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1999-02-17 第145回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成十一年二月十六日(火曜日)委員 会において、設置することに決した。 二月十七日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       伊藤 公介君    植竹 繁雄君       大原 一三君    久間 章生君       小林  守君    大野由利子君       濱田 健一君 二月十七日  伊藤公介君が委員長指名で、主査選任され  た。 —————————————————————— 平成十一年二月十七日(水曜日)     午後一時開議  出席分科員    主 査 伊藤 公介君       岩下 栄一君    植竹 繁雄君       大原 一三君    久間 章生君       小林  守君    山元  勉君       青山 二三君    大野由利子君       並木 正芳君    桝屋 敬悟君       中川 智子君    濱田 健一君    兼務 加藤 卓二君 兼務 上原 康助君    兼務 斉藤 鉄夫君 兼務 辻  第一君   兼務 中林よし子君 兼務 知久馬二三子君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       太田 義武君         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         環境庁自然保護         局長      丸山 晴男君         環境庁大気保全         局長      廣瀬  省君         環境庁水質保全         局長      遠藤 保雄君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         農林水産技術会         議事務局長   三輪睿太郎君         林野庁長官   山本  徹君         水産庁長官   中須 勇雄君         郵政省放送行政         局長      品川 萬里君  分科員外出席者         警察庁生活安全         局生活環境課長 原  芳正君         環境庁大気保全         局大気規制課長 飯島  孝君         大蔵省主計局主         計官      坂口 勝一君         大蔵省主計局主         計官      松元  崇君         文化庁文化財保         護部長     井上 明俊君         厚生省生活衛生         局企画課生活化         学安全対策室長 平山 一男君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 田中 慶司君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 森田 邦雄君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課産業廃         棄物対策室長  仁井 正夫君         建設大臣官房審         議官      倉林 公夫君         消防庁次長   滝沢 忠徳君         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君         環境委員会専門         員       鳥越 善弘君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 分科員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   大原 一三君     岩下 栄一君   小林  守君     松崎 公昭君   大野由利子君     並木 正芳君   濱田 健一君     辻元 清美君 同日  辞任         補欠選任   岩下 栄一君     大原 一三君   松崎 公昭君     山元  勉君   並木 正芳君     青山 二三君   辻元 清美君     伊藤  茂君 同日  辞任         補欠選任   山元  勉君     中桐 伸五君   青山 二三君     白保 台一君   伊藤  茂君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   中桐 伸五君     小林  守君   白保 台一君     桝屋 敬悟君   中川 智子君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   桝屋 敬悟君     大野由利子君 同日  第一分科員辻第一君、第三分科員斉藤鉄夫君、  第四分科員加藤卓二君、第六分科員中林よし子  君、第七分科員知久馬二三子君及び第八分科員  上原康助君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算  〔総理府環境庁)及び農林水産省所管〕      ————◇—————
  2. 久間章生

    久間主査代理 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  主査所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。  本分科会は、総理府所管環境庁並び農林水産省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省庁所管事項説明は、各省庁審査の冒頭に聴取いたします。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算及び平成十一年度政府関係機関予算総理府所管環境庁について、政府から説明を聴取いたします。真鍋国務大臣
  3. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 平成十一年度環境庁関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  まず、予算基礎となっております環境政策の基本的な考え方について御説明申し上げます。  二十一世紀まで残すところあと二年という時期を迎え、未来への発展の基盤を築く上で、現在、環境行政は極めて重要な責務を負っているものと認識しております。  二十一世紀においても国民が豊かで安心できる暮らしを実現していくためには、その基盤となる環境を守り、子孫に引き継いでいくことが不可欠であります。それは、我が国の美しい恵み豊かな自然環境だけでなく、我々の生活しているこの地球環境に対するあらゆる負荷全力で低減していかなければならないということを意味しています。  しかしながら、現在、既に地球温暖化影響海面上昇等の形であらわれ始めるといった地球規模の問題が国際的にも大きな課題となっています。そして、ダイオキシン環境ホルモン廃棄物など生活に密着した問題も次々と顕在化しており、国民に大きな不安を与えております。  私は、こうした問題の一つ一つに対し、果敢に挑戦していこうと考えておりますが、その際、次のような基本姿勢で対処してまいります。  まず、大量生産大量消費大量廃棄という我々のこれまでの経済社会システム生活慣行を見直し、環境への負荷の少ない持続可能な経済社会への転換を進め、これまでとは質の異なる新たな活力ある社会を目指してまいります。  そうした対策とともに、国民の不安を払拭し、安心して生活できるようにしていくために、例えば、ダイオキシンを初めとする化学物質問題などの緊急的な課題について対応をしてまいります。  さらに、環境省創設動きと相まって高まりを見せている国民環境行政に対する期待にこたえ、二十一世紀環境時代とするよう、顔の見える環境行政を進めてまいります。  以上のような基本認識のもと、次の施策に重点的に取り組んでまいります。  第一に、地球環境問題の解決のために、持続可能な経済社会への転換を図ってまいります。  地球温暖化対策については、京都議定書に定められた温室効果ガス削減目標の達成に向けて、地球温暖化対策推進に関する法律に基づく対策基本方針を速やかに策定し、実行に移すなど、二十一世紀における脱温暖化社会実現を目指した総合的、戦略的な対策充実強化を図ってまいります。  また、中国を初めとする各国との政策対話国際協力を進め、アジア太平洋に位置する先進国として、途上国との橋渡しの役割を積極的に果たしてまいります。  さらに、持続可能な経済社会への転換を進める上で、国民のライフスタイルを環境負荷の少ない形に変えていくことが重要であることから、その具体的な取り組み一つとして、現場の体験を重視した環境学習推進等を図ります。  環境事業団事業についても、新たな時代の要請に応じた展開を図るため、今国会において環境事業団法の一部を改正する法律案を提出する予定です。  第二に、ダイオキシン問題や環境ホルモン問題については、国民の不安を払拭するよう、政府全体として早急な対応が求められており、環境庁取りまとめ役としての責務を果たしつつ、未解明の点について早急に知見の充実を図るなどの対策推進いたします。  特にダイオキシン対策としては、土壌汚染浄化対策技術実証調査地方公共団体が行う測定分析への支援等を進めてまいります。  また、有害性がある化学物質環境への排出量等を把握するとともに、その管理を促進する新たな法律案を提出する予定です。  第三に、自動車交通等による大都市における深刻な大気汚染等への対策推進に力を注いでまいります。特に低公害車については、制度的な普及方策のあり方を検討し、大量普及実現を目指します。  第四に、循環型社会形成のため、生産から廃棄に至るまでの、廃棄物リサイクル一体となった望ましい物質循環実現を目指し、システムの構築に向けた取り組み先進的技術評価等を進めます。  また、自然界の健全な水循環の確保が重要であることから、関係省庁と連携して基本的考え方取り組みについて検討を進め、その具体的取り組み一つとしてパイロット事業を実施します。  第五に、里地湿地等を含めた国土全体の生物多様性保全を図るため、第六回自然環境保全基礎調査、いわゆる緑の国勢調査を開始し、基礎データ整備するとともに、里地自然等保全を図ってまいります。  また、野生鳥獣保護管理を強化するため、今国会鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案を提出する予定です。  第六に、公害健康被害者救済に万全を期するとともに、健康被害を予防するための施策等の着実な推進を図ります。  平成十一年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、以上のような基本的な考え方のもとに計上した環境庁予算要求額は八百六十億一千五百万円であり、これを前年度の当初予算額七百九十八億三千五百万円と比較すると、六十一億八千万円、七・七%の増額となっております。  予算要求額の主要な事項につきましては、お手元にお配りしてある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして、説明を省略させていただきたいと存じます。  よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。     〔久間主査代理退席植竹主査代理着席
  4. 植竹繁雄

    植竹主査代理 この際、お諮りいたします。  ただいま真鍋国務大臣から申し出がありました環境庁関係予算主要項目説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 植竹繁雄

    植竹主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 植竹繁雄

    植竹主査代理 以上をもちまして総理府所管環境庁についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 植竹繁雄

    植竹主査代理 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力お願い申し上げます。  また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。岩下栄一君。
  8. 岩下栄一

    岩下分科員 自由民主党岩下栄一でございます。  発言の機会をお与えいただき、大変ありがとうございます。水俣病問題とチッソ支援についてお尋ねをしたい、このように思います。  患者補償支障を来さないためのチッソに対する支援として、熊本県による県債発行が二十年続けられてまいりました。環境庁は、長官名において、平成十年度の中長期的な支援策策定を県に対し約束をされているわけでありますが、いまだ成案を見ておりません。  チッソの債務は、患者県債あるいは設備県債ヘドロ県債、トータルしますと二千二百九十七億円でございます。チッソ株式会社は既に行き詰まっていると言えると思います。  チッソ支援目的は、一私企業の救済ではなくて、患者救済地域振興にその主眼があるわけでございます。  そういうようなことで、一方で自由民主党の小委員会等では議員立法論議も出ておりますけれども、環境庁としては、金融支援策についてどのように考えられているのかお尋ねをいたします。
  9. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  チッソ支援問題は水俣病問題の残された大きな課題でございまして、環境庁といたしましても、その目的が、今先生おっしゃいましたように、患者救済地域経済社会の安定のためのものであり、重要な問題であるというふうに認識しております。  今年度中の中長期的支援策策定に当たりましては、これまでも長官文書に沿って懸命に努力してきたところでございますが、今後ともその実現に向けてさらに全力を尽くす所存でございます。  他方、政治のサイドにおきましても、チッソ支援策につきましては、昨年夏までは自民党、社民党、さきがけの三党によるプロジェクトチームにより検討がなされておりましたし、現在も、先生がお触れになりましたように、自民党環境部会水俣病問題小委員会を中心に議論がなされているところでございまして、私ども政府の方といたしましても、自民党検討作業協力し、よりよい支援策取りまとめに貢献してまいりたいと思っております。
  10. 岩下栄一

    岩下分科員 この二十年間、県並びに県議会、そして県民のこうむってきたストレスといいますか不安感というのは大変大きなものがございまして、かなりのエネルギーが割かれてまいりました。そういうようなことで、政府とされましても、ぜひ早急に一つ方向性を出していただきたい、このように思います。  それから、水俣市並びに周辺町村でありますけれども、そうしたハンディをばねにしまして、暗いイメージを払拭するのに相当の努力を傾けてまいりました。国際標準化機構が定めた環境管理システム国際規格、ISO14001の認証取得にも今乗り出しております。また、公害防止事業も進捗し、仕切り網撤去などもあり、水俣市及び周辺町村、そして水俣湾にはとうに明るさが回復をしております。  そうした中で、公健法上の水俣病認定指定地域というのはそのままであるわけでありますが、この解除についてどのようにお考えになっているかお尋ねをいたします。
  11. 岡田康彦

    岡田政府委員 公害健康被害補償等に関する法律水俣病認定に係る指定地域といたしましては、熊本水俣市、葦北郡、鹿児島県出水市、新潟新潟市の一部及び豊栄市の一部が指定されておるところでございます。  熊本県におきましては、水俣湾内魚介類中の水銀値規制値を下回ってから三年経過したことから、一昨年には仕切り網撤去が行われました。一方で、現在も水俣病認定の申請が続いておる状況にもございます。  こんなこともございますものですから、先生指摘の、指定地域解除の問題につきましては、今後、地域の長期的な環境や健康に関する状況を踏まえながら、将来的な課題として考えてまいりたいと思っております。
  12. 岩下栄一

    岩下分科員 よろしくお願いをいたしたいと思います。  起きたことへの対策としてダイオキシン対策、あるいは未解明な部分への対応として環境ホルモンのいろいろな調査分析、こうした対策に多額の予算がつけられて、環境庁の前向きの努力評価したい、このように思います。  しかし、こうした問題は起こってからでは既に遅いわけでございまして、予防原則を明確にすべきであるというふうに思います。そういう意味で、水俣病教訓をどう生かすかが大変大切なことでございます。  環境ホルモンあるいはダイオキシン、特に所沢ダイオキシン問題等マスコミを今にぎわせておりますけれども、こうした問題に取り組む長官決意を伺いたい、このように思います。
  13. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生が御指摘されましたように、環境ホルモン問題やダイオキシン問題については、水俣病教訓をぜひ生かしていきたいと存じまして、その対応を急いでおるところでございます。いずれにいたしましても、国民の健康や生態系への影響未然に防止する観点から、各種の対応を進めてまいろうと思っております。  ダイオキシン問題については、もう先生御承知のとおりでございまして、国民にかかわる環境保全上の重要な問題と認識しておりまして、従来から、廃棄物焼却炉等に対する規制等各般対策を進めてきましたけれども、所沢の野菜の汚染問題を初め、今後早急に対応すべき課題が多く残されておるわけであります。  政府一体となって取り組んでおるところでございますけれども、昨日からは、厚生省、農水省、環境庁におきましては、埼玉県に十カ所ほどその調査機関をつくりまして、できるだけ早く調査を進めて、安心した数値を国民に出していかなければならないと思っておるところであります。  また、環境ホルモンにつきましても、昨年の十二月に京都世界大会を開きまして、大変な評価をいただいたところであります。しかしながら、意見が大きく分かれるところとなっております。そこで、来年度予算におきましても、第二回の世界大会を開催していただくべく予算お願いをいたしておるところであります。環境ホルモンの知識は日本から発信できるような体制をとって、今後、環境ホルモン問題に取り組んでいく心づもりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  14. 岩下栄一

    岩下分科員 ありがとうございました。  各省庁にまたがる問題でございますし、各省庁との連携を密にされて、国民不安解消のために御努力をいただきますことを心から念願いたします。  それから、水俣病が、大変多くの被害者を出し、また死者も出し、公害の原点と言われてまいりましたが、産業人間社会、あるいは文明と人類のかかわり合いを考える大変大きな契機であり、また教訓であったわけでございますが、これを環境教育にどのように生かしていくのかということをお尋ねしたい。  それからもう一つアマゾン川流域、あるいはインドネシアジャカルタ湾、タンザニアのビクトリア湖などなど、河川あるいは湖沼に水俣病類似水銀中毒が発生をしている、このように聞いております。今長官がお述べになりましたように、日本からさまざまなものを発信していくという観点からしますと、国際協力ということが非常に大きな問題でございますが、どのような国際協力を考えておられるのかお尋ねをいたします。
  15. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  水俣病のような悲惨な公害は再び繰り返されてはならないという決意のもとに、水俣病の悲劇を教訓として謙虚に学び、我が国環境政策を一層推進させるべく努力をしているところでございます。  直近の例で申し上げますと、平成十年度補正予算におきまして、これは仮称でございますが、水俣病情報センターの設置が認められたところでございます。これは、水俣病に関する情報教訓を収集、解析するとともに、インターネット等を通じまして広く国内外に発信する機能を備えた施設の整備を図るものでございまして、水俣病経験契機とした環境教育の拠点となるものと考えております。  また、世界国々に対しましては、水俣病経験から得られた教訓を伝えるセミナーを水銀汚染が懸念される途上国で開催しているところでございまして、インドネシア、フィリピンに続きまして、本年度はタイで開催する予定でございます。  さらに、世界的な水銀問題についての話し合いの場である地球環境物質としての水銀に関する国際会議平成十三年に水俣市で開催することとしております。こうしたことも環境教育の場として十分活用できるものだと思っております。  それから、お尋ねの二点目の世界各地の問題でございますが、先生指摘のように、現在、ブラジル、中国インドネシアバングラデシュ等国々水銀汚染が懸念されております。  国立水俣病総合研究センターにおきましては、従来より、水銀汚染調査研究、住民の健康調査水銀分析技術移転等目的としてこれらの国々専門家を派遣してきております。特に平成八年度には、本センター国際総合研究部を設けまして、水銀問題についての国際的な研究協力を積極的に推進しております。  さらに、主に開発途上国水銀汚染防止対策についての総合的なマニュアル作成事業平成十一年度予算案に盛り込んでおるところでございまして、このマニュアル普及を含め、我が国水俣病経験を生かした水銀汚染未然防止対策等を広く世界に発信してまいりたいと考えております。
  16. 岩下栄一

    岩下分科員 ありがとうございました。  熊本県議会環境対策特別委員長を長いことさせていただいて、私もこの問題に地方立場で取り組んでまいりました。しかし、これはやはり国家的な問題でございます。また、国際的な視点から取り組んでいかなければならない問題でございますし、ぜひ環境庁として、さらにこの問題を一つの大きな課題とした対応お願いしておきたい、このように思います。  時間があと十分ございますが、PRTR汚染物質排出移動登録について、その経過とねらいについてお尋ねをしたい、このように思います。  OECDの勧告を受けて、環境庁としては、中央環境審議会中間答申、そしてまた、時を同じゅうして、通産省においては、化学品審議会中間報告を踏まえて、環境庁通産省、両省庁にまたがる法制化動きが具体化している、このように聞いております。そこで、この立法の背景、ねらいとするものは何かをお尋ねしたい、このように思います。長官お願いします。
  17. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生からただいま御指摘をいただいたように、通産、環境、両省庁にわたります審議会答申を受けまして、両省間でもう何十回もの集いをしてきたところであります。意見調整をして今国会にぜひ法案として提出したいということで、法制局の御指導もいただいておるのが現況でございます。  PRTR制度は、人の健康などへの悪影響未然に防止するため、有害性が認められ、広く環境中に存在していると考えられる多数の化学物質を対象に、これを取り扱う事業者等から、環境への排出量を国に届けさせ、集計、公表するものでございます。これによりまして、事業者化学物質管理を促進し、環境保全上の支障未然防止を図っていくのがねらいでございます。  いずれにいたしましても、新しい法案として世界各国から注目されておる法案でございまして、慎重を期しながら対処してまいりたいと思っております。
  18. 岩下栄一

    岩下分科員 ぜひ実効性の高いものになることを期待いたします。  そこで、この法案作成論議の過程で、環境庁通産省の見解の相違指摘されたというふうに聞いてきたわけでありますけれども、この相違は解決したのかどうか。  通産省産業界立場に立つというのは当然かもしれませんが、特に産業界には、当初、自主管理で十分ではないかという声もあったと聞いています。しかし、環境保全という大前提からしますと、それでは不十分だということは私ども言えるわけでございまして、環境庁考え方は十分盛り込まれたものになっていくのかどうかをお尋ねいたします。
  19. 岡田康彦

    岡田政府委員 先ほど大臣の方からも御答弁を申し上げましたように、通産省と私ども、随分話し合いを続けてまいりまして、既に先生も御質問でお触れになられましたように、通産省と私どもが一緒になりまして、共同で法案の提出をすべく現在努力中でございます。もちろん、通産省だけじゃございませんで、ほかの関係省庁等々とも協議をしている状況にございます。  環境庁といたしましては、環境保全上の支障未然防止観点を盛り込んだ環境保全立法となるよう、調整に全力を注いでいるところでございます。
  20. 岩下栄一

    岩下分科員 産業界を納得させる、産業界立場からのメリットもあると思うんです。排出削減に企業も努力する過程において、環境保全コストの低減につながるというメリットもございますので、ぜひ環境庁がイニシアチブを十分とって、この法案がいわゆる環境保全という大前提を貫いてまとまっていくことを期待したい、このように思います。  それから、対象物質とか対象事業所の選定の基本的な考え方についてはどうかをお尋ねいたしたい。  ダイオキシンとか環境ホルモンなども対象となるかどうか、これは聞いておりませんけれども、化学物質は一般的に十万種とかあるいは数十万種とか言われておりますけれども、この対象物質や対象事業所の選定の基本的考え方お願いいたします。
  21. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  化学物質の中には、例えば、動物実験データで物質としての有害性があることはわかっていても、それが実際に人体等に悪影響が生ずるかどうかなどの科学的な知見が不明確なものもたくさんございます。  このため、PRTRの対象物質といたしましては、このような人の健康影響等との因果関係の判明の程度にかかわらず、まず一つは、人の健康や動植物の生育等に有害性があることが判明しているもので、二つ目には、環境中に広く存在していると考えられる化学物質について幅広く対象にしていきたいというふうにまず考えております。  次に、排出量の届け出を求める事業者等につきましても、対象物質を製造していること、原材料として使用していることなどによりまして、対象物質を環境に排出する可能性がある事業者をできるだけ幅広く対象としたいというふうに考えています。  この際、事業者による排出量の把握、届け出に関する技術的能力及び経済的能力等を考慮しまして、事業の業種及び事業所のすそ切り要件等を定めることによりまして、事業者に過重な負担をかけないようにしたいとも考えております。
  22. 岩下栄一

    岩下分科員 それから、地方自治体の役割についてでございますが、聞いているところでは、国でデータを集約するというか、通産、農水、厚生の三省が届け出を受けて、環境庁取りまとめるというふうに聞いておるわけでありますけれども、化学物質環境リスクというのは地域によって違います。したがって、地方自治体が情報集約というか収集の当事者であることが望ましいのではないかと私は思うのでありますが、地方自治体の役割はどういうふうに位置づけられているか、お尋ねをいたします。
  23. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  地方公共団体は、地域環境状況等を把握し、環境保全に取り組んでいるわけでありまして、地域住民や事業者に、身近な行政主体として広報活動等を効果的に実施できる立場にあるというふうに思っております。  PRTR法制化に当たりましては、このような地方公共団体立場を踏まえまして、一つには、国に届けられた事業所別の排出量データをすべて速やかに都道府県に通知し、これを活用して、地域実情に応じた環境保全施策に活用していただくこと、二つには、国が行う環境モニタリング調査等に対して意見を述べてもらう機会をつくること、それから三番目には、事業者に対する技術指導や広報活動等による国民の理解の増進等の役割を果たしていただくことを現在考えております。
  24. 岩下栄一

    岩下分科員 最後でございますが、PRTR実効性を高め、国民の健康を守るために、このPRTRで得られるデータをどう活用していくのか、それからこのPRTRを既に実施しているアメリカ、カナダ、オランダなどの制度をどう参考にしていくのかということについてお尋ねをいたします。
  25. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  まず最初の御質問でございますが、PRTR制度の実施によりまして、有害性が認められ、広く環境中に存在していると考えられます多数の化学物質を対象に、その排出量等が把握されることとなりますので、こうしたPRTRの実施により得られますこれらのデータにつきましては、環境保全政策の基礎的な情報として活用する、そしてまた、必要に応じ、人の健康や動植物の生息への影響調査を行うことなどによりまして、国民の健康等に対する影響未然防止に努めていきたいというふうに考えております。  また、PRTRの実施が個別の事業者における化学物質管理を促進する動機づけとなり、環境保全に資するものとなるような制度にもしたいと考えております。  それから、二点目の御質問の諸外国との対比でございますが、御指摘のように、PRTRは、アメリカ、カナダ、オランダ、英国などの諸国で既に法制化されております。  例えば、オランダでは、大規模な事業場だけでなく、それ以外の自動車などの発生源も含め、環境汚染物質の環境への排出量の全体を把握し、環境政策に活用しております。また、アメリカやカナダでは、PRTRの実施により、事業者の自主的な努力が促進され、化学物質環境への排出量の削減がなされているというふうにも聞いております。さらに、先ほども出ましたが、OECDでは、一九九六年二月にPRTRの制度化に関する勧告を行っている状況にございます。  こうした諸外国や国際機関の状況も参考にしつつ、環境保全の成果が上がるよう対象物質や対象事業所を適切に選定し、また手続や技術的な手法を定めることによりまして、国際的に遜色のない制度にしてまいりたいと考えております。
  26. 岩下栄一

    岩下分科員 ぜひ実効性が高まることを心から期待をして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  27. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて岩下栄一君の質疑は終了いたしました。  次に、並木正芳君。
  28. 並木正芳

    並木分科員 公明党と会派を組んでおります改革クラブの並木でございます。どうぞよろしくお願いします。  主として、ダイオキシン対策についてお伺いしたいと思います。  青酸カリの一万倍、サリンと比べても二倍以上の毒性がある、こう言われております史上最強の毒物、環境ホルモンでもあるダイオキシンにつきましては、その発がん性あるいは催奇性などを含めて、再三質問もさせていただいておりますので、真鍋大臣もよく御承知のことと存じます。  このダイオキシンが、この永田町からもほど近いといいますか、約三十キロほどしか離れておりません川越市、狭山市にまたがる通称くぬぎ山と呼ばれる雑木林の中に、わずか五百メートルぐらいの距離のところに十五カ所もの産業廃棄物焼却施設が密集し、周辺の土壌からは大変高濃度で検出され、この山のちょうど南側に位置します、私の選挙区でもあります所沢市の住民は、健康の不安におののき、また、数キロ離れた公園の土壌からまた大変高濃度のダイオキシンが発見されたということで、子供たちにも汚染の影響がある、こういうことも私が再三指摘したとおりでございます。  これに対しまして、昨年十二月から、焼却炉の排出規制強化や全国的規模での汚染調査の開始をする、そういった対策に一歩踏み出していただきました。そのことについては一定の評価をいたしておるところでございます。しかし、まだこの問題、なかなかすぐには解決しないというか、これからさらなる対策を求めていきたい、こういうふうに感じているところです。  そうしたやさきに、このたび、テレビ朝日の報道でありますけれども、所沢産の野菜が高濃度のダイオキシンに汚染されていると。実は、今もう誤った報道であったということになっているわけですけれども、こういうものをきっかけに、所沢産のホウレンソウを初め埼玉県産の野菜の販売中止が相次いで、二月十日までの被害額がおよそ三億円と言われて大問題になっているわけであります。大変な苦労をして育てられた野菜が売るに売れないという農家の方の怒りというのは、察するに余りあるところであります。  そこで、JA所沢市では、二年ほど前に行った野菜のダイオキシン調査結果を発表して、そのデータにより、政府が、これは直ちに健康に影響が生じるとは考えられないと一応の安全宣言を行ったわけです。しかし、一兆分の一グラムという単位で健康に障害があらわれる、こういう物質ですから、もちろん目にも見えないわけです。  そういうことを考え合わせますと、単に安全宣言だけで、一たん生じた風評的な被害、特にテレビという影響力が大きいものによって生じた被害をすぐに払拭できるものではないというふうに考えております。  先ほどのお話にもありましたが、昨日から環境庁厚生省、農水省で調査を開始され、来月中には公表されるということですけれども、そのデータもその安全基準というのが不明確である。しかも、今特別に所沢周辺の地域調査されるということで、全国的調査は後から来るということですから、比べるのにもなかなかちょっとデータが不足している。そういうようなところで、どういうふうに評価していいか、来月公表されるこのデータというのが戸惑いを生むものであってはいけないのかなというふうにも考えます。  そこで、まずこの安全基準ということですけれども、これをどのようにお考えになっているか。ドイツ等先進国のいろいろな例もあるわけですけれども、その辺について、真鍋大臣からお伺いしたいと思います。
  29. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 ダイオキシン問題につきましては、当初、平成十一年度予算で計画を立てまして調査をすることに相なっておったわけであります。しかし今、予算審議中でございますし、しかも、所沢における野菜の問題点が大きく取り上げられたところでありますので、早急にその対応を図らなければならないということで、環境庁から厚生省、農水省に呼びかけまして、緊急対策措置ということで事務レベルの会議を開催してもらいました。  その結果、予算の前倒し等々をしながら、ここ一カ月ぐらいの間に早く調査結果を出そうということに相なったわけであります。昨日から、所沢の七カ所を初めといたしまして、狭山市や川越市、そしてまた三芳町にまたがる調査を十カ所においてやっておるところであります。  その結果を待ちまして、各国の安全基準度というようなところも照合しながら数値を出していかなきゃならない。この数値というのは、兆分の一とかなんとかいうことでありますから、非常にミクロな数値ということになってくるわけでありまして、その数値の出し方にも大きな問題があるかとも思うわけでありますが、三省庁で十分連絡を密にした上で、安全宣言なる数値を出していくつもりでございます。  今はそういう過程でございますので、これが安全数値であるというようなことは申し上げられませんけれども、そのような心づもりで対応していくつもりでございます。
  30. 並木正芳

    並木分科員 こうした微細な物質なのでデータがひとり歩きするということもありますので、ぜひ安全基準というのを、それなりに客観的な、世界的基準にも見合ったものを早急に出していただきたいというふうに思うわけです。  また、この基準の設定に当たっては、御存じのとおり、これまでダイオキシン対策というのは日本はややおくれをとってきたというふうにも言われております。今早急に対策がさまざまな形で講じられている、御案内のとおりでございます。  また、世界一のごみ焼却大国といいますか、産廃まで入れるとこれは掌握し切れないぐらい、何万カ所という焼却の施設があるということです。そういったことを考えると、既にかなりの汚染が進んでいるということからすれば、かなり設定基準を厳しく考えていいんじゃないかと私は思うわけです。  環境庁はこれまで、一日のダイオキシン暴露の健康指針値を体重一キログラム当たり五ピコグラムとしてきました。厚生省は危険値というようなことでちょっと感覚が違うということですけれども、厚生省より進んだものではあったわけですが、WHOでは、御承知のとおり、四ピコグラムぐらいでも発がん性があるというふうな報道もなされた、そういうことを既に発表しているということです。  そういうことを勘案すると、この指針値をさらに厳しくする必要があろうかと思います。そして、それに関連する大気汚染防止基準、これも当然連動して厳しくなっていかなきゃならないと思いますけれども、この辺については今いかがお考えでしょうか。
  31. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 先生の言われております健康にかかわる指針値でございますが、厚生省はTDIという形でございます。  私たち環境庁の方で考えましたものは、当然食物とかに影響があるということで、環境をより積極的に守ろうということで五ピコを決めた。そして、その五ピコを決めて、それから具体的に、大気の中における状況というのはどうあるのかというふうに導き出しました。ですから、五ピコを頭に置きながら、現在の大気汚染防止法で言う指針値の〇・八ピコというのは決められたというふうになります。  ですから、今後のTDIの厚生省環境庁との話し合いの検討結果を待って、それに基づいて決められていくという作業になるというふうに思っております。
  32. 並木正芳

