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中桐委員 そこで、先ほどの
大臣のお答えの中に幾つかの非常に重要なキーワードがあるわけですが、
一つは選択肢を用意するということ、これはこれで重要なキーワードであり、このことをどうするかということと、先ほどの
常用雇用の安易な切りかえ、
派遣労働のようなものにどんどん切りかえるというふうなことについては、同時にこれをきちんと対処しなければいけない、そういうことをやらせてはいけない、これは大変重要なセット論の話だと私は思うわけであります。
しかし、その場合に、私もこの
派遣労働についてドイツやフランスに調べに行ってまいりましたが、ドイツなんかに行きますと、よく、
日本の労働時間が問題になったときに、過労死なんという問題があって、その事件の死亡している
労働者本人がどういう働き方をしてきたかというようなデータを外国の
労働者の
人たちが見ると、一体、君の国には労働基準に
関係する基本的な
法律というのはないのか、こういうふうなことを
質問されることがあるわけですね。
つまり、もちろん
法律違反というのは幾つもあるだろうけれども、何しろ最近は労働時間の短縮でだんだん努力をして問題が少なくなってはきておりますけれども、しかし、例えば労働時間というふうなものを通して
考えれば、労働基準というものが本当にきちんとしたナショナルなスタンダードになっていないんじゃないのという疑問を持つわけですね。いわば
法律に書いてあることと現場の食い違いというのがそのぐらい大きい、かなり大きい国、そういう国に見られてしまうわけであります。
もちろん、ヨーロッパが
法律と現実が全く一致しているというふうなことを私は言っているわけじゃありません。ただ、その格差が余りにも大きいということを、いわゆるナショナルなスタンダードを決めたのならそれをきちんとお互いに守ろうよ、こういうことがなかなかできていない国の
一つなんじゃないかというふうに、私はずっと痛感をしてきているわけですね。
そういう中で、ドイツの人も言っていましたが、いわゆる事業の臨時的、一時的繁閑に正規
雇用ではどうしても全部対応できない、そういうところに必要な
労働力を供給する、その
需要にこたえて供給をするという仕組みはどうしてもゼロにはできないということから、一定の条件つきでそういう働き方を認めざるを得ない。しかし、それは正規の
常用雇用に比べれば労働条件が非常に悪くなるということがあのドイツでも非常に問題になっておりまして、そういう
意味において、そもそも
労働者派遣事業の中で働く
労働者の労働条件というのは、いわゆる正規
雇用の
労働者の労働条件に比べればどうしても悪い
状況で働かなければいけない、ある種
労働力の
需給の
関係の中でそういうふうに
市場の法則が貫徹をしてしまうというところがある。
そういうことに対して、私は、このネガティブリスト化に伴う
派遣労働の
拡大、そしてその中で
就業条件の非常に悪い
状況が広がってしまう、そういうことについて非常に大きな問題を起こしてしまうのではないのかな、こういう懸念をずっと持ちながらこの
法律の
整備をしなければいけないなと思っているわけです。
さて、その中で、いわば正規労働に対して非正規労働という形で働く働き方の中には、パートもあれば社外工みたいな形の働き方もあれば、いろいろな働き方が既にもう
日本でも行われている。これはまあ世界でもそういう形で
労働力市場が形成されているわけですが、そういう中で、最近の研究の報告でも、確かに
経済成長の中で最低賃金は上がってきて生活のレベル、賃金のレベルは上がってきた、しかし
企業規模間格差というふうなものを見た場合に、この
企業規模間格差、一番上の大きな
企業と一番下の
企業の間の格差は実は
拡大をしているという問題が言われているわけです。これは統計的にそれを調べて、
拡大をしている。つまり、全体の
経済成長の中でのレベルは上がってきてはいるが、相対的に規模間で見ると格差が
拡大をしている。これは私のずっとやってきた安全衛生でも同じことで、労働災害の発生率は実は、発生率全体の絶対数は減っているけれども、相対的な
関係では
拡大をしている。
さて、
メガコンペティションというような形で
