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1999-03-30 第145回国会 参議院 経済・産業委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月三十日(火曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  三月二十六日     辞任         補欠選任      福山 哲郎君     海野  徹君  三月二十九日     辞任         補欠選任      加納 時男君     森山  裕君      海野  徹君     福山 哲郎君  三月三十日     辞任         補欠選任      陣内 孝雄君     森田 次夫君      平田 健二君     内藤 正光君      福山 哲郎君     海野  徹君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 簗瀬  進君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 倉田 寛之君                 小山 孝雄君                 末広まきこ君                 中曽根弘文君                 森田 次夫君                 森山  裕君                 海野  徹君                 内藤 正光君                 長谷川 清君                 福山 哲郎君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        通商産業大臣   与謝野 馨君    政府委員        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        文化庁次長    近藤 信司君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        岩田 満泰君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        通商産業省生活        産業局長     近藤 隆彦君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        資源エネルギー        庁石油部長    今井 康夫君        特許庁長官    伊佐山建志君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君    説明員        法務大臣官房司        法法制調査部司        法法制課長    河村  博君        文部大臣官房審        議官       若松 澄夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○特許法等の一部を改正する法律案内閣提出) ○不正競争防止法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○訪問販売等に関する法律及び割賦販売法の一部  を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、加納時男君が委員辞任され、その補欠として森山裕君が選任されました。     ─────────────
  3. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 畑恵

    畑恵君 自由民主党の畑恵でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  今回の特許法改正ですが、さき通常国会での改正で積み残されましたさまざまな課題について、そのほとんどに対する施策が盛り込まれておりまして、いわば特許法大改正完結編と言えるものだと認識しております。本委員会におきましても、さき国会では全会一致附帯決議をつけさせていただきましたけれども、その項目、例えば文書提出命令拡充ですとか計算鑑定人制度の創設など、具体的な措置は今回ほとんど実現いたしますということで、大いに評価させていただきたいと思います。  中でも、裁判官の裁量ですとか判断によって、たとえすべての侵害地における販売数量立証が困難でも、蓋然性のある事実まで考慮して実質的な規模損害賠償が可能になる道が開けたことは、私自身、非常に朗報だと思います。ぜひ、米国の三倍賠償にまさるとも劣らないような勇気ある裁定を下していただいて、いわゆるこれまでの侵害のやり得を一掃して、損害賠償認定額、これまでですと米国の方は大体平均百億円規模で今まで進んでおりますが、日本の方はその二百分の一程度にすぎないという現状でございますので、このような現状を打ち破っていただきたいと思います。  今回のこの特許法改正ですけれども、これまで特許庁はこの改正に当たって、広く強くそして早い保護というのをスローガンに掲げていらっしゃいました。特に今回はこの早さ、迅速さについて伺ってまいりたいと思います。  今回の改正では、権利取得を早めるために、審査請求期間現行の七年から三年に短縮されました。デファクトスタンダードの獲得国際競争を勝ち抜く上での大命題である今日にとって、特許権取得欧米に比しておくれれば、それだけ日本デファクト獲得の点で不利になるということは明白でございます。  そういう中で、審査請求期間が短縮されたというのは当然の措置だと思うんですけれども欧米諸国と比べた場合、例えば欧州特許庁は二年、米国審査請求期間自体が、確かに特許制度自体日本と多少違いますけれども、ございません。なぜ今回、短くしたにもかかわらず欧米よりは長い三年という期間設定をされたんでしょうか。
  5. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生指摘のように、アメリカヨーロッパ日本の間で審査請求期間がそれぞれ違った制度をとっております。これは、それぞれの国のよって立つ制度的、歴史的、文化的な背景等を勘案したものだと理解いたしております。特に私どもといたしましては、アメリカ制度はともかくといたしまして、ヨーロッパ制度にできるだけ近づけるというのは我々にとって決して悪い考え方ではないということもございまして、ヨーロッパ制度を十分勉強しながら今回の制度改正に当たったつもりでございます。  ヨーロッパ特許庁におきましては、出願から一定期間経過後に先行技術調査の結果でございますサーチレポートを公表する、そういう制度を設けております。したがいまして、出願する側からいたしますと相対的に短期間審査請求の要否を判断することが可能だということでございます。  私ども制度におきましてはこういうものがございません。審査請求期間を過度に短くするということによりまして、出願する側の方が発明を再評価するといったこと、これを十分に行えないまま審査請求をするというのは出願する側に負担を過度に要求することになるのではないかということもございまして、二年ではなくして三年にいたしました。
  6. 畑恵

    畑恵君 過去の背景というのは私自身もある程度存じ上げているつもりでございますけれども、ただ、大手企業、またベンチャー等に話を聞きますと、確かに、むだな審査料は払いたくはないんだけれども審査料が下がるのであるならば、できるだけ審査請求期間というのは短くというか、ない方向審査料を下げてほしいと、そういう要望が大体総体としては聞こえてまいりますので、ぜひ今後の動向も見守りながらそういう一つ方向というのも検討していただきたいと思います。  さて、早さという点でもう一点伺いたいんですけれども、こちらの方は侵害訴訟手続の方の迅速化という問題について伺いたいと思います。  昨今、時間がかかり過ぎる日本での訴訟を避けて、日本企業同士の係争でさえも米国の方に持ち込まれるというケースが大変ふえてきております。ちなみに、米国知的財産権に関する訴訟を起こしますと弁護士費用だけで年間一億から二億円と日本の五倍以上かかると言われているんですけれども、それにもかかわらず、訴訟米国で行うためにそのための事務所を米国につくる企業がこのごろ出てきている。といいますのも、何事につけ今市場というのはスピードの速さというのが勝負のかなめでございますけれども、中でも製品寿命が短いハイテク製品などですと訴訟期間が長いともう致命的になってしまう。このままでは日本司法制度は、こうやって日本からどんどん出ていってしまって空洞化の一途をたどるんではないか。それだけならまだしも、その遅い司法というのに足を引っ張られて我が国国際競争力というのに陰りが見えるのではないかと私自身いつも気にしておるんです。  こうした事態を、大臣というお立場はもちろんなんですけれども、我が党の知的財産権議員連盟の会長でもあります、この問題に大変御造詣の深い与謝野大臣はどのように認識していらっしゃいますでしょうか。
  7. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生おっしゃっているとおりでございまして、日本企業同士が争うのにアメリカ裁判制度を利用するというのは大変おかしいことでございます。いわば司法空洞化と呼ばれるような現象でございまして、私は大変重大な問題だというふうに認識をしております。  先生指摘のように、知的財産権重要性が高まる中で、侵害訴訟を迅速かつ適切に解決することは日本競争力を高める上でも大変重要でございまして、不可欠な問題であると思っております。  今回の改正案は、権利侵害に対する救済措置拡充を図るため、侵害訴訟の各段階に応じて、まず第一には侵害行為立証容易化、それから第二には損害計算容易化、第三には実質的な規模損害賠償実現等規定を体系的に盛り込んでおりまして、早く広く強い保護実現を目指しているものでございます。  この改正法趣旨を踏まえた適正な運用が行われることにより、侵害し得の社会が是正され、国内裁判制度の活用を通じて知的財産権侵害に関する紛争が迅速に解決されることを期待しております。
  8. 畑恵

    畑恵君 今回、特許法改正を二度の国会にわたってしていただいて、これ自体は大変大きく日本知的財産権保護ということに寄与するとは思うんですけれども、繰り返しになりますが、やはりそれだけではなかなか解決しない、司法の問題というのは非常に大きいと思いますので、特許庁法務省連携というのもオンラインでとられるということでございますけれども、なおぜひ法務省の方とも連携をとっていただきたいと思います。  そこで、きょうは法務省の方にもおいでいただいていますので、この実態についていろいろ伺いたいと思うんです。  御省の方でも今年度から司法試験合格者を七百人から千人にふやすということで、こうした実態を何とか是正しようというその意気込みは感じるんですが、やはりはっきり申して焼け石に水ではないかなというのは私だけではなく各所から聞こえてまいります。  現在、日本弁護士は一万六千八百人、これに対して米国は八十八万人ということでございます。この差は、単なる量的な差だけではなくて質的な差も生み出していると思います。といいますのは、つまり米国では弁護士資格を持っている人間が非常に多いですから、何か専門的な知識というか分野を持たないと生き残っていけない。労働問題であるとか知的財産権問題の専門的な弁護士というのが自然に生まれてくる。また、試験というのも日本のように狭き門ではないですから、それだけに特化した勉強をするのではなくて、法律以外のさまざまな専門知識ですとか資格を持った弁護士さんというのが生まれてくる。  何も米国のように余りにも過剰な訴訟社会というのは私自身も望むものではないんですけれども、それにしても我が国の抜本的な司法改革というのは早急に行わなければいけないと思うんですけれども法務省としてはどのような見解をお持ちでいらっしゃるか、あわせて大臣にもう一度この司法改革ということについて伺いたいと思います。
  9. 河村博

    説明員河村博君) 御説明いたします。  まず、司法試験合格者の点についてでございますが、司法試験合格者年間千五百人程度に増加するということにつきましても、政府規制緩和推進三カ年計画等において取り上げられているところでございます。  国民権利利益実現法秩序の維持といいます法曹の果たすべき役割と職責の重大性にかんがみますと、司法試験合格者の増加に当たりましては、国民の負託にこたえるに足る水準、この質を確保することが必要でございますし、これからの社会のニーズに的確に対応していくために、先生指摘のような知的財産権事件などの高度で複雑な法律問題にも対応できる法律専門家を養成していくというのが極めて重要であると考えております。  司法制度改革という点につきましては、内閣司法制度改革審議会を設置していただく、そこで二十一世紀我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにしていただき、司法制度改革と基盤の整備に関して必要な基本的施策について国民的見地から調査、審議していただく、そういう法案を現在国会において審議していただいているところでございます。  法務省といたしましては、この審議会における動向などを踏まえながら、法曹の質及び量の充実強化に今後とも努めてまいりたいと考えております。
  10. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 御指摘のように、早い司法実現というのは、我が国企業同士特許侵害訴訟が海外で行われるなど司法空洞化が問題となっている状況の中で、私としてはこれは喫緊の課題であるというふうに考えております。  特に、特許権の場合は、土地の所有権などと異なりまして、権利期間一定の制限が設けられております。したがいまして、限られた期間の中で権利を十分享有するためには、権利侵害が発生した場合、速やかな紛争解決が求められるわけでございます。  また、独創的な技術開発推進していくためには、先行投資に見合うだけの適正な利益回収が確保される必要がありまして、侵害行為があった場合には迅速に適正な損害の補償を受けられるようにすることが求められているわけでございます。  今回の改正案は、以上のような特許侵害訴訟迅速化の要請を踏まえまして、特許侵害に対する救済措置拡充のための制度改正を行うものであります。また、特許庁裁判所との間での協力強化観点から、侵害情報相互交換制度化するとともに、特許庁から裁判所への専門調査官の配置や技術的見解の提供の強化を図ることとしております。  今後は、改正法趣旨を踏まえ、裁判所において適正な法運用が行われることにより早い司法実現していくことを期待しております。また、今後とも特許庁及び裁判所協力関係強化を図りながら、それぞれの観点から紛争処理機能強化に向けた取り組みを行っていくことが重要と認識しております。  なお、付言いたしますと、裁判所の方でも特許侵害に関しては、その重要性にかんがみまして、多少の人員の増強を図ってくださっております。
  11. 畑恵

    畑恵君 ありがとうございます。  ぜひ連携強化していただいて、一つの省の中で御自身たちが思っていらっしゃってもできないことが多分これだけの改革になるとあると思いますので、私ども政治家役目だと思いますけれども、ぜひ私ども連携を密にしながら司法改革を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  さて、ここからは多少法案からは離れますけれども、関連ということで知的財産権全般について伺ってまいりたいと思います。  知的財価値が急速にクローズアップされてその重要性を増しているというのは先ほど大臣からもお言葉があったとおりでございますけれども、今後さらにグローバルにボーダーレスになっていって全世界的に波及していくことは必至だと予想されます。既に、バイオですとか情報通信分野では先進各国知的財産権というテーマを国家戦略の主眼に据えて、これまでに発明、発見あるいは創造されたさまざまな知的財というのをいかに自分たちのところに取り込むかと熾烈なバトルを繰り広げていると聞きますけれども、まずそうした国際舞台での状況というのを特許庁長官から御報告願えますでしょうか。
  12. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生指摘のように、今や世界の市場でそれぞれの企業家が競争するような環境になっております。日本日本としてみずからの強い部分というものを今後いかに強めていくかということは当然の課題として私ども認識いたしておりますが、アメリカヨーロッパにおきましても決して手を緩めているわけじゃございません。今御指摘のように、バイオテクノロジーでありますとか通信情報関係技術開発、こういったものにつきまして、ただ単に技術開発を進めるだけじゃなくして、知的財産権という制度を上手に使いながらその産業発展を図るというようなことをかなり意識的に戦略的にとっていることは御指摘のとおりでございます。  具体的には、ヨーロッパにおきまして、先月、欧州委員会特許を通じた技術革新の促進という提言を出しております。彼らの問題意識といたしましては、アメリカとか日本と比べますと相対的にまだ劣っているところがある、制度的に劣っている部分というものを平等化させることによって関係する産業というものを振興していきたいという思いでございまして、今後特許政策というものを中核に据えまして新たな競争力強化策をこれから築いていくというようなことを提言いたしております。  アメリカも似たようなことを問題意識として持っていまして、今月の初め、競争力評議会レポートが出されておりますけれども、八〇年代におきましては、うまく知的財産権政策を活用することによってアメリカの持っておりましたポテンシャル、産業の持っておりました競争力というものをうまく育てるということによりまして今日の非常に好調な経済を回復したという認識は持っておりますが、しかし九〇年代に入って、八〇年代にやったほどの知的財産権政策というものをうまく活用していないんではないかという批判国内で出ておりまして、早急にアメリカとしてももう一度この観点から競争力強化ということを考えてはどうかと、こういうレポートが出されております。  私どもも、そういう環境にございますので、バイオでありますとかソフトといったような二十一世紀におきます中核をなすと思われます技術政策については、決して他におくれをとるようなことにならないように万全を期してやっていきたいと思っております。  特に、国際面におきましては、私どものところに工業所有権審議会というのがございます。これの国際部会というので昨年の年末からつい最近まで非常に熱心な御議論をいただきまして、今後日本としてそういう国際環境の中でどうあるべきかということについての御提言もいただいております。そういうものを十分に参考にしながら、いろいろな場を通じまして我々の意見というものを主張し、世界的な制度調和ということに率先して取り組んでまいりたいと思っております。
  13. 畑恵

    畑恵君 あれだけトップを走っていると申しました米国が、なおかつもっともっと頑張らなきゃいけないというふうに中で批判を受けているということを聞きますと、ちょっと背筋が寒くなる気がいたしますけれども、ぜひ今の意気込みのとおり頑張っていただきたいと思います。  日本が、日本だけでこの問題を考えていらっしゃらないと思うんですけれども、アジアというくくりでどう考えるのか、欧米を目の前にしてどう考えるのか、そしてその研究開発機関ですとか民間というところとの連携をどう考えるのか、いろいろな問題があると思います。そういう意味では、本当に総合的な見地から考えていかなければいけない知的財産権施策でございます。  日本の中を見ました場合に、非常に大きな問題だと思いますのは、分野別に複数の省がそれぞれ担当している、特許著作権、それぞれ違うというようなところがございますので、知的財産政策ということでそれを国家戦略的に進めるのであれば、やはり一本化して政策を進められるような、そういう組織体系というのも必要ではないか。仮にでありますけれども知的財産庁と呼ぶようなものを今後、すぐにではないですけれども、実行していかなければならないのではないか。そういう組織枠組みの話になりますと、官庁の話ではなくてこれは政治家役目でございます。  そのためには、国会議員知的財産政策重要性というのをよく認識して一致団結して進めなければいけないわけです。大臣としてはこの問題なかなか言及しにくいところもあるとは思うんですけれども、もしその場合には、そこの部分を少し離れて一人の議員として、知的財産権に非常に造詣が深くて問題意識の高い与謝野議員としてお答えいただいても結構なんですけれども、この知的財産政策の一本化ということについてどのような御見識をお持ちでございましょうか。
  14. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 御指摘知的財産権に関する行政組織につきましては、基本的な法目的の相違を踏まえて編成されているわけでございます。例えば、特許法産業の発達に寄与することを目的とし、著作権法は文化の発展に寄与することを目的とする、それぞれ法目的を異にしていることを踏まえまして、特許庁及び文化庁がそれぞれの法律を所管しているのが現在の体制でございます。  通産省としては、最近、権利侵害への対応の強化等共通課題も出てきておりますことから、関係省庁との間で具体的な施策の検討に際して、審議会等委員として相互に参画し合うなど協力連携強化してきているところでございまして、こうした交流を通じまして、今後とも整合性のとれた戦略的な政策推進に努めてまいります。  なお、今、文部省文化庁と話をしておりまして、通産省からも文部省文化庁に出向して著作権法勉強をする必要がある、また、もちろん文部省文化庁で必要であれば我々としても受け入れる、そういうことで、相互に、特許法のこともわかっていただき、また我々も著作権法のこともわかった上でそれぞれの行政を進めていくということの必要性は実は感じているわけでございます。
  15. 畑恵

