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1999-01-27 第145回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年一月二十七日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 中井  洽君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       江藤 隆美君    小澤  潔君       小野寺五典君    越智 通雄君       大原 一三君    大村 秀章君       加藤 卓二君    亀井 善之君       河村 建夫君    岸田 文雄君       斉藤斗志二君    阪上 善秀君       島村 宜伸君    新藤 義孝君       竹本 直一君    津島 雄二君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       村田 吉隆君    村山 達雄君       森山 眞弓君    谷津 義男君       横内 正明君    岩國 哲人君       上原 康助君    生方 幸夫君       岡田 克也君    桑原  豊君       小林  守君    仙谷 由人君       肥田美代子君    細川 律夫君       横路 孝弘君    吉田  治君       池坊 保子君    大野由利子君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       坂口  力君    冨沢 篤紘君       西川 知雄君    加藤 六月君       鈴木 淑夫君    西村 眞悟君       木島日出夫君    児玉 健次君       瀬古由起子君    平賀 高成君       矢島 恒夫君    北沢 清功君       濱田 健一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     川崎 二郎君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   野田  毅君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国 務 大 臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  尾見 博武君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       竹島 一彦君         内閣審議官   安達 俊雄君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣総理大臣官         房審議官    佐藤 正紀君         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         総務庁長官官房         審議官     大坪 正彦君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         国土庁計画・調         整局長     小林 勇造君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         郵政省電気通信         局長      天野 定功君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      木下 博夫君         建設省道路局長 井上 啓一君         建設省住宅局長 那珂  正君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 一月二十七日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     牧野 隆守君   大原 一三君     大村 秀章君   河村 建夫君     阪上 善秀君   島村 宜伸君     新藤 義孝君   村田 吉隆君     竹本 直一君   小林  守君     細川 律夫君   肥田美代子君     仙谷 由人君   横路 孝弘君     桑原  豊君   草川 昭三君     冨沢 篤紘君   斉藤 鉄夫君     坂口  力君   春名 直章君     瀬古由起子君   平賀 高成君     児玉 健次君 同日  辞任         補欠選任   大村 秀章君     大原 一三君   阪上 善秀君     河村 建夫君   新藤 義孝君     島村 宜伸君   竹本 直一君     小野寺五典君   桑原  豊君     横路 孝弘君   仙谷 由人君     肥田美代子君   細川 律夫君     小林  守君   坂口  力君     斉藤 鉄夫君   冨沢 篤紘君     池坊 保子君   児玉 健次君     平賀 高成君   瀬古由起子君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   小野寺五典君     村田 吉隆君   池坊 保子君     草川 昭三君   矢島 恒夫君     春名 直章君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十一年度一般会計予算  平成十一年度特別会計予算  平成十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。
  3. 仙谷由人

    仙谷委員 質問に先立ちまして、先般、民主党の、我が党の菅代表質問をいたしましたときにお配りをといいましょうか、参考に見ていただくために手交をいたしました平成十年九月十八日付の「確認」という書面、それから平成十年十月一日付の覚書という書面、これを総理大臣大蔵大臣官房長官に改めてお示しをさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
  4. 中山正暉

    中山委員長 結構です。どうぞ。
  5. 仙谷由人

    仙谷委員 そこで、まず官房長官にお伺いしたいわけでございますが、この覚書という方の書面でございますね、三枚つづりになっていますが、このことについて見覚えがおありになるかどうか。それから、官房長官の御記憶ではどういう場でこの署名がなされたか、官房長官がその場に立ち会っていらっしゃったかどうか。官房長官がそのときにどのようなことをおっしゃったか。この三点についてお答えください。
  6. 野中広務

    野中国務大臣 記憶いたしております。そして、この取りまとめの方向の中で、金融再生委員会委員あるいは株価評価委員、こういう人選に当たりましても、御党初め、関係のそれぞれ党の御意向も聞かなければならない、こう考えて御党にもお伺いをした経過もございます。  以上でございます。
  7. 仙谷由人

    仙谷委員 重ねてお伺いするわけですが、国会の、この衆議院の常任委員長室で行われた席上、この十月一日付の書面は調印をされたわけでございます。それで、自由民主党民主党、平和・改革、この三会派がいずれも、幹事長政調会長国対委員長、この三役といいましょうか、国会運営の切り盛りをする最高ポスト三役がすべてそろった上でこの署名がなされた。そして、その場に官房長官も立ち会いといいましょうか同席をされた上で、政府としてもこの合意確認するというふうにおっしゃったんじゃなかったでしょうか。
  8. 野中広務

    野中国務大臣 三党間で合意されたことを承知いたしますと申し上げました。
  9. 仙谷由人

    仙谷委員 もう一枚の九月十八日の「確認」をごらんいただきたいわけでございますが、九月十八日の「確認」が行われてから九月二十六日の朝にかけて、この「確認」の意味、内容についてある種の迷走状態が発生しました。  それで、そのときには、この二項目めの「金融再生委員会設置に伴う財政金融完全分離及び金融行政一元化」というところがこの時点では問題になったのではなくて、小渕総理がアメリカに行かれて、機中で、飛行機の中でこの「特別公的管理等で対処する。」の「等」についてある種の発言をされて、それで九月十八日から九月二十六日まではある種の迷走状態に入ったわけであります。  それで、官房長官がその途中、私の記憶では九月二十五日でありますが、九月二十五日に、長期信用銀行債権放棄は認めない、この発言記者会見でなさって、九月二十六日の三会派幹事長会談になるわけでございます。  九月二十六日の三会派幹事長会談が行われて、これは午前中でございましたが、そこで九月十八日のこのいわば「確認」がもう一度再確認をされたということになりまして、新聞各紙は一斉に、長銀の合併を断念して、子会社化をしてこの株式を譲渡するというふうに書いてございます。そのことがもう一回きっかけになりまして、そこから再協議が始まったわけであります。  九月二十七日の昼過ぎから、私の記憶では午後四時だと思いますが、そこから改めて法案をきちっとつくるという実務者協議に振られたわけであります。  今度は、そこでの大議論は、金融再生委員会所掌事務及び権限、これをどのように定めるかということで与野党間で大変激しい議論が行われた。そのときには、自由民主党政調会長を初め大蔵省の幹部も別のホテル、つまり赤坂プリンスホテルに詰めて、その協議の場と連絡をとっていたということがその後の報道で書かれております。与野党間の協議としましては、二十七日の夜遅く、日本リース会社更生法適用申請をするというニュースが飛び込んできたこともあって、二十七日の夜、ほぼ合意を見た、こういう経過になっておるわけであります。  その合意は、これは官報にもその事跡が残っておりますが、私ども民主党は、平和・改革さんもそうでございましたけれども、この九月十八日の「確認」、それから十月一日の覚書にも記載されておりますけれども、要するに、財金完全分離金融行政一元化が必要だ、いつまでにやるんだということが議論になっておりまして、それは金融制度企画立案に関することというこの所掌事務の規定を大蔵省設置法から削るかどうか、そして再生委員会所掌事務及び権限にそのことを書き込むかどうか、こういう議論だったわけでございます。そのことは官房長官あるいは大蔵大臣も御承知だったと思います。いかがでございますか。まず、官房長官
  10. 野中広務

    野中国務大臣 私は、会見で、長銀債権処理は行わないなどと発言した記憶はございません。ただ、長銀に関連をする日本リース債権について、とても国民の同意を得られるようなものでないと私は一人の国民として感じるという言い方をいたしました。そのことが大きく報道をされたことは認識をしております。  その後、今仙谷委員がおっしゃいましたように、いろいろなお話がございまして、そして金融財政分離についてそれぞれ協議が行われた経過承知をいたしております。  その後、私どもといたしましては、この合意に基づく問題と省庁再編の問題をどのように整合をとっていくかということでぜひ協議をしなければならないと、こういう席で申し上げると失礼でございますけれども仙谷委員にも連絡したつもりでございますけれども外遊等で随分連絡がとれなかった事実もございました。  そういう中から、実際問題として、これから法案を提出して、そしてこの与野党合意に基づく問題で二〇〇〇年一月に実施していく上では、今日ある金融再生委員会金融監督庁、そして大蔵省の持つ金融企画局を含む組織を来年の一月までに、法整備を含めて、あるいはその役所が入る部屋のスペース等も含めながら、どのように具体的に調整をし、なお課題として残っておる破綻処理の、いわゆる所掌問題等を具体的に詰めていかなくてはならないと考えておったところでございます。  以上でございます。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金融危機管理等に関する企画立案につきましては、現在、金融再生委員会設置法におきまして、金融再生委員会大蔵省との共管となっております。
  12. 仙谷由人

    仙谷委員 柳沢長官はいらっしゃいますか。  つい最近、金融再生委員会から、金融再生委員会運営基本方針というのが発表されました。例えばここで書かれていることは、これは、金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する調査企画及び立案をすることという所掌事務に含まれるのでしょうか、含まれないのでしょうか。
  13. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 今ちょっと急な質問で、手元にその現物を持っておりませんので、一字一句詳細にフォローできかねます。  ちょっとお借りしますけれども、この基本方針は、我々が現に今与えられている法律枠組み、この枠組みの中でかなりいろいろ選択肢があり得るという書き方に当然のことながらなっております。したがいまして、その枠組みに入っておる選択肢の中から我が再生委員会として今後どのような選択肢を選択していこうとしているか、これを国民の皆様、なかんずく関係金融機関の皆さんに周知徹底する必要がある、こういうことを主眼として制定いたしたものでございまして、したがって、この枠組み自体を、若干のことを感じていないわけではありませんが、法律の改定に至るという形式をもって何か変えなければならないということを念頭に置いて定めたものでは全くありません。  以上です。
  14. 仙谷由人

    仙谷委員 真っ正面からお答えいただいていないのですが、いずれにいたしましても、こういう運営基本方針というふうなものを出す、あるいは金融再生委員会規則をつくるということは、当然のことながら、金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する調査企画及び立案ということに含まれるのは当然じゃないですか。  仮に、反対からいいますと、再生委員会にこの権限がなければ、あるいは省庁再編後の金融庁にその権限がなければ、この種の基本方針なんというものが出せないことは火を見るより明らかじゃないですか。財務省なのか大蔵省かわかりませんが、すべてそこにお伺いを立てて、そこでつくってもらわなければ、あるいは再生委員会立案したものでも、金融庁立案したものであっても、事実上、外に発表したり何らかの規則にするためには所管官庁財務省権限のある立場の人に決裁をしてもらわなければできないということになるのは、これは官庁のごく当然のやり方といいますか、論理になるんじゃありませんか。  したがいまして、私が言いたいのは、もし仮に、反対からいえば、再生委員会共管にせよ何にせよこの権限がない場合には、このようなものがつくれましたか、独自につくって独自に発表することができましたか、発表してこれを実施する、監督下にある金融機関にこのとおりやらせるということができますかということを聞いているのです。いかがですか。
  15. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 この委員会運営基本方針性格については、あるいは中身の性格については、私さきに御答弁申し上げたとおりであります。  しからば、その制定手続はいかがであったかということに焦点を絞ってお話を申し上げますと、いわゆる役所の合い議と決裁文書確認をとるというところまでやったかどうか、そういう事跡が残っているかどうかは私つまびらかにはいたしませんけれども、いずれにせよ、関係の部署ということで大蔵省当局にも当然この基本方針制定の過程でこの文書を見せていただいて、異議があれば、あるいはお気づきの点があれば教えてくれるように、こういう手続は事前にとっております。
  16. 仙谷由人

    仙谷委員 手続はとろうと何しようと、権限再生委員会にあるからできる話であって、お伺いを立てて決裁を得るという話ではないはずですよ。うなずいていらっしゃるから話を進めます。  ところが、今度の、昨日決定された大綱中央省庁等改革に係る大綱によりますと、総理大臣現行の定めと反する大綱決定になっているのですよ。我々からいえば、むしろ現行よりも一歩逆戻りした大綱が堂々とつくられてひとり歩きを始めているのですよ。どうなっているのですか、これ。  つまり、ここに、官房長官は二枚舌という表現について、大変感情的にも人権上の問題からもとおっしゃっているけれども、反論をされておりますが、つまり二枚あるのですよ、紙が。二枚あるのですよ。二律背反の紙があるのですよ。これはどうなっているのですか。  つまり、これをして、相矛盾する、相反する、二律背反、真っ向から方向性が逆なんですよ、ベクトルが。こんなものが存在することに何の矛盾も感じないといったら、本当に理解能力に欠陥があるか、日本語がわからないか、あるいは別の腹黒い意図があるか、この三つに一つですよ。どうですか。では、官房長官
  17. 野中広務

    野中国務大臣 委員承知のとおりに、省庁再編基本法が先にできておったわけであります。したがいまして、先般、菅委員の御質問につきましては、三党がその後合意したことは十分承知をいたしております、その合意に基づきまして今後この取り扱いについて与野党間で協議を進めることによってその誠実な実施に向けて努力をしたいということを申し上げてきたわけでありまして、きのう定めました大綱は、先般の省庁再編基本法に基づいて作成をしたわけでございます。  その後に合意いたしました事項につきましては、我が党の国対委員長を初めとするいわゆる関係者から、それぞれ、御党を初めとする合意をされた党及び連立を組んだ自由党を含めて、今後のこの金融財政分離についての取り扱いをどのようにして、これを閣法でいくのか、あるいは衆法でいくのか、そのことについてあの合意においては決定がされておらないために、その取り扱い協議してもらって、その取り扱い協議を得て、今後大綱に、閣法でいくとするならば閣法取り扱い衆法でこれはやっていただくということになればやっていただくというすみ分けをいたしまして、今取り扱いをお願いしておるところでございます。
  18. 仙谷由人

    仙谷委員 改めて確認をしておきますが、この大綱の中には、「金融庁所掌事務の概要」として、「国内金融に関する企画立案財務省所掌するものを除く。)」と書いてあるわけですよ。それで今度は、財務省設置法案関係大綱というのを拝見しますと、「金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案」というふうに書いてありますから、これを金融庁権限から除く、所掌事務から除くということに論理的になるわけであります。そしてまた、備考の欄に、「財務省において金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案の任務及び機能を担うのは、金融システム改革進捗状況等を勘案し、当分の間とするものとする。」これは、自社さきがけ合意がそのまま書かれておるわけですね。  いいですか。確かに基本法には書いてあります。基本法が六月の九日に成立をした。しかしその後、十月の一日に三会派合意があって、政府まで確認をされたということになってくると、その事情変更によって新たに大綱をつくったわけですから、これは一月の二十六日につくるわけですから、そのことは当然含んで書くのが当たり前だし、現に、いいですか、私はやっかんで言っているわけじゃないのですよ、やっかんで言っているのじゃないけれども、自自合意大臣の数は、ちゃんと自自合意のとおり書かれているじゃないですか。  何で、基本法に定められたもの、定められたとき以降に起こった政党間の合意で、一方はそのことを含んだ大綱をつくり、一方については大綱の中で完全に無視をして、大綱どおり法律をつくると現行法よりも退歩する。そして、財政金融分離については完全な分離、つまり共管ではなくて完全な分離、そして二元行政にならないような金融の一元行政を行うということを約束したことに、この中央省庁の改革に関する大綱では逆のことが書かれているわけですから、これは整合性などという問題ではなくて、どちらをとるかの決断を、我々から言えば一月二十六日になって改めて、あのときはこういう合意をしたけれども、改めて一月の段階では別の決断、つまり逆行する決断をした、そういうふうに受け取らざるを得ないじゃないですか。総理大臣、どうですか。
  19. 野中広務

    野中国務大臣 それは違うのでありまして、基本法が成立をした後に、先ほど仙谷委員がおっしゃったような合意が九月の終わりから十月にできたわけであります。  この合意に基づきましては、必要な法整備を行うということで、我が党の津島議員を初めとしてそれぞれ署名がされておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、これを閣法で提出するのか、衆法で提出するのかという決定がなされておらなかったために、私どもといたしましては、この大綱を決める際に、この問題については基本法のとおりにやっていくと。しかし、三党の合意があるということを十分踏まえて、三党の合意の中身を詰めていただいて、そして、これを議員立法でいくとするならば別途に取り扱っていただく弾力的なものを残し、閣法でいくとするならばこの大綱の中で定めなくてはならないということを確認をいたしましてやったのでございまして、その取り扱いについて私どもが、御党との約束をほごにしようとか先送りしようとか、そういうことをしたのではありませんし、自自合意に基づきます大臣の数というものについては、この定める大綱の中にこれを入れるということに決まりましたのでこれを入れたわけでございまして、そこのところはよく御了承願いたいと思うわけでございます。
  20. 仙谷由人

    仙谷委員 今のは極めて形式論理でございまして、一言、大綱に入れていいかというお問い合わせさえあれば、いや、どうぞということになったはずであります。  いいですか、今の話を詰めますが、官房長官お話によると、閣法衆法いずれにせよ、今国会中に法整備を完全に実行する。財金完全分離金融行政一元化、すなわち大蔵省設置法四条の八十七号だったと思いますが、大蔵省に残された金融制度企画立案という権限を現在の大蔵省設置法、新たな財務省設置法には書かない、このことを今お約束できますか。実行するということをはっきり言えますか。総理大臣、どうですか。衆法閣法か、どっちかと言っているのだから、総理大臣、言ってください。自民党総裁としてどうですか。
  21. 太田誠一

    太田国務大臣 私がこの省庁再編大綱をつくる責任者でございますので、お答えをいたしますが、三党合意の内容は、金融再生委員会設置に伴う財政金融完全分離及び金融行政一元化は、次期通常国会終了までに必要な法整備を行い、平成十二年一月一日までに実施する。これから必要な法整備を行うというのが合意内容でございますから、今はこの合意内容はないわけですね。なかったとすれば、政府側としてはこれを大綱に書きようがないわけでございます。  そしたらば、それは、私はたびたびみずから議員立法をやっておりますから知っておりますけれども、この立法については、民主党におかれても責任を三分の一は担っておられるわけでございまして、これを今国会終了までに決めるということであれば、私ならば、それはどこの党が先に問題提起をしてもいいわけでありますから、そこは御提案をされるなり協議を呼びかければよろしいんじゃないかと私は思っておるのです。  ですから、自自の合意について書いたのは、これは内容が確定をしたから私どもは入れたわけでございます。(発言する者あり)いやいや、自自の合意については内容が確定したから入れたんです。こちらは、確定していないとここに書いてあるわけだから、我々は書けないということでございます。会派間の合意でございますのでそういうことであります。
  22. 仙谷由人

    仙谷委員 総務庁長官のお答えは、まさにある種の政治的陰謀を言の葉の端から漏らしたような感じですよ。  いいですか、総理大臣、自民党総裁として、内閣総理大臣として、閣法にせよ、衆法にせよ、いずれにしても今国会中に財金分離を実現する、実行する、やりますと約束してください。
  23. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 三党の合意につきましては、これは誠実に対処しなければならぬと思いますが、そのための法整備を図っていくということにつきまして、各党間で十分御相談をいただきまして整備を図っていただきたいと思っております。
  24. 仙谷由人

    仙谷委員 自民党総裁としてそれだけしか言えませんか。実行できませんか。実行できないんですか。お答えください。
  25. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 内閣総理大臣としては、法律を施行していく立場でございますが、その法律について、整備することについての基本的な内容についての方針は定まっておるわけでございますから、三党として十分御相談をいただいて法整備を図っていただければ、そのことをもって、今後、その他の法律との整合性は十分図ってまいりたいと思っております。
  26. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、今のお話を聞いていると、内閣総理大臣としてはやる意思がないということですか。議員立法でやられるのであれば受けとめるけれども、内閣としては、大綱を今から修正して閣法で出す準備をするつもりはないというふうにお伺いしていいですか。
  27. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 先ほど基本法につきましてのお話が答弁されましたが、それとの整合性を図っていくためにはきちんとした法律がなければならぬと思いますし、その法律について、その方向は三党で合意したことは事実でございますから、それについて、自民党も含めまして十分御相談をいただきまして、法整備を図る方向がはっきりいたしますれば、その方向に基づいて基本法につきましての整備も行われることは当然だろうと考えております。
  28. 仙谷由人

    仙谷委員 整合性、整合性と言うけれども、もともと整合性はないのですよ。双方向なんです。相反する方向を向いているのですよ、この話は。だから、幾らやっても整合性は図れないのです、中身的には。どちらかに決断するしかないのです。いいですか。  よくわからないのだけれども、もう一度確認させてください。内閣としては、内閣総理大臣としても、財政金融一元化、具体的に言うと、財務省設置法から、金融破綻処理制度及び危機管理に関する調査企画立案という所掌事務を含めない、削除すると、この大綱に反して、大綱に記載されていることをやめてしまうというおつもりはあるのですか、ないのですか。
  29. 野中広務

    野中国務大臣 再三申し上げておりますように、基本法ができた後にこの合意はなされたわけでございます。その合意の中身は、いわゆる次期通常国会における内閣が提出する省庁設置法の中で定めるとは書いていないのであります。署名された三人の皆さんがそれぞれ法整備を行うと書かれておったために、私どもとしては、そのそれぞれ合意をされた党の合意が行われた中で、今後の大綱に盛って閣法としてやるのか、あるいはこの合意をされたところが衆法としておやりになるのかを求めなければならないということを考えて、そして基本に基づいてやったわけでございまして、今仙谷委員はそれをなぜ一緒にやらなかったとおっしゃいますけれども、そこには、我々が閣法で出すということは合意で書いていないわけでございます。  したがって、私どもとしては、今国対委員長を中心にいたしまして、政調担当の皆さんにも呼びかけて、これをどのように取り扱うかをまず合意した三党で決めていただき、なお与党である自由党とも協議をした上で、私どもにその回答をいただきたい。そして、それを四月に提案をする法案閣法でするとするならば盛らなくてはならない、それを衆法でおやりになるとするならば衆法にお任せしなければならないということを申し上げたわけでございまして、整合性をとらなくてはならないということを総理が先般の菅委員に対する質問にもお答えをいたしましたところはそこにもございますし、そして実際問題として、これをやるのには非常に、スペースの問題、あるいは予算の問題、人員の問題、いろいろな整合をとらなくてはならない問題があることは仙谷委員十分承知でございます。  したがいまして、そういう意味での整合性をも含めてやらせていただきたいということを先般も申し上げたところでございます。決して言葉を左右にしたことでもございませんし、二枚舌を使ったわけでもございません。
  30. 仙谷由人

    仙谷委員 官房長官、二枚舌で悪ければ、今のようなお話は、閣法衆法か書いてないじゃないか、そういうのはへ理屈というんですよ。へ理屈というんです。私に言わせればそういうことです。いいですか。  では、さっきへ返りましょう。平成十年九月十八日付の「確認」を見てください。金融再生委員会設置に伴う財政金融完全分離及び金融行政一元化は、次期通常国会終了までに所要の法律を整備する、こう書かれています。これは、党首会談における政府と我が党の約束です。間違いありませんね。間違いないですね。  この種の約束をした場合には、政府閣法でお出しになるというのが通常ではないのですか。
  31. 野中広務

    野中国務大臣 この覚書覚書として決定をされましたために、金融再生委員会設置については、当方は閣法としてお願いをしたわけであります。しかも、先ほど申し上げましたように、これによって定められた再生委員会の人選についてまで御党を含めて照会をして、そして国会の同意を得る努力をしたわけでございます。したがいまして、これは閣法としてすることがはっきりとされておるわけであります。  次の、十月一日のいわゆるお三名の方の署名につきましては、それぞれここに書かれておりますように、「次期通常国会終了までに必要な法整備を行い、平成十二年一月一日までに施行する。」ということでございまして、津島先生、中野先生、坂口先生の署名がされておるわけでございまして、これは、いわゆる閣法でやるのか衆法でやるのか、いわゆる党の合意でございますから、決定されておらないわけでございます。もし私どもが先般の大綱の中にこれを先に盛り込んでおったとしたら、我々はこれは政党間でやるんだったのになぜおまえたちは先を越したといって、むしろおしかりをいただくことを私どもは考えて、十分配慮したつもりでございます。
  32. 仙谷由人

    仙谷委員 いや、官房長官、そこまで理屈をこねられるとますますおかしくなる。余りそういう素直じゃない解釈をしてはならない。  つまり、いいですか、官房長官の説によると、次期通常国会終了までに所要の法律を整備するという文言であれば、これは閣法だ、こうおっしゃるわけ。閣法をつくる義務があるかもわからないとおっしゃっているわけ。いいですか、「次期通常国会終了までに必要な法整備を行い、」だったら衆法閣法かわからない。こんなでたらめなことがありますか。  普通、政党間の、特に与党と野党の合意をするときに、閣法でやるか衆法でやるか、そこまで、そんな細かいことまで協定書に書くなんということがありますか。それは言いがかりですよ。そんな不誠実なことをおっしゃるのだったら、我々、これは予算委員会質問続けられないですよ。いいですか、政党間の合意というものがそんなに鴻毛より軽いような話では、我々はできませんよ。こんな不誠実な態度では質問できない。
  33. 中山正暉

    中山委員長 どうぞ、質問を続行してください。  仙谷先生に申し上げますが、理事会で決定をしておらない質疑順位に採択しました仙谷先生につきましては、池田理事の申告によって質疑いただくことにいたしましたものですから、これは委員長が好意的に配慮してお願いした予定外の質疑でございますので、ぜひひとつ続行していただきたいと思います。(発言する者あり)  ちょっと速記、速記録、とめてください。     〔速記中止〕
  34. 中山正暉

    中山委員長 速記を起こしてください。  野中官房長官
  35. 野中広務

    野中国務大臣 私、先ほど金融再生委員会設置について閣法でやったように言いましたけれども、これも議員立法でお願いをしたわけでございます。  したがいまして、三党の合意に基づいてもそこのところを十分配慮しなければならないということでやってまいったということでございます。  若干間違いがありましたので、訂正しておきます。(発言する者あり)
  36. 中山正暉

    中山委員長 仙谷議員に申し上げますが、ぜひひとつ続行してください。続行して、その中で究明していただけばいいじゃないですか。せっかくの機会を無言で終わるというのはもったいないです。
  37. 仙谷由人

    仙谷委員 今度、では、大蔵大臣に聞きましょう。  大蔵大臣、この財政金融完全分離金融行政一元化について、当時は、昨年の九月、十月ごろは否定的な見解をお持ちでしたよね。現在でも大蔵大臣としても反対なんじゃないんですか、どうですか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、昨年以来いろいろ御議論がございまして、私は、自分の役所に関することでございますから、これについての御決定は、総理、閣議及び国会の御決定に従う、それが私の立場です。
  39. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、大蔵大臣、昨年の十月一日の合意によってもう決着はついているわけですね。あとは法技術的にどう書くかというだけの話なんです。それでよろしいんですね。お答えください。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、先ほど官房長官が御答弁をされました。私は、国会の御決定あるいは閣議の御決定には従います。
  41. 仙谷由人

    仙谷委員 いわば財務省財政省ですか、財務省になる現在の大蔵省が、この権限を手放してもいい、そういう国会の意思ならば手放してもいい、内閣全体の意思ならば手放してもいいということを言っておるわけですから、これは官房長官、もう一度聞きますが、十月一日のこの覚書ができた席上に官房長官がいらっしゃって関係会派関係者に、労をねぎらった後で、政府として確認をして尊重するとおっしゃいませんでしたか。その言葉が、今おっしゃっているように閣法衆法かわからない、そんな軽いものなんですか。政府を代表して来られたと私は思っていた。野中広務一個人がその場にふらっとあらわれてきて、やあ御苦労さんと慰労をしたとは思っていませんよ。  官房長官、当時の状況からして、与党があるいは政府が、ブリッジバンク法案を取り下げてまで金融再生法をつくる、その必要な道具として金融再生委員会設置法をつくる、関係法律の整備に関する法律にも共同で修正をして提起をする。その中で官房長官が、三会派幹事長政調会長国対委員長がいらっしゃる、そしてそこで実務者の責任者として、両方兼ねている人もおりましたけれども、サインをする、その場でおっしゃられた、尊重するとか、政府としても確認するとか、そういう言葉がそんなに軽いんですか。おまえたちの勝手だ、議員立法で出してくるんだったらどうぞ、そんな軽い話なんですか。(発言する者あり)決まっているんですよ、もう。
  42. 野中広務

    野中国務大臣 仙谷委員、おまえたちで出してくるなら勝手だとか、そんな意味で私申し上げておるわけではありません。  私どもは、議会の合意というものがどんなに重いものかということを考えて、この中の合意の前提に立った金融再生委員会の予算等について政府は措置するということについては、議員立法で金融再生委員会が行われたときに予算措置もすることをお約束いたしましたし、もちろん、連日の徹夜の中で行われた経緯も存じておりますから、その最終の場面において皆さん方の努力に私は感謝をし、またそのお取り扱いについて誠心誠意政府としてやることを申し上げたわけでございまして、今おっしゃったように、おまえたちの合意は軽やかなものだなんていうのなら、私どもはこういう発言をいたしておりません。我々はむしろ、大綱を定めるのに合意を踏まえて、我々が勝手にやってはいけないということで、国対委員長を中心にいたしまして、それぞれ合意をされた党に、この内容について閣法でやるべきなのか衆法でやるべきなのかをぜひ決めていただきたいということを投げかけておるはずでございます。  したがって、この大綱大綱としてもとの基本法に基づいてやりますけれども、あの三党合意を踏まえた取り扱いについては別途それぞれ三党間において御協議をいただき、あわせて、連立を組んで、このときには署名に加わっておられない自由党の協議をも含めて、ぜひ党間で合意をいただいたものについて我々は対応したいということを申し上げてきたわけでございまして、今、それほど軽やかなものかなんかとおっしゃることは、むしろ私は、みずから合意をされた合意事項を政党が否定をされるのかと言いたいぐらいに、私どもは謙虚に取り扱っておるわけでございます。
  43. 仙谷由人

    仙谷委員 今のは野中先生流の逆さまどりみたいな論理なんですよ、僕に言わせれば。(発言する者あり)いや、そうですよ。  これは、大綱の修正ということを速やかに行うというお気持ちが、本部長、ありますか。中央省庁等改革推進本部長、いかがですか。  つまり、十月一日の覚書に基づいて、そこで定められたように、そして、その覚書に従って半分つくられた金融再生委員会設置法あるいは金融再生法、あるいは関係法律の整備に関する法律、この内容を財金完全分離及び金融行政一元化方向性を持った中身に、中央省庁等改革に係る大綱、これを修正するおつもりがあるんですか、ないんですか。
  44. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これも先ほど申し上げましたが、三党間で再生法を成立させるに至りまして、本当に深夜にわたりまして熱心な御協議をされ、官房長官も最終的に、今お話しのように、出席をされて、誠実にこの問題について対処しようということについてまとまったことについて、私は、自民党の総裁という立場で考えれば、まことにそのとおり実行していくことでございます。  ただ、現行法がございます中で、また今後の基本的な基本法が存在いたします中で、政党間の話し合いについては、これは政党間できちんとおまとめをいただきまして法的措置を講じていただければ、そのことの法律に基づいて、内閣総理大臣としてはこれを実行していくというのが私の役割である、こう考えております。
  45. 仙谷由人

    仙谷委員 端的にお答えいただきたいんですが、この大綱、十三ページ「金融庁所掌事務の概要」その中の「(財務省所掌するものを除く。)」そして、この規定を含んでおっても、矛盾、そごを来さないようにするためには、四十三ページ「金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案」、それから四十五ページの備考、これを削除するという大綱の修正を行うおつもりがありますか。
  46. 太田誠一

    太田国務大臣 大綱につきましては、私が責任者でやっておりますので、私がお答えをいたします。内閣は、国務大臣が連帯して責任を持っておるのでありまして、総理や大蔵大臣だけが責任を持っているわけじゃありませんから。  そこで、私が今申し上げたいのは、今おっしゃったことは、今の大綱の内容は、これは基本法のとおりにそのまま書いておりまして、三党で合意をされましたらば、直ちにそれは今書いてあることを全部書き直して、整合性のあるものに書きかえるということははっきり申し上げられます。
  47. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると今度は、三党の合意はもうはっきりしているんですよ、あと何を詰めろとおっしゃるんですか。財金完全分離金融行政一元化、はっきりしておるわけですよ。今申し上げたように、大綱のうち、この四十三ページと四十五ページを削除すればいいんですよ。削除すればいい。もうそれだけで、十月一日の覚書が完全に生かされるわけであります。いいですか。  そのことについて、改めて三会派合意が何か要るというんですか。これは三会派合意したんですよ。既にしてあるんですよ。そういう改めて合意が要るかのごときことをおっしゃるから、二枚あるとか言を左右にするとか、こういう話になるんじゃありませんか。もっと誠実にお読みになったらどうですか、事の経過と文言を。
  48. 野中広務

    野中国務大臣 誠実にお答えしておりますので、私はお酌み取りいただきたいと思うのですが、これは大綱でございます。省庁基本法に基づいて大綱を決めたわけでございます。  今後、この大綱に基づいて、省庁設置法案を四月に出すわけでございます。その間、三党合意もある経過にかんがみまして、三党間でぜひこれを、この設置法の中で閣法として提案をするのか、あるいは、衆法として議員立法で再生委員会と同じようにお取り扱いになるのかを確認してもらいたいということは、既に投げかけてあるはずであります。  その回答が返ってきたら、私どもは、これを閣法でやれということであれば、太田総務庁長官お話しになりましたように、これは設置法の中に織り込むわけでございまして、大綱の段階はあくまで基本法に基づいてやるのが私ども取り扱いでございます。それでは大臣の数とおっしゃいますかもわかりませんが、自自の合意に基づくのは、大綱の中にこれを織り込みなさいということで合意がされたから、私どもとしては、大臣の数については織り込んだ次第であります。
  49. 仙谷由人

    仙谷委員 だんだん詰まってきました。  では、投げかけてあるというのは、だれに投げかけたんですか。少なくとも民主党は投げかけられていませんよ、今の話、最大限譲るとしましても。聞いていませんよ。ちゃんと、だれに投げたのか、おっしゃってください。
  50. 野中広務

    野中国務大臣 私どもは、自由民主党の古賀国会対策委員長にその取り扱いをお願いいたしております。古賀国対委員長は、署名をされた津島議員を通じてお願いしたと私は伺っております。
  51. 仙谷由人

    仙谷委員 総務庁長官総務庁長官の方からも、取りまとめの責任者としてだれかに投げかけてあるんですか。
  52. 太田誠一

    太田国務大臣 それは、今は、私が古賀国対委員長の方に、三党協議に入られるのかどうかということを確認いたしたわけでございます。今ちょっと、それから先、自民党の国対委員長の方から御党にそのような申し入れを既にしているかどうかということは、確認はできておりません。
  53. 仙谷由人

    仙谷委員 これは、所管庁を通じないで官房長官がそういう指示をされたのかもわかりませんので、だれに投げかけたかということは別にしましょう。  そうしますと、三会派のどんな合意が改めてできれば大綱を書き直す、修正するというふうにおっしゃるのですか。
  54. 太田誠一

    太田国務大臣 三会派合意の内容を、三会派合意はこういうことである、今は何ももうつけ加えるものはない、消せばいいんだとおっしゃったけれども、そのこと自体も三会派で、それでいいのかどうか、消せば三党ともすべてこの合意の趣旨を体現するものであるということであるならば、それはそれでお受けとめ申し上げまして、政府政府としての立場がございますので、そこで初めて我々は判断をして、恐らくそれはほとんど書きかえることになるでしょうね。それは潔くそういうふうにいたします。
  55. 仙谷由人

    仙谷委員 十月一日の覚書は、そんなにいろいろこれから協議なんかしなくとも、書き加えなくとも、常識のある人が見ればわかるわけですよ。  それはなぜわかるかというと、その後の金融再生委員会設置法なり、金融再生法なり、関係法律の整備に関する法律のところで、当然のことながら、大蔵省は後ろからこんなことをやってもらっては困るとか困らないとかという話があったわけですから、全部わかっているわけですね。政府もわかっているわけです。  それで合意をしたわけですから、大綱的定め方としては、私が先ほど申し上げたように、四十三ページのこの規定、四十五ページの規定を削除すれば、それでいいんですと私は思います。  そのことぐらいはわかるわけですから、今、太田長官は潔くやるとおっしゃったんですから、総理大臣も、太田長官の言うとおりだ、私も潔くやるとおっしゃってください。
  56. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 言葉の問題で、潔くか、ちゅうちょするかは別にいたしましても、三党できちんと法的にどういうふうな措置を講ずるかということで、その法律がどのような形であるかにつきましては、官房長官閣法か議員立法かということのお話がございましたが、きちんとその約束を果たすための法律を制定いたしますれば、それはそのとおりに、基本法を改めるか、あるいは設置法を考える段階でいたしますかどうか、そのことは、実態的には金融再生委員会が十三年の三月三十一日までこの考え方、この基本的な処理をする、事務として挙げておられる二つの大きな問題についてこれを実行していくという今過程にあるわけでございます。  そうしたことを考えますと、基本法があり、そして、それに対して新しい設置法をつくる場合に、今、三党で合意をされたことをどのような形でいたすかということできちんとした国会における処理がなされれば、それは政府としては、それに当然のことながら準拠して、この法律を適用させていただいて措置いたしていくというのが今度私の立場であろうとも考えております。
  57. 仙谷由人

