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1999-02-18 第145回国会 参議院 外交・防衛委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十八日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員氏名     委員長         河本 英典君     理 事         依田 智治君     理 事         吉村剛太郎君     理 事         柳田  稔君     理 事         高野 博師君     理 事         小泉 親司君                 岩崎 純三君                 亀谷 博昭君                 佐々木知子君                 鈴木 正孝君                 村上 正邦君                 森山  裕君                 木俣 佳丈君                 齋藤  勁君                 吉田 之久君                 続  訓弘君                 立木  洋君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 山崎  力君                 佐藤 道夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         河本 英典君     理 事                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 柳田  稔君                 高野 博師君                 小泉 親司君     委 員                 岩崎 純三君                 亀谷 博昭君                 佐々木知子君                 鈴木 正孝君                 村上 正邦君                 森山  裕君                 木俣 佳丈君                 齋藤  勁君                 吉田 之久君                 続  訓弘君                 立木  洋君                 田  英夫君                 田村 秀昭君                 山崎  力君                 佐藤 道夫君    政府委員        外務省欧亜局長  西村 六善君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君    説明員        特命全権大使オ        ーストリア国駐        箚        高島 有終君        特命全権大使ド        イツ国駐箚    久米 邦貞君        特命全権大使ハ        ンガリー国駐箚  糠澤 和夫君        特命全権大使連        合王国駐箚    林  貞行君        特命全権大使ロ        シア国駐箚    都甲 岳洋君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○外交防衛等に関する調査  (欧州諸国政治経済等に関する件)     ─────────────
  2. 河本英典

    委員長河本英典君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  まず、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、外交防衛等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河本英典

    委員長河本英典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 河本英典

    委員長河本英典君) 次に、外交防衛等に関する調査のうち、欧州諸国政治経済等に関する件を議題といたします。  本日は、欧州各国に赴任されている大使が一時帰国されている機会を利用いたしまして、欧州諸国政治経済等事情説明を聴取し、それに対する質疑を行いたいと存じます。  大使各位には御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。  本委員会では、外交の第一線に立っておられる大使から直接赴任国事情等をお聞きする機会を設け、あわせて我が国外交に対する国民的な理解を深める一助にしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず外務省欧亜局長から欧州大使会議概要等について説明を聴取した後、本日出席いただきました五名の大使の方々から各十分以内で順次赴任国事情等について説明を聴取し、おおむね一時間程度質疑を行いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、西村欧亜局長より欧州大使会議概要等について説明を聴取いたします。西村欧亜局長
  5. 西村六善

    政府委員西村六善君) 欧州大使会議は、今週の月曜日でございますが、十五日から昨日まで行われました。  本省におきまして、三十一人のヨーロッパ大使が一時帰朝いたしまして、会議に参加いたした次第でございます。  会議におきましては、明らかに非常に大きな歴史的な展開を遂げている欧州現状を分析し、それとの関係におきまして我が国外交をどのように進めていくべきかということを基調にして議論を行った次第でございます。  議論におきまして、特に欧州との関係につきまして御説明を先にさせていただきますと、ことしの一月一日から欧州におきましては統一通貨ユーロというものが発足しているわけでございますけれども、それに伴いまして、欧州経済政治的な統合が非常に進捗しているという大きな動きがございます。その動きをどうとらえるかということにつきまして議論をいたした次第でございます。  まず、欧州経済統合通貨統合との関係におきましては、欧州諸国自身におきましても、この通貨統合に伴います欧州経済統合というものは欧州の将来に対して大きな機会可能性を開くものであるという、言ってみますれば楽観論といいましょうか、欧州経済単位としても世界的に、国際的により強くなっていくんだという展望のもとに楽観論というものが表明されていたわけでございますけれども、同時に、一方におきまして、欧州の論者、政治家それから私どもの、我が国におきましてもそうでございますけれども、いろいろな問題も同時に存在しているという指摘が既にその時点から行われていたわけでございます。  そういった状況背景にいたしまして、各国大使の参加を得まして、展望と抱える問題点について議論をいたしたわけでございます。  明らかに、展望が豊かな展望を内包しているということは認める必要があろうかという結論でございます。  同時に、しかしながら大きな問題を抱えていることも明らかでございます。特に、現在ヨーロッパ経済ヨーロッパ諸国押しなべてそうでございますが、幾つかの例外的なケースがございますけれども、押しなべて景気動向につきましては、成長率下方修正動きがあるわけでございます。そういう景気が若干下降ぎみにあるという状況がまず第一の問題でございます。  それから、第二の問題といたしましては、そういう下降ぎみにある経済状況の中で欧州が抱えております非常に重要な構造的な問題、特に失業でございますが、なかんずくその中でも若年労働者失業問題というものをどのように解決していくのかということにつきましてかなり深刻な問題があるわけでございまして、そういう問題を欧州諸国がどのように解決していくのかということについて各方面から議論をした次第でございます。  さらにもう一つ、同じような性質の問題でございますけれども、この失業の問題を欧州社会が抱えております構造的な問題としてとらえるのか、あるいはそうではなくて、成長を促すことによって解決できる、そういう問題としてとらえるのかといった政策のアプローチの違いといったようなことも欧州が抱えている問題の一つとして指摘された次第でございます。  さらに、こういった問題を包含いたしまして、新たにできました通貨統合のもとにおきましては、欧州中央銀行というものが金融政策中心的な唯一の責任の所在になるわけでございますけれども各国が持っておりました今までの政策景気政策構造政策上の政策の道具とでもいいましょうかツールとでもいいましょうか、そういったようなものとの関係でいきますと、通貨統合の枠組みのもとにおきましては、財政的には、今までのような自由な拡大財政積極財政といったような政策をとり得ない仕組みになっているわけでございます。マーストリヒト条約が規定しております収れん基準というものがございまして、そのもとで財政を非常にかた目に緊縮的に運営していかなければいけないという仕組みになって出発しているわけでございます。  したがいまして、そういう経済動向との関係で調節を要します場合には、金融政策が専らその主軸にならざるを得ないわけでございますけれども、その金融政策だけで今私が申し上げました幾つかの問題、その他の問題を解決していくことができるのかといったような問題が指摘された次第でございます。  さらに、そういった問題が地域的な凹凸といいましょうか、地域的にも差が出てくるわけでございまして、そういう地域的な差を欧州の統一的な金融機関としての欧州中央銀行がうまくハンドルをして、全体として成長を維持しながら同時に失業の問題を解決していくというようなことをうまくやっていくことができるのかといったような問題がるる指摘されたわけでございます。  しかしながら、それらの問題があるわけでございますけれども出席をいたしました多くの大使意見によりますれば、恐らくは時間はかかると思いますし、幾つかの困難な問題も生ずると思いますけれども、中期的、長期的に見ますれば、欧州経済統合はこういう問題を何らかの形で解決し、克服していくのではないかというのがおおむねの大方見方であったわけでございます。  そういった考え方の背後にありますものは、やはり非常に強い政治的な意思というものが欧州統合を進めるべきであるという方向に向かって動いているわけでございまして、その点につきまして欧州諸国の間に全く問題がない、全く問題がないといいましょうか、大きなコンセンサスがあるわけでございますので、そういう政治的な強い意思のもとで幾つかの問題、大きな問題というのは克服されるんではないかという見通しでございます。  さらに、もう一つ見方といたしましては、既に三、四十年にわたりまして、欧州諸国におきましてはこういった問題を解決するメカニズムというものが既にでき上がっているわけでございまして、そういうメカニズムに基づきまして密度の濃い政策調整ということを行う習慣といったようなものが確立しているわけでございまして、そういう協議メカニズム習慣を通じましてこれらの問題は克服されるのではないかという見通し大方見通しであった次第でございます。  政治問題につきましても、同じような議論を行ったわけでございますが、政治外交安全保障につきまして、欧州におきましても同じように統合動きというものが進んでいるわけでございますけれども、こちらの方は経済統合通貨統合よりも若干スピードが遅くなっているといったようなことがあるわけでございます。しかし、それにもかかわらず大きな流れとしてそういう方向に進んでいるという実態でございます。  そういった経済及び政治の両面にわたりまして欧州一つの大きな存在として浮かび上がってきているという結論でございまして、これに対しまして、我が国外交といたしまして、一番大きな方向性といたしまして、欧州との対話をより強めていく必要がある、多方面にわたって欧州との対話と協調、協力という関係を強めていく必要があるというのが大使会議におきまして大方コンセンサス大方の同意を得た考え方であった次第でございます。  以上、会議の主な点につきまして御紹介をさせていただきました。
  6. 河本英典

