○坂上富男君 私は、
民主党を代表して、ただいま
議題となりました
出入国管理及び
難民認定法の一部改正案に対し、総理及び法務大臣に質問をいたします。
外国人登録者数が昨年末現在で初めて百五十万人を突破、永住者は六十二万人、その九〇%は韓国、朝鮮の人で、既に五世代を迎えております。一九八〇年後半以降、移住労働者の急増とともに、
日本で出生する外国籍の子供が増加しております。
各自治体においては、公務員の国籍条項の撤廃が、徐々ではありますが、行われつつあります。また、国会でも、一定の外国人に地方参政権を付与する
法律案を、
民主党は公明党とともに衆議院に
提出済みでもあります。
今や国際化の著しい進展の中で、
日本社会も大きく変動しておるのであります。この際、世界の
現状を正しく認識し、これにおくれることなく、国際協調と国際交流の増進に寄与し、我が国の国際的信頼を高めなければならないのであります。
そこで、まず、小渕総理に質問をいたします。
我が国憲法は、国際協調主義を高らかにうたい上げ、国際
社会において名誉ある地位を占めたいと思うと決意し、
日本が締結した条約及び
確立された国際法規約は誠実に遵守することを世界に宣言しているのであります。
しかるに、本法第二十六条は、
日本から出国する外国人は、事前に再入国を許可された者のみが滞在資格を失うことなく
日本へ帰ることができるとしており、事前の許可は法務大臣の裁量によってのみ与えられているのであります。この
法律のもとでは、
日本における第二、第三世永住者や
日本にその生活の基盤を置く外国人は、
日本出国の権利と
日本再入国の権利が奪われるのであります。
日本を出ていった外国人は再び
日本に入ってくるなという、国際協調主義に著しく違背する言行不一致の
出入国管理行政なのであります。
国連規約人権
委員会は、我が国の再入国許可
制度は、第四回勧告の中で、人権規約第十二条第二項、同第四項に違反すると指摘しておるのであります。そこで、人権
委員会は、その
制度について、
日本政府に、
日本で出生した在日韓国・朝鮮人の人々のような永住者には、事前の再入国許可は、これを取り除くべきであると強く勧告しているのであります。
本改正案の問題点は、在日外国人の再入国許可の有効
期間を一年から三年に伸長するというところにあるのでなく、
現行法における法務大臣の裁量下にある再入国許可
制度の是非にあるのであります。総理はこの勧告に対しどのような答えを出されようとしておるのか、答弁を求めます。
続いて人権
委員会は、
日本に対し、調査及び救済のため警察及び
出入国管理当局による不適正な処遇に対する申し立てを行うことができる独立した当局が存在しないことに懸念を有する、
委員会はそのような独立した機関が締結国
日本により遅滞なく設置されることを勧告すると言っております。今
日本には、外国人の収容に関し独立した調査権を持つ第三者機関設置が必要なのであります。この勧告についていかがされますか、お答えをください。
人権
委員会はさらに、第三回
報告の検討後に発せられたその勧告が大部分履行されていないことを遺憾に思うとして、
日本の態度に深い失望感を表明し、朝鮮人学校の不
認定を含む在日韓国・朝鮮人マイノリティー、アイヌ先住マイノリティー、同和問題等の人権差別にも言及して、その是正を勧告し、
日本の第五回
報告提出日を二〇〇二年十月と指定しているのであります。
私は、総理の直属の
委員会が設置され、関係各省と民間関係者も参加してもらって、協議されて、勧告履行の実現を図るべきだと思いますが、総理、いかがされるのか、御答弁をいただきたいと思います。
勧告の中で、人権
委員会は、公共の福祉に基づき
日本国内法の規約上の権利に付し得る制限に懸念を再度表明するとして、注意を喚起しているのであります。さらにいわく、この概念、公共の福祉は、あいまい、無制限で、規約上可能な範囲を超えた制限を可能とし得る、前回の見解に引き続いて
委員会は再度
日本に対し、
日本国内法を規約に合致させるよう強く勧告していることを忘れてはならないのであります。
今回の入管法改正のうち、特に第五条、第七十条は、外国人に対する取り締まりをますます強化するものであります。現入管法は、一九八二年、外国人の入国数が百七十万人の時代につくられたもので、年間四百五十五万人の外国人が入国する現在の実情には全く合わないのであります。
国際化の時代にふさわしく、取り締まりの観点からだけでなく、
日本に在住する外国人の生活と人権の保障の観点から見直すべき時期が到来していると思いますが、総理はどのように実情を認識しておられるのか、また、外国人法制のあるべき姿をどのように考えておられるか、御答弁を求めます。
陣内法務大臣に質問をいたします。
退去を強制された者にかかわる上陸拒否期限を一年から五年に伸長することの不当性についてであります。例えば、
日本人の配偶者が在留
期間を超過したため退去強制された場合は、その後五年にわたって
日本に入国できなくなります。明らかに酷であります。退去強制についてはさまざまなケースがあり、一律に五年間再入国を
禁止することは妥当でありません。大臣は人道的配慮をすると言っておられますが、その基準を示していただきたいのであります。
また、この改正により何人ぐらいのリピーターの入国がストップできるかもお答えをいただきたいと思います。
次に、不法在留罪の時効と効果についてであります。不法入国者に対しては厳しく取り締まりをすべきでありますが、時効の適用のない本罪の新設は、入国後一定
期間を
経過して我が国
社会に平穏に受け入れられている者までも犯罪者扱いをすることとなり、その者や関係者の生活を不当に脅かし、他の犯罪の時効
制度との整合性を著しく欠き、刑事
政策上大きな問題でありますが、いかがでございましょうか。
本罪の新設によって、不法入国を防止する効果がどれほど期待できるかも疑問であります。
平成九年に本法の一部が改正され、集団密航者を不法入国させる行為等の処罰
規定が新設されましたが、その後も不法入国事件は減少したとは言えない状況にあります。入国防止のためには、海上警備の強化や外国
政府との協力関係を強化する方がより効果があると思料されますが、いかがでございましょうか。
年間四百五十万人以上の外国人が入国し、百五十万人以上が在留する国際化の時代にあって、人権の観点から
出入国管理行政は抜本的に見直すべきときと思いますが、法務大臣はどのようにお考えでございましょうか。
在留特別許可について、中村法務大臣就任後、上陸及び特別許可について直接大臣決裁を行われましたが、そこに問題が起き、陣内大臣就任後、前大臣決裁に関する諸問題について見直しを指示したと言われておりますが、現在までの是正の状況はいかがでありますか。
通信傍受
法案は、密航、麻薬犯罪について傍受対象犯罪となっておりますが、外国在住の外国人からの通信は傍受の対象となるのか、この外国人に通信傍受の事後通知をするのか、
日本在留中傍受された外国人が帰国した場合は事後通知をするのか、お伺いをしたい。
最後に、規約人権
委員会の勧告に基づく、法務大臣の自由裁量による再入国許可
制度を覊束裁量による再入国
制度と
修正すべきでありますが、いかがでありましょうか。
これをもって質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