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1999-06-08 第145回国会 参議院 外交・防衛委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月八日(火曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員の異動  六月三日     辞任         補欠選任      山崎  力君     高橋紀世子君  六月七日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     岡崎トミ子君  六月八日     辞任         補欠選任      岡崎トミ子君     木俣 佳丈君      高橋紀世子君     山崎  力君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         河本 英典君     理 事                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 柳田  稔君                 高野 博師君                 小泉 親司君     委 員                 岩崎 純三君                 亀谷 博昭君                 佐々木知子君                 村上 正邦君                 森山  裕君                 木俣 佳丈君                 齋藤  勁君                 吉田 之久君                 続  訓弘君                 立木  洋君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 山崎  力君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外務大臣     高村 正彦君    政府委員        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        法務省民事局長  細川  清君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君        外務大臣官房審        議官       小松 一郎君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省条約局長  東郷 和彦君        海上保安庁長官  楠木 行雄君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷  つける取扱い又は刑罰に関する条約締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付  ) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国大韓民国との間の  条約締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○軽水炉プロジェクト実施のための資金供与に  関する日本国政府朝鮮半島エネルギー開発機  構との間の協定の締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 河本英典

    委員長河本英典君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国大韓民国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上二件を便宜一括して議題といたします。  両件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 佐々木知子

    佐々木知子君 まず、いわゆる拷問等禁止条約について二、三お伺いさせていただきまして、その後にコソボ情勢について幾つかお伺いさせていただきたいと存じます。  まず、拷問等禁止条約でございますけれども、これは公務員等による拷問防止するため各締約国がこれを刑法上の犯罪とするとともに裁判権を設定すること、そのような犯罪を引き渡し犯罪とすること等について規定するものであって、そういったまことに人道的な内容条約我が国締結することにつきましては、それ自体は党派とは無関係に、または個人の主義主張とも無関係におよそ異論はないだろうと考えております。また、技術的な問題としても、新たな国内法立法措置もまた予算措置も必要でなく、およそ全く問題ない条約と考えております。  それで、その点外務大臣に少しお伺いしたいのですけれども、これは八四年国連総会において全会一致で採択されて以降、我が国においては実に十五年後のこのたびにやっと締結の運びになったわけでございますが、問題がないにもかかわらず、これだけ年月を要したのに何か理由というものはございますでしょうか。
  4. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 我が国は、人権関係条約重要性認識し、各条約の目的、意義、内容締結必要性国内法体制との整合性等を十分に勘案の上、基本的な人権関係条約を順次締結し、その誠実な実施に努めてきたところでございます。  拷問等禁止条約についても同様の観点から、関係省庁とも協議しつつ鋭意検討してまいりましたが、今般、検討が終了し国会承認をお願いすることになった次第でございます。
  5. 佐々木知子

    佐々木知子君 私は、平成五年から八年にかけまして国連アジア極東犯罪防止研修所というところで教官をしておりました。これはODA予算を使いまして、主にアジア、アフリカ、ラテンアメリカのいわゆる発展途上国刑事司法に携わる実務家を招きまして研修実施しているところなのでございますけれども、彼らに、特に発展途上国警察官に言わせますと、拷問が日常的に行われていると。パキスタン警察官がおもしろいことを言っておりました。観光客が来て、この仏像はいつできたのかと聞くと、わからないけれども、仏像警察に連れていけばきっと白状するのではないかということまで言われているぐらい、警察官みずからがそのように言っておりました。  パキスタンに限らず、どこでも警察官というのは政治家あるいはその地方の有力者と結託いたしましてすごく甘い汁を吸う。警察ばかりか軍隊もそうですけれども、力を持たない民衆に対する拷問が日常的に行われているというのが一般的な多分認識だろうというふうに思われるわけであります。我が国におきましても、今は結構偉そうなことを言えるかもわかりませんけれども、戦前は治安維持法もあって特高による拷問が行われたというのも事実でございます。  日本国憲法におきましては、三十一条から四十条までの実に十条を刑事手続保障のために割くという世界的にも余り例のない憲法をつくったわけでございます。その三十六条は、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」という規定になっておるのは周知のことでございます。その成果がありまして、幸い戦後においては拷問は非常にまれというふうに考えられるようになりまして、この面では治安のよさとともに世界先進国として誇れるのではないかと考えております。  我が国のそういうノウハウを、拷問のために民衆が苦しんでいる国々、殊に発展途上国のために役立てられればと思うわけですが、これまで我が国は、その面におきましてどのような貢献をしてきたか、あるいはしてこなかったのか、またはこの条約締結きっかけとして今後どのような貢献をしていこうと政府としてはお考えになっておられるのか、理念的なことで結構ですから、外務大臣にお伺いしたいと存じます。
  6. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 実は昨年の一月だったと思いますが、国連人権高等弁務官ロビンソン女史日本に来られたときに、私はまだ政務次官でありましたが、お会いしてお話をしたわけであります。  そのとき、私はまさに日本拷問というのは憲法でもきっちり禁止されていて、そして刑罰法規もきっちり整備されている、全然ないとは言わないけれども、公務員による拷問というのはもうほとんどないんですよ、こういうことを申し上げました。  それに対して、ロビンソン女史がおっしゃったのは、日本拷問がほとんど行われていないということはよく知っていると。よく知っているが、やはりこういう条約をきっちり締結して、そしてその上で、日本国際社会に対してそういう拷問というようなことがあってはならないことだということを率先して働きかけてほしいと。それを働きかける上においても、こういうものをきっちり締結していることが必要なんだ、こういうお話がありました。  私は、それはなるほどもっともだ、こう思いまして、いろいろ私なりに政務次官のときから、外務大臣になってからも含めて、事務方にこれは急いだ方がいいよということを言ってやってきたわけでありますが、具体的に今までどういうことをやってきたかということについては政府委員から答えさせたいと思いますが、できるだけ日本としてもそういう面でもリーダーシップを発揮していきたい、こういうふうに思っております。
  7. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 具体的に、日本といたしましても拷問禁止を含みます人権の問題が非常に国際社会で重要な問題であるということでございまして、開発途上国との対話人権シンポジウムの開催、それからもちろん当然でございますけれども、国連人権委員会におきます議論等を通じまして、今、大臣から御答弁ございましたような人権状況改善ということを促してきているわけでございます。  なお、特にODA分野で、ODA大綱にも民主化の促進と基本的人権及び自由の保障状況十分注意を払うということがうたってございます。その趣旨に沿いまして、ある場合には状況改善要求を申し入れたり、ある場合には援助停止なども行っているわけでございますけれども、促進する方といたしましては、今御指摘がございましたアジア途上国、特にアジアでございますけれども、国連アジア極東犯罪防止研修所における研修でございますとか、あるいは民主的発展のためのパートナーシップ、PDDと言っておりますけれども、そういうようなことで司法制度の方に携わっておられる方々、その分野を中心に研修その他のODA支援を行っております。  それから、国連拷問被害者のための国連自発的基金というのがございますが、これは各国、各地での拷問被害者の方の治療とかリハビリのための援助を行っている国連の機関でございますので、そこに日本としても近年拠金して協力をしてきております。
  8. 佐々木知子

    佐々木知子君 私が勤めていた国連アジア極東犯罪防止研修所、それから今言われましたように警察もさまざまな研修実施しております。  それから、これは非常に技術的な貢献になると思いますけれども、我が国は、科学的捜査の手法、例えば指紋捜査、最近はDNA鑑定の時代に入りましたけれども、世界トップレベルにあると言われております。それを発展途上国に教授すれば、間違った捜査、無辜の者が捕まってくる、拷問というのも間接的にではあってもかなりの部分防げるのではないかというふうにも考えておりますので、こういった意味でも日本貢献ができる分野というのがあると確信しておりますので、ぜひその分野でも努力していただきたいと存じます。  次に、各国はそれぞれの刑罰権に基づきましてさまざまな刑罰実施しているわけですけれども、それ自体拷問ではなく、他の残虐な非人道的な、または品位を傷つける取り扱いまたは刑罰としてとらえられていることは当然承知しております。  これにつきましては、まさに各国主権というものが絡んでくるところで非常に難しいかとは思いますけれども、数年前に、皆さんよく御存じのように、シンガポールでアメリカ人未成年者が自動車を傷つけたということでむち打ち刑だったかつえ打ち刑だったか、そういう体罰を言い渡されたということで、アメリカやいろんな国が随分直訴をしたというような事件もございましたし、さかのぼって、マレーシアでオーストラリアの青年二人が薬物を輸入して、マレーシアは非常に薬物に対して厳しい国ですので、ヘロイン、コカインに関しましては十五グラム以上所持していればもう文句なくみんな死刑だというような国でございますので、そのときには各国の首脳が随分直訴いたしましたけれども、マレーシア自分国内法を忠実に実行いたしまして死刑にしたというような経緯もございます。  この条約締結きっかけに、今申しましたように、各国主権が絡むところでありまして非常に難しい問題だと思いますけれども、残虐な非人道的な刑罰というのを実施されている国も実際たくさんあるということも事実でございますし、何らかの働きかけをするつもりであるのかどうかということにつきまして、政府の御見解をお聞きしたいと存じます。
  9. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) まさに拷問につきましては条約上明確に定義がございますけれども、これは条約締結会議のときに関係国の間で共通認識があったわけでございますけれども、今御指摘の非人道的な取り扱い等については、どのような行為がそれに該当するかということにつきまして各国共通認識がなかったといいますか、まだかなり幅があったということでございまして、したがって明確な定義条項がこの条約の中にはないのでございます。  私どもが考えておりますのは、この条約に基づきまして各国自分の国の状況について報告をすることになっておりますので、その報告委員会の方が審査してまいります。そういうような過程を通じて非人道的な取り扱いの具体的な内容について国際社会でだんだんと共通認識ができてくるんじゃないかなという感じはいたしております。  先ほど申し上げましたように、国連の場あるいは人権委員会等の場でいろいろ議論の中、あるいは二国間の人権対話等の場を通じて、こういった共通認識の醸成に寄与していけるということを考えております。
  10. 佐々木知子

    佐々木知子君 時間もございませんので、コソボ紛争につきまして、二点ほどお伺いしたいと存じます。  報道で言われておりますが、七日、ボンにてG8緊急外相会議が開催されまして協議が行われましたけれども、結局、同日の会合では前進はあったものの決議案を取りまとめるには至らず、協議は八日に持ち越されることになったというふうに存じておりますけれども、現在のところの情勢というんでしょうか、見込みというのでしょうか、どのような問題点があるのかということについて、お話し願えればと存じます。
  11. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 三日、ミロシェビッチ大統領が、チェルノムイルジン・ロシア特使アハティサーリ・フィンランド大統領が提示した和平案を受け入れたことはコソボ問題の政治解決へ向けての重要な一歩であったと言えると思います。現在、ユーゴ軍治安部隊の撤退のためのNATOとユーゴ協議は残念ながら中断されており、今後の展開は必ずしも楽観視できない状況にあります。我が国といたしましては、このことが最終的政治解決へ向けての流れを停滞させないことを強く望むものでございます。  現在の政治解決へ向けた動きを確固たるものとし、最終的な政治解決を実現するためには、G8として国連安保理決議案を早急に取りまとめることが重要でございます。このような観点から、昨七日、ボンにおいて開催されたコソボに関するG8緊急外相会合では国連安保理決議案につき真剣な議論が行われ、決議案を取りまとめるには至らなかったものの、進展があったものと承知しております。本日も引き続き議論を行う予定と承知しており、決議案が早急に取りまとめられることを強く望むものでございます。  九日及び十日にケルンで開催されるG8外相会合においてもこの問題は重要な議題として議論される予定のところ、我が国としても積極的に貢献してまいる所存でございます。  ロシアイワノフ外相自分の一存では決められないところがあるということで、ロシア本国の訓令を待って、また日本時間のきょうの夕方から話し合いに入る、こう承知をしておりますが、すべてまとまることを心から願っているわけでありますし、日本からも私の代理として久米大使ほか出席しておりますので、それなりのお手伝いができる、こう思っております。
  12. 佐々木知子

    佐々木知子君 五月末から六月にかけまして自民党、自由党の調査団コソボ難民支援策検討のために現地調査実施していると承知しております。  その結果を踏まえまして、政府としては既に二億ドルの拠出を言明しているところでございますけれども、いかなる支援が必要と考えておられるのか。できるだけ早い段階で和平が成立することを願わない者はおりませんけれども、たとえ和平が成立いたしましても、難民救済国土復興、また紛争再発防止などもろもろの懸案事項が残っておりまして、我が国支援が今後も期待されていると考えられます。これに対して政府がどのように取り組む所存なのか、お伺いしたいと存じます。  報道の非常に新しいところで、例えばフランス大統領日本支援策に対して、日本の連帯を示すものとして心理的なインパクトがあり、欧州で高い評価を得ていると表明しているというありがたい報道もございましたし、それから台湾李登輝総統が一部の難民には台湾職業教育実施するというようなことも発表しているというふうに新しい報道では承知しておりますけれども、そういうことも含めまして政府の御見解をお伺いしたいと存じます。
  13. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 政府といたしましては、既に難民支援周辺国への支援和平達成後のコソボ復興及び難民帰還支援から成る総額約二億ドルの支援を行うことを決定したところでありますが、今、議員もお触れになった、与党現地調査団からいただいた提言をさらなる支援策検討のために役立てていきたい、こう考えているわけでございます。  この調査団によって提言されている我が国の顔が見える支援実施についてでありますが、今後とも努力していきたいと考えております。  和平合意が実現した後のコソボ復興支援及び難民支援は、今後国際社会が取り組むべき重要な課題であると考えております。我が国としては、コソボ復興難民帰還支援のため積極的に貢献していく方針であり、既に申し上げました約二億ドルのうち一億ドルをこの分野のために拠出することとしております。さらなる貢献については今後の状況を踏まえて検討してまいりたいと考えているわけであります。  紛争再発防止につきましては、ユーゴ側が受け入れを表明した和平案についても、効果的な国際的文民及び安全保障プレゼンスコソボに展開することとされています。我が国としては、民生面での和平履行のための人的貢献等検討していきたいと考えております。
  14. 佐々木知子