大臣もよく言われますが、いわゆる大競争
時代というような形で言われるこの
状況の中に、これからどんどん
構造改革やあるいは規制緩和やそういったものをやっていくと、これはもう既にアメリカという国で所得格差というのがどんどん広がっているという結果が出ていることが明らかですから、そういうことを
考えるとますます、これはかつて言われていた、
日本で言えば二重
構造ですね、大
企業と中小零細、それと同じように、二重
労働市場とか二重
労働力市場というように二つ
労働市場があって、第一次
労働市場と第二次
労働市場があって、その第一次と第二次の間は固定的になってしまって移動ができない。
つまり、
労働市場というのは普通
一つだと思っているけれども実は二つあって、第一次
市場という、どんどん挑戦のチャンスがあって、職業訓練なんかどんどん受けて新しいことにどんどん挑戦をして
自分の能力をいろいろなところへ展開をする、そういうことのできる第一次
労働市場と、それから、その道が非常に狭くて、
自分がどこかで自助努力で次のチャンネルへ移行しようとしても移行できないもう
一つの
市場ができてしまう。これを第二次
労働市場といって、これは学説の
一つですから、この学説論争をここでやるつもりは全然ないのですが、そういう
考え方がなされるほど、言ってみれば大きく二つのグループに分かれるような傾向が出てきている。
しかし全体の生活がよくなっているのだからいいじゃないの、こういう話でそれを解決するかどうかという問題になってくるのですが、私はやはり余りこの格差を
拡大し過ぎてはいけないと思っているわけで、私はそういう
意味ではリベラルの立場に立つわけであります。
そうなると、何を解決していかなきゃいけないかという問題になってまいります、この
派遣法の問題
一つとっても。少なくとも
派遣労働というものは正規
雇用の上にいい労働条件をとれるということは、これは全世界を見ても私はあり得ないことだと思います。そうなると、問題は、その格差をどう
拡大しないで適切な労働の
市場としてこれを
確保していくのかということが
一つと、それからもう
一つは、やはり第一次
市場と第二次
市場に固定してしまわないようにするためにはどうしたらいいんだという問題の二つを解決しなきゃいけない。
そのときには、選択肢を用意するということと
労働者保護をしっかりやるということだけでは足らないので、もう
一つのチャンス、つまり第一次
市場に転換できるチャンスというか正規
雇用というか。もちろん正規
雇用そのものをされたら第二次
市場から第一次
市場へ移れるというものでもないんですけれども、これはややこしいから細かい話はやめますが、問題として、
一つは正規
雇用にどの程度移れるのかという問題があるわけであります。いわゆる不安定な
雇用状況、
就業条件がどうしても落ちる、その落ちる
状況から脱却をする道というのは、多様な選択肢の
一つである
派遣労働という選択肢を通じて正規
雇用にどういうふうに移行できるのかという問題が私は非常に関心がある。その正規
雇用に移行できる
可能性というのは一体どのぐらいあるのかということが問題になるわけです。
さて、その点でどうでしょうか。今まで私が調べた限りでは、一九九〇年に
雇用開発センターというところが調査をして、その調査結果があるようですが、アメリカでは非常に転職が頻繁に行われる。その中で、これはパートの統計のようですが、パートタイマーで働いていた人が正規の職員に転換をしていく、そういうふうに登用した
経験があるというのが、アメリカの統計では八二%の
企業がパートを正規にした。これは今までの
経験ですから発生頻度じゃないのですが、そういうことなんですが、それに対して
日本では、パートでは二六・四%。つまり、パートを正規の職員に登用したことがあるという
企業がアメリカでは八二%、
日本では二六%。
派遣労働者ではわずかに三・七%というんですね。これは一九九〇年の
雇用開発センターの統計なんです。
こういう中で、今
労働省、
政府が、これまでの
行政の中で
経験したことも含めて、一体
派遣労働というものが、二重
労働市場から、下位の
労働市場から上に転換する
一つのステップである正規
雇用への道がどの程度あるのか、それは把握をされたことはありますか。