    委員長河本英典君) 続きまして、各大使から赴任国等についての説明を順次聴取いたします。  初めに、特命全権大使ドイツ国駐箚久米邦貞君。
  7. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) それでは、私の方からドイツ政治経済情勢及びユーロ欧州経済情勢について、ドイツから見た見方を御紹介させていただきたいと思います。  まず、ドイツ政治経済情勢でございますが、御承知のとおり、昨年九月に連邦議会選挙がございまして、十六年間政権の座に着いてきましたコール首相選挙に敗れて、コール政権が退陣いたしました。かわって、当初は大連立のうわさも立っておりましたけれども社会民主党緑の党、両党が予想以上に票を伸ばして、その結果、いわゆる赤緑連合と言っておりますけれども社会民主党緑の党連立政権が成立いたしました。  コール政権敗北最大理由は、やはりこの十六年間にわたるコール首相の姿勢に対する飽き国民の間にあったということが最大理由かと思っております。現に、いろいろな世論調査を見ましても、現在キリスト教民主同盟コール党首の後任になっておりますショイブレ党首、この方が首相候補で出ていればあるいは結果は違っていたかもしれないというような世論調査の結果も出ておりまして、コール首相個人に対する飽きということがかなり大きなウエートを占めていたのではないかと思います。  二番目には失業問題、これは大変深刻な失業問題が続いておりまして、四百万を一回切ったことはございますけれども、大体四百万前後で推移しております。これは一〇%を超える失業率でございまして、特に東と西の旧東独地域と旧西独地域の間の格差が非常に大きいのが現状でございます。こうしたことから、失業問題に対する十分な対策がとられないことに対する国民のいら立ち、特に東独市民東西格差拡大に対するいら立ちというものが一つの敗因になっていたのではないかと思います。  この選挙の結果について、日本それからその他の外国においても社会民主勢力拡大ということがよく言われておりますけれども政策面で非常に大きな二つ政策選択肢をめぐっての選挙戦という感じではございませんで、政策面では大きな左への旋回が生じるというふうには私どもは見ておりません。現に、一週間前に行われましたヘッセン州の、これは連邦選挙の後、最初に行われた州の選挙でございますけれども、この州の選挙におきましては、従来長年にわたって政権をとってまいりました社会民主党キリスト教民主同盟に敗れて、まさに連邦議会とは逆の結果が出ております。  こうしたことからもわかりますとおり、ドイツ選挙民はやはり中道志向で、その中道の中で多少左右のぶれを繰り返しているということかと思います。  他方、現在、成立いたしました政権はいろいろな問題でヒッチを起こして試行錯誤を繰り返しております。この原因と申しますのは、もちろん十六年にわたる在野ということからくる準備不足がございますけれども、それに加えて政権の中にいろいろな要因が混在しているということがございます。  一つは、緑の党社会民主党の間の差異がございます。  それから、社会民主党の中でも非常に幅の広いスペクトルがございまして、ラフォンテーヌ党首を筆頭といたします左派の勢力と、それからシュレーダー首相中心といたします右派の勢力の間にいろいろな考え、立場の違いがあるということから、現在までのところ、いろいろな案が出てきては調整を繰り返し、いろんな各方面意見交換をした末、またそれが修正されるという試行錯誤の状態を繰り返しております。ただ、これは当初の段階での話でございまして、恐らく今後何カ月かを経てだんだん一本の方向に収れんされていくのではないかと思っております。  現在のドイツ政治にとって大きな選択肢の幅というのは余りないはずでございます。一方においては、欧州統合動き等によって推進されている欧州内での自由化競争激化市場広域化という現象他方世界的規模でのグローバリゼーション動き、こうしたことからくるドイツ経済課題というのは、やはりこういうグローバリゼーション競争激化に備えての構造改革であり、規制緩和であり、いろんな意味での改革が求められているわけでございまして、そうした課題に取り組むという要請がございます。  一方で、社会民主党の伝統的な社会的要請、これは当面は失業問題が最大課題でございますけれども、そうした要請との両立をいかに図っていくかということで次第に方向は一本に収れんしていくのではないかというふうに考えております。  経済につきましては、これは先ほど欧亜局長の方から御紹介がありましたとおり、欧州全体が昨年までは比較的好況だったわけでございますけれども、九九年の見通しはやや景気減速が予想されるということで、その減速も当初から年末にかけてだんだん下方修正をされる傾向がございまして、昨年九八年は二・八%の成長をいたしましたけれども、九九年の見通しとしては、政府見通しは二%でございますけれども、民間の中にはさらにそれより低い見通しを持たれているものもあります。  以上がドイツの現在の状況でございます。  他方ユーロにつきましては、いろいろな問題がございますが、一つ最大の問題は、やはりこのユーロは当初の段階からインフレに対する手当てというのはかなり手厚く万全な手当てがとられております。財政赤字を三%に抑える、あるいは累積の財政公的債務をGDPの六〇%に抑えるというようなことを規定いたしました安定協定あるいは欧州中銀独立性保障ということで、インフレ回避という意味では万全の措置が既にとられており、この意味での懸念は今のところないのだろうと思います。  ただ他方、この一本の金融政策とそれから十一の加盟国がそれぞればらばらにとる財政政策、これの組み合わせでむしろ景気後退面に対していかに効果的に対応できるかというのが今後の最大の問題かと思っております。しかも、先ほども申し上げましたとおり、来年はまさに景気後退ということが予想されているところでございまして、そういう局面を迎えてこれからこれにどう対応していくかということが大きな課題かと思います。  ただ、先ほど局長の方からも申し上げましたけれども政治的意思というのは非常に強いものがございます。これは一部には、戦中の体験を持つコール首相あるいはミッテラン大統領等と違って、新しい世代のシュレーダー政権というのはあるいは欧州統合に対する熱意が欠けるのではないかというような見方もございますし、あるいは社会民主党政権をとることによって、社会的公正により重点を置くがために欧州の域内の市場自由化あるいは統合動きに対していろんなブレーキがかかるのではないかという見方もございます。そういう傾向が全くないではないと思いますけれども、しかし欧州統合を進めていこうという基本的な政治的意思にはコール政権についてもシュレーダー政権についても何ら変わるところはないのだろうと思っております。  それから、それに加えまして、いろいろな問題があるにもかかわらず、それを政治的な意思を持って乗り越えていくというための各国間のいろいろな協議の場あるいは調整の場というのは、外から見ております以上に極めて緊密なネットワークが既にでき上がっておりまして、これを使ってのいろんな難しい問題についての妥協調整を行う過去の経験も既に蓄積されております。こうしたことから、今後もいろいろな問題について欧州通貨統合の十一の加盟国の間で緊密な協議調整を行って一つ一つ問題を片づけながらだんだんに前進していくのではないかというふうに見ております。  他方、今年の課題といたしまして、通貨統合のほかに政治安全保障面での統合ということについてもさらなる前進が期待されております。これはアムステルダム条約にも規定されているわけでございますが、アムステルダム条約が発効し、これに伴って政治安全保障担当代表者が指名される予定でございます。恐らくこれは夏前にも指名される、その事務局も設置されるということになっておりまして、さらに最近のコソボのケースあるいはボスニアのケース欧州独自の安全保障の一本化を図ろうという志向は非常に強まってきておりますので、こうした志向背景に、かつそうした事務局代表者が設置されることによってその面での欧州の一本化というのは、これはまた非常に難しい問題でありまして時間がかかると思いますけれども、これから進んでいくのではないかなというふうに見ております。  以上でございます。
  8. 河本英典

  9. 林貞行

    説明員林貞行君) それでは、英国におきます事情と、それから今ドイツの方から説明がありましたヨーロッパ動向、特にユーロ動向に対するイギリス考え方ということを中心にお話しさせていただきたいと思います。  まず、英国動向でございますが、一昨年九七年五月に誕生いたしましたブレア政権は、これは議席数六百五十九のうち四百十八を占めるという圧倒的多数で、その後極めて安定した政権運営をやっております。閣僚のスキャンダル等若干の事件はありましたけれども支持率は依然として五〇%を超えるということで揺らぎは見せていないということだろうと思います。政権成立直後に公定歩合決定権中央銀行に移すとか、それからスコットランド、ウェールズへの分権に関する国民投票を実施するとか、それからさらには北アイルランドの和平達成とか、着々と実績を上げているということであろうと思います。  経済面では、労働党の伝統的な政策でありました国有化政策とかそれから高福祉高負担という政策は改めまして、いわば保守党の延長といいますか、保守党、特にサッチャー政権がとってきた市場メカニズムを重視するという政策を踏襲しながら、しかし人に優しい政策というものを中心に進めているわけでございます。規制緩和市場重視中心にしながら、例えば今ブレア政権一つ方針として福祉から雇用へというのがありますが、同じ収入を得るにしても、福祉で国からもらっているよりも自分がみずから稼いでやった方がいろんな意味で健全なんだ、社会にとってもプラスだし本人にとってもいいんだと、こういう方針でいろんな政策をやっているわけでございます。  今後の課題といたしましては、まず経済でございますが、極めて好調でございましたけれども世界経済後退、それから昨年来続きましたポンド高の影響を受けまして、イギリス景気後退に悩まされております。それに伴いまして、昨年の夏には七・五%でありました公定歩合を順次下げてまいりまして、今五・五%まで二ポイント下げてその対応に当たっているということでございます。今後の経済動向によってはいろんな揺さぶりが出てくることも考えられないことではありません。  内政におきましては二つの大きな課題を抱えておりまして、一つ上院改革でございます。  上院議員は、ここは貴族院議員でございますが、千百五十名ぐらいのメンバーがおりますが、そのうちの六百五十名は世襲貴族でございます。世襲貴族のうちの圧倒的多数は保守党志向者ということでございまして、そこに下院における圧倒的な労働党の優位というところとねじり現象が出ている。しかも、選挙でなくて世襲である。一代限りの貴族として任命された人たちも約五百名おりまして、それはそれなりに功績があって任命されたんだから選挙じゃないにしてもいいにしても、世襲というのはおかしいじゃないかという議論が従来からありまして、これは労働党選挙公約としてこの上院改革に取り組んでおるということでございます。  保守党の方も、世襲貴族というものを貴族院議員から外すということの基本的方向についてはやむを得ないと思っているわけでございますけれども、それでは、その後の上院をどうするのかということについてまだまだ姿が見えてこない。選挙をやるのか、選挙をやるとすれば下院の選挙とどういうふうに違えるのか、その辺はこれからの議論ということになるわけでございます。  それからもう一つは、これは下院の選挙制度の改革でございます。  御承知のように、イギリスは小選挙区制でございますけれども労働党がさきの選挙を戦いましたときに比例代表制を入れるということを公約として言ってまいりました。そのときの考え方というのは、労働党はやはり今のような小選挙区制ではなかなか政権につけない、政権につくには自由党、今で言いますと自由民主党と労働党連立のようなものを考えるべきだ、それに当たっては国民の意向が比例的に出てくるような要素を入れるべきだということで、当時の労働党選挙前の労働党と自由民主党の間である意味で協約のようなものがございまして、それで戦ってきたわけでございます。  ところが、今労働党の中は実は割れておりまして、選挙をやってみれば圧倒的多数で勝っちゃったと、そうなれば今の選挙制度は悪くないじゃないかという議論も出ているわけでございまして、これをどういうふうに持っていくのか。労働党の中にも、今の制度でいいという意見と、いやいや長期のことを考えればやっぱり労働党と自由民主党の連立というものを考えていかないといけないので、そのためには比例代表的な要素を入れるべきだという議論が相半ばしているような感じでございます。  ジェンキンズ報告というのが出まして、小選挙区制度を主とするも、比例代表の要素を一部入れろという提案が出てきておりますが、今後この点をもとにいろいろな国内の議論が行われていくんだろうと思っております。  それからユーロの問題でございますが、労働党は、保守党政権ヨーロッパ政策ということで非常に国内、党内が割れまして悩んできたわけでございますが、積極的にヨーロッパの問題に入っていくんだと、新ヨーロッパだというのが労働党の基本的な考え方でございます。それを外交戦術の一つとしているわけでございます。  昨年の一月から六月まではEUの議長国としまして、ユーロには入らなかったにもかかわらず、ユーロの順調な発足ということで議長国として大変な努力をいたしました。それで、現在の労働党政権の立場は、イギリスと大陸ヨーロッパでは景気サイクルが違う、大陸の方はこれから景気が立ち直るということで低金利政策でやっている、イギリスの方はどちらかといえば、少なくとも昨年の夏ぐらいまでは景気が過熱ぎみで、したがって公定歩合も高かった、そういうサイクルが違うときに入ることはこれは無理があるということで、そういう判断をしたときには公定歩合の違いというのは大陸とイギリスの間で四%、五%の違いがあったわけでございます。そういうことで、当初入ることは見合わせる、しかし将来入るための準備は着々と進めていくと。  次の総選挙、これはイギリスの議会は任期五年でございますので、その前に総選挙がなければ二〇〇二年の五月ということでございますが、その選挙後にそれまでのユーロの運用がどうなっているかというのを見て、イギリスがそれに入ることが利益であると思えば、その際に労働党として入るかどうかについて国民投票に付するというのが、これはイギリスの正式な立場でございます。  他方、ブレア首相はさらに若干前向きなことを言っておりまして、今はユーロがいいとか悪いとかという議論ではない、ユーロが現実になったんだ、そういうことを踏まえてユーロが成功することはイギリスにとってもプラスである、その成功を祈るということを言っているわけでございます。  他方労働党政権考え方は、プロヨーロッパでいずれユーロに入るべきだということでございますけれども、世論の方は必ずしもそういうふうには現状ではなっていないという感じでございます。  一月の世論調査では、反対が五二、それから賛成が二九ということになっております。昨日入手しました二月の最新の世論調査では、反対が依然として五二、賛成は三六ということで若干ふえておりますけれども、依然として反対の方が非常に強い。それから、プレスの方が若干の高級紙を除いてみんな反対という論調を張っているわけでございます。  これは、二つ理由が大きくあると思います。一つはやはりこれは政治統合への一歩である、ヨーロッパとの政治統合というのは、いずれ、感情論を言いますと、女王もなくなるし英国の議会もなくなるし英国の首相もなくなる、こんなものにはくみし得ないというのが一つ意見。それからもう一つは、やはり先ほど久米大使の方からありましたように、大陸は構造問題を大変抱えている、労働の硬直性がある、そういう大陸においてユーロが本当にうまくいくんだろうか、もう少しそれを見きわめたいということがあると思います。  イギリスには大変多くの日本の企業が対英直接投資という形で進出してきておられます。EUへの投資の約四〇%がイギリスに来ておりますが、そういう方の話を伺ってみますと、やはりイギリスには大陸にない魅力がある、インフラがあるし英語は通じるし、それから労働、雇用関係でも調整が大陸に比べると断然易しい。他方、今後ユーロができますと、イギリスだけ為替不安に悩まされるということがある。今後、どういう形で投資していくかというので非常に難しい決断を迫られる。イギリスが一日も早くユーロに入ってもらいたいというのが日本の企業の方々の大体一致した感じでございまして、私どもイギリス政策に直接関与することはしておりませんが、イギリス政府関係者と接触するときに内々日本の感じは伝えております。  以上でございます。
  10. 河本英典