    佐々木知子君 ありがとうございました。
  15. 柳田稔

    柳田稔君 現在、ユーゴコソボの問題についてG8が行われているという報道がありますけれども、なぜ外務大臣ここに座っていらっしゃるんですか。
  16. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) きのうも大切な参議院の本会議並びに外交防衛委員会がありまして、これに出るためもあったわけでありますが、それと同時に我が方の予定もいろいろあったのと、六日に独外務省から六日開催できなかった本外相会合を七日に開催したい旨の通報が行われましたが、その時点では、これまでのロシア等の態度にかんがみれば必ずしもこの会合が実現するかどうか明らかになっていなかった。欧州までの飛行時間、フライトの便からしても、その時点で私が出席することは事実上不可能であった。外相会合には私の代理として久米独大使飯村欧亜局審議官が出席しているわけであります。今、国会等でも副大臣とかいろいろなことを進められていて、大きな改革が進められると、私がこういうときには少しドイツに腰を据えていられるというような状況ができるかもしれませんが、今の状況ではなかなか難しかったということもあります。
  17. 柳田稔

    柳田稔君 今、大臣の御答弁では到底私自身は納得できないと思うんです。このコソボ問題も含めてですけれども、サミットが行われるわけです、この週末ですか。このサミット内容について外相が集まっていろんな協議をなさるわけでしょう。そして、月半ばにサミットがある。そのことを念頭に置いたときに、日本国益です、参議院のことを先ほど大臣おっしゃいましたけれども、日本国益を考えたらどうすべきだったのか。私は行くべきではなかったのかと。と申しますのは、G8のメンバーはどことどこの国なんですか。
  18. 西村六善

    政府委員西村六善君) G8のメンバーは、米国、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ日本、カナダそれからロシアでございます。
  19. 柳田稔

    柳田稔君 今回のコソボに関係している国は八つのうちの六つですよね。密接に関係していますね。そして、自分たち国益があるからこのコソボ問題については相当真剣に取り組んでいる。その解決策をどうするかということで緊急に外相会議を招集した。出席しなかったのは日本だけだ。問題がこのコソボだけに関係するのだったら少しは迷うかもしれませんけれども、いずれにしてもサミットが大きなテーマとしてあるわけです、近い将来に。その中で日本が果たさなきゃならない役割の大きな部分があります、債権の放棄とかいろんな問題が出てくると思うんですけれども。そういう協議もそのサミットでするわけです。  としたときに、八カ国のうちの六カ国が自分たちの国の大変な事態だということで本当に一生懸命やっている。緊急にその解決策として国連決議が要る。G8を集めよう、協議をしようと。日本だけ来ない。だれが来たんだ、大使が来ましたと。  これで果たして日本国益というのは守れるんですか、大臣
  20. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 九日、十日にサミット外相会議があります。今晩私は出発して出てくるわけであります。それで、そういう中で、サミットでいろいろ行われること、そしてコソボの問題についてもきっちり話してまいりたい、こういうふうに思っております。  さらに申し上げれば、五日にG8外相会議を開くということがドイツ外務省から連絡がありました。行くとしたら三時間後までに決めなければいけないという状況の中で、ロシア外務省に問い合わせたところ、ロシアイワノフ外相は行かないと。結果としてはオルブライト国務長官も行かない、こういうことになって、そういう中で、もし私があのとき出発していたら、飛行機の中で取りやめになったということを聞かなければならなかった。  それから、前もG8の緊急外相会議で私が国会日程でどうしても行けなかったわけでありますが、やるということで武見政務次官を派遣したとき、また飛行機の中で取りやめになった、こういうこともあったわけであります。五日はやるということをきっちりドイツ外務省は言いましたが、結局日本ドイツアメリカが行かないということで取りやめになった、こういうようなこともあるわけです。  そういう中で、ヨーロッパの、一時間でほとんどの国が行ける、ロシアは二時間ぐらいかかります、それからアメリカはかなりかかりますが、そういう中でいきなり言われても、日本状況その他我が方の日程等もあって、遠くから行くところは行けない、それについてはG8のほかのメンバーもみんな日本が行けない理由は理解していただいていると思います。  それから、さらに申し上げれば、今晩出発して九日、十日に外相会議に行くことについても、国会のお許しは、多分既に出たんだと思いますが、きょうになってやっと出た、こういう状況であるということも申し上げておきたい、こう思います。
  21. 柳田稔

    柳田稔君 過去キャンセルになったとかそういう話があったとしても、今回の緊急のG8というのは相当大きな意味を持つG8だろう。そして、近く、もう今月にも行われるサミットのその大きなテーマ幾つか考えたときにも、日本国益を思うのであれば、私は何をさておいても行くべきではなかったのかなと、そう思います。  冒頭、大臣参議院のきょうもありましたとおっしゃいましたけれども、この委員会の開催は先週決めましたけれども、それ以降、実は緊急外相会議ドイツで行われるのでできれば大臣を行かせてほしい、政府委員で対応させてもらえないかという話は一切ないんですよ、我々には。与党からもない。外務省からもない。  実は、余りこういう場所で言うべきではありませんけれども、私は土曜日の段階で多分サミットが開かれるだろうなと。ここまで進展してきて和解策が出てきていいところまで来れば、次は国連決議だと。以前の委員会でも大臣答弁されていました、国連決議に持っていくんだという話をされておりましたので、私は、場合によってはもう仕方がないということで、実はうちの党の国対と話をしていたんですよ、申し出があった場合にはそうしようと。でも一切ないんですよ、外務省からも。自民党初め与党からもないんですよ、話が。  ですから大臣国会審議の日程があるからというのは私は理由にならないと思う。もっと厳しく言いますと、自民党を初めとした与党は国益を考えていないのではないかと私は思う。非常に厳しく言って申しわけありませんけれども、サミットの課題を考えたときに、日本の負担というのは多分莫大になるだろうなと。行けばその話も多分既に出ているだろうなと思うんですよ、いろんな会合で。それに大臣が直接行って話を聞く。  私は大臣を尊敬しています、大臣は言うことをはっきりおっしゃる大臣ですから。何でもはいはいと言って帰ってくる大臣ではない。日本の立場をしっかり説明して、これが日本の立場だから皆さんも理解してほしいと言う大臣だからこそ厳しく言っているんですけれども、残念でならない。どうでしょうか、大臣
  22. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 参議院の日程だけでそう言っているわけではなくて、総合判断でありますが、私は一つ考えたのは、日本が行って政治決断をしなければいけない会議かどうかということが一つありました。  私は、政治決断を日本がその会議でするということは可能性は非常に少ないと。むしろ政務局長会議で、ロシアを除いたG7で大体内容が詰まっておりましたので、その中で政治決断をしなければいけない国というのはロシアであると。ロシアがどうしてもだめだと言った場合に、逆にG7で詰まっていたことについてロシアに歩み寄れるかどうかという政治決断をしなければいけない国というのは、G7の中でロシアの考え方とかなり離れた考え方を持っているアメリカかイギリス等は政治決断しなきゃならないかもしれない。日本の立場はどうかといえば、既にG7、ロシアを除いたG7で詰まっていたことでいいし、それからさらに言えば、アメリカ、イギリスとロシアがのめることであれば、この結論については、我々はその二つが近づくような努力はしなければいけないあれですが、それについては必ずしも外務大臣でなくても果たし得るというふうに考えました。  ただ、委員がおっしゃるように、外相会議ですから外相がいた方がいいに決まっているんですよ。外相がいた方がいいに決まっている。どの外相会議だって外相がいた方がいいに決まっているんですが、今の状況で一番私が行かなければいけないことについては九日、十日の外相会議である、それを完全に最優先しようと。  それから、逆にこのコソボの問題で日本政府自体が大きな政治決断をしなければならない会議であれば、またそれはより強く衆議院、参議院国会にもお願いすることがあったと思いますが、今までの状況の中で、外務省とすればともかく九日、十日の外相会議に私が出席するということを何よりも最優先すると。そのほかのことについてお願いしてどうかということもいろいろ内部で考えました。  私は、正直言えば金曜日の段階で、ともかく日曜に行われるべき緊急外務大臣会議は何をおいても行けるように努力しろと一時は外務省の中で言ったわけでありますが、そういう中でロシアイワノフ外相が来ないということがはっきりして、その時点で、九日、十日の外相会議に出席するということを最優先する立場からは、それはロシア外相が来れない中で私は出てもしようがないなということを判断した。その後、そうしたら途中でやらないということになり、また次の日に延びると、こういうような状況が続いてきたわけであります。さらに、七日の会議でいえば、五日を延ばしてドイツから招待されたのが六日の朝でありましたが、そのときにもロシアに対して出席するかどうか確かめたわけでありますが、まだ現時点では不明だということでありまして、本当に実施されるかどうかもわからないと。  ですから、私たちからいえば、ドイツの当局が一、二時間で行けるEUの中の会議と、我々みたいに行くのに大変時間がかかる、それも国会の日程もある。そういった総合判断で九日、十日を最優先するために行かなかったということでございます。  ただ、委員が行った方がよかったんじゃないかということは、私はおっしゃることはわからないわけではありませんから、これから外務省としてもあるいは日本全体で考えなきゃいけない話だと、こういうときにすんなり行けるのか行けないのかも含めて考えなければいけない話だと、こういうふうな感じ方は持っております。
  23. 柳田稔

    柳田稔君 相談も一回もないわけですからね、どうだろうかと。きょうの委員会でも自民党サイドからどうだろうかと、政務次官で対応できないか、政府委員で対応できないか、そういう話も一回もなかったわけですよ。きょうの朝、新聞を見たら行われているし、内容を見ると、後のサミットも考えると相当日本にとっては大きなサミットになるんだろうなと、コソボも含めてですよ、債権の問題も含めて、経済の問題も含めて。  そうすると、G8の中の六カ国も参加しているような外相会議に出ていっていろいろ情報を集めながら、そして日本の立場を説明しながら、日本の言う我々の考えも理解してもらってサミットを進めるようにする方が私は国益にかなうと。行った方がいい、行くべきだと私は思っているんです。  今、大臣は、いや九日、十日があるからそれでいいんだとおっしゃったのなら、じゃこれから事前交渉のためのいろんな会議にはもう大臣は行かなくていいと、これは言葉じりをとらえた言い方になるかもしれませんけれども、私はそんな問題じゃないんじゃないかなと思うんですよ。以前みたいな状況じゃないし、今は日本日本の立場をはっきり言わないといけないし、各国の話も聞かないといけない。非常に混乱した時代だからこそ大臣が行って交渉しながら、話をしながら最後の決断をするときではないのかなと。それも普通の会議ではなくてサミットだと僕は思っていますから、だから行くべきだったと、そう強く申し上げておきます。  私は、大臣からどうだろう行かせてくれと言われたら、はいどうぞ行ってらっしゃいませと言うつもりでいたんですけれども、今の野党は昔の野党と大分変わっていまして理解がありますので、いろんなことを言ってもらいたいと思っております。
  24. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 外務省に対する日本外交に対する力強い応援の言葉をありがとうございました。  ただ、かつても、どうぞ行ってらっしゃい、だけれどもそのときは審議はできませんねと言っていろいろ問題もあったこともあるわけでありまして、これから言えば審議はさせてもらえることが、かなりそういう感じが強くなってまいりましたので本当にありがたいことだ、こう思っています。
  25. 柳田稔

    柳田稔君 昔は大臣行けなかったんですよね、国会開会中は。それが行けるようになったじゃないですか。この週末の外相会議だって、以前だったら、昔だったら大臣行けなかったんですよ。行けるようになったじゃないですか。今回、相談ないんですよ、与党からも、自民党から、一切ない。外務省からもない、どうだろうかという問い合わせは。それはちょっとおかしいんじゃないかと私は思いますよ、今、大臣答弁でしたけれども。私は残念だなということだけ申し上げて、次に移りたいと思います。
  26. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 残念だなと委員に言っていただいて、私は大変ありがたいと思います。これから今、委員がおっしゃった方向で外務省の中でも考えてまいります。
  27. 柳田稔

    柳田稔君 またコソボなんですけれども、この週末のG8を含めサミット、どちらにしてもコソボ和平案内容について相当議論になると思うんです。その中で、多分日本としても決断しなきゃならないことが幾つかあるかと思うんですが、私が思う大きなテーマを二つだけまず先に質問させてもらおうと思うんです。  治安部隊の話が出ています、文民も含めた治安部隊の話が。これについては、日本政府としてどういう考えを持って会議に臨むおつもりなんでしょうか。
  28. 西村六善

    政府委員西村六善君) 治安部隊内容につきまして、今非常に難しい議論が行われている最中でございます。その決定を見なければいけないわけでございますけれども、いずれにしましても、我が国との関係におきまして、現在議論が行われている方向性を想定してみますと、我が国の現在の法体制におきまして、こういう治安部隊我が国が参加するということにつきましては種々の難しい問題があるんではないかというふうに考えますけれども、何度も申し上げますとおり、議論に結論が出ておりませんものですから、最終的に我が国がどういう対応をするかということにつきましても結論を出せないという状況にあるわけでございます。
  29. 柳田稔

    柳田稔君 局長のおっしゃることもよくわかるんですけれども、逆にどういう条件が整うとどういうことができるのか、その辺は既にいろんなことをお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  30. 西村六善

    政府委員西村六善君) 一般的な人的な貢献につきましてはもとより、先ほど大臣が佐々木委員の御質問との関係でも答弁されておりましたとおり、何らかの形で我が国協力できる可能性がないかということを検討していることはもちろんでございます。
  31. 柳田稔

    柳田稔君 例えば、国連決議ができた、そしてこの国連決議のもとで、日本に対しても文民か自衛官かわかりませんけれども協力の要請が来る、そういった場合は日本政府としては派遣の意思を示すのかどうなのか、あくまでも国連決議というのがあればということなんですが。
  32. 西村六善

