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1999-04-20 第145回国会 参議院 経済・産業委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十日(火曜日)    午前九時三十分開会     ─────────────    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      谷林 正昭君     前川 忠夫君  四月十六日     辞任         補欠選任      阿南 一成君     中曽根弘文君      山下 善彦君     陣内 孝雄君      木俣 佳丈君     簗瀬  進君  四月十九日     辞任         補欠選任      簗瀬  進君     木俣 佳丈君  四月二十日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     岸  宏一君      陣内 孝雄君     脇  雅史君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 平田 健二君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 加納 時男君                 岸  宏一君                 小山 孝雄君                 末広まきこ君                 中曽根弘文君                 脇  雅史君                 木俣 佳丈君                 長谷川 清君                 福山 哲郎君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君    政府委員        公正取引委員会        委員長      根來 泰周君        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      山田 昭雄君        公正取引委員会        事務総局審査局        長        平林 英勝君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        中小企業庁次長  殿岡 茂樹君        運輸省海上交通        局長       宮崎 達彦君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君     ─────────────   本日の会議に付した案件私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の適用除外制度整理等に関する法律案(内  閣提出) ○原子力損害賠償に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、谷林正昭君、阿南一成君及び山下善彦君が委員辞任され、その補欠として前川忠夫君、中曽根弘文君及び陣内孝雄君が選任されました。  また、本日、陣内孝雄君が委員辞任され、その補欠として脇雅史君が選任されました。     ─────────────
  3. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律適用除外制度整理等に関する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 畑恵

    畑恵君 おはようございます。自由民主党の畑恵でございます。  我が国経済再生を図るに当たりまして、今、抜本的な構造改革こそが喫緊の課題と認識しております。これまでの護送船団方式から自己責任原則市場原理に基づいた自由で活力ある社会を実現して一日も早く国際競争に打ちかつことのできる体制を整えなくてはならないと日ごろ認識しておる次第でございます。そうした視点から見た場合、今法案事業者間の公正かつ自由な競争を制限し、消費者利益を損なうおそれのある独禁法適用除外制度を厳正に見直そうという趣旨は、国際競争協調時代を迎えた我が国が目指しますあるべき姿にまことに合致したものであるということで、その趣旨に大いに賛同するものでございます。  ちょうど、きのうですか、トヨタとGMの共同開発という非常に大きな話も舞い込んでまいりましたけれども、昨今、国内国外を問わずにトップ企業同士合併ですとか連携の話題が毎日のごとく報じられております。  昨年の通常国会合併基準緩和などを盛り込んだ改正独禁法案が通りましたけれども、今年一月一日からそちらの方も施行されて、先日は日本石油と三菱石油大型合併という話も発表されました。この合併によって生まれる新会社販売シェアが、当然業界第一位なわけですけれども、もうこれで二五%ということでございます。これ以前からもビッグな合併メジロ押しで、思い起こすところでも、例えばおととし十月の三井東圧と三井石油化学、昨年十月の日本セメントと秩父小野田、昨年十二月はKDDと日本高速通信など、まことに枚挙にいとまがなくて、産業界の大再編があらゆる業界で一気に断行されている感じがいたします。  そこで、このように社会状況が激変を迎えている中で、公正取引委員会がこのような合併審査にどのような体制で何人ぐらいで日ごろ当たっていらっしゃるのか、まずそのあたりから伺えますでしょうか。
  5. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 合併審査等審査体制人数等の御質問でございますので、私から答弁させていただきたいと思います。  御指摘のとおり、今、大変大型合併とか戦略的な提携と言われているものが増加しているわけでございまして、先生お話しのとおり、昨年の独占禁止法改正におきまして、経済グローバル化になっていくということで、一方では、すべて合併届け出を出していたものを重要なものに、総資産百億円以上の企業が総資産十億円のものを取得する、そういうような合併届け出は限定しよう、そしてまた、国内会社合併ということだけではなくして、経済グローバル化に対応いたしまして、海外における合併でありまして我が国市場に影響を及ぼすもの等も規制の対象にするようになりまして、そういった面もございまして、おっしゃられるとおり、合併審査業務量が非常に増大してきておるわけでございます。  さて、その体制ということでございますが、私ども事務総局経済取引局、そしてその中に企業結合課という課がございます。現在の定員は十九名でございまして、言ってみれば十九名でお話にございましたように石油の話から自動車の話まですべてあらゆる業種について取り組んでおるということでございます。  お話しのとおり、量的な増加だけではなくして、質的にも大変難しい事案が増加しているわけでございますが、昨年の法改正にあわせまして、ことし一月一日から施行になるということで合併に関するガイドラインも出しまして、事業者にとりましてもできるだけ判断の予測性可能性が高まるということでガイドラインを出しておりますが、このガイドラインに照らしまして、市場の実態やあるいは市場変化ということも十分勘案しながら、合併等審査の効率的あるいは機動的な処理ということに努めておるところでございます。
  6. 畑恵

    畑恵君 今、十九人という人数を伺って、恐らく多くの方々がかなり驚かれているのではないかと思います。今、各業界で一斉に大きな合併連携というのが進んでいる中でございますので、よくその人数案件処理されているなと本当に健闘ぶりに敬服する次第でございますけれども、ただ、それにしても少な過ぎるだろうという気持ちが正直いたします。  ちなみに、アメリカ日本公正取引委員会と同様の仕事をしている米国司法省の反トラスト局連邦取引委員会、いわゆるFTCの人員ですけれども、これが合わせて大体千八百人ぐらいです。これに比べて日本公取は五百五十人余りということで、人数だけ比べても三分の一以下です。  近年、独禁行政業務というのは、今お話しになられましたように、質、量ともに一段と難しさを増している、厳しさを増しているわけでございます。さらに、国際競争に生き残っていくためにはスピードの速さ、なるべく迅速に処理するということが勝負のかなめになっているので、私自身、やっぱり今こそ公取委の人員増強、それも大幅な増員というのが必要ではないかと思います。  では、現在の公取全体の人数人員配置、それから業務内容業務体制というのをお話しいただきながら、先ほどは合併という話をしましたけれども、それ以外のところでも、今こういう状況変化が起こっているのでこの部門業務がある意味で非常に厳しくなっているというところがございましたら、御指摘いただけますでしょうか。
  7. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) お話しのとおり、規制緩和推進競争政策の積極的な展開ということは一体的なものであるというように私ども考えておりまして、人員につきまして申し上げますと、平成十一年度予算で審査部門を中心に九人の新規増員が認められまして、事務総局全体では五百五十八名ということでございます。  これを部門別に見ますと、官房が七十五、そして経済取引局、これは百四十四名でございますが、このうち下請法とか景品表示法というような消費者保護であるとか下請事業者保護というようなことをやっておる部門、これは取引部内数で八十四名でございます。それと、違反事件審査に当たっております部門審査局が百九十九名。地方事務所がございますが、それを含めまして百三十五名、こんなような陣容でございます。  企業結合関係では十九名ということでございますが、先ほど先生お話にございましたが、アメリカでは企業結合関係は四百名ぐらいの規模だということで、ややちょっとやゆ的な批評といいますか、そういうものもあることも事実ではないかと思っております。
  8. 畑恵

    畑恵君 やはり全体を見ましても、非常に少ない人数の中でやりくりしていらっしゃるという感が否めないわけでございます。  これまでの平成八年、九年、十年の審査件数処理件数の統計を見ましても、どんなに頑張ってもと言っては失礼なのかもしれませんけれども、やはり審査件数というのは処理件数をかなり上回っている。要するに、毎年毎年処理できないで繰り越していく件数というのが積み重なっていくわけですね。やはり業務量公取の限界を明らかに超えているという状況がこれで見渡せるわけでございます。こうした傾向は、今後規制緩和が進んでいって本格的な自由競争が進展すればするほど強まるものと思われます。ということは、幾ら公取を増強したとしても、やはり公取だけではさばけないものというのが出てくるのではないか。  そこで、現在導入検討されていると伺っております私訴制度について伺いたいと思います。  これは、被害者自身取引妨害行為の差しとめを直接裁判所に求められる私訴制度ということでございますけれども規制緩和で多発する紛争をより迅速に処理する上で非常に有効な手段で、早期の導入が望ましいと私自身は考えているんですけれども公取の御見解はいかがでしょうか。また、これまで検討されていると伺っているんですけれども、今回もやはり見送られたその経緯はどのようなものか、お話しいただけますでしょうか。
  9. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいまお話のありました私訴制度導入でございますが、これは通産省の懇談会におきましても、それから私ども委員会研究会におきましても、方向としては採用するという方向で進んでいると思います。  ただ、今の独占禁止法というのは公的な秩序を維持する法律でございまして、そこへ私的な要素を加味するというのはどういうことであろうかということとか、私訴を認めるにしましても訴権者をどうするかという、極めて細かい問題が山積みになっているわけでございます。  それから一方、独占禁止法には私人の損害賠償請求を認める制度がございますが、この損害賠償請求制度と私訴制度は裏腹のような関係にございます。ところが、損害賠償請求事件というのは、法律ができて五十年以上たちますけれども、まだ十件に満たない、十件前後だと、こう言われているわけでございます。  そういうことから、現在、私ども研究会におきまして、私訴制度導入するにしましても、この損害賠償請求制度をより活発化するにはどうしたらいいかという二つの命題を研究するということでお願いいたしまして、希望としましては、平成十一年度中に何とか結論をいただいて、それから立案をしまして国会にお願いしたいと、こういうふうに思っている次第であります。
  10. 畑恵

    畑恵君 なるほど、方向性としては導入するということで、ただ司法の方の準備といいましょうか、先日も特許法法案審査のときにも、司法の方の足並みというのがなかなか追いついていないんじゃないかという御指摘を私の方からもさせていただいたんですけれども、そちらの整備というのもあわせて進めなければいけないということはよくわかりました。私自身も、その部分についてはよく認識しながらぜひ応援をさせていただきたいと思います。  公取人員増強、そして私訴制度導入という二点について要望を兼ねて御質問させていただきましたけれども、そうしたことを実現させた上でぜひ全力で行っていただきたいと思っておりますのが民民規制の問題への対処でございます。  民民規制は、戦後復興期から経済成長を続けているいわゆる発展途上の間は、業界を挙げて追いつき追い越せという意味では一定の役割を果たしてきたのかなという気もいたします。ただ、今となりましては、やはり既得権温床そのものでありますし、競争を阻害して高いコスト消費者に強いるなど、全般的にマイナスの側面が目立っているのではないでしょうか。  この問題については、今回、政府の第二次規制緩和推進三カ年計画にも公取による監視の強化という項目がたしか盛り込まれていると思いますけれども、代表的な民民規制事例についてまず御報告願います。
  11. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 民民規制の代表的な事例ということでございますが、いろいろ定義といいますかとらえ方はあるかと思います。  規制緩和委員会等では、民民規制について、これを公取としてもしっかり取り締まれということを言われておりますが、類型化いたしまして、一つは、公的規制背景として競争制限行為が行われるような事例で私ども従来やった事例ですと、専門的職業団体につきましては法律上会則を定めることができております。そして、そこで報酬に関して基準となる報酬というのを決められることになっていますが、実際にはその団体構成員が収受する額を決め、それを制限しているような事例がございました。  二つ目といたしまして、規制緩和に伴いまして競争制限行為が行われていたような事例でございまして、例えばタクシー運賃規制緩和後に、ゾーン運賃制ということで、値下げした一部の組合員共通乗車券の手数料を引き上げたり、あるいは駅構内タクシー乗り場の使用をさせないようにしたというような事例がございます。  三つ目といたしましては、検査機関等認定を利用いたしまして競争者を排除するというような事例でございまして、先生も御存じのとおり、医療用食品につきましてこれが行われたものであると考えております。  四つ目は、行政指導背景にして行うような事例。  五つ目といたしまして、事業者団体が行う自主基準とかあるいは認定制度、そういったものを使いながら新規参入を妨害するというような事例。  こんなようなものがあろうかと思います。
  12. 畑恵

