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1999-06-01 第145回国会 参議院 外交・防衛委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月一日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十八日     辞任         補欠選任      脇  雅史君     亀谷 博昭君      小川 敏夫君     木俣 佳丈君  五月三十一日     辞任         補欠選任      山崎  力君     堂本 暁子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         河本 英典君     理 事                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 柳田  稔君                 高野 博師君                 小泉 親司君     委 員                 岩崎 純三君                 亀谷 博昭君                 佐々木知子君                 村上 正邦君                 森山  裕君                 木俣 佳丈君                 齋藤  勁君                 吉田 之久君                 続  訓弘君                 立木  洋君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 堂本 暁子君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外務大臣     高村 正彦君    政府委員        外務大臣官房審        議官       小松 一郎君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  東郷 和彦君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君     ─────────────   本日の会議に付した案件国際海事衛星機構インマルサット)に関する  条約改正及び国際移動通信衛星機構(インマ  ルサット)に関する条約改正受諾について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○投資促進及び保護に関する日本国バングラ  デシュ人民共和国との間の協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○投資促進及び保護に関する日本国政府とロシ  ア連邦政府との間の協定締結について承認を  求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 河本英典

    委員長河本英典君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月二十八日、小川敏夫君及び脇雅史君が委員辞任され、その補欠として木俣佳丈君及び亀谷博昭君が選任されました。  また、昨日、山崎力君が委員辞任され、その補欠として堂本暁子君が選任されました。     ─────────────
  3. 河本英典

    委員長河本英典君) 国際海事衛星機構インマルサット)に関する条約改正及び国際移動通信衛星機構インマルサット)に関する条約改正受諾について承認を求めるの件、投資促進及び保護に関する日本国バングラデシュ人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件及び投資促進及び保護に関する日本国政府ロシア連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  三件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 依田智治

    依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。  私は、本日提案の三条約案件については賛成立場で、後ほど基本的な点を一点ずつ質問したいと思います。その前に、週末に外務大臣ロシアにも行き、また北朝鮮関係ペリー米政策調整官訪朝核疑惑査察等も行われたという状況もありますので、今回の外務大臣訪ロの結果というか、新聞論調等を見ても領土交渉はなかなか進展しそうもないような感じですし、北朝鮮問題、いろいろペリーさんが行って話はしたけれども我が国に関連する拉致疑惑その他については何ら前向きな方向も出ていないという状況にあるようですが、このあたりについて外務大臣から冒頭に、状況と今後の我が国の対ロシア、対北朝鮮等対応についての方針をお伺いしたい、こう思います。
  5. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今回の私の訪ロロシアにおける内閣交代後であったわけでありますが、ステパシン内閣におきましても対日政策に変更のないことを確認し、また来るべき首脳会談首脳レベル対話への道筋をつけることができたと考えております。  エリツィン大統領の訪日につきましては、引き続き本年秋を念頭に置いて準備を進めることを確認し、また六月のケルン・サミット開催時に日ロ首脳会談が予定されていることを確認いたしました。  旧島民による四島自由訪問につきましては、大臣レベル交渉を得て、その実施方式について基本的に一致するとともに、実施のための所要の作業を早急に完了することとなりました。本件自由訪問については、早期実施のため引き続きロシア側との作業を鋭意進めていく考えでございます。  平和条約交渉につきましては、日ロ双方提案を踏まえた率直な議論を行いました。この問題はもとより難しい問題でありますが、今後の首脳レベルでの交渉に向け、引き続きクラスノヤルスク合意に基づき粘り強く交渉を進めてまいります。  その他の分野におきましても、あらゆる分野日ロ間の協力を推進するとの考え方に基づき、有意義協議を行いました。特に、今般私より退役原潜解体協力を含む軍縮環境保護のための日ロ共同作業イニシアチブを表明したところ、ロシア側評価を得たわけであります。  コソボ問題については、G8外相会合一般原則に沿って早期政治解決を達成すべく日ロ間でも協議協力していくことで一致いたしました。  今後の我が国対ロ外交に関しては、今回話し合われた今後の首脳レベル対話の日程も念頭に置きつつ、東京宣言及びモスクワ宣言に基づき、二〇〇〇年までに北方四島の帰属問題を解決して平和条約締結し両国間の関係を完全に正常化するよう引き続き全力を尽くしていく考えでございます。  それから、五月二十日から二十四日まで行われた米国技術専門家チームによる北朝鮮金倉里施設訪問の結果、この施設建設が未完成であり、その地下の部分は大規模な空のトンネル施設であることが判明をしているわけであります。米国政府は、今後さらに技術的な分析を行った上で報告をまとめる予定であるとしており、少なくとも現時点において、米国疑惑が払拭されたとの結論に至っていないものの、北朝鮮合意された枠組みに違反しているとの結論に至る材料も有していないと承知をしております。ペリー北朝鮮政策調整官は、今般の訪朝において、合意された枠組みを含む既存の米朝間関係を維持することを双方が確認するとともに、同調整官が検討中の包括的かつ統合されたアプローチ基本的な方向性説明したものと承知をしております。  我が国政府としては、韓国とともに包括的かつ統合されたアプローチを全面的に支持しており、抑止と対話双方をバランスよくとることにより、対応する基本方針もと北朝鮮側対話の扉を開くよう引き続き粘り強く働きかけていく考えでございます。  また、今回のペリー調整官訪朝時にも、合意された枠組み重要性が確認されましたが、我が国としては、合意された枠組みを踏まえて進められているKEDO軽水炉プロジェクトにおいては意味のある財政的役割を果たす考えであり、そのために今般KEDOとの資金拠出協定国会提出しているところであり、これについては、委員各位の御理解と御協力をお願いしたいと思います。
  6. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。  ロシア情勢考えると、大統領の健康不安、それから下院議員選挙も年末にあるようですし、また来年には大統領選と、また国内政治経済的に非常に不安定というようなことも考えると、領土問題でなかなか譲歩できるような状況にないのはわかりますが、領土問題の解決というのがいずれにしても日ロ関係を飛躍的に増進させる基本でございますので、今後とも粘り強い外交を展開していただくようお願いする次第でございます。  北朝鮮についても、我が国という立場に立った場合には何ら進展がない、こういう状況でございますし、また後ほどKEDO審議等もありますので、その場合に議論を譲りまして、きょうはこの点でとどめたい。  あと、提案されておる条約案件について、一点ずつお伺いします。  まず、投資保護協定ですが、これは現在五カ国と締結しておって、今回バングラロシア。私も今回勉強をしてみて、一番我が国投資等重要性のあるASEAN等ではまだ一本も締結されておらぬ。またそれぞれの国の事情もあるんでしょうが、恐らく進出する企業からは要望も強いんじゃないか。  何でASEAN等々はおくれているのかという点と、こういうぐあいに相手国が希望したところとは結んでいるというような感じもなきにしもあらずのような感じも受けたんですが、この協定を結ぶ基本方針や基準みたいなのは何かあるのか、外務省側から御報告をいただきたい。
  7. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 投資保護協定締結は、海外で活動を行う我が国企業投資財産及び事業活動を法的に保護し、投資受け入れ国投資環境整備と相まって我が国からの投資促進するとともに、我が国からの投資を通じて投資受け入れ国経済発展に貢献するなど、締約国双方にさまざまな経済的利益をもたらすものでございます。  このような意義を有する投資保護協定締結について、政府といたしましては、我が国企業の意向、相手国からの締結要請の有無、相手国外国資本受け入れ政策を含む投資環境整備状況相手国との貿易投資関係及び政治関係、WTOなどにおける国際的な投資ルールに関する議論状況などを総合的に検討した上で、協定締結意義が認められる国との間では積極的に締結に向けた協議を行っていく考えでございます。  ASEAN諸国につきましては、一九八〇年代初めにマレーシア、フィリピン、シンガポール、タイとの間で投資保護協定締結のための協議を行いましたが、協定基本的な内容について意見が一致しませんでした。締結に至らなかったわけでございます。他方、政府は現在、ASEAN加盟国であるベトナムを初め韓国、サウジアラビアなどの国々との間で協定締結に向けた協議を進めております。  現在の状況はそういうところでございます。
  8. 依田智治