  11. 糠澤和夫

    説明員糠澤和夫君) 十分以内ということでできるだけハンガリーのことについてお話し申し上げ、周辺的にそれと関連ある点でいろいろと全体についてもお話し申し上げたいと思います。  その前に、昨年、参議院からハンガリーに議員団の方が訪問になっていただいて、非常にありがとうございました。それから、今度三月にハンガリーの方から、参議院議長の御招請によってハンガリーの国会議長のチームが日本に来られることになって、アーデル国会議長も非常にお喜びでございました。ありがとうございます。  私が、東欧の中から呼ばれたことについては、結局日本との関係がハンガリーが一番深いからだというふうに考えております。  貿易量だけ見ましても、日本とハンガリーの貿易というのは東欧で一番多くて、第二位、第三位を合計したよりもハンガリーの貿易だけが屹立して高いということです。それから、投資残高を見ても、同じくトップを切っておりまして、第二位、第三位を合計したよりも大きい。そういう状況です。邦人数も一番多い。したがって、邦人保護、そういった外務省本来のサービスも非常にハンガリーでは要求されている。観光客もまた多い。こういうことで私の方が呼ばれたんだというふうに理解しております。  さて、今お二方からお話がありましたユーロの問題につきましては、私どもの方は林大使の方のように入れる権利があって入らないというのではなくて、まだ入る権利がないのでございます。それで、林大使の方は蚊帳の中に入らないで外でしばらくウエート・アンド・シーというような感じでございますが、ハンガリーの方はなるべく早く入りたい。まず、その第一段階としてNATOに入り、第二段階としてEUに入り、それからユーロラウンドの中に入りたい、こういうふうな気持ちであります。  全体を通じてハンガリー及び東欧を強く流れておりますのは、ユーロフォリアといいますか、EUに入ることによって非常にいいことがあるんじゃないかなという期待が強い。中に入ってもなかなかそれなりに苦労が多いかと存じますけれども、そういう期待が一般に東欧においては強い。しかし、強くても入れてもらうについてはやはり条件がある、いろんな準備をしていないと入れませんよというのがEUの側の対処方針。そういうわけで、これとこれとこれと努力しなさいというふうなことを言われております。  ハンガリーについては割に早く自由経済に歩みを始めましたので、EU側の評価でもハンガリーが一番準備が進んでいるという評価であるというふうに理解しておりますが、ほかの国も似たり寄ったりで一生懸命努力しております。ただ、非常な大国であります例えばポーランドのようなところは、頭を下げてまでも入れてくれとお願いしているんじゃないんだという大国の気概があります。ハンガリーの方はそういうことを言っていませんで、何でもやりますから早く入れてくださいよというような感じでございます。  チェコの方も、EUで一番強い例えばドイツに対しても少しいろんな感情的なたゆたいがございますから、正直そう進んでいろいろやっているというふうなことではなくて、進んでやっているのかもしれませんが、少し準備がおくれているという状況がございます。しかし、そうはいっても今言った三国は大体同時に入るというのが希望でもあるし、またEUの方もそういうふうに三国一緒に入れてあげたいという気持ちがあるんだと思います。  ただ、加盟の時期は、入る方としては二〇〇二年ぐらいの希望、入れる方としては大体二〇〇四年から二〇〇六年ぐらいのことを頭に入れておるんだと思います。  これは、EUの方の本当の気持ちは、余り低賃金のところにドアをあけてがさがさ入られるのは困るという気持ちが一つ。それから、貧乏人に入られるとそれに対して助けてやらなきゃいけないので予算が非常にかさむでしょうという気持ちがございます。それから、EUの中の貧乏な国々、国の名前は申し上げませんけれども、こういうところはほかの貧乏人が入ると自分のところのもらいが少なくなるという気持ちがあるんだという、そういうことであります。  そうはいっても、いろいろまじめに努力している人をいつまでも外に置くわけにいきませんから、それは二〇〇二年とは言わずとも二〇〇四年ごろに実現するんだというのが我々の観測でございます。  NATOというのはEUに入る前の準備段階でありまして、NATOに入るということによって従来の定義による西欧との運命共同体というものを引き受けたいんだ、引き受けるんだという気持ちをはっきりさせたということに意義がある。よく考えますと、EUにさえ入ってしまえば、NATOは入っても入らなくてもいいんじゃないかと。NATOに入ると少し予算が絡むんじゃないかということがありますが、そういうことを言っている国はございませんで、NATOに入ってEUに入るんだという気持ちをみんな持っているということでございます。  NATOに入ると、ハンガリーだけとってみましても、現在、ディフェンスバジェット、防衛予算の方はGDPの一・三%ぐらいだと思いますが、それを〇・一%ずつずっと上げて最終的には一・八%ぐらいに持っていくというのが義務のようになっておりますが、それは非常に予算がかさむことですねということで非常に私も心配しておりましたけれども、いろいろテクニカルアシスタンス、技術援助とかいろいろありまして、そのかさむ部分はEUが面倒を見てくれる、あるいはNATOが面倒を見てくれると、そういうことになっておりまして、余り実際上の負担は大きくないんじゃないかなと思っております。  私の国の方について、ロシアがちょっとこけたと言うと都甲大使に非常に失礼ですが、ロシアの経済のふぐあいによって非常に影響を受けたんじゃないかというふうに御質問なさる方が私の友人にございますけれども、今のハンガリーで見ますと、対ロシア輸出というのは全輸出のうちの三・五%ぐらいだと思います。それから、輸入の七%ぐらいだと思いますので、さほど心配するに及ばないということです。もちろん、少しよろけたりしますけれども中央銀行が大体十四億ドルぐらいちょっといかれましたけれども、それも全体的に取りっぱぐれたわけでもないので、そう心配いただくようなことはない。  それから、アジアに暗雲が立ち込めてアジアが不景気になっているのでまた日本も不景気になって困るんじゃないかとおっしゃる方がありますけれども、アジアの方が非常にぐあいが悪くなったものだから石油価格が非常に安くなって、ハンガリーのような、あるいはハンガリー周辺の東欧の国のように石油を輸入している国にとっては、石油が一バレル当たり十ドルも下がったということは非常に大きいことなんです。  それから、金利が大体一五%とか二〇%とかで借りている国にとっては、金利の全般的低下、日本を初めとして金利の全般的低下というのは非常に喜ぶべき現象であります。  それから、日本のような国がアジアに投資しなくて東欧に投資してくれる、なかんずくポーランドとかハンガリーに来ていますが、そのことは非常にいいことなので、必ずしも悪いことばかりじゃないなというふうに見ております。  あと一分でございますけれども、私の方はそういうことで、去年も五%、ことしもいろんなことを慎重に見通しても大体四・五%ぐらい成長する、失業率は低下する、物価、インフレ率も低下するということで、余り御心配いただかなくて、むしろお金を貸してやるのに非常にいい国じゃないかと思っておりますので、そのことをぜひ御念頭に置いていただきたいと思います。  以上です。
  12. 河本英典

    委員長河本英典君) 次に、特命全権大使オーストリア国駐箚高島有終君。
  13. 高島有終

    説明員(高島有終君) 私からは、旧ユーゴを中心といたしますバルカン情勢について御説明させていただきます。  御承知のとおり、旧ユーゴがございますこのバルカン地域は、中世以降、オスマン・トルコのイスラム勢力ヨーロッパのキリスト教勢力が覇を争った地域でございまして、人種的、宗教的、歴史的にも極めて複雑で、その結果として極めて不安定な地域であったわけでございます。  冷戦の時代に、旧ユーゴは、チトー大統領の非常に強力なカリスマと指導力によりましてこのような民族問題、宗教問題を抑え込んで、かつ東西対立のそのはざまで非同盟とそれから自主管理社会主義という独自路線をとってまいったことは御承知のとおりでございますが、冷戦時代にはこのような政策が東西双方から支援を受け援助を受けるということで、比較的安定した政治経済情勢を保ってきたわけでございます。  しかし、チトー大統領が亡くなりまして十年後に、ちょうど冷戦の崩壊と時を合わせまして旧ソ連圏にございました社会主義諸国がいずれも民主化と市場経済方向に明確に方向転換いたしまして、欧州統合に参加するという方向動き出したのに対しまして、この旧ユーゴ地域では民族主義を背景にいたしまして分裂の方向に進み、そういう分裂から独立国が多くできたわけでございますが、その中でもスロベニアなどごく一部を除きまして、民主化と市場経済化の面で大きく立ちおくれて、欧州統合からも取り残されて、依然として不安定であるのみならず、内乱、内戦にまで発展しているというのが今日の状況でございます。  まず、九一年六月にスロベニアとクロアチアが独立を宣言いたしましたのに続きまして、十一月にムスリム人、セルビア人、クロアチア人の三民族が混住しておりましたボスニア・ヘルツェゴビナも独立宣言をいたしまして、その結果といたしましてボスニアに内戦が勃発し、それがほぼ四年間にわたって泥沼の内戦に発展したわけでございます。  その間、国連や欧州諸国中心に紛争の調停に乗り出しましたが、そしてその間何度か停戦協定はつくられたわけでございますが、いずれも守られませんで、結局最終的に米国が乗り出しまして、NATOの軍事力を相当これは直接的な形で使いまして、九五年の秋に紛争当事者をアメリカのデイトンにいわば缶詰にして交渉した結果、いわゆるデイトン合意の和平が成立したわけでございます。  その後、国際社会、特にNATOを中心とした大きな軍事力と、それから和平履行協議会という国際的な関与体制、あるいは極端に申しますと国際的な管理体制のもとで新しいボスニアの体制がスタートしたわけでございます。  簡単にボスニアの体制を申し上げますと、ボスニア連邦とそれからセルビア人共和国という二つの、エンティティーと言っておりますが、二つの単位から成る連邦、いわば一種の連邦制でございますが、しかし軍事権、警察権といった主要な国家機能は中央政府あるいは統一ボスニアではなくてそれぞれの単位、それぞれのエンティティーに属するということで、中央政府はございますけれどもその権能は弱い、そういう国家体制でございます。  九五年の和平以降、九六年から毎年これまでに三回選挙が行われまして、国家機能は機構的には一応整備されてまいりました。しかし、内戦を実際に戦った三つの民族間の和解というのは容易には進んでおりませんで、したがいまして重要な国家の意思決定は実は三民族の話し合いではなかなかできませんで、結局国際的な管理体制のもとにできております上級代表というのがおりますが、そういう三民族で合意ができない場合にはその上級代表が決めるという形で、例えば国家の象徴でございます国旗のデザインとかあるいは紙幣のデザインといったものもこの上級代表が決めて、それを三民族にのませているというような状況でございます。  他方、軍事面で見ますと、これは直ちに内戦が勃発するような険悪な状況はなくなりまして、また国民ももう実際に戦争には懲り懲りだという印象を強くしているということのようでございます。しかし、このような平和の体制も、多いときには六万、現在でも三万強のNATOを中心とした国際的な軍事プレゼンスがいるという背景があるからでございます。  これからのボスニアの主要な課題といたしましては、難民の帰還、特に多数民族が住んでいる地域にそれ以外の民族が帰還するという状況が遅々として進んでいない。これは緒方高等弁務官が非常に御苦労なさっている点でもございますが、したがいまして今後は多数民族のところに少数の民族が帰ってくるということを進めていくというのが一つの大きな課題でございます。  それから、民主化、特にボスニアの三民族それぞれが民族別に政党を持っているわけでございますが、民族を横断した政党というのが進んでいない。そういう意味では、国民の啓発あるいはマスメディア等を通じた民族横断的な政党を育てて民主化を進めるというのが大きな課題になっております。  それから第三の課題は、申し上げるまでもなく経済の再建でございまして、特にこれから重要になるのは市場経済化を通じて経済の自立を図っていくということでございます。なお、我が国はこの和平履行協議会に積極的なメンバーとして参加しておりまして、九六年の支援国会合で、四年間に五億ドルの支援を実施する用意があるということを表明して、それ以来、医療、教育あるいはそれ以外のインフラの面で積極的な支援を実施しているところでございます。  なお、現在コソボで新たに紛争が発生していることは御承知のとおりでございまして、現在ランブイエにおきまして、いわばボスニアにおけるデイトン合意と同じように、当事者を缶詰にして交渉を行っているところでございまして、当初の予定を一週間延長して、この二十日までに合意を達成するということで鋭意交渉が行われている最中でございます。  アルバニア人側の方では、停戦合意の締結とそれからNATOによる保障といったものを要求して、また最終的には住民投票によってコソボの将来を決めるといったようなことを要求しているようでございますし、他方ユーゴ側では、和平合意の後にNATOなどの国際的な軍隊がコソボに駐留することには反対するといったような点が主要な対立点として、まだ合意に至っていないという状況でございます。  簡単でございますが、以上で御説明を終わらせていただきます。
  14. 河本英典