    畑恵君 ありがとうございます。  人事交流を初めとしてさまざまな連携のとり方というのを模索していらっしゃる、また実行していらっしゃるということでございますので、一気に物事を進めるというのは難しいと思いますが、そのような形で地ならしをしながら、とにかく政策として事実上一本化されて国家戦略として打ち出せればいいわけですので、ぜひそういう環境整備に努めていただきたいと思います。  では、ちょっと変わりまして、昨今のデジタルネットワーク技術進歩の中で発生している問題について伺ってまいりたいと思います。  デジタルネットワーク技術進歩の速度というのが非常に速くて、今では画像ですとかデータなどの情報コンテンツ加工複製がいとも簡単に行われる上に、しかもほとんど劣化がないということです。こうなってしまいますと、加工複製、再発信が可能になったことは、これ自体技術進歩のメリットだとは思うんですけれども、反面、現行著作権処理枠組み、これにおさまり切れない新たな問題というのが生じていると思います。  現在は、著作権そのものが単なる権利ということよりも非常に大きな経済的価値を持つようになってきている。こういう現状にかんがみまして、例えばの話ですけれども著作者人格権保護規定を初めとして現行著作権に関するさまざまな規定が、情報コンテンツの流通とか利用の実態にそぐわないのではないかという声が現場からよく聞こえてまいります。政府としてはこうした課題にどのように今取り組まれているのか、伺えますでしょうか。
  16. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えをいたします。  近年、デジタル化でありますとかネットワーク化の進展に伴いまして、音楽、美術、映画などの著作物の利用形態も多様化し、その経済的価値にも改めて関心が高まっているところでございます。  文化庁といたしましては、このような社会の変化に対応いたしまして、著作権制度の改善を適時適切に行い、著作者の権利利益を確保していくことが重要である、それがひいては文化の発展にもつながっていくのであろう、このように認識いたしております。法制度の面では、平成九年にインターネット等に対応いたしました公衆送信権でありますとか送信可能化権の整備を行ったところであります。  今後も必要に応じまして見直しを図ってまいりたいと考えておりますし、こういった法制度面の整備に加えまして、著作物の円滑な利用を図ることも重要でございます。文化庁では、著作物の利用手続円滑化のためにさまざまな分野の著作物の権利情報を一つの窓口で提供するシステムの構想を今推進しているところでございます。  また、著作権者にかわりまして著作権を行使している著作権管理団体のあり方につきましても見直しを進めているところでありまして、時代の変化に対応して的確に、また効率的な権利処理体制が整備されるよう今後とも努力をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
  17. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 経済社会の情報化の進展に伴いまして、また先生指摘の情報技術の進展に伴いまして、いわゆるコンテンツと言われるものの円滑な流通あるいはその利用を図っていくということは非常に重要でございますが、一方において著作権者の保護をきちっと図る、この両方の要請を両立させるということがますます重要になるという認識を持っております。  通産省におきましては、デジタル化ですとかあるいはネットワーク化に伴います諸問題につきまして、産構審でずっと御議論をお願いしていたわけでございますけれども、その結論を踏まえまして、今国会に、コンテンツの無断視聴ですとかあるいは無断でコピーをするというのを防止する技術につきまして、これを無効化する装置というのをどんどん販売するというようなことが横行しております。こういうことに対して差しとめ請求を認めるという内容の不正競争防止法改正案というのを実は提案させていただいております。その中で、著作権法の直接の対象になっておりませんコンテンツの無断視聴、これに対しても規制の対象にしているわけでございますけれども、一方におきまして、その中身ですが、民事救済にとどめる、つまり刑事罰を科さないということで必要最小限のものにするという配慮をしております。  こういうことで、私どもとしては今後とも、コンテンツの制作者あるいはコンテンツの提供者、それから著作権者あるいは機器のメーカー、こういった関係者の間で新しい時代に対応しましたビジネスの枠組みづくりのための調整が円滑に進められるように、これから関係省庁とも十分連絡をとりながら今後適切に対応していきたい、このように考えております。
  18. 畑恵

    畑恵君 時間も来てしまいましたけれども、ぜひ連携をとっていただきたいのはもちろんでございます。  ただ、例えば権利交渉で折り合いがつかなくて、ビデオのソフトですとかDVDのソフトですとか、結局商品化を断念したというのがアンケートをとりますと六割以上あるということで、やはりこれは問題。でも一方で、確かにデジタルコンテンツの制作者側にも著作権など権利問題に関する認識というのがまだかなり低いという、そういう結果も出ておりますので、ぜひ連携をとっていただいて、双方といいましょうか、関連各省庁がそれぞれバランスをとれるように、特に使用料の規定というのは、民民で解決することだといってもなかなかこのところで進まないということはたくさんございますので、ぜひ円滑に進むように御指導いただきたいと思います。  時間が来ましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。
  19. 福山哲郎

    福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。  きょうは、特許法改正について質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。  昨年の四月、先ほど畑委員もおっしゃられましたように、特許法損害賠償についての改正も含み四十年ぶりに改正をされまして、とうとう日本もプロパテント時代のスタートを切った、今回その改正がいわば二段ロケットの二段階目ということで、各委員先生方の御尽力で附帯決議がなされまして、今回その附帯決議の内容がかなりの部分反映されているというふうに考えております。  とはいえ、まず、特許や実用新案、意匠、商標など、これまで特許庁が担当してきたものというのは、工業所有権といって、ある意味で物権的なアプローチをされてきたように感じています。この所有権という概念から、産業財産権というような形の取引ができるような状況でということで、今まさにこの特許の問題というのはその変化の真っただ中にあるように考えております。  そうなると、こういった技術というのはまさに国境がなく動き回っていく。その国境がない中で、どの国で研究開発をすれば一番得かという競争が実はもう始まっているんだろう。そうすると、当然、知的財産権保護が最も強い国に研究成果というものが集まっていく状況になっていくのではないかなというふうに思っていまして、これに乗りおくれてはいけない。まして、日本は先頭を切るんだという心意気のもとに今回の改正案がされたのは重々承知をしておるんですが、とにかくこういう状況で、日本産業発展、技術集積というのが外へ出ていくことに対して抑えていく。  これは大きく国益に関係するものだというふうに思いますので、こういった状況を踏まえて、まず、知的財産権に関する国際的な戦略というものを通産大臣はどのようにお考えになられているのか、大きな枠組みで御答弁をいただければありがたいと思います。
  20. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 技術開発をやった場合に、それの成果に対して価値を与える特許を初めとした知的財産権制度は、研究開発に要した投資の回収を促進し、研究開発へのインセンティブを付与するなど、技術革新、ひいては世界経済発展の基盤としてますます重要になってきていると考えております。  こうした中、経済のグローバル化が進展する今日、円滑な貿易、投資、技術移転に資する予見可能性の高い安定的なビジネス環境整備に向け、知的財産権制度分野においても次のような課題が重要となってきております。  第一に、制度の国際調和に向けた透明性の高い国際保護ルールの確立であります。第二には、情報通信技術やバイオテクノロジーなどの先端技術の国際的な保護水準の調和でございます。第三には、知的財産権が尊重される国際的な事業環境整備でございます。  日本といたしましては、以上の三つの課題に対処するべく、今後の国際交渉に積極的に参加する所存でございます。特に、国会の了解をいただければ、五月中旬に開催予定の四極貿易大臣会合、五月下旬の先進国特許庁長官非公式会合などを通じまして、WTO・TRIPS協定等、知的財産権制度の今後のあるべき姿について議論してまいる所存でございます。
  21. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。  国際的な観点からいうと、今大臣がおっしゃられたことはまさにそのとおりだと思いますし、その中で日本が存在感を持ってやっていくということは重要だと思います。逆に言うと、実際に国内でどれほど技術を養成していくかというのも大変重要な問題だと思います。そういう点で見ますと、改良型の技術開発から付加価値のより高い創造的な技術開発へ重点をシフトする必要があるというふうに私は思っていまして、創造的な技術研究を活性化させる必要がある。  ところが、我が国特許の内容を見ますと、既存技術の小改良や改良性の高いいわゆる改良特許というのが四分の三を占めている。創造性、独創性の高い基本特許というのが基本的には余り多くないというのが現状であります。  この法案改正が創造的な技術の開発にそのまま結びつくとは思わない。逆に言うと、それのための条件整備だということはよくわかりますが、こういった日本現状をどういうふうに分析されているのか、また、アメリカなどとの差も含めて、我が国産業競争力が減退することにならないか、その辺の見通し、創造的な技術開発に関する戦略をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  22. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生指摘のとおり、私ども企業向けにアンケート調査いたしましたところ、御指摘のような内容の実態があるということを私どももつかんでおります。日本の場合には、国内におきます企業間の競争がほかのケースと比べまして大変厳しい、激しいという実態がございまして、どちらかというと企業特許戦略というものを企業の生き残り戦略の一部に活用されるということで、他社が特許をとるであろう、とったであろうということを想定しながら、ある種防衛的に特許戦略を立てるというような実態もございます。  そういうふうなこともございますものですから、基本特許にウエートが置かれるというよりも、残念ながら改良特許のウエートが高い。あるいは、実際に出願したけれども特許化される登録件数というのは全体の三割でしかないというような形になっていること、これについては制度面で改正される部分は何とか是正していきたい。  今回、こういう形でもって御審議をお願いいたしているわけでございまして、そういうことによりまして私どもが期待いたしますのは、まさに先生指摘のように、創造的な研究開発をすることが日本の市場において十分に受け入れられるんだという制度的な担保と、それを使う側の意識というものが相まって、多分最も理想とされるような企業活動が行われることになるのではないかというふうに期待いたしております。  先ほども御紹介申し上げましたけれども日本だけではございませんで、世界がどんどん新しい技術を求めて、それを商業化する、新しい企業を起こすという形で進んでおります。日本がそれにおくれをとらないような形でもってやる、その一番ベーシックな着実なやり方というのが、私どもが主張いたしております創造性のある環境づくり、知的な活動をうまく創造サイクルに乗せることによって、そういう環境づくりを一刻も早く日本の中でも築いていくことが重要だということで、今後そういう方針のもとでやっていきたいというふうに思っております。
  23. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。  今回の法案の中で、特許庁長官がメッセージとして、例えばここの部分は創造的な技術開発をする条件整備として一番重点的に私たちは考えたというようなところはどういった点になりますでしょうか。全部がそうだと言われれば、全部がそうなんでしょうが。
  24. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) そのとおりでございまして、制度的な部分で私どもが関係方面と非常に工夫いたしました点といいますのは、やはり知的財産権という非常に経済的に価値のあるものを開発するわけでございますので、それがきちっと評価されるような市場づくりにつながる制度にしなきゃいけないということで、侵害された場合の補償、回復というところで、権利的にそれが素早く回復される、それから侵害された場合に十分な経済価値を回復できるような、そういう制度にする。  そこで、先ほど大臣からも御紹介申し上げましたけれども計算鑑定人というような方々の支援を得ながら制度運用するというのは非常に工夫をした部分だと思っております。
  25. 福山哲郎

    福山哲郎君 では、具体的に法案の中身について少しお伺いをしたいのですが、今回、出願人に対して、三年以内に審査請求を短くされた。これは私は大変いいことだというふうに思うのですが、現実に我が国の今までの審査請求制度の利用状況を見てみますと、六、七年の間ずっとほったらかしにしておいて、七年目のぎりぎりのところで集中的に申請をするという状況にあります。  今回、一気にそれが三年になるわけです。そうすると、出願人にとっては大幅な実務の変更を伴いますし、出願に対する評価体制というものも、急激にぎゅっと押し詰まって、実はかなり大きな負担がかかるのではないか。僕は法案趣旨には賛成なんですが、逆に、その評価体制の整備に対して負担と混乱がないように、今どのようにそれを配慮されているのか、お聞かせをいただけますでしょうか。
  26. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 一つ先ほども御紹介申し上げましたけれども日本の場合は非常に出願の数は多い、しかしながら特許化されるのは全体の三割ぐらいだというところでございます。  そもそも、特許化される前に審査請求という手続をとっていただくことになるわけでありますが、半分は審査請求されないということでございます。先ほど申しましたように、日本企業同士の競争が非常に激しいということを反映いたしまして、どちらかというと防衛的になる。したがって、最後まで出さなければ、こちらも出さなくていいということがございますものですから、そういう結果を招来しているんだというふうに考えております。  ただ、これはほかの方々からすると権利の帰趨が未確定なままになってしまいますものですから、これではほかの人の研究開発を阻害することにもなりかねないということでもございますので、今回こういう形でもって審査請求期間現行の七年から三年にぜひ短縮していただきたいということでお願い申し上げているわけでございます。  その結果、審査請求件数が増加することになるのではないかという御懸念、私どももそういうことの可能性については十分配慮しなきゃいけないというふうに考えております。一つにはいわゆるペーパーレス計画、これを私ども長い間計画的に進めさせていただいておりますけれども、これをさらに実効あるものにさせる。それから、私ども特許庁でこれまでやってこられた方で、わかりやすく申し上げますと、定年になられた、定年になりそうだ、しかしながら同じような仕事をやりたいという意欲と能力を持った方がたくさんおられます。そういう方々の力というものをうまく活用させていただいて、そういうことを通じまして審査処理件数というものを少しでも高めるというような形をとってきております。  おかげさまで、最近に至りましては審査処理件数というものは審査請求件数を上回っておりますものですから、約四、五万件毎年上回るような環境になっておりますので、何とかその辺のやりくりはできるのではないか。  それから、さらには情報の分野で、これまでも特許情報をマージナルコストで提供するということによりまして、民間企業のデータベース構築をそういう形でもって間接的に御支援をさせていただいております。  それに加えまして、特に中小あるいはベンチャー企業に注目いたしまして、三月末、つまりあすから私ども特許電子図書館をいよいよインターネットで開放することができるようになっております。これによりまして、特許庁が保有しております約四千万件の特許情報、必ずしも特許だけじゃございませんで、工業所有権関係それから非特許文献なんかも入っておりますが、こういったものを分類・検索サービスつきで世の中に御提出するということを考えております。これによりまして、出願する側にありましては、先行技術調査を非常に容易に御自身でおできになるという環境になりますものですから、一部の出願あるいは審査請求というものはそういうものを御利用することによって明らかに不要になるのではないかというふうに考えております。
  27. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。  もう一つ、同じような観点でお伺いをしたいんです。少し細かくなりますが、恐縮です。  無効審判の審理において、書面のやりとりを口頭審理にするということの促進が行われていまして、平成八年まで二十件以内だったものが、平成九年は五十六件、平成十年には百四十四件を数えて、大変ふえている。その中で、これまでは口頭審理が厳格に行われたかどうか、適法に行われたかどうかの証明手段である調書の作成を審判長の命を受けた職員が行っていることを、今回、客観性、公証性を担保するために審判書記官というものを創設するというふうに改正案で入っているわけです。  これはどのような形での人員体制を整えられるのか、またその件数増に対応できるのか、先ほどと同じような観点でございますが、お教えをいただけますでしょうか。
  28. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のとおり、口頭審理案件というものが最近非常にふえております。従前はどちらかというと書面に依存するケースが多かったわけでございますが、口頭審理を通じまして、特に当事者の言い分というものが非常にはっきりと明確な形でもって確認できるというメリットが大きいということを踏まえまして、これをベースに今後やっていくことが多分社会的なニーズにこたえることになるのではないか。そのためには、手続面でももう少しきちっとした形にしないと客観性、信頼性というものが得られる形にはならないということもございまして、今回審判書記官という新しい制度を導入していただくべくお願い申し上げているところでございます。  具体的にこういう仕事ができるのにはそれなりの専門知識が必要でございます。少なくとも特許実務を十分に経験している、それに加えまして、特許法のみならず民事訴訟法等の関連法規の知識を十分持っている、あるいはやはり調書というものを作成するのはそれなりの専門性が必要でございます、調書を作成する能力を持っている、こういう方々でなければいけないということでございます。この法律をお認めいただければ来年からこういう制度を導入したいということでございますので、若干の時間的な余裕をいただいた上で、私どもの研修所で所要の研修を十分にしていただいて、それで対応できるような形にしたいと思っております。  具体的には、三人の審判書記官で対処するということでございます。現在、今御指摘のように百数十件弱でございます。したがいまして、一人当たり数十件ということになりますので、これは私どもの実務経験からいいますと十分にこたえ得る量だというふうに判断いたしております。
  29. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。  その専門性のある人材というのは、先ほど言われた例えば特許庁のOBの方とかもしくは弁理士の方とか、そういうふうなイメージでよろしいのでしょうか。
  30. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) むしろ現役の方でございます。
  31. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。  次でございますが、今回の答申に書かれて、そして法案改正で見送られた点なんですが、これはお答えになられる範囲なのかどうかはちょっと僕も判断できないので、それは御判断をいただければと思います。  弁護士費用の敗訴者負担の導入については、答申の中では積極説、消極説両論が併記されておられます。訴訟の結果、権利者の得る賠償額との関係で弁護士費用をどちらが持つかということに対して、これは特許庁のお答えいただける範囲なのかどうかちょっとわからないのですが、この件について答申の中のものが今回外れているということで、どういうふうにお考えなのかをお教えいただけますでしょうか。
  32. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生が御指摘された点以上のことは私ども、こういうふうにやりたいということを持っているわけじゃございません。  弁護士費用のみならず、できるだけ侵害した側の利益というものを立証する、この立証の仕方も大変難しいものがございます。利益から所要のコストを差っ引けばいいじゃないかというような議論がございますが、これも実はどういう客観的な証拠をもって費用と認めるかというような問題もございまして、それが不明な場合に、最終的にはでは収入として得たもの全部とっていいのかどうかというような議論もございます。この点については今後いろいろなケースというものを踏まえて判断していきたい、こういう結論になったものですから、私どもとしては、今まだ方向づけをするのは時期尚早だということで触れないことにしたわけでございます。
  33. 福山哲郎

