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中桐委員 そこで、もう少し前に進みたいんですが、ここには「
事業者が安全衛生
対策を自主的に行うための
指針であって、強制的な
基準ではない」と書いてあります。ここが問題です。強制するのは何なのか、そして任せるのは何なのか、ここが問題なので、この発想ではちょっと先がよく見えない。
すべての
事業所、すべての
労働者を対象にするというのが最近の国際的な安全衛生活動の方向性になっていますから、安全衛生
委員会があるとかないとかという問題だけではない。そうしますと、自主的な安全衛生計画というものを
事業者に義務づけることは、これは強制的な
基準ではないということでは私は困ると思う。つまり、小さな
事業所であっても、
事業主は安全衛生計画をつくらなきゃいけないんだ。会社に行くと、おたくの会社の安全衛生というのは今どういう方針になっていますか、ことし一年何をやりますか、来年は何をやりますか、つまりこれは、計画、実施、
評価、改善ですから、それを出してくださいと言ったときに、すぐ文書で出てくるかどうかという問題なんです。
それを全部チェックするかどうかは別ですよ。
化学物質と同じで、やっていなければペナルティーですよ、それは。ペナルティーが起こるときは、災害が
発生したときに起こるわけですよ。それはしようがないじゃないですか。マネジメント
システムを
導入したから一斉に何月何日に全部の計画をチェックができるか、これは不可能でしょう、現在の
労働監督行政の幅広い範囲からいえば。それはしようがない。それを一々細かに法律の条文、規制項目でやろうといったって、その会社に一体どういうリスクがあるのか監督官にわかりますか。わからないんですよね。多様な
企業があり、日々技術革新で変わっていくわけですから。そうすると、ドン・キホーテはやめなきゃいけません。
そうすると、
事業主は何をやらなきゃいけないんですか。ここが問題なんだ。
事業主は、自分の会社のことは自分が一番よくわかっている。安全衛生というものはこういう問題を考えながら計画をつくるんですよという何か
ガイドライン、いわゆる
基準ですか、というものをつくって、それをつくりなさいと。工場に監督官が行ったときに、平均すれば十年に一回行くのか、行ったときに、文書を見せてくださいと言ったら文書がちゃんと出てくる。しかも、それは十年前につくったのを全く変えていないのでは困るわけです、だって、計画、実施、
評価、改善なのだから。
そうすると、それはちゃんとしかるべく定期的に
労使が話をして、
事業主がつくっていく。
労働者がそれに意見を述べてでもいいですけれ
ども、少なくとも
労働者の合意でやらなければうまくいかないのだから、法律で規制するというアプローチは日本でももう限界に来つつあるわけだから、やはり現場が一番わかる働いている人も参加をして、ここの
職場はどうも働きにくいとか、そういう意見も入れて、よりいい
作業場にするということをやらなければいけないという話になってきているわけですよ、ローベンス・レポートの基本コンセプトは。
ですから、そう考えると、行政が漏らさずやらなければいけないことはきちんと掲げなければいけない。それは、五十人未満であろうが何であろうが、全部やらなければいけないわけですよ。たった五行か六行の安全衛生計画でもいいのですよ。やることが重要なのです。私の
職場は、まずいすをちょっとよくしますという計画を立てるだけでもいいのです。それを、全部の体系を突っ込んで、これだけの
安全衛生法を守りなさいといって五十人未満の
事業所に押しつけて、
事業主は全部読むのは頭がパンク状態になるのだから、そこをどうするかという問題。これは私も詰めて
検討していないから、行政の前線の人に十分
検討してもらいたい。
しかし問題は、自主的な、強制的な
基準ではないものをつくってどうするのですか。私は、基本は
内容ではないと思うのです。もちろん
内容は重要ですよ。
内容は物すごく重要なのだけれ
ども、基本的にはこういう枠でつくりなさいということをすべてのところに義務づけなければ、新しい時代の安全衛生活動にならないではないかと思うのですね。
ですから、そういう点で、ぜひ私お願いがあるのは、自主的な活用と同時に、監督業務の再編成、再
検討、それを考えていただきたい。国際的な安全衛生
基準からいうと、もう
労使が参加をするということが前提
条件になってきておりますから、
労使が参加しなければこの
システムはうまくいかないと私は思うのです。法律で規制するのならまだいいですよ、これこれをしなさいと書いてあるわけだから。それは規制の可能性があるけれ
ども、自主的にやる話になってきたときに、やはり現場の
労使が参加をしなければ話になりません。
そうすると、
労使が参加できる仕組みをつくってあげないといけない。その
労使が参加する仕組みというのは、今意見を聞くという話になっている。五十人未満の場合は、
労働者の意見を聞くという話になっていて、どうも
システムがうまく機能するレベルに達していない。そこで私は、
委員会を五十人未満は全部つくれということをやるのがいいのか、それとも安全代表みたいな人を選んで会社の方と話をするのがいいのか。それは日本的に考える必要がある。
例を挙げれば、スウェーデンの場合には、五十人以上のところには
委員会をつくりなさいというのが義務づけられている。そこから下のところは、
労働者から何か
委員会をつくれという要求があった場合にはつくりなさい。それ以外の要求がないところではどうするかというと、安全代表をお一人かあるいはそれ以上の人数を選びなさい。
労働者が選ぶ。一人でもいいわけです。五人以上のところはそうなっている。
ですから、それは一人のところではやらなくてもいいかもしれないけれ
ども、スウェーデンの場合は、五人以上に安全代表、五十人以上に
委員会。五十人未満のところに
労働者が
委員会をつくれと言ったらつくらなければペナルティーがありますよ。こういう形も
一つの参考としてはあるわけです。だから、それをやらないと、この
安全衛生マネジメントシステムは、すべての
事業所、すべての
労働者に機能しませんよ。こういうことを私は言いたいのです。いかがですか。