    仙谷委員 官房長官太田長官が先ほど、まだ確認できないと言っています。どうも官房長官のおっしゃられたのも、我が党に対しても、国対委員長としての正式の再々確認が必要だとか、あるいは合意についてもう一度再確認したいとかという正式のお話でないようですね、総務庁長官からの話もお伺いしますと。  私どもの立場は、財政金融完全分離金融行政一元化というのは、中身の点においてもそれほど疑義の発生するような概念ではない、テクニカルタームではないと自信を持っているんですね。当然のことながら閣法で処理されると。もし閣法で処理してもいいかというお問い合わせが正式にあるんならば、それが懸念の材料ならば、いつでもお聞きください。いつでもお答えできるでしょう。  もし、この合意の中に法律概念としての疑義がある、しかし、この文言を実現するためにその方向で、もっと言えば中央省庁改革基本法とは相矛盾する条項についても十月一日の確認方向で、約束の方向で実施をする。しかし、ここに疑義があるから、より、実務者協議なのか、政調会長協議なのか、国対委員長を含めた協議なのかわからないけれども、そういうことが必要だとおっしゃるんだったら、そういう明確な指示をしかるべきラインを通って国対委員長にされたらどうですか。我が民主党国対委員長にそういうことを正式に申し入れられたらどうですか。そして、そのことによって大綱が修正されるというんならば、どんどんやりましょう、こんなものは。こんなところでつまずいてやる必要は全くない。どんどんやりましょう。
  58. 太田誠一

    太田国務大臣 まことに申しわけございません。古賀委員長にその旨を申し入れをする役目は私の役目でございましたので、官房長官の先ほどのお話も含めて、きのう、きょうの話でございますので、どうぞ、いずれ、間近にそういうあれがあろうかと思います。ぜひ前向きに御検討をいただきたいと思います。
  59. 仙谷由人

    仙谷委員 まだ、何といいましょうか、一半の不安を禁じ得ないわけでございます。つまり、ずっとこの財金分離についての協議が難航した。なぜ難航したか。その後予算づけでどうしたかということについて、我々、全く懸念を払拭し得たわけではないのですね。どうもサボタージュが行われるのではないかという懸念があるのです。  それで、総理の御答弁がややもするとわかりにくい。一たん約束をされて、自民党総裁としても、あるいは当時の政府としても、この法案を受け入れて十月一日の覚書確認したわけですから、やはり、綸言汗のごとしといいます、一遍言ったものをそうそう簡単に取り消したり相反することをやられると政治不信にもつながります。私も、こんな質問を今の段階ですることは、非常に悲しいといいましょうか、残念だと思いながらきょう来ております。  どうかひとつ、議会制民主主義の中の政党間の協議ですから、こういう約束したことと相反するような大綱がつくられるとか、それが単に手続的な理由でそうだったとか、そういうことのないように強く私の方からもお願いをいたしまして、きょうの緊急の質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  60. 野中広務

    野中国務大臣 政府だけが非常に誠意がないようなとられ方を一方的にこの場でされることは、私残念だと思っております。少なくともあの金融関連国会を通じて、それぞれ深夜に及ぶあるいは徹夜に及ぶ御苦労をいただいた結果、金融再生委員会はスタートをしたわけでございまして、この覚書に載っておる再生委員会の予算措置等を含めて、政府が行うべきことは行ってきたつもりでございます。  ただ、一連の問題は、それぞれ三党を代表される実務者の方が合意をしておられますので、その取り扱いについては三党において御協議をいただきたいということも大綱決定する際にお願いをして、その結論が出てきてから、先ほど申し上げたように、閣法でいくのか衆法でいくのかを我々は決めたいということでありまして、この場でむしろそういう問題が出ることが、私は今日まで、再生委員のメンバーの問題、株価算定委員の問題、すべて御党と協議を進めてきたつもりであります。  そして、そういう中で、再生委員は、いや、兼務はいけないといって御党からお話がありました。なかなか兼務をしないで再生委員に専任をしていただくことの人選も非常に困難でありました。そういうことも含めて誠心誠意やってきたつもりでございます。あるいは、株価算定委員についてもそうでございます。  政府としては、今日まで、金融再生委員会について、あの短時日に再生委員会を立ち上げて、そして非常に混乱して、長銀、日債銀等混乱する中におけるあの取り扱いというのは大変でございましたけれども、庁舎の問題、人員の問題、すべて誠意を持ってやってまいったはずでありまして、むしろ政府のこの誠意について評価をいただいて、そして今後の大綱について、設置法に至る間には三党が合意をされ、あるいは自由党を含めた合意を私どもにいただければ、太田長官が申し上げたように、その趣旨に沿って取り扱いをやっていき、整合性を持っていきたいと考えておる次第であります。
  61. 仙谷由人

    仙谷委員 官房長官が、再生委員会の発足、その後の措置等について大変御尽力をされて、誠意を持ってなさったということは十二分に評価いたしております。評価しておりますだけに、再生委員会が自律的な権限を持ってこれだけ、全面的な評価はまだ今の段階ですべきでないと私は思っていますが、仄聞したり報道を見たりしておる限りにおいては十二分に評価し得ると思っておりますだけに、こういう相反する大綱再生委員会あるいは金融庁から権限をもぎ取るような大綱を平気でつくられると、どういうことなんだ、こういう話になるじゃないですか。  大綱決定する前に三会派協議をしてほしいという話は、一切民主党には伝わってきていませんよということも申し上げて、私は、評価をしておるからこそ、こういうことを申し上げておるということをテークノートしてください。  終わります。
  62. 中山正暉

    中山委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田克也君。
  63. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党の岡田克也です。  時間も限られておりますので、端的に聞きたいと思いますから、端的にお答えいただきたいと思います。  まずは野田大臣政府委員制度の廃止の問題でありますが、この問題につきましては、私ども菅代表が一昨日質問をいたしまして、それなりのお答えは野田大臣及び総理からいただいているわけでありますが、私は、まだ若干のあいまいさが残っている、こういうふうに、拝聴しておって思いました。議事録を確認しても若干のあいまいさがあると思います。  そこで、端的に聞きますので、イエス、ノーではっきりお答えをいただきたい、そういうふうに思いますが、政府委員制度で自自の合意は、参考人、つまり政府の職員を国会側の要求によって出席させることができるというのが自自の合意であります。もうちょっと詳しく言いますと、「執行状況・技術的説明のため、国会側からの要求により、政府職員を参考人(仮称)として出席させることができる」ということであります。  問題は、この国会側の要求によりということの意味であります。この意味を野田大臣にお聞きしますが、ここで言う国会側というのは質問者である、つまり、質問者の意に反して政府職員が答弁をすることはない、こういうふうに考えていいかどうか、野田大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
  64. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今、岡田委員申されたとおりであります。ここが一番大事なポイントでして、質問者の要求もないのに、勝手に委員長政府委員を今までなら指名をしてということがあり得たわけです。逆に言うと、一方で、これは国会法の第七十条で、現行政府委員は、言うなら、権利として、国会に通告すれば出席し、発言することができるという裏づけがあったわけです。そういう点で、それじゃよくない、どういう名目であれ、そういうことはやらないということなんです。
  65. 岡田克也

    ○岡田委員 ということは、例えば、質問者、私が説明員を要求しないにもかかわらず、委員長が指名をするとか、あるいは委員会理事会で多数決で決める、こういうような形で答弁をさせるということは一〇〇%ない、こういうことでよろしいですね。もし、よろしければ、総理も同じ考えかどうか、確認をしておきたいと思います。
  66. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 これは、そういう考えであります。ただし、そのときに、ぜひここはお互いしっかり頭に置いておきたいと思います。委員会運営も変わるんだということもあわせて行われるということです。  今のように、一方が質問側で一方が受け身側でという、いわゆる一方通行的なことではなくて、議会運営そのもの、委員会運営そのものが双方向議論になるということ、これが大前提であるということでなければ、この議論は成り立たないんです。そういうことをぜひ、現行委員会のやり方が根本から変わるんだということもあわせて御理解を願いたいと思います。
  67. 岡田克也

    ○岡田委員 委員会が双方向になるというのは結構なことだと思います。そのとおりだと思います。  もう一度総理に確認しますが、質問者が求めないのに政府職員が答弁をすることはないという点について、そのとおりだという確認をしていただきたいと思います。
  68. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 プロジェクトチームで合意したことは、そのとおりであると思います。
  69. 岡田克也

    ○岡田委員 プロジェクトチームで合意したかどうかではなくて、総理としてそういう考え方であるかどうかを確認しているんです。
  70. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 基本的考え方はそのとおりだと思います。
  71. 岡田克也

    ○岡田委員 この点が非常に大事なポイントであるということは、野田大臣おっしゃるとおりであります。  今かなり明確なお答えはいただいたと思いますが、この点について、もしこれが実現しないということになりますと、野田さんはこの責任者ですよね。閣僚の中での政府委員答弁の責任者であるというふうに聞いておりますが、野田さんが先ほど答弁されたとおりのことが実現されなければ大臣をやめるぐらいの決意を持ってこれをやっていただく、こういうことで理解をしておきたいと思います。  次に参ります。  国連の平和活動の位置づけについてお聞きしたいと思います。  きのうから何度か議論もあり、そして内閣の考え方というのも示されておりますが、まず、この自民・自由合意の中で、従来の憲法解釈が変わったのか変わらないのかという点について総理に確認したいと思います。  従来の自由党の考え方というのは、国連決議に基づく多国籍軍への参加とかあるいは国連軍への参加というのは、これは憲法九条の問題ではない、憲法前文からくる話であって、したがって、場合によっては、武力行使も含めた幅広い範囲でそれに参加することが憲法上は可能であると。それに対して、そういう国連の決議がない場合についてはかなり抑制的に、従来政府が考えてきたよりもむしろ狭く、九条を厳格に運用する、これが自由党の小沢党首の議論であります。  そういう考え方はこの自民・自由の合意では採用されなかった、つまり、従来の政府の憲法解釈がそのまま通った、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。
  72. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今般の自自合意におきましては、従来の政府の憲法解釈を変更しない点で一致をいたしており、政府としては従来の憲法解釈を変更する考えのないことはしばしば申し上げておるとおりでございます。
  73. 岡田克也

    ○岡田委員 そうすると、野田大臣、今の総理の御答弁のとおりだとすると、自由党の主張というのはどこへ行ったのか。憲法論、解釈論を変えないということになりますと、自由党の主張は全面却下された、憲法に関しては全面却下された、こういうふうに考えられますが、そういう理解でよろしいですか。
  74. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 自由党の憲法に対する解釈は、それはそれとして厳然としてあって結構だと思っています。しかし、そのことと、現実の、具体的にどういうような政策判断を下すかということとはおのずから違ってくることだと思っています。  そこで、この連立内閣をつくるに当たって、自由党の今までの解釈は解釈として、連立政権に当たっては、今日までの政府の憲法に対する見解を前提とする中で連立政権をつくった、こういうことでありますから、私としては、連立内閣、小渕内閣の一員として政府の憲法解釈に従っていこうということと同時に、自由党においても、その政府の憲法解釈という枠の中でこれからのさまざまな事柄、法案等について対応していこう、こういうことであります。
  75. 岡田克也

    ○岡田委員 今まで例えば小沢党首がテレビ等で何回も述べてきたことは、従来の憲法解釈が非常にあいまいでずるずる拡大していく、そういうことをやめて、きちんとルール化しなきゃいけないんだ、こういうことを言っていますね。  ルール化するということは、それは、小沢党首言うところの、国連決議がある場合にはいいけれども、国連決議がない場合には抑制的にやるんだ、こういうことをおっしゃっていると思うんです。その憲法解釈がとられなかったということは、じゃ、小沢党首みずから認められるように、ずるずる拡大する危険があるものに合意したということになりませんか。
  76. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 私どもはそうは理解しておりません。  ただ、その点で、今までの憲法解釈等について、いわゆる湾岸戦争のころに行われた説明というものと、今回、ガイドラインに基づく周辺事態法に関連する解釈の問題について、前回までそれほど十分な整理がなされなかった説明の事柄が今回はきちんと整理をして説明ができるという、言うならそこのところの説明ができたという理解の上でやっておるわけでありますから、そういう点では、私どもは、この政府の解釈のままでずるずると拡大解釈的なことにつながっていくということにはならないという歯どめができたと思っています。
  77. 岡田克也

    ○岡田委員 今おっしゃったのは個別具体的な話でありまして、従来自由党が言っていたのはそういう話じゃないはずですね。ですから、国連決議がある、ないできちっと分けて、そういう議論がいいかどうかは別ですよ。しかし、国連決議がない場合には憲法九条というものを非常に厳格に運用していく、そして、従来政府がやっていたことはそれがかなりいいかげんだ、こういうことを言っていたわけですから、そういう解釈をとらなかったということは、私は政策合致していないと思うんですね。だから、政策に基づいて、政策が一致するからその実現のために自自連立をつくるんだとおっしゃりながら、ここの政策が全然一致していないのになぜ政策合意なんということを言われるのか、私は全く理解できないんですが、いかがでしょうか。
  78. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今回、憲法上できることと、それから政策判断としてやること、やらないことということの整理ができたわけであります。そういう点で、私は、政策の一致というか、これは完全にできたと考えております。当然のことだと思います。
  79. 岡田克也

    ○岡田委員 政策と憲法を分けられたけれども、憲法をどう考えるかなどというのは一番政策の基本のところじゃないですか。そして、従来、そのことを自由党の中では国連安全保障という概念を用いて盛んに説明してこられたわけでしょう。それが全部憲法論としては却下されて、それで合意するというのは、これは野合そのものじゃないですか。
  80. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 民主党の岡田さんからそういうことを聞くとは思わなかったんですが、民主党の中でも憲法に対する解釈が随分違うんじゃないでしょうか。  私は、国会に憲法調査委員会を置くか置かないかについても、現にこの前、民主党の中でも随分議論の違う意見が公に表明されていることだと思っています。私は、そういう点で、憲法についての解釈が云々ということだけで今のようなお話になるのはいかがかというふうに思いますよ。
  81. 岡田克也

    ○岡田委員 憲法についていろいろな考え方があるというのは、それは民主党もそうですけれども、自由党も自民党も同じだと思います。問題は、今回の自自合意、そして連立政権をつくった理由が、政策が一致したことをもって、その一点で合意したんだというふうにおっしゃるから問題になるわけですよ。政策が一致していないのにそういうことをおっしゃっているということは、それは国民を欺いていることになるんじゃないですか、そういうことを申し上げているわけであります。
  82. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 政策一致していないということを盛んにおっしゃりたいようですが、少なくとも安全保障の基本的な考え方についても公表いたしております。そういう点で、未整理であったところについて、特に国連の平和活動への我が国の参加、協力のあり方についてここまでちゃんとしておるわけでありまして、私は逆にお伺いしたいんですよ。民主党は、ではこのことについてこれだけのことをあなた方は自分の党で書けますか。そういったことについて、全体、大きく四項目にわたって、安全保障の基本的考え方について両党間で現に合意しているわけです。  それから、周辺事態法に関しても、一刻も早くこれを整備するということ、成立させなきゃならぬということにおいて、率直に言って、今日本が置かれている環境から見て、皆さんはどうお考えになっているかわかりませんが、私は、本当に大事な、最優先課題の一つでもあるという認識をしています。私は、この点は両党における非常に大事な認識の一致の一つでもあると思っていますよ。
  83. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党の安全保障政策は、今非常に幅広い視点で議論をしておりますので、幅広い視点という意味は、意見が違うということじゃありません。自民党も自由党も議論していないような根本的なところに踏み込んで議論している、そういう意味であります。したがって、それは間もなく私どもとしてお示しできると思っております。  いずれにしても、今私が申し上げた、憲法について基本的な違いがある、そういう中での政策本意の連立などというのは、私にとっては理解できないということをまず申し上げておきたいと思います。これはまた後でやります。  憲法解釈は棚上げして自自連立ができたということでありますが、その上で、では政策は一致しているのかどうかということについてお聞きします。  政策論として、武力行使、それからそれに一体化するものというのは、これは憲法九条でできない、こういう考え方に政府は立っておられると思いますけれども、そのときに、武力行使及びその一体化の範囲というものが、国連決議がある場合と国連決議がない、例えば日米安保とか、あるいは自衛隊が独自に動く場合で、その範囲というものは異なるのでしょうか、それとも基本的には一致するのでしょうか。総理。
  84. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは一致をしておるものと考えております。
  85. 岡田克也

    ○岡田委員 一致をしているということですね。  そうすると、国連決議がある場合と国連決議がない場合の、その憲法上禁じられている武力行使及びその一体化したという範囲は一致している、こういうことでありますが、官房長官はそれでいいのですか。  官房長官のきのうのいろいろな記者会見とかを読んでおりますと、そこを分けておられますよね。きのうの記者会見の中では、国連決議に基づく多国籍軍等の場合については、それは日米安保の上に立ったものではない、国際連合の活動に対する問題でありますから、そこのところは一概に、戦闘行為、武力行為に一体化しないという状況の判断というのが非常に難しい、慎重を期すべきだ、こういうことを言っておりますね。  ということは、官房長官は、昨日の記者会見で、国連決議がある多国籍軍の場合には、むしろ憲法の禁ずる武力行使及びその一体化する範囲というものを広くとって、より慎重に考えるべきだ、こういうふうにおっしゃっているというふうに私は理解しましたが、違うのでしょうか。
  86. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 実は、御党の菅代表の御質問のときに、いわゆる多国籍軍と、現下国会法律制定をお願いいたしておりますガイドライン法とやや混同した形で受け取られた点もございましたので、その点につきまして、政府としての統一的な見解を明らかにいたしたわけでございまして、大変恐縮でございますが、改めて、誤解を招かないように、岡田委員十分御承知のところだと思いますが、この点について、政府の考え方を明らかにさせていただきたいと思います。  いわゆる国連平和活動における多国籍軍、多国籍軍という言葉がまず出てまいりますものですから、一体多国籍軍とは何ぞやという議論なしにお話が展開していったという点もございます。そこで、こうした多国籍軍の概念がそういう意味で実ははっきりしておらないということではありますが、いわゆるということで申し上げさせていただければ、その多国籍軍に対する後方支援について、周辺事態安全確保法案にある後方地域支援とは異なる。先ほど申し上げましたように、この点は全く異なっておる。  そして、同時にまた、法律も実は作成をされておりませんで、いわゆる多国籍軍に対する後方支援でございますが、そういう意味で、具体的な関与のあり方については今後検討を進めていく問題であるとは承知しております。政府としては、国会にお諮りしておりますこのガイドライン、指針関連法案でありまして、まずその点についての議論をお願いいたしたいと思っております。  そうした前提で、一般論として申し上げれば、憲法上、多国籍軍にいかなる後方支援をなし得るかについては、個々の具体的ケースにおいて、武力の行使と一体化するかどうかという観点から判断されるべきものである。さらに、実際に多国籍軍に対する武器弾薬の輸送を含めいかなる後方支援を行うかについては、憲法解釈上の問題を加えまして、諸般の情勢を総合的に勘案した上で慎重に判断すべきものと考えております。  憲法上、このような多国籍軍に対する後方支援も、周辺事態安全確保法に基づく米軍に対する後方地域支援も、武力の行使と一体化するか否かという観点からその可否を判断するものでありまして、しかし、既に具体的な法案国会にお諮りしておる周辺事態に際する日米協力と、法律すら作成されていない多国籍軍に対する支援を一概に単純に比較するのは極めて困難であり、いずれにせよ、政府としてはまずは指針関連法案についての御議論をお願いしておるところでございますが、お尋ねがありまして、この多国籍軍に対する武器弾薬の支援についてということでありましたので、私はそのときに、行為と一体化しないということにおきまして、憲法上の解釈におきましてはこれは許されるものであるという答弁をいたしました。  しかし、実際に政府としてどういう行為を行うかということにつきましては、最初申し上げましたように、多国籍軍そのものについての概念の規定がまだはっきりしておらないこともあり、法的整備もされておらない、当然のことでありますが。  でございますので、官房長官記者会見におきまして、現政府としてはそのような考え方をしておらないということを申されたことが、政府における不一致ではないかという御指摘がありましたが、私としては、私が答弁したことと官房長官記者会見で申されたことには何らの閣内における基本的考え方に相違はない、私は官房長官発言もそのままに理解をしておる、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  87. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明で、憲法上の制約と、それから政策的といいますか、これは当然法律が要ると思いますが、法律上あるいは政策的にこうするというのはこれは別だ、こういう論理であります。  そこで、官房長官にお聞きしますが、それじゃ国連決議に基づく多国籍軍の行動というのは、憲法上の問題はちょっと別にしまして、政策論として、あるいは法律上、それはより慎重に考えるべきだというふうに官房長官はお考えなんでしょうか。
  88. 野中広務

    野中国務大臣 今総理が申し上げたとおりでございまして、たとえ憲法が許容する範囲であったとしても、またその前提として多国籍軍は概念が明確でもないわけでございますから、たとえの例として憲法が許容する範囲であったとしても、その行動についてより慎重であるべきということは、先ほど総理が申し上げたとおりでございます。
  89. 岡田克也

    ○岡田委員 官房長官のお考えは、一つの論理としてはわかるわけでありますが、もちろん多国籍軍が性格がはっきりしないというのは、国連決議に基づく多国籍軍という前提での議論だということであります。  私は野田大臣にちょっとお聞きしたいのですが、今官房長官の言われたことは自自合意とちょっと違うのじゃないですか。自自合意の中ではこう書いてあるのですよね。国連の決議があり、かつ要請がある場合には、「武力行使と一体化するものでない限り、積極的に参加・協力する」。官房長官はより慎重だとおっしゃるし、自民・自由合意は「積極的に参加・協力する」と書いてあるし、ここはどうなんでしょうか。
  90. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 私は、そこのところは似たようなものだと思っています。それは、多国籍軍というと非常に、何か単一の、この前の湾岸戦争のときのことだけをイメージしがちであります。しかし、実際問題、今、今日はそういうものは存在していませんし、今後どういう形で、本当に国連憲章に基づく国連軍の構成に極めて限りなく近いような形での多国籍軍ということもあり得るだろうし、一体世界じゅうのどれだけの国がそれに参加するのか、あるいはわずか数カ国で構成されるのか。そういう意味で、実際にこれから発生する可能性がある多国籍軍というのはどのようなものであるのかということを、今からあらかじめ特定の形だけを想定することはなかなか難しいのではないか。  そういった点で、その必要性が一体地球上のどこで発生するのか、あるいは日本が国連からの要請としてどういう場面で協力の要請をされるのか、どういう部分の協力を要請されるのか、そういったさまざまなことを考えた場合に、当然日本の持っておる能力ということと無関係に要請があるとも思えない。要請の内容ということとも関連するわけであります。  そういったことを前提として行われた場合には積極的に参加、協力していいんじゃないですかということであって、何かそういうことが発生した場合に、常にアグレッシブにどんどんやっていけということを自由党として言ってきたことではないのであって、そういう点で、今後、どういうことがあるかわからないものを想定して、無理に何でもいつでもということじゃなくて、今官房長官が申されたように、そういった具体的なことを頭に置きつつ、やはり物事というのは慎重に検討していっていいんじゃないかというのは、私はそれで結構なことだ、何ら矛盾する話ではないと思っています。
  91. 岡田克也

    ○岡田委員 いろいろ後から理屈をつければ何でも言えるという一つの例だと思いますが、少なくとも自自合意の中にはそんなことは何も書いていないですよ。国連の平和活動への参加については、国連の総会あるいは安全保障理事会の決議があり、かつ要請がある場合には、「武力行使と一体化するものでない限り、積極的に参加・協力する」と、何の条件もついていないのです。むしろ積極的にやると書いてあるじゃないですか。それを今になって、国連、多国籍軍の中身がどうかとかいろいろ言われたけれども、そんなこと全然条件になっていないじゃないですか。  むしろ今まで、例えば、自由党、私は自由党の中の議論は知りませんが、新進党時代とか、小沢一郎さんが言ってきたことは、これは憲法九条の問題じゃない、なぜないかといえば、国権の発動じゃないんだと。つまり、国連が言ってきたら無条件に基本的には受けるんだ、だから、国権の発動じゃないから憲法九条の問題じゃないんだという論理を構成してきたじゃないですか。  今のお話で、いやいや、国連が言ってきても、いろいろな条件をつけて、オーケーするかどうかもわかりません。いろいろなことを言い出したら、それは憲法九条の問題になってきますよ、国権の発動になってきますよ、違いますか。
  92. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 そういう議論にならないように、私は、決議があった場合だけじゃなくて、要請があった場合ということをあえてこの合意の中で大事なことの一つとして申し上げたわけであります。  それからもう一つ、日本が自分の持っているいろいろなそういう意味での能力を超えて、幾ら国連決議があったからといって対応できるわけがないんですよ。そういったことを考えれば、新進党時代から何もアグレッシブに、国連決議があれば行け行けどんどんでいきましょうという話をしていたのではないと私は思っています。この点ははっきり申し上げておかなきゃならぬのですよ。  ですから、そういう点で、何か国連決議があればどんどんやっていくんだよと言わんばかりの自由党であると思われたら、それは全然違うことであるということは申し上げておきたい。
  93. 岡田克也

    ○岡田委員 何でも理屈をつければつけられると思うのですが、野田さん、一つだけ指摘しておきましょう。  朝日新聞の一月十六日、これは大臣になった後のインタビュー記事ですね。ここでこういうふうに野田さんは言っているのですよ。国連の平和活動への後方支援をめぐる自民党との合意について、「「戦闘地域における補給・輸送はやらない」が限界点、ということを明確にした。そうでないところは構わない、という判断をしたということだ」というふうに言っておられるのですね。  つまり、戦闘地域における補給、輸送以外は基本的にやるんだということをインタビューで野田さんは言っているんですよ。今の答弁と全然違うじゃないですか。これは自治大臣になってからの答弁ですよ。どうなっているんですか。
  94. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 憲法上できる、できないということと、やる、やらぬという判断は別問題であるということが一つであります。  そういう点で、戦闘地域における補給、輸送ということは、我々、憲法上の問題としてもこれは除外をしようということで合意をしたわけであります。それ以外については憲法上の問題ではないので、政策判断としてそれが適切かどうかという判断になるわけです。そのことを申し上げておるのであって、何らその点は矛盾はないと思っています。
  95. 岡田克也

    ○岡田委員 その前提として、憲法上認められるものは基本的にやるんだというのが自由党のお考えだったんじゃないんですか。つまり、憲法に触れるもの以外は基本的に積極的にやっていくというのが自由党の御主張であり、かつ自自合意でも、「武力行使と一体化するものでない限り、積極的に参加・協力する」と書いてあるんですよ。そこは先ほどの官房長官お話、総理のお話と違うじゃないですか。
  96. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 そういう意味では、今回の周辺事態法などにおいてその部分が入っているわけでありますが、私どもは、だからそれは必要なことだと思っていますし、しかし、やはりそのときの状況によって違うんじゃないですかね。そのこと自体、日本が積極的にそういう形での協力をする必要性がある場合と、それからそこまでの必要性がない場合というのは、それぞれのケースにおいて私は異なった判断がなされて当然だと思うんですよ。  しかし、そのときに、最初から、あらかじめ逃げ腰でもって、そういう責任逃れ的な格好で対処するのか。私は、もう少しニュートラルな判断があっていいんではないか。今までは何じゃかんじゃ言いながら、言うなら国際社会における責任をあえて避けてきたという側面があったのではないんでしょうかという反省に基づいて、はっきりしておきたいということであって、頼まれもしないのに行け行けどんどんでやろうなどとだれも言っていませんよ。
  97. 岡田克也

    ○岡田委員 野田さんは極論を言われるわけですが、もう一回最初から議論を整理しますと、基本的に、国連決議がある場合とない場合で分けるという考え方がまず憲法上あるが、それは今回の自自合意ではとらなかった。したがって、憲法は自民党の憲法解釈に立った上で、しかし、政策的に、国連決議がある多国籍軍や国連軍の参加については積極的に参加するというところで、そこで自由党の意図するところを確保した、最初はそういうお話だったと思うんですね。  ところが、それでは具体的に、そういった国連決議がある場合には積極的に参加するんですか、こう聞くと、確かに自自合意ではそういうふうに書いてあるが、今野田さんのおっしゃっていることは自民党の言っていることと全く変わらないわけで、どこに自由党の独自性があるんですか。政策が一致したから、政策が大事だから、自分たちの政策を実現するために連立を組んだとおっしゃいながら、どこに自由党の独自性があるんでしょうか、最後にお聞きしておきたいと思います。
  98. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 いや、だから合意が成立したんじゃないでしょうか。  自由党の考えをそのままそっくり自民党に受け入れてほしい、小渕内閣として、従来自由党が主張してきたことを受け入れてくださいということで合意が成立したのではなくて、自由党の主張というものは、それはそれでこれからもその考えは変わりません。政府の見解は今までどおりでありました。  しかし、その平行線の中で、では、内閣としてどういうふうにやりますかという中で、いろいろ議論をした結果、一番こだわりがあった一つは、湾岸戦争のときにはできないと言われたことが今度はできるようになっているのは一体どういう背景なんでしょう、やはりここだけははっきり説明できるようにしなければいけませんねという中で、それは憲法解釈の変更によってそうなったのではなくて、言うなら、当時はまだ議論が十分に整理されていなかった、未整理。言うなら、そういう点で疑わしいというようなところもあった。  それがやや憲法上の制約という形でできないというイメージにもつながっていたので、この機会にきちんと整理をしました、その整理した結果が今回の合意の内容である、こういうことでありますから、それは我々というか自由党としても、そういうことであれば結構であります、小渕内閣の見解で結構でございますということで合意が成立したわけでありますから、私は何ら問題はないと思いますよ。
  99. 岡田克也

    ○岡田委員 自由党の主張をそっくり受け入れられるはずがないというお話ですが、この今のずっと一連の議論を聞いていた多くの方は、自民党の主張がそっくり入っている、そういうふうに考えられるだろうというふうに思います。  さて、では、次に参ります。  ちょっと飛び越して、ガイドラインの問題についてお聞きしたいと思いますが、これは確認ですが、外務大臣、この周辺事態法の中で、従来から安保の枠内とかいろいろな議論がされているわけでありますが、こういう場合というのはこの周辺事態法上認められるかどうかというお聞きの仕方をしたいと思います。  つまり、あるところで周辺事態が発生しました。そして、そのときにアメリカは中立を宣言しました、これは関与しないと。そのときに、日本が独自の判断で基本計画をつくり、そして、ここの後方支援というのは、これはアメリカがなければできませんから、それはできないのですけれども、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動に乗り出すということは法律上できますか、できませんか。
  100. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 御質問のような事態はなかなか想定しにくいのでございますが、まず、安保条約第六条は、日本国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する旨が明記されております。この日米安保条約に基づく日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するためにガイドライン、日米防衛協力のための指針が策定されておるわけであります。そのガイドラインの実効性をさらに確保するために、今回、この周辺事態安全確保法案を提案しているところであります。そのような意味で、周辺事態安全確保法は日米安保条約の目的の枠内であるということが明言できます。  だから、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすようなことが、そういう周辺事態が起こった場合にアメリカが協力しないということは、あり得ない想定であると私は思います。
  101. 岡田克也

    ○岡田委員 法律上できるかどうかということを聞いているわけであります。アメリカは、それは最後はアメリカの国益もありますから、そういう周辺事態に、日本そのものを守るということは、これはアメリカの安保条約上の義務ですよ。しかし、そういう周辺事態で、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすということがあった場合にも、それは日本そのものに対する攻撃ではないということで、アメリカが中立宣言することは十分想定できるのじゃないですか。そういう場合に……(発言する者あり)法律の話をしているのです。そういう場合に、この法律で日本が独自に活動することは可能ですか、不可能ですかと聞いているのです。
  102. 高村正彦

    ○高村国務大臣 ほとんどあり得ない想定で、余り意味のあることだとは思いませんが、法律的に絶対できないわけではない。それは、日本の平和と安全を脅かす事態が発生した場合に、後方支援でない幾つかの行動が絶対できないわけではないが、余りあり得ない想定だと思います。
  103. 岡田克也

    ○岡田委員 しかし、法律というのはきちんとどうするかということを決めておかなきゃいけないわけですが、先日来総理初め皆さんが御答弁されているように、この周辺事態法というのが安保条約の実効性を確保するための法律である、そういうふうに断言されるのであれば、そういう穴をふさいでおくということに、法律上穴をふさいでおかなきゃいけないということになりませんか。いかがでしょうか。
  104. 高村正彦

    ○高村国務大臣 目的の枠内だということを何度も申し上げているわけでありまして、目的の枠内というのは、安保条約の目的が日本の安全と極東の平和と安全、こういう二つのことがあるわけでありますが、周辺事態はその中の日本の平和と安全ということに着目しているわけでありまして、そういう意味で目的の枠内ということを何度も申し上げているわけであります。
  105. 岡田克也

    ○岡田委員 日本の安全とおっしゃるけれども、六条というのは必ずしも日本そのものの安全ということじゃないですよね。ですから、私は、今言ったような、これはここできょうはやめておきますが、この法律は不備がある。もし安保条約の枠内だとおっしゃるのであれば、その不備は何らかの方法で防いでおく必要がある。もし、そうじゃなくて、これは安保条約の実効性確保の法律だけじゃなくて、日本が独自に判断し自衛隊が活動することも認めた法律である、そういうふうにおっしゃるのなら、今までの安保の枠内だという答弁を取り消していただきたい。どっちにするのかということを私は問題提起をしておきたいと思います。これはなおこれからいろいろ議論していきたいと思っております。  それからもう一つ、この周辺事態法では、自衛隊法の九十五条が排除されておりません。武器の防護のための武器使用という規定が公海上でも適用される、こういうことになるわけでありますが、そのときに、従来、政府の統一見解がありますね、武器使用と武力行使についての統一見解。資料をお配りしてございます。平成三年九月二十七日、これはPKO法の審議のときかなり焦点になった問題で、さんざん議論した結果こういう統一見解が政府から出されたということであります。  この統一見解の中で、なぜPKO法で武器の使用が認められるかということに対して、二の最後のところで言っているわけですね。「自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、」憲法九条一項で禁止された武力行使には当たらない、こういうことであります。  武器の防護のための武器の使用というのは自然権的権利ではないというふうに常識的には考えるわけでありますが、そうすると、この平成三年九月二十七日の政府の統一見解では読めないはずです。現実に、PKO法では武器の防護のための武器の使用というのは排除されているんですね、適用が。今度は排除されておりません。そこのところについて、基本的にどうお考えなのか、政府の見解をお聞かせいただけますか。
  106. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今お話のありましたものは平成三年九月二十七日の政府統一見解でございますが、憲法第九条の一項の武力の行使について定義をした上で、国際平和協力法第二十四条の武器の使用が武力の行使に当たらない理由として、例えば、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の武器の使用は憲法九条一項に禁止された武力の行使には当たらないとしたところであります。  この見解においては、自己保存のための自然権的権利に基づく武器の使用は、武力の行使に当たらない武器の使用の例として挙げられているのでありますが、武力の行使に当たらない武器の使用をこれに限定する趣旨ではないと思います。  他方、自衛隊法第九十五条に規定する武器の使用は、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段が破壊、奪取されることを防ぐため、武器等の警護を現に担当している自衛官に認められた武器等の防護のためのあくまでも受動的なものであります。また、正当防衛や緊急避難の条件を満たす場合でなければ人に危害を与えてはならないという極めて限定的なものであります。このような武器の使用は、自衛隊の武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊したり奪取したりしようとする行為から当該武器等を防護するための必要最小限の行為でありまして、憲法の禁ずる武力の行使には当たっておらず、憲法上の問題を生ずることはないと思います。  このように、平成三年九月二十七日の政府見解と自衛隊法第九十五条とは相反するものではないと私どもは考えております。
  107. 岡田克也

    ○岡田委員 これも次回以降に持ち越したいと思いますが、今の御答弁は、参議院の本会議で本岡議員の質問に対して総理がお答えになったのと同じだと思いますが、しかし、最小限だからいいんだというのは、これは理屈にならぬだろうと私は思いますよ。今までは、自分を守るための自己保存のための自然権的権利ということで、いわば憲法があるにもかかわらずそれはいいんだという法律構成をしておられたのに、最小限だからいいんだというのは、それは非常に無理がある。  私も、この自衛隊法九十五条が適用されるということは必要かなという気持ちはしているのです。しかし、だからといって、この従来の政府の統一見解では読めないと思いますから、そこのところをもうちょっときちんと、武力行使との関係を整理していただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。  これは、例えば、艦船なんかが行って、その艦船が攻撃されたときに、その艦船そのものの防護ということもこの九十五条に入ってくるわけですから、そのときにどこまで反撃していいのかという問題でもあるわけですね。かなりこれは微妙な問題を含みますから、これからの国会審議でさらに詰めていきたいと思いますし、政府の中でもよく御検討いただきたい、そういうふうに思います。  時間がないので、次に、ちょっと経済問題、一つ参ります。  宮澤大蔵大臣、きのうもちょっとお話しになっておられましたが、一—三月の景気の動向というものがこれからの景気回復を図る上で非常に重要だ、こういうふうに認識を新聞のインタビューとか記者会見でお述べになっておられますが、基本的に、どうして一—三月が大事だというふうにお考えなのか。時間がございませんので、端的にお話しいただけますか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三月は、御承知のように企業においての決算期でございますが、経済の動きに関係なく決算は過去の業績を反映いたしますので、したがって、どうも今度の決算というものはかなり暗いものにならざるを得ないだろう。企業のマインドは、したがってかなり暗いと思っておかなきゃなりませんが、そのことがいろいろ雇用の問題に影響するのではないか。大企業間では労使のいろいろな交渉が行われる時期ですが、それに限らず、中小企業を含めて、雇用のところで、どうか労使でもう一辛抱してもらいたいという、その問題を一番心配しております。  もう一つは、金融機関に対して公的資金の導入が行われるちょうどその時期でございますので、これが国民が納得するような形でできて、金融機関への信頼が確保されるかどうかというのもこの時期でございますので、そういう意味で申しております。
  109. 岡田克也