    福山哲郎君 先ほど畑委員の方からもありました司法制度改革の関係になりますが、間違いなく知的所有権訴訟というのはこの流れからいってこれから増加傾向にあると思います。  ところが、裁判所の体制、司法の中の体制では、東京地裁で専門部が一部増設されたという動きがありますが、抜本的に拡充強化がされているわけではない。権利の迅速な確定をしなければいけないと言っていますが、そういう点も含めて、これは司法の問題なのでこれも言及いただけるかどうかは別に、専門的な知識を有する裁判官の養成等については今どのようにお考えなのかをお教えいただけますでしょうか。
  34. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 特許等の侵害訴訟を円滑に運営する要件といたしまして、技術的な知見を有する私ども特許庁と法的判断能力を有します裁判所がうまく連携をしないと所期の目的を達することができないということは御指摘のとおりであります。そういう観点から、今回の法案におきましても、特許庁裁判所との間の協力関係というものを意図的に強化する、そういう規定を幾つか設けさせていただいております。  具体的には、侵害情報を交換する、それから特許庁専門的判断を提供することによって裁判におけます判断業務というものを少しでも迅速化できるような形にするというような工夫をさせていただいております。  それから、侵害訴訟の迅速な解決を図るべく、私どもから専門調査官を裁判所に配置させていただいております。この人たちに対する特許情報、これをできるだけいわばオンラインで提供できるような、あたかもかつて御自身特許庁においてやっておった仕事と同じような環境で調べができるというような形になることによって、審理の迅速化が図られるのではないかというふうに考えております。  こういう形での協力関係というものを今後ともぜひ強化してまいりたいと思っております。
  35. 福山哲郎

    福山哲郎君 次に、文部省にお伺いをしたいんです。  日米の大学における特許の出願件数というのが異常に差が大きくて、一九九五年の段階で日本は百三十七件、アメリカは五千百件ということで大変大きな違いがある。この辺のことにかんがみて、昨年、大学等技術移転法、TLOができたんだというふうに思います。  歴史的に見てなぜこのような差が生じたのかというお答えと、実際に大学での知的財産開発のために文部省としては具体策をどのようにお考えなのか、それからもう一点は、先ほど申し上げたTLOについて今進捗状況はどのようになっているのか、三点についてお答えをいただけますでしょうか。
  36. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 先生指摘いただきましたように、工業所有権審議会の答申資料によりますると、平成七年、一九九五年でございますけれども日本の大学が特許出願をいたしました件数が百三十七件に対しまして、米国の大学が特許出願した件数が五千百件というふうに承知をいたしておるわけでございます。  ただ、例えば権利の帰属のあり方につきまして、アメリカでは一九八〇年のベイ・ドール法制定以降、原則として大学に権利が帰属するというふうにしていることに対しまして、日本の国立大学では原則として大学ではなく個人に帰するというふうにされてございまして、実態としても八割強が個人に帰属しているということなど、制度面での違いというものもございまして、一概に単純な比較というのは難しいのではないかというふうに思っております。  ただ、帰属先がどうであるかということにかかわりませず、日本の大学の研究成果というものが必ずしも特許に結びついていないのではないか、こういう指摘があるということは事実でございまして、私どもといたしましては、大学の教官が積極的に特許がとれるような環境整備していくことは重要なことだというふうに認識をいたしております。  そうしたことから、例えば研究者のインセンティブを高めるために、科学研究費補助金という基本的な研究費がございますけれども、その中の研究業績という欄がございますが、その中にどの程度特許取得したのかというようなことについての記載欄を設けるというようなことでございますとか、あるいは教官個人が持っております特許を出願するためのサポートの体制というものをつくっていく。先ほど先生指摘ございましたような、支援をするためのTLO法と言われるものを通産省と一緒になって制定をして促進しているというようなことがございます。また、平成十一年度からでございますけれども、科学技術庁と共同いたしまして、大学の教員の特許マインドというものを涵養するためのセミナーというようなものも開くことにいたしておるところでございます。  今後とも、大学の教員の特許取得を支援するための環境整備、ひいてはそれが民間に活用されていくことについて努力をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、TLOの設立状況でございますけれども、御案内のように、昨年の八月一日からいわゆるTLO法が施行されておるわけでございまして、昨年の十二月には、東京大学を中心といたします株式会社先端科学技術インキュベーションセンター、それから東北大学を初めとする東北地域の国立大学を対象といたします株式会社東北テクノアーチ、それから立命館大学を初めとするところの関西地域を対象とします関西ティー・エル・オー、さらには学校法人日本大学、その四法人から申請のありました実施計画について承認をいたしたところでございます。それ以外にも、近年、北海道大学、筑波大学、東工大、名古屋大学、九州大学など二十以上の大学で設立に向けての全学的な検討委員会というものが設けられているなど、学内外でさまざまな形態レベルでの検討が進められておりまして、私どもとしてもそれを推進していきたいというふうに考えているところでございます。
  37. 福山哲郎

    福山哲郎君 先日、この質問をするのである技術系の大学の先生のところへお話を伺いに行ったら、特許を出すよりも論文を発表する方が大学の世界では評価が高いんや、そこの評価がもらえないんだったら特許へ出すよりも学会での論文発表の方を私たちは優先する、そういう風土が日本のアカデミズムにはあるというお話を直接伺いました。  今のお答えをいただいたのですぐその風土が変わるとは到底思えないんですが、その辺について文部省はどういう御認識でいらっしゃいますでしょうか。
  38. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 大学の教官がまず最初に考えますのは、自分の研究成果というものを論文にすることであるということにつきましては、日本の研究者はもちろんでございますけれども、私どもの承知している限りにおきましては、アメリカの研究者においてもそれは同様であるというふうに思っております。ただ、とりわけ日本では、特許取得するということが、研究評価、研究の業績として認められにくい、そういう風土があるということは先生のおっしゃるとおりであろうと思っております。  したがいまして、先ほども若干申し上げましたように、大学の先生方に対します代表的な研究費でございますところの科学研究費補助金、そういうものの業績欄に特許取得状況というようなものを記載させるというような形で、申請を評価する上での一つの方法にするというようなことなどの取り組みをして、大学の先生方の意識を少しずつ、特許をとるということも研究業績としての重要な一要素だという認識を持っていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  39. 福山哲郎

    福山哲郎君 ということは、今の表現でいいますと、特許をとることも業績の評価の一部であるということの認識を持ってほしいということなんで、文部省特許方向に誘導してそっちへ向かっていくという形でもないわけですね。一応学会での発表等は、もちろんアカデミズム、それが大事なのはわかるんですが、それは一部の選択肢としてそういうことも評価の対象に入れましょうよという、今の段階ではその程度なわけですか。
  40. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 大学の先生方が行っておる研究活動は非常に幅が広いわけでございまして、もちろんすべての研究が実用化に即結びつくという研究をいたしているわけではないわけでございます。ただ、中には研究成果というものが産業界等の活用にふさわしいものというのは当然あるわけでございまして、そういうものがいたずらに埋もれておるということはよろしくない。  したがいまして、先生方の意識というものを、学会発表あるいは論文発表という形態とともに、そういうような内容の研究成果につきましては速やかに移転ができるようにということで、私どもとしても先ほど申し上げましたTLOというようなものを促進するという形もとっておりますし、私どもの持っておりますパンフレット等でもそういうことについての啓発をしているつもりでございます。
  41. 福山哲郎

    福山哲郎君 また少し話が変わります。  マドリッド協定議定書に参加をするというお話について、二、三お伺いをしたいと思います。  一つは、今このマドリッド議定書に参加するに当たりまして、アジアを見たところ、近隣アジア諸国において我が国の意匠や商標等が大変模倣される例が多くなっていまして、この模倣品流通というので我が国産業は大変被害をこうむっている。これの対策に苦慮しているというふうな話も伺っているんですが、この模倣品に対する対策をどう考えているのか。  さらに、そこに加えて、模倣品が出回っているアジアにおいて実はこのマドリッド議定書に対して参加を表明している国がまだまだ少ないということの現状についてどのように認識をされているか、また対策についてどう考えているのか、お伺いします。
  42. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のとおり、アジアを中心といたします発展途上国におきまして、特に日本の商標の模倣が非常に多いということはそのとおりでございます。これを何とか改めなきゃいけないということで、基本的には、御案内のとおり、二〇〇一年からWTOのTRIPS協定の履行期限が来るわけでございますので、それぞれの国におきまして総合的な知的所有権制度整備というものがとられているところでございます。  さはさりながら、制度があれば必ずしも十分だということではないのが現実でございますので、模倣被害の実例を私どもなりに調査いたしまして、これまで発展途上国政府に対しましては、それをお示ししながらこういうふうに改めてほしいということを申し上げ、制度運用の改善要請を行ったりいたしております。  また、あわせて、アジア等の発展途上国の取り締まりに当たる方々に日本に来ていただいて、日本ではこういう形でもってやっているからこそこういう欲しい技術が入ってくるような環境になっていますということをお教えさせていただいております。  それからまた、日本の方の企業にも必ずしもマインドが十分にできていない。模倣されてやっとこれで一流の企業になったというようなことを言われる企業も現実の問題としてございます。そういう方々には、そんなことをやっていたんじゃ問題を大きくするばかりだということを申し上げて、外にいる方々に模倣品被害のセミナーを開催する。こういった実態がありますよということをお教えしながら、それをどういうふうにやったら回避できるかということを、アメリカとかヨーロッパの事例を申し上げながら、マニュアル集をつくるなどして御協力といいますか、むしろ意識改革をしていただくべくいろいろな働きかけをいたしているところでございます。  それから、マドリッド協定議定書でございますけれども、御指摘のとおり、実はアジア諸国でこれに参加いたしておりますのは中国と北朝鮮、この二カ国でございます。ほかの国がまだ参加されていないということで、私どももその辺は非常に気になっていますものですから、去る一月に日韓特許庁長官会合というのがございまして、その場でもぜひこれに入るべきではないだろうかというようなお話を申し上げております。韓国では具体的にマドリッド・プロトコルに参加すべくその手続を早急に進めているんだというお話でございました。したがいまして、韓国は時間の問題で参加されることになると思います。  ASEAN諸国にもお話を申し上げているんですけれども、そのもう少し手前の状況にあるものだから、まずはTRIPS履行をきちっとやるための制度づくりをした後で、こういった問題についてもやりたいというのが実態のようでございます。いろいろな機会を利用しながら、日本の経験を十分お話ししながら、それをやらないと欲しい技術が入ってこないということについて御理解いただけるように今後とも努力してまいりたいと思っております。
  43. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございます。  本当に一刻も早く働きかけをしていただいて、それこそ日本がリーダーシップを果たしていただかなければいけないと思います。  もう一点言いますと、このマドリッド・プロトコルにはアメリカが参加をしていません。現実に簡便に迅速に安く商標権をとるということに対してアメリカという巨大な市場が入っていないというのは、実は画竜点睛を欠くというか、本当にこれで議定書がうまく機能しているんだろうかという疑念を持たざるを得ないわけです。アメリカの参加の見通し、また今何でアメリカが参加をしていないのかの理由について特許庁としてどのようにお考えなのかをお聞かせいただきたいと思います。
  44. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) アメリカの場合は、一応行政府としてマドリッド・プロトコルに参加する方向で従前よりも熱心に進めるような形になるのではないかという予測をいたしております。  アメリカがこれに問題視しています点は一つだけでございまして、EUがこのマドリッド・プロトコルに入っているヨーロッパ諸国に加えてEUという、ある種二重投票権を持てるような形になっている、これはおかしいというところでありまして、私どもお伺いしている限りでは、アメリカの中で一部のところがこれに問題を提起している。  今まではそこの意見が非常に強かったけれども、最近はやっぱりトータルとして商標の保護というものをアメリカ企業も非常に重視しておりますものですから、商標の保護を受けるに当たりましてこのマドリッド・プロトコルというのは大変便利な仕組みでございますので、そういう現実というものを無視できないような環境になりつつあるということから、従前よりももう少しまともにと言ったらおかしいですけれども、多分議会におけます審議でもメンバーになること、加盟することを是とするような確率というものは非常に高くなっている、このように理解いたしております。
  45. 福山哲郎

    福山哲郎君 そろそろ時間ですので、最後に一つ、これほど特許法等改正が進んで世界の大きな流れになってきている。先ほど長官も言われましたペーパーレス化、それから特許電子図書館の開放等が出てきた段階で、私は、弁理士の資格要件というか役割というのはかなり大きな変化をもたらしてくるのではないか。今、日本全国で約四千人、これは数で足りるのかどうかという観点と、弁理士資格試験等、弁理士のあり方等についても弁理士法の改正も含めて視野に入れて考えなければいけないのではないかというふうに思っているんですが、最後にそういった点の御見解をお聞きいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  46. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 私どもも、弁理士の役割というものが従前以上に大変大きなものになってきているというふうに認識いたしております。先ほど来御紹介ありましたように、地方におきましても知的財産権のウエートというものは大変高くなっている。したがいまして、弁護士の方もそうですし、やはり知的財産権にかかわる方々の人的インフラを十分にしないことには十分社会的ニーズにこたえることにならないという認識では同じでございます。  しからば具体的にどうするかということになるわけでございます。量的な問題も私ども認識いたしております。今の四千人で十分であるかどうか、アメリカの場合には約二万人ほどいるということでございまして、経済規模から考えましてもアメリカの半分ぐらいいてもいいんじゃないかというような御議論もあります。  そういった点を含めまして、実は昨年の四月以来、私ども組織の中で今後の二十一世紀におきます弁理士の役割やいかん、今後どういう人、どういう制度にして拡充すべきかということについて議論いたしてまいりまして、その最終的な考え方というものがほぼ取りまとめられつつございます。  その辺を踏まえまして、今後さらに審議会等の場を通じまして、対象法になっております弁理士法、この改正も十分に視野に入れながらどういう役割を与えるべきかということについても十分な議論をしていただいて、それを踏まえて所要の措置をとっていきたいというふうに考えております。
  47. 福山哲郎

