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1999-02-18 第145回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十八日(木曜日)     午前九時開議  出席分科員    主 査 臼井日出男君       小野寺五典君    加藤 卓二君       萩野 浩基君    松本  純君       村山 達雄君    岡田 克也君       藤村  修君    山本 孝史君       辻  第一君    春名 直章君    兼務 末松 義規君 兼務 辻  一彦君    兼務 漆原 良夫君 兼務 福島  豊君    兼務 横光 克彦君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 宮下 創平君         労 働 大 臣 甘利  明君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     青江  茂君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君  分科員外出席者         環境庁企画調整         局環境保健部長 澤  宏紀君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部審議官  赤阪 清隆君         大蔵省主計局主         計官      村瀬 吉彦君         自治省財政局準         公営企業室長  株丹 達也君         厚生委員会専門         員       杉谷 正秀君         労働委員会専門         員       渡辺 貞好君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 分科員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   加藤 卓二君     小野寺五典君   村山 達雄君     松本  純君   岡田 克也君     山本 孝史君   春名 直章君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   小野寺五典君     加藤 卓二君   松本  純君     村山 達雄君   山本 孝史君     渡辺  周君   中島 武敏君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   渡辺  周君     藤村  修君   辻  第一君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   藤村  修君     岡田 克也君 同日  第一分科員漆原良夫君、第五分科員辻一彦君、  横光克彦君、第六分科員末松義規君及び第八分  科員福島豊君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算  (厚生省及び労働省所管)      ————◇—————
  2. 臼井日出男

    臼井主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算及び平成十一年度政府関係機関予算労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。甘利労働大臣
  3. 甘利明

    甘利国務大臣 おはようございます。  平成十一年度労働省所管一般会計及び特別会計予算について、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管一般会計は五千百九十億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと百九十三億円の増額となっております。  次に、労働保険特別会計について、各勘定ごと歳入歳出予算額を申し上げます。  労災勘定歳入予算額は一兆九千二百一億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと一千二百九十七億円の減額となっております。また、歳出予算額は一兆三千九百四億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと二十六億円の減額となっております。  雇用勘定につきましては、歳入予算額歳出予算額とも三兆六千二百六十八億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと三千二百五十四億円の増額となっております。  徴収勘定につきましては、歳入予算額歳出予算額とも三兆四千二百三億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと千六百七十七億円の減額となっております。  石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計石炭勘定のうち労働省所管分歳出予算額は百六億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと二十五億円の減額となっております。  平成十一年度の労働省関係予算につきましては、安定した職業生活実現に向けた雇用能力開発対策積極的展開、少子・高齢化が進展する中で、生き生きと働くための支援策充実、一人一人が意欲にあふれ、健康で安心して働ける環境づくり、多様な個性、能力を十分に発揮できる社会実現国際化への対応など労働行政重要課題に的確に対応していくための予算措置に十分配慮しつつ、財源の重点配分に努め、必要な予算を計上したところであります。  以下、その主な内容について概略を御説明申し上げるべきところでございますが、委員各位のお手元に資料を配付してございますので、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、委員各位の格別の御審議をお願い申し上げます。
  4. 臼井日出男

    臼井主査 この際、お諮りいたします。  労働省所管関係予算重点項目につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 臼井日出男

    臼井主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 臼井日出男

    臼井主査 以上をもちまして労働省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 臼井日出男

    臼井主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。
  8. 小野寺五典

    小野寺分科員 甘利労働大臣、おはようございます。  日ごろは、近年に増しまして一番労働環境が厳しい中、大変御尽力いただきまして、本当に心からその御活躍には敬意を表する次第でございます。  そういう中、きょう、さらにまた労働環境について、特に雇用問題について少しお伺いしたいと思っております。  御存じのとおり、景気回復、やや明るさが見えてきたということでありましても、いまだ現在の雇用環境は大変厳しい中にあります。特に、十二月も失業率四・三%ということで、これはもうここ近年では一番高い数字になっております。こういう非常に厳しい状況にあるわけですが、さらに各地域を見ますと、地域によっては、主要産業が衰退しましたり、あるいは緊急的な大きな状況がありましたり、そういうふうな問題がありまして、例えば北海道あるいは近畿では特に五・二%の失業率ということで、地域においても非常に厳しいところがあります。  このような雇用環境が厳しい中、あるいはその地域それから産業、そういう細かい分野に向けての雇用対策というのはかなり厳しいことがあると思うのです。全体的に厳しいのですが、さらに厳しい地域あるいは厳しい産業についてどのような支援策を行っているか、まずその全体のことをお伺いしたいのです。
  9. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 大変厳しい雇用失業情勢が続いているわけですが、今先生指摘のように、これは、地域によって、あるいは年齢等によって、あるいは産業によっていろいろと差異が出ております。このため、労働行政といたしましても、できるだけきめ細かに対策を行おうということで、地域あるいは産業実情に応じた雇用対策に取り組んでいるところであります。  まず、地域雇用対策といたしましては、雇用機会大変不足をしている、こういった地域雇用機会増大促進地域とかあるいは過疎雇用改善地域というふうに指定をいたしまして、その指定をされた地域の中で新しく事業所を設置して労働者を新たに雇い入れていただく、こういった事業主の方には、設備設置助成とかあるいは労働者賃金の一部を助成する、こういったことで従来から取り組んでいるわけであります。大変残念なことに、最近こういった地域指定もふえてきているというのが実情でございます。  また、産業別対策でございますが、どうも将来的にもなかなか回復が見込めない、あるいは景気の変動によって大変落ち込みが厳しい、こういった産業対策といたしまして、雇用調整助成金制度を従来から運用しているところでございます。この雇用調整助成金制度によって、できるだけ休業やあるいは職員の方の訓練ということで現状を乗り切っていただく、そのための助成をしているわけでありますが、どうしてもそういったことでは支え切れないという場合には、事業主の方の努力によるあっせんとか出向とか、そういったことによって失業を経ないでそういった産業から別の産業へ移転する方については、やはり労働者訓練費用助成とか賃金助成とか、そういったことを行いまして、できるだけ失業を経ない再就職が可能になるような対策をとっているわけであります。  さらに、先般の緊急経済対策におきましては、今申しました制度業種指定をしていたのですが、業種指定を抜きにしましても、個別の企業に着目をして、業績が落ち込んでいる企業につきましては、やはり失業なき労働移動のための、先ほど申しましたような助成をあわせて行うというふうなことを行っておりまして、できるだけ地域産業の特性に応じた雇用対策に努めているつもりでございます。
  10. 小野寺五典

    小野寺分科員 現在の努力の方法については、今局長の方からお話があった内容だと思うのですが、ちょっと具体的なことをお話しさせていただきます。  私は宮城県の選出なんですが、私の選挙区の中に気仙沼という町がございます。ここの場合、特に今回、FAOの行動基準ということでマグロ漁船国際減船という問題が起きてまいりました。国際的な協定の中で、日本マグロ漁船の二割を削減しろということになりまして、私の地元では、日本で一番のマグロ漁船集積地でありますので、約六百人の乗組員の方が離職を余儀なくされるという、現在でも雇用環境が厳しい中、さらに、こういう国際情勢の変化によって雇用が厳しくなるというダブルパンチを今受けているわけなんです。  特に、漁船員としての再就職の場合、これは運輸省所管も一部あると思うのですが、今、漁業環境水産環境は厳しいものですから、漁船を離れた場合、そこから再就職といいますと、どうしても、漁船にまた乗り込むというのはかなり厳しくなります。そうなった場合、陸上の別の産業就職を転換しなければいけない、そういうふうな状況になると思うのですが、そういう期間中の生活の安定あるいは再就職促進を図るための対策ということがどのようなものがあるかということをまずお伺いしたい。  それからもう一点。これはちょっと特殊な事情なんですが、今漁臨法という形で恐らく努力をしていただいていると思うのです。特に、ある船が減船になって、それは減船対象になっているものですから、その乗組員の方は、労働省あるいは運輸省所管漁臨法関係でカバーはされると思うのですが、今度は、そこからあふれた漁船員の方が別な漁船に新しく乗り込む、そうしますと、減船対象になっていない漁船に乗り込んでいた従来の乗組員の方が玉突きのように追い出されてしまう、こういう現象が今現実地元で起きているのです。こういう減船によって玉突き離職を余儀なくされたような漁船員皆さんにもどのような措置が講じられるのか、その辺のことについてお伺いしたいのです。
  11. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 国際協定等によりまして減船が行われ、その結果、漁船員の方が離職をせざるを得ないというふうな事態に対しましては、今先生指摘漁臨法によりまして、再就職促進あるいは生活安定策を講じているところであります。  具体的に申しますと、まず、国際協定締結等によりまして離職を余儀なくされた漁船員乗組員の方に対しましては漁業離職者求職手帳発給いたしますが、これは有効期間が三年間ということになっております。この手帳所有者に対しまして特別の就職指導等を行うわけでございますが、まず、船員保険失業保険金給付、あるいは一定年齢以上になりますとこの保険金延長給付をされます。なお、それで再就職がまだ不可能であるという方につきましては、この三年間の期間内は保険金類似助成金を出しまして、生活の安定とさらにその間に再就職促進を図るという措置をとっているところでございます。  さらに、後段御指摘のいわゆる玉突きの問題でございますけれども、従来の取り扱いですが、同一漁業者が有する他の漁船減船になった乗組員の方が移られて、その結果その船の方が離職をせざるを得ないという場合には、やはりこの漁業離職者求職手帳発給しております。これは同一事業主の間におけるやりくりといいますか、これについては玉突き離職をする方についても手帳発給しております。  それから、同一事業者でない場合ですけれども、従来から、漁業者間で乗組員を相互に他の漁船に乗り込ませる、共同配乗と申しておるようですが、それが行われている場合には、その場合の玉突き現象につきましては、やはりその結果離職をせざるを得ない漁船員の方につきましても手帳発給するということで、こういった二つのケースについては手帳発給ということで対応しているということにしております。
  12. 小野寺五典

    小野寺分科員 今の説明で納得をする部分もあるのですが、今本当に離職者の方、家族を抱えて大変な状況にありますので、なおできるだけ柔軟に対応していただければというふうに思っております。  それでは、大臣に最後にちょっとお伺いしたいのですが、漁業が私の町では基幹産業になっております。特に、二割減船ということで基幹産業を含めて二割の産業基盤が失われる、これはもう町にとっては大変危機的な状況なんです。  このような基幹産業が、国際減船という日本国策によって大きな影響を受けたわけなんですが、こういう場合、積極的にぜひ労働省挙げて、国を挙げての対応をお願いしたいと思いますが、ぜひその辺の大所高所から立ちました大臣の決意並びに所感についてお伺いさせていただければと思うのです。
  13. 甘利明

    甘利国務大臣 御指摘のように、一つの産業がその地域経済全体を支えているという場合に、その産業がこうむる打撃というのは、その地域経済に多大な影響を与えます。しかもそれが外的要因といいますか、日本と他国、国際間の協定によって影響を余儀なくされる場合には国策としてきちんとした対応が必要であるということは、今まで御説明をさせていただきましたし、委員指摘のとおりであります。  気仙沼につきまして、今般の遠洋マグロはえ縄漁業について講ずることとした離職者対策、具体的には漁業離職者求職手帳発給等の特別の措置というものを的確に講ずることといたしておりますし、詳細については今まで政府委員説明したとおりでございます。それに加えまして、基本的な対策といたしまして、十一月に緊急経済対策を策定いたしました。そして、その柱に雇用活性化総合プランというのを策定したわけであります。  若干重複をいたしますけれども、中小企業労働者を雇い入れたときの助成措置、これは昨年の秋の臨時国会で改正をいただきました中小労確法に基づく新規雇用創出のための支援等相当充実をさせていただいたつもりでありますし、生産量が減少をしている事業所から中高年労働者失業という経緯を経ることなく移動させる、そうした場合には、受け入れた企業に対して賃金一定割合助成するという措置も組ませていただきました。  さらに、情報能力ミスマッチ失業の原因にもなっておりますので、情報につきましては、各経済団体とハローワークの情報をネットワークさせよう、そして職業能力ミスマッチに関しましては、従来あります職業訓練の各カリキュラムを全般的に見直しまして、次代を担う職業訓練の講座といいますかカリキュラム充実させていく。特に、ブルーカラーだけではなくて、ホワイトカラーに対応した職業訓練、あるいは情報化介護福祉対応した職業訓練等々、次代を担う雇用分野についても職業能力ミスマッチをなくしていくように対応させていただいているところでございます。  今後とも各般の政策を積極的に進めまして、雇用創出、安定を図っていきたいと思っております。
  14. 小野寺五典

    小野寺分科員 ありがとうございます。  本当に御努力されているところはよくわかります。こういう地域気仙沼に限らず全国にあると思いますので、今は本当にしのぎどきだと思います、ぜひ最大限の御努力をお願いしまして、労働大臣への質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。  続きまして、恐縮でありますが、厚生省に対して、介護保険の問題についてちょっとお伺いしたいと思います。  実は、私は福祉系大学で教鞭をとっております。きょうは同じ大学の学長の萩野委員がいらっしゃいますが、そういう中で、福祉現場教え子たちから随分いろいろな声を聞きます。特に、今回、平成十二年四月から導入予定介護保険につきましては、現場において期待の声あるいは不安の声、いろいろな声があります。その辺について、かなり具体的な細かいことをお伺いしたいと思うのです。  まず、利用者の方、あるいは施設の方から一番不安に思われていることが、利用コストというのでしょうか、受益者コストというのが一体どのぐらいになるのか、現在のサービスに比べてある面ではかなり高くなるのじゃないか、そういうふうな不安もあるのですが、その辺について、現在の見積もりについて教えていただきたいのです。
  15. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 在宅サービスでの例で申し上げますと、制度施行当初の保険料見積もり、こういうことを試算していただいて今後の参考にしてもらいたい、こういうことでそのときに暫定的な平均利用額をお示ししております。  在宅サービス費用は、要介護度に応じて六万円から三十五万円、こういうことでお示ししているわけでございまして、基本的にはその利用料の一割を負担していただくということでございますので、要介護度に応じましておよそ六千円から三万五千円ということになるわけでございます。三万五千円となりますと結構高くなるわけでございますので、現在、医療保険におきましても高額療養費制度がございますけれども、それと同じような高額介護サービス費、こういうふうな制度を設けておるわけでございます。  これによりまして、負担上限額でございますとか、それから食費も負担していただきますので、その標準負担額、これにつきましてより低額な利用負担、こういうふうに配慮するということで、今審議会の方で御議論願っているということでございまして、まだ決着ということになっておりませんけれども、そういう方向で御審議を願っているところでございます。
  16. 小野寺五典

    小野寺分科員 現在の介護保険法でも、五十一条、六十一条で高額介護サービス等の支給の要件についてうたっておりますので、その辺は少しは安心しているのですが、特に現在、通常介護保険訪問看護では週三回というのが規定だと思いますが、当然高度な疾病によりまして毎日のように看護が必要だということもあると思いますので、そういう場合に、介護基準費用ですが、かなり高くなるということも考えられますので、利用者の方、一割負担でも家庭によっては大変な負担になることもありますので、上限というのは厳しくぜひ制限をしていただきまして、より安心な介護を受けられるようにお願いしたいと思います。  次に、実は昨年、厚生省が要介護認定に関する試行的事業ということで、いわゆる今回の介護保険導入に関して実験的な調査を行っております。  その実験的な調査を見てみますと、現在特別養護老人ホームに入居されている方を、介護保険認定という形で、どの程度の介護が必要かということで調べてみましたら、これは厚生省資料なんですが、現在特養に入っていらっしゃる方でも、そのうちの二・七%の方が実はもう自立できている。要支援という方が三・四%。介護の等級ですが、Iが一五・八%ということでずっとなっているのですが、実は、査定しましたら最も多かったのが要介護度IIIの方でして、要介護度Vというかなり重度の方は一〇%しかいなかった。  こういうふうなことを見ますと、もし介護保険が導入されまして、では、現在の特別養護老人ホームに入っていらっしゃる方をちょっとチェックをしましょうということで認定をした場合、現実的には、寝たきり度かなり進んだ方が本来は入っていなければいけないのが、中を見てみると、どうも自立できる方も中にはいるんだ。  でも、そういう方を、では介護保険が入りましたから皆さんここから出ていってくださいというふうになりますと、既に、自分の老後ということを特別養護老人ホームに置きまして、自分の私的な財産に関しては処分をされているとか、あるいは御家族の方が家族設計を、お年寄りを特別養護老人ホームにお願いして、これからこうやって家族でやっていくんだというふうにライフスタイルを設定されている方、そういういろいろな事情があると思うのですが、こういう方に対して一体どのような対応をされるのか、お伺いしたいと思うのです。
  17. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 介護保険法施行時におきまして特別養護老人ホームに入られている方、この中で、先生指摘のように、自立とか要支援という方も当然出てくるとは思うわけでございますけれども、五年間に限ってはございますけれども、こういった要支援とか自立認定された方も、引き続き、経過的に特別養護老人ホームに入られるということでございます。  それで、そのときの介護報酬がどうなるかということでございますけれども、これは、当然入所者の要介護度に応じまして算定せざるを得ないと思っておりますが、余りにも低くいたしまして制度運営そのものに重大な支障が生ずるということは困りますので、特別養護老人ホーム全体といいますか、個々の施設全体としまして重大な支障が生じないような形で介護報酬を設定するように、審議会の方にも審議をお願いしたいと考えております。  それから、五年を経過いたしますとやはり出ていただく、その後でまた要介護状態になれば引き続きいらっしゃるわけでございますけれども、そうでない方については出ていただく必要があるわけでございます。そのときには、ケアハウスの整備とか、あるいは、今年度の補正予算で、今までは僻地とか離島に制限されておりました高齢者生活福祉センターを、これは十人から二十人の居住的な施設でございますけれども、こういった在宅サービス利用して、高齢者生活福祉センターあるいはケアハウス生活できるように、こういった受け皿対策を今後本当に力を入れてやっていかなければいかぬ、こういうふうに思っております。
  18. 小野寺五典

    小野寺分科員 今、局長の方からそういうお話がありましたが、現実に、地域によって施設かなりの格差がございます。今、局長の方からもお話がありましたが、例えば特別養護老人ホーム一つとりましても、これは平成八年の数字ですけれども、お年寄り、六十五歳以上の人口に対して特別養護老人ホームの定員率が最も高いところ、これは沖縄ですが、二・三%になっています。また、一番低いのが岐阜、これが〇・九%になっています。  ですから、二・五倍の格差が施設だけでもありますので、例えば、こういう福祉サービスをするとしても、まず受け皿となるところがまだまだ未整備である。今、新ゴールドプラン等で大変な御尽力をいただいていますが、なおこれが均一化するように、そうしますと初めてこの介護保険の意味合いが出てくると思いますので、ぜひ御尽力していただければというふうに思います。  次に、ちょっとまた別な質問に入らせていただきたいのです。  実は今、町によっては広域で行ったり、あるいは町単独で行ったり、現在の介護保険サービス充実ということをそれぞれの地域でやっているのですが、大体の地域が、サービスの主体というのでしょうか、サービスを行う、会社であったりあるいは第三セクターであったりする場合が多いのですが、そういう場合、大体一つのサービス主体しかなくて、利用者としては二つも三つもあちこちを選んで選択できるわけではない。  そういうふうに、あくまでも選べるのは恐らく一つぐらいであろうという場合に、サービスの品質の保持というのでしょうか、あるいは苦情の受け付けというのでしょうか、当然そういうことをかなり厳しくやらなければ、サービスは当然そこからしか受けられないものですから、利用者にとっては、だめだったら隣の町というふうに選択できない部分もあります。  ですから、そういうサービスの品質保持に対してどのような対応をとられるのか、お伺いさせていただければと思うのです。
  19. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 確かに事業者が少ないときにはそういう事例もあろうかと思いますけれども、今回の介護保険制度自分利用施設を選べる、こういうことでございますので、当然、たくさんあればその中からいい方を選べるということで競争原理が働く、こういうことでございます。  ただ、そういう場合でも当然苦情処理というのはあるわけでございまして、これは、まずはやはり身近な市町村、保険者である市町村にお願いせざるを得ない。それから、事業者自体に対する苦情処理というのは当然あろうかと思うわけでございまして、これでかなりのものは解決つくと思いますけれども、広域的な事業を行っておりますので、今、県レベルでつくられております公法人でございます国民健康保険団体連合会、国保連、こういうところに苦情処理の機能を持たせるというのが法律上決められているわけでございます。これはいろいろな業務をやっておりますので、中立、独立性を高める、こういうことで、通常の事務局とは別に苦情処理担当の委員を委嘱いたしまして、客観的、独立性をもって対処したい、こういうふうな工夫もしたいと思っております。  そういうことで介護サービスの質の担保というものも図ってまいりたいと思っておりますし、やはり、ホームヘルパーとか、そういう個々の人たちの能力といいますか、こういうものを上げていかなきゃいかぬ、こういうこともございますので、先ほど労働大臣からもお話がございましたけれども、いろいろと、そういうふうな職業訓練みたいなものも含めて質の向上というものを図っていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。
  20. 小野寺五典

    小野寺分科員 今、局長の方から、いろいろなサービスを選べるというお話だったのですが、それは、例えば人口密度が高い都会であればできるのですが、地域によってはかなり広いエリア、車で一時間ぐらいのエリアのところでようやく一つのサービス、在宅介護サービスが受けられるという場所が大部分であります。ですから、では隣のサービスを受けるとなると、車で三時間先のところの会社から来てもらわなければいけない。そうしますと、当然今の算定では、遠隔地からの場合には交通費がまた新たにかかるということで、事実上一つのサービスしか受けられないのが地域の現状です。  ぜひ、苦情処理というのはしっかりしていただければと思います。  最後の質問なんですが、一つの矛盾があります。例えば、特別養護老人ホームとかそういう施設でリハビリを一生懸命努力しまして、寝たきりのお年寄りの方がどんどん元気になりまして自立できるようになった、こういうふうになると、今度は、施設にとっては、今までは介護報酬かなり出ていたのが、その認定がどんどんよくなることになって、介護報酬が実は逆に減ってしまう。ですから、努力すればするほど逆に、変な話ですが、収入が減ってしまう、こういう現実があると思うのです。  ぜひ、何か逆に、一生懸命頑張れば、お年寄りをどんどん元気にすれば私たちの報酬もふえるというような、そういうモチベートが働くような政策についてお聞かせいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  21. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 確かに、先生の御指摘のような問題点が今持ち上がっているわけでございます。  それで、今審議会でも御議論いただいているのですけれども、一方の反論といたしまして、そもそも、医療、福祉に携わっている専門職の方がそういう誘因がないと改善に努力しないか、こういうことで、使命感がある人はそういう報酬がなくても当然やるんだ、こういう意見も有力でございますし、それから、施設とか事業者努力だけではなくて、やはり本人の自覚が非常に必要なわけでございまして、本人の御努力で改善をされた、その結果、要介護度に応じまして費用も決まって負担額も決まりますので、負担が楽にならないとこれはおかしいのではないかということとか、事務的に申し上げますと、いろいろな事業者に頼むときに、どの事業者努力によって改善されたのかわからないというような実務的な問題もあるわけでございまして、導入の是非そのもの、あるいは、もし導入するとしまして、どうやって評価したらいいのか、この手法というのもなかなか難しいわけでございまして、さらに議論を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  22. 小野寺五典