    依田智治君 投資環境というのはグローバル化し、いろいろ複雑だと思いますが、企業要望も踏まえ、また相手国状況等も踏まえつつ、着実な安定的な環境整備するということは大変重要なことだと思いますので、今後とも御努力のほどをお願いしたいと思います。  最後に、インマルサット条約改正関係、これは言うならば国際的民活かなということで理解しておるわけですが、これからますます競争等も激化する衛星通信分野、そういう面で、今度新しくつくる会社というのは、採算性は維持しつつ、かつ従来インマルサットでと言われているように海上遭難とか安全に関する通信業務を引き受けながらやっていく、採算性公共性を両立させながらやっていってもらわねばならぬわけですが、そういうことが可能なのかどうか。可能にしてもらわなきゃならぬわけですが、これに対する我が国のかかわり、このあたりはどんなぐあいになっているのか、この点をお伺いしたい。
  9. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 衛星通信分野では、独自の衛星を使用してサービス提供を行う民間企業の参入により競争が増大しつつあるわけでございます。今回の条約改正は、インマルサットがこのような情勢の急速な変化に対応することを目的として、インマルサットの所有する衛星やその業務民間会社に移管するものであります。  すなわち、新たに設立される会社は、政府間組織である現在のインマルサットよりはるかに柔軟に資金調達を行うことができ、一般通信業務の拡充を通じて財政基盤を強化することが可能となります。その結果として、海上における遭難及び安全に関する通信のような公的業務を安定的継続的に提供していくことも可能になるというのが、今回の条約改正に際してのインマルサット条約締結国の一致した考え方であって、我が国としても会社採算性業務公共性とは十分両立可能である、そういうふうに考えております。
  10. 依田智治

    依田智治君 我が国の場合はKDDがこれに参加していくという形になるんですか。
  11. 小松一郎

    政府委員小松一郎君) 現在、インマルサットKDD関係でございますけれどもKDD運用協定の当事者、運用体として通信業務をやっております。この改正が成立いたしまして、機構業務が新たに設立されます民間会社に移管されますと、KDD会社と契約を結んで、実態的には今行っているような活動を継続していくということになると考えられます。
  12. 依田智治

    依田智治君 いずれにしても、採算性公共性という面で両立し、しっかりした機能が果たせるように、我が国としても関心を持って継続的に努力していっていただく必要があると思います。  以上で終わります。
  13. 齋藤勁

    齋藤勁君 高村外務大臣ロシア訪問大変御苦労さまでございました。  私どもの会派も本委員会提案されています条約三件とも賛成をさせていただきます。また、ロシアあるいはインドネシアの選挙、そして東ティモール問題につきまして、何点か今日的視点に立ちましてお尋ねさせていただきたいと思います。  最初に、条約関係で一点お尋ねしたいんですけれども投資促進及び保護に関する日本国政府ロシア連邦政府との間の協定でございますが、一つ気になりますのは、ロシアとの協定発効見込みをどういうふうに見られているのか。発効見込みについてお尋ねしたいと思います。  さまざまな国内政局の動向があろうと思いますけれども議会承認とか発効の遅延が懸念されるわけでございます。アメリカもロシアとの協定は九二年六月に署名を済ませております。しかし、国連貿易開発会議の九八年の資料によりますと、いまだ発効には至っていないということで、協定ができても実際に動かない、実際の効力を発揮しないことは言うまでもないと思いますが、外務省としての見通しについて、お尋ねしたいと思います。
  14. 西村六善

    政府委員西村六善君) ロシア側におきまして手続が若干おくれているということは事実でございます。この協定自身は、そもそもロシア側よりぜひ日本と結びたいという提起があって、私どももその趣旨に賛同いたしまして準備を重ねてきたわけでございまして、今回、外務大臣ロシア訪問いたしました際も、外務大臣自身よりその点を指摘いたしまして、ロシア側準備を急ぐように要請をいたした次第でございます。ロシア側は、できるだけ早くに議会への提出準備を進めるという説明をいたしておりました。  今後も引き続き、ロシア側早期措置手続を行うように督励といいましょうか、要請をしていきたいというふうに考えております。
  15. 齋藤勁

    齋藤勁君 今、ロシア側からの強い要請と言われましたけれども我が国経済界からも基盤をきちんとしてほしいという要望がかねがねあったと思いますけれども、その点も触れておくべきではないかと思いますが、いかがですか。
  16. 西村六善

    政府委員西村六善君) 先生おっしゃるとおりでございます。  日本側におきましても、もちろんその必要性感じていたわけでございますし、現在も感じているわけでございます。進出しています多くの日本企業ロシア側法制度整備を強く要請しているという状況は現在においても変わらないわけでございまして、もとよりロシア側から要請があったことは事実でございますけれども、先生今おっしゃるとおり、日本側におきましても強い利害関係を持っている問題でございまして、両者の利害は一致しているという状況でございます。
  17. 齋藤勁

    齋藤勁君 北方四島問題についても何点かお尋ねしたいんですが、その前に、なかなかロシア政局のこれからを占うというのは難しいことではないかという気がいたします。ただ、はっきりしていますのは、十二月に国会議員選挙があり、来年大統領選挙がある、こういうスケジュールが明らかになっています。そしてまた、ステパシン内閣がスタートしましたけれども、第一副首相任命をめぐりまして、任命したけれどもまた交代をする、一年間に三回も内閣交代すると。日本もいろいろ世界から言われますが、ロシアほどひどくないわけであります。そしてまた、この秋にエリツィンさんに訪日してほしいという小渕総理からの親書もということですが、健康状態ももうひとつはっきりしない不安な状況があると思うんです。  そういう点で言いますと、私は前にもこの委員会で指摘させていただいたことがあるんですが、平和条約交渉加速化ということで、非常にエリツィン大統領と前橋本総理、そして今小渕総理ということで友好関係を築いていますが、外務大臣が今回訪問した意図といいましょうか、多分今の小渕内閣では、ともかく年内に訪日していただいて平和条約交渉を明確にして早く決着をつけたい、こういう真意があるのではないかなと思います。  もう一方で、ロシア政局が非常にこれから混乱をしていくのではないかという危惧がありまして、元も子もなくなってしまうのではないかというような、私はある意味では極端なおそれもあるような見方をしているんです。  外交でよく一元外交二元外交多元外交とありますが、ロシアの十二月の選挙結果を見なきゃわからないんでしょうけれども、どういうふうにこれから日本として、年内ということは射程距離にあるんですけれども、少し中期的、長期的にロシアとどうおつき合いをしていくかということについて、外務大臣としてどういう基本的な考え方、スタンスを持っておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  18. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 地理的にも非常に近い国でありますから、日本にとってロシアが安定した国、繁栄した国になることは日本自身にとっても利益だ、こういうことが一つあるわけで、そしてロシアが民主化するあるいは経済の改革の努力をする、こういうことは日本政府として支えていかなければいけないということが一つあります。  それと同時に、四つの島の帰属の問題。これは両首脳間で二〇〇〇年までに東京宣言に基づいて、東京宣言に基づいてということは四つの島の帰属の問題をきっちりさせて平和条約締結させるという、こういう両首脳間の合意があるわけでありますから、その合意に基づいて私たちは、いろいろ難しい状況があることは十分承知はしておりますが、最大限の努力をする、こういうことだと思うんです。  ロシア内政については、余り他国の内政について日本国政府として言うことは差し控えたいと思いますが、一つ感じていることは、大統領というのは力があるんだなということ、プリマコフが解任されてから、少なくとも多くの人が予測したよりは混乱しない方向に進んでいるのではないでしょうか。安定している、決して超安定とは言いませんけれども、多くの人が予測したのと比べれば安定の方向に進んでいる。そういうところにやはり、私たち東京宣言に基づいて平和条約締結するということをきっちり約束されたエリツィン大統領の力はあるのかなと、こういう希望も持っているわけでございます。
  19. 齋藤勁

