○中島武敏君 私は、ただいま
議題となりました
都市基盤整備公団法案について、
日本共産党を代表して、
総理並びに関係大臣に質問いたします。
第一に、
政府が公団賃貸住宅の建設、
供給から撤退しようとしている問題についてお尋ねいたします。
消費の低迷を要因とする経済成長率の落ち込みで、勤労者の実質賃金も下降傾向にあります。一方、完全失業率は四・六%を記録して、統計をとり始めてから最悪の
事態となっています。終身雇用制も減少ぎみで、勤労者の雇用に対する信頼感は揺らいでいます。こうした中で、
国民の中に、土地の資産価値は必ず上がるという土地神話が崩れつつあり、その結果、住宅の自己所有にこだわらない借家へのニーズが高まっています。
不況が深刻化する中、借金を返済できなかった人たちが、債務を清算するために自己破産を申し立てた件数が、九八年一年間で十万件を突破したことが最高裁のまとめでわかりました。この中には、住宅を購入したものの、価格が下がって売ることができない上に、リストラ、解雇などでローン返済が不可能になっている人も多数含まれております。先行きのめどが立たないという将来不安は、
国民の持ち家志向を打ち砕いていると言っても決して過言ではありません。
ところが、
政府は、この
法案によって、戦後、
日本の住宅
政策の重要な一つの柱として、住宅に困窮する勤労者に良質な住宅の
供給を
目的として住宅公団を設立し、それを進めてきた住宅・都市
整備公団を廃止し、賃貸住宅の建設を都心部の再
開発と一体となったごく一部の
地域に限定し、その中心的
業務を、ゼネコンと不動産
会社、
金融機関など大企業に奉仕するための都市基盤
整備に重点を移そうとしています。このことは、住まいを人権として保障しなければならない
政府の重大な
責任を放棄するものであることを厳しく指摘しなければなりません。
国民の住生活を保障するために
政府、公共が果たす役割は終わったという認識なのか、明確な
答弁を求めるものであります。
特に、ファミリー向けの賃貸住宅の
供給は、
民間ではほとんど行われていません。それは、ワンルームマンションなどと比べても、採算が成り立ちにくいからであります。このような状況があるにもかかわらず、賃貸住宅、特に家族向け賃貸住宅は
民間任せにしようというのですか。また、住宅に困窮している、公共賃貸住宅を求める
国民に対して、
政府はどのような対策をお持ちになっているのか、はっきりお答えください。
第二に、本
法案による新公団が、大手ゼネコンなど大企業のための仕事づくりである、都市基盤
整備を中心的
業務にしようとしていることについて質問いたします。
特に重大なのは、新公団が、ゼネコンや
金融機関がバブル崩壊で塩漬けになった
不良債権、つまり売れ残った虫食い状態の土地や工場跡地などの、いわゆる低未利用地を大量に購入、取得しようとしていることであります。これは明らかに、税金投入による大企業のためのバブルの後始末ではありませんか。
既に公団は、先取り的に、土地有効利用事業と称する
不良債権の取得事業を進めており、九八年度の補正予算で、三千億円の購入枠も認められているのであります。この事業の実態について、私が独自に入手した公団内部資料土地情報仮受付物件によれば、
銀行やゼネコン、共同債権買取機構、住宅金融債権管理機構などから持ち込まれた土地を公団が取得対象にしているのであります。
しかも、この事業を推進している土地有効利用事業本部には、
銀行、ゼネコン、不動産、コンサル
会社などの合計百九十一人の社員が出向しているのであります。そして、まさにその土地の所有者や、持ち込んでいる
銀行、ゼネコンなどが、公団に社員を出向させている当の企業であることは、余りにも露骨な癒着ではありませんか。従来から、公団の癒着体質が指摘され、それが放漫経営の要因と指摘されてきました。事ここに及んでも、このような癒着を続けるのですか。明確にお答えください。
これらの持ち込み土地には、土地に設定されている抵当権の債権額を合計すると、公団の見積もった土地評価額の十一・六倍に達するものもある、中には、十社以上が抵当権を設定している土地や、バブルのどさくさで隣地との境界線がどこにあるのかはっきりしない土地さえあると報道されています。いわば、問題のある土地を取得対象にしているのではありませんか。このような土地取得は、
不良債権の
民間から公団への移しかえだけに終わり、結局、
国民へのツケ回しになるのは明らかではありませんか。
