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1999-03-23 第145回国会 参議院 経済・産業委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月二十三日(火曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      加納 時男君     石川  弘君  三月十六日     辞任         補欠選任      石川  弘君     加納 時男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 簗瀬  進君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 加納 時男君                 倉田 寛之君                 小山 孝雄君                 末広まきこ君                 中曽根弘文君                 長谷川 清君                 平田 健二君                 福山 哲郎君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        通商産業大臣   与謝野 馨君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政府委員        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      山田 昭雄君        通商産業省貿易        局長       佐野 忠克君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君        通商産業省生活        産業局長     近藤 隆彦君        特許庁長官    伊佐山建志君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        中小企業庁次長  殿岡 茂樹君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○中小企業経営革新支援法案内閣提出、衆議院  送付) ○中小企業総合事業団法案内閣提出、衆議院送  付) ○特許法等の一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  中小企業経営革新支援法案及び中小企業総合事業団法案の両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 海野義孝

    海野義孝君 公明党の海野でございます。  きょうは、堺屋長官、今商工委員会の休憩時間ということで、御無理を申し上げましておいでいただいたわけでございます。私から長官に御質問させていただいて、終わり次第御退席していただいて結構でございますので、よろしくお願いします。  きょうは、委員長、どうもありがとうございました。  それでは、堺屋長官に御質問申し上げたいと思います。  先般、もうかれこれ二週間近くになりますけれども平成年度の第三・四半期、昨年の十—十二月の実質GDPが発表になりましたけれども、これも残念ながら大方の予想を上回るような深い落ち込みということでございました。  したがいまして、暦年ではこの平成十年についてはマイナス二・八というような数字になるわけでございます。平成年度がどうなるかという点、実はこの点につきましては、ことしの一月十八日の閣議でございましたか、平成年度マイナス一・八%という見通しをさらに改定されまして、これがマイナス二・二というようにさらに下方修正を決定されたということでございました。さらに、それからほどなく、わずか一週間足らずで、マイナス二・二が二・二ないし二・四というようにさらに下方修正というような見通しが出ました。  そこで、問題は、その後、十—十二の数字が出ましたことに基づいて、この平成年度の第四・四半期、つまり間もなく終わる一—三月が去年の十二月の悪さを踏まえてどうなるかということが大変問題になるわけでございます。この点につきまして、長官、一—三の実質GDPが大体どのような数字になるかということが第一点。  それから、第二点は、そういったことを踏まえた平成年度見通しの中で、十一年度はどうなるかという点でございますが、これはもう先般、平成十一年度予算審議に伴って前提となる平成十一年度経済見通し実質プラス〇・五と三年ぶりでプラス成長になる、こういうことでございました。  今、私がいろいろ申し上げたことを踏まえて、一つは一—三がどうか、そして平成十一年度の〇・五の数字はどうなるのか、ひとつ簡略にお願いいたします。
  4. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のとおり、平成十年の十—十二月の数字マイナス〇・八%ということで、年率に直しますと三・二というかなり大きな落ち込みになっております。  その原因でございますけれども、まず第一に、その前の期、七—九月期が従来の速報値でございますとマイナス〇・七でございました。四—六月期もマイナス〇・七、次の期もマイナス〇・七、こうなっていたのが、確報の段階修正が行われまして、七—九月がマイナス〇・三と〇・四%上昇いたしました。この主たる理由は、中小企業設備投資が意外と前期の推計時に比べて大幅に上昇しており、一一%強の上昇になっている、ちょっとこれは当時の感覚と違うのでございますけれども、そういう統計になっております。  その結果、前期が上に上がりました。したがって、十—十二月はそれほど下がらないと思っていたのが、設備投資が一一%上がったものですから、今度は中小企業だけとると二四%下がるというふうな、二八でしたか、大幅に下がるというような形になりました。それが効いたのが一つであります。  もう一つは、住宅がかなり引き合い等がふえていたんですけれども減税等措置が年明けからとられるというようなことで先送りされたような傾向もありました。そして、何よりも大きかったのは、海外余剰が七—九月期にはプラス〇・三でございましたが、十—十二月期はマイナス〇・三、そこで差し引き〇・六違う。だから、内需だけ見ますとほとんど同じでございましたけれども、外需で大きな差が出る。  したがいまして、七—九月期が高い水準になったものですから、四半期ごとの姿を描きますと〇・七下がって、〇・三下がって、〇・八下がる。前期が上がりましたもので、十年度見通しとしてはむしろ楽になったといいますか、大体マイナス二・二という数字がそのまま行くんじゃなかろうか、今慌てて修正しなきゃいかぬような状況にはなっておりません。何しろ、七—九月で上がりますとその水準あと三期にわたってかさ上げになってくるものですから、そういう点では修正する必要がございません。  問題は一—三月なんです。まさに今でございますけれども、これがどうかということでございますが、まだこれにつきましては何ら統計が出ておりません。今出ておりますような諸般の統計、百貨店の売り上げでございますとか住宅着工数とか、自動車の売り上げとかというようなものを見ますと、依然として非常に厳しい経済情勢ではございますが、かなり下げどまりの要因も見られている。そういうことで、まだ何とも申せませんけれども下げどまりが期待できる状況。  そういうことをあわせて言いますと、この十年度マイナス二・二という前の見通しを今変えねばならないような状況ではないだろうと考えております。
  5. 海野義孝

    海野義孝君 十一年度実質GDP〇・五%という政府見通しですけれども、いつも問題になりますが、景気というのはパターンとしてしり上がりの形で好転していくのか、ずっと底ばっていて来年の一—三あたりでぴょんと上がって〇・五になるのか。  その場合、やはり平成年度の最後の一—三、ここでげたがプラスになるかマイナスになるかということが、これもまた問題になるんですけれども、そういった細かなことはともかくとして、平成十一年度実質〇・五%の経済成長、これは四半期別でどういう数字を描いていらっしゃるか。調整局あり、調査局ありで、いろいろそういったことの難しさは、私も過去の長官の皆さんにそれぞれ御質問させていただいて、回答がなかったので堺屋長官も恐らくないと思いますけれども、〇・五%の四半期別成長率、どういう数字を描いていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  6. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) これはどうなるかというのを細かく分析といいますか、見通して当てることはほとんど不可能でございますが、パターンをちょっと申し上げさせていただきます。  今まで答弁がなかったということでございますけれどもパターンで申しますと二つ考えられます。  まず、一—三月、今でございますが、これが全く横ばいだった、〇・〇だったといたしますと、前の年の形が下り坂になっておりまして、そこの平均値に比べて今度〇・四上がるわけですから、あとかなり上がらないといけないことになるわけです。それで、その間を四半期で割りますと各四半期ごとに〇・四%ずつ、年間成長率でいいますと一・六%ぐらい上がってくれないと、こちらの方が下がっておりまして、去年の春ぐらいは高いわけですから、それとならすと〇・五のプラスにならないということになります。  逆に、今期これが仮に〇・四%回復してくれるとあとは〇・二%ずつでいいと、年率に直しますと〇・八%ぐらいになる。今期もし〇・八%ぐらい上がってくる、十—十二月で下がったのと同じぐらいの反騰をしてくれるといたしますと、あとは〇・一ずつでいいと。こういうパターンになります。  これはいずれもあり得る線なのでございますけれども、余り大きなことを期待しないで、今の状況を見ますと大体横並びか少し上がるか、その辺で、あと〇・三とか〇・四ぐらいが積み重なっていくのかなと、そういうように思っております。  したがいまして、今のところこの〇・五%のプラス成長というのは私どもとしてはかなり自信を持って変える必要はないと考えております。
  7. 海野義孝

    海野義孝君 先般のG7でもそうですけれども、この平成十一年度プラス〇・五というのは半ば国際公約めいているという点で私は大変厳しいなとは思いますが、いずれにしても、早く底入れをして経済が上向くことを願っている一人でございます。  そこで、先週ですか、実は総理の方から追加景気対策というのが三点ほど出まして、報道等をつぶさに私は分析してみました。後ほどまた通産省方々にも御質問することになりますので重複は避けますけれども、今般のこの追加景気対策によりまして実質〇・五%の平成十一年度政府見通しは上方修正されるのか、あるいはこういった追加的な景気対策をやることによって何とか〇・五というプラス成長を辛うじて実現できるのか、その辺については率直なところ長官はどういった御判断をお持ちですか。
  8. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 追加的なと申しますと、昨年十一月にやった緊急経済対策でしょうか、それとも最近発表した……総理記者会見でおっしゃったものでございますね。  総理記者会見でおっしゃったのは、現在の既に御審議いただいております予算範囲内でございまして、一つ住宅関係金利、それから二番目は貸し渋り対策の問題、それから三番目は予算執行前倒しする、この三つでございます。  この中で既に効果を上げていると言えるのは住宅金融。これは本来でございますと、本来といいますか従来の決めている政策体系でございますと二・八五%ぐらいになるところを二・四%に今回抑えました。これを六月まで続けることにいたしました。  住宅金融公庫金利を〇・一%変えても二十五億ぐらいの差なのでございますが、心理的といいますか、建てられる方にとっては非常に大きな効果がございますので、これはかなり効果があると思います。  それから、二番目の貸し渋り対策でございますが、これは通産大臣の方が詳しいと思いますが、なお保証の枠も大分まだ残っております。これがどれぐらい出てくるかを見ながら検討したいということだと思います。  三番目の前倒しでございますけれども、これは予算国会先生方の御尽力によりまして早く上げてもらいましたので、すぐ実施計画に取りかかれることになります。そういたしますと、二、三週間早く執行できるというようなこともございまして、前半期のうちに前年度を一〇%上回る十五兆ぐらいの執行ができるんじゃないか。そういたしますと、これはかなり前倒しに効いてまいります。  それで、あとこれが民需にうまくつながっていくかどうかというのが問題でございますけれども、私どもとしては、だからといって見通しを引き上げるようなことはしないで、確実にこの〇・五%を実現させていくというのが現在の政府の立場としていいんではないかと考えております。
  9. 海野義孝

    海野義孝君 もう一点お願いします。  先般、経産委員会での所信の中で雇用対策起業支援の二点についてお触れになっていたので、その点についてちょっとお聞きしたい。  雇用対策につきましては、新しい産業構造就業形態に即した雇用開発と創造に注力するために、勤労者能力開発を強化し、新規雇用創出に対する新たな助成制度を創設するということでございましたけれども、これは具体的に何かという点。  もう一点は、起業支援ということですけれども、新たに事業を起こそうとする者の資金調達支援する措置ということがありましたけれども、具体的にこれはどういうことを、もう具体化しているのか構想の範囲にとどまっているのか、お聞きしたいと思います。
  10. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 勤労者能力開発を強化し、新規雇用を創造するという方でございますが、これは緊急経済対策から引き継いでおりますので、既にいろいろと案を練りまして実行準備段階に入っております。  職業能力開発相談支援事業というのを創設いたしまして、主として中高年向け民間教育機関政府機関だけではニーズにこたえ切れないので、民間機関に委託いたしまして、職業訓練を拡大するとともに、失業給付が受けられない職業訓練受講者に対しましては、期間中、特別訓練奨励金を支給するというようなことを行っております。昨年十二月より、教育訓練給付制度を施行しており、労働者費用を負担した労働大臣指定訓練機関に係る費用の八割相当額、二十万円が限界でございますが、そういうことを実施しております。  また、雇用機会が不足している中で、雇用の安定を図るためには新規雇用開発することが重要であります。従来は、なるべくその職場にいるように補助金助成金を出していたんですが、このたび、まずさきの臨時国会で決定いたしました中小企業労働力確保法に基づきまして、中小企業雇用創出助成金が創設されました。中小企業者個人の方が創業や異業種進出のために人材を確保する場合には賃金等助成をするところであります。  さらに、緊急雇用創出特別基金というのを創設いたしまして、雇用情勢が著しく悪化した場合には、非自発的失業者を雇い入れた場合、中高年、四十五歳以上だと思いますが、これに対して三十万円を支給するということになっております。この雇用情勢が悪化したと、臨機に対応してということでございますが、一月三十日より沖縄県においてこれは適用されております。  それからもう一つ、お尋ねの起業の方でございますが、これは通産省の方でおやりいただいていることでございますが、新たに事業を起こそうとする者の資金支援するために、新事業創出促進法に基づきまして、一定の要件を備えた創業者民間金融機関から資金を借り入れを行うとき、これを円滑に行えるように、無担保・第三者保証不要で保証するような制度を始めております。これは、特にサラリーマンの経験しかない方が新しく事業を起こそうとなさるとき、従来の制度でございますと一定年限経験なり事業継続が必要だったのでございますが、これは新たになさろうという方にも適用できる制度ということで進めております。  そういう意味で、既にかなり準備が進んでいる、沖縄では一部実行されている、こういう状況でございます。
  11. 海野義孝

    海野義孝君 どうもありがとうございました。  長官は以上でございます。  次に、与謝野大臣に御質問します。  事前に申し出ている以外のことでございますけれども、これはついこの三連休中に新聞報道等に出ておりましたことなんです。  一つは、創業初期ベンチャー支援という問題でございます。民間においてはベンチャーキャピタル、これは五億円ないし二十億円ぐらいの複数のそういったファンド、一方では、今度六月末をもって統合された新総合事業団に変わるわけでございますけれども中小企業事業団、これの方とで新しい共同基金制度を創設するということで、形態としては投資事業組合方式をとるということのようでございます。三月末ということはもうあと一週間ですが、めどにこれを創設されるというように新聞で伺いました。一応、新年度平成十一年度一年間で、年度末までに約八十億円程度ファンドを創設すると。そのねらいは、国の資金を呼び水にしてベンチャー投資を拡充し新しい産業を育成する、このように伝えられているわけでございます。期間としては大体十年から十五年ぐらい、こういった制度ということです。  そこで御質問ですが、これは今審議されております中小企業経営革新支援法案、これとも絡んでいるような感じもするわけでございますけれども、それのより具体的な一つ試みかと思うんですが、これは一年で大体八十億円ぐらいということをお考えになっているということでございます。具体的には、これによって新たなベンチャービジネスをどのぐらい誕生させるか、それがアメリカのように軌道に乗っていくということが期待できるわけですけれども、その辺のところを含めて大臣のお考えというか、わかっている範囲お願いします。
  12. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 報道された記事をまとめてみますと、「通産省中小企業庁は三月末にも、創業初期企業を中心に投資する官民共同基金制度を創設する。」ということが書いてございます。それから第二には、「民間ベンチャーキャピタル共同で、九九年度末までに総額八十億円程度ファンドを設立する。」、これも書いてございます。第三番目には、「有力な技術やサービスを持ち、会社設立後五年程度までの企業を発掘、投資する。経営参加や指導を通して成長を後押しする米国型支援を目指す。」、これが記事の骨子でございますが、記事の内容はおおむね事実でございます。  ただし、二のところで、「五億から二十億円の規模のファンドを複数設立する。」とございますのは、中小企業事業団出資額は二分の一以内、十億円が上限というのが正しいわけでございます。また、「期間は十年から十五年」とございますのは、十二年以内、三年以内の延長可能、これが正しいわけでございます。  私どもとしては、この制度によりまして創業期ベンチャー企業への資金供給が活発に行われることを期待しながらこの政策考えているわけでございます。
  13. 海野義孝

    海野義孝君 御確認をさせていただいたわけですけれども、具体的に新たなベンチャービジネスがこれによってどのぐらい誕生するかという点は、また改めて後日お聞きしたいと思います。  もう一点、これも事前にお届けしていないんですけれども、実は今大変問題になっております日米開業率廃業率の問題ということでございます。九七年ですから一昨年の暦年の我が国の法人企業ベース、株式会社とか有限会社ということで、個人事業所的なものは除外してあると思うんですけれども、ついにここまで来たかという感じです。個人事業所については、従来からも相当長きにわたって開廃業率廃業率の方が上回るというような、まさに中小企業の厳しさというものをあらわしていますが、法人企業につきましてもこういった状況にある。前年が三・九ということで、九七年の開業率は三・五%ということで歴史上最低になった。一方で、廃業率については、不況が続いておりますので、当然のことながらこれも前年に比べて二・三%だったものが何と四・五%というところまで高まった。差し引きしますと一%廃業率が上回るということでございまして、恐らくこの傾向は昨年、九八年も余り変わりはないんじゃないかというように危惧されるわけでございます。  そこで、問題点としましては、こういう開業率落ち込みというのは、産業構造の新陳代謝、要するにこういったものが鈍ってまいりまして、日本競争力が中長期的に見て衰退するおそれということを示唆しているのではないかというように大変懸念されるわけでございます。  そういった点で、大臣とされては、創業支援する税制面での対策等、こういった状況を踏まえてさらに一段と踏み込んだそういう具体的に何か諸措置を講じられるお考えがあるのか、あるいは既にそういったものを御検討されているのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  14. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) アメリカと比べて開業率廃業率ということが随分議論されております。  まず、開業から申しますと、一つは、やはり心意気の問題と申しますか、自分で何か仕事を始めようという意志と意気込みを持った方が少なくなってきたということは、これは社会的な背景もございますが、多分教育問題等々根元的な問題を含んでいるのではないかと思います。  そこで、新規開業する方にいろいろなアンケートをとってみますと、何がネックになっているかといいますと、一つは、開業したいということを考えついたときに、なかなかいいアイデアも持ち、よし、やってやろうという意気込みもあるんですがなかなか開業資金調達できないという、まず資金の問題がございます。それからもう一つは、相当技術もあるんだけれども、もう少し技術者技術があると新しい企業が創設できるという技術の問題もございます。それから、人材を集めるということについても新規開業の方は苦労をしているわけでございます。  それから、先般私のところにも大学の先生が四名ほどお見えになって、自分たち技術は持っているけれども、製品化するとか販路を開拓するとかという経営上のノウハウが全くない、これは一体どうやったら手に入れられるのかということを御相談に来られました。そういうことですから、そういう面での支援というのはいろいろ今回の政策の中で国会に御承認をいただくようにお願いをしておりますし、過去もいろいろお願いをいたしました。  それと同時に、エンジェル税制というものもございますけれども、やはりそういうベンチャーあるいは新規開業にお金を出す方々税制上の問題ももう少し拡充しなければならないと思いますし、また資金調達方法として直接資本市場から調達できるというような、アメリカ的な資金調達方法ということについてもまだ十分でないと思っております。  また、企業を新しく始めた方が失敗したときに、やり直しがきくような倒産法制というものも我々考えなきゃいけない。一回きりの試みで終わるということではなくて、七転び八起きという言葉がございますけれども、そういうやり直しがきくような倒産法制あるいは社会的な雰囲気と申しますか、背景と申しますか、そういうもろもろのことが全体として必要なんだろうと思います。  ただ、先生が御心配のように、新規開業が少なくなりますとやはりだんだん日本の活力と申しますか競争力というものが失われるわけでございますから、我々は政策的にそういうものを支援していくという心がけを持ちながら、政策考え税制考え予算考えていく必要があるという点は、私は先生のお考えと全く同一であろうと思っております。
  15. 海野義孝

    海野義孝君 次に、与謝野大臣に引き続きお願いします。  一つ考えておりました御質問については今のお答えの中でかなりいただけましたから、次の問題です。これも三月四日の当委員会において大臣の所信表明があったときの中の一つです。「産業再生に向けた政策手段の総動員」に関しまして、中小企業技術革新制度とか地域の産業資源を活用した事業環境の整備ということについてお述べになっているわけですけれども、私が不勉強かもわかりませんが、これは具体的施策としてはどういうものがあるのかという点についてお聞きしたいと思います。
  16. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 中小企業技術革新制度というものは、国が中小企業向けに研究開発補助金等を指定した上で、毎年度支出目標を設定いたしまして、技術開発力のある中小企業に対して重点的に研究開発補助金等を投下する仕組みでございます。加えまして、無担保・第三者保証人不要の特別保証枠の創設等の中小企業信用保険法の特例等を講じまして、技術開発から事業化まで一貫して支援を行う、こういうことでございます。  また、地域に存在するさまざまな産業支援機関の連携を促すことによりまして、技術開発から事業化に至るまでの各段階において、技術面、人材面、資金面等のさまざまな問題に直面する中小企業者等に対して適時適切な支援を行う体制、これを地域プラットフォームと我々は呼んでおりますが、これを整備いたしまして、その中心となる中核的支援機関が中小企業者等の相談を行うなど地域を挙げて産業再生に取り組む、こういうことを考えているわけでございます。
  17. 海野義孝

