というものが考えられるのか、これは判断をしていかなければならない時点を迎えておると思っております。  運輸省全体といたしましては、これ以上日本籍船が減っていく、日本人船員が減っていくということについては何らかの歯どめをかけなきゃならない、このように承知をいたしております。  ただ一方で、自由貿易を強く訴えてきておる日本だけに、過度の保護主義というものはとり得ないということは委員御承知のとおりでございます。
  125. 森本晃司

    ○森本晃司君 今大臣からも、九六年に国際船舶制度を導入されて登録免許税や固定資産税の軽減を行った、こういう御答弁がございました。確かにそれは行われているわけでございますけれども、報道によりますと、船価が九十二億円程度のコンテナ船の場合、我が国では登録免許税、固定資産税がそれぞれ千二百二十九万円、千七十三万円かかるわけです。一方、パナマは登録免許税が五十七万円、固定資産税が十万円。リベリアはそれぞれ二十五万円、六十万円で済む。  これは明らかに税コストの格差があるわけですけれども、今のような軽減状況で、大臣、これで歯どめがかかりますかね。これは三年たちましたけれども、恐らく何も歯どめはかかっていないと思うんです。今金額も申し上げましたけれども、このような制度だけで、どう考えられますか、この開きについてもどうですか。
  126. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 今御指摘いただいたパナマ、リベリア、いわゆる便宜置籍国というんでしょうか、ひたすら税収目的のために逆に極端に低い課税にして多くの外国商船を誘致する、こういう特殊な方法をとっている国家でございます。さあ、これに対抗して日本も同様のところまで下げろというのはなかなか正直言って難しかろう。  それでは、先進の海運国ではどのような方策をとっているか、そこに比べて日本の税制等が劣るということになれば、先ほど申し上げましたように、三年前にこれで何とかなるのではなかろうかという一つの方策を決めたことは事実でありますけれども、今見直しの時点が来ておるかもわかりません。そういった意味で、可能な限りの是正を目指して努力をしてまいりたいと思っております。
  127. 森本晃司

    ○森本晃司君 五月から実施される外国船員資格者に対する日本籍船配乗資格付与制度の実施方法の整備状況と、どれぐらいの日本籍船に何人ぐらいの外国人が資格を受けて配乗するのかお伺いいたします。
  128. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答え申し上げます。  外国資格の承認制度の施行に当たりましては、その承認申請の手続、それから承認を申請する者が必要な経験あるいは知識あるいは能力を有するかどうかの確認方法、それから制度の具体的な実施方法などを定める必要がございまして、現在、本年五月二十日からの制度の施行に向けてこれらの事項について関係者方々と協議をさせていただいているところでございます。  それから、承認を受けた外国人船員の配乗につきましては、国際船舶に限定することにはしております。ただ、実際に外国人が配乗する船舶数でありますとかあるいは配乗する外国人数につきましては、今後国際船舶を運航すると思われます各船社の経営判断によるところが大きいと考えておりまして、経営判断そのものによって決まってくるのかなと思っております。
  129. 森本晃司

    ○森本晃司君 最後になりますが、大臣にお伺いしたいんですが、神戸商船大学の名誉教授で元学長の平勇登さんという方が、こういう今の状況を見て、新聞の「論点」に書かれているわけでございますけれども、「日本は海洋国家である。 生命の源であり、万物の母である海に四方を囲まれているからこそ、わが国は」云々ということで、経済発展もなしてきたし、不安のない生活も営むことができるという内容から、提言されている部分がございます。  それは、「私は、政府が一定の船を所有し、日本人船員を配乗するなどで、青少年が海への夢を持ち続けられる政策を打ち出すよう、要望したい。政府が全額出資して所有船を造り、ふだんはチャーター船として民間に運航させておけば、緊急時にすぐに船を調達することができる。」、こういった提言をされており、そのほかに事細かにいろいろ書かれているわけでございますが、政府が船を持って、そして青少年に夢を与えていくと。  今の国際情勢から見ると、安全保障云々という面では船が要るとか要らないとかという議論があるようでございますけれども、それはまた別にいたしまして、どうですか大臣、ひとつ大臣就任時代に日本政府の船をひとつどんとつくって、それで夢を与えていくような考え方、また、この平先生の御提言に対する所感をお述べいただきたいと思います。
  130. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 実は、私も昨年の八月就任直後、海で子供と遊ぼうということで運輸大臣もその行事に参加をさせていただきました。そのときに、ことしの夏に海で泳いだ人は手を挙げてくれ、プールで泳いだ人はと言うと、ほとんどがプールで泳いだ人ばかりでございました。やはり海というものにもう少し親しんでもらうということを運輸省全体として考えていかなきゃならぬなという立場で努力をしていきたいと思っております。  それから、政府が一定の多目的船を持ったらどうかと。これは中東の湾岸危機の際の輸送等の問題を契機として、大規模災害発生時の救援、医療協力等の国際協力、難民の輸送など多目的に活用できる船舶に関する調査研究、平成三年六月に内閣官房を中心に多目的船舶調査検討委員会を設置いたしております。この議論の中で今日まで進んでまいりまして、平成九年七月に多目的船舶基本構想調査委員会を設置して、どのような船をつくるか検討に入っているところであり、もちろん運輸省もその中で今努力をいたしているところでございます。  私のところにどんとつくれるかどうかは、もう少しお時間を賜りたいと思います。
