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1999-02-16 第145回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十六日(火曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       小澤  潔君    越智 通雄君       大原 一三君    奥山 茂彦君       加藤 卓二君    亀井 善之君       河村 建夫君    岸田 文雄君       小林 多門君    斉藤斗志二君       阪上 善秀君    津島 雄二君       中野 正志君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    牧野 隆守君       松本  純君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       谷津 義男君    山口 泰明君       横内 正明君    岩國 哲人君       上原 康助君    生方 幸夫君       岡田 克也君    小林  守君       仙谷 由人君    田中 慶秋君       肥田美代子君    横路 孝弘君       吉田  治君    石田幸四郎君       漆原 良夫君    大野由利子君       長内 順一君    木村 太郎君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       並木 正芳君    西川 知雄君       加藤 六月君    鈴木 淑夫君       西村 眞悟君    木島日出夫君       佐々木陸海君    平賀 高成君       矢島 恒夫君    北沢 清功君       濱田 健一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣 川崎 二郎君         建 設 大 臣 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣 野田  毅君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣総理大臣官         房審議官    佐藤 正紀君         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     山田 昭雄君         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         総務庁長官官房         審議官     大坪 正彦君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁人事局長 中川 良一君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         法務省入国管理         局長      竹中 繁雄君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         資源エネルギー         庁石炭・新エネ         ルギー部長   北畑 隆生君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      木下 博夫君         建設省河川局長 青山 俊樹君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省行政局選         挙部長     片木  淳君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      藤原 作彌君         参  考  人         (日本銀行審議         役)      三谷 隆博君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   江口 一雄君     阪上 善秀君   大原 一三君     松本  純君   亀井 善之君     中野 正志君   斉藤斗志二君     山口 泰明君   島村 宜伸君     小林 多門君   横内 正明君     奥山 茂彦君   岩國 哲人君     田中 慶秋君   生方 幸夫君     仙谷 由人君   大野由利子君     石田幸四郎君   草川 昭三君     漆原 良夫君   志位 和夫君     平賀 高成君   不破 哲三君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   奥山 茂彦君     横内 正明君   小林 多門君     島村 宜伸君   阪上 善秀君     江口 一雄君   中野 正志君     亀井 善之君   松本  純君     大原 一三君   山口 泰明君     斉藤斗志二君   仙谷 由人君     生方 幸夫君   田中 慶秋君     岩國 哲人君   石田幸四郎君     大野由利子君   漆原 良夫君     長内 順一君   矢島 恒夫君     佐々木陸海君 同日  辞任         補欠選任   長内 順一君     並木 正芳君   佐々木陸海君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   並木 正芳君     木村 太郎君 同日  辞任         補欠選任   木村 太郎君     草川 昭三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  速記をとめてください。     〔速記中止
  3. 中山正暉

    中山委員長 速記を起こしてください。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、まず、行革経済対策等についての集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村直人君。
  4. 北村直人

    北村(直)委員 自民党の北村直人でございます。  こういう事態の中で、委員長大変御苦労をいただいておりますけれども、ひとつ御理解をいただきながら、スムーズな議会運営委員会運営をお願い申し上げる次第でもございます。  また、野党の方々質疑時間を十分にとって議論をしていただこう、国民皆さんは一日も早い予算の成立を見て、この景気対策を待ち望んでいるわけでございます。そういう意味では、我々自由民主党、自由党、そして公明党・改革クラブ皆さん方は、委員会を継続しながらその中で問題のある点については議論をしていただこう、こういうことできょうまで来ているわけでございます。  それに対しまして、民主党共産党社民党皆さん方は、その与えられた質疑の時間を、これも行わない。大変国民にとってはわかりづらい予算委員会ではないか、このように思います。一日も早く民主党共産党社民党皆さん方委員会に御出席をいただいて、それぞれ質疑をいただきたいな、このように思うところでもございます。  それでは、きょうは行革集中審議ということでございますけれども、私はぜひ総理に、日本国として大変大きな問題でございます北方領土の問題、特に日ロ関係につきまして、きょうまで小渕総理、そして前総理大臣橋本先生含めて、歴代総理大臣には大変な御苦労をいただいてきているわけでございます。  小渕総理におかれましてもロシアエリツィン大統領との会談、あるいは前総理エリツィン大統領との会談で、国民からすれば、トップ同士会談では非常に将来に希望の持てる、そして前進をしていくような、そういう会談になっておりますし、また事実そうである、私はこのように信じております。  一方、事務方、つまり日本外務省事務方皆さんも大変御努力をいただいておりますが、ロシア外務省事務方皆さん方との協議に入りますと、マスコミを通じて我々の耳に入ってくる、国民の目に映る状況というのは、どうも小渕総理エリツィン大統領会談とは逆に、裏腹というんでしょうか、一歩後退をしているような印象を受ける報道等々があるわけでございます。  私は、決して後戻りをするようなものではないですし、総理大統領が本当に真摯な中で会談をされ、そしてそこで合意を得たことは、これは二国間の本当に真摯な協定、そしてお互いの確認をされたことだと思っております。  そういう面で、この日ロあるいは北方領土にかける総理の熱情と、そしてまた、今もし総理危惧している点がございましたらそのこともお聞かせをいただき、また将来にわたっての展望というものも、きょうはお聞きをさせていただければ大変ありがたい、このように思うところでございます。  また、ロシア外務大臣が来日をされるようにも聞いております。その際に、高村外務大臣はどのような形で会談をし、小渕総理そしてエリツィン大統領との会談によって決められたことをどのように遂行されていこうとしているのか、そのことについて外務大臣にもお聞かせをいただきたい、このように思うところでございます。
  5. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私は、昨年十一月の訪ロ時にエリツィン大統領モスクワ宣言に署名いたし、東京宣言クラスノヤルスク合意及び川奈合意に基づいての平和条約交渉を加速していくことで一致をし、平和条約を二〇〇〇年までに締結するよう全力を尽くすとの決意を再確認いたしておるところでございます。  現在、こうしたエリツィン大統領との合意に基づき、引き続き精力的に交渉を進めております。今週末からのイワノフ外相の訪日や、春ころに予定される高村外務大臣訪ロの際も、この問題について外務大臣レベルで率直な話し合いが行われる予定でもあります。また、エリツィン大統領には、願わくば今春にも訪日していただき、大統領とともに平和条約交渉をさらに進めていきたいと考えております。  問題は決して簡単なものではありませんが、政府といたしまして、今後とも、このような両国間のハイレベルでの間断なき対話の継続を通じて、あらゆる分野における関係を一層強化しながら、北方四島の帰属問題を解決して平和条約締結するとの課題の達成に向けて全力を尽くしていく考えであります。  北村委員北方四島に最も近い北海道地区選挙基盤に持たれておるわけでありまして、四島からあの時点で日本に、北海道に移住をせられたほとんどの島民北海道に現存するわけでございまして、そういう意味で、日本全国国民の悲願ではありますが、同時に、北海道また旧島民皆さんのこの問題にかけるお気持ちをひしと実は感じておるわけでございます。  今、委員指摘のように、昨今メディアを通じましていろいろな方々がいろいろな御発言をされておる中で、ややこの交渉自体について停滞をしておるのではないかという危惧をされる向きもありますが、今申し上げましたように、戦後五十数年間解決をしてこられなかった問題でありますだけに、決して安易に考えられないことは事実であります。  何といってもクラスノヤルスク首脳同士合意し、かつ現ロシアエリツィン大統領熱意も並々ならないものであることは、実は私が昨年訪ロいたしましたとき二人で会談をいたしたときも非常に強く感じておるわけでございますので、そうしたことを一つ一つ着実に推進していく、そのための努力を傾注していけば、必ずやこの問題に対する解決のめどはつき得るもの、私はこう認識をして、最大の努力を傾注してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  6. 高村正彦

    高村国務大臣 総理がおっしゃったように、日ロ関係、過去一、二年の間に着実な進展を見せ、その間、九三年の東京宣言の基礎の上にクラスノヤルスク川奈の両合意が積み上げられ、昨年十一月の小渕総理訪ロの際のモスクワ宣言に結実しているわけであります。  このモスクワ宣言において両首脳は、東京宣言クラスノヤルスク合意及び川奈合意に基づいて平和条約交渉を加速していくことで一致して、平和条約を二〇〇〇年までに締結するよう全力を尽くすとの決意を再確認しているわけであります。また、両首脳合意に基づき、既に先般の次官級分科会において国境画定委員会及び共同経済活動委員会第一回会合が行われるなど、精力的に交渉が行われております。  今週末には、御指摘のようにイワノフ外相が訪日されるわけでありますが、イワノフ外相とは平和条約締結問題日ロ合同委員会議長間会合を行い、外務大臣レベルで率直な話し合いを行う考えであります。  もとより問題が易しくないものであることは多言を要しませんが、政府としては、北方四島の帰属の問題を解決平和条約締結して両国間の関係を完全に正常化するとの基本方針を堅持しつつ、交渉推進全力を尽くしていく考えであります。
  7. 北村直人

    北村(直)委員 小渕総理高村外務大臣から、大変力強い、日ロ合意に基づくそれぞれの交渉あるいは締結に向けての熱意というものを感じたところでございます。ぜひ、力いっぱいの外交を粘り強くひとつお願いをし、旧島民方々が本当に笑顔で北方四島に行き来できるような、そしてまた、あの北方四島を囲む海で働いておられる漁民の皆さんが安心して安全な操業ができるような、そういう日が一日も早く来ることを実は望んでいるわけでございます。  しかし、一方で、北方領土啓蒙活動は、これは総理外務大臣も御承知のとおり、やはり、原点でございます根室市を含める根室管内の、北方四島を自分の目で見られるあの地域に住んでおられる方々が今までの返還運動の本当に原点でございますし、また、そういう方々が力いっぱい、全国皆さんに、あるいは世界の皆さん啓蒙活動をしてきたのも事実でございます。  そういう方々が、ややもすると、今の日ロのいろいろな交渉事の中で、希望は持っておりますけれども、なかなか難しい、我々の熱意というものがいつまで持ち続けていくことができるだろうか、実は、こういう心配というのでしょうか、そんな気持ちを若干持っていることも否めない事実でございます。  政府やあるいは外務省を含めて、北方四島に対する、北方領土に対する人道支援一環として、いろいろな形で事業を展開していただいているところも事実でありますが、あそこに住んでいる方々にとって、今の政府人道的支援等々を含めて、本当に北方四島に住んでいるロシア方々が安心して、領土日本に戻るということを望んでいるのだろうか、こういう素朴な疑問を実は持っております。  私は、随分、この十数年間、議員生活の中で、地域方々との話の中で、できれば北方四島に住んでいるロシア方々が、根室市やあるいは四町村、別海町、中標津標津羅臼、こういうところの町がうらやましいな、四島に住んでいる我々が早くああいう町並みを持つ日本の国籍が取れればいいね、こういう気持ちになってもらえるような政策を打ち出すということも日本政府の一つの考え方ではないのか、こういうことを実は持論として持っておりました。  例えば、北方四島の、北方領土に住んでいるロシア方々健康管理。あそこの北方四島に住んでいる方々が一番今生活の中で困るのは、多分、病気になったときにどうするんだろうか、あるいは自分の健康というものはこの四島で大丈夫だろうか、こういう心配が随分あるというふうに私は聞いております。  そういうときに、我が日本政府が、北方四島の健康管理は、では我が国でやるよ、それは、例えば根室市あるいは中標津別海標津羅臼、こういうところの医療機関で診ますよ、そんなような提言というのでしょうか、そんなような気持ちで、逆に、我が国の、こちら側の市町村医療機関整備をきちっとする。いつでも来なさい、来なさいというのは語弊がありますが、いつでもお越しください、皆さんの健康は我が国がいつでも診られる体制にありますよ。こういう形も、ある面ではこの北方領土の人道的な支援になるのではないのか。  四島にプレハブ医療施設をつくること、これも私は大切なことだと思います。あるいは、発電機を送ってあそこで発電を起こしてもらうということも大切なことではありますけれども、一方、先ほど申し上げましたとおり、旧島民を含めて地元方々は、本当にそのことが日本にとって、将来、結果として効果の上がることになるだろうか、こういう危惧を持っている方々も実は片一方であるということを総理にお考えをいただきながら、私は、今までも、一市四町の、この地域支援というものについては大変な御尽力をいただいておりますけれども、さらに一歩進めて、例えば医療関係ですと、我が国が四島に住んでいる人方健康管理をいたしますよ、そのための地域医療施設に対する国の支援方、こんなことを考えられないかどうか、ぜひ総理にお聞きをしてみたい、このように思います。  それと、もう一方、先ほど、本当に熱意を込めた日ロ交渉についての総理の生の声を聞かせていただきました。私は、そこまで総理熱意を持っていただけるということであれば、ぜひ原点であります根室市の納沙布に立っていただいて、身近に北方四島を望んでいただきたい。貝殻島を含めて、あの海を通じて、本当に目の前にある我が国の固有の領土というものをぜひ総理に見ていただいて、そしてそのことが、今後行われるであろうロシア大統領との交渉事については、気持ちも新たに、何か体じゅうからわき出てくるような、そういう活力が出てくるのではないかなと。  元総理鈴木善幸さんがあの北方四島の見える納沙布に立っていただいて以来、歴代総理根室の地に足を運んでいないわけでございます。ぜひこの機会に、総理の決断で、よし、私が行くよ、こういうお言葉がいただければ、地元で一生懸命に啓蒙活動をしている方々、あるいは旧島民方々にとっても非常に励みにもなる。そしてまた、全国北方領土運動に取り組んでおられる多くの国民方々にも、なるほど、総理が先頭に立って、このロシアとの問題、言葉だけではないんだな、行動で、それも現地まで見ていただいてと。私は、場合によっては北方四島に渡っていただくということも本当は必要なのか、しかし、これはなかなか難しいところもあろう、こういう気持ちでありますが、ぜひ、現地の視察というのでしょうか、あの納沙布の岬に立っていただきたい。  この二点について、総理のお言葉をいただきたい、このように思います。
  8. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず、北方四島の住民に対する医療支援でございますが、従来から、平和条約交渉のための環境整備一環としての見地から、緊急人道支援枠組みのもとで、プレハブ診療所建設衣料品供与等北方四島に対する我が国法的立場を踏まえつつ、我が国として適切な支援を行ってきておるところでありまして、これは継続していかなければならぬと思っております。  一方、根室市等の近隣市町村における医療提供体制整備につきましては、医療法枠組みのもとで、北海道医療計画を定め、地域医療の確保に努めるとともに、国としてこれを支援してきているところであり、今後とも現行制度のもとで適切に対応してまいりたいと思っております。申し上げましたように、いずれにしても、人道的立場から、これら四島に現在住居しておるロシア人もそうでございますが、そうしたことに対して、我が国医療制度というものは極めて程度が高いわけですから、いろいろな形で力を尽くすことは当然だろうと思います。  ただ、現実に、今四島と北海道の間には大変厳しい戦後の両国関係が存在しているわけでございますから、その線を一概に取り払って北海道で診療するということはなかなかこれまた困難だろうと思います。  しかし、いずれにしても、日本医療技術の高さ、また、これによって人道的立場ロシア方々に対しましても緊急な医療、施療ということが行われるということは大切なことだろうと思いますので、この点については今後とも考慮を払っていきたいというふうに思っております。  次に、根室に参って、旧島民も含めまして、日本政府の意思を明らかにしろというお考えは基本的に正しいものと思っております。私もかつて総務長官の時代にも根室に参りまして、外務大臣の時期が少なかったので、外務大臣としても参りたかったわけですが、その機会を得ませんでした。現在、総理になっておるわけでございますが、地元から強い要望もあることを承知いたしておりまして、国政をめぐる諸般の状況などを見ながら検討してまいりたいと思っております。  なお、当地は北方領土返還要求運動原点でありまして、島民の約三割の方が居住すると聞いておりますので、そうした方々の御意見をお聞きすることは大変意義深いことだと思います。今後とも積極的にその機会を得たいと思っております。
  9. 北村直人

    北村(直)委員 ぜひ、小渕総理として現地に立っていただいて、旧島民皆さん領土返還の啓蒙活動をしている皆さんに、本当に今までも苦労をかけたけれども、これからも粘り強くひとつ頼む、こういう意味原点を視察していただきたい。総務庁長官として行っていただいたことは私もよくわかっておりますし、そのことは十分理解の上でまた改めてお願いを申し上げる次第でございます。  さて、私はいつも、北海道に向かっていく日本の道路、あるいは北海道へ向かっていく空路、あるいは旧国鉄、今のJR、こういうものはすべてが北方領土に通ずる、このように考えております。ですから、いろいろな政策の中で、特に北海道の選出の先生方も含めて理解のある多くの先生方は、北方領土に通ずる高速道路をつくるべきである、あるいは北方領土に通ずるJRの線をきちっと整備するべきである、あるいは北方領土に通ずる空路をきちっと確保すべきである、これらがある面では今の道東地域の発展の根底にある、このように思っております。  そういった中で、先ほど来、人道的支援の中で発電機というものもございました。我が国には、実はこの我が国の産業を大きく支えてきた産業の一つに石炭産業というものがございます。今、悲しいかな、北海道の一鉱と九州、長崎の一鉱、この二鉱だけが石炭を掘り続けている、実はこういう寂しい結果になっているわけであります。しかし、その二鉱も、将来にわたって本当に石炭を掘り続けていくことができるだろうか、こういう不安にも実は陥っているわけであります。  特に北海道の道東、釧路市には、太平洋炭鉱という石炭鉱業所がございます。ここで出る年間約二百二十万トン程度の石炭というもの、これは火力発電にしか使えない石炭でございます。そういった面ではこれも、電力というのは北方領土に通ずる、私はこういう意見というよりも、自分考えを持っておりまして、北方四島の電源の供給は特に北海道、道東でやるべきであるというのが私の実は持論でございます。  この太平洋炭鉱の石炭を使って、道東地域に火力発電をしっかりつくって、そこでできる電力を北方四島にいつでも供給することができるよ、こういう意味合いでは、国民皆さんに御理解をいただけるのではないのかな。標津から国後まではわずか十六キロ。海底送電というのは十分に実は考えられる距離でございます。将来はというよりも、今でもあの北方領土我が国の固有の領土である、こういう観点なら、いつでも送電ができる体制をしっかりつくっておくということも私は非常に大切なことではないのかな、このように実は考えておるところでございます。  その中で、実は昨年の九月に、第二十七回目の総合エネルギー対策推進閣僚会議というのが開かれまして、その中で全国の要対策重要電源の見直しをされたわけでございます。これは通産大臣もよくおわかりだ、このように思いますが、これを見ますと、ずっと、例えば原子力は十二の地点で二十二基、あるいは石炭火力は九地点で二十一基がある、あるいはガス火力は一地点の一基、あるいは水力の方は四地点の四基、これが要対策重要電源の指定を実は受けております。  これをずっと見ますと、どうも西高東低というのでしょうか、随分本州、九州、四国の方には要対策重要電源として位置づけをされておりますが、東の方は、これは北海道の道南の方に一つ指定されているだけであって、北方四島を抱えている道東というのでしょうか、北海道の東の方は全く要対策重要電源としては指定されていないのであります。  私は、電力というのは、長い送電を使えば、これは消耗するのは論をまたないわけでございまして、やはりその地域にこういう電源があれば消耗も非常に少なくなってくる、こういうことが考えられるわけでございます。そうなると、ぜひ要対策重要電源に、国民的な合意として北方四島にも電力を供給するんだ、こういう意味合いで、この道東地域北海道の東の方にも要対策重要電源の指定をして、日本で二つになってしまった、北海道で一つしか今石炭を掘っていない釧路にあります太平洋炭鉱で出ておる石炭を使って、これを火力発電として考えていく。それは石炭を燃やせばCO2が出てくるのは当たり前でありますが、北海道の森林をしっかり再生していけば、あるいは今までも、今もやっております。そうなれば、このCO2の削減というのは十分に可能である、私はこのように考えております。  通産大臣にぜひ、一石二鳥というのでしょうか、こう言うと怒られてしまいますが、北海道の動いている石炭の将来にわたっての存続、そして国民的な合意としては、北方四島に送電をする電源地域だ、こういう意味合いで、要対策重要電源の指定をさせて、そしてしっかりとした石炭政策というものをつくっていくということが私は非常に重要ではないのかな、このように考えますが、通産大臣の御意見を、お考えをいただきたいと思います。
  10. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 北村先生、たくさんの点について御質問になられましたので、一つずつお答え申し上げます。  まず、北方四島との関係ですが、北方四島が返還される際のこれらの地域における電力供給のあり方については、その返還の態様、さらに平和条約交渉の帰趨にもかかわるものであり、現時点で具体的に論じることは難しいと考えております。  なお、政府は、北方四島住民に対しまして、四島の困難な電力事情にかんがみ、平和条約交渉進捗のための環境整備として、昨年十一月にディーゼル発電機及び燃料の供与を行っており、今後も四島に対する我が国法的立場を踏まえつつ、適切な協力を行っていく考えでございます。  次に、いわゆる要電源地域の基準ということを御質問になったと思いますが、要対策重要電源は、電力会社が発電所の立地計画を有する地点のうち、その重要性にかんがみ、政府として立地に関する調整、推進に努めるべきものを総合エネルギー対策推進閣僚会議の了解に基づき、昭和五十二年度から指定しております。  要対策重要電源の基準は、電源開発計画の具体化が確実な電源であること、及び、電力の長期的な需給安定確保のために極めて重要な電源であることでございます。  次に、道東に火力発電所を建設するというお考えで御質問がございましたが、これにつきましては、現在のところ、国内炭を安定的に使用する需要家が新たにあらわれるといったような具体的な事案がなかなか難しいわけでございます。  そこで、石炭の事情を申し上げますと、現在、国内炭鉱で生産される石炭は、海外炭との価格差が大きいことから、電力業界の引き取り協力を前提としてその経営が維持されている状況でございます。また、ポスト八次策終了後については、電力業界からは、海外炭との大きな価格差の存在や電気事業への競争導入の促進を背景として、自由取引にするべきであるとの強い主張がなされているところでございます。  国内二炭鉱の位置づけについては、このような状況も勘案した上で、石炭鉱業審議会の場において、現行石炭政策の円滑な完了に向けての石炭対策全体の議論の中で審議をしていただいているところでございます。  仮に、大きな内外炭価格差があるにもかかわらず、国内炭を安定的に使用する需要家が新たにあらわれた場合に、これが国内炭鉱の経営の安定に寄与するかどうかは、この需要家の国内炭需要量、その際の電力業界の対応、炭価の水準等によって影響されると考えられます。現在のところ、そうした具体的な事案がございません。したがって、具体的な評価もできないのは大変残念でございます。
  11. 北村直人

    北村(直)委員 今の現行制度からいくと、大変厳しいものがある、このように思います。ですから、先ほどから申しているとおり、やはり国民合意を得るということになれば、北方領土というものは我が国の固有の領土である、このことをずっと我々は言い続けてきたわけであります。  しからば、我が国の固有の領土であるこの北方四島に向けてどういう形でいろいろなことを整備していくかということは、私は、ある面では、先ほど総理外務大臣がおっしゃったいろいろな問題はありますけれども、それを超えた政策転換というものは必要ではないのかな、実はそのように考えておりますので、ぜひまた皆さん方の御指導をいただきたいな、このように思うところでございます。  そして、特に、今ロシア国籍の船が根室を含めた港にたくさん入ってきております。その根室の花咲港等々に入ってくるロシア船が非常に事故が多い、この数年間でもう何十隻も放置されてそのまま沈んでいる、あるいは漁網等々の被害が出ている、こういうことがあります。  ところが、ロシアの船には、保険に入っていない、こういう船がもうほとんどでございます。そういう面では、この補償制度がない現状の中では、やはり政治的レベルでの解決を願うしかない、こう思います。あるいはまた、補償制度のPI保険への加入指導というものは別機関での検討ということもこれはお願いをしなきゃならないな、このように思っております。そのことは十二分に外務省もわかっておると思いますので、現地からの報告があろうと思いますので、そのことについても今後のまた御指導をいただきたいな、このように思います。  それで、最後に、時間が迫っておりますので、もう一つ。  私は、日本危機管理というものは、国あるいは政府危機管理の中で何をしていくか、それは我々人間の命をやはり守っていくための危機管理である、このように思います。我々の命を奪うものとしては天災があります、これは地震等々。あるいは、人災の一番大きなものはひょっとすると戦争かな、このように思います。そのほかに、私は、突如として人間の命を奪ってしまうものには病原体がある、このように思います。  これは、一般的な感染症あるいはそういうものの病原体は予防というものは十分にあるわけでありますが、もう古くて新しい名前になってしまいましたが、エマージングウイルス感染症、こういうものがございます。これは、ちょうどエボラ出血熱に代表される出血性のウイルス性の病気の名前でございますが、先般、新聞を見ておりましたら、成田の飛行場で、この国際空港でエボラ熱の対応の訓練をなされた、こういう記事が実は載っておりました。  私は、何度も何度も、このエボラ出血熱を含めて、今リアルタイムに世界じゅうを移動できる、日本にいつこういうものが入ってくるかわからない、しかし、入ってきたときの対応というものは、それは厚生省は本当によくやっていただいていると思います。私も、現地をよく見させていただきました。そういう意味で、わかっておりますけれども、しかし、このエボラ出血熱のウイルスを検出する施設については、これはまた先進国の我が国にとっては本当に弱々しい体制でございます。仮にこういうものが入ってきたときは、アメリカの疾病センター、CDCにお願いをせざるを得ない。  ところが、よく調べてみると、日本にもそれをきちっと検出できる施設はありました。武蔵村山市に、元の国立予防衛生研究所に、これはP4、レベル4という非常に危険度の高いものを取り扱うための実験施設であります。しかし、それを、十七、八年前にできているのですけれども、これは凍結されたまま、封鎖されたまま一度も使えない状況にございます。  聞いてみますと、歴代の武蔵村山市の市長さんは、歴代の厚生大臣に、これの使用を凍結する、あるいは撤去という陳情をずっとされているというふうにお聞きをしておりまして、宮下厚生大臣にも昨年の八月ぐらいに提出されたのではないかな。歴代ですから、私は、それぞれの大臣のときにもあったと思います。  私は、歴代の厚生大臣は一生懸命やっていただいていると思いますけれども、特にHIVで民主党の党首がよくやったという評価がありますが、実は、調べてみますと、その民主党の党首の菅直人代議士の御地元にこれがあるようでありますね。しからば、自分の選挙区にあるこの施設は使いたくないという気持ちなのかな。当時の厚生大臣であった民主党の菅党首は厚生大臣としてどのような対応をされたのか、そしてまた、宮下厚生大臣はどのような気持ちで今回その陳情を受けられたかお聞かせをいただきたい、このように思います。
  12. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 武蔵村山市にございます国立感染研究所の高度安全実験施設、いわゆるP4でございますが、これはP1からP4までございまして、P4が病原体の安全管理基準で一番ハイレベルのものでございます。そういう施設を五十六年につくっております。  しかし、今委員の御指摘のように、これは、今日十八年目を迎えますが、稼働しておりません。その原因は、地元自治体あるいは住民等の反対がございまして、この施設の実験停止の続行、それから、他への移転、撤去ということを終始求め続けてこられております。  それで、今お話しのように、歴代の厚生大臣に対しまして、事務方の連絡としてこのことが強く要望されていることは承知しておりまして、私が着任をいたしまして以来、八月のたしか十一日にやはり同様な趣旨の申し入れがございます。  私としては、ことしの一月に感染症の担当課長を武蔵村山市に赴かせまして、今度、耐震構造その他きちっとした予算がついておりますので、それをやって安全性を確認いたしますということで、理解を求めることを早速やらせていただいております。  しかし、今御指摘の菅直人厚生大臣のときの状況のお尋ねでありますが、菅大臣は、一月からたしか十月ぐらいまででございました。その間に、同様にやはり菅大臣に対しても実験停止と移設の申し入れがございましたが、私ども、その当時菅大臣がどういう行動をおとりになったかというのは詳細に知る由もございませんけれども、どうも特段の行動をとっていらっしゃらないようにお伺いをしているところでございます。
  13. 北村直人

    北村(直)委員 私は、国家の危機管理としては、いつ生命を奪われるかわからない、こういう大変危険なこの感染症に対する措置としては非常に不十分だ、そう思っております。そして、十七、八年前にできた施設でありますから、今はもう使い物にならない、このように私は思います。  しかし、筑波にある理研のものにしても、あるいは武蔵村山にあっても、やはり住民の人方のことを考えれば、もっと違ったところに新しくつくる必要がある。昨年もフランスのリヨンにもできました。一昨年にはカナダにもできました。世界じゅうで八カ所しかありません。しかし、日本にはこれをきちっとやれる施設がありません。  そういう面では、ぜひ厚生大臣、今あるものを見直すとかということではなくて、やはり新たに、もう一度、このP4を含めた、世界の技術のレベルに合ったものをぜひつくっていただけますように、心から御陳情というよりもお願いを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。
  14. 中山正暉