    政府委員西村六善君) 国連決議だけが必要な条件であるわけではないわけでございまして、我が国の国内の法体制、制度一般との整合性をとらなければいけないわけでございます。  国連の決議ができなければ行けないという側面ももちろんあるわけでございますけれども、それだけには限らないわけでございますので、その時点になりまして全体的な諸要素を考えながら考え方を決めていきたい、そういうことになると思います。
  33. 柳田稔

    柳田稔君 ちょっと質問の角度を変えますけれども、例えばG8とかサミットの中でこういった文民も含む治安部隊について派遣できるように国連決議をしようと言ったら、日本も賛成するわけですね、今までの答弁を聞いていますと。とすると、日本もそれに参加という話も出ますね。そのとき日本としては幾つかの条件を挙げるかと思うんですが、国連決議以外に何かあとお考えになっていることはありますか。
  34. 西村六善

    政府委員西村六善君) 何度も申し上げますとおり、どういう状況になっていくかということは今行われております議論の帰趨を見なければいけないわけでございますが、今までの類例に即して申し上げますれば、外務省の設置法に基づきまして政務官といったようなものを派遣するといったようなこと、これも幾つかの条件が充足されなければいけないわけでございますけれども、そういったようなことは過去においてもあったわけでございますので、そういった方面の検討は現在もしておりますし、これからもいたさなければいけないというふうに考えております。
  35. 柳田稔

    柳田稔君 もう一つ私が重点的に考えているのが、これは正しいかどうかわかりません、新聞の情報なので。「紛争地域での経済発展のための包括的なアプローチ」という文言が載っているんです、経済発展のための包括的なアプローチと。多分、その紛争地域の経済復興のために各国は努力しようという内容だろうと思うんですが、これについては政府はどういうふうなお考えで臨むつもりでしょうか。
  36. 西村六善

    政府委員西村六善君) もとより、この地域の問題は非常に長い歴史のある問題でございますし、民族的な問題が中心的でございますけれども、単なる民族的な問題だけにとどまらない非常に難しい諸側面、いろいろな側面を持った問題であるわけでございます。  したがいまして、今、先生がおっしゃいましたように、地域的な全体的な経済的な安定、社会的な安定というものを志向しまして、国際社会とその地域の諸国が協力して新しい展開を模索するという動きのことを、今、先生が言及されたことを条項が意味しているんだろうと思いますけれども、そういう考え方自体につきましては非常にいい考えだというふうに思っておりまして、我が国ができますことは当然やっていくという姿勢で、この検討を見守るのみならず、この検討の中にも参画していこうという考えでいるわけでございます。
  37. 柳田稔

    柳田稔君 そういう考えでいいかと思うんですけれども、私はこういうときによく思い出すのが湾岸戦争なんです。人的な貢献ができなかったら金を出せと、またぞろ多額のお金だけ出すのかなと。答弁がありましたように、国内の法整備ということもあります。ありますが、いろんなことを考え合わせながら、日本としての国益をどう守ってそして世界にどう貢献していくかという観点があるかと思うんです。  私は逆に、湾岸戦争のときの感想を言いますと、たくさん出したじゃないかと威張って言えばいいんじゃないかと思ったんです。それが日本の国内の法律だからしようがない、それでもたくさん出したじゃないかと威張ってよかったことだと思うんですが、これは個人的な感想だったんですけれども、多分そういう問題がいろいろ出てくると思う。人的な貢献日本はどうするんですか、金銭的な貢献はどうなりますかとか、いろんなことがテーマに上ってきてその中で合意がだんだんできていくのかなと、そう思いますので、私ははっきりとした方針を日本としては持って臨んでいただきたいなと、そう思います。  気性の激しい大臣ですから、物事をはっきりとおっしゃると思いますので、頑張っていただきたいと思うんです。  私の持ち時間がだんだん狭まってきたんですけれども、今回、このユーゴはまだ最終的な結論は出ていませんけれども、和平に向かって大きく踏み出して、そう遠くないうちにいい結果になるのかなと僕は思っているんですけれども、ただ、これを最初の段階からまた考え直しますと、あくまでも国内の民族紛争ですね、これは。民族紛争の問題。それに対してほかの国が、ちょっかいとは言いませんけれども、手を出したわけです。それでこういう結果になったわけです。  先日も齋藤議員の方からありましたように、東ティモール、あそこでも相当民族に対する弾圧があるという質疑もありましたけれども、世界各国で民族の弾圧、民族浄化というのは今でも行われていますよね、至るところで。とすると、内容はこのユーゴと同じような地域がたくさんあるんですけれども、それに対する対応の仕方というのも今後考えていかなきゃならないことになるのではないかなと僕は思うんです。  NATOみたいに軍事介入するという手だてもあるんでしょうが、それはほかの地域にそんなことをしたら多分許されないんだろうなと、国際感覚では。かといって、そういう紛争解決もしなきゃならないといったときに、さあどうするかといった議論も今後残されておると思うので、知恵のある外務大臣に頑張っていただきたいなと。  そういうほかの地域の民族に対する弾圧、浄化、今後大きな課題として出てくる、もう既に出ているんですけれども、今回のコソボの関係も含めてどう対応していったらいいのかという議論が出てくると思うんですけれども、大臣、何か考えがありますか。
  38. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 知恵のある委員のいろいろ御指導をいただきながら対応していきたいと思いますが、民族紛争というのはいろいろあっても、あれだけ極端な民族浄化というのはそんなにあることではないと。だって、二百万の人口で百八十万人がアルバニア人、そして二十万人がセルビア人という中で、アルバニア人の半分ぐらいが国外に脱出せざるを得ないような組織された極端な民族浄化というのは、今のいろんなところで民族問題がありますねというのとはちょっと次元が違う問題としてとらえられるのではないか、こういう感じはしております。  国際社会全体で、直ちに軍事力というのではなくて、やはりいろんな形の説得、あるいは友人としての圧力みたいなものもあるでしょうし、そういった形で国際社会がいろいろ関与して、民族紛争があるにしても極端な民族浄化ということに向かわないように、できるだけ民族紛争も話し合いで解決できるように努力していくという抽象的なことを申し上げる以外、現時点でないのではないか、こう思っております。
  39. 柳田稔

    柳田稔君 ユーゴの極端な例とおっしゃいましたけれども、アフリカでも似たようなことがたくさんありましたね、アフリカ大陸でも。もっとひどいかもしれません、アフリカ大陸の方が。  としたときに、今回の僕の反省としては、国連の安全保障理事国の二つの大国の対応が非常に難しかったですよね。その辺の国々といろいろ話ができるのは、もしかしたらG8の中では日本だけしかないのかなと思ったりもするんですよ。としたときに、その二大国と日本がいろいろ話をしながら、これからそういった民族紛争に対する対策、いろんな意見交換をしていくという姿勢が一つあってもいいのかなと、個人的には思っているんです、できるかどうか、ちょっと私も知識がないものでわかりませんけれども。そういう務めを日本がしていくのも一つのいい方向かなと思ったので、質問させてもらいました。何か御感想はありますか。
  40. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) それは、それぞれの二国間、かなめになる国と話し合って、いろいろいい方向に力を発揮していただくというのはそれは大切なことだと思いますが、二国間でやってそう簡単に、はい、日本がそう言うならそうしますよというほど国際社会は簡単なものではない。しかし、それは粘り強いそういう努力は必要だと思っています。  大きな観点では、やはり日本国連の安保理常任理事国になると、そういう方向というのは、私は、日本国際社会で発言権を持ち、現実に役に立つために、行動していくためにはどうしても必要なことだと思いますし、そういう努力はしていきたい、こう思っております。何でもかんでも、自分はこう考えるよと、ただ言うだけで役に立たないでもいいのであればそんなこともできますけれども、それは外交上プラスになるかマイナスになるかはわからないわけでありますから、現実に役に立つ力を発揮していくためには、私は、今、日本がG8の一員であるというのはそれは一つの大きな立場でありますけれども、やはり安保理の中で常任理事国になる、そういったことを追求していかないとなかなか、ただ発言するだけ、声を上げるだけに終わったのでは余り意味がないのかなと、こういうような感じは持っております。
  41. 柳田稔

    柳田稔君 今回のユーゴの問題で、北欧のそれほど大きくない国が動いて仲介の労をとって、いい方向に導きましたね。また今、米中関係にしろ、非常に難しくなっていますでしょう。とすると、NATOの各国が話をするよりは、日本が前面に出て、今後のそういった民族浄化とか民族弾圧とかがあった場合に、さあどうするかという話し合いのキーパーソンというかキーマンに外務大臣がなられていろんな話を詰めていかれるのはいいことかなと。また、逆に言うと日本しかないのかなと思ったのでそう申し上げたんです。  それから、日本世界で第二位の経済大国ですから、大変なお金を皆さんに供給もしているわけですから、私は言う口も持っているし、頑張っていただきたいなと、そう思います。  最後に、もう一つコソボについて聞きますけれども、国連の旧ユーゴスラビア戦争犯罪法廷、ミロシェビッチ・ユーゴ大統領コソボでの残虐行為の疑いで起訴という発表をされました。この問題について日本政府はどういうお考えなのか、お聞かせください。
  42. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 旧ユーゴ国際刑事裁判所のアーバー検察局長ミロシェビッチ大統領等の起訴を発表しましたが、その起訴の内容は、一九九九年初頭からコソボで起こされた人道に対する罪及び戦争の法規または慣例に反する罪であるとされているわけでございます。  旧ユーゴ国際刑事裁判所は、独立した司法機関として国連安保理決議に基づき設立されたものであり、我が国としてもその独立性を尊重してきているわけであります。今回の決定も、政治的なものではなくて司法的な観点からなされたものであると承知しております。
  43. 柳田稔

    柳田稔君 ということは、これは支持をするというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  44. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) その独立性を尊重しておりますと、こういうことでございます。
  45. 柳田稔

    柳田稔君 わかるように話をしてほしいのですが、要するにこの判決について支持するということですか、それとももう一回考え直せということなんですか。
  46. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) これは司法的観点からなされたものでありますから、反対するということ、そういう選択はないんだろうと思っています。国連の決議によってできた旧ユーゴ国際刑事裁判所、これは独立した司法機関でありますから、それに対して日本政府として考え直せとか、そういう話ではないというふうに考えております。  ですから、政治的に支持するとか支持しないとか、そういう話ではなくて、独立した司法機関が司法的観点からした処分は、それは尊重していかなければならないでしょうと、こういうことを申し上げているんです。
  47. 柳田稔

    柳田稔君 時間がなくなりましたから終わりますけれども、これからもいろんな問題が起きるんでしょうけれども、私は外務省には頑張ってもらいたいと考える一人ですから、それだけ申し上げて終わります。
  48. 高野博師

    ○高野博師君 拷問禁止条約について、二、三お伺いいたします。  先ほども質疑がありましたが、なぜ十五、六年も前に国連総会で採択されたのに今の締結なのかということについて、外務大臣の方から人権という観点から非常に重要な条約だということをおっしゃっているんですが、それにしてはおくれた理由としては根拠が薄いと思うんです。僕は単なる政府の怠慢ではないかと。もう一つは、政府側に要するに人権意識とか人権感覚というのが非常に希薄なのではないか、それが理由ではないかと思うんですが、特に答弁は求めません。  拷問が刑事上の手続として用いられている国というのは世界的にどのぐらいあるのか。そして、これによる被害者等の数というのは何かわかっているんでしょうか、実態がどうなっているのか。
  49. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) まさにこの条約自体が、一九七〇年代に一部の軍事独裁政権などによって拷問と見られる行為があるという非難が高まったということを背景に作成されたものでございます。そして、いまだに一部の締約国を含むいろんな国で拷問が行われているという報道がありましたり、あるいは国際的なNGOがそういうことを指摘しておられたり、そういうことは承知しております。  他方におきまして、そのことの性質上、極めて拷問ということが密室性が高いということでございますし、また公権力の方が暗黙の了解を与えているというような場合もあろうかと思いますので、全体といたしまして実情が必ずしも十分明らかではない。したがって、今、公にいろんな国際的なNGO等の指摘はございますけれども、私たちの方で、どの国でどういうところでどのぐらいの拷問が行われていて、被害者がどういうふうな状況になっているということを正確につかむということはなかなか困難な状況でございます。
  50. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、具体的にお伺いします。  アルゼンチンの件ですが、これは一九七六年から軍事政権がずっと続いて、その軍事政権時代に相当の人権侵害があったということで、行方不明者も数万に上るとも言われております。先般、ある新聞でも、この軍政時代に刑務所で生まれた赤ん坊の誘拐も行われた、これについて元大統領等が逮捕されたということなんですが、私も現地で拷問のやり方等について生々しい話を聞いたこともあります。  人権団体の「五月広場の母たち」というのも依然として運動をやっておりますが、これは今現状はどういうことになっているのか、簡単に御説明ください。
  51. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) ビデラというアルゼンチンの元大統領、この人は七六年から八一年まで大統領だったわけですけれども、この大統領の軍事政権下で幼児の誘拐等を指示したという容疑で身柄を拘束されているということでございます。
  52. 高野博師

    ○高野博師君 この軍事政権時代に、日本政府はアルゼンチン政府に対してどういう対応をしてきたのか。特に人権問題について、例えばODA等の関係で、これについて何らかの言及をしたことがあるのかどうか、この辺で人権状況についての改善を求めるというようなことをしてきたのかどうか、お伺いいたします。
  53. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 当時、アルゼンチンが民政移管したのが八五年でありますけれども、それ以前の状況下で、日本が個々のケースについてどういうふうに対応をしてきたかというのは一言でなかなか申し上げにくいのですけれども、例えばこれらの国々の人権状況につきましても、その時々で関心を示してやってきたわけでございます。  ODAの方につきましては、ODA大綱の形でまとめられましたのが九二年ということでございますので、今のような形での取り扱いといいますか、そういうことが必ずしも行われてきたということではございませんでしょうが、例えば一九七九年の段階におきまして園田外務大臣が中南米を訪問されました際に、中南米の人権状況に関しまして、これらの諸国が民主化の方向に進むのを助けていくという姿勢で対処したい、これら諸国の国情を無視して一方的に非難することはすべきではないけれども、民主化の方向に進むのを助けていくということで対処することが重要だというようなことを発言しておられます。
  54. 高野博師