    畑恵君 さまざまな種類、さまざまな業種で行われてしまっているわけですけれども、たしかこれまで民民規制に対する法的措置、大体年間で二十件を下回らないと伺っておるんですけれども、今御紹介いただいたさまざまな事例に対して公取がこれまで行ってきた取り組みの状況、そして今後目指すべき民民規制あり方対処について教えていただけますでしょうか。
  13. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいま局長から御答弁申し上げましたように、私ども業務推進上、民民規制ということも一つの問題だということで、それに対して目を光らせているという現状でございます。  しかし、私も率直に考えましたときに、民間方々が必ずしも独占禁止法違反というようなことを念頭に置いて規制をしているわけではない部分が大いにあるわけでございます。これは独占禁止法マインドといいますか、そういうところが欠けるところがございまして、うかうかと今までの過去の経過から民民規制を行っているというところがございますので、私どもの方としては、やはり民民規制というのは独占禁止法違反のおそれがあるよということをよく広報する必要もあろうかと思うのでございます。  一方、その民民規制ということについては、先ほど申し上げましたように、やはり行政指導背景にした民民規制というものもございますので、そういうものにも十分配慮しながら厳正な対処をしたい、こういうふうに思っております。これは政府全体といたしましても、規制緩和推進三カ年計画改定計画にも「民民規制への対処」ということをうたっておりますから、その方針に従ってやっていくつもりでございます。
  14. 畑恵

    畑恵君 ありがとうございます。  確かに、悪いことをしているという感覚が全くなしに、いわゆる日本の村社会的な考え方の中で当然の慣行じゃないかということで一線を越えかけてしまうということはたくさんあると思います。ぜひその広報、啓蒙活動、そして恐らく幼いころからの教育の中にもこうした認識を深めるといいましょうか、自覚させるような何か教育あり方というのが必要ではないかと思います。  おしまいに、公取から民民規制ということについて対処していただくのももちろんなんですけれども、たしか総理の諮問機関である経済審議会民民規制作業部会、こちらがまとめた報告書の中に、官民双方から独立して、かつ法によって定められた第三者機関による監視国内版OTOと呼ばれるものの設置が提唱されていたと思うんですけれども、このような官からも民からも独立した機関が設置された場合、その機関とのすみ分けといいましょうか、どのような協力体制をとられるのか、何かお考えがありましたら伺いまして、質問を締めくくらせていただきたいと思います。
  15. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 当然のことながら、私どもは、そういう機関ができましたときには密接な連携をとりましてそごのないようにやっていきたい、こういうふうに思っております。  なお、つけ加えて申しますと、私ども、先ほど御指摘のありましたように、職員の人員も極めて少ない役所でございます。これからやはり民間方々の御協力を得るということも大変必要なことでございまして、今までも消費者モニターとかあるいは下請関係協力員とか、そういう民間方々の御協力を得て推進しているところでございますので、そういう機関ができましたら、なお密接に連携してやっていきたい、こういうふうに思っていますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  16. 畑恵

    畑恵君 どうもありがとうございました。御活躍に期待いたしております。
  17. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 民主党・新緑風会の木俣佳丈と申します。  昨今、我が国防衛に対するガイドラインガイドラインというふうに、ガイドラインというと防衛のことのように言われておるわけでございますが、独禁法ガイドラインというのはどうなっているんだというような思いがして、きょうはそのあたりを最初に、そしてまた、今度の改正について二点目で質問したいと思っております。  まず、ガイドラインでございますが、例えば独禁法適用除外制度、一年前も緩和されたわけでございますが、それに続いて今回も大幅に緩和されるわけでございます。その中で、二十一条で自然独占という、本当に不可解な名前でございますが、道路が込むと自然渋滞と言ったり、何か官庁の方は自然という言葉を容易に使うのかなと思ったりするんですが、自然独占に対する適用除外があります。  規制緩和推進三カ年計画が閣議決定されたわけでございますが、平成十一年の末までにこういったものの存廃の結論を得ると書いてありますけれども、現在の検討状況というのはどのようになっておるか、ちょっとお知らせいただければ、自然独占についてです。
  18. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 自然独占といいますのは、独占禁止法二十一条で、自然独占に固有な行為につきましては独占禁止法適用除外するという規定でございます。そういうことで、独占禁止法上定められております適用除外制度一つであるわけでございます。  独占禁止法二十一条の規定は、鉄道電気ガス事業における事業者独占的地位及び事業者の生産、販売、供給に関する行為であって、当該事業に固有のものにつきまして、独占禁止法禁止規定構成要件に該当しないということを確認的に規定したものでございます。  検討状況はどうかという御質問でございますが、現在、御承知のとおり、電気ガス事業につきましては、小売分野における部分自由化等制度改革によりまして競争導入を図るということが検討されておるわけでございまして、私どもといたしましても、こういった検討の結果も踏まえながら、引き続き二十一条の規定につきまして必要な検討を行っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  19. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 検討をされるということで、検討状況というのがなかなか見えてこないわけでございますけれども。  そもそも、今申されたような電気とかガスとかいうのは、まさに経済用語で言う規模経済が当てはまるものでございまして、要は大きくなればなるほど強くなるということでございましょうか。そういった意味で、独占禁止法適用除外というのは非常に当てはまるし、まさにすべからくかなという感じがするわけでございますけれども、歴史的な経緯の中でその必要性が言われた条文だと思うんですが、今その必要性というのはどのようになっているか、ちょっと伺いたいと思います、どのように変化しているか。
  20. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) これは、いわば非常に巨大な固定施設を必要とする、あるいは例えば同じ路線に二つの線を敷くということの必要性社会的なコスト関係というようなことで、従来、鉄道事業電気事業ガス事業等につきましては自然独占に固有な行為について独占禁止法適用除外するということで、これを明文的に規定をしておったわけでございます。  ところが、電気事業ガス事業平成七年以降、いろいろな形で自由化ということが考えられ、実際に行われるようになってきておりますので、今までのような考え方で果たしてそれが妥当なのかどうかということを検討する必要があるわけでございます。  私どもといたしましては、この見直しを行っているわけですが、そもそもこういった規定を置いておる必要性があるのかどうか、あるいは適用除外制度というのが、電気事業ガス事業等はすべてあらゆる行為適用除外されるのであるというような誤解も生ずるわけでございまして、適用除外制度内容というのが非常に不明確ではないかというような観点からも検討する必要がございます。  一般的に、独占禁止法適用除外というのは必要最小限度にすべきであるという観点から種々見直しを行ってきたところでございますので、二十一条の見直しに当たりましても、そういった観点を踏まえまして今後とも必要な作業を行っていく必要がある、このように考えているところでございます。
  21. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 局長は、海外、特にアメリカとかにお住まいになったことはありますか。
  22. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 外務省の職員になりまして、ヨーロッパに勤務したことがございます。
  23. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 私もワシントンDC、首都に住んでおりまして、四月末から特に五月におりますと、豪雨で、雷雨なんです。そうしますと、月に少なくとも五回ぐらい停電になるんです。こういったものを経験しますと、やっぱり電力の質というのがすごく大事かなというふうに思います。  特に、情報化になりまして、コンピューターとかを使いますでしょう。これは一応アブソーバーというのか、何か使えばそこで遮断するようになっていますけれども、もしそれもきかないと全部パアになっちゃう。時にはコンピューター一台だめになるということは十人に一人以上経験しているようなものなんです。  そういったことを考えたときに、まさにエネルギー安全保障という言葉でしょうか、またはこれからは情報の安全保障ということも含めて、先ほど申されたように、独占禁止法適用除外をなくした場合に、または一部自由化した場合、本当にこれが大丈夫なのかなというのが私の思いでございます。  特に、二八%—三〇%と小売を自由化していくというふうになるわけですね。そうしますと、価格支持力、つまり市場の価格支持をする力というのは経営学では大体二割と言われているんです。二割の市場を占めたものが動いたときにその価格は支持される。つまり、例えば三割も野放しにした場合に、要は本当にそれが価格も十分に守られていくのか。ダンピングでどんと安くなって、こちらが高どまりしていった場合に、本当にうまくその辺が調整できるのか、調整したときに公平性とか安全性が守られるのかどうか。ちょっとこれは心配だと思っておりますが、いかがでしょうか。
  24. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 今回お願いしている法案につきましては、適用除外制度を極力廃止する、こういうことで法案を作成いたしまして、内閣から議会へお願いしているわけでございます。  この検討過程の中で二十一条の削除という問題も当然入っていたわけでございますが、ただいま委員から御指摘がありましたようないろいろの問題が絡みまして、二十一条の削除は見送っているわけでございます。これは、いろいろ私ども独占禁止法の中の問題もございますし、それから、今委員が御指摘になりました産業政策といいますか、電力政策といいますか、これはほかにも交通とかそういう問題がございますけれども、そういう問題もいろいろあると思うわけであります。  そこで、私ども独占禁止法の中の問題といたしましては、これは昭和二十二年に独占禁止法ができたときにこういう制度ができたのでございますけれども、その歴史的経過はどうであろうか、その歴史的経過の中で現在どういうふうに状況が変わっているのであろうか、あるいは二十一条を廃止したときに具体的にそれではどういう不便なことが起こるのであろうかという、いろいろの検討課題がございます。そういう検討課題をこれからさらに詰めまして、これはもしそういう問題がクリアできますれば再びこの削除の問題を議会にお願いすることになりましょうし、その結果によって今後考えていく問題だろうと考えております。
  25. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 わかりました。  それで、例えば自由化されていってIPPが参入してくると。そうした場合に供給義務、これは電気事業法の第十八条で電力会社に対しては供給義務というのが課せられているわけでございますけれども、供給義務の観点から十分に安全な供給がされるように、それはきちっとまた別法か何かで定めるわけでございましょうか。ちょっと教えてください。
  26. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 電力の供給義務が規定されるかどうかという御質問でございますが、電力あるいはガスもそうだと思いますが、今、公益事業と言われておるわけでございますが、そういった供給義務、あるいは新しく電力事業をしまして小売分野に供給するという事業につきましても、サポートのシステムをどうするのかというようなこともこれは電気事業法の分野で考えておる問題ではなかろうかと思います。  独占禁止法で直接これを何か規定するか、あるいは仮に二十一条の削除というような話になりまして、その場合に、そういった供給義務の問題でありますとか、あるいは当然これだけの、今お話しございましたような情報化社会でございますから、全国くまなく電力の供給をしていくというようなユニバーサルサービスの問題、そういったことは独占禁止法の立場から何か規定を設けるとかそういうことではなくして、やはり電気事業法、ガス事業法等の認可に伴う、あるいはいろいろの監督等に伴う一つ規制としましてそういったことが手当てされるのではなかろうか、このように考えるわけでございます。
  27. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ごもっともだと思うのでございますけれども、しかし、要はそこの相互の連携というのがまさに必要で、切り離しては語れないことですね。だから、独占をやめさせます、やめさせますというかやめてもらいますと。だけれども、じゃ個別の人が入ってきていいよと、それは電気事業法でもちろん定めればいい。それはもちろんわかりますけれども、これは相互がやっぱりリンクしないとうまくいかない話なんです。ですから、初めに申しましたように、独占禁止法ガイドライン、これは何なんだということを僕は申したわけなんです。  そのほかだって、例えば鉄道は入っていますけれども、航空やバスやタクシー事業が自然独占の項目に入っていないんですよ。これはどういうことですか。
  28. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 先ほど申しましたが、航空でありますとかあるいは自動車等について、自然独占ではないではないかということでございますが、現実に考えていただきまして、航空等についてはスロットの制約ということがあるかもしれませんが、同じ路線を二社あるいは三社という形で具体的な、直接的な競争というのが行われているわけでございまして、そういったものについては特に自然独占という二十一条の適用対象というようには考えていないわけでございます。  それともう一つ先生指摘のとおり、電力とかガスの分野で自由化が始まる、その際に独占禁止法が適用されるということであれば一体どのように考えるか、事業法との関連もよく考えながらやっていかなきゃいけないのではないかという御指摘でございますが、これは私どももまさにそのとおりであるというふうに考えております。現在、通産省がいろいろな形で進めておりますが、通産省と調整をしながら、自由化になった後の競争あり方、あるいはそこで問題が生じることにどんなことがあるかということを現在種々検討を始めているところでございます。
  29. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ちょっとあちこち行ってあれなんですけれども、例えば、よく言われることで、電力は十ですか、ガスは二百幾つですか、たくさんあるわけです。この差というのは何ですか。
  30. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) それは、どういった地域に独占として一社営業する地域を認めるかどうかという、そういう政策のとり方の問題であるのではないかと思います。  それと、電力ということでは全国を九電力に分けまして、いわばそこで独占的な営業区域を与えている。ガスにつきましては比較的それが狭く、かつまたガスは都市ガス事業のほかに簡易ガス事業であるとか、あるいは簡易ガス事業だけではなくしてプロパンガスというような競争もあるということで、それぞれ物の性質あるいは実際の競合というようなことでそれが決まってきているのではないかと思います。それもいずれも事業法を所管している大臣がこれをどういった地域について与えるかということを考えられているのではないかと思います。
  31. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 いずれにしましても、この話、個人が参入した場合に、供給義務のところ、やっぱりエネルギーの安全保障というのを、立場は違うかもしれませんけれども、きちっとリンクしてやっていただきますようにぜひ強く御要望させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  32. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 私ども独占禁止法を所管しているわけでございまして、その独占禁止法の精神ということでいろいろ考えているわけでございますが、当然所管省庁の問題も頭に入れましてその調整をしているわけでございます。  今回提出いたしました適用除外整理法といいますか、そういう法案を提出するに際しましても、所管省庁と十分協議を遂げてやっているわけでございますので、御指摘のような二十一条の問題につきましても、将来そういう問題がございましたら所管省庁とも十分意見を交換いたしまして、私どもは私どもの立場で、また所管省庁はその立場でいろいろ議論をいたしまして、成案を得次第、国会にお願いする、こういう段取りになろうと思います。
  33. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ちょっと揚げ足をとるようであれでございますが、今、当然というふうに言われるんですけれども、この世の中というのか、日本国の法律の体系とかやっていることが当然じゃないことが多いものですから、ぜひそこは当然と言わないでしっかりやっていただきたいと思っております。  次に、この間、経団連の方からも発表がありましたけれども、過剰設備の廃棄についてちょっと伺いたいと思っております。  業界の中で共同して新会社や組合とかを設立しながら過剰設備、今、供給過剰で値崩れをしたり、それからこれが要はデフレの元凶であるとかいろいろ言われておるわけでございますが、これを集約、廃棄する事業を行わせようとする動きがあるわけでございますけれども、これはカルテル行為にならないんでしょうか。
  34. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 過剰設備の廃棄につきましていろいろ新聞報道がされているわけでございます。  私どもといたしましては、過剰設備の廃棄というのは、それぞれの企業によりましてこれは状況が相当異なっておるし、またその経営環境もそれぞれ異なっておりますから、それぞれの企業が自主的に取り組むべきものではないか、このように考えておるわけでございます。  したがいまして、先生指摘のとおり、業界ぐるみで過剰設備の廃棄を行うとか、あるいはそれを集約するとか、あるいは有力な事業者が集まりましてそういうようなことを行うという場合におきまして、競争を実質的に制限するということになれば御指摘のような独禁法上の問題が生じてくるのではないか、このように考えておるわけでございます。
  35. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 これは四月八日の毎日新聞ですが、公取委、同業種処理はカルテルのおそれと書いてありまして、塩田事務総長が、規制緩和により公正な競争を促進しよう、「「事業者の自己責任、自主的な判断によって経済を活性化しようという流れの中でやっていくべきだ」との考えを示した。また、今国会に提出している不況カルテル、合理化カルテル廃止法案についても例外規定などを設ける考えのないことを強調した。」と書いてあります。  今のお話をまとめますと、どういうことでしょうか、もう一回わかりやすくお願いします。
  36. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 事務総長も記者会見で申し上げておるとおり、過剰設備の処理というのは、個別の事業者がそれぞれの経営判断で取り組むべきではないか、横並び的なカルテル的な対応というのは、これは今まさに我が国が目指しております自己責任原則市場原理に基づきます市場主導型の経済社会に変えていくということに反するものではないかということではなかろうかと思います。
  37. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 要するに、競争制限につながる可能性が高いということでよろしゅうございますか。
  38. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 二社で行えば直ちに競争制限になるということではなかろうと思います。例えば、二社でありましても、それほどシェアが高くならない、シェアだけの問題ではないわけでございますが、そういうようなものもあろうかと思います。余りシェアの高くない事業者が分社化をして新しい会社をつくり、そして一方の古くなった施設を破棄していくというようなこともあり得るわけでございますから、二社以上であれば直ちに問題になるということではないわけでございますが、しかし、業界ぐるみでやるとか、あるいは共同した事業者のシェアが非常に高くなるような場合は独禁法上問題になる場合も出てくるということでございます。
  39. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 局長はたまには中小企業の町工場とかそういうところを歩かれますか。
  40. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 個人的な経験で大変申しわけございませんが、私も、通産省に出向させていただきまして立地指導関係あるいは地域振興関係をやっておりましたので、その機会にはかなり町工場あるいは地域の工場等も見させていただきました。
  41. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 最近は。
  42. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 最近は残念ながらそういうことはございません。
  43. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 きのうも、ある非常に優良会社です、ある大きな家電メーカーの下請としても一次下請、金型では日本でも有名な会社の社長と話をしていましたが、これはもう本当に首をつるしかないと、極端に言いますと。だけれども、そういう会社はこういうことをできないんじゃないですか。そう思われませんか。
  44. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 確かに、それぞれの企業が今必死にいかに合理化なり効率化を図っていくか、あるいは過剰な投資というのもそれぞれの個々の事業者によって違うわけでございますから、それらに非常に真剣にいろいろの形で取り組んでいるのではないかと思います。  私も実際にその具体的な話というのは見たりしているわけでございませんが、いろいろな形で報道されたり、雑誌等に書いてあるものもいろいろ見ながら、今いかに合理化に取り組んでいくか、その方法はいろいろの形があろうかと思います。例えば分社化してやっていくとか、あるいはいろいろなところと共同してそれをしていくというようなこともあろうかと思います。そういう形でいろいろなことは見聞きさせていただいているのではないかと思います。
  45. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 事務総長にも、それから局長にもぜひ現場を見ていただきたい。ぜひ十社ぐらい見てください。お願いしてよろしいでしょうか。そういった町工場を、現状を見てください、設備がどうなっているか。
  46. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 御指摘もございますので、できる限りそのように努めてまいりたいと思います。
  47. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 適用除外制度は、例えば一昨年も整理されてかなり廃止されたこともあるというふうに聞き及んでおりますけれども、今、一昨年からして何か競争が活発になったとか、いろいろ効果はあらわれたか、ちょっと伺いたいと思います。
  48. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 一昨年来の適用除外見直しでございますが、先生指摘のとおり、個別法に基づく適用除外につきましては、平成九年の通常国会におきまして一括整理法で廃止等の措置を講じたわけでございます。  そのほかに個別に適用除外制度を廃止しているものもございまして、平成九年の七月に施行ということもございまして、まだ私どもといたしましてこの分野で非常に自由化が進んだということをなかなか端的に申し上げられないわけでございますが、一つだけ申し上げますと、例えば保険の分野等におきましては、自動車保険なんかは御承知のとおり非常に商品がバラエティーに富んできたんじゃないか、そして料率も、今までのようなカルテル料率と言われているようなことから、会社によってかなり違ってきたんじゃないかというようなことが端的に言えるのではないかと思います。  すべての適用除外、幾つも廃止しましたから、それぞれの分野にこういったものがあるというのはなかなか申し上げられないわけですが、いずれにしましても、適用除外を廃止してどういうような状況になったかというのは少し時間を置いてから見ていく必要があろうかと、このように考えております。
  49. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 今回の適用除外、新たにこの廃止をしましてどのような効果があらわれると期待されますか。
  50. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) これは先ほど来申しておりますが、規制緩和と同時に自己責任と市場メカニズムの原理にのっとった市場主導型の経済社会を築いていくということでございますから、ややもすると今まで非常に困った事態についてカルテルを行うというような、そういったマインドがあったわけでございますが、今そういった適用除外はもうなくすと。日本では非常にカルテルが多いというようなことを言われていたわけでございますが、こういった適用除外をなくす、必要なものに限定するということを対外的にも明らかにするということが、企業事業者のマインドにも影響いたすと思いますし、また外からの見方もかなり変わってくるのではないか、このように考えているわけでございます。
  51. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 今までの歴史を考えてみても、公正取引委員会の役割というのが今こそ本当に重要になってきて、今局長がおっしゃられましたような市場経済に移行して行く、個の自立の経済へ行くということだと思います。民主主義、そしてまた市場経済の一番必要なものというのはやはり個の自立である、個人であって、そしてまた個々の企業が自立して強くあることであるということだと思いますものですから、ぜひ今後も本当に厳しく監視していただいて、時には弱者を温かく守っていただきたいと心から願うところでございます。  ありがとうございました。
  52. 海野義孝

