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福島分科員 大臣、大変御苦労さまでございます。
本日は、小児科医療につきましてお尋ねをしたいと思います。
小児科医療につきましては、例えば
平成八年の十一月六日付の朝日新聞では、「少子化の波に揺れる小児科——患者減で危機的
状況・縮小や病棟閉鎖も 量こなせず薄い利益 三一%に経営上重荷」というような見出しがあったようでございます。
少子化が進んでいく中で、だんだん子供の患者さんが減っていく。そしてまた、子供の患者さんの場合は一人当たりの薬剤の使用等も少のうございますから、経営上の大変な困難がある。これは
平成八年の新聞でございますが、この事態は変わったのかというと、決して変わっていないというふうに思います。
次に御紹介いたしますのは、本年の一月二十一日の朝日新聞でございますが、これは千葉県内の
大学附属病院で勤務していた小児科の女性医師、当時四十三歳でございますが、亡くなられまして、これが労災として
認定をされたということでございます。大変な過重労働を
現場では強いられていて、その結果として過労死が生じるような事態が起こっている。
それに対して
日本小児科学会のコメントが載せてありますが、「小児科では専門性や夜間診療の需要が高まる一方で、採算性が悪いため人員は増えずに過重
負担の傾向が強くなっている」というふうに
指摘をされておるわけでございます。そしてまた、同病院の院長も、こういう過重労働があるということはよくわかっているわけでございますから、それに対して見直さなければいかぬと思いつつも、「勤務態勢の見直しを検討しているが、投与する薬が少なく診療報酬が低い小児科では、医師の人数を簡単に増やせない」、非常に率直なコメントを載せております。大変な事態ということだと思います。
このような記事を見まして、私も、
地元の
大学の先輩であります小児科の
先生にいろいろと
お話をお聞きいたしました。そうしますと、大阪でも、総合病院の中でも小児科病棟というのは採算性が悪いということで、これを閉鎖しようという動きも出ている、そういう実態をよく認識してほしいという話がありました。
ただいまも、なぜ小児科の医療というのが経営上非常に困難になるのかということについて、その一端として、投与する薬が少なく、診療報酬が低いということがありましたが、それ以外にも幾つかの特徴があるようでございまして、この点も
大臣に御認識をいただきたいと思うわけでございます。
一つは、乳幼児というのは病態が急変しやすいわけでございます。そういう急変しやすい患者を
対象とする場合には、ほかの科に比べますと、医師にしましても
看護婦にしましても、おのずと人員配置を厚くしなければいかぬということがある。
そしてまた、二点目としましては、感染症が小児の場合には非常に多い。感染症というのは季節変動があるわけでございまして、例えばことしの冬であればインフルエンザで入院を余儀なくされるような事態が非常にふえたというふうに伺っておりますが、こういう季節変動が多いと、どうしても病床の
利用というのが季節によって大きく変化してしまう。夏場は空床が目立ち、冬場は入院させなければいかぬ患者でも入院し切れないというような事態も起こっている。そしてまた、感染症の場合には、大部屋であったとしても、ほかの患者にうつしてはいけないということがありますから個室として使用しなければいかぬというような事態も出てくる。
また、三点目としましては、小児の病状というのは急変しますから、また変化があった場合には御両親の方はすぐに診てもらいたいということもありますので、時間外、夜間、休日を問わず受診をすることが多い。また、病院における小児科の場合には、二次、三次救急というものを担わなければいけないけれども、実際にはこういった救急を担うとかえって赤字になる、一件当たり一万円ぐらいの赤字になるんだということを言っておりました。
そしてまた、外来の診療でも、成人の場合ですと服を脱いで待っていてくださいという話ができるわけでございますが、小児の場合には、まずそういう段取りも時間がかかりますし、診察が終わった後にお母さんに
説明をしなければいかぬということで、それも時間がかかるわけでございます。これはやらなければいかぬことですから必要なわけですけれども。したがって、
一定の時間内で診療をした場合の比較をすると、他科の診療の場合に比べて医業収入が半分以下になってしまう、そういうような事態もあるということでございます。
そしてまた、五点目としましては、小児科医療の評価の低さということが言われております。一九七七年から一九九一年の間、高齢者一人当たりの医療費というのは二十一万九千円から五十二万四千円、三十万五千円増加したわけでございますが、これに対して小児一人当たりの医療費というのは二万七千七百円から五万九千百円、わずか三万一千四百円の増加でしかなかった。
こういった小児科の特徴的な診療のあり方、そしてまた評価の低さというものが相まって、現在の小児科の経営の危機ということに至っていると思います。そしてまた、困難な経営状態の中で、
現場で小児科の医師というのは大変な過重労働、
看護婦さんも含めてでございますが、医療従事者が過重労働に悩まされている。この事態を私は何としても改善をしていただきたいと思いますし、少子化
社会の
対策の一つの柱は、やはり安心して子育てができるということだと思います。
安心して子育てができるということは、その
地域地域において小児科の専門の
先生がおられて、いつでも診ていただけるというような体制をやはりつくっておかなければいけない。しかし、今の
状況ですと、だんだんこれが空洞化していって、すぐ診てもらいたくてもなかなか小児科の
先生がおらない、そういう事態になるのではないかというふうに懸念をいたしております。
そういう意味で、小児科学会の方からさまざまな要望が出されております。
その一つは、小児の
給付率をぜひ引き上げてほしいということでございます。これは、老人でしたら、実際の実効の
給付率は九五%、五%の自己
負担というところでございますが、これに対して小児の場合には三〇%の自己
負担ということになる。これはもちろんさまざまな
助成措置がありますので、三〇%よりも軽減されていると思いますけれども、老人と小児を比較した場合、小児の方がはるかに
負担が多いのはいかがなものかという考え方があると思います。ここの点を改めていただきたいという意見がございます。
そしてまた、先ほども申しましたように、全体としての小児医療の評価というものについて、これを大幅に引き上げる必要があるというふうに私は思いますが、こういうことを含めまして、
大臣の御所見をまずお聞きいたしたいと思います。