    中山委員長 これにて北村君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  15. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  本委員会の冒頭、民主党共産党社民党によりまして貴重な時間を空費いたしましたが、自民党さんの御好意によりまして、自民党さんの方で時間の調整をしてくださいました。私ども自由党は、予定どおり一時間質問させていただくということで、これからやらせていただきます。どうもありがとうございました。  小渕内閣は、申すまでもなく経済再生内閣と名乗っておられるわけでございますので、本日は、日本経済再生の戦略、展望、その中での行政改革の位置づけといったものを中心に質問させていただきたいと思います。  まず初めに、長期市場金利の上昇問題から入りたいのでございますが、九九年度の積極的な予算編成に伴って長期国債の大量発行が予想される、他方、財政収支の悪化を反映して、運用部による引き受け、あるいは市場からの買いオペが減るといったようなことがきっかけとなりまして、長期金利が上昇いたしました。この結果、円高あるいは株安ということになりますと、いわば長期金利上昇とあわせてトリプルパンチで景気に悪影響が及ぶということで、再生の戦略がまず最初のところでつまずきかねないということで、非常な関心を呼んだわけでございます。  この委員会でも総理あるいは蔵相がたびたび言っておられますように、現在、民間の資金需要は沈滞し、また、日本銀行が超緩和政策をとっておりますから、長期国債が大量に発行されているとしても、現時点で資金需給が逼迫して金利が上がっているわけでは決してございません。将来そういうことが起きるのではないかという予想を抱く。そういう予想が出ますと、このまま長期国債を持っていると値崩れでキャピタルロスが出るかもしれない、それじゃそういうことが起きないうちに売ってしまおう、そういった動き、いわば経済学で言う合理的期待みたいな動きが出て金利が上がった。これはもう総理、蔵相の御認識のとおりと私も思っております。  ではどうしたらいいのか、そういう予想を打ち砕くような政策は何かないのだろうかということで、自民、自由の政策責任者会議を毎週火曜日にやらせていただいておりますが、先週の火曜日で次の三つのことについて合意したということは御案内のとおりであります。  まず第一は、日銀が長期国債を直接引き受けるということは、必要でもないし、適切でもない。財政法、日銀法に禁じられているこの手段を講じる必要もなければ、これは適切でもない、このことを合意いたしました。  二番目に、では、日本銀行は金融調節を通じて何かやってくれないのかな。これについては、新しい日銀法で、金融調節は完全に日本銀行は独立して政策委員会で決定するということになっておりまして、政府としては、大蔵大臣あるいは経済企画庁長官がその政策決定の政策委員会へ出て意見を申し述べるという形になっておりますから、それで意見を申し述べれば十分であろう。政治的な圧力をかけて日銀の独立した金融政策決定を脅かすという印象を与えるようなことはよくない。これが二番目の合意でございました。  そして三番目には、では、我々政治家あるいは政府ができることは何だろう。これは、国債の発行者としての国債管理政策であろう。この際は長期国債の発行を絞って、中期、短期の国債の発行をふやすとか、そういったことは我々政治家あるいは政府の権限でできるだろう。この三つの点を合意したわけでございます。  それで、その結果、第一点の日銀引き受けは、もう与党の中でそれを強く主張される方はほとんどいないと私は認識をしております。  それから二番目の金融調節は、御承知のとおり先週の金曜日に決定が行われまして、二つの点で金融緩和を進める。一つは、コールレート無条件物を、今までは〇・二五%を誘導目標にしていたのを〇・一五%まで下げるし、可能ならもっと下げていこうという決定でございます。短期金融市場の方から長期金利に対しても間接的に影響を与えよう。  二番目には、いわゆる長期国債を使ったレポであります。現先取引のようなオペでございますが、これに短期調節ではあるが長期国債を使おう、こういう決定が行われました。これも、実は長期国債がランニングバランスとしては日本銀行にかなり吸収されていきますから、これも、長期金利に何がしか影響を与えるという決定をしたわけでございます。  それから、一番重要なのは三番目の国債管理政策だと思うのでございます。  先々週の金曜日、五日でございましたか、大蔵委員会の席上で宮澤大蔵大臣に質問をさせていただきました。やはり政府あるいは我々政治家としてできるのはこの国債管理政策、すなわち、これだけ国債を出す以上、長期国債の発行を絞って中期あるいは短期をふやすという柔軟な国債管理政策が今こそ日本に求められているのではないか、こういう質問をいたしましたところ、宮澤大臣は、まさにそのとおりであって、我々は既に検討をしているという大変勇気づけられるお返事をいただきました。  それで、けさほど閣議の後で、宮澤大臣は記者会見で、この御検討中であった新しい国債管理政策について御説明いただいたようでございます。私はマーケットの寄りつきを見てびっくりいたしました。金利がいきなり、長期金利は二五ベーシスポイント下がりました。その結果、寄りつきでは一・八九%でありました。一方、株価は二百六十一円上がりまして一万四千三百円台に乗った。円レートは円安に振れて百十五円八十一銭。その後少し揺り戻しがあるようでございますが、しかし、これはマーケットによって大歓迎をされたということではないかと思います。  つきましては、宮澤蔵相、けさほど発表されました新しい国債管理政策について御説明いただければありがたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましては、殊に、御専門でもいらっしゃいますが、鈴木委員が当委員会並びに他の委員会においてしばしば御指摘をせられまして、御指摘の内容また分析、あるべき対策等についてたくさんの御示唆をいただきまして、私自身、おっしゃることに基本的に啓発も受けましたし、また分析的にも同じような考えを持っておりました。  それで、両党の政策合意も承っておりますが、まさに第一の問題、日本銀行が直接に国債を引き受けるということは適当でないということにつきましては、日本銀行が先般、先週の十二日でございますか、政策委員会をいたしまして、その点は日本銀行としても同様に考えておられるという結論に達せられたと伺っております。  次に御指摘のありました金融調節につきましては、その十二日の政策委員会政府から、全部ではございませんでしたが一定の時間、堺屋経済企画庁長官及び谷垣大蔵政務次官が出席されまして、政府としての意見を述べられました。  その結論は、今鈴木委員の言われましたように、いわゆる〇・二五から〇・一五への引き下げ、無担のオーバーナイトの引き下げでございますが、それからリパーチェシングアグリーメントで国債を使う、こういう結論を得られて、日銀総裁が当日発表せられました。これもしかるべきことと存じておりました。  残りは、したがいまして、政府として、国債の発行者として、あるいは一部国債を資金運用部等では引き受けますので、買いますので、そういう国債管理政策として何かなければならない、こういう御指摘であって、私自身も両方の委員会におきまして、これだけ大量の国債を発行いたすことになりましたので、発行者としてやはりそれなりの心構えあるいは工夫というようなものがなければならない、事務当局に検討を申しつけてございますということを申し上げてまいりましたが、けさ、その検討の結論が出ましたので発表をいたしました次第でございます。  けさ発表いたしましたことは二つに分かれておりまして、まず、この三月に発行いたします国債につきまして、十年債を予定しておりましたが、一兆八千億予定しておりますが、その中で、四千億円を中期債、二年債が三千億円、それから六年債が千億円に振りかえるということをいたしました。これは鈴木委員が御指摘のとおり、やはり品物に、商品にバラエティーをつけるということがいろいろな意味で必要だと考えたからでございます。こういう考え方は基本的にこういうときには非常に大事であろうとおっしゃいますことは私もそのとおり考えまして、三月債についてそのことをいたしました。  それからもう一つは、資金運用部による国債の買い入れの問題でございますが、いろいろなことを総合的に判断いたしまして、この一月には市中買い入れをいたしませんでしたが、二月と三月には市中買い入れを行うことに決定をいたしまして、金額といたしましては、月に二回、千億円ずつ、都合四千億になりますが、その入札をいたしたい、こう考えたわけでございます。  この点も、やはり発行者としてこういう事態に対していろいろ工夫もなければならない、心構えもなければならないと考えたわけでございますが、私の場合には、発行責任者であるとともに資金運用部の資金の運用者でもございますので、その点についても配意いたさなければなりません。両方のことを市場の動向を考えましてこのような決定をいたしました。即時実行をいたすつもりでございます。
  17. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 どうもありがとうございました。  二つの措置、二番目におっしゃった運用部の一月にやめました買い上げを二月、三月再開、これは、一月に買わないという決定をしたことが一つのきっかけになって金利が上がっておりましただけに、大変大きなインパクトをマーケットに与えたと思います。  最初におっしゃいました、国債発行にバラエティーを持たせて、十年物に偏ることなく、もっと中期、短期も出していくということも、まさに日本における本格的な国債管理政策のスタートとして歓迎すべきことであると思います。どうぞ、これから先も、市場の状況などをごらんになって、弾力的に発行国債の構成を変えるという国債管理政策をお続けいただきたいというふうに思います。  さて、私、これで、日本銀行の一段の金融緩和とあわせてこの国債管理政策もスタートしましたので、これから先は、仮に長期金利が上がってくるとすれば、それは景気が底を打って先行き感が好転したときだろう、もうクラウディングアウトの予想で長期金利が上がって円高あるいは株安を通じて経済が攪乱されるという心配は片づいたなというふうに思っております。  そこで、もう少し長い目で見た日本経済再生についてお伺いをいたしたいと思います。  総理総理の諮問機関として経済戦略会議が、昨年十二月の二十三日に中間取りまとめとして「日本経済再生への戦略」というのを総理に御提出になったと思います。そして、伝えられるところによりますと、最終報告、間もなく、二月二十六日に出る、あるいはもっとおくれるのかもしれませんが、一応そういうふうに聞いております。  この「日本経済再生への戦略」というのは小渕内閣として経済再生への戦略、展望の非常に大事なたたき台になっていくのではないかと思うので御質問申し上げるわけでありますが、私、これを拝見して、大筋は大賛成でございます。  日本経済の危機的状況についての現状認識、それから、日本的なシステムを改革する、再構築するということを通じて経済再生を図るという戦略、それによって二十一世紀には新しい成長ステージに到達するんだ。この全体の考え方は、私が賛成だと言うのみならず、私ども自由党の基本政策であります日本再生へのシナリオの基本構想とほとんど一致しております。大変これは結構だと思っているのでありますが、総理、この中間の報告をお受けになりまして、どういう評価を今しておられますでしょうか。
  18. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 委員指摘のように、最終答申はまだちょうだいいたしておりませんけれども、内閣が発足いたしまして以来、経済戦略会議の各メンバーの皆さんには、精力的にお取り組みでございまして、現時点で取り組むべき課題、あるいはかなり中長期的な問題も含んでおります。その中では、率直に申し上げて、日本の将来を展望した上での大変難しい問題にもお取り組みいただいております。  答申をいただきますれば、その実行のために諮問いたしました私といたしましては全力でこれの実現に努力していかなければなりませんが、当然のことでございますが、国会におきまして、そうした問題の諸点につきましても十分御議論をいただきながら、必要なものは法律化していかなきゃならぬと思っております。  基本的には、大変熱心にお取り組みいただいた点でございますので、将来の方向性につきましては、勇断を持って取り組まなきゃならない問題も含めまして、内容がそのようになっておると思いますが、これの実現には歩一歩これに取り組んでいかなきゃならない。そういった意味では、中間答申はいただきましたが、大変内容の濃い、そして問題意識の高いものであるというふうに認識をいたしております。
  19. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 大変力強い評価をいただきました。私も、最終報告に大いに期待をかけると同時に、堺屋長官、これは恐らく今御検討中の新しい経済計画、中期計画にも反映されていく、恐らく両者が一体になっていかなければならない、そして、それが小渕内閣の大きな戦略的な目標として打ち出されなければならない、こういうことになっていくんだろうと思います。  そこで、堺屋長官に御質問いたします。  私は今、これを読んでみて、大筋考え方は結構だと申し上げましたが、もちろん、細かい話になっていきますと若干コメントしたいところもあります。  やや専門的になりますので長官にお伺いいたしますが、私は、この中間報告の一番大きな問題点、強いて挙げますと、日本経済再生のタイムスケジュールがはっきり出ていない。逆の言葉で言うと、戦略性。戦略的にどこから入っていって、どういう段階を経ていくのか、各段階でどの政策が一番大事なんだ、入り口はどこだ、その手の戦略性が余りはっきり出ていないのですね。これをはっきりさせていかないと。  ただ、百六十四も提言がこの中にあります。それぞれ、ほとんど私は賛成です。だけれども、強弱がついていない、あるいは組み立てられていない。どこから入っていって次の政策が生きてくるとか、そういう戦略的な組み立てがまだ出ていないのですね。それが必要だと思って、私はこれを執筆した委員の一人と議論をさせていただきました。あなた方は、小渕内閣の日本経済再生のタイムスケジュールについてどう考えているかという点を議論させていただきました。  そうしたら、その委員は、実はタイムスケジュールは頭の中にある、それも議論している、ただ、いろいろな事情があってまだそれほどはっきり出ていない、ここに出ていない、最終報告では出したいんだと言っておりました。  この中に、何となく行間に読み取れるタイムスケジュールは、総理、次のようなことのようであります。これは委員の方と議論して確認したのです。  来年度、九九年度と二〇〇〇年度の最初の二年間は、これは再び景気後退なんか起きたら大変だから、景気を間違いなく回復させていくんだという景気刺激最優先でいく、そこに戦略的なポイントがあるんだ。同時に、バブル経済の集中的な清算の時期として徹底的に金融システムの安定化を図っていくんだ。したがって、それに伴って若干財政赤字がこの先さらに拡大していっても、とにかく景気最優先、バブル清算最優先でいく、これが二年間だということのようであります。これは私は賛成なんです。  その次の二年間、二〇〇一年、二〇〇二年、二十一世紀の最初の二年間は、いよいよ潜在成長率、ここでは二%と言っていますが、いろいろ聞いてみたら二%強のようでございますね。意見は割れています。それにプラスアルファ。なぜアルファがつくかといえば、今デフレギャップがありますから、デフレギャップを縮小しながらいけば、ここではまず潜在成長率プラスアルファの成長経路に乗ってくるだろうというふうに考えています。ところが、ここではまだ財政再建に取りかからないのですよ、この二年間では。私は、これは非常に大事なポイントで、賛成なんですね。  では、この間どうするのかといったら、もう景気刺激はやめるのです。だけれども、財政再建のためにデフレ的な予算は組まない。いわば中立ですね。増減税なし。公共投資でいえば横ばいです。そういう中立的な政策を二年間とって、完全に潜在成長率プラスアルファで、民間支出主導型で成長していくようにする、この二年間。  そして、その後、二〇〇三年以降、いよいよ日本経済再生の完成期に入りますから、その中には財政再建も入ってくる。もう政策の後押しをしなくても自分の足で歩けるところまで行くだろうから、当然、財政は抑制ぎみになってくる。こういうものが頭の中にあるようでございます。  堺屋長官、今のようなタイムスケジュール、ですから、恐らく、最後の二〇〇三年以降といっても、そんな簡単に財政のバランスはとれません。特に、この中ではプライマリーバランスという言葉を使っていますね。収入のうちから公債発行の収入を除く、支出のうちから国債費を除く。そのバランスがとれてきますと、総理、財政赤字の対GDP比率というのは決して発散いたしません。安定を完全にしてくるんですね。そこを目標にするのだ、その考え方もいいと思うんですが、やはりこれはせっかちにやってはいけないんだと思うのですね。  仮にこれに六年ぐらいかけるとすると、日本経済再生というのは十年の大仕事になります。そのぐらいのスケールで考えていかなきゃいけないなと私は思いますし、行間にそれが読み取れるわけですが、堺屋長官は新中期計画を考えるに当たって、どういうふうに考えておられますか。  もしそれが五年計画だと、私は、今度の再生計画というのはそんな短いものじゃだめだ。もっと長く考える。余り成長率何%なんて数字にこだわらずに、今私が申し上げたタイムスケジュールとそれぞれの段階の戦略的なポイント、そういう計画にしなきゃいけないのじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  20. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員指摘のとおり、戦略会議からは中間報告をいただきまして、近く最終報告をいただくことになっております。その最終報告に委員の御指摘いただきましたようなタイムスケジュールがどのように盛り込まれておるか、まだ私存じておりませんが、私も委員の皆様方とは意見の交換を繰り返しております。  御指摘のように、一九九五年、九六年、九六年は四・四%経済成長いたしました。それを非常に高く評価したというか強く見て、すぐ財政再建に乗り出したのがちょっとタイミングが悪かったと私は考えております。したがって、今委員の御指摘のように、六年計画、八年計画というようなものが必要だろうと思っております。  私ども経済企画庁といたしましても、この経済戦略会議の報告を踏まえて、さらに、一月十八日には総理大臣から経済審議会の方に諮問がございました。それは、従来の経済計画、所得倍増以来、五カ年計画、十カ年計画、いろいろあったのでございますが、経済計画ではなくして、十年ぐらいの間に、二十一世紀の初頭十年ぐらいの間に達成すべき我が国の経済の姿、そしてそれに至る政策いかん、こういう形で諮問していただいております。  それで、審議会の方でも、成長率何ぼ、何が何ぼという数字よりも、日本の社会経済のあり方がいかにあるべきか、そしてそれに至る道程がどういうものであるべきか、今五つの部会を編成いたしまして、日本の少子社会あるいは会社人間の後の日本人の家庭の問題、そういったことまで含めて、この五つの部会を動かして、そしてできるだけ早い機会に答申をいただきたいとお願いしているところでございます。  その中には、鈴木委員指摘のようにタイミングの問題も、余り縛りはできませんけれども、現実の動きを見ながらどういう段階でやっていくか、プライマリーバランスの問題、これは極めて御指摘のとおりでございますが、そういったものも含めてやっていきたい。今鋭意準備中でございます。
  21. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 五カ年計画ではなくて十年という非常に長い視野で諮問された、さすが小渕総理大臣だと思います。ぜひそういう長い視野、歴史的な大きなスケールで考えながら、この新しい計画をつくっていただきたいと思います。  今堺屋長官がおっしゃった中で、私も全く同意見の点がございます。それは、デフレーターが変わったものだから、国民所得統計が少し動きました。その結果、驚くべきことには、九六年度の成長率が四・四になっている。三・九%だったのが、三・九でも相当なものですが、四・四になっちゃった。それからその前年度の九五年度が三・〇%。実質ですよ、両方とも。  実質で三・〇、四・四といったんですよ。これはかなりのスピードが出ているんですね。これを見るにつけても、私は、うまく持っていけば、潜在成長率プラスアルファというのはかなり高い数字が出てくるはずだな、三%台が出るんじゃないかなと思います。  この回復の後、本当に残念だったと思うんですが、九七年度に中立的な財政政策をとっていただければ、景気刺激をする必要はもうないんですよね。三・〇、四・四と来たんですから、景気刺激をする必要はなかったが、いきなり九兆円の国民負担増、三兆円の公共カット、十二兆円、赤字をぼんと減らそうとした。これは無理で、がたがたっとマイナス〇・五%成長になっちゃって、十二兆円以上逆に赤字が膨らむような羽目に追い込まれたわけでございますね。  ですから、繰り返して申し上げて恐縮でございますが、景気刺激政策でようやく経済が回復してきたときは、その次に中立の時期を置かなきゃいけないということです。そこでいきなり、アクセルを踏んでいた足をぱんとブレーキに置きかえたのがあの失敗なんですね。それは、アクセルから足を離してしばらく、車はエンジンブレーキがかかってもだあっと行きますね。そういう状態を二年間ぐらい置いてから財政再建に入っていけば十分その力があったのに、返す返すも残念であったと思っております。  それだけに、さっき申し上げましたように、九九年度と二〇〇〇年度は何が何でも景気回復というんで、景気刺激をする、バブルの清算をする。その後の二年間、せっかちに財政赤字削減のためにブレーキをかけない年を二年間置く。そうすると、自分の力で、民間支出主導型で自律的に成長していく。この二年間を置けば、その先の六年間で財政再建が成るというふうに私は思っております。その点で、今の堺屋長官の御発言を聞いて、我が意を得たり、私もまさにそう思っているということでございます。  そこで、大蔵大臣にお伺いいたしますが、その後、いよいよ二〇〇三年から財政再建に取りかかるというときのポイントなんでございますが、もう御承知だと思いますが、私ども自由党が考えておりますのは、この第一期の景気を持ち上げるときの直接税減税、もう既に来年度予算に九・四兆円の直接税減税が入っておりますね。相当な直接税減税をやるわけでございます。これは、もちろん第二期には増税しちゃいけないんですが、第二期は増減税はとんとんでいかなきゃ、中立じゃなきゃいけません。第三期に入って、さあ財政再建だというときに、この直接税を増税で取り戻しちゃ、赤字を埋めていっちゃいけないと僕らは思っているんです。そうではなくて、本格的な行政改革による歳出の削減と、それから潜在成長経路に戻ることによる自然増収の両方で埋めなければいけないというふうに思っているのであります。  では、全然増税しないのか、高齢化していって大丈夫か。これに対する私どものお答えは、いいえ、高齢化に伴って膨らんでくる基礎年金、高齢者医療、介護、これは消費税の増税で賄わざるを得ませんと言っているわけで、ただ、その場合に、消費税はこの三つにしか使わないということで、透明性を十分に高めて国民皆さんに説明すれば、消費税はこの三つに行く、それ以外には行かないということを説明すれば、国民の皆様に御納得いただけるんじゃないだろうか、これが我が自由党の考えでございます。  こういたしますと、国民は幾つかの安心が得られる。  まず第一は、今所得税減税、法人税減税と言っておるが、先へ行ったら増税じゃないかと思うから貯蓄に回っちゃうという議論がありますね。これがなくなる。直接税が、今の減税は本当に減税であって、先へ行って増税しませんよ、もちろん制度改革で課税ベースを広げるとか、そういうことはありますが、ネットで見たとき、増税には持っていかないんだということが非常に大事だと思います。それを言い切れば、国民は大変安心をする。  もう一つ、消費税で、今言った三つの高齢者社会保障を見るということになりますと、高齢者と働き手と両方が安心すると思うんですね。今のままですと、皆保険、皆保険と言いながら、保険制度は崩れてきておりますので、将来の給付が下がるんじゃないか、将来の保険料が上がるんじゃないかということで、高齢者も働き手も両方が不安になっちゃっている。これを何としても取り除かなきゃいけない。消費税で限定的にこの三つを見ていく、保険制度はこの三つに関してはやめますということになれば、今言った点、安心が出る。  だから、三つの安心が出ると思うんですね。将来の直接税増税はないんですよ、将来の給付水準は下がりませんよ、将来の保険料負担増加はありません、それどころか、今の三つに関連した保険料は、個人についてはゼロにしますよ、これは直接税減税の一環ですよという形がとれると、国民は大変安心して、まさにやる気を起こしてくれると思うんですね。  これがサプライサイド改革の一番大事なポイントで、レーガンやサッチャーが成功したのもこの辺にあるというふうに思います。大変これは厳しい財政再建のあり方だと思いますが、大蔵大臣、いかがでございましょう。私ども自由党はこう考えておりますが、蔵相のお考えをお聞かせください。
  22. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから経済企画庁長官との間で、この不況を幸いにして脱出できました後、財政再建等々のタイミングをどういうふうに考えるかということについてお話がございまして、承っておりまして、私も実は全く同様に考えております。  私は大蔵大臣でございますので、財政再建のことをしばしば御指摘を受ける、それは当然のことでございます。大事なことだし、急ぎますけれども、しかし、日本経済が確実に成長のサイクルに入って、その後でないと考えるべきでない、また考えることも難しいということを申し上げてございまして、それはほとんどおっしゃいましたようなタイミングになろうと思います。  それで、これは今そのときを想像することも、具体的にはそう容易でないと思います。恐らく二千何年かに、世の中、いろいろなことが変わっておりますでしょうし、また、ニーズも違っておろうと思います。世界も変わっておると思いますから、今とは違った世の中になるくらいに思っていないといけないんだろうと思います。  それを前提に申し上げました上で、所得税につきましては、今回の税制改正で、課税最低限が三百八十二万円になりました。これでも諸外国に比べればかなり高うございますが、しかし、これを下げるということは容易なことではございません。  ただ、一部で、国会で御議論がございましたように、定額減税の四百九十一万円までにしろ。しかし、これを据え置きましたら、これは国民から所得税をいただくという、少しでもいただくという体制というのはとれませんので、どうしてもそれは今回そうしたくなかった。今はそれで少しいいかもしれませんけれども、先のことを考えますと、四百九十一万円なんていう課税最低限を持っておりましたら、なかなか将来のことは考えられないと思いますので、それで、仮に三百八十二万円、今のところでございますね。  それと、最高税率を下げましたことにもいろいろ御批判が一部にございました。しかし、これを下げますと、今度かける累進というのは余り急なものはかけないことになりますから、これはやはりそのときのために下げておきたい。  そういう気持ちがありまして、そういう二つのことをいたしましたが、これは将来の所得税というものの姿を、ある意味で、そこで暗示と言うのは言い過ぎでございますけれども、どこかで考えてしているつもりでおりまして、そういう意味では、病気が治ったから所得税を上げるなよとおっしゃいますことは、実はつくづくそういうふうに私ども考えておるわけでございます。  そこで、消費税でございますが、三つの社会福祉目的に限るという点につきまして、自由党からそういうお考えの御提示があって、私どもは今度予算総則でそのことを書くことにさせていただきました。  この点については、野田当時の政調会長ともよくお話ししているのですが、先々、直間比率、狭い意味での直間比率との関連で消費税を上げる、どうもそういう説得はなかなか難しいのではないか。消費税には消費税の分野というものがあって、それで国民が受け入れるので、直間比率といえば所得税を下げておいて消費税を上げる、そういう発想というのはなかなか国民には受け入れがたいだろう、私もそれは至言だと実はやはり思います。  つまり、高額者に軽く、大衆に厚くというような、そういう税制の受け取られ方でないようなことを考えなければなりませんから、自然、今鈴木委員の言っておられるようなことにやはりなっていくのかな。  ただ、先ほどは大変明確に、そういう福祉負担がふえれば消費税の増税になる云々ということをおっしゃっていらっしゃいまして、私どもはそういうことを口に出して言える問題だと今思いませんから、直間比率の問題として消費税を考えるのではなくて、やはりそういう三つの福祉目的との関係考える、それがまさにあるべき姿ではないか。  結論といたしまして、しかし、そういう抜本的な改革、それは財政もそうでございますし、税制もそうでございますし、中央、地方の行財政の調整もそうであろうと思います。それから、先ほどおっしゃいましたように、プライマリーバランスで考えるのもそうだと思います。御指摘の点はそのとおりだと思いますし、また十分これからも御示唆を受けながら、幸いにしてそういう日が参りましたときには、再建のタイミングを間違えないようにいたさなければならないと思います。
  23. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 大枠において御賛成いただきまして、大変私も心強く感じた次第でございます。特に、景気刺激政策で景気が回復してきたとき、すぐに財政再建に入ってはいけないという点、同じ御認識だと伺って大変安心いたしますと同時に、さすが宮澤大臣というふうに思いました。  それから、いよいよ大丈夫だということで、将来、直接税、増税はしないとおっしゃってくださいましたが、しかし制度的にはまだいじらなければいけない。  私が一つ思っておりますのは、さっき言ったように、消費税を三つの高齢者社会保障に充てますと保険料がゼロになっていきます。あれは一種の直接税だと観念いたしますと、課税最低限の調整なんかに使えるなというふうに思っております。  それからもう一つは、将来の問題として、NPOに対する寄附金の課税所得控除というのがもう少し、まだほとんどない、これが入ってきたときは、割と私は所得税率のフラット化に行きやすいんだなというふうに思っています。その辺は総合してだと思います。  さて、次に太田長官にお伺いしたいわけでございますが、先ほども申し上げましたように、今やっている直接税減税は将来の直接税増税では埋めないよ、行革による歳出削減、それから潜在成長率が戻ることによる自然増収だという場合に、やはり行革による減税、行革減税というのが大変大切、大きな役割を担わなきゃいけないというふうに思っております。これはもう長官が骨身にしみておわかりのように、行革ぐらい、言うはやすく実行するのは難しいことはない。それでも歯を食いしばってやらなければいけないというところに日本は来ているんだと思います。  私思いますに、歳出削減につなげていくための行革のいわばポイントになるのが幾つかあると思うのですね。  一つは、中央政府については、規制の撤廃と地方分権をすれば、人が要らなくなるだけじゃない、組織だって何だって全体に簡素化、スリム化していけるはずだというところ、ですから、これは経済構造改革と表裏になってスリム化できるはずだ。  それからもう一つは、公共部門だってアウトソーシングしなさいよ。もう民間がこれだけやっているんだ、相当アウトソーシングできるものがあるじゃないか。独立行政法人もいいが、それよりももっと踏み込んで民営化できるところがあるんじゃないのという、このアウトソーシングの問題だと思います。  それから三番目のポイントは、さっきちょっと言いましたように、NPOへの寄附金を課税所得から控除するという思想は、同時に、かなりの活動をNPOにやらせるという考えと表裏でありますから、これもスリム化につながっていく。  最後に、四番目は、地方自治あるいは地方分権と言うが、地方自治体だって三千三百もあって、むだをやっているじゃないか、あの受け皿をどうやるんだというところ、これも公共部門として大変な歳出カットが出てくるんだというふうに思います。  専門家でいらっしゃる長官は、私が今とりあえず四つ挙げましたが、まだまだいろいろな諸相を御存じだと思いますが、歳出削減につなげていくための行革について、長官の御見解を承りたいと思います。
  24. 太田誠一

    太田国務大臣 行政改革で今度やろうとしておりますことは、むしろ今鈴木委員がおっしゃった、なぜこんなに肥大化してきたのかということの原因を取り除くということで、そういう体質の変化をみずからつくり出すということでございます。  したがって、例えば今の内閣法などの考え方でいうと、行政各部が分担管理をしていくということで、必ずしも内閣総理大臣がイニシアチブをとれるということになっていないわけでございますので、そこでそれぞれ、こういう言い方はあれですけれども、各省庁が分立割拠しておって、それぞれが自己増殖をしてきたという戦後の歴史があるわけでございます。それをこの際、内閣、そして特に総理大臣政策決定の主導権を一元化して、そして今おっしゃったように、ここでぐっと押さえるべきだということを総理が決断すれば、一糸乱れず各省庁が協力をするような体制にしておくという、鈴木委員もあるいは自由党の皆様方も従来言っておられます政治主導の姿にやるということが、私は、これがうまくいけば、今おっしゃっているようなことにおのずから制度が向かっていくだろうということがあると思うのです。  それから、今具体的におっしゃいました民営化の話でございます。これはもちろん考えておるわけでございますけれども、独立行政法人化も必ずしもその趣旨には沿わないということではないわけでございまして、相当これはその後の、実際に物事がスタートをした後の、みんなが、特に立法府がどうやって監視して、あるいは評価をしていくかということにかかっておると思います。政府の今持っております国家公務員の数の相当部分をこちらの方に移っていただいて、一部じゃなくて相当部分を移っていただいて、それを立法府が監視をして効率化していくということができると思うのでございます。  ただ、今この行革の中で、具体的に歳出削減を、どういうふうにしてお金を減らしていくのかということになりますと、そこは直接的には念頭に置いておりませんので、ともかく体質を変えて、そういう今おっしゃったようなことができるように早くするということではないかと思っております。
  25. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 まずは体質を変えるところから入る、ごもっともな御意見でございますが、ぜひ次の段階で、この日本経済再生の大きなタイムスケジュールの中で歳出に切り込んでいく。恐らく、これはもう第一期の終わりぐらいからそこへ入っていっていただきたいものだと私は思っております。ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それから、最後に言った地方自治体のことについて野田大臣にお伺いいたします。  野田大臣が自由党の幹事長、政調会長として先頭に立っておつくりになった日本再生へのシナリオでございますから、私からお伺いするのもおかしなものでございますが、私どもは、最終的には自治体の数を三千三百から三百ぐらいにしよう、一億二千万として平均四十万人の人口でございます。それから、自自協議の中で、私も覚えておりますが、そうだな、まあとりあえずは千ぐらいかなというようなこともありました。正式の文書にはきちっと必ずしも残っていませんが、そういうことで、自民党の先生方も同じ発想であるということは私も承知しております。  自治体を今の三千三百から効率的な三百か四百か、あるいはとりあえず千かに向かって整理統合していく場合の政策の手段として、私は、やはりその程度の自治体にならないとやれないよというものを、えさに使うといいますか、手段に使うのは大変大事で、もう野田大臣もよく御存じのことだと思いますが、一つは、私はやはり公共投資だと思うのですね。  地方分権で、今のように中央政府が五カ年計画を立てる、それに合ったプロジェクトを持ってきてやったら補助金をつけてやる、ああいうシステムから、一括して補助金を渡して自主的に地方自治体で公共投資計画を考えなさい、こういう方へ移行していこうというのは、大体もう自自の間で一致した考えでございますが、そういうところへ持っていくに当たって、総理生活空間倍増の計画でございますね、この中に大変いいヒントがあるなと私は思っております。  それは、生活空間倍増戦略プランの中に地域戦略プランというのがございますね。大体の感じで四百ぐらいだ。これをやろうとすると、今の市町村にこだわっていてはできないわけでございます。ちょうど私どものイメージに合う平均三十万ぐらいの地域社会、市町村が一緒にならないとこのプランはできない。しかも、これは同時に、今までの縦割り行政による補助事業という概念を乗り越えなければできないのでございますね。ぜひこれを一つのてこにして、自治体の整理統合を進めていただくということをお考えいただいてはどうかと思っています。  それから、もう一つは介護だと思うのですね。日本では、介護というと介護保険、介護保険というのですが、私は非常にあれは不満でございまして、介護の内容は二つありまして、介護サービスの供給とその介護ファイナンシング、介護のファイナンスのやり方の一つが保険なんですから、それを介護保険、介護保険といって問題を狭くつかまえるのはけしからぬ。私は、介護というのは介護サービス供給とそのファイナンスだ。そのファイナンスについて、私ども自由党は消費税と言っているので、それを保険でやるのはどうですかね、こう言っているのです。  しかし、ぴたっと自自で一致しているのは、介護サービスの供給というところは一致しているわけですね。この介護サービスの供給能力を持った自治体というのは、今の市町村のようにちっぽけじゃだめです。これはもう既に御存じだと思いますが、市町村で悲鳴を上げているところがあります。動けない、やれないというところがあります。ですから、介護サービスの供給というのをもう一つのてこにして、自治体の統合、そして三十万とか四十万ぐらいの単位の受け皿能力のある自治体に持っていくという考えがあろうかと思いますが、自治大臣、いかがでございましょう。
  26. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 大変貴重な御意見、御示唆をちょうだいしてありがたいと思います。  先ほど来、特に総務庁長官とのやりとりの中で、行政改革という問題、これは単に構造改革ということだけでなくて、言うなら行政経費削減ということにもつながっていくんだという非常に大事な視点だと思います。そういう点でいえば、国、地方を通ずる行政の簡素効率化ということと、それを通じてのいわば経費削減効果、この両面が必要だろうと思います。  そういう点で、市町村の合併について、今そこへ至る一つの戦略的なアプローチについてお話があったのですね。いずれも発想として、そのとおりの発想で臨んでいかなければならぬと思っております。  ただ、具体的に地域戦略プランが直ちにそれと連動するかということについては、若干検討しなければならぬと思います。あれはたしか四百ほどの地域ということになっておりますし、しかも、十一年度から、直ちに現実の予算配分の中で、これからいわゆる調整費の配分の中でスタートするものですから、市町村合併の問題が直ちにそこに連動するかどうかというのは、ちょっとすぐには難しいかもしれません。  しかし、方向性としてそういう広域連合ということもありますけれども、ただ単に従来の合併機運を促進するというだけでない、もう少しさらにアクセルを踏んでいかないとだめではないかということについて、全く同感であります。  そういう点で、昨年の五月にいわゆる地方分権推進計画というものが閣議決定され、今国会で今度それを法案化して、地方分権、我々地方主権という言葉も用いたりしておりますけれども、それをさらに法案化して今国会でお願いしよう。その中に、いわゆる市町村の合併特例法の改正をして、従来よりもさらに合併をアクセルを踏んでいきたい、その具体的な手法を今いろいろさらなる追加を考えておる段階であります。  そういう点で、介護のお話もありましたが、基本的な住民サービスへのレベル、内容を、どのように高度なニーズに対応していくかということを考えれば、単なる行政経費削減というだけでなくて、そういう意味からも合併を推進していかなければならぬという、ここのところをさらに住民の皆さんにも十分理解してもらうような、そういうやり方もしていきたい。  それから、いま一つお話があったようですけれども、多少、いわゆる過疎地帯等についてのいろいろな話がありますが、そういう意味で、ナショナルミニマムというような中で、交付税の中で、言うなら補正を用いていろいろ傾斜的なやり方をしてきたことの見直しも若干する必要があるのではないかということも含めて、やはり合併した方が住民のニーズにも沿う方向になるんですということを、相当これはアクセルを踏んでいきたいというふうに考えております。  いずれにしても、両党間の協議の中で、今の三千三百という数は余りにも多い、それを何とか三分の一ぐらいを目途にアクセルを踏んでいこうという方向性は、両党間でさらに進めていただきたいとぜひお願いをする次第です。  自治省としては、それを具体的に、その協議を受けて、さらにアクセルを踏んでいきたいというふうに考えております。
  27. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 この問題のリーダーでずっと自由党の中で議論してきたことを、いよいよ実践段階で、責任者でおやりになっている自治大臣から力強いお話を承りました。最後に承りましたように、自自両党でこの問題、さらに真剣に議論させていただきたいと思っております。  一番最後でございますが、総理に御質問申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  経済戦略会議でございますが、最終報告を出しますと、その後どうなるのだろうということがございます。それから、長いことずっと規制緩和委員会が頑張って、あれは細川内閣のころにできて、ずっと長らえて、それなりに仕事をしてきたと思いますが、今は宮内委員長、頑張っておられますが、あれもぼつぼつデューが来るのかなというふうに思います。  つきましては、経済再生内閣である小渕内閣として、今諮問されております中期計画が立ち上がってきて、これを経済戦略会議の提言も入れて実行するのだということになったときに、そのタイムスケジュールどおりに日本経済が推移しているかをしっかり監視する機関、ナショナル・パフォーマンス・レビューとアメリカでは言っているようでございますが、そういう機関として、経済戦略会議あるいは規制緩和委員会を母体として、そういう機関を同時におつくりになることをぜひ総理にお考えいただきたいと思っております。  それが裏打ちになっておりますと、出てきた中期計画も、それから日本経済再生の戦略、戦術も、これは本当に実行されるぞという印象を国民に与える、そういう安心感を国民に与えると思いますので、この監視機関の創設ということを御検討いただきたい。これを最後の質問といたします。いかがでございましょう、総理
  28. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 経済戦略会議はいよいよ本答申をいただく時期を迎えておりますが、過程におきましてもいろいろな御提言をちょうだいいたしてまいりました。  まずは、金融問題につきまして、この国会でも二法を審議いたしております段階におきまして、公的資金の投入ということでかなりドラスチック、結論的には同じ数字になったくらいの、六十兆円を入れるべきだという中間的ないろいろ提言をいただいて、それぞれに実施をさせていただいたという意味では、私は非常に時宜を得た中間的ないろいろ御提言もいただいてきたと思います。  いよいよ、これは提言を受けました以降の、どのようにこれを実現していくかということにつきましては、この戦略会議そのものも、従来からいいますと、諮問し、答申を受け、それで一応幕を閉じるというような形が通例ではありますけれども、私は、せっかくに非常に熱心にお取り組みいただいて、かなり中長期的にもわたりましての経済の戦略についての御答申をいただけるということになりましたら、これに対しての、いかに監視をするといいますか見ていくかということにつきまして、今ナショナル・パフォーマンス・レビューのお話もございましたが、この点につきましては、樋口議長その他、皆さんとも御相談をしていきたいと思っております。  私自身は、御答申をいただければ、これを政府の中でどのような形でこれをバックアップしていくかというような形もつくっていかなければなりませんし、また、具現化するとなれば、多くの法律も必要とすることでありまして、こうなれば当然国会とのかかわり合いを持つことでございますから、国会における諸先生方のこの御答申に対しましての建設的な御検討もいただきつつ対処することが諮問した者の責任ではないか、このように考えております。
  29. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 野党のやじのない静かな質疑でございましたが、各大臣から大変前向きな御答弁をいただきました。ありがとうございました。  では、これをもって質問を終わります。
  30. 中山正暉

    中山委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時四十三分開議
  31. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、暫時休憩いたしたいと存じます。     午後一時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  32. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(ただし北海道開発庁、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、国土庁を除く)並びに他の分科会の所管以外の事項  第二分科会は、法務省、外務省、大蔵省所管  第三分科会は、総理府(科学技術庁)、文部省、自治省所管  第四分科会は、厚生省、労働省所管  第五分科会は、総理府(環境庁)、農林水産省所管  第六分科会は、総理府(経済企画庁)、通商産業省所管  第七分科会は、総理府(北海道開発庁)、運輸省、郵政省所管  第八分科会は、総理府(国土庁)、建設省所管 以上のとおりとし、十七日、十八日の両日分科会審査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次いで、お諮りをいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  36. 中山正暉

    中山委員長 質疑を続行いたします。小林守君。
  37. 小林守

    小林(守)委員 民主党小林です。  委員会の運営が正常化されたわけでありますけれども、委員長には、厳正な、公平な運営、そして、円満な運営を続けられますように、まず最初に要請をさせていただきます。
  38. 中山正暉

    中山委員長 はい。心得てやらせていただきます。
  39. 小林守

    小林(守)委員 それでは、今大きな話題になっております、外国の艦艇が、軍艦が日本の港湾に入港するに際して、自治体の方で非核の証明をもらいたいということについて外務省にその提示を求める、そういう趣旨の県議会の決議に基づく条例化について、外務省並びに自治大臣は、地方自治体の知事の権能の逸脱であるというような趣旨で、これを阻止するべく動いておるやに聞いておりますけれども、私は、むしろ、地方分権の流れの中で国と地方との関係考えるならば、対等、協力の関係に原則あるべきでありまして、そういう点で、私は、自治大臣の発言は、むしろ国の権能からの逸脱ではないか、このように思えてならないんですが、まず最初に、この問題について自治大臣の認識をただしたいと思います。
  40. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 外国の軍艦が本邦に寄港するということについては、これは、まず何といっても、外交関係の処理の世界において国の責任において決められるべき事柄であります。  したがって、港湾管理者としての県における権限というのはありますが、それはあくまで港湾の管理運営上の権限の世界であって、そのことと、国の外交上の責任ある処理としての判断がそのことによって制約を受けるということは認められるものではないと思います。それは次元が違うことである。そこは、私は、この前からこの委員会で御質問があったときにも申し上げたと思っております。
  41. 小林守

    小林(守)委員 地方自治の本旨という、憲法九十四条でしょうか、これに基づくならば、地方自治体は「法律の範囲内で条例を制定することができる。」このようになっていますね。法律に反するかどうかについて、これは日米安全保障条約、そして地位協定、それから港湾法というようなものが関連法ということなんですが、少なくとも非核三原則というのは国是ですよね。国是をしっかりと求めていくことを地方自治体が国に求める、これがどうして国の外交上の権能に差しさわりがあるんでしょうか。
  42. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 その辺の判断は、国の政策なり国の責任において決定すべきことであって、知事が港湾の管理運営について地方自治法なり港湾法で認められているのは、その管理者としての責任の権限行使、その範囲である、政治的な判断は全く別の世界であると我々は考えております。むしろそれは、物理的ないろいろな能力においてどうのこうのということはあるだろうと思います。  それからいま一つ、そういう政治的な、非核三原則であれ何であれ、自治体がそのことを理由としていろいろな施設の管理権限の中で具現化してやっていこうということになると、結果において、国の外交の責任ある処理ということが自治体の判断によって制約を受けるということは、これは認めるわけにいかないということは当然だと思います。
  43. 小林守

    小林(守)委員 納得がいかないんですが、国是である非核三原則について、搭載していないということを港湾管理者として県民に対して責任を持つ立場にあるわけですから、非核三原則の趣旨にのっとって、外国艦船に対して直接求めるのではなくて、県から外務省に求める、国に求めることがなぜ外交の専権事項に差しさわりがあるのか納得できませんけれども、外務大臣、いかがですか。
  44. 高村正彦

    高村国務大臣 自治大臣がお答えしたことを繰り返すようになりますが、国と地方公共団体は相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理しているので、国として責任を有する外交関係の処理がまさに地方公共団体に妨げられるようなことがあってはならない、こういうふうに考えているわけであります。  外国軍艦の本邦寄港は、外交関係の処理につき責任を有する立場から、国がその是非を判断すべきものであります。地方自治法及び港湾法に基づき地方公共団体に認められている係留場所の指定等の港湾施設の使用に関する規制は、あくまで港湾の適正な管理及び運営を図る観点から、港湾管理者としての地位に着目してのものにとどまるわけで、まさにその外交関係の事務というところまで地方自治体が言い出せば、それは権限の逸脱以外の何物でもない、こういうことでございます。
  45. 小林守

    小林(守)委員 地方自治体が外交関係にまで関与することについて、権能の逸脱であるということでしょうけれども、先ほども言ったようにその非核三原則について、これは核を搭載していないということを証明してくれ、証明書を出してくれということを国に求めることが、なぜ国の判断を求めることにつながるのか。当然事前協議の対象になるわけですね、核の搭載の場合は。しかし、搭載していないというようなことであるならば協議の対象にはなってこない、だから、協議の対象にならないというか協議の申し入れがないからこれは核搭載はないんだ、むしろ外務省がそういう証明を自治体にする、知事の方に対して文書でするということはどうしてできないのかということなんですよ。それがどうして外交の専管事項に触れることになるのかということですよ。少なくとも、国と地方との対等、平等な関係考えていくならば、これは当然できない話ではなかろう、このように思えてならないんですが、納得できません。そして、どういう法的根拠において、国の専管事項として自治体が関与してはいけないんだということは、法律的な背景は何なんでしょうか。
  46. 高村正彦

    高村国務大臣 外交の処理は外務省がやるということは、それは設置法に規定されておるところでありまして、法律的根拠はそういうことだと思いますが、我が国は非核三原則を国の基本政策として堅持しており、国が外国軍隊に対して寄港の同意を与えるか否かについて決定する際には、このような基本政策を堅持するとの立場を踏まえて対処しているわけであります。  米軍艦船については、日米安保条約及びその関連取り決めに基づき我が国への、港への出入りが認められていますが、日米安保条約上、いかなる核の持ち込みも事前協議の対象であり、核の持ち込みについての事前協議が行われた場合には、政府としては常にこれを拒否するということを鮮明にしているわけであります。  以上のように、政府の対応によって非核三原則を堅持するとの我が国の立場は確保されているので、外務省から個々の外国軍艦が核兵器を積載していないことを証明するような文書を発出することはそもそも必要でないし、そのような文書を発出することは考えていないということであります。
  47. 小林守

    小林(守)委員 国としてはそういう考え方で、必要ないからということなんでしょうが、自治体が条例を制定して、外務省に対して、必要ないということになるかもしれませんが、一々個別の艦船について政府は回答しない、そういう回答の文書が来るとか、そういう条例を決めることについて、違法なんですか、これは。
  48. 高村正彦

    高村国務大臣 何のためにそういうことを求めるかということでありますが、私どもが承知している限りにおいては、高知県は、そういう証明書を求めて、その証明書があることによって初めて核が搭載されていないということを認定して寄港することを認める、そういう考えを持っているということであるとすれば、それはまさに国の権限に対して地方が関与するということでありまして、それは許されることではない、こういうことでございます。
  49. 小林守

    小林(守)委員 法律に反しない範囲で条例を制定する権利があると憲法に保障されております。  今外務大臣がおっしゃったのは、恐らく七十三条の「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」の中で、「外交関係を処理すること。」というところに基づいておるんだろうというふうに思うんですが、法律に反しない範囲で条例を制定することができるという九十四条の趣旨からいって、国がそのねらっている思惑、考え、それをおもんぱかって、これはけしからぬと言うこと自身、条例制定権を奪う、制限する、そういう関与ではないか、国の地方への私は関与ではないか、このように思うんですが、いかがですか。
  50. 高村正彦