  15. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 最近のロシア情勢と日ロ関係ということでお話しさせていただきたいと思います。  今回の会議の中で、明と暗があったと言われておりますけれども、明の方はもちろんヨーロッパの中で統合が進み、ユーロまで行っているということでございますが、暗の方は、同じ八五年にゴルバチョフのペレストロイカで始まったロシアの改革がソ連になり、ソ連が崩壊してエリツィン大統領のもとで改革を進めているわけですが、まだいろいろと困難な状況にあるということで、ヨーロッパの暗のうちの一つだということになっております。しかし、大きな流れとしてはやはりこのロシアが七十四年の共産主義体制を脱して、今や世界の経済圏の中にできるだけ早く取り込まれたいということで改革を進めているというのが基本的な流れであるということはぜひ御理解いただきたいと思います。  そして、この間のロシアの中で、改革の結果というのはやはり民主主義というものが定着し、報道の自由が定着し、そして市場経済に向かって一生懸命努力しているというのが今のロシアの現状でございますので、現状だけを見ますと大変暗いように見えますが、ロシアの人と話をしていても、現在は大変だけれども十年後のロシアは明るい、希望を持っているという人たちが多うございます。そういう大きな流れだけはぜひ御理解いただきたいというふうに思います。  それで、内政でございますけれども、御承知のように、エリツィン大統領の健康を中心に不安がずっと続いているというのは事実でございます。しかし、エリツィン大統領は二〇〇〇年まで大統領職を完遂するという決意でございますし、健康のことはどうしても浮き沈みはございますけれども、この前のヨルダンの国王の葬儀にも出られましたように、現在でもかたい決意で主導権を発揮していくということでございますので、まだエリツィン大統領の今後についてはそう簡単に予断を許さないということでございますが、大統領職を続行する決意であるということでやっぱり無視できないファクターであると申し上げられると思います。  それから、現在の困難は、もちろん昨年のチェルノムイルジン内閣の退陣から、今回キリエンコ内閣の退陣に続く困難の継続でございますけれども、最近の明るい面といいますか若干評価できます面というのは、やはりプリマコフ内閣になりましてから、プリマコフ首相は独特の政治的なすぐれた面を持っておられまして、議会の信任をまず得て発足したと。これは、今までの中で絶えず議会と大統領府、政府が対決してきたわけですから、そういう面では非常にいい面を持っております。  プリマコフが、そういう意味では国内の難局を乗り切るのに議会の同意を得て、いわば人に言わせますと荒波の中に油をまいてこれを静めたという表現をする人もいますけれども、国内はかなり安定してきている、これが一つの大きな動きだろうと思いますし、それなりに評価が高まっております。  そういうことで、もし今大統領選があれば、プリマコフが一番人気が出ているということでございますが、プリマコフ首相自体は大統領への野心はないということで、今後も国内の安定化のために努力するという姿勢をとっております。  それから、経済は御承知のように難しい状況にございますけれども、しかしこれも、プリマコフが社会問題を重視しそして生産の回復を重視するということでやっておりますので、一応危機的な状況は脱して、思ったほど経済が危機的な状況に急速に悪化するというのを食いとめているということが一つ言えるのではないかと思います。  そういうことで、ことしの予算も厳しい予算でございましたけれども、議会がこれを承認いたしまして、今までそういうことはなかったんですけれども割とすんなりと通った、国内の危機に際して議会も首相と協力をしていこうということでございましたので、予算は通りました。  問題は、その予算がかなり厳しい予算になっておりまして、そしてことしは対外債務が非常にふえるわけですけれども、IMFが借款を供与するということに決定してもらわないと予算が執行できないという状況になっておりますので、今IMFとの交渉に全力を挙げております。これがもし調わないということになりますと、ルーブルをたくさん刷って国内がインフレに陥ってしまうという状況でございますので、そういう国際社会の支持を得ながらこの難局を何とか乗り越えたいというのが今の状況でございます。  それから、国内では、当然ことしは議会の選挙の年でございますから、この議会がどういうふうになるか、これが今焦点でございます。  一九九五年の選挙のときに共産党が第一党になり、そして野党が第一党になったおかげで政府の遂行したいという政策が多くの問題で議会から抵抗に遭ったということがございましたので、今回の議会がどういう構成になるかということが非常に焦点になっておりまして、中道勢力はルシコフ市長を初めとして何とかこれを中心に据えたいということで頑張って、いろんな政治的な動きが出ておりますけれども、これがどういうふうになるかが一つの焦点であろうと思います。  大統領選挙の方は、議会の構成が決まってから、それ自体が非常に大きな影響を持つと思いますので、来年の初めごろから本格的に始まると考えていただいてよろしいと思います。いろんな候補の名前が出ておりますけれども、今だれが勝つということを言うのは時期尚早ではないか。というのは、九六年にも、一月にはエリツィン大統領の支持が六%という中で戦って選挙に勝ったわけですから、ロシアの大統領選挙というのは、あくまでもこれからの経済状態、それから国会がどういうふうに構成されるかということにかかわってきますので、来年の初めだというふうに御理解いただきたいと思います。  それから、日ロ関係でございますけれども、日ロ関係は、やはり一九九七年十一月のクラスノヤルスクで始まったプロセスというのは、私は極めて重要な意味を持っているというふうに思います。これは当然、エリツィン大統領の呼びかけに従って、日ロが首脳同士の信頼関係を強めることによって問題を解決すべきではないかという呼びかけに応じて始まったプロセスでございますけれども、クラスノヤルスクで我々の予想以上に、二〇〇〇年までに東京宣言に基づいて日ロ平和条約を締結するためにあらゆる努力をしようという合意というのはやはり画期的なものであったと思います。その後、川奈あるいは昨年の十一月の首脳会談を経て、この合意はそのたびごとに確認され、もっとこれを加速しようということは両方の首脳同士でなく、政府のみでなく、政府の間でも確固とした合意になっておりますので、御承知のように双方から案が出て、今交渉しております。  そして、ロシアの国内の情勢というのは、特に今のような経済困難の中に、こういう弱い中でのロシアは妥協ができないんだということを国内で言う人はかなりいます。  そういうことで、状況は必ずしも楽観は許しませんけれども、しかし基本的にこういう合意があるということで、両政府がこれに対して全力を挙げようという合意はなおそのたびごとに確認されて続いておりますので、一月には次官レベル協議の話し合いが行われましたし、近くイワノフ外務大臣が来られてなお大臣レベルでもこの話を続けます。それから、エリツィン大統領が多分夏ごろまでには訪日ということになると思いますので、あらゆる機会を通じてこれの実現のために努力していくというのが我々の考えでございます。  日ロ関係は、今領土問題だけではなくて、経済関係あるいは防衛問題における相互交流、文化交流、その他の広い基盤をもとに、全体を進めながら問題を解決したいというのが双方の意思でございますし、この一年半に起こった日ロ関係の改善というのは極めて実質的なものであって、ロシアの中でも日ロ関係の改善ということは重要だということは共産党まで含めて、野党も含めてかなり理解が出てきております。  ですから、問題の解決は楽ではございませんけれども、しかし私どもは、この大きな流れというのは、二十一世紀に向けて日ロが本格的に協力をしていけるための基盤をつくるということに対して双方の国民が理解でき、そして納得できるような形でこれを何とかして持っていくのが、私はクラスノヤルスク以来始まったこのプロセスの中で両政府にとって大きな責務ではないかというふうに考えております。  どうもありがとうございました。
  16. 河本英典

