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1999-03-09 第145回国会 参議院 交通・情報通信委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月四日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     内藤 正光君  三月八日     辞任         補欠選任      筆坂 秀世君     林  紀子君  三月九日     辞任         補欠選任      林  紀子君     筆坂 秀世君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         小林  元君     理 事                 加藤 紀文君                 景山俊太郎君                 寺崎 昭久君                 森本 晃司君                 渕上 貞雄君     委 員                 岩城 光英君                 鹿熊 安正君                 田中 直紀君                 野沢 太三君                 山内 俊夫君                 山本 一太君                 若林 正俊君                 内藤 正光君                 本田 良一君                 松前 達郎君                 林  紀子君                 宮本 岳志君                 戸田 邦司君                 岩本 荘太君    国務大臣        運輸大臣     川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君    政府委員        運輸大臣官房長  梅崎  壽君        運輸省運輸政策        局長       羽生 次郎君        運輸省鉄道局長  小幡 政人君        運輸省自動車交        通局長      荒井 正吾君        運輸省海上技術        安全局長     谷野龍一郎君        運輸省航空局長  岩村  敬君        郵政大臣官房長  高田 昭義君        郵政省郵務局長  濱田 弘二君        郵政省貯金局長  松井  浩君        郵政省通信政策        局長       金澤  薫君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君        郵政省放送行政        局長       品川 萬里君    事務局側        常任委員会専門        員        舘野 忠男君    説明員        金融監督庁監督        部保険監督課長  樋口俊一郎君        大蔵大臣官房参        事官       窪野 鎮治君        大蔵省主計局主        計官       佐々木豊成君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○運輸事情情報通信及び郵便等に関する調査  (運輸行政基本施策に関する件)  (郵政行政基本施策に関する件)     ─────────────
  2. 小林元

    委員長小林元君) ただいまから交通情報通信委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四日、千葉景子君が委員辞任され、その補欠として内藤正光君が選任されました。  また、昨日、筆坂秀世君が委員辞任され、その補欠として林紀子君が選任されました。     ─────────────
  3. 小林元

    委員長小林元君) 運輸事情情報通信及び郵便等に関する調査を議題といたします。  運輸行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 質問いたします。  政府の十一年度運輸省一般会計予算は、景気への即効性、また波及性、それから将来性というものを追求するために、整備新幹線、また拠点空港整備などの運輸関係社会資本整備重点を置いた極めて積極的な予算編成と思っております。  その成果を大いに期待したいわけでありますけれども運輸大臣といたされまして、御自分で編成されたこの予算について、その所感をまずお伺いしたいと思います。
  5. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 今御指摘いただきましたように、経済再生小渕内閣のまず第一の基本でございます。そういった意味では、十五カ月予算景気に対して刺激をしていくという立場でつくらせていただいたところでございます。  私、運輸大臣になりまして、いろいろな皆さん方から御意見を賜っております。一つは、大都市圏というものに集中的な投資を行うべきではなかろうか、こういう意見。もう一つは、やはり国土の均衡のとれた発展というのが一番大事だよという意見。実は、この二つの御意見、非常に強うございます。ある意味ではこのバランスをどうとっていくかということが一番大事なんだろうと。  実は、前年度の予算では、大都市圏への集中率は五七%でございます。今回の予算では、地下鉄等、それから拠点空港整備、こういうものを中心にしながら六〇%にさせていただきました。六対四という形で分ける中で、地方の大きな夢であります新幹線の問題や港湾の問題、こういう問題にも取り組ませていただいた、こういうふうに考えております。  進めていく中で一番の課題は、やはりいいプロジェクトを早く仕上げて、そして経済性を発揮していく、ここが一番私ども課題であろうと思っております。何かいいアイデアはないのかという形で随分閣議でももんでまいりましたけれども結論としては、今までの知恵がいろいろ出ているわけですから、それを早く仕上げる方が私は重要ではなかろうかなと、こういったスタンスで予算を組ませていただいたところでございます。
  6. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 ことしの予算の特徴というのは、今大臣が言われましたように、景気対策を最優先に、平成十年度の補正予算と一体となって十五カ月予算ということであります。  ところが、補正予算を組まなくても追加支出が可能な公共事業予算予備費というのを、これは国土庁にあると思うんですけれども、五千億計上されておると思います。  大臣、今いろいろとお考えを申されましたけれども、それでは、この予備費であります五千億を運輸省として今後どういうふうに取り組んで即効性のある、または将来性のあることができるか、その点につきまして、まだ今のを編成されたばかりで大変だと思いますけれども、せっかくこの五千億があるものですから、どういうふうにお考えかちょっと伺っておきたいと思います。
  7. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) これにつきましては、景山委員指摘のとおりで、景気回復を図る中で予見しがたい経済情勢推移等により、公共事業等の経費に予算の不足が見込まれる場合に備えて計上いたしておりますので、今予算を御審議いただいている段階で予測し得る話をいたしますと少し間違った発言になると思いますので、御理解を賜りたいと思います。  いずれにせよ、今後の経済情勢の中で適切に判断をしてまいりたいと思っております。
  8. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 私、時間がちょうど二十分しかありませんので先に進みますが、フリーゲージトレーン技術開発推進というのが出ております。  大臣所信の中で、次世代に向けました技術開発推進として、リニアモーターカーでありますとか、今申し上げましたフリーゲージトレーンメガフロート先進安全自動車次世代港湾技術開発などを挙げておられます。これらはいずれも次の時代の運輸関係社会資本を担う大きなモードばかりであると思いますが、ぜひ積極的な技術開発を今後も進めていただきたいと思います。  そこで、きょうはこのフリーゲージトレーン技術開発についてお伺いをしたいと思います。  我が国開発中でありますフリーゲージトレーン軌間可変電車ですか、これはスペインのタラゴーナにもこれに似たような電車が走っているようであります。それよりも非常に技術的には進んでいると思いますが、地上軌間変換設備を自力で通過する際、車輪の左右間隔、ゲージに合わせて自動的に変換ができる事業であると。新幹線から在来線直通運転を進めることができるわけであります。  フリーゲージトレーンにつきましては、平成八年に政府・与党の整備新幹線建設に関する合意の中で、事業化推進すると位置づけておられます。早期実用化に向けまして各方面からも期待が上がっております。また地方自治体からも上がっております。運輸省は、平成九年から本格的な技術開発に取り組んでいらっしゃいますし、ことし一月からはちょうど私の地元であります山陰本線米子—安来間で約十日間、試験車両走行実験をされております。今後は、耐久試験等のためにアメリカのコロラド州のプエブロ試験線でいろんな実験を行われるようであります。今太平洋上で船に運ばれているようでありますけれども。  この実用の目途はいつごろつけるつもりであるのか、また十一年度予算整備新幹線建設推進高度化等事業費が前年度同額の三十六億円計上されております。このフリーゲージトレーン技術開発には具体的にどのくらい要されるのか、そして、うまく実験がいきまして本格的になりますれば、大体いつごろから、例えば私ども地元である伯備線あたりで走ることができるか、そういう点をお聞かせ願えればと思います。
  9. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) まさに在来線をどう活用していくか、日本じゅうすべて新幹線を引くというわけにはまいりませんので、新幹線在来線をどううまく活用していくか、その中でやはり科学技術というものを基本にしながら何とか解消をしていけないか、これが課題であると思っております。  軌間可変電車技術開発については、平成九年度からおおむね四年間で高速走行試験耐久性確認試験を行い、実用化めどを立てるということにしております。平成十年十月に新しい試験用車両が完成し、先ほど御指摘のように、米子—安来間において百キロ程度までの走行実験を実施しております。さらに、来月からは、約一年半になりますか、米国のプエブロ試験線で時速二百五十キロの走行実験を行う予定にいたしております。  なお、予算の中で整備新幹線建設推進高度化等事業費三十六億円でございますけれども、このうち十五億円程度をこちらの実験に使ってまいりたい、こう考えております。
  10. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 よろしくお願いしたいと思います。  次に、コンピューターの二〇〇〇年問題で非常に我々不安になることがたくさんございます。例えば、きのうの新聞を見ましたら、アメリカ原子力発電所でこれに対してテストをやりますときにトラブルが起こったというようなニュースも書いてございました。運輸関係においてもいろんな問題があろうと思います。  西暦二〇〇〇年になりますと、コンピューターが一九〇〇年と混同いたしまして誤った作動を起こしたり停止したりするおそれがある、コンピューター二〇〇〇年問題、こういうことであります。とりわけ人命を預かりまして、また安全を第一といたします運輸分野において、これは本当に焦眉の急といいましょうか、最優先課題であると思います。現に、二〇〇〇年問題の危険日でありましたことしの一月一日に、我が国を運航する貨物船などでもこれに類したような計器や通信機器が故障するなどトラブルが発生したような報告を聞いております。  万全に取り組む必要がありますが、鉄道航空海運など各交通モードごとの二〇〇〇年問題に対します対応状況をお聞かせいただければと思います。
  11. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) お答えいたします。  運輸省といたしましては、まず私どもが所有するコンピューター体制、これを整備し、二〇〇〇年問題に万全になるようということで管制、気象、海上保安等について所要の措置をとっております。  これに加えまして、先生指摘鉄道航空海運につきまして、各運輸事業者に対しましてまず問題の周知徹底を図るとともに、システム改修を行うよう指示いたしました。そして、それだけではなく実際に動かしてみる、模擬テストを行わせる。そしてさらに、いずれもだめな場合でも、ワークしなくなった場合でも危機管理計画をつくる。このような三段階の構えで万全を期すように指導しているところでございます。  現在の陸海空のそれぞれの事業者対応状況でございますが、改修につきましてはおおむね六月までにすべてを終えるように指示をしております。そしてさらに、それにとどまらず、先ほど申し上げました模擬テストにつきましても、これは若干数字が古うございまして昨年十二月末、今度三月にまた新たなヒアリングをいたしますが、十二月末現在で鉄道については約五割、航空については約七割の事業者が既に模擬テストを終了しております。海運につきましては、この模擬テスト進捗率が若干悪うございまして、三六になっております。  それとの関係で、先生指摘になりました、報道もされましたが、ことし貨物船でプレ二〇〇〇年問題とも言うべきものが発生したという事態でございますが、この情報を踏まえまして、改めて二月に海運関係団体からヒアリングを行いまして、安全航行問題を中心に入念なチェックをするように再度文書で私どもから関係海運業界団体等を通じて各会社に要請したところでございます。
  12. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 いろいろお話を聞いたんですが、運輸省としてそういった面を各業界にもいろいろ指導もされておられると思います。各業界に対しましてはいつごろまでに対応を終了させ、いつまでに報告をさせるのか、おわかりになりますればお願いします。
  13. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) 私どもといたしましては、運輸事業者の方に重要なシステム安全性に関するもの、あるいは事務処理制御系システム、こういったものについては本年六月末までに改修を終えていただきたいと思って要請しているところでございます。  さらに、これが終わった後も、先ほど申し上げましたシミュレーションや危機管理計画の策定、さらにこれを一般消費者に対し情報公開する、こういった手はずをこの六月の後、秋までに整えてまいりたいと考えております。
  14. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 海外ではさまざまな国があると思います。この二〇〇〇年問題に対しまして非常に熱心な国、またそうでない国もあろうと思います。この二〇〇〇年問題に十分対応できない国、そういうところへ旅行する人も正月あるんじゃないかと思います。  海外旅行する人々に対しまして、運輸省として今後業者も含めましてどういう対応をされるかお聞かせを願いたいと思います。
  15. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) 先生指摘のとおり、二月末でございましたか、アメリカ国務省報道がございまして、やはりアメリカ国務省としても国によってはこれら交通問題で問題が生ずる可能性があるということをアメリカ国民に喚起していくという報道がございました。  私どもといたしましても、海外旅行に係る二〇〇〇年問題につきまして、現在、関係機関外務省等政府機関あるいは国際観光振興会また旅行団体旅行業界等を通じまして各国の情報収集に努めているところでございます。そして、この情報収集をしまして評価した段階で、ことしの秋をめど海外旅行業者等を通じまして旅行される方々に適切な情報を提供しようと考えております。
  16. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 心情的には声を大にしてこれは一〇〇%大丈夫だ、こういうふうに責任者である方々は言いたいと思いますけれども、万一の場合何かあるといけないというので、法律的には何か起こったら困るということで逡巡しているような状態ではないかと思います。  そういう点で、最高責任者である運輸大臣のこの問題に対しますお考えというものをまず伺っておきたいと思います。
  17. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) この問題に対して、先ほど答弁がありましたように最悪の場合というものをまず想定してきちっとしたマニュアルというものをつくっておく、ここが一番大事だろうと私は思っております。  ただ、一方で最近、風評被害というのがかなり問題になってきております。外国から旅行は危ないぞという話が一部出されました。そうすると外国へ行くのは全部危ないのかという話になって、もう年末に旅行に出る人はだれもいなくなる、こういう話になりますとまさに観光業者にとっては大変な話になってまいります。  そういう意味では、風評被害のときにもいろいろ言われましたように、正しい情報を分析してそして国民に正しく伝えていく、この努力を我々はしっかりしていかなければならないんだろう、この二つだろうと思うんです。一つは、最悪の場合に備えてきちっとした運輸省としてマニュアルをつくり、またそういう点を事業者徹底していくということ。もう一つは、やっぱり間違った報道とか間違った風評によって国民が惑わされてはいけない、正しい情報を伝えるべく努力をしてまいりたい、こんなことに一生懸命邁進したいと思っております。
  18. 景山俊太郎

    景山俊太郎君 次に、不法入国問題ですが、我が国における不法入国事犯は、近年、近隣諸国から、韓国の人とか中国の人が中心となって、上陸地点も全国に及んでおります。特に山陰地方はこういった問題が多いわけであります。昨年八月、二千九百トンの貨物船ゴールドリッチ・リバーを利用した集団密航など、非常に大口化しております。一方で、韓国沖合海域では、中国船から韓国漁船に乗りかえて日本に上陸する集団密航ども増加いたしております。また、ますます悪質化、巧妙にもなっております。  こういった点につきまして、運輸大臣所信でいろいろと述べておられますが、再度、海上保安庁また大臣のこういう問題に対しますお考えと、それから、日韓漁業協定、新しい協定が結ばれたわけでありますけれども、その中でEEZ、排他的経済水域も設定されました。いろいろと双方努力もされておりますけれども不法操業、そういうものも今後起こるんじゃないかとも心配しております。こういうことに対しまして、海上保安庁対策、またいろいろ予算をつけて船などもつくられておられるし、いろいろと配慮もされておりますけれども、船を一隻つくるのに三年ぐらいかかるということもございます。  そういった点を含めまして、不法入国問題と漁業協定を結んだ後の問題につきましてお聞かせを願って、質問を終わらせていただきたいと思います。
  19. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 今御指摘いただきましたように、海上保安庁が取り扱った不法入国事犯の約九割が中国人によるものでございます。これら中国人による集団密航は、最近では、一見して外見上密航船と識別できる中国漁船等を仕立てて本邦へ直接上陸するものあるいはこれらの船から日本船に乗りかえそして密航するものがほとんど見られなくなり、現在は韓国沖中国船から韓国漁船に乗りかえて密航するものや貿易船に巧妙に隠し部屋をつくって入ってくるもの、こういうものがふえてきて、ますます悪質化、巧妙化いたしております。情報収集体制強化中国等を出航して本邦に寄港する船舶への立入検査の徹底海域における警戒の強化情報入手時における巡視船艇航空機の集中的な投入による監視取り締まり等を行い、不法入国事犯の防止に努めております。  実は、一番大事なことは、中国側韓国側としっかり取り締まろうということが一番大事でございます。外務省を通じてもそうしたことを申し入れているところでありますけれども、なかなかまだはかばかしくなっておりません。この外交ルートを使った努力というものを一層強めていかなければならない、このように認識をいたしているところでございます。  それから、新日韓漁業協定によりまして韓国漁船が多数操業することが予想される日本海、九州周辺東シナ海等の主要な漁場に重点を置いて巡視船艇航空機を配備して監視取り締まりを強めております。新協定発効後に、六隻の韓国漁船排他的経済水域における無許可操業等の疑いで検挙をいたしております。  今御指摘のように、予算をことしは随分つけていただきました。そして、ヘリを乗せた巡視船等いろいろな装備の近代化を急いでいるところでございますけれども、御指摘のように三年ほどかかりますので、今持っておる現有勢力努力を続けてまいりたいと思っております。どうぞ、今後とも御指導賜りたいと思います。
  20. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 昨年三月十二日の当委員会において、私は、自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責の問題を中心質問もし、また意見を述べて、当時の藤井運輸大臣から大変前向きな御答弁をいただいたと承知しております。したがって、平成十一年度の運輸行政予算案にそれがどう生かされるんだろうかということを大変期待を持って見守ってまいりました。したがって、早速この確認から入りたいわけでありますけれども、しかしその前に、自賠責保険、とりわけ再保険の廃止問題をめぐりましてこのところマスコミの論評、それも運輸省保険業界の反目とか意見対立といったとらえ方での報道が後を絶ちませんので、このまま放置するわけにはいかないと思い、この点からまず運輸大臣に御意見を伺いたいと思います。  このところの自賠責保険に関する報道というのは、例えば運輸省懇談会東京海上が不参加であるとか、あるいは自賠責保険をめぐり運輸省損保業界対立契約者事故被害者利益は置き去りにされかねない情勢、あるいは再保険の存廃思惑渦巻くといった角度や切り口のものが少なくないわけであります。  週刊新潮、三月四日号というのがございますが、これにも損保会社の幹部の発言として、「運輸省運輸省だが、あの程度の問題に、東京海上の反応は大げさすぎる。」、つまり運輸省懇談会樋口社長が参加をしないということだと思いますが、「再保険制度などあってもなくても、契約者被害者関係ないのです。」「所詮、小さな利権にしがみつく役人と、姑に財布を握られるのが嫌な業界との争いなんですよ」という記事が載せられております。  大変残念に思いますし、私は、このまま放置しておけば保険制度そのものの不信を招き崩壊をしかねない、それを懸念しているわけでありますが、運輸大臣はなぜこういう取り上げ方がされると思われますか。その点についてまずお伺いします。
  21. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 実は、我が党自民党の中の行革本部の中の議論として取り上げられました。そのときに、やはり両者の意見をしっかり交わすべきだということで、懇談会を持ってやったらどうだ、こういう結論をいただいて実は私ども呼びかけをさせていただいたところでございます。  その後の経過は、確かに一時はそういう御指摘をいただいた場面があったかもしれません。しかしながら、西崎座長のもとで二月二十三日から懇談会が始まりました。東京海上は御出席いただいておりませんけれども、三井、住友両社損保の代表という形で入っていただいて、西崎座長自身も、すべて前提を設けないでいろいろな意見を出し合ってほしいということで、既に議論が始まっているところでございます。  一方で、私も報道されているような東京海上運輸省対立、こういう形ではよくないと思っておりますので、荒井局長にも何度も向こうへ電話をしてもらったり、また社長ということでなければ向こう担当者胸襟を開いて話し合えということで、そういった場も設営をさせていただいたところでございます。また、実はJRのときもいろいろ御心配をいただいたり御指摘いただいてきましたが、やはり民主主義の原点、話し合いながら結論を出していくということでありますので、私自身東京海上社長とお目にかかって議論を交換したことも事実でございます。  いずれにせよ、交通事故被害者の保護及び保険契約者である自動車オーナー利益という観点から、どう進めていったらいいか、お互いが胸襟を開いて話し合いを続けて、そして結論を出してまいりたいと思いますので、また寺崎委員にも御指導いただければ、このように思っております。
  22. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 運輸省のいわゆる懇談会は自民党の申し入れに基づいてつくられたという今のお話ですが、この懇談会ができたからといって、いわゆる業界運輸省の反目が消えるとは私は到底思えないんです。それをなくすために運輸大臣関係局長も御努力されているということも伺っておりますけれども、この問題について言えば、最初にボタンのかけ違いがあったのではないかという気がいたします。  そこで、その経過を若干振り返ってみますと、昨年の十月二十日、損保業界が経団連を通じて自賠責保険における政府強制再保険の廃止を政府規制緩和委員会に要望をいたしました。このとき、業界の方は再保険の廃止としか言っておりませんけれども、要望理由の中に、自賠責と任意保険の二本立て制度、しかも政府保険制度は欧米先進国にはほとんど例を見ないなどと挙げておりますから、再保険の廃止というのがすなわち自賠責の民営化と受けとめられたとしても、それはあながち勘ぐりとは言えないと私も思います。  しかし、これに対して運輸省は、昨年の十一月十二日付の「自賠責保険の民営化(政府保険の廃止)が不適当な理由」というペーパーを作成し、関係方面に配付するなどして反対を表明しております。そして、それが功を奏したとでも言うべきでしょうか、ことし一月の政府の中央省庁改革に係る大綱には、再保険の廃止という文字は載りませんでした。ここまでが自賠責不協和音交響楽の序曲だと思います。  この運輸省のペーパーを拝見させていただきました。私の場合は、これを見てむしろ釈然としないものが残ったというのが正直なところであります。ここで運輸省が民営化反対の理由として挙げた五項目について一々議論しようとは思いませんけれども、私が釈然としないと申し上げたのは、再保険を廃止した場合、自動車事故対策センターの運営に影響が全くないというのか、あるいは緊急医療体制整備事業計画との関係は全くないというのか、これとの関係はどうなるのか、そういったものにこのペーパーが触れていないこと、それが釈然としない理由でございます。これは大事なポイントだと私は思います。この点に触れていないので、マスコミ等は利権争いというような見方をするのではないかと思います。  なぜこの点をペーパーで触れなかったのか、あるいは反対理由と今指摘した問題というのは全く関係ないのか。これは運輸省にお尋ねします。
  23. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) お答えさせていただきます。  今寺崎委員申されましたように、議論の最初にボタンのかけ違いがあったんじゃないかという御意見でもございますが、運輸省から見ましても少々情報不足の点もございまして、出だしのところで少々議論がかみ合わなかったというふうに反省しております。  今御指摘のペーパーは、実は十二月に自民党の行政改革推進本部のヒアリングがあったときに、自賠責保険の民営化についてのヒアリングという項目でございましたので、そのようなペーパーを用意した次第でございます。  なお、自民党行政改革推進本部では、事故対策センターの業務内容については平成九年六月に実は見直しが行われておると私ども事務当局として御説明したという経緯もありますので、今回は、自賠責の民営化という大変大きな問題がまないたの上に上がったという認識のもとにそのようなペーパーを出したという経緯がございます。
  24. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 自賠責の民営化という認識はなかったと今おっしゃいましたけれども自賠責の民営化に反対する理由というんでしょうか不適当な理由ということでこのペーパーをつくられたんじゃないですか。
  25. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 失礼しました。言葉が変だったと思います。  自賠責の民営化についてのヒアリングということでございましたので、自賠責の民営化は大変な大きな問題だという認識のもとにこのペーパーをつくった次第でございます。
  26. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今もお尋ねいたしましたけれども自賠責の特別会計、再保険が廃止された場合に、これまでその運用益で助成されていた金額というのはどうなるんでしょうか。一般会計で肩がわりしてもらえるという前提があるんでしょうか。もしそういうことであれば、どういう根拠に基づいているのか、それもお聞かせいただきたいと思います。  ちなみに、九七年度は、自賠責特会の保険勘定から生じた運用益の中から事故対センターに百十三億円、また、保障勘定から救急医療施設等に二十八億円拠出されております。この助成金はどこからどういうふうに捻出されることになるんでしょうか。
  27. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 自賠責特会の運用益から出しております事業の主なものが事故被害者に対する援護事業中心となるものは事故対策センターの療護センターの運営でございます。それが一つと、それから交通安全対策事業、運行管理者研修、適性診断等をやっております。その二つは再保険特会の運用益からの政策支出として出しております。  再保険が廃止された場合に、この政策支出面がどのようになるかという議論でございますが、二月二十三日に発足しました懇談会におきましては、政府保険廃止の問題も含めて議論するということになったわけでございます。政府保険を廃止したときのメリットあるいはデメリット、デメリットあるいは懸念されるので大きなものがこの政策支出であると認識しております。  その手当てが今後どうなるかということにつきましては、現在まだ議論が始まったばかりでございますが、事務局の頭の中にはどのような支出に代替できるのかというところまでの見通しは持っておる段階ではございません。
  28. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 先ほど指摘しましたように、運輸省のペーパーには盛り込まれなかったけれども、この運用益の使い方というのは、再保険の廃止問題にかかわって大変重要な問題であるという御認識だということは間違いないですね。  それでは、大蔵省にお尋ねしますが、今も自動車交通局長から御答弁いただきましたけれども、もしこの特会がなくなった場合に、それにかわる資金手当てをどうするかというのは今後の問題だということでありますが、一般論としてお尋ねしたいと思います。  私の理解では、再保険が廃止されると特別会計が消滅する、したがって毎年四千億円を上回る純保険料等の運用は損保会社にゆだねられる、運用益も損保会社に帰属する、つまり民間企業の持ち物になりますと。その結果、国は税収面で増収は期待できても、運用益は失うということになるんではないかと思いますが、このように理解してよろしいでしょうか。大蔵省にお尋ねします。
  29. 佐々木豊成

    説明員佐々木豊成君) 自賠責保険のあり方につきましては、先ほど運輸省の方からのお答えがございましたように、懇談会議論が始められているところでございまして、まさに特別会計のあり方、そういう制度のあり方につきましては、そういうものを前提として成り立っておりますので、検討を現在見守っている段階で、そういうものの方向性なり結論が出た段階で必要に応じて検討してまいるということで、現段階でどのような会計の状況になるのかということにつきましてはお答えしがたいところでございます。
  30. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 この運用益の使い方については私の意見を後で述べさせていただくことにして、その前に、運用益の使い方というのは損保の共同プール分からの拠出とも関係がございますので、この点についてまず確認をしたいと思います。  運輸省にお尋ねしますが、現状の損保の共同プールで生じた利益から交通事故防止対策などのために拠出されている助成金というのは、どの法律に基づいて支出されているんでしょうか。
  31. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) いわゆる自賠法、自動車損害賠償責任保障法の根拠に基づいておると思います。
  32. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 正確に言うと自賠法二十八条の三に基づいていると思いますが、ここにはどこへ支出すべしという項目が載っておりません。これは省令にゆだねるということになっているわけであります。法律に基づいて実際の支出金額が決まっているわけではございません。  したがって、この拠出について国会にあらかじめ承認を得るとか、そういうような手続がなされていないと思いますが、どうでしょうか。
  33. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今委員指摘のように、個別の支出についての認可という手続はございません。
  34. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 これまでも私は、共同プールからの拠出金の支出が省令で定められる、そして国会審議にかけられていないということについては好ましいことではないと思っておりました。運用益というのが発生すれば保険料の引き下げに使うというのが当然だと思います。もし、自賠責が民営化された場合には、その発生した運用益というのは保険料の引き下げに使うことを基本にしてもらいたいと思います。  もちろん、この法律の趣旨からいって、例えば保障勘定というのは残ることになるのかなということは想像できますけれども、残余の部分についての運用益というのは保険料の引き下げに使うとか、ないしは保険給付の充実に使うべきだと思っております。そして、行政経費というのは一般会計で賄うのを基本にするべきだと思います。これが第一点目です。  これは自賠責が民営化されたときのお話ですが、その前に、現行の制度においても私は共同プールから支出している行政経費については何らかの格好で事前に国会の承認を受けるべきだと考えておりますが、この第二点について御答弁をいただきたいと思います。
  35. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 国会との関係につきましての基本的な権限は金融監督庁でお持ちでございます。プールの運営自身の監督という立場からだと思いますので、どういう事務でお諮りするということについてはまた政府部内での協議が少々要るかと思っておりますが、寺崎委員に再三御審議願っていますように、国会にお諮りする、何かの形で審議を仰ぐという基本的な考え方につきましては反対するものではございません。
  36. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 それでは、再保険廃止をめぐる自賠責不協和音交響楽の第二章に入りたいと思います。  運輸省の今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会東京海上社長が出席を拒否されたことからこの第二楽章は始まるのかなと思います。  この二月の中旬に、懇談会の開催が固まったとして運輸省から事前の説明を受けました。そのとき、東京海上がなぜ参加をしないのかという理由として、東京海上はこの問題、つまり再保険の廃止は自賠責審議会で検討したいという希望である、それから会社として重複するテーマについて審議会と懇談会という二つの場に参加したくないというようなことをおっしゃったと聞いております。  これを聞いて、私は東京海上の言い分に一理があると思いました。というのは、自賠責審議会というのはこの保険に係る基本的な問題を審議する場になっているからでございます。にもかかわらず、運輸省懇談会をなぜつくったのか。大臣が私的諮問機関ということでつくられたわけですから、この懇談会をつくられた理由について大臣に伺いたいと思います。
  37. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) これは先ほど寺崎委員から御指摘いただいたところでございますけれども事故被害者の保護の条件等を今後検討し、そのあり方を見直すということで、自由民主党行政改革推進本部から運輸省が検討するようにということで宿題としていただいたものでございます。  整理といたしましては、懇談会結論が出れば自賠責審議会に付議するということで、金融監督庁と協議をし、これは調整がついたというように理解をいたしております。  したがって、私自身の勉強会という形でやらせていただいて、そして建設的な意見ができ上がれば正規のルートで法律改正まで至るのかな、こういう思いをいたしております。
  38. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 懇談会の構成メンバー、それから自動車損害賠償責任保険審議会の構成メンバーをそれぞれ比べてみますと、両会議に御出席されているのは荒井通局長お一人だけでございます。  もちろん、自賠審というのは運輸省が深くかかわって人選をした審議会でございます。この法律にも、委員十三名中八名については内閣総理大臣運輸大臣の同意を得て任命することになっているわけであります。大変重い委員会でございます。にもかかわらず、自賠審というのは所管が金融監督庁に移った、運輸省から見るとちょっと手の出しづらい所管になってしまった、これはいかぬということで、損保行政についての意見をまとめるには、そこへ付託するというよりは新しい懇談会、つまり実質的な審議会をつくる必要があるというように勘ぐられてもいたし方がないのではないかと思います。  私も、その点が気になったものですから調べました。そうしましたら、先ほども御紹介しましたように、荒井自動車交通局長だけが両方の会議に所属されておりまして、自賠審の残りの十八名、これは臨時委員も含まれますけれども懇談会の十四名は別人でございます。  ということを考えますと、この懇談会をつくるというのは、みずから人選した自賠審を否定するということになりかねないんじゃないでしょうか。先ほど大臣は、ここでまとまった結論を自賠審に持ち込むんだということをおっしゃいましたけれども、既に自賠審の関係省庁あるいは自賠審から持ち込んでいただいて結構ですという事前のネゴができているということでしょうか。ちょっとその点を伺います。
  39. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 第二幕とおっしゃいましたが、ずっと経緯のある中で精いっぱいしてきたつもりでございます。  自賠責制度は大変大きな制度でございますが、運輸省と金融監督庁の立場を一言言いますと、運輸省被害者保護の観点から、金融監督庁は保険業界あるいは保険制度全体の監督という立場から見ておられるように感じております。  自民党の行政改革推進本部から運輸省が、政府保険の廃止あるいは自賠責の民営化というテーマでヒアリングを受けまして、その結果、事故被害者の保護の条件等を今後検討し、そのあり方を見直すという指示をいただきました。政府行革本部の中でもその申し入れを尊重して対処しろということになったものでございますので、急遽運輸大臣懇談会という形で、学識経験者、保険会社事故被害者の代表等幅広い専門家に参集いただいて検討を始めたらどうかということで、真摯な気持ちからスタートしたと申し上げたいと思います。  自賠責審議会に運輸大臣は付議の権限はないわけでございます。金融監督庁あるいは大蔵大臣と御相談しなきゃいけないという手続面がございます。したがいまして、今後、実は再保険の民営化の事務的な議論が全然煮詰まっていない段階で何をどうしようとしてかけるのかと言われるのが普通でございますので、どういうことを業界は求められてどういうことを運輸省考えればいいのかということがまだテーマにのっていない、いまだにまだ端緒だと思っておりますので、その議論をこなすという役目は運輸省の事務当局の立場からは十分あると思ったと、こういうふうに申し上げたいと思います。
  40. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ちなみに、自賠審というのは、自賠法第三十二条に、自賠責審議会は、「内閣総理大臣又は大蔵大臣の諮問に応じて、責任保険に関する重要事項を調査審議し、及びこれらに関し必要と認める事項を関係大臣に建議する。」と役割が規定されております。これに対して懇談会は、今も局長からお話がございましたけれども、この目的というのは、運輸省懇談会の検討結果を受けて自賠審に付議し、その後制度改正を実施する予定という説明になっているわけであります。  運輸省としてのお考えを表明するというのは差し支えないことだとは思いますけれども、例えば、自賠審が受けつけないとか、あるいは制度改正は運輸省が言う話じゃないよ、だから結論を自賠審としては出しません、議論はちょうだいしても棚上げにしますと言われたら運輸省も困るんじゃないでしょうかね。
  41. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今申しましたように、自賠審という大きな審議会にかけるにはどのようなことを目標にかけるのかということを、懇談会の最初の議論が二月二十三日にございまして、私出席いたしましたが、何を議論すべきかという点から始まったわけでございます。最初のボタンのかけ違いは、何をテーマに課題として議論するのかという点が少々ずれていたというふうに反省いたしますので、その点をしっかりして地道な議論をまずせにゃいかぬというふうに考えております。  自賠責審議会を所掌されている金融監督庁にはこの経緯については御報告はしております。制度問題になればそういうこともあるかもしれないということで協議を進めておりますし、大変注目を浴びた、しかも自賠責制度自身は四十年を経て、制度改革ということも必要が生じるかもしれませんので、今後、逐次御報告を申し上げて、自賠責審議会につなぐような形で事務当局としては働きたいと考えております。
  42. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 懇談会と自賠審というのがある、それぞれ所管官庁が違う、同じようなテーマを取り扱う。これはまかり間違うと、業界運輸省の権益争いじゃなくて省庁間の主導権争いに発展しかねないんではないかという懸念を持っているわけであります。  例えば、損害保険に係る仕事、業務のうち、どの部分が運輸省でどの部分が大蔵省でどこが金融監督庁なのか、それぞれ所管について御説明いただけませんか。まず、運輸省からお願いします。
  43. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) まず、主導権争いというようなことは、ゆめないように心がけていきたいと思います。細心の注意を払っていきたいと思っております。  運輸大臣の権限といたしましては、自賠責法に書いてございますが、制度の運用に当たって、事故の被害者の観点から運用するようにという運輸大臣の責務が全般にかかっておりますので、これが基本的なスタンスだと考えております。
  44. 窪野鎮治