    ○岡田委員 そこで、一—三月非常に大事だ、しかし、どうも一—三月はかなり消費中心に厳しいことになりそうだ、こういう話もあるわけですが、私は総理にお聞きしたいのですが、所得税の減税、これはさすがに十二月とは言えずに六月ですか、前倒しということになったようですが、本来は、これは一—三月の減税なんですね。どうして、一月から減税するような、そういう意思決定をされなかったのでしょうか、総理。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 多少技術的なことがありますのでお答えを申し上げますが、前回も申し上げましたが、源泉徴収票の問題でございます、端的に申しますと。  源泉徴収票は、税法が確定をいたしましてから二カ月たちませんと、源泉徴収票が実際に使われるようなことに事実上できないという問題がございます。したがいまして、一月の減税を源泉徴収票でいたしますためには、十一月あるいは十月には少なくとも法律が確定していなきゃならないというどうもやむを得ない事情が、民間にお願いをしている、それも大企業あるいは一人二人の企業はよろしいのですが、中のところがどうしてもそれが無理であるということから、現実には十一年の所得から減税が行われるにもかかわらず、普通一—三が年末調整になってしまう。  それについて御批判がありまして、今度は、とにかく二〇%大体引けばいいはずでございますから、定率でございますから、それだったら六月でもできるではないか、これがぎりぎりのところでございました。
  111. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今大蔵大臣が御答弁をされましたことが、技術的な問題も含めまして極めて困難な問題でございました。  しかし、景気回復という意味から考えますれば、経済界を含めまして、第四次補正を行ってまで法人課税の前倒しをすべきだという議論もございました。  ただ、この問題について、私は、総裁選挙で申し上げたことについて、公約違反でないかという大変御批判もちょうだいいたしておりますが、それ以降の二つの臨時国会におきましても、これは今申し上げたような理由も含めまして十一年度からの税制改正でお願いをいたしたいということを申し上げておりますので、いろいろとこれは御主張はございましたけれども、この問題を、十年度の中での補正によって税制改正を行い還付を行うというようなことはなかなか困難であるということにつきまして、御理解をいただきたいと思います。
  112. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、今所得税について議論しているのですが、宮澤大臣おっしゃるように、準備に二、三カ月かかる、それはそのとおりであります。そんなことは前からわかっているわけですね。  それなら、どうして総理が総理に御就任になった直後から——大体、所得税の減税の骨格は総裁選挙でみずから明らかにしておられたでしょう、その次の臨時国会の冒頭でもお話しになったわけでありますから、もうわかっていたわけですね。残っていたのは、国と地方の調整の問題でありますとか細かい技術的な話でありますから、それを早急に詰めて、どうして前国会かあるいは前々国会に所得税法の改正案を出して一月一日から実施できるようにしなかったのか、そこが問題だと思うんです。空白の三カ月があるわけですよ、そこに。  この一—三月、大変重要な時期だと宮澤大臣もおっしゃったけれども、私もそう思います。この一—三月にもし景気が失速するようなことがあれば、私はこの所得税の減税が一—三月に現実にできなかったということが決定的になると思うんですよ。そこに私は総理の責任というのが当然出てくると思いますが、この点につきましてはなお引き続き追及したい、こういうふうに思っております。  いずれにしても、一—三月景気が失速するようなことがあれば、これは減税が現実にできなかったということが非常に大きい。そして、それは小渕総理自身の決断がおくれたことによるものだということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  113. 中山正暉

    中山委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  114. 上原康助

    ○上原委員 若干質問の時間が短くなりましたので、外交問題、朝鮮半島情勢についてもお尋ねしたかったんですが、これは後に回したいと存じます。  私も今の岡田委員の御質問とも関連して、政府の憲法解釈と、若干私なりに疑問が、まだよくのみ込めない、理解できない点もありますので、これからのガイドライン関連法案や防衛問題等議論を継続していく上で参考になるかと思いますので、自自連立政権政策合意等と関連づけてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  まず、総理と自治大臣に改めてお伺いをしたいわけですが、自自連立政権政策合意があっても政府の従来の憲法解釈は変えない、これは総理は本会議並びに本委員会において再三強調をしてこられました。間違いないですね。例えば、集団的自衛権の行使を含めて政府の憲法解釈は変更なし、こういうふうに理解してよろしいですね。
  115. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今般の合意におきましては、従来の政府の憲法解釈を変更しない点で一致をいたしておりまして、政府としても従来の憲法解釈を変更する考えはございません。
  116. 上原康助

    ○上原委員 野田自治大臣、今私が総理にお尋ねをした集団的自衛権の行使、いわゆる自衛隊等が海外に派兵、派遣をされて、そういう武力行使を伴うというか一体化する集団的自衛権の行使を含めて、憲法解釈は政府がこれまでやったとおりで自自の政権政策合意は遂行できる、こういう御理解をしていると思ってよろしいですね、理解していいですね。
  117. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今、小渕総理が申し上げたとおりでありまして、政府の憲法解釈の変更は行わないというその前提での合意であります。
  118. 上原康助

    ○上原委員 ですから、憲法解釈問題で防衛問題との関連で絶えず議論されてきたのは、集団的自衛権の行使ができるかできないか。小沢さんは、そういうものは国連の決議があればとか、あるいは国際連合主導の国際活動なら可能だという見解を展開してこられたからいろいろの論点に発展してきていると思うのですが、もちろん、今閣僚ですから大分自信をお持ちの御答弁をなさっておられるが、閣僚ですから、やはり小渕内閣の閣僚の一員として、憲法解釈であろうが諸政策を遂行していかれるというのはそれは当然でしょう。私たちも随分いじめられた、一時期。  集団的自衛権の行使についての野田大臣あるいは自由党の御見解はどうなんですか、憲法との関連で。
  119. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 自由党は、自衛権に関しては、いわゆる我が国が急迫不正の侵害を受けた場合にこれを排除するということに意味があるのであって、極めて抑制的といいますか、専守防衛の精神を貫徹しよう、したがって、自衛権の行使については、個別的であれ集団的であれ、抑制的であろう、ありたいというのが自由党の考え方であります。そういう点で、特段に個別的自衛権と集団的自衛権を区別して論ずるということはそれほど大きな意味はないというのが自由党の考え方であります。  しかし、今日までの政府の見解は、今御指摘がありましたように、その点は、集団的自衛権に関する議論は今日までの政府の積み重ねがあります。その今日までの政府の憲法解釈ということの上に立って小渕内閣が成立しておるわけでありますし、その小渕内閣の考え方を受け入れる、そしてそれに基づいて連立政権ができておるわけでありますから、自由党は自由党としての憲法解釈論議がありますが、少なくとも連立政権下において、小渕内閣の憲法解釈という枠の中で政治が行われるというのはこれは当然のことであり、私自身もその一員としてその見解に従うということも当然のことであると思っております。
  120. 上原康助

    ○上原委員 野田大臣、今大変重要な御答弁をなさっておられるわけですよね、個別自衛権の行使であるか集団的自衛権の行使であるかはさほど問題ないと。私はそう理解はしないです。これはいろいろ見解の違いはありますよ、憲法問題を含めて。しかし、現行憲法下において最も議論されてきたのがそこなんですよね。そこを何か、むしろ玉虫色というかうやむやにしているところに、論議をごちゃまぜにしている。  国連の言う安全保障ということと、集団安全保障の概念と集団的自衛権の行使の概念をごちゃまぜにし議論をしているところに問題が……(発言する者あり)黙っておけ。複雑にしているところがあるんです。  では、それとの関連で、先ほどの岡田さんへの答弁の中で、湾岸戦争時代できなかったことが今度の自自連立政策合意でできるようになったと。今度はできるようになって、何ができるようになったんですか。いや、さっきの御答弁はたしかそうだったと思うんですよ。湾岸戦争時代できなかったことが今度はできるようになったのが政策合意の特徴だとおっしゃった。まだ多国籍軍の性格とかそういうものについては法的整備もできないから、官房長官は慎重を期すということを、きのう、おとといからずっと政府統一見解として述べておられるわけでしょう。  私の聞き間違いかしらぬが、湾岸戦争時代できなかったことが今度の自自連立政権でできるようになったと、どういう意味ですか。
  121. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 その前に、これは閣僚としての答弁なんですからなんですが、あえて自由党としての考え方をお聞きですから、小渕内閣の一員としての考え方と受けとめられると少しややこしくなりますので、その辺はお含みの上で、自由党としての考え方で申し上げますと、私は、先生が自衛権について、個別的自衛権と集団的自衛権を分けないのはおかしいということでいろいろお話があった。しかし、私たちは、少なくとも今日までの歴史の教訓において、個別的自衛権であれば許されるというような枠組みは決していいことじゃない。過去の戦争というのは、ほとんどのケースはすべて個別的自衛権の発動という形の中で行われてきたことも現実なんです。  そういった意味で、集団的自衛権に関してだけは随分と厳しくチェックをし、個別的自衛権についての抑制ということがややもすれば薄れがちであるということは、これはこれで戒めなければならぬということを言ってきたことであって、その辺を少しすれ違いでお考えいただくと誤解が発生すると思っております。これは、自由党として今までの言ってきたことについて先生の言及がありましたのであえて申し上げました。  それから、後段のいわゆる湾岸戦争当時いろいろな議論がありました。しかし、そのときにできる、できないというものと、許されるのか、許されないのかという問題が、あのときは初めての経験でもあり、なかなか十分な論議が尽くされていなかったようなところもありました。  そういう点で、例えば武器弾薬等の輸送ということについて、今回、ガイドライン法案においてはこれが可能であるというか、そういうことになっておるわけであります。もちろん戦闘地域でない地域ということの限定であります。湾岸のときには、そういうような地域限定ということはありやなきやということをも含めて、完全な整理がなされていなかったようなところもあったので、そういう点で今回は整理がなされたというふうに我々は理解をいたしております。
  122. 上原康助

    ○上原委員 今の野田大臣の御答弁を受けていろいろ議論をすると、相当これは時間がかかります。  個別自衛権の問題を我々が厳しく言うのは、それには前提があるわけですね。日本の国防の基本方針とか、専守防衛に徹するという前提があるんですよ。そういうことも含めて議論をしていかなければいかない問題だということと、もう一つは、さっきは、理念と政策は一致したから、これからはその自民党政権の内閣の解釈の方向で自由党も安全保障政策等についてもやっていくというような言い分の答えもありましたね。それを具体的にお尋ねします。  それでもう一点、この自由党の安全保障政策の中で重要な点は、国連の決議があるとか、あるいはかつ要請があった場合、当然参加すると。これに関連して、例えば朝鮮半島有事の場合、国連の決議が行われるまでの間に米国から協力を求められる、そういう場合もあり得ると思うんですね、一衣帯水の関係においては。あり得ると思う。さらに、国連の決議があって要請がない場合に米国から協力を求められた場合というのはどういう対処をするのか。
  123. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 国連の決議がない場合で米国から協力を求められた場合、こういうことですか。  これは、私の理解では、少なくとも今小渕内閣の一員としての責任ある答弁はもちろん外務大臣からしていただくのが筋と思います。  ただ、今お尋ねでありましたので、自由党として検討してきた過程の中での考え方を申し上げますと、今度のガイドラインというのは大きく三つに分かれておると我々は理解しておりまして、一つは少なくとも平素からの協力があり、いま一つは日本自身が直接武力攻撃を受けた場合、そのときにどうするか。そして、もう一つが、そうでない場合でも、日本が直接武力攻撃を受けていなくても、日本の平和と安全にとって極めて重要な影響を与えるケース、これを周辺事態、こういう言い方をしておるわけで、そういう意味で、地理的にあらかじめ特定するということはそれほどの意味はないのではないか。直接攻撃でない場合であっても大事な事態が発生したという意味で周辺事態、こう言っているのであって。  そこで、朝鮮半島で何かがあったときに、今の御指摘で、国連の決議はないが、まさにそのことが日本の平和と安全にとって非常に大事だ、重要なことだというようなことが日本においても米国においても認識された場合に初めてその日米のガイドラインの問題が具体的な適用のテーマになる、私はそう理解をいたしておりまして、そういう点では別段今度のガイドライン法案というものは国連決議を前提とするものではない、私はそう理解をいたしております。
  124. 上原康助

    ○上原委員 ガイドライン関連法案は国連決議とは関係ないというのは、私もそのとおり理解をしているんです。だが、今私が指摘をしたことは、「国連の平和活動へのわが国の参加・協力のあり方」という中での自由党の考え方との関連でお尋ねをしておるわけですから。  そこで、これは外務大臣にもお尋ねをしておきたいわけですが、なぜ多国籍軍の問題が非常にこの二十五日からずっと議論をされてきているかというと、一つは、先ほど来ありますように、自自連立政権政策合意の今指摘をしたような国連活動へのかかわり方、協力の仕方とか、あるいは自由党の安全保障に対する基本的な政策等から起因をしているわけですよね。「国連の平和活動へのわが国の参加・協力のあり方」「日米安保体制の堅持」という、これもいろいろ議論したい面もありますが、時間がありませんから省きます。周辺事態の範囲についてはいろいろ議論がありましたのでもう繰り返しませんが、地理的概念ではないという言い方は、主張はどうも理解しにくい。また、国民としても非常にわかりにくいと思うのですね。  そこで、これも非常な論議になったのは、周辺事態をめぐる、この周辺事態法案の周辺は地理的概念ではない、こういうばかげた話をして世界各国から失笑を買っている、日本周辺といってもそれが地理的なものを含まないなんて国語からやり直してもらわないといけない、日本国周辺といったら少なくとも日本に隣接する各国、地域は全部入っているに決まっている、ロシアだろうが中国だろうが朝鮮半島だろうが台湾だろうが、当たり前でしょう、そんなこと。これは十四日、自由党の党本部で小沢党首がこういう御発言をしているわけですよ。中国はこれに対していち早く反応を示している。  外務大臣に、これについて大臣はどういう御認識を持っておられるか。こういう党首の、今も私はこの小沢さんのお考えは変わらないと思うのです。  そして、この台湾を含むという小沢氏の発言に対して中国側はいち早く反応して、外務大臣は、周辺事態はロシア、朝鮮半島、中国、台湾を含むという小沢氏の発言に関連して、外務省はパニックに陥っている、こういう御発言を、十八日のお昼、首相官邸で小沢さんと交わしたという報道がなされておる。そして、外務省は中国に小沢発言は誤りであるという日本政府の態度を説明したという報道がなされておる。これは外交上、非常に二元外交的に、こういうことがあるからやはり対中政策あるいはアジア近隣諸国とのいろいろな信頼関係というものに私は影響していると思うのですね。  このことについて外務大臣、それからあと野田大臣、総理の御見解を求めておきたい。
  125. 高村正彦

    ○高村国務大臣 質問がいろいろありましたので、どの点から答えていいのかよくわかりませんが、小沢党首と私が交わした会話は、これは私人間の会話でありますから、どういう会話があったかということはともかくとして、地理的概念であると小沢党首がおっしゃったというのは、周辺事態というものに対する考えがどれだけ違うのかということよりも、むしろ地理的概念という言葉の定義が小沢党首と私たちとは大分違うのかな。  政府が一貫して申し上げているのは、明確に特定の地域をあらかじめ定めるという意味での地理的概念ではない、こういうことを申し上げているので、周辺とかあるいは周辺地域とか周辺事態とか、周辺という言葉が地理的要素を全く含まないなどということは、最初から政府関係者が申し上げたことは一回もないと思います。少なくとも私はありませんし、一回もないと思います。  ですから、あくまで、いろいろな形容詞をつけてあらかじめ一定の範囲を画定するという意味での地理的概念でないというのは、当初から一貫して説明してきたわけで、ただ、そこを、余り長いので地理的概念でないという言葉だけが走って、そうすると、周辺という意味に地理的要素を全く含まないというんじゃ、それは国語からいっておかしいんじゃないのというような、ごく素朴な疑問かとも思いますけれども、まさにそういうことでございます。
  126. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 日本語として、日本周辺地域といえば常識的に入るんじゃないかというので党首はおっしゃったと思います。それだけをとって言えばそういうことだと思うんですね。  だけれども、少なくとも今度は、そこに意味があるんじゃなくて、さっき私ちょっと申し上げましたが、ガイドライン法案というかこの大事なところは、日本が直接日本の領土、領海が攻撃を受けた場合にどう対応するかという問題と、むしろ日本周辺という場合には、日本を除く事態であっても、日本が直接侵略を受けるという事態ではなくても、そういうときであっても、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態というふうなところの意味があるんじゃないか。  そういうことを込めて、その表現を、それは日本周辺事態という表現が適切であったかどうかはわかりませんが、少なくとも意図するところはそういうことであって、まさにその事態そのことが大事な意味がある。だから、そういう日本の平和と安全に重要な影響を及ぼさないようなことであるならば何ら問題はないんであって、そういう意味で、その事態の性質に着目をした意味なんだ。だから、あらかじめ特定の地域なり国々を云々ということを言うことは、さほどの意味はないというのはそういうことである。私はそういう理解をいたしておりますので、何らこの問題で心配をかけることにはならぬのじゃないか、そう理解をいたしております。
  127. 上原康助

    ○上原委員 私はそう思いませんね。  今言いましたように、私語を交わしたと外務大臣は言っているが、少なくとも、小沢発言によって、自由党の党首の発言によって、中国に外務省が公式に釈明をしなければいかないということは、これは外交事態でしょう。皆さんは政策と理念が一致をして自自政権ができたと胸を張っているけれども、外交上に既にブレーキがかかっているんじゃないですか。何がスピーディーに問題解決につながるの。そのことを言っているんです。(発言する者あり)ブレーキになるかならないかはこれからの問題なんだ。  これは、これからもいろいろ対外的に反応があると思いますので、この程度にして、何か先ほどから、政策も合意をし、あたかもこの自自連立政権が当面する政策や重要政治課題を解決していくベストのものかのように、野田大臣関係大臣が答弁する向きもあるが、それは恐らく、当初、野田さんがおっしゃっておったように、国民が審判するでしょう。支持率もそう上がってはいませんね、幾分は上がっているけれども。  次に、このガイドラインの関連法案と関連づけて、事前協議問題について少しお尋ねをしておきたいと思うんです。  事前協議のあり方は、もちろん、協議対象三要件というのも私もある程度理解をいたしております。そのことは省きますが、百四十国会のときに、これは沖縄の例の軍用地特措法だったと思うんですが、その委員会で我が党の前原誠司議員が当時の橋本総理大臣に事前協議について質問をいたしております。  それを一々申し上げませんが、事前協議制度がもう形骸化している、一度も六条に基づく事前協議が今日までなかったということは、これは本当に不思議なことで、それで橋本総理大臣は、従来からの事務方の解釈ばかりがいいかといえば、必ずしもよいことばかりではないと思う、一たん議論を整理する、整序すると言った方がいいのでしょうか、整序する必要があるんじゃないかと述べて、事前協議制度の運用を見直す考えを当時示唆をしておられます。  そこで、政府はその後どのような事前協議制度の整理、整序を進めてきたか、そのお答えがあればお聞かせを願いたい。これが一つ。  二点目は、我が国と米国の間に事前協議制度が設けられたのは、私は、米軍の一定の行動に対しては、これが我が国の意思に反して行われることのないよう、いわゆる日本の国益ということを考えるという面から、米軍の行動に一定の制限を加え得ることを目的として設けられたものであると理解をいたしております。だが、そうではないですね、運用も解釈も。ここに非常に問題がある。  そこで、在日米軍が周辺事態における出撃に際して、その命令を移動中に受けて出撃しようが、基地から直接出撃しようが、それはやはり出動したことには変わりはないんです。そういう意味から、在日米軍が戦闘行動に参加した場合は、紛争相手国から見ると、基地を提供している日本は無関係な中立国とは見られないと思う。そうは見られないと思うんですね。また、我が国近隣での紛争であれば、出撃基地となる在日米軍基地も直接の攻撃対象になり得ることは私はあり得ると思うんですね。  こういう立場から、周辺事態における米軍の出動と事前協議の制度の関係政府はどのようにお考えになっているのか。私は、これは非常に重要なこれからの課題だと思うので、どなたか、できれば総理なんだが、外務大臣でも結構ですし、きちっとしたお答えをしておいていただきたいと思います。
  128. 高村正彦

    ○高村国務大臣 最初に、橋本前総理がお答えになったことでありますが、その前に政府委員がかなり長々と答弁をした後に、そういったことを前提としつつ、一たん議論を整理する、整序する必要がある、こういうことを言っておられるわけであります。それで、日米両国が同盟国として従来以上に緊密に協議していくことが重要であって、また日米同盟関係については、多くの国民の支持、理解を確保し続けるためには、このような日米の協議や米軍の行動についても可能な限り透明性を高めることが必要であるとの考えを表明されたものである、こういうふうに考えております。  そして、具体的に、外務省の中でどういう議論が深められているか。今まで事務的にやってきたことについて、必要であればそれは政府委員からお答えさせたいと思います。  ただ、事前協議の運用にかかわる事項については、日米両国政府が日米安保条約締結以来長年にわたり確認をしてきているものであって、この法的枠組み及びその運用を直ちに見直すということは今考えていないわけであります。  上原委員、先ほど三要件はよく知っているということをおっしゃいましたが、その三つの要件の中で、事前協議が必要なことであればそれはきっちりされる、それ以外のことについては、随時協議等を通じながら両国で密接な連絡をとり合って日本の国益も確保していきたい、こういうふうに思っております。
  129. 上原康助

    ○上原委員 政府委員の御答弁は外務委員会かどこかでまたよく聞かせてもらいますけれども、外務大臣、これだけは指摘をしておきましょう。これは総理も各閣僚も聞いていただきたい、防衛庁長官ももちろん。  三要件といったって、六〇年安保改定の岸・ハーター交換公文、あれは本当に古証文ですよ。今ごろ、これだけ近代化した装備体系になっている時代に、陸軍の一個師団とか海軍の一個機動部隊とか、あるいは核の基地建設とか持ち込みとか、そういうものが前提でなければ事前協議がないなんというのは、これは全くもうナンセンスなんです、これこそ。そういう安保論争をするからかみ合わないんだよ。もう少し日本の国益ということを考えたらどうですか。それを我々は指摘しているのです。  周辺事態法案は安保の枠内ということであるのですが、実際に、今の在日米軍基地を使用する米軍の行動範囲というのは、中東、ペルシャ湾、地球の裏まで行っているのです、高村外務大臣、おわかりのとおり。これもきょう議論しようと思ったが、時間がありませんからやりませんけれども。  ガイドライン法案ができた場合、米軍の行動と、自衛隊がそこまで行くかどうかは別の問題であるにしても、在日米軍基地を米軍が使うという面では重大な問題が潜んでいるということは当然想定できるわけでしょう。その意味では、今の事前協議の三要件を含めて、地位協定問題を含めて、私は、やはり現実に合わせた、日本の国益ということを考えて改定すべきと思う。  この点について、総理のお考えがあれば聞きたい。あなたのお考えでこれは言ってくださいよ。本当に、どれだけ基地の周辺住民が犠牲を強いられてきたかわかる。
  130. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 沖縄県が多くの基地を抱えて大変御苦労されておられることについては、十分承知をいたしております。  今、安保条約におきます事前協議の点についてお触れになられました。今日まで事前協議の対象にならなかったということは、それなりに、逆に考えれば、日米間に問題が生じなかったということでもあろうかと思います。  ただ、御指摘のような点もいろいろございますから、橋本前総理も、そうした事務当局のお話を受けながら整理すべきことは整理したい、こう言っておられるようでございますから、私自身も勉強させていただきたいと思います。
  131. 上原康助

    ○上原委員 総理、外務大臣、あるいは防衛庁長官、僕はそんな心情論で物事を片づけてはいかないというのですよね。日米間にその対象になる案件がなかったなんて、それはもう全くうそですよ。ベトナム戦争あり、湾岸戦争あり、いろいろなことが今起きている。それが今日、我々は実質的な安保改定と見ているのですが、こういう事態になっても、そういうこともきちっと精査をしないで、ただアメリカの国際戦略に基づいて、いろいろ安保の運用とかガイドライン関連法案が成立した後運用されていくということには大変懸念を持つ。私は、それは否定はしませんが、やはり日本の国益ということ、基地周辺住民の生活ということをもっと真剣に考えてもらいたい、このことをきょうは注文をつけておきます。  次に、沖縄問題について、これも今申し上げたような安保体制あるいはガイドラインと非常に関連をします。  残念ながら、この予算委員会でも余り沖縄問題を取り上げる党が少なくなった。私は、どうしてもこれは関連して取り上げておかなければいかないと思いまして、少し時間を割いてお尋ねをさせていただきたいと思います。  そこで、まず基地問題からお尋ねをしますが、二十九日に沖縄政策協議会が、あさってですか、二回目が開かれるということなので、あるいはそこでまた云々という御答弁かもしれませんが、少し、本当に政府はどうなさるか、まじめにお答えいただきたいと思います。  例えば、基地問題。九六年十二月のSACO最終報告が決まりました。普天間飛行場を海上施設に移転するという明記がなされて、場所が名護市の辺野古沖というふうになったわけですが、この政府の構想というか、これは暗礁に乗り上げて破綻しましたね、沖縄側の反対によって。それで、沖縄本島北部に本当に期限つきで軍民共用空港を建設する案が今浮上しているわけですが、これは政府は可能性あると見ているの、どういう御認識ですか。  普天間飛行場問題、移転先を沖縄側の意向を聞いてということでしょうが、安全保障というのは一つの国策でしょう。国の根幹にかかわる政策でしょう、基地というのは。この点に対して、総理、どういうふうに解決しようとしておられるのか、まずお考えを聞かせていただきたい。
  132. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 上原委員、今、普天間基地の代替海上ヘリポートについて、破綻をしたとお話しされておりますが、政府としては、従来どおり、そうした考え方が実行でき得ないかどうかということで検討を続けておるわけでございます。  しかし、同時に、先般の知事選挙におきまして稲嶺知事が誕生いたしました。そういった選挙戦を通じまして、知事自身もいろいろこの点についてはお考えがあるやに承知をいたしております。  ただ、現時点におきましては、知事とのこうした問題についての話し合いにつきまして、私自身はまだいたしておりません。したがいまして、近い将来におきまして、いろいろと地元の知事としてのお考えも承りながら、今後どのように対策を講じていくかについて、真剣に取り組んでいきたいと思います。  いずれにいたしましても、地元の協力と支援がなくしてはこうした大きな問題の処理はできないわけでございますので、今後、誠実に知事とも話し合ってまいりたいと思っております。
  133. 上原康助

    ○上原委員 随分こういうやりとりもやってまいりました。本当にむなしさを感じますね、正直申し上げて。  SACOの最終合意、普天間の返還というのは、二〇〇一年から二〇〇三年の返還というのを日米政府合意している。もう既に二年以上たっているんですよ。一歩も動かないんですよ。それはなぜそうなっているか、理由がわかりますか。私は、この合意については当初から非常に無理があったと思う、正直申し上げて。  そこで、今、政府がやろうとしているSACOの最終合意の問題点などいろいろ指摘をしましたが、那覇軍港が、昭和四十九年、一九七四年にたしか日米間で合意された。二十数年たっても返還されていない。今度はまあ動くかもしらない。なぜこういう事態になっているか、その理由についてはどういうふうな御認識ですか。総理なり外務大臣、どっちでもいい、防衛庁長官でもいいし、聞かせてくださいますか。
  134. 高村正彦

    ○高村国務大臣 政府とすれば、沖縄県民の方々の御負担を可能な限り軽減するため、日米両政府が最大限努力して取りまとめたSACO最終報告の着実な実施に向け、誠心誠意取り組んでいるつもりであるわけであります。  現在までの進捗状況としては、土地の返還では、安波訓練場の返還について、昨年十二月、返還が実現したところでありますし、他の案件についても、地元の御理解を得るべく鋭意努力しているところであります。  また、土地の返還ではありませんが、県道一〇四号線越え実弾砲兵射撃訓練については本土演習場で既に実施されてきており、KC130の移転についても、関係自治体より既に受け入れの表明をいただいているわけであります。  いずれにいたしましても、政府としては、沖縄県及び県民の方々が直面する諸問題を十分踏まえた上で、普天間飛行場の返還を初めとする米軍施設・区域の整理、統合、縮小に向け、稲嶺知事のお考えを十分に拝聴しつつ、県の協力と理解のもとに、SACO最終報告を踏まえ、真剣に取り組んでまいる所存でございます。
  135. 上原康助

    ○上原委員 稲嶺知事が誕生なさったから何でも進むと御期待しては、余り甘いんじゃないでしょうか。それは知事も一生懸命なさるでしょう。  そこで外務大臣、あなた、そういう答弁だけするからいかないのよ、これは。やはり県内移設、あの狭い沖縄だけで、よく言われるたらい回しという表現を私はしたくないけれども、沖縄県内だけで移設、統合をしようとしたって無理があるんですよ、それは。その認識が政府や与党にない。あるいは野党にも少ないかもしらない。ここにも防衛庁長官経験者がお二人いるが、長崎県に持っていこうとか千葉に持っていこうなんて一言も言わなかった。今、外務大臣は、あなた、岩国基地にだって余裕があるんじゃない、六年先は。  ですから、そういう県内移設だけを考えているからだめなんです。私だけが言っているんじゃない。これは宮澤大蔵大臣も、外務大臣や首相も経験なさってよくおわかりかと思うのですが、私の尊敬する、お名前を出して失礼ですが、これは三月四日の朝日新聞のコラムで後藤田先生が「県内移設がネックになっている以上、また合意の前に県内自治体との調整が不十分であったことからみて、SACO合意は見直さざるを得ないだろう。」これは私がずっと言ってきたことなんだ。だから、いろいろ書いてあります、これをぜひ読んでください、三月四日の後藤田先生のこの御意見を。  「在日米軍の兵力の削減、基地の整理・縮小、アメリカ領域内への移転などの解決策が生まれてくるのではないか。」グアムとかハワイとか日本本土とか、全体的に考えるべきだということをおっしゃっている。  さらに、新しい防衛協力指針(ガイドライン)の中身といい、冷戦後の平和と軍縮の方向とは逆に、局地問題を事由とする米国の世界戦略の一翼の中で対米軍事協力を強化する方向に日本は向かいつつある、こういう御指摘さえなさっておるんですよね。  だから、基本問題として、県内移設だけでは無理があるということを政府全体としてどう認識をするかというものが、沖縄の基地の整理縮小、あるいは皆さんの言う整理、統合、縮小というものを前進せしめる私はかぎだと思う。  これは、官房長官にも時間を早目においでいただいてお尋ねしますが、そういった県内移設だけでなくして日本全体の在日米軍基地を再検討して、本土にある基地に統合できるものは統合していく、沖縄県内でももう少し整理、縮小、統合ができるものはやる、こういう根本的な洗い直しがない限り、SACO合意は一歩も進みませんよ。  いずれ、私がきょうここでそういう発言をしたということは残るはずですから、必ずだれかが将来指摘してくれると私は思う。  今の私が指摘をしたような問題について、総理御自身は、私はやはりSACOの合意というものは再検討、見直しをせざるを得ないと思う。どうですか、そういうことは。これはもうやっていただかないと、どんなに皆さんが稲嶺知事とお話をしても、そう簡単には進まない、振興策以外は。どうお考えですか。
  136. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 上原委員がかねてからの御主張は十分、何度もお聞きをいたしております。  ただ、政府といたしましては、せっかくまとまりましたSACO合意、これを着実に実行していくという中で、米軍の施設・区域が集中する沖縄県の方々の長年の御負担をぜひ軽減していかなければならないということでございまして、現実的には、確かに、おっしゃるように、なかなか進捗しない問題等もございますけれども、先生御承知のように、安波の訓練場の返還等につきましても、これが初めて土地返還の案件として実現をいたしておる方向でございます。  したがいまして、これをぜひ加速させていき、せっかく八年の十二月にまとまりました最終報告を一つ一つ着実に実現をしていくということにつきまして、申し上げましたように、新しい知事さんとも十分お話をしながら努力をしていくということで、その方向性についてはぜひ御理解いただきたいと思います。
  137. 上原康助

    ○上原委員 もちろん努力はしていかねばならないでしょうね。しかし、これまでの実績が示しているように、皆さんは七二年の沖縄返還のときにも、核抜き本土並みと大宣伝をやった。今度だって二一%現状より削減するというんだが、それが実現するまでに何年かかるか。何十年かかったってできませんよ、それは。とてもできない、あと七、八年では。仮に一〇〇%今のSACO合意が達成したって、依然として米軍専用基地の七〇%は沖縄に残るんですよ。それさえも、今のような御答弁では百年河清を待つだけだ、これは。待ってもできない。だから、根本的に認識を変えなさいと言うんだ、私は。  外務大臣は、一〇四号線の実弾砲撃演習を本土に移したと。沖縄一カ所でやったのを本土は北海道から大分まで六カ所で分散してやっているんじゃないですか、あなた。五十年沖縄一カ所でやられておったんだよ、金武、キャンプ・ハンセンで。それが大きな解決策だったということは、しかも今、本土の皆さんだって実弾射撃演習には反対をしているような状況なんだ。そういった痛みを本当にわかるなら、SACOの最終報告については、できるものは進めながら、日米間でもう一遍再検討するというのが私は真剣なる沖縄へのメッセージだと思う。  これ、総理ですかね。官房長官沖縄開発庁長官も兼務をなさっているんだから、あなたの御見解を聞きましょう。
  138. 野中広務

    野中国務大臣 いろいろ上原委員から、SACO合意を含む沖縄の現状について御意見を賜りました。沖縄開発庁長官を経験され、ともに与党として沖縄問題に取り組み、かつ、SACO合意を普天間の返還とともに合意するに当たって大きな感激を共有した上原委員から、今、SACO合意に無理があったという言葉をいただくことは、私はまことに残念だと思っておるわけでございます。  私ども、五十年を振り返りながら、多くの困難を沖縄県民に強いて、多くの犠牲をまた強いてまいりました。その上において、橋本前総理を初め、今日まで真摯に沖縄問題と取り組んでまいったはずでございますし、また小渕総理に至りましても、先般の特別調整費の予算のお願いを含めまして、本年、八百数十億の第三次補正をお願いするとともに、また来年の予算に向けましても、五千数百億という沖縄関連予算をもって、何とかして沖縄県民の痛みを軽減したいと考えて取り組んでおる次第でございまして、今、その沖縄で今日まで政治生活を続けられた、そして我々と一緒に沖縄問題に取り組まれた上原議員からそのようなお言葉を聞くことを、私はむしろ残念だと思います。  むしろ御一緒に、これから与野党を超えて、沖縄の困難な問題に取り組んでまいる決意をお互いに共有したいものであると考えておる次第であります。
  139. 上原康助

    ○上原委員 官房長官、失礼かもしらぬが、お疲れかもしらぬが、この間からどうも御答弁がおかしいな。それは、そういう立場で僕は言っているわけじゃないのですよ。何かそんな心情論とか感傷論で言われたら質問も、あなた、お互いの議論ができないんじゃないですか。少しお疲れじゃないの。いやいや、本当、私の方が心外だよ、そういう御答弁をあなたから聞くのは。僕は、是は是、否は否と言っているのに。  それで、今五千数百億の予算と言うが、ちょっとこれも違いますよね。沖縄開発庁予算は三千五、六百億だとは思うけれども、オーバーで。そういう経済振興をどうするかは、沖縄県民が見ると、それは当たり前のことと思う人もいるでしょうし、政治の場にいる者は、政府がやっていることに対しては、それは私も評価もしますよ。  問題は、私が今言った基地の問題が一歩も進んでいないんじゃないか、それをどう解決するか。県内でたらい回すような整理統合、縮小統合ではだめだから、その政府の認識を改めていただいて、日米間でもう一度解決策を図るように努力していただきたいという要望、願いを込めて私は言っているのであって、もう一度御見解を聞きたい。
  140. 野中広務

    野中国務大臣 私は、上原委員が沖縄にかけられる情熱をとかく申し上げたわけでございません。  ただ、現状として、今日まで粛々とSACO合意に基づいて普天間の移転を前大田知事とともに真剣に取り組んできた橋本総理の苦悩を思いますときに、大田知事が突然、このSACO合意を十分御承知の大田知事が名護の市長選挙の席上で海上へリポートの拒否を言われてから一年余り、政策協議会を初めとして、沖縄との関係連絡協調することができなくなったことは、大田県政における問題として十分上原委員承知でございます。そしてそのことで、沖縄問題が解決つかないということから、時には上原先生そのものが知事に立候補しようとされ、それすらお考えになった時期もあったじゃありませんか。  したがって、稲嶺新知事はそういう中から、この状態では政府と一緒になって沖縄の基地問題を解決し、沖縄の深刻な経済問題を解決することができないという上に立って立候補をされ、そして沖縄県民の輿望を担って当選をされ、その公約の中に、従来の海上ヘリポートと違って、県民の合意を得ながら陸上において軍民共用のヘリポートを考えたいという提案をされたわけであります。  その上に立って知事は、就任された翌日、東京にお出ましになりまして、第一回目の政策協議に出、来る二十九日にまた政策協議会を行うわけでございます。そういう県内体制を整えられた上で、知事はプロジェクトチームをつくって、そしてみずからの公約に基づく代替施設の問題、あるいは那覇軍港の移転の問題を含めてやっていきたいと、今やっておられるところでございます。  したがいまして、総理がお答えになりましたように、我々は稲嶺知事のお考えを十分聞いた上で、沖縄の多くの課題を解決するために真摯に努力をしようと、内閣を挙げてやっておるところでございます。
  141. 上原康助