    並木分科員 WHOが出したそういう数字については、今どのようにお考えでしょうか。
  33. 田中慶司

    ○田中説明員 御説明申し上げます。  厚生省としましても、委員指摘の昨年五月のWHOの専門家会合におきまして、耐容一日摂取量の見直しという報告書が出ました。これを踏まえまして、我が国としましても、ダイオキシン類の摂取による安全性の基準となるTDIの見直しを早急に進める必要があるというふうに考えているところでございます。  今環境庁の方から御説明ありましたように、共同でTDIの見直しを行うということにしておりまして、先月、一月二十八日に両省庁専門家による合同会議を開催いたしたところでございます。この専門家による検討結果を踏まえまして、食品衛生法に基づく基準の設定を含む食品衛生上の対策の必要性についても、食品衛生調査会等において検討してまいりたいというふうに考えております。
  34. 並木正芳

    並木分科員 では、それはその辺の結果を待ちたいと思います。  今ダイオキシンという話をしてきたわけですけれども、ごみ焼却によってはまた、ダイオキシンはもちろんですけれども、それだけでなくてベンゼンだとか四塩化炭素、トリクロロエチレンとかいろいろな有害物質が排出されるおそれがあるわけです。ダイオキシンの数字が一番最強の毒物ということで当然注目されているわけですけれども、これ以外の、今申し上げたような有害物質の調査については既に行っておられると思いますけれども、今後の取り組みについても含めてお伺いしたいと思います。
  35. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 平成九年二月に、有害大気汚染物質に係る環境基準として、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンの三物質が決められました。そのときダイオキシンの指針値も決められたわけでございます。そして、今後の問題として考えていくときに、現在、物質として二百三十余物質が問題にされておりますので、その中から優先的に取り上げていかなきゃならない物質を選定しながら、逐次この問題については取り組んでまいりたいというふうに思っております。  なお、これにかかわっては、関係の文献とかそういうものを集めなければいけませんものですから、専門家意見も十分聞きながら、具体的には大気の状況、それから自然界状況というのをモニターしながら、具体的にどう対応するかということで決めていくことが当然今後望まれることだというふうに思っていますので、その辺のところは、モニターシステムを含めて十分な検討を加えて対策を立てていくということは考えていかなければいけないものだというふうに思っています。そのためにも関係省庁との連携は十分とっていくつもりでおります。
  36. 並木正芳

    並木分科員 その調査と、さらに、規制に関してアメリカが一つの例として挙げられますけれども、いわゆる発がんリスクという観点、許容できる生涯の発がんリスクをもとにして、百万人に何人とかこういう基準で規制を行っているわけですけれども、日本ではそうした環境基準は今のところ検討されているのかどうか。私は、今後検討すべきじゃないか。ある意味で非常に素人にわかりやすい基準なので、その辺についてはいかが今お考えでしょうか。
  37. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 発がんリスクを取り入れて考えていくべきではないかということでございますが、まずアメリカのところをちょっと御紹介申し上げます。  アメリカでは、一九九〇年に改定されました大気清浄法に基づき、大気中の有害大気汚染物質の削減のため、排出基準をまず炉の技術水準に基づいて設定して排出抑制を行い、さらに、将来、相当程度有害大気汚染物質によるリスクが残存すると評価された場合には、先生の御指摘のとおり、発がんリスクに基づいた排出抑制も検討することになっている。また米国では、現在までに、我が国の有害大気汚染物質に相当する環境基準については設定されておりません。  なお、欧州においては、我が国環境基準と必ずしも同様のものとは言えませんが、生涯リスクに基づく環境目標値等の設定を行っている国が一部にございます。  我が国では、先ほど申しました平成九年の二月に有害大気汚染物質の三物質を決めたときがございますが、このうち特にベンゼンについては、生涯の発がんリスクをもとにして環境基準の設定を行ってきたところでございます。  そういう意味で、先生のおっしゃるように、今後、有害大気汚染物質に係る環境基準の設定の検討というところでは、それぞれの問題点の指摘を頭に置きながら検討してまいりたいというふうに思っております。
  38. 並木正芳

    並木分科員 ところで、先ほどのお話に戻らせていただくのですが、例のくぬぎ山というところに施設が集中して被害が南側の所沢市などの地域に及んでいる。この報道の問題に関して中川農林大臣は、あす質問させていただきますけれども、原因者負担だというふうなお話もあったようなんですけれども、この被害というのが、複合的な汚染あるいは総量的汚染、一つの工場だけでということでなく、あわさって危険があるというふうになっています。極端に言うと、我々がたき火をしてもそこからダイオキシンが出るというようなこともあるということでは、どうしてもなかなか、規制が一個ずつではやはり効果がない。そういうことで、ぜひ総量的な規制を考えるべきだということを再三述べてきたわけですが、この辺について、ただいまの見解、いかがでしょうか。
  39. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 先生から総量規制について何回か質問をされております。そのことも頭に置いてございますが、現在の考え方でございますが、ダイオキシン類の発生源対策については、廃棄物焼却炉に対して実施可能な最善の対策を前提に排出抑制基準を定めているということで、まず、早急に個別発生源対策ということによって地域の総排出量を削減することが必要であると考えております。それとあわせて、先ほど申しました大気中の〇・八ピコというのを頭に置いて、個別発生を抑制していきたい。  この規制の徹底によって四年以内に、規制前の全国のダイオキシン類の排出量の約九割が削減できると試算してございます。  そういう意味で、昨年の十二月一日から規制が新しい形で始まっているわけでございますが、そのことを踏まえながら、今後経過を追いかけながらこの達成を早めるよう考えてまいりたいということでおりますが、環境基準の達成が困難な場合には総量規制についても検討してまいりたいというふうに思っております。
  40. 並木正芳

    並木分科員 国として全体的に個別規制からということは、それはそれでわかるところもあるんですけれども、先ほどの話というのは、地域的に施設が集中して、特に所沢周辺というのは東京からごみを一番出しやすいところだということで問題が起きているわけです。  その辺、地域に限定されるということなら、自治体がそれぞれの状況に合わせて自治体の条例で規制を行える、そのようにある程度幅を持たせた規制値をつくる、あるいは、ある一部分の権限を都道府県知事に移譲する、そういう考えもあるわけですけれども、それについてはいかがお考えでしょうか。
  41. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 この問題についてでございますが、大気汚染防止法の第三十二条の中で考えていきますと、自治体の条例による対応ということは可能でございます。そして、条例によって、地域の実情に即して技術的対応可能性を考えながら厳しい基準値を設定するということが可能かと思います。  また、ちなみに具体的例を申し上げますと、埼玉県で条例を設けておりますし、所沢市でも条例を設けておりますし、狭山市でも条例を設けているということでございますから、そういうことで、具体的に地域状況をかんがみながら、大気汚染防止法とあわせて具体的施策実効性ということをどのように担保していくかという考え方で、県と市町村とも合わせながら仕事をしてまいりたいというふうに思っております。
  42. 並木正芳

    並木分科員 そうすると、そういう地域の中で、まさに私の出身地の市で独自の条例をつくったという点では画期的だったわけですけれども、現状では、そういう中での総量的規制とかは、ある意味では地域的にやっていっていただきたい、そういうことで一応よろしいのでしょうか。
  43. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 総量ということより、法の中で、先ほど申した具体的な個別案件と、それから〇・八ピコという全体をあわせながら、具体的にかなり積極的に進められる、それが地域の条例に基づいて、一定地域をある程度上手にカバーできるような部分として出てくるかというふうに思っています。ですから、今後とも、地域の条例と大気汚染防止法とを組み合わせながら見ていくという作業が必要かと。そして、その条例の効果の出し方ということをまた市町村とも十分話し合いながら進めていくという作業があってできるものというふうに思っております。  ですから、いつも大臣から、いつも県、市町村を頭に置いた行政をしなさい、こう言われておりますので、こういう横出しの部分、それから規制の強化の部分の条例を持っているところとは緊密な連携をとりながら仕事を進め、その評価をしてまいりたいというふうに思っております。
  44. 並木正芳

    並木分科員 これもやや自治体行政になる部分もあるわけなんですけれども、いわゆる未規制の小型焼却炉、これも相当量のダイオキシンが排出されるのではないかと言われているわけです。  規制対象施設の規模要件を下げて、ダイオキシン類の排出と関連の深いばいじんを規制物質として排出基準を設定するとともに、小型焼却炉について、構造基準、維持管理基準を明確化して、国で管理するというのは非常に難しい部分があるかと思いますけれども、各地方自治体などで行政指導を強化させるという方向に行くべきと考えるわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  45. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 未規制の小型焼却炉については、先生のおっしゃるとおり、私たちとしては十分なデータを持っていないということが一つございますが、一時間当たりの焼却量が二百キログラム未満の小型の焼却炉ということでございます。対象にはなっておりません。  そういうことで、今後についてどういうふうに考えていくかということですが、前から国会等で先生方から指摘されているとおりでございまして、ダイオキシン類の排出の実態について、今年度、十年度の予算の中で緊急に調査をしているところでございます。それに基づきまして、効果的なダイオキシン類の排出抑制対策について、法や条例による対策ということをどのように考えていくかということになるかと思っておりますが、現在、その調査結果が出ることを待ちながら、具体的に専門家のところで相談をしてまいりたいというふうに思っております。
  46. 並木正芳

    並木分科員 ぜひ積極的にお願いしたいと思います。  次に、土壌のダイオキシンということなんですけれども、去年まとめた環境庁中間報告だと、土壌中のダイオキシン類に関する検討会という中で、市街地の暫定基準値を土壌一グラム当たり千ピコグラムとして、濃度がこれ以上のときは土壌の除去や覆土などの対策を行う。私も、これについて、基準が今までなかったということでは大変評価をしているわけですけれども、もう御存じのとおり、ドイツなど環境先進国においては、非常にヨーロッパの国がいろいろ接しているという事情にもよるのでしょうけれども、大変厳しい基準が設けられています。公園や、あるいは子供の遊び場というのを、一般住宅地とは分けて百ピコグラムとしているわけですけれども、御存じのとおりでございます。  日本は、先ほども述べましたとおり、大変対応がおくれ、汚染も進んでいる。また、世界一のごみ焼却大国だ。そういうようなことを考えて、いろいろな場所で子供たちも暴露される、浴びるということを考えると、こういう点で、公園だとか校庭というのはどうしても区別して基準を設けるべきだというふうに考えるわけです。今、千ピコというのが中間報告のレベルでやっとどうやらできたというところですから、なかなかその結果がまだ見えないところかもしれませんけれども、私としては、ぜひそうすべきである、公園、校庭とか、特に子供たちに配慮すべきだと考えるわけですけれども、その点については今後どのような検討をされるのでしょうか。
  47. 廣瀬省

    ○廣瀬(省)政府委員 先生のお話の中にありましたとおり、土壌中のダイオキシン類に関する暫定ガイドラインは、汚染土壌の対策上緊急に必要とされていることから、土壌中のダイオキシン類に関する検討会を設けました。現時点で知り得る科学的な知見及び諸外国における事例等をもとに緊急に提案したものでございます。  この値は、諸外国で居住地等に係るガイドライン値として用いられている、先生のおっしゃる千ピコグラム・パー・グラムの土壌からの摂取量を推定したところ、汚染土壌の上で例えば七十年間毎日生活を続けたとしても、土壌からのダイオキシン類摂取量に土壌以外の一般的な生活環境からの摂取が加算されても健康リスク評価指針値を下回るとの判断を踏まえ提案されたものと理解しております。  子供への影響への配慮につきましては、国民からもさまざまな意見が出されております。現在、これらの意見を整理し、引き続き専門家検討していただいているところであって、その結果を踏まえて適切に対処してまいりたいというふうに思っております。  前の千ピコを出すときの考え方の中で、子供は外で遊ぶ機会が多いということがあって、土壌との接触が当然多頻度にわたることから、ゼロから六歳の子供の土壌摂取量を百五十から二百ミリグラムと大人の二、三倍多く見積もっているという考え方も出してございまして、その中で千ピコというのを考えてはございます。  いずれにしても、子供がどういう形で土壌への接触を空気から、口からしていくのかというようなことを、文献とかそういうものも含めてよく精査をしていく中で子供の問題を考えていく。  それからもう一つ、戻りますと、先ほど、厚生省環境庁でTDIの検討をするときに、当然どのように取り組むかという作業の検討も行われますので、それを見ながらも、なおこの研究会にも通して十分に検討していくということになるかと思っております。
  48. 並木正芳

    並木分科員 子供に対して、体重一キロ当たりとかいうような基準もあるわけですから、特にこれからの時代を担っていただく人たちですから、当然その辺の配慮を積極的にお願いしたいと思います。  実は、冒頭述べましたとおり、去年十二月からの排出規制強化で、廃棄物を処理し焼却する一部の業者が廃業したり転業したりしたいと、くぬぎ山等々でもそういう例も出てきています。そういう面では、ある意味で大変好ましいことかと思いますけれども、こういう業者に対して所沢市等では転業の奨励金というものを出しているわけです。こういう施策が本来いいのかどうなのかというのはありますけれども、何せやむにやまれぬ方策でもあるわけです。  この辺について、一つの自治体が、ある意味でのしわ寄せを全部負うということでは問題があるかと思いますけれども、こういった業者の転業等々、あるいは炉の撤去推進のための資金援助策、こういうことについてどのように考えておられるのか。厚生省管轄が大きいかと思いますけれども、各省庁にまたがる問題かと思いますので、ぜひよろしくその辺をお伺いしたいと思います。
  49. 仁井正夫

    ○仁井説明員 お話ございました規制への対応でございますが、基本的には、廃棄物の処理焼却施設に対する規制の強化、これに対しましては、設置者において改造等により適合の努力をしていただくということが基本でございます。私どもとしては、そういった改造の努力支援するという意味で、税制上の優遇措置あるいは環境事業団による特別な融資制度といったような支援措置を用意しているところでございます。  なお、その設置者の御判断で業を廃止されるというところについて、基本的に、みずからの責任においてというのが基本の考え方ではないかというふうに思っております。
  50. 並木正芳

    並木分科員 まだ数点お聞きしたいこともありますけれども、時間が参りましたので、ありがとうございました。
  51. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて並木正芳君の質疑は終了いたしました。  次に、知久馬二三子君。
  52. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 私は、社会民主党・市民連合の知久馬二三子でございます。  私は、地元鳥取県の妻木晩田遺跡群の保存問題について、文化財保護について文化庁に質問させていただきたいと思います。  先人の残した文化遺産を子供たちの世代に引き継ぎ、子供たちが肌で触れることができる生きた教材とするためにも、文化財の保護は極めて重要だと思いますが、まず文化庁のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  53. 井上明俊

    ○井上説明員 お答えを申し上げます。  文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことのできないものであるとともに、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであり、その適切な保存と活用を図ることは極めて重要であると思っております。  この点、文化庁としましては、史跡等の保存整備、活用の推進、国宝、重要文化財の保存修理の充実、無形の文化財の次世代への継承発展、文化財保護に関する国際交流、協力推進などの諸施策を積極的に展開しているところであり、今後とも文化財の適切な保存、活用に努めてまいりたいと考えております。
  54. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 ありがとうございました。  ただいま文化財保護の意義についてお聞きしましたが、実は私の地元で重要な文化財が今破壊の危機にあり、大きな問題となっております。それは、鳥取県の西部、淀江町と大山町にまたがる妻木晩田遺跡群でございます。  妻木晩田遺跡群は、秀峰大山に連なる標高百メートルから百五十メートルの丘にあり、日本海を間近に望む風光明媚な位置にあります。この遺跡群は、弥生時代の後期、一世紀後半から三世紀前半の約二百年間営まれた集落と墓地であることがわかりました。調査、発掘が進むにつれて、考古学、歴史学の見地から極めて希有な遺跡であることが明らかになり、全面保存を求める声が非常に強くなっております。多くの市民団体によって取り組まれている妻木晩田遺跡群の保存を求める署名も、昨年の十一月から三カ月で一万六千人と急増し、一月二十六日までに約五万六千名に上る署名をとっております。  さらに、韓国遺跡保存保護対策委員長のシン・ギョンチョル釜山大学教授、文化財全国保存協議会代表委員の甘粕健新潟大学教授、さらには作家の黒岩重吾氏など日韓の二十人の考古学者が、鳥取県のゴルフ場と遺跡の共存案に対する抗議文を送り、経済優先主義ではなく自然環境、歴史遺産を大切にする世界的趨勢を深く受けとめるべきと主張しています。  私たち社会民主党も、土井党首を先頭に、去る一月三十日に現地の妻木晩田遺跡群を視察してまいりました。土井党首も、これだけ大規模な遺跡がほぼ完全な形で残っていることは重要なポイントで、当時はどうした暮らしをしていたかと古代に思いをはせておられました。そして、土井党首は視察後の会見で、文化庁や学識経験者からは、この遺跡は国内でも得がたい遺産であり、またこの遺跡を破壊するようなことにでもなれば国内には保存に値する遺跡はないとの意見も聞いている、この景気の悪い現在、何が保存かといった意見もあるでしょうが、百年後、二百年後の子孫に私たちが何を残したかということからすると残すべき遺跡だと思う、継続中の四者協議では文化庁や学識経験者の意見も当然反映させるべきではないかと述べました。  私ども社会民主党は、鳥取県に対して、遺跡の全面保存を働きかけ、現在行われている四者協議、県と淀江町、大山町、そして開発業者の京阪電鉄に、文化庁や学識経験者を交えるよう強く要請しているところでございます。  ところで、この妻木晩田遺跡群は、高地性弥生大集落と四隅突出型墳丘墓がセットで見つかったということで、とても珍しいということでございます。そして、その規模においても、佐賀県の吉野ケ里遺跡をはるかに上回る壮大な集落であるとも言われていますが、発掘調査がほぼ終わった今日、文化庁はこの遺跡についてどのようにお考えでしょうか。また、調査官の方が二度にわたり、また文化庁長官も御自身が現地に入られたとも聞いておりますが、妻木晩田遺跡群は国史跡に十分値するものと考えてよろしいでしょうか、お伺いいたします。
  55. 井上明俊

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  妻木晩田遺跡につきましては、平成七年から三カ年にわたりまして、大山町及び淀江町により発掘調査が行われたところでございます。  これまでの発掘調査の結果からしますと、弥生時代後期を、今から約千八百年前と言われておりますが、中心とする広い範囲にわたる大集落跡でございまして、山陰地方を中心に独特な発達を見せる四隅突出墓や環濠、多数の掘っ立て柱建物跡、または竪穴式住居跡、大型建物跡等が一体として良好に保存されているものでございます。妻木晩田遺跡は、遺跡の規模、内容の面から、弥生時代社会構造や、クニが成立する時代の歴史を探る上で貴重な遺跡の一つであるというふうに認識をしております。  また、史跡として指定できるかどうかというお尋ねでございますが、国の史跡として指定するに当たりましては、文化財保護審議会に諮りまして、専門的な観点から御審議をいただくことが必要でございます。これまでの発掘調査の成果及び現地を視察しました文化庁の調査官の所見によりますと、国の史跡に値する価値を有しているものであるというふうに考えております。
  56. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 ただいま大変貴重な史跡であるということをおっしゃいました。  それで、文化庁とされましては、県への指導についてどのように考えておられますか、ちょっとお伺いしたいわけです。  この妻木晩田遺跡群の保存運動を進めている市民グループが鳥取県に情報公開を求めて開示された文書、これは昨年二月二十五日から六月六日までに県の教育委員会文化課と文化庁の協議経過を示すものです。そこでは、協議のたびに文化庁は、妻木晩田遺跡群を国史跡指定として全面保存が必要なことを強調されております。県は開発の意向を崩さず、全面保存は困難との立場をとってきていることがわかります。特に、文化庁はゴルフ場全域の百五十六ヘクタールが国史跡に相当するというお考えと聞いておりますが、いかがでしょうか。
  57. 井上明俊

    ○井上説明員 妻木晩田遺跡は、発掘調査の結果、ゴルフ場の開発予定地であります丘陵の全域にわたり弥生時代後期の遺跡が広く発見されておりまして、それらが相互に関連を有しているというふうに考えられております。このため、一つのまとまりを持った遺跡として保護していくことが適当と考えておりまして、全面保存が可能であれば、ゴルフ場予定地の百五十六ヘクタールについて史跡として指定することができるのではないかと考えているところでございます。
  58. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 実は、二月九日に四者協議が開催されております。県は、京阪電鉄が提出しているゴルフ場のコースのレイアウト変更案を許可せず、県独自に作成したコースの変更案を示しました。それは、重要遺構十二カ所のうち、洞ノ原地区の四隅突出型墳丘墓群と環濠、松尾頭地区の首長などの住居跡の遺跡四カ所、約六・五ヘクタールを残すというものであります。  あくまでゴルフ場開発にこだわる県の姿勢に多くの批判が上がっておりますが、県の案は実質的に文化財の破壊にほかならないと思うのですが、これについても文化庁のお考えをお聞きしたいと思います。
  59. 井上明俊

    ○井上説明員 現在、鳥取県、地元大山町、淀江町及び事業者であります京阪電鉄の四者において、妻木晩田遺跡の保存問題について協議が行われているところでございます。  二月九日に行われました協議の場におきましては、鳥取県から提案された、コースレイアウトを変更して遺跡の一部のみを現状保存するという案は、その検討の中での一つの案として出されたものというふうに承知しておりますが、文化庁としては、従来から妻木晩田遺跡が全面的に保存されることが望ましいと考えているところでございまして、その一部のみを現状保存するという提案は、遺跡の保護の観点からは必ずしも適切なものとは言えないというふうに考えております。  今後、関係者の間でさらに協議が進められ、遺跡として一つのまとまりのある形で保存できるよう御努力いただきたいと考えております。
  60. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 全面保存を望んでおられる文化庁さんでございますけれども、その財政措置等についてちょっと一言お伺いしたいと思います。  その遺跡の一帯は、京阪電鉄が計画しております大山スイス村ゴルフ場の予定地となっており、京阪電鉄はこれまでに、用地取得費として三十六億円、発掘調査費など十四億円、計五十億円を投資したと言われています。現地の淀江町や大山町、鳥取県の方は、遺跡を全面保存した場合の財政負担を大変心配しておられます。  そこで、国史跡の指定になればどのような財政措置があるのか、お尋ねいたします。鳥取県との協議の中でも、遺跡の全面保存に向けて、文化庁は史跡整備費についてもさまざまな手だてがあると説明されているようですが、その点についてもお聞きいたします。
  61. 井上明俊

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  国が史跡の指定をした場合に当該土地を民間が所有している際には、指定後にその保存のために地方公共団体が必要な土地を購入するという場合に、買い上げに必要な経費の一部、これは八〇%でございますが、これを国が補助するという制度がございます。これは、史跡等購入費国庫補助金というものでございまして、八割補助を行うということでございます。  また、指定されました後、指定した史跡について、これを適切に保存するとともに広く活用するために地方公共団体が史跡の整備、活用を行うということがございますが、その場合にはまた、必要な経費の一部、これは五〇%でございますけれども、国が補助する制度がございます。  やや具体的に申し上げますと、史跡等保存整備費、これは一般国庫補助と言っておりますが、これは例えば、整地を行ったり、古墳等の盛り土、張り芝、囲さくなどを行うための補助金もございますし、二番目としては、史跡等活用特別事業費国庫補助、一般的にはふるさと歴史の広場というふうに言っておりますけれども、これは例えば、歴史的建造物等の復元でございますとかガイダンス施設の建設などに要るお金の補助金でございます。また最後に、三つ目としましては、地方拠点史跡等総合整備事業費国庫補助金というものがございまして、これは、史跡の全体像を認識できるような復元的な整備でございますとか体験学習施設、休憩施設の整備などに対する補助金でございます。  こういった補助金がございまして、これを鳥取県の方にも説明をしてきたところでございます。
  62. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 大変文化庁にとっては高額な補助だと思うのです、八割という補助は。そうした中で、やはり鳥取県、地方の方にも何とか説得をしていただくようなことはできないものかなと思っておりますが、それは地方の実態に沿うことですから、ここでとやかくは申しません。  次に、建設省にお願いしたいのですけれども、我が国固有のすぐれた歴史的、文化的資産の保存や活用を図るため、歴史公園などの事業を行われていると聞いておりますが、どのようなものがありますか、御説明願いたいと思います。特に整備費については、文化庁以外にもあるかどうか、どのようになっておりますか、お聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  63. 倉林公夫

    ○倉林説明員 お答え申し上げます。  建設省では、個性と活力ある都市づくりを図るための都市公園の整備推進しておりまして、歴史的、文化的遺産や歴史的風土の保存活用もその重要な要素の一つと認識しております。  そのため、平成九年度に地域ルネッサンス公園整備事業を創設いたしまして、史跡を含む身近な歴史風土や地域の特徴となる景観を地域一体となって保存、復元あるいは体験する公園の整備、こういったものにつきまして地方公共団体支援を行っております。  また、平成十年度には緑の歴史文化地区保存整備事業を創設いたしました。これは、歴史文化地区の保存計画の策定なども含めまして、史跡等と一体となった都市公園の整備について補助を行いまして、地方公共団体支援を行っているところでございます。
  64. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 ありがとうございました。本当に、省を超えてこれらの費用でこの貴重な遺跡を何とか保存していきたいなという気持ちでいっぱいでございます。  考古学者のイラスト作家、早川和子さんは、西尾鳥取県知事に、「こんな遺跡公園にしてみませんか」というイラストをかいて、古代のロマンあふれるイラストを送られました。そこには、大きな樹木でつくった巨大な望楼と四隅突出墳丘墓、遺跡群の遠景が描かれています。  早川さんは、子供たちからお年寄りまで多くの一般市民が、古代の人たちの息吹を感じながら雄大な美しい自然景観を楽しむことができる自然公園ができたらと祈りながら描いたということで、こういうイラストが新聞に載っていたわけなんです。ここにゴルフ場がなくても、こんなふうな公園になって、より多くの子供たちが歩いて、さわって、見ることができるようになったらどんなにすてきだろうと思いますというメッセージも送っておられます。  私も、今、子供たちというか、大人もですけれども、自分さえよければいい、ほかの人たちはどうでもいいというような心の持ち方、そのようなことを考えるときに、本当に子供たちにこうした中でゆったりとした夢やロマンを語らせるような、こういうところがあっていいなということを非常に強く思います。  昨年の三月に妻木晩田遺跡群を訪れた国立歴史民俗博物館の館長さんの佐原真さんは、この遺跡を残した人たちの住んでいたころは、ムラからクニへ、つまりちょうど日本列島が統一国家に向けてまとまり始めた時代でした、そのころの社会の移り変わりの過程がこの遺跡群で具体的にわかるようになるはずですと語られております。さらに、石野博信さん、坪井清足さん、西谷正さん、森浩一さん、本当にこうした多くの考古学者の方が訪れて、口をそろえて超一級の遺跡と評価しておられます。私も全く同感です。  それだけに、残す残さないを鳥取県だけの視点でなく考えてほしいものだと思うのでございます。破壊して、県で十五番目のゴルフ場にするのと、豊かな自然環境とともに文化遺産を残すことは、子孫にとってどちらが重要なのか言うまでもないと思います。  県総合運動場の野球場のスタンドを一部中止して保存した青森県の三内丸山遺跡、中小企業団地の開発を中止して国営の歴史公園までになった佐賀県の吉野ケ里遺跡、それからこの妻木晩田遺跡群も、その重要性にかんがみ、ぜひとも全面保存され、国民的な歴史遺産として活用されるべきだと考えます。本当に、一たん破壊してしまえば、なくなってしまえば、調査だけでとどめるということになれば、それはなくなってしまいます。  そうしたことで、もう一度、文化庁の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  65. 井上明俊

    ○井上説明員 妻木晩田遺跡は、我が国の成立の歴史を探る上で貴重な遺跡の一つであり、文化庁としては、全面的に保存されることが望ましいと考えておるところでございます。  現在、鳥取県、地元両町、事業者の間で保存問題について協議が行われておりますけれども、保存されるということになりましたら、文化庁としてもできる限りの支援に努めてまいりたいと考えております。
  66. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 ありがとうございました。ぜひとも、何とか全面保全で残るようにお願いしたいものでございます。  このことはさておきまして、今、日本では、一年間に一万二千件を超える発掘調査が行われていると言われます。ただ、御承知のとおり、これらの発掘調査の多くはいわゆる行政発掘と呼ばれているものであって、つまり、調査費用を開発業者に負担してもらい、その間工事は中断されますが、発掘調査終了後は、報告書をまとめ、遺跡を埋め戻し、多くの場合は予定どおり工事が続けられます。当然遺跡は壊されてしまいます。この場合、開発業者も費用がかさみますが、調査が開発業者の意向で不十分になる心配もないわけではありません。  そこで、お伺いしますが、発掘作業を早く終わらせようという開発業者から圧力がかかることなどがないよう、具体的にどのような行政指導をなされておられるのか。また、埋蔵文化財の存在が確認できるにもかかわらず、専門職員を置いていない自治体がどれほど多くあるか、その場合の対応はどのようになさっているのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  67. 井上明俊