    ○高野博師君 わかりました。  そこで、ODAの関係で言いますと、一般的な話ですが、これはODAの基本理念の一つの中に人権的考慮というのが入っております。それから原則の一つの中に基本的人権、自由の保障状況に配慮するということがうたわれておりますが、特に締約国になっている国で拷問が行われているような国に対しては、ODAの理念、原則に従ってODA供与の際に人権問題についてきちんと日本政府としては言うべきではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  55. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 御指摘のとおり、日本ODA大綱で原則の中にうたっておりますし、基本的人権及び自由の保障状況十分注意を払うということを求めているわけでございます。  そういう中で、日本としては、著しい人権の侵害状況が見られるというような国、例えばアフリカのスーダンでありますとか、そういう国には援助を停止しているわけでございます。ミャンマーでも、ケース・バイ・ケースですけれども、いまだ全体としては全面的な前向きな動きがまだ見られないというようなことで、ケース・バイ・ケースで、民衆に直接裨益するものならいいんだけれども、全体としてはまだ全面的な修復には至らないというようなことで、例えばミャンマーについてはそういうふうな方針をとっているわけでございます。  拷問禁止条約に入るということでございますから、今後ともODAの大綱に沿ってきめ細かく対応していきたいというふうに考えております。
  56. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、もう一つ具体的な話ですが、九八年の十月にチリの元大統領のピノチェト氏がイギリスで逮捕されました。その逮捕の法的根拠としては拷問禁止条約がある。これに対してスペインが犯罪人の引き渡しを要求しているということになっていますが、これは今どういう現状にあるんでしょうか。
  57. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 九八年十月十六日、スペイン政府が、チリのピノチェト軍事政権時代に同国でスペイン市民が殺害されたり拷問を受けたとして国際手配状を発出し、これを受けて翌十七日、英国当局がピノチェト元大統領を入院中のロンドンの病院で逮捕したものと承知しております。  本件逮捕に関しては、元国家元首の裁判権免除の観点からこの有効性が議論されました。結局、イギリスの貴族院上訴委員会は、拷問等禁止条約が英国、チリ両国にとって効力が発出した八八年十二月八日以降の拷問行為については裁判権免除が認められないとの判断を下されたわけでございます。  本件は、現在英国でスペインへの引き渡しに関する司法審査が継続中であると承知をしております。
  58. 高野博師

    ○高野博師君 ピノチェト元大統領の時代にも左翼狩り等が行われて、数千人の行方不明者、死者が出たということで、私も迫害に遭って逃げてきたチリ人に会ったことがあります。  今お話がありましたピノチェト氏に対する裁判権免除については、八八年にイギリスとチリが拷問禁止条約締結した以降の問題に限られるということでありますが、イギリスがやはり人権問題についてこういう行動をとれるというのはすごいことだな、もし日本だったらどうなるのかと。日本はもちろんこの条約締結しておりませんからこういうことができる根拠は何もない。しかし、締結していたとしても、もちろんチリとの友好関係とかいろいろありますが、こういう問題に対して人権意識というのがそこまであるのかな、逮捕等の行動に出るようなことが日本というのはできるのかなと、そういう感じを持っております。大臣はどういう認識をされておりますか。
  59. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 人ごとのような言い方で大変恐縮でありますが、委員と同じような認識を持っております。  大臣はどのような認識か、私だったらどうするかということであると、ちょっと具体論を離れて今一概に答えられないということでありますが、日本だとなかなか難しいなと。一般的にはそういう感想を持っているということだけは申し上げておきたいと思います。
  60. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、残った時間で北朝鮮問題について伺います。  村山訪朝団が近く北朝鮮に行かれるということですが、この村山訪朝団に対して政府も全面的な協力をする姿勢だというようなことが報道されておりまして、外務大臣も重要な対話の契機になり得るものという発言もされていますが、これも報道によれば、この訪朝団は国交正常化交渉再開とミサイルの再発射を行わないということを条件に北朝鮮へのチャーター便の再開と食糧支援の凍結解除、食糧支援をやるということを表明すると言われていますが、この事実関係はいかがでしょうか。
  61. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 政府としては、村山元総理を初めとする国会議員の方々が訪朝を検討しているということは承知しておりますが、その具体的な日程も決まったということを承知していないわけで、その中身について政府に聞かれてもよくわかりません。よくわかりませんが、この前も申し上げたように、日朝間の重要な対話の契機となり得るものと考えて、政府としても可能な支援を行う考えはあります。
  62. 高野博師

    ○高野博師君 よくわかりませんでは困るんで、重要な対話の契機になり得るというのであれば、何を向こうでやってくるのか政府は当然重大な関心を持っていると思うんですが、このミッションが政府がやる食糧支援についてコミットするようなことはあり得ないと考えてよろしいんでしょうか。
  63. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 村山元総理が向こうとどういうお話をされるかは私どもは知らないわけでありますが、外交交渉自体政府がやるものであります。ですから、そういう特定のことを政府にかわってコミットするということはあり得ないことだと、こういうふうに思っておりますし、ただ、今政府同士で話がなかなかやりにくい状況もあるわけで、そういう中で本格的な外交ルートが生まれるための重要な対話の契機となり得る、私たちが考えているのはこういうことに尽きるわけでございます。
  64. 高野博師

    ○高野博師君 食糧支援等、何にも手土産を持たないで行くとほとんど相手にもされないんではないかという感じもあるんですが、外交の一元化という今おっしゃられたような観点からすると、こういう援助等については政府がきちんと対応すべきだと思います。  前回、五十万トンの米の支援を行ったときにもいろんな政治家がかかわった。それはそれで対話のチャンネルを多元化するという点では意義があると思うんですが、それぞれの政治家の思惑が非常に複雑に絡み合って、北朝鮮側に利用されたという面がないでもない。日本が米をもらってくれと言うからもらってやると、そういうことを発言した北朝鮮の要人もいたわけです。したがって、これはもうきちんと政府が中心になって対応する必要があるんではないかという私は認識をしております。
  65. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 繰り返しますが、外交交渉自体政府がやると。そういう点は我が国外務省はきっちりしていると自信を持って申し上げられます。
  66. 高野博師

    ○高野博師君 それでは最後にもう一つ、朝鮮半島有事に関して、これも新聞報道ですが、六〇年安保改定時に、朝鮮半島有事の際には在日米軍の行動について日米間の事前協議の対象としないという極秘の約束があったということを示すアメリカ側の内部文書が見つかった、こういう報道がありますが、これについてはいかがでしょうか。
  67. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 御指摘の文書に御指摘のような記述があるとの報道は承知しておりますが、この文書は米国政府の内部文書であると承知しており、政府としてその内容にコメントすべき立場にありません。  我が国から行われる戦闘作戦行動のための基地として日本国内の施設及び区域の使用に際しては、日米安保条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文に基づき、事前に我が国政府協議し、その同意を求めることが米側に義務づけられております。これはいわゆる朝鮮半島有事の際にも適用されるものでございます。  この点は、例えば一九七一年十一月、当時の佐藤総理がいわゆる朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動に係る事前協議について問われた際、事前協議については国益に従って自主的に決定をいたします、イエスもありノーもある、こういうことをはっきり申し上げたのでございます、と述べております。  従来から繰り返し述べておりますように、米国政府は、事前協議に係るものを含め日米安保条約及び関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に遵守すること、事前協議については日本政府の意思に反して行動することはない旨を繰り返し述べているわけでございます。
  68. 高野博師

    ○高野博師君 密約なんかはないということですが、核の問題についても先般国会で取り上げられましたが、核の密約があったというような文書がアメリカ側で見つかっていると。それはアメリカ側の公式文書だから知りませんで済むのかどうか。  この問題については、国益という問題とそれから国民の知る権利という非常に難しい二つの問題の中で難しい対応を迫られると思うんですが、密約そのものが有効であるとするならば、それはもう重大な問題であるんですが、もしそうでないとすれば、例えばもっと情報を公開して、冷戦時のああいう厳しい状況の中では密約もやむを得なかった、そういうことであれば国民も僕は理解するんではないかなと。  むしろ、そういう密約の存在を否定し続ける政府の姿勢、態度、これに対して不信感を持つのではないのかなという私は感じを持っております。密約そのものはないという主張ですから、それはそれで聞きおきますが、僕は個人的にはそういう考えを持っております。  大臣、コメントがありましたら。
  69. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 密約はありません。これは政府の一貫した態度でございます。
  70. 高野博師

    ○高野博師君 結構です。終わります。
  71. 立木洋

    ○立木洋君 この間の続きでひとつまたお願いします。  この間、最後まだはっきりしない点がありましたものですから、よく調べてきてほしいということを竹内さんにもお願いしたんですが、この間申し上げた、アメリカの核積載艦が日本の領海を通過する場合、それを無害航行とはみなさない、事前協議の対象にするということが領海条約の中で変わりました、日本見解が。  ですから、その見解を、日米間で外交上有効的な効力を発するようにアメリカとの間でいつそのことで話し合いをし、どういう合意文書がなされているのか、それを調べてきてほしいと申し上げたんですが、竹内さん、あったでしょうか。
  72. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) この問題につきましては、立木先生かねてより御質問がございました。その当時政府側から繰り返し答弁していたところでございますので、全く御承知のとおりなので恐縮でございますけれども、先生御指摘のとおり、核搭載艦の我が国領海の通過につきまして、安保国会当時は、先回、先生は高橋局長答弁を御引用されましたけれども、そのような通過が国際法上の無害通航に該当する場合には事前協議の対象とはならないという旨、政府としては説明し、そういう立場をとっていたわけでございます。  さらに、これまた先生再三御指摘のとおり、その後、昭和四十三年に至りまして国会におきまして領海条約が審議されました際に、当時政府が政策として打ち出しました非核三原則をも踏まえまして、国際法上の無害制度との関連でこの問題につきましてさらに詳細な検討を行った結果、無害通航の基準に関する政府の従来の考え方というものを変更したわけでございます。  そういたしまして、そのような常時核装備を有する外国軍艦の我が国領海の通航は無害通航とは認めないとの考え方を昭和四十三年四月に政府統一見解という形でお示しをいたし、さらに政府は、昭和四十九年の十二月でございますけれども、政府統一見解においてもこの点を重ねて明らかにしたところでございます。  さてそこで、米国との関係でございますけれども、これも先生との間で何度もやりとりがあったという記録も私は拝読してまいりましたけれども、その当時から政府が申し述べておりますけれども、米国としましてはここの在京米国大使館を通じまして我が国国会における審議の概要を十分フォローしておると承知しておりますし、また当方から累次機会があるときに説明を行ってきていたところでございます。  さらに、昭和四十九年、その統一見解が出されましたときには、日を置かずいたしまして外務省からここの大使館に対しまして国会での論議を紹介した上で統一見解内容を説明しております。こういうのが経緯でございます。  さらに、昭和五十六年、一九八一年でございますけれども、いわゆるライシャワー発言が論議を呼んだ際でございますけれども、この際、マンスフィールド大使と園田大臣との間でやりとりがございまして、その際にマンスフィールド大使の方から、従来の米国が明らかにしてきた立場、すなわち米国政府としては従来から安保条約及び関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に遵守してきているという趣旨を確認しているという経緯があるわけでございます。
  73. 立木洋

    ○立木洋君 私が言っているのは、いわゆる御承知のあの一九六〇年一月に行われた岸・ハーター交換公文、それに基づく藤山・マッカーサー口頭了解等々の問題の経緯等々も全部押さえた上でお聞きして、特に領海の通過の問題について私は言っているんです。  この点については、私が一九七四年十月十八日、核兵器を積載したアメリカの艦船の通過が事前協議の対象になるという日米間の合意文書が存在しているのかどうかということを聞いたときに、松永条約局長はそういう文書はございませんと答えております。  それから、一九八一年五月二十一日、同じことを質問したときに、丹波さん、これはその当時審議官だったかどうかわかりませんけれども、肩書きが不明でしたが、「そういうことを特定して取り上げたような文書はございません。」ということでした。  今、竹内さんが言われた、つまり日本が領海通過の問題についてどういう立場をとっているかということについてはアメリカ側は知っていると思うんです、それは説明していますから。だけれども、説明をしてアメリカ側が知ったということと、アメリカ側がそれに合意して外交上そういう措置をとりますということは全く別のことなんです。北米局長なんですからそのことぐらいは十分御承知だろうと思うんです。アメリカが知っているということと外交上それが効力を持ち得るという合意の確認になっているということは別問題なんです。  だから、その合意の確認がいつなされたのか、その文書があるのかないのかということを聞いているんです。これまで一九七四年と一九八一年に私は外務省に確かめてあるんです、既に。そのときにはないと答えているんです。ですから、今ありますかと聞いているんです。
  74. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 先生御指摘の一九七四年、私はここに議事録も持っておりますが、正しく申し上げますと、先生からの御質問と申しますのは、「核兵器の日本の領域の通過に関しては事前協議の対象になるということが明確に書かれていない、そのことは確認されるわけですね。」という質問がございまして、それに対しまして、当時の松永、たしか条約局長だろうと思いますが、「文字として書かれていないということでありますれば、そのとおりでございます。」ということを確認されております。  それから、もう繰り返しはいたしませんが、丹波、八一年当時、恐らく私の記憶では安保課長だったと思いますが、先生の御質問に対しまして、先生の御指摘のような趣旨のことを申しております。ただし、その際に丹波説明員の方からは、要するに、この藤山・マッカーサー口頭了解とそれから安保条約第六条の実施に関する交換公文というものによってそもそも日本の考え方というものはこの通過の問題に関しても極めて明確である、日米間の約束された、合意された文書の中において明確であるということが前提になっているという趣旨もあわせて答えているところでございます。  私が先ほど申しました昭和四十九年当時のここの在京大使館との確認等のことについては、一九七四年でございますので、まさしく先生も御承知のとおりですので詳しくは述べませんけれども、その際に我が国の領海通過が無害通航には該当しないという趣旨をここの大使館に明確に説明したという経緯があるわけでございます。
  75. 立木洋