    福山哲郎君 ありがとうございました。
  48. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤でございます。  私は、まず特許法の関連でございますけれども特許庁知的財産権を重要な経営資源として位置づけ、その戦略的管理、活用を図ることは非常に不可欠だと、そういったスタンスをとっていることは非常によろしいと思います。  ソフトウエアの担保評価というのは極めて私は難しいと思っております。期間を限定して短期的な評価をいかにするか、あるいは二番目としては融資ではなくて投資にするとか、あるいは三番目として短い期間に資金回収の可能性をどういうふうに評価するか、そういった三点は非常に重要だと思いますので、ぜひそういった面についても検討をしていただきたいと思います。  まず通産大臣にお伺いいたします。  コンピューターのプログラムそのものの特許性ということなんですけれども、現在の特許法それ自体侵害行為を明確にするために物または方法の形でのみ発明を認めているわけです。その媒体クレーム、その媒体というものの特許でありますけれども、プログラムそれ自体は物でもないしあるいは方法でもないわけで、現状のままではプログラムクレームは認められない、そういった話がございます。  それで、特許法においてコンピューターソフトウエアプログラムをどのように保護していくか、こういった点についてはどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
  49. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) コンピューターソフトウエアにつきましては、まず国際的にも調和した形で保護していくことが重要であるというふうに考えております。  特許庁としては、従来からこれらの分野における発明について、保護範囲の拡大など、技術の進展に対応した措置を講じているところでございます。  具体的には、平成九年度以降、コンピューターソフトウエアのプログラムを記録したCD―ROMを解釈運用特許保護の対象に含めることとし、関連する運用指針を整備したところであります。  通産省としては、今後とも、コンピューターソフトウエアなど戦略的に重要な技術分野発明については、技術の進展や諸外国における特許保護状況を踏まえつつ、適切に保護していく方針でございます。
  50. 加藤修一

    ○加藤修一君 今、CD―ROMの話が出ましたけれども、要するにクレームの構成要素としてハードウエア資源を入れる必要があるという認識ということで理解してよろしいですか。
  51. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) そうでございます。
  52. 加藤修一

    ○加藤修一君 長官にお尋ねしたいんですけれども特許法のソフトウエアの審査、これはプログラムの知識等々を含めて非常に高度な、システムデザインをするシステムエンジニアでもかなり私は難しいんじゃないかと思います。そういった意味では相当高度な専門性を要求されるということなわけです。  そういった点から考えていきますと、先ほど人材確保の話も出ましたけれども、そういった面における人材の確保をどういう形で考えておられるのか、つまりサイバーポリスに対してサイバースタッフみたいなことも今後重要な点になるのではないかと思いますけれども、その辺どうでしょうか。
  53. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のとおり、この分野は技術の進展が大変早うございますものですから、それにキャッチアップするために私どもなりにいろいろな工夫をいたしているところでございます。  一つは、関係する文献というものが非常に膨大なものがございますけれども、そのデータベース化を図ることによりましてこの分野におきます技術というものにキャッチアップできるような、まずそういう情報確保ということをいたしております。それを審査するに当たりまして、特に先行技術としての有無というものをチェックする必要がございますので、そういう業務に当たりまして利用させていただいているということがまず第一でございます。  それから第二は、さはさりながら、文書だけでは必ずしも実感を伴わないということがございますので、この分野におきます研修の重要性ということを私ども非常に強く認識いたしておりまして、数はまだ決して十分ではございませんけれども、実際に最も先端的と思われているようなところの技術を持っている企業の方からのお話を聞くとか、そこに実際に参加させていただくというようなこと。国内のいろいろな関連する学会がございまして、そういった学会に出る、あるいは海外でもこの分野は非常に進んでいるわけでございますので、海外におきます学会にも参加する、そういうような工夫をいたすことによりまして、ある種肌で感ずるような形で技術動向というものを身につけられるような、そんな工夫をすることによりまして、必要な人材の確保、養成に努めているつもりでございます。
  54. 加藤修一

    ○加藤修一君 ちょっと質問を前に戻しますけれども、クレームの末尾がプログラムの場合、例えばインターネット上でプログラムをコピーする場合については、ハードウエアと直接関与していないわけですけれども、そういった場合は特許権侵害にならないという認識でいいんですか。その辺はどういう議論がございますか。
  55. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) インターネットのようなもの、オンラインのネットにあるもので、それが必ずしもCD―ROMのような媒体をとった形でのものになっていない場合には、まだルールができておりません。したがいまして、今後そういうふうなものをどういうふうに考えるべきかということについては、それぞれ関係者でもって、例えば日本だったらこういうふうにしたい、アメリカではこうしたい、ヨーロッパではこうしたいということを意見交換、情報交換しながら一つの秩序づくりを進めようということで、実は去る二月から三月にかけましてアメリカでそういう専門家同士の会合を持っております。
  56. 加藤修一

    ○加藤修一君 日本はどうしたいと思っていますか。
  57. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 今検討中でございます。
  58. 加藤修一

    ○加藤修一君 検討中で、中身は特段ないですか。
  59. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 中身を持った非常によくわかっている人間同士で今議論をいたしておりますので、できるだけ早目に結論が出るように督促いたしたいと思います。
  60. 加藤修一

    ○加藤修一君 これは恐らく媒体との関係になってきますので、相当特許法を変えなければいけないという話になってくるんじゃないかなと思うんです。どうもその辺は特許庁もよく整理されていないように私は判断してしまうんですけれども、大変難しい問題だと思います。  現行特許法では、特許出願後の審査請求期間は七年になっているわけですけれども、今回それを短くしていく、そういうことなわけですが、これは審査請求しなくても出願した特許内容については出願から一年半後には公開される、ただしその権利は未確定のまま、ある意味でライバル関係の企業などを牽制する役割も果たしている。つまり、企業防衛的な出願も多かったなという感じがしております。  そのことに関係して、多少似ているようで非な問題でありますけれども、鉱業権の設定出願処理問題ということについて質問したいと思います。  北海道管区行政監察局のあっせん内容について調べたことがございます。それは石油鉱業資源を試掘する権利、すなわち鉱業権の話であります。許可審査をする北海道通産局が出願を受理してから最長で三十年以上処分を保留していた、処分が留保されているのは約三万二千件、大部分がいわゆる石油開発会社であるということであります。これは行政監察局が事務の迅速処理をあっせんしたようでありますけれども、その出願の処理状況とあっせん内容について簡潔に御説明をお願いしたいと思います。
  61. 東田親司

    政府委員(東田親司君) お答え申し上げます。  総務庁では、設置法に基づきまして各行政機関等の業務に関する苦情の申し出があった場合に必要なあっせんを行っております。  本件、お尋ねの件でございますが、私どもの出先の北海道管区行政監察局に対しまして次のような申し出がございました。北海道通産局に鉱業権、この場合試掘権でございますが、この設定出願をしたけれども、二十年以上を経過した現在まで処分決定がない、早急に処分決定がなされるようあっせんしてほしいとの申し出が平成十年の四月にございました。これを受けまして、私どもの出先から北海道通産局に対しまして、本年の一月六日、改善を図るようあっせんしたものでございます。  あっせんの要旨を申し上げますと、二点ございまして、一点は、関係地方公共団体との協議など審査の時間に長期間を要しているため未処分となっている出願につきましては、審査事務処理の迅速化を図るとともに、長期間未処分出願の解消策というのを検討する必要があるということ、それから二点目は、出願を受理した後に処理を保留しているものがございますが、このようなものにつきましては、先願主義を採用している鉱業法のもとでは後願の処理を阻害することになるとも考えられますので、早急に処理を開始して処分決定する必要がある、こういう二点のあっせん内容でございます。
  62. 加藤修一

    ○加藤修一君 これは非常に不思議な話だと思うんです。未処分件数が全体で三万二千件を超える。二十五年前のものは二万五千八百件を超える。三十三年前のものもある。ほとんどが処分されていないでいるわけですけれども、これは通産省はどういうふうにお考えですか。
  63. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 北海道通産局でこれまでに出願を受け付けた件数の総数は十四万三千件でございますが、これまで八割弱に当たります十一万一千件の処理を行っております。ただ、結果的に御指摘のような三万二千件の出願についてはまだ未処理の状況でございます。  この未処理の大まかな内訳は、陸域にかかわるものが約五千二百件、海域にかかわるものが二万七千件でございますが、今行政監察局の方からお話がございましたように、この鉱業権の設定に関しまして、陸域を中心として権利調整あるいは鉱害関係などで関係者の同意をなかなか得られない、そういったものが一つございます。それからいま一つは、海域の二万七千件を中心といたしまして、鉱業権を付与するに至る具体的な開発計画がまだ固まっていないというようなことで留保をしているものがございます。  ただ、監察局の方からのごあっせんの趣旨を体しまして、今後の処理については意を尽くしたいというふうに考えてございます。
  64. 加藤修一

    ○加藤修一君 そのあっせん事項②についてでありますけれども、北海道通産局は「改めて出願人に開発計画の有無を確認し、早期に着手する意思のないものに対しては取り下げ指導を行うこととし、それ以外の案件については鉱業法に基づく事務処理を進めていく。」と。  これは具体的に今どんな状況でありますか。
  65. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) あっせんを受けました北海道通産局の今後の処理方針でございますが、ごあっせん事項の中の一つ、関係行政機関から、あるいは関係者からの意見、回答を早目に受けるべしという点につきましては、関係機関にそれぞれお願いをいたしまして、協議先に早期回答要請を行ってございます。その上で、今後の方針といたしましては、昭和六十年以前の陸域における未処分出願につきましては、今後五年をめどに解消したいというふうに考えてございます。  それから、あっせん事項②につきまして、これは主には海域での石油あるいは可燃性天然ガスの開発に係る出願でございますが、御指摘ございましたように、改めて出願人に開発計画のヒアリングをする等々も含めまして、今後の審査促進、事務処理の促進を図るということでございます。こういう趣旨で、通産局の中に関係の委員会を起こしまして、処理状況もフォローしながら迅速処理を進めるという方向でございます。
  66. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど、行政監察局の中に、「後願の処理を阻害することとなるとも考えられるので、早急に」ということで、委員会を立ち上げるという話でございますけれども、北海道の通産局でこれほどあるわけですが、全国でどの程度あるかということについて、ぜひとも私は調査すべきだと思います。そして、その実態を明確に公表すべきだというふうに考えておりますけれども、その辺についてはどうでしょうか。  大臣、どうでしょうか。
  67. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 御指摘も踏まえまして、北海道通商産業局以外における鉱業権設定出願についても、今後その処理状況調査し、これを公表する方向で検討してまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、今般の北海道通商産業局に対する行政監察局のあっせんも踏まえ、改めて出願者の開発計画の有無を確認するなど、未処理案件の処理を進めてまいりたいと考えております。
  68. 加藤修一

    ○加藤修一君 聞き逃したかもしれませんが、全国の通産局について全部やるということですね。
  69. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 北海道通商産業局以外における件についても、その処理状況調査し、これを公表するということでございます。
  70. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは次に、国内石油・天然ガス開発調査についてであります。  既に委員のお手元に配付資料が行っていると思いますけれども、石油・天然ガス開発調査についての補助金ですが、国が石油公団を通して、さらに石油公団から再委託という形で石油開発会社に基礎調査の内容を含めて行っているわけです。これまで国として予算をつけているわけですけれども、配付資料に載っておりますように約二千億円なわけですが、これはどれだけの効果があったか。非常に重要なことだと思うんです。また、商業生産したものがあるかどうかということも非常に関心を持っているわけです。  つい先日ですけれども通産省で基本政策委員会合同会議が行われました。ここでも大変大きな問題になっているわけです。  例えば、こういう議論があったわけです。いかにお金を有効に使い効率的に開発を進めるかということ、むだなくお金を使っていくことが重要であり、今までの方法がよかったのか、それとは違う方がよいのかよく検討する必要がある。あるいは、もう今の状態で国内の石油は出ないということではないのではないか。そういう意見もあったり、あるいは、国内の基礎調査についてはどれほどの効果があるのか不明確であり、また一体どれほどのお金を使っているのかもよくわからない。費用対効果が重要であり、これに見合うものなのか、これを明らかにすべき。今後も国内基礎調査を実施していくのか否か。これまでの路線を外れて議論をすることが必要ではないか。あるいはさらに、調査によって学術的な意味などはあるかもしれないが確かにその効果については不明確なところがある。国内開発については個人的には国内には石油はないものと思っていたくらいで、仮に国内にあったとしても採掘が困難な場所にあるのだろうと理解している。いわゆる国内石油開発の意義を再確認する必要がある。  こういう形で議論が出ているわけでありますけれども、どれだけの成果があったのか、あるいは商業生産したものはあるのかどうか、その辺について明確に御答弁をお願いしたいと思います。
  71. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) お答えを申し上げます。  基礎調査につきましては、これは補助金というわけではございませんで、日本の国の中にある石油・天然ガス資源の賦存を確認する等の目的で国が直接やる業務でございます。これにつきましては、先生指摘のように、昭和二十九年以降、関係の審議会から通産大臣に建議をいただきまして、計画を立てて実施してきておるところでございます。それで、平成十一年の予算額は百四十一億円、それから、計画が始まりました昭和三十年から平成十一年までで二千二百十八億円でございます。  この調査目的でございますけれども、直接井戸を掘って商業化をするということではございませんで、我が国の悲願でございますけれども国内における天然ガス、石油、この賦存を把握したいということ。それから、探鉱リスクが高いところ、例えば未開発な部分でございますとか、海域でございますとか、深い深度のものでございますとか、こういうものについて民間企業の探鉱の先導的な役割を果たしていきたいということ。それからまた技術力の向上を果たしたいということで、これまで累次進めてきているところでございます。  また、昭和四十二年には、国会附帯決議におきましても、こういう基礎調査を大いに進めなさいという御指摘があったところでございます。  それで、今の先生の御指摘でございますけれども、これは直接生産をするための井戸をつくるという目的ではありませんで、これまで石油とか天然ガスが発見されていないところで新たな発見の可能性を見出すために非常に深い井戸を掘ったり、新しい地域で井戸を掘るわけでございますので、そういう意味では探鉱という観点からすると非常にリスクが高いわけでございます。これまで八十本の井戸を掘りましたけれども、そこで直接油が出た、ガスが出たというケースは五坑でございます。
  72. 加藤修一

    ○加藤修一君 五本ですか。
  73. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 五本でございます。  ただ、この調査の資料をベースに国内企業は探鉱に取り組んでおりまして、第一次、最初の計画が始まったのが昭和三十年でございますけれども、そのときの石油生産は年間三十五万キロでございまして、天然ガスは一億五千六百万立米でございます。それで、生産地域は伝統的な地域に限られまして、秋田、新潟ということであったわけでございます。その後、これらの調査も利用されまして、平成九年現在では石油が八十四万キロリットルでございます。これは昭和三十年の二・四倍でございます。また、天然ガスは二十二億立米でございまして、三十年の十四・六倍というふうになっております。  また、生産地域も、旧来地域に加えまして、新潟県の沖でございますとか福島県の沖、それから北海道の陸域ということで、新しい油田、ガス田が開発されているところでございます。こうした新しい油田、ガス田の開発につきましては、この国内基礎調査の結果というものが活用されてきているわけでございます。  また、効果という点で申し上げますと、この国内基礎調査我が国の地質構造を知る上で大変貴重なデータでございますので、過去十二年間で約百四件の閲覧、開示をいたしております。これは石油企業のみならず、大学の研究室などにおきましても活用されてきているところでございます。  以上でございます。
  74. 加藤修一

    ○加藤修一君 結論を言いますと、今の説明では何のためにやったかよくわからないです。  それと、昭和三十年と比較すると二・四倍、天然ガスが十四・六倍だったでしょうか、こういう表現をされても困るんです。問題は、全体の何%のシェアを占めているか、そういったことを考えて示していただかないと。それは別の機会に示していただきたいと思います。  それで、石油公団から再委託されている石油開発会社は何社ぐらいございますか。その辺について、金額も含めて御答弁をお願いしたいと思います。
  75. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 過去古くデータをさかのぼる時間的余裕がございませんでしたので、平成二年から平成十年までの九年分のデータ、これは七次及び八次の基礎調査でございますけれども、九年分のデータで御説明申し上げます。申しわけありませんが、九年度と十年度は契約額でございまして、八年度までは決算額でございます。  そういたしますと、石油資源開発が三百四十七億八千八百万円、地球科学総合研究所が二百四十九億九千五百万円、帝国石油が二百七億五千七百万円、日本海洋石油資源が九十八億五千七百万円、出光日本海石油開発が四十九億三千五百万円、あと一億円以下のところが三井金属資源開発、出光石油開発、ジオウインドウ、ジャパンエナジー石油開発、この九社でございます。
  76. 加藤修一

    ○加藤修一君 今御説明いただきましたけれども、今私の方で配付した資料を考えていきますと、黒丸が石油資源開発株式会社、「子」と書いてあるのがその子会社なわけです。ほとんどが石油公団から石油資源開発会社に、平成七年度は六三%、平成八年度は七八%、調査費が行っているわけで、さらにその子会社にこういう形で流れているということを考えていきますと、このグループだけでやっているという話にもなりかねないわけで、もう少しこの委託の選定のあり方、透明性、そういったものについてきちっとやっていくべきだと思うんです。  話をもとに戻しますけれども、基礎調査をやっている目的それ自体がよくわからない、全然説得性がない、そういうことも含めてきちっとすべきだと思います。  委託会社の選定、これはどういうふうにやっておりますか。随意契約という話ですけれども、私がいろんな資料をいただいて調べた範囲では子会社とかこういった形になっているんです。これは癒着というふうに誤解されます。もうちょっと公正なやり方をすべきだと私は思いますけれども、どうですか。
  77. 今井康夫