    高村国務大臣 むしろ、国の外交権に関与することを目的としてそういうことをするということはまさに法の趣旨に反することでありますから、我々は、そういうことは好ましいことではない、そういうことを高知県の求めに応じてそういう照会に応じている、そういうことでございます。
  51. 小林守

    小林(守)委員 高知県の条例案、それからそれと付随している実施要綱案を見ますると、要は、非核三原則に基づく港湾の平和的な利用ということを県議会の決議に基づいて条例化しようとしていることでありまして、全会一致の決議に基づいて条例化することについて、その内容がけしからぬということを国が言うこと自身、私は、まさに越権行為ではないのかな、こういうふうに思えてならないんですが。
  52. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 もう既に先ほど来、私からもあるいは外務大臣からも御答弁申し上げておりますが、高知県で検討されておりました条例改正の内容を見ますと、言うなら政府に対して証明書といいますか文書の提出を求めて、その結果に基づいて港湾施設の使用に関する決定を行おうということでありまして、このことはすなわち、外交関係の処理に当たる国の決定に自治体が関与してそれに制約を加えるということでありまして、このことは港湾管理者の権能を逸脱するものであって、地方公共団体の権限の行使としては許されるものではない、こういうことであります。
  53. 小林守

    小林(守)委員 それでは、別の角度からちょっとお聞きしますが、いわゆるガイドラインの中の自治体及び民間の協力の中で、特に自治体の協力の中で、「協力を求めることができる。」ということになっていますね。そして、例えば合理的な理由があればお断りというか拒否することもできるし、それは違法ではないんだよというお話になっておりますね。  では、非核三原則の実効性を外務省に求めるというようなことは合理的な理由になるのかならないのか、これについてはどうでしょうか。
  54. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほどから御答弁申し上げているように、国がきっちりそういうことをやっているわけでありますし、そういうことを求めて入港を認めるとか認めないとかいうことは、地方自治体の権限に属することではない、地方自治体の事務に属するところではない、そういうことでありますから、そのことによってその正当な理由とか何だとかいうことに関係してくるとは思いません。
  55. 小林守

    小林(守)委員 ですから、核搭載の有無を確認できないことをもって入港はちょっと困ると言うこと、ガイドライン法上で協力できないという理由がそういう理由だった場合には、これは合理的な理由になるのかならないのかなんですよ。
  56. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 ちょっと私の受けとめ方が間違っているのかもしれませんが、ガイドライン法というのはあくまで日米安保に基づいて行われる世界であって、これは米国の艦船ということは当然のことであると思うんです。しかし、今回いろいろお話があっているところは、必ずしも、米国の艦船のみならず、一般的な外国の軍艦の寄港ということについてのテーマでありまして、そこはおのずから違うんではないんでしょうか。ガイドライン法案は、あくまで日本周辺事態に関して行われる協力の一つの、いろいろな形の中で出てきたテーマであるというふうに考えております。
  57. 小林守

    小林(守)委員 確かに、安保条約ばかりでない、一般の外国の艦船についても対象にはなっているのが今日の高知県の問題だと思うんですが、しかし、その大きな丸の中に含まれるのがガイドラインの中の艦船の入港という問題になるんじゃないでしょうか。大きな丸の中の安保条約にかかわる米軍の艦船の入港ということになるわけですから、当然同じ論法が適用されるわけであって、今自治大臣のおっしゃった問題は、ちょっと焦点をずらしてしまうようなことになるんではないでしょうか。  ですから、ガイドラインにかかわってでいいですよ、ガイドラインにかかわる米艦船の入港について、自治体が、核搭載がはっきりしない、外務省も返事をくれないということをもってその入港を拒否することは合理的な理由になるということなのか、いや、合理的な理由にならないということなのか。
  58. 高村正彦

    高村国務大臣 自治体が判断すべき合理的な理由にはなりません。国がそういうことはないことを確認して入れるか入れないかを決めるわけでありまして、あと港湾管理者に協力をお願いするということは、出入国、そういうようなことではないわけであります。
  59. 小林守

    小林(守)委員 それで、もう少しこの問題について別の角度からお聞きしますが、神戸港方式というのを御存じだと思うんですけれども、神戸市が議会の決議によって、これは直接だと思いますが、外国の艦船、艦艇に対して非核証明を求める、こういう決議に基づいて実施をしようということになっているわけなんですが、これについては、外務省並びに自治省はどういうふうに受けとめているのか。これは違法なのかどうかどうか。今の論法でいくならば、違法ということになるんでしょうか。
  60. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 神戸において行われておりますのは、条例に基づいて、今のような高知県が検討したような内容のやり方ではなくて、直接みずからが外国の軍艦に対して問い合わせをしているというか、そういう形の中で行われておるようであります。そして、ただ、その結果が入港あるいは港湾施設の利用についてどういう影響をもたらしたかということとの脈絡が必ずしもはっきりはしていないところがあることはあります。  したがって、そういう点で一概に違法ということを言い切ることはできませんが、必ずしも適当なことではないというふうに考えております。
  61. 高村正彦

    高村国務大臣 地方自治体が地方自治の本旨に基づいて各自治体住民の意見として決議や宣言を採択することについては、政府としてとやかく申し上げる立場にないわけであります。その意味で、神戸市議会の決議は、神戸市としての考え方を表明したものとして受けとめているわけであります。  他方、国と地方公共団体とは相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理しており、国として責任を有する外交関係の処理が地方公共団体によって妨げられるようなことがあってはならないと考えているわけであります。  外国軍艦の本邦寄港については、その具体的実施上の調整には港湾管理者たる地方公共団体もかかわることになりますが、寄港自体は、外交関係の処理につき責任を有する立場から、国がその是非を判断すべきものであります。  したがいまして、国が外交関係の処理として責任を持って同意を与えた外国軍艦の本邦寄港は、当然支障なく実施されるべきものであります。地方自治体が非核証明書の提出を求め、その結果、国として同意を与えた軍艦の寄港が妨げられるようなことは、あってはならないことであります。
  62. 小林守

    小林(守)委員 あってはならないということですが、じゃ、違法ということですか。
  63. 高村正彦

    高村国務大臣 もしそういうことを港湾管理者がするとしたら、権限を逸脱したものでございます。
  64. 小林守

    小林(守)委員 地方自治体の首長が住民から選挙をもって、その住民の生活や安全について、平和について、守る権能を委託されているわけです。その自治体の首長が議会の同意を得て決議をし、条例を制定する、これが法律に、法律ですよ、国の考え方ではなくて法律に反しない限り条例を制定することができるというのが、私は地方自治の本旨だと思うのです。憲法九十四条の本旨だと思います。そういう点からよって、私は、国の関与は地方自治権への侵害である、このように思えてなりません。  「行政権は、内閣に属する。」というふうに六十五条でありますけれども、この行政権はいわゆる国の事務にかかわる権能だというふうに、これは法制局の解釈が既に出されております。行政権は内閣に属する、その行政権は、国の事務に関してなんです。地方の事務に対しては及ばない、これが内閣法制局の見解でありますから、皆さんがおっしゃっている国の専権事項に対する関与だということを、どういう法的な根拠で言っているのか明確でないのです。自治大臣、いかがですか。
  65. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 くどいようですが、外国の軍艦の寄港ということは、一にかかって国の外交権、専権事項であります。地方自治体といえども、日本の国土の中にあるわけであります。そういう点で、国の外交権に服するのは地方自治体といえども当然のことであると思います。  そういう点で、地方自治法なり港湾法で規定している事柄、権限というのは、あくまで港湾の施設についての利用、運営に関する権限の範囲の中であるというふうに理解をいたします。だから、そういう意味で、地方自治権の侵害には当たらないというのは当然のことだと思います。
  66. 小林守

    小林(守)委員 私は、地方分権の趣旨、流れから随分後退して、まさに住民の自治権を抑制するような方向に相当かじ切りをしてきているのではないか、このように思えてなりません。  住民が、国民が、艦船の核搭載について、搭載していないという印を外交の責任を担う外務省が、国が、国民に対して示してほしい、こういう要求をすること自身、国の外交権に対する侵害だというのは、これは国民主権に反することにならないか。地方自治体の長が外務省にそれを求めること、それがどうして国の外交権に対する権能の逸脱だということになるのか、どうしても理解できません。
  67. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 自主的判断で外務省にいろいろ問い合わせをされること、そのこと自体をとやかく言うことではありません。  しかし、少なくとも、その結果いかんによって港湾施設の利用ということについての取り扱いが異なった決定を受けるということになれば、おのずから国の外交に関する責任ある執行を妨げることにつながっていくということを申し上げておるわけであります。  そういう点で、先ほども申し上げましたが、少なくとも、地方自治体といえども国の施政権の範囲の中にあることは当然のことでありまして、それは何ら地方自治体の自治権を侵害することにならない、当然のことじゃないのでしょうか。
  68. 小林守

    小林(守)委員 国の施政権の範囲内という概念が非常にあいまいでありますし、さらに、これはすべてに広がっていくようなものではないかというように思えてなりません。  法律を逸脱することは許されませんけれども、法律の範囲内では地方自治権が認められているわけでありますよ。その違反する法律の根拠がどこにもない今回の高知方式に対して、国が関与していく、介入することについては、どうしても納得できません。  引き続き委員会等で論議をしていただくということにいたしまして、せっかく官房長官においでいただいておるものですから、ちょっとお聞きしたいところがございます。  昨年の十月七日に、金大中大統領が国賓として訪日をされました。そのときに、国会の演説もありましたけれども、地方参政権の問題について大統領は触れられておりました。そして、その地方参政権の問題について、官房長官もその後記者会見で、韓国の金大中大統領が国会演説でもこの問題に触れられたことを重く受けとめたい、このような発言をされております。それから、当時の西田自治大臣は、この法制化について真剣に検討したい、このようにもおっしゃっております。  もちろん、この永住外国人の地方参政権の問題については、九五年の二月二十八日最高裁判決で、これは立法措置上の問題であって違憲の問題ではない、憲法上の問題ではないんだという明快な回答がされておりますから、そういう点で政府政策判断であるということになっておるわけなんですが、これについて、官房長官、せっかくおいでいただいておりますので、その後の取り組み状況等について、どのように進められておるのか、ぜひ前進した回答をいただきたいと思います。
  69. 野中広務

    ○野中国務大臣 お答えいたします。  今御指摘ございましたように、昨年、金大中大統領がお越しになりましたときに、在日外国人の参政権、特に地方参政権の問題について強い要請がございましたし、私どもとしても、大統領がお越しになりまして、こういう問題について、自国の選挙権をも含めて慎重に考えておる旨、披瀝がございましたので、自治大臣とも協議をし、それまでにも公明党の冬柴幹事長から強い要請をも受けておりましたので、慎重に協議をすることといたしまして、目下それぞれ、この参政権のあり方につきまして協議をしておるところでございます。
  70. 小林守

    小林(守)委員 九五年の二月に最高裁判決があってから既に四年を経過しているところであります。そういう点で、特に歴史的な背景のある在日韓国人の皆さん方の強い要望、それから、全国の自治体における決議、少なくとも、人口比でいうと七〇%以上の国民が地方参政権を認めるべきではないかという判断に至っているわけでありまして、そういう点では政府の怠慢というふうに言わざるを得ないと思うのですが、官房長官、いかがですか、もう一度お願いします。
  71. 野中広務

    ○野中国務大臣 私どもといたしましては、確かにおっしゃいますように、在日韓国人の皆さん方からは地方参政権の付与についてお話がございます。同じように、朝鮮半島をともにされます在日朝鮮人連合会からは強い反対の意思がございます。したがいまして、全体に、我が国に長期滞在して永住しておられる在日の皆さん方の選挙権を地方に限ってどうあるべきかということを前向きに検討をしなければならないということで、慎重に対応をしておるところでございまして、ぜひお時間を賜りたいと存じております。
  72. 小林守

    小林(守)委員 既にこの問題については、民主党と当時の平和・改革さんの方で共同提案をさせていただいているというような経過もございますけれども、ぜひ政府の方からも閣法としてでも提案をしてほしい、このように強く要望しておきたいと思います。  それでは、続きまして、建設大臣においでいただいておりますので、建設省所管の公共事業に関する事業再評価実施要綱に基づく事業等監視委員会、これの再評価の運用の問題なんですが、私は、去年の十月に建設委員会の方に行きまして大臣に質問させていただいて、そのとき大臣の方から、事業再評価委員会のメンバーには、地方公共団体の長ばかりでなく、水没住民など現地の方を必ず入れる、こういう答弁をいただいております。もちろん、関係自治体の住民、それからNGO団体等も含めまして、その事業評価委員会の中にぜひ住民の声をしっかりと受けとめられるような構成メンバーを検討する必要がある、このような問題提起の中で、大臣は、そういうことで、十分意見が聞けるようなことで検討していきたいという答弁をいただいております。  ところが、実際のところ、関東地建の思川開発事業についての事業再評価については、このような答弁にもかかわらず、即継続という回答がそのままの委員会の状態の中で行われてしまったということで、私にとっては、大臣の答弁はどうなったんだということで、極めて強い不信感を持っているところなんですが、その経過等についてお聞きしたいと思います。
  73. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 過半御指摘をいただきました思川の開発事業、この再評価でございますが、そのとき私も述べさせていただきましたわけですが、水没者の代表者の方々もその場に入って十分に意見を聞きたいということを答弁いたしたわけでございます。  その後この再評価の会議が開かれておったかどうか、ちょっと担当の者に答弁をさせますので、お聞きをいただきたいと思います。
  74. 青山俊樹

    ○青山政府委員 お答え申し上げます。  思川開発事業につきましては、関東地方建設局事業評価監視委員会におきまして、今後も現地の理解を得るべく努力するとともに、河川整備計画の策定、変更の手続の中で現地の意見の聴取を図ることという意見が付されたところでございまして、そういった附帯意見つきで継続了承ということになったわけでございまして、今後この意見を尊重いたしまして、水没者の代表の方も入った場を設定いたしまして十分に意見を聞いてまいりたい、かように考えております。
  75. 小林守

    小林(守)委員 それでは、今後具体的に、これは毎年事業評価、再評価というか見直しというのはやっていくのですか。ですから、確かに、十月の九日ですから、平成十一年度の予算の閣議決定のかなり直前と言っていいと思うのですよ。その時点で再評価委員会を開いてメンバー構成、委員会構成を直していくというのは、事務的には確かにきつかったというふうに思うのですが、今後、じゃ、いつどういう形でそのような事業再評価委員会の構成を直して、編成がえをして関係住民の声をしっかりと受けとめていく、そういうスケジュールになっているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  76. 青山俊樹

    ○青山政府委員 再評価委員会のスケジュールでございますが、これは定期的に開いていくわけでございますが、対象となる事業が非常に多うございますので、再評価委員会の方から、むしろ、この思川のダムの件につきましては非常に重要な案件であるので、河川整備計画を議論する過程において特別の場を設けて、そこで現地の水没者の方々の御意見もお聞きするようにという条件がついておるわけでございます。  そういった意味で、その線に沿いまして、なるべく早い時期に、十分な御意見を聞く場を河川整備計画を議論する中で設けてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  77. 小林守

    小林(守)委員 私も、河川整備計画の論議の中で、なるべく早くそういうシステム、仕組みをつくっていきたいということなんですが、河川整備計画の論議というのは今どういう形で進められているのですか。
  78. 青山俊樹

    ○青山政府委員 現在、利根川につきまして、非常に広い範囲でございますので、まずその河川整備計画の論議の一環としまして、準備的に、思川につきましては先行させて議論をする場を設けるということでございます。
  79. 小林守

    小林(守)委員 具体的に、河川整備計画の論議というのはいつからどう進められるのですか。何かよくわからないのですけれども、何となく、やるんだかやらないんだかわからないような形で進めていくというような感じなんですが、どういう形でやっていくのか、もうちょっと具体的に言っていただけますか、日程も含めて。
  80. 青山俊樹

    ○青山政府委員 今関東地方建設局の方と水資源開発公団の方で準備中でございますが、春以降になろうかと思いますが、そのような場を設けていきたいというふうに考えております。
  81. 小林守

    小林(守)委員 春というと、四月ごろからということでよろしいのでしょうか。いいですね。はい、じゃ、わかりました。  時間が参りましたようですので、交代させていただきます。ありがとうございました。
  82. 中山正暉

    中山委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田克也君。
  83. 岡田克也

    ○岡田委員 まず、日米防衛協力のガイドライン関連法につきまして、簡単に質問をさせていただきます。本来的には、特別委員会も設置が決まりましたので、その場で本格的にさせていただきたいと思いますが、その導入ということで、二点ほど質問をさせていただきます。  まず、邦人救出の件であります。邦人救出の規定というのは、もう既に自衛隊法の百条の八「在外邦人等の輸送」という規定がございます。先般のインドネシアでの問題が発生したときに、自衛隊機がシンガポールに行った、こういうことがございました。  そこで、防衛庁長官にお聞きしたいのですけれども、この百条の八にいろいろ書いてございます。「長官は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、」云々かんぬん、こういうふうに書いてあるわけですけれども、そのインドネシアの際に、ここに書いてある要件、すなわち「外国における災害、騒乱その他の緊急事態」であるという判断を防衛庁長官としてした上で自衛隊機の派遣を決定されたのか、それともそういう判断はしていないのか、いずれでしょうか。
  84. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 これはもとより、主体的には外務大臣が判断し、要請してくるわけでありますが、私どもも、その要請を受けて、ここに書いてあるような判断をした上で行動をとるわけであります。
  85. 岡田克也

    ○岡田委員 外務大臣、それでよろしいんですか。これは予備的な派遣ですから、そういう判断をされて派遣したんですか。外務大臣からの協議もなかったというのが実態なんじゃないでしょうか。
  86. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 自衛隊法の百条の八で、そういう事態のときに、外務大臣から依頼があった場合に、それに応じて対応するということでございますが、先般の場合には、現地の情勢の急変等によりこういった依頼をする可能性があるとの判断が外務大臣から示されまして、それに応じて自衛隊として行動をとったということでございます。
  87. 岡田克也

    ○岡田委員 そういう認識が示された、こういう話でありますが、この百条の八にある要件に該当するということがそのときに確認をされて出したんですか、それとも、そういうことではなくて、予備的にお出しになったんでしょうか、いずれなんでしょうか。
  88. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 いずれにいたしましても、当時の状況で申しますれば、外務大臣から防衛庁長官に対して、邦人の輸送が必要になる事態があり得るということで、準備に万全を期するためにシンガポールに移動させるということについての依頼がございまして、防衛庁としても、その依頼を受け、また独自の情勢判断の上で出すことを決定したということでございます。
  89. 岡田克也

    ○岡田委員 では、外務省にお聞きしますけれども、今、依頼とか情勢判断とか、いろいろな言葉を使われたのですが、百条の八に規定をする正式な協議というものを外務大臣防衛庁長官にされたんでしょうか。
  90. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 私の記憶で申し上げて大変申しわけないのでございますが、当時、インドネシアの状況が急変しておりまして、ただいま防衛庁の方から御答弁申し上げましたように、邦人救出が必要となるような事態があり得るということを防衛庁の方にお伝え申し上げたというふうに記憶しております。
  91. 岡田克也

    ○岡田委員 なかなか素直にはお答えいただけないのですが、そういう状態急変があり得るということで依頼をしたということでありますが、これは百条の八に基づく法律的な要件を満たしたということでの協議ではなかったはずであります。ですから、予備的な派遣ということになったはずですね。ということは、逆に言いますと、この百条の八に書いてあるようなことが全くなくても、防衛庁長官の判断で、協議すらもなく自衛隊機を出せるということに私は論理的になると思いますが、いかがでしょうか。
  92. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 これは、あくまでも外務大臣からの依頼に基づき、依頼があったときに、安全性の問題等を外務大臣防衛庁長官が協議して決めるわけで、防衛庁長官が単独で、勝手にそういう行動をとるということは毛頭考えられません。
  93. 岡田克也

    ○岡田委員 それは非常におかしな話でありまして、百条の八に基づく正式な邦人救出のための自衛隊機の派遣であれば、百条の八に書く要件を満たして、その上で派遣をされるわけでありますが、そうじゃなくて予備的に派遣をしたということでありますから、百条の八に関係ないわけですね。そういう意味では、百条の八に書いてある要件を満たさなくても出せる、こういうことだと論理的に思います。いかがでしょうか。
  94. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  今お話ししておりますようなインドネシアの例に見られますように、現地の情勢が急変いたしまして緊急事態となった、こういう状況のもとで、この法律の同条第一項に規定する依頼を外務大臣が行う可能性があり、かつ、その場合、邦人輸送を行うのは、遠隔地でもあり、航空機または船舶の速度、航続距離、任地までの距離等を考えますと、緊急事態発生後、本邦から出発したのでは、この条に定める任務の性質上、その遂行が適切に実施し得ない可能性があるという場合が考えられると思います。  こういう場合に、依頼をする可能性があるとの判断が外務大臣から示された場合に、防衛庁長官におかれましては、自衛隊の航空機または船舶を隣接国または領海外まで移動、待機させることは、今申し上げましたこの条の趣旨等にかんがみまして、緊急事態における邦人等の輸送という任務の性格上、この条を根拠とする準備行為として実施し得るのではないかというふうに考えて、かく取り計らった次第でございます。
  95. 岡田克也

    ○岡田委員 今、私の言ったことを裏側からお認めになったと思うのですが、外務大臣が依頼する可能性がある場合にというふうにおっしゃったわけですが、ということは、これは正式な依頼じゃないということですね。  私も、ああいった事態での予備的な、準備行為的な派遣というものをもちろん否定しているわけではありません。いろいろな現実を見たときに、そういうものも必要だと思います。ただ、法律上そういうものが非常に不明確になっているということは私は事実だと思うのです。  そういう意味で、今回、百条の八を改正して艦船まで入るということになりますと、その艦船の中には恐らく自衛艦等も含まれてくる可能性があると思うわけですけれども、飛行機の場合には主として輸送の用に供するという歯どめが一つかかっておりますけれども、艦船についてそれが広がるということでありますと、そこはより慎重にしなければいけない。そういう意味で私は、準備行為的な自衛艦あるいは輸送機の派遣についても法律できちんと規定をすべきである、こういうふうに思っているところでございます。  自治大臣がどこかへ行かれたんですが、自治大臣にちょっとお聞きしようと思っていたんですが。——私が今申し上げたことについて、外務大臣、何かコメントございますか。防衛庁長官
  96. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 自衛隊が活動する際にいろいろの準備を行うことは当然であります。そして、自衛隊の活動の準備といっても、輸送手段の移動から必要な物資の集積等、その内容はさまざまであります。その一々を仮に明文で規定するということになると、これは大変困難であると思います。また、そのうち一部を法文上明文で規定した場合、その反対解釈として、明文規定としていない準備については実施できないのではないかといった疑義を生む可能性もあります。  したがって、在外邦人等の輸送を規定した百条の八の準備行為のみ取り出して明文で規定するということは、他の自衛隊の活動の準備との整合性という観点からも好ましくないと考えております。
  97. 岡田克也

    ○岡田委員 防衛庁長官に聞きますけれども、今度、改正で艦船が入るというときに、例えばそれは、武装した自衛艦は排除されるんですか。
  98. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今御指摘のように、今私どもがお願いしている百条の八の改正案では、自衛隊の艦船も邦人の輸送に使えるようにするということでございまして、その場合、いろいろの状況を考えまして、私どもとしては、できれば当該船の防護の任務も与えた形で実施したいということでございます。
  99. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、そこまでいきますと、そしてかつ、百条の八ではなくて、その準備行為ということで、いろいろな要件がないままにそういった自衛艦まで出すということになると、かなり従来とは違う話になるんじゃないか、そういうふうに思っているわけでございます。  そこで、自治大臣、お待ちしておりましたが、新進党時代に、この百条の八の準備行為についても法律をつくって、我々として修正案を出そう、こういう話をしておりましたが、自治大臣は、そういった準備行為について、法律できちんと規定をするということについてどのようにお考えでしょうか。
  100. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 新進党時代、そのことを岡田委員も一緒に勉強して検討したことがあったことはそのとおりです。  ただ、ちょっと、今急なことで、その当時のことを全部つまびらかに思い起こしておりませんが、確かに、御指摘のとおり、すべて準備行為という中で何でもできるというイメージがあってはよくないだろう、それはそのとおりだろうと思うんです。しかし、一方で、その辺のどこまでを準備行為としということはなかなか難しい部分が、かなり専門的な部分があると思います。  それから、目的は何かというと、最も効果的に救出をすることに意味があるわけで、それに資するような法体系ということを考えるべきなんで、余り歯どめの方から先に入るよりも、この目的というのは、効果的な邦人救出ということにターゲットを絞った一つの整理ということがあっていいんじゃないか、このことがあのときの一つの検討するテーマであったと思っています。  具体的、技術的、専門的なことについては、ちょっと、私も今ここで確たることを申し上げることは控えたいと思います。
  101. 岡田克也

    ○岡田委員 これ以上の議論は特別委員会議論したいと思いますが、例えば、騒乱その他の緊急事態になるおそれがある場合とか、それからそういう場合も外務大臣が協議しなきゃいけないとか、そういうことを要件として置いておく、そういうことは私は必要なことじゃないかなと。そういうこともなしで、何でもいいから準備行為の名のもとに出せるということは私は通らない、そういうふうに思っております。  それからもう一点、このガイドラインの関係でお聞きしたいと思いますが、法制局長官にお聞きをします。  以前もちょっと申し上げましたが武器の使用と武力行使の関係ということが、PKO法を、八年前でしたか平成三年ですね、議論したときに大きな議論になりまして、政府の統一見解も出ているわけであります。  今回のそのガイドライン関連法、周辺事態法の中で、武器の防護のための武器使用、自衛隊法九十五条の適用が排除されていないということでございます。したがって、武器の防護のための武器使用は周辺事態においてできるということになっていると思いますが、この平成三年九月二十七日の統一見解では、そのPKOにおける武器の使用が憲法の禁ずる武力行使に当たらない理由としてこういうふうに言っているんですね。  「例えば、自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器の使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力の行使」には当たらない。」  ここで言う自己保存のための自然権的権利という理由でありますが、これは武器の防護のための武器使用にも同じような論理が適用されるんでしょうか。
  102. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 ただいま委員が引用されました冒頭の言葉、「例えば」という言葉が入っていますのが本件をカバーし得る言葉でございまして、あくまで自己保存のための自然的権利に当たるからそれはいいんだというのは一例でございます。  したがいまして、この自衛隊法九十五条による武器使用と申しますのは、自己保存のための自然的権利に当たるからいいということじゃございませんで、もう一つの類型が、やはり認められる類型があるであろうという、そのもう一つの類型に当たるということでございます。  なぜそうかということまで理由を……
  103. 岡田克也

    ○岡田委員 結構です。私もそういうことだと思います。  そこで、しかし、ここにはもう一つの類型というのは書いてないわけですね。例えばということで、今の自己保存のための自然権的権利ということが書いてあるだけで、もちろん、例えばですから、それ以外のものを認めていないわけではございません。しかし、では、武器防護のための武器使用というのは、例えばという書き方にした場合にどういう理由になるんでしょうか。
  104. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 自衛隊法九十五条による武器使用、これは、我が国を防衛するための重要な物的手段である自衛隊等の武器等の破壊や奪取から当該武器等を守るため、武器等の警護に当たる自衛官に、極めて限定的かつ受動的な条件のもとで認められた必要最小限度の行為であるという、重要な自衛手段の物的保存のために認められた最小限度の行為であるということが理由でございます。
  105. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明は、我が国が侵略を受けたときの防衛出動の場合にはそういう議論はできると思いますが、周辺事態法に基づく自衛隊の出動の場合には我が国を防衛するための武器だという議論は私は通用しないと思うんですが、いかがでしょうか。
  106. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 自衛隊法九十五条は、防衛出動命令があった場合という限定は確かになされておりません。それは当然のことでございまして、いざ、我が国が侵略を受け、それに対して防衛出動を行う際に、肝心の重要な物的手段が破壊されている、あるいは損壊されているということがあってはいかぬものですから、常日ごろ、一定の限られた要件のもとで、重要な物的手段の物的保存を行っておく必要があるんだということが理由でございます。
  107. 岡田克也

    ○岡田委員 この議論は、時間もありませんので、後でじっくりやりたいと思いますが、今の話はちょっと私は通用しないと思いますね。大事な宝物だから、将来とっておかなきゃいけないからいいんだ、そういう理屈のようにお見受けしますが、私は、もう少し、この平成三年九月二十七日の統一解釈について手を加える必要があるんじゃないか、そういうふうに思っております。  九十五条の適用そのものを排除しろというところまで今言うつもりはありませんが、今のこの統一見解ではとても読めないんじゃないか。余り無理してやるということで憲法の禁ずる武力行使というものがあやふやになってしまうということを非常に恐れるわけでありまして、そういう観点で特別委員会でじっくり議論をさせていただきたいと思います。  それでは、次に参りたいと思います。外務大臣防衛庁長官、もう結構ですから。法制局長官も結構です。  公共事業予備費についてお尋ねをしたいと思います。  憲法八十三条は、財政における国会中心主義を定めております。それから、八十五条も、国費の支払いは「国会の議決に基く」というふうに書いてあるわけでございます。予備費というのは、その憲法八十三条、八十五条の重要な例外でありまして、憲法八十七条に、「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の」承認を受けなければいけない、憲法上、そういうふうに規定をされているわけでございます。  そこで、今回の予算におきまして公共事業予備費五千億円が計上されているわけでありますが、この公共事業予備費が使われる場面、つまり、憲法で言う、あるいは財政法で言う「予見し難い予算の不足」というのは、この五千億円についてはどういう事態を想定しておられるのでしょうか、大蔵大臣にお伺いします。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、この予備費の使用の対象でございますが、国債発行対象経費であります公共事業関係費とその施設費に限定をするというのが公共事業予備費といたした理由でございますが、つまり、こういう見通しにくい経済状況でございますから、万全の注意はしておるつもりでありますけれども、経済情勢の推移いかんによりまして、公共事業等の経費に予算の不足が見込まれる場合に機動的に対処いたしたいと考えてやったものでございます。  もとより、一般的に予備費としてお願いをすることも可能でございますけれども、もっと具体的に、この使用につきましては、これは今申しました用途に限っていたしますという、予算執行に当たりまして、国会に対して行政府としての制約をみずから課した、そういうものであるというふうに考えております。
  109. 岡田克也

    ○岡田委員 一般に、予見しがたいというのは、歳入欠陥になってしまったとか、あるいは災害が起こったとか、そういう場合が予見しがたいでありまして、単に政府の経済見通しが多少狂って、景気対策として公共事業を追加しなければいけない、そういうものが果たして憲法で言う「予見し難い」に当たるのかどうかというのは、私は、かなり疑わしいところがある、こういうふうに思うわけでございます。  本来そういうものは補正予算によって対処すべき話でありまして、こういうものまで予備費でやるということになりますと、財政について国会が中心になってやる、あるいは財政法定主義といいますか、そういう憲法の大原則に対する非常に大きな抜け穴をつくることになるのじゃないかということを懸念するわけですが、大蔵大臣の御見解はいかがでしょうか。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一つの考え方として、補正予算を編成するということは、確かに対処の方法でございますけれども、しかし、それには、もうとうに御承知のとおり、大変に手続を必要といたしますし、国会の開会もお煩わせしなければなりません。  それに比べますと、このような予備費は、国会の事後の御承認をもちろん必要といたすわけで、最後まで勝手に行政ができるわけではございませんが、しかし、あらかじめこうやって予算でお許しをまず受けておきまして、そしてまた事後に御承諾を得るという手続をしておきますならば、あえて補正予算をお願いして国会の御開催を煩わせるよりは機動的に運用することができますし、また、今回のように経済情勢の展開の不明なときには、こういうことはないことを祈りますけれども、ある可能性というのはある程度考えておかなければなりませんので、こういう処置をいたしました。
  111. 岡田克也

    ○岡田委員 国会の手を煩わせないようにとおっしゃいますけれども、それが問題なんですね。ですから、やはり憲法上、法律と予算は国会が決める、そういう大原則なんですよ、これは。憲法の大原則。それに対する例外をつくっている、そういう認識に立っていただかないと、今の大蔵大臣のお話だと、もう国会が煩わしいから政府だけでやってしまうというふうにも聞きようによっては聞けないわけはないわけでありまして、国民の納めた税金、払った重要な税金について、それの使い道を決めるのは国民を代表する国会である、そういう基本的な考え方があると思うのですが、今のお話では非常にそういうものが損なわれているように思います。  もし、今のお話をずっと拡張していけば、例えば五千億じゃなくて三兆円、四兆円、公共事業予算十兆円全部を予備費にするということも、これはいいわけですか。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会の御審議をなるべく逃れるようにというような気持ちで申したのではありませんで、五千億円程度のことでございますと、小さな額ではございませんが、かなりの仕事をできる額でございます。かなり事態に対処し得る。しかし、それだけで補正をお願いするほどの事態かと。それは、三兆とか五兆とかいう事態でございますとまた別でございますが、このぐらいですと、こうやって国会で御審議を願って、その程度ならよかろうといってお許しをいただけるかいただけないかという、その辺の限界というのは、やはりおのずからあるであろうと思っております。どんな金額でもいいというふうに考えておるわけではございません。
  113. 岡田克也

    ○岡田委員 予備費の使用については、大臣御承知のように閣議決定がございます。  その中で、これは平成元年の五月三十日の閣議決定でありますが、「国会開会中は、前項の経費及び次に掲げる経費を除き、予備費の使用は行なわない。」というふうに書いてありまして、その「次に掲げる」ものの中の(3)、「災害に基因して必要を生じた諸経費その他予備費の使用によらなければ時間的に対処し難いと認められる緊急な経費。」こういうふうに書いてあります。ここであえて読むのかなというふうに思うわけですが、ここに書いてある、「災害に基因して必要を生じた諸経費その他予備費の使用によらなければ時間的に対処し難いと認められる緊急な経費。」ということですから、かなり狭く考えておられると思うのですね、この閣議の決定は。  そういう意味で、私は、原則として、景気が悪くなったから次は追加景気対策をやらなければいけないという場合であっても、国会開会中は補正予算を組むのがこれは当然。国会閉会中で新たに召集しているいとまがないような例外的な場合にはこの五千億を使って景気対策をやる、こういうふうに私は考えますが、いかがでしょうか。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会開会中は予備費というものは原則として使えない、補正をお願いするというのは、従来政府がとってまいりました方針でございますし、それに変わりございません。
  115. 岡田克也

    ○岡田委員 自治大臣にお聞きしますけれども、国会中心主義といいますか、国会で政治家が大いに議論して物事を決めていこう、こういう基本的考え方に自由党もお立ちだと思います。国会で議論するというのは、もちろん法律の中身、あるいは政策論もありますが、予算の中身ももちろんそうであります。  そういう意味では、五千億円の白紙委任状的な予備費の存在というものは、私は、国会で政治家同士が議論して物事を決めていく、そういうことに対して、役所だけが、政府の中だけで、国民に見えないところで勝手に決められるという意味で非常に問題があると思いますが、いかがでしょうか。
  116. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 この五千億の問題は、政府の方が勝手に決めたというよりも、率直に申し上げて、自民党、自由党両党間の来年度予算編成に関する協議をしていく過程の中で、むしろ自由党の主張を取り入れる形で実現をした、こう考えております。  したがって、政府が勝手に云々ということではなかった、そのように理解をしています。
  117. 岡田克也

    ○岡田委員 だから申し上げているわけで、私は非常にやわらかく言ったのですが、自由党さんがおっしゃってこの公共事業予備費五千億が入った。それは、国会できちんと政治家同士が議論をして物事を決めていこうという自由党さんの主張に反しているのじゃないですか、そういうことを申し上げたかったわけですけれども、いかがでしょうか。
  118. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 原案をつくるのは、議院内閣制ですから、当然のことながら与党が中心になって政府と案をつくっていく。そして、まさに与野党の中の論戦なり考え方の意見表明等々については、まさに今それがその場であるというふうに思いますので、十分に今議論が現に行われているのではないのでしょうか。
  119. 岡田克也

    ○岡田委員 今のは論点のすりかえで、私が言っているのは、五千億の白紙委任状を出して、いざ景気対策が必要なときに、その中身について国会で議論することなく政府の中で決めてしまうということが、国会で政治家同士が議論して物事を決めていく、そういう基本的考え方に反しているのじゃないかと申し上げているわけです。
  120. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 五千億の使途について、その結果、中身についていろいろ改めて報告をするなりなんなりという手続があるのは当然だと思うんですね、予備費ですから。その予備費が具体的にどういうふうに使用されるかということについて、国会のチェックを受けるというのはあるんじゃないんでしょうか。
  121. 岡田克也

    ○岡田委員 ですから、それは事後でしょう。事前の承認じゃないですよね。予備費については事後承認ですよね。
  122. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 つまり、さっき大蔵大臣から御答弁されましたとおり、今こういう微妙な経済情勢の中で、私たちがあえてそれを主張した背景は、少なくとも公共事業だけで景気対策をやるということは、それは難しかろう。しかし、設備投資なりあるいは消費なりというものがそれまでの牽引車になれない、特に設備投資というのは大変厳しいぞ、そういう環境の中で、公共投資が少なくとも足を引っ張る材料になってはよくないという判断の中から、そういう意思表示として、公共投資について、対前年度で落ちない、しかも補正後においても、言うならストップ・アンド・ゴー、走ってみてだめだったらちょっと追加する、だめだったらまた追加するということを繰り返すんではなくて、公共事業の補正をやるにしても、あらかじめ上限を決めておいた方がいいんだ、そういう中でトータルとして判断する方がいいんだ、そういう考え方であの五千億というものを公共事業予備費という形にしたわけです。  したがって、改めて景気がスローダウンしたことを見きわめた上でこの補正予算編成から順番にどんどんやっていきますと、結果的に夏になり秋になっていく、実際に予算が執行されていくというのは結局年度を越えてしまうとかいうようなことになって、景気対策効果においても極めて限定的になるんじゃないか、そんな判断の中から私たちはそのことを主張したわけでありまして、私は、今の経済環境の中でいえば、大変効果的な手法であるというふうに判断しております。
  123. 岡田克也

    ○岡田委員 経緯の説明としてはお伺いしておきますが、結局今の議論というのは、例えば法律を国会で議論する、重要なことは全部政省令にゆだねる、それと同じ議論なんですね。同じ次元の議論ですよ。確かに、事態はどんどん変わるから、機動的に対応するためには、法律事項はなるべく少なくしておいて、政省令にたくさんゆだねて、そこで役所が適宜それを変えていけばいい、こういう議論は当然あると思います。  しかし、そういうことはだめだ、やはり基本的なことはきちっと国会で議論して、法律なり予算なり決めよう、そういう考え方に大臣はお立ちじゃないんですか。だから私は申し上げているんですよ。
  124. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 法律、政省令の関係とはちょっと違うようにも思うんですけれども、少なくとも、そういう点で公共事業予備費五千億について計上するということ自体、既にこうやって議論をしていただいておるわけで、私は何ら問題はないと思っていますがね。
  125. 岡田克也

