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参考人(
花田啓一君)
日本SOHOセンターの
花田です。本
法案につきまして、SOHOの
立場からの
意見を述べさせていただきます。
お
手元の
資料にもあるかと思いますが、私
どもの
日本SOHOセンターという団体は昨年の十一月に設立されたものでして、SOHO
自身によるSOHOのための
支援団体で、非営利、いわゆるNPOの形で活動しております。
このSOHOとは何かということにつきましては、現在ではかなり多くの方が御存じではあろうと思いますが、いわゆるスモール・オフィス・ホーム・オフィスの略でありまして、小規模オフィスもしくは自宅をオフィスとする個人事業の形態であります。法人格を持つSOHOもございますが、おおむね四、五人程度の小さな規模というふうにお考えください。
では、従来の
中小企業や個人商店とどのような違いがあるのかと申しますと、一言で言いますならば、パソコンやインターネットに代表されますようなIT、いわゆる情報
技術というものが最大限に
活用されているという前提でビジネス展開を図っていくというふうにお考えくだされば結構だろうと思います。今のところ、
日本においてはSOHOというものに対する統一的な定義がまだないのでありますが、雑駁にそのように御理解ください。
このSOHOという新しい概念、新しい働き方、生き方、これが現在かなりの注目を集めているわけでありますが、このSOHOの持つ可能性というものが、私たちは、今日のこの
日本が陥っております閉塞
状況、
経済・
産業の苦境を打開するための大きなかぎの一つになるのではないかというふうに考えております。
今日、会社もしくは組織という従来型の価値観が行き詰まっているということが言えるのではないかと思います。いわゆる護送船団方式でこれまでやってきたものが、現在その限界が顕在化してきているのではないか。この
状況を打ち破るために今必要なものの一つとして、個性を大事にしたSOHOという働き方、生き方、個という単位でビジネス展開を進めていくSOHOではないか、これがまさしく
産業の
活性化のポテンシャルを持つものだというふうに私たちは考えております。
この
法案に対しまして、SOHOにいる現場の身として申し上げたいことが幾つかございます。
この
法案の事業再構築という部分がありますが、もちろん現在のこの難しい
状況を
リストラクチャリングという形で
環境整備していくということは必要なことだろうと思います。これは基本的にはあってしかるべきことだろうとは考えております。しかしながら、
リストラという言葉が巷間伝えられている
意味合いは、やはりそこには
雇用の
削減を伴うものである、むしろ
雇用の
削減イコール
リストラというふうにとらえられているのではないかと思います。
今回の
法案につきましても、それがやはり基本的に
雇用の
削減につながっていくものではないかというふうに考えられると思います。確かに、今説明がありましたように、
日本版バイ・ドール法など一部に評価すべき点もございますが、しかしながら、こういう
法案を進めることによって
政府もしくは国が
リストラをあおる、従業員の
雇用削減にお墨つきを与えるといった
側面は否定できないのではないかというふうに考えます。
しかしながら、私は何もここで絶対的に
雇用を守れというようなことを申し上げたいわけではないわけです。過剰な設備はやはり廃棄しなければならないと思いますし、余剰の人員も整理しなければならないでしょう。しかし、その過剰とか余剰をつくり出した責任は一体どこにあるのかという点であります。つまり、経営側にも責任はないのか。
リストラされる従業員の中にもそれはちゃんとした仕事をしないという
意味においての責任はあるのかもしれませんが、経営側には責任がないのか。
世界市場で生き残れる強い体質をつくるんだというようなことが言われておりますが、弱い体質にしてしまったのは一体だれなのか。このあたりの視点が欠けているのではないかと考えます。
ですから、例えばかの山一の倒産の日に、従業員は何も悪くないと泣きじゃくった社長のあの絵が
日本の国の中である種の共感を覚えられたように私は思いますが、あれはなぜかといえば、やはり従業員だけが悪いんじゃない、経営者側も悪いんだということが暗黙の了解として国民の中にあったんではないかというところが考えられると思います。
経済の
活力を
再生するというネーミングにもかかわらず、この
法案を見ますと、今申し上げたように、経営者側にも血を吐くような痛みを伴うようなそんな抜本的な
改革という部分がいささか足りないのではないか、安易に
リストラという、言ってみればカンフル剤を打とうとしているのではないか、こういうふうに考えられる部分があります。
