○吉井英勝君 私は、
日本共産党を代表して、
産業活力再生特別措置法案について、
総理並びに関係
大臣に
質問します。
今、
日本経済は、二年連続のマイナス成長、完全失業者は三百三十四万人、完全失業率は四・六%という戦後最悪の状況の中にあります。これに対して、
総理は、
日本経済の再生、経済の自律的回復を達成するには供給側における効率性の向上と競争力の強化を図ることだとして、本
法案を出してきました。
法案では、企業が生産性向上を目的に、中核事業への経営資源の集中とその他不採算部門の廃棄、縮小を事業再構築、すなわちリストラと定義し、その支援策を盛り込んだものとなっています。
ところで、ことし二月の予算
委員会で、私の
質問に与謝野通産
大臣は、リストラは合成の誤謬を生む、全部の会社がリストラをやることは全部の会社で不況大運動をやっているのと同じだと
答弁し、堺屋経企庁
長官も甘利労働
大臣も同様の見解を示しました。
総理も同じ見解か、確認したいと思います。深刻な不況のもとで、この
法律によって大企業が安心してリストラを推進すれば、大量の失業者を生み出し、不況をさらに加速することになるのではありませんか。はっきりお答えいただきたい。
そもそも産業再生
法案は、ことし一月に産業再生計画を閣議決定し、三月からは、
総理ら閣僚と経団連会長を初め財界、大企業のトップとの
意見交換の場である産業競争力
会議を設けて、そこでの
議論をもとに
法制化したものであります。
本来、
日本経済の再生を言うのなら、企業の数でいえば九九%を占めている中小企業の代表をメンバーに加えて
意見を聞く、リストラと雇用の問題については労働者の代表を入れて
意見を聞く、それが当然ではありませんか。
総理はなぜ中小企業や労働者の代表を排除したのか、明確に
答弁されたいと思います。
今回の
法案は、ことし五月の経団連の、わが国産業の競争力強化に向けた第一次提言の
内容をそのまま丸のみしたものではありませんか。これほどまでに露骨に
政府と財界が一体になって
法律をつくった例はありません。大企業偏重のきわみであります。
総理の
答弁を求めます。
次に、
法案そのものについて
質問いたします。
第一に、リストラ、解雇を推進する
法律だということについてです。今日、大企業のリストラ計画は、ソニー一万七千人、三菱電機一万四千五百人削減など、すさまじいものです。そのやり方は、日立製作所家電部門の分社化、
日本鋼管京浜製鉄所の事業部門の分社化などに見られるように、いずれも、転籍、出向による人減らしと、賃金三割カット、労働時間延長など労働条件の切り下げ、及び下請、中小企業へのしわ寄せと切り捨てを伴っているのが特徴です。
本
法案によって国のお墨つきを得た大企業は、安心してリストラ、人減らしを推進することになるのではありませんか。そうならない保証があるのか、はっきり答えられたい。また、
法案で言う事業再構築とは、中核事業への集中、不採算部門の整理、縮小、廃止としておりますが、これは、大企業の利益拡大を中心に、人減らし、賃下げ、下請いじめを進めるものではありませんか。
第二の問題は、
政府が
法案を出す背景として、企業の抱えている三つの過剰が企業の競争力を低下させているとして、そのために大規模なリストラを国が支援するとしていることです。しかし、設備と債務の過剰の原因が、バブル期の大企業の過剰投資と、本業以外の財テクなどの投機に走って失敗したことにあることは明確です。
ところが、
法案によると、企業が事業再構築計画を出してきたときに、国が認定七基準で判断して計画を承認すると、リストラを進める企業に対して、国は、設備廃棄などに税の還付を含む税制上の優遇
措置をとること、産業基盤
整備基金による債務保証や出資を行うこととあわせて、債務の株式化を認めることにしています。これは、銀行が企業の債権の一部を放棄するかわりにその企業の株式を受け取るというもので、これは、銀行支援六十兆円の公的
資金が、迂回して借金の一部棒引きという大企業救済に回されるものです。