    説明員(窪野鎮治君) 金融監督庁発足後におきましては、大蔵大臣といたしましては、損害保険制度を含む金融制度の企画立案を所掌しております。  ただいまの自賠責保険につきましては、民間の保険会社保険者として引き受けを行う損害保険でありますことから、自賠法上、金融再生委員会または大蔵大臣の諮問に応じて、自賠責保険に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認められる事項を関係大臣に建議することとされておりまして、大蔵大臣としましては、保険制度の企画立案という観点からこの制度の企画立案について携わっているものでございます。
  45. 樋口俊一郎

    説明員樋口俊一郎君) お尋ねの御質問にお答えする前に、先ほど寺崎委員から御質問のございました運輸省懇談会自賠責審議会との関係ということで、私ども自賠責審議会の事務局も担当しておりますので、先日の自賠責審議会の状況を簡単に御紹介をしたいと思います。  去る二月十七日に自賠責審議会が開催されたわけでございます。その場におきまして、委員の方から、政府保険の必要性はなくなったというふうな意見でございますとか、あるいは政府保険はなお必要であるというふうな意見が出されたわけでございます。運輸省からは、自賠責保険について運輸省としての考え方をまとめるためにこの懇談会を開くものであって、考えがまとまれば自賠責審議会に付議し、審議していただくことを考えている、そういう御発言はございました。それから、複数の委員から、自賠責制度の見直しについては自賠審で検討すべきであるというような意見も出されております。  こういったことでございまして、現在、私ども、本件につきまして自賠審の各委員の御意見を順次聴取しているところでございまして、その結果を踏まえて、自賠審の会長、これは倉澤武蔵工業大学教授でございますけれども、会長とも御相談の上、本件の取り扱いあるいは審議会の開催時期など、今後の自賠審の具体的な運営について決めてまいりたいというふうに考えているところでございます。  それから次に、お尋ねの自賠責制度、この問題に関連する金融監督庁の所管でございますけれども、幾つかございますが、初めに、今御紹介しました自賠責審議会の設置あるいは委員の任命ということ、あるいは自賠責保険事業の免許ということで保険会社の免許を与えている、それから保険料の関係、ノーロス・ノープロフィットの関係でございますとか、その他運輸省と共同して所管している項目もございます。  いずれにしましても、私どもとしては、自賠責審議会の事務局でありますと同時にこの制度も所管しているわけでございますので、運輸省あるいは大蔵省とも十分に相談の上、適切な対応をとってまいりたいというふうに考えております。
  46. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 自賠審に付議するのは大蔵省の仕事というように規定されておりますので伺いますが、保険制度の改革ないしは再保険の廃止といったような問題について、ただいま自賠審に付議しているというようなことがありますか、ありませんか、大蔵省に伺います。
  47. 窪野鎮治

    説明員(窪野鎮治君) ただいま金融監督庁の方から御説明がありましたように、二月の自賠審において御紹介があったような議論が行われたところでございます。  また、現在各方面において自賠責をめぐる議論がなされていると承知をしておりまして、私どもといたしましては、大蔵省とすれば保険制度の企画立案を担当するという観点からこの問題に携わっているわけでございますが、御案内のように、政府の再保険事業も民間の保険制度を基礎とし、その仕組みを活用しているものでございますので、仮にその見直しが論議になるという場合には、保険制度、こういう観点からの見直しについて検討しなければいけない、こういう必要も生じる可能性はあると思います。  いずれにしましても、自賠責審議会の事務局でございます監督庁とよく相談をして対応してまいりたい、こう考えております。
  48. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 省庁間の主導権争いになって被害をこうむるのは保険契約者であるとか事故の被害者であるとかということにならないように御留意を願いたいと関係省庁に要望しておきます。  もう一つ具体的な問題として、今保険の企画立案とかそういう難しい言葉でおっしゃられましたけれども、平たく言って、掛金の改定を発議するのはどこか。保険金の上限を発議するのはどこか。また、一般会計に今一兆円を超えるお金を貸していると思いますが、そういったものを貸してもいいとか返し方がこうだとかというチェックをするのはどこの省庁がやっているのか、この三点を伺います。
  49. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 全体的にお答えを申し上げます。  保険料率につきましては、保険会社の申請に基づきまして、自賠責審議会に諮った上で金融監督庁が認可されます。自賠法三十三条でございます。認可の前に運輸大臣の同意が必要とされているところでございます。  それから、保険金限度額の改定につきましては、自賠法施行令第二条にそのまま書かれておりますので、政令の改正ということになりますが、実際上は自賠責審議会に諮った上で政令を改正されるのが通例でございます。なお、原案につきましては、過去の保険金支払い実績などに基づきまして運輸省が原案を作成するという慣例になっております。  それから、一般会計への特会からの出し入れ、繰り入れ繰り戻しでございますが、これは予算編成過程の中で特会を所管しております運輸省と主計局と御相談してやっておるという実情だと認識しております。
  50. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 相互チェック機能が働いたり、三人寄れば文殊の知恵ということになれば大変幸いだと思います。ぜひ主導権争いにならないように連携をとっていただきたいと思います。  さて、ここまで私は再保険の廃止をめぐる運輸省対応の問題点について幾つか指摘してまいりました。それは、伝わるところによると、運輸省が最初に自賠責の民営化はあり得ないという結論から出発したと聞いているからいろんなことを申し上げたわけであります。私は、損害保険そのもののあり方をもっと被害者救済であるとか過失責任主義の観点から抜本的に見直してもらいたいという期待を持っております。少なくとも業界との権益争いであるとか、あるいは省庁間の主導権争いというような汚名を着せられるようなことはぜひ避けていただきたいと思います。  もとより、私は運輸省対応だけに問題を感じているわけではありません。例えば、業界が再保険の廃止を要望するというだけでその先の青写真を何ら示していない。また、この保険制度を通じて社会的責任をどう果たそうとしているのかという考え方も公表されていない。これでは厚かましさ、あるいは物金第一主義、御都合主義と受けとめられても仕方がないなという面も感じております。したがって、そういうところに今のまま自賠責を民営化し、すべてをゆだねるというような形式をとることについて一抹の不安も感じているわけでございます。  例えば再保険が廃止されて自賠責が民営化されれば、業界として次に進む道というのでしょうか、次のステップというのは法定保険金だとか強制付保だとか、あるいは賠償責任の形態など、基礎的な枠組み、基礎的な条件というのは国の基準を守るでしょう。しかし、ノーロス・ノープロフィットを要求するのではないか。要求しても私は民間企業だったらそんなのは当たり前だと思います。あるいはそれの緩和とか撤廃を求めるであろう。そうなれば普通は、つまり談合がなければということですが、過当競争が起こる。損保会社の体力に応じた優勝劣敗が起こる。体力のない保険会社は退場をしていただくということになるのはだれにでも想像がつく筋道だと思います。だからこそ大手の保険業界は民営化を少しでも進めたいと思うし、体力の弱いと思われる損保の方は現状のままにしてもらいたい、つまり護送船団方式を維持してもらいたいということを願うのは容易に想像もつきます。  しかし、このままでいいのだろうか、それが本当に保険契約者やあるいは事故で被害を受けた人の救済にとってベストの仕組みと言えるのだろうかというのが今の問題なんだろうと思います。  この制度ができたのは言うまでもなく昭和三十年でございます。その当時に比べますと、車の保有台数も飛躍的にふえました。したがって、自動車を使う人も自動車の使われ方も物すごく多様化しているわけであります。また、元受け保険会社の経営基盤というのも比較にならないぐらい向上していると思います。発足当時は、危ないなということもあって再保険という案が浮かんできたといういきさつもあると思います。また一方では、行政のスリム化ということも求められている昨今でございますし、民間でやれることは民間に任せろというのが今日の要請でもあろうと思います。そういうことにこたえるのが国の仕事、国のリーダーシップ、行政のあり方というものではないかと思うわけであります。  三月二日の自民党の行革推進本部幹部会で、運輸省は、再保険を廃止した後、具体的に保険業界からこういう方式があれば検討をするというようなことをおっしゃったやに私は出席者の一人から聞いております。私はそれはちょっとスタンスが違うんじゃないかと思います。  運輸省は、国家国民のために保険行政はかくあるべしということを、保険業界のことも利害も考えなければいけないとは思いますけれども、やっぱり国家国民に基礎を置いて今の保険行政はどうあるべきかということで、もっと前に出て一歩引っ張るような提案をするというのが運輸省のあり方として必要なのではないでしょうか。それでなければ、行政に対する信頼も保険に対する信頼も失われるに違いない、そんなふうにも思っております。  そういうことを考えますと、これから検討する際には、自賠責の民営化だとか各種の規制というものも聖域をつくらないで議論するということが必要だと思いますし、あるいは議論の場として、懇談会でやります、審議会でやりますというような、二つの場で同じようなテーマをやるというのがいいのかということも考えなければなりません。  私は、議論をもう一回振り出しに戻して、どういう場で議論をするべきなのか、あるいは民営化をすることはよろしくないという結論じゃなくて、フリーハンドで、ベストの保険制度をつくるためにお互いに痛みがあってもそれは耐えようじゃないかという案を運輸省はつくってもらいたい、そのように思っておりますが、どうでしょう。
  51. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 自民党で運輸省が答えたのは私でございますので、少々ニュアンスが違ったかと思いますので、恐縮でございます。  具体案が出ないので、出てからしか検討しないといったものではございません。既に検討委員会が始まっておりますので、そこに出席いたしましてその場でも発言したわけでございますが、官民の対立とか、この自賠責業界と役所だけの制度ではないので、七千四百万台の強制保険の制度なので、広く検討していただきたいと懇談会でも申しました。  自民党の中でもそういう気持ちで懇談会を進めたいというふうに申したわけでございます。ちょっと愚痴を言ったと思いますが、具体案、再保険廃止後の姿が見えないものだから、その検討がまだ初期の段階ですというつもりでちょっと愚痴になったようなことでございます。  本意は、むしろ広く積極的に検討を進めたい、しかも今委員が言われましたように、発足以来四十年もたっている制度でございますので、制度の改正点は必ずあるに違いないというふうに思います。運輸省は再保険を通じて被害者保護を図っておるという自負はございますが、しかし完全じゃない面もございます。  先ほどの中で、昨年自算会の再審査機構というのを運輸省がお願いしてつくらせていただきましたが、自算会の監督は金融監督庁でございますけれども運輸省がお許しを得てこういう再審査制度をつくったらどうかということを提案して実現させるように政府部内で調整を図ったという気持ちもございますし、その延長線上で、広くこの制度を被害者保護の観点から見直すということを今も思っております。  具体案が出てくれば議論が進むと思いますので、ぜひ見守っていただき、また御指導を願いたいと強く感じる次第でございます。
  52. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今私は、今後の自賠責保険のあり方についての進め方をるる申し上げましたけれども、聖域を設けずに、つまり再保険がなければ被害者保護はできないんだとか、そういう前提を設けずにフリーハンドで、また審議会の場をもう一回つくり直したらどうですかというようなことも申しましたが、運輸大臣はどのように受けとめていただいているのか、御所見を伺いたいと思います。
  53. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 冒頭申し上げましたように、新聞報道でいろいろございました。業界との話し合いというのも私は二月二十三日から始まったというふうに認識をいたしております。  ただ、そのスタンスが業界意見だけを聞くというスタンスであってはならない。今御指摘いただいたように、国民の立場からどういう自賠責保険制度というものをつくり上げたらいいか。そういったときに、昨年、私どもの役所からいえば大変厳しい御意見業界からいただいたわけでございます。しかし、それを門前払いということがあってはならないよ、すべての人に入ってもらって意見を聞かせてくれと、その上で国としてのルールに従ってやっていかなきゃならない、このように思っております。  それからもう一つは、行革という立場、それから外国との比較という立場、こういったものをしっかり踏まえながら議論は詰めていかなければならないなと思っております。  せっかくの御提案でございますけれども懇談会がスタートいたしたところでございますので、審議を十分していただくように、続けてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
  54. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 再保険の廃止の問題等についてはまた議論をさせていただく機会があると思いますので、冒頭に申し上げたように、去年の当委員会大臣から御答弁いただいた幾つかの点について確認をさせていただきたいと思います。  まず、自賠責特会からの政策経費の支出についてでありますが、大臣から、一定の節度を持つことは当然だ、この運用益についてどこまで使えるのか、どこまでやってはやり過ぎなのか、そういう例示的なことをお示しできるように検討したいという趣旨の御発言がございましたが、この点についてはどうなりましたか。
  55. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 大臣の御所見の前にちょっと経過を御説明させていただきます。  昨年、節度を持って政策経費の支出に当たれと御指摘がございました。その後、政策経費の支出が、交通事故の事後対策といいますか、療護センターを中心とした被害者対策と、事前対策と申しますか、安全対策というふうになっております。それぞれにつきまして、運輸大臣の諮問機関でございます運輸技術審議会で安全と環境に配慮した今後の自動車交通政策のあり方ということで大きな議論をしていただいております。  その中で、運輸省の行っております自動車交通安全の大きな分野を自賠責の政策として占めておりますので、その政策の評価をするという議論をお願いしております。効果を測定するのをお願いしております。それをできれば数量的に表明できないかということで、難しい面もございますが、そういうお願いをして議論を重ねております。  しかし、それまでの間、具体的な年度の予算等で節度のある運営をどのように図るかという点にも御指摘がございましたので、年度年度の予算におきまして、政策効果の大きい事業とか具体的に効果が説明しやすい事業優先したり、あるいは創設以来長期間が経過している事業については基本的に縮小、廃止の対象にするという個別的な対応をしたりしておるところでございます。  また、事故対センターの予算案につきまして、療護センターの運営予算を削減を図るとか、事故対策補助金の一部縮減を図るとかという個別対策を別途講じておるというのが経過でございます。
  56. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 運用益を投入した場合の効果のはかり方についてはぜひ引き続いて御検討いただきたいと思っております。  それから、荒井局長はこういうことをおっしゃっておりました。平成六年から七年にかけて一般会計に特会から一兆二千億円繰り入れをしておりまして、その一部は既に返済が始まっておると思いますけれども、この貸したお金について、自賠責特会から一般会計に繰り入れた金額の利息については、どのような形で利息を返すかというのは予算の中で決めることだけれども、特会から貸す際にはぜひ趣旨に沿って、つまり私はあらかじめ利息の支払い方、利率などを決めるべきだということを申し上げたのに対して、そういう趣旨で大蔵省とも話し合いをしたいということをおっしゃっておりますが、この点はどうなりましたか。
  57. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 昨年、自賠責特会から一般会計への繰り入れに対する利子分の約定といいますか協議がどうなっておるかという御質問がございました。現在の大蔵省との了解でございますが、繰り入れがなかったとした場合の運用収入に相当する額に達するまでの額を付して自賠特会に繰り戻す、預けたのは利子をつけて繰り戻すということが基本的な了解になっております。  利子分でございますが、元本の一般会計へ繰り入れたときからの繰り入れ期間に対応した資金運用部預託金利を適用して算定するというのを基本的な考え方にさせていただいております。
  58. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大蔵省、御出席いただいているので確認しますが、これの利息というのは、今日のような金利が下がったときのその時点を起点にするんじゃなくて、繰り入れた時点の経過に応じた利息を繰り戻しのときにつけるというように理解してよろしいでしょうか。およそ五%ぐらいになるのかなと期待しておりますが、どうでしょう。
  59. 佐々木豊成

    説明員佐々木豊成君) 先ほど荒井局長の方からのお答えにありましたように、運輸省と大蔵省の間におきまして元本の一般会計への繰り入れ時における繰り入れ期間に対応した資金運用部資金の金利を適用するということでございますので、そのようなことで対応してまいりたいと思います。
  60. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ちなみに、六年、七年の繰り入れ時の資金運用部の長期利率というのは何%ですか。
  61. 佐々木豊成

    説明員佐々木豊成君) 恐縮でございます、ちょっと手元にございませんので後ほどまた。
  62. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 それは後で見ればわかることですから確認させていただきますが、二〇〇〇年までにたしか繰り戻しをされることになっていたと思いますが、ちゃんと約束は守ってもらえるんでしょうか。運輸省、どうでしょう。見通しはどういうふうに思っていますか。
  63. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 二〇〇〇年でございますから平成十二年度までの元利の繰り戻し完了ということでお約束いただいておりますので、その方向で今後とも大蔵省と協議を続けてまいりたいと考えております。
  64. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ありがとうございました。
  65. 森本晃司

    ○森本晃司君 私たちがこの地球に生きており、またこの世に生をうけたわけでございますが、このかけがえのない地球を私どもは未来に向かって残していかなければなりませんし、人の命をさらにまた大事にしていかなければなりません。そういった点で、きょうは運輸大臣にお見えいただいておりますので、二つ大きく絞って御質問をさせていただきたいと思っております。  一つは、地球温暖化の問題であります。もう一つは、近く義務づけられるであろう子供の命を守るためのチャイルドシートの問題であります。この二点にわたってよろしくお願い申し上げます。  まず、私たちの生活というのは自動車なしで生活をすることはできませんし、また今日の経済状況を考えてみても、自動車を減らすということはこれはできません。しかし、今エネルギー問題、環境問題、さまざまな課題で自動車について地球規模で論じられるようになったのではないかと思うところでございます。  大臣所信表明を聞かせていただきました。そこで述べておられることは、「地球規模での環境問題、とりわけ地球温暖化問題が深刻化しており、平成九年末には二酸化炭素の排出削減を国際的に取り決めた京都議定書が採択されたところであります。」「ここで義務づけられた排出削減目標を達成するため、」云々ということで、「強力に推進してまいります。」というかたい決意を述べておられます。運輸行政として当然この二酸化炭素削減に全力で私どもも一体となって取り組まなければなりません。  今大臣所信表明の中にもありましたけれども、いわゆる京都議定書が採択されました。COP3のことでございますが、そこで日本のCO2排出削減目標は一九九〇年基準で六%減と決まりました。我が国にとって超緊急ペースで推進しないと到底達成することはできないのではないか、こう思っております。  運輸省としても推進本部を設置された、そしてそれで取り組んでおられるということでございますが、具体的な対策や実現の見通しについてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  66. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 今御指摘いただきました九七年十二月の京都における気候変動枠組条約第三回締約国会議、COP3でございます。二〇〇〇年以降の先進国の温室効果ガス排出削減目標が定められた京都議定書が採択されました。我が国については、今の御指摘のとおり二〇〇八年から二〇一二年に一九九〇年に比べて六%削減という厳しい数値目標が義務づけられております。  運輸部門からの二酸化炭素排出量は我が国全体の二割を占めております。しかし、現状では二〇一〇年までに一九九〇年に比べますと四〇%増加をするという予想が立てられております。したがって、運輸部門での取り組みは極めて重要であると考えております。  具体的には、二〇一〇年までの伸び率を一九九〇年に比べて一七%増に抑える。自然に推移する場合に比べて千二百七十万トン削減することが必要でございます。したがって、さまざまな施策を進めなければならない。  まず第一に、やはり自動車の利便性というのは非常に高うございます。しかしながら、そうした流れは流れでありますけれども、公共交通手段、これをしっかり打ち立てることが大事であろう。また、例えばトラックと港湾海運との接点をどうつくりながらモーダルシフトというものをやっていくか、こういう問題がまず第一にあると思っております。  それから第二の問題として、さはさりながら、森本委員指摘のとおり、車の利便性というのはなかなか我が日本人が離れるわけにはいかぬぞ、したがって、やはり低燃費の車の導入を図るべく税制部門においてインセンティブを与えながらやっていかなければならない。また、実は今議論いただいているところでありますけれども、インセンティブだけではなくて、あめとむち、場合によっては税制的に低燃費車については安い税金にさせていただく、しかしながら、大きな車で割合効率の悪い車については高い税をいただくということ、グリーン化も考えていかなければならないなということで今取り組ませていただいているところでございます。
  67. 森本晃司

    ○森本晃司君 今大臣から取り組む姿勢についてお話をいただきましたけれども、特にCO2の排出量の二割が運輸部門というお話がございました。その中で九割が自動車からのものでございます。  先ほども申し上げましたように、重要な経済指標であり、厳しい不況の折から、また大臣もおっしゃったような利便性から考えますと、自動車そのものを抑制することは政策手段としてはとれないということでありますし、一方、排出規制は国際公約でございます。自動車部門について、どう対処されるか伺いたいと思います。
  68. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 自動車が運輸部門の九割を占めるという状況でございます。  対策といたしまして、自動車自身の排出を低燃費といいますかCO2を下げる、いわゆる単体対策と言われている部門がございます。それでできる限りやる。それだけではもちろん不十分でございますので、自動車の使い方ということになりますが、物流部門でございますとか都市交通でございますとか、交通流を円滑にするとか、あるいは節約するとかといった部門でも何とか燃費の消費を防がなきゃいけない。あるいはその他、実はアイドリングストップというような、簡単なことでございますが、そのようなことでも普及すると非常に節約があるということもございます。そのような部門で何とか全体として温室効果ガス六%削減のための運輸部門の責務を果たしていかなきゃいけないと考えております。
  69. 森本晃司

    ○森本晃司君 自動車を減らすわけにはいきません、ますます必要なものでございますから。そして考えた場合、自動車部門でいろいろシステム的に渋滞を緩和するという必要性もありますが、まず第一に、私は低公害車の普及に努めなければならないのではないかと思っているところでございます。  ひとえに低公害車の普及という問題が大事で、そこにかかっていると言っても過言ではないと私は思っています。ハイブリッドカー等の低公害車は急速に実現されつつありますし、さらに加速度的に普及される必要がありますが、低公害車導入は、高いとかあるいはガスの基地がまだ十分ではないとか、いろいろ意見があって遅々として進んでいないのが現状ではないか、このように思っておりますが、低公害車普及について、運輸省としてどの程度の見通しを立てておられるか、お伺いしたいと思います。
  70. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 低公害あるいは低燃費車の普及でございますが、特に低燃費でございますが、六%削減という目標を達するためには、低公害・低燃費車の普及というものを約三百四十万台強ぐらい普及しなきゃいけないという目標を内々持っております。  なかなか大変な目標でございます。そのための施策、税制でございますとか補助金でございますとか啓蒙でございますとか、あるいはメーカーの開発でございますとか、いろんなことを検討し、かつ実行に移しつつあるところでございますが、なかなか現状は厳しいとは思っておりますが、それに向かっていろいろ毎年の努力を積み重ねていかなきゃいけないと思っております。
  71. 森本晃司

    ○森本晃司君 二〇一〇年で天然ガス車はおよそ百万台あるいはまたハイブリッドも同様に百万台ということ、それを含めて今局長は三百四十万台というお話がございましたが、当初目標、去年あたりあるいはことしも含めて二十万台ぐらいはいこうという目標を立てられたのではないかと思いますが、現在低公害車はどれほどございますか。
  72. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 二十万台とおっしゃった後で答えにくいのでございますが、九千台でございます。
  73. 森本晃司

    ○森本晃司君 今局長がおっしゃったとおりだと思います。この目標達成については本当にあらゆる形で、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、税制部門も含めて総体的に取り組まないと大変な問題になりますし、国際的公約を果たすことができない、約束事を果たすことができないという結果になってくると思います。  ハイブリッドカーなどの低公害車が普及した場合の排ガス量の抑制効果とその関係について、試算はあるのでしょうか。排ガス規制との関係からその見通しをお願いしたいと思います。
  74. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 低公害・低燃費車が出だし大変細々としたものでございますが、目標どおり二〇一〇年に達成されますと、CO2の排出抑制目標の約三六%が低公害・低燃費車の導入の効果として計算されております。
  75. 森本晃司

    ○森本晃司君 そこで、低公害車導入のための誘導策が必要ではないかと思っております。  大臣、今も申し上げましたけれども、税制の問題について考えがあるというふうにお答えいただきましたが、我が党は、今低公害車に減税措置を講ずるべきではないかということを主張しております。  具体的に、環境に優しい低公害車、ハイブリッドカー、電気自動車、天然ガス自動車等に対する自動車取得税の非課税化、これが一点でございます。二点目には、環境に優しいマイカー、最新排ガス規制車等に対する自動車取得税暫定税率五%について、二年間に限り本則の三%に戻すということを主張しております。税制でもこういった措置を行ってユーザーがやはり低公害車を買おうという気持ちを起こさなければなりませんが、こういった誘導策について、大臣のお考えあるいは運輸省のお考えをお尋ねしたいと思います。
  76. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 実は、昨年の税制の論議の中におきまして、運輸省も同様の主張をいたしてまいりました。しかし一方で、地方自治体の貴重な財源になっておることも事実でございます。そうした議論の結果として、低燃費車事実上一%の削減ということで一応決着を見たところでございます。予算、税制が成立をいたしましたら、何とかこの四月からその車の普及に向けて懸命に取り組んでまいりたい、こう思っております。  ただ、一%でどのぐらい効果があるのか、自分たちはもうちょっと大きく要求していたんじゃないか、そうなれば実現ができたんじゃないか、こういう御主張もあるかもしれませんけれども、今日財政の限られた状況もございましたので、まず一%削減という中で取り組みを始めたいと思っております。ただ、効果が言われるとおり余り上がりませんでしたら、もう一段と努力をしなきゃならぬな、また要求もしてまいらなきゃならない、このように考えております。
  77. 森本晃司

    ○森本晃司君 大臣のおっしゃったとおりでございまして、残念ながら一%ということになっております。しかし幸い、我が交通委員会は力ある運輸大臣を擁しているわけでございまして、政府・与党の中でも大変な力をお持ちでございます。地方の財源の問題はこれもまた大事な問題でございますが、これをすべて切り捨てていくというわけではなしに、これから地方分権が進みますから、それはそれとして別の財源を十分に考えていかなければならない。  しかし、この一%で果たしてどこまで進んでいくんだろうか。私は、結果は大変厳しいものにしかならないと残念ながら今そう思わざるを得ないんです。予算成立後の今後の論議の中でも、大臣、ぜひ力強い強烈な折衝を行っていただいて目標達成に向かっていただきたいとお願いをするところでございます。  そこで、まず隗より始めよという言葉がございます。なかなか財政的にはいろんな問題があるわけでございまして、私たちは実現に向かって頑張りますが、運輸省の中で一体どうなっているんだろうかということを私は同時にお伺いさせていただきたいと思います。  今運輸省の車の持ち台数、全国で運輸省が持っている車は何台かと聞きますとこれは大変なことになるかと思いますが、少なくとも霞が関の台数はおわかりになるかと思います。持ち台数をお答えいただきたいと思います。
  78. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) 霞が関の関係でございますと四十一台程度考えております。
  79. 森本晃司

    ○森本晃司君 全国はわかりますか、わかりませんか。
  80. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) 全国のうち、通常の行政事務の用に供する車両でございますと、全国で百五十六台でございます。
  81. 森本晃司

    ○森本晃司君 その中で、霞が関の四十一台のうち低公害車が何台導入されていますか、全国でまた何台でございましょうか。
  82. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) 霞が関、全国含めまして現在の時点では三台にしかすぎません。
  83. 森本晃司

    ○森本晃司君 運輸大臣、我が運輸省が先頭を切って進めなければならないわけでございますけれども、全国百五十六台のうちの三台ということなんです。  やっぱりまず私は運輸省からこの問題を始めないと、他の民間の皆さんに幾ら言っても進まないと思うんです。目標はあるんですか。
  84. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) 政府といたしましては、通常の公用車のうち行政事務の用に供するものを平成十二年までに一〇%に高めるという目標がございます。  運輸省といたしましては、現在の三台というのは大変低いと思っておりまして、平成十二年度末までに新たに二十一台の低公害車を導入いたしまして、平成十二年度末には政府の計画の目標である一〇%を上回る一五%を達成いたしたい、かように考えております。
  85. 森本晃司

    ○森本晃司君 もっと積極的にやられたらどうですか。おっしゃったように公用車は平成十二年一〇%導入目標ということでございますが、十年末現在で全体で〇・一%だとも伺っております。  昨年の九月の閣僚懇でこのことが大変話題になった。真鍋環境庁長官が必死になって絶えず訴えているわけでございますけれども、前向いて進まないということで、官房長官談話まで発表されたというふうに思いますが、環境庁だけではなしに運輸省もぜひその先頭を切ってやっていただきたいと思います。  大臣、いかがでございましょうか。この官房長官談話、発表されたときの大臣のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  86. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 低公害車について今二十一台という目標を持たせていただいておるわけですけれども、全体のガス供給等の利便性ももう少しお互い考えていかなきゃならぬなと思っております。それから、先ほどお話し申し上げた低燃費車、これはプラスオンでまた考えていかなければならぬだろう。  ただ、一方で運輸省、これは通産省も一緒だろうと思いますけれども、なるべく外国の車を買えと、こういう制約も一つかかっております。その辺の整合性もとりながら、やはり環境庁同様運輸省もトップランナーにならなきゃならぬと思っておりますので、努力してまいります。
  87. 森本晃司

    ○森本晃司君 ガスの場合、ガス基地という問題があって、なかなか霞が関がそれに対応しかねているという状況もございましたが、私の聞くところによりますと、今度霞が関の五号館のところにことしの五月ごろガス基地が運転開始されるということでございます。  これは運輸省に聞いてもどうかわかりませんが、今大臣車は何台あるんですか。
  88. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 最近そういうことがありましたので覚えておりますけれども、今乗っているのは一台でございます。予備車として一台、合わせて二台であります。
  89. 森本晃司

    ○森本晃司君 ぜひ閣僚の皆さんにもそういった車を使っていただくように勧めていかなければならないのではないんだろうか。運輸大臣がどういう車に乗っておられるかどうかを今伺いませんが、五月に充てん所ができると、非常にいろんなことでおっしゃっていたことが一つは大きく克服して前進できるんではないだろうか。大臣車はすぐにいつでも発進できるようにしなければならないということから今までそういうことになっていたかと思いますが、ぜひそのことも推し進めていただきたいと思うところでございます。  それでは次に、チャイルドシートの問題に入らせていただきたいと思います。  交通事故による死者数、直近の数字で九六年度で年間一万四千人に上っている。負傷者においては百万人に近いわけでございます。車の凶器性についていろいろと認識をしていく必要があるわけでございますが、そういった意味で、今度チャイルドシートが義務化される、そのことは私は当然だと思っておりますし、よき取り組みだと思っております。  運輸省としての着用への取り組みはどのように考えておられるか、お答え願いたいと思います。
  90. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) チャイルドシートは小さいお子さんの衝突時の生命を守るのに大変有効だということでございます。親御さんが手で持っておられても時速七キロで衝突するともう手が離れちゃう、弾丸のようにお子さんが飛び出すというふうな実証実験も、外国でございますがあるようでございます。したがいまして、チャイルドシートの着用というのは、衝突時の被害軽減あるいは生命保全に大変重要かつ致命的な装置だと思います。  使用の義務づけ自身は道路交通法でされるわけでございますが、運輸省の責務といたしましては、このようなものが安全なチャイルドシートですよという認定制度、安全基準を示すという役目が一つございます。それからもう一つは、正しい使用をしてもらう。間違った使用をすると逆にのどが詰まったりということにもなりかねないというようなことで、その周知徹底。それから、チャイルドシートを使ったらこれだけの効果がありますよという安全性の効果を確認して啓蒙するというような、そういったさまざまな役割があろうかと思います。  要すれば、安全なチャイルドシートの普及とその正しい使用をされるような啓蒙ということが運輸省の大きな責務だというふうに考えております。
  91. 森本晃司

    ○森本晃司君 義務化されますと、これは幼い命を守るということでそれぞれユーザーが取りつけて、そして子供の命、これは金額にかえることはできませんから着用すべきでありますけれども、その負担は、今国民の皆さん、御婦人の声等々を聞きますと、全部ユーザーが負担しなきゃならないのかということがございます。私は、ユーザー、それからメーカー、行政、この三者が一体となってやはり負担すべきものではないかと考えますが、いかがでございますか。
  92. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) チャイルドシートは御家族にとりましていっときの使用でございますので、保存等にやはり負担がかかります、あるいは購入等に負担がかかります。それで、最近ではいろんな立場から無償貸し出しというようなこともごくわずかでございますが普及し始めております。市の当局がされましたり交通安全協会がされましたり、あるいはJAFといったような団体がされましたり、あるいは最近ではメーカーがそういうこともしようかという動きもあるように聞いております。  ユーザーに基本的な着用義務がかかるわけでございますが、メーカーあるいは行政、運輸省を初め警察その他の行政機関あるいは市町村等、協力して普及に努めにゃいかぬと認識しております。
  93. 森本晃司

    ○森本晃司君 ユーザーの負担を少しでも軽くするためには、メーカーに対していろいろと考えていかなければならない。メーカーの設備投資に対して優遇措置を検討すべきではないだろうか、このように考えるわけでございます。  シートベルトは普及いたしましてどの車にももう装備されているわけでございます。シートベルトの場合には比較的そんなに高いものではないというふうに思っていますが、チャイルドシートの場合はやはり負担が大きいと思っております。メーカーにそういう優遇措置をしないと結果的に価格にはね返ってユーザーの負担になると考えますが、いかがでございますか。
  94. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) メーカーの責務でございますが、一部でございますがチャイルドシートの普及について大変熱心になってきておられるメーカーがございます。車の方の取りつけの器具を標準化するとか、取りつけやすいようにするといったような面もございますし、もう一つ、チャイルドシート自身を、ディーラーがされることでもございますが、販売のときにサービス品で出したりというようなことが始まっております。  どのような形で、例えばそれが要らなくなったときのリサイクルにどのように回すかというふうに考えますと、また行政も関与してシステム考えにゃいかぬという面もこれからあろうかと思っておりますが、そのような試みに呼応して普及に努めていかにゃいかぬというふうに認識しております。
  95. 森本晃司

