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1999-02-10 第145回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       小澤  潔君    越智 通雄君       大原 一三君    加藤 卓二君       河村 建夫君    岸田 文雄君       斉藤斗志二君    津島 雄二君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       牧野 隆守君    宮本 一三君       村田 吉隆君    村山 達雄君       森山 眞弓君    谷津 義男君       横内 正明君    岩國 哲人君       上原 康助君    生方 幸夫君       岡田 克也君    小林  守君       肥田美代子君    平野 博文君       吉田  治君    大野由利子君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       西川 知雄君    一川 保夫君       佐々木洋平君    鈴木 淑夫君       西村 眞悟君    木島日出夫君       春名 直章君    藤木 洋子君       藤田 スミ君    北沢 清功君       濱田 健一君  出席公述人         中央大学法学部         教授      貝塚 啓明君         慶應義塾大学商         学部教授    深尾 光洋君         国際通貨研究所         理事長     行天 豊雄君         神戸大学教授  二宮 厚美君         一橋大学教授  石  弘光君         評  論  家 佐高  信君  出席政府委員         北海道開発政務         次官      石崎  岳君         経済企画政務次         官       今井  宏君         科学技術政務次         官       稲葉 大和君         環境政務次官  栗原 博久君         沖縄開発政務次         官       下地 幹郎君         外務政務次官  町村 信孝君         大蔵政務次官  谷垣 禎一君         文部政務次官  森田 健作君         厚生政務次官  根本  匠君         農林水産政務次         官       松下 忠洋君         運輸政務次官  林  幹雄君         郵政政務次官  佐藤 剛男君         建設政務次官  遠藤 利明君         自治政務次官 田野瀬良太郎君  委員外出席者         大蔵省主計局次         長       寺澤 辰麿君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月十日  辞任         補欠選任   横内 正明君     宮本 一三君   岩國 哲人君     平野 博文君   加藤 六月君     佐々木洋平君   志位 和夫君     藤田 スミ君   不破 哲三君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   宮本 一三君     横内 正明君   平野 博文君     岩國 哲人君   佐々木洋平君     一川 保夫君   春名 直章君     不破 哲三君   藤田 スミ君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   一川 保夫君     加藤 六月君   藤木 洋子君     志位 和夫君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十一年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず貝塚公述人、次に深尾公述人、続いて行天公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、貝塚公述人お願いを申し上げます。
  3. 貝塚啓明

    貝塚公述人 本日は公述人としてお呼びいただきまして、大変光栄に存じます。  私は財政金融専門でございますが、きょうは主として金融の話、しかし最初予算案についてちょっとだけ申し上げておきますが、今回の予算案は、現在の経済危機の中でとり得る手段を動員して編成されたものとして、妥当なものというふうに考えております。  あとは、私のレジュメに沿いまして申し上げたいと思いますが、私は経済学者でもありますので、最初に多少、経済動き方に関する考え方について申し上げます。  日本では、景気については、財政が出動すべきであるとかあるいは減税をなすべきであるとか、非常に財政政策に関して比重がかかっておりますが、昨今の、十年か十五年ぐらい前からの欧米の経済学者、あるいは日本経済学者もそうだと思いますが、財政政策効果は限られていて、余り財政を多用するのは望ましくないというのがコンセンサスに近いと思います。逆に言いますと、金融政策は非常に重要ですというのが現在の認識ではないかと思います。  あと金融政策について多少コメントいたします。  最近の日本不況その他には、いろいろな原因があります。しかし、私は日本銀行の方もよく存じておるのですが、やはり中央銀行政策がおくれたということがかなりの要因としてあります。ただし念のためにつけ加えておきますが、今から十年前あるいは五年前の日本銀行は、今の日銀法が改正される以前の状況でありまして、全体として政府政策の中で行われておりまして、必ずしも日本銀行だけの責任ということではないということだけちょっと申しておきますが、いずれにいたしましても、金融の引き締めあるいは緩和は半年ぐらいはおくれた。そのことの結果、かなり景気の振幅が大きくなったということであります。  それはともかくといたしまして、現在の日本経済状況というのはどういうものかということを、ちょっと私の感想を交えて申し上げたいと思います。  日本の現在の景気の情勢というのは、ある程度は一九三〇年代のアメリカの恐慌に似ている点があります。どこが似ているのかという点は、そこに書いてございますが、消費支出が減ったということです。日本の戦後の景気の波の中で、消費が減ったということは初めてなんですね。それからもう一つは、住宅投資が減ったということも初めてであります。  それは、普通は景気というのは、設備投資とか、企業設備をふやしたり減らしたりするということが原因日本の戦後の景気循環は起きておるのでありますが、今回は、前年よりも消費が減った、前年よりも住宅建設が減ったということにおいて、非常にそういう意味で深刻であるというふうに思います。  ですから、今後の日本景気がどうなるかということについては、そこに書いてございますが、消費支出住宅建設回復がどの時点で本当に本格的に生じてくるかということに依存しているというふうに思っております。  では、政府が何をすべきかということについては、私は、財政金融政策は最大限やるべきであるというふうに思いますが、しかし限界がある。今のような大きな不況、大不況状況政府がなすべきことというのは、これはむしろ政治家先生方に多少お願いしたいのでありますが、現在、日本消費者あるいは企業経営者がどう思っているかということです。  それは、簡単に申し上げれば将来が不安であるということです。不安であるということはどういうことかというと、どうなるかわからないということなんですね。もし経済がある程度悪くなったとしても、ここまで下がって、これ以上は下がらないでしょうというふうなことがある程度確信が持てれば、ちゃんと計画は立てられるはずです。  その辺のところが非常に不安であって、どうなるかわからないということの結果、皆さんどうしているかというと、自動車の買いかえはおくらす、住宅新規取得は、新しく買うのもおくらす。なぜならば、自動車というのは、今の日本自動車は大変よくできておりまして、一年や二年、少しぐらい買いかえを延ばしてもちゃんと走るわけでありますし、住宅も、昔と比べてちゃんと住んでおるところは、借りておるところにしてもあるわけでして、借りかえるというのは少しおくらせる。その結果、自動車需要は非常に減りましたし、住宅需要も非常に減りました。そういう状況ではないかと思います。  したがって、政府としてなすべきことは、実を言うとちょっと先の話でありまして、先の話として、日本社会保障はどうなりますか、年金はどうなりますか、介護保険はどうなりますか、医療保険はどうなりますか。そこで重要なことは、日本納税者方々は、多分、恐らく将来ある程度社会保障が切り詰められるということは皆さん予想されております。ただ重要なことは、切り詰められたときにも、やはり最低限ここまでは確実に保証するということが、そういうことを約束するというのが非常に重要で、それで大丈夫だと思えば、皆さんいろいろなことを考える。  今は、そこのところは、例えば私は年金関係年金審議会というのに出ておりますが、平たく言えば厚生年金の新しい再計算に関して、次どうするかということで、完全に今のところ宙に浮いている。宙に浮いているということは、こうなるということがはっきりしていないということなのであります。  その点について、御理解と、いろいろ政府全体の政策について国会方々が助言、議論していただくことをお願いしたいと思います。  あとは少し金融の話でございます。  金融の話は、昨今いろいろ議論されておりますので、一言だけ、ちょっと申し上げますと、中央銀行である日本銀行は、新しい日本銀行法のもとで独立性回復いたしました。しかし、中央銀行独立性回復するということはもう一つ重要なことがありまして、英語で言うとインディペンデンス・アンド・アカウンタビリティーということですが、独立すると同時に説明義務があるわけです。  なぜそういう政策をとったかということをわかりやすく、今の中央銀行というのは昔と違いまして、やはり経済政策で非常に重要なことをやっておるわけですから、世の中にわかりやすく説明して、こういうふうにやっていると。今、金融緩和で、できる限り、できる手段は総動員してやっているということを世の中に、もちろん国会に説明されるのは当然ですが、経済界とかいろいろなところに情報を発信して、わかりやすく説明されることが非常に重要じゃないかと思います。その結果、いろいろな誤解は解けることが、多分、かなり大きいというふうに思います。そういうことであります。  ですから、あと細かい点を申し上げれば、日本銀行さんは、CPオペといいますか、CPというのは企業が発行している手形、それを直接ある程度買うということですね。  これは、金融政策としては普通はやらないことなんですね。やらないというのはなぜかというと、現在のような日本状況で、なるべく貨幣供給というのですか、それを潤沢に、円滑に行うために、普通はやらない手段を使ってやっております。そのことは、もちろん専門家の方は御存じですし、ある程度は新聞の記事にも当然出ておりますが、そういう点はきっちり説明して、やはりできる限りのことを、考えられる手段を使って金融緩和が行き渡るようにしているというふうな、もう少し説明等が必要ではないかというふうに思っております。  あとは、多少レジュメに沿いまして、現在の金融システムがどうなっているかということだけ、その他、多少金融について御説明いたします。  残念ながら、日本金融機関経営体質は、著しく劣化したと言うべきであります。その劣化の程度は極めて著しい、非常に残念でありますが、現実はそうであります。どうすればいいのか。それは、本当はなかなか難しい話ですが、私は、もう割り切って、ある程度外資系銀行に、ある部分は仕事をやってもらわないとやれなくなった事態ですね。  実際問題として、皆さんもよく御存じでしょうが、私は昔東京大学の経済学部におりまして、今から十年とか十五年前は、学生は、給料が高いのでみんな金融機関に就職して、我も我もと金融機関に行きました。私は、余り金融機関に行くのはよろしくないということを申し上げたのですが、だれも聞いてくれませんでした。ただし、現在になってみると、言ってみれば、先生の言っていたことを思い出すというふうに卒業生は言いまして、例えばの話、今もう銀行としてなくなりましたので個別行の名前を挙げてもいいのですが、例えば長期信用銀行なんかにどんどんたくさん就職しましたが、しばらくたって、二、三年前から全部転職。転職できた人はかなり優秀な人ですね。しかし、そういう事態は昔はほとんど予想できなかった。  今、そういうところに反映しておりますように、日本金融機関は非常に劣化いたしまして、実質問題として優秀な人材は外資系にある程度流れているということで、実態として既に動いているということでございます。  その点をどう考えるかは結構難しいんですが、日本金融機関で現在立ち直れるところはなるべく早く個別の得意な業務に特化して、すべての分野で大きければいいというのは今やもうだめでして、単純に言うと。得意な分野仕事をして、ビッグバンで東京市場で外国の金融機関と太刀打ちする、あるいは場合によってはもちろん提携、合併その他も当然のことでございますが、そういうふうに対応すべきではないかというふうに思います。  それから、あとは今後の金融システムの問題で、私は金融審議会というところで関係しておりますが、かなり難しい問題があります。皆さんも御承知だと思いますが、そこに書いてございますが、ペイオフ以後の金融システムをどうするか。  ペイオフというのは、御存じだと思いますが、今、日本金融機関の、基本的には預金ですが、これは全額保証されております。ですから、預金者がそれを保有している限りは、銀行経営がおかしくなっても、これは一〇〇%保証されている。しかし、それがある時期にそうでなくなる。二〇〇一年ですか、というふうに一応金融当局は約束しておりまして、その後をどうするかという問題が非常に大きな問題であります。  私見を一言だけ申し上げますと、アメリカはかなり以前からそういう制度をとっておりますが、実際にアメリカ銀行が本当につぶれちゃったという例は、本当は多くはないんですね。要するに、銀行が消えてなくなったというのは、預金保険機構の中で、恐らく今の処理した中で三割ぐらいです。残り七割ぐらいは、大体は業務を継承するかあるいは別の銀行と合併するということですね。ですから、金融機関が簡単に消えてなくなるというのは、処理が大変であります。それは昨今の日本の事情を考えていただいてもそうであります。  ですから、むしろ問題は、銀行経営がおかしくなったときに、なるべく早くモニターといいますか、それに気をつけて、そしてできるならば自分で早く是正していく。そういうルールをつくって、それ以前にやはり金融機関経営体質が悪くなるのを防ぐということが肝要ではないかと思っております。  以上が大体ここに書いてあることですが、別の点で二、三多少補足いたしますと、多分財政赤字についてはいろいろな方々がここで議論、私も一応財政学者の端くれですのでちょっと申し上げますと、現在財政赤字がふえているというのは、これは経済が非常に落ちているということから、むしろ当然であります。日本経済は、ある意味では異常な時期にありまして、そこで税収入がどんどん減っていくというのは、それで赤字がふえるということは、深刻な不況に対応してそれはある意味では当然だと思います。  したがって、申し上げれば、やはり日本経済にとっては、財政それというよりも日本経済自身回復が重要でして、日本経済回復すれば、おのずからある程度、当然税収はふえてきます。とにかく経済回復するということが最優先すべき課題であって、あと財政の方は、経済がある程度回復したときに、ここに主計局の方がおられるようですが、やはり経済がある程度めどがついたときに財政健全化の措置を立てるということが現実的ではないかというふうに思います。  それから、もう一つだけつけ加えますと、中央、国の財政の問題も深刻なんですが、皆様もよく御存じだと思いますが、地方財政赤字はもっと深刻であります。深刻というのは、たくさんの自治体がありまして、もちろん優良なところもありますが、非常に財政赤字が大きくなったところもありまして、これをどうするのか、これは相当深刻な問題であろうと思われます。  それから、最後でございますが、長期金利の問題が最近いろいろ議論されております。考え方はいろいろあると思いますが、長期金利というか国債金利ですが、元来国債金利は、現在の日本のようなシステムでは、やはりマーケットで決まるものであります。  したがって、市場参加者がどういうふうに考えているかがこの金利を左右すると思われます。余り政策的にこれを動かすということは、今や不可能でありますし、国債管理政策というのは、現在の金利の、こうなっているということを前提にして、既に多少出ておるようですが理財局国債の発行を多様化して、現在の金利のいろいろな構造の中で出しやすいところを出していくというのが重要ではないかというふうに考えております。  以上、大体私がお話しいたすことは話が尽きましたので、この辺で終わらせていただきます。御清聴を感謝いたします。(拍手)
  4. 中山正暉

    中山委員長 ありがとうございました。  次に、深尾光洋公述人お願いを申し上げます。
  5. 深尾光洋

    深尾公述人 慶応大学の深尾です。本日は公聴会にお招きいただき、ありがとうございました。  きょうは、お配りしております資料衆議院予算委員会公聴会資料ということでお配りしておりますが、これに沿ってお話ししたいと思います。  平成十一年度予算案には次のような問題点がある。一つは、非効率景気刺激政策です。つまり、この予算には減税公共事業の拡大による景気刺激策を盛り込んでおりますけれども、使ったお金の割合には支出創出効果が小さいものが多い。この結果、非効率であるというふうに思います。  また、支出結果につきましても、公共事業が一体どの程度執行されて使われているのかという統計は、一年近くおくれる。これは、一般企業については法人企業統計季報投資を見れば二カ月ほどで出ておりますけれども、わずか三千三百ほどの地方公共団体及び国についてすぐにその支出データがとれないというのは、非常に怠慢だというふうに思っております。  二番目に、財政赤字が過大になってしまっているということです。非効率景気刺激政策を採用した結果、財政赤字が過大となって、長期金利の上昇を招いております。  現在の財政赤字というのは、これも統計がおくれてよくわからないわけですが、多分、九九年度の一般政府財政赤字というのはGDP比一割近いところまで上がるだろう。こうしますと、途上国財政破綻国と言われているような国並み財政赤字になってしまう。ですから、これ以上財政赤字を拡大することは、日本政府信用を、海外ばかりでなく、国内でも失墜させるおそれがあるので、避けるべきだというふうに思います。  こういうふうに考えてみますと、なぜこういうことになったかといいますと、過大な恒久減税でございます。所得税法人税恒久減税というのは、雇用や公的年金企業年金制度の将来に対する不安感が強い、しかも、金融機関の貸し渋り、あるいは貸し出し回収競争というクレジットクランチが厳しい状況では、効果は薄いと思います。また、商品券配付につきましても、所得税減税よりは効果はあるというふうに思いますけれども、多大な配付コストが必要であって、これも余り効率的な政策ではないと思います。  それではどうしたらよいかということですけれども、私は、昨年の夏ごろから、所得税法人税恒久減税あるいは公共事業の追加はほどほどにしておいて、消費税を一時的にゼロに下げて、半年ごとに二%ずつ上げていく、これは人為的に四%近いインフレを一年半ほどにわたってつくるということであります。これによって消費前倒しを行い、その間に金融システム不安を払拭することで景気回復を図ってはどうかという提案をしておりました。しかし、これについては採用されなかったわけですけれども、現状でどうかというふうに考えますと、ここまで財政赤字が拡大した中で消費税をゼロにするというのは、リスクが余りに大きいので、現状ではやるべきではないというふうに思っております。  そうしますと、どうやったらいいかということですけれども、むしろ、次に述べます金融システム対策と強力な金融緩和、これは後で説明いたしますが、こういったものを柱にしつつ、増税の景気刺激効果を使ってはどうかということを考えております。  これは、住宅減税については五年程度で徐々に廃止するということを宣言しますと、これで相当程度住宅投資について前倒しが出てくる。それから二番目については、消費税を、現在五%ですけれども、半年ごとぐらいに二%ずつ引き上げていって、一年半で一一%にする。しかし、これだけでは通りませんので、同時に、基礎年金の財源をこちらに移すということで社会保険料を引き下げる。社会保険料を引き下げますと、社会保険料御存じのように相当程度逆進的でございますので、この逆進的な社会保険料、これははっきり言って税金ですけれども、これを引き下げることによって消費税にシフトする。これによって、消費支出前倒し公的年金に対する信頼を取り戻す。これによって、貯蓄率が現在異常に上がっているのを普通に戻すということが必要ではないかと思います。  この二つのこと、つまり住宅投資消費支出の大幅な前倒しによって、その間にクレジットクランチを解消するということで、景気自律回復を促してはどうかというふうに思っております。  当然、消費税引き上げ、あるいは住宅投資減税を五年間でやめますということをやりますと、その後の反動が怖いわけです。これについてどう考えるかですけれども、九七年第二・四半期には確かに消費税引き上げ反動はありましたけれども、実は、夏ごろまでには回復してきつつありました。現在の深刻な不況というのは、私は、消費税引き上げというよりは、むしろクレジットクランチ。つまり、当時の金融機関の相次ぐ破綻、三洋、拓銀、山一、こういった金融機関の相次ぐ破綻クレジットクランチが起きて、これは金融機関がみずからの資金繰りに安心できなくなったので、資金繰りのために貸し出しを回収する、こういったことをやったわけですから、これをやめるということ、これを何とか解消するというのがポイントであって、消費税引き上げが現在の不況の主因ではないというふうに考えております。  また、現在、不安感貯蓄率が異常に高まっている、これによって消費が低くなっているわけですから、この消費支出を、今こういったやや奇策で消費住宅投資引き上げるということをやっても、異常に下がっているものを平常なところまで戻すわけであって、その間に不安の方を取り除いてやれば、そう大きな反動にはならないのではないかというふうに考えております。  二ページ目に行っていただきまして、金融システム対策ですけれども、金融再生法と金融早期健全化法については後ろに、四ページ以降に詳しい説明がしてあります。  これは三月号のジュリストに公表される予定でございますけれども、これを簡単に要約いたしますと、金融再生法と金融早期健全化法には幾つか問題点がありますけれども、金融監督庁の運用ぶりというのは全体として高く評価できるというふうに考えております。  私自身、学者グループで金融監督政策研究会というグループをつくって提言活動をしてきておりますけれども、去年の十二月に行った提言、ほとんどそれに沿った形で運用されているやに見えるぐらいでございまして、非常に高く評価できると思います。  ポイントといたしましては、注入する資本に対して適正な収益確保を迫っている。金融機関政府のお金を注入するのだから、それに見合う利益を上げなさいということを迫っている。これによって、金融機関に対して極めて深いリストラを迫っているということ。それから、不良債権の徹底的な償却、まだ私は切り込みが足りないと思いますけれども、それでも従来に比べれば相当厳しい償却を求めている、こういった点が評価できると思います。  また、金融早期健全化法による資本注入ということについては、まだどういう形で注入するかは決めておりませんけれども、優先株の発行について幾つか注文をつけたいというふうに思っております。  きょうの日経新聞に出ておりましたけれども、一つは、普通株式への転換権をつける、これは非常にいいことだと思います。こういうふうにしておくことによって、経営が傾いたときには国が経営を掌握できるというわけです。  同時に、優先株というのは利益配当について優先するだけですけれども、これに加えて、残余財産についての配分も優先するようにすべきだと思います。こうすることによりまして、万一、金融早期健全化法で資本注入して、その後で金融機関破綻した場合でも、普通株式が先に消却されて、政府が入れた優先株はその上に乗っかって相当部分が残る、こういう形になりますので、残余財産の配分についても優先するような形の優先株にすべきではないかというふうに考えております。  また、資本注入については大規模に行うべきですけれども、金融システム健全化のめどがついたら、早急に株式を市場で売却すべきだと思います。  なお、これに関してですが、ペイオフについては、やはり予定どおり実施して、それまでの環境整備を行うべきだと思います。  従来あった金融システムに対するセーフティーネット、預金保険もですけれども、これについては、ある意味では使うことを予定しないセーフティーネットという形で設計されておりまして、悪く言えばタイタニックの救命ボートのような設計であったということが言えます。使い物になるセーフティーネットをつくるということが必要であります。  このためには、例えば預金保険についても、一千万円までは全部保証して、それ以後は保証はなくなるというふうになるわけですが、そうしますと、中小企業なんかは困ってしまうわけです。一千万じゃとても資金繰りに足らない。そうなりますと、例えば、一千万円以下についても九割までしか保証しない、そのかわり一千万を超えても八割は保証するとか、このあたりをもう少し考えてもいいのではないだろうか。自動車保険であっても、自分で自動車をぶつけた場合は当然自分で少しはかぶるわけですから、それに見合うような形での負担をうまく設計できないものかというふうに思います。  次に、金融政策ですけれども、日本銀行は、本来インフレでもデフレでもない状態を目指すべきだと思いますが、現在はデフレになっておりまして、そういう意味では政策に失敗しているというふうに思います。日本銀行は、そういう意味で、金融政策の主目的である物価の安定ということについて、その目標値を明らかにすべきだと思います。  私は、生鮮食品と間接税の変更、これは消費税の変更、それらの影響を除いた消費者物価の上昇率について、中心値として一・五%程度で、プラス・マイナス一%程度のインフレ率の目標値、インフレーションターゲットを設定して、それを達成することを目的として金融政策を運営するのが望ましいと思います。  この理由といいますのは、財やサービスの質の変化ということによって、物価指数のゆがみが大体一%程度ございます。私も自動車を一番初めに買ったときは、もう二十五、六年前ですが、当時でも自動車は百数十万、新車でまあまあの車というのはそれくらいしておりまして、実は現在とそんなに変わっておりません。しかし、現在であれば、エアコンもカーステレオもABSも全部ついているわけですから、そういう意味での質の変化ということが相当大きいわけです。こういう部分が大体一%ぐらいありますので、その分を除いてみると、一%ぐらいの消費者物価の上昇があっても実はゼロインフレに近い。  もう一つは、不況期には実質金利をほぼゼロ程度までに引き下げるような強力な金融刺激策をとる必要がある場合もある。このためののり代として、ある程度とっておく必要がある。この観点から、一・五%を中心に上下一%ぐらいをターゲットにすべきではないかと思います。  そもそも、日本銀行の総裁、副総裁、政策委員の人事というのは国会の同意人事でございますので、そういった方を同意されるときに、どういう目的で金融政策を運営されるのかというのを国会でお聞きになってはどうか。こういう目標をするのだから選びますということを、はっきりその任命する場でお聞きになる方がいいのではないか。そういうふうに選んだ上で政策を任せるということが必要ではないかというふうに思います。  また、物価の安定、今デフレ的なわけですが、これを一%ぐらいのインフレに戻すということは、日本銀行は量的緩和に踏み切るべきだと思います。  私の申し上げているのは、調整インフレではありません。むしろ、ゼロインフレ、実質的なゼロインフレを目指すということですけれども、現在の日銀による金利の低目誘導は既に限界に達しておりまして、現状以上の金融緩和を行うには、銀行券と金融機関が日銀に預ける預け金、この合計をベースマネーあるいはハイパワードマネーと申しますが、この供給を増加するような量的緩和が必要だと思います。  しかし、銀行券には、季節性が大きいといいますか、日々の動きが非常に大きいものですから、これに対する数値目標をつくるのは非常に難しい。そういうふうに考えますと、金融機関が日銀に預けている日銀預け金についてターゲットを設ける。  大ざっぱな数字ですけれども、例えば日銀預け金について、超過準備、つまり準備預金制度で求められている準備の金額に上積みしてどれだけ持たせるか。これを日銀がオペでどんどん注入していく。例えば月に五千億程度を注入して、一年間で六兆円ぐらい超過準備をふやすというような形での量的な緩和というのが望ましいのではないかと思います。  この量的緩和を行う場合のオペ対象としては、日銀の中期的な金融緩和に対する決意を示す上で、一部長期国債を含めるということは考えられると思います。しかし、この長期国債は、いざという場合にはすぐ売れる状態、つまり、買い切りでずっと持てというふうにいったのでは危な過ぎるので、やはり必要なときにはすぐ売れるような状態にした上で買っていってはどうかと思います。  これをやりますと、今、翌日物の金利は〇・二五%で、これはこれ以上下がらない可能性があります。といいますのは、銀行間でお金を貸す場合でも、相手が破綻する可能性がありますので、その分リスクが上乗せされる。このためにこれ以上は下がらないと思いますが、三カ月物の例えばコール金利あるいはユーロ円金利というのは、〇・七とかそれぐらいのところにありますので、これは相当下がる可能性があります。  しかし、長期金利の方は、下がるかどうかというのはわかりません。これがうまくいきますと、将来インフレになるという期待が出てくるわけですから、金利はむしろ上昇する可能性もあります。しかし、名目金利が上がったとしても、将来物価が安定し、若干上昇するという期待が生まれれば、むしろ金融緩和しているというふうに見るべきであります。そうしますと、長期金利はむしろ多少上げるかもしれない。円は多少下落する方向にある。これは、円安のときにこれをやりますと危険ですけれども、今は比較的円高の時期ですので、やるリスクが比較的小さいというふうに思います。  三番目として、日銀による国債引き受け、これはやるべきではないと思います。  その理由といいますのは、国債引き受けと日銀の国債の買いオペというのは、見かけ上同じですけれども、実は政治的には大きな意味の違いがある、このことによるものです。そういう意味では、政治経済的なものであって、純粋に経済的な反対ではありません。  日銀の引き受けといいますのは、政府にとって打ち出の小づちを持つようなものでして、電話一本でお金が、現金が来る、こういう状況になるわけです。これは財政支出に歯どめがきかなくなる危険がありまして、日本政府に対する信用を維持するためには、これ以上財政赤字をふやすような、あるいは財政を簡単に使えるような変更をすべきではない。  それから二番目は、日銀の引き受けといいますのは、国債市場金利の上昇を抑えるための国債価格の支持政策、つまり、国債の値段が下がって流通利回りが上がったときに、これを抑えろというふうに圧力が必ずかかってまいります。これは歴史的な経験です。そうしますと、長期金利が上昇を始めたときに、それは財政赤字をふやすわけですから、さらに日銀に国債を買わせるといいますと、悪循環になります。こうなりますと、インフレ抑制のための金融引き締めができなくなってしまう。  過去の歴史を振り返りますと、通貨価値の安定が揺らぐ時期というのは、デフレからインフレになったり、あるいはインフレからデフレになったりということで、物価の大きな変動を生じております。そういう意味では、デフレ状態というのは、ひょっとするとインフレになるかもしれない、リスクというのは必ずあるものですから、そういったことを忘れてはいけないというふうに思います。  最後に、公的資金による株式の買い支えですけれども、私は、現状では、公的資金による株式の買い支えは行うべきではないと思います。  現在の株価水準というのは、バブル前に比べて十分低いとは言えないわけです。これは長期のデータでグラフをかいてみればすぐわかるわけですが、東証一部の時価総額のGDPに対する比率を戦後ずっとグラフにかいてみますと、大体GDP比二〇%から四〇%。列島改造ブームのときで四五%、そのピークで四五%ぐらいです。これが、バブルのときに実は百四、五十%までいきまして、現在一万四千円絡みで、東証一部時価総額、これは日経新聞の株式欄に載っておりますが、二百八十兆円弱でございます。GDP比約六割弱でございます。  こういうふうに考えますと、高値覚えという部分が相当あって、まだ十分低くはない。日経平均が一万円を切ってどんどん下がっていくような時期、本当のデフレスパイラルというような状況であれば、非常手段ということは考えられないわけではないと思いますけれども、今やるべきではないと思います。  次に、日本企業を実質的に国有化すべきではないということです。  財投の自主運用、それから銀行への公的資金注入、国営化ということで、国は相当巨額の株式を持っております。これ以上日本企業を国有にしてしまいますと、そもそも市場経済なのかという疑問さえ私は持たれるリスクがあると思います。  また最後に、企業部門のバランスシートを見ますと、まだ相当巨額の未処分利益剰余金を持っております。法人企業統計季報で見ますと、自己資本の勘定、資本金十億円以上の大企業の資本勘定が百六十五兆円ありまして、このうちの半分弱ぐらいは未処分利益剰余金です。この分は、自社株の消却には定款を変更すれば使えるわけでございまして、まだまだ自助努力が足りないというふうに思っております。  以上でございます。(拍手)
  6. 中山正暉