    海野義孝君 次の質問は、これは通産大臣なのかあるいは鴇田長官かちょっとわかりませんけれども、そう言っては失礼ですが、先ほどからいろいろ抽象的なお話は承ったんですが、具体的な金額として貸し付けだとか税制面での支援であるとかいろいろあると思いますが、今般審議中のこの中小企業経営革新支援法に基づく一連の支援措置の規模、金額、それと、今般のこの法案によって発展的に解消になるという従来の中小企業近代化促進法及び中小企業新分野進出等円滑化法に基づく関連支援措置の規模、これの比較。  これは、一方についてはこれからの問題ですけれども、年間どのぐらいの規模でそういった支援のための措置を講じていかれるかというような考えになろうかと思います。従来の二法に基づく分は年々の予算の中でも盛り込まれ、実行されてきているかと思いますので、私がお聞きしたいのは、その辺の比較において今回の法案がまさに画期的な法案と言えるかどうかを金額の面でお示しいただきたいという意味でございます。
  18. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 今回御審議をお願いしております中小企業経営革新支援法における助成策の規模と従来やっております近促法、新分野進出法における支援措置の規模の比較というお尋ねをいただきました。  御趣旨に照らしまして具体的に御説明させていただきますと、例えば新分野進出等円滑化法と経営革新法との違いでございますが、従来、新分野進出等円滑化法におきましては、これは業種の面では製造業等四業種に限定をされておりまして、これについて全業種を対象にするということが基本的なところでございます。  例えば予算的に申し上げますと、補助金ベースでは、新分野進出等円滑化法におきましては年間二億円の補助金でございました。今回、経営革新支援法に基づく補助金制度といたしましては、新商品開発あるいは販路開拓、人材育成等に必要な二分の一補助といたしまして十八億円という予算規模を設けてございます。  それから、低利融資でございますが、これは中小公庫等の政府関係金融機関から低利融資をいたします。これにつきましては、金利あるいは金額等について従来とほとんど変わりませんけれども、質的には担保徴求特例というのを新たに創設いたしておりまして、昨今の経済環境下の中でなかなか担保提供ができない、そういった中小企業者のために、八千万を上限といたしまして融資額の二分の一までは担保を徴求しないで融資ができるという制度も盛り込んでございます。  それから、税制、信用保険、その他、これらについてはほとんど新分野進出法と同じでございますが、例えば新たに法律事項といたしまして投資育成株式会社法の特例ということで、資本金一億円以上の企業に対する投資も投育の方からできるという点がございます。  他方、近代化促進法との助成策の差異でございますが、まず一番最初に大きいポイントとして挙げられますのは、従来、高度化融資、こういった計画承認を受けた者について、融資割合が七割、かつ金利も二・七%でございましたが、今回の支援法に基づきましては、融資割合を一〇%上げて八〇%、金利についても二・一%と格段に低下をさせてございます。  また、中小企業金融公庫等の融資につきましても、金利、これは具体例で申し上げますと、設備資金、従来の制度ですと二・五%の金利でございましたが、今回は二・一%ということで、特利三を適用できるようにいたしております。  それから、税制では、これはかなり大きなメリットになろうかと思いますが、機械等の割り増し償却、従来の近促法に基づきますと償却率が一八%でございましたが、今回の法律に基づく計画に従ったものについては償却率を一八から二七%まで上げております。  また、信用保険、信用補完の分野では、従来の近促法では、別枠の信用枠が使えるとか、あるいはてん補率が七割から八割に上がるとか、あるいは保険料率の引き下げという特別措置が適用されておりませんでしたが、今回の経営革新法に基づく経営革新計画につきましては、今申し上げた信用補完の面で格段の拡充策が講じられることになっております。  以上、主要な点について御説明申し上げました。
  19. 海野義孝

    海野義孝君 時間が一分になりましたので、最後に通産大臣にお聞きします。  まだ三月末の数字は出ておりませんけれども中小企業の金融安定化のための特別保証枠二十兆円に対して、現在、三月末で推定大体どのぐらいの金額及び件数が対象になったかということと、今回新たな景気追加対策の中で二十兆円を三十兆円に枠を拡大するというような話があるやに新聞によっては出ておりますけれども、この点について確認したいと思います。
  20. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 特別枠につきましては、三月十二日までの数字ですが、実績は七十万五千件、金額にいたしますと約十三兆七千億になっております。非常に多くの中小企業の皆様方に御利用いただいているわけでございます。したがいまして、二十兆から十三兆七千億を引いた六兆三千億が残った特別枠でございます。  これは中小企業庁を中心に今どういうペースでこの保証枠が使われていくかということをいろいろ推計しておりますが、なかなか正確な推計というのはできません。三月末のこともございますし、一月が極端に減ったのは十二月のいわば反動だという説もありますし、いろいろ計算しております。しかし、ことしの秋に入るころには二十兆の枠が使われてしまうのではないかというふうに我々は考えておりまして、総理からも特別な御指示がございましたので、必要に応じて機動的にこの枠を追加するようにいたしたいと思っております。  ただ、一部報道にございます十兆の枠が確定的なものというふうに報道されておりますけれども、それはまだ決められておりません。ただ、いずれにしましても、二十兆の枠はことしの秋ごろまでには使われてしまいますので、この特別枠の制度が来年三月まで続くということを考えれば、当然追加をしなければ制度の維持ができない、こういうことでございます。  ただ、追加したときに、貸し渋りという名目が正しいのか、あるいは中小企業を何らかの意味で強化していくという考え方が入っていくのがいいのか、その辺はまだ議論が詰まっているわけではないということは御理解いただきたいと思っております。
  21. 海野義孝

    海野義孝君 なるだけ強化という形で使われるように、不景気のために必要だということでない方向に行くことを念願するわけでございます。  どうもありがとうございました。
  22. 畑恵

    ○畑恵君 自由民主党の畑恵でございます。  与謝野大臣におかれましては、オーストラリアの首脳との意見交換をされて、けさ早くに成田にお着きになって、そのまま審議ということで大変お疲れでございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  まず、中小企業経営革新支援法案について伺ってまいりたいと思います。  今回の法案ですが、単に中小企業近代化促進法と中小企業新分野進出等円滑化法という既存の中小企業支援のための二法を発展的に統合させたにとどまらず、今日のグローバル化ですとか情報化、そしてサービス化が加速度的に進展する経営環境に対応する、即応するように中小企業政策そのものを理念から抜本的に見直したものとして私自身としてはまず高く評価させていただきたいと思います。  これまでの中小企業対策といいますと、その主眼はやはり弱者救済ですとか格差是正でございました。これでは支援の体制は護送船団方式にならざるを得ません。しかし、このたびの法案の趣旨は、意欲ある企業の独立性ですとか自助努力を支援して各企業の個性や多様性を重視し、伸びる企業をもっと伸ばす方向に重きを置いたもので、ぜひこの趣旨どおりに具体的な支援策が実施されることを希望してやみません。  そこで、まず実際にその申請を行った際の審査のあり方について伺いたいと存じます。  これまでの近代化促進法では、商工組合などが業種ぐるみで構造改善計画を策定して、主務大臣から承認を受けますと、組合員である各中小企業者が承認を受けた旨の証明書を組合からもらって、それを中小公庫などに持っていけば助成を受けられるという、これしか方法がなかったわけでございます。しかし、今回の法案ですと、個々の中小企業者経営革新計画を自分で作成して、そして審査を仰いで個別に助成を受けられる。こうした措置によって、個々の企業の新規性ですとか意欲が評価されて、それに応じて支援がなされるのだとすれば実に画期的なことだと思います。  ただ、心配なのは、これまでの尺度でははかれない新たな企業価値というもの、これをどのような基準で、まただれがそれに基づいて判断することになるのか、この二点を伺えますでしょうか。
  23. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 経営革新計画というのを、中小企業方々、個々の事業者あるいはグループ、組合という形でつくっていただくわけです。これにつきましては、法律上も具体的に書いてございますが、一つの都道府県の域内にとどまる事業者の方々試みられる場合には都道府県知事が承認することになっております。その他のものについては通産大臣経営革新の内容たる事業を所管する大臣が審査するということになっております。  具体的には、経営革新計画として承認を受けるためには、新商品の開発や生産あるいは商品の新たな生産方式の導入等新たな事業活動であって、かつ経営相当程度の向上が見込まれるものを経営革新として定義をしておるわけであります。さらに、経営革新計画の中身の一つといたしましては、付加価値額等の指標に基づく経営相当程度の向上というものが図られることを要件の一つといたしております。  これらにつきましては、都道府県で審査をいただく場合には当然なかなか難しい判断を要する審査になろうかと思いますので、これから法律を御審査、成立させていただいた暁には、法律にございます経営革新指針というものを通産大臣が定めさせていただきます。この中で具体的に、これはある意味では、審査をする審査権限者、都道府県、国にも必要でありますし、また実際に応募をされる、申請をされる中小企業者の方にもある程度予測可能性が必要になりますので、そういった経営革新指針の中に今申し上げた要件についてできるだけブレークダウンした、そういった基準を定めたいと考えております。  あと、法律上ではございませんが、都道府県に対して具体的な審査マニュアル的なものもぜひ提供を申し上げたいと思っております。  なおかつ、そういった手続面あるいは物差しが用意された上でも、これはある種の業種特性といいますか、業種ごとに新規性とかマーケッタビリティーとか、そういった面については特殊なノウハウが必要になりますので、これらについては今後の流れとなると思いますが、そういった外部の経営資源といいますか審査能力というものも活用できるような場を都道府県なりあるいは国の場合においても設けるという形で対応を図っていきたいと思っております。
  24. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  経営革新の指針ですとか審査マニュアルということで、非常に具体的な措置考えていらっしゃるということがわかりました。期待いたしたいと思います。  今、長官のお言葉にもありましたように、例えば、昨今、株価が非常に高騰していますインターネットの関連企業ですとかハイテク産業などは、今までの伝統的な指標ではなかなかその潜在的な価値がはかれないわけです。先ほど、特殊なノウハウというものの導入も考えていらっしゃるということでございました。  例えば、シリコンバレーのオピニオンリーダーとして名高いレジス・マッケンナ氏も先日、新聞にインタビューを受けて書かれていたんですが、情報通信のような変化のスピードの速い産業ですと、実物資産、いわゆる帳簿上の資産ですが、これは技術革新への即応力を鈍らせるのでむしろマイナスである、新たな価値基準としては例えば顧客資産、どれぐらいクライアントリストを持っているかとか、そういうことに注目すべきだと述べています。そうした変化にキャッチアップしていくのは非常に大変だと思いますけれども、審査する側の発想の転換というのもぜひ進めていただきたいと思います。  こちらも、今長官の方から、外部のそういうノウハウを持った方の起用ということも考えていらっしゃるというお話でした。ぜひ大臣にお考えいただきたいのは、クリントン大統領が、かつてベンチャー企業推進委員会のヘッドに大手ベンチャーキャピタルのアラン・パトリコフ代表を据えまして、実務者の視点に立った改革を行って非常に成果を上げました。  せっかく今回、新規創業支援に重点を置きました経営革新支援法案をこのように通すのであれば、それを今後実際に機能させていく上で、こうした思い切った人事を行って、現場に即したアドバイスを随時吸い上げていくべきだと思うんですけれども、これに対してもしコメントいただけましたらお願いいたします。
  25. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 法運用に当たってどういう姿勢で臨むかというお尋ねでございますけれども中小企業経営革新支援法は、新たな事業活動を通じた中小企業経営全体の高付加価値化等を支援する振興法でございます。したがいまして、法の運用に当たりましては、中小企業経営問題等に精通する実務者の意見を取り入れることは大変重要であるというふうに認識しております。  そこで、具体的な制度設計に当たりましては、実務家や有識者の意見を積極的に取り入れるとともに、法の運用に際しても、中小企業診断士や公認会計士など経営診断の専門家の協力を得ることを検討しております。
  26. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  ぜひそうした部分を強化していただくのと、さらにもう一段踏み込んだところで、やはりトップのところで、実務者の方の御意見というのが上の方から生かされませんと実際に機能していく上でなかなか難しいのではないかなと思います。  私自身も、例えば先日、幕張メッセで行われました東京ゲームショーなどに参りまして、実際にああしたコンテンツをクリエートしている人物ですとかその企業家たちと現場に行って話しますと、やっぱりちょっと私自身も視点がずれていたなとか、こういうところを強化すべきなんだなということがわかりますので、大臣御自身は非常にお忙しいと思うんですけれども、もし何か機会がありましたら、そういう実務者のトップの方々、非常に若い世代でございますので、ぜひ直接御交流をいただきまして、意見を吸い上げて反映させていただきたいと思います。  今は事前の評価のことを伺いましたけれども、行われた支援によってどのような効果が得られたのか、その事後の評価についても大切なことだと思いますし、ぜひ実施していただきたいと思います。  しかしながら、これまでの近代化促進法ではこの政策評価というのがなされていなかったために、何と二十年以上の長きにわたってほぼ同様の構造改善計画を実施している業種が数多く存在すると聞いております。  中小企業庁御自身の調査でも、組合により策定された計画と個別企業経営課題とが一致するとする企業が約二割しかいないと、そういう結果が出ているということですけれども、この事後の評価ですとかその評価の結果の公表、今後これをどのような対応を考えていらっしゃいますでしょうか。
  27. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 計画を実際に実施していただきました場合の事後の評価ということでございますが、経営革新計画、我々の予定では五年間程度の計画を中小企業方々につくっていただくことになるのではないかと考えておりますが、実際にそういった計画を実施後にどういった効果が上がったかにつきましては、いろんな経済指標なんかも駆使いたしまして、成功事例あるいは失敗事例という形で整理をさせていただいて、できるだけ公表させていただきたいと考えております。  ただ、本制度は、法律上、行政庁の方で計画期間の中間年において進行状況を調査するという規定がございまして、これは近促法と大きく違う点でございます。  先ほど申し上げたような五年後の計画終了後の評価に加えまして、計画をやっている最中、二年後、三年後につきましても進捗状況について調査をさせていただいて、これに応じてアドバイスが必要であればその時点でまた加えさせていただくということです。近促法の例で委員が御指摘になりましたように、幾つかの業種については二十年以上にわたって構造改善を進めておられる、それなりに必要性があってやっておられるわけですが、それにつきまして、できるだけ経営革新については迅速に対応し効果を上げていただくという観点から、そういう仕組みも設けてございます。
  28. 畑恵

    ○畑恵君 スクラップ・アンド・ビルドを随時行ってくださるということでございますので、スクラップはしないのかもしれませんけれども、随時方向修正が当然それによってある程度なされるわけでしょうから、そのような調査を入れる形で進めていただきたいと思います。  さて、今回の法案の基本理念と言えます、変化の早い経済に柔軟かつ機動的に対応できる中小企業支援策を実施するとなりますと、従来のような強固な企業間連携よりも、それぞれの企業が得意とする分野に特化して、不足する経営資源はほかの企業との緩やかな連携というんでしょうか、そのような形によって補完する組織化、これを促す方向性を全体の政策としてはとるものと思います。  この法案では、こうした緩やかな新たな連携という組織化の後押しというのをどういう形でなさるおつもりでいらっしゃるのか。また、そういう新たな形態を発展させるとなると、アウトソーシングということ、当然これの有効利用ということが必要だと思うんですけれども、その促進についてどのようなことをお考えか、あわせて伺いたいと思います。
  29. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 近促法と今回の法案の大きな違いは、計画作成主体が業種ぐるみの全国組合であるのに加えまして、今回は個別の中小企業者あるいは任意のグループ、そういったものについても計画の作成資格を与えているところでございます。  今、委員御指摘のように、中小企業者の場合は、すべての経営資源をみずから調達する、具備するというのは大変難しい状況にございますので、できるだけ得意分野を持ち寄りまして、他社と連携をして課題に対応していくということが大変有効な考え方だと考えております。したがいまして、今回の場合も、アウトソーシング、企業連携、そういったもので他社と一緒になって経営革新計画をつくる場合も法律上の対象にしております。  その結果、支援策の方でございますが、従来事業団から高度化融資ということで長期無利子融資がございましたが、これにつきましても、従来の組合のみを対象とした考え方から、四社以上の任意グループが経営革新計画をつくられる場合もこの長期低利融資制度が使えるように助成措置を格段に拡充しているところでございます。  それから、アウトソーシング一般の問題といたしましては、私ども、この法律をつくる前からコーディネート活動支援補助事業というのを持っておりまして、中小企業者がいろいろな外部経営資源と実際に遭遇するためのお見合いといいますか、マッチングをされるような、そういったものに対して助成をするという制度も昨年からやっているところでございます。
  30. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  大変きめ細やかな措置がとられているというのがよくわかりましたので、頑張っていただきたいと思います。  さて、ここまでは今法案のいわば攻めの部分について伺ってまいったんですけれども、ここから守り、つまりセーフティーネットの部分を伺ってまいりたいと思います。  先ほど、昨今のスピーディーに変化する経営環境ではスケールメリットが必ずしもプラスには働かないというマッケンナ氏の言葉を紹介させていただいたんですが、さはさりながら、やはり相対的に経営基盤が脆弱な中小企業は、例えば為替の急激な変動ですとか市況の暴落ですとか連鎖倒産など、このような経営環境が激変しますと存続が危ぶまれる事態が生じることも大企業と違って多く生じる。そうした場合、政府は緊急避難的な措置を弾力的かつ機動的に行う必要があると思っておりますけれども、今回はそのセーフティーネットはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
  31. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 経営革新支援法の中におきましては二つの計画制度を用意してございます。  一つは、今まで申し上げております経営革新計画ということで、経営相当程度の向上を図るために新事業等をやっていただく計画でございます。  もう一つは、経営基盤強化計画という計画制度を設けてございます。これは、今委員が御指摘になりましたような外的経済環境の急激な変動に対応して、特定の業種の中小企業方々が大変な困難に遭遇されているという場合に、個々の中小企業者を含めて将来の経営革新計画をつくって前向きに対応していただくための下ごしらえをしていただくというか、基盤を整備していただこうということで、業種の指定を政令でいたしました。この指定を受けた業種に属される中小企業者の全国団体がこの計画を作成いたしまして、承認を受けられますと、その傘下の組合員の方、メンバーの方等々が個別に信用補完とかあるいは貸し付けとか諸種の助成手段を享受できるという考え方でございます。  こういった場合に、業種の指定をいかに迅速にやるかという点が問題になりますので、この点につきましては、我々としてはできるだけ機動的、迅速に対応できるよう努力をしたいと思っております。
  32. 畑恵