    ○森本晃司君 チャイルドシートというのは子供の成長につれてどんどんかわっていくものでありまして、ある程度、使用限定商品とも使用期間限定商品とも言えるものであります。したがって、その辺のリサイクルをいかにするかという点についても運輸省は取り組んでいただきたい、こう考えるところでございます。  メーカーの優遇措置を考えて、さらにユーザーに対する助成も同時に考えていかなければならないのではないかと思います。各地方自治体では一部そういったことを考え始めているところもあるようでございますが、地方自治体がそういったものを負担した場合、国はそれに対してどのような助成を行っていこうと考えておられるのか、お伺いいたします。
  96. 荒井正吾

    政府委員荒井正吾君) 今例えば北海道の根室市でございますとか宮城県の白石市で、市が御自身で無償貸し出しをされております。それに対する国からの直接助成は現在制度がございません。今後、市の当局がやられる場合、あるいは交通安全協会がやられる場合、あるいはほかの、JAFといったようなユーザーサービスをしている団体がやられる場合、いろんなケースが出てくると思いますが、国の支援体制というのはまだこれからの検討課題だと思っております。関係行政機関もございますので、政府部内で十分協議して、ぜひ普及ができるような、今委員おっしゃいました優遇措置も含めて検討を進めたいと考える次第でございます。
  97. 森本晃司

    ○森本晃司君 間もなく法制化される問題でございますので、ぜひ運輸省も取り組んでいただき、ユーザーの負担を少しでも軽くして、そして多くの人が着用し、幼い命をお互いに守っていくということにしていきたい、このように考えております。  最初に申し上げましたけれども、地球を守り命を守るという意味から、NOxの問題あるいはCO2の問題、そしてチャイルドシートへの運輸省の積極的な取り組みをお願いいたします。  最後に所感を大臣からお伺いして、終わりたいと思います。
  98. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 冒頭お話がありましたように、自動車の利便性というものは極めて有効であり、また国民のニーズというものは高いと思っております。しかしながら一方で、今御指摘いただいた環境と安全という問題については、規制強化と言うとしかられますけれども、この部分においては運輸省は譲ってはならないんだろうと思っております。  御指摘いただいたことを頭に入れながら、行政としても努力を積み重ねてまいりたいと、このように思っております。
  99. 森本晃司

    ○森本晃司君 終わります。
  100. 小林元

    委員長小林元君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  101. 小林元

    委員長小林元君) ただいまから交通情報通信委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、運輸事情情報通信及び郵便等に関する調査を議題とし、運輸行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 林紀子

    林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  私も大臣所信表明、見せていただきました。この所信表明では、交通運輸における規制緩和を積極的に進めると大臣は述べられ、鉄道航空、旅客自動車など各分野の規制の緩和を図るとなさっていらっしゃいます。  私たちは、規制緩和一般を否定する考えは持っておりません。国民や中小業者などにとって余計な規制を撤廃していくというのは当然のことだと思っております。ただ、交通運輸部門の規制緩和は、大臣もおっしゃっておりますけれども、安全、生活交通の維持、利用者保護などに直接大きな影響を与えることになるので、慎重に対応することが求められていると思います。  そこで、まず大臣にお伺いしたいのですが、規制緩和によって安全や住民の足に重大な影響があってはならない、こう思いますが、いかがでしょうか。
  103. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 御指摘のように、規制緩和につきましては光と影の部分があることは事実でございます。我が国の高コスト構造を解消していく、一つの大きな方針であろうと思っております。その中で、規制緩和、需給調整というものを取っ払っていく、これがまさに今政府の方針と言ってもいいだろうと思っております。  例えば、飛行機等では、東京—札幌にしましても東京—福岡にしてもかなり安い料金が設定をされるようになってきた。したがって、受益者にとってはまさに還元をされ始めたんだろうと。いい競争の結果、光の部分が出てくる。しかしながら、一方で影の部分が出てまいる。離島にいたしましても過疎地域にいたしましても、そういう問題が当然出てまいります。そこへどう運輸省として取り組んでいくべきか、また地方自治体と力を合わせながらやっていくべきか、これが私どもの大きな課題であろうと思います。  そういった意味では、できるだけ規制緩和をして、民間事業者が精いっぱい努力をしてもらう、競争の中にいいサービスを提供してもらう。そして、一方で影の部分に私どもがどういう政策を入れていくか、これが課題であろうと思っております。  例えば、離島航空路でありますれば、税の社会、離発着料の社会、そして今回は補助というものまで導入をすることになりました。そういった意味で全体の生活路線というものをどう守っていくか、大きな課題として今後も努力をしてまいりたい、このように考えております。
  104. 林紀子

    林紀子君 そこで、今度の規制緩和では需給調整の廃止を図るということになっているわけですが、このことは今までの法体系の骨格を変える全面的な改正になるのではないかと思います。とりわけ重大なのは、各事業や路線の廃止の規制緩和問題、鉄道航空、旅客船など不採算路線や赤字路線が今後どうなっていくのか、大変大きな不安が広がっています。  そこで、きょうは私は鉄道に絞ってお聞きしたいと思います。  今度の鉄道事業法の改正で行おうとしているのは、廃止をする場合どうなるかということですが、現行では大臣の許可が要ったが、今度は鉄道事業者が一年前に届け出れば自由に廃止できることになる。大臣関係地方公共団体や利害関係人の意見を聴取することになっておりますけれども、一年間話し合いをしても地元が廃止は絶対に困るとなった場合でもこの廃止をとめることはできない。また、今までは廃止に当たっては地元自治体の同意が必要であったけれども、今度は同意が不要になる、こういうことになるわけでしょうか。
  105. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 今回、提案させていただいております鉄道事業法の改正の中は、お話のように需給調整規制を廃止するということでございます。参入につきましては免許制から許可制ということになるわけですが、これに伴いまして、お話のように退出規制につきましては現在許可制でございますけれども、これが新法におきましては一年前の事前届け出制という制度になります。  一方、お尋ねの地方公共団体の同意等の問題でございますけれども、現在の鉄道事業法におきましては、許可申請に先立ちまして当該鉄道事業者に対しまして地方公共団体の同意を得るように実は指導してございます。これは原則的な指導でございまして、そういう地域での合意を得た上で申請に及んでいただくということになっておるわけであります。  一方、新法におきましては一年前の届け出でございますが、その届け出の前後を問わず鉄道事業者が廃止の意向を表明した段階で、地方公共団体から申し出があった場合には運輸省の方が主体となりまして地元の協議会を設置させていただきまして、当該鉄道事業者より路線を維持できない事情等につきまして十分な説明を求めるとともに、地方公共団体等とかわります交通機関、代替交通機関の確保等につきまして調整を行うこととしておるということでございまして、地域における生活交通サービスの確保のための措置を講じていきたいというふうに考えております。
  106. 林紀子

    林紀子君 今お聞きしただけでも大変な改悪だというふうに思うわけです。  路線を廃止する場合、今までは大きな規制が二つあったのを、それを全面的に外すということになると思うわけです。事業者が赤字や不採算路線を対象に自由に切っていくことができる、こういうことになるのではありませんか。そういう意味では、今回の改正というのは赤字路線を対象にした廃止自由化とも言うべきものだと思いますが、いかがでしょうか。
  107. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 手続的には、先ほど申し上げましたように、新しい法律になりますと一年前の事前届け出制ということでございます。  そういうことでございますが、まず現行の鉄道事業法におきまして、先ほど申し上げましたように、許可制の中で事実上運用として原則として地方公共団体の同意をいただいてくるようにということでの指導をさせていただいておりますが、この場合におきましても実は大臣の許可の基準が法律上明定されております。つまり、ほかの交通機関がないなど重大な支障を生じる場合を除き運輸大臣は許可しなければならないという明文がございます。  その意味におきましても、代替輸送機関整備された場合においては、あるいはそういう整備されておる段階、事情においては現行においても実は鉄道の撤退ということが可能であるわけでございまして、そういう意味におきましては、新法におきましては先ほど申し上げましたように次の代替輸送機関整備されるように最大一年間という期間を設けて、運輸省の方としても、運用上ではございますけれども、その手だてをせっかく努力していくという制度でございますので、実効的な話として、決して新法になったから自由に退出が可能になるというふうには理解してございません。
  108. 林紀子

    林紀子君 全然違うんじゃないでしょうか。  今までは住民のそういう状況がどうかということをきちんと勘案した上で大臣が許可をするということだった。今度は一年前に届け出れば、幾らいろいろ地元の人がだめだだめだ、困る困ると言っても、もう一年たったらそれで済んでしまうということなんじゃないでしょうか。  ですから、そういう意味では、赤字路線を勝手に切れないという、この歯どめというのは何にもなくなってしまう、保障は何にもなくなってしまう、そういうことになるんじゃないかと思います。赤字路線は切るべきだというような法律になってしまうのではないかと思います。  答申も同じことを言っているのではありませんか。「輸送需要の少ない鉄道路線ではそれらの優位性を発揮できず、収支採算も悪化しているものが少なくない。これら鉄道路線に係る事業は、今後、バス等の需給調整規制の廃止、道路整備の進展等からその事業を取り巻く経営環境はさらに厳しくなり、経済的にはバスを中心とした交通体系に移行することが考えられる。」、今局長がおっしゃったことがそのままここに記されているわけです。「また輸送コスト面でもバス等の自動車輸送の方が経済的であるのが通例であり、これらは、より適切な輸送モードへの転換を図ることが適当である。」。つまり、輸送の需要が少ない、不採算、赤字路線廃止の方向というのを示しているのじゃありませんか。ですから、赤字線を対象にした赤字路線の廃止自由化法だというふうに私は考えざるを得ないわけです。  現に、JR西日本は、広島の可部線の一部廃止について、この法律を改正する前に廃止の同意をすれば代替バスを責任を持って運行する、しかし法改正の後なら代替交通を運行することに必ずしもならないと。つまり、早く同意をしろ、こういうおどかしをしているわけです、法改正の後ではもう遅いですよということを盛んに言いながら。これではまるで恫喝だということを地方自治体の方たちは皆おっしゃっているわけです。  鉄道事業法改正の趣旨はこういうことまで含んでいるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  109. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 鉄道事業法の改正の趣旨、それからまた新法の我々が考えております運用等の趣旨は、先ほど申し上げたとおりでございます。先ほどのは具体のJR西日本地元への説明の過程における御議論かと思いますけれども、仮に先生がおっしゃられたようなお話を地元にされておるとすれば、これは非常に我々としても遺憾でございますし、そういう意味での今後適切な地元との話し合いが進められることを期待しております。
  110. 林紀子

    林紀子君 やはり地元の方たちがこれはおどかしだ、恫喝だと受け取られるようなことをJRともあろうものがやるべきではないと思いますので、そこは運輸省の方がきちんと対応していただきたいと思います。  そして、次にお聞きしたいことは、事業者が路線を、鉄道を廃止するに当たって判断をするその物差しは何かということなんです。  例えば答申では、「収支採算の確保が困難な路線」について、「需要が小さく、鉄道輸送サービスの持つ優位性を十分に発揮できない状況にある。また輸送コスト面でもバス等の自動車輸送の方が経済的であるのが通例」である、だから適切な輸送モードに転換を図るべきだというふうに言っているわけです。  この収支採算の確保ができない、このことはコストを収入で償うことができないということ、つまり赤字だということになると思うわけですが、これが廃止対象の一つの基準になるんだと思うわけです。  それからもう一つは、輸送密度四千人未満の路線、これを廃止の対象にしているんじゃないかと思っているわけです。  事業者はこのことについて何と言っているかといいますと、JR西日本は、輸送密度四千人というのは、鉄道とバスを比較し、これ以上なら鉄道の方がコスト的に有利であるがこれ以下ならバスの方がコストが安くなる、輸送コストの分岐点がこの輸送密度四千人だ、こういうことを盛んに強調しているわけです。  これは国鉄時代のローカル線廃止の基準と同じ考え方だと思いますが、現在四千人未満の路線数、営業キロはどうなっているか、まとめてで結構ですのでお答えいただきたいと思います。
  111. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) お答え申し上げます。  JR旅客会社、六社ございますが、その路線数は全国で百七十八路線ございます。その営業キロは二万五十九キロ。そのうち輸送密度ではかりまして四千人未満は六十七路線五千三百三十四キロでございます。
  112. 林紀子

    林紀子君 八四年の当時が五十一線四千四百五十七キロというふうに過去の記録を見せていただきました。  きょうは皆様のお手元に、今局長がお答えくださった細目といいますか、きのう資料として出していただきまして、それをもう一度JR会社別に並べかえたものをお配りしておりますので、皆さんの地元交通機関がどうなっているかということも含めてごらんをいただけたらと思うわけです。  これを見て、輸送密度四千人未満が六十七線五千三百三十四キロ。八四年当時と比べますと、十八線八百七十七キロ四千人未満というところがふえているわけです。  そして、国鉄からJRに移行するとき、当時の橋本運輸大臣は、こうした四千人未満の路線はJRに移行して生き返らせるのだということを盛んに国会の場でお答えになっておりましたけれども、この表を見ますと、生き返らせるどころか、これは昭和五十二年から五十四年の輸送密度が出ておりますけれども、それと平成九年と比べますと、何と輸送密度がアップしているのはこの表の中ではたった二つしかないわけです。JR北海道の江差線とJR東日本の津軽線。それ以外は全部輸送密度というのは大幅にダウンをしている。もう大変なものだと思うわけです。  こうした二千人未満から四千人未満の路線がJRに移行するときまず廃止の対象となったわけですけれども、今回もこれが廃止の対象になるんじゃないか、その可能性が出てくるんじゃないかということが十分予想をされるわけです。  今までのいろいろお答えの中ではっきりしてきたのは、第一に、路線の廃止は事業者の判断で届け出だけで自由に廃止ができる。第二に、どの路線を廃止するか、この判断も事業者任せ。それも赤字線で輸送密度が四千人未満の路線が廃止対象になってくるんじゃないかと思わざるを得ないわけです。  さらに重大なのは、その全部が四千人未満という路線だけではなくて、今度は路線の一部の区間を取り出して廃止する、こういうことまで考えているんじゃないかということです。  今これがやられようとしておりますのは、私が住んでおります広島県にあります可部線、広島から三段峡というところまで走っている路線ですが、全部で六十キロあるうち可部から三段峡までの四十六キロ、約八〇%を区切って西日本はばっさり切ろうとしているわけです。じゃ、あとの二〇%のところはどうして切らないのかといったら、これは乗車人員もふえてうまみがあるところで、ここはとっておこうというわけなんですね。ですから、どう考えても非常におかしい話だと思うわけです。  地元の自治体や商工会や観光協会、学校、PTA、もうすべての団体がこれには反対だ。私たちは日本共産党で反対だと言っているんですけれども、自民党の議員さんも含めてこれは反対をしております。署名も短期間で五万人もの人たちがこれを廃止してもらっては困るということを言っているわけです。  JRになってこのように特定区間だけを取り出して廃止するというのは、盲腸線を除けば今度が初めてのケースじゃないかと思いますが、どうですか。
  113. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 路線の部分廃止の件でございますけれども、まずJRについて言いますと、国鉄の分割民営後におきましてJRの旅客鉄道事業の廃止例といたしましては、特定地方交通線の廃止と新線開業に伴う既存線の廃止というものがございますが、これを除きますと、JR北海道の函館線の砂川—上砂川間七・三キロ、深名線の深川—名寄間百二十一・八キロ、それにJR西日本の美祢線の南大嶺—大嶺間二・八キロの三例がございます。  この三例について申し上げますと、まず深名線につきましては、深川—名寄間、これは路線全部でございまして、廃止のケースでございます。それから函館線の砂川—上砂川間、美祢線の南大嶺—大嶺間につきましては、幹線からの枝分かれ線の廃止ということでございます。そういう意味で今回のケースとは異なるものでございますけれども、路線の一部廃止というケースでございます。  なお、こういうケースにつきましては、民鉄につきましては、今回の広島地域におきます可部線のような路線の一部先端部分を廃止させていただいたというケースはございます。
  114. 林紀子

    林紀子君 今例に出していただいた砂川—上砂川七・三キロ、それから美祢線、いずれも盲腸線ということで、あとは深名線というのは百二十一・八キロですか、全部そっくりなくしてしまったということなんですね。ですから、JRの方がここから先はとっておくよ、ここから先はだめだよ、廃止するよということで一部を取り出してというのは本当にこれが特に本州では初めてのことだというふうに思うわけです。  こういうふうにもうからない区間だけを取り出して、一部の区間だけを取り出して廃止できるような手法というのを認めてしまったら、ローカル線にとどまらず、幹線まで不採算、赤字の区間が自由に廃止されていくことになって、全国各地に本当に大きな影響があるんじゃないかと思うわけです。  ですから、分割民営化のときに、可部線のように一部区間を取り出して廃止することが想定されたわけですので、我が党の当時の運輸委員であった小笠原貞子議員は何度も念を押して質問をいたしました。当時、国鉄のローカル線廃止法で全国の八十三線三千百五十七キロの赤字路線が切られたが、同じ四千人未満の地方交通線はJRに引き継がれたが、この路線が民営化されたら廃止されるのではないかという、その懸念を追及した。そして二つ目は、今申し上げました可部線のように、一部区間を取り出すと四千人から八千人の地方交通線で二十二線千二百キロ、幹線でも千二百二十五キロもそういう部分がある。これらも廃止の対象になるのではないかということを本当にしつこいぐらい念を押したわけです。  これに対して、当時の橋本龍太郎運輸大臣は、新しい会社になってから路線を切り捨てていくということは本来考えてはいない、育成して抱えていく、これを抱えても会社は十分将来にわたって企業経営ができる確信を持っている、ローカル線を切り捨てるつもりはない、生き残らせるためにこそ分割民営化の方針をとった、こういうふうに何回も同じ答弁をしているわけですが、この橋本大臣答弁というのは間違いないことですね。
  115. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) お答え申し上げます。  国鉄民営分割のときに、それぞれ旧国鉄から旅客六社は路線を引き継いだわけでございますが、そのときに引き継いだ路線のすべてが実は黒字ではない、赤字路線も含めて一つのネットワークとして引き継いだということでスタートしております。これは先生お話しのとおりでございます。そのときの経営として、時の運輸大臣が申されましたように、ネットワークを育成していくんだということでスタートしたのも事実かと思います。  その意味ではそれぞれの会社が黒字路線の収益をもって残念ながら赤字の部分について埋め合わせをしながら路線を維持していくということでスタートしたわけでありますけれども、その中で、当時の赤字の程度基本的に事情が異なってきておる部分の線区があることも事実でございます。その場合に、具体的に申しますれば、採算性というよりも鉄道でお運びすることが社会全体としていいのかどうか。例えば、鉄道というのは確かに便利ではございますけれども、大量性ということでたくさんの方をお乗せしなければ非常にコストの高いものでございます。そういう物の考え方の中で、鉄道特性が分割時とは基本的に変わってきておるというような部分について、それを地元の御理解をいただきながらバス転換していくというところまで実は橋本運輸大臣考えの中で否定するものではなかったろうというふうに我々は理解しております。  そういう意味で、我々としては、一般の民鉄と違ったJR各社のスタートでございますので、特にスキームとして赤字路線も抱えながらということでのスタートであったこと、そういうことで一般の民鉄と違いますので、十分に認識し、運輸審議会の答申の中でも、その辺については利用者なり地域に対して説明責任があるというところまで答申で書いていただいているところでございます。我々としてもそういう説明責任をJRに指導しているというところでございます。
  116. 林紀子

    林紀子君 説明責任はもちろん果たしていただかなければいけないわけですけれども、しかし、今局長がおっしゃったように、生まれも育ちもやはりほかの私鉄とはJRは違っているわけです。JRは国民の財産をただ同然で引き継いで、経営が十分成り立つ仕組みをつくっているわけなんです。ですから、国鉄からJRに移行するとき当時の橋本運輸大臣がこういう答弁をしたというのは、これは国民への公約なんじゃないですか。そのやり方、可部線が今やろうとしていること、JR西日本がやろうとしていること、それは約束に真っ向から反するものだと思わざるを得ません。  JRの廃止理由、四千人未満を下回っていて鉄道特性がないということを盛んに言います。また、赤字であるということも言うわけですけれども、じゃ、可部線全体の輸送密度と乗車人員はJR発足時と現在とを比べてどうなっているのかをお答えいただきたいと思います。
  117. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 我々、鉄道事業法に基づきましてJR各社から毎年度報告をいただいておるわけですが、この鉄道事業実績報告に基づいて申し上げますと、可部線に係ります輸送密度、輸送人員について申し上げますと、昭和六十二年度輸送密度は全線で三千二百六十人、輸送人員が八百九万八千人、これが平成九年度には輸送密度が四千六百三十五名、輸送人員が千三百八十万ということになっております。  ちなみに、可部線の今回議論になっております可部—三段峡間につきましてJRから内々状況を聞きましたところ、輸送密度につきましては昭和六十二年度には八百六名、輸送人員が八十九万三千人でございましたが、平成九年度では輸送密度四百九十二名、輸送人員としては五十五万七千人となっておるというふうに聞いております。
  118. 林紀子

    林紀子君 今のお話ですと、輸送密度もふえている、四二%ふえている。それから乗車人員の方もJRに引き継がれた後伸びているわけですね、これは八〇%ふえている。むしろ大きく伸びているということじゃないかと思います。  赤字については、可部線全体の赤字額はどうなっていますか。
  119. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 我々、これも鉄道事業法に基づきまして鉄道事業実績報告をいただいておるわけですが、この中では路線ごとの運輸収入、路線全体の運輸収入の報告はいただいておりますが、支出については実は報告を受けておりません。その意味で、可部線全体の運輸収入だけ申し上げますと、昭和六十二年度の収入は八億二千万円、それに対しまして平成九年度は十二億八千百万円というふうに聞いております。  それから、例の廃止問題についての申請はまだ来ておりませんので、詳細な資料については持ち合わせておりません。
  120. 林紀子

    林紀子君 詳細な資料はまだ来ていないということですが、少なくとも六十二年度と比べて収入もふえているということになるわけですよね。輸送密度の方も後退をしていないということは今お答えがありました。  西日本全体の経営、利益というのがどうなっているかということですが、それもJRが発足したときよりも六倍に伸びている。内部留保も約五千億円に達している。こうしたJRが、もうからない区間だけ、可部線の八割もの区間を切るということは全く不法じゃないかと思います。  そこで、大臣にお聞きしたいんですけれども、生き返らせるといって残したことを、今までの御答弁では、もう幾重にも不当な形で切り捨てていくということにならざるを得ないと思います。こんなことをもし可部線で許したら、JR西日本がそういうやり方をするのなら、体力のあるJR西日本がやることなんだから、経営の厳しいほかのJR、北海道や四国や九州はもちろん、私鉄でも同じことがやられることになるんじゃないか、まさに日本全国に大変重大な影響を与えることになるんじゃないかと思います。  ですから、可部線の一部廃止ということにつきましては極めて慎重な対応が求められていると思いますが、大臣いかがでしょうか。
  121. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 今数字でお示ししましたように、今回、JR西日本から廃止という形で御相談をかけさせていただいていることにつきましては、かなり乗客数が減ってきておると、今局長から御説明をさせていただいたとおりでございます。  冒頭申し上げましたように、規制緩和によって競争が進み、国民皆さん方にいいサービスが提供される一方で、不採算部門については、やはり民間事業者でありますから、一つの判断をしていかなきゃならぬということは事実であります。  そして、そのときに生活路線としてどう維持していくかという立場でありますので、バスという代替も提供されないということになれば私どもははっきりとした方針というものを打ち出さなければならないと思っておりますけれども、バス代替路線というものを、バス転換というものをJR西は表明いたしているわけですから、住民の足というものは私ども確保されると、このように考えております。  したがいまして、鉄道事業法第二十八条において、鉄道事業の廃止については、当該廃止によって公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあると認める場合を除き許可をしなければならないと規定されております。したがって、公衆の利便が著しく阻害されるか、バスの代替で住民の足というものはきちっと確保できるか、ここが判断基準になるだろうと思っております。
  122. 林紀子

    林紀子君 私も地元に行っていろいろお話を聞いてまいりましたけれども、可部線というのは地元の人たちの本当に大切な足になっているわけです。  加計高校という高校がちょうど真ん中あたりにありますが、この高校生の七割の通学の足になっているわけです。今大臣はバスとおっしゃいましたが、バスに転換された場合は運賃だけで三倍にもなる、そういうこともあるわけですし、またお年寄りは病院に通う大事な足になっているわけです。時間どおりに来てくれる、雪の日も安心だ、何よりトイレがあるのがありがたい、こういう声で、本当に大事な足になっているわけです。  先ほど、規制緩和は光と影があるということを大臣おっしゃっておりましたけれども、本当に過疎の町の人たちの大事な足、それを大事に守っていくことこそ今求められていることじゃないかと思うわけです。  もう一度お渡しいたしました表を見ていただきたいんです。可部以西、今輸送密度が少なくなっていると盛んにJRが宣伝しているところ、そこでは移行当時と比べて輸送密度が六〇%になってしまったということなんですが、この表を見ていただきましたら、JR西日本で、例えば一番上の三江線、木次線、越美北線、その三つを見ましても、いずれも輸送密度は、昭和五十二年から五十四年の平均と平成九年を比べてみますと六〇%以下になっているわけです。それから、この表全体を見ていただきましても、当時の六〇%以下になっているところが四十七線あるわけです。  ですから、今のような、大臣がおっしゃったような論理でバスに転換をしていくということになりましたら、可部線だけではなく、こういうところが全部切り捨てられていってしまう、こういうことにならざるを得ないんじゃないかというふうに思うわけです。  私は、この改悪を許すならば、大量公共輸送機関として全国各地を結んで大動脈の役割を果たしている鉄道がもうずたずたにされて、国民交通権というのは全く侵害されていく、地域経済にも大きな影響を与えることになる。こうした赤字路線区間廃止自由化法というのは撤回すべきだということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  123. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社会民主党の渕上でございます。  さきの臨時国会で国鉄の長期債務問題について御議論いただき、法律として成立をする、その後、JR各社でいろんな問題が派生をしてきました。一時険悪な状態にもなったわけですけれども、JR各社の誠意といいましょうか努力といいましょうか、同時に、あわせて運輸省の説得がきいたと思うのでありますけれども、言うならばJR各社と運輸省との間の信頼関係があったからこそあの問題について非常に円満に解決したのではないかというふうに思います。そういうことについて、運輸省努力を多とし、これから先も引き続きひとつ運輸行政に誤りのなきよう行っていただくようお願い申し上げておきます。  しかし、まだ運輸省として残る問題として、成田空港の問題、それから先ほどもお話ありましたように、北海道、四国、九州、それに加えて貨物の問題、これらの問題についてもひとつ引き続き努力をしていただきたいと思います。  当時議論となりました国鉄労働者の問題についても、今後政治の場でも努力をいただきたい、こういうことをまずは冒頭にお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、大臣所信表明の中にもありますように、これから先の運輸行政について、二十一世紀が希望に満ちた時代になるよう運輸省としても頑張っていきたい、同時に、あわせて国土交通省としての再編問題についても努力していきたいというふうに言われております。  そこで、国土交通省の役割として、国土交通省設置法案関係大綱では、「国土の総合的、体系的な開発及び利用」、「社会資本の整合的な整備」、「交通政策の推進」などとなっています。これでは名称からして余りにも巨大な公共事業官庁をつくろうとしている感がぬぐえないと私は思います。  しかし、交通基盤の整備中心とした公共事業推進行政に重点が置かれているように感じられます。交通のハードだけではなくて、やはりこれから先は少子・高齢化社会を迎えるわけでございまして、交通のソフトをどう整備していくかということが大変重要な点であると思います。そこで、総合的な交通政策の推進に改めるべきではないかと考えますけれども、まずは大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  二つ目には、現在、経済企画庁が「運輸に関する基本的な政策及び計画の総合調整に関すること。」を所管いたしまして、国土庁が「総合的な交通施設の体系の整備方針に関し、基本的な政策を企画し、立案し、及び推進し、並びに関係行政機関の事務を調整すること。」になっております。  今回、国土庁を統合して国土交通省ができることから、縦割り行政を除去し、交通に関する基本政策の企画立案から事業実施及び評価まで同一組織で一貫した政策遂行を行うことができるようにするためにも、国土交通省において総合的交通政策の企画立案と調整機能を担うことを明確にすべきではないかと思うんですが、その点について大臣の御所見をお伺いしたい。  三つ目には、四省庁が統合され、二十局が十四局に減少することになり、新たに総合政策局、国土計画局、土地・水資源局、都市・地域整備局、海事局が誕生しますけれども、その他の局は現行のまま移行し、何も変わらないわけでありますから、局の再編を見ましても縦割りの各省を合体させるだけのように見受けられます。むしろどのような政策を遂行していくのかなど、目標をやはり明らかにすべきだろう。目的別、横断的、総合的、一元的にやはり事務や政策を推進し得る大胆な再編成というのが今回必要ではないかと思っています。  特に、今回の目玉といたしましては、建設省と運輸省一つの省となることによって、道路交通行政を一元化するとともに、陸海空の総合交通政策を可能にすることにあると私は考えます。  そこで、総合交通政策、総合交通体系を展望しながら、総合交通体系の確立と一貫した政策遂行の実施等、課題を踏まえた省の設置が私は大変必要ではないかと思うんです。例えば、道路局と自動車交通局を統合した道路交通局をつくるようなことなども検討をして一元化をしていくべきではないかというふうに思います。  今議論をされておりますように、基本的には中央省庁の基本法の中にもありますように、具体的な総合交通とは書いておりませんけれども、そういうことを目指すべきではないかと思いますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
  124. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 渕上先生に御指摘いただきましたように、中央省庁等改革基本法では、国土交通省の「主要な任務」として「交通政策の推進」、それから設置法案の大綱におきまして「総合的な交通体系の整備」、こういう形で明記されているところでございます。  昨年も特別委員会でかなりこうした議論を聞かせていただき、また私も申し上げてまいったところでございますけれども、私自身の当時の、中央省庁再編のときの考え方は、この委員会と一緒のように交通情報省というのを実は強く打ち出しておりました。結果として渕上先生の今述べられたような意見というものが大勢となって国土交通省というものが選択をされた、これは間違いないと思っております。したがって、その経過にかんがみても、今先生が言われた方向へ我々は進んでいかなければならないと思っております。  ただ、四省庁が一挙に合体をいたすことになります。同じ建物の中に入っていますと、割合いろんな形で交流が行われ、さまざまな議論が行われていくわけでありますけれども、私自身はこんなように考えております。  多分、副大臣というものが三名とか四名とか設置をされるんだろう。さあその人たちが、今言われておるような縦割りで旧建設省担当副大臣、旧国土庁担当副大臣、旧運輸省担当副大臣というのでは何のために合併をしたのかなと私は言われるんだろうと思うんです。局自体はある程度縦割りにならざるを得ない。しかしながら、お話がございました道路と交通の問題とか、道路と鉄道の問題だとか、そこはやっぱり同じ副大臣で所掌していくような形に変化していくことが今回強く求められているところだろうと思います。  今回は、局のあり方まで今度の設置法でお決めいただくわけでありますけれども、その後さまざまな議論の中で言われるような方向づけを私どもも目指していかなければならないな、このように考えております。
  125. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 大きな改革の時期でありますから、誤りのなきようどうかひとつ、私たちの願い、要望にかなった省になり、国民が安心して利用できるような運輸行政をつくっていただきたいことをまず要望しておきたいと思います。  次に、今国会の大変重要な議題でございます新ガイドラインの関連法と運輸関係につきましてお伺いをいたします。  さきの朝鮮戦争、それからイラン・イラク戦争のときの我が国の船舶、船員などの被害状況についてわかれば教えていただきたい。  一九九四年の時点で朝鮮半島を想定した在日米軍が対日要求の内容を明らかにいたしました。そのときに千五十九項目の支援項目に整理されているというふうに言われておりまして、この中で民間協力として運輸に関係する分野はどれぐらいあるのか、その詳細について運輸省が把握しておればひとつ御説明を願いたいと思います。  二つ目には、ガイドライン、周辺事態法において民間協力が記されておりますけれども運輸関係者から不安が表明されております。新ガイドラインにおける運輸業界の協力の詳細についてどのような具体的な内容が検討されているのか、今の時点どうなっておるのか、どういう項目が検討されておるのか、お教え願いたいと思います。
  126. 谷野龍一郎

