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坂上分科員 わかりました。
これ、わかりますか。「ふぉれんと」といって、建物を貸せることに対する広告です。ここに一斉に書いてありますが、これは私が目をつぶって一枚取り出したんです。これは黄色い線を引いてあります。これがやはり期限つき借家権です。ここにちゃんと書いてある。念のため調べてください、私の発言が間違いであるかどうか。いいですか。
実例、極めて少ないなんていうものじゃありません。五十三分の六あるんだ、一ページに。一ページにこれだけありますよ。これを
建設省が少ないなんていうようなことをどういう根拠で言っているの。全くでたらめなんじゃないですか。よく検討してください。これは
答弁要りませんよ。私の言っていることが間違いだったら言ってください。
さて、その次。法務省おられますか。
法務省は、借地借家
研究会というのをやっておられますね。それで、報告書があります。その中の、「諸外国の
状況」としてこういうふうに書いてあります。「ドイツ、フランス、イギリスといったヨーロッパ諸国においても、居住用の建物の借家については、わが国と同様に、更新拒絶の制限等による存続保護が図られている。なお、ドイツには、わが国の期限付借家に相当する
制度がある」、今言ったのはこのことなんですが、「(フランスでは、一九八六年の改正で、居住用の建物について存続保護を認めないこととされたが、一九八九年の改正で、再び存続保護を認めることとされた。)。また、フランスでは、
事業用の建物の借家については、更新拒絶は制限されないが、立退補償が必要とされている。」これははっきり書いてあるでしょう、あなたたちので。
それで、あなたたちは確かに専門家だけあって、ドイツの場合、フランスの場合、それからイギリスの場合、アメリカの場合、ちゃんとここで詳細に書いてあります。問題は、この中に定期借家権があるかないかということなんです。それから、日本のような正当理由あるいは立ち退き制限規定があるかどうかということがポイントなんですね。どうですか、これは。
建設省のこれを見てみますると、
建設省の言葉の中に、例えばフランス、基本的には当事者間で自由に定める定期契約だというんです。それから、今度はドイツ、当事者間での契約合意が基本であるというんだね、「借家
制度の
概要」。そして日本の欄を見てみますると、更新拒絶に際しては、家主と借家人の事情の比較考量による正当事由やそれを補完する立ち退き料が必要、こう書いてあるわけです。いいですか。フランスについては自由な契約である、ドイツについても合意契約が基本である、そして日本についてだけ、正当理由などというようなややこしい問題が書いてある、こう言っているんだ。
いいですか、
建設省。日本も基本的には当事者間で自由に定める定期契約が、定期契約ですよ、定期契約が一般的な形態なんです。でありまするから、フランス、ドイツもちゃんと、いわゆる正当理由に似たような制限規定が随分ここに書いてあるわけでございます。しかも、日本の場合は立ち退き料の額はとかく大きくなるというように書いてありますが、フランスは、立ち退き補償の支払い義務は明示されております、はっきり書いてあります。
住宅に住む者よりも、
事業用の立ち退き料が必要だというふうにきちっとみんな書いてあるんですね。
しかるに、これを読んでみますると、例えばフランスの場合は、期間満了によって契約は終了するとか、立ち退き料の授受は違法である、こういうようなことがフランスの規定だというんですね。それから、ドイツの場合は定期型と不定期型があるというんです。こんなことは言葉としては、学問としてはこういう言葉は的確じゃないと言われておるわけでございます。どれを見てみましてもこれは間違いがいっぱいあるのでございますが、こういうようなことを
建設省は承知してこんなものを発行しているんですか。
ここで今度、学者の
先生から私が
意見を聞いてみました。もしもフランス、ドイツ並みに日本の借家
制度の
概要を書くとしたならば、フランス、ドイツと同じように当事者間での契約合意が基本だ、あるいは基本的には当事者間で自由に定める定期契約だ、こういうふうに書いていい、書かなければだめなんだと。日本だけは正当理由があって立ち退き料が必要だなんというようなことを書いていることは、明らかにこれは間違いだと言って学者の
先生方が強く
指摘をしているんですよ。こういうようなこと、わかっていますか。
そこで、こういう間違いを我が日本の新聞はどう書いているかおわかりですか。私が読み上げますよ。まず「定期借家権」。これは、正当理由なく、期間が来れば追い出されるということなんです。「海外では普及しているの。」こう言ったら、「米国や英国、ドイツ、フランスで導入している。」と。法務省のこれには、定期借家権なんて導入していませんよ。法務省の
意見とどうして
建設省、違うんですか。こういう新聞がここに出ている。
その次。「日本の借家率が欧米に比べて低い理由は、戦後の持ち家政策の
推進という
住宅政策もあるが、正当事由
制度という強力な解約制限によることは、ほぼ間違いがない。」と言っている。こう新聞に書いてある。これと同じことがあなたたちの中間報告に書いてあるんだ。
そこで、こういう間違いのもとになっておりますのはこの皆様方の中間報告書なんです。これを読んでみますと、本当に腹が立ちます。私たち
法律家の諸君が
中心になって専門的に今こうやって
研究しているところへ、まさにでたらめなこと、不正確なこと、ばんとバケツで水をかけるようなやり方、こんなことはどうしても許しがたい。
さらに、新聞によりますと、間違った報道がなされていると私は思っているんでございますが、「日本の
賃貸住宅の狭さ、高さは、現在の借家法の副作用とも言える。」こう新聞に書いてあるんです。とんでもございません。ドイツにもちゃんとこういう類似の
法律の規定があるんです。ドイツの正当の理由もある。正当の理由じゃなくて正当の利益とこう言っているわけです。フランスはフランスで、きちっと立ち退き料払わぬといけませんよと書いてありますよ。
これ、ひとつ法務省のを読んでごらんなさいよ。もういずれを読んでも、「取戻し又は更新の拒絶ができる」とか、あるいは「営業財産を補償するための立退補償の義務を負う。」とフランスは書いてある。ドイツの方についても、「賃貸借の終了が賃貸人の正当な利益を斟酌しても妥当とすることができない苛酷なものになるときは、貸借人は契約継続の請求をすることができる。」正当理由類似のことが全部あるんですよ。定期借家権なんというものの規定は全くないんです。これをあるがごとくこうやって書いてあるのは、
建設省が法務省を乗り越えまして自分らが勝手にこの定期借家権をつくれば、
住宅がばたばたできて借家人が非常に喜ぶというような立場に立つというような
住宅政策をおっしゃっているんじゃなかろうかと私は思っております。
しかし、こういう
法律ができますと、今度は借家人を追い出す結果になるんです。でありまするから、これは本当に慎重に
対応して検討しなければならぬという問題なんでございますが、まず担当局としまして、私が言いましたことはほんの一部でしかありませんが、どんな感じを持っておられますか、担当局。
これは本当にとんでもないことでございますから、どうぞひとつきちっと認識を言っていただきまして、あわせて大臣、今言ったように借地借家という問題は法務省の担当なんです。それを
建設省が、幾ら
住宅政策だからといって、いわゆる定期借家権というのはもう国論が二論しているんですよ、
関係者の間で。激しい議論がある中へこうやってばかっとこんなのを配られまして間違った報道がなされるというような事態になりますと、国民は迷うばかりでございますから、この辺ひとつ担当の
局長さん、所感を述べてください。
それから大臣、最後の締めを
お願いしたい、こう思いますが、いかがでしょうか。