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斉藤(鉄)
委員 公明党・改革クラブの
斉藤鉄夫です。
現在の
景気後退の主な原因は、短期的には、需要の減退、それから
金融システムが崩壊をしたこと、また、この二つが相互に関連し合って悪循環に陥ってしまった、それが原因だと思います。
しかし、
景気後退がここまで長期にわたりますと、先ほど申し上げました二つの原因以外に、中期的な、もっと根本的な原因があるのではないか、このように考える次第でございます。先ほど
若松委員が、需要の減退、そして
金融システムの崩壊ということについて
質問をいたしましたので、私は、中長期的な原因について
質問をさせていただきたいと思います。
短期的な
景気循環は需給ギャップで説明できますけれども、中期的な
経済の成長を決めるのは、供給側の潜在GDPだと言われております。供給側の潜在能力というふうに言いかえてもいいんでしょうか。別な言葉で言えば、供給側に新しい価値観を提案し、新しい価値観というのは、例えば地球環境というようなことも例として挙げられるかもしれません。新しい価値観を提供し、その価値観に基づいた製品や情報や社会のシステムをつくり上げていく、その新しい需要を生み出していく潜在能力、これ自体が成長していかなければ、中長期的な
経済成長、
景気の
回復はない、このように言われております。
その供給側の潜在能力の
伸びといいますのは、これは
経済学で言われていることだそうでございますが、労働、資本、そして技術開発力、この三つの
伸び、これが供給側の潜在能力の
伸びだということだそうでございます。
戦後の
日本の高度
経済成長は、この三つがいずれもそろっていた。そこであのすさまじい高度
経済成長をしたわけですけれども、九〇年代に入りましてこの三つがいずれも
伸び悩んできた。技術開発力までが
伸び悩んできた。私は、ここに、この九〇年代に入っての長期の
景気低迷の根本的な原因があるのではないか、このように考えております。
これからの
日本の
状況を考えますと、この三つのうち労働の
伸びというのは、今の人口動態を考えますと、なかなか期待できません。また資本の
伸びも、
金融についてがたがたになっているということから考えますと、この資本の
伸びも余り期待できない。そうしますと、期待ができるのは技術革新の力、これしかないわけでございます。
日本が中長期にわたって
経済成長を続けていけるか否かは、この技術革新の力があるかどうかにかかっている、このように思います。
そこで、きょうは、私は、この技術革新の力、
日本の技術革新力ということに着目をして議論を進めていきたいと思います。
さて、戦後から八〇年代までの
日本の技術力は、特に製造技術において
世界一だ、こう言われてまいりました。しかし、よく考えますと、その技術力というのは、アメリカやヨーロッパの基礎的な研究、その基礎的な研究を
日本が民間でうまく応用して製品化する、そういう技術でした。
例えば、液晶というものがございます。今カラーの液晶ですばらしい映像を見ることができるわけですが、液晶そのものの技術は、基礎的な分野は原子物理学でございまして、その基本はアメリカが出してきたわけでございます。アメリカでほっておかれたその基礎技術の成果を
日本が応用し、製品化した。その製造技術が八〇年代まで
世界で一番と言われてきておりましたけれども、八〇年代後半から、その基礎研究に
日本がただ乗りするということに対して
世界各国から批判が集まり、かつ、アメリカやヨーロッパも知的所有権を主張するようになり、そのあたりから
日本の技術力に陰りが出始めたわけでございます。
ちょっとパネルを使って説明させていただきます。
これは、昨年九月にアメリカの国務省がまとめた、アメリカ、
日本、ヨーロッパの技術力の比較でございます。横軸は一九八二年から一九九六年まで、縦軸は特許の数とその特許の質を掛け合わせた技術力の指標です。これは、非常に
景気に大きな影響を及ぼすと言われております自動車分野です。八〇年代は
日本の技術力の方が上でした。しかし、九〇年代に入ってその技術力は急速に低下し、アメリカに追い抜かれる、そして九〇年代を通じてこの技術格差はどんどん広がりつつある、こういう
状況でございます。
次のパネルは、二十一世紀の産業の中心になると言われております情報技術分野、これがアメリカ、
日本、ヨーロッパでございます。この分野についてはもともと米国が優位でございますが、一九九〇年に入りますと、その格差がどんどん広がりつつある。ちょうどいつもこの一九九〇年を境に技術力格差が広がりつつある、どの分野でもそうなんですけれども、それを示しております。
あと一つ、
国民生活に大変
関係の深い医療、健康分野でございますが、これがアメリカ、ヨーロッパ、
日本は最低でございます。この医療、健康分野につきましても、一九九〇年代に入って技術格差が拡大しつつある、こういうことがこのデータからわかっていただけると思います。
きょうは三つの分野についてお示ししましたけれども、これは各分野について同じことが言われております。この、九〇年代に入っての
日本の技術革新の力が相対的に
世界で低下をしてきたこと、これが中長期的に見た場合の
日本の
景気低迷の原因なのではないか、このように思います。ある
意味で、
日本の
経済が今危機的
状況に陥っているということがこのデータでわかると思いますけれども、
小渕総理、今の
状況をどのようにお考えになっているか、御感想をお伺いします。