    中山委員長 ありがとうございました。  次に、行天公述人お願いいたします。
  7. 行天豊雄

    行天公述人 行天でございます。よろしくお願いいたします。  まず、御審議中の来年度の予算案につきましては、私は賛成をするものでございます。  と申しますのは、一つには、この予算が確実かつ迅速に施行されれば、恐らく日本景気回復に資するという期待が持てるのではないかと思っておるわけです。  さらに、具体的には、これは後ほどちょっと触れさせていただきますが、日本にとって非常に重要なアジア諸国の経済危機からの回復のために、あるいはアジア金融危機支援資金、あるいはいわゆる宮澤構想等、私といたしましては、この予算案の中に大変有意義な計画が盛り込まれておるという点でございます。  それから三番目には、将来の日本にとって非常に大事だと考えております円の国際化を推進するために、主として税制の面で措置が講ぜられておるわけで、これも私は大変結構なことだと思っております。  せっかくの機会でございますので、日本を取り巻いております最近の世界経済につきまして、僣越でございますけれども、若干私見を述べさせていただきたいと思います。  世界経済は、一言で申しますと、非常に不確定な要素がふえておるように思います。具体的に申しますと、要するに、よくなるのか悪くなるのかわからないという感じが非常に強くいたします。  一昨年来、大変な危機に襲われております東アジアの諸国でございますけれども、確かに、貿易収支がよくなった、あるいはインフレもおさまった、金利も下がってきたという面もございます。しかし同時に、銀行部門の不良債権の問題、あるいは企業の採算の悪化、それに伴うリストラ、失業というような問題も実は同時に進行しておりまして、全体として、本当にことしが東アジアの諸国にとって回復のための第一年度になり得るのかどうか、私は、率直に申しまして、若干まだ自信がございません。  国別に見ましても、御承知のとおり、韓国とかタイのように大変努力をしながらいろいろ前進している国もございますし、同時に、インドネシアのように政治的、社会的に問題がむしろ難しくなっているという国もあるわけで、東アジアの情勢というのはまだ予断を許さないという感じでございます。  中国は、御承知のとおり、この東アジアの危機の中では今までのところ割と影響が少なくやってきたのでございますけれども、ここに至りましてかなり難しい問題が出てきておるようでございます。  国有企業、国営銀行、それから各種の投資公司というようなところの経営破綻が続出しておりますし、輸出の伸びも鈍化する、外国からの直接投資も先細りになってくる、失業もふえてくるというようなことで、かなり難しい問題が起こっておるわけです。もちろん、当局が非常に努力をしているということは認められますけれども、現在の国内での、主として財政刺激によって何とか急場をしのいでいこうという政策が、短期的にはともかく、長期的に中国経済の再生につながるかどうかというのは、これも若干不確定であろうかと思います。  日本でも最近非常に大きな話題になっておりますユーロ、欧州統一通貨の誕生を迎えましたヨーロッパは、確かに現状、非常に精神的な高揚の時期にあるわけでございまして、この統一通貨が長い努力の後ついに実現できたということで、非常にヨーロッパの雰囲気というのは高まっておることは間違いございません。統一通貨の導入というのは非常にいい刺激を与えると期待されておるわけです。  一つには、これはもう当然のことでございますけれども、今まで十一もあったばらばらな通貨が一つになるわけでございますから、従来のいわゆる為替リスク、あるいは通貨をいろいろとかえていくに伴う手数料とかその他のコストというものは、事実上全くなくなる。これはビジネスにとっては非常にプラスになることは間違いございません。  それから、もう一つやはり大事なのは、十一の国が同じ通貨になるということは、少なくとも金融の面では非常に大きな新しい市場が生まれるということでございます。この統一通貨に参加をいたします十一の国の経済規模というのは、人口はともかくといたしまして、GDPであるとか、あるいは株式の市場評価総額であるとか債券の発行額その他、金融市場を中心にいたしまして、大体米国の現在の経済規模に匹敵をする新しいマーケットが生まれたわけでございます。こういうふうに大きなマーケットが生まれるということは、当然、規模の利益を生みますから、これがヨーロッパにとってプラスであろうということは考えられるわけでございます。  それから三番目には、従来、いろいろな通貨があったために、同じものでも、ドイツでつくられたものとイタリアあるいはスペインでつくられたものとが、本当のところを言ってどっちがコストの点からいって安いのか、すぐれておるのかということが比較できなかったわけでありますけれども、これからは、すべての物とかサービスの値段が同一の尺度ではかられることになりますから、競争力の差というのが一目瞭然になってくるわけでございます。ヨーロッパの人はこれをユーロ競争、ユーロコンペティションなどと言っておりますけれども、この従来と比べて非常に激しい競争の到来ということが、恐らくヨーロッパの企業に非常にいい意味での刺激を与えるのではないか。その結果、ヨーロッパの経済というのは合理化が進み、生産性が高まるのじゃないかということが期待されておる。  それから四番目になりますけれども、先ほどもちょっと触れましたが、何しろ長い、五十年にわたる努力の末にこの歴史的な事業を成就した、そういう精神的な達成感と申しますか高揚感というのは、これはやはり経済その他の面にもいい影響を及ぼすだろうと思います。  そういう意味で、ユーロの導入というのは確かにプラスの面が多いと思います。ただ同時に、金融の面では統一ができたけれども、あと財政の面、特に税制とか社会保障制度とかその他財政の面では、依然として各国ごと政策が行われることになりますから、果たしてそういうアンバランスな状態というのがうまく機能するんだろうか。  ある国の景気が非常に悪くなって、失業がふえたというような場合に、その国は、金融政策はもう自分だけの金融政策金利を下げるというわけにいかなくなってしまいましたから、どうしても財政に頼る。そうすると、財政赤字がふえて、これが約束違反になってしまうというようなことで、果たしてヨーロッパ諸国の経済的な調和というのは保たれるかどうか、非常に不安だという見方ももちろんできるわけでございます。  政治の面では、御承知のとおり、ドイツを初めといたしまして、いわゆる中道左派の政権が次々と生まれております。こういう政権の物の考え方というものも当然経済政策に反映されることになりますので、果たして、ヨーロッパがこのユーロ誕生というものを非常に前向きな出来事としてうまく活用することができるかどうか。一方で非常に大きな期待があると同時に、かなりのリスクもあると言わざるを得ないのだろうと思います。  景気自体は、御承知のとおり、若干低下ぎみでございます。昨年はこのユーロ参加国全体で三%前後の成長率を確保したと思いますけれども、多分ことしはこれが二%前後に減速をするということで、これが失業問題等々にどういう影響を及ぼすのかというのが関心を持たれておるわけでございます。  それから、米国は、御承知のとおり相変わらず大変なブームを謳歌しておりまして、これは本当に信じがたいようなことが起こっていると言ってもいいと思います。  あれだけの大きな国が三・九%というような高度成長を遂げ、財政は黒字、インフレは二%、失業率は日本よりも低い四・三%というような状態が続いておるということは、本当に一体いつまでもつのかねという感じがするわけですけれども、少なくとも現状では、アメリカの人たちは、自分の国の経済並びに経済政策については大変自信を持っておるということは否定できない。  ただし、そうはいっても、心配がないのかといえばこれは確かにあるわけで、どう考えても今の株価はバブルじゃないのかということも言えます。それから、そもそもこれだけ株価が上がりますと、みんな何となく見かけの資産がふえたような気持ちになって、どんどん消費者金融をふやして、消費をふやしておる。現にもうアメリカの家計は貯蓄率ゼロということになっておりますし、これだけ国内で景気がいいと、当然のことながら国際収支は赤字になって、恐らく米国の経常収支のことしの赤字は二千億ドルを超えるんじゃないかということで、対外純債務も一兆ドル。  ですから、こういう国内の異常なくらいの繁栄と、世界的に見た場合の何となくじりじりと劣化している状況というのは、一体これからどうなるのか。理想的には、少しずつ、いわゆる軟着陸という格好で事態が収拾されることなんであります。アメリカ当局もそれを非常に強く希望し、そのための努力をしていると思います。それがうまくいくのかどうか、それは恐らくことしじゅうには結論が出る話だろうと思います。  そんなことで、世界景気は、よくなるか悪くなるかわからないというのが率直なところでございます。  しかし、そういうばらばらな話の中で、同時に、いろいろ世界全体にとっての共通な問題というのが最近起こってきておる。それは何かと申しますと、抽象的な言い方をしますと、競争と秩序という二つのことのバランスをこれから世界はどう考えていったらいいのだろうかという話ではないかと思います。  特に、先般のアジアの経済危機の中で我々が何を見たかと申しますと、例えばアジアの小さな経済が、経済は小さいなりに一生懸命開放をして、世界の中に溶け込んでいこうと努力をした。ところが、小さいけれども開放を目指していた、まさにそういう国が国際的な危機のあおりを受けてしまった。それから、それぞれの国の中では、もちろんそういうバブルによって非常に利益を得た人もいたわけですけれども、結局、最後のところで大きな被害をこうむったのは一般大衆であったわけですね。アジア全体を見ても、一昨年から昨年、昨年からことしにかけて、いわゆる貧困ライン以下の人口というのが何千万という規模でふえておるわけですけれども、言うなれば、世界的なレベルでの一つの社会正義というか、そういうものは一体どう考えるんだと。  それと関連して、よく言われておりますけれども、大変投機的な、かつ短期のお金が大量に世界じゅうを暴れ回って、そのことがいろいろな混乱を引き起こしているじゃないかとか、あるいはまた、その一環として、世界じゅうの金融システムがどこかで壊れてしまって、世界の金融システムというものが動かなくなってしまうんじゃないかというおそれがあるとか、あるいは、こういう事態に一体国際機関というのはどういうふうな役割を持って、どういう仕事をしたらいいのだろうかとか。  広い意味で申しまして、世界経済を動かす場合に、全く自由な無制限な競争ということでいくのか、それとも、何かそれに秩序を導入しようという考えを持たなきゃいけないのか、この問題がまさに世界全体の課題として起こってきておると思います。そういうことの解決に対して、これから日本がどうやって具体的に貢献をしていけるのかというのが、恐らくこれからの世界における日本の役割とか地位を決めていく非常に大きな一つの局面になるのではないかと思っております。  それから三番目に、こういう世界の情勢の中で、一体、日本経済というものは今どういう状態にあると思われておるのかということでございます。率直に申して、日本経済に対する国際的な懸念というのは、依然としてかなり深刻だろうと思います。  どういうことが懸念されているかといえば、やはり、日本景気回復というのは本当にこれから順調に進んでいくんだろうか、腰折れせぬだろうかという心配。それから、長年努力をしておりますが、日本金融の再生という問題も本当にうまく完成するんだろうか。さらには、日本財政というのは一体これから大丈夫なんだろうかという、残念なことですけれども、まだ日本経済については、さまざまな意味で海外から懸念があることは否定できないだろうと思います。この懸念がいろいろな形で日本にも伝わってくる、それが市場の、マーケットの心理にも影響を与える、それがまた実体にも影響を及ぼすということで、悪循環になっているわけでございます。  私は、日本は非常にやらなければならない課題が多いわけでございますけれども、今一番大事なことは、何か一つヒットを打たなければいかぬ、つまり点を稼がなければいかぬ。外から見ておって、やったなということがなければいけないのではないかなという気がいたします。  その意味で、何が一番実行可能であり、かつ役に立ち、かつ大事かということを考えますと、今、貝塚さん、深尾さん、お二人のお話にもございましたが、金融の問題、つまり金融の再生という仕事が終わる、それが成就するということが一番大事ではないか。  具体的に言えば、少なくとも日本の主要行は不良債権の問題から完全に決別をしたという安心感、確信が国内外のマーケットに生まれるというところが、恐らく今一番我々がその実現に近づいており、かつ最も有効で、しかも大事なことではないかと思っております。  この金融再生の問題、なかんずく不良債権処理の問題は、随分進展はいたしましたし、各般の努力によって法律的、機構的あるいは財政的な手当てができておるわけでございまして、その意味では六割とか七割ぐらいのところへ来たのかもしれません。しかし、まだ終わっていないことも事実でございますし、これからがいよいよ剣が峰というか、最後の一番難しいところへ差しかかっていることも事実でございます。  ですから、何しろこの問題をまず片づけて、国内外のマーケットに確固たる日本への信頼感を打ち立てるということが、少なくとも選択肢としては当面一番大事なことじゃないかなという感じが私はいたしておるわけでございます。  それから、最後にもう一つ申し上げたいのは、冒頭にもちょっと触れましたが、やはりこれからの日本経済の行方を考えますと、片っ方では米国が、御承知のとおり非常に元気がよろしい。この力というのは、着実に米国から中南米あるいは世界じゅうに広がっていっておるわけで、その意味では、米国経済圏というものの世界的な存在感というのは格段に強まっておる。それに対しましてヨーロッパでは、ユーロの導入を機にいたしまして、やはり何とかアメリカによる単一支配、単一世界経済支配に対抗しなきゃいけないという非常に強い意気込みがあるわけで、恐らくこれからしばらくの間は、この両雄の競争関係というのが随分厳しくなってくると思います。  その中にあって、日本がもし、埋没をしてしまうとかあるいはみそっかすになってしまうということを避けようとすれば、どうしても日本が、日本にとって非常に重要なアジアの地域というものの経済を助けていかなければいけない、日本も一緒にアジア経済の再生に努力しなければいけない、これはもう自明の理であろうと思います。その意味で、先ほど申しましたように、現在依然として大変苦難に悩んでおります東アジア諸国に何とか支援をするということは、日本の当面の経済政策にとって非常に重要である。  では、具体的に何をしたらいいのか。これは、割と答えははっきりしておると思います。  第一は、これは当たり前な話でございますけれども、何しろ日本経済回復しなきゃいけない。というのは、アジアの国が物とかサービスを日本に買ってもらえるようにしなければいけない、あるいは日本金融機関が再生をして、再び効率的に資金をアジアの国に回せるようにしなきゃいけない。要するに、日本経済の再生というのが当然、まず第一に重要な日本の貢献であろうと思います。  二番目は、やはりいろいろな形での援助とか協力ということが大事だろうと思います。  日本は従来もアジア諸国に対しては非常に貢献してまいりましたけれども、今アジアの諸国が一番大事に思っておる、必要に思っておることは、アジア諸国の銀行とか企業が大変不良債権を抱えておる、あるいは金繰りに困っておるというようなことでございますから、そういう企業を助けるためのさまざまな支援というもの、これは非常に大事だと思います。  それからもう一つは、そもそもこのアジアの危機が起こりました原因一つは、円の特にドルに対する相場というのが非常に大きく動いて、そのためにアジアの諸国が、自分たちの考えで、あるいは自分たちの努力で国際収支を安定させることができなかったことでございますから、今後日本としてアジアに貢献をしようと思いますと、どうしても円というものの安定化、それと同時に、円を国際化してアジアの人たちに大いに使ってもらうということでやることが大事であろうと思います。  以上、四点を申し上げまして、私の公述とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕
  8. 臼井日出男

    ○臼井委員長代理 ありがとうございました。     —————————————
  9. 臼井日出男

    ○臼井委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  10. 谷津義男

    ○谷津委員 三人の先生方には貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。また、御示唆いただきましたことに感謝を申し上げます。  そこで、まず貝塚先生にお聞きをするわけでありますけれども、先生が最後の方にちょっとお話しになったわけでありますけれども、今、長期金利が上昇しておるということで、これを抑えるために、日銀に国債の買いオペ等のいろいろな意見が出ておるわけであります。この辺につきまして、先生の御意見を少しお聞かせいただきたいと思います。
  11. 貝塚啓明

    貝塚公述人 ただいまの御質問は金融政策の運営に関することでございまして、実を申しますと、国債を大量に抱えた経済金融政策をどうするかというのは、以前もいろいろ問題になったことがあります。  古い話で恐縮ですが、第二次世界大戦後のアメリカでは、戦争中に物すごい国債が出されまして、大量の国債がありましたときに、ある時期までアメリカ中央銀行国債の価格を結果的に支持していた。ある時期に、千九百六十何年かちょっと正確には覚えていませんが、アコードというのがありまして、それ以降は、アメリカの連邦準備銀行金融政策は、金融政策の本来の物価の安定その他、それを第一義として、もちろん財政的な、国債管理と普通言いますが、そういう国債管理のことも考慮するけれども、第一義的にはそれが重要であるということで、大論争の結果そうなりました。  やや大きく見れば、日本現状も、国債が非常に大量に発行されておりまして、やはり金融政策の運営とその部分が、対立するというのもおかしいですが、場合によっては意見が食い違うという場面が出てきた、やや評論家的に申せばそういう状況であります。  私の意見は、基本的に申しますと、やはり金融政策手段をどういうふうに使うかは中央銀行が元来決めるべきことであります。現在の日本銀行が、ある意味政策的にかなり手詰まりというか、金融緩和がこれ以上なかなかうまくいかないということは日本銀行自身が憂慮されていることであります。したがって、日本銀行としては、どういう方法があるかということについて苦慮されていることはそのとおりであります。それで、今回の提案は、かなり具体的に金融政策について、要するに日本銀行貸し出しに関する具体的な、ある意味では極めて技術的なんですが、それを政府の側から、一応これはどうかという球を投げたということであります。  今回の事態は、どうも私は、非常に政治問題化しちゃったのはぐあいが悪い。なぜかというと、やはり日本銀行独立性を持つということがあって、日本銀行政策審議会ですか、それに先立って球を投げたというところで別の反作用があったと思いますが、私は、基本的には、日本銀行政策委員会は、現在の金融政策の運営の中で、やれることは何ができるかということの中で自分で決定されるべきだというのが元来の原則論であります。  私自身、では、賛成するか反対するかということを問われるといたしますと、私自身は、現在の段階において日本銀行がそういう形で政策を、やり方を少し変えるというふうに、まあお決めになることですが、私はやはり消極論であって、現在、やり方を変えないでできる限りやって、もしそれでもうまくいかないとすれば、その中の選択肢で考えられるべきだというのが私の意見でございます。
  12. 谷津義男

    ○谷津委員 深尾先生もこれに触れられて、買いオペの方は反対だというふうな意味のお話でございましたね。そういうわけでもないんですか。では、いま少し御意見を。
  13. 深尾光洋

    深尾公述人 私は、日銀による国債引き受けは反対ですけれども、日銀が買いオペをふやすことによって準備預金を供給する、さらに金融の量的緩和を行うということは、私の資料にもありますように、賛成でございます。  ただし、引き受けと買いオペの違いは、買いオペはいつでも売れる。つまり、必要であればすぐに売れる、こういう態勢で買いを進めるべきだというふうに思っております。
  14. 谷津義男

    ○谷津委員 深尾先生、今でも四千億ぐらいは買いオペをやっていますね。これをもっと幅を広げろということでしょうか。
  15. 深尾光洋

    深尾公述人 私の提案は、日銀預け金、つまり、金融機関が日銀に預けている当座預金、当座にすぐ使えるお金ですが、これの供給を当面どんどんふやしていってはどうか、こういうことです。  トータルのオペがどうなるかというのは、日銀のバランスシート全体がどうなるかということとも関係しております。日銀のバランスシートは今異常に膨らんだ状態にありまして、FBを二十兆円ぐらい引き受けていながら、その片方で、売り出し手形がこれまた十七、八兆円あって、しかも、預金保険機構向けの相当多額の貸し出しがある。このあたりで、FBが減っていくということに対して、多分売り出し手形も減っていくだろう、また預金保険機構向けの貸し出しも減っていくだろう。この全体をどうやって調整するかというのは、さっき貝塚先生がおっしゃったように、やや技術的な問題だと思います。  ただ、準備預金をふやすときに、オペの対象として、国債をその一部に加えるということは考えられると思います。現在は、日銀は、銀行券の発行の伸びに見合った分ぐらい、成長通貨部分ぐらいを買いオペする、これは内部的なやり方の基準といいますか、こういった形でオペをやっていると理解しておりますけれども、私の提案では、それに加えて準備預金をどんどんふやすということを考えておりまして、その一部の対象、それに見合う対象として国債を一部に含めるということは考えられると思います。
  16. 谷津義男

    ○谷津委員 貝塚先生、もう一度その件についてお尋ねしたいのですが、十二日に日銀がこれをどういうふうにするか決める会議があるだろうというふうに思うのですけれども、このことを市場も非常に注目しているのではなかろうかなというふうに思うのです。  ただ、安易な妥協で国債をさらに、大量の発行というのでしょうか、そういうことになると、日銀の財務も悪化するという方向にもなりかねないというふうに私は思うのです。そうなると、財政金融政策の信頼が失われるのではなかろうかということで、結果的には長期金利が上昇してくるのではなかろうかという懸念があるというふうに私は思うのですけれども、その辺のところを先生はどういうふうにお考えでしょうか。
  17. 貝塚啓明

    貝塚公述人 現在、長期国債が非常に大量に発行されて、ますます大量に発行されていくということは、そのとおりでありまして、その見通しがとりあえず非常に強い。昨年末、国債金利がかなり上がりました。これは、一つにはそういう要因があると思います。  ただ、それはそのとおりでありますが、需給関係において、恐らく、わかりやすく申せば、長期国債を買ってくれるところは従来よりも少し量が大きいということと、例えば生保さんなんかが従来はかなり買っておられたのが、なかなか買いにくくなったということもあります。そういう事情がありますが、とにかく、そういうところで国債長期金利が上がりました。  これは、やはりマーケットでそういうふうになったと言わざるを得ないのですね。それに対していろいろ介入して無理をするということは、私は、望ましくない、やはり自然体でいくべきであると。  ですから、今回の話も、日本銀行の決定ということと政府との関係というやや複雑な問題がありますが、基本的には、先ほど私が申し上げましたように、日本銀行政策委員会は、平たく言えば、ちょっと私が評論家的に申すとあれかもしれませんが、余り感情問題にとらわれずに冷静に議論していただきたい。要するに、金融政策の選択肢として、日本銀行は手詰まりの状況にあって、その中でどうすべきかということを冷静に議論していただきたい。その結果として結論を出されるということが重要だということを申し上げたいと思います。
  18. 谷津義男

    ○谷津委員 もう一つ貝塚先生、申しわけないのですがお聞きしたいのです。  先ほど深尾先生もお触れになっておったのですが、昨年の十月に議員立法で金融二法を通過させました。今その執行に当たっているところでありますが、先生がお考えになりまして、この金融二法の執行に当たってはどんなふうな状況にあると評価しておられるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。先生がお触れにならなかったものですから、ちょっとお聞きをしたい。
  19. 貝塚啓明

    貝塚公述人 私は、先ほど行天さんが言われましたことに基本的に同じ意見でございます。  これも随分長い間、住専問題以降おくれにおくれて非常にそのツケが大きくなったというのが現状でありまして、しかし今の段階で、おくれましたけれども、やはり日本金融の、経営破綻があったときの処理の仕方についてはっきりした道筋がついて、その部分については制度として大丈夫であるということではないかと思います。ただし、今後ペイオフが発生したときどうするかという次の問題はありますが、とりあえず金融機関経営破綻について適切な処理が可能になって、しかもそれができる体制に移ったということは間違いないので、その点で評価いたしたいと思います。  ですから、わかりやすく言えば、金融界は、行天さんも言われましたけれども、諸外国を含めて、日本はそういう金融の不安定性に関してはシステムとして一応きちっとしたものを整えたという理解で、そうだと思っております。
  20. 谷津義男