    ○畑恵君 いろいろな検討をしている間にそのまま倒産してしまうというのでは元も子もありませんので、ぜひ機動的にお願いしたいと思います。  反面、あくまでも緊急避難措置ということで考えていただいて、やはり企業の責任とは関係ないところで外的な要因によって大きな支障が生じた場合、そしてそれもある限られた時限的措置であるというところを踏まえた上で、それによって本来舞台から退かなければいけないものまでも残ってしまうということのないように、ある程度市場原理がきちんと働くということを踏まえつつ、救うべきものは救う、非常に難しいとは思うんですけれども、ぜひ実行していただきたいと思います。  いずれにしても、中小企業庁設立五十周年という大変な節目にこのような大転換を政策として行われているわけです。今回の法案というのは基本理念の部分というのがきちんと記されている。実際にこれを現場で実行していくとなると、今後政令ですとか省令で定められていく部分がまた多いと思いますけれども、具体的な施策がこれによって進められて、見事な実が実りますことをお祈りいたしております。  さて、変わりまして、中小企業総合事業団法について伺いたいと思います。こちらの方は、中小企業信用保険公庫、中小企業事業団、そして繊維産業構造改善事業協会、これらが行ってきた事業がこれまでのように遺漏なく、そしてさらに円滑に事業団へ引き継がれて、新事業の開拓促進がより一層充実強化、迅速化されることを確信しまして、法案に賛成させていただきます。  あと、残りました時間で、同様の中小企業支援策として大変注目されております日本版SBIR、中小企業技術革新促進制度について若干伺いたいと思います。  先回の審議の際に加納議員の方からもお尋ねがございましたけれども、今月一日に日本経済新聞がまとめました国のベンチャー支援策に関するアンケート調査でも、回答した三分の二の企業がこの日本版SBIRに関心があると答えて、また三分の一が自分の会社に応募する技術案件があると答えていますので、日本版SBIRに非常に期待が集中しているという結果が出ております。  これは言うまでもなく、アメリカが一九八二年に制定しましたスモール・ビジネス・イノベーション・リサーチ法、これがモデルで、米国では現在連邦政府の研究開発予算のうちその二・五%もの割合で中小ベンチャー企業に配分がされている。九七年度ですと、件数で約五千件、金額ベースですと約一千四百億円が投入されているということでございます。  そこで、日本では研究開発予算を今持ちますのは七省庁と伺っておりますけれども、参加企業をそれぞれに募集するわけですね。政府全体の総額としては今年度どれぐらいの規模を見込んでいるのか、教えていただけますでしょうか。
  33. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 日本版SBIR制度でございますが、これは新事業創出促進法が二月十六日に施行になりまして、具体的にこのSBIR制度も運用を開始したところでございます。  今年度についていかほどの金額かということでございますが、法案が十二月に成立したこともございますので、そういった意味では大きな数字にはならないかと思いますが、十年度の三次補正予算に関しましては、委員の御指摘をいただいた七省庁のうちの通産省、科学技術庁、それから郵政省の十二の研究開発事業、これを特定補助金等として指定をさせていただきました。  平成十一年度予算につきましては、現在、関係各省との間で新しい形で特定補助金等の指定をすべく作業を進めているところでございます。  今年度につきましては、先ほど申し上げました十二の研究開発事業につきまして、実際に中小企業者に幾ら渡るかについては今後の作業に依拠するところになりますけれども、約四百億ぐらいの規模の十二特定補助事業というのが指定をされております。できるだけ大きな金額が中小企業の方に回るように努力をしたいと思います。
  34. 畑恵

    ○畑恵君 今四百億という金額を出していただきましたが、先日の日経の記事でも米国並みの水準を目指すということで、こちらは今年度四百億から五百億円にという見出しが載っておりますので、ぜひ頑張って上積みをしていただきたいと思います。  これからやるというのに今のことを言って恐縮ですけれども、とにかくこのSBIR制度ができるまでは日米中小企業向けの研究開発費というのは同程度だった。ところが、これができて日本は米国の二十五分の一になってしまったということで大きく水をあけられてしまったわけです。ただ、その年限でまたキャッチアップできるわけですので、ぜひ金額の上積みをお願いしたいと思います。  金額の多寡もさることながら、日米の研究開発支援の大きな違い、これを見ますと、日本技術開発段階のみにこれまで助成してきたことに対しまして、米国では事業化まで一貫して支援しているというところが大きく違っていると思います。米国のSBIRの第一段階、第一フェーズでは、フィージビリティースタディーの段階からどうやったら売れるか、プレマーケティングまでしている。その成果を持って今度セカンドスフェーズに入りますので、研究開発支援を選定するその仕方というのにむだがない、支援にむだがないわけでございます。  日本版SBIRでもこうした事業化までの一貫した支援体制というのはとられているんでしょうか。
  35. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 委員御指摘のように、米国の制度におきましては、第一フェーズから第三フェーズまで、フィージビリティースタディーから始まって、試作、実際の開発事業化について制度が設けられておるわけですが、一点誤解がございますのは、最終的な事業段階での助成手段というのは先方の連邦政府の中には入ってございません。  特定補助金等を中心とした私ども日本版SBIR制度におきましては、先ほども十二の特定補助金等をとりあえず御報告しましたが、その中にはフィージビリティースタディー段階事業をするものもありますし、あるいは試作の段階について助成をするものもございます。これからこの特定補助金の種類をふやしていくという形の中において、その第一フェーズ、セカンドフェーズという話については解決していくんではないかと思っております。  我が方の新事業創出促進法の中で米国の制度よりも長じている点では、実際に事業化の段階になったときに信用保険制度とかあるいは投育、投資育成会社を通じた投資のお金が受けられるとか、事業段階まで一応法律上の手当てをしてございます。もちろん、これ以外にも、例えば事業団の持っております新たな助成金制度とか、法律のらち外ではありますけれども、そういったものもできるだけ重ね合わせて利用できるようにして、できるだけFS段階から開発事業段階まで一貫したものになるように努力をしたいと思っております。
  36. 畑恵

    ○畑恵君 なるほど、日本の方がさらに事業段階では手厚い支援策が用意されているということでございます。存じ上げませんで、大変失礼いたしました。  本家のSBIRでは事業化に三五%が成功するという高い効果が上がっているわけですけれども、後からではございますけれども、これだけ日本としてもさらに厚い支援がなされているわけですので、これを上回る高い効果をさらに期待いたしたいと思います。  さて、最後の質問でございますけれども、これは大臣の方にさせていただきたいと思います。  日本版SBIRという仕組み自体、極めて有効な支援策たることは今伺ってよくわかりましたけれども、実際にこの制度を機能させるため、従来の審査体制の見直しはやはり必要だと思います。これは先ほどの経営革新支援法案で伺ったことではございますけれども、同様に評価のあり方が大きく問われるということです。今の審査方法というのは技術力よりも過去の実績ですとか信用力を重視するというところに重点が置かれているので、実際アントレプレナーの方々とお話をしたりすると、こういう審査方法で実効性はどうかなとか、こういう形で自分たちのところというのは支援が受けられるかなと、若干危惧する声も出ております。  審査体制についてどのような見直し、配慮というのがなされていらっしゃるのか、また今後なされるべきと考えているのか、大臣に伺いたいと思います。
  37. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 御指摘のとおり、日本版SBIRの実施に当たっては公正かつ的確な審査を実施していくことが重要と認識しております。  新事業創出促進法に基づき定められた基本方針においても、技術の新規性、事業化の可能性につき知見を有する人材を審査委員に加える等の配慮をすることとされております。  本制度におきましては、特定補助金等として指定される研究開発予算にさまざまなものがございまして、審査体制について一概に申し上げることはできませんけれども、評価は一般に、科学技術的な意義、手法の妥当性、実施体制の妥当性、経済社会的な意義、事業化の可能性等から行われるものと思料いたします。また、審査委員の選出に当たっては、大学教授、国立研究機関の研究者、民間研究機関の研究者等の中から当該事業の審査に必要な識見を有する者が選定されていると思料いたします。  いずれにいたしましても、今後、関係省庁とも連携し、公正かつ的確な審査体制の確保に努めてまいる所存でございます。
  38. 畑恵

    ○畑恵君 中にもございました、評価ができる人材というのがかなめの問題だと思います。育成ですとか確保ということにぜひ精励していただきたいと思うんですけれども、中には、例えば今までの企業をスピンオフした方であるとか、それから定年でそこの場を引かれた技術力であるとか見きわめる目を持った方々というのは、掘り起こせば恐らくたくさんまだ日本の中にもいると思います。海外から呼ぶというのも一つ大きな策だと思いますけれども、両面で頑張っていただいて、正しい評価、実効ある評価というのをしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  39. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 民主党・新緑風会の前川でございます。  最初に、特殊法人の整理統合の問題についてお伺いしたいと思います。  平成年度政府の決定に基づいて、現在たくさんあります特殊法人の整理統合が進められています。この国会にも幾つかの法案が出ているというふうに理解をしておりますが、経済産業委員会通産省所管の特殊法人の統合も既に幾つかこれまでに実施してまいりました。その際にいろいろ法案の審議はいたしましたが、これまでの特殊法人の整理統合がその後どのような検証をされているのか、どのような評価を通産省としてはされておられるのか、まずそれをお聞かせいただきたいと思うんです。  といいますのは、この質問のバックグラウンドとして、今度の国会にも出ております中央省庁の再編に係る法案を見ましても、幾つかの省を束ねるというにすぎないではないかという批判があるのは大臣も御存じだと思うんです。私どもも、この種の法人を統合することによって行政のスリム化を図るということについては基本的に賛成をしているんです。後ほどまた法案の中では質問したいと思いますが、今度の中小企業総合事業団法を見ましても、多少性格が違うんじゃないのというような三つの法人の統合ということになってまいりますと、三つが一つになったということだけがどうも先行しているような感じがしまして、本当にそういう意味では評価できるんだろうかという思いがございます。数が減るということについては確かに評価できるんですが、それだけでいいんですかという実は問いかけをしたいわけです。  本会議の中で、私どもの平田議員の質問に対して総理も、ただ単に国民負担という視点だけではなくて、新しい時代の要請にこたえる、こういう視点があるんだというお話がございましたが、組織の統合ということと、それから、それぞれの持っていた事業をまとめることが新しい時代というものにどうこたえることになっているのか、その辺について最初に大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
  40. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 私もかつて村山内閣の一員におりましたときに、特殊法人の整理統合をやれということで、文部省の所管の特殊法人を統合しようということで、結局、私学振興財団と私立学校共済との統合をやって、一体どういう理屈で統合するのかということで苦労したこともございますし、また、統合した場合に業務が能率よく行われる、効率性が達成される、そういうことに随分意を尽くしたことがございますので、先生の質問の御趣旨はとてもよくわかるつもりでございます。  複数の特殊法人において同種類似の事業を実施している場合に、これを一体として実施することにより事業の効率的な実施が期待できる、あるいはより総合的な観点に立った事業の遂行が期待できる場合には、当該特殊法人の整理統合を行うということが、特殊法人の整理統合についての理念、目的であると私は考えております。  通産省としては、以上のような特殊法人の整理統合の理念、目的を十分踏まえつつ、過去五年間におきまして、まず日本貿易振興会、いわゆるジェトロとアジア経済研究所の統合及び新エネルギー・産業技術総合開発機構と石炭鉱害事業団の統合を国会での御審議を経て実施してきております。これらはいずれももともとの業務の性格に共通性がございまして、統合によって事業の効率的な実施や総合的な観点に立った実施につながり、行政改革の理念にも沿うものであったと評価しております。  今般の中小企業信用保険公庫、中小企業事業団及び繊維産業構造改善事業協会の統合につきましても、同様の理念、目的に基づいて実施するものと考えております。
  41. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、大臣からお答えをいただいた中にも出てまいりましたNEDOと石炭鉱害事業団の統合問題、それから、昨年でしたか、ジェトロとアジ研の統合の問題、どちらもそれぞれ私、質問に立ったものですから、その後の経過、評価というのは気になるわけです。  確かに今大臣がおっしゃいましたように、国のさまざまにかかわる法人やかかわり方について整理統合していくというのは時代の要請に合ったものであって、それは私は当然だろうと思うんです。ただ、木に竹を接ぐような統合であっては何のための統合なんだろうという疑念を抱かざるを得ない。というのは、重複するものがもしないとすると、人の面でも金の面でもなかなか合理化はできないわけです。そういう意味で、今度の統合というのがどれだけの効果を上げるんだろうかという点で疑念が少し残っているなという感じがいたします。  そこで、今行われています信用保証業務やあるいは高度化事業といったような大変大事な事業について、今度の新しい事業団の中で、この統合によってどのような効果が期待できるというふうにお考えなのか。  それからもう一つ、この法案の中の五条一項ではこの三法人の資本金を合算したものを新しい法人の資本金とするというふうに記載をしておるわけですが、さらに二項では新たに政府が出資をすることがあるというふうにうたわれているわけです。今度の統合によって新しい出資を政府考えておられるのか、あるいは今後の事業団の運営等々を見ながら出資することがあるというふうに考えておられるのか、あるいはそれはどういう目的を意識しておられるのか、この事業団の性格も含めて判断する材料になりますので、その辺についてもお答えをいただきたいと思います。
  42. 殿岡茂樹

    政府委員(殿岡茂樹君) お答えいたします。  この法案は、先生御案内のように、中小企業に対する融資でございますとか信用保険あるいは指導・研修、共済等の事業を一体的に行わせることによりまして、特殊法人等の整理合理化を推進し、あわせまして人事交流の推進でございますとか組織体制の整備を行いまして、これまで各法人が持っておりました知見の相互活用を図ろうとすることにいたしておりまして、いわば中小企業施策の総合的かつ効果的な実施を図ろうとするものでございます。  それぞれの機関の対象が中小企業という同一のものであるのに対しまして、それぞれのやっておりました事業を総合的に実施することによって一層の効率を上げるというのがねらいでございます。  その中で、今御指摘のございました信用保険でございますけれども、これにつきましてはこの事業団におきまして引き続いて着実に実施していくようにいたしておりますし、また高度化融資事業につきましても抜本的な見直しを行うという中におきまして一層の効果的な実施というのを図ろうとしているわけでございます。また、これまでどちらかというと手薄でございました中小ベンチャーによる新事業開拓の支援というのにも力を入れていくというような仕組みにしていくというふうに考えているわけでございます。  それから、三点目でございます資本金の件でございますけれども、この統合を機に資本金を追加するということは考えておりませんけれども、十年度末で計二兆七千九百十一億円の資本金がございます。それぞれの事業につきまして事業基盤の強化を図るという観点から、これからの各年度においてもその基盤強化のための出資ということは当然あることと思っておりまして、その必要に応じて資本金の追加が行われていくというふうに認識しているわけでございます。
  43. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 いずれこれはこれからの新しい事業団の仕事がどういうふうに進んでいくかによって判断されることですから、今この段階でこの問題についてこれ以上深追いはしません。  もう一つ、今度の行政改革絡み、いわゆる特殊法人の整理統合の中でいつも話題になるのは役員の問題なんです。これまでも、政府は何度となく特殊法人の役員への天下りについて、閣議決定であったり申し合わせであったりさまざまなことを繰り返してまいりました。  今度の三法人の役員、たしか合計すると二十一名というふうになっているはずですが、これを新しい法人では十三名にしたいということのようです。念のため教えていただきたいんですが、現在の二十一人の出身別の内訳とそれから新しい法人の役員、これは法律が通らないうちからまだあれよというお答えが来るのはわかっているんですが、理念だけお答えをいただきたいと思うんです。  つまり、特殊法人の役員については、いわゆる天下りについては五〇%以下に抑えるというたしか申し合わせがあったと思うんですが、これが適用になるのかどうかについてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  44. 殿岡茂樹