もちろん、カンフル剤も必要な場合があります。瀕死の重症を負っている人間に適切な処置をするという
意味においてはカンフル剤も必要かもしれません。しかしながら、この
経済の
再生という部分のネーミングからしますと、やはり一時的に危機的な
状況があった場合にそれを助けて、その人間が言ってみれば退院をしてもとの日常生活に戻っていく、そこまでケアして初めて
再生ではないだろうか、こういうふうに考えるわけです。そうすると、どうしてもこの
法案の中からはその辺の
再生のシナリオが見えにくい。どうしてもカンフル剤的なところしか見えてこないというふうに私は考えます。
そこの、いや違うんだ、ちゃんとした
再生のシナリオは打たれているんだという部分について想像しますに、
新規事業の育成というような部分、先ほどの説明の中にもありましたが、そうしたものが出てきていると思うんですが、ここが本当に
再生のための大きな柱だとしたら、私はこれはとんでもないことではないかというふうに考えます。
再生のための
新規事業の育成というものどころか、今の非常に危ない状態の
日本経済にもしかしたら引導を渡す結果になりかねない、そんな危惧を私は抱いております。
どういうことかというと、つまり、新しく事業を起こすときに融資というのは確かにありがたいものです。ビジネスの立ち上げにはやはりお金が必要ですから、ないよりはあった方がいい。しかし、誤解を恐れずにあっさり申し上げれば、ある程度のスキル、
技術、
能力、やる気、意欲、そういうものがあれば開業、独立というものは基本的にそれほど難しいものではないということです。一部の業種に関しましては最初に投下資本がかなり必要なものがあって、融資を、かなりのお金を必要とするものもあるかもしれませんが、しかしながら、この
情報化の
時代において起業する場合、まさしくいろいろな情報が入手できるような
時代になってきているわけです。
現実にパソコンも安くなっておりますし、インターネットを使えば、文字どおりインターネットというのは情報の宝庫でありますから、
世界じゅうからいろいろなデータや情報が得られるわけで、これにかかる費用も例えば五年前に比べれば相当安くなっているわけです。ですから、莫大な投資を必要とするものではない
状況が生まれてきているにもかかわらず、相変わらず創業段階で融資、無利子で一千万とかそういうことになっている。これではやはり足りないのではないかと。
こういった問題を考えてみるときに、先ほど来も
アメリカとの比較がありましたが、
アメリカでの開業率は高いのになぜ
日本の開業率は高くないのかというふうなことを考えた場合に、こちらにビジネスの方もいらっしゃるので先輩を差しおいてなんですが、つまりビジネスというものは継続しなければ
意味がないと思うんです。立ち上げるだけなら、今申し上げたようにある種の意欲さえあれば立ち上がるんですが、それを四年、五年、十年と続けていくための、継続は力なりという名文句がこのビジネス界にありますけれ
ども、そこだと思うんです。ですから、この継続をしていくというときに実はいろいろな問題が
中小企業、特に小規模の事業、それから個人事業主の間にはあるんだということを私はここで指摘しておきたいと思います。
それはどういったことかというと、お
手元の
資料の中に私
どもが申し上げております「本当に必要なSOHO
支援策」というものが十九項目にわたってありますので、一つ一つ申し上げている時間はございませんので詳しくはその中を見ていただきたいんですが、例えば一つ申し上げれば源泉の問題がございます。
お
手元の
資料の中で言えば、三
ページ目に第三番目の項目として出しておりますが、源泉の問題。これは法人格を持った
企業の場合は全然気にすることはないんですが、個人事業主の場合はいや応なく報酬の一〇%を源泉として取られるわけです。これが事業です。個人とはいえ事業を行っているわけです。確定申告もするわけです。なのになぜその売り上げの一〇%をあらかじめ源泉という形で前納しなければならないのか。例えば個人商店で肉や魚や野菜を、例えば一本百円でニンジンを売っている。その百円のうちの十円をあらかじめ源泉として取られるということがないように、私
どもの個人事業主がその報酬の一〇%を源泉としてあらかじめ納めなければならないというのは、やはり個人事業主に対する
考え方としていささかその活動を阻害するものではないかというふうに考えます。
そのほかいろいろなことがあるわけですが、こういった一つの問題を取り上げましても、個人もしくは小規模で事業を行っておりますと実はいろいろな問題が発生しているわけです。なかなか想像しにくいかもしれませんが、支払いの遅延、不当な未払い、不払い、そのようなことはまさに残念なことではあるんですけれ
ども、個人もしくは小規模で事業を行っていると日常的にこれは発生するわけです。消費税が転嫁できないということも決して珍しくありません。そうした問題が実はあるわけなんです。支払いサイトが長過ぎるという問題もあります。ですから、