    ○谷津委員 貝塚先生、もう一度申しわけないのですけれども、先ほどから金融問題についてのいろいろな深い御見識をお聞かせいただいたわけでありますが、貸し渋りのお話も先ほどちょっと出ました。  中小企業は、いわゆる証券市場からの金の調達というのはできない、結局銀行だけしか頼れない。その銀行が貸し渋りというのを起こして、中小企業は大変困った。優良な中小企業もそういう面では非常に企業経営を圧迫されたというふうな面があるわけでありますが、今、何かまた自己査定をするようにやられておりまして、いわゆる信用金庫なんかが今そういう査定の中に入っていますね。  ところが、信用金庫なんかが貸している相手というのは、もう零細というか、本当に中小までにいかないところもいっぱいあるわけですね。そういうところは、今の状況ですと、ほとんど赤字と言ってはなんですが、かなりのところが赤字であるはずなんです。それを自己査定しまして、そうすると、赤字が二年続くとまたランクの問題が出てくるわけなんですけれども、こういうことであっては、信用金庫あるいは信用組合、そういうところの小さな金融機関というのは非常な危機的な状況に追い込まれるというふうに思うのです。  この辺の問題については、先生はどういうふうにお考えになっていますか。自己資本比率をどうしても確保するために非常にそういった面で圧迫をされている面がまだあるかと思うのですけれども、その辺どうでしょう。
  21. 貝塚啓明

    貝塚公述人 今の点は非常に難しい問題といいますか、現在の日本金融機関健全化を進めようとすれば貸し渋りが発生する、それはある程度はやむを得ない側面がありまして、そこをどうするかということ。  金融機関自身としてはやはり貸しにくいということは、そのとおりであります。現在は、多分御存じだと思いますが、いろいろな形で信用保証協会その他が信用保証を行ってその分野金融を助けているということと、それから、やはり政府金融機関といいますか、開発銀行、中小公庫、国民金融公庫、そういうところが積極的にそこへ貸す、そのやり方で当座をしのぐ以外にはないんじゃないか。ただし、信用保証協会も、最後は地方公共団体にツケが回ってくる可能性がありますので、そこのところは十分承知の上でいろいろ慎重に対応されるのが望ましい。  ということで、貸し渋りというのは、日本の現在の不況の中で民間金融機関がそういう方式をとるのはやむを得ないが、政策的にはできる限り緩和すべき、現在もある程度緩和する方策を持っておりますけれども、そうしてしのいでいく以外にないということではないかと思います。
  22. 谷津義男

    ○谷津委員 行天先生にお尋ねをするわけでありますが、先生は国際金融の権威者でありまして、先ほど御見識のほどを承ったわけでありますけれども、その前に、先生予算案には賛成だ、これは貝塚先生も今の危機的状況の中では賛成だというふうなお話でございました。  そこで、実は、先ほどユーロのお話が出たわけでありますけれども、このユーロが出現したことによりまして、ドルが相対通貨になったというふうに私も思うわけでありますけれども、このユーロとドルの間に挟まれて、先ほども先生ちょっとおっしゃっていましたが、円が沈没するようなことがあってはならぬというふうに思うのです。  この辺のところに私は多少疑念を持っておるのですが、特に東アジア等のことを考えれば、先ほど先生がおっしゃいました、日本経済の再生、回復のため、あるいは援助や協力が大事だ、そしてもう一つ、円がドルに対して大きく動いたということが大きな影響を与えているんだということなんですが、このユーロとドルの間に挟まれる円、これにつきまして、先生のお考えをひとつお聞かせいただければありがたいと思うのです。
  23. 行天豊雄

    行天公述人 ユーロの将来は、先ほども申し上げましたが、まだ非常に期待と不安が交錯をしているというのが実情だろうと思います。  しかしながら、やはり我々といたしますと、ユーロがどうなろうと、それが円に非常に大きな影響をもたらすことは間違いないわけでございますので、対応を図っておかなければならないと思います。  もし、ユーロが非常に安定して、かつ国際的にも広く使われるような通貨になりますと、これは現在のドルだけという体制が、ドルとユーロという二極体制ということになっていくと思います。こうなってまいりますと、恐らくドル圏、ユーロ圏以外の人たちは、どちらかをやはり選ばなければいかぬのかなということになって、アジアの諸国も、早晩ドルかユーロか、どちらかという選択を迫られていくことになる。それは、逆に言えば、円というものに対する需要が減ってしまうということになりかねないだろうと思います。  それを防ぐためには、やはり円というものが、少なくともアジアの諸国にとって一番頼りになる、一番使いやすい、持っていても、あるいは貿易その他の決済に使うにしても、一番使いやすい安定した通貨だという安心感を与えることが大事でございます。  ですから、見通しといたしまして、私は決して楽観はしておりません。ユーロが立派になろうと、あるいはそうでなかろうと、円というものがこれから世界の中で生き残っていくためには、日本が相当努力をしなければいけないということはもう御指摘のとおりだろうと思います。
  24. 谷津義男

    ○谷津委員 もう時間がありませんので、一言深尾先生にお聞きしたいのですが、先ほど先生、いわゆる商品券、地域振興券について、そう効果がないのじゃないかというふうなことをおっしゃったわけであります。  経企庁長官は、先ほどの予算委員会の中では、〇・五%ぐらい引き上げ効果があるんだ、これは単に地域振興券そのものだけではなくて、いろいろなイベントがそれによって行われるので、そういった面の効果もあるんだというようなこともおっしゃっておったわけですが、先生、先ほどおっしゃいましたけれども、なぜ効果がないんだというふうに断定しているのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  25. 深尾光洋

    深尾公述人 資料にも書いておりますように、所得税減税よりは多分効果はあるだろうと思っておりまして、商品券が来ればお歳暮、お中元でもらっても大体使うわけですから、そういう意味では消費刺激の効果はあるだろう。  ただし、コストとして、配付に一千億近くかかるというのはやはり相当コスト的に高い。あれだけの枚数のものを、印刷工場に地方自治体の人が監視に行って、枚数を調べて、それを銀行経由か何かで全部回収するわけですが、この人手と手間というのはやはり相当なものがありまして、それを使うのであれば、もうちょっとうまいやり方があるのではないかというふうに思っております。
  26. 谷津義男

    ○谷津委員 終わります。ありがとうございました。
  27. 臼井日出男

    ○臼井委員長代理 次に、西村眞悟君。
  28. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党の西村でございます。  十分間ですので、本当に大まかなことを御質問させていただきます。  先生方三人からは、財政金融について御専門的な立場からお話をいただきました。また、行天先生からは、国家戦略にも触れられたお話をいただきました。  まず第一にお聞きしたいことは、国民と国のかかわり合いという観点から、私が常日ごろ疑問に思っていることが一点ございます。国民は国といかにかかわるのか。今、地方分権それから規制緩和が言われております。この根本の哲学は、やはり国民を信ずるということなのだと思うのですね。その国民を信ずるという一点で、私は、税制について具体的なことを、先生方の御意見をお聞かせいただきたい。  相続税というものは、人間が死んだことによって税金を取る原因をつくる。なぜ人間が死ぬことによって国家に税金を納めねばならないのか。国民を信じるという観点からするならば、相続税のない江戸時代に非常な日本の文化が興っておった。それは、いわゆるタニマチという言葉ができましたように、いろいろなことで興りましたでしょう。しかし、この国家は、国民を信じていないのではないか。その象徴的な税制が相続税ではないか。  仮に、人が死んだことによって税金を取る原因が生まれるならば、死ぬためには生まれねばならない、したがって生まれたことによって参加税を取ることもできるではないか、このように思っております。国民を信ずる、自分が生きていて稼いだときには税金を払い、消費税を払う、しかし、自分が生涯の働きで残したものは彼の自由な選択にゆだねるべきであろう、このように思うのです。  そしてまたもう一つ、相続税があることによって企業が起こらない。  例えば、松下幸之助氏が企業を始めたときには、やはり自分の資産の上で企業を始めた。今の青年が大学を卒業して企業を始めるときには、父親の土地の上であれ、自分が生まれたところの土地の上であれ、やはりそこで始めるわけですね。しかし、相続税というものがある限り、それは不幸にして自分以外の死によって挫折する可能性が大いにあるわけです。これは象徴的なことですけれども、この一点を取っ払えば社会は明るくなるんだと私は思います。  これは金持ち優遇とかいろいろなことがございましょうけれども、先生方お三人それぞれ、相続税は廃止すべきなのか、それとも今のままでいいのか、その理由をも含めた御意見をお聞かせいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
  29. 貝塚啓明

    貝塚公述人 ただいまの御質問は、税制の中で、普通、所得税は、法人税もそうですが非常にウエートが高い、相続税というのは税収の中でごくわずかであります。にもかかわらず、なぜ現在相続税があるのかと。  御存じのように、所得税も、垂直的公平といいますか、やはり経済力の高い人には高い負担をという原則を持っております。相続税の場合はどういう問題があるかというと、資産が次の世代に継承されるわけですが、そのときに、平たく言えば富の不平等ということでありまして、これは実際、最終的には日本皆さんがどういうふうにお考えになるかです。  例えばイギリスとかアメリカは、相続税は、本当を言うとまともにはかかっておりません。私が昔、文献として読んだのは、ロックフェラーとかメロンとかそういう財閥が今から三世代前にあった資産がどれだけ減ったかといったら、多分三分の一ぐらいですね。結構すごい、そのまま維持されています。イギリスでも多分そうだと思います。  日本は、簡単に言えば、日本皆さんはそういうことはよろしくないというふうにお考えになっているというのが現在の相続税のあり方で、ただ、一言だけ申し上げますと、相続税は本当に、相続された方のたしか一〇%、死亡されて相続財産が残された方のたしか一〇%にも満たないと思います。ですから、そういう意味で、非常に広くの人が関係しているわけではありませんが、かなり富を残した人に関係している。  私は、やはり日本の社会で、現在依然として富が世代を超えてどんどん集中していくことに関しては日本皆さんは賛成されないのではないかという意味で、現在の相続税はそれなりに意味があるというふうに考えております。
  30. 深尾光洋

    深尾公述人 大変大きな問題ですけれども、私は、相続税の累進性を大幅に緩めて、それにかわる税にかえるということは、考えられないわけではないと思います。  一つのやり方としては、所得税と、それから相続税の方を大幅に緩めて、それに対して累進消費税にする。つまり、お金をもうけたから税金を課すのではなくて、使ったからと。使ったからというのは、消費に使ったからと。投資に使うのではなくて消費に使ったからというところに対して累進消費税にするということは、申告することも可能だと思います。つまり、所得金額に対してことし幾らためたかという貯蓄額を全部申告して、その分を除いた部分について税金を課す。これにすれば、現在ある消費税をそれの源泉徴収にして、さらにそれに上回る部分について累進的に消費税を課すということは考えられると思います。  こうした場合の問題点としては、自分で住んでいる住宅についてどう考えるかです。  住宅を自分でほかに賃貸すれば、その分は所得になり、税金が課されてしまいますけれども、自家で住んでいますと、税金は固定資産税だけです。そうなりますと、その自家の部分について、自分の持っている家についての税金というのが今相当甘い形になっておりますので、固定資産税を引き上げる必要があるだろうと思います。ただ、固定資産税、特に自分の家に対する固定資産税を引き上げますと、老後になると払えないという問題が起きますから、これについては例えば金利をつけて、利子税をつけて、死ぬときまで延納を認める。これが、ある意味では相続税にかわるものになる、一部の相続税にかわる可能性はあると思います。  ただ、こういった形で支出と税体系全体を考え直すということは考えられないわけではないと思いますけれども、そのためには、公平性を確保する、あるいは税収を確保するという面で、全体を見直す必要があるだろうというふうに思います。
  31. 行天豊雄

    行天公述人 税が、資産、所得、消費の三つに対して課されるという大原則から考えまして、相続税だけを廃止するということは、私はちょっと、社会的な公正の観点からいっても好ましくないのではないかと思います。  しかし、先生御指摘のように、確かに、相続税のためにせっかくの価値のある資産がさまざまな形で後世につなげられないという問題があることも事実でございますので、私は、むしろ相続前に、その財産をより公共的かつ後世代に役立つような形に使うような誘導を税制の面でもできないのかということを考えるべきではないかという気がいたします。欧米の金持ちが非常に大きな社会的な貢献をして、それが、まさにその人の直接の家族というよりは一般の役に立っていることは非常に例が多いわけでございまして、やはりそういうことを誘導するような形に相続税そのものも考えていくということは必要だろうと思います。
  32. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 一分ほど残っておりますので、行天先生、アジアに対する関係に触れられましたので一点だけ。  今、我が国は毎年ODA援助をやっておりますが、この援助、私から見れば、非常に戦略性に欠けると思っています。詳しいことは時間がないので申し上げませんが、どうでしょうか、このODA援助、行天先生が言われた、アジアを援助するということに今すぐ役立つ方向になっているのか、なっていないのか、工夫すべきは何なのかということについて、お教えいただきたいと思います。
  33. 行天豊雄

    行天公述人 公的な援助は、率直に申しまして、二つ大きな柱があると思います。  一つは、人道的と申しますか、まさに国内と同じように世界的な規模でも弱者、恵まれない人たちを救うために、これはもう理屈なしにお金を出さなきゃいけない、これは一本の柱だろうと思います。それからもう一本の柱は、広い意味での出す方の国益というものを考えてやらなきゃいけないということで、従来の日本の援助は、この二本の柱というものを非常に意識しておられたと思いますけれども、具体的な効果という点につきますと、必ずしも所期の、期待どおりになっていないという面もあったかと思います。  ですから、今後この援助の問題というのは、特にアジアについては一件一件十分な検討を加えながらやっていく必要があるだろうと思います。
  34. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございました。
  35. 臼井日出男

    ○臼井委員長代理 次に、生方幸夫君。
  36. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫と申します。  本日は、三先生方には大変お忙しいところ貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  今年度予算につきましてですが、今年度予算にとって最も重要なことは、景気回復させることができるかどうかというのがポイントであろうと思っております。  政府は、この予算を通すことによって今年度〇・五%の成長が可能であるというふうに申しております。実際、去年の緊急経済対策からことしの予算まで含めて百兆円以上のお金が投ぜられるということが明らかになっておりまして、本来であれば、これだけ大きな額が投ぜられるということが明らかになれば、景気の先行きに、明るい、まさに堺屋経済企画庁長官が申したような胎動というのが私たちにも感じられていいはずなんですが、残念ながら、ことし一月、二月に入って、私は、むしろ逆に景気そのものが冷え込んでいるんではないかというような気がしてならないわけでございます。  今、三先生方のうちのお二人の先生は、今年度予算でいいというふうなお話を述べられました。いいということは、当然、今年度予算が目指しているところの〇・五%成長というのが可能であるというふうにお考えになっていると思うんですが、私、最近、町に出ますと、二月に入って特に、人の流れも非常に少なくなってきている、それから店に行っても人の数が少ないというようなことで、もちろんニッパチという影響もあるんでしょうけれども、世論というんですか、世間全体がこの予算に対して、これでは景気がよくならないんじゃないかというふうに判断をしているように思えてならないわけでございますね。株価を見てもそうでございますし、金利が上昇しつつあるということも、金利上昇がこれ以上長く続けば、せっかく住宅減税を実施したとしてもその効果を相殺してしまうことは明らかでございます。  そこで、まず貝塚公述人にお伺いしたいんですが、本年度予算で本当に〇・五%成長が可能だと今の時点でお考えになっているのかどうかから、お考えをお伺いさせてください。
  37. 貝塚啓明

    貝塚公述人 予算案について、細かいことを私はほとんどここでは申しませんで、ただ、非常に簡単に言えば、全体として今年度の予算案でいいんじゃないかというふうに申し上げました。  ただし、私は、景気予算関係については必ずしも楽観視しておりません。私が申し上げたことは、現在の日本の大きな不況は、単純に言えば、やはり一九三〇年代の大恐慌のときと似ておりまして、財政とか金融の短期的な政策だけで経済をうまく回復に誘導できるかというと、それは私は正直言って無理だと思っておるんです。  どういう点が無理かというのは、先ほど来申しましたように、結局、日本消費者が今どう考えているかというと、先行きが不安である、日本経営者も同じく。ですから、要するに大きな仕事を今やることは大変危険ですと。大きな仕事というのは、家計では、やはり家を建てたり、自動車も結構あれですね、そういうことはしばらくやらない。それから企業の方も、設備投資とか、そういうリスクの大きい仕事はやりませんというのが多分現在の状況じゃないかと思います。  処方せんは、普通の財政金融政策では、それは多少効果がありますということはそうなんですが、先ほど来私が申し上げておりますのは、二十一世紀に入ったある時期、特にしばらくたったところで、例えば社会保障制度というのは一体どうなるんですかと。政府は、ここまできちっとそれを保証しますと。レベルは少し下がります、それは皆さん、そうお考えになっていることと思います。  むしろ、問題は、ここまでは大丈夫だというところをあらゆる局面について、しかもパッケージとして、介護保険年金それから医療保険、あるいはサービスですね、そういうところについて、これは地方公共団体も入っていまして結構難しいんですが、やはりはっきりしたある種の公約といいますか、これは大丈夫ですということを政府が、また当然国会として、そういうことを国民の皆さんに、ある意味で大丈夫ですよということを言うのが一番重要です。財政金融政策をちょっと変えてすぐよくなるというほど話は簡単でないというのが私の意見でございます。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 生方幸夫

    ○生方委員 行天公述人にお伺いしたいんですが、十五カ月予算ということで、切れ目のない公共事業を執行することによって景気を底支えしようというような意図で今度の予算案は組まれておるわけですけれども、公共事業は大体前倒し前倒しで実施をしていくわけでございますから、ことしの後半になりますと、公共事業が途切れてしまうんではないか。それまでに民間の需要に火がついてくれればうまく景気回復に向かっていくんでしょうけれども、仮に途切れてしまうと、今度はもう打つ手はないわけですね。  去年のように緊急経済対策で大型の補正予算を組む余地があるんならばまだいいんですが、もしこれが、ことしの中盤になっても景気回復の火がつかないということになると、打つ手がないということを見越すと、さらにまた景気が後退してしまうおそれがあるんではないか。そういう危惧を私はしているんですけれども、先生、その辺、どのようにお考えになっていますでしょうか。
  39. 行天豊雄

    行天公述人 最悪のシナリオとしては、まさに先生のおっしゃったとおりだろうと思います。ただ、仮に本予算での公共事業が十分でないということが年央に明らかになった場合に、財政の面からもう全く打つ手がないというふうには思っておりません。これはその時点での情勢にもよりますけれども、昨年同様に、やはり年度中央の情勢によっては、補正を含めた追加ということは当然考えられてしかるべきだし、また考える余地はあるんだろうと思っております。  しかし、いずれにしても、何しろ当面の重要なことというのは、この予算の着実、早期の執行ということに尽きると思っております。
  40. 生方幸夫

    ○生方委員 深尾先生にお伺いしたいんですが、先生は今年度予算問題点というのを指摘をなさっておられます。  私も、公共事業がかつてのように経済波及効果が大きいときであれば、これだけの額の公共事業をやるわけですから、当然それなりの効果が出てくるというふうに思うんですが、残念ながら、今年度予算を見てみますと、公共投資の各省庁割りの割合とか事業別の割合というのを見ても、ほとんど前年と変わらない、その額だけが大きくなっているということでございまして、公共投資経済波及効果というのは非常に小さい。だから、予算案全体の構成そのものを見直していかなければいけないというふうに私は考えておるんです。  先生はその処方せんとして、幾つか、二点ほどお教えいただいたんですが、予算案全体の組み立てをこう変えたらいいんではないかというようなアイデアがございましたら、ぜひ教えていただきたいんです。
  41. 深尾光洋

    深尾公述人 私自身は、公共事業については、やはり効率性をきちっとはかっていく、実際に計算して、それを公表していくというプロセスで効率を見直すべきだと思います。  これについては、かなりの程度、各省庁でやられているんだろうと思いますけれども、それが内部資料にとどまっているのではないかというふうに疑っております。こういうふうに考えますと、波及効果の大きさというのを、なるべく中立的なところがきちっと評価して、それをまた事後的に検証していく、そういうシステムとしてつくる。  つまり、一年ごとあるいは半年ごとで、慌てて補正予算のときにとにかくプロジェクトを集めてくるというやり方をしますと、どうしてもむだなものができてしまいがちになると思います。そういう意味では、なるべく早い時期に公共事業効果を個別に評価して、それをまた事後的にチェックして、それを公表していくといった体制で、内部の制度としてそういう形の見直しをシステム化すべきだというふうに思います。  具体的には、おっしゃったように、ほとんど船が来ない漁港とか、もう新聞、雑誌等にいろいろ取り上げられているとおりだと思いますが、それについては、例えば都市部であれば、共同溝なんかをつくって毎年掘り返すというのをやめて、将来に残るようなものにしていくといったことが大事なのではないかというふうに思います。
  42. 生方幸夫

    ○生方委員 行天先生にお伺いしたいのですが、現在、長期金利がじりじりと上がっているという状況でございます。先ほど貝塚先生もおっしゃいましたように、個人消費住宅投資がどれぐらいふえていくのかということが景気回復一つの目安になるということから考えますと、金利がこれ以上上昇、どこまで上昇していくのかわかりませんが、上昇が続くと、住宅投資にも悪い影響が出てくるのではないかというふうにも考えられます。  ただ、この金利が、去年が低過ぎたのであって、今ぐらいの水準であれば適当ではないかというような意見を述べる方もいらっしゃるわけで、現在の長期金利の水準は妥当であるのか、それとも高過ぎるのか、危険水準なのか。その辺、先生はどのように御判断なさっているか、お伺いさせていただきたいと思います。
  43. 行天豊雄

    行天公述人 昨年のように、〇・五%というような水準は、これはちょっと異常であったろうと私は思っております。その意味で、長期金利の望ましい水準がどのくらいであるべきかというのは難しい話でございますけれども、今、御承知のとおり、インフレはほとんどゼロ、むしろマイナスでございますから、確かに名目の長期金利というのは、実勢金利よりは低く出ておるわけでございますね。その意味で、二%前後の水準がどうかということでございますけれども、私は、どうも直観的な答えで申しわけないのでございますけれども、この水準が非常に高過ぎるとか、あるいは非常に低過ぎるということではないと思っております。  国債がたくさん出るということは、これはもう実は前からわかっていた話でございまして、それではどうして去年の暮れから急に長期金利が上がったのかといえば、やはりこれは、従来の低過ぎた水準の訂正という面と、もう一つは、残念なことですけれども日本財政状態について何か急にマーケットでの信頼感が薄れたということがあるわけで、私は、むしろそちらの方をできるだけ早く払拭するということが大事だろうと思っております。
  44. 生方幸夫

    ○生方委員 貝塚先生にも同じ質問なんですが、今の長期金利の水準について、先生はどのように分析をなさっておりますでしょうか。
  45. 貝塚啓明

    貝塚公述人 金利の水準が、どの水準が妥当かということの判断は非常に難しい話でありますが、今、行天さんがおっしゃいましたけれども、確かに去年の後半の金利の水準というのは、多少無理して下げたというところがありまして、やや低過ぎたというところで、現在はある程度それを戻している状況で、今の状況が高過ぎるというふうには私自身は思っておりません。  そもそも、やはり現在のマーケットで皆さんが一体どう思っているのかということが反映されて、あとは、むしろ政策でやるべきことは、日本財政赤字を一体どういうふうに将来うまく減らしていくか。具体的にこういうふうにやるんだとか、そういう日本の今後の政策に対する、具体的な日本経済回復のシナリオですか、そういうものがはっきりすれば、おのずから訂正されていくというものではないかというふうに思っています。
  46. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほど行天先生は、景気回復が思わしくなければ、中盤にもまたさらに財政を出動する余地があるのではないかというふうにおっしゃいました。  そこで、貝塚先生にお伺いしたいのですが、今、ことし、借換債を含めると六十数兆円の国債を発行するということになっておりまして、仮に、ことしの中盤に、景気がよくならないということでさらに国債を発行しての景気刺激策というのを立てるとすると、そちらの方が効果があるのか。逆に、財政赤字を膨らませてしまう方の逆効果の方が大きいのではないかというふうに私は考えるのですが、その辺、仮の話なんですけれども、先生は、中盤以降の景気刺激策というのをさらに赤字国債を発行してもやるべきなのか、そうではなくて、そこで何かほかの手があるというふうにお考えになるのか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  47. 貝塚啓明

    貝塚公述人 私は、公述の一番最初に申し上げたのですが、日本財政政策に期待し過ぎるというのが私の意見です。減税をやるかやらないか、公共投資をどの程度ふやすか、それに余り神経質に過ぎる。  というのは、エコノミストの議論は、確かにある時期まで、ケインズ的な政策公共事業をやったり減税をやったりするのは景気政策としては一番重要ですというのでありました。しかし、現在のマクロエコノミックスの定説というのか、ある意味で教科書なんかに書いてある話もそうなんですが、やはり財政政策は基本的に限界がある、景気の調整には限界があるということは、恐らく皆さんそう考えている。むしろ、先ほど私が申しましたように、金融政策をうまくマネージする方が重要であるというのが私の意見であります。  したがいまして、財政でいろいろ微調整でやっていくということについては、私は余りそれを、考えなくてもいいということになるとあれですが、政治の問題としてやはり多少考慮しなくちゃいかぬということはわかりますけれども、その辺について、そこに焦点を合わせて、幾らふやしたか余りふえなかったかというところについて余り神経質に議論をすることは、経済全体のメカニズムの中では実を言うとそれほど重要ではないことになってきているということであります。  したがって、むしろ問題は、先ほど私が申し上げましたように、長い目で見てこんなに財政赤字がふえて、一体——まあこれはまだ本当は考える時期ではないのかもしれませんが、本当は経済が底を打ってから回復しているときに、一体今の財政赤字をどういう形でうまくコントロールして少しずつ減らしていくかというところをきちっと議論して、こういうふうにするということを内外に示すことがやはり重要で、その信頼性が一番重要じゃないかというのが私の意見でございます。
  48. 生方幸夫