    ○立木洋君 いや、竹内さん、私が先ほど言ったのは、日本側は説明していないとは言っていないんです。説明しているんです。だから、アメリカ側は日本側がどういう考え方を持っているかというのは知っているんです。知っているけれども、それを合意文書として外交上効力を持つような確認がいつなされたのか、それがいつの文書に明記されているのかということを聞いた場合に、今までにないと言っているんです、二回とも。  今の状況であるのかと、私はないと思うんです。このことについて向こう側は知っているけれども、それを合意文書として確認して外交上効力を持ち得るように文書を策定できないのはなぜなのですか。──東郷さん、いいよ、後で聞くから。あなたのお父さんも関係があるから、これ。
  76. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 事前協議の制度上、核の持ち込みにつきましては、それが一時的であろうが何であろうがということで安保国会当時から、先ほど申しました当事前協議の対象となるという立場で一貫してきているところでございます。この事前協議制度の解釈について変更したということではございません。  ただし、我々政府の立場に変更がございましたのは、一般国際法上の無害通航の基準につきまして昭和四十三年に変更があって、昭和四十九年にそれを再確認している、こういうことでございます。それで、アメリカ、先方に対しましては、今申しましたようなことで説明をして、米国からも特に異論を示してきていないという状況がそのときからあるということでございます。  ただし、先生の重ねてのお尋ねの、端的に先ほど申されたような核搭載艦の領海通過というのが無害通航には該当しないということを記した明確な文書があるかどうかというお尋ねでございますれば、それは当時お答えしたとおりでございまして、そういうことを文書で交わしたということはございません。
  77. 立木洋

    ○立木洋君 ですから、私は、外交上はアメリカ側を拘束する有効ないわゆる確認というのが日米両国の間になされていない、なされていないのはなぜなのかと聞いているんです。それをそこまでやれば、詰めるんだったら詰めて、アメリカ側にも確認させて、こういう文書を交わしましょうと。  一九六〇年のいわゆる岸・ハーター交換公文、それに基づいて藤山・マッカーサー口頭了解がありますね。あのときの核持ち込みの問題に関しては、御承知のようにこれはトランジットかあるいはイントロダクションかというようなことも議会の中でも何回も繰り返し問題になってきました。だから、きちっとそういう内容を精査して、アメリカに拘束力を持つ外交的な有効な措置として確認することが必要だった。それがなされていないということになるならば、それは外交上効力を発しないんです。  御承知のように、山本草二さんという上智大学の教授がいましたね。日本政府が御承知のように国際海洋法裁判所の裁判官として推薦をして、今は国際海洋法裁判所の裁判官として二〇〇五年まで任期を持って仕事をなさっているわけです。この方は海洋法の権威者ですが、この方が書いている「海洋法」という本があります。これは東郷さんの方の分野になるのかどうかわかりませんが、その中に明確に書いてあるんです。  いわゆる領海の無害通航による核持ち込みを許さないためにはという問題意識の中で、  非核三原則に関するわが国の立場が、国際的な対抗力を持ち他国にも尊重するよう強制しうるものとなるためには、沿岸国としての立場から、このような無害性の有無の認定が関係条約の規定(同条約十九条1項)により許容されていること、核兵器を搭載した軍艦の領海内通航が、通常兵器の持ち込みとは異なり、自国にとり特別の有害・危険性を持つものであり、軍艦一般に対する事前許可制を主張するものではないことを十分に立証し、その趣旨外交経路により国際的に周知させることが、必要である。 そのことでの確認、合意、つまり外交的な経路により相手が確認するという問題です。国際的にそういうふうなことが行われて初めて有効性を持ち得ると。だから、ただ単に述べたから、日本国会内で政府見解を主張しているからそれで外交的に有効になるというふうにはならないということですが、いかがですか。東郷さん、短くね。お父さん短く述べているから。
  78. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 委員指摘の無害通航というものが国際法上どういうものかということでございますけれども、国際法上特定の通航が無害通航に該当するか否か、これにつきましては国際法上の一般的基準の枠内において第一義的な判断は沿岸国にゆだねられている、これが基本かと思います。  この問題が国際法の中で議論された大きな機会としましては、一九六八年の領海条約の審議の際、それからただいま委員指摘の一九八二年の海洋法条約の審議の際でございました。海洋法条約の審議の際には……
  79. 立木洋

    ○立木洋君 それはわかっているから。
  80. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) はい。より精緻な議論がございましたが、いずれにしましても、この二つの大きな機会の議論を通じまして、私どもの明確に理解しているところに従って申し上げれば、沿岸国の判断によって一義的に何が無害通航になるかならないかということが決まるということでございます。  我が国は、昭和四十三年にただいま御指摘のような立場の変更をいたしました。しかし、これは米国と合意すべき性質のものではなく、我が国の一義的な判断で国際法の基本の部分についての立場を変えたということでございます。したがいまして、米国と新たな合意を必要とする、そういうような性質のものではないというふうに考えております。  それから、一九八二年の海洋法条約の審議の際には、既に十年にわたりまして我が国の立場は総理の演説を初めとして極めて明確になっておったわけでございます。そういう背景のもとに八二年の条約が採択されたということでございます。
  81. 立木洋

    ○立木洋君 領海条約でそれが無害か有害かという問題の認定は沿岸国の第一義的なものである、それはそのとおりですよ。あなたのお父さんはちゃんと区別して述べているんです。いいですか。あの文彦さんという方はお父さんでしょう。これは、領海を通過するということが無害かどうかという観点と事前協議の対象にするかどうかという問題なんです。分けて述べているんです。だからお父さんは事前協議の対象にしなかった。それを事前協議の対象にするんだと言う。事前協議の対象にするというのは、アメリカが合意しなければ事前協議の対象にならないじゃないですか。簡単に、短く。
  82. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 日米安保条約及びその関連取り決めに基づく事前協議の制度上、核持ち込みについては事前協議制度の対象になる、これは岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解からして十分に明らかであり、米国との間のこの合意は一切変更がないということでございます。  我が国が変更しましたのは、一般国際法上における無害通航が何かということについての我が国の立場、考え方を変えたということでございます。したがいまして、米国側との合意というのは改めてする必要はない、米国側にその事態は十分に説明することはいたしたということでございます。
  83. 立木洋

    ○立木洋君 時間が長引くとまたきょうも委員長から注意されますから、後は私の方で簡単に主張します。  これは先般も言ったように、領海条約の二十五条で、「この条約の規定は、すでに効力を有する条約その他の国際協定の当事国間においては、それらに影響を及ぼすものではない。」というんです。影響を及ぼさないんです、この問題では。事前協議の問題に関しては影響を及ぼしていないんです、領海条約での日本見解を変えたということは。  そして、御承知の第三回国連海洋法会議の中で、その条約にはちゃんと十九条の中で「無害通航の意味」というのがありますね。第一項と第二項があります。第一項の中では、無害とされるということについては当然沿岸国の第一義的な見解が問題になるだろう。しかし、第二項には十二項目が挙げられておりますが、いわゆる無害通航にはならないということが十二項目挙げられていますけれども、その中には核積載艦というのは入っておりません。  それで、この場合に、この海洋法条約会議が行われた中で、御承知の三百十条というのがあります。三百十条というのは、その国が宣言をし、声明を行うことは排除しないという条項です。ですから、その問題について海洋法会議が行われたときにはイラン、イエメンなど十カ国近くがこの無害通航の問題に関していわゆる解釈宣言を行っております。御承知のイラン、イエメンは、こういう問題に関しては、軍艦の通過等については事前の許可が必要だ、あるいは事前の通告が必要だという国もあります。それから、外国の軍艦に対しては規制権があるということを主張されております。アメリカとそれからソ連の間では、どのような積み荷、軍備、推進方法であろうとも領海の無害通航権を有する、だから通航は事前の通告ないしは許可を必要としないというふうに言って、無害ではないという十二項目は網羅的なものであるというふうに見解を述べております。  つまり、このように三百十条で解釈宣言を行うことができるのに日本はなぜそのときに解釈宣言をしなかったのですか。
  84. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 委員指摘の点につきまして、まず領海条約第二十五条との関係についての御指摘がございましたが、私今申し上げましたように、無害通航についてどういう立場をとるかということは、領海条約の解釈の問題ではなく、一般国際法上における無害通航についての各国の立場の問題でございます。したがいまして、二十五条に基づく領海条約と安保条約の抵触関係についてこの問題をとらえるということは適切を欠くのではないかと思います。  それから、海洋法条約第十九条二項と十九条一項の関係でございますが、十九条二項に述べられております十二項目、これは限定列挙ではなく例示的な列挙であるというふうに解しております。  それから最後に、なぜ解釈宣言をしなかったのかということでございますが、先ほど申し上げましたように、非核三原則を堅持するということについては、その当時までの歴代の総理大臣の施政方針演説等において繰り返し表明されており、既に内外に十分周知徹底されていることから、御指摘のような宣言を改めて行う必要はないと考えた次第でございます。  他方、国連海洋法会議において政府我が国の基本政策である非核三原則を踏まえつつこの会議に対処したことは当然のことでありまして、我が国として、条約の規定との関係で非核三原則を維持できなくなるようなことがないように十分な注意を払ってこの会議に臨んだ次第でございます。
  85. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、お尋ねじゃなく、私の考えを述べておきます。  この問題に関して、領海条約の中でそういう見解を変更し、わざわざ無害通航権という問題と別個にして事前協議における制度をアメリカの側と確認するということをなし得なかった、行わなかった。なぜ行わなかったのか。これは重大な問題です。それはなぜか。それは核密約があったからなんですよ。核密約があったからこそ、相手側に対してその問題を申し入れて、そして日米両国間でこの問題を、明確に無害通航権等を認めない、だから事前協議の対象になるという確約ができなかったのはいわゆる核密約があったからです。  もう一つの点については、いわゆる解釈宣言ができなかったのも、いわゆる国際会議の席上でほかの国々が解釈宣言を発表することができるのになぜ日本がしなかったのか。これも同じ原因です。私はそのことを明確に指摘しておきたい。  それはなぜかというと、先般も言いましたように、アメリカがはっきりとアメリカの安全保障局の政策課次席の名前で、現在もこの問題に関しては六九年十一月二十一日付ニクソン大統領、佐藤首相の日米合意議事録は存在しているということを確認したんです。しかも、なぜそれについて公開できないかという点については、現在も極秘扱いで情報公開法の例外規定の適用を受けているからだと述べています。そして、我が国の国家安全保障に極めて重大な損害を引き起こすことが合理的に予測されるためにいわゆる規定外に、例外規定にしているんだと。これは核密約以外にないんです。アメリカでもその文書を認めている。しかも、日本政府が事前協議の対象にするということが合意できないというのは核の密約があるからにほかならない。  その核の密約の文書については、高村さんがごらんになっているかどうかはわかりません。私は見ていない方が多いだろうと思うんです。だから、そういう見地からいって、核密約は存在してないんではなくてこれは存在している。ですから、核密約によって法がねじ曲げられ、日本の政治がゆがめられているということは極めてゆゆしき事態であるということだけは明確に指摘しておきたいと思います。  そういう点では、明確な答弁を竹内さんも東郷さんもなし得なかった。あなたのお父さんは分けて答えているんですよ、無害通航の問題と事前協議の対象にするかどうかという問題は。そのことはもう一遍あなた考えてきていただきたい。竹内さんも一生懸命勉強されたようですけれども、あなたは勉強家だという話は聞いておりますけれども、もっと真剣にこの問題を考えてほしい。  終わります。
  86. 田英夫

    ○田英夫君 私は、拷問禁止条約について関連する問題を伺いたいと思います。  法務省からおいでになったと思いますが、冒頭のところで私が申し上げることをぜひ法務省も聞いておいていただきたいんです。この拷問禁止条約のまさに第一条に、身体的あるいは精神的な苦痛を与えることはいけない、精神的な苦痛を与えることはいけないということが明記されているということを一つ指摘しておきたいと思います。それから、同じく第一条に、何らかの差別に基づく理由によって拷問をするという、そういう指摘もあります。この二つの点を冒頭に申し上げておいて、以下、在日朝鮮人、韓国人の人たちを中心とした問題について取り上げたい。  いわゆる在日という言い方をしているのは、彼らの仲間の中では特別永住ないし永住、要するにずっと日本にいる人たちのことを在日と言って、最近に来てまだ日が浅い人とか、そういう人は対象にしてない。そういう意味で在日の問題について取り上げたいと思うんですが、法務省は恐らく、政府の中でこの在日の人たちのことを担当するお役所というのは法務省、入管がありますから、ということになるんだと思いますが、それは間違いないですか。
  87. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) いわゆる在日の方は特別永住者という資格で日本におられる方なわけですから、そういう資格でおられる外国人を所管するところとして法務省ということは当たっていると思います。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、その担当の役所である法務省は、この在日の人たちの数を把握しておられるでしょうか。朝鮮人、韓国人に限ります。
  89. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) 平成十年の十二月末現在で国籍欄の記載を韓国、朝鮮として外国人登録をした在留中の方の数は六十三万八千八百二十八人でございまして、そのうち特別永住者、いわゆる在日の方の数は五十二万八千四百五十人でございます。  ちなみに、この特別永住者の地位を規定した出入国管理特別法が施行された直後の平成四年十二月末現在の時点では、国籍欄の記載を韓国、朝鮮として外国人登録をした方の数は六十八万八千百四十四名であり、そのうち特別永住者は五十八万五千百七十人となっておりますので、特別永住者の数は減っておる。そうすると、差し引いた数はむしろ昔に比べて今の方がふえているというのが大きな趨勢だと思います。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 今のは朝鮮籍、韓国籍というそういう形の登録の皆さんの数だと思います。おっしゃったように減っていますね。これは後で問題を取り上げますけれども、いわゆる朝鮮総連系それから民団系と、こういう形で分けますと必ずしも籍とはイコールにならない。アクティブに朝鮮総連系、民団系とこう言っている人たちの数は、増減はどうなっているかということまではつかんでいますか。
  91. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) 朝鮮総連及び大韓民国居留民団という組織があることはもちろん承知しておりますが、当局といたしましてはこれらに所属している者の数は把握しておりません。
  92. 田英夫

