○佐藤道夫君 私からはODAの重債務国に対する不良債権放棄の問題についてお伺いしたいと思います。
この前のケルン・サミットでODAの重債務国、最貧困国に対する不良債権の放棄ということの申し合わせがなされたということであります。
これは当然
外務大臣も御案内と思いますけれ
ども、旧約聖書でヨベルの年というのがありまして、来年二〇〇〇年がこれに当たる。五十年ごとにこの年がめぐりめぐってきまして、そして不良債権というのか、借金を棒引きにする、こういうことが旧約聖書に書かれておるんだそうですよ。それを守って、今回もキリスト教国がもう最貧国に対する不良債権は放棄しようということを強硬に主張して、ケルン・サミットで申し合わせがなされたんだ、こういうふうなことのようであります。
私、旧約聖書を読んだことがないので、多分小渕総理は詳しく、読書好きの方ですから読まれておって、キリスト教国のそういう申し入れに従ったんだろうと。あるいはまたいつからか小渕総理がクリスチャンになっちゃったのかなと、こういう気もしないわけじゃないんですけれ
ども、いずれにしろ、自分たちの信条、信仰を異教徒に押しつけるというのは、これはクリスチャンの独特な思い上がりも甚だしいわけであります。異教徒は異教徒の考えがあるという、そういうことがどうもなかなか彼らにはないようでありまして、そのヨベルの年ということで、一つのきっかけになって債権放棄ということにまで至ったんだと言われております。事の真偽はわかりませんけれ
ども、大いにあり得る話だろうと私は思っております。
それと大変いぶかしいことは、ODAの不良債権の総額、G7の間では二百三億ドルと、こう言われておりまして、そのうちの四四%は、何とキリスト教国でもない異教徒である我々
日本が負担しておるんですね、四四%は。そして、しきりに放棄しろ、放棄しましょうよと言った例えばイギリスやカナダは、ほとんどゼロに近い。自分たちは何の負担もこうむらずして、やい、
日本人め、放棄しろと、来年はヨベルの年だと。こんなばかげたことがあるわけがないと私は思うんです。
いずれにしろ、今、
日本国は国の内外を問わずして不良債権の放棄が大変はやっておりまして、銀行は銀行で勝手にゼネコンに対する不良債権を放棄しますわと、こう言います。これ、頭取のお金ならば、銀行経営者の金ならば勝手に放棄しようと、それはその人の勝手なんですけれ
どもね。いずれにしろ、これは株主の金、預金者の金、公的資金も投入されているとすればもう国民全体の金と、こう言ってもいい。それを簡単に放棄するなんて、そんなことは許されるわけがないのでありまして、
外務大臣も法律家ですから、御案内のとおり、理由もなしにそういうことをすればこれは立派に背任罪ですから、現に長銀あるいはまた日債銀でそういう問題も起きておりまして、検察は厳重に調べろということも言われておりまして、いずれそうなるんだろうと私は思っております。
これは国の債権だって同じことなんで、総理が勝手にそんなもの放棄しますよと言うことは許されないわけでありまして、総理だって背任罪の適用があるんじゃないかと、私はこう考えるわけであります。きちっと考えに考え抜いて、これはもうどうしようもない、もう回収不可能なんだと、だれが考えてもそうなんですよということならば許容されないわけでもないのかもしれませんけれ
ども。
それじゃお伺いしたいんですが、どうしてこんな事態になったのか。その間一体
外務省それからODA、それからもう一つその下部機関であるOECFという機関がありますね。その担当者は一体何をしていたんだと、こういぶかしい気持ちが起きます。
一番問題なのは、今の
日本の不良債権、この最貧国に対する不良債権は総計一兆一千億円と。そのうち何と、二千七百億円がミャンマーだっていうんですね。何であんな国にそんな膨大な金をつぎ込んだのかと。二千七百億、不良債権の額が。つぎ込んだ金はもっと大きいのかどうか知りませんけれ
ども、ミャンマーという国は
日本人になかなかなじみがたい国でしょう。ミャンマーまで観光旅行に行こうなんていう人はちょっと余り聞いたこともない。何であんな国に一生懸命そう頑張ったのか。全体の三分の一ぐらいがあの国につぎ込まれているんですよね。しかも、軍事独裁
政権が長い間続いてきたと。とてもじゃないけれ
ども援助するような対象じゃなかったんだろうと私は思うんですけれ
ども、今でもそういうことなんで。
一体これは、金をつぎ込む際に、借款だから返してもらうぞという気は恐らくなかったんだろうと思うんですよ。借款、それは形式であって返さなくてもいいんだよという思いがあるから、どんどんそういう金をつぎ込んでいく。借りた方も、こんなものは借りたというのは形だけであって、返さなくてもいいんだぞというような気持ちがあるからこそ、こういうことがずっと続いてきているんだろうと思うんですよ。これ、貸した方はそれはまた犯罪、背任罪なんですね。返済の見込みがないのにそんなものを貸し付ける。自分の金なら勝手なんですけれ
ども、国民の税金を貸し付ける、これは立派な背任罪だろうと私は思います。
それから、中途段階で一体どういうことになっているのか、厳重に調査団を派遣して、この金が目的のために使われているかどうか、ああいう国ですからうっかりしていると将軍とか独裁者とか、そういう連中の懐にひょっと入ってしまう可能性が非常に高い。恐らくそうだろうと私は思うんですよ。まともに使われている金はまず余りないんじゃないかと、こういうふうにも思っておりますけれ
どもね。
それから
最後に、もう一つはこれまた大事なことですけれ
ども、そう簡単に私、不良債権の放棄なんかしてもらいたくないと思うんですよ。やっぱりそれぞれの国にきちっとした調査団を派遣する、これはもう
外務省じゃだめですよ。今までのように責任を持ったやり方しないわけですから。
専門家の公正な第三者で調査団を構成しまして、そういう人たちがきちっとミャンマーとかその他の国々に行きまして、一体どうしてこういうことになったのかと。その間の
日本政府の指揮監督はどうなっていたのかと。
それから、今回債権放棄しますよという場合に、本当にどうしようもないのか。取り立てを続けたらミャンマーという国はもうつぶれてしまうと。どうしようもありませんと。そこまで追い込まれておりまするということを確認した上での債権放棄なのかどうなのか。少しく責任ある行政ということは私、当然だろうと思うんです、国民の大切な税金を動かしているわけですから。そう簡単に貸し付けるわ、返さなくてもいいわと。そのうち、何だ、ああそんなに大変かと、じゃ、もうしようがない、放棄しようやと。諸外国がみんな放棄しているから我々も放棄しようやと。そう簡単にはいかないのであります、
日本は法治国家でありますからね。
そこで、時間が大体終わりになったようでありますけれ
ども、なぜミャンマーに、一つの例ですけれ
ども、二千七百億円もの不良債権ができたのか、簡単に御説明してください。