    政府委員谷野龍一郎君) まず、お尋ねの第一点目の答弁でございますが、イラン・イラク戦争及び朝鮮戦争の際に被害を受けた日本人船員の死傷者数についてでございますが、イラン・イラク戦争におきましては、日本船主協会の調査によりますと二名の方がお亡くなりになり、一名の方が負傷されております。なお、その際巻き込まれた日本船舶の隻数は四隻でございます。  それから、朝鮮戦争の際の被害状況でございますが、まことに申しわけありませんが正確な情報は把握しておりませんが、全日本海員組合の五十年誌を拝見いたしますと、その際二名の方が負傷されたという記録があるのは存じております。
  127. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) まず一点目の新聞報道の件でございますけれども、これは予算委員会でもお尋ねがありましたので、運輸省としても調査をいたしました。全くございません。また、防衛庁からも、そのような具体的な話は米軍との間ではなかったということで、同じように予算委員会でも答弁をされたところでございます。  それから、周辺事態のときの民間協力の問題でございます。  私どもは、不測の事態が起こり得ない地域に協力をお願いするということで申し上げております。ただ、民間業者の方に、例えば日本との契約または米軍に対するあっせんという形で協力をお願いするときに、はっきりとしたマニュアルというものをつくってお渡ししなければならないだろう、このように思っております。例えば、私どもがどのような情報を民間業者にお伝えをし、危ないときにはこういうサインで帰ってきてもらう。帰ってきたときには、対米軍に対しては契約不履行になるわけでありますから、その補償は我々がこういう形でするよというような一つ一つ具体的なことを書いて、まず安全第一、不測の事態が起こり得ないということを前提にしながら、民間の方々と米軍の、基本計画を最初につくるわけですから、そのときに民間と話し合いの中で得られたものを御回答させていただくということになるだろうと思っております。
  128. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 この問題については、まだ引き続き国会の中で議論されることであろうと思いますので、その中でまた議論に参加していきたいと思います。  JRの下請の事故の問題については、後ほど事務所の方にお知らせいただければというふうに思います。  次に、仮称でありますが、交通事故調査委員会の設置の問題についてです。  先ほど同僚議員の方から交通事故の問題等についてお話がありましたように、年間一万三千九百八十一名の方が事故死している。本来、一万三千人もの方が亡くなっていながら社会問題になっていないところが問題ではないかと思うぐらい多くの方が亡くなっている。  この約一万四千人の方々が生まれてくる背景には、先ほどもお話があったように、交通事故で毎年百万人の重軽傷者が出ている、そして一万四千人の方々が亡くなっているというのが実態でございますが、不幸にして起きてしまった事故に対して、その事故原因を究明していくことは非常に大事なことではないかというふうに思います。  現在、運輸省の中では航空事故調査委員会と海難審判所が事故調査委員会として設置されていますが、自動車交通事故についての調査委員会はありません。鉄道技術審議会では同じような鉄道事故調査委員会の設置について検討が前向きになされております。ある程度鉄道関係については評価できます。それから自動車関係の問題については、交通事故総合分析センターというのが第三セクターか民間のあれであるというふうに思いますが、やはりここのところは、運輸大臣所信の中でも明らかなように、交通に対する安全問題についてはきちっとやはりやっていくべきではないかというふうに思います。したがって、アメリカのNTSB的な権限を持った委員会というものをやはり検討していくべきではないか。一万四千人も毎年死んでいて、そのことをほったらかしているというのはだめじゃないかというふうに思います。  私、つい最近、あすなろ社の佐藤光房さんという方が書かれた「遺された親たち」という本、シリーズで六巻物でありますが、それを読んでおりまして、いわゆる加害者のところでは、先ほど自動車保険の問題も議論になっていたようにかなり議論されているけれども、もう一度金銭だけではなくて被害者の立場に立って事故そのものを考え直していくという視点も必要ではないか。そういうことなどを考えると、やはり交通事故調査委員会の設置、私はつくっていくべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  129. 羽生次郎

    政府委員羽生次郎君) 確かに先生指摘のように、すべての事故を総合的に取り扱うアメリカのNTSBのような事故調査委員会、これも大変有効に機能するということも考え、大きく事故防止に貢献するのではないかとも思われるわけでございますが、同時に、各交通モードごと交通事故の形態が相当異なります。最近の科学技術の発展の中では、モードごとの事故についてますます専門的技術的な深さ、専門知識が要求されておりますので、総合的な事故調査機関を設けるということもさることながら、各輸送モードごとに十分な事故調査を実施してそれぞれにフィードバックしていく、そしてそこで専門家を育てていくという方法もあるのではないかと考えております。  まだ私どもも果たしてどちらの方法がよいのかということを十分把握しているわけではございませんが、ひとつこれからまた検討させていただきたいと思います。
  130. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 検討したら検討した結果について後ほど教えていただきたい。検討した結果だめでしたなんていうのは答えではないということを申し上げておきたい。  環境問題について質問をする予定でございましたが、これは取り下げておきたいと思います。  それから、規制緩和の問題について先ほどお話が同僚議員の方からも出ておりましたけれども、やはり運輸行政にとっては非常に重要な問題、一大改革を求めていく問題であろうというふうに思います。大臣は先ほど光と影の話をされましたけれども、必ずしも、運輸行政の中で経済優先の市場経済だけで成り立つ競争社会というものを考えた上で規制緩和、需給調整廃止をやっていこうということでは成り立たないのじゃないかと私は思います。  例えば、タクシーのことを考えますと、大体今利用していただけるお客さんが四キロから五キロの範囲、東京の料金でいうと大体二千円以下ぐらいのところを利用している人が最も多い。そういうことを考えると、そこでは他の交通機関というのが非常に発達をしていまして、非常に多い。他の交通機関とタクシー、ハイヤーは競争しながら、あわせてタクシーはタクシー内部で競争しなきゃならない。そのタクシー内部で競争する場合に、規制緩和をして、量的にも規制緩和をしていく。今お客さんたちが、利用者が一番求めているのは何かといえば、やはり利用料金の安さを求めているのじゃないか。それである程度成功しているのがスカイマークなどの航空分野における現行料金を割り引いて競争していく。しかし、きょうかきのうかの新聞で必ずしも調子よくないという話も聞いております。  しかし、そのことをもろに受けているのがやはりタクシーではないか。量的にも規制緩和をしていく、運賃も規制緩和をしていく、そしてその市場たるや他の交通機関と非常に競争させられるという状況の中で、そこに働いている人たちが自分の賃金や労働条件を切り下げなければ運営できないような規制緩和というのは、私は本来の規制緩和ではないと思います。  そこで、量的にするのか運賃だけのことをやるのかやらないと、中小零細企業が多い交通産業の中では、やはり規制緩和だけで、世の中の流れだけで行くことは大変難しいのではないかと私は思うのですが、その点についての御所見を伺って、終わりにいたします。
  131. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 今タクシーの例をとらえて規制緩和のお話をいただきました。確かに、一つ一つ交通機能、航空の場合、鉄道の場合、また海運の場合、いろいろなケースがあると思っております。したがって、一本一本しっかり確かめながら審議会で御議論をいただき、また国会での御議論も賜ってまいりたいと思っております。  やみくもにすべて規制緩和してしまえという議論に私どもは立っておりませんので、どうぞ御理解をお願い申し上げたいと思います。     ─────────────
  132. 小林元

    委員長小林元君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、林紀子君が委員辞任され、その補欠として筆坂秀世君が選任されました。     ─────────────
  133. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 時間も余りありませんので、簡単に二、三お伺いしたいと思います。  先日、JR側が昨年の国鉄長期債務関連の問題のうちの年金部分について、厚生年金に移行するに当たってのJR負担分をお支払いになるという決定をされたということを聞きました。あれだけいろいろと争ってきた問題ですから、私はそういう決着を迎えたことを非常に喜ぶべきことだったと思います。  ただ、今までの経緯を考えますと、JRサイドがあそこまで頑張ってこられた問題、これをああいう形でお支払いになられるというからには、あの方たちは相当筋を通して物を言う方々だったと思いますので、私はそれなりに納得した上での御決定ではないかと思っております。  この点について、運輸大臣はどう御理解され、受けとめておられるか、一言お願いしたいと思います。
  134. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 実は、昨年特別委員会で御議論を賜りましたときに、これで法律は通ることになるだろうけれども、しっかり運輸大臣はJRと話し合いをしろと、運輸省とJRが変なべたべたした関係はいけませんけれども、やはり鉄道のあすというものをお互い考えていく責務があるだろう、したがってしっかり話し合いの機会を設けろ、こういうお話をいただきました。私もJR七社、北海道から九州まで全部現地に出向いて話し合いの機会を持たせていただき、法案の成立の過程、またそのとき委員皆さん方から賜った意見をJRにお伝えしながら、法律が決まったということを理解してほしいとお願いをいたしました。  当時、そのときにJR東だけは少し考えさせてくださいと、実はノーとは言われなかったんです、考えさせてほしい、専門家等の意見も聞きながら、自分も今までいろんな発言をしてきているから、十分考えた上で結論を出したいからということで留保されました。正月になり、各社からお支払いをするという話が参ったときに、JR東だけがまだその御返事をいただけませんので、私は改めて今度はJR東の社長に来ていただきまして、法律が通ったということをぜひ受けとめてそろそろ決断をしてほしいということで御要請をいたしました。何日か後だったでしょうか、取締役の方々といろんな議論を重ねられた結果として一つの決断をされたというふうに私ども理解をさせていただいております。そういった意味では法の趣旨を十分理解していただいたものと、こういうふうに受けとめているところでございます。  なお、JR西は、法廷闘争の問題についてはまだ留保したままでございますので、お互いもう少し理解が深めればなと、こう思っているところでございます。
  135. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 川崎運輸大臣の御努力も非常に大きな力になったかと思いますが、こういった点については運輸省とJR、できるだけ円満にということだろうと思いますので、JR西日本の問題についてもなお一層お働きをお願いしておきたいと思います。  そこで、あの問題が発表されたときに、大新聞は、いかにも国が法律をつくって暴力的にそういうお金の徴収をすることになったという論調が非常に多かったわけです。この報道はもともと事の本質をとらえていない報道であったかと思います。  私は、やはり今行政に何を問われているかといえば、行政が透明性を持って皆さんに理解していただいて行政サイドが考えていることを進めていく、そういう時代であろうかと思いますから、私はああいうことについては、もう既にそういうアクションをとっておられると思いますが、直ちに訂正を申し入れるとか、そういうことをしていかなければならないと常々思っております。この点について鉄道局長、ひとつお願いします。
  136. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 新聞の報道等々についてでございますけれども運輸省といたしましては、先生御案内のように、今回のJR負担につきましては、JR社員の年金のための負担をすべて一般国民の負担とするわけにはいかない、適切ではないということで、その一部をJRに負担をお願いしたわけであります。  そういうことでございまして、そういう趣旨のもと、国会において成立した法律に基づく移換金の負担につきまして、JR各社に対しまして、大臣が申し上げましたように法律を誠実に遵守して支払いを履行してほしいということについて理解を求め、また要請をしてきたということであります。したがって、このやりとりの間、大臣からも再三申し上げておりますように、JRに理解を求めたわけでありまして、JRに対して強権を発したというようなことは当然一切ございません。この点につきましてはJRも同様の認識であろうというふうに我々は承知しております。  そういうことでございまして、大臣の記者会見、それから事務次官の記者会見等、いろいろの場におきまして我々の基本的な考え方、特に新聞報道等によりますと完全民営化、株の売却等と絡めたのではないかという話がございますけれども、この点につきましても大臣、事務次官から再三再四考え方を披露させていただいておりますけれども、従来の考え方を常に我々堅持しながら説明させていただいているところでございまして、先ほど先生からお話がございましたような誤解がないように引き続き努力させていただきたいと思っております。
  137. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 この問題につきましては、どうも今まで新聞の論調というのは、ずっと一貫してと言っては言い過ぎかもしれませんが、私は正しい報道が少なかったんじゃないかという気がしております。これは最初からそういう論調で始まったのでそうなってしまったのかもしれませんが、そういう誤解があるようなときには、ひとつ運輸省の方もきちっと一つ一つについて運輸省考え方を相手にちゃんとわかるようにというか、届くようにしていただきたいとお願いしておきたいと思います。  次に、整備新幹線関係の問題で、私の次の岩本委員整備新幹線についていろいろ御質問があるようですので、私は一点だけお伺いしておきたいと思います。  整備新幹線、新規着工も含めてですが、今国の計画に上がっている線区間、そういったものについて、一応いつごろまでに完成という計画がおありのことは私どももよく知っているつもりでおりますが、こういった大プロジェクトというのは、これは財源の問題が非常に大きな点になりますが、できるならできるだけ早く完成させるということが地域の発展とか、そういったことから考えても望ましいということは言えると思います。  我が党は、昔から整備新幹線なんというのは早くつくればいいんだ、こう言っておりましたが、しかしそうはいっても、具体的に財源問題を解決しない限りは前に進まないという状況でもあるかと思います。  ひとつここは運輸大臣運輸省の立場というよりは政治家として、そういったことにどう対応していくべきかという御見解をお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  138. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 私も、いいプロジェクトを早く仕上げて経済効果を出していく、これが景気対策上は一番いいだろう、こういう主張を昨年の秋以来繰り広げてまいりました。そういった意味では、新幹線はまさに地方期待も大きく、また経済効果も高いものと思っております。  ただ、一方でありますのは、今委員が言われた財源の問題でございます。確かにこの一、二年は、経済再生を小渕政権として掲げておりますので、積極財政論が展開されるであろう。しかしながら、やはりある程度の期間がたてば当然財政再建というものが国の大きな柱とならざるを得ない。したがって、何から何まですべてできますよという話は少しお互い自重していかなければならないであろう。したがって、今とりかかっております三線四区間、それから新規着工いたしました三線三区間、これについてしっかり計画を立てながら早く上げられるものは早く上げる。そして、ある程度時間を見ていただかなきゃならないものは時間を見ていただくという形で、分けて進めていく必要があるだろうと思っております。  ただ、まさに自由党さんの御主張どおり、日本の縦軸として新幹線網を北海道から九州までしっかり通すべきと。これは運輸省としても大方針であることについては変わりはない、このように思っております。
  139. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 運輸省所管事項の最後の質問者でございます参議院の会の岩本でございます。  私は、昨年の参議院選挙で当選してまいりまして、運輸大臣所信表明をじかにお聞きするのは初めてでございますし、こういう席で質問させていただくのも初めてでございます。ひとつよろしくお願いいたします。  私は、今まで地方におりまして地方行政の一端を担っておりまして、いわゆる運輸省地方の基盤整備といいますか、そういうものにかかわっております役割というのは大変大きなものであるなというふうな感じを実は持っております。空港しかり、先ほどから出ております新幹線を含めて鉄道、さらに港湾等ございますし、観光等も運輸省所管でございますから、これからの地方分権の時代に運輸省にやっていただくことは大変大きいなというような感じがいたしまして、ぜひとも御期待を申し上げたい次第でございます。  先ほど大臣の御答弁の中に、大都市中心でいくのか全国均一でいくのかというようなお話がございまして、どちらかという御回答がなかったように思いますけれども予算規模で昨年比五七%から六〇%。これは大都市中心じゃないか、お伺いいたしまして実はちょっと残念な気がいたしました。もう少し地方にも光を向けてもらいたい。ただ、こういう金そのもので、予算だけで云々するものではないと思いますので、きめ細かい視点を当てていただきたい。  私が地方を言いますのは、やはり大都市に集中してきますと、日本人の活動の場が抽象的に考えましても固まってきてしまう、国土が狭くなってしまう、動く範囲が狭くなってしまう。これは日本の狭い国土の中で非常にもったいないことで、日本日本としての国土全体を広く使うためにも、地方の振興といいますか、地方の発展というのが大きな役割を果たしているのじゃないかなと思っている次第でございます。  そこで、質問でございますが、大臣所信表明の中にもございました都市交通でございますけれども、都市におけるバス、鉄道等公共交通機関の一層の利便性の向上と利用促進に引き続き取り組みたいという御決意を承っております。  大都市の都市政策といいますか都市交通、これは大都市に出てくれば自動車の渋滞というのは当然見ればわかる話ですし、それに対して地下鉄などがどんどんできておりますし、LRTなんかの整備も進んでおるわけでございます。地下鉄などは、極端に言えば上京するたびに道がわからなくなるというぐらいな発展の仕方のように私は見受けております。  そういう意味で、都会がそういう利便性を増進するという点ではこれはそれなりに評価されるものだと思いますが、モータリゼーションの進展がやはり地方の中核都市にも及んできているというのが今の現状ではないのか。すなわち、交通渋滞というのがどんどん広がってきて、そのために中心市街地が疎外されるといいますか、そういうような問題も起こっておるわけでございます。それはそれ、中心市街地の活性化について各省のお取り組みもあるようでございますが、そういう交通渋滞が顕在化している中で、中核都市にしても簡単に解決するような状況でないわけでございます。道路の拡幅等、全く都市と同じように用地確保に限界があるというふうな状況でございます。  そのような中で、これは中核都市といってもいろんな地域があると思いますけれども、中核都市についてもそろそろそういう問題が、そろそろというよりもかなり起こってきている。さらには、時代の要請といいますか、そういう中で都市の活力を再生しなくちゃいけないのじゃないか、あるいは環境問題も考えなきゃいけない、高齢者への対応等もあるわけでございまして、中核都市につきましても私は都市交通問題を真剣に考えなきゃいけない時代ではないかと思っております。  大臣のその辺の御認識といいますか、御見解についてもしお聞かせ願えればと思って御質問させていただきます。
  140. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) まず、交通網の整備でありますけれども、大都会におきましても、収益性というものが成り立つ、これが大前提でございます。例えば地下鉄の整備、国が三五%、それから地方が三五%、七〇%下をつくるために援助が行われるわけでありますけれども、残りの三〇%プラス動かすための経費、これについては基本的に、例えば東京ならば営団地下鉄が採算として合うかどうかと。ここが一番問題であろうと思っております。  したがって、幾らいろいろな声があるからといって、需要とのバランスがとれないものについてはなかなか我々としても決断しにくい。最近の例で申し上げますと、北海道の札幌の地下鉄の場合は二千億程度の赤字を今抱えてしまっております。並行線をつくって思った以上の収益が上がらない、こういうことであります。当然大都会でもそうでありますから、地方においてもどういうものを整備していくことによってバランスがとれていくか、これに尽きてまいるのだろうと思います。  また、例えば地方の中核都市といっても、仙台とか福岡ということになりますと、当然需要として地下鉄まで大丈夫だという地域になるだろうと。私の県庁所在地、三重県の津市は十六万しかありませんものですから、これはバス以外になかなか対応ができないな、こういう感じになっております。  ある程度の規模を持っておる中核都市は、今お話がございました高性能な路面電車、LRTというのでしょうか、そういうものが最近注目されてきております。それから、オムニバスタウンの整備ということでバスをより効率化していく、また利用者にとって明るいものでありたいというようなことで、いろんな形での対策が打たれているところであります。一方で、ことしから御承知のようにバリアフリーということで取り組ませていただいている鉄道駅の利便性という問題で今いろんな形で整備をさせていただいているところでございます。  まさに地方の声、地方がどのような施策を考えられていくか、我々もメニューを用意しながらそういうものに対応できるようにしていかなきゃならない。ですから、地方在来線整備も含めて、私どもしっかり勉強しながら、地方の需要というものに対応できるような体制を運輸省としてもつくり上げていきたい、このように思っております。
  141. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございます。  確かに収益性ということがあるかと思いますが、単純に収益性だけで、大都市と同じような収益性ということですとなかなか限界もあるような感じもいたしますので、その点の御配慮もお願いをいたしたいと思います。  地方も、収益性を考えないということでなくて、いろんな工夫をしているわけでございます。しかし、正直言いまして、交通渋滞をなくすとすれば、これは車を入れないか、あるいは新しいものをつくらない限りなくならないわけで、いろんな都市の工夫で車を入れないというようなところもあるかもしれません。あるいは、そうでないとすれば高架とか何か別のルートをつくらなきゃいけない。  そうした場合に、新しいものをつくろうとするとどうしても財源の問題になってくるわけでございます。それは今の体系でも、地下鉄等鉄道関係運輸省、道路関係は建設省というような仕分けになっておろうかと思いますが、地方がいろいろ工夫をしますと、今まで思いつかなかったような方式もあるいは出てくるのではないのかなと。思いつかなかったというのは言い過ぎかもしれませんが、例えば、ガイドウエーバスで地下を走るというような場合、これは全く新しいんじゃないかなと私は思うんですけれども、こういう場合にもやっぱり同じような助成、これは鉄道なのかどうなのか、運輸省なのか建設省なのかよくわからない、境目になるんじゃないかと私思うんですけれども、今度省庁再編で一緒になればそれは解決する問題かもしれませんが、それはさておき、そういう新しい取り組みに対して、運輸省としてどんなふうにお考えいただいているか、ひとつよろしくお願いいたします。
  142. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) お答え申し上げます。  今先生お話しのように、地方の中核都市等々の交通体系を考える場合に、地域で相当御苦労を重ねられた結果、いろいろなアイデア、あるいは地方公共団体の支援の仕方等についても新しい動きが出てきております。  そういう状況を踏まえまして、実は昨年の十二月に運輸政策審議会鉄道部会の方に今後における鉄道整備基本方針について諮問させていただきました。  その中で、一つ課題としては、お話しの地方中核都市の軌道系の交通システムをどうしていくのか。それから、そのときに国なり地方公共団体のそういうシステム構築に向けての支援、これをどういうふうに考えていくのかということなどにつきまして、実は全般的な現在の補助スキームを見直すような意味での検討を開始していただくことになっておりまして、この検討、議論を踏まえまして、今後我々としては適切に対応していきたいというふうに考えております。
  143. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございます。  再度申し上げますが、地方地方なりにいろいろと工夫して考えております。どうにかして活性化しようと取り組んでおりますので、その辺に対する温かい目といいますか、自主性を育てていただくよう、ひとつよろしくお願いしたいなと思っております。  次に、整備新幹線、先ほど戸田委員からの御紹介で、私が質問するということでございますが、最後の質問者になりますといい面と悪い面がございます。前で勉強させていただく面と、前に質問が出てしまうという面がございまして、ちょっと御通告してあるのとは同じにならないかもしれません。  新幹線につきまして、私は地方にいた立場から、今の計画はやるべしというふうに思っております。というのは、国の骨格になるものであろうと。これはただ単に経済性だけで云々すべきでない、骨格をつくって、それで国の肉づけをしていくというむしろ逆のアプローチが必要だというふうな考えを持っております。そういう意味で、骨格の一部が弱ったりしていますとこれは体全体がだめになりますから、最小限の骨格はきちっとそろえなきゃいけない。  ただ、昔、政治路線と言われたような何か無益に広がっていくようなことはきっちりととめて、やるべきものはちゃんとやらなきゃいけないなというふうに感じてきたものでございます。そういう促進という意味で、委員会におられます野沢先生を初め、私は昔から大変お世話になっておりますが、この推進につきましては、御存じのとおり、今や一党一派じゃなくて、促進大会をやりましても全党が促進に賛成しているというような状況であると私は認識しております。そういう意味運輸省も、政府・与党案といいますか、与党とかそういうものにとらわれずに、運輸省としてしっかりと自主性を持ったこれからのスキームの運営をしていただきたいなというような気がいたすわけでございます。  そこで、先ほどもちょっと出ましたけれども、いわゆる三線五区間でスタートしたのはたしか平成三、四、五年ぐらいだったと思うんです。そこから大体十年程度というようなお話であったわけですが、もう今大分進んできたと思うんですが、大体この先完成予定といいますか、どのぐらいをめどにしておられるのか、その辺をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  144. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) お答え申し上げます。  実は、工事の進捗の今後の見込みでございますけれども、これは今後の予算措置が、財源がどれぐらい用意できるかということと非常に関連することで、なかなか先は読みにくいわけでございまして、先生お話しのように平成三年から五年にかけまして着工させていただいて、おおむね十年ということで頑張らせていただいているということでございます。その意味で現在途中過程にあるわけですが、現在までの進捗状況を工事費ベースでちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  十年度の第三次補正、今執行中でございますが、これを全部我々消化して進捗できたと仮定いたしますと、まず既着工区間でございますが、東北の盛岡から八戸間につきましては四〇%程度、それから北陸につきましては、糸魚川—魚津につきまして、こちらはちょっとおくれておりますが二一%、石動—金沢で五一%、それから九州の西鹿児島から新八代で三〇%程度という状況でございます。  なお、新規着工区間につきましては、これは昨年の三月に着工したばかりでございまして、まだスタートした直後ということでございまして、こちらについてはおおむね二十年、これは財源の関係でございますけれども、を目標にスタートしたということでございます。
  145. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 確かに財源の関係でいつになるか、こういう大プロジェクトの完了時期というのはなかなか予想できないのは私も理解できないわけではございませんが、これだけ進んできますと、地元のサイドでも何かもう完成間近だなというか、将来の姿が見えてきたような感じを持つのが実態だと思います。トンネルの入り口など整備されてくるわけですから。  そうしますと、地元の欲深といいますか、これからどうなるのかなというようなことで、地元のことで申しわけないんですけれども、各地域、路線ごとにあると思うんですけれども、例えば私どものところでは、地元はぜひフル規格にしてもらいたいというような要望を持っておる。陳情もさせてもらっている経緯がございますけれども、そういう将来に対するどうなるのかなという心配といいますか疑問といいますか、そういうものを持ち始めるのも実際だろうと思うんです。  将来のことでこれはなかなかそう単純に決められることではないと思いますけれども、その辺の地元の熱意、状況が変わってきた、だんだん具体化されてきた中における地元の熱意等に対して、大臣はどう受けとめていただいているのか、ひとつその点をお聞きして、私の質問は終わらせていただきます。
  146. 川崎二郎

    国務大臣川崎二郎君) 私の理解しておりますのは、当初、東北についてはフルでやる、その他についてはスーパー、在来線を活用してやっていこうと、こういう考え方で整理されたと思っております。  その中で、北陸の中で今委員が言われたような議論が出てきた。この議論は少しお詰め願わなければいけないなと。一回決めた議論に対して違う意見が出てきた。ですから、当然そこでどういう交通整理をするか、まさに交通整理をするかという段階を今迎えているんだろうと思っております。  早くやれということならば当然フルでない方が早いわけです。しかしながら、地元の声ももちろんあるだろう。そこをどうお互いが理解をし合いながら進めていくかということに私は尽きるんだろうと思っておりますので、どうぞ、特に北陸関係の議員の方々と十分お話し合いをいただきながら最終結論に導いていくようにお願いを申し上げたいというように思っております。
  147. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。
  148. 小林元

    委員長小林元君) 運輸行政に関する質疑はこの程度にとどめます。  次に、郵政行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  149. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 自由民主党の加藤紀文でございます。よろしくお願いいたします。  先般、大臣所信表明の中に、ITUの事務総局長に内海さんが就任されたというお話がありました。まず、この点についてお尋ねいたしたいと思います。  言うまでもなく、事務総局長というのはITUの最高ポストであります。そして、日本人として初めて当選されたわけでありますが、このITUというのは、一八七九年に我が国が加盟し、一九四七年に国連の専門機関になったという長い歴史のある国際機関の中でのトップでありますから、大変なことだと思うわけです。  このITUというのは、皆様方御承知のとおり、五つの目的がある。簡単に言えば、国際的な周波数の割り当てとか、また電気通信の標準化、そして発展途上国に対しての技術協力ということを主な目的に設立されたわけでありますが、情報通信のグローバル化が進む中で、このITUの活動というのはますます重要になってくると思うわけであります。  そういった中で内海さんが選ばれたということでありますから、割と我が国国民の皆様方は御存じないようでありますが、すばらしいことだと思うわけであります。まして、選挙で選ばれる国連の専門機関のトップというのは、昨年の七月に退任されましたが、WHOの中嶋さんに続いて二人目であります。国際的な分野でリーダーシップを発揮する立場に人材を送り出すことができたということは、我が国にとっても大変名誉なことであり、またその責任も重いと思うわけであります。  今回の就任について、大臣の感想といいますか、また郵政省の支援体制といいますか、いろいろな思いがおありになろうかと思いますが、まずその点からお尋ねさせていただきたいと思います。
  150. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 今、加藤先生のお話にございました内海さんについて少し申し上げたいと思いますが、その前に、電気通信自体は、二十一世紀の世界のいわゆる経済の牽引というかリーダーシップをとっていく一つの大きな役割を担っていると思いますし、それに関連するITUというのは国際的にも非常に重要な役割をあわせて担っているということを認識しております。  そして、加藤先生のお話にありましたように、選挙を経て多くの国々から日本の内海さんが支持をいただきまして当選できましたことは、ひとえに先生を初め関係各位、諸先生方、そして多くの関係者の皆様方のお力添えがあったがゆえと思いまして、この場をおかりいたしまして心からまずもって御礼申し上げたいと思います。いろいろとありがとうございました。  選挙において勝因というか、そういうことを考えるに当たって、まずは内海さん個人のやはり長きにわたる電気通信に関する幅広い知識とか識見があったことと同時に、具体的には、一九九四年に京都での全権委員会議を大成功に導いたその議長ぶりというのが世界の人たちに高く評価された結果だと思います。  また、内海さん個人の活躍とあわせて、国としても、日本としてもこれまでITUの活動にさまざまな貢献をしてきましたし、各国に対して国際協力をしてきたことを皆様方が受けとめていただき、理解をしていただけたものではないか、そういうふうに感じているところです。  ITUにつきましては、加藤先生の方から役割について話がございましたので割愛しますけれども、さらに政策的な面でもいろいろと、例えばフォーラムを開催するなど重要な役割を果たしております。  郵政省としては、ITUがこのような活動を通じて、世界の電気通信の発展を推進する場として一層大きな役割を果たしていけるよう、積極的に他の国々の皆さんとも連携して努力をしてまいる所存でございます。  最後に、内海事務総局長がその情熱と経験をもって世界の皆さんの期待にこたえられるよう、電気通信の発展に貢献できるよう、どうか、また一層の御支援を心からお願い申し上げる次第でございます。
  151. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 ありがとうございました。きょうは限られた時間ですので、次に移らせていただきます。  地上波、地上放送のデジタル化、これも大変いろいろな問題があり、お尋ねしたいことも多いわけでありますが、きょうは時間の制約もあり、ごく素朴といいますか基本的なことをお尋ねしたいと思います。  今ITUの役割がありました。国際間で国別に割り振っている周波数を有効利用するためには、やはり地上放送のデジタル化というのは必然といいますか当然の帰結ではなかろうかなという気がいたします。そして、デジタル放送になるとテレビのチャンネルもふえます。画面も高精細画質になり、パソコン等の他のデジタル機器とも連動して双方向性の機能を持つこともできます。また、テレビだけではなくて、その電波の周波数の中で音声やデータの放送といいますか、このチャンネルもまた飛躍的にふえる。  郵政省の地上デジタル放送懇談会報告によりますと、地上波放送のデジタル化による経済波及効果は、西暦二〇〇〇年から十年間の合計で、インフラやソフト合わせて二百十二兆円、雇用の誘発は七百十一万人だという報告がおありになるそうでありますが、果たして本当にそんな効果があるのかなという気がいたします。  まず、その点に関しまして大臣はどのようにお受けとめになっておられるか。局長でも結構です。
  152. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、過日まとめていただきました、御懇談いただきました地上デジタル放送懇談会において、今御指摘のような予測数値をお示しいただいたわけでございます。  内訳といたしましては、まず放送事業者側のデジタル化のための設備投資、それからこの受像機、視聴者側において今度はデジタル放送を受信するためのいろんないわば家庭内の設備投資、それから三点目といたしましてはデジタル放送のための新しい番組コンテンツの展開、大きく分けますとこうした三つの分野における経済波及効果あるいは雇用増という数字が、今先生から御指摘ございました十年間で約二百十二兆円、七百十一万人という数字でございます。  これは、絶対とは申しませんけれども、大体今までこうした、例えば光ファイバーアクセスをした場合どうなるかというふうな経済予測をいたしますと、いろんな別なケースがあるのではないかというお示しがあることが多いのですが、今回につきましては大体特に御異論がないというふうな状況でありまして、私どもかなり確度の高い予測をしていただいたのかなというふうに思っております。  単に他の御意見がないということの以外に、私どもこれについて一つの確かさを感じておりますのは、一つは、今先生指摘ございましたように、国際的に見ましても、放送のデジタル化そのものは一九七二年から始まりまして、ITUにおける地上放送のデジタル化の議論というのは九二年から議論がされております。地上放送に限らず、およそITUの議論というのはすべてデジタル技術を前提になされているということでございます。  それから、昨年、高度情報通信社会推進本部におきまして新しい指針をお示しいただいたわけでございますが、その中では、我が国の二十一世紀の社会はトータルデジタルネットワーク社会であるということが目標として示されております。  既にそれぞれ、先ほど設備投資の分野として三つ申し上げましたけれども一つの現象例でございますが、例えば受像機の世界でいきますと、今の地上放送のままではハイビジョンは見れません。しかし、デジタル放送になると、これは地上六メガヘルツのままでデジタルテレビが見れるということで、単なる買いかえ需要じゃなくてまさにより質の高い高度なテレビの買いかえ需要が出てくるだろう。  それから、新しいコンテンツの世界でございますが、実はデジタル放送のいろいろなシミュレーションとかあるわけでございますが、この分野につきましては、電波は地上を通っていきますと立体図形、三次元図形の中でどういうふうに電波が飛んでいくかとか、こうなりますといわゆる建設業界のノウハウというのは大変効用が大きいわけでございまして、そういう分野からの参入も動きがございます。そういう意味で、今までの既存業界の設備投資なりコンテンツだけじゃなくて、新しい分野からの参入と申しますか投資もある。  こういった国際的な動き、それから国内全体の動き、それからこうした新しい技術開発をきっかけとする新規、今までこの分野に従事されていなかった分野からの参入と申しますか寄与、こういったことを考えますと、この数字というのはかなり確かさのある数字ではないかというふうに感じておる次第でございます。  以上でございます。
  153. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 確かに、新たなといいますか新規参入分野は期待が持てましょう。  しかし、実際の今やっている放送事業者に限って言えば、例えば同じテレビ放送であっても、CSとBSと今度は地上波のすべてがデジタルになる。昨年十二月にBSの放送委託事業者が決まりましたね。この委託事業者の内容を見ると、地上波のキー局の五社、またCSデジタルの映画専門局とか、NHK、WOWOWでありますが、一般的に考えれば、衛星も地上波も視聴率のシェア争いからすればライバル会社であります。まして、地上のキー局がBSの新会社をつくるにもかなりの設備投資が必要ですね。そして、CSはもう既に一九九六年から始まっている。BSは二〇〇一年、地上波のデジタル化は二〇〇三年、これは東名阪。そのほかは二〇〇六年というタイムスケジュールの中で、果たしてそれぞれの放送委託事業者が頑張り切れるのかなという心配をしておるわけであります。  ですから、CS、BS、地上波、この三つの相関関係といいますか、整合性といいますか、そういったことに関しては郵政省はどのようにお考えになっているかお尋ねしたいと思います。
  154. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) ただいま先生指摘のとおり、昨年十月にBS4後発機を舞台にする新しい委託放送事業者の認定を行わせていただきました。その結果、大きくハイビジョンを中心とするテレビジョン放送のチャンネルが、NHKが六チャンネルをアナログも含めますと持つことになります。それから民間放送事業者が八チャンネルのテレビジョン放送を行うということになるわけでございます。  これからのそれぞれのメディアでございますが、私どもの少なくとも放送行政の大きな課題というのは、衛星放送も地上放送も、それからCATVも音声放送も、あるいはコミュニティーFMまで多様な形の放送サブシステムがございますが、全体としてそれぞれの特徴を生かした放送を行うことによって、ライフラインに近いような役割を果たしていける放送が国民の視聴ニーズにこたえていくというのが放送行政の政策の目指すところではなかろうかと考えておるわけでございます。  今御指摘のとおり、新しい民間の衛星デジタル放送の会社、確かに資本関係では御指摘のとおりの関係が見られるわけでございますが、今着々と各社二〇〇〇年十二月に向けて新しい衛星デジタル放送を始める準備を進めておられます。  その準備状況、私ども一般的にいろんなメディアを通じて承知している限りでは、やはり各社間でそれぞれ個性と申しましょうか、ある会社はエンターテインメント中心、あるところではドキュメントとか、それからニュースを中心にやっていくというようなことで、同じ衛星デジタル放送でもかなり個性の違いが見られる。それから、もちろん当然のこととして、地上アナログ放送と同じものではこれは視聴者が選択してくれないわけでありますから、衛星デジタル放送でなければ見れないいろんな番組構成ということを対地上放送の関係では考えておられるようでございます。先行しておりますNHKはNHKとして新しい試みがあるようでございます。  したがいまして、BSのチャンネル相互間のいろんな競争と申しますか、放送の世界ではむしろ切磋琢磨といいましょうか多様化といった現象、それから地上放送と衛星放送の間の新たな番組の個性、製品差という言葉がございますけれども、番組の個性発揮というところが見られてくるのではないかというふうに考えております。放送法に集中排除原則というのがございますが、これはいかに多様な情報が多様なチャンネルを通じて提供されるかということが一つの原則でございますけれども、そういった期待にこたえる新しい試みが地上放送あるいは衛星デジタルの中でなされてくるのではないかということが感じられます。  それから、同時に視聴者側も新しい番組に接することによって新しい視聴覚能力といいましょうか、新しい感覚が養われて、それがまた放送事業の方にはね返りまして、より個性豊かなそれぞれの放送がなされていくのではないかというふうな見通しが持てるのではないかと私ども今各社の準備状況を拝見しながら感じておる次第でございます。
  155. 加藤紀文