    政府委員(殿岡茂樹君) 現在、三法人の役員数を合計いたしますと、先生御指摘のように二十一名でございます。その内訳を見ますと、そのうち六名が当該法人の出身の方々でございます。それから十一人が国家公務員出身、それから四人の方々民間等からの出身ということになっております。  統合された暁にはということでございますけれども、法律が制定されまして、その設立に向けてのこれから準備が進められる中で適材適所の観点から登用されるべきものと考えておりますけれども、具体的にどこから何人ということを現在持っているわけではございません。  それから、最後の御質問でございます閣議決定の趣旨はなお有効であるのかということに関しましては、私ども有効なものと考えております。
  45. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 これまでもたびたび申し上げていますように、特殊法人で働いている皆さんすべてが官庁から行かれた方なら構わないんですが、法人の中で採用されて法人の中で勤続を重ねた、あるいは仕事をして、その上の方のポストだけが天下りで占められるということではやっぱり働く意欲というのはなくなるんですよ。幾ら最近は民間企業でも年功序列型はなくなったとはいうものの、それはそれなりの効果というのはあり得るわけですから、私が申し上げた真意というのもぜひ十分に御理解をいただいて、ふたをあけてみたらあれというようなことのないようなひとつ十分御配慮を、これは大臣にもお願いをしておきたいと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。  今の段階ではなかなか具体的な数字をお答えするというわけにはいかないんでしょうから、これ以上申し上げませんが、今申し上げたことを必ずひとつ実行していただきたいということは申し上げておきたいと思います。  次に、今度の法律にもかかわる話として、中小企業基本法の問題について少しお尋ねをさせていただきたいと思います。  かつてこの経済産業委員会の審議の中で、通産省の中でも中小企業基本法についての研究といいますか見直しといいますか、こういうものが行われているというふうにお聞きをしたんですが、それが今どういう状況になっているのか、まずお伺いをしたいと思います。
  46. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) ただいま中小企業庁内におきまして、中小企業政策研究会という勉強会を昨年の七月以来進めているところでございます。その内容につきましては細かくは申し上げられませんが、できれば連休明けごろにはそういう研究会の勉強の成果というものの取りまとめをしたいという予定にしてございます。  幾つかの論点があるわけでございますが、昭和三十八年に中小企業基本法ができたわけでございますが、そのときはやはり大企業中小企業の間の格差の是正が主要論点になっておりまして、生産性だとかあるいは賃金の格差について焦点が当たっております。  それを受けてこの基本法体系下で各種の施策を続けてまいったわけですが、この点については、まず大きな話としては、やはり今後の経済構造改革を推進する推進役として位置づけるべきではないか、あるいは雇用の維持、創出を図る母体として重点を置くべきではないか、そういう観点からいろいろな議論を進めているところでございまして、まだ結果は出ておりません。
  47. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、長官のお答えの中にもありましたように、三十八年にできて、四十八年でしたか、範囲を少し拡大するという改正をいたしました。  私は、今の中小企業基本法の精神そのものも後ほど質問をしたいと思っていますが、一つには中小企業範囲の問題です。資本金一億円以下、従業員三百人以下、もちろん卸売あるいはサービス業については多少下げていますが、中小企業基本法というのは中小企業の定義を広く定めるものと私は理解をしてもいいんだろうと思うんです。  ところが、ほかの制度、例えば今度出ております信用保証関係のものを見てみますと、例えば信用保証の場合は、基本法に基づく中小企業範囲で一応定めていますけれども、例えば融資関係で見てみますと、中小企業金融公庫の場合は対象の範囲が卸売の場合は七千万円以下になっています。基本法では三千万円以下です。それから、小売の場合には五千万円以下。さらに、国民金融公庫の場合ですと製造業の場合には一千万円以下、それから従業員百人以下です。さらには、これはちょっと別な制度ですが、倒産防止共済等の場合には卸売の場合には七千万円、小売の場合には五千万円というふうに、さまざまな制度によって中小企業の定義が違うんです。  こういうばらばらな状態で、基本法の持つ意味というのは一体どういうことなんでしょうかということがあるものですから、もちろん研究会の中で、勉強会の中でこれは議論の対象になっているとは思うんですが、今現在こういうばらばらな状態は中小企業者にとってみても大変わかりづらいわけです。例えば私のところはさまざまな中小企業制度というものがすべて適用になるものだと思って飛び込んでいったら違っていたとか、実はこういうケースがあるんです。  ちょっとその辺についての御見解をお伺いしたいと思うんです。
  48. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 中小企業基本法における定義についての御質問でございますが、これは委員御指摘のように、三十八年に定められましてから、四十八年に製造業について資本金規模五千万からたしか一億に引き上げたままでございまして、それから三十年近くたっておるわけでございます。今回の勉強会といいますか、政策研究会におきましても、この点については十分な議論を重ねて、今後二十一世紀にもたえるような定義というのをつくり上げていきたいということで勉強をしているわけでございます。  先ほど引用されました融資関係、金融関係の定義でございますが、これは昨年六月に法律改正をお願いいたしまして、金融関連について幾つかひずみのあります定義について緊急措置として手当てをしていただいたということでございまして、当然この延長線上でこれらについては本格的な議論を整理させていただくということになろうかと思います。  その他、基本法で一応、製造、卸、小売、サービスと定義を基本的に定めるわけでございますが、委員も御指摘になりました幾つかの制度につきましては、ある程度その制度の特殊性を加味しながら、きめ細やかに中小企業性というのをとらまえた方が結果的には中小企業の方にお役に立つという議論もございますので、そういった一種の政令特例的な制度につきましても、今議論はもちろんしておりますが、やはりその必要性というのは最終的には残ってくるのではないかなと。これは現時点での考え方でございますが、それぞれの必要性、意義というものを検証した上で再整理をしたいと考えております。
  49. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、長官のお答えの中にもありましたので、ぜひ御検討いただきたいと思うんです。  これはあくまでも例えばのケースでありますが、これは通産省の所管ということにはならないのかもしれませんが、地方の私鉄の経営者の方から、御案内のように地方の私鉄というのは今経営的には四苦八苦の状態です、鉄道事業だけではとてもじゃないけれどもどうにもならぬという状態で、かなり自治体や何かの支援をいただいているというのが実態です。  ところが、その企業の中身を見てみますと、確かに資本金一億円以下の私鉄というのはほとんどないんです。ある意味では設備はしっかりと必要ですし、それから従業員も三百人以下というのは、よほど地方の、ローカルのローカルの私鉄でない限りはない。ところが、経営的には一般の中小企業どころの騒ぎではないほど悪化している。ところが、中小企業の定義に入らないものですからさまざまな支援を受けられないという実態があるやに実はお聞きをしたんです。  もちろんこれは、私鉄の場合には運輸省所管でしょうから、別な意味での手当てというのが当然されているんだろうというふうに理解をしていますけれども中小企業という定義の中に全部を当てはめてしまってきた今までのやり方について改めて再検討をしていただきたい。これは先ほど長官からも触れられましたので、要望をひとつしておきたいと思います。  それからもう一つは、この基本法の中の精神といいますか政策目標として、先ほども畑議員の方から質問がありましたけれども、制定時の事情から、大企業中小企業あるいは親企業対下請的な関係で、どちらかというと中小企業を保護する、あるいは守る、あるいは格差を是正する、大企業との間のバランスをとるというのが基本法の精神になっています。私は、そういう部分がなくなったとは言いません。かなり大きなウエートを占めていることは事実ですが、もう少し積極的な意味で中小企業支援ということに重点を置いた基本法の見直しをもう一回すべきなのではないかというふうに思うんです。  それは、これまでもさまざまな視点から議論されていますいわゆるベンチャーに対する支援ももちろんそうでありますし、あるいは新しい最近の行き方として大企業の分社化という問題があるわけです。それぞれの企業がある部門だけを切り離して分社化をしていくというようなケースも実は存在しているわけです。こういう新しい時代に合った中小企業のあり方みたいなものをもう一度政策目標の中に、つまり基本法の中にしっかりと位置づけないといけないんじゃないかというふうに私は思います。  今言ったことと若干矛盾するかもしれませんが、例えばヨーロッパなどでは、中小企業の定義の中に、例えば親企業といいますか、大企業がかなりの株を持っているケースの場合には、政策的な保護を必要としないとまでは言い切っていないかもしれませんが、そういうスタンスで中小企業をとらえている国もあるわけです。そういうものとのバランスももちろん必要になってまいりますから、一概に何でもかんでもというふうに私は申し上げているんじゃないんですが、そういう意味で、もう少し中小企業基本法そのもののきめの細かさといいますか、機動性を持った仕組みというのを考えるべきではないかという思いがございますので、今申し上げたような問題についての現段階での御見解があればお聞かせをいただきたいと思います。
  50. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 勉強会といいますか、研究会で議論しておりますポイントの大きなものといたしましては、先ほども申し上げたように、中小企業というのは弱者としての位置づけで律するべきではなくて、二十一世紀を控えまして日本経済のダイナミズムの源泉としての役割が非常に大きいのではないか、また雇用の観点からも役割がどんどん高まってきているのではないかという位置づけをしようという議論を今しております。  その中で、委員がおっしゃられたベンチャー企業対策につきましては、これは基本法の中では、三十八年でございますので当然ほとんど位置づけがされておりません。この点は今回、基本法体系について議論する場合の一番大きな柱の一つになってくるかと思います。  それから、二点目の大企業の分社化の話でございますが、これについては大変難しい問題もはらんでございます。これは、今ヨーロッパの例を先生が引用されましたけれども、私どもといたしましても、大企業は単に、ある事業部門を独立分社化して、これは三百人、一億円という定義に該当するから中小企業助成策を活用したいということが今現在においてもあり得るわけでございますが、それらについては実質的、形式的に見てもう大企業の一部である、経営実質的に支配されている、人が派遣されている、あるいは資本の面で五割以上大企業が持っておられる、そういったものについては運用の話といたしましては対象にはできないということで納得をいただいております。  こういった大企業の分社化の話というのは昨今の一つ経営革新のあり方としていろいろ議論に上ってきておるわけですから、これについては相当慎重にこれから議論していく必要があると考えております。
  51. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今の仕組みの中では確かに対応できない部分があるわけですから、運用の面でというふうに今長官がおっしゃいましたが、運用でやりますと、これはなかなかきちっとしたガイドラインがあるわけではないですから、さじかげんというのが出るんです。ですから、私は、この基本法について早く見直しをしていただいて、そういう問題が発生しないようにきちっとしていただきたいということを要請しておきたいと思います。  そこで、順序違うんですが、今度の総合事業団法について二、三お聞かせをいただきたいと思います。  一点は、先ほど海野議員からも指摘がありましたが、現在の中小企業資金繰りの実態の中で、信用保証業務というのが非常に重要でありまして、今度の中小企業信用保険公庫の活動がそういう意味では今大変大きな焦点を浴びているわけです。確かに、先ほど大臣からもお答えがございましたように、現在の政府の保証枠二十兆円ももう間もなくといいますか、一部には九月ごろには底をつくんじゃないかという指摘もございまして、一部からは心配だなという声もないわけではない。具体的に、先ほどの新聞報道等も含めて報道がされているという状況ですから、先ほどのお答えのように政府の方でも検討されるんだろうというふうに期待をしておきたいと思います。  ただし、これとは別に、水をかけるわけでは決してありませんが、焦げついた場合には最終的に税金でこれは補てんをするということになるわけです。したがって、確かに貸し渋りと言われるものについては解消しなければいけない。しかしながら、余りにも膨大な申請に対するチェックで、チェックが甘くなって、本来だったらとてもじゃないけれども保証できないようなものまで保証するということになってはいけないという意味で、現在の保証体制がどうなっているのか。その辺について心配はないのかどうか。これからの保証策の追加とあわせて、そういう体制の問題についての心配がないのかどうか。もしつかんでおられる状況がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  52. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) まさに先生の御指摘のとおりでございまして、これは特別枠で保証をいたしました。仮に代位弁済が発生した場合でも、これを何とか回収するという努力をすることは当然でございまして、これはお金をばらまいて歩いた話とは全く違っておりまして、中小企業資金繰りの一助としてこの特別枠というものを設定したわけでございます。したがいまして、借り得であるとか借りっ放しでほっておいていいという性質のものではないということは制度の発足の当初から当然のこととして考えていたわけでございます。  ただ、制度の設計上、従来よりはやや緩めにしたということは事実でございます。それは、従来の設計ですと、やや観念的ではございますが、代位弁済率は全保証額の二%ぐらいであったと、これは相当実績に裏づけられている数字でございますが、今回は代位弁済率を一〇%ぐらいで制度設計をしようと、そういう考え方に基づいて出発をいたしました。審査の体制も、従来は保証していい人ということを基準に物事を決めましたが、今度は保証してはいけない人という裏側からの基準を使ったわけでございます。しかしながら、これはあくまでも保証ということで、信用保証協会が保証し、最後は保険公庫がそれを補てんするという形になるわけでございますから、むやみやたらに保証するということではございません。  ただ、昨年の一連の信用収縮の中で、中小企業の金繰りというものが困難をきわめたという状況の中で、国会の皆様方の御理解をいただきながらこの制度を発足いたしました。  しかし、モラルハザードというものがこれによって発生するということは決して好ましいことではございません。今十三兆七千億の保証をいたしまして、あと予定されている保証枠というのは六兆三千億でございますから、それを追加するかどうかということは、来年三月まで特別枠という制度は残るわけですから、いずれ追加せざるを得ないと私は思いますけれども、やはり先生の御指摘のあったモラルハザードが発生しない、また最終的には公のものであるという観点に立って、保証し、代位弁済をしたものについては、回収についてもまた決められたとおりのことを粛々とやるという態度でなければならないと思います。これが借り得であったり借りっ放しであったり、あるいは特別枠であったから回収についてやや力を抜いたりということのないようにするということも、またこの制度の健全性を維持する上では私は大変大事なことであって、今先生の御指摘の点は、我々も内部で若干議論をしておりますけれども、さらに議論を深めたい、そのように思っております。
  53. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 大臣の方から大変苦しい、片方は貸さなければならない、あるいは貸さなければ救えないという実態があって、片方は貸したはいいけれども借り得で逃げられても困る、この辺の線引きというのは大変難しいと思うんです。私は、保証協会の第一線の皆さん方がそういう意味では大変苦労されていると。はっきり申し上げて、書面だけではわからないんです。  今、大臣からもお答えをいただきましたけれども、これが最終的には国民の税金で処理をしなければならない仕組みなんだということをぜひしっかり受けとめていただいて、なおかつ、救済をしなければならない本当に困っている事業者に対してはしっかりとした救済策になるような御配慮をいただきたいと思います。  そこで、今度の新しい総合事業団法の中で、これまでの事業は当然引き継ぐものというふうに私たちは理解していますが、そのほかに新たな事業はどんなことを具体的に考えておられるのか。  それから、この法案の説明の際に新しい事業の開拓支援というものがございましたが、これは今までの通産省のさまざまな施策とダブる部分はないのかどうか。後ほどの経営革新法と一緒でして、ここでまた新しい法律をつくって、今まであった法律とダブるので次の国会でまた一つにしますなんというこの繰り返しが時々あるものですから、念のためにお聞かせをいただきたい。  それから、事業団の仕事の中に、人材の育成といいますか人材についての支援というのがたくさん仕事として入ってございます。私は、確かに中小企業の場合には、大企業と違って、オン・ザ・ジョブ・トレーニングといいますか、企業の中でさまざまな教育をしていくという余裕はなかなかないものですから、どうしても外に教育を依頼するか、あるいは教育を受けた方を採用するかしかないわけです。確かにそういう役割が事業団としてあるのは私は承知していますが、特にこれからのことを考えますと、ただ単に中小企業人材ということだけではなしに、新しく業を起こす、つまり起業家やあるいはベンチャーの育成といったような視点も大事なんじゃないか。通産省の方でもやられていると思うんですが、現状がどうなっているのか、あるいは今度の新しい総合事業団法との関係ではどうなっているのか、もしお答えをいただけるようでしたら、お答えをいただきたい。  アメリカの場合と日本の場合とでかなり大きな開きがあるんじゃないか。つまり、アメリカの場合、一般の大学等を使ってやる教育がございますね。日本の場合にもたしかあると思うんですが、今もしわかりましたら、その実態について、これは事前に実施数の質問通告をしていませんのでわかりにくかったら結構なんですが、そういうものについて新しい事業団としてはどんなふうなスタンスなのか、あるいは別なところでやっているのか、お教えをいただきたいと思います。
  54. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 幾つか御質問をいただいたわけですが、その前半の部分につきましてお答えをしたいと思います。  今回の経営革新支援法、それから総合事業団法を御審議いただいているわけですが、端的に申し上げまして、経営革新支援法の方は、意欲のある中小企業の方が経営革新計画をつくられて経営を向上させるという制度でございまして、総合事業団法の方は、それは全体でございませんが、そういった経営革新をされる中小企業者助成手段を提供するというのが一つの頭の整理だと思います。法律上載っております支援制度に加えまして、今回、総合事業団化するに当たりまして事業団としての幾つかの施策の充実を考えております。  具体的に申し上げますと、高度化融資事業につきまして、先ほど来申し上げております業種による制約とか要件の緩和とか、事業を大ぐくり化することにより中小企業者にとってわかりやすく制度を簡素化していくというようなこともしておりますし、融資比率を八〇%に上げたり金利を二・一%に下げたり、そういった実質的な助成追加もしております。  また、一番大きい点は、組合ということで高度化事業だったわけですが、これは四社以上の任意のグループの方の計画の場合でも高度化融資ができるというように、ある種の抜本的な改革を行ったつもりでおります。  それから、二点目の御質問にございました新事業の開拓に関する支援の関係でございます。これは第一には、事業団が助成金制度、これは百万円から五百万円程度の試作段階、それよりも前の段階に必要となるお金について簡易に助成ができる制度もつくっております。また、先ほども御質問いただきましたけれども、例の投資事業組合、有限責任組合に対して事業団自身が出資をする、そういった機能も新しい事業団は実施する予定でございます。この助成金交付あるいは直接金融支援というのはほかに例を見ない画期的なものであると我々は考えております。  人材の点につきましては、次長の方から答弁させます。
  55. 殿岡茂樹

    政府委員(殿岡茂樹君) 中小企業事業団におきましては、その下部機構といたしまして中小企業大学校という制度がございます。全国に九校ございまして、ここにおきましては中小企業経営者あるいは技術者の研修に当たっているということで、先生御指摘のように内部で研修あるいは人材育成がなかなか難しい中小企業方々にとりまして大変役に立っているというふうに考えております。  さらに、御指摘の中で、今後、ベンチャーでございますとかあるいは新しく創業しようとするそういった人材も育てる必要があるのではないかということでございます。昨今の経済情勢の中で、創業あるいはベンチャーの活性化は極めて重要であるという認識のもとに、この中小企業事業団の大学校、これを人材発掘あるいは育成の大きな苗床にしようではないかということで、昨年末の緊急経済対策におきまして、こうした人材育成の事業事業団が一つの核になって、さらには商工会議所、商工会等の機能も活用しながら、ベンチャー日本国じゅうで盛んに起こるような、そういった人材育成の仕事も大きな重点として取り上げているという現状にございます。
  56. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 中小企業大学校というのは、どちらかといいますと実態は、既に中小企業に働いている皆さんが中心だと思うんです。むしろこれから業を起こそうという方々に対する、ただお金の面とかあるいは技術的な面だけじゃなくて、さまざまなノウハウを提供するような仕組みというのがやっぱり私は必要なんじゃないかなというふうに思います。これは今度の新しい事業団の仕事とはちょっと離れるかもしれませんが、ぜひ通産省全体として取り組んでいただきたいということを要望しておきたいと思います。  次に、繊維産業構造改善事業協会が今度統合されます。私は今度の法案については、確かに最近の構造改善事業の申請の件数等をずっと見ていますと、非常に件数が減ってきているということもあるのかなというふうに思ったり、あるいはこの協会自身の仕事が既に時代的には他の業種にはもうほとんどなくなったということもあって、そういう時代の流れなのかなという思いがありつつ、実は本会議の中でも平田議員が質問しておりましたが、繊維というのは大変すそ野の広い産業です。それから、ほかの業種と違いまして、物を着るということに関しては永久に恐らくなくならないんじゃないかというふうに思うわけです。そういうことを考えますと、繊維産業というのは大変大事な位置をこれからも占めるんだろうというふうに考えます。  そういう中で、私は、これからの繊維産業、広い意味での繊維産業というふうにとっていただいていいんですが、国際的な分業体制みたいなもの、これはもうかなり前からいろんな議論がされてまいりました。  しかし、例えばスーパーへ行きましても、あるいはデパートへ行きましても、メード・イン・ジャパンというのとメード・イン・何々、つまり外国製品と日本製品とでは信頼度というのは、これは消費者の心理ですよ、やっぱり違うんです。日本のものはいいという意識が必ずあるんです。中にはもちろん、例えばヨーロッパのイタリアですとかフランスですとか、デザインを含めたさまざまな先進国ももちろんありますけれども、最近の傾向としては、日本製品のよさというのが認められてきているんです。そういう中で、これからの繊維産業というのをどう考えていったらいいのか。  それから、つい二月でしたか、後楽園のプリズムホールで伝統的工芸品まつり、これは通産省が後援をしておられます。私もちょっと時間があったものですから、各県のそれぞれの伝統的な工芸品というのをずっと見せていただきました。その中でも、さまざまな、特に織物ですね、繊維関係の出展されておられる方のところも見てまいりましたが、かなり付加価値の高い製品をつくっておられる。  しかし、なかなかそれが販路がしっかり拡大していかない。もちろん、先ほど言ったように、付加価値が高いということは価格が高いということにもつながりかねないわけですから、そういう意味では難しいのかなというふうに思いながら、例えばきょうも西山先生、着物をお召しですけれども日本のこういう伝統的な繊維のよさというものをそれぞれの業界任せでいいんだろうかという思いがある反面、といって余り行政がかかわるのはどうなのかなという相矛盾した気持ちが実は心の中にあるんです。  しかし、伝統的な部分は残していかなきゃならない、あるいは付加価値の高いものをつくっていく必要がある。そういう意味での指導というのは私はこれからも必要なんじゃないかというふうに思うんですが、これからの繊維業界のあり方や、あるいは行政のかかわり方等について御所見がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  57. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) 繊維産業に関しましては、かねてから、いろいろなその当時の繊維産業をめぐる状況を踏まえまして、累次の繊維法の審議をお願いいたしまして、設備調整でありますとか、あるいは生産規模とか経営規模の適正化等の構造改善事業でありますとか、さらに最近は情報化基盤事業でありますとか、いろいろな事業を進めてきてまいったわけでございます。  御指摘のとおり、繊維産業日本の基盤産業一つでございますし、地域を支える大変重要な産業でございますし、生活、文化と密接に関係のある産業でございますので、現在二百万人を超える雇用を擁しておりますけれども、極めて重要な産業であるというふうに認識しておる次第でございます。  このような状況の中で、昨今の情勢は、一つは、いろいろな累次の構造改善事業あるいは繊維事業者の努力もありましたけれども、例えば消費者と直接に向かい合ってもっと情報を直接とって自分で製品開発をしていくような、いわゆるクリエーションといったような機能でありますとか、あるいは流通構造全体がまだまだ複雑でございまして、かなり戦略的なグループ化等も進んでおりますけれども、まだまだその点は不十分でございます。そういう意味で言いますと、サプライチェーン全体の構造改善といいましょうか、そういった見直しが必要でございますので、そういった点も今後の繊維政策の課題であると思っております。  なお、先生おっしゃいましたとおり、製品のさらに一層の高度化でありますとか、あるいは技術開発、特に衣料分野に関しましては、なお一層の多様化とかあるいはいろんな意味の風合いとかといった、本来の衣料に求められるものをさらに一層高度化していくといった点。  それから、非衣料分野につきましても、環境問題等、繊維産業は大いに貢献できるものですから、こういった面につきましても大いにこれから繊維産業自体も頑張っていただきたいし、政府側でも十分いろんな意味で支援できる点があると思っております。  ただ、官民の問題もございますものですから、そういったものを十分踏まえながら、官としてふさわしいものを引き続き支援していこうというふうに考えておる次第でございます。
  58. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 今、局長からお答えをいただいてある程度了解をいたしますが、衆議院の方でも附帯決議がついて見直しや何かについての指摘もございますね。確かに、繊維産業というのは、まさに大手から昔でいうと機織りの機械一台というようなところまで本当に物すごい範囲の広いといいますか、企業規模の大きな産業なんです。ですから、きめの細かい仕組みというのはやっぱりこれからも私は必要なんじゃないかというふうに思いますし、それからある意味では、先ほども申し上げましたような高付加価値化に向けてのさまざまな支援というものもあわせてひとつお願いをしておきたいと思います。これは要望として申し上げておきたいと思います。  次に、中小企業経営革新支援法について一点だけお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、法律二つを一つにまとめられるわけですが、近代化促進法、いわゆる近促法の中でうたわれている、従来は非常に大きな意味を持っていた業種別の近代化の対応というのが限界になりつつあるということはどういう意味を持っているのか、その辺の背景についてごく簡単で結構ですから御説明をいただきたい。  それからもう一つは、一緒になります新分野進出法、こちらの方は、どちらかといいますと、かつての急激な円高に対する具体的な業種に対応する形の支援ということが非常に色濃かったと思うんです。多少その二つの法律の性格が違っていたんじゃないかというふうに思うんですが、これを一つにすることによってどういう効果があらわれるのか。  先ほど来の議論の中で、従来のような業界であったりあるいは組合であったりということにさらにプラスする形で、事業者も新しいこういう法律の仕組みの中でこれを活用することができるということは承知しているつもりなんですが、そういうものを踏まえた意味で、具体的にはどういうことなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  59. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 近代化促進法でございますが、昭和三十八年に制定されました。一言で申し上げれば、当時の高度成長期におきまして大企業中小企業との間の生産性格差が非常に大きかった、この格差是正を目指して法律に基づいて助成をしていこうという考え方でございます。したがいまして、どちらかというと、製造業を中心に生産性の格差を解消するためにはやはり設備投資、設備の近代化を図る必要があるだろうということで、業種別に一定の必要とする設備の近代化の程度を業種ぐるみで定めて、それに参画される構成員の方については個別にも助成を差し上げるという制度でございます。    〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕  三十年以上たちまして、現在のところ、経済のソフト化、成熟化が進んでおります。サービス化も進んでおります。したがいまして、個別の中小企業にとって、生産設備の近代化という業種ぐるみで対応するような経営課題、これはもちろんある業種もあるわけですが、それにも増しまして、やはり技術開発だとか人材養成とかあるいはマーケティング、需要開拓、そういった個々の中小企業が置かれた経営環境の中で経営革新を図らなきゃならないニーズというのはより強く出てきたんだと思います。  したがいまして、今回の法制度におきましては、個別の企業あるいは任意のグループ、もちろん組合も含めてですが、そういった方々経営革新、現下の経営課題に対応できるような方策がとり得るような仕組みをつくり上げたということでございます。  一例を申し上げますと、昨年、近促法についての評価をいたします段階に、実際に参画をされました中小企業者の方からアンケートをいただきました。それによりますと、近促法に基づきます構造改善計画と自社の個別の経営計画との間で、例えば全く方向性は不一致である、ただ支援制度が活用できるのでこれに乗ったという方が二割ぐらいを占めておりました。そういうことで彼我のずれが徐々に生じてきているというのが、業種ぐるみの対応策ではなくて、個々の経営者主体に今回の法制度を構築した理由でございます。  それから新分野進出法、これは環境の激変に応じて新分野に進出したりあるいは海外進出をされたりするそういった中小企業者のための制度であるわけですが、これにつきましては、やはり原材料が枯渇するとかあるいは為替が変動するとか、業種ごとに大きな波をこうむられる中小企業者があるわけでございます。こういったものについては、そういった業種ぐるみの底上げ措置をとりあえず基盤強化という形でして差し上げて、その後、経営課題に対応して経営革新をされる方については前者の経営革新計画の方で頑張っていただこう、そういう頭の整理にしているつもりでございます。    〔理事成瀬守重君退席、委員長着席〕
  60. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 事前に通告はしていないんですが、例えば今度の新しい法律の中で、最近話題になっていますダイオキシン問題。例えば、私も先日ある業界の人とお話をしていたんですが、鉄鋼の電炉、産廃の処理場に比べれば全体の排出量は少ないようですけれども、あそこもダイオキシンを排出しているんです。例えば電炉業界というのは非常に中小が多くて、もうダイオキシン排出を抑制するような設備投資をするだけの力もないよという実態があるという話なんです。もちろん、これは法律があるなしにかかわらずやらなきゃいけないことなんですね。そういうようなケースの場合、例えば電炉業界全体として何かをやりたいというようなケースにはこれは十分対応できるものかどうか、一つだけお聞きをしておきたい。  それから最後に、経営革新計画を提出してというお話がありましたが、これは私もたびたびこの席でいろいろ申し上げておりますが、この法律の適用を受けてさまざまな支援を受ける、しっかりとしたものをつくらなきゃならないというのは当然なんですが、中小企業者にとってはこういう書類をつくるということは大変負担なんです。ですから、今度の新しい法律に基づく提出の手続、手順、書類等についてもできるだけ簡素化が図れるような仕組みというのをぜひ御配慮しておいていただきたい。  これは最後に要望を申し上げて、前段の方はちょっとお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 委員御指摘のダイオキシン問題に対応される電炉業界について本法の適用が可か否かという話でございますが、経営基盤強化計画の作成主体としては幾つか要件がございます。  一つには、その業種全体として中小企業性の業種であるということは、中小企業対策でございますので当然でございます。  第二点の、外部経営環境の劇的な変化という意味では、例に挙げられましたダイオキシン問題というのは、これは環境問題ということで、現下の大変大きな問題でございますので、対象になり得ると思います。  あと一つは、経営基盤強化計画の場合には、やはり業績が隆々とされている業界の場合にはわざわざこの制度を使われる必要もありませんので、従来新分野進出法の要件ともされております例えば売り上げ落ち込みとか経営状態の悪化という要件も必要になろうかと思います。  そういった観点から中小企業政策審議会に諮って業種指定をするという手続になりますので、私、特にダイオキシン問題に造詣が深いわけでございませんが、そういった要件を満たすのであれば活用は可能だと思います。
  62. 前川忠夫