    ○海野義孝君 公明党の海野でございます。時間が大変少ないものですから、できるだけ多くの御質問をしたいと思っておりますから、簡潔にひとつ御答弁をお願いしたいと思います。  今回の法改正につきましては、これ自身は総論的に見て時代に即した、一つ前進する改正であろうと思います。運用の問題等が効果的かどうかということは別問題でございまして、その辺は当局の今後の努力をお願いしたい、こう思います。  まず御質問でございますけれども、今回、合理化カルテル制度適用除外を全廃するということがこの改正でうたわれておりますけれども、私が勉強している範囲では、適用除外を合理化カルテルについて全廃するのは日本だけである、このように思うんですけれども、その理由、それから何ら問題がないのか。さっき同僚議員からもいろいろ指摘があったように思いますけれども、私は個人的には、こういった合理化カルテル制度の改廃という問題は、産業とか企業の効率化、国際競争力、国際提携、技術開発、環境対策などとも関係するわけですので、欧米の実績を見ながら慎重に検討すべき問題ではないかと思いますけれども、単に適用除外を合理化カルテル制度について全廃する、こういうことでいいのかどうか、この点についてひとつ御見解をお聞きしたいと思います。
  53. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) まず、合理化カルテル制度につきましては、アメリカあるいはイギリス、フランス、カナダ、主要国におきましても制度それ自身がないわけでございます。ただ、EUにおきましては、専門化協定とか共同研究開発につきましての適用除外がございます。これは、EUの競争法、ローマ条約の八十五条、八十六条という規定でございますが、特に八十五条が事業者間の共同行為につきまして禁止をしているわけですが、我が国独占禁止法禁止規定の範囲よりも広く禁止しておるわけでございます。したがいまして、広く禁止しているために適用除外という制度も設けまして、認めているということでございます。  次に、今回合理化カルテル制度を廃止する理由でございますが、個々の事業者の合理化ということも基本的には市場メカニズムによる競争を通じて達成されるものではないか、このように考えておるわけでございまして、合理化カルテルによりまして事業者間の協調的行動を許すということは競争に悪影響を及ぼすこともあるわけでございます。  そして、他方、先ほど先生お話しのように、環境に対応するような合理化カルテル、いろいろあるのではないかという御指摘でございますが、事業者の利便に合致いたしました規格の標準化であるとか、環境問題に対応するための共同行為、自主的な基準の設定というようなものにつきましては、これはカルテル制度によらなくても現行の独占禁止法の枠内でも違反にはならないわけでございまして、すなわち現行の独占禁止法の枠内でも十分行うことができるわけでございます。  こういうこともございまして、合理化カルテルを廃止いたしましても、今後出てくるであろう環境問題への対応とか、あるいは個別企業が規格、基準をつくる、それを共同行為として行うということも現行の独占禁止法の枠内でも十分対応できるということから、廃止しても大丈夫ではないか、このように考えているわけでございます。
  54. 海野義孝