    ○生方委員 アメリカ財政赤字も、十五年ぐらい前ですか、非常にひどい状態で、あれが昨年度、単年度で黒字になるなどということは十数年前には考えられなかったことで、その裏には、当然、景気がよくなって税収がふえたということがあるわけですから、とにかく、景気回復させて税収をふやしていくということが非常に大事だと思うわけでございます。  ただ、日本の場合は、構造転換、構造転換というふうにここ数年ずっと言っておるのですけれども、残念ながら、その構造改革というか構造転換というのか、それがなかなか見えてこないのですね。それは、今先生おっしゃいましたように国がやれることに限りがあるのは確かなんですけれども、国がやることに対して民間がきちんとこたえるような、いわばその仕組みというのができていないというか、構造改革そのものがうまくいっていないというような気がしてならないのです。  そこで、深尾先生にお伺いしたいのですが、確かに経済構造を変えなければいけない。どこをどういうふうにすればスムーズに民間の経済構造が変わって、民間主導型の景気回復というのが達成できるのか、先生のアイデアをお伺いさせていただきたいと思います。
  49. 深尾光洋

    深尾公述人 先ほども申し上げましたように、現在の景気の落ち込みというのは、やはり金融の問題、つまり、銀行部門がだめになって、貸し出し回収競争といいますか、あるいは貸し渋りをやっている、これが最大の問題だと思います。例えば、企業サイドから見た現在の金融機関貸し出し態度というのは、過去の金融引き締め並みの状態がずっと続いておりまして、実質的に企業金融を引き締めておきながら財政を吹かしても、それはそんなにはきかない、これが最大の問題だと思います。  それから、貸し渋りは、私は三つの要因が背景にあると思います。  一つは自己資本の不足。つまり、銀行部門の自己資本がないのでBIS規制が守れない、あるいは債務超過になってしまう、これが資本の不足です。キャピタルクランチとも呼ばれていますが、資本が足りない部分。それから、二つ目は流動性の部分です。これは、金融機関がみずからの資金繰りに安心できない。預金がひょっとしたら流出するかもしれない、そのためには手元に流動性をためておかなければいけない。貸し出しをやる場合でも、なるべく短期で貸して長期は貸したくない、あるいは一番安全なところにしか貸したくない。三つ目は信用リスク、貸出先が破綻するリスクです。この三つの要因があって貸し渋りが起こっている。  このうちの二つについては、政策で対応できます。三つ目の要因は、景気回復させないとだめです。そうしますと、資本の注入、それから銀行の持っている手元現金をうんとふやしてやる、この量的緩和、これで初めの二つに対応して、三つ目の方は、短期的に景気を何とかよくする。  それで、おっしゃったように、公共事業効果が出るのになかなか時間がかかりますし、金融が引き締まっている状態ではなかなかききにくい。そうすると、家計部門に頑張ってもらわなければいけない。家計の貯蓄率を下げて、安心感を持たせて貯蓄率を下げ、消費引き上げる、あるいは住宅を出す、これである程度景気をよくして、その間に貸し渋りの三つの要因の二つを解消する、こういう総合的な対策が必要だと思っております。
  50. 生方幸夫

    ○生方委員 深尾先生の、どうしたらいいのかというところで、住宅投資減税をやめるとか、いわばあめとむちのむちの方で景気を刺激しようというのは、非常におもしろい考え方だとは思うんですけれども、なかなか現実には、これだけ湿ったところにむちを振るうと、かえって萎縮してしまうんではないかというような気がするんです。  それともう一点、ペイオフの実施に当たって、例えば一千万円以下でも全額を返す必要がないんではないか、あるいは一千万円以上は全部返さないということじゃない、条件の緩和というんですか、そういうのがあってもいいんではないかというような先ほどのお話でした。そうなりますと、結局ペイオフを、完全実施ということじゃなくて、ある程度年限を延ばしてしまうようなことになって、いわばペイオフを実施することによって経営基盤の弱い銀行市場から去っていく、預金者銀行をきちんと選ぶことによって期限までにきちんと対応できない銀行は去っていくというけじめがきかなくなってしまうような気がするんですけれども、先生のさっきおっしゃった考え方と、今私がこう言った、やはり期限を切ってきっちりと実施するということと、どちらがいいのか、その辺の真意をもう一回お伺いしたいんです。
  51. 深尾光洋

    深尾公述人 まず一つ目の、むちで消費させるということですが、実は今回の住宅減税も二年間の時限というのが入っておりまして、結局それが相当程度、むちといいますか、支出をふやす効果があるんだろうと思います。また、この前も東急百貨店の閉店セールで、期間限定セールがいかに売れるかというのはごらんになったとおりですから、やはり住宅投資あるいは消費についても、期間限定セールは終わるんですよということを見せるということは大事なのではないか。  そうすることで、景気がある程度よくなってきて、またそれによって例えば社会保障のネットが、見せかけではなくて、ちゃんとお金があるんだよということを見せることで安心させる。この二つを一緒にやらないとうまくいかないというふうに思っております。  それからペイオフについて、私は、ペイオフはすべきだと思います。二〇〇一年四月からペイオフはすべきだと思います。ただ、ペイオフでも、使えるペイオフにしなければいけないということであって、使えない、見せかけのペイオフではいけない。  そうしますと、例えば私が申し上げたのは、預金保険については九〇%、八〇%。つまり、一千万円以下は九〇、それ以降は八〇といったやり方というのは、使えるペイオフにする。中小企業なんかが連鎖破綻をするようなペイオフの仕方はやはりまずいわけですから、これは、そうならないような形のペイオフをする。しかし同時に、まさに御指摘されたように、だめな金融機関には去っていっていただく。  これが、今のやり方の、一千万円の元本までは全部保証をするということにしますと、そうはならないわけです。つまり、一千万円に小分けして名義分散あるいは銀行分散すれば、それをたくさん集めれば本当に自己資本がない銀行でもやっていけてしまう。そういう意味では、仕切りを設けることによって、小口の預金者もある程度リスクを負ってもらって見きわめてもらう、そのために先ほど申し上げたようなことを申し上げたわけです。
  52. 生方幸夫

    ○生方委員 終わります。どうもありがとうございました。
  53. 中山正暉

    中山委員長 次に、西川知雄君。
  54. 西川知雄

    ○西川(知)委員 公述人の方、きょうはどうもありがとうございます。  三名の方、予算案に賛成の方も反対の方もいらっしゃったわけですが、共通しておっしゃっていたことは、金融の再生というものが非常に重要である、ここは共通していたんではないかというふうに思います。  そこで、個々の予算のお話をお尋ねする前に、金融問題についてまずお尋ねをしてみたいというふうに思っております。  深尾先生もこのメモの中でおっしゃっておりますように、再生法、早期健全化法、これは幾つか問題があるわけですけれども、財政金融の分離ということについてもまだまだ詰めないといけないところがあるようでございますが、一応、金融再生委員会、金融監督庁、この運用ぶりは全体として高く評価できる、こういうふうにおっしゃっているわけです。  これは、それに携わっているいろいろな人の内容にもよるでしょうし、また、機構として財政金融が分離したからこういうことができたということも言えると思うんですが、ここで重要なことは、先生もおっしゃっているように、やはり不良債権、これの徹底的な償却を求めている、こういうことが一つにはあるんじゃないかというふうに思います。  その前提として、やはり情報開示というものが重要であるということは三先生方、共通であると思うんですけれども、そこで、やっと引き当てのガイドラインというものができまして、第三分類は七〇%を基準とするというようなことができてまいりました。また、これは将来的でございますが有価証券の評価も、これは国際的にもおくれている、原価法じゃなくて時価法の方に移っていこう、こういうようなことが今のところ考えられております。  しかしながら、いつまでも将来、将来というふうに言っていきますと、これまた不良債権の問題の先送りということですから、若干厳しいところはあると思うんですが、やはり今は、徹底した情報開示をして、そして本当にその金融機関の体力がないということであれば、これは公的資金を導入して、そして健全化行にして、それでもって景気回復していこうというのが正道であるというふうに私どもは思っております。  そこで、具体的な話でございますが、公的資金を導入するというような銀行に対して、以前は大蔵省の検査、今度は金融監督庁の検査というものが入って、いろいろな問題点等が指摘をされております。そういう問題点を指摘されたことに対して、それを解決するために公的資金が導入されるのであれば、その各銀行のどこに問題があったのかとか、そういうことをやはり国民の前にある程度開示することが必要じゃないかというふうに私は思います。そこで、その点についての御見解をまずお尋ねをしたい。  それから、今言われていることは、公的資金を導入するのはいい、ただ、それが一体何の目的に使われていくんだろうか。  例えば、銀行が抱えている不良債権があるゼネコンにある、それを無税償却をします、そうすると資本が不足しますから、その部分について公的資金の財源をもって充てよう。これは、いい悪いということは別問題としてあると思うんです。しかし、もしそういうふうにするのであれば、その使途を明確にさせて、それを国民の前にオープンにさせるということが、これは情報開示として、また国民の公的資金がどうやって使われるかという意味で、非常に大切なことであると私は思っておりますので、まずそれに対して深尾先生の御意見をお尋ねしたい。  そしてまた、金融のそういう問題について、私と多分同じ見解であると思われますので、貝塚先生にも、ぜひこの点についてお教えを願いたいと思います。
  55. 深尾光洋

    深尾公述人 御指摘のように、金融監督庁が大蔵省から分離されて、それによって過去のしがらみを断ってやっているということは、非常に評価できる、今おっしゃるとおりだと思います。  ただ、まだ分離は足りないと私は思っております。特に破綻処理について、共管といいますか、大蔵省と監督庁共管という格好になっておりますが、あれは、私の知り合いの大蔵省なり監督庁にいる人と話をしても、一体どういうふうに共管になっているのかわからないということ。また、検査員についても、財務局にいる人が監督庁の指揮下で検査を行っている。人事権はない、指揮権だけはある。こういうのは普通の会社ではあり得ないわけでして、こういったところでまだ不十分な部分が相当残っている、分離が不十分であるというふうに思います。  開示については、今まさに御指摘のように、金融機関の不良債権について、個別の分類債権、またそれに対する引き当て率といったところも公表していくべきだろうと私は思います。しかし同時に、顧客との関係というのは大事ですので、顧客の秘密に関する部分というのは開示すべきではないだろうというふうに思います。  それから、償却についてですけれども、債務の減免をやるような場合というのは、やはり相手が実質的に破綻という処理を行う必要があると思います。つまり、徳政令になってはいけない。  ただし、むやみに企業体としてあるものをつぶして景気をどんどん悪化させるというのは、これもばかな話ですので、同時に、いかに倒産したところがすぐやり直せるかというところで、中小企業にも使いやすい会社更生法。現在の会社更生法というのは大企業にしか使いにくいわけです。中小企業は和議法しかないわけですが、和議法は法律学者の間では詐欺法と呼ばれていて、実際上うまく働かない。こういった倒産法制についても、早急に見直すことによって、破綻をするのだけれども、すぐやり直して、従業員と経営者がちゃんとやっていける、しかし株主は責任をとって、経営陣も相当程度の責任をとってもらう、こういうめり張りのついたやり方で再生を図っていくということが必要だろうと思います。  また、公的資金の使途、目的についてですけれども、破綻についてそういう形で透明な破綻処理を行えば、おのずと明らかになっていくだろう。ただ、お金がひもつきでどう使われたかといっても、これは、お金にひもがついているわけではありませんので、全体としてどう使われたかということをきちっと開示していくということが大事なんだろうと思います。
  56. 貝塚啓明

    貝塚公述人 御質問の最初の方は情報の開示ですが、情報の開示は多分企業会計の、今大幅に変えつつありまして、時価表示にするということがある。そこで情報の開示の問題は現在よりもはるかに行われるはずであります。銀行も当然そうなります。  ただ、今おっしゃったのはもう一つ、公的資金を入れたときの銀行に対してどうするか。ここのところは、私は現在の処理の仕方についてはやや不満でありまして、公的資金を入れるということは、いろいろな入れ方がありますけれども、最終的にはどこかで税金を使うということが十分あり得るわけですね。そうすると、税金を使うような話に関して、ということは要するに納税者すべてが知っているべきことになるわけですが、その点について、やはり公的資金を入れた場合には、そうでない場合に比べてもっと情報を開示すべきであろうというふうに思います。  私、銀行の方もいろいろ存じておりますが、非常にわかりやすく言えば、経営責任の問題は必ずあるはずでして、民業である限りは経営責任の問題があるというのが私の単純な理解であります。ですから、公的資金を入れるということは、実を言うと経営破綻したということであって、そこにおける経営責任というのは当然あると思います。銀行経営の方にはある意味では非常に酷な言い方かもしれませんが、やはり経営責任というのは依然として残っていて、その点はやはりはっきりしないと、最後は納税者が怒るのじゃないかと私は思います。  あとは、先ほどの、目的を結びつけて資金を入れるということは、やはり非常に難しいと思います。しかるべくちゃんとリストラをやり、公的資金を使って経営の体質をよくするということをはっきり、何といいますか、後をフォローすることが重要じゃないかというふうに思います。深尾さんと全く同じであります。
  57. 西川知雄

    ○西川(知)委員 ちょっと行天先生にお尋ねしたいのですが、今、国際金融のことを御説明いただきました。日本の円が国際化すること、これは大変重要なことでございますが、日本のマーケット自体がもっと国際化するということは、私は特に金融面で重要じゃないかというふうに思っております。  というのは、いろいろな国際金融の商品が、新しい商品が日本に来るというときに、果たしてその経済効果はどういうものか、特に、それに対してどういう税制が課せられるのか、税金が課せられるのかということが余りはっきりしていませんと、新しい商品を日本に紹介しようと思っても、やはり投資家というのは、これは場合によっては三〇%税金を取られるかもしれないとかそういうことになると、やはり投資には踏み切れない。  こういうことで、アメリカなんかでは、御存じのように、IRSなどへ行きますとアドバンスルーリングというようなものがあって、大体どういうような税効果が生まれるのかなということで投資家も一応の覚悟をした上で投資ができる。これは、さっき貝塚先生がおっしゃったように、国民が先で一体どういう結果になるのかということがわからないと心配で何もできないというのと全く同じだと思うのです。  その点について、私はアドバンスルーリングみたいなもの、そういう制度をつくっていくべきじゃないかというふうに思っているのですが、もし御意見があればお教え願いたいと思います。
  58. 行天豊雄

    行天公述人 御指摘のとおり、円の国際化を進める場合に非常に重要なのは、やはり日本金融・資本市場というものが、円を使いやすい、円を使うことが非常に有利だというふうな形のマーケットになることだろうと思いますね。そのためには、税制の問題が恐らく一番大事だろうと思いますけれども、その他さまざまな、いわゆるインフラの問題であるとか、人間の問題であるとか、物価の問題であるとかございます。  その中で、私は、先生同様、税の問題というのは非常に重要だろうと思いまして、その面で、海外の資金を投資しようとする人あるいは調達しようとする人が、東京でこういう種類の取引をしたときにそのコスト計算がどうなるのかということがよくわかるような制度、アドバンスルーリングを含めてでございますけれども、それを検討するということは、私は非常にいいことだと思っております。
  59. 西川知雄

    ○西川(知)委員 最後に深尾先生にお尋ねしたいのですが、ことしの予算というものは余り効率的なものじゃないという部分もたくさんあるという御指摘でございまして、我々もそう思いまして、予算に関する組み替えの要求というものをやろうということでございます。  その内容はいろいろとございますが、例えば、児童手当制度の抜本的拡充とか、また今、大都市の生活基盤というものが余りにも充実していない。交通渋滞対策とか、そういう物流効率化対策関連、そういうものに対して一層の重点配分をする。また、将来の年金の問題。これもやはり同じような問題があるので、年金の国庫負担引き上げ。それから、景気を刺激する意味でパソコン減税制度の創設。そういうことをもろもろ要求していこうと思うのですが、その点について、先生のお立場から何かコメントがあればお願いしたいと思います。
  60. 深尾光洋

    深尾公述人 現在の日本年金・医療制度を長い目で見たときに、将来相当負担が多くなりそうだということは明らかでございまして、今の財政問題点というのは、短期的には景気の問題ですけれども、長期的には、少子化といいますか、子供が少なくなっているというのが最大の要因だと思います。  やはり子供が平均で二人ちょっとぐらい生まれないと、人口はどんどん減ってしまいまして、そうしますと、将来は地価も下がっていきますし、人口が減ってしまって残された財政赤字はどんどん所得比が上がってしまう、こういう問題があります。  そういう意味では、児童手当というのも一つ考え方ですけれども、むしろ働く女性が仕事がしやすい形での、例えば企業内の託児所をつくるといったことに補助をするとか、そういった、単にお金だけではない、もう少し制度的なものにうまく使っていってはどうかなというふうに感じております。  また、大都市の基盤整備につきましては、確かにおっしゃるとおり、これまでどうしても農村といいますか、地方に公共事業が配分されがちだったという感じがしておりまして、こういった点で、波及効果の大きいものをうまく選んでやっていくといったことは御指摘のとおりかと思います。  また、年金につきましても、私がここの中に書いておりますけれども、年金財政についての安心感を与えていく。私、慶応大学で学生を教えておりますけれども、二十を超えますと国民年金の負担があるわけですが、話を聞いてみますと、結構払っていない者が多いわけです。これは、やはり将来もらえないんだろうという意識が非常に強いわけです。しかも免除されている人が相当ある。こうなりますと制度として破綻を来しますので、これについて国庫負担をふやす。  ただし、国庫負担というのは結局は納税者負担ですので、いかにそれに対して税金を上げていくのか、理解を求めていくのか。ここでは、福祉目的税といいますか、そういったことの一部、消費税の歳入の一部を目的税化することも考えられるのではないかというふうに思っております。
  61. 西川知雄

    ○西川(知)委員 どうもありがとうございました。
  62. 中山正暉

    中山委員長 次に、木島日出夫君。
  63. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  三人の公述人先生、本当にありがとうございました。きょうは、二つの点についてそれぞれお聞きしたい。一つは今年度予算をどう見るか、二つ目は金融問題でございます。  私どもは、九九年度予算案については、二重の危機の打開が求められているのではないかと考えております。一つは、この未曾有の不況をどう打開するかという問題。もう一つは、深刻きわまりない財政危機をどう打開するかという問題だと考えております。そして、根本的には浪費型の財政からの脱却、転換が必要だと考えているわけでございます。  貝塚先生にお聞きをいたします。  先ほど、財政景気回復のことは余り期待しない方がいいんじゃないかという趣旨の御発言もございましたが、先生の公述の中で、消費支出が伸びるために将来不安の解消が決め手だとおっしゃられました。そのとおりだと思うんです。それで、社会保障についての最低限の保証、約束が必要だとおっしゃられました。  そういう目で今年度予算を見ますと、年度末、国と地方の借金六百兆円、GDPの一二〇%であります。償還金利経済成長の見通しをはるかに超える、そんな状況。大蔵省の中期財政見積もりでも財政再建の展望が全く示されていない。こういうことですから、国民は、将来この財政赤字は間違いなく税金の負担、社会保障の切り捨て等々でかぶってくるんじゃないかと見ざるを得ない。経済戦略会議でも消費税引き上げを強調しておる。  こんな状況予算では、ますます国民の不安が高まって、不況が一層深刻になるんではないかと考えざるを得ないわけですが、先生に、今年度予算について、経済回復が可能かどうか、国民不安が解消できるのかどうか、端的にお答えいただきたいと思います。
  64. 貝塚啓明

    貝塚公述人 政府予算というのは、極めて継続性の高いものでありまして、現在の予算支出項目もかなりのものは実際はそうであります。  現在の経済危機に対して政府予算がどうあるべきかというのは、これはいろいろ考え方はあり得ると思いますが、私は、やはり財政は、基本的には、言ってしまえば景気に中立的な感じぐらいの程度で、余り多くいろいろ財政支出に、これは景気効果があるからというふうな形で予算案をつくるのには必ずしも賛成ではないということを申し上げたわけです。  あとは、むしろ問題は、中期財政の見通しも重要であります。それで、今の段階でそれが立てられるかどうか、むしろ難しいと思います。ですから、日本経済が最低限景気回復した段階で、その時点でもう一度、英語で言えばクレジブルというのか、要するに信頼のおける今後の財政の見取り図を描くべきであって、そこで、発行された財政赤字、今までの財政赤字をいかにコントロールしていくかというのは、本当に最重点の問題です。減らしていくことも当然必要でありますし、その中で、経済がある程度回復したときには税制の問題も、先ほどおっしゃったように当然登場すると思います。  一応そういうふうに考えているということでございます。
  65. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、深尾先生にお尋ねします。  先生の公述、今年度予算案について、非効率景気刺激策だ、過大な財政赤字、過大な恒久減税、私もそのとおりだと思うわけであります。それで、ではどうするかという問題で、先生はすぐに金融の方に行かれてしまっているのですがその前に、ではどういう財政であるべきか、どういう今年度予算であるべきか。  私どもは、もうるる私は申しませんが、むだ遣いに徹底的に切り込んでいく、そして少しでも国民消費回復に役立つ、そういう中低所得者への減税等々に思い切って集中すべきだと考えてはいるんですが、先生の今年度予算をどうすべきかについての御意見をよろしくお願いしたいと思います。
  66. 深尾光洋

    深尾公述人 私も同感するところが多いわけですけれども、やはりむだ遣いといいますか、公共事業でも効果が見込めないようなものについてはどんどん刈り込むというのは、御指摘のとおりだと思います。  では財政全体としてどうするかということですけれども、私は、公共事業はもう徐々に、予算が切れたところで補正は要らないのではないか。公共事業の補正というよりも、むしろ、例えばその分のお金を年金財政に回すといった形によって、社会保険料を切り下げる。  これは、例えば自営業者の基礎年金の場合は定額制ですから、逆進的なわけですね。人頭税みたいな格好になっているわけですから、この点が逆進的な部分が大きい。あるいは、社会保険料につきましても、標準報酬の上限に達しますと厚生年金でも税金がかからなくなりますので、ここでも、所得の低い人の方が税率が高くて、高い方が低いということで、逆進的になっているわけです。しかも税率はフラットで平均税率になっている。  こういうところについて、その部分を減らしていって、それに対して消費税、これはある程度逆進的な面はありますけれども、消費税にしておくことによって、たくさん消費する人はたくさん税金を払うという形で多少なりとも調整がきくのではないかと思います。  それからもう一つは、課税最低限につきましては、私は、日本の場合は既に高過ぎるのではないかと思います。そういう意味では、課税最低限を下げて、少しは税金を皆さんに払ってもらうということは要るのではないかというふうに思っております。  これは、高い税金をかける必要はありませんけれども、低い税金を薄く取るということは、やはり国民で公共サービスを受けている場合は払ってもらう必要があるのではないか。税金といいますのは、確かにある程度の公平性というのは大事ですけれども、同時に財政のバランス、おっしゃったように財政赤字がすごく大きいわけですので、これを何とか抑えないことにはどうしようもない。そうしますと、税金をどこから取るかという点では、薄く広く取る部分というのはどうしても必要なのではないかというふうに思っております。
  67. 木島日出夫

    ○木島委員 課税最低限が高過ぎるという御意見、私は賛成しがたいわけですが、きょうは論争はやめまして、行天公述人に一点だけ。  行天さん、先ほど、九九年度予算に賛成する理由を三つ挙げましたが、その第一の理由として、景気回復に資するとありました。中身に全然触れられていないので、簡単で結構ですが、どんな点で景気回復するとお考えなのか、述べていただきたいと思います。
  68. 行天豊雄

    行天公述人 予算だけで景気回復するとは私も思っておりません。ただ、需要創出という意味で、財政の果たす役割はあると思います。その意味で、来年度予算はそういう効果を持つ期待ができるという意味で私は賛成を申し上げてございます。  その場合、問題が二つあると思います。一つはどうやって金を使うかという話と、それから長期的な財政破綻をどう考えるかという問題です。  これは、アメリカの例を引くのもなんでございますけれども、アメリカがあれだけの大きな財政赤字から今日の一千億ドルに及ぶ財政黒字になった過程というのは、確かに景気が非常に長くよく続いたということが大きいと思いますけれども、同時に、一九九三年に民主党と共和党の間で行われました財政合意ということがやはり非常に意味が大きかったと思います。  それは結局何かといえば、社会保障並びに軍事費関係予算が将来ふえない、だんだん減っていくという、いわば基礎をつくったわけでございまして、これは両方とも非常に不人気な政策であるのは当然でございますけれども、なぜそういう不人気な政策がとり得たかといえば、やはり同時に徹底的な規制の撤廃によって新しい雇用と所得を生む機会をつくったということだと思います。日本財政の将来についても、このことは非常に参考になる話ではないかというふうに私は思っております。
  69. 木島日出夫

    ○木島委員 金融問題御専門の三人の先生に時間の関係で詳しく聞けないのは残念でありますが、金融で一点だけ行天公述人にお聞きしたいんです。  先ほど、世界経済に共通の課題として、競争と秩序のバランスということをおっしゃられました。確かにそれは大事だと思います。今、国際金融問題でカジノ経済が大問題になっている。九八年の世界の外為取引が三百七十一兆ドル、実際の貿易取引の三十四倍。この乱脈な金の流れが一国経済をつぶすような状況になっている。これの規制が非常に求められているんじゃないかということで、昨年、G7やAPECなどでマハティール首相などからも規制の問題の提起がなされましたが、アメリカが規制に反対しているんじゃないかという声も聞こえてきます。  この問題についての公述人の、簡潔で結構ですから、御意見を聞かせていただきたい。
  70. 行天豊雄

    行天公述人 世界的な金の流れを規制することのプラスとマイナスというのは、これは真剣に考えなきゃいけませんが、私は、やはり基本的には、金の流れというのは自由であった方が世界経済のためにいいと思います。  しかしながら、それがもたらす弊害というのは、どこにでもあるわけではなくて、やはり今度のアジアの経済危機を見ましても特定の場所に起こっているわけでございますね。そういう場合には、私は、金を受け入れる方が、入ってくる金について十分判断ができ、必要に応じて規制ができるような制度をつくる。それから、そもそもそういう世界じゅうを回っております金が、もしその背景に非常に不健全な、つまり、本来預金者から預かった金をそういう投機的な金に使っておるというようなことがあれば、それは出す方の側で、これも規制しなきゃいけない。  ですから、受ける方と出す方の両方で健全性の観点から必要な措置をとれるように、これは国際的にそれを認めようということにするのが正しい方法ではないかと思っております。
  71. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。
  72. 中山正暉

