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国務大臣(
宮澤喜一君) 御
指摘の点は承ってよくわかりました。ごもっともだと思います。
もちろん借金はない方がいい。基本的には借金なしで済めばこれにこしたことはないというところはもう明らかでございますけれども、現実にはそういうふうにまいりませんから、殊に我が国の今日のような
状況はそうはまいりませんから、大きな国債を出しておるわけでございます。したがって、将来の
負担もふえてまいりますが、幾つかのことが申し上げられると思います。
それは、我が国の今日の
経済力あるいは将来を展望しての
経済力でどのぐらいの国債発行あるいは国債の累増に耐え得るかという問題でございます。極端な例は、EUをつくりましたときに、毎年の国債が
GDPの三%を超えてはいけないとか、あるいは累積は六〇%であるとか、非常に厳しいことをとにかく入学試験のようにいたしました。とてもああいうわけにはまいりませんが、しかし我が国のこれだけの
経済力でどこまでの毎年の赤字公債の発行あるいは累積に耐えていけるかという問題でございますけれども、今の日本及び将来を展望しまして、少ない方がよろしいには決まっておりますけれども、耐えられないような借金をしつつあるというふうには私自身は考えておりません。
それには幾つか理由がございますが、基本的には我が国のこれからの
経済力というものを考えているからでございます。
よく個人の場合の借金と国の場合の借金とが議論されるわけでございまして、将来子孫に
負担を残すという話がございますが、ここはよほど注意して申し上げなければならないのですけれども、文字どおり我々の同胞の子孫に残すのであって、外国人に残すわけではございません。そして、子孫で申しますと、自分はおやじから二億円の国債を相続したということについて恐らく文句を言う子孫はいないだろうと思います。金融資産として二億円の国債をもらったということは決して迷惑には我々の子孫は考えないだろう、その国債が十分値打ちを持って、また利払いが行われている限りは。そういう意味では、個人の借金というものとは実は分けて考える必要があるであろうということが一つございます。
ただ、そのためには、その国債が十分に市場価値を持ち、かつ金利が払われているということが前提でございますから、これは一番大事なところでございますが、今我が国に関します限り、国債を三十一兆円出そうとしておりますが、国債の発行は
余り困難をいたしておりません。むしろ、イールドで申しますとパーバリューよりは低い、つまり国債の価格の方が高いというふうに取引されております。
これはただ、現在民間の設備投資の意欲がないものでございますから、そういう意味で楽をしておると申しますか、国債だけが出ておるということで、競合いたすようになりますと当然高い金利を払わなければならないことになりますし、民間の
経済活動を圧迫することになりますから、これはそれ自身で問題があることになろうと思います。ただいまは大変低い金利で、一・八とかいうような全く、めったにないような金利で借金をしておりますから、市場での流通にも問題がございませんが、民間の
資金需要が出てくればこう簡単にはいかないということだと思います。それが一つでございます。
それからもう一つは、これは大事な点でございますが、おっしゃいましたように、毎々
予算に国債費というものが当然あるわけでございます。それは大体経験的に歳出の二割ぐらいでございますから、
大蔵大臣の立場で申しますと、全体の歳出の中で二割は国債の利払いに、償還に使わなきゃならないということは、これが丸々あったらなあと考えることはもうそれはまことに本当にそうでございますから、そういう意味ではつらいところがございます。プライマリーバランスというのは、それとその年の国債発行が同じになればいいではないかということと思いますけれども、ただいまは金利が非常に低いものでございますから、これだけ出しても国債費というのは意外に大きくなっていない。それは実は金利が低いということに助けられておるわけでございます。
それから、もう一つ申し上げた方がいいと思いますが、大体そんなところが申し上げるべきことかと思います。