    ○井上説明員 お答え申し上げます。  開発事業等によりまして埋蔵文化財に影響が及ぼされるという場合には、事業者協力によりまして、工事の前に発掘調査を行い、その記録を保存しているというところでございます。発掘調査を適切に実施するというためには、事業者との間で事前に十分に調整を図りまして、その理解と協力を得ることが重要でございます。  このため、文化庁におきましては、各都道府県に対しまして、一つは、事業計画を速やかに把握するとともに、埋蔵文化財の範囲や性格等を把握し、早期に適切な調整を行ってほしいというのが第一点。第二点としましては、発掘調査が必要となる場合には、その範囲、調査期間、経費等をあらかじめ事業者に提示して、十分に説明し、理解を得るということについて指導を申し上げているところでございます。  また、公共事業、公共工事に関しましては、工事担当部局と文化財保護部局との連絡調整体制の整備が必要でございまして、これを進めるために、建設省ないしは農林水産省等とも協力しまして、地方公共団体に指導を行っているところでございます。  また、埋蔵文化財に関する専門職員についてのお尋ねでございます。  埋蔵文化財の保護上必要な、開発事業との調整や発掘調査等の円滑な実施のためには、各地方公共団体におきまして、埋蔵文化財に関する専門的な知見を持った専門職員が配置されることが望ましいところでございます。  現状を申し上げますと、埋蔵文化財担当専門職員につきましては、各地方公共団体におきまして、順次配置が進んでいるところでございます。そして、その数は年々増加しているところでございます。平成十年度のデータによりますと、約七千名弱ということでございまして、かなり急激なスピードで増加はしているところでございます。しかしながら、市町村でこれを見ますと、その配置は年々進んでいるものの、配置率は四六%ということでございまして、なお不十分な状況かと思います。  このため、文化庁としましては、市町村における専門職員の配置の一層の促進に向けて、各市町村ないしは都道府県にお願いをしているところでございます。  なお、専門職員がいない市町村においてどうかということでございますが、この場合には、都道府県がみずから調整や発掘調査を行うという方法もございますし、また、市町村に専門職員を派遣するという方法などによりまして、適宜連携協力を図りながら、適切な対応がなされているところでございます。
  68. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 ありがとうございました。  日本国じゅう掘ればどこでも文化財は出てくると言う方もあります。ですが、やはりこうした貴重なものは、本当に保存していかないと消えていきます、なくなってしまいます。それらを考えますのに、特に、埋蔵文化財だけでなくして民俗の関係にしてもそうだと思いますが、各県に配置され、町村にも配置されながら、そうしたものを守っていくということをぜひお願いしておきたいなと思います。  最後ですけれども、環境庁の方にお伺いいたしたいと思います。  こうして、私、本日は、妻木晩田遺跡群という文化財の保護の問題について質問いたしましたけれども、このごろ各地で開発というのが進められておりまして、特に、ゴルフ場建設という開発と歴史的な文化財の保存が両立しないという状況ですが、今、全国でも、埋め立てとか干潟の保存、道路建設と森林の保護など多くの問題が出ています。  そこで、環境庁とされましては、開発と環境保護の問題についてどのようにお考えかをお伺いしておきたいと思います。
  69. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 開発と環境保護との問題でございますけれども、持続可能な形で環境を懸命に利用するということが基本であるというふうに考えているところでございます。  特に、開発と自然保護の関係につきましては、本来的に、それぞれの地域地域におきます多様な自然環境を維持あるいは回復し、また、さまざまな人の活動の中で、自然との豊かな触れ合いを保ち、自然との共生を確保するということが大事でございます。  環境庁自然保護といたしまして、原生的な自然の保護から、身近な自然の維持、さらには野生の動植物の保護管理という各種の施策推進しているところでございまして、先ほどお話ございましたような文化財も含めました自然環境保全関係法令とも相まって、我が国自然環境の適切な保全に努めてまいりたいと考えております。
  70. 知久馬二三子

    ○知久馬分科員 ありがとうございました。  実は、大山というところはまだ原生林も残っておりますし、オオタカなども何とか守れた、ここもやはりゴルフ場の開発という形の中で、市民団体の厳しい目があり、開発の反対運動をしたところでございまして、それらが残っております。  今言いましたように、本当に、こうした貴重なものを何とか残す方法、国を挙げて、今の妻木晩田遺跡群、ぜひとも残していただきたいなという思いでいっぱいでございましてきょうは質問に立たせていただきました。予算措置等も含めて、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  大変ありがとうございました。
  71. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて知久馬二三子君の質疑は終了いたしました。  次に、青山二三君。
  72. 青山二三

    青山(二)分科員 公明党・改革クラブの青山二三でございます。きょうは、野積みにされております廃タイヤの諸問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。  本年の一月二日、栃木県の佐野市の山林に野積みされておりました約二十万本の廃タイヤに火がつきまして、一週間近くも燃え続けた事件がございました。佐野市は、私が住んでおります足利市に隣接をしておりまして、付近には煙と悪臭が立ち込めまして、国道二百九十三号線の越床トンネルが一時通行どめになるなど、環境や交通に大きな被害を与えました。さらに、今回の大規模な火災は、鎮火後も、有害物質の流出や水への影響など、地域住民に大きな不安を与えております。近隣住民の健康への懸念はもちろんでございますが、それとともに周囲の環境にも大きな影響を及ぼすのではないかと私は大変心配をしております。  そこで、この廃タイヤ火災の詳細について御説明いただきたいと思います。
  73. 滝沢忠徳

    ○滝沢説明員 御指摘がございました火災でございますが、本年の一月二日の十八時ごろの出火、このように推定されるわけでございますが、地元の佐野地区広域消防組合消防本部におきましては、十八時三十六分に一一九番通報を受けまして、直ちに消防車両十九台、消防職員七十五名、消防団員四百名を出動させまして消火活動に当たったところでございます。  しかしながら、御質問にもございましたが、古タイヤが約二十万本ということで、またこれが高さ十メートル余りにうずたかく堆積しておりました関係上、炎上を続けまして消火に大変困難をきわめたところでございます。  この火災に対しまして、消火活動に当たりました消防車両は延べで百七台、消防職員は延べ三百二十六名、消防団員は延べで一千六百三名でございます。また防災ヘリも、一機でございますが、一月四日、五日の両日、合計八十八回空中消火を実施いたしました。  また、一月五日午後から、直接放水するだけではなく、特殊な泡消火剤を使いまして消火活動を行ったところでございます。そして、一月七日の五時に火勢をほぼ鎮圧したところでございますが、ほぼ鎮圧した際には、土砂で現場を覆土いたしまして鎮圧を行ったところでございます。  なお、消防庁といたしましては、今回の火災が鎮圧にかなり時間を要する状況となりましたことから、一月五日午後に私ども消防庁の職員二名を現地に派遣いたしまして、災害の状況を把握いたしますとともに、消火活動につきまして種々指導を行ったところでございます。  以上でございます。
  74. 青山二三

    青山(二)分科員 ただいま御説明いただきましたように、今回の野積み廃タイヤの大規模な火災は、栃木県では初めてでございますけれども、全国的にはたびたび起きているように伺っております。そこで、過去十年間にわたりまして、この種のタイヤ火災が起きた件数やその主な原因について御報告いただきたいと思います。
  75. 滝沢忠徳

    ○滝沢説明員 御指摘の野積み廃タイヤ火災につきましては、火災統計上の分類がないことから、その出火件数を正確に把握することは困難でございます。  なお、私ども消防庁への火災報告上、業種が廃棄物処理業で、着火物がゴム及びゴム製品及び野積みその他に区分されている火災がございますが、この火災の中で調べた範囲におきましては、野積みされた廃タイヤに着火して火災に至った事例といたしましては、昭和六十三年から平成九年までの過去十年間で六件を数えるわけでございます。  それから、火災原因でございますが、ただいま申し上げました六件について調べますと、放火、それからたき火からの飛び火などが挙げられるところでございます。なお、原因が判明していない事例もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、廃タイヤのみの野積みからは自然発火の可能性は考えにくく、外部の火源からのもの、こういうふうに推測されるところでございます。  それから次に、火災の特徴でございますが、先ほども申し上げたわけでございますが、大量のタイヤがうずたかく堆積した状態での火災でありますため、奥深い内部になかなか消火効果が及ばず、表面を一たん消しましても内部からの熱で再び炎上するなど、完全消火が困難で鎮火までに長時間を要するといったことが特徴として挙げられるものと考えております。  以上でございます。
  76. 青山二三

    青山(二)分科員 今回の野積み廃タイヤの火災は、まさしくもし火災が起きたら大変なことになるという地域住民の不安が現実となってしまったものでございます。県も改善警告を出したり、また撤去を指導していたやさきの火災でありました。住民にとりましては本当に大変なことでございますので、安全を第一に、また環境的な配慮からも、強制的に撤去するなどの措置が必要であったのではないかと思っております。  栃木県内には、このほかに同様の廃タイヤの山が五カ所、総数にいたしまして百五万本あるという現状でございます。県といたしましても、廃タイヤ対策連絡協議会を発足させまして適正処理の研究を始めておりまして、改めて廃タイヤの管理や処理の問題が注目をされております。同じように全国でも問題となっている廃タイヤの管理等の問題点につきましてお伺いをしたいと思います。  また、今回ここまでの大規模な火災になってしまった根本原因は、廃タイヤを長い間山のように野積みしたまま放置しておいたことにあると考えますが、こうした状況が改善されなかった原因はどこにあるとお考えでしょうか。
  77. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 廃棄物の処理をめぐりましては、最終処分場の逼迫あるいは不法投棄の問題等が生じておりまして、これらの問題に対応いたしますために、平成九年に廃棄物処理法を改正して各種の規制措置を強化したわけでございますが、それにあわせまして保管基準あるいは廃棄物処理施設の維持管理あるいは構造に関する基準の強化、明確化を図ったところでございます。廃棄物の保管につきましては、御指摘のような問題がよく起こるわけでございます。  また、不法投棄まがいの不適正な廃棄物の保管というものも散見されるわけでございまして、これらを防止いたしますために、まず第一に、屋外の保管については高さを制限することによりまして廃棄物の飛散、流出を防止すること。第二点目は、保管場所の入り口の見やすい箇所に保管の場所である旨を表示した掲示板を設けること。第三点目に、保管の場所につきまして、その囲いに廃棄物の荷重がかかります場合には、その囲いは廃棄物の重さに耐え得る安全なものとすること。第四点目は、保管している廃棄物から出る汚水によります地下水等の汚染を防止いたしますために、排水溝等を設けますとともに、保管場所の底面を水を通さない材料で覆うことなどの基準の強化を図ったところでございまして、これらの徹底が図られますように、都道府県等を通じました指導の徹底を図ってまいりたいと考えております。  それから、有価物というふうに主張しているトラブルがあるわけでございますが、本件の廃タイヤにつきましては、当初、栃木県におきまして調査をいたしましたところ、業者におきましては購入実績と販売実績があったわけでございます。そこで、これは廃棄物ではなくて転売のために商取引をされている古タイヤであるというふうに判断をしていたわけでございますが、その後、タイヤの数が増加していく一方でありまして、廃棄物の不適正保管に該当するのではないかという疑いを強めまして、タイヤの搬入中止、それから撤去の指導を行っていたというふうに聞いております。  厚生省といたしましては、このような形で、形式的に売買をされるものかのように装いまして、不適正な廃棄物処理が行われるということがあってはならないわけでございますので、保管をしておりますものの売買契約関係などを綿密に把握をいたしまして、廃棄物処理法の運用の厳正を期するように、都道府県に対して指導を行ってまいりたいと考えております。
  78. 青山二三

    青山(二)分科員 大変ありがとうございます。  この佐野の廃タイヤの出火の原因は今もって明らかにされておりませんけれども、タイヤが炎上いたしますと、そこから出る黒煙が人体にさまざまな悪影響を及ぼすと言われております。タイヤの火災に伴う黒煙はぜんそくを起こす、そういうことが言われてもおります。また、発がん性物質が発生することが、カナダのオンタリオ州の環境部にも報告をされているようでございます。  今回も有害物質の流出や、大気、水への影響が懸念をされておりまして、地域住民の健康なども大きな不安となっておりますけれども、大気や水質検査等はきちんと行われているのでしょうか。その対応と、結果についてもお伺いをしたいと思います。
  79. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 お答え申し上げます。  栃木県からの報告によりますと、先ほど消防庁の次長から答弁いたしましたように、一月二日出火をしたわけでございますけれども、初期消火の段階で消火水が流れ出しまして、これが沢を経由いたしまして、一部付近の駒場川に流れ込んだということは承知しております。  水質汚濁があったかどうかということでございますけれども、まず、水質の汚濁の状況の監視、これは水質汚濁防止法に基づきまして都道府県知事が行うこととされております。したがいまして、栃木県におきましては、一月三日に、この沢が駒場川と合流する地点の直下で採水いたしまして、環境基準項目二十項目につきまして水質調査を実施いたしました。その結果は、いずれの項目も環境基準を超えるような値は検出されなかったということでございます。  さらに、一連の消火活動が終了いたしました一月七日にも、同じ場所で採水いたしまして同様の水質調査を実施しましたけれども、環境基準を超えるような値は認められなかったということでございます。
  80. 青山二三

    青山(二)分科員 ただいま、環境基準を超えるということはなかったという御答弁でございましたけれども、御近所の方がおっしゃるには、近くにありますゴルフ場の池の魚が全部死んで浮かんでいたということでございますから、大変住民は心配をしている、不安を抱いておりますので、今後ともきちっと対応をしていただきたい、よろしくお願いをいたしておきます。  一九九一年から九二年にかけまして、大分県では約六万本の廃タイヤが百日間も燃え続けた例がよく知られておりますが、さらに一九九七年の岐阜県美濃市、また昨年の群馬県境町など、廃タイヤの火災は全国的に珍しいことではございません。東京周辺でも、野積みタイヤが炎上して黒煙で視界が遮られたために、武蔵野線が一カ月にわたって不通になったこともございました。その原因も不明なようでございます。こうした例からも、タイヤの野積みをすると、何らかの原因また理由で自然発火する可能性は否定できないと思うわけでございます。  このように、野積みをすれば自然発火する、あるいは放火される、こういう可能性がある廃タイヤの適正な貯蔵や保管などについて、周囲の住民の安全や健康、そして環境を守るという視点から、これまで国としてはどのような指導を行ってきたのでしょうか。お伺いをしたいと思います。
  81. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 いわゆる不適正な保管によりますさまざまの事案に対する対処の強化ということにつきましては、先ほど、私、主として四つの点について御説明申し上げたわけでございます。  こういったことがきちっと守られますれば、事態の発生は恐らくかなり減るであろうと思っておりますが、今後とも、こういった事案の分析を踏まえまして、必要があれば基準の強化をするなりなんなりということで対処してまいりたいと考えております。
  82. 青山二三

    青山(二)分科員 野積み廃タイヤの撤去が進まない一つの原因として、業者側の、これは廃棄物ではない、売り物の商品、すなわち有価物を一時保管しているだけという主張があるためだとよく言われております。商品であれば、廃棄物処理法の対象にはなりません。法律上の位置づけの難しさが行政指導のネックにもなっていると言われております。こうした例は廃タイヤだけではなくて、建設残土や廃パチンコ台など、この種の問題は必ず繰り返されてきた議論でございます。  しかしながら、売り物にするので有価物だと言われましても、現状を見ている地域住民にとりましては、とてもそれは納得できるものではございません。現行の廃棄物処理法では、有価物か廃棄物かの認定が難しいとされておりまして、対応する自治体も大変苦慮していると聞いております。  そこで、このような、売り物にするので有価物だという主張に対しまして、有効な手だてはないのでしょうか。
  83. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 今、先生指摘になりましたように、廃棄物処理法上は、いわゆる有価物というのは廃棄物に該当しないという解釈をいたしているところでございますが、これの判定につきましては、全国でもいろいろトラブルが起こっていることは承知をいたしております。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、売買あるいは譲渡の契約がきっちり行われているかどうか、それから、実際に搬入され搬出されている、有価物としての流れがあるかどうかという点については厳格に判断をしていただく、いささかでも疑義があれば搬入をストップさせるというふうな措置を講ずるように、廃棄物処理法の改正法の施行に当たりまして、都道府県にかなり何回もお願いをしたところでございます。今後とも、機会がありますごとに、そういった趣旨につきまして都道府県にお願いを申し上げたいと思っております。  なお、もう一点、廃棄物処理法を改正したわけでございますが、改正後の施行状況を踏まえながら、廃棄物対策について、部内あるいは関係審議会でも御議論を開始いたしておりますので、御指摘のあった点も踏まえまして、さらにきっちりとした対応をどうとっていけばいいかということも御議論をいただきたいというふうに考えております。
  84. 青山二三

    青山(二)分科員 確かに、有価物の名のもとにこうした廃タイヤを放置しておいたのでは、今後もこのような問題が繰り返されるということは間違いないと思います。そして、このような事態が全国各地で発生しているということを考えますと、国としても対応策を本当に検討して頑張っていただきたい、このように切にお願いをする次第でございます。  その対応策の一つといたしまして、悪質業者の取り締まりが考えられますけれども、新聞報道によりますと、佐野署は、火災発生後、県や市と協力して調査し、長い間野積みのまま雨ざらしになっていた廃タイヤを有価物ではなく廃棄物と断定したとございました。  火災の発生後ではなく、火災が発生する前に徹底的に調査し、判断することができなかったのでしょうか。また、こうした問題に際しましては、廃棄物処理法のほか、消防条例あるいは農地法など、関係するあらゆる法令を厳格に適用すべく、業者への調査を徹底して、一刻も早く悪質な業者を取り締まるべきではないでしょうか。警察庁の対応をお伺いしたいと思います。
  85. 原芳正

    ○原説明員 警察におきましては、地域住民の皆様の生活の安全と平穏を確保するという立場から、悪質な廃棄物事犯に対しましては積極的に取り締まりを進めてきたところでございまして、廃タイヤを野積みする事犯に対しましても、これを認知しました場合には、関係機関とも十分な連絡をとりまして、これが廃棄物処理法等に違反するという場合には、関係法令を適用しまして積極的に取り締まりを行ってきたところでございます。委員指摘の栃木県佐野市の事案につきましては、本年一月二十六日に、廃タイヤを野積みした業者など二名を廃棄物処理法違反で逮捕いたしたところでございます。  警察といたしましては、今後とも悪質な事犯に重点を志向しました情報収集を行いますとともに、違法な行為に対しましては強力な取り締まりを推進していくことといたしております。  以上でございます。
  86. 青山二三

    青山(二)分科員 今後もさらに一層頑張っていただきたいと思います。  今回の火災現場から少し車で参りましたところに、もう二カ所、野積みにされた廃タイヤの山があります。私も、近所の人が大変心配だということで、案内をされまして見てまいりました。後でまたこれは参考までにいろいろごらんいただきたいと思いますけれども、二カ所ある中の一カ所が、小さな道路ですけれども、道路を挟んですぐ前に民家があるわけでございます。今にもその民家に向けて地震でもあったらすぐ崩れてくる、こんな危険な感じで廃タイヤの山があるわけでございまして、その廃タイヤの山を毎日目前にしている住民の不安はただごとではございません。  また、本当に五、六メートル離れたところにこういう棚をつくりまして、「タイヤ五割引」、こういう小さな看板が立ててありまして、いかにもこれは売り物だ、こういう見せかけをしているわけですね。これは売り物だとなりますと、手がつけられないで、行政指導するにも取り締まるにも大変困るのではないかと思うわけでございますけれども、これを見ておりまして、とても売れるような代物ではございません。ほとんどすり減って使い古したタイヤの山でございまして、何とかこれを片づけてほしい、撤去してほしいという住民の願いは切実でございますので、どうか今後とも関係省庁にはよろしくお願いをしたいと思います。  今回の火災を見ますと、一たん事故が起こった場合、各方面に与える影響ははかり知れないことは明白でございます。ですから、たとえ持ち主が、この写真にもありますように、有価物だ、商品だ、売り物だと言っても、廃タイヤなどを大量に山積みにして火災発生などの不安を与え、また周辺の住民や環境等に影響を及ぼしかねないものにつきましては、一定期間以上の放置は許さずに撤去させるとか、排出事業者にも連帯責任を持たせるなどという強制力のある法の網をかぶせるべきである、このように思うわけでございます。  このような事故を二度と起こさないためにも、自治体任せではなく、国としての具体的な再発防止を関係省庁は早急に示すべきであると考えますけれども、いかがでございましょうか。
  87. 原芳正

    ○原説明員 この種の放置事案につきまして、私ども警察としましては、そうしたものの情報が入りますれば、関係機関と十分な連絡をとりまして情報収集を行っていくということでございますが、直ちになかなか判断がつかないというようなところもございますので、いろいろな手続によりまして実態を解明しまして、また厳正な取り締まりを行ってまいりたいとも考えております。また、そのために関係省庁とも十分な連絡をとってまいりたいというふうに思っております。  以上でございます。
  88. 青山二三

    青山(二)分科員 今回の栃木県での廃タイヤ火災では、定められた届け出を行っておりました。また、市の消防本部は、県とともに五回以上の立入検査や二回の文書通達、一カ所の集積面積を五百平方メートル以下にするなどという改善や管理方法を再三にわたり指導しておりましたが、実行していなかったようでございます。消防条例は危険物の保管の方法を指導するのみで、集積そのものを禁止できるものとはなっておらずに、違反者に搬入の禁止や撤去を強制できないという指導の限界が指摘されておりまして、これは自治体も頭を抱えているところでございます。  タイヤは、埋め立てれば油がしみ出す、野積みすれば自然発火する、あるいは放火されるという可能性があり、少量でも放置しておけば雨水がたまりまして、そこから異臭が発生するばかりではなく、夏場は虫の発生源、蚊が大変発生いたします。  大臣、この野外に山積みされていた廃タイヤの山は、まさしく環境汚染の典型的なものではないでしょうか。そして、これが火災に発展する可能性を持っているという大きな危険を常にはらんでおりまして、各方面に悪影響が及ぶことを十分に御理解をいただきたいと思います。  最後に、環境行政の重要な観点から、真鍋大臣に、今回の火災を教訓とした実効性ある対応策についてお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  89. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先ほど来の議論を聞いておりまして、廃タイヤが有価物であるか廃棄物であるかというような認識の相違が出ておりました。私たちは、野積みにされておるタイヤというものは廃棄物であるというような位置づけをいたしまして、廃棄物の処理を環境庁として真剣に考えていかなきゃならない、これは大きな社会問題だ、こう認識をいたしておるところであります。  環境庁としましては、すべての廃棄物をリサイクルするということが大きな目標であるわけでありまして、廃タイヤのリサイクルを考えていかなければならないと思っております。年間一億百万本の廃タイヤが出てまいるわけでありまして、この処理に頭を悩ますわけでありますけれども、燃料としたり、また再生ゴムとして利用したり、いろいろなリサイクル用途があるわけでありまして、そのリサイクル化に鋭意努めて、そして環境破壊を防いでいかなければならない、それが防火対策でもある、こう思っておるところであります。  御指導をいただきながら、皆さんの御協力を得ながら、この問題に対処してまいりたいと思います。
  90. 青山二三

    青山(二)分科員 大変ありがとうございました。大臣、今後ともよろしくお願いを申し上げます。
  91. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて青山二三君の質疑は終了いたしました。  次に、中林よし子君。
  92. 中林よし子

    ○中林分科員 日本共産党の中林よし子でございます。きょうは、瀬戸内海の環境問題について質問をいたします。  去る一月十九日に、瀬戸内環境保全審議会が「瀬戸内海における新たな環境保全・創造施策のあり方について」という答申環境庁長官に提出いたしました。瀬戸内海環境保全臨時措置法が制定されましてから二十五年、これが特別措置法となってから二十年が経過して、今回の答申を受けて、瀬戸内基本計画及び埋め立ての基本方針、瀬戸内府県計画の見直しに着手する、こういうことになっているわけです。  瀬戸内海の環境をめぐっては、水質だとか藻場、干潟、景観、そういうことを初めとする埋め立ての問題、さらには海砂だとか産業廃棄物やごみの問題など大変多くの問題がございます。今回は、埋め立てにかかわる藻場や干潟の問題、そして海砂の問題について質問をさせていただきます。  瀬戸内法の第三条一項で「瀬戸内海が、わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地として、また、国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきもの」、こういうふうにうたっているわけです。  環境庁の資料によりますと、一九七三年からの二十四年間の埋め立ては、免許数で約四千件、面積で約一万ヘクタール、こうなっております。朝日新聞が独自に調べたのを見ますと、ちょっと環境庁よりも多くて、一万六千三百ヘクタール、こういうことになり、さらに今後八千ヘクタールの埋め立てが進行中あるいは計画中だということになっているわけですね。  瀬戸内法に基づく埋め立ての基本方針は、埋め立てについては厳に抑制すべきだ、こういうふうになっているわけですが、この法律の施行後も依然として埋め立てが進んでまいりました。その結果、藻場だとか干潟の消失、そういった環境に悪い影響を及ぼす方向に進んでいって、厳に慎むべきとうたっている法の精神からしてこの埋め立ての規制が不十分だったのではないか、私はこういうふうに思うわけですけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。
  93. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 瀬戸内法が施行されてから二十五年間になるわけでありますけれども、その間にはその法律の役目を、十二分とは言いませんけれども、十分発揮してきたもの、私はこう思っておるわけであります。  現に私も瀬戸内海に住んでおる者でございまして、瀬戸内の赤潮の発生なんかを見ましても、このところ非常に発生率が減少した、ピーク時から比べれば四割程度になったというようなデータもいただいておるわけでありまして、私は、それはそれなりの法の適用が効力を発揮したものと思っておるわけであります。また、CODに関しましても、産業系のCOD汚濁負荷量は半分以下に減少したとも言われておるわけであります。  いずれにいたしましても、埋め立てについても、埋め立ての基本方針に基づいて厳に抑制すべきものとされてきた結果、埋め立ての免許面積、許容面積でございますけれども、これも大きく抑制されておるところであります。  結果的に見まして、私は、法の適用というものは大きな成果をおさめていったわけでありますから、これからも基本方針の見直しによってその成果を上げていきたいものと思っておるところであります。
  94. 中林よし子

    ○中林分科員 法の効果が埋め立てについてもあった、こういう大臣の認識ですけれども、しかし私は、そうであるならば、瀬戸内海以外の埋め立ての面積との比較というのは当然必要だというふうに思って調べてみたのです。  瀬戸内海は、その施行後も平均的に毎年四百ヘクタール、これだけ海が消えている。私は、その以前のふえ方と比べれば確かに減ってはきているけれども、やはり毎年四百ヘクタールずつ埋め立てられている、海の面積が減っているというのはやはり問題だというふうに思うんです。  同時に、それならば、全国の埋立免許面積が一体どうなっているのかと見ますと、施行前の面積は平均千五百六十八ヘクタールだったのですけれども、施行後は四百六十四ヘクタールということで、瀬戸内海でも四分の一に抑制された。だけれども、全国的にも四分の一に減っている。その減り率というのは同じように減ってきているわけですから、私は、埋め立ての承認の要件として、瀬戸内海の特殊性について十分配慮すべきだという十三条の一項の項目があるわけですけれども、やはり規制が十分瀬戸内海で果たされていなかったのではないか、こういうふうに見ざるを得ないというふうに思うんです。  次に進みますけれども、実は私は、今回、藤前干潟に対する環境庁の態度というのは本当に立派だったというふうに思っております。名古屋港の藤前干潟を埋め立ててごみ処分場にするということに対して、環境庁が十二月十八日に、この計画は無謀、極めて不適切と指摘をして、計画の撤回を求める報告書を出されました。もちろん住民の皆さんの非常に強い運動があったことは言うまでもありません。その結果、名古屋市も環境庁の方向に沿っていったわけですね。  だから、私は非常にすばらしいと思っているんですが、この藤前干潟の前の計画によると、埋立計画では代償措置をとるということになっていて、人工干潟をつくるということになっていたわけですけれども、今日の時点で、藻場だとか干潟を回復させるための人工の藻場、干潟の技術、その到達点はどういうふうにお考えでしょうか。
  95. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 私は、昭和三十四年の九月の伊勢湾台風の状況を承知いたしておりました。そして、その後の名古屋周辺の道路補修とか土地造成の改修に当たりまして、その砂は藤前干潟の土砂をもって充てたわけであります。そうしましたところが、その干潟はいまだにもとの干潟に回復することはできておりません。それを見まして、私は、干潟というものは自然のものであって、人工的につくるというのは不可能である、そういう素人なりの認識を持っておったわけであります。  しかしながら、私も環境庁長官に就任したわけでありますから素人考えで事をはかってはならないということで、これは専門家意見もお聞きしました。そうしたら、やはり同じような意見、考えが返ってまいりましたので、これはもう、代償措置と申しましょうか、代替地でもって事の処理に当たるわけにはいかないという認識に立って環境庁の内部の結束を図ったわけであります。  そんな経緯でもって事の処理に当たったわけでありまして、私自身の考えでそういうことを処理したというのじゃなくして、専門的な意見もいただいた上で処理をさせていただいたということでございます。
  96. 中林よし子

    ○中林分科員 その点は私はいいと思うんですね。こういう問題は、専門家意見あるいはそこに住んでいる人たちの経験則、そういうものがやはり生かされてこそ自然は守られていくんだろうというふうに思います。  私も、この十二月十八日の取りまとめを見せていただいて、本当にすばらしい取りまとめだというふうにお伺いをいたしました。その結果、今大臣もおっしゃいましたように、自然の干潟を人工でやるということ自体はまだ未確立だということを専門家もきちっと指摘をしているわけです。  私は、その点で、瀬戸内海の問題に当てはめて考えると、瀬戸内の基本計画では、藻場や干潟について極力保全するよう努めるということにはなっているわけです。環境庁調査で、法律施行後の一九七八年から九〇年の間に、干潟が約八百ヘクタール、藻場が約千三百ヘクタール失われております。失われた干潟の七割、藻場の四割は埋め立てやしゅんせつが原因とされております。  環境庁自然環境保全基礎調査を継続して行われているわけですが、九三年までの第四回調査の報告では、藻場について、  日本の国家を支えてきた沿岸海域の豊かな漁業資源と生産力の基盤をなしている海草・海藻藻場の保護は、環境面のみならず、国民の健康を守るため、更に近い将来起こり得ると予測されている地球的規模での食糧難を乗り切るためにも、国家にとって焦眉の急である。 と指摘をしております。これは瀬戸内海だけでなく全国的な分析に基づいているものではありますけれども、瀬戸内海でのこの藻場だとか干潟の消失が全国の二一%を占めているわけですね。  そこで、具体的な問題でお話を伺いたいわけですけれども、広島市の出島沖で、総面積百三十ヘクタールの大規模埋め立てが二千二百億円を投じて進められております。そこでは二・二ヘクタールの藻場が消滅しました。この埋立認可に当たりまして、九六年の春に環境庁長官が、消滅する藻場にかわる新たなアマモ場や干潟の造成に努める必要があると事業者の県に指示をされております。  また、山口県岩国市の米軍岩国基地の滑走路沖合移設のために二百十五ヘクタール埋め立ての計画があります。ここでは千六百億円の事業費がかかるわけですけれども、この事業で、豊かで広大なアマモ場の四割に当たる四十一ヘクタールが消滅します。環境庁は九六年の十一月に、この消滅する藻場や干潟の回復などを条件に埋め立てを認めるという意見書を出しておられます。事業者である広島防衛施設局は、アマモ場の回復措置を試験的、研究的に行い、極力その形成に努めるとして、学術研究者でつくる藻場・干潟回復調査委員会を発足させております。  代償措置、人工的な藻場、干潟の回復は、今おっしゃったように、技術的にもまだ研究段階だというふうに思うのですね。それにもかかわらず、藻場だとか干潟をつぶす埋め立てについて、未確立の代償措置を条件にそれを認めるということ自体、私は環境行政としては極めて無責任ではないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  97. 岡田康彦