    小野寺分科員 ぜひ、努力をお願いします。  これで終わります。ありがとうございました。
  23. 臼井日出男

    臼井主査 これにて小野寺五典君の質疑は終了いたしました。  次に、山本孝史君。
  24. 山本孝史

    山本(孝)分科員 おはようございます。民主党の山本孝史でございます。  労働大臣、先般、予算委員会で御質問を通告をしておりまして、時間の関係でお答えをいただけませんでした。大変失礼をいたしました。きょうは、いわばその続きという形で御質問をさせていただきたいと思います。  きょう取り上げさせていただいておりますテーマは、年金と六十五歳現役社会実現と定年制、この三つの課題でございます。  御案内のとおりに、年金の将来制度を考えましたときの前提条件が幾つかございますが、その一つが労働力率の見通しをどういうふうに見るかということでございまして、特に女性と高齢者の雇用状況についての見通し、これは職業安定局長が五年ごとに出していただいております数字をもとに、その将来の姿を推計しているわけであります。  今回、平成十年十月の職安局の推計で、二〇一〇年のところを見ましても、六十—六十四歳、六十歳代前半の男子は八〇・五%と、前回の七〇%あるいは七六%というところから比べれば随分高くなっている。特に女性の場合に、前回は三三%が今回は四八・五%というふうに随分高目に推計をしておられますので、こういう推計をするに至ったその道筋を少し御説明いただきたいと思います。
  25. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 労働力率の見通しですけれども、推計の方法は、過去二十年ぐらいの実績といいますかトレンドを踏まえまして、そのときにおきます勤労者の意識の変化とか、あるいは産業経済の変化、あるいは政策状況、こういったものを踏まえまして将来の推計を行っているわけでございます。  昨年、今先生指摘のように労働力率の見通しの改定をいたしました。それによりますと、高齢者の労働力率の高まり、あるいは女性の労働力率の高まり、こういったことを推計しておりますが、まず女性につきましては、この四月からは雇用における男女の均等な機会と待遇の確保、これが強行規定になりまして、将来に向けていよいよ本格的に実施をされるといったふうなこと、あるいは女子労働者の意識の変化、あるいは職業生活家庭生活の両立支援対策制度的にも相当の充実を見てきたこと、こういったことを根拠にいたしまして、女子労働力率が今後高まっていくというか、従来の推計よりは高まっていくだろうというふうに考えております。  また、高齢者ですけれども、実際には高齢者の労働力率の急速な高まりというのはなかなか難しいわけですが、将来に向けましては、六十歳定年制度も昨年からはいわゆる義務化をされて、さらに六十五歳までの継続雇用を目指していろいろと行政も指導しており、また、年金もこれから将来に向かって支給開始年齢が高まっていく、こういったことを踏まえまして、特に女子の高齢者の労働力率が高まるんじゃないか、結果として高齢者の労働力率は従来の推計よりも高まっていくというふうな見通しをしているところでございます。
  26. 山本孝史

    山本(孝)分科員 労働力率というのは、労働意欲のある人という理解ですね。実際に働けるかどうかというのは、またそこと大分数字の差が出てくるだろう。  日本の場合に、諸外国に比べて高齢者の労働力率は随分高いわけですけれども、これは働かなければいけないから高いのか、働きたい意欲が諸外国の人に比べて日本人は高いのか、どっちだという御認識ですか。
  27. 渡邊信

    渡邊(信)政府委員 日本の場合、高齢者の労働力率が大変高くて、例えば六十から六十四歳の男子をとってみますと、七五%ぐらいの方が何らかの働きをしておられるわけでございます。  これは欧米に比べて相当高い高齢者の労働力率になっていて、その原因についてはいろいろなことが言われておりますが、勤労者の意識調査をしましても、日本の場合には働ける限りは働きたいんだというふうなことを答える方が大変多いわけでありまして、やはり日本人の勤労観というのは、従来から、労働を通じて自分も生かすし、社会にも貢献できるという、労働に対する大変積極的な勤労観というものが我が国にはあるのではないか、こういった見方が強いようであります。  また、特にヨーロッパ諸国におきましては、若年者の失業率が大変高いということから、若年者雇用と高齢者雇用とのバランスといいますか、そういったことを考慮いたしまして、政策的に高齢者の早期引退を促す、これは近年相当見直しはされておるようでございますが、そういった政策がとられてきたというふうなことも影響しているのではないかというふうに見ております。
  28. 山本孝史

    山本(孝)分科員 早期退職、勤労に対する意識が日本人と西欧人との間で違う、むしろアーリーリタイアメントの方を好むということが外国の場合には多いのかもしれません。  問題は、今もおっしゃったように、働かなければいけないような状況もある。六十五歳年金支給という形になってきますと、六十歳代前半の雇用をどうやって確保するかというのは、これは労働省にとっても大変重要な問題になるというふうに思っているわけです。ようやくことしから六十歳定年制になりましたけれども、年金が六十五になってくると、では六十五歳定年制というのをどう考えるのかというところが大変問題だろうと思います。  定年制というものが日本社会においてどのように今後変容していくというふうにお考えなのか。二〇二五年ぐらい、あるいは二〇五〇年ぐらいが年金のピークになりますけれども、そのあたりの時点でどういう姿を定年制は持っているだろうか。あるいは、年金が六十五歳支給開始になることと定年制との絡みをどういうふうに労働大臣としてはお考えになりますか。
  29. 甘利明

    甘利国務大臣 先生指摘のとおり、昨年の四月から、法律として定年が六十歳以上ということになったわけでありますが、年金支給が段階的に六十五歳までいきますから、どうやって六十歳代前半の雇用を確保していくかというのが非常に大きな課題になります。  現在、継続雇用制度、あるいはこれを推進していくための給付制度というのがありますけれども、現状では、企業のうち継続雇用制度を備えている、整備しているのは二割ぐらいしかまだないわけでありまして、私どもといたしましては、高年齢雇用継続給付などを活用して、ぜひ六十五歳までの雇用を確保してもらいたいということを企業に要請しているところであります。  もちろん、継続雇用以外の別な道での再就職ということについても、有効求人倍率が非常に少ないのではありますけれども、促進員等を配置いたしまして、職業安定所で鋭意取り組んでいるところであります。  それから、六十歳を過ぎてからの働き方は、働く方のニーズによっていろいろな形態を用意する必要があると思いますし、その一つとしてはシルバー人材センターの活用も大事かと思っております。シルバー人材センターに地方自治体から新たな仕事を発注していただいたときには、それを促進するような措置も策定をいたしておるところであります。  それから、先生も御案内のとおり六十五歳現役社会推進会議というものがございまして、各方面の知恵をおかりしながら、六十五歳現役社会実現するためのビジョンを策定していきたいというふうに考えているところでございます。
  30. 山本孝史

    山本(孝)分科員 端的にお伺いを申し上げます。  今、年金制度改革の中で、政府・自民党の案としては、いわゆる厚生年金の報酬比例部分、二階の部分、今別個の給付で出ている部分を二〇一三年以降段階的に六十五歳にするということを言っております。この年金の六十五歳支給開始という案について、労働大臣のお立場では御賛成でいらっしゃいますか。
  31. 甘利明

    甘利国務大臣 将来に向けての不安の一つに、年金が制度として成り立っていくのかという不安を国民が持っているわけであります。高齢化社会の進展に従って年金制度自体を抜本的に改革をしていかないと、制度自体の信頼性が弱くなっていく。  そういった中で、私、個人的に考えますのに、すべてにいい策というのはなかなかないわけでありますから、ある意味では三方一両損的な調整をしなきゃならない部分というのもあると思います。そういった中で支給年齢を上げていくということは、それはやむを得ない措置だというふうに個人的には考えております。
  32. 山本孝史

    山本(孝)分科員 二つの考え方がありまして、年金制度が六十五歳になるから企業社会が、雇用の形態が六十五歳定年に追いついてくるのか、あるいは、社会がそういう方に動いていくから年金が後で追いかけていって、六十五歳でもいいじゃないか。すなわち、年金が雇用の形態を、変容を引っ張っていくという役割を担うことがいいのか、あるいはよくないのか、そこはどうお考えですか。
  33. 甘利明

    甘利国務大臣 どちらがどちらを誘導するか、いろいろ議論があると思います。  ただ、私は、働くということが苦痛であるならばこれは早く解放してあげた方が当然いいわけでありますけれども、私どもは、働くことは、人生の自己実現上、自分の意欲とそれから体力が許す限り喜びとして存在した方がいいんだというふうに思っております。ですから、年齢、体の状態に応じていろいろな働き方が選択できるようにするということは非常に大事なことだと思っております。  あわせて、年金制度自分に意思があっても体の状態等で働ける職種がないというときに、生活の保障、安心感をセーフティーネットとして担保してあげなければいけないわけでありますから、両々相まって充実した社会生活、安心した社会生活が送れるということがいいと思います。  ですから、どちらがどちらを引っ張るということじゃなくて、制度の安定、安心感と生きていく充実感と、その合わせわざでやっていくのがいいかというふうに思っております。
  34. 山本孝史

    山本(孝)分科員 極端に言えば、年金制度がどう設計されるかによって働かなければいけないという社会はまずいんですね。年金と雇用、労働というのは明らかに中立性を保っていなければいけない。そこのところで、将来の労働環境がどういうふうに変化をしていくかということと年金制度の設計とが非常に重要な問題になってくるわけで、六十五歳の年金支給開始は、年金財政の上からいくと大変に大きな選択肢の一つであります。  ただ、ようやく六十歳定年制が実現してきている中で、年金制度が先に六十五歳に行くから六十五歳まで働かなきゃいけない社会になっていくかというと、どうもこれはならないのではないか。すなわち、先ほど職安局長もお答えになったように、早期退職を希望する人たちがふえてくるだろう、今の若い人たちの働き方がどんどん変わってくるだろうというふうに思いますので、これは年金だから厚生省の役割ということではなくて、労働省の側からも大いに御発言を続けていただきたいというふうに思うわけであります。  定年制の今後の姿、終身雇用制度というものが今後ともに崩れていくのか、あるいは終身雇用制度をずっとこのまま日本の特色として続けていくように企業社会努力していくのか、大臣、どちらの方向に行くというふうにお考えですか。
  35. 甘利明

    甘利国務大臣 日本雇用形態の特徴として終身雇用、年功序列という二つのことがよく指摘をされてきました。  特に終身雇用に関しましては、学卒の一括採用で、企業が長期的視野に立って職業訓練を行い、戦力として育てていくというメリットは当然あったわけでありますし、働く方にとりましても、まじめに汗をかいていればとにかく失業という不安からは解放されるという安心感というものもあるわけでありますから、今先生指摘の終身雇用については一定の役割を果たしてきていると思いますし、これからも雇用の中核として存在すべきものだというふうに私は思っております。  ただ、大学を卒業して就職をする方の三割が三年以内にやめちゃうんですね。これは職業意識の欠如ということも指摘されていますけれども、実は、自分の頭の中で描いていた職業と、実際に現場についてみたときのギャップが大きい。自分がやりたいのは実はこういうことじゃなかったということで、新たに職を求めたいという人が三年以内に三割もいちゃうわけです。終身雇用制ががちんがちんの状態ですと、途中から別なところにチャレンジするという門がうんと狭くなっちゃうという副作用もあるわけであります。ですから、自分能力を磨いて新しい分野にチャレンジをする、あるいは、自分が思っていたところと現実とのギャップがあった、そこで自分の思い描いていた職業につくために途中から再チャレンジをする、そういう道もちゃんとあけておいていかなければならないんだと思います。  今失業率が、日本は最悪で四・三%、アメリカは最善で四・三%。同じ数字でありながら不安感というのが違うんですね。これは、日本が、自分の意思で表へ出るのはともかくとして、自分の意思以外、つまり非自発的に失業というところにほうり出されることには全くなれてないわけでありますから不安が大きい。それは、終身雇用という中で、新たな、途中から再チャレンジされていく道がちゃんと開いているんだろうか、そういうことに対する不安感というのも大きいんだと思うんです。  ですから、終身雇用日本型長期雇用というのは雇用の中心にこれからも座っていくべきだと思いますけれども、しかし、さりとて、中途から別な道を選ぶというところもちゃんと開いておいていかなければいけない、両々相まって活力ある経済社会が維持されるというふうに思っております。
  36. 山本孝史

    山本(孝)分科員 学卒者の就職してのミスマッチをできるだけ少なくする、あるいは転職をもう少し容易にしてあげて多様な人生を設計できるような社会をつくる、それはそのとおりだと思うんです。  でも終身雇用制を中心的に置いていくというのがいいんだというお考えですね。現実社会は、なかなかこれは難しくて、今終身雇用制があるために雇用調整ができないで企業失業を随分抱え込んでいるわけです。それが景気回復をおくらせているという形がありまして、少し乱暴な言い方をすれば、終身雇用制を崩してしまわないと日本社会の活気が出てこない、景気回復にはつながっていかないという思いも一方でするわけです。  そういう中で、終身雇用制は、すなわち働き始めたら、最初に就職したら、あなたは定年までこの会社で働けますよという時代が今後ともに続くというふうに想定されておられるのか、あるいはそれがいいことだというふうにこれからの労働政策をつくっていかれるのか。いやいや、もともともうこれから終身雇用制なんか日本ではないんだよ、定年まであなたは同じ会社で働き続けるなんて考えるのは甘いよ、だからそれを前提に考えなさいよということで労働政策を仕組むのか。どっちでしょうか。
  37. 甘利明

    甘利国務大臣 結論から申し上げますと、半分半分であります。日本型長期雇用も決して悪い点ばかりじゃないのです。ただ、硬直化してしまって、メガトレンドである大競争時代に勝ち抜いていけるかという不安があるわけであります。  企業が必要な戦力をより柔軟に調達できるようにする、それから働く側も、企業の都合だけで労働政策雇用政策というのは進むわけじゃないですから、働く人たちの安心感を醸成してやるということも大事な側面でありますから、自分努力をしていれば職場が保障されるという安心感も引き続きやはり保っていかないといけないと思うのです。状況によっていつ職を失うかもわからないという思いと隣り合わせでは、やはりゆとりと豊かさという社会実現ができないと思いますから、挑戦する人にとってはいろいろなチャンネルがある、そして、地道に、自分は不器用だけれどもまじめに努力することでは引けをとらないよという人にはちゃんとそれなりの道をつないであげるということは、これからも大事だというふうに思っております。
  38. 山本孝史

    山本(孝)分科員 おっしゃっているところは日本の美徳だったわけですね。その美徳が今後ともに続けられるのかというところが、実は今、日本社会が直面している問題で、半分半分というのは、言い方は悪いですけれども、格好はいいのですけれども、それは何もしないという話にもつながってしまうので、非常に中途半端な政策を続けていたのでは、そこは問題が出てくるのではないかという心配をします。  それで、先ほどの御答弁の中でもお触れになりましたように、会社に勤めて企業内で研修をするということでその企業に合った人材をつくり上げていく、育成するというのが日本企業社会ですね。実は、そうしますと、そこの会社で身につけたことはその会社では役に立つけれども、その会社を離れてほかの企業に行こうといったときにその技能が意外と役に立たない。今後の日本社会の労働状況というのは、恐らく地域間の移動も、それから産業間の移動ももっと激しくなっていくのだろう。そうすると、この業界では役に立つけれどもこの業界では役に立たないということがいっぱい出てくると思うのですね。そこの雇用ミスマッチがやはり問題になってくる。  そこのところで、もう一度やはり技能訓練を受けていただく機会をふやさないといけない。いろいろ手だてをやっておられることは存じ上げておりますけれども、一つは、雇用保険の支給期間の延長を真剣に考えてみるべきではないか。雇用保険の失業給付を受けている期間中に新たな技能を身につけて、新たな仕事を見つけるということは、今の世の中、非常に難しいです。先生もそうだと思います、政治家は随分、転職の御相談も就職先のあっせん等も持ち込まれますけれども、これほど難しいことは今ないように思います。  そういうことも含めて、雇用保険の給付期間を延長して、もっとしっかりとした技能を身につけられるような期間の保障をする。それは事業主負担が高くなることはありますけれども、でも、これこそ日本社会の安定につながっていくというふうに私は思うのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  39. 甘利明

    甘利国務大臣 雇用保険の給付期間の延長につきましては、私は基本的にこういうふうに考えております。  何もしないで待機している時間を長くするということは、言ってみれば職業能力をなまらせることになると思います。そこで、待機している間に職業能力のバージョンアップをさせるために給付の延長をするということはいいことだというふうに思っております。給付期間を単純に延長するということについては、むしろリストラを助長することになりかねないものでありますから、その待機期間に次なる能力を身につけるための延長、つまり訓練給付延長は幅広く活用をしてもらいたいと思います。  今、単純に雇用保険給付期間というのは在職期間年齢に応じて九十日から三百日でありますけれども、訓練給付はそれに加えて制度上は最長二年ということになっているのです。もちろん、何もしないでいる期間が目いっぱい来て、ぎりぎりになってから訓練給付を申請するというのもどうかと思いますけれども、できるだけ早いときから、心のスタンバイができたら直ちに職業訓練に入ってもらいたいと思いますが、今度の雇用活性化総合プランの中では、今まで職業訓練の範囲に入っていないような部分を大分幅広にいたしました。それをもちろん訓練延長給付対象にしたわけであります。  とにかく、失職している間に職業能力をバージョンアップして武装する、いかなる戦いにも勝てるだけの職業能力を身につけた労働者になっていただくということが一番大事だというふうに思っております。
  40. 山本孝史

    山本(孝)分科員 そこは、制度の仕組みをつくれば、単に失業給付を受けながら遊んでいる人が出るということはないと思うのですね。  それとあわせて、どういうことを勉強すればお金がもらえるのか、失業給付からもらえるのか。八割は国が保障してくれますということで英語学校がはやるだけでは、私はこれは余りいい話じゃないなという気がしている。情報社会になっていく、あるいは運転免許が必ず必要になる、そういう、どういう社会にこの先なってくるかということで、本当にその人の次の就職、転職に役立つような技術を身につけられるものであれば大いに国が金を出せばいいと思いますが、そこはもう少し精査が必要ではないかというふうに思います。  時間ですので、最後もう一問。年金の中で企業年金制度の問題ですけれども、財形のお話はこの間聞かせていただきましたが、確定拠出型年金というものをどうお考えになっているのか。  そのこととあわせて、企業年金に関する包括的な基本法をつくるべきだということで、労働省もお入りになって、省庁またがっての検討会をおやりだというふうに理解しておりますが、この法律が必要であると思っておられるのか。必要であるならば、どういう事項を盛り込むべきだとお考えなのか。  この二点についてお聞かせをいただきます。
  41. 甘利明

    甘利国務大臣 確定拠出型年金というのは、企業年金の信頼性を高めていくということで、これは必要なことだと思っております。  それから、先般の先生の御質問で、財形年金がこの確定拠出型年金に合流をしていくというお話をさせていただきました。ただし、他の財形、財形貯蓄とか住宅財形は、制度として従来どおり存続、残っていくことになります。住宅財形については、この間御説明を申し上げたことをちょっと忘れたのですが、システムの設計を若干変更しまして、より活用しやすいものに変えていくということになっております。  それから、もう一点、企業年金の基本法につきまして、今、関係省庁で協議をいたしております。  例えば、税制面でどう整備をしていくかですね。拠出時とか運用時とか給付時、税はどうあるべきかとか、あるいは、年金であるのだからいわゆる一般の貯蓄とは違う、そこにどう制約をつけるのかつけないのかとか、そういう議論があると思いますし、それを体系化して法律にする必要があるのかどうか。私は個人的にはあるのじゃないかと思うのですが、法律として一つの体系としてやる必要性も含めて、来年の通常国会を目指して、今、検討しているところでございます。
  42. 山本孝史

    山本(孝)分科員 省庁の協議の中で来年の通常国会というお話もあるやに聞いておりますけれども、ここはどういう形に仕組むのか。企業年金の姿が大きく変わっていきますので、そこはできるだけ早目のところでお示しをいただきたいというふうに思います。  時間になりますので、最後、御要望をさせていただきたいと思います。  六十五歳現役社会実現というのは、これからの日本社会が望んでいる一つの姿だというふうに思います。必ずしも、今やっておられる職業再訓練制度あるいは再雇用制度雇用促進制度がこの制度にこれから合っていくのかどうなのかというのは、私はちょっと疑問に思っている部分があります。  そういう意味でも、きょうお願いしています雇用保険の支給延長等も含めて、定年制の姿はどう変わっていくのか、終身雇用制度が今の不況脱却の中でどういうふうに姿を変えようとしているのか、退職金の姿も今全然変わってきていますので、退職金そのものがなくなっていく、松下さんもなくなりましたので、そういう意味でも、将来労働省として、労働政策こういうふうにしっかりと、六十五歳現役社会をつくるために取り組んでいきますという姿をその都度お示しいただくようにお願い申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  43. 臼井日出男

    臼井主査 これにて山本孝史君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして労働省所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  44. 臼井日出男

    臼井主査 次に、厚生省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本純君。
  45. 松本純

    松本(純)分科員 自民党の松本純です。  本日の衆議院予算委員会第四分科会では、厚生省が中心となり懸命にお取り組みいただいております医療の抜本改革を進めるに当たり、その準備や現制度との整合性について何点かお尋ねしたいと思います。  これらのさまざまな改革は、先送りすることのできない極めて窮屈なスケジュールの中にあることを忘れてはならないと思います。特に来年度は、診療報酬の改定、五年に一度の年金改革の年、さらに介護保険のスタート、医療制度の抜本改革といった決断を求められる重要課題が山積しています。特に平成十二年度予算にかかわる課題については、本年の夏ごろまでにはその考え方を示さなければ予算編成そのものに大きな影響を与えてしまう、こんなことが心配をされております。  少子・高齢社会を迎えると言われて久しいところですが、一九九五年には四・七七人で高齢者一人を支えていたのが、二〇二五年には二・一七人で一人を支えることになります。  年金、医療等社会保障給付費についても、二〇〇〇年には八十七兆円、うち医療費三十一兆円、二〇一〇年には百三十七兆円、うち医療費五十四兆円、二〇二五年には二百十六兆円、うち医療費百四兆円になると言われております。これらの急激な変化に迅速に対応するためには、価値観の見直しも含め、まさに今抜本的な改革が求められているところです。  宮下大臣及び厚生省におかれましては、国民皆保険制度の堅持などを初めさまざまな改革が国民の安心につながるよう、さらなる御尽力をいただきますよう切にお願いを申し上げる次第でございます。  さて、医薬分業が全国的に急速に進んでおります。  昭和三十一年に分業法が施行されて以来相当の期間、処方せん受取率は一%に満たない状況が長く続いていました。昭和四十九年、薬依存から脱却すべきと訴えられた元日医会長武見先生らの御努力により、処方せん料が五十円から五百円に大幅に引き上げられたと聞いておりますが、このような経済的要因により医薬分業が進み、処方せん発行も高まったそうです。昭和六十二年にようやく一〇・一四%、平成七年に二〇・三%、平成十年に三二・一%といった処方せん受取率になってきました。  平成七年度から九年度までの三年間を見ると、毎年、三千万枚、四千万枚、五千万枚と伸びてきており、ことし三月締めの平成十年度のまとめでは三億九千万枚に達するであろうと言われております。  この五千万枚という数字は、一日四十枚の処方せんを調剤し、年間二百五十日間働く調剤技術を持った薬剤師が五千人必要となる数字です。  それだけに、今は、処方せんの受け入れ体制づくりが各県薬剤師会の重要な課題になっております。厚生省の理解と協力も得ていかなければ、民間の力だけで早期にまた十分な受け入れ体制を整備していくことは困難だと思っております。  そこで、医薬分業が進むことに伴って処方せんの受け付け薬局の数もふえていて、平成十年十月現在で約三万三千薬局を数えています。医療機関の処方せんが拡散して、多くの薬局が医薬分業に参加するようになり、面医薬分業が進んでいるという意味では望ましいことだと思いますが、その反面、薬局の医薬品在庫の負担が急速に大きくなってきている状況が一方で出てきていると聞いております。  医薬分業の推進のため、厚生省は、医薬品備蓄や情報センターを兼ねた医薬分業支援センターに補助金を出しているとのことですが、これまでの補助件数はどの程度になっているか、また、一年間何カ所の補助で、どのような条件で補助採択されているのか、この補助金の意義はどのようなものか、補助金の全体の概要についてもお教えをいただきたいと思います。
  46. 中西明典

    ○中西政府委員 地域の薬局が的確に処方せんの応需を進めていくという見地から、薬剤師会が主体となって医薬分業支援センターを整備してこられているところでございます。  先生もお触れになりましたが、使用頻度の低い医薬品の備蓄、またそれを薬局に配付する、医薬品そのものの情報収集並びに提供、休日・夜間時の調剤等の業務を行う、そういった見地から支援センターが整備されてきているところでございまして、現在、国の方が三分の一、都道府県が三分の一、それから都道府県の薬剤師会あるいは法人格を有する郡市区の薬剤師会が三分の一という費用負担割合で補助事業が行われているところでございます。  平成九年度までに、設備整備につきましては昭和五十四年度から百七カ所、施設整備につきましては平成四年度から十四カ所について補助をしてきているところでございます。  九年度には、施設整備一件、設備整備二件について補助実績がございまして、実績といたしましては、交付額、施設整備については八百五十五万五千円、設備整備については千六百十五万五千円、このような実績になっております。
  47. 松本純