    委員長河本英典君) それでは、これより質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者を定めず、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。質疑を希望される方は挙手をし、私の指名を待って発言いただきたいと存じますので、御協力をお願いいたします。  なお、多くの委員が発言の機会を得られますよう、片道三分以内の質疑におまとめいただくようお願い申し上げます。また、御答弁もなるべく簡潔にお願いしたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。
  17. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 本日は、それぞれ大使の皆様方、当委員会にお越しいただきましてまことにありがとうございます。時間も限られておりますから、簡単に御質問させていただきます。  ユーロについてでございますが、いよいよユーロがこのような形でスタートいたしました。先ほどから御説明ありましたように、一つ政治的意思によってよくもここまで積み上げてきたなという感慨を、我々日本人でありますが、感じておる次第でございます。これも第一次世界大戦、第二次世界大戦、本当にいろいろと経験を積み、やっぱり平和を希求するというヨーロッパ人の一つ意思のあらわれかな、こんな思いがするわけでございます。政治的意思と言っても非常に抽象的ですので、まだ我々もぴんとこないんですが、その点が一つ。  それから、こういう形で統一通貨、したがいまして金融政策はセントラルバンクで行うんであろうと。しかし、それぞれの国々はそれぞれまだ独立した形で経済政策、特に予算なんというのは各国が独自に組んでいくんだろうと思いますし、そこにはやはりそれぞれの国々がまだ抱えております諸問題、経済的問題があって、積極財政また緊縮財政いろいろあるんではないか、そことの兼ね合いですね。金融政策は統一的にやる、しかし経済政策はばらばらにやらざるを得ないんではないかなと。財政赤字なんか三%以内ということでその枠内にはおさめてあるんではあろう、このように思いますが、その辺が非常に難しいこれからの運営ではないか。  それと同時に、まだ参加していないイギリスとの経済格差。例えば公定歩合なんかの差が非常にまだ大きいものがある。だから、足並みをそろえるという方向に行けばそれなりにでしょうけれども、そうはいかない。失業率が非常に高いところは積極財政も組んでいかなければならないというようなところもあるし、これから非常に難しい運営、各国もそうだし、ユーロ自体も問題を抱えておるのではないかなという感じがするんですけれども、その辺について、ドイツ大使よろしくお願いします。
  18. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) まず、御質問にございました第一の点、政治的意思の問題でございますけれども、これは二つ方向があるんじゃないかと思います。  一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれどもヨーロッパで戦争を繰り返した経験から、やはり欧州というのは統合していかなきゃいけない、二度とこの戦争の惨事を起こしたくないといういわゆる戦後の体験を持った人たち統合への非常に強い意思、これはコール首相なんかまさにそういうあれでございますし、もう一つは、これはむしろ後から、九〇年代に入ってそういう思考が強くなってきたと思いますけれども、グローバライゼーションの問題、それからアメリカ、アジア太平洋からの挑戦の中でやっぱりヨーロッパが生き残っていくためには統合を進めていかなきゃいけない、市場の一本化が必要だ、こういう意味での政治的意思、この二つ意思があるんだろうと思います。  前者につきましては、確かに世代交代によって生の体験に基づく強い意思というのはなくなったのではないかということを言う方がおられますけれども、双方合わせて私はやはり基本的にはそういう意味での政治的意思というのは非常に強く感じております。それから、各国個別の事情に基づく経済困難という点を御指摘になりましたけれども、まさにこの点がこれからの非常に難しい問題かと思っております。  景気後退への対応について十分な備えがないということを先ほど私も申し上げましたけれども、これが全欧州的な規模の景気後退であればこれは比較的対応がまだしやすいんだろうと思います。ただ、一定の地域が海外からの安い商品の輸入によって失業が増大するとか、そういう局地的な景気後退、そういったものに対応するところが非常に難しい問題かと思っております。  ですから、本来はこの財政政策は今、十一本に分かれておりますけれども、それが一体化の方向に向かって動かなければいけないし、それから財政のみならず税制あるいは労働政策、年金政策社会保障、そういったものがすべて調整されなければいけないわけですけれども、そこがまだ調整されていない状況でそうした局地的なものに対する対応というのは非常に難しいんだろうと思います。  今、アジェンダ二〇〇〇という、EUの財政をめぐってこの夏にかけて負担の公平化を図るという動きがございまして、これはドイツの新政権、特にドイツがネットで一番の負担国になるものでございますからそれを求めておりますけれども、こういう動きは実は逆行する動きでございまして、本来であれば豊かな国がたくさんの負担をしてそのヒットされた地域への財政的な手当てに資金を回すということにならないとそういう問題は解決されていかないのかもしれませんけれども、ですからその辺の困難はこれからも予想されるところでございまして、ただ、そうした問題も、この財政問題も今非常に大きな問題になっておりますけれども、何らかの妥協が見出されるんじゃないかなという観測を持っております。
  19. 齋藤勁

    齋藤勁君 民主党の齋藤でございます。  二つお聞きしたいと思います。  一つは、ここ一両日、トルコのオジャランさんという方でしたか、野党党首が大変ミステリーじみた逮捕をされたというような情報もいろいろ入っているんですが、今度のいわゆる欧州大使会議の中で、このことについてどういう意見交換がされたのか、そして今後の推移について、このクルド人問題がヨーロッパ各地に与えるさまざまな影響についてどう分析されているのか、お考えをひとつ伺いたいというふうに思います。  もう一つは、先ほど欧亜局長の御説明の中であったんでしょうか、いわゆるEUから、経済統合から安全保障部分の防衛問題に向かっての発展した形というんでしょうか、いろいろ文献を見ますと、イギリスのブレア首相が、EU自身に軍事力を持たせていこう、そのためにはWEU、西欧同盟をEUに合体させる可能性もと、こういう発言もされているようでございますが、いわゆる軍事、全体的な防衛問題につきましての動きについてお聞かせいただければありがたいというふうに思います。  お答えできる方、どなたでも結構です。
  20. 西村六善

    政府委員西村六善君) 今、先生がおっしゃられましたオジャランとの関係でございますけれども、この西欧大使会議自身では議論はいたしませんでした。  しかしながら、オジャランの問題は、問題の根元が所在しておりますのは中近東でございまして、トルコ及びイラク、イランにまたがりますクルド人の居住地域とその周辺諸国との関係でございまして、そういう視点から外務省の中におきまして、主として中近東アフリカ局におきまして非常に綿密な情報収集を行っているところでございます。  今後この問題がどういうふうな扱いになるか、あるいは展開になるかということは、非常に大きな意味合いを持つことはもう今先生がおっしゃられたとおりでございまして、外務省全体としましてはそういう意識のもとで情報収集等対応に当たっている、そういう状況でございます。
  21. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) ただいまの第二番目の点について、防衛・安全保障面での欧州の役割ということについてお話を申し上げたいと思います。  おっしゃるような点につきましては、最近特に欧州内で、やはり防衛・安全保障の面でも欧州がより独自の積極的な役割を果たしていくべきだという機運が盛り上がっております。特に、そうした機運というのは、コソボ、あるいはその前の既にボスニア・ヘルツェゴビナにおきましても、これはヨーロッパの中でありながらアメリカの強力なイニシアチブなしにはヨーロッパだけで全く動きがとれなかったという状況がございます。  それから、特に昨年十月のコソボの危機のときには、ホルブルック特使がシャトル外交をやったわけですけれども、コンタクトグループというのがございまして、それの意を受けて、要するに、コンタクトグループそのものには欧州の主要な国も参加しておりますが、その過程で欧州の中の足並みがそろわなかった、あるいはアメリカの動き欧州が必ずしも全部克明にフォローできなかったというような状況から、非常ないら立ちといいますか、欧州としての役割の強化ということに対する機運が高まってきたんだろうと思います。  それに加えて、昨年の十二月に、従来安全保障・防衛面での欧州の役割ということに対して、どちらかといえば消極的であったイギリスが態度を変えて英仏の首脳会談で前向きなイニシアチブを表明したというような背景もございます。こうしたことから機運としては非常に高まっているということが申し上げられるかと思います。  そういう状況の中で、先ほど申し上げたような政治安全保障問題でのヨーロッパの代表、これは夏までに指名されることになっておりますし、そういう人たちが指名され、かつその事務局というものができるようになれば、それなりにそちらの方面でのヨーロッパ内での討議というのも進んでいくのかなというふうに思っております。  もちろん、その中身について一本化し合意に至るというにはまだいろいろ時間がかかるかと思いますけれども、器ができ上がるというのはそれほど遠くないのではないかというふうに見ております。
  22. 高野博師

    高野博師君 林大使一つお伺いいたします。  通貨統合ヨーロッパユーロが誕生した。これからは政治的な統合のためのEUの外交とか、あるいは防衛力の強化というようなことが課題になってくるのかと思うんですが、イギリスのブレア首相がEU軍の創設というようなことを提案されているということなんですが、そのイギリス側の本当のねらいというか真意はどこにあるのか。これはアメリカとの緊密な同盟関係ということから考えて、報道なんかでは、ユーロに参加しなかったのでEU内での主導権というかリーダーシップを握るためだとかいろいろ言われているんですが、本当にEU軍創設ということに力を入れてくると、アメリカ依存というところから脱却するとはちょっと考えられないんですが、その辺の兼ね合いのところをお伺いしたい。  もう一つ、イラクの空爆等でアメリカと一体になって軍事力の行使をしているんですが、こういうアメリカとの関係イギリス国民の批判というのはないのかどうか、それをお伺いしたい。  それから、ロシアについて都甲大使一つお伺いしたいんです。非常に楽観的な見方をされたんですが、かなりロシア寄りの見方になってきているのかなという感じも受けたんですが、本当はもっと冷たく見ているんだろうなと私は思っているんです。エリツィン大統領の健康問題等々がありますが、もう既に統治者能力をなくしているんではないかなという感じを受けているんです。これからイワノフ外相の訪日とかエリツィンの訪日とかがあるんですが、領土問題についてはもうほとんど進展が期待できないのではないかなと思っているんです。余りここの部分に期待を持たせるようなやり方をしていくと、全くうまくいかなかったときにこれはやっぱり問題になってくるのかなと。僕はもう少し長期的に見てこの問題に取り組んだ方がいいのではないかなという気がするんですが、その点について簡単にお伺いしたいと思います。
  23. 林貞行

    説明員林貞行君) NATOについてのイギリスの態度ということでございますが、先生御指摘のとおり、従来イギリスは一貫してヨーロッパ防衛におけるアメリカの重要性ということを言ってまいりました。今御指摘のブレアの発言といいますか立場といいますのは、十二月四日の英仏首脳会談のときに出てきたものでございまして、NATO全体の関与しない軍事行動を念頭に置いたEUの防衛というのを考えてはどうかということをブレアが言ったわけでございます。これは、ブレアは昨年の一月から六月にかけましてEUの議長国をやっておりましたけれども、その議長国としてコソボの問題について非常に努力したわけです。そこでやっぱり軍事力のない外交努力の限界というものを強く感じたというのが一つ理由だというふうに説明されております。  それから、先生御指摘のとおり、やはりユーロに入らない英国ヨーロッパの中で発言権を確保するのも一つの要素であるということが言われておりますが、結論は、何らかの理由でアメリカが参加できないような場合に、ヨーロッパ独自で軍事的に動ける道も考えておくべきだというのがブレアの考え方でございまして、基本的にこれからアメリカを排除したEUの防衛体制を考えようということでは全くございません。これを今後どういう形で実現していくかというのは、例えばNATOのインフラを使うとか、いろんな問題でNATOとの関連というのが今後議論されるんだと思います。  それから、第二点のイラク空爆のときでございますが、これはイギリスの議会でも議論されましたが、保守党はもう全員賛成、それから労働党の一部、こういう言葉がいいかどうかわかりませんが、彼らはオールドレーバーと言っておりますが、左派の人が若干棄権の態度を示しましたが、圧倒的多数で政府の立場を支持するということでございまして、新聞で若干のコメントはありましたが、世論は全体として、また圧倒的に支持しているというのがイギリス現状でございます。
  24. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 先生の御指摘、いろいろともっともといいますか、そういう見方が日本でもあるし、私どもその点は十分に心にとめているところでございますけれども、私が御説明申し上げたかったのは、新聞にいろいろ出ておりますけれども、現地で見ていて、具体的な政治的な動きの中でエリツィン大統領の役割というのはまだ重要であるということを強調したかった。確かに健康問題の不安はございます。しかし、新聞が書いているように統治者能力を失った失ったというのが真実に近いかというと、私はそうではないのではないかという現地にいての感じを申し上げた次第でございます。  それから、日ロ関係につきまして、領土問題についてはほとんど進展がないのではないか、もっとさめた目で見る必要があるのではないかというふうにおっしゃられましたのも、私どももそういう点があることは十分承知しております。  しかし、現地で見ておりまして、クラスノヤルスク以来いろいろ行ってきていることが現実の問題としてもかなり成果を上げているということも事実でございます。というのは、御承知のように四島周辺のビザなし交流から出てきている実質的な動き、あるいは昨年の十二月に署名されましてことしの二月に、非常に国内では問題がかなりあったわけでございますが、そういう問題を克服して、安全操業と言われております、いわゆる四島周辺の漁業の問題が片づいたのも、これは四島問題を片づけるための環境整備というふうに観念されているわけでございます。  これはモスクワ宣言を見ても、両方の合意として、この平和条約の早期締結のための環境を整備することを目的とする四島をめぐる協力の重要性を確認しと書いてあるわけでございます。こういう今まで日ロ間ではなかったことがこういうふうに文書で明確にされながら一歩一歩進んでいる、しかも平和条約に向けて努力を進めようとし、これを加速しようということはモスクワ宣言の中にも書かれているという事実がございます。  ですから、客観情勢として難しいのではないかという御指摘は私はもっともだと思いますし、そういうことはないとは申し上げませんけれども、両当事者がそういうことで頑張っているという事実をぜひ御理解いただきたいというのが私の趣旨でございまして、決してこれを楽観視しているわけでもございませんし、現在のロシアの国内情勢からしてそう易しい問題でないということはもう重々承知の上で、つい担当しているもので、現地におりまして、若干皆様の感じから離れているかもしれませんけれども、そういう面もあるということをぜひ御理解いただきたいというのが趣旨でございます。
  25. 高野博師