    岡田政府委員 広島港の出島地区埋め立てと岩国基地について御指摘がございました。  御指摘のとおり、八年の三月と八年の十一月に、それぞれ主務大臣から環境庁長官意見を求められまして、埋立事業の実施により藻場等が一部消失いたしますので、埋立計画地周辺海域において新たに藻場等を造成し、その定着状況などを計画的に監視するなどによりその増殖等に努める必要がある旨について申し述べたことは、先生指摘のとおりでございます。  現在、岩国地区におきましては、アマモの移植方法の検討や移植試験が行われておりますし、広島港の出島地区におきましては、九年度に移植が終了し、現在モニタリング調査を継続中であると聞いておりますが、活着率については比較的良好というふうに承知しております。
  98. 中林よし子

    ○中林分科員 その人工藻場のところが良好だと広島の出島沖については聞いているとおっしゃっているのですが、実際は全く違うというふうに私は見ております。  出島沖では、九三年から五年間で二十億円かけてアマモの移植が行われて、今続行中なんですね。試行錯誤の連続で確立したとはもうとても言えない状況で、造成だとか調査、維持費を含めれば一平方メートル当たり一万数千円が毎年消えていくという状況で、今後の見通しは経費面でも立っていないのが現状です。  これは出島ではないのですが、広島市の五日市でも、県が四十二億円かけて人工干潟を造成しております。ここでは一羽の野鳥もいないという報告があります。それどころか、完成直後から地盤が沈んで、今でも細り続けておって回復のめどは立たない、これが現状ですよね。しゅんせつ土を使った藻場だとか干潟造成の事業もふえているが、海の濁りを懸念する漁業者、住民の反対も非常に強くなっていて、大臣御存じだと思いますけれども、愛媛県では中止になる事例も実は起きております。  ここでちょっと大臣にこの地図を、御存じなんですけれども、見ていただきたいので、よろしいでしょうか。
  99. 植竹繁雄

    植竹主査代理 はい。いいです。
  100. 中林よし子

    ○中林分科員 岩国の沖合移設の問題をそこに、最初のページが干潟のものです。それから二枚目が藻場がどのくらい消失するかというものです、見ていただければおわかりだと思うのですけれども。  出島沖の二ヘクタール前後のアマモ場移植、これがまだままならないと言われているのに、岩国沖では、四十一ヘクタールもの緑あふれるアマモ場が今から消滅させられようとしているわけですね。広島の出島を参考にすれば、回復する費用は数百億円ぐらいになるんじゃないか、こういうふうに言われているのです。それだけお金をかけても成功するかどうかはまだわからない、こういう状況のときに、沖合移設の計画はもう既に始まっておりますけれども、幸いにもこの藻場はまだ海の中です。埋め立てられてはおりません。だから藤前干潟と同じように、環境行政ここにありと、大臣の決断でもって、あるいは学者の意見も参考にされて、これはやはり見直すべきだということにはなりませんか。
  101. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 藤前干潟を例に出されて、それと同じような問題処理にならないかということでございますけれども、やはりケース・バイ・ケースでございまして、それはそれなりの歴史と、そしてまた今日置かれた場所づけがあるわけでありまして、それらの問題をよくよく勘案しながら事の処理に当たりたいと思っています。  今先生から御指摘いただいたような地域の問題については、私自身も少し勉強をさせていただきたいと思っておるところであります。
  102. 中林よし子

    ○中林分科員 今回の答申で、これまでもそうですけれども、やむを得ず埋め立てをする場合は、環境の劣化を防ぐ必要があるとして、代償措置の検討を常に挙げてこられました。代償措置を、なし崩し的に埋め立てをする免罪符にされているんじゃないか、私はこう思えてならないわけです。  先ほど二つほど指摘をいたしました。これは、今の公有水面埋立法に基づいて、五十ヘクタール以上は環境庁から意見を言うことになっているわけですから、それについての意見なんですが、広島の出島のところも代償措置でやりなさい、それから、岩国のところでもそういう同じような意見が出されながら、結果的には、やむを得ないというようなところで埋め立てに同意をした。それを条件に同意したということになると、私は、もうこれ以上瀬戸内海の藻場、干潟を失わせてはならないと。本当に、瀬戸内法でもあるいは基本計画でも、これはただ単なる魚だけの問題ではなくて、瀬戸内海全体の環境、ひいては日本国民全体の問題にかかわるということをうたっているわけですから、そういう意味では、まだ技術的に未確立である代償措置で埋め立てを許可しない、こういう方向で検討していただけませんでしょうか。
  103. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 先生指摘の、埋め立てとそのミティゲーション、代償措置としての藻場、干潟の造成の問題でございますけれども、先ほど大臣から御答弁いたしましたように、それぞれの実態に応じて適正に判断していく、こういうことではなかろうかと思います。  その際に、造成される藻場などの県の評価でございますけれども、これにつきましては、土地の形状の安定化などの物理的な要素については一定の成果が出ているということも報告されております。ただ他方で、海水浄化とか生物の生息、生育の観点における効果については必ずしも十分解明されていないんじゃないかという指摘もある。したがって、そういう点につきましても十分配慮をしながら、これから埋め立ての問題についての対応というものを検討していきたい、そういうことが私どもの基本方針でございます。
  104. 中林よし子

    ○中林分科員 私は、藤前干潟でせっかく今の環境行政があそこまでいったかということで、これを後退させてはならないなという思いが大変しているわけですよ。大臣も、学者の人たちの意見も取り入れて、自然を一度破壊するとなかなかもとに戻らないということも、これは研究者の意見として藤前干潟のときにちゃんと書いてあるわけですね。  だから、そういう意味では、そこのところは、私は本当に今の環境行政を後退させてほしくないという観点から、これまで環境庁が出しておられるさまざまな基本計画だとかあるいは報告書というのは、文字的には極めていいことを書いてあるんだけれども、実行がなかなか伴わないというところに最大の問題があると思うのです。  先ほど引用しました環境庁の第四回の藻場調査報告書では、欧米ではどうなっているかということも実は報告されているんですね。そこでは、沿岸生態系の最も重要な生物種として、既存の藻場をつぶさないことを原則としていることを、アメリカやフランスの法律を示して紹介をし、「国家にとって焦眉の急である。」と環境庁自身がそういう報告をして、藻場の保全を言っているわけですよ。  そうなると、先ほど政府委員の方から、人工藻場も何か成果があるかのようなことをおっしゃっていたけれども、それは多少の成果はあったとしても、もとのあのアマモ場のような状況に返るまで一体何年かかるのか、幾らお金をつぎ込まなければならないのか、こういう問題があるわけですから、ここはしっかり環境庁としても、今までの代償措置、代償措置ということで免罪するんじゃなくて、本当になくさない、こういう毅然とした法律づくりなり対応をするべきだというふうに思うのですけれども、もう一度、大臣、いかがでしょうか。
  105. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 私も環境庁長官になってまだ日が浅うございます。すべての歴史にたけておるわけではございません。そんな点で、過去の歴史をひもときながら、現在環境庁としてなすべき仕事はどの辺にあるかということについての検討を進めてまいりたいと思っておるところであります。  藤前干潟の問題につきましても、ある一面ではごみの処理場の問題が大きく問題になったわけでありまして、その対応が不十分な中に、その干潟をごみの捨て場としてなくしてしまうということには耐えがたい気持ちを持って、慣行的に環境アセスがされる前の意見書を出したところであります。それが国民的な歓迎を得まして今日のような状態になったわけであります。  瀬戸内の藻場の問題につきましても、私も瀬戸内出身でありますし、そのようなところが諸所にあってこういう形になっておるのかという認識を今持っておるわけでありまして、その歴史や、そしてまた現在置かれた状態をよくよく調査しながら処理をさせていただきたいと思っておるところでございます。
  106. 中林よし子

    ○中林分科員 次に、海砂採取の問題でお伺いするわけですが、この間、広島県を中心に大変な社会問題になっております。  広島県では、県が許可した以上の量の海砂が採取されて、地域によっては、六三年の海図では四メートル前後だった浅い海域が四十八メートルまで掘り下げられているなど重大な変化が生じていること、海砂採取海域での漁獲量の激減、護岸の侵食や付近の民家での地盤沈下など大変深刻な影響指摘されております。  広島県は昨年二月に海砂採取を禁止しました。同県の知事は、そもそも海砂採取は、水産資源の保護培養及び自然環境保全観点からできるだけ早期に禁止するのが基本方針だ、こう述べております。  今回の答申では、海砂採取が環境に及ぼす影響は十分な知見がないと、環境への影響研究を掲げているわけです。今でも瀬戸内海では、広島県は禁止しましたけれども、ほかの県がやっているので続いております。だから、今回の答申が、影響がまだわからないと言っているのですから、最小限今禁止すべきではないかというふうに私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  107. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 海砂の問題でございますけれども、今回の答申におきまして、海砂採取につきましては、環境影響の究明の促進とともに、生態系など多様な環境を考慮した対策検討を行うことが必要、こういうふうに指摘されておるところでございます。  先生指摘のように、現在、平成六年度から十二年度にわたりまして、私ども今環境調査を実施しておりまして、今年度より、特に生態系のうち生物生息への影響に重点を置いて環境影響の究明に努めているところでございます。  その点も踏まえて今後の対応を考えていくというのが我が方の方針でございまして、先生指摘の、海砂採取を認めるか認めないかにつきましては、砂利採取法というものがございまして、採取計画の認可を行う都道府県知事が判断することになっております。  したがいまして、環境庁といたしましては、今後、答申の具体化を進めておるわけでございますけれども、その一つとして、先生指摘のように、基本計画の見直しを行ってまいりますけれども、その場合に、環境保全という観点から海砂問題にいかなる配慮が必要か、この調査結果等もにらみつつ検討を進めて、その上で都道府県等への働きかけをも考えていく、こういうふうにしたいと考えております。
  108. 中林よし子

    ○中林分科員 確かに、各県の知事が決めることになっているのですね。だから広島はやったのだけれども、せっかく広島県は禁止したのに、瀬戸内海に面しているほかの県がやるものですから、広島県の境のところでとられて、それは大変なんですよ。だから、そういうときはやはり国が出ていかないと示しがつかないということです。  平成十二年までの調査の結果を待ってと言われるんだけれども、結論は、至るところで被害が出ているんだから、今後の調査を待たなくても十分あるので、ここは大臣、少なくとも国がイニシアチブをとって禁止の方向で検討すべきではないかというふうに私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  109. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 かつて私は、瀬戸内海のしゅんせつ航路の土砂をどうするかということについての検討もいたしたわけであります。それがためにということで、香川県の沖合の番の州の埋め立ては航路しゅんせつでもって処理することができて、両者相まっての利得があったというふうに受けとめておったところであります。  しかしながら、それが今日になっては非常に環境を破壊したということにもなっておるわけでありまして、それに気がつくには、広島県といたしましても、五、六年の年月がかかったわけであります。ですから、ようやくにして海底調査までできるようになって、瀬戸内海の海底がえぐり取られたようになっておるという写真を見まして、これではいけないぞという気持ちに、大方の県の方、知事さんなんかがなっていただいておるところであります。  それがためにということで、昨年、瀬戸内海の知事さんで形成する円卓会議を開催させていただきました。そうしましたら、広島県の藤田知事を初めといたしまして、もう瀬戸内の海砂は禁止していこうじゃないかという意見も出たところでありまして、各県ともそのような方向に向かって現在行政処理ができておるものと思っておるところであります。  それがためにということで、今回、関西空港に海砂をもって埋め立てする第二期工事に対しましては、瀬戸内海としては、それはできないというノーの返事もさせていただいたところでありますから、そういう一遍な処理がなかなか難しいわけでありますけれども、漸進的な処理ができておるものと思っておるところであります。
  110. 中林よし子

    ○中林分科員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、瀬戸内法ができて四半世紀、四分の一世紀たって、本当にもうこれ以上瀬戸内海を荒らしてはならないというふうに思うのです。一方で、多額のお金をかけて人工島をつくったりして、埋め立てたりして、藻場や干潟をつぶして、また多額なお金で人工的にそれらをつくっても、よみがえるという保証はないわけですよね。だから、そういう意味では、藤前干潟で示された環境行政を後退させずに、さらにそれが前進できるように要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  111. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて中林よし子君の質疑は終了いたしました。  次に、山元勉君。     〔植竹主査代理退席、久間主査代理着席〕
  112. 山元勉

    山元分科員 民主党の山元でございます。  長官も長時間大変御苦労さまです。先般、私の地元琵琶湖へ来ていただいて本当に随分とお励ましをいただきまして、この機会にお礼を申し上げたいと思います。  きょうは、琵琶湖の問題ではなしに瀬戸内の問題なんですが、御承知のように、和歌山の雑賀崎の埋め立ての問題についてお尋ねをしようというふうに思います。  私が申し上げるまでもなしに、長官も十分御案内ですけれども、和歌山の雑賀崎のところは、私もこの間行ってきましたけれども、本当に大変美しい、白砂青松というのですか、豊かな浜ですし、そして、仏の華が降る、こういうふうに地元ではおっしゃるらしいですけれども、太平洋そして紀淡海峡ですか、本当に美しい景色、夕日の沈んでいくところで、地元の人も大変大事にしている、そういう景観でもあるし、環境でもあるわけです。  今度また大きな計画が出まして、今まで繰り返して港湾整備が行われてきて、そういう環境が破壊されてきたわけですけれども、前回の計画、一九八五年の計画でも大規模に埋め立てられて、金属団地などもできているわけですね。そして、さらに今、最初は百十七ヘクタール、少しいろいろと環境庁にも物をおっしゃっていただいて、八十ヘクタール、それでもやはり日比谷公園の五倍もあるような、そういう広いところを埋め立てようという計画が和歌山で進められているわけです。  まず最初に、環境庁は、この雑賀崎の状況についてどのように事態を把握していらっしゃるのか、認識していらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。
  113. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 お答え申し上げます。  この雑賀崎地区でございますけれども、水軒の浜と呼ばれまして、かつて良好な自然海浜であったと認識しておりますけれども、瀬戸内海環境保全臨時措置法施行時には既に防波堤で囲まれておりまして港湾内水面となっておった、そして、これまでに逐次埋め立てが行われてきたということを承知しております。
  114. 山元勉

    山元分科員 そういう状況でなしに、今問題になっている点についてどのように認識していらっしゃるかということなんです。  それは、先ほども言いましたように大変美しいところですし、海の面でいいますと、瀬戸内海環境保全法に指定されている地域ですし、陸は、瀬戸内海国立公園の特別地域に指定されているわけですね。そういうふうに、国の大事な法律で守ろう、こういうことになっている地域で埋め立てがどんどんと進められていく。  今申し上げましたように、数次にわたる埋め立てで、この間、私、十二月二十九日、大みそかではありませんけれども、押し詰まってから行ってまいりました。そこで見た景色というのは、これは何をしているんだと。広大な空き地が、ずっと埋立地がまだあいているわけですね。そういうところに繰り返して大規模な開発をしているわけです。  この二つの法の精神というのは、環境庁がいつもしっかりと守らなければならぬ部分が多いわけです。環境や景観について、特別に瀬戸内の問題については配慮をするということが法の中にも書いてあります。そういう大事な地域で起こっている問題について、今のは単なる状況ですから、もう少し、どういうふうに問題として認識していらっしゃるかをお尋ねしたい。     〔久間主査代理退席植竹主査代理着席
  115. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  恐らく先生が御指摘の点は、平成九年の中央港湾審議会のときの議論になった新しい埋め立ての計画についての御指摘ではないかと思いますので、そういう観点からちょっと申し上げたいと思います。  環境庁といたしましては、平成九年十一月の中央港湾審議会におきまして、和歌山下津港の本港沖地区の埋立計画が瀬戸内海国立公園の特別地域に隣接する大規模なものであり、重要な展望地点であります雑賀崎地区からの景観に著しい影響を与えるということが一点、二点目は、この埋立計画が、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく埋め立てについての規定の運用に関する基本方針に抵触するものであると考えられる、こうした二点から、景観を十分に保全するよう計画の再検討をすべきことを指摘いたしました。  これに対しまして、港湾管理者からは、これは和歌山県でございますが、港湾機能の拡充が必要であるとの説明がございましたが、景観についても重要な課題であるというふうに理解してもらいまして、当該埋立地の規模や形状については今後柔軟に対応していきたいという回答があった状況でございました。  こうしたやりとりを踏まえまして、中央港湾審議会より、同港の港湾計画については、全体としておおむね適当であるが、当該埋立地については、景観の保全についてさらに検討すべきことが答申をされました。  環境庁といたしましては、港湾管理者が、この答申を踏まえまして景観の保全などについて再検討し、改めて、地方港湾審を経て中央港湾審議会の審議にかけられることにまたなるのではないかというふうに現在のところ理解しております。
  116. 山元勉

    山元分科員 確かに、一昨年の十一月の審議会で、環境庁も再検討すべきだという意見をおっしゃっているわけです。けれども、受けとめた和歌山は、環境への影響は軽微だ、こう言って出してきたのが百十七を八十にしようという計画なんですね。  私も、番所の鼻でしたか、先っぽのところまで行って、立って、見ました。そして、その角度がどうだとか、そういういろいろなことを、実際に船を何隻も出してもらって、ここからここまでがこういう計画だということも見てきました。けれども、たとえ百十七が八十になろうが六十になろうが、あそこに大きな埋立地をつくるということについては、この二つの法の精神からいってすべきでないということを、僕はその鼻のところに立ってつくづく思いました。  環境庁は、確かに再検討せいというふうにおっしゃる。けれども、地元では、影響は軽微だと。景観については配慮しろと言われたけれども、港湾機能については必要性が認められたということを言って、まだ進めようとしているわけです。  そうすると、これをずるずると認めていくと、環境庁は、環境保全法と国立公園法と、この二つの法の精神をないものというのですか、悪い言葉で言うと、ざる法にする手伝いを環境庁がしてしまうのではないかという心配があるのですけれども、そこのところの環境庁の思いというのを聞かせていただきたいと思います。
  117. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  環境庁といたしましては、先ほど申し上げたような経緯がある中で、地元でさらに再検討が進められているというふうに理解していまして、その検討の推移を注視しておる状況にございます。  いずれ再検討された計画が地方港湾審議会を経て中央港湾審議会の審議にかけられるのではないかと先ほど申し上げましたが、そういう際には、事業の必要性や環境保全への配慮について十分な審査を私どもとしてはまた行ってまいるつもりでございます。
  118. 山元勉

    山元分科員 この和歌山が言っている、環境への影響は軽微だという言い方というのは、判断基準というのは極めてあいまいなんですね。  その欲するところといいますか、大きなコンテナが将来来ることを望んで、どんどんと大きい港をつくらにゃならぬとか、いろいろそれぞれの立場での欲するところで、影響は軽微ですよと、こういうことになれば、これから未来永劫といいますか、どんどんとそういう埋め立てが進んでしまうことになるわけです。そこのところはきちっと環境庁が、それこそ歯どめをかける責任があるんだということについて私は強く申し上げておきたいし、お願いをしたいというふうに思うのです。  去年の十二月の二十四日に瀬戸内海環境保全審議会というのが開かれた。地元ではなしに瀬戸内海の環境保全審議会の総会で出されていること、これはやはり環境庁、守ってもらいたいというふうに思うのですが、幾つかずっと書いてあるのですが、例えば、今の問題で言いますと、埋め立ての抑制については、「埋立ては、水質の悪化、生物の生息・生育環境等の生態系の変化、自然景観の改変、海とのふれあいの場の減少」、ずっと挙げて、「埋立てを抑制するための方策を幅広く検討することが必要」だというふうに審議会は去年の暮れに言っているわけですね。それにきちっと和歌山さんが対応しようとしているかといったら、今の県の姿勢で言うと、そうはなってない。ただ東京で、審議会でこのきれいなことが書かれたというだけに終わってしまうのではないか。  それから、その中にまたこういうことも書いてあるわけです。「住民参加の推進」として「瀬戸内海の環境保全のための施策推進には、住民の理解と協力が不可欠であり、」そういうために、住民の参加の推進を図るべきだ、こういうことがこの審議会で出されているわけですね。  私は、この地元の皆さん、今までずっと先祖伝来の浜、海と考えてきた、そういう住民の人たちの気持ちもやはり大事にする必要があるんだろう。今申し上げましたように、埋め立ては抑制すべきだという原則、あるいは住民参加を推進すべきだという原則からいくと、その点については、ここで和歌山さんを批判せいというのは酷かもしれぬけれども、この問題について、そのことに合うのかどうか、合致するのかどうか。環境庁の判断はどうですか。
  119. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 山元先生の御意見を伺っておりまして、我々が肉眼で現地で見た第一印象というものが大切なものだ、私はこう思っておるわけであります。それほどの景観の地をなぜ埋め立てなきゃならないかというその疑問の心を私は大切にしていきたいと思っております。  これは泣き言を言うわけではありませんけれども、環境庁意見具申が出る段階でございますけれども、ここにも書かれておりますように、環境庁というのは、運輸省から協議があった際に、事業の必要性や環境保全への配慮など十分な審査を行うということになっておりまして、これが先ほどからお話ししておるように少し温度差がありまして、環境庁としての意見を出すのが遅きに失するような感じがしてならないわけです。  今後、環境アセスのあり方ということを皆さんに御論議をいただいて、できることならもう少し早い段階で環境庁意見が出せるような対応をしてほしい、そうしたら瀬戸内環境基本法というものが大きく生きてくるのじゃないだろうか、こんなことを思っておるところであります。
  120. 山元勉

    山元分科員 率直におっしゃっていただいて、そのとおりだというふうに思います。ですから、先ほども少しだけ聞きましたけれども、藤前のときにはやはりああいう長い間の経緯がありました。そこのところでやはり環境庁がきちっと言ってもらったことで、また方向がぐんと変わったわけですね。  今度の場合も、今まで数次にわたって行われてきた、例えば一九七四年のときの計画では二百ヘクタール埋め立てるというのが、猛烈な反対で白紙撤回された経緯があるわけですね。それからまた、八四年、今度また新しい計画をと、こうなっているわけです。ですから、そういうことについて、環境庁がきちっとした指針なりあるいは方向というのを、ああせいこうせいと言うのはなかなか難しいかもわからぬけれども、きちっと出していただきたいというふうに思うのです。  それには、一つはその地域環境についての認識と、もう一つは、やはり今申し上げました、審議会も言っているように、住民の皆さんの合意だというふうに思いますね。  この間行ってきたときに地元の人の声を聞きました。先ほども言いましたように十二月の二十九日で、そんなに人いやへんで、役所の人もいないでと、年末の大忙しのときですから。けれども、たくさんの自治会の皆さん、特に多かったのは女性の皆さんに来ていただきました。そこで口々にいろいろなことを聞かせていただきました。例えば、木材の港だとか産業ということを言うけれども、木材会社に浜を好きなようにされてよいのか、くやしゅうてならぬとか、あるいは雑賀崎の名前が消えてしまう、先祖に申しわけない、こういう言い方をしている人もありました。  さらに言いますと、既に埋め立てられた土地がずっと空き地になっている、本当に広い空き地があるわけですね。売れないのですよ。そのときに、環境庁に強いことを言ってほしいというのが住民の人の声です。環境庁を頼りにしたい、こういうことをおっしゃっていました。  私どもは恥も外聞もなしにあちらこちらで署名運動をやって、あっという間に十一万人の署名が集まったと。私らは田舎者やからそういう署名運動というようなことは余りしたことがないのだけれども、初めて恥も外聞もなしに走り回ったら十一万の署名が集まった、こういうふうにおっしゃった。  あるいは、新聞にだあっと反対ということを出そうやないかと言うたら、地元の人が金をちょっとずつ出して、新聞の全面広告に三千人の人が名前入れて四回にわたって、雑賀崎を埋め立てるなという全面広告をやったわけですね。それはやはり本当に体にしみ込んで、自分たちの雑賀崎の浜を守ろうという気持ちが強いからだろう、こういうふうに本当に受けとめて帰ってまいりました。  そういう状況の中で、やはりそういうものを大事にする仕事というのは環境庁だろう、こう思うのですね。  そこで、去年の十二月に地元から長官あてに要望書が出ているはずです。二つの問題で要望書という形で出されているわけで、環境庁はお受け取りになっているのですが、それについてどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、あるいはそれにどういうふうにこれからこたえていこうとなさっているのか。地元の皆さん、出しっ放しと言ったら語弊がありますけれども、心配をしていらっしゃいました。お聞かせをいただきたいと思います。
  121. 岡田康彦

    岡田政府委員 和歌山県におきまして、先ほど来先生の方からも御指摘がありましたように、景観に係る専門家による検討が行われているというのが一方にございますが、御指摘のように、自治会や団体からの意見表明がなされておりまして、環境庁にも複数の自治会、連合会からの連名のものをいただいておりまして、現に地元の動向等は私どもなりに把握はしておるつもりでございます。また一方で、地元和歌山市などからも新たな提案も現にあるような状況のようでございます。  さまざまな検討が行われておる状況は我々としても常に把握しながら、また、我々が議論をし、審査をするまでの材料集めをしてまいりたいと思っております。
  122. 山元勉

    山元分科員 この要望書というのが出されているのは雑賀崎の自治会、連合会ですね、あるいは自然を守る会。それから名前を添えていらっしゃるのは、雑賀崎地区だけではなしに、名草地区だとかあるいは和歌浦地区の連合会の皆さんも一緒になって、二つ出ている。  一つは、海域での埋め立てについて全面的に規制していただきたいということ。あるいは変更案、今出てきているわけですね、変更案の策定過程における問題点を含めて独自に厳正な審査をするようお願いをしたい、和歌山の態度に対して厳正な態度で臨んでほしい、こういうことなんだというふうに思います。  これは、和歌山で聞かせていただいた、あるいは見せていただいた資料に、何回か意見書を出したり、さまざまな行動をしていらっしゃるわけです。ですから、問題は非常に広がっているし、そして進んでいるというふうに考えていいと思うんですね。  この要望書にもありますように、独自の厳正な審査お願いをしたい、こういうことですから、局長、これからということではなしに、十二月三日からですから大分日がたっているわけです。ですから、ぜひこのことについて、真剣になって話し合いをもう一遍この人たちとするのか、あるいは調査に独自に入っていくのか。  今までこの問題が国会の中で論議をされたかどうか私は知りません。けれども、きょうこうやって公式の場で私も物を申し上げているわけですから、ぜひ、この要望書なり、今までこの地区の人たちが出している意見書というものについて、環境庁なりに調査をしたり対応を急ぐなりしてほしいという、これは要望ですけれども、いかがですか。
  123. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生指摘のとおりでございます。私も、今のお話を聞きながら、環境庁としてとるべき対策を懸命にやっていくつもりでございます。
  124. 山元勉

    山元分科員 もう一つですが、そういう環境なり景観というものを破壊していくということと、もう一面、今予算を審議していますけれども、むだな公共事業というのをやっているのではないかと私どもは強く思って主張しているところですけれども、この問題も同じようなことが言えるのではないか。  県は、将来大変たくさんの木材の輸入がふえていって、二〇一〇年にはこうなる、ああなると言って、そして大きな、十四メーター、十五メーターの港にしたいんだとかいろいろなことをおっしゃっているんですけれども、私は、やはり今の状況の中で、どんどんと木材輸入がふえてくる、巨大なコンテナ船が入ってくるという状況にはバブル以後ないと思うんですね。  現に、これは地元の人がつくっておられる資料ですけれども、例えば、木材輸入船の入港隻数、何隻入ったかというのは、平成一年のときには百二十三隻入ってきているんですけれども、年々、百二十三が九十三になり、八十になり、七十になり、六十になり、平成九年は五十五隻しか入ってこなかったと言うんですね。この十年ほどの間に百二十三から五十五、ことしも減っていると聞きました。平成九年、十年、減っているわけです。それなのになお大きいのをつくるというのは、これはやはりためにする、木材輸入が増大をするからという理由での埋め立てなのではないか。  素人がそういうことを言ってはいかぬのですが、私の資料では、かつて運輸省の事務次官を務めた、今JRの顧問をしていらっしゃる方のコメントがあるんです。  運輸省は、港湾について、二〇一〇年にコンテナ貨物が倍増、埠頭も二倍必要としているが、こんな現状を無視した見通しはない、和歌山は製材業者の多くが廃業、原木需要が激減、既存の埠頭で十分対応可能だ、運輸省港湾局が公共埠頭をつくりたがるのは予算をとるため。これは、事務次官をしていらっしゃった方がこういうことを、これはべらべらとしゃべったのと違って物の本に書いていらっしゃるわけです。公共埠頭でないと公共事業費がつかないからで、使われるかどうかは二の次である、予算のむだ遣いへの反省がなくて、先行投資だから見通しを誤るという言いわけは今の世の中ではもう通用しない、こういうことを元事務次官がおっしゃっているわけです。  私は、今、和歌山が、船が大きいのが来るから深うせにゃいかんのや、倍増になるからもっと倉庫建てにゃあかんのやと言うのは、現実、私も行って、先ほどの繰り返しになりますけれども、広大な空き地があるわけでしょう。実際に、今なぜ必要なのかということについては、住民の皆さんも、先ほどの対話の中でも、なぜ必要かということが絶対にすとんといかないと言うんですね。どうしても和歌山のために、我がふるさとのために要るものだったら我慢せんならぬところはせんならぬやろうけれども、何で必要なのかということは全然わかりませんということをおっしゃっているわけです。  このことはやはり運輸省にもわかってもらわにゃいかぬと思いますけれども、実際にこれだけは、景観を破壊しても環境を破壊してもやむを得ぬということに対して、環境庁は大胆にやはりストップをかける責任があるだろうというふうに思うんです。いかがですか。
  125. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 まず第一点の、この地域の港の利用状況でございますけれども、私どもが得ているデータでは、これは中央港湾審議会の資料でございますが、和歌山下津港における取扱貨物量は、平成六年が五千万トン、平成八年が五千三百四十二万トン、こういうふうに推移してきております。入港船舶数も、一年間で、平成六年が三万六千四百隻、平成八年が三万五千三百七十隻ということで、一日大体百隻前後で推移してきております。  私ども、この先生の御議論で、二つ御議論をされているんだと思います。一つは、過去に埋め立てをオーケーしたところの利用率の問題、あと、それを踏まえて、今企画調整局長から御答弁いたしました、問題となっている埋め立ての問題をどう考えるか、この二つであろうと思います。  過去の問題につきましては、雑賀地区の堤防の内側を埋め立てたわけでございますけれども、その埋め立ては、当時、免許の申請に際しまして、市内の金属機械機具製造業二十三社がありまして、その社にアンケートをしましたところ、早急に移転希望を出された。それは、端的に言いますと、和歌山市内の住工混住地域において騒音等の公害のための移転を必要とするということが一方にあったということで、私ども、やむを得ないと判断した。ただ、その際に、この土地の利用に当たりましては、必要な緑地の確保あるいは建設される工作物の規模あるいは外観等に十分配慮がなされるように、こういうふうな対応をしたということでございます。  それで、それの利用状況でございますが、現在、売却済みは六割、進出協定済みが八%で、全体で七割が進んでいるという実態でございます。今後の問題につきましては、それは港湾当局でいろいろ議論されるということになろうかと思います。  私どもは、埋め立て基本方針に基づきまして、三つの視点から、一つは海域環境保全上とか自然環境保全上の見地からの判断、二つ目は、自然公園法等々のいろいろな規制がある、その点からの妥当性の判断、三つ目は、いろいろ湾の特性などに応じた判断、こういうものに照らして適正に判断していきたい、これは、埋立免許の際のいろいろな意見書を伺ったときに適正に判断していきたいということでございます。
  126. 山元勉