    松本(純)分科員 最近、地方自治体の財政が厳しくなり、国の補助金が出ても都道府県の補助が得られず、支援センターの開設が困難になっている地域があると聞いております。支援センター予算の使い勝手がよくなるような検討はできないでしょうか。宮下大臣にお尋ねをいたします。
  48. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 医薬分業推進の見地に立っての支援センターの内容につきましては、委員も御指摘になりましたし、局長の方から御答弁がありました。  私どもとしては、医薬分業を推進するために、御指摘のようにいろいろ使い勝手がよくなるというような意味で、この対象を都道府県が行う補助事業を中心にしておりますが、例えば政令指定都市でありますとか中核市等が実際に医薬分業推進に果たす役割等もございますので、それらを踏まえまして、センターの整備が円滑に推進できるような補助対象領域のあり方についても検討してまいりたい、このように思っております。
  49. 松本純

    松本(純)分科員 備蓄医薬品の対策としては、卸売業への支援が不可欠であると思います。最近、幾つかの卸売が薬局に対する小分け販売のサービスを開始していると聞いております。一方、現在、薬局や薬剤師の経営する備蓄センターがこのような小分け販売サービスを行う場合、薬事法の医薬品の容器包装への記載義務事項を大幅に簡略化することを認めているとのことですが、この措置は卸売業に対しては認められていないと聞いております。  卸売業が小分け販売サービスをしやすくするため、卸売業についても記載義務事項の簡略化を認めるなどということを検討されてはいかがかと存じますが、御所見をお伺いします。
  50. 中西明典

    ○中西政府委員 今後、医薬分業をさらに進めていくという見地から、応需体制を整備していく一環として、卸売一般販売業における小分け販売サービス促進されるということは、先生指摘のとおり、重要であるというふうに考えております。  厚生省といたしましては、本年度、医薬分業応需体制確保事業の中で医薬品の在庫管理の問題についても検討を行っておるところでございまして、この検討結果並びに関係団体の意見も踏まえながら、先生指摘の方向で検討してまいりたい、かように考えております。
  51. 松本純

    松本(純)分科員 次に、処方せんの一般名記載が進めば備蓄問題もかなり緩和されると思います。厚生省はこの一般名による処方について通知を出されていますが、どの程度進んでいるのか、お教えをいただきたい。さらに推進をされるお考えがあるのかもあわせてお尋ねします。
  52. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  現在、先生指摘のように、処方せんに記載をいたしまする医薬品名につきましては、今お挙げになりました昭和五十一年に出された通知でございますが、これに基づきまして、一般名による記載でも差し支えないというふうにいたしておるわけであります。したがって、薬価基準に記載をされております後発の銘柄ごとの名称あるいは一般名のいずれで記載するかについては医師の判断に任せているという格好になっております。  その結果、一般名による処方がどのような格好で進んでいるかというデータについてのお尋ねでございますが、まことに申しわけございませんけれども、それについてのデータはとっておりませんので、状況はちょっとわかりかねるところであります。進捗状況は必ずしもよくないというふうには思っております。  ただ、今御指摘がございましたように、一般名によります処方が進めば備蓄問題等の面でそれなりの効果があるということは御指摘のとおりだというふうに思いますけれども、一方におきまして、実際に一般名で処方するかどうかというところは、個々の医師の後発品に対しまする認識が違ったりというようなことがございますものですから、そこをして、いわば一般名での記載ということを強く推すということはなかなか難しいところがございますので、そこらの兼ね合いを考えながら、今後さらに関係者の意見も伺いながら、そのあり方につきましてさらに検討をしてまいりたいというふうに思います。
  53. 松本純

    松本(純)分科員 処方せんへの病名記載についてお尋ねをします。  平成九年四月から、薬剤師法改正により、調剤時における患者に対する医薬品情報の提供義務が課せられ、薬局における患者に対する情報提供、服薬指導は着実に進んできていると承知しています。  今後は、情報提供や服薬指導の質の向上が課題となってきていると思いますが、薬局の服薬指導に対する批判として、薬局は患者の疾病名を知らないのだから適切な指導は難しいのではないだろうかとの指摘もあります。しかしながら、お医者さんの説明事項だけでなく、薬歴などに基づく薬剤師としての説明事項があり、この指摘は必ずしも適切とは言えないと思いますが、ただ、患者の疾病情報が薬局に提供されれば、よりよい服薬指導が可能になると思います。  そこで確認させていただきたいのですが、医療機関のお医者さんが処方せんを交付する際に、薬局薬剤師に対して処方せんに記載をするなどその他の方法によって疾病情報を提供することは、お医者さんの判断であって、特に問題はないと考えてよろしいのかどうか。  例えば愛知県がんセンターでは、処方薬剤の使用目的等お医者さんのコメントを処方せんに記載して交付していると聞いております。また、在宅医療でも、処方せん発行医から調剤する薬局に対して疾病情報等を提供した場合には情報提供料の算定も認められていることもありますが、いかがお考えになるでしょうか。
  54. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 まず、処方せんの記載事項というのが医師法施行規則第二十一条に規定をされておりまして、その中には病名は含まれておりません。ただし、今先生がおっしゃられましたように、薬剤師さんが服薬指導をされる場合に病名があった方がいいという御意見もあることは承知をいたしております。  それで、一般に、医師が、患者の同意を得るなどして、当該患者の疾病に関する情報を別文書を交付することなどによりまして薬剤師に提供することにつきましては、特段に問題は生じないもの、このように考えております。  ただ、処方せんそのものに書きなさいというようなことになりますと、これはまたちょっと別の問題かと思って、それについては慎重な検討が必要か、このように思っております。
  55. 松本純

    松本(純)分科員 厚生省平成九年度の老人保健事業推進費等補助事業として、在宅医療における医療機関と薬局のあり方に関する研究事業という事業が行われたと聞いておりますが、どのような事業なのか、その内容をお教えください。
  56. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 御指摘の事業でございますが、入院患者が在宅療養に移行する際に、服薬管理に関しまして医療機関と保険薬局とがスムーズな連携ができるようなシステムについて検討する、こういうことで、日本薬剤師会に委託して実施したものでございますけれども、札幌など六地区のモデル地区に九つの医療機関と地域の保険薬局が参加をいたしまして、退院後の在宅患者につきまして服薬管理や服薬指導を実施いたしまして、入院から在宅へ移行するための連携のあり方あるいは方法論等について検討したところでございます。  この結果、医療機関と保険薬局が連携することによりまして、調剤の継続性が確保された、それから継続的な服薬指導ができるようになった、あるいは副作用情報を共有化することによりまして適切な指導が行える、こういったメリットがある、こういうふうな報告でございまして、効果的な在宅医療が行えた、こういうふうな結果になっております。
  57. 松本純

    松本(純)分科員 医療提供体制の改革の一環として、病院と病院間、病院と診療所間の連携が進められ、医薬品の適正な使用のための情報として、厚生省は、このような処方せんへの病名記載など医療機関から薬局への情報提供について診療報酬上での評価をするなど、病院、診療所と薬局の連携を推進をするという方法についてどのようにお考えになるか、お尋ねをします。
  58. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  現在、先ほどのお話にもございましたように、処方せんにつきましては患者の氏名あるいは交付年月日、処方内容等を記載することになっておりますけれども、病名については必ずしも必須記載事項とはなっておりません。  しかしながら、先生指摘のように、患者さんによりよき医療あるいはよりよき投薬をするという観点から、保険医療機関と保険薬局との連携を推進するというのは大変大事な観点でございますので、診療報酬上も特にそういう必要性の高い部分、一つ挙げますならば、保険医療機関が保険薬局に対しまして在宅患者訪問薬剤管理指導をされるというときに必要な情報を提供される、そのときに病名も含んでそういう情報を提供していただいた場合には、診療情報提供料という形での評価を現在行っておるところでございます。  また、逆に保険薬局から保険医療機関への情報提供という意味では、保険薬局が保険医療機関に服薬状況等の情報を提供していただきました場合には、服薬情報提供料という形で評価をいたしております。  今後、保険医療機関と保険薬局の場合も含めまして、そういった関係機関の連携に対しまする診療報酬上の評価というのは一つの重大な視点でございますので、中医協等において御議論をしていただきました上で、適切な対応ということを検討してまいりたいというふうに考えております。
  59. 松本純

    松本(純)分科員 次に、病院薬剤師の患者情報の提供体制についてお尋ねします。  厚生省は、昨年平成十年十二月三十日に、新しい病院薬剤師の配置基準として、入院患者七十人につき薬剤師一人、プラス処方せん七十五枚につき薬剤師一人という基準を実施されたところですが、この基準の員数の算定根拠をまずお伺いいたします。
  60. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 今般の病院薬剤師の配置基準の見直しは、服薬指導や薬歴管理等、病棟において薬剤師が果たすべき役割が変化してきていることにかんがみまして、病床種別ごとに入院患者数に基づく人員配置基準を設けることとしたものでありまして、医療審議会審議、答申を経て、昨年十二月に基準の改正を行ったところでございます。  算定の具体的な考え方は、入院患者を基礎とした薬剤師の人員配置基準が既に設けられている特定機能病院の基準をもとに、医師や看護婦の人員配置基準とのバランスも考慮するとともに、また、現行の薬剤師の充足状況等も勘案しつつ設定したところでございます。
  61. 松本純

    松本(純)分科員 この基準の実施によって、病院薬剤師の数は増強されたのか、それとも減ることとなったのか、御説明をいただければと存じます。  平成九年四月から薬剤師の情報提供義務が実施されていますが、この規定は病院薬剤師にも適用されると思います。このように、薬剤師の新しい義務が法制化されたにもかかわらず実質的に薬剤師の数を減らされたわけでありますが、このような情報提供義務といった新しい業務については考慮されたのか、お尋ねします。
  62. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 今回の薬剤師の人員配置基準の見直しにつきましては、調剤技術の進歩とともに、服薬指導や薬歴管理等の病棟業務の増大といった病院における薬剤師の役割の変化等を踏まえまして、業務に応じた適切な数の薬剤師を配置する観点から、従来の調剤数のみに基づく基準から入院患者等を基礎とした基準への見直しを行ったものであります。  なお、この薬剤師の人員配置基準については、医療審議会の答申を踏まえ、今後、病院薬剤師の業務の内容及び配置状況等の把握に努め、三年後を目途に病院薬剤師の業務の実態に即した見直しを行うことといたしておるところでございます。
  63. 松本純

    松本(純)分科員 病院薬剤師の入院患者に対するいわゆる四百八十点業務の実施状況について、実施している医療機関の比率、患者の比率などをお尋ねします。
  64. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 施設基準に適合しておりますものとして都道府県知事に届け出ていただきました病院におきまして、薬剤師の方が入院患者に対して薬学的な管理指導を行われた場合に、診療報酬上薬剤管理指導料ということで、先生今お挙げになりましたように四百八十点の評価がされているわけでございます。  この実施状況でございますけれども、平成九年の七月でございますが、全病院九千四百二十病院のうちの約三四・八%に相当いたします三千二百八十二病院が、今の薬剤指導管理上に係りまする届け出を知事に対して行っておられるというのがまずございます。その届け出ました医療機関におきます一施設当たりの月平均の指導患者数が八十四・三人でございます。したがって、その三千二百八十二病院における状態は今申し上げたところでございますが、これが全体の患者数にどう比率として占めるかについては、申しわけございませんが把握をいたしておりません。
  65. 松本純

    松本(純)分科員 薬剤師法二十五条の二の規定が設けられたことを、病院薬剤師が病院経営者や医師に伝えても理解してもらえないという声が多く聞かれます。厚生省としては、この点について、病院経営者や医師に対して薬剤師法二十五条の二の規定が設けられたことを理解してもらう必要があると考えますかどうか、お尋ねします。
  66. 中西明典

    ○中西政府委員 改正薬剤師法施行に際しましては、医師会等の関係団体に対しまして、改正の趣旨について周知したところでございます。  先生指摘のように、薬剤師の病棟活動を進めていく上に当たって、病院経営者や医師の十分な理解というものが必要であるということは言うまでもないわけでございまして、私どもとして、今後も機会をとらえてそうした趣旨の周知に努めたいというふうに考えております。  また、他方、薬剤師さんの方も病棟業務について具体的にどんどん実績を積んでいただくということも、これがまたお医者さん、病院経営者の理解を深めるということにもつながるというふうに考えますので、日本病院薬剤師会等に対しましても、そういった旨会員に対しよく指導いただくようお願いしてきているところでございます。
  67. 松本純

    松本(純)分科員 今回の基準によれば、入院患者七十人に一人の薬剤師とされていますが、一病棟の入院患者さんは五十人ですから、おおよそ一・五病棟に一人の配置になると思われます。このような配置基準で、入院患者さんに対する調剤も行い、また十分な服薬指導業務を行うことは難しいことと思われます。今回の基準は三年後に見直しをするとのことでありますが、少なくとも薬剤師のこうした法定業務が確実に実施されるのに十分な薬剤師基準とするべきと思いますが、どのようにお考えでしょうか。  さらには、医療提供体制の見直しの中にあって、医療の担い手として薬剤師、とりわけ、例えば服薬指導、病棟活動など、今までより院内において大きく変化してきている病院薬剤師の果たしている役割あるいは今後とも果たすべき役割の重要性について、宮下厚生大臣の御認識と御所見をお聞かせいただければ幸いでございます。
  68. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 病院の薬剤師の業務につきましては、調剤業務のほかに、調剤技術も進歩しておりまして、お話しのように服薬指導とか薬歴管理等の病棟業務が増大してきておりまして、その内容が変化してきているものと認識しております。  ただいまお話しのように、昨年十二月に行われました薬剤師の人員配置基準の見直しも、こうした病院薬剤師の業務をめぐる状況を踏まえまして、入院患者の数等を基礎にした薬剤師の人員配置基準を定められたものと承知しております。  そして、この人員配置基準は、医療審議会の答申におきまして、三年後を目標にその見直しを行うこととされておりまして、したがって、見直しに当たりましては、病院薬剤師の業務の実態とか薬剤師の需給の状況等を踏まえまして適切に対応してまいりたい。審議会の答申におきましても、そのようなことが記述されておりまして、三年後を目途に病院薬剤師の業務の実態、薬剤師の需給の状況を踏まえて人員配置基準を見直すというように示されておりますので、そういった方向で検討してまいります。
  69. 松本純

    松本(純)分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  70. 臼井日出男

    臼井主査 これにて松本純君の質疑は終了いたしました。  次に、福島豊君。
  71. 福島豊

    福島分科員 大臣、大変御苦労さまでございます。  本日は、小児科医療につきましてお尋ねをしたいと思います。  小児科医療につきましては、例えば平成八年の十一月六日付の朝日新聞では、「少子化の波に揺れる小児科——患者減で危機的状況・縮小や病棟閉鎖も 量こなせず薄い利益 三一%に経営上重荷」というような見出しがあったようでございます。  少子化が進んでいく中で、だんだん子供の患者さんが減っていく。そしてまた、子供の患者さんの場合は一人当たりの薬剤の使用等も少のうございますから、経営上の大変な困難がある。これは平成八年の新聞でございますが、この事態は変わったのかというと、決して変わっていないというふうに思います。  次に御紹介いたしますのは、本年の一月二十一日の朝日新聞でございますが、これは千葉県内の大学附属病院で勤務していた小児科の女性医師、当時四十三歳でございますが、亡くなられまして、これが労災として認定をされたということでございます。大変な過重労働を現場では強いられていて、その結果として過労死が生じるような事態が起こっている。  それに対して日本小児科学会のコメントが載せてありますが、「小児科では専門性や夜間診療の需要が高まる一方で、採算性が悪いため人員は増えずに過重負担の傾向が強くなっている」というふうに指摘をされておるわけでございます。そしてまた、同病院の院長も、こういう過重労働があるということはよくわかっているわけでございますから、それに対して見直さなければいかぬと思いつつも、「勤務態勢の見直しを検討しているが、投与する薬が少なく診療報酬が低い小児科では、医師の人数を簡単に増やせない」、非常に率直なコメントを載せております。大変な事態ということだと思います。  このような記事を見まして、私も、地元大学の先輩であります小児科の先生にいろいろとお話をお聞きいたしました。そうしますと、大阪でも、総合病院の中でも小児科病棟というのは採算性が悪いということで、これを閉鎖しようという動きも出ている、そういう実態をよく認識してほしいという話がありました。  ただいまも、なぜ小児科の医療というのが経営上非常に困難になるのかということについて、その一端として、投与する薬が少なく、診療報酬が低いということがありましたが、それ以外にも幾つかの特徴があるようでございまして、この点も大臣に御認識をいただきたいと思うわけでございます。  一つは、乳幼児というのは病態が急変しやすいわけでございます。そういう急変しやすい患者を対象とする場合には、ほかの科に比べますと、医師にしましても看護婦にしましても、おのずと人員配置を厚くしなければいかぬということがある。  そしてまた、二点目としましては、感染症が小児の場合には非常に多い。感染症というのは季節変動があるわけでございまして、例えばことしの冬であればインフルエンザで入院を余儀なくされるような事態が非常にふえたというふうに伺っておりますが、こういう季節変動が多いと、どうしても病床の利用というのが季節によって大きく変化してしまう。夏場は空床が目立ち、冬場は入院させなければいかぬ患者でも入院し切れないというような事態も起こっている。そしてまた、感染症の場合には、大部屋であったとしても、ほかの患者にうつしてはいけないということがありますから個室として使用しなければいかぬというような事態も出てくる。  また、三点目としましては、小児の病状というのは急変しますから、また変化があった場合には御両親の方はすぐに診てもらいたいということもありますので、時間外、夜間、休日を問わず受診をすることが多い。また、病院における小児科の場合には、二次、三次救急というものを担わなければいけないけれども、実際にはこういった救急を担うとかえって赤字になる、一件当たり一万円ぐらいの赤字になるんだということを言っておりました。  そしてまた、外来の診療でも、成人の場合ですと服を脱いで待っていてくださいという話ができるわけでございますが、小児の場合には、まずそういう段取りも時間がかかりますし、診察が終わった後にお母さんに説明をしなければいかぬということで、それも時間がかかるわけでございます。これはやらなければいかぬことですから必要なわけですけれども。したがって、一定の時間内で診療をした場合の比較をすると、他科の診療の場合に比べて医業収入が半分以下になってしまう、そういうような事態もあるということでございます。  そしてまた、五点目としましては、小児科医療の評価の低さということが言われております。一九七七年から一九九一年の間、高齢者一人当たりの医療費というのは二十一万九千円から五十二万四千円、三十万五千円増加したわけでございますが、これに対して小児一人当たりの医療費というのは二万七千七百円から五万九千百円、わずか三万一千四百円の増加でしかなかった。  こういった小児科の特徴的な診療のあり方、そしてまた評価の低さというものが相まって、現在の小児科の経営の危機ということに至っていると思います。そしてまた、困難な経営状態の中で、現場で小児科の医師というのは大変な過重労働、看護婦さんも含めてでございますが、医療従事者が過重労働に悩まされている。この事態を私は何としても改善をしていただきたいと思いますし、少子化社会対策の一つの柱は、やはり安心して子育てができるということだと思います。  安心して子育てができるということは、その地域地域において小児科の専門の先生がおられて、いつでも診ていただけるというような体制をやはりつくっておかなければいけない。しかし、今の状況ですと、だんだんこれが空洞化していって、すぐ診てもらいたくてもなかなか小児科の先生がおらない、そういう事態になるのではないかというふうに懸念をいたしております。  そういう意味で、小児科学会の方からさまざまな要望が出されております。  その一つは、小児の給付率をぜひ引き上げてほしいということでございます。これは、老人でしたら、実際の実効の給付率は九五%、五%の自己負担というところでございますが、これに対して小児の場合には三〇%の自己負担ということになる。これはもちろんさまざまな助成措置がありますので、三〇%よりも軽減されていると思いますけれども、老人と小児を比較した場合、小児の方がはるかに負担が多いのはいかがなものかという考え方があると思います。ここの点を改めていただきたいという意見がございます。  そしてまた、先ほども申しましたように、全体としての小児医療の評価というものについて、これを大幅に引き上げる必要があるというふうに私は思いますが、こういうことを含めまして、大臣の御所見をまずお聞きいたしたいと思います。
  72. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 専門家でいらっしゃる福島先生の御指摘でございまして、大変参考になりました。  ただし、マクロ的に見ますと、小児科の診療所、これは個人診療所でございますが、その収益率というのは必ずしも低下はしていないという事情はあるようでございますし、それから、少子化の進展で、全体としては患者数も確かに減少してきております。小児科特有の事情があることも今先生の御指摘のとおりでございまして、小児科特有のいろいろの御指摘は参考に聞かせていただきました。  したがって、これから適正な小児科医療を確保していくということは、少子化社会を迎えて大変重要なことだと私も思います。今後、診療報酬の問題も、御指摘のように、その評価を含めまして、救急医療体制の確保、夜間診療における労働の問題等もございますし、そういった体制の整備はより図っていきたいというふうに考えております。
  73. 福島豊

    福島分科員 大臣の前向きな御答弁をお聞きしまして安心をいたしましたが、それを受けまして、個別の論点につきましてさらにお聞きをいたしたいと思います。  小児科学会、また小児科医会から出されております要望の一つには、予防給付の拡大という論点がございます。これは、現行法では予防給付は麻疹のガンマグロブリン、B型肝炎のワクチン等に限定されているけれども、その有効性が認められているおたふく風邪、水痘、インフルエンザワクチン等の任意接種もその対象に加えていただきたいということでございます。  インフルエンザにしましても、ことしのインフルエンザの大流行の中では小児の死亡患者も非常に多かったというふうに報道されております。そういう意味で、小児の場合に、予防的にワクチンを接種する等の措置というものをやはり進める必要がある。これは法改正によりまして、以前と比べるとワクチンの接種というのが非常に少なくなっているというのも実態でございますし、そういうことを踏まえるのであれば、やはり予防給付の範囲を拡大することによってその対応を進めるべきではないかというふうに私は考えますが、この点についての厚生省の御見解をお聞きしたいと思います。
  74. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 御指摘の、いわゆるインフルエンザ等のワクチンを含めました接種等につきまして保険給付対象にという御議論でございます。  現在、先生御案内のとおり、医療保険制度は、疾病等を対象にする保険給付ということで、予防給付を正面から取り上げるという形にはいたしておりません。  その中で、先生お話のありました、例えばガンマグロブリンでございますと、この抗体を注射をするというのは、患者と同居する方に感染する蓋然性が非常に高い、そして、感染をしますというと発症する確率も非常に高い、九五%以上だと言われておりまして、そういった特性を有しまする麻疹、いわゆるはしかでございますけれども、これに対しまして、感染した同居者の発症を直接抑制する治療的性格を持つということから、現在いわば例外的にぎりぎりのところで保険給付対象にしているということであります。  また、いわゆるワクチンの関係につきましても、感染者と同居あるいは近接をしておられまする人に対して、おたふく風邪だとか、先生今お挙げになった水痘あるいはインフルエンザ等のワクチンを接種するという問題につきましては、これは接種してから抗体ができるまでに数週間がかかるということで、直接発症を抑制するというものではございませんので、そういう意味からいうと、現在の疾病または障害等を対象にする保険給付ということからいきますと、そこらは限界の外かなということで現在対象にしておりません。  ただ、今御指摘がありましたB型肝炎の感染につきましては、その中でも特にB型肝炎の母子感染の関係につきましては、キャリアの母親から生まれた小児がキャリアになる蓋然性が非常に高い、これは九五%以上と言われておりますが、かつまた、急性肝炎だとか劇症肝炎、肝臓がん等のハイリスク者になるという特性がございますことと、出産直後という感染時期が非常に特定でき、その直後のワクチン接種によってキャリア化を防止できるという他のワクチンとは異なる特性があるということから、今のそういった場合に限りまして例外的にB型肝炎ワクチンについては保険給付対象としているということで、疾病や障害を保険給付対象にするという現在の医療保険の建前の中のぎりぎりのところをして今やっているところでございます。  そこで、しからば、やはり予防的給付ということで予防給付を今後どうしていくかというところに話は恐らく移るのだろうと思います。これにつきましては、ある意味からいうと現在の医療保険制度のあり方の基本にかかわる論議になります。したがいまして、この点については今後の医療保険抜本改革の検討課題だというふうに考えております。そこを抜きにして、今の法制度を前提にしてこれを広げていくということはなかなか難しい事情にあることを御理解を賜りたいと思います。
  75. 福島豊