    ○海野義孝君 EUを除きまして今そういった合理化カルテルの適用除外というのはそもそもないとおっしゃったのですけれども、私もこれ十分に突っ込んで研究しているわけじゃないんですが、ドイツの独禁法について事実関係について伺いたいと思うんです。  我が国の合理化カルテル制度導入というのは五三年だったと思うんです。モデルとなったのはドイツの独禁法でございまして、ドイツの場合は西欧の諸国でも最も整備された、しかも最も厳しい独禁法と言われているわけでありますけれども、当初から合理化カルテルというのは認めていたわけでございます。  九八年五月に、ドイツでは改正法が成立してカルテル規制は強化されて、輸出入カルテルなどは廃止された、このように聞いているんです。しかしながら、流通・サービス業を含めて、標準化、専門化、合理化、構造不況対策、緊急事態対処、中小企業、農業などにおけるいわゆる広義の合理化カルテルの適用除外はむしろ拡大されている、このように私は承知しているんですが、この事実関係は、おっしゃった方と私の言うものとどっちが正しいか、その点ひとつ事実関係の認識の点でお聞きしたい。  もう一つ、広義の合理化カルテルというのは、ドイツの場合はいかなるものであり、適用除外が拡大されたのはなぜかというような点についてお聞きしたいと思います。
  55. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 昭和二十八年に不況カルテル制度と合理化カルテル制度導入されたわけでございますが、そのときの経緯といたしまして、社会民主党政権になる前の時期ですが、ドイツで競争制限禁止法という法案検討されておりまして、その法案を参考にしたということはそのとおりであろうかと思います。  そういうことで、構造不況カルテルというのがドイツにも一九五四年に成立したと思いますが、その後ほとんど使われてきていない、二件ぐらいでございます。それと、合理化カルテルあるいは専門化カルテルという、こういう制度はありまして、これは幾つか使われてきておる、それもそのとおりではないかと思います。  先生指摘のとおり、ドイツの競争制限禁止法は昨年、九八年に第六次の改正が行われました。これは御承知のとおり、今EUではEUの独占禁止法でありますローマ条約の八十五条、八十六条の規定と同様の規定を加盟各国が平準化しようということをやっておりまして、ドイツもそういうことで、できるだけローマ条約の八十五条、八十六条と同じような規定に平準化する作業一つとして、EUの独占禁止法に調和したものにしようということで改正が行われました。  先生おっしゃるとおり、適用除外の範囲の縮減ということを行いまして、輸出カルテルあるいはリベートカルテル等を廃止いたしました。それと同時に、従来ありました合理化カルテルあるいは専門化カルテルと同じように、いろいろ整理しながら、一般的な適用除外カルテル制度ということで一般条項的なものを入れておるのも事実でございますが、この考え方というのはEUの独占禁止法と平準化するという目的のために行われたものでございます。  そういうことで、ドイツは、おっしゃるとおり、合理化カルテルあるいは専門化カルテルはあるわけでございますが、ただし非常に重要な点でございますが、その要件といたしまして、市場支配的地位を形成または強化はしないということが認められる要件でございますので、これがまさに何でも認められるということではなくして、我が国で言えば競争が実質的制限になるようなものはこれは認められないということとほぼ同趣旨であろうかと思います。  したがいまして、ドイツと日本との比較ということも、法制が異なりますから単純に比較することはできないわけでございます。しかし、実際に合理化カルテル等で認められているものを見ますと、ドイツにおきましては中小企業者が共同して販売するとか部品を共通化するとかそういうことが認められているわけでございまして、その趣旨からいいますと、我が国でも独占禁止法の枠内で行い得る行為について、ドイツはきちっとした形で合理化カルテル、専門化カルテルとして認めているということではないかと思います。
  56. 海野義孝

    ○海野義孝君 大分丁寧にお答えいただきましたけれども、時間がありませんから、できるだけ簡潔にお願いします。  今のに関連しましてですけれども、EUの、欧州連合における競争法では一括適用除外と個別適用除外によって標準化、専門化、共同研究開発など多くの合理化協定が届け出制によって公認されている、このように承知しているわけでございます。ある協定が法違反にならない、つまりネガティブクリアランス制度届け出と公開により認められているというように聞いておるわけです。  先ほどのドイツの問題ですけれども、ドイツの広義の合理化カルテルの適用除外制度の拡大という問題は、このEUの競争法に基づいて独禁法緩和したものというように私は考えるのですけれども、その点いかがでございますか。
  57. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 先ほど申し上げましたが、ドイツの競争制限禁止法の改正というのはEUの競争法に調和させていくということでございますので、必ずしも適用除外を広げたということではないというように私どもとしては考えているところでございます。
  58. 海野義孝

    ○海野義孝君 EUの競争法とそれから今大分御指摘がありましたけれどもEU加盟十五カ国の各国の独禁法との相互関係あるいは制約、規制、こういった面で何かあるのですか。
  59. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) EU競争法は加盟十五カ国に適用されるということでございまして、加盟国間の通商に影響を及ぼすような競争制限的な共同行為とかあるいは市場支配的地位の乱用行為というのはEU委員会処理しておりまして、やや乱暴な言い方になりますが、自国の市場に影響を及ぼす競争制限行為についてそれぞれの加盟国が国内規制機関を持ちまして処理している、こういう関係でございます。
  60. 海野義孝

    ○海野義孝君 次に、日本では五三年の独禁法改正によりまして規格の標準化とか専門化、それから共同技術利用などの協定が適用除外となったわけでありますけれども、今回の適用除外制度の廃止によりまして、この種の協定とか、さっきもちょっと御指摘ありましたけれども、環境対策協定などが禁止されるのか。あいまいになって法の執行力という点でむしろ低下するのではないかということを危惧するわけでありますけれども、私は、カルテルつまり企業連合等はすべて悪いという単純な原理主義的な考えではなくて、適用除外制度を全廃することは独占禁止政策の強化に本当になるのかどうかという点、いささか腑に落ちない部分があるのですが、その点すっきりとひとつお答えいただきたい。
  61. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 合理化カルテル制度というものが廃止されましても、企業の合理化とか効率化に係る共同行為がすべて認められないということではないわけでございます。例えば、お話がございました規格の標準化とか環境対策の取り組み、こういったもののように社会公共的な目的のために合理的に必要とされる基準、規格の設定というものは独占禁止法に反しないというふうに考えておりまして、先生お話しのように、これについては私ども事業者団体の活動指針というのを出しておりまして、御相談があったものについては相手方の了承を得ながらすべて公表しております。こういうことで問題ないんだ、こういうことがやり得るんだということを公表しておりまして、できるだけ運用の透明性を高めてまいる、このように考えておるわけでございます。
  62. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  実は先週、新聞を見ておりましたら、アメリカのFRBのグリーンスパン議長が地方都市におきましての講演で大変注目すべき発言をしたわけでございます。要約しますと、反ダンピング法というのは公正な貿易に名をかりた競争禁止というもので、グローバル化が進む国際経済下にあっては反ダンピング法は時代おくれだというようなことを指摘したわけであります。  反ダンピング法というのを時代おくれとする見方につきましては、この法律自体が輸入価格だけを特別に取り扱う点を問題にしているわけでありまして、確かに輸入というのは国内産業に影響、被害を及ぼすという考え方はあるわけですけれども企業がボーダーレスな活動を行うような今日にありましては、資材を調達するに当たりましても、現在のこういった経済にはそぐわないようになってきているのじゃないかと思うわけです。アメリカのシンクタンクあたりのエコノミストも、輸入価格が安過ぎると罰するという反ダンピング法というのはアメリカ経済にとってむしろ有害ではないか、独禁法によってこれは運用すればいいんじゃないかということの指摘をしているわけでございます。  つまり、国産品も輸入品も差別的に取り扱わないという独禁法、これでチェックすべきだと、こういうことだと思うのですけれども、これにつきまして、きょうは野中国務大臣はお見えになっていませんので、根來委員長にお聞きしたいんですけれども、この反ダンピング法あるいは今いろいろ言われておりますような鉄鋼等の三〇一条発動問題等、我が国独禁法運用との関連で今後どのように対応していくかという点、御所見をひとつお聞きしたいと思います。
  63. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 今御指摘の貿易措置と独占禁止法という関係でございますが、必ずしもこれが代替的に運用されるということはないと思います。しかしながら、国際機関でもいろいろ検討はされておりますが、貿易と競争政策というのはある意味では非常に密接な関係があるわけでございます。そういう点で、国際機関でも甲論乙駁ということで、いろいろこれは産業保護政策といいますか、そういう点も絡みまして、いろいろ議論が重ねられているところでございますし、いずれそういう国際機関の中においても一つ考え方が示されると思いますけれども、私どもの立場といたしましては、やはり貿易措置と申しましても、独占禁止法に触れるような事態に対しましては厳正に対処するということについては申し上げるまでもないことでございます。
  64. 海野義孝

    ○海野義孝君 今の質問は本当は通産大臣にちょっとお聞きしたかったのですけれども、いろいろな御所用もおありだったようで、これはまた後日聞いてみたいとも思う問題でございます。  最後にもう一点、これはさっき木俣議員からも御指摘あった部分をちょっと広げた問題でありますけれども、今我が国の製造業については、競争力会議というのが官民で設置されて進められているということでありますけれども、そういった中で個々の業界等につきまして研究会と称していろいろとそういった動きが始まっているように思います。今主要な製造業の設備など三つの過剰という問題、これは雇用とか設備とかそれから債務という、三つの過剰というのが景気回復の手かせ足かせになっているというわけでございます。  産業界の設備廃棄をめぐっては、八〇年代の前半においては、例の特定産業構造改善臨時措置法に基づきまして、構造不況に陥った業界の設備廃棄を独禁法が禁じるカルテルの対象から除外させた、こういう例があるわけでございます。  グローバル化が広範に進んでおりまして、規制緩和が進展するという今日的なこういう時代背景は当時とはここ十数年で違ってきているわけではございますけれども、しかし合併とか買収などの個別企業の自主性というのが前提であるということは理解できるわけであります。そういうことで、政府主導の保護策ということはなじまない、このようにも思うわけでございます。  そこで、今回のこのただいま審議中の法改正と設備廃棄に向けたカルテル容認など独禁法の弾力的運用との関連性といったようなことについてどのように考えたらいいか、委員長の御意見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  65. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいま御指摘のように、時代が変わるといいますか、一昔前は政府が産業を囲い込んで保護して、規制して育成してきたということは事実だろうと思います。ところが、最近ここ十年ばかりの間に、やはりそれはまずいと。自由競争あるいは自己責任の原則ということに立って、各企業、あるいは事業者という言葉でいいと思いますけれども事業者の自主的な行動によって競争してやっていくのが産業振興に資する、それが一番いい選択だということは大方の御同意を得ておるところだと思います。  そういうことで、今回の適用除外整理法を国会に御審議をお願いしているわけでございますけれども、何しろこの経済不況の時代でございますから、いろいろの知恵を出す方がおります。しかしながら、そういう歴史的な流れから申しまして、歴史に逆行するような政府主導の規制ということ、あるいは政府主導による、ただいま具体的に設備廃棄というようなことを申されましたけれども、そういうことがどうしても共同ということにつながっていく。共同ということにつながりますと、独占禁止法の理想とするところと背馳する場合が出てくるわけでございますので、そういう点については、弾力的という言葉については若干いろいろまた議論があろうかと思いますが、私どもの方としては、独占禁止法の原点に立ちまして、共同の事業、カルテル的色彩のあるものに対してはやはり厳正に対処せざるを得ないのではないか、こういうふうに思っております。
  66. 海野義孝

