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1999-05-07 第145回国会 衆議院 本会議 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月七日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十九号   平成十一年五月七日     午後一時開議  第 一 森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 二 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 三 農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 四 特許法等の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第 五 鉄道事業法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 六 道路運送法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 七 海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 八 航空法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 九 有線ラジオ放送業務運用規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律案内閣提出)  第 十 放送法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十一 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  行政機関の保有する情報公開に関する法律案(第百四十二回国会内閣提出)(参議院回付)  日程第一 森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 特許法等の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第五 鉄道事業法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第六 道路運送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第八 航空法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第九 有線ラジオ放送業務運用規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十 放送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十一 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案内閣提出)  小渕内閣総理大臣米国公式訪問に関する報告及び質疑  食料・農業農村基本法案内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後一時三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。  土井たか子君から、五月八日から十六日まで九日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。      ————◇—————
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) お諮りいたします。  参議院から、第百四十二回国会内閣提出行政機関の保有する情報公開に関する法律案が回付されております。この際、議事日程に追加して、右回付案議題とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。     —————————————  行政機関の保有する情報公開に関する法律案(第百四十二回国会内閣提出)(参議院回付
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 行政機関の保有する情報公開に関する法律案参議院回付案議題といたします。     —————————————  行政機関の保有する情報公開に関する法律案参議院回付案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案参議院修正に同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、参議院修正に同意することに決まりました。      ————◇—————  日程第一 森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案内閣提出
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、森林開発公団法の一部を改正する法律案日程第二、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案日程第三、農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。農林水産委員長穂積良行君。     —————————————  森林開発公団法の一部を改正する法律案及び同報告書  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び同報告書  農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔穂積良行登壇
  11. 穂積良行

    穂積良行君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、農林水産委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  初めに、各法律案の主な内容について申し上げます。  まず、森林開発公団法の一部を改正する法律案は、特殊法人整理合理化を推進するため、農用地整備公団を解散し、その権利義務について森林開発公団を改称した緑資源公団に承継させるとともに、森林の造成と農用地土地改良施設等整備を一体的に実施することを内容とする特定地域整備事業緑資源公団業務として追加する等の措置を講じようとするものであります。  次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案は、特殊法人整理合理化一環として、日本開発銀行業務を再編し、新銀行に承継することに伴い、日本開発銀行食品工業向け融資農林漁業金融公庫に移管しようとするものであります。  次に、農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案は、農業災害補償事業の健全な運営に資するため、共済事業てん補内容充実蚕繭共済畑作物共済への統合、共済事業運営基盤充実及び強化促進等措置を講ずるとともに、行政改革一環として、農業共済基金を解散し、その業務農林漁業信用基金に行わせる等の措置を講じようとするものであります。  委員会におきましては、四月十四日中川農林水産大臣から三法律案提案理由説明を聴取し、二十二日及び二十七日に質疑を行いました。  質疑終了後、森林開発公団法の一部を改正する法律案について、民主党から、特定地域整備事業の創設に関する規定を削ること等を内容とする修正案が提出され、討論を行った後、採決いたしましたところ、修正案は否決され、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び農業災害補償法及び農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案について採決いたしましたところ、両法律案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第一につき採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第二及び第三の両案を一括して採決いたします。  両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第四 特許法等の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  15. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第四、特許法等の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。商工委員長古賀正浩君。     —————————————  特許法等の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔古賀正浩登壇
  16. 古賀正浩

    古賀正浩君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、技術開発成果である工業所有権に対する迅速かつ十分な保護要請に対処するとともに、工業所有権制度国際的調和を図るため、特許法等関係法律について整備を行うものであり、  第一に、特許出願審査請求期間を短縮する措置を講ずること、  第二に、権利の侵害に対する保護強化するための措置を講ずること、  第三に、商標に係るマドリッド協定議定書への対応を図る措置を講ずること、  その他、特許料の引き下げを行うこと 等を内容とするものであります。  本案は、去る三月三十一日参議院から送付され、四月十四日当委員会に付託されました。同月二十日与謝野通商産業大臣から提案理由を聴取し、同月二十七日質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告いたします。(拍手)     —————————————
  17. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第五 鉄道事業法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第六 道路運送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第八 航空法の一部を改正する法律案内閣提出
  19. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第五、鉄道事業法の一部を改正する法律案日程第六、道路運送法の一部を改正する法律案日程第七、海上運送法の一部を改正する法律案日程第八、航空法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。運輸委員長石破茂君。     —————————————  鉄道事業法の一部を改正する法律案及び同報告書  道路運送法の一部を改正する法律案及び同報告書  海上運送法の一部を改正する法律案及び同報告書  航空法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔石破茂登壇
  20. 石破茂

    石破茂君 ただいま議題となりました四法律案について、運輸委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  四法律案は、いずれも事業者間の競争促進による利便性の向上への要請等対応し、運輸事業に係る参入規制等を緩和するとともに、輸送の安全に関する所要の措置等を講ずるものであります。  まず、鉄道事業法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、鉄道事業への参入に係る需給調整規制を原則として廃止すること等により、鉄道事業者による多様かつ良質なサービス提供促進し、あわせて、鉄道技術発達等対応して、鉄道に係る安全規制合理化を行おうとするものであります。  次に、道路運送法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、一般貸し切り旅客自動車運送事業への参入に係る需給調整規制を廃止すること等により、一般貸し切り旅客自動車運送事業者による多様なサービス提供促進し、あわせて、運行管理制度充実を図ることにより、旅客自動車運送事業輸送の安全を確保しようとするものであります。  次に、海上運送法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、離島等の住民の生活に必要な輸送確保するための措置を講じつつ、一般旅客定期航路事業等への参入に係る需給調整規制を廃止すること等により、当該事業を営む者による多様なサービス提供促進するとともに、旅客輸送に係る安全の確保及び利用者保護の徹底を図るための措置を講じようとするものであります。  次に、航空法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、国内航空運送事業への参入に係る需給調整規制を廃止すること等により、航空運送事業者による多様なサービス提供促進し、あわせて、航空技術発達等対応して、航空に係る安全規制合理化を行おうとするものであります。  以上の四法律案はいずれも二月十九日本院に提出され、四月十三日本委員会に付託されました。  本委員会においては、四月十四日川崎運輸大臣から各法律案について提案理由説明を聴取し、十六日、鉄道事業法の一部を改正する法律案及び海上運送法の一部を改正する法律案について質疑を行い、同日質疑を終了いたしました。また、二十七日、道路運送法の一部を改正する法律案及び航空法の一部を改正する法律案について質疑を行い、同日質疑を終了いたしました。  次いで、四法律案について討論を行い、採決の結果、いずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、四法律案に対しそれぞれ附帯決議が付されたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  21. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 四案を一括して採決いたします。  四案の委員長報告はいずれも可決であります。四案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  22. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、四案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第九 有線ラジオ放送業務運用規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十 放送法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十一 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案内閣提出
  23. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第九、有線ラジオ放送業務運用規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律案日程第十、放送法の一部を改正する法律案日程第十一、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案、右三案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。逓信委員長中沢健次君。     —————————————  有線ラジオ放送業務運用規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律案及び同報告書  放送法の一部を改正する法律案及び同報告書  高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔中沢健次登壇
  24. 中沢健次

    中沢健次君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、逓信委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、各案の概要を申し上げます。  有線ラジオ放送業務運用規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律案は、有線放送分野における規制合理化を図るため、有線放送業務を行う者の地位の承継に係る規定整備するとともに、有線テレビジョン放送施設の設置の許可について、外国人等であることを欠格事由としないこととするものであります。  次に、放送法の一部を改正する法律案は、地上放送分野において、デジタル信号による送信をするテレビジョン放送等を導入するに際して、映像または音声と文字、図形等とをあわせ送る高度かつ多様な放送を行うことができるようにするため、テレビジョン放送等の定義に関する規定整備するものであります。  次に、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案は、デジタル信号による送信をするテレビジョン放送早期の普及を図るため、高度テレビジョン放送施設整備事業実施に関する基本的な指針の策定及び実施計画認定等について定めるとともに、通信・放送機構業務当該事業実施促進するために必要な業務を追加するものであります。  三法案はいずれも四月十三日本委員会に付託され、四月十四日野田郵政大臣から提案理由説明を聴取し、四月二十八日質疑を行い、採決の結果、有線ラジオ放送業務運用規正に関する法律及び有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律案賛成多数をもって、また、放送法の一部を改正する法律案及び高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案の両案は全会一致をもって、それぞれ原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、放送法の一部を改正する法律案及び高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法案に対しそれぞれ附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  25. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第九につき採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  26. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第十及び第十一の両案を一括して採決いたします。  両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  内閣総理大臣発言米国公式訪問に関する報告
  28. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 内閣総理大臣から、米国公式訪問に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣小渕恵三君。     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  29. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 私は、クリントン大統領の招待を受け、四月二十九日から五月五日まで米国を公式に訪問し、クリントン大統領首脳会談を行ったほか、ロサンゼルスシカゴ親善訪問いたしました。  今回の訪米は、我が国の首相として、十二年ぶり公式訪問であり、八年ぶり地方都市への親善訪問でしたが、日米両国の友好と協力のきずなを一層強固なものとする上で、所期の成果を上げ得たものと考えております。  三日に行われました首脳会談では、日米両国が、自由と民主主義という基本的価値を共有する同盟国として、二十一世紀に向けて、平和で豊かな世界を構築するという共通の目標に向けて一層協力していくことを確認いたしました。  大統領との間では、アジア太平洋地域の平和と安定のためにも、日米安保体制信頼性強化していくことで一致するとともに、大統領より、周辺事態安全確保法案等の本院通過を評価する旨の発言がありました。  私より、来年の九州・沖縄サミット首脳会合沖縄で開催することに決定した旨説明し、大統領は、大変よい考えであると述べられました。(拍手)  また、主要地域情勢につきましても、緊密な意見交換を行いました。  北朝鮮に関しては、日米韓三カ国の協調のもと、抑止と対話のバランスをとりつつ、北朝鮮政策を進めていくことを確認いたしました。この関連で、私より日本人拉致疑惑に言及し、大統領より引き続き米国としても取り組んでいくとの発言がありました。  コソボ情勢に関しては、私から、その政治的解決を目指した国際社会の一致した対応重要性を指摘するとともに、難民支援を中心に二億ドルの支援を決定した旨を伝えました。大統領からは、日本姿勢を高く評価する旨の発言がありました。  なお、米国訪問中のロシアのチェルノムイルジン特使との間でも、コソボ問題の解決に向けた取り組みについて協議いたしました。  経済に関しては、日本経済回復に向けて、とり得る限りの施策を迅速かつ大胆に講じてきたこと、そして、本年度にプラス成長を確実にすることに向けて、引き続き不退転の決意で臨んでいくことを説明いたしました。また、我が国経済根本的再生のための、供給面体質強化を図る構造改革についても説明をいたしました。大統領は、こうした日本取り組みを高く評価しつつ、日本経済早期回復への期待を表明しました。  また、日米が、アジア経済回復国際金融システム強化やWTOの次期交渉の開始に向けて、緊密に協力する旨が確認をされました。  さらに、大統領と私は、規制緩和、投資、コンピューター二〇〇〇年問題及び競争分野協力協定に関する日米協力成果を歓迎いたしました。  また、私は、米国民との交流を深めるため、ロサンゼルスシカゴ訪問いたしました。両都市において、アジア太平洋における日米協力や今後の日米関係に関する演説を行ったほか、シカゴ大学の学生との懇談など、米国民との交流行事を行い、日米関係のすそ野の拡大を図りました。また、ワシントンにおきましても、米国財界人日本滞在経験を有する米国人青年等日米交流関係者とも懇談し、多様な分野の多くの米国の方々とお会いをいたしました。  こうした出会いを通じまして、両国のパートナーシップが、国民同士でも強固な相互信頼により結ばれていることを実感しました。また、日米関係のさらなる発展のために、両国民の一層の交流促進していくことの重要性を強く感じました。  今回の六日間に及ぶ訪米及び日米首脳会談を通じ、新たな世紀を迎える世界にあって、より多くの国の人々が、より強固な安全と一層の繁栄を享受できるよう、率先して協力していくことが日米両国にともに課せられた使命であることについて、クリントン大統領とともに決意と展望を示せたことが、今次訪米の最大の成果であったと思います。  私としては、日本外交の基軸である日米関係の一層の強化のために、今後とも尽力してまいる所存であり、議員各位の御協力を改めてお願い申し上げます。  以上、御報告といたします。(拍手)      ————◇—————  内閣総理大臣発言米国公式訪問に関する報告)に対する質疑
  30. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。菅直人君。     〔菅直人登壇
  31. 菅直人