    政府委員(今井康夫君) 基礎調査目的は、やはり国内資源の非常に乏しい我が国で何とか石油、天然ガスを発見したいということが最大の目的でございます。それで、今後新しく我が国で非常に賦存が見込まれると思われるメタンハイドレートなどのこともございますので、国としてはある程度長期的な視点からこういう調査を進めていかなければならないというふうに思っております。  また、今の御指摘の委託でございますけれども、まず我が国国内におきます石油開発企業というのはやはり限定されておりまして、こういうものに対応できる企業というのは基本的には石油資源開発と帝国石油、かつては両社とも国策会社であったわけでございますけれども、そういうところが生産においても開発においてもメーンのプレーヤーになっているということで、その能力の限界ということが一つございます。  また、具体的なケースにおきましては試掘、試錐と申しますけれども、試錐をいたす場合におきましては、調査地点、穴を掘る地点に最も詳しい情報を持っておるところに委託することを通常としておりますので、その意味でそこの鉱業権者ということになります。そうなりますと、日本の場合は、先ほど申しましたように国内の開発は大きく二社が行っているという観点からこの二社になる可能性が非常に高いということでございます。  また、今のは具体的に試掘をするというものでございますけれども、物理探査、これはダイナマイトを爆発させて反射してくる波で地層等を解析するものでございますが、そういう能力を持っております我が国企業先生のお出しになりました資料の地球科学総合研究所一社でございますので、物理探査と称しますけれども、物理探査についてはそこに委託をすると。海外のところに委託するということもないわけではありませんけれども国内資源の調査でございますのでこの一社に委託するということになっております。
  78. 加藤修一

    ○加藤修一君 なかなか理解ができないんですけれども、この石油資源開発株式会社というのは元公団じゃないですか。公団から分離してつくられた会社ですね。そこに再委託されて、さらにその子会社で回していると、私は非常に不思議にしか思いようがないんです。第七次、第八次の五カ年計画の、企業別にどういうふうに調査費用が使われているかどうか含めて、資料をきちっと出していただきたいと思います。  それから、時間も来ましたので最後に大臣の方にお伺いしたいんですけれども、こういう形というのは決して私は健全な姿だとは思えないんです。やはり、国民の皆さんも、見ていておかしいな、もうちょっとすっきりした形にできないのかと、そういうふうに思いますよ。参画できるような、ある意味で公正な入札制度というものを導入していくことも一つだと思います。それについてどう思うかということが一点。  それから、先ほど合同審査会だったでしょうか、部会なんかで話し合われている中にもありましたけれども、こういうことを機会にして国内基礎調査を存続するかしないか、そういったことも含めてこの国内基礎調査のあり方、あるいは委託先企業の選定のあり方、それから先ほどの鉱業権の取得の関係を含めて、登録の仕方を含めて鉱業法の見直し、そういった面についても見直しを考えていくべき非常に重要なポイントを含んでいる、そういうふうに思いますけれども大臣、どのようにお考えでしょうか。
  79. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 一部に発注が集中しているというのは、先ほど石油部長が御説明申し上げましたように、やはりそういう能力を持ったところということが私は中心であろうと思いますし、もちろん歴史的な経過もその中には含まれるわけでございます。  基礎調査をやっておくということは大変大事なことでございまして、日本人が日本国内の資源について、あるかないかわからない世界ではございますけれども、基礎調査を継続するということは、石油や天然ガスのみならず他の鉱業資源についても大事だろうと私は思っております。  それから、鉱業権の問題は石油、天然ガスだけの話ではありませんで、他の資源に関しても同じ鉱業法という物の考え方があるわけでございますから、一概にそれを改正するとか改正しないとかということを今この段階で申し上げるわけにはいかないわけでございます。
  80. 加藤修一

    ○加藤修一君 いずれにしましても、この関連については不透明な部分がございますので、関連の資料の提出をお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  まず最初にお聞きしたいわけですけれども、今回の改正というのは昨年の十二月十四日の工業所有権審議会の答申をもとにした具体化であるというふうに思います。  この答申には「プロパテント政策の一層の深化に向けて」というサブタイトルがついておりますけれども政府がプロパテント、特許重視策という場合に具体的に何をやろうとしているのか、特徴だけで結構です、教えてください。
  82. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 私どもが考えておりますのは、創造的な研究開発成果としての知的財産権、これをいかにして国が育て、発展させていくかということは非常に重要なことだということをまずもって申し上げたいと思います。  今後日本が二十一世紀に向けて科学技術創造立国を目指したいという意向があるわけでございますが、それを現実ならしめるためには、やはり国内だけではございませんで、海外を含めて日本現状というものをどう見るか、研究者にとって研究のしやすい場所なのか、研究開発をしてそれが十分に尊重される場所なのかというところが非常に重要な部分だというふうに思っております。科学技術がはぐくまれやすい環境であり、かつ権利化された暁にはその権利がきちっと正当に評価される、大事にされるというような形になって初めて我々の考えているところが実現されるんだというふうに考えております。それが一言で言うとプロパテント政策ということで集約される問題だと思っております。  先生御案内のとおり、アメリカにおきましては、あれだけの国力を持ちながら七〇年代に日本あるいは西ドイツといったようなところからハイテクでおくれをとったがゆえに非常に苦境に立たされたという経験を踏まえまして、八〇年代に入りましてからアメリカ競争力でどこを重視したらいいかというある種の戦略を持ちまして、こういうパテント政策というものを活用しながら今日を築いたということがございます。  我々はそれを参考にしながら、我が国として今の状況をどういうふうに判断するか、私どもなりに日本版のある種のプロパテント政策というものがあってもいいんじゃないかということでございます。一つは、知的財産権制度の基本であります早く強く広い権利保護実現する。これによりまして、どちらかというとアメリカヨーロッパと比べますとその部分でまだ若干のおくれをとっているという現状を一刻も早く直したい。主要国間では同条件で競争ができるというベースをまずつくらなければいけないのではないかというふうに思っております。  それから第二は、関係する方々の知的財産権についての意識のレベルというものが必ずしも理想的な状況になっていない。それが端的には、せっかく多くの特許を取りながらかなりの部分が十分に利用されないという環境にございます。このままでは非常に国費のむだ遣いにもなりかねないということを踏まえまして、何とかこういう環境を改善するということが必要ではないか、そのための施策を講ずるということが必要ではないか。  それから三つ目は、この制度経済的な制度でございますので、国際的な環境というものを十分に踏まえなければいけないということで、一つは先進国との間で同じような制度を持って重複したような業務を進めるというのはいかがかということで、私どもの言葉で世界特許と申しておりますけれども、世界特許に向けた制度の調和というようなものもやらなければいけない。発展途上国との間では、発展途上国におきまして権利を大事にするという土壌がまだ十分育っていないということもございますので、いかにしてそういう制度を導入し、それを守っていくという土壌をつくっていただく、そのための我々のこれまでの知見、これをお伝えするのが我々の重要な仕事のうちの一つではないか、そのようなことで総称日本版プロパテント政策というものを進めていきたいというふうに思っております。
  83. 西山登紀子

    西山登紀子君 強い保護、広い保護、早い保護、長官は早い、広い、強いというふうに言われましたけれども、この権利保護というのは日本人の出願であれ、外国からの出願であれ差別なく等しく保護されると理解していいでしょうか。
  84. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) そのとおりでございます。  そもそもこの制度が国際的につくられましたのは、百年余前にいうところのパリ条約というのができました。我が国を初めといたしまして現在百五十カ国余が加盟しているわけでございまして、その国際的なフレームワークの中で内外無差別にするという大原則がそもそもうたわれておりまして、それを私どもよしとして加盟いたしましたものですから、内外は全く無差別に扱っております。
  85. 西山登紀子

    西山登紀子君 そこで、政府がこのプロパテント政策を実施していこうとしているわけですけれども、この政策我が国産業にどのような影響を与えるかという点での業種別、あるいは分野別といってもいいでしょう、それから大企業、中小企業、こういう事業規模別にどのような影響を与えるかということについて検討されたことがあるでしょうか。
  86. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 今申しましたように、プロパテント政策の基本でございます早く強く広くというところの権利保護実現といいますのは、どの分野とか事業規模がということにかかわりませず、基本といたしますところというのは、先ほど申しましたように、ぜひ研究開発ということは国全体として非常にプライオリティーの高い重要なことだということを認知していただいて、そういう行為を行うに当たっては投資しただけの回収が十分にできるというような形にしなきゃいけないということで、研究開発へのインセンティブあるいはイノベーションを加速すると、そういうもののために我々はこの政策を進めているというふうに思っているわけであります。  もちろん、今先生指摘のように、したがって全くすべてを同一にしていいかという点については、私どもなりの配慮をいたしているつもりでございます。  例えば、規模別の問題で申し上げますと、中小企業に対しましては、従来より特許出願に先立ちます先行技術調査という行為を行わないとせっかくの出願がむだになりますので、その調査というのはなかなかこれは大変でございます。この部分を、私どもの傘下に社団法人発明協会というのがございますが、そこに依頼いたしまして、中小企業者が先行技術調査をしてくれないかというときに無料で実施するというようなことをやっております。平成九年度の実績で申し上げますと、約一千七百件ほどの実績がございます。  それからまた、今回、先ほどもちょっと御紹介申し上げましたけれども、あすから特許庁のホームページで四千万件に上ります特許情報、これをインターネットを通じまして無料で提供させていただくことになっております。  それから、さらに今回の特許法改正でお願い申し上げています点は、資力に乏しい中小企業に対しまして審査請求料、特許料の減免・猶予措置の特例について御配慮いただくようにお願い申し上げております。  業種別に申し上げますと、最先端技術分野でございますバイオでありますとかソフトの保護水準につきましては、特定の国のルールによって全部ひとり勝ちになってしまうような形になるのは世界全体にとって決して好ましいことではない、その国にとっても長期的に見ると決して好ましいことではないということを理由にいたしまして、関係国と常に問題を提起し合う、協議し合うというような場を設けております。そういう場を設けて、できるだけ調和のとれた、みんなにベネフィットがいくような、そういう形になるような工夫もいたしているところでございます。
  87. 西山登紀子

    西山登紀子君 いろいろ工夫をなさっているということですけれども政府が進めようとしているこのプロパテント政策というのは、キャッチフレーズ的に言いますと、強く広く早い権利保護ということです。この政策というのは産業にどういう影響を与えるか、各業種間でも相当効果が違うと思うんです。それから、出願は今八〇%が大企業ということですから、事業規模でもかなり効果が違ってくるんじゃないかというふうに思います。非常に微妙な問題もありますから、きちっとした分析が必要だと思うんです。  先ほどもお伺いいたしましたように、日本人の出願も外国人の出願も全く同じだということなんですけれども、そこで特許行政年次報告書を見ますと、特許登録件数で日米の比較をいたしますと、情報記憶装置、電子部品など八分野日本が優勢だと。ところが有機化学、医療機器、医薬など二十二の分野米国優勢ということになっている。技術貿易という点から見ますと、米国は大幅な黒字なんですけれども日本は赤字だと。  もう少し具体的に申し上げますと、日本は東南アジア諸国との技術貿易は黒字だけれども欧米諸国との技術貿易では先端技術分野を中心に大幅な赤字だということで、全体に赤字になっているということです。こういう欧米諸国との技術格差の現状をそのままにして強く広く早く権利保護するということになりますと、結果としては欧米諸国日本において強力な特許権を行使することを保障することになるんじゃないか。日本産業にとってはかえって打撃が大きくなるんじゃありませんか、大臣
  88. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 今回の特許法あるいはプロパテント政策というのは、その前提になりますのは、いかに日本人が物事を発明するか、新しい技術を開発するかということにかかわってくるわけでございまして、特許法が重要なのではなくて、むしろ発明とかあるいは新しい技術とかということが実は大事なのであります。  今回の特許法改正というのは、特許法改正のために特許法改正しているのではなくて、新しい技術や新しい発明を促すそのための環境整備というふうにお考えいただきたいと私は思っております。  確かに、日本の技術あるいは科学の水準というのは大変すぐれたものであったわけでございますが、最近十年間ぐらいはやや欧米におくれをとっているというような全般的な印象がございます。しかし、二十一世紀日本を本当に豊かにするためには、やはり科学や技術を基盤にした産業というものをつくっていかなければなりません。科学技術創造立国という言葉も使われておりますが、我々は日本人の発明したものあるいは日本人の工夫したもの、こういうものを大切にしながらその権利を世界に向かって堂々と主張できる、そういう法制度改正あるいは法整備をする必要があるというのがプロパテント政策というふうに私自身は理解をしております。  したがいまして、確かに現在欧米の方が技術水準が高いというような考え方もありますが、こういうプロパテント政策をとることによりまして発明者に対して刺激を与える、また発明したことに対して正当な保護を与える、あるいは特許の利用に関して各国共通した基盤を整備する、いろいろな目的を持った今回の法改正でありまして、特許制度を充実することによって日本が不利になるということには決してならないというふうに私は理解をしております。
  89. 西山登紀子

    西山登紀子君 大変甘い観測をされていると私は思います。私が申し上げましたように、今の技術格差の現状をそのままにしておいて、そして強く広く早くという保護制度をつくるということになると、こういう格差のまま日本産業の方が打撃を受けるんじゃないかというふうに思います。  それで、次に大臣アメリカが九四年の日米包括経済協議でいわゆるサブマリン特許を是正するということをお約束されたわけです。我が国と同様に出願後十八カ月の出願公開制度の導入を約束したんですけれども、いまだに実施されておりません。政府としてはいつまでこういう事態を放置しておくのか。
  90. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生指摘のように、一九九四年の日米包括経済協議におきまして、米国はサブマリン特許の是正に向けまして早期公開制度の導入を約束したにもかかわらず、期限を過ぎた現在もいまだに履行されておらず、我が国としては再三にわたり合意事項の履行を求めてまいりました。  特に、昨年の米国第百五議会での改正法案の廃案を受けて、昨年十一月、私からデイリー商務長官及びバシェフスキー通商代表あてに遺憾の意を伝えるとともに、合意の早期履行を求める書簡を発出いたしました。これに対しまして、米国側より、政府として日本政府の懸念を共有するとともに、この書簡を米国議会の上下両院の院内総務に送達する旨の発言を得ております。  今次、米国第百六議会においても日米合意関連法案提出が見込まれておりまして、我が国としては引き続きその動向を注視しながら、合意事項の早期完全履行を強く求めてまいる所存であります。  また、かかる日米二国間交渉に加え、WTO、WIPO等の多国間交渉を通じ、早期公開制度の国際ルール化を含めた特許制度の国際調和を積極的に提唱してまいる所存であります。
  91. 西山登紀子

    西山登紀子君 毅然とした態度で臨んでいただきたいと思います。  時間の関係がありますので、次の質問をちょっと飛ばしまして、この法案そのものの内容についての質問に移らせていただきたいと思います。  まず、審査請求ができる期間の問題です。  現行特許出願から七年以内を三年以内に短縮するということなんですけれども、この規定が二〇〇一年十月一日から施行されるということになっているので、二〇〇四年十月一日以降の四年間は七年間の期限のものと三年間のものが併存することになる。この審査請求件数が増大することが予想されるんですけれども、どれぐらい予想されて、どんな特別な審査体制をとるのか、教えてください。
  92. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生指摘のとおり、制度改正によりまして審査請求件数が増大するかもしれないという懸念については私どもも予想いたしております。  ただ、これまでに実態を御紹介申し上げましたけれども特許庁の審査処理能力そのものにつきましては、一つはペーパーレス計画によりまして着実に非常に効率が上がる制度が進んでおります。それからさらに、審査実務の経験があるOBの人で自分の知見を生かしたいという方々、この人たちも相当数おられますものですから、そういう方々をうまく活用させていただきまして、それで審査処理件数というものを最近非常に上げてきております。幸いに、審査請求件数よりも四、五万件は上回るような状況になっております。  それに加えまして、やはり何といっても特許を得るプロセスで先行技術があるかないかということを調査するのは大変な時間と労力がかかるものでございます。この部分については、インターネットを利用することによりまして、私どもの持っておりますサーチのツール、こういったものもあわせて提供させていただきますものですから、出願する側にありましてはその辺をうまく活用することによって、これまでですと一たん出してしまったというようなことが事前に防止できるような、こういうことも可能になるのではないかということでございます。  トータルして、私どもとしては、一定の猶予期間をいただくことによりまして、特許庁側にありましてはできるだけスムーズな形での業務が遂行できるように持っていけるのではないかというふうに考えております。
  93. 西山登紀子