  131. 森本晃司

    ○森本晃司君 終わります。
  132. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 船舶法改正案について質問いたします。  今度の法改正は、海運会社の取締役員に外国人も三分の一まで認めようというものでございます。その改正の背景について、このいただいた資料を読ませていただきますと、「近年、外航海運をめぐる国際競争の激化の中で国際的な集約・グループ化の動きなどが進展しており、我が国外航海運企業においても、外国企業との提携や、外国籍の人材の活用等のニーズが高まっている。」と述べられております。  つまり、国際的な集約がどんどん進み、日本海運も外国の大手海運企業とのアライアンス、つまり提携が求められている。そのためにも外国人役員を配置できるようにしたい、こういう趣旨ですか。
  133. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 先生今申されましたようなそういう国際競争及び外国海運企業との提携、アライアンス、もしくは外国におきます営業活動の強化といったことは背景にございます。それと直接外国人役員を雇い入れるかどうかということとはもちろん直接結びつくものではございませんが、そういう国際活動の広範化、強化ということで、おのずと日本の海運企業外国の優秀な方を取締役として迎え入れたいという動きが基本的な背景として高まってきておるという認識でおります。
  134. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 日本の外航海運も集約・グループ化が繰り返し行われてまいりました。一九六四年に運輸省の主導で十二社体制から中核六社に集約を図りました。それが八九年六月、ジャパンラインと山下新日本汽船が合併しナビックスラインとなった。九八年十月には昭和海運を日本郵船が吸収合併して日本郵船となりました。さらに九九年四月、商船三井とナビックスラインが合併し商船三井となりました。このように次々と合併し、今や日本の大手海運は日本郵船、それから商船三井、川崎汽船の大きく三社体制となっております。  外航海運は集約に次ぐ集約、リストラに次ぐリストラという形で進んできたわけですけれども、だから他の業界から、最も合理化の進んだ業界と、こういう声も聞こえてまいります。  そこでお聞きしたいんですけれども、日本商船隊と日本籍船は九七年と八七年についてどうなっているか、隻数とその差についてお答えいただきたい。同時に、あわせて外航日本人船員の九七年と八七年の推移について、差について御答弁いただきたいと思います。
  135. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) まず、日本商船隊の隻数につきまして私の方から御説明いたします。  十年前、一九八七年におきましては二千八十二隻商船隊がございましたが、十年後の一九九七年は二千二十一隻でございます。六十一隻の減少でございます。そのうち、日本籍船の隻数につきましては、一九八七年で八百十六隻、十年後の一九九七年では百八十二隻、六百三十四隻の減少という状態でございます。
  136. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) 日本人の外航船員数について私の方からお答えさせていただきます。  これは船員統計で船員需給総合調査結果報告書というものからとった数字でございますが、八七年十月一日現在では一万七千六百九十五人でございましたが、それが九七年十月一日現在では七千百九十二人となっております。
  137. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 すさまじい合理化、すさまじい減少だと。日本籍船や日本人船員は大激減しているというふうに思うんです。日本籍船は六百三十四隻減少、船員もこの十年間で一万人、六〇%減少ということでございます。結局、便宜置籍船化という形で人件費の安い外国人船員を乗せているという構図、この構図も単純でなくなってきていると思うんです。空洞化の道を徹底して進んでいる。  例えば、商船三井では便宜置籍国に船舶保有会社を置いております。何と各国に八十一も保有会社を置いている。そればかりか、かつては日本の本社で船舶管理をしていたものを、人件費削減だということで香港やシンガポールにその管理会社を設置して、そして貨物集荷など営業拠点となる海外支店も現地法人にして、役員も現地人を採用する。こうして本社機能を現地法人に移管するなどしてきているわけであります。こうしたことによって、商船三井は社員一万人のうち八千人が外国人と言われております。  日本人船員や働く人たちが海運企業からいなくなる、まさに空洞化という事態だと思うんですけれども、これが皆さんのおっしゃる国際化、グローバル化ということなんでしょうか。
  138. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 国際競争にそれなりに日本海運企業が耐えながら頑張っていくということは、貿易立国でございます日本としてはこの国際化の中ではやむを得ないことかなと思っております。一方で、日本籍船の船舶を持つことによるいわゆる産業の育成及び船員のノウハウの伝承といったことが国策としてどの程度求められるかというバランスの問題であろうかと思っておりまして、ゼロになることが国際化であるというふうには決して思っておりません。