    ○岡田委員 この辺でやめますけれども、私としては、与党であれ野党であれ、主張は一貫する政治家でありたい、そういうふうに思っております。  さて、次に特殊法人の問題に参ります。  簡単にお聞きしたいと思いますが、大蔵大臣、今度の特殊法人改革で、大蔵省関係の特殊法人の合併がいろいろございます。  例えば、輸銀と経済協力基金が一つになって国際協力銀行になったり、あるいは開銀と北東公庫が一つになりまして政策投資銀行になる、国金と環衛公庫が一緒になる、そういう金融機関の合併が入っておりますが、これらに基づいて、一般会計ベースで一体どれだけのリストラ効果が見込まれるのでしょうか。
  126. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大蔵省関係の特殊法人の整理は、一つ一つ申し上げますか、例えば、日本開発銀行と北東公庫が一緒になりまして役員で九人の減、輸出入銀行と協力基金の統合で役員五人の減、国民金融公庫と環衛金庫の統合で五人の減等々ということになっておりますが、金額は、予算上どのぐらいの金額か、ちょっとお待ちください。
  127. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  例えば、日本開発銀行のようにむしろ利益を上げているような機関もございますので、それが直ちに一般会計にと結びつくわけではございませんが、今回の統合によりまして、例えば輸出入銀行と海外経済協力基金の統合によって国際協力銀行ができるわけでございますが、この関係で役員あるいは職員の縮減がございまして、その人件費ベースですと初年度で五千六百万、それから物件費等につきましては、これは重複事務所等の統合による削減で一億三千百万の物件費の削減が見込まれております。
  128. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、単位が三つぐらい違うんじゃないかという気がするんですが、民間で、例えばAという会社とBという会社が合併する。そうすると、そのリストラ効果が二百億とか三百億とか、そういうことがすぐ発表されるわけであります。  特殊法人も、何のために合併するのか。それは、単に理事長の数を一つ減らすとか、役人の数を何割減らす、こういうことではなくて、それが財政にとってどれだけプラスのメリットがあるか、こういうことだと思うのですね。  そこについて、わずか人件費で初年度五千六百万、物件費で一億三千万、合わせて二億弱というんでは、これじゃ看板のかけかえ代も出ないじゃないですか。何のためにこれは合併するんですか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今民間の合併の場合をおっしゃいましたが、民間の合併、統合の場合には、多くは両方の仕事が競合しているわけでございますから、競合部分の排除ができるというので節約が多いと思いますが、政府関係機関は競合しているというところは本来的にはないはずであって、ただ、非常に類似しているから統合できるということであるんだと思いますね。したがいまして、排除できる部分は民間の合併とはおのずから非常に違うのではないか。  しかし、それでもお役人の数、これは税金で仕事をしておるわけでございますから、一人でも減らすということは大事なことだというふうに考えておりまして、民間の場合の利益上の競合、利益上の節約、経費上の節約というのとはかなり意味が違うように思います。
  130. 岡田克也

    ○岡田委員 平成九年だったと思いますが、さんざん大騒ぎをして特殊法人の合併とか廃止について議論がされて、その結果が法律になって今回出てきているわけでありますが、お聞きすると、一体何のために合併したのか私にはよくわからないんですね。単に数が減るだけである、あるいは若干役人の数が減るだけだというだけのためにあれだけ大騒ぎをし、そしてお金をかけてやったわけですか。  私はそうじゃなかったと思うんですね。やはりそこで事業の再構築をやって、今まで必要のないものはやめる、あるいは重複しているものは整理をする、そういう中でかなりの合併の効果が見込まれるからやったはずなんじゃないですか。何か単なる、合併先にありき、看板のかけかえだけあったように、今回の法案を見ていますとそういうふうに思えてくるわけですが、どうしてもっと切り込んでしっかりリストラをやらなかったんでしょうか。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり民間というのはバランスシートを持っておりますし、それで利益を上げる、リストラは、どれだけ少ないコストでどれだけ大きい利益を上げるかというのが民間のリストラの場合でございますけれども、政府機関というのは、基本的にはバランスシートを持っておりません。したがいまして、コストもベネフィットも実は非常に計算のしにくい部分だし、一緒になりましても共通の競合部分というのは非常に少ないわけでございますから、そういう意味で、民間のリストラのような効果は、本来的にバランスシートのない世界でもございますから、上げ得ないだろうと思います。  ただ、どうせ統合するんならもっときつくできなかったかというような御批判は、常に行政整理には私はあるのだと思いますので、今度の場合は、しかし随分政府関係機関、関係者が緊張をし、かつ、それは努力もしたし、抵抗した部分もございますけれども、それだけの効果、一種の引き締めの効果は、そして政府機関といえども納税者の金をむだにしてはならないというような物の考え方は、かなり私は、やはり、官界と申しますか政府部内に広まっておるというふうに思っております。
  132. 岡田克也

    ○岡田委員 これは、実は省庁の再編成も同じなんですけれども、基本的には、順序からいえば、まずその役所がやっている、あるいは特殊法人がやっている仕事について精査をして、民間でやれるもの、あるいは地方に任せるもの、そういうものについて移管をした上で、そのスリムになったものを、それだけではなかなか一つの省としての固まりとして小さい、あるいは一つの特殊法人としての固まりとしては小さいということで、それを幾つかを一つにする、これが本来の意味の整理合理化だと私は思うんですね。  そういう意味で、省庁再編成も同じなんですけれども、特殊法人の場合にも一体何のためにやったのかよくわからない、手間暇ばかりかかって、そのためのコストもかかっていると思いますが、その結果として何かいいことがあったのかといえば、それはないというふうに残念ながら言わざるを得ないわけでございます。全然ないとは言いませんが、ほとんどないとは言えると思います。  したがって、これはこれからそれぞれの法案が出てまいりますので、それぞれの委員会議論されることだと思いますが、民主党としては、そこのところを厳しくこれからお聞きしていきたい、そういうふうに思いますので、ぜひそういう点について準備をしていただきたいというふうに思います。  自治大臣、何か御感想ありますか。
  133. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 ちょっと、御趣旨を十分とらえ損ねておりましたので、恐縮であります。
  134. 岡田克也

    ○岡田委員 特殊法人の整理合理化について、単なる看板のかけかえに終わっているんではないか、業務のスリム化というのがほとんどなされていない状況じゃないか、業務のスリム化がほとんどなされていないまま、単にAとBをくっつけて看板をかえているだけじゃないかという批判に対して、かつて特殊法人は原則民営化というふうに言っておられた自治大臣、野田先生として、どのように御感想をお持ちかと聞いているわけでございます。
  135. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 単に看板のかけかえだけであるのならよくないでしょう。ただ、今回の場合に、それだけでなくて、先ほど来大蔵大臣初めいろいろ御答弁があったと思っておりますが、さらなるいろいろなこともおやりになろうとしていることのようですから、私はそれなりの意味があると思っています。
  136. 岡田克也

    ○岡田委員 総理、いかがですか。
  137. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 十分国会で御審議をいただきまして、よって国民のためになる行政改革をきちんとやっていかなきゃならぬと思っております。
  138. 岡田克也

    ○岡田委員 国会の議論の話じゃなくて、政府がお出しになっている案がそういうものになっていないというふうに申し上げているわけでございます。いかがでしょうか。
  139. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 政府といたしましては、現下、これから国会で御審議を願うこの法案その他につきましては、種々の経緯を踏まえまして、現時点において政府としてなすべきこととして出させていただいておるということでございます。
  140. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは次に参りますが、総理にちょっとお聞きします。  消費税の問題なんですけれども、総理は消費税の引き下げは、少なくともここ一年はないというふうに断言されますか。
  141. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 前回、二%の引き上げにつきましては、これは種々の経過を踏まえまして、国民のために社会福祉制度その他を遂行するためにも必要なこととして御理解を願って引き上げさせていただいたわけでございますので、これを今後どのようにするかということにつきましては、この消費税につきましては最低のパーセンテージとして引き上げさせていただいておる、このような認識をいたしておりますので、財源的にもこれを今引き下げるというような状況ではない、こう考えております。
  142. 岡田克也

    ○岡田委員 今のお言葉の中で、今引き下げるつもりはない、こうおっしゃったわけですが、これから一年ないし二年ぐらいというふうに、総理はもう少し長くやられるおつもりかもしれませんが、小渕総理として消費税の引き下げはない、こういうふうに断言できるでしょうか。
  143. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今の時点で考えておりません。
  144. 岡田克也

    ○岡田委員 今の時点で考えていないということは、将来、景気が悪くなったりしたらあり得るということですね。
  145. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この消費税によりましての財源というものは極めて欠くべからざるものでございますので、これを変更する意思はございません。
  146. 岡田克也

    ○岡田委員 ちょっと今聞き取れなかったんですが、済みません、もう一度最後の部分だけおっしゃっていただけますか。
  147. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今変更する意思はございません。
  148. 岡田克也

    ○岡田委員 必ず今という言葉がつきますので、ということは、将来あるんだというふうに国民は期待しますね。政党の中にも、引き下げを唱えている政党があります。民主党はそういうことを否定しているわけです。引き下げるべきでない、こういうふうに言い切っているわけですけれども、今の総理のお話は、そういうことは状況によってはあるというふうに、国民は今の答弁を聞けばそういうふうに受け取ると思いますが、それでよろしいんですか。
  149. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 五%の数字を今変えることは考えておりません。
  150. 岡田克也

    ○岡田委員 何度聞いても今という言葉が入りますから、ということは、将来あるというふうに私は受け取ります。  自治大臣、自治大臣はもともと消費税の凍結といいますか、ゼロ%にして毎年少しずつ上げていくということを言われたこともありますし、さきの参議院選挙では凍結だったと思いますが、三%でしたかという主張もされたわけですが、消費税についてどういうふうにお考えでしょうか。
  151. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 消費税について基本的な考え方は、これからの少子高齢時代における社会保障、特に老後の不安を除去するためのいわば基礎年金あるいは介護そして高齢者医療、こういったところに使途を限定すべきである、目的税にすべきであるというのがまず基本線であります。  しかし、同時に、現在の経済の状況というものが余りにも下振れが強過ぎる、したがって、これを何とかして短期に立て直していくということが不良債権処理をしていく上でも極めて重要である、そういう中で、一つの有力なるてことして、消費税の税率を、将来の問題は別として足元、これを参議院選挙のころは三%ということを言いました。  しかし、それにしても、その後の夏においてもどんどん状況が悪化しているということを踏まえて、凍結をして、そして段階的に翌年から引き上げていく、最終的には現在の税率よりも高いレベルまで持っていくということをやった方が、財政再建という角度からいっても、あるいは三年間経済へのアクセルを踏み続けるということからいっても有効ではないかということを主張したことは事実でありますし、私も、その主張は決して間違ってはいなかった、そう思っています。  しかし、それがすべてではなくて、それにかわる方策があるならばそれでも結構でございますということを言ってきたことも事実でありまして、そういう点で、小渕総理と小沢党首の間で大幅な減税の規模ということについて約束がなされ、そして予算編成、税制改正について平成十一年に対してどう対応するかという中で、両党間でかなり突っ込んだ議論の結果、自民党の方も減税規模の大幅な上乗せをし、それから先ほどお話がありました公共事業についての予算編成の取り組み、そういったもろもろのことの中から、完全に、我々、百点満点でございますというほど自由党として高い点数を出すということはどうかとは思うけれども、しかし、それにしても誠意を持ってよく努力をしていただいたという評価の中で、両党間の合意が成立をして今日に至っているというのが事実であります。  したがって、この後、我々は、もう一遍消費税について引き下げなり凍結を声高に主張しなければならないほど経済が落ち込むということのないようなことを、心から願っておりますということであります。
  152. 岡田克也

    ○岡田委員 自治大臣もはっきりは結論はおっしゃらなかったわけでありますが、総理にもう一回聞きます。  これ、今のお答えのままですと、新聞は多分、消費税引き下げに含みのある答弁をした、そういうふうに書くと思うんですね、必ず今ということを入れられましたから。本当にそれでいいんでしょうか。もう少し違う言い方をされるおつもりはありませんか。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私、承っておりましたが、ネバーということはネバー言うなという教えがありますから、それで総理は注意して言われたので、私には、言っていらっしゃることは、ネバーとおっしゃったと聞こえました。
  154. 岡田克也

    ○岡田委員 もう一度総理にお聞きしますけれども、消費税の引き下げについて、総理の任期中に、任期中というとひょっとすると五年ぐらいかもしれませんから、ここ一、二年を考えたときに、消費税の引き下げはしない、それは選択肢としてない、こういうふうに断言されますか。
  155. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 長々申し上げるつもりはありませんが、消費税を最初に導入したときの竹下内閣の、私、官房長官でございました。なぜ消費税を導入したかという経緯の中で、この十年、いろいろ変化をしてまいりました。やはり公平、公正、簡素、選択という消費税の一つの意味合いから始まりまして、以降、財源として二%引き上げさせていただきましたが、これもしばしば御答弁しておりますように、その四三・六%が地方に回っておるというような状況でございまして、そうした観点を考えますと、現在の地方財政の厳しい状況等々を考えまして、五%いただくこの税源というものは、これは今の時点において変更できるような状態でないという意味で、今その変更を考えておらない、こう申し上げておるわけでございます。
  156. 岡田克也

    ○岡田委員 どういうふうにマスコミが受け取られるか、それはマスコミが決めることですが、私はもう一つ言えることは、もしここで下げるということになりますと、また赤字国債を発行するということですから、それはまた長期金利が上がる可能性があるわけですね、そのニュースだけで。そういうことも含めて申し上げておるわけです。  いずれにしましても、非常にあいまいさが残る答弁であったというふうに私は理解をいたしました。断言をしますかというふうに何回も私、問うたわけですが、断言されなかったわけで、今あるいは今の状況は、こういうふうに言われたわけであります。  それでは次に、年金の問題に参ります。  年金制度改革については、この前も少し厚生大臣と議論させていただいたところでありますけれども、きょうは二階建ての部分についてちょっとお聞きしたいと思うんです。  二〇一三年までに一階建ての部分について六十歳から六十五歳にしていく、二〇〇一年からですね。その後、二階部分について、つまり報酬比例部分について六十五歳にしていく、そういう方向だと思いますが、民主党はそれに対して反対をしております。  問題は、本当にそういった、二〇二五年に六十五歳完全支給にするというお考えだと思いますが、その二〇二五年の状況というのは今から果たして見通すことができるんだろうか。つまり、二〇二五年の段階で本当に定年が六十五になっているということであればそれは問題ないわけでありますが、私には、それだけ先のことがどうなっているか必ずしも見通しができる状況じゃないというふうに一方で思います。  それからもう一つは、六十歳を過ぎた方というのはかなり個人差がございます。したがって、お元気で、チャンスがあれば六十五歳まで働くという方も一方でいらっしゃるでしょうけれども、身体的な、健康状態その他でそこまで働けないという方もかなり現実には出てくるだろう。そういう状況の中で六十五歳にまで延ばすということを今決めるということは、私はかなりリスクのあることだ、あるいは不安を呼ぶことだと思うわけですが、いかがでしょうか。
  157. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基礎年金の上にあります報酬比例部分につきましては、私どもの今の設計では、二〇一三年から二〇二五年にかけて六十五歳にしようという案でございます。したがって、随分先の話になりますが、そのときに一体どういう状況であるかということは、確たる推測はそれはできないということは理論的には言えます。  しかし、少子高齢化の問題というのは、トレンドで見ますとそういう傾向になっていくし、それから、六十歳から六十五歳ぐらいまでは労働力率も高まると私どもは予想をしています。それから、もしも、そういうことで人によって個人差がありますから、そういう場合はさかのぼって、つまり六十五以前にさかのぼって減額年金制度の選択もできるようにしたいというようなことを考えておりますので、これは御理解いただきたいなと思うのです。  基礎年金は、御承知のように二〇〇一年から二〇一三年までに六十五歳にする。なぜ六十五かといいますと、これは世界的な傾向として、大体六十五は先進国の一般的な水準でございます。アメリカは三十年前ぐらいに六十七歳にすることを決定しておりますから、世界の大勢からいっても決して無理な設計ではない。  それから、年金制度は、御案内のように二〇二五年までの期間を私ども設計期間としてとりあえず今回の年金の改正の基礎にいたしておりますが、非常に長期的な問題でございますから、やはり長期的な条件を一応設定いたしまして、そして給付水準をある程度抑制しませんと、少子高齢化に対応できないという問題がございますから、そのような設計上の選択をさせていただいております。これから六十から六十五歳の定年延長があり得るのか。ないかもしれませんし、あるかもしれません。しかし、労働力率がだんだん高まるということはさっき言ったように事実であると思いますので、そういうことを前提にさせていただいております。  なお、今言ったような減額年金制度があるということで制度を設計しているというのが現状でございます。
  158. 岡田克也

    ○岡田委員 しかし、大変これは不安を呼ぶことだと私は思います。六十五歳定年延長に向けてもう少し政府の方で具体的な歩みが見られるのであればいいと思いますけれども、そういう状況が今ない。むしろ定年が前倒しになっているような現在の状況の中で、こういったことに踏み切るということが果たしていいのかどうか、そういう気が非常にいたします。  もう一つ厚生大臣に、少し根本的なことで聞きたいと思うんですが、年金制度は修正積立方式というか修正賦課方式というか、現行制度はそうなっていると思いますが、年金制度における公平というものは一体何だろうか。  厚生省の資料によりましても、働く世代と年金をもらう世代の割合を見ると、一九九五年には働く世代が四・三人に対して年金をもらう人は一人ですね。それが、二〇〇五年には二人で一人になる。二〇五〇年には一・五人で一人になる。つまり、一九九五年と二〇五〇年を比べれば三分の一になってしまうんですね。  ということは、もし完全な賦課方式でやるとすれば、保険料が三倍にならなければやっていけない仕組みになりますね。それを多少、積立方式を加味することで緩和しているとは思いますが、果たしてこれが公平という概念に合致することなんだろうかどうか。つまり、たまたま自分が生まれたときに時代が悪くて保険料を三倍払わなきゃいかぬというのは、これは果たして公平と言えるのでしょうか。
  159. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 年金制度は、やはり現役世代と年金受給世代との相互扶助のシステムだと存じます。年齢が一定であれば、その年齢構成が、今委員指摘のように、高齢化が進まなければ均衡は保たれます。しかし、こういう少子高齢化を迎えている以上、やはりそれを支えていかなくちゃいけない、所得保障をしていかなくちゃいけないという、一方の極めて重大な要請がございます。  私どもは、そういうことを考えながら設計をしているわけでございまして、完全な積立方式ではございませんし、また完全な賦課方式でもございません。今委員が修正積立方式とか修正賦課方式と言われたのは、まさにそういうことでございまして、完全にバランスがとれているかというと、少子高齢化が進みますから、ある程度、現役の既裁定年金者の方があるいは多少有利になる可能性はあります。でも、それは、世代間のお互いに支え合う制度ですから、やがてその若い世代も支えられるようになるという前提に立っておりますから、そのような設計にさせていただいておるわけです。
  160. 岡田克也

    ○岡田委員 ここは、本当はもう少しきちんと議論した方がいい部分だと思うのですね。  高齢化率が一定であれば、おっしゃるような賦課方式で何の問題もないと思いますけれども、従来ですと、だんだん働く世代がふえてくるという中で、比較的低い保険料で成り立っていた。これからは、少子化が急速に進んでいく中で、それが全く逆転してきているわけですね。  そういうことをそのまま放置しておいて、果たして若い世代の理解が得られるのかどうか。いろいろ、そういうこともありますから制度改革をしているわけですけれども、しかし、より根本に返ってみると、相当無理なことを我々は若い世代に押しつけようとしているのではないか、そういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  161. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私どもも、年金を持続的な制度としてやるためには、若い世代のやはり理解が必要だと存じます。したがって、一つの例を申し上げますと、在職老齢年金制度を創設しようとしています。  これはどういうことかといいますと、今までは、六十五歳になりますと、幾ら所得があろうが事業収入があろうが、これは定められた給付を完全に履行しておりますが、私どもは、一定の所得以上の方々については、やはり六十五歳から六十九歳までの間は保険料を納めていただいて、そして給付の方を制限しよう。それは高額所得者の方々です。そういうことをしませんとやはり若い世代の同意は得られないということで、在職老齢年金の見直しをやろうとしておりますが、これも、今委員のおっしゃられたような精神のもとに構築しようとしているものでございます。
  162. 岡田克也

    ○岡田委員 もちろん、現に受け取っておられる皆さんの年金を減額したりというようなことはできる話ではありませんので、それはそれできちんと配慮していかなきゃいけない話だと思いますし、今日の日本を築いていただいた世代に対する我々の感謝の気持ちというものも当然あるわけです。しかし、いろいろな議論の大前提として私が先ほど申し上げたようなことを、まず国民皆さんにわかっていただくというところから年金の議論を始めていかないと非常に話が見えにくくなるのじゃないか、私はそういうふうに思っております。  引き続き、また別の機会でやらせていただきたいと思います。
  163. 中山正暉

    中山委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、仙谷由人君。
  164. 仙谷由人

    仙谷委員 官房長官と総理を中心に御質問をしようと思っておったわけでございますが、官房長官が記者会見をなさっていらっしゃるということでございますので、その他の質問の方から進めてまいりたいと存じます。  まず、金融再生委員会委員長柳沢大臣にお伺いするわけでございますが、二月十三日付の報道で、再生委員会が大手十五行に対して公的資金の注入の仮決定をした、こういう報道がなされております。仮でありますから我々のところにも何にも御連絡がないのかなと思っておりますが、いずれにしましても、こういう仮決定がなされておるということですから、早晩、本決定がなされるんだろう、こう考えているところでございます。  そこで、問題なのは、私は、この注入をする時点で、国民が最低限、こういう次第でこの銀行に公的資金を注入せざるを得ないという決定を再生委員会の方でしたんだということがわかるディスクローズがなされなければならないと思う。まず、これが最低限だと思うのですね。このことについて、再生委員会の方で今どうお考えなのかということをお伺いいたしたいと存じます。
  165. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生今御指摘いただきましたように、去る十三日に、私ども、内々にこの公的資金の注入を我々の側に求めてきておる大手行十四行プラス地銀一行の十五行に対して、おおむねこれらの銀行の場合、私どもの考えているような株式の発行ということになれば、この授権を株主総会からいただかなければならないところが多いということもありまして、それらのことを三月末までに行い得るほぼぎりぎりの日付も迫ったという認識のもとで、これらの十五行に対して、公的資金を注入するという前提で、株主総会を開いてそれぞれの授権を得るということについて、差し支えない旨の指示を行ったということでございます。  それについて、今仙谷委員の方からは、その必要性について、その基礎になっている情報というか考え方について国民に対してディスクローズをする必要があるのではないかというお話があったわけでございますけれども、これらのことについては、実は法律に手続が載っておりまして、公的資金を注入する等の施策を行う場合には、前提となる資産の査定あるいは引き当て、そういう基準を明らかにすること、さらには、経営改善計画に載っかるべき事項について基準を示しておくこと等々の手続が実は規定をされております。我々は、これに乗っかりまして、既にそれぞれの時期におきまして、これらの引き当ての基準等を既に明らかにし、また、経営改善計画の基準についても明らかにしておるという次第であります。  そして、その上に立ちまして、先般、私ども、国会が始まる直前でございましたけれども、合議制の委員会ということもあって、私がこれらの委員を代表して答弁に立つ責任がある、こういう立場を意識いたしまして、私どもの委員会の運営の基本方針というものを明らかにいたしましたけれども、そこにもこの資本注入に当たっての基本的な考え方を明らかにして、国民の皆様の御理解を呼びかけているところであります。
  166. 仙谷由人

    仙谷委員 これは新聞報道ですから、どこまで正確なのかわかりませんが、拝見する限りにおいて、みずから独自に増資がほとんどなくて、公的資金の注入だけに頼っている銀行というのも相当あるようでございます。あるいはみずからが増資で集められる金額の二倍から三倍の公的資金の注入を受けるという銀行もほとんどのようであります。  さらに、もう一つ申し上げますと、額面上の、表面上の資本金の額と注入を受ける公的資金を比べますと、このバランスがいかにも公的資金の方が多くなっておる。つまり、これは資本金の金額そのものが現在の株価が持っている株価の総額ということには直ちにはならないのかもわかりませんけれども、これは優先株で増資をなさるのでしょうけれども、普通株であれば現在の経営者は首が飛びかねないような、そういう資本構成になり得る金融機関まであるのではないか、そんなことを考えるのですね。  したがいまして、私は、先ほどおっしゃられた点をより厳格に資産査定をして、この分類、非分類、引き当ての問題、そして手持ちの、保有の有価証券等々についても、当然のことでありますけれども時価評価をして、これをディスクローズする。それともう一つは、やはり事ここに至った責任問題についても、金融再生委員会の方からも指導して、やはりそれなりに国民に対して各銀行がけじめをとるということをぜひお願いしたいと思います。簡単で結構です。
  167. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 簡潔にお答え申し上げます。  今先生、新聞の報道に基づかれまして、いろいろな詳細にわたる資本投入のあり方についての御質疑でございますけれども、私の現在の立場におきましては、まだ内々の話し合いをしておるというわけでありまして、正式には、先生御案内のように、株主総会での授権を得た後に正式の手続を始めるということでございますので、株式等の資本の仕組みの詳細にわたっての御答弁というのは現在できる段階でないことをひとつ御理解いただいておきたい、このように思います。  加えまして、責任問題でございますけれども、責任につきましては、私ども、既に経営改善計画の中に、どの資本充実の区分であれば経営者の責任を追及するかということを明らかにいたしておりまして、その区分に当たる銀行からの申請があれば、当然今申したような、既に明らかにした基準に基づいて責任を追及する話になります。また、その区分に当たらない場合には、別途私どもとして、この改善計画において改善計画の遂行が十分に円滑に行われない場合にそのことについて責任を追及する、そういった仕組みでの制度の運用を考えておりますので、そんな方針に従って運用させていただきたい、かように存じておる次第であります。
  168. 仙谷由人

    仙谷委員 多分、大手行が終われば、地方銀行、第二地銀等々に対しても検査、それから資本注入ということになるのかもわかりません。いずれにしましても、この二十五兆円で足りるのかどうかわかりませんが、早期健全化勘定として設定された二十五兆円、これはいずれにしても、将来的には国民の負担になる可能性が、全部とは言いませんけれども、なる可能性もあるわけであります。  先般来の議論からいいますと、ボンドマーケットの現状からいきますと、これが現金化されてマーケットに出るということになりますと、その分何らかの影響を与えることは間違いない。つまり、国民生活に影響を与えることは間違いないわけでありますから、どうかひとつ、再生委員会の方では、国民の理解が得られるようなやり方、そして内容で、この再生委員会の事務をお進めいただきたいと思います。  次に、それでは日債銀問題を改めてお伺いします。  これは、大蔵省でも金融監督庁でもいいのですが、ちょっと整理をしていただきたいのですが、客観的な数字として、九七年四月の日債銀の第三分類債権というのは四千七百億円という日債銀の主張といいましょうか、表現もございます。それから、第三分類は五千五百億円だという話が議事録等々を読んでおりましても出てまいります。それから、七千億円という数字も出てまいります。それから、最終の大蔵検査の結果の示達は一兆一千二百十二億円だった、こういう数字が出てきておるわけであります。  これは、客観的には、有価証券報告書とかあるいはその他の書面、つまり、日債銀がつくった会計帳簿の結論としては、この第三分類の債権額というのは幾らであったのか。そして、大蔵検査の結果、この九七年においては第三分類の金額というのは幾らであったのか。金融監督庁でも大蔵省でも、どちらでも結構です。
  169. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  日債銀が経営再建策を発表いたしました九年四月の段階で、日債銀から報告を受けておりました自己査定結果による第三分類の額が約四千七百億円、これはこの間も監督庁長官がお答えになられたとおりでございますが、それが有価証券報告書に記載されているかどうか、ちょっと今現在確認はしておりませんので、その点はまた確認をさせていただきたいと思います。あと、七千億、一兆一千二百という数字は今先生が言われたとおりでございますが、五千五百という数字はちょっと私聞いておりません。
  170. 仙谷由人

    仙谷委員 有価証券報告書はわからないということなのですが、これは有価証券報告書に、この四千七百億を前提にした資産、つまり、分類、非分類というのは多分附属書類というところに出てくるのではないかと思いますが、そういう決算報告書といいましょうか、決算の貸借対照表といいましょうか、そういうものがあるはずですよね。有価証券報告書はそれに基づいてつくられている。そうだといたしますと、大蔵省検査が終わった九月十一日、この時点では、大蔵省は証券取引法に基づいて、日債銀の有価証券報告書の訂正を求めるという必要があったのではないでしょうか。
  171. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  一般に、今先生言われました話に関しまして、証券取引法第二十四条の二でございまして、これが有価証券報告書について準用いたします同法の七条、十条の規定によりますと、今委員が言われました話はむしろ十条の方の話になるかと思いますが、大蔵大臣が、有価証券報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、または記載すべき重要な事項もしくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていることを発見したときは、訂正報告書の提出を命ずることができるという規定がございます。  いま一つは七条で、これは、提出者本人が訂正を必要とすると認めた場合においては、訂正報告書を提出しなければならないという規定がございます。  今御質問のことについて言いますと、この当該要件に該当するかどうか、現時点ではまだ何とも申し上げられないわけでございます。一般論として申し上げますと、これらの要件に該当する場合には、法令にのっとり適正に対処すべきものと考えております。
  172. 仙谷由人

    仙谷委員 そんな将来の話ではなくて、これはもう過去の話をしているのですよ、今。  だから、当時は多分大蔵省の金融検査部というところが所轄だったんだろうと思いますけれども、これだけ大きい差が出てきて、有価証券報告書の訂正を命じないという感覚がわからないわけであります。  これは、重要な事項について、不十分記載とか、あるいは誤り記載とか、あるいは記載の欠缺とか、こういうものがあった場合には命じなければならない、「命ずることができる。」という法文になっておるようでありますが、命じなければならないということとほぼ同視すべきような法律の構成になっているんじゃないですか。  そしてまた、そうでなければ、そんなごまかしのような有価証券報告書が巷間に、つまりちまたに出ていっているのに、その訂正を求めて、訂正をさせて、これは新聞公告まで必要だと書いてあるじゃないですか、法律に。「日刊新聞紙に掲載して公告しなければならない。」ということが書いてあるじゃないですか。つまり、マーケットとの関係においても、この訂正の報告というのが極めて重要だということになっているのじゃないですか。  そうだとしますと、今問題になっておる四千七百億なのか一兆一千二百億なのかなんというのは、検査の結果、判明した瞬間に、これは訂正を求めなければならないということはおのずから明らかなんじゃないですか。それが、一般論としてはこうだけれども、当時日債銀に対して訂正を求めたのか求めなかったのか、その事実を、これは金監庁でも大蔵省でもどちらでもいいですよ、それをまず明らかにしてください。
  173. 日野正晴

    ○日野政府委員 突然の御質問でしたのであらかじめ準備はしておりませんが、少なくとも、私が有価証券報告書について理解している限りでは、査定というものについて、有価証券報告書に何らかの記載をするということは求められていないはずでございます。  有価証券報告書は、もう御案内のとおり、主として損益計算書とそれから貸借対照表などから成り立っているわけでございまして、その損益計算書にいたしましても、あるいは貸借対照表にいたしましても、自己査定の結果、それぞれの当該の金融機関が、自分のところの償却、引き当て率に基づいて計算して出てきた償却した分あるいは引き当てた分が損失として損益計算書に載りますし、それから、引き当てた場合には引当金が貸借対照表の貸方の部に記載されるということになるわけでございます。  しかも、その間には、監査法人あるいは公認会計士の監査というものが途中に介在しているわけでございまして、その査定も直ちにそれを報告書に記載するというふうにはなっておりませんで、査定をした後、監査法人の監査を経て償却、引き当てが実施される、こういう運びになりますので、私の理解では、仙谷先生がおっしゃるように、これは有価証券報告書に虚偽の記載をしたとか、あるいは逸脱したというふうには理解していないわけでございます。
  174. 仙谷由人

    仙谷委員 長官、私はそれほど会計に詳しくないですけれども、これだけの差が出てきて、資産勘定と負債勘定と影響がないなんということは考えられますか。第三分類を自己査定だと四千七百億円だ。ところが、大蔵検査によると、第三分類が一兆一千二百億になった。七千億も違うじゃないですか。これ、例えば一五%引き当てでも、引当金を計算してごらんなさいよ、幾らになりますか。  そうしますと、少なくとも、負債勘定で、引当金勘定なのか債権償却特別勘定なのかわかりませんけれども、そこには当然のことながらバランスシート上も出てこざるを得ない。あるいは、貸付金だって、第三分類が一挙に七千億円ふえたときに、貸付金がそのままでいいなんという、そんな会計処理はどこにもないですよ。それはおかしいですよ。  だから、私が言っているのは、百億、二百億が、あるいは一千億なのかもわかりませんけれども、当然のことながらバランスシート上、貸借対照表上の資産、負債項目について違う金額が出てくる。そして、その附属書類では、その原因がわかるというのが決算関係書類じゃないですか。  そのことについて大蔵省が当時もし訂正を求めていなかったとすれば、これは任務懈怠も甚だしいですよ。あるいは、もしくは日債銀と同じ穴のムジナでおったということしか考えられないですよ。なあなあでやって、その金額を翌年の三月に持ち越して、そして佐々波委員会でその数字を言って、国民の金を六百億円もむしり取った、こういう図柄にしかならないじゃないですか。  何で、この九七年の九月十一日の検査結果が、公的な、外に出す書類の上で、企業会計上の書類の上で反映されていないのですか。これ、どこにも反映されていないような答弁ばかりしかないのですよ、今までのを拝見すると。どうしてなんですか、これ。金監庁だったらわかるでしょう、当時なかったんだから、責任ないから、もう率直におっしゃったらどうですか。
  175. 日野正晴

    ○日野政府委員 決してそういうことではございませんで、現在でも有価証券報告書については大蔵省の金融企画局が所管しておられるわけでございまして、私が証券取引法やあるいは有価証券報告書について余り言及するのはふさわしくないと思いますので、直接今委員がお尋ねになったことについて申し上げますと、少なくとも、この早期是正措置というのは昨年の四月から導入されたわけでございます。九七年、つまり平成九年の段階では、まだ早期是正措置が導入されておりませんでした。  その当時は、導入前でございましたので、これは現在のように、検査において償却、引き当ての適切性を指摘する仕組みとはなっておりませんでした。この償却、引き当ての適切性というのが基本的には当該の金融機関と監査法人の判断にゆだねられていたというところが、やはり現状と非常に大きく違っているところではないかと思います。
  176. 仙谷由人

    仙谷委員 そうなりますと、これ、大蔵省銀行局というのは何を検査していたのですか。あるいは、大臣官房金融検査部というのは何のためにあるのですか。  それから反対に、今度は、企業財務課というところは、有価証券の上場関係について、企業の健全性を審査し、この企業であれば大丈夫だということでオーケーを出して上場させていたわけでしょう。そんないいかげんな話だったら危なくて、企業の健全性とか企業の資産とか企業の営業力とかそんなことについて、安心して独自の評価をマーケット関係者ができないじゃないですか。  今のような話では納得できないですよ、私は。納得できない、それは。もっとまともに答えてください。
  177. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今、監督庁長官が言われましたように当時は、大蔵省が検査した場合に、検査において資産の査定を行うわけでございますが、それについて示達を受けた金融機関がその償却、引き当てをするかどうかは、これは基本的には当該金融機関、監査法人の判断にゆだねられていたわけでございます。  そうしますと、先ほど御説明いたしましたが、その有価証券報告書の提出者がこれは訂正を必要とすると認めた場合には、先ほど言いました証券取引法第七条の準用によりまして、みずから訂正報告書をまず提出しなければならないわけでございます。  その上で、十条の方になりますと、これは虚偽の記載があった、そのほか等々認めた場合、これは命ずることができるということでございまして、その段階を踏むシステムになっておりまして、今の場合、償却引き当てが金融機関と監査法人の判断にゆだねられていたという事情を御理解いただきたいと思います。
  178. 仙谷由人

    仙谷委員 そんないいかげんな話であれば、大蔵検査なんというのは要らなかったということじゃないですか。接待を受けるだけに行っていたような話になってくるじゃないですか。冗談じゃないですよ。  重要な事項について、重要な事項の記載が不十分であると認めるときは、大蔵大臣は、届け出書の提出を命ずることができるとなっているじゃないですか。不十分でもできるんですよ。  当然のことながら、そういう権限を行使して銀行の資産内容の健全性を担保してもらわないと、そういうことを担保しないでおいて公的資金を注入するなんというのはもってのほかですよ、ということになるじゃないですか。  余りここで延々と時間をとってもいけませんので話をちょっと進めますが、そうしますと、日債銀については、佐々波委員会へ資金注入を申請したときには、第三分類は幾らだという前提で申請をしておったのか。そして、大蔵省は、大蔵大臣を介して、大蔵省の見解は第三分類については一兆一千二百億あるということを言ったのかどうなのか。この二点だけ答えてください。
  179. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  まず、今委員が言われました意味での検査結果そのものは、金融危機管理審査委員会には提出されておりません。  他方、審査に先立ちまして、各申請金融機関が自己査定に使用いたしましたラインシート等を徴求いたしまして、過去の検査結果等に基づきまして精査した結果を委員会には報告しておりますが、詳しい事情につきましては、預金保険機構の方からもお答えさせていただきたいと思います。
  180. 仙谷由人

    仙谷委員 やはり端的なお答えがないんですよね。  第三分類の金額が佐々波委員会に提出されたかどうか、それだけ答えてください。
  181. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  検査結果、日債銀が申請してきた自己査定の中の三分類の数値というのは、私どもが求めましたのは、自己資本の充実が基本でございますので、十年三月期を目標に資料をとったわけでございます。そこで、各銀行とも、十年三月期の自己査定の数値を非公表を理由として引き寄せて、それに対する審査をしたわけでございます。  したがいまして、その後、金融監督庁は、昨年十二月でしょうか、日債銀について、特別公的管理銀行にする際に御発表になった十年三月期の正確な実測値である自己査定の三分類の数値、たしか六千億前後だと思いますが、それとほぼ近い数値がそのとき出ております。
  182. 仙谷由人

