○
説明員(都甲
岳洋君) 最近のロシア情勢と日ロ
関係ということでお話しさせていただきたいと思います。
今回の
会議の中で、明と暗があったと言われておりますけれ
ども、明の方はもちろん
ヨーロッパの中で
統合が進み、
ユーロまで行っているということでございますが、暗の方は、同じ八五年にゴルバチョフのペレストロイカで始まったロシアの
改革がソ連になり、ソ連が崩壊してエリツィン大統領のもとで
改革を進めているわけですが、まだいろいろと困難な
状況にあるということで、
ヨーロッパの暗のうちの
一つだということになっております。しかし、大きな流れとしてはやはりこのロシアが七十四年の共産主義体制を脱して、今や世界の
経済圏の中にできるだけ早く取り込まれたいということで
改革を進めているというのが基本的な流れであるということはぜひ御理解いただきたいと思います。
そして、この間のロシアの中で、
改革の結果というのはやはり民主主義というものが定着し、報道の自由が定着し、そして
市場経済に向かって一生懸命努力しているというのが今のロシアの
現状でございますので、
現状だけを見ますと大変暗いように見えますが、ロシアの人と話をしていても、現在は大変だけれ
ども十年後のロシアは明るい、希望を持っているという
人たちが多うございます。そういう大きな流れだけはぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
それで、内政でございますけれ
ども、御承知のように、エリツィン大統領の健康を
中心に不安がずっと続いているというのは事実でございます。しかし、エリツィン大統領は二〇〇〇年まで大統領職を完遂するという決意でございますし、健康のことはどうしても浮き沈みはございますけれ
ども、この前のヨルダンの国王の葬儀にも出られましたように、現在でもかたい決意で主導権を発揮していくということでございますので、まだエリツィン大統領の今後についてはそう簡単に予断を許さないということでございますが、大統領職を続行する決意であるということでやっぱり無視できないファクターであると申し上げられると思います。
それから、現在の困難は、もちろん昨年のチェルノムイルジン内閣の退陣から、今回キリエンコ内閣の退陣に続く困難の継続でございますけれ
ども、最近の明るい面といいますか若干評価できます面というのは、やはりプリマコフ内閣になりましてから、プリマコフ首相は独特の
政治的なすぐれた面を持っておられまして、議会の信任をまず得て発足したと。これは、今までの中で絶えず議会と大統領府、
政府が対決してきたわけですから、そういう面では非常にいい面を持っております。
プリマコフが、そういう
意味では国内の難局を乗り切るのに議会の同意を得て、いわば人に言わせますと荒波の中に油をまいてこれを静めたという表現をする人もいますけれ
ども、国内はかなり安定してきている、これが
一つの大きな
動きだろうと思いますし、それなりに評価が高まっております。
そういうことで、もし今大統領選があれば、プリマコフが一番人気が出ているということでございますが、プリマコフ首相自体は大統領への野心はないということで、今後も国内の安定化のために努力するという姿勢をとっております。
それから、
経済は御承知のように難しい
状況にございますけれ
ども、しかしこれも、プリマコフが
社会問題を重視しそして生産の回復を重視するということでやっておりますので、一応危機的な
状況は脱して、思ったほど
経済が危機的な
状況に急速に悪化するというのを食いとめているということが
一つ言えるのではないかと思います。
そういうことで、ことしの予算も厳しい予算でございましたけれ
ども、議会がこれを承認いたしまして、今までそういうことはなかったんですけれ
ども割とすんなりと通った、国内の危機に際して議会も首相と協力をしていこうということでございましたので、予算は通りました。
問題は、その予算がかなり厳しい予算になっておりまして、そしてことしは対外債務が非常にふえるわけですけれ
ども、IMFが借款を供与するということに決定してもらわないと予算が執行できないという