  139. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 こういう実態も本当に受けとめていただいて、ひとつ運輸大臣にお伺いしたいんです。  大手三社は、外国大手海運との提携、アライアンスという形で、世界の基幹航路というものは今五グループと一社による寡占状態が形成されているというふうに言われております。この五グループにかかわって言いますと、例えば先ほど申し上げた商船三井はNOL、APLなどとニューワールドというアライアンスを組んでおりますし、日本郵船は英国のP&Oネドロイドという会社とグランドアライアンスというグループをつくっております。また、川崎汽船は中国のCOSCOや台湾の陽明海運と協調配船をする。こういう状況で、この五つのグループに集約をされていっているわけです。  海運市場をめぐって熾烈な競争が続いて寡占や独占化が進むことは、海運秩序を乱し、大変危惧される問題をはらんでいると思います。こうした動きの中で、国際的な集約、吸収合併が促進されていくなら、日本の船舶はなくなってしまうのではないかとの声すら出されてまいります。同時に、日本人船員を含めて海運企業の雇用も重大事態であると言わざるを得ません。  これは日本の海運行政のまさに根幹にかかわる問題なので、運輸大臣にひとつ、この二点についてどうお考えかということをお伺いしたいと思います。
  140. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 海運のみならず、先ほど申し上げたように、製造業も含めて国際競争の厳しい中にあります。破れれば当然倒産せざるを得ない、もしくは外国に買われざるを得ない、こうした状況下で民間が知恵を絞りながら努力していることは一つの事実だろうと思います。  一方で、先ほどから申し上げていますとおり、我が国の海運としてこれ以上籍船を減らしたりまた雇用を減らすということについては何とか歯どめをかけることはできないかということで、平成八年に新しい制度を導入させていただいた。申し上げたように、三年たつことになりました。さあ、これで十分の効果があったのか、いや、これに増して何かの対策を打たなきゃならないのか、まさに今洗い直しの時点が来ておるんだろうと思っております。  そういった中で、我が国が極端な保護主義という政策をとり得ない、これはもうおわかりのとおりであります。したがって、極端な保護主義でない中で、何とか民間の皆さん方ともお話し合いをしながら、日本の雇用、また籍船というものを確保できるような方策を努力をしてまいりたいと思っております。
  141. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 この問題にかかわって、カボタージュということについてお伺いしたい。  国内での港間の運送に当たってはその国の船籍に任せるというのが国際原則だと聞いております。アメリカやノルウェーなどは条約においてカボタージュ規制というものを認めておりますけれども、日本でも条約がなくてもこれは当然のことだというふうに思っております。これはよろしいですか。
  142. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 今先生がおっしゃいました外国船舶による国内輸送、いわゆるカボタージュでございますけれども、これは国家の安全保障でありますとか地域住民の生活物資の安定輸送の確保とか、そういった観点から、それに従事いたします権利は専ら自国船舶に留保されるといったことが国際慣行上確立しております。  我が国におきましても、船舶法第三条におきまして、外国船舶によるカボタージュを原則として禁止しておりまして、例外的に認めるに当たっても運輸大臣の許可を必要ということにしております。  今回、船舶法改正いたしますけれども、この三条につきましての改正というのは一切直接関係するものではございません。あくまでも日本船舶の所有者要件についての緩和を行うものございまして、カボタージュ規制につきまして緩和をするものではないということを御理解いただきたいと思います。
  143. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 くどくなるようですけれども、この最後に運輸大臣にも御確認させていただきたいんですが、外航海運の国際船舶に限って船舶職員も外国人が乗船できるように法改正がなされました。昨年の四月二十一日当委員会で、我が党の筆坂議員の質問に対しての国会答弁での約束、このときこう述べておられます。内航海運に外国人が就労するということは今後とも禁止する、こういうお約束でございます。  改めて再確認ですけれども、今度の改正で取締役に外国人が就任すると、この機会に内航海運にまで外国人船員が乗船できるようにするなどということはあり得ないと思うんですが、よろしいですね。
  144. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 内航船への外国人船員の受け入れについては、単純労働者は原則として受け入れないとする政府全体の施策に準じ認めないとする施策をとっております。  内航船への外国人船員の導入については、今後とも、内航日本人船員の雇用に対する影響、船内コミュニケーション等安全の確保上の問題、さらに他の労働分野への波及などを考慮すれば困難であると考えております。