    ○海野義孝君 これはもう御答弁は結構でございますけれども、時間の範囲内で申し上げたいのは、私は、今回のこういった法案の問題もそうでございますけれども、どうも我が国の場合は時代にそぐわないというか、むしろ時代よりもかなりおくれてというか、問題の先送りというか、後追い的なそういった面がいろいろ多いかと思います。こういうような今日的な時代にあって、まさにグローバルなボーダーレスなこういう問題に絡むことでございますから、国際的な、特に最近のEU、これに伴っての新しい法律等あるいはいろいろな規制、これの日本に対する影響等々も広く考え、またEUに伴ってアメリカ等においても今後、法の改正等々、運用の問題についても変わっていくという傾向もあろうかと思うわけでございます。そういう意味からすると、今回のこういう法案についても十分に、世界的な中で日本がどうかと。  私は、多分に外圧的な面から結果的に法案をつくるというような傾向がなきにしもあらずということを大変嫌な思いがするわけでございます。日本はそれなりの経済大国であるし、見識もあるし、そういった能力もあるし、実行力、行動力もある国ですから、そういう意味でもそれにふさわしいような法律というものをきちんとつくっていくという点からいいましても、今回の問題についても、私が今いろいろと御指摘申し上げた点でいろいろまだ考える、あるいは運用の面において問題があるのではないかということを御指摘申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  67. 山下芳生

    山下芳生君 まず、今回の法案が中小企業団体に関する適用除外は引き続き認めるということを確認したいと思います。その上で、なぜそうしたのか、理由について伺いたいと思います。
  68. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 中小企業に関します適用除外につきましては、独占禁止法の二十四条というところで一定の組合の行為につきまして適用を除外しているわけでございます。  それで、なぜかということでございますが、協同組合等の共同経済事業等の行為でございますが、これは単独では大企業に伍して競争することが困難な小規模事業者が協同組合等を組織いたしまして、市場におきまして有効な競争単位として競争し得るということ、公正かつ自由な競争の中でこれらのものが競争単位として活動し得るということからこれを認めているわけでございます。こういった独占禁止法二十四条の規定というのは、こうした組合の行為独占禁止法の目的に反することは少ないといたしまして適用除外を認めているものである、このように考えているところでございます。  なお、協同組合につきましては、現在、独占禁止法二十四条に基づきまして適用除外とされておるわけでございますが、昭和二十二年にできました独占禁止法適用除外法の規定におきましても、この八条の適用除外をされておりまして、二重に適用除外規定されているということもございまして、これにつきましては整理し一本化する、このようなことで整理させていただいております。
  69. 山下芳生

    山下芳生君 私は、小規模事業者の共同行為を認めるということは、それによって彼らが大企業と効果的に競争できる出発点に立てる、こう思います。石井良三氏も著書「独占禁止法」の中で、そのことが「公正且つ自由な競争を実質的に促進するために是非とも必要である。」、こうお述べになっております。  適用除外といいますと、何か独禁法と相反するもの、独禁法緩和し弱めるもの、本来はよくないけれども例外的なものとして認めるというニュアンスがあるわけですけれども、私は、中小企業団体等の適用除外については何ら独占禁止政策と矛盾しない、むしろ歓迎すべきものである、こう思っておりますが、この点について委員長の認識を伺いたいと思います。
  70. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 言葉の問題はさておきまして、そういう思想で適用除外というふうになっているのではないかと思っております。
  71. 山下芳生

    山下芳生君 元公取の首席審判官であった長谷川古さんがお書きになった「日本の独占禁止政策」という本の中に、「小規模事業者等が組合を組織して結合することは、独占禁止政策に何ら矛盾するものでなく、むしろ歓迎すべきものである」、こう書いてあります。「それが大企業市場支配に対する対抗力として機能することが期待されるからである。」と。つまり、独禁政策を実施する上で、むしろ期待されるべき政策なんだと。  私は、今後ともこの中小企業等の適用除外というものは、いろんな情勢の推移があるでしょうけれども、この点については公取として堅持すると、このことを確認したいと思うんですが、いかがですか。
  72. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 現在のところ、中小企業について何ら今の取り扱いを変更するという気持ちは全くありません。
  73. 山下芳生

    山下芳生君 次に、運輸省に伺いたいと思います。  現在、内航海運事業者は約六千社あります。そのうち中小企業者が九九・六七%、圧倒的多数であります。今回、海上運送法の内航海運カルテルの範囲を限定するということにしたわけですが、これでどういう変更になるのか。つまり、これまで何のカルテルがあって、何が今回なくなって何が残るのかということが一つ。それから、その理由は何なのか、伺いたいと思います。
  74. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 今回の改正におきましては、端的に申しますと、カルテルにつきましては必要最小限のものに限るという趣旨で、限定的にカルテルが許される場合のものを列挙するという形の改正にさせていただいております。項目的に申し上げますと、基本的には運賃、これは商業取引上の基本的なものであって、これのカルテルというのは今後認めるべきではないということで、それについては適用除外は認めておりません。ということでございます。
  75. 山下芳生

    山下芳生君 今の内航海運業界というのは長期不況で輸送量がそもそも減っている、船腹量も過剰だと。そうすると今回の運賃協定の廃止で運賃の大幅な下落が心配をされております。内航タンカーやケミカルタンカーの運賃が四割は下がるであろうとの報道もありますし、一部石油元売大手が大幅に安い新運賃を決めるなど、今後安値競争が激化する公算が大きいという報道もあります。  海員組合の方から話を聞きました。内航海運業界は不況のもとで船余り、船員余りの状態で、船員の労働条件が低下させられ、雇用不安が激化している。船員の求人倍率、今〇・一五だそうでして、今陸上労働者が〇・五、これ自身非常に低いわけですけれども、それと比べても大変な状況であります。その上、運賃協定がなくなって自由化されることで一層の運賃収入の減少と人員削減が進むのは必至だ、これは安全面にも影響を与える、こうおっしゃっておりました。内航タンカーの海難事故が昨年から増加傾向にあるため、第六管区海上保安本部が関係者に注意を喚起しているという報道もあります。  そこで伺いたいんですが、まず運輸省は今回の運賃協定の廃止がこの業界に対してどういう影響を与えると認識されているのか。それからもう一つは、運賃協定を廃止したことをきっかけにして荷主の側、大手元売の側から値下げの強要や優越的地位を利用した横暴なやり方が既にもう始まりつつあるわけですが、これに対してはやはり厳しく運輸省としては指導すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  76. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 運賃協定廃止後の影響につきましては、この三月末に廃止ということになったばかりでございまして、その影響につきましてはまだ把握するところではございません。また、今後荷主側の優越的地位の乱用的な行為がありましたら、また公正取引委員会の方の所掌にもなろうかと思いますが、運輸行政上措置できることがありましたら我々も対処してまいりたいと思っております。
  77. 山下芳生

    山下芳生君 もう一つ問題提起させていただきたいんですけれども運賃協定がなくなれば中小事業者が困難を抱えることはもう明らかであります。私、内航海運業法というものを読ませていただきますとその第十六条で、「運輸大臣は、」「内航運送業について標準運賃又は標準料金を設定し、これを告示する。」ということを規定しております。この「標準運賃」というのは「適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものでなければならない。」と。今これが崩されていこうとしているわけですから、せめてこれを設定し告示すべきではないか、それも含めた何らかの手だてを打つ必要が必ず出てくると思いますが、これはいかがでしょうか。
  78. 宮崎達彦

    政府委員(宮崎達彦君) 標準運賃規定先生がおっしゃるとおり法律上ございますけれども、この規定は、戦後の混乱期から高度成長に至る間、内航海運業界がなかなか混乱から立ち直れなかったという実態を踏まえまして設定されたものでございますが、昭和五十年ごろになりまして、逆に内航海運業界方々の方から、ある意味ではコストアップに弾力的に対処しにくいということで御要望を受けまして、現在設定しておりません。廃止したというところでございます。現在、いろいろ成熟した競争社会を迎えるという中におきまして、内航海運の運賃につきましても基本的には市場原理のもとで当事者の任意の契約で決まっていくべきものというふうに考えております。  先生おっしゃいましたように、一部に内航運賃対策として標準運賃の設定を求める声があることは承知しておりますけれども、昨今の規制緩和の流れの中におきまして、一種の公定価格的な標準運賃の設定につきましては、現時点におきましては慎重に考えるべきであろうというふうに思っております。
  79. 山下芳生

    山下芳生君 慎重にということですが、そういう手段も含めて、全体として大変な状況が生まれる可能性大だということですので、先ほどの荷主の問題も含めて、適正な対処を強く要望しておきたいと思います。  次に、また公取に戻りますけれども、私、港湾関係者の話を聞きましたら、海上コンテナ輸送業界、これはトレーラーに海上コンテナを積んで運ぶ業界でございますけれども、この海上コンテナ輸送業界でも不況で取扱荷物の大幅な減少が起こっております。同時に、ここでも大手の荷主、物流業者などによって海上コンテナ事業者への運賃、料金の異常なダンピング、コスト削減の強要が起こっております。  私が聞きますと、現在この海上コンテナ輸送については運賃、料金は運輸大臣への届け出制でありますが、その届け出運賃の大体五割、あるいはもっと下げられて三割ぐらいの運賃が強要されているということになっているそうです。労働者の雇用や賃金の確保すら困難になっているというふうに聞きました。  そこで、公取として、こういう大手企業、大手荷主によるダンピングの強要などは不公正な競争、優越的地位の乱用に当たると思いますが、認識はいかがでしょうか。
  80. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 荷主と海上運送業者との間で運賃についていろいろ交渉しているわけでございまして、それが運賃の値下げということがありまして、一つの対価に係る交渉の一環であるということでございますと、荷物の荷動きが少ないときにどうしてもそれを運びたいという業者もいるわけでございますから、需給関係を反映して料金、運賃というものは決まってくるのではないかと思うわけでございます。そういうことからいえば、直ちに優越的地位の乱用行為であると言うこともなかなか難しい問題もあるわけでございますが、他方、非常に継続的に取引関係がある、そしてそういった取引上優越した地位にあると認められるような荷主が運送業者に対しまして一方的に著しく低い対価での取引を要請するような場合、あるいは不当な不利益を与えるような場合につきましては、ケースによりましては優越的地位の乱用という問題が生ずる場合もあろうかと思います。  私ども、前回の一括法を受けまして、役務取引につきましても、どういう場合が独占禁止法上言います不公正な取引方法、特に優越的地位の乱用行為等に当たるかということをガイドラインを作成しこれを公表しているところでございますが、今後ともこういったガイドラインの普及啓発ということを進めまして、できる限り荷主側にもあるいは貨物運送事業者の方にもこういった考え方がよくわかるように普及啓発に努めていかなければいけないというように考えておりますし、また、個別のケースで特に問題があるということに接した場合には、これは個別の事案の処理ということで考えていく必要がある、このように考えておるところでございます。
  81. 山下芳生

    山下芳生君 海上コンテナ運送業界というのは、かつてはこれは認可運賃だったというふうに私は承知しております。それが規制緩和の流れの中で現在の届け出運賃になった。  規制緩和三カ年計画、毎年出されておりますけれども平成十年の文書の中に何とあるかといいますと、「規制緩和とともに」、「公正取引委員会審査体制等の充実を含め、独占禁止法の執行力の強化を図り、」、「同法違反行為に対して告発を含め厳正かつ積極的に対処する。」、「規制緩和後の市場の公正な競争秩序を確保するため、中小事業者等に不当な不利益を与えるなどの不公正な取引に対して厳正・迅速に対処する」と、こうはっきり書いてあるわけです。一方で規制緩和をやるというのであれば、一方で公正な取引がきちっと守られるように公取としては厳正に対処すべきだということがきちっと述べられているわけです。私たちは規制緩和の流れというものそのものについて異議を唱えておりますけれども、ちゃんとその中でも書いてあるわけです。  ですから、これはやはり厳正に運用していただきたい。規制緩和の流れの中でそういう業界の苦難が出てきているわけですから、これは市場の番人として、個々の事例があればということでしたけれども業界ぐるみでそういう声が出ております。私も聞きました。ぜひこれは公取として調査し、指導すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  82. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 規制緩和推進すると同時に、公正な競争もやはりきちっと確保していく必要があるということを考えておるわけでございます。  他方、先ほどお話が出ておりますような、運賃、料金は自由化したわけでございまして、これについて当事者で価格決定をしていくということでございまして、行政としてそれにどの程度介入していくかということの問題もございます。せっかく規制緩和ということで市場原理に基づいて価格が決まっていくという仕組みをつくりながら、また行政がそこに入っていくということもこれは問題になるわけでございまして、そういう意味で私どもといたしましては、先ほど来申しておりますように、こういうケースは不公正な取引方法になるということを外に向かって明らかにいたしまして、個別ケースでそういう事案が出てくればそれに対して対処していく、このようなことを考えておるわけでございます。  それともう一つは、先ほど示したガイドラインというのも事業者の皆様方によくわかっていただかなければいけないということもございまして、その普及啓発ということにも力を注いでいかなければいけない、こういうことを考えているわけでございます。
  83. 山下芳生