    西山登紀子君 今の御説明の中に外注、アウトソーシングのお話が出てこないんですけれども、外注はしませんね。
  94. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先ほど申しましたOBの活用というのは、それは一部外注でございます。一部は内部で活用させていただいていますけれども、これは法律をつくっていただきまして、一定資格を持った団体に対しまして、サーチのような仕事、定型的な仕事については外注できるという制度を設けていただいております。
  95. 西山登紀子

    西山登紀子君 アウトソーシング、外注をするというお話があったわけで、現在でもやっていらっしゃいますね。IPCC、工業所有権協力センターに相当程度外注されているということですけれども、これはまさか全部丸投げしているわけじゃないと思います。今どんな仕事をどの程度外注していらっしゃるんでしょうか。
  96. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のとおり、審査処理期間の短縮という中で、実質的に定型的なものではなくして判断業務を必要とする部分、これはもちろん外注できるような性格のものではございませんので、そういったものはいたしておりません。  具体的には、先ほど申しましたようにサーチ外注、先行する技術があればこれは特許の対象になりませんものですから、例えば日本の文献でありますとか諸外国の文献を当たっていただきながら、それの有無、先行するような事例があるかどうかということをチェックしていただく。  それから、出願書類の中で発明がどういう分野発明なのか、私どもの言葉で言いますと国際特許分類と呼んでおりますけれども、その分類の作業というのもこれまた時間的には非常に多くを要するものでございます。ただ、それは定型化されてございます。ある一定の知見を持っていますと、これはこの分野発明だということがすぐにわかるようなものでございますので、こういったものについては外注させていただいております。  平成十年度の外注件数を申し上げますと、サーチにつきましては十二万件、分類付与につきましては三万件やっております。
  97. 西山登紀子

    西山登紀子君 サーチについてはおよそ三分の一外注をしているということなんですが、これは非常に重要だと思います。  外注する場合には相当慎重に行う必要があります。このIPCCにも企業から出向しているというようなお話を伺っておりますし、例えばサーチだけといっても出願公開前の出願も含まれるわけでしょう。秘密の保持というのは十分配慮をしないと、公開後の出願だと直接出願書類を見てやるということで、これは非常に慎重な対応が必要だと思うんですけれども、どうお考えでしょうか。
  98. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生指摘のとおりでありまして、そういうこともございますものですから、外注するに当たりましては、平成二年に制定していただきました工業所有権に関する手続等の特例に関する法律におきまして、一定資格を持った機関でなければそもそも外注することはできない、かつ指定調査機関の役職員、それから過去にその役職員であった者に対しましては特許庁の職員と同等の守秘義務を課しております。それの違反があった場合には罰則もかけられるようになっております。
  99. 西山登紀子