    ○前川忠夫君 終わります。
  63. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  きょう私は着物を着て質問させていただくわけでございますけれども、少しでも和装産業の振興のために役に立てれば大変うれしいと思って参りました。  まず大臣にお伺いをしたいわけでございますけれども中小企業総合事業団法案の附則で、繊維産業構造改善臨時措置法、繊維法と繊維産業構造改善事業協会が廃止されるということになっているわけです。日本経済における繊維産業の位置づけをどのようにお考えになっているのでしょうか、まず与謝野大臣に最初にお尋ねしたいと思います。
  64. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 繊維産業というのは一見地味な産業でございますけれども、製造業、流通業合わせまして二百万人という我が国の約一割に相当する雇用を支えておりまして、またいろいろな地域経済を支える一大産業であるとともに、生活者の価値実現を支え、さらには基礎素材を供給する産業としての役割も果たしておりまして、今後とも我が国経済にとって重要な産業であると考えております。  現在、繊維産業は大変厳しい状況にありますが、繊維産業の重要性にかんがみ、今後とも適切な支援を行ってまいりたいと考えております。
  65. 西山登紀子

    西山登紀子君 もちろん、大臣も重要産業であるということをお認めになっていらっしゃるわけですし、私も、繊維産業というのは全国の産地の五八%を構成している、いろいろな関連産業も含めますと二百数十万人の雇用を擁する重要産業であるというふうに思っております。  加えて、人間が生活する上では衣食住は不可欠です。その衣の分野を通じまして国民の生活あるいは文化を支えてきているというふうに認識しているわけです。また、和装伝統産業について申し上げますと、これは日本人固有の歴史と文化とともに発展をしてまいりました重要な産業でもあろうかと思います。  本会議の質問に対する答弁で大臣は、今までの繊維政策についてこのように述べていらっしゃいます。「これまでの繊維政策一定の役割を果たしてきたものと理解をしております。」ということで、四十年来の政府の繊維政策一定の役割を果たしてきたというふうに評価をしていらっしゃるわけですけれども、今日の繊維産業の実態というものは極めて厳しい状況にあるというふうに考えます。  これは申し上げるまでもなく、御存じだと思いますが、工業統計を少し御紹介させていただきたいと思います。一九九〇年と一九九五年、これを比較いたしますと全国の繊維の状況がくっきりとしてまいります。  事業所の数は、一九九〇年、十二万九千九百四十四ございましたのが、九五年には十万四千三百八十八ということで一九・六七%減っています。従業者の数はどうかといいますと、九〇年が百二十四万五千四百三十七から、九五年には九十七万一千二百四十二、二二・〇二%減っているわけでございます。製品出荷額も付加価値額もそれぞれマイナスになっています。この五年間で非常に急激に減っているわけでございます。  次に、それでは京都の織物業はどうかということで、私、事業統計をちょっと調べてまいりました。  事業統計によりますと、九一年、一万百三十一事業所が九六年には七千七百五十一事業所に減っているわけでございます。従業者の数はどうかといえば、二万八千六十三人から二万一千二百六十五人という形で、事業所数では二三・四九%減、従業者の数は二四・二二%減、この五年間に既にこのような著しい縮小が起こっているということでございます。  もう少し和装産業の中心でございます京都の実態をお話しして訴えたいと思うんですけれども、生産量はどうか。七〇年代がピークでございましたが、その七〇年代のピークから見てどうなってきているかということです。  京都といえば西陣ということになりますが、西陣の主力製品であります帯、七百八十万五千本から二百二十万本、二八%に減少しております。二八%減ったんじゃないんです、二八%に減少しております。丹後ちりめんはどうか。九百九十六万反、それが百八十五万五千反、一九%に減っております。友禅はどうか。千六百二十五万反から百七十六万反、わずか一一%にまで減少するという極めて深刻な事態になっているわけでございます。このまま推移すると本当に伝統産業が壊滅的な打撃を受けてしまう、こういう状況にあるわけでございます。  私は、こういう状況を見ましたときに、大臣一定の役割を果たしてきたというふうに政府の繊維政策を評価されていらっしゃるわけですけれども、これまでの政府の繊維政策というのは、政府の構造改善事業に参加できる一部の業者の生き残りの陰で、実は大企業による繊維製品の大幅な輸入の急増、流通段階でも大企業の不公正取引などの横行で、国内の中小繊維産業と繊維産地が今申し上げましたように非常に疲弊が進んだ、こういうことではないかと思います。  このことは、繊維法によるさまざまな、特別な構造改善施策が不十分であったということであって、廃止ではなくて、今、私はむしろ抜本的な改善と対策を充実することこそが課題になっているというふうに思うわけですけれども大臣のお考えを伺いたいと思います。
  66. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 通産省としては、個別産業振興的施策からの脱却という行政改革の趣旨を踏まえまして、繊維法を本年六月末の期限をもって延長せずに廃止することが適当と考えております。  しかしながら、繊維産業を取り巻く厳しい状況を踏まえまして、繊維事業協会の事業のうち、需要開拓等の必要なものを当分の間、中小企業総合事業団に移管する等、経過措置には万全を期してまいります。  また、繊維産業の実態を十分に踏まえながら、業種横断的施策をきめ細かく活用することにより、引き続き必要な施策の実施に努めてまいりたいと考えております。
  67. 西山登紀子

    西山登紀子君 私が今までるる説明をいたしましたように、繊維産業の実態は極めて深刻でございます。一般的な施策に流してしまうということではとても今日の繊維産地の疲弊の状態をとどめることはできないというふうに考えるわけです。  私、きょうこの西陣の帯を締めてまいりましたけれども、皆さん、実に見事な帯だというふうに見ていただけると思います。この帯は西陣の一級技能士の方が織られた帯なんですけれども、その一級技能士の方が今どんな生活をしているかということなんですが、昨年一年間の急激な不況のもとで、実は織っておりました織機五台が今一台になっているんです。御自身だけが織るようになりまして、ほかの方はみんな西陣よりも高いアルバイトの方に行ってしまったということで、月十万以下の収入の中で、しかし一級技能士としての誇りを捨てるわけにはいかないということで、帯をずっと織り続けていらっしゃるわけでございます。  こういう繊維の状況に対して、私はやはりもう一般策でいいのだということではさらさらないということを申し上げて、次に移りたいと思います。  次に、繊維業界にあります不公正取引の問題でお尋ねをしたいと思うわけでございます。  私の地元は京都なんですが、いろんなところで業者の方と懇談をいたしました。大変なお話がございました。もちろん不況で仕事がないというのが根本の問題でございますけれども、それに加えて、例えば安い単価でも一生懸命仕事をやるわけですけれども、支払いが手形でございます。しかも、決済期日が短いもので百五十日、中には二百日、三百日というようなものも実際あるということでございます。友禅などでは染めの注文があって、仕事をして持って行っても引き取ってくれない。受け取ってくれても伝票は入れないでくれと言われてしまう。さらに、集金に行きますと代金から一方的に三%、五%差し引かれて、歩引きの強要は日常茶飯事だということで、非常に私も驚いたわけです。  実はこういうことは独禁法に違反すると思うのですが、公取さん、どうですか。
  68. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 今、先生からお話しの手形のサイトが百五十日なり二百日と非常に長くなっているものがあるという御指摘でございますが、下請取引における下請代金の手形の支払いにつきましては、一般の金融機関による割引を受けることが困難な手形の交付というものを禁止しているわけでございます。どのくらいの期間が一般の金融機関の割引を受けるのが困難かということにつきましては、繊維業につきましては手形期間が九十日を超えるもの、一般の業種につきましては百二十日を超えるものにつきまして、これが割引困難な手形であるおそれがあるとして下請法を運用しているものでございまして、そういうものがあれば所要の改善措置を講じてきているところでございます。  したがいまして、今御指摘のような手形の支払い期日が百五十日あるいは二百日、三百日というようなお話がございましたが、それが現にあるとすればそれは下請法四条二項の第二号の規定に違反するおそれがあるということになろうかと思います。
  69. 西山登紀子

    西山登紀子君 今も言われたように、私は明らかにこれは独禁法違反だというふうに思うわけでございます。どうしてこんな事態が放置されているのか、違反を早くなくしてほしいという現場の切実な声でございます。  それで、ぜひ公正取引委員会は現場に足を運んで直接実態を調査してほしい、特別の手だてをとってほしいという切実な声をお伺いしたのですけれども、これにぜひこたえていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  70. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 私どもも、京都の繊維のお話がございましたが、下請法、これは下請事業者の保護ということで下請代金支払遅延等防止法という法律があるわけでございます。しかしながら、親事業者と下請事業者の関係というのは取引の継続ということを前提として成り立っているということもございまして、違反行為というのが下請事業者からなかなか申告として出てこないということもございまして、毎年、親事業者に一万四千、それと下請事業者に対しましては七万社を対象に、法律に基づいてでございますが、書面調査を実施しております。  この違反のおそれのある行為というものに接した場合には、これは実地調査ということで現地にまで行きまして、あるいは親事業者あるいは関係の事業者においでいただいていろいろ事情を聞きまして調査しているわけでございまして、繊維につきましても当然その中に含まれておるものでございます。  まだまだ不十分ということもございますが、私どもとしてはできる限りそういった調査を通じまして、違反があれば、端緒に接すればそれを徹底的に調査していくように努めてまいりたいと思っております。
  71. 西山登紀子

    西山登紀子君 現場のいろんなお声を聞きますと、公正取引委員会というのは非常に遠い存在なのです。こんな実態を本当に知ってくれているのだろうかとおっしゃっているわけです。  そういう点で、公取さんがなかなか現場に来てくださらないので現地の皆さんが、特に繊維業界に働く和装職人の労働組合の皆さんが一一〇番活動というのをやっていらっしゃるわけです。京都友禅一般労働組合、全西陣織物労働組合、京都流通サービス労働組合という三つの労働組合が一緒になって和装産業一一〇番、地元の新聞などにも報道がされました。取引条件の改善、雇用問題、不公平取引、支払い遅延、雇用不安、何でも御相談くださいということで、こういう自衛の手段に出ている。自衛だけではない、業界全体の健全化ということにも乗り出しているということでございますので、ぜひそういう現場の取り組みにも関心を寄せてほしいと思うわけです。  次に、今おっしゃいましたように書面調査をやっていらっしゃる。これは公正取引委員会中小企業庁が一緒になってやっていらっしゃるのを、私きょう資料で配らせていただきました。これを見せていただきますと、九七年度では全体で十四万六千事業者に書面を発送して調査をしている。この書面調査でわかった違反件数は千三百三十件、全体の〇・九%でございます。それで措置はどうかというと、勧告は三、警告は千三百四十八件ということになっているわけでございます。毎年、下請法の規制の対象になる親事業者、それからこういう関連の事業者の調査をしているわけですけれども、これはどうなのでしょう、実際の違反件数はもっと多いと推測できると思うのですが、どうですか。
  72. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 先ほど申しましたように、毎年下請事業者七万の事業者に対しまして書面調査をしておるわけでございまして、これは四年で一回転すれば全下請事業者のすべてのものについて調査をしているというような数でございます。私どもの書面発送数というのは、親事業者というのは企業単位で出しておるものでございますから、三千万以上の親事業者については全数でございますし、それと取引している下請事業者はすべて、これは七万、これは四年たちますと一回転すれば全下請事業者からすべて情報が集まるということでございまして、申告の数こそ少ないわけでございますが、このような形でかなり違反の是正には力を入れていると、そのように感じているわけでございます。
  73. 西山登紀子

    西山登紀子君 かなりつかんでいるという自信のある御答弁なのですけれども、しかし、この数は繊維だけではありません、全親事業者を対象にした全数調査ということになっているわけですが、今私たちが聞いている下請取引の現状からしますと、実態を十分つかんだ数字であるというふうにとても思えないわけです。  それで、先ほど言われました申告なんですけれども、申告は十三です。この十三という数、非常に少ないのですけれども、この書面調査の千三百三十件と申告十三、この差はどのように受けとめたらいいのでしょうか。
  74. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) 申告は非常に少ないではないかということでございますが、これはやはり下請取引の性格上、下請事業者が親事業者の下請法違反行為に対して公正取引委員会なり中小企業庁に申告するというのはなかなかしにくいということかと思います。  法律上は、下請法の規定の中に、公正取引委員会なり中小企業庁に申告したということによって取引上数量を削減したり、あるいは取引を停止するというような行為、これも下請法違反になるということを規定しているわけでございます。いわゆるそういう報復措置も下請法違反ということで規定しているわけでございますが、そういう報復措置で違反になったという件も余りございませんで、要は下請事業者は親事業者を相手になかなか申告しにくいということかと思います。  そういうこともございまして、私ども、先ほど申しましたように、親事業者一万四千、それと下請事業者七万というかなりの膨大な数に対しまして毎年書面調査をしている、そして違反行為の端緒を見つけ、それを手がかりに実地調査等を行っている、このようなことを行っているわけでございます。
  75. 西山登紀子

    西山登紀子君 おっしゃるように、下請事業者が公取に申告したということが知れれば仕事を打ち切られるということは本当に目に見えているということで、我慢に我慢をしていらっしゃる姿がこの十三件という少ない数にあらわれているのではないかと思うわけです。だから、公取さんに現場に来てほしいという声もそういうところから起きていると思うのです。書面調査をやっていらっしゃる努力は私は認めますけれども、下請法を制定以来、毎年苦労して営々と書面調査をやってこられた。しかし、新規発生件数というのは大体千数百件から二千件を超える違反が、この数年ですが、続いているわけであります。これはどうしてなくならないのか。事態を幾らかでも改善して未然に防いでいただきたい。再発防止もしなきゃいけない。従来どおりのやり方では改善されないんじゃないでしょうか。  この事態、どのように検討されてきましたか。
  76. 山田昭雄

    政府委員(山田昭雄君) ここにございますような措置件数が、警告等でございますが、毎年千四百件内外ある、これが減っていないということかと思います。私どもといたしましては、再発防止ということが一つあろうかと思います。  ただ、違反行為者で同様な違反行為、例えば支払い遅延でありますとか、先ほど少しございました割引困難な手形の交付、そういった行為をまた再犯するということは比較的少ないわけでございまして、むしろ書面の不備であるとかそういうようなことを新規の業者がまた行うということがございます。私どもといたしましては、この再発防止ということと未然防止ということに力を入れているわけでございまして、そのために講習会を開催いたしましたり、あるいは再発防止ということでは、警告等を行った事業者に対しては、社内的に十分マニュアルをつくったり再発防止の措置を講ずるよう特にお願いしているところでございます。  再発防止と未然防止ということでできる限り違反の防止に努めているわけでございますが、確かに御指摘のとおり、措置件数ということではなかなか減っていかないというのも一つどもの悩みでもあるわけでございます。
  77. 西山登紀子