    福島分科員 局長のおっしゃられる現在の保険給付の枠組みの建前というのは非常によくわかるわけでございますが、将来的には、保険給付というものはいかにあるべきかということについての考え方をやはり変えるべきであろうというふうに思います。そういう意味では、さらに検討を進めていただきたいというふうに思います。  その次に申し上げたいことは、健康支援デイサービスにつきましてでございます。これは、病後児保育、そしてまた拡大しますと病児保育ということになりますが。  実際に、例えば感染症の回復期にある子供さんにしましても、なかなか保育所で預かってくれない、そういう事態がございます。親御さんにしてみますと、病気がそろそろ回復してきて、もう仕事に出なければいかぬのだけれども、なかなか保育所が預かってくれないということもありまして、仕事に支障を来すという事態になっているわけでございます。そういう意味で、この病児保育また病後児保育の要望というのは非常に大きなものがあるというふうに思います。  厚生省におきましても、健康支援デイサービス事業につきましても、平成十年の四月に、乳幼児健康支援デイサービス事業の実施についてということで、実施施設に関して、病院、診療所の場合には病気回復期にいまだ至らない場合も含めて実施することができるという通達を出していただいております。この点は大変大切なことで、このような前向きな対応をしていただいたことに私も一定の評価をいたしておりますが、ただ、実際に地域地域に行きますと、なかなかこれがそれほど思ったようには進んでいないというのが私は現状だというふうに思います。  というのは、自治体の対応の違いということもあろうかと思います。ただ、先ほども言いましたように、小児科のさまざまな特性を考えますと、こういったデイサービス事業の中で、病院の病棟にしましても、そしてまた有床診療所の病棟にしましても、積極的にこれは活用していっていただいた方がいいというふうに思います。自治体に対しての指導、そしてまた現状がどうなっているのかという認識も含めまして厚生省の御見解をお聞きしたいと思います。
  76. 横田吉男

    ○横田政府委員 乳幼児健康支援一時預り事業というのがございまして、これは先生お話ございましたように、保育所等に通っている児童で病気の回復期ということでまだ集団保育ができないというような児童につきまして病院、診療所等で一時預かっていただくということでございますが、私どもといたしまして、緊急保育対策等五か年事業の一環として全国的に五百カ所を目指して整備を進めておりますけれども、御指摘いただきましたように、現在のところ、その進捗状況は必ずしも十分でないという状況でございます。  この要因を考えてみますと、一つは、補助の基準というのが、専用の保育室等を設けなければならないとか、あるいは看護婦なり保育士を二名以上配置しなくてはいけないというような、かなり厳しいというような御指摘もございます。また、日々の利用者の変動の幅が大きいというような問題もございますし、最近における市町村の財政事情の窮迫等もございまして、市町村によって姿勢にかなりの違いがあるというような点が指摘されているところでございます。  私どもといたしましては、十年度、今先生がお述べになりましたような基準の緩和等を図るとともに、さらに十一年度におきましては、専用のそういった部屋あるいは常時の職員配置を必要としない方法を取り入れまして、例えば病院、診療所の空き部屋の利用、あるいは市町村に看護婦なり保育士を登録しておいていただきまして、そうした者の派遣によって対応するというようなこと、あるいは労働省のファミリー・サポート・センターという事業がございますが、そういったところと提携いたしまして、送迎もしていただけるようなことも含め改善を図りまして、この推進を進めてまいりたいというふうに考えております。
  77. 福島豊

    福島分科員 大変積極的な御答弁をいただきましてありがとうございます。きめ細かな、そしてまた弾力的な対応を進めていただきたいと思います。  時間も限られておりますので、小児加算の点につきましては先ほどの大臣答弁で一定の御配慮をいただくというふうに御理解をさせていただきまして、次に、発達障害のことにつきましてお尋ねをしたいと思います。  これも少子化が進む中で大切なことであるというふうに私は思っておりまして、さまざまな発達障害がございますが、今は遺伝子医学というのが極めて進歩をいたしております。そういう意味で、遺伝子レベルでなぜこういった障害が起こるのかということについての研究を今こそ積極的に私は進めるべきであるというふうに思っております。  先日、私は、愛知県の心身障害者コロニーというのを訪問いたしまして、そちらにございます発達障害研究所を拝見させていただきました。  聞くところによりますと、全国でもこのように発達障害ということを一つの専門的なテーマとして運営されている研究施設というのはほとんどないんだ、それが日本の実態だということをお聞きいたしました。  そしてまた、この研究所は非常に立派な研究所でございまして、ネーチャーでの論文の評価でも、日本国内の施設の中ではベストテンに入る成績を出しておられるというふうにも伺いました。ただ、なかなかこれが今大変ですというお話をしておりまして、もう設立されましてから三十年ほどになるわけでございますが、自治体も大変財源が厳しくなってきて、そして都道府県がこういった研究所を持つというのは荷が重い、率直に言うとそういうことだというふうに思いますが、そういう中で今後どうしていくのかというような、研究者の方のお悩みをお聞きいたしてまいりました。  私が思いますのは、こういった発達障害の研究というものを遺伝子レベルも含めまして積極的に進めなければいかぬという観点から、ぜひともこういった研究所の存続、そしてまた研究の進捗というものに対して、国としても、その設立主体が異なるという話はよくわかりますけれども、一つの財産として、どのような形かというのはいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、その研究をバックアップしていく必要があるというふうに私は思うわけでございますが、この発達障害についての研究の推進ということも含めまして大臣に御感想をお聞きしたいと思います。
  78. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私は発達障害という言葉を初めてお聞きするものですからちょっと事務局から聞かしていただきましたが、大体わかりましたが、特に愛知県の心身障害者コロニーの問題の御指摘でございます。  今お話を伺っておりますと、これは県立ということでございまして、しかも国がやってもいいような研究じゃないかというふうな御指摘でございまして、研究所としてはあるいはそういう見方もあるかもしれません。  しかし、現実的には県立でおやりいただいておりますから、いろいろ研究費の補助等を行って研究内容充実させていくことはもちろん国として当然でございますが、運営費まで国がやるというような段階にはなっていないようにもお聞きしておりますので、今後、立派な施設のようでございますから、またよく検討させていただいて、研究が本当に充実して、コロニーの目的に合致するようにこれから活動していかれることを期待したいと思っております。
  79. 福島豊

    福島分科員 期待をしていただきまして大変私も感謝をいたしますが、研究費のあり方ということが一つありまして、研究費ということでお金を出す場合でも、問題なのは、最近の研究というのは、遺伝子を扱う研究にしましても、研究機器が大変高価だということなんですね。ですから、一千万円水準の研究機器というものがざらにある時代でして、そしてまた現在の研究というのは、どういう機器を使うのかということでその結果もかなり影響される時代だというふうに私は認識をいたしております。ですから、この研究機器の部分までカバーできるような形での研究費の補助というのをぜひとも私はお願いをしたいと思っておるわけでございます。  例えば厚生科学研究の中でヒトゲノムの機能解明ということで、平成十一年度の予算では二十五億五千九百万円と大変大きな力を厚生省には注いでいただいておりますけれども、発達障害の遺伝子レベルの関係ということも含めて、こういった大きな研究の枠組みも活用していただいて、ぜひ発達障害の研究の推進を進めていただきたいと思うわけでございますが、再度厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  80. 真野章

    ○真野政府委員 発達障害の研究の推進に当たりましては、原因解明等の基礎研究から予防や治療法等に関する臨床応用研究まで総合的な取り組みが必要だと考えております。先生指摘のヒトゲノムの機能解明等の研究との連携、そういう格好で進めてまいりたいと思っております。  また、御指摘をいただきましたように、ヒトゲノムの機能解明等の研究というのは二十五億五千九百万ということで、従来のいわば研究費の感覚からいきますとかなり大型な研究費を一課題ごとに考える、今先生指摘のようなそういう研究機器の高騰というような背景もあってそういうことを考えております。そういうようなことで、十分連携をとって推進をしてまいりたいというふうに考えております。
  81. 福島豊

    福島分科員 ぜひよろしくお願いいたします。  最後に、限られた時間でございますが、先日の横浜市大病院での取り違え手術の件についてお聞きをいたしたいと思います。  さまざまなことが報道されておりますので、本日は、二つの御意見を御紹介させていただいて、大臣の御認識をお聞きしたいと思います。  一つは、国立循環器病センターの名誉総長でございます川島先生の御意見でございます。  川島先生の御意見では、患者を危険にさらしてでも、少ない人員で診療しなければ赤字を招くという医療費体系のなせるところなのだ、こういうことが言われております。この事故の場合には、一人の看護婦さんが二人の患者さんを搬送するというようなことが起こっていたわけですね。これは、欧米ではそういうことはしない。日本の、人が少ない大学病院の実態がこういうことを引き起こしている。  そしてさらに、川島先生は、日本大学病院の病床当たりの看護婦数は米国の三分の一、欧州の二分の一であり、医療事故がいつ起きてもおかしくない環境であると。これは、実際に搬送されました看護婦さんの責任を問うということもあるかもしれませんけれども、実際には、日本の医療というのがこうした貧困な状況の中で営まれているという実態が今になっても変わっていないということだというふうに私は思います。これがまず第一点でございます。  こういった病院における人手不足が今後とも続くのであれば、再度同じような事故が起こっても不思議ではないと私は思います。  それから、二つ目の御意見は、これは桜町病院の外科の医長をしておられます布村先生の御意見でございますが、こういう事故が起こった後にどういう抜本的な安全対策を講じるのかという視点が不可欠だということでございます。  その一つの提案としまして、簡単には取り外しができず、字のにじまないようなネームバンドを入院患者全員につけてもらうということを全国の病院の標準とすべきではないだろうか。そういうことも含めまして、現場医療のあらゆる安全管理を制度化し、安全管理者を養成し、世界に学び、安全規則をマニュアル化して徹底実行するように運営すべきであるということで、今後に向けましての制度づくりということを提案いたしておるわけでございます。  この人員配置の問題、そしてまた安全対策のための制度づくりの問題、この二つのことはきちっと私は答えを出さなきゃいかぬことだというふうに思いますが、最後に大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  82. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 横浜市立大学附属病院での患者取り違え事件は、私は実はびっくりいたしたわけです。こんなことが本当に一流病院であり得るのかという感じでございました。患者にとって、あるいは国民にとって、そういう医療機関の信頼というのは高いわけですから、それを裏切ったものであるということだと私は思います。  したがって、それはそれとして、市立大学病院でいろいろ委員会をつくって検討されているようでございますが、厚生省としては、こうしたことが再び起きてはならないし、類似行為が起きてはなりませんので、各医療機関にやはり指導をしなければならぬと思いまして、そのために、市立大学病院の結果を踏まえまして、どういうところに原因があるのか、あるいはそれを防止するマニュアル、どういう方法がいいのか等々について内部の検討会を設けましたので、これは有識者を含めての検討会でございますが、その結論を待って院内管理体制のあり方を強化していきたいなと思っております。  こういう重大な間違い事件なんですけれども、そのほかにもいろいろの問題が提起され、実際事故がございます。京大病院で血液型を確認しないで輸血するというようなことも、私ども国民から見るとそんなことは考えられないのですけれども、そういうことも現実に起きておりますから、とりあえずは患者取り違えの事例を中心に検討いたしまして、そういうことがないように、国民が安心できるようにしたいと思っております。  ただ、先生の御指摘の人員が少ないからこういうことが起きたんだという点は、私どもの方の調査によりますと、横浜市立大学の医学部附属病院は、これは平成十年の十一月の定時の医療監視の結果でございますけれども、医師については、必要数が百六十三名に対して現員が四百三十ということですから、これは中身を見ないと、無休奉仕的なような人とかが入っているのかどうかわかりません、大学病院ですから。しかし、医療従事者は必要にして十分、あるいはそれをオーバーしているという実態。それから、看護婦につきましては、必要数二百八十二名に対して現員が六百六十二名いるという実態でございますから、必ずしも人員が不足していたからこういう事故が起きたんだということは一概に言えないのではないかというように思っております。
  83. 福島豊

    福島分科員 六百六十二名ですか、その中身がどうなのか、また後で詳しく教えていただこうと私は思います。  いずれにしましても、循環器病センターの総長でありました川島先生がおっしゃっておられることは、現場の意見だと私は思います。というのは、必要数という概念そのものが、本当にそれで必要なのかというところに議論は立ち戻るわけでして、医療現場の業務の分量、こういうことも踏まえて、必要数というのは必ずしもそれとリンクしている話ではないと私は思いますし、現場の実態の解析というのは行われていない。それで、医療提供体制の見直しというのが今進んでいるわけですけれども、この点についても実際の現場の業務の解析のようなものを踏まえて、必要数の算定というものはいかにあるべきかということの検討を進めていただきたい、私はそのように要望いたしまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  84. 臼井日出男

    臼井主査 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。  次に、辻一彦君。
  85. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 私は、きょうは、国立病院の統廃合、あり方、こういう問題について若干質問したいと思います。  昭和六十一年三月七日衆議院予算委員会のこの分科会において、私は、福井県における四つの国立病院、北潟、鯖江、敦賀、三方の四つの国立病院の統廃合、再編、これからどうするか、こういう問題についてかなり論議をして、当時の厚生省当局からこの四つの病院についての方向というものをかなり伺ったのでありますが、あれからいうと十三年ほど、随分時間がたって、それなりの努力政府の方はしているわけでありますが、四病院についてどういう状況になっておるかということをまず最初にお尋ねしたい。     〔主査退席、萩野主査代理着席〕
  86. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 福井県には四つの国立医療機関があるわけでございますが、まず、国立鯖江病院でございますが、現在百七十床で、内科、呼吸器科等をやっておりまして、一日平均の入院患者数が百十三人、外来患者数が二百七十四人という状況でございます。  そのほか、国立療養所敦賀病院と国立療養所福井病院がございまして、この二つにつきましては統合するということで今いろいろ検討しているわけでございますが、敦賀病院につきましては、百四十五人の入院患者さんがおります。そして、政策医療といたしまして、がん、脳血管疾患、呼吸器疾患などをやっておりまして、この入院患者さんとしましては、がんが三十一人、脳血管疾患が十三人、呼吸器疾患が十二人等となっております。  それから、国立療養所福井病院でございますが、入院患者数が二百十一人、主として重症心身障害の患者さんを中心に医療をしておりまして、百二十人の方が入院されているわけでございます。  もう一つ国立療養所がございまして、北潟病院でございますが、九年度の一日平均患者数が二百二十三人ということでございまして、主として結核、精神、重心、筋ジスなどについての患者さんを扱っているところでございます。
  87. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 ここで四つの病院のすべてに触れることは時間的に無理ですから、鯖江病院といわゆる三方病院と言われております福井病院、この二点の問題について考え方をお尋ねしたい。  鯖江病院は言うまでもないことですが、三方病院も前の陸軍病院の跡であって、それは各地の国立病院と同じような経緯をたどっておると思います。  鯖江病院の周辺は、福井県の福井を中心とするエリアと、中部地区、福井県の丹南地区と一応言われております武生、鯖江市を中心にした二十三万ほどの地区、それから嶺南という敦賀から南の方の十五万ぐらいの地区に分かれております。  そこで、鯖江を軸にして武生、鯖江の二市九町村、だから十一市町村で医療の対象人口は二十万余りというように言われておりますが、実は公立の病院がこの武生、鯖江周辺に一つもないということで、国立病院がそういう役割を果たしておったわけです。  それから、そういう状況の中で、救急病院についても、夜まで全部引き受けてやるという公的病院が、その二十万余りの地区にはないというのも事実なんですね。  そういう点で、この病院を、これはもう御承知のとおりですが、二市九町村、だから十一市町村で事務組合をつくって、だから地方公共団体にかかわり合いのある医療機関をつくって、そこで移譲する、こういう方向で動いておるのです。  ところが、その実態をずっと見ますと赤字なんですね、赤字病院。どこも赤字が多いと思うんですが、昭和六十一年、今から約十三年前ですが、私がここで質問したときにも、厚生省当局は、自治体に赤字を押しつけようとするようなものではないということを繰り返し答弁をしておるんですね。しかし、現状を見ると、赤字が明確に毎年ずっと出ておるんですね。  そこで、そういう鯖江の経営実態というものがどんな状況にあるか、少し説明していただきたい。
  88. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 国立鯖江病院の経営状況でございますが、平成九年度におきましては、経常収入が十五億八千四百万、経常支出が十七億三千八百万で、一億五千四百万の赤字となっております。収支率という計数で見ますと九一・一%となっております。  平成七年度、八年度におきましては、収支率が、七年度が九五・七%、八年度が九七・六%ということでございまして、七年度、八年度に比べますと九年度の収支率が悪化をしている、こういう状況でございます。ちなみに、七年度の赤字額が八千百万、八年度の経常収支の収支差額が四千三百万となっております。
  89. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 平成九年度において一億五千四百万の赤字が出ている。これはそれなりに努力はしているのですが、今の状況からすれば、毎年過大な赤字を出している。だから、これをそのまま自治体もしくは自治体に準ずる公的医療機関に移した場合に、こういう赤字が続けば、今地方自治体は財政的に大変な状況ですから、とてもやり切れるものではない。  そうすれば、赤字が生まれないようにいろいろな努力をしなければいかぬと思うんですが、厚生省として、赤字にならないためにはどうすべきかということについて、考えていらっしゃる、あるいはやっていらっしゃることをお尋ねしたい。
  90. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 九年度におきましてこの鯖江病院の収支差額が増加したことにつきましては、これは、主として患者数の減少に伴う病床利用率の低下によるものであると考えているところでございます。  今回、この経営移譲に当たりましては、経営移譲後の経営状態につきまして地元自治体と十分調整を行っていきたいと考えておりますが、厚生省といたしましても、国立病院等の再編成に伴う施設設備の整備費補助金等によりまして最大限の財政的な措置を講じていきたいと考えているところでございます。
  91. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 一般的にはそういうことで結構だと思うんですが、具体的に、私も、前にもそういうかかわり合いがあり、途中でもう一回ぐらい論議をしたような覚えがあるものですから、いろいろ関係がありましたので多少調べてみたんですが、厚生省資料はもう既に十分持っていらっしゃると思うんですが、要は、国立鯖江病院が民間や自治体的性格を持つ医療機関に移譲されたときに、問題は、移譲されたから患者が来てくれたりするわけじゃなくして、地域の医療のニーズというか、その必要にどういうようにこたえているかということがなければ、赤字を移譲したにすぎないことになるんですね。  したがって、この地方でどういうニーズがあるか。資料で御存じのとおりだと思いますが、検討委員会を設けて、つい最近答申を出しておるんですね。その中を読み、それから私も直接会っていろいろな状況を聞き、国会の方にも陳情にもいらっしゃるということで伺いますと、一つは、全体が古くなっているから病棟等々古いところをちゃんとして、それから、そういうニーズにこたえるような施設、機械、機器、そういうものを整備しなければ、医療機関というのは機器がどんどん新しくなるから、そういう方へどんどん患者さんが流れていくのは当然だろうと思うんですね。  そこで、そういう中で、この二十万の地域では特に眼科の病院やお医者さんが非常に弱い。だから、眼科を整備すればそういう希望にこたえることができる。それから、救急病院、これは一次、二次。だから、町村に一次医療の小さな病院とか、ある程度大きくても公的病院でないのが、一次が大小ある。そこで、今度移譲される病院は恐らく二次医療の性格を持つであろう。しかし、ちょっと離れてみましたら、福井には第三次医療、非常に高度な医療機器や施設を持ったものがあるわけですから、そこと競争したって無理なことなんです。そうなると、一次医療の病院の要請にこたえ、三次はそちらの方に大いに協力してもらうようにして、二次の要請にこたえようとすると、二次の救急病院の一番大きなものは何といっても交通事故ですから、脳神経外科が設置をされて、そういういざというときの要望にこたえる条件がなければ、患者は来るはずがないわけですね。  だから、重点的に見ると、診療の中身で眼科の設置、それから脳神経外科を設置して、そういう期待にこたえて救急病院としての役割を果たすことが非常に大事なんですが、そういうことは自治体から厚生当局にも相当要望していると思うんです。たくさんありますが、限られているから。その二点についてどういうように把握をし、どうしようとしているのかということを伺いたい。
  92. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 鯖江病院の経営移譲後の病院のあり方につきましては、今先生からお話がございましたように、地元におきまして特別検討委員会というものを設けまして、そこから中間答申として出されました内容については、私ども十分承知しているわけでございます。  経営移譲後のこの病院の経営につきましては、やはりこの地域の医療のニーズに沿って、どういう具体的な役割が期待されているかということが一番基本になろうかと思います。  そういたしますと、今御指摘ございましたように、特に丹南地区の二次救急医療としての医療機関としての機能の充実、眼科の充実、それから僻地医療の支援、こういう特徴を持った医療機関として経営移譲後は体制を整備していくということは基本的に必要なことだと思っておりまして、私どもも、経営移譲に当たりましては、この中間答申、また、今後予定されております最終答申の線に沿って地元と協議をしていきたいと考えておるところでございます。
  93. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 私は時間の点からちょっと割愛しておりましたが、僻地医療の支援も非常に大事なのです。各地に海岸線も山の方も持っていますから、そういうところには診療所とか、そういうものがぽつぽつと海岸線に皆一つずつぐらいあるわけですね。だから、そういう僻地医療に対する支援も今後この鯖江の中核的病院に求められている点であるということは、そのとおり、当然だと思うんです。  そこで、移譲後にその努力をするといっても、このままでいけば赤字を引き継ぐことになるんですよ。だから、自治体の方は、今一緒にやろうという事務組合を構成する市町村は、移譲前に、十年、十一年にぜひそういうものについてのめどをつけてほしい、そうでないと、いや、それは移譲後に拡充されるでしょうといってやって、時間が長い間かかれば毎年赤字が続く、それはとてもどうもならぬ、こう言っておるんですね。だから、今のいわゆる僻地を含む三点について、ことし、来年度、この移譲は十二年の二月一日を予定しておるんですね、そうすると、一年ほどなんですが、その間に具体的にどれぐらいのことができるのか、どう考えておりますか。
  94. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 経営移譲に当たりましての条件整備につきましては、事前に施設設備に対する厚生省からの予算措置と、もう一つは、経営移譲後におきましても、国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律に基づきます、譲渡を受けた譲渡先に対します施設整備に係る補助制度があるわけでございまして、これらの制度を最大限活用いたしまして、地元お話し合いをしていきたいと考えております。現時点におきましては、私ども、地元からのお話を聞いている限りなかなか難しい問題もあるのは承知しておりまして、今後、精力的に地元お話をさせていただきたいと考えているところでございます。  また、救急でございますとか僻地につきましては、譲渡後におきましても、厚生省としての救急医療に対する制度なり僻地医療に対する制度がございますので、それらについても当然検討の対象になるものと考えているところでございます。
  95. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 きのう私は、レクチャーで担当に少し詳しく話を聞いたのですが、現地は、施設で十八億、機器で十二億、大まかに三十億の整備をしてほしい、こう言っておるんですね。ところが、聞いてみると、二億と一億で三億ぐらいが一般の相場であると。これは余りにも開きが大きいわけですね。だから、最大限厚生省がやって、どう出てくるのか、それができないときには、一体かわる方法はないのか、これは局長ではなしに大臣からその所信を聞かせてください。
  96. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 経営移譲する場合に、整備をしてお渡しするということは基本的な考え方だと思います。ただ、現実かなりな数の病院をそういった形で経営移譲をしたりいたしますので、今、この鯖江の病院は全体として三十億ということでございますが、全国に病院がたくさんございますので、いろいろ財政的な問題もございまして、今の基準でいきますと、その要望には到底到達しないなという感じがいたします。  これは、今先生のおっしゃるように、余り長い時間かけたんじゃ赤字ばかり続いてどうにもならぬぞということですから、できる限りの努力はさせていただきますが、基準値というのがあるようでございまして、一応それを基準にして病院の実態に応じて整備をさせていただくということを現在申し上げるしかない、このように思いますが、移譲をする以上、最大限努力はしなければならぬ、そういう感じは持っております。
  97. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 十三年前に私がこの委員会で確認したことは、繰り返し厚生省は自治体に移譲しても赤字を押しつける考えはないということを明言しておるんですね。だけれども、このまま今言った普通並みの三億をやっても、脳神経外科そのものが整備される保証はない。  この中でも、予算的になかなか容易でないので検討項目にしておるんです。片方では、救急病院の中核に据えようという考え方で、それをやろうというんですね。言うなら事故が起きたときに一番必要な脳神経外科が整備されていなければ、そんなものは絵にかいたもちで、名前だけになる。だから、こういうところに力を入れなくちゃいかないんですね。  だから、赤字を押しつけないという十数年前の明言を自治体は信用して、そして、大変だけれども、随分な経営の後を受けるということになったんですから、そういう約束は果たしてもらわないと、実際は赤字を押しつけることになりかねないと思うんですね。  したがって、私は、厚生省でまず最大限努力してもらうというのは今大臣の答弁で確認しますが、同時に、自治省あたりが地方交付税等によってこういう面の補完というか支援をするという道もいろいろと残されていると思うので、自治省からもそれについての意見を聞きたい。
  98. 株丹達也