    仙谷委員 いや、質問に答えてください。  結局、九七年三月期の一兆一千二百億円という大蔵検査の結果の第三分類の金額は、大蔵省から、大蔵大臣を通じて、佐々波委員会には、当時はこうだったということで、この数字自身は提出をされているのですか、されていないのですか。
  183. 松田昇

    松田参考人 それは提出されておりません。  ただ、先生に御理解いただきたいのは、私どもは、十年三月期の資料を集めましたので、検査結果というのは、当時一斉検査をやっていないわけですね。そうしますと、銀行銀行区々に分かれておりまして、中には古い検査結果もあるわけでございます。  したがいまして、審査委員会としては、検査結果を取り寄せるということはとりあえず第一段階ではやめまして、自己査定を出させて、それに伴う精査を大蔵大臣及び日本銀行総裁にお願いして、それに基づいて審査委員会でさらに審議をして決めたという段階でございます。
  184. 仙谷由人

    仙谷委員 松田理事長、さっきおっしゃった金額、私よくわからないんだけれども、平成九年の四月十五日を基準点として一兆一千二百億というのは、これは九七年の大蔵検査ですよね。九八年の三月期については、第三分類については、金融再生委員会といいましょうか金融監督庁といいましょうか、ここの査定は最終的に一兆三千百十億円ですよね。そうですね。  さっき六千億とかなんとかおっしゃったのは、どういうことですか。
  185. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  それは、金融監督庁の方で昨年十二月に日債銀を特別公的管理銀行にされました。そのときに、新聞等に公表された数字の中に、金融監督庁の査定された数字と、それからもともと日債銀が発表していた自己査定の三分類の数字が並んでいるわけです。そのうちの、日債銀が出している数値とほぼ近い……(仙谷委員「何がですか」と呼ぶ)三分類の数値です。
  186. 仙谷由人

    仙谷委員 では、当時佐々波委員会に提出してきた数字は、日債銀が特別公的管理になってから主張している金額とほぼ近かった六千数百億だ、こういう話ですか、今のは。
  187. 松田昇

    松田参考人 それは、先生、済みません、ちょっとかみ砕いて簡単に申しますと、佐々波委員会がターゲットにしました日時は昨年の三月末でございます。審査をしたのは三月の十日なんです。それで我々はどういう資料を集めようかということで考えまして、短期間でありましたから、三月末の、若干、二十日間の違いはありますけれども、見込み値をそれぞれ自己査定を出させて、それを精査した。  そのとき出された数値について、私ども守秘義務があるので簡単に申し上げられなかったのですが、後に、昨年の十二月になって、金融監督庁が新聞等に御発表になった日債銀の、当時の、つまり昨年三月期の三分類の数値と、当然ながら二十日間の違いしかありませんから、ほぼ近い数字で六千億前後の数値であった、そのように申し上げておるわけでございます。
  188. 仙谷由人

    仙谷委員 日債銀問題、これでとりあえず一たんおきますけれども、いずれにしましても、こういうばかなことが起こっていたわけですね。  大蔵検査で一兆一千二百億がわかった。その次の年には一兆三千百億円、こういう第三分類の結果が、これは金融監督庁からもあるいは再生委員会からも判断が出ておる。だけれども、依然として日債銀は、その前は四千七百億と主張し、そして九八年の三月十日直前の段階では、六千億ですか、六千数百億と主張した。それをうのみにして六百億の公的資金の注入が行われたというのが佐々波委員会だという。  何のために大蔵省の検査があったのかわからない。せっかく間に検査が入っているのに、これは何のためですかという疑問を禁じ得ないわけでありまして、この話は、要するに、日銀が被害者になった九七年四月の奉加帳増資、そして九八年三月の佐々波委員会の決定、これをめぐる、つまり税金もしくは将来国民の負担となるべき日銀のお金が使われておるわけですから、これはもう少しといいましょうか精力的に解明をしなければならない。  私どもが請求をしている証人喚問あるいは各種の資料をこの予算委員会に提出をしていただきたいと思います。委員長、よろしくお願いします。
  189. 中山正暉

    中山委員長 理事会で協議いたします。
  190. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、時間が少のうございますが、国債が平成十年度に三次補正分を含めて七十六兆四千三百億円発行される予定になっております。  今未消化分というのはどのぐらいありましょうか。そして、それは予定との関係でいいますと、民間で消化が予定されておりまして、現在未消化になっておる分はどのぐらいございますでしょうか。
  191. 中川雅治

    中川(雅)政府委員 平成十年度分の国債発行でまだ消化しておりません残額は、トータルで十七兆六千億円程度でございます。そのうち民間消化分として予定されておりますのが十三兆四千億円程度、残りの四兆二千億円程度が公的部門で消化を予定いたしております。(仙谷委員「総額幾らですか」と呼ぶ)総額十七兆六千億円程度でございます。
  192. 仙谷由人

    仙谷委員 という相当大きい金額がまだ未消化なんですね。これは正式には三月の年度末まで、こういうことになるわけでございます。  平成十一年度は、民間の消化額が平成十年度よりどのぐらいふえて、どのぐらいの金額になる予定になっているのですか。
  193. 中川雅治

    中川(雅)政府委員 十一年度の国債発行でございますけれども、十年度の三次補正後と比較いたしまして、民間消化分は十兆三千五十六億円増の六十一兆三十五億円を予定いたしております。
  194. 仙谷由人

    仙谷委員 景気対策予算のために財投を大変拡大したために、資金運用部の資金で九兆二千四百五十九億円ぐらい引き受けを少なくせざるを得ないということがあって、民間分が大変ふえているのですね。十五カ月予算とおっしゃいますから、それをやって、その分で約十七兆円まだ残っている。さらに、民間消化で六十一兆円。全部で現時点では七十一兆円という数字でありますが、これを十五カ月で消化をしなければならない。こういう事態が今の目の前の、要するにボンドマーケットをめぐる需給関係になっておるわけでございます。  官房長官、官房長官は記者会見で、日銀は中央銀行として現在の深刻な状況を打開する責任がある、こういうことをおっしゃっています。  私よくわからないのですが、この間もいらっしゃらなかったのですが、この景気論議をするときに、宮澤大蔵大臣は、二%の金利は、適正水準というお言葉はお使いにならないけれども余り高過ぎないんだよ、こういうふうにおっしゃいます。これは経済企画庁長官もそうおっしゃる。来年度は〇・五%の成長はほぼ間違いない、もう底を打って回復の胎動が出てきておるんだ、こうおっしゃっておるわけです。  ところが、官房長官だけが、現在の深刻な状況を打開する責任が日本銀行にある、こうおっしゃるのですね。そして、日本銀行にいわば国債の引き受けという最後の最後の最後の禁じ手までやったらどうかと言わんばかりの記者会見を三回も四回もやっている。官房長官の認識のこの深刻な状況というのはどういう状況ですか。
  195. 野中広務

    ○野中国務大臣 あらかじめお断りをいたしますけれども、よく報道で官房長官が記者会見と言われますけれども、これは私の方から意図的に申し上げたことは一度もないのでございまして、それぞれ会見場にいらっしゃいます記者の皆さん方が質問をされまして、それに答える形で私どもの考え方を申し上げるわけでございます。  したがいまして、いろいろな局面で、それぞれ会見の話が出ようと思いますが、そういう経過でありますことをあらかじめ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  つきましては、私が最近の景気情勢について中央銀行たる日銀について言及をいたしましたのは、過度にわたる円高は、我が国経済の現状を見るときに非常に深刻な状態であると認識をいたしまして、日銀あるいは大蔵等、金融全体についてあらゆる方途をとっていただきたいという期待感を申し上げた次第であります。
  196. 仙谷由人

    仙谷委員 現在の深刻な状況を打開する責任があるという言葉だけれども、これは私、日銀にないと思いますよ。これは政府がしでかしたことですからね。長い間の景気対策、百兆円を超える景気対策をやって、こういうじゃぶじゃぶのボンドマーケットをつくったのは政府の責任です。日銀の責任ではない。少なくとも国債とボンドの金利問題、これは非常に重要な問題でありますが、これは日銀の責任ではない。これを日銀に押しつけるのは、余りにも日銀がかわいそうだと私は思います。あるいは、原因をほかへすりかえることになるのではないかと思います。  総理、何か総理の経済政策の顧問は大原先生でいらっしゃるのですか。大原一三先生が総理の顧問なんですか。フィナンシャル・タイムズに大原先生が、二年間に限って五兆円の国債引き受けを、直接の引き受けですよ、日銀が引き受けるのですよ、それをやったらどうかという進言をした、こういう報道がありますが、こういう事実はありますか。
  197. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 大原先生はその道の大変エキスパートという立場でございまして、私は常々いろいろな御意見を拝聴いたしておりますが、具体的に今の点について、進言といいますか、いろいろと御説明は承ったと思いますが、正確に、ちょっと今手元にそのときのペーパーがございませんですが、いろいろな形で御提言をいただいて、勉強させていただいていることは事実でございます。
  198. 仙谷由人

    仙谷委員 それじゃ、結論的に。総理、官房長官が、いわば日銀の国債引き受けなのか、直接のですよ、あるいは買い切りオペの拡大増額なのか、あるいは他の手段による、資金需要に対して金融緩和をするのか、いずれにしても、日銀から見れば、あんな実力者の偉い人が言っているんだから何かしなきゃいかぬと思われるぐらい繰り返し繰り返しおっしゃっているのですね、これは総理と打ち合わせした結果なんですか。意思は一致しているのですか。それとも、官房長官が勝手に言っているのですか、あんなことを。
  199. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 先ほど官房長官もここで御答弁をされておられますように、記者会見におきまして、記者の質問に答えてお考えを申し述べられたということでございまして、そのことは報道を通じて私も承知をいたしておりますが、その真意は先ほど御本人から御答弁したとおりだ、こう考えております。
  200. 仙谷由人

    仙谷委員 私は、今のこの債券市場の長期金利の上昇というのは、確かに、これから日本の経済成長といいますか、景気回復の足を引っ張る相当大きなガンになるだろう。この間、大蔵委員会でもやりましたし、予算委員会でもやりました。そのことは、そういう流れはわかるわけでありますが、しかし、問題は債券発行主体の信認が低下している。これは、戦時経済並みに財政赤字を膨張させたということが大問題だと私は思っているところでございます。  最後に、日銀副総裁がいらっしゃっていますので、日銀がこの局面でできることとできないこと、これについてはっきりとお答えをいただいて、質問を終わりたいと存じます。
  201. 藤原作彌

    ○藤原参考人 お答えいたします。  現下の経済情勢につきましては、官房長官がおっしゃいましたように、過度の円高が経済全体にゆゆしい影響を及ぼしているという点については私たちも共通の認識を持っているものであります。  それや債券相場やその他もろもろ含めまして、どういうような対策を行えばいいかということにつきましてはいろいろな御意見があるということは私どもも傾聴しているわけでありますけれども、日本銀行に与えられた手段というのはおのずから限られているわけであります。その手段を使ってできるだけのことをやっていくというのが私どもの責務だと思っておりまして、先般、無担保コールレート、翌日物ですが、それを従前の〇・二五%から〇・一%下げまして、それが、できるだけ潤沢な資金供給を通じて経済全般にいい影響が及んでいくということを期待しているわけです。
  202. 仙谷由人

    仙谷委員 終わります。
  203. 中山正暉

    中山委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。  次に、石田幸四郎君。
  204. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 公明党の石田でございます。  行革問題についてこれから質疑を行いたいと存じます。  その前に、法務大臣にお伺いをいたしておきたいのでありますが、今から約十五年ぐらい前、いわゆる定住外国人の問題で指紋押捺の問題が大変大きな話題になったわけですね。特に三世の人たちが、指紋押捺という性格上、簡単に言えばこれは犯罪者扱いじゃないか、そういうようなことで大変反対をされたわけでございます。  私たち公明党としましても、その心情はよくわかるわけでございますので、指紋押捺の問題についてはぜひ改革をしてもらいたい、改善をしてもらいたいという主張を何回もいたしました。私自身も海部総理のときにその申し入れ等もしたわけでございますが、最近の一部の新聞に、この指紋押捺はやめたいという法務省の方針が固まったというふうに報道をされておるわけでございます。  事の性格上、そのような改善措置がとられるということは非常に結構なことでございます。大変時間が過ぎてしまったのでございますけれども、やはり私は、そういう制度というのは非常に人権を侵害しているということを考えますと、遅きに失したとはいえども、歓迎すべきことではないかなというふうに思っております。  そこで、そのように指紋押捺制度をやめようというふうに思われた今日までの議論の経過、並びに、やめるについてはやはり法律をもって国会で審議をしてもらうということになろうかと思うのでございますが、そこら辺はいつごろ法案を提出されようとしているのか、この点についてお伺いをいたしたいと存じます。
  205. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 経緯は、石田先輩おっしゃられたとおりでございますが、平成四年に外国人登録法の一部改正がございました。そのときに、御存じのとおり、永住者の指紋押捺制度を廃止いたしました。そのときに衆参両院の法務委員会において、さらに外国人登録制度、指紋押捺制度について検討を進めようという附帯決議がなされました。そして、その後、実際に事務を行ってくださいます地方自治体の方から、この指紋押捺廃止について強い御要望が繰り返しございました。  そこで、法務省としては検討を進めておったわけですが、昨年こういったことが法務委員会で取り上げられましたときに、諸外国の制度の調査等も進めまして、平成四年の改正において、指紋押捺制度にかわる同一人性確認の手段というのをとったわけですが、その制度が有効な制度として定着してきているということを考えまして、そして、この際非永住者についても指紋押捺制度を全廃しようということを決めたわけでございます。  そして、今、所要の法律の整備の準備をしておりまして、三月には国会に法律が提出できるものというふうに考えております。
  206. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 法務大臣にお伺いをすべき点はそれだけでございますので、お忙しくいらっしゃるようでございますから、御退席していただいて結構でございます。  それでは、行革の問題について総理並びに関係大臣にお伺いをしてまいりたいと思います。  小渕総理がいわゆる行革について大変厳しい態度で臨んでおられる、積極的な態度で臨んでおられるということは私も理解をするわけでございますが、総理になられるときに、行革の基本的な問題として、国家公務員の削減二〇%、それから行政経費の削減目標を三〇%というふうにおっしゃったと思うんですね。その後自自連立がありまして、公務員の削減目標は、さらに五%追加されて二五%というふうになったわけでございます。  この予算委員会でもしばしばその問題は議論になったようでございますが、この二五%という数字は、現在の公務員の総数が約八十五万と言われているわけですから、一般の人から見ますと八十五万の二五%なのかなというふうに受け取られかねない状況が一つありました。その後、予算委員会でいろいろ議論があって、そうではない、郵政公社が二〇〇三年にスタートするわけであるから、その三十万は除いたところの二五%である、こういうふうに御説明があったやに聞いております。  総務庁長官、それでよろしゅうございますか。
  207. 太田誠一

    太田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。  もし郵政公社に行く三十万人の方々の分を分母、分子の両方に入れていいということならば、実はもっと目標を高く掲げてもよかったわけでございます。五十四万七千という数字からスタートすることが、より厳しいことでございます。
  208. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そこで、その数字を計算をしてみますと、五十五万に対する二五%ですから、削減の目標というのは十三万七千五百ぐらい、こういうふうになりますね。そこからさらに、独立行政法人に所属している人たちを順次減らしていこう、こういうふうになるわけでございますから、独立行政法人に現在配置されている八万三千、そうすると、準公務員といいますか、定員法に掲げられる公務員の二〇〇一年から十年後の数値目標というものは、十三万七千からさらに八万三千人程度を独立行政法人で削っていくわけですね。そうすると、残るのが五万四千ぐらい、こんなふうになるのでございます。  これは私は、総定員法に基づくことを申し上げているわけではない。しかし、独立行政法人といえども、やはり国が責任を持って予算措置をしなきゃなりませんね。そうすると、当然その人件費も国が責任を持たなきゃならない。特に、独立行政法人というのは、国家公務員の資格をそのまま存続する、継続するということになっているわけですね。そうすると、総定員法の数ではなくて、予算措置ということを考えると、大体五万四千人ぐらいの削減が実態的な目標なのかなという印象を免れないのでございますけれども、長官、いかがですか。
  209. 太田誠一

    太田国務大臣 石田先生は総務庁長官の大先輩でございますからよくおわかりのことと思いますけれども、現在、現に国家公務員でおられる方々にとって、独立行政法人にあなたは行ってくださいというふうに言われるのと、その組織に毎年、例えば今のペースでいけば、二五%でいえば年率二・五%の削減がかかるということとどっちが厳しいかといえば、実際問題としては、独立行政法人に移行するということの方が、人生の取り組み方としてはリスクが私は多いように思うわけです。  そういたしますと、私は、独立行政法人化が、今八万三千というふうにおっしゃったわけでございますが、それは目標としてそういう数字は我々の頭の中にはございますけれども、今、職場単位で考えて六万七千でございます。それで、六万七千が全部独立法人の方に身分を移行していただくかどうかというのはまだ結論が出ていないわけでございまして、石田先生からも側面から御支援をいただきながら独立法人化というのは進めておりまして、なるべくその数字が高くなるようにいたしたいと思いますが、ぜひそこは、独立行政法人化ということは、現に国家公務員としてやっておられる方々にとっては大変厳しい選択であるということは、御理解を賜りたいと思います。
  210. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 長官のおっしゃること、私もそれはよくわかりますけれども、どれだけ実質減、予算措置上要するにどれだけ公務員を削減しようとしているのか、そこのところがやはり国民の前に数字の上で見えていかないと、国民皆さんはなかなか納得しないと思うんです。その数字が要するに基本数値ですから、いろいろな条件があって動くことは間違いない。しかし、大幅に何万人も違ってくるなんということはあり得ないわけでございますので、そういった意味で、確認の上で、大体私の考え方が妥当なところなんじゃないのかなと。  今、八・三万人に対するお話もございました。私も事務局に聞いてみますと、大体八割ぐらいはいけるんじゃないかとか、そんな話もありますという程度のことしか決まっていないようでございますから、無理無理に数値を確定しようというふうには申し上げませんけれども、大体そこら辺が妥当な、基本的な数値なんではないかなと思ってお尋ねをしたわけです。それはまあこれでよろしゅうございます。  さらに、総理大臣にお伺いをしたいのでございますが、行政経費の三〇%削減を目指そうという、お気持ちはよくわかります。しかし、その行政経費なるものの基本的な認識といいますか、これはなかなか言うべくして難しい点があるのでございますけれども、これはたくさん議論している時間はありませんので私の方から申し上げますけれども、例えば、平成十一年度全体の予算規模というのは八十一兆円ぐらいですね。しかし、その中に公債費は入っている、あるいはまた地方交付税も入っているわけでございますから、そういうものを対象にするということはちょっと角度の違う話でございますから、やはり三〇%削減の行政経費なるものの定義というのは、一応目標としては一般歳出予算ぐらいかな、こんなふうに思うのでございますが、ここら辺は想定して三〇%というふうにおっしゃったのかどうか、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  211. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 実は、この行政コストの削減につきましては、先生御案内のとおり、私が先年の総裁選挙に臨みました折、目標として十年間で三〇%コスト削減を実現いたしたいということを申し上げ、申し上げた上で自民党の総裁になり、そして総理として現在におるわけでございます。  具体的にこれを実行していくということになりますれば、それぞれ所掌しておる行政分野ごとに、行政コストをどうとらえ、どう削減するかを検討した上で、具体的な削減の目標を設定していかなければならないと考えておりまして、このような考え方に基づきまして、現在、去る一月二十六日に決定をされました中央省庁等改革に係る大綱も踏まえまして、各省庁がそれぞれ所掌している行政分野ごとの削減目標の設定作業を行っておるところでございます。中央省庁等改革関連法案提出の時期を目途に、具体的な取り組み方針を策定してまいりたい、このように考えております。
  212. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そうしますと、行政経費の定義というのはちょっとしにくいんだろうと思うのですけれども、各省庁がそれなりに削減目標をつくるとおっしゃいますけれども、三〇%というとなかなか容易ならぬ数字なんですね、これは。十年間で三〇%。  先ほど、定数の問題もございましたけれども、五千人から六千人ぐらいの定員削減というのは、金額の上でそんなに大きいものじゃないんですね。恐らく三百億から四百億ぐらいの経費の節減になっていくと思うのです、年間五、六千人削減するということを考えますと。そうすると、現在のこういった国債の発行枠から見ても、それだけじゃとても行政経費を削減したとは言えないわけでございますので、この各省庁の基本目標をどうやってつくるかというのは、私は大問題だと思うのです。  午前中でございますか、自由党の鈴木議員もちょっと議論をしていらっしゃったようですが、どうやってこの行政経費を削減していくのか、それに対する御答弁というのは、全体の体質的な問題を改善しなきゃならぬ、こういうふうにおっしゃる。それはわからぬではないが、しかし具体的にどこからメスを入れていくかというのは大問題じゃないでしょうか。地方交付税を削れますか、そう簡単に削れませんわね。  例えば補助金の問題、これも、毎年ではありますけれども、少しずつふえているわけで、整理統合したとはいうものの、なお平成十一年度は二十兆を超しちゃったわけですよね。基本的に、こういうことにメスを入れていかない限りは、行政経費の削減なんというのは到底できようがないんですけれども、この三〇%削減の切り込みをどんな柱を立てておやりになろうとしているのか。そこら辺は、ひとつ総理並びに総務庁長官の方から承りたいと思います。
  213. 太田誠一

    太田国務大臣 大変難しい目標の設定であると思っておりますが、ただ、実際に、事業費そのものをあらかじめ三割削減するというふうなことはちょっと現実的に考えられないわけでございまして、やはり行政各部に対して総理が具体的に何か、その周囲でもって三割削減というようなことができないかという問題を提起されておるものと思うわけでございます。  例えば、これは小渕内閣になってから決まったことではありませんけれども、公共事業については単価を三年間で一〇%削減しようというふうな目標を立ててやっているところもございます。そういうことをモデルにして、行政各部でもってそれを考えていただくということではないかと思っております。
  214. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは伺いますが、いわゆる地方分権委員会の第二次勧告を見ますと、国から地方への権限移譲というものが行われて、自治事務と法定受託事務とに分けられたわけですね。それをやりましていわゆる補助金は減りますか、お答えください。
  215. 太田誠一

    太田国務大臣 その部分では別に減ることはありません。(石田(幸)委員「減らないでしょう」と呼ぶ)はい。
  216. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総理、お聞き及びのとおり、これだけの権限移譲をやりましても、要するに補助金そのものは減らないわけなんですよ。そこのところを十分頭に入れていただいて、それで、この国と地方との税財源の配分という問題は、私は非常に重要だと思うのですね。ここへ議論が進んでいっていただかなきゃならないわけです。  いろいろなお話を申し上げたいわけですが、自治大臣にお伺いしますけれども、私は、地方分権を進める上におきましては、財政の問題を含んだ改革というものと、それから、先ほどもお話が出ていたようでございますが、いわゆる受け皿問題ですね、三千三百の。非常に問題が、大都市と市町村の間の格差が余りにも大き過ぎて、行政そのものがそこからゆがんでくるおそれもあるわけですよね。これはやはり進めなきゃならない。この二つが私は今後の地方分権を進める大きなかぎではないかと思っているのですが、自治大臣の見解を承りたいと思います。
  217. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 石田先生御指摘のとおり、権限移譲といいますか役割分担、国と地方の役割分担という側面と、それからいま一つはその受け皿という、この両面から検討する必要があるという御指摘は、そのとおりであろうと思います。  役割分担ということでは、先ほど来御議論ございましたが、地方分権推進委員会の勧告をもとにして、権限移譲なりあるいは自治事務と法定受託事務ということで、その辺の交通整理をして、これをこの国会に、昨年の勧告をもとにした地方分権推進計画を法案化して、これを御審議いただこうという段取りになっておるわけでございますが、その法案の中で、あわせて、受け皿である市町村の合併の促進について、合併特例法を改正するほか、その受け皿づくりということをさらにプッシュしたい、こう考えておるわけでございます。  そのことが、仕事の配分と同時に、それを遂行していくための、言うなら財源の手当てということをあわせて考えていかなければならない。そういう意味で、俗によく言われる権限、財源、人間といいますか、そういう人をも含めた受け皿づくりということを並行して進めていかなければならないというふうに考えております。
  218. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さらに自治大臣にお伺いをしますが、やはり市町村の合併を促進するための特に自主的な措置というものが基本的になくてはならないことは間違いないわけなんですが、しかし、これをそのままの形で推進しようと思っても非常に時間がかかるというふうに思わざるを得ない。三千三百を仮に千ぐらいにするにしても、これは並大抵のことじゃないのですけれども、自治大臣として、やはり計画的にそれを前へ進めるためには、十年なら十年で何とかそこまで持っていきたいとか、あるいはこれとこれとこういう手だてでそこまで持っていきたい、少なくとも省庁再編の一つの成果が、二〇〇一年からスタートして十年先にできるわけだから、それまでには何としても整理をしたい、あるいは統合を促進したいというようなお気持ちはあると思うのですけれども、何か具体案がございましたらお示しをいただきたいと思うのです。
  219. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 おっしゃるとおり、かなりそういう計画的といいますか、アグレッシブにやっていきませんと、この問題はなかなか前には進まないという思いはございます。  そこで、現在のところ予定されておりますのは、先ほど若干触れましたのですが、地方分権推進計画、昨年の五月に閣議決定された事柄に沿った法改正をする。その中に合併特例法の改正を盛り込む、地方分権一括法案の中に盛り込みたいということであります。そこでは、住民発議制度の拡充、あるいは合併算定がえの期間の延長、あるいは都道府県知事による合併協議会設置の勧告、そのほか地域審議会の設置というような事柄を盛り込みたいと思っておりますが、それだけでなくて、いわゆる財政措置の拡充をもあわせてやっていかなければならない。それは、合併の障害を除去したり、あるいは合併のための環境整備をしたり、あるいは合併後の町づくりの支援のための財政措置を拡充していくことがもう一つ必要である。  さらに、これについては、特に都道府県の協力といいますか、積極的な取り組みということが不可欠なことでありますので、市町村合併の推進についてのガイドラインをこの上半期にも都道府県に対してお示しをして、そこで、それをもとに、都道府県の方で要綱をつくっていただきたいということでございます。  ただ、これだけで果たしてどこまでいけるのかということになると、私たちとしては、もうさらに拍車をかけるやり方を工夫しなければなるまい、こう考えております。  今出ておりますいろいろな合併支援のスキームのほかにさらなる、これは自治省の所管の中だけで果たしてできるかどうかということもあります。そういう点で、もう少し全体の中でぜひこれを推進していくような発想法を持ってやっていかなければならぬと考えておりまして、現在、自民党と自由党の間で、この市町村合併についても、今まで予定しておりますいろいろな支援の方策をさらに突っ込んだ形でやれないかという協議をスタートしていただくということになっておるわけであります。
  220. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 野田大臣、結構でございますから。あと、各大臣にちょっとお伺いをします。  その前に、私は、きょう実は補助金行政の問題をかなり時間をかけてやりたかったのですが、残念ながら割り当ての時間が五十分しかありませんので、その議論ができない。だけれども、補助金行政に対する批判というのは、長い間いろいろな問題点があるのですね。ある学者の指摘するところによりますと、問題を四点挙げているわけです。  問題点の第一は、現行制度のもとでは、自治体は国庫補助金によって細部まで干渉、指示を受けるため、自治体にとって最も大切なみずから治めるという精神、自主性、創意工夫といったものの芽が摘まれて育たないということである。  第二は、地方自治体の側では、国の補助金のつく事業を優先して予算が組まれる。いわゆる補助金待ちのそういう弊害が生じている。これを具体的に申し上げますと、いろいろな市に聞いてみてもそうなんですが、一億円の原資があって、それで補助金がつくということになれば、その倍の二億の仕事ができる。なれば、自治体の長としては、やはり勢い補助金のつくいわゆる国の奨励事業を優先させる、そういうような現象が現に起きているわけなんですね。そういうこともそこでは指していると思うのです。  それから、第三は、補助基準の不明確さ、あいまいさがあると。まあ詳しくは申し上げません。  それから、問題の第四は、現在のような国庫補助金制度では、住民は行政に要求するという姿勢だけが強くなってくる。それに必要な負担を自分たちがするという自治にとって最も大切な負担意識が育たない、こういうようなことが言われている。ほかでもいろいろ言われていますね。  そういうふうに、補助金行政には非常に批判があるのでございますけれども、私も、去年でございますか、この補助金行政のために陳情合戦が起きていることは何とかならぬかということを申し上げたわけですね。  それはともかくとしまして、今お願いをしました文部、農水それから厚生、補助金が多いんですね、非常に多い。それで、今度、公共事業については統合補助金という制度を一つ設けるということを決められました。それを聞いてみますと、四兆幾らのうちの一兆一千ぐらいそこへ固めてしまうというようなことなんでございますけれども、厚生、文部、農水の方でそういう統合補助金の発想があるのかどうか、この点をひとつ伺いたいわけなんです。  それから、この補助金の流れをずっと見てみますと、問題が多過ぎる、そう思わざるを得ない。それで、私の持ち出してきたものは、経企庁の経済研究所が「地方分権化時代における地方財政のあり方に関する研究」という論文を出しておられるわけなんです。  それを見ますと、これは九四年度の資料でありますが、一九四九年から五四年に補助金が設定されたもの、これは四十五年前です。それで五兆円ぐらいある。それから、三十五年前ぐらいまでのものを合算してみますと、九兆ぐらいあるんですね。この当時、恐らく補助金というのは十五、六兆かもしれません、九四年ですからね。相当な数なんです。  だから、もう三十年前、四十年前の社会情勢とは変わっているわけですから、そういったものを本当に各省庁はことしの補助金を設定する場合に十分検討されたのかどうか。私は、そういう部分はもう少し削れるんじゃないか、また削らなきゃならぬというふうに思うんですが、その二点を各大臣にお伺いをしたいんです。
  221. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今、委員の御指摘でございますけれども、厚生省の補助金というのは、大きく分けますと、年金の、例えば基礎年金でございますね。これはもう負担制度に近いものだと思います、三分の一負担。これでもう五兆円近くかかっています。それから医療制度でも、国保の四〇%補助とか、いろいろございます。これも制度の中にビルトインされておりますので、これを自由にというわけにはまいらぬという点がございます。それから、介護は御案内のように公的負担で半分やるということになっておりまして、私の方の補助金は、福祉の問題に大体零細的なものが多いと思います。  それで、それはやはり、例えば公共事業に準じたゴールドプランの実施にいたしましても、厚生省の特色はどういう点であるかというと、建設省のように、道路とか橋をつくってしまえばそれで、あと維持管理の問題はあるにしても、問題はそんなにないと思うんですね。ところが、厚生省の場合は、自治体のボトムアップで、例えば特老をどうするとかいうことを、計画に基づかないと補助はできないと思います。  それはなぜかというと、運営費がかかるからですね。システムとしてずっと永続する、そういう性格のものが非常に多いものですから、金額が非常に多うございますけれども、目ぼしい金額で補助金をカットするとか、そういうことはなかなか今の社会保障の体系の中で難しい点は、これは申し上げざるを得ないと思います。  ただ、いろいろの個々の福祉の問題の統合化、そしてある程度自由にやらせるということは、現に多少そういうこともやっております。目細を統合したりしてやる、それからまた廃止をしたりということも現にございます。一々は細かな話になりますから申し上げませんが、委員の御指摘のような状況での努力はいたしておりますが、厚生省の予算というのは、大勢は今申しましたようなことでございます。  それから、古いものがあるんじゃないかというんですが、これは一つの例でございますが、生活保護費負担金は今でもございます。これは一兆一千億計上してありますが、昭和六年から連綿として続いているんですね。それから、国民健康保険助成費にしても、療養給付費の負担金は、これは昭和二十七年に創設されまして、今二兆二千億続いています。  そういう種のものが、年々委員のおっしゃるように見直さなくちゃなりませんが、制度として組み込まれているものは、制度を改変すればあるいは変更は若干あるかもしれませんが、基本的にはなかなかそうもまいらぬという点もあるのは御承知をいただきたいと思うんです。
  222. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 平成十一年度の予算編成に当たりましては、文部省においても、施設整備関係補助金を含め補助金等について、社会経済情勢の変化、官と民及び国と地方の役割分担のあり方等の観点から、その整理合理化を進めております。十一年度予算案におきましては、補助金等の整理合理化に努めており、補助金等の廃止や統合メニュー化を進めているところでございます。  より具体的には、平成十一年度予算編成に当たりましても補助金の整理合理化に積極的に取り組んだところでございまして、例えば、公立学校施設整備費補助金に係る高等学校危険建物改築事業の廃止、及び社会体育施設整備費補助金の水泳プール上屋の建設事業等の廃止、重点化等を行ったところでございます。  今後とも、地方分権の趣旨を踏まえまして、予算の効率的な使用の観点等から、補助金の見直しについて積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  223. 中川昭一

    中川国務大臣 農林水産省におきましても、かんがい排水事業のように戦前から続いているものがございます。  我々といたしましては、国民への食糧の安定供給とか、あるいは国土の保全、あるいはその地域に住む人たちへの支援という観点から、必要なものについてはやはり引き続きやっていく必要があるというふうに考えております。しかし、適時見直しをやっていくということも重々大切なことだろうというふうに考えておるところでございます。  また、補助金の統合化につきましても、自治体の意向を重視した上で、目的、性格の近い事業をできるだけ統合することによって補助事業が地域の実情、ニーズに合致したものになるように、全力を挙げて先生の御趣旨に合うように、また引き続き努力をしていきたいと考えております。
  224. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 三大臣、ありがとうございました。しかし、それぞれのお立場からいけば、要するに補助金はなかなか切れないということですよね。難しい。  ところが、これは大蔵大臣に聞いていただきたいんですけれども、私は小さい市、人口五万ぐらいの市を幾つか調べてみたんですよ。そうすると、Aという市は補助金が二億三千万ぐらいもらっておる。補助金の件数はというと、この中に百十五件あるのでございますね。百十五件に分かれているわけです。そうすると、一件当たり二百二万円ぐらいになるんですよ。ほかの都市をずっと調べてみても、大体人口五万ぐらいの都市で、B市は三百三十万、C市は四百四万。これが一件当たりの補助金の実態ですよ。  そういった二百万、三百万のものを、中央省庁へ出てきてその都度その都度陳情しなきゃならぬという行政のむだ。私は、ここら辺にメスを入れない限り、総理がおっしゃる三〇%の経費削減の道筋というのは見えてこないと思うんですよ。  この問題について、先ほどの批判を含めて大蔵大臣にお伺いをしたいんですが、そういう意味におきまして、本当に地方分権を推進するなら受け皿をしっかりしなければならないという一つの議論。それからもう一つは、やはり行財政の配分。これはなかなか自治体側から議論が出てこないんです。というのは、国の財政そのものを議論しないとこの問題は解決できないからなんです。自治省にもいろいろ聞いてみているんですけれども、そういう地方の行財政の改革論議をしているセクションというのはもちろんない、審議会もないというんですよ。だから、これは地方の立場だけで議論はできないから恐らくやらないんだと思うんです。やはりそれは国で、将来のあるべきそういう行財政のあり方、地方の財源配分のあり方を議論しなければならない。  そうすると、今非常に景気が悪いから、景気対策のためにそういう行政改革というところには踏み込めないという議論もそれは出てくるかもしれません。しかし、きょう成立をしたいわゆる情報公開法、これだって細川政権のときに立ち上げた話でして、それからもう五年、六年たっているわけですね。あれだけの大法案、基本法なんですけれども、それよりももっと、この地方のいわゆる分権を進めるための行政改革、財源配分の問題等をかなりの時間をかけてやらないと改革の進路というのは出てこないというふうに私は心配しておるわけなんです。  そうしますと、これを本当にやらないと、地方分権も、今度は推進計画が出てきますけれども、権限移譲だけにとまっちゃって、受け皿は進まない、財源問題は進まない。そういう見通しがないということは、地方分権というのはあの分権計画が出てしばらくお休み、全然進まないと。それはそうでしょう、自主財源も持ち得ない地方がどうやって分権を進めることができますか。  そういう意味において、私は、国の財政問題を含めた、地方の財政も含めた、そういう改革論議をすべき委員会なり何かを立ち上げていかなければならない。今からその問題を検討していかなければならない。仮に言えば八条委員会でもいいんですけれども、そういうような形のある委員会議論をこれはすべき問題ではないか。  本当は時間があればもっといろいろな事例を挙げたいのですけれども、もう幾らもありませんので、そこら辺を大蔵大臣にお伺いをいたしたいと存じます。
  225. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど、補助金に伴う幾つかの弊害を列挙せられましたときに、第一には、中央の干渉によって地方の自治というものが育たないと言われました。それから、第四に、どうしても住民が地方に頼る、あるいは中央に頼る、あるいは行政に頼って、自己負担をするという気概を失わせる。この二つのことは違うようで似ていることでございますが、これが私は一番恐ろしいと申しますか、一番の弊害だと考えております。  それで、おっしゃいますように、中央、地方の行財政の再配分ということに行かなければ、財政だけ、行政だけで話はできないんだと思いますが、しかし、戦後五十年、これほど何度も言われてほとんどできていない仕事はまずございません。  今回、橋本内閣から各省庁の再編成ということをやられようとしましたときに、国の機能をそれによって定義をして、設定をして、残りはもう放してしまえ、そういう発想で中央省庁の再編成が進んでおる、あるいはおるはずであるわけなんです。これができましたときに、やはり中央のすべき仕事をそこできちっと限ってしまって、そして地方との分け合いをそこで私はやることにならなければならないだろう。  よく、こういう日本の現状にかんがみて、やがて財政の構造改革をしなければならないというお話がございまして、私は、それにつけ加えて、そのときは必ず税制の改革と中央、地方の再編成と一緒にやっていただかないと、どうもうまくできないんじゃないか。というのは、二千何年でございますか、そのときの我が国国民のニーズというのは随分今と違っておるに違いございませんから、どうも今の延長だけで考えるということが適当でないんではないかという思いがいたしますのです。  それで、全部そういうふうに新しい、新しい日本というのは言うはやすくですが、そういうものをみんなで考える。幸か不幸かこういう、にっちもさっちもいかなくなっておりますから、これじゃいかぬということは何となくみんなはわかっていますので、新しい、二十一世紀当初に行われるべき抜本改革がそういう問題を取り上げる、むしろ、そのことをしなきゃならないんじゃないかということを大変痛切に考えておりますので、またいろいろ御指導を仰ぎたいと思っております。
  226. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これで終わりたいと思うのでございますが、どうかひとつ大蔵大臣にも、ぜひ何か検討すべき、ずっと各省、自治省なり大蔵省なりにも聞いているのでございますけれども、今申されたようなことを検討するところがほとんどないんですね。辛うじて出てきたのが、先ほど申し上げました、経企庁でやっている経済研究所あたりが、要するに地方財源のあり方を研究して、その成果を世に問うておるというような感じでございまして、これでは私は本当の行政改革の柱が抜けているというふうに思わざるを得ないので、これはまた後ほど議論させていただきますけれども、ぜひお考えをいただきたい。どこかで、審議会でも何でも立ち上げてでも、国と地方との財源問題、ぜひ議論するところをつくってほしいというふうに御要望を申し上げておきます。  それから、総務庁長官、さっき確認し損なったんですが、この十三万七千ですか、減るやつですね。この前、省庁再編の基本法のときにこの定員の削減一〇%というのが出ました。そのときに、これは純減ですかと言ったら、言葉を濁してはっきりおっしゃらなかった。この十三万七千というのは純減でしょうか。増員の分は別と考えるというようなことはないでしょうね。それだけ念を押しておきます。
  227. 太田誠一