    ○上原委員 昔の私なら、こういう御答弁をされたら相当頭に血が上るんだが、沖縄問題を解決するには野中さんとけんかするわけにもいかぬし、きょうのところは、納得はしませんが、聞きおくことにしましょう。  そういった心情論、感情論もいいですが、私が指摘をしている問題の本質というものを内閣として、総理初め関係大臣がどう理解をするかということをぜひお考えになっていただきたい。稲嶺知事は万能じゃないですよ、相当苦労なさいますよ、そんな御答弁しておられると。  そこで、せんだって、何か基地の返還跡地を進めていく上で検討委員会設置するということを野呂田防衛庁長官が威勢よく打ち上げたようだが、筑波学園都市並みの強力な取り組みが必要だということを沖縄で普天間飛行場をごらんになっておっしゃったとかいう報道もあって、私も期待をしたんですがね。確かに、今指摘しましたように、那覇軍港にしても、普天間飛行場その他が、SACO合意は一向に進展しない中で返還跡地の検討委員会を先んじてやるというのもいささか、いろいろ見方によってはあると思う。  だが、これだけは指摘しておきたいと思います。そういう委員会は、現在の基地の環境影響調査とか、あるいは返還されたらどういう活用をしていく、跡利用をしていくかということにおいては、政府が率先してやらにゃいかない問題だと思う。そういう問題認識はありますか。これはどなたが答弁するかね。どうぞ。
  142. 野中広務

    野中国務大臣 跡地利用の検討委員会につきましては、政策協議会のもとに既にそのスタッフを整えております。ただ、今委員おっしゃいましたように、普天間の移転の問題を先に置いて、跡地利用を考えて具体的に我々が何かをするときに、沖縄県民の感情を逆なでするようなことになってはいけないという配慮から、具体的な動きを今一応見合わせておるだけでありまして、そのときにどう対応するかということについては、十分体制を整えておるところでございます。
  143. 上原康助

    ○上原委員 私の要望も含めてですが、いずれ環境庁長官などの御意見も聞いて、基地の、これは沖縄の米軍基地だけじゃないですよ、在日米軍基地全体の環境影響調査というものをやらにゃいかぬ、PCBその他を含めて。そういうのを含めての検討委員会というか、外務、防衛、沖縄開発庁、内閣内政審議室等々の、それはやりますね。ぜひその御見解をもう一度、どなたでも結構です。
  144. 野中広務

    野中国務大臣 既に、今委員がおっしゃいましたような体制で取り組むことにしております。
  145. 上原康助

    ○上原委員 野呂田防衛庁長官、何か。失礼な言い方だが、今検討委員会はパアになったんだが、防衛庁としてはどういうあれでやるか。今官房長官から御答弁あったんですが、少し何か補足するのか、あなたの見解があれば一言聞いておきましょう。簡潔に。
  146. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 SACO返還事案につきましては、関係自治体の御理解と御協力を得なければ進みません。  ところで、施設の移転先となる関係自治体等からは基地機能の強化になる等の反対が非常に強いということを、私も沖縄へ行ってよく理解してまいりました。また、施設の返還そのものについては、関係する自治体及び地主会等の中には、私も地主会とか漁連等にもよく会ってお話を聞きました。あるいは宜野湾市の市長にも会いましたし、前の比嘉名護市長ともお会いしましたが、そういう話の中から、跡地利用の困難等を理由に返還反対の意向を示しているところもあります。  こういう御理解がまだ得られていないということがこの基地問題が進まない一つの要因であると私は思いましたから、実は跡地利用の検討会をひそかにやろうと思って、始めようとしたところでありますが、ただいま沖縄開発庁長官から御見解が示されたとおりでありますので、目下それを差し控えているというのが現状でございます。  ついでに申し上げますと、沖縄の稲嶺知事さんは、地元の意見を踏まえながら国との連携を密にして、SACO合意の実現を初め、基地の計画的、段階的な整理縮小に向けて前向きに取り組むという意味で、二月ないし三月にプロジェクトチームを県庁内に設置してこの問題に対する方向を示したいとおっしゃっていますから、私どもとしては、地元の頭越しにこの問題を進めないという大前提から見て、知事さんのそういう結果を今見守っているというところであります。  大変な、関係者が納得できる報告が出れば、私どもとしては、その方向に向かって政府を挙げて知事を支援して、いい結果が出るようにしたいと思います。
  147. 上原康助

    ○上原委員 あと五分ありますので、そのくらいで終わります。  最後に、サミットの沖縄開催について。これを最初に言ったのがよかったかもしれませんが、総理大臣、本当に、沖縄の米軍基地問題あるいは振興策、今後のアジアの安全保障、平和というような面からしても、二〇〇〇年サミットは沖縄で開催したらという意見は強いですね。これはいろいろ事情はあると思います。しかし、私は、これは内閣の、特に総理や沖縄開発庁長官、外務大臣等の政治決断いかんだと思う。  これも、塩川正十郎先生、前衆議院議員、大阪の方ですが、産経新聞のコラムにいい御意見を載せておられる。私は大変感心しました。これはちょっと何日だったか、一週間くらい前のあれです。  それともう一つ、岡本行夫前首相補佐官も、やはりサミットは沖縄で開催したのが、基地問題その他、今後の日本外交にとっていいんじゃないのか、それはまさに総理大臣の専管事項だ、決断いかんだ、こうおっしゃっているわけです。  長年の沖縄県民の本当の痛みに、あるいはこれからに夢を与えるということであるならば、この際、いろいろ、福岡とか宮崎とか大阪あるいは横浜でしたかね。(発言する者あり)千葉も譲る、みんな譲るというんだから。どうですか。お聞かせ願いたいと思います。
  148. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 二〇〇〇年の日本で行われるサミットにつきましての開催の地域につきましては、今御指摘のように八つの自治体から強い要請が来ておりまして、現在調査団をそれぞれに派遣いたしまして検討を進めておるところでございます。  私もかねがね申し上げておりますが、次期、日本で行われる地域につきましては、従来、三回東京で行われてきましたので、地方で行う必要があるんじゃないか、こういうことでございます。  この時点で、どこだ、こういうことを申し上げる立場にありませんが、有力な一つの地域であろうと思っております。十分検討させていただきます。
  149. 上原康助

    ○上原委員 中央の地方ですからね。しかし、アジアの中心ですから。今の総理の答弁をしっかり県民は受けとめると思います。  最後に、野田郵政大臣、沖縄振興はマルチメディアが非常に大事であります。さっきからの私の基地問題に対する非常に優しい意見を含めて、あなたの女性大臣としての沖縄基地問題への解決策を、感想を、男性の皆さんは余りいい返事はしませんでしたから、国会も少し華やいだ御答弁もあってもいいかと思うので、振興策のことと関連づけてマルチメディア、郵政省として簡潔に、どうやるのか、基地問題をどう解決したらいいのか、御見解があれば聞いて終わりたいと思います。
  150. 野田聖子

    野田(聖)国務大臣 沖縄振興策についての御質問でございますが、私はこう受けとめています。  まず、沖縄の経済が元気になること、そしてそれに伴って雇用が生まれてくること、そして最終的にはそこに住んでいる皆様方の生活が豊かで幸せになることということで、郵政省としては、これは沖縄だけではないのですけれども、日本国内でも世界的にも情報通信が非常に重要だということで、その活用を寄与することで、これは橋本前総理が命名されたのですけれども、マルチメディア特区構想ということでその構想を推進しております。  その中には、情報通信の基盤整備を進めること、さらにはその情報通信の人材を育成すること、そして情報通信の産業の集積、さらには将来沖縄が発信基地として進んでいくこと等に取り組んでいるところでございます。  具体的に、長くなりますけれども、ギガビットネットワークという超高速のネットワークを沖縄に持っていただいたり、さらには、三次補正で決まりました学校インターネット接続も沖縄の子供たちの将来のためにやっていただくこと、さらには、今後デジタル放送が始まるわけですけれども、それも沖縄で主体的に取り組んでいただくことが既に推進されることになっています。  雇用のことなのですけれども、これは郵政省というよりもNTTの方に要請しまして、名護とか那覇で、一〇四番号案内を沖縄に移しまして東京の番号案内のために女性が活躍していただいているということで、情報通信はこれからまだまだ発展するわけですけれども、私がとらえているのは、これを単に沖縄の振興ということではなくて、今、日本が閉塞感があって頑張らなければいけない中、沖縄が情報通信のアジアとか太平洋地域のハブという位置づけを持っていただきまして、オール・ジャパンの推進力として頑張っていただきたい、そういう思いを込めて取り組んでいるところでございます。よろしくお願いします。
  151. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。終わります。
  152. 中山正暉

    中山委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  153. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  154. 坂口力

    坂口委員 公明党の坂口でございますが、よろしくお願いいたします。  先日の、自自連立のときの社会保障関係の取り決めというのは二つあったというふうに思いますが、一つは、消費税の福祉目的税化の話がございました。もう一つは、基礎年金の国庫負担の三分の一から二分の一への引き上げのお話がございましたが、これは正式に決まったのかどうか、ちょっとわかりません。  それで、最初の福祉目的税化の話でございますが、これは福祉目的税と決まったわけではなくて、一応、目的税化ということになっているんだろうというふうに思います。その中身でございますが、これはいろいろとり方がございまして、消費税は福祉のみに使用するという意味なのか、それとも、福祉には消費税だけを使う、こういう意味なのか。先日、NHKの討論会でも池田政調会長に申し上げたわけでございますが、若干意味が違うというふうに思っております。  消費税は福祉だけに使うということになりますと、それは、福祉だけに使って、足らない分が出てきたら、その足らない分は直接税の方からも回しますよということも含まれておりますし、それから、福祉には消費税だけを使いますということになりますと、消費税が足らないときには消費税を上げて、そして福祉に必要な分まで上げる。  これは将来の直間比率にかなり係ってくる話なものでございますから、自自連立のときのお話し合いの結論というのは大体どういうことであったのかということを、では野田先生、何も予告をしてございませんけれども野田先生からまずお聞きをして、そして大蔵大臣からお聞きをしたいと思います。
  155. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 この問題は、両党間、党レベルで協議しておった内容でありますので、あえて私からこの点について申し上げさせていただきます。  坂口先生御指摘のとおり、両方の含意がありまして、自由党が主張しておりますのは、その両方のことを含んでおります。それはすなわち、基礎年金、高齢者医療、介護、この三つについて、消費税の使途はこの三つに限定をする、それ以外には使わないということが第一点であります。しかし同時に、将来に向けては、逆にこの三つについては消費税を財源として賄っていこうという発想がもう一つあります。ただ、一〇〇%それで満たせるかどうかはまだ断言はいたしておりません。  それは、現在は社会保険という形でその主たるファイナンスをしておるということが一つありますし、現在の状況では消費税のほかの税収をも充てられる、言うなら一般財源から投入するという形をとっておるものですから、そういう点で、消費税の負担ということと、いわゆる消費税を導入するとき、税率を引き上げるときに国民に対して説明された、高齢社会のためにという説明と必ずしも直結していないというような嫌いがあって、そういう点で、これからの高齢社会を考えたときの大きな老後の不安をなくするための、それを何によって財源を賄うかということを考えた場合に、むしろ消費税の使途をまず限定するということを第一に置こうと。そこで、両党間の合意において、当面できることは、使途をこれに充てる、ほかには使わないよということが予算総則において明記をされたということが大きな第一歩であるというふうに我々は判断をいたしております。  ただ、将来的に、しからばその三つの大きなテーマについて消費税だけですべてを賄うということまでいけるかどうかということについては、現在既に社会保険ということがそれを支える大きな背景であるということも現実の問題でありますし、そこへ一気には行けないという、途中のいろいろな過程があるということもありますので、この点は引き続き両党間で勉強していこうという位置づけになっておるということであります。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両党間のお話し合いにつきまして、私も、今野田自治大臣が言われましたように理解をいたしております。基本的には私はこれは政策としてはなかなかいいことではないかというふうに受けとめまして、さしずめ、しかしいろいろ将来まだ決めなきゃならない要素がたくさんございますから、今回予算総則においてあのように決めさせていただいたということは、将来その方向でいろいろ考えていこうという私の気持ちでございます。  それで、今野田大臣が言われましたように、福祉全体が消費税で賄えるかどうかというお話は実は両様に受け取れる話でございまして、消費税がこれしかないから福祉はこれだけだという意味なのか、あるいは福祉はもっともっと要るから消費税をもっともっとアップしたらいいじゃないかという意味なのか、それは大変に微妙な話でございますから、そういうこともございますし、また社会保険のこともございますので、これからいろいろこれは具体化していく方向の政策的な考え方であろうというふうに考えております。
  157. 坂口力

    坂口委員 お二人の大臣からお聞きをしたわけでございますが、野田大臣お話は、いろいろございましたけれども、予算総則に書かれます部分はどちらかといいますと前段の部分に大体限定されると申しますか、その辺のところを書く、ただし、後半につきましてはこれからというお話でございますし、大蔵大臣からもそういうお話でございました。  もう一つだけ大蔵大臣にお聞きしておきたいのは、そういたしますと、大蔵大臣のお気持ちとしては、これはいいことではないかというお話もございましたが、後段の方の福祉には消費税だけでいくという方向も含めて、そういうことでできれば合意をしていきたい、こういうお気持ちなんでしょうか。そこまではまだ至ってなくて、それも含めてこれから検討だというお話なのか、もうちょっとその辺のところをお聞きをしたい。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 率直に申しまして、福祉の財政需要がこれからかなり大きくなっていく、またいくばかりであろうかという感じがいたしますが、しかし、消費税につきましてはまだまだいろいろ御議論があって、したがって、消費税の方はそれに従って増税をしていってもいい、そういう国民的なコンセンサスといいますか合意というものはあるとは申せないであろうと思いますので、その辺のところは、やはりいろいろな御議論があって、その後でありませんと何とも申し上げかねるな。ただ、二つのことを関連づけて考えることは政策の方向としては恐らく適当なことではないか、その程度にただいまとしては思っております。
  159. 坂口力

    坂口委員 では、もう一つの方でございますが、基礎年金の国庫負担割合の話でございますけれども、こちらの方はいわゆる自由民主党の年金制度改正という中にかなり書かれているわけでございますけれども、これは両党の合意であったのかどうかということまで私は存じ上げておりません。  自由民主党の年金制度改正につきましては、「基礎年金の国庫負担割合については二分の一に引き上げることとし、年金改正法に明記する。」こう書いてあります。「国庫負担割合の引上げ及び保険料凍結解除の時期は同時とし、平成十六年」いわゆる二〇〇四年までの間にでき得る限り速やかに実現する、この時期において「改めて財政再計算を行い、負担と給付の将来像をより明確にする。」こう書かれておりまして、自由民主党の改正ということにはなっておりますが、これは当然、政府と与党とは一体ではございますけれども、一応これは政府の方針というふうにもなっているというふうに理解させていただいてよろしゅうございますか、厚生大臣
  160. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 厚生年金の改正につきます自由民主党の年金問題調査会というのがございます。そこと我々厚生省で審議してまいりました素案をもとにして協議した結果、今議員のおっしゃられたような線に大体なっておりますが、これが最終的に与党で合意されたものでもございませんし、なお、これから法案をつくる段階までに最終的な与党内合意をきちっとつけるべき話でございますが、基本的な方向としては大体そういうことになっております。  なお、二〇〇四年までに凍結するのか、それ以前かという問題は、私どもは、できるだけ早く保険料の引き上げ解除をしていただきませんと、中長期的な年金財政でございますから、後半に非常に多くの年金の保険料の引き上げがしわ寄せされるという懸念もございますから、なるべく早期に解除していきたいと思うんですが、それはしかし三分の一を二分の一にするという措置が可能であって初めてできるということになっておりますので、これは我々と、それから与党自民党の年金問題調査会ないしは政調との合意事項であります。
  161. 坂口力

    坂口委員 もう少しこれはお聞きしたいのですけれども、時間の都合がございますから、またの機会に譲らせていただきたいというふうに思いますが、できるだけ早くきちっとした形で位置づけをしていただきたいというふうに思っております。  さて、本論でございますが、社会保障全体につきまして、厚生省からもいろいろの試案が出されたりしております。そして、社会保障全体といたしましては、二〇二五年に向けて、国民所得の伸び率が、例えば三%でありますとか二%でありますとか一・五%でありますとか、それによりましてこのようになりますよというような試算もお出しをいただいているわけでございます。  ところが、今までの政府お話は、これから先負担はこのぐらい多くなりますよ、社会保障を含めてのお話でございますが、これだけ多くなりますよというお話。それから、給付金の方は現在よりも少々減って、大体このぐらいにしないと保険料はもっと上げなきゃなりません。保険料は上げますよ、給付は若干下げますよ、そういう話が先行しているわけでございます。  そういたしますと、国民の方は、それを聞きまして、さあえらいことだ、将来は保険料はどんどん上がってくる、もちろん税金も上がってくるだろう。そして、給付の方は、年金なんかの給付はどうも下がるらしい。一体将来はどうなるのかという心配が先走りまして、そして財布のひもがだんだんとかたくなって消費が伸びないということにも結びついているではないか、こういう話がずっと今続いているわけでございます。私も、そういうことになっているのではないかというふうに実は思っております。  そこで、厚生大臣あるいは総理大臣に少しお聞きをしたいのは、そのように、負担をする方は大体二〇二七年にはこのぐらいになりますよという値が示されております。おりますが、しかし、今申しましたように、個々人にとりまして、それでは、年金を払い、あるいは保険料を払ったその後、一体どれだけ残るのかということの試算というのは示されていないわけでありまして、国民の側は、そこがわからないものですから非常に心配が大きくなるという気が私はしてなりません。  そこで、そこの辺のところを厚生大臣はどのようにお考えになっておりますか。そして、現在まで発表なさったものは私はないように思いますけれども、今手持ちでお持ちになっているものがありますか。どういうふうにそれは国民に納得をしてもらうようにしようと思っておみえになりますかというところをお聞きしたい。
  162. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員の御指摘のように、私どもは、マクロ的なアプローチとして、平成九年度に、社会保障の給付と負担に係る将来推計を一応マクロ的にしてございます。それによりますと、名目NI、国民所得の伸び率に応じて、約三〇%ないし三六%ぐらいと推計をしております。この数字は発表しております。  これによりますと、それは前提がございまして、名目国民所得の伸び率を二〇〇〇年までは三・五、以降は三・〇%にするという案とか、それが一案です。それから、名目国民所得の伸び率を同じく一・七五ないし二〇〇一年以降は二・〇にする。それから、名目国民所得の伸び率を一・七五で、二〇〇一年以降は一・五にする。そして、人口の推計は国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来人口の推計に基づいてございます。  こういう試算結果を報告いたしておりまして、ABCそれぞれによりまして、社会保障に係る負担は、平成七年度は一八・五でございましたが、平成三十七年度、つまり今度の財政再計算期の終期を私ども二〇二五年と考えて計算をいたしておりますが、それでいきますと、A案でいきますと二九・二分の一、B案でいきますと三三・二分の一、C案でいくと三五・二分の一%になるという予測をいたしまして、それに対して、社会保障以外に係る負担はおおむね二〇%で横ばいという前提を置きますと、それを加算したものが国民負担率ということになります。なお、財政赤字の問題は考慮してございません。  そういう試算を出してございますが、しかし、今委員のおっしゃる点は、そういうマクロ的なただ数字だけではなくて、家計の可処分所得が一体どうなるんだという御疑問であり御質問だろうと思うのです。  私ども、可処分所得と言う場合は、家計の受取金額から個人所得税とか社会保険料の本人負担などの家計の公的負担を除いたものとして考えておりますが、これを実際上、二〇二五年までどういう推移で推移し、二〇二五年にどうなるかという具体的な数値につきましては、その試算をやることはできないわけではございませんが、非常に多くの前提を置かなければなりません。  その一つは、国民負担率の水準を将来どう考えていくか。あるいは現在の赤字をどう解消していくか。あるいは社会保障制度の改革が必要でございますが、システムをどのような形にしていくか。そして何よりも、経済成長と賃金の水準の動向によって可処分所得が大きく変わりますので、そういった諸点を考えながら算定しなければなりません。しかし、可処分所得の、今申しましたような制約条件が大きく異なってまいりますので、試算を行うことは実際は困難であるというように考えております。  したがって、今直ちに政府として、公式なそういう推計値、社会保障の伸びに応ずる可処分所得を推計することは困難であるということを申し上げざるを得ませんが、いろいろの前提を置きますれば推計も可能かという点があろうかと思っております。
  163. 坂口力

    坂口委員 今厚生大臣お話を聞きますと、なるほど平成九年の九月に厚生省から将来推計が出されまして、そして試算が出されております。そして、二〇二五年のいわゆる社会保障給付費なるものはこれだけですよ、社会保障に係る負担は大体これぐらいでございますという推計が出されているわけでございまして、これはもう私もよく拝見をしているところです。  今後いろいろの前提があるから推計は困難である、こうおっしゃいますけれども、それじゃ、この推計なるものは、いろいろの前提を置いた上でなければこの推計も実は出てこないわけで、これは大変ないろいろの推計、大胆な推計の上に成り立っている給付費であり、そして負担額であるわけです。負担する方だけ大胆なものを使いながら出しておいて、そしてあと残るのは知りませんよというのは無責任ではありませんかと私は言うておるわけなんです。  だから、負担をするのはこれでわかりました。大胆な前提がようけある、幾つも幾つも重ねた大胆な前提の上の値でございますが、これはこれで出た。こういう値が出た。だけれども、これも賃金の動向によりましたり、あるいは経済成長によりましたり、いろいろな値でこの値も多分変わってくるのだろうと思うのです。変わってはきますけれども、大胆な前提のうちにこういうふうになりますという三つの案を出された。これを出されたということは、これに見合うべきもの、これがあるということは、これを払った後、国民がそれにたえられるのかどうかということを考えてもらわないと、一方的にかかりますよということだけではこれは無責任でしょう。  推計困難であるというのは、厚生大臣、一方で必要な額だけ出しておいてあとは推計困難であるというのは、いささかこれは虫がよ過ぎると申しますか、推計困難なら、もらう方も推計困難だというのなら話はわかるわけですけれども、もらう方は大胆な前提でちゃんと計算できますよ、あと残ります方は推計困難でございますというのは、いささかこれは偏っているのではないかというふうに思っているわけでございます。  総理大臣、どうですか。総理大臣ですからそう細かなことをお聞きしようとは思いません。大枠の物の考え方をちょっとお聞きしたいと思います。
  164. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 総理の御答弁の前に申し上げさせていただきますが、今申しましたのは、確かに保険料の負担の問題でございます。給付の方が実際に可処分所得の中でどう位置づけられるかとか、あるいは可処分所得の中で保険料負担がどうなるかという、特に可処分所得の中で保険料負担がどの程度を占めるからというような問題は、先ほど申しましたようないろいろの、さらに複雑な前提が必要であろうと思うのです。  ただ、絶対できないかといえば、坂口委員のおっしゃるように、可処分所得に対する推計は、私は、大きな前提を置けば可能だと思います。しかし、その前提が本当に現実的かどうかという点になると検証を要する点が非常に多いものですから、先ほどのような点を申し上げました。  したがって、坂口委員はそういうことで非常に関心をお持ちで試算もなさっておるようにもお伺いをしておりますが、それはそれとして一つの方法だろうと思いますが、私どもとしては、余りにも仮定が、前提が大き過ぎますから、今のところ公式なものは発表していないというのが現実でございます。
  165. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 坂口委員の問題意識は、その重要性については、私もよく理解するところでありますが、給付と負担の問題、そして将来における財政の状況等諸案件を勘案いたしますと、この問題についての将来図を正確に描き得るということがなかなか困難だろうと思います。しかしその中で、将来不安をなくすということでありますれば、いろいろな要件を挙げて、その前提の上で将来に対する不安を解消するような姿というものを描いていかなければならない、これは大変大切なこととして努力していきたい、いかなければならぬ、このように考えております。
  166. 坂口力

    坂口委員 厚生省の方は、この試算の全体に出ておりませんけれども、何か試算をしておみえになるところを拝見いたしますと、いわゆる国民所得の伸び率三・〇%の場合には国民負担率は五〇%ぐらいでいける、しかし、伸び率が二%のときだったら五三・五%ぐらいまでかかるとか、あるいは一・五%の伸び率でいくということになると五六%ぐらいかかるというような試算も出しておみえになるわけで、出のところはそういうふうにちゃんとなっているということを私は指摘をしているわけでございます。  それで、時間もございませんので、厚生省のをちょうだいできないということになれば、私のまことに大胆な試算でございますけれども、ごらんをいただいて、御批判をいただきたいというふうに思います。  今お配りをいただいておりますが、とにかく二〇二五年、厚生省がお出しになりました三つの案に従いまして、じゃ一方で可処分所得は一体どうなるのかということを試算したものでございます。いろいろ細かなことがございまして、一番上は、こういう式次第で出しましたよということが書いてあるわけでございます。それから二枚目には、こういう仮定のもとにやりましたという仮定が書いてございます。  これは仮定次第でございますので、この仮定のところだけは大事でございますからちょっと読ませていただきますと、厚生省の将来推計というものを利用いたしまして、平成七年度を起点とし、平成九年九月時点における将来の保険料見通しなどをもとにして推計をいたしました。それから、社会保障給付及び社会保障制度については現行制度を前提として、このまま続くものというふうに仮定をいたしております。  それから、一番難儀なのは、二番目の財政赤字の解消はどうするかということでございます。しかし、これは言い出しますと議論が百出しましてぐあいが悪いものでございますから、ちょっと横に置かせていただきました。国及び地方の財政赤字は平成九年度対国民所得で七・七%になっておりますが、これは返す、返さないとかいろいろによってまた違ってきますので、少し横に置かせていただいた。  それから、社会保障以外の支出に関する公費負担の対国民所得比というのは、これは先ほど厚生大臣が御指摘になりましたように、現在約二〇%。この社会保障以外の支出に伴う公費負担の対国民所得は現在の水準から変化しないものというふうに仮定をいたしてございます。  そして、税収構成は、現在の所得、消費、資産のバランスがこのまま継続するものというふうに前提にさせていただいております。特定の税目の福祉目的税化等が今議論になっておりますけれども、税収構造が影響を受ける可能性は考慮していない、こういうことを言うておる。  それから、租税負担のうちの家計負担分の比率を固定いたしておりまして、法人税の帰着の問題などは考慮をしていない。それから、固定資産税等の大税目につきましては、家計負担分の割合を大胆に仮定して、半分なら半分、こういうふうにしてある。  それから、社会保障負担の家計負担分は五〇%というふうに仮定をしております。事業主負担分の帰着の問題は考慮に入れないということにしてございます。  それから、家計の受け取りと国民所得との比率は一定。家計の受け取りに含まれております社会保障給付による移転収入の比率というものが変化する可能性がございますけれども、それは考慮に入れていない。将来における社会保障給付費の増大によってこの比率が変化する可能性が大きいということはよくわかっておりますが、こういうことにさせていただいた。  以上申し上げたような、まことに大胆な前提でございますけれども、前提を置かせていただいたということでございます。  そして、その次のページは、その計算をいたしますときの経過でございまして、これは省略をさせていただきまして、最後の二枚目の方の「平成九年度」というのがございますけれども平成九年度におきます家計の負担額、それから可処分所得、そして可処分所得の中から間接消費課税の負担を考慮した、除いた後どれだけになるかというのを出してあるわけでございまして、最終のところをごらんをいただきますと、平成九年度の可処分所得は八三・八%であり、間接消費課税の負担を考慮いたしますと七八・九%になる。これはもう過去の数字でございますから、大体このとおり間違いがないだろうというふうに思っております。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕  問題は最後のページでございますが、これは厚生省がお出しになっておりますABC将来推計の三つ、すなわち一番上はいわゆる将来推計Aというものでございまして、これは国民所得の伸び率が平成十二年までは三・五%、平成十三年以降は三・〇%という数字になっております。そういう前提のもとに試算をいたしますと、途中の過程のところはもう省略をさせていただいて、最後の可処分所得は七八・二%、それに間接消費課税の負担を考慮に入れて、それを引きますと七二%になる。  それから同じようにして厚生省の将来推計Bを用いたものを見ますと、これは可処分所得が七六・六%になり、そして間接消費課税のものを除きますと七〇・二%になる。  最後にいわゆる推計C、すなわち国民所得の伸びが一・五%になりますと、可処分所得の方が七五・五%であり、そして間接消費課税の負担考察後は六八・九%、こういう数字になる。  先ほど申しましたように大分大胆な仮定を置いてありますから、一つ狂ったらどうなるんだと言われたらそれまででございますけれども、しかしおおよその見当はつくんじゃないかと実は思っているわけでございます。  ただ、将来、人口構成がさらにどうなるのか、急に変わることはないか。あるいは国及び地方の多額の借金をどんなふうに返していくのか。これは税を上げて返すのか、それともほかの支出を抑制して返していくのかというようなことによってもこの数字は違ってくるというふうに思いますが、そこは、もしも返すというときには、約二〇%他の支出があるわけでございます。その中で返していくなら返していく、そのかわりほかのところに使うものは減りますよということでこの計画はできているということでございます。  そんなことで出してみると六八・九%。三%というのは私はちょっと難しいのではないかというふうに思いますが、まあ一・五%の国民所得の伸び率というのはそんなに難しい話ではないのではないかという気がいたしますので、ここを見るというふうにいたしますと六八・九%。約六九%前後の自由にできるお金といいますか、国民の皆さん方がそのときの自由にできる額というのは大体想像がつくのではないか。これは個別に個々人の問題を言うておるわけではなくて、トータルでの話をしているわけでございますから、ここにも問題はございますけれども、おおよその見当はつくのではないかという気がいたします。  ただし、この数字をどう見るかということがございまして、そうはいうけれども、これはなかなか、現在は七八%ぐらいあるわけでございますから、二〇二五年にはさらに一〇%減りますよ、これは大変なことだというふうに見るのか。それとも、高齢化社会に突入した中で多額の社会保障を担っていかなければならない状態であれば、このぐらいの負担であればこれは辛抱のできる値ではないかというふうにごらんをいただくか。私は、見方はいろいろあるんだろうというふうに思うわけでございますが、率直な感想を総理にちょっとお伺いをしたい。  大体このぐらいの、これはまあ予想をしていた額よりも案外ゆとりがあるというふうに思われるのか。それとも、まあこんなものだというふうにおっしゃるのか。いや、ちょっとこれは思ったよりも厳しいぞという感想をお持ちなのか。だから、感想で結構でございますから、ひとつお聞きしたいと思います。
  167. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この道の専門家の坂口先生が大変御苦労されまして、一定の前提を置いてこの試算をされたわけでございまして、今お聞きをいたしまして、大変意欲的、大胆な試みだという、そういう意味でその労を多としたいとは思います。  国民負担率の水準や、それから、委員御指摘ありましたが、財政赤字、今でも大変大きな額をしょっておりますが、これがどうなっていくかというような点での問題、そして社会保障制度そのもののあり方の問題、また将来の税収構造あるいは国民負担における家計の負担分についての問題等、なかなか多くの仮定を置いて試算されたものでございますが、この数値を前提にいたしまして社会保障の議論をするということにつきましては、これは先ほど申し上げましたように、将来、その時点、この計算によれば平成三十七年、二〇二五年、こういうときに、これから若い人たちも含めてその時代生きていくということを考えますと、ある種の数字を明らかにしながら、そこに向かって安心して行ける数字が出てこなければ将来設計はできないわけでございまして、そういった意味での数字として拝見をさせていただきました。  この問題については、政府部内にもそれぞれ専門の大臣ございますのでお聞きをいただきたいと思いますが、感想といいましてもなかなか難しいことでございますけれども、ぜひ安心して、国民負担の率も、ある程度の数字の中で個々人が負担し得るという数字でなければならないのではないかという気持ちを持ちまして、実は今、坂口委員の試算について拝聴いたしておったところでございまして、正直申し上げて、これについての感想を述べるということはなかなか難しいことでございますので、それぞれ担当の所管の大臣の御感想もあわせてお聞き取りをいただければありがたいと思っている次第でございます。
  168. 坂口力

    坂口委員 難しいという感想であるということはよくわかりました。  それでは、大蔵大臣と経企庁長官と厚生大臣、それぞれ御担当のところで、出し方そのものもいろいろありますから、それはその仮定が成り立つかどうかという問題もございますけれども、六八・九%、これぐらいな数字、事実としてその数字がもしもあるというふうになれば、そのぐらいな数字は一体どう評価するかという御意見を含めて、ひとつお聞きをしたいと思います。  大蔵大臣の方から順番に行きますので、ちょっとお待ちいただけませんか。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理が閣僚は何か言えとおっしゃいますので、そういうベースで申し上げますが、とにかくほとんどの要素がわからない、人口動態ぐらいが幾らか確かなことがわかるばかりの中で、ひとつ家を建ててみよう、どういう景色の家になるか、こういうお企てですから、私はそれは非常に有意義なお企てだと思うんです。結局、それでどこか悪ければ、やはりどこかあちこち押したりへこませたりして何か建てなければならぬということなのでございますから、こういう作業がやはり要る。そうでないと、どういう形の家かすらわからぬということで。  私の率直な感じで申しますと、この推計Cを用いた場合でございますね。今おっしゃいました六八ですが、この六八というのは、この場合の租税負担が三一でございます。そして保険料負担が二四でございますが、この間この委員会で、おまえは将来の国民負担はどのぐらいがいいと思われるかという御質問がありまして、私は、わかりませんが五〇というのが一つの目安じゃないかと申し上げました。この場合は五六でございます。現在の租税負担は多分二三ぐらいでございますから、この三一というのはかなりの租税負担のプラスになっている。しかし、このぐらいで本当に成り立つのならば、私は、これは一つの考えではないかなと。可処分所得の率というのはちょっとわかりにくうございますから、逆に租税負担で考えたら大体見当がつくと思いますので、三一・五というのはやむを得ないのかなというようなのが私の感じでございます。  いろいろなことを前提にして申し上げましたので、余り正確におとりいただかない方がいいかと思いますけれども、そういう感じでございます。
  170. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 坂口先生のいろいろな前提を置かれての労作、まことに興味深く拝見いたしました。  これは、一つ問題点として言いますと、先生御指摘になりました財政赤字の問題もございますが、名目成長率だけでとっておりまして、実質成長率とデフレーターとの関係、そしてそれに絡む利子率の問題が出てまいります。累積赤字がございますので、国債の累積赤字を考えますと、利子率との関係もかなり重要なポイントになってくるかと思います。  そのあたりを捨象いたしまして、とにかく絵をかいてみるという試みは、やはり先生だから大胆にできたことで、まことにありがたい資料だと思いますが、実際問題といたしまして、現在の財政赤字を解消しながら五六%の国民負担率というのは、結構多い率だろうと思います。したがって、大胆に財政負担の方を切るか、あるいは社会保障の方を、もう少し高齢者も働けるような形のものをつくるか、何かちょっと工夫が要るという感じは私はいたします。
  171. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 総理大臣並びに経済企画庁長官のおっしゃられた点も、私も多々共通する感想でございます。  ただ私は、実際、年金なり医療なり介護なり、これからの社会保障制度をどう構築していくかという立場から見ますと、多少ミクロ的な、システムとしてどうあるべきかということが非常に関心が強うございます。そういった点からいたしますと、例えば基礎年金も、税で負担するのか保険料で負担するのか。負担には変わりないじゃないかという点で、負担率では同じだと思いますけれども、そういったいろいろのミクロ的な、システムとしての懸念というか、関心が相当私どもは高いわけでございます。ただ、総体としてどのようになるのかなという感覚だけは持っておかなけりゃならぬことは、委員の御指摘のとおりでございます。  そういった点からすると、総じて今よりも、坂口委員の指摘されましたように、大体六九%、七割くらいに、多少一〇%くらい下がるだろうという予測は、まあ本当にそうなるのかどうかというと私は自信がありません。二十一世紀の少子高齢化を迎えてまいりますと、そのときのシステムをどうするかによりますけれども、高福祉という点を貫こうとすればかなり負担率その他も高まる可能性もありますから。そんな感じで、坂口委員の御指摘はそんなに見当違いでないのかなという感じを持ちました。
  172. 坂口力

    坂口委員 試算でございますのでこれ以上のことを申し上げるのは控えさせていただきますが、一つは、我々と違いまして政府の方はいろいろのデータもお持ちでございますから、もう少しさまざまな問題も加味をしていただいて、それこそ、大蔵大臣がおっしゃいましたが将来の家の形、大体どんなことになるのかということを、おおよその見当のつくようなものをひとつ政府としてもお示しをいただければありがたい。そうすれば、国民の方もかなり安心する、安心できるかどうか、それは家の形によって違いますけれども、納得できるのではないかというふうに思います。  したがいまして、その辺のところを御要望しておきたい、ぜひひとつお願いをしたいと思います。これは総理大臣にお聞きするのかどうかわかりませんけれども、ひとつその辺、検討していただけますか、どうですか。
  173. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これから、非常に難しい問題でございますが、アプローチをさせて、検討させていただくつもりでございます。
  174. 坂口力