    齋藤勁君 帰られたばかりですから、ロシア政局中身について、私も大統領権限というのは強いという認識ももちろんないわけじゃないんですけれども、そう逆なことも言えないなと思うんです、帰ったばかりで。  私は逆に、議会の方も何度も内閣承認するのも煩わしいということで、エリツィン後についてある意味ではもうスタートしているというような、これは個人的な見通しでございますけれども、どうもそんな気がします。病気とか何かということは別にしまして、クレムリン、エリツィン大統領を取り巻く汚職問題も国内では非常に大問題になっているということです。  国と国との交渉ですから、大統領が変わってもこれは継続していくということ、今ステパシンさんになってもロシア日本との関係は変わりませんよということだと思うんです。  ただ、大統領権限が強いだけに、エリツィンさんはもう次は当然出ないと思うんですけれども、その後の大統領がどうなるかということは少なくとも正常な継続じゃないんじゃないかということで、政変と似たようなバトンタッチをしていくようなそんなときに、私は今、日本の対ロシア外交というのは大変難しいと思うんですけれども、今の対応で果たしていいんだろうかと非常に気になるところでございます。  今ここで長時間議論しても始まらないと思うんですけれども、一つ具体的に、今回訪ロされました中身として歯舞諸島渡航対象に加えられました。ビザなし交流の対象が広がったわけですけれども、この夏にも実施をしたいというのがどこかの報道に出たと思うんですけれども、具体的な時期とか対象島民の方々はどの程度見込まれるのか。外務省としてのお考えを、お尋ねいたします。
  20. 西村六善

    政府委員西村六善君) 旧島民によります四島に対します自由訪問のことを御質問いただいたと思うのでございますが、この問題につきましてロシア側と話をいたしまして、一応実質的な合意に達したわけでございます。  主な内容といたしましては、このスキーム、枠組みに基づきまして訪問をする対象者といたしましては、一九四五年末までの期間におきましてこの四島に居住しておられた日本国民並びにその配偶者と子供ということにいたしております。それから、おっしゃられます歯舞群島への訪問が可能になりますように、若干の手続的な容易な措置を検討してロシア側合意いたしたわけでございますけれども、複数の通過点を設けることによりまして遠回りをせずに歯舞群島に行けるような仕掛けをしているわけでございます。  できれば、ことしの夏ぐらいにも第一陣がこの枠組みに基づきまして訪問できるように努力をいたしたいと思いますけれども、この点につきましてはロシア側とさらに協議をする必要がある状況にございます。
  21. 齋藤勁

    齋藤勁君 ぜひ詰めていただきまして、実現に向けて努力をいただきたいというふうに思います。  それから、先ほどの御答弁の中でも、ロシア等の老朽化した原子力潜水艦解体処理、この資金援助等について話し合われてきたということを言われております。これをもう少し具体的にお尋ねしたいと思うんですけれども、具体的なこれからの進め方、今回合意した内容について詳細を御説明していただけますか。
  22. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 極東におけるロシア退役原子力潜水艦の安全な処理及び廃棄は、軍備管理軍縮観点に加え、環日本海地域環境保護観点からも国際的に重要かつ緊急の課題であると認識をしているわけであります。  このような認識から、我が国は現在ウラジオストク近郊における液体放射性廃棄物処理施設建設協力を行っており、これが完成すればロシア退役原子力潜水艦から生ずる液体放射性廃棄物処理に大きく貢献するものと考えております。そして、従来の協力を強化すべく、今後の原子力潜水艦解体の推進において重要な地位を占める幾つかの具体的なプロジェクトについて調査を行うことで、今般、ロシア政府との間で一致したところでございます。これらを含めて非核化支援軍縮、不拡散分野の新たなイニシアチブとして、今回の訪ロの際に軍縮環境保護のための日ロ共同作業を発表して、ロシア側からも高い評価を得たところでございます。  今回の我が国イニシアチブを踏まえ、今後引き続き原子力潜水艦解体支援の実施に向け鋭意作業を行っていく考えでございます。
  23. 齋藤勁

    齋藤勁君 外務省からいただきました資料によりますと、既に九四年三月までに核兵器廃棄協力に関する二国間協定締結して、総額百十七億円を日ロあるいはウクライナ、カザフスタン、ベラルーシ等、日本との関係委員会に拠出をしていると。今回の原潜の解体処理に関しては、この拠出をしている中から支出をするという理解でよろしいのか、そして具体的にはどの程度の金額を見込んでいるのか、お尋ねいたします。
  24. 西村六善

    政府委員西村六善君) 今、先生がおっしゃったような御理解で正しいわけでございますが、現在拠出しましたものの残額が三千五百万ドル程度ございます。それによりまして、新たな幾つかのプロジェクトを実行するという計画にいたしているものでございます。
  25. 齋藤勁

    齋藤勁君 今回はプロジェクトスタディーを行うということで一致した段階ですから、今後のスケジュールについては、ここで出てくるのかもわかりませんけれども、年限というのは念頭にございますか。
  26. 西村六善

    政府委員西村六善君) 新たなプロジェクトとしてスタディープロジェクトは三件あるわけでございますけれども、具体的にどのようなタイムテーブルで行うかということはこれから協議しなければいけない問題でございます。  ただいま大臣が説明いたしましたとおり、この問題は環境との関係から非常に重要な問題であるわけでございまして、できるだけ早くに研究が進むようにロシア側とは協議を進めたいというふうに思っております。
  27. 齋藤勁

    齋藤勁君 ロシア問題であと一点だけ。  外務大臣、コソボ問題でロシア首脳との話し合いの中で何か具体的に触れられた点、報告していただけるようなところがございますか。
  28. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 外務大臣との話で一致した点は、G8で決まった七つの一般原則に基づいて政治解決を図ろうということと、そしてこれからも日ロ協力していこう、そして今のロシア側の調停努力日本政府としては高く評価する、そしてそれを支持していく、こういうことを両方で話し合ったということです。
  29. 齋藤勁

    齋藤勁君 ありがとうございます。  次に、インドネシアが今選挙に入っているわけですが、四十四年ぶりということで、大変重要な選挙戦ということです。いろいろ聞きますと、ある日はこの政党、ある日はこの政党というので、日本国内選挙とちょっと違うので、大変国によって違いがあるなというふうな思いと同時に、公正な選挙が果たして実施できるのだろうかということや、そこで再び暴動等が起きては困るわけでありまして、政府として、このインドネシアの選挙に対してどういう取り組みをされているのか、お尋ねいたします。
  30. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) まず、インドネシア情勢でございますが、六月七日の総選挙投票日に向けて、五月十九日から六月四日までの間、総選挙に参加する四十八政党によるキャンペーンが行われているわけでございます。  主要政党はこの総選挙を平和裏に実施するということで一致しているという報告を受けております。最西端のアチェ特別州の一部では選挙妨害の動きを示している住民と治安部隊の衝突事件の発生が報じられていますが、今のところ、総選挙実施を妨げる暴動等目立った問題は発生していない模様でございます。  我が国としては、今回の総選挙が自由、公正かつ円滑に実施されることは、ハビビ大統領もとで進められている政治改革に資するものであると考えており、総選挙の結果がインドネシア国民及び国際社会の双方に受け入れられるものとなることを願っているわけでございます。  それで、日本政府として二十名程度の選挙監視団を派遣することを決定いたしました。団長が枝村元インドネシア大使ということで、外務省、自治省その他数省庁にまたがるそういった専門家を中心とする選挙監視団を派遣するということでございます。
  31. 齋藤勁

    齋藤勁君 今、大臣に最後に触れていただきました選挙監視団は、具体的にもう出発されているのか、これからインドネシアに行かれるのか。もう一つ、日本は二十名の監視団ですけれども、他の国々のこれら監視団に対する対応、おわかりの範囲でお答えいただきたいと思います。
  32. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 三日に本邦を出発いたします。その日のうちにジャカルタに着いて、その後ジャカルタ周辺、メダン、ウジュン・パンダン等に分散して投票の視察等を行い、約一週間の予定でインドネシアに滞在をいたします。
  33. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 日本以外の国の対応でございますが、米国も三十名から四十名の監視団、豪州は二十名と聞いております。  我が国の監視団、先ほど大臣から御説明ございましたが、民間の方から公募をさせていただいて十五名、それに各省の担当官がついて総勢二十名、こういう構成でございます。
  34. 齋藤勁