    菅直人君 私は、民主党を代表し、ただいまの小渕総理訪米報告に関連して、総理外交姿勢と当面する政策課題について質問をいたします。  総理訪米と同じ時期に、私は、民主党代表団を率いて、中国上海西安北京の三都市訪問してまいりました。  上海では、急激な経済発展を実感するとともに、台湾問題の中国側責任者である汪道涵元上海市長と長時間話し合うことができました。統一後も台湾に独自の軍隊の存在を認めるなど、統一の条件の説明も受け、平和的統一にかける強い決意を感じました。  西安では、平成の元号の出典となった尚書の、地平らかにして天成る、「地平天成」が刻まれた石碑を見学し、中国日本文化の源流であることを改めて痛感いたしました。  北京では、一昨日、江沢民主席会談し、両国の過去、現在、未来について、腹蔵なく語り合うことができました。  私は、日中関係日米関係と同様に極めて重要な二国間関係だと考えますが、まず総理に、中国に対する認識と、近い機会に訪中するお考えがあるかどうか、お尋ねをいたします。  訪米直前総理との党首会談で、ガイドライン法案を、船舶検査の条項を削除してまで、自自公の国対政治で強引に押し通したのは、訪米のお土産にするためで、国民国会を無視したやり方だと私は指摘しました。これに対して、総理は、訪米のために国会日程に注文をつけたことはないと言われました。しかし、実際の訪米での大統領との会談を見れば、ガイドライン法案の本院通過がお土産であったことは明らかではありませんか。今でも、お土産外交ではなかったと総理は言い張られるのですか。  今回、一連の中国要人との会談を通じて私が感じたのは、日本に対する警戒感が高まっているということであります。総理ガイドライン法案の本院通過をお土産米国訪問されましたが、私は、中国要人との会談で、ガイドライン法案中国を敵視するためのものではないということの説明にかなりの時間を費やさなければなりませんでした。日米安保条約は、核兵器を持たない日本が核抑止を持つために必要であり、あくまで防衛的性格を持つものであること、中国の封じ込めのためのものではないことも説明してまいりました。  ところが、これに対して、総理は、ワシントンにおいて、大西洋を挟むNATOと太平洋を挟む日米同盟を同列に並べて強調する発言を繰り返されました。NATOは、まさに現在、国連決議もないままその域外のユーゴスラビアに対して空爆などの行動に出ており、もはや防衛的性格の同盟とは言えません。日米同盟をNATOと同列に論じることは、現行憲法に反するばかりか、中国を初め周辺諸国に脅威を与え、一層の警戒感を高めることになるでしょう。  総理は、日米安保条約を、国連決議がなくとも域外で軍事行動を行うNATOと同じように考えているのですか。明確な答弁を求めます。  総理のこうした姿勢は、世界の裁判官と警察官を兼ねたような行動をとる米国世界戦略に無批判に追従しているように受けとめられます。NATOの場合は、それでも多数の国が参加しているだけ牽制もきくでしょうが、日米同盟は二国間の同盟であるだけに、一層米国に引きずられるおそれがあります。  訪米前の党首会談で、私は総理に、クリントン大統領との会談では、コソボ紛争について、出口の見えないままNATO軍が泥沼の空爆を続けていることに日本の多くの国民が強い懸念を抱いていることをきちんと伝えるべきだと申し上げました。しかし、実際には、総理は、米国の強硬姿勢を支持し、二億ドルの難民支援金の拠出を約束するだけの追従外交に終始をされたのではないですか。総理外交姿勢は対米追随だとの各界の批判に対して、総理はどうお答えになりますか。  さて、総理は、クリントン大統領との会談で、プラス成長に向けて不退転の決意で臨むという約束をされたと報道されております。さきのG7での合意も含め、今年度の〇・五%のプラス成長というのは、小渕内閣の国際公約になったと考えます。しかし、総理が現在の政策の延長上で〇・五%のプラス成長が可能だと本当に信じておられるとすれば、かなり重度の政策自己過信症とも言うべきでしょう。世界銀行はマイナス〇・九%、IMFはマイナス一・四%のマイナス成長に日本経済の見通しを下方修正しているではありませんか。  プラス〇・五%成長という国際公約が実現できなかった場合、総理大臣としての政治責任をどうとるおつもりか、総理の覚悟のほどをお伺いしたいと思います。(拍手)  総理は、大統領との会談で、当面は追加的な景気対策は考えないという従来の立場を繰り返されました。しかし、他方で、自民党の森幹事長は、秋にも臨時国会を開いて、補正予算を審議すべきとの考えを示されています。総理はどうされるおつもりですか。米国での発言は、今年度は補正予算を組まないという意味なのかどうか、総理の見解を伺います。  財政構造改革法のもとで、景気対策のための財政出動ががんじがらめになっていた昨年と、財政構造改革法を凍結した上で、史上空前の大盤振る舞いの予算編成をしたことしでは、補正予算の持つ意味合いは全く異なります。  今年度の予算には公共事業の予備費五千億も計上され、その配分すらまだ決まっていません。余りの巨額のばらまきに、公共事業はもう消化不良だという声が全国の自治体から上がっているのが実情ではありませんか。これ以上むだな公共事業のばらまきをしたり、構造改革に水を差すような後ろ向きの補正予算を編成するつもりであれば、民主党としては賛成できないことをあらかじめ申し上げておきます。  次に、連休前に国会に提出された中央省庁改革関連法案について伺います。  この法案は、地方分権一括法案と並んで、二十一世紀のこの国の形を形づくる重要な法案であるにもかかわらず、小渕総理は、橋本内閣が引いたレールの上をのほほんと走っているだけにしか見えません。昨年の金融国会で、私たちが提案した金融再生法案に自民党が賛成し、金融再生委員会を設置したことは、橋本内閣がつくった一府十二省庁という数合わせの枠を超えた積極的機構改革でありました。  そして、金融再生法案について合意したそのときに、金融政策の失敗を財政出動で覆い隠してきた大蔵省のやり方を改めさせるために、財政と金融の完全分離について、総理は私との間で明確に約束をされました。しかし、その後、大蔵省の天下り先確保などの利益構造を守るため、大蔵省出身議員を中心とした巻き返しで、この約束を総理はほごにされたのであります。総理は、国民の前で交わした公党間の約束であっても、役所が抵抗すれば約束は守られなくても仕方がないと考えているのですか。明確にお答えをいただきたい。  もしまだ政治家として一片の信義でも重んじる気持ちがあるならば、即刻、中央省庁改革法案を撤回して、財政、金融の完全分離を実現する法案を提出し直すべきだと考えますが、総理のお考えを伺います。(拍手)  最後に、むだな予算のばらまきで将来の世代にツケを残し、必要な改革は先送りにして、政権維持のためには何でもありという小渕政権は、まさにブラックホール政権であると言うべきでしょう。失業中の若者や子育てに悩む女性の声に耳を傾けない無為無策の小渕政権がだらだらと続くことこそ、国民にとって政治空白にほかなりません。  小手先の数合わせによる政権運営ではなく、我が国の課題に真正面から取り組む政治に国民は期待しているのであります。小渕総理は、みずからの胸に手を当てて、自分が今後も政権を担い続けることが本当に日本国民の将来のためになるのかどうか、真剣に考えるべきに来ているのではないか、このことを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  32. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 菅直人議員にお答え申し上げます。  まず、中国に対する認識についてお尋ねがありました。  我が国にとりまして日中関係は、日米関係とともに、最も重要な二国関係と考えておりまして、中国との良好な関係を維持発展させていくことは、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と繁栄にとり、極めて重要と認識いたしております。今後とも、中国との間で、平和と発展のための友好協力パートナーシップを強固にしていく考えでございまして、そのためにも、近いうちにでき得れば訪中することも検討させていただきたいと思っております。  日米防衛協力のための指針関連法案につきましてお尋ねでありました。  本法案は、昨年四月の国会への提出後一年を経ているものでございまして、本院における長時間にわたる御審議を踏まえ、本院におきましても修正の上可決されたところであり、外交日程に合わせるものであったとの御指摘は全く当たりません。  日米同盟とNATOに関する御質問でありましたが、私がNATO諸国に言及いたしましたのは、米国から見て、大西洋の方向にはNATO諸国との同盟関係があり、太平洋を隔てては日本との同盟関係があるとの事実を指摘したものでありまして、日米安保体制を、米国のNATO諸国との関係と同列に論じたものでもございません。いずれにせよ、日米安保体制が全く防御的な性格のものであることは、従来から繰り返し御答弁申し上げておるところでございます。  コソボ問題への対応についてお尋ねでありました。  この問題の発端は、ユーゴ政府のアルバニア系住民に対する強圧政策であり、これに対しては、米のみならず、多くの国々の政府、世論が強い怒りを表明してきております。ユーゴ政府の強圧政策をとめさせるため、我が国としても、ロシアを含むG8を中心として、国際社会が一致して同政府に働きかけることを支持してきた次第であります。このような我が国の政策は、御指摘のような対米追随外交であるとは考えておりません。  今年度の我が国経済プラス成長についてのお尋ねがございました。  私としては、十一年度に回復基盤を固め、プラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で取り組む考えであり、緊急経済対策を初めとする思い切った諸施策を、果断かつ強力に推進してまいる決意でございます。  補正予算についてのお尋ねがありました。  我が国経済の現状を見ますれば、依然として厳しい状況にありますが、緊急経済対策等の効果に下支えされて、下げどまりつつあり、また、今後は、十一年度予算の効果も本格的にあらわれることが期待されます。さらに、先般の閣議におきまして、雇用対策の取りまとめを指示いたしたところであります。こうした状況のもと、現在のあらゆる対策を効果的に進めるよう、まさに内閣を挙げて全力で取り組んでいくことに尽きるものであると考えております。  財政と金融の分離に関する問題についてお尋ねでした。  昨年の党首会談及び三会派実務者間合意の内容の具体化につきましては、これが政党間の合意であることから、政党間協議の中で整理が行われていたところであります。政府といたしましては、政党間協議が合意に至らなかったことにつきましては、まことに残念に思っておりますが、このような状況のもと、政党間協議の経緯等も踏まえながら、法案化を行ったものであり、何とぞ御理解を賜りたいものと考えております。  御答弁申し上げる次第であります。(拍手)     —————————————
  33. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 赤松正雄君。     〔赤松正雄君登壇
  34. 赤松正雄

    ○赤松正雄君 私は、会派公明党・改革クラブを代表いたしまして、先ほど報告のございました総理のアメリカ訪問首脳会談に関する基本的な問題につきまして、若干の質問をいたしたいと存じます。  まず、現在の国際情勢を見るときに、多くの国民が関心を持ち、心配をしているのは、ユーゴスラビアのコソボにおける悲惨な状況であります。この地域へのNATOの空爆が開始されてより既に一カ月余り、ますます事態が泥沼化していく懸念が指摘される中で、日本にとって、同盟国アメリカのかかわり方に強い不安を持たざるを得ません。  冷戦終了後、世界におけるアメリカの一極支配的傾向が強まったと言われる状況が続いておりますけれども、果たしてそれで国際社会の平和と繁栄と安定は保たれるのか、かえって危険な貧困で不安定な事態が強まっているのではないか、一体、同盟国日本はどんな役割を果たそうとしているのかという疑問が強くわいてくるのを禁じ得ません。  あたかも、三年の歳月をかけて、日米防衛協力の指針、周辺事態安全確保法案など、いわゆる日米ガイドライン関連法案が、修正をされた上で衆議院を通過した直後であります。私たちは、これまで、北東アジアに平和をもたらすためには、予防防衛と予防外交を同時に巧みに展開していくことが必要であるとの考えを持ってまいりました。この関連法案によって予防防衛の軸ができ、それがないときには無原則な対応になりかねないのを、一定の歯どめをもたらすことができると自負をいたしております。  ただ、問題は、今後予防外交の展開が効力を持つのかどうかであり、同時に、同盟国アメリカに対して、この両面において、日本がひたすら従属の姿勢に終始するのではなくて、率直な意見を言い、時にアメリカをただす関係にあるのかどうかということであります。その意味で、今回の会談の行く末をかたずをのんで見守っていたのであります。  そこで、まず第一にお聞きしたいことは、今回の会談で、両首脳は、日米が共通の価値観を持ってこれからの国際社会対応していくことを確認されたとありますが、日米の共通の価値観とは一体何かということであります。これは改めて吟味をする必要があります。  先ほど総理は、自由と民主主義を守りという言葉を使われて、人権という言葉をあえて外されておりましたけれども、人権の尊重を重んじるということは、先ほどの自由と民主主義とあわせて、それ自体、いわゆる従来の西側社会に属する国にとって異論はないでありましょう。  ところが、一たび具体的な外交目標ということになると、少々違ってまいります。今回のユーゴスラビアにおける空爆についても、アルバニア系の住民の人権が侵されたことを理由に、非人権的な、一般民間人さえ巻き込んでしまう危険きわまりない空爆が正当化されてしまうことには、大いなる疑問を感じざるを得ません。  総理は、ユーゴスラビアでの空爆について、とりわけ国連安保理事会の議決を経ないでの実施をどう考え、今回の首脳会談で、どうクリントン米大統領に意見を述べられたのか、改めてお聞きしたいと思います。  次に、第二に、日米両首脳はコソボの情勢をめぐってロシアの仲介に期待すると述べられておりますが、この点についてお尋ねをします。  昨日、ボンで開かれたG8緊急外相会議では、ロシアを巻き込んでの包括的和平に向けて、七項目の合意がなされました。これで、当初かなり険悪であったNATOとロシアとの関係がかなり修復されたと見る見方がある一方、依然として基本線では双方の主張に隔たりは大きいとの見方もあります。こういう状況下で、ロシアにどのような仲介を期待されるのか、展望をお示し願いたいと存じます。  第三に、総理難民支援など総額二億ドルの支援策を決定したことを伝えられたことに対して、アメリカ大統領は、日本支援に感謝すると述べる一方で、国際的平和維持部隊なるものの結成を提案したといいます。総理は、これに参加するかどうかについては、はっきりとした意思表明はなされなかったようでありますけれども、今後、国連での一定の決議があればどうされるおつもりなのか。  また、G8の一翼を担う立場として、政治的貢献をしたいと述べられたようですけれども、その意味する中身は何か。国連の集団安全保障については、従来、慎重であるべきだという考えに立ってこられましたけれども、それを踏襲するのか。それとも、できることは積極的にやろうと一歩踏み出そうと言われるのか。また、さらなる戦費支援を求められたらどう対応するおつもりか。考えを示していただきたいと存じます。  また、国連を中心とした経済制裁について、我が国はどこまで歩調を合わせるおつもりか、どういう方針をもって臨まれるのか、お聞きしたいと思います。  第四に、総理は、今日まで、人間の安全保障という概念を導入することの大切さを説いておられますけれども、これ自体、私たちも同調するものであります。  しかし、これは国家の安全保障という側面としばしばぶつかります。大国に住む人々の人権と小国に住む人々の人権がひとしく守られねばならないのに、そうでない状況がしばしば発生しております。つまり、大国の内部における人権無視は見過ごされる一方、小国における人権抑圧はいとも簡単に他国の介入を招きかねないという今日の事態をどう考えられるのか、あわせてお聞きしたいと存じます。  また、この点に関連をしまして、北朝鮮日本との間に横たわるいわゆる拉致事件について、アメリカの理解と支持を求められたとのことでありますが、具体的な両者間のやりとりの詳細と、これからどうこの問題を解決されようとしておられるのか、展望をお聞かせ願いたいと思います。  第五に、総理は、対北朝鮮政策をめぐって、抑止と対話でバランスをとりつつ進めるとおっしゃっておりますが、対話というのは、基本的に、話せばわかる相手との間で成り立つものであります。話す糸口、窓口さえおぼつかない相手と、どう対話を進められるのか。  私は、本来、抑止と交渉と言うべきであって、交渉には、経済、文化、人的交流を初め、あらゆる手だてを含むものであります。特に、北朝鮮問題をめぐって、従来のアメリカ、中国、韓国、北朝鮮に、日本とロシアを加えた六者会談という話し合いの場の実現に努力すると言われたとのことでありますが、どういう展望を持っておられるのか、お考えを述べていただきたいと存じます。  これに関連して、一時凍結されていたKEDO協定の調印が時を同じくして行われましたけれども、十億ドルにも上る資金供与を北朝鮮がどう受けとめていると認識されているのか。総理がおっしゃるところの対話の一環であるならば、相手の反応を確かめる必要があると思いますが、どうこれを確かめようとされているのか、お聞きしたいと思います。過去のように、仮にテポドンの発射あるいは不審船のような事件が再び起これば、どうされるおつもりなのか、あわせてお聞きしたいと存じます。  第六に、今回の会談で、アメリカ大統領は、日本が一層の景気刺激策をとることを、市場開放政策とともに求めたことに対して、総理は、企業マインドが改善し、景気は下げどまりつつあるとの見方を示した上で、プラス成長を確実にするために不退転の決意で取り組むとの姿勢を強調されたといいます。具体的にさらなる景気刺激策をどうとろうとされるのか、そのお考えの一端をお聞かせ願いたいと思います。  あわせて、総理のいささか楽観主義的な経済認識とは裏腹に、過去最高の記録を更新しつつある失業率など、厳しい雇用情勢などについての議論はされなかったのかどうか、また、この問題についてはどう対応されようとしておられるのかについても、お考えをお聞きしたいと思います。  さらに、日米貿易摩擦の回避について、米側の要求を一方的に受け入れるばかりで、日本の要求をアメリカに主張したということが伝わってきておりません。米政府が進める包括貿易法スーパー三〇一条の復活は貿易自由化の流れに逆行するものであって、断固これを回避するよう申し入れられたのかどうか。私たちは党首会談総理に申し入れたわけでありますけれども、その点をされたのかどうか、ここでお聞きするものであります。  最後に、総理は、日米首脳が国際社会の平和に率先して知恵を出し合うということを展望し得たことが今回の会談成果だと言われました。知恵を出すという考えは、言うは簡単でありますけれども、現実には至難のわざであります。  戦争を放棄することをうたった憲法を持つ国が、いかに武力行使以外の手段で紛争を防止するか。本来、アメリカに知恵を出し、武力行使に頼りがちなアメリカをいさめねばならない立場の日本が、どうもアメリカの言うなりになっているようにしか見えない現状は、今回の首脳会談でも何ら改善されなかったようにしか見えないのは、極めて残念と言うほかありません。  一カ月後のサミットを控え、我が国は、アジア太平洋地域のみならず、今こそ世界におけるリーダーシップを発揮するべきときではないのかということを強調させていただき、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  35. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 赤松正雄議員にお答えいたします。  示唆に富む御意見も含めてのお尋ねをいただきました。ただ、政府といたしましての立場につきましては、以下、御答弁を申し上げさせていただきたいと思います。  まず、コソボの問題についてでありますが、今回のNATOの行動は、ユーゴ政府が和平合意案をかたくなに拒否する等の中で、さらなる人道上の惨劇を防止するため、やむを得ざる措置としてとられておると理解いたしております。  私は、先般の日米首脳会談におきまして、コソボ問題解決のためには国際社会の一致した対応が重要であること、我が国としては政治解決に貢献するとともに約二億ドルの支援策を決定いたしたことを申し上げたところであります。  ロシアの仲介についてのお尋ねでありますが、ロシアは空爆に批判的な態度をとっておられますが、同時にまた、問題の解決のためには、西側諸国、特にG8諸国と密接に協議するとの姿勢でもあります。六日のG8外相会合におきましては、ロシアを含むG8諸国が、政治解決のための七つの原則に合意し、国連安保理決議の採択に向けて作業を進めることになりましたことは、御案内のとおりであります。我が国は、ロシアのこうした努力を高く評価しており、今後とも密接に協議することが重要であると考えております。  コソボ問題について、さらに加えて、国連の関与のあり方についてでありますが、今後議論が、G8の先般の外相会議等の進展に伴いまして、さらに進められるものと承知をいたしております。我が国は、国際社会が一致した対応をとるため、G8の一員として積極的に議論に貢献してまいりたいと考えます。  経済制裁につきまして、投資の停止等の措置をとってきたところであり、石油禁輸措置については欧米諸国と共同歩調をとってまいりたいと考えております。  戦費の支援等につきましては、その要請もありませんし、支援を行う考えもありません。  国際社会における人権の扱いについてお尋ねがありましたが、我が国は、人権は普遍的価値を持つものであって、その促進、擁護は国際社会の正当な関心事項であり、各国は、大国、小国の区別なく、ひとしく人権及び基本的自由の促進、擁護をすべきであると認識をいたしております。  次に、北朝鮮による拉致疑惑に関してのお尋ねでありました。  首脳会談におきまして、私より、本件について大統領協力を得たい旨を申し述べました。それは、残念ながら、今、日朝間におきましては正常化交渉が途絶いたしておる状況でありまして、北朝鮮との交渉のパイプを持っておりますのは米国でございますので、そうした意味からも、この問題につきましてぜひ御理解をいただいておきたい、こう思ったわけでありまして、米国といたしましても、今後ともこの問題についても十分関心を持ってまいりたいということでございました。  政府といたしましては、本件が我が国国民の生命にかかわる重要な問題であるとの認識から、あらゆる機会をとらえて、北朝鮮の真剣な対応を粘り強く求めてまいりたいと思っております。  北朝鮮との対話に関するお尋ねでありましたが、政府といたしましては、北朝鮮が国際的な懸念や日朝間の諸懸案に建設的な対応を示すなら、対話と交流を通じ関係改善を図る用意がある旨、引き続き粘り強く呼びかけていく考えであります。また、関係国等の意向もあり、必ずしも容易ではありませんが、こうした努力の一環として、北東アジアにおける多国間の対話の場の実現にも尽力していく考えであります。  KEDOに関するお尋ねでありましたが、北朝鮮も、米朝間の合意された枠組みの一環として、軽水炉プロジェクトの早期推進を重視いたしておりまして、我が国とKEDOの資金供与協定の署名を前向きに受けとめていると考えます。ミサイルや不審船等の諸懸案に対して、対話と抑止により適切に対応する考えですが、北朝鮮の核開発を封ずる最も現実的かつ効果的な枠組みであるKEDOを支持する立場には変わりはありません。  次に、経済問題でありますが、プラス成長に向けての決意と具体策についてお尋ねがありました。  先般、緊急経済対策の実施状況と今後の予定について確認いたしたところでありますが、緊急経済対策関連の諸事業は極めて熱心に遂行されております。現下の我が国経済は、民間需要が低調なため、極めて厳しい状況にありますが、各種の政策効果に下支えされて、下げどまりつつあると考えます。  平成十一年度には、金融システム安定化策等により、不良債権処理、金融機関の再編が進み、我が国実体経済回復を阻害していた要因が取り除かれると考えられます。また、昨年末に成立いたしました十年度第三次補正予算のもとで、切れ目なく景気回復策を実施しており、十一年度予算におきましても、恒久的な減税を初めとして、国、地方を合わせて九兆円を超える思い切った減税を実施するほか、公共事業について大幅な伸びを確保するなど、積極的な財政運営を行うことといたしております。  私といたしましては、十一年度に回復基盤を固め、プラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で取り組む考えであり、緊急経済対策を初めとする思い切った諸施策を、果断かつ強力に推進してまいります。  我が国の雇用情勢についてでありますが、日米首脳会談におきまして、私から、日本経済の現状について説明する中で、我が国企業が企業経営や組織形態、雇用等、多面にわたって新しいシステムを模索していること、大規模なリストラや企業の再編、株の持ち合いの解消、労働移動の増大など、日本経済社会は大きく変わりつつあること、政府としても、規制緩和等による環境の整備取り組み、産業競争会議で、官民で取り組みを進めていることを説明いたしました。  現下の厳しい情勢にかんがみ、新しい雇用確保に向けた政策展開を図るべく、雇用対策及び雇用機会の創出策のさらなる充実について、早急に検討を進めているところでございます。  いわゆるスーパー三〇一についてでありますが、今回の首脳会談におきまして、本件に関しては触れられませんでしたが、我が国は、米国がこのような一方的なアプローチをとり得る手続を有していることは、原則の問題として受け入れられないとの立場であり、種々の機会にこうした立場を表明してきておるところであります。  最後に、外交におけるリーダーシップの発揮についてでありますが、施政方針演説でも申し述べましたように、我が国国際社会の中で尊敬され、その地位にふさわしい責任を果たすことにより、世界へのかけ橋を築いていくべきであると考えております。このような考えに基づき、サミットを含む外交の場におきまして、今後とも、我が国の立場を明確に主張いたしてまいりたいと考えております。  以上、お答えを申し上げます。(拍手)     —————————————
  36. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 佐々木憲昭君。     〔佐々木憲昭君登壇
  37. 佐々木憲昭