    ○加藤紀文君 今のお話の中で、視聴者から見た、いわゆる見る側の立場、これに立って見ると、確かに選択肢がふえるということはいいことであります。  しかし、今のCS、BS、地上波の全部を見ようと思ったら、アンテナやチューナーやコンバーター、全部要りますよね。受像機に内蔵されたらそれまででしょうけれども、持ってない者は新たに買わなきゃいけない。そして、全部を見ようとしたら、コンバーターだけでも重箱みたいにテレビの横に重ねなきゃ見れない。そういう状況ですと、どうしてもこの番組を見たいという人はそこまでされましょうが、しかし大部分の人はもっと簡単に、もっと安くなったら買いましょうという気持ちじゃないかと思う。  そうすると、さっき言いました二〇〇一年、二〇〇三年、六年、これに間に合うとはとても思えないのです。それぞれの関連の皆さん方努力されると思いますが、見る方がそういう気持ちであって果たして先ほど申し上げた経済効果というのが達成できるというか、達成という問題じゃないと思いますけれども、できるかなという気もいたします。  いずれにせよ、もう決まったタイムスケジュールがあるわけでありますから、それに向けてさらなる郵政省の御努力をお願い申し上げまして、質問を終わります。
  156. 内藤正光

    内藤正光君 民主党の内藤正光でございます。  先々週の予算委員会では、郵政大臣質問通告をしておきながら時間の関係質問することができませんでした。大変申しわけございませんでした。本日は六十分間時間をいただいておりますので、いろいろたくさん郵政大臣質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  きょうは一時間、高度情報化社会の構築に向けてというテーマで質問をさせていただきたいわけでございますが、その前に、二点ほど大臣確認をさせていただきたいことがございます。  それはネット犯罪でございます。昨年の末に、インターネットを利用した青酸カリ宅配事件がございました。そして、ことしの最初のころでしたか、伝言ダイヤルサービス事件がございました。それを受けて一月八日、記者会見をされたかと思いますが、その記者会見の中で大臣は、実態を早急に調査をするというふうにおっしゃったかと思います。その調査の進展状況について御説明していただけますでしょうか。
  157. 天野定功

    政府委員(天野定功君) ただいま先生が御指摘のように、伝言ダイヤルサービスにつきまして事件が起きまして、早速私どもの方から電気通信事業者の団体、それから私自身もアンケート調査をいたしまして今それの取りまとめをしているところでございますが、電気通信事業者の方からはもう既に状況の簡単な報告が来ております。現在は全体の取りまとめをしておるというところでございます。
  158. 内藤正光

    内藤正光君 この事件の手がかりとして県警が伝言サービス会社に対して記録の提供を求めたかと思います。それに対して会社側が、プライバシーの保護というものを理由に拒否をし続けた。そうこうしているうちに、二人目の被害者が出た。そして、それを受けて、まだ被害者を出すつもりなのかと強く伝言サービス会社に迫った。その結果、やっと会社の協力を得て記録をいただいたというような経過だと思います。  今回の一連の経過を見て、法の不備がいろいろなところで見られたかと思いますが、郵政省として、ネット犯罪に対する法的環境の整備についてどのようにお考えになられているのか、その基本的な考えをお聞かせいただきたいと思います。
  159. 天野定功

    政府委員(天野定功君) 近年におきますインターネットや携帯電話の普及など電気通信サービスの多様化、高度化に伴いまして、利用者の利便性は著しく向上いたしますが、他方、先生指摘のように、インターネットなどを通じた違法な薬物、毒物の売買あるいは青少年に有害な情報の提供とか、ただいま御指摘のような伝言サービスを悪用した犯罪など、電気通信サービスの不適正利用によるトラブルが大きな社会問題になっていると認識しております。  郵政省としましては、こうしたいわばネットワーク社会の陰の部分に対しましても適切に対処して、利用者が安心してネットワークを利用できるようにすることが高度情報通信社会を実現するために重要な課題であるというふうに考えております。  具体的な取り組みの状況を申し上げますと、まず、インターネットを通じました毒物の売買だとかわいせつ情報など違法・有害情報の流通に対しましては、プロバイダー等が加盟する社団法人テレコムサービス協会が昨年策定した自主規制のためのガイドライン、具体的な中身は、違法・有害情報が発見されたときの排除措置が盛り込まれております、そういったガイドラインにつきまして、その策定を支援いたしますとともに、その周知徹底に努めてきたところでございます。  さらに、青少年にこうした有害な情報を見せないようにする、いわゆるフィルタリングにつきまして、その技術の高度化を図るために現在横浜市の協力を得まして研究開発を行っております。  また、伝言サービスの関係につきましては、電気通信の高度化に対応したサービスの一つとしましてこのサービスが利用者の利便性に資するという反面、匿名性を悪用した行為が行われやすいという問題もはらんでいるものと認識しております。特に、これがだれでもメッセージを録音、再生できるサービスである場合には、いわゆる公然性を有する通信としましてインターネットと同様の問題状況が存在すると考えられますことから、先ほど申し上げましたように、先月、電気通信事業者の団体に対しまして、既にあるインターネットの自主規制を伝言サービスにまで拡大することの検討など適切な措置を要請したところでございます。  今後とも、私どもといたしましては、多角的な観点から検討を行いまして、国民が安心して電気通信を利用できる環境の整備に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  160. 内藤正光

    内藤正光君 確認なんですが、郵政省の基本的な考え方としては、専ら事業者の自主規制にゆだねて、法的規制は考えていないということでよろしいでしょうか。
  161. 天野定功

    政府委員(天野定功君) このような陰の部分に対しまして法律により規制すべきとの指摘もあるわけでございますが、拙速な法規制は新しいメディアの発展や自由な情報流通の妨げともなり、かえって情報通信の発展の阻害要因ともなりかねないということから、慎重な検討が求められます。むしろ、新しい通信メディアの利用については利用者側の意識につきましても重要な要素でございますので、行政に限らず幅広いところでの御議論をお願いしたいというふうに考えております。
  162. 内藤正光

    内藤正光君 では次に、本題に移らせていただきたいと思います。本題は、先ほど申し上げましたように高度情報社会の構築に向けてということでございます。  我が党民主党の中でこのたび高度情報化社会プロジェクトというものを設置させていただきました。その中で私は事務局長という役割をいただいたわけですが、そこでの議論を踏まえて幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず一つ目の質問なんですが、何のための情報化なのかということでございます。よく新聞や何か、あるいは雑誌などを見ますと、毎日のようにインターネットだとかマルチメディアあるいは情報化、そういった言葉が躍っているわけなんですが、これらはあくまでも手段であって目的ではないということです。  ここに新聞があるわけなんですが、この新聞を見ますと、最近、自治体による地域情報事業が相次いで停止をしている、やめになっているということでありますが、私は、その最大の理由は目的と手段というものをはき違えているところにあるのではないかというふうな気がしてなりません。  私も十一年間民間企業に勤めたわけですが、その中での経験を一言、二言申し上げさせていただきますと、民間企業でも何年も前、十年以上前から情報化というものが始まったわけです。当初のころいろいろな民間企業で見られたことなんですが、従前の仕事の流れというものを全く見直そうとせずに、今までの仕事の流れに沿ってラインを引いて、これを情報化と称していた。結果、情報化というのは余り効果がないんだというふうな見方をしていたときがありますが、これなどはまさに目的と手段というものをはき違えた典型例ではないかと思っております。  私はここで、アメリカの中でも特に情報化の進んだ二つの州について、もう御存じのことだろうと思いますが、御紹介をさせていただきたいと思います。  一つは、アイオワ州でございます。アイオワ州というと、私は映画が好きなんですが、ケビン・コスナーが主演をした「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台になったところじゃないかと思います。あの映画を見た方は思い出されるかと思いますが、一面畑ばかりの何もない、そんなようなところだと思います。  そこの州では一つの大きな悩みがあった。それは、過疎に悩んでいた。そして、そこに住んでいる州民もそこに住んでいることに余り生きがいを感じられない、楽しさを感じられない、そんなような悩みを抱えていた。そこで州政府は、いかにしたら州民のクオリティー・オブ・ライフ、生活の質を向上できるんだろうかということに苦心をされた。いろいろ議論をしたかと思います。そこでたどり着いた一つの解決策がどういうものだったかといいますと、アイオワ全州九十九の郡があるわけですが、全州規模のネットワークというものを構築して、そしてこのネットワークを使って全州民に生涯教育の機会とか場所を提供した。もって州民のクオリティー・オブ・ライフを向上させた。  二つ目の例ですが、これはノースカロライナ州の例でございます。この州が抱えていた一つの大きな問題は何だったかといいますと、人口が余りにも急激な勢いで増加をし続けていた。当然州の財政には限りがある。ふえ続ける人口すべてに十分な満足のいく行政サービスを提供しようとしても財源が不足してしまう、そんな悩みを抱えていた。そこで、この問題にどう対処しようかということで議論したかと思います。ここでたどり着いた一つ結論が、やはり同様なんですが、先進的な情報インフラを全州規模で構築する。この名前はノースカロライナ・インフォメーション・ハイウエーというものなんですが、これを構築して、一つには、このネットワークを使って教育、医療、行政などのサービスを安価に提供する。そして二つは、新しい事業をどんどん誘致して雇用を創出して、もって税収をふやす。これはうまくいっているそうですが、このような解決策を図ったそうです。  これらのアメリカにおける二つの例を見てみますと、この二つの例では目的が何なのかということがしっかりと認識されているんだろうと思います。  そこで、高度情報通信社会推進本部副本部長としての野田大臣にお尋ねをさせていただきます。  日本は今どんな問題に直面をし、どう解決を進めていくべきだとお考えなのか、そしてまたその中で高度情報通信技術がどんな役割を果たし得るとお考えなのか、お答えいただけますでしょうか。
  163. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) ただいまは非常に参考になるアメリカでの事例について御紹介いただきまして、ありがとうございました。  私たちの国日本で、今先生がお尋ねになった課題というか宿題、それは幾つもあると思うんですけれども、特に私が注目しているのは、例えば今経済がこういう状況にある中、小渕総理を初めとして経済再生ということで取り組んでいるんですが、経済再生に向けた経済構造改革、その中身をどう変えていくかということを達成していかなきゃいけない。また、二つ目には、私たちの生活がやはり本当にゆとりがあって豊かだなと感じられるようにならなければいけない。さらには、多様なライフスタイル、さまざまな生き方がこの国では認められ、そしてまた、今地方の話が出ましたけれども、新たなコミュニティーというものがつくり出されなければならない。四つ目には、これもよく言われることなんですけれども、新規産業を生み出して、そしてそれに伴う新たな雇用をまたつくり出していきたい。そして、大きな柱の一つに、やはり社会的な弱者への十分な配慮。こういう課題に真剣に取り組んでいかなきゃならないと思っているわけです。  では、高度情報通信社会の構築がこういういろいろな課題に対してはどう役に立つかということですけれども、私自身は、今先生まさに手段とおっしゃったけれども、手段としてそれぞれが引っかかっている部分について大いなる力を発揮できるのではないかと思っているわけです。  一つ例を挙げてみると、先生方に御審議いただいたテレワークみたいなものも、働く人たちが通勤という、都会でいうと往復二時間かそのぐらいかかってくたくたになって働くことではなしに、家の中で、例えば子育てをしながら、またはおじいちゃん、おばあちゃんの介護をしながら、さらには高齢者になっても、また障害をお持ちであっても仕事ができるという、そういう環境整備のためにこの高度情報通信社会の役割が生まれてくるのではないかと思っています。  そういうこともありますので、私たちは昨年十一月に「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」というのを推進本部で新たに改定いたしまして、こういうことに対しての具体的な目標とかスケジュールを示したアクションプランを早くつくろうということで今取り組んでいるところです。  具体的には何をなしていくかということなんですけれども、新しいビジネスの形としての電子商取引の普及とか、また、私たち国みずからが情報通信の需要家にならなきゃいけないということで、電子政府の樹立というか実現、さらには、手段を使いこなせる人たちをふやしていくための情報リテラシーの向上、さらには、やはり何といっても基盤である情報通信インフラのきちんとした整備、この四点を特に重要と定めていろいろな施策を講ずることにしています。  副本部長としてのリーダーシップというよりも、やはり先生を初めとして情報通信の必要性を御理解いただいている先生方の応援をいただきましてこの国に高度情報通信社会を根づかせていきたい、そう思っていますので、よろしくお願いいたします。
  164. 内藤正光

    内藤正光君 私も認識は大臣と同じだろうと思います。  ただ、重複を恐れずにあえて私なりに考えたことを申し上げさせていただきますと、日本社会が今直面する課題としてはいろいろあります。数え上げれば切りがなくて私の質問時間が終わってしまいますが、少子・高齢化、これは労働力人口の絶対的な、あるいは総体的な減少をもたらすだろう。また財政状況も御存じのように逼迫をしている。産業も成熟化を迎えている。あるいはまた中央集権的な手法、考え方、これが限界に達して行き詰まりを見せている。あるいはまた右肩上がりの経済成長も今後は期待できるだろうか。クエスチョンマークがつくわけなんですが、これがどうなっていくかというと、先が見えない日本社会というふうにつながっていくだろうと思います。  それ以外にもたくさん問題がありますが、じゃ、これらの問題に対してどういう方向性で取り組んでいったらいいのか。  一つには、いかに高齢者を労働力として取り込んでいくか。これは経済的な観点からのみならず、高齢者のクオリティー・オブ・ライフ、働きがい、生きがいといった観点からも取り組んでいかなければならないことだろうと思います。そしてまた二つ目には、いかに安価で迅速でそして高品質な行政サービスを国民に提供していけるか。三つ目としましては、おっしゃったように産業の構造転換をどうやって進めていくか。四つ目として、日本は高コスト構造社会と言われていますが、これをどう改善を図っていくか。あるいはまた、これまた大臣おっしゃいましたが、いかに個性豊かな自立した地域社会を構築していくか、あるいはまた、いかにこの不透明な時代を生き抜く人材を育て上げていくことができるか等々だろうと思います。  これらのいろいろな社会変革を進める上で一つの大きな重要な手段となり得るのが、先ほどから再三申し上げておりますように、高度情報通信技術だろうと思います。私は個人的に思うのでありますが、中でも特に重要なのがやはり教育の改革なんだろうと思います。やがて訪れる本格的な高度情報通信社会に対応し得るような人材をいかに育て上げていくことができるか、これが我が国に課せられた喫緊の課題ではないかと思います。  大臣郵政大臣ではございますが、再び副本部長としての野田大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。  大臣、教育改革の重要性に対する御認識と、そしてまた、その改革の中で高度情報通信技術が果たし得る役割についてお考えをお聞きしたいと思います。
  165. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 教育の重要性というのは、文部省にお任せするということではなくて、やはり私たちの将来の国を支えてくれる人材を育てるということで、今のすべての大人の責任ではないかと思います。  ただ、具体的な一つ一つの教育のあり方については主体的に文部省がやっていただくべきことだけれども、郵政省としてできることは、今取り組んでいる高度情報通信社会の中の一つのこれからの主役であろうと言われているインターネット、これを有効活用していただいて、今の子供たちがそれを使いこなすことによって、次の時代に心豊かな日本を支える人材となってもらうための基礎づくりというか基盤づくりを私たちは精いっぱいやっていかなきゃいけないのではないかと思います。  先ほども情報リテラシーという話を申し上げましたけれども、まさにやはり小さなころからコンピューターまたはインターネットと身近に接する環境をつくっていくことが、今の私たち大人が子供たちに将来を託す意味で残せる一つの宝ではないかなと思って取り組んでいるところです。  そういうことで、実は既にもう推進本部の方においては、平成十年の十一月に、先ほどの基本方針の改定の中で、情報リテラシーの向上と教育の情報化ということをあえて独立した課題として取り上げておりまして、今申し上げたインターネット教育をきちっと進めていくということを明記してあります。  それについては、アクションプランを策定中であるということは先ほど申し上げたとおりですけれども、総理みずからもバーチャルエージェンシーというグループをつくりまして、その中でも特に教育の情報化のプロジェクトをあえて設置しておられる、非常にストレスを置いて特に教育の情報化については取り組んでおられるということを御報告申し上げます。  その中ではどういう課題が検討されているかというと、例えば学校に接続されるインターネットの高速化、それと、あとはインターネット上で使われる教育用のコンテンツ、中身の充実についての検討をしているところです。  昨年は三次補正の折に、何度も申し上げて恐縮ですけれども、これは公共電気通信システム法に基づいてなんですが、文部省と共同で光ファイバーとかさまざまな高速アクセス回線を使った、衛星とかCATV、そんなようなものを使って教育のネットワークシステムを実現する研究開発というのに着手させていただくことになったわけであります。  そういうようなことを初めとして、文部省を中心にますます情報通信を通じて子供たちが豊かな子供時代、さらには人材として育ってもらえるようなシーズをつくるように努力していきたいと思っています。
  166. 内藤正光

    内藤正光君 大臣所信の中で、学校におけるインターネットの利用を促進するということで、先ほどの答弁でもいろいろ具体的な施策についてお答えいただきました。  私はそれ以外にもいろいろあろうかと思います。例えば情報教育情報教育と言っているわけなんですが、文部省の方では二〇〇三年から高校の教育課程において情報教育を必修化するということになっておりますが、私はある意味では高校ではちょっと遅過ぎるんじゃないのか、やはりこういうのは小学校ぐらいから徐々に始めるべきではないのかと思うんです。ですから、私はぜひ小学校からの情報教育の必修化、これを取り込むべきではないか。  ほかにもあります。さらに大きな問題として、環境がたとえ整ったとしても教える側がそれに追いついていない、つまり教師の側が十分教えられないという現状も悲しいことですが現実のものとしてあるわけなんです。それへの対応、いろいろあろうかと思いますが、一つの方策として教員免許の取得の条件として情報関連の単位を義務づける、こういったものもあろうかと思います。  そのほかにも、私なりにいろいろ考えました。例えば教育の情報化を公的部門だけで進めるにはやはり無理があるだろう。やはり民間の助けもかりながら進めていくべきではないのかということで、例えば学校の情報化のための優遇寄附税制というものを設けたらいかがか。例えば、個人が寄附をした場合、今の税制では二五%までしか控除をされない。しかし、それをアメリカのように五〇%まで拡大をする。あるいはまた企業でも何でもいいです、パソコンは例えば二年使ったら大体企業は取りかえるかと思いますが、普通に使う場合は二年前のパソコンでも十分使えるんだろうと思います。それを企業が、評価性資産というんですか、そういうようなものを学校に寄附をした場合、それを企業側に損金算入できるような、そんなようなアイデアもあるかもしれません。  あるいはまた、さきの臨時国会で私は指摘をさせていただきましたが、厳然として学校における日米の格差があるわけです。ですから、この格差を急激な勢いで縮めるためにも、この際、国債を活用できないものだろうか。  こういったいろいろなアイデアが思い浮かぶわけなんですが、副本部長としての野田大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  167. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) ただいまの多岐にわたるいろいろなアドバイスというか御提案をいただきました。私一人でお答えできるようなことばかりではないんですが、ただ一点、早いうちからそういうことを徐々にさせていかなければならないということはまさに同感でございます。今度の三次補正での実験研究に関しましても、全国の小中学校、手を挙げていただいたところになるわけですけれども、大体千五十校ですか、インターネットの接続をさせていただいているということで、それに関しては郵政省も積極的に取り組んでいるところでございます。  あとのことにつきましては、また推進本部で、いろいろと税金の問題とかもございますので、検討できれば取り組んでいきたいと思っています。
  168. 内藤正光

    内藤正光君 では次に、ちょっと項目が変わりまして、高度情報化社会の推進ということで質問をさせていただきたいと思います。    〔委員長退席、理事寺崎昭久君着席〕  先ほども申し上げましたように、民主党の高度情報化社会推進プロジェクトの中で、毎週いろいろいろな先生方をお呼びして御講演をいただいております。インターネットの分野では大変高名なある先生なんですが、その方がこのようにおっしゃっていました。日本は九〇年代前半まではインターネットの世界では最先端を行っていたと。  今考えるとそんな時代もあったのかななんて思うんですが、確かに九〇年代前半はインターネットの分野では、日本の、特に大学関係は最先端を行っていた。しかしその後、欧米に大きなおくれをとるようになってしまった。その理由を大臣、どのようにお考えになられるでしょうか。
  169. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) インターネットはもともと米軍の技術でございまして、ARPANETを中心にして発展してきたということがございます。その後、米国においては高速のネットワークを講じようということで、NRENとかラージスケールネットワークとか、さまざまな施策が講じられまして、約千三百億程度のお金が投下されたということがございます。  現在は次世代ネットワークという形で新たな施策の展開に入っているわけでございますけれども、今おっしゃいました日本が九〇年代の前半にインターネットの分野で主導的立場を占めていたということでございますけれども、多分、現実は米軍の技術を中心としたアメリカにおけるインターネットの発展というものの方が大きいのではないかというふうに私どもは承知しております。
  170. 内藤正光

    内藤正光君 いろいろ見解の違いはあろうかと思いますが、その先生がおっしゃるには、こういうふうに言っていたんです。  日本は、一つには、九〇年代後半、教育だとか行政の現場に情報環境が整備されていなかった、だから余り広がりを見せなかったこと。もう一つは、九〇年代の前半というのは、そういった大学だとか研究所の利用からビジネス利用へと大きな飛躍を遂げるときであった。ところが日本は、規制がたくさんあったり、あるいはまた法的な環境整備がなされていなかったりということで、大学だとか研究機関に閉じていたころはうまくいっていたけれども、ビジネス利用になる段階でストップがかかってしまったというふうにおっしゃっているんです。  そこで、私は、一つの施策として教育現場での情報環境の整備というのを積極的に進めるべきではないのかというふうに思います。いいか悪いかの是非はさておいて、日本的な特質を考えますと、教育の現場に情報環境が整備をされると家庭での普及というのが一気に広まるんですね。  例えば一つの例を挙げますと、アメリカでパソコン通信が一気に普及した理由は、もう御存じのことだろうと思いますが、オンライン確定申告というもの、そういった行政サービスを始めたから家庭での普及が広まったわけなんです。  大臣所信の中で、明確に情報通信のインフラ整備に積極的に取り組んでいくというふうにおっしゃっています。しかし問題は、いつでも問題になるんですが、実際にだれがこの教育現場の情報インフラ整備を行っていくのか。その基本認識について、昨年もお伺いしたかと思いますが、今改めてお伺いします。政府の役割、自治体の役割、民間の役割、それぞれに分けて基本認識をお答えいただけますでしょうか。
  171. 天野定功

    政府委員(天野定功君) 現在、インターネットを中心とします先端の情報インフラの整備につきましては、文部省と郵政省の連携で取り組んでおります。  文部省の方は、公立の小中学校に配備されます教育用コンピューター整備ということで平成六年度から十一年度までの六カ年計画で進めておりまして、これに要する経費は地方交付税で賄うということにしております。これによりまして、平成十年度末までには目標に対しておおむね九割ぐらいの教育用コンピューターが配備されます。  また、インターネットに接続するためには単なる電話線では非常に遅うございますので、文部省におきましては計画的にすべての学校に毎秒六十四キロビットのスピードの回線を敷設するという計画で進めております。  この計画につきましては、私どもの方も促進するために、郵政大臣の方から通信料金等に関しまして学校向けに特別料金を導入するよう事業者に要請しまして、目標が二年間前倒しになりまして平成十三年、二〇〇一年度になりますけれども、全学校にこの六十四キロビットの回線が設置されるようになります。  以上、中心はどちらかといいますと文部省でございますが、郵政省としましては、さらに、先ほど大臣がお答えいたしました第三次補正予算におきます通信回線の高速化を進めていくということで今取り組んでおりまして、対象の学校は千五十校でございますが、その千五十校の学校に二十台程度のパソコンが同時にインターネットに接続できる環境の整備を先行的に進めておるという状況でございます。
  172. 内藤正光

    内藤正光君 よく郵政省さんは学校につなげるとか言うんですが、アメリカの方では学校と言わずに教室にどれだけつなげるかなんですね。郵政省さんは学校につなげる、一つの教室であってもこれは一つ一つとしてカウントされる。でも、諸外国アメリカなんかは大体一つの学校に一本ということじゃなくて三つも四つも五つも教室をつなげているんです。回線も、六十四キロビットというのは知らないと速いのかなという勘違いを受けてしまいますが、大体一・五メガとか、それが通常なんです。もうちょっと認識をできれば改めていただきたい。  先ほどから何度も申し上げておりますように、情報教育というのは私は本当に二十一世紀の日本の命運をかける大事な課題であるかと思いますので、改めて御所見をお伺いしたいと思います。
  173. 天野定功

    政府委員(天野定功君) 学校にどこまで整備すべきかは、これは政府内の役割分担としましては文部省の方で措置することになっておりまして、現在の整備目標は今申し上げましたように小学校の場合ですと二十二台を置きまして、これは生徒二人に一台といったような感じの目標でございます。中学、高校につきましては生徒一人に一台パソコン教室のときに使えるようにしようということでございます。  そして、六十四キロビットは確かに回線の容量としてはまだまだ十分ではなくて、これらすべての二十二台とかあるいは四十二台のパソコンが同時にインターネットに接続する容量ではございませんので、私どもとしましては、先ほど言いましたように、第三次補正で一つの学級のパソコンが全部インターネットにつなげられるようにこの千五十校につきましては先行的に整備しようということでございます。  これは予算の問題がございますので、恐らく文部省もすぐには大容量化というのは難しいのかもしれませんけれども、私どもとしてもよく連携をとりまして、おっしゃいますように、単に学校ということではなく一つの教室単位でとらえるような、そういったまとまったコンピューターを同時にインターネットに接続できるような措置を取り組んでいきたいというふうに考えております。
  174. 内藤正光

    内藤正光君 済みません、一つ聞き逃したのか、確認をさせてください。  先行的な幾つかの学校については財政支出で引くということなんですが、それ以外、その後はどういうふうにお考えになられているんでしょうか。
  175. 天野定功

    政府委員(天野定功君) これは、地方交付税で現在学校の通信回線の費用は措置されておりますので、引き続き、これは文部省の方で措置なさるわけですけれども、私どもの方は地方交付税で措置されるというふうに聞いております。
  176. 内藤正光

    内藤正光君 昨年の段階では、何かインフラ整備は民間だとかいうふうにおっしゃっていたかと思うんですが、これは私の勘違いなのか、あるいはまた見解が変わったのか、どういうことでしょうか。
  177. 天野定功

    政府委員(天野定功君) 基本的に電気通信の整備のための投資といいますものは、通信事業としてとらえました場合に、ここは民間主導で整備すべきであろうというふうに考えております。    〔理事寺崎昭久君退席、委員長着席〕  しかしながら、非常に公共性の高い分野だとか、あるいは研究開発をする分野などにつきましては、政府の資金も投入していくということは考えてもいいんじゃないかというふうに考えておりますが、基本は民間のビジネスで展開される分野につきましては民間主導で、こういう考え方でおります。
  178. 内藤正光

    内藤正光君 私もそのとおりで、同感でございます。  原則論としては、民間がインフラ建設を行って、政府の役割は何かといえば、ビジョン策定であり法的環境の整備であり、あるいはまたパイロットプラント的な研究開発の支援であったり、これが原則論としてあるべきなんだろうと思います。  しかし、私はどうも原則論にはそんなに固執する必要もないんじゃないか。最初に申し上げたアメリカにおける二つの州、これは対照的ないい例なんですね。というのはどういうことかと申しますと、アイオワ州のネットワークは、実は全部州が財政支出において敷設をした。そしてその使用料金に関してもかなりの補助が出ている。どれぐらい補助を出しているかといいますと、通常ならば毎時二百ないし三百ドルぐらい要求すべきところを五ドルしか要求しない、残りの二百ドル近くあるいは三百ドル近くは補助でもって行っている。これがアイオワ州における実情なんです。  一方、ノースカロライナ州はどうかといいますと、これは原則論にのっとった進め方をしました。建設は民間。州は何をやったのかといいますと、一つシステムの仕様だとか企画を決定したこと、そしてもう一つはユニバーサルサービスだとかそういった基本原則を確立したこと、そういうようなことを州の役割として進めていったそうです。その結果、州の最終的な財政支出は一千五百万ドル程度だったんです。結果としてどれぐらいの価値のあるネットワークをつくれたかというと、二億ドル相当のネットワークを民間活力をもってつくり上げることができたというふうに言われております。  私がここで申し上げたいのは、原則論に固執することはない。つまり、収益性の期待できるような都会は民間主導でどんどんやればいい、しかしそれがどうも期待できそうにない地方は、甘やかすという意味ではないんですが、やっぱり基礎的インフラとして財政支出も一つの選択肢として考えてもいいのではないかというように思っております。  では、次に話題を変えたいと思います。  次のテーマは、情報バリアフリー環境の整備についてということでございます。  大臣所信の中で、高齢者や障害者も情報通信の利便を享受できるような情報バリアフリー環境を整備すべきだというふうに明確におっしゃっております。私もそのとおりだと思います。情報化社会は身障者が疎外されるような世の中であってはならない、むしろ情報通信技術の持つ可能性をとことん使って障害者も健常者と同じように活躍できるような社会を積極的につくり上げていかなければならないんだと思っております。  この際、私たち自身の持つべき基本的な考え方として、障害を特殊なものとして考えるべきではない。もし障害を特殊なものとして考えたならば、経済的合理性を追求する中で、コスト削減を追求する中で、障害者への配慮というのは例えば不景気だからということで切り捨てられたり、いろいろな理由で簡単に切り捨てられていってしまう。むしろ、障害は何も特殊なものではない、単に身体的特性と周りの環境とのミスマッチだというように考えるべきだ。  ちょっと身近な例を挙げますと、例えば物が見えない、どういう場合か。目が不自由な方も見えない、しかし周りが暗かったら健常者でも見えない。物が聞こえない、どういう場合か。耳が不自由な人もそうかもしれないけれども、周りが騒がしかったら健常者でも聞こえない。つまり、身障者へとことん配慮するということは、結局はすべての人たちにとっての配慮につながるんだということを基本認識として持たなければいけないんじゃないかと思います。  そこで、その関連で一つ質問させていただきます。  字幕放送というのがございますが、各国、日本とイギリスとアメリカで結構です、各国のテレビ放送における字幕放送の普及率について教えていただけますでしょうか。
  179. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) 字幕が付与されている放送番組の割合でございますけれども、九五年の数字でございますけれどもアメリカは、四大ネットワークで約七割ということでございます。英国でございますけれども、九六年の数字でございますが、BBC及び民放合わせまして三割というふうになっております。ちなみに、日本ではどうなっているかということでございますけれども、民放は一・六%しかやっておりません。それからNHKは一二・九%ということで、この分野においては日本は非常におくれております。
  180. 内藤正光