    太田国務大臣 今まで使っておりました言葉は、二〇%と言っておったときは定員削減の話でございまして、それは今おっしゃいますようにグロスの数字でございます。それで、今度二五%というのは、これはグロスの数字とは言えなくて、純減ということを覚悟をして取り組むということになっております。
  228. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう少し歯切れはよくありませんけれども、また議論しましょう。  じゃ、私は終わります。ありがとうございました。
  229. 中山正暉

    中山委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。  次に、西川知雄君。
  230. 西川知雄

    ○西川(知)委員 西川知雄でございます。  今、委員長のお許しを得て、日債銀の問題について資料をお配りいたしていると思います。いろいろと日債銀問題については議論がされてまいりましたが、ちょっと、事実についての誤解とか、いろいろなところでいろいろなことが言われておりますので、私は、ちょっと関係当事者から詳しく聴取して、また、いろいろなところで調べました結果をまとめさせていただきました。また、何が一体本当の問題なのかというところも、この資料の一番目の「問題点」というところに書いてございます。  そして、ちょっと資料の説明でございますが、一覧表がございますが、これは例の、平成九年の三月三十一日現在、これの第三分類が日債銀では七千億円という見解でしたが、九月十一日の大蔵検査の示達では、四月十五日現在で一兆一千二百十二億円、こういうことで約四千億の差があるわけです。その四千億の差は一体どういうふうにして出てきたかといいますと、これは、後でちょっと御説明申し上げますが、その差額の四千億円の差異が生じた対象債権に係る会社概要でございます。これが正確な情報でございまして、後にそれぞれの会社と日債銀とがどういうふうに関係しているのかということが説明として書いてありますので、また後でお読みいただければと思います。  そこで、まず最初に、日債銀問題についての主要点というのをごらんになりながら聞いていただきたいのでございますが、先ほど申しましたように、九年の三月三十一日現在の第三分類が七千億円、こういうのが日債銀の見解ですが、大蔵検査の示達では、九月十一日に行われましたが、これは四月十六日現在で一兆一千二百十二億円、こういう差が出たわけです。  これはなぜ差が出たかといいますと、聞いてもいいのですが、わかっておりますので申し述べますが、日債銀によりますと、積極的に自分の銀行が支援をして、また当該債務者が合理的な事業計画を持っていて、そしていわゆる強い関係のある関連会社、こういうことであれば、今までの大蔵省のずっと過去からの検査では三分類ではなくて二分類であったというふうにされていたわけです。したがって、こういうことでございますし、さらに公認会計士協会の実務でも、これは公認会計士協会からも意見を聴取したのですが、その実務でも、銀行が最後まで支援をするというような会社、関連会社は、財務内容にかかわらず、これは会社に対する融資は正常債権である、または悪くても第二分類であるということで、第三分類にする必要がなかった。  こういうことで七千億円というのが第三分類であって、あと先ほどの別表で挙げられております支援先、これについては四千億円あるけれども、そういう今までの大蔵省の検査の連続性、過去の経緯、それから公認会計士協会もそういうふうに実務でやっていた、そして今までそれが全部受け入れられてきた。こういうことでその差が出たということでございますが、まず、この今までの大蔵省の検査の経緯とか公認会計士協会の実務とか、こういうことについて、これで理解は正しいかどうか、監督庁、何かあればコメントをお願いします。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  231. 五味廣文

    ○五味政府委員 お答えをいたします。  銀行がみずから金融支援を行います支援先に対します資産査定というものが、一般の企業と異なるルールで行われるということはございません。  問題は、その金融支援を行うという意思、あるいは金融支援を実際に行うだけの体力がその金融機関にどの程度あるのか、それから、そういった金融支援を受けた場合に、受ける側の、融資先といいますか融資を受けている先、こうした先がそれによって財務内容がどういうことになるのかということ。こういったことを勘案しまして、最終的には融資を受ける側の財務内容、これがどういうことになっておるか、そしてそれによる債務者区分を行った上で、あとは担保がどうなっておるか、保証がどうなっておるか、こういうことからくる回収の危険度、これに応じて一分類、二分類、三分類というように分類をしていくということでございますので、いわゆる金融支援先であるから自動的にそれが正常先であったり、要注意先であったりする、あるいは非分類であったり、二分類であったりする、こういったような基準は検査当局は使っておりませんし、私の知る限り、企業会計原則でもそういうことにはなっていないと存じます。
  232. 西川知雄

    ○西川(知)委員 自動的に二分類とか正常先とかいうことになっていないというのは、そのとおりでございますが、私が指摘したいのは、ほぼ自動的に、そういう支援をするというところは第三分類ではなくて、悪くて第二分類であるというふうに、過去の実態としてそういうことが行われてきたということは指摘しておきたいと思います。  そこで、その分類がどうかということは、実際これは重要なんですが、最も重要なのは、分類をするということは、その後の償却と引き当てということについてこれが関係してくるから重要なわけです。そこで、五味さんが記者会見をあるときにされまして、こういうふうに四千億ふえたというけれども、これは第三分類だといってもちょっと性格の違う第三分類である、したがって引き当てを必ずしもしなくてもいいというようなことをおっしゃったのではないかというふうに日債銀も、そしてその記事を読んだ私も理解したわけでございますが、正確にはどういうふうに言われたのか、お答え願いたいと思います。
  233. 五味廣文

    ○五味政府委員 ただいまお話のありました件は、恐らく日債銀が特別公的管理へ移行いたしました際の記者会見、その席上での発言であろうと思います。そして引用をなさいました報道というのが、毎日新聞に報道されましたそのときの記録ということであろうと存じます。  恐縮です、ちょっとお時間をいただいて、毎日新聞の報道では、記者の質問で、昨年四月といいますから、今からいいますと一昨年四月でございますが、その大蔵検査でどうだったのだという御質問に対しまして、私がそのときの各分類額を説明をいたしました。そしてその後、この記事によりますと、「当時は早期是正措置は導入されておらず、引き当てを求めていない。」こう発言をしたというふうに書いてございます。これは、質問が、昨年四月の大蔵検査では債務超過だったのではないかという質問でしたので、それに対する最終的に締めが必要でしたのでこの部分があったわけですが、この報道は間違っております。間違っております。  実は、こういう質問が出るということは当然私は想定をしておりましたので、この部分に対する答えというのは、日債銀側が、関連会社であれば、自分支援している限り、これが意に反して倒産をすることはないから要注意先でいいのだということで御主張をずっと続けておられましたし、当局と見解が相違しておりましたので、この質問が出たときは、非常に注意深く誤解のないように答える必要がある。そこで、これは国会でございません、記者会見ですので議事録というものはとっていないのですけれども、したがって、記憶に基づいて御答弁することをお許しいただきたいのですが、この部分は私、実はよく覚えております。この質問があったらこう答えなければいけないという手持ちのメモを用意しておりまして、それをほぼそのまま読み上げたつもりでおります。  その部分はこうでございます。前回検査、すなわち九年四月は早期是正措置導入前に実施されており、検査において償却、引き当ての適切性について指摘する枠組みとなっていなかった、このようにお答えをしておるはずでございまして、この部分が正確にこの毎日新聞では引用をされていないということでございます。
  234. 西川知雄

    ○西川(知)委員 では、正確な引用はわかりましたが、そこでおっしゃっていることは、引き当てをしなくてもいいということは言っていない、しかしながら、引き当てをどういうふうにするかは、各金融機関そして監査法人の意見に任せましょう、そういうような実務であったということをおっしゃっているわけでございます。  ところで、そういう実務でございますから、日債銀としては、その四千億というのは、二分類から三分類にされたとしてもまあそう影響はないわと。というのは、その部分については引き当てをする必要はないというふうに監査法人も言っていた。したがって、引き当てをする必要はないわけだから、二分類、三分類といったとしてもまあそう関係ないということで進んでいったわけでございます。  ところで、それから時がたちまして、日債銀が六百億円の公的資金を申請するという事態になりました。  そこで、これは十年三月五日に提出しました、三月末見込みの自己査定でございますが、日債銀は、このときにはもう債務者区分とかそういう区分ができ始めてございましたので、まずこれを債務者区分で要注意先にしたわけです。  要注意先というふうにしますと、その後は、その要注意先には三分類とか四分類というのはございません。最高二分類でございます。したがって、これは三分類だと言われたけれども、引き当てをしなくてもいい三分類だ、特殊な三分類だというふうに言われておりましたし、そう理解していたわけですから、要注意先というふうにまず債務者区分でやったわけです。  そうした理由は、先ほど申しましたような、単純な第三分類ではないというふうに多分示達書に書いてあったと思うんです。ですから、これは要注意先でよろしい、すなわち二分類でいいというふうにして、公的資金の導入に当たっての自己査定の検査、それをやったわけです。  そしてまた、それについて、先ほど申しましたように、重要なことは、償却、引き当てが幾らあるかということでございますから、これも従来の方法でやっていいんだ。すなわち、さっき五味検査部長がおっしゃいましたように、引き当てについて、償却については当局がとやかく言わない、これは監査法人というもの、また各金融機関が個別に決めればよろしいということですから、従来の方法でこれを算定して、これをラインシートを含んで、自己査定の詳細を大蔵省と日銀に提出して、その結果を佐々波委員会に提出したということでございます。  そして、いろいろな委員の質問にお答えになって、その結果を大蔵大臣が委員会で説明をして、そしてこれは問題がない、妥当であるから公的資金を導入してよろしい、こういう結果になったわけです。  そのときに、前の基準を使った、前の引き当ての基準、そして分類の基準を使った、そういうような自己査定、これをやって、そしてそれをさらに当時の大蔵省の検査部に見せているわけです。大蔵省の検査部は、先ほどの検査示達書でありましたように、二分類ではない、三分類にはしなさいというふうに言っているんです。その同じところが、自己査定の結果をもう一回もらったときには、それは二分類になっていたんです。ところが、それを見ないで、いやいや、三分類にする必要はない、二分類でよろしい、そして償却、引き当ても、前の、あなたの言うとおりで結構です、こういうふうに言って、そしてこれが、十年の三月五日ですよ、決定したのは三月十日です。示達があったのは九年の九月十一日です。そして、新しい個別の償却、引き当てをやろうというふうに決まったのは十年の四月一日からです。三月期からです。四月一日からです。ですから、もうすぐそばなんです。そういうときに、いや、個別引き当てはする必要はありません、そして分類も三分類にしておきなさいと言いながら、二分類の自己査定結果が出て、それでオーケーだというふうに言っているんです。  これは日債銀であれば、小渕総理、客観的に、日債銀であれば、いや、これは三分類だと示達書で言われた、二分類だと自分は思っていたのに三分類だと言われた、しかし、自分は、何か三分類でもちょっと毛色の違う三分類だと言われた、引き当てもしなくてもいい三分類だと言われた。だから、何を考えているのかはよくわからない、大蔵省は。だから、それは要注意先として今度の自己査定で出しましょうというふうに思って、要注意先として出した。そうしたら、それ、同じ人が見て、通っていた。通った。そうしたら、いやいや、やはり大蔵省はそういう考え方だったのか、これは三分類にして個別の引き当てをする必要もないんだなというふうに思って、従来からの方針どおり分類をして引き当てをするというふうに、相手を信じてするのが当たり前だというふうに思うんです。  総理、私は専門家じゃない、詳しいことはおわかりにならないと思うんですが、そういう客観的なことを考えて、私は行政の連続性とか、そういうことについてはお尋ねをしようと思っていますので総理にお尋ねしたいんです。そういうふうなことを客観的に聞かれて、いやいやこれは二分類でいいんだなというふうに、そして引き当てもしなくてもいいんだなというふうに考えるのが普通の人ではないかと思うんですが、総理は、ちょっと客観的な御見解いただければありがたいと思います。じゃ、まず大蔵大臣にお答え願って、そして総理の、どういう見解かということをお願いしたいと思うんです。
  235. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 伏屋金融企画局長
  236. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それは基本的な、知らない人が考えて、どういうふうに客観的に思うかということを質問しているわけで、伏屋さんが答えたって何の意味もないんですから、それは取り消してください。
  237. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 伏屋局長、とりあえず答弁してください。
  238. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 まずお答えいたします。  今言われました検査結果というものが一つあります。他方、その審査に先立ちまして、各申請金融機関が自己査定に使用したラインシート、これは先生が言われたようにあるわけでございますが、それを徴求いたしまして、それで過去の検査結果等も、これに基づいて精査した結果を総合的に判断いたしまして、委員会に報告しているわけでございますから、そこは、それも踏まえているということで御理解いただきたいと思います。
  239. 西川知雄

    ○西川(知)委員 局長も全然わかっていらっしゃらない。  大蔵大臣、いかがですか。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今、西川委員のお話を伺っておりまして、私も個々の細かい事実とかそのときの心理とかいうのは知る由がございません。おっしゃったことは、私がいつぞや申し上げたこととそんなに違わないと思うんですが、何人も悪意とか故意とかいうものは実は余りなかったのだが、結局、当時これを引き当てなければならないという規則はないものでございますから、恐らく大蔵省の示達は、おっしゃったような種類のことを指摘しておるに違いないんですが、それを受け取った方は、仮にそうではあっても、これはある意味で、自分たちが生き延びている限りバッドデットではない、生きている、こう考えることができるものですから、その間に考え方の違いがあったのみならず、それを引き当てなきゃならない、それは公認会計士の仕事でございますから、大蔵省の仕事でもないし、銀行の仕事でもない。そういうことになってしまって、そこでボールがぽとんと落ちて、だれも実は悪意でもない、きっとそういうことをおっしゃったんですね、今、ほとんど。  私はまずそういうことかなと思いますが、もう一つつけ加えることができるのならば、仮に一兆千二百十二億円という数字を立てたといたしましても、これ自身で債務超過であったかどうか、昨年の三月、当時の状況ででございますね。この話は、関係ない、大事な話だけれども関係ない。皆さんはそうおっしゃるけれども、これは関係ないという、そこまでわかりましたら、大体私はおっしゃっているようなことじゃないかと想像をいたします。細かいこと、自分でわからないものですから。
  241. 西川知雄

    ○西川(知)委員 総理ちょっと、おわかりにならなかったら、私ちょっと違うこと聞きますから。  ということは、何が重要かといいますと、だれが悪いとか、そんなことを私は言っているんじゃないわけですよ。要するに、大蔵省は今までは、大蔵大臣がおっしゃったように、引き当てについては大蔵省がやるものでもない、これは公認会計士協会、公認会計士、これがやるものだ、そして、それを適用して信用しましょう、こういうことでずっと大蔵検査は進んできたわけです。  ところが、それではまずい。というのは、十年の四月に早期是正措置、これが導入されたということで、これは、何%の自己資本率だということを計算するときに具体的な償却とか引き当てが非常に重要になってくるということで、個々具体的に引き当ての適切性ということを検査しないといけないということになったんです。  私はこれが悪いとは何にも言っていないんです。柳沢国務大臣もいらっしゃるように、私もこの委員会かどこかの委員会で、引き当てガイドラインというものを早くつくってください、そしてそれを公表してください、各項目つくって公表しなさい、そういうふうに言った。そして、この間ガイドラインを出してもらった。私はこれは非常に結構なことだというふうに思うんです。  ただ、それが、今申し上げたように、今までの実務と違ってきたんです。そして、正式に日債銀が、こういうふうに金融監督庁の検査でも個別具体的な償却、引き当てというものが必要なんだな、また、そしてそれを大蔵省、金融監督庁が見るんだなということが明らかになったのは、正式には平成十年の十一月十六日が最初なんですよね。ですから、平成九年の四月に日債銀の支援を頼んだ。大丈夫ですよ、損はさせませんよ、いい投資ですよとまで言った人もいた。そういう銀行に対して、そのときに、分類とか償却とか引き当ては、分類については二分類でやっていた。それを見て、いいですよと言った。また、償却、引き当てもその四千億円部分については何にもやっていない。やっていないのに、いい銀行ですよと言って投資をさせた。  そして、今度日債銀が公的管理になるときは、そうじゃないんだ、いやいや、よく考えてみれば、十年の三月三十一日現在において、自己査定を査定するときに、当局の査定をするときには、これは二分類じゃなくて三分類だ、引き当ても、個別でやるから、あなたの引き当ては間違っていると言って方針を、大方針を転換したんです。大方針を転換するのは、それはいい方向に行っているときには結論はいい。ところが、その過程が問題なんです。  総理、御存じのように、法律を適用するときに、法律の場合ですよ、法律を適用する場合に、法律は前の事実について遡及して適用するということは、原則としてよっぽどのことがない限り禁止されているんですね。遡及効というものは基本的にはないんです。  ところで、これは今は法律はないですけれども、金融機関が債務超過かどうか、また日債銀が実質的に破綻しているかどうか、そういうふうな重大な認定に直接関係することですよ。そして、それによって金融不安が起きたり取引先がやはりその権利義務に関係してきたり、また、従業員の生活、権利義務関係、一発で変わってくるわけですよ。その検査の基準、分類、引き当て、これが今までのやり方であればオーケーだったのに、違うように変わったことによってこれは生活破綻までいく。すなわち権利義務に大きな影響を与えているんです。  こんなことを、大蔵省また金融監督庁の指針、要するに、こういうふうに変わりますよと。そして、それを初めて日債銀がわかったのは、十年の十一月十六日に、十年の三月三十一日にやっていたことは間違っていましたと言っているわけです。ところが、三月五日と十日、その一週間か二週間前は、前のままでよろしいよと言っていたんだから、当然作業中の人は、ああ前のままでいいんだなと思ってやるのが普通なんですね。  ですから、こういうような重要なことをやはりまず、指針でやる、そういうようなこと、これは非常に問題だ。そして、まずこれを各金融機関に言っていたかどうか、十二分に説明していたかどうか、こういうことも私はよくわからないわけです。多分それはある程度はしていたでしょうけれども、正式にはそんなことはしていなかったはずです。  ですから、私がこれをさっき首相に聞こう、総理に聞こうと思ったのは、こういう国民生活の権利義務に関係するようなことを指針の形で変えるというようなことは、検査行政の一貫性、行政の不連続性をあらわしているんじゃないかというふうに私は思うんですが、その点についてまず大蔵大臣にお答え願って、総理にお答え願いたいと思います。
  242. 五味廣文

    ○五味政府委員 お時間がないところ恐縮でございますが、ただいまのお話には事実関係の誤認がございますので、その点御説明させていただきます。事実関係のみでございます。  まず、三月にあたかも検査をやって二分類としている自己査定を了解したということを日債銀側に通知をしているかのごときお話がございましたが、これはございません。事実と反します。  次に、資産査定、要するに、債務者区分を行い、回収の危険度に応じて債権分類を行う。これに使います指針といいますのは、「資産査定について」という表題がついておりますもので、平成九年三月に制定をされ、公表をされております。一貫してこの指針に基づいて査定を行っておりますので、平成十年の四月を境に資産査定についての方針の転換があったということはございません。  第三に、公認会計士協会の実務指針による引き当てでございます。これも十一月の十六日の通知の日をもって大転換があったというお話でございますが、そうではございません。この引き当ての実務指針と申しますのは、平成九年四月十五日に日本公認会計士協会から公表されております。そして、この実務指針の中にはっきりと、適用は、「平成九年四月一日以降開始する事業年度に係る監査から適用する。」と書いてあります。つまり、平成十年三月期から適用するということが一年前から予告をされておるわけでございます。  事実関係、以上でございます。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  243. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今政府委員が事実関係について間違いがあるということを言われまして……(西川(知)委員「それも間違いなんです」と呼ぶ)いや、お待ちください。これは、そうであるかそうでないか、お互いに知らないことなんですが、今、日債銀のケースというのは一種の、係争中という言葉ではないかもしれませんが、セツルしてないケースでございますね。  というのは、日債銀の株価算定委員会というものがこれからしなきゃならない。そういうことをしますときに、今のような事実があったかなかったか。西川委員はあったとお思いになるし、政府委員は違っておるところがございますと言っていますね。いいですね。今そのために言ったんですから。(西川(知)委員「違うんです」と呼ぶ)いや、どっちがいいと言っているんじゃないんです。そういうことがございますから、それは東郷頭取という人が悪意で物をやったかやらなかったかということに実は大変に関係をしていることでございまして、そのことは、また日債銀の株価を将来算定しなければならないときに、あるいは東郷氏についてのいろいろな調査というものは実はあり得ることでございますね。  そういうことまで考えますと、私は、西川委員の大体の大きな、うそ、本当じゃなくて、流れみたいなことは感じとしてわかるけれども、悪意があったか過失があったとかということをここで申しますと、将来に向かって非常に大きな影響がございますね。それは多分おわかりいただけると思うから、そこのところでこれはおいておいていただきませんと、国会の御審議は御審議といたしまして、という感じが私はいたしております。
  244. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 公正な金融行政を行わなければならないということは、国民の強く要望いたしておることだろうと思っております。  日債銀問題につきましては、委員の御指摘は御指摘として十分お聞きをいたしておりましたが、この問題につきましてはかなりいろいろな角度からの検討が必要だ、こう思っております。したがいまして、この問題について、大変恐縮でございますけれども、私自身がこの個別の問題についての是非を論ずることは、この際避けさせていただければありがたいと思います。
  245. 西川知雄

    ○西川(知)委員 ちょっと時間がないので、皆さんにちゃんと御理解をしていただくためには時間が必要なのでございますが、私が申し上げているのは、五味検査部長が言われた事実の違いじゃなくて、要するに、公認会計士協会の実務指針というのも実は公認会計士協会と大蔵省とで一緒に集まってつくったのですね。そして、資産査定というのは分類についてだけ書いてあって、償却、引き当てについては要するに公認会計士協会の指針に従ってやりなさいと、そういうふうに書いてあるのですよ。それは、金融監督庁の事務ガイドラインというのが十年の六月八日に出ていますが、そこにもそう書いてあるのです。ところが、同じ引き当て、償却というものが二人がつくったところにちゃんと書いてあるのに、その公認会計士協会の会員である監査法人がそれに従って出した結論が、金融監督庁がそれに従って出した結論が百八十度違うということなんですよ。  これは、基準がちゃんとありますと言うけれども、基準というのは、必要額をちゃんと算定して、その必要額を償却、引き当てしなさいとしか書いていないのですよ。その必要額は一体何なのかということについて、方針の変換があったんじゃないかと、あったんですよ。すなわち、今までは公認会計士の言っていることが正しいというふうに一応考えて、そして、その人がゼロだと言えば、これは怪しいかもしれぬけれどもゼロだなということでやっていたのが、今度は、それじゃとんでもないということもあって、早期是正措置が導入されるということもあって、それが変わってきたわけですよ。ですから、それは私の言っていることが事実なんですよ。  私が申し上げたいのは、要するに、そういうあいまいな指針というものをつくって、そして、公認会計士協会の監査法人も専門家の集まりですよ。そして検査部もまた専門の集まりかもしれないけれども、二つの全く違う答えが出たときに、国民はどうやって判断すればいいんですか。そんな重要なことで、債務超過になって、実質破綻になって公的管理でお金をつぎ込む、そういうときに、果たしてつぎ込んでもいいかどうか、結論がその二つ全く違うところによって出ていたら、判断のしようがないんじゃないか。  ですから、真ん中で審判をする、その審判をするのは、多分内閣総理大臣がするのが一番いいのじゃないかと思うのですが、こういう問題を解決するためにはどういうふうにしたらいいのか、総理、御意見を聞かせてください。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 西川委員のおっしゃっていらっしゃることは私なりにわかるような気がいたしますが、結局、昨年ああいう制度を国会でつくっていただきまして、初めてこういう事態が法的にも救えるようになった。それまでは、まあいわば護送船団行政とかいうようなことで、今からいえばいろいろな、悪意ではないが、いろいろなことを一生懸命やってきたけれども、今の制度からいえばそれは甚だ整っていないことをやってまいったと思います。  ですが、全体としては、まあこれでかなりおかげで進歩をしたわけだと思いますので、この出来事はその間の二つの時期を貫いて流れた出来事なものですから、途中で確かにいろいろなことの変化があったじゃないか、前でいえば通るはずの話が後になって通らなくなっているみたいなことも私はきっとあっただろうと思います。それをおっしゃっていらっしゃるのですが、ですが、そこを公法がその後まで適用されるかということまでおっしゃると、それは少しきついかなといったあたりで、とにかくしかし、結論で申しますことは、新しい制度ができまして、前のようなことでなく、比較的画一的な検査もでき行政もできるようになったということは、我々がこういう一連の出来事から今学んでいることだというふうに私は思っております。
  247. 西川知雄

    ○西川(知)委員 最後に、終わりますが、そういう私が申し上げたことが非常に論点で重要なことであるということで、四つの書類と、そして東郷前日債銀の頭取の参考人の招致を求めます。  要求書類は、平成九年九月十一日の示達書で、三分類の取り扱いについての記述、すなわち、通常の三分類ではないというふうに書いてある部分。それから、平成十年十一月十六日の検査結果で、要追加償却、引き当て見込額とされた五千六百十五億円の算出根拠を証する書類。三番目に、日債銀と監督庁との間で見解の違いがございました。その両者の見解の相違をまとめた平成十年九月十六日付確認書。そして最後に、特別公的管理に際し、監督庁に日債銀が弁明書を提出しました。その中にいろいろなことを書いていますが、その日債銀の弁明書。この四つを要求し、参考人を東郷前日債銀頭取ということで委員長にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  248. 中山正暉

    中山委員長 理事会で協議をいたしたいと存じます。  これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  249. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党木島日出夫でございます。  日債銀への六百億円の公的資金投入問題について、私は、その中でも特に、昨九八年三月の金融危機管理審査委員会、いわゆる佐々波委員会の日債銀の資産状況に関する審査の問題について絞ってお聞きしたい。審査が本当に適正になされたか否か、この問題について絞ってお聞きしたいと思います。  昨九八年十月三十日に預金保険機構が出した金融危機管理審査委員会議事要旨によりますと、昨年三月、公的資金が投入されたわけですが、個々の金融機関についてどういう手順で審査がなされているか読み取れます。どういう手順かといいますと、個々の金融機関、申請の金融機関ごとに、まず最初に預金保険機構事務局による事前説明、そして次に大蔵大臣及び日銀総裁による事実関係の精査報告、そして三番目に各金融機関の代表者、頭取などでありますが、からの直接ヒアリング、そして四番目に、最後に審査委員会の審議を経て議決がされているわけでございます。  そこで、早速、最初の手順、事務局による事前説明にかかわる問題についてお伺いいたします。  審査委員会事務局は、ここでも大問題になりましたが、九七年九月のいわゆる大蔵省が行った日債銀に対する検査結果報告並びにそれに対する示達、御案内のように、三分類は一兆一千二百十二億円、四分類が千二百七十七億円という示達書でありますが、それがあったという事実を審査委員会事務局は知っていたんでしょうか、知らなかったんでしょうか。昨年三月の審査の時点の認識をまずお伺いしたいと思うのです。
  250. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  私も審査委員六人のうちの一人でございました。その限りで知っている状況を申し上げますが、事務局が予備ヒアリングでとりましたのは、先生も御案内だと思いますが、申請書類と健全性確保計画とそれから非公表を前提とした自己査定の数値、これでございます。これによって十年三月期の財務状態を調べようということでありますので、その資料だけを取り寄せて審査を始めました。
  251. 木島日出夫

    ○木島委員 そんなことは全然聞いていないのです。昨年三月、あなた方が審査をしたその時点の審査委員会事務局としての認識を問うているのです。  審査委員会事務局は昨年三月の時点で、九七年九月に大蔵検査があって示達があった、三分類が一兆一千二百十二億円だった、四分類が千二百七十七億円だった、そういう示達がなされた、検査結果があって示達があった、そういう事実は認識していたのか、知っていたのか知らなかったのか。それだけを聞いているんですよ。余計なことは全然聞いていません。率直に答えていただきたい。
  252. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  私、直接の事務局ではございませんけれども、審査委員として、しかも事務局を預かっている預金保険機構の理事長として知っている限りでは、とにかく我々の中心が十年三月期でございましたから、余りそう関心がなかったといいますか、事実の調べは後に大蔵省と日銀にお願いをすることもございますので、そこで検査の状況を織り込んだ精査が行われますから、当面は、出されてきた十年三月期の計数を中心に物事を考えていたということでございます。
  253. 木島日出夫

    ○木島委員 質問に答えていないんですよ。どこに関心があったかなんか私は聞いていないんですよ。そんなことを聞いていないんですよ。  審査委員会事務局は、九七年の大蔵検査結果があった、示達がなされた、その事実を知っていたのか知っていなかったのか聞いているんですよ。一番肝心なところですよ。ほかに何に関心があったかなんて聞いていないですよ。そこだけずばりと答えてほしい。こんなところで時間を使ってはいかぬ。
  254. 松田昇

    松田参考人 私、事務局そのものではありませんから、事務局の何人がそれを知っていたか知らなかったか、定かではありません。それはありません。
  255. 木島日出夫

    ○木島委員 では、委員長であるあなたは、松田さん自身は知っていたんですか。去年の三月時点で、九七年九月の示達があったこと、その中身、知っていたんですか、知らなかったんですか。
  256. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  私、一昨年ですか、九月の内容については、先ほど申しましたように関心がありませんでしたので、そこに集中していませんでしたので存じ上げておりません。内容については知りません。
  257. 木島日出夫

    ○木島委員 非常に重大な事実ですね。知らなかった、関心がなかった。では、いつ知ったんですか。九七年九月に大蔵検査の報告があって示達があったということをいつ知ったんですか。
  258. 松田昇

    松田参考人 ごく最近であります。
  259. 木島日出夫

    ○木島委員 いつですか。
  260. 松田昇

    松田参考人 多分、特別公的管理銀行になったときの数値を見まして、それでそれより前にもそういう検査があったんだろうということで話しました。
  261. 木島日出夫

    ○木島委員 では、昨年の十二月ごろということですか。
  262. 松田昇

    松田参考人 大体そのころだったと思います。
  263. 木島日出夫

    ○木島委員 非常に重大なことをあなたは答弁されました。  九七年四月一日に日債銀は、もうやっていけない、このままじゃやっていけない、破綻だと言って白旗を掲げて大蔵省と日銀の支援を求めて、三千数百億円の奉加帳による資金を求めたわけですよ、関連ノンバンク三社に対する自己破産も出して。そして九七年四月十六日、三塚大蔵大臣の当時でありますが、公然と公開検査に入っていったんですよ。もうマスコミは大騒ぎしました。  こういう日債銀の状況、奉加帳による公的資金が必要だ、日銀の金も必要だ、これは検査しなきゃいかぬ。三塚大蔵大臣が九七年四月十六日、もう大騒ぎをして、公然と日債銀に検査に入るんだと表明して検査に入っていったんですよ。そんな事実知らなかったですか、松田さん。
  264. 松田昇

    松田参考人 詳しいことは存じておりません。
  265. 木島日出夫

    ○木島委員 あなたは、審査委員として日債銀の資産がいかなる状況にあるか審査をして、健全な大丈夫な銀行なら公的資金を入れていい、不良資産がたくさんあって危ない銀行なら公的資金を入れてはいかぬ、そういう六人の委員の大事な一人だったんです。  そういう大事な立場にある審査委員のあなたが、九七年四月に日債銀が白旗掲げて、奉加帳を回さなければやっていけないんだ、頼むと大蔵省と日銀に頼んだ、日本生命、興銀に頼んだ。それで、そういうところに日銀の金を入れていいかどうか、そういうのを確認するために大蔵大臣が検査に入ったんですよ。大蔵省が公開検査に入ったんですよ。だから、非常に大事なことが前の年に実はあった。そうすると、検査があれば結果があるはずだと。そういう委員であるあなたが全然そういうことに関心すら持たなかったんでしょうか、私は不思議でしようがない。
  266. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  審査の仕組みがちょっと先生の思っておられる構図とは違うわけでございます。  私どもは十年三月期に、自己資本を充実させて金融機関のシステムの信頼を回復させるという緊急措置で、急いで審査会をつくって審査を始めたわけでございますから、そのときは十年三月期の、自己査定であれば見込み値を出してもらって、その数値の信憑性を大蔵省と日本銀行にチェックしてもらって、その結果を受けてもう一度協議をして、頭取ヒアリングもして、その結果、債務超過ではない、審査基準一から五までパスするということで投入を決めたことでございます。  先ほど申し上げたことで若干誤解を招くとまずいのですが、もちろん日債銀がいろいろ問題がある銀行であるということは当然知っていますし、飛ばしの記事が当時出ておりましたので、もちろんそういうことは念頭に置いて審査委員六人とも審査をやっております。
  267. 木島日出夫

    ○木島委員 質問にずばりと答えてください。  それでは、昨年三月の審査に当たった時点で、いや私は、これで審査委員会事務局がそういう予備審査をしているから、そこから審査が始まっているから聞いているのですよ。そしてまた、あなたは今預金保険機構の委員長として、ただ、去年の三月時点では六人の委員の大事な一員として参加しているから聞いているのですよ。  では、次の質問。  昨年三月時点で審査委員会事務局は、予備審査に当たった事務局は、大蔵省に対して直近の日債銀に対する検査の有無それから内容、照会をしていますか、していませんか。
  268. 松田昇

    松田参考人 ちょっと突然の事実関係のお尋ねなので自信はありませんが、多分それはしていないのではないかなと思います。  検査結果をなぜ我々はとらなかったかと申しますと、当時は一斉検査がなかったんですね。そうしますと、十年三月期の自己資本を査定する材料として、もちろん検査資料は大事ですよ。大事ですが、各申請行二十一行、区々ばらばらなんですよ。しかも古いところがあるわけですよ。そうであるならば、それよりも第一に、出させてもらった自己査定とか経営健全性確保計画の計数を、現に検査や考査をやっておられる省庁の専門家に見てもらって、その結果を、それぞれのメンバーである大蔵大臣や日銀総裁からチェックの結果を教えていただいて討議をしていこう、こういう仕組みであったわけでありますから、そういうことであります。
  269. 木島日出夫

    ○木島委員 あなたは、昨年三月の段階で、審査委員会事務局は大蔵省に対して日債銀に対する直近の検査結果の有無、内容について照会していなかったのではないかとお答えになりました。これは非常に重大な答弁だと思う。要するに、照会していない。  基本的な基礎資料でしょう、直近の大蔵検査の結果というのは。昨年三月時点の日債銀の客観的な資産状態、客観的な不良債権の状況、二分類が幾らか、三分類が幾らか、四分類が幾らか、そういう客観的な資料ですよ。日債銀の自己査定じゃないですよ。それは主観的ですから、主観ですから。そういう日債銀の自己査定という主観じゃなくて、客観的に、日債銀の昨年三月時点の不良債権がどうなのか、総資産に対してどのくらいあるのか、その不良債権はどういう種類のものなのか、三分類なのか四分類なのか。決定的な重要な事実、客観的な事実、それを本当に知ろうと思ったら、大蔵省に対して、直近の検査はしているんですか、それはいつなんですか、その検査結果はどうだったんですかと聞いて当たり前じゃないですか。何でそんな当たり前の、基礎的な事実を照会しなかったんでしょうか。関心が全然なかったといったらおかしいと思う。
  270. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  関心がないということではもちろんないわけでございますが、短期間の、五日間の間にその決意を、決めなきゃいけないときに、最も効率的でいい方法は何かということを考えたときに、それぞれの銀行が出してきているいろいろな計数について、十年三月末の計数について、それを、メンバーでもあり、検査や考査の実績と経験をお持ちの大蔵大臣と日銀総裁にチェックをお願いしたわけであります。そうしますと、チェックを受けられた大蔵大臣と日銀総裁は、当然検査や考査の結果をお持ちなんですから、それも踏まえられながら、なおかつ、そのとき急遽、相当数のラインシートを取り寄せたんですよ、現物を。そして、それを全部実地に、不眠不休で係官が見て、その結果を上げておられるのです。  これは私は当時としては最善の方法であったろうと思います。
  271. 木島日出夫

    ○木島委員 それじゃ、何ですか、あなたは、短期間じゃなくて、もうちょっと時間がたっぷり、余裕があれば、前の年の大蔵検査の結果、示達書なども取り寄せて審査したでしょうという意味ですか。では、検査結果、時間が短くて、そういう前の年にせっかく大蔵省が検査しているのを取り寄せなかったのを、手抜かりだった、そうおっしゃるんですか。
  272. 松田昇

    松田参考人 先ほど申し上げましたように、検査結果はそれぞれ区々に分かれているわけですね、銀行によって。それで、我々が、各申請行が出してきた十年三月末の数値を、そのチェックをお願いしたわけでありますから、その中でそれぞれ、直近の検査結果をお持ちの大蔵省、直近の考査結果をお持ちの日本銀行、それぞれ係官がラインシートを見ながら精査をされたわけです。その結果を我々審査会に御報告になったわけでありますから、一生懸命やったと思っております。
  273. 木島日出夫