    西山登紀子君 公取さんが悩みだと言われると困ります。実際被害を受けている人たちは本当に困ってしまう。  ということで、大臣に抜本的な提案をしたいわけです。実は私は、こうした状態をなくするために東京の墨田区の中小企業制度は大変すぐれたものだというふうに考えております。これは行政として、親企業の支配から区内の中小企業を守るために、実態がどうなっているのかということをリアルにつかむために、業者の皆さんの御協力も得て悉皆調査を実施いたしまして、どんな対策をとったら区内の業者の頑張りに役立つのかという徹底的な調査をして対策を練り上げて、中小企業振興基本条例というようなものをつくりましたり、職員さんも八人から八十二人にふやしたりして非常に積極的にやっていらっしゃるわけです。私は、こうしたやり方を国が同じように実施せよということを言うつもりはありませんけれども中小企業の実態がどうなっているのかということについて積極的につかむ対策を自治体と一緒に協力してやっていただきたいと思うわけです。  とりわけ、今、繊維の段階で非常に不公正な取引が多くあるという声が現地の方から上がっておりますので、ぜひ日本の繊維産地を計画的に業種と地域を限定して、通産省中小企業庁、それから公取さんなどが産地を抱える自治体と協力して、流通の実態をつかむための例えば訪問調査などもやっていただきまして問題を明らかにする、そして近代的で民主的な商取引のルールを確立するということに業界とともに努力をしていただきたいと思いますが、大臣の御答弁はいかがでしょうか。
  78. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生の御質問の御趣旨は、書面調査だけでは多分本当のことを言わないだろうということを前提にして質問されているんだろうと私は思います。  書面調査もある種の効果がございますが、私どもとしては、産地における繊維産業の下請取引の実態につきましては、資本金三千万超の製造業の企業ほぼすべてについて毎年度書面調査を行いまして実態の把握に努めております。  また、書面調査の結果、下請代金支払遅延等防止法違反のおそれがある場合等には立入検査を実施し、違反の事実が確認された場合には改善のための指導を行うなど、厳正に対処してまいりたいと思います。  今後とも、繊維産業を初めとする中小企業状況に注視しながら、下請取引の適正化に努めてまいりたいと思っております。  もちろん、地方自治体によっては、より厳正な、より的確な調査をしているということもあるということは、先生の御質問から十分理解したつもりでございます。
  79. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、書面調査の効果がないとか、そういうことを申し上げているのではないんです。非常に膨大な書面調査をずっとやりながら、なおかつ新規の違反件数が絶えない、しかも四けた以上ある、そして現地はもっとあると訴えているということについて、従来どおりのやり方を続けていたのでは民主的な商取引のルールが繊維産業の中で育っていかないんじゃないか、こういう提案でございますので、よく検討していただきたいというふうに思います。  次に、繊維産業構造改善事業協会の解散に関連して聞きたいわけです。  今指摘をいたしました不公正な取引を防止するために、繊維業界は繊維取引近代化推進協議会という自主的な組織をつくって、実態調査をしたりガイドラインをつくったりして努力してこられたと思います。この協議会の事務局は今協会に置いてあるんですけれども、これはどうなるんでしょうか、総合事業団に移されるんでしょうか。
  80. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) 御指摘のとおり、現在、繊維取引近代化推進協議会の事務局は事業協会に入っておりますけれども、この事業民間方々が積極的に自発的に取り組んでいただくような事業でございますので、今回の事業協会の廃止に伴いましてこの協議会の事務局は民間に移管していただきたいというふうに考えております。
  81. 西山登紀子

    西山登紀子君 事業団に移されないということなんですけれども、それで公正で中立的な運用ができるかどうかという疑問が出るのは必定だというふうに思います。具体的な対策をお持ちですか。
  82. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) 取引問題は、先生御指摘のとおり、いろいろ利害関係もありましたり、難しい問題でございますので、そういう意味では公正中立な立場から議論していただきたいというふうに思っております。  従来、事業協会がこのような事務局的な機能まで果たしておった場合も、通産省も適宜出席をしまして見ておりましたので、事業の運営そのものは民間の関係者の方々お願いしようと思っておりますけれども、今後とも厳正中立に行われますように注意をしてまいりたいと思っておりますし、必要に応じまして例えば陪席する等によりまして、公正中立な議論ができますように環境には十分考えてまいりたいと思っております。
  83. 西山登紀子

    西山登紀子君 それでは次に、セーフガードの問題についてお聞きしたいと思います。  ことし一月十八日付で、TSG発動に関するガイドラインを改定しているわけですけれども、その内容は、手続を若干緩和しただけで、被害の判断基準が緩和されたというものではありません。私は、やはり被害を受けている日本の産地にとって発動の要請も発動ももっとしやすいようにすべきだと思うんですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  84. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 平成六年十二月にWTO協定に対応いたしまして整備した繊維セーフガードの発動についての国内規則につきましては、昨年、輸出入取引審議会で見直しをしていただきました。その結果、過去二回の調査経験等にかんがみ、発動手続を改善することが適当であるとされ、本年一月、調査期間の短縮、すなわち一年から六カ月、業界の調査負担の適正化等を内容とする関連国内規則の改正等を行ったところでございます。  繊維セーフガードの発動基準につきましては、国内規則において、輸入の増加や、それによる重大な損害等の技術的判断要素、発動によるメリット、デメリットの比較考量による国民経済上の緊急の必要性という政策的判断要素を総合的に勘案し決定することとされております。昨年の輸出入取引審議会の答申におきましても、この枠組みを維持すべきとされたところであります。したがって、現時点での発動基準の緩和は考えておりません。  繊維セーフガードの発動の要請があった場合には、この国内規則に従い、適切な対応を図ってまいる所存でございます。
  85. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣の御答弁だと、TSGの発動は本当にもうしないというふうに私は受けとめたんです。  例えば、丹後ちりめんなんというのは今や生産量を上回って輸入がされておりまして、産地は休業、廃業、自殺者が本当にたくさん出ているという深刻な事態でございます。幾ら言っても国は聞いてくれない、国は見捨てたのかという声だってあるわけでございます。  それでもう一つ、セーフガードを発動してほしいという申請が一度出たのに発動しなかったという例を私は資料をいただきました。平成七年二月二十三日に業界から繊維セーフガードの措置発動の要請が出ているんですけれども、これは出さないと言ってやめてしまったわけですが、そのやめた結論を出した経過を見せていただきますと、非常におかしなことなんです。前年度比で下がっているからもういいんだみたいなことを言っていらっしゃるけれども、実は前年度比じゃなくて、九二年度から比べれば九五年だって一五六%の輸入量があるにもかかわらず、前年度比九二・七に下がっているからもういいんだ、こういう結論を出しているというんですから、私は驚くべきことだと思います。こういうセーフガードのあり方が続くようならば、日本の繊維産業というのは決して守られないだろうと私は強い憤りすら覚えるわけでございます。  次に移りたいと思います。  大臣経営革新支援法についてお伺いをしたいと思うんです。この支援法は、業種指定がなかったり対象事業者を限定していないということは一歩前進だと考えるわけですけれども、余り高い目標が要求されますと、全産業にわたって中小零細の業者が事実上は支援法の対象から除外されるのじゃないかという懸念を持っているわけです。  要件にあります付加価値額を五%から一〇%以上に、大体五年間の計画を持つようにという要件でございますけれども、この要件を絶対的な条件としたり、達成しないからといって途中で支援を打ち切ったり、そういうことはありませんね。大臣に確認をしておきたいと思います。
  86. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 中小企業経営革新支援法は、幅広い中小企業経営革新を支援していくものでございまして、経営の向上に関する目標については、個々の事業者の状況に応じたものとしていくことが重要であると認識しております。  具体的な目標値については経営革新指針に規定することとしており、その検討の際には中小企業政策審議会における審議も踏まえてまいりますが、業況の悪化する中小企業に対しては、一定の要件緩和を行う等の工夫をすることによって、幅広い中小企業の前向きな努力を積極的に支援してまいります。
  87. 西山登紀子

    西山登紀子君 確認をしておきたいというふうに思います。  次に、協会の解散に関連いたしましてお聞きをしたいと思います。  協会の事業事業団に引き継がれるということで、三年ないし五年の後にはこれがなくなるということでございます。協会は、三十年に及ぶ活動の中で貴重なデータ、繊維対策推進のノウハウ、人的つながりなど膨大な成果を蓄積しているわけですが、これが事業団に移管されますと繊維業界の人が気軽に利用できなくなるのではないかというようなお声もございます。  この協会のとってきたさまざまな対策事業団としてどのように受け継ぐか。今こそきめ細かく対応すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  88. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) 御指摘のとおり、繊維事業協会は三十年を超える歴史を持っておりますので、いろんな実態調査でありますとかノウハウでありますとか、貴重な資料と経験を持っております。  これにつきましては、今後の繊維産業支援につきましても大変貴重な資料でございますので、これらの資料が中小企業総合事業団に適切に引き継がれまして、十分これからも参照できるように最大限の注意を払ってまいりたいと思っております。
  89. 西山登紀子

    西山登紀子君 それでは次に、政府は別途、産地活性化基金というものを設けまして、二百億を出資して都道府県に同額の出資を求めて、総額四百億円の規模として事業を新しくやろうということなんですが、これは地方自治体の財政事情の逼迫ということもありまして、積み上げが本当に可能なのかと危ぶまれているわけでございます。  地方自治体の協力が得られませんと、事実上、産地対策が手抜きになるということに結果としてはなるのじゃないかと思いますが、政府の責任あるお考えをお伺いしたいと思います。
  90. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) 現在、産地活性化基金につきましては関係の都道府県で御検討いただいておりますが、おっしゃいますとおり、財政事情が大変厳しいものですから、私どももできるだけ弾力的に考えたいと思っております。例えば、基金そのものでなくても、運用益相当分を補助金という格好で毎年毎年フローで各都道府県の方で御準備いただくといったことも含めて、都道府県の方でできるだけ事業が実施しやすいように考えていきたいと思っております。  また、こういった事業は、現在の産地の状況から考えますと集中的にしていただきたいものでございますので、現在のところ、五年間の事業というふうに考えている次第でございます。
  91. 西山登紀子

    西山登紀子君 五年間ということなんですけれども、先ほど来私が述べましたような深刻な状況にある産地にとって五年というのは余りにも短いと思うんです。五年間で打ち切られるということで非常に不安を持っていらっしゃるわけですから、この点はもっと弾力的に運用するということをお考えいただきたいと思います。  時間が迫ってまいりましたので、最後に、協会が実際今までやってまいりましたQR事業、これがどうなるのかということが一つ。それから、各地の繊維リソースセンター、これも大幅な赤字を抱えているのだけれども、この点はどうなるのかという大変不安がございます。それから、職員の処遇がどうなるのか。この三つの点についてまとめてお伺いいたします。
  92. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) QR事業は、繊維産業の構造改善、特に生産・流通構造の改善のために大変重要でございまして、今おっしゃいましたQRコードセンターはその中核として極めて重要な役割を引き受けているものでございます。したがいまして、これにつきましては、将来は民間事業者の利用により事業を実施するという民営化が方向としては望ましいというふうに考えておりますけれども、民営化に向けました体制整備を行いつつ、当分の間、中小企業総合事業団に移管しまして、引き続き事業を実施してまいりたいというふうに考えております。  それから、繊維リソースセンターの件でございますけれども、これも繊維の組合におきまして、さまざまな産地におきまして、構造改善事業をするための支援のセンターとしまして、情報提供とか人材の育成等にいろいろな意味で仕事をしているところでございます。  これを経営面から見ますと、おっしゃいましたとおり、累積ではかなり赤字の点もございますけれども事業の性格が非常に公益的でもあるといった面がありますので、そういう意味では、これからも国庫補助金によります支援等を通じましてセンターの活動が行われますように、通産省としましても応援をしてまいりたいというふうに考えております。  三番目の職員の点でございますけれども、現在のところ、繊維事業協会の職員に関しましては、定年退職者を除きまして、希望者全員が中小企業総合事業団に移ることができるように万全を期してまいりたいと思っておりまして、こういう意味で職員の不安がないように心を用いてまいりたいと思っております。
  93. 西山登紀子