    株丹説明員 御答弁申し上げます。  自治体病院の経営につきましては、独立採算制が原則でございますけれども、僻地医療あるいは救急医療、高度医療など、経営に伴う収入をもって充てることが困難な経費、つまり採算性を得ることが困難な経費などにつきましては一般会計負担をすることとしまして、その一般会計負担をする経費につきまして地方交付税措置を行っておるところでございます。  国立鯖江病院の移譲につきましては、現在、地元関係自治体におきまして鋭意検討中と伺っております。地元市町村が経営をすることとなりました場合につきましては、ただいま申し上げました他の自治体病院と同様の財政措置対象となるというものでございます。
  99. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 直接自治体がやるのではないが、厚生省も十何年前の方針の中に、自治体に準ずる、あるいはそれのかかわりのある公的医療機関が引き受ける場合、こう二つ並べておるのですね。だから、直接自治体は引き受けなくても、同じ性格のものであると私は思うのですね。  だから、もう一点、三方病院を五分ほど聞きたいので、事務当局の責任者として局長の方から決意を、今の自治省の方はその上に立ってぜひ地元とも協議をして最大限の努力をしてもらいたい、それについて簡潔に一言ずつ伺いたい。
  100. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 現時点におきましては、具体的な要望額につきまして、なかなか事務的には難しい問題がありますが、誠意を持って最後まで地元お話をさせていただきたいと思っております。
  101. 株丹達也

    株丹説明員 地域における医療の確保は大変重要なことでございますので、地元関係する方々が十分に協議をされまして適切な方途をとられますように期待をしております。
  102. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 もう時間なのでそれ以上言いませんが、大臣、二人が言われたことをひとつ頭によく入れて、具体的にやってもらわなきゃいけない、お願いします。  そこで最後に一つ、福井にはもう一つ敦賀と三方の統合問題があるのですが、三方の病院の問題について一言だけ触れたいと思います。  三方病院は敦賀の南の方になるのですが。三方郡の中に美浜町と三方町の二つがあるのですが、私どもの福井県は、若狭地方、嶺南地方というのは有力な原子力の所在地ですね。私は、これには随分長い間頭を突っ込んでおるのですが、ロシアのチェルノブイリもアメリカのスリーマイルも、ほとんどのところを一遍見てきましたが、ここは十五基、約千二百万キロワット、これぐらい集中している地域というのは世界のどこにもない。しかも、関西の電力の半分はこの若狭湾から原子力発電によって送っているという実態があるわけですね。大阪と京都の電力は全部ここから送っているわけなんですが、その中の一つとして、美浜町には一号、二号、三号、百六十六万キロワット、約百七十万キロワットの発電基地があるのですね。有力な福井県の原子力発電基地の一翼をここは担っておるということ。  ところが、両町には診療所以外に整備された病院というようなものが残念ながらないのが実態なんですね。そういう意味では、今の三方病院がその地域の中核的な役割を実際は果たしてきた経緯があります。  そこで、原子力の防災というような点からいうと、これはあってはならぬし抑えなければいかぬのですが、万が一のときのベッドの確保。これも、嶺南地区には四百六十で、ベッドが足りないと言われる中で、これが統廃合等で縮小されれば、その機能が非常に縮小してしまうということ。  それから、今高速道が大阪—舞鶴までついて、舞鶴から敦賀まで海岸を通って全線の整備命令が建設大臣から出されているという段階になっている。いずれこの高速道が整備をされる。そうなりますと、高速道における救急体制ということをとらなくてはならない。  これらの四点とあわせて、地元、この地方では三方町、それから議会を挙げて、三方の病院を統廃合の中から存続してほしいという要望が随分強く来ておるんですね。受けておられると思うんですが、なかなかこれは容易なことではないんですが、こういう状況の中でどう考えるかということが一点。厚生省の方から。  それからもう一つは、同様の問題の上に立って、一番縁が深い科技、通産省、できれば代表して科技庁の方から、これに対する支援の道、努力、地方の振興策として、こういう病院の存続支援をどう考えるか。この二点をそれぞれ伺いたい。
  103. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 敦賀、福井の統合につきましては、現在、地元と調整中でございまして、鋭意話し合いをしているところでございますが、私どもといたしましては、国立病院の再編成の基本方針に沿いましてこの統合を進めていきたいと考えております。  三方町からの要望に対しては私ども承知しているところでございますが、この二病院を統合いたしまして、さらにこの機能を充実していきたい。  それで、現実的にはこの福井病院と敦賀の病院は地理的に十五キロでございまして、近年のいろいろ交通網の整備などを考えれば何とか御理解をいただけないものかというふうに考えておりまして、今後とも引き続き地元関係自治体、特に三方町と協議を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  104. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  科学技術庁といたしましては、先生御案内のとおり、原子力の開発利用というものを進める上で、地元住民の方々を初めとする国民の皆様方の幅広い御理解と協力というものが必要不可欠というふうな観点に立ちまして、電源三法等を活用いたしまして地域の振興策といったところに努力をしてきておるところでございます。  そういう中におきまして、今御指摘のありました点に関してでございますけれども、私どもといたしましては、立地地域としまして敦賀市、美浜町などを含めましての嶺南地域全体におきまして適切な医療サービスというものが提供されるということの重要性というものは十分認識しているところでございまして、地元の自治体でございますとか、国立病院を所管されてございます厚生省とも十分に連絡をとらせていただきながら、先ほど申し上げましたような電源三法の枠組みというものを本当に使えるのかどうなのかといったことを含めまして勉強させていただきたい、かように考えてございます。
  105. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 時間が来たんですが、もう一点だけちょっと伺っておきたいんですが、同じく三方町と三方町の議会から、救急病院としての指定をしてほしい、こう言っておるんですが、これは今の段階の中で可能なのかどうか。
  106. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 統合後におきましては広域を対象とした高度専門医療を担うという基本的な考え方に基づきまして、現在、国立療養所福井病院が受け入れている救急患者につきましても、この統合後の新病院において、その病院の機能として検討していきたいと考えておるところでございます。     〔萩野主査代理退席、主査着席〕
  107. 辻一彦

    ○辻(一)分科員 時間が来ているので終わりますが、大臣は大蔵省にいらっしゃったのでこの実態はいろいろな立場から十分御承知であると思うんですが、赤字を抱えて本当に手を上げている自治体にとって、また新しい赤字を一年に何億か持つとしたら大変なことになるので、何とかして次善の整備をやって、そしてせっかくやるんなら、経営をぎりぎり努力をしてやっていけるようにしたいという、この声をよく踏まえて、これからの厚生行政、国立病院のあり方に生かしていただくように強く望んで終わりたいと思います。  終わります。どうもありがとうございました。
  108. 臼井日出男

    臼井主査 これにて辻一彦君の質疑は終了いたしました。  次に、辻第一君。
  109. 辻第一

    ○辻(第)分科員 私は、国民健康保険の問題で質問いたします。  国民健康保険法第一条は「社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」と明記しております。また、国保法第四条の「国及び都道府県の義務」では、「国は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるようにつとめなければならない。」としております。これに照らせば、国は国保加入者すべての医療を受ける権利を保障すべきであります。国民健康保険は、創立の趣旨からしても、第一義的には国に責任があることは言うまでもありません。  さて、国民健康保険の実態でありますけれども、いろいろ問題がございます。  国保の加入者というのは、いわゆる健康保険でありますとか共済組合に入っておられない中小商工業者や農家、そして高齢者などが中心でございます。しかも、今深刻な不況、殊に一昨年の消費税の増税、医療費の負担増などの中で本当に厳しい厳しい生活をしておられるわけであります。そういう中で、国保料は年々上がっておる。本当に、どこへ行っても、何とか国民健康保険料を下げてくれないか、高いんだという声もたくさん聞きます。大臣も聞いておられると思います。それから、所得の低い人ほど負担率が高いんです、後でもう少し申し上げますが。また、滞納者がふえてきております。  そういう中で、短期保険証だとかあるいは資格証明書だとかいろいろやっておられるようでありますけれども、保険が使えないような状況になって医者にかかるのがおくれる、そういうことで手おくれになる、中には命まで失われる、こういう例を私の関係している医療機関からも聞くわけであります。そういういろいろな問題が今山積みをしているのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そういう中で、国保料は、一人当たりの保険料を見ましても毎年増加しています。この結果、九六年度で、年所得百五十万から二百万という低い所得の方で平均の保険料は十六万一千円、負担率が九・三%、また、百万以下の世帯になると一〇%から二〇%、このような過酷な負担になる、こういうデータがございます。  私どもは奈良市でちょっと調べてきたわけでありますけれども、奈良市では最高が四十九万だそうでございます。最高の方は、これは自営業者の場合で、土地建物を自分で持っていらっしゃる、四人家族、こういう世帯でございますけれども、年収四百二十一万になりますと、最高の四十九万ということになるんですね。四百二十一万の年収といいますと月に三十五万八百円で、約四万を超える負担です。三百万の人はどうかと見てまいりますと、自営業者で、その他は同じ条件です、保険料が三十八万、月に三万一千六百円を払わなくちゃならないんです。年に三百万といいますと、月に直しますと二十五万です。月に二万円払わなくてはならない人を見てまいりますと、年収百四十三万です。月に平均十一万九千円の収入の人が月二万円払わなければいかぬということです。  これは本当に大変なことで、もう負担能力の限界を超えているとか国民の負担は限界に来ている、こういうふうに自治体の担当者あるいは首長もおっしゃっている。もちろん、国民の皆さん方からは高い高い、何とかしてほしい、こういうお声があります。また一方で、こういうことだけ言っていると悪いんですが、国民健康保険のおかげで病気したときは助かった、ありがたかった、こういうお声もたくさんあるわけでありますけれども、現状は、高い、何とかしてくれというお声は満ち満ちておると言っても私は言い過ぎでないと思うわけであります。  こういうふうに、負担能力の限界を超えている、このような声に対して大臣はどのように御認識をいただいているのか、お答えをいただきたいと思います。
  110. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 先生今お挙げになりました保険料の問題でございます。  昨今の大変厳しい経済状況のもとで、被保険者の方々の保険料に対する負担感は決して軽いものでないということは、私どももそのように認識しておりますし、国民健康保険制度が宿命的にと申しますか、構造的に産業構造の変化等を受けやすい、基盤が脆弱になりやすいという体質があることも、私どもそのとおりと考えております。  そうした中で、国保制度の健全な運営が非常に大事であるということから、老人保健制度を初めといたしまして、いろいろな施策をやることによって、国保制度自体の経営基盤の安定にも資する施策をしてまいりました。  そうした中でも、国保制度を健全に運営していくために、そして良質な医療を確保するためにも、適切な水準の保険料を御負担いただくということはどうしても必要になってくる施策ではなろうかなというふうに思います。  奈良県の例をお挙げいただきました。ちょっと奈良県の例を直接的には私承知いたしておりませんが、今の年収とおっしゃっていただきましたものが生の収入であるのか、先ほど全国ベースでおっしゃっていただきましたのも所得ということで、通常は基礎控除等の控除を引いた後、年金収入でございますと年金控除等を引いた後のものでございますが、生の収入そのものではあるいはないのかなというふうには思います。  そのようなことで、いずれにしても、保険制度は入りと出ということでございますから、だんだん高齢化等に伴って医療費がふえてくるということになりますと、それを支えていくためには、そういった意味での財源というものがどうしても必要になってくる。そのために必要な保険料というものをどうしても負担をしていただかなければならないという点は、御理解を賜りたいというふうに思います。
  111. 辻第一

    ○辻(第)分科員 大臣も、これはもう限度を超えておるということは、そういう部分があるということはよく御存じだと思うのです。もう時間がありませんので前へ行きますけれども、これは深刻なことです。それは、零細な業者も大変な状態の中で、四人家族で、家や土地があるとしても月に十一万九千円の収入があれば二万円の保険料を払うというのは、現実僕は払えぬと思うんですね。四人家族ですよ。ですから、そこのところは十分御認識いただきたいと思います。  そういう中で、収納率が近年どんどん低下していますね。滞納者が、九二年度では全国で二百三十六万世帯から、九七年度が三百三万世帯と増加しています。全世帯の六分の一。  この深刻な事態の原因の一つは、国の国庫負担の削減によって、その負担が地方自治体と住民に押しつけられているということもあろうかと思います。保険料のアップが滞納者の増加をもたらしている一つの要因だと厚生省自身も認めておられる。これは、九七年十一月十三日の参議院の厚生委員会で、我が党の西山議員の質問に対する保険局長の答弁でございます。このままでは、介護保険が導入をされ、その保険料も徴収されるということになりますと、さらに滞納者がふえるということが予想されます。  そこで、国庫負担の割合でありますが、八四年に被保険者の一部負担を除いた医療費の五〇%に切り下げられ、この結果、総医療費の三八・五%となり六%の削減、九五年度には調整交付金の減額で三六・四%になる、このように落ち込んでいるわけですね。  私は、国民の負担を軽減させる、増大をさせないということ、そして国保財政を維持、存続させる上でも、国保の補助率を総医療費の四五%に戻していただきたい、このように考えるんですが、いかがですか。
  112. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 国保制度における国庫補助でございますけれども、本来、保険制度でございますから基本的には保険料と保険給付という形で、保険料をもってその主財源にするべきところでございますけれども、国保制度については財政基盤が弱いということから、給付費の五〇%という形での国庫負担を今行っているわけでございます。  それで、今先生お挙げになりました、昭和五十九年の改正における国庫負担の扱いの違いをあれしてもとに戻すべきだという御議論をいただきましたけれども、五十九年の改正は、国民健康保険制度は保険制度である以上、国庫補助に余り偏重した姿というのは社会保険の姿から見ると本来ではない。一方において、老人保健制度あるいは退職者医療制度が創設をされるということで、老人だとか中高年齢層という、いわゆる国保における医療費負担を非常に過重にしておった部分が一つの制度的な対応がされましたので、それを契機に国庫補助のあり方を見直すということで、先ほど申し上げましたように、国庫補助という側面だけではなくて、国保基盤を安定させるためにも大きな原因になります老人保健制度などの新たな手当てをしたことの見合いでやりましたものですから、そういうことを考えますと、やはり保険制度である以上、これ以上国庫負担の引き上げをするというのは保険制度としての特質からいかがなものかなというふうに考えておるところでございます。
  113. 辻第一

    ○辻(第)分科員 やはり国庫負担増額すべきだと重ねて求めておきます。  次に、徴収率による普通調整交付金の問題でございます。  こんなに住民が困っている中で、厚生省保険料徴収率によって普通調整交付金が段階的に減額できるようにしていますね。九七年度で減額されている自治体は全国で五百六十七自治体、減額額が約百五十四億。近年、減額されている自治体数、減額額は増加しています。これは、平成五年で三百五十一自治体が、平成九年で五百六十七自治体になっていますね。減額額が、百七億から九年は百五十四億にふえておる、こういうことです。奈良市では、九七年度の徴収率は八九・一五%で、普通調整交付金が一〇%、六千万円カットされています。  市町村としても、被保険者負担の公正公平の確保と、保険事業の健全な運営のために収納率向上に努力をされております。先ほど述べましたような状況の中で、第一線の市町村の担当者というのは本当に御苦労いただいています。並々ならぬ御苦労をいただいているんですが、そうスムーズに収納率が上がるということではないんですね。努力されているけれども、これは一種のペナルティーというのですか、減額されているというのが現状なんです。  こういう状況の中で、努力してもすぐ収納率の好転に結びつかない部分がある。それから、こういう方法が収納率の向上にはつながらないという面がある。それで、この交付金の減額が結局保険料の引き上げにもつながり、そのためにまた高くなって収納率が下がって、またそのために減額を受ける、こういう悪循環も考えられるのですね。多くの自治体から、徴収率による交付金の減額については撤廃を求める要望が上がっています。大臣、御存じですか。僕のいただいたのは、近畿都市国民健康保険者協議会、会長さんは姫路の市長さんですが、平成十年七月に国民健康保険に関する要望書というのが出ていますね。そういう中に、徴収率による交付金の減額については撤廃をしていただきたい、こういうふうに要望が出ているのですが、大臣、いかがですか。
  114. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 交付金の交付をその徴収率が下がった場合にさらに減額していくという方式は、いわばペナルティーを科して徴収率を上げようという意図に出たものだと思います。しかし、考えようによっては、徴収率が下がっておるのに、追い打ちをかけて財源をカットしていけばさらに下がるという今御指摘のような側面も、これは否定できないかもしれません。  しかし、制度の建前として、調整交付金というものが自治体の努力を前提としている以上、そういうマイナス面があることも承知をしながらも、やはり督励をしていただいて、そして徴収率を何とか上げていただくということが本旨でございますので、そうした努力を期待したいものだと思います。     〔主査退席、萩野主査代理着席〕
  115. 辻第一

    ○辻(第)分科員 ぜひこれは私は撤廃していただきたい。これは全国の地方自治体が御要望を出されているのじゃないかと私は思うのですよ。  それから、同じような問題ですが、今度は特別調整交付金で、国と都道府県が市町村に対して、前年度に対する徴収率の増減や徴収率アップに対する取り組みなどで自治体の経営姿勢をカウントして評価、採点を行い、市町村をランクづけして交付額に差をつけている。これは先ほどと同じようなことで、こうしたランクづけによって交付金に差をつけるということも私はやめていただきたいと思うのですが、厚生省、いかがですか。
  116. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 先生お話しの普通調整交付金、特別調整交付金による保険料の収納努力の評価ということですが、これは、もちろん誤解はないと思いますけれども、調整交付金そのものを全体を減らすということではありません、配り方の問題としてその減額した分はまたほかの調整交付金として配られるわけですから。そういった中で、保険料の収納に努力をされたところとそうでないところとでは、やはり保険料でやっている以上、そういった調整交付金の配り方の公平という側面からも、そこはとんちゃくしなければだれも努力をするかいがないということにもなりますし、保険料収納努力による特別調整交付金の方の格差も、経営努力が必要不可欠だとするならば、特別調整交付金の算定に当たりまして、保険料の収納努力を含む各市町村の経営努力というものを評価するということは、ある意味からいえば大事なことではなかろうかな、こんなふうに考えております。
  117. 辻第一

    ○辻(第)分科員 私は、そういうやり方は好ましくない、やめていただきたい、重ねて要望しておきます。  次に、国保財政が厳しい状況の中でも、国保会計が黒字の自治体がございますね。言うたら、市町村は支出の見込みを立てて保険料を決定する、ところが大幅な黒字になるということですね。これは、見込み違いで保険料を上げ過ぎたか取り過ぎたというのか多過ぎたということですね、逆に言いますと。だから、この見込み違いを是正するために保険料を引き下げ、住民の負担減を行う、また、それが徴収率の向上にもつながろう、こういうことで、住民の生活や健康に責任を持つ自治体として、これは自然の考え方、当然の立場ではないかと思うのです。こうした黒字分は住民に還元すべきではないか、このことが一点ですね。  そして、厚生省予算編成に当たっての通知で、年間の保険給付費の五%以上を積み立てるように通知していますね。災害や流行疾患などの緊急事態に対応するためというのが名目のようでございます。自治体によっては黒字分の累積で基金がふえる、そして国保料を下げてほしいという住民の期待にこたえて、その基金の一定部分を国保加入者に還元をする、住民の負担軽減を図っていく、そういうことに保険料の引き下げを行いたいとする自治体もあります。  ところが、厚生省は、基金をちゃんと五%確保しているような自治体の保険料の引き下げに対しても、都道府県を通じて安易な引き下げを行わないように指導をしておられる、こういうふうに聞いておるわけです。これもやはり適切な指導とは言えないのじゃないか、行き過ぎではないか、私はこういうふうに思うのですが、御答弁をいただきたい。済みませんけれども、時間がないので簡明に願います。     〔萩野主査代理退席、主査着席〕
  118. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 御指摘の点ですけれども、この基金は、国保財政の安定運営を確保するという立場から、単年度単年度だけがつながっておればいいということではなくて、やはり予期せぬ医療費の増加等が当然ございますから、ある程度中立的な保険制度の安定ということを考えなければなりません。そういう観点から積み立てをしていただいているわけでございます。  それで、短期的な視点だけから保険料の引き下げの財源に基金を充てるということになりますと、保険制度の安定という面から、しかも、最近は医療費の増加傾向がどうしても続いておりますから、そういったことが安易に行われるということは、自分の首を絞めるといいますか、国保財政を後ほどまたさらに苦しくするということになりますので、そこは慎重にやっていかなければならないという一般的な通知を出しておるわけでありまして、そういった指導は必要ではなかろうかなというふうに思います。
  119. 辻第一

    ○辻(第)分科員 地方自治体はその地域の住民に責任を持っていろいろ行政を行い、この国保もやっておられるわけですから、そこの実態はよく御存じで、十分論議も尽くし、実態も十分知ってやろうとされる場合に——案外厚生省の言うことに敏感な地方自治体も僕はあると思うんですよ。どないしよう、やりたいんやけど、やはりこれがあるしやめとこうか、後でにらまれたらかなわぬ、こういうことを言うのはちょっとぐあいが悪いけれども、そういう感じがあるんですね。ですから、これは僕はやめてほしいと思うのです。  それで、これは大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、先ほどの問題と関係があるのですが、国保の保険者である自治体が保険料を決定するのが基本ではないか、このように私は考えておるのです。それで、九四年三月二十九日に参議院の地方行政委員会で我が党の有働議員が佐藤自治大臣に御質問をした中で、厚生大臣ではありませんけれども、いろいろあるのですが、「確かに基本的には自治体にあるわけでございます」、こういう御答弁がありました。私は、国保の保険者である自治体が保険料を決定するのが基本だと思うのですが、いかがですか。
  120. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 国民健康保険の保険料につきましては、保険者たる市町村が国民健康保険法に基づく基準に従って算定を行って賦課しておるというのが建前でございまして、その場合、保険料賦課に関する事項は政令で基準を定めておりまして、その基準に従って条例で決定することになっております。  国としては、国民健康保険事業の健全な運営を確保する観点から、今申しました保険料の算定に関する基準を設定いたすとともに、保険者におきまして保険料賦課が適正に行われるように指導し、期待をしているところでございまして、おのずから政令の基準の範囲内でやっていただけるものというように期待をしておるところでございます。
  121. 辻第一

    ○辻(第)分科員 その問題に関連をするのですが、保険料を引き下げてくれという声、そしていろいろ検討して、今のところ余裕があるという状況でしょうか、そういうことになりますと、自治体は引き下げたいということになりますね。ところが、引き下げれば、それを理由として自治体に対して調整交付金の減額を行う、こういうことはありませんね。
  122. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 今大臣が御答弁申し上げましたように、国民健康保険の保険料水準の決定は、国保法に従います基準に従って各保険者の判断でお決めになるものでございます。したがって、それによって保険財政の健全な運営が確保されるということであるならば、そこは調整交付金の減額影響を及ぼすものではない。  要は、保険財政の健全な運営が確保されるような運営が行われているかということだと思いますので、引き下げそのものがイコールではないと思います。
  123. 辻第一