    ○木島委員 あなたはさっきも、自分たちが関心があったのは九八年三月末見込みの段階での日債銀の資産状況なんだとおっしゃいましたね。時間がないので古いものは、そこまで関心がなかった、それで、せっかくその前年の大蔵検査結果があるのに、照会もしなかったし、知らなかったし、関心もなかったと。私はとんでもないと思うんですね。  あなたは、古い古いと何度も言いましたよ、今までのこの委員会で。去年の三月末の日債銀の不良債権の状況、それがどうかという審査をするときに、確かにその前の年の九七年の三月、四月の時点の数字、一年前だから古いかもしらぬです。古いかもしらぬけれども、私は、一年たったからといって全然古くなっていないということを言ってみたいと思うんです。  というのはなぜかというと、数字がはっきりしているんですよ。九七年四月十五日基準日の大蔵検査の結果、示達が九七年九月十一日。いいですか。三分類が一兆千二百十二億円ですよ。四分類が五百八十九億円ですよ。そして、九八年三月三十一日現在、去年のちょうど審査した時点の、それを基準日とする検査結果、明らかになったのは九八年十一月十六日です。そのときの三分類が一兆三千百十億円ですよ。四分類が千二百七十七億円ですよ。この数字、頭へ入れてください。  この委員会でも再三、おととしの段階での日債銀の不良債権、三分類は七千億円だとか、きょうも答弁ありましたよね、五千億円ぐらいだとか。そんな数字じゃないんですよ。一昨年四月の基準日の三分類の金額と昨年三月三十一日時点の三分類の金額が、ほとんど一致しているんです。一兆一千億円から一兆三千億円。四分類も、五百八十九億円から千二百七十七億円、ふえているんですよ。  私は、二つの点で全然古くない。というのは、ほとんど金額が一致しているということと、ふえている。ふえているということは、客観的な不良債権の額ですよ、これ。大蔵省認定にかかわる額ですよ。客観的な額ですよ。自己査定じゃないという意味ですよ。三分類がふえているということは、これは全然古くないという意味でしょう。意味、わかるでしょう。もし、九七年の検査による結果がもっと大きな数字で、急速に減ったんなら、古いから、昨年三月の日債銀の資産状況を審査、認定するのには役に立たないかもしらぬ。しかし、ふえているんですからね。むしろ小さいんですからね、一昨年の四月十五日を基準日とする大蔵省がやった公開検査。それが少ない、小さい数字が出ているんですから。  そして、その数字を見ただけで、これは大変だ。一兆一千二百億円が第三分類、五百八十九億円が第四分類だったら、六〇%ぐらい、昨年監督庁は引き当てさせたようですね。四分類は一〇〇%引き当てさせて計算しました。そうしたら、間違いなくそれだけで債務超過、そして、公的管理に落とし込んだわけでしょう。  どうですか、ちっとも古くないじゃないですか。去年の審査の段階でおととしのこの示達の数字がわかっていれば、あなたが関心を持って大蔵省から取り寄せていれば、とてもじゃないけれども、この銀行に公的資金を入れたら危ない、破綻して返ってこないかもしらぬと常識的に思うんじゃないですか。だから、あなた、古いというのは全然理屈に合わないと思いますが、どうですか、何か言いたいことがあったら。
  274. 松田昇

    松田参考人 先ほどから申し上げておりますように、審査の仕組みが、十年三月期を中心にやったわけでございまして、チェックは大蔵省と日本銀行に頼んでいるわけでございます。大蔵省、日本銀行は、もちろん検査結果は十分御承知の上でありましょう、考査結果をお持ちでしょう、その上で総合的に判断した結果を、この申請した数字はいいでしょうかということをお願いしたわけでありますから、その結果を聞いて、なおかつ我々は、いろいろな問題がある銀行だと知っていましたから、審議を、ヒアリングもやりましたし、それから慎重な討議もした上で、債務超過でない、審査基準はパスできる、こういうことで導入を決めた、こういう経過でございます。
  275. 木島日出夫

    ○木島委員 それで、では次に大蔵大臣はどうだったかについて聞きましょう、大事なところで。  今松永大蔵大臣ではありませんので、松永大蔵大臣の認識が非常に大事だ。そこで聞きます。当時、大蔵省を代表する審査委員の一人です、松永大蔵大臣は。  そこで、大蔵省に聞きます。昨年三月、この審査に臨んだ時期において、大蔵省が九七年九月に日債銀に検査を行って結果が出た、示達もしていた、その事実について、大蔵省検査当局から松永大臣は報告を受けていたでしょうか、それとも受けていなかったでしょうか。はっきりと答えてください。
  276. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  昨年三月の資本注入のための審査委員会による審査の際には、今お話がありましたように、大蔵大臣が審査委員会のメンバーであったことから、大蔵省といたしましても、審査に十分に協力するという観点で、日債銀から提出されました健全性計画、それから自己査定の結果を行政として把握した資料や過去の検査結果等に照らして検討し、それを踏まえて、その正確性や適切性等についての審査委員会の審査に大蔵大臣が参加したものと承知いたしております。  そして、今お尋ねの九年の同行に対する検査結果そのものにつきましては、大蔵省から審査委員会には提出しておりませんが、同行から提出された健全性計画等の内容の適切性について、同行に対する過去の検査の結果等に基づいて確認を行い、これを踏まえて、大蔵大臣が審査委員会の審査に参加したものと承知しております。
  277. 木島日出夫

    ○木島委員 答えていない、全然。  去年の三月、松永大蔵大臣に対して、おととしの大蔵省の検査結果、示達書を報告したのかしないのか。それだけだよ、聞いているのは。全然、ろくなことを言っていない、答えていない。イエスかノーか。報告したんですか。松永さんは、事務当局からその一昨年九月の示達書、検査結果報告書をちゃんと報告を受けて、認識を持ってその審査委員会に臨んだんですか。それだけですよ、ポイントは。それだけですよ。
  278. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほど松田参考人からもお話がありましたが、審査委員会の任務というのは、当時日債銀から出された資料に基づいて、それが審査基準に適合するか否かを決定することでありまして、この点については、大蔵省の事務方から松永大臣に対しまして、日債銀が提出した資料について関連会社に対する自己査定が甘いのではないかとの報告を行い、大臣はその趣旨を確認すべく委員会において御発言されたものと承知しております。  こうした審査委員会の任務の性格から、一年前の検査の個々具体的な計数を大臣に御報告することはしていないと聞いております。
  279. 木島日出夫

    ○木島委員 いないと聞いていると、非常に重大なことがまた出てきました。  大蔵省みずからがやった検査でしょうが。前の年の九月に出た検査結果じゃないでしょうか。それで示達までしているじゃないですか、第三分類が一兆一千二百十二億円、第四分類もあったと。基準日は確かにその年の四月ですよ。しかし、さっき私が言ったように、数字は小さい数字が出たんだ。  こんな重要な最も基本的な資料、大蔵省みずからやった資料、大蔵省の銀行当局ですか検査当局ですか、何で自分の大臣に教えないんですか。そんなことを認識を持たずに、どうして大蔵大臣が、松永さんが去年の三月の時点でまともな意見を言えるんですか。それを言ってください。何でこんな事実を知らないで松永さんがまともな意見を吐けるんですか。言ってください。
  280. 日野正晴

    ○日野政府委員 検査結果というものと、それから審査委員会の審査の目的とは、その目的がもともと違っております。いわば次元が違いますので、審査委員会というのは、あくまでも日債銀が提出した健全性計画が果たして妥当であるかどうかということを審査するために存在するものでございますから、いかなる資料をそこにおいて用いるかということは、審査委員会に任されていることではないかと存じます。
  281. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁になっていない。  あなたは今、審査の対象は客観的な日債銀の不良債権の状況、資産状況じゃないとおっしゃった。日債銀から出された経営健全性の確保のための計画、それが正しいかどうかだとおっしゃった。私は全部これを読んでいますよ。こんなもの読んだって、客観的な日債銀の去年の三月の資産状況がどうか全然わからないですよ、こんなものは。勝手な作文ですからね。しかも、不良債権の額なんて書いていないですよ。公表ベース、それからディスクロージャー拡充後の数字。一分類、二分類、三分類、四分類、そういう大事な分類は全然書いていないですよ。ごまかしているんですよ。こんなものを見たって、全然、本当の日債銀の去年の三月の実態はわからない。本当にわかろうとしたら、一昨年の大蔵検査の結果が一番近い、客観的な資料だったわけですよね。  それを、いろいろ理屈をつけても大蔵大臣に教えなかった。宮澤さん、どうでしょう。自分の部下がやった、前の年の九月に明らかになった数字を、大蔵大臣は教えられていない、報告を受けていない、何にも知らされないまま審査委員会に臨んだ。どう思いますか。  宮澤さんは、私の、この前二月一日の質問に対して、去年の三月の審査はまともだったようなことを言っていますね。こんなものでまともな審査になったと思いますか。大蔵大臣の認識を問うているんですよ、今。宮澤さんの御意見をお聞かせ願いたい。もしあなたが去年の審査委員だったら、松永さんの立場にあったら、どうでしょう。半年前ですよ、わずか。一昨年九月に大蔵省がつかんだ数字を知らされないまま審査委員会に臨んで意見を言った。どう思いますか、大蔵大臣。
  282. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほども申し上げましたけれども、大蔵大臣に対しまして、大蔵省の事務方から、日債銀が提出した資料について、関連会社に対する自己査定が甘いのではないかとの報告を行いまして、大臣は、その趣旨を確認すべく委員会において御発言されたものと承知しております。
  283. 木島日出夫

    ○木島委員 私、二月一日のとき再三詰めましたよ。日債銀が、自分が出してきた自己査定が甘い。確かに甘かったんです、受け皿会社に対するものはみんな二分類にしましたからね。  それで私は、昨年十二月三十一日の読売新聞の記事なども明らかにして、全部自分がつくったダミー会社、それに対して不良債権を全部ほうり込んで隠した、飛ばした。そして、それをみんな三分類じゃなくて二分類にしていたというのが暴露されて、それを二分類にしていたから甘いと。しかし、その甘さを追及していたのが、実は一昨年九月の大蔵検査の結果だったんですよ、そうでしょう。  そこで、大蔵省は示達して、あんたの第三分類、日債銀の第三分類は一兆一千二百十二億円じゃないですかと詰めた。しかし、日債銀は、おれたちは違う、第三分類は七千億円ぐらいしかないと言い切って、け飛ばしたわけでしょう、大蔵省の示達を。そこまで私の質問で明らかになったわけでしょう、前回。甘いという指摘をされた。その甘いかどうかをまさに証明する大事な資料が、前の年の九月、九七年九月の大蔵検査結果報告書だった、示達書だったわけですよ。  そんなに決定的な文書が、自分の直属の上司である大蔵大臣に知らせないで審査がやられたということ、それだけで、その一点で私はこの審査がいかに穴があいてずさんだったか証明できていると思うんですが、これは意味はわかるでしょう、総理大臣、大蔵大臣。どうですか。その一点だけでも、去年の三月の審査はずさんきわまりないものだったと言わざるを得ない。大蔵大臣、総理大臣、どうでしょうか、そう思いませんか。答弁してくださいよ。決定的に重要なことなんです、これは。答えてください。宮澤さん、答えてくださいよ。そんなことを知らされない大蔵大臣が意見を言えるのか。
  284. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時の事情を知りませんので判断できませんが、審査がいいかげんだったという結論に同意せよとおっしゃっても、それは同意できません。
  285. 木島日出夫

    ○木島委員 総理大臣、どうですか。どう思いますか。
  286. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 同じ答弁になると思います。
  287. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、本当に私は、今の答弁を聞いて、審査委員の大事な六人のうちの二人、大蔵大臣、松田さん、一番その情報にアクセスできる人、近い人、それが知らない。松田さんなんか、関心もなかった。こんなずさんな審査ってあるでしょうか。  では、もう一人の大事な人は日銀総裁なんですね。去年の六人の審査委員のうち大事なもう一人、情報に一番近い人は、次は日銀総裁。というのは、あとの三人はアクセスできないんですよ。日弁連会長にしろ経団連の会長にしろ佐々波さんにしろ、アクセスできない。アクセスできる人がそんな状況でしょう、二人が。  では三番目、日銀総裁に聞きましょう。  日銀総裁は、残念ながら速水さんじゃありませんでした、松下康雄さんでした。果たして、昨年の三月、日銀松下総裁がこの審査委員会に六人の委員の一人として臨むに当たって、日銀松下総裁は、九七年九月の大蔵検査結果報告書、示達書、三分類が一兆一千二百十二億円であったという事実、四分類が五百八十九億円であったという事実は知らされた上で審査委員会に臨んだんでしょうか、そんなことは全く知らされないまま一審査委員としてこの審査委員会に臨んだんでしょうか。記録が残っているはずでありますから、速水総裁に、前総裁の認識についてお伺いしたいと思います。
  288. 速水優

    ○速水参考人 記録は残っておりませんが、日本銀行としては、大蔵省検査による三分類の金額は当時約七千億という認識で出ておられるはずです。日債銀の自己査定もそれと同様な計数でございましたから、特段の疑問は持たれなかったのではないかというふうに思います。  日本銀行は、御承知のように三月五日から十日まで、日債銀から出ました自己査定の資料を五日間かかって、非常にベテランの、専門知識を持った職員が分析をしております。同行から出されました経営の健全性の確保のための計画の内容の適切性、それから自己査定結果の正確性等について、ラインシートを精査する等の方法によって可能な限りチェックを行ったはずでございます。その記録は残っております。私どもとしては、その時点から同行が債務超過であるという認識はしておりませんでした。  それで、松下総裁も、そのような調査確認をもとに審査委員会で発言されたと思われますことは、佐々波委員会の議事録の要旨が公開されておりますが、その中に、    申請内容の事実関係については、各金融機関とも特段の誤りは認められなかった。    自己査定については、一部の金融機関ではやや甘いのではないかと思われた。   各金融機関の申請書類の審査に当たって「特に留意すべき事項」として次のような点を挙げた。    不良資産処理の方針、進捗状況    資産内容の改善策    有価証券の含み損を抱えている金融機関に対しその状況と今後の対応方針    自己査定が甘いと思われる金融機関に対しリスク管理体制の強化に関する考え方    具体的なリストラ策    役職員の倫理等に係る具体的な対応    今後の海外の業務展開方針とアジア経済混乱の影響 これらのことを、まだほかにございますけれども、指摘をしておることは記録に残っております。  同時に、御承知のように、八日と九日の二日にわたって、十四行の申請を出しておられるところの頭取方が来られて実態の説明をされておられるはずですが、そういう中でどの数字が出たかということは、私どもの記録に残っておりませんけれども、最初に申し上げましたように、第三分類は七千億ということで松下総裁は会議に臨まれ、こういう感想をお述べになったというふうに私は理解します。
  289. 木島日出夫

    ○木島委員 どうも本委員会で再三、他の同僚委員からも質問されて速水総裁がお答えになっているのは、今述べられたとおりです。  松下日銀総裁は、昨年三月、日債銀の第三分類が七千億円だという認識で臨まれた、そう言われていたというわけですね、日債銀から。  では聞きましょう。昨年三月に、松下日銀総裁の認識の中に、実は一昨年四月の十六日でしたか、日債銀の破綻が表に出て奉加帳を回した時期、大蔵省が公開検査に入った、さっき私が言った話。そして、その結果が九月に出た、示達もあった、回答もあった、不満の回答だったようです。そういう一昨年の四月に大蔵が検査に入っていたということ、そしてその結果が九月に出たらしいということ、中身はともかく、そういう外形的な事実は非常に関心があり、松下日銀総裁は当然知っていたと思うのですが、その認識、どうだったかわかりますか。
  290. 速水優

    ○速水参考人 一昨年の四月一日に日債銀が経営再建策を発表したわけですが、それと同時に、私どもの方の基金への、幾らここへ入れるかという、最高限度八百億という許可も、そのときに出ております。  その検査の結果につきましては、中間報告を大蔵省からいただいておりまして、口頭の説明ですけれども、債務超過ではないという報告を五月の中ごろにいただいております。  なお、九月には検査が終わって、日債銀の東郷頭取から検査報告があり、そのときも、恐らく第三分類は約七千億という報告ではなかったかと思います。
  291. 木島日出夫

    ○木島委員 今、非常に重要なことをお答えになりました。  九七年五月中ごろ、日銀は大蔵省から日債銀検査にかかわる中間報告をいただいていたとおっしゃられました。非常に重要な事実だと思うのです。中間報告をもらえたくらいですから、では大蔵省から日銀は日債銀に対する検査の最終報告書をいただいて当然ですね、中間報告をもらっていたんですから。中間報告というのは中くらいの報告ですから、最終報告をもらって当たり前。もらいましたか。
  292. 速水優

    ○速水参考人 先ほど申し上げましたように、中間報告は電話で、債務超過ではないということを伺っただけだというふうに聞いております。  それから、九月の検査結果につきましては、日債銀の東郷頭取から御説明があったということを聞いております。
  293. 木島日出夫

    ○木島委員 では、確認しますが、中間報告は五月ごろ電話で大蔵省から受けた。しかし、最終報告は九月、大蔵省から受けなかった、日債銀から受けた、そういうことでいいですね。確認だけ。
  294. 速水優

    ○速水参考人 そのとおりでございます。
  295. 木島日出夫

    ○木島委員 では、大蔵省に聞きましょう。  何で大蔵省は、五月に中間報告七千億円なんていいかげんな数字のみを日銀に報告して、肝心かなめの九月の最終結果報告、第三分類一兆一千二百十二億円を日銀に報告しなかったのですか。中間報告だけを報告して、最終結果を何で報告しなかったのですか。これは事実ですか、大蔵省。今の日銀総裁の答弁、事実ですか。事実だったら大問題ですよ、これは。
  296. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  大蔵省と日銀の担当部局は日ごろから連絡をとっておるわけで、ちょうど今、日銀総裁が答えられた話は、当該銀行が出資要請先に説明を開始した日でございますので、その認識の確認を担当者間で行ったということでございます。  いま一つ、検査結果の方は、あくまで示達先に検査結果を示達するということだと思います。
  297. 木島日出夫

    ○木島委員 全然だめですよ。中間報告の数字を日銀に教えているのでしょう、七千億と電話で。中間報告の数字を教えて、何で最終報告の一兆一千二百億円という数字を教えないのですか。私は、日銀総裁は昨年三月の時点で、二つの意味で日債銀の本当の資産状態、不良債権の状態に関心を持っていたと思うのです。  それは、一つは、何といったって日銀はその前の年に八百億円の金をつぎ込んでしまっているのですからね。この金が返ってくるかこないか、決定的ですから、日債銀の資産状況は物すごい関心を持ったはず。  そしてもう一つは、日銀総裁は六人の審査委員の一員として選ばれて、国会で選ばれたのでしょうか、大事な六人の一人として審査にあずかったわけですね。そういう二つの顔を持つ日銀松下総裁は、日債銀の本当の資産状態について、ある意味では、私は、大蔵大臣や松田さんよりも鋭い関心を持ってしかるべきだった。その日銀総裁が、今御答弁が出たように、かりそめにも、大蔵省から前の年の九月の最終報告書、これを見れば、日銀総裁が見れば、部下に審査させれば、これはだめだ、これは引き当てを積んだら債務超過だとすぐわかる数字ですよ。そういうのを知らされていなかった、これが明らかになりました。  私は、六人の審査委員のうち、肝心の大蔵大臣、松田さん、そして日銀総裁、一番大事な資料を知らずに、盲目にされて、六百億円のゴーサインを押した。もうはっきりしたと思うんです。  さらに、しかし、もっとこの事実を解明しなければならぬ。これがどうだったかを解明なしに、私は、この三月にも投入されようとしている七兆円を超える公金投入は許せないと、それだけでも思うわけでして、再三要求しております全審査委員と東郷前頭取の証人喚問を要求して、質問を終わらせていただきます。
  298. 乾文男

    ○乾政府委員 お時間のないところ恐縮でございますが、事実関係のみお答えさせていただきます。  今の御指摘の中に……(発言する者あり)委員長からの御指名でございますので。今の御指摘の中に……(発言する者あり)
  299. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。
  300. 乾文男

    ○乾政府委員 今の御指摘の中に、当時の大蔵省が七千億という中間報告をしたということでございますけれども、何度もお答えしておりますように、検査結果というのは九月まで出ておりません。したがいまして、七千億という検査結果が出たこともございませんから、そのことを検査結果としてお話ししたことはございません。  それで、七千億という数字は、これも従来からお答えしておりますけれども、当時、日債銀が日債銀自身で把握しておられた、感触として持っておられた数字を言っておられたわけでございまして、そのことについて日債銀はこういうふうに言っておりますねという意見交換をしたという、そういうことでございます。
  301. 木島日出夫

    ○木島委員 じゃ、最後に、今の段階でも、日銀総裁の答弁と大蔵省の答弁、決定的に食い違っちゃっている。これはもう食い違っているんですよ、二つの答弁が。これはもう真相解明は証人喚問以外ないとますますはっきりしたということを申し述べまして、終わります。(発言する者あり)
  302. 中山正暉

    中山委員長 速水日銀総裁。委員長として聞いておきたいものですから、御指名します。
  303. 速水優

    ○速水参考人 先ほどから中間報告のお話をしておられますけれども、中間報告は債務超過であるということだけでございます。金額は聞いておりません。そのことだけ。
  304. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、それは違いますよ。(速水参考人「さっき申したとおりです」と呼ぶ)今までは、第三分類が七千億円という答弁を何度もしているんですよ。
  305. 中山正暉

    中山委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。
  306. 速水優

    ○速水参考人 今、言い間違えました。  債務超過でないと。債務超過でないと。金額は聞いておりません。債務超過でないと。
  307. 中山正暉

    中山委員長 速記録を検討いたしまして、訂正いたします。  次に、濱田健一君。
  308. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 盛り上がってきたところで、時間をお譲りしてこのまま続けてもいいような気がしておりますけれども、私の持ち時間ですので、質問をさせていただきたいと思います。  まず、民間の信用調査機関の帝国データバンクが発表いたしました一月の倒産の状況ですけれども、負債総額は前年同月比九・八%ふえている、金額にして七千五百億程度でございますけれども、倒産件数は約三三・二%減という結果になっておりまして、九三年の一月以来、六年ぶりの低水準となったというふうな記事が出ております。  倒産件数が減ったのは、政府の貸し渋り対策による信用保証協会の中小企業向け特別保証制度が昨年の十月から実施されて、中小企業の資金繰りが一時的に緩和したためと見られているようでございますけれども、そういう状況の一つのデータの中で、中小企業の資金繰りが一段落したということから、これからの倒産の状況といいますか、一定程度、中小企業、運転資金等回り出して企業の体質の回復ということにつながっているのか。逆に、この倒産の急減は一時的なものであって、今後倒産が急増することも懸念されるというふうに言われているところでございますけれども、この辺の資金繰りの一段落したという状況を政府としてどのように認識しておられるのか、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  309. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは通産大臣からお答えをお願いすべきかと思いますが、承っておりますと、政府が昨年来講じましたいわゆる四十兆円という措置は、十二兆五千億円の承諾が、十二兆五千百億円と書いてございますが、保証承諾が二月五日現在で成約されておりまして、十三兆円に近づいているということを伺っております。  したがいまして、暮れからございました一種の逼塞状況というのは一遍ここで緩和されて、通産大臣のお話では、一月に入って申し込みの率は少しずつ下がっておるといいますか、ですから、一応、当面の需要にこたえることができたんではないかというのが通産大臣の御判断で、他方で、政府機関、中小系の政府機関、それから開銀も支援に立ちましたので、かれこれあわせまして、施策としては一応ニーズにこたえつつあるということと思いますけれども、だからといって、中小企業が息をついた、一息ついたとぐらいまでは申し上げてよろしいと思いますけれども、先が展開したと申し上げるのにはまだ早いのではないかと考えております。
  310. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今の政府の認識、確かにそのとおりだと思います。  次に、景気回復の前兆が取りざたされている現在でございますけれども、中小建設会社に対する下請いじめというものが激増しているということが、マスコミ等によって知らされているところでございます。  今月の十二、十三日には、永井孝信元労働大臣を中心とされます中小建設・資材産業協会というところが、ホットラインを開設して相談活動に乗り出されております。  昨年以来、金融機関の貸し渋りや強引な債権回収は、下請中小企業の経営を圧迫してまいりました。加えて、ゼネコン側も、工事代金の支払いをストップしたり、単価の引き下げを露骨に要求するなど、不利益を下請中小業者に押しつけるという横暴な行為を繰り返すようになっております。これらは、私たちの党の中にも、さまざまな中小の企業の組合を含めて悲鳴を上げているという状況が明らかになっております。  そういう中で、例えば建設業法の第十九条では、工事契約の際、当事者間で書面契約を交わすことを義務づけております。しかし、この第十九条には罰則が伴っていないので、空文化しているというふうにも言われておりますし、そのことが下請いじめということで、そこの原因が一つここにあると私は思っているところでございます。  公正取引委員会が製造業の不当取引の類型を定めているのに対して、建設業における不当取引禁止のガイドラインすらございません。法の改正を含めて、中小建設業における下請取引の適正化に向けた建設省及び公取の取り組み方、展望、これらを建設大臣と公正取引委員会にお尋ねをいたしたいと思います。
  311. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生の御指摘は、二つのポイントを指されていると思うわけでございます。  まず一つは、建設業法第十九条の違反があるわけでございますが、確かに、これは罰則規定がないものですから、うたい文句になっているところも正直のところあるわけでございます。  この元請下請取引の適正化につきましては、平成三年に策定されました建設産業における生産システム合理化指針等に基づき取り組んでいるところでございまして、適正な契約の締結や代金支払いの適正化について、各種会議等を通じ指導をいたしております。  そしてまた、昨年の十一月十九日には、元請下請関係の適正化を一層強力に進めるべく、建設業団体に対して通知を発出したところでございます。  具体的には、先生御指摘の書面による契約の締結、これが決められておるわけでございますが、これが安易に、例えば追加の工事などには、これをやっておいてくださいというようなことで文書でやっていなかった。そういうことで支払いが滞っておったなんという場合には、裁判にしましても弱い立場にあるわけでございますから、第十九条で決められております書面による契約の締結、このことはなお一層徹底していきたいと思っております。  それから、代金支払い期間の短縮、現金払いの促進、あるいは手形期間の短縮などを通知しておるところでございますが、今後、元請下請の方々がそういう被害に遭わないように努力をしていきたいと思っております。  それと、もう一つございますのが、元請のところまではお金が来ておるわけですけれども、その元請の方が倒産をしてしまって、下請のところにお金が来ないということで、下請の方がまた被害に遭っているという実例も、多々御相談に来られておるわけでございます。そういうようなところも、できる限りの支援をするべく、建設省も努力をいたしております。  ですから、おっしゃいますように、これは罰則規定をつくるというようなことになりますれば、またその方向で進めていかなければならないと思います。
  312. 根來泰周

    根來政府委員 お尋ねの点でございますけれども、私どもの方の所管といたしましては、不公正な取引方法ということに当たるわけでございますので、そういう案件について、被害者といいますか当事者から申告がありましたら、一般論といたしましては、それを受理して適正に処理するつもりでおります。  また、建設業法には、建設大臣等あるいは中小企業庁長官等からの審査の申し立てという制度がございますので、そういうルートからもまた受理することもありますし、また私ども職権でやることもあり得ると思います。そういうことについては厳正に対処するつもりでおります。  なお、その基準でございますけれども、この基準につきましては、昭和四十七年に建設業の下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準というのを当時の事務局長通達ということで出しておりまして、これにのっとって処理することに部内ではしております。
  313. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 チェックを強化するということも含めて、それでもこの問題というのは、こういう景気の悪いときにはどんどん一番下の方がしわ寄せをこうむるわけでございますので、法の改正も含めて検討していただきたいと思いますし、公取としては不正取引と、きちっと、取り締まる側としてはいい加減な調査をやらないということをお願いしておきたいというふうに思っておるところでございます。  次に行きます。  行革関係でございますけれども、中央省庁等改革に係る大綱ということが先般取りまとめられました。この中で、独立行政法人の制度を設けるに当たって、財政民主主義の観点等からの国の関与も必要最小限のものとするとしておられます。  社民党は、独立行政法人の制度設計は了といたしましたけれども、このことは財政民主主義の縮小を許容するものではないというふうに申し上げておきたいと思います。あくまでも国民的監視機能に立った制度設計が基本であるべきと考えておりますが、この点、総理、いかがでございましょうか。
  314. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 お答え申し上げます。  独立行政法人制度の基本的な考え方は、事前管理から事後評価へ移行することによりまして、自律的、弾力的な業務運営を可能とし、効率性や質の向上、透明性の確保を図ることをねらいといたしております。  このような考えに照らしまして、中央省庁等改革大綱におきましても、独立行政法人の財務、会計につきまして、できる限り自律性を尊重することといたしておりますが、財政民主主義の観点から、国から独立行政法人に対する所要の財源措置につきましては、各年度の国の予算に計上し、国会の審議を受け、議決を経ることとなります。さらに、徹底した業務の評価及び公表等を行うことによりまして、国民の監視のもとで法人の業務の適切な運営を確保することといたしております。
  315. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 その独立行政法人の業務の評価でございますが、そのために各府省と総務省に、総務省ができるわけでございますが、評価委員会が置かれることになっておりますね。総務省に置かれる評価委員会は、「独立行政法人の民営化・主要な業務の改廃等の勧告を(総務大臣を通じて)独立行政法人の所管大臣に行う。」こととされております。  まず、この勧告の性格はどういうものなんでしょうかということをお尋ねいたしたいと思います。どういうものになるのかということをお尋ねしたいと思います。  また、この評価委員会の機能から明らかなように、独立行政法人とは、将来の民営化、廃止の一里塚のように受け取られる可能性もございます。うまくいけば民営化、失敗したら廃止では、現場の職員の士気にもかかわると思いますけれども、この辺は、総務庁長官、いかがでしょうか。
  316. 太田誠一

    太田国務大臣 まず、先ほどの財政民主主義のお話がございまして、それは、言ってみれば、国費を投入する対象というのは国会での開かれた議論に供されなければならないという意味だと私は理解しておるんですけれども、そういう意味では、従来の国の一般の行政よりも、それぞれ区分をして、そして自己管理をする。そして、企業会計原則でディスクローズするわけでございますから、一層国民の目には見えやすくなってくるわけでございますので、独立法人化ということ自体が財政民主主義の考え方に一層近いものになるというふうに考えております。  そこで、評価委員会のことでございますけれども、総務省に設けられるものは、各省で独立行政法人に対する評価委員会を持ってもらうということが前提でございまして、その評価委員会がきちんと評価をしておるかどうかということをさらに評価するという役割を総務省に設けられる政府全体としての評価委員会は持つわけであります。  そして、何をもって評価をするかといえば、これはあくまでも国の使命として果たさなければいけないことを、従来の形態ではなくて、独立法人という形態でそのような使命を果たしていただくということでございますので、そこはまず目標管理をしっかりしなければいけない。どういう目標のためにこれはあるのかということに対して、どれだけ達成をしたのかということを常に評価されなければいけないということと、もう一つは効率性、どれだけ効率的に仕事をしていただいておるかということを機関ごとにチェックをするということになるわけでございます。  そこで、今、改廃のお話がございましたけれども、これは、私は、国が直接やっておる、つまり内閣が直接責任を持つ事業につきましても、時代の要請から外れて要らなくなったといえば、そこは撤退をしなければいけないわけでございますから、そこは、国の、政府の中に直接ある場合と独立法人化した場合と、本質的には違いはないと思います。  しかし、あくまでもこれは、効率性だけを求めているわけではなくて、行政目的、目標を達成した度合いというものを評価するわけでございますから、そこは民営化とは違うというふうに考えております。
  317. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 総務省に置かれる評価委員会と、ほかの各役所に置かれる評価委員会、そこで出てくる評価というものは、今考えられる範囲でいうと、どういう位置づけになる、上下の関係とかそういうのはどうなっているんですか。
  318. 太田誠一

    太田国務大臣 上下の関係ということではありませんけれども、直接的には、それぞれの省庁において各大臣が独立行政法人を評価する、あるいは監督するということになるわけでございますが、それが適正に行われているかどうかというものをさらにもう一段設けて評価をするということでございますから、各省に対する勧告というふうなことになってこようかと思います。  今の総務庁の仕事でいいますと、行政監察局がやっております行政監察の結果、こういうことをすべきだという勧告を今でもいたしておりますので、それは、上下関係というよりも、役割分担としてそういう監察という役割を総務庁が担っておるということでございますから、同様にして、今度は、評価という役割を総務省が担うことになるわけでございます。
  319. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 大綱を読んでみますと、人事院の関与のあり方や省庁からの天下りの規制等も明らかではないと私は感じました。そういう観点からいって、各役所から独立行政法人を経由すれば、省庁と関係を有する民間企業への天下り、今、ある程度の歯どめをしておりますけれども、そういうことも許容されるのか、許されるようになるのか、その辺はいかがでしょう。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕
  320. 太田誠一

    太田国務大臣 今のお尋ねの件は、国家公務員であった者が民間の営利企業に再就職をするという場合には、当初二年間は制限がございますから、独立行政法人に一たん入ったとして、独立行政法人で二年間たたないうちに営利企業に再就職をするとすれば、同様の制限がかかるということでございます。ですから、そこは、その二年間を何もしないで御自宅で過ごすのか、あるいは独立行政法人で何かお仕事をされた後に行くかという違いであって、二年間の制約については同じことだと思います。
  321. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がありませんので、あと一点だけ。  同じく独立行政法人の件ですが、これについては、「職員団体等、各方面の十分な理解を求めつつ行い、一方的な適用は行わない」という、九七年十二月二十六日、当時の自社さの三党確認があります。また、労働関係への配慮をうたう基本法の四十一条及び附帯決議の趣旨を十分尊重するべきであると私は考えているところでございます。  大綱を読みまして、確かに「労働関係への配慮」という言葉があります。「それぞれの独立行政法人に行わせる業務及びその職員の身分等を決定するに当たっては、これまで維持されてきた良好な労働関係に配慮する」というふうにされております。しかしながら、実際に制度設計をするのは中央省庁等改革推進本部でありまして、各省と話し合いをしてもらちが明かないことも多々あると聞いています。  そこで、推進本部としてはどのようにこの条項を受けとめているのか、きちんと対応していただきたいと考えますが、いかがでございましょうか。
  322. 太田誠一

    太田国務大臣 特に、今国家公務員でおられる労働界の方々と十分に理解を深め合っていく努力をどのぐらいしているかという御質問だろうと思います。  例えば、私自身は、この七カ月の間に八回、そのような会合を持たせていただきました。それからまた、中央省庁等改革推進本部全体では、さまざまな形でございますけれども、百八回会合を持たせていただいております。それをどう見るか。少ないと見るか、それともよくやったと言っていただくのか、そこは御判断の問題でございます。  四十一条の精神については、十分に踏まえて対応をいたしていきたいと思っております。
  323. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今の御答弁、確かに、いろいろなところから聞こえてくるのはプラスの評価とマイナスの評価がございますけれども、御努力だけは当然これからも続けていただくということを申し添えて、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  324. 臼井日出男

    ○臼井委員長代理 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、行革経済対策等についての集中審議は終了いたしました。  次に、昨日に引き続き、安保・外交問題についての集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木陸海君。
  325. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 周辺事態におきましては、米軍が武力行使をしており、後方地域支援などで日本がこれを支援する、こういうケースが想定されているわけであります。  そこで、そういう場合の米軍の武力行使の性格について、基本的な点をお伺いしたいと思います。  総理は、このことに関して、これまでの答弁でこういうふうに言っています。米国は、国連憲章によって国際法上違法な武力行使を行わない義務を負っている。同盟国として、これを遵守することを確信している。あるいは、国連憲章のもと違法な武力行使を慎む義務を負っている同盟国たる米国が違法な武力行使を行うことは、そもそも想定していないというふうに述べてこられました。  そこで、総理に確認をしたいのですが、周辺事態において米軍が行う武力行使というものは、違法なものはあり得ないという意味ですね。間違いありませんね。
  326. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 おっしゃるとおりでございます。
  327. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それでは、お伺いします。  今引用しましたように、国連憲章のもとで違法な武力行使を慎む義務を負っているというふうに総理ははっきり述べられておるわけですが、国連憲章は、御承知のとおり、一般的にすべての武力行使を禁止しているわけであります。そして、その憲章のもとで武力行使が違法でないと認められる場合というのは極めて限られておりまして、国連自身が決定した武力行使を行う場合、これは当然ですが、それ以外ということになりますと、憲章五十一条の、武力攻撃があった場合のこれに対する集団的、個別的自衛権の発動としての自衛反撃以外にないわけであります。  したがって、国連憲章のもとでの合法的な武力行使というのは憲章五十一条の自衛反撃以外にない、それ以外の武力行使は米軍はやらないし、やっても支援しない、こう確信しているという意味を確認してよろしいですか、総理
  328. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今、国連憲章五十一条のお話がありましたが、国連憲章第二条四項、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と定めておりますが、ただし、ある国が自衛権の行使として武力の行使を行う場合や、国連憲章第七章のもとでの国連安保理の決定に基づき加盟国がその国際関係において武力を行使する場合には、これは違法とされない場合がある、こういうことでございます。
  329. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 端的にお答え願いたいと思うんですが、要するに、安保理が決定した武力行使と五十一条の自衛反撃以外にない、そういうことでしょう。
  330. 高村正彦

    高村国務大臣 基本的に総理がお答えしたとおりでありますが、武力攻撃に至らない武力の行使に対して必要最小限度の範囲で武力を行使することは一般国際法上認められており、国連憲章第五十一条はこれを排除するものではないと考えております。
  331. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、今の外務大臣の答弁は、五十一条以外の武力行使も米軍はあり得る、それを支援することもあり得るという意味ですか。
  332. 高村正彦

    高村国務大臣 一般国際法上認められている必要最小限度の範囲での武力を行使することに対して後方地域支援をすることは、排除するものではないということです。
  333. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それは極めて重大な答弁だと思いますよ。  今あなたが挙げた一般国際法上の自衛権、これを五十一条は排除するものではないというふうに言うんですが、それでは、そういう一般国際法上合法的とされるような武力行使、これを合法的だと肯定したあるいは確認した国連安保理あるいは国連総会、そういった決議等々がこれまでに存在していますか。
  334. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 質問の御趣旨を正しくとらえているかどうかわかりませんが、安保理事会に、ある国が報告をいたします場合、みずからが行った武力行使につきまして、これは自衛権の行使であるというような報告をすることが国連憲章上予定されているわけでございます。したがいまして、安保理事会が、ある国の行為をあえてそれが国連憲章に合致したものであるというようなことを安保理事会の立場から決定する、そういうことはないというふうに考えます。
  335. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 外務大臣が言われたような、五十一条以外の一般国際法で認められているというような武力行使というものは、これまで国連の中ではそういうものが合法的だとかなんとかということを認めるような文書はないわけですよ。しかも、そのあなたのおっしゃる武力行使というのは、いわゆるマイナー自衛権というものでしょう、そうですね。  これは、これまでの政府の答弁でも、五十一条で言うのは武力攻撃、これは計画的、組織的な、かなり大規模な武力行使ですね、五十一条は武力攻撃。そうではない軽微な、いわゆる権利侵害や武力行使がある場合に、必要最小限度の範囲内でそれにつり合った武力の行使が行われる、これは非常に軽微な場合、これはこれまでの政府答弁に、これは六〇年の四月の答弁ですが、こういう答弁もあります。  つまり、マイナーな自衛権。ほかの政府答弁でもマイナーケースの自衛権というようなことが言われているわけでありまして、これは本当に、例として挙げられているものは、国境での小競り合いとか公海上での船舶の奇襲だとか、相手側の軽微な、つまり計画的、組織的でない武力行使の、その現場でそれに反撃するために必要最小限として行使される自衛権として説明されているものですね。そうじゃありませんか。
  336. 高村正彦