  145. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 次に、少し問題を変えて、GMDSSと新生丸の海難事故について一つ二つお伺いしておきたい。  一月二十日のマグロはえ縄漁船新生丸事故は、二月一日からのGMDSSによる遭難安全通信システムへの移行を控えて大問題になりました。救助がおくれた原因として、GMDSS対応のEPIRB、非常用位置無線機が七分間しか発信されなかった、あるいは船体から外れなかった、遭難警報の九〇%以上が誤発射という実態など、このシステム信頼性について大きな議論となってまいりました。  我が党は、GMDSSの導入については、科学技術進歩を人命救助や安全対策に生かすことは当然との立場から賛成をしてまいりましたが、同時に誤発射の問題についても、九六年二月、本委員会で上田耕一郎議員も取り上げるなど、以前からこれを指摘し対策を求めてまいりました。しかし、何の対策もとってこなかった運輸省の責任は重大だと思います。  新生丸の事故を受けて、GMDSS体制の欠陥、誤警報問題をどう改善するのか御答弁ください。
  146. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答えを申し上げます。  遭難警報の誤発射問題につきましては、これまでIMOの場におきまして、もちろん日本も積極的に参画をしておりまして提案をしておりますが、数多くの議論が重ねられてまいりまして、DSCの警報発射のダブルアクション化など多くの改善策が講じられてきております。その結果、絶対的な数字としてはまだまだ減少のための努力をする必要はありますが、船舶への設置数の急激な増加に対比しますと、比率では一定の誤警報を減少させるための効果が上がっているものと考えております。  しかし、先生御指摘のとおり、さらなる信頼性を高める必要がございます。漁船新生丸事故を契機に今般設置されました捜索救助連絡会におきまして、誤発射の詳細な実態調査を行うとともに、関係者に誤発射防止対策について十分御議論をいただいて、具体的な対策の内容検討していきたいと考えております。  特に、誤発射の内容として操作上のミスが多いという点を踏まえますと、GMDSS設備の使用方法の周知徹底等システムへの習熟の促進とか、あるいは中継方法の改善を図るなどソフト面における対策を強化して信頼性を向上させる必要があると認識をいたしております。
  147. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 最後に、運輸大臣にお伺いいたします。  GMDSS体制への完全移行により、遠洋に出ていく船舶に乗船する通信士は、第一級総合無線通信士、一級海技士の資格から、第三級海上無線通信士が乗船すればいいことになりました。簡単な講習で資格が取れる第三級海上無線通信士で船上保守が実施できるのか心配があるとの指摘もされております。また、今までは第一級総合無線通信士の資格を取るのに大変な労力、知識、技術を要したわけです。その資格もGMDSSの導入で効力を失いかけている。  今までの通信士の資格に見合う雇用の確保に万全の体制をとること、技術的、システム的にも誤作動などで確立していない段階では、例えば当分の間は船上保守を必須条件にするなど、何らかの手だてをとる必要があるのではないか。この点、大臣の御所見をお伺いして、質問を終わります。
  148. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) GMDSS通信設備を施設する船舶につきましては、今御指摘のとおり、通信長と船長等の職務を兼務することができることになり、ある意味では通信士を単独で乗り組ませる必要はなくなった。しかし、これまで通信士が果たした役割、その専門的知識等にかんがみるならば、今後も十分その能力を活用されて、海上、陸上を問わずその雇用の確保は図られるものと考えております。
  149. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 終わります。
  150. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 船舶法改正の問題について質問をいたします。  法改正の意義については提案の中でも述べられておりますけれども、法改正の背景と目的、その中に、先ほども質問がありましたが、外航海運をめぐる国際競争の激化を挙げられておりますが、いま少し具体的にどのようなことなのか御説明をいただきたい。その激化に伴って法改正をする意義について明確にしていただきたい。
  151. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 外航海運をめぐります国際競争激化の具体的な中身でございますけれども、国際的な外航海運企業同士の集約化、グループ化といったような動きがございます。コンソーシアムといったような形で業務提携をする、船舶は非常に大きな投資を必要といたしますので、そのスペースを共同で使い合うとか、コンテナバース施設などを共同で使用し合うといったようなことがございます。また、外国での営業活動というのも非常に重要でございますので、外国での営業展開というものも競争上非常に必要なものというふうになってきております。  そういった中で、従来の船舶法でございますと、外国人の取締役を日本企業に雇えない、日本船舶を持てなくなってしまうという問題がございました。やはり日本船を日本船社が持ち続けるということも必要でございますし、そういった日本船社が国際活動で国際競争力を持ち続けるためには、外国人の優秀な取締役、重役を雇うといったようなことも必要になってきておりますので、一定の範囲におきまして、外国人のノウハウを活用するといったようなことをねらいまして、基本的には日本船社の国際競争力の強化といったような意味規制緩和といったような意味で今回の改正をお願いしておるということでございます。