    ○辻(第)分科員 時間がありませんので、次に行きます。  福祉医療の現物給付に対する問題でございます。  県や市町村が行う福祉医療費助成事業は、お年寄りや障害者、母子家庭、あるいは子供さんたちに対する医療費助成として多くの自治体で実施をされ、関係者から非常に喜ばれています。受診者が医療費の自己負担分を市町村に請求するのではなく、医療機関が直接市町村に請求をする。要するに、病院の窓口で払わなくてよい現物給付に対して、医療費が波及して増加するとして、この波及分の調整を名目に国が現物給付額の多少に応じて減額調整率を掛けて国庫負担減額を行っています。  これは、受診者に申請手続を課し、償還払いにすることで受診抑制を意図したものであるということだと思うのですが、せっかく喜ばれているこのような自治体の現物給付施策を国庫負担対象にしないというペナルティーをかけるのは、私はやはり理解できないですね。この部分を国庫負担としないことで、奈良県では四億円の県の単独負担の増加になっているということです。全国で波及増分の調整を受けている自治体が二千三百七十自治体。多いですね。その調整を受けた医療費は九百九十八億ということであります。  ですから、私はこの現物給付の施策を国庫負担対象にしていただきたいと強く要望するのでありますが、簡明にお答えいただきたい。
  124. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 この点につきましては、地方単独事業で一部負担金の割合が法定割合よりも軽減されるという場合には、先生指摘のとおり、それによって波及増といいますか、医療費そのものが膨れます、どうしても一部負担金が少なければ。そういった状態でなおやりました場合に、公平という観点から国庫負担金を配分しますときに、法定割合どおりやられた側と法定割合を減らされた側で、減らされた側はその分だけ医療費が多いのに、それをそのままにされたら、法定割合どおりやられたところに比べて不公平という問題が生じます。  したがいまして、こういった地方単独事業を行っておられる市町村については、その波及増加分につきましては国庫負担金の対象外ということで、いわば国庫負担金の配分の公平を図っている措置だというふうにお考えおきをいただきたいと思います。
  125. 辻第一

    ○辻(第)分科員 最後に、国は市町村が応益割りを強化するように誘導するために、軽減措置の割合を応益の割合によって差をつけ、比率が五〇対五〇に近い保険者の軽減措置の割合を優遇している。応能、応益の割合については市町村が自主的に決めるものであると思います。国が誘導するものではないと私は思うのです。応益率によって軽減措置の割合の差をつけるのではなく、平等にして拡充すべきだ、このように考えるのですが、御答弁を求めます。
  126. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 国保の保険料につきましては、いわゆる応能保険料と受益に応じた応益保険料とのバランスのとれた保険料であることは大変大事だということで、従来から法令上も標準の比率五〇対五〇という形を規定しております。  実態は、先生お話しのように、応能保険料の割合はどうしても高くなっておりますけれども、そういったことの結果、中間所得層の保険料負担が過重になるわけであります。  こうしたことを踏まえまして、平成七年の制度改正におきまして、低所得者の保険料負担には配慮しながら、中間所得層の保険料負担を軽減するという観点から、応益割合が制度上の原則でございます五〇%に近い保険者を中心に、低所得者に対する保険料軽減制度を拡充するという方向をとったものでございます。やはりこれも保険料負担の公平という意味から必要なことではなかろうかなというふうに考えております。
  127. 辻第一

    ○辻(第)分科員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  128. 臼井日出男

    臼井主査 これにて辻第一君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  129. 臼井日出男

    臼井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。末松義規君。
  130. 末松義規

    末松分科員 民主党の末松義規でございます。  きょうは、ピルの解禁問題について、厚生大臣を中心にお伺いをしたいと思います。  私は、これからの日本の二十一世紀の市民社会を考えてみますと、やはり自立と共生という概念が非常に重要だろうと思うんですね。特に自立というのは、自分の人生に対して自分で責任を持って、自分で判断して決めていく。逆に社会の方は、その自立する方が社会に害を及ぼさないという前提ではございますが、その中で社会がそういう自己決定されたことについてサポートを与えていくというシステムが、この日本社会に極めて重要であろうと考えているわけです。  もちろん、自立する、あるいは自分で判断して自分の人生に責任を持つためにはさまざまな情報が必要です。その情報をいろいろと集めながら、そして自分の人生は自分で決めていきましょうということが極めて重要になってくるわけですが、ピルの問題で、私も避妊ということをいろいろと考えてきたわけです。女性が人生を送られる中で、例えば自分がどういうときに妊娠をして、そしてどういうときに子供が欲しいかというようなことをあらかじめ自分で判断して決めていくということが、先ほどの自立という観点から極めて重要なんだろうと思います。  今、避妊について日本状況などを見ますと、三分の一が自分で望んだ妊娠をするということでありますし、そして出産する。そして、三分の一が、自分は望まなかった妊娠、そして、できちゃった出産といいますか、そういうふうな状況になっているし、これは残念なことなんですが、残り三分の一が人工中絶をやっているという状況であります。そうしますと、女性の方々の大体三分の二が望まなかった妊娠をし、そしてその後、やっておられるということで、そういった意味では、自立という観点から極めて不本意なところであろうと思います。  その意味で、避妊というものが世界各国でいろいろとやられているわけですけれども、ピルについても、日本と北朝鮮を除いてはほとんどの国が認可をして、実際に自分の避妊ということについて役立てているということでございます。特に避妊については、カイロでの国連の国際人口開発会議で、リプロダクティブヘルス・アンド・ライツということで、避妊は女性の権利であるというふうに認められているわけですが、私が昨年九月にこのピル問題について質問主意書を出したときに、中用量のピルの使用については避妊というものは全然認めていないんだという話がございました。  そういうことを考えてみますと、避妊の器具というものについてはコンドームを初めいろいろと販売をされておられるでしょうけれども、避妊のための医薬品とか、そういう医療関係は全く認められていないんじゃないかということから考えますと、避妊ということについて厚生大臣は大体どういうふうにお考えなのか、そこら辺をまずお聞きしてみたいと思います。
  131. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 避妊の問題でございますけれども、夫婦間の年齢でありますとかお持ちの子供の数とか、あるいは家庭経済状況等を考えて、よりよい状況のもとで子供を産むためにも、また、今御指摘のような望まない妊娠を未然に防ぎ、人工妊娠中絶を防止するためにも、重要なものであると認識しております。  このために、市町村の保健婦やあるいは受胎調節実地指導員等によりまして、避妊に関する知識の普及など家族計画に関する指導を推進しておるところでございます。特に、十代の望まない妊娠を防止するということは大変重要なことでございまして、思春期の男女を対象といたしまして、性や避妊に関する知識の普及や相談事業等を実施しております。健全母性育成事業でありますとか、あるいは思春期のクリニック事業などもやらせていただいております。  さらに、昨年から、生涯を通じた女性の健康施策に関する研究会というのを開催いたしまして、この問題を含む女性の健康支援について総合的に検討を行っておるところでございまして、これらの検討を踏まえまして、避妊などの家族計画の普及に努力をしていきたい。ピルの問題も、そういった一つの角度からの問題提起だろうと思っております。
  132. 末松義規

    末松分科員 そうすると、これは大臣にお伺いした方がいいのかどうかわかりませんけれども、先ほど申し上げた医薬品の分野で、避妊という観点からの医薬品が全くない、これについてはどうなんですか。ピルの問題でいろいろな事情があったということはあるかもしれませんが、いろいろな医薬品が出て世界じゅうに出回っているんですが、日本では全くないということについては、今いろいろな活動をされておられるという話がございましたけれども、それはちょっと片手落ちじゃないんでしょうか。
  133. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今、中央薬事審議会におきまして鋭意審議中でございまして、私も、ピルの問題は女性議員等からも提起をされておりますので、その進行状況についてチェックをいたしましたが、決してサボっているわけじゃなくて、いろいろの問題がございますので、それらを一つ一つクリアするということで、衛生審議会の意見も聞きながら検討しているというようにお伺いしております。
  134. 末松義規

    末松分科員 そうしますと、一つ一つチェックしておられるということは、ある意味じゃ、医薬品についても厚生省として真剣に取り組んでいるんだということですね。
  135. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ピルの避妊の有用性については、国際的にも御指摘のような事情があると思います。しかし、HIVの問題でありますとか、あるいはがんに対する影響度の問題があるのではないかとか、情報提供はどうするかとか、いろいろな問題が指摘されておりまして、来月三月に、それらの問題について検討の結果、発表できるものは発表したいということで進めつつあるというように認識をしております。
  136. 末松義規

    末松分科員 この前のハーグの会合でも、堂本暁子議員あるいは小宮山洋子議員、そういうさまざまな女性議員の御活動が、これは以前からもあって、その辺は大きくピルの問題についても貢献をされてきたことは、私も重々承知しておるわけです。  ピルの問題については、昨年十二月に情報公開が行われたということで、私も資料を見させていただきました。中央薬事審議会の常任部会から、有効性それから安全性、幅広い角度からある一定部分での情報公開を行ったわけです。これは非常に評価されたわけですね。これはある意味じゃ情報公開としては初めてのケースなのかもしれませんが、今後とも情報公開をどういうふうに促進していくおつもりなのか、あるいは情報公開について今後とも促進していくつもりかどうかをまずお聞きします。
  137. 中西明典

    ○中西政府委員 ピルにつきましては、先ほど大臣からお話し申し上げましたとおり、現在、中央薬事審議会常任部会で審議がなされておりまして、一つ一つ、きちっと論点の詰まったものについては公開していくことといたしております。  それから、先生おっしゃいました医薬品一般の件でございますが、中央薬事審議会の議事録につきましては、個人の秘密あるいは企業の知的財産権が開示されることによって特定の者に不当な利益や不利益をもたらすようなおそれがある箇所を除いた上で公開する方針といたしております。それから、医薬品の承認審査に係る資料につきましても、調査審議結果を取りまとめた調査報告書あるいは審議経過等の関係資料を承認後に公表していく方針といたしております。  それからさらに、副作用情報等を初めといたします医薬品の安全性に関する情報につきましては、既に承認されている医薬品、これは市販後いろいろな問題が起こってくる可能性がございますし、それから、医療機関なりあるいはメーカーから副作用報告という格好で私どもの方に報告がございます。そういった情報を取りまとめて、医療関係者、さらには国民もインターネット等により必要な情報が入手できるように、来年度から医薬品等安全性情報提供システムという形で安全性情報を広く使っていただくという格好で提供していくことといたしております。
  138. 末松義規

    末松分科員 これは非常にいい動きだろうと思いますし、大変大きく評価を私もしております。先ほど言われたプライバシーとか、その他知的所有権の問題ですか、そういうのもあるということで、薬が承認後、あるいは安全性の問題は市販後ですか、原則でやっていかれるということでございますので、その辺はどんどん進めていただきたいということだと思います。  ちょっと角度を変えて、最近バイアグラというのが認可をされたということで、心臓発作で亡くなられた方があってやや世間も一瞬びっくりしたというにもかかわらず、これは、申請後から約半年間ぐらいですか、非常に速いスピードで認可を受けたわけですね。  片やいろいろな、やれエイズの問題だ、先ほど大臣も御指摘になられました環境ホルモンの問題だとかというような話で、ピルの問題ですけれども、九年たっても全く認可になっていないということなんですが、この辺の差というのをちょっと考えてみますと、やはり中央薬事審議会が、技術的な有効性とか安全性という話を超えて、どうも社会的なさまざまな価値観を大きく持ち込んで触れてきたというような事情があるのじゃないかという感じを私は持っているわけです。  例えばピルについてアメリカは、FDAは一九六〇年にもう認可しているわけですね。また臨床試験についても、第三相試験ですか、この本当は通常日本で行う試験が省略されて、アメリカの、海外のデータでいいのだという話、これはいろいろと国際的合意もあるというふうに聞いていますけれども、どうもピルのときの言い方では、日本の女性は世界の女性とはちょっと違うかもしれないから、そういった意味で海外の情報は当てにならぬのだという言い方を厚生省自身がされてこられたわけですよ。そうなると、日本の女性だけは独特なのかという議論が当然噴き上がって、ばかなことを言うなという話になるわけですね。  そういった意味で、どうも統一的なやり方がなされていない、あるいはそういうふうなプロセスのまだ混乱状況にあると言ってしまえばそうなんですが、その辺は余りにも対照的なものですから、どういうことなんだと思うわけですが、その辺についてはいかがですか。
  139. 中西明典

    ○中西政府委員 バイアグラにつきましては、これはメーカーが承認申請に至るまでの話でございますが、先生ちょっとお触れになりましたが、ICH、米、EU、日本の三者合意に基づきまして、外国臨床データの受け入れ方針、これがまとまりまして、昨年から実行に移されたということがございまして、ちょうどそういったタイミングもあって、ファイザー社は速やかに申請することが可能となったという事情はございます。  申請後の話でございますが、バイアグラ自体、非常に多数の患者さん、はっきりした数値はわかりませんが、一説には百万とも二百万とも言われているような多数の患者さんが待ち望んでいる、勃起不全の治療薬としてまさに初めての医薬品であって、医療上特にその必要性が高いというふうに認められ、私どもとしてもそういった観点から優先的な審査の取り扱いを行ってきたということ、それから、その承認申請に際して提出された試験成績、これが効能、効果等を立証するに十分な、極めてはっきりとしたデータであったということ、それから、適正に使えば安全性に大きな問題がない、そういった事情から早期に承認することができたわけでございまして、今後とも私どもとしては、バイアグラに限らず、このような医薬品につきましては、承認審査を速やかに行っていくこととしております。  他方、ピルにつきましては、これは治療薬でなくて健康人が服用する薬であり、特に副作用の問題、子宮頸がんや乳がんあるいは血栓症等々いろいろな副作用の問題がございますが、そういった問題について慎重な審議が行われるとともに、それから、ピルの使用がHIV等の性感染症の拡大に与える影響についての公衆衛生上の観点からの議論等もあり、審議に時間を要してきたというふうに認識しております。また、承認申請があった以降、承認申請者に対し審議会からいろいろな資料の作成を求めたわけでございますが、その資料の作成に申請者の方が相当手間取ってきたという経緯もあるというふうに認識しております。  有効性、安全性の問題に限らず、性感染症の拡大に与える影響あるいは環境ホルモンの問題等々指摘されている問題につきましては、当然薬事法上も、保健衛生上の問題が、まさに保健衛生の向上を図るための法律でもあるわけでありまして、そういった問題が指摘されている以上、避けて通ることはできない問題だというふうに審議会の方でも判断してきているということでございます。
  140. 末松義規

    末松分科員 何か百万から二百万の、勃起不全で望んでいる方々が多いという話で、適正に使えばそれはいいのだという話というのは、ある意味ではピルにしても、百万前後おられるかもしれないし、実際に数十万人がもう使っているという話もありますね。適正に使えばという話ですけれども、そこら辺は確かにきちんと、適正に使えばいい話ですね。副作用というのはどの薬にでもあるのでしょうし、風邪薬だってずっと常用していれば大変な毒にもなるのだと思います。  いずれにしても、ピルとまたバイアグラは違うのかもしれませんけれども、さまざまな状況を考えてみますと、やはりピルの審査を見ますと、どうも何か大きな思惑があったのじゃないかと思わざるを得ないようなことが多々あるわけです。  それは今の状況に至っては捨象しますが、いずれにしても、先ほど、承認後情報公開する前提のこのピルの審査について、十二月、承認前にこういう情報公開も一挙になされたということもあるだろうし、あと残りの情報の公開も早急にされるという話を伺っています。そして、世論の状況なんかを見てみますと、もう三月にもピルは認可されるのじゃないかということが言われているわけですね。大きな期待がかかっているわけなのです。  三月三日に中央薬事審議会の常任部会が開かれる予定だと聞いておりますけれども、大臣、このときに厚生省としては、今大きな問題になっているピルについて、これは提案をするというか先生方にその御判断をいただく、そして結論を得る、それは御審議状況いかんでしょうからここでは申し上げられない世界かもしれませんが、厚生省からもある意味で積極的に御意見を求める、あるいはでき得れば結論を求めるというふうに考えておられると思ってよろしいですか。
  141. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいま局長の言われたように、ピルの使用につきましては、安全性、特に乳がんとか子宮頸がんの発生率、リスクの評価の問題もあるようでございますし、それから、ピルの使用のHIV感染等の性感染症の拡大への影響、これは現実に、中央薬事審議会から公衆衛生審議会に正式にそのことについての意見も求めて、返答がございます。また、処方に当たっての情報提供のあり方とか環境ホルモン、今申されたような問題等々ございます。  私どもとしては、そういう医学的な安全性その他の見地からの検討は十分尊重しなければなりません。我々素人が直ちにやれとかどうしろと言う性格のものではございませんので、中央薬事審議会、十二月に行われて以来、一月、二月は行われておりませんが、三月にある程度また前進した議論が行われ、クリアすべき問題はクリアし、なお残された問題があれば恐らく引き続き検討ということになると思いますが、私どもとしては、中央薬事審議会にどうこうと言う性格のものではございませんけれども、これだけいろいろな検討がなされているということも承知しておりますから、できる限り早くそういう点をクリアして、そして認可できるものなら認可してほしいという気持ちは持っておりますが、指示はできませんので、そんな期待を申し上げておるというところでございます。
  142. 末松義規

    末松分科員 先ほど局長の御答弁の中で、各国間と臨床試験についての結果を適用するという合意が得られたというお話ですけれども、ピルについては、昨年二月ですか、その合意が得られてから、世界百数十カ国ですか、いろいろと検査結果についても、専門的に海外事例を使って審査しているわけですか。
  143. 中西明典

    ○中西政府委員 ピルについては、申請がなされましたのが平成二年七月から三年の二月にかけてでございまして、申請者の方でも、国内の臨床データとあわせて海外の臨床データについても提出してきております。審議会としても、その他内外の治験を集めるようにということで、言ってみれば、ありとあらゆるデータを集めまして、特に安全性の評価については、先生先ほどお触れになりましたように、十二月に一応取りまとめて、関心のある方にごらんいただけるような形にしたところでございます。  ただ、そういった安全性状況を踏まえて、どういうふうな情報提供をしていくのか、あるいは、どういう検査をしていくのが望まれるのか、患者さんあるいはお医者さん双方含めてでございますけれども、そういった議論もあわせてなされておるというのが現実でございます。
  144. 末松義規

    末松分科員 本当に速やかな審査が行われることを私は希望しますし、先ほどの大臣の御答弁の中にも、認可できるものは認可していきたいというお気持ちがあると。ただ、あくまでも審査をされるのは政治家ではなくて専門家のグループの方ですから、そこの判断は尊重していく、そういう話を私もここで承りました。  この場で、最後になりますけれども、医薬品の認可について、審査体制の現状にかんがみますと、アメリカのFDAで審査官が大体二千名、事務職員も合わせて一万名近くが医薬品についての有効性、安全性について審査をしている。片や日本は、医薬安全局の審査体制を中心に、審査官が二百人程度で、あと事務当局を含めて百人プラスして三百名ぐらいしかいない。  国の大きさの違いはあるわけですけれども、さまざまな安全性、有効性、これから高齢化社会を迎えるとそういったニーズがもっともっと強まってまいりますが、これについて、やはりもう少しきちんと充実させる必要があるのじゃないか。アメリカの半分とまでは言いませんけれども、そこのところについて、時間もかかって何をすると。逆に、医薬品のレベルについても、余りに長い審査だとやはり国際競争力もなくなってくるわけですよ。  アメリカとかを含めて医薬品業界もすさまじい長足の進歩を遂げているわけですから、そのスピードにも追いついていけないということでしょうから、それは逆に消費者あるいは患者の立場に立ってどんどん検査体制をきちんと強化していくという必要があると思いますが、その辺は、大臣、どうお考えですか。
  145. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 医薬品等の承認審査体制の充実強化につきましては、これはもう仰せのとおりでございまして、アメリカ等からも短期の承認が要請されている実態もございます。  私どもとしては、特に、平成九年の七月の薬事行政組織の抜本的見直しにおきまして、承認審査事務を専門的に行う医薬品医療機器審査センターというのを設置いたしまして、医学、薬学、獣医学、生物統計学等の多様な専門分野の審査担当官によるチーム審査というものを開始しております。そしてまた、審査担当官の、今までに比べて大幅な増員は進めてきているところでございます。  御指摘のように、私どもの手元の資料でも、審査体制でアメリカは二千六百九人、平成九年でございますが、英国も四百人前後、フランスが五百五十人、日本はそれに対しまして百十四人でございましたが、今二百四人ということでございまして、なお、これからも医薬品機構等の人員を含めてやはり充実を図って、早期に審査できるような体制を築いていくことは、これはまた国際的な面でも必要になる、国内的にも当然でございます。
  146. 末松義規

    末松分科員 このピルという、避妊という問題を通じて、やはり女性も、自分の人生に対して責任を持って、自分で判断して、自分自分の人生を送ることができるということですね。このような新しい社会に基づいて、一刻も早くそういった意味でピルが解禁されることを私は望みますということを申し添えて、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  147. 臼井日出男

    臼井主査 これにて末松義規君の質疑は終了いたしました。  次に、横光克彦君。
  148. 横光克彦

    横光分科員 社民党の横光克彦でございます。  末松議員も質問されましたが、今、国民の関心、とりわけ女性の関心が急激に高まっております経口避妊薬、いわゆる低用量ピルについて御質問させていただきたいと思っております。  御存じかと思いますが、避妊法の選択肢としてピルの使用が承認されていない国は、国連加盟国百八十五カ国中、日本が唯一の国なんですね。唯一の国というと何か誇りに思えるようですが、日本だけが承認されていない国なんですね、国連加盟国の中で。北朝鮮でさえももう認可されていると聞いております。そういった現実をまず御認識していただきたいということでございます。  近代的な避妊法を利用しやすい体制がどれぐらいできているかどうか、それを百点満点で評価した資料がございますので、ちょっとごらんになっていただきたいのです。  これで見ますと、百点満点とすると日本は四十一・七点。ルーマニアやタジキスタン、ウクライナ、これらと同じ、近代的避妊法を利用できるか否かということをデータで調べますと。ドイツやニュージーランド、このあたりはもう百点なんですね。各項目が満点で、二十点。各国では、ピルが二十点あるいはこういったところでは十点という国がありながら、日本の場合、零点なんですね。この零点ということはもちろん使用されていないということです。  この使用されていない、日本でまだ認可されていない薬が、全世界では、先ほどの表でもごらんになりましたように、九千万人近い女性が使用をしているという現実なんです。ですから、技術立国と称される我が国におきまして、こういった避妊法の選択という点では、私は、全くの後進国であると言っても過言ではない、このように思うわけでございます。  私、実は平成五年十月と平成七年六月に低用量ピルに関する質問主意書を提出いたしました。また、平成六年六月には予算委員会で、平成七年六月には厚生委員会で、低用量ピルの審議状況について質問してまいりました。しかし、そのいずれも、ただいま審議中でありますという、ただ形どおりの一言で、これといった答えはなかったわけでございます。あれから三年余りたつわけですが、いまだにこのピルの認可が下されていない。  ピルの審議において、中央薬事審議会、ここは本来、医薬品としての有効性及び安全性を医学的、科学的に評価する場であり、昨年の十二月にはインターネットを通してその有効性及び安全性の資料が公表されたわけです。これは大変な前進であり、私も大変高く評価いたしております。これまでベールに包まれていた部分が徐々に国民の前に明らかになったわけでございます。そこまでの議論がなされているということで、私自身は、中薬審が本来行うべき医学的評価の使命は果たされた、このように考えているわけでございます。  そういった観点からちょっと質問に入りますが、まず、外務省にお聞きいたします。  今年の二月四日から十二日まで、オランダ・ハーグにおいてカイロ会議プラス5が、議員フォーラム、ハーグ国際フォーラムの順に開催されました。政府からも駐オランダ大使らが出席したと聞いておりますが、ここで、我が国のピルに関してどのような状況であったかということを、御報告を受けた範囲で結構でございますので、お聞かせください。
  149. 赤阪清隆

    ○赤阪説明員 ただいま御質問ございました、ハーグにおきます国際フォーラムでの審議の概要でございますが、今回のハーグでのフォーラムでは、一九九四年に開催されましたカイロの国際人口開発会議、この会議で採択されました行動計画のフォローアップについて種々議論が行われました。その結果、検討結果及び行動提案という報告書が採択されまして、ことし六月に国連特別総会で審議されます人口問題のための材料として国連総会の方に提出されることになっております。  御質問の我が国のピルにかかわる問題につきましては、私ども、会議に出席しました限りにおいては、この問題が取り上げられたとは承知しておりません。  ただ、私どもがこの会議に関しまして記者ブリーフィングを行いました際に、記者の方から日本における審議の概要について御質問がございました。私どもは、十分な情報を当時持っておりませんでしたので、現地では、この問題については本国で審議がさらに続いておると答えた次第でございます。
  150. 横光克彦