    ○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、日米首脳会談について総理に質問いたします。  まず、安保、外交問題についてであります。  総理首脳会談で、ガイドライン法案に関連して、日米安保条約をアジア太平洋の平和のためさらに強化したいと述べました。国会では、周辺事態の周辺とは地理的概念ではないと繰り返し答弁し、周辺地域がどこかは全く明らかにしませんでした。ところが、法案が衆議院を通過した途端、総理はアメリカで、アジア太平洋という地域に言及したのであります。国会答弁と全く違うではありませんか。  総理発言によれば、ガイドライン法案の周辺とは、広大なアジア太平洋地域ということになるではありませんか。これは安保の実質大改悪でもあります。総理の明快な答弁を求めます。  しかも、クリントン大統領は、共同記者会見で、ガイドライン法によって、アジアにおけるいかなる地域的な危機に対しても、柔軟かつ迅速に対応できるようになると述べました。これまで政府は、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合と説明してきました。しかし、大統領発言は、日本の安全とは関係のない地域でアメリカが行う無法な戦争に日本協力させるという危険な本質をあけすけに述べたものではありませんか。答弁を求めます。  次に、コソボ問題についてお伺いします。  アメリカとNATOは、空爆について、コソボでのユーゴ側の残忍な行為をやめさせるためだと説明してきました。しかし、現実を見れば、空爆によって新たな難民を生み出した上、ユーゴの住宅地、病院、経済施設、国際列車、避難民の列車など、民間目標へのほとんど無差別な爆撃によって、何千人という死傷者を出し、肝心のコソボ問題の解決そのものが遠のくという結果をもたらしているのであります。  この空爆は、国連安保理の決議もなく、NATO加盟諸国の自衛権の発動でもありません。だからこそ政府は、四月の国会答弁で、NATOの行動について我が国として法的評価を下すことはできないと述べ、支持ではなく、理解できるという態度をとってきたのであります。  しかし、クリントン米大統領は、共同記者会見で、コソボでの我々の努力についての日本の強力な支持に対し小渕総理に感謝したいと述べました。総理は、会談で、アメリカとNATOの空爆を強力に支持したのですか。それは、従来の立場さえ大きく踏み越えるものではありませんか。明確な答弁を求めます。(拍手)  今必要なのは、この空爆の即時中止であります。そして、すべての紛争当事者が武力行使を直ちに停止し、和平のための交渉を再開すべきです。関係諸国は、軍事行動ではなく、国連憲章に定められている平和的解決の原則に基づいて、和平交渉での合意ができるよう粘り強い努力を続けるべきであります。今、日本に求められているのは、このことを世界に向けて主張することではありませんか。答弁を求めます。  次に、景気対策についてお尋ねをいたします。  総理は、首脳会談で、とり得る限りの措置を迅速かつ大胆に実行したと述べました。ところが、経済の実態は極めて冷厳であります。失業率は最悪を記録し、消費と設備投資は未曾有の落ち込みを見せております。経済成長率は五期連続のマイナスとなり、昨年は年平均マイナス二・八%と戦後最悪の落ち込み幅となりました。小渕内閣成立後、主要な経済指標はどれをとっても最悪の記録を更新し続け、経済は好転するどころか一層深刻化しております。  何十兆円という巨額の資金を銀行やゼネコンに注ぎ込んでも、これら巨大企業のモラルハザードを招くだけだったではありませんか。日本経済が自律的回復軌道に乗らなかったのは、政府がGDPの六割を占める肝心の個人消費に目を向けないだけでなく、それを一層冷え込ませる政策を実行してきたからであります。消費税の増税、社会保険料の引き上げなど、巨額の国民負担の増大が景気回復の足を引っ張っている最大の原因であります。  今大事なことは、従来の政策の枠組みから大胆に抜け出し、浪費型公共事業を削減して、消費税の三%への引き下げを初め、消費拡大に焦点を当てた対策に踏み出すことであります。迅速かつ大胆に実行すべきはまさにこの政策ではありませんか。個人消費を拡大してこそ、商業、流通も活性化し、生産の回復と設備投資の増大につながり、実体経済を着実に回復軌道に乗せていくことができるのであります。  総理は、個人消費の拡大を経済政策の上でどのように位置づけておられるのか、景気回復にとって重要ではないとお考えなのか、明確にしていただきたい。  総理は、首脳会談で、今年度の日本経済成長率を確実にプラス〇・五%にするため、今後も不退転の決意で取り組むと言明しました。しかし、IMFの予測でも明らかなように、政府の言うプラス〇・五%の達成は極めて困難というのが、もはや国際的な常識となっているのであります。  マスコミは、日米両国政府は水面下ではプラス成長確保するには早晩補正予算は必要との認識で一致していると報道しました。総理は、対米公約の〇・五%成長を達成する、そういう口実で、大型公共事業を中心とした従来型の補正予算をまた今年度も組むというのでしょうか。巨額の財政赤字を抱える日本は、そのことで取り返しのつかない事態を迎えることになるのではありませんか。答弁を求めます。  次に、雇用問題についてお聞きします。  総理がアメリカに出発した直後、四月三十日に総務庁が発表した三月の日本の完全失業者は三百三十九万人、完全失業率は戦後最悪の四・八%を記録しました。五年連続して最悪記録を更新する深刻な事態が続いております。これは、大手企業を中心とするリストラ、人減らしが急速に強まっているためであります。今大事なことは、このような大手企業の不当な大量解雇を規制し、サービス残業をやめさせ、労働時間を短縮して、雇用を拡大することであります。(拍手)  ところが、総理は、五月一日、メーデーで雇用を守れの声が日本じゅうに響き渡ったまさにその日に、シカゴで驚くべき発言をされました。企業が競争力を持つためには、残念ながら失業率が若干まだ増加せざるを得ないと述べたのであります。これは、失業増加の最大の原因である大企業の人減らし、リストラを放置し、不当な解雇を容認する立場を表明したものであります。これでは、幾ら雇用対策に力を入れると言っても、空念仏ではありませんか。これで、どうして雇用の拡大ができるというのでしょうか。  総理の明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  38. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 佐々木憲昭議員にお答え申し上げます。  まず、周辺事態の定義に関するお尋ねでありましたが、首脳会談での私の発言は、日米安保体制が二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けるとの認識のもとで、今後もこれを強化していく決意を述べたものでありまして、周辺事態がその生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできないという意味で地理的概念でないということは、これまでの政府の見解と全く矛盾しないところであります。  首脳会談でのクリントン大統領発言につきお尋ねでしたが、御指摘の大統領発言は、周辺事態安全確保法案の意義につき一般的に言及したものと理解をいたしており、周辺事態が我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である点につき、日米間に見解の相違はありません。  いずれにせよ、米国は、安保条約で明記されているとおり、国連憲章のもと違法な武力行使を慎む義務を負い、周辺事態に際し米国が武力を行使するのは国際法上の要件を満たす合法的な場合に限られますので、法案米国の無法な戦争に日本協力させるものとの御指摘は全く当たりません。  コソボ問題についてお尋ねですが、御指摘のクリントン大統領発言は、我が国国際社会と協調してコソボ問題の解決のため努力を払っていることへの謝意表明であると理解しております。  なお、今回のNATOの行動に関して、我が国は、ユーゴ政府が和平合意案をかたくなに拒否する中で、コソボにおけるさらなる犠牲者の増加という人道上の惨劇を防止するため、やむを得ずとられた措置であったと理解しているとの立場を表明いたしておるところであります。  コソボ問題の解決に向けた我が国の努力についてのお尋ねでありましたが、我が国は、この問題の政治解決が実現し、一刻も早く和平が到来することを希望いたしております。六日のG8外相会合におきまして、政治解決のための七つの原則につき合意され、今後、国連安保理決議採択に向けた作業が進められることとなりました。我が国としては、G8の一員として、国連の枠組みのもとでの解決を目指し、外交努力を続ける考えであります。  次に、経済の問題につきまして、個人消費の拡大についての御指摘がありました。  我が国経済回復のため、GDPの約六割を占める個人消費は極めて重要であると考えております。こうした観点も踏まえまして、昨年末に成立いたしました第三次補正予算のもとで、切れ目なく景気回復策を実施いたしておりまして、十一年度予算におきましても、当面の景気回復に全力を尽くすとの観点から、個人所得課税の恒久的減税を実施するほか、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、住宅ローンの減税を行うこととするなど、人々の生活基盤の安定化につながる施策を十分取り入れたものとしておるところであります。  なお、補正予算についてお尋ねがありましたが、我が国経済の現状を見ますれば、依然として厳しい状況にありますが、緊急経済対策の効果に下支えされ、下げどまりつつあり、また、今後、十一年度予算の効果も本格的にあらわれてくることが期待されます。さらに、先般の閣議におきまして、雇用対策の取りまとめを指示したところであります。こうした状況のもと、現在のあらゆる対策を効果的に進めるよう、まさに内閣を挙げて全力で取り組んでいくことに尽きるものと考えております。  最後に、雇用についてのお尋ねがありましたが、雇用は景気におくれて回復する傾向がありますので、当面は厳しい状況が続くことが考えられます。このような状況のもとで、新たな雇用確保に向けた政策展開を図るべく、雇用対策及び雇用機会の創出策のさらなる充実につきまして、早急に検討を進めているところでございます。  以上、御答弁申し上げました。(拍手)     —————————————
  39. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 中川智子君。     〔中川智子君登壇
  40. 中川智子