    坂口委員 時間がなくなってしまいましたので、あと取り急ぎ残りの問題をやらせていただきます。  いずれにいたしましても、景気がこういうふうに停滞をしてまいりますと、国民の個人消費というものが非常に大きな問題になってまいります。国民の個人消費に関係いたしますものを一、二申し上げておきたい。  一つは、これは労働大臣に少しお聞きをしたいわけでございますが、労働者財産形成促進法、これは御承知のとおり長い間あるわけでございますし、そして同じ名前のがドイツにもある。むしろ、ドイツにあったのを日本が同じようなものをつくったということだと思いますけれども、ある。  ドイツを拝見しますと、ドイツは勤労者全体の八〇%に当たる人たちがこの中に入っている、この恩恵を受けているわけでございますが、しかし、日本の場合には、財形に入る勤労者が年々歳々少し減ってきておりまして、現在二七%ぐらいな程度になっている。  これは勤労者の財産形成を促進していくという意味で、もう少しここは充実をさせていかないといけないのではないかというふうに思っておりますが、労働省の中で、あるいは労働大臣がどんなふうにお考えになっているのかということをお聞きをさせていただきたいというふうに思います。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  175. 甘利明

    ○甘利国務大臣 先生御指摘のとおり、勤労者財形制度というのは、ドイツを範にして日本が導入をし、日本を範にして韓国が導入したという経緯がございます。先進国にそう普遍的な制度ではありませんけれども、御指摘のとおり、我が国がお手本としたドイツと日本とでは加入率に随分差がございます。どうしてこの差があるかということなんでありますが——それから、御指摘のとおり、口数でいうと減っております。残高は若干ふえておりますけれども、口数が減っていて、二十何%ということであります。これは、制度設計が確かにドイツの方が手厚くできているという点がございます。この点について、魅力を増加させていくということで幾つか考えている点がございます。  一つは、この財形の中の、貯蓄とそれから融資の制度がございますが、財形住宅融資に関しまして、今までは三%の下限設定がありましたけれども、これを切っていこうじゃないかという設計変更をいたしたいと思っております。今までは変動金利でありましたけれども、五年見直しの固定で、しかも三%という下限枠を切って制度設計をしていこうじゃないか、これは新年度からスタートさせるつもりであります。  日本には、例えば住宅融資に関しましても選択肢が幾つもありまして、いずれも低金利制度を持っておりますので、ほかにも利用の制度があるということで魅力をそがれている点等もあったんだというふうに思っております。  さらに、先生御承知かとも思いますけれども、今、政府・与党の中で四〇一Kに象徴されるような確定拠出型年金ということを検討しておりまして、自営業者も含めて、企業年金制度を確定拠出型、四〇一Kに象徴されるような制度をつくって、それに例えば所得控除制度も加味して、もっと魅力をふやしたものにしていくという検討がなされておりまして、恐らく来年の通常国会を目途に法案を提出されるんだと思います。そうしますと、それに合流をしていくという形になると思いますが、魅力も倍加されてきますので、そうすると、加入者もかなりふえてくるのではないかというふうに考えております。
  176. 坂口力

    坂口委員 ぜひ、今おっしゃったことにさらにひとつ大胆に改革を加えていただきまして、魅力のある制度にしていただきたいというふうに思っております。それだけにしておきます。ちょっと時間がなくなってまいりましたので、ぜひお願いをしておきたいと思います。  それからその次に、もう一つ、これはもう前提抜きの話にさせていただきますが、ベンチャービジネスがなかなか育ってこないという話がございまして、それで、これは何とかしなきゃならない。小渕内閣も経済再生内閣といううたい文句で出発をしたことでございますし、ぜひとも検討をしていただきたいというふうに思うことが一つございます。  これは、ベンチャー企業に資金が集まりにくい。ベンチャー企業がいろいろ資金を調達しようと思いましても、金融機関としては貸し渋りの問題もございますし、それがもうなかったといたしましても、ベンチャー企業にはなかなか担保にするものもないというようなことで、資金が得られないというようなこともございますので、ベンチャー企業の、これは株式化されてないといけませんが、株式を購入しましたときに、税制上で所得控除する、いわゆる個人投資減税というものを導入ができないだろうか、それがどこまでの減税かは別にいたしまして、ベンチャー企業の株式を、直接金融でございますけれども。  それで、そうしたときにはそれに見合うべき個人投資減税なるものができれば、私は、もっともっとこれを採用する人が出てくるんではないか。そうすれば、ベンチャー企業がもっと活性化されるのではないか。千二百兆円と言われるものが、じっと岩のごとくに動かずにあるというのが、若干でも動いてくるのではないか、そんなふうに思っておりまして、提案をさせていただきますが、これは、大蔵大臣でしょうか、経企庁長官でしょうか、お答えをいただきたい。
  177. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私も、殊にこれからの経済を考えますと、いわゆるベンチャーキャピタルというものは非常に大事なんだろう、これから日本の将来をきっとそういう人たちがつくっていってくれるのではないかとすら思いますので、何とか考えたいと思っておりますが、今までエンゼル税制というものがございまして、それはロスを繰り越して引かすというところまでなのでございますね。これも役に立たぬとは申しませんが、かなり消極的なことでございますから、何か考えられないかなと、実は通産大臣と、法人、個人にわたって何か考えられませんかということをこの間からいろいろお話をしていて、通産省もいろいろな施策としてはあっちこっちに持っておられるようなんですけれども、やはりこれは何か考えられないかなと私はかなり真剣に思っております。
  178. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員御指摘のように、税制の問題、今大蔵大臣がお答えになったとおりでございますが、そのほかに、金融で、特定目的会社のパッケージをつくるというようなことも検討されておりますし、さらに、緊急経済対策では、産業基盤整備基金の中に新事業創設等促進信用資金というのを設けさせていただきまして、従来は何年かやらないとこれにお金を借りられなかったのを、今度は、始めようという人に保証するというような枠組みもつくるようにしております。いろいろな点で事業を起こしていかなきゃいけない。  日本は今、新規事業がどんどん減っておりまして、零細事業が減っておりまして、一年間に三万六千つぶれて三万三千しか起こらない。これは先進国で日本だけでございますので、委員御指摘の点、いろいろな点から考えていきたいと思っております。
  179. 坂口力

    坂口委員 時間がなくなりましたので、最後に、外務大臣にひとつお聞きをしておきたいと思いますが、またコロンビアで地震がありまして、国際緊急援助隊が派遣されたというニュースが出ておりますけれども、AMDAの皆さん方が大変な活躍をしておみえになりましたが、そこで、二、三、御要望が出ておりますので、ぜひ御検討をいただきたい。  一つは、やはり、何か災害が起こりましたときには早くそこに行かなきゃならないということでございますが、八時間以内に行くとかなりな効果がある。ところが、国内でございますと八時間以内も可能でございますけれども、諸外国へ八時間以内というのはなかなか困難でございまして、早く行けない。それを早く行きますためには、どうしてもビザをとらなきゃなりませんから、関係国の間といいますか、想定していてもなかなか難しいんでしょうけれども、そういう災害が起こりましたときには、登録をされた人だけでもノービザで行き来ができるような形にならぬだろうかという話がございます。これが一点。  それからもう一つは、行きました先で、英語圏ならまだいいんですけれども、土地の言葉を使うというようなところはなかなか言葉も通じないというようなことがございまして、そこで、青年海外協力隊の皆さん方が現地で働いておみえになるような場合がございますが、その場合に、その皆さんにお手伝いをいただいた場合には非常にスムーズにいく。この間、ホンジュラスの場合にも非常にスムーズにいった。ところが、協力隊の皆さん方の目的の中には災害というのは入っていない。その辺のところを少しお考えをいただけないだろうか、こういう話が来ておる。  この二点につきましてお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  180. 高村正彦

    ○高村国務大臣 AMDAにつきましては、日本政府も大変高く評価をして、いろいろな側面支援を行っているわけであります。  早く到達しなければいけないので、ビザを免除するようにできないかということでありますが、これは相手国政府の査証政策によるものでありますので、直接、一義的にビザの免除というわけにはいかないわけでありますが、個々のケースを踏まえつつ、できるだけ早くビザを出すように相手国政府と外務省としても交渉をするような形で、できるだけ早く出るようにしていきたい、こういうふうに思います。  それから、青年海外協力隊と緊急援助隊、これの協力を得るためのシステムでありますが、現実にこのようなシステムはあるわけでありますが、効果的な救援活動の実施をこれからも図っていきたいと思います。そして、協力隊経験者のうち九十五名が国際緊急援助隊医療チームに登録されております。協力隊経験者の知見、経験の活用も図られているわけでありますが、なお一層そういったことが図られるようにこれからも努力してまいりたい、こういうふうに思います。
  181. 坂口力

    坂口委員 済みません、もう一点だけ大蔵大臣にお願いをしておきたいというふうに思いますが、福祉定期預金がございまして、これがこの二月二十八日で期限が切れることになっております。前回も更新をしていただきましたが、ぜひ更新をお願いしたいという声が相次いでおりますが、ひとつ御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今金融機関でいろいろに御相談中のようでございますけれども、私といたしましては、坂口委員の言われますような方向でやってもらうことが望ましいと考えております。
  183. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  184. 中山正暉

    中山委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、太田昭宏君。
  185. 太田昭宏

    太田(昭)委員 公明党・改革クラブの太田昭宏です。よろしくお願いします。  もう既に何回か出ておりますが、十一年度予算、はっきりしたプラス成長にする、〇・五%成長だということを明言され、臨時国会におきましてははっきりという言葉を二回使われ、十八日には正式に閣議決定をされたというこの〇・五%成長でありますけれども、内閣として、三十一兆の国債を発行しなくてはならないという予算組みの中で、私は、これは背水の陣でやらなくてはいけないことであろうというふうに思います。  総理は、この予算委員会が始まってからも、お約束事でございますからというような表現をされたりしておりますが、〇・五%、内閣の責任者として背水の陣でやるんですねということを最初に御確認させていただきます。
  186. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 施政方針演説でも申し述べましたが、ぜひそれが達成できますように、あらゆる政策を遂行することによりましてその数字が達成できるように、それが確信を持てるように全力を尽くしていきたいと思っております。
  187. 太田昭宏

    太田(昭)委員 野田大臣、同じく一月十八日の閣議決定の場にいらっしゃったわけですから、〇・五%、自由党としてというのか野田大臣というのかわかりませんけれども、これについては連帯責任ということでよろしいですか。
  188. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 その思いで頑張りたいと思います。
  189. 太田昭宏

    太田(昭)委員 きょうの新聞を見ますと、堺屋経企庁長官発言が二紙ほど出ておりました。この間二・二%という修正をしたばかり、しかし、マイナス二・四%にも低下するというような新聞記事が出ていて、ほかにありますかなと思って探しましたら、やはり同じような発言を別のところでされているというようなことで、戦略会議のメンバーから発言があるということが新聞記事に出ておりました。  これをまず、この事実は、あちらこちらでこういう話をされているのかどうか、十八日の閣議決定との関係はどうなるのか、そして、余り詰めるということは私の本意ではありませんが、非常に心配をされているのかどうか、この点についてお聞きします。
  190. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 きょうの新聞はちょっと誤解がございまして、三種類ございまして、一つは、経済戦略会議の樋口議長が私からの伝聞としてどこかで講演をしたという記事でございます。もう一つは、それを聞いて駆けつけてきた新聞記者に、そういうふうには言わなかったと言ったのがまた誤解をされたという記事でございまして、もう一つ別のところには、強気だという全く違う記事が出ていたりしておるのでありますが、ちょっと報道に混乱がありましたのは、そういう伝聞の講演から話が始まったからでございます。  今、第一・四半期がマイナス〇・七、第二・四半期がマイナス〇・七でございまして、大体後の動きがゼロ、プラス〇・二ぐらい、後の十—十二月と一—三月、それがそういう平らか少し上がるぐらいのところで、大体二・二ぐらいになります。私は、大体二・二行くだろうなと思っておりますが、予測のことでございますから絶対確実とは申せませんけれども、今のところこれを訂正するような根拠はございません。したがって、二・二%程度というふうに考えております。
  191. 太田昭宏

    太田(昭)委員 それにしても、当初の見込みがプラス一・九、それがマイナス一・八に修正され、またマイナス二・二に修正され、それも危ういというような記事が出ますと、これは不安感を与えるということ自体が非常に経済に影響を与えるわけですから、私は、気をつけてといって、気をつけられる部分と気をつけられない部分があると思いますけれども、ぜひともこの辺は明確に、そうではないというのなら、ないということを明言をされた方がいいと思います。  それで、楽観主義か悲観主義かという話がされておりますが、私は、楽観主義になるにはそれなりの手を打ってこその楽観主義でなくちゃならぬと思います。フランスの哲学者アランの「幸福論」という中に、私が非常に気に入った言葉があるんですけれども、悲観主義は感情のものであり、楽観主義は意思のものである、こういうことが書かれております。悲観主義というのは、ああだめだなという感情かもしれないが、楽観主義というのは、明確な意思というものを持って初めて楽観主義である。  コップの水がどうかなという、上下の見方の問題ではなくて、明確にプラスならプラス成長にするという意思を持っているか。〇・五%というのは、あるいはマイナス二・四だとか二・二だ、こういうことは単なる天気予報とは違いますから、内閣の意思を持ってそういうことを明確にしていかなくてはいけない。楽観主義はまさに意思である、〇・五%というのも意思である、このことを確認します。
  192. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 平成十一年度について〇・五%というのは、私は確信を持っております。それだけの予算措置、減税措置、手厚い措置をやっておると思います。なお、これからしばらく景気の上では悪い数字が出てくるときもありますけれども、それを乗り越えて、来年度一年度を見ますと、〇・五%というのは底がたい数字であろうと、予測の上でも意思の上でも考えております。
  193. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私も、ここに座っておりまして、さまざまプラス要因ということについて御説明をいただく。しかし、マイナスという面をどうフォローするかということが非常に大事で、私は、例えば平成十一年というのを漢字で見ますと、上から見ますとプラスに見える、下から見るとマイナスに見える。現場に近いところから見ますと、これはマイナスということが非常によくわかる。  中小企業の方がどうなっているのか、あるいは八〇%の民需というのを、これを底上げするかどうかというところで、やはり六〇%を占める個人消費というものをしっかり底上げするには、それは減税かもしれない。しかし、減税が果たして貯蓄に回らないで、具体的にはどう行くのか。そこには、例えば一九八二年、この年は、消費性向ということからいきますと、明確に上がっているのから急落していくという、ちょうど境目の峠のような、堺屋長官の小説の「峠の群像」みたいなものです。ちょうど境目のところが一九八二年ですよ。そうすると、単なる消費税を上げたということだけではなくて、もっと消費ということについては根本的な問題というものも私はあると思います。  一番気になるのは設備投資です。これは後から質疑をさせていただきますが、設備投資ということについて、私は大変実は心配をしております。これは後から申し上げますが、その前に一つだけ。  もう一つ、去年からことしにかけて一番この予算に関連して特徴的であったのは、三十一兆の国債を発行した。そこで長期金利が上がった。不況の中で長期金利が上がるということが、実は、設備投資であろうと、あるいは住宅ローンということであろうと、大変これを減殺されることになる。このことが非常に私は気になるわけなんです。不況下の金利高ということについてどういう認識をされているのか。これは一時のものだと考えているのか、ある意味では一つの流れの大きな潮の目の変わり目にあるのかということについて、大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。
  194. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 結論から申しますと、まずここで落ちつくだろうというふうに考えております。  御承知のように、昨年の暮れに、大量国債発行があるということ、あるいは平成十二年には郵便貯金の定額貯金分がたくさん戻ってきて、そういう意味で資金運用部の資金が減るだろうというようなことがございまして、資金運用部の国債買い入れについて方針を変えました。  その二つのことがございまして、暮れに長期金利が上がりまして、二・〇一ぐらいまでまいりまして、ちょっと心配をいたしました。過剰反応ではないかと思っておりましたが、ことしの国債六十兆円ぐらいの発行についてシンジケートと話しましたときには、割にうまく、スムーズにできておりましたので、一月になりまして、一月のクーポンレートを二にしてみましたところが、その後金利が下がっていきまして、一・七ぐらいのところまで下がってまいりました。  昨日、二月分の入札をいたしまして、そういうふうに落ちついてまいりましたから、今度はクーポンレートを一・九に下げてみましたが、これはうまくいい値段で受け入れられまして、昨日の標準物の国債の金利は一・七幾つでございます。それから、きのう入札しましたものは一・八五であったと思いますので、どうもそういう様子から見ますと、きのうでございましたか、私はこの委員会でクーポンレートはもう上がることはないだろうと思うと申し上げましたが、一つ下げまして受け入れられておりますので、まず落ちつくのではないか。  幸か不幸か、民間の資金需要がなかなか出てまいりませんで、クラウディングアウトというような状況にはなかなか、しかし起こりましたら、もとより十分注意して対応いたします。
  195. 太田昭宏

    太田(昭)委員 意思ということからいいますと、住宅ローン減税というものでかなり踏み込んだことをやられたわけなんですが、住宅金融公庫の金利は上げないという意思を持つということが私は非常に大事だと思いますが、いかがでしょうか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げましたような昨年の暮れからのちょっとした変動がございましたけれども、二・二という金利は、これは三月十二日までが今の締め切りかと思いますが、変更いたしません。それから後、ただいまの長期金利の状況でございますと余り心配する様子はないのではないかと考えておりますが、ともかく今の募集分につきましては据え置いて、上げることはいたしません。
  197. 太田昭宏

    太田(昭)委員 そこで、今回の不況というものをたどりますと、かなり金融不況という、それが特に中小企業に貸し渋りがあって、そこから起きているということを私は前国会では指摘をさせていただきました。設備投資という今一番深刻なこの状況を見ますと、特に中小企業の設備投資の不振というのは戦後で最も厳しい状況にございます。  大蔵省の法人企業統計季報によれば、昨年一月から三月、四月から六月、二期連続で前年同月比が二〇%以上の大減少。そして七月以降はさらに悪化をして、中小金融公庫の調査によりますと、七—九月期に設備投資を実施した企業は全体の二二・三%、一九六三年の調査開始以来最低。九九年一—三月期、今ですね、その比率が恐らく一七・三%まで下落する見込みである、こういう予測をしております。中でも中小製造業を見ますと、九八年度設備投資計画額は前年実績比マイナス一九・五%と大幅に減少する、こういう状況でございます。  非常に事態は深刻でありまして、今回の予算、千九百二十三億円の中小企業対策費、この設備投資の低迷をどう打開しようとしているのか。その道筋というのが、私は、これはかなり、千九百二十三億円というのは傷口に手当てするというようなことに多く使われてしまっていると思うのです。もう少しバックアップするという体制にしなくてはいけないと思いますが、千九百二十三億円のこの中小対策費、それが設備投資の低迷をどう打開しようという予算になっているか、このことについてお伺いします。
  198. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 中小企業を取り巻きます厳しい経済環境にかんがみまして、昨年の五月の総合経済対策、十一月の緊急経済対策において、貸し渋り対策、中小企業の新規開業、雇用創出支援、既存中小企業の基盤強化等によりまして、十年度当初予算と合わせると総額一兆円を超える、過去に例を見ない大規模な中小企業予算ができたわけでございます。  また、十一年度予算については、十五カ月予算と位置づけられている昨年十二月の補正予算とあわせ、中小企業金融対策の抜本的強化、新規開業、雇用創出支援、既存中小企業の経営革新支援等を強力に推進するものとなっております。このような予算を通じまして、切れ目のない景気回復、これを図り、中小企業の業況の改善につながらせたいと期待をしております。  そこで、先生が御心配になっております設備投資でございますが、中小企業の設備投資の動きは、普通ですと、景気回復局面で中小企業の設備投資の方が先行的にあらわれてくるというのが従来の例でございましたが、今回は幾ら統計を見ましても、中小企業の設備投資は回復の兆しを見せておりません。  そこで、なぜそういうことが起きているのかということを簡単に申しますと、中小企業の設備投資の低迷の原因としては、需要の低迷等々循環的に説明できる部分と、先生が大変懸念されました資金調達環境の悪化、いわゆる資金が手に入らない、貸し渋りを受けている、そういうこともやはり設備投資が低迷している一つの原因だというふうに我々は考えております。
  199. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今の御説明でわかるのですが、それに関連してお聞きしますが、私は、先行性が見られない。そうしますと、そこの中小企業の設備投資は、かなり先駆的にそこに後押しをするということが逆に言うと必要になってくる。それがマイナスをプラスに転ずるという非常に大事なポイントになってくる。一つの要因は、貸し渋り。一つの要因は、これは需要をどうするかという観点。もう一つの要因、三番目では、これは経営刷新とかいう、最近出ている産業再生ということでしょう。  まず総括的に申し上げますと、政府の認識の中に、最近の報道等を見ますと産業再生という言葉がかなり出てきます。まだこれはまとまっていませんね、間もなく出ると思いますが。この産業再生だとか、あるいは例えば通産でも近促法をなくしていって次の新しいものにシフトするとか、さまざまなそういうような提案がやられようとしています。私の感ずるところは、まず貸し渋りということは、これが今回の一つの原因ですから、ここのところがちゃんとなりました、そして次に需要の手が打たれました、その後に経営刷新という構造改革というものに踏み込むということが、まあ大枠に言って、順番ということでは正しいであろう。  これもやりました、貸し渋りは大体システムはつくりましたね、需要にも相当手を打ちましたね、それでいよいよサプライサイドのそういうものをやりますねということが並行的に行われるような印象がありますが、私は、まず貸し渋り対策が大事で、次に需要面ということにもっとよくにらみをきかせて、その上で中長期的なことも踏まえた産業再生計画ということに行くということが正しいんだ、タイミングの点をよく考えてもらわなくては困るんだということを主張したいと思います。  この産業再生計画は総理の発案であろうと思いますので、非常に今際どいところに来ているから、タイミングというもの、政策の打ち出し方、どこが温まっているか。今の状況の中で経営刷新をしなさいと中小企業に言ったら、これは倒れますよ。私はタイミングはもっと慎重に考えなくてはいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  200. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まさに太田委員御指摘のとおりだろうと思いますので、この産業再生計画、これは直ちにこの問題について打ち出していかなきゃならぬということでありまして、この予算委員会が終わりましたら、通産大臣関係団体の皆さんとお寄りをいただきまして、今通産省で懸命にこの内容を詰めておりますので、私に報告をいただくことになっております。  この計画は、言うまでもありませんが、新事業の創出による良質な雇用の確保と、生産性向上のための投資拡大に向けた幅広い施策を含むものでありまして、新規開業やその他の成長支援のみならず、既存企業の再活性化のための環境整備を大きな柱と位置づけております。  御指摘の中小企業につきましても、この考え方に沿いまして、既存の中小企業は創意工夫を生かし、新製品、サービスの開発や新たな生産方式の導入により経営の刷新を図り、あるいは経済的需要の変化により業況が悪化した業種の中小企業が経営基盤の強化を進める努力を総合的にバックアップする制度を創設することにいたしております。  また、貸し渋りの問題につきましても御指摘ありましたが、こうした対策をさらに続けてまいりますと同時に、切れ目のない景気回復策の実施など、このような構造改革を進めるに当たって経済環境の整備にも配慮してまいります。  重ねてでありますが、御指摘のようにタイミングを失しては、これは効果がますます遅くなるわけでございますので、スピーディーにこの問題については対処し、この計画につきまして、まず計画を定め、そしてそれぞれの手を的確に打っていきたい、このように申し上げさせていただきたいと思います。
  201. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私の申し上げていることとは違う答弁であったと思いますが。  要するに、報道によりますと、これは需要サイドに立ったものではなくて、サプライサイドへの大きな変更というものの象徴的な事例として産業再生計画というのがあるという報道がなされていますが、そういうかじ取りをしたのでしょうか、意識の点で。私は、そうではない、貸し渋りは現実に続いている、そのことの認識をもっとしてくださいということを申し上げている。
  202. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 貸し渋り対策としては、もちろん先生御承知のように、政府系の中小企業関係金融機関が三つございます。すなわち、国民金融公庫、商工中金、中小企業金融公庫、ここは昨年後半から約二十兆円以上の枠をもって貸し出しを行っております。あわせまして、昨年十月一日以降、保証協会が特別枠を供与いたしまして、これに関しましては、もう中小企業の方の利用が既に五十万件を超える、十社に一社は保証協会の保証ということを求めてこられたということになっておりまして、それはそれなりに機能はしていると思いますし、また、先般の国会において中堅企業まで保証協会の保証の対象を広げていただきましたので、これは広く利用されると思います。  もちろん、貸し渋りということに関しましては、全国の都道府県あるいは市町村、あるいは私どもの通産局、あるいは財務局等々力を合わせまして、不当な貸し渋りが行われていないかどうかということは、金融監督庁にも御参加いただいて、十分目を光らせているつもりでございます。そういう意味で、貸し渋りということが起きないという理想まで近づくかどうかは別にいたしまして、理想的なことを考えながら物を進めているわけでございます。  ただ、この貸し渋り対策というのは信用収縮に対する対策でございまして、先ほど先生が触れられました、昨年一年は需要サイドの対策をやってまいりまして、有効需要がふえるというためのいろいろな対策をやってまいりました。このコンテクストで考えますれば、減税もそうでございますし、財政支出もそうだろうと思います。  しかし、それはあくまでも対症療法的な意味を持っておりますので、日本の経済の体力が今後二十一世紀までもしっかりとしたものであるためには、やはり供給サイドの構造改善と申しますか、体質強化というものがどうしても必要になってくる。そろそろその仕事に着手をしなければならないということで、小渕総理の御指示のもと、去年の秋から少しずつ準備を進めてまいりましたので、そういうものを政府挙げてやっていただく体制を小渕総理にとっていただきたい、そのように思っているわけでございます。
  203. 太田昭宏

    太田(昭)委員 そこで、そのタイミングとしては、やはり貸し渋りというものがどういう現状にあるかという認識が大事だと思います。そういう意味では、そういう手を打つというときには必ずセーフティーネットを用意するということと、今まで打ってきた需要サイドの手というのが効力を発揮しているという状況をつくることが大事だと思いますね。  そういう意味では、去年から問題になっております旧債振りかえ、銀行の姿勢、そういうものについて監視がしっかり行われているかどうなのか。これは金融監督庁ですかね。
  204. 日野正晴

    ○日野政府委員 旧債振りかえの監視をきちっと行っているかという御質問でございます。  申し上げるまでもなく、この信用保証協会の保証制度というのは、中小企業に対する円滑な資金供給の確保を目的とするものでございまして、民間金融機関が抱えている不良債権を信用保証協会につけかえるものではございません。  したがいまして、私どもといたしましては、いろいろな機会をつかまえまして、これまで全銀協等の金融関係機関に対しまして、この保証制度の運用に当たり、万全を期するように傘下の金融機関に対して周知徹底をしてきたところでございます。  また、調査という観点からまいりますと、先般、私ども、昨年十月から十一月にかけての実態を調査いたしました。その結果、昨年十月、十一月の二カ月間で、主要行では百五十二億円、地銀では千百四十八億円、第二地銀では二百三十二億円、信用金庫では八百九十七億円、四業態合わせますと二千四百二十九億円の旧債振りかえの事例があったとの報告を受けております。  また、この中には、信用保証協会の承諾を受けずに行われたものが三十七億円余り含まれておりまして、こういった点に関しまして、この制度に関する運用が、十分に金融機関に対しましてその趣旨が行き渡っていなかったのではないかということを反省しているわけでございます。  また一方、御案内のとおり、既に銀行の中には大変不適切な表現を含む内部文書を支店あてに発出しているなどの事例がございましたので、私どもといたしましては、四銀行に対しましては、一月十四日付で銀行法の二十六条一項に基づく業務改善命令を発出させていただきましたし、それから、一銀行、一信用金庫に対しまして、やはり一月十四日付でこの改善命令を発出させていただきまして、今月の二十九日までにその改善計画を提出するように今求めているところでございます。
  205. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今の数字は十月、十一月というお話でありましたが、十二月はあるんですか。
  206. 日野正晴

    ○日野政府委員 十二月分につきましても、現在、報告、ヒアリングを求めているところでございまして、これが二月の恐らく上旬までにはきちっとした数字をまとめることができるというふうに考えております。
  207. 太田昭宏

    太田(昭)委員 非常にそういうことがあるということが言いづらい、借りる方からいきますと。そういう実態をよくにらんだ上で、含んだ上での調査になっているかどうか、確認します。
  208. 日野正晴

    ○日野政府委員 私どもといたしましても、昨年来、ある銀行が不適切な文書を支店に通達として流しているといったようなことを十分に念頭に置きながら、また、その旧債振りかえの実態、保証協会の承諾なしに行われるということが実際にないかどうか、そういったもろもろの面を含めて、今現在、十二月分につきましても調査を進めているところでございまして、私どもといたしましては、決してそういったものに対して目をつぶるといったようなことではやっておりません。ひとつ御信頼いただきたいと思います。
  209. 太田昭宏

    太田(昭)委員 柳沢大臣、別の問題が出ていまして、一昨日、池田政調会長質問の中でもやりとりがあったのは存じています。公的資金投入の条件として、中小企業向けの貸出残高をふやすことが挙げられていますね。ところが、現実には、優良中小企業というものを選んで、これからそういうことが行われるからというような動きがもう開始されているという、選別といいますか、そういう実態が、報告が耳に入ってきます。そして、貸出残高をキープしようというような動きがあるやに聞いています。こういう状況を御存じですか。
  210. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 きのうの池田委員との質疑応答の中でも私申し上げましたけれども、何がゆえに我々の方で中小企業向けの融資において残高増加を心がけるような計画を徴しておるかといいますと、これは別に、単なる中小企業対策といういわば社会経済的な政策意図から出るばかりではなくて、実は、中小企業向け融資こそが、公的資金を入れた場合に、その返済原資となる利益を稼ぎ出し得る源泉なんだ、こういう認識があるわけでございます。そういうようなことを考えますと、仮に今先生がおっしゃるような優良中小企業ということになりますと、優良ということになった途端に、リスクが低いわけですから利ざやが稼げない、こういうことになるわけでございます。  私どもは、審査能力を高めることによって、むしろリスクがあるところから、リスク分の引当金を積んだ上で、したがってそのリスク分を積んだコストを転嫁させていただきますけれども、そういうような格好で目的とする収益力の向上を図るべきだ、こういうような意味合いもあわせ持つものでありますよということを昨日の答弁でも申し上げた次第です。  そういう観点からいたしますと、今、かなり銀行もバランスシートが傷んでおりまして、もうその修正というか、それに急になっておりまして、できるだけリスクを負うまい、貸し倒れを出すまいというようなところに姿勢が傾き過ぎている点は私も感じないわけではありませんけれども、そういうものを立て直していくという、その果敢な努力というものも必要であるというふうに考えておりまして、そのことを計画書の徴求とそのフォローアップによって確保してまいりたい、このように考えていることをぜひ御理解賜りたい、このように思います。
  211. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、そこの思想性というか、物の考え方を徹底的にやっていただきたいと思うのです。もう始まる前にこういう優良中小企業へというような動きがあるとしたら、これは本来の銀行業務自体の話になりますから、私はそこはしっかりやっていただきたいと思う。  それから同時に、今お話があったから申し上げますと、一九八〇年代から直接金融にシフトした大企業に対しまして、間接金融、そういうようなことの中から、それがかなり貸し込んだというような事態の中から、非常に銀行が慎重になっているということもあろうと思います。そういうことの中で、結局、今お話に出ました銀行の審査能力、これはなかなか難しい問題なんですが、ここは非常に大事な問題になってきていると思います。何か対策を考えていらっしゃるんでしょうか。
  212. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 銀行の審査能力というものがバブルの発生時に大変減衰をしていった。これはバブルの発生時とたまたま軌を一にした時期に起こったことなんですが、銀行の組織の変更をしまして、そして今や、審査なんてやっている人員がいるんだったら、それは業務と一体化すべきである、むしろ審査部を消滅させて営業と一体化し、業務本部制というふうに言ったそうですけれども、業務部門と一体化して、むしろ営業にどんどん経営の資源というものを、人材の資源というものをシフトしていくべきであるというようなことを始めまして、それでほぼ十年がたって、その間にバブルの形成と崩壊があった、こういうことなのでございます。  そして、バブルが崩壊して、余りにも不良債権を抱えたことに愕然として、やはり銀行業務というのは審査部門が大事なんだ、審査能力を磨くことが大事なんだ、こういうことで、また審査部門の再建と審査能力の向上に心がけ始めたというふうに私ども承知をいたしておるわけであります。  日本の銀行の審査能力というのは、かねてはそんなに劣ったものではなかった。審査能力において、これは長期それから短期ともにいろいろ特徴があるものでございましょうけれども、例えば長期資本の供給においては、アメリカのインベストメントバンキングの審査のマニュアルを一生懸命勉強してキャッチアップしていったんだ、こういうようなこともありまして、そんなに遜色のあるものではなかったんですけれども、たまたま今申したバブル期にこれを崩壊させてしまった。この十年の空白というのはやはり並大抵のものではなかったんではないかと私そんたくしておるわけでありますけれども、そこは銀行が有している人材のレベルに私は期待を託したい、このように考えて、一日も早い審査能力の確立、確保を今後指導してまいりたい、このように考えております。
  213. 太田昭宏

    太田(昭)委員 通産大臣、昨年の十月一日からの信用保証協会の特別枠、これが一息ついたというか、そういう状況。一息ついたというのは、中小企業にとりましては大変助かった、そういうことで、しっかり手を打たれたんだと思います。これが現在のところ、二十兆という枠の中で十二兆近く既にいっているということからいきますと、予算審議をしているきょう、私がさらに膨らませようというようなことを言うのは答えづらいと思いますが、しかし二十兆ということが、三月、四月ぐらい、ほぼ枠が終わるなということに対して、何らかのお考えがあるんじゃないかと思いますが、一言。
  214. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生御指摘のように、既に十二兆保証をやっておりますし、また、一月になりましてからも相当の申し込みがございますけれども、どうやら二十兆のうちの十二兆は今まで使われましたけれども、十二月がピークで、一月になりましたら申込件数、申込金額ともにがくんと減っております。  しかしながら、私どもとしては、中小企業の信用収縮対策という意味では、この信用保証協会の果たした昨年十月からの役割は大変大きいものだと思っておりますので、残り八兆ほど枠がございますので、それがどう使われていくのかということも見ながら、今後必要な対策をとらなければならない。当然、財政当局にもお願いすることもありましょうし、各都道府県にもお願いしなきゃいけないこともあると思いますけれども、特別枠二十兆のうち十二兆使われて、まだ現在八兆残っておりますから、それがどういうふうに使われていくかということの推移をもう少し見たい、現時点ではそのように思っております。
  215. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今の御発言でわかりましたから結構ですが、ぜひともやっていただきたいというふうに思います。  設備投資と同時に、公共事業というものがGDPの八%ということなのでしょうが、公共事業だけで景気を上げるなんということはもともと構造的に違うでしょう。しかし、これが導火線になるかどうかということは極めて大事なことだというふうに思います。  そこで、まず公共事業というものが、今回、非常に効率的な公共事業が行われる、むだな公共事業はやめる、必要な公共事業はやる、また、何が必要な公共事業かという基本的な判断基準というのをさらに明確化していく、こういうことが私は非常に大事だというふうに思っております。将来の日本、また国際競争力強化の観点から着実な整備が一つは大事だ。  同時に、民需を押し上げる、そういう導火線になる、ある意味では起爆力になる、そういう公共投資というものが行われるという観点が大事なのですが、今回、景気、雇用の救済措置に成り下がっていないのかということについて、よく吟味された予算になっているかどうかについて、全体の流れにつきまして、総理から御答弁いただきたいと思います。
  216. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 社会資本の整備は、二十一世紀先導プロジェクトの推進を核といたしまして、民間活力を最大限活用しながら、特に情報通信、都市、住宅、環境、教育、福祉など、我が国の経済活性化に不可欠な分野について、戦略的、重点的に行うことといたしておりまして、その諸施策と相まって、効果が最大限に発揮されることを期待して予算を編成させていただきました。  特に、配分重点化枠というものを設けさせていただきまして、これは、物流枠、二十一世紀枠、生活枠、こういう観点で仕分けをさせていただきまして、重点化配分をさせていただきました。  それから、事業ごとの重点化ということで、公共事業につきましても、例えば市街地整備などはプラス五三・八%の伸び率、自然公園もプラス二七・五、こういうようなことでありまして、国会でもいろいろ御指摘をいただいております公共事業につきましても、こうした形で非常に重点的に配分をさせていただいておるつもりでございます。  また、地域戦略プランの推進ということによりまして、それぞれの地域におきまして、地域がそれぞれみずからテーマを選んで策定する地域戦略プランの推進を最大限支援してまいりたいと考えておりまして、常々御指摘をいただいております公共事業につきましても、その配分と効果を十分認識しながら今回編成させていただいた次第でございますので、必ずそうした意味でこの公共事業につきましても効果的な成果が生まれてくると私は確信をいたしておる次第でございます。
  217. 太田昭宏

