○宮澤国務
大臣 ただいまいろいろ数字をお挙げになられて、現在の財政の現状、将来における展望の十分でないこと等々御
指摘になられました。言葉だけでお答えをすることはできますけれども、長いこと国政に御参画の上でそういう御
心配をなさいますことは、ただ言葉だけでお答えをして済むという話ではない。私自身も、正直を申しまして、将来
我が国の財政というものをどうするかということは極めて重大な問題として心を痛めております。
ただいまおっしゃいました数字は、全部そのとおりでございます。しかるがゆえに、橋本内閣の
時代におきまして、総理経験者、村山
先生を含めまして、財政再建のための
会議を一年やられまして、そして案をつくられた。それはついに凍結することになりましたが、ただ、その中で、今お話しのように、一種の長期計画、年金であるとか医療でありますとかいうものにつきましては、将来の人口の動態等をとらえまして、これはここで新しい考えをしておかないと先行き破綻するという部分だけは、再建計画全体は凍結せられましたけれども、現に施策の上に残りまして、今その再建策がつくられている。そういう部分の貢献はあのプログラムにあったわけでございます。それは今日もそのとおりでございます。
ただ、他方で、理由はいろいろあると
思いますが、あのときに考えられましたような
我が国の経済成長はなかなかそのようにまいりませんで、実際には小渕内閣が成立するその以前において、本
予算よりは早く補正
予算をやって方向転換をしなければならないというような雰囲気になってしまいました。
今、私どもはその延長線上におるわけですが、小渕内閣が財政再建のラインを凍結すると決定いたしましたのは、将来の財政の
心配がないという
意味ではもとよりございません。もとよりございませんで、必ずその日は来なければならないが、しかし、今財政再建と不況脱出と両方を図ることは、しょせんは二兎を追うことになるのではないか。まことに残念なことであるが、今二兎を追うことはできない。一兎を追うということに専念をして、とにかくこの不況をまず脱出をすべきではないか。そうでないと、全体、国の財政そのものもそうでございますけれども、
日本経済そのものあるいは
日本の国民生活そのものが二十一世紀に向かって計画が立たないではないかという考え方が支配的になったわけでございます。
そういうラインに基づきまして、私自身も、減税をお願いします際にも、あるいは十年度の
最後の補正
予算をお願いいたす際にも、あるいは今御審議中の十一年度の
予算の編成にいたしましても、ともかく二兎を追うことはこの際考えまい、全力を尽くして不況の打開を図りたい、こういう決心をいたしました。その結果は、ただいま言われましたように、
平成十一年度における公債依存率は三七・九でございます。これは、十年度の
最後の姿が三八・七でございますので、もう
最後の姿が最初から出てくる。十年度の当初は二〇%でございましたので、いかに高く公債に依存しておるかがおわかりいただけると
思いますが、そういうことで今
予算の御審議をお願いしている。それが大体実情でございます。
ただ、財政そのものから申しましても、実は、この十一年度の租税収入の見積もりは四十七兆円でございますが、この四十七兆円という租税収入の見積もりは、昭和六十二年の見積もりと同じでございます。つまり、財政の租税徴収能力というのは十何年前に押し戻されてしまったということでございます。
それは、ごらんのように、ここのところ歳入欠陥が毎年出ておりましたが、それはむしろしかし、経済成長がマイナスでございますとプラスで考えておった財政収入が確保できないのは当然でございますが、それでも来年は大丈夫だろうというようなことで毎年毎年租税収入を出してまいって、毎年毎年歳入欠陥が出まして、それは二期もマイナスが続きますとどうしてもそうなるわけでございますが、そこで四十七兆のところまで押し戻されてしまった。これは実は、財政そのものも何かしなければ、
自分の力では再建ができないということになっていることを
意味いたしますので、ただ国民経済だけが悪いのではない、当たり前のことですが財政自身もこのままにすれば回復能力を失ってしまうという
状況にございます。
そういうことを考えまして、とにかくこの際不況脱出をして、国民経済に何ぼかでもプラスの成長を呼び戻しませんと、財政そのものがプラスの租税収入を見込むことができない。当然のことですがそういうことになりまして、したがって私がいろいろ決心をいたしました理由の一つは、財政自身の事情もあったということを御理解をいただきたいと思うわけでございます。
そこで、こういう大きな公債依存を決心したわけでございますが、文字どおりこれは、もしこれでできなかったらどうなるのかということについて、なかなかそうたやすく、こういうことをいたしますという案が浮かばないような
状況でございます、正直を申しまして。これはどうしても、ここまで来たら何とかしてプラスの成長に
日本経済を戻して、それによってやがては財政、税収もプラスになってくる、財政にとってもどうもこれしか方法がないという
思いがいたしておるわけでございますから、ある
意味でそれは甚だ無謀なことをしておるのではないか、そういうふうに御感想をお持ちになる向きもきっとあるだろう。しかし、正直を申して、どうもそれ以外にこの現状を打破する方法は見つからない、大変正直を申しますと、そういう気持ちを持っておるわけでございます。
したがいまして、この十一年度
予算編成に当たりましては、私は各省庁の
予算編成の中で、とにかく不況脱出に即効のあるものは、将来害のあるものは別でございますができるだけ採用させていただいて、減税を含めまして、たとえそれが多少国債増発になっても、中途半端なことはできないという
思いでいたしたわけでございます。
それが大体の気持ちを申し上げたわけで、これで御納得をいただけるとはすぐには
思いませんけれども、ただ、今具体的に、やはりこの一月—三月期というものは、この路線にとって私は非常にキー的な時期であるというふうに考えています。それはしたがいまして、どうも企業から見ますと、この一—三の決算、決算期になりますが、これが仮に景気上昇の胎動が片っ方であったといたしましても、決算そのものは過去の集積でございますので一番悪い決算になることはもう必至であって、したがってそこからこの雇用の問題にどうしても響きかねないという点が一つ。それからもう一つは、金融機関の、金融システムの信用の回復、公的
資金の導入等々でございますが、これが予定どおりいくという、この二つのことが一—三月で一番大事なことだと思っておりまして、私としましては祈るような気持ちで、この一—三月というものを何とかプラスになるように
日本経済をしていきたい。
正直を申しまして、長いこと国政に御経験のおありの上原
委員から、これでどうするのかねという率直なお尋ねでございましたので、まあ、こういう
思いでおりますということをお聞きいただいたわけで、大変長くなりました。申しわけありません。