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田中(甲)
分科員 日米安全保障にかかわる、そしてガイドラインに関して、さらには今国会内において
憲法という問題を取り扱っていくその機関をどのようにしていくか等々、国内においてはそのような流れに、
国民もあるいは国会の中でも当然それは必要なことというふうに考えられていると思います。そして、極めて重要なことという認識も持たれているところだと思います。
しかし、アジアの国々から見ると、それらの議論を行っていく
日本の姿に対して、いま
一つ、不信感といいますか、先ほ
ども申し上げましたが、信頼の醸成ということを欠いたままそういう話がまた行われていくのではないかという不安感ということも、私はないとは言えないと思うんです。
例えば、先般訪日されました韓国の金大中大統領、九八年十月八日に国会で演説をされていますけれ
ども、その中で未来志向の発言を大統領が行った。しかし同時に、「過去を正しく認識し反省する、道徳的勇気のある、数多くの
日本の民主市民がいる」ことを知っていますという発言も文書の中に一文としてしっかりと入っておりました。これは自発的に
日本が事実を明らかにしていくという姿を期待しているのであって、韓国から
日本に対して強く申し上げることではないけれ
ども、しかし
日本でそういう動きがあることに対しての、私は、ストレートではなかったにせよ、期待をしての発言だと受けとめています。
中国の国家主席江沢民さんがやはり来日をされて、昨年の十一月でありますけれ
ども、「未来は若い
世代のためにある」、そういう発言をされています。これは早稲田大学における講演の中でされているんですけれ
ども、そして正しい歴史の認識の必要性ということを強く訴えられたということでございます。しかし、私は、中国の国家主席は余りにも歴史認識というところに力点を置き過ぎて、少し
日本の現在の状況の中ではかみ合わなかったんではないかというふうに受けとめています。
先ほ
ども申し上げた、この点もそうでありますけれ
ども、歴史認識というのは国それぞれ違うし、アジアの中の国においては、歴史認識どころか歴史物語を語っている国もあるように私は
感じています。
日本はそういう点では、調べようと思えば数多くの
資料というものが、書籍が手に入ってくる、かなりバランス感覚を持って歴史の事実ということも見詰めていくことのできる国だと自負をしている点もございますけれ
ども、しかし、今韓国の大統領や中国の国家主席の発言を引用いたしましたが、事実を明らかにしていく
日本の姿という点では、アジアから見ているとまだまだ十分とは思えない、そんな
気持ちが伝わってくるのであります。
少し古い話になりますが、一九八五年、ドイツのワイツゼッカー前大統領の演説の中で、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になる」。この言葉は非常に私には力強い、同じ敗戦国の中でもヨーロッパにおけるドイツの地位というものを確立してきたまさにその根底には、この言葉というものが根強く影響を与えてきたのではないかというふうに思うんです。
真相究明ということに向けて、今国会議員百三名が議連をつくって
活動しております。くどくどと
お話をしているようで大変に恐縮なのでありますけれ
ども、事実を明らかにしていくということは非常に重要なことである。時あたかも情報公開法というものができたわけでありますけれ
ども、しかし、
戦前、戦中、戦後の事実を明らかにするというところにはこれは及ばない法案であります。
防衛庁の話とは少しかけ離れた
質問になってしまったかもしれませんけれ
ども、事実を明らかにしてアジアの国々からの信頼醸成ということも、
日本が安全保障やガイドラインの法案の論議、審議ということを行っていくに当たってやはり重要であるという認識を持つべきだと考えるのですが、長官の御所見を賜れればありがたいと思います。