    高野博師君 よくわかりました。ありがとうございました。
  26. 柳田稔

    柳田稔君 今、日本の平和にとって一番脅威になっているのが北朝鮮なんですけれども、まず都甲大使にお伺いしたいのは、北朝鮮とロシアは国境を接していますので、まずロシアと北朝鮮の関係は今どうなっているのか。それから、北朝鮮のミサイル開発、核兵器の開発、どういう見方をされていらっしゃるのか。  そしてもう一つは、ミサイルの開発が非常に速いスピードで進んでいますね。その技術者がロシアから来ているのではないかという話もありますけれども、そういうことを考えたときに、今は米朝協議ということでアメリカが主体になっていますけれども、私は意外とロシアの役割というのが大きいのではないかと思うんですが、このことについて都甲大使としてどういう働きかけをロシア政府にしていくのかというのがまず一つ。  それから、いつ何どき北朝鮮がどういう行動に出るかもわかりませんけれども、多分国際社会でも国連の中でもヨーロッパ各国イギリスにしてもフランスにしてもドイツにしても大変大きな発言力を持っていると思うんですが、この北朝鮮の動向、日本の考え等を折に触れてヨーロッパ各国にもいろんな話を、コンタクトをとっていく必要があるのだろうと私は思うんですけれども、それについてどういうお考えをお持ちなのか、お聞かせ願いたいと思います。  以上です。
  27. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 最近は、日ロの関係で国際問題につきましてかなり立場が似てきておりまして、多くの問題で共通の場が出ております。もちろん立場を異にすることもございますけれども、そういう意味では国際問題についての日ロの協議というのはかなり突っ込んで行われていると言っていいし、お互いに意見をいろいろな問題で交換しているというのが事実としてございます。  北朝鮮の問題につきましても、当然のことながら意見を交換しておりますけれども、ロシアと北朝鮮の関係というのは従来のような同盟関係というわけではなくなっているというのが現状でございまして、ロシアとしては北朝鮮との関係の新しい協定を結ぶために今お話しの外交的努力を続けておりますし、それから対話は維持するということでやっておりますけれども、やはり北朝鮮の問題というのがアジア太平洋問題の安全保障の見地から非常に重要な問題であるという認識においては、日本とロシアの間でそう認識の差はないということでございます。  具体的に、開発についてロシアの技術者が現在協力しているんじゃないかという御指摘がございましたけれども、私は、ロシア側から聞いている限りではそういう事実はないということを聞いておりますので、そういうことではないかというふうに思っております。
  28. 西村六善

    政府委員西村六善君) 今、先生がおっしゃられました二番目の関係につきましてでございますけれども我が国ヨーロッパ諸国に対しましてこの問題について十分な啓発を行っているか、情報提供等意見交換を行っているかという御質問であったと思いますが、現に、非常にハイレベルから事務方のレベルに至りますまで、あらゆる機会をとらえまして問題を提起し、問題の深刻さを説明しているということでございます。  小渕総理大臣御自身もヨーロッパにことしの一月に行かれたわけでございますけれども、国際問題を広く議論されましたけれども、その中にこの問題はもちろん入っているわけでございまして、問題の深刻さを欧州の指導者に説明しておられる、意見交換しておられるという状況でございます。同じようなことは外務大臣のレベルにおきましても、あるいは外務省の事務方のレベルにおきましても常に日ごろから実行しているところでございます。  現に、ヨーロッパ諸国も非常に強い関心を示しているわけでございます。同時に、そういう関心、それからこの問題の解決に当たりまして、先生もよく御存じの一つメカニズムがあるわけでございますが、KEDOというメカニズムヨーロッパ自身が相当額の拠出をしている状況にございまして、ヨーロッパ諸国がこの問題に全く無関心で冷淡であるというような状況ではないわけでございます。
  29. 小泉親司

    小泉親司君 日本共産党の小泉でございます。きょうは大変御苦労さまでございます。  私は三つの点について質問をさせていただきます。  初めに、久米大使と林大使にお尋ねしますが、先ほどから同僚委員が御質問していますけれども欧州安全保障問題、確かにおっしゃるとおりに、今度のEUの政治安全保障での統合問題というのはやはりアメリカとの関係というのが一番大きいんじゃないかというふうに思うんです。  例えば、ことしのNATOの五十周年に向けまして戦略の見直しというようなことが行われておりまして、例えばアメリカは国連決議がなくてもNATOの域外派遣がやれるような体制をとりたいと言うし、フランスの方はそういうふうなアメリカの行動を単独行動主義と言ったり覇権主義と言ったりして大変批判をしている。  ですから、イギリスはともかく、ヨーロッパとアメリカの間というのは比較的ぎくしゃくしているといいますか、そういう点があるんじゃないか。特にその点で、EUにおきます政治安全保障での統合問題に関連してアメリカとの関係ではどんな動きがあるのか、その辺が一つお聞きしたい点であります。  二つ目は、都甲大使にもし御存じでしたらお聞きしたいんですが、今月の十一日の日本の報道によりますと、ロシアの情報局長が例の日米ガイドラインの問題についてコメントを出されて、つまり日本は地理的な制限を今度のガイドラインでは持っていなくて、ロシアの領土までひょっとすると来るんじゃないかという懸念を表明しておられるわけです。日米安保がもともと防衛的なものがなぜこういうふうに拡大するのか、そういう点では受け入れられないんだというふうな声明をいたしておりますけれども、ロシア政府としてそういう点についてどんな見解があるのか、もし御承知でしたらぜひお聞かせいただきたい。  三つ目は、八九年にEUの労働者の基本的社会権に関する共同体憲章というのが出されたと思うんですね。これは久米大使と林大使にお聞きしたいんですが、例えば最近の報道を見ていますと、イギリスではブレア政権が、最近、労働者の権利を拡大する職場の公正法案というのをつくりまして、これが社会憲章の国内実施の一環だと言ったり、ドイツでは例のコール政権のもともとの福祉切り捨て政策というんですか、政策をもとに戻す政策というふうなことが打ち出されて、減税政策の見直しなども先ほどもちょっとお触れになりましたが、そういうことがされておるというふうなことが報道にはあるんですが、いわゆる八九年の労働者の基本的社会権に関する共同体憲章での各国の取り組み、特にドイツイギリスでの取り組みなどがありましたら、その点もひとつお聞きしたい点であります。  以上でございます。
  30. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) まず第一の点で、安全保障をめぐるアメリカとの関係でございますけれども欧州の中に、これはもとよりドイツも含めて、その他欧州一般の中に、アメリカとの関係でより発言力を強めて、より対等な立場からアメリカとのパートナーシップを組んでいこうという志向があることは否めないところだと思います。ただ、それはあくまでもアメリカのパートナーシップの枠内での発言力を高めるということでございまして、枠組みそのものを崩してアメリカと全く別個なものをつくろうという話ではないというふうに考えております。  先ほど国連のマンデートの話がございましたけれども、この四月に採択が予定されておりますNATOの新戦略概念の中で、いわゆる非五条任務といいますか、活動といいますか、それに対するマンデートの問題というのが取り上げられることは間違いないと思います。  そこで、今おっしゃったようなフランスとアメリカとの間に立場が一致しない部分があるということも事実かと思いますけれども、ただ、それはヨーロッパ全体がそうだというわけではございませんで、ヨーロッパのほかの国の立場は承知いたしませんけれどもドイツで見ておりますと、やはり特にコソボの経験にかんがみて、非常にはっきりしておりますことは、一方では安保理のマンデートがあることが原則であるという点だろうと思います。  ただ、現実の問題として最近のコソボ問題等を見ておりますと、安保理が実際に拒否権のために機能していないという現実がございまして、他方では、コソボの中で極めて人道的見地からヨーロッパの世論として許容しがたい事態が生じている、これを何とかしなきゃいかぬという世論の動向は、ドイツの中で見ておりますと、与野党含めて、あるいは世論押しなべて非常に強いものがございます。  そういう世論を受けて、やはりそのマンデートについても、そうした人道的に極めて問題になるケースが生じている場合に、他方で安保理が機能しないために何もできないということはどうかという疑問が生じていて、そこを何とか手当てできないかという感じがあることは非常に広く支持されているところじゃないかと思います。  それに基づいて、じゃどういう書き方をするのかというのはもちろんこれから議論していくところで、非常にこれは微妙な問題であり、かつ難しい問題だと思いますし、そういうものを一般的に書くことに対する警告というものも非常に強いものがありますので、これからそこは議論を詰めていく段階だろうと思っております。  それから、二番目の御質問にございました労働者の社会的権利に関する共同体憲章というのは、私ちょっとどういうものか承知しておりませんけれどもドイツ社会民主党の立場として、労働者の権利あるいは社会的公正ということは最大のプライオリティーの問題でございますし、おっしゃいましたような年金面あるいは疾病の保険関係でいろいろな改革の試みが行われていることは事実でございます。  ただ、冒頭の発言で申しましたとおり、やはり現実との対応というのがございます。それから財政のネックもございます。そういうことから、現実には従来のキリスト教民主同盟政府のもとで行われてきたこととそれほどかけ離れたことがこれから政策として打ち出されてくるという──もちろんいろんなところで数字が変わってくることはあるかと思いますけれども社会的公正という概念は必ずしも社民党だけの専売ではございませんで、保守党側も非常に十分にそういう考えを持っておりますので、そこは基本的な方向はそれほど変わらないんじゃないかなというふうに考えております。
  31. 林貞行