    内藤正光君 けた違いに違うんですが、どうしてそんな大きな開きが出たんでしょうか。
  181. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) これは、英語のアルファベットと、それから漢字仮名まじりという日本語の特性にも由来すると思うんですが、英語だとアルファベットの数二十六字ですべてをあらわせるということでございますが、日本語の場合は平仮名、片仮名、漢字等で構成されますので、文字数に格段の差があるということがございます。それから、日本語の場合は同音異義語が非常に多いわけでございまして、これを漢字変換を行いつつ漢字仮名まじり文に変換する必要がございまして、非常に難しいという点がございます。アメリカの場合は、タイプライターで口述筆記するというようなものも非常にポピュラーにあるわけでございますが、日本はそういう点で字幕放送をつくることに多額の経費がかかるということもありましてなかなか進捗しないということでございます。
  182. 内藤正光

    内藤正光君 日本語の持つ特殊性ゆえだということなんですが、ただ、私が聞くところでは、リアルタイムで音声を文字化する技術は相当なところまでいっているというふうに伺っておりますが、現状をおわかりでしたらお答えいただけますでしょうか。
  183. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) 郵政省も通信・放送機構を中心にしてその点の研究をやっておりまして、ニュース等の生番組への字幕の付与を可能とする字幕の自動生成を実現するための研究開発ということで実施しているわけでございますけれども、まだ実用化には至っていないということでございます。
  184. 内藤正光

    内藤正光君 私が聞いたところでは、九五%とか六%まで精度は上がっているというふうに聞いております。これはバラエティー番組というのじゃなくてニュースのようなきれいな発音で発せられるような言葉を文字化する、その精度が九五、六%まで上がっているというふうに伺っております。  私は、ここまで来たら、むしろ二年後に例えば法制化をする、字幕放送を義務づけるというふうに決めてしまえば、あとは民間活力というか民間努力を鼓舞して実現への可能性が一歩早まるのではないか。  先ほど何で日本アメリカあるいはイギリスとこんなに開きがあるのかと聞いたら、これは日本語の持つ特殊性ゆえだとおっしゃったわけなんですが、私はそれ以外にも一つ大きな理由があるんだろうと指摘をさせていただきたいと思います。  それは、アメリカ及びイギリスでは字幕放送というのは法律で義務づけられているんです。日本は単に努力義務なんです。私はここがかなり大きいのではないかと思っているんです。  つまり、繰り返しになるんですが、二年後に法律として義務づけるというふうに方針を決めてしまうことで民間は一気に努力をする。普通にしていたら字幕放送化が五年先、六年先だったものが、そういうことで三年なり四年早まるんではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  185. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 情報バリアフリーということは大変重要だということで何度も申し上げてきたところです。先ほど内藤先生がおっしゃった障害に関する考え方というのは、恐らくユニバーサルデザインということで、だれもがいろいろな情報通信機器にせよ、共有し合えるとか、そういうことをやっていかなきゃいけないということだと思います。その義務づけとかそういう法制度の前に、やはり私たちは一つずつコンセンサスを積み上げていかなければならない。確かに、技術的な問題もあったわけですけれども、やはり多くの皆さんにそういう情報バリアフリーという気持ちを共有していくためにいろいろな取り組みを進めていきたいと思っています。  先ほど来申し上げている高度情報通信社会推進本部においても非常に重要だということで取り組んでおりますし、さらに郵政省の方では、御承知と思いますけれども、昨年の十月には今先生の御指摘のようなことがきちんと電気通信サービスの利用においてできるようにするために、障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針というのを実は告示しています。  ここに、先ほど申し上げたような障害にかかわらずすべていろいろなことができるようにしていこうというようなことを策定しているところなんですけれども、この指針を受けまして、電気通信の提供者団体とか障害者団体の人たちにつくっていただきました電気通信アクセス協議会というのが昨年十一月に設立されました。今その協議会で皆さん方先生指摘のようないろいろな電気通信設備についての開発とかどういう仕様がいいかというところを検討していただいているところであります。  私とすれば、そういう担当の皆さん、または当該の関係している皆様方が設立してくれた協議会を通じていろいろな知恵なりアイデアが出てくることを踏まえて、これからの郵政省の取り組みをしていきたい、検討していきたいということを今は考えているところであります。
  186. 内藤正光

    内藤正光君 話が大変飛ぶようなんですが、大臣、八五年、今から十何年も前のことなんですが、かつて、車のフロントガラスが同じ日本製でありながら日本向けとアメリカ向けで違っていたというのは御存じですか。
  187. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 知りませんでした。
  188. 内藤正光

    内藤正光君 説明をさせていただきますと、同じ日本製、日本でつくっているんですが、米国向けは合わせガラスといってガラスとガラスの間にビニールを挟んでいた、それで一方、日本は単に強化ガラスを使っていた。何が違うかというと、事故を起こしてバーンと人間が前に飛び出たときに、強化ガラスだとばらばらに破片が飛び散り失明をする、合わせガラスだと破片が飛び散らずに失明をすることはない、そういう違いがあったんです。  じゃ、日本の安全基準はそんな適当なものだったのかというと、実は日本の安全基準は強化ガラスかあるいは合わせガラス、いずれかを使いなさいということになっていたんです。ところが、強化ガラスに比べて合わせガラスのコストというのは二倍かかったんです。倍以上したんです。だから、合理的な企業の行動として、やはり日本強化ガラスを採用するということなんです。つまり、私はある程度こういう安全規制というのは必要なのではないか。  そこで、大臣にまたお尋ねをいたしますが、これは十年ちょっと前にアメリカで制定された法律なんですが、リハビリテーション法五百八条というものを御存じですか。
  189. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) リハビリテーション法第五百八条、承知しております。
  190. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 正直に申し上げて、きのうまでは知らなかったんですけれども、きょういろいろな情報バリアフリーの勉強の過程で学ばせていただきました。
  191. 内藤正光

    内藤正光君 勉強されたということで、ありがとうございます。  私の口から改めて御説明を申し上げますと、この法律はどういうものかといいますと、連邦政府あるいは政府の資金を受けている組織に納入する機器は障害者に配慮したものでなくてはならない、こういった法律なんです。  じゃ、具体的にこういった法律がどういった効果を与えているかといいますと、民間企業はそれなりに努力するわけです。例えば、私の手元にマイクロソフト社のマニュアルがあるんです。これはどういうマニュアルかといいますと、身障者でも使えるようなアプリケーション、ソフトウエアを作成するためのガイドライン、ソフトウエアエンジニアに向けたガイドラインです。これがばっと何ページかにわたってあるわけなんです。これを全部読むと十分終わってしまいますので、飛び飛びで読ませていただきます。  アメリカにおける法律、例えばリハビリテーション法五百八条などが「公共企業と私企業の両方に障害者のコンピューターへのアクセシビリティーの課題について国民的関心を引き起こした。」、あるいはまた、「このドキュメントは、障害者にとって如何にコンピューターをアクセス可能なものにするかについて議論し、如何にデザインし、障害のあるユーザーに便宜をはかるコンピューターソフトウエアを作るかについて記述したものである。」、以下、技術的な細部について記述があるわけですが、一つだけ紹介をさせていただきます。  キーボードアクセスということで、すべての機能を実行するに当たって、キーボードアクセスをも提供しなさいということを言っているんです。これはどういうことかかみ砕いて言いますと、普通皆さんがコンピューターを使うときはマウスを使う。マウスは視覚的で便利です。ところが、便利なのはあくまで健常者である私たちに対してであり、目の見えない人はマウスというのは一切使えないんです。むしろ、ウィンドウズ以前のMS—DOSの方がキーボード操作の入力で操作できたから便利だったんです。  ついでにもっと言いますと、銀行のATMはかつてはボタンだったと思いますが、それがタッチパネルになった。このタッチパネル操作は意外と便利だなと思うんですが、目の見えない人は全く使えないというものなんですね。だから、マウス操作もいいけれども、同時にキーボードでも操作できるようにしなさいよというようなことが書かれているわけです。  最後に、これは大事なことなんですか、各種試験の項目について言われているんですが、各種試験においては必ず障害者もその中に含めなさいというようなマニュアルなんです。  そこで、私は、私なりにこのリハビリテーション法五百八条の効果をまとめさせていただきました。  一つには、先ほど御紹介させていただいたように、身障者に配慮した基本機能というものが標準的に組み込まれるようになる。あくまで対象は政府納入機器だけなんですが、政府というのは大口顧客なわけですから、民間事業者としては何も政府に納入するものと民間に納入するものを区別する必然性がないわけですから、すべての製品に障害者配慮への基本機能を標準化して組み込む。これが期待されます。  そしてもう一つは、大量生産によって障害者配慮のためのコストが低減化する。あるいはまた、それに付随することなんですが、周辺機器が普及をする。これによって障害者がコンピューターを使おうとしたときの経済的な負担が軽減をされる。  あるいはまた、先ほど最後の項目で申し上げましたように、生産プロセスの中に必ず障害者の視点を要求するようになるわけですから、障害者の雇用状況も改善をされる。このような多くの効果が期待されるわけなんです。  そこで、私は大臣に御提案をさせていただきたいわけなんですが、このような法律をぜひ日本も取り入れるべきだと思いますが、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
  192. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) 先ほど大臣も申し上げましたように、昨年十月に「障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針」というものを告示いたしました。このアクセシビリティ指針は、ユニバーサルデザインの概念に基づきまして電気通信設備の機能の基準というものを定めております。そういう意味では五百八条に類するものというふうに考えられます。この指針を今後電気通信設備の形に移しかえていくということでございまして、現在統一仕様について検討中ということでございます。  先ほどお示しございました五百八条についても、その後改正されておりまして、二〇〇〇年二月までに基準を作成、公表するというふうなことをアメリカでも言っているようでございまして、今後さらに詳細な見直しが行われるようでございます。  私どもとしては、アメリカにおける見直しの状況、それから統一仕様のでき上がりぐあい、そういうさまざまな観点を加味しながら今後さらに検討してまいりたいというふうに考えております。
  193. 内藤正光

    内藤正光君 私は、アメリカが後退したからといって日本も後退する必要はないと思うんです。これはいいことなんですからぜひやるべきだと思うんです。そして、努力義務が余り効果がないということは、日本語の持つ特殊性というものは考慮しなきゃいけないものの、努力義務ではなかなか効果が発揮できないというのは字幕放送の例でもおわかりいただけるかと思います。ぜひこれは大臣の頭の中にインプットして推進していただきたいと思います。大臣答弁をお願いします。
  194. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 内藤先生情報バリアフリーに関する大変熱い思いを受けとめさせていただきました。  ただ、私も、今局長が申し上げたように、初めに例えば義務ありきとか規制ありきとか、そういうことではなく、アメリカでは法律と呼んでいて私たちの場合は指針となっていてその重みが違うじゃないかというお話もあるわけですけれども、やはりこういう積み重ねで初めてみんなが気持ちよく情報バリアフリーに関して取り組んでいただけるのではないか。そういうこともこの国では大切にしていきたいなと思っておりますので、なるべく情報バリアフリーがこれまで以上に迅速に進めていけるように郵政省としても頑張ってやっていきますので、御理解いただきたいと思います。
  195. 内藤正光

    内藤正光君 残された時間あと五分でどこまで質問できるかどうかわかりませんが、さきの予算委員会でも途中で切れてしまったんですが、次はSOHOについて質問させていただきたいと思います。  SOHOは、御存じのようにスモールオフィス・ホームオフィスということで、定義を簡単に言えば、情報通信機器を活用した自営業的な在宅勤務形態、これは郵政省さんの言っている雇用関係のあるテレワークとは多少ニュアンスが違うものでございます。  SOHOワーカーはどれぐらい日本にいるかといえば、これはしっかりした統計があるわけでございませんが、百五十万とも三百万とも言われているんです。私は、このSOHOという勤務形態というのは、これからの高度情報化社会における新しいワークスタイルであると同時に、新しいライフスタイルであろうかと思います。  と同時に、例えば今までいろいろな制約でもって働くことができなかった女性だとかあるいは高齢者、身障者、そういった方々へ働く機会を提供する大きな潜在力を持っている。そして、ベンチャーというとハイテク系ベンチャーを思い浮かべるわけなんですが、私は、SOHOというのはベンチャーという言葉をかりて言うならば雇用創出型のベンチャーではないんだろうか。  私はこの例えが好きなんですが、雪をいただいた富士山はきれいなんですが、しかし山頂だけできれいな富士山にはなり得ないわけです。なぜ富士山がきれいかというと、山頂を支える幅広いすそ野があるからこそ富士山はきれいだと。つまり、私はSOHOというのはハイテク系ベンチャーを力強く下支えするベンチャーでもあるんではないかと思います。私は、SOHOを育てはぐくむいろいろな努力がまさに雇用創出のための努力につながるんであろうかと思います。  しかし、毎度のことながら、行政上の取り組みは一歩も二歩もおくれている。さきの予算委員会で、小さな子供を持つ女性SOHOワーカーの大きな悩みとして、保育所へ子供を預けようとしても優先順位が低いと。それに対して厚生大臣は、そういうことがないよう努力をいたしますという前向きな答弁をいただいたわけなんですが、大臣、なぜ優先順位が低いのかおわかりでしょうか。
  196. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 詳しい厚生省の政令、省令とかが今手元にないので正確なことを申し上げられないんですけれども、伝え聞くところによると、恐らく現場の運用の意識なんじゃないか。要は、SOHOの場合はおうちにお母さんがいるから勤めているお母さんよりは子育てがしやすいでしょうみたいな感じで保育園でそういう取り扱いをされたんじゃないかというようなことをちょっとお話をしたんですけれども、むしろ根本的な問題というのは、政府の中にもSOHOを知っている人が少ない。先日、私も予算委員会での先生質問を聞いておりましたけれども、恐らくSOHOということをきちっとわかっている人が少なかったんじゃないか。そういう意味で、私たちも郵政省の立場としてSOHOの形とか、どういうものかというのをこれからPRしていかなきゃいけないなという重要性を感じたところです。
  197. 内藤正光

    内藤正光君 おっしゃった理由のほかにまだあるんです。ほかの自営業者と比べてなぜ優先順位が低いのかという答えにはなっていないんですね。それは、一般見解を厚生省さんからお伺いしたんですが、理由の一つに、普通の自営業者は勤務時間が明確だと、朝九時から夕方五時まで。しかし、SOHOというのは勤務時間帯が明確でない。これが他の自営業者と比べて入所の優先順位を低くしている理由だそうなんです。  私は、これから高度情報化社会が本格化する中で、こういうような就労形態というのはますますふえていくんだろうと思います。就労時間、それぞれのライフスタイルに応じて働くという、そういう時代の中にあって、この理由で優先順位を低くするというのは余りにも時代おくれではないのかなと思っております。  時間がなくなりました。まだたくさん質問したいことがあるんですが、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  198. 森本晃司

    ○森本晃司君 大臣、どうも御苦労さまでございます。  まず最初にお伺いしたいんですが、我々の家庭に、あるいはもう至るところにテレビが普及し、また放送というのは我々の生活の中で重要な役割をしております。ニュース一つもう欠くことのできない問題でありますが、そのニュースの取り扱いについて、最近考えさせられる問題が出てまいりました。大臣もその点についてよく御存じだと思っておりますが、報道の自由を余り行政が侵すようなことになってもこれまたいけない問題だと我々も考えております。しかし一方、人権を守らなきゃならないという問題もあるわけです。  最近、所沢のダイオキシンを報道する番組がございまして、結果として所沢のホウレンソウが売れなくなって大暴落したという出来事がございました。それから、脳死臓器移植の問題の報道のあり方、これは極めて個人のプライバシーを侵すような状況にもなりかねなかったのではないかと思います。報道の大切さということで、競う余りに、時にはその手術場まで映させろという要求があった。さらにまた、病院の中で携帯電話をがんがん使ってやる。臓器を提供してくださる御家族の方は悲しみの中にいらっしゃるのに、平気でいろんなことが行われていく。  ニュースの大切さ、報道の大切さということは私もそのことについて痛感しておりますし、よりリアルなものを求めたいというのはこれはだれの心の中にもあるものでありますが、非常に難しい問題に今当面しているのではないかと思うんです。記憶に新しいところでは松本サリン事件がありました。こういった一連の状況を見て、現状のままでまた同じようなことが繰り返され、報道されることはどういうことなのかなということも考えなければなりません。  現在、放送事業者は、自律的な放送番組、放送倫理向上のための機関として、民放連の放送基準審議会、放送番組調査会、また各局に番組審議会がある。さらに、放送による人権侵害の救済機関として、民放連とNHK共同の放送と人権等権利に関する委員会機構が設置されているほか、各事業者の放送基準や民放連とNHK共同の放送倫理基本綱領が定められております。  随分たくさんあるわけですけれども、これらはちゃんと機能しているんだろうかと思います。先ほど来申し上げましたが、過度のスクープ合戦や誤った報道による人権侵害に歯どめがかけられるような、そういうものを何とか防ぐ手だてを考えていかなければならないのではないかと思うんです。  去る三月三日に、自民党さんの方でダイオキシン報道を機会に報道と人権等に関する検討委員会が設置されたようでございますけれども、こういった問題について大臣、今どのようにお考えになっているのか、報道の自由と人権、お伺いしたいと思います。
  199. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 私も、ダイオキシン報道等を通じまして、今先生がおっしゃったように、一家に一台というよりももう一家に数台あるテレビの影響の大きさを深刻に受けとめた一人であります。  今ある放送法のもとで、じゃ放送はというと、自律のもとで、先生がおっしゃった表現の自由の確保と、あわせて公共の福祉への適合ということを図っていただく目的があるわけです。今お話しいただきましたとおり、放送の自律のもとで、放送事業者みずからが番組基準を決め、さらに放送番組審議機関を設置している。そして、その中で番組の適正を図るように努めていただいているところです。また、その放送番組基準や番組審議機関の議事については、視聴者に対して情報公開をされている、そういうような工夫もしている。  それは事前のことですけれども、先ほど被害者の方のお話もありましたけれども、事後的には、申し上げた放送法の中に訂正放送制度というのがございます。これはいろいろなことがあって今日では改良されまして、訂正放送の請求期間というのが平成七年度から二週間から三カ月に延長しているということになっています。  さらに、お話がありました放送と人権等権利に関する委員会、ここにおいては視聴者の立場から問題解決に当たるということで、いわゆる権利侵害を受けたと人と放送事業者の間での話し合いがつかなかった場合に、そういうところできちっと問題解決に当たってもらえる、そういう機構も今設置されたところです。  郵政省というか、私たちが思うには、まず今あるシステム、このような放送番組の適正化に対する現行のシステムをきちっとそれぞれの立場で真に実効性のあるものにしていくことが大事じゃないか、そういうことを考えておりますし、今申し上げた訂正放送の制度とかBRC、BROについても、どうも十分に国民には伝わっていないというか、そういうことがわかっていないというところも指摘がございましたので、それについては積極的に周知に努めていきたいと考えているところであります。
  200. 森本晃司

    ○森本晃司君 我々の生活に影響力が大変大きいだけに、よく考えなければならない問題であると思っております。ひとつ郵政省の方としても人権という問題も含めていろんな角度で検討していただいて、そして、数ある機構が設けられておりますけれども、それらが機能していき、また同時に、単に競争するだけではなしに、放送業者がある意味で自主的、自律的にその倫理を守っていくようにしていただければと、このように考えておるところでございます。  ところで、来年十月にはBS4後発機が打ち上げになるわけでございまして、十二月からいよいよBSデジタル放送がスタートいたします。大変このデジタル化が急速に進展しているわけでございますが、同時に、地上放送のデジタル化導入に際して、現在のアナログ放送を継続するために現在のUHF放送局の周波数変更が必要で、これまた大変な費用がかかるということが最近いろいろ判明してきたとも伺っております。  そこで、デジタル放送について幾つかお伺いしたいわけでございます。  今不況にある家電メーカーのBSデジタル市場への期待は大変大きいものがあります。BS放送は既に一千二百万件に達しているとも伺いますが、そういった人たちの意欲をかき立てていることも事実でございますし、東京の秋葉原あたりでは既にその準備が始まり、商戦が始まろうとしている。こういう不況の中で期待が大きいわけであります。また、NHKやあるいはWOWOWなど、委託事業者がいろいろと準備を進めているところでもあるわけです。  私も、デジタルデジタルと言ってもなかなかわからないということをこの間品川局長に申し上げて、わからないわからないと言っているばかりじゃ、これまたなおさらわからなくなるのでということで、このいただいたペーパーも眺めてはみたんですが、これでもまだまだなかなかわからないという感じがいたします。  そこで、先般、NHKの放送技術研究所へお邪魔いたしまして、一体どんなものなのかということをいろいろと見せていただき、また操作もしていただいて、なるほどこれはすばらしい機能を持っているなと。一日の番組もテレビを通じて見ることができる。七時のニュースを八時に帰ってきて初めから見ることができる。あるいはあしたの天気はどうか、もう少し狭い地域を知りたいと思えばそれもまたできる。それから双方向通信ができる。これはいよいよ画期的なものが始まって、デジタルは日本がおくれていると言われていたけれども、これに力を入れていくということは極めて大事なことだなというふうに痛感した次第でございます。  しかし、どんなすばらしいテレビ、あるいはデジタル化され、あるいはまたそういうものがどんどん進んでいっても、大事なことは、視聴者のニーズにかなったソフトが提供されるのかです。  あるいは、率直にその場で感じたんですが、そんなすばらしいものが我が家で操作しながら見ることができるわけですけれども国民の人が思うことは、これの放送が始まったときに、今の家のテレビでそのままいけるのか。率直な考え方ですよ。デジタル放送と言ったってわからない、今アナログをやっているんですから。それはいけないだろうと。そうすれば、どうすればデジタル放送が我が家で見ることができるんだろうか、それにはどれだけの費用がかかるのか、アンテナはどうなるのか、それからアダプターはどうなるのか、受信機はどうなるのかと。  私自身も、今宿舎で使っているテレビが相当二重映りしたり、時々トントンとたたいてやって言うことを聞かすわけですけれども、ぼつぼつ買いかえの時期に入っているんだなと、こうなっているわけですけれども、では、どんなテレビを買えば次のデジタルに対応できるんだろうか。ハイビジョンのやつを買えばいいという話も聞きましたが、それは一台三十万円から五十万円ぐらいするという話も聞きますし、ちょっとその辺を教えていただきたいんです。  しかも、BS放送を今見ている人と、それからそれを受けていない人ではそれにかかる費用がまた異なるということもちらりと伺っているわけですけれども、一国民に語りかけるように教えていただければありがたいと思います。
  201. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) お答え申し上げます。  今先生指摘の点でございますが、大変受像機も多様な受像機が普及しておりまして、恐らく視聴者の方々、おっしゃるように自分のテレビはどうなったら衛星デジタル放送を見れるのかと、いろんなことでお考え途中にあるかと存じます。  私ども、やはり何よりも放送というのは視聴者のためにあるわけでございますから、常に視聴者の視点に立ってデジタル放送への円滑な移行も考えていくべきではないかということを第一の原則に考えておるわけでございます。  お尋ねの受像機でございますけれども、これは大変難しいお尋ねでございます。と申しますのは、いわゆる情報家電と申しますか、テレビは価格があってないような、市場価格というのがない、非常に把握が難しいわけでございますが、実勢価格で私どもが身近に調べたケースを申し上げますと、今BSのアナログ受信機でデジタルもアダプターをつければ見れますという二十八インチのフラット横長の十六、九の画面のついているもので実勢価格で十万円という話を聞いています。ただ、大分店頭で交渉をしたということも聞いておりますけれども。  それから、CSデジタル放送、もう始まっておりますけれども、これはアダプターとアンテナ込みで五万円というようなのが今のCSのデジタル放送の例でございます。  申し上げましたように、今のBSデジタル放送対応型の受像機も、よくパンフレットをごらんいただきますと、アダプターをつければ衛星デジタル放送も見れます、こんなふうな書き方になっております。  しからば、BS衛星デジタル放送用のアダプターというのはいかほどの価格になるのか。実は今関係業界において非常にけんけんがくがくの御議論をいただきながら検討していただいておるところでございます。  これは同じアダプターでも三とおりぐらいのパターンが考えられるわけです。一つは、BSデジタルだけのアダプター、それからCSデジタル放送にも対応できるもの、それから将来の地上デジタル放送にも対応できるアダプター、この三とおり考えられるわけでございます。一番いいのは将来の地上デジタル放送のためにも使えるアダプターというのが今のアナログ受像機にぴったり対応できるわけでございますが、このためには、放送会社さんによってどういう放送方式をとるかということでも変わってくるところがございまして、一生懸命に今メーカーさんあるいは放送会社方々において本当に視聴者にわかりやすい形で衛星デジタル放送を見ていただくにはどうしたらいいかということを真剣に御議論いただいているところでございます。  これはちょっと先走った御答弁になって申しわけないんですけれども、実は、いずれ御審議賜りますNHKの次の十一年度予算になりましょうか、これにおきましても、衛星デジタル放送が十二年度から始まるわけでございますけれども、この点視聴者にどうしたら衛星デジタル放送がよく見えるようになるのか、十分にPRと申しますか情報提供に努めるということが経営方針に書かれておりますし、また郵政大臣意見の中でもその点特に御配意願いたいということも言及しております。これはまた別途御審議賜りたいと思います。  いずれにしましても、申し上げたように、実勢価格はそういう価格が今私の手元にあるわけでございますが、情報家電という言葉で一言で言われておりますけれども、これはひとえに内蔵されております集積回路、LSIがどれだけコストが下がるかということでございます。今いわゆる家電メーカーさんはこの部分に集中的に技術開発なりあるいは生産工程の改善に努めておられますので、将来、衛星デジタル放送を実際に放送されるときには相当コスト面では低価格なものが提供されるのではないかというふうに今のところ考えておりますし、またそういう方向で関係業界方々も御努力をいただいているというふうに承知しております。  しかし、現実に普及している受像機は多様でございますから、自分の持っている、いろんなこれまで発売された機器に応じて、どういうふうにすればデジタル放送が見れるのか。これは行政の我々としても努力いたしますけれども、一義的には放送会社の方あるいはメーカーの方が十分視聴者にそれこそ情報を提供していただくということが大事でございますので、その辺、視聴者に目を向けたいろんな施策を進めていただくようにまた我々の立場でもお願いをしたいと考えております。
  202. 森本晃司

    ○森本晃司君 WOWOW放送がスクランブルをかけた有料放送をしていますが、デジタル放送開始時にデジタルデコーダーを加入者に無料で設置するような話も聞いているわけです。当然、WOWOW放送は自局のみ視聴できるデジタルデコーダーを配るのではないかと思います。NHK、民放系の事業者各社はスクランブル化は当面見送る方針であると聞いておりますが、私自身は、衛星放送は本来有料がなじむのではないだろうかというふうに考えています。  これはいろいろと御意見もあるところかと思いますが、問題は、デジタル放送で局がいろいろふえても番組に魅力がないと高いデジタルアダプターを買ってまでBSデジタルを見る人はいないのではないかと心配しておりまして、このままいくとWOWOWの独壇場になるのかなということも思うところでございます。  そこでお伺いしたいのですが、デジタルで参入してくる民放系事業者はどのような番組を放送しようとされているのか。また、NHKを含めて、有料放送及びスクランブルについてどのように考えているのか。あわせて、BSデジタル放送をどのような放送メディアと位置づけておられるのか。また、具体的にどのようなBSデジタル化促進策を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  203. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) お答え申し上げます。  今先生指摘の衛星デジタル放送は、二社が有料放送で、それから五社が、民放でございますけれども無料放送、広告スポンサーをとって放送するというふうになっております。  私ども、衛星放送につきましては、確かに先生おっしゃるように有料放送あるいは無料放送いずれも可能でございますけれども基本的には放送事業者の経営判断でとられてよろしいのではないかというふうに考えております。  よく有料放送について問題になりますのは、例えばイギリスの例ですと、スポーツ番組など国民的に見てほしい番組が有料でだれでも見れるようにならない、そういった問題から有料か無料かという議論をされますけれども、幸い我が国においてはそのような事象は生じておりません。したがいまして、少なくともこれからの放送会社考えておられること等からしますと、有料か無料かというのはそれぞれの放送会社さんの判断でよろしいのではないかというふうにも考えております。  お尋ねのスクランブルの件でございますが、これはNHKの場合と民放の場合と若干考えるべき角度が違いますので、分けて御答弁申し上げたいと思います。  まず、NHKにつきましては、地上放送も衛星放送も受信機を置いて見れる状態にある方について受信料をお払いいただいて、そして公共放送をみんなで支えていただくというシステムでございます。これは衛星も地上も基本的には別に扱う理由はございませんので、今パブリックコメントをお願いしているところでございますけれども基本的には、デジタル衛星放送についてもスクランブルをかけないでNHKとして放送される方向が望ましいのではないかというふうに考えております。  ただ、その際に、どうしてNHKのスクランブルの議論が出てきたかというと、一つは、民間のスクランブルをかけて有料放送している放送とNHKとの公平競争、それからもう一つは、NHKの衛星デジタルを視聴しながらある人は払ってある人は払っていないというNHKの視聴者の中の公平論、この二つがあったかと思います。  前者の民放の衛星デジタル放送とNHKの放送については、これは切磋琢磨という意味では、より衛星デジタル放送の視聴者が大きくなって、その中で次の段階の大きな意味での競争ということが望ましいのではないかということが一つ言えようかと思います。  もう一つ、NHKの番組を見ている、受信料を払っている方と払っていない方の公平の確保、これは衛星放送の受信料を公平に負担していただくようにNHK側においてしっかり徴収の努力をしていただくということがこの問題の一つの有力な解決策ではないかというふうに考えておる次第でございます。  その次のお尋ねの、これだけたくさんの衛星放送のチャンネルが開かれるということで、これを放送政策の中でどのように位置づけるかということでございますけれども、これからの非常に情報のニーズが高まる中で、そしてまた放送がライフライン的な重要な役割を果たしている時代になりますと、衛星放送も地上放送もあるいは音声系も、CATVもあるいはコミュニティーFMも、それぞれ他にはない特徴がございますので、これがそれぞれのメディアとして個性を発揮して、全体として国民のニーズにこたえていくというのが大事ではなかろうかというふうに考えております。  今後、CSデジタル放送が始まって、BSデジタル放送が始まるわけでございますが、これはどのようにして普及が促進されるかということにつきましては、今先生指摘のように、まさにそれなりのいわば家庭内の情報化投資をするわけでございますから、コストパフォーマンスに見合うすばらしい番組が提供されるということが一番の普及策でございますし、それから先ほどお尋ねがございました受像機ができるだけ低価格で提供されるということが大きな要素かと存じます。  それから、衛星放送につきましては、ハイビジョンで全国的に放送できるということから、大きなスポーツイベントに向いているのではないかと言われます。考えてみますと、二年置きにサッカーとオリンピックが来るわけでございまして、シドニー・オリンピックは二〇〇〇年九月からでございます。BSデジタル放送衛星の後発機が上がるのが十二月でございますので、それ以前にシドニー・オリンピックがあるわけでございますから、これについても何とか放送できるシステムはないかというようなお考えもあるようでございまして、そういった新しい番組について積極的ないろんな試みが衛星放送のプロジェクトの中で組まれておるわけでございます。そういうことが普及促進につながっていくのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  204. 森本晃司

    ○森本晃司君 デジタル放送が始まると、同時に現在のアナログ放送も行っていかなければ国民の皆さんはテレビを見ることができないわけであります。そういったサイマル放送として衛星の寿命が尽きる二〇〇七年まで行うということになっておるわけです。それまでの間にすべてのテレビがどこの家庭もデジタル化になっていくように推し進めなければなりません。  先ほどサッカーやオリンピックの話が出ましたけれども、今大阪では二〇〇八年オリンピック招致を目指して頑張っているところであります。こういったときにはすべてデジタル化されたすばらしい映像を見れるようにそれぞれ進めていかなければならないわけです。  しかし、一方、サイマル放送があるということが逆にデジタル化を進めていくのをおくらせてしまうのじゃないかなという気もしないでもないわけであります。できるだけサイマル放送を早く終えるように推し進めていく必要があると思います。  そこで、少なくとも、国策としていろいろやるわけでございますから、アダプターあたりは、それを購入する方々にとって手に入りやすいような状況にしていかなければならないのじゃないかなというふうに思っています。すべてそれを国の費用で負担するというようなことまで考えませんが、ちょっと私の勝手なアイデアで恐縮でございますが、せめて一家に一台ぐらい、企業とかそういったところは別にいたしまして、アダプターを買いたいという方がいらっしゃいましたら、値段はいろいろ違いますが、二万円から三万円とすると、例えばデジタル振興券のようなものを発行いたしまして、アダプターをお買い求めの方には、二万円のアダプターであれば振興券を使えばそのうち一万円は振興券で買うことができると。こうなると、物すごく私は誘導策になり促進策になると考えておりますが、どういった形で進めていこうと考えておられるのか、お尋ねいたします。
  205. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 先生の御指摘のとおり、やはりサイマル放送の期間というのはできるだけ短く済むことが望ましいと思っています。具体的なサイマル放送の終了時期につきましては、視聴者の皆さんのデジタル放送への移行状況というのをしっかり見ながら判断していきたいと思っています。  ただ、じゃ、そういう視聴者の人たちがどうしたらデジタル放送へ移っていただけるか。重要な決め手というのは、私たちが考えているのは、先ほども局長からありましたけれども、やはりおもしろい中身、内容のある番組をつくっていただくことと、あとは受信機がお値打ちに低廉化できるということじゃないかと今取り組んでいるところです。  今せっかく御提言いただきましたアダプターの無料配付のことですけれども、視聴者間の公平性の問題というのがまず出てくると思います。ですから、このことに対しては行政としてどんな形で促進ができるかは慎重に検討していきたいと思っています。
  206. 森本晃司