    山下芳生君 何も介入せよと言っているんじゃないんです。公正な競争確保できるようにきちっと公取の役割を発揮すべきだということを言っているわけです。それをやらないと、どんどん運賃が今下がっておりまして、それを後追いするかのように、先ほどの報道では届け出制を今度また事後報告制に変えるという動きもございます。そうなりますと、ますますこれは安全運航にも支障が出かねないわけですから、不公正な競争のもとで下がった運賃が固定化されるようなことのないように、厳正な対処を重ねて強く求めておきたいと思います。  次に、これはこれまでも同僚委員から質問があったことですが、重ねて確認をしておきたいと思うんです。報道によりますと、過剰な設備を抱えた産業界競争力回復策を話し合うため、通産省と主要企業研究会業界ごとに相次いで設立されている。独禁法の弾力的な運用を求めることを主テーマに掲げている。複数メーカーが設備を現物出資する形で合弁会社を設立して共同で廃棄したりする際、独禁法では禁止されているカルテルの適用を弾力化することなどを検討しているという報道があります。  まず通産省に伺いますが、こういう研究会をやっているんでしょうか。
  84. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 幾つかの業界の実情を把握するために関係業界から情報を収集するということで、重立った企業の役員などに集まっていただいて事情を聞いているということはございます。
  85. 山下芳生

    山下芳生君 その中で、先ほど述べた複数メーカーが設備を現物出資する形で合弁会社を設立して云々かんぬんということも検討されているんですか。
  86. 江崎格

    政府委員(江崎格君) その場においてそのような具体的なことが検討されているとは承知しておりません。むしろ現状を把握するということが中心かと思います。
  87. 山下芳生

    山下芳生君 公取に伺いますけれども、こういう報道にあるような複数メーカーが設備を現物出資する形で合弁会社を設立して共同で廃棄と、これは今議論している本法案、カルテルの適用除外を廃止するという方向とも逆行すると、公取としては認められないと思うんですが、いかがでしょうか。
  88. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほども御説明いたしましたけれども独占禁止法の理想ということになりますと、各企業が、各事業者が自分の判断でそういうことをやっていただくということが理想であろうかと思います。一方、理想とそれから現実の問題というのがございまして、現実的には、それでは独占禁止法の第三条に当たるような共同的な行為によって新会社をつくる、新会社をつくって市場を支配というか市場に影響を与える、あるいは共同廃棄を大規模にいわゆる業界ぐるみにやっていくということをしますと、これが独占禁止法違反に当たるわけでございます。  だから、両方の考え方があるわけでございますが、まさか今の時代に、私が後段に述べましたような、業界ぐるみでみんなが共謀してそして施設を廃棄していく、あるいは新会社を大規模につくっていくということはまさか考えていることではないというふうに、私は新聞報道を見てそういう感じがいたしました。
  89. 山下芳生

    山下芳生君 委員長としての強い意志を今確認させていただきました。  さらに、この法制化として、企業改革支援法を制定することが検討されている、具体的には金融機関の株式保有制限である五%ルールの制限緩和も含まれているとの報道もありますが、五%ルールの制限緩和、これも私、公取としてとてもじゃないけれども認めるわけにいかないと思うんですが、いかがでしょうか。
  90. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) これも私どもが新聞報道で把握しているだけでございまして、どういうふうに債務の株式化を図っていくかということについては詳細承知しておりませんので何とも申し上げかねるところでございますけれども法律は、五%を超えても公正取引委員会が認可すればいいという仕組みになっておりますから、場合によってはそういう認可という手続の方向で進む場合もあるかと思います。これも私の個人的な新聞の読み方でございますけれども、債務の株式化というのは株主の間でもいろいろ難しい問題があるし、企業の間でもいろいろ難しい問題があるから、これはでき上がってみないと、私どもの方で五%ルールがどうだということを申し上げる段階ではないんじゃないかと、こういうふうに思っているわけであります。いろいろの問題をクリアされて、そこで公正取引委員会独占禁止法の五%ルールがどうだとおっしゃれば、その段階で意見を申し上げることになろうかと思います。
  91. 山下芳生

    山下芳生君 非常に微妙な答弁なんですけれども、私は、債務の株式化や余剰設備の廃棄について、これは今企業のモラルハザードにつながるとして経済界からも批判の声が上がっておるわけです。大手銀行への公的資金投入、それから大手ゼネコン、不動産業に対する債権放棄に続いて、これは産業界全体に徳政令をしくものだという批判もあります。こんなことがまかり通ったら競争のルールなどあったものじゃないと。  一方で公正かつ自由な競争を叫びながら中小企業の皆さんを規制緩和の荒波にほうり込んで、労働者を大変な雇用不安に陥れておきながら、一方でこういう大企業に対してはあの手この手、これまでのルールを緩めながら救済してやる、これは競争を阻害するものだと、私は断じて認められないと思っておりますが、引き続き公取として毅然として対処されるよう強く求めて、質問を終わります。
  92. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 今まで同僚議員からいろんな方面から質問がありまして、かなりいろいろ議論が出尽くされているようにも思います。若干重複するかもわかりませんし、またちょっと違った角度からも質問をしてみたいなと思うんです。  この独禁法は、昭和二十二年に施行されてから今日までの五十数年間というのは、まさに独禁政策の緩和規制強化の歴史の繰り返し、こんな記憶がいたしております。特に昭和二十六年の特需景気後の不況を契機として、不況対策や過度の競争防止を目的としたカルテルを容認する適用除外法が制定されるようになったと記憶しています。その背景には、先ほども若干話がありましたが、過剰物資の市況安定策を求める産業界の意向を受けて、産業官庁による産業政策があったように思います。今回廃止される独禁法の不況カルテルや合理化カルテル、あるいはまだ独禁法適用除外として残っている輸出入取引法の輸出カルテルなどは、そうした産業政策上の要請のもとに制定されたものだと思います。  その後、高度経済成長期に入って、貿易や資本の自由化を契機として大型合併などが相次いで、産業の寡占化の弊害が出るに及んで、昭和五十二年に先ほど来話が出ている不当な取引制限に対する課徴金制度を新設する独禁法の強化改正が行われ、そして課徴金の引き上げや違法カルテルに対する刑事罰の強化など独禁法規制強化がなされてきた。これが大体私が承知している今までの大ざっぱな流れのような感じがいたして、ちょっと整理をいたしてみたわけであります。  こうした中で、今回、規制緩和推進計画を受けて、産業政策上の観点から導入された不況カルテルや合理化カルテルなどが廃止されることになったけれども、一体これはどんな基準で整理されたのかということを一言でいいですが簡潔にちょっと答えていただけますか。委員長でも局長でもどっちでもいいです。
  93. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 簡単に申し上げますと、既に目的を達成して必要性を失っているかどうか、政策手段として有効性を喪失していないかどうか、適用除外内容が不明確でないかどうか、それから適用除外制度の乱用防止のために公正取引委員会との手続規定を整備する必要がないだろうかというような諸点を考慮して法案を作成したわけであります。
  94. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 その申し出がないこととか、そういうことも若干の根拠になっているようにも思います。実際、今日申し出がなくても、将来必要になることもあるだろうと思うものもあるわけです。それよりも本来的には、適用除外となる事業や企業あるいは行為業種は、国家的な見地から保護的な措置がとられる、保護的という言葉がいいかどうかわかりませんが、とられてしかるべきではないかと考えられるものもあると思うんです。  例えば、農業は従前のまま適用除外なのに、林業は独禁法がずばり適用されることになっております。農業も林業も国土保全的な見地に立てば、この問題はもっと理屈を言いたいんですが、時間がありませんけれども、まさに国土保全的な見地に立てば同一の価値を持つものと言えるものではないか。特に我々政治家から見ると、政治論からするとそんな感じがします。これはごく身近な例です。  ほかにもあると思うんですが、実際に独禁法適用除外を申し出ているかいないかで今回の適用除外の整理をするのでは、経済の憲法あるいは自由経済市場の番人、さっきの言葉にもありましたが、そういうことにかかわってくる改正としてはいささかちょっと、少し安易な対応ではないのかなという気もします。もっと経済的な理屈づけというか、もう一ついかがですか。
  95. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 今までの適用除外見直しに当たりまして、特に平成九年の一括整理法を御承認いただきましたけれども、そのときについては個別法の適用除外制度ということを整理させていただきましたものですから、一つの大きな観点といたしまして、制度として適用除外が利用されたことがあるかどうか、いずれも昭和二十年代につくられたものが多いものですから、その後一回も使われていないというようなことについて非常に大きな視点として整理の視点にさせていただきました。  今度のものについては、独占禁止法それ自体にある適用除外、それと独占禁止法二十二条に規定されておりますが、特別の法律適用除外法という法律をもって独占禁止法適用除外するというものでございます。その適用除外の仕方というのは、例えば適用除外法の二条ですと、そこで指定した団体であるからそれがすべての行為について適用除外されるというような規定のされ方もしてあるわけでございまして、いろいろな観点から見直しをしたわけですが、自己責任と市場原理に基づいて市場主導型の社会にしていくということが今一番叫ばれているわけでございますので、適用除外制度としてもう必要最小限にするという大きな観点から見直しをしたという点もあろうかと思います。
  96. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 要するに、個別根拠法の方へ持っていっておいて、そっちで対応しておくというようなことにならぬ方がいいだろうということですな。どうせこういうふうに一つ改正をやって、せっかくの規制緩和をやっていこうということでありますから。それはそれとしてわかりました。  時間がありませんのでちょっと別の角度から御質問をしてみたいのでありますが、我が国が率先して国内市場を一層競争的かつ開かれたものとすることは非常にいいことだと思うんです。この政策によって我が国企業競争力がつくことが期待されるということは、これは私も確信をいたしております。しかし、競争力がつかないうちに、外国企業我が国独禁法で禁じられているような価格ダンピングなどで日本に対して輸出攻勢に出てきたときに、我が国産業が壊滅的な打撃を受けるということが考えられる。こうしたことは現実問題として今すぐ起きるということは考えられないかもわかりませんが、しかしあり得ないことではないと思うんです。これだけグローバル化の時代であり、あるいは国内国内独禁法体制規制緩和されて自由競争原理に基づいた環境整備ができた、しかし外国からそこの間隙を縫われて日本に入ってくる、日本のまじめにやっている産業は痛手を受けるというようなことがこれからなくはないですね。  米国では、電気製品のうちテレビが生産できなくなっている。これは国家安全の見地から特に問題ではないけれども、国家として当然にあるべき産業はスーパー三〇一条に基づく制裁措置を武器に保護しようとしていることはもう御存じのとおりです。これはもう幾たびか今まで輸出貿易関係でマスコミをにぎわし、あるいは我々も議論し合ってきた問題です。我が国もかつて近隣諸国から繊維製品の輸入が急増したときに、繊維セーフガード措置の発動が問題とされて、結局それぞれの自主規制で事態の収束を図ってまいりました。私自身もそれに携わったこともあります。  これらのことを考えると、国内市場を一層競争的かつ開かれたものとすることだけでよいのだろうか。確かに一般的にセーフガード措置があり、関税暫定措置法、定率法、外為法があり、価格ダンピングして我が国に輸出してくる場合も不当廉売関税で対応できるようになっているけれども、全般的に我が国独禁法が禁じている行為我が国以外の地域においても行われ、それをもって我が国に輸出や企業進出などをしてきた場合、つまり我が国独禁法が外国企業やその企業行為に対応できるような法体系になっているか、あるいはまたその対応は十分可能かということを私は危惧しながら、こうした体制が必要ではないのかなと。  先ほどの委員長の、この時期に、自由経済グローバル化の時期にという言葉はありましたが、もう一つ、別に保護政策をやろうという意味じゃありませんけれども、しかし我が国内における自由主義経済を維持するための必要最小限度の用意ということは、今すぐとは言いません、この際の段階として考慮しておく必要はないか、あるいは検討しておく必要はあるのではないかという感じを私は政治家の一人として持っております。どんなお考えでしょうか、もし考えがあったら聞かせてください。
  97. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) おっしゃるような危惧というのはだれもが抱くことだろうと思います。  ただ、これは我が国だけで解決できる問題ではございませんので、例えばOECDとかWTOで競争政策と貿易政策の関連ということで、先ほども申し上げましたけれども、大変な議論があるわけでございます。その中に私ども公正取引委員会の職員も参画しまして、その議論の中に入っているようなところもございます。これは単に競争政策だけではなくて、貿易政策の問題もございます。一方では、アンチダンピングの乱用という問題もございまして、いろいろの問題と絡んで、そういう危惧に対する防波堤といいますか、そういうものを考えているところだろうと思います。  それでは、私どもの方の独占禁止法はそういう場合にどういうふうな効用があるかということでございます。その原点で適用していくしかないわけでございますけれども、例えば合併審査に当たりましても、最近は国際的な市場ということ、国際的な参入ということも考えましてやっているわけでございまして、いろいろ細かい問題でも国際的な問題ということを念頭に置いてやっておりますので、それが結実するかどうかは別としまして、お考えのようなことに対して日ごろから勉強しているところでございます。
  98. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 ありがとうございます。  なかなか難しいことだと思います。やっぱり経済基本法だけに、国内のみならず世界にも説明できるように今後も検討していかなきゃいかぬことだろうと思います。  独占禁止政策は、まさに競争政策を通じて産業政策そのものを規定していくものであると考えられます。それだけに、競争政策をそのまま貫徹していくとなると、一方では国として存立するに当たって存続させなければならない事業などを支える政策も、これは産業政策で通産省の担当としてやっているわけでありますが、このような考え方の中で、非常にグローバル化あるいは国際化の中で公取委員会としても、独占禁止法の運用に当たっては、通産省以上にこれからの産業政策のあり方を研究、検討あるいは分析していただいて、ぜひひとつこの自由経済における公正な取引のできるような、そしてまたその役割に大いに私は期待をいたして、これからもぜひ公取委員会の新しい意味における責任、そういうものを根來委員長のもとに大いに指揮、発動されていくことを、フリー、フェア、オープンという言葉は我が自由党が党是としながら主張いたしております、公取の健全で公正なしかも秩序のある運営が担保されて初めてこのフリー、フェア、オープンということが実現できる、望ましい社会ができ上がっていくだろうと期待をいたしておるわけであります。  時間もありませんので、雑感を申し述べながら、また御期待を申し上げながら、新しい時代における公取委員会の責任と使命ということとやっぱりバランスということもお考えになりながら、典型的な談合の社会である日本経済のこの仕組みの中で、もうそろそろそういう談合ということをやめていかなきゃならない。そこら辺の監視もぜひしていただきながら、どうぞひとつよろしく、私は基本的に賛成の意を表して、この法律が一層の適正な運用、期待に沿った運営が行われていくことを期待いたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  99. 水野誠一