    説明員林貞行君) NATOの問題でございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、イギリスはアメリカの関与というのを非常に重視しているわけでございまして、久米大使の申し上げたとおり、NATOの枠内での議論ということでアメリカも中に入れた議論になっているわけでございます。  非五条事態といいますか、集団的安全保障と直接関連なく行動する場合に、どういう場合に許されるかということでございまして、これは安保理の決議が必要かどうかというのは今NATO内で議論されていると承知しております。  イギリスは、どちらかといいますと、人道的な問題が緊急の場合には、安保理の決議があることは望ましいけれども、どうしても人道的な要請から必要な場合には必ずしもそれが必要でない場合もあるんじゃないかというふうな考えと承知しておりますが、いずれにせよ、NATOの五十周年会合に向けて新戦略が採択されるわけで、その中でNATO間のコンセンサスが図られていくものと思っております。  それから、第二点の社会憲章でございますが、これは労働党になりましてこの受諾というのを表明いたしました。それに基づきまして最低賃金法も導入いたしましたし、それからその他いろいろな施策というのをやっております。  イギリス労働党政権は、基本的には市場メカニズムということでございますが、しかし人に優しい政策というのもあわせてやっておりまして、そういうものの一環としてそういうものを進めているんではないかと、そういうふうに承知しております。
  32. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 先生御指摘のような発言をラフマーニン外務省情報局長が行ったということは承知しております。一般的な背景を申し上げますと、最近は防衛分野でも、首脳レベルあるいは参謀長レベルを含めて交流はかなり進んでおりまして、いろんな対話が行われております。それを通じまして、日米安保条約が極東、アジア地域で持っている安定に資する役割というものについてはかなり理解が進んでおりまして、その点についてロシア側が基本的に問題にしているというところはないのでございます。  こういう個々の問題が出た場合には、私どもとしてもロシアにこれを説明して理解を求めることにしておりますし、ロシア側もその背景がわかればかなり理解をするというのが今までの幾つかの例において生じてきていることでございますが、本件につきましても、もちろんロシア側に説明はしておりますし、向こうの今理解を求めているところでございます。
  33. 小泉親司

    小泉親司君 どうもありがとうございました。
  34. 依田智治

    依田智治君 ベルリンの壁が崩れてもう十年。その間、ワルシャワ条約体制が解体になって、ソ連邦も崩壊という中で、ハンガリーはいち早く共和国になって、NATOにも入りEUにも入ろうかというくらいで、パーキャピタのGNPも四千ドルを超えるというような資料の御報告をいただいているんですが、ちょうどベルリンの壁が崩壊した年だったですか、私、内閣におりまして、東独にちょっと行ったときに、トラバントなんという、煙を物すごく吐いている、これが一番いい車だなんて走っていたのを見て、いや大変な格差があるなというのをつくづく感じた経験があります。そして、数年前にモスクワに行ったときに、マフィア等も横行し、いわゆる市場経済導入と、もう一挙に民営化しちゃったものですから、物価が一年に二十六倍も上がったりしているような混乱の状況のところへ行ったんです。  そこで、質問したいのは、やはり安全保障というのは、結局、民主主義、市場経済というか、内政の安定があってこそ安全保障が成り立つと思うわけですね。  そこで、ドイツの体制は、コールさんなんかも結局十六年やっていましたが、その間に東西ドイツ統合、物すごい重荷をしょって、まだ今日その負の遺産を抱えているんだと思いますが、東と西の格差、東で育った人たちの精神構造、そういうものを本当に十分一体化したような形になりつつあるのかどうか。そのあたりの東独部分の方々の格差というものがもうほぼいい方向になっているのか。  それから、ハンガリーは市場経済という面ではもう全くほっておいても十分行けるということになっているのか。  最後にロシア。これは、例えば税金なんか取る制度なりにしても、金融システムというのは本当に安定化しているんだろうか。それから、国営企業を一挙にばんと民営化しちゃって、本当に自由な商品の流通がないところでそういうふうになったから物すごくなっちゃっているんですが、そのあたりは大分いい方向になっているのかどうか。  そのあたりをお三人から、簡単で結構ですが、エキスを御報告いただければありがたい。
  35. 河本英典

    委員長河本英典君) 時間が迫っていますので、質疑もそれからお答えも簡単にお願いいたします。
  36. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 旧東ドイツ状況でございますけれども経済の面でもいまだに格差が残っております。失業が東では一七%前後、五州ございますけれども非常に高い水準であるのに対して、西側は一〇%というかなりの格差がございます。これは州によって西側の中でもまたいろいろばらつきがございますけれども、ならすと大体そのぐらいの差がある。  それから、依然として西から東に年間に約一千億マルクでございますが、今のレートで換算いたしますと七兆円ぐらいの公的資金が移転されております。したがって、これは大変な、ドイツ政府にとって非常に大きな重荷になっていると。主としてインフラの整備及び社会保障面での移転でございます。  それから、さらに問題なのは、御指摘のございました、まさに心理面でのギャップがまだ埋められていないということで、例えば東五州の首相の中で東独出身の方というのはブランデンブルクのシュトルペ首相のみでございまして、いろんなところで、企業のトップ、そういった人たちは西から行った人たちが占めている。世論調査の結果を見ても、東独の地域の住民は自分たちを第二の市民であるというふうに意識している人が、ちょっと正確な数字は覚えておりませんけれども、たしか七、八〇%に上っていたんじゃないかと思います。  そういう状況でございますので、特にこの心理的なギャップというのを埋めていくことはなかなか大変なことかと思います。今般ベルリンに首都が移転されることによって、その辺も若干の心理的効果はあるのかなというふうに思っております。
  37. 糠澤和夫

    説明員糠澤和夫君) ありがとうございます。  今、先生から、内政あっての安全保障というお言葉がありましたが、逆にまた安全保障あっての内政という感じもいたします。今ハンガリーは、過去五百年の中で、一番独立した、一番繁栄の希望を持った、それから一番平和の中にいるという状態であると思います。非常に希望に満ちた国であります。兵隊さんの数、これがソ連の中にいたときには十八万人いたんです。今は五万三千人になっています。シンガポールより少ないんです。それだけの少ない軍隊で守れるということが、やはり西側の方に入ってきたということの一番のメリットだというふうに私は考えています。若い人も、二十四カ月強制徴兵だったんだけれども、今は九カ月で済んでいるわけです。やがて六カ月になります。それで強制徴兵はやがて終わると思います。そういった面がハンガリーの青年の一番の希望です。  それじゃ、ほうっておいたらいいのかという問題です。確かに非常に輸出も好調ですし、強いドイツに対して輸出の黒字、貿易の黒字を持っているということからして、ハンガリーは非常に強いじゃないかというふうに思いますけれども、それでは弱みはどこにあるかというと、やっぱりインフラ、環境、それからEUに入るための運輸の面での改善、そういった面があります。  それについて日本の役割は、やはり円借をやってやるということじゃないかと思います。円借については、アジアに非常にこれからお金を回さなきゃいけないから東欧に回すお金はないんだというのが財政の方から言われているんですけれども、我々としては、〇・二%でもって貯金している郵便局、ハンガリーに貸すときには二・五%で貸しているわけですから、ぜひよろしくお願いしたい、こういうことでございます。
  38. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 新聞で見ていると、ロシアの経済は今にもメルトダウンしそうだというような感じをお持ちだと思いますけれども、私は四回目にロシアに行きまして完全に変わったという感じを持っております。  モスクワの町では今は西欧のスーパーも随分できておりますし、輸入品であふれております。それは地方においても多かれ少なかれそういう状況で、物資の不足というのはございません。食糧について若干問題視されましたし、去年の半分にことしは穀物はなっておりますけれども、にもかかわらず食糧についてもそれほど危機的な状況はないということを申し上げられると思います。  今回のルーブルの切り下げによって、むしろ国内の生産の競争力がもっと回復しているという状況がございまして、やっぱり今まで余りにもバブルで金融だけにお金が回っていたのが少しずつ回り始めるんじゃないかという期待も出てきております。ですから、私は今回の危機というのは一つ段階を乗り越えたという意味も持っているのではないかと。それで、よくモスクワに来られる方々が日本で読んでいるのと全く違うという印象を述べておられまして、モスクワ自体がかなり活気を帯びておりますし、地方も安定したところもかなりございます。  そういうことで、全体のロシアを見ますとやはり変わっているというのが実情だというふうに思います。
  39. 依田智治

    依田智治君 ありがとうございました。
  40. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 民主党の木俣でございます。  時間がございませんので、ハンガリーの糠澤大使にかいつまんで御質問申し上げます。  まずもって、大使の皆様方には本当に御苦労さまでございます。特にまた、糠澤さんにおきましては私の前の上司ということもあって大変恐縮でございます。  ハンガリーのことなのでございますが、私は大変重要な国ではないかと思っておりまして、ヨーロッパというのは本当に遠くて遠い国のように思えてなりません。先日もマレーシアに参りましたときに、中国を攻めるためにどうしたらいいだろうかと。ISISという研究所のソフィーという方が言われたのは、マレーシアを使いなさい、マレーシアのチャイニーズから攻めていきなさいというこういう教えを請うたわけでございます。ヨーロッパは民族が違うものですから、チャイニーズ同士のものとはもちろん違いますけれどもヨーロッパの裏庭と言われるような東欧の、特に三つの国として大事な国ではないか。特にハンガリーは数学が得意な人がおりますので計算高い国ではないかと思うわけでございます。  そういう観点から、非常に大事にしたい小国ではないか。そのためには日本国としてどのように対応していったらいいのか、また民間大使でいらっしゃいますものですから、なかなか申しにくいかもしれませんけれども、外務省がこういうふうになったらいいんだ、外交というのはこうあるべきだということも含めて御説明いただければ幸いでございます。
  41. 糠澤和夫

    説明員糠澤和夫君) 御質問ありがとうございます。  ハンガリーに関する限り一番日本にやってもらいたいことは金を貸すということです。ハンガリーというのは借りた金を一回も返さなかったことはありません。赴任するときに渡部衆議院副議長のところに行きましたら、ハンガリーは偉いよ、困ったときにも元利どおりちゃんときちんと返すからということです。そういった点は、ほかにいろんな国がありますが、ハンガリーについてぜひ覚えておいていただきたいということであります。  それから、ハンガリーの教育について今お話がありましたが、ハンガリーの教育、とにかく十三人もノーベル賞をとっている国の教育というのはどういうものかというので高等学校を四つ見に行きました。これは非常に数学を中心とした教育で私も非常に感心することがありました。これについてぜひ皆さんに申し上げたいことは、数学を中心とするというのは、非常に時間をむだに使って長い目で見て物を考える力を養う、数学というのは時間をむだにして自分で考えさせなければ決して成功しない学問、しかも数学が強い人というのはロマンチックな人が多くて計算高い人は少ないということです。数学者は皆多く貧乏であります。  そういうわけで、私は日本の外務省について文句を言うことは全然ありません。私を選んだのも非常に正しいチョイスだったと思っております。私としては、これからいろいろ外務省にこういうことをやってもらいたいということは個別に申し上げますけれども、全体として今までの外務省の東欧、特にハンガリーに対してやったことは非常に向こうにとって感謝されている。ゲンツ大統領に初めてお目にかかったときも、非常に向こうは感謝して、その感謝することの具体的あらわれとして、日本がハンガリーに頼むことは大抵聞いてあげていますよ、安保理事会の問題でも何でもちゃんと聞いてあげますよということを向こうがちゃんと言って、それから投資をよくしてくださいと言っています。  私のところも、グリーンフィールド投資としてはハンガリーが世界からもらうものの中で三番目になっていて、やがて二番目になるという勢いでやっております。グリーンフィールド投資というのは非常に大事で、雇用も税収もそれから関連産業も非常に潤うものです。これと全然違うものが、ある国がこの間ハンガリーでやったパルプ会社ですが、これはその製紙会社を買って全部更地にしてオーストリアから紙を輸出するようにしました。直接投資と称していますが、それは顧客名簿だけいただいたものです。それに比べると日本の投資がいかにいいかということは向こうの人はみんなよく知っています。それは全然日本にとって損するものではないんです。だから、投資もやってあげ、融資もやってあげ、ちゃんと金利もいただける国なんだから仲よくしましょうと、こういうことです。
  42. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ありがとうございました。
  43. 立木洋