    ○中川智子君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、日米首脳会談に関連して小渕総理に質問いたします。  さて、総理、本当にお疲れさまでございました。訪米中の総理の幸せそうな笑顔はとても印象的でした。大リーグでの始球式の成功、思い出のクイーン・メリー号訪問や、シカゴでの講演、ワシントンでの大統領との会談日本の首相としての十二年ぶり公式訪問はつつがなく終わったとの御認識だと思われます。しかし、そんなにあっけらかんと日米関係の強靱さを強調し、二人三脚で前に進んでいくことを国民が手放しで歓迎しているとお思いなら、ちょっと待ってと言わざるを得ません。  そこで、質問ですが、小渕総理は、訪米する直前に、二〇〇〇年七月予定のサミット会場を沖縄県名護市にすることを決められました。発表の際の野中官房長官のコメントは、政府を挙げ、沖縄県民に対する熱い思いをサミットにかけたということを理解してもらえるのではないかということでありました。  しかし、開催決定を受けた沖縄県民の心は複雑です。しかも、会場となる名護市は、海上ヘリポート基地構想が押しつけられようとしている場所であり、沖縄県民が要求しているのは基地の縮小であります。すなわち、基地の縮小が葬り去られ、引きかえに、基地の永久固定化が日米の間で取り交わされるのではないかという強い懸念であります。  小渕総理は、沖縄県に余りにも多くを押しつけてきた米軍基地の縮小に向けた不退転の決意はあるか否か、お伺いいたします。  私どもは、この日本でのサミットが、戦争の世紀と言われた二十世紀最後の開催であり、かつ、NATO加盟国ではなく、アジアの地、日本で開催されるという点に大きな意義があると考えています。  今、NATO、とりわけアメリカは、ユーゴスラビア連邦への空爆という戦争拡大への道をひた走っています。世界の各地で、武力による力の戦略をアメリカは繰り広げています。日本で行われるサミットは、力による秩序という論理ではなく、対話と平和共存が主流となるようにリードしていくものでなければなりません。その意味で、沖縄サミットは、苦難の歴史を歩み、いまだに基地を抱える沖縄だけに、平和サミットとして位置づける意義と価値があると言えます。(拍手)  総理は、沖縄サミットで、日本から世界に何を発信する戦略を持っておられるのでしょうか、まずお伺いいたします。  次に、日米首脳会談は、新ガイドライン関連法案が、修正案の審議もなく、いまだ不透明な自治体や民間協力の詳細も盛り込まれず、ただただ首相の訪米出発日に合わせる形で、お土産という形で、自自公合作で衆議院で可決されました。  この法案成立の報告を受けたクリントン大統領は、アジア地域の危機に柔軟に対応することが可能とのコメントを発表しましたが、一方で、日米同盟が軍事的に強化されることに懸念を表明する中国政府は猛反発しています。こうした状況になることは、当初から私どもが指摘してきたことですが、日米首脳会談を終えて、今、小渕総理は、中国を含むアジアとの平和と友好関係をどのように再構築されていかれるおつもりなのかを、改めてお伺いいたします。  さて、この会談の背景には、NATO軍によるユーゴ空爆という事態があります。クリントン大統領の心もコソボにあったようです。そこで、私どもが大変残念に思っていますのは、総理クリントン大統領に、空爆を中止し平和的解決の道を模索するよう助言する姿勢が全くなかったという点であります。  既に、深刻化するコソボ難民の問題ばかりか、空爆の犠牲にユーゴの市民が巻き添えになるという事態が進んでいます。強固な同盟関係、友人関係を自称するのであれば、空爆による事態収拾を回避するよう助言することこそが、平和を目指す私たちの国の立場であり、友人としての心配りであると思いますが、いかがでしょうか。  また、総理は、チェルノムイルジン・ロシア大統領特使とも会談をなされましたが、どのような提案があり、何を日本は求められたのか、また、どのような立場でこの事態の収拾をロシアに働きかけられたのかをお伺いいたします。  最後に、日米首脳会談において、総理は、プラス成長を確実にするための不退転の決意を強調されました。しかし、我が国の現状は、金融資本の再編を初め各産業の再編化が、結果として失業問題を顕在化させ、雇用不安を募り、将来への不安の増大から消費を低下させるという状況を生み出しています。  特に、三月末における我が国の完全失業率は、過去最高の四・八%にも達しています。総理は、訪米中、失業率が五%台に上る可能性まで示唆されました。また、今春卒業した学生の雇用状況は最悪だと言われています。こんな雇用状況がこのまま推移すれば、プラス成長どころか、大失業時代の到来は必至です。私の息子も来年卒業ですが、本当に就職先が大変で大変で、親としても本当に困っております。たった二十人の募集に一万人も来るという状況、異常な状況が生まれています。  今、日本総理大臣に求められるのは、働きたくても働く場所もないという人々、とりわけ若者たちの将来に夢と希望を持たせる政策を一刻も早く確立する、そのためには、国内での、小手先ではなく、抜本的な内需拡大と雇用の拡大の方策を打ち立てることがともかく必要だと考えますが、いかがでしょうか。  実は、私はきのう滑って転んで骨折をいたしまして、でもきょうは、病院から抜け出しまして、総理にしっかりとこのことを質問したいと思って、頑張って参りました。総理の明快な御答弁を心からお願いいたしまして、質問は終わります。どうもありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  41. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 中川智子議員にお答え申し上げます。  骨折は、御快癒のこと、お祈り申し上げます。  お尋ねの点について、まず最初に、訪米成果についての認識を尋ねられました。  私は、首脳会談において、日米両国が二十一世紀に向けて平和で豊かな世界を構築するという共通の目標に向けて一層協力していくことを確認したことが最大の成果であったと考えております。我が国外交の基軸は日米関係であり、このような日米関係決意と展望を示せたことは、国民の皆さんの御理解を得るところと確信をいたしております。  沖縄における米軍施設・区域についてのお尋ねでありました。  政府は、これまで米国政府と緊密に協力しつつ、SACO最終報告に盛り込まれた事案を着実に実施してきており、サミット開催のかわりに、施設・区域が固定化されるというような御懸念は全く当たりません。政府といたしましては、今後とも、同報告の着実な実現に向けまして、稲嶺知事のお考えを十分に拝聴しつつ、沖縄県の理解と協力のもと、最大限の努力をしていく考えであります。  九州・沖縄サミットについてのお尋ねでありました。  九州・沖縄サミットが発信すべきテーマは、本年六月十八日から二十日、ドイツで行われますサミットの結果をも踏まえて、G8各国の意見も聴取しつつ準備していくこととなりますが、二〇〇〇年という区切りの年に行われるサミットでありますので、二十世紀を総括しつつ、二十一世紀に向けて、平和で豊かな国際社会の構築という観点から、明確なビジョンを打ち出す機会にしていきたいと考えております。  我が国とアジアの平和友好関係についてのお尋ねでありますが、先般の日米首脳会談におきまして、アジア太平洋地域の平和と繁栄実現のための日米協力について合意するとともに、日米両国それぞれが中国との協力関係を促進することが重要であるとの意見で一致を見ました。今後とも、地域における米国の存在と関与を前提としつつ、アジア諸国との対話と協力を通じて、信頼関係の構築を図ってまいります。  コソボ問題についてお尋ねがありました。  私は、この問題の解決のためには、国連事務総長の提案や今般のG8外相会合の声明に明らかな国際社会の要求を、ユーゴ政府が受け入れることが必要だと考えます。今回の日米首脳会談におきまして、このために国際社会の一致した対応が重要であり、米ロ間で密接な協議を行うことを期待し、我が国としても政治解決のため貢献していく考えであることは申し上げました。  私とチェルノムイルジン特使との会談についてのお尋ねでしたが、同特使よりは、コソボ問題解決のため、米欧諸国と緊密な協議のもとにユーゴ政府と話し合っていること、また、空爆とすべての戦闘行為をやめてテーブルに着くことが重要であること等の発言がありました。これに対し、私から、ロシアの仲介努力を高く評価するとともに、我が国としては政治解決早期実現を望んでおり、そのため、G8としての共通のポジションを形成することが重要であることを申し上げたところであります。  最後に、経済問題でございますが、プラス成長に向けての決意と具体策について御質問がありました。  先般、緊急経済対策の実施状況と今後の予定について確認したところですが、緊急経済対策関連の諸事業は極めて熱心に遂行されております。現下、我が国経済は、民間需要が低調なため、極めて厳しい状況にありますが、各種の政策効果に下支えされて、下げどまりつつあります。  平成十一年度には、金融システム安定化策等によりまして、不良債権の処理、金融機関の再編が進み、我が国実体経済回復を阻害していた要因が取り除かれると考えられます。また、昨年末に成立いたしました十年度第三次補正予算のもとで、切れ目なく景気回復策を実施しておりまして、十一年度予算におきましても、恒久的な減税を初めとして、国、地方を合わせて九兆円を超える思い切った減税を実施するほか、公共事業について大幅な伸びを確保するなど、積極的な財政運営を行うことといたしております。  私といたしましては、十一年度に回復基盤を固め、プラス成長を確実にすることに向け、引き続き不退転の決意で取り組む考えであり、このような諸施策を果断かつ強力に推進してまいる決意であります。  以上、御答弁申し上げました。(拍手
  42. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  食料・農業農村基本法案内閣提出)の趣旨説明
  43. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、食料・農業農村基本法案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣中川昭一君。     〔国務大臣中川昭一君登壇
  44. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) 食料・農業農村基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  現行の農業基本法は、昭和三十六年、当時における社会経済動向や見通しを踏まえ、我が国農業の向かうべき道筋を明らかにするものとして制定されました。しかし、我が国経済社会が急速な経済成長、国際化の進展等により大きな変化を遂げる中で、我が国食料・農業・農村をめぐる状況も大きく変化し、関係者の多大な努力で成果を上げた一方で、国民が不安を覚える事態が生ずるに至っております。  まず、食料自給率の低下であります。米の消費の減退、畜産物、油脂の消費の増加という国民食生活の変化や食料需要の高度化等に対応した国内の供給体制はいまだ十分に確立されていない状況にあります。  次に、農業者の高齢化とリタイアが進み、次代の担い手の育成確保は不十分な状況にあります。農地面積は減少し、耕作放棄地も増加しています。農地を有効に利用する体制も十分ではありません。また、農業生産の場であり生活の場でもある農村の多くは、高齢化の進行と人口減少により活力が乏しくなっています。地域社会の維持が困難な集落も相当数見られるようになっています。  一方、国民我が国農業、農村に対する期待は高まっております。健康な生活の基礎となる良質な食料の合理的価格での安定供給の役割を果たすこと、国土や環境の保全、文化の伝承など多面的機能を十分に発揮することなど、暮らしと命の安全と安心のもととしての農業、農村の役割に大きな価値を見出す動きは近年着実に増大しています。  しかし、現状のままに推移するのでは、期待される役割を果たすことは困難です。現行農業基本法を初め農政全般の総合的な見直しを行い、全国各地で見られる新しい芽生えに未来を酌み取り、早急に、国家社会における農業、農村の位置づけなど、食料・農業・農村政策に関する基本理念の明確化と政策の再構築を行わなければなりません。  二十一世紀を展望した新たな政策体系の確立により、これまでの傾向に歯どめをかけ、国民は安全と安心を、農業者は自信と誇りを得ることができ、また、そのことを通じて、生産者と消費者、都市と農村の共生が可能になるものと確信しております。本法案は、このような基本的考えのもとに、食料・農業・農村基本問題調査会答申を踏まえ、食料・農業・農村に関する施策についての基本理念と、これに基づく基本的な施策の枠組みを国民的合意とするべく、提案したものであります。  次に、この法案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、食料・農業・農村に関する施策についての基本理念を明らかにすることです。  食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展及び農村の振興という四つの基本理念と、国及び地方公共団体の責務等を定めています。  第二に、基本計画を策定することです。  食料・農業・農村に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食料・農業・農村基本計画を定め、施策についての基本的な方針、食料自給率の目標、総合的かつ計画的に講ずべき施策を国民の前に示すこととしております。  第三に、食料・農業・農村に関する施策の基本方向を明らかにすることであります。  食料の安定供給の確保農業の持続的な発展及び農村の振興に関する施策として基本的なものを定めております。  第四に、国に食料・農業・農村政策審議会を設置すること等について定めていることであります。  以上、食料・農業農村基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)      ————◇—————  食料・農業農村基本法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  45. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。堀込征雄君。     〔堀込征雄君登壇
  46. 堀込征雄

    ○堀込征雄君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました食料・農業農村基本法案について質問いたします。  本法案を読んでみますと、多面的機能の発揮や食料自給率目標の設定などが盛り込まれ、確かに現行の基本法とは異なる新機軸を打ち出しているように見えます。しかし、全般的に抽象的表現が多く、目標実現に向けた力強さが伝わってきません。また、宣言法であるにもかかわらず、基本理念をうたった前文もないため、非常に迫力に欠ける印象も否めません。  以下、個別事項について疑問点を伺います。  まず、本法案内容について伺う前に、現行の農業基本法を政府がどのように総括しているのか、伺っておきたいと思います。  御存じのように、昭和三十六年に制定された現行基本法は、農業生産性の向上と他産業並みの生活水準を目指すべく、いわゆる選択的拡大路線を打ち出しました。しかし、そこでは、我が国伝統の食文化の維持や農村社会の発展、継承といった面は全く考慮されず、一方で、麦や大豆といった伝統的作物生産からの撤退や畜産への転換に伴う飼料作物の大量輸入による食料自給率の著しい低下を招き、他方で、農村の過疎、高齢化、相次ぐ集落の消滅といった、我が国の地域社会の崩壊につながりかねない事態を生み出すに至っているのです。これが、現行基本法農政が招いた今日の我が国農業の現状であります。  昨年九月の食料・農業・農村基本問題調査会の最終報告を見ても、同じく十二月の政府農政大綱を見ても、現行農基法の総括については、ほとんど全くと言ってもよいほど言及されておりません。これでは、なし崩し的な方向転換と言われても仕方ありません。  新しい法律を制定するに当たって、まず、今までの法律のどこに欠陥があり、なぜ変えなければならないのかを明確にすべきであります。今までの法律がただ単に現状に合わなくなったために変えるのか、そうではなくて、今までの農政が農業、農村の疲弊をもたらした結果を受けて、つまり現行法の否定的総括の上に立って、この法案を提出しているのか、総理の見解を伺います。  次に、これからの農政の改革をどのように考えているか伺います。  この法律案に書かれている食料の安定供給、多面的機能の発揮、農業の持続的発展、農村の振興は、いずれも今日まで取り組んできた課題であり、殊さら新しい発想のものではありません。むしろ、なぜこうした課題が解決され実現されてこなかったのか、そして、それはどこに原因があったのかを明確にしなければなりません。  今日、また新しい基本法をつくり、大綱やプログラムを決めても、決してうまくいくとは思わないのであります。農水省は、過去にも、平成四年の新政策を初め、さまざまな政策を打ち出してきた経過があります。しかし、それらはすべて絵にかいたもちに終わってきました。  私は、この原因は、中央集権型、全国画一型農政にあったと思うのであります。戦時の強制的な食糧管理法、戦後の画一的な農地法、あるいは農業会から引き継ぐ団体組織、これらを改革し、思い切った地方主権の生き生きとした農政の転換を行うべきときだと思うのであります。  言うまでもなく、我が国農業の歴史は、食料の増産、そのための農地の開墾や開田の歴史でありました。それは、稲作文明が伝えられて以来、戦後まで続けられました。昭和四十年代になり、我が国で初めて有史以来の米余りという事態が発生し、今日に至っています。開墾や開田による農地面積の拡大や、農業技術の進展などが米過剰の事態をもたらしました。  その間、我が国の為政者は、食料の増産、農地の開墾に心血を注いでまいりました。とりわけ、江戸時代中期から後期に至る全国規模の開田の歴史は、今日の稲作の原型をつくり上げたものと言われています。  そうした食料増産の体制を米過剰の今日まで、何の疑いもなく引き継いでいるのが構造改善事業であります。最近では大規模な道路をつくったり、下水道事業まで行っていますが、これは、明らかに時代の変化に対応した行政の姿とは言えないと思うのであります。しかも、当初予算だけで農水省予算の実に五〇%以上、一兆七千億余りの予算を消化し、これにウルグアイ・ラウンド対策などの補正を含めると、実に膨大な国費がつぎ込まれています。  この予算を新農政の中で有効に活用するとともに、農業基盤整備や生活基盤整備などの公共事業については、権限と財源を地方に移し、国の行政と関連組織、団体の改革を大胆に進めることが必要だと思うのであります。  私は、この農業基本法の抜本改正に当たっては、戦時から続いてきた中央統制型の画一型農政を総括し、それを転換するという抜本的発想がどうしても必要だと思うのであります。そのために、農水省組織、農業諸団体の思い切った改革と、従来の事業の抜本的再検討、見直しが必要だと考えますが、総理考え方を伺っておきたいと思います。  次に、法案内容について伺います。  まず、食料自給率の問題についてであります。  昭和三十五年当時七九%に達していた我が国の自給率も、平成九年段階では四一%にまで落ち込んでおります。ここにも、現行基本法路線の破綻が数字となってあらわれているわけです。先進各国の自給率が軒並み七〇ないし八〇%から一〇〇%を超える中で、我が国の数値は余りにも低いと言わざるを得ません。  食料・農業・農村基本問題調査会の議論では、食料自給率を政策目標にすることについては賛否両論があったと伺っております。そのため、今回の法案でも、せっかく食料自給率目標の設定を基本計画に掲げながら、わざわざ、農業生産及び食料消費に関する指針だとか、関係者が取り組むべき課題というクレジットをつけることで、政府の責任をあいまいにしてしまっているのです。  これでは、現行の基本法でも行われている農産物需要及び生産の長期見通しで示される自給率の指針とどこが違うのか疑わざるを得ません。食料自給率を政策目標として位置づけた以上、目標達成については断固政府の責任のもとに実行するとなぜ言い切れないのでしょうか。この点について、農水大臣の見解をお聞かせください。  次に、構造政策に関連して質問いたします。  法案では、効率的かつ安定的な農業経営の育成に向けて、基盤整備や規模拡大、専業農家の育成などを挙げております。しかし、これらの考え方は、従来の構造政策と基本的に同じであり、新鮮味に欠けるものであります。  これまでも自立経営農家や中核農家の育成が方針化され、平成四年のいわゆる新政策では、十年程度後の農業構造のイメージとして、基幹となる個別経営体を三十五万ないし四十万、組織経営体を四ないし五万といった具体的な数字を示しましたが、現状ではおおよそ実現可能とは思われません。このような状況を、政府はどのように認識しているのでしょうか。  また、法案では、農産物価格を需給事情や品質評価に反映させるとしております。農産物貿易の自由化と農産物の市場価格化が今後ますます進んでいけば、最も大きな影響を受けるのは、これまで国策として規模拡大を進めてきた専業農家であろうと思います。現状でも、多くの大規模農家は、農産物価格の低迷や土地改良負担金などのために経営が圧迫され、離農が相次いでおります。このような中で今以上の市場原理が導入されれば、経営破綻する専業農家が急増することも想定されます。  法案では、価格の著しい変動の際の影響緩和策について書いておりますが、専業農家への所得確保支援策について、具体的にはどのような施策を想定しているのでしょうか。農水大臣の考えを伺います。  次に、条件不利地域政策について伺います。  これまで、中山間地などの条件不利地域に対するデカップリング制度の導入については、多くの議論がありました。基本問題調査会でも、賛否両論であったと伺っております。しかし、地域社会の維持や自然環境、景観の保全という視点からも、今後の条件不利地域政策として、デカップリング制度を取り入れるべきであると思います。  政府も、デカップリング制度の導入に向け、現在具体的な検討を進めていると伺っておりますが、法案を見ますと、中山間地等において、農業の生産条件に関する不利を補正するとなっております。これは、平地農業との生産費の格差を是正するといった程度のものと読み取れますが、果たして、そのような施策で、条件不利地域における持続的な営農活動が可能でしょうか。  また、中山間地などの条件不利地域の抱える課題は、それこそ地域ごと千差万別であります。それに対し、国が基準を決めて、一律的に個人給付を行うというのも、その効果には疑問が残ります。むしろ、地域の実情を熟知した自治体がみずから計画を作成し、国はその計画実施のための一括交付金を交付するというスタイルの方が望ましいと思います。そして、交付金の給付対象は、個人、集落、グループを問わず、自治体レベルで判断するようにすれば、より効果的ではないでしょうか。  条件不利地域のデカップリング制度について、農水大臣は具体的にどのような構想をお持ちか、伺います。  最後に、WTO次期農業交渉との関連で伺います。  WTO交渉は、いよいよ来年から交渉が開始されますが、その前哨戦ともいうべき閣僚会議や事務レベルの会議が相次いで開かれつつあります。特に、五月十一、十二日に東京で開かれる四極通商会議で事前交渉が本格化し、十一月末にアメリカで開かれる第三回WTO閣僚会議で交渉方式や対象分野が決定されると伺っております。  総理は、日米首脳会談で、鉄鋼など日米通商問題とは別に、WTO交渉成功のため両国協力強化を確認したと報ぜられておりますが、具体的にどのような話し合いが行われたか、伺っておきたいと思います。  あわせて、七月末の総理訪中の日程もあるようでありますが、中国のWTO加盟問題について、どのような方針で、どのように対応するのか、政府の基本的考え方も伺っておきたいと思います。  また、中川農水大臣も連休中にEU首脳と会談してこられましたが、次期交渉に向けた交渉方式等で一致したのか、具体的な話し合いの内容について伺っておきたいと思います。  WTO交渉については、今さら申し上げるまでもありませんが、あくまで自由貿易を推進するルールを確立するための交渉であり、保護主義とは相入れないものであります。政府は、アメリカやEUと連携を図りながら、次期WTO交渉を成功させ、世界の自由貿易を進めることを基本的立場としておりますが、その一方で、農業分野については、米の関税化の実行を初め、この法律では、農業の多面的機能の発揮や中山間地域などへの直接支払いを準備しております。  つまり、一方で、世界の自由貿易確立のための交渉を行い、一方で、競争力のない農業分野については、いかにして緑の政策に政策転換するかに腐心しておりますが、この法案内容は極めて抽象的であり、国際交渉の模様眺めをしながら国内政策をおいおい詰めていくという、腰の据わっていない姿勢に見えて仕方ありません。  政府のWTO交渉に臨む基本姿勢と、各分野と関連しつつ農業交渉にどのように臨むかを伺い、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  47. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 堀込征雄議員にお答え申し上げます。  まず、現行農業基本法の総括等についてお尋ねがありました。  現行基本法につきましては、経済社会の変化の中で、食料や消費者の視点が十分でない等の問題が生じてきております。また、食料自給率の著しい低下や、多面的機能の発揮に対する国民の期待の高まり等、新たな対応を必要とする事態も生じております。これらを踏まえ、新たな理念に基づき、政策を再構築しようとするものでございます。  基本法改正に当たりまして、農政改革についてのお尋ねがありました。  本法案は、我が国経済社会や食料・農業・農村をめぐる情勢の大きな変化を踏まえ、新たな基本理念のもとに政策を再構築しようとするものでありますが、これにあわせて、これまでの施策や事業のあり方、国と地方の役割分担、行政の組織や運営のあり方、関係団体の役割等についても十分見直しをしてまいる所存であります。  次に、日米首脳会談におけるWTO交渉関連のやりとりついてのお尋ねがございました。  クリントン大統領との会談におきましては、WTOの次期交渉の開始に向けまして、日米両国が主導的な役割を果たしていくことで意見が一致したところであります。  中国のWTO加盟問題につきましてでありますが、我が国は多角的貿易体制強化の観点からも、中国のWTO早期加盟を支持しており、さきの日米首脳会談でも、中国の本年中の加盟実現に向けて両国協力することで意見が一致いたしました。我が国は、さらなる自由化約束を働きかけ、残るサービス分野の日中協議を早期に妥結すべく努力いたしてまいりたいと存じます。  WTO次期交渉についてのお尋ねでありましたが、我が国は、二〇〇〇年からWTOにおいて開始される次期交渉は、農業サービス等の合意済み課題に加え、鉱工業品関税や投資ルールの策定を含む包括的な交渉とし、三年程度の短い期間で成果を上げるべきとの立場でございます。  最後に、次期農業交渉に臨む我が国の基本姿勢についてのお尋ねでしたが、食料の安定供給と農業、農村の持続的発展を図り、二十一世紀に向け農業者が明るい展望を持って農業に取り組めるよう、次期交渉では、農業の多面的機能や食料の安全保障、輸出入国の貿易関連措置の状況を踏まえた貿易ルールの確立を積極的に主張してまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣中川昭一君登壇
  48. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) お答え申し上げます。  まず、食料自給率についてのお尋ねですが、本法案では、政府が基本計画で食料自給率の目標を定めることが明記されております。しかし、自給率の向上は、我が国の国土条件などから、現実問題として相当の困難を伴うものと考えられます。  かつ、自給率の向上は、国内で生産されたものが消費者や実需者に選択され、その需要が増加することを通じて初めて実現できるものでありますから、食料自給率は、生産、消費という関係者の行動のあり方に大きな影響を受ける性質のものであります。このため、食料自給率の目標設定には、政府だけではなく、農業者、食品産業、消費者等の関係者がそれぞれ一体になって取り組んでいくことが不可欠であります。  こうした観点から、本法案では、食料自給率の目標は、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めることが明記されるものでありますが、政府が目標を定め、必要な施策の推進の責任を負うことは、法律規定上明確であります。  次に、構造政策についてでありますが、農業の持続的発展を図るためには経営感覚にすぐれた効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これが農業生産の相当部分を担う農業構造を確立することが重要であります。このような観点のもと、新政策のもとで発足させた認定農業者制度につきましては、着実な進展を見せ、認定農業者も現在約十四万人に上っており、各地域の農業において中核的な役割を果たしつつあります。  しかし、農政の目指す農業構造の実現のためには、認定農業者等の意欲ある担い手の一層の確保育成を図る必要があり、資本装備、雇用確保、技術向上等、全般にわたる支援策を強化してまいりたいと考えております。  次に、専業農家の所得確保支援策の具体的な内容についてでありますが、今後の農業生産においては、消費者の需給動向が生産サイドに的確に伝わるようにすることにより、需要に即した生産の展開を促していくことが重要であります。このため、価格政策について、農産物の価格が需給事情や品質評価を適切に反映して形成されるよう、見直しを行っていく考えであります。  あわせて、価格の著しい低落時に、専ら農業を営む人を初め、育成すべき農業経営が安定的に営農を継続できるよう経営安定措置を講じていくこととしており、今後、麦、乳製品、大豆等、品目ごとの生産、流通状況を踏まえつつ、順次施策の具体化を進めていく考えであります。  既に、麦及び牛乳・乳製品につきましては、新たな麦政策大綱、新たな酪農・乳業対策大綱において、価格政策の見直しと経営安定措置内容実施についての方向づけを行ったところであり、現在その具体化のための作業を進めております。また、大豆等につきましても、本年秋の価格決定までに施策見直しの方向づけを行う考えであります。  次に、条件不利地域のいわゆるデカップリング制度についてでございますが、中山間地域等につきましては、耕作放棄地の増加等により、公益的機能の低下が懸念されています。このため、農政改革大綱において、耕作放棄を防止し、公益的機能を確保するという観点から、中山間地域等への直接支払い制度の実現に向けた具体的な検討の枠組みを明示したところであります。  直接支払いの導入は、広く国民の理解を得る観点からも、また、WTO協定の緑の政策とする必要があり、同協定では、農業生産条件の不利性の格差の範囲内で直接支払いを行う旨、規定されております。この点も踏まえ、平成十二年度概算要求時までに、国民の合意が得られるような仕組みについて、具体的に検討を進めていきたいと考えております。  なお、中山間地域等への直接支払いは、中山間地域の抱えるすべての問題に対処できるものではないと考えておりますので、中山間地域に見合った農業生産基盤の整備や定住条件の改善を含め、中山間地域全体の振興を図っていくことが必要であると考えております。  次に、今回の私とEU首脳との会談内容についてでありますが、EUのブリタン副委員長及びフィシュラー農業委員と、次期WTO農業交渉に向けての意見交換を行ってまいりました。  この会談におきましては、私から、我が国としては新たな基本法案の基本理念である国内農業を基本とした食料の安定供給の確保農業、農村の有する多面的機能の発揮等の重要性が十分反映された内容の合意が得られるよう積極的に主張していく考えであることを申し上げ、EUとの間で相互理解をさらに深め、連携協調を進めていきたい旨、説明いたしました。  これに対し、EU側からは、農業の多面的機能に関する日本側の考えについてはよく理解ができること、また、次期農業交渉の成功に向けて日本とEUの連携を深めることが重要であることについて話があり、あらゆるレベルで意見交換を続けていくことで意見が一致いたしました。  最後に、次期WTO農業交渉に臨む基本姿勢についてでありますが、先ほど総理よりお答えした基本的な認識のもと、いずれの国にとっても公平かつ真に公正な貿易ルールの確立を図るため、次期交渉では次のような論点を強力に主張し、最終合意内容我が国考え方を十分反映させてまいりたいと考えております。  第一に、農業の多面的機能や食料の安全保障の重要性、さらに国内の農業政策の円滑な実施農業生産の文化への十分な配慮がなされること、第二に、輸出国、輸入国の権利義務のバランスを確保すること、第三に、各国の農業が共存できる国際規律とすることであります。  私といたしましては、このような基本的な姿勢のもと、今後さらに関係者が一体となって、議論、検討を進め、国民的共通認識を得ながら、揺るぎない交渉方針を築き、後世に悔いのない交渉結果を獲得すべく、省を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)     —————————————     〔議長退席、副議長着席〕
  49. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 木村太郎君。     〔木村太郎君登壇
  50. 木村太郎