  152. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、内航海運への波及の懸念問題については先ほど宮本議員が質問されておりましたが、同じように、内航海運における外国人船員導入や言うところのカボタージュ規制といったところへの波及というのを大変懸念しているわけです。同時に、例外措置というのがだんだん拡大されれば一般化していくわけでありまして、そこのところは先ほどの答弁では、大臣の許可があればかなり規制ができるのではないかというようなことになりましたけれども、そう簡単にいかないというふうに思うわけであります。そのようなことはないと思うんですが、いかがでございましょうか。
  153. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 外国船舶による国内輸送、カボタージュにつきまして今先生御指摘のように現在原則禁止ということでございまして、特別な場合には運輸大臣の許可ということになっております。  これの実質上の運用につきまして、このカボタージュが禁止されております趣旨でございます国家の安全保障及び地域住民の生活物資の安定輸送の確保といったようなことに反するようなことまで、許可があるから何でも許可すればいいんだということではなくて、そういったことをこういった法目的に合致しながら、趣旨に合致しながら運用していきたい。これは従来どおりというふうに考えております。
  154. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 その点、従来どおり厳しくひとつ守っていっていただきたいと思います。  先ほども説明がございましたが、国際海運関係変化に伴っての法改正ということで、役員の規制という問題が出てきているわけでありますが、国際海運業の状況というのは、先ほどもいろんな形で説明がありましたけれども、とりわけ進んでおります系列化、集約化、グループ化というんでしょうか業務提携というんでしょうか、どういうような形で行われておるのか、その動向について御説明いただきたい。
  155. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 先ほど簡単に申し上げましたけれども、船につきましては膨大な投資ということがかかりますので、国際企業間におきまして、荷主のニーズにもきめ細かく対応するという共通の目標に向かいまして、同一航路に配船する複数の海運企業が相互に船腹の一定スペースを融通し合うといったようなこと、それからターミナルでありますとかコンテナバースでありますとかいったものを共同で利用するといったようなことが世界規模で広まっております。  日本関係で具体的に申しますと、新グランドアライアンスという一つの名称でございますが、日本郵船を日本では中心といたしまして、ドイツのハパックロイド、香港のOOCL、英国のP&Oネドロイドの四社がそういったコンソーシアムを組んでおります。それから、ニューワールドアライアンスというようなコンソーシアムでございますが、これは日本では商船三井でございますけれども、アメリカでAPL、シンガポールのNOL、それから韓国の現代といったような企業がこういったコンソーシアムを組んで業務提携を行って活動を展開しておるという状況でございます。
  156. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 国際海運の中における役員の規制の問題については、海運先進国においては役員で規制する場合それから資本で規制する場合とありますが、どういう状況になっておるかお伺いしたい。
  157. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) 諸外国における船舶の国籍要件、とりわけ先生御指摘の海運先進国の代表的な例を申し上げますが、法人所有の場合には、まず自国法人であることに加えまして、資本あるいは役員のどちらかについて自国民が一定割合以上占めていることを要件としております。  具体的な例を二、三申し上げますと、例えばアメリカやフランス等においては、日本の代表取締役に相当する者の全員と取締役の過半数が自国民であることを要件としております。
  158. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 これは先ほども多くの方が聞かれましたが、国際競争の激化に伴いまして日本船舶の状況というものはだんだん籍船が減っている、したがってそういう状況のもとで具体的にどのようにすれば今後外航海運の中で生き残っていくのか、運輸省としてどのように考えておられるのか御説明願いたい。
  159. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 先ほどからも各委員に御答弁申し上げておりますけれども、平成十年七月現在で百六十八隻、昭和六十三年が六百四十隻ございましたので、大幅に減少いたしております。  そのために、平成八年に日本籍船の確保を図ること、貿易物資の安定輸送の確保を図る等の目的で国際船舶制度を創設し、登録免許税や固定資産税の軽減外国資格受有者に対する承認制度を実施してきております。  三年たちましたので、これがどのぐらいの本当に効果を得たかそろそろ検証をし、そして足らざる点についてまたいろいろな御意見を賜りながら努力をしなければならないだろう、基本的には、これ以上日本籍船なり日本の雇用が減るということについて何としても減らないように努力をしなければならないだろう、このように思っております。
  160. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 罰則の整備についてお伺いをしたい。  今回、罰則の整備についても行っておりますけれども、これまで両罰規定が盛り込まれていなかった理由はいかがですか。