一体、バブルに踊るなどして経営に失敗した当該企業に対して、
法案は、企業の責任を不問に付して、専らリストラ支援だけではありませんか。
与謝野通産
大臣は、日経のインタビューに、公的
資金による資本注入で金融機関が助かり、今度は金融機関が面倒を見る番だと語っています。マスコミも、公的
資金が入ったことで銀行に償却余力ができ、企業がそのおすそ分けにあずかろうと動き出した面を否定できないと指摘していますが、
総理は、このような
国民の税金によるてこ入れを当然のことと考えているのか、伺うものであります。
ハーバード大学のガルブレイス名誉教授は、崩壊したバブル対策で
政府のやるべきことは、投機に走った企業に責任をとらせること、一方、バブルの
被害者である罪なき人々に公的支援でカバーすべきだと指摘しています。これは、だれもが共感できる当然の指摘です。ところが、
総理が本
法案でやろうとしていることは、こうした方向とは全く正
反対のことではありませんか。
第三に、大企業のリストラ支援ばかりに熱中して、雇用を守るという
政府の役割を放棄しているということが問題です。今、
総理がなすべきことは、現に行われている、物置に閉じ込めての退職強要などの、人権侵害を伴う大企業の猛烈なリストラ、解雇のあらしから労働者、
国民を守ることであります。
ヨーロッパでは、解雇規制法とともに、企業または事業の全部または一部が譲渡された際に労働者の既得の権利を保護することを目的として、適用対象、労働者の請求権の保護、解雇の禁止、労働者代表の地位、情報提供と協議などを
規定した既得権指令があります。その目的や
内容、また英仏独各国での
導入状況について、外務
大臣に伺います。
総理、せめてヨーロッパ並みの労働者保護のルールを制定するべきではありませんか、
答弁を求めます。
法案第三条では、企業のリストラ計画の認定に当たって、その計画が従業員の地位を不当に害するものでないことを条件に挙げていますが、その認定条件とは具体的にどのような基準であるのか、具体的に示していただきたい。
かつての特定不況産業安定
措置法でも、また八七年の産業構造転換円滑化法でも、雇用の安定をうたい、リストラ計画の承認基準の中で、労働者の地位を不当に害するものであってはならないとしており、通産省は、これを
根拠に、そうした事態は起こらない、心配ないと
答弁してきました。ところが、現実はどうであったか。この
法律廃止までの九年間に、新日鉄など鉄鋼大手五社は、全従業員の四三%に当たる六万九千人もの人減らし、大リストラを強行しました。
総理、この鉄鋼産業を含む承認企業の中で、従業員の地位を不当に害する事態は生じなかったと言えますか。
答弁を求めます。本
法案の認定基準では、労働法に違反する企業は認定しない、あるいは認定を取り消すという
立場をとるのか。
総理は、そのことを明言されますか。はっきりお答えいただきたいと思います。
産業競争力
会議参加メンバーであるトヨタ、ソニー、日立製作所、富士通、新
日本製鉄を含む輸出上位三十社で
日本の輸出総額の五〇%を超えていて、大企業の競争力は十分にあります。また、同メンバーである大企業十五社だけで、六年間に十五万九千人の雇用削減を行ってきました。
これら大企業の多くは、多国籍企業となり、グローバルな合併を進めて、さらに巨大企業への道を進んでいます。そういう大企業に、産業競争力の名で、本
法案によってリストラ、人減らしを支援することは、今日の深刻な不況の打開にも、
日本経済の再生、発展にもプラスするものにはなり得ません。
大企業に対する民主的規制を行って、リストラ解雇の規制、労働時間短縮による雇用の拡大、
教育、福祉、防災など公的部門での雇用の確保と、消費税減税など個人消費の拡大で、中小企業と地域経済が活力を取り戻せるようにすることこそ、今一番なすべきことであります。
日本共産党は、
日本経済の民主的再生に全力を尽くすことを述べて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣小渕恵三君
登壇〕