    中山委員長 次に、北沢清功君。
  73. 北沢清功

    ○北沢委員 三人の先生方から貴重な御意見をいただいて、ありがとうございます。社会民主党の北沢でございます。  初めに、貝塚先生にお尋ねをいたしたいと思います。  今日の不況は、大きく分けて金融不況消費不況だろうというふうに私は思っているんですが、金融不況については、日本はバブルが破綻をしてから、九〇年代に起きたわけであります。アメリカ、イギリスなどでは八〇年代に起きている。これは、日本の科学技術というものがいわゆる繁栄をある程度持続したという意味でおくれたんではないかというふうに私は思っております。  しかし、九〇年代になってから今日まで、ことしは別として、百兆近い景気対策を打ってきたんですが、なかなか景気回復しない、長期であるということの最大の原因は、いわゆる不良資産をどういうふうに処理するかということが、極めて真剣に行われなかったという一つの今日の破綻だろうというふうに思っております。  そういう意味で、今回の予算を通じたり、あらゆる施策を通じて、不良資産というものは、来年のビッグバンを目指して銀行の体質、日本金融界全体の体質が問われるわけでありますが、そういう中で今回、完全に処理できるかどうかということ。それは長くかかるかどうかということ、そのために施策をどういうふうにしなきゃいけないかということを含めて、お教えをいただきたいというふうに思っています。  それからもう一つ大事なことは、消費不況の中で、案外、新しい消費が生まれてこないということに問題点があるわけであります。そこら辺は、今回の予算では情報通信だとか環境だとか福祉というふうに言われておりますが、構造そのものから見ると、かつての大量生産、大量消費という構造から消費者皆さんが、例えば自動車の例を一つとってみても、自動車の機械がよくなっていますから、技術も進歩していますから、かつては三年ぐらいなのが今日は十年ぐらいもつ。そこら辺が消費の落ち込みにつながっているんではないか。  これはあらゆるものについて言えることですが、そういう意味での消費構造の変化、消費者の意識の変化というものをどういうふうに見られますか。そこら辺を含めてお教えをいただきたいと思います。
  74. 貝塚啓明

    貝塚公述人 最初の御質問は、不良債権の処理の見通しといいますか、私は、金融再生法というのは、基本的には、不良債権が出た後で金融機関経営破綻しそうになったときに、それをちゃんとどういうふうに処理するかということについてシステムができ上がったというふうに理解します。  それで、これから先は、金融機関がどうするかはまさに自己責任の話で、そこで公的資金を受け入れて、それから先は、それぞれの戦略でどういうふうに仕事をしていくかが問われている段階に入って、まさに、そのときには外資系の機関も入りまして、競争は非常に激しくなりますが、そこでぜひとも日本金融機関がそれなりの独自性を持って活躍されることを期待したいということではないかと思います。  それから消費についての御質問でありますが、消費は、今の時点で乗用車を買わないとか住宅を買わないというのは、それはそうだと思いますが、ただ、あとはむしろ将来の見通しであって、ある程度景気回復し失業の危険性が減ったときには、今依然として住宅は、確かに充足はされましたけれどももう一つ先の、平たく言えば例えば都心に近いところに住みたいとか、いろいろなことがあると思いますので、当然住宅需要はある段階で出てくるというふうに思います。それから自動車も、なかなか商品としては新しい商品がたくさん出てきて、これもまた需要が出てくると思います。  そういう意味で、住宅ないしは自動車の先行きについて、私自身は別にそれほど長期的には悲観はしていないというふうに申し上げ、そして現状はそういうことですということを申し上げたわけでございます。
  75. 北沢清功

    ○北沢委員 私も、消費については、将来の生活設計が立たぬということで消費を手控えるという面も非常に強いと思っています。  ただ問題は、今回の、ことしの予算は相当な額で予算を組んでありますが、やはりそういう面での将来の日本経済なり、消費のあり方とか、そういうものが非常に不明確であります。そこら辺が非常に霧の中というか低迷をしているというところに、今日の日本の政治の大きな弱点があるんではないかというふうに私は感じております。  次に、深尾先生にお尋ねをしたいんですが、過大な財政赤字、過大な恒久減税ということで、これは私も、今までずっと予算委員会でもそういうことを実は一貫して唱えてまいりました。これは成長率にかかわることでありますが、成長率も、少子高齢化であり、環境問題も含めて、またはエネルギー問題も含めて決していい材料はないわけです。  そういう中で、どのように速やかな景気回復を図りながら成長率を高めるかということについて、やはり確かなめどをつけなきゃいけないわけですが、私は、このままでも、ともすれば国、地方を含めての六百兆が七百兆になるんじゃないかという感じもします。世界の日本経済に対する格付も一ランク下がったという報道も入っておりますから、それらを含めて考えていかなきゃいけないと思いますが、これらについて、結局頼らざるを得ないのは消費税、非常に大きな私は課題になるんじゃないかと思います。  そこで、老後なり将来の年金を安定させるという意味でのいわゆる消費税化という問題について、保険制度よりも税制で行ったらどうか、そういう意見も出ておりますから、そこら辺についてはどういうふうにお考えになりますか、お教えをいただきたいと思います。
  76. 深尾光洋

    深尾公述人 きょうの資料でも書きましたように、私は、消費税の歳入の一部、あるいは全部になるかわかりませんけれども、それを年金と医療費の目的税化するということはあり得るのではないかというふうに思っております。  これまで社会保険料というのを、まあ所得税に当たるわけですけれども、これをここまで引き上げてくることができた、今総所得ベースで給与所得の一七とかそれぐらいまでいっていると思います。これは、一般の人が思っている所得税よりも多分多いぐらい社会保険料を払っていると理解しておりますけれども、ここまで社会保険料が上げられたというのは、それが保険だという意識があったからだろうと思います。  そういう意味では、国民に納得してもらうためには、支出目的をある程度はっきりさせるということは、将来、支出に応じて税金を上げていくという納得を求める上では一つのやり方かなと思います。  ただ、柔軟性の問題もありますので、全部が全部社会保険料の代替に使えるかどうかというのは、全体として収支を見て、その上で判断する必要があるだろうというふうに思っております。
  77. 北沢清功

    ○北沢委員 終わります。どうもありがとうございました。
  78. 中山正暉

    中山委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人の各先生方におかれましては、御多忙の中、大変貴重な御意見を承りましたことに、委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。  午後一時三十分から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  79. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成十一年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  公述人各位におかれましては、大変御多忙の中を御出席賜りまして、まことにありがとうございます。平成十一年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますように、まず開会に当たりましてお願いを申し上げる次第でございます。  御意見を承る順序といたしましては、まず二宮公述人、次に石公述人、続いて佐高公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員各位から質疑をしていただき、お答えを願いたいと存じます。  それでは、二宮公述人お願いいたします。
  80. 二宮厚美

    ○二宮公述人 二宮でございます。  私は、五つの問題点につきまして指摘をしたいと思います。  政府予算案はさまざまな側面を持っているかと思いますが、第一番目の問題点は、既にこの公聴会でも議論されているかと思いますが、財政危機が未曾有の規模に達して、後で申し上げますけれども、大蔵省の試算によりますと、なお泥沼化といいますか解決の方向が見出せない、こういう問題点一つ。  二つ目は、景気対策上の問題でありまして、今回の政府予算案景気対策を最優先ということで組まれておりますけれども、果たして有効性を持っているのかどうか、これが第二番目の問題点であります。  第三番は、私はたまたま財政構造改革法の意見陳述人ということで呼ばれた記憶があるのでありますけれども、財政構造改革という視点から見て、また経済構造の改革という視点から見て、今回の政府予算案問題点を含むのではないか、これが第三点目であります。  第四と第五は、国民生活に与える影響と、地方財政が最近では大変大きな問題になっていて、国も財政危機でありますけれども、自治体も極めて厳しい状況にありまして、この地方財政に与える影響につきましても少し考えてみたいというふうに思います。  まず第一番目の問題点でありますが、財政の規律維持というよりも景気回復を最優先というふうに宮澤大蔵大臣はおっしゃったわけでありますけれども、その視点から、今回の政府予算案は文字どおり巨額の国債依存型の財政構造になってしまった、この問題が一番大きい争点ではなかろうかというふうに思います。  もう既に数多く報道もされ、また議論もされておりますから周知のことかと思いますが、念のため数字をもう一度振り返ってみますと、来年度発行予定の国債、これは赤字国債を含めまして三十一兆円、一般会計に占める国債依存度は約三八%ということになっておりますし、地方債を含む政府の長期債務の残高については、しばしば議論されてまいりましたように、六百兆円という文字どおり破天荒の天文学的な数字に到達している、こういう状況にあります。  六百兆円の債務残高は、財革法で問題にされました対GDP比で申し上げますと、財革法が目指した六〇%をはるかに超えて、一二〇%に達します。つまり、先進国の中でも最悪の財政危機を呼び起こしている、こういう構造になっております。  将来につきましても、さきに触れましたけれども、大蔵省のこの一月に発表されました中期試算によりますと、仮に今後一般歳出の伸びをゼロに抑えたとしても、今後四年間にわたって大体毎年三十兆円前後の国債発行が避けられない、したがって、二〇〇三年度の国債の残高は、来年度末の三百二十七兆円から四百三十兆円へと増加をする、すなわち、四年間でなおこの上に百兆円以上も国債が増加をする、こういう計算が発表されております。  国債費につきましても、同じく四年後に二十兆円を超える見通しでありまして、国債費を除く歳出と国債発行分を除く歳入、この比率を通常プライマリーバランスというふうに言っておりますが、この基礎的収支、これをいかに黒字化するかというのが財政再建の一つのめどであったわけでありますけれども、将来ともにこのプライマリーバランスがずっと赤字を続ける、こういう状況になっております。  したがいまして、新聞でも、将来の税収によって赤字国債を減らすとか財政危機を打開するというのは空手形ではないか、こういう評価がなされておりますけれども、文字どおり空手形に終わりかねないような未曾有の財政危機をつくり出してきた。この問題が、やはり焦眉の、当面の最大の問題であろうというふうに思います。  それから、財政危機といいましても、政府が見込んでおりますように、確かに経済成長が上向きになりますと税収が上がってまいりますので、ある程度の見通しはつこうかと思いますが、この景気対策の効果がどうか、こういう問題点があります。  宮澤大蔵大臣は、財政が全力投球して景気回復の先頭に立つ、これは日経新聞の昨年の十二月二十一日付の報道でありますけれども、こうおっしゃったわけでありますけれども、果たして景気回復に万全の効果を発揮するのかどうかというのが第二番目の問題点になります。  景気対策のためには、言うまでもなく、不況原因をあらかじめ押さえておく必要があるわけで、私は、さまざまな要因があろうかと思いますが、現局面に即して言えば、主にこの不況が長引いている要因は三つに大別できるというふうに思います。  一つは、九七年の四月から、消費税引き上げを契機にいたしまして進行した消費不況の問題です。消費不況は、内需の低迷によりましていわゆる国民経済の需給ギャップを拡大しますので、過剰設備を露呈させて、そこから、今中小企業から大企業に広がっておりますけれども、設備投資の不振を招く。こういうことで、消費不況ないし過剰設備の問題、この問題が不況要因の第一に挙げられるだろうというふうに思います。  第二番目は、金融不安といわゆるクレジットクランチの中で、特に今、中小企業に対して融資及び長期資金の供給が途絶えた。最近、中小企業に対する貸し渋りがどのぐらい進行しているのかという推計が多く出されておりますけれども、いずれにしましても、中小企業に集中的なマイナスの影響が貸し渋り現象の中で進行した。この問題が内需の低迷を呼び起こしまして、今日に至る不況の非常に深い要因をつくり出している。  第三番目は、東アジアを襲いました経済危機の中で、御存じのとおり輸出環境が悪化をする。したがって、戦後日本経済の、ある意味でお家芸であったわけでありますけれども、輸出を主導にし、ないし輸出に依存した不況打開といいますか経済成長の道に大きな限界が生み出され、これは相当長期的な要因になろうかと思いますけれども、輸出依存型の景気回復に難問が生じてきている。こういう三つ目の問題点があります。  以上の三つの中で、とりわけ輸出依存型の経済成長についてはさまざまな見直しが行われておりますが、限界があるといたしますと、景気回復のためには、第一の、消費不況及び過剰設備の打開、それから第二番目の、中小企業に対する支援策、この二つが特にかぎになるだろうというふうに思います。  政府予算案で準備をされました景気対策といいますのは、大きく言いますと、これらの要因に対して二つあったというふうに思います。  その一つは、いわゆる公共事業を中心として需給ギャップの解消を図る、伝統的ケインズ主義型といいますか、要するにスペンディングポリシーでもって過剰部分を吸収する、ないしそのはけ口を提供する、これが一つ目であります。  それから二つ目は、これはケインズ主義ではありませんけれども、所得税法人税に対する減税策で、これは主に、消費不況打開ではなくて、サプライサイド、要するに、労働力であるとか企業サイドの意気込みといいますか、投資意欲であるとか貯蓄意欲に対しててこ入れを図る、こういう減税政策が二つ目の柱でありました。  この減税政策の方は、小渕首相も答弁で答えていらっしゃいますように、要するに、不況消費を底上げするところにねらいがあるわけではない。つまり、この所得減税というのは、中間層から上層にかけての所得減税でありますから、それらの人々に対して、活気といいますか意欲を引き出すためのものであって、例えば勤労意欲を刺激するものである。あるいは、法人税減税にいたしましても、この減税は、別に、それでもっての不況打開というよりは、むしろ国際競争力という視点、あるいは国際的なバランスという視点から法人税の実効税率を六ポイントばかり下げる、こういう措置をとったわけで、ねらいそのものが消費不況の打開であるとか中小企業の不振に対する支援という意味を持っていない。したがって、景気対策という点から見ますと、理屈の上からも政策の上からも問題が多い、こういうことが言えるだろうというふうに思います。  公共事業の方はどうか。公共事業の方は、今、例えばセメントの生産能力などもおよそ四分の一ぐらいは過剰だというふうに言われておりますから、いわゆる重厚長大グループの過剰な供給能力に対して一定の解消の道を図る、こういう効果は確かに持っているかもしれません。ただし、この公共事業は、経済企画庁の試算モデルを使っていいますと、これは昨年の秋だったと思いますが、発表されたものでいえば、波及効果、いわゆる需要波及効果というのは大体一・二一ぐらいしかない。しかも、これは続けてやらないと短期的な効果に終わってしまって、それほど需給ギャップを解消するということにはならない。こういうモデルが打ち出されておりますように、公共事業景気のてこ入れ策をやるといたしましても、要するに、長期にわたって連続的にやらなければ現在のだぶつきぎみの需給ギャップは解消できない、こういう問題点を持っております。  したがいまして、今、一〇%以上の伸びの公共事業でもって現在の需給ギャップの解消を図り、これで景気てこ入れ策をやるということになりますと、後の問題にもかかわってまいりますけれども、一層財政構造をゆがめてしまうという問題点があるだろうというふうに思います。  もちろん、そればかりではありませんで、もし仮にこれで需給ギャップを解消するということになったとしても、それは、将来再び訪れるであろう過剰な生産能力、過剰な供給能力を将来に先送りするという効果を持っているわけで、ある意味で、現在の慢性的な不況を先送りするといいますか先延ばしする、一たん景気回復しても、また公共事業でもって吸い上げていかないと再び同じような不況が訪れるという、戦後構造の遺産をそのまま将来に先送りすることになるだろうというふうに思うのですね。そういう意味で、公共事業に依存するこの景気対策というのは、構造上も問題があるし、効果の上でも甚だ大きな疑問がある、こういうふうに考えなければいけないというふうに思っております。  したがいまして、今進められております消費不況打開、内需不振の打開策に対して、この財政政策がまるで効果がないというふうには私は思いませんけれども、構造上の問題や、本来、消費不況が大きな不況の要因になっているわけでありますから、そこに向けてつぼを得た不況打開策になっているとは言えないのではないか。以上、こういうことが第二番目の問題点として浮かび上がってきます。  さて、話を続けて、第三番目は、財政及び経済構造改革という視点から見た問題点であります。  さきにも触れましたように、財革法では、そもそも二つのことが大きなねらいでありました。財革法そのものはもう既に実質的には破綻をしておるわけでありますが、今度の予算案の説明書にもありますように、また大蔵省も説明しておりますように、財政構造改革法の精神は将来にわたって生かすし、今回も堅持をする、財革法というのは凍結しているにすぎない、こういう視点でありますから、財革法が含んでいた問題点は、なお解消されていないということですね。  財革法は、二つの柱というふうに申し上げましたけれども、要点を申し上げますと、一つは、まず赤字国債からの脱却という目標を掲げまして、赤字国債に直接関係するのは一般的な経常支出でありますから、要するに、社会保障であるとか、公共事業を含みはしますけれども、教育などにいわゆるキャップ制で上限の枠、天井をつける。天井をつけられて一番苦しむのは自然増部分の多い社会保障予算で、それで社会保障の圧縮に財革法は向かわざるを得ない。こういう構造上の問題点を持っておりました。それから第二番目に、財革法はそもそも補正予算は縛っていない。当初予算については縛りがかかっているけれども、補正予算は余り縛らずに、かつ、赤字国債に対しては厳しいのだけれども、建設国債については歯どめをかけていない。  この二つによりまして、もともと、補正予算を組んで公共事業で積み上げをやれば財革法そのものはたちまち破綻に陥る、こういう構造上の問題を持っていたわけで、かつ昨年四月から始まります補正予算から、実質上成立した直後にもう財革法は破綻していた、こう考えられるわけでありますけれども、にもかかわらず、この財革法の精神であるとか趣旨についてはなお生かす、そういうねらいが今回の予算案にあって、これが社会保障制度改悪と結びついていると思うのですね。そういう意味で、まず構造上の大きな問題点がある。  それから第二番目に、経済構造の点から見ても、需給ギャップが非常に多くなっている。経企庁の推計では約二十兆円、民間のシンクタンクで、多いところでは四十兆円という過剰な生産能力を指摘しておりますけれども、要するに、二十兆円から四十兆円という巨額の供給能力をどのように活用していくのか。  このときに予算案が示しましたのは、先ほど述べましたように、公共事業で吸い上げる、こういうプランであったわけでありますが、現在、消費不況の打開と結びつけて、国民の生活の安定であるとか、国会でも問題になりました、消費性向の引き上げのために必要な将来の生活の見通しの安定化であるとか、こういう流れをつくり出すためには、社会保障や福祉の拡充が不可欠であります。  したがって、人材にしろ各種の資源にしろ、この過剰な能力を生かして、福祉充実型の、社会保障主導型の経済構造、新しい、文字どおり経済構造改革路線を、世紀末の来年度、提起すべきであったと思うのですね。ところが、そういう方向とはまるで違って、伝統的な、産業構造や就業構造の維持が基調になっている、そういう問題点が指摘できるだろうというふうに思います。  時間が来ましたので、あと二つだけ簡単に指摘をいたしまして、終わりたいと思います。  第四番目の問題点は、要するに国民生活に与える影響です。  これは二つの側面があって、一つは、増税に見られますように、一般の低所得層から中間層にかけて高負担が及ぶということ。二つ目は、社会保障制度、福祉制度の改悪のプランとこの予算案が結びついているということ。  予算案の通過の後、恐らく国会では、社会福祉の基礎構造改革だとか年金改革だとか、あるいは医療の改革だとか、連続的に審議されるかと思いますけれども、そういう二十一世紀の社会保障や福祉の基礎構造改革ラインと一体になって、国民生活に、安定というよりは、不安定と申しますか、見通しそのものを薄くする、そういう状況になっているということであります。  最後は、地方財政に対する影響です。  先ほど申し上げましたように、自治体の財政もまことに厳しい状況があります。私は大阪に住んでおりますけれども、大阪府も、財政再建団体への転落におびえる、こういう状況があって、各種のリストラ策というのが打ち出されているわけであります。国の方が借金依存で今回交付税の予算を組みましたけれども、借金依存で国の地方財政計画が進めば、自治体の方はそれに引っ張られながらなお財政危機を深めていく、こういう構造になっていて、それで地方財源の抜本的な拡充が不可欠になっているわけでありますけれども、その対策がなされていない。  私は、このままいくと、多くの自治体で、まさに再建団体への危機といいますか、転落の不安がますます高くなって、大変危険な状況になると思いますので、地方財政の抜本的拡充、それから再建団体に転落するような特別措置法の凍結ないし廃止というのをぜひ国会でも議論していただきたい。  これを述べまして、私の意見にしたいと思います。どうも失礼いたしました。(拍手)
  81. 中山正暉