    齋藤勁君 我が国の監視団の任務はどういうところに予定されているんですか。
  35. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 御案内のように、インドネシアは人口二億の大変広いところでございますので、余り各地に分散してというよりは、重点地区、投票所に配置をされる格好になりまして、そこで投票所の状況を監視するというのが主たる目的というふうに理解しております。
  36. 齋藤勁

    齋藤勁君 インドネシアの選挙結果というより、本当に民主的に行われるかどうかということが、結果は国民自身が選択することですから、民主的に行われるということで非常に注目をしております。  さてもう一つ、民主的に行われるかどうかというので、非常に今これは世界各国でも注目をしておりますけれども、ことしの五月五日にポルトガルとインドネシアが合意文書に調印いたしました。東ティモールの直接投票、八月八日にインドネシアの一州として自治を東ティモール人が受け入れるかどうかという投票が行われるわけでございますけれども、既に我が国外務省ほか警察庁とか各省庁から成る調査団が実際に現地に行かれてもう帰国されていると思いますが、この概要について、お尋ねいたします。
  37. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 我が国は東ティモール問題の平和的解決を望んでおりまして、国連関係各国と緊密に連携しつつ、できる限りの支援を行いたい、こう思っております。  このような観点から、今般東ティモール人の直接投票の円滑な実施を支援するために、国連の信託基金に約一千万ドルを拠出することといたしました。そして、直接投票実施の際のさらなる貢献につきましては、総理から、今般の調査団の調査結果を受けて、現地状況や国連の動向を踏まえ、我が国としてどのような貢献が行えるのか、関係省庁で緊密に連絡をとり検討するよう指示を受けて、現在鋭意検討を進めているところでございます。とりあえずそういうことでございます。
  38. 齋藤勁

    齋藤勁君 大臣、急ぐと思うんですよ、これからの取り組みについて。その報告中身を分析していただいての対応策だというふうに思いますが、そこら辺の具体的なスケジュールについてはどういうふうにお考えですか。対応策を出すスケジュールについて。  言ってみれば、インドネシアの選挙監視団の方は既に二十名ということで、もうあしたかあさってに出発をされるわけでしょう。この東ティモールの方も、後ほどお話をしますが、外務省の方でも御案内だと思いますが、武装集団によります大変異常な状況になっていて、非常に予断を許さないと思います。日本を初め各国、あるいは国連もイニシアチブをとりまして対応しておりますが、日本対応策については私は急ぐべきだと思うんですが、その点も含めてお尋ねいたします。
  39. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 調査団の報告、詳細が必要であればアジア局長から答弁させますが、ごく簡単に言うと、予測したよりかなり危険だねと、こういうような感じでございます。一方で、インドネシアは日本とも大変密接な関係のある国でもありますし、人的貢献を何とかしたいということと、その危険性と、どうするかということで、今、総理の御意思も積極だと思いますので、そういう観点から、できるだけ早くということで、その危険性との見合いで今検討をしているところでございます。  今、申しわけないんですが、いついつまでという具体的な日時を示すことはできませんが、できるだけ早くという気持ちでやっているということでございます。
  40. 齋藤勁

    齋藤勁君 総理の積極的な対応ということで御発言いただきましたので、ある意味では大変勇気づけられるんですが、局長、ちょっと調査団の行かれた中身について、限りある時間ですけれども報告の概要についてお聞かせいただけますか。
  41. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 調査報告の詳細、ちょっと今手元にございませんが、大臣がおっしゃいましたように、現地の東ティモールで日本が国連とともにどういう貢献ができるか、そういう問題意識で現地に参りまして、非常に多数の関係者と話をし、また現地の当局者や警察の説明、そして案内でいろいろな各地を視察して帰ってきたわけでございます。  これは、先生御指摘のように、独立派と統合派と申しますか併合派、これはもう本当に必死にしのぎを削っている状況でございまして、武装集団も中に存在するという状況下で、決して治安状態が落ちついているというような状況ではない、こういうようなことでございますけれども、もちろん場所にもよりますし、それから日本が貢献するという観点からはどういう部署でどういう役割を担うかという視点もございますので、そういう点から調査団なりに調査をしてまいったということでございます。  また、タイミングの点については、これも大臣御答弁になりましたが、国連の方は割と急ピッチでいろんなことをやっております。そしてまた、新しい要素に応じて新しい施策を打ち出したりしておりますので、それにおくれることのないようにきちっと日本政府としても対応していく必要がある、こういうふうに考えているところでございます。
  42. 齋藤勁

    齋藤勁君 問題は、武装集団が両方あるということ、両方なければ武装衝突をしないということですが、いわゆる衝突ということではなくて、インドネシアの方がいわゆる独立派に反対する立場の中で、この準軍隊的な組織をインドネシア軍の方が支援をしているということについて、さまざまな各種の報道とか証拠とか写真とか映像からも明らかなわけでありまして、この問題につきましてはオーストラリアの外務大臣も非難をしているわけであります。  私は、先ほど外務大臣の御答弁の中で、小渕総理日本として何ができるのかということについて積極的に対応策をとりたいということで大変勇気づけられたという話をしました。やはり、この事実について目をそらすことはできないわけでありまして、オーストラリアの外務大臣が表明したからということではなくて、日本政府として事実を把握したならば、日本政府としての立場に立って非難するときは非難するということが私は大切ではないかというふうに思います。  いずれにしましても、インドネシア側がこの合意を遵守していくのだろうかということについては非常に甚だ不安でありまして、インドネシア軍内の対立も確かにあると思います。インドネシア軍の中に賛成派と反対派がいるわけで、そこの中の対立があると思いますが、この東ティモール問題、八月八日の投票ですから、何としても正常なうちに成功させたいというふうに私は思います。  そこで、国連での合意基本的に日本政府も歓迎をしているということでお話もいただいていますが、文民警察官が二百八十名程度派遣をされるということを聞いているんですけれども、治安の責任を持つインドネシア警察に果たして文民警察官二百八十名ということについて対応ができるんだろうかという危惧も非常にあるわけでありまして、多分、現地へ調査に行かれて非常に生々しい報告を聞きながら、どういう対応策をとるかということについて検討の対象になっているんではないかと思います。  現在のさまざまな状況を見ますと、インドネシア警察が基本的には統合派武装集団を抑えようとしていないということも明らかであり、そしてこのインドネシアの警察が統合派武装派集団の暴力行為を見逃しているということで、果たして文民警察官というのが防止とか阻止をすることができるのだろうかということがありまして、これは報告中身対応策にもかかわってくることですが、ここら辺の分析はいかがでしょうか。
  43. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 先生のお話にありましたような、軍のかかわり合い方ということは大きな要素になっておりますが、今回の調査団、いろいろ客観的に事態を見てくるということで、もちろん独立志向派の人たちからの話も聞き、そういう人たちの話の中には、今先生がおっしゃったような軍のむしろ統合派を支援するというような動きについての話もございました。  この辺はまさにインドネシア、東ティモールそのものの問題でございますので、余り我が方が判断をすることではないと思いますが、先生今おっしゃいました文民警察二百八十名程度ということで、一義的に責任を持っているインドネシア警察の活動というものがきちんとアドバイスをしながら対応していけるのかという御指摘については、国連の方もそういう問題意識を今持っているようでございます。先ほどちょっと申し上げましたように、国連の方も現地の事情、情勢の推移を見ながら、さらに必要な対応があり得るかどうか検討しているというふうに承知しております。
  44. 齋藤勁