    西山登紀子君 終わります。
  94. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 通産大臣は、早朝に帰国されて、引き続いて委員会、御苦労さまです。  厳しい情勢下で、特に中小企業を取り巻く状況の中で、通産省中小企業庁が鋭意頑張っておられることにつきまして、心から敬意を表します。  ただ、中小企業対策考える場合に、何が一体本当の中小企業対策になるのかという点は、赤字法人率の推移を見ますと、景気のいいときには四〇%台まで赤字法人率が下がってくる、今のようなときにはもう六五%を超えている。その法人の数の圧倒的なところは中小企業です。ですから、最大の中小企業対策というのは景気対策です。景気がよくなれば中小企業もよくなるわけですから、その辺のことをやっぱり抜きには中小企業対策はない、このように思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  95. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御指摘のとおりでございまして、個別の中小企業に対する経営支援の中には例えば金融もございましょうし、また技術支援もございましょうし、また新規の開業支援もございましょうし、また他の中小企業といろいろ協力関係を成立させるための支援もありましょうし、いろいろなものもございます。  しかしながら、根本的には二つのことが私は大事だと思っております。  一つは、日本経済全体、いわばマクロ経済と言っていいんですが、これをやはり回復しませんと、幾ら個別対策をやってもそれはその場限りのことでございまして、中小企業がもう一度活力を取り戻して日本経済をまさに支えているという状況をつくるためには、日本経済そのものが成長路線に乗るということが必要であると思います。  しかし、それだけではまた足りないわけでございまして、中小企業自体の体質を強化するということも一方では大事でございますし、いわば技術を含めたイノベーションにも中小企業は取り組んでいく、そういう中小企業側の努力も必要でございます。この点については、競争力を回復すると申しますか、企業としての健全性を構築していくといいますか、そういう両面が私は中小企業対策としては必要なんだろう、そのように考えております。
  96. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 全く認識が一致するのでありますが、役人サイドへ行きますとやや、法律をつくった、出した、ああやったやった、こういうことでどうもそこをクローズアップして終わりがちなところがあるものですから、今大臣の答弁にありましたような趣旨でぜひ仕事をしてもらいたいという希望を申し上げたいと思っております。  それで、中小企業経営革新支援法というのは、大変名前がいいわけで、期待をしておるんですが、中小企業近代化促進法と新分野進出法、この二つを発展的に解消して、そしてこの経営革新支援法になっていくんですが、私も中小企業近代化促進法に基づいてやられている事業を幾つか知っておりまして、その中でうまくいっているのとうまくいかなかったのもよく知っております。  大体そういう状況というのは、数字はなかなか持っていないということらしいですが、うまくいったケースとうまくいっていないようなところとどのようにかみ分けをしておられるのか、特に皆さんはうまくいかなかったところというのは隠したがるわけですが、そういう点は感触でいいですから聞かせてください。
  97. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) なかなか難しい御質問であるわけですが、三十八年に法律ができましてから、指定業種では百八十七の業種、特定業種では七十七の業種を指定してございます。現在でも約三十八万社の中小企業が参画されて近代化促進法の活用を図られているということでございます。  これだけ業種が多いものですから、一概に特定の業種だけこの場で取り上げて、特に悪かった方を申し上げるのは差し控えたいと思いますけれども、例えば生コンクリート製造業、あるいは一般印刷業、これも先生もよく御承知のように、近促法を御活用いただいて、かつ設備の近代化とか集約化が進んできている大変典型的なしにせの業種でございます。それ以外にも多々、例えば陸上貨物運送業等につきましてもよく利用をいただいている業種で成果を上げているものがございます。  ただ、一般的に申し上げますと、近年、業種ぐるみで策定をいたしました構造改善計画と個別の中小企業者経営計画との間にずれが見られるものが約二割程度どものアンケートでも出てきております。  そういった時代の流れというのを頭に置きながら、今後は個別の中小企業者あるいは任意のグループを中心とした中小企業経営革新の方に力を入れてまいりたいということでございます。
  98. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 例えば中小企業金融公庫から金を貸して、あるいは中小企業事業団から金を貸して近代化をやったと。その途中で計画がもううまくいかなくて、返済が遅滞しているとか返せないとか、そういうものの累計みたいなものはありますか。
  99. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 具体的に結論を申し上げますと、手元にそういう数字は私、現在持っておりません。ただ、中小公庫の融資の場合ですと、例えば平成年度以降でも千七百二十一件、千三百億の融資がされておりまして、大変多数に上っております。  申しわけありませんが、今御質問の点については数字を持ち合わせてございません。
  100. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 後日でいいですから、あれば数字を見せていただきたいと思います。  私の地元で三和酒類という「いいちこ」というしょうちゅうをつくっているところがあるんです。これは三つが輪になって、それぞれ別々の酒屋が組んで三和酒類と、それで社長もくるくるかわりながらやっているんですが、下町のナポレオンという名前をつけまして、そして麦しょうちゅうブームにずっと乗っていって、今優良な企業成長しているんです。こういう場合は非常にうまくいっているんです。  ところが、印刷部門を集約して軽印刷というものを一つつくったと、これは途中からもうばらばらなんです。最初は重役がいっぱいおりましたが、あの手この手やって、結局なかなか結末は厳しい状況なんです。  だから、本当にうまくいっている例とかいっていない例というのは幾つかそういうように見てきておりますけれども、影の部分、暗い部分というのを、なぜだったのかとやっぱりよくそこを反省して、それで新しい今度の法律に生かすように希望いたします。  それから、中小企業新分野進出円滑化法につきまして、特にプラザ合意を受けて、あの円高の後に法律の改正がありました。私も当時、法案審議のときにはたしか意見も言ったと思うんです。最近の融資の状況というんですか、今、いただいた資料のグラフで見ますと、非常に下がっておるんです。これはトータルで三千七百件が対象になっておるようでありまして、そしてこの法律というのは知事が承認をするというような形になっておりまして、それぞれ数字をいただきました。  最近これがずっと落ちてきた原因といいますか、下がっている、行き詰まっているという状況は一体何かということをお尋ねしたいんです。
  101. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 新分野進出法は、委員の御指摘のように、平成五年にバブル経済崩壊後の円高不況の中で制定をされた法律でございます。十一年の一月末現在で、計画承認件数が三千七件になってございます。  幾つか具体例がございますが、例えば眼鏡産業なんかでは、形状記憶合金を利用した眼鏡フレームが開発されまして世界市場に展開している例とか、成功している例が幾つかございます。  ただ、融資額につきましては、今先生御指摘のように、平成年度中小企業金融公庫で二百五十四億の融資がございまして、平成年度には九十九億と金額が落ちてきているわけでございます。原因といたしましては、当然のことながら昨今の経済全体の景気の低迷あるいは中小企業自身の設備投資額も約二割ぐらい落ち込んできている点もございますので、こういった新分野進出に臨む中小企業者の土壌といいますか、環境は大変厳しいものがある点も否めないと思います。  経営革新法では、新分野進出法と同じような考え方を取り入れながら、例えば製造業関連四業種に限っておりましたのを、経済のサービス化、ソフト化も踏まえて全業種に広げるとか、従来の新分野進出等円滑化法の考え方をより広げて、中小企業者にとって幅広く使えるような制度に工夫をいたしております。
  102. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 当時の議論をちょっと思い出しますと、情報化、半導体、ソフトウエア業とか、これからそういう分野が相当開けてくると。そういうものへの転換が相当出てくるのかな、こう思ったんですが、いただいた資料によりますと、ソフトウエア業あるいは情報処理サービス業というのは余り多くはないような気がするんですが、どのように判断しておりますか。
  103. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 先生御指摘のように、特定業種といたしましては、製造業以外に、ソフトウエア業、それから情報処理サービス業というものを四業種の中の一つとして加えてございます。これは、こういう業種に属される中小企業の方が具体的に生産額の減少要件を満たされるとか、その分野で成り立たなくなって新しい分野を志向される場合に、個々の中小企業者の方のそういう志向の結果として実績が出てくるものですから、ただいま定性的にこの両業種についてなぜ進まないのかという点についてはコメントを差し控えさせていただきます。
  104. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 かたいことを言わぬで、コメントは控えぬでもいいと思うんですが、後でわかれば教えてください。
  105. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) まことに恐縮であります。  手元にちょっと数字が出てきておりまして、やはり数的には多くない傾向にございますが、一つには、ソフトウエア業あるいは情報処理サービス業につきまして、その業自身として一般的に業況が他業種に比べて悪くなかったということではないかと思料しております。
  106. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 恐らくこれからどんどんまた伸びてくるんだろうと思いますが、研究をしていただきたいと思います。  何か本法律施行後の状況についてアンケートをとられたと。先ほどもちょっと答弁を聞いておりましたが、そのアンケートの中で、融資効果が大きかった、またはあった、このように答えている人の数とかいうものが出ておるんです。その人たちは全体の何%か。あるいは税制効果が大、または税制効果があったと回答したのは全体の何%ぐらいだったのか。どうも集計を見ますとちょっとわからないものですから、小さいことでございますが、わかれば教えてください。
  107. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 昨年の一月に実施いたしましたアンケート調査によりますと、新分野進出等円滑化法の計画承認を受けた方で、税と低利融資とを分けて申し上げますと、税制措置を利用した方は五三%、約半分の方が利用されております。そのうちの七割、七一%の方からおおむね満足というアンケート結果になっております。  また他方、低利融資制度につきましては、これは利用者が高くて七二%の方が利用されておりまして、うち七三%の方からおおむね満足という回答をいただいております。大ざっぱに申し上げますと、利用者から見て効果的な制度であったと認識しております。
  108. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ちょっと税制のところをもう一回言ってください。
  109. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 税制につきましては、法律上の計画承認を受けた方を分母といたしますと、五三%の方が税制を利用されておりまして、利用された方のうちの七一%の方から満足というアンケート結果を得ております。
  110. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 この新分野進出等円滑化法も、恐らく途中でつぶれたりうまくお金を返せなかったりしたところがたくさん出ているんじゃないかと思うんですが、何か把握しておりますか。
  111. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 今、委員御指摘のような、融資を受けたり税制を活用して結果的にうまくいかなかった例というのは統計的に把握しておりませんで、恐縮ですが差し控えさせていただきます。
  112. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 また、それはどうせ必要なことですから、わかったら後で教えていただきたいと思います。  私は、この法案を読んでみながら、どうもわかりにくいんです。どこがなぜわかりにくいのかというのは、通産大臣経営革新の指針をつくる、その指針はどういうことか。これは確かに何かわかりそうでわからないんだけれども、これは第三条で、一つは「経済的環境の変化に即応して中小企業が行う経営革新に関する事項」、それから二つ目に「経営革新の内容に関する事項」、三番目に「経営革新の実施方法に関する事項」と、こうなっているんです。私が長いこと見ていますと、大体こういう指針であらまし提起して法案をつくって、そしてあと通産省でやりましょうと、大蔵省と通産省から出す法案は非常にこういうように、この指針の中身についてもう少し私どもが具体的な案みたいなものを見ながら議論をしないと、でき上がったのがどういうようなことになるのかというのは非常にわかりにくいんです。大蔵省から出てくる法案と通産省から出てくる法案は大体こういうように大ぐくりで、あとは任せてくださいと、非常に立法府に対しては不親切な法案が多いんです。  この指針について、これは一体いつごろできて、我々がああこれかと理解するような内容になるのか、そこのところをちょっと。
  113. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 法律の構成について御指摘を受けましたが、具体的には、指針につきましては、スケジュール的に今年の七月一日に本法の施行をしたいということで準備をさせていただくつもりでございます。  指針の大きな意味合いは、法律ということで法制局とも相談をしながら項目を整理させていただいておるわけですが、中小企業者にとって経営革新というのがどういった意味合いを持つものであるか、そういったものをわかりやすく書き上げるということが一つでありますし、あるいは自治体がこういった計画を承認する場合の基準になる、物差しになる、そういった内容のものにしなければいかぬということで、先ほど先生が言われたような経営革新に関する事項とか内容に関する事項とか実施方法に関する事項ということが書いてございます。  今申し上げた趣旨で指針をつくらせていただくということが前提になっておりますので、実を言いますと、経営革新の例えば目標とか経営の向上の程度を示す指標、計画の中身に入ってまいりますけれども、これらについては専門家をこれから交えましてドラフトをつくっていただきまして、またそれを審議会にお諮りして指針として組み上げるということで考えております。現時点では文章化されたものを私ども手元に持っておりませんが、法律の表現とは別に、指針の段階では中小企業者が見てもわかるような、それをもとに計画申請ができるような、できるだけそういった中身にしたいと思って今努力をしております。
  114. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もう少し時間がありますから続けますが、私はそういう表現がいいのかどうなのかわかりませんが、経営革新という場合に、欠かせないのは、特に中小企業の場合は経営個人の力です。私もよくいろんな人とお話ししておりますが、この経営者が行ったら大概つぶれかかったところをみんな立て直す、そういうような人がやっぱりいるんです。松下幸之助さんもそうだったでしょうし、まあいろんな。  だから、皆さんが対策を打つ場合に、おれが経営者であった場合はどうするか、うまくやるかと。やっぱりそういう立場で法律をつくり、あるいは指導をしないと、机の上で皆さんの話を聞いてそしてやっていくんじゃなくて、長官民間へ行って経営者になったときに、非常に厳しい荒波の中で経営を立て直していく、あるいは維持していくというようなそういう力が要るわけです。だから、そこの部分に相当ウエートをかけないと、金融やあるいは税制や、あるいは何か情報を提供するだけで物がいくかというといかないです。やっぱり人なんです。  特に中小企業の場合はそういう経営感覚というか、努力をする、根性のあるそういう人というのはやっぱり大事でありまして、その部分をどのように反映していくかということを真剣に考えてもらいたい。そのことを私の気持ちと意見として申し上げまして、時間が来ましたようでありますから、終わりたいと思います。
  115. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 どうも御苦労さまでございます。  中小企業総合事業団法を初め、中小企業庁がこれから非常に厳しい経済状況の中で日本中小企業をどう育成、あるいはまた技術的にもいろんな角度から協力をして発展させていくか、そのためにはもちろん行革の問題もこれありでありますが、この中小企業政策を基本的に精査してみるという作業を、私が昨年ここで指摘を申し上げたことでありますが、そのことの作業に入っておられるということを先日もお聞きして非常に喜んでおりますし、期待をいたしております。  日本経済発展は、もちろん産業政策あるいはまた安定した政権の中における長期的計画の中においての産業・財政政策の絡み合いで極めて順調に発展してきたわけであります。しかし、こういう新しい時代になって、やはり今までのようなある意味においてはトータル的なマクロ的な政策だけでは、資源のない我が国で中小企業が今までのように日本産業を支えていくという役割が演ぜられるかどうかということはなかなか状況として厳しくなっていると思うんです。  川上から川下といって政策をやったこともありました。しかし、この辺でそういったところも、今までのこととこれからの方向を十分よく見きわめられて、このあまたある中小企業に関する法律をぜひひとつよく精査をして、二十一世紀に向かっての過ちのない中小企業政策の方向性というものを見出していく努力をしていただければありがたい。また、我々もそのために政治家として、それぞれがそれぞれの地元の中小企業、小規模事業者等の実情をよく見ながら、そういう政府考えていることとすり合わせをしながら過ちのないようにしていかなければならない。私は非常に難しい時期に入っていると思います。  しかし、今回のこの中小企業総合事業団法によって、またここで一つのまとまりができるということは大変結構なことだと思います。特に中小企業信用保険公庫あるいは中小企業事業団を軸として繊維産業構造改善事業協会が一本になるということ、それによる資本の率も高まっていわゆる対策が講じやすいという機構をつくるということに対しては、まずもって基本的に賛成の意を表明しておきたい。それだけに、この事業団法が成立の後の、今ほどの同僚議員のお話のように、ぜひきめの細かな、効果あらしめるような諸施策を講じていただくように、あるいはまた指導をしていただくようにお願いを申し上げておきたいと思うんです。  私は、先日も一般質問のときに大臣日米関係の通商問題の中で繊維問題を若干取り上げました。時間がなかったので大臣からも適切な答弁を得ないまま終わってしまいましたが、それはそれとして、きょうはなるべく同僚議員と重複しないところで、私の地元の問題も若干これありで、この繊維産業構造改善事業協会の事業団への統合に絡んで若干私が危惧していることやあるいはまたこの機会に大臣からお聞きしたいこともあわせて、余り時間がないようですけれども、少しの時間質疑を交わしてみたいというふうに思います。  まず、時間をとってしまいますので少し整理をいたしてまいりましたが、私は、繊維政策に対して一体どういうふうに大臣は評価しておられるかということをちょっと聞きたいんです。  平成十年六月に繊維産業審議会が取りまとめた中間報告によれば、繊維法の構造改善事業に対する政策評価として、繊維産業に対する助成制度は、平成年度以降の四年間で全繊維事業者の約一%に利用されており、それなりの実績ではあると思いますけれども、繊維産業全体の産業構造改革のための手法としては波及効果が限定的であると述べております。  繊維産業の今日的な課題が広範に存在する中で、その政策手段の評価についてはさまざまな意見があると思いますが、通商産業大臣は今日までにとられてきた繊維法に基づく政策評価についてどう考えられますか。  言うならば、繊維法は、昭和三十一年六月に繊維工業設備臨時措置法、これは思い出しても登録制をやったわけです。昭和三十九年十月からは繊維工業設備等臨時措置法などをやりまして、昭和四十二年から四十九年まで特繊法が続けられてまいりました。昭和四十九年七月に新繊維法となって平成元年まで続いてまいりましたが、平成元年四月に新繊維法が改正されて繊工法と言われるようになったわけであります。平成六年七月には繊維産業構造改善臨時措置法となって今日に至っている。繊維という問題についていろんな措置を講じて、またそのときによっていろんな法律を改正してきたことは事実なんです。  しかし、現実には、通産省に昔は繊維局という局があった、それが今日では繊維課ですべてを賄うという時代になった。時代の流れでもありましょう。そういう意味においては、大変お互い努力してきたとはいっても、この繊維法に基づく政策、こういう繊維政策というものが、もちろん通商関係は私この間申し上げましたからそれは触れずに、内政的に見てもう一味この政策のやり方というか進め方というものがあるような感じも私はするんです。  しかし、きょうは時間がありません。率直に大臣の繊維政策についてのこれまでの評価を伺ってみたいというふうに思います。
  116. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本の繊維の歴史は大変古くて、富岡で国営の工場ができましたころからのいろんな話があるわけでございます。  それからもう一つは、やはり繊維に係る技術の進歩というのがございまして、人工的な繊維も出てまいりましたし、そのほか麻とか綿とか、そういう材料を直接繊維にするものもありますし、絹も日本では特産品であった時代もあります。また、日本が繊維が非常に得意になって先進国を追いかけていた時代もありますし、追いついた時代もあります。また、先進国と繊維摩擦が生じたということもありますし、現在では普通のものに関しては発展途上国の製品が非常に大きな競争力を持っているということもあります。また、日本の女性、男性を問わず、やはり衣料に対する考え方、例えば和服が戦前に比べまして着る方が少なくなったとか、あるいはファッションに対する物の考え方が変わってきたとか、さまざまな環境の変化が実はございます。  そういう中で、その都度国際的な取り決めも変わってまいりましたし、最終的には我々は今WTOの世界に入っております。  現行の繊維法ができましてから、確かに先生の御指摘のとおり、構造改善事業を実施した事業者の全繊維事業者に占める割合は必ずしも大きなものではないということは事実でございます。しかしながら、繊維法の構造改善事業は繊維事業者、中でも構造改善に積極的に取り組もうとする事業者を支援しているという性格を有しておりまして、繊維事業者の活力を引き出すという点で一定効果があったと考えております。  他方、繊維産業が直面する課題としては、情報化、環境・リサイクルへの対応等、業種横断的なものがふえております。したがって、今後は、繊維産業の実態も十分に踏まえた上、中小企業施策等の一般施策のきめ細かな活用による支援に移行することが効果的であると考えております。  それでも、先ほどの御質問の中にありましたように、繊維産業が上流から下流まで支えている雇用というのは二百万を超える、そういう点もやはり忘れてはいけないことだろうと私は思っておりますし、伝統文化を守る、そういう観点も政策遂行の一つの大きな視点ではないかと私は思っております。
  117. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 この繊維問題というのは、それぞれ産地によりましてもいろんな特徴があって、まさに画一的政策ということだけでは思うように進まない一面もあるのであります。  私は、この事業団法が成立されました暁、ぜひそういう意味でも産地の特色、またさらなる技術の革新、そしてその産地に何はおいても付加価値が恩恵として残るような、どうもこの繊維産業というのはばらばらでして、流通の最終のところでその付加価値が吸収されてしまう、産地が一番その悲哀を感じているということになって、何でもある意味ではそういうことが言えないわけではありませんが、しかし繊維においてはとりわけそんな感じがします。そういう意味で、新しい政策をいろいろやっていただいているようでありますけれども、その具体的な推進をぜひよろしくお願い申し上げたい。  時間がなくなってきて、私はきょうもう少しこの繊維問題のことを具体的に申し上げたかったのですが、期待を込めて申し上げて、以上で終わりにいたします。  もう一つは、経済の活性化のために、これは繊維産業にももちろんいろいろ通用すること、中小企業全体に通用することなので、設備問題についてちょっと私は意見を申し上げて、そして御意見を拝聴したいと思うんです。  私は、今日の日本の設備は、もう本当にゆゆしき事態に入っていると思います。  せんだっての経済企画庁長官の所信表明の中でも述べておられましたが、しかし若干角度を変えてちょっと質問をしてみたいと思います。  所信表明の中で通産大臣は、情報、自動車、住宅を中心とする投資促進税制の創設について述べられました。非常に結構だと思うんです。最近の設備投資の目的を日銀短観によって見ると、これまで最も高かった増産投資のウエートが低下して、かわって維持、補修、公害防止、高度技術先端産業設備などを目的とする投資が増産投資を上回りつつあるとされています。当然と言えると思うんです。この背景には、日本経済の低成長に伴い需要増加に対応した能力増強型設備投資の必要性が薄れてきたことが挙げられると思う。しかし、経済のグローバル化の進展などによって相対的に戦略的投資の重要性が増している中で、設備投資が全体として縮小傾向にあることは、二十一世紀に本格的な大競争時代を迎える我が国経済にとって大きな懸念材料でもあると思うんです。つい先週の政府月例報告の中にも、この中小企業設備投資意欲が非常に低下しておる、減速しておるというのが指摘されておりました。  平成八年の民間企業資本ストックは、発表では三百四十一兆円となっています。一説によるとその三分の一、百兆近くはもう陳腐化していると言われていますし、私もそんな感じがします。そういう意味では、この設備投資の今日の陳腐化の現状を考えると極めて重大な問題だと思うんですけれども大臣の御認識を一言で結構ですが伺っておきたい。
  118. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本はこういう不況を経験しておりますが、実は不況対策のほかに、今渡辺議員が言われましたような、設備過剰を解消するという一方で、やはり大変生産性の高い設備投資にも力を入れなければ二十一世紀の日本は明るくないと思っております。そういう意味では、繊維に限らずあらゆる分野で設備過剰をどう解消するのか、そして一方では生産性の高い設備投資日本全体として力を入れるということが必要であって、これこそまさに日本が再び国際競争力を十分に回復して、世界の中で経済の大きな分野を支える国としての役割を果たせることだろうと私は思っております。
  119. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 私、実はこのことを申し上げたいんです。設備投資に対する優遇措置を思い切ってやらないと、我々が今までやってきた過去二十年のいわば政策税制というような規模で奨励しても、この不況の中で、ましてや将来の見通しがなかなか出ない中で、特に中小企業は思い切った設備投資をなかなかやらないだろうと思うんです。  ある意味では、かつては中小企業が大企業よりも設備投資をしたんです。そういうことが景気対策あるいはまた日本経済の力を取り戻すのに非常に大事なことだというふうに考えるがゆえに、いよいよ予算も通ったわけですから、来年度に向けての景気対策一つとして大臣にぜひ今考えていただきたいと思うことは、今一言で申し上げた、思い切った設備投資に関する優遇措置をある意味ではむしろ補助金を出すぐらいの、業種によりますよ、よりますけれども、それぐらいのことをおやりになったらいかがかなというふうに思うんです。そうでないととても中小企業はなかなか設備投資意欲を持ってこない。貸し渋り対応の必要性もこれから少しずつ縮減するでありましょうから、開銀融資なども設備の更新の場合に限って超低利の融資制度などを考えられるようなことも一つではないか。  私は、大蔵省の金融主導の経済政策による景気回復だけではなくて、経済産業主導の政策税制を大胆に行った設備投資意欲を活発に向上させる施策をやることによって、景気対策一つとして、しかも、もう東南アジアにも今の日本設備投資の現状はおくれている。そういうことを危惧してあえて大臣に、ぜひ声を大にして閣内で思い切った設備投資に対する提言をおやりになっていただけたら非常によろしいのではないかと申し上げたいのでありますが、いかがですか。
  120. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) もう間もなく小渕総理が主宰されます産業競争力会議というのが発足をいたします。これは中小企業を含めた経済界の方々に御参加をいただき、そしてまた政府側からも小渕首相が議長をやられて閣僚も参加をするわけでございます。文字どおり、競争力会議というのは日本経済競争力を回復するためにやるわけでございまして、その中の一つの大事な項目というのはやはり設備投資を促すということでございます。  ただ、設備投資を促す前に、まず設備廃棄をいたします。そして生産性の高い設備を導入するということをある一定の時間をかけてやっていくわけでございます。ただ、かけ声だけではそういうことは起こりませんので、幾つかの例えば政策手段があるんだろうと思います。  一つは、この国会お願いをしております法人税の減税、これは企業の期待収益率を上げますから、それ自体は設備投資を促す一つの要因でございます。しかし、設備投資をしたときの税制、例えば加速償却を認めるとかそういうこともございますし、安い資金のお金を設備投資に関してどうやって供給できるのかという問題もございます。金融、税制、あわせましてそういうことをやらなければなりません。  一方では、設備を除却した場合の除却損に対する税の考え方、あるいは除却をしたときの金融のあり方、そういう万般のことを政策として考えていただけるだろうと思っておりますので、通産省としてはこの競争力会議において率直な提言をしてまいりたいと思っております。  ましてや、先生まさに御指摘のとおり、日本企業はもちろん投資もしておりますが、むしろ最近設備投資をしました東南アジア等が持っております設備の方がはるかに新しくて生産性が高いというようなことも報告されておりますので、二十一世紀の日本経済が本当に競争力を回復できるかどうかということが、二十一世紀の日本の社会を豊かにできるかどうかということの境目であるという認識で私はこの競争力会議に臨みたい、そのように思っております。
  121. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 時間が参りましたようですが、ぜひこの不況、金融の関係は大体一つの基盤ができ上がりました。あとはまさにこういう時期こそ通産省の出番なんです。  そういう意味では、今大臣が言われましたように、この会議において、総理の顔色や大蔵大臣の顔色や役所の顔色を見ないで、どうぞ与謝野通産大臣の本当に思い切った提言をしていただき、そしてその何とか競争力会議なんかも偉そうな人ばかり名前を並べているけれども、どうもそこが今までの自民党の悪い癖であって、本当に町の中の中小企業のあした手形が落ちるかどうかわからぬと七転八倒している人を委員に選んで生の声を聞かなきゃいけませんよ。あるいはまた、産地を代表する委員を選ぶとかそういうことを、本当に今までと同じパターンでは私はなかなか国民の理解と協力は得られない。ぜひ与謝野大臣の極めて見識の高い、しかもまた思い切った剛腕を振るっていただくことを期待しながら、質問を終わりたいと思います。
  122. 水野誠一