    中山委員長 ありがとうございました。  次に、石公述人お願い申し上げます。
  82. 石弘光

    ○石公述人 御紹介いただきました石でございます。  時間も限られていると思いますので、来年度予算に関して、まず総論的に全般的な評価、次いで、個別事項につきまして重要と思われる点を三つほど挙げて、私の意見陳述にかえたい、このように考えております。  全体的な評価あるいは印象でございますが、目下、日本経済は三年連続のゼロ成長ということが予想されております。このような景気低迷の中では、景気対策に力点を置いた来年度予算というのはやむを得ない措置であったというふうに考えております。  財政再建とか財政健全化景気刺激というのは、これはトレードオフでありますので、どっちかに重きを置いた政策をとらなければいけない。なかなか両にらみというのは難しい。そういう意味で、今の景気低迷を反映して、財政出動というのをもう一度やろうということで来年の景気刺激型の予算がとられたんだと思います。これは、全面的に賛成という点に至らない点もあるのですけれども、しかし基本的には、マクロ経済財政との関係において、恐らくこの方法以外にあり得なかったというふうに考えております。  若干前に戻って、日本経済あるいはバブル崩壊以降の景気動向をちょっとかいつまんで、考えていることを申し述べますと、一九九一年にバブルが崩壊したわけでありまして、それ以降、どうも政策は後手後手に回っていたという感じを免れ得ません。  何よりも、不良債権処理、あるいは金融システム不安定性の除去というのを、もう少し早急に、速やかに、あるいは重点的に処理すべきでありましたが、どうもその点が時間をかけ過ぎた。これは後知恵ではございますが、もしか金融不安の処理あるいは不良債権の処理がもうちょっと速やかにいきますれば、その後とられました財政出動を中心といたしました総合経済対策の効果はもっと上がったのではないかと思います。  逆に言って、金融システムの不安を抱えたままで財政出動をした。百兆円規模の総合経済対策を打ったわけでありますが、その効果が思ったほど上がらなかったというのも、やはり、金融の不安を抱えたままで旧来型の言うなればケインズ政策をやっても、それだけ効果が減殺されたというふうに理解をいたしております。  さはさりながら、やっとと言うべきでしょうか、六十兆円規模の公的資金の注入を一応決意しました。そういうわけで、これからそれが本格的に注入されれば日本経済の貸し渋りもある程度改善される、それと呼応する形で本年度の第三次補正予算と来年度当初予算を合わせた十五カ月予算という形で財政がもう一度出る、日本経済を浮揚させよう、こういう考え方は、恐らく基本的には間違っていないのだろうと考えております。当然のことながら後ほど財政赤字の問題は触れますが、短期的に見れば、恐らくこの方向だろうと思います。  言うなれば、全体的に見れば、橋本内閣で行われておりました財政構造改革というものが、小渕内閣になってからスイッチをかえまして、景気浮揚策に移ったわけであります。個別に見ればいろいろ問題もあろうかと思いますが、それはそれとして、今やるべきことについては適切なる手を打ったのかなという感じはいたしております。  しかし、これから三点まとめて述べたいと思いますが、歳出歳入の個別の事項に触れますと、やはり問題はかなりあるだろう。特に、中長期的視点を欠いたままで、何でもありといったような形の景気浮揚策に走ったという点は、恐らく今後さまざまな形で、俗に言われます財政赤字のツケを回し、後遺症を残すものだというふうに理解をすべきであろうと思います。  今後、財政赤字累積の飛躍的な増大が日本経済のおもしになるだろうということは免れない。そういう意味では、短期、中長期のコンビネーションといいますか関係を、この際しかと考えるべきではないか。これが総論的な私の位置づけであります。  さて、個別な事項の第一点でありますが、経費配分において問題はなかったかという点は、来年度予算のやはり一番重要な点ではなかったかと思います。  八十一兆円規模の予算総額で、一般会計予算五・四%増、一般歳出でも五・三%増というわけで、久方ぶりの大型予算になったわけでありまして、これは冒頭申し上げたように、景気浮揚を図る上から見て、予算規模というのはある程度ふえざるを得ない。が、よく考えてみますと、景気浮揚の陰に隠れて、資源のむだ遣い、専門的に申しますと、資源配分の非効率がなかったかどうか、この点からの検証というのは、やはりどうしても欠かせないのであろうと思います。  冒頭、景気浮揚と財政健全化あるいは財政構造改革は両立し得ない、基本的には両立が難しいと申し上げましたが、そうは言っても、全体のパイをふやした中でも、ふやし方において濃淡がある、あるいはめり張りをつけるという視点、これはまさに重要な視点であろうかと思います。  伸び率で見ますと、科学技術振興費が八・一%、社会保障関係費が八・四%、公共事業関係費が五・〇%、これはふえた方でありますが、防衛費が〇・二%の減であり、エネルギー対策費がマイナス二・三%であるというふうに、一応伸び率だけで見れば、それなりのめり張りがついた格好にはなっております。  ただ、全体として言えば、本年度の当初予算というのは、財政構造改革のもとにおいて、言うなればキャップをかけて歳出の効率化を図ろうという形でスタートさせたものに比べますと、マイナスからプラスに転じた経費項目というのはいっぱいあるわけです。財政構造改革の精神、キャップをかけて削減してそのむだを取ろう、あるいは必要度が少なくなった歳出を削って、財政構造改革、財政赤字削減を図ろうという趣旨からいいますと、途端にマイナスからプラスに転じてしまった経費項目は、当然のことながら、言うなれば景気刺激という意味において新しい価値を与えられたということはありますが、経費は本来むだなく使うという視点に立ちますと、やはり大きな問題であろうと思います。  とりわけ、財政構造改革で問題になっておりました公共事業関係費、公共事業、これはやはり精査する必要があるだろうと思います。  毎年度の執行においても使い残しがございますから、来年度の公共事業関係費の伸びは、当初予算だけで見ると五%そこそこでありますが、そういう支出ベースで見ますと一〇%は伸びるだろう、こういうふうに言われております。景気対策としては、この規模を確保したのは、ある意味では結構かもしれません。しかし、前から言われておりますように、言うなれば本当に重要な社会的インフラに使われているか等々の点から見ますと、疑問なしとしない。とりわけ、土木型の公共事業から都市型へ、そういう視点がよく言われておりますが、果たしてこれがそういう形で生かされているかということになると、やはり問題があるように思われます。  例えば伸び率で見ますと、市街地整備は五三・八%伸びておりますし、公園の方も二七・五%伸びておりますから、伸び率にすると他の経費よりは圧倒的に多いわけであります。しかし、そもそも伸び率というのは、発射台が低ければ伸びは多くなるわけでありまして、そういう意味で、発射台というか、もともとの絶対額が低いこういうものは、絶対額の面から見ると、伸び率が大きいからといって、単純に、ふえたとは言いがたい面があるような感じがいたします。  そういう意味で、特別枠等々でめり張りをつけた予算編成をされたという点につきましてはそれなりの効果が見られますが、時間的制約もあったのかもしれませんが、まだ旧来型の、在来型のそういった経費配分になっていたという点は、やはり否定はできないだろうと思います。  ただ、最近、時のアセスメントという概念から、治山治水とかダムとか漁港とかというところで、役割の終わった公共事業については一応中止をするとか休止をするとかという方法をとっております。これは実にいい方法でありまして、ちょっと数がまだ少ないのが残念でありますが、そういう点もこれから、資源の効率的な配分という点からは、ぜひもっと実行すべきではないかと思います。  第二点は、税制面であります。  一応、恒久的減税という名のもとに、国税、地方税合わせて九兆円規模の減税が行われております。規模はそこそこ出たのでありますが、これが個人消費とか投資刺激にどれだけつながるかというのは、もう一つ疑問であります。  私は、特にここで申し上げたいのは、税制という視点から見て、この九兆円規模の減税がどういう意味を持っていたかということであります。  所得税に関しましては、定額法、定率法、いろいろな形でこれまでやられてまいりました。特に、定額法の場合には課税最低限を引き上げるということで、今回は定率法という形にしましたが、定率法といいましても、最高税率を所得税、住民税合わせまして六五%から五〇%に下げたという点は努力を多といたしますが、それ以外のところは一律に、所得税、住民税、二〇%、一五%の定額的な減税になっておりますから、言うなれば本格的な、税率を見直すとかあるいは課税最低限を考えるとかという改革ではございません。  そういう意味では、今回の所得税減税というのは、前回とあわせて、やはり本来の姿から見て、いいと思われる所得税の姿にゆがみを与えたと考えております。恒久的な減税とは言いつつ、税制改革の基本的な方向からいえば、あくまで仮の姿と言わざるを得ない。所得税を本格的に我が国の税制の中核に据えるなら、やはり課税最低限の引き下げも、あるいは累進課税の刻みの見直しも含めて、抜本的な改革がいずれ必要になってくるかと思います。  ただ、私は、税率のフラット化、つまり最高税率が今度下がったということについて言っておりますが、これは今後、二十一世紀を目指して、活力ある家計なり活力ある企業のためには有効な手段ではないかと考え、この点は評価をいたしております。  法人税率の方も一応公約どおり四六・三六%から四〇・八七%というふうに、表面税率で法人税と地方の法人税減税になりました。これはまさに、グローバル化という視点から見て、国際的水準にということで、それなりの目標は達成されたというふうに言ってもいいかと思います。  ただ、税率を引き下げることが先行いたしまして、実は法人税改革で重要な、課税ベースの見直しというのがおざなりになっております。引当金、準備金の話あるいは減価償却の話、あるいはそれをまとめた意味での租税特別措置をどうするかという問題が欠落しておりまして、やはり、課税ベースのあり方という議論をこれからやる中で、この税率引き下げを是とするか否とするかの議論が本格的に行われるべきでありまして、どうも片っ方だけの議論が先行している。そういう意味では、法人税に関しましても、やはりまだ恒久的な減税と言うにはちょっと距離があるような気がいたします。  いずれにいたしましても、歳出面と同様に、中長期的な視点から、法人税所得税を中心といたしまして、税制改革の抜本的な見直しがいずれ来ざるを得ないというふうに考えております。  それから第三の問題、これは財政赤字の問題でございます。  冒頭申し上げましたように、景気の方に足を踏み出せば当然財政赤字の問題が出てきますから、財政赤字がふえて大変だということは、実は、片っ方の目標を認めてしまった以上、そう大きくは言えないと思います。ただ、あくまでこれは短期的な面での政策目標の関係でございまして、やはり中長期的に見た場合に、財政赤字が抱える問題が日本経済にどういうインパクトを与えるかという視点は、今から考えておくべきであろうと思われます。  とりわけ問題は、公債依存度であれ公債規模であれ、数字を先ほど二宮さんお出しになりましたが、私がもう一つ強調したいのは、フローで見て、公債の発行額、つまり財政赤字がGDPの一〇%近くになっております。GDPの中で一〇%の財政赤字を抱えてそのまま長く続く国はそうないと思います。あの通貨危機を抱えたブラジルでもたしか八%ぐらいでありましょうし、長く財政赤字で苦しんできたイタリアも、例のマーストリヒト条約の規定によって、いろいろな操作はあったかと思いますが、三%まで下げてきたということがあります。  いずれにいたしましても、一〇%のままで将来いけるはずはない。何らかの措置をこれから本格的に議論すべきであろうし、それからストックの面で見て六百兆円というのは、まさにGDPの一〇〇%をはるかに上回るわけでございまして、これまた、この抱えた問題は深刻にならざるを得ないと思います。  マスコミの論調も、予算編成の段階までは景気刺激、景気刺激と言っておりましたが、一たんこの財政赤字の規模を見て、やはり将来を見たときに、唖然とするという意味もあって、かなり財政赤字に気を使った論調にもなってきているように思われます。  そういう意味で、今後何をすべきか。宮澤大蔵大臣もおっしゃっていますが、景気の動向と関係がございますが、やはり第二次の財政構造改革といったような視点が早晩必要になってくる。将来の国民負担増を言うと国民は今消費減税を回さないというような危惧を抱かれる方もいらっしゃいますが、国民は、合理的期待という面を、将来に延ばせば当然のこと将来そういうことが起こると思っておりますから、余り情報をあらわにしないで隠しておく方がおかしいんでありまして、やはり今から先のことを考えて議論しないといけない。  とりわけ今、長期金利が上昇し出しました。これはある意味で、市場がもう財政出動は手いっぱいであると、財政出動のツケが顕在化したというふうに受けとめるべきであろうと思いますので、この長期金利上昇を契機にして、やはり我が国の財政赤字のあるべき水準なり内容なり、どう解決すべきかということをこれから議論しなければいけない、このように考えております。  当面は、今話題になっておりますが、日銀主導のもとで、日銀のイニシアチブのもとで、国債の買いオペをするとか、あるいは十年債に偏り過ぎております国債の言うなれば発行の形態、これをもっと多様化するとか、いずれいろいろなやり方もあろうかと思います。まあ、禁じ手と言われます日銀引き受けというのは論外でございますが、この種の議論というのはこれから詰めなきゃいけない。  しかし、結局のところ、財政赤字が一国経済の規模に比して過度になってきたというのは、まさに否定すべくもない事実でございますので、財政構造改革というのは、それは手段でございますが、目標としては、財政赤字というものをどう減らすかという点がこれから大きな問題にならざるを得ない、このように考えております。  最後に、やはり、これからいろいろな政策立案が出てこようかと思いますが、私は、これはアメリカでもやっておりますが、必ず財源の裏づけをつけた政策論議をすべきである、このように考えております。  とりわけ、今、基礎年金の国庫負担率三分の一を二分の一にしようという議論が出ておりまして、その結果、二兆円規模の新規財源が必要だとされておりますが、これは消費税率の一%に当たります。したがって、この消費税率でやれというわけではございませんが、何らかの形で税源、財源を必要として国庫負担率を上げろというふうに議論がいかないと、単に上げるというだけでは、政策の整合性はございません。  そういう意味で、一例を申し上げましたが、すべからく、すべての面においてこういう配慮が欠けては、政策の立案としては不十分であろう、このように考えております。  以上、歳出、歳入、そしてその合わせたところの、収支バランスのところの財政赤字という点で、三点問題点を指摘いたしました。  以上でございます。(拍手)
  83. 中山正暉

    中山委員長 ありがとうございました。  次に、佐高公述人お願いいたします。
  84. 佐高信

    佐高公述人 私は、ある外国の銀行が募集しました川柳の紹介から始めたいと思います。  山藤章二さんなんかと一緒に私が審査に当たった川柳ですけれども、住専の問題のちょっと後でしたけれども、その一番の優秀作が、「国民を無理やり連帯保証人」というのが最優秀作でありました。そのほか、「通帳のしみかと見れば金利なり」というふうな川柳、あるいは「あの銀行昔の名前は何だっけ」というのもありました。これは、まさに今、「あの政党昔の名前は何だっけ」というふうにかえられるものだと思いますけれども、私は最初に、予算の問題について、政治家の発言の重みということを申し上げたいというふうに思うわけです。  もう絶対あの人とは組まないとか、その政党とは絶対一緒になんかやらないんだと言った、その昔というのが一週間前とか一カ月前とかそういう形の中で、幾らいろいろな言葉を費やそうとも、政治家の発言というふうなものの信用というのは、足元からみずから掘り崩しているということ。そういうふうなものの中で、どういう政治をやって信頼を得ようとするのか。この予算案への信頼感というものも、そういう中で大きな問題となっているんだということをまず申し上げたいというふうに思います。  自民党と自由党の連立によってこの予算というのは組まれているわけですけれども、私は、この自民党と自由党の連立というふうなものによって顕著な例として出てきたのは、大蔵省に対する姿勢の後退というものだろうと思います。  あの財政金融の分離というふうなことは、当然のこととして決まったはずであるのに、いろいろな形で理由をつけて後退してきている。それはまさに、両方の政党が大蔵省に対して全く弱いからということではないか。財政金融の分離というふうなものがいかに必要なのかということは、その財政金融の分離というふうなものがしっかりとなされていないために、金融政策の不手際を簡単に税金で穴埋めするというふうなことが出てくるわけですね、いわゆる公的資金の導入ということですけれども。  さっきの川柳の中でもう一つ、「転んでも起こしてもらえる金融業」というのがありました。まさに、なぜ金融だけがそこで助けられるのか。金融システムの秩序維持というふうなことが、いろいろ難しい言葉を使って持ち出されますけれども、本当にきちっとした形でそれがなされているのかということ。  私は、日本長期信用銀行日本債券信用銀行の国有化というふうな問題についても、多くの問題を含んでいるというふうに思います。  非常に易しく国民一般の感覚で言うと、北海道拓殖銀行はつぶしてよくて、日本長期信用銀行はなぜつぶしては悪いのかということは、いろいろな形で言ってもわからない。私なんかから言わせれば、北海道拓殖銀行の方がいわゆる一般庶民にはより影響の大きい銀行であるわけですね。日本長期信用銀行というのは、御承知のように、金融債を売って、そして企業に金を貸すということです。一般的な庶民への影響度ということからいえば、それははっきりと北海道拓殖銀行の方が影響が大きいだろう。つぶした後の北海道経済現状を見れば、まさにそういうことであるわけですね。  そのときに持ち出されたのが、いや、長銀というのは国際的な影響力が大きいんだというふうな話でした。では、山一証券はなぜつぶしてよかったのか。その辺が非常に不明朗であって、大蔵省の金融政策のずさんさというふうなものがはっきりとそこに浮き彫りにされているわけです。  私などは生来疑い深い人間でありますから、日本債券信用銀行日本長期信用銀行をつぶせないのは、例の金丸信さんの事件の尾を引いているからだろうというふうにある週刊誌に書きました。  どういうことかと申し上げれば、あの金丸信さんの事件というのは、脱税というのは、日本債券信用銀行のいわゆる金融債、ワリシンというものを無記名で買ってお金を隠していたということですね。その、無記名で金融債を買って、いわば脱税とかそういうふうなものの温床とするという方法が、今現在まだあるわけですね。ということは、日本債券信用銀行でやれたことが日本長期信用銀行でやれないはずがないということ。つまりは、日本長期信用銀行及び日本債券信用銀行もつぶさなかった、国有化という形にしたわけですけれども、それは、金丸信さんの事件のようなことがいろいろとあらわれては困るからではないかというふうに私は記事を書きました。  一般の庶民の気持ちもそういうことになるだろうというふうに思っています。北海道拓殖銀行をつぶしてその影響が大きいから、日本長期信用銀行のときはつぶさなかったんだというふうな言いわけもなされましたけれども、本当にそうなのかということ。大蔵省の、あるいは政府金融銀行に対する姿勢というふうなものが、きちっとした基準がなくて、非常に不透明で、さらには不明朗であるということが、公的資金の導入というものに対する国民の不満をさらにあおっている。銀行というのは、雨降りのときに傘を取り上げ、天気のときにしつこく貸して貸し賃を取る、そういうものだと言われますけれども、今、銀行に対する怨嗟というのは、本当にちまたに満ちあふれている。  私などは、企業経営者に対してかなり厳しい意見を申し上げますけれども、各地の商工会議所なんかからいろいろ呼ばれるわけですね。どうして私なんかが呼ばれるのかなと思うと、一般の中小企業経営者というのは、本当に銀行に対して頭にきているわけですね。その頭にきている銀行の悪口を私がずうっと並べると、かすかに留飲を下げる、そういう構造になっているわけです。自分たちの口では言えないから、私の口をかりていわばそれを言うという形になっている。それが皆さん方の耳にどこまで届いているのかということ。  さらに、あの自分たちででたらめをやった銀行というふうなものに公的資金を導入するということ。私は賛成ではありませんけれども、百歩譲ってそれがいたし方ないとして、公的資金を導入しなければならなくなったということは、銀行経営者としては明らかに失格であるわけですね。そんなのは当たり前の話。その失格の銀行経営者が引退もしないでそのままぬけぬけと居座る、それを許すというのはどういうことなのか。  公的資金の導入というのがどうしてもしようがないとしたら、少なくとも頭取退任というのは当たり前の話ではないか。そういうふうなことを突きつけられると嫌だから公的資金の導入はしり込みするとか、そんな話がどうして通じてしまうのかということを考えると、私は、そのくさった銀行から企業献金を受けている政党があるからだというふうに言わざるを得ないわけで、まさに一味同心というふうなことで、それでその銀行に対して厳しいことが言えないのだろうということになるのではないか。  この間の金融国会のときに私が非常に不満だったのは、少なくとも、その期間だけでも銀行からの献金というものをどうしてストップできないのか。それをストップしないで、銀行から金をもらっていて銀行についての審議をして、それが国民に通ずると思っているのかということを私はつくづく感じたわけです。  さらには、大蔵省の姿勢ということ。この予算の問題にも関係してきますけれども、この予算案の重要なキーパーソンとして主計局長の涌井洋治さんという人がいるわけですね。この人が、例の石油ブローカーの泉井純一という人から再婚祝いにかなり高額の絵をもらって、その泉井という人の脱税が発覚したら慌てて返した。慌てて返さなきゃならないようなものをどうしてもらうのか、私はもう信じられない思いですけれども、全然もらって不都合がないというものなら返さなきゃいい。返したということは、明らかに自分にとっておかしいところがあるということだろうと思う。  そういう人がある種キーパーソンとなって組み上げた予算というものを国民がどう見ているかということ。その辺、例えば大蔵省というのはどういうふうに考えているのか。何か能力があるとか、どんな能力があるのか知りませんけれども、疑惑を隠す能力とか疑惑を抑える能力とか、さまざまな能力がありますからそれはあれでしょうけれども、その人が当然、少なくともこの間の人事ではやめるだろうというふうな観測がなされていた。やめるどころか、今度の六月の人事では次官になるのは間違いないと言われている。そんなことが通るのかということ。また、大蔵省自身の中で、そういうものを通していいのか、そういう論議があの大蔵スキャンダルのさまざまな中でどうして起こってこないのか、自浄能力というものがないのかということを私は非常に悲しく思うわけです。  今オリンピックのさまざまな疑惑というのが問題になっていますけれども、あのオリンピックの疑惑の調査というものを見ていると、私はまさに大蔵官僚の調査というものを思い出す。身内の人間が身内を調査するということですね。そんなのできちっとした調査ができるはずがない。鬼がいることはちゃんとわかっているのに、鬼を避けていろいろな鬼ごっこをしているわけですね。自己申告に基づく調査というふうなものでさえ証券局長らが辞任しなきゃならなかった、そういう教訓がどこにも酌み取られていないで、その主計局長が堂々と居座ってこういう予算を出してくる。つまり、予算やそういうものへの国民の信頼感というふうなものをどういうふうに考えているのかということを私は問いかけたいと思うわけです。  それから、前のお二人からるる説明ありましたけれども、公共投資というふうなもの、また大盤振る舞い。小渕さんという首相に指導力とかそういうものを求めるのは無理なのかもしれませんけれども、何かとにかく花咲かじいさんみたいにまきゃいいんだという話で、私は、さらに日本を壊していくという感じがするわけです。  諫早の問題とか藤前干潟の問題とか、あるいは吉野川の可動堰の問題とかがようやく明らかになってきて、藤前とか吉野川については、少しはストップをかけなきゃならなくなってきた。そういうふうなところに来ている公共事業というものを、何が公共なのかということを、何がパブリックなのかということをきちっと詰めないで、今までどおりでばらまけばいいんだということで果たしていいのか。私は、公共事業というものに対して、公共にゼネコンとルビを振れと言っているんですけれども、そういうゼネコンプロジェクトというふうなものをさらにばらまいて、それでいいのかということ。  消費税の問題、税金の問題とも絡みますけれども、消費税を還元セールみたいにしているイトーヨーカ堂の消費が伸びているということは、私は、購買力というふうなものがないわけではないと思うわけですね。そういうふうなところをきちっと考えた形でなくてこういうふうな問題が出されてきている。  二宮さんと私は財革法の審議のときもここに出てまいりましたけれども、ついこの間のことなんですね。ついこの間そういうことがあって、今また逆のことが行われている。そういうようなことについても、何かやはり、ここに来て話をすることにもむなしさを覚えるという感じがいたします。  失礼しました。(拍手)
  85. 中山正暉

    中山委員長 ありがとうございました。     —————————————
  86. 中山正暉

    中山委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村田吉隆君。
  87. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 自由民主党の村田吉隆でございます。  各公述人皆さん方には、本日大変御苦労さまでございます。  きのうからずっといろいろな御意見をお伺いしてまいりました。朝からずっと聞いておりましたが、午後の御三人が一番バラエティーに富んでいる発言をされたかな、こういうふうに思います。  それで、問題は、今回の予算景気回復効果があるかどうかというのが一点。それにしても巨額な財政赤字というのはもう放置できないところに来ていますねと、これで論戦がなされてきたような気がいたします。  いずれにしましても、今佐高先生からは大変厳しい御意見をちょうだいいたしましたけれども、総じて、景気の今の状況に対して、これまで景気回復がなされなかった一番の根本原因は、やはり金融システムに不安があって、これがしっかりとしなかったからなのではないかということが大方の意見であって、そういう意味では、昨年秋にああいう二法ができまして、それで今、金融再生委員会でもって資本注入のいろいろな検討がなされている、条件や引き当ての基準とかいろいろなことが具体的に決められて、前よりももっと透明性のあるようなやり方が行われようとしているということは、大体の人が評価されていると私はこの二日間で理解をいたしました。  佐高先生がおっしゃるように、庶民は、私が地元に帰って金融問題についていろいろな議論をするときに、何で銀行に金をやらなきゃいけないのか、彼らは随分高い月給を取っているじゃないか、金も貸してくれないじゃないかと、それはとにかく非難ごうごうでありますけれども、私なりにずっと、小さな集会を開きながら、こういうわけでやはり一番の経済のかなめは金融問題なんだよという説明をしていきますと——私のところは大きな銀行一つもないんですよ。都市銀行一つもない選挙区。私のところは岡山でございますから、あるのは農協と郵便局と、中国銀行とか広島銀行、そういう小さな銀行だけなんですね。そうだな、日本銀行がつぶれていって、それに伴って信用収縮が起こっていくということはやはりよくない、聞いてみれば、税金を直に入れるわけじゃなくて、公的資金ということで、これがうまくいけば我々に戻ってくるかもしれないお金なんだということで理解して帰っていきます。  私は、銀行も失敗したと思います。銀行だけじゃなくて、日本国民がすべてバブルに踊って失敗したと思います。しかし、やはりこれがうまくいかなければ前に進まない、こういうことでありますから、個人の責任やなんかはともかくとして、佐高先生にも前向きの発言をいただきたいと思うんですが、先生いかがですか。
  88. 佐高信

    佐高公述人 私は、日本の国民すべてがバブルに踊ったとは思いません。銀行の問題でも、北海道の北洋銀行という銀行があります、例の北海道拓殖銀行という大きなものを引き受けざるを得なくなった。あの北洋銀行はバブルに踊っていなかったわけですね、武井正直という人。私との対談の中で武井さんは、自分は、不動産担保があれば何でも貸すというやり方はおかしいと思って、ずっとそれはとってこなかったと。ところが、大蔵官僚は、当時、おまえのところはもっと営業努力で金を貸せというふうな逆の指導をしていたということもあります。  私は、銀行がつぶれていいと言っているわけじゃなくて、責任のめり張りをきちっとつけなさいということを申し上げているわけです。  長期信用銀行の元会長の杉浦敏介という人が九億とか、あるいは日本債券信用銀行の元会長の頴川という人が何億とかという話がある。では、ああいう退職金の問題はどうなっているのか。その辺のところが、もちろん個人の問題だけ追及して済む問題ではないですけれども、あわせて個人の問題もきっちりと追及しないと国民の方は納得できない。個人の問題とシステムの問題が対立するものではなくて、やはりそれは両方きちっと解決していかなきゃならない問題だ。  そしてまた、地方に行きますと、私もいろいろ地方の銀行なんかにも呼ばれますけれども、やはりバブルに乗らなかったというのか、乗れなかったというのか、実際傷んでいない銀行もあって、そういう銀行との区別というのも私はきちっとすべきだと思います。先頭を突っ走って、いわば変な道に走った都市銀行に対してはやはりもっときっちりとあれをするし、地方の銀行にはもっときちっとある種の保護を加えるという、めり張りをつけてほしいということを申し上げているんです。
  89. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 ところで、佐高さんにもう一度質問いたしますけれども、久保田宵二という、詩人というか作詞家を知っておられますか。「山寺の和尚さん」という歌がありますね。あの作詞家は私の田舎の生まれなんですよ。そこは本当に山の中で、昔九千人からの人口がいたんですが、今は大体三千五百人ぐらい。それで、有権者が大体二千八百人ぐらいいるんですよ。となると、未成年者は数えるほどで、四百人とか五百人。  そういう町で、あるとき事故が起こりました。私の知っている人だったんですが、交通事故で、ぶつけられまして、内臓破裂。ないんです、病院が。もちろん近くに大きな病院はあるんですけれども、内臓破裂の手術を、十時間も十何時間もかけて、チームをつくってやるような外科の施設というのはないんですね。彼は幸いにして、本当だったら一時間半ぐらいかかるところを救急車がぶっ飛ばして四十分ぐらいで行きまして、辛くも一命を取りとめたんです、倉敷まで走りまして。よかったねと言うんですが、やはり道なんです、道、田舎でも。  それで、国民にとっていろいろな不安がありますけれども、過疎の村に住みまして一番心配なのは、やはり命ですね。人間ですから、生きていかなきゃいけない。石先生もおっしゃいましたけれども、よく従来型の公共事業とおしかりを皆さんから受ける。御三人は、前回の九七年の財政構造改革法案のときに同じようにお出になって、公共事業についてのいろいろな御批判もあった。だけれども、私のところなんかからいいますと、そこは命にかかわる。私はつくづく考えるのでありますけれども、昭和三十七年に法律ができまして、全国が均衡ある発展というか、国土の均衡ある発展ということで、みんながそれを思って田舎の方にも予算をといってやってきているわけで、そういう意味で、私は一概になかなか言いがたい。  今、佐高先生の話を聞きまして、全部がそうではないよと。だから、代表的に言うと、銀行が悪いねとか、そういう話になりましたから、私も、公共事業についてもそうなんだろうなと勝手に解釈をさせてもらいますが、私のところの実情をそう理解してもらいたいというふうに思います。  ところで、石先生にお伺いをいたしたいというふうに思いますが、今度の税制改正、九・四兆円の減税をやりました。私が見て、私も党の税調にも時々出ておりましたけれども、やはりいろいろなものが今度の税制改正に入ってきたような気がしますね。自民党の税調の中でも最後には、今度の税制改正の中では、税制で対処すべきものと、やはり歳出で対処すべきものとごっちゃになっています、だからこれは整理しなきゃいけません、そういう議論も出ました。確かにそのとおりだったと思います。  考えてみても、これは税制でやるべきでなくて、むしろほかの手法があった、そういう税制改正というか減税もあったと思います。しかし、そういうものを含みながら、今度は一緒に、めくらなべみたく、とにかく景気をよくしたいということでいろいろな施策が減税策にも込められました。落ちついて考えてみますと、もう次の税制改正は、今こんなときに言うとしかられるかもわかりませんが、増税しかないような気もいたします。  先生も、今度の税制改正でも、課税ベースの見直しというものも十分でないとおっしゃった。だから、今度の税制改正というのは、本当に長期的な視野に立って整理をして、それから、とにかく大赤字でございますから、これを解消していかなきゃいけない。二宮先生も大赤字の方についての警鐘は鳴らしておられましたけれども、私は、次は、やはり財政をどうやって立て直していくか、これをみんなで国民に示さなきゃいかぬところに来ているというふうに思います。  ただし、難しいですよ。私も十年前に選挙に出るときに消費税で大変な目に遭いました。私は無所属だったけれども、消費税には賛成いたしました。本当にそのときは大変だったんです。だけれども、次の税制改正というのは、多分大きな、増税といいますか、それを含むような大改正になってくるのではないかというふうに思います。しかし、一本一本かつてのようにやっていくとなかなか大変です。所得税でも課税最低限を下げなきゃいかぬだろうと想像します。それから、地方の財源でも、もっと安定的な税源を持ちたいということになるならば、やはり外形標準課税というものも検討してみなきゃいかぬ。  だから、そういう意味で、今度の税制改正というのは大変な作業になると思いますが、いわば、ちょうど私どもが、個別に一票の格差を選挙のレベルで是正していくのに行き詰まって、これをとにかくばっと全部でやってしまおうということで中選挙区制から小選挙区制にしたように、今度の税制改正というのは、ビッグバン的にやらないと、みんな一挙にやらないとなかなかうまくいかぬだろうなという気がしますが、先生のいいアイデアがあったら御披露をいただきたいというふうに思います。
  90. 石弘光