    ○水野誠一君 参議院の会の水野誠一でございます。  今回の独禁法適用除外の縮小、これは今まで何度も繰り返されてきたわけでありますが、いろいろ背景的なことから考えても今回の改正に異を唱えるものではない、公取には引き続き自己責任原則市場原理に立つまさに市場の番人としてしっかりと努めていただきたい、かように思います。  民間企業の過剰設備の問題、これも同僚議員から繰り返し出た問題でありますが、今私は経済再生をする上で非常に重要課題だと思いますので、あえて繰り返して御質問をしたいと思います。  世界的な再編競争が今取りざたされています自動車関連に例を見ても、九八年度の国内生産台数が二十年ぶりに一千万台を割り込む見通しだと。これはピーク時では一千三百五十万台ということでありますから、二六%の減少。その結果、生産設備の稼働率が当然のことながら低下をして、単純に言えばトヨタ自動車一社分の生産能力が過剰である、余剰であるというふうに言われている。これは大変な状況になるわけです。  例えば経済企画庁の試算によりますと、九八年七—九月期に企業が抱える過剰設備は過去最大の八十五兆九千億円ということでありまして、これはさまざまな計算方法があるでありましょうから一つの参考としてとらえたとしても、これは何と九七年度の新規設備投資額にほぼ匹敵する規模ということでありまして、つまり設備投資の丸一年分が過剰という驚くべき数値になるわけであります。  まさにバブル期の過剰投資による設備の余剰が今企業のバランスシートを圧迫して機敏な事業活動を阻害する原因となっているということでありまして、総理直属の産業競争力会議でもこの問題が大きなテーマとして位置づけられている。これはもう御承知のとおりであります。  そういう中で、将来の需要回復を当てにして設備の稼働率の引き下げとかあるいは一時的な休止でしのぐということよりも、むしろ大胆な設備廃棄に取り組む例が多く出てきている。報道では、自動車ガラスの五割のシェアを持つ大手ガラスメーカーでもう既にこういう一部工場の生産設備の廃棄、こういうことを発表しています。ほかにもこういった例は恐らく出てくるであろうと。  こういう余剰設備廃棄というのは個別企業にとっても大変なことでありまして、必然的に雇用面での問題ということも出てまいりますから、まさに血のにじむような工夫と知恵が要求されてくる。これは単に一社の問題ではなく、大きくその業界の共通課題にもなる。これは理解をしていかなければいけない点だと思います。  この設備の廃棄に絡んで、業界別の新会社や組合を設立するという方法、今いろいろ同僚議員からこれについての厳しい御指摘がございました。それに対しては、業界全体としてまたはその主要企業が入った形でそれが行われれば競争制限につながるおそれが強いという、現行の独禁法上、公取としては当然とも言える見解がもう既に示されているわけであります。  他方、これを弾力的に運用することを求める動き、これも業界あるいは経済界を中心に強いわけでありまして、きのうの朝日新聞などにも報じられているとおりであります。  それから、けさの閣議後の会見で宮澤蔵相が、景気回復のかぎを握るとされている民間企業の過剰設備廃棄や債務処理を後押しするために、政府としては政策減税の実施に前向きに取り組む考えを明らかにしたと。具体的には言及しなかったということでありますが、恐らくこれは設備廃棄に伴う欠損金の繰越期間の延長や、法人税課税上の債務免除益と設備廃棄損失との相殺処理などが課題になる、こういうふうに見られているということでありまして、まさに政界、財界挙げてこういった過剰設備の問題に今取り組むタイミングになってきているということだと思います。  こういう機運が大変高まってきているということでありますが、そういった背景も踏まえて、公取の方針というのはいかがなものなのか、どういう方針をお持ちなのか、この点について簡単にお答えをいただきたいと思います。
  100. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほども申し上げましたが、設備廃棄というのは産業界で非常に重要事項だと、こういう認識はございます。私どもとしては、なるべく個々の企業の判断でやっていただきたいというのが一つの希望でございますが、さはまいらない場合もあろうかと思います。  しかしながら、最後の独占禁止法上の考え方といたしましては、具体的な案件はどういうふうに進められるかわかりませんけれども、極めて抽象的に申し上げれば、競争を実質的に制限することとなるような設備の共同廃棄というのは違反になりますよということはどうしても申し上げざるを得ないところであります。
  101. 水野誠一

    ○水野誠一君 それは当然おっしゃるべきことだと思います。  しかし、かなりこういった問題というのは、一種弾力性を持って対応していかなきゃいけない。その中には当然いろんな選択肢が出てくるわけでありまして、今、またもう一方で取りざたされておりますのが債務株式化、これも先ほど質問に出ております。余剰設備問題に絡んで債務の株式化をして、金融機関などがその企業に対する債権の一部を放棄して、そのかわりに企業が増資して発行した株式を取得する手法ということであります。これは、アメリカでは八〇年代に自動車メーカーのクライスラーあるいは百貨店のメーシーズ、こういったところが経営再建のために活用したというような事例があるようでございます。  こういった手法、これは当然のことながら賛否両論どうしても出てまいります。これは今、日本経済における一番大きな論点である問題であることもありますし、また宮澤大蔵大臣が債務株式化に触れる発言をもう既にされているというようなこと、それから関係団体にこの手法を含めた協議を要請した、こういったニュースもございます。山下委員が御指摘になったように、モラルハザードにつながるという非常に厳しい指摘も一方であるということと同時に、市場における公平性という視点からの議論というのも当然出てくるわけであります。  この債務株式化という手法のメリット、デメリットについて、通産省内でも当然いろいろな検討をされていると思うのでありますが、通産省内での検討状況を伺えればと思います。
  102. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 御指摘のデット・エクイティー・スワップの問題でございますけれども、確かに企業が過剰債務を処理しようとする場合に一つの方法かとは思いますが、これがうまく当てはまるケースというのは必ずしも多くないというふうに思っております。  と申しますのは、まず、金融機関自身が債務を一部免除して株式を保有するということになりますと、そうした金融機関の行動について金融機関の株主に対して合理的な説明ができるかどうか、つまり金融機関としてそれが合理的な行動かどうかということがございます。それから一方、その事業会社の側にしても、株式を新たに発行するということになりますから、既存の株主の了解が得られるかどうかという問題もあるわけでございます。そういうこととあわせまして、借り手企業の徹底したリストラですとかあるいは経営者への責任の追及といったようなことも当然前提になると思います。したがいまして、決してこの方法というのは安易な方法ではないということだと思っております。  ただ一方で、今御指摘のように、アメリカなどで企業の立て直しに際しましてこれが活用されたという例もございます。私どもにおきましても基本的にはこれは、企業の立て直しの過程におきまして、金融機関と個別の事業会社との間で話し合ってそういう対策が出てくるかどうかということでございますけれども、そういう場合の対策の一つのオプションだとは思いますが、いろいろ条件があって、一種の魔法のつえのような役割というわけにはいかないのではないか、このように思っております。
  103. 水野誠一