    横光分科員 今、審議に参加された中ではそういった審議というか話題には余りならなかったということですが、全体を通して見ますと、NGOを通して私どもに入ったこの会議での状況をちょっと補足させていただきますと、国際家族計画連盟の代表からは、日本で低用量ピルが承認されないと日本からの援助にも使えない、これは世界じゅうの問題である、こういった声があったそうです。  そして、日本の低用量ピルについては、NGOフォーラムの新聞にも取り上げられて、バイアグラの六カ月という異例の速さの承認とともに、低用量ピルの未承認は日本の不思議である、こういった書かれ方もされております。  さらに、日本事情に詳しい国際家族計画連盟の事務局補セナナヤケ医師、スリランカのお医者さんですが、この方が、日本の女性たちは、避妊方法の選択肢という点で、スリランカのように貧しい国に比べてもはるかに厳しい状況に置かれている、このようにインタビューに答えている。  このように、日本で低用量ピルが承認されていないということは、この国際会議で非常に話題となり、しかも不思議がられている状況であるという報告も入っているわけですね。  先ほども申し上げましたが、国際的な要請として、日本がピルの使用さえ認めていないことは問題だという意見があったわけですが、特に、ODA予算によって途上国のエイズ並びに人口問題への援助が行われているとのことですが、これは事実ですか。
  151. 赤阪清隆

    ○赤阪説明員 人口、エイズに関しましては、一九九四年の段階で日本が、特に新たなイニシアチブを設けまして、人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブというものを進めております。七年間で総額三十億ドルをめどにしておりまして、既に二十四億ドル使っておりますが、この中でピルがODAの対象になるかということにつきましては、このピルの問題につきましては、我が国で審議が進められているところでございますので、目下のところはODAの供与の対象とはしておりません。
  152. 横光克彦

    横光分科員 三十億ドル、膨大な資金援助がされている中で、このエイズ並びに人口問題対策として、向こうではそれを使用したいけれども日本では未承認のために使用されないという現実があるということですね。  インドネシアの一例をちょっと紹介してくれますか。
  153. 赤阪清隆

    ○赤阪説明員 インドネシアにおきましては、我が国は無償技術協力プロジェクトを実施しておりますが、この一環としてピルの要請が出された経緯がございます。一九九八年の秋の段階でございますけれども、去年十月の段階でインドネシアの方から経口ピルの要請書がセットをした経緯がございますが、これにつきましても、先ほど申しましたように、我が国におきます審議状況から援助の供与対象とすることを見合わせた経緯がございます。
  154. 横光克彦

    横光分科員 今の例のように、せっかく日本がそういったGIIという、人口あるいはエイズ対策に大変な資金援助をしていながら、それを実際に使う場合、それが効果的に使われていない一つの事例だと思うんですね。こういった現状であるということも、大臣、どうか御認識いただきたいと思うわけです。  ピルの承認がおくれた理由の一つに、コンドームが使用されなくなりエイズが蔓延するのではないか、この懸念があることは私も十分承知をいたしております。  これを受けて、平成九年三月には、新薬の審議としては異例中の異例と思われるんですが、中薬審が公衆衛生審議会に意見を求めるということがありました。ピルの使用と性感染症は当然私も関連するものと思いますし、そういった意味で、公衆衛生審議会に意見を求めたということは、これは理解できます。そしてまた、それほどまでに新薬の承認のために慎重な審議をしたということも私は評価できると思うんです。その公衆衛生審議会の回答が同年六月出されたわけですが、保健医療局長にお尋ねいたします。  まず、この答申の解釈ですが、これはピルの承認をとめているものではないと理解してよろしいですね。簡潔にお願いします。
  155. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 公衆衛生審議会が中央薬事審議会の求めに応じまして検討したわけでございますが、その要点を申し上げますと、ピルの使用と性感染症の関連を明確に結論づけることは困難であること、これが一点でございます。ピルが承認される場合にあっては、その前提として、国民の性感染症予防についての認識を高め、感染の拡大を予防するための対策を強化することが不可欠であることなどについて提言されたものでございます。  したがいまして、御指摘のとおり、公衆衛生審議会の答申がピルの承認をとめているものではないという理解でよろしいかと思います。
  156. 横光克彦

    横光分科員 どうもありがとうございました。  ピル同様、バイアグラについてもエイズを含む性感染症の拡大が懸念されると私は思うんですが、公衆衛生審議会としてバイアグラ承認のときに問題提起をされたのでしょうか。
  157. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 結論から申し上げますと、問題提起はしておりません。それは、求めがなかったということと、私ども事務方もその必要性がないという判断をしたわけでございます。
  158. 横光克彦

    横光分科員 今お話ございましたように、公衆衛生審議会から出された答申には、エイズを含む性感染症について国民的な予防、啓発などを行うように書かれているわけですね。しかし、これらの対策はピルの承認いかんにかかわらず行われるべきものではないでしょうか。
  159. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 この答申は、中央薬事審議会から低用量ピルの使用が性感染症の拡大に与える影響について特に意見を求められたことに対する回答という性格から答申を出したものでございます。  議員御指摘のとおり、性感染症の予防、啓発等は、低用量経口避妊薬の承認のいかんにかかわらず厚生省としては推進していくことが重要であると考えているところでございます。
  160. 横光克彦

    横光分科員 専門家の中には、ピルが承認されたら大変だと騒いでいる方もいらっしゃいます。しかし、私自身は、ピルがもし承認された場合、これは医師がちゃんと処方をするわけでございますので、そのときに性感染症の検査や治療が行われると伺っておりますし、となりますと、ピルはあくまでも避妊の薬です、性感染症はこれまでどおりコンドームが一番有効なんですよ、そういったことを、新たに性感染症の問題を啓発する場がむしろできると思うわけですね。性感染症に対する関心は従来よりもっと高まると私は期待しておりますが、エイズ担当部局としてはどのようにお思いですか。
  161. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 公衆衛生審議会の答申におきましても、医師がピルを処方する場面が、薬を服用する者に対して性感染症とその予防方法の正しい知識を提供し、予防を実践する動機づけの最高の機会と指摘しているわけでございます。このため、性感染症予防対策の観点を含め、処方医師及び服用者への情報提供のあり方について、中央薬事審議会において審議中と聞いているところでございます。  性感染症の予防は各自の自覚に基づいた自立的な行動が基本であることから、ピルの処方時に性感染症予防の情報が提供され、服用者への啓発が行われることは性感染症予防の観点から見ても好ましいものと認識しております。
  162. 横光克彦

    横光分科員 わかりました。  ピル承認後の性感染症対策ですけれども、ピル承認後のエイズ等の拡大には国民の関心も高いわけですので、懸念されるような事態にならないよう万全の体制で進めていただきたい、このように思います。  次に、毎日新聞が二年おきに行っております全国家族計画世論調査、そしてまた国際機関でありますポピュレーション・カウンシルが一九九〇年に調査した資料、この二つを比較してパネルにしてみました。  これなんですが、要するに、日本における既婚の避妊法としては、七七・二%、八〇%近い避妊法は日本の場合はコンドーム主体なんですね。ところが、世界的に見ますと、いわゆる不妊手術あるいは器具それからピル、こういった形になって、赤いものが日本のもの。こうして見ますと、歴然とその差がわかりますね。日本の場合は、どうしても男性主導とも言えるコンドームで避妊をしている傾向。外国では、この三つの例はすべて女性がみずから取り組める避妊方法なんですね。この差が非常にはっきりしているわけです。  そこで、児童家庭局長にお尋ねいたしますが、現在我が国の人工妊娠中絶の実態と、特に二十歳未満、十代の中絶はどれくらい行われているのか、また、中絶件数はこのところどのように推移しているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  163. 横田吉男

    ○横田政府委員 我が国の人工妊娠中絶の件数につきましては、昭和三十年には年間約百二十万件でございましたけれども、その後家族計画の普及等によりまして年々減少し、平成九年には約三十四万件弱にまで減少いたしております。  また、二十歳未満の件数につきましては、昭和五十年以降増加傾向にございまして、三十年時点におきましては一万五千件弱でございましたのが、九年度には三万件に増加しているという状況でございます。
  164. 横光克彦

    横光分科員 中絶数が減少しているとは言え、今のお答えでは二十未満の中絶数はむしろふえている。年間約百二十万件の出生、誕生する。それに対し三十四万近くの中絶が行われている。これは大変な数だと思いませんか。  私、このピルの問題に対応し始めたのは、実は命の尊厳というところからだったんです。要するに、体内で芽生えた命であろうと、この世に出た命であろうと命は同じなんですよね。ところが、これだけの数、三十四万の数がこの世に出ないまま結局絶たれてしまう。要するに、望まれない妊娠ですね。望まれない妊娠ですから人工妊娠中絶を行う。この女性の悲劇というのは大変だと思うんです。これほどの望まない妊娠をいかに避けるか、そのためにはやはりみずからが避妊をできるという選択肢を広げる必要がある。ここにたどり着いたわけなんです。  もう一つパネルがございます。  今児童家庭局長の御答弁にございました。確かに、一九九五年を一〇〇とした場合、中絶件数は減っていますね。二十代から五十代の方は減っています。ところが、見てください、二十歳未満だけこんなに上がっているんです。十代の悲劇がここにあるんです。一番かわいそうなんだ。恐らくこの人たちは大多数が未婚者だと私は思います。そういう人たちがこうした人工妊娠中絶をせざるを得ない。それは結局、避妊に失敗して、望まない妊娠を起こしてしまった。私は、ここのデータをやはりここまで下げる必要がある、若い人たちのためにも。そのためにどうするかということを今私は問いかけているわけです。  スウェーデンやオランダあるいはベルギーなどでは、ピルが使用されるようになったことで、人口は横ばい、中絶件数、殊に十代の妊娠中絶が激減した、こういうデータがあるんです。一国だけじゃないんです。それぞれの国でピルが使用された後十代の中絶数が激減したというデータがある。こういった先進国の例に学びながら、望まない妊娠あるいは中絶などで涙する女性を少しでも少なくしていく、そういった施策を今求められているんじゃなかろうか、このように思うわけでございます。  そういった施策をぜひ望むわけですが、次に、環境庁にお伺いいたします。  ある環境団体から私どもに、ピルは環境ホルモンの一種であり危険だというような意見が届いております。環境庁にお尋ねしたいのですが、海外では、環境ホルモンを問題にして環境当局がピルの使用をとめさせたという国があるのでしょうか。
  165. 澤宏紀

    ○澤説明員 現在までのところ、ピルを環境ホルモンの問題として環境上の規制をしたという国はないと承知しております。
  166. 横光克彦

    横光分科員 わかりました。  ということは、ピルは、ある団体が言うような形での環境ホルモンとは異なると考えていいんじゃないかと思います。ダイオキシンやPCBなど、私たちの生活環境に大きな影響を及ぼす環境ホルモンがあることは私も重々承知いたしております。環境ホルモンに関する全体的な対策の中で、環境部局としてピルをどのように位置づけているのか、お聞かせください。
  167. 澤宏紀

    ○澤説明員 ピルにつきましては、現在厚生省の方でも検討されておられるところであります。環境庁におきましては、厚生省との連携を図りながら、科学的知見の集積に努めたいと思っております。
  168. 横光克彦

    横光分科員 これを問題にしている方々もいらっしゃるわけですから、そこの調査をよろしくお願いいたしたいと思います。  大臣にお尋ねいたします。  中央薬事審議会の本分は、医薬品としての有効性及び安全性の評価を行う場である、そう認識してよろしいんでしょうか。
  169. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 最も重要な機能だと思います。
  170. 横光克彦

    横光分科員 となりますと、中薬審が科学的に有効性と安全性を認めるならば、医薬安全局としてはその方向になるでありましょうし、大臣としても当然承認ということになると思うわけですが、その中薬審が、既に昨年十二月二日に、インターネットでピルの有効性と安全性に関する中間取りまとめを発表しております。また、きょうの私の質問に対する各政府委員の答弁を総合しても、いわゆる国際間での日本の置かれている状況、あるいは性感染症対策、そしてまた十代の中絶件数の増加傾向、あるいは環境ホルモンとの関連性、こういった問題に対してのお答えを総合的に判断しても、私は、もはやピルの承認に向けての障害はない、このように考えているわけです。  ピルは、本来、女性自身がみずから選択をして、みずから納得して使う薬なんです。万人に飲むことを強要するものでも何でもないわけです。自己責任、自己責任という世の中であれば、もう政府がちゅうちょする問題ではないと私は思っております。医薬品の安全性と有効性が確認されているならば、先ほど申しました命の尊厳、そしてまた女性の避妊の選択肢の拡大、こういうことにもかんがみて、ぜひ承認の方向で御決断をされるようお願いしたいわけです。  どうですか、大臣、ピルについても長い眠りから覚めて、来月あたりには結論が出せそうですか。
  171. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今委員の方から、世界の大勢、その他二十未満の中絶の増加傾向等々、また、環境ホルモンに対する環境庁の見解、各省の見解等が述べられました。  大体周辺としてはそういう感覚を持っているのではないかと思われますけれども、私どもは、安全性と効率性という先ほど申しました重要な視点で専門的な中央薬事審議会に申請を審査していただいておりますので、そういう専門家の方々も、やはり科学的な、今御指摘されたような点は十分理解はされた上の話だと私も思いますので、そういった先生方が三月早々にこの審議会をやるということでございますから、そこである程度のクリアはされるものと期待しておりますが、なお残された問題も生じた場合は、またちょっと研究を、検討をさらに続けるということになるでしょう。  私どもとしては、きょうの論議、大変いろいろのスタンドポイントからの指摘もございましたので、これは何らかの意味で事務当局からお伝えはしておきますが、最終的には専門技術的な専門家の審議というものは、やはり私どもは尊重しなければなりません。しかし、あとう限り速やかにその結論が得られることを私としても望んでおる次第でございます。
  172. 横光克彦

    横光分科員 ありがとうございました。  国内外の動向を含めて、周辺状況はこれだけ変わってきているわけでございます。先ほど申し上げましたように、望まれない妊娠というのがいかに悲劇であるか、とりわけ今児童家庭局長お話にございましたように、若い十代の女性に中絶件数がふえているというこの実態をどうか見詰めて、一刻も早い審議終了をさせていただき、ぜひともピルの承認を決断くだされますよう重ねてお願いを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  173. 臼井日出男

    臼井主査 これにて横光克彦君の質疑は終了いたしました。  次に、藤村修君。
  174. 藤村修

    藤村分科員 民主党の藤村修でございます。  きょうは、医療関係の教育の問題に絡むわけでございますが、医師ということでなしに、その周りの看護婦さんであるとかあるいは検査技師さんであるとか放射線技師さんであるとかという皆さん方の現状、特に教育の問題についてお尋ねをしたいと思います。  それで、まず背景といたしましては、特に大学教育におきまして、この十年来、国が余り大学の教育の中身について細かく縛るのではなしに、いわゆる教育課程、教育カリキュラムの大綱化ということで大学改革が進んでいる最中でございます。さらに、特に看護婦さんあるいはそういう検査技師さんらを養成する大学部門におきましては、かつては医学部附属の専門学校であったりあるいは短期大学部などが設けられておりまして、ずっと長年やってきたんですが、この数年来は、特に国立大学ではそういうものを廃止して、四年制の医学部の中の例えば保健学科などに移管をして、より高度な大学教育をやっていくという分野にもなってきております。  そういう大きな流れの中で、看護婦さんにしても保健婦さんにしても、あるいはいろいろな関係の検査技師さんらについては当然厚生省が深くかかわられておりますが、実はそごが生じている。  片方は、大学の方に移管している部分というのは、大学教育の中でカリキュラムの大綱化などが進み、あるいはかつての教養部と専門部みたいな分け方もなくなってまいりました。ところが、一方で、専修学校、専門学校など、これは厚生省管轄ということでありますので、そこは以前と同じ。細かく言いますと、指定規則などで非常にがんじがらめに教育内容が縛られている。  これは、そういうことが時代の流れとして出てきたこともあり、厚生省の方でも文部省と連携をとりながら教育内容の大綱化などを図ってこられておるのですが、まず最初に、保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則、かつて細かく縛られていた指定規則について、平成八年に改正が行われて、九年四月から施行されていると聞いておりますので、改正の趣旨とその中身について、ポイントを絞って、どういうふうに改正されたのか、お尋ねしたいと思います。
  175. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 看護を取り巻く環境が、近年の高齢化の進展、それから医療の高度化、専門化などで大きく変化をしているところでございます。  こうした背景のもとで、看護サービスの拡充、看護職員の資質の向上が求められるようになっておりまして、平成八年三月に、医療関係審議会保健婦助産婦看護婦部会、保助看部会のもとにつくりました看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討委員会よりレポートが出されました。カリキュラム施設設備の基準の見直しに関しての報告が出されたところでございます。  この報告を踏まえまして、看護職員の基礎教育においても、科学的思考を基盤とした看護の実践力、保健、医療、福祉全般にわたる広い視野と高い見識、幅広い教養と豊かな人間性を養うことを趣旨として、文部省と連携のもとに指定規則の改正を行ったところでございます。  主な改正のポイントといたしましては、まず一つ、これまで科目及び教育時間数が定められていたカリキュラムにつきまして、先生が先ほどおっしゃったように大変細かくなっているところでございますが、この科目を大綱化いたしまして、教育時間を単位制により規定することにより、各養成施設において柔軟なカリキュラム編成を可能としたこと。  二つ目には、新たな社会需要を踏まえ、在宅看護論及び精神看護学を設けるなど教育内容の見直しを図りました。  三つ目に、教育体制の充実を図るため、専任教員の数を増加したことなどが挙げられるところでございます。
  176. 藤村修

    藤村分科員 今、改正のポイントをおっしゃっていただいて、その背景に流れるものというのは、先ほど私が申していましたような教育の中身をがんじがらめにするのではなしに、ある程度大綱化してやる、そういうことで理解はよろしいのでしょうか。
  177. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  178. 藤村修

    藤村分科員 そういうふうに看護が大きな流れの中で変わってきたのですが、ただ、今、例えば大学の保健学科などは、看護婦、保健婦、助産婦以外にも、理学療法士、作業療法士、あるいは診療放射線技師などを養成するコースもあって、それが医学部保健学科などに変わっている。  そうすると、その他の部分というのはどうなのですか。理学療法士及び作業療法士の教育課程についての指定規則について何か動きがあると聞いておりますが、この点を一つお願いいたします。
  179. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則の見直しについては、実施をいたしております。  これにつきましては、保健婦、助産婦、看護婦と同様に、医療を取り巻く状況の変化に対応するとともに、各養成施設がそれぞれの教育理念、目的に応じて柔軟にカリキュラムの編成を可能にするという観点から、医療関係審議会理学療法士作業療法士部会カリキュラム等検討小委員会において、今年度検討を行ってきたところでございます。  昨年十二月に、当小委員会からカリキュラムの大綱化に係る報告書が取りまとめられたところでございまして、本報告書の内容に沿って今年度中に指定規則の改正を行い、本年四月から施行することといたしております。
  180. 藤村修

    藤村分科員 理学療法士学校、それから作業療法士学校の中で、これは文部省の方からいただいた資料ですが、国立大学、短大、各都道府県、各私立大学、そして短期大学関係課長ということで文部省の高等教育局から、厚生省の健康政策局から改定をするという小委員会の報告についてお話を受けて、そういうことを文部省ルートで文部省管轄の学校に通知をされたということで、これも読ませていただきますと、おおむね、先ほどの保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の改正の趣旨といいますか、がちがちに縛っているのではなしに、今度は大綱化をして、最低これだけのことをやるという基準を示しているように変えようということでそういう通知をされたように思います。  今おっしゃったのは、これは専門家のところから答申されたものですから、多分これを省令で改正されるのだと思いますが、具体的にはいつの時点で省令改正を行って、いつこれは施行になるのでしょうか。
  181. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 これは省令になります。  それで問題は、文部省とも連携を図っていくことが必要であります。そして、今年度中に、指定規則の改正を三月までに行います。そして、本年四月から施行ということを予定として考えております。
  182. 藤村修

    藤村分科員 そこで、一歩一歩は確かに進んではきているのですが、放射線技師、これは診療放射線技師というのが正確だそうですが、診療放射線技師の教育につきまして、大阪の北の方に国立の大阪大学がございますが、大阪大学医学部保健学科の稲本先生という方が、これは五年前になるのですが、指定規則の改善をいろいろ論文に書かれております。  その趣旨は、まず大学自体が——大阪大学でも、これは多分一九九四年からだと思いますが、今までの医療技術短大が廃止されて、医学部保健学科というのが立ち上がった。これは五年前ですね。本来、そのときから今の助産婦、保健婦あるいは理学療法士、診療放射線技師などもぱんと転換して、大学教育へ持っていければよかったのですが、そうはなかなかすぐにはいかなかった。しかし、五年前にいろいろな問題点も指摘をされている。そうしてもらわないと、大学教育にこれはなじまなくなってくるという指摘をされております。  例えば、ちょっと具体的に引用させていただきますと、大学自体がかつての教養部と学部という枠組み自体が外れてまいりました。すると、指定規則の方では、一般基礎科目というのでしょうか、それが専門科目とはっきり分かれている。そこで学生が、大学の中で「自然環境と人間」という科目をとったというのですね。診療放射線技師を目指す学生のようですが、自然環境と人間という科目は、指定規則によります分類でいくと、一体どこに入るのだろうか。例えば人文科学については時間数三十だ、社会科学についても三十だ、自然科学については六十という時間の指定があって、自然環境と人間というのは基礎科目には入るのであろうけれども、一体どこに入れたらいいのだろうかというのが、一つの具体例としてうまく合わない点が出ていた。これは五年前に指摘をされております。  あるいは、大学における教育というのはより高いレベルでそういう専門の技師、技術者を養成するという意味なんでしょうが、診療放射線技師の養成の課程の中に、これは私も見てみましたら、例えば放射線医学という科目がないんですよね。だから、この指定規則のかつての決め方自体にもやや欠陥があったし、そして、文部省管轄にはなりますが、大学教育に大きく移行されてきたところにおいて、この指定規則はどうも合わないんじゃないだろうかと五年前に提言をされております。  そこで、しかし、これは九四年の話ですからもう五年、六年になってくるわけですが、いまだにこの指定規則を大学の診療放射線技師養成課程でも使わないといけないものでしょうか。
  183. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 まず、身分法のことをちょっと申し上げたいと思うんです。  衛生サイドの身分法というのは、先生御存じのように、国家試験というので最終的にはチェックをいたしておりますが、実際には、頭で、いろいろな教科書を読んで勉強されただけのチェックということでは国民の健康を守るという点からは甚だ不十分ということで、どうしても実習的なことが必要になってきます。  例えば医学部でいけば解剖実習だとか生理学の実験だとかいろいろそういうことが必要と同じように、結局、どんな職種においても実習、現場というのが非常に大事、勉強していくことが大事。そういう現場の実習的なことを修めることと学問のことと両方あって一人の立派なヘルスマンパワーですか、そういう医療関係者という人ができてくるわけであります。  そういうチェックの関係厚生省としてはカリキュラムを定めて、そのカリキュラムに従ったことについて、国家試験もそれに沿って出しましょう、こういうことで、各施設がそのカリキュラムを守って勉強され、そういう形で各学校がやっていらっしゃる。大学も同じように、やはり国家試験に受からなければその人は医療従事者として働くことができないからそれを御活用される、こういうことだと思います。  では、実際にそのとおりやれという命令なのかというと、法律上はそこまでは言っているわけではないんですね。だから、要は、看護でも同じですし診療放射線技師でも同じだけれども、こういうことを勉強してください、そのことは試験に出させていただきますよと申し上げているのでありまして、このことは、大学自体がそのとおり教育をしなければならない、大学が自由に組みかえてはいけないということまで言っているというふうには私どもは解釈していない。  ただ、実際には、学生さんも、ここに書いてあることから出るならそれでやっていただきたいという御希望があって、実態としてはこれが守られているということは否めない事実だと私も思っております。  そういう意味では、私どもも、これを早く直した方がベターということは先生がおっしゃるとおりでありますが、大学で独自に、この内容も含めた上で、特に時間数というのが大変問題になりますが、そういうものを包含した形で自分大学独自の形をとられるということを否定しているわけではないということをまず御理解いただきたい、このように思っております。  ですから、我々としては、基本的にはできるだけ早くした方がいい、先生がおっしゃられたとおりでございますけれども、何せ行政事務能力が足りないものですから、実際には、今のところ、十二年には臨床検査技師を改正するという予定を立てて準備をしておりまして、十三年には診療放射線技師についてこれをやる、こういうような計画を考えておるところでございます。順次このプログラムに従ってやっていこう、このように思っております。
  184. 藤村修