    齋藤勁君 これは日本の新聞ですけれども、五月十六日付で、十五日に、インドネシアの外務大臣が東ティモールの独立派と残留派の指導者をバリ島のホテルに招いて、同国とポルトガルが調印した東ティモール自治合意と国連主導で実施される住民投票について両派と個別に協議をしたと、こういう報道がございました。  これを読む限り、双方でテーブルに着いて、そしてインドネシア政府の方は、国軍の役割を徐々に小さくして、警察が責任を持つようにしていくと、こういうことで話し合いが民主的に行われているというふうに受けとめたわけでございますけれども、実際は報道とは大分違って、独立派の人は一人しか参加していなかった。しかも、その人は武装集団の襲撃から身を隠さなければならない状態にあったということ、会議でも、オブザーバーとして出ただけで独立派組織から決定権を与えられてはいなかった。こういうことで、東ティモールのカトリック教会の方はバリ島ではなくてオーストラリアを会議の場所として提案したんだけれども、インドネシア政府の方はオーストラリアには独立派の東ティモール人が多いからということで拒否したということで、インドネシアか東ティモールならいいということで、いずれにしても再度この和解の会談を行うことを提案しているわけです。  真実をきちんとするということについては、日本外務省としても大変な努力をしなきゃならないというふうに私は思います。例えばオーストラリアでもカトリック教会がオーストラリアを会議の場所として提案したわけですけれども我が国も、例えば会議の場所として日本で行ったらどうかというような、インドネシア政府寄りであるかもわかりませんが、形式的には我が国は中立的だというふうに私は思いますが、ぜひ和平に向けてテーブルに着くというような、もし先ほどの小渕総理の積極的な考えというのがあるなら、和解のプロセスとして統合派あるいは独立派の指導者を日本に呼んで会議を持つということについて検討してもいいのではないかというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  45. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今、委員が御指摘になったように、既に幾つかの場所が候補になっているわけであります。そういう中で、今例えば東京がいいじゃないかといって手を挙げることが果たしていいのかどうかという問題もあります。ありますが、委員が御指摘になったわけですから、私も考えてみます。積極的に検討するというところまでまだ行きませんが、考えてみます。
  46. 齋藤勁

    齋藤勁君 時間ですから終わりたいと思いますが、一番最初にインドネシアの選挙のことを申し上げました。  長い間、ODAを中心にしながら、我が国として非常にアジアの中でも深いつながりを持ったインドネシアであり、インドネシア経済が立ち直っていくというためにも、この選挙を成功させたいということで、そういう意味では指導者もそうだし、私どももそう思っている。そして、インドネシアとポルトガルが合意をした八月八日の投票についても平和裏に行っていくということが大変私は大切なことだと思います。  我が国として、和平に向けて積極的にプロセスに関与しながら、これまでのいろいろな歩みはありましても、未来に向けて取り組んでいくという積極的な姿勢をとっていただきたいということを申し添えさせていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、ロシアの問題について、特に北方領土問題に関連してお伺いいたします。  外務大臣のただいまの発言で、エリツィン大統領は予想したより大統領の力はある、あるいは予想したよりも政局は安定しているのではないかという印象を持ったと言われていましたが、一面ではそういう面もあると思いますが、北方領土問題に対して思い切った判断を下せる、あるいはリーダーシップを発揮できるような力があるかどうかは私は疑問ではないかと思うんですが、この北方領土問題については、今回の訪ロで何らかの進展があったんでしょうか。
  48. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) まず、この領土問題というのは、やはり最終的には両首脳間でつけていただかないとどうしようもない問題で、私たちはその道筋をつけるために今一生懸命やっているわけであります。  まず、エリツィン大統領の訪日につきましては、引き続き本年秋を念頭準備を進めるということを確認したわけであります。その前に六月、ケルン・サミット開催時に日ロ首脳会談が予定されているということをさらに確認いたしました。  平和条約交渉につきましては、二月の外相会談に引き続いてイワノフ外相との間で日ロ双方提案を踏まえた率直な議論を行いました。エリツィン大統領の訪日に向けてさらに議論を深めていくことで一致したわけでございます。  この問題はもとより易しい問題ではないわけでありますが、今後の首脳レベルでの交渉に向けて、引き続きクラスノヤルスク合意に基づき粘り強く交渉を進めていく考えでございます。
  49. 高野博師

    ○高野博師君 報道によれば、高村大臣が、領土問題解決のかぎとなるのは北方領土の帰属の問題、これを解決することだというふうに迫ったと書いてありますが、この発言というのは川奈提言に基づいての主張でしょうか。そう理解してよろしいんでしょうか。
  50. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 東京宣言からそうなっているわけで、要するに平和条約締結のかぎは四つの島の帰属をはっきりさせることだ、こういうことは一度ならず何度か申し上げました。
  51. 高野博師

    ○高野博師君 川奈提案というのは、私の理解では日本側が最大の譲歩をした提案だと思っておりますが、これは、ステパシン首相が大統領が訪日したときにロシア側提案に対する日本側の回答がこちらを失望させないものであることを望むというような発言をしたという報道がありますが、この辺はいかがでしょうか。
  52. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) そういう発言もありました。ありましたが、また一方では、ステパシン首相の方から二〇〇〇年までに何としても平和条約を結びましょう、こう強く言われまして、私の方から東京宣言に基づいて二〇〇〇年までにぜひ平和条約を結びたい、こう言いましたら、わかった、紳士と紳士との間で約束ができたと、彼がそう言いましたので、私ははっきり東京宣言に基づいてとこう言いましたから、それは四つの島の帰属の問題を片づけてということが当然含まれているわけですから、そこだけとれば大変明るい材料でありますし、話の中でいろいろな話が交わされているということでございます。
  53. 高野博師

    ○高野博師君 相手側がわかったと言うのはどういう意味かわかりませんが、平和条約締結と領土問題は分離しようというのがロシア側の主張であると思います。これはもうエリツィン大統領国内事情あるいはリーダーシップの問題で、分離するという考え方を簡単に向こうが変更するとは思えないのでありますが、この辺の認識はどうでしょうか。  東京宣言に基づいてというのは日本側の主張ですが、ロシア側はそういうことについて全く今のところ受けている気配はありませんので、この辺はどうでしょうか。明るい材料とは私は思えません。
  54. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 東京宣言に基づいてというのは、クラスノヤルスクで両首脳間で合意されたことでありまして、その後も私とイワノフ外相の間で何度も何度もクラスノヤルスク、川奈の合意に基づいて交渉を進めていこうということは確認をしているわけで、東京宣言に基づいてというのが日本側の主張であって、ロシアはとてもそれをのまないなどという話では、少なくとも両外相の間でもう東京宣言はだめだと言われたこともありませんし、そういう状況でございます。
  55. 高野博師

    ○高野博師君 それまで強気な発言をされるのであれば、ぜひこの問題については責任を持って取り組んでいただきたいと思います。  これも報道によると、日本政府としては、反復は力だ、同じことを繰り返し言い続けるしかない、そういうことも政府高官が言っているようでありますが、それだけしかないというのでは本当に行き詰まるおそれも十分私はあると思うんです。本当は川奈提案も明らかにした上で北方領土問題も含むもっと包括的な対ロ戦略というのを練る必要があるのではないかと私は思っておりますが、もし何か所感があればお伺いします。
  56. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 平和条約の問題、これは東京宣言に基づいて四つの島の帰属の問題をきっちりさせて平和条約を結ぶという問題と、その環境整備と両方進めておりますし、それから、もっと広い意味で、ロシアの民主化あるいは市場経済が進むことは日本利益でもあると思って、そういった改革努力に対して協力をしているわけであります。それはそれとして、そっちは大きな面でやっていきますが、それと同時に、四つの島を片づけて、帰属をはっきりさせて平和条約締結するのをないがしろにするというわけには絶対いかないというのが日本政府立場でございます。
  57. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、ケルン・サミットに関連して二、三お伺いいたします。  アメリカ政府が日欧各国にヨルダン向けの公的債務削減を要請したという報道があります。これは、ヨルダンの経済的負担を軽減させて内政を安定させた上で中東和平を促進させるというアメリカの考え方に基づいてそういう要請があったということでありますが、この事実関係はいかがでしょうか。
  58. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日本政府としても、ジョルダンの政治的、経済的安定が中東地域の平和と安定にとって不可欠だと、こう認識をしているわけでございます。そして、ジョルダンの債務問題については種々難しい問題があることは承知しておりますが、このようなジョルダンの重要性を踏まえて、現在我が国としてどのような対応が可能か検討をしているところでございます。  アメリカ政府側は、今、委員が御指摘になったような意向を持っているというふうに承知をしております。
  59. 高野博師