  161. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答え申し上げます。  罰則は法令の実体規定において国民に対して課された義務を担保するために置かれるものでございます。したがいまして、それ自体は国民の権利とか義務を規定するものではございません。このことによりその義務の内容に何ら変更がなくして罰則だけを改正するということは通常行わないものとされているようでございます。  船舶法におきましては、昭和二十四年以降実質的な改正が行われておりませんので、その後一般的となりました先生御指摘の両罰規定を追加するためのみの改正という機会を失してきたわけでございます。
  162. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 今後の法整備についてお伺いをしたいと思います。  今回の法改正は、役員の規制の緩和それから罰則規定の整備等でとどまっておりますけれども、やはりこれから先、新しい二十一世紀の海運の情勢変化につきましても、引き続き船舶法改正というのは抜本的に見直していかなくてはならないのではないかというふうに思うわけでありますけれども、今後の見通し等についてお考えがあれば示していただきたい。
  163. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) お答えさせていただきます。  海運に関する諸制度について、社会情勢でありますとかあるいは海運の動向に対応した制度が求められるということは当然のことであろうと思います。したがいまして、運輸省としましては今後とも社会情勢の変化や海運の動向を見きわめながら適切な対処をしてまいりたいと考えております。
  164. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  165. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 船舶法改正ということでございます。船舶法は非常に重要な法律だと私は認識しております。  昨今議論されております国旗問題につきましても、国旗の掲揚についてこの中で二条規定があります。第一は日本船舶が日本の国旗を掲揚する、もう一つ外国船舶が日本国旗を掲揚してはいけないという規定がありまして、この規定は、私から申し上げるまでもありませんが、現在の海洋法条約の中でも船舶の国籍を明らかにしてその船舶の法的地位を確立するということになっている、そういうことについての国内法措置が、前の領海条約それから公海に関する条約、そういったものの手当てとして既になされていたということでありますので、私はこの法律がそういった点からは極めて重要な法律であると認識しております。  昨今非常に数が少なくなってしまいましたが、日本の外航船が公海上で日本国籍の船であるということを他国に認識してもらい、その法的地位が確立できているというのは、まさにこの船舶法のおかげと言うべきではないかと思っております。  また、今回の改正も、一つの時代の流れといいますか、その中でぎりぎりのところでこういう改正がなされたというふうに私は認識しております。そういうことになりますと、日本の輸出入物資を運ぶ船舶のかなりの部分が外国籍船、その中の大部分は便宜置籍船ということになるかと思いますが、そういうような状況になってきております。  この委員会でたびたび議論されてきておりますし、また現実にナホトカ号の事件、この事件は公海上で起こっておりますが、結局我が国の沿岸を大きく汚染するような事故に発展してしまったということでありますが、外国船の安全性についての取り締まり、これが非常に重要な課題になってきていると思います。東京MOUなどの仕組みができましてポートステートコントロールもかなり実績を上げてきているとは思いますが、この問題はこれからますます重要な問題として扱っていかなければならない問題だと思っております。  そういう点から、外国船の安全性の維持といいますかチェック、そういうことからのPSCの仕組み、それからこれの今後のより確実な実施についての大臣の御見解だけをお伺いしまして、質問を終わりにしたいと思います。
  166. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 日本国旗のことからひもとかれましたけれども、船舶の安全確保は第一義的には旗国の責任であります。しかし、残念ながら旗国の中で必ずしもその責任を果たしていない。したがって、寄港国におけるポートステートコントロールの役割が今日極めて重要になってきております。  ポートステートコントロールにつきましては、昨年開催されたアジア太平洋地域と欧州地域のポートステートコントロールに関する合同閣僚会議の宣言の趣旨にも見られますように、国際的な枠組みで連携を図りながら実施することが重要であります。そのため、アジア太平洋地域の一員である我が国としては、引き続き地域における連携の下で、このポートステートコントロールの重要性、そしてその強化をリードしていきたい、このように考えております。  我が国自身としましては、平成九年度にポートステートコントロールに専従する外国船舶監督官を創設し、その後も順次その体制の強化を図ってまいります。御指摘をいただいたとおり、このポートステートコントロール、私ども国際的にも先頭に立ちながら頑張ってまいりたいと考えております。
  167. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 参議院の会の岩本荘太でございます。最後の質問者でございます。  用意いたしました質問のうち大分もう御答弁いただいておりますので、その辺は省略させていただいて質問をさせていただきたいと思います。  先ほど来の質問で、いわゆる日本籍船といいますか日本の船が非常に減っているというようなお話もございました。また、もうこれ以上減らせないというような御答弁もございましたけれども、数もお聞きしましたけれども、いわゆる船腹数といいますか容量の問題で実際にどういうような状況であるか。  それとあわせて、日本が輸入しているもののうち日本籍船がどのぐらいのシェアで輸入しているのか、その推移等もわかりましたらまず教えていただきたいと思います。