    ○田英夫君 この辺になってくると、今度は在留の形の問題ではなくて、今度は一種の政治活動になってくる。あるいはそういう活動の問題ですから警察になってくるのかなと。  これは私の意見ですが、後で申し上げますけれども、とにかく六十万を超す人たちが日本にいるということは、ほかの外国人に比べるともちろん非常に異例であるわけですけれども、そういう人たちの生活について考えている役所というのが実はどこだか定かでない。朝鮮総連にどのくらいの人が集まっているか、民団にどのくらいの人が集まっているのか、これをどこのお役所も把握してないんですね。実は、私の承知している限りでは双方とも激減をしていますよ。それで、第三勢力がふえている。これは日本人と同じような生活をしているわけですからある意味では同じなんで、日本人の中でも政党支持率の中で一番多いのは実は自民党ではなくて、支持政党なしというところだということと同じ傾向が出ております。  朝鮮総連系でも民団系でもない。しかし、第三のグループというのはまとまっていないのかというと、まとまっています。皆さんは余り御存じないかもしれませんが、在日同胞の生活を考える会という大変市民的な名前ですけれども、この数が一番今多い、こういうふうに私は承知しているんです。  それはともかくとして、なぜ六十数万もの人が日本にいるのかという、つまり在日というものの起源は一体何なんだろうか。外務大臣、これはどういうふうにとらえておられますか。
  93. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 在日韓国人・朝鮮人の方々が我が国に定住するに至った経緯につきましては、国民徴用令のもとでいわゆる徴用のために朝鮮半島から来られた方々や、経済的な事情によって日本に出稼ぎに来られた方々等、さまざまな事情があったものと承知しております。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 一言で言えば、いわゆる強制連行なんです。これは東条内閣のときにはっきりと閣議決定をして、昭和十七年ですけれども、主として朝鮮、今では韓国ですね、当時の朝鮮人が圧倒的に多い。  中国の人は四万数千ありましたけれども、花岡事件なんかにあらわれているんですが、この数ははっきりわかる。四万数千、外務省が全部名簿を持っておられる。今から十年ほど前にそれが明らかになりました。  しかし、朝鮮系の人については余りにも数が多くていまだにつかめないというのが実態であって、今、外務大臣がおっしゃったとおり、一言で言えば強制連行で連れてこられた人の子孫が大部分を占めるという事実です。このことをひとつ政府は十分心にとめていただきたい。つまり、日本の都合で日本が強制的に植民地支配していた人たちを連れてきてしまった。その子孫だということになれば、その取り扱いをどうするかということについては格別の配慮があっていいのじゃないかと私は思います。  またもう一つ、余り知られていないことで、これは御質問しませんけれども、一九四八年、昭和二十三年四月の済州島事件、韓国ではチェジュ島事件と言っておりますが、そういう事件があって二万人を超す人が殺された。しかも、驚くべきことにこれはアメリカ軍が中心になって、韓国の警察も加わってそういう事件が起きてしまった。それは李承晩政権ができて、朝鮮半島が南北に分断するということが明白になった段階でそれに反対する人たちが蜂起した。当時のアメリカ占領軍としては、それは好ましくないということでそういう弾圧になったという。私は、昨年現地へ行って五十周年の会合に出てそのことを明白に知りました。韓国でもこのことは長いことタブーになっていた。つまり、アメリカ軍が関与しているということだと思います。  そういうことがあって、そのときに、近いですから、かなりの数の人が昭和二十三年という段階で、日本もまだ入国の手続等のことについて完備していなかったこともあり、結果的には密入国だろうと言われているんですが、かなりの数の人が日本に逃げてきたということがあります。したがって、在日の中に、数はそんなに多くはないでしょうけれども、比率からいえば少ないでしょうけれども、そういう人もまじっているかもしれないということも指摘しておきたいんです。  そこで、法務省にお聞きしたいのは、数が全体として減っているというさっきの局長のお言葉がありましたが、それは何が原因か。彼らの仲間では帰化だと言っているんです。現に帰化はふえているでしょう。それは間違いありませんか。
  95. 細川清

    政府委員(細川清君) 帰化者の数についてお尋ねでございますが、昭和二十七年四月二十八日に平和条約が発効した後から昨年末までに帰化した韓国・朝鮮人の方の数は二十二万三千八百六十一人でございまして、この間に帰化した人の総数が三十万一千四百九十五人ですから、帰化者総数の三分の二が朝鮮半島出身の方々であるということでございます。
  96. 田英夫

    ○田英夫君 法務省としては、つまり政府としては在日の人たちが帰化することは好ましいこと、あるいは推奨すべきことだと考えているんでしょうか。
  97. 細川清

    政府委員(細川清君) 帰化というのは御本人の申請に基づいて法務大臣が許可するものでございまして、法務省といたしましては、御本人の申請があった場合には、これはもともと平和条約発効前は日本の国籍であったという方々ですので、国籍法の帰化の要件を満たしている限りは帰化を許可するという方針でございますが、一般的に帰化の申請をされない方に対してこれを慫慂するということはいたしておりませんし、これからもいたさないつもりでございます。
  98. 田英夫

    ○田英夫君 今、在日の人たちの中で、さっき申し上げた一番大きな勢力になっている在日同胞の生活を考える会は、帰化に対して反対するという運動を起こしているということを念のために申し上げておきたい。自分たちは過去の歴史も考え、しかし日本に住んで日本の人たちと一緒に平穏に暮らしていたい、しかも国籍はあくまでも韓国であったり朝鮮である、こういうことを守りたいという、そういう考え方だということをやはり理解してあげる必要があるのじゃないかということを申し上げておきます。  もう一つ、もう時間がありませんが、最近、ニューカマーという言葉を彼らも使うんですね、新しく来た人という。こういう人たちを中心にして、ニューカマーの中には最近は中国の人が非常に多いわけですが、そういう人たちも含めて在日の人たちの中で、入管の窓口、つまり出張所、そこの自分たちに対する取り扱いが極めて不愉快だ、これは非常に常識化するぐらいにみんなそう言っております。  このことは御質問というよりも私は意見として申し上げておきたいんですけれども、さっきの在日の起源ということも考え、また最近は中国からいろいろな形で来る人が多いことも事実だし、犯罪がふえていることも事実でしょうけれども、そういう中で、まさか拷問禁止条約があるからとは申し上げませんけれども、今度この条約に正式に加盟するということを踏まえたときに、差別ということとさっき冒頭に申し上げた精神的苦痛を与えるということはいけないんだということを念頭に置きながら、窓口の接し方というものの実態をぜひ幹部の方に見きわめていただきたい。  私も実は数回、在日の人と一緒に行ってみたことがあります。あれは我々が見てもちょっとひどいなというような、そっと行ったのでどこだかも言いませんけれども、そっと行ったので係の人は気づかなかったと思いますが、もう少し人権を考えて丁寧にしてあげていただきたいということだけお願いして、終わりたいと思います。
  99. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 本日の議題であります二つの条約締結について承認を求めるの件については賛成でございますので、一般質疑をさせていただきます。  五月十四日以降、我が国の排他的経済水域に中国の海洋調査船及び海軍艦艇が計十九隻確認されている件についてお尋ねをいたします。  まず、海洋法条約で「排他的経済水域及び大陸棚における海洋の科学的調査は、沿岸国の同意を得て実施する。」ということが規定されています。  中国は我が国に同意を求めてきたんですか、お答えください。
  100. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) ただいまお尋ねの中国の海洋調査活動でございますが、これは日本と中国の間で排他的経済水域、また大陸棚もそうなのでございますが、境界の画定というものが最終的に行われておりません。  したがいまして、我が方は当然日中間の中間線ということを主張し、現にそういうことで現場でも対処しているわけでございますが、中国の方は必ずしも日本側の言う中間線を境界線と認めているわけではございません。そういう事情の中で、我が方、沿岸国の許可を一々とるということは事実として行っていないわけでございます。
  101. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 画定されていないというお話ですけれども、画定されていないようなところに入ってくるときには、民主、自由を尊重する国家は沿岸国の同意を得るのが普通ですね。何も得てこないというところに私は問題があると思うんです。そういう国とつき合うということ、それが問題なんです。それが同意を得て実施しているのならば、普通の国家なんです。そうじゃないところと今つき合おうとしているわけであります。  そこのところを、十九隻も来て、沖縄のすぐ近くですね、これ。何キロぐらい離れているんですか、それを答えてください。どのぐらい離れているところに来ているか。どのぐらい離れているところに十九隻いるんですか、簡潔に答えてください。時間がないので、長く答えられると困るから。はっきりわかっているんだから。一番近いのは何キロで一番遠いのは何キロか、それだけ答えてください。
  102. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 私どもが監視活動で発見したポイントで申し上げますと、これは先生御指摘のようにたくさんの船がございますので一概には申し上げられませんが、私どもが確認したところ、例えば近いところで言いますと、五月三十日に魚釣島の北西約八十キロというようなところで調査船を見ているというような例がございます。あとはおおむね二百キロあるいは三百キロというところで発見をしております。
  103. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 一番近いのは魚釣島から八十キロのところの船ですか。
  104. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) これは私どもが確認をし、そして海上保安庁の方にも通報をしておりますが、私どもがP3Cで確認をしたところで申しますと、五月三十日の今の位置にいたものだと思っております。
  105. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 我が国政府としてはこの中国の艦船の動きに対してどのような措置をされたのか、お尋ねします。我が国政府としてどういう対応をとられたのか。
  106. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 一言その前に申し上げますが、私どもは日本の中間線を主張して、直ちに調査を中止せよと言い、そこから即刻退去せよと言っておりますが、先ほど申し上げましたように、中国の方から見ますと中間線という境界線というものは画定していないわけで、沿岸国は自分だという主張になるわけでございますので、そこは相対的な状況があるということは申し上げておきたいと思います。  この事態に際しまして、我が方としては現場でこういう調査を即時中止するという要求をいたしました。また、東京そして北京で外交ルートを通じ、私が在京中国大使館の臨時代理大使を呼んで即時中止、撤退を申し入れ、またその翌日には北京で谷野大使から唐家セン外交部長に対しても同様の申し入れを行ったという経緯がございます。
  107. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 それで、中止するように申し入れて、その後どうなったんですか。相手はやめたんですか、やめないんですか。
  108. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 実態としては、一たん我が方の主張しております境界線から出たという事実がございますが、またその後戻ってきているということもございます。  我が方の申し入れに対して中国側は、先ほど私が申し上げましたような、向こうの立場はあるんだということを我が方の申し入れに対する反論として言っておりました。
  109. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 結局、我が方の申し入れを向こうは受け入れていないわけです。中止するように申し入れても一たん出ていってまた入ってきたわけでしょう。そういうことを繰り返しているわけですか。  日本政府というのは、こういう事件に対してどういうような考え方で行くのか。向こうはそうじゃないと言っている、うちはこれが排他的水域だと言っている、その中間線が画定されていないわけです。外交関係があるのに、相手が北朝鮮じゃないんだから、どうしてきちっと話をつけないんですか。
  110. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日中間の排他的経済水域及び大陸棚の境界画定問題につきましては、海洋法の問題に関する日中協議の中で話し合っていくこととしており、この点につきましては、昨年十一月、江沢民国家主席訪日の際に発出した共同プレス発表においても双方で確認されているわけであります。  現在、第二回協議の日程につき調整を行っているところでございますが、現実の問題としてなかなか進まない。一生懸命やっていきたい、こう思っております。
  111. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 防衛庁と海上保安庁は監視を続けているんですか。監視を続けているだけですか。
  112. 楠木行雄

    政府委員(楠木行雄君) 先ほど委員の方からお話がございましたように、この外国による海洋調査というのは我が国の事前の同意が必要であるというのが私どもの立場でございまして、このため、海上保安庁では、我が国周辺海域を哨戒している巡視船艇や航空機によりまして外国の海洋調査船を発見いたしました場合は追尾、監視を行います。そして、外務省等関係機関にも通報して密接な連絡をとるということとしておりますが、海洋調査活動を確認したときにはその活動の中止要求を行うなど、所要の措置を講じてきておるところでございます。
  113. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 排他的な経済水域と大陸棚というのは大体常識的にそこの沿岸国からどのくらいの距離だということ、我が国が中間線を引いているのは常識的な線じゃないんですか。中国側が排他的経済水域だと言い張るのはおかしいんじゃないんですか、常識的に国際社会の中で。
  114. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 中国側の主張がおかしいということを私ども、先ほど大臣がおっしゃった協議の中でずっと言い続けてきているわけでございますが、これは立場の違いで、今、先生おっしゃった大陸棚ということにつきましては向こうは大陸棚延長論というのをとっております。我が方は中間線論。  排他的経済水域の境界と大陸棚の境界とはまた違うのでございますけれども、当然どっちかが決まればどっちかに影響があるということで、中国側はそういうことも踏まえて中国なりの一つの線の引き方を主張している。その点については決着がついていないということは先ほど来申し上げているところでございますが、我が方はあくまで将来の姿は中間線で決まるべきだという立場でございますので、そこから入ってくるなということはこれまでも言い続けていると。  実は、正確に何年前かということは申し上げられませんが、三、四年ぐらい前まではこういうときには必ず向こうは、ああ、ちょっと入ったということで出るということをやっていたんです。すなわち、立場上日本の中間線を認めたわけではありませんが、実態としてはそれを尊重するということをやっておりましたが、最近は割とそれを無視して入ってきている。我々はそれについても、以前は境界線が決まってはいなかったけれども中国はそれをきちんと実態的には尊重して遠慮していたじゃないか、それによって不測の衝突等を防いできたんじゃないかと。最近はそれがだんだんこっちに入ってきている、それはけしからぬ、とりあえず境界線が画定するまで従来のようにきちんと対処せよということもあわせ言っている、それが現状でございます。
  115. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 私は、中国のやり方というのは非常に覇権主義的な、一般の自由で民主的な人権を尊重する国家でないということを外務省の方々はもっと明確に確認する必要があると私は思うんです。  それで、中国に対しての外交の仕方が非常によその国から見て弱腰だ、もう言いなりと言われても仕方のないような外交姿勢をとっておられる。それは日本のためだけではなくて、アジアの平和と安定のために非常によくないということを強く申し上げて、政府は断固たる処置をおとりになるように要望して質問を終わります。
  116. 山崎力