    ○森本晃司君 次に、地上放送のデジタル化についてお尋ねして、これを最後にさせていただきたいと思います。  地上放送のプランを発表されましたけれども、UHF帯ローバンドを使用する。そのために現在のUHFローバンドを使用しているアナログ放送局を大幅に変更しなければならない。そのことによって、放送事業者、視聴者に多額の負担がかかってくるということが判明して、今大変な問題になって、新聞各紙でも取り上げているところでございます。  アナアナ変換のコスト負担がどれほどかかるのか、それは一体だれが負担するのか、そのことによって一般視聴者の負担はどうなるのかということをお尋ねしたいと思います。  同時に、きょうは時間がございませんので、これはまた次にお伺いさせていただきたいわけでございますが、放送事業者の負担がこれについては大変大きくなりまして、民放の人たちもこれでいいのだろうか、これは一体だれがということを大変危惧されている点があります。  殊に、私も県域局の経営をしておられる方とお話しをさせていただきました、ローカル局。ここからも、営業収入が平均一社七十億だといたしますと、営業収入の十年間にかかるような投資をしなければならないのではないだろうかということがあって、果たしてそれでやっていけるんだろうかということもございます。  こういった放送事業者の負担の問題についてはまた日を改めていろいろと聞かせていただきたい、このように考えておりますが、先ほど申し上げました負担はどれほどかかるのかということについてお願いしたいと思います。
  207. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) 私ども第一次のチャンネルプランを作成して、今放送会社の皆さんあるいは有識者の方々にいろいろ御意見を承っているところでございます。  なぜいわゆる周波数調整が要るのかということを御説明申し上げますと長くなりますので、結論だけ申し上げますと、放送波が及んでいる世帯、単純計算では四千四百十一万世帯なのでございますけれども、これは放送世帯数ということでとらえますと六千万世帯になっております。そのうちの五千万世帯については特段の周波数調整なしにデジタル放送も見れる、サイマルも可能だという世帯、残る一千万世帯についていろんな工夫が要る、こういう状況でございます。  それにつきましていろんな手当てが必要なのでございますが、チャンネル変更に伴うコストというのが大体私どもの今の試算では四百七十億から一千四十億ぐらいの間ではなかろうかというふうに見ております。  これからの課題でございますが、先生おっしゃった、アナアナ変換と申しておりますけれども、周波数調整に要するコストをいかに小さいものにするか。これはチャンネルプランの改善とそれから実際に必要とするものは受信アンテナの変更なのでございますけれども、これをもっと効率的に低コストで変更するようなことが可能なのかどうか、トータルのコストをいかに小さくできるのか、これをまず詰めてまいりたいと思っています。  それから、これは最終的にデジタル放送のメリットというのが国民、国家全体に及ぶためのいわば事前の投資でございます。そういう性格もございます。それから国全体としてデジタル放送への移行、先ほど申し上げましたように、二十一世紀はトータルデジタルネットワーク社会を形成するという国の課題にも対応することでございますので、国としてやるとしてもどのような方法、どのような手当ての仕方が合理的なもので、国民の皆様の御理解が得られるか、いろんな角度から検討してまいりたい、かように存じております。  以上でございます。
  208. 森本晃司

    ○森本晃司君 終わります。
  209. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志でございます。郵政大臣所信表明に対する質問を行います。  まず、NTTの分割・再編問題についてお伺いをしたい。  二月の十六日にNTTから「日本電信電話株式会社事業の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計画案の概要」、これが発表されました。三月十八日まで国民関係業者などの意見を聞き、実施計画を六月ごろまでにまとめるということであります。  初めに、まず、NTTの分割・再編法案の国会での審議において、当時の堀之内郵政大臣、またNTTの宮津社長は、国民に対して、東西地域会社間の料金格差はつけない、現行の国民サービスの水準を維持する、現行の職員の雇用は継承する、こう明確に約束をされる答弁をしてまいりました。  野田郵政大臣は、この立場を堅持して実施計画の審査に当たっていただけると考えますが、いかがですか。
  210. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 私も、NTTの再編につきましては、大臣に就任した平成十年十月一日の衆議院逓信委員会の共産党の矢島先生の御質問で、まさに前の大臣意見を承継してまいるということをお約束させていただいているところで、変わりございません。
  211. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 NTTの実施計画の概要によりますと、「利用者利便の確保に関する具体的措置」というのが十ページから書かれております。  一つは、「利用者に対し日本全国につながる通話を引き続き確保すること」。二つは、「料金を含むサービス水準を全体として低下させないこと」。「承継会社は、再編成時において料金を含む電気通信サービスの水準を再編成前と同等又は全体として低下させないよう」措置をとる。これは文書で明確に書いてございます。  しかし、東日本地域会社、西日本地域会社の概要を比較いたしますと、一見、総資産や予想売上額は真っ二つに分けたように見えますけれども、しかし、この両地域には歴然とした経営基盤の差があり、このままでは東西地域会社間の格差が起きることは明瞭だと思います。西日本は予想売上高が東日本よりも一千四百億円低い。その一方で予想人員数は六千五百人多くなっている。ですからそれだけ費用が多くかかるということですから、三年間かけて人を減らすか、売り上げを伸ばすかしかないということになります。  結局、三年間の補てん期間が過ぎると料金の格差が生まれてくるおそれがあるのではありませんか。
  212. 天野定功

    政府委員(天野定功君) NTTの再編成に当たりましては、再編成によりまして新たに設けられる西日本の地域会社につきましては、再編成直後には赤字が見込まれるということでありまして、この西会社が経営改善の効果が生じるまでの間、三事業年度までの間に限りますけれども、東会社の方から利益の一部を西会社の方へ赤字の補てんを行うという負担金制度が用意されております。この負担金制度を活用しますとともに、東会社との比較競争を通じまして西会社が一層増収努力や経営の効率化を図ることが期待されますことから、西会社の経営基盤は早期に安定するものと考えております。  したがいまして、再編成を契機としまして、一方の地域会社による料金の値上げなど、料金水準やサービス水準が現在よりも悪化する形で東西格差が生じるというふうには考えておらないところでございます。
  213. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 早期に安定するという答弁でありましたが、国民や利用者との関係で、支店や営業所、こういうものはどうなるのかということが大変心配されているわけであります。  電電公社時代のピーク時、八四年ですか、支店は千七百支店、九一年にはこれが二百三十支店になりました。九五年には百十支店。今回の分割・再編案を見てみますと、東日本が十七支店、西日本が三十支店、実に合計四十七支店。これはピーク時の二・八%まで支店を減らす。  支店のもとに置かれる営業所はどうなるか。例えば西日本についての私の調査をきょうお持ちしましたけれども、大阪では営業窓口が現在三十八カ所あるものを二十三カ所に集約する、京都では二十カ所を八カ所に、兵庫では三十三カ所を十二カ所、奈良では十二カ所を四カ所に、滋賀では八カ所を二カ所に、福岡では二十二カ所を十一カ所に軒並み集約をして大幅に減らす計画を現場に示しております。  NTTの窓口のない市町村が数多く生まれる。つまり、電話の申し込みとかあるいは料金請求書の再発行、未払いで通話が停止された場合の通話停止解除の手続など、営業所に出かける必要のたびに隣の市まで足を運ぶ必要が出てまいります。これは明白な国民サービスの低下ではないですか。
  214. 天野定功

    政府委員(天野定功君) NTTは、再編成に向けまして、ただいま先生おっしゃいましたように、全国十一の支社をすべて本年の一月二十五日に廃止いたしました。これは、NTT本社部門と支店部門の間に存在する支社組織を廃止しまして経営をスリム化し、支店への権限移譲を図るために実施されたものと承知しております。  また、営業窓口についてでありますけれども、同様の経営効率化の観点から集約化を進めているわけでありまして、サービス水準の維持や利用者利便に十分配意しつつ実施されているものと聞いております。  具体的に言いますと、立地条件だとかあるいは来客数などの地域事情を考慮して営業窓口の見直しが進められているところでありまして、営業窓口が廃止されるエリアの利用者に対するサービスの確保につきましては、一一六番による電話注文受け付けの一層の促進等を図っていると聞いております。
  215. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 現実に窓口が廃止されて、電話で済まない、一一六番で済まないような手続もあるわけですから、その点はしっかりと見ていただきたいというふうに思うんです。  そこで、郵政大臣にお伺いしたいんですが、NTTが発表した今回の実施計画案どおりにこのまま進めば、まさに、大臣の東西料金格差はつけない、サービス水準を維持する、職員の雇用は継承する、この三つの約束も守れなくなるのではないかと私は思います。経営基盤にこれほどの差がありながら、ただ単純に真っ二つでいくならば、結局西日本会社は職員を削ったり窓口を減らしたり国民サービスを切り捨てざるを得ないか、そうでなければ料金で格差をつけるしかない。いずれにしても、結局大臣の三つの約束をほごにすることになるのではないか。  大臣、私は、改めてそういう経営基盤の格差ということを勘案したものに再編実施計画案を再検討すべきであるというふうに思いますが、いかがですか。
  216. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) この改正NTT法において、再編成の実施計画については、平成九年十二月に定めてあります再編成に関する基本方針に従ってNTTが作成することとされています。これは御存じのとおりだと思います。  既に定められている基本方針は、繰り返しになりますけれども、利用者利便を確保するとともに、電気通信市場における公正有効競争を促進することを目的としており、実施計画の認可に当たってはこれらの点を改めて確認した上で適切に対応してまいりたいと考えております。
  217. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 次に、郵政の問題について質問をいたします。  経済戦略会議は、去る二月二十六日に最終答申を出しました。「日本経済再生への戦略」、これでございます。そこで、「中央省庁等改革基本法に基づき郵政事業庁、郵政公社への改革を予定通りすすめる。しかし、将来的には郵政三事業の経営形態のあり方を見直す。」と書いてございます。  二月二十七日の日経を見ますと、この最終答申の原案では郵政公社に移管した後郵貯、簡保を民営化に移すことを検討すべきだとなっていたものを、引き続き経営形態のあり方を見直すと玉虫色の表現に差しかえられた、そう日経新聞は報道しております。  しかし、中央省庁等改革基本法では、第三十三条で、郵政三事業を一体として国営の新たな公社を設立するとして、その第六号、「民営化等の見直しは行わない」とはっきり法に明記してあるわけですから、したがって、今回、経済戦略会議が言う経営形態の見直しというのは民営化については含まないと理解してよろしいですね。
  218. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 経済戦略会議の最終答申にありました「将来的には郵政三事業の経営形態のあり方を見直す」、この書きぶりなんですけれども、具体的にどのような見直しを意味しているか必ずしも明らかでありません。だけれども、今おっしゃったとおり、私たちは郵政三事業については基本法に沿って粛々と今進めているところでございまして、まさに結論を申せば、民営化はないのかということであれば、ありませんと、そういうことを申し上げたいと思います。
  219. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 私どもも、郵政三事業を守る、民営化反対という立場はもちろんはっきりとしたものでございます。  しかし同時に、先ほど紹介した日経報道ではこういうことも書いてありました。「首相周辺が「四月の統一地方選を前に自民党の有力な集票組織である全国特定郵便局長会などの協力が得られなくなる」と強く抵抗」して玉虫色になったと書いてあるんですね、この報道では。こういう圧力に頼っていたのでは、民営化論を打ち破ることは絶対にできないと私は思います。我が党ももちろん民営化には反対ですが、それは国民が信頼でき安心できる郵政三事業を守る、このことがどうしても必要だと考えるからであります。  九七年の行革会議での郵政三事業民営化論議以来、連日マスコミで民営化の大合唱が繰り返されました。これを許さなかったのは私は国民世論の力だったと思うわけであります。国民は一貫して現行の三事業を信頼して、そして現状以上の国民サービスを期待して、それで民営化に反対してくださっている、この点を片時でも忘れれば、もう国民は信頼しない、守ってはくれないと私は思うんです。  郵政大臣所信表明で、国民共有の生活インフラである郵便局ネットワークを最大限に活用するとともに、情報通信の高度化を一層推進し、日本経済の再生と国民一人一人が豊かで幸せに安心して暮らせる社会の構築に貢献していく決意を述べられました。  改めて大臣に、国民のための郵政事業を守り抜く決意をお伺いしたいと思います。
  220. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 行政改革の議論があった当時、私は郵政政務次官でございまして、そこでまさに郵便局、郵政三事業の重要性、または国民からの信頼というのを目の当たりに実感させていただいた一人でございます。これからも国営三事業一体という中にあって、郵便局サービスがあまねく全国の皆さんにすばらしいサービスを提供していくこと、それがひいてはやはり国への信頼の一助になるのではないかということで、先生のおっしゃったとおり、一生懸命郵便局の皆さんと力を合わせて頑張ってまいりたいと思います。
  221. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 また、郵政大臣所信表明の中で、「郵政行政は多くの職員に支えられて初めて成り立つものであり、意欲に満ちた創造性ある職員なくしてその発展は期待し得ない」とも述べられました。  ところが、その郵便局の窓口で今何が起きているか。予算委員会の資料を私いただいて、驚きました。郵便局の窓口での過不足金の事故の多さであります。  郵政省にお伺いしたいんですが、郵便局の窓口等で過不足金は毎年何件、そして幾ら発生しておりますか。
  222. 松井浩

    政府委員(松井浩君) お答え申し上げます。  まず、直近の平成九年度の状況について申し上げます。過剰金、たくさん入り過ぎたお金でございますが、件数が六十四万七千五百四十一件、金額は六億二千八百七十九万円でございます。それから欠損金として処理されたものでありますが、件数は一千五十五件、金額は三億三千五百五十万円でございます。また職員による自発的な任意弁償という形で処理されました件数が三十九万五十三件でございまして、金額は十一億五千四百十万円となっております。  また、お尋ねの最近の状況でございますが、過剰金につきましては平成六年度以降はおおむね六十万件台で推移しております。金額につきましては、若干年度の変わり目で特殊な要因があったこともありますが、基本的には九億円台で推移しております。横ばいと言えるかと思います。それから欠損金でございますが、平成元年度以降は発生件数では年々減少しております。金額では年度によりまして増減している状況がございます。また任意弁償でございますが、平成六年度以降、件数は漸減しておりますけれども平成五年度以降、金額で申しますと十一億円台ということで推移しておる状況でございます。
  223. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 平成九年度で見ましても、不足金が年間三十六万件、過剰金が六十五万件、合計百万件に上っております。合計すれば毎日大体約四千件という計算になると思うんです。全国二万四千六百の郵便局で年間四十件ということになりますので、平均すれば週一回の割で起きているということになります。  郵政大臣にお伺いしたいんですが、この問題を解決しなければ、やはり国民との信頼を失うことにつながりかねない、そういう御認識はございますか。
  224. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 確かに郵便局で郵便そして郵便貯金、簡易保険のサービスを提供しているわけですけれども、その間で取り扱われるお金にミスがあってはならない、そういうふうに思っております。
  225. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 問題は、こういう現金の過不足という事故が何によって起こっているのか、過不足金事故はどうして起きているのかということが問題だと思うんです。さらには、その原因の究明は果たしてなされているのか、また、一つ一つの過不足事故についてその原因が究明できるようなシステムになっているのか、そしてそれが解明されて減りつつあるのか、ここが問題だというふうに思います。  郵政省、原因は何ですか。そしてどういう対応をし、どういう処理をしておりますか。またその結果、過不足件数は減っているんですか。
  226. 松井浩

    政府委員(松井浩君) 全国で二万四千六百、簡易局を含めたものでございますが、膨大な局所で日々膨大な件数の事務を処理しております。受け払いの金額で申しますと三百兆円を超えます。それから件数でいきましても一年間で二十億件をやや下回るぐらいの膨大な事務をやっております。そういう中で、実際に忙しい中でお客様と直接お金のやりとりをさせていただくという中で、間違いがあってはなりませんが、神様ではありませんので全くゼロということもまた難しかろうと思います。  そこで、過剰金が出る場合でございますが、実際に証拠書、お客様の申込書だとかそういった書類の金額よりも過剰に多く現金を受け入れたとき、それからお客様にお支払いする現金が不足する場合、当たり前の話でございますが、あるいはつり銭が不足している場合、それからお金はしっかりいただいたんですが受け入れ証拠書がその後亡失した場合、そういうときには不符合、一致しない場合が出てまいります。  欠損金の場合は、このほかに盗難だとか、あるいは強盗でお金を盗まれれば当然それは欠損金になるわけでございますし、それから窓口とお客様とのやりとりの中でいただく現金が少ない場合、あるいはつり銭を過剰にお支払いする、そういうパターンが多うございます。  それで、先生お話しのそういったことがある程度は、体諒的に言えば全く出ないとは限らないわけでございますが、いずれにしろ、そういうものをなくすべく努力をしていかなけりゃなりません。  それで、私どもがどういう取り組みをしているかということでございますが、一つは、やはり過剰金にしろ不足金にしろ、そういった事故の発生を防止するために必要なことといたしまして、職員による慎重で適正な現金の取り扱いが必要だということでございます。そのために、平成九年度から現金過不足事故防止のための特別のビデオをつくりまして、全国の郵便局に配付しております。しっかりと手続を守るだとか、例えばお札を勘定しておるときには雑談をしないだとか、そういうある意味ではイロハのことがよく出ております。  それから、事故防止のためのマニュアルをもうちょっと詳しくしまして、私今手元に持っておりますこれなんですが、全国のこうした現金を取り扱う職員すべてに一冊ずつ配付しております。  それから、そのほかに、実際に窓口で大変忙しい中でも間違いなく仕事ができるようなものとして機械化を進めております。具体的に申しますと、紙幣の計算機、それから硬貨の計算機を全国の郵便局に配備しております。これは平成八年度までに配備が終わっております。  それから、そのほかに、郵便局の窓口の実際に事務処理をするオンラインでつながっている端末機と現金の出し入れが自動的につながる仕組みとしてオートキャッシャーというものがございます。ATMが窓口の端末機にそのままくっついているようなものということで御理解いただければいいかと思いますが、事務処理と金の出入りとが端末で即つながっておりまして、非常に正確にできるものでございます。これの配備を平成三年度から順次やっておりますけれども、今御審議いただいております平成十一年度の予算の中ではさらに改善を加えて増備すべく、今予算を織り込んでおるところでございます。  そうした中で、実際に事故の発生がどうかということでございます。事務量的には全体的には漸増している状況はございますが、ここ数年発生の状況は大きな変化はございませんが、先ほど来申しました職員指導の充実、それから窓口における現金取扱事務の機械化を推進していく中で、今後その効果が発揮されることを期待しているところでございます。
  227. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 今説明があったわけですけれども、私はこれをいろいろ郵政省からお伺いして痛感いたしましたのは、こういう事故が発生したときに、一体どこで過不足が生じたのか、どのお客さんとの関係で生じたのか、このことがほとんどわからないことが多いということだと思うんですね。それは先ほど御紹介いただいた資料からも歴然といたします。  例えば、不足金については、欠損金となっているのは一千件でありまして、理由がわからないまま任意弁済というものが三十九万件に上る。あるいは過剰金の方はもっと歴然としておりまして、発生件数が六十八万八千という発生件数に対して、過剰金として処理されたのは六十四万七千ですから、この差、つまり発生したが過剰金処理でなくお返ししたというものが四万件。つまり九割以上はどのお客さんの間違いなのかがわからないという状況になっていると私は思うんです。  これがなぜそうなっているのかということを私は他の銀行などの民間金融機関システムを調べ、現場の方々からもお話を子細にお伺いいたしました。民間銀行では、窓口職員がどこのだれからどういう目的で幾ら受け取り幾ら払ったのかという詳細な情報をきちっと受け払いごとに記録しておくというのが当然の常識になっているわけです。しかも、その際、現金の総額だけではなくて、金種、枚数まで全部書く。これはもう現金管理の常識だと民間銀行の方はおっしゃっておりました。  そして、三十年近く前からテラーズマシン等の機械も入って、オートキャッシャー、先ほどおっしゃられたそういう機械も今ではどの銀行も入っている。郵政省も入れると言うんだけれども、まだ今年度の予算分足しても一千台とお聞きをいたしました。どこでもあるという状況ではないです。ところが、そういう状況のもとで銀行ではほとんど現金の過不足事故がなくなっている。また起こっても、この機械を使えばどのお客さんとのやりとりで起こった事故なのかが特定できるとお伺いいたしました。  ところが、郵便局では一回一回の現金の受け払いごとに書類を書くということになっておりません。金種とその枚数まで記録するシステムになっていない。一日の終わりの日締決算のときに受けの総額あるいは払いの総額、残金の総額を合わせて記帳する。これは東京郵政局が出している例規類集にもそうなっております。  つまり、窓口業務が終了して一日分を計算してみて初めて過不足金が生じていることがわかるわけです。それから振り返っても、どのお客さんとの間にミスがあったかは書類などへのメモ書きとかあるいは職員の記憶を頼りに調べるほかはないというのが実態じゃないですか。私、何人も現場の方から話を聞きましたが、これが実態だということであります。こんなやり方でどのお客さんとの間にミスがあったかわかるんですか。
  228. 松井浩

    政府委員(松井浩君) 一日に大変大勢のお客様をお迎えして、的確にまた愛想よく親切にサービスをさせていただくという中で、いろんなことがあると思います。  それから、先生の御指摘のように、銀行につきましては、郵便局と比較いたしますと、比較的大きな店舗でかつお客さんについても恐らく札束の数も非常に枚数も多いとか、そういった違いもあろうかと思います。郵便局というのは非常に簡易でみんなが利用しやすいということがコンセプトでできております。そうは申しましても、先ほど大臣答弁にございましたように、そういったミスがないように最大限の努力をするというのが私どもの使命であろうかと思います。  そういう中で、私どもできる限りの措置として何をやっているかということについてちょっと申し上げたいと思います。  一つは、いろんな業務を、先ほどのオートキャッシャーの例でもございますように、機械化を推進していきますと、それは個別の取り扱い内容が記録に残ります。そうはいいましても、実際にいただいたキャッシュの枚数が多かったり少なかったりとかいうふうなことはそれとはまた別問題のケースもございますが、後刻対査する場合に、やはり証拠書類等取り扱い内容がしっかりしているということがその後で調べるときの記憶とマッチしやすいということなんだろうと思います。その観点から機械化をできるものはどんどん推進していかなきゃならぬと思っております。  私どもの郵便貯金について申しますと、窓口端末機とオートキャッシャーがついていれば現金との関係もきれいにいきます。それから、そうでなくてもオンラインですから比較的きちっと記録内容が残ります。それから、例えば郵便でも最近ではポスタルスケールだとかあるいは郵便窓口事務機を使いますと、切手にしてもどういう処理をしたんだということがはっきり残るような仕組みが出てきています。そういった取り組みはこれからも進めていかなきゃならぬと思います。  そうは申しましても、どうしても機械化になじみにくい仕事が残ります。その点につきましては、先生の御指摘のようにきちっと対査がしにくいということはそのとおりだろうと思いますが、しかしながら、実際に職員の方が窓口で仕事を取り扱った中で、いろんな証拠書類と対査する中で、その間の取り扱いを再確認することによりまして過不足の発生の原因を調査するように努めております。  もちろん、わかるものとわからないものとが出てまいりますが、ただほかの人は触らないようになっていますので、そういうことで、あと職員に対する指導を徹底させる中で低減を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。
  229. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 銀行の場合は取り扱いの額が大きいということもおっしゃいましたけれども、郵便局は三百兆円を超えるお金を扱っているわけですから、大きな額を扱っているという点では銀行よりはるかに大きいわけです。だから、それだけきちっとしたシステムが求められているというふうに思います。  ところが、これがなかなか調べにくい。これからもっと努力していくという今お話でしたけれども、現状では民間銀行に比べてもまだまだシステムとしてそういう点が後々原因が特定しにくいという状況にありながら、その結果生まれた過不足、特に不足については職員の任意弁償という形で解決を、職員の任意弁償あるいは最終的には弁償命令という形で解決していると思うんです。  原因が特定されないのに、なぜ職員の弁償に押しつけるわけですか。
  230. 高田昭義

    政府委員(高田昭義君) 不足金が出た場合の責任の問題でございますが、原因がどうかということと担当職員が扱っていた時間帯に発生した事故かどうかというのは別問題でございますので、先生御案内のとおりのことでございますが、現行の会計法の規定では一応取り扱った出納職員に責任ありということになっているということで責任の問題は対応をさせていただいている、そういうことでございます。
  231. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 つまり、不足金については、不足金が生じた以上、どこで狂いが生じたかは特定できないがその職員の責任であることは間違いない、こういう論理だと思うんです。だから、国会の答弁でも、これを国庫に負担をおかけするわけにいかない、こういう御答弁も衆議院などでございます。  郵政大臣にこれは聞きたいんですが、それなら、私は逆に過剰金のことをお伺いしたい。  不足金は確かにそういう論理もあるでしょう。では、過剰金はどうなるのか。過剰金というのは結局お客さんが払い過ぎたあるいは受け取りが少なかった、受け取り忘れたというお金、本来お客さんに返さなければならないお金じゃないですか。不足金の原因が特定できないということは、過剰金の原因も特定できないしょう。つまり返すべきお金が返せないままお客さんに迷惑がかかっているということじゃないですか。これは一体どうやって国民の理解を得るんですか。
  232. 高田昭義

    政府委員(高田昭義君) 結局、過剰金もその他の国庫に入った金の帰属がはっきりしない場合にどういう対応をするのが一番適正かということだと思うんです。  先生が言われるように、本来は、個々人が特定されれば我々も過剰金についてはそのお客さんに返すということでございますが、相手が特定しない場合は結局郵政事業全体の国庫金扱いにすることによって、間接的になりますけれども郵便局の利用者の皆様に国庫金の収益という形でお返しをするという以外に返しようがないということで一応国庫金の扱いにさせていただいている、そういうことでございます。
  233. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 つまり、原因を特定するためのシステムをつくる努力、きちっとそれがわかるようにする努力、それを結局不足金については任意弁済あるいは弁償命令という形であいまいにしてきたから、過剰金についてもこうして国民に具体的にそれを払い過ぎたり受け取り忘れたお客様に直接お返しすることができないようなシステムになっているということを私は指摘しているわけです。私がきょう過不足金という問題を取り上げたのは、まさにこういう点にこそ郵政事業に対する国民の信頼が問われていると考えるからであります。  あなた方は、郵政民営化が議論された行革会議に、ヒアリング資料としてこういうものを出しております。この中で、郵便と銀行の経費率というグラフまで出して、民間銀行よりも郵便貯金は経費が低い、銀行の三分の一で郵便はやっておりますと力説しております。  それはそうでしょう。民間銀行がやるような当然のシステムをつくらない、民間銀行では常識だと言われているような機械も使わせない、郵便、郵貯、簡保、全部窓口で一人の職員にやらせているじゃないですか。それもそろばんや電卓でやらせている。これではまさにそういう基本的に必要なシステムもあなた方はつくる努力をしていないと言われても仕方がないと思うんです。  そんな状況のもとで、不足金が出たら全部職員の負担だ、善管注意義務違反だ、職員負担だと。しかし過剰金だったらお構いなしだと、そんなばかな話がありますか。私は、こういう状況が続けば、大臣所信で述べられた、意欲に満ちた創造性ある職員なくして郵政事業の発展はない、そのお言葉に反して職員の意欲もそがれる、こういうことではまさに国民の信頼は得られない、それでは民営化するなという国民世論の支持も得られなくなるのではないか、私はここを指摘しているわけであります。  最後に、郵政大臣、現金過不足事故の根絶へシステムそのものを見直す、少なくとも後から原因がきちっと特定できる、調べようがある、そういうシステムを検討する、そのことへの決意をお伺いしておきたいと思うんです。
  234. 松井浩