    山元分科員 数字が大分違ったのは、私が先ほど申し上げたのは木材を積んだ船の数を言ったわけです。どおんとその木材船が減っている。けれども、和歌山の言い分としては、木材の輸入ということについて、一番の産業という形で物を言っていますから、ですからさっき数字を挙げたんです。  今の、もう土地売れてますよとかなんとかいう数字、先ほど挙げた人が別のところでもずばりと言っている。適当に数字をつくっているとしか考えられない、こう言うている。今の答弁を適当な数字やとは言わぬけれどもね。やはりそれぞれのところところでつくっているというのか、それなりの欲するところでの数字をつくっているということはあろうと思うんですね。  ですから、私の目だけを言うわけじゃありませんけれども、本当に広大なところに草が生えている。何メートルありましたか、ずっと長い堤防があるのですけれども、そこのところもきれいな石段が続いて、堤防の向こう側が見られるように場所がつくってあるのですね。けれども、だれも、人っ子一人もいませんよ、まあ暮れでもありましたけれども。きれいないい石で幅の広い階段が、だあっと海が見えるように上がっていく階段がつくってあるのです。これは石屋さんのもうけやな、こう言っていましたけれども。  そういうことが、やはり住民の人にしてみれば、先ほども言いましたように、必要であれば、我慢せんならぬところは我慢するけれども、わかるけれどもという気持ちに、やはりどう数字を並べてもならないのだろうというふうに私は思います。  時間もなんですから、先ほどから繰り返しの言葉になっていますから、最後に長官、やはりこの問題で、瀬戸内法の精神だとか、国立公園の特別地域に指定してあるという精神からいって、最小限にそういう海岸なり自然をさわる、壊す、壊すと言ったら言い過ぎかもわからぬが、実際は壊すのですけれども、そのことについては最大限抑える、ブレーキを踏むという役目が環境庁にあるのだろうというふうに思います。  ですから、長官の所信ということで最後にお伺いしておきたいのですが、瀬戸内を守るということ、特に香川の先生でもありますから十分御案内だろうと思いますけれども、これからどういうふうに、住民の皆さん、和歌山の皆さんも、うん、わかったということになるように御努力をいただきたい。それが環境庁の責任でもあろうというふうに思いますので、最後に長官の所信だけ。
  127. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 山元先生は、環境庁の政務次官も務め、また環境委員長を務められたわけでありまして、環境面につきましては、大変な御活躍をいただき、また、たけた意見を出していただいておるところであります。  その先生がおっしゃる環境破壊の問題、これまでのいろいろな経験学の中から言われたわけでありまして、私も、その意見を真摯に受けとめて、これらは検討課題とさせていただきたいと思っております。
  128. 山元勉

    山元分科員 ありがとうございました。  そう言われると、私の任期中にもこれはずっと続いていたわけですからじくじたるものもあるわけですけれども、どうぞ頑張っていただきますようにお願いを申し上げて、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  129. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて山元勉君の質疑は終了いたしました。  次に、斉藤鉄夫君。
  130. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 公明党の斉藤鉄夫でございます。大臣担当の最後でございますので、お疲れでしょうが、よろしくお願いいたします。  私は、先ほど山元委員も取り上げておられました瀬戸内海の環境問題を引き続き取り上げていきたいと思います。  一月十九日に、瀬戸内海環境保全審議会答申がございました。私も読ませていただきました。私なりにこの答申をまとめますと、瀬戸内海は、生活生産、交通、憩いの場として重要な海域である。しかし、その環境については、一時期の危機的な状況からは脱したと考えられるが、水質の改善等必ずしもはかばかしくない状況にある。そういう中にあって、新たな課題、海砂利採取などが提起をされてきた。この状況にあって、瀬戸内海の環境保全環境を守るための保全施策、それから、積極的に失われた良好な環境を回復させる施策が必要なのではないか。そのためには、国、地方自治体、いろいろな住民団体の一体的、総合的な施策が必要である。  私なりに読んで、こういうふうにこの答申をまとめた、そのように認識しているわけでございますけれども、大臣、この審議会答申を今後の環境行政の中でどのように位置づけておられるか。また、どのようにこの答申を生かしていこうとされているのか。それについてまずお伺いをいたします。
  131. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 一月十九日に答申を受けまして、その問題について真摯に取り組んでいこうということでございます。  今回の答申については、総合的、体系的に今後の瀬戸内海の環境保全のあるべき方向が打ち出されており、環境庁としては重く受けてとめております。今後、本答申を具体化するため、瀬戸内海の環境保全のマスタープランとも言える瀬戸内海環境保全基本計画の見直しや、埋め立ての基本方針の見直し等を進めていきたい、こう考えておるところであります。  また、平成十二年度から、水質に関する第五次総量規制にもこの意を反映していきたい、こう思っておるところであります。  さらに、本答申を踏まえて、関係省庁や関係自治体、企業や漁業者、そして地域住民、研究者などの御協力をいただきつつ、環境教育環境学習施設の整備調査研究、技術開発の促進などに着手していきたいと思っておるところであります。
  132. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 今回のこの答申は、私が読みましても、新たな視点、また新たな価値観というものが提起されているような気もいたします。そういう意味で、万全のお取り組みお願いしたいと思います。  今大臣の御答弁の中に、マスタープランとして瀬戸内基本計画の見直しをするというお言葉がございました。本文の中にも、この瀬戸内基本計画の見直しとともに、埋め立ての基本方針及び瀬戸内府県計画の見直しをしなくてはならない、見直しが必要である、このような文章も推進方策の中にあるわけでございますが、この基本計画、基本方針の見直しについてのスケジュールをお伺いいたします。
  133. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 お答え申し上げます。  基本計画あるいは埋め立ての基本方針につきましては、瀬戸内の審議会に、平成十一年度になりましたら諮問し、論議を進めていっていただきたい、こういうことでございます。なるべく早く答申をいただきまして、その上で行政庁の対応というのを考えていきたい、こう思っております。  府県計画の方につきましては、これは各府県の問題でございますので、国の論議との関連で、やはり府県での論議を進めていただくよう私どもも働きかけをしていきたいと思っております。
  134. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 今現実に進んでいる環境破壊もこの中に書いてございますけれども、現実に進んでおりますので、それを早く食いとめるためにも早急な施策お願いしたいと思います。  さて、この答申の中に、初めて海砂利採取の問題が新たな課題として取り上げられました。そのほかに、散乱ごみ、油流出事故、それからいわゆるダイオキシンなど内分泌攪乱化学物質の問題、こういう問題が取り上げられたわけですが、そのイの一番に海砂利採取の問題が取り上げられました。  これからの議論の基本になりますので、その本文をちょっと読ませていただきますと、   瀬戸内海においては、高度成長期以降、コンクリート骨材への使用を主目的に、海底の砂利が大量かつ継続的に採取されてきている。   海砂利採取については、瀬戸内基本計画において、「海底の砂利採取に当たっては、動植物の生育環境等の環境保全に十分留意するもの」とされており、海砂利採取が行われる地方公共団体では、採取海域又は採取禁止海域を指定するなどの環境保全に資する対応がとられている。   海砂利採取海域においては、水深が著しく増大した場所や海底に礫が堆積している場所が存在することが確認されており、海砂利採取による環境への影響が懸念されている。 こういう文章で新たな課題として取り上げられました。  ここには、大量かつ継続的に採取されてきている、しかしそれは地方公共団体でいろいろな管理のもとに行われてきているというふうな文章がございますが、現実には、大臣御存じのように、違法採取が、これは地域という意味でも、それから量という意味でも非常に大がかりに行われてきたということは御存じのとおりでございます。その結果、環境への影響が懸念されているということでございます。  今回の答申の根底を流れている思想、保全そして自然の回復、それについて手を打たなければならないという基本思想からすれば、この海砂利採取の問題につきましても、もう四十年来続いている問題ではございますが、早急に手を打たなくてはいけないんではないか、このように考えますが、大臣、いかがでございましょうか。
  135. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 前回先生から環境委員会で質問を受けた当時と、私、現在の認識との差異に大きなものがある、こう自分で思っておるわけであります。先生があれほど熱意を込めて海砂採取の禁止を訴えておられた意は、やはり先見性を持ったものとして私は受けとめさせていただいたわけであります。  かつて私の香川県の沖合、番の州の埋め立てをやったわけであります。そのときに、しゅんせつ航路の砂でもって埋め立てればいいということで、地元といたしましてもそれを大歓迎しまして、しゅんせつ航路はしっかりしたものになるわ、埋め立てはできるわということで、一挙両得だなと思っておったわけです。海底は幾らでも深いものと思っておって、そこには砂が堆積しておるものと認識しておったわけでありますけれども、今日技術が非常に進歩しまして海の様子もよくよくわかるようになったわけでありますけれども、広島県の沖合の海底を見ましても、本当に海底深くえぐり取られたような状態になっておる写真を見まして、これはもう放置しておけないなという感じが一段といたしました。  広島県も長年にわたって海砂採取の禁止をするための方策を講じたところでありまして、遅きに失してしまいましたけれども、香川県や岡山県も早く広島県に倣った体制をとっていかなきゃならないんじゃないだろうかと思っております。  海砂採取の許認可権については都道府県にあるわけでございますから、環境庁として指揮権の発動というようなことにはなりませんけれども、環境庁としての見解だけはしっかりと出していかなきゃならない、こう思っておるところでありまして、昨年の十一月にも瀬戸内の知事さんによる環境円卓会議を開催いたしました。  そのときにも、広島の藤田知事さんを初めといたしまして数人の方々からその保全の必要性ということを言われたわけでありますけれども、ようやくにして他の県の方々もそれに気がつきまして、徐々にやっていこうという当時の意見であったわけでありますけれども、今年になりまして、これは少しテンポを速めて禁止の方向に向かってやっていかなきゃならないということになりまして、香川県も関西空港に対する海砂の供給を約束しておったわけでありますけれども、これも全面的に提供を禁止いたしましたし、そしてまた禁止に向かって少しテンポを速めてやっていこうという状況が見られることになったわけでありまして、瀬戸内環境の基本法というものがここにも大きくあらわれてきておるのかな、そういう感じを持っておるところであります。
  136. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 大臣から大変前向きな答弁をいただきまして、もうこれ以上質問できなくなった、そんな感じですけれども、私も、野党の議員の生きがいは委員会での質問でございますけれども、その質問が大臣の認識を変える一助になった、こういうふうに言っていただければ議員冥利に尽きるわけでございまして、本当にありがたいと思いますが、ここで質問をやめますと十五分も残ってしまいますので、ちょっと具体的に質問を続けたいと思います。  この答申にも自然をもとどおりに回復させるというところがございます。また、局長も新聞等の報道で、できるところから始める、このような発言もあるわけでございますが、具体的に、今大臣が示された大方針に対して、海砂利採取によって破壊された環境をどう回復させていくのか、できるところから手をつけるとはどういうことなのかということについてお伺いしたいと思います。
  137. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 先生の第一の点でございますけれども、取り戻す施策、回復の施策ということでございますけれども、これは審議会で主として論議された対象は、環境保全上重要な藻場とか干潟とかあるいは自然海浜、これらを念頭に置いたものと理解しております。  先生指摘の海砂採取に伴う問題につきましては、平成十一年度から着手いたしますところの瀬戸内海環境保全基本計画の見直しの中で、今現在実施しております生態系影響調査状況等も踏まえつつ、環境保全観点からどんな点に配慮が必要か、これの具体化を図っていくというところがポイントではなかろうかと思います。  それで、やれるところからといいますのは、審議会での御議論でいろいろな御提起があったものを踏まえまして、私ども基本計画等に反映させていくということになろうかと思います。
  138. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 確かに、先ほど大臣おっしゃいましたように、各都道府県に対して強制力はないわけでございます。そういう意味でおのずと限度があるわけではございますが、しかし今国民の、環境庁、将来の環境省に対する期待というものは非常に大きいものがございまして、ぜひリーダーシップを発揮していただきたいと思います。  この審議会答申に、海砂利採取への対応として、現実問題として海砂利が建設の骨材として使われているわけですから、建設をやめるわけにはいきませんし、海砂利の代替品の利用及び砂利にかわる骨材等の研究開発を促進する必要がある、そして、海砂利への依存度合いの低減を図ることが必要である、こういう文章がございます。  そういう意味で、骨材等の研究開発の促進、そして、そのためには私は、海砂利への依存度合いの低減を図る努力目標といいましょうか数値目標、これが必要だと思いますけれども、この点に関していかがでございましょうか。
  139. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 環境庁といたしましては、代替材の開発の問題につきましては、関係省庁と連絡しつつその利用の促進とか研究開発を積極的に推進していきたい、そして海砂への依存度の低減を図ることが必要と考えております。  例えば、コンクリート廃材、高炉スラグ、石炭灰、下水汚泥などのリサイクル利用の促進などに取り組むよう関係各省あるいは関係業界に働きかけまして、これらの利用を通じまして、海砂への依存の減少のために努力をしていきたいと考えております。  具体的にちょっと申し上げますと、環境庁といたしましては、リサイクルに伴う環境保全技術指針開発調査というものでこういった問題の技術指針の策定、あるいは通産省は、廃コンクリートなど建材リサイクル技術開発事業あるいはリサイクル資材活性化技術の標準化に関する調査研究、建設省におきましては、建設事業における他産業再生材の適正評価技術の開発事業の中での対応等々、いろいろ努力をしてきております。  こういう努力環境庁としてはみずからもやりますし、かつまたバックアップしていく、こういうふうなことで対応してまいりたいと思っております。
  140. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 建設廃材の利用等は、これは一石二鳥になるわけです。海砂利の採取を低減させるということと資源の再利用という一石二鳥でございますので、ぜひ、環境庁みずからが研究する部分と他省庁が研究する部分とございますけれども、その調整という役目も含めて、全力で取り組んでいただきたいと思います。  先ほど大臣のお話の中にもございましたが、ちょうど広島県が海砂採取を全面禁止して一年になりました。先日もちょっと竹原という海砂採取をしていたところに行ってきたんですけれども、おじいさんたちが、子供のころの海の色に戻った、このようにおっしゃっていました。ああ、これが本当の海の色なんだな、こういうふうにおっしゃっていました。  それから、小さな魚がたくさん帰ってきた。しかし、これは海がきれいになったからというよりも、その小さな魚を食べる大きな魚がいなくなったから、そのせいじゃないか、その大きな魚がいなくなったところに海砂利採取の影響が出ているんではないかというふうな声もございました。私も海砂を実際に採取している現場へ行きましたけれども、確かに海そのものを汚くしている、広範な地域にわたって汚くしているのを本当にこの目で見てきまして、計画的な削減が必要だなと思いました。  長官の地元の香川では、丸亀市議会や庵治町の町議会が海砂採取の中止を求める意見書を可決した、高松市長さんも禁止を要望したということで、県側は、本来二%ずつ採取量を減らしていくということだったけれども、一〇%の削減率を明らかにするということで、さすがリーダーシップのある環境庁長官の地元の香川県で大変進んでいる。また、岡山県や愛媛県についても見直していこうということが言われておりまして、私は、この環境庁取り組み、リーダーシップがこういう結果を生んでいるんだろう、このように思う次第でございます。  しかし、広島県知事さんともお話ししてみますと、できるだけ早く全面禁止してほしい、広島県だけがやめてもほとんど意味がないわけで、瀬戸内を囲む全部の県がやめなければ意味がないわけだから、正直者がばかを見る、努力した者がばかを見るということではなくて、環境庁のリーダーシップで各県とも削減に向けて努力してほしいというふうな声もございました。  そういう意味でリーダーシップをとっていただきたいわけでございますが、先ほどと同じ質問になってしまいますが、環境庁長官の御決意をお伺いします。
  141. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 昨年十一月にやりました瀬戸内海の瀬戸内環境知事会議、円卓会議の成果が非常に私は大きかったというふうに思えてなりません。それで、広島県ができることなら他の県もできるじゃないかというような意見が出てまいりましたし、このところ、マスメディアの世論のリードぶりも非常に時宜を得た対応をしてくれたんじゃないかと思っております。  そんなことで、私も、知事さんを初めとして行政に携わるトップの皆さん方に、この海砂の採取というものが瀬戸内海の環境を大きく荒廃させておるというふうなことを訴え続けまして、それじゃということで、皆さん方が力を合わせて取り組んでいただいておるところでありまして、香川県としても、今先生から御指摘いただいたように、二%ぐらいで六、七年かかってというようなことを申しておったわけでありますけれども、もはや、広島県を目指して力を合わせて頑張っていこうということで、業界の皆さん方の御理解も得つつあるところであります。  そういう形で、いいことはできるだけ早くやっていく、そういう習慣、風習をつけていきたい、こう思っておるわけでありまして、先生の先見性を得たあの質問というものが、今日大きないい結果を生み出しておるわけでありまして、ぜひ、これからも御協力や、また御支援を賜りたいと思っておるところであります。
  142. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 ありがとうございます。  また、これ以上質問が続けられないような御答弁で困っておりますが、実は、あした運輸部門、第七分科で運輸大臣に直接お聞きしようと思っておりますけれども、関空二期工事でまた大量の海砂を必要としているということで、使用量の削減に努力をされているということでございますけれども……(真鍋国務大臣「カットしている、全部」と呼ぶ)まだ全面カットにはなっておりません。香川県からは、少なくとも……(真鍋国務大臣「香川県は全部お断りしました」と呼ぶ)はい。  ということで、そういうことがすごく大きく運輸省の努力にもつながっているわけでございますが、もう全面的に使わないんだということをぜひ環境庁長官から運輸大臣に言っていただきたい、環境庁のリーダーシップを発揮していただきたいと思うわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。
  143. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 他省庁にわたって私から意見を申していくのは越権行為じゃないかとも思っておるわけでありますけれども、香川県の要望というものを運輸省、関西空港の方に申し入れましたら、それに対する理解を示していただいて、香川県以外の海砂を使って対処していきましょうということになったわけであります。  所々方々にわたって言っておるわけでありますけれども、運輸省は運輸省なりの懸命の努力をしていただいておると思って、私も感謝をしておるわけでありまして、ここはもうあうんの呼吸でいかなきゃならぬ、こう思っております。
  144. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 では、最後の質問です。  問題は、先ほどの局長の御答弁にもありましたけれども、生態系への影響というものがまだ科学的にはっきりしていない、その影響がはっきりしたら何らかの措置をとるということにつきましては、真鍋長官も前回の環境委員会でお答えいただきましたし、まだ橋本政権時代ですけれども予算委員会で質問したときに、橋本総理からも、生態系への影響が出るということがはっきりわかれば、それはちゃんと手を打つよ、このような御答弁でございました。  生態系への影響評価、これはまだまだ時間がかかるようでございますけれども、その間にも現実に海砂採取は続いております。あれだけ地形が変化しているということを考えれば、生態系へ何らかの影響があるということが常識的には考えられますし、また、この三月には広島県海砂利採取環境調査委員会が結論を出します。その中には、生態系への影響評価の結論も含まれているというふうに聞いておりますので、地方自治体がやったものではございますが、そういうものも参考にしてできるだけ早く結論を出す、早く手を打っていくということが必要かと思いますけれども、この点についての質問をさせていただいて、私の質問を終わります。
  145. 遠藤保雄

    ○遠藤(保)政府委員 先生指摘のように、地形上の問題はいろいろ生じているわけでございまして、生態系の問題がいろいろ課題として残されているということでございます。  いずれにしましても、昨年、広島県の提案によりまして、瀬戸内海環境保全知事・市長会議の中に、海砂を含む瀬戸内海の環境問題を広域的な共通課題といたしまして協議する検討会が設置されました。  環境庁としましては、先ほど冒頭私も申し上げましたように、十一年度に瀬戸内海環境基本計画の見直しを進めていくということにしておりますので、以上のような各県の動向をも踏まえまして、瀬戸内海の環境保全という観点から、海砂問題で基本計画論議の中でいかなる配慮が必要か、こういう検討はしていきたい、こう思っております。そして、その上で、都道府県知事の対応に当たりましては、いろいろ働きかけが必要になればしていきたい、こう思っておる次第です。
  146. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 大臣、今までの議論で、随分御答弁いただいたわけですけれども、最後に御決意をお伺いします。
  147. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先般の予算委員会におきまして、斉藤先生から質問があるということで答弁を持って待ち構えておったわけでありますけれども、残念ながら時間切れになってしまったわけであります。  私は、先生の高邁なる意見を大変力強くお聞かせもいただき、また、私自身もその面について今後真剣な取り組みをしていかなきゃならないと思っておるところであります。いろいろ御意見をちょうだいいたしておることを感謝いたしておる次第であります。
  148. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)分科員 どうもありがとうございました。終わります。
  149. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理府所管環境庁についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  150. 植竹繁雄

    植竹主査代理 次に、農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。中川農林水産大臣
  151. 中川昭一

    中川国務大臣 平成十一年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。  初めに、予算基礎となっている農林水産施策基本方針について御説明します。  農林水産業と農山漁村は、国民の安全で快適な生活基盤であります。加えて、昨今、ゆとり、安らぎといった価値が重視される中で、国民は、農林水産業や農山漁村に対し、新たな期待を寄せています。こうした期待に的確にこたえていくことが重要であり、国民あっての農林水産業と農山漁村、農林水産業と農山漁村あっての国民との信念のもとに、各般の施策を積極的に展開します。  次に、平成十一年度農林水産予算について、その枠組みから御説明します。  平成十一年度一般会計予算における農林水産予算の額は、関係省庁計上分を含めて、三兆四千五十六億円となっています。その内訳は、公共事業費が一兆七千五百八十八億円、非公共事業のうちの一般事業費が一兆三千七百八十一億円、主要食糧関係費が二千六百八十七億円となっています。  平成十一年度の農林水産予算については、農山漁村地域を中心とする地方経済の活性化、再生を図るとともに、二十一世紀に向けて強固な食料供給基盤や緑豊かで暮らしやすい国土、地域の形成を図るために必要な予算を計上しました。特に、農業については、農政改革大綱に沿って、新しい食料・農業・農村政策を推進する観点から、所要の予算を計上しています。  以下、農林水産予算の重点項目につきましては、委員各位のお許しを得まして、御説明を省略させていただきたいと存じます。  よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  152. 植竹繁雄

    植竹主査代理 この際、お諮りいたします。  ただいま中川農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 植竹繁雄

    植竹主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  154. 植竹繁雄

    植竹主査代理 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  155. 植竹繁雄

    植竹主査代理 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。加藤卓二君。
  156. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 私は、自由民主党の埼玉県選出の加藤卓二でございます。本日は、野菜のダイオキシン問題について質問させていただきますが、大臣にはよろしくお願いいたします。  民放の報道番組で取り上げられたことから問題が各方面に広がったと私は考えておりますが、番組中、民間調査機関の方が、「野菜のダイオキシン濃度」と題する図表を用い、示した数値が国民の誤解を招いたようで、また、この中で用いた野菜という表現についてもその範囲があいまいであり、そのあいまいさが波紋を大きく広げたように思っております。  後日、テレビ局側で葉っぱ物という表現で訂正したようですが、最初の報道しか目にしていない国民は多いはずです。いかなる報道機関でもそうですが、ただ訂正すればいいというものでなく、その報道については重大な責任があり、慎重にやらなければならないということを認識してほしいと思っております。  また、近年の都市近郊農業においては、ハウス型促成栽培がかなりの部分を占めており、冬場のホウレンソウなどは、栽培期間においてビニールによるトンネルを利用しない例は少ないのでございます。トンネル栽培がほとんどでございます。また、出荷間際にビニールの覆いを取り外すことにしており、大気汚染の影響は受けにくいはずです。番組のデータは、その区別も表示されておらず、その発表方法にも問題があったのではないかと思っております。  郵政省は、この事実関係に誤りがなかったかを至急調査すべきで、また、正しい報道のあり方はどのようなものであるかお聞かせください。
  157. 品川萬里

    ○品川政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘のありました件につきましては、二月一日と二月九日の両日にわたりまして報道がなされたわけでございますが、先生おっしゃるように、二月一日の報道におきましては、単位を省略いたしますと、〇・六四から三・八〇の数値につきまして、ボードの表示は野菜、それから解説ではホウレンソウをメーンとした葉っぱ物というような、確かにわかりにくい表現がありました。二月九日については、今度はホウレンソウという表示で報道がなされたように承知しております。  これにつきましては、私どもなりに報道番組を調べております。それから、それ以降、テレビ朝日の方に、一日と九日でいかなる番組の関係があるのか事情を今聞いておるところでございます。  先生指摘のように、放送というのは大変影響の大きいものでございます。それから、当然のことながら、放送の表現の自由というのは認められておりますけれども、その上に立って、放送法では、公共の福祉に適合することということがあわせて求められているわけでございますので、今回の事態は私どもも真剣に受けとめまして、既に総理からも、この問題について真剣に取り組むようにという御指示もございますので、関係省庁と打ち合わせながら対処してまいりたいと思います。  放送法上どのようにこの問題について対応すべきか、事情も十分踏まえながら、また事情もよく聞きながら、真剣に検討してまいりたい、かように存じております。
  158. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 先日のテレビの報道以来、所沢市を中心に、私の選挙区の埼玉県の北部は、県内屈指の野菜の産地であります深谷市、その周辺の大里、児玉を初め、埼玉県全域にわたって野菜が価格低下の影響を受けております。また、ハウス栽培のナスまでその被害を受けております。そうした中で、農林水産省はどのような対応を考えておられますか、ひとつお聞かせください。
  159. 中川昭一

    中川国務大臣 加藤先生御地元の埼玉県の所沢を初めとする数市町の野菜等につきまして、二月一日のニュースステーションの番組の中で、あたかも大変な量のダイオキシンがついている野菜、ホウレンソウが出荷されている、つくられているという報道は、私も大変びっくりいたしたところでございます。  その後、その数字が、今お話がありましたように、野菜ではないものが特に高いものとして入っているということでありまして、その報道については、私は大変な驚きと怒りを持って現在に至っておるわけでございます。  特に生産者の皆さんにとりましては、精魂込めてつくったものが、全く事実と違う報道によって価格が暴落し、また買ってもらえるところも激減したという状況であります。その後、幾分か持ち直したこともございますけれども、大変な被害が生じたということについては、我々としても大変悲しみをもって関心を持っておるところでございます。  農林省としては、報道直後からJA所沢調査結果の公表も受けまして、安全性に特段問題がないということで、量販店や卸売関係者等、あるいは消費者に対しましても冷静な対応お願いしております。また、農水、厚生、環境省庁で、きのうから現地調査、そして実態の把握に向けて今全力を尽くしておるところでございまして、全力を挙げてこの実態の正確な把握、そしてまた生産者、消費者あるいは流通関係の皆さんに一日も早く安心を取り戻していただくべく、今全力を挙げて努力しておるところでございます。
  160. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 ダイオキシンの汚染問題は、所沢市周辺のみならず日本全国の問題であります。国民全体が健康に対する不安を抱いております。全国的に汚染状態の把握などが必要でありますが、厚生省では、今この問題に関して、埼玉県の住民だけではなく、全国の住民の健康を守るために、汚染実態の把握などどのような対策を講じているか、お聞かせください。
  161. 平山一男

    ○平山説明員 厚生省におきましては、ダイオキシン類の汚染実態の把握をいたしまして、それとともに、人への健康影響というものを解明するため、平成九年度から厚生科学研究事業によりましてダイオキシンに関する総合的な調査研究推進しているところでございます。  具体的に申し上げますと、まず食品中のダイオキシン類につきましては、平成四年からでございますが、穀類、肉類、野菜類等の個別食品の汚染実態調査を実施しており、平成八年度から、さらにダイオキシン類の一日摂取量の調査というものも実施しているところでございます。  それから、人体におきまして全国的にどのようなダイオキシンに関する暴露状況があるかということを把握するために、全国四地域で血中ダイオキシン濃度の調査を実施いたしております。  それから、母乳についてでございますが、これは、全国の二十一都府県におきまして、母乳中のダイオキシン類濃度を測定するとともに、その母乳で保育された乳幼児の健康状態に関する調査を実施しているところでございます。  それからまた、ダイオキシン類の摂取による安全性の基準となるTDI、耐容一日摂取量でございますが、これを見直すということで、現在環境庁と合同で早急に検討しているところでございます。  厚生省といたしましては、今後とも国民の健康を保護する観点から、必要な種々の対策推進してまいる所存でございます。
  162. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 今回のダイオキシン問題が起こっております所沢地域では、産業廃棄物処理施設が集中的に立地していると言われていますが、この地域での大気中のダイオキシン濃度の状況はどうなっているのか、環境庁からお聞きしたいと思います。
  163. 飯島孝