状況になっておりますので、今IMFとの交渉に全力を挙げております。これがもし調わないということになりますと、ルーブルをたくさん刷って国内が
インフレに陥ってしまうという
状況でございますので、そういう国際
社会の支持を得ながらこの難局を何とか乗り越えたいというのが今の
状況でございます。
それから、国内では、当然ことしは議会の
選挙の年でございますから、この議会がどういうふうになるか、これが今焦点でございます。
一九九五年の
選挙のときに共産党が第一党になり、そして野党が第一党になったおかげで
政府の遂行したいという
政策が多くの問題で議会から抵抗に遭ったということがございましたので、今回の議会がどういう構成になるかということが非常に焦点になっておりまして、
中道勢力はルシコフ市長を初めとして何とかこれを
中心に据えたいということで頑張って、いろんな
政治的な
動きが出ておりますけれ
ども、これがどういうふうになるかが
一つの焦点であろうと思います。
大統領
選挙の方は、議会の構成が決まってから、それ自体が非常に大きな影響を持つと思いますので、来年の初めごろから本格的に始まると考えていただいてよろしいと思います。いろんな候補の名前が出ておりますけれ
ども、今だれが勝つということを言うのは時期尚早ではないか。というのは、九六年にも、一月にはエリツィン大統領の支持が六%という中で戦って
選挙に勝ったわけですから、ロシアの大統領
選挙というのは、あくまでもこれからの
経済状態、それから国会がどういうふうに構成されるかということにかかわってきますので、来年の初めだというふうに御理解いただきたいと思います。
それから、日ロ
関係でございますけれ
ども、日ロ
関係は、やはり一九九七年十一月のクラスノヤルスクで始まったプロセスというのは、私は極めて重要な
意味を持っているというふうに思います。これは当然、エリツィン大統領の呼びかけに従って、日ロが首脳同士の信頼
関係を強めることによって問題を解決すべきではないかという呼びかけに応じて始まったプロセスでございますけれ
ども、クラスノヤルスクで我々の予想以上に、二〇〇〇年までに東京宣言に基づいて日ロ平和条約を締結するためにあらゆる努力をしようという合意というのはやはり画期的なものであったと思います。その後、川奈あるいは昨年の十一月の首脳会談を経て、この合意はそのたびごとに確認され、もっとこれを加速しようということは両方の首脳同士でなく、
政府のみでなく、
政府の間でも確固とした合意になっておりますので、御承知のように双方から案が出て、今交渉しております。
そして、ロシアの国内の情勢というのは、特に今のような
経済困難の中に、こういう弱い中でのロシアは妥協ができないんだということを国内で言う人はかなりいます。
そういうことで、
状況は必ずしも楽観は許しませんけれ
ども、しかし基本的にこういう合意があるということで、両
政府がこれに対して全力を挙げようという合意はなおそのたびごとに確認されて続いておりますので、一月には次官レベル
協議の話し合いが行われましたし、近くイワノフ外務大臣が来られてなお大臣レベルでもこの話を続けます。それから、エリツィン大統領が多分夏ごろまでには訪日ということになると思いますので、あらゆる
機会を通じてこれの実現のために努力していくというのが我々の考えでございます。
日ロ
関係は、今領土問題だけではなくて、
経済関係あるいは防衛問題における相互交流、文化交流、その他の広い基盤をもとに、全体を進めながら問題を解決したいというのが双方の
意思でございますし、この一年半に起こった日ロ
関係の改善というのは極めて実質的なものであって、ロシアの中でも日ロ
関係の改善ということは重要だということは共産党まで含めて、野党も含めてかなり理解が出てきております。
ですから、問題の解決は楽ではございませんけれ
ども、しかし私
どもは、この大きな流れというのは、二十一世紀に向けて日ロが本格的に協力をしていけるための基盤をつくるということに対して双方の
国民が理解でき、そして納得できるような形でこれを何とかして持っていくのが、私はクラスノヤルスク以来始まったこのプロセスの中で両
政府にとって大きな責務ではないかというふうに考えております。
どうもありがとうございました。