○
石橋委員 引き続きまして関連の質問ですが、私は、今日本の
労働者、勤労国民は、ちょっときざな言い方をしますが、三つの非常に厳しい状況に置かれている、三重苦のもとに置かれている、こういうふうに言っていいのではないか、こう思っているわけであります。
三重苦の第一は、言うまでもなく、
雇用失業問題が非常に厳しいということであります。これについては説明するまでもないですから、さっきも話がありましたし。六月二十九日に発表されました総務庁の
雇用失業統計では、
完全失業率は四・六%、三百三十四万人の
失業者、わずかに減ってはいますけれども、これは求職活動をやめた人たちがふえた、こういうことでもありましょうから、少しばかり減ったからといって喜んでおれる状況ではない。企業のリストラ計画だとか民間のシンクタンクが発表している潜在
失業者の数、企業が抱えている過剰
雇用の数、四百万から八百万という
数字が出ていますから、そういうようなことを
考えるとまだまだ
雇用失業問題は厳しい状況が続く、こういうふうに思いますから。まず一つは、かつてない厳しい
雇用失業状況。
二つ目は、年金、医療を含めて、政府もさんざん苦労はしておられるようですが、なかなかきちっとした
政策が決まってこない、そういう一種の混迷
状態に社会保障が置かれている。その端で、御承知のとおり、厚生年金基金などは長期にわたる低金利のもとで運営に行き詰まって、小さいところから片っ端から崩壊していく、こういうような状況があるわけです。そういう
意味では、社会保障制度の混迷と崩壊が表面化をするような状況の中で、勤労者、国民が老後、将来の生活に安心感が持てない。この春、経企庁でしたか、
調査しました
調査によりますと、
大臣も御承知だと思いますが、二十代の若者たちの五六%だったと思いますが老後に不安を持っている、こういうような
数字も出ているわけですね。五十、六十の
高齢者が老後の生活に不安を持つというのはわからぬでもないのですが、将来にわたって大きな希望とみずからの人生を開こうとする意欲に満ちた二十代の若者が今から老後に不安を抱くなどということは、私は、先進国日本においては異常事態だ、こう言わざるを得ないことではないかと思っておるわけです。そういう
意味では、二つ目の問題点は社会保障制度の混迷と崩壊現象。
三つ目の問題は、今言った長期
雇用慣行と関係をしますけれども、
失業問題が深刻になっている、社会保障制度もまた深刻な状況に直面をしている。そういう中で、
労働省としては、長期
雇用慣行を全面的にここでなくすなどということは
考えていない、
人材の
流動化と安定的な長期
雇用を両立させながらうまくいくようにしたい、こういう
大臣の答弁だったと思います。しかし、日経連が九五年に出した「新時代の「日本的経営」」、こういう文書を見ますと、これは見ようによってはいろいろな言い方ができると思いますが、私は、日経連という経営者団体のやや長期にわたる
雇用戦略というか、そういうものだと受けとめているわけであります。
これによれば、さっきも言いましたように、日本的
雇用関係の終身
雇用制度、年功型の賃金その他の処遇、こういうものは根本的に変えようという
考え方が明確になっているわけですね。さっき
大臣が言われました長期
雇用が保障されるのは、その中で言う長期蓄積
能力活用型ですか、全体の大体一〇%程度が
考えられておるようですが、企業の基幹要員になる人々については
期間の定めのない
雇用、終身
雇用かどうかはまだはっきりしませんが、比較的それに近い状況が保障される。定期昇給もある、期末手当も業績給が
中心だけれども保障される。
ところが、その一番
中心に座る人たちにはそれが保障されるけれども、その他の人たち、二番目のところは御承知のとおり高度
能力活用型だったと思いますが、研究開発部門だとか営業だとか企画部門で働く
労働者については、賃金は年俸給、定期昇給なし。退職金もたしかなかった、賞与なしですか、そういう形に変わっていく。
期間の定めのある
雇用ですから、これは終身
雇用ではない。
それから、一番底辺という言い方はよくないんだが、その次は
雇用柔軟型の
労働者。これは、パートタイマーだとか
派遣労働者だとかあるいは社外工だとか下請の
労働者、そういう人たちが当てはまると思いますが、これについては時間給、定期昇給なし、退職金もなし、
期間の定めあり、こういうことだと思います。
日経連は何年ぐらいかけてそういう目標を実現しようとしているのか、そんなことは全然明らかにされていませんから何とも言えませんが、しかし、じわりじわりとそういう状況が進んでいくということになると、これは我が日本の勤労者、
労働者は生活設計をし直さなきゃいかぬことになってくるわけであります。
第一、第二の問題と絡んでそういう面からも非常に厳しい状況に置かれているわけですから、景気
対策としては何としても国民の消費を拡大することが最大の決め手になるわけですが、今言ったようなことを
考えると、そうはいってもなかなか財布のひもを緩めるわけにいかない、こういう状況が続いているわけであります。
そういう
意味で、景気
対策上ももう少し働く人々に対する温かい処遇というものが
考えられないといけないのではないかなと思っておるわけであります。これは総理
大臣が一番
考えなきゃいかぬ話かもしれませんが、しかし、
労働担当の
労働大臣が閣議でどういう姿勢で対応されるかということは非常に大事ですから、そういう
意味で、ここで改めてそのことについて伺っておきたいと思います。