    西山登紀子君 そういうことなんですけれども、秘密を見た、それをだれがどういうふうにしてどこに持っていったかというのはなかなかわからないことなんです。ですから、今私が心配するのは、もう三分の一を外注していると、これからこの四年間にふえるであろう審査件数の処理についても外注を主に考えていらっしゃるということについて、やはりこれは外注するにしても極めて厳正に、また緊急避難的なものに限るということでないと、貴重な国民知的財産権を守るというふうにならないんじゃないかと危惧をいたします。  そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、この特許権の付与というのは、公的機関であります特許庁国民の信頼を得て厳正な審査の上で新しい権利を付与するということです。ですから、非常に公正で中立的なものを求められていると思います。したがって、こういう制度改正に対応するために安易に外注に依存するのではなくて、厳正な権限を持った必要な審査官は増員して対応するということが必要だと思います。  アメリカ特許庁というのは、いろんな統計の数字がありますが、ほぼ我が国と同じような処理件数をこなしているというふうに思いますけれども、審査官の数は二千二百十二人、欧州の方は二千二十七人、日本は千七十八人というふうな、審査官の数が非常に日本は貧弱だというふうによくこの数字が出されるわけです。  それで、今、特許庁は大変黒字を抱えて、赤字じゃなくて黒字を持っていらっしゃるということなんで、基本的には審査の質を落とさないためにも、また国民の財産を守るというその点の信頼を確保するためにも、審査官の増員でこの四年間も対応するし、もちろんプロパテント政策というものに対しても対応していく必要があるんじゃないか、大臣にお伺いしたいと思います。
  100. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 毎年特許庁では増員をお願いしておりますが、予算全体の査定の中では必ずしも特許庁の要望が全部かなうということにはなっておりませんのは大変残念なことでございます。  特許庁では、ペーパーレス計画の推進、あるいは審査実務の経験のある者の活用など、総合的施策の展開によりまして審査能力が向上し、近年、審査処理件数は審査請求件数を上回っております。したがいまして、残ったものはだんだん少なくなっているという状況でございます。  また、特許庁は、三月末の電子図書館のサービスの開始によりまして、出願人があらかじめ先行技術調査をできるようにするという環境整備をやることになっております。したがいまして、出願されますときにむだな出願が減るということを実は期待しているわけでございます。  こういうことでございますけれども、審査期間を短縮するというのは社会の要請でございますので、全体として定員に関しましては大変査定の上で厳しいわけでございますが、なるべく多くの定員が確保できるよう通産省特許庁ともに努力をしてまいる、そのように考えております。
  101. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣に努力をするという御答弁をいただいたので、ぜひそういう方向で頑張っていただきたいと思うのです。  私、この間の増員の人数を少し調べてみましたら、九一年、九二年、九三年、九四年、九五年とずっと三十数人ふえているんです。ところが、ピークは九五年の千百二人、これは審査官の場合ですが、ピークの九五年の千百二人を境といたしまして審査官が減っているんです。九八年は八人ほどふえましたけれども減っている。これはやっぱり大変心配です。この辺の審査官の増員について大臣の一層の御努力を強く要望いたします。  時間の関係で、一番最後の質問を大臣にお伺いしたいと思います。  この減免の問題なんです。今度、法改正で、「資力に乏しい者」という形で減免の対象になっております。減免の対象が「資力の乏しい者」ということで広がることになっているんですけれども、今申し上げましたように特許庁の特別会計が大幅黒字だという現状からいたしますと、この「資力に乏しい者」という範囲から個人を除くという合理的な理由はないと思います。  中小企業と個人については減免の対象にするということは十分可能だと思うし、そうすべきだというふうに思います。また、大学の学生さんや研究者、それから発明造詣の深い婦人団体の会員の皆さんからもぜひそのようにしてほしいという要望も聞いているんです。アメリカ特許制度の中では、中小企業と個人については半額になる制度が定着しているというようなこともお聞きいたしましたけれども、こうした点は大いに参考にすべきではないかと思うのですが、最後に大臣の御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  102. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 特許料については出願人間の公平ということが制度の基本設計でございます。  一方、資力が乏しいために発明権利化することが困難な個人に対しては、このような個人を放置するということが発明奨励という意味からはマイナスであるということで、個人に関しましては例外的に特許料等の減免等を講じる特例措置の対象としてきたわけでございます。  したがって、知的創造活動の主体が個人から法人へと変化している中で、資力に乏しい法人が発明権利化することが困難な現状を踏まえまして、発明奨励の観点から特例措置の対象に法人を追加するものでございます。  したがいまして、資力に乏しいとは言えない法人をも含むすべての中小企業及び個人を特例措置の対象とすることは、出願人間の公平を基本原則とする現在の特許制度制度設計のもとでは大変難しい問題だと私は考えております。  通産省としては、特許の料金体系については、かかる考え方を基本としながら、特許特別会計の状況や諸外国の料金政策にも引き続き注意を払ってまいりたい、そのように考えております。
  103. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時四十分まで休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ─────・─────    午後二時四十分開会
  104. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、平田健二君、陣内孝雄君及び福山哲郎君が委員辞任され、その補欠として内藤正光君、森田次夫君及び海野徹君が選任されました。     ─────────────
  105. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 休憩前に引き続き、特許法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  106. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 特許法改正の審議に私はずっと関係してきましたが、一昔前は出願してもいつ結果が出るのかわからないという話をよく聞いておりましたが、平成十二年には出願して特許がおりるまでに十二カ月でおさまるということです。今昔の思いといいますか、我々は前の古い特許庁を見たこともありますし、また特許庁が新築された後も見ました。第一印象は、書類の山で、これは火事にでもなったらどうするのだろうかという気持ちを抱きながら見せてもらったのです。その当時、とにかく特許庁はペーパーレス化をやらなきゃだめだというようなことを随分言われておりました。その結果プラス皆さんの努力があって現状のように審査処理期間が非常に短縮されてきたのだと思うんですが、どういう取り組み方をこれまでしてきたのか、この辺の現状を少しお聞かせいただきたいと思います。
  107. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 特許庁では、一九八四年以降、ペーパーレス計画を推進し、業務の効率化に努めてきておりまして、現時点においては出願の受け付け、審査、発送、登録などを電子的に行うことができておりまして、これは世界に先駆けた取り組みでございます。  これらのペーパーレス計画に加えまして、審査実務経験者の活用等の総合的な施策推進することによりまして、一九八四年当時は平均処理期間が三十五カ月であったものが、一九九八年末時点では一次審査期間が約十九カ月に短縮するなどの成果を上げてきております。  知的財産権重要性が高まりまして、審査、審判の迅速化の要請が一層高まっていることを踏まえ、今後もこうしたペーパーレス計画を初めとする施策を引き続き推進し、二〇〇〇年末までに一次審査期間を十二カ月に短縮するとの目標の達成に向けて努力をしてまいります。
  108. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 しかも一般会計からお金が出なくて特許特別会計で、自前ですべてをやっておる特許庁の努力に対して敬意を表したいと思います。これから平成十二年に一年以内で審査処理をするという大方針に向かってさらに努力をされますように心からお祈りをしたいと思います。大臣、頑張ってください。  次に質問しますのは技術貿易収支の関係であります。  これは先ほど同僚議員から若干質問があったと思いますが、日銀の調査によりますと一九八六年から九五年に関して、日米の比較では、アメリカはこの間技術貿易収支は十六兆円の黒字、日本はマイナス四・一兆円の赤字だと、こういうようになっておりますが、それは間違いはないのか。一体どういうものがこの中に含まれておるのか。  さらに言いますと、かつて防衛庁がイージス艦を千二百億円出して四隻つくったんです。あるいはファントム戦闘機も。そのとき、何でそんなに高いのかと言うと、その中に入っておるコンピューターとかそういうライセンスが非常に高いんだということを聞いて、じゃ何ぼするのかと言うと、それは防衛秘密で言えないということで大分やりとりをしたんですが、恐らくこういうものまで差し引き全部入っているんじゃないか。しかし、大宗を占めるのは商標とかそういうものだということも皆さんから聞いておりますが、その辺について若干説明をしていただきたいと思います。
  109. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生が最初の御指摘の点でございますが、私どもも同じ数字を持っております。  現在、私どもが依存しておりますデータは日本銀行が出しております統計データでございまして、それ以外に実は総務庁から出されている統計もございまして、こちらによりますと日本は技術貿易は黒字だという結果になっております。  ここの大きな差と申しますのは、日銀の統計データの方では商標あるいは意匠、こういう数字が入っていまして、これが非常に莫大な量になっております。したがいまして、それの結果、日本全体としては大きな赤字になっているというのが実情であるというふうに理解いたしております。  防衛関係のものについてライセンス料を払わなきゃいけないという事実関係はもちろん存じ上げてはおりますけれども、どの程度の量のものがあって、かつこの数字に入っているかどうかということについては、私どもも可能な限り調べてはみたのでございますけれども、残念ながら公表されているデータはもちろん全くございませんで、この中の一部を形成しているのかどうかということについても、まことに申しわけございませんけれども、お答えできない状況でございます。
  110. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 時間がありませんから次に行きます。  日米の大学における特許出願件数、同僚議員の質問に対しまして文部省からの答弁がありまして、聞いておりました。若干ダブりますが、一九九五年、アメリカは五千百件、一方日本は百三十七件、どうして日本が少ないかということで、日本は研究論文か何かに重点を置かれて、特許の方には大学の先生方も関心を持たないような意味の答弁をされたんですが、それはなぜか。もうかる話なら恐らくどんどんやると思うんだけれども、所得とか税金とかあるいは国家公務員とかそういう身分とか、何かそういうところを気にしている面というのが多分にあるのじゃないかと思うんですけれども、もう一度聞かせてください。
  111. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 大学の先生方が特許になかなか出願をしないということでございますけれども、幾つかの理由があろうかと思っております。  一つは、先ほどもちょっと御答弁させていただきましたけれども、大学の先生方の特許取得ということが研究業績としてはアカデミズムの世界ではなかなか評価されにくいというような実態、風土というものがあるということでございます。それと、そういうことも関係しておると思いますけれども、全般的に特許取得に対します関心の低さというものが大学人にはあろうかと存じておりまして、本来特許化が可能な発明というものが、特許出願をされる前に学会の発表でありますとか論文等の形で公表されてしまう、その結果として特許になりにくくなるという点がもう一点あろうかと思っております。  それから三点目といたしましては、国立大学におきましては、個人に特許を受ける権利というものが帰属するということが原則としてございますので、研究者に対します発明についての相談でございますとかあるいは出願の代行というようなこと等の支援体制というものが十分ではない、そういうことから、出願等に対しまして個人の金銭的あるいは時間的な負担が大きいというようなことなどがあろうと思います。  それから、これはまた大学の研究のかなりの部分でそうであろうかと思いますが、大学の先生方の発明というもの自体特許化という目的を持って行った研究ということでは必ずしもございませんで、研究者が何かの研究をしているそのプロセス上で偶然に生じるというようなケースもございまして、その発明が現実の市場のニーズと必ずしもマッチしないというようなことなどもあって、総じて大学の教員の特許に関します関心というものが低いという状況が生じているのではないかというふうに考えている次第でございます。
  112. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 長々と議論したくないんですが、通産省はそういう新しい創造とか技術とかいうものを産業界と結びつけて、そしてベンチャー企業を育成しようと、我々何度もそういう法案を審議してきているんです。あなたの今のお話を聞いておりますと、文部省はそっちで行こうとしているのか、あるいはアカデミックさというものを求めて今までの大学のあり方をそのまま肯定しながら行こうとしているのか、そこのところがちょっとわからないんだが、どうなんですか。
  113. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 文部省として後ろ向きの姿勢を持っているわけでは全くございませんで、今申し上げたのは、大学の研究者の意識の問題あるいはその支援体制というものが不十分であるというふうなことなどの実態を申し上げたつもりでございます。文部省といたしましても、大学の先生方の研究成果というものが特許化され、それが民間で広く活用されるということは、大学の使命としても重要なことと基本的に考えておるわけでございます。  そのため、先ほど来申し上げましたけれども、平成十年度から、研究業績として評価を受けないということに対します一つの手だてといたしまして、科学研究費補助金の申請書に研究業績という欄がございますけれども、その中に特許をどれだけ取っているのかというようなことを書かせるということで、研究業績として認知をしていこうということの努力をしているつもりでございます。また、個人が持っております特許についての実用化ということから、TLO法というものについてお認めをいただくために法案提出させていただいたこともございます。  また、大学の先生方に特許マインドというものを持っていただこうということから、十一年度からは知的所有権に関しますセミナーというものを科学技術庁と共同して実施していこうということなどをいたしておるわけでございまして、大学の先生方の持っている研究成果というものが民間になるべく速やかに移転できるように種々手だてを講じているつもりでございます。
  114. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 通産省、今言われたように、文部省特許庁とのそういう関係は本当にうまくいっているんですか。
  115. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 私どもも、必ずしも十分ではございませんけれども、知的な支援、若干の予算的な支援を含めまして、大学にもお手伝いさせていただくべくこれまでやってきております。  もちろん、大学本体の業務に問題を生ずることがあってはいけませんものですから、その辺については十分文部省とも連絡をとりながら、主に国立大学の先生方に、実態的には彼らは非常にやりにくい部分があることも事実なものですから、例えば私学の場合では、比較的自由な形でもって研究をやり、かつその研究成果を得てそれを研究費に回しています。その辺のうまい事例というものを御紹介しながら、それぞれの国立大学でも同じような結果が得られるような工夫ができるのではないでしょうかということで、十分な知見を持っている人間を含めまして、特許流通アドバイザーという形でもってそれぞれの大学に派遣するというようなこともやっております。
  116. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私学は立命館大学と東海大学あたりがこういう面は進んでおります。私は、東京工業大学の学長が郷里の友達でありまして、彼も幾つか特許を持っておりますが、苦労しているようですよ。  だから、なぜそんなに普及しないかという問題はもうはっきりしている。それは文部省が一番よく知っていますから、それをどう克服するかということをぜひ考えていただきたいと思います。期待をしております。  それから、法律案に入りまして、これは救済措置の関係、百五条の二の計算鑑定人です。計算鑑定人というのはなかなかぴんとこないんですが、これはどういうシステムで、どういう人を選んで、そういう人は大体どこに常駐して、そういう組織を新たにつくるということだろうが、その辺の仕組みを教えてください。
  117. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 従来、訴訟が生じましたときに、裁判所の方で提出されましたデータをベースにいたしまして、どれだけの損害が発生したであろうという推定を行ってきております。  最近、データというものが非常に複雑化いたしてきておりますし、かなり専門知識を要するというのが実情でございますので、その辺を裁判官にすべてお任せするのではなくして、裁判官の判断に直接影響を与える、知識を持っていないがゆえに判断が狂ってしまうということがないような形にしていただく必要があるのではないかということで、その分野でのプロ、具体的には公認会計士でありますとか大学の先生方といったような方々、いわば専門知識は持っている、かつ特定の事件からは中立であるという方々を選びまして、当事者の方の申し立てによりまして裁判所が選任するということでございます。  あらかじめ人間集団を指名してやるということではなくして、ケース・バイ・ケースで、そのときにどの人が一番望ましいかということで選ばせていただくというものでございます。裁判所の方がその人間を選任するという形になります。  選任された計算鑑定人の場合は、侵害品の販売数量あるいは販売単価といったような損害計算をするために必要ないろいろな事項がございます。これを裁判所からの命令を受けまして計算鑑定人が調査を行いまして、当事者からの説明を受けながら損害額を算定してあげて裁判官の判断の参考に供するというものでございます。
  118. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 幾つか用意をしておりましたが、もう時間ですので、これで終わります。
  119. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 特許行政についての質疑であります。  特許行政というのは決して狭いとは思わないんですけれども、そう幅広いものではないので、今までの同僚議員の発言と若干重複する点もあるかと思いますが、お許しをいただいて幾つかの点について意見を述べながら質疑を交わしたいと思います。  翻って、今日、我が国の工業所有権制度は、明治十八年に専売特許条例が公布されて以来今年で百十四年目を迎え、また現行特許法が昭和三十四年に施行されて四十年目になることは御存じのとおりです。その間、数度にわたる特許法などの改正特許特別会計制度の創設などによって工業所有権制度は逐次整備されてまいったこともまた事実であります。これによって、当初おくれていた特許などの審査処理は、昭和四十年の二十二万件が六十年には四十一万件、そして平成七年には五十二万件と大幅に改善されてまいりました。それに伴って特許実用新案の要処理審査期間も、以前は三年近く、それ以前は七年ぐらいから十年ぐらいかかっていたのでありますが、最近では二年近くに短縮されているということも非常によかった、成果が上がっていると私は思います。  本当はこういう特許という性質上、二年も長いのであって一年ぐらいで処理できるようでなければならないのではないか、でなければ国際競争力あるいはまた技術立国としての基盤的なものがだんだん希薄になっていくのではないかという感じはいたします。しかし、そうはいうものの、このように審査処理能力が向上した背景には、昭和五十九年に制定された特許特別会計法があったということは否めない事実だと思います。  思い起こして昭和五十七、八年、私が当時通産政務次官のときでありましたが、この特別会計の創設にかかわり、相当反対意思の強かった上司である通産大臣の気持ちを和らげるために大臣室に乗り込んでいって大分お話をしたようなそんな記憶も思い出すわけであります。そのときに申し上げたのは、いわゆる特許というものの重要性あるいはまた今後の技術立国としてのあり方等々の中から、極めて貧困であったこの特許行政を進めていく環境あるいは財政基盤等々によって特別会計制度というのが当時財政当局においては拒まれた制度でありましたが、しかし今日の状況を見るに私は昔日の感があるということを申し上げたいのであります。  この特許特別会計が提案された背景としては、今申し上げたように処理期間が七年から十年と長期化する情勢にあるというようなことがあって、この課題を解決するため事務処理のコンピューター化、いわゆるペーパーレスシステムを導入し、そのために新庁舎を建設するという抜本的な対策が講ぜられ、そしてコンピューターシステムが導入されたわけであります。その財源としてのこの特別会計制度は、歳入は郵政事業特別会計からの特許印紙による受入金や一般会計からの繰入金などの収入をもって充てることとして、そのために昭和五十九年に特許特別会計法が制定されたわけであります。  このように審査処理能力が大幅に向上した背景には、特別会計を財源としたペーパーレスシステムの導入が貢献したということは今まで申し上げたとおりでありますが、この特許特別会計については、先ほども同僚議員が述べておりましたが、近年相当大幅な剰余金、私の知るところでは年間約五百億円以上の剰余金が生じている、非常に結構なことだとも思います。しかも、歳出の三分の一以上を占めているペーパーレス計画が終了すると今後は一層剰余金が出るのではないかと思われる。  今回の改正特許料の引き下げや資力に乏しい中小法人に対する特許料の軽減措置が講じられているけれども、多額の剰余金が生じていることを考えれば、今回の引き下げ以上に特許料を引き下げることができるのではないか、もっと引き下げたらいかがですかと私は思うんです。そのことは特許出願を増大させるインセンティブを与え、科学技術創造立国を目指す我が国としてもプラスになると思いますが、この件について通産大臣、いかがでございますか。
  120. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 特許関係料金につきましては、昨年に引き続きまして今般の制度改正においても引き下げを盛り込んでいるところでございます。昨年の料金改定においては、特許権利化後の十三年目以降の料金の引き下げを行いまして、特許料の経年変化に伴う累進構造の見直しを行いました。  今回の料金改定としては、特許料及び審査請求料等について請求項数の増加に伴って増加する部分の料金を引き下げること、また貧困な個人を対象としている現行特許料及び審査請求料の特例措置の対象に資力の乏しい法人を追加することにより、その発明権利化を奨励することとしております。  昨年の料金改定と今回の料金改定によりまして年間約六十億円の歳入減となるところでございまして、今後その累積的影響を見守っていく必要があります。  今後とも、特許関係料金については、中長期的な観点から、出願等の動向、健全かつ効率的な特別会計の運営、諸外国の料金政策を勘案しつつ、十分な注意を払ってまいりたいと考えております。
  121. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 ありがとうございます。  やっぱり中小企業あるいはまた個人のそういう特許意欲というか出願意欲というか発明意欲というものを大いに高揚していかなきゃいかぬ。そのためには手軽くなきゃいかぬというふうに思います。そういう意味で、今の大臣の答弁を踏まえて、行政事務当局はぜひそれらの方向に向かって努力を願いたい、こう思います。  次に、特許関係団体の役割について私の考えを申し述べながら、御意見を承りたいと思います。  今日、我が国の休眠特許は現在四十万件に上っていると言われているんです。その中には少し工夫を加えれば画期的な新製品が生まれ、我が国経済の再生に役立つものがあると思われます。このような休眠特許を有効に活用するため現在特許流通市場の整備が図られていることも承知しています。特許の移転を仲介する特許流通アドバイザーが常勤で三十人、登録アドバイザーが三百人、全国に派遣されている。また、産業再生計画では特許流通アドバイザーを三十人から六十人に倍増する計画もあると聞いております。しかし、倍増されても常勤の特許流通アドバイザーが各都道府県に配置されているのは一人か二人程度にすぎないという現状。地域経済が疲弊している中で、その活性化を図るためには地域産業の振興が必要であるが、それには地域の中小企業が貴重な技術資源である休眠特許を有効に活用して新たな製品の開発に結びつけられるような体制の整備が重要であると思うんです。  ところで、特許にかかわる関係団体を見ると、発明協会、弁理士会、日本特許情報機構など、発明家協会というのもあったと思うんですが、いろいろ十団体ぐらいがあるように思います。これらの団体のうち、例えば発明協会では本来の発明奨励振興事業以外に中小企業に対する出願適正化指導事業なども行われ、産業発展にも貢献しております。また、弁理士会に所属する弁理士も出願の代行や特許侵害訴訟に係る代理の業務を行っており、複雑な特許取得手続の円滑化に貢献していることは御承知のとおりです。しかし、全国の弁理士事務所の約六六%が東京に集中しておる、あるいは大阪で一四%、愛知が四%と、三都府県で全体の八〇%以上を占めているようなことになっておりまして、我が新潟県などは何人もいないということであります。  これらの団体はそれぞれ設立目的に従って活動しており、その活動範囲には限界があることはわかっております。しかし、今日、地域産業の一層の振興が求められており、それには弁理士の地域的偏在や数少ない特許流通アドバイザーを補完する対策を講ずる必要もあるのではないでしょうか。  そこで私が申し上げたいのは、各特許関係団体をネットワーク化して、連携を密にして発明の奨励から特許出願、そして先ほど申し上げた休眠特許など、中小企業の製品開発にまで結びつくような有効な特許の活用方法が整備されることが必要ではないかと思うんです。  特許行政一つとして、事務的な面もありますが、長官にお考えをお聞きして、大臣、もし後で何かありましたらお願いを申し上げます。
  122. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 今、先生が御指摘の二点について現状を申し上げますと、確かに大都市に弁理士のほとんどの方が偏在しているという事実はそのとおりでございまして、そういう実態で今後日本全体の知的財産権意識というものを高められるのかという御懸念はまことにごもっともな点だと思っております。  そういうこともございまして、今御指摘になりましたような弁理士会を初め、発明協会とか関係の諸団体に対しまして可能な限りの工夫をしていただいて、手薄となっております地域にてこ入れをするというようなことを私どもなりに意識的にやってきているつもりでございます。  弁理士会は、今先生が御指摘のとおり、ある種ボランタリー活動的に、近隣の弁理士の方を御紹介するというようなことをやったり、出張いたしまして無料でサービスを行うというようなことをやっております。  発明協会におきましても、先ほどの御指摘にありましたように、中小企業者向けのサーチを無料でやってあげるとか、あるいは相談事業、それから情報提供といったようなものを、幸いにして発明協会の場合には全都道府県に支部を持っておりますものですから、そこに専門家がおります。必要に応じまして中央からも派遣するというような形で、地方の行事に合わせて弁理士の方々を必要とするような事業についての質問に答えられるような形をとっているつもりでございます。  特許庁といたしましても、やはり特許庁の支部というのはございませんから、幸いにして一人ないし二人、三人、最近では特許庁の人間を通産局に出すことができるようになりました。したがいまして、その人たちが地域のそれぞれの県、主要な都市に出向いて相談事を受け付けるというようなこともやるようにいたしております。  したがいまして、こういうようなことを通じて、知的財産権のインフラを支えているのがまさにこういう方々でございますので、こういう方々を少しでも私どもの方で御支援できるようなものについては積極的に今後ともやってまいりたいと思っております。  それから、私どもも非常に重視しておりますのが、せっかく毎年多くの発明が生まれながら残念ながらそれが十分に活用されていないということは御指摘のとおりでありまして、私ども調査いたしますと、中小企業者の中で三分の二に当たる方々が大企業の持っている特許で使っていないものをぜひ使いたいという要望がございます。  そういう実態がありますものですから、私ども調査いたしまして、またそれぞれの関係企業に働きかけまして、こういったものだったらば出してもいいというものをリストアップしていただき、かつそれを一カ所にまとめさせていただきまして、その特許の概要はどういうものなのかということを利用者がわかるようなハンドブック的なものをつくらせていただいております。  今そういうものが約二万件余ございまして、特許数でいうと大企業が持っております六十万件ぐらいが十分に活用されていないということでございますから、その一割ぐらいはそちらの方に出していただいて、日本テクノマートという団体がございます。そちらで検索が可能なような形にデータを加工いたしまして、それを中小企業者の方々に御利用いただく、インターネットでもそのうちの一部は御紹介するような形をとっております。  そんな形でもって、せっかくお金をかけ、時間をかけて特許権利化されたもの、これを少しでも皆さんに使っていただけるような工夫を今後ともしてまいりたいと思っております。
  123. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 地方通産局を活用しながら、そしてまた、中小企業政策とか振興地域とかいわゆる通産行政をやっているところがあります。そういうところで、例えば発明の日とか特許の日とかということを特許庁が率先して設けると国民のそういうものの目覚めが出てくる。子供たちでもそういうものに対して関心を持つようになる。情操的にも大事な教育の一つではないかというふうに私は思うので、一つの考えとして、幼稚なことですけれども特許行政の今後の発展の意味合いも込めて、ぜひ効果を高めていただくようにお願い申し上げたい。  特許法の「目的」を見ると、「この法律は、発明保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること」とあります。ということは、特許行政は単に出願を受け付けて特許としての権利を与えるだけにとどまらず、産業発展に積極的に寄与することが求められていると思うんです。言うならば、願書を受け付ける場所じゃない。要するに、産業発展あるいはまた産業の基盤をつくり上げていく、積極果断にむしろ特許庁から行政が外に出ていくという姿勢が私は大事ではないか。先ほども大臣がおっしゃっておられました。非常に私は同感のきわみでありました。  法律をつくることが目的ではないので、まさにこの特許あるいは発明は、技術立国、資源のない我が国にとってのまさに資源であるこの問題をやはり大いに振興、発展させるという基盤あるいは方策の一つにしかすぎない、こういう考え方で取り組んでいただければなお一層の発展あるいはまた将来の我が国の財産ができていくことになる。最近の特許行政はそういう意味では受け身で、特許権を与える機関としての役割を果たすだけではないところにぜひいま一歩大きく出て頑張っていただきたい。  一方、アメリカではUSTRが知的財産権に関する問題を一括して取り扱い、先ほどもいろいろお話がありましたが、十年以上も前からプロパテント政策、すなわち特許重視政策を展開して知的財産権価値を高め、今日の米国産業国際競争力の回復に貢献してきた。今までいろいろ議論のあったところであります。  これに対して、我が国ではこうした取り組みがおくれてきたため、特許の出願数では米国の四倍以上もありながら、技術貿易では米国の黒字に対して我が国は赤字だと。これも指摘されました。我が国でも、遅ればせながら今回の法改正権利取得の早期化や特許権の早く強く広いという保護を図るための措置が講ぜられたことは評価いたしたいと思います。  しかし、今後我が国が二十一世紀に向けて国際的大競争時代の中で一層の経済発展を遂げていくためには、米国の例に倣って、この知的財産権保護強化を、単に特許行政一つとしてではなく、産業政策上あるいは国の経済政策上の最優先課題として、あるいは通商政策上とでも言っていいでしょう、特許庁文化庁など関係各省庁の問題に総合的に対応するなど、知的所有権政策国家戦略として打ち出していく必要があるというふうに私は思い、かつ今までの議論の中で十分にそのことは大臣の考えも述べられてきたので、あえて私はここでもう一度同感の意を表しながら、時間が参りましたので、最後の一点だけ申し上げて、御意見を承って終わりたいと思います。  アメリカでは、特許出願の公開を九四年度に導入することを約束しながら、議会の反対でいまだに実行されていない。いわゆる知的所有権をめぐっての海外との摩擦問題でありますが、この結果、日本企業特許出願済みの技術とは知らなかったことでむだな研究投資を強いられるなど、不満が出ていることは御存じのとおりであります。  ことしの十一月末にはWTO次期通商交渉が始まりますが、知的所有権問題を重点課題に取り上げて、通商産業省は国際交渉の場で強い姿勢をもって臨み、成果を上げていただきたい。希望を申し上げながら、大臣の所見を承って終わりたいと思います。
  124. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先ほどの御質問の中で私が感じたことを答弁の前に二つ申し上げたいと思います。  それは、弁理士制度はございますが、日本特許制度を円滑に運営していくためにはやはり今後弁理士の方々のお働きというのは大変重要になってくるということでございます。これは、特許権取得する際も、また特許に関する紛争が起きた場合にも、弁理士の方の役割というのがますます重要になってくると思います。  それから、未利用特許の件でございますけれども、先ほど長官からも御答弁申し上げましたが、特許庁が持っておりますすべてのデータをデータベースといたしまして、今は全国どこからでも、あるいは全世界どこからでも四千万件近い情報に接することができますし、既に期間が経過した情報に関しても、また特許権が生きている技術に関してもすべてアクセスができて、全国からわざわざ東京に来なくても情報がとれるというのは私は画期的な試みであると思っております。  そこで、米国との関係でございますが、九四年に日米包括経済協議が行われたことは先生御承知のとおりでございますが、いわゆる米国のサブマリン特許と我々呼んでおりますが、これの是正に向けまして早期公開制度の導入がここで約束されたわけでございます。しかし、期限が過ぎた現在でもいまだにこの約束は履行されておりませんで、我が国としては再三にわたりこの合意事項の履行を求めてまいったところでございます。  特に、昨年の米国百五議会で改正法案が廃案になりまして、これを受けまして昨年十一月、通産大臣の名前でデイリー商務長官及びバシェフスキー通商代表あてに、日本政府としては大変遺憾であるという意を伝え、約束の早期履行を求めたわけでございます。こういうお手紙を出しました。  これに対しましてアメリカ側より、政府として日本政府の懸念を共有する、また、このお送りしました書簡を上院、下院両院の院内総務にも送達したと、こういうことを承っております。今回の米国第百六議会においても、日米合意関連法案提出が見込まれております。  そこで日本としては、引き続きその動向を注視しながら、合意事項の早期完全履行を強く求めていきたいと考えております。また、日米間二国間交渉のほかにWTO、WIPO等の多国間交渉を通じて、早期公開制度の国際ルール化を含めた特許制度の国際調和を積極的に提示してまいる所存でございます。  以上です。
  125. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 頑張ってください。  ありがとうございました。
  126. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、先端技術が日進月歩の国際競争の時代に、今回の特許法改正というのは大変望ましいものだというふうに考えております。特にこういった技術革新が日々行われている、こういうときには、先ほどいろいろ同僚議員からも御指摘ありますが、三年といってもこれは非常に長い。本当に合理化してもっともっと時間短縮を図っていただくさらなる努力をお願いしたい。  そういう意味でも、今回、あす三十一日からスタートします四千万件に上る特許情報をインターネットを通じて提供する特許電子図書館、これも私は大いに期待をするものであります。  私は通告では、今渡辺委員からもう既に御質問が出てしまったんですが、知的所有権交渉のことをお尋ねする予定でございました。しかし、重複してもいけないので、一つ私からのお願いだけを申し上げて終わりたいと思います。  サブマリン特許、今大臣からも御答弁がありましたが、これが引き起こすむだな研究投資あるいは不毛な訴訟というものがいかに多いかということを考えますと、この九四年の日米特許合意の約束がまだ不履行であるというこの状況というのは大変遺憾なことだと私も思っております。ひとつ今後、特に途上国とのライセンス契約をめぐって日本企業が不利な条件を押しつけられるというようなケースも大変多い昨今でございますし、日本だけにグローバルスタンダードを押しつけるのではなくて、やはりアメリカとしてもこういったグローバルスタンダードをみずからつくり出していただく、協調関係を持っていただくということをぜひ強い姿勢で交渉をさらに進めていただきたいと思います。  次にお尋ねしたいことでございますが、特許庁がこの四月から開始されるベンチャー企業などが持つ特許権を評価してその内容に格付を行う、この計画についてお尋ねをしたいと思います。  日本にベンチャー企業が育たない最大の理由というのは、銀行からの融資というものがまさに土地本位制と言われるような土地を担保とした融資でしかないということで、資金難に苦しむベンチャーが数多く存在する、こういう実情があるわけであります。  そういうことから、通産省もさまざまな支援施策、資金調達問題解決がベンチャー支援のかなめであるという認識を相当しっかりとお持ちであるということは私は評価をしているところでありますが、こうした技術開発型のベンチャーを助けるためにも特許などの知的財産権に対する世間の認識を向上させる必要というのは大変重要だと思います。この計画の趣旨にはそういう意味からも大いに賛同できるものでございます。  今、土地担保というものが不十分な時代になってきておりますし、金融機関なんかにもそういう意識の転換を大いにしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。この制度というのは、政府系金融機関との連携による知的財産権担保融資支援、こういうタイトルでございます。まさにこういった知的財産権の活用を図っていく計画が目的どおり資金調達支援につながることを期待したいと思っております。  そこで、この四月から開始するという特許権の評価サービスについて、計画の概要、それから期待される効果について伺いたいと思います。
  127. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 先生指摘のとおり、私どもといたしましても、技術開発型のベンチャー企業がせっかくの技術を十分に活用できないままでいるというのは大変残念だという思いから、そういう問題にチャレンジしようとしている政府系金融機関が幾つかございましたものですから、そういったところと話し合いをしていくプロセスで、では一緒にやってみようかということがそもそもの発端でございました。  これまでも、日本開発銀行、商工中金、中小企業金融公庫、こういったところが知的財産権を担保にいたしまして融資した事例はございます。事例の多くは日本開発銀行でございますが、これら全部合わせましてこれまでに約百件ほどの実績がございます。  しかしながら、そういう方々のお話を承って痛感いたしましたことは、そういう機関に最新の技術動向あるいは技術そのものについての評価をし得る言ってみれば審査官的な人が残念ながらいないということもございまして、そこが最大のネックだというお話でございました。また、日本国内にそういうことを第三者が信頼してきちっと評価を下すような機関がないということもございます。  それで、特許庁の場合には、特許分野だけでも一千人余のすべての技術分野をカバーする専門家がおりますし、またそういう人たちは日々新しい技術に接しているということでもございます。もちろん、過去の状況については十分わかって、過去にはこういうものがあったけれども、今出されたものは過去の技術と抵触しないかどうかということを日々チェックしているわけでございます。  そういう専門的な知見というものを生かすことによって、中堅企業が持っております知的財産権というものを少しでも生かせるような工夫ができないかということで、特に私どもの持っております権利面での情報、それから技術面での情報、この二面を中心といたしまして情報を提供することによってお手伝いできたらということで、新年度へ入りましてから、とりあえずは政府系金融機関を中心といたしましてこれを発足させたいと思っているところでございます。
  128. 水野誠一