    ○高野博師君 この同じサミットで、アフリカ等の重債務最貧国向けのODA、これについては一〇〇%その債権を放棄するという、それについての合意も見込まれているということでありますが、これはいかがでしょうか。その場合には何カ国ぐらいを対象にどういう基準でやるのか、お伺いいたします。
  60. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 重債務貧困国に対する債務救済問題につきましては、現在、ケルン・サミットに向けて国際的な債務救済措置枠組みを改善する方向で検討が進められているわけであります。我が国も先般新しい債務救済措置につき提案を行って、その中で国際的にその必要性が認められた債務国に対しては二国間ODA債権の一〇〇%削減を行うこととしているわけでありますが、この提案に基づいて積極的に協議に参加しております。  我が国としては今後も引き続き各国と協調しつつ本件に取り組んでいく考えでありますが、その際には、債務国側の自助努力重要性やモラルハザードの問題、負担の公平性等への配慮の必要性につき、引き続き各国に主張していく考えであります。  何カ国ぐらいを対象としているか等、詳細については政府委員から答弁させます。
  61. 大島賢三

    政府委員(大島賢三君) ケルン・サミットに向けまして重債務貧困国の債務救済に関する問題についての細部を今G7の事務当局の間で検討を進めております。  対象国、それから債務救済の措置が適用される基準等のいわば細部、詳細にわたる部分でございますが、悪魔は細部に潜むという表現がございますけれども、ODA債権につきましては一〇〇%の救済を図るという大筋についてはほぼ合意がございますが、その際の基準をどうするのか、適用の対象国をどうするのか、まさに今いろいろな角度から議論をされております。基本的には、この債務救済措置は一定の厳しい政策、構造調整を含む政策をすることが前提になっておりますので、そういった点をきちんと踏まえつつも、それではその国の負っておる債務が例えばGDPに対してどの程度の大きさであるべきか、それから外貨収入額、輸出額に対してどの程度の大きさであるべきかといったような点が細部にかかわる問題でございます。  そういうことで、現在のところはまだ国の数が幾らになるか、あるいは具体的な基準がどうなるかという結論は見えておりませんけれども、サミットの場に向けてできるだけ具体的な形でまとまるところまではまとめ切ろうということで鋭意検討が進められている状況でございます。
  62. 高野博師

    ○高野博師君 ヨルダンは中所得国ということで、この債務削減、債務救済については政治的な特例措置だということで対応を検討しているんだと思いますが、日本国内の経済不況あるいは失業率の増大等も十分考慮した上で、そしてまた中東和平の促進ということは我が国にとっても重大な国益にかかわる問題でもあるので、これは慎重に対応すべきだと思うんです。  九一年にポーランドとエジプトに対して政治的な特例措置をとったんですが、この場合どういう判断に基づいて行ったんでしょうか。
  63. 大島賢三

    政府委員(大島賢三君) ポーランド、エジプトに対します債務救済の措置は、一般的にはパリ・クラブという場で債権国が集まりまして救済措置を決定いたしますが、この二国につきましては湾岸危機の直後ということでございましたので、特にその影響が大きかった国に対しまして一応特例的な措置ということで五〇%程度までの削減措置を取り決めた経緯がございます。
  64. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、北朝鮮問題について二、三お伺いいたします。  ペリー調整官北朝鮮訪問については、訪朝の目的は達成したというような報告をされたようでありますが、ペリー調整官と金正日総書記との会談が実現しなかったという事実がありまして、これについては北朝鮮側国内事情あるいは北朝鮮側の対中国配慮等さまざまな理由があったと推測されております。このことから、韓国側は、南北対話とか日朝国交正常化交渉、こういう問題については楽観も悲観もできない情勢だと慎重にこれをとらえているというふうに報道されておりますが、日本政府はこの点はどういうふうにとらえているんでしょうか。
  65. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 今回のペリー政策調整官訪朝は、御案内のように、日米韓の対北朝鮮政策をまとめて向こうに説明するということで、調整官自身も述べておりますが、交渉をしに行ったわけではない。  したがいまして、ペリー調整官自身、北朝鮮側から前向きな反応であるとか即座に反応が返ってくるということは期待していなかったということをそもそも言っておられますので、私どもも、今、先生おっしゃいました韓国側の対応、これと基本的に同じように、今回即座に向こうからしかるべき対応が出なかったことはそれほど驚くことではないというふうに考えております。
  66. 高野博師

    ○高野博師君 同じく、ペリー調整官日本人の拉致疑惑について北朝鮮側に言及したと。しかし、北側から何の反応もなかったということであります。北側は当然何らかの言及をそこでするとは思えませんが、非常にこの問題についても現実は厳しいんではないかと私は思っております。ペリー報告書というのが近く出される、これで米朝の包括的な交渉も開始されるということでありますが、日本あるいは韓国交渉相手とすることについては一貫して北朝鮮は否定的ではないかと思うんです。  この点で一つお伺いしたいのは、我が国北朝鮮との交渉の中で、日本人拉致問題をいつも入り口に置いていると、日本は。これがなかなかうまくいかない一つの原因だ、交渉のむしろ出口にこの拉致問題を置くべきではないかというような議論もあるんですが、この点についてはどういうお考えでしょうか。
  67. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 必ずしも入り口とか出口とかいうことではない、日本政府としてもこの問題がすべて解決しなければ一切の交渉に応じないとかそういうことを言ったことはないわけで、かつて日朝国交正常化交渉の中でこの問題を持ち出したところ北朝鮮側が席を立ってだめになったと、こういうことがあるわけで、むしろこの問題を持ち出してはいけないという北朝鮮側がある意味で入り口論みたいな話なのかなと。  我々はそういう接触があれば、これは日本の主権の問題でもあり日本人の命の問題でもありますから、私たちはこの問題はそういう話し合いの中では当然持ち出していく。ただし、これが全部解決しないと一切の話し合いに応じないとかいう完全な入り口論に立っているわけではない。出口論というのはどういうことかわかりませんが、何かすべてどんどん進めて、この問題は最後に解決しさえすればいいんだという出口論というのもまた私はおかしな話で、やはりいろんな話を進めていく中でこういう重要な問題は当然議題にのせ、やっていかなきゃいけない問題だと、こういうふうに思っております。
  68. 高野博師

    ○高野博師君 ぜひこの問題について積極的に取り組んでもらいたいと思います。  それから、ガイドライン関連法案について今回のソウルでの会合では米韓から何らかの言及があったんでしょうか。
  69. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) ペリー調整官韓国側代表、また我が方は加藤総政局長が参加いたしましたが、これは主としてペリー調整官北朝鮮訪問の結果を聴取する、そして今後三者でさらに緊密に連絡していこうという話し合いでございまして、ガイドラインの話というのはこの場では出ておりません。
  70. 高野博師

    ○高野博師君 終わります。
  71. 立木洋

    ○立木洋君 インマルサットの問題についてはこれは賛成ですし、あえてお尋ねすることもございません。また、ロシアバングラデシュとの投資保護協定の問題についても、これまで何回か日本の国が五カ国と結んでおる投資保護協定がありますから、その際にいろいろお尋ねしておりますし、あえてお尋ねしなければならない問題もないようですから、きょうはちょっと核問題についてお尋ねしたいと思うんです。大臣、顔しかめないでくださいよ。  この間から問題になっております一九七二年六月十七日に当時のアメリカのロジャース国務長官あてのアメリカのレアード国防長官の書簡の問題が国会でも問題になりました。このときの書簡は、私ずっと読んでみましたが、二つの大きな問題がありますが、一つの問題はちょっと置いておきます。  つまり、アメリカの国務省の方からアメリカの空母が核兵器を積み込まないで日本に母港を持つというふうな考え方を打診したときに、それに対してレアード国防長官が、この問題については軍事的には実際的ではない、もしくは空母に対して核任務を与えなければそれは軍事的な有用性というのが極めて大幅に低下する、そういうことになるとこれは作戦上にも困難を来すから、これは軍事的には実際的ではないんだというふうな趣旨のことが手紙に書かれてあります。  そしてさらに、法的な必要性の問題についても、法的な側面では、この問題に関する我々と日本政府との交渉の記録では極めて明白になっているというふうに書かれて、ライシャワー大使は、この問題を一九六三年四月に大平外相と協議した際、事前協議事項は日本の水域もしくは港湾にいる核兵器積載艦には適用されないという同大使の見解を確認した、その後どの日本政府もこの解釈に異議を唱えていないということが指摘されているわけです。  それで、この問題に対して特別委員会で質問されたとき、私もテレビで聞いておりました。大臣お答えになっておるからお答えはわかっているんです。ですから、とりあえず、そのことについてこれは核密約かどうかという問題に直接的に入るのではなくて、私ちょっと別の問題をお聞きしたいんです。  アメリカの方のここに述べられている見解というのは、つまり核の領海通過の問題は事前協議対象にならないということを言っているわけです。日本側は、今までこの核の、核兵器を積載している軍艦のいわゆる領海通過はこれは事前協議対象になるというふうに言っているわけです。現在までも同様の趣旨のことをアメリカ政府は述べている、後でこれ御紹介しても結構ですが述べている。どうしてこういう違いが出てくるんだろうかということをまずお聞きしたいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  72. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) ちょっとどうしてこういう違いが出てくるのかという御質問があれでございますが、いずれにしましても、我が方の解釈と考え方というのは先生も従来から御承知のとおりでございまして、核兵器の持ち込みに関しましては、寄港であろうが領海通過であろうが、いわゆる岸・ハーター交換公文の中の装備における重要な変更ということで事前協議対象になるということで一貫しているわけでございます。  それから、先生、領海通過ということで絞って今御質問されたのかわかりませんですけれども、その点については、立木先生御承知の無害通航との関係の問題というのがございまして、これまた先生との間でもかつて国会でやりとりが、質疑があったと思いますけれども、その点についても、現在の立場というのは領海を通過するということも事前協議対象になるというのが我が方の立場ということで一貫しているところでございます。
  73. 立木洋