  168. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) まず、日本籍船による輸入量のシェアの推移でございますけれども、十年前と平成九年とを比べてみますと、輸入量全体で約八億八千万トンほどございます、原油でありますとか鉄鉱石でありますとか、重量物でございますけれども、それの一六・六%が現在日本籍船による積み取り比率ということになっておりますが、十年前の昭和六十三年の数字でございますと三五・四%ということになっております。  それで、ではどの程度あればいいのかという御質問もございましたけれども、これは一体どういう事態を想定して算定するのかというようなことで極めて難しゅうございまして、かつて試算ということをやったことはございます。ちなみに、日本人の生活水準全体が生活保護を受ける方たち並みの生活水準というようなことを前提に置きまして、いろんな仮定があるわけでございますが、約三百隻程度は要るのではないか。ただ、そのうち全部が日本籍船でないとだめかどうかというのはそのときの状況にもよるわけでございまして、そこのところはその時々の情勢次第ということでございます。
  169. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 どのぐらいあったらいいかというのは、これはなかなか難しい問題だと思います。例えば米の自給率も、高い方がいいかもしれませんが、それがどのぐらいかという問題とも関連すると思いますので、その辺はよくよく見きわめていただきたいなと思うんです。  今回のこの船舶法改正、先ほどからその趣旨をいろいろ御答弁いただいておりますけれども、国際化の進む中で生き残りだと、生き残りを図るために広く外国人も入れる、入れないとうまくいかない、こういう御答弁だったと思います。  素人の目といいますか一国民として見まして、外国の資本はもう既に入っているわけですね、そんな中で人を入れないというのがよくWTOの問題にならなかったなというような、何か遅きに失したといいますか手おくれになっているんじゃないのかなという見方が一つできるんじゃないかなという気がするんです、これはあえて質問いたしませんけれども。  それともう一つ、日本籍船を確保してずっと持っているということは、先ほどのどれだけの輸入シェアがあるかという御質問と関連するんですけれども、やはり緊急時の、非常時と言っちゃおかしいですけれども、いろんな国際関係でなかなか外国船に頼ったら物が入ってこない、そのときの安全保障という意味もかなりあるんじゃないのかな、そのために日本籍船が生き残れるように法改正をしたといいますか、生き残りができるようなこういう体制をとったんじゃないかなというようにも見られるわけでございますし、またそういう観点から考えることも大事ではないのかなというような気がするわけでございます。  そんなことで、一つだけ質問させていただきますと、安全保障というお考えがあるかどうかわかりませんが、私はそういうのは必要だと思いますが、そういうような観点から、この日本籍船の維持についてのお考え方と、これからどんなふうに対応されていくのか、先ほどそれに関連した質問もありましたけれども、再度大臣からひとつお願いをいたします。
  170. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 確かに岩本委員指摘のとおり、アメリカは明らかに国防という観点からアメリカ籍船というものを確保していく、船をやはりいざというときのためにとっておる、これは間違いないだろうと思います。  我が国は必ずしもそうした立場には今現在は立っておりません。しかし、食糧の問題を御提起いただいたように、食糧自給率やはり我が国としてこれほど下がっていいんだろうかと今御議論が盛んであります。一方で、私は家電業界の出身なものですからよく申し上げるんですけれども、ビデオとかカラーテレビはそろそろもう我が国では生産する工場はなくなってきた、これも事実だろうと思います。したがって、やはりこういう海運という我が国の自由貿易というものの基幹になる産業が、日本籍船がなくなる、また蓄えてきた技術がなくなる、また雇用がなくなるということであっていいかどうか。ここはまさにバランス問題になるだろう。  そこで、私どもの立場としては、もうここまで減ってきてしまって、ぎりぎりの状況になってきているのではなかろうか、平成八年に法改正をいたしたところでありますけれども、今もう一度チェックをしながら何らかの対策もまた考えていかなければならないな、こういう認識でおります。
  171. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  終わります。
  172. 小林元