    山崎力君 まず、今回の拷問等の禁止条約なんですが、これはどなたか出るかと思っていたら最後まで残っていたためにあれなんですけれども、非常に時間がかかっているという点の理由。特に、巷間いろいろ言われてきた中で個人通報制度の諾否の問題があったのかというふうに言われていたんですが、その辺の事情について、ポイントを手短にお答え願いたいと思います。
  117. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) 我が国人権関係条約締結の際の検討状況につきましては先ほど大臣から御答弁したとおりでございますが、個人通報制度の受け入れの問題につきましても検討してまいりましたけれども、政府部内において、憲法保障する司法権の独立を含めて司法制度との関連で問題が生ずるおそれがあり、慎重に検討すべきという指摘がありまして、今後この制度の運用状況等について引き続き関係省庁とともに真剣かつ慎重に検討に努めていくということにしております。
  118. 山崎力

    山崎力君 後で時間があればまた伺いますが、今回の問題について、一番私が難しいといいますかわかりにくいのは拷問という意味での定義なんですね。特に肉体的なものは非常にわかりやすい、いろいろ言われているんですが、先ほど田先生もおっしゃったと思ったんですが、精神的苦痛というのが拷問に当たる、これは非常に難しい。  例えば、一般の刑事事件においても被疑者とされた人はある意味では精神的な苦痛を伴う取り調べを受けるわけで、これを全く無視すれば取り調べにならないというのもこれまた常識的なものだろうと思うわけです。自発的にやるということ以外に証拠能力がないとか、ちょっと精神的にプレッシャーをかけて証言を引き出そうとすればこれはかえって司法サイドの方が処罰対象になる。  言葉上は非常にいいんですけれども、こういう国際条約等の中でどれほど審議されてきているのか。その中身について、特に精神的苦痛に対する取り調べ等とそれから拷問のグレーゾーンというか境についてはどのような議論がなされたんでしょうか。
  119. 小松一郎

    政府委員(小松一郎君) 御審議いただいております条約第一条に拷問定義が規定されているわけでございますが、御指摘のように、この中で身体的なもののみならず精神的な重い苦痛を与える行為も拷問に当たるということにされております理由でございますが、それはこの条約ができます国際社会議論の中で、そういう身体的なもののみならず精神的な重い苦痛を与える行為も拷問に当たるということが国際社会共通認識となっていたわけでございます。  単に精神的な苦痛を与えるということだけではございませんで、やはり重い苦痛を故意に与える行為というのが拷問に当たるわけでございまして、例えば生命、身体、自由等に対して害を与えるということをあらかじめ告知する、暴行等によって精神的に重い苦痛を故意に与える行為を指すものと解しております。  重い苦痛を与える行為であるか否かの判断基準でございますが、結果として相手が主観的に苦痛を感じたか否かというのみではございませんで、その点も一つの要因ではございますが、それも含めまして個々の事案の具体的状況を総合的に勘案した上で、この重い苦痛を与えることに足りると社会通念上考えられる行為であったか否かが判断基準となると考えております。
  120. 山崎力

    山崎力君 ちょっと今のあれだと何が何だかわからない。  例示されたのは、暴行を加えて重い精神的苦痛、あるいは害を与えるぞとおどかす。これは、いわゆる肉体的なものではなくても、刑事犯罪的に国内法を見ても暴行、脅迫の罪に当たる行為をしてそれによって精神的な苦痛を与える。そんな精神的と言わなくたって、暴行、脅迫というのはそれだけで完全な刑事罰ですよ、これ。刑事罰の対象です。そんなのは例示になるわけがないんです。だから、本当に難しいところを国際的な規約としてどこまで検討されたのか、ちょっとよくわからないんですが。
  121. 小松一郎

    政府委員(小松一郎君) これは委員も御案内のとおり、大体の国家におきまして、我が国憲法においてもそうでございますけれども、拷問というようなことは禁止をされているわけでございます。  この条約は、単に拷問禁止するというだけではなくて、その実効性を確保いたしますために拷問に当たると広く国際社会で観念されているもの、そういった行為を行いました外国人に対しましても、それが外国で行われた行為に対しましても裁判権を設定するということによりまして、たまたまそういう公務員等締約国の領域の中に逃げてきたとか何らかの理由でやってきた場合に逃げ場をなくする、その締約国におきまして司法的な手続をとる、または引き渡し犯罪として引き渡しをするという国際的なネットワークを確立することによりまして拷問の抑止という効果に実効性を与えようというところに眼目がございます。  何が拷問に当たるかというところにつきましては、確かに委員指摘になりましたとおり、いわゆる犯罪構成要件として非常に精緻なものがあるわけではございません。  これにつきましては、この条約に入りましたら、例えば精神的な苦痛を与える拷問罪というようなものを新たに刑法の犯罪として定めるというようなことを義務づけられているというわけではございませんで、今御指摘がございましたように、例えば我が国でございますと、刑法上の脅迫罪、暴行罪、特別公務員暴行陵虐罪等の既存の刑罰法規で対処するということで足りるというのがこの条約を作成いたしましたときの大体の理解でございます。
  122. 山崎力

    山崎力君 今の答弁で、どういうことだというのは理解されたかというのは非常に疑問な御答弁で、申しわけないんですが要するに何が問題なのか。  主観だけではない、客観もあるよと。ところが、精神的な問題というのは個人差が非常に激しい、あるいは社会的、その国自体の成り立ちとかそういったものとの価値観の差も非常に強い。それを国際条約でこうやるということがどういう意味があるのかということに関して見れば、今のお答えで私の理解からいけば、そういうのをやった連中が何かの際にほかの国へ逃げていったときに、その人を処罰するためにこういう条約があるんだというふうな言い方であります。そうなってくると、趣旨説明その他にその辺のところというのは今まで全然出てこなかったように私は感じるわけです。  時間の関係もありますから一つ二つお聞きしておきますが、この問題からいって一番問題になるのは、海外に行った邦人、日本人がその地において司法的な取り調べ、例えば警察等に捕まった、犯罪に類する行為をしたという容疑で捕まったときに、私はどこどこの国の警察からかくかくしかじかのような取り調べを受けた、極めて重い精神的苦痛を味わったと言ったときに日本国政府は、この条約に参加した以上、そして相手国が、その当該国がこの条約に参加している以上、極めて厳重な抗議をしなければいけない。  ただそのときに、取り調べ権が我々にあるわけでもないし、単に邦人が調べを受けたと言っているだけで客観的な証拠もない、非常に実効性の薄い状況だと。むしろ大使館側の方のそういったものに対する能力、大使館の職員の方の能力的な面と相手方との力関係の方が重要になってくるかもしれない。何なんだこの条約はというのが正直な私の気持ちでございます。  そしてもう一点、もしそういった国があったとした場合、少なくとも相手国の政府側の司法当局、取り調べ当局が言っている説明よりも我が国の国民が、かくかくしかじかの拷問に等しい、あるいはまさに拷問の取り調べを受けたと言った場合、どちらを信用するか。少なくとも客観的に、日本人がそのような行為をされたと言った場合、日本としてどういう対応をとるのか、国家として。あるいはそういったものを国際社会の中にどう取り上げていくのか。  要するに、条約に違反して拷問をした、少なくともそういったものがあったと確信した場合、国際社会あるいは国連を通じてどのような強制力をその国にするのかというようなことが今回の条約である程度見えてきているんでしょうか。
  123. 小松一郎

    政府委員(小松一郎君) この条約のほかの人権関係国連条約もそうでございますが、条約自体締約国条約違反に対する強制力を伴う措置については特段の規定はないわけでございます。  他方におきまして、本条約におきましては、条約の誠実な遵守を確保するために締約国による報告が定期的に求められているということもございますし、また拷問の効果的な防止を図るための制度として、拷問禁止委員会による調査制度、あと国家通報制度及び個人通報制度等の規定があるわけでございます。  また、この条約を離れて国連等の場でどういうような実効的な条約実施を確保するような措置があり得るかという点でございますが、具体的なケースを離れて一般論以上のことを申し上げるのはなかなか困難なところもございますけれども、過去にも国連人権委員会国連総会等において一国の人権の問題、特に拷問の問題も含めまして議論されたこともございまして、また決議が採択されたという場合もございます。  これらの制度及び決議につきましては、必ずしもすべてが強制力を伴うものではございません。また、調査制度及び通報制度は義務的な制度ではございませんが、こうしたものの組み合わせによりまして、拷問を含めまして、人権状況に問題のある国に対して国際的な世論を高めて圧力を加えていくことが可能であるというふうに考えております。
  124. 山崎力

    山崎力君 長々おっしゃられましたけれども、一言で言えば精神的な条約で、ないよりはあった方が少しは何かのときに足しになるんじゃないか、このような感じとしか受けとめられないんですが。それはともかくとして、そういった条約を、その程度のものであるならば、これまで一生懸命いろんな検討をされてきて、世界の最後の方で批准というような形になるとすれば、そういった点での外交上の判断というのがちょっと間違っていたんじゃないかなという気がいたしております。  時間ですからそろそろやめさせていただきますが、確かに言葉上はそのとおりで、人権でそのとおりだと言っているわけですけれども、今おっしゃられたように、何かのときにはこれをもとにそういったことができるかもしれないと。しかし、現実の問題として、精神的に重い苦痛を与えるといった極めて、司法的、刑事政策的に捜査上、逆にもろ刃の剣みたいなことをやっていて、それの定義自体、実効性が難しいような中身になっている。そういった意味での一種の宣言的な条約だというふうにおっしゃられた方がむしろ国民は実態に近い理解ができるんじゃないかなというふうに私は思いました。御答弁は結構でございます。  そういったことであれば、そういった形でやればいいのではないかというのが私の感想ですが、大臣、何か一言、間違っているなら間違っていると、なければそれで結構でございます。
  125. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 委員がおっしゃったことが間違っているとは思っておりません。いろいろ問題があった中で、例えば国内的に時間がかかった一つの理由の中には、余り実効性という意味でメリットがないんじゃないですかという中で余り早く進まなかったという面もあったかに思っております。
  126. 山崎力

    山崎力君 終わります。
  127. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私は、この条約で取り上げておる「他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰」、ここのことにつきまして具体的例を挙げてお尋ねしたいと思いますので、本条約が適用あるのかどうなのか、お答え願えればと思います。  最初は、ウガンダかナイジェリアか国名ははっきりしませんが、アフリカのある国の出来事でありまして、一月か二月ほど前、何気なく私テレビを見ておりましたら、画面に広大なアフリカの草原が映し出されまして、その中に延々と地の果てまで鉄条網が引いてあります。さくがしてありまして、その中に何万とも何十万とも数えるおびただしい人間が閉じ込められておるわけですね。  そして、なぜかこれは日本のテレビ局に開放されているみたいでありまして、日本のテレビ局があらわれまして、ナレーターが、ここはこの国のある意味では刑務所であります。この国は二つの部族が相対立しておりまして、現に政権を握っている部族に反抗した部族の人たちがここに閉じ込められておる。その罪はと、こう言いますと、彼らが政権を握っていたころに現在政権を握っている部族の人たちに残虐な扱いをした、あるいはまた政権を失ってから反政府ゲリラ闘争をした、そういう罪でここに入れられているというふうに聞いておりますがという前提でと。  それから、そのナレーターが付近に集まっている囚人とおぼしき人たちに質問をしておりまして、一体ここにどれぐらい入っておるのかと、二年か三年も入れられておりますという答えでした。あなた方はどんな罪を犯したのか、いや一切何もしておりません、わけもわからずに連れてこられてここに入れられておるのでありますると、こういうことでした。それから、裁判はどうなっておるのかというのに対して、そのうち裁判をすると言われておりますが、全然そういうことも具体的には聞いておりませんということを口々に訴えておりました。  これは非文明国の、低開発国での出来事だといえばそれはそれっきりの話かもしれませんけれども、私はちょっと見逃しがたいなという思いがしております。外務省のことですから、当然こういう情報は収集しましてすぐ在外公館に下命して実情はどうなのかと、特にこの条約締結を控えておりますから、そういうことは指令しまして事実を調べたんだろうと思います。  こういう事例、恐らくあの状況は今も変わっていないと思いますけれども、これはこの条約でうたっている非人道的な、あるいは残虐なと言っていい取り扱いまたは刑罰そのものだと言ってもいいと思いますけれども、どうでしょうか。もし適用があるとすれば、今まで外務省として在外公館を通じて、もうそういうことはいいかげんやめたらどうだということを言ってきたのだろうと思いますし、これから特に条約が成立した後では厳しくそういうことを申し入れてもいいんだろうと思いますけれども、いかがなんでしょうか。
  128. 上田秀明