    政府委員(松井浩君) ちょっと一点だけ、たくさん申し上げません。  郵便局の窓口で大勢のお客様を相手にして多額の現金の受け払いを連続して正確に処理するというのは、大変職員の方には精神的な緊張を期待しているということになると思っております。それにつきましては、別の次元でありますが、そういった仕事だからということで特殊勤務手当として現金出納手当というのを郵便局のそういった職員には支給しております。  そういう手当の支給と、それと先ほどの国の機関だから会計法の適用を受ける、だから銀行と違うという部分とをいろいろ総合的に御判断いただくべきものなのかなというふうに、事実だけまず申し上げます。
  235. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 システムの問題、大臣、どうぞ。
  236. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 今先生の方からは、民間の銀行さんのやり方についてもお話をいただきまして、ありがとうございました。  先ほどの民営化されちゃうよという話の中で、国民の信頼もさることながら、私がよく郵便局の皆さんに言っているのは、やはり皆さんの働きぶりが評価されているんだと。一つには、いろいろほかの民間ではもっとぜいたくもしているだろうけれども、ぐっとこらえて非常にシンプルに節約をしながらやっている姿勢とか、一生懸命取り組んでいる姿勢というものに対して国民の皆さんが共感を、そして感謝をしてくれているんじゃないか、そういうことを申し上げているのです。  まさに、現金過不足事故とかを初めとするそういう根絶については、まず郵便職員の皆さんにさっき局長が言ったイロハを徹底して、職場内でみんなでチームワークよろしくどうしたらなくなっていくかというようなことをやっていただくこと。また、負担なんじゃないかという話に対しては、先ほどのオートキャッシャーの話とか、やはり機械化を私どもとしては進めていく、そういうことを考えています。
  237. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 終わります。
  238. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 不正アクセス法についてお伺いをいたします。  「不正アクセス行為の禁止等を内容とする法整備を行うとともに、違法・有害情報の流通、プライバシー侵害等についても適切に対処してまいります。」と大臣所信で表明をされております。  警察との調整が決着をして、法制化の作業に入っているとの報道もございます。具体的にはどのような内容の法案なのか。また、通信、記録の秘密はきちんと守られているのか。民間の通信分野について、日本では個人のプライバシー保護の立法がありませんし、規制立法のみ先行することに危惧を覚えるわけでありますけれども、不正アクセス法についての大臣の所見をお伺いいたします。
  239. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 不正アクセス対策法案についての御質問ですけれども、これはかねてから世界各国が真剣に取り組んできた問題で、日本にも早急にという話もございまして、実は最初は警察と郵政省と別々に法律の話なんかも出てきていたんですけれども、やはりこれは政府を挙げて一致結束してやっていくべきものということで、警察と共管で進めさせていただいたものでございます。  不正アクセス規制法案ということで、中身につきましては、一番目に不正アクセスの禁止、二番目に不正アクセスを助長する行為の禁止、それから三番目に不正アクセスの防止のための国及び都道府県公安委員会による情報の提供などの援助等を柱にして法案の作成をすることで警察と合意をし、そして最終的な調整をし、できるだけ早く今国会に提出したいと考えています。  それで、一番最後まで調整事項となっていたのがログの保存の義務づけということでありますが、これについてはいろいろな国、世界の国々でももう既に不正アクセス法については整備されているところもありますが、そういうところでまだまだそこまでやっていないという流れの中で、これはきちんと引き続き検討していこうと、今回に関しては法案には盛り込まないということになりました。  郵政省としては、今回の不正アクセス規制法案で個人情報の保護という規定を盛り込みたい、そういうふうに検討してきましたけれども、実はこの個人情報保護については、必ずしも不正アクセスに関係する場面だけの問題ではなくて、どうしても広い問題ですので、これからも政府部内で幅広い議論、検討を行うことが適当だと思いました。そういうことで、今回の法案の中では見送り、これについても引き続き検討させていただくこととなりました。  プライバシー侵害の問題につきましても、これは非常にデリケートな問題ですが、特にインターネットなどの情報通信メディアの普及に伴い最近大きな社会問題になってきております。ですから、平成三年には電気通信事業者を対象として、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインというのを定め、そして関係団体に周知徹底とか適切な対応を求めたところであります。これを現状に即したものに改定しまして、昨年の十二月二日には郵政省告示として広く国民一般の皆さんにも告知、周知させていただいたところです。  今後、さらに電気通信分野における個人情報保護をより実効性のあるものとするために、法制化も検討していきたいと思っているところであります。
  240. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 これからやはり個人のプライバシー保護の問題が大変重要な問題になってまいりますので、慎重の上にも慎重を期してひとつ法案化に努めていただきたいというふうに思っています。  次に、青少年専門家会合がございますけれども、青少年の健全育成を図る観点からの視聴者政策の推進ということも大臣所信で述べられております。郵政省、NHK、民放連共同で開催されております青少年と放送に関する専門家会合、その進捗状況、検討状況について明らかにされたいし、また行政として具体的に会合で議論されたものについて、具体的にどのようにされていくのか明らかにしていただきたいと思います。
  241. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) お答え申し上げます。  今先生指摘の青少年と放送に関する専門家会合につきましては、昨年十二月に放送大学学長の吉川先生のもとで開いていただきました研究会の報告に基づいて開催しているものでございます。  具体的なテーマといたしましては、青少年向けの放送番組の充実、メディアリテラシーの向上、青少年と放送に関する調査等の推進、第三者機関等の活用、放送時間帯の配慮、番組に関する情報提供の充実等につきまして今専門家の皆様に御審議いただいているところでございまして、既に三回開催しておりまして、広く関係者の方々から御意見を伺うとともに、それぞれの立場で今後どのように取り組むべきか御議論いただいているところでございます。  この会合の趣旨は、学校はどうすべきであるとか、あるいは放送事業者はどうすべきかという、お互いに注文し合うのではなくて、一緒にそれぞれの立場で子供のためにどういうことができるかという同じ方向を見ての御議論をしていただいているところでございまして、そういう方向で有意義な会合が開かれているというふうに承知しております。  この会合につきましては、本年六月を目途にそれぞれの立場でどういうことをすべきなのかおまとめいただくということでございまして、我々行政の立場でも、放送法によりますところののりを越えることなく、行政としてどうすべきか、案をまとめてまいりたいと思います。  なお、この開催状況につきましては、郵政省、NHK、民放連それぞれインターネットのホームページで開催状況を掲載しておりますので、機会がございましたらごらんいただきますと詳細の状況を御把握いただけるのではないかと存じます。  以上でございます。
  242. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、郵便料金の値上げについてお伺いをいたします。  郵政事業について、単年度損益で七百四十二億の赤字の見込み、全体でどの程度になるのかわかりませんが、そういう見込みが発表された。それから累積損益では、これも大臣所信表明で言われていますが、七百八十四億の黒字を確保できる見込み。二〇〇〇年度には累積損益が赤字に転落をいたしまして、二〇〇一年度にも郵便料金の値上げが避けられないという指摘もございますけれども、この見通し、値上げをするかどうかはっきりしていただきたいと思います。  全く観点は変わりますけれども、郵政省の果たす役割の一つとして、今政府が進めております雇用創出の問題について具体的にどのようなお考えなのか、あわせ御答弁いただきたい。
  243. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) ただいま先生指摘のとおり、郵便事業は大変厳しい景気の状況のもとで業務収入が平成九年度には戦後初めて前年の収入を下回る、そういう状況になっていまして、現在もそういった厳しい状況が続いているところです。平成九年度には、当時消費税が引き上げられましたけれども、まだその引き上げ分の四百億円ぐらいを事業で飲み込むだけの状況にあったんですけれども、今はもう激変しまして、全くさま変わりしているような状況であります。そういうことから、今先生指摘のように、郵便事業損益、平成十一年度予算においては七百四十二億円の赤字を見込んでいます。  じゃ、この難局を乗り切るためには何をしたらいいかということですが、まずは郵便事業関係者のトータルパワーで皆で増収に向けてさまざまな積極的な営業活動をしていこうということで頑張っております。その努力のあらわれの一つとしては、去年の年賀はがきについてはおかげさまで過去最高の販売をみんなで達成してくれたところであります。  こういういろいろな新しいサービスとか営業活動のほかに、やはり御指摘のいろいろと効率化、経費の削減というのは重要だと思います。新郵便番号制、これも国民の皆様方の御理解で記載率は大変高いわけですけれども、その中で経営基礎体力というのを強化してきた。そして、そこで定員削減があるわけですけれども、新郵便番号制度に基づく新しい処理システムによって、九年度と十年度で合わせて四千人を超える削減を実施し、また、今回事業が始まって以来の取り組みなんですが、十一年度からは三年間で地域区分局を中心として本務者を非常勤職員にかえていくことによりまして三千二百四十人の削減を行うことにしました。  まだまだ収入のマイナスを反転させるところまでは至っておりませんけれども、先ほど申し上げたように景気というのも非常に重要な問題でありまして、政府の方では十一年度にははっきりとしたプラス成長にさせる、そして十二年度には安定させるということで、先生方のお力をかりて今経済再生のさまざまな施策を進めているところで、十一年度ではぜひとも実質経済成長率を〇・五%まで上げるということで必死で取り組んでいます。  そういう経済環境が改善される中で、引き続き今申し上げた増収対策または経費の削減、その両面で真剣に取り組んでいき、できるだけ長く現行料金を維持していきたい、そういうふうに申し上げたいと思います。  先ほどの雇用の件なんですけれども、実は先日も雇用の会議がございまして、特に郵政省の情報通信分野は著しい技術革新のもとで頑張っているじゃないか、今低迷している経済の中にあっても情報通信分野は経済の牽引力、原動力、エンジンになっているということで、通産省とも合わせてですけれども、この一両年でその関連分野で新規の産業またはそれに伴う雇用の創出ということで約十八万人ぐらい頑張って新しい雇用を生み出していこうということで、それに必要な情報通信関連の基盤整備とかに郵政省は全力で取り組むということになっているわけであります。
  244. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 失業者が三百万人とも、今期末では五百万人とも言われているので、できる限り郵政省としてどうかひとつ雇用創出のために頑張っていただきたいと思います。  次に、デジタル放送についてお伺いをいたします。  同じく大臣所信の中で、地上放送のデジタル化について、「円滑な移行を図るためのきめ細かい支援措置等に取り組んでまいります。」、また「二十一世紀のデジタル放送時代に向けた受信実態調査等の施策を実施してまいります。」と述べられております。  地上放送のデジタル化は巨額の設備投資、NHKの場合は三千億円とも言われておりますが、また一千万世帯でアナログテレビのチャンネルの変更やアンテナのつけかえなどが必要となると。これは先ほど同僚議員もこの問題について御質問をしておりました。  しかも、この費用については視聴者負担となると見られておりますけれども、やはり国がデジタル化を国策として進めるわけでありますから、国費の負担とすべきではないかというふうに思いますが、その点はいかがでございましょうか。二〇一〇年が目標だと、具体的にどうしていくかについては一定程度年限的な目標もあるとすれば、その中でどういうふうにしようとしているのか、御所見をお伺いします。
  245. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 先生がおっしゃったアナログのチャンネル変更というのは、デジタル放送にしていくための途中の避けては通れないものでありまして、それによってベストなデジタル用のチャンネルプランをつくるためにやらねばならぬことというふうに思っています。  今おっしゃったんですけれども、確かに国策ではありますけれども、悩ましいことにアナログチャンネルのアナアナ変換のときに生ずる費用を国が負担するということは、すなわち国自体はお金を生み出しているわけではなく、国民の皆さんからいただいた税金を使うということになるわけですから、結果として国が負担するということは国民にはね返る話になるわけであります。  ですから、私たちがやらなければならないことは、まず国民の皆様方が、先ほど来話に出ているデジタル放送のメリットとかそういうよさをじっくりわかっていただくようなそういうことを考えつつ、なお一層アナアナにせよ何にせよ、周波数の対策について合理的にその費用が最小限でとどまるようなそういうことをいろいろな形で検討していきたい、そういうふうに考えているところであります。
  246. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 続いて、テレビ電話についてお伺いをいたします。  情報通信利用の高度化につきまして、所信で、高齢者や障害者の方々情報通信の利便を享受できる情報バリアフリー環境の整備を進めてまいると。現在でも、ひまわりサービスだとか郵便局舎のバリアフリー化とか簡保加入者福祉施設のバリアフリー化などを進めておられると思います。この点については敬意を表しておきたいと思います。一方で、「情報通信の高度化を一層促進し、日本経済の再生と国民一人一人が豊かで幸せに安心して暮らせる社会の構築」と大臣は述べられております。非常にこれは感動して聞ける言葉ですね。では、どう具体的に実施するか。言葉はこれは大変いい、しかしそれを具体的にどう実施するか。  そこで、高齢化社会を展望した生活基盤型情報ネットワークを推進して、地方公共団体に対して通信端末、例えばテレビ電話、パソコンなどの購入費を全額補助すべきだと考えます。さっきと同じようなお答えは余り聞きたくないので、積極的な大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  247. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) これからの日本は少子・高齢化と言われておりまして、特に高齢社会を土台にした社会構造を考えるということはとても重要なことだと思います。これからの健やかな高齢化社会のために、情報通信というのは必ずや、目的ではないけれども手段としてお役に立てるのではないかと思っています。  いわゆる高齢者の皆さんは情報弱者と呼ばれることがあるわけですけれども、先ほども申し上げたとおり、高齢者の方たち、または障害をお持ちの方たちがそういう状況にならないように情報バリアフリー化というのをどんどん推進していきたいと思います。これはむしろ皆さん方が健常者の方と差がなく、そういう情報通信機器を使って豊かな人生を楽しんでいただくためにさまざまな研究開発をしていきたいと思っています。  あわせて、いろいろと今介護とか福祉の中で情報通信の持っている技術を使って家族の皆さんや介護をされている皆さんのお役に立てないかという研究もやっているわけであります。例えば、PHSなんかを使って徘回老人の方の探知をするとか、そのようなことにも実は取り組んでいるわけです。  今先生の御指摘の、物を渡して、いわばただで差し上げるということに関しては、いろいろ難しいなと思うことがあります。というのは、例えばテレビ電話一つ差し上げたとしても、私的に利用する場合も当然あるわけで、そういう切り分けなんかもきちっとできていない。本当に福祉利用というか介護利用のためだけのものであればいいわけですけれども、別なことに利用された場合に本当にそれでいいのか、国民の納得が得られるかどうかというようなまた難しい問題もあるし、それだけに使えよということであると逆に邪魔になるのじゃないか。  そんなような実際の現場で使われるときの周りとの整合性というか公平性というのが、非常にこういうことが重要になってくると思うので、ぜひとも、最大限の努力はしてまいりたいと思いますが、先生方のそういうお知恵をかりながら、周りの人との公平性がきちっと保たれるような形で進めてまいりたいと思います。
  248. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  249. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 大分時間も遅くなってまいりました。持ち時間も非常に少ないということですので細かい問題はさておきまして、情報化社会における二、三の問題について大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。  情報化社会、高度情報化社会という言葉が出てきて相当の年限がたってきている。その間、いろいろな分野でハード、ソフトを含めて情報化の進展というのは非常に目覚ましいものがあったと思います。  ただ、いろいろな見方があると思いますが、アメリカ情報化社会と比べてどうだろうかというような議論をしますと、一般的に言えば日本の方がおくれているのかなという認識があるのじゃないかと思います。こういった物の見方といいますかとらえ方というのはなかなか難しい面もあるかと思います。日本の方がはるかに進んでいる面もある。しかし、連中の方が先にやっていたというのがありまして、向こうの方が進んでいるというようなところもあると思います。  そこで、現状認識として、大臣はどのようにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。
  250. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 答弁に当たり、実は先生がおっしゃっていることは最近の私の悩みでもありました。というのは、どこへ行っても日本情報通信がおくれているじゃないかというお言葉があるんですが、本当にそうだろうか、もう少し冷静に、いろいろ情報通信といっても幅広いわけですから、客観的にデータを見なきゃいけないねということで、まさに私がいつも思っていたことをお尋ねいただいたわけでありまして、この際ですので客観的なデータをお示ししたいと思います。  先生がおっしゃっているように、日本情報通信に関しては進んでいるところとおくれているところがあります。悪い方から先にいくのは余り好きじゃないのでいい方から申し上げていくと、例えば光ファイバー化率、光化率、アメリカが八・八に対して日本は一三・二、これは一九九七年現在ということです。また、今新聞では三人に一人と言われるようになった携帯または自動車電話の人口当たりの普及率を申し上げると、アメリカが二二・四に対して日本は三六・二。また、先ほども質問がありました衛星放送、これの普及世帯数につきましては、日本が九百六十五万世帯に対してアメリカは六百六十八万世帯ということになっているわけであります。  ですから、これらのことに関しては日本は他国に比べて非常に頑張っているんだということを御理解いただきたいと同時に、悪い悪いと言われているのはやはりインターネット関連なのかなというふうに思います。特に今現在では日米間で大きな格差があることは事実です。  例えば、インターネットを通じての新しい商形態と言われる電子商取引、これの市場規模では、アメリカが一兆円以上に対して日本はようやく約八百二十億円ぐらいということになっていて、十五分の一と言われています。インターネット利用、これはホストコンピューターの数であらわすのですけれどもアメリカの三千四十九万台に対して日本は百六十九万台ということで十八分の一。さらにそれ以外のことでは、いろいろな技術が基本的にアメリカのデファクトスタンダードと言われる形で設計されてしまっている。そういうことだと思います。  その背景を申し上げれば、何度も申し上げてきましたけれどもアメリカというのは、もともとインターネットに関しては国防の技術として培われてきたものが民間に転用されてきたという、インターネット自体は生まれがアメリカだということだと思います。  さらには、先ほどベンチャーの話がありましたけれども、ベンチャーを育てていくためにはどうしてもリスクマネーというのが必要で、日本ではまだまだリスクマネーというものが進まなくて、そういう情報通信系のベンチャー企業を育てにくい土壌にあるということだと思います。  また、産学で連携して、要するにアメリカの場合は大学の教授が発明したものが物となってベンチャー企業になって大きく育っていくというようなことがありましたけれども日本ではまだまだそこまで至っていないということが背景として考えられると思います。
  251. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 大変難しい設問といいますか議論に対して明快に答えていただいたわけですが、これから日本の高度情報化社会を進めていく、それを生活の中で大きく利用していく、経済社会の中でも非常に進歩をさせていく、そういうことになりますと、ハードの問題もあるかと思いますが、ソフトの問題が非常に大きな問題になってくるのじゃないかと思っております。  ハード面でいきますと、光ファイバーは確かに最初はアメリカでできたかもしれないですが、これを産業として安く実用化したのはやはり日本会社だったということもあります。そういったことで、今年度の予算などでもそういったネットワークに相当力を入れていくというようなことで、補正予算の中で大々的に扱われているということもありますが、教育分野などでの活用ということにつきましても、まだインターネットとEメールの交換とかそういった限られた用途になるかと思われます。  せっかくそういったネットワークを組んでいくということですから、大臣が時々お話しになっておられますが、老人介護の問題でも、また今の電子マネーの問題でもそうですが、これからそういった分野を広げていく、それが非常に重要なことではないかと思っております。  そういった点から考えますと、日本の現状がいささか心もとないところもあるし、また今後その分野を拡大するについても相当の努力も要るし、また国側からのサポートも要るんじゃないかと思いますが、そういったことについての御見解をお伺いしたいと思います。
  252. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 私もインターネットを利用して電子メールをやっている一人ですけれども、やはり確かに先生の御指摘のとおり、マニアというか、余り実生活に忠実に貢献していないなということは感じるところであります。例えば実社会というか実生活というのは、お買い物をするとか物を食べるとか、そんなようなことにインターネットがどれだけ食い込んでいけるかということで高度情報通信社会の中にインターネットがまさに根差していくんだと、そういうふうに感じているところです。  そこで、今の日本の現状というか、確かにお寂しいものはあるかもしれませんけれども、ようやく十人に一人の方がインターネットにタッチするような時代になってきました。私たちがそこで取り組んでいきたいのは、急激に普及はしているものの、やはり社会とか生活の一部になるようにしていかなきゃいけないということで、まずは使える人をふやしていきたい。  そこで、教育における早いうちから、小学校、中学校の段階からパソコンを使ったインターネット接続に対するいろいろなリテラシー、はっきり言えばアレルギーをなくし、そこで自由自在にそういうものが使える人を育てていこうということが中長期的には大事だと思います。  二つ目には、先ほど申し上げた電子商取引、アメリカでは一兆円を超え、日本では八百億円をようやく超えたと。そこにもまだまだ潜在的な能力があるとするならば、そこでビジネスをやってくれる人、利用してくれる人に、それがいいものだ、安心して使えるものだというための実証実験、または電子マネーなんかをどんどん普及させていくことで、実際の生活とインターネットがひっついていくような、そういうような取り組みをやっていきたいと思っています。
  253. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 情報化社会における投資というものを考えていきますと、この面では、経済的な側面から考えても相当重要な部分を受け持っているということが言えるかと思います。例えば携帯電話にしましても相当の投資額が必要だったというようなことになっております。  現在の景気状況を考えますと、やはりそういった面での設備投資が非常に重要だと思うんですが、いわゆる電気通信分野、情報関係含めて、少々先行きのことを考えると、投資額は頭打ちになってきていはしないかなという心配があるわけですが、その辺については、今年度投資額、あるいは来年度の見通しなどについてお考えがありましたらお伺いしたいと思います。
  254. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) 郵政省では、電気通信事業及び放送事業につきまして平成元年度から通信産業設備投資等実態調査というものを実施しているところでございます。これは総務庁の承認統計ということでございます。  この調査結果によりますと、通信産業全体の平成十年度の設備投資計画額でございますけれども、約四兆五千億円というふうになっております。これは全産業が四十二・三兆円でございますので、約一割に相当いたします。平成八年度以来三年連続で実質一位ということで推移しているわけでございますけれども先生御心配のように、平成九年度は対前年で八・二%減少しております。それから十年度は〇・三%減少しているということでございまして、全体として見ると減少傾向にございます。  平成十一年度の通信産業の設備投資額の見通しでございますけれども、現在三月調査というものを実施しておりますけれども、依然として厳しい状況が続いております。電気通信事業を見ますと、携帯電話関係の設備投資は堅調でございますけれども、交換機のデジタル化完了ということで大型のネットワーク投資が一段落しつつございます。それから、民間の機関が実施している動向調査を見ましても、平成十一年度は減少の見込みという結果が出ております。  これらの点を勘案いたしますと、十一年度の設備投資の見通しは楽観を許すような状況にはないということでございまして、私どもしても、これを何とか立ち上げていきたいということで努力してまいりたいと思っております。
  255. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 設備投資の動向というのは、これは今後の経済回復を考えるときに本当に重要な指標になっているわけですが、そういった面から考えましても、設備投資全体の動き、さらに情報通信関係に関する設備投資の動きというのはこれから相当注意深く見ていかないとならない分野ではないかと思います。  最後に、一問大臣にお伺いしておきたいと思います。  これから二十一世紀を迎えるというような時期になってきているわけですが、二十一世紀において情報通信関係は恐らくほかの産業すべてとの関連を持って進んでいく、そういった意味情報通信関係一つを見ていれば大体その国の全体の経済の動向がわかるという時代になってくるかと思います。  そういった意味で、情報通信技術、ハード、ソフトを含めて日本がこれからトップレベルを維持していくということになりますと、そういった分野での開発、これが非常に重要になってくる。また、それを社会全体で活用していく、そういったことがこれからの大きな問題点になってくるかと思います。  そういった意味では、このハード、ソフトを含めての開発について、これから日本の産業が、あるいは国がどういうふうに取り組んでいくか、そこが非常に重要な問題になるかと思いますが、これについての大臣の御所見をお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  256. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 現在は低迷している日本の経済ですけれども先生おっしゃったように、情報通信産業がやはり次の時代のかぎを握っている。既にもうリーディング産業としても位置づけられていますけれども、それがより頑張っていくことが重要なんじゃないか。  じゃ、郵政省としては、そういう人たちとどう向き合っていくかというと、やはり基盤整備とか先進的な技術開発、民間企業ではまだまだ厳しい状況の中で、そういう前向きな先を行くようなやはり研究開発を進めていきたい。と同時に、やはり経済波及効果というのを常に考えなきゃいけないわけです。経済波及効果というのはどこにもとがあるかといえば、消費者や生活者が望むものでなければならないんじゃないか。これからの二十一世紀に必要と思われるものを研究し、先進的に技術開発していくことが日本の国にとって大事なんじゃないか。  その中で具体的に私たちが積極的に取り組んでいきたいと思うのは、ITS、道路の関係で、よく御存じだと思いますけれども、ああいった最終的にはどなたでも安心して運転ができるような、究極の話になるかもしれませんけれども、そういうようなことにも積極的に取り組んでいきたい。または、具体的にはきょうずっとお話がありました放送のデジタル化、まさに御家庭にテレビが一台以上ある、そういう中でもっといい放送文化を享受していただくために取り組んでいきたい。さらには、インターネットを次世代インターネットという形にして、速くて大容量で安全でそしてみんながそれを使っていろいろな生活に豊かさを与えられるものにしていきたい。そんなようなことを具体的には取り上げて、もう一つ言うなら、IMT二〇〇〇という新しい次世代の携帯電話、こういうものをやはり柱として取り組んでまいりたいと思います。
  257. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 大トリでございます。もうしばらくおつきあいを願いたいと思います。  私も、準備しましたのは地上放送のデジタル化ということでございますが、先ほど来多数の同僚の先生方がいろいろ御質問されましたので、なるべく重ならないように心がけて、余った部分だけちょっと質問させていただきたい、こう思っている次第でございます。  このデジタル化、確かに国際的な要請からも考えまして必要なこととは思いますが、これをうまく進めるには、やっぱりそれぞれの立場の人間がそれぞれ理解し合ってそれぞれメリットをお互いに享受し合うということでないとなかなかうまくいかない。  メリットの面でいきますと、一つは放送事業者、それから視聴者、それから機器の製造業者、あるいは放送番組の制作業者、こういう面はデジタル放送懇談会報告でも書かれておりまして、幾つか載っておるわけでございます。機器製造業者のメリットというのは非常にわかりやすいですからさておきまして、それ以外のいわゆる放送事業者あるいは視聴者についてちょっとこれに関してお聞きをしたいんです。  これを読みますと、確かにメリットというのは観念的にはわかるんですけれども、これが日本全国押しなべてというんならわかる、そういう理屈ではないかと思うんですが、いわゆる大都市と地方とを分けた場合に必ずしも同じように考えていいのかなというような気が一ついたします。  例えば、番組がたくさんつくれるというような話でも、地方の放送業者の中にはそんなふうにつくれる力もないというような声も聞く。まあ否定的といいますか、やることはいいとしても、現実を見るとそういう問題もあるというような声も聞くところでございます。その辺について、放送事業者というよりも地方の、ローカルの放送事業者にとってのメリットをどのようにお考えになっているか、大臣、お話をいただけたらと思います。
  258. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) まず、放送のデジタル化というのは、今すべてがデジタル技術で、例えば通信、さらにはコンピューターもそうですけれども、そして放送という情報通信の三本柱がデジタルによって融合することによって、さらなるメリットとか利便性のあるものを、機器を生み出していこうということで取り組んでいるところです。特に放送は、地上デジタルというのは私たちにとってなくてはならない放送であるということで、むしろ期待にこたえられるように措置を考えているところであります。  それで、ローカルの問題なんですけれども、確かに先生が御指摘のとおり、独自の番組をつくるとかそんなに簡単にできることじゃないという話もあるわけですけれども、むしろデジタル技術によって、例えば今までできなかったデータ放送との組み合わせとか、または美しい画像を、例えば地方だからこそあるような場面場面というのがあるわけですけれども、そういうものをデジタルの技術によってやっていただく、そんなようなことをローカル放送にはお願いしたいと思いますし、できれば私たちも、どういう形になるかわからないけれども、そういう取り組みについて支援をしていければなということは考えています。
  259. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 地方放送業者のメリット云々ということは、ある意味ではやはりこれからやらなければいけない投資にかかわる問題だと思うんです。  先ほど森本先生も御質問されかけておりましたが、放送事業者が新しいデジタル化の局並びに中継局をつくるとなると、私が聞いたところでは大体全国平均で四十億円ぐらいですか、私の北陸で大体三十数億だというふうに伺っておりますけれども、これは今のローカル放送の実態からいうととても容易な額ではないわけでございまして、その辺、この報告書では、税制で助成措置を考えるというようなことをちらと述べられておりますが、とてもそんなことではできないのじゃないかなというような思いがいたします。  その辺に非常に不安を持っておられるような感じがいたしますので、その辺についてどんなお考えか、はっきりと述べていただけたらと思っております。
  260. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 助成措置等についての御質問なんですけれども先生方も御承知のとおり、郵政省というのは大変予算が少ないところでございます。限られた予算のスキームの中ですけれども先生方の御理解をいただきまして、今日までは地上デジタル放送パイロット実験とか、全国十カ所の共同利用実験、さらには税制、法人税と固定資産税の軽減措置、そして金融上の低利融資制度などの支援策というのを講じてきたところなんです。  昨年十一月の高度情報通信社会推進に向けた基本方針とか、またはことしの産業再生計画、そういうことの中で、政府においては、デジタル化というのが大変重要である、大きな柱であるということを位置づけていただいているわけであります。  その中にあって、デジタル放送の普及は恐らく十年ぐらいかかるであろうということであるので、できるだけ早目早目にデジタル化の進展段階に応じた各種支援策を、前段にあるように産業再生計画等で言われておりますので、それを踏まえて各種の支援策というのを検討していきたいと思っています。  地域によってニーズがさまざまであると言われています。地方事業者の方がデジタル化をスムーズに進めることができるよう、事業者の御意見を聞きながら地域ごとにきめ細かな支援策も講じていきたいと考えています。
  261. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 その辺、ローカルの放送事業者の不安をかき立てないようにひとつよろしくこれからもお願いいたしたいと思います。  もう片方で、視聴者のメリットでございますけれども、これもやはり大都市とローカルでは大分違うんじゃないかなと思うんです。  非常にわかりづらいので、私など、情報化人間とはほど遠いものでわかりづらいんですが、御説明いただけるかどうかわかりませんが、具体的な例として、例えば地方の農家の一日をとって、この放送になることによってどんなメリットが描けるのか、ひとつその辺を教えていただくと視聴者の協力が非常に得やすくなるんじゃないかなと思うんです。よろしくお願いします。
  262. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) 想像力をできるだけかき立てていろいろ考えたわけですが。  私も個人的には農家の経験も若干あるのでございますが、まず、何よりも気象情報というのが大変農業にとって重要でございます。先ほど岩本先生のお話もございましたように、デジタルテレビというのはいわばコンピューターつきテレビでございまして、非常に情報蓄積機能がございます。それから、いろいろな検索が可能でございますので、例えば早寝早起きをされる農家の皆さんにとりましては、寝るときにその日の最終の天気予報情報を蓄積して、朝起きますとすぐに最新の気象情報が得られるということが一つあろうかと思います。  それから、既にもういろんな試みもございますけれども、やはり農産物の市況情報でございますね。今は大変、国際市況も国内の市況にすぐ響くわけでございますから、非常に多方面のグローバルな、または国内市場の、それからもっときめ細かい市場情報もデータ放送を活用しまして農家に送ることができるようになるだろうということでございます。  それから、インタラクティブな、インターネットと結合した形での最新の農業情報等でございますとか、気象情報も含めて入手することも可能になると思います。  それから、衛星デジタル放送が始まりますと、明らかにハイビジョンは衛星でと、地上は見れないということになるわけですが、地上デジタル放送によりましてハイビジョンも見れることになります。そうしますと、生鮮食料品等でございますとか、そういったものを視聴者が見ることができるようになりまして、より農産物に対する消費者の目が肥えてくるとか、あるいはよりよい農産物に対する購買意欲が高まるとか、あるいは料理番組なんかでもレシピをたくさんとることができるというようなことで、そういったちょっと間遠なことかもしれませんけれども、消費生活の向上を通じて農家にとってプラスになるということも考えられるのではないかと思っております。  先ほども申し上げました気象情報をどうやってきめ細かく提供するかというようなことは、もう既に天気予報専門の放送会社がいろいろ研究を始めておるというのがございますし、それから、先ほど来御紹介申し上げております共同実験施設でも、例えば東北の実験では、やませというのが東北の冷害の原因なのでございますけれども、これの総合情報システムをどうやってデジタル放送に組み込むか、あるいは中国地方では、農産物の生育情報を今回のデジタル放送の実験の中でやっていこうというような試みもございます。  したがいまして、今までのテレビの見方というのは受け身で見ているわけですが、デジタル放送というのはいかに積極的にテレビを使い込んでいくかということでございますので、私どもといたしましては、農家の方々にいかにデジタル放送を農業政策あるいは福祉政策の中に積極的に取り込んで活用していくかということでお考えいただきますと、さらにデジタル放送というのはより地に足のついた現実の国民生活に役に立つメディアとして普及していくのではないかと思っております。  そういった面では、関係省庁とも十分いろんな情報交換なり協力をさせていただきながら、本当に国民生活に、農家の方々あるいは一般サラリーマン、消費活動等にお役に立つようなメディアになってくるように努力してまいりたいと存じております。
  263. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 郵政省の局長さんに農家のことまでいろいろ教えていただきまして、まことにありがとうございました。ぜひ、今のお話をもとにいろいろと農家の方々あるいは地方方々と話を進めさせていただこうとは思います。私も、本委員会ですから、局長さんにお任せするばかりでなくて我々も考えなきゃいかぬじゃないかなというような気持ちでおるわけでございます。  ただ、一つだけ心配になりますのは、高齢者が今お話しになるような利用ができない場合、端的に言いまして、結局二〇一〇年になるとアナログは全部なくなっちゃうわけですね。お金がなくて買えないというようなときに、八五%の普及率になれば切られる、残りの一五%の中に入っちゃう場合が多いんじゃないかというような気がするんです。そうすると、高齢者の方々は、今まで一番楽しみにしていたテレビが見れなくなるというような、こんな心配がちょっとするんです。時間がありませんので、それはお答えいただかなくても結構でございますけれども、その辺の御配慮もひとつお願いしたいなと。  何かありますか。
  264. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) メディア一般論になりますけれども考えてみますと、電話にしても何にしても、我々の認識機能とか認知能力の不足しているところをカバーするのがメディアの機能でございまして、そういう意味ではデジタル放送こそ逆にハンディキャップのある方にとって役に立つメディアではないかというふうに考えております。コスト的にも、アナログテレビというのはもうこれ以上技術革新の要素はございませんけれども、デジタル放送受信機はますますコストダウンは目指せるべきところでございます。  それから、デジタル放送というのは、先ほどの御質問にもありましたけれども、字幕放送でございますとか、あるいは話速変換装置と言っておりますけれども、より高齢者の方にも役に立つメディアということになりますので、そういった観点から、高齢者にとって不利ではなくて、むしろ逆に高齢者にとって有利なメディアになるのではないか、その可能性を秘めているというふうに存じております。  したがいまして、最終的に普及する中で、むしろデジタル受像機の方が将来はひょっとしたらアナログ受像機よりも安くなるかもしれない、あるいは安くなる可能性が大変高いわけでございます。それから、買いかえ需要というのが大体十年で一サイクル回りますので、そうしたところも考えながら、いろんな各種の政策を総合的に糾合する中で、できるだけそうした方々にも、最もデジタル放送を享受いただきたい方に普及していけるようにいろいろ工夫してまいりたいと存じます。  以上でございます。
  265. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 どうなるか。私、そういう御配慮をいただきたいということで、議論をこれ以上進めませんが、ともあれ視聴者の場合は、そのメリットに合わせて買う方向に行くかどうかというのはやっぱりテレビそのものの価格によるのが大きいんだと思います。  先ほども、そんな話でアダプターを使ったらいいんじゃないかと。私、ちょっと聞き取れなかったんですが、アダプターでもいいんでしょうけれども、アダプターだと何かデジタル専用のテレビとは必ずしも同じ機能にならぬというような話も伺いますし、それは別に議論いたしませんが、デジタルテレビそのものについて、将来はそれになるわけですから、これが手軽に手に入らなきゃいかぬ。  今局長の話ではそうなるんじゃないかというようなお話がありましたけれども、これはデジタル化の進行と合わせてそうならないと意味がないわけでございますから、それに合わせたような進度で、安く買えるようなそういう産業界の動きが必要であろう。  そうした場合に、うまく需要が先行すればいいんですけれども、そうでないと、これはどちらかというと需要と供給というのは卵と鶏みたいな関係になると思うんですが、そういう場合には、やはり視聴者からすれば機械の、供給サイドの問題をどうしても見るようになると思うんです。  やはり、それについては、国策として安いテレビをつくるということに対して、郵政省が中心的な役割といいますか、あるいは郵政省だけではないほかの部局との連携も必要であろうと思いますけれども、そういう連携も含めて、強くそういう方向に導くという方策をぜひとっていただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。
  266. 品川萬里

    政府委員(品川萬里君) 最終小売価格というのはやっぱり市場で決まるわけでございますので、行政で安くする高くするということではないんでありますけれども、いずれにしましても、過去の受像機のコストダウンの傾向を見ますと、例えば高いと言われていましたハイビジョンも、平成三年では三百八十万いたしましたけれども平成九年では二十九万ということでございまして、六年間で約十分の一のコストに下がっている。この分野は最も今情報家電ということで家電メーカーさんが技術革新なり設備投資に努力されているところでございますので、ハイビジョンに見られたようなコストダウン効果が大きく働くのではないか。  もとより技術革新について、国としても新しいより高度な、例えばLSI開発について、当省の政策だけではなくて、関係省庁の施策の中でより技術革新が進むようにということで協力もしてまいりたいと存じます。  ただ、やはり何よりもコストダウンに効果がありますのは、需要が拡大していくということでございます。今までいわば家計部門にいかにこのデジタル受像機が普及するかということでございましたけれども、先ほどもお願いかたがた申し上げましたけれども、これが例えば学校教育の中でデジタル放送が使われていくとか、あるいは行政の、あるいは企業活動の中でデジタル放送が活用されていくとなりますと、この家計部門の需要だけじゃなくてより大きなロットでデジタル受像機が普及することになりますので、そうしたデジタル放送をいろんな部門で活用していただくということが、あわせて最終的に家計部門におけるデジタル受像機の普及に大いに役に立つ、貢献するんではないかというふうに考えておりますので、そちらの方面でもこれからデジタル放送というのはどのような効果があるのか、単に個人の生活における有効性だけではなくて、行政の、あるいは教育における、あるいは企業活動におけるデジタル放送の効用ということについても十分情報を提供してまいりたい、かように存じております。  以上でございます。
  267. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  最後に、大臣にお聞きしますが、その前に、先ほどアナログからデジタルへの移行について非常に金がかかるというようなお話が出ておりまして、大臣はみんなの問題だから、いかがなものかというような御答弁ございましたけれども、別の見方をしますと、やっぱり個人の選択の自由が束縛されることは事実でありますので、そういう感覚にならないような御指導はぜひお願いしたい。  それと同時に、このデジタル化、先ほどから出ておりますとおり、やはり国策の一つだろうと思いますので、郵政省が強いリーダーシップを持って進めていただかないといけないと思いますので、その辺の御決意のほどをお聞きして、質問を終わらせていただきます。
  268. 野田聖子

    国務大臣(野田聖子君) 先ほどのアナアナに関しましては、決して後ろ向きではなく、いろいろまずは費用を最小限に抑えることもやっていかなきゃいけないし、また各方面の皆様方にいろいろと知恵を出していただいて、郵政省としてもできるだけの手当てはしてまいりたい、そういうことを考えております。  決意というよりも、むしろ先生がおっしゃったとおり、放送のデジタル化というのは見る人、そして放送をつくってくれる人、またはテレビをつくるメーカー、そういういろいろな関係の皆さんとの一致結束というか、同じ歩調の中で粛々と進めていきたいと思っています。  私としましては、そういう関係者の皆さんが、先ほども申し上げた少ない予算の中でいろいろな実験のための費用とか設備をつくっているわけですけれども、そういうところでデジタル放送のサービスを考えてもらったり、いろいろなことを見出してもらう中で、デジタル化への理解を深めていただき、そして最終的に、局長も言っていましたけれども、多くの需要が望まれるような形でみんなで協調してやっていくために精いっぱい努力をしていきたいし、さらにはアジア地域からも日本に対する熱い要望が来ていることもあえて申し上げて、全力で取り組んでまいりたいと思いますので、よろしく御指導をお願いいたします。
  269. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 どうもありがとうございました。
  270. 小林元

    委員長小林元君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時一分散会