    ○木村太郎君 改革クラブの木村太郎です。  私は、公明党・改革クラブを代表して、ただいま議題となりました食料・農業農村基本法案につきまして、小渕総理大臣を初め関係大臣に質問をいたします。  昭和三十六年に農業基本法が制定されてから三十八年が過ぎ、この間、内外の環境は激変し、農業についても、食料自給率の低下、農業就業者の減少、高齢化、後継者の問題など、大きく情勢が変化しました。これまで政府は、現行基本法から離れた価格政策中心の農政を展開してきたにもかかわらず、基本法の見直しそのものを問題にしてこなかったのであります。  現行の基本法の規定と現実の政策の間に大きな乖離ができて、食料・農業農村基本法案、いわゆる新農業基本法案の制定の動きとなってきたわけですが、この乖離と、さきの農政改革大綱に記載のある戦後の農政への反省について、総理はどのように認識されているのか、お聞かせください。  これまで政府は、基本法を見直すよりも個々の施策を見直す方を重要視し、個別政策を充実させることが我が国農業の振興に結びつくかのような姿勢をとってきましたが、ここに来て基本法の見直しに方針転換をした理由について、総理にお伺いします。  私は、日本農業は崩壊の危機に直面していると思います。  例えば、食料自給率は、現行基本法が制定された昭和三十六年にはカロリーベースで七九%でしたが、食生活の質的変化などにより、平成九年には四一%までに低下しています。一年に一%の割合で低下しており、このままでは日本は、二十一世紀には、農業が存在しない、食料をほとんど海外に依存する国になるのではないかと危惧いたします。日本農業崩壊を食いとめる有効な歯どめの措置を、具体性と現実性をできる限り加味した基本理念を、本法案において示す必要があると思います。  また、WTO農業協定にどう対応していくかという大きな課題があります。  WTO農業協定は、単なる米の関税化だけの問題ではなく、国内農業政策や国境調整措置について国際ルールをつくり、世界各国がこの一定ルールに従って農政を展開していくという約束であります。今後予想し得る展開は、このルールに従いさらに削減目標が設定され、全世界的に農業保護が減らされていくことですが、この国際ルールに対して、日本の農政はどう対応していくのか。  また、WTO農業協定で日本が関税化の舞台に乗ったことで、輸出国の強い関税引き下げを求める圧力にさらされ、急速に完全自由化の状況に至る可能性を、農家サイドから心配する声が高まる中で、我が国農業の維持発展をどう図っていくのか、総理の見解をお伺いします。  日本農業は、関税化により国際的な完全自由化の道を進んでいくことになり、国際協定といういわば外圧によって新基本法案の制定の必要に迫られ、急遽方針転換をしたと指摘する声もあります。しかし、新農業基本法案が重要であることは間違いなく、掲げている四つの基本理念も時代に合ったものと考えます。問題は、これを実現するためにどのような具体策を用意し、魂を入れるかであります。  基本問題調査会の答申にあったとおりに、国内農業生産を基本に位置づけ、可能な限りその維持拡大を図るべきと法案に明記して、取り組み姿勢を明確にすべきと考えますが、総理にお伺いいたします。  さて、基本計画に掲げる食料自給率目標設定は、立地条件に合った地域農業の生産振興指標を明確にするという点からも重要と考えます。  また、農産物輸出国の過剰生産の解消を主目的としたウルグアイ・ラウンドでは、輸出国が断然有利になっており、輸入国には自由化により市場を開放する義務がありますが、輸出国には輸出の義務づけがありません。輸出国に何らかの事情が発生したときには、輸出国は国内事情を優先することは明白であることから、食料自給率向上は絶対に必要であります。  しかし、重要なのは、自給率目標を掲げること自体ではなく、その目標がいかにして実効を上げるかということであります。目標だけならば、現行の基本法のもと、平成七年に出した第六次長期需給見通しによっても、十年後の、つまり平成十七年の食料自給率の目標値を四六%としていましたが、今や四一%に低下し、しかも政府には何も責任が発生していないのです。目標実現を担保するような新しい政策なり措置がぜひとも必要であり、それがなければ絵にかいたもちにすぎないと思います。  また、競争原理を強く意識し過ぎれば、もうけるものしか生産しない状況にもなりかねず、やはり国内農業、農産物の均衡ある生産体制や所得保障の政策を明確にしながらの自給率向上に努めることが大切であり、新基本法案において政策の実効性の担保はどうなっているのか、中川農林水産大臣にお伺いします。  次に、担い手の確保対策についてお伺いします。  現状の日本は、高齢化社会に直面し、国際化の中で自由競争社会を目指さざるを得ず、年金、福祉、雇用確保などの国民生活のセーフティーネットを次々に外して、それがために将来生活の安定が見えず、国民は消費を渋っている状況にあります。農業もこれに似ていて、農業の将来展望が描けていないから担い手が育たないのではないでしょうか。  担い手確保のためには、新基本法案農業のセーフティーネットを示し、安心して農業経営ができる環境を、つまりは農業を職業として選択できる姿に整える内容でなければなりません。単刀直入に言えば、納得する所得が得られるかどうかであります。  欧米では、国により形態は異なりますが、最低価格による無制限買い上げという最低価格保証がセーフティーネットとなっています。我が国はどのような具体策をとるのか、基本法案にあるような抽象的な表現ではなく、明確に農林水産大臣からお答え願います。  農業への新規参入者の受け入れ対策を強化するため、地域の実情に応じた自治体レベルでの独自の取り組みが増加していますが、このような動きを後押しするような、そして画一的でない国の施策を工夫すべきと思います。特に、土地、施設などの生産資本を確保できる受け皿として、例えば農業団体等によるリース制度の活用があると思いますが、それらの支援体制についてどのように考えているのか、農林水産大臣にお伺いします。  さて、担い手の確保対策、つまり強い経営体を育てるには、同時に、作業が効率的にできるような農地が集積される必要があります。加えて、食料生産が単位収穫量と耕作地面積の掛け算に依存している以上、自給率向上のためにも優良農地の確保を、目標数字として示すことが重要と考えます。  新基本法案では、農地総量に関し規定が示されていません。優良農地とはどのような農地を指し、その面積をどの程度必要と試算しているのでしょうか。また、優良農地を将来にわたり確保していくために、規制と特典を明示すべきと考えます。いかがでしょうか。  例えば、永久あるいは数十年にわたり農地として使用していく場合、これらの農地を公共の財としてとらえ、基盤整備の経費を国庫が全額負担するなどの思い切った施策も検討に値すると考えます。私有地に税金を投入するのでありますから、農地の所有者が私的財産権を主張し、農業以外の用途に転用した場合には、それまでに投下した整備経費相当分を返還させることを担保として、国庫による基盤整備について国民に了解していただくというような提案など、以上、優良農地の確保について、農林水産大臣にお伺いします。  従来の日本農業は、稲作中心でありました。今後の米の需要増加には限りがあるため、生産者の判断が前提にではありますが、稲作から他作目への転換、誘導策が必要と考えます。この場合、生産調整対策は、行政が従来と同じような手法で主導し、目標面積の一〇〇%達成だけが重要視されてきた感があります。  今後、稲作の経営転換を進めていく場合、個々の農業経営や農協の持つ流通戦略などを基本とした、地域の主体性が生かされるような誘導策を講ずることが重要であり、その仕組みも極力簡素化してわかりやすいものとすることが必要ではないかと思います。さらには、義務加入になっている稲共済や地域農業を束ねる農協が、耕作放棄地を含めて生産管理を直接行う仕組みも考えられますが、農林水産大臣の見解をお伺いします。  もちろん、稲作については、規模拡大、専作だけではなく、兼業の稲作スタイルも大切にすべきは当然であります。  次に、新基本法案では、地方と国の役割分担を明記して、地方の創意工夫を大切にするとの理念が読み取れます。  例えば、認定農業者などに施策を重点化、集中化するとしていますが、これは従来の米の生産調整に代表されるような、上意下達型の、全国一律型の手法による農政への反省を踏まえたものと理解してよいのでしょうか。地域や個人が目指す経営設計に対応して、おのおのに合った細やかな施策をとるためにも、実情をよく把握している地方に対して大幅に権限や財源を移譲し、いわば地域重視型農政に転換するよう工夫すべきと考えますが、これらについて、総理並びに野田自治大臣の見解をお伺いします。  新農業基本法案を策定する前に、農林水産省は、全国各県に幹部を派遣して、農業者に対して説明会を開催しましたが、反応はどうであったのか、また、得るところは何であったのでしょうか。それらの説明会等により意見をくみ上げ、現地の動きや要求を的確にとらえた施策の組み立てが重要であります。農業関係予算については、思い切った事業のスクラップ・アンド・ビルドを検討すべきと考えますが、宮澤大蔵大臣並びに農林水産大臣にお伺いします。  以上、私見を交えながら申し上げてきましたが、最後に、私の地元津軽は今、田植えの始まった水面に、日本一の生産を誇るリンゴの白い花が映え映る季節を迎えています。その農村地域では時に、農業の魂、つまり農魂という文字を刻んだ石碑などを目にいたします。総理の地元上州は空っ風にかかあ天下で有名ですが、空っ風吹く中でも、全国一の生産を誇るコンニャクイモや養蚕、二位、三位を誇るキャベツ、小麦、ホウレンソウ、ナス、ヤマイモなどを生産する農家の汗流す姿が、きょうもあると思います。  私たちは、新農業基本法制定という大きな試みに向かおうとする中で、政治の分野からもいま一度、農魂という言葉を再認識し合おうではありませんか。以上申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  51. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 木村太郎議員にお答え申し上げます。  現行基本法と現実の農政の乖離等への反省についてのお尋ねでありました。  現行基本法に個別の施策とのつながりを確保する仕組みがないなど、これまでの農政の現状を踏まえ、本法案では、基本計画を定めるとともに、これを定期的に見直すことにより、実際の政策と基本法の整合性を担保することといたしております。  基本法の見直しを行うに至った理由についてお尋ねですが、これまでも、経済社会情勢の変化に対応し、個別の施策を見直してきたところですが、食料・農業・農村をめぐる事情の大きな変化や、国民からの新たな要請に対し的確に対応すべく、今般、新たな基本理念のもとに政策を再構築しようとするものであります。  次に、我が国農業の維持発展のため農業協定にどのように対応するかとのお尋ねでありましたが、食料の安定供給と農業、農村の持続的発展を図り、二十一世紀に向け農業者が明るい展望を持って農業に取り組めるよう、農業の多面的機能や食料の安全保障、輸出入国の貿易関連措置の状況を踏まえた貿易ルールの確立を、積極的に主張していきたいと考えております。  国内農業生産の維持拡大を実現するための取り組み姿勢のお尋ねでありました。  本法案では、国民に対する食料供給のあり方について国内農業生産を基本とすること、及び基本計画におきまして食料自給率の目標を定めることが明記されていることから、国内農業生産を基本に位置づけて、可能な限りその維持拡大を図るという取り組み姿勢は、明確に示されていると考えております。  最後に、地域重視型農政への転換についてのお尋ねがありました。  本法案は、我が国経済社会及び食料・農業・農村をめぐる情勢の大きな変化を踏まえ、新たな基本理念のもとに政策を再構築しようとするものであります。その中には、国と地方公共団体の適切な役割分担や地域の特性に応じた施策の展開など、地域の実情を重視した考え方が盛り込まれておるところでございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣中川昭一君登壇
  52. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) まず、新しい基本法案における食料自給率の向上の担保措置についてのお尋ねですが、食料自給率の目標については、政府が作成する基本計画の中で目標数値を明らかにすることを考えております。この基本計画においては、単に目標数値を定めるだけではなく、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策についても明らかにすることとしております。  また、本法案においては、食料・農業・農村に関する基本的施策の方向について規定しておりますが、これらの多くは食料自給率の向上にも寄与するものと考えております。  具体的施策といたしましては、地域段階における生産努力目標の策定の促進、消費者ニーズの生産サイドへの的確な伝達を可能とする価格形成の実現、技術の開発普及による品質の向上、生産性の向上と生産基盤の強化、食生活の見直し、改善に向けた情報提供や啓発活動等を考えております。  次に、担い手確保についてでありますが、今後の農業構造、経営対策の基本的方向は、他産業並みの年間労働時間で他産業並みの生涯所得を実現できるような農業経営が農業生産の大宗を占める農業構造を確立することであります。このような効率的、安定的な農業経営が育成されるよう、意欲ある担い手に施策を集中し、その施策の内容について、資本装備の充実、労働力の確保、経営管理能力、技術の向上等、経営全般にわたる支援策として体系的に整備していきたいと考えております。  次に、農業への新規参入者の受け入れ体制についてでありますが、各地域において自治体を中心に、新規就農に際しての隘路となっております技術の習得、資金の手当て、農地の確保解決するため、地域の実情に応じた支援取り組みが行われております。  農林水産省といたしましても、こうした取り組みを後押しし、新規に就農しようとする人の技術、知識のレベルや資金の状況に応じて的確な支援を行うため、県立農業大学校等における段階的な研修教育の実施、就農前の技術習得のための研修資金等について無利子資金の貸し付け、農地の確保についての情報提供等を行っております。  また、特に、経営基盤を持たない新規参入者が円滑に就農できるための資本装備を進めるに当たっては、リース事業が有効な手段であることから、離農農家等の農地、機械、施設をリースする補助事業をあわせて実施しております。今後とも、大綱に沿って、新規就農対策の一層の充実を図ってまいります。  次に、優良農地についてでありますが、優良農地につきましては、いわゆる農振法におきまして、集団的な農用地、土地基盤整備実施された農用地等を農用地区域として設定し、その確保に努めてまいりましたが、今回、同法改正案において、これらを優良農地の基準として明確に法定化することとしております。  また、今回の農振法の改正案においては、あわせて、農用地等の確保に関する基本的な方向、農業振興地域の指定基準に関する事項等を内容とする国の基本指針を定めることとしておりますが、具体的に優良農地をどの程度必要とするかについては、新基本法の基本計画における食料自給率の目標や、品目ごとの生産努力目標等とあわせて検討してまいります。  次に、優良農地の確保に当たっての規制と特典についてでありますが、優良農地の確保につきましては、農業振興地域制度において、優良な農地を農用地区域として設定し、農用地区域内における農地転用は認めないとするとともに、圃場整備事業等の農業基盤整備事業につきましては、農用地区域において重点的に実施する等の措置を講じてまいりましたが、今後とも、これらの適切な措置により、優良農地の確保に努めてまいりたいと考えております。  なお、基盤整備の経費につきましては、優良農地の整備を図るため相応の国庫負担をしておりますが、全額国庫負担とすることは、基盤整備が私有財産の価値を増す側面も有しておるため、困難と考えます。  次に、稲作の経営転換についてでありますが、稲作を中心とする水田農業につきましては、新たな米政策大綱等で示された方向に沿って、米の価格形成がより市場実勢を反映した形となるように、産地の判断と創意工夫に基づき、需給動向に応じた米生産と、産地の特性を踏まえた他作物生産に取り組むことが重要と認識しています。  このため、各産地の生産者、生産者団体の主体的経営努力が生かされ、適地適作にも資するよう、各種需給・価格情報の積極的な開示と提供、地域条件に合った助成メニューの提示等を行っているところであります。今後とも、米の生産調整を初めとする水田農業の展開に当たり、生産者、生産者団体の意向を踏まえつつ、地域の主体性や取り組みやすさの点にも配慮していく考えであります。  次に、農協の取り組みについてのお尋ねでありますが、新しい農政の展開において、農協は、担い手の確保育成、営農・経営指導の充実、各品目の生産対策に資する経済事業の推進、農地の流動化、耕作放棄地の解消への取り組み等、積極的な役割の発揮が期待されております。このため、農協が、地域農業の活性化の主体として、地域の実情に応じ、例えば農地保有合理化法人として、耕作放棄地を含めた地域の農地の管理等に積極的に取り組んでいくよう指導してまいる考えであります。  次に、農業者に対する説明会についてでありますが、農林水産省は、昨年十二月に、農政改革の基本的な考え方と具体的な施策の方向を、農政改革大綱及び農政改革プログラムとして取りまとめましたが、その内容につき関係者の理解を深めるとともに、忌憚のない御意見をいただくため、本年一月から二月にかけて、農林水産省の課長級以上の職員を各都道府県に派遣し、意見交換会を開催いたしました。  こうした試みはこれまで例を見ないものであり、生産者を初めとする現地の関係者の方々にも大変好評であったというふうに理解をしておりますし、また、派遣された職員にとっても、現場の実態を肌で感じる貴重な機会となったと考えております。  最後に、農業関係予算についてのお尋ねでありますが、新たな基本法案においては、食料の安定供給の確保農業、農村の多面的機能の十分な発揮を図るという基本的な考えに立ち、食料・農業・農村政策を総合的、一体的に推進していくこととしております。このような施策の展開に当たっては、従来の農業関係予算全体についても、従来の事業の効果や地域のニーズ等も勘案しつつ、必要な見直しを行い、新たな基本法の考え方に沿った予算編成としていくことが重要であると考えております。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  53. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの食料・農業農村基本法案は、食料供給力の低下、農村の過疎化、高齢化など、現下の問題に対処するために、事業のスクラップ・アンド・ビルドなどを含めまして、農政の再構築を図ろうとするものと承知をいたしております。  財政当局といたしましても、これを受けまして、農業関係予算がさらに重点的、効率的なものとなりますよう、極力支援を惜しまないつもりであります。(拍手)     〔国務大臣野田毅君登壇
  54. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) 地域重視の農政についてのお尋ねでありますが、新基本法案において、地方団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その自然的、経済的、社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施する責務を有するものとされております。  したがって、今後、権限や財源の移譲をより一層進めることなどによりまして、地方団体が地域の実情に応じた施策を推進することができるよう努める必要があると考えております。(拍手)     —————————————
  55. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 一川保夫君。     〔一川保夫君登壇
  56. 一川保夫