    政府委員上田秀明君) お尋ねがウガンダということでございますれば、その反体制といいますか、そちらの部族をそういうふうに裁くといいますか、そういうところでおりみたいなところに放置しているというふうな事実があるのかということにつきましては、具体的に現地にも照会しまして、例えば現地の国連難民高等弁務官事務所等にも照会いたしましたけれども、直接的に今御指摘になったようなことについては承知していないということでございました。  一般的にどういう扱いが残虐なあるいは非人道的な、または品位を傷つける取り扱い……
  129. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 一般論は結構です。  私はテレビで見たので、事実関係がはっきりしておる。しかも、日本のテレビ局までそこに立ち入って撮影をしている。それをあなた方が、さあよくわかりません、関係機関を通じて調査をしたがはっきりはいたしておりませんと。少しく無責任過ぎるんじゃないかな、こういう感じがいたしますが、しかしまあわかっていなきゃ仕方がない。  これからどういたしますか、もしこういう事例があらわれましたらば。恐らくこの国に対しても必要な財政援助ODAその他の援助が行われていると思うんですけれども、場合によりましたら援助を一時中断してでもそういうことはもうやめなさいときっぱり申し入れるのがこの条約の精神でもあろうかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣
  130. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 事実関係を承知しておりませんので何とも言えませんが、私は、やはり国内的にひどいことが行われているということは、ODAを供与する場合に考慮すべきことだと、こういうふうに思っております。
  131. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ある意味じゃ部外者の私が、テレビですけれども承知していることを外務大臣が知らないというのもちょっとおかしいなという気もいたしますけれども、まあ結構です。  それから、次の事例であります。これは中国での死刑の公開なんです。これもやはりテレビその他で私は知っていることなんですけれども、あそこでは公開処刑、死刑を公開するということもあるようであります。どういう罪が中国で死刑に対応しているのかわかりませんけれども、何かテレビを見ておりますと、国家の財産を常習的に盗んだ男である、まことにけしからぬということで死刑になって、それを公開処刑をするんだということで死刑犯人が引っ張られてきます。周辺に群がっている群衆はつばを吐きかけたり、わあわあどなったりしておる。さすがに処刑のところまではテレビには出ておりませんでしたけれども。  これなども、ここで言っている残虐なあるいは品位を傷つけるような非人道的な扱い。死刑をやるならやるでひそかにやることが今日的な常識ですから、これはいかがなんだろうかと。もしこういうことがこれからも中国で行われるようなことがあるとすれば、これまたやはり厳重に申し入れをしていいんじゃないかと。この条約の精神はそういうことを言っているんだろうと私は考えますが、いかがでしょうか。
  132. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 公開処刑制度については、一般論として言えば全く佐藤先生と同じように好ましくないと考えております。  他方、中国の刑事訴訟法におきましては、その第二百十二条において死刑の執行は公開しないものとされており、その徹底を求める通知が上級機関から出されていると承知しております。徹底を求める通知を出さなきゃいけないぐらいですから現実にはあるのかな、こうも思いますが、ともかく上級機関からはそういう通知を出しているということであります。  二国間の人権対話等を行っておりますから、そういう中で事実関係を取り上げることはあり得べし、こういうことだろうと思います。
  133. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 そういう対話の機会があるとすればなおのこと、言うべきことはきちっと申し入れた方がいいと思います。向こうもこちらから言っていけばよく考えてくれるんだろうと思いますので、何ら遠慮することはないと私は考えております。  それから次は、北朝鮮の拉致の問題でありまして、二十数年前、横田めぐみさん等が拉致された、その数は何十人にも及ぶんだといろいろ言われております。そして、彼らあるいは彼女らは今でも向こうに拘留されているというのか、とどめられておりまして、帰国を望んでも帰国できない状態にある。そもそも拉致をすること自体が残虐な取り扱い、非人道的な取り扱いそのものだと言ってもいい。  それから、そうして拉致されてきた人たちが帰りたいというのを帰さないといたしますれば、やっぱり許しがたい非人道的な取り扱いだ、この条約も適用があるんだろうと思います。拉致したのはもう既に前のことであっても、今現在、向こうの国が押さえておるとすれば、帰さないとすればやはりこの条約の対象だと思いますので、このこともきちっとやはり機会を見て北朝鮮政府に申し入れるべきだろう。これは私じゃなくても自民党の方々も皆こういうことを言っているわけですから、どうか大変重く受けとめていただきたいと思う。  今度、KEDOの問題が出てきまして、千億か二千億かを資金援助すると。これまた自民党の方々も言っておることですけれども、資金援助なんかする前に拉致問題を解決するのが筋道ではないか、こういう意見、私は全くそのとおりだと思います。人道問題は金で解決できることじゃありませんから、人道問題を解決する気がなければ資金援助なんということは私はやるべきではないとはっきり言ってもいいと思うんですけれども、いかがでしょうか、こういう考え方は。
  134. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) この条約云々をする前に、拉致なんということはもう許しがたいことでありますから、それは私たちは粘り強く言っているわけであります。  KEDOとの関係というのは、これは非常に難しい話でありますが、単なる援助であればやるはずがないことでありまして、日本は人道的な食糧支援までして、今差しとめている状況であるわけでありまして、このKEDOというのはやはり北朝鮮の核開発を防ぐ国際的な仕組みであると。  ですから、北朝鮮がけしからぬことをやったから逆に核開発を野放しにしていいかという話は、これは北朝鮮がそう要求するだけじゃなくて、国際的にもそういうふうな意見が非常に強い中で非常に難しい判断を迫られて、私はやはり日本の安全保障のためにこれは必要であった、こう考えております。  ただ、それは拉致の問題を軽く見るとかそういうことではないので、この拉致の問題というのは大変重く受けとめております。
  135. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 人様にただで金をやるのは、だまされてやるのか、おどかされてやるのか、あるいはくれてやるのか、いずれかなんですね、いろんな理由があるにいたしましても。そして、もう一方のことでは拉致問題を抱えておる。これは拉致問題をそのままにしておいて、金を援助をしていると言われても仕方のないことなので、引きかえになるような問題でもないと思います。  人道というのは今や本当の我々の最大の課題だ、こう言ってもいいわけですから、横田めぐみさんを初め、拉致された人たち、そのことについて、粘り強い粘り強いと随分前から粘り強くやっておりまして、さっぱり解決していない。こういうのを粘り強いとはもう日本語じゃ言わないんです、ただやっているというだけのことであります。一体これからどういうことになるのか、私自身本当にいても立ってもいられない思いがするわけでありますけれども、まあ仕方がない、どうか粘り強くやってください。三年、五年かかっても粘り強くあくまでも我が国の主張を貫いてください、お願いいたします。  それから、四番目でありますけれども、これは本条約の対象にはならないとは思いますけれども、精神は受け継がれていいんじゃないかと。ペルー事件なんです。ペルー事件といっても大使館が乗っ取られたケースではありませんで、そのころ、二年ほど前に早稲田の学生が二名ペルーで殺害されました。殺害したのはペルー国の軍隊であります。これは公務員等の残虐な取り扱いそのものだろうと思います。許しがたいことであります。この条約の成立後にああいうことが行われたら、もうこれは条約違反だと、明らかにそういうことを考えていいと思いますが、遺憾ながらあのときはそういう条約がなかったものですから。  そして、あの当時の橋本首相は、これは本人たちの不注意だからということを言って大変厳しく非難されました。日本国政府が旅行を承認しておいて、向こうで殺されたらおまえらの不注意だ、政府は関知しないと。そんなことは言っていられない、政府政府として厳しくもし本当に危険な国だとすれば注意をすべきだったわけですから。  そのことはさておきまして、その後、犯人である軍人たちは捕らえられまして裁判にかけられたと。刑事裁判の方は終わったようでありますけれども、この前も私はこのことを取り上げたんですけれども、民事裁判あるいは民事弁償の問題はまだ解決していないと私は聞いております。まさしく殺され損であります。  このことも私は昨年取り上げてお尋ねしておりますけれども、もし日本国にペルーの学生二名が遊びに来て、日本警察官や自衛隊員がちょっと来いといって職務執行に名をかりてどこかに連れていって殺して所持品を奪ったとすれば、これは大変な問題で、ペルー国を挙げて、アメリカの青年だとすればアメリカ国を挙げて日本に厳しい非難が来まして、日本は申しわけなかったといって犯人である警察官を処罰して済むことじゃありません。やっぱりしかるべき賠償法を講ずる、謝罪のほかに賠償を講ずる、これは当たり前のことなので。私は、そういう当たり前のこと、これは人間としての常識の問題だと、こういうことも申し上げまして、外務大臣は、まさしく国民感情からいえば常識そのものでありますけれども、国家賠償制度は遺憾ながらペルー国にない、そういうペルー国に対して金を払えということを要求するのは国際常識にかなうゆえんかどうかちょっと調べさせてほしいということを最後に答弁されておりました。  お調べになったと思いますので、国際常識から見て一体どういうことなのか。ペルー国というのは国家賠償制度を持っていないからその国に対して被害者補償をしろと要求はできません、やむを得ない、殺され損でありますと、こういうことになるのか。しかし、国民の生命、財産の安全を守るというのはこれは政府の第一の義務ですから、基本的な義務ですから、その国民が他国の軍隊に殺されたわけですね。それで、国際常識はそんなことを弁償するような常識はないからこれはこれ以上要求できませんということになるのかどうなのか、お教え願えればと思います、あえて教えてくださいと申し上げますけれども。
  136. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 前回のときに、尊敬する佐藤先生が、たしかまさにこれは裁判とかなんとかいったって難しいんだから、具体的な言葉は忘れましたけれども、国家がかわってやっていけるのは国際常識ですよ、こういうことを申し上げて、私はそうではないのではないかなと思いましたが、国家がそこまでやることが国際常識だとは私はそのとき思っていなかったんですが、先生がこうおっしゃるので、そうかな、ちょっと調べてみるといって、私は最も尊敬する数人の方に、国際常識があると思われる方に聞いてみたんです。  これは、私人が外国において損害をこうむった場合、補償等の請求については、一義的には当該事案に関連する事実関係等について最も詳細に把握できる立場にある当該外国の裁判所等において処理されるべきものとあるというのが一般的でありました。本件についても、そうした一般的な考え方を踏まえつつ対処すべきものと考えております。  現時点では御遺族が民事訴訟を提起されたとの連絡は受けておりませんが、提起される場合は政府として必要に応じ側面支援を行う旨これまでも表明してきており、御遺族の意向等も含め今後の動向を注意してまいりたい、こういうふうに思っております。  佐藤先生が問題にされるのは、まさに軍人が職務執行に名をかりてと、こうおっしゃったので、私はまだそこのところの事実関係もよくわかりませんが、やっぱり一義的には当該事案に関連する事実関係について最も詳細に把握できる立場にあるそこの国の裁判所でやるべきだと。確かに外国で裁判をやるというのは大変難しいことでありますから、日本政府としては、やる場合はお手伝いしますよということは御遺族の方たちには申し上げているところで、一般的にはそういうことではないかというのが、私は数人の方へ尋ねてそういう返事が返ってきて、私もそうだろうな、こういうふうに思っているわけでございます。
  137. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後になりますけれども、私の意見だけ申し伝えておきますけれども、全然納得できません。  殺害したのはペルーの一民間人じゃありませんで、軍人です。これはまさしくペルー国が日本の学生を殺害したと、こう考えてもいいわけです。国対国の問題なんですよ、これは。そんなことを言ったら、ニクソン大統領日本の民間人を殺害して、後はニクソンさんと日本の裁判の問題だと、こんなことは通用しないわけですから。国対国の問題として受けとめて、この条約ができ上がりましたらもう一度これをこの条約の精神に従って必要な損害賠償をしてほしい、やるべきだ、日本の遺族は大変困っておるということを申し伝えてほしいと思います。  以上であります。
  138. 河本英典

    委員長河本英典君) 他に御発言もないようですから、両件の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  139. 小泉親司

    ○小泉親司君 日本共産党を代表して、韓国との租税条約に対する反対討論を行います。  この法案に反対する理由は、これまでに四十四カ国と締結した租税条約と同様、以下の点にあります。  第一に、現地の安い労働力などを使って日本国内で活動する以上に大きな利益を上げる海外進出企業に対して、国内で保障する大企業優遇税制の範囲内での課税にとどめる必要はないと考えるからであります。  第二に、二重課税の排除の措置は、国内産業を空洞化させている日本企業の海外進出に対する税制面からの規制を実施できなくすることになるからであります。  第三に、配当に対する税率の上限の引き下げは税額控除の範囲を広げるものであって、大企業優遇税制を強化するものと考えるからであります。  第四に、韓国との条約でみなし税額控除を一定期間存続させていることは、優遇税制以上の特別利益を保障するもので賛成できません。  以上、反対の理由を述べ、討論を終わります。
  140. 河本英典

    委員長河本英典君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  141. 河本英典

    委員長河本英典君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国大韓民国との間の条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  142. 河本英典

    委員長河本英典君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 河本英典

    委員長河本英典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  144. 河本英典

    委員長河本英典君) 次に、軽水炉プロジェクト実施のための資金供与に関する日本国政府朝鮮半島エネルギー開発機構との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。高村外務大臣
  145. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) ただいま議題となりました軽水炉プロジェクト実施のための資金供与に関する日本国政府朝鮮半島エネルギー開発機構との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、我が国が直面する安全保障上の重大な懸念である北朝鮮の核兵器開発問題に対応するため、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の軽水炉プロジェクトを推進するとの観点から、我が国からKEDOへの同プロジェクトの実施のために必要な資金供与の枠組みを確立するための協定の締結につき、平成十年十二月以降協議、交渉を行いました結果、平成十一年五月三日にニューヨークにおいて、我が方大塚在ニューヨーク総領事と先方アンダーソン事務局長との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、KEDOの軽水炉プロジェクト実施のため、千百六十五億円までの円貨による貸し付けが日本輸出入銀行または同銀行を承継する国際協力銀行からKEDOに対して行われることとなること、我が国政府がKEDOに対しKEDOが支払う利子の総額に相当する額の贈与を行うこと等を定めております。  この協定の締結により、早期に軽水炉プロジェクトの本格工事が開始され、KEDOの枠組みへの信頼性を高めるとともに、我が国の安全保障及び北東アジア地域の平和と安定に資することが期待されます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
  146. 河本英典

    委員長河本英典君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会