    太田(昭)委員 公共事業が悪い、悪玉論というのが出たりするのは、そこの、かくかくしかじかでこれが必要である、あるいは、国のグランドデザインはこうである、そしてこれが必要である、戦略的に思い切ったそうした投資が行われているかどうか。また、事前と、真ん中のところと、途中と、そして事後と、評価というものをアカウンタビリティーで明確に国民に示すというような手順が今まで私は非常に欠けていたのだというふうに思います。  財革法によって七%の削減、実質的には七・八%の削減になりまして、それで今、建設業界を悪者にするという以上に、そういう政府の方針自体が、やれと言ったのが、引き戻したり、アクセル踏んで、そういうようなことで、どんどんそこでぽとんと落ちていくのが中小企業の建設業であるというような事態に対して、建設大臣、去年の一月、救済措置をとるとかあるいはさまざまなことをやってきたと思いますが、これは政府が起こした責任ですから、ちゃんとそういう手を打っているかどうか、これは短くで結構ですから、お答えください。
  218. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生おっしゃるように、公共事業の効果というものも、戦後五十四年たってきたわけですから、いろいろな角度から見れば当然変わってきておると思うわけでございますが、先生御指摘のように、さりとてこの公共事業というものが景気喚起の大きなイニシアチブをとるものであるということは間違いないと思うわけでございます。したがいまして、効果のあるような公共事業をやっていくということでございます。  従来型の公共事業と言われておりましたけれども、今後は、我々国民の生活そのものに直結するような、下水道の整備であるとか都市公園であるとか、もちろん住宅であるとか、そういう分野をまた大きく伸ばしていきたいと思いますし、科学技術の分野あるいは文教の分野、あるいはまた環境の分野の公共事業というものが社会から要求される、私はそのように大きく変わってきておると思うわけでございます。  ですから、そういうような意味におきまして、その公共事業が十分な効果を出しておるかというようなことでございまして、その評価をするようにいたしておりまして、再評価の委員会もあるわけでございます。  それから、先生御指摘いただきましたが、今、建設業界を取り巻く環境は、そういうようなことで非常に厳しい状態にございまして、倒産が急増いたしておりますし、雇用情勢も厳しい状態にあります。  その中、御指摘のように、昨年の一月三十日の建設業の経営改善に関する対策に加えまして、十二月の九日に、建設業の経営改善に関する緊急対策を取りまとめました。  その中には大きな三つの柱があるわけでございますが、資金の供給あるいは信用補完、それから受注環境の改善、連鎖倒産防止対策、労働者対策というような八分野二十五項目の対策を講じておる現状でございます。
  219. 太田昭宏

    太田(昭)委員 むだという話の中には、急に来るものだから、地方自治体にとりましては、設計自体が間に合わないという話があったりします。直接私も聞いています、現場としては。これは要らないというわけではない。要るけれども、設計自体がばたばたしている、あるいは裏負担で大変であると。  あるいはまた、地方単独事業の未執行というのも、去年、十六兆の緊急経済対策のときにはたしか一・五兆地方単独事業というのをやったと思いますが、この執行状況、ここらについて、地方自治体の受ける側から見て、この公共事業の問題点というものをどう認識されているかということについて、お聞きしたいと思います。
  220. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 昨年四月の総合経済対策において、今御指摘ありましたように、公共事業の追加とあわせて一・五兆円規模の単独事業をやることを追加要請したわけです。これらの事業が円滑に行われるために、これは補助裏の問題もありますが、交付税総額を四千億円上積みするという措置を講じた上で要請をしたわけです。  これの実施状況でありますが、九月の補正までに約一兆五千五百億円できた、こういうことでありまして、地方財政が厳しい中ではありますが、地方団体の協力は一応達成はされておるというふうに考えられております。  ただ、毎年のようにこういう形で地方の協力を得ながら景気対策を重ねてきておりまして、地方の財政状況そのものも極めて窮迫してきております。そういう点で、今年度の地方財政計画においては、景気対策ということも当然中には入っておりますけれども、一応、一般単独事業については前年同額という形で計画を組んでおるということであります。
  221. 太田昭宏

    太田(昭)委員 むだをなくせということを随分私も言ってきたんですが、ことしの予算ということについて、ダムを中止したとか休止したとか、あるいは治山、港湾、漁港、さまざまなところで相当これは重点化もしたし、むだなものは切ったという話がありますが、金額、やったとした場合、そして今回、切ったということで幾ら節約されたのですか。
  222. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  十一年度予算におきまして、九十二の事業につきまして、中止、休止あるいは事業の縮小の決定をしております。この結果、縮減額といたしましては二千億円を上回る規模となっております。
  223. 太田昭宏

    太田(昭)委員 そういうものを見ますと、大体、確かに、休止、中止いたし方ないなというものが出ておりまして、さまざまな形で問題になっております箇所について、私は、そういうところこそ結論を早く出していかなくてはいけない。何とかダムの問題だ、いろいろありますね。そういうところ自体についての結論というものを出すというリーダーシップを政府はとるべきだ、こう思いますが、その辺、努力はされているのでしょうか。
  224. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 再評価システムを取り入れまして、省内におきまして、地元の方々の例えば土地の買収がいつまでたってもできない、あるいは十年たってもそのダムの進捗率が五%以下であるというようなところは、これはもう中止にするというようなことで、今後は厳しくそれを評価をしていきたいと思っております。
  225. 太田昭宏

    太田(昭)委員 先ほど情報通信産業への、またインフラ等へのシフトと言っておりますが、国民から見ますと、果たしてこれがどれだけシフトされたのかなということがわからない。私もいろいろな人に聞くと、我が省ではこれです、いろいろなことで、全体が一体どのくらい情報通信インフラということにシフトされたかということがなかなか見えないという状況があります。  先ほど特別枠という話がありましたが、公共事業部門の特別枠として、物流の効率化とか二十一世紀の経済発展基盤整備で一千億でしょう。ここがいわゆる情報通信インフラでしょう。調べてみますと、ここは情報通信百八十七億ですよ。今度は非公共部門でいきますと、情報通信が千五百という中で七百十二億。  各省庁、あるいは先ほどからありましたが、同じ、下水道を引くとかあるいは河川整備をするとか、道路をつくる、共同溝をつくる、それ自体が通信ということに行くわけなんで、なかなかそれが、全体的にはかくかくしかじかで幾らでございますということがよくわからないのですが、全体的に、これは間違いなく、どのくらい、金額で言えるかどうかしりませんが、各省庁全部合わせて情報通信産業というのは昨年度はどれだけで、ことしはどれだけで、こういうことで拡大をされて重点化されていますよ、そういう説明ができるのでしょうか、政府として。
  226. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 情報通信分野につきましては、これは経済成長の牽引力の一つとして、また最先端技術をめぐる国際標準化競争への対応が必要であるということで、その重要性は十分認識しているところでございまして、議員御指摘のとおり、継続的な視座からこの分野に配意すべきものと考えているところでございます。  他方、この分野の成長の主因は民間主導のダイナミックな競争にあるわけでございまして、民間活力、市場の資源配分機能を損なわないといった官民の役割分担等の観点からの整理も必要と考えております。  先生御指摘のとおり……(太田(昭)委員「時間がないから。数値を聞いているのですから」と呼ぶ)はい。  まず、第三次補正予算におきましては、先生御案内のとおり、総額で八千八百八十五億円という金額を計上しているところでございます。十一年度予算におきましても引き続き、例えば、情報ボックス等光ファイバーの収容空間の整備で四百八十九、あるいは電気通信格差是正の推進七十三億といったような、各省庁におきまして必要な緊急度の高いものについて重点的な予算配分をしているところでございます。
  227. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、国家戦略として、情報通信産業なら情報通信インフラということについて、まず一つの大きなテーマに掲げるなら掲げる、そこに重点的に戦略的にシフトする。アメリカはそういうことをやっていますよ。人や物や金や情報が日本から逃げている、四つのハブが日本から逃げている、こういいますが、そういうところで非常におくれをとるという、二十一世紀ということを考えると、この点は非常に大事です。  もう一つ、私は、都市とかあるいは住宅とか町の改造、町づくり、こういうところへ大きくシフトをするという国家戦略を明確に出していかなければ日本は生きていけない、私はそういうふうに思っております。  その意味では、もう時間がないから各論はやめますが、しかし、公共事業予備費というのが五千億円つけられていた。中身が大事だ、こう言いながら、公共事業の予備費が五千億円ついた予算、そして、これで公共事業が一〇%アップになりました。私は、これは非常におかしい。公共事業というものは、今国民の課題からいくと、一番大事なのは、中身が明確であって、アカウンタビリティーがあるというものであって公共事業ですから、この公共事業予備費五千億円というのは一体何ですか。
  228. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 普通の場合でございますと、いわゆる一般的な予備費にすることも考えられるわけでございますけれども国会に御審議をいただいて、この部分は一般予備費としては使用いたしません。公共事業について従来配分したものに不足を生ずる、あるいは失業対策等々で緊急のものを要する、いろいろな変転する事情が考えられますので、そういう意味で国会のお許しを得て五千億を残しております。
  229. 太田昭宏

    太田(昭)委員 総理、公共事業というのは中身がしっかりしなくちゃいけない、中身が。何をどうするか。公共事業の性質からいっても、永続的なものであったり、展望があったり、あるいは計画がじっくり立てられたり、そういうものがあって初めて公共事業というものの信頼性というものが獲得できると思います。  その意味では、公共事業予備費五千億円という、不測の事態、景気が悪くなったらこれを出すというお金がありますよというようなことが今回の予算に入っているのはおかしい。やるならば中身を明確に最初から入れるべきだし、ないものならやめるべきだし、後半で公共事業が息切れするというようなことがあるならば、補正予算なら補正予算ということをやればいいし、私はそういうことだと思います。非常に、よくわからない。御説明をお願いします。
  230. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、百万人の雇用確保というプログラムを持っておるわけでございますが、その中で地域的に失業が発生するということを関係者が非常に心配をしておられまして、そういう場合に、長期の計画でなくても、とりあえず地域にどういう仕事ができるかという、そういう弾力性を持っておってほしいというお話もございました。また、その地域における既定計画を拡張されることもあり得ると思いますので、いわゆる何年間かにわたる新規計画をこの五千億で突然やるということは、おっしゃるように考えておりません。
  231. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今までこの公共事業の予備費というのが行われたことがありますか。
  232. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何回かあったと記憶をいたします。
  233. 太田昭宏

    太田(昭)委員 五十一年、五十三年、五十四年と聞いておりますが、何に使われたか御説明ください。
  234. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  五十一年度の公共予備費につきましては、主として災害等に使われております。それから、五十三年度、五十四年度につきましては、特に五十四年度の場合は、むしろ年度途中で公共事業の繰り延べを行うというような状況だったものですから、補正段階におきまして減額して他の財源に充てられたということでございます。
  235. 太田昭宏

    太田(昭)委員 補正に使われるということは、息切れするというような、そういう含みがありますか、今回。
  236. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 現在御審議をお願いいたしております予算、公共事業で景気に対しては十分対応できるものと考えておるところでございまして、この予備費というものは、あくまでも予見しがたい経済情勢の推移に対応できるようにするためのものでございます。
  237. 太田昭宏

    太田(昭)委員 金額が多過ぎるし、私は、これは政府の懐の中に入っているというような、五千億というのは余りにも大きなお金ですから、ぜひともこれは国会議論をするということをお願いしたい、このように思います。  最後に、時間がもう終わってしまいましたが、わかったかわからないかだけお答えください。
  238. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろなことが起こりまして、計画を実施しなければならないとき、事前または事後におきまして十分に国会に御報告いたします。
  239. 太田昭宏

    太田(昭)委員 終わります。
  240. 中山正暉

    中山委員長 これにて太田君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  241. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  御承知のとおり、昨年十一月十九日の小渕総理・自民党総裁と私ども小沢自由党党首との合意に基づきまして、今ここに提出されております予算案は私ども自自両党で共同で編成させていただいたものでございます。  ただ、実際問題として、予算は夏の概算要求からずっと積み上げてきておりますので、十二月の段階で御一緒させていただいたといってもかなり限界はございましたが、それでも、例えば減税規模六兆円から九兆四千億に政策減税中心に引き上げていただく等々、私どもの主張を十分積極的にお考えいただいたということについて感謝しております。  一番大事だと思いますことは、自自両党でこの予算案を協力して編成する際の政策的な決意と申しますか、戦略的な目標でありまして、私ども両党は、この予算案及び十一年度の税制改革によりまして何とか二年続いているマイナス成長を平成十一年度にはプラス成長にするんだ、十二年度には回復の軌道に乗せるんだ、そして十三年度以降、政策の手助けなしに民需主導型の安定的、持続的な成長を実現するんだ、この大きな戦略的な目標、政策的な決意を自自両党で共有したということに非常に大きな意味があると私は存じております。その意味で共同で編成させていただいたと思っております。  したがいまして、きょうは、そういった戦略目標を実現するんだという観点から、今後どういうところに注意を配っていったらいいだろうかという観点から質問をさせていただきたいというふうに思います。  実は、この予算案、最終的な姿が出る前に民間の予測が出ていたというせいもありますけれども、平均的に見ますと民間の予測というのは、来年度、平成十一年度も若干のマイナス成長であります。どこの認識が違うのかということを私全部チェックいたしました。一つ一つ確認の意味を含めて質問させていただきます。  まず、減税の効果なんですね。九兆四千億というのは大変な大型減税でございます。しかし、民間の見方の中には幾つか留保条件がありまして、九兆四千億というのは、まずグロスなんですね。グロスの減税です、粗減税。去年四兆円減税しておりますので、ネット減税は五・四兆円だ。その点は割り引かれるのですね。所得減税については、ネット減税ゼロだ。それはそうだと思うのですが、それにしてもしかし、ネット五・四兆円とは大きな減税であります。  もう一つは、もう長い間識者が主張してきた減税がここで実現している。一つは、法人税の実効税率を国際標準並みの四〇%まで下げたこと。もう一つは、世界に例を見ないような最高限界税率、所得課税六五%を五〇%までに下げたこと。これは、企業の投資意欲あるいは個人の勤労意欲、やる気を刺激するという意味で、中長期的にはサプライサイドに対して大変大きな効果を持つ。とうとうこの減税が実現したという意味で大きな意義を持っております。  ただ、これはサプライサイドへの影響が大きいわけでありますが、短期的に見ますと、所得がどんどん減っているときに所得減税したって余りきかないんだよ、去年四兆円減税したのにどこかへ飛んじゃったじゃないか、あるいは赤字企業にとって法人課税を減税したってきかないぜ、あるいは収益がどんどん減っているときに実効税率下げてもらったって、だから投資が出るというものでもないよとか、そういう短期的には問題はあることはあるんだと思います。しかし、そういうことを割り引いても、私は、これは中長期的には大変な力を持つ、日本のサプライサイドを改善する減税であるというふうに思います。  もう一つ民間にありますのは、九・四兆円大型減税をすれば、しただけ将来増税になるんじゃないのという増税の不安なんですね。これについては、私は、私ども自由党の主張、そして基本的には自民党の御主張でもあると思いますが、私どもははっきりと、この直接税の減税の財源は将来の増税ではないんだ、行政改革による歳出削減、むだの排除で出すんだ、だから大型減税したからといって将来増税が待ち構えているんじゃない、このことを示さなければいけないというふうに思っております。  総理、一月二十二日に、自民党と自由党は昨年の党首会談合意に基づきまして二つのことを合意しております。内閣総理大臣以外の国務大臣の数は、十四人とする。ただし、必要があるときは、三名を限度として、特命をもって国務大臣を任命することができる。もう一つは、国家公務員は、平成十二年度採用分から毎年新規採用を減らし、公務員を十年間で二五%削減するということであります。  念のために、総理に確認をさせていただきたいと思います。総理はこの合意をもちろん御存じであろうと思いますが、それを確認させていただいた上で、この合意の実行につきまして改めて総理の決意を伺いたいと思います。  政党間の合意というのは、申すまでもなく大変重いものでございまして、役所や事務方には従来の慣習などがありますために改革に対して強い抵抗があるとは思いますが、どうぞ総理からしっかりと御指導をいただきたいと思います。このことについて御見解を賜ればと思います。
  242. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今の指摘にお答えする前に、今次内閣改造におきましても、現行の内閣法における二十名の定数を減じまして二十名といたして発足をさせていただきました。(発言する者あり)十八名。失礼しました。内閣法における二十名を十八名といたしました。  本件につきましても、いろいろ世評御指摘がございまして、むしろ削減しないでしっかりと、行政をきちんと見守るべきだという意見も一部はありました。ありましたが、現下、あらゆる産業界におきましてもリストラが続けられておる中で、大臣はそれぞれ精力的に取り組みますれば、今申し上げた定数におきまして、その範囲において全力を尽くすということで、かつてなく、初めて減員をすることといたしました。  そこで、今御指摘の点につきましては、国務大臣の数及び公務員の削減につきまして、与野党間で、合意につきまして政府としてもこれを重く受けとめまして、昨日二十六日、政府中央省庁等改革推進本部で決定をいたしました中央省庁改革に係る大綱に盛り込んだところでございます。今後、本大綱にのっとりまして、四月の法案、計画の本部決定に向けましてさらなる具体化の作業を進めてまいる所存でございます。  私といたしましても、自自合意を踏まえ、今後とも内閣一丸となってこのことの実現のために全力を挙げてまいりたい、こう考えております。
  243. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理、ありがとうございました。  総理もただいまお触れになりましたように、これだけ大臣の数を減らす、そして国家公務員の数を減らすというのは容易なことではございません。これを実行するためには、中央省庁の再編ももちろん大事でございますが、単なる俗に言う看板のかけかえのようなことではとてもこの数の削減は無理でございまして、結局、規制緩和で、あるいは地方分権で中央省庁の仕事を減らしていくという本格的な経済構造改革と行革と表裏の関係で進めない限り、これは実行できないことだというふうに考えております。  ということは、これは単に人数を減らして人件費が減るだけの話ではございませんで、組織が減る、そしてさまざまの経費全体が減るという大きな行革を目指す第一歩、その決意だというふうに私は考えております。  さらに言えば、これは中央省庁から手をつけるわけでございますが、いわば隗より始めよでございまして、当然この次の段階で地方公共団体、三千三百もあって、それだけの数の首長さんがいらっしゃって、議会があって、それを支える秘書がいて、大変な経費がかかっておるわけでありますが、次は地方公共団体の行革にも切り込んでいく。地方公共団体の再編で、よく言われるように三百から五百ぐらい、人口三十万から四十万ぐらいの平均の、十分地方分権の受け皿になり得る地方公共団体に再編していくならば、ここでも大きな歳出の削減、行革の効果が出る。さらにはそういうところまでにらんだ第一歩であるというふうに考えております。  地方と中央を足せば、もう御存じのとおりでございますが、重複を調整した上で百五十兆円ぐらいの歳出規模を持っておる。ですから、今言った行革をやればその一割、十五兆、あるいは二割、三十兆ぐらいは浮いてくるわけで、そのことを確信を持って実行するぞということについて国民に信頼してもらえれば、今の九兆四千億の減税、あるいはさらに大きな減税をしても、将来は増税じゃないんだという説明ができると思うんですね。  そういう意味で、私は、まだまだ国民には御理解いただいておりませんが、このことを小渕内閣、自自連立内閣として国民に説明し、実行してみせることは大変大事なことではないかと思っております。  地方自治体の整理の話まで及びましたので、このいわゆる行革による減税、直接税の減税、行革減税ということをずっと主張してこられました野田自治大臣にも御見解を伺いたいと思います。
  244. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今、鈴木先生御指摘のとおり、行革ということは、単に中央省庁におけるだけのテーマではないわけでありまして、国、地方を通じて徹底して簡素で効率的な政府を目指していくというこの基本精神、そのことが一方でまた民間活動なり地方自治体のいわばみずからの責任分野というか、それをしっかり確立させるということにもつながっていくわけで、そういう意味で、もう余分な介入を避けようという、これが非常に大事な国づくり、社会づくりの基本になっていくだろう。そして、そのことが、あわせて言うなら行政経費のコストを減らしていくということにもつながっていくわけであります。  この小渕内閣において昨日決められました大綱、これはまずその大きなスタートにもつながっていくだろうし、この後、地方分権に関して昨年出されました地方分権推進計画をもとにした法案をこの春提案を申し上げてお願いをしたいと思っておりますし、あわせて、その中にも含まれておりますが、市町村の合併の推進についてさらに拍車をかけて、もちろん地元の自治体あるいは都道府県の協力をも得ながらでありますけれども、それを精力的に進めてまいりたい、そう考えております。
  245. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。ぜひ、総理、小渕内閣として、そして自自連立内閣としてこのことを国民に訴えて、増税が将来必ず出てくるということではない、今やる直接税減税の財源はおれたちは歯を食いしばって行革で出してみせるということをよろしく訴えていただきたいというふうに思います。  それから、次に、歳出の方でちょっと民間の経済見通しに誤解がある、あるいは私どもの説明が不足だと思われるところがあります。それは公共事業費についてでございます。  大蔵省の主計局から説明をあらかじめ私は聴取いたしました。また、自自合意の場でも説明がございましたが、平成十一年度の公共事業費、支出ベースで見ますと、かなりのずれ込みが本年度からあるものですから、伸びが高くなるというのは御承知のとおりでございます。第一次補正の分も、去年の九月から動き出したばかりでありますから、一兆円近いものがずれ込んでくる。第三次に至っては、二・七兆円のうちの二・三兆円、大部分は平成十一年度であります。したがって、平成十一年度に四兆円ぐらいずれ込みまして、全体の伸び率が一五・八%になるという説明を受けております。  民間もある程度これはわかっているんですが、しかし、民間の見通しを見ますと、年度下期に息切れしてしまうという見通しが大半なんでございますね。つまり、本年度の下期と来年度の上期にどどっと出て、息切れがしてしまう、したがって成長率も下期に失速ぎみになる、こういう見通しが大変多いわけであります。  私、主計局担当者を呼びましてチェックをいたしましたが、蔵相、これは息切れは起きないと思うんですね。といいますのは、来年度当初予算分を支払いベースで上期三、下期七で出しますと、本年度下期、来年度上期、きれいに三半期、一年半続けて伸びていきまして、平均伸び率が一五・八ということになります。  過去の例を調べてみますと、もちろん契約ベースでは上期に相当契約していますが、支払いベースをチェックしますと二対八から三対七ぐらいで出ております。この点についてもぜひ政府として、下期息切れはないんだよと。  さっき太田委員、五千億円の公共事業予備費について言っておられました。あれは、御承知のとおり、自自合意の中で出てきたものでございます。これは、もし下期息切れみたいなことになっては大変だから、補正予算を組むなどということでなくて、あらかじめ五千億円の公共事業予備費を入れておこう、それでその中身は国家的プロジェクトを中心にどんどん作業をしてはっきりさせておこうよ、これが自自の合意であります。私は、その場に政策責任者協議の一人として入っておりましたから、しっかりと記憶しております。  そういうことでございますから、その点も誤解のないように説明した上で、一五・八%、上、下息切れなしに出ていくから、公共事業の下支え効果は相当大きいよということを説明しなきゃいけないなというふうに思っております。蔵相、いかがでございましょう。
  246. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに適切な御指摘をいただきました。  そのとおりでございますが、実は平成十年度の本予算の公共事業の上期の前倒し、契約達成を非常に高い率で達成をいたしておりますので、そこで十五カ月予算を組みますときにもそのことを頭に入れておりまして、実はかなりの部分が契約も支払いも次の年度に回ることになる、それでも前倒ししてありますから大丈夫だ、こう考えておりました。  大体そういうふうに動いておりまして、五千億を外しましても、契約ベースでも支出ベースでも対前同期比五%、五千億を計算いたしますと一〇%ぐらいなプラスになりまして、息切れということは、私は、今度恐らく考えられないのではないか。極端に申せば、うまく設計なり地点なりの折り合いができまして、地方財政は大丈夫だと思いますから、こういう計画した公共事業が支障なく行われればいいな、むしろその方を大事に考えることが大事だろう。息切れということはないと考えています。
  247. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  それから、次は金融面なんでございますが、これは国内にもこういう批判がありますが、海外にかなり批判がございます。  それはどういうことかといいますと、これだけ大規模な財政刺激をやる、それに伴って国債が出てくると、他方で、金融政策によってマネーサプライを潤沢にしておかないと、今のような低いマネーサプライの伸びではなくて、マネーサプライがもっと高い伸びになるようにしていかないと金利が上がっちゃうじゃないか、金利が上がれば円高じゃないか、現に長期金利がぽんと上がって円高が進んだじゃないか、こういう批判がございます。だから、財政政策をやっても日本経済は立ち直らない。  これは、実はファイナンシャル・タイムズに、二十日にMITのポール・クルーグマンという、お読みになりましたですか、蔵相。それから、その一週間前に、何とマネタリストの総帥のミルトン・フリードマンがエイジアン・ウォールストリート・ジャーナルに書いていますが、二人とも同じことを書いておりました。  そこできょう、お忙しい中、日銀総裁にお越しいただいたわけでございます。マネーサプライの伸びが日本銀行がここまで短期金利を低くしているのになかなか高まらない理由は、御承知のとおり、貸し渋りにあるわけでございますね。しかし、貸し渋りについては、私ども自自で協議し、そして野党の御協力をいただきまして、大きな規模の信用保証枠を中小企業について設け、さらに中堅企業についてもつくりました。したがって、信用保証に伴う貸し出し増加、マネーサプライの増加が始まっております。  それから、日本銀行独自にCP、コマーシャルペーパーの買いオペの条件を緩めまして、今までは三カ月以内しか買わないと言っていたのを、もう少し長期も買い始めました。それからさらに、銀行貸出増加額の五〇%を日銀がリファイナンスするということを始めました。このことによっても、私は貸し出しが少し伸び始めていると思うのですね。  総裁にお伺いしたいのですが、私は日本銀行のインターネットを引っ張り出して、日本銀行が公表しているマネーサプライの季節調整済み前月比の伸び、それはでこぼこするから、三カ月移動平均したのを引っ張り出しました。これは、七月ごろは三・五%しか年率で伸びていなかったものが、十二月、最新の数字は五・五%伸びているのですね。これは私は、多分信用保証と日銀の努力と両方からきた、多少とも貸し渋りを緩めた結果、マネーサプライが伸び出したというふうに思うのですね。  総裁にお伺いしたいのは、それをそういうふうに解釈していいのか。また、日本銀行の見通しでは、今度大事なのは年度末でございますから、こういうマネーサプライの伸び率の高まりというのを日本銀行としては年度末に向けてキープしていけると思っているか。その点についての見通し、あるいは政策当局者としての御決意を伺いたいと思います。
  248. 速水優

    ○速水参考人 ただいま鈴木委員御指摘のとおり、マネーサプライは数字の上の実績で見ますと比較的伸びておるわけでございます。  昨年七—九月でプラス三・七%、これはM2プラスCD、十—十二月でプラス四%、うち十一月は特に伸びたわけです。ただ、本年一—三月になりますと、やはり三%台というのが私どもの方の見通しでございます。昨年の十—十二月に伸びましたのは、年末越えの資金繰りへの不安感を抱いて、企業が手元資金を早目早目に潤沢にとろうとしたということかと思います。その間は、御指摘のように、政府の中小企業への貸し渋り対策や我々の各種措置が効果を上げて、企業金融はひところに比べて非常に逼迫感が和らいできた。特に年明け後、非常に企業金融はやわらかくなってきたということを、今回の支店長会議でも各所の支店長から報告を受けました。  しかし、資金需要全体がなかなか伸びないというところがやはり問題でございまして、設備投資の減少とか、これは引き続き低迷が続いておるわけで、マネーはそこそこに伸びているけれども、今後伸び率がどんどん高まっていくということになるかどうか。やはりお金が出て手元に置いていても、これがなかなか回転して動き出さないというところに問題があるわけで、それはやはり企業経営者や家計のコンフィデンスといいますか、将来に対してここで思い切って設備投資をやるとか、あるいは前向きの投資をやるとか、家計の方も、この辺で少し買い物を、まとまったものを、耐久消費財を買ってみるとかいうようなところまでまだいっていないということのあらわれではないかと思っています。  そういう意味で、我々としても、引き続き経済活動をしっかりと下支えしていくという観点で、思い切った金融緩和スタンスを続けていきますけれども、潤沢な資金供給を続けていきますけれども、実需がやはり伸びてこない限りはなかなか、マネーサプライが伸びただけでも、手元に置いてあるだけでは実体経済はよくなっていかないというのが現状かと思います。  そういう意味で、今度もよく見ながらやっていくつもりでございます。
  249. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 資金需要がなきゃマネーサプライがなかなか伸びづらいという面は当たり前でありますが、しかし総裁、手元に置いてあるというだけでもこれは大変大事なことでありまして、手元を潤沢にしている、そういうことがあって初めて、大規模な財政出動があっても金利が上がったり円高になったりしないのでありますから、ぜひとも、年度末においても潤沢に手元に置いておけるように、私どもも信用保証協会の保証枠拡大で努力しておりますが、日本銀行におかれましても、新しい金融調節方式、例の社債担保貸し出しというのはまだ始まっていませんですよ。これもあわせて三つで、少しでもマネーサプライの伸びを確保する、貸し渋りを防ぐという御努力を今後とも続けていただきたいというふうに思います。  お忙しい中、ありがとうございました。  以上、減税の効果、歳出増の効果、そして金融面の効果と見てきたわけでございますが、ここで景気の現状判断について企画長官にお伺いしたいのであります。  昨年十一月に、確かにちょっといい指標が出たわけですね。軽乗用車を中心として自動車の新車登録台数が本当に二十カ月ぶりぐらいに前年を上回った、あるいは百貨店、スーパー、あるいは寒さが急に来たこと、あるいは消費税還元セールをやったこと等がありまして、これまた十一月の前年比マイナス幅がぐっと縮小した等々がございます。  ですから、長官もどこかで言っておられたかと思いますが、私は、十—十二月期に個人消費が若干プラスになって、公共事業も伸びてきていますから、五カ月ぶりにわずかのプラス成長に転ずるということはあり得るかなと思っております。  しかし、総理、決して手放しで喜んでいらっしゃるとは思いませんが、それで事成れりと思ったら大間違いでございます。十二月の数字というのはかなり、百貨店、スーパー、悪くなってきております。年明け後、私はヒアリングをいたしましたが、非常に冷え込んでおります。  結局、何か軽乗用車のいいのが出たとか、あるいは寒さが急に来たとか、そういうことで消費性向を上げて消費するというのは一時期ございますよ。だけれども、基本的には所得が今落ちてきているわけです。四兆円の減税も追いつかないぐらい落ちてきているわけでございます。  それから、設備投資というのは、御存じのように公共投資の二倍の規模を持っています。公共投資に住宅投資を足しても設備投資の四分の三でしかない。その設備投資が今相当なスピードで、多分二けたで落ちています、一〇%以上。そうしますと、公共投資が相当伸びてきても間に合わないのですね。  しかも、先ほど蔵相もおっしゃいましたが、一—三というのは、例のニッパチの二月を真ん中に持っている。そして三月、年度末の決算というのがある。しかも、今度の決算は、もうまなじりを決した最後のリストラチャンスだということで、過剰設備を思い切って償却する、あるいは金融機関であれば不良債権処理を相当する、大変悪い決算数字が出てくると思うのですね。そういうものが発表になりますと、マーケットにもいい影響が及ばないかもしれない。  そういう意味では、夜明け前が一番暗いというのは長官がよくお使いになる言葉ですが、その夜明け前の一番暗いところは、実は、去年の話じゃない、今だと私は思います、この一—三だと思います。この一—三を踏ん張って踏ん張って、踏み越えていく、そして四—六にどうかな、こういう時期に来ていると思うのですね。私は、一—三にもう一回マイナス成長が出ても驚きません。そのぐらいの可能性さえございます。  どうぞひとつ、そういうことで、予断を持って楽観論を言っておられるわけじゃないと思いますが、あの十一月を中心とした数字で余り楽観論をお持ちにならないで、慎重にこの一—三、四—六というところを見ていく、これが大変大事なことだと思います。  どうぞ、堺屋長官
  250. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ただいま鈴木委員がおっしゃったとおり、十二月はちょっと十一月に比べると悪い数字も出ております。また、一月十五日現在で、東京都内の百貨店などを見ますと、これは前年を上回っておりますけれども、その中で東急日本橋店の閉店セールとかそういう特殊要因がございまして、一月はちょっと悪いかもしれません。  その反面、マンションなどはここへ来まして減税政策と低金利政策で大変売れておりますが、これはすぐに着工に結びつかないので、仰せのとおり、この一—三月というのが大変勝負といいますか、分かれ道といいますか、注目すべき時期だと考えております。  消費の面につきましても、消費構造全体が非常に変わっている、低所得者の消費性向が落ちているという傾向がございます。そういうところも注意深く見守りながらやっていきたいと思っております。
  251. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  それで、一つ通産大臣にお伺いをしたい、お願いをしたいことがあります。  それは、去年の九月、十月の、これは企画庁が発表した景気動向指数の一致指数が五〇%を上回って、これも何となく変化の胎動を思わせたわけですね。  しかし、あれは通産省が発表になっております生産指数の季節調整のいたずらが主因でございまして、通産省が発表されております季節調整指数は曜日構成を調整していないんですね。週末が余り入らない。ワーキングデーがたくさんあるとふえちゃう。それで、九月と十月の生産が実勢よりもふえちゃって出ているのですね。それが入ってきて、三カ月前よりも、九月、十月、生産関連が全部ふえてしまったために、ああいうふうになったんです。この反動がこの先出ます、この先また景気動向指数が悪くなってくると思うのですね。  ちょっと技術的なことを言って、これはもう大臣御存じなくて当然の技術的なことを申しますが、通産省さんが使っておりますセンサス局法のX11というのはもう古いんですね。曜日構成が調整できない。今X12アリマという、アリマというのは日本の学者ですけれども、これを使います。そうしますと、曜日構成まで調整できちゃう。そうしますと、去年の七—九は、通産省は、生産はようやく四四半期ぶり横ばいになった、こういう数字を発表していますが、一・〇%落ち続けております。それどころか、六四半期連続してだあっと生産が落ち続けております、X12アリマですと。ですから、これはぜひとも御指示いただきまして、一刻も早くこの曜日構成の調整の入るX12アリマに切りかえていただきたい。  なぜ僕こんなことを知っているかというと、実は通産省さん以外の省庁、日本銀行、民間金融機関はこのアリマを使って調整しているんですよ。私もその数字を取り寄せているからこういう判断ができるわけでございます。  どうぞ通産省さんも、これは非常に大事な統計でございますので、季節調整指数、一刻も早く改善されますようお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  252. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 通産省におきましても、ただいま鈴木委員のおっしゃられましたX12アリマの曜日調整機能に注目しておりまして、これを鉱工業指数に何らかの形で速やかに適用することとしておりまして、ただいま技術的な詰めを行っているところでございます。
  253. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いをいたします。  以上、私が最初に申し上げましたとおり、とにかくこの予算、そしてこの十一年度税制改革で、最初に申しました戦略的目標を達成するんだという決意で、ぜひ自自連立内閣、頑張っていただきたいと思っております。  しかし、さっきも言いましたように、私は一—三にもう一回沈む可能性があると思っているのですね。それで、四—六になって、さあ本当に大丈夫かねという不安が万が一にもあったら、これは自自の政策責任者協議、ずっとやっているわけでございますから、そこで十分情勢の分析を両党で知恵を出し合ってやって、必要だったら、私は断固としてこの戦略目標を達成するための新しい手段を追加するという必要があると思います。しかし、これはまだ先のことでございますね。ただ、ここで一つ申し上げたいことがあるんですね。(発言する者あり)
  254. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  255. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ちょっと経済学的な用語で恐縮でございますが、異時点間代替という言葉があるのです。インターテンポラル・サブスティチューションという言葉があります。異時点間代替というのは、異時点でございますから、将来の時点と現在の時点は異時点、それで、将来の支出予定を現在の支出予定に繰り上げさせる、その方が合理的だという政策をつくる。こう言うとえらい難しいですが、簡単に言えば、買い急ぎを誘うということですよ。買い急ぎを誘うことを異時点間代替の政策といいます。  これは、レーガン政権が八〇年代初期に使いました。これは御承知のように、時限立法で加速度償却をやったのですね。それからもう一つ、やはり時限立法で、機械設備とかあるいは住宅とかあるいは自動車、トラックとか、購入した額の一定割合を課税所得から控除したのですよ。これをやられますと、もう大規模な設備投資あるいは住宅投資あるいは耐久財購入の買い急ぎが起こります。  実は、私ども自由党が消費税の一時凍結と段階的引き上げと言ったのは、まさにこの異時点間代替をねらったんです。これをねらったんです。実は、これを考えるときに、私はアメリカの、名前をここで出しちゃうのはあれですから言いませんが、アメリカの政権の中にいるかなり上の人でしかも大学教授出身と言えば大体見当つくと思うのですが、その方とも意見交換しました。彼らも、今のような日本では決め手は異時点間代替じゃないかという点で意見は一致しました。  なぜかといいますと、直接税減税をしたって、所得が減っていればきかないわけですよ。去年、四兆円がどこかへいっちゃったと。それはそのはず、所得が四兆円減っていたときに四兆円減税したってきかない。それから、法人減税したって赤字企業にはきかない。収益がぐんぐん減っている企業は、ありがたいとは思うが投資はしないのですね。そこまで日本経済は冷え込んでいるんだ。とすれば異時点間代替をねらう以外ないだろう。  これは学者の間でまじめに議論されます。どうかこれを覚えておいていただきたいというふうに思います。インターテンポラル・サブスティチューションなんて、そういう学術用語を国会で言うとは何か変なやつだと思わないで、覚えておいていただきたい。これは簡単に言えば、買い急ぎを誘う。それで経済に勢いをつけておけば、買い急ぎの反動が出たって吸収できるのですよ。そこまで加速させなきゃいけないということですね、逆に言えば。  最後に、もう一つ国民が心配していること、それは、先ほどから出ておりますが、基礎年金等々の高齢者の社会保障の問題でございます。  保険制度を使っておりますと、どう計算してみても、先ほど坂口委員の計算が出ておりましたが、少子高齢化が進んでいったとき、保険料の負担がふえるんじゃないか、あるいは給付の水準が下がるんじゃないかという計算がどうしても出てくる。  しかし、厚生大臣に御質問いたしますが、基礎年金それから高齢者医療、それと介護、この三つは、すべての日本人に社会全体で保障すべきナショナルミニマムだと思うのですね。  ところが、保険制度というのは、保険料を払って制度に加入した人だけが享受することができる、権利が発生する、給付を受けられるということです。すべての日本人に保障すべきことを、保険料を払った人にだけ給付するという保険制度でやるということ自体に大きな無理があるんじゃないでしょうか。だからこそ、国民年金、基礎年金について、保険料を払っていない人が三分の一もいるとかいう問題が起きますし、医療保険についても大分払っていない未納分があります。ましてや、これから介護、介護サービスの充実は大事ですよ、しかし介護を保険制度でやったとき、どれだけ保険料がきちんと払われるでしょうか。本当に、年金から源泉徴収してでもやれるのでしょうか。  私は、この根本的な問題をぜひ政権でお考えいただきたいと思いますし、自自両党間でこれからも深く研究をしたいというふうに思っております。  この三つは保険制度にはなじみません。逆に不公平が発生します、保険料を払っていない人と払っている人の間で。保険制度そのものが崩れてきちゃいます。そうすると逆に、財政負担がどんどんふえちゃうのです。我々はそれを、消費税で日本人全体が負担する方が公平だし、それから制度的に崩れないし、恐らく効率的な制度になるのだろう。だからこそ、今度の予算総則にお書きいただきましたように、将来の消費税というのは基礎年金、高齢者医療、介護に限定した目的税として、保険制度から時間をかけてこちらへ移すということが大事ではないかと考えております。厚生大臣の御所見を伺いたいと思います。
  256. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 社会保障制度の構築に当たりましては、やはり長期安定ということも重要でございます。それから現役世代、後の世代との負担の公平等も必要でございます。それから今の制度は、委員は入った人のみが適用になるとおっしゃいましたが、皆保険、皆年金それから皆介護でございます。  したがって、徴収等の問題の指摘もございましたが、それはそれとして別個の徴収確保を図りますが、年金制度は、我が国の社会保障制度をつくり上げる上において大変多大な貢献をしてきていると私は思うんですね。これはやはり自主的な努力も前提にしております、同時に公費も投入しています、事業主の負担も求めています。そういう格好で、支え合うシステムとしては、私は今考えられる知恵の中では大変すばらしいものじゃないかな。これは、委員の御指摘でございますが、見解を異にしております。  したがって、私どもは、少子高齢化と経済の低成長化を迎えて、いかにこれを維持して、そして国民が安心、安定できる、見通しのつくものにするかということが現在の私どもの使命であると考えておりますから、御意見ではございますが、直ちに賛成しかねるということでございます。
  257. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 皆保険とおっしゃいましたけれども、皆保険が不可能だという現実を前にして改革案を言っているということをお忘れなく御検討いただきたいと思います。  以上、時間でございますので、これでおしまいにいたしますが、ぜひとも、総理、閣僚の皆様、そして自民党の皆様方も、断固として、来年度プラス成長を実現する、再来年度回復の軌道に乗せる、この戦略目標を実現するために、十分、予断を持つことなく経済動向を点検して、必要ならば追加策を講ずるということを腹の中に入れておいていただきたいと思います。  これで終わります。ありがとうございました。
  258. 中山正暉