    ○飯島説明員 所沢地区における大気中のダイオキシン濃度についてでございますが、年間の平均値で評価をしておりまして、平成九年度に埼玉県及び所沢市が測定した六地点の結果によりますと、〇・六三から〇・九九ピコグラム、一立方メートル当たりの値でございますが、この範囲にございまして、環境庁が大気環境指針値という指針値を設定しておりまして、それが〇・八ピコグラムでございますが、これを超えましたのが六地点中一地点でございました。  なお、全国の汚染状況と比べますと、平成九年度の全国のダイオキシン濃度の調査結果は六十八地点中十四地点、約二割の地点でこの指針値を超えておりまして、所沢のこの指針値を超える割合はほぼ同じでございました。  また昨年八月に、一回きりでございますが、所沢市が測定した十一地点の結果は、〇・三五から〇・七九ピコグラムと若干低くなっておりました。
  164. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 このダイオキシン問題は、本当のことを申しまして埼玉県の農家は被害者で、もちろん農林省も同じだと思うし、この環境問題の中で一番大事なのは、産業廃棄物をこの地域でなぜこんなに一カ所でやるようになったかといったら、やはりこの辺の宅地化があったからというよりも、むしろ山林が宅地並み課税という形で農家が手放さざるを得ないような状況の中で、大変そういう地域に集中したのかなというような話もございます。  そのとおりだと思いますが、ただし一番大事なのは、今農林省からも聞いて大臣も同じような答弁をずっとやっておると思うのですが、ダイオキシン平成九年度のくぬぎ山の大気環境は特に問題がないとの環境庁からの答弁があったのですが、所沢地区は一説に六十とも言われていたのが、やはり厚生省で規制を厳しくしたときに三十五ぐらいまでに減っているわけですね。ですから、これは平成九年からですから、今は少なくもよくなっているんじゃないかなと私たちは思っていたわけです。  このような焼却炉に対して厚生省はどのような規制指導を行ったのかということを、いま一度詳しくお聞きしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  165. 仁井正夫

    ○仁井説明員 廃棄物焼却施設に対してのダイオキシン規制の状況でございますが、平成九年の八月に廃棄物処理法に基づく省令を改正いたしまして、規制基準を定めたものでございます。同時に、政令も改正いたしまして、規制対象となる施設の規模をすそ上げいたしまして、規制対象施設の拡大を図ったところでございます。  この基準につきましては、新設のものにつきましては一昨年の十二月から、既設の焼却施設につきましては昨年の十二月一日から暫定の基準が適用になり、また既設のものについての恒久的な基準はさらに厳しい値として平成十四年の十二月から基準の適用が開始されることになっております。このような規制を実施いたしました。  また、この規制を遵守していただくように、埼玉県御当局においてもいろいろ御指導いただいているところでございまして、お話がございましたように、所沢周辺、これはくぬぎ山を含みます三市一町の区域でございますが、もともと五十九の施設がございましたが、現在は二十四の施設が休止あるいは廃止という状態になっておりますし、当然その稼働している施設につきましても、現在適用されております一立方メートル当たり八十ナノグラムという排出の基準については遵守できているということが確認できております。  こういったことから、規制の効果は着実に上がっているというふうにとらえておりまして、排出されるダイオキシン類の総排出量も減少しているものと思っております。以上です。
  166. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 ダイオキシン類の対策がほとんど行われていなかった平成九年度のくぬぎ山の大気環境が特に問題がないというのですから、昨年末に開始された焼却炉の規制によって、その地域の炉の数が半分になった。これは不景気も影響しているのかなと思いながらも、技術革新が大変進んでいる中で、次々に生まれる技術革新の中で、中規模の産業廃棄物を燃すのは、大規模な人がやっているみたいじゃなく、町村がやるわけじゃございませんから小さいと思います。が、これはゼロにできるような技術はできないのかということをよく言われるのですが、厚生省はこの技術開発を進めているのか、お伺いしたいと思います。
  167. 仁井正夫

    ○仁井説明員 ダイオキシンの生成につきましては、塩素を含むものを焼却するということに伴いまして、非意図的、望むという形でなくて生成されてしまうというものでございますので、厳密な意味での本当のゼロというのはなかなか難しい面もあろうかと思いますが、高温で完全焼却していく、あるいは温度管理を徹底していくということでダイオキシンの排出を極めて少なくする、そういった技術はできるものと思っておりますし、また、私どもがその規制を動かし出したといったことに呼応する形で、技術開発の意欲というのは非常に進んでおります。  厚生省といたしましても、ダイオキシンの排出抑制技術についての開発、あるいは技術情報の収集といったようなところに努めているところでございます。
  168. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 このように、技術開発にあわせて規制を厳しくしていくことも必要だと思いますが、結局、産業廃棄物がなくなっちゃうというわけではございません。ですから、平成十四年にはさらに厳しい規制が産廃の焼却炉に適用されるんだと言っておりますが、産業廃棄物の処理が適切に行われるよう、共同化だとか公共関与などによって適切な処理体制を確保していくことも大変必要ではないかと思います。  例えば再生資源化を図るという手もあるでしょうが、厚生省の方では、今ある産業廃棄物業者を、おまえ、やめちゃえという形ではなく、ぜひこれをある意味で面倒を見て、廃棄物の汚染度をなくすための施設をつくるためのいろいろな面での援助はできないのですか。これをお聞きしたいと思います。
  169. 仁井正夫

    ○仁井説明員 御指摘のとおり、平成十四年から既設炉に対しましてかなり厳しい排出の基準がかかることになります。ただ、設置者に対しましては、やはり基準はきっちり守っていただくということが必要でございますので、お話ございましたような共同化による対応といったことも含めて、計画的に必要な施設の改造等の計画を立てていただく、こういったことを県を通じてやっていきたいというふうに思っておりますし、また、施設の設置者がそういう改造等をする費用につきましては、環境事業団による特別な融資でありますとか、あるいは税制上の措置といったような形での支援を行っているところでございます。  また、あの地域で多く焼却されている例えば建設系の廃棄物、御指摘ございましたように、適切な選別を行うとか、あるいは再生の処理を行うといったようなことで再資源化が可能なものというのもかなり多かろうと思います。関係省庁とも連携して、そういったことについても進めてまいりたいと思っております。
  170. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 厚生省、一生懸命やっていることは承知しておりますが、加害者になったような省にならないように頑張っていただきたい。そういう意味で、ぜひひとつ産業も育てていくという形の中で御協力願いたいと思います。  この所沢の問題を契機に、三省庁の連絡会議を設置したという話をお聞きしておりますが、これはダイオキシン問題に対してだけでなく、農林水産省のように大変大事な国民の食糧を生産するあれでございますが、この問題は今後いろいろな形で大きく、ダイオキシンが大丈夫だと思えばまた次のものが出てくるかもしれませんから、そういう対策は三省庁で一生懸命やっていくというお話を聞いて、ああ、いいことだな、縦にやっているといろいろな漏れが出ますが、横にスクラムを組んでやることが大変効果的なあれになる。大臣、これについての取り組み方について、ひとつイニシアチブをとっていただいて、農林省以下皆さんが仕事がやりいいように協力してやってほしいということで、最後になりましたが、大臣に一言お話をお聞きしたいと思います。
  171. 中川昭一

    中川国務大臣 二月一日の国会での質疑、そしてその夜の「ニュースステーション」での番組をきっかけにいたしまして、厚生省環境庁、そして農林省、それから県、関係市町村と直ちに連絡をとり合いまして、特に三省庁連絡体制を密にいたしました。  事務局は農林省でございますが、その一環といたしまして、昨日から所沢を中心に調査に入っておるところでございます。  その目的は、周辺地域の現時点における野菜に一体どのぐらいのダイオキシンがくっついているんだろうかという実態調査、そしてまた、その分析評価をできるだけ早くやりたいということで、現在鋭意作業中でございます。何しろ、ピコという兆分の一の世界の話でございますから、収集そのものは簡単でございますけれども、その分析に若干時間がかかるということでございますが、できるだけ早く、来月中にもきちっとした実態調査結果をまた御報告するということで、早くやることがポイントだろうと思います。  なお、小渕内閣総理大臣も、ダイオキシン問題については、極めてこの取り組みについて積極的でございますし、一方また、所沢を中心とする埼玉県の野菜農家の皆さんのこうむった損害に対しましても大変深い関心をお持ちでございまして、その総理のもとで、今政府を挙げてこの問題に取り組んでおるところでございますので、また引き続き御指導をよろしくお願いいたします。
  172. 加藤卓二

    加藤(卓)分科員 大臣の本当に心強い発言を聞いて、非常に安心はいたしますが、このダイオキシン問題というのは、農林水産省の非常に広い範囲で影響力のある問題でございますので、各三省庁がぜひ今後とも協力していただいて、こういう問題で二度と国民にいろいろな心配をかけないように、省庁の御協力、またその努力お願いいたしまして、ちょうど時間を節約しましたので、時間に終わるように、この辺でやめておきます。  大臣、きょうは本当にありがとうございました。
  173. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて加藤卓二君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  174. 上原康助

    上原分科員 どうも中川大臣、大変お疲れさま、御苦労さまでございます。民主党の上原ですが、なかなか農業問題でお尋ねする機会がありませんので、この分科会の機会を利用して、農政問題、また地元の農業問題等について少しお尋ねをしたいと思います。  農政に対して非常に御精通しておられる中川農水大臣ですから、私のような素人が余りお尋ねするのもいかがかと思うのですが、政府・与党といいますか、自民党さんも新たな農業基本法の策定に向けて大詰めの作業を今進めておられる。これはたしか一九六一年、昭和三十六年以来約四十年ぶりの抜本的というか時代の変化に相応する見直しだと聞かされております。中間報告でしたか、ちょっと目を通させていただいたのですが。  それを受けてというか、そういう政府・与党の動きもありまして、民主党も、このほど農業基本政策あるいは基本農政についての考え方取りまとめて、今いろいろ政府への提言、提案をしようとする準備を進めているようであります。  その中身を簡単に申し上げますと、世界食糧安保の達成と我が国の食糧自給についての政策をより明確にすべきだとした上で、公益的機能、国土・環境保全機能、これは政府でお考えになっているものとも共通する面が相当ありますが、保健休養機能等の視点から基本法を見ていく。もう一つは、今のダイオキシン問題もそうでしょうが、消費者、地方分権、国際協力観点というか視点というものもはっきり位置づけていくことが必要じゃないのかということ。  そういう食料政策あるいは農業政策、農村政策、関連する重要政策という課題別の政策を取りまとめて、政府の農業基本法の改正に向けて、まあ、対案になるのかあるいは提案ということになるのか、これからよく検討していくと思うのですが、今準備をしております。  そこで、こういう農業基本法にかかわる新たな食料・農業・農村基本法の改定を目指して、二十一世紀を展望する我が国の農政を確立していくということでありますが、それに対する大臣の御決意というか、今私があらまし述べたようなこと等に対する御所見を伺わせていただければありがたいと思います。
  175. 中川昭一

    中川国務大臣 今先生指摘のように、現行の農業基本法が昭和三十六年から実施されましたが、四十年近くたちまして、農業というよりも農業にかかわる役割というものが大きく変化をしてきたという認識でございます。  例えば、環境面の問題、あるいは地域に根差している伝統文化、あるいはまたその公益的機能でありますとか、さらには国際的な食糧と人口とのバランスの問題、そしてまた食糧の安全性、そして国民の食糧に対する関心といったような新しい問題等々も提起されるようになってまいりましたので、今回、抜本的に食料・農業・農村基本法という形で、国民全般にかかわりのある食糧というものを大きな位置づけとしてとらえております。  したがいまして、消費者の視点というものも重視した上で、農業の持続的な発展、さらには農村における食糧供給という本来的な役割と、さらにそれと同じように大事だというべき多面的な地域の役割というものを大きな柱として、この基本法をこれから御審議いただきたいというふうに考えております。
  176. 上原康助

    上原分科員 その中で、これももうしばしば議論されてきていることだと思うのですが、特にこの食糧自給率の問題ですね。  これは私も時々聞かされるのですが、今、ガイドラインとかいろいろな、安全保障の面での有事とか、そういうことをよく言われますが、本当に世界的な食糧危機、気象現象とかいろいろなことでアメリカとかオーストラリアとかロシアあるいは中国等々の食糧生産が著しい影響を受けた場合に、日本国民生活、食糧自給というものが、自給率が低いわけですから、果たして輸入依存だけでいいのかという心配がある。備蓄とか、本当に現在の国民生活を、食糧生活を維持していくにはという不安を、やはり国民はどこかに持っているのですね。特に沖縄なんかも、全くこれは輸入に頼っているわけで、離島県でありますし、北海道とは違うのですよ、大臣のところとは。  そういう点もぜひひとつこの新しい農業政策には御配慮いただきたいということを要望申し上げておきたいと思います。もし御所見があればお聞かせいただきたいわけですが。  そして、この平成十一年度の予算説明の中でもいろいろ触れられております、また今の基本法の改正問題とも関連するわけですが、特に中山間地域の適用範囲の問題ですね。  中山間地域の農業生産に対する所得補償、デカップリングというのですか、そういうものも二〇〇〇年度から導入しようとしておられるようです。それは私は理解ができますし、またぜひ積極的に対応策を講じていただきたいわけですが、どうも今、農水省がお考えになっておられるこの中山間地域地域範囲がどこまで指すのか、ちょっとよく理解できない点があるわけです。明確でない。  現行法では、該当するのは、沖縄県の場合ですと、市町村、五十三のうち十五しかない。二八%に相当している。だから、さっきも申し上げましたように、離島県である沖縄の場合なんかは、いろいろの指標なりあるいは実態なりを勘案してみると、やはり県全域が対象地域になっていいのじゃないかという感じがするわけですね。  これは、県の農協中央会なども、沖縄を条件不利地域として明確に位置づけてもらいたいという要望を既に関係省庁に出しております。そして、離島を多く抱える条件不利地域の基幹作物としての、後でも少し触れますが、サトウキビは、他産業への波及効果、地域社会の存続、県土・環境保全の公益性という面からも、あるいは雇用という面でも相当の影響があるわけですが、そういう重要な地域振興作物として位置づけることがより必要になってきておりますので、この中山間地域の指定範囲というものをもっと弾力的に、あるいはいろいろ御配慮をいただきたい、こう思うのですが、大臣の御所見なり、また担当局長でも結構ですが、まずお答えいただきたいと思います。
  177. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘の、中山間地域に対する直接所得補償というふうにつながっていくんだろうと思いますが、我々としては必ず中山間地域等ということで、条件不利地域の代表例として中山間地域というものを挙げておりまして、必ず等という言葉が入っておるというふうに先生にも御理解いただきたいのであります。つまり、生産性におきましても、また定住性におきましてもコスト面で非常に不利であるというところに対して、先ほどの生産性あるいは国土の機能維持といったようなニーズもあるわけでございますので、それに対して直接所得補償をやろうという方向で進めております。  ただ、どういう範囲を中山間地域等条件不利地域にするかについては、これは日本で初めてやる仕事でございますので、具体的に対象地域あるいは対象者あるいは支払い方法、対象行為等々、これはもう、実は私の北海道なんかもきっと寒くて遠いんだということで、北海道ごと条件不利地域だということを言う人もおりますし、また先生も沖縄というのは大変御苦労されて、またいろいろと条件不利の部分もあるわけでございます。  そういう意味で直接所得補償、つまり国民負担での支払いでございますので、客観的な基準、指標というものをつくっていかなければいけないということで、現在、専門家の間で基準づくりというものをやっておるところでございます。
  178. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 済みません。ちょっと補足をさせていただきます。  検討の視点なんですけれども、やはり国際的に通用するということ、それから国民的理解を得るということ、こういうことを考えますと、WTO農業協定上の緑の政策に合致する、そういう政策としなければいけないということを前提に議論をさせていただいております。WTOの農業協定では、農業生産条件の不利性というところに着目をいたしまして、その生産性の差といいましょうか、その範囲内において直接支払いを行うということになっております。  今御指摘になられました離島の扱いにつきましては、その離島が果たしてそういう意味で生産性において顕著な差があるのかどうか、それから離島が果たしている公益性について検証が必要だろうと思っておりますので、そういう点からの議論を今まさに展開していただいているところでございます。
  179. 上原康助

    上原分科員 これはやはり御専門のお立場で役人の方々がいろいろ基準なり、国際性というかWTOとの関係等々を考慮しなければいかないということは理解をいたしますが、そこだけに余りこだわると、今私が指摘をしたような地域不利性というものがカバーできないおそれもありますので、その点は先ほど大臣がおっしゃったようなことで、この等などというのはなかなかくせ者ではあるけれども、それで包んでもらって、ひとつ特に御配慮をいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  次に、サトウキビの振興、サトウキビ問題について取り上げておきたいと思うのです。  余りたくさん申し上げる必要もないと思うのですが、サトウキビを取り巻く環境は年々厳しくなってきております。特に糖度引きかえというか品質取引になって以降、これは年によって波があるわけですが、どうも九八年産は相当厳しいのじゃないかという気がしてなりません。いわゆる基準糖度帯の十三・一から十四・三度の比率は、今のところ、一月末現在あたりでは二〇%を切っているというふうに県の農水部あるいは沖縄総合事務局の農水部あたりは見ているようであります。  さらに、年々生産量も御承知のように減少してきておりますから、企業の統廃合、そしてリストラ、また職員の整理縮小、指名解雇等々も出て、スタートは大変厳しい状況にあることは御承知のとおりですね。  この事態を解決していくには、やはり後継者問題を含めて、いろいろ多面的、多様的に、政策面あるいは生産面等々を含めてやらなければいかないと思うのですが、生産者自体の努力あるいは沖縄県、農業関係団体の努力も、自助努力というか、いろいろな面が必要であることは重々わかりますし、私は別に政府の特別措置とか保護策に常に依拠しようという立場はとりません。だけれども、やはり基幹作物としての沖縄のサトウキビを継続、発展させていく、何とかその地位を確保しながらより甘味資源としての効用を出していく上においては、政府なり県なり行政の援助というのも引き続き必要だと思うのですね。  今申し上げた事態について、農水省としてはどういうお考えで沖縄のサトウキビ農業というものをいい方向にというか、農民の期待にこたえ、そしてもう少し明るい希望を与えるような施策というものが必要かと思うのです。後でちょっと具体的に申し上げるのですが、まずは政府の、現状をどう見ておられるのか、その現状に対してどのようなお考えで対処していかれようとするのか、お聞かせを願いたいと思います。
  180. 中川昭一

    中川国務大臣 沖縄県におけるサトウキビは、もちろん県の農作物の大宗を占めるわけでございますし、また砂糖自体がこれはもう国民的な重要な食糧でございます。しかし現状においては、需要が減少するとか内外価格差の拡大とか、いろいろな問題がございますが、何としても、沖縄県においても、また全国的においても、サトウキビ生産の振興をしていかなければならないということで、農林省としましては、農地利用の集積とか、あるいはまた農作業の機械化、さらには糖度の高い多収性の優良品種の普及等に積極的に取り組んでいきたいと思っております。  農政改革大綱に沿いまして、国内産糖の価格競争力の回復に向けまして、生産者あるいはメーカー、製糖企業等の一体となった取り組みの具体化と、それに対しましての国としてのバックアップということについても、これからも積極的に対応していきたいというふうに考えております。
  181. 上原康助

    上原分科員 ぜひひとつ、いろいろな面での御配慮というか、お力添えをさらにお願いを申し上げておきます。  そこで、沖縄総合事務局の農林水産部がまとめた「これからのさとうきび作のあり方 さとうきび作検討会報告書」というのが出ているのですね。余り農水省を褒め過ぎてもいかないのですが、これはよくできたものだと思って高く評価しているのです、私は。むしろこういう提言とか案というのは、本当は沖縄県なり地元がもっと先にやるべきことじゃないかと思うほど核心をついた点だと思うのですね。そこで、総合事務局の農林水産部は農水省の出先でもあるわけですから、もう既に報告書を見ておられておわかりと思いますが、サトウキビの減産の対策として、一つは県民合意の形成、二点目に担い手の育成、三点目が高収益作物の導入、四点目が輪・間作の推進、五点目が地域の実情に即した機械化体系の確立・普及、六点目が農協等のサトウキビ生産のあり方というか、増産でしょうね、増進でしょう。七点目が農地流動化の促進、八番目が側枝苗生産技術の実用化、そして九点目が製糖企業の経営安定、合理化ですね、安定化。  まさに今、今日までやろうとしてきたことを、ある面では現時点で集大成をして、これからのサトウキビの危機を打開していこうという提案だと見ていいと思うのですね。ぜひこの内容を、農水省としても沖縄県なり、あるいは関係団体ともよく御協議をし、相談をして、予算の必要性のあるもの、あるいは政策的にもっと配慮していくべきものを進めていただきたい。  このことに対して、農水本省はどのような受けとめ方と、また今私が挙げたことについての御所見と、これを具体化していくお考えがあるかどうか、お聞かせを願いたいと存じます。
  182. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今の先生指摘いただきました沖縄総合事務局のレポートでございますが、お褒めいただいて本当にありがとうございます。  そこで触れられていることにつきまして、我々、本当に重要なことが指摘されているわけでございまして、それは、工場地区ごとに、工場側と生産者と関係団体が地方公共団体一体となって進めるためのルネッサンス計画事業というのをやっております。これは昨年からやっておるわけでございまして、二年事業で進めているわけでございます。その成果が少し出てきているのじゃないかなどというふうに思うわけでございます。  基幹的な作目でございますから、サトウキビの生産性の向上、また、糖業の合理化等を関係者が一体となって進めていくルネッサンス事業を核として、この事業を進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  183. 上原康助

    上原分科員 もちろん政府だけ褒めるといけませんので、沖縄県としても前県政時代からサトウキビ生産計画、ルネッサンス計画というものを、二十一世紀に向けたプランをつくってあるということは、恐らくそれともう連携、連動させてこの構想が出てきたのじゃないかと思いますので、あわせてひとつぜひ推進をしていただきたいと思います。  そこで、これは一々ごもっともなことを書いてあるのですが、文章化するのは、知恵のある人ならだれでもできるのですよね。どうこれを政策化していくか、実行していくかということが大事なんで、中川大臣、私は、今は相当優しくなっているんだが、以前から農水省や沖縄開発庁にきつい注文をつけてきたことがあるのですよね。  この中にも、五点目に、地域の実情に即した機械化体系の確立・普及というのがあるのですよ。ハーベスターも、例えば南大東とか北大東あるいは伊江島とか、基盤整備がされて相当広域生産をしているところは大型のハーベスターが活用できますから、効果を上げているのですよね。  しかし問題は、それに対する助成であるとか管理であるとか、前は、私がいろいろ聞いてみると、ここにも書いてあるように、地域の実情に即した機械化体系はできるというのですよね。機械はつくることはできる。だがそれが大量生産でもない、なかなかペイしないというわけですね、つくる側が。だから機械化がおくれて、ますます高齢化していく、離農していく、農業離れというものがあるわけで、まさにここに指摘した、地域の実情に即した機械化体系ということを、もう少し本腰でやっていただかなければいかないということなんです。これなくして本当に農業改良できませんよ、農村改革は。  その点について、いろいろ今農業に対する補助金問題等々、厳しい面もあるのですが、しかし、こういうことをやらないと、地域の農業とか文化とか雇用とか、そういう面は確保できないわけですから、そこにもう少しお金も暇も知恵も出していく、これが沖縄農業の基幹作物であるキビを本当によみがえらせる一つの大きな課題だと私は思うのですが、もう少し何とかなりませんかね、これは。
  184. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お答えを申し上げます。  今先生お話ございましたとおり、まさに地域にマッチしたといいますか、例えば一、二例を挙げますと、ハーベスターでございますと、地域の実情ということからいきますと、小型化したもの、あるいは軽量化したものが必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。それから、ハーベスターが効率的に稼働できない小区画もあるわけでございまして、そういうところでは集中脱葉機を導入するというようなことが必要ではないかと思っております。  そのために、私どもの方では農業生産体制強化事業というものを持っておりまして、その中で、九年度からは石垣市の農業開発組合、あるいは十年度からは沖縄さとうきび振興組合といったところを実施主体にしまして、今お話をしましたような、地域にマッチしたような機械を導入していくという機械化体系の整備に力を入れてきているところでございます。
  185. 上原康助

    上原分科員 これは大臣の方からも、いろいろ難しい面もあると私はわかります。その事情とか、なかなか容易でないということはわかる。しかし、皆さん自体が、沖縄の実情を知っている出先の機関がこういう指摘をしているわけですから、もう少し督励をしていただいて、積極的に進めていただけませんか。
  186. 中川昭一

    中川国務大臣 私も何年か前に沖縄のサトウキビを視察に行ったことがありますけれども、本当に沖縄といっても条件が違うのですね。そういう意味で、沖縄という大きな島、あるいは周りの島を含めていろいろ条件が違うんだなと。これはまさに農業の難しさであり、特徴だと思いました。そういう意味で、今の先生の御指摘、しっかり受けとめて、役所の中、督励したいと思います。
  187. 上原康助

    上原分科員 もうあと一分ぐらいしかありませんので。  最後に、これは沖縄振興プロジェクトの中にも農水関係のPTがあって、いろいろ計画されておりますね。このことについても積極的にやっていただきたいということと、もう一つ、時間がありませんで触れられませんでしたが、松くい虫、これも相変わらずひどいのですよ。山原の松はみんなもう枯れている。今ごろ観光に行くと、何で冬に花が咲いているの、桜と違うんじゃないかと言われるほど松くい虫がひどい。  この二点について、ぜひ積極的に対策を講じていただきたいと思うのですが、最後にお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  188. 中川昭一

    中川国務大臣 沖縄政策協議会のプロジェクトチームにおきましては、農林水産関係におきまして、生産物のブランド化の推進を通じた沖縄の農林水産業の振興、あるいは森林や海洋等の保全、風力等の自然エネルギーの活用等について調査を行ってまいりました。今後、沖縄のすばらしい特性を生かして、特色ある農林水産の振興に向けて頑張っていきたいと思います。  それから、松くい虫に対して、沖縄は大変な被害が生じていることは私も承知をしておるところでございます。これは気象条件にも随分左右されるようでございますけれども、今後、保全すべき松林における防除の実施、あるいはまた樹種転換、あるいは抵抗性松の普及等、総合的に講じながら、できるだけ被害を終息させるように、早く終息させるように、最大限努力していきたいと思います。
  189. 上原康助

    上原分科員 ぜひひとつよろしくお願いいたします。ありがとうございました。     〔植竹主査代理退席、主査着席〕
  190. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、辻第一君。
  191. 辻第一

    ○辻(第)分科員 私は、国営総合農地開発事業、近畿や奈良で行われております国営総合農地開発事業の問題でお尋ねをいたします。  この事業は、既に平成元年度に新規着工を取りやめ、継続分のみが行われております。なお、各地で行われているこの事業は同様の問題を抱えていると思うんですが、奈良県では、五條・吉野、大和高原北部、大和高原南部の三地区で事業が行われております。京都府も丹後で行われております。しかもこれらは、事業が開始されてからはや十五年から二十四年もの歳月を経ようとしております。ようやく完了の時期が具体的になってきました。しかし、そうした時点になって、改めて関係農業者の中に不安、苦悩、怒りが高まっています。  問題は、例えば昭和四十九年に事業がスタートした五條・吉野地区は、事業がスタートしてから二十四年です。奈良県下で一番早く事業が完了する見込みの大和高原南部で二十二年にもなっています。当初の計画は七年間でした。一、二年程度延びることはあろうかと思いますけれども、いろいろ事情があったにしろ、既に約三倍の期間がかかっております。例えば大和高原南部では、昭和五十一年にスタートし、農地造成四百二十九ヘクタール、区画整理三百一ヘクタール、昭和五十八年度に事業終了の予定であったものが、平成四年に事業変更が行われて平成九年度までということになったのですが、現在のところ平成十一年までかかるということです。  このように、完了が大幅におくれたことが関係住民にとっては大変な負担になっているんですね。今の厳しい農業状況の中で、工期がおくれる、事業費がふえる、負担がふえるということですね。深刻な不安、悩みあるいはまた怒りということが広がっているんです。一体なぜこのようにおくれたのか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  192. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 御指摘のとおり、当初七年間の予定工期でスタートしたわけでございますけれども、不測の事態が生じまして、大きな要因を申し上げますと、大和高原北部地区では、ダムの用地交渉に十九年間という長い時間がかかりました。また、大和高原南部地区でも、埋蔵文化財が各地で出現をいたしまして、十六年間、調査のために時間が必要だったわけでございます。また、五條・吉野地区につきましては、権利調整あるいはダムの補償交渉、さらには道路の用地交渉等々につきまして調整がなかなかできませんで、今日を迎えておるという状況にございます。
  193. 辻第一

    ○辻(第)分科員 簡潔にお答えをいただいたわけでありますけれども、そのような事情があることは否定をしないんですが、それにしてもこんなに延びるということは、計画が甘かったのではないか、それとも、期限内に完了は難しいがとりあえず七年間でスタートしたということなのか。事業を計画されるときには事前にもっと十分調査検討をされるのが当たり前だと思うんですね。  そこでは関係者の意見も当然聞いておられることと思うんですが、それとも先に計画ありきだったのか。さらに、予算がつかなかったというようなお話が現地でもあるんですが、それは政府の責任であります。もし予算がつかなかったというようなことがあれば、その理由も明示していただきたいのです。  平成九年の二月に総務庁の大規模な農業基盤整備事業に関する行政監察結果が出ています。こういうのが出ていますね。この調査対象となった国営十三地区では、期限内に完了したものは二地区、十一年から十五年を上回ったものが六地区、大和高原南部地区はこの調査対象外ですけれども、既に十五年を上回っているんですね。勧告では、予定工期内の完了を求め、完了しない場合は、事業目的を含め抜本的な見直しを求めています。私も読んでみましたけれども、やはり効率的、効果的な運営ということが強く求められているわけです。  農水省は、事業が大幅におくれたことによって生じる問題点をどのように認識されているのか、それから、この勧告をどのように受けとめておられるのかお尋ねをいたします。
  194. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 御指摘のとおり、勧告の中で「引き続き効率的かつ効果的な事業実施に努めること。」という指摘をいただいているわけでございます。そういう状況を踏まえまして、私どもは、国営の事業でございますので、私どもの方から地方農政局あるいは事業所に対しまして、予定工期内に農業基盤整備事業が完了しないというふうな場合には、よくよくこの予定工期の適切な見直しを行って、地元の方々と御相談の上、適切な計画変更を行うようにという指導をいたしましたし、それから、工期の設定そのものにつきましても、それぞれの地区の事業の規模とか内容とか地形、地質等の自然条件を十分考慮に入れて、これまで以上に適切に設定をすることというふうな指導をいたしているところでございます。  なお、この三地区、長期化に伴いまして、物価も上昇いたしますし、労務費や資材費が増加をするということで、事業費が増加をいたしております。ただ、その過程で地元から、整備水準自身をもう少し高くしてくれというふうな御要望もございましたし、いろいろ工事内容の変更もございまして、ある意味でやむを得ない面もあるわけでございますけれども、今後は、とりわけ立地条件など、実情に応じたより経済的な設計施工をいたしまして、とにもかくにも早期完了に向けてこの地区への予算の重点配分等を行いたいというふうに考えております。
  195. 辻第一