    委員長小林元君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  173. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、船舶法の一部改正案に反対の討論を行います。  今度の法改正の背景、目的は、法案説明にあるように、国際的な集約・グループ化の進展の中で日本外航海運企業外国企業との提携を強めていくことを目指したものであります。  このことは、第一に、日本海運の空洞化を促進させ、日本籍船の減少と日本人船員や海運労働者の雇用を奪うことに拍車をかけるものであります。日本の外航海運は、他の業界から最も合理化の進んだ業界と言われるほど大合理化が進んでいます。  既に、日本籍船の日本商船隊全体に占める比率は、十年前には三〇%を占めていたものが今やわずか八・五%にすぎません。日本人船員も十年前の約一万八千人から約七千人と一万人も激減しているのです。しかも、日本の大手海運は、営業拠点や本社機能を現地法人に移管し現地人を採用する等、日本海運の空洞化政策により危機的状況にあると言えます。  第二に、日本の外航海運の集約・グループ化が繰り返し行われてきました。十二社体制から中核六社に集約され、現在はわずか三社となっています。その上、国際的な集約、吸収合併が促進されていくのなら、海運市場での寡占・独占化が一層進むことになり、海運秩序を乱すことは明白であります。加えて、日本籍船の存在すらなくなってしまうおそれが生じるのであります。  最後に、今度の改正で取締役に外国人が就任し、これを機に内航海運にまで外国人船員が乗船可能にすることは絶対あってはならないことを指摘し、討論を終わります。
  174. 小林元

    委員長小林元君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  船舶法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  175. 小林元

    委員長小林元君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 小林元

    委員長小林元君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  177. 小林元

    委員長小林元君) 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、関東運輸局栃木陸運支局自動車検査登録事務所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。  本件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。──別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、関東運輸局栃木陸運支局自動車検査登録事務所の設置に関し承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  178. 小林元

    委員長小林元君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 小林元

    委員長小林元君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  180. 小林元

    委員長小林元君) 特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律の一部を改正する法律案及び通信放送機構法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。野田郵政大臣
  181. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律の一部を改正する法律案通信放送機構法の一部を改正する法律案、以上二件につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  初めに、特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律、いわゆる公共電気通信システム法は、高度情報通信社会の構築に資するため、通信・放送機構に特定公共電気通信システムの開発に必要な通信・放送技術に関する研究開発及び特定の公共分野における技術に関する研究開発の総合的な実施等の業務を行わせるための措置を講ずることを目的として昨年制定されたものであります。  今回の改正においては、高度情報通信社会の構築に資するため、以下御説明する二つの電気通信システムを特定公共電気通信システムに追加するほか、所要の規定整備を行うため、本法律案を提案した次第であります。  第一は、警察通信の安全を確保するための機能を有する電気通信システムであります。  第二は、水火災または地震等の災害の状況を把握し、及びこれらの災害による被害を予測するための機能を有する電気通信システムであります。  なお、この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  次に、通信放送機構法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、通信・放送機構が行う通信衛星及び放送衛星の制御等の業務の一部について、経営の自立化を図るため、当該一部の業務に必要な資金に係る出資資格者から政府を除くこととする等の改正を行おうとするものであります。  次に、この法律案の概要について申し上げます。  通信・放送機構が行う通信衛星及び放送衛星の制御等の業務の一部について、経営の自立化を図るため、当該一部の業務に必要な資金に係る出資資格者から政府を除くとともに、通信・放送機構の財務内容の公開を徹底するため、貸借対照表及び損益計算書の官報公告等を義務づけることとしております。  なお、この法律の施行期日は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上がこれら二法律案の提案理由及び内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  182. 小林元

    委員長小林元君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十七分散会