    中山委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、児玉健次君。
  259. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  総理、ことし、一九九九年は国際高齢者年です。一九九二年十月の国連総会は、高齢化に関する宣言を採択し、一九九九年を国際高齢者年に指定いたしました。  私たちはかねてから、高齢化は人類にとって誇るべきことであり、日本にとって喜ぶべきことである、高齢者が心豊かに生きようとする努力を社会と政治がしっかり支えることこそ求められている、このように主張してまいりました。  昨年、国会の論議で、私はこの点で橋本前首相と論議をいたしました。私の主張に対して、橋本前首相はこう答えた。「まさに意見が一致するのは、高齢化というのは喜ぶべきことと言われました。長寿社会というのは本当に私はめでたいことだと思うのです。年少人口の減少については」児玉議員の指摘のように「克服すべきこと、これもいい言葉かもしれません。」前総理とこの分野での意見の一致は、私にとって、今印象に強く残っています。  そこで、国際高齢者年は、高齢化を人類の成熟、進歩としてとらえ、人類の高齢化に対応するため、現在緊急に必要とされている人的、物的資源を提供すること、そのための各国政府の役割の重要性が極めて強調されています。  総理、日本政府として、高齢化に対応するための人的、物的資源を提供すること、国連のこの提起にどのようにおこたえになるのか、総理から具体的に示していただきたいと思います。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕
  260. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御指摘の高齢化に関する宣言で、本年が国際高齢者年に指定されておられるということを承知いたしております。世界じゅうでかつてない高齢化が進んでいるとされておるところでございまして、我が国におきましても、二十一世紀を目指して、急速に高齢化が進む中で、国民が人生全般にわたり、健康で生きがいを持って充実した生活を送れる、明るい活力のある社会を築き上げていくことが重要でございます。  政府といたしましては、平成七年に議員立法で制定されました高齢社会対策基本法に基づきまして、これまでも高齢社会対策の推進を図ってきたところでありますが、今後とも、高齢者雇用や年金、医療、介護など、社会保障制度を初めとする社会全体の仕組みが高齢社会にふさわしいものとなりますよう不断に見直しをしながら、高齢者が社会を支える重要な一員として尊重される、活力のある高齢社会を築き上げていくため、高齢社会対策の総合的かつ体系的な推進を図ってまいる考えでございます。
  261. 児玉健次

    児玉委員 国際高齢者年が日本において実効あるものになるかどうか、その極めて重要な試金石が介護保険制度です。  国連の高齢化問題に関する国際行動計画では、高齢者の中で最も傷つきやすい者として、特に貧困者を挙げています。政府、NGO及びすべての関係者は、特に貧困者と言われる方々に対して特別の責任を持つと強調しています。  日本の高齢者の生活実態はどうか。厚生省が九六年に発表した国民生活基礎調査、全国六百二十万四千の高齢世帯で年収二百万円未満の世帯が三九・九%、実に二百四十七万世帯に及びます。そこで、介護サービスを希望する高齢者にとって、まず一つは保険料、そしてもう一つはかかった経費の一割が必要となる利用料、この二つが二重の壁となって立ちはだかります。  介護保険法の審議が行われた際、衆議院においても参議院においても、各党各会派、低所得者の問題を繰り返し論議しました。九七年十二月三日、法案が参議院本会議で可決された際、それまでの国会決議を踏まえて全会一致の決議が採択されました。その一項目にこう書いてある。「全ての国民が適切に介護サービスを利用することができるよう、低所得者に対する必要な措置を講ずること。」  総理、この決議を国会の意思として真剣に受けとめて、必要な措置を講じていただきたい。いかがでしょう。
  262. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと介護保険の制度に関することでございますから申し上げさせていただきますが、一つは保険料の徴収でございます。  これは、国会の御論議のときに二千五百円というような数字が出されております。これは当時の、平成七年価格で平均値を参考のために提示したものであります。そういうことでありますが、実際は、療養型病床群が多かったり、施設が多かったりするところは介護給付が多くなりますね。高くなります。そういうことで、実際に保険料給付は高くなったり低くなったりしますが、その平均値に対しまして、各地方団体が、保険者が定めるのは五割まで増額できますし、五割まで減額できます。そして、なおかつ五割以上に、地方公共団体が条例によって定める場合は、これをさらに下回ることもできるという制度を持っていることは御案内のとおりです。  それから、給付の方の一割負担でございますが、これも……(児玉委員「この後お伺いします」と呼ぶ)それじゃ保険料の点だけ今申し上げましたが、そういうことでございますので、低所得者対策としての配慮は、私は十分なされていると存じますが、なお実行上円滑にいくように措置していきたい、こう思っております。
  263. 児玉健次

    児玉委員 今宮下厚生大臣がお述べになった保険料の問題です。  昨年のこの予算委員会で、私に対して厚生省は、人口推計を加味した場合、九五年価格で月額二千六百円程度、そういうふうにお答えになった。  そこで、今最前線でこの準備で苦労なさっている市町村、全国市長会の去年十一月に発表された調査結果があります。それを見ますと、今一番国民の関心が集まっている保険料の問題、月額二千六百円では到底おさまらない。三千円から四千円未満と答えたのが百二十七市、回答者の中の五七・七%、四千円から五千円未満が二九・六%、五千円以上が二十八市、回答部分の一二・七%になっています。  来年の四月から発足というんですから、厚生大臣、ここのところは、保険料が実際どのくらいになるかということについて具体的に提起なさることが市町村や国民の理解を得る上でも必要だと思うので、その点率直に示していただきたい。
  264. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今、来年の実施に向けまして鋭意いろいろ諸準備中でございますが、そういった点を含めて実態調査をいたしておりますので、それらの集計を待って、全体的な姿を見ながらお示ししたいと思います。  介護給付というのは、申すまでもなく、材料もありますし、それからホームヘルパーの介護報酬もございますし、いろいろなものの組み合わせでございますから、今実態調査をやっておりますから、それらの組み合わせを待って、どのぐらいになるかということを最終的には決定し、そして報酬はどのくらいがいいかということを通達等でお示ししたい、なるべく早くそういうものを示したいと思います。  市長会の、今お示しになった点は私ども承知しておりますが、まだまだ全体をどの程度にするかということがやはり確たる姿が描けない状況で不安感を与えている点が多分にあると思いますから、私どもとしては、これを周知徹底すると同時に、地方団体の意向を十分踏まえて、この一年間に諸準備を万端整えていきたい、こう思っております。
  265. 児玉健次

    児玉委員 今のお話ですが、厚生大臣、やはり率直に答えていただきたいのです。  市長会のこのアンケートは御存じだとおっしゃった。当然御存じでしょう。それから、きのうも出ましたけれども、高知県で昨年の夏試算されたところ、平均月額三千八百円、最高六千百円、最低千九百円。私のおります北海道で、北星学園大学の横山純一教授が聞き取りなさった結果、二十四市町村、平均月額六千円、最高一万円、最低三千五百円。根拠のある数字です。厚生省が試算の言ってみればプログラムを出された上でいろいろやっての結果ですから、少なくとも二千六百円では終わらないということははっきりしているのじゃないですか。どうですか。
  266. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 確かに二千六百円では無理かなと思います。それは、例えば今高知県のお話を申されましたが、療養型の病床群等も介護の施設として認めておりますから、そういったものが多くありますと介護給付費は上がります。これは御案内のとおりです。それから、人口の高齢化率、要するに後期高齢者の割合が高いようなところは上がりますね。そういう点で高知県の特色があると存じます。  私どもは、二千六百円で、平均値でいいとは今は思っておりません。それは、そういったいろいろの特殊事情がございますし、なるべく質の高い介護給付をやるべきであるとも思っておりますから、それを超える可能性は十分あると思います。  ただ、余りこれが高度または高額になりますとこの保険制度が成り立たなくなる可能性もありますから、その辺の中でしかるべきリーズナブルな水準を決めていく。しかし、市町村によっては非常に差があるということははっきりしておりますから、私どもとしては、広域化によってそれをならすとか、あるいはゴールドプランの達成をさらにやって基盤を造成していくとか、均質な給付ができるような体制は築いていかなければならない、こう思っておるところでございます。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  267. 児玉健次

    児玉委員 総理、私、この問題は重ねて総理御自身にお伺いします。  今のお話からもわかるように、二千六百円と言われていたものが、それではおさまらないということについて厚生大臣が今お認めになった。そこで先ほどのあの国会決議の重さなのです。「低所得者に対する必要な措置を講ずること。」これが今国に求められている。よくも悪くも参議院で介護保険法案が成立をした。私たちはこの法案反対しました。成立をして、法のスキームが示された後、今後の運用でどうするかというそのための決議なのですよ。それをよく御理解いただきたい。  そこで私は、さらに具体的に言いたいと思うのです。一つの国民の負担、それは所要経費の一割を負担すべき介護サービス費、利用料の問題です。減免制度があります。介護保険法五十条、六十条、災害その他厚生省令で定める特別な事情とあります。その中身がどうかということについて今市町村が深甚な関心を持っている。  私は、この災害その他厚生省令で定める特別な事情というのは、震災、風水害等はもちろんのこと、主たる生計維持者の重い疾病、長期入院、死亡等による収入減、そういったことで利用料の負担が困難になったとき、またそれに類する事由がある場合、当然対象となるべきだ、こう考えますが、厚生大臣、いかがですか。
  268. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本的には、低所得に対する配慮は私はなされていると思います。一つは、高額給付制度というのが医療の面でございますが、それに準じた措置をとって、一割の負担が非常に過重な場合にはそれを調整するということをまず考えます。それから、今の点は、ずっと継続して非常に負担が耐えられないような方々ですね。それは軽減の措置となります。それから、今委員のおっしゃられた点は免除の点でございますが、これらは、一般論として申し上げれば、医療保険におきましてもそういった措置がなされておりますが、メカニズムこそ違え、大体同じような考え方で対処すべきだと私は考えております。  ただ、制度が国保と介護で違いますから、低所得に対する調整の仕組みは変わっておりますが、考え方としては同様な考え方を貫くべきものだと思っております。
  269. 児玉健次

    児玉委員 端的に聞いていますので、端的にお答えいただきたいんです。  私が聞いたのは、国保という制度がある。基本的にはそことの横並びで、先ほどの災害等特別の事情という場合に、災害はもちろんのこと、生計維持者の重い疾病、長期入院、死亡等、収入減で利用料の負担が困難になったとき、これは今厚生大臣が言われた減免です。あなたは免をおっしゃった。大いに免除すべきです。そして、それに類する事由がある場合、これは対象になるはずだと思うのです。その点に限ってお答えください。
  270. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本的には、おっしゃるとおり対象にすべきものではないかと思います。
  271. 児玉健次

    児玉委員 そこで、参議院に各市町村の方が参考人として意見を述べにおいでになったことがあります。そのとき北海道の奈井江町の北良治町長さんは、保険料を滞納すると給付が差しとめられる、そのことについてこうおっしゃった。「率直に言いまして、ペナルティーがかけられて、私ども市町村が窓口でそれを実施するということは難しいことだと思うんです。」市町村のアンケートでもそれが出ています。こういうことは本来行うべきでない。  介護保険法の六十七条に一時差しとめについて規定がありまして、「特別の事情」云々と書いてある。これも今と同様と理解していいですね。今の介護保険法の五十条、六十条と基本的には同じ扱い、こういうふうに考えていいですね。
  272. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 まだ最終的には審議会で審議中でございますけれども、基本的な方向では同じような措置ができないかということで検討しております。
  273. 児玉健次

    児玉委員 そこで、保険料の減免の問題です。今私が議論していたのは主として利用料の問題、保険料の滞納です。保険料本体の減免について、やはりここがこの後この制度の生き死ににかかわります。  国保法の七十七条では、地方税法七百十七条、水利地益税の減免という項目がありまして、そして国保税の場合もこれに含まれている。そこでは「天災その他特別の事情がある場合」云々といって、「貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者」等も含まれています。そして、皆さん、これは介護保険法でも市町村の裁量によって条例をつくることが可能になっていますから、国保の場合、市町村が条例によってどのような減免条例をつくるかということについて厚生省は準則を示されていて、そこでも基本的には今までと同様の規定になっています。  この点はこの後もそのようにされるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  274. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本的にはその方向だと思っています。
  275. 児玉健次

    児玉委員 そこで総理、つい最近、新聞で、宮城県で施設に入っていらっしゃる方々がインフルエンザで、恐らくインフルエンザと見られる集団風邪で七人亡くなった、私、本当に痛ましいことだと思います。  今各地の特養ホームの職員は、高齢者が入院した場合、現在の制度ではおおむね三カ月程度は特別養護老人ホームに帰ることができます、この後介護保険制度が発足したときどうなるのか、もし帰れないということになったら、よほどでなければ入院を勧められない、こういうふうに心から心配なさっています。  新しい制度ができるとき、従来の福祉や医療が後退することはあってはなりません。この場合も入所者の意向を尊重して、介護保険制度の場合も特養の入所者の意向を尊重して、おおむね三カ月程度は現行取り扱いと変わらないようにすべきではないか。大臣、どうでしょう。
  276. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基本的にそのように考えております。
  277. 児玉健次

    児玉委員 そこで、この問題の最後の御質問に移ります。総理にお答えいただきたいと思うんです。  読売新聞が、一月二十二日に全国自治体首長アンケートを明らかにされています。大勢の回答者の九二%が、今地方自治体が抱える最大の課題は、介護保険そして医療などを挙げていらっしゃる。不安は何か。財政負担の増大、首長の八六%がそう答えていらっしゃいます。  介護保険制度が発足をしていく。今私は国保との横並びと言ったけれども、その国保でさえ、現在、保険料の滞納が約三百万世帯に及んでいます。そして、国保に対する自治体の負担の重さに文字どおり関係者が大変な苦労をなさっているから、介護保険が第二の国保にならないようにということを熱望されている。  総理は本会議の答弁の中で、繰り返し、市町村に大変御苦労をいただいておりますとお述べになりました。そして、一月二十一日の本会議では、市町村に対する財政面、実施体制面等の支援に全力で取り組んでまいりますと明確にお答えになった。私は、その中身を今総理から具体的にお示しいただきたい。どうぞ。
  278. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 制度の中身でございますから、総理の答える前に、ちょっと私の方から申させていただきます。  基本的には、介護給付費の五〇%は公費で持ちます。そのうち国費が二五%。そのうち五%を今先生のおっしゃられた財政調整等で充てます。  それから、残り三三%は、これは二号被保険者といいますいわゆるサラリーマン等の四十歳以上の方々、あるいは国保でも自営業者でも四十歳以上の方々から保険料をいただくことになって、それが三三%です。したがって、残りは一七%でございますが、このほとんど八割くらいは今度は年金受給者になりますから、年金受給者の場合には年金の給付の中からいわば天引きをさせていただくことになります。  そして、なお残るのが、ごくわずかになりますが、例えば今御指摘のような、国民年金に加入していても納付していない方あるいは入っていない方等々、あるいは無年金者等の場合が多いかと思いますが、これは量としては非常に少ないわけですが、制度として、これを市町村長の徴収にお願いしておる、こういうことがございます。  そういうことでございます。
  279. 児玉健次

    児玉委員 総理、私は重ねてあなたの答弁を求めたいんですが、それこそ今厚生大臣がおっしゃったことを私がどう理解しているか、ちょっとスケッチしてみましょう。  これまでの措置制度では、かかる経費のおおむね二分の一を国が負担しておりました。今度の介護保険制度では被保険者が二分の一を負担しますから、残り二分の一の二分の一、すなわち国の負担分はこれまでの二分の一から四分の一に減ります。  その結果どうなるか。これは厚生省の推計ですが、二〇〇〇年実施の場合、今だと一兆五千五百億かかるんだけれども、この保険制度に移ることで国の負担は一兆一千八百億円に減ずる。三千七百億減ってしまうんですよ。その分をさらに上乗せして、総理が本会議でおっしゃったように、市町村の財政負担を軽減するため全力を尽くす。その点、私は総理からお答えをいただきたいのです。
  280. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 先年の秋だと思いますが、全国市町村会の代表の皆さんと官邸で各地方自治の問題につきましてお話をいたしました。そのとき、代表者のほとんどが、実は介護保険につきまして、現況の状況につきましてお話がございまして、かくもこの問題についての難しさということを認識いたしました。  したがいまして、お話のありましたように、今回の施政方針演説でも、地方自治団体が大変御苦労されておる趣旨を念頭に置きながら、あらゆる手段を講じて、ぜひ、せっかく国会で御審議いただき、法律として制定をし、十二年の四月から開始をされるということですから、やはり将来の社会保障の大きな柱であるということを考えますと、これが間違いなくスタートのできるようにと考えて申し上げたところでございます。  まだまだ市町村長の中には、例えば武蔵野市長さんのように、私のところにまだ反対である旨いろいろ告げておられる方がおられますが、さりながら、ここで定まったことですから、ぜひこれは実行していかなきゃならぬと思っております。  いろいろ具体的な諸問題につきまして御指摘がありました。また、厚生大臣からもお答えをされておりますが、私といたしましては、御指摘いただいた点、どこにどう措置すればいいか、すべてここで私お答えできませんけれども、重ねて、せっかくのこの制度がスムースにスタートのできるように、そしてまた、国会でもこれを制定する過程におきましていろいろと附帯決議等をつけられておるということでございますから、その実行のために、政府としては最大限の努力はいたしていかなきゃならない、こう考えております。
  281. 児玉健次

    児玉委員 次に、国家財政全体の構造とも関係させながら、社会保障の問題について私は触れたい、こう思います。  一九九九年度予算案、そこに示されている破滅的ともいうべき財政危機、これが日本経済と国民の生活に深刻な害悪を与えていることを私は直視しなければならない、このように思います。  我が党の不破委員長は、二十一日の本会議で、日本の予算の中で公共事業が抜群の主役をなしているという世界でも本当に異常な状況、この状況を抜本的に改めて、消費税減税などの景気対策、国民の緊急切実な要求にこたえながら、国と地方の財政を健全なレールに早急に乗せる、そのことを基本にして、四つの具体的な提起を行いました。  私は、総理に真剣な対応を求めたいと思います。そこで、中身に入っていきたいと思うんです。  日本経済の深刻な破綻がバブル経済、投機ブームとその崩壊を直接の出発点にしているという点では、多くの論者の意見が一致しています。  総理も御存じの、駐インド大使もなさったアメリカの経済学者ガルブレイス、日本経済新聞の「激動世界経済」のシリーズで氏の所論を展開されています。去年の十月九日のものです。読んだのです。こう言っている。  崩壊したバブルへの的確な対応は、経営方針を誤ったり投機に走った銀行や企業にみずからの責任をとらせることである、こういうふうに述べた上で、非難されるいわれのない国民の所得、雇用、福祉を改善向上させることがより重要であり、それが政府の使命である。  私は、これを読んで、まさに正論だと思いました。  あなたたちがこれまでなさってきたことは、これとは全く逆じゃありませんか。バブルのときに野方図な放漫経営に走ったのは、ゼネコンであり大銀行です。それに対して、宮澤内閣以来、六十四兆円の公共投資が積み増しされ、大銀行に対しては六十兆円の税金投入の枠づくりが行われて、そしてそれが今年度予算でさらに加速されている。  一方、非難されるいわれの全くない国民に対して、今年金再計算の時期になりますけれども、四%と予定されている賃金スライド、これが凍結される。支給額が九七年度で三十五兆です、約一・四兆円の削減になる。これは、次期再計算までの五年間だけをとって見ても、七兆円の年金支給減になります。  そして、そうやって支給減にして乏しくなった年金から、先ほどの介護保険料、そして高齢者医療保険制度、この二つの制度で新たな負担が一兆円です、それが容赦なく天引きされていく。これでは家計の消費が冷え込むばかり。全く非難のいわれなき国民、特に高齢者が、それだけ生活を困難にされる。  私は、これはまずい。日本経済のこの後の再生のためにも、消費不況の解決が今一番の急務ですから、その方向で事態を改善すべきだ。総理、この道でいいとお考えでしょうか。いかがでしょうか。
  282. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この道とおっしゃられるのは、今委員が御批判をいただいたことかと思いますが、私どもは、消費を拡大し、そして経済を活性化していくということで、あらゆる手段を講じて今努力をいたしておるところでございまして、そうした中で経済を再生し、そしてその力によりまして、あらゆる社会保障制度その他につきましても、適正にこれが政策として遂行のできる、そのために今全力を尽くさせていただいておるところでございます。
  283. 児玉健次

    児玉委員 経済の再生を国民本位の立場でどうやって進めるか。その点で、私たちは、かみ合った、忌憚のない議論をしたいと思いますね。  そこで、私は、一月の十七日でした、夜八時四十五分にNHKのニュースを見ておりましたら、総理はその日、阪神大震災の犠牲者追悼式典に参列なさった。その後、神戸大学で外国人留学生とお会いになって、そして日本経済の見通しを留学生に聞かれた。  これは、日経テレコン21、発信データベースからとったものですが、そこで総理がこのようにその留学生にお答えになった。「政府としては、平成十年度の補正予算や十一年度の予算案の編成など、経済再生に向けてやるべき施策はやっているが、」今そこはおっしゃいましたね、そのとおりおっしゃった。そこで次です。「六割が個人消費であり、公共事業や減税措置というものにはそれなりに限界がある。今後は個人消費を刺激するような施策に全力をあげたい。」もしそのようにお答えになったのだとすれば、そうしていただきたいのですが、いかがでしょう。
  284. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 個人消費が、これが効果あらしめるためには、あらゆる施策も講じておりますが、その一つといたしましては、減税によりまして、実質的所得が上昇のできますような施策もその一つだと考えております。
  285. 児玉健次

    児玉委員 これまでの議論というのを私も注意深く聞いてきておりますし、総理は、もちろん政府の責任者として傾聴なさっていると思うのです。  例えば、あなたがその外国の留学生に対するお答えの中で、「減税措置というものにはそれなりに限界がある。」この点を、私どもの志位書記局長が、きのうあなたと、一時間半の中の相当の時間をかけて議論をいたしました。  七割、八割の勤労国民にとっては、去年に比べて明白な増税になるじゃないか、そして、個人消費を刺激するという場合に、それこそ外からの刺激という場合に最も有効なのが消費税だという点では衆目が一致しているじゃありませんか。  そして、あなたがそれなりに限界があるとおっしゃった公共事業。この公共事業について、私たちは、生活密着型のもとに思い切って転換して、そして、全体として言えば、そこに投じられるものについては大胆にメスを入れるということを私ども委員長はこの前の本会議で提起いたしました。その方向を進むのが道ではないでしょうか。外国人の留学生に対して率直に述べられたことをここでも述べていただきたいんです。いかがでしょう。
  286. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 消費が経済に与える影響の大きさを申し述べたわけでございますが、大変政府を御信頼いただいておることはありがたいことだと思いますけれども、経済全体というものは、ひとり政府の、例えば公共投資においてのみ活性化するわけでございませんで、やはりこれは消費者のマインドの問題もありますし、また、経済界自身がいろいろな消費を引き起こすような製品を開発したり、いろいろなことが相まって経済全体が大きく成長するものでございます。  そういった意味で、私は、留学生の皆さんにも、政府だけの力でなかなか進むことはできない、みんな消費についてはいろいろな角度から検討し、必要なものについても生産をしていただくような、サプライサイドの努力も必要だということを申し上げた、こう考えております。
  287. 児玉健次

    児玉委員 今、九九年度末で地方と国の負債が約六百兆になる。国民一人当たり五百万ですね。そして、皆さんは、二〇〇〇年度、〇・五%成長するかどうかということを盛んにおっしゃっているけれども、仮に二%成長したとしても、六百兆に対する利子負担は、その成長分をすっぽりのみ込んで、文字どおり、すさまじく全体を引き下げていく。  そういうときに、これを再建するためにどうするかという場合に、もちろん私たちは、最近の若干の変化として、公共事業について皆さん方が一定の見直しを進めようとされていることは知っているけれども、しかし、全体としてはやはりゼネコン型の公共投資が主柱ですよ。そこのところを放置しておいていいのかという問題。  そしてもう一つは、二%の減税というのは全国民にとって二%の生活のプラスになるんだから、そこのところに着目して、まずそこから着手していく。消費税の増税が景気締めつけになるという点は、小渕総理もお認めになっているんですね。  その二つを同時的にやることが、今、日本の国家財政を再建していく場合の最も確かな道、王道ではないかと思います。いかがでしょう。
  288. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからお話を伺っていまして、ガルブレイスも、私は新産業国家を書いたぐらいまでは経済学者として相当な人だったと思いますが、後は、国民経済を考える上に、あの人の言っていることは参考にならないと思います。ただ、あの人はあの人なりの哲学を持っていますから大変それはおもしろいんですけれども、アメリカのようにインフラが発達した国だったらああいうことを言っていられますけれども、日本のように国民経済をつくるということになりますと、なかなか私はそのようにいかないんではないか。  例えば、きのうも、消費税を下げたら一番いいんだと。それは消費者は楽になりますでしょう、下げっ放しなら。しかし、そのとき、国の経済とか、国がしなければならないことというのはだれがやるんだろうかといったようなことについては、どうも余りこれをなさらないような御言説が多いので、それはそういう一つの哲学をお持ちになって言っていらっしゃるのかと思います。しかし私どもは、やはり国民経済というものが大事ですから、税金がただ安ければいいんだろうというような御議論にはなかなかついていけないところがある。ガルブレイスさんはそういうことはどうやら卒業したようで、まことに自由自在なことを言われますけれども、どうもそうもまいらないんじゃないですか。
  289. 児玉健次

    児玉委員 大蔵大臣がガルブレイスに対して個人的にどのような主観をお持ちか、あなたの御自由です。私たちは、ここに展開されたものは正論だと思っています。そのことをまず一つ言いましょう。  それから、財政についてどうかというお話ですが、これは私たちが今まで随分皆さんと議論したことです。例えば私も、この議論平成九年の八月二十六日からやってきています。  国立社会保障・人口問題研究所、毎年、社会保障財源の推移について数字を出している。政府の答弁ですが、九四年度十九兆四千七百六十一億円。一方、自治省は公共投資の行政投資実績というのを明らかにされている。九三年五十一・一兆、九四年は四十七・八兆。アメリカでは公共事業への投資は社会保障よりはるかに低位である。社会保障がアメリカでは公共事業の四倍ですね。イギリスでは五・九倍です。ここを逆転することで十分な財源が生み出せる、それが私たちの一貫した主張ですよ。あなたもよく御存じだと思うのです。そのことを一つ私は言っておきたい。財源のことを抜きに議論することはありません。  そしてそういう中で、経済戦略会議が、先ほどの絶望的というか破滅的とも言えるような国家財政のもとで、昨年十二月の中間取りまとめ、消費税増税は不可避という方針を打ち出された。そして、自民党と自由党の党首合意をばねにして、消費税の福祉目的税化の議論が展開され始めた。  消費税の福祉目的税化とは、福祉のためと言って大幅な消費増税を選ぶか、それとも福祉水準の切り下げを選ぶか、選びようのない二者択一に国民を追い込むことになる、そうではないだろうか。  総理、あなたの考えを聞きたいと思います。
  290. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の我が国の財政から考えますと、実際、直接税をこれ以上非常に上げられるような状況ではありませんし、また、社会の少子高齢化ということを考えますと、福祉の負担は将来重くなるということはもうはっきりわかっております。したがって、それについて何かの財源措置を考えなければならないということはどうも逃げられないのではないかというふうに私どもはやはり考えるわけでございます。
  291. 児玉健次

    児玉委員 ですから、どういう形で財源を生み出しつつ、すなわち国民の消費を喚起し、そして国民の将来不安の最大の理由である年金、医療、介護、こういった部分についてむしろ公的投資を強めていくことできのう来議論になっている消費マインドを解かしていく、そのことを私たちは提起しております。  そこで、もう少し今の福祉目的税について述べたいと思います。  厚生省は、去年の八月三十一日に行われた第二十五回の年金審議会、そこで事務局として、昨年、一九九八年度の基礎年金——済みませんが配ってください。その基礎年金、現行、御承知のように三分の一は一般会計で負担しています。国で負担しています。一つのシミュレーションとして、一九九八年度、三分の一の現状はそのままにして、そしてこれを三分の一から三分の三に上げていく、その差三分の二を年金目的税で充当した場合にどうなるか、こういうふうに説明なさっている。読みましょう。  基礎年金の拠出部分につきましても、これは労使折半でありますから、その労使折半の使用者側の負担が全部消費税に移り変わるために法人負担が減少すると。現時点で約三・三兆円という計算になりますが、その分国民負担が増加するということについて、その辺の財源の移動についての議論が要るのではないかということです。  厚生大臣、こういうふうに御説明なさっていますね。事実に違いがあるでしょうか。
  292. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 被用者年金の二階建て構造からいたしますと、今委員のおっしゃられるとおり、今一七・三五でございますが、これは事業者と個人、被保険者の折半でございます。それの基礎年金部分を推計いたしますと六兆六千億、今資料に配られたとおりでございます。したがって、その半分は企業負担でございますが、三兆三千億ということに相なっております。
  293. 児玉健次

    児玉委員 今お配りしている資料は厚生大臣が的確に説明していただきました。  基礎年金の国庫負担を、一九九四年の国会決議に基づいて、先送りすることなく明年から三分の一を二分の一に増額すべきだ、これは私たちの強い主張です。  そこで、基礎年金の三分の一は現在国庫が負担しています。これをすべて税による負担三分の一から三分の三、今国庫で負担している三分の一と三分の三に引き上げていくときのその差、それを福祉目的税化で賄えばどうなるかというのが、この墨を塗った部分です。使用者の負担が平成十年で三・三兆円、二十二年で五・二兆円、三十七年、二〇二五年で六・一兆円減ずることになる。厚生省の御説明のとおりだと思います。  そこで、私たちは、これは大変なことだ、率直に言いたいと思うのです。それは何かといえば、現在消費税を負担しているのは、最終消費者である国民と、消費税を転嫁しようとしても転嫁できなくて苦吟している中小企業の皆さんですね。一方、大企業の方はどうかといえば、全額を消費者に転嫁しています。高齢化社会はみんなで支えるといいながら、大企業の負担を国民に移しかえる、こういうことは許されませんね。このような計画は撤回すべきだと考える。総理、どうでしょう。
  294. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今後とも、国民のためにお約束をいたしました社会保障の諸制度が運営のできますように、財政面も考えまして、真剣に努力をしていくということだろうと思います。
  295. 児玉健次

    児玉委員 国会ではやはり論議をしたいですからね。こういうふうにお聞きしましょう。労使折半の使用者側の負担が全部消費税に移りかわるために法人負担が減少する、その分国民負担が増加する。この点については、総理、お認めになりますね。
  296. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと、私どもは、委員の御指摘のようなこの表の三分の一を二分の一までは中期的課題として考えておりますけれども、基礎年金を全額税方式でやることも考えておりません。したがって、仮定の上のお話であろうかと存じますけれども、計算上は今ここにお示しになったとおりでございまして、三・三兆円の企業負担が減少になる、三十七年度にはそれが全体として規模は大きくなりますから六兆一千億企業負担が減ずるということだけは、これは計算上、仮定の問題ですが、確かなことであると思います。
  297. 児玉健次

    児玉委員 今の議論は、三分の三税負担とすることについて考えていないとおっしゃったけれども、仮に二分の一税負担、仮に三分の二税負担としても、これと全く同じ計算が可能で、そして額は減るけれども国民の負担分が企業から移る、その点はお認めですね。
  298. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 計算上はそのとおりでございます。
  299. 児玉健次

    児玉委員 そこが問題なんですよ。計算上と言うけれども、実際にやったらそうなってしまうわけだから。企業が負担すべき分を国民が負担していく。高齢化社会はみんなで支えようと言いながら、今社会保障に対して企業が支弁している分が大幅に減額されていく。これでいいのか。その点で、私はやはり総理のお考えを聞きたいのです。ここは総理にお答え願いたい。
  300. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 企業の負担がなくなることがいけないとおっしゃっておられるわけですか。それによって国民負担、企業もすべて日本国の中の企業体でございまして、すべてそれぞれどのような負担をするかというところが実は一番の問題だろうと思っておりまして、大変恐縮ですが、御党としては、それではどういう負担を考えていかれる、こういうことをお示しをいただければ、それに対してまた考え方を申し上げさせていただきます。
  301. 児玉健次

    児玉委員 その点については先ほど申し上げました。公共事業の負担の浪費を思い切って削って、個人消費を伸ばすことで実体経済に活力をつけて、そして日本経済を国民本位で再建していく。この前も私たちは展開していることです。  それで、ちょうどいい提起が総理からあったから、その点について触れましょう。  お聞きしますが、九八年度の第三次補正、特別養護老人ホームの一万人の増が行われ、計上されました。このことに伴う雇用創出効果を厚生省はどのように見ていらっしゃるでしょう。
  302. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 計算の問題でございますが、七十人くらいの規模といたしまして、箇所数を選定し、一カ所たしか約二十人だったと思いますが、四千人強の雇用創出効果があります。
  303. 児玉健次