    ○一川保夫君 私は、自由民主党及び自由党を代表いたしまして、ただいま御提案のありました食料・農業農村基本法案について質問をいたします。  我々は、農業は国家形成の基本であるとの理念のもとに、今日、全国で農業に意欲を持って取り組んでいる農家の方々の意見を直接聞いたり、また農政上課題を持っている現場に乗り込み、その結果を党の基本政策に反映するよう努力してまいりました。  現行の農業基本法が昭和三十六年に制定されて以来、この基本法に基づき、農業従事者を初め農業関係者は、我が国農業発展とその向かうべき新たな道筋を目指し、今日まで不断の努力を重ねてまいりました。まず、その中でも特に、経済社会が激動する厳しい情勢の中で、農業に従事されてきた方々の御努力に対し、深い敬意を払いたいと思います。  さて、しかしながら、今日の我が国農業の現状を見るときに、急激な国際化の進行により、農産物自由化の拡大及び輸入農産物の増加、自給率の低下などにより、極めて厳しい立場に立たされております。また、翻って農村の現状を見るときに、農業従事者の減少、さらには急激な高齢化現象、過疎化の進行、耕作放棄地の増大などにより、農村地域そのものの崩壊が心配されるような状況と相なっております。  このような現状にありまして、我々は、今日までの農政の展開で解決できなかったことを十分に反省しつつ、今こそ我が国農業の果たすべき役割と重要性を強く認識し、新たな希望の芽を息吹かせ、そして力強くこれを支援し、国家の礎として農業を位置づけ、その持続的発展に努めることが必要であり、あわせて、農業従事者の意欲を奮い立たせる新たな基本法の制定が求められているというふうに思います。  私は、一方で、この新たな基本法は、国民の各界各層の期待にこたえるものでなければならないというふうに思っております。この新しい基本法制定の意義と、今後の農政のあるべき姿について、総理大臣及び農水大臣の考え方をお伺いしておきたいと思います。  次に、新たな基本法の理念、基本政策に照らし、当面の重要課題の取り組み方針をお伺いいたしたいと思います。  まず、政府はこの四月から米の関税化に踏み切ったわけでございますが、農業従事者、農業関係者が、当面最も関心を寄せているWTOの次期交渉についてお伺いいたします。  交渉において、輸出国側は、我が国のような輸入国に対し、さらなる関税水準の引き下げや、国内保護政策の削減を迫ってくるものと考えられますが、輸出国側の要請を丸のみにすれば、我が国農業、農村が致命的なダメージを与えられることは明白であります。よって、次期交渉においては、国内農業生産を基本とした食料供給の確保や、農業、農村の有する多面的機能の発揮の考え方やそのための施策が、国際規律の中で適正に位置づけられるように、最大限の努力をする必要があります。  こうした主張が国際社会で認められるためには、我が国が、特定分野に焦点を当てて先行して交渉を進めていくのか、あるいは全体の交渉バランスを考慮して包括的交渉を行うかなどの基本的な交渉スタンスを明確にし、我が国の国論を分裂させることなく、揺るぎない姿勢で交渉を行うことが必要であります。  我々は、次期WTOの交渉は、二十一世紀我が国農業のあり方を左右する重大な交渉であると認識いたしております。国論の一致はもちろんのこと、我が国農業、農村の特性を強調し、国際的な世論を形成するために、与党としましても、政府と一体となり、議員外交を積極的に展開していく方針であります。  この新たな基本法案のこれからの目指す方向と、こうした基本的な交渉スタンスについて、総理大臣及び農水大臣の考え方をお聞きしたいと思います。  次に、中山間地域の施策についてお伺いいたします。  現在、我が国の農村は、農業従事者の減少、あるいは高齢化や過疎化の急激な進展、耕作放棄地の増大等により苦しんでおりますが、そのほとんどがこの中山間地域と言われる地帯であります。しかし、この中山間地域は、農業生産活動はもとより、国土保全、水資源の涵養等の公益的な役割を果たしていることは、御存じのとおりであります。今後、このような地域に対する振興策を講じていくことが急務となっていると思います。  本法案では、中山間地域活性化の一環として、中山間地域に対し、直接支払い制度を導入することを念頭に置いて、生産条件の不利性を補正するための支援を行うとしております。ただ、直接支払い制度は、我が国農政では例を見ない制度であり、支払いの対象あるいは支払い額等の仕組みにについて、国民から理解を得られない可能性もあります。  よって、直接支払い制度の導入に当たっては、政策の透明性を確保し、努力している地域、努力している農民の皆さん方に対して、しっかりとした、報われるような制度を確立し、国民的合意が得られるように努力する必要があります。このような観点から、中山間地域に対する直接支払い制度の導入に向けた現在の検討状況、今後の取り組み方針について、農林水産大臣にお伺いいたします。  次に、食料自給率の向上のための政策と米の生産調整についてお伺いいたします。  今回の法案では、第十五条において、施策についての基本的な方針、食料自給率の目標等の事項を内容とする基本計画を定め、これを公表すると定めております。特に、我が国の農産物の大宗を占める米につきましては、その生産及び生産調整という政策の中で、転作、裏作について政策的にいかなる目標を掲げ、取り組んでいくのかが、食料自給率の目標の策定に際して最重要課題となることは言うまでもありません。  食料自給率の向上に向けての具体的施策と、米の生産調整についての基本的な考え方の整合性について、農林水産大臣の考え方をお伺いしたい、そのように思います。  次に、農村地域における伝統文化等の評価についてお伺いしたいと思います。  我が国農業と農村は、自然と共生しながら生活を営み、地域社会や文化を形づくってきた歴史的経過がございます。そのため、農村地域における伝統文化、文化的遺産、技術等は極めて多種多様であり、農耕民族とも言われる我が国社会の文化の原点とも言えるものであります。農村に根づく我が国固有の歴史的伝統文化は、自然の恵みに対する感謝、畏敬の念をあらわし、豊作を願ってのものであり、その伝統文化の維持発展を図ることが、国家形成の基本としての農村社会を守り、農業、農村を発展させ、ひいては心の豊かさ、人間形成にもつながるものだと考えております。  農村地域の伝統文化等に対する評価とこれからの取り組みについて、農水大臣及び文部大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  最後になりますが、国民の総意をもって、二十一世紀農業、農村のありようを位置づけ、農政の方向づけを明確にし、農業に従事し、農村に居住する人々に自信と誇りが持てるように、力強く温かみのある政策を展開するための指標として、二十世紀の末のこの時期において、この新しい基本法を制定し、議論することは、まことに重要であり、その意義は大きいものがございます。  我が国農業が、新たな時代に向けて着実に発展をし、国民経済国民生活の向上に大きく寄与することを期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  57. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 一川保夫議員にお答え申し上げます。  まず、新しい基本法制定の意義等のお尋ねでありましたが、新たな基本法案は、国家社会における食料・農業・農村の位置づけを明確にし、農業者だけでなく国民全体の視野に立って、基本理念と政策を再構築しようとするものであります。このことによりまして、農業者が自信と誇りを持って農業に励み、国民が安全と安心を得て暮らすための条件整備が図られるものと考えております。  次に、議員から、与党としても、政府と一体となって議員外交を展開していくとの積極的な方針をお示しいただきました。ぜひ、そうした議員外交を通じまして、世界のそれぞれの国々に対しましても、我が国の立場等につきまして十分認識を深めていただく御努力をお願いもいたしたいと思っております。  新たな基本法案内容とWTOにおける交渉スタンスとの関係について、加えてお尋ねがございました。  次期WTOの農業交渉におきましては、基本法案において基本理念として掲げた、食料の安定供給の確保や、農業、農村の多面的機能の十分な発揮という考え方、並びにこれに基づく施策が国際ルールの中で正当に位置づけられるよう、積極的に主張していきたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣中川昭一君登壇
  58. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) お答え申し上げます。  まず、新しい基本法制定の意義と今後の農政のあるべき姿についてでありますが、社会経済情勢の著しい変化や国際化の進展等により、食料自給率の大幅な低下、農業就業人口の低下と高齢化の急速な進展、中山間地域等における過疎化の進行という問題が生じるとともに、国民からは、農業、農村に対し、良質な食料の安定的な供給に対する要請や、多面的機能の発揮に対する期待が高まってきております。  このような状況に対応するため、新たな基本法では、国内農業生産を基本とした食料の安定供給の確保農業、農村が有する多面的機能の適切かつ十分な発揮と、その基盤となる農業の持続的な発展、農村の振興を基本理念として明定し、国家社会における農業・食料・農村の位置づけを明確化し、国民全体の視野に立って、政策体系の再構築をしていこうとしているものであります。  これらにより、農業者が自信と誇りを持って農業に取り組むことができ、国民の暮らしと命の安全と安心のもとが確固たるものになるものと考えております。  次に、議員から、与党として、政府と一体となり議員外交を積極的に展開していく方針を示しつつ、次期WTO交渉における交渉スタンスと本法案内容との関係についてのお尋ねでございますが、二十一世紀に向け、農業者が明るい展望を持って農業に取り組むことができるような交渉結果を獲得するため、先ほど総理からもお答えしたように、二十一世紀我が国農政の指針である食料・農業農村基本法案に掲げられた考え方や、これに基づく施策が、国際規律の中で正当に位置づけられることが必要であると考えております。  このような観点から、次期WTO交渉においては、新たな基本法案の基本理念である、国内農業を基本とした食料の安定供給の確保農業、農村の果たす多面的機能の発揮等が十分反映された内容の合意が得られるよう、我が国考え方を積極的に主張していきたいと考えております。  次に、中山間地域等に対する直接支払い制度についてでありますが、中山間地域等は、下流域の都市住民を初めとした国民の生命財産を守るという国土の保全、多様な食料の生産等に重要な役割を果たしているものの、耕作放棄地の増加等により公益的機能の低下が懸念されております。このため、農政改革大綱において、耕作放棄を防止し、公益的機能を確保するという観点から、中山間地域等への直接支払い制度の実現に向けた具体的な検討の枠組みを明示したところであります。  この大綱に基づき、本年一月に、中山間地域等直接支払制度検討会を設置し、対象地域、対象行為、支払い方法等について御議論をいただいているところであります。今後、本検討会での議論を踏まえ、平成十二年度概算要求時までに、政策の透明性をも含め、国民の合意が得られるような仕組みについて、具体的に検討を進めていきたいと考えております。  次に、食料自給率の向上についてでありますが、食料自給率の向上は、国内で生産されたものが消費者や実需者に選択され、その需要が増加することを通じて初めて実現されるものであり、生産者や消費者の行動が自給率の動向に大きく影響するという性質のものであります。  このため、食料自給率の目標の策定に当たっては、生産面では、自給率の低い小麦、大豆、飼料作物を初め、品目ごとに、品質、コスト面における課題を明確化した上で、課題が解決した場合に到達可能な水準を通じて生産努力目標を明らかにするとともに、消費面では、食べ残し、廃棄の抑制や、日本型食生活を踏まえた脂肪摂取の抑制等の取り組みを考慮していく考えであります。  これらの数字を積み上げながら、食料自給率の目標を策定する考えであります。また、その際、農地の面積につきましても、品目ごとの作付面積など、自給率目標の達成に必要な指標として明らかにしていくことを考えております。  しかしながら、食料自給率の持つこのような性格から、その目標の達成には、政府だけではなくて、農業者あるいは食品産業関係者、消費者等のそれぞれの方々の立場での、一体となった取り組みが不可欠であるというふうに考えております。  次に、米の生産調整についてのお尋ねでありますが、米について、国内的に大幅な需給ギャップが存在しているという現状で、生産調整の推進を図るということは避けて通ることのできない課題と認識しております。今後とも、米の生産調整の着実な実施により、国内産米の需給と価格の安定を図るとともに、食料自給率の向上の観点も踏まえ、土地利用型農業全体の展望のもとに、品質の改善、生産性の向上等により、麦、大豆等の生産振興を図ってまいる考えであります。  最後に、農村の伝統文化等についてのお尋ねがありました。農村に根づく伝統文化や文化的遺産の多くは、地域において営まれる農業生産とこれに携わる人々の生活の中ではぐくまれ、歴史的な経緯の中で受け継がれてきたものと考えております。こうした農業生産活動に関連した農村の伝統文化は、我が国にとってかけがえのない財産であり、将来にわたってその保全、伝承が必要なことから、本法案においては、農業の多面的機能として文化の伝承を位置づけております。  これら地域の伝統的な文化を伝承するためには、その基礎となる農業生産活動の維持継続を確保することに加え、特にこの多面的機能の一つであります文化、歴史あるいは生き物、そしてまた自然といったものについては、特に子供たちへの教育という側面にも注目をし、文部省とも緊密な連携をとりながら、また関係省庁ともよく連携をとり、地方公共団体、民間団体との連携も図りつつ、地域で取り組まれている農業史跡の保存や、伝承活動に対する支援や顕彰、国民が伝承文化に親しみ、農業生産活動とのかかわりやその今日的意義を普及する機会の充実等の施策を推進することが重要であると考えております。(拍手)     〔国務大臣有馬朗人君登壇
  59. 有馬朗人