一体、この土地有効利用事業本部は何をしようとしているのか、この際、その全貌を明らかにすることを
要求いたします。大企業の
不良債権処理を
国民の血税を使って行うことを直ちにやめるべきではありませんか。
答弁を求めるものであります。
第三に、新公団設立による家賃、建てかえなど、住宅の管理について質問いたします。
とりわけ、本
法案によって、七十二万戸、二百万人を超える現在の居住者に影響が与えられることであります。重大なのは、家賃は市場家賃を基準にして
決定することを明確にしたことであります。
この
措置によって、家賃は三つの体系ができることとなります。すなわち、新規、空き家の入居家賃は
民間並みの市場家賃に、現在住んでいる居住者の家賃、継続家賃は市場家賃を上回らない程度まで一斉に値上げされる、さらに六十五歳以上の高齢者や低所得者に対しては減免家賃が適用されるとされています。しかし、この減免家賃の実態は、建設省の
説明でも、現行家賃を上回るものがほとんどであります。市場家賃に近づくのを一定程度緩和するだけであり、減免
措置とはほど遠いものであります。
結局のところ、これらの
措置によって、多くの居住者が高家賃にたえられなくなって、住みなれた住居と
地域から出ていかざるを得なくなるのではありませんか。また、新規家賃は高家賃となり、入居する人が少なく、再び空き家がふえるのではないですか。そうならない保証はあるのですか。
既にさまざまな調査で明らかなように、公団居住者は高齢化、低所得化しています。全国公団住宅自治会協議会がことし三月発表した実態調査によっても、世帯主の年齢が六十歳以上が三九・一%に上り、中でも女性の世帯主が増加しています。年間の世帯収入も六百四十万円未満は五三・四%を占め、年金収入が大部分を占める世帯が二〇・一%になっているのであります。その結果、公団住宅に長く住み続けたいとする世帯が七四%、そのうち九割が家賃の値上げや高家賃に不安を抱いているのであります。
これらの声にどのようにお答えになるのか、明確な
答弁を求めるものであります。
建設省、公団は、昭和三十年代に管理開始した住宅約十七万戸を対象に、建てかえ事業を行ってきました。しかし、それは居住者の要望に反し、建てかえ後家賃が三倍、四倍になるなど、従前居住者が住みなれた住宅を出ていかざるを得ないような、まことに情け容赦ない事業であると言わなければなりません。
本
法案で、建てかえ事業は新公団に引き継がれ、今まで公団の任意事業であったものが
法律に明記されることになったのであります。法制化されることで、強権的な追い出しが一層推し進められることにならないか、
答弁を求めるものであります。
最後に、住都公団が、この間、
国民の住生活を向上させるのではなく、もうけ主義に走り、その利権、癒着構造によって
国民の要望に背を向けてきたことに触れざるを得ません。
新規賃貸、分譲住宅の高家賃化と高額化、建てかえ後家賃の途方もない高家賃、継続居住者家賃の三年ごとの値上げ、
開発しても需要のない土地取得によるむだの発生、本来の役割を投げ捨て、大企業のオフィス向け都市再
開発に重点を移し、バブル崩壊で空きビルをつくるなど、数々の愚挙を繰り返してきました。
それは、経営者が建設省などの天下り官僚によって占められ、建設省の厳しい管理体制の中でつくられた、居住者や
国民に顔を向けない、官僚的体質によって生み出されたものであります。関連
会社を多数つくり、そこに幹部が天下りし、公団の関連事業を独占して、巨大な利益を上げ、甘い汁を吸うなどという経営姿勢は、到底世論の支持を受けるものではありません。そこに財界が目をつけ、猛烈な公団バッシングを行い、
国民の中に、
民間の方がまだしもましだという世論形成を行ってきたのであります。
これまで、
日本共産党は、勤労者が入居可能な適切な家賃と良好な居住水準、機能、環境を持った賃貸住宅の
供給、住宅に困窮する人々が支払い可能な、現居住者が住み続けることができる家賃にする、住民追い出しの強権的建てかえではなく、徹底した情報公開の中で、住民
合意、住民参加で、建てかえ後も住み続けることができる家賃にする、不明朗な公団運営、公団経営にメスを入れ、民主的な運営という建設的
提案を行い、
国会論戦や居住者の運動を通じて、その
実現に努力してきました。
本
法案の審議に当たり、我が党の
提案による新公団の
実現こそが
国民、居住者の声であることを強調して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