    児玉委員 一万人の収容者をふやすことで、女性を中心に、四千人程度の安定した雇用が生まれる。そして、今の厚生省のお答えでは、特別養護老人ホームを建設するときの建設労働者の雇用数は入っておりませんね。入っていない。そこも私たちは含めなければいけない。  そして、この点は私たちの昨年二月の調査で既に政府にお示ししておりますが、現在、特別養護老人ホームの待機者は全国で十万一千人を超えています。今度の一万人増の分を含んだとしても、なおかつ七万人の待機者がこのままでいけば生まれます。七万人分の待機者を解消するための特養建設の費用、総理、それは私たちの見ているところ約一兆円前後ですね。この一兆円前後が日本の実体経済にどんな影響を与えるか、具体的に申しましょう。  東京都の工事発注をちょっと見てみました。一九八八年から九七年度、割合長い期間です。臨海副都心の工事の場合、受注額は大企業が九三・〇%、中小企業は七・〇%です。一方、東京都の福祉局が発注したものでいえば、受注は逆転しますね。中小企業が八二・二%、大企業が一七・八%です。恐らく、これは東京だけの例外的な傾向ではない。全国でもそのような傾向だと思う。  そこで、私たちは、先ほどの総理の問いかけに申しますが、社会保障や福祉建設の事業は、不況に苦しむ中小企業の確実な活力になる。そして、特養七万人増だけで、女性を中心にして、厚生省の控え目な計算でも安定雇用が二・八万人創出されます。私たちが福祉、教育など国民生活密着型の公共事業に重点を移せと言っているのは、それは大型開発に比べてはるかに広い地元の中小業者に仕事を確保することになり、雇用の拡大においても確実な効果が期待できる。総理、この点は御理解いただけると思うのですが、いかがでしょうか。
  304. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 そういう効果は確かにございます。しかるがゆえに、第三次補正等で二十九万を三十万床にいたした次第でございまして、景気刺激的な効果が十分あるというように考えております。  ただ、大企業と中小企業の問題でございますが、一つは非常に小ぶりであるということ、規模がそんなにばかでかいものではありません。それから、それはつくったらそれでいいというものではなくて、今お話しのようにマンパワーを必要とします、運営経費も必要とします。そして、主体は市町村でございますから、これが継続的にちゃんとできる見通しが立たなければいけません。  なお、十万人についてでございますが、これは、私ども、これから介護実施計画が集計されてまいりますから、その結果、ゴールドプランは十一年で終了いたしますけれども、それらを見ながら整備していきたい、こう思っております。
  305. 児玉健次

    児玉委員 これは、平成九年度、高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告、いわゆる十年版高齢社会白書、昨年の五月二十九日に閣議で確認されております。  この中に、今の議論とも関連して、高齢化と経済の成長分野というくだりがございます。そこでどのようなことが展開されているか。一九九三年を起点にして二〇〇〇年、二〇一〇年、それぞれパースペクティブを述べていらっしゃるから、その点について長官からお示しいただきたい。
  306. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘の書物にございますのは、平成五年から平成十二年、さらに平成二十二年と時期を分けまして、高齢化市場が非常に大きくなるということを述べております。それで、委員御指摘のように、将来は高齢化市場で、例えば平成二十二年でございますと六十九兆円に達するような需要ができるだろうと指摘しております。  しかし、それに至りますまでに、やはり経済の活性化ということも必要でございまして、高齢化が進みますと労働人口もやはり下がってまいることもございまして、労働生産性を上げるような公共事業も、公共施設、社会資本の充実もそれ以前には必要でございます。今直ちに福祉だけに重点を置いて公共事業を切っていいかどうか、これはまた別の判断がございますので、その点も考慮して、今即効性のある景気回復策あるいは生産性の向上策ということをとりながら、やがてこの福祉も充実していく、そういう段取りが必要だと考えておる次第でございます。
  307. 児玉健次

    児玉委員 経済はすべて福祉だなんて私はきょう一回も言っていません。実体経済全体の中で、社会保障の領域が重要な主柱の一つになっていくだろう、雇用の面でもその他の面でも最も確実な成長分野になっていくだろう、そういうふうに述べているのです。その点、長官、私の意見に反対ですか、どうですか。
  308. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 長期的に見ればそうでございますけれども、例えば、十年度の三次補正あるいは十一年度の予算案についてどういうぐあいにシフトするかということになりますと、意見が分かれるんじゃないかという気がします。
  309. 児玉健次

    児玉委員 さて、私は、やはりここのところは総理にお出ましをいただきたいと思うのです。  今のいわゆる高齢者白書でもそうですけれども、二〇〇〇年から二〇一〇年の国内関連生産の伸びは十四兆円です。雇用創出効果は七十万人です。そこのところを大切にしていかなければならない。  社会保障への公費負担を伸ばすのでなくて、どうやってそこを削っていくかというようなことばかり考えていたら、端的な例がさっきの年金です。それでは総理のおっしゃる安心へのかけ橋は不安へのかけ橋になってしまう。そうではないか。不安へのかけ橋にならないように、国民が安心して頼れる社会保障制度を目指して国の財政の仕組みを転換する、そのことが財政再建を国民の立場で進める本来の道だ、私はそう思います。いかがでしょう。
  310. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 お聞きをいたしましたが、我々は我々の政策を遂行させていただきたいと思います。
  311. 児玉健次

    児玉委員 終わります。
  312. 中山正暉

    中山委員長 これにて児玉健次君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  313. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 総理の施政方針演説、二十一世紀に向けて五つのかけ橋ということで、二十一世紀に向けた日本の方向性というものを示されたわけでございます。私は、その方針をお聞きしながら、すべての部分に、やはりこの日本において人材の育成というものが大変大事であろうということを考えてみたところでございます。  おとといですか、自民党の伊藤委員質問の中で教育の問題が触れられました。施設設備充実をするということは国政としてとても大事であるということは当然でございますけれども、やはり私たちは、二十一世紀を託す子供たちにその内面的な成長というものをしっかりと求めていかなければならないというふうに思うわけでございます。  それで、ここにこういう統計がございます。不登校の問題、そして中退の問題でございますけれども、小学校や中学校で三十日以上の不登校、五十日以上の不登校。平成七年、八年、九年、少子化の時代を反映いたしまして、二十五万人ぐらいずつ子供たちの数は減ってきているわけでございます、小学生については。中学生については五万人ぐらいずつ減ってきております。しかしながら、この不登校のパーセンテージというのは、平成七年、小学校で三十日以上不登校、全体の〇・二%一万六千五百六十九人から、九年は、〇・二六%二万七百五十四人というふうに四千人以上ふえております。中学生も、平成七年が六万五千二十二人から平成九年が八万四千六百六十人という形で、一・四二%から一・八九%にふえている実態がございます。これは五十日以上の不登校を見てみましても同じような傾向でございます。  高校中退にしてみますと、昭和六十三年から平成八年にかけまして在籍者が百万人減っております。この中で、全生徒の十万人前後が、パーセントにすると約二%強でございますが、一年間に高校中退をしている。  日教組がつい先日全国の教研集会をされたようでございまして、新聞の記事によると、小学校から学級崩壊、子供たちが授業以前、いすに座ることができない。多動児という言葉もございますけれども、教室の中を動き回るというような状況等々、私たちにとってみると非常に悲しい実態が続いているわけでございますけれども、総理に、二十一世紀に日本を託す子供たちの今の姿をどのように見ておられるのか、非常に幅広い現象があるかと思うんですけれども、御見解を伺えれば幸いでございます。
  314. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私、橋本内閣から引き継ぎをいたしましたが、あの当時、六大改革を大変主張されました。一般的に、行政、財政あるいは金融、経済、社会保障、こういうことは非常にわかるんでありますが、その中で一つ、教育改革ということを言われておりました。私はこれは、実はそうした五つの上にさらにその前提として教育改革が行われなきゃならないという考え方は、全く引き継いでいかなきゃならぬと思っております。  今先生御指摘のように、現下の現象を見ますると、子供たちがいろいろな意味で、犯罪も多いですし、学校におきましても不登校の問題あるし、もっと言えば生徒のみならず先生までそういう状況だというようなことを考えますと、全く残念のきわみだというふうに思っております。  このことは、顧みますれば戦後五十四年、どちらかといいますと経済再興といいますか、そのことに政策のほとんどを集中しておったということでございまして、もちろん教育につきましても立派な先生方がおられて努力をされたんでありましょうけれども、現下の状況を見ますると実に嘆かわしい状況ではないか。現象面としてもいろいろ新聞紙上をにぎわしておりますし、こうした状況が続いていくというと二十一世紀がどうなるかという、若干暗たんたる思いもしないでもありません。  そういうことで、非常に抽象的ではありましたけれども、私、施政方針演説の中でも、二十一世紀の子供たちへ、こう言って、亡くなられた司馬遼太郎氏が書かれて、これが学校の教科書にも載せられておる、この文章を取り上げさせていただきました。ぜひ、二十一世紀の子供たちがかくあらねばならぬ、こういう思いで、これからこの教育の問題につきましても一生懸命に取り組んでいかなきゃならぬ、こう思いをいたしたわけでございまして、この内閣におきましても、中教審を熱心におつくりをいただいた有馬先生にもあえて閣僚としてお入りいただきまして、そうした考え方を推進する大きな役割を果たしていただきたいとお願いをし、現在御努力いただいておるわけでございます。  御指摘をいただきました諸点、どのようなところにその原因があるかということも十分これから分析し検討し、そして、少なくとも今の子供たちが二十一世紀において世界からも尊敬されるような国家のつくり手として努力をされていかれるような、そういう日本をつくる、このための教育問題について熱心に取り組んでいかなきゃならぬ、改めてそう考えておる次第でございます。
  315. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ややもすると、子供たちが大きくなっていく、育っていくということが、社会人として大人になっていくための準備期間というふうに言われているところもございますけれども、やはり人間ですので、そのときそのときに生きている喜びそして悲しみ、いろいろな感情を持ちながら成長していくわけでございますけれども、子供たちにとって今の家庭や地域や学校、ここがどういうところであるのかということを考えてみなければならないと私は思うのでございます。  これはいろいろな価値観を持ってお互いが生きているわけでございますので、一概に決めつけるわけにはまいりませんけれども、私も中学生や小学生とよく話をする機会がございます。今のこの厳しい雇用、経済状況の中で、お金じゃなくて、お父さんとお母さんがけんかだけはしてほしくない、それだけが私の家庭における安らぎの根本だという子供たちがたくさんおります。まさにそのとおりだろうと思います。  地域の中で、子供ですから、昔なりの餓鬼大将としていろいろなことをやるでしょう。失敗もあるでしょう。一つの失敗をするとすぐにレッテルを張られる。民主的な世の中になっていると言われますけれども、なかなか今このレッテルを張られるということについては解消し得ないというようなこと。  また、特に学校の中では、勉強ということを主体にして輪切りがまだまだ続いている。これは、五十年代の当初に、当時の文教政策として、指導者たる者五%なり三%なりでいい、あとはその指導者についていく作業層であればいいというような文教政策がとられ、戦後一貫して追求された男女共学、総合制、一緒に勉強をしていくというような姿が消えて、今、複線型の教育というものも中高一貫教育を含めて模索をされておりますけれども、なかなか子供たち自身の意欲として学校で生活していくという部分が失われてきたと私は思うわけでございます。  これも非常に抽象的な総理への御質問になるかと思うのですが、総理が、子供たちの成長を、本当の意味で人間として豊かに成長していくために、家庭は、地域は、学校はこうあってほしいなというようなお気持ちを、お役人の言葉じゃなくて、総理が描かれるそういう各生活の領域というものを教えていただければ幸いでございます。
  316. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 昔の言葉で言えば、修身斉家治国平天下、こういうことになるんだろうと思います。おのおの個人が個々にみずからを修め、そして家庭を大切にして、地域社会の中でお互い個々人だけで生きられないという形の中で社会を構成をし、そして隣人と仲よくしながら社会をつくり、そしてそのことの集大成として国家というものができ上がるという形だろうと思っておりまして、翻ってそう考えますと、やはりみずからの人間形成というものがしっかりとでき上がるようなそうした社会、それをまた社会が常にバックアップしていくような、そうしたことが大切ではないか、こう考えております。
  317. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 私の聞き方も抽象的でございますけれども、子供たちにとって、育ちやすい、生きやすい社会というものを私は当然追求しているわけでございます。  私たちが、経済の成長、景気の成長といいますか、大人が望む世界と、子供たちが生きていく、幼年期、そして小学生、中学生、青年期含めて、もっと今の世の中の状況と違うありようというものをどういうふうに論議をするのか。心豊かなと言いますが、物質にあふれているこの世の中、心豊かではないという現象をもう少し論議を続けなければならないと思いますが、これは当然文教委員会等で論議をする中身として、きょうはこれ以上は触れません。  それで、学校現場でございますが、文部大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、学校を卒業したての先生方は、ベテランの先生方に比べて、子供の指導、学校の運営といいますか、学校の協力関係、なかなかうまくできない。まあ素人さんと言ったらよろしいんでしょうか、そういうことで、初任者には学校に入っていただいたときに一年間研修をしていただこう。旧来は、現職教育という言葉を使いながら、先輩たちから本当に幅広くいろいろなことを学んできたわけでございますけれども、それを制度として国が取り入れられました。学校の中での研修、その県の研修センターでの研修とか、または、もっと外に出て、船に乗って洋上研修とか、さまざまな取り組みがなされております。この十年以上たった成果といいますか、これを文部大臣なりにどのように評価されておられるか、御見解を伺いたいと思います。
  318. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 ただいま御指摘になられた件でありますが、大変成功していると思います。  初任者研修制度の効果ということの御質問でありましたけれども、やはり現場でじっくり勉強した上でさらに教育に入っていくということが望ましいわけでありまして、そういう点で、初任者研修というのは、新任教員の資質、能力の向上、それからまた、研修へ取り組んでいくというふうなことで学校が大変活性化してきていると思います。それからまた、指導教員の指導力が向上するというような報告もなされておりまして、大変大きな成果を上げていると私は認識しております。したがいまして、今後とも、充実した初任者研修が行われるよう、各県市の積極的な取り組みを支援してまいりたいと思っています。  またさらに、一たん教職についた人々が何年かたって再び教育のブラッシュアップ、フレッシュアップのために大学へ戻る等々というふうなことも今大いに進めたいと思っております。
  319. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 大変効果を上げているという文部大臣の御見解でございますが、多くの先生方が、技術的なことは、大学で学ばなかったものについて、学校に入ってから一年間学ばれるのでありましょう。  私も教育の現場を離れてこういう仕事を始めましたので、この五、六年の状況というのはそんなによくわかりませんが、靴箱に靴を入れるのはこう入れるように指導するんだよとか、スリッパの並べ方はこうするんだよ、廊下の歩き方はこういうふうに指導するんだよという、三つ子に教えるような指導の方法から始まったように思うのです、私の知っている範囲ではですよ、その中身はだんだん向上してきたと思うのですが。  子供の取り扱い方が私には全然わかりませんという先生がふえていることがこの初任者研修制度の成果につながっているとは私は思わないのですが、文部大臣、いかがでしょうか。
  320. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 実は、この前NHKで一時間半ほど子供さんたちと討論をいたしました。そのときに私が悟ったことは、子供たちが先生方の講義の仕方、教育の仕方に対して随分やはり不満を持っているというところがありました。これは、初任者研修や、あるいは少し現場で経験を踏んだ人々がもう一度大学や教員養成の機関に戻って、いろいろさらに勉強するというふうなことで随分解決していくのではないかと思いました。  しかしながら、今おっしゃられた心を育てていくというふうなことに関しては、さらにまた教職員養成審議会等々の答申などを考えまして、工夫をしていかなければならないと思っています。
  321. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 取り扱いという言い方をいたしまして、扱い方というふうに訂正させてください。物みたいな感じで言ってしまいまして、大変失礼をいたしました。  学校の現場が非常に忙しいという状況、これはどの世界も一緒だとは思うのですが、子供たち、生徒の扱い方がわからないということは、先ほど後ろから物じゃないぞと言われましたが、まさに物じゃない人間をどういうふうに教育という形の中で、その中に入り込んでいくかというすべを学ぶ機会がないのではないか。  つまり、物ではないものを取り扱っている職業の皆さんが、生身の人間である子供たち、生徒たちの生きている背景を学校の中だけでしか見られない忙しさ、朝学校に出てくるときに、きのううちの中でどういうことがあったのか、地域でどんな状況になっているのかということを全くわかることのできないこの忙しさ、仕事の多さというものが、私は第一義的に、子供たちのことをわかることができない、生徒たちの生きている背景がわからないということの状況になっていると思うのですが、文部大臣はどのようにお考えでしょうか。
  322. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 その点に関しまして、私も大変心配はしております。やはり教育というのは心を育てるものであると思っておりますので、その心を育てる方法はどういうふうにしていったらいいか、これはやはりいろいろな経験を通じてやっていかなきゃならないと思います。  このごろの問題点はやはり、先ほどちょっと御指摘にあった家庭の中での教育力の低下ということもありますし、もう一つ御指摘の、先生方が忙しいということもあると思うのですね。その先生方が忙しいというふうなことに対しましては、今回二〇〇二年より学校完全週五日制にすることによって土日を休む、その間にゆっくりと御自分の御研究なり家庭のサービスなりをなされるように努力をいたしております。  それからもう一つは、余りにもいろいろ調査報告などを求めることが多いようなこともありますので、こういうものは今整理して、学校の先生たちがゆとりを持って教育に向かっていただけるよう、いろいろ工夫をしているところです。
  323. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 制度としての改革政府文部省、一生懸命頑張っておられることには評価をしたいというふうに思います。  ただ、今学校五日制の学校現場は第二土曜日と第四土曜日だけ休みになっておりますけれども、これを二〇〇二年から学校五日制完全実施ということになったとしても、教師も子供たちも、日常的に接触をする五日間、ないし土日の中でも、どのようにかかわり合いが持てるかという、現場や地域や家庭のありようというものをやはり文部行政としてもつくっていくということが必要だろうと思います。これもこれ以上はきょうは質問させていただきませんが、文教委員会でやりたいと思います。  これと並行して、任命された主任制度というのも既に二十年近く実施をされているところでございます。養護教諭の先生方も主任になれるというような制度の改正も進められておりますが、制度としてのこの主任制度が導入された以降と、制度ではない、学校現場でお互いに先生たちが、あなたはこの教科なら教科、この特別活動なら特別活動にある程度堪能だから、そこのまとめ役として皆さんを引っ張っていってほしいというような時代がございましたが、任命制の主任制が定着をしたということは、それ以前の学校内でやってきた主任というものとどのように効果が違うと、文部大臣、お考えでしょうか。
  324. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 御指摘のように、もともとは各学校に置かれていた主任たちのうちで基本的かつ全国的にほぼ共通に設置されているものについて、昭和五十年に学校教育法施行規則に規定して制度化したものであります。  このような主任制度は、創設から今御指摘のように二十年を経過し、多くの学校で定着し、所期の制度の趣旨、役割を果たしていると考えております。しかしながら、一部の学校や地域においてはなおまだ適切に運用が行われない、主任制が形骸化しているというふうな問題点もあるように認識しております。  このような状況を踏まえまして、私も参加しておりましたが、昨年九月の中央教育審議会の答申「今後の地方教育行政の在り方について」において、「学校がより自主的・自律的に教育活動を展開し、組織的、機動的な学校運営が行われるようにする」という観点から、そのあり方を根本的に検討するように提言されております。したがいまして、文部省といたしましても、この提言に基づいて、適切な見直しを行いたいと考えております。
  325. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 これもきょうはこの程度にしておきたいと思うんですが、私が総理と文部大臣にお尋ねし、そして言わんとしたいことは、複雑な社会状況の中で学校もそれに並行しながらいろいろな仕事が出てくる。子供たちの生活もいろいろな生活のパターンがある。  ただ、子供たちは、一番欲している気持ちは、ゆっくりしたい、イの一番言いますね、これ、一番言いますよ。それは家庭の中でもそうでしょうし、学校の中でもそうです。ほっておくとだめになるというような言葉もありますが、今の日本の教育制度、しっかりとしたものであることは事実でございます、世界の一流であることは事実でございますけれども、先ほどから文部大臣がおっしゃっている心というもの、この部分の発達を教師も子供たちも一緒につくっていくためには、余りにも忙しいし、中身が濃いというか、材料が多いといいますか、そういう形になっております。  今、初任者研修制度と任命主任制の話をいたしましたけれども文部省としてはそれなりの成果が上がっているというふうにおっしゃいますけれども、私は、より効果のある財源の使い方としては、一番大事なのは、やはり子供たちの一学級の数を減らして、それにきちんと向かい合える先生たちの数をふやす。これは、先生たちが楽しようと思っているからそんな質問をするんだろうという言葉がすぐはね返ってきますが、決してそういうことじゃなくて、世界の先進国は二十人学級、二十五人学級というふうにもう進んでおります。日本はまだ四十人学級でございます。  これは文部省政府全体も、村山内閣のときに、教育は未来への先行投資という形で努力をしてこられ、今も努力をしておられることは一応評価しながらも、こういう部分をより進めるための財源として、強力に展開する必要があるのではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  326. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 大変重要なポイントを御指摘いただきましてありがとうございました。  ただ、現行の第六次教職員配置計画というものがございまして、グループ別指導や習熟度別指導あるいはチームティーチング、小人数の学習集団できめ細やかな指導等が行えるよう教職員配置の改善を現在図っているところでありますが、これは平成十二年度の完成に向けて、まず最大限の努力をさせていただきたいと思っております。  今後の学級編制や教職員配置のあり方については、昨年九月の中央教育審議会の答申におきましてもその前の一昨年の答申におきましても、教員一人当たりの児童生徒数を欧米並みの水準に近づけるようにすべきであるという提言をいただきましたし、私もその議論に大いに参画をした一人であります。現在のところ、かなり欧米に近づきつつあるという事実はございます。一学級当たりの児童生徒数、全国平均で見ますと、小学校では二十七・四人、中学校では三十二・七人となってきております。  しかしながら、さらなる改善を図らなければならないということは重々私も知っているわけでありまして、文部省といたしましては、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施ということを視野に入れまして、専門家の協力を得て現在検討を行っているところであります。そこでおおむね一年ほどを目途に検討を終え、そこでさらなる対策を講じたいと考えております。
  327. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 御努力をお願いしたいというふうに思います。  次に、ガイドライン関連法案を一部お聞きしたいと思うんですが、新しい日米防衛協力の指針、ガイドラインと言われているものの中に船舶の臨検という行為があるわけでございますが、周辺事態安全確保法には、これは船舶の検査というふうに表現をされております。  瑣末な質問だとは思うんですが、防衛庁長官、外務大臣でも結構でございますが、この違いがあるのかないのか、違いがあったらその中身を教えていただきたいと思います。
  328. 高村正彦

    ○高村国務大臣 新ガイドラインも、日本語に訳すときには、訳すというよりも、日本語では船舶の検査、こう申し上げております。ですから、その実体において違いはないということであります。
  329. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 検査というふうに訳されるのはそれは構わないんですが、普通は臨検というふうにこれまで使われてきたと思うんですね。検査という言葉は初めて生み出されたと思うんですが、そこは私の間違いでしょうか。
  330. 高村正彦

    ○高村国務大臣 大変申しわけないんですが、委員のお間違いだと思います。ガイドラインでは最初から検査ということを言っているわけであります。  そして、船舶の検査でありますが、これは、周辺事態において、経済制裁の実効性を確保するために、国連安保理決議に基づき日米両国が行う船舶に対する検査活動を一般的に指して言っているということでありまして、今度の周辺事態安全確保法においては、このような活動を我が国が行う場合の船舶検査活動として、その活動の具体的態様を含めて法文上明らかにしている、こういうことであります。
  331. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 まあ私の間違いであればそれはそれで結構ですし、船舶臨検、船舶検査と違いがなければそれはそれで結構でございます。  これは国連安保理の決議を前提として行うということになっていると思うんですが、自由にそれができるようにすべきだという意見もあるようでございますけれども、ここはしっかりと守られるわけでございましょうね。
  332. 高村正彦

    ○高村国務大臣 今御説明申し上げましたように、周辺事態安全確保法案における我が国が行う船舶検査活動は、国連安保理決議に基づく経済制裁の実効性を確保するために、商船等に対して、基本的に公海上で行われるわけであります。  できるだけ早くこの法案を通していただきたい、こういうふうに思っております。
  333. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 野田大臣に、済みません、質問のあれはしていませんけれども、自由党はこれをなくせとはおっしゃってないのでしょうか、国連決議前提ということを。
  334. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 現在政府が提案をしております法案の内容は、今外務大臣がお答えになったとおり、国連決議を前提としての船舶検査ということになっております。  自由党は、国連憲章に規定してあるような形における臨検ということであるならば、かなりいろいろな国が一斉にやるということであれば、それだけの責任が果たせるような形でなければおかしいのではないかということを言ってきたことは事実であります。  しかし、どうも今回の法案の内容は、額面どおりの国連憲章に基づくいわゆる臨検というものではないようであるということで、そうであるならば、いわゆる臨検ではない検査である、言うなら強制力を伴わない、相手方の協力を前提とする、そういうことであるならば、必ずしも国連決議にこだわらなくてもいいのではないかという議論をした経緯はあります。
  335. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 国連憲章に基づく臨検という言葉を使われたと思うのですが、高村外務大臣は、検査だ、船舶検査だ。これが違えば、今野田大臣がおっしゃったように、国連決議を外しても構わぬのではないかというような考え方があると言われましたけれども、この辺、どうなんですか。
  336. 高村正彦

    ○高村国務大臣 一般に臨検と言われるのは、奴隷取引とか、そういうような特定の場合に検査をするということが軍艦等に認められているものでありまして、もう少し正確に言うためには、ちょっと政府委員に言ってもらった方がいいのですが、どういたしますか。
  337. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 では政府委員、どうぞ。
  338. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 国際法上の臨検について一言補足説明を申し上げます。  各国は、公海の法秩序を確保するために、外国船舶に対しまして公海上で一定の警察権の行使をし得る、このことを臨検というふうに通常呼んでおります。  具体的には公海条約それから国連海洋法条約等に規定がございまして、特に国連海洋法条約第百十条、ここに、第一に海賊行為、第二に奴隷取引、第三に無許可放送、第四に外国船舶が国籍を有していないこと、それから第五に、臨検を行う船と同一の国籍を持っているのですけれども、旗を掲げていないか、または外国の旗を掲げている場合、この五つのケースの場合に、所定の手続に従いまして検査をすることができるというふうになっております。これが国際法で言うところの通常の臨検でございます。
  339. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 では、それはそれとして、海上自衛隊はこの船舶検査というものをこれまでにやられたことがありますか。
  340. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 船舶検査活動は、周辺事態安全確保法案によって新たに自衛隊に付与された任務でございます。これまでは自衛隊が実施したことがないことは、もう御指摘のとおりでございます。また、現行法上の任務でない以上、現在このマニュアルみたいなものも持っていないというのが現状でございます。
  341. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 次の質問の答えももう既に出してもらいました、マニュアルはないと。じゃ、どうされるのでしょうか、この法律が通ったら。
  342. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今後、この法案国会の御審議をいただいて成立した場合に、施行に間に合うように、船舶検査活動等同法に規定する新たな任務について、自衛隊として適切に実施できるように、各種の規定等の整備を含め、万全のマニュアルをつくってまいりたい、こう思っております。
  343. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 まだ全く考えていらっしゃらないということでしょうか。例えば、その船とまれということをどのような手法でされようとしているのか、もしありましたら。
  344. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 まだ完成はしておりませんが、鋭意今つくっているところでございます。  そこらでとまれというような停船方法につきましては、法案できちっと担保されておりまして、停船が必要な場合は船長等に対し当該船舶の停止を求める、これに応じない場合は応ずるよう説得を行う、さらに必要があれば、説得を行うための必要な限度において、当該船舶に対し、接近、追尾、伴走、進路前方における待機等を行う、自衛隊の対応がこれを超えることはないというのが法律の規定でございます。
  345. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 マイクか拡声機かよくわかりませんが、とまれというふうに合図をする、それでもだめなら接近をするというようなことですが、それで逃げちゃったときにはどうするのですか。しようがないのですか。ああ残念だったと、もうそれでおしまいですか。
  346. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今まで、イラクとかユーゴとかハイチとか、こういうところでも、経済制裁を加えて、調査をしておりますが、照会をしたのが十万そう以上に及びますが、そのうち乗船をして検査したのが一万七千そう程度であります。そして、さらに進路変更を命じた等の措置をやったのは二千そうでございますが、ほとんど素直に言うことを聞いて、例えば威嚇発射をしたというようなことは、国際的にもゼロでございます。警告を含めた発射をやったのは、十万件のうちたった十一件だけでございます。
  347. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今防衛庁長官が言われた、その威嚇による発射といいますか、それをやったのはどこですか。どこがそういう形をとってやったわけですか、米軍ですか。
  348. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 十一件でございますけれども、米軍等でございます。
  349. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 説得、接近、乗船というやわらかい手法をおっしゃいますけれども、私が知り得ている範囲では、米軍のマニュアルは威嚇による実弾を発砲するというふうに聞いているわけですが、これは間違いでしょうか。
  350. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 この船舶検査活動でございますけれども、これにつきましては、国連の安保理決議に基づいて実施するわけでございますが、いかなる態様で実施するかということは各国の判断に任されている、こういうことでございます。そういう中で各国がそれぞれの判断に基づき対応しているわけでございますが、その全体の実績は、先ほど申し上げたそういったところでございます。
  351. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 きょうはこれ以上論議はしませんけれども、もう一回、防衛庁長官、先ほど防衛庁長官が言われたような方法をとって、とまらずに逃げていったときには、先ほど冗談ぽく言いましたけれども、この船舶検査というのは実行し得なかったということで、それでおしまいになっちゃうというふうに理解してよろしいわけですね。
  352. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 やむを得ないことだと思います。精いっぱいやってだめなら、やむを得ないことだと思います。
  353. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 外務大臣もそれでよろしいでしょうか。
  354. 高村正彦

    ○高村国務大臣 船長の同意を得た任意の検査ということでありますから、逃げていっちゃうのであれば、それは仕方がないことだと思います。
  355. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 わかりました。これはまた後日、中身について論議をしたいというふうに思います。  日米安保条約第六条、当然先輩の皆さん方はおわかりのように、米軍が日本の安全、極東における平和及び安全の維持のために行動をする、そのために日本は日本の国内に基地を提供することができる、そしてその基地を使って極東の範囲内で米軍は行動ができるという第六条になっているというふうに思うわけでございます。  これもこの予算委員会で何人かの委員質問されておられるようですが、外務大臣は、直接イラク等に例えば沖縄なら沖縄から米軍が出動しているわけではないので、こういう戦闘行為についても事前協議の対象ではないというふうに何回も繰り返しておられるようですが、その御見解に変更はございませんか。
  356. 高村正彦

    ○高村国務大臣 その前に、日米安全保障条約は、日本の安全と、そして極東の平和と安全を守るためでありますけれども、米軍の活動範囲というのは極東に限られるわけではなくて、極東の周辺まで認められています。そして、極東の周辺というのは、地理的な、今言われているような、明確に地域を特定するような地理的概念ではないと伝統的に解釈されているわけです。今度の法案で初めて出てきたわけではなくて、極東の周辺まで活動できるということがされているということは、これは御理解いただきたいと思います。  それと今の問いは全く別の話でありますが、日本の基地、施設を使っているところがほかに移動して、そしてそこから新たに出撃するということは、それは我が国から直接出撃するわけではありませんから、それは事前協議の対象にはなりません。
  357. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 この話は蒸し返しになるかとは思うのですが、現在いろいろな、周辺のトラブルといいますか戦争状況に陥る前に、これだけ情報網があるわけですので、昔だったら緊急に、例えば日本の国のどこかの基地から出ていかなくてはならないというようなことがあったでしょうけれども、もうそれに備えて、直接例えば沖縄なら沖縄からは出撃しないけれども、備えて、そこから事が起こりそうなところに行って待っているというような状況があるわけでございます。  これについては、その辺で、例えばペルシャ湾ならペルシャ湾で、戦闘行為じゃなくても、日常的な展開をやっていた、たまたまそこから事が起きたので戦闘行為に入った、寄り道していて入ったというような話には私はならない。やはり沖縄から出ていって、準備をしてやろうとしているというふうにとられると思うんですが、そうじゃないんでしょうか。
  358. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日米安保条約締結以来、日米の了解で、そうではないということになっております。
  359. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ちょっとこれは、きょうすべてやるわけにはいきませんので。  今、後方支援という形での協力関係、新しい法律でつくろうということになっておりますが、後方と、前線と言ったらいいんでしょうか、前方と言ったらいいんでしょうか、この概念をしっかりと分けることができるのかできないのか、外務省はしっかりとした概念として分けておられるのかどうか。ちょっとこれは質問の中にはありませんでしたけれども、お聞かせ願いたいと思います。
  360. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 法律で言う後方地域とは、我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲のことでございます。  後方支援地域は、当該後方地域において、指定される区域において実施されることになります。この活動を実施する区域は防衛庁長官が指定することになっておりますが、その指定に当たっては、閣議決定により基本計画に定められるおのおのの活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項に従うこととなります。  この場合、防衛庁長官は、自衛隊がさまざまな情報源や常続的な警戒監視活動によって収集した情報あるいは外務省が収集した情報、米軍から提供された情報等の各種の情報を分析し、これらを総合的に判断した上で、閣議決定により基本計画に定められた事項を考慮しながら、我が国後方地域支援を実施する区域を指定することになるわけであります。  こういうことで、後方地域の指定ということ、あるいは後方地域支援を実施する区域ということは、このような慎重な配慮のもとで決まるわけでありまして、その指定をする場合には内閣総理大臣の承認を受けることになりますが、このことは、当然として日米間の緊密な協議が持たれることとなるわけであります。  なお、仮に、後方地域支援を実施する区域内で事前に予測されなかった攻撃が活動実施中に発生したにしても、法案においては、実施区域の変更や中断等の対応をとることによりまして、当該活動が戦闘行為が行われている場所で実施されないことを担保している次第であります。
  361. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 後方というのは、戦闘が行われない地域というふうに今言われましたけれども、戦闘は行われなくても、バックアップする国として敵性を持っているという相手側の判断が仮にあったとしたら、攻撃をされる目標として位置づけられることは想定できませんか。
  362. 高村正彦

    ○高村国務大臣 位置づけられるというのはどういう意味だかわかりませんが、事実行為とすればいろいろなことがあるので、日本にいてだって、平穏なところにいてもいきなりミサイルが降ってくるということだって絶対あり得ないわけではないわけです。むしろ大切なのは、相手が攻撃するだけの国際法の根拠を与え得るかということであれば、与え得るものではありません。
  363. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 昭和四十一年六月一日に、鯨岡議員の「アメリカの相手国である北ベトナム等から見れば、日本は直接の敵ではないけれども、敵性国のような形になっている。」のではないかという問いに答えて、当時の椎名外務大臣が、「ベトナム戦争がもう少し近いところで行なわれておるということになると、はっきりするわけであります。私は、危険がないとは言えないと思います。」いわゆる極東の範囲とか極東の周辺とかいろいろな論議がなされておりますけれども、このことは、今外務大臣が言われたことと同じことを言われているとお思いでしょうか。
  364. 高村正彦

    ○高村国務大臣 御質問の趣旨がちょっとよくわからないままに答えることになるわけでありますが、私たちが一番問題になるのは、日本がある行為をしたことによって第三国が日本を攻撃する国際法上の正当な根拠を持ち得るようなことは日本はしないということは、これは大切なことだと思います。  ただ、実際にするかしないかというのは、それは世界じゅうに、どの程度相手が無法かということにもよるわけでありますし、そこはできるだけ君子危うきに近寄らずで、危険も実際にもない方がいいわけでありますけれども、我々が一番考えなければいけないのは、相手が国際法上日本を攻撃してもいいようなことに日本はしない、これだけはきっちりしていきたい、こう思っています。
  365. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今外務大臣が言われたことは非常に大事な点だと思いますね。そういう形での対応をしなければならない。  私の質問が、いわゆる後方支援の部分と、実際に極東の範囲の中で、地理的概念があるやなしやという論議がきのう、おとといずっとありましたので、それと少しまぜて質問をしたことが意味がよくわからないとおっしゃったことだろうというふうに思いますが、とにかく、近いとか遠いとか、後方であろうと何であろうと、こういう形をとって支援をしていくという部分については、近くても遠くても、今大臣おっしゃるように攻撃をされる可能性もある。  ですから、そのことについて言うと、日本という国が、近いところとの、米軍との関係を含めていろいろなことがあったときに、外交関係をどのようにしっかりつくっていくのかということが、当然私たちの論議の中でも先行すべきだということにつないでいきたかったわけでございますけれども、やはりこういう論議が、国民の皆さん方には、まず外交ありきというところからの論議をどのように進めていくかということが大事ではないかというふうに私は思っておりまして、このガイドライン及び関連法案を論議する場合には、適切な外交関係をどうつくるか。日本が従であり、例えばアメリカが主であるというようなことがないようにこれまでも努めてこられたとは思うのですけれども、しっかりとした関係をつくるということについて、高村外務大臣の思いというのはいかがでしょうか。
  366. 高村正彦

    ○高村国務大臣 今、最後に委員がおっしゃったことは非常に大切なことだと思いますので、そういう気持ちでこれからもやっていきたい、こう思います。
  367. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ほかにも幾つか質問を準備しておりましたけれども、時間が参りましたので、きょうはこれで終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  368. 中山正暉

    中山委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会