    ○石公述人 個別にパッチワークでやってもだめだろう、ビッグバンでやれ、そういう基本的構想、私も基本的に賛成いたしたいと思います。  ただ、それは、それなりの準備、それから綿密なる検討が必要かと思います。レーガン減税とかサッチャーの税制改革等々ございましたが、それはそれなりに基本的な哲学があったと思いますね。そういう基本的な理念、基本的な目標を立てる。例えば高齢化社会、一体どういう形で我々国民として負担をするのか、あるいは福祉サービスをどこまで要求するか等々のはっきりした目標を立てた後で、大がかりにやるなら一年だけで終わりませんから、やはり多年度のしっかりしたシナリオが必要になってこようかと思います。  ちょっと顧みますと、一九九四年、平成六年のときに、先行減税で、言うなれば大がかりな増減税のスイッチ、パッケージをつくりましたよね。それが三年後に消費税値上げになって景気を冷やしたと批判されておりますが、あのときにほとんど所得税の抜本的な改革というのは僕は終わっていると思う。その後何でこういうがたがたしたことが出てきたかというと、ひとえにやはり景気対策で、そのときそのときで追加的にくっつけられたということが税制を著しくゆがめていると私は思いますね。法人税もしかりです。  そういう意味で、法人税所得税そして間接税の体系を、全体としてどういう望ましいタックスミックスでやっていくかという基本的な兼ね合いの問題、それから先ほど申し上げた理念の問題、そういうものをしっかり立ててやる分には、私はビッグバン型というのは一つの手法であろうと考えております。
  91. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 二宮先生にお伺いをいたしたいと思います。  二宮先生、非常に系統立てて御説明をいただきました。私は意見に反対でございますけれども、ただ一つだけ、先生も、やはりこの巨額の財政赤字はとにかくサステーナブルではない、そういう御指摘をされました。では先生は、その場合において、どういう形でこの財政再建をなし遂げていくのか。ほかの点には処方せんが、少しずつ御意見があったように思うんですが、この赤字についてどういう解決方法を先生はお考えなのか、ちょっと御披露いただきたいと思います。
  92. 二宮厚美

    ○二宮公述人 財政赤字は収支のアンバランスですから、財政の収入面と支出面、形式的には二つに分ける必要があると思うんですね。  歳入面は、何らかの増収策が必要だ。増収の方法については、これは御意見が違うという御指摘でありまして、私も、例えば消費税の増税をやれというのは大反対でありますので、それには同調できない。ですから、あるいは石先生ともこの点は違いますが、法人税だとか所得税の改革につきましても、何らかの改革をもって増収策を図るというのは、ここまでは恐らく財政赤字対策でだれもが一致すると思うんですけれども、そのやり方については、先ほどの意見で言えば、法人税の課税ベースを今の租税特別措置を見直して拡大するとかいう点は賛成いたしますし、そういう改革を含めて増収策をとるべきだ。  財政支出面は、言うまでもなく、要するに構造改革と結びつけて浪費なりむだ遣いを省く、削減するというのが基本で、そのときに、先ほど申し上げました構造改革を支出の構造と結びつけて提起しなければいけないので、その代表が例えば公共事業であるとか国防費であるとか、あるいはその他のむだ遣いにつきましても、先ほど佐高さんが御指摘になったように、金融支援なども今回二・五兆円ですか、交付国債の現金化を図るというふうになっていますから、そういうところを改革するというふうに考えることが基本だということで、お答えにしたいと思います。
  93. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 いろいろな意味で、今、日本経済は大変なときに来ているというふうに思います。  マネーフローを見てみましても、一昨年の九月と去年の九月とを比べてみますと、ふえているのは、現預金がふえているんですよ。それから、国債、郵便貯金がふえている。それから、減っているのは、金融債が減っている。貸付信託なんかも、これは五年物ですから、ペイオフを前にして、預けかえないというので減っておる。それからあと預金は、ふえていることはふえているんだけれども、内容を見ると、多分、勝ち組と負け組というのは大幅に分かれているんじゃないかなという感じがするんです。  いずれにしましても、現預金は不胎化でしょう。それから、国債も郵便貯金も、そのままの形では民間にお金が流れるような状況じゃない。こっち方が民でこっちが官となると、ひどくマネーフローが左方の官に寄っちゃっているんですね。それを一生懸命、今、左から右へと戻そうとしているわけです。本当に公的部門が過大にしょっちゃっている、これをいろいろな意味で将来戻していかなきゃいけない。  だから、これからは、さっき言った財政赤字もそうなんですが、ソフトランディングをどうやってあらゆる面で図っていくかというのがキーワードになってくるんだろうというふうに思いますが、また先生方の本当に貴重な御意見を賜りたいというふうに思います。  これで私の質疑は終わらせていただきます。ありがとうございました。
  94. 中山正暉

    中山委員長 次に、鈴木淑夫君。
  95. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  お三人の公述人の方、お忙しい中をお越しいただきまして、ありがとうございました。  私の時間は非常に限られておりますので、最初公述人お一人お一人にずっと質問をさせていただきます。その後お答えいただき、それでもし時間が余っていれば、またお伺いいたします。  まず、順番どおりで二宮公述人でございますが、五つおっしゃったわけでございます。  まず、財政危機、大変だ、財政赤字が非常に大きいので、これを縮めるのは焦眉の急だとおっしゃったわけですね。  焦眉の急だという話を聞いた途端に、二年前に、その辺に座って、焦眉の急だ焦眉の急だと言った総理大臣を思い出しました。九兆円の国民負担増と三兆円の公共投資カット、全体で十二兆円のデフレインパクトを含んだ平成七年度予算を焦眉の急だと称して執行された。その結果は、御承知のように、前年度四・四%成長していた日本経済が、たちまちマイナス〇・七%成長になった。そして、本年度も恐らく二・何%かのマイナス成長、うっかりしたら来年度もだという状態に陥ったわけですね。  二番目に、公述人は、今の予算では景気対策としての有効性もかなり限られている、こう言ったわけですね。赤字は縮めなきゃいけない、しかし景気対策もこんなのじゃ足りないよ、こうおっしゃった。  三番目には、構造改革が大事だ。四番目は、国民生活。最後に、地方財政の充実も大事だとおっしゃった。最後におっしゃった三つは、全部金食い虫の話ですね。  一体どういう形で景気回復させながら焦眉の急の財政赤字を切っていくということが頭の中におありなのか、お聞かせいただきたいと思います。  二番目は石公述人でございますが、石さんは長い間政府税調にいらっしゃいまして、税制のエキスパートでいらっしゃいますので、お触れにならなかった税制上の問題を一つ伺いたい。  それは、今度の予算の総則に、将来消費税は、基礎年金、高齢者医療、介護という三つの高齢者社会保障の財源に充てていく、まあ福祉目的税化ですが、漠然とした福祉目的税化じゃなくて、この三つを挙げているわけですね。  御承知のように、この三つは、今、保険制度でやっている、ないしはやろうとしているわけであります。ところが、国民年金などはひどいもので、保険料を払っていないのが三分の一いるぞという話がある。高齢者医療についても、そういう保険料未納の問題があるし、同時に大変な金食い虫になっている。介護に至っては、まだスタートしていませんが、保険でやろうとしているわけですね。これは何と、年金から天引きしちゃうぞという、本当にやれるのかねというようなことを考えております。  いずれにしても、私は、この三つは、あらゆる日本人に保障しなきゃいけないナショナルミニマムだと思うんですよ。ナショナルミニマムというのは、保険料を納めた人だけに給付するということとは違うんですね。全部の日本人に保障するんだから、本来、保険制度になじまないんだというふうに思うんです。それを無理やりに皆保険、皆保険とできもしないことを言うから、未納がふえたりして保険制度ががたがたしているんだろうと僕は思います。  これまでは、保険制度は保険審議会、税制は税制調査会ということで、縦割り審議会でやってきましたけれども、もうここらで両方を統一的に考えなければいけない。私ども自由党は、この三つは保険制度から外して、そしてエクスクルーシブに消費税だけで見ていくということを考えておりますが、それについての石公述人の御意見を伺いたいと思います。  最後に、佐高公述人でございますが、自自連立で大蔵省に対する態度が後退したというお話でありますが、佐高さんは覚えていらっしゃいますか、二人でテレビに出て大蔵省の財金分離を議論したことがありますね。もう随分前です。恐らく私どもが火つけ役だったと思います。私は、財金分離を強力に言っていたんですね。だから、佐高さんとは意見が一致して、第三者が僕らを攻撃するという形のテレビに何回も出ました。ですから、私自身その信念は全然変わっていないですね。  ただ、今は大変な金融システム危機なものですから、いわば戦争している最中に軍隊の編成がえをする、あるいは急流で馬を乗りかえると言ってもいいんですが、これは賢明じゃないだろう。どうしても来年一月から完全分離というのは、ちょうどそういう感じになるじゃないか。だから、着地は完全分離なんだけれども、途中のプロセスとしては、どうしても来年一月からだということにこだわるのはどんなものかねというのが私ども自由党の意見です。  着地は、私どもは行革大綱のとおりでいいと言っているんですね。行革大綱は、着地は完全分離です。ただ、当分の間、金融システムががたがたしている当分の間は共管でいこうと書いてあります。だから、この当分の間というのを信じない人は、着地は完全分離じゃない、こう言うわけですね。私どもは、これは文字どおり、金融システムが落ち着いたら完全分離だというふうに考えていますので、その点についてどうお思いか。  それからもう一つ、長銀や日債銀をつぶさないで拓銀をつぶしたじゃないかとおっしゃいました。今の金融再生法に基づく公的管理というのは、これは整理に入っていると解釈するか、生かしたまま抱えて、手術をして悪いところだけ取って生きたまままた民間へ出していくと考えるか。後者の考え方佐高公述人はしておられると思うんですね。  私どもは、それではいけないと思っているんです。公的管理の中で事実上整理しちゃうんだ、いい部分だけを売っ払うんであって、これはやはりつぶすんだというふうに考えているんですね。実は、この点の見解が食い違ったものですから、私ども自由党は、最後の段階でこの金融再生法の共同提出からぱっと外れたんです、そこがはっきりしなかったから。  そういうわけなんですが、お三人の公述人の御意見をそれぞれ伺いたいと思います。
  96. 二宮厚美

    ○二宮公述人 では、簡潔にお答え申し上げたいと思います。  財政構造改革法は、さきに説明しましたように、赤字国債の削減ないし財政危機の打開を、社会保障には手厳しい圧縮、それから公共事業には建設国債で比較的甘い、そういう両方を組み合わせて提起をした。だから、その財政構造改革の精神を、ある意味で逆転する。逆転するというのは、財政構造改革を社会保障優位に切りかえるということですね。それとあわせて、つまり、社会保障優位に切りかえるということは、国民経済全体から見れば、政府消費及び国民の家計支出消費を対GDP比引き上げるということになりますから、それに基づいて経済構造を切りかえながら景気の浮揚を図る。  だから、内需拡大を福祉や社会保障主導型に切りかえて、それで景気の浮揚を図りながら、つまり、歳入面では増収を期待しながら、長期的に財政危機の打開を図る、アウトラインからいたしますとそういう構想だということを申し上げておきたいと思います。
  97. 石弘光

    ○石公述人 保険料でやるかタックスでやるか、これはまさに各国各様の選択がございますから、一様に言えない。私自身も、実はこの点についてまだ決めかねている面もございます。  何を決めかねているかというと、タックスでやる場合にどういう税目があるかということで、今御指摘のように、消費税を福祉目的化という形で目的税化していこうというふうに話が少しずつ進んでいるようでありますが、もしか国民の、消費税の目的税化でおっしゃった三つの福祉財源を賄うということについてあらかた合意が得られれば、私はタックスでやるのが筋かとは思います。ただ、消費税には非常にアレルギーのある国でありまして、その辺をどうこれからクリアしていくかという大きな問題がある。  そういう意味では、ちょっとまだ、断定的にどっちでやって何でやるというよりは、どういう手段があるからこっちだと、僕はちょっと逆の方向を考えておりますので、今どちらというふうには申しかねます。ただ、保険料の欠陥があらわになってきた現在、タックスの比率をだんだんふやしていかざるを得ない情勢にあるかなという点は認識しております。
  98. 佐高信

    佐高公述人 あのテレビのときに、同志として厳しく大蔵省を追及した鈴木さんの意思の変わらないことを信じておりますので、大蔵省に籠絡されることのないよう、よろしくお願いします。
  99. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 終わります。
  100. 中山正暉

    中山委員長 次に、小林守君。
  101. 小林守

    ○小林(守)委員 民主党の小林守でございます。  公述人の諸先生には、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  最初に、佐高先生の方にお聞きしたいと思います。  今日の経済状況の中で、戦後最悪の雇用不安、そして将来生活への不安にさらされて、国民は消費マインドを萎縮させ、自己防衛に走っている、こんなふうにも言われているところでございますけれども、人間というのは、そういう後ろ向きの側面と、それからやはり、そういう状況の中でも自立して将来を何とか考えていこうというようなプラス思考も働くのではないかというふうに思います。  経済不況というのは、もちろん経済的な仕組みというかシステムの中で不況になる、需要供給の関係でなるという側面と、それをもたらすのはやはり人間である、人間の欲望、人間の意識、これが大きな影響を与えているではないか、このように思うわけであります。  そういう点で、信用収縮という言葉が、この経済不況と別の言い方がされているんですけれども、これは経済的な、金融的な言葉であると同時に、人間の、人間に対する不信とか、信頼できないとか、そういうモラルハザード社会、先ほど先生がお触れになりましたいわゆる政官業の腐敗、モラルハザード、自己責任をとらない、こういう今日の社会の病というか、ここに、国民全体が消費マインドを冷やしている、後退をしているという側面があるんではないか、私はこのように思うんです。  もう一方では、このような状況の中で自分を守るために、できるだけ物を買わない、質素、倹約、そしてシンプルライフ。こういう形の中で、今までの自分たちの暮らしは本当に豊かだったのか、自分たちは本当に必要な物を買って消費していたのかどうか。本当は必要のない、むだな物や情報をあさっていたのではないか、それが豊かさ、幸せと勘違いしたのではないか、こんなふうな見直しがかなり進んでいるのではないか。あえて言うならば、意識の変化、価値観の変化、ライフスタイルの転換へと、国民はここで大きな、二十一世紀型のライフスタイルを求めようと模索をしているんではないか、このように思います。  そして、そのような生き方が、例えば地球環境の問題や資源エネルギーの問題、そういう視点から考えても最も望ましい方向ではないか、このような考え方もできるわけでありまして、そういう点で、むしろ量から質への大きな転換が進んでいるのではないか。このように考えるならば、いわゆる消費性向がしぼんでいる、GDPの成長を経済回復不況脱出のメルクマールとする考え方は、大きく転換されていかなければならない時代が来ているのではないか、このように思えてならないのですね。  そういうことで、質的な転換をはかる物差しがまだできていないということでございますが、少なくとも、供給過剰だ、そして何とか新しい需要を喚起したいということなんですが、既に需要の中身は変わってきている。しかし、供給の体制なり供給の中身は従来どおりだ。そういうような中に、私は、いろいろ財政出動をしながら未曾有の財政危機をもたらし、景気経済対策を打ってきながら景気回復に向かわないという今日の大きな原因に、そのような質的なギャップが生じているんではないか、このように思うのです。  先生の憤りのお言葉、大変私も共感をしながら受けとめたのですけれども、そういう価値観の転換についてどのようにお考えになっていられるか、御意見があったら教えていただきたいと思います。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  102. 佐高信

    佐高公述人 何か文明論的で難しい御質問でしたけれども、私は、質と量の問題は本当にそのとおりだと思います。  例えば、皆さん御承知のオリックスという会社があります。これは昔、オリエントリースと言った会社です。リース会社では、日本リースという長銀系のリース会社が一番先発の会社だった。この日本リースは、去年の秋、倒産ということになったわけですね。そのほぼ同じ時期に、オリエントリース、オリックスは、ニューヨーク証券取引所に株式を上場したわけですね。これは余りにも対照的な明暗だろうというふうに思うわけです。ですから、すべての企業が、あるいはすべての経営者がバブルに踊ったのではないということを、まずはっきりさせておきたいということ。  それから、オリックスという企業は、もちろん三和銀行が発足には関係しておりますけれども、三和銀行から取締役だった乾恒雄という人が派遣されて、後に社長になるわけですけれども、乾さんは、派遣されると同時に三和銀行の出向をみずから切るわけですね。銀行のしっぽを切って、自分がいわば銀行の支配というふうなものを受けないというふうにして、当時四十五歳だった宮内義彦という人を社長に抜てきする。そういうことは、普通、銀行支配が強いところではできないわけですけれども、そういう銀行の支配からの脱却ということを目指したオリックスがニューヨーク証券取引所に上場を果たし、同じ時期に長銀丸抱えの日本リースが倒産したというのは、非常に私は示唆するものが多いというふうに思います。  ちなみに、ニューヨーク証券取引所というのは非常に審査の厳しいところですね。あそこに株式を上場している日本企業というのはわずか十社ぐらいで、金融関係では東京三菱銀行のみなんですね。その辺のところの問題もあろうかというふうに思います。
  103. 小林守

    ○小林(守)委員 二宮先生に同じような関連の質問なんですが、私は、経済的な学、全く素人でございますが、ただ、いろいろな雑誌などで、昨年ノーベル経済学賞を受けられたのは、アマーティア・センというインド出身の経済学者だそうであります。もちろん詳しく知っているわけじゃないのですけれども、経済と倫理の問題を解明された功績を非常に評価されてノーベル経済学賞をいただいたというようなことなんです。  実は、その経済学と倫理という関係の中で、江戸時代、幕末なんですが、小田原出身の藩士なんですけれども、その方が、終えんの地は栃木県の今市なんですね。この方が、いろいろ社会事業、今でいうと土地改良事業みたいなことをやって、農村改良に努めてきたのですね。明治でいえば殖産興業的なことをずっとやってきた方なんでしょうが、今、大きな見直しをされております。  その二宮尊徳の思想の中に、実はびっくりしたのですが、道徳のない経済は犯罪であるということを言っているんです。その裏返しで、経済のない道徳は寝言である、これを言っているんですね。非常におもしろいという感覚で受けとめたんですが、江戸時代の社会的な実践活動家の言葉なので、いろいろ実践に基づいた直感力というか、そういうもので話していることなんだと思います。  もちろん経済的な社会環境は違うのですけれども、しかし、今世界の経済が抱えている問題を、もう江戸時代にも同じようなことを、規模は違っても質的には同じようなことを受けとめていた方がいるんだなというふうに思って、大変びっくりしているのです。  同じ二宮先生という、何か御先祖様かどうかわかりませんが、もしそのことについて御意見がありましたら、お聞きしたいと思います。
  104. 二宮厚美

    ○二宮公述人 家系上は全然関係ありません。  ただ、今お話しになりましたアマーティア・センは、たしか私の記憶では二冊ばかりは翻訳がありまして、それを読んだ限りで申し上げますと、いわゆる学説上は、福祉を人間の潜在的能力、つまりケーパビリティーの発達という点から押さえて、それで例えば国連の人間開発ないし人間発達報告書などに大きな影響を与えた、世界的な福祉に対する考え方あるいは開発に対する考え方を改めて提起した、これが最大の学績といいますか業績だと思うのですね。  この視点で、もし日本でもそれを生かすといたしますと、やはり今お話しになった人材、日本の国民の福祉の指標を、日本の国民の諸能力の発達、とりわけ潜在的な能力がいかに発達していくのか、その展望の中で福祉の諸制度の改革を図る。  例えば、先ほどお話しになりました介護保険の話に即して言いますと、老人にも残存能力というのはあるわけですね。この能力を引き上げるためにヘルパーさんなどのさまざまな介護の仕事があって、ですから、単に身の回りの世話をすればいいというのではなくて、その老人なら老人の発達といいますか、残存能力そのものの維持や発展のために福祉の諸資源を活用していく、そういう考え方になるわけです。  これらを全般化いたしますと、日本が持ち合わせている、今お話しになった人材だとか資源の多くを極力人間の諸能力の発展に向けて活用していく。資源小国でありますから、まして日本の場合には、センなどが言っているような潜在能力アプローチで福祉そのものの充実を図るということが発展途上国に対しても大きな貢献をするのではないか、別な意味での国際貢献として大きな意味があるのではないかという意味で、倫理だとか福祉の視点というのが問われているように思います。
  105. 小林守

    ○小林(守)委員 ありがとうございました。  それでは、続きまして、先ほど石先生のお話の中で、とにかく中長期的な財政の視点を欠いた何でもありの予算ではないかと、こういうことに尽きると思うのですけれども、しかし、このような状況の中で、とにかく限界に来ているということで、遅かれ早かれ第二次財政構造改革を視点とした取り組みが必要になってくる、このようなことをお話しされたわけなんです。  先生の「国の借金」という文庫本をちょっと読ませていただいているのですけれども、その中では、こういう未曾有の財政危機の中で、もう後のない、初回から大魔神が登場するような三七・九という国債依存度の状況でありますから、もうこれ以上の国債発行は、まさにクラウディングアウトですか、そういう状況になるだろうし、長期金利の上昇という形がさらに強まってくるだろうということなんですが、そういう形で後がないということになるならば、とる道は二つしかないというようなことが書かれておりました。  一つは、国債の日銀の引き受け、禁じ手と言われているようなところですね。買いオペならいいじゃないかというようなお話もありますし、また、イタリアなどでは七〇年代にそういう国債中央銀行引き受けというのを金融政策としてとったというような経過もあるようでございますが、日本の戦前戦後などで、とにかく国債が紙っぺらになってしまったというような経験というのが、我々はちょっとわからないんですけれども、相当根強く国民の間には残されているのではないかと思うんです。そのハイパーインフレの恐怖みたいなもの、こういうようなことも将来的につながっていくんじゃないか。  まさに公共事業費調達のための、戦費調達のための財政インフレ政策というか、そして国の借金を棒引きしていくようなやり方、こういうことが選ばれてはならないというふうに思うんですが、ただ、時限を区切ってとか、一定の期間の中でのものであれば、一つ金融政策として成り立ち得るのではないかというような議論もあるようですね。  そういうことで、国債引き受けについて、既に新聞等でも、また官房長官などもちらっと言っているようなところもあったようでありますが、これは本当にないことなのかどうか。もし選ぶということならば、私は、ますます破滅への道を、財政的な破局の道を歩むことになるだろうというように思うんです。  そのほかに、もう一つは、おっしゃったように、これまた国民に厳しいことをしなきゃならないと思うんですけれども、財政構造改革への道しかない。  このどちらかだというようなことなんですが、私は、何でもありという状況の中で、しかも〇・五成長を達成することが政権の命運をかけたことまでになっていますから、やってくるのではないかなと思えてならないんです。また、それをやらないとするならば、やはり政策転換をしなきゃなりません。  第二次の財政構造改革をやるとなれば——私は、少なくとも自自連立政権では政策転換はできないのではないかというふうに思えてならないんですよ。というのは、やはり既得権益の中で、しがらみ、それからそういう権益擁護をせざるを得ない、またそれが政権基盤でありますから。そういうことに立つならば、私は政策転換を図るのであろうというふうに思うので、やはり破れかぶれのかけに出てくるんじゃないかと思えてならないんです。  その辺について、石先生の方から、それからお二人の先生の方に、御意見がありましたらいただきたいと思います。
  106. 石弘光

    ○石公述人 私は政治評論家でもないので、自自連合がどういう政策転換をするかというのはちょっとわからないので、恐らく佐高さんがお答えくださるかもしれません。  御質問に沿ってお答えいたしますと、何でもありというのは、よくないという意味で私が使っているのでありまして、もうこれは極力これで最後にしてほしい。  そういう意味で、これからとるのは、オーソドックスな、正統な形で国の借金、財政赤字を解決する方法を選ぶべきだということになりますと、当然のこと、日銀引き受けの禁じ手というのはとり得ない。時限的に期限をつけてという議論もありますが、これはもう過去の歴史が言うとおり、こういうのは大体守られないだろうし、一たん踏み出してしまいますと、とめどなく多分行くであろうと思います。  何といっても根っこにあるのは財政赤字が多過ぎるということですから、地道な行動を踏まえ、それを減らすべく努力をまず第一にする。そのためには、やはり財革法。これは歳出カットか。公債というのは将来の税負担を担保にした借金でありますから、そういうことからいえば、公債を一たん発行してしまえば、元利償還は後の世代の納税者が払うべきものでありますから、それを愚直に言うか。そういう形で、国民の不人気になってもいいからやっていただかなければいけないんじゃないか。  そういう意味で、これからの政治家先生方は大変だなと思っております。私も側面から大いにサポートはしたいと思っています。
  107. 佐高信

    佐高公述人 自自連立では政策転換ができないのではないかというお話、私もそのとおりだと思います。
  108. 二宮厚美

    ○二宮公述人 日銀引き受けにつきましては、今の石先生と同意見で、絶対やってはいけないし、そう簡単にはやれないというふうに思っています。  ただ、日銀引き受けは、形を変えた調整インフレーションの議論だと思うんですね。日銀引き受けでなくても、何らかの形でインフレに依存をする、買いオペの発動を持続的に進めるというのもそういう流れになると思うんです。だから、形を変えて日銀引き受けと同じような効果を期待するような流れが出てくる可能性が強くて、それに十分警戒しなければいけないんじゃないかというふうに思います。
  109. 小林守

    ○小林(守)委員 まだいろいろあるんですけれども、時のアセスのことで、石先生の方で触れられておりましたけれども、まだまだ対象化が少ないのではないか。  要は、財政構造改革の中で、やはり歳出構造の見直しというのが相当大きなポイントになるんだろうというように思うんです。そういう点で、土木型から都市型への転換とか、時のアセス対象事業のさらなる拡大というか、こういうことが言われておりましたけれども、公共事業の中でも例えばどのような事業が、まあ先送りしてもいいのではないか、これはむだじゃないかとか、いろいろあろうかと思うんです。ビッグプロジェクト等についての見直しの、時のアセスの視点、そして対象事業について具体例等がありましたらば、教えていただければというように思います。
  110. 石弘光