    高村国務大臣 おおむね委員のおっしゃるとおりだと思いますが、私が申し上げたのは、そういう場合でも自衛権の行使は一般国際法上認められているということでありまして、実際問題として、周辺事態に該当する場合があるかどうかは別として、そういう場合が日本の平和と安全に重大な影響を与えるということがありとすれば、それは理念的に排除されないということを先ほど申し上げたわけであります。
  337. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それはとんでもない言い方だと思うのですがね。これはマイナーな自衛権なんですよ。  では、A国とB国、日本の周辺で、その国境で小競り合いがあったという場合に、そのマイナーな自衛権を、アメリカが集団的自衛権の行使としてそれに加わることができるんですか。つまり、このマイナー自衛権というのは、第三国がそうやって介入できるような、そんなことを認めている自衛権なんですか。
  338. 高村正彦

    高村国務大臣 一般国際法上認められている自衛権だということを申し上げております。
  339. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そんなこと、ごまかしたってだめですよ。個別的自衛権の範囲ですよ、これは。集団的自衛権が行使できるような、そんな自衛権じゃないですよ。マイナーなもの、国境での小競り合いみたいなものに何で第三国が加担できるかという問題があるわけですよ。第三国がこれに加担できるような、そんな解釈ありますか。
  340. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 正確なお答えになるかどうかちょっと自信がないのですが、ただいま委員の御指摘になられましたようなケース、これがどのようなケースを具体的に念頭に置いておられるのか、必ずしも明らかではないところでございまして、今おっしゃられましたような仮定のケースにつきまして、具体的な状況を離れてお答え申し上げるのは、ちょっと難しいのではないかという気がいたします。
  341. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 端的に答えてください。マイナーな自衛権に対して、集団的自衛権の行使なんてことがあり得るのかということですよ。国際的に認められていますか。
  342. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 ただいま申し上げましたように、マイナーな自衛権を行使する、これは、基本的には個別的自衛権ということで議論されていることが確かに多うございます。しかしながら、そのようなケースの場合に集団的な形で自衛権を行使できるかできないか、この点につきましては、国際法的には必ずしもよく議論されているところではございませんで、具体的なケースを離れまして、できる、できないということは申し上げにくいということでございます。
  343. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それもごまかしですよ。五十一条以外のそんなマイナーな自衛権は、国連憲章でも国連の文書でも、さっき言ったように、何か合法的に認められているわけでもないし、そして、このマイナーな自衛権、そういう自衛権の行使に第三国が加わるということは、国際司法裁判所のニカラグア判決などでは明確に否定されているんですよ。否定する国際的文書がちゃんと存在しているんです。そんなものでごまかして、憲章五十一条以外の米軍の武力行使も容認されるんだ、そしてその場合に自衛隊が協力できるなんというのは本当にとんでもない話だと思いますよ。  マイナー自衛権の行使に対して、米軍がこのアジアで、アジアのどこかで国境紛争なんかちょっとしたものが起こった場合、ちょっとしたものですよ、計画的、組織的な武力行使に至らない段階のマイナーな自衛権なんですから、そのいわば現場でちょこちょこっとやり合うようなところに、米軍がやられた側に立って出ていってバンバンとやるようなことができるはずがないんですよ、この自衛権というのは。
  344. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 ただいま委員より、ニカラグア事件に関する判決についての御指摘がございました。  この一九八六年のニカラグア事件に関する国際司法裁判所判決、これは、委員御承知のように、ある国が他国国内のゲリラ等の反政府勢力に対して行う支援等の論点につき法的評価を行ったものでございます。かつ、委員御案内のように、この判決というものの具体的内容については、それぞれの論点につき個別の事件の文脈に照らして理解すべきものであるというふうに考えております。  以上の前提の上であえて申し上げるならば、確かにICJ判決は、「ニカラグアのエルサルバドル国内の反政府勢力への支援に対しては、被害を受けた国のみが対抗措置を発動することができる。」「第三国がとりわけ武力の行使を含む対抗措置をすることは認められない。」という判示はございます。  しかしながら、この判決は、そもそも集団的対抗措置について包括的な議論を行ったものではないことであり、一般的な形で集団的対抗措置という考え方について、この判決との関連でコメントすることは適当ではないというふうに考えております。
  345. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうであるにしても、そういう問題での第三国の介入を許すような、そういう文書も一切ないんです、大体マイナーなんですから。それにほかの大国が加わっていくなんということは、本来想定されない自衛権なんですよね。  こういう問題にかかわって、政府が、結局国連憲章五十一条の自衛反撃以外のものも何か米軍はやってもそれが許されるかのように言う、これは極めて重大な問題だと思います。  先ほど総理も言っているように、確認したように、米軍は国連憲章に基づいて違法なことはやらない、そういうふうに総理は言ったはずですけれども、しかし突き詰めていくと、それ以外のものも何かありそうだ、そういうことをにおわしてくるわけです。  これは、米軍の行為が違法であるかないかという基準の問題ですよね。基準と原則をはっきりさせなければ、協力を自主的に判断するなんといっても、結局そのときの政府の勝手な判断次第で無基準、無限定になっていってしまうという問題なんですよね。ですから、五十一条の場合以外にあり得ないと明言しないということは極めて重大だということを私は指摘しておきたいと思います。  その点で、具体例について少し聞きたいと思いますが、政府はこれまで、周辺事態について四つの事態というようなものを挙げてまいりました。そして先般、十日の答弁で外務大臣は、内戦やクーデターも周辺事態になり得るというふうに答弁されました。  それでは、その内戦やクーデターの事態での米軍の武力行使があり得ると想定しているのか、想定しているとすればどういうケースとしてあり得るのか、またその場合の日本の協力はどうなりますか。
  346. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態が発生したときに、米国は、武力の行使を伴わない種々の活動、情報収集だとか警戒監視だとか船舶検査活動等を行い、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが当然想定されるわけであります。したがって、周辺事態になれば米国が直ちに武力の行使を行うというようなことではないわけであります。  また、内乱等が周辺事態に当たるか否かについても、あくまでも、特定の地域を念頭に置くものではなく、一般論として述べれば、ある一国の国内で発生したある事態が純然たる一国の国内問題としてとどまる状況では、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態にはならない、こう思います。  他方、ある国の国内で発生した事態であっても、それが拡大して、一国の国内問題にとどまらず、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合は、この事態は周辺事態となる、こういうことを申し上げているわけであります。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  347. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 周辺事態になるか、ならないかを私は今問うているわけではないのです。そういうものが周辺事態になった場合に、米軍の武力行使があり得るのかということを聞いているのです。
  348. 高村正彦

    高村国務大臣 まず武力行使が想定されるわけではないということは申し上げました。  そして、いわゆるある国の国内で発生した事態であっても、それが拡大して、一国の国内問題にとどまらず、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合に、米軍はいろいろな活動をするでしょうが、それはその場合、その場合によって違うわけでありますから、あるとかないとかということを今明確に申し述べることは困難であります。
  349. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 内戦やクーデターに直接米軍が武力介入をした場合は、それは違法になりますね。
  350. 高村正彦

    高村国務大臣 内戦とかクーデターとかいう言葉も、必ずしも国際法上きっちり定義されていることじゃありませんし、そして、その場合でも、あらゆる、そこの状況がいろいろあるわけでありますから、それについて、すべての場合が違法になるかどうかということを明確に答弁することは困難であります。
  351. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 内戦やクーデターに米軍が武力で介入したら、これは明確に憲章違反ですよ、五十一条のケースじゃないんですから。  政府の想定している四つの事態のうちの一つに、武力攻撃が発生している場合というのがあります。この場合、この武力攻撃というのは、だれのだれに対する武力攻撃を想定しているんですか。当然、国と国との間の問題だと思いますが、その点はいかがですか。
  352. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態として典型的に考えられるのは、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような武力紛争が発生している場合、このような武力紛争の発生が差し迫っている場合等であるということは今まで申し上げているところでございますが、ここで言う武力紛争として、どの勢力のどの勢力に対する武力行使かということを具体的に想定しているものでないことは申し上げるまでもないことであります。
  353. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 申し上げるまでもないというのは、どういうことですか。
  354. 高村正彦

    高村国務大臣 あらかじめだれがだれに攻撃した場合などということを想定していない、そういうことでございます。
  355. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、だから、国と国の間なのか、それとも一国の間の政府と反政府勢力との争いのことを言っているのか、それを聞いているのです。国と国の間を想定しているのですか。
  356. 高村正彦

    高村国務大臣 武力紛争が発生している場合ということは、国と国の場合が多いでありましょうが、先ほどから答弁しておりますように、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合ということであれば、それにとどまるものではない、こういうことを何度も答弁していることでございます。
  357. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その場合の米軍の武力行使の関与というのは、どういう可能性があり得るのですか。
  358. 高村正彦

    高村国務大臣 抽象的な想定で具体的にどういうことがあるということを答えることは、それはできません。
  359. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、はっきり言うべきだと思うのですよ。国連憲章五十一条に基づく武力攻撃があった場合に、米軍の武力行使はあり得るでしょう。首相もはっきりと違法な武力行使はないと言っているんですから、米軍の武力行使があり得るとすれば、そういう形態しかないと言うべきだと思うのですよ。私は、そういう想定でなければ許されないことだと思います。  では、武力紛争の発生が差し迫っている場合というのは、米軍の武力行使は行われますか。
  360. 高村正彦

    高村国務大臣 差し迫っている場合といっても、ごく抽象的な話でありますから、あらゆる具体的な場合を想定しないで、すべて排除できるかどうかということは、それは何とも言えないところだろうと思います。
  361. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 発生が差し迫っている場合に、米軍の武力行使は、米軍が違法な活動をしない限りあり得ないはずじゃないですか。武力攻撃の発生が起こっていない、まだ発生していないんですから。その時点で米軍の武力行使なんかがあり得るはずがない、そう言えるはずじゃありませんか。
  362. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 委員お尋ねの趣旨が、武力攻撃が発生していない事態における先制攻撃にかかわるものでありますれば、以下のように申し上げられると思います。  委員御案内のように、国連憲章第五十一条では、「武力攻撃が発生した場合には、」「個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」というふうに規定されております。  そこで、ここで言うところの「武力攻撃が発生した」、これはどういうことかということにつきましては、これまで国会でも累次御説明しておりますように、これは単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけでは、その場合に自衛権を使うことは認められない。すなわち、先制攻撃、予防戦争などは認められないということでございまして、これは国連憲章の解釈として私どもが一貫して申し上げていることでございますし、アメリカ側もそのように考えているというふうに理解しております。
  363. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そんな一般論を聞いているんじゃないんですよ。政府が想定している周辺事態に、四つの事態を想定している。その四つの事態の中に、武力攻撃の発生が差し迫っている場合というケースがあったわけでしょう。その場合に、その時点で米軍の武力行使ができると解釈しているのか、米軍の武力行使があると考えているのかということを聞いているのです。
  364. 高村正彦

    高村国務大臣 武力紛争の発生が差し迫っている場合ということも極めて抽象的なことでありますから、一般的には、いわゆる先制攻撃というのは認められないということですから、そういうことは認められない。ただ、その事態、事態によって、まさに国連憲章五十一条に該当するような場合があるとすれば、それはあり得る、こういうことで、武力紛争の発生が差し迫っている場合というのは、一般的には武力攻撃は認められないということはありますが、この言葉自身が極めて抽象的でありますから、その中で、具体的に自衛権の行使と言えるかどうかということは、判断しなければいけない場合をすべて排除できるかどうかという問題は残ると思います。
  365. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この周辺事態という問題について、政府自身が具体的な説明を余りしないわけですから、それに基づいてこちらも議論しようとすれば抽象的にならざるを得ないという面がどうしてもあるわけです。  では、ちょっと具体的な問題、過去のアメリカの武力行使の問題について幾つか聞きたいと思います。  一つは、我々がたびたび取り上げているグレナダの問題です。  一九八三年の十月、レーガン米政権のもとで米軍は、面積が佐渡島の半分弱、人口十一万のカリブ海の小国グレナダに侵攻いたしました。侵攻軍の総数はおよそ七千人、十一万の人口の対比で見れば物すごい規模の軍隊であります。  その侵攻当時のレーガン大統領のテレビ演説によると、これはレーガン大統領の説明を私なりに翻訳したものですが、グレナダでは一九七九年にアメリカの気に入らない左翼政権が生まれていたが、その後八三年十月になって政変が起こった。もっと悪い政権が生まれそうだ。それに対応して、約一千人のグレナダ在留アメリカ人の安全が問題になった。また、東カリブ海諸国機構、OECSがグレナダの秩序と民主主義を回復するために軍隊を派遣してほしいとアメリカに要請してきた。  そこから引用ですが、レーガン大統領は、まさに彼らの、つまりOECSの要請の正当性と、我が国の市民についての私自身の懸念こそ、私にこの侵攻の決定をとらせたものであると説明しています。  だから、これによりますと、侵攻の理由は、OECSの要請に基づくグレナダの秩序と民主主義の回復、そして在留アメリカ人の保護ということでありました。一千人のアメリカ人がいた、そこへ七千人の軍隊投入。結果として、ここに親米政権をつくり上げたわけであります。  国際社会は、このアメリカのグレナダ侵略を容認しませんでした。フランス、イタリア、西ドイツなどの諸国がこれを非難しました。緊急に開かれた安保理では、非難決議案がアメリカ一国の反対、つまり拒否権で葬られましたが、総会は、八三年十一月二日、賛成百八、反対九、棄権二十七で非難決議を採択いたしました。そこでは、この武力介入を国際法及びグレナダの独立、主権、領土保全の重大な侵害として、深い遺憾の意を表明し、武力介入の即時停止及び外国軍隊の即時撤退、これを求めています。  国際社会はこうやって非難、糾弾いたしました。日本はそれをしないで、この決議に賛成しませんでした。当時の日本政府は、首相が、在留米人の保護と関係各国からの要請でやむを得ずああなったことは理解できるとして、この蛮行に理解を示しました。  そこで、まずお聞きしますが、国連総会のこの非難決議に日本が棄権した理由は何だったんでしょうか。
  366. 高村正彦

    高村国務大臣 御指摘の事例におきまして、米国はみずからの行動について、在外自国民保護、自衛権の行使等の説明を行っているわけであります。我が国としては、これらの行動については、当事者でもなく、すべての事実関係を把握しているわけでもないので、確定的な法的評価を申し上げることはできないわけであります。  確定的法的評価を申し上げることはできないわけでありますから、その時点でどういう判断であったかということは、まさに確定的法的評価ができないから棄権したんだと思います。
  367. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 確定的な法的評価は事実関係を把握していなかったからできなかったと。これからの周辺事態の米軍の行動に関してはそういうわけにいかなくなるわけですよね。  それでお聞きするんですが、確定的な法的評価を下す上で、事実関係を把握していなければいかぬわけですが、このグレナダの問題でも、もう今からやれとは言いませんが、事実関係を把握して判断した場合に、合法的でないという法的評価になる場合もあり得るということですか。また繰り返して法的評価を下していないというのですか。
  368. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約は、日本の安全及び極東における国際の平和と安全を維持することを目的とする全く防衛的な性格のものであります。周辺事態安全確保法案は、このような日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、そのことを通じて我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止するための枠組みであります。  日米両国は、ともに国連憲章上の義務を負っており、かつ、そのような義務の遵守を日米安保条約において二国間の義務として確認しているところでございます。したがって、特に、日米安保条約に基づいて米軍が行動するときに、国際法上問題があるということは想定されないと考えております。
  369. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、グレナダの事態では、アメリカは世界の各国からは、違法なことをやった、侵略をやったというふうに認定されて、ああいう決議が採択されたわけです。日本はそういう認識はしなかった。  あなたは今、安保条約に基づく米軍の行動のことを言ったわけだけれども、これは違法なことは一切しないということですね。頭からあなたはそうやって決めてかかるわけですね。何か事実関係の評価の上に立って違法か違法でないかというようなことを決めるんではなくて、アメリカは違法なことをしないんだ、最初からそういう立場で臨むということですね。
  370. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約というお互い生死にかかわる条約を結んでいるわけでありますから、最初からそんな違法なことをする、する、そういうことを想定してやっているわけではなくて、そういうことは非常に想定しにくいことだ、こういうふうに思っておりますが、我が国は主体的に、この場合は我が国は当事者でありますから、主体的に判断をいたします。
  371. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 当事者というのはどういう意味ですか。その武力行使をしている当事者じゃないでしょう。
  372. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案を適用するかどうかという場合には、当事者になるということであります。
  373. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もう一つ、パナマの例ですが、八九年十二月、アメリカは同じ中米の人口二百万のパナマに二万四千人の兵力をもって侵入いたしました。  当時のブッシュ大統領の声明では、この侵攻の目的は、米国人の生命の安全を守ること、パナマの民主主義の維持、麻薬取引撲滅、パナマ運河条約を遵守することであると説明をいたしました。  侵攻はアメリカが麻薬取引人だとしたノリエガ将軍を逮捕するまで二週間以上に及び、二千五百人とも四千人とも言われるパナマ人が虐殺をされました。結果として、親米政権をつくり上げました。  このときも、国連の安保理はアメリカの拒否権で否決されましたが、総会は賛成七十五、反対二十、棄権三十九で非難決議を採択しました。決議は、国際法と諸国の独立、主権、領土保全への甚だしい侵害をなすアメリカ合衆国の軍隊によるパナマ介入を非難し、介入の即時中止と合衆国の武力侵攻軍のパナマからの撤退を要求しております。  このときも、日本政府は、米国が自国民を保護する軍事行動をとらざるを得なかった背景は理解するとして、国連総会の決議には、グレナダの場合には棄権をいたしましたが、今度は反対の投票をいたしました。このときもこの問題では法的評価は下していなかったはずでありますが、反対投票した理由は何ですか。
  374. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 このパナマの場合の我が国政府の立場というのは、委員からも簡単に言及がございましたけれども、その当時明らかにしておりますところでは、我が国としては、米国がパナマにおいて武力を行使し多くの死傷者を出す事態になったことを遺憾とするものであるが、同時に、同国が自国民を保護するために軍事行動をとらざるを得なくなった背景は理解するものであるということでございました。  そして、国連総会におきまして、我が国は事実関係の詳細について承知しているわけではないので、米国の行為の法的評価について確定的に判断し得る立場にはないという立場に立った上で、さらにこれに加えまして、国連総会決議というものが米国がその行動に至らざるを得なかった背景について言及をしておらないこと、また、自由、民主的に選出された政権を支持すべきことについての言及がその決議にないこと等、内容的にバランスを欠いているという理由からこれに反対したものでございます。
  375. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 このグレナダとパナマの両方に共通している侵攻の目的が、在留米国人の保護という問題があったわけですね。しかし、それは実際には口実にすぎなかったことが今では歴史的に明らかになっています。  例えば、グレナダの場合には、レーガン大統領は一千人のグレナダ在住アメリカ人がいたと言うのですが、レーガン大統領自身がそのうちの八百人はセントジョージズ医科大学の学生だったと言っている。その医科大学のアメリカ人学長ら自身が、アメリカ市民は全く危険にさらされていない、グレナダ政府はアメリカ市民の安全を約束していたとの証言をしております。  また、当時、グレナダと同じ英連邦に属しているカナダのトルドー首相は、カナダ議会下院の八三年十月二十六日の会議で、なぜアメリカを支持しないのかと問われて、現地のアメリカ人の安全を確保する方法が侵攻という行為以外になかったのでしょうか、カナダの場合は我が国の市民を避難させる権限をグレナダ政府から得ました、アメリカはそのような権限を拒否されたのかどうかと言い、その点はアメリカのシュルツ国務長官に確認したところ何の説明もしなかった、それどころかアメリカや侵攻に加わった他のカリブ海地域諸国は、彼らがグレナダに別の政府を望んでいたということを持ち出したと議会の下院ではっきりと述べています。  自国民保護なんというのは、このときは全く口実にすぎなかった。ですから、はっきり申し上げたいんですが、自国民保護という言葉も、過去においては極めてしばしばそれを理由にして侵略が行われてきたわけであります。国連の総会がこのグレナダやパナマの事態に関してこの口実を認めなかったのは大変賢明だった、私はそう言わざるを得ないと思うんです。  総理、お聞きしたいのですが、アメリカの言い分をうのみにすると無法な侵略に加担することもあり得る、私はそのいい例だと思うのですが、さっき外務大臣は、アメリカが違法なことをやると決めつけるような必要はない、それはそのとおりでしょう。しかし、アメリカが違法なことをやることも可能性としてはあり得るという前提で物事を検討しなければ、真実の検討なんかできないんじゃないですか。  アメリカが違法なことをやり得る、その可能性もある、そういうことは、総理、あなたは本当に考えませんか。
  376. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 米国は、国連憲章により国際法上違法な武力行使を行わない義務を負っていることは申し上げたとおりでありまして、これは日米安保条約第一条、第七条でも確認をいたしておるところであります。同盟国として米国がこれを遵守することを、これまた確信をいたしております。  周辺事態における日米の行為は、国際法の基本原則、国連憲章と合致いたしておりまして、いずれにせよ、周辺事態の協力の可否は、日本が主体的に判断して決定するものと理解をお願いいたしたいと思います。
  377. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 グレナダやパナマは八三年、八九年の話ですが、過去の話じゃないんですよ。アメリカは、国連総会でもこうやって侵略だと非難されたこれらの武力行使を、反省するどころか、最近でも立派な作戦の実例として強調をしているわけであります。だから、今後もあり得る話なんです。  橋本前首相は、我々の質問に対して、我が国が国連に加盟して以来、我が国が米国による武力行使に対し国際法上違法な武力行使であるとして反対の意を表明したことはないと述べました。しかし、実態はこのとおりであります。  アメリカの九七年の国防報告で何と言っているかというと、米国は、我が国の重要な利益が問題となっているときには、単独で、あるいは他国との共同によって、小規模戦闘作戦を遂行する能力を維持する。小規模戦闘作戦と言っているのですが、二万何千人とか七千人とかという作戦のことを言っているのですが、その作戦の成功例としてグレナダやパナマを挙げている。  しかも、グレナダは地域的安定を提供するための作戦の成功例だ、パナマは民主主義を促進するための作戦の成功例だ、自国民保護なんというのはどこにもないわけです。当時は自国民保護ということを一番の理由のように挙げてやっていたその侵攻、それが非難されて、国連総会でも非難の決議がされたのに、それを今に至っても立派な作戦だと言って褒め上げているわけであります。  ですから、同盟国たる米国が違法な武力行使を行うことはそもそも想定していないとか、国連憲章に基づいて違法な武力行使を行わないことを確信しているとか言っても、それでは全く国際社会で通用するものじゃないし、そんなことを言っていたら、それこそこれまでのアメリカの歴史に照らしてみれば、国際社会で恥をかくことにならざるを得ないということを私は率直に申し上げたいと思うのです。  総理、本当にアメリカが違法なことをやる可能性はこういう過去の例に照らしてもないんだ、確信するんだとおっしゃるわけですか。
  378. 高村正彦

    高村国務大臣 米国が国連憲章上の義務を守り、自衛のため以外の目的では武力を行使しないということは安保条約の大前提であり、米国が仮にもかかる義務に反した行動をとることはないとの信頼関係なくしては安保条約は成り立たないわけであります。  さらに、日米両国政府間では、日米安保体制のもと、安全保障協議委員会等種々のレベルにおいて密接な情報交換、政策協議が随時行われております。周辺事態と考えられるような事態が発生している場合には、日米間で情報交換、情勢分析、意見交換等が一層緊密に行われることになります。したがって、かかる意味からも、御指摘のような事態が生ずることは実際問題として考えられないと思います。  我が国は、米国を含め他国の行動について、あらゆる場合にその法的評価を明らかにすることはできません。御指摘のグレナダ、パナマにおける事態についても、まさに我が国は第三国として事実関係の詳細の把握をしていないため、確定的判断をなし得る立場にないと申し上げているのでありますが、今申し上げたとおり、いわゆる周辺事態の場合は、我が国の置かれている状況はおのずから異なるものと考えております。
  379. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本が協力する米軍の武力行使について、国連憲章五十一条に限定されるのかという質問に対しても、何かそれ以外のものがあるかのような答弁をされるし、それからまた、これからの周辺事態と政府が言っているものの中での米軍の武力行使がどういうものがあるかと言っても余り明確な答弁はないし、そして、アメリカは違法なことはやらないんだ、グレナダやパナマのいろいろな例を出しても、政府は、違法なことはやらないんだという確信を表明するだけ、それでは本当にこの周辺事態というのは危険だということをはっきり申し上げて、ガイドライン法案は撤回するしかない、重ねて申し上げて、質問を終わります。
  380. 中山正暉

    中山委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、北沢清功君。
  381. 北沢清功

    ○北沢委員 私は、社民党の北沢でございます。  昨年からの一連の自自連立に向けての協議において、自民党そして自由党の間で問題にされたのは、専ら戦争の危機であるとか軍事貢献という問題が非常に出てまいりました。  考えてみれば、戦後、我が国が歩んできた方向性からすれば、海外の武力行使を禁じた憲法第九条からしても、まず協議さるべきは平和友好的な外交の方策でありまして、非軍事的な分野での貢献でなければならないはずでありますが、このことについて、総理はどのようにお考えでしょうか。  もう一つ、それでは外務大臣にもお尋ねをしたいと思いますが、友好的な関係を促進するための構想をどのように外務大臣は描いておられますか。あわせてお聞きをいたしたいと思います。
  382. 高村正彦

    高村国務大臣 先月、自民、自由両党間でまとまった安全保障の基本的考え方につきましては、日本国憲法の平和主義、国際協調主義の理念に基づき、我が国及び国際の平和と安全を確保するとの基本的考え方が示されたものと理解をしております。これは、従来の我が国の安全保障政策の基本に沿ったものであると考えておりまして、私としても、その内容を真摯に受けとめ、十分に念頭に置きながら、諸施策について対応してまいりたいと考えております。  我が国外交の基本姿勢は、御指摘のように、まさに平和友好に基礎を置いているものであります。すなわち、アジア太平洋の安定と繁栄のために、引き続き米国を初め近隣諸国との関係強化に努めるとともに、軍備管理・軍縮への取り組みの強化、アジア経済危機克服のための貢献、ODA等のグローバルな取り組みを通じて、世界全体の安定と繁栄に貢献していくものであります。
  383. 北沢清功

    ○北沢委員 私はたまたま、戦後の方もおられるかもしれませんが、いわゆる戦中族でありまして、実は戦争の体験をした一人であります。したがって、あの戦争の惨禍というものを見るときに、平和に対する努力というものは、し過ぎることはない、私はそう思っております。  今アメリカとの安保条約の範囲内だというふうに言われておりますが、きのう、おとといのいろいろな御答弁を見ると、やはり多国籍軍にアメリカが参加しておれば貢献できるではないかとか、いろいろ日本の周辺事情も含めて、本当の意味で、では、アジアの諸国と友好を深めていくかという取り組みは私は見えないと思います。  特に北朝鮮の問題は、テポドンといいますか、そういう問題も含めて、毎日実はテレビで映像がされまして、それと同時に、毎日侵略であるとか軍事貢献であるとか、いろいろそういう問題が出てくるわけでありまして、私どもは、自民党と社民党とやはり連立内閣をつくった経緯も知っていますし、私も、中でのいろいろの友人関係もできまして、当時話したことがたんとあります。  しかし、今日のこの状況というのは、何か危機感をあおって、そのことによって一気に何かしようというやはり強権的な、何といいますか、そういう問題ですね。ですから、私は、よくファッショというものがどういうところから出るかというと、短い記憶と長い舌、それから恐怖心をあおるものは恐怖政治をするものである、私はそういうふうに思っております。したがって、そういう意味で、このことをよく冷静に判断をしていくことが外交であります。  かつては、米英鬼畜であるとか、撃ちてしやまんとか、東洋平和のためならば何で命が惜しかろうとか、そういう中で、気違いじみた日本国民の動きが実はございました。国会においても、当時の斎藤代議士が反軍演説をやったら、皆から石を持って投げられて除名をされるということを含めて、よほど、我々はこういう苦い経験をしたわけでありますから、もっともっと慎重に多面的な外交をすべきだ、そのことに対する取り組みが私は非常に不満足だというふうに思っています。  特に現実的には、アメリカや韓国の日本に対する、最近の日本の動きについては非常に驚いているわけですね。そのことは、韓国の太陽政策もさることながら、日本の対応というものは異常だ、そういう評価を実はしているということを見ても、我々はよくそのことについて心していかなければならないことだというふうに私は思っておりますが、このことについて、再度外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  384. 高村正彦

    高村国務大臣 北朝鮮をめぐっては、昨年の弾道ミサイルの発射や秘密核施設疑惑などにより、国際社会の懸念は増大しておりますが、政府として、必要以上に北朝鮮の脅威をあおっているというようなことは全くありません。  いずれにしても、これらの問題については、現在、米朝間で協議が行われており、我が国としては、北朝鮮より前向きの対応を得て、この協議が進展することを期待しております。  また、我が国としては、米韓両国と緊密に連携しつつ、国際的な懸念並びに拉致疑惑や国交正常化問題などの日朝間の諸懸案に対処していく方針でありますが、北朝鮮がこれらの問題に建設的な対応を示すのであれば、対話の再開を通じ、関係改善の用意があることはこれまで累次申し上げているところであります。  韓国の方たちとも、米国の方たちともいろいろお話し合いをしますが、日本の反応がちょっとおかしいとか、そういうようなことを言われた記憶はございません。
  385. 北沢清功

    ○北沢委員 やはりこの前の一九八〇年代というのは、いわゆるソ連脅威論というものがあったわけでありまして、その中で、日本は非常に軍備を拡張しまして、世界第二位の軍事費をもって軍事大国になった、私はそう思っております。今脅威とされている北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国というものは、かつてのソ連に比較をすべくもなく、飢餓状態の小国で、食糧も航空燃料も産業用重油さえも満足にないと言われている国であります。この景気低迷下で、巨大な軍事予算を組んでまで対抗すべき相手ではない。これは北朝鮮の脅威を意図的にあおることで、国民を危機感に陥れる目的の、極めて恫喝政治につながるべきものであるという大きな危惧の念を私は持っております。  どうかひとつ、冷静な対処を含めて、本来の日本の平和外交というものを進めていかないと、私は今日の状況というのは非常に心配をしております。その点について、もう一度総理の御所見をお願いいたしたいと思います。
  386. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 北朝鮮に対する対応につきましては、先ほど外務大臣から御答弁申し上げました。我々といたしましては、隣国として、国交が正常化して、ともに近くて近い国に当然なっていかなければならぬと思っております。  ただ、テポドンのミサイルの発射等々、我が国としては、大変不安、安心のできない、そういう気持ちを持っておるわけでございますので、そうしたことに対しましては、我が国の主張は主張として、北朝鮮にもその意思を伝えていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  387. 北沢清功

    ○北沢委員 いろいろ私も私なりに情報も入ってきていますし、私も実は三年ほど前にずっと中を見て、技術も含めて、そんな富裕な、発達した国ではない、そういうことを感ずるわけですが、そのことだけを強調して物事を進めると、かつての歩んだ歩みになるのではないかという思いを私は実は最近深くしておりますから、ぜひ、外交の面において積極的な対応をしていただきたいということをお願いしたいと思います。  それから、もう一つお尋ねしたいことは、PBOという活動があるということを聞いておりまして、PKOばかりが大きく取り上げられましたが、これは軍隊ばかりで実施するPKOとは違って、非政治組織であるNGOが一緒になって、紛争の予防や紛争後の復興を支援するというカナダ政府の提唱している平和構築活動であります。  そのことについて、PBOに日本への、政府へ加盟も呼びかけておるということでありますが、このような活動に積極的に参加してこそ、日本の存在を示すにふさわしい活動であり構想であるというふうに思います。  最も現実的な対応としての、総理の、または外務大臣の、このことに対する御見解をお伺いいたしたいと思います。
  388. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 カナダからは、我が国との間の各種会議等累次の機会におきまして、御指摘のような平和構築活動のアイデアの提示を受けておりまして、それらの機会において、同アイデアにつき両国間で話し合ってまいっておるところでございます。  我が国としては、冷戦後の国際社会においても後を絶たない紛争に対処するためには、紛争そのものへの対処のみならず、紛争を未然に防止すべく、紛争の根源にある貧困等の問題に対処すること、また紛争後の復興に協力すること等、幅広い視野を持って取り組んでいく必要があると考えております。  カナダの提示してきておりますこのアイデアを十分踏まえつつ、今後、この分野における我が国の対応については検討してまいりたいと考えております。
  389. 北沢清功

    ○北沢委員 ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。  次の質問に入りますが、北朝鮮の脅威が必要以上に喧伝をされている危険性については、私が申し上げたとおりでございます。  先日の朝日新聞の報道によりますと、防衛庁は、自衛隊法を改正して領域警備という項目を加えて、自衛隊に新しい任務を与えることを続けようとしております。これについては、私は、どのような具体的内容であるか、考えであるかということについて、長官にお尋ねをいたしたいと思います。
  390. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 我が国に対する武力攻撃に至らないような不法行為等への対処につきましては、第一義的には警察機関、これは警察庁とか海上保安庁の任務でありますが、自衛隊は、警察機関では対処することができないと認められる事態が発生した場合には治安出動や海上警備行動により対処するということは、委員御承知のとおりでございます。  政府といたしましては、橋本内閣以来、我が国に対する危機が発生した場合やそのおそれがある場合において、我が国としてとるべき種々の対応について、必要な対応策をあらかじめ十分検討、研究しておくことを目的として、緊急事態対応策の検討を実施してきたところであります。  いずれにしましても、防衛庁としては、このような不法行為等に際してのより適切な対応を期するために、自衛隊の対応のあり方について今後とも勉強してみる必要があると考えておりますが、一部の報道にありましたように、そしてまた今先生から御質問がありましたように、自衛隊法を改正して、防衛庁として自衛隊の活動に新たな領域警備という項目を加えるということは、今のところは検討しておりません。
  391. 北沢清功

    ○北沢委員 ぜひ、新しい自衛隊の任務については、ひとつ慎重に対処をしていただきたいと思っております。  それから、もう一つお伺いをしたいのですが、きょう、民主党小林守議員からも御質問があり、また強い要請がございました、高知県の橋本知事のいわゆる入港に対する、外国船舶に対する非核証明を求めるという条例化の検討という問題が最近大きく取り上げられております。  もちろん、野田自治大臣や外務省外務大臣からも、自治体の事務としては許されないという公式見解を示す動きがございました。その答弁でもおっしゃるとおり、外交に関するものは国の判断であることはそのとおりだとは思います。しかし、先ほど外務大臣が、きっちりした対応を国でやっているから、そういう御答弁がございました。  そこで、今、あらゆる世界的な軍事情報の中では、やはりアメリカの核、韓国のものを含めて、核弾頭というのは恐らく数百発だというふうに言われております。恐らく、世界の全人類が二十回死ぬだけの核兵器がまだ廃棄されないでおるということは、これは明らかなことであります。  したがって、沖縄もそういう意味では核基地化をされていることは、これはもうだれが見ても争えない事実でありますし、また、日本へよく寄港をする原子力潜水艦や空母その他艦船を含めて、そういうおそれといいますか、そういうことはもう今は常識化しているんです。  だから、日本は非核三原則というのを国是として積み上げてきたわけでありますから、そういう意味で、外務省がそういうことにきちんとした対応がとれておらないという心配も、やはり私は一面にあると思います。  これは、非核三原則というのは、国民の積み上げた一つの日本の国是です。それから、地方の首長といいますか、知事というのは、県民が安心して暮らせるという意味で、その県民の生命を心配することは当然のことですね。ですから、そういう意味での問題がその底流にあるということをやはり考えていかないと、これは非常に額面どおりの答弁やそういうものに終始するというふうに私は思いますが、自治体の首長として当然のことだというふうに私ども社民党考えておりますが、このことに対する総理のお考えをぜひお伺いいたしたいと思います。
  392. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今日もこの点に触れての答弁を自治大臣並びに外務大臣からもいたしておりますが、改めて、私からもこの問題に対しての基本的な考え方について申し上げさせていただきます。  国と地方公共団体とは、相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理しており、国としては、責任を有する外交関係の処理が地方公共団体により妨げられるようなことがあってはならないとまず考えます。  外国軍艦の本邦寄港は、外交関係の処理につき責任を有する立場から、国がその是非を判断すべきものであります。地方自治法及び港湾法に基づき地方公共団体に認められている係留場所の指定等の港湾施設の使用に関する規制は、あくまでも港湾の適正な管理及び運営を図る観点から、港湾管理者としての地位に着目したものにとどまるものであります。  高知県がどのようなことを検討しておるか、すべてつまびらかではありませんが、これまで聞いておるところによりますれば、港湾施設管理条例の改正に当たり、政府に対し、外国艦船が核兵器を積載していないことを証する文書の提出を求め、その結果に基づき港湾施設の使用に関し決定を行うことを検討しているものと承知をいたしております。  これは、外交関係の処理に当たる国の決定に、地方公共団体が関与し、またはこれを制約するものであり、港湾管理者の権能を逸脱するものでありまして、地方公共団体の権限の行使としては許されないものであると考えております。
  393. 北沢清功

    ○北沢委員 終わりますが、私はやはり沖縄の問題というのは、中国の香港の植民地化を含めて、あれは百年ですか、そういう歴史の中で解消されたわけでありますが、もう戦後五十数年たっております。ぜひ、私は、今回の後方支援問題が、沖縄の基地化を、全国の地方都市や地方のものに及ぶことのないような、固定化することのないようなことを配慮していく必要が非常にある。沖縄の全国土化だ、そういうことのないような、心配を与えないような、ひとつ安心感を与えていただきたいということを強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。  以上です。
  394. 中山正暉

    中山委員長 これにて北沢君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして安保・外交問題についての集中審議は終了いたしました。  次回は、明十七日午前九時三十分から委員会を開会し、一般質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十三分散会