    ○辻(第)分科員 事業の大幅遅延による影響の問題ですが、幾らかお答えいただいたようですけれども。  整理してみますと、一番目に、事業費の増嵩による農家負担の増大、それから第二番目に、参加農家数がその間減少している、さらに、農業を取り巻く状況の変化に伴って事業実施の目的、背景事情を失ったり、大きくそれが減少している、こういう場合もございますね。  そこで、農業を取り巻く状況の変化を少し考えてみますと、昭和五十年前後には、当時は、農業の生産性向上、農業構造改善のための基礎条件の整備ということが言われて、さらに農村総合整備パイロット事業が創設されたのも昭和四十七年。その後、オイルショックを経験し、食糧の輸入が大幅に増加した時期には食糧自給率の向上、水田利用再編対策などが中心になる。平成に入るころには、農業就業人口の減少、過疎化、高齢化が問題になり、食糧自給率の向上、農業の生産性向上、農地の流動化などが中心になりましたね。国営事業の再編が行われ、そして、事業目的一つとってきてもこのような変化をしている中で、さらに、ウルグアイ・ラウンド農業合意は日本の農業に大きな影響をもたらしました。  現在この事業は、完了していない事業を継続しているということですが、こうした農業をめぐる変化の中で農家が将来に対する不安を募らせている、当然だと思うんです。事業が長期化したことについて、大臣は農水省の責任についてどのようにお考えになっているのか、これがまず一点ですね。  それから、深刻な農業事情の中で工期が延びて、事業費がふえて、そして負担が大変ふえているんですね。先ほどいろいろ高度な要求もあったというようなお話もあったんですが、しかし、後で詳しく申しますけれども、驚くべくふえております。そして高齢化、それから先の見通しが立たないという営農の状況、もうこの負担を払えない、そういう深刻な状況があるわけですね。そういう中で、どうか負担の軽減をぜひやってくれという農民の切実な声があるわけですけれども、この農民の声をどのように考えておられるのか。  大臣、二点お答えをいただきたいと思います。
  196. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 二点といいますか、三点ぐらいにわたって御指摘があったのですが、この工期が長くなりましたことにつきましては先ほど、あるいは事業費が増加をしましたことにつきましても先ほどお答えをいたしましたけれども、ある意味でやむを得ざる事由もあるわけでございますけれども、その点につきましては、一つ一つ話し合いの中で克服をし、とにもかくにも予算の重点配分をして、今後、早期完了に向けて計画的な事業執行に努めたいというふうに考えております。  それから、農業事情が変化をして厳しい状況にさらされているということは事実でございますけれども、国営のこういった農業開発の地域というのは、私も昨年、表彰行事にも参加をいたしましたけれども、もう相当部分が大変優秀な営農を行っております。歯を食いしばってではありますけれども、日本の農業のリーダー格になるものも多いわけでございますので、そういったことも十分考慮いたしまして、この事業について、そのいい点を広めるというふうにしたいと思っております。  それから、負担の問題でありますが、その負担につきましては、御承知のことと思いますけれども、国営事業の場合には、償還は着工ですぐ始まるのではなくて、その間、完了するまでの間、国がすべて無利子で立てかえをしているという、そういうふうなことでございますので、現在のところ、事業が完了しなければまだ負担は生じないわけです。ただ、完了いたしますと償還が始まりますので、その償還につきましては、私どもが今やっております負担金対策、平準化とかあるいは担い手育成型によりまして、工夫の中で農家負担を減少させるというふうなことに努力をいたしたいと考えております。
  197. 辻第一

    ○辻(第)分科員 責任の問題を十分答えていただいていないと思うのですが、その責任の問題はどうですか。これも簡明に答えていただきたいと思います。
  198. 中川昭一

    中川国務大臣 やはり国営事業というのは、規模も大きく、また期間も長いものでございますから、経済事情あるいはまた農業事情、さらには金利等の事情にもよって、やはり当初の計画と違うということも必然的に起こってくることもあると思います。  そういう中で、しかし、できるだけ優良農地を確保するという受益者の皆さんの御希望には沿っていきたいということで、できるだけの対応をしていきたいと思っております。  なお、今局長からも答えましたが、負担につきましては、あくまでも工期完了後、数年の据え置きの後の負担でございますので、そのときにまたいろいろな条件緩和策等もございますので、それらを大いに活用していただきたいと考えております。
  199. 辻第一

    ○辻(第)分科員 重ねてお尋ねいたしますと、こんなに工期が延びてこういう状況になった、その農水省の責任というのはないんですか、どうですか。
  200. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 事実問題として、工期が長くなっているというのは御指摘のとおりなんですけれども、その工期が長くなったことにつきましては、それぞれ事情がございまして、その事情はそれぞれがわかる事情でございます。ですから、その事情を乗り越えてそれが解決をいたしました後は、とにかく早期に完工させるという方向で、私どもは全力を注ぎたいと思っております。
  201. 辻第一

    ○辻(第)分科員 そんなことでは国民や農民の方は納得しませんよ。二割や三割とか五割ぐらいはふえるのはわかりますけれども、もう三倍近くなっているんですよ。話にならぬですよ。日本じゅうこんなことやっていたら、それはもうつぶれますよ。私はその責任を厳しく指摘したいと思います。  それから、農民の皆さんが一番問題にしているのは農家負担の増大の問題ですね。こういうお話があるんですが、一万円の切符で東京行きの新幹線に乗って、おりるときに五万円を請求されるようなもんや、こういう言い方をしている人もありました。最初から五万円が嫌なら乗らないこともできるが、乗ってしまってからは払わざるを得ないだけに問題が深刻だと。もう既に農地を利用しているんだから、償還に向けて積み立て等の方法もあることはあるでしょうが、しかし、この間の農業を取り巻く環境はそう生易しいものではありませんでした。  現実の問題となっている事業費を見てみますと、大和高原南部の場合は、当初百億が現在で二百七十一億、それから大和高原北部では、当初百七十五億が現在では六百四十九億ですね。前者は二・七倍、後者は三・七倍になっているんですね。さきに触れました行政監察結果を見ますと、実に十一・六倍とか九・七倍というのがあるようでございます。  地元の農家の負担を見てまいりましても、農地造成で、金利分を含めて十アール、一反当たり当初二十七万円が八十八万円、区画整理では五十万円が百五万円となっております。また、こういう計算と違って、直接農業者から聞いた話も後で触れますけれども、まあ大変な負担増になっているわけであります。このような事業費の増大、結局、農家の負担の増大ということにどのように対応してこられたのか、お尋ねをします。
  202. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 繰り返しになって恐縮なんですけれども、国営事業の場合には、事業をやっている間は農家に対しては負担を求めないわけです。しかし、農地はその間使えるわけです。地域にもよりますけれども、その間、今先生指摘になりましたように、みずから償還のための財源を積み立てているというところもあるわけでございます。  私が申し上げたいのは、国営事業というのは、大臣からも答弁申し上げましたように、大変大規模で優秀な農地を造成するということでございますので、ほかの事業よりはかなり優遇した補助率といいますか、負担割合が決まっているわけでございます。そういう中で、工期が延伸したことによって事業規模が膨らんだという面はありますけれども、やはりそれはやりようによっては、ほかの一般的な補助事業よりは、より優良な農業経営が可能な地域ができ上がるというふうに私どもは思っております。
  203. 辻第一

    ○辻(第)分科員 そういう甘い話じゃないんですね、現場は。現地へ行って見られたところ、たくさんありますか。当初の計画と今の状況というのはもう全然違うんですね。それは当初は夢を見て、それだけの優良な農地ができて、一生懸命やってと、農家の方も一生懸命そう思われたと思います。しかし、もう今はそれだけ延びて、しかも今の現状はそんな甘い話じゃないですね。  それから、農家の負担軽減策がとられてきた、いろいろ御努力いただいているんですけれども、そのための府県や市町村の努力は大変御苦労さんだと思うんです。大和高原北部の場合の負担割合を計算してみましたが、負担割合は、農地造成の場合は、当初国が七三・一%、県が一三・四%、農家が一三・五%。区画整理は、当初国が四〇・七%、県が二七・五%、農家が三一・八%。それが最終の予定では、農地造成の場合は、国が七二・〇%、県が一七・八%、市町村が六%、農家が四・二%。区画整理では、国が四〇・九%、県が三〇・五%、市町が一三・六%、農家が一五・三%、こういうふうになっているわけですね。  地方自治体の負担で軽減されていると言って言い過ぎでないんですね。国の負担割合が変わっていないのはやはり大きな問題ではないのか。国は事業を期限内に完了させることができなかった責任、大幅に期限が延び、事業費がふえた、そういう責任を十分果たしていないと言えるのではないかと思います。  大和高原北部の例をとりますと、造成地が七十アール、七反持っている農家で試算をいたしますと、パイロット事業完成と同時に負担金が五百万ほどになるようです。返済まで十五年ですね。事業開始時点で四十歳—五十歳の農家の方が、もう今既に六十五歳から七十五歳になりますね。償還が終わるのがさらに十五年先ですから、八十から九十になるんですよ。今六十五や七十五にもなっている人が、これからそれだけのものを営農して返していけるのか、それはもう目の前が真っ暗になるとおっしゃいますよ。そういう状態ですね。  私ももう何度も現地で農業者のお話を聞かせていただいてまいったんですけれども、本当に年老いた農業者が深刻に苦しみ悩んでおられる。どのように解決してくれるんだろうかと。中にはもう大変なお怒りの方もたくさんございます。  先ほどの例とちょっと違うのですが、ある人は、これは大和高原北部の人でした、当初は一反歩十二万か十三万と聞いていた、それが五十六万四千円になる、四倍以上になるのですね。現実年もとってきたし、今の農業事情では払えないと。これまでの状況の中で蓄えてきたかというと、実際、蓄える余裕がなかったということですね。そういうお話。  それから、ある人は、造成工事に一反当たり四百万もかかるというのは、どない言うても異常ではないのか、そういうことに対して十分な工事費の説明がやられていない、そういうふうにおっしゃっている方もございます。  それから、カキやブドウの不適作地が多いとか、あるいは、もともと水はけが悪いところでお茶のできない造成地もある、こういうこともあるわけですね。ぜひ農水省の幹部の方に現場を見てほしいという強いお声がありました。  そういうことで、国も金利の引き下げも含めて財政措置をすべきではないか、何としても負担を軽減してこれらの農業者の苦しみ、悩み、こういうものを解決してあげていただきたい、このように思うのですが、いかがですか。
  204. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 先生の御指摘、数点にわたったわけですけれども、国の負担割合が事業費が増加しているのに変わらないじゃないかという御指摘があったわけです。国営事業の場合、繰り返しになりますけれども、もともと極めて高率な負担割合になっておりますので、その点はなかなか変更ができないというふうに思います。  それから、償還が始まりますと、この償還の仕方については相当な工夫が私は可能だろうと思います。つまり、五%で元利均等払いというふうなやり方だけがそうなのではなくて、例えば担い手育成支援事業の利子助成の適用を受けるというふうな形で二%まで引き下げるとか、あるいは平準化事業をするとか、やはりいろいろ工夫があるのだろうと思います。  そして、その工事内容につきましては、第二次の計画変更も行わなければならない時期に来ておりますので、現場の方からよくよくお声を聞かせていただいて、相談ずくで適切な計画変更がなされるように指導いたしたいと思います。
  205. 辻第一

    ○辻(第)分科員 できるだけの努力をしていただきたい、重ねて要望いたします。  それから次に、未利用地、不適地の問題でございます。かなりあるようですね。大和高原北部、南部の関係者にお話を聞いてみますと、約一〇%の未利用地があるのではないかとおっしゃっています。造成農地の表土の浅さなんかで不適地ということもあるということ。このような問題の根本には、いろいろな問題を内在していると思うのですが、長期にわたる事業期間のもと、農業、農家を取り巻く事情、いわば農政の問題もございますし、不適地については、カキやブドウ、茶など、それぞれの地区の作物に適さない造成地もあるということから生じているのではないか。  農林水産省は、こうした未利用地あるいは低利用地、不適地をどのように掌握し、どのように対応されようとしているのか。十二分に御対応をいただきたいと思うのですが、御答弁を求めます。
  206. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 私どもも、低利用地、未利用地の実態を調査してみました。先生は今一〇%という御指摘をなさいましたけれども、私どもの調査とはちょっと違っております。  私どもの調べでは、この三地区における低利用地、未利用地は、全植栽面積九百三十四へクタールの中の三・七%に当たる三十五ヘクタールでございます。それから、その三十五ヘクタールも、不適地ということではなくて、営農労力の不足というのが四分の三を占めておりますので、純然たる未利用地というのは五ないし六ヘクタールではないかなというふうに思っております。  ただ、いずれにしても、こういったところに対しまして営農が行われるように、農地を流動化させるとか、地域の協議会でお話をするとか、そういうふうな努力はこれから先も続けたいと思っておりますし、おっしゃられましたような農地造成工事の中で、耕土が浅かったとか十分深くないというふうなものにつきましては、造成後営農上の支障を除去するという観点から、補完的工事を実施して、低利用、未利用の解消に努めたいと思います。
  207. 辻第一

    ○辻(第)分科員 ぜひ十二分の対応をいただきたい。  それから、お願いですが、関係農民から農地として不適切な部分の指摘があった場合には、その都度誠実に御対応いただきたい、重ねて要望いたします。  時間がありませんので、次へ行きます。  次に、計画変更の問題でございますが、この三つの地区の場合、事業が長期にわたっていることから、既に変更が一回行われていますね。それから、完了までにもう一度計画の変更が予定されているということですね。  土地改良法八十七条の三では、変更しようとするときはあらかじめその変更後の計画の概要を公示して三分の二以上の同意を得なければならないとしていますね。しかし、事業完了に向けて第二回目の計画変更が行われることになりますが、実際は、相当程度事業が進んだ時点で、言うなら形式的に事業計画の変更が行われているのではないか、このように考えるわけでございます。  そういう点で、第一回目の計画変更は、当初の予定の倍の期間を五年以上経過した平成元年の手続開始、平成四年に変更確定、第二回目は、平成十一年度に事業が終了予定というのに変更確定予定平成十一年六月というのもあるようですね。大和高原南部では、必要な工事等もほぼ終了しておる。前回もそうですが、今回の計画変更も既に基本的には終了した内容の追認であるという感じですね。農民の皆さんは、計画変更が形式的だと言っていますね。法律の規定はあくまでも「あらかじめ、」となっているわけですから、計画内容のみならず、もろもろの情報公開を含めて、形式的ではなくきちんと理解を得てから進めるということが必要だと思います。とりわけ、事業終結を控え、関係受益者から出されている疑問や要望などに誠実にこたえることが必要だと思うのですが、御答弁を求めます。
  208. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 計画変更の手続につきましては、あるいは計画変更をする場合の条件につきましては、法律にきちんとした定めがあるわけでございますので、フライングというふうなことは私どもはやっておりません。  それから、先生から御指摘がありましたように、当然この法手続というのは民主的手続にのっとってやるわけでございますので、関係都道府県、市町村、こういったところの意見は十分聞かせていただきますし、受益農家の三分の二以上の同意の取得を行った後、学識経験者の意見を聞いた上で計画の変更を決定するというふうなことをしたいと考えております。
  209. 辻第一

    ○辻(第)分科員 ぜひ本当にきっちりした計画変更を進めていただきたい。  最後に、大臣に、所見というか決意を伺って終わりたいと思います。  先ほどるる述べてまいりました、いろいろ御答弁もいただきました。しかし、現状はもう高齢化をし、しかも今の農業事情の中でこれから先十分営農をやっていけるのか、そういう不安などでいっぱいですね。そこへ高額の負担ということになりますので、どうしてもいろいろな、先ほど来の農家の方の切実な要望があったわけでありますから、この受益者の声に十分耳を傾けて、誠実に対応していただきたいということであります。どうか最後に大臣の所見、御決意を伺いたいと思います。
  210. 中川昭一

    中川国務大臣 先生は、先ほどからこの大和地区の国営事業のことを中心にお話しされておりました。実は私、北海道でございまして、北海道には国営事業がいっぱいあるわけでございますが、いずれも関係者の同意のもとで計画が採択され、事業が進んでいるわけであります。また、計画変更についても、受益者の同意というものが前提になっておるわけであります。もちろん、工期が延びる、あるいはまた、先ほども申し上げたように周囲の状況が変わってくるということで、計画が変更されることは時々ございますけれども、いずれにいたしましても、受益者ということ、要するに負担する人は、工事が完成すればやはりそれだけいい農地になり、また生産性の高いより合理的な経営ができるという前提で計画を進められているということが大前提だと私は思っております。  しかし、その大前提に立って計画が変更される場合には、先ほど局長からも申し上げておりますように、償還の猶予とか、また金利の低減とかいろいろな措置も考えておりますので、それらを総合的に判断して、この国営事業推進を期していきたいと考えております。
  211. 辻第一

    ○辻(第)分科員 私の求めたのとは大分答弁の中身が違って、私不満でありますけれども、時間が来ましたので終わります。
  212. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて辻第一君の質疑は終了いたしました。  次に、中川智子さん。
  213. 中川智子

    中川(智)分科員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  まず最初に、中川大臣にお尋ねしたいのですが、きょう私は、遺伝子組み換え食品の一連のことに関して質問をさせていただきます。  現在コロンビアで、二月二十三日まで、生物多様性条約の国際会議、締約国会議が開かれているわけなんですけれども、そこで議定書の採択ということになる見込みになっております。ここで日本政府が、遺伝子組み換え食品、農産物の環境の問題というふうなたくさんの不安を国民が抱えている中で、日本政府としてはどのような表明を御用意なさって現在あちらで会議をしていらっしゃるのかということを伺いたいのです。日本政府の遺伝子組み換え食品に対する、表示を含めてのこの会議でのお立場をお聞かせください。
  214. 中川昭一

    中川国務大臣 今、バイオセーフティー会議で議定書の作業が進められておりますが、正直言って、先生も御承知のとおり、先進国と発展途上国あるいはそれぞれの国で、いろいろな意見の対立といいましょうか、いろいろな意見が出ているということを承知しております。  そういう中で、我が国といたしましては、遺伝子組み換え生物、GMOの環境に対する安全性と食糧の円滑な国際取引の観点から、GMOの的確な環境影響評価の仕組みが議定書にきちっと規定されるようにしていきたいということで今交渉に臨んでおります。
  215. 中川智子

    中川(智)分科員 農水の方でも表示問題懇談会というのが現在行われまして、また消費者問題特別委員会では、一応中間の報告といたしまして、表示を求めるというふうな決定で委員長の方にきっちりと表明をしておりますけれども、いわゆる国民世論を受けて、遺伝子組み換え食品に対して国民の不安があるというぐらいのことはきっちりと意見の中で言われているのでしょうか。大臣以外でも結構です。
  216. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 御質問の遺伝子組み換え食品の表示につきましては、御案内のように、現在農林水産省で懇談会を設けて検討しているわけでございます。その検討結果を踏まえまして適正に対処するということでございまして、現在時点におきまして検討中であるということでございますので、それを条約に反映させるということを我が国としてバイオセーフティー会議におきまして、議定書におきまして述べているものではございません。
  217. 中川智子

    中川(智)分科員 それでは、そのような国民の声を生かした形での立場を持って行かなかったというようなとらえ方でよろしいのでしょうか。
  218. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 これは、遺伝子組み換え食品の表示の問題とバイオセーフティー会議におきます議定書の問題とは、ちょっと次元が違うわけでございます。  要するに、遺伝子組み換え食品の表示といいますのは、消費者に対しましてどういう表示をしていくかという問題でございます。他方、バイオセーフティー会議におきます流通の問題といいますのは、いわばそうした組み換えられた農作物である、生物であるということがわかるように、つまり国境間でわかるようにする、それを規制するということでございまして、消費者に対する表示の問題とは別な問題でございます。
  219. 中川智子

    中川(智)分科員 でも、いわゆる環境の面からの不安というのもありまして、ただ口に入る物からだけではないということで、消費者などの意見としましては、いわゆる輸出国から輸入国に対して、環境全体を考えた上での遺伝子組み換え作物の不安ということはきっちりと農水の方にも届いていると思うのですが、そこを含めての御見解ですか。
  220. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 我が国に現実に流通しておりますいわゆる遺伝子組み換え食品といいますのは、要するに、厚生省におきまして安全性が確認されたものに限られているわけでございます。それで、バイオセーフティー議定書交渉におきましては、どのような遺伝子組み換え生物を船等で運んでくるかということでございますので、それは環境への安全性を確保するための情報というわけでございまして、先ほど申しましたように、消費者への情報提供としての遺伝子組み換え食品の表示の問題とは別な、性格を異にするものだということでございます。
  221. 中川智子

    中川(智)分科員 わかりました。では、また違うところでここの結果に対しての情報公開を、あわせてまた教えていただきたいと思います。  次に、厚生大臣、農水大臣あてに出されている遺伝子組み換え食品表示の要請の地方議会及び消費者団体等からの意見書などは、現在どのような状況になっているか教えてください。
  222. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 遺伝子組み換え食品の表示に関します意見書等でございますけれども、地方議会からの意見書が千八十四件、それから地方自治体からの要望書が五件、各種団体からの要望書が四十二件、そのほか一般消費者からの署名が約五十万件となっております。  また、昨年八月に、食品表示問題懇談会におきまして遺伝子組み換え食品の表示のあり方につきましてたたき台を提示しまして、パブリックコメントを求めたわけでございますが、その際に、個人及び各種団体から一万件を超える多数の御意見をいただいております。
  223. 田中慶司

    ○田中説明員 御説明申し上げます。  厚生省に寄せられました遺伝子組み換え食品に関します地方議会等からの意見書、要望書についてでございますけれども、平成十一年一月十九日現在で、千二百二十四地方議会から組み換え食品の安全性等に関する意見書が提出されております。また、消費者団体等からは百二十三の要望書が提出されているところでございます。  遺伝子組み換え食品についての地方議会等からの意見書、要望書の内容は、主に遺伝子組み換え食品に対する消費者の不安の解消、遺伝子組み換え食品の安全性の確保、それから消費者選択の権利の立場からの表示の実施等を求めるものでございました。  それから、遺伝子組み換え技術というのは非常に高度、先進的な技術でございますので、食品分野への応用経験が少ないものでありますことから、消費者等の間で、遺伝子組み換え食品の安全性に関する非常に漠然とした不安というものがございまして、これが地方議会における意見書等として示されたのではないかというふうに考えております。  今後とも、最新の知見の把握に努めるとともに、専門家意見も踏まえまして、遺伝子組み換え食品の安全性評価に係りますあらゆる情報提供を行う必要があると考えておるところでございます。  また、遺伝子組み換え食品の表示につきましては、現在、食品衛生調査会の表示特別部会におきまして、遺伝子組み換え食品を含めまして食品の表示全般について検討お願いしているところでございます。  以上でございます。
  224. 中川智子

    中川(智)分科員 地方議会からの意見書というのは、やはり全会派一致で採択して意見書というのは上がってくるわけですね。ですから、今、農水、厚生合わせまして二千三百八の地方議会からの意見書が上がってくる、ぱっと足しましたらそのようになります。これは、漠然とした不安というふうに今おっしゃいましたけれども、やはり諸外国の研究機関、学者等の中では、おとといの新聞にも載っておりましたけれども、きっちりとした、それに対して有害だというような研究結果が出されていましたり、さまざまな形で、漠然とした不安を超えて現実的に、アレルギーを持っている人とか、さまざまなところで不安が現実化してくるのじゃないかという大変な重い課題だと思います。  これは、農水と厚生と両方の省庁が今鋭意取り組んでくださっていると思いますが、いかんせん長くなりまして、なかなか表示に対して半歩も踏み出せないという状況になっておりますので、ぜひとも前向きにしっかりと、ともに取り組んでいきたいというふうに思っておりますので、大臣もよろしくお願いしたいと思います。  それと、今のことに関連いたしまして、農水省の方の表示問題懇談会での表示議論はいつになったら結論が出るのかなというのを、首を長くして待っております。かなり予定よりも延びまして、今度は、次回は六月にまた開かれるということなんですけれども、前回、農作物への表示を検討するというふうな形に議論はなっていながら、小委員会で、加工食品等まで含めて検知技術などとの関連を調べることになっている、そのあたりを少し、余り具体的ですと時間がありませんので、ポイントを押さえてお答え願いたい。  いま一つは、その結果を待つということで、六月以降のいつごろ結論を出すおつもりなのか、それについての現在のところの状況を教えていただきたいと思います。そして、大臣にも、そこの結果を踏まえての御見解をお願いします。
  225. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 平成九年の五月に設置されました食品表示問題懇談会におきまして、以来月一遍ぐらいのペースで検討を進めてきたわけでございます。しかしながら、この懇談会での意見、なかなかコンセンサスに至らないわけでございます。  それで、先月開催されました食品表示問題懇談会におきまして、表示に関しまして、信頼性なりあるいは実行可能性の観点から、もう少し技術的あるいは科学的検討を行う必要があるんではないかということで、このための小委員会を設置することが決定されたわけでございます。  具体的にこの小委員会でどういうことをやるかということでございますが、遺伝子組み換え食品の表示問題に関します技術的、科学的に検討すべき事項で、特に品目ごとの加工工程によりまして、DNA及びたんぱく質の除去なり分解の実態、それから組み換えDNA及びこれによって生じたたんぱく質の検出可能性というようなこと、また検証方法の具体的な内容、さらには主な原材料の具体的範囲等でございます。  それらにつきまして、この小委員会におきまして本年の六月ごろまでに検討いただきまして、これを踏まえまして懇談会として検討していただきまして、早急に取りまとめを行っていきたいというふうに考えているわけでございます。  農林水産省といたしましては、この懇談会での取りまとめを踏まえまして、遺伝子組み換え食品の表示ルールを確立いたしまして、適正に実施していきたいというふうに考えております。
  226. 中川智子

    中川(智)分科員 大臣、ずっと消費者問題特別委員会でもこの問題は話し合われてきております。また、農水の懇談会でも。かなり結論が先送りされております。でも、やはりこれから、いわゆる厚生省の方のガイドラインをクリアしていったら、小麦粉とかいろいろな食品が次から次に許可されてくるという懸念がありまして、パンも何もとなりますと、表示されてもほとんどが遺伝子組み換えだという事態にもなりかねません。ここは農水の方のJAS法か何か、しっかりとその中で表示を明示していくという方向を消費者はとても待っておりますので、大臣の御決意、今のいろいろな話を聞いての御見解をお願いします。
  227. 中川昭一

    中川国務大臣 今局長から答弁ありましたように非常に専門的でございまして、これは先生お詳しいと思いますけれども、あくまでも安全だということが前提で、その上で表示をどういうふうにするかということで、では安全とは何だというと、例えばたんぱく質が変性しているのかしていないのかとか、そこになってくると私は全くわかりませんが。  とにかく、突き詰めていけばいくほど、諸外国の例を見ましても、例えばアメリカのやり方、ヨーロッパのやり方を見ても、かなり違う。そしてまた、それぞれの運用でかなり苦労しているというような状況等もございますし、また国内におきましてもいろいろな意見があるところでございまして、決してこれは先延ばしにしておるつもりはございません。むしろ、一刻も早くきちっとした基準をつくることが国民に対して必要なことだとすら私は思うわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう専門的な作業をできるだけ早くやりながら、ことしの夏までには一つ方向性を出したいというふうに考えております。
  228. 中川智子

    中川(智)分科員 いわゆる科学万能、バイオという言葉が結構身近にはなってきたんですが、やはり二十一世紀を目前に控えた今、一歩立ちどまっていく、そして、私たちの生活、暮らしそのものをもう一度考え直していくと同時に、何でもバイオ、バイオというところで、私も、今大臣がおっしゃいましたけれども、遺伝子組み換えというのも、考えれば考えるほど何かわけがわからなくなってきたりするところもございます。  そこで、やはり一歩立ちどまって、本当にこんなにいろいろなものが土から生まれない、またターミネーター種子なんていって種をまいて発芽しないような種も出てくるとか、クローン人間とかいろいろなことが出てきている中で、私自身は、やはりこれだけ消費者の不安があるときに、もっともっと一方でそれを推進していくということに対しては、どうかなと思うんです。  そのどうかなと思うことの一つに、農水省の二十一世紀グリーンフロンティア研究、通産省などと一体になって進めていこうとしている国家バイオテクノロジー政策等の開発中心の政策が上がってきているということを伺いました。では、国民の懸念にこたえる安全性の研究には、その中にどれだけ予算をつぎ込んでいるのか、そして、いわゆる安全性の問題ということの位置づけをこの中ではどのように置いているのかということを伺いたいと思います。でなければ、国民を説得することはとてもまた難しくて、新たな問題を生み出すのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
  229. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 お話にございました二十一世紀グリーンフロンティア研究でございますが、この中では、イネゲノム研究等によりまして有用な遺伝子を確保して特許化を加速する、それとともに、それらの遺伝子を利用しました新しい動物とか植物、食品及び有用物質生産手法、こういった技術の基礎になる研究を行うこととしております。  また、先生の御関心の安全性でございますが、これは組み換え体の産業的利用あるいは実用化に当たっては前提となることでございます。そのため、最新の科学的知見に基づきました的確な安全評価が不可欠であるという認識に立ちまして、これから新しく実用化が予想される組み換え農作物等も含めまして、環境に対する安全性評価手法の開発等を内容としました組み換え体の産業的利用における安全性確保に関する総合研究を行うこととしております。この安全性確保に関する総合研究の平成十一年度予算額は一億二百万円であります。
  230. 中川智子