    ○立木洋君 領海通過の問題で問題になったのは一九六八年のときですね、あの問題が問題になったのは。それで、ここで先ほどおっしゃったいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解についても国会に文書を提出したのは六八年の四月二十五日です。これはレアード氏の書簡というのは一九七二年なんですね。ここでもそういう見解を述べて、その後日本政府としてはそういう解釈に異議を唱えていないというふうに言っているんです。  さて、ここでお尋ねなんですけれども、その後、いわゆるトランジット、領海に対する通過の問題について事前協議対象になるということはいつのアメリカとの交渉で確認したんでしょうか。その文書は存在するんでしょうか。
  74. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) この点は従来から国会でも御説明申し上げていると思いますけれども、昭和四十三年四月でございますか、今おっしゃられた藤山・マッカーサーの口頭了解というのが国会の場に明らかにされましたけれども、片や御指摘の無害通航との関係での問題というのは、たしか昭和四十三年でございますか、日本政府の見解というのを出しまして、それから昭和四十九年十二月に、核常備艦、常時核を装備している軍艦については無害通航を認めないという点を政府として再確認を国会で明らかにしたわけでございます。  それで、お尋ねのアメリカとの関係でございますけれども、当然当時から申し上げておりましたけれども、アメリカ政府もこの我が方の政府の見解というものを国会の審議を含めまして十分にフォローしていたということが一つ。  それから、昭和四十九年の見解につきましては、当時アメリカの在京大使館に対しまして十分説明をしたということが国会でも当時から明らかにされているところでございます。
  75. 立木洋

    ○立木洋君 今までの説明で、ずっとこれまでも何回かこの問題を私たちは取り上げてきているということは、竹内さん御承知だろうと思うんですけれども、この問題はいつの会議で、どういう形でアメリカ側が確認したのかということは一切明らかにしていないんです、日本政府は。そして、トランジットという言葉は向こう側は使っていないんです。みんなイントロダクションなんです、核の持ち込みなんです。通過の問題や、ある場合には寄港の問題等も含めてこれは認めていないんです。  この問題に関しては、私はここで領海条約が審議されたときに、その領海条約の中で、皆さん御承知のように、今言ったような経過がありました。日本政府は見解を発表し、日本政府国会でそういう趣旨のことを説明している。だけれども、そういうことは外交上の効力を発することにはならないんです。向こう側と交渉してアメリカ側が確認をして、こういう重要な問題ならば、この間の特別委員会外務大臣がおっしゃったように、こんな大切な問題を口頭で了解するなんてことはだめじゃないかというふうに、あり得べきじゃないじゃないですかと言われているように、これは文書で交換すべき重要な問題なんです。  そうすると、皆さん御承知のように、領海条約二十五条に書いてあります。結局この問題は、領海条約の問題での審議の以前に、他国との間の協定条約等があった場合には、それに影響を及ぼすものではないというのが領海条約の二十五条です。領海条約が審議されたのは後です。安保条約や口頭了解があったのはその前ですから、それを変更する際には外交上の手続を経ないと変更できないじゃないですかということをまず述べておきたい。お答えしなくていいです、大変困るだろうと思いますから。そういう文書もないし、交渉した日時もないんですから。もしかあるというのだったら、次またお尋ねしますからそのときまで準備しておいてください。  それで、大臣、こういう問題が起こってきているというのは一回や二回じゃないんです。一九六六年にラスク国務長官がライシャワーに極秘の電報を送った。日本の港湾の中の米軍の艦船と通過中の米軍の航空機に積載された核兵器の存在に関する日本政府が受け入れてきたあいまいさと書いているんです。そして、日本政府が有事の際に核兵器の持ち込みに同意するという一九六〇年の秘密合意がある。六六年のラスク国務長官の極秘の電報です。  次に、一九六九年十一月二十一日付のニクソン米大統領と佐藤首相との間の核持ち込みの秘密合意が存在しているということの合意です。これは、若泉元京都産業大学の教授が明らかにしています。そして、その極秘文書のいわゆる共同文書の案文が文芸春秋が出した出版物の中の一面に飾られています。そういう経過もあった。  さらには、一九七四年、アメリカの議会でラロック元米海軍提督が証言している。その中では、核積載能力のある艦艇は核を積載している、日本など外国の港に入るときには核兵器はおろさないと証言して、このときも大問題になりました。そして、その後、一九八一年、ライシャワー元駐日大使が核兵器を積んだ米艦船が日本に寄港していたと明確にこれも発言した。このときも大問題になりました。一九八九年には、キャロルというミッドウェーの元艦長も同じようにいわゆる核兵器を途中の航海でおろすようなことをして寄港するようなことはあり得ませんという証言もしている。これは一部を紹介しただけですけれども、こういう事実というのがずっと続いているんです。  そのたびごとに大問題になった。だけれども、これは事前協議があるんですから、事前協議を申し込まれていない以上、日本に対しては核兵器は持ち込まれていませんという口実に使われてきたんです。我々はアメリカを信頼しております、ですから核兵器を黙って持ち込むようなことはないでしょうと。  だけれども、これはフィリピンのある高官が明確に述べています。フィリピンに対する核兵器の持ち込み等の問題については、あなた方はどう考えているのか、名前は今は言いませんけれども、その高官は明確に、私たち日本政府の態度に学んでおりますと答えたんです。どういう意味かおわかりだろうと思うんです。こういうふうな状況があって、現在また再びこの問題が起こっているんです。  私は一つの問題だけちょっと提起しておきますが、この秘密の核取り決め、密約という問題はどういう意味を持つのか。  この問題は、一九七八年三月十四日参議院の予算委員会質疑が行われています。これは今でも議事録が明確に残っています。我が党の上田議員が、この核密約の問題に関連して、核密約の具体的な内容ではなくその法的な性格をどう考えるのかということをただしているんです。そのときに真田秀夫法制局長官がこう言っているんです。一国の条約締結権者が他国の条約締結権者との間で結んだ取り決めその他の国際条約は、それが密約、いわゆる不公表であるということのみをもって無効だと言うわけにはいきません、こう答えています。さらに、ほかの大臣がもしか知らなかった場合どうなるのか、政権が交代した場合にはどうなるのかとさらに質問を続けると、国が同一である限りそれは効力は続くと言わざるを得ません、破棄されない限り存在するんですと明確に答えているんです。  つまり、公に法治国家として法律が決められていても、密約を他の大臣が知らなくても政権が変わってもその密約は有効に効力を持ち得る、こういうふうに述べているんです。これは極めて大変なことです。  これは木村俊夫元外務大臣が亡くなられた後の文書の中にもそれに若干触れた内容があります。キッシンジャー氏もこの問題について触れております。先ほど申し上げた佐藤首相の密使となった若泉敬氏もこの問題について先ほど申し上げたように「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」という本の中に書かれておる。先ほど言いましたように、英文の草案の写真までがこの極秘の合意議事録として一緒に掲載されています。  この問題についてはことしの一月十一日ですが、朝日新聞が報道しております。この問題は一昨年、朝日新聞が代理人を立ててアメリカの政府機関に先ほど申し上げた佐藤首相とニクソン米大統領との間で一九六九年十一月二十一日の会談の秘密合意議事録なるものが存在するかどうかということを名指しで確かめました。これに対して、アメリカ側は一つのパラグラフでも違っていればそういうものは存在しませんというのが大体回答なんです。  ところが、この場合にはちゃんと回答が来たんです。ジョアンというアメリカの国家安全保障局次長の名前で返事が来ました。その請求に関しては本局で構成された関係文書がありますということがことしの一月に来たんです。だから、佐藤さんとニクソンさんの秘密の会談議事録があるということを認めたんです。それがこのアメリカのあれにあるということを認めたんです。これは重要なことなんです。初めて認めたんです。  それで、この問題について私は、もしかすると高村外務大臣は知っていないかもしれない、あるいは知っていて本当のことをおっしゃらないかもしれない、そのどちらかがあり得ると思うんです。なぜ大臣が知らないことがあり得るかと。それは宮澤さんが通産大臣をしておられたころのことを書いた本があります。「戦後政治の証言」というのを宮澤喜一通産大臣が書かれています。  このとき通産大臣として宮澤さんは御承知の繊維密約にかかわる問題との関連があった方なんです。アメリカに交渉に宮澤さんが行かれる前にアメリカのスタンズ商務長官から、佐藤総理が御存じの一枚の紙があるから出発前によく読んできてほしいという連絡が来たんです。それで宮澤さんは単独でと本の中には書いてあります。単独で佐藤首相に会って尋ねたそうです。首相は真っすぐ私の目を見てそんなものはないというふうに言われたと。密約の合意文書があるのに、それを見て来てくれと言われたのに、そういうものはないと言って佐藤さんは断ったんです。この問題は、余談になりますけれども、ある方の話で、宮澤喜一さんは佐藤首相はひどい人だとお酒を飲むと語っていたというんです。これは後日談としてあるんです。それも本にちゃんとなっています。  問題は、首相だけが条約締結権者として知っておれば効力を持つんです、高村さんがお知りにならなくても。だから、ここにはそんなものはない、私は知らない、関係ないとおっしゃったってだめなんです。つまり、日本政治の結果がこんな密約でゆがめられるんですよ。これは大変なことですよ。それでどうして法治国家と言えるのか。  だから、私はこの問題に関して、結局アメリカと日本政府のいわゆる事前協議対象が違っている、認識が違っている、その問題で、きちっと外交上効力を発するように訂正されなかったら、訂正されていないんです、訂正されていないからアメリカ側はいわゆる事前協議対象になるなんて思っていないんです、入ってくるんです。それとも、そういうふうにして内容は決められたけれども、密約は効力を持っているために、依然として核通過はいわゆる無害通航とは認めない、安保条約上も訂正されていない、だから依然として事前協議対象にならないということで行われているかのいずれかなんですよ。  ですから、高村外務大臣がその密約を知っておられれば、密約を維持して日本の法治国家の本来の姿をゆがめる外務大臣になられるのか、それとも、本当に知らなくて、そして特定のところだけでこの密約が生きているという状況になっているのか、そのいずれかなんです。そのいずれかがこの問題の本質なんですよ。  大臣の御所見をお聞きしたい。これはお考えだけで結構です、どういうふうにお考えになられておるか。
  76. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) これまで政府が繰り返して述べているとおり、米軍による我が国への核兵器の持ち込みは、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文において装備における重要な変更として事前協議対象となっており、核積載艦船の寄港及び領海通過を日米間の事前協議対象としないという口頭了解は存在しません。  また、核持ち込みについての事前協議が行われた場合には、政府として常にこれを拒否する考えでございます。米国政府も、安保条約及び関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に遵守すること、事前協議については日本政府の意思に反して行動することはない旨繰り返し述べております。  知らないというんじゃなくて、口頭了解は存在しないということを私は知っている、こういうことでございます。
  77. 立木洋