    立木洋君 時間がありませんので、都甲さんに日ロ関係だけちょっとお尋ねしておきたいと思うんです。  東京宣言以後、おっしゃったように重要な会談というのが何回か行われてきて、一定の合意があったということも報道を見てよく知っております。ところが、その後の実態を見ますと、ロシア側からそれに対する否定的な見解というのが出てきているんです。例えば、川奈の日本側の提案はすべて同意したわけではありませんという発言だとか、あるいはモスクワでのいわゆる自由保護についても、国内法が整備できていないから、それについては我々はできないというふうな発言だとか、さっきの安全操業の問題もありましたけれども、いろいろたくさんあるんです。そういうことについては関係者が非常に心配しているんです、ある意味では。そういう点については、なぜこんなことが起こるのか。ある識者の発言によりますと、結局問題は平和条約にしろ領土問題にしろ十分にかみ合っていないんじゃないかという意見もあるんですが、この点が一つです。  それから、今ロシアの中で日本との関係、領土問題等々含む平和条約の問題を含めてどういう考え方が一番多い考え方なのか。  それから最後に、ロシアの中に領土問題に関しては第二次世界大戦の戦後処理でスターリンが誤っていた、だからこれはやっぱりきちっと正して日本に領土は返さなければならないんだというふうな見解を持つ潮流が存在するのかしないのか、存在するとしたらどのような潮流なのか、どの程度の比率なのか、ちょっと参考までにお願いします。
  44. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 先ほどのようにいろんな声が時々出てくることもございます。これも、ロシアも自由な報道になっておりますから、それでいろいろな利害団体がいることも確かでございます。  ですから、領土問題についてかなり厳しいことをずっと言い続けている人たちもおりますし、事ごとに、例えば四島の漁業協定についても国会で批准すべきだという動きがあったこともございます。しかし、この動きも今おさまっております。そういうことで、いろんな声が出るのは当然なんです、昔のロシアと違いますから。それが出たことが、一々全体政府としてそれをサポートしているということも必ずしもないということが言えるというふうに思います。  それから、平和条約の問題につきましては、やはり日ロ関係がよくなることは重要だということはほとんどロシアの人が理解を始めたというのは事実でございます。この前、小渕総理が来られたときに公邸で要人をお呼びしたんですけれども、各党の代表全部、共産党まで含めて来てくださいました。そして、やはり日ロ関係をよくするということは大事だと。そこで、領土問題ということが、いわば議会の中の議論として使えるときにはやっぱりそれを使いたいということは残っていると思いますので、その点は今後とも理解しながらやらなきゃならないということはございます。  それから、国内で今、先ほど申しましたように報道の自由がございますから、新聞でも日本に領土を返すべきだと理路整然と主張している学者の論文がそのまま載っております。と同時に、また返すべきでないという議論も載っております。そういうことでテレビの番組なんかでも両方の主張をあわせながらやるというようなこともできております。  そういうことで、やっぱりロシアが変わったというのは、本当にそういう報道の自由というものが今定着しつつあって、その観点からロシアの新聞、テレビ等も両方の議論を流そうという姿勢になっておりますので、その点はもう随分変わったというように言えると思います。  昔は、大使が国祭日に講演を、演説をするのに、領土問題が入るか入らないかで随分せめぎ合いをしたというところがございますけれども、そのときからはやっぱり時代が変わったなというのが現在の状況だと思います。
  45. 山崎力

    山崎力君 久米大使とそれから都甲大使に一点ずつ。  ドイツに関しては連立の一方である緑の党のことなんですが、原発の問題であるとか雇用の問題であるとか、そういったスタンスで入ったわけですけれども、その主張がなかなか現実化するのは難しいということになっているわけです。予想されたことではあるんですけれども、このことに対してドイツ国民は、内閣に入った緑の党の主張がどういうふうに現実の政治で行われているかということに対して現状においてどういうふうな見方緑の党にしているのかという点を一点。  それから、都甲大使に対しては、ロシアのシステムの中で、特に市場経済の中で流通、情報のインフラというものが非常に重要だろうと思うんですけれども、その辺の力の入れぐあいといいますか認識度がどうなのかと。要するに、いわゆる西側の市場経済メカニズムの中でやっていけるところまで行くのに相当かかるんじゃないかという気がするんですが、その辺のところの状況を教えていただきたいということ。  二点、お願いします。
  46. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) 御指摘の緑の党ドイツでの受けとめられ方でございますけれども、これは二つ、非常に極端、対照的な例がございます。  三人閣僚が入っておりますけれども、一方ではフィッシャー外相は大変現実への対応をうまくやったということかと思います。例えば核先制不使用の問題を提起はいたしましたけれども、これはあくまでNATOの中での議論のために提起しているんだと。ドイツとしては同盟の調和といいますか、意見に従うということでやっております。  他方、環境相、環境大臣になられましたトリッティンという、これも緑の党の出身でございますけれども、原子力政策については相当ラジカルな緑の党の主張をそのままぶつけて、外国では再処理の放棄の問題、禁止の問題をめぐってフランスとイギリスが対立いたしまして、国内でも経済界と激しく対立をするということで、その辺の現実性の対応というのがどちらかというと世論からも批判されるという形になっております。  結果として、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、ヘッセンの州議会選挙というのが先週行われまして、ここで一番票を失ったのは緑の党でございます。一一%から七%に四%の支持を落としていますので、そういうところに世論の批判が若干出ているのかなということがございます。  それと、若い世代の支持層が特に緑の党については減っております。この理由としては、最近若年層の失業問題というのが非常に深刻になっておりまして、そういう年齢層にとっては環境問題以前にやはり自分の職が欲しいということで、環境問題を主な柱とする緑の党に対する支持が減っているというような分析がなされております。
  47. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 御指摘のように、流通の問題あるいは情報の問題等、まだ問題がなくはないと思います。七十四年間の共産主義体制を自由市場経済に変えるのがいかに難しいかというのはそのとおりでございます。  しかし、モスクワを見ておりますと、やはり流通は際立ってよくなってきていると。例えば、花屋がモスクワじゅうにありますけれども、ロシア人は花が好きですけれども、前の晩にオランダから輸入してきて次の日にはほとんど売れちゃうというので、花屋が非常に今はやっております。それから、町のスーパーその他についても同じような状況がありますし、今そういうことで急速にこれは進んでいる。  ただ、企業のマネジメントその他でいろいろ問題がございますので、橋本・エリツィン・プランの中の重要な問題は、日本センターをモスクワ、ハバロフスク等につくっていろんな講座を設けて今までやっております。それから、千六百人ぐらいロシアでも教育しましたし、五百人ぐらい日本に呼んでそういうマネジメントの教育をするということを今やっておりまして、こういう貢献というのは非常に重要だというふうに思っておりますから、まだ完全に自由経済としてシステムが確立するにはなかなか難しい。例えば七割が貨幣経済、物々交換だったり、税金を払う人が、なかなか納税制度がうまく機能しないというような問題、いろいろございますので、政府としてもそういうところの法律を確保し、それからシステムをきちっとするのに非常に力を入れているところでございます。  ですから、完全に日本あるいはアメリカ、ヨーロッパのようになるには時間がかかると思いますけれども、基本的な枠組みはもうできつつあるという感じがいたします。  それから情報については、報道の自由というのはもう完全に今確立されていますから、モスクワでも相当数の新聞がありまして、それぞれが自由な主張をしていますので、昔はプラウダとイズベスチアだけを読んでいればよかったんですけれども、今はとても大変になっていると。  それから、テレビが主なメディアになっておりまして、テレビは主に広告でやっておりますから、その広告を見てみますと、今までは西側の広告が非常に多かったんですね。ただ、最近、ルーブルの切り下げで外国企業が若干引いたということから、ロシア企業が随分広告をするようになっております。  そういうことで、やはり基本的には報道の自由を通じていろんな見解が伝わるし、それから市場も報道を利用しながら拡大しているという状況を見てみますと、やはり資本主義の独特のメカニズムというのはロシアでもどんどんと拡充しつつあるという感じがいたします。
  48. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 久米大使に法律問題を一つお尋ねします。  去年の八月、アメリカがスーダンとアフガニスタンに対してミサイル攻撃をしかけました。それは、その少し前にアフリカにあるアメリカの大使館が爆弾テロに遭ったと。それで爆弾テロの犯人を調べたら、スーダンとアフガンのしかるべきところに隠れておるということでそこにミサイル攻撃をかけたというので、こんなばかげたことはないわけでして、物事の筋道は全く通っていない。  もし犯人が隠れていると思えば、情報を、資料をアフガン政府あるいはスーダン政府に提供して、犯人の検挙、引き渡しあるいは処罰を求めればいい、それだけのことで、もし断れば国連に訴えて経済措置その他を考えればいいということなので、暴力に対しては暴力でということはもう絶対に許されないことなので、法治主義としては当たり前のことなんですけれども、日本政府は余り難しい議論はしたくないと、しかも日本はまあまあの社会ですから、アメリカのやっていることに一々因縁はつけられないということで理解を示したと。  私ちょっと不思議に思ったのは、ドイツ政府も理解を直ちに示しているんですね。ドイツ人というのは法律の議論が飯より好きで、とことん納得するまで議論をして夜明かしを平気でやる、筋道が通らなければどこまでも言い争う、議論をする、そういう民族なんですけれども、今やそういうことはどこかへ行っちゃって、我々日本人と同じように、余り難しいことはやめようや、アメリカがやったんだからけちをつけても始まらぬ、こういうふうになっちゃったのかどうなのか。  その辺の議論を、有識者と意見も交換していると思われますから、ちょっと披瀝してもらえればと思います。
  49. 久米邦貞

    説明員久米邦貞君) おっしゃるとおり、日常の生活においては今でもドイツ人のそういう性格については全く変わっていないのだろうと思います。ただ、政治のレベルでは、たまたま今おっしゃいましたスーダン、アフガニスタンへの米軍の攻撃の際にはそういう議論というものは余り出てきておりません。
  50. 河本英典

    委員長河本英典君) 他にも御質疑があろうかと存じますが、予定の時間も参りましたので、本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  大使各位には、各赴任地において、今後とも健康に留意され、日々の任務を果たされるようお願いし、御礼のあいさつといたします。  本日はどうもありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十二分散会