    ○石公述人 先ほども申し上げましたが、都市型といってもなかなか定義が難しい。しかし、その中を拾っていきますと、市街地整備であるとか公園であるとか、ほかのものも入っておるかもしれません。しかし、こういうものは、今まで比較的なおざりにされていたというか、ウエートは少なかったわけでありますから、ちょっとつけると伸び率はふえるんですよね。伸び率の上からだけ見ていたのではちょっと誤解があるんじゃないかという意味で、この点に触れました。  ただ、地域経済の活性化とかなんとかというのは、景気刺激の根っこになりますと、ばらまきとは言われつつ、どうしたって土木型にならざるを得ないのが常でしょう。そういう意味で、私は、道路を、道路特定財源というような格好で揮発油税等を入れ込むような制度、こういうものはやはりもうそろそろ見直すべきではないか。そういう視点から見まして、道路であるとか港湾であるとか農業基盤であるとかという旧来型のは減ってはおりますが、やはり長い目で見て、これをもっと都市型の方に組み込む。上下水道であるとか市街地であるとか、あるいは都市の中の高速道路でもいいと思いますし、そういうふうに、もう少し具体的に目に見えるような格好のものも出てほしいなというふうに期待はしております。
  111. 小林守

    ○小林(守)委員 それじゃ、時間はまだ少しあるんですが、終わりたいと思います。
  112. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 次に、斉藤鉄夫君。
  113. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 公明党・改革クラブの斉藤鉄夫です。  三人の先生方、きょうは本当にどうもありがとうございます。  それでは早速、まず二宮先生にお伺いをいたします。  先生のお話の中で、今の不況原因である需要と供給のギャップ、そのギャップを、公共事業を中心にして埋めるという方法ではなくて、供給側の努力として供給側の能力を福祉型、福祉主導型に変える、そういう産業構造の転換をもってこの需給ギャップを埋めるべきだ、こういうお話がございました。  私も趣旨は大賛成なんですけれども、具体的にどのようにしてそういう改革をしていくのか。我々も、実は国会でも党内でもいろいろ議論をするんですが、全然具体的なイメージがわいてこないわけなんです。その点についてお伺いしたいのが一つ。  それからもう一つは、先生、お話の中ではお述べにならなかったんですが、今回の税制改正案、抜本的な改正であると評価する声と、それから今の時期にやるのは不適当なのではないか、つまり、昨年に比べて負担増になる層、年収七百八十万前後と言われておりますけれども、それ以下の層にとっては実質的に増税になる、景気対策として行う減税としては不適当ではないか、また金持ち優遇ではないか、このような指摘もあるわけですけれども、この税制改正に対してのお考え。この二つをお聞きいたします。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 二宮厚美

    ○二宮公述人 最初の、福祉主導ないしは福祉充実型ですが、例えば公共事業ということにいたしますと、これは、例えば環境保全の、いわゆるアメニティー保全型の公共事業に切りかえる。あるいは、今圧倒的に福祉の施設やサービスが不足していますから、例えばこれからスーパーゴールドプランというのを厚生省がおつくりになるようでありますけれども、そこに必要な福祉関係の人材というのは、供給も徐々にはふえつつありますけれども、まだ圧倒的に不足しておりますから、これは福祉先進国のスウェーデンだとかデンマークと比べてみれば明らかで、したがって、それらの供給能力の、資源の再分配をやる。そのときに、福祉充実型といいますのは、後の話にかかわりますが、必ず所得再分配を同時にやらなければいけない。  だから、資源の再分配と所得の再分配を統一して、福祉寄り、福祉にシフトして遂行するというのが基本で、それに伴って施設の転換であるとか人材の転換を進めるということが極めて重要ではないかというふうに思います。  例えば、福祉の関係の費用といいますのは八割方が人件費ですから、医療費が五〇%にしましても、教育費も、大体教育費の八割は人件費でありますから、その人件費に金がある意味で回るということなんですね。いわゆる公共投資の、物に回るのではなくて、人件費に回りますから、その人件費に回った分が消費に回るわけです。それによって、今の過剰な供給能力が消費を通じて吸収される。そういう形をとりますので、すぐというわけではありませんけれども、長い目の経済構造改革になるのじゃないか、こういうふうに考えます。  それから、後の、七百九十四万円でしたか、八百万円以下の定率減税についての効果、これは増税ではないかという御指摘は、そのとおりであります。大蔵省が試算の結果を発表しておりますが、大体サラリーマン世帯の七割から八割ぐらいは八百万以下の所得階層でありますから、所得減税というふうにいっても、定率減税と昨年の定額減税というのは質は違いますけれども、来年についていうと、これまでの流れから見れば非常に高負担で、これが厳しい消費抑制効果も発揮しかねない、こういうことだと思います。
  115. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。  次に、石先生に二点にわたってお伺いします。  一つは、グローバルスタンダードということが言われて、アングロサクソン流の価値観で自由競争第一、その結果として、今の世界経済はカジノ経済になったと言われております。貿易決済の三十数倍という金融取引が行われている。私はもともと技術者なんですけれども、まじめに働いて物をつくって生きていくというのがばからしくなる、そんな風潮も呼びかねない、そういう状況でございます。  私は、アングロサクソン系のああいうグローバルスタンダードがもう唯一絶対の価値なんだというふうな感じできている今の考え方を根本的に改めて、やはり働くこと、物をつくるということにも何らかの大きな意義を見出せるような、そういう経済にしなくてはいけないと思うのですが、そのためには、やはり何らかの規制、それから、今のIMF体制、アメリカ主導のIMF体制から変えて、例えば世界中央銀行的なものをつくるとか、そういう必要も出てくるのではないか。そういう中で、日本やアジアの価値観にも合った、そういうものをつくり出していかなくてはいけない、新しい価値観をつくり出していかなきゃいけない、このように考えるのですけれども、先生の御意見をお伺いしたい。  それから、二つ目の質問は、先ほど二宮先生にした、税制改正に対する基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  116. 石弘光

    ○石公述人 第一点は、大変大きな問題で、お答えしにくいのですが、まさに、物の価値、物づくりの喜びがなくなってきたというのは、バブルの頂点のときの、土地なり株で大もうけした、その要因が残っているということだと思います。ただ、バブルがつぶれまして、今、日本でも物づくりの再認識が起こってきましたので、アングロサクソン型のものが恐らくこのまま続くとは私は思いません、アメリカ状況を見ましても。  と同時に、最近「国家対市場」という本がえらく売れておりまして、市場と国家の間の関係はどうなるかということが新しい視点として出てきております。一方に振り子が振れますと必ずもとに戻ります。そういう意味で、私は、市場の失敗なり、市場至上主義ではないそういう世界がこれから出てくると思いますので、健全なる方向にこれから動き、かつ、政府なり国家の役割というものが再認識されて、どうあるべきかという議論が出てくるだろうと思います。  市場万能ではございません。私は、そういう意味で、あるところでは規制も必要でありましょうし、政府も、乗り出すべきときには乗り出すことが出てくるだろうと思います。ただ、世界政府まではちょっと話が恐らくいかないだろうと思いますが、国家間の協定等々、EUがもうできましたから、そういう格好の協定とか協調で、ある程度のところまでいくかもしれません。  税制改革は、御質問は恐らく、所得税減税が、ある低所得層以下、中低所得以下は増税になるじゃないかということだろうと思いますが、確かに、表面的に見ればそういうことがあるかと思います。  ただ、減税は、このところ立て続けにやられておりまして、どこを出発点にして見るかによって随分変わってくると思います。  十年度に四兆円規模で特別減税、つまり定額減税をやりましたから、それを経た後ならば、それだけ減税した後ですから、恐らく階層から見て増税になるところが出てくると思いますが、そういういっときの臨時的な増税ではなくて、その前の、九年度までの定率減税から比べれば、各階層が今回の減税でやはり減税になっているというので、その点は、かなり定義の問題があると思います。  と同時に、定額だけでやっていきますと、うんと税を払っている人に対して恩恵がいかないという意味で、今回みたいに定率に切りかえる。定率もややあいまいな定率でありますが、最高税率を下げるというようなことがあっても、私はいいのではないか。  したがって、単一年度だけ見るのじゃなくて、数年トータルで減税の幅等々を見る方が重要ではないかと思っています。
  117. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。  佐高先生に二点お伺いいたします。  一つは、今回の景気低迷、金融システム原因があるとか需給ギャップとか言われておりますが、長期的に見ますと、私は、日本の製造業の技術力そのものがやはり相対的にかなり低下してきた、そのことにあるのではないか。  いろいろな技術力指標を見ましても、一九八〇年代までは日本も結構頑張っていたのですが、九〇年を境にして、特にアメリカとの技術力が逆転し、今その差がどんどん開きつつある。一つ日本の民間会社の技術開発力がかなり低下してきたということを感じておりまして、それも長期的に見た場合の景気低迷の一つ原因ではないかと思います。  先生の目から見て、この日本の会社の研究開発力、技術力の低下、これをどのように考え、見ていらっしゃるか、また原因はどこにあるとお感じになっているかという点が一つ。  それから、今回行政改革ということがこの予算委員会でも余り議論されませんでしたけれども、省庁再編ということが言われているわけですが、抜本的に国の基本的な仕事の見直しをして、スリム化をして、それによって財政赤字を減らしていこうという議論がちょっと最近小さくなり過ぎていると思います。その点、行政改革に対しての先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  118. 佐高信

    佐高公述人 最初の、日本の技術開発力の問題ですけれども、日本の会社組織の問題にも関係があるんだろう。要するに、例えば欧米の場合は、やはり個人というのがある種尊重されていますから、いろいろな特許なんかあれした場合には、その人にかなり、報酬といいますか、そういうものがあるわけですね。ところが、日本の場合は、あくまでも一社員というので、月給が特にそれで上がったりするわけじゃないわけですね。そういうふうな一つ日本システム、体制というふうなものにも関係があるんだろう。  それから、やはりさっきから話になっていますバブルの影響というものも非常に大きくて、まさに御質問のように、技術者が逆に金融のデリバティブかなんかやったりして、あたら才能を無にするというか、そういう傾向もありますよね。そういうふうなものも一つの大きな原因なんだろうというふうに思います。  それから、次の、省庁再編と財政構造改革の問題ですけれども、これは私もちょっと悩むところでありまして、省庁再編の問題では、行革については大蔵省に対してかなり厳しくちゃんとやれという立場ですけれども、財政構造改革は、ちょっと大蔵に応援したいかなという感じもあるわけで、その辺がちらっと分裂しているところでございます。
  119. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  120. 中山正暉

    中山委員長 次に、春名直章君。
  121. 春名直章

    春名委員 日本共産党の春名直章です。どうぞよろしくお願いします。  三人の公述人皆さんには、本当にきょうはありがとうございます。  二宮先生にお伺いします。  九九年度の予算案減税ですけれども、先ほどの御質問にもありましたが、差し引きでは残念ながら七、八割が増税にならざるを得ないということになります。こうなりますと景気にどんな影響をもたらすのかということ。  それと、効果的な減税という点でいえば、私どもが言っております消費税減税ということがやはり一番効果があるのではないかと思っておりますけれども、その点についてのお考えをお聞かせください。
  122. 二宮厚美

    ○二宮公述人 政府の来年度経済見通しの一覧表、たまたまこれをいただいたのでありますけれども、これで見ますと、来年度は〇・五%の成長を見込んでいて、そのよりどころは、民間の最終消費支出、これが〇・五%の伸び、それから民間の住宅が七・二%の伸び。民間シンクタンク、たしか二十数社だったと思いますが、その予測は、平均いたしますとマイナス〇・五%の伸びだろうと。政府の予測と上下一%違うわけですね。  政府の予測は、明らかにこれは消費住宅という、国民の家計と結びついた、国民の所得と結びついた消費及び住宅の伸びを当て込んでいるわけですね。ということは、要するに、可処分所得なり実質消費なりを推進したり安定化させないと政府経済見通しは実現できない。民間のシンクタンクの方は、ややその点否定的で、その否定的な要因の一つが、減税というふうに言っているけれども実質は大半の国民にとって増税ではないか、これが根拠になっているわけです。  その意味で、先ほどの御質問の、つまり実質増税で、しかも可処分所得が昨年だけでも四兆円減っている、そこへさらに増税が加わってまいりますと、消費及び住宅にてこ入れができるかといったら、非常に難しい。難しいといいますか、今の時点では困難だというふうに予測をしなければいけない。それよりは消費税効果の方がというのは、先ほど佐高さんがイトーヨーカ堂の五%引きの事例でお話しになったように、即効力といいますか、そういう点から見れば、消費不況打開に非常に大きな貢献を果たすというふうに思われます。
  123. 春名直章

    春名委員 先ほどからの議論の中で、財政再建という問題と景気回復、両立できるのかできないのかという議論がかなりされました。  そこで、二宮先生と石先生にお話を伺いたいと思います。  二宮先生は、財政構造改革法の精神、社会保障を圧縮して公共投資に甘い、この精神を逆転することが大事なんだということでアウトラインをお述べになりましたので、両立できる道筋を改めましてお聞きしたいということ。  石先生も、財政破綻も解決しなきゃいけないところに来ている、これは何とかしなきゃいけない、根っこは赤字が多いことで、歳出カットをしなきゃいけないということもおっしゃっておられます。この歳出カットという点で、どういうむだな部分を削る必要があるのか。そこにやはりメスを入れることが私はかなめだと思いますので、その点について御意見をお聞かせください。
  124. 二宮厚美

    ○二宮公述人 私の方は、先ほどの意見につけ加えて一点だけ補足をしたいと思います。  つまり、財政構造を改革するということが、景気及び財政再建に対してどういう効果を持つか。これは、例えば公共事業中心型でいくのか社会保障充実型でいくのかというのは、相対的な比較の問題だと思うのですね。先ほどから話があったように、社会保障であれ公共事業であれ、それこそ何でもありの莫大な金を注ぎ込めばそこに何らかの経済刺激が発生するというのは、これは当たり前のことでありますから、つまりは、どちらの方が有効かという問題に帰着すると思うのです。  だから、より健全な財政構造にしながら社会保障や国民生活の充実型に支出のウエートを振り向けていくということが公共事業よりもより効果が高いということを言えばいいだけの話です。これは既に財政構造改革法のときにも、たしか総務庁の統計で、いわゆる産業連関表を使って公共事業の波及効果を調べてみると、雇用及び付加価値の生産では社会保障関係の費用よりも劣る。つまり、社会保障の方が経済効果の上で高い。とりわけ不況期で雇用が落ち込んでいますから、雇用効果という点で見ますと、相対的に見て社会保障の方が優位にあるわけで、そういう意味で、相対効果の点から財政構造を改革するということがいいんじゃないかということです。
  125. 石弘光

    ○石公述人 御指摘のように、財政再建と景気回復、私は、これは基本的にはトレードオフ、つまり二律背反だと思っております。つまり、財政再建は、どうしても歳出カットをしたり増税ですからデフレ効果景気回復は、やはり需要拡大でインフレ型のことを要求いたします。さはさりながら、限界的な部分のところで両方できないかということはあり得るんだと思いますが、これは極めて難しいと思います。  それで、御質問は、財政再建、財政構造改革を歳出カットでやれというときにどこの項目かということでございますが、恐らく一番大きな項目は社会保障であり、二番目に大きいのは公共事業だと思います。  橋本内閣の財革法のとき、マイナス七%というキャッピングを公共事業にかけましたが、これは、国際比較をしても、これまでの経緯を見ても、公共事業というのはもう表面的にやれやれどんどんでいくものではないだろうという判断で、私は、これは基本的に正しいと思います。ただ、景気回復というのが出てきたので、即効性があるという意味公共事業の方にまた飛びついたわけでありますが、この転換は、今後、必ずしもいい転換ではなかったという可能性が出てくると私は思っています。  それから、社会保障は、これはほっておいてもふえる。これはどんどんふえるんですね。そういう意味で、これを戦略的に使ってふやすということは、逆に言って非常に難しい。つまり、ふえる部分のうちをどれだけ効率的に見直して有効に使うかという視点の方がより重要でありまして、これは恐らく景気対策等々には使いにくい項目ではないかというふうに考えています。
  126. 春名直章

    春名委員 ありがとうございました。  佐高先生にお伺いします。  銀行経営者の責任のめり張りをつけるのが大事なのだというお話をされました。公的資金を投入するということについて私どもは反対ですけれども、こういうことをやりますと、めり張りがなくなって、モラルハザードをもっとひどくしてしまうのではないかと非常に心配をしています。その点でのお考えをお聞かせください。
  127. 佐高信

    佐高公述人 原理としては、おっしゃるとおりだと思いますけれども、私はもうちょっと柔軟でありまして、どうしても入れなければならないなら、頭取の首を切れということです。
  128. 春名直章

    春名委員 大変率直で、わかりやすい御意見でした。  二宮先生に最後の御質問をします。  六百兆円の大借金ということなのですけれども、なかなか国民にとって、この借金が一体どういう問題があるのかというのがわかりにくいのですね。長期金利の上昇の傾向という問題も出てきていますし、あるいは福祉目的と結んだ消費税引き上げも示唆されるというようなことも出てきています。  こういう大借金をもたらしていることが国民にとって結局どのような影響をもたらすのだろうかということについて、先生の口からわかりやすく語っていただければ私はありがたいなと思っております。
  129. 二宮厚美

    ○二宮公述人 これは既にことしの予算説明の中にもあったと思いますが、与野党問わず、財政危機が深化しているというのは共通の認識だと思うのですね。これが大変だということについてもある意味では共通の認識で、ではどうするかというときに、GDPが二%成長の時点でもう一度財政再建を考え、国民の負担の軽減のために、将来にツケを残さないようにするためにということが言われているわけであります。  そのときに、結局、さきにも述べましたように、いわゆる財革法の精神そのものはまだ残っている。残っているというのはどういうことかといいますと、橋本政権の当時のいわゆる六つの改革の、社会保障構造改革や教育改革やあるいは金融ビッグバン、こういうものがまだまだ財政面でも残っているのだということを意味しているわけです。  そういう意味で、まず、財政危機が大変だと将来にわたる国民の負担が大変になる。特に、先ほどから話題になっているように、最後の切り札として消費税の増税に突入するという危険性が大変高くなって、これがつまりは財政危機の圧力のもとで進行する。これまでの政府の流れを見てみますと、やはり状況の圧力というのを利用して、景気対策にしても財革法にしましても、ともかく何か押し出してくる。こういう形をとっていますから、そういう国民の負担に対する状況の圧力として財政危機が使われやすいということ。  財政再建の時代、財政構造改革をもう一度正面に据えたときには、先ほどから話題になっている社会保障の構造改革や教育改革ということが問題になって、社会制度の面でも将来に不安定性をもたらす。だから、社会保障及び各種の社会制度が大変危険な要素を抱えているということと、負担増の爆薬を抱え込んだ、そういう意味で、財政危機に警鐘を乱打するということが今重要ではないかというふうに思います。
  130. 春名直章

    春名委員 どうもありがとうございました。終わります。
  131. 中山正暉

    中山委員長 次に、濱田健一君。
  132. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 三名の先生方には、長時間すばらしい公述と意見交換をいただきまして、ありがとうございます。  佐高先生に御質問をさせていただきたいと思います。  貸し渋りの対策として、私たちが与党におりましたおととしの十一月から、そして現在の小渕政権も、さまざまな対応をしておられます。このことの御努力は認めたいと思うのですが、私、鹿児島で地場産業の皆さん方ともいろいろお話をする機会があるのです。  私が最後に勤務した町に竹屋さんがありまして、そこでは、新しい製品をつくっていくのに、県の工業試験場などともタイアップして、竹を使った新たな製品、フローリングなんですけれども、床材とか壁材とか、コストが高くつき過ぎているものですから、新しい設備投資をやって、販路もきちんと拡大をしてという方向性がもう既に現実的に見えているわけなのですが、金がない、運転資金がないということで、信用保証協会の保証枠をつけて金を借りようと努力をされておられます。願ったお金の四分の一ぐらいしか出ないというような話がありまして、大変困っておられるわけです。  その人たちに言わせると、信用保証協会の保証の裏づけがあるのに、まだ地場の銀行が、一定の金利にプレミアムをつけた金利をプラスして、これだったら貸すよというようなことを言っている、銀行の地域社会への貢献という意味で、お互いに困っているのだから、貸し渋りプラス金利の上乗せというダブルのパンチを私たちに食わせる必要はないじゃないか、もっと丁寧な、温かいやり方というか、そういうことをやってほしいと言って、本当に怒りまくっておられる。  そういう意味では、銀行をしかるということが、しかるという言葉は好適でないかもしれませんけれども、国会に来てもらっていろいろな話を聞く、追及する、証人喚問だ、公聴会だとかあるのですけれども、こういう国民の怒りというのを本当に直接どう伝えるのかということが、なかなか私たちにも、国会の中では時々はできるのですけれども、地元にいる人たちはそういう怒りというのをどうぶつけるか。それこそ佐高先生の辛口の方向性を聞いてくれなどという話もよくあるわけでございますが、御感想というか、その辺、いかがでしょうか。
  133. 佐高信

    佐高公述人 私は、元来は辛口ではないのでありますけれども、相手がひどいと辛口になるということなんです。  銀行の問題は、私は、やはり基本的には、ディスクロージャーをもっと徹底してやることが第一だろうというふうに思います。長銀の例の元会長の退職金九億にしても、何かいろいろな問題になってからようやく出てくるということであるわけですね。あるいは、公的資金導入とかいろいろなことを言われていますけれども、今現在、では各銀行の頭取は幾らもらっているんだということさえ明らかになっていないわけですね。だから、銀行がさまざまに変なことをやるというのは、それはやはりガラス張りにするというのが一番の方策だと思いますし、それを金融監督庁のしりをたたいて徹底してやらせるということしかないのだろう。  今委員御質問の中でもありましたけれども、いまだに銀行では歩積み両建てみたいなことが行われているわけですね。そういうふうな明らかにおかしいものをどうきちっとやるのかというのは、本当に銀行に対するディスクロージャーと、そちらの徹底ということだろうと思います。
  134. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ありがとうございます。  もう一点、佐高先生にお尋ねしたいと思うのです。  きょうの公述の中でも、政治家への政治献金の問題が触れられております。私たちは二回前の総選挙のときから、政治改革の中身は、選挙制度ではなくてやはり金の問題、トライアングルをどう断ち切るかということをずっと党としても言ってきたわけでございますが、やはり政治資金、政治献金を含めた政治改革のおくれというのが、最終的に、国民の政治と政治家への不信感、そして、政治家がつくっていく、一生懸命、与野党口角泡を飛ばして論議をしてつくるものに対しても不信感をぬぐい去れないというベースで動いてきているように思うわけでございます。この辺は、やはり早くきちんと対応すべきだ、政治改革の中身でまだまだ取り残されている、これをどうするかと私たちはいつも強く言っているわけですけれども、先生のお考えはいかがでしょうか。
  135. 佐高信

    佐高公述人 おっしゃるとおりだと思います。  私なりに調べたのは、アメリカ銀行のディスクロージャーは日本銀行なんかのディスクロージャーとはもう全然比べ物にならないわけですけれども、あるアメリカ銀行のディスクロージャーには、どの政治家へどれだけ政治献金をしたかということまできちっと書かれるわけですね。私は、日本銀行もまずこれをやったらいいのだろうというふうに思います。やはり政治献金の廃止というのが、政治改革のまさに第一歩であり、結論だろうというふうに思います。
  136. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 二宮先生にお尋ねしたいのですが、先ほどもございましたとおりに、六百兆円もの国の借金。ある人は、外国にそれぐらいの金を日本は貸したりためたりしているから、それで心配せずにチャラになるのだ、チャラというか相殺できるんだというような話を楽観視して言われる方もおられるようです。  私は、今回の景気対策という形での予算の中身、それはそれでインパクトを持って提案されたとは思うのですが、財構法を凍結したという意味合いからも、三十一兆、特例公債、建設国債を含めて出していくという方向性が、国民に本当に納得されるのか。選挙区いろいろなところを歩いて、景気対策だけでも、おれたちの将来の景気と生きていく基盤についてはどうなんだ、そこまで目配りしてあるのかという、不安といいますか、不信といいますか、そういうものがやはりごろごろしていると思うのです。  この六百兆の借金を含めて、この予算との関係でいって、論議の中で、または修正の中で、まだまだやるべしという声が大きいと思うのですが、先生、いかがでしょうか。
  137. 二宮厚美

    ○二宮公述人 おっしゃるとおり、借金の残高の量だとか赤字国債そのものの発行量だとか、その絶対量とあわせて、今お話しになったことは、例えばせんだっての阪神大震災のときのように、復興、災害救援のためにどうしても国全体が金を出さなければいけない、だから赤字国債もやむを得ないのだと言えば、今お話しのとおり、国民はある程度納得もし、やむを得ないということになるのですが、その絶対量がすさまじいということと、それからその中身に対して、きょう、ずっと議論がありますように、非常に不信が高まるようなずさんな中身になっている。  先ほどの金融支援につきましても、例えば、昨年、二兆八千億円、まあ三兆円近く公的資金を投入して、結局のところ貸し渋りは終わっていない。昨年の銀行の貸出総額は落ち込んでいますから、特に大手銀行の、公的資金をもらったところで貸し渋りがますます進行している。そうすると、金融不安は何もなくなっていないので、金融収縮もなくなっていない。そうしたら何のための公的資金だったのかということになって、また今回、二兆五千億もそのための交付国債を計上する。そうすると、赤字国債赤字国債で使われる支出の両方が、何だかわからぬというか、うさん臭いといいますか、問題点が多いということになって、いよいよ政治に対する不信が高まっているわけです。  そういう意味で、量とともに財政の質というものをもう少し国会なども国民にきちっと説明をして、それで不信を取り除くということが必要なのではないかというふうに思います。
  138. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ありがとうございました。
  139. 中山正暉

    中山委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人の各先生方にお礼を一言予算委員会として申し上げたいと存じます。  大変貴重な御意見をお忙しい中お出ましいただきましてお述べいただきましたことに心から感謝を申し上げ、今後ともの御活躍をお祈りして、お礼のごあいさつにいたしたいと思います。ありがとうございました。  以上をもちまして、公聴会は終了いたしました。  次回は、来る十二日午前十時から委員会を開会し、金融財政並びに景気対策についての集中審議を行います。本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会