資金の回転に苦労するという問題もあります。
そうしたいろいろな問題に加えて、福利厚生の問題もこれは見逃せない事実だと思います。最近では会社員だってつらいんだというような論調が目立ちますけれ
ども、しかしながら会社員はまだまだ恵まれていると思います。個人事業で仕事を進めている場合には、会社員の
時代にあった福利厚生というものは一切なくなる。その中で、個人として仕事をしているんだという現実をできる限りやっぱり直視すべきではないだろうかと思います。
そういったアンフェアな
状況が厳然としてある。現実にある。そういう
状況の中で起業家
支援だというふうにおっしゃられても、そうそう人は業を起こそうとは思いません。いろんな方に私たちはお会いしていますけれ
ども、才能のある方、スキルがある方こそむしろ会社員でい続けたい、会社員でなくなったら全部自分でやらなくちゃいけなくて大変だと、そういうことをおっしゃられます、訴えられます。
しかしながら、先ほど、独立は簡単だという言い方をしたときに、多少なりともスキルややる気がありさえすればそんなに難しい話じゃないと申し上げましたけれ
ども、ここで今発生している問題は、非自発的な退職者、本人が望まないにもかかわらず
リストラされてしまうということです。本人が望んで退職して独立、開業してもいろんな問題が山積しているのに、本人が望まないで独立、開業した場合にどのような問題が起きるかは火を見るより明らかだろうと思います。
そういった問題を考えていきますと、確かに目の前の失業率は五%を前後して、これ以上高くなるだろうということで問題は生じておりますけれ
ども、しかしながら、この失業率の問題をとらえて、失業者になるぐらいだったら開業させる、起業させる、そうしたら失業率は下がるかもしれません。しかしながら、そのために資本金を、最初の
創業資金を国や行政が
支援する。そうしたら一年、二年、三年はもつかもしれません。しかしながら、四年、五年、十年たつとどうなるでしょう。いや十年どころじゃなくて四年、五年で十分だろうと思いますが、この
人たちは基本的に起業家マインドがない人間たちですから、これがばたばたと倒産するのは火を見るより明らかだろうと思います。
倒産したらどうなるか。もはや失業者ではないわけです。失業保険がないわけです。どうするか。自殺するかホームレスになるか犯罪に走るか、それしかないわけです。
企業に再就職するという道も残されていないわけです。そういった現実を招きかねない安易な創業
支援、
起業支援は、二年、三年、四年後にそういった事態を招きかねないということを私は声を大にして申し上げたいと思います。
ですから、むしろ社会的な
基盤を
整備することにお金や知恵や手間暇をかけていただきたい。今いろいろ申し上げた中で、幾つもの実行できることがたくさんあります。そうしたことを、社会的な条件
整備、
基盤を
整備していけばある程度の人は今さら起業だ何だと言わなくてもほっといても独立、開業していきます。四年、五年続けていったときにいろいろな問題が生じるでしょうから、そういうときに融資の枠のことを考えていただくとかいうことをすれば、継続していって、その先にそうした
人たちがたくさん出てくることによって、その中から自分は将来は店頭公開だ、一部上場だと考えるような人も出てくるわけです。そうした中から第二、第三の本田のようないわゆる
ベンチャーの旗手と呼ばれるようなものが出てくる可能性があるわけです。
つまり、
ベンチャーというのはいきなり出てくるものではなくて、その中には当然個人もしくは小規模で事業展開をしている豊かな土壌がなければならないわけです。そうしたものとして起業をとらえていただきたい。単なる失業対策として業を起こすことをとらえていただきたくない。ここは声を大にして申し上げたいところです。
全国津々浦々にはいろいろな個人、小規模で事業を展開していらっしゃる方が現実にいます。現実にいろんなところにいろんな人がいます。そういう
人たちに対する
支援こそが次の
日本の新しい未来を築くものだと私は信じて疑いません。
日本は資本主義の国だと言われながら、しかしやゆ的に非常に成功した社会主義の国だと言われることもありますが、今まさに本当の
意味での資本主義革命が起きているのかもしれません。地方にはそうした一生懸命仕事をしている人がたくさんいます。そうした
人たちに少しずつでも地方自治体の枠の中でいろいろな
支援をしていただければ、そうした中から第二、第三の本田が生まれるのではないかと私は信じて疑いません。
まさしく今こそ草の根資本主義というものがこの国に問われている問題ではないでしょうか。そうした観点からすると、この
法案に足りないものがまだまだたくさんあるというふうに私は感じております。
ありがとうございます。