    ○水野誠一君 最後の質問者になりますと、大部分の問題はもう既に出尽くしておりまして、伺うポイントが大変限られてくるのですが、ともかく一部重複する質問については、多少違う視点から補強的に伺うということで御容赦を願いたいと思います。  まず、今回出ております二法のうち、中小企業総合事業団法に対する問題ということについては、特殊法人の統廃合を積極的に進めるべきだという視点から、私は大いにこれは歓迎をしたい。ただ、足し算だけの発想ではなくて、こういった統合が掛け算の効果を上げるような統合にしていただくということ、これは非常に重要なポイントだと思いますし、ましていろいろ同僚議員から言われている、二十一世紀において日本中小企業というものが本当の活力源にならなければいけない、こういう立場からも、ぜひこういった新しい事業団の役割というものを明確にしていただきたい、まずこれをお願いしておきたいと思います。  そこで、きょうは中小企業経営革新支援法案について幾つかお尋ねをしたいわけであります。  まず、この承認の問題、この承認を与えるのは行政庁だということになっております。これは知事または所管大臣ということでありますが、政令に従って地方支分部局に権限委任できるとされております。経営革新指針に書き込まれる事項というのは恐らく大まかなものになろうと思うんですが、これをどのようにブレークダウンしていくのか、余り細かい基準で縛っても逆に機能しにくいことが予想されるので、その辺はひとつバランスが必要になるのではないかと思うのであります。実は、中小企業近代化審議会の議事録、これを拝見しますと、個々の経営革新的な経営計画を行政庁の役人が書面で判断できるであろうかという疑問が指摘されております。  企業などから提出されますプランについて実際にだれが中身を分析評価するのか、そこには事業内容についての適切かつ公平な判断ができる人材なり仕組みが本当に存在するのか、この点に私は今の疑問が尽きるのではないかと思うのであります。  こういう問題意識の中で、従来の承認システムとの違いということにポイントを置いて、簡潔にお答えいただければと思います。
  123. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 今、委員の御指摘にございましたように、経営革新計画につきましては、国あるいは地方自治体、相手の中小企業者の状態によって振り分けてこの承認行為を行うわけでございます。特に、地方自治体がこの経営革新計画の承認を行うに当たりましては、事業の新規性あるいは経営相当程度の向上という点について、ある意味では難しい審査をせざるを得ないことになってくるわけでございます。したがいまして、法律三条にございます経営革新指針の中ではできるだけ具体的に定量的に、特にこの経営相当程度の向上については規定をいたしたいと考えております。今、大学の先生等にも入っていただいて勉強会も既に立ち上げておりますし、最終的には中政審で御意見を伺いながら決めてまいりたいと考えております。  また、もう一つのポイントでございます事業の新規性でございますが、これにつきましては、従来からも政府系金融機関、例えば中小企業金融公庫とか国民金融公庫で新規事業育成のための特別貸付制度とか、いろいろ運営をしてノウハウがございます。こういった政府関係機関の持っておる新規性判断ノウハウとか、あるいは外部の学究畑の方あるいは産業界の方、これは実際に利用可能性のある方々につきまして、アウトソーシングも含めてこういった点については審査体制を整備するようにしてまいりたいと考えております。  従来の新分野進出法あるいはその他自治体に計画について承認をお願いしているものよりも、より密なる対応が必要になってくるのではないかというように考えております。
  124. 水野誠一

    ○水野誠一君 今の問題に続いて、補助金の支給についてお尋ねしたいと思うんです。  通産省は昨今、ファクスとかインターネットを使って広く国民から意見を募集する、いわゆるパブリックコメントという制度を実施されている。これは私は大変評価するわけであります。  昨年八月に出されました中小企業近代化審議会の中間答申に対するパブリックコメントの結果というものを拝見したのでありますが、中にこういう意見がございました。つまり、中小企業支援のために自己負担を求めない一〇〇%補助金という手段を使うのは望ましくないのではないか、こういう意見でございます。  今回の法案に係る支援措置のメニューには、補助金支給というものが実際に存在をしているわけであります。経営革新計画の承認を受けた企業などに対する支援措置のメーンは低利子融資制度などになろうと思いますが、また補助金についての予算もさほど大きくない。これは直接の支援が十八億、それから中小企業総合事業団を通じてが三十億ということでありますから、さほどの額ではないんですが、補助金という性質上、それからまた逆に、その規模が小さければ小さいほど、より実質的、実際的あるいは効果的な投資判断が要求されてくると思うわけです。  そこで伺いたいのは、その補助金対象について、特に他の中小企業のモデルとなり得るような模範的なもの、こう説明されていますが、これは具体的にはどんなイメージで考えたらいいのか。創業間もない企業成長性のある事業を行う中小企業者という説明もあるわけでありますが、これも具体的にはどういう企業をイメージされているのか、伺えればと思います。
  125. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) まず最初に、パブリックコメントの件ですが、補助金制度について事業者の負担もある程度加味すべきであるという点につきましては、本法の対象になっております補助金十八億についても、それぞれ、二分の一、三分の一の事業者負担制度というのを入れてございます。  もう一点の、他の中小企業者のモデルになるような、模範となるようなそういった案件について補助金を交付するということでございますが、これ自身については、今現在具体的にケースが出てきているわけでございませんので、出てきた申請案件に応じて判断をしていくということになろうかと思います。  一つございますのは、新規性という判断からしますと、本邦初演ということは全く必要はないと思っております。ただ、ある程度業界の中でもうポピュラーになってしまっているような、そういった新規性についてはやはり対象にすべきではないと考えておりまして、定性的にはなりますが、今後同業種の方々がそれをフォローされるのにふさわしいような、そういったモデルになり得るケースについてケース・バイ・ケースで判断をしていきたいと思います。
  126. 水野誠一

    ○水野誠一君 先ほど畑委員からも同様の質問があったんですが、承認された計画の成果に対する評価の問題、これをもう少し補強的に伺いたいと思います。  経営革新計画が承認されて支援施策が講じられた企業などについて、その後の計画の実施状況経営状態に対する追跡調査がどの程度なされるのか、またその調査結果はどう生かされるのか、こういう点について簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  127. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 御指摘のように、法律の十五条に「調査、指導及び助言」という規定がございまして、承認権限を有する「行政庁は、」「その経営の向上の状況を把握するための調査を行うものとする。」ということで、ある意味で自治体を含めて義務づけがなされております。  これについては、具体的になされますのは、経営革新計画が例えば五年間程度のものであるとすれば、二年ないし三年後に実施されることになるわけでございまして、具体的な制度の仕組みについては今後詰めてまいりたいと思います。この承認件数というものを前提に考えますと、ある程度、できるだけ悉皆でフォローアップができるようなそういった仕組みにしたいと思っておりますし、それを受けまして、残りの計画期間の中においてどういった対応を図られたらいいか、そういった指導につきましても専門家によるアドバイス制度などについて整備をしていきたいと考えております。
  128. 水野誠一

    ○水野誠一君 今のお答えでも、追跡調査の重要性と、それから専門家のアドバイスを通じて施策の充実を図っていく、こういう趣旨のお答えだったと思うんです。私は、この条文を見て一つ問題だと思うのは、事後の調査を行うのは、企業などから提出された経営革新計画を初めに承認したのと同じ行政庁であるというふうに読めるんです。この点はいかがですか。
  129. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 十五条の調査ということを前提で考えますと、先生の御指摘のように経営革新計画を承認した行政庁がフォローアップを行うということになろうかと思います。
  130. 水野誠一

    ○水野誠一君 もしかそうだとしますと、承認を与えた同じところが後になって果たして客観的な評価ができるのか、こういう素朴な疑問が残るわけですし、その調査結果の積み上げを踏まえて施策全体の改善を加えようとすることの意味が薄れるんじゃないだろうか、こういった指摘についてはどういうふうにお答えになるか。
  131. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 私ども実際にこの条項を動かす場合には、例えば国で承認した案件あるいは都道府県で承認した案件それぞれについて、承認をした時点での報告もいただきますし、中間的な実施状況についての報告もいただくことにしております。  経営革新計画の場合には、ある程度客観性を持った指標といいますか、目標、ターゲットというのを書いていただくことにしておりますので、それとの関係で、例えば付加価値が一〇%伸びましたという数字を達成しておればこの中小企業者の方においては十分計画の趣旨を全うされたということになりますし、それが数%にとどまっておってなかなか残りの期間では達成できないという場合には、それにある程度焦点を絞った形でその後の対応についていろいろ相談を申し上げるチャンスが出てくると思います。その場合には、累次申し上げておりますような、アウトソーシングといいますか、外部のコンサルタントの方、診断士の方、あるいは専門家の方を活用するという道があり得ることだと考えております。
  132. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう少し伺いたいんですが、時間もなくなってまいりましたので、次に中小企業対策における政策評価についてお尋ねしたいと思います。  この政策評価ということはいろいろ議論されてきておりますし、我が国でもようやく政策評価という行政手法を導入する動きが広がってきている。中央省庁等改革基本法では、政策評価機能の充実強化ということがうたわれておりますし、建設省などでは既に公共事業などの再評価結果を公表しているというようなこと、これは大変評価できることだと思います。  もちろん、多くの政策については公共事業とは違って費用効果を定量化してとらえるのが難しい、こういう面もあるわけでありますが、合理的な政策判断をするためには政策のコストや成果を客観的に示すことが重要なのは論をまたないところでございます。  アメリカではどうなのかということでちょっと見てまいりますと、米国では政策効果を評価し、その評価を予算編成にフィードバックして効率的、効果的な運営を行うための努力が今までもかなり積み重ねられてきております。現在では、九三年に成立したGPRA、これはガバメント・パフォーマンス・アンド・リザルト・アクトという法律だそうですが、この制度によって全連邦行政機関を対象に達成されるべき業績目標を客観的かつ定量的かつ測定可能な形式で定めた計画の立案並びに報告の提出が義務づけられている、こういうことのようであります。  ただ、このGPRAというのも万全ではございませんし、また日米のさまざまな環境の違いといったことを差し引いて見なければいけないと思いますが、政府活動全般についてそのコストや成果を国民に明確に示そうという姿勢、これは我々は学ばなければいけないのではないかと思うわけです。  ただし、中小企業政策はその成果を定量的に把握することが特に難しい分野かもしれない、そういう気もいたします。しかし、例えば今回の法律に基づく施策の将来の点検や見直しに当たって、社会経済情勢の変化の中でも妥当性があるのか、あるいは目標の達成にどれだけ貢献しているのかなど、効率性、有効性の観点から客観的に分析、総合評価して次なる施策に反映させることは非常に重要だと思うところでございます。  そういう視点から、中小企業庁としての政策評価に関する取り組み、これはアメリカでのGPRAというような制度もあるわけでありますが、その辺も踏まえてぜひお答えをいただければと思います。
  133. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 中小企業政策全体の見直しを今やっておるわけですが、その中で政策の評価をどうやって行うのか、その意気込みということで御質問をいただいているわけでございます。  本法案、経営革新法案の立案過程でも、実を言いますと、昨年の春以来各種のアンケート等を行いましたし、実績の評価もやりまして、その結果、業種ぐるみの制度では現下の経営課題に対応できないということで今回の法案を立案させていただいたわけであります。  より一般論で申し上げまして、中小企業政策についての評価体制いかんということでございますが、これは残念ながら、現在、具体的に定年的、GPRA的なレビューというのは毎年ベースではやってございません。ただ、今回いろんな施策の見直しをやる過程におきまして、本法案もそうですが、その施策の中間段階、あるいは実際にある程度効果をまとめて評価のできる段階にはきちっとした評価を行い、それをできるだけ経済指標化し公表して、かつ世の中の評価を受けるというような仕組みの必要性を痛感しておりますので、今後の見直しの段階においていろいろ議論を進めていきたいと思います。
  134. 水野誠一

    ○水野誠一君 ぜひその点については御留意いただきたいと思います。  最後に、新たな中小企業政策の方向性ということで、少しマクロ的視点から伺いたいと思うのであります。  昨今、二十兆円の信用保証枠をさらに三十兆に拡大するというような話も出ております。同制度の創設で中小企業資金繰りが少しでも楽になる、ことしに入ってから倒産件数が減ってきているということなど、効果が実際出てきているということで評価する声も高いとは思っております。しかし、競争力のない中小企業まで延命させている面もあり、景気の本格回復に必要な構造調整をおくらせているんではないかというような批判的な声ももう一方にあることも事実であります。  また、逆に、衰退しても日本に存在させなければならない産業もある。これはよく比較される話でありますが、例えば韓国経済あるいは東南アジア経済と比較して、この日本中小企業の層の厚さというのが日本産業経済というものを支えている、こういう面は確かに重要であります。また、非常に高度なハイテク産業だけではなくて、日本独自の技術、技能を持っている中小企業、こういうものを今すぐ必要ないからといって倒産させてしまうようなことは絶対に避けなければいけない。こういう多方面の視点からぜひこの中小企業対策というものは考えていっていただきたいというふうに思います。  ただ、苦しいところに金を出すという単純な発想からはこの議論に対する回答というのはなかなか出てこない、またそういう単純な発想はすべきではない。経済活動のグローバル化が進む中で真の競争力強化を目指さなければならない、まさにその構造改革をしなければならない中小企業にとって、今後通産省がどういう施策の方向を示すかということは大変重要な意味を持つと思いますし、競争条件の整備やベンチャー支援、金融や雇用にかかわる措置等々、期待される範囲は非常に幅広いと思っております。  近年の環境変化を受けて、これからの中小企業政策の方向性をどういうふうにお考えになっておるか、また今回の経営革新支援法はその大きなビジョンの中でどのような位置づけになるのか、その点を大臣に伺えればと思います。
  135. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 昨年我々が当面した問題というのは、一つは信用収縮の問題、それから大変大きな需給ギャップがあって、場合によっては中小企業を含めた日本経済全体がデフレスパイラルに落ちていくという心配、また一方では、我々はわかっておりましたが、中小企業を含めた日本経済の構造改革もやらなければならないということがございました。この三つのことを一遍に解決するということはなかなか難しかったわけでございますので、信用収縮を片づけ、そして有効需要をふやすためのいろんな政策を行ってということで、いよいよ第三段階の構造改革に取り組むわけでございます。  構造改革と申しますのは、やはり二十一世紀に向けた将来の発展基盤の整備のために必要なことでございまして、中小企業においても経済のダイナミズムの源泉として、また雇用を維持、拡大する担い手としての役割がますます高まっていると私は考えております。このため、消費者ニーズの変化、企業間関係の変化等、中小企業を取り巻く環境変化を踏まえまして、多様で活力ある中小企業の育成、発展を図ることが必要だと、このように考えているわけでございます。  中小企業政策全体の見直しについては、この観点を踏まえまして、昨年七月から新たな中小企業政策の方向性について検討を深めているところでございますけれども、今後その結果を踏まえ、中小企業政策審議会で議論を行い、所要の対応を行ってまいりたいと、そのように考えております。
  136. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。
  137. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案の討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  138. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、日本共産党を代表いたしまして、中小企業総合事業団法案に反対の討論を行います。  反対理由の第一は、本法案が、中小企業事業団中小企業信用保険公庫を統合するとともに、繊維産業構造改善臨時措置法の廃止に伴い、繊維産業構造改善事業協会を解散し、その業務を暫定的に移管するという三重の統廃合であるという問題です。これは、政府の行政改革プログラムに基づく特殊法人の整理合理化、また昨年成立した中央省庁等改革基本法で示された経済産業省の編成方針である個別産業の振興政策から撤退、縮小を具体化したものであり、事実上、個別の繊維政策の打ち切り、中小企業政策の後退と言わざるを得ません。  反対理由の第二は、繊維対策の一般施策への解消は、中小繊維事業者への対策を弱めることになるからです。今、繊維産地や中小繊維業者は、戦後最悪の不況に加えて、外国繊維製品の輸入急増や大企業による海外製品の逆輸入などで壊滅的な打撃を受けています。繊維産業構造改善臨時措置法は、たとえ不十分ではあっても、中小繊維業者に活用できる対策を定めたものであり、このようなときにこれらの施策を打ち切ることは、深刻な経営危機をさらに加速させることになりかねません。今必要なことは、繊維対策の拡大、充実であります。  第三の理由は、中小企業事業団中小企業信用保険公庫の統合は数合わせにすぎず、統合すべき政策的、合理的理由がないことです。中小企業信用保険公庫は、信用力に乏しい中小企業に対する信用補完制度として中小企業金融の中心的役割を担うものです。むしろ独立した機関で存続させ、地域の信用保証協会と協力して、業務を拡大、充実させることこそ求められています。  以上で私の反対討論を終わります。
  139. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより両案の採決に入ります。  まず、中小企業経営革新支援法案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  140. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。
  141. 簗瀬進

    ○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました中小企業経営革新支援法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     中小企業経営革新支援法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 経営革新指針における「新たな事業活動」及び「経営相当程度の向上を図る」とする経営革新の内容の策定に当たっては、幅広い中小企業経営革新計画に基づく支援が受けられるように配慮すること。  二 経営基盤強化計画の特定業種の指定及び計画の承認については、経済的環境の著しい変化による影響を受けた対象中小企業者経営実態に即応できるよう迅速かつ適切に対応すること。  三 計画承認申請の事務手続は、利用者の利便性を考慮して、それに必要な書類、様式等において簡素化に努めること。    また、中小企業者等が計画に基づく各種支援策を十分に活用できるように、周知徹底を図るとともに、今後とも施策の充実に努めること。  四 中小企業における信用保証の重要性にかんがみ、信用保証制度のより一層の充実に努めること。特に、中小企業金融安定化特別保証制度においては、保証枠の動向に即した時宜にかなった適切な対応措置をとること。    また、金融機関による不当な旧債振替等が行われないように引き続き監視し、こうした事態が発生した際には厳正に対処すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  142. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  143. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、中小企業総合事業団法案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  144. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  梶原敬義君から発言を求められておりますので、これを許します。梶原敬義君。
  145. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は、ただいま可決されました中小企業総合事業団法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     中小企業総合事業団法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 三法人の統合による新事業団設立の趣旨にかんがみ、新事業団における業務の整理合理化並びに人事交流及び組織体制の整備等により、中小企業に対する総合的かつ効率的な施策が迅速に実施できるよう努めること。  二 統合に伴う職員の処遇については、不利益が生じないよう特段に配慮すること。  三 新事業団の設立後、三年を経過した時期に、運営状況を勘案し、事業団の業務について検討を加え、その結果に基づいて適当な措置を講ずること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  146. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいま梶原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  147. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 多数と認めます。よって、梶原君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの両附帯決議に対し、与謝野通商産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。与謝野通商産業大臣
  148. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、両法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。
  149. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  151. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣
  152. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 特許法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  国際的な大競争時代において、我が国の経済産業の活性化を図るためには、創造的技術開発を促進することが重要であります。このため、技術開発の成果である知的財産の法的保護を迅速かつ十分に付与することにより、その経済的価値を国際水準にまで高めることが必要であります。また、企業の活発な国際展開に対応し、商標の国際的保護を図るための制度を構築することが求められております。  本法律案は、かかる情勢を踏まえ、特許法その他の工業所有権関係法律について、権利の強く早い保護、標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書の実施、特許料の引き下げ等を図るために所要の改正を行うものであります。  なお、本件につきましては、昨年十二月に工業所有権審議会より特許法等の改正に関する答申が提出されており、本法律案はこの答申を踏まえた内容となっております。  次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、特許権の早期取得を図るため、審査請求期間を現行の七年から三年に短縮することであります。  第二は、特許権等の侵害に対する救済措置を拡充することであります。具体的には、文書提出命令等の拡充による侵害の立証の容易化、鑑定の手続の整備による損害の計算の容易化や、裁判所の認定による実質的規模の賠償額の実現を図るものであります。  第三は、商標の国際的保護を図るため、マドリッド協定の議定書を実施するための手続を整備することであります。具体的には、我が国の商標登録出願等に基づく国際登録出願や、国際登録に基づく我が国での保護を求める商標登録出願に係る手続を新たに設けることであります。  第四は、出願人や権利者の負担の軽減を図るため、特許料、審査請求料を引き下げることであります。具体的には、基本発明重視の観点に立脚した特許料等の引き下げを図ること、及び特許料の納付を猶予し、または減免する特例措置の対象に資力に乏しい法人を加えることであります。  第五は、その他権利の迅速かつ十分な保護、工業所有権制度の国際的調和等を図るために必要な事項について、所要の改正を行うものであります。  以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  153. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会