    藤村分科員 二つ疑問が出ました。  一つは、そうすると、大学のお医者さんを育てるという分野も同じようにこういう細かい指定規則に基づいてやっていらっしゃるのかどうかという点。  それからもう一つは、確かに、厚生省のそういう担当のところで手いっぱいだという一つの理由はわかりますが、しかし、厚生省のお役所、お役人でこれら細かい話を全部決めるわけじゃなしに、それぞれの専門家のグループがこうして審議されるんでしょうから、ある意味では厚生省、お役所というのはコーディネーター役ですよね。それなら、関連するこれらの分野を同時に検討してもらって、同時にできる限り出して、それで省令改正をしたらどうなんでしょうか。それができないんでしょうか。二つの点について。
  185. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 まず、大学の医学部については指定規則なるものはありません。実際には、大学大学で独自な教育をしていただく、厚生省は国家試験を担当させていただくということでやっております。  医師の場合には、卒業すると、今のところは臨床研修は努力義務規定になっております。かつてはインターンというのは必須義務であった時代もありますけれども、今は、必須ではないけれども自主研修という形で二年間の努力義務が課せられております。また、今これが問題であるということで、臨床研修の必須化ということについても我々の方で検討をいたしておるところでございますけれども、いずれにしても、医師の場合にはそういう研修の義務づけ、今は努力義務なんですけれども、そういうような形で対応させていただいているということでございます。  それから、コーディネーター役だからいろいろな職種を一挙にできないかということですけれども、会議をセットする、いろいろな資料をつくるとかということについては厚生省で担当させていただいて、そして先生方に御協力をいただいているということでございまして、全部詰められないかということは、まだそこまで再検討はしておりませんけれども、今のところは順次こうやっていくという考え方で進んでおるというところでございますので、御理解を賜ればと思います。
  186. 藤村修

    藤村分科員 大臣、そういう事情で今お忙しいのはわかりますが、それぞれ大学で大きな改革が進み、もう五年、六年になってまいりました。そして、大学のやる気があっても、旧来の指定規則のような非常に細かい縛りが一部残っていて、厚生省管轄の専門学校とか専修学校でそれが適用されるのはそれはそれでいいとしても、大学にもそれを何もかもやるのは、さっきの趣旨は指定規則にがんじがらめに縛られる必要はないというふうな若干のニュアンスがございましたが、私は、もう少し踏み込んで、今医学部は指定規則がないわけですから、これらも全部ひっくるめて……。実は、厚生省管轄で国家試験というものでちゃんと縛っていらっしゃるが、一番中心的な医師の問題についてはそんな細かい指定規則はない。となれば、大学教育においてはこの指定規則を適用除外にするというのも一つの考え方かと思うんですね。それは、お忙しいという点を今お伺いした上でそう言うんですが。  あるいは、本当に徹底して早くやっていただいて、この大きな大学改革の流れで、そういう学生に対し、カリキュラムの大綱化なりでそれぞれ大学の独自性を出して教育ができる体制にしたいというのが希望でございますので。どちらをしていただけるか。  急ぐという話もありますでしょうし、いっそ大学教育においては、お医者さんの方は指定規則はないんですから、それならば、その他については適用するとしても、大学については今の指定規則を適用除外にするという考え方もあるかと思うんですが、その辺についてちょっとお伺いしたいと思います。
  187. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 済みません、その前に私から一言御返事をさせていただきたいと思います。  衛生行政を担当する医療関係職種の方々については、先ほど申し上げたように、実技と学問の両方の勉強が必要です。医師の場合には、実際には卒業後医師の免許を取ってから実際的な実技をみんな勉強していただくという仕組みになっている。ほかの職種についてはその実技のところがないものですから、教育の中できちっとそこは見てくださいよということになっているということで、医師とほかの職種とはそこがちょっと違うということを御理解いただきたいと思いましてお答えさせていただきました。
  188. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本的には今委員のおっしゃられたとおりではないかと思うんですね。  大学の医師については国家試験というくくりで規制といいますか基準を定めておるわけでございますから、他の医療関係職種等については、これは今局長の言われたように全く自由でいいかどうかということになると、現場における知識経験とかの修得、そういうことが非常に重要な要素をなすと思いますので、それぞれ今大くくりでカリキュラムの大綱化とか教育内容の変更とか、いろいろさっき局長の言われたような点を踏まえつつ、やはりその特殊性に応じて養成形態を定めてもいいのではないか。  しかし、委員のおっしゃるように、大学における教育であれば、あるいはそれは先行させて除外してもいいのではないかという見解も一つの有力な考え方だと存じます。
  189. 藤村修

    藤村分科員 趣旨を御理解いただいてありがとうございます。  ですから、今後、二つの方策なんですが、これは文部省とよく打ち合わせていただかないといけないと思いますが、文部省以外の、厚生省が管轄する専修学校、専門学校はおおむね二年制とか三年制とか大学と違う部分が相当大きいですから、これは除外しても、大学教育における今の医学部保健学科などのコメディカルの部分の教育というのはおおむね大学に預けるということで、むしろ厚生省からの相談を持ちかけていただけないか。  それからもう一点は、看護婦はもう平成九年からスタートをされているのですから、ほかの関連分野もぜひ急いでやっていただく。これは専修学校、専門学校にもかかわる問題として、教育自体が今大きく大綱化の流れになっているということでございますので、国が中央でがちがちに縛るというより、これは地方分権の発想からも出てくるわけですが、それぞれ独自にしていただく。出口はちゃんと国家試験で縛っているわけですから、国として責任はそこでちゃんと果たせるわけですし、そういう方向性で前向きに検討いただけないかというお願いでございますが、いかがでございましょう。
  190. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本的には委員のおっしゃるとおりであろうと思います。  時期等について、一斉にできるかどうか、これはいろいろなプロセスがございますので確約できないと思いますけれども、趣旨はそういう趣旨で理解をいたしております。
  191. 藤村修

    藤村分科員 診療放射線技師が、先ほど局長のお答えでは平成十三年とか、予定はそうなんでしょうが、まだ二年も先の話ですから、これはぜひとも前倒しをしていただいて、大変ではございますが、しかし現場の教育が一日も早くよくなる、うまく独自性を発揮してできるという方向でぜひともこれは督励をいただいて、きょう質問したことによって一年ぐらい早くなるということを期待いたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  192. 臼井日出男

    臼井主査 これにて藤村修君の質疑は終了いたしました。  次に、漆原良夫君。
  193. 漆原良夫

    漆原分科員 公明党・改革の漆原でございます。  私の方からは、学生に係る国民年金保険料の免除基準についてお尋ねしたいと思います。  まず、国民年金制度は二十歳以上の者を強制適用の対象としておりまして、平成三年からは学生にも適用されるようになったわけでございます。ただ、学生についてはいろいろな問題点もあるということで、学生に係る保険料の免除基準というのを通達で設けられて、それを適宜適用するというのが現実の運用でございます。  それでお聞きしたいことは、まず、学生に対して、従来の任意加入を改めて強制加入とした理由は何なのかということが一点、それから、通達で学生に係る保険料の免除基準を設けた理由をお聞かせいただきたいと思います。
  194. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 学生はかつて任意加入だったわけですけれども、お話のございましたように、平成三年から強制適用にしたわけでございます。これは、学生時代にスポーツとかアルバイトで障害になられる、こういう方がいらっしゃいまして、任意加入ですとほとんどの方が国民年金に加入していなかった、そういう実態がございましたので、無年金になってしまう、これが一番大きな理由でございます。  それからもう一つは、満額の老齢基礎年金を受給するには四十年の加入期間が必要なわけでございまして、できるだけ満額の老齢年金の支給要件を満たせるようにする、こういう二つの理由で強制適用にしたということでございます。  それから、学生につきましては、御本人はほとんど収入がないわけでして、親御さんの収入によって免除を判定する、こういうことにしたわけでございますけれども、そういった場合に、学生さんというのは幾つか特徴があるわけでございます。例えば被保険者期間が非常に短期間で、しかも卒業しますと社会人として保険料負担する、こういうこともできるようになるわけでございます。そういう点でほかの一号の方とは異なっておる。  それからもう一つは、親御さんの経済負担をできるだけ軽減する必要があるわけでございまして、特に子供を大学にやりながら、しかも年金保険料まで負担する、これはなかなか大変でございます。そういうことで、これは法改正の際にも国会の附帯決議等におきまして保険料負担が過大にならないように配慮すべきだ、こういう指摘も行われたわけでございます。  そういうことで、一般の方の免除基準よりも、より限度が高くなるわけでございますけれども、そういった学生免除基準を適用しているということでございます。
  195. 漆原良夫

    漆原分科員 今までは一般の場合は本人と配偶者中心に考えてきた、学生の場合は本人、親元の所得も考えて免除基準を設けた、こういうことになるわけですね。  そこで、従来、この免除基準ができる前は、学生は一般の免除基準に従って免除を受けていたというふうにも考えられますが、今回、平成三年でございますが、学生の免除基準がつくられたことによって、特にこれは親と別居した学生でございますけれども、今まで一般の免除基準で免除されていた学生が、逆に非免除というふうになるケースが出てくると思われますが、この点はいかがでしょうか。
  196. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 学生は、強制適用になる前は任意加入だったわけですね。それで、実際はほとんどの学生さんが国民年金には入っていなかった。どうせ一、二年たてば卒業して社会人になって厚生年金とか共済年金に入れる、こういうことで、学生時代はほとんどの方が国民年金には加入していなかったというのが実態でございます。
  197. 漆原良夫

    漆原分科員 そう思いますね。ただ、今後は強制加入の対象になったわけでございまして、今後の学生については、学生である限りは一般の免除規定の対象にはなり得ないのか、それともなり得るのか。競合するのか、それとも競合を全くしないのか、この辺はどういう解釈でしょうか。
  198. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 学生の免除基準の方が一般の免除基準よりも有利なわけですね、上限が高いわけです。したがいまして、学生につきましてはより有利な学生の免除基準を適用しているわけでございまして、一般の基準と競合するということはないということでございます。
  199. 漆原良夫

    漆原分科員 先ほどちょっと申しましたように、親元から離れて一人で下宿したりアパートを借りたりしているケースがあります。そういう場合に、一般の場合であれば全く収入がないということで免除の対象になる可能性のある人が、学生の免除基準の適用によっては、親の収入も勘案して決めることになりますから、親が収入があれば免除の対象にならないというケースが出てくるのじゃないかなと思いますが、いかがでしょうか。
  200. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 同居の場合と別居の場合で別々の基準になっておりまして、これは同居であろうと別居であろうとひとしく対象にしているわけでございます。  例えば同居の場合、これはサラリーマン世帯、夫婦子供二人、そのうち一人が学生、こういうケースでございまして、親の収入ベースに換算した場合ですけれども、国公立大学では、同居している場合はその免除基準が六百七十五万円ということでございまして、要はこの基準に達しない場合には免除になるということです。それから、別居の場合は、アパート代とか余計に費用がかかるわけでございますので、免除基準もこれよりも高くなりまして、国公立ですと七百四十万でございます。  ちなみに、私立で申し上げますと、これは私立の方が授業料とか入学金とか高いものですから、免除基準も私立の方が高くしてあるわけです。したがいまして、私立は、同居の場合が七百七十万、別居の場合が八百三十五万、こういう基準になっております。
  201. 漆原良夫

    漆原分科員 もっと単純に、下宿している学生が全く収入がないという場合に一般の免除基準の適用は受けられるんでしょうか、受けられないんでしょうか。親の収入とは別にして、本人に収入がないという理由だけでもって一般の基準対象になり得るんでしょうか、なり得ないんでしょうか。
  202. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 これは、学生さんは学生免除基準を優先して適用することにしておりますので、一般の基準の適用にはならないということでございます。
  203. 漆原良夫

    漆原分科員 その場合に、学生であるかどうかというのは、これはある意味ではわからないことであって、所得がないんだということの証明をすれば場合によっては一般の適用になる可能性もある、学生であるということを証明したことによって親御さんの収入まで勘案されて適用にならない場合もある、こういう不都合が生じる可能性はありませんか。
  204. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 その辺は、個々のケースで見るとおっしゃるようなことが起こり得る可能性はあると思いますけれども、運用につきましては、先ほど来申し上げているように、学生さんは学生免除基準を適用する、こういう原則で対応しているということでございます。
  205. 漆原良夫

    漆原分科員 現実には学生かどうかは現場で判断できない、したがって、申請をして、一般の免除基準に該当すれば一般が適用されて、見過ごされるケースもある、それが今の運用の実態だというふうにお聞きしてよろしいでしょうか。
  206. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 決してそういうことではないと思います。  学生につきましては学生免除基準を適用するということが大原則で、そのような運用をやっておるわけでございます。しかし、先生が今おっしゃられたようなケースが発生しておることも否定できないんじゃないかということでございます。
  207. 漆原良夫

    漆原分科員 この際は、そういう実態があるとしたら、学生の場合は、学生の免除基準も一般の免除基準も、自分にとって有利と思われるものを選択できるというふうに明確にした方が学生にとってはいいのではないかな、また親の負担も軽くなるのではないかなと思うんですが、その点はどうでしょう。
  208. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 これは実は、学生につきましては制度自体をもう少し根本から見直すべきじゃないか、こういう議論が非常に強いわけでございます。  今般、ことしがちょうど財政再計算の年でございまして、年金審議会でも随分議論していただいたわけですけれども、学生につきましては、これは一般の方とはやはり事情が違うんじゃないか。一、二年して社会人になれば負担する能力が出てくるわけでございますし、今のやり方ですと、結局親御さんが保険料負担することになってしまう。子供の老後の面倒を何で親が保険料を払って見なきゃいかぬのか、こういう批判も非常に強いわけでございます。  それで、今度の年金法の改正に当たりましては、ここのところを見直しをしまして、学生さんにつきましては卒業後に追納する、そういう仕組みにしたらどうか、出世払いにしたらどうか、こういう方向が示されておりまして、そういった制度改正を検討しておるところでございます。  したがいまして、免除基準を選択制にするとかそういう方向ではなくて、学生さんについてはもう一度制度の根本から見直しをして、卒業後に追納できるとする。在学中は親御さんの事情とは関係なく御本人だけの所得でもって免除するかしないかを決める、そうすると、ほとんどの方が免除になるわけです、そういった免除になった方につきましては、卒業後にさかのぼって納めていただく、そういう制度にしたらどうかということでございます。  したがいまして、今御提案のございましたような選択制にするとかそういう方向じゃなくて、今申し上げたような方向でこの問題は解決したい、こう思っておるわけでございます。
  209. 漆原良夫

    漆原分科員 その問題はまた後でお伺いしたいと思うんですが、私が問題にしたいのは、いわゆる職業訓練大学校というのがございます、この職業訓練大学校は、この基準によりますと免除の対象になっておりません。  そこで、職業訓練大学校はどのくらいあって、どのくらいの人数かというのを調べてまいりましたので、少し説明申し上げますと、雇用促進事業団立職業能力開発大学校というのが一校あります。二学年から四学年次の在学生が七百七名おります。それから、同じく雇用促進事業団立職業能力開発短期大学校というのがあります。これは施設が二十六校あります。学生は、二学年次ですが、三千三百五十三人おります。もう一つは、都道府県立の職業能力開発短期大学校というのが五校あります。二学年次で三百四十八名。合計しますと、施設としては三十二校、二学年次以上の在校生の総数が四千四百八名。これは平成九年の四月現在の数字でございました。  最近は、昔みたいに高校を卒業して社会人になって新たにということではなくて、高校を卒業してそのまま職業訓練学校に入るケースが非常に多いというふうに聞いておりまして、また、地方の学校では親元からそのまま学校に通っている人が非常に多いというふうにも聞いております。こういう学生に対しては、学生に係る国民年金保険料の免除基準の適用は受けられないのでしょうか、いかがでしょうか。
  210. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 今御紹介のございました職業能力開発大学校等の公共職業能力開発施設の学生さんにつきましては、実は学生免除基準の適用対象にはなっておりません。
  211. 漆原良夫

    漆原分科員 なっていないと私も思います。  この保険料の免除基準対象者は、一の(5)によれば、学校教育法所定の学校以外にも、保険料の免除の対象者として、あんま、マッサージ、指圧師、はり師、きゅう師の養成施設、理容師養成施設、栄養士、美容師の養成施設、それから柔道整復師の養成施設などが免除の対象として規定されているわけでございますが、先ほど申しました都道府県立もしくは雇用促進事業団立の職業訓練大学校の学生が保険料免除の対象にならない理由はどういう理由によるものなのでしょうか。
  212. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 これは、学生を強制適用にいたしましたときに学生免除基準をつくったわけですけれども、そのときの適用対象、学生とは何ぞや、そういう問題につきましては一定の割り切りをしたわけでございまして、その場合、学校教育法に位置づけられておる教育機関であるかどうかというのが一つのメルクマールになったわけでございます。  そういうことで、ただいま御紹介のございました職業能力開発大学校等につきましては学校教育法に位置づけられていないということ、あるいは、こういったところは労働者職業訓練を目的とした施設であり、一般の大学等とは目的を異にしている、こういうことで適用対象にはしなかったということでございます。
  213. 漆原良夫

    漆原分科員 学校教育法上の大学ではない。  しかし、先ほど申しましたように、この一の(5)のアからスまで十三の個別規定には、あんま、マッサージ、指圧師、はり師、きゅう師の養成学校とか、理美容師の養成学校とか、いろいろなことが出ております。学校教育法以外にもこういうものは対象になるんだということで十三規定してあるわけなんですが、同じく一定の技術を身につけて世に出ようとする学生なわけですね。厳密に学生かどうかわかりませんけれども。  同じく一定の技術をつけて世に出ようとして学んでいる、技術を修得している人に対して、あんまさんだとか、はりきゅう、マッサージ師の場合はいいよ、しかし、職業訓練大学校で一生懸命学んでいる人におまえはだめだよという、この差別の合理的な理由は一体あるのかないのか、お聞かせいただきたいと思います。
  214. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 学生の強制適用に際しまして、今申し上げたような学生免除基準をつくり、その適用対象を個別具体的に決めていったわけでございますけれども、こういった職業能力開発学校等につきまして対象にしなかったということについては、今種々御指摘のような問題もあるんじゃないか。  したがいまして、これも新しく制度を見直すということを先ほど来申し上げておるわけでございますけれども、そういった際には、改めてこの適用対象、学生というのは何ぞやということにつきまして、もう一度、根本的にといいますか基本に返ってといいますか、見直す必要があるんじゃないか、こう思っております。
  215. 漆原良夫

    漆原分科員 私もそのとおりだと思います。  実は、なぜ私が細かいことを申し上げたかというと、私が陳情を受けまして、職業訓練大学校に子供を通わせている親御さんからお話がありまして、同じく技術の修得のために理美容師の養成所に通っているお子さんに対しては免除が適用になるけれども、何で職業訓練大学校に通わせている自分のところは免除の対象にならないんですかというふうな質問を受けて、これはもっともだなというふうなことで、ぜひこういう実態を厚生大臣に聞いていただきたいという観点から御質問させていただいたわけなんです。  やはりこれは、物事を学んでいる学生にとってみても、子供をそういうところに送り出している親御さんにとってみても、不公平感は免れないなというふうに考えております。学生の範囲をどうするか、これによって適用範囲がずっと違ってきますので、どうか今後その辺に配慮をしていただきたいなということを申し上げたいと思います。  先ほどちょっとお話がありましたが、年金制度の改正作業について、今作業が進んでいるというふうに聞いておりますが、学生の保険料の支払い方法についてどのような検討をなされているのか、その際には現在の学生に係る保険料の免除規定というのはなくなるのかどうか、この辺教えてください。
  216. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、今の学生の取り扱いにつきましては非常に批判が多いわけでございます。  つまり、学生というのは一般的に収入がない。それで、親御さんの収入によって免除か非免除かを決定しておるわけでございますけれども、結果としまして親が子供の保険料まで払わなければいけない。学生のときには何かと物入りでございまして、学校に納める授業料とか入学金、それだけではなくて、都会に子供を送るということになりますと、都会で生活するには生活費だけで月十万とか十五万とかかかるわけでございまして、国民年金の保険料負担というのが非常に大きな負担になっているということで、見直すべきだという意見が非常に強いわけでございます。  そういうことで、年金審議会でも御議論をいただいたわけでございますけれども、やはり今のようなやり方は改めるべきだということでございます。学生さんというのは、一、二年して社会人になりますと収入を得られるわけでございますので、言ってみれば社会人になってから払う出世払い、そういった方法をとるべきじゃなかろうか。それで、学生時代につきましては、申請していただきまして、学生の所得だけで免除か非免除かを決定する。そして、そういう手続をとっていただきますと、学生時代にスポーツとかバイトで障害になったとしても満額の障害基礎年金は支給をする、こういう制度にしたらどうかという声が強かったわけでございます。  そういうことで、今、制度改正全体についての見直し作業を進めておるわけでございますけれども、学生につきましても、そういった方向で制度を根本的に見直していきたいということで検討を進めているということでございます。
  217. 漆原良夫

    漆原分科員 私、その方向性はまことに公平で、まことによろしいかと思います。早急に進めていただきたいというふうに考えております。  そこで問題になるのは、先ほどからおっしゃっているように、学生とは何かということが一番大きな問題になるわけでございまして、学生の定義をどうするのかということが非常に難しい問題だと私は思います。  したがって、今、学生の定義についてどのような検討がされているのか、その中で、今私が申し上げた職業訓練大学校の学生についてはどのような位置づけをされているのか、その辺、今検討されている内容がわかりましたら教えていただきたいと思います。
  218. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 学生の範囲につきましては、基本的には私どもとしては、従来の学生の免除基準で学生として定義づけられている方々を踏襲すべきであろう、こう考えておったわけでございまして、実は、きょう先生から御質問を受けるまで、こういった職業能力開発学校というのがある、そこの学生さんは高校とかの新卒の方でほとんど占められておる、こういった実態を最近承知したわけでございまして、学生の範囲につきましてはそう突っ込んだ検討はこれまで行ってこなかったというのが正直なところでございます。  したがいまして、きょうのこういう御質問もございましたし、これから学生の範囲ということを、先ほど来申し上げているようにもう一度全体的に見直しをしていきたい、こう思っております。
  219. 漆原良夫

    漆原分科員 最後に大臣に一言お言葉を賜りたいのですけれども、今、学生特例を創設するのだというお話なわけで、その学生特例を創設する趣旨から考えれば、何も学生を学校教育法所定の学生だけに限る必要は私は全くないと思います。むしろ、一般的な学問的知識の修得のほかにも、専門的知識だとかあるいは技術、そういうものを修得するために一生懸命学んでいる、そういう人たちも広く学生として学生特例の対象にすべきだと私は思っておるのですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  220. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 学生に係る保険料の免除基準お話を承っておりまして、これは、今御議論のあったように、大体学校教育法を中心にして学生というものをくくっている感がございます。柔道整復師の引用もなされましたが、こういったものも、学校教育法に一応各種学校として位置づけられているものをくくったもののように思われます。  したがって、各省に設置されております省庁別の職業訓練校あるいはいろいろの各種の学校、教育形態のものもございます。それらをすべて入れていいかどうかということになると、例えば給与をもらって訓練を受けているようなところもございますから一概には言えませんが、今の職業訓練所のようなところであれば、これは実態に即して判断をして、今度の制度改正の特例は適用していいのではないかと思います。  具体的には、その検討の結果によってくくりをさらに実態に即したものにしていきたいと思っております。
  221. 漆原良夫

    漆原分科員 大変積極的なお答えをいただいて、本当にありがとうございました。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  222. 臼井日出男

    臼井主査 これにて漆原良夫君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして厚生省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後二時五十一分散会