    ○水野誠一君 先ほど金融会社の株式保有制限の問題も御質問がありましたのでこれは伺いませんが、今の通産省からのお答えにもあるように、これは一つの選択肢であるということでありますし、やはり知恵を大いに使っていかなければこの難局は乗り切れないという中では、ひとつしっかりとした議論をお続けいただきたいというふうに思います。  それから次に、最近の話題の中で、スカイマークとエア・ドゥという航空会社が、典型的な規制業界と言われる国内航空業務に徹底的なコスト削減による低価格を武器に参入したという出来事がございました。  しかし、それに対して、既存大手各社がこの二つの航空会社の発着時間に飛行機を飛ばしてそこの料金を大幅に引き下げるというようなことをやる、あるいは大手某社はスカイマークの機体整備契約を打ち切る、こういうようなことをやってかなり露骨な対応を図ってくるということで問題になっているわけであります。  今回、七日の記者会見で事務総長がこの点に触れて、一つ競争のやり方ではあるんだけれども新規参入を排除するのが目的なら独禁法上問題となる可能性がある、こういうように述べておられる。公取はもう既に独禁法に抵触するおそれがないかどうか調査を始めたということでありますが、この調査の進行状況、あるいはそこからもしか結論が出ているのであればその結論をお尋ねしたいと思うわけであります。
  104. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 先生お話しのとおり、スカイマーク等の二社が低料金で参入いたしまして、それに対して既存の大手三社が新規参入者と同じ時間帯に割引運賃を設定したというわけでございます。これ自身を見ますと、新規参入者の参入によって搭乗率が低下する、そういった事態に対応して競争的に対抗するような行動、ミーティングコンペティションという、そういうようなものというふうにも理解されるわけでして、割引料金を設定したということで直ちに独禁法上問題だというわけでもないわけでございます。  他方、今先生から私どもの総長の記者会見のお話がございましたように、新規参入者を市場から排除するような意図とか目的とかあるいは効果というようなものを持っているということになりますと、それは態様いかんによりましては独禁法上問題となり得るということでございまして、現時点におきまして違反の疑いがあるということで審査としての活動をしているわけではございませんが、規制緩和されて競争が活発になる、そういった市場についてどういうそれぞれの企業のビヘービアがとられているか、あるいはどういう法制のもとでそういう行為がとられているかどうかということは私どもとしてもやはり十分ウオッチしていく必要があるんじゃないかということで、今、その行為なりあるいは規制、仕組みの枠組み等々について非常に注意深くそれを見ていると、そういうような状況でございます。
  105. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。     ─────────────
  106. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、倉田寛之君が委員辞任され、その補欠として岸宏一君が選任されました。     ─────────────
  107. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 最後になりました。十五分ですからよろしくお願いします。  不況カルテルを適用除外するということ、これについて若干の心配があるものですから、ひとつお尋ねをしたいと思います。  装置工業における価格の動向というのは大変厳しいものがあって、例えばH形鋼の価格動向については、八八年には六万三千九十五円しておったものが九八年には三万四千百八十二円になっている。それから、ソーダ製品の価格ですが、八八年に六万三千四百円していたものが九八年に三万三千九百円、もう極端に値が下がっております。それからポリエチレン、これはキログラム当たりですが、八八年に二百八十一円していたものが九八年には百三十五円、これはもう半分以下です。それから上質紙の関係ですが、百八十二円しておったものが百二十八円。もうほとんどが原価割れをしているような状況。相当原価割れをしている。  装置工業というのは、御承知のように、稼働率が高いか低いかによりまして採算が極端に変わるわけです。ですから、不況になった場合には過剰生産、採算割れをしていても付加価値がつく限界ぎりぎりのところまでは操業をやろうと、こういうことになる。そして、投げ売りが始まったり等々で、今のように半値ぐらいに価格が落ち込んでどうしようもないような状態に陥っていきます。そこで雇用問題が生じたり、企業の集中合併が進んだり、あるいは企業の事業所の閉鎖が進んだり、不況のときにはこういう状態に落ち込んでいくわけであります。そういう例が過去にも幾らもありました。  ですから、不況カルテルの適用除外の場合にやっぱり一番問題になるのは装置工業なんです。装置工業についてこれは単純に割り切っていいものかどうなのか。割り切ってしまえば企業の独占化、寡占化が進んでくる、あるいは人員合理化や首切り、企業閉鎖が進んでくる。これはそういう追いかけっこの状況になる。だから、この不況カルテルの問題については一体どう考えればいいのか。少しも悩まず公取がこれをどんどん進めていくというのは、やっぱり現実に対する、経済に対する見方、装置工業に対する見方、この辺の深みというか、見なきゃならないところを見ぬまま物を決めつつあるのではないか、そのように思うんですが、いかがですか。
  108. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 確かに先生おっしゃるとおり、装置産業におきましては、稼働率を維持するかどうかということによりまして市場における価格は相当変わってくる。それと、従来であればそれを輸出向けに回すというようなこともあり得たと思いますが、それも輸出相手国におけるダンピングの問題等々いろいろ提起するということもあろうかと思います。  しかし、共同して設備を廃棄するとか封印するというようなことにつきましては、昭和五十年代に先生御承知のとおり特定不況産業安定臨時措置法等ができまして、いわば平炉、電炉、アルミニウム、合成繊維というような今おっしゃられたような装置産業についてカルテルによってそういった構造的な不況を乗り切るということの手段がとられたわけでございますが、これについては、その当時としては政策手段としてとられたわけでございますが、結果的に見れば必ずしも十分であったかどうか、あるいは海外からの批判ということも非常に強かったわけでございます。そういうことでその後、特定不況産業法後、五十八年に特定産業構造改善臨時措置法がとられ、昭和六十二年には産業構造転換円滑化法がとられたわけですが、ここでは個別企業の設備廃棄ということに対して税制上の措置等を講ずるというような、そういった政策手段に変わってきたというふうに理解しているわけでございます。  先ほど来申し上げておりますが、やはり今、日本経済社会というのを自己責任と市場原理に基づく市場主導型の経済に変えていくということで進められているわけでございますから、確かに装置産業において過剰設備というような問題もあろうかと思いますが、これについては個々の事業者がそれぞれの経営判断であるいは経営環境を考慮いたしまして自主的に取り組むべきではないか、このように考えておるわけでございます。  なお、先生から雇用の問題あるいは企業閉鎖というような問題のお話がございましたが、そういった企業のリストラ、合理化に伴います雇用調整等々の問題につきましては、セーフティーネットの整備等の他の政策手段ということを講じていく、それによって個々の企業が合理化を図っていってもセーフティーネットがあるということが重要ではないか、このように考えておるわけでございます。
  109. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 理屈では言えるけれども、現実はなかなか厳しいからね。もう答弁は要りません。  ただ、自己責任と市場原理を求めていくといってこれを、だから私が今言ったのは、例えばセメントはもう三つの資本に集約されているんですよ。このままこういうことがどんどん進めば、自己責任と市場原理、資本主義が発展する過程の中では、これはもう寡占化、独占化に、企業の集中合併に追い込んでいく。結果的には国民に対しては、そういう大寡占体制に入れば価格の維持を彼らは自由にできるようになる。だから、それが公平公正な社会を実現することになるのかどうなのか、私は考えなきゃいけないと。答弁は要りません。  それから次に、不況カルテルの適用除外というのが先進諸国の中にあるのかないのか。通告しておりますから、もう簡単でいいです。  次へ移りますが、これは日経ビジネスの九九年四月十九日号ですが、「カルテルは地の果てまで追及する? 日本製紙を「域外適用」で訴えた米司法省の執念」、これをちょっと読んでみますと、   日本企業同士が日本国内で結んだカルテル行為に対し、外国の司法当局が刑事責任を追及できるのか──。「域外適用」の是非を焦点として始まった裁判が、異例の展開を見せている。米国向けファクシミリ用感熱紙の価格カルテル疑惑で、米司法省が日本製紙を刑事訴追した事件だ。昨年七月十三日、米ボストン連邦地裁で、有罪か無罪かで陪審員の意見が割れて評決不能となって以来、九カ月も公判が再開されず、空白状態が続いているのだ。 ということであります。  私は、域外適用というんですか、日本まで踏み込んでアメリカが刑事責任の追及をするような、これは主権の侵害だと思うんです。そんなことをアメリカにやらせていいのかどうなのか。アメリカ一つの州みたいな取り扱いをするようなことに対して、一体日本公正取引委員会なり日本政府はどう考えているのか、答弁をお願いしたい。
  110. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) 具体的なファクス用感熱紙の事案につきましてはちょっとおきまして、一般論として申し上げたいと思うんですが、アメリカの反トラスト法の適用につきまして、一九九二年だったと思いますが、従来の適用方針を変えました。それまではアメリカ国内消費者に影響のある事案というのにアメリカの反トラスト法を適用するということでございました。それを、外国商業反トラスト改善法という法律があるということで方針を転換いたしまして、米国の輸出等にも影響のあるものについて米国の反トラスト法が適用できるというように方針を転換したわけでございます。  これに対しまして私どもも、これはアメリカの域外適用になるのではないか、日本国内で行われた行為はもちろん、日本市場に影響がある競争制限的効果があれば、それは日本独禁法を適用すべきであるというように主張してきたところでございます。  ただ、これもいろいろ摩擦を起こすばかりでございます。外国の反トラスト法を適用する、いや日本の反トラスト法を適用すべきだということですと、非常に摩擦を起こすことになるわけでございまして、現在各国とも、できる限りそういう摩擦を起こさないように、それを回避する手段としまして二国間で独占禁止法協力協定というようなことを締結するという動きがございます。日本アメリカの間におきましても、現在、そういった二国間の協定ということを検討しているところでございます。
  111. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 これは素人の話だけれども、ファクシミリ用感熱紙なんか買わないんじゃないのか、アメリカ日本から、あるいは日本の業者から。その根本的な議論というのはやっぱりやる必要があるんじゃないか。日本アメリカからいろいろ買っているのに、逆に日本アメリカへ行ってアメリカの刑事訴追をするなんということはやれますか、実際問題として。力関係が違うんじゃないですか、どうなんですか、その辺。
  112. 山田昭雄

    政府委員山田昭雄君) ファクス用感熱紙の事案につきましてはちょっと手元に詳細な資料がないわけでございますが、この事案につきまして申し上げるならば、日本のメーカーあるいは輸出商社が米国向けあるいは米国におけるファクス用感熱紙の価格を協定したということで、米国における行為として問擬されていたものではないかと思います。  そういうわけで、ちょっと私が申し上げた事案とは異なる事案であるかと思います。
  113. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 公取委員長、これはあなたは前に検察庁におられて一番詳しいわけですけれども、こういう問題は主権の侵害も甚だしい、私はこう思うんですけれども、あなたのお考えを聞かせてください。
  114. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) こういう問題はなかなか深刻な話でございまして、刑事事件の管轄権というのはいろいろ甲論乙駁ではっきりしないところがあるわけでございます。  しかし、おっしゃるように、我が国の立場からいえば、日本で行った行為について、その影響が米国に及ぶとしましても、それは日本がまず問擬すべき問題ではないかと。先ほど局長が答えましたけれども、そういう管轄権が重畳する場合に、それではどちらが先にそれを問擬すべきかという問題になりますと、やはり日本がやるべき問題じゃないかというのが私ども考え方でございますけれども、いかんせん、そういう問題は外交問題に帰着するところでございますので、なかなか私どもの思うとおりにはいかないというところでございます。  それで、それをひとつ解決するためには、やはり二国間の協定ということはぜひとも必要ではないか。例えば刑事事件については日米では犯罪人引き渡し条約というのがございますけれども、条約とはいかなくても何かそういう取り決めということは必要ではないかというのが私ども考え方でございます。
  115. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ちょっと時間を。  やはり幾ら外交問題としても、こういう問題で向こうから日本企業を刑事訴追するようなことが起こったら、もう日本企業は一々それは何にもやれなくなる。だから、そのことは公取もしっかり外交問題に反映させるように要望して、終わります。
  116. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律適用除外制度整理等に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  117. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  野中官房長官、どうぞ御退席ください。     ─────────────
  119. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。有馬科学技術庁長官。
  120. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  原子力の開発利用を進めるに当たりましては、安全の確保を図ることが大前提であることは申すまでもございませんが、さらに万一の際における損害賠償制度を整備充実し、被害者の保護に万全を期することにより国民の不安感を除去するとともに、原子力事業の健全な発達に資することが必要であります。  このような観点から、原子力損害賠償に関する法律が昭和三十六年に制定され、原子力事業者に無過失損害賠償責任を課すとともに原子力事業者への責任の集中、損害賠償措置の義務づけ等の一連の制度導入し、さらにその後の諸情勢の変化に対応して所要の法改正が行われてきたところであります。  平成元年の法改正以来九年を経過した現在、最近における原子力損害賠償制度に係る内外の状況の進展にかんがみ、賠償措置額を引き上げ、原子力損害賠償補償契約及び原子力事業者に対し政府が行うものとされる援助に係る期限を延長するための措置を講ずるとともに、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案において新設することとなる使用済み燃料の貯蔵の事業に係る原子力損害賠償の対象とするための措置を講ずることが不可欠であります。  これら諸点につきまして検討を行い、ここに改正案を取りまとめ提出した次第であります。  以上、本法案を提出いたします理由につきまして御説明申し上げました。  次に、本法案の要旨を述べさせていただきます。  第一に、現在の賠償措置額三百億円につきまして、民間責任保険の引き受け能力や国際的動向といった点を総合勘案し、六百億円に引き上げることといたしております。  第二に、原子力損害賠償補償契約及び原子力事業者に対し政府が行うものとされる援助に係る期限を延長し、平成二十一年十二月三十一日までに開始された原子炉の運転等に係る原子力損害について適用するものとしております。  第三に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案におきまして、使用済み燃料の貯蔵の事業に関する規制を新たに設けることとすることに伴いまして、原子力損害賠償する責めに任ずべき原子力事業者として使用済み燃料の貯蔵の許可を受けた事業者を加える等所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案の提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  121. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三分散会