    ○国務大臣(有馬朗人君) 農村地域における伝統文化に対する評価及び取り組みについてのお尋ねでございますが、農村地域では、祭礼行事、伝統芸能、農具等が有形無形の文化財として伝承されており、地域固有の文化が形成、伝承されているものと認識いたしております。  文部省といたしましては、これまでも、農林水産省を初め関係省庁や地方公共団体と連携しつつ、これらの文化財の保存、活用に努めてきたところでございます。また、先月出されました生涯学習審議会の中間まとめにおきましても、地域の文化を伝える活動など、地域に根差した子供たちの体験活動を展開することなどが提言されているところであり、文部省といたしましては、今後とも、伝統文化の伝承のための施策の充実に努めてまいります。(拍手)     —————————————
  60. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 中林よし子君。     〔中林よし子君登壇
  61. 中林よし子

    ○中林よし子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております食料・農業農村基本法案に対して、総理に質問をいたします。  総理我が国の食料、農業は、未曾有の危機に直面しています。食料自給率は世界最低水準の四一%に低下し、農家は何をつくっても採算がとれず、農家数は、八〇年の四百六十六万戸から九八年には三百二十九万戸と、百三十七万戸も離農が進み、それは大規模農家にまで及んでいます。  また、農家の高齢化の進展は、専業農家四十三万戸のうち二十一万戸は六十五歳以上の高齢農家という状態です。耕作放棄地はこの十五年間に七万ヘクタールも増加し、実に四国全体の耕地面積に相当する十六万二千ヘクタールにも及んでいます。このままでは、我が国農業が崩壊し、食料自給の基盤を失った国になりかねません。  総理、このことは、輸入自由化を前提とした選択的拡大、及び多くの農家を切り捨てる規模拡大を柱とした現行農業基本法の破綻を明確に示したものです。その真剣な反省とそれに基づいた農政転換こそが、根本的に求められているのであります。総理のこの点での認識をまずお伺いいたします。  その上で、本法案を見ると、さまざまな重大な問題が存在しております。  第一の点は、本法案が食料自給率引き上げを目指すものになっていないという点です。  農業は、国民の生存に欠かせない食料の生産を担うとともに、国土や環境の保全など多くの役割を果たしています。農業を崩壊の危機から救い、本格的な再建に踏み出すことは、待ったなしの国民的課題であります。とりわけ、極端に低い食料自給率の回復向上は、食料不足が予測されている二十一世紀を目前にして、国民の生存にかかわる大問題です。  本来、農業に関する基本法であるならば、農業を文字どおり国の基幹的産業に位置づけ、この食料自給率向上を基本法の大命題に据えなければなりません。そして、国の責任で食料自給率を一刻も早く五〇%へ引き上げ、さらに六割、七割へと自給率を引き上げることを明記すべきであります。総理、あなたが国民の生存に責任を負っているならば、そうすることが当然ではありませんか。明確にお答えください。  総理、これに対して本法案は、総則において食料自給率という字句さえなく、ましてや食料自給率の引き上げが基本理念としても掲げられず、国の責任で引き上げるとの言及もなく、目標数値さえも明記されていません。これでは、とても食料自給率引き上げを目指すとは言えず、国民的課題にまともにこたえていない基本法案であると言わざるを得ません。答弁を求めます。  第二の点は、WTO体制を前提として、さらに農産物輸入自由化を推し進めようとしている点であります。  食料自給率向上の課題と農産物輸入自由化が両立し得ないことは、現行基本法のもと、全面的な農産物輸入自由化によって、食料自給率が六〇年の七九%から九八年の四一%にまで下落したことで何よりも明らかではありませんか。食料自給率を引き上げるためには、輸入自由化政策を転換しなければなりません。そのためには、米を輸入自由化から外すなど、WTO農業協定の改定が不可欠です。それを回避して、農業の再建も食料自給率の向上も困難であることは明らかです。総理考えを伺います。  本法案では、輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行わなければならない、安定的な輸入を確保するため必要な施策を講ずるとして、農産物輸入自由化体制の強化のために国としてあらゆる措置をとることを義務づけています。これは、食料の安定輸入の確保を名目に、アメリカや多国籍企業の対日要求を次々に受け入れる根拠となり得るものであり、食料主権にも抵触する問題であります。総理の見解を求めます。  総理、あなたは、WTO協定の再交渉を前に、国民、農民の反対を押し切って米の関税化を強行しました。そして、関税率が引き下げられ、米の輸入が増大していくことを積極的に認めました。食料自給率引き上げを真剣に検討するのであるならば、何よりも米の関税化を中止することを表明すべきであります。総理の答弁を求めます。  第三の点は、本法案では日本の家族経営が守られないという点であります。  家族経営は、世界農業でも普遍的な経営であり、日本農業経営の基本です。家族経営の維持発展は、基本法の中心的課題とすべきであります。その中でこそ、後継者が育成されていくのです。農業経営が農産物収入によって成り立っている以上、主要な農産物の生産労働に他産業並みの労働報酬が保障され、生産費が償われる農産物価格制度が確立されなければなりません。総理、この基本的認識をまず明らかにしてください。  しかし、本法案は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するとしています。これは、稲作では十ないし二十ヘクタールという大規模農家を育成し、農家の九割以上を切り捨てる新農政を中核に据え、破綻が明確になった規模拡大一辺倒の政策を一層加速化するものです。さらに、農業経営の法人化を推進するとして、企業形態による農業経営を中心にするだけでなく、株式会社による農地所有を進めようとしています。  他方、家族経営については基本理念の中にも明記せず、家族経営を豊かに発展させる立場では到底ありません。これで日本の大多数の家族経営が守られ、発展するのですか。総理のはっきりした答弁を求めます。  第四の点は、本法案が農産物価格支持制度の解体を打ち出していることです。  本法案では、農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずるとしています。これまで、政府の価格引き下げ政策のもとで、所得保障機能が不十分だったとはいえ、農業者にとっては大切な農産物支持制度を、この法案では解体する方向を打ち出したのです。このことにより、日本の主要な農産物価格は、輸入を前提とした市場実勢のもとで大きく下落することになり、農業者は農業所得の減少など大変な打撃を受けることは必至で、さらに多くの農業者が離農に追い込まれることになります。  他方、本法案では、市場原理導入による影響の緩和措置に触れていますが、その対象は育成すべき農業経営と限定し、大多数の家族経営を守るのではなく、その選別、淘汰を進めようとしているのです。総理、育成すべき農業経営以外の農家は、一体どうするおつもりですか。これでは、弱体化した日本農業をさらに打ちのめすことになるではありませんか。答弁を求めます。  第五の点は、条件不利地域に対する直接支払いの問題です。  条件不利地域で農業と農村が維持できるように直接所得補償措置を導入することは、我が党がこれまでも一貫して要求してきたことであります。  本法案は、農業の生産条件に関する不利を補正するための支援を打ち出しましたが、その具体的内容の言及はありません。本法案と表裏一体の農政改革大綱では、直接支払いを限定化しようとしています。本来、条件不利地域に対する直接支払いというのであるならば、条件不利地域のすべての農家に対して、国土管理の労働を正当に評価し、所得補償を実施すべきであります。総理、そのような条件不利地域に対する直接支払いが、なぜできないのですか。はっきりと答弁をしてください。  この点では、農業予算の問題を指摘せざるを得ません。食料・農業・農村基本問題調査会の最終答申では、財政措置の効率的、重点的運用を明記して、ゼネコン奉仕の公共事業が農業予算の過半を占める現在の構造を続けることを前提としています。これでは、直接支払い予算もスズメの涙になりかねません。農業予算の重点を、ゼネコン奉仕から農家経営の維持改善へ抜本的に転換することが何としても必要です。総理の答弁を求めます。  以上見てきたように、本法案は、農民、国民の望むものとは大きくかけ離れ、農産物の輸入自由化を前提として、国内農業を市場原理に全面的にゆだね、施策の対象を一部の大規模経営だけに限定することなどを基本にしたものです。WTO農業協定に合わせた農政改革であり、食料、農業に対する国の責任を事実上放棄し、国内農業の切り捨てを一層推進するものにほかならないことを強く指摘して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  62. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 中林よし子議員にお答え申し上げます。  まず、現行農業基本法への反省等についてお尋ねがありました。  経済社会の変化の中で、食料自給率の著しい低下、担い手の減少、高齢化、農村の活力の低下等の問題が生じておりまして、現行基本法につきましては、食料や消費者の視点が十分でないなどの問題が生じてきております。これらのことを踏まえ、新しい基本法は、新たな理念に基づき政策を再構築しようとするものでございます。  食料自給率についてのお尋ねがありました。  食料自給率の目標につきましては、基本計画において定めることとしておりますが、その際、何の前提もなく目標数値を掲げるのではなく、政府を初め、農業者、消費者等の関係者が一体となった取り組みによりまして、実現可能なものになるよう、生産、消費両面での課題を明らかにしながら、数字を積み上げていくことが適当であると考えております。  食料自給率の引き上げと基本法案の関係についてのお尋ねでありますが、本法案では、国民に対する食料供給のあり方について、国内農業生産を基本とすることが明確に規定されているとともに、基本計画において食料自給率の目標を定めることが明記されており、食料自給率の向上を目指して取り組んでいくことが趣旨として含まれているところでございます。  次に、食料自給率向上のための農業協定改定についてのお尋ねですが、まず初めに協定の改定ありきではなく、基本法案に基本理念として掲げた国内農業を基本とする食料の安定供給の確保や、農業、農村の多面的機能の十分な発揮という考え方、並びにこれに基づく施策が国際ルールの中で正当に位置づけられるよう、積極的に主張することが重要と考えております。  農産物の輸入に関してのお尋ねでありましたが、国民に対する食料の安定供給は国の基本的責務であります。このため、本法案におきまして、食料政策に関する基本政策の一つとして、国内の農業生産を基本とし、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせるという考えを明らかにしているところであり、こうした考え方を国際社会でも積極的に主張してまいる所存でございます。  次に、米の関税措置への切りかえについてのお尋ねですが、今回の切りかえに際して設定した二次税率のもとで、米の輸入増により、国産米の需給や自給率に影響が出るとは考えておりません。このことからも、米の関税措置への切りかえを中止する考えもまたありません。  農業経営の考え方についてのお尋ねですが、家族農業経営の維持発展を図ることは重要な課題と認識をいたしております。これを実現するためにも、農業経営の安定を図ることが重要であるとの考え方に立ちまして、農業者自身の創意工夫を基礎に、経営全般にわたる支援策を総合的に講じていく考えであります。その一環として、価格政策の見直しに伴う経営安定対策を講じてまいります。  次に、家族農業経営についてのお尋ねでありましたが、我が国農業は、これまでも家族経営を中心に展開されており、今後も家族農業経営が我が国農業の主流であると考えております。このため、新基本法案は、その第二十二条において、家族農業経営の活性化を明確に位置づけ、必要な施策を講ずるものとしておるところであります。  価格政策の見直しに伴い、育成すべき農業経営以外の農家の経営をどうするかとのお尋ねであります。  今後、育成すべき農業経営に対し、経営全般にわたる支援策を総合的に講じていく考えでありますが、農業者の高齢化等のため、こうした展開が直ちに図りがたい地域におきましては、集落営農や受託組織等、地域の組織活動の中で位置づけていくことが重要であると考えております。  条件不利地域に対する直接支払いについてのお尋ねでありますが、これにつきましては、国民的理解を得るとともに、WTO農業協定等国際的規律との整合性を考慮する必要があります。現在、これらの点を含め、中山間地域等における公益的機能を確保する観点から、制度の仕組みについて有識者に御議論をいただいておるところでありまして、今後、これを踏まえて適切に対処してまいります。  最後に、農業予算についてのお尋ねでありますが、中山間地域等における直接支払いを初めとする新たな施策の内容、事業規模等を検討するとともに、従来の農業関係予算につきましても、事業の効果や地域のニーズ等を勘案しつつ見直しを行い、全体を新たな基本法案考えに沿ったものになるよう努めてまいります。  以上、お答えといたします。(拍手)     —————————————
  63. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 前島秀行君。     〔前島秀行君登壇
  64. 前島秀行