    ○水野誠一君 今の御説明でかなりわかってきたのでありますが、どう技術を評価するか、このノウハウが大変難しい。この部分というのは大変重要なことだと思うのですが、意外なことに知的財産権を担保とする融資というのは海外にも余り例がない。  例えば、そういった知的財産権に対する認識が一番高いと思われるアメリカでは、御承知のようにベンチャー企業のアーリーステージにおけるベンチャーキャピタルという資金調達ルートが存在して大変大規模な投資がそこで行われるわけでありますが、一般的な銀行融資というのは逆に非常に保守的である。知的財産権を担保とする場合でも、担保売却による債権回収をねらったものではなくて、債務者にとって価値あるものを押さえることによって忠実に約束を履行させる圧力とする非常に古典的、補助的な機能に限った位置づけが多い、こういうふうに言われています。その根底には、こういった日進月歩の技術進化の時代でありますから、一たび陳腐化すれば担保価値が急減する可能性がある、こういう特質もあるわけであります。  そういう意味から、特に私は、市場性ということ、先ほど休眠特許のお話もありましたけれども、いかにすぐれた技術、特許があっても、それが市場の需要とマッチしないとなかなかそれだけの担保価値を生み出していかない。こういう問題も含めて今回のランクづけということが非常に注目される、世界的にも注目されるところではないかと思うわけであります。  その中で、権利を評価する四つの基準として、権利の安定性評価、権利の技術レベル評価、関連特許との関係評価、そして総合評価、こういうふうに述べておられるわけなんですが、二月末に発表された時点ではまだ詳細は検討中というお話であったので、その内容について少し詳しくお尋ねをさせていただきたいと思います。
  129. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) とりあえず、今先生指摘の四つの観点から担保の対象となるものについての評価をする、そういう仕組みをスタートさせようということでございます。  まず、権利の安定性評価におきましては、実際のところ、異議申し立てでありますとか無効審判というような対象になっているものでございますと、これは一挙に担保としての価値が小さくなってしまいます。したがいまして、私どもの場合にはそういうふうな情報はすべて持っておりますものですから、そういうものを提供申し上げる。  それから、権利の技術レベル評価におきましては、これも特許化するプロセスで、従来技術との比較において極めて基本的な特許性を持っているものであるのか、改良的なものであっても大幅な改良に近いものなのかどうか、こういう評価は直ちにできるような状況になっておりますから、我々が見ている範囲内では、この技術は非常に革新的ですよというようなアドバイスは大体できるのではないかと思っております。  それから、関連特許との関係評価でございますが、これは実は、ほかに出願された特許あるいはこれから特許化されそうなもの、これもいずれ一年半後にはすべて公表されますから、公表された暁にはそういったものをお使いいただいて間違いないわけですから、既にあるもの、それから今後出てきそうなものを含めて、この特許価値というものは大体この程度のものじゃないかということは、これも私どもの情報として御提供申し上げられる。  そういうことを総合評価して、全体としては普通なのか、普通よりも上なのか、普通よりも下なのかという三つぐらいの評価で全体を総合判断する、そんなふうなことを今考えておるのでございます。  また、詳細については、さらに対外的に公表できるようなものになった段階で、インターネット等を通じて公表できる部分はどんどん公表してまいりたいと思っております。
  130. 水野誠一

    ○水野誠一君 先ほどお話しありましたように、開銀が九五年にこういった知的財産権を担保として融資を行う、こういうことでスタートしたのを皮切りに、今百件とおっしゃっていましたが、そういう幾つかの事例が過去にもあるということであります。  その中で、例えば一つの例なんですが、動画圧縮技術を持つソフト関連ベンチャーに開銀などが多額の融資をした事例というのがありました。ただ、事業がとんざした後にその技術の買い手がなくて宙に浮いてしまった、こういう案件が報道されて波紋を呼んだ、こんなことを覚えております。  つまり、特許庁による今回の格付計画というのは大変意義のあるものだと思うんですが、知的財産権担保融資を今後根づかせていこうという場合には、これをもって十分とすることはできない。知的財産権の市場整備、これとまさに車の両輪の関係でうまく整備をしていかないといけないんじゃないか。つまり、格付の問題だけじゃない、市場整備という問題が非常に重要だと思うわけであります。  特許庁は、これまでにも取引情報の収集・提供、人的交流の促進などなど、特許市場整備に向けて幾つもの事業を展開してこられているわけであります。あすからスタートするインターネットの特許電子図書館もその一つだと思いますが、特許流通市場におけるコーディネーター役である特許関連情報事業者あるいは知的財産取引業者が活躍しやすい場をいかに提供するかといったことも特に重要ではないかと思うわけであります。  これは先ほどの渡辺委員からの御質問にもちょっと関連するところでありますが、今後の特許市場整備に向けた重点施策というものをいま一度簡単に御説明をいただければと思います。
  131. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のように、私どもなりのできる範囲内で情報を提供する、あるいは情報提供に基づいて私どもの技術的な観点からの価値判断を下すというぎりぎりのところまではできると思いますが、まさに今先生指摘のように、マーケティングの部分については、これは私ども全くそういう実業を経験しておりませんので、例えば銀行でありますとかあるいはほかの仲介業者といったような方々にゆだねざるを得ないわけでございます。  今まさに、情報を扱うような企業あるいは技術を扱うような企業というのが、アメリカとかヨーロッパと比べますと絶対的な数が非常に少のうございます。したがいまして、この辺については、十分な知見を必ずしも有していないということを前提にいたしまして、これを何とか育てていく必要があるだろうということで、先端を行っておりますアメリカを私どもなりにまず謙虚に学んでみようということで、私どものその衝にある人間を定期的にアメリカに行かせましてアメリカの実情というものを把握し、それをデータベース化するというようなことを今やっている最中でございます。  それから、アメリカとかヨーロッパでもう既に知見を積んでおります人たち、そういう業を営んでいるような人たちの中でその業をおやめになった方々にアドバイザー的に日本に来ていただいて、半年とかそのくらいの長さのことを考えているわけでございますが、それで日本実態を知っていただいて、こういうふうにすればそういう市場が育っていくんじゃないかというようなことを、これもトライアルでございますけれども、やってまいりたいというのがとりあえずの私どもの考え方でございます。
  132. 水野誠一

    ○水野誠一君 そういったアメリカから学ぶということは私も大変重要だと思うんですが、昨日の日経新聞に、アメリカでベンチャーキャピタルが入って起業した企業のうち、九三年に設立された二百八十一社、これが九九年三月にどれくらい残っているかということのデータが載っていたんですが、約八〇%が残っていると。しかもその中で二〇%が店頭公開を実現しているというデータがありました。ところが、その一方、いわゆるベンチャーキャピタルの資本導入ができなかった企業は八割がつぶれていると。逆に言えばそれだけベンチャーキャピタルの審査力というか判断力というものがしっかりとしたものであるということだと私はそれを見て感じました。  それと日本のこの制度とは違うんですが、おっしゃるように金融機関に市場性をしっかりと判断する目を養っていただく、それと同時に、技術評価についても今回の特許庁の評価というものがそれだけ大きく期待されるものであるということをぜひお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  133. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  特許法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  134. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
  135. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました特許法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 知的創造の進展・複雑化にかんがみ、知的財産権に係る国全体としての総合的な取組を行うため、我が国知的財産権の今後の方向に関する基本的な方針の策定に努めること。  二 特許権等の侵害に対する救済措置拡充を図る法改正趣旨及び内容の周知徹底を図るとともに、知的財産権紛争に対し国際的に遜色のない紛争処理能力及び紛争処理体制の確立に努めること。  三 創造的技術開発の促進とその成果の権利化・利用の促進を図るため、産学連携強化、弁理士等による知的財産権専門サービスの充実等知的インフラの一層の整備に努めること。  四 マドリッド協定議定書に基づく国際商標登録出願及び商標権について出願時及び登録時に発行される商標公報に翻訳を付す等により、我が国ユーザーが出願内容及び権利内容を十分に理解できるようにすること。  五 我が国ユーザーの一層の利便性向上のため、マドリッド協定議定書未加入国に対する加入の働きかけに努めること。  六 アジア諸国等における工業所有権制度全般の整備についての国際協力を積極的に進めること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  136. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  137. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、与謝野通商産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。与謝野通商産業大臣
  138. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
  139. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  141. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 不正競争防止法の一部を改正する法律案及び訪問販売等に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣
  142. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 不正競争防止法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  近年、音楽、映像、ゲームソフト等をデジタル化し、インターネットやDVDなどを用いてさまざまな形態で販売する事業、いわゆるコンテンツ提供事業が著しく発展しております。このようなコンテンツ提供事業は、消費者の多様なニーズに対応するものであり、将来の成長産業としても極めて有望であります。  通常、コンテンツの提供に当たっては、無断視聴や無断コピーを制限するための技術的制限手段が施されております。この技術的制限手段を妨害する装置やプログラムが広く販売されることとなりますと、正当な事業収益を得られないなど、事業としての存立基盤が危うくなる懸念があります。現在、技術的制限手段を妨害する装置やプログラムの販売行為が半ば公然と行われている状況に対応し、コンテンツ提供事業における公正な競争を確保するため、こうした装置やプログラムの譲渡などの行為を不正競争とし、差しとめ請求などの対象とすることが必要であります。  このような要請に対応するため、今般、本法律案提出した次第であります。  次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、コンテンツ提供事業における公正な競争を確保するため、料金徴収などのため営業上用いられる技術的制限手段により制限されている影像や音の視聴あるいは記録を可能としてしまう装置あるいはプログラムの譲渡などの行為を、本法における不正競争行為と位置づけ、差しとめ請求などの対象といたします。  第二に、技術的制限手段に関する研究開発を抑制しないため、技術的制限手段の試験または研究のために用いられる影像や音の視聴あるいは記録を可能としてしまう装置あるいはプログラムの譲渡などの行為については本法の規定を適用しないこととしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。  次に、訪問販売等に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  消費者取引をめぐるトラブルにつきましては、近年、エステティックサロンや外国語会話教室を初めとするいわゆる継続的役務に係るトラブルが急増しており、これらの契約の解除等に関する苦情相談が多数寄せられている状況にあります。  また、訪問販売等に係る取引により購入者等に被害が多数発生している等、取引の適正化が十分図られていない状況にあります。  政府といたしましては、こうした現状にかんがみ、これらの取引の公正及び購入者等の利益保護をさらに図るため、本法律案を提案することとした次第であります。  次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、訪問販売等に関する法律の一部改正であります。この一部改正におきましては、特定継続的役務提供について、契約締結時における書面交付の役務提供事業者等に対する義務づけ、役務の提供を受ける者等による契約の解除、契約解除時の損害賠償等の額の制限等の措置を講ずるとともに、同法の対象取引全般について、罰金額の引き上げ等の措置を講ずることとしております。  第二に、割賦販売法の一部改正であります。この一部改正におきましては、特定継続的役務を中心に割賦販売等の利用が増加していること等から、役務等について同法の対象に追加し、契約解除時の損害賠償等の額の制限、割賦購入あっせんに係る抗弁権の接続の措置等を講ずることとしております。  以上が本法律案の提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  143. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会