    中川(智)分科員 ぜひとも安全性のところに力点を置きながら、余り急がず慌てずしていっていただきたいし、それに際しての情報公開というのを基本的にお願いしたいと思います。  最後の質問になりますが、これはぜひとも大臣に伺いたいと思います。お疲れのところ申しわけありませんけれども、ダイオキシンのことについて質問したいと思います。  今、野菜がかなり問題になっておりまして、そちらも非常に懸念されますけれども、私自身は、子供たちに、本当に牛乳は体にいいよということでどんどん牛乳を飲ませている世代でございまして、さまざまなところでお水がわりに牛乳を飲む子供というのはやはりふえております。  でも、牛乳に対して、昨年の十月、農水省から発表になった市販の牛乳のダイオキシン濃度は、高いところで脂肪当たり三ピコグラムでした。ドイツの牛乳のガイドラインというのがここにあるんですが、三ピコ以上は発生源の特定と削減対策、もう一点、消費者に提供しないよう農家に勧告というふうになっております。五ピコ以上は、もう流通禁止という措置がドイツではとられておりますし、オランダでもフランスでも、具体的に牛乳に対してのそのようなダイオキシン対策というのはやっております。フランスでも、三ピコ以上は発生源調査対策を早急に実施というふうになっていますが、日本では、牛乳は全然今そういうふうな対象になっておりません。  日本で農水が発表されたのが三ピコグラム以上になっていますので、私は、やはり早急にいわゆる安全基準というのと、その供給に対してストップをかけるというところまで牛乳に対してやっていただきたいと思うんですが。欧州連合も、EUも三ピコ以上で対策を早急に実施しております。  今回の場合、厚生省の値を見ますと、牛乳を毎日二百cc飲んでしまうだけで体内にダイオキシンを十二ピコ摂取してしまうことになります。市販の牛乳は、いろいろな原乳というのをあっちこっちからとってきて、ブレンドして、平均化されて、その値で三ピコになったと思いますので、汚染のひどいところというのは三ピコ以上の値が出ていると思います。大臣、今のこのような牛乳に関してぜひとも聞かせてください、野菜だけじゃなくて。お願いします。
  231. 本田浩次

    ○本田政府委員 ただいま先生がおっしゃっておりました牛乳中のダイオキシンの汚染実態調査の件でございますけれども、まず厚生省が、先生御承知のとおり、毎年度牛乳を含む食品中のダイオキシン類についての調査を行っておりますけれども、厚生省のその調査結果によれば、現時点で特段の問題はないというふうにお聞きしております。  それから、私どもといたしましても、先生指摘のとおり、平成十年度に牛乳についての調査を実施したところでございまして、御指摘のとおり、昨年の十月に公表させていただいたところでございます。その調査内容につきましては、二十二検体について調査をしたわけでございますけれども、低いところから若干高いところまであるわけでございますが、平均的には厚生省調査結果と同様でございまして、特段の食品衛生上の問題はないというふうに考えているところでございます。  それから、先生おっしゃっておりました、最大値では三ピコグラムとか、最小値では〇・六一ピコグラムとか、平均値で一・八二ピコグラムと申しますのは、これは乳脂肪に換算した数値でございまして、結果的には、厚生省調査結果と内容においては同じだというふうに承知しているところでございます。  いずれにいたしましても、今後とも厚生省環境庁などの関係機関と連携を密にしながら、適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
  232. 中川昭一

    中川国務大臣 野菜に限らず牛乳に限らず、食品に対して、先生からダイオキシンのことについては前回も御下問がございましたけれども、現時点においては、今畜産局長が御答弁いたしましたように、厚生省あるいは農林省の統計でも安全であるというふうに認識をしておりますが、この問題については国民的関心が高いということも我々重々承知をしておりますので、これから三省庁連携をしながら、実態を常に把握していきたいと思っております。  なお、先生冒頭お話しになりました、野菜のダイオキシン汚染が問題になっておりますが、現時点においては、問題になるほど多量のダイオキシンが検出されているという資料はないということを御理解いただきたいと思います。
  233. 中川智子

    中川(智)分科員 では、厚生省に伺いますけれども、問題がない根拠、現在のところこれだけの数値が出ていて、問題がないという根拠を教えてください。
  234. 森田邦雄

    ○森田説明員 食品中のダイオキシンの汚染状況につきましては、平成四年から個別に食品を調査しておりますし、平成八年からは、実際に食事としてどのぐらい体内に取り込むかというようなことで、トータルダイエット方式に基づきまして、平成八年は三カ所で、九年につきましては七カ所、十地区で行っております。  そういう調査の結果、平成九年度の結果でございますけれども、牛乳中のコプラナPCBも含めたダイオキシン類の濃度を見てみますと、一グラム当たり平均で〇・〇五ピコグラムであります。また、トータルダイエットスタディーに基づきます乳・乳製品の全体の取り込み量を見てみますと、ダイオキシン、コプラナPCBも含めてでありますけれども、摂取量全体から見ても七・八%、牛乳・乳製品から取り込んでいるのは七・八%という状況にございます。  食品中のダイオキシンによる健康被害、健康影響というものにつきましては、全体にどれだけ取り込むのか、食事として全体でどれだけ取り込むのか、摂取する量と耐容一日摂取量、ここまでは大丈夫であるという数字と比較して検討すべきものと私ども思っておりまして、この平成九年度のトータルダイエットスタディーに基づく食品を通じての取り込み量を見ますと、一日平均摂取量は、体重一キログラム当たりで二・四一ピコグラムでございます。  WHOの調査で見ますと、主要先進国ダイオキシンの一般の食品からの取り込み量というのは、体重一キログラム当たり二から六と言っていますので、この二・四一というのは諸外国と比較しても多いというわけじゃありませんし、そういう意味で、健康に影響が生じるおそれはないと考えているわけであります。  なお、私どもとしましても、今後引き続き、牛乳を含めまして、食品全般のダイオキシン類の汚染実態調査、あるいはトータルダイエットスタディーを続けてまいりたいと思っております。
  235. 中川智子

    中川(智)分科員 厚生省と農水省に聞きますけれども、その牛乳の検体、はかったのは、酪農家のところに行って搾乳したものなのか、それとも、もうブレンドした後のいわゆる市販されている私たちが飲むときのものなのか、そして、全国で七つでしたよね、それだけで十分だと思っていらっしゃるのかどうかというところを伺いたいと思います。
  236. 本田浩次

    ○本田政府委員 サンプリングの内容でございますけれども、全国の二十二地域を選定いたしまして、その地域生産された市販用の一リットル普通牛乳をサンプリングいたしまして、検査牛乳を採取したところでございます。  二十二地域というところで選んだことにつきましては、大至急検査できる範囲で、かつ、全国を網羅しつつ、消費者に安心していただける検体数を検査したということでございます。
  237. 森田邦雄

    ○森田説明員 厚生省が行っておりますものについて、平成九年度につきましては、個別で行ったものは四検体。それから、先ほどお話ししましたトータルダイエットスタディーで十地区でやっておりますので十四検体になるわけですが、それはすべて市販の牛乳で行っております。平成八年も同じような市販のものを行っておりまして、そういう意味では、余り数字的には変化がないという状況でございます。
  238. 中川智子

    中川(智)分科員 大臣の先ほどの発言で、野菜も牛乳も、全く問題にするのは杞憂だというような感じの御発言だったと思うんですが。どうなんでしょう、子供たちというのは今、毎日有無を言わさず、牛乳を体にいいと思って学校給食の中で飲んでいるんですけれども、二百cc、ほとんどの子供が毎日飲んでいます。  大人の感受性と子供のは、三倍子供が高いと言われています。そこで、もう少しきっちり、牛乳とか乳製品とか野菜群とか、食品ごとでダイオキシン調査をしまして、やはりきっちりと、搾乳時でここの地域はやはり汚染が高い、そうなると、牛乳以外のものを子供たちの学校給食に出すとか、そのようなことぐらい考えていかなければ、先ほどの発言というのは私は非常に問題だと思いますが、いかがですか。
  239. 中川昭一

    中川国務大臣 今の先生のお話というのは、牛乳はダイオキシンがある、だから牛乳を出すなという御意見だとするならば、それはちょっと私としては賛成しかねる話であります。仮に、一定量以上のダイオキシンがその検体の中から検出されて、それが人体に、あるいは子供であっても、その子供に換算した量であって、それで検出されたということであれば、そのときに、その地域、あるいはまたいろいろな方法で考えるわけでありますけれども、牛乳というのは子供の成長過程において極めて大事な食品だと私は考えておりますので、安全性を前提にして、これからも牛乳は大いに普及をしていきたいというふうに考えております。
  240. 中川智子

    中川(智)分科員 安全性を前提にしてとおっしゃいました。そうしたならば、日本に食品の安全基準が全然ございません。百ピコの牛乳であろうと、その安全基準がなければそれは安全だとおっしゃり続けると思いますので、ぜひとも早急に食品ごとの安全基準をつくっていただいて、そしてもっときめ細かな汚染調査をしていただいて、すぐに手を打てるような法整備をしていただきたい、そのように思います。ありがとうございました。
  241. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて中川智子さんの質疑は終了いたしました。  次に、桝屋敬悟君。
  242. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 公明・改革クラブの桝屋敬悟でございます。大臣も大変にお疲れだと思いますが、あと三十分、おつき合いをよろしくお願いいたします。  私は、この分科会で、日韓新漁業協定にかかわります入漁中断問題について議論させていただきたいと思います。  私の地元は山口県でございますので、下関あるいは萩等、先週も私、地元の漁業者にずっとお会いしてきました。大体片づいたから大丈夫だろうという気持ちで現場に行ってまいりましたけれども、いやいや、なかなか簡単なことではないようでありまして、私も漁業問題の専門家ではありませんし、専門的にずっと追っかけているわけではありませんけれども、やはり現場の声を聞きますと、ずっと継続的に構造改革が進められている中で、さらに、今回の新漁業協定に伴うさまざまの問題がやはり出てきているなということを実感した次第であります。  それで、最初にお伺いしたいのでありますが、一月二十二日には協定が発効したものの、この協定に基づく両国の操業条件が折り合っておりませんで、今、解決したようでありますが、我が国漁業の韓国水域での操業が一時中断するという事態になりました。  地元紙では二月十六日という報道も一時あったわけでありますけれども、再開の見通しといいますか、状況はどうなっているのか。また、一番大きな問題は、一時中断になったその影響ですね、被害の影響といいますか、この状況をどのように把握しておられるのか、最初に。簡単で結構でございます。
  243. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいま先生指摘のとおり、新しい日韓漁業協定、一月二十二日に発効したわけでございますが、まことに残念なことに、相互入漁の操業条件が合意を見なかったということで、一月二十二日以降、相互に操業が相手国水域では中断する、こういう残念な結果になったわけであります。  その後、大臣間のお話し合い等を経まして、ソウルで実務者間の最終的な協議を行った上、二月五日に操業条件についての合意を見るに至りました。現在、その合意に基づきまして、相互入漁を実現すべく、数多くの手続を進めている段階にございます。  ちょうど今、韓国は旧正月でございまして、向こうの役所も連休中でございます。そのために若干仕事がストップしておりますが、明日から仕事が再開されますので、早急に相互入漁が実現するよう、できるだけ早く実現するよう努力をしていきたいというふうに思っております。  それから、この間、韓国水域に行けなくなったことによりまして、我が国の漁業で言えば、以西底びき網漁業あるいはフクはえ縄漁業、沖合底びき網漁業あるいは大中型まき網漁業、こういった漁業種類が、ちょうどこの時期、韓国水域での操業ということを一部分依存していたわけでございまして、こういった漁業に影響が出るであろうということで、現在、これらの漁業、個別の船ごとにどういうような影響があらわれているかという状況を把握するための調査を県や団体にお願いしているところでございまして、その結果を得て適切に対応していきたい、こういうふうに考えております。
  244. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 ありがとうございます。  二月五日に条件は一応折り合って、今まさに準備中であると。今、旧正月という話がありましたけれども、事務的には準備はもう相当できておる、今週中にもというような状況でございますか。
  245. 中須勇雄

    ○中須政府委員 若干事務的に細かいことを申し上げますと、この協定に従いまして、日本国、大韓民国政府、それぞれ相手国の船を受け入れる際の操業条件というものを相互に通報し合います。何隻、何トンの漁獲割り当てで、こういう操業区域に入って結構ですよと。その合意に基づきまして、相互の操業条件の通報というものは既に了しております。したがいまして、現在、その操業条件のもとで入漁を希望する船をリストアップして、それぞれそのリストを交換いたしました。  ただ、実は非常に急な中でやっておりますので、そのリストの追加とかあるいは落とすとか、そういう作業が延々と続いているという状況でございまして、本来ならそれに基づいて許可証を発給して操業を開始するということでございますが、許可証の発給まで待つと相当時間がかかるのではないかということで、今回はそのリストが確定した段階で、これは許可をし得る船ということを確定した段階で、便宜、操業を実現させようというふうなことで今韓国側と打ち合わせをしている、そういう状況にございます。
  246. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 ありがとうございます。  今の手続の問題についても、現場で話を聞きますと、昔拿捕されたような方がたくさん現場にいらっしゃいまして、相互入会といいますか相互入漁というその状況そのものにもう本当に危惧をされておられる、こういう声もありまして、それはいつかまたの機会に議論したいと思うんですが、影響ですよね。  それで、今回、大方一月ぐらいですか、今鋭意調査をされておられる、現場に指示をされておられるということでありますが、例えば、一番関心がありますのは、フグのはえ縄あたりであります。それでなくても漁獲は落ち込んでいる状況がありますけれども、現場で話を聞きますと、それこそ昨年度比で半分ぐらいになっているという業者もいらっしゃったりします。  大体パーセントでわかるんじゃないですか。それこそ手続なんというのは、お互いに漁獲量まで事前に確認し合うわけでありますから、この一月でどのぐらいの影響が出るというのは大体私はわかるんじゃないかと思うんですが、もう少し具体的なお話はここではできませんか。
  247. 中須勇雄

    ○中須政府委員 実は、今回の一時中断というのが、例えば船が出漁できないということで一定期間出漁できなかったということであれば、極めて簡単に、例えば前三年と比べてどれだけの減収があったかということが把握できるわけでございますが、今回の場合、基本的にすべての船は出漁はしております。韓国水域に行かないで我が国の水域で操業する、こういうことでございます。したがいまして、率直に申しまして、日々の漁獲量、今中断が続いているわけでございますので、それはやはり一定の時点で締めて、それで過去と比べてどういう状況であるかということをしないと全体の状況を把握できない。  それからもう一つは、先ほど申しました、例えばフクはえ縄にしてもあるいは以西底びき網漁業にしても、沖合底びき網漁業にしても、どこを根拠地としている船かによって、実は沖ではある程度その操業水域のすみ分けみたいなことがあるわけでございます。一律に業界に、一面にその影響が出るということではなくて、やはり大きく影響を受ける船、あるいは受けない船、薄い船、やはりそういう差も大変ございます。  そういう意味におきまして、私ども、やはり一定のタームを切って、先生がおっしゃいましたが、これから相互入漁が実現すれば、それまでの一定の時間ということで、例えば一月間を区切って数字を確認していく、こういう作業が可能になるだろう、これは県にもお願いをしているわけでございますが、県当局も現段階ではなかなか計数的にそこを把握するのが難しいというふうな状況でございまして、日々努力は続けておりますが、やはり一定の時点で締めた上で全体像を把握していくということがどうしても必要ではないかと思っております。
  248. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 確かにそうでしょう。確かに、操業をとめているわけではありませんから数字を計数的に出すというのは大変難しいと思います。先ほど申し上げましたように、現場へ行きますと、それでなくてもへこんでいるところにさらに三角が立つということでありますから、逆になかなか実態を把握するのは難しいと思いますが、これは、大臣、しっかり実態を把握していただきたい、この御努力はぜひお願いをしたいと思います。  今もお話がありましたけれども、現場で話を聞きますと、県等の指導もありまして急遽韓国水域から撤退をする。それで、操業をやめているわけじゃないので我が国水域に戻っておりまして、今の時期では漁場の形成が難しい我が国周辺水域で大変に過密な操業を強いられているという状況であろうと思います。しかも盛漁期だと。一番とらなきゃいかぬときに今回重なったわけでありまして、それが現場の声では本当に一番悩ましい話として私も感じさせていただきました。一月というふうに私先ほど申し上げましたけれども、ぜひこの実態をしっかりと把握していただきたいというふうに思っております。この点をお願いしておきたいと思います。  そこで、昨年ですか、この事態が大変危ぶまれたときに、我が党の宮地理事の方も、大臣とこれは委員会で協議をした、万全の態勢をとるというふうにおっしゃっていただいたということで、安心していいよ、こういう話もいただいておりますし、それから、二月二日、中川農林水産大臣に対して、地元の河村建夫先生もお話をされたようでありまして、そのときには、漁業だけでなくて関係水産加工業者も含めまして被害が出るということになれば、例えば低利融資の施策等万全な対策を講じていきたい、このように御答弁をされておられます。  きょうは分科会でありますので、その後の救済措置についての検討状況、どんなふうに検討されておられるのか、実態を把握しておられるのかもしれませんが、ぜひ具体的にお伺いしたいと思います。
  249. 中川昭一

    中川国務大臣 協定が一月二十二日に発効した後、今先生長官との間でやりとりがあったとおりで、具体的な操業条件がまとまらない、我が国としては譲れない線がある。それに対して、先生の御地元を初め、操業が韓国のEEZの中でできない地域の皆さんも実は本当に歯を食いしばって御協力をしていただいた。その結果ああいう形での条件が整い、現時点で、今長官から話があったとおり、事務的な作業を鋭意進めておるところでございます。  その間、先生の御地元の関係者を含めた、いわゆる向こうに行ってとる方々の損害、あるいはまた漁業関係者の皆さんの影響というものについて、一体どのぐらいのものが発生し、それが確定するのかということを待たないと、それに対するいろいろな施策というものはできないわけでございますが、そういう前提ではありますけれども、今回の一連の新協定の発効に伴う関係者の皆さんの損害に対して、その額なりあるいはいろいろな形での損害というものが確定した段階であらゆる施策を考えていかなければならないというふうに考えております。
  250. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 今大臣は、あらゆる施策をと、こう言われまして、この前の議事録を読みますと、低利融資の施策等と。大概こういう文章のときは融資ということがまず頭に浮かぶわけでありまして、果たして融資だけで大丈夫かどうかということも大変私は気になるところであります。  その前にぜひ御認識をいただきたいのは、私、現場を回ってきまして、間違いなく影響が出ております。そういう意味では、先ほど大臣がおっしゃったように、あらゆる角度からという御姿勢でぜひお取り組みをいただきたい。  そういう意味で、具体的にお聞きしますと、昨年、三次補正でこの案件に関して、二百五十億ですか、特別の予算もお組みになった、基金を設置されたということも伺っておりまして、こうした昨年の三次補正のあの二百五十億、全部が基金かどうかはちょっと私全部確認はしておりませんが、そうしたものを活用して今回のあらゆる施策に、救済策にということは検討一つに入るんでしょうか。
  251. 中川昭一

    中川国務大臣 いわゆる二百五十億を含めた、たしか二百六十数億の漁業関係の対策費を計上したわけでありますけれども、それをそのまま充当するかどうかも含めて、現状、先生の御地元を初めとする関係者の皆さんがどのぐらいのダメージをこうむったのかということをまず確定させていただいて、その上で、それに対して融資、あるいはまたそれ以外にどういう方法があるのかも含めてやるわけでございますので、直接その二百五十億と結びつくとも結びつかないとも、現時点では申し上げない方がいいのではないかというふうに考えております。
  252. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 私は、必要であればそうしたこともぜひ御検討いただきたい、お願いをしておきたいと思います。  しつこいようですけれども、もう一度現場の状況を申し上げますと、今回、操業中断によりまして、操業そのものは出ているわけでありますけれども、先ほど申し上げたような実態でありまして、そうした損失を受けました漁業者にとりましては、本当に現場の声は、融資では対応できないという声があります。  私は、ずっといろいろな資料を見ましたら、日ソのときにも融資で対応されたということがありまして、あのときは百日ぐらいでありますか、今回三十日ぐらいだから、当然融資でという話も出る可能性がある。そういう意味で大臣も低利融資の施策等ということでおっしゃったんだろうと思いますけれども。現場を歩いてみますと、日ソのときに比べて本当に漁業者の経済構造そのものがもう変わっている。  特に、私どもの地元では、十年前に比べまして大変に漁業者の数は減っている。その中で、本当に苦しい思いをして取り組みをされている。例えば、十九トンでも三人ぐらいのリストラをされて、本当にぎりぎりのところで操業されておられる。  しかも、昨年、民間の地元の金融機関から特別の融資を受けてことしの操業の準備をしたというような話を聞いておりまして、実態からいいますと、実は、地元の自治体も特別枠を設けまして制度融資を既に決定したようでありますけれども、融資ではどうもならぬと。それは、とりもなおさず金融機関から相手にされない。漁業者の実態が、それでなくても貸し渋りとかいろいろな問題があるわけでありまして、金融機関から相手にされない状態にまでなっている。  そういう漁業者に対して、融資で何とかなるだろうというような安易な理解ではなくて、ぜひ実態を十分把握の上、あるいは現場の声も聞いていただいて、私は、融資ではない損失補償をぜひ検討していただきたいと思うわけであります。  漁業法三十九条を見させていただきましたけれども、公益上の必要性等から操業が制約された場合は、その補償をする、こういう法律もあるようであります。ある意味では、現場の声からしましたら、この三十九条に準拠するような、準ずるような取り組みをしてもらいたいんだ、これが現場の声だ、こういう実情も私は伺わせていただいてまいりました。  そういう意味で、安易に融資ということではなくて、ぜひ損失補償すべき性格のものだ、このように私は考えておりますので、ぜひその辺を御検討いただきたい。大臣、いかがでしょうか。
  253. 中川昭一

    中川国務大臣 結論から申し上げますと、もちろん検討させていただきますが、現時点で我々が最も優先すべきことは、一日も早く日本の漁船がEEZの中で操業が開始できる、また、向こうから入ってくる船についても日本のルールのもとで操業ができる、資源管理ができるという体制を構築することが最優先だと思います。それが順調にスタートした後、先生のいろいろな御心配、御指摘を承りまして、いろいろと検討させていただきたいと思います。
  254. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 ありがとうございます。  今の急務の課題、それは私も理解できますから、ぜひそれでお取り組みをいただきたいと思うんです。  そういう意味で、もう一つ考え方として、ことしこういう実態になった。日韓の合意からしますと、操業条件というのは毎年協議をするわけですね。それで、地元の漁業者にとっては、来年もまたこういうことがあるのかと。二度とあってはならないと思いますけれども、ないという可能性もない。特に、日韓の問題についてはさまざまなその他の分野の影響もあるわけでありまして、順調にいけばいいわけでありますけれども、また来年もこういうことになるんじゃないかという危惧を地元はやはりするわけであります。  私は、特に、きょうは時間がないから全部議論できませんけれども、今回の相互入会といいますか、相互入漁のエリアといいますか水域、端的に言いまして、ある意味では西日本に固まるわけですね。本当に西日本のあの水域にとっては大きな、できればすぱっと真ん中で切ってもらいたい、相互入会なんというのはやめてくれという声もあるぐらいでありまして、しかし、過去の経緯等からして、どうしてもそういう調整をせざるを得ない。  としますと、さっきのように、来年はまたどうなるのだ、こういうこともありまして、私は、ぜひ今回、実態を把握していただくことはもちろんのこと、ことしの実態を把握したものに対してこれからどういう救済措置をするか、その検討と同時に、来年どうするのだ、またこういう事態になったときにどうするのか、そういう救済のルールといいますか、そういうものがないと、なかなか現場は苦しいですよ、こういうことを申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
  255. 中須勇雄

    ○中須政府委員 確かに、ことしの場合、新しい協定が発足をする、最初の、産みの苦しみというか、初めてのことであるということで、このような大変残念な状況が起きた。私どもも一面では反省をしておるところでございます。  こういった相互入漁の協定ができて、これが一定の期間、日韓両国の漁業関係を規律するということになれば、やはり当局者としては、こういった操業中断なんてことが起きないように、事前に十分話し合いをしてスムーズに相互入漁が行われるような、やはりそれに向けて最大の努力をすべきだ。今回の事例でもちろん我が国も大変大きな影響を受けましたけれども、さらに韓国側はより大きな影響を受けているわけであります。  お互いに、やはり今回のことを教訓として、来年以降スムーズに相互入漁を期間までに実現できるように話し合いを進めていくということをある意味では身にしみて知ったわけでございまして、そういうふうに努力をするということがやはり何よりも大切であって、あらかじめ、それがだめだから一定のルールをつくっておこうというふうにはなかなかなりにくいのではないか、率直に言ってそう思います。  それから、実際に相互入漁ができないといっても、今回は全面的にお互いにだめだったわけでございますが、それも異例の姿でございまして、これから先、仮にそういうことが起こるにしても、例えば部分的に起こるとか、いろいろな状況が予測されるわけでありまして、そういう意味では、一律に、事前にこういうときにはこういう対策を打つのだというふうに決めるのも、率直に言って、実務的になかなか難しいなというのも私どもの率直な現時点での感じでございます。
  256. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 今回は最初だからこういうことになったという、こういうお話でもありますけれども、私は、今回の事態というのは、一連の流れ、特に国連海洋法条約体制後の状況からすると、ある意味では起きるべくして起きた事態なのかな、こういう気もするわけです。  というのは、やはり昔と違いまして新しい体制になっているわけでありまして、日ソの時代と異なりまして、国連海洋法条約を批准しまして、排他的経済水域を設定し、TAC法を施行した現在、やはり資源の管理といいますか、そうした観点から、特にこの西日本の水域についてはグローバルな観点から資源を管理しなければいかぬ、こういう流れになっているわけで、そうした全体の流れの中から今回の日韓の新漁業協定というものも生まれてきた、私はこのように思うわけですね。  そうしますと、やはり資源管理に関する国の関与というものが昔の時代と違って大きくなってきている、私はこのように思うわけであります。そういう意味では、これから毎年、今回を教訓として、来年以降はこういうことがないように両国間でしっかり流れをつくりたいというお話があったけれども、やはり資源管理という観点では、今回、具体的にはきょうは時間がないから言いませんけれども、特に西日本の水域ではさまざまな問題がこれからも出てきます。絶対出てきますよ。  そうした中にあって、国の資源管理に関する関与が今まで以上に大きくなってきている、そういう意味では、理念的に、そうした観点からも、場合によっては、最悪の事態がことしのように起これば、国の責任において補償していくという考え方が今まで以上に求められるのではないか、私はこのように思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  257. 中川昭一

    中川国務大臣 昭和四十年に現協定が、現というか、破棄されました前協定がスタートして、西といわず北といわず本当に混乱がいろいろあったわけでございまして、そういう中で先生指摘のように、新たな秩序のもとでスタートしたわけでございます。  そして、協定が署名された、国会で承認された、そして発効したといろいろあったわけでありますけれども、その後も操業ができないという、これはまさに両国間の新しい時代の漁業秩序をスタートさせる上での産みの苦しみであったであろう、その経験というのは、今長官からもお話がありましたように、決してお互いに忘れることのできない一つの貴重な経験として、次からの交渉の中で生かしていかなければならないと思います。  一方、これから日韓の共同委員会というものができて、交渉ルールというものもこれからでき上がっていくわけでございますから、これを経験とし、また新しいルールのもとで、こういうことによって、まして日本の漁業者の皆さんが数日あるいは数週間、行けるところに行けないということのないようにしていく努力というのは必要だと思いますが、万が一のための、だめなときのための補償ルールを今からつくっておくというのは、交渉のやり方からいっても決して、これは相手側に知れたらプラスになることではないのではないのかなとすら思うわけでございまして、なかなか難しい議論だろうと思います。
  258. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 私が申し上げたかったのは、だめだった場合——私も二度とこういうことがあってはならぬと思いますよ。これはことしまだ終わっていません。今回の実態を把握して、そしてそれから検討されるということでありますが、その検討される理念として、やはり新しい時代の国家管理、資源管理に対する国の関与というのは今まで以上に大きくなっている、そうした観点から対応策を考えていただきたい、これをお願いしたわけであります。  最後に、時間もありません。大臣も北海道でありますから、かつての北洋漁業の再編というものを目の当たりに見てこられたお立場だろうと思うのです。今回は、西日本の漁業者に言わせますと、どうも石川なり北海道、向こう側はいいのだけれども、しかし西日本にとってはちょっと、今までの経緯も多分あるでしょう、なかなか悩ましい声を持っております。特に最近、水産庁から新しい相互入会の漁場について、どんどん資料が現場におりておりますけれども、それが今徐々に現場に伝わっておる。えっという声もあるわけです。  きょう、時間がないからそこまでの議論はできませんけれども、どうぞ大臣、ぜひ現場の声も、特に西日本の漁業者の声も聞いていただきたい。今回は、どうもそれがちょっとおろそかになっているのではないかという気がいたします。最後に、これをお願いしておきたいと思うのです。
  259. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、十月に基本的な合意がなされたときに、これは率直に私の感情、気持ちも込めまして、漁業者の皆さんの不満が大変大きいということは何回もこういう場でも申し上げたところであります。  その後発効したわけでありますけれども、操業条件につきましては何としても日本として譲れない部分があるのだ、最後はもう一点、二点に絞って、これだけはだめだということで、実は長官以下実務者で、最後必死の交渉をして、おおむねその目的を達成することができました。その間、先生のところの御地元を初めとする数県の関係者の皆さんは、早く出たいという気持ちが、私のところには直接ありませんでしたけれども、心の底には当然おありになった。しかし、全国の要望としては、最後まできちっとオール・ジャパンで交渉に臨んだからこそ、はっきり言って、韓国側に比べて体制が整っていたということが、おおむね交渉が成功した最大の原因だろうと私は思います。  しかし、さはさりながらも、全体としては、大体目的は達成したとはいえ、百点では決してない。しかもその中のマイナス点の大部分は、大変なことに先生の御地元を初めとする地域であろうということは、私自身想像のできるところでございますので、先生のところの代表者の方々、あるいは場合によっては、機会があればぜひ御地元の皆さんのところにもお伺いをして、生の声を聞くことも大事かなというふうに考えております。
  260. 桝屋敬悟

    桝屋分科員 ぜひよろしくお願いいたします。  大変お疲れでした。ありがとうございました。
  261. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて桝屋敬悟君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十八日午前九時より開会し、引き続き農林水産省所管について審査することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十九分散会