    ○前島秀行君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました食料・農業・農村基本法に対して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  政府が国会に提出した食料・農業・農村基本法の審議の行方を、今、農業者はもとより、消費者、国民は重大な関心を持って注目しています。  というのは、一九六一年、昭和三十六年に現行農業基本法が施行されてから三十八年が経過した今日、我が国農業、農村の現状はといえば、食料自給率は先進工業国の中で最低の四一%であり、国内総生産に占める農業生産の比率は、昭和三十五年に九・〇%であったものが一・四%に低下し、農地は六百七万ヘクタールが四百九十一万ヘクタールに減少、専業農家は二百八万戸が四十三万戸に減少し、二種兼業農家が圧倒的多数を占めているのであります。加えて、後継者難、過疎化と高齢化が進み、崩壊の危機にさらされている集落は少なくないのであります。  この厳しい現実に追い打ちをかけたのが、WTO農業合意による農畜産物の包括的関税化でありました。我が国農業、農村の将来は、全く先が見えない状況に追い込まれてしまっているのであります。それだけに、この基本法に我が国農業、農村の再建と再生の突破口を求めていると言っても過言ではありません。  そこで、まず、我が国の食料・農業・農村の現状に対する総理の御所見と、今日このような日本農業、農村になった最大の原因はどこにあるのか、御見解をお伺いいたします。  近い将来、人口の増加や地球環境の変化で、世界の食料需給が逼迫することが予想されています。国民の圧倒的多数は、我が国の将来の食料の安定供給について、多くの不安を抱いていることは間違いありません。総理府の世論調査によれば、七一%の国民が食料に対する不安を抱き、八三%の人が、米などの基本食料は、たとえ割高になっても自給すべきだと答えているのであります。  提案されている食料・農業・農村基本法は、基本原理として、食料の安定供給、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展など、現行の農業基本法とは違った新たな課題を提起している点は、一応評価することができます。食料の安定供給の基本は、国内生産を主力にすることであり、農業生産の維持増大を図ることが何よりも大切なのであります。  しかし、今年二月の農水省から発表された法案骨子には国内生産の維持増大が明記されていたにもかかわらず、なぜか、提案されている新基本法の第二条第二項から、この国内生産の維持増大が削除されているのであります。食料の安定供給における国内生産の維持増大が明確に位置づけされていないことは、極めて問題であります。  総理は、我が国の食料の安定供給をこれまで以上に外国に依存しようとするのか。先進国で最低の自給率と、展望の見えない農業と農村を招いてしまった最大の要因が、安易な食料の輸入と農業軽視の政策であったことを考えるならば、国内の農業生産活動をしっかりと位置づけるべきであります。新たな農業基本法において、国内農業生産の維持増大を放棄した理由は何か、総理、農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。  農業は、国民生活に必要不可欠な、良質で安全な食料を長期的に安定的に提供するとともに、農業の生産活動が持続的に行われることによって、国土の保全、水源涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の多面的な機能を発揮します。また、農業、農村の発揮する外部経済効果は、公益的機能の発揮でもあります。  提出された新農業基本法では、農業の多面的な機能の発揮と農業の持続的な発展について、基本理念として指摘はしているものの、それを実現させるための具体的な政策展開は何ら提示されていないのであります。  農業、農村の発揮する多面的機能と公益的機能との関係を明確にするとともに、多面的な機能の発揮をどのような具体的な条件と政策手段で実行するのか、社会的、経済的効果をどう評価するのか、どのような農法をもって農業の持続的な発展を維持するのか。これからの日本農業の根幹をなすこの諸課題に、総理、農水大臣はどのように対処しようとするのか、御所見をお伺いいたします。  また、基本計画を定める上で、国民が最大の関心を持ち、期待していることは、確実に実行する具体的な施策であります。ところが、自給率の向上のための具体的な施策を初め、安全な食料を提供する環境保全型農業の推進、農業生産組織の育成、所得政策と経営安定対策、直接支払い方式の具体化など、すべてが検討委員会の結論待ちであり、いまだに明らかにされていません。これでは、立派な絵を見せられただけであって、我が国の食料・農業・農村の基本像、将来像は国民の前に示されているとは言えないのであります。  しかも、この基本計画を定めるときには、農政審議会の意見を聞くだけであります。国の食料・農業・農村政策の根幹となるこの基本計画では、施策の具体化を図るとともに、国民的な合意を得るためにも、国民の代表である国会の意見を聞くべきであると考えますが、総理、農林水産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  この食料・農業・農村基本法が、名実ともに我が国農業、農村の将来の明るい展望と期待を現実のものにするためには、少なくとも、次の諸課題に対する具体的な政策を国民の前に明らかにすべきであります。  第一は、すべての施策の基本となる食料自給率の目標値を明示すること。その目標は五〇%とし、米、麦、大豆、酪農、畜産などの主要食料の生産目標も明示すべきです。  第二は、米、麦、大豆、飼料作物などの土地利用型作物と畜産、酪農など我が国の主要食料の再生産を可能とする所得政策及び経営安定対策を確立すること。  第三は、目標の自給率を達成するために必要な農地の確保について、その目標値を明らかにすること。その目標は五百万ヘクタールとすべきであると思います。  第四は、経営形態のあり方の問題であります。我が国農業は、家族農業と集落営農を中心にして営まれてきました。これからも家族営農と農業生産法人を主体とすべきであり、農村における地域社会の維持と農業の多面的な機能を発揮させるためにも、株式会社の農地取得は認めるべきではありません。  第五は、直接支払い方式の導入の課題であります。我が党の十年来の主張であった直接支払い方式を導入することは評価します。この種の政策では、経済的には成り立たないが、国民と国家にとって大切なものを守る行為を公的に支援するとの理念を明確にすることが大切であり、その上で、制度の適用範囲を中山間地域だけに限定するのではなくして、平たん地の環境保全型農業にも適用すべきだと考えます。支払い方法は、地域農業の活性化と一体的な地域政策との観点から、自治体への一括交付方式とすべきであります。  これらの基本的な諸政策について、農林水産大臣及び自治大臣の御見解をお伺いいたします。  次に、次期WTO交渉についてお伺いをいたします。  WTO次期農業交渉は二〇〇〇年から始まりますが、今年の十一月には交渉の枠組みや期間を定めるWTO閣僚会議、六月にはその前哨戦とも言える五カ国農相会議、APEC閣僚会議が開かれます。現在の農業協定は、アメリカなどの農産物輸出国に有利であり、日本などの輸入国に不利な不平等協定であることは間違いありません。すべての農畜産物の関税化を前提にした、市場原理に基づく自由貿易主義に、我が国農業が対抗できないことは明白であります。  食料の国内生産を基本とする政策はもちろん、農業、農村の自然循環機能の発揮や多面的機能の発揮、直接支払いの導入など、新農業基本法の柱となるすべての政策分野で、次期WTO農業交渉の結果が影響してきます。地球環境や資源の有限性に配慮し、それぞれの国の条件と特徴を生かして、自国の基礎的食料は自国で生産する食料自給の権利を基本とした、新たな農産物貿易ルールの確立を目指して、政府はEU、韓国などとの連携を積極的に展開すべきであるが、その具体的な行動も、結果としての成果も、一向に見えてきません。  政府は、現行のWTO体制の枠組みを前提とした交渉をしようとしているのか、新たな農産物貿易のルールをつくることを目指すのか、次期WTO交渉に臨む基本姿勢について、国民の前に明らかにする責任があります。  同時に、地球的視野による人口、食料、環境問題のために、飢えに苦しむ途上国への食糧援助、資金援助、農業技術援助、米の長期貸借による東アジア食料安全保障システムの確立、世界の食料備蓄機構の創設などの国際貢献について、総理並びに農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。  今提出されている食料・農業・農村基本法は、二十一世紀我が国の食料と農業、農村の基本的な枠組みを決めるものであることはもちろんであり、次期農業交渉に臨む我が国の基本スタンスを国際社会に示す重要な役割を担っているのであります。そして、農業、農村の持つ公益的、多面的な機能からして、もはや食料、農業は、単に農業者、農村だけの問題ではなく、都市住民を含めた国民的課題であることは異論のないところであります。新しい農業基本法が、国民の理解と合意によって成立することに大きな意義があります。  それだけに、この基本法が、さきの米の関税化のときのように、政府、与党、農業団体だけの談合によって処理されるようなことは、断じて繰り返してはなりません。次期WTOの交渉では、国民の合意と支援をバックにして、食料自給の権利を自信を持って主張することを強く要請して、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  65. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 前島秀行議員にお答え申し上げます。  まず、食料・農業・農村の現状認識等のお尋ねでありましたが、経済社会の変化の中で、食料自給率の著しい低下、担い手の減少、また高齢化、農村の活力の低下等の問題が生じてきております。その主な原因は、予想を上回るテンポの経済成長や地価上昇、さらには国際化の進展の中で、農業体質強化がおくれたことにあるとも考えております。  国内農業生産の維持増大が記述されていない理由についてお尋ねでありましたが、本法案では、国民に対する食料供給のあり方について、国内農業生産を基本とすることが明確に規定されているとともに、基本計画において食料自給率の目標を定めることが明記されておりまして、国内農業生産の維持増大を図ることは、趣旨として含まれているところでございます。  多面的機能についてのお尋ねでありましたが、この機能の中には、国土の保全等の公益的機能のほか、文化の伝承等が含まれており、これらの機能を発揮していく上で、農業の持続的発展と農村の振興は不可欠であります。このため、本法案の定める方向に従いまして、望ましい農業構造の確立、自然循環機能の維持増進、中山間地域等における多面的機能の確保を特に図るための施策等を推進してまいります。  基本計画についてのお尋ねがありました。  基本計画は、国会での御審議をいただき制定される本法案の基本理念や基本的施策を具体化する計画という位置づけのものであることから、行政が責任を負うべき分野であると考えております。したがいまして、政府が食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いた上で策定し、公表することといたしております。  次に、次期農業交渉に臨む我が国の基本姿勢国民に明らかにすべきとのお尋ねであります。  食料の安定供給と農業、農村の持続的発展を図り、二十一世紀に向け農業者が明るい展望を持って農業に取り組めるよう、次期交渉では、農業の多面的機能や食料の安全保障、輸出入国間の貿易関連措置の状況を踏まえた貿易ルールの確立を積極的に主張していきたいと考えております。  食料分野での国際貢献についてのお尋ねでありました。  食料備蓄を含む食料安全保障の問題は、人類の生存基盤に影響を与え得る重要な問題でございます。我が国は、途上国に対し食糧、資金、技術面で支援を行うとともに、世界食糧計画等、国際的な食糧援助システムに参加し、積極的な貢献を行っており、今後とも、世界的な課題である食料問題に真剣に取り組んでまいりたいと考えております。  最後に、次期WTO農業交渉に向けた決意についてお尋ねがございました。  政府といたしましては、次期農業交渉に臨むに当たりましては、国会での御議論を十分踏まえることはもちろん、関係者が一体となって協議、検討を進め、農業関係者のみならず、消費者団体、経済団体を初め幅広く理解を得ながら、国民合意のもとでの交渉方針を構築していきたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣中川昭一君登壇
  66. 中川昭一

    ○国務大臣(中川昭一君) まず、国内農業生産の維持増大が法案規定されていない理由についてのお尋ねでありますが、本法案では、国民に対する食料供給のあり方については、骨子の段階では書かれていなかった、国内の農業生産を基本とするということが明確に規定されております。国内農業生産を基本とするとの規定は、国内農業生産の維持増大という規定よりも、食料供給における国内農業生産の位置づけが、より端的で明確になっているものと考えております。  また、基本計画においては食料自給率の目標を定めることが明記されておりますが、国内農業生産の維持増大を図ることは、趣旨として含まれているものでございます。  次に、農業、農村の果たす多面的役割についてでありますが、本法案におきまして多面的機能として例示している機能のうち、国土の保全、水源の涵養等は公益的機能と呼ばれてきたものであり、こうした機能に加えて、芸能、祭り等の文化の伝承などを包含することにより、広い概念として多面的機能を用いるという整理をしております。  このような多面的機能を適切かつ十分に発揮するため、担い手の確保、優良農地の確保と有効利用、生産基盤の整備、あるいはまた農業に内在する自然循環機能の維持増進、環境に負荷を与えない農法の促進、中山間地域等の条件不利地域における多面的機能の確保を特に図るための施策等を推進してまいります。  また、多面的機能の評価につきましては、これまで代替法などさまざまな手法による評価を行ってきたところでありますが、国民の理解と支持を得るためにも、より的確な評価方法の研究をやってまいりたいと考えております。  次に、基本計画についてのお尋ねでありますが、基本計画は、国会で御審議をいただいておる本法案に定められた基本理念や基本的施策を具体化する計画という位置づけのものであることから、施策の実施を担当する行政が責任を負うべき分野であると考えております。この基本計画は、政府が原案を作成し、国民各界各層の代表から構成される食料・農業・農村政策審議会の御意見を聞いた上で、閣議決定、公表する考えでございます。  次に、食料自給率及び主要作目の生産目標についてでございますが、食料自給率の目標につきましては、基本計画の中で数値目標を明らかにすることを考えております。  その際、何の前提もなく目標数値を掲げるのではなく、実現可能なものとする観点から、米、麦、大豆等の品目ごとに生産努力目標を明らかにするとともに、食べ残し、廃棄の抑制や、日本型食生活を踏まえた脂肪摂取の抑制等の消費者サイドからの取り組みも加える必要があると考えております。その上で、これらの数字を積み上げながら、食料自給率の目標を設定する考えであります。  次に、所得、経営安定対策についてでありますが、土地利用型作物や畜産等主要農産物の再生産を可能とする上でも、農業者の所得確保と経営の安定は重要な課題であり、本法案においては、農業者自体の創意工夫を基礎に、経営全般に対する支援策を体系的に整備し、各般の施策を総合的に講ずることにより、その実現を図っていくこととしております。  この一環として、価格政策の見直しとあわせて、価格の著しい低落時においても、育成すべき農業経営が安定的に営農を継続できるよう、経営安定措置を講じていくこととしており、主要な品目ごとに順次施策の具体化を進めていく考えであります。  次に、農地の確保目標についてでありますが、基本計画において食料自給率の目標を設定することとしておりますが、その際、農地の面積につきましても、品目ごとの作付面積など、自給率目標の達成に必要な指標として基本計画の中で明らかにしていく考えであります。  次に、経営形態のあり方についてのお尋ねでありますが、土地利用型農業における株式会社形態の取り扱いにつきましては、株式会社一般は認めず、担い手の経営形態の選択肢を拡大する観点から、地域に根差した農業者の共同体である農業生産法人の一形態としての株式会社に限り認めることとしております。  現在、株式会社形態の導入に関する懸念を払拭するための措置として、専門家による検討会を開催して検討しているところであり、本年夏ごろまでに結論を得た後、関連法制度の整備を行ってまいりたいと考えております。  次に、直接支払いについてのお尋ねでありますが、直接支払いという政策手法の導入は、我が国農政史上初めてのことであり、国民の理解と支持を得ていくために、多面的機能の発揮のために早急な対策が必要な中山間地域等を対象とすることが適当であると考えております。  また、環境保全型農業に対する直接支払いにつきましては、WTO協定上緑の政策として認められているのは、環境負荷の軽減義務が課せられていることに対して、これらに伴う追加措置または損失の補てんを行う場合に限られていること、直接支払いは財政負担であり、汚染者負担原則との関係の整理が必要となること等の問題があり、慎重な検討が必要と考えております。  次に、直接支払いの実施方法についてのお尋ねですが、現在、中山間地域等直接支払制度検討会で検討されておるところであります。直接支払いを導入するに当たっては、国民の理解を得る観点からも、WTO協定上の緑の政策とする必要がありますが、同協定では、生産条件の不利な地域の生産者に対する直接支払いとされ、地方自治体に交付されるものとはされておりません。  いずれにいたしましても、国と地方公共団体との間でどういう役割分担で施策を実施していくかは重要な検討事項であり、平成十二年度概算要求時までに、国民の合意が得られますような仕組みについて、中山間地域等条件不利地域の直接支払い制度につきまして、検討会での議論を踏まえながら検討していきたいと考えております。  次に、次期WTO農業交渉に臨む基本姿勢についてのお尋ねですが、いずれの国にとっても公平で、かつ真に公正な貿易ルールの確立を図るため、次期交渉では、農業の果たす多面的役割や食料の安全保障の重要性、さらに、国内の農業政策の円滑な実施農業生産の文化への十分な配慮がなされること、輸入国と輸出国との権利義務のバランスを確保すること、各国の農業が共存できるような国際規律とすることであります。  私といたしましては、このような基本的な姿勢のもと、今後、さらに関係者が一体となって議論、検討を進め、国民的共通認識を得ながら、揺るぎない交渉方針を築き、後世に悔いのない交渉結果を獲得すべく、全力で取り組んでまいりたいと考えます。  次に、国際貢献についてのお尋ねですが、我が国といたしましては、開発途上国の国内生産力の向上を図ることを基本とし、食料、農業分野の各般の国際協力を進めてきたところであります。今後、農林水産省としては、関係省庁とも連携しつつ、技術協力や資金協力等を推進するとともに、食糧支援の仕組みの適切な活用を図ること等により、地球的視野による人口、食料、環境問題の解決のため、食料、農業分野の国際協力について、途上国の実態、ニーズに応じた、より一層効率的な、効果的な実施に努めてまいります。  なお、東アジア食料安全保障システム及び食料備蓄機構につきましては、各国が持続可能な食料生産の確立を図ることを基本としつつ、今後とも、発生し得る大規模な食料不足という事態に適切に対処できるよう、国際ルールや国民負担に留意し、関係各国や関係省庁と意見調整を図りながら検討すべきものと考えております。  次に、本法案国民の合意と理解により成立させるための政府の決意についてのお尋ねでありますが、食料・農業・農村政策は、国民の暮らしと命の安全と安心に密着した問題であります。このため、農政の抜本的な見直しに当たっては、農業者だけでなく、消費者も含めた国民全体の合意に基づき、食料・農業・農村に関する政策を再構築していくことが必要であると考えております。  本法案国会審議や国民各層への広報活動の展開等を通じ、食料・農業・農村について、都市住民、消費者も含めた国民的な理解が深まり、国民の理解と支持のもとで食料・農業・農村政策を推進し得るよう、各般の努力を行ってまいりたいと考えております。  最後に、国民の合意と支援を受けて次期WTO交渉に臨むことについてのお尋ねでありますが、次期農業交渉において、我が国の主張を強力に展開し、我が国考え方が十分反映された交渉結果を獲得するためには、広く国民的合意を形成することが重要であると考えております。  このため、次期農業交渉に臨むに当たっては、先ほど総理からもお答えしたとおり、国会での御議論を十分踏まえることはもちろん、関係者が一体となって協議、検討を含め、農業関係者のみならず、消費者団体、都市住民、経済団体初め、幅広い関係者の理解を得ながら、国民合意のもとでの交渉方針を構築していきたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣野田毅君登壇
  67. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) 中山間地域等への直接支払いに関するお尋ねであります。  昨年十二月に策定されました農政改革大綱に基づき、現在、農林水産省において、検討会を設置するなどして具体的な内容について検討されているところでございます。  自治省といたしましては、地方団体の自主性を尊重する立場から、今後、政策の目的や効果、地方団体の果たすべき役割等を中心に、望ましい制度のあり方を関係省庁と協議してまいります。(拍手
  68. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  69. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会     ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         文部大臣    有馬 朗人君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運輸大臣    川崎 二郎君         郵政大臣    野田 聖子君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣    太田 誠一君  出席政府委員         外務省北米局長  竹内 行夫君         外務省経済局長  大島正太郎君         農林水産大臣官房長 高木 賢君