    ○立木洋君 それは、今の時点ではそういうふうにお答えにならないで、私はそういう文書があるかないか本当は知らないということも言えないでしょうし、そういう秘密合意があるんだというふうなことについてあなたが知っているともまた言えないでしょう。それは、今の時点で言えないということはあなたの立場としてはわかりますよ。だけれども、問題は事重大なんです。日本が法治国家としてあり得るのか、密約で日本政治が動かされるのかという問題なんです。  この問題に関してはいろいろあります。これは、安保条約協議された日米安全保障条約特別委員会、衆議院での議事録の中ですけれども、昭和三十五年五月六日付です。  これは、高橋(通)政府委員が述べられているんですけれども、この問題については、「国際法上の一般原則として、無害通行というのがございます。インノセント・パッセージ、これは、そういう場合にはこの問題の対象ではないわけでございます。」、だから、日米安保条約上、国際法上の一般原則として領海を通過するということは無害通航ということで認められているんですから、そういうものにはならないんです、これはいわゆる事前協議対象にはならないんですと答えているわけです。  ですから、これが、御承知のように、先ほど言った領海条約の審議の過程で三木さんが変えたんですね。その問題については厳しい批判があった。通過だとか日本の港湾内に寄る核についてはそれがどうなるんだという問題になって……(「時間が過ぎております」と呼ぶ者あり)
  78. 河本英典

    委員長河本英典君) 立木君、時間が超過しておりますので、まとめてください。
  79. 立木洋

    ○立木洋君 はい、一分で終わりにします。  ですから、その問題についてはそういうことを、その後、核常備艦でなくても核積載可能艦においてもそれは適用されるというふうに一九七五年に宮澤さんは変えたんです。だけれども、現実には、それを変えた証拠も、いつ会談をしてアメリカ側がそれを確認したかということも、ただの一回も日本政府は述べたことがないんです。どうしてそれが外交上効力を発するんですか。日本国会で何ぼそんなことをしゃべったって効力を発することにならないんです。  もう時間がありませんから、次の機会にまたもう一回やらせていただきます。
  80. 河本英典

    委員長河本英典君) 他に御発言もないようですから、三件の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  81. 小泉親司

    ○小泉親司君 日本共産党を代表して、ロシア及びバングラデシュとの投資保護協定に反対の討論を行います。  我が党は、我が国企業の海外での投資活動を全面的に否定するものではありません。しかし、今回の二つの協定には次の点で重大な問題があります。  その第一は、投資受け入れ国は自国の経済発展に資するよう投資を受け入れるにもかかわらず、いずれの協定も受け入れ国の規制の権利を全く認めず、投資保護の義務だけを負わされている点であります。内国民待遇を受けているから平等だと見られるかもしれませんが、もともと免税などの特権を受け高利潤を上げている外国投資にとって、それが有利に働くことは明らかであります。  第二は、外国企業投資による収益やその他の資金の領域外移転の自由を引き続き保障している点であります。これは、進出企業の資金が受け入れ国の経済にほとんど役立たず、日本企業の自由で無責任な利潤追求を保障するものです。  また、ロシアとの協定では現地生産品の使用を禁止する規定を盛り込んだことや、バングラデシュとの協定ではバングラデシュに投資財産や収益を不断に保護、保証させているのもこのことを証明しています。  一九七四年の国連総会決議、新経済権利義務憲章は、投資受け入れ国が外国投資を規制し、外国投資に特権的待遇を与えることを強制されないことを明記していますが、二つの協定は、この保証がなく、決議に逆行するものであり、反対であります。  以上、主な反対理由を述べ、討論を終わります。
  82. 河本英典

    委員長河本英典君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、国際海事衛星機構インマルサット)に関する条約改正及び国際移動通信衛星機構インマルサット)に関する条約改正受諾について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  83. 河本英典

    委員長河本英典君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、投資促進及び保護に関する日本国バングラデシュ人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  84. 河本英典

    委員長河本英典君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、投資促進及び保護に関する日本国政府ロシア連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  85. 河本英典

    委員長河本英